バットマン「グランド……オーダー?」 マシュ「その2です」

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698 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:21:21.34 ID:iNQLdeY80


コツ、コツ……


ドクター『ブルース、その……肝心な時にサポートが行き届いていなかった。すまない』

バットマン「……あぁ、大丈夫だ。私も、現場で常に策を考えるハズが、犠牲を出しながらの撤退になってしまった……まるで最悪を受け入れたようだった。情けない話だが」ポタポタ、グイッ

ドクター『……』

バットマン「……それに、フランケンシュタイン博士を助けられもしなかった。すまない」

ジキル「……良いんだ。キミ達が帰って来た、それで十分だよ」

???「……ゥ……」フリフリ

バットマン「……良ければ、キミの名を教えてもらえないか」

???「ふらん……」

バットマン「フランか……」


699 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:22:00.00 ID:iNQLdeY80


バットマン「ダビデを……ダビデを助けようとしてくれた事に、感謝する。ありがとう」

フラン「……ゥ」

ドクター『……ダビデも、消滅したんだね。アイツ、最期に何か言ってたかい?』

バットマン「あぁ。息子を頼むと、そう言われた」

ドクター『えっ……息子って、そ、ソロモンを?』

バットマン「ああ、そうだろう」


700 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:22:25.50 ID:iNQLdeY80


ドクター『……そうか、そんな事を……』

バットマン「ドクター、やはり……ダビデは、お前が思っているほどは、悪い奴ではないと思う」

ドクター『……そう、か。
……そうだね。僕も少し、言い過ぎたかもしれないなぁ』

バットマン「……」

ドクター『……ありがとう、ブルース。ごめんね』

バットマン「謝る事ではない。ダビデにも息子を思う気持ちがあった、それだけの事だ」

ドクター『そうだね……』


701 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:23:04.04 ID:iNQLdeY80


バットマン(しかし、今回の黒幕がソロモンだと直接ダビデに明かした事があっただろうか)

バットマン(……覚えはないが、第三特異点であれほど強く問い詰めたのだ。何かしら察するところはあったのだろう)


ジキル「あれが図書館だ、ブルース。もう少し踏ん張ってくれ」

バットマン「ああ、大丈夫だ……」

フラン「ウ!」スタスタ


702 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:23:32.60 ID:iNQLdeY80


バットマン「……」


霧「」ズォォォォォォ……


街路「」……、…………


バットマン(私達以外の足音などしていない。その筈だ、だが……この胸騒ぎは何だ?)

バットマン(また恐怖ガスの幻覚か? いや、それにしては……)


ジキル「どうした?」

バットマン「……」

フラン「?」

バットマン「……いいや、何でもない。行くぞ、止まらず」スタスタ



703 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:24:02.31 ID:iNQLdeY80


………………


ナーサリー「……」

アンデルセン「……ほら、紅茶だ。飲め」カチャ

ナーサリー「いらないわ。紅茶なんて……」パシッ

アンデルセン「いつまでヘソを曲げているつもりだ、お前……」

ナーサリー「いつまで、ですって?」

アンデルセン「……」

ナーサリー「……マッドハッターさんが帰ってくるまでにきまってるわ」


704 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:24:31.54 ID:iNQLdeY80


アンデルセン「……死人は戻らん」

ナーサリー「じゃあ……じゃあ、どうして助けに行かせてくれなかったの!? 私、わたしは……私は、ようやく『物語』になれたのに……っ」ギュッ

アンデルセン「……」

ナーサリー「これじゃまた、誰も読んでくれない。誰も私を見てくれない。誰も……」ブルブル

アンデルセン「いつまでも同じ事を言うんじゃない。あそこで無駄死にするのがお前の役割だったなら、とっくに放り出してる」

ナーサリー「……だからあなたは嫌いよ、アンデルセン」キッ

アンデルセン「フン……」


705 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:24:59.76 ID:iNQLdeY80


アンデルセン「……?」ピクッ

ナーサリー「? アンデルセ……」

アンデルセン「静かに。……チッ、侵入者か。動くなよ、俺が向かう」

ナーサリー「わたしも向かうわ。一人は駄目よ、ぜったい駄目」

アンデルセン「座っていろ。マッドハッターの最期の言葉まで無碍に扱うつもりか」

ナーサリー「……大人ってズルいわ、だから嫌いなの!」

アンデルセン「奇遇だな、俺も理想論ばかりの子供は大嫌いだ!」ガチャッ、バタンッ‼

ナーサリー「っ……」


706 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:25:26.00 ID:iNQLdeY80


………………

ドクター『……すまない、感知が遅れた。図書館内の魔力反応に揺らぎが出た。キミ達は何やら結界じみたものを踏み越えてしまったようだ』

バットマン「ジキル、確か図書館に居るサーヴァントは……」

ジキル「ああ、帽子をかぶった男だったハズだ」

バットマン「……」


バットマン(マッドハッターの仕業か? いや、だが奴はわざわざこんな回りくどい事をする性格ではなかったハズ……)


バットマン「ドクター、図書館内のサーヴァント反応をサーチできるか」

ドクター『待ってくれ、今やってみてる……うぅ、相変わらずノイズまみれだな。恐らく二人居るぞ、それで……この体格、どっちも子供みたいだな』

バットマン「子供?」


バットマン(……マッドハッター……ではない?)


707 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:26:13.48 ID:iNQLdeY80


ドクター『あぁっ、駄目だ! ノイズが激し過ぎて捕捉しきれないぞ……二階に居るらしい事は分かったんだが』

バットマン「十分だ。……二人とも注意しろ、この建物も安全という訳では無さそうだ」

ジキル「困ったな……」

フラン「まも、る」

バットマン「……行くぞ」スッ


裏口「」ガチャ、ギィィィィィィィ……



708 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:26:39.44 ID:iNQLdeY80



コツ、コツ……コツ……

蜘蛛の巣「」ハラリ

ろうそく「」ユラァ……


バットマン「……」


バットマン(やはり、つい先ほどまで人が居た痕跡がある)


ジキル「うわっ……酷い状態だな、ここは……」

バットマン「迂闊に動くな。……それと、扉をきちんと閉めてくれ」

フラン「ウ!」ガチャン


裏口「」ガチャリ


709 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:27:39.91 ID:iNQLdeY80



バットマン「……そこの机の上を片付けるぞ。マシュとモードレッドを寝かせる」

ジキル「ああ、緩和剤製作のスペースも作らなくちゃな」

フラン「きたない……」ガサゴソ

バットマン「……いや、待ってくれ。少しだけ」スタスタ


バットマン(机の上にあるのは……赤ずきん、蟻とキリギリス、赤い靴、ある母親の物語……『あ』から始まる本ばかりか)ペラ

バットマン(読まれた形跡はどれも古いものだ。各ページの湿り気、クセの付き方から判断して……恐らく、他の本を探す際に本棚から放り出されていたのだろう)ペラ、ペラ

バットマン(では目的の本とは? ……考えるまでもない。『アリスズ・アドベンチャー・イン・ワンダーランド』『不思議の国のアリス』。マッドハッターの愛読書)

バットマン(……だが、捜索は途中で打ち切られたようだ。中途半端に残ったあ行の本棚、冷めたままで放置された紅茶とカップ……急な来客でもあったか、それとも)


ビュォォォッ……

本「」パララララララ……

バットマン「……風?」

ジキル「扉か窓でも開いてるんじゃないか?」


710 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:28:13.98 ID:iNQLdeY80



バットマン「……ここに残っていてくれ、見に行く」スクッ

ジキル「了解。緩和剤も調合を開始するよ」

バットマン「頼んだ。フラン、ここの守りは任せた」

フラン「まかせて!」フンス

バットマン「……」スタスタ



ヒュォォォォォォォォォオオオ……


裏口「」……キィ……



711 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:28:48.55 ID:iNQLdeY80


コツ、コツ……


バットマン(何かが起こったのは間違いない。ここにあるのは三人分の足跡だ。本を蹴飛ばし、垂れたインクを踏みながら『その現場』へと急いだらしい)コツ、コツ

バットマン(ここまで急ぐとなると、敵か)


ドクター『気を付けてくれ、ブルース。二階のサーヴァント反応がひとつ減った』

バットマン「……了解。慎重に行動する」コツ、コツ


ビュオォォォォォッ……


バットマン「……これは……」ピタッ


バットマン(凄まじい攻撃力でもって図書館の正面玄関が破壊されている。粉々の木片を踏みながら侵入者は入って来た……脳内で木片を元の位置に再構築。足跡を分析する……)

バットマン(……この足の形は、ベイン)ピクッ

バットマン(成程、ようやく事態が把握でき始めたぞ。図書館に居た三人は団結してベインを攻撃したんだ……しかし、我々が遭遇したベインには傷一つ付いていなかった。虚しい抵抗か)

バットマン(図書館には未だに二つのサーヴァント反応。つまり、ひとりを犠牲に残りが逃げた……さあ、犠牲になったのは誰だ?)


ビュォォォォォォオオッ……


帽子「」コロコロコロ……

バットマン「……」パシッ


バットマン(……マッドハッター)


712 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:29:29.65 ID:iNQLdeY80


???「……手を上げろ、黒猫男」

バットマン「……」


バットマン(しまった、後ろを取られた……)


???「手を上げろと言ったんだ、聞こえなかったか」

バットマン「……」スッ

???「聞き分けの良い奴だ。敵か味方か分からない状況ではこうするのが賢明でな」

バットマン「……我々は味方の可能性が高い」

???「さあ、どうだろうな……少なくとも、その帽子にすぐ目を付けた時点では怪しいものだが」

バットマン「……」


713 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:29:58.49 ID:iNQLdeY80



バットマン「マッドハッター。そうだな」

???「……なんだ、お前もあの狂人の知り合いか?」

バットマン「古い付き合いだ……嫌になるほどのな」

???「含みのある言い方だな。どうしてアイツの知り合いはマスクしか居ないんだ」


バットマン(マスク……という事は、やはり)

バットマン「……やはり、ベインも来たのか」

???「ますます怪しいな、お前は。何故そこまで知っている? 何故ここに来た? 何故黒猫のコスプレなんだ?」

バットマン「それは……」


ドゴォォォォォォォォォォォォ……


バットマン「……!!」バッ


714 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:30:29.87 ID:iNQLdeY80


???「ええい、今度は何の音だ!?」

バットマン「あれは……!」


バットマン(しまった、ジキル達が居る方角……!)ダッ


???「待て、動くな! 今の音は何だ!?」

バットマン「敵だ! 侵入を許した!」

???「敵だと!? お前達はどうなんだ!」

バットマン「敵ではない!」

???「その証拠は!」

バットマン「恐れている! 悪いが行くぞ!」ダダッ

???「待て!! ええい、待てと言っているだろう!!」ダッ


715 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:31:05.84 ID:iNQLdeY80



………………

ジキル「くっ!?」ガギィ‼

???「フッ」クルクルスタッ、ダダッ

フラン「!!!」ガッギャァァァァァァ‼

???「やああっ!」ガギャギャギャギャ、ズバァッ

フラン「ッ……」ドサァッ

???「解体するよ」スッ


バットラング「」ヒュォォォォォォォッ


???「っ!!」ガギャア‼


バットラング「」クルクル……カラン


バットマン「……間に合ったか!」ダッダッ


716 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:32:26.66 ID:iNQLdeY80



バットマン(幼い姿、両手に握ったナイフ……乾いた血が体に点々と散っている)


バットマン「何者だ」

???「……わたしたち?」

バットマン「……」ジリッ


バットマン(……私達、だと? 複数? 二人以上がこの場に襲ってきたのか?)


717 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:32:52.19 ID:iNQLdeY80


ジキル「来てくれて助かった……急にそこの少女が襲ってきたんだ、恐らくはサーヴァント」

バットマン「……一人でか?」

ジキル「ああ、恐らくは彼女が『ジャック・ザ・リッパー』だろう。まだ新聞が刊行されていた頃に、容姿を見たという者のスケッチが載っていた」

バットマン「……成程、了解した」


バットマン(……この位置は不味い。下手に動けばジャックがモードレッド、マシュを人質にとる)


ジャック「……」ジッ


718 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:33:20.18 ID:iNQLdeY80


ジャック「あなたなの?」

バットマン「……?」

ジャック「あなたが、わたしたちのお母さんになってくれるの?」

バットマン「……私は男だが。『お母さん』とは、何だ」

ジャック「ずっと探してた。どれだけお腹を開いても、どうしても見つからなかった」

バットマン「……探していた?」

ジャック「うん。だって、帰りたいもん」


719 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:33:55.15 ID:iNQLdeY80


ジャック「……あぁ、やっぱり、その目。私達のおかあさん。全部を諦めて、仕方がないって思ってる目」

バットマン「……私にも諦めていないものはある」

ジャック「じゃあ、諦めてねッ」ダンッ、ギュオッ‼

バットマン「ッ」ガギィィィィィィィッ、ゴロゴロッ


バットマン(良し、喰らい付いた)


バットマン「ジキル博士! マシュとモードレッドを安全な場所へ! フラン、ジャックを抑えるぞ!」ゴロゴロ、スクッ

ジキル「了解!」

フラン「ウァァァァァ!!」ババッ

ジャック「邪魔だよ!」ヒュンッ


720 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:34:33.65 ID:iNQLdeY80



ジキル「よい……しょっ!」グイッ

モードレッド「……クソ……俺の、価値……!」ブラァ……

ジキル「……大丈夫、助けるから」スタ、スタ


ハイド(((助けるだって? おいおい、よく言えるな)))


ジキル「……黙れ、違う……」スタ、スタ


ハイド(((何が違うんだよ、後ろじゃ戦いの音が響いてるぜ? 『あの薬』を飲めよ……そんで加勢しろ、それがベストだ。ベストを尽くさない人間が未来を語る資格はない。そうだろ?)))


ジキル「……僕には僕の役割があるんだ。黙って、従え……!」


ハイド(((ケッ……)))


721 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:35:02.32 ID:iNQLdeY80


バットマン「くっ……」ガギィ、ギャリギャリギャリ

ジャック「このまま……!」ギリギリギリ

フラン「させない!」ブォンッ

ジャック「!!」ババッ、スタッ

バットマン「……」


バットマン(やはり熟練したサーヴァント相手にはかすり傷一つ負わせるのも難しいか……ならば)スッ

バットマン(マッドハッターの帽子を使う)


722 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:35:41.84 ID:iNQLdeY80



バットマン「フラン、少しの間の時間稼ぎを頼む。ドクター、私の脳波の観測を」スチャッ

ドクター『え、え、え!? わ、分かった!!』

フラン「わかった!」ブォン、バチバチバチバチィッ

ジャック「っ、電気……」ジリッ

フラン「ここからは、通さない!!」ダン‼


バットマン(……肉体面で捉えられないなら、精神面から捕捉する……!)ギュゥゥゥゥゥォォォォォォ……


ドクター『ブルースくん、β波が危険域だ! ……え、安定した!? どういう事だ!?』

バットマン「まだ大丈夫だ、ドクター……!」ギュォォォォォォォォォォ……

ドクター『ど、どうなってるんだ!? 何だその帽子!?』


723 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:36:10.28 ID:iNQLdeY80



フラン「ハアッ!」ブォン‼

ジャック「っ」ババッ、タタッ

フラン「ウァァァァアアアアアアアア!!!」バチバチバチバチバチィ‼

ジャック「遅いよ」タタッ、ダダッ


フラン(当たらない……!?)


ジャック「そろそろ、終わらせるね」タンッ

フラン「!!」バッ

バットマン(っ、間に合わない……!)ギュォォォォォォォォォォ……


光弾「」ギュドドドドォッ‼

ジャック「!!」バッ


???「……フン、間に合ったようで何よりだ」シュゥゥゥゥゥゥ……


724 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:36:37.64 ID:iNQLdeY80


バットマン「お前は……あの時の、子供か」

???「子供ではない。アンデルセンと呼べ……全く、追いついてみればこれだ。図書館で大乱闘とは不届き千万、せめて本の無い場所でやれ!」

フラン「ウゥ……」

バットマン「……協力如何による」

アンデルセン「小生意気な男だ、お前は!」

バットマン「同意してもらえたようだな」


ジャック「……解体するひとが、増えただけだよ」カチャッ

アンデルセン「フン、少女の殺人鬼か。今度お前を題材に小説でも書いてやろう」

バットマン「構えろ。来るぞ」


725 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:37:15.31 ID:iNQLdeY80


ジャック「……」タタ、スゥッ

フラン「ウゥ……!」ダッ

バットマン「待て、追うな。奴の戦略だ」バッ


バットマン(真正面から掛かって来ず、障害物の陰に隠れ、気付かれない内に敵の命を掠め取る……生粋のアサシンだ。迂闊に誘い出されれば破滅する)


アンデルセン「どうする、見失ったぞ」

バットマン「…………アンデルセン、フラン。固まれ。あちら側の本棚を破壊し尽くせ。策がある」

アンデルセン「全く、本に対する冒涜だ!! ……商売敵の本ばかりだから喜んでやろう」ギュォォォッ、ドシュシュゥッ

フラン「ウ、ウゥ!」ブォンッ、バキャァ‼


本棚「「「」」」」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……ドッシャァァァァァァァアン……‼


726 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:37:44.00 ID:iNQLdeY80


………………

ジャック(……あっちにわたしたちは居ないのに、本棚を倒してる……足音も聞こえなくなってこっちには好都合だけど)


ズグググググググググ……ドッシャァァァァァァン……


ジャック(自暴自棄、なのかな。ヤケになっちゃったんだね、かわいそう……すぐに片付けてあげなきゃ)タタ、タタタタ……



バットマン(当然そう考えるだろう。だが派手な動きに気を取られ、私を見失うようでは甘い)プシューッ、プシュー……カチャカチャ、ピンッ


727 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:38:11.17 ID:iNQLdeY80



ジャック(あの位置を取れば……)タタタッ……


ジャック「……?」ピタッ


ジャック(……これ、ワイヤー? 罠だ)ジッ


カタッ

ジャック「!!」バッ


バットマン「……」コソコソ


ジャック「……見つけた」ダンッ



728 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:39:38.73 ID:iNQLdeY80


バットマン「!!」ガギィィィィィィ、バッ


バットマン(誘導成功だ)


ジャック「ひとりだけ、逃げようとしてたの? わるいお母さんだね」クルクルッ、スタッ

バットマン「……さあ、どうだろうな」

ジャック「でも、解体して、かえるから」

バットマン「母は変えられない」

ジャック「かえれるよ。これからはずっと一緒だもん」


バットマン(……机の上に乗った。ジャックの精神捕捉にはまだ時間が掛かる。作戦通り)


729 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:40:10.94 ID:iNQLdeY80


バットマン「フッ!」シュババッ


バットラング「」ギュギュォォォォォォッ‼


ジャック「!!」ガギャッ

バットマン「フッ!」スタッ、ヒュンッ

ジャック「あたらないよ!」シュンッ、ヒュォッ

バットマン「くっ……」ギャリリリィ‼


バットマン(良し。高所レベルは同程度を確保。机の上は足場が制限される分、ジャックも迂闊に大幅な回避、攻撃はできない……ならば近距離戦闘、身体能力の差は技術と予測で誤魔化し互角の戦いに持ち込む!)



730 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:40:56.73 ID:iNQLdeY80


ジャック「っ!」ババッ

バットマン「シッ」シュババッ


バットラング「「「」」」ヒュオォォォォォォォオォォッ


ジャック「あたらないって言ってるよ!」バッ

バットマン「無論そうだろう!」ヒュンッ

ジャック「ふっ」パシッ

バットマン「……!!」グッ、グッ……

ジャック「……駄目だよ、お母さんは人間だもん。わたしたちには勝てないよ」ググググググ……

バットマン「……そうかもしれないな、ジャック・ザ・リッパー」

ジャック「……」

バットマン「だが、後ろに注意しておいた方が良いだろう。リバースバットラングは『帰って来る』」

ジャック「!?」バッ


バットラング「「「」」」グォンッ、ヒュォォォォォォォォオッ‼


731 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:41:32.20 ID:iNQLdeY80



ジャック「っくぅ!?」ガギギギギィ‼

バットマン「そこだ……!」シュポッガシッ、ギュチチィ‼

ジャック「ぐ……なにを!」

バットマン「フラン、今だ! 思い切り叩き込め!」


ダッダッダッダッダッダダンッ‼

フラン「ウゥゥゥゥゥゥァァァアアアアアアアァァァア!!」バチバチバチバチィッ、ドッゴォォォォォォォォ‼


732 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:41:59.85 ID:iNQLdeY80



モクモク……バチ、バチチ……


バットマン「……どうだ……」

フラン「……」バッ


バチ、バチバチチ……ジリッ


ジャック「……きか、ないよ……!」バチチチチチ……ググググググ……‼

フラン「……!」


733 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:42:27.39 ID:iNQLdeY80


バットマン(ならば)


バットマン「アンデルセン! 二階のサーヴァントを借りるぞ!」

アンデルセン「!? 待て、それは……!」

バットマン「最終手段だ! フラン、机の端を叩け! アンデルセン、私を撃て!」

フラン「!?」

アンデルセン「なにぃ!?」

バットマン「やれ! 策があると言っただろう!」

アンデルセン「つくづく狂った熱の男だ! どうなっても知らんぞ!」ギュギュギュオォォォッ‼

フラン「ウ、アアアアァァァァ!!!」ドッシャァァァァァァァァン‼



734 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:43:31.30 ID:iNQLdeY80


(ここだ)


 一瞬を捉える。ブルース・ウェインは投げ技の厳しい修行を思い出していた。血反吐を吐きながらも起き上がり、何度も投げられたあの修行だ。身体が覚えている。


 重心が全てだ。ジャックを腕に捉え、倒れ込む準備をした。フランのメイスが机の端を叩き、シーソーじみて逆の端を跳ね上げる。バットマンのマントが翻り、凄まじい勢いで重心が移動する。二者が空中へ放られる。

 光弾が肩に着弾。ブルースは衝撃を受け、まるで水の流れのようによどみなく回転した。ジャックを腕に捉えたままだ。ブルースは遠心力、重心、そして筋力の最高パフォーマンス点を計算した。

 その瞬間、バットマンは目を見開いた。そしてジャックの身体を僅かに引っ張り上げ、巴投げのように頭上へ、天井へと放った。


 三人の全力が乗算され、一瞬の回転の中から砲弾じみてジャックが弾き飛ばされた。天井を突き破り、少女は二階へと放り込まれた。数秒遅れ、コウモリの騎士も羽を広げ、急制動で二階へと突入した。


735 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:44:08.24 ID:iNQLdeY80



ジャック「ごほっ、ごほっ……」ガラガラ……

バットマン「……」バササササッ、スタッ

ジャック「……くっ」キッ

バットマン「……」


バットマン(……ジャックの精神捕捉にはまだ掛かるか。警戒が激しいと捕捉も遅れるらしい……)ジッ



736 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:44:38.57 ID:iNQLdeY80


???「……どなたかしら?」

バットマン「……お前が、第二のサーヴァントか」

???「第二の……? よく分からないけど、私にはナーサリーという名前があるのよ。それに、その帽子を何故貴方が被っているの?」

バットマン「深い理由がある、ナーサリー。だが今は力を貸して欲しい」

ナーサリー「……」チラッ


ジャック「……」ボロッ


ナーサリー「……いたいけな少女を敵に回して、そんな説得では無理よ」ジッ


バットマン(成程、アンデルセンが共闘を勧めなかった理由か)


737 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:45:35.68 ID:iNQLdeY80


バットマン「……私はマッドハッターの……友人だった」

ナーサリー「……嘘はそんな嫌そうに言ったら駄目よ、黒猫さん」

バットマン「嫌な思い出もある」

ナーサリー「……」

バットマン「……嫌な思い出だけだ。敵同士だったが、守るべきものは必ずしも相違していた訳ではない」

ナーサリー「今回は何を守っているの?」

バットマン「世界だ。手を貸してほしい」

ナーサリー「……わたし、子供だけど、大丈夫かしら?」

バットマン「世界の危機に立ち上がらせないというのは、いくら子供でも酷なものだ……」

ナーサリー「……ええ、勿論よ! 手を貸すわ、黒猫さん!」


738 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:46:05.58 ID:iNQLdeY80


ナーサリー「さあ、そういう理由よっ。名前を聞かせてちょうだい、そこのあなた」

ジャック「……ジャック・ザ・リッパー」

ナーサリー「まあ……大量殺人のあのジャックなのね」

ジャック「邪魔をするなら、解体するよ」カチャッ

ナーサリー「でも私だって負けないわ。ご存知かしら、お姫様だってスカートを上げれば走れるのよ」

ジャック「……? よく分からないけど、邪魔するんだね。なら、容赦しないよ」ジリッ


739 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:46:52.48 ID:iNQLdeY80


ナーサリー「……」ヒュオォォゥゥ……

ジャック「っ」ダンッ

ナーサリー「くるくるくるくる回るドア……」バッ、ギュォォォッ


光弾「」ギュドドドドッ


ジャック「あっ……!?」ギャリィ‼ ギャリィン‼

ナーサリー「行き着く先は、鍋の中!」パパパッ

パキィィィィィィ……

ジャック「つっ……!?」


ジャック(手が、凍った……!?)


740 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:47:30.70 ID:iNQLdeY80


バットマン(いいぞ、このまま……)


ジャック「っ、こんな程度!」バキャァァァァァ、ブンッ

ナーサリー「きゃっ……!?」ドサッ

ジャック「わたしたちは、かえらなきゃ駄目なの! 邪魔しないで!!」ダンッ

ナーサリー「……! 駄目よ、私にだって世界があるもの!」スクッ、ギュォォォッ

ジャック「じゃあわたしたちの世界は何処なの!? 消えるのが世界のためなの!? そんな世界なら、最初から……」ブォンッ


(((捉えた)))


ジャック「っ!?」ビクッ

ナーサリー「……?」


(((捉えた。捉えた)))


ジャック「……え? なに、これ」ジリッ

(((捉えた捉えた捉えた捉えた捉えた捉えた捉えた捉えた)))

ジャック「……なに。なんで」

(((捉えた捉えたお前の捉えた捉えた精神を捉えた捉えた見せてもらう捉えた捉えた捉えた)))


バットマン(捉えたぞ、ジャック・ザ・リッパー。精神に動揺をきたしたな……見逃すものか)


741 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:48:03.30 ID:iNQLdeY80



ジャック「……やだ。やだよ、何……なんで」ペタン

バットマン「このまま、精神の深層へ潜り込む……ドクター。10分経過しても私が戻って来なかった場合は、スーツの蓄電機構を解放し、電気ショックで呼び戻してくれ」ギュォォォォォォォォォォ……

ジャック「……う……」ドサッ

バットマン「……ナーサリー、見張りは頼んだぞ」ギュォォォォォォォォォォ……

ナーサリー「ど、どうなって……どうするつもりなの?」

バットマン「……」


バットマン(このまま戦意の元を取り除く。もしくは、精神を崩壊させる)ジッ


742 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:48:31.71 ID:iNQLdeY80


──────

『産めるワケがないでしょう、自分ひとりが食べていくのに精いっぱいで……』

『愛してる。愛してる。ごめんね、ごめんね……』

『大丈夫よ、愛してるのは貴方だけ』

『堕ろすわ』

『……許して、お願い……許して……』

『神様……』


バットマン(……)

マッドハッター『やあ、バットマン。お前なら必ず来ると思っていたぞ』

743 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:49:07.74 ID:iNQLdeY80



マッドハッター『そうだな。例えば赤ずきんは、男に襲われる少女としてその物語が解釈される事が多い』

バットマン『……お前は、マッドハッター? 死んだハズだ』

マッドハッター『勿論死んだ。肉体はね。だが見ろ、お前は私の帽子を被った……そこにあった残留思念が、私を形作っている。どうだ、ロマンチックだろう?』

バットマン『……』

マッドハッター『……そして、アレを見ろ』


『愛してなんかなかった』

『父親なんて分からない』

『だけど出来た。だから堕ろす』

『悪い事だけど、胎児に意識なんて無いでしょう? だから、これは罪じゃない。……罪じゃ、ない』


マッドハッター『うーっ、これはロマンチックには程遠いな……なあバットマン、人を最も苦しめる恐怖とは何だと思う?』

バットマン『……』

マッドハッター『……それはな、罪の意識だ』


744 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:49:42.90 ID:iNQLdeY80


マッドハッター『勿論、サイコパスを自称する人間は多い。だが良心の呵責は大なり小なり無意識下に積み重なるものだ。人生の澱みと言い換えても良い……ウフフフ、物語に入り込む際の足かせになるから、私は切り捨てるがね』

バットマン『何が言いたい』

マッドハッター『何が? 言いたいか、だって? バットマン、もう明白だろう! ここはあの殺人鬼の深層心理じゃないのさ。澱みはもっと下の部分にある。もっと降りる必要がある』

バットマン『……もっと降りる?』

マッドハッター『そうとも。集中を深めろ、ウサギに導かれる少女の如く……私はついて行けないが、「そこ」に辿り着けるハズだ』

バットマン『……』ジッ

マッドハッター『……そうだ、深めろ……』


745 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:50:12.41 ID:iNQLdeY80




………………

ちがう。

ちがうよ。迷惑なんてかけない。だからやめて。

産まれたい、それが一番強い望みだったのに。

どうしてこうなの? 何が駄目だったの? わたしたちが、悪い子だったから?

それとも、世界が駄目だったの?


746 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:51:09.92 ID:iNQLdeY80



なら、わたしたちが消えたんじゃない。おかあさんが消えたんだ。だって、まだわたしたちはここに居る。

だから、探さなくちゃ駄目。探して、探し出して、もう一度一緒になる。

そして、今度こそ、一緒に────


747 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:51:40.07 ID:iNQLdeY80



バットマン『……それがお前か、ジャック』

ジャック『……』

バットマン『娼婦達が妊娠し、堕胎する。その水子の霊が集まって出来たのが、お前という存在なのか』

ジャック『……おかあさんに、会うんだ。だって、そうしないと、私達はずっと迷子だから』

バットマン『……』

ジャック『会って、もう一度、産んでもらうの。そうしたらやり直せるから。もう一回、やり直せるから』

バットマン『……』


748 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:52:09.25 ID:iNQLdeY80



バットマン『……いいや』

ジャック『……』

バットマン『死者は帰らない。絶対に』

ジャック『……じゃあ、どうすればよかったの? わたしたちは死んだまま? 産まれたかったのに。忘れ去られたままになっておけばよかったの? それが世界なの?』

バットマン『だが、殺しは正当化されない』


749 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:53:05.26 ID:iNQLdeY80


ジャック『殺しじゃない。帰りたかっただけ』

バットマン『被害者達は死んでいったぞ。訳も分からず、理由も分からず』

ジャック『……わたしたちだって……! わたしたちだって、生きたかった! でも叶わなかった! だって、生まれる前から、世界が終わっていたんだもん!!』

バットマン『……』

ジャック『……お母さんは泣きながらわたしたちを殺したよ。知ってるもん。だから、帰らなきゃ。帰って、安心させてあげるの。そうすれば、もう一度やり直せるから』


750 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:53:45.55 ID:iNQLdeY80


バットマン『……』

ジャック『……だから、あなたも、おかあさんになってね。わたしたちを、受け入れてね』

バットマン『……』

ジャック『一緒に、幸せをやり直そうよ。おかあさんとなら、大丈夫』

バットマン『……』


751 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:55:21.91 ID:iNQLdeY80


バットマン『……私の目』

ジャック『……?』

バットマン『諦めた目だと言ったな。それは間違いだ』

ジャック『何が言いたいの』

バットマン『能動的に人を変える事などできない。だが世界は変えられる』

ジャック『……』

バットマン『変えてみせる。お前達の世界が破滅しているならば、救う』

ジャック『無理だよ』

バットマン『できる。私も無理だと思っていた』

ジャック『……』


752 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:55:57.88 ID:iNQLdeY80


ジャック『……でも、おかあさんのところに……戻らなきゃ』

バットマン『……』

バットマン『……ならば、私が母親になろう。私の手を取れ、ジャック』

ジャック『……え……』

バットマン『今度こそ、お前を置き去りにはしない。お前を腹に宿す事はできないが、共に戦う事はできる』

ジャック『……』

バットマン『……親の愛が信じられないなら、私は諦める訳にはいかない』



753 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:56:35.25 ID:iNQLdeY80



ジャック『……信じて、いいの?』

バットマン『決して後悔はさせない』

ジャック『ほんとう? ほんとうに? 今度こそ、捨てられないの?』

バットマン『……マーサの名にかけて、誓おう』

ジャック『わたしたちは、まだ幸せになれるの?』

バットマン『お前が諦めないのならば、いつまででも』

ジャック『そう、なんだ……まだ……』


754 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:57:05.59 ID:iNQLdeY80


ジャック『……』

バットマン『……行くぞ、ジャック。手を取れ。あちらでもまだやるならば、相手はしよう』

ジャック『うん……』キュッ

バットマン『……』ギュォォォォォォォッ

ジャック『今度は、捨てないでね』

バットマン『……勿論だ』


ギュォォォォォォォォオオオオオオオ……


755 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:57:51.12 ID:iNQLdeY80



………………

フラン「……ウゥ!!」ダダダッ

アンデルセン「ナーサリー! 怪我は無いか!!」タタタ

ナーサリー「大丈夫よ、平気……だけど、二人が」

ジャック「……」

バットマン「……」

アンデルセン「でかしたぞ、チャンスだ。今の内にこの殺人鬼を放り出すとしよう」

ナーサリー「駄目よ! この黒猫さんとジャックは今戦ってるの、起こしちゃ駄目」

アンデルセン「おのれ……これだから! 低い可能性に賭けられるかと言うのだ、全く!」

ナーサリー「駄目なのっ!!」

アンデルセン「駄目なものか!!」

ナーサリー「ゼッタイダメ!!!」

フラン「ウゥ……」


756 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:58:18.47 ID:iNQLdeY80


アンデルセン「この……」

ナーサリー「分からずやさんの……」


バットマン「ッッ!!!」ババッ、ズササァッ

ジャック「ッ!!」ダンッ、クルクル……スタッ


アンデルセン「!?」

ナーサリー「きゃっ!?」

フラン「!!」スッ


757 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:58:48.08 ID:iNQLdeY80


バットマン「……ハァッ、ハァッ……」ジリッ

ジャック「……」ジッ

アンデルセン「おい。どうなっている」

ナーサリー「……」

バットマン「……ジャック。答えを聞こう。これを続けるならば相手になる」

ジャック「……」

フラン「……」


758 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 17:59:29.70 ID:iNQLdeY80



ジャック「……勝ち目もうすいし、やめるよ」パッ


ナイフ「「」」カラン、カラン


バットマン「……そうか。なら、やめよう」スッ

ジャック「……」

バットマン「……」

ジャック「……っ、おかあさん……っ!」タッタッ、タンッ

バットマン「……」ガシッ

ジャック「おかあさん、おかあさん……おかあさん……」ギュゥゥゥゥゥッ……

バットマン「……大丈夫だ、ジャック」



アンデルセン「……ナーサリー、一部始終を見ていたんだろう。なんだこれは」

ナーサリー「さっぱり……だけど、素敵」

アンデルセン「ワケが分からない事を素敵で済ませるんじゃない!」

ナーサリー「もう! だから人魚姫はバッドエンドになっちゃったのよ!」

アンデルセン「現実をしっかりと……ああクソ、お前はリメイク版でも観ていろ!」


759 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 18:00:28.18 ID:iNQLdeY80

ダダッ、ガチャリ‼


ジキル「ブルース! 加勢に……え?」

バットマン「……大丈夫だ、博士。少し時間をくれ」

ジャック「……」ギュゥゥゥゥゥゥゥ……

ジキル「……え? どういう……え?」

アンデルセン「ようやくまともな感性の男が来たか! こっちへ来い、貴重なんだ!」

ジキル「……???」

フラン「ウゥ……」



760 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 18:01:01.76 ID:iNQLdeY80



………………


ジキル「……うん、結論から言うと……やっぱり解毒剤の精製が不可欠だ。二人の精神状態は安定しつつあるが、いつまた恐怖に飲まれるか」

バットマン「……やはりか。ドクター、聞いているか」

ドクター『あぁ、勿論。そちらでも準備しやすい成分の解毒剤を模索しているが……どうにもね。できるだけ簡易化した成分表を送る』ピッピッ

バットマン「……どうだ、ジキル博士。これを作るのは可能か?」

ジキル「……うーん……少し厳しいな。東南アジアとかアメリカ辺りにしか自生していない植物の成分が含まれてる」

バットマン「そうか……いや待て。キャプテンドレイク……大航海時代の名残だ。世界中の植物が植物園に集められているハズ。そこにも無いか?」

ジキル「ああ! そこならあるハズだ、きっと見つけられる!」

バットマン「良し。ならそこへ向かうとしよう」



761 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 18:01:43.87 ID:iNQLdeY80


………………

バットマン(……植物園は少し遠い。巡回する自動人形、ロボット達とはあまり遭遇したくない)

地図「」ペラ……

バットマン(……ロボットの武装は遠距離もカバーしてくる。直線の道は避け、曲がり角の多い道を採用しつつ……)

バットマン(……しかし、無理だ。最低でも何度か戦う事になる。消耗した状態で、B・P・M・Sの面子に出くわさないとも限らない)

バットマン(……)


762 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 18:02:12.60 ID:iNQLdeY80


モードレッド「おい。オレ達を連れて行かねえなんて言うんじゃねえだろうな」

バットマン「……モードレッド。回復したか」

モードレッド「恐怖なんざ、下らねえ。行けるぜ、オレは……ちょっと取り乱してただけだ」

バットマン「……」

モードレッド「連れて行け。戦力になる。今度こそ負けねえ」

バットマン「……当然、そうする。休む暇などないぞ」

モードレッド「上等だ……」


763 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 18:02:46.12 ID:iNQLdeY80


………………

バットマン「マシュ。行けるか」

マシュ「! マスター……はい。その、ご迷惑をおかけして……」

バットマン「大丈夫だ。行けるなら準備をしろ。まずは植物園へ向かう……長丁場になる」

マシュ「……はい。平気です」

バットマン「今からちょうど15分後、全員で出発だ。正面玄関で会おう」スタスタ

マシュ「……あの、マスター!」


764 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 18:03:13.09 ID:iNQLdeY80


バットマン「どうした」クル

マシュ「……」

バットマン「……どうした、マシュ」

マシュ「……あの、ベインさんに……手も足も出ずに……負けてしまって」

バットマン「……」

マシュ「……これから先、ずっと……戦って、勝っても、いつかあの人が立ちはだかるんじゃないかって」

バットマン「……」


765 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 18:03:45.99 ID:iNQLdeY80


バットマン「……きっと奴は、そうなるように全力を尽くすだろう。もう一度ベインと闘うその時は来る。だが、マシュ」

マシュ「……」

バットマン「我々は破滅の為に戦っているのではない。この戦いの先にあるのは破滅ではない。乗り越えるべき壁だ」

マシュ「……」

バットマン「それに、戦いだけが全てではない。作戦で勝てる事もある……悲観するな、奴は完璧ではないさ」

マシュ「……はい」

バットマン「15分後だ。正面玄関で会おう」スタスタ


766 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 18:04:12.03 ID:iNQLdeY80



バットマン(……きっと奴はもう一度現れる。ベインは)

バットマン(作戦で勝てる事もある。事実だ……だが、言っていない事実もある)

バットマン(戦略的視点ですら、ベインは私と拮抗、または上を行く)

バットマン(……果たしてこの恐怖は、恐怖ガスの影響によるものか。それとも……)


バットマン「……破滅が待つ、か」


767 : ◆GmHi5G5d.E [saga]:2018/06/02(土) 18:04:40.48 ID:iNQLdeY80



(((お前を殺せば、きっと世界は終わるのだろう。悲しむべき事だ)))

(((だが、それがどうした)))

(((世界の破滅も良いだろう、見てやろう。所詮守るべくもない)))


バットマン「……」


バットマン(破滅に身をさらし、世界を守る。その価値は、あるか?)



768 : ◆GmHi5G5d.E [saga sage]:2018/06/02(土) 18:07:06.72 ID:iNQLdeY80
今日の更新はここまでです。マッドハッターの帽子の能力を拡大解釈してすみません……ジャービスファンの方、どうか怒らないで。

あと遅れてすみません。待って下さった方本当にありがとうございます
769 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/02(土) 18:24:13.72 ID:KA56htl1O
舞ってたぞ
770 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/02(土) 18:41:02.16 ID:YaWSfu6Go
乙乙
771 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/02(土) 19:54:56.94 ID:IXECUp1vo
相変わらずのクオリティ
安心した
772 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/02(土) 22:39:59.32 ID:I3T3MhJFo
毎度面白い乙乙
773 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/03(日) 10:25:00.69 ID:JPWn3ng4O
乙、こうしてみると4章は内面に問題がある面子が多かったんだな、まともなのはバベッジくらいか?
774 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/09(土) 17:02:42.34 ID:xMzpBW62o


よくジャックのスケッチ残ってたな
視認してもすぐに忘れるのがジャックのスキルなのに
775 : ◆GmHi5G5d.E [saga sage]:2018/06/09(土) 21:12:41.36 ID:JHnriFtr0
(やっっっっべ完全に忘れてた)
776 : ◆GmHi5G5d.E [saga sage]:2018/06/09(土) 21:13:36.45 ID:JHnriFtr0
(何かしら後付けの理由を付けますので何卒……何卒……)
777 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/06/14(木) 23:01:29.53 ID:aYEhFwXa0

「見てくれ、チャールズ」

 この少女(フラン)は最高傑作になる……そう言う男の笑顔は、屈託のないものであった。私にはその作品の素晴らしさが分からず、首をかしげるばかりであったが。

「ははは。これはイヴだよ、チャールズ。もう少しで、私は完璧だった人類を造り出せる」

「イヴ。最初の人類か……ヴィクター、そんな事が可能なのか?」

「勿論だとも! 私はこれで世界を変えてみせるぞ!」

 ヴィクターは笑っていた。私も笑みを浮かべ、激励の言葉を口にしたのだと思う。

 一人が世界を変えられる。その時の私達は、まだそう信じていた。


778 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/06/14(木) 23:02:16.55 ID:aYEhFwXa0

「見るがいい、チャールズ」

 世界の真実は恐怖だ……そう呟く男の目は何も映していなかった。霧に飲まれて行く街の中、人々は怖気づき、殺気立ち、隣人や家族を手にかけた。

「これが真実だ、チャールズ。嘘のヴェールをはぎ取れば、世界は容易く崩れ去る」

「……では、やはりこれが真実だったのだな。スケアクロウ」

「勿論だとも。世界はとうに終わっていた」


 スケアクロウは無表情に言った。我も無感情に、諦めきって世界を見下ろしていたのだと思う。


 世界を変える事などできない。我々は、結論に達してしまっていた。


779 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/06/14(木) 23:02:50.24 ID:aYEhFwXa0



 私は、星を目指していたのだと思う。

 蒸気機関はいつか天を超える。そして、あの輝きの元へ至れるのだと、そう信じていた。


 いつからか、蒸気が空を覆うようになっていった。我々では無理だ。仲間の研究者の誰かが、そう呟いたのを聞いた。地を走り、海を渡ろうとも、星へ至る事だけはできなかった。


 人々は星に目もくれない。たとえ一人で星に手を伸ばしても、世界は変わるハズもない。


 いつからだろうか。蒸気が空を覆うのを、言い訳じみて見つめていたのは。



780 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/06/14(木) 23:03:27.60 ID:aYEhFwXa0



………………

チュゥン‼ ドッガァァァァァン‼

ロボットA「殲滅、シマス」ババババババババババ

ロボットB「……」ガシャン、ガシャン



バットマン「無事か、博士!」ズシャシャッ

ジキル「っ、ブルース。ああ、こちらは大丈夫だ!」チュウン!バチュン!!

バットマン「ジャック、出過ぎるな! マシュはアンデルセン、ナーサリーを庇いつつ防御を! フラン、モードレッド、まだ掛かるか!?」



フラン「ゥウ……!!」ブォンッ、ガッシャァァァァァ

モードレッド「うっせェぞ! 今やってんだろうが!!」ガシャァァァァ、ガッキャァァァァァァ‼

自動人形A「……」ウィー、ウィー

自動人形B「殺害」ウィー……ココココココ……


781 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/06/14(木) 23:03:58.70 ID:aYEhFwXa0


バットマン(……ジリ貧。ジャックの働き次第……いや、賭けはしたくない。何処か、挟み撃ちにされにくい場所は……)


看板『UNDER GROUND』

バットマン「……!! 全員、地下鉄のホームへ飛び込むぞ! 急げ!」

モードレッド「あぁ!? 敵に背中を見せるってのか!?」

バットマン「戦略的撤退だ、大局を見失うな! マシュ、宝具を解放できるか!?」

マシュ「可能です!」

バットマン「今すぐ解放しろ! 全員、タイミングを合わせて撤退に動け!」

モードレッド「クッソが……!!」ギリッ


782 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/06/14(木) 23:04:24.74 ID:aYEhFwXa0


マシュ「真名、偽装登録……行きます! 『ロード・カルデアス』!!」ゴォォォォォォォォォォォォォォッ‼

バットマン「今だ! 全員階段を降りろ! フランは待て!」

フラン「わかった!」


ナーサリー「お先にごめんなさいっ!」タタタッ

アンデルセン「手を引くな! 転げ落ちるわ!」ヨロロッ

ジャック「さきに行ってるね、おかあさん!」タタッ

モードレッド「チクショウが……」ギリィ、ダダッ


バットマン「……よし、マシュ! いつでも防御を解放して良いぞ!」

マシュ「……! ……!! 分かりました、もう少し……ふぅっ」ブゥン……ガギャギャギャギャギャギャ‼


783 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/06/14(木) 23:05:17.04 ID:aYEhFwXa0


バットマン「フラン、今だ! 辺り一帯の霧に電撃を走らせろ!」

フラン「ウゥゥゥゥゥゥァァァアアアアアアアァァァア!!!」バチバチバチバチバチバチバチィィィィィ‼


霧「「「」」」バチチチチチチチチチチチチチィ‼


ロボット達「「「ズズズズズズズズズズググググググググ……」」」バチ、バチバチ……

自動人形達「「「ガガガガガピピピピピ……」」」ビリビリビリビリ、ビリ……


バットマン「今だ、マシュ、フラン! 地下鉄へ!」

マシュ「はい!」ダダッ

フラン「ウゥ……」バチ、バチバチ……フラッ

バットマン「……! 行くぞ」ガシッ、タタタ

フラン「ごめん……」ヨロヨロ


784 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/06/14(木) 23:05:45.93 ID:aYEhFwXa0


ドクター『無事かい、ブルース!?』

バットマン「あぁ、無事だ。霧の魔力伝導率が極端に高いという発見のお陰だ……」コツコツ

ドクター『良かった……そこは何処だい、霧ほどじゃないけど電波状況が悪いな……』

バットマン「……地下鉄のホームへ降りている。これからもっと悪化するだろう。少し通信を切る」ピッピッ

フラン「……もう、大丈夫」

バットマン「そうか。いきなり無理難題を吹っ掛けて悪かった……ゆっくりでいいぞ」

フラン「ウゥ……」フリフリ


785 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/06/14(木) 23:06:12.69 ID:aYEhFwXa0


バットマン「全員無事か」

マシュ「はい!」

ジャック「へいきだよ」

ナーサリー「居るわっ」

アンデルセン「……暗いな、ここは」

フラン「ウゥ」

モードレッド「……居るよ」


バットマン「……地下鉄への降下は予定とは違うが、まあいい。このまま、できるだけ植物園に近い駅に出るぞ」

全員「「「はい!(了解)」」」


786 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/06/14(木) 23:06:39.07 ID:aYEhFwXa0


看板『→Next Sta.BAKER STREET』


ポスター『なんと言っても19世紀! 地下鉄(The tube)はロンドン市民のたしなみ』

ポスター『生活にお困り? なら、スコットランドヤードが解決します!』

ポスター『日々の癒し、新たな発見……王立キュー植物園は二駅先』


バットマン「……少し歩くようだ。どうだマシュ、追手の足音は聞こえるか?」

マシュ「……微かに聞こえます。ですが、まだ電撃から復旧し切っていない……混乱が生じているようです」

バットマン「良し……全員並びを崩すな。このままチューブの中を進む」


787 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/14(木) 23:07:01.01 ID:4SEcEX4BO
期待
788 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/06/14(木) 23:07:10.29 ID:aYEhFwXa0


アンデルセン「本当に真っ暗だな、ここは……ランプを持ってきたのは正解だった」カチャ、ポウッ

ジキル「なんと言っても19世紀だ。ありがたいよ」コツコツ

フラン「ウゥ」コクコク


マシュ「……」コツコツ

モードレッド「……」ズンズン

バットマン「……」


バットマン(……闇は想像の余地を与える。マシュとモードレッドが恐怖に掻き立てられていなければ良いが)コツ、コツ……


789 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/06/14(木) 23:07:48.83 ID:aYEhFwXa0


ナーサリー「まぁ……本当に管のようになっているのね! おもしろいわっ」

ジャック「おもしろーい!」

「おもしろーい!」
「……しろーい……」
「……ーい……」(反響)


ジャック「……!!」キラキラ

ナーサリー「まあ、響いて返って来るのね! まるで何人もジャックがいるみたいだわ!」キラキラ


アンデルセン「……お前達の能天気さは本当に……世界の危機だというのに、頭が痛くなってくるぞ」

モードレッド「……」イライラ


790 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/06/14(木) 23:08:15.70 ID:aYEhFwXa0



アンデルセン「む、これは」

ジキル「……蒸気車両だ。機関車がチューブを塞いでる……どうする、ブルース」

バットマン「待ってくれ、少し……ドクター、聞こえるか」

ドクター『ザザ……聞こえる……シグナルは悪いけど……ザザザッ……』

バットマン「私達の目の前にある車両内部をスキャンできるか。何か罠が無いとも限らない」

ドクター『りょうか……ザザッ……ノイズ……酷いが、断片情報を……ザザザザ……み合わせた結果、そこは……ザザザザザザ……問題無い』

バットマン「……行くぞ。車両内部を通過する」ガチャリ、ギィィィ


791 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/06/14(木) 23:09:22.00 ID:aYEhFwXa0


ジキル「……まだ石炭が生きている。つい最近まで稼働があったんだろうね……無茶をしてたものだ」コツ、コツ

ナーサリー「すごいわ、本当に本の中みたい……」テクテク

ジャック「見て見ておかあさん、ぶら下がれるよ!!」ブラァ

モードレッド「……チッ……」

バットマン「つり革で遊ぶのはやめr……怪我をするぞ、気を付けるように」スタスタ


バットマン(……蒸気機関車か。現代と近代の橋渡し……確かにここは歴史のターニングポイントだ)

バットマン(しかし、木製のチューブに蒸気機関車とは。確かに、開発されたばかりの地下鉄では火事が絶えなかったと聞くが……やはり、余計な危険を招く前に迅速な退出が望ましい)スタスタ


モードレッド「……着いたぜ。逆の端っこ、機関車両だ」

バットマン「出るぞ。あまり音を立てないように」スタ、スタ

マシュ「了解です」

バットマン「ジャック。分かったな」

ジャック「はーい」


792 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/06/14(木) 23:10:01.45 ID:aYEhFwXa0


モードレッド「……」ズンズン

バットマン「待てモードレッド、あまり急ぐな」

モードレッド「ああ?」ピタッ

バットマン「ついて行けない者が出ると言ったんだ。スピードを合わせ、ゆっくりと進むぞ」

モードレッド「チッ……ノロいな、チクショウが」

バットマン「……」


793 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/06/14(木) 23:10:46.02 ID:aYEhFwXa0

………………


コツ、コツ……


バットマン「……待て、一旦止まれ」

モードレッド「あぁ?」ガチャリ

バットマン「定期確認だ。マシュ、何も聞こえないか?」

マシュ「……いいえ、何も聞こえません」

バットマン「……良し、進行を再開する」

モードレッド「……んだよ、クソ……」ブツブツ……

バットマン「……苛立つな。慎重に行かなければ……」

モードレッド「うるせえ、分かってる」

バットマン「分かっていたらそんな言葉は……」

モードレッド「うるっせえってんだよ!!!」


794 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/06/14(木) 23:11:19.77 ID:aYEhFwXa0


壁「」ワァン……ワァン……ワァン……


モードレッド「……」フーッ、フーッ

バットマン「……何を恐れている」

モードレッド「……誰が、何を、怖がってるだと?」チャキッ

バットマン「今のお前は異常だ。何を苛立っている。何を焦っている」

モードレッド「誰が!? 怖がってるだと!!?」

バットマン「傍目にも明らかだ。ベインに負けてから、お前は……」

モードレッド「テメェ!!」ガシッ


795 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/06/14(木) 23:11:54.74 ID:aYEhFwXa0


マシュ「も、モードレッドさん!」ガシッ

モードレッド「離せ! テメェもういっぺん言ってみろ……オレが、なんだってんだ!!」バッ、グイッ

バットマン「お前の行動が士気を乱すものになると言っている。緩和剤は打ったハズだ、恐怖を抑えろ」

モードレッド「クソが……! テメェがオレに指図すんじゃねえ!」

バットマン「私が気に食わないだけか? ならば指揮はアンデルセン辺りに任せよう。それで満足か?」

モードレッド「おちょくってんのか……!!」ギリィ

バットマン「……そうではないのだろう。だから言っている、モードレッド。恐怖を抑えろ。飲まれるな」

モードレッド「テメェがオレの何を知ってんだ!!」バシィ


796 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/06/14(木) 23:12:23.09 ID:aYEhFwXa0



ワァン……ワァン……ワァン……


バットマン「……」ジリッ

モードレッド「……」ギリッ

マシュ「……」

アンデルセン「……」

ナーサリー「……」


暗闇「」…………、……

ジャック「……?」


蒸気「」ズォォォォォォ……


797 : ◆GmHi5G5d.E [saga ]:2018/06/14(木) 23:12:58.36 ID:aYEhFwXa0



暗闇「」……、……、……

マシュ「……? これは」


蒸気「」ズォォォォォ……


アンデルセン「何だ。下らん諍いの次はボヤ騒ぎか?」

ナーサリー「待って。何か聞こえてこない?」

ジャック「……これ、足音だ。後ろから」

バットマン「しまった、チューブ内で声が反響して地上に届いたか……走るぞ」

マシュ「待って下さい、前方のホームへ降りて来る足音も……!」

バットマン「全速力だ! 挟み撃ちにされる前に全員目的地のパディントン駅を目指せ!」ダッ

モードレッド「クソ、チクショウが……!」ダンッ


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