男「だから俺は、彼女の為にギターを始める」

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32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:32:37.12 ID:FkZbUO0z0

後輩「なーんで昨日は図書室居なかったんですか」

男「……用事あったんだよ」

後輩「なら言うなり書き置きしておくなり、なんとかしといてくださいよぉ」

男「なんでお前にそんな事言わなきゃいけないんだよ……。 つーか!」

男「二度と来るなって言っただろ」

後輩「……?」

男「おい、まるで理解してないような顔してるけどはっきり言ったよな、一昨日」
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:33:13.07 ID:FkZbUO0z0

後輩「あはは……そんなこともあったりしたっけ?」

男「お前っ……! はぁ……」

後輩「図書室に来ない時は教えて下さいよ。できれば直接言ってくれたらいいなー」

男「あのなあ……お前は何様だよ」

後輩「えへへ……命令にはちゃんと従ってくださいよー?」

男「……なんで、俺なんかに構うの」

後輩「前に言った通りです」

男「前に?」

後輩「……だって」ボソッ

男「? 今なんて……」
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:34:06.86 ID:FkZbUO0z0

後輩「……先輩のギターが、好きだから」


後輩「……って、何度も言わせないでくださいよ、恥ずかしいんですから」

男「……アレのどこがいいんだよ」

男「よく音外すし、リズムずれるし……ヘタクソじゃん」

男「親がギタリストなんだろ。ならよく分かるだろ」

男「それにギターなら、2年の島崎さんの方が断然良いと思うけど」

後輩「……」ニコニコ

男「な、なんだよ……」
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:34:35.63 ID:FkZbUO0z0

後輩「先輩、私の事知ってくれてたんですね―」

男「いや、それは……龍臣に昨日聞いたんだよ」

後輩「用事って……。そういうことですか」

男「……ああ」

後輩「……確かに、ヘタクソですよ」

男「……だろ。なら――」

後輩「一生懸命練習してる姿見てたんです」
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:35:04.83 ID:FkZbUO0z0

男「……えっ」

後輩「最初に新歓ライブで演奏聞いた時はホントにヘタクソで、臣先輩の歌を汚してて……正直、すごく腹が立ちました」

男「……っ」

後輩「だから文句言おうと思って、練習してる先輩の所行ったんですよ。……そしたら」




後輩『まったく! あのヘタクソギターはどこに……!』

後輩『……いた! あいつぅ……』
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:35:45.14 ID:FkZbUO0z0

ジャーン……


男『……っ! また間違えた』

男『痛って……皮剥けてるじゃん』

男『……でもこんなんで練習やめてたら、いつまで経っても龍臣達に追い付かないしな』

男『っし! ……もう一回っ!』


後輩『……』
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:36:28.94 ID:FkZbUO0z0

後輩「先輩が周りの人達が練習終わった後も、ずっと1人で練習してて」

後輩「そんな姿見てたら、文句言うのはまた今度でいいやって、なって……」

後輩「文句を言おうと思って何度も何度も先輩の所行って……その度に文句言う気が失せて」

後輩「その内、文句言う気無くなっちゃって……気づいたら、先輩の練習ずっと見てました」

後輩「どんなに間違えても練習して……指の皮が剥けても関係なしに練習やめないで」

後輩「でも、いつまでたっても上手くなんないんですよ。でも……」


男『……よっし!』ニコッ

後輩『――』


後輩「……たまたまミス無しで弾き終わった癖に、すっごい嬉しそうな笑顔で笑うんですよ、先輩」
    
後輩「そんな姿見てたら、先輩の弾くギター好きになるに決まってるじゃないですか」ニコ
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:36:58.74 ID:FkZbUO0z0

男「……なんで、今頃そういう事言うんだ」

後輩「……本気で、そう思ってるってこと伝えたかった」

男「……!」

後輩「先輩に、私の気持ちが本気だって事を伝える為には、言わなきゃ駄目だと思いましたから」

後輩「だから、本気で考えてください。ギターをやめるかどうか」

後輩「先輩のギターを待ってる人がいることを考えた上で」

男「……」
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:37:32.87 ID:FkZbUO0z0

後輩「あっ、そうだ。先輩ID教えて下さいよ」

男「……メッセージの?」

後輩「メッセージだったら居場所教えるの、楽じゃないですか」

男「まあ、たしかに。……ほらっ」

後輩「わっ……携帯丸投げっていいんですか?」

男「見られても困るものないし」

後輩「へえ……? はいっ、先輩」

『Eri Miura』

男「……」

後輩「わーっ、先輩のアイコン地味ー!」

男「うっせ……下の名前、えりって言うのか」
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:38:08.78 ID:FkZbUO0z0

後輩「え……」

男「……? どうかしたか?」

後輩「先輩、もう一回言ってください」

男「はあ……?」

後輩「名前、もう一回言って!」                                 

男「……えり」

後輩「〜〜! もう一回!」

男「……もう言わねーよっ」

後輩「えーそんなこと言わずにー!」

男「言わないったら言わない! ったく……」

後輩「むー……。まあ、今日はこれぐらいでいいです」
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:38:37.01 ID:FkZbUO0z0

後輩「……じゃあ、先輩しっかりと考えて答えてくださいね?」

後輩「できれば、続けるって方面での答え欲しいですけど」

男「……わかった」

後輩「あと居場所もメッセージで送ってくださいよ!」

男「……それはどうだろう」

後輩「もー先輩のイジワル! 絶対に送ってくださいよっ! じゃあ、また明日っ!」

男「あ、ああ……」


男「また明日、か……」

男「……」

『Eri Miura』


男「……変なヤツ」ニコ

43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:39:04.73 ID:FkZbUO0z0

男「はぁ……」

男(今日は色々と疲れた。三浦に、あんな事を……)

男(ふと、部屋の片隅に立てかけてあるギターの入ったケースを見つめる。)


『信吾っ! バンドやろうぜ!』

『信吾ヘタクソだなー! でも俺達みんなで練習してうまくなってこうぜ!』

『すっげえ楽しかった! 信吾もそうだよな!』

『俺、夢出来た……。このバンドで、デビューしたい』

『1年の島崎透華です。前の学校では、ギターやってました』

『島崎さん、めっちゃ上手いな! それもプロ級に……!』

『よろしくおねがいします、宇佐美先輩。……お互いギターということで頑張りましょう』

『おい、なんでだよ信吾! 何でバンドやめるんだよ!!』


『そんな姿見てたら、先輩の弾くギター好きになるに決まってるじゃないですか』

44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:39:49.39 ID:FkZbUO0z0
















男「……」


男「卑怯だろ、今頃そういうの」

男「せっかく決めたのに、迷うじゃねえか」
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:40:17.16 ID:FkZbUO0z0

男「……」カリカリ

〜〜〜!

男「……!」

男(メッセージ? ……まさか、あいつ?)

後輩『せんぱーい! 今日は図書室いますかー!?』

男「……フッ」

男『勉強してる。だから来るな』

後輩『えーひどいー! じゃあ、7時に校門で!』

男「……」



男『勝手にしろ』
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:40:53.22 ID:FkZbUO0z0


後輩「……先輩?」

男「……」

後輩「もしかして……待っててくれたんですか?」

男「……お前ボーカルだろ」

男「いくら春だからって夜になったら冷えるだろ……こんな事が原因で風邪ひいて喉痛めたら、何だか悪いし」

男「だから、そのせめて待つ時間だけは減らそうって……」
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:41:20.63 ID:FkZbUO0z0

後輩「〜〜〜〜っ!!」

男「……三浦?」

後輩「せんぱーい!!」

男「ちょっ、お前抱きつくなって……! ここ校門っ……!」

後輩「先輩のそういう優しさってあざといですよぉ〜!」

男「お前がそれを言うか……!」
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:41:57.53 ID:FkZbUO0z0


後輩「えへへ……」

男「……いつまで笑ってるんだ」

後輩「先輩って優しいなあって」

男「……たまたまだし」

後輩「それでもです〜!」

男「……変なヤツだなお前」

後輩「それでも、ですよー!」
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:42:29.16 ID:FkZbUO0z0

男「……なあ」

後輩「……はい」

男「聞いてほしい事がある」

後輩「……はい、わかりました」

男「……」

男「俺、昔から何やってもパッとしなくて。龍臣にサッカーとか誘われた事もあったけど、それもなんかしっくりこなかった」
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:43:00.06 ID:FkZbUO0z0

男「でも、ギターはなんとなく良いなって思ったんだ」

男「好きだったんだ。龍臣とか、他のメンバー達と演奏するの」

男「無理やり入れられたバンドだけど、やってる内に段々楽しくなってって」

男「気づいたら、ハマってたギターに」

後輩「……」

男「ヘタクソだったけど、練習していく内にやれる曲も増えていって、その度に龍臣が喜んでくれて」

男「でも、ある日言ったんだ龍臣が……」
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:43:36.65 ID:FkZbUO0z0

友『俺、夢出来た……。このバンドで、デビューしたい』

友『このメンバーで、もっと上目指したい』


男「正直、言われた時は嬉しかった」

男「ヘタクソで不安だったけど龍臣とか他のメンバー達が励ましてくれて、そうしたら俺でも目指せるかもって思えた」

男「今まで、1つの事で努力して最後まで成し遂げた事が無くて……でも、これならできるって」

男「練習すれば、いつか夢の様な景色を見られると思ってたんだ」

男「……あいつが来るまでは、な」

友「……トーカちゃん?」

男「そう、島崎透華。あいつが転校してきて、現実を知った」
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:44:04.46 ID:FkZbUO0z0

女『1年の島崎透華です。前の学校では、ギターやってました』

友『おーいいねー! それで軽音入るって事はバンド、やるんだろ?』

女『は、はい……』

友『なら、なんか一曲弾いてもらおうぜ。な、信吾?」

男『え。まあ……いいけど』

女『なんですか藪から棒に……』

友『いいじゃん、聞かせてよ』

女『……』

女『分かりました』
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:44:59.20 ID:FkZbUO0z0
>>51

友「……トーカちゃん?」→後輩 「……トーカちゃん?」
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:45:44.60 ID:FkZbUO0z0

男「その時、思い知ったよ。本物の上手さってやつを」

男「俺、ギターはヘタクソだったけど、それなりに曲は聞いてたから分かるんだ」

男「ミスなんて当然しない正確な演奏で、なのにたまに音をわざと外してさ」

男「曲を自分なりにアレンジしてるんだ。……聞いてるこっちが鳥肌立つぐらいにすごい演奏で」

男「そんなの聞かされたらさ、もう諦めるしか無いだろ」

後輩「……」
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:46:15.46 ID:FkZbUO0z0

友『……』

男『……』

女『……ど、どうでしたか? 自分なりにアレンジしてみたんですけど……』

友『島崎、めっちゃ上手いな! それもプロ級に……!』

男『……』

友『……信吾? どうしたんだよ……。あまりに上手くて感動したのか?』

男『……入れようよ』
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:46:58.08 ID:FkZbUO0z0

友『……は?』

女『……え?』

男『彼女、バンドに入れようよ』

友『信吾、なんで……』

男『島崎さんみたいに、上手い人が龍臣のバンドに必要だ』

友『でもギターは信吾が』

男『別にギターが2人いても不思議じゃないよね、島崎さん』

女『は、はい……』
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:47:26.52 ID:FkZbUO0z0

男『じゃあ、いいじゃん。な、龍臣?』

友『……別にいいけど、島崎は?』

女『私は……』

女『……いいですけど』

友『じゃあ、決まりだな』

男『よろしく。俺は宇佐美』

女『……よろしくおねがいします、宇佐美先輩。お互いギターということで頑張りましょう』

男『……ああ』
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:48:01.77 ID:FkZbUO0z0

男「その時にはもう、彼女にギターの席を渡すつもりだった」

男「龍臣のバンドが、上に行くには俺じゃなくて彼女が必要だって思ったから」

後輩「……」

男「龍臣の夢を俺のわがままで邪魔したくないんだ。だから、勉強を言い訳にしてバンドを辞めた」

男「龍臣のバンド辞めたら、ギターやる意味無いしだからギターも辞めた」

男「……つまんない話だったろ。だからやっぱり俺はギターをやるつもりは――」

後輩「……」ウルウル

男「お、おい後輩……」
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:48:40.70 ID:FkZbUO0z0

後輩「……っ」

男「なんで泣いてんだよ、こんなくだらない話で……」

後輩「くだらなくなんかないですよっ……」

男「くだらないよ……。何やっても中途半端で、これならできると思ってたのに……」

後輩「先輩が報われないじゃないですか……! そんなに臣先輩の事を想って、先輩自身の夢を諦めるって……」

後輩「そんなのって、無いですよっ……!」

男「でも、それはお前だって分かるだろ」

男「上の世界目指すなら、ある程度の技術ないとダメだって。努力だけじゃ、どうにもならないって」

後輩「……っ」

男「だから俺は――」
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:49:06.46 ID:FkZbUO0z0

後輩「私が先輩の夢になります」


男「……何を言ってるんだお前は」

後輩「私が、先輩がギターを続ける理由になります」

男「だから意味がわからないって……」

後輩「明日の放課後、第二音楽室で待ってますから、先輩はギター、持ってきてください」

男「は……? だから俺はギターをやめるって……」

後輩「……待ってますから」ニコ
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:49:33.32 ID:FkZbUO0z0

男(懐かしい夢を見た)

男(2年の文化祭の数日後、いつもの様に居残りで練習していた時の事だ)


男『……?』

『……ふふん』

男『……誰?』


男(妙にでかいサングラスにマスク姿。フードを被っているおそらく女子であろう不審者的な存在が俺の目の前にいた)

62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:50:03.97 ID:FkZbUO0z0

『私は……ギター仮面だ』

男『……は?』

『君があんまりにもヘタクソだから、私が君に指導してやろうと思ったわけだ』

男『いえ、結構です』

『……まあまあ、そんな事言わずにー。ギター借りるよ』

男『えっ、ちょっ、お前……』
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:50:32.78 ID:FkZbUO0z0

男(俺の手からギターを無理矢理奪い、彼女はある曲を演奏し始めた。)

男(それは俺達のバンドが文化祭で演奏した曲で、何度も何度も練習した曲。)

男(なのに、そいつの演奏は俺のやつより遥かに上手くて、悔しくなった。)

男(でも、それ以上に目の前の彼女の演奏が凄くて、圧倒されてしまった。)

『……どうよ』

男『……すごい』

『……でしょ?』


男(そしたら、自然とそいつからギターを教えて貰うことになって……)

男(気づいたら、警備員が見回りに来るほどの時間まで、練習していた。)
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:51:22.85 ID:FkZbUO0z0

『わわ……もうこんな時間だ』

男『そろそろ帰らなきゃな……。もしかして、先輩とかだったり?』

『そ、それは……秘密』

男『だよなあ。そんなに顔隠すぐらいだから教えてくれないかー』

男『……できれば、また教えてくれ。凄く分かりやすかったし、一緒に演奏してて楽しかった』

『……っ』

『……ではまた会おう、悩める少年!』


男(そいつはその日以降二度と姿を現さなかったけど、その時の経験は俺のその後のギターの演奏において多くの事をもたらしてくれた。)

男(正体を探るのも野暮だと思ったから、探さなかったけど……きっとめちゃくちゃお節介なヤツであることには違いない。)

男(何で今その夢を見たんだろうか……。)


男(……多分、あいつみたいなお節介なやつにまた出会ったから、だろうな。)


65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:51:54.56 ID:FkZbUO0z0

男「……」

男「……っ」

ガラ……

後輩「……せんぱい」

男「……よう」

後輩「来てくれたんですね! ……それに」

男「……」


後輩「ギターも、持ってきてくれた」
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:52:29.52 ID:FkZbUO0z0

男「……言われたから、仕方なくな」

後輩「じゃあ、ギター貸してください。私がチューニングするんで」

男「チューニングってなんでそんな事する必要ないだろ」

後輩「ありますよ……だって先輩、1ヶ月以上演奏してないでしょ。感覚とか絶対忘れてるって」

男「そういう事じゃなくて、ギターは辞めたからもう弾かないって……」

後輩「まだ、辞めてないです。……はい、先輩」

男「え……」
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:53:43.23 ID:FkZbUO0z0

後輩「セッションしましょうよ」

後輩「私が歌いながら弾くんで、先輩もそれに合わせて」

男「だからもう弾けないって……」

後輩「2年の文化祭で弾いてた曲」

男「……っ!」

後輩「あれだけ練習してたんですから、体が覚えてますよ」
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:54:09.34 ID:FkZbUO0z0

男「……でもそれ、お前が知らないだろ」

後輩「大丈夫です。練習する機会がありましたから」

男「……お前」


後輩「やりましょう、先輩」

後輩「私と一緒に演奏した上で、決めてください。ギター続けるかどうか」

男「……」

後輩「……絶対に、またギター弾きたくなるようにしてやるんだからっ」ニコッ

男「――」
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:55:19.98 ID:FkZbUO0z0





























男(その時、三浦の笑顔を見た時に俺の心は決まった)


後輩「すぅー……はぁー……。すぅー……っ」


男(だって、卑怯だろ)


後輩「ワン、ツー、スリー、フォー」






























70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:56:41.90 ID:FkZbUO0z0
































男(俺の為に、こんなに一生懸命頑張ってくれる彼女を)


後輩「――――」

男「……っ」


男(一生懸命、俺の事を見ていてくれた彼女を)


後輩「――――」


男(手放したと思っていたモノ、全部取り戻してくれた彼女の願いを、破ることなんてできやしない)































71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:57:35.88 ID:FkZbUO0z0






























後輩「……」

男「……」

後輩「……ニッ」ニコ


男(……ほんっとに卑怯だよ、お前は)






























72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:58:17.31 ID:FkZbUO0z0

男「――だから、ごめん!」

友「……信吾」

女「宇佐美先輩……」

友「そりゃあ、その気持ちは嬉しいけどさ……! でも、やっぱり俺は信吾とやりてえよ……!」

女「……井上先輩。宇佐美先輩がせっかく話してくれたんですから」

友「でもぉ……!」
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:58:43.22 ID:FkZbUO0z0

男「こんな事で泣くなよ龍臣……。島崎さん」

女「……?」

男「龍臣の事、よろしく」

女「――」

女「……はいっ!」

男「それと、龍臣……」

友「……なんだよぉ」


男「俺、新しい夢が出来た」
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:59:14.46 ID:FkZbUO0z0

男(……春だ。)

男(春といえば出会いと別れの季節だ。)


後輩「……先輩っ」

男「……三浦」

男「お前、今日練習は?」

後輩「部長……臣先輩がすごく落ち込んでて急に部活休みだって……先輩こそ勉強は?」
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 05:59:44.41 ID:FkZbUO0z0

男「……先にやることできてな」

男「……ギター教えてくれよ、三浦」

後輩「――――」

後輩「せんぱいーっ!!」

男「ちょっ、お前、だから抱きつくなって……!」

後輩「嬉しいんですよっ! 先輩がギターを……それも私に……!」

男「ちょっ、暑苦しい……!」


男(……と言っても今年は例外で。)
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 06:00:25.93 ID:FkZbUO0z0

後輩「あー! あと、下の名前で読んでくださいよ、信吾先輩っ!」

男「何でだよ、別に関係無い……」

後輩「むー……。じゃあ、ギター教えてあげませんよー?」

男「うぐっ……。んんっ……」

後輩「……ゴクリ」

男「……え、えり」

後輩「……信吾せんぱいっ」

男「……えり?」

後輩「信吾先輩っ!」


男(新たな出会いと……そして別れがあった。)
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 06:00:52.11 ID:FkZbUO0z0

男「……そういえば”えり”ってどういう漢字使うんだ?」

後輩「英語の”英”に、梨の”梨”って書いて、英梨ですっ」

男「……なんか、お前にしては普通だな」

後輩「ですよねー? もうちょっと捻りがほしかったですよねー」

男「……かもな」フフフ

後輩「んー? 何笑ってるんですか信吾先輩」

男「……なんでもない」

後輩「あっ、信吾先輩照れてるー」

男「て、照れてねーし!」
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 06:01:27.99 ID:FkZbUO0z0

男(春。)


男「……」

男「……俺、お前の事好きだ」


男(今まで大きな変化が無かった高校生活だけど……今年は、今までに無かったような大きな変化がありそうだ)


後輩「……私も好きです」ニコッ



男(俺の為に一生懸命頑張ってくれる人がいるから、俺のヘタクソなギターを好きでいてくれる人がいるから――)
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 06:02:33.16 ID:FkZbUO0z0































後輩「一生懸命頑張る先輩の事が、大好きですっ!」



男(――だから俺は、彼女の為にギターを始める)































80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 06:06:44.65 ID:FkZbUO0z0
健気な後輩系ヒロインが報われないことが多いのでむしゃくしゃして書いた、後悔は今、時間を見てしてる。

殴り書きなんで間違えてる所多いし、軽音楽やった事無いから間違った知識あるかもしれないけど愛嬌でゆるして

それじゃあ、おやすみなさい
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/02/12(月) 20:06:38.48 ID:Zww32ShSO
乙です。

青春っていいですね〜
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