未来を置き去りにしてバイトをする

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121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/23(月) 01:15:58.45 ID:etJYgP1F0
大倉庫への道のりは,居心地の悪い静寂に包まれていた.

時折脇を通るトラックは電気を消費して走っているのでガソリンを燃やすようなことはしていない.さらに,歩けば歩くほど人通りは少なくなっている.

大倉庫のある湾岸部周辺は,無機質な工場とその駐車場に占領されつつあった.

そして,その工場から出てくるのは,どれも人型に近いアンドロイドだ.そのどれも頭部には顔が描かれておらず,黒色のカバーによって覆われている.その

カバー越しに,ランプが点灯して,作業をこなしている.移動の中核を担う脚部は正座をしているかのように折りたたまれており,見たところ両脇に取り付け

られた車輪で移動しているようだった.

思わず目を奪われていた僕に,気づいた男仁さんが声を掛けた.

「彼らは,人間より遥かに頑丈で力強いです.ただ,自分で考えることはできないので,そこは人間の出番ですね」

「あのロボットたちは,AIを搭載していないんですか?」

男仁さんは首を振って,答えた.

「彼らは,弱いAIです.命令を聞き,決められた答えしか返せない.かのPCにあたる前世代の遺物ですが,今の産業にそれ以上は望まれていません.

なにせ今の時代人権というものが真らしく囁かれているものですから,燻っている火種は敬遠されがちです」
122 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/28(土) 15:04:52.46 ID:6Az4MCq0O

ゆっくり読んでたが追いついてしまった。続きが気になる
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/16(水) 04:01:31.66 ID:Wnz2PVY60
曖昧な微笑みを返す僕に,男仁さんが人差し指を挙げて説明してくれる.

「簡単に言えば,こうです.我々は自分らと同等,あるいはそれ以上の知能を持つ存在とどう接するべきか悩んでいるのですよ.敬意を払うべきという方もい

ますし,あくまで人類が創造主なのだから,被創造物に『遠慮』は必要ないという方もいる.ただ彼らに共通しているのは,それが人類に仇なす存在になった

ときを恐れているということです」

朝,PAIにそんな話を聞かされた気がする.PAIの意見では,人工知能が人類に反逆する可能性があると言っていたが,実際人類側は誰にも分かっていないよう

だ.そして誰も未来への責任はとれないでいる.それも当然なのだと思う.一人で背負うには重すぎるから,みんなで考えて背負う必要があるのだ.

「そういった事情を踏まえればこれから向かう大倉庫の管理者は非常な変わり者です.

なんと.彼はそこで働くロボットに知能を与えることを許可したのです.だから.大倉庫へ着いたら,百地さんも頭に入れておいてください.一見彼らの振る

舞いは人間的ですが,AIであるということを」

PAIみたいなことを言うのだな,と僕は思った.

PAIを始めとして一般的な人工知能は知性が備わっていて,感情があるように見せているだけだ.

出会った当初,PAIは自身のことをそう表現した.それが原因で僕はPAIに名前を付けなかったのだが,今思い出すと

なんだか胸がムカムカしてくる.この苛立ちにも似た不快な感情の原因を今のPAIは説明できるのだろうか?

もしできるなら,所詮機械だったはずのPAIが,僕よりも百地悠真のことを理解していることになる.

僕はすこしだけ,愉快な気持ちになった.
124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/17(木) 04:04:42.90 ID:aS5DfyA80
そんなことにほくそ笑む自分に嫌気が刺してきたころ,数基のガントリークレーンがその首を天高く持ち上げているのが見えてきた.丁度,貨物船に載せられ

たコンテナを港へ運び入れているらしく,コンテナがゆっくりとスライドしながら船上から現れるのが分かる.

「これまでは人間が.ガントリークレーンに乗り込んで高度数十メートルから操作していたそうですよ.今では,画像認識の技術が発展して,砂漠の中から蟻

を見つけ出すことさえ可能になったのでAIが代わりにやっているはずです」

赤と白で交互に塗られた巨大なガントリークレーンのどこかに,AIが備わっているのだろう.これがもし故障して,暴れたら大変だなと他人事のように思った.

目的の大倉庫はガントリークレーンからすぐ近くの埠頭にそって立ち並んでいた.

三角屋根にしっかりとした構えで,その口は長方形の扉で閉ざされている.

男仁さんは無警戒に,道路から外れ大倉庫の敷地へ入っていく.

慌てて,僕もついていく.ガントリークレーンのある方向からのコンテナを運ぶ雑音に紛れて,倉庫内でなにか重いモノが移動する音がする.

大男である男仁さんの二倍以上の高さをもつ扉の前に立った,男仁さんが辺りを見回す.

「さて,ここで待ち合わせの予定なのですが...姿が見えませんね」

確かに,目に入るものと言ったら敷地の隅に置かれたフォークリフトくらいだ.

「ほっほっほっ,ここにおる」

鈴の転がるようなハスキーボイスが,すぐそばから聞こえた.

ぎょっとして背後を振り返ると,扉の奥から茶目っ気たっぷりな咳払いが聞こえた.

「開けてやるから,ちょっと下がっておれ」

ゴゴゴという重低音と共に,扉がスライドして横に移動する.

そこから,現れたのは一人の美しく若い女性だった.

燃えるようなブロンドの髪と,白いワイシャツ越しにでも分かる豊満な胸.

そして,黒色のスカート越しに覗く肉付きのよい太腿が僕から言葉を奪った.

呆気に取られていた僕の手をとって,彼女は目を細めて,人懐っこい笑顔を浮かべた.

「初めまして,ここの港湾管理者である犬井剛子じゃ」

今この瞬間,僕の身にカルチャーショックが起きた.PAIがいたならば,即AEDを勧めていただろう.

なんだこの可愛い生物は.
125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/23(水) 19:37:38.69 ID:Lqd5uF5Ho
良いスレを見つけた
126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/27(日) 23:30:56.29 ID:0DxDewO/0
呆然としていた僕ににっこり笑いかけてから犬井さんはくるりと振り返り,男仁さんに手を振る.

「今時,珍しくウブな子を連れてくるものだ,男仁よ.感謝するぞ」

男仁さんは肩を竦めた.

「百地くんはバイトで入ってくれているんですよ.貴方へのお土産ではありませんから,そのところをご理解願います」

「わかった,わかった.今朝,お前に耳にたこができるほど聞かされた.百地悠真は儂の玩具ではない」

犬井さんはそう頷きながらも,僕の手をしっかりと握ったままである.

彼女の手はマシュマロのように柔らかくて,温かい.それに包まれていると,なんだか幸せな気分になる.いつぶりだろうか,誰かと握手をしたのは.

一方で,犬井さんは顎をもう片方の手で撫でながら,僕の方をまじまじと眺める..

「ここを案内しようにも,その手に持っているブツはいささか邪魔じゃな.それに儂の家にふさわしくもない」

「その通りです.そもそも,ここには仕事で伺ったのですから,お願いいたします.」

男仁さんの口調に疲れがうっすらと現れていた.

犬井さんが,ふっと口端を吊り上げて,自分が出てきた扉の隙間を指さした.ちょうど成人女性一人分の幅しかない.

「中へ入るとよい.ただし我が家に段差はないが,敷居は高いのでな.男仁は頑張るように」

「もっと大きく開けられないのですか」

「この扉を管理している悟の仕業じゃ.文句があるなら,奴に言え」

犬井さんはくっと上を向いた.

数十メートル上空に点のようなものがいつの間にか現れ,ぶぅーんと低く唸りながら,こちらの様子をじっと眺めていた.

「あれはドローンです.こうした大きな工場で異常があればすぐ気づけるように,工場内を飛び回っているのですよ」

男仁さんはドローンへ手を振った.しかしドローンは何も言わずに,去って行ってしまった.

「今日は天中殺でしょう」

男仁さんはときどき僕の知らない単語をぼやく.
127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/28(月) 04:11:22.10 ID:S11ZuKiX0
「やれやれ,ひどい目に遭いました」

ワイシャツ姿になってやっととこさ通り抜けた男仁さんは,スーツを羽織った.

その姿を横目で見ながら,犬井さんは歯切れ悪くも僕に説明してくれる.

「悟は男仁のことを良く思っておらぬのじゃ.なにより,この仕事を引き受けること自体やつは反対なのじゃろうな」

一体全体,その悟と呼ばれる者は何者なのだろう.

港湾管理者であるらしい犬井さんを差し置いてこんな真似ができるなんて,只者ではないことは確かだろう.だが,今の僕には詮索する気はなくなっていた.


ベルトコンベアーがコンテナを運び,そのコンテナの中に荷物を積み込んでいく産業用ロボットたち.彼らは地上に一本足でつながっており,そこから分岐し

たいくつかのハンドがカメラを搭載した頭部のAIによって,制御されているようだ.というのは黒いカバーの付いた頭部を傾げて,運ぶ荷物を認識しているの

が分かったからだ.

それでも彼らの作業スピードは早く,人間ならば持てないような大きさのものでも素早く持ち手を見つけ,軽々と持ち上げてみせているのだから,凄まじい.

「あれでも,スピードは抑えているほうじゃよ.奴らはとんでもなく熱を吐くからの,夏場は空調を効かせたうえで,作業させなければ,すぐにオーバーヒー

トしてしまう.もし今,空調がなかったら,ここは一瞬でサウナじゃ.くっはっは」

「とんでもないですね...」

僕も,犬井さんと握っている手がオーバーヒートしそうだ.男仁さんは,それを見て見ぬふりをしているし,かなり恥ずかしいのは事実.

しかし振り払うわけにもいかず,ぐいぐいとと引っ張られているのだった.
128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/23(土) 22:30:55.32 ID:1XKYnlun0
倉庫内を巡るベルトコンベアーに沿って,どんどん奥へ向かっていく

「と,ところで,僕たちはどこへ向かっているのでしょうか?」

犬井さんは,僕の持っているスーツケースを顎でしゃくってみせる.

「男仁はそれらを引き渡しに行くのじゃ.もう先方は待っておるからのう.その間ぬしは,ちと儂と戯れようか」

どうやら,昇天斎場のときと同じく僕は現場にはいられないようだ.その間犬井さんが付いてくれていることが先ほどと違う点だろう.

「家には,儂以外に二人住んでいる.が,こちらのことを気に介する暇もないほど忙しいだろうて」

面白くもなさそうに,犬井さんは付け加えた.

それから入口とは反対に位置する倉庫の勝手口の前で,男仁さんと別れることになった.

男仁さんへスーツケースを渡すとき,唇をほとんど動かさず告げた.

「時間はとらないと思いますから,ここで待っていてください.」

男仁さんが立ち去ったのを見届けてから,犬井さんが大きく背伸びをする.

白のワイシャツから胸部がくっきりと浮かびあがる様子をまんじりと見てしまう.

今だけはPAIがいないことを,感謝しなければならない.

「さて厄介な荷物も失せたところで,儂の家へ招待しよう!」

一気に華やぐ彼女にとって,ついさっきの男仁さんの言葉など風の前の塵にすぎないようだ.

僕は

1 「ありがたい話ですが,ここで待つように指示されているので,遠慮させて頂きます」

2 「ぜひ,お願いいたします」(男仁さんの言葉を裏切ることになるかもしれない・・・)

3 「なぜ,犬井さんは僕にそんな親切にしてくれるのですか」(危険な問いだ.だけど,これは僕が一番知りたいことなんだろう)

安価直下
129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/23(土) 22:44:58.80 ID:mj6EiPJwo
3
130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/24(日) 01:20:14.13 ID:UcaOh9Zb0
「なぜ,僕にそんな親切にしてくれるのですか」

溜まっていた疑問は口を衝いて,出てきた.

言ってからの後悔は,頬を赤面させるのに十分だった.自意識過剰かもしれない

当の本人の犬井さんはからりと笑って,目を細める.

「好きだからじゃ」

握っていた手をぱっと放して,僕と正面から向き直る.

「想像たくましく悩み,いかなる行為にも理由を求める.

それが意味のないことだとしてもせずにはおられぬ」

その一つ一つの言葉たちは,彼女から僕への仕返し.

「他にどんな理由があると思っていた?」

僕は絶句するよりほかない.
131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/24(日) 01:20:45.31 ID:UcaOh9Zb0
しばらく沈黙が流れたのち,犬井さんは肩を落とした.

「この話題はお主の反応を見るにあまり受けてないのじゃな.ざんねんな結果になってしまった」

「え?」

「ちなみにこれ,昨年流行ったAI LOVE HUMANという映画でのヒロインの台詞なのじゃ.いままで,最高の反応を引き出していただけに,この選択のミスは

痛いの.ただお主,すこしばかり世俗に疎いのじゃ」

犬井さんは,人差し指の腹で僕の額をつんと突いた.

「ちょ,ちょっと待ってください.どういうことですか,僕には,なにがなんだがさっぱりで」

『はい,対象者が異常を認知したことを確認したため,実験シューリョー.I-TAKEKOは即時撤収しなさい.最後にばらさなければ,セカンドステージもあった

のに.最後まで諦めないことねI-TAKEKO』

倉庫のどこかにスピーカーがあるのだろうか,どこか気の強そうな印象を受ける音声が倉庫内に鳴り響く.

犬井さんが失態じゃ…失態じゃ…と頭を抱えて,勝手口から出ていく.

狼狽していた僕は彼女を追いかけようとするが,勝手口の扉はロックされているのか,開かない.

『あんたはそこにいなさいよ.男仁からの指示があったんでしょ』

その指摘は半分正しいが,半分間違っている.

特に,スピーカーの向こうにいるやつに,指図されることじゃない!

「おい.犬井さんをどこにやった?」

『あんたには関係がない.ちなみにこれ,男仁も了承済みの話だから.文句は男仁に言いなさい.あと,このバイトで高い給料出てるのは私のおかげだから,

感謝はなさいよね』

「僕を使って,無断で実験をしていたんだな」

『そう,TAKEKO(剛子)がロボットだって知っていたら,意味がないもの.でも,実際に話していたあんたも違和感がなかったのよね?』

「違和感ならあった!変な口調だし!」

『それが狙いなのよ.会話はわざと不完全な状態にしたほうが見分けにくいと思ってね.自分でも驚くくらい,素晴らしい案だったわ.今度はノムリッシュに
でもしてみようかしら』

冷静な口調が逆に癪にさわった.

「大体お前は一体何なんだよ.何者だ?」

『港湾管理者がTAKEKOであることは事実よ.私はそれのメンテナンスと管理をしている開発者といったところかしら.ロボットは背中の痒いところは,アーム

を伸ばせば掻くことはできるけれど,自分の中身を掻っ捌いて脳を取り出して自分の悪いところを見ることはできないの』

スピーカー向こうにいる相手はまったく悪びれる様子もなく,あっさりと白状した

それもご丁寧な説明を加えて.

さて,僕はどうしようか.


1 怒りに任せ,ここから出ていく.バイトなんて知ったことか.

2 男仁さんを待つ.その間,この相手とは不快だから喋らない.

3 男仁さんを待つ.その間,この相手から事情を聴こう.

安価直下
132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/24(日) 01:29:20.31 ID:CPRUz3Aio
3
133 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/10(火) 02:42:23.52 ID:NAcE1XbF0
深呼吸をして,落ち着きを取り戻そうとする.

とりあえず,スピーカーの向こうにいる相手から事情を聞き出したい.このむしゃくしゃが収まるなら,今は熱くなってしまった頭を冷却しようじゃないか.

「それで,僕を実験に使ったわけだけど,結果は上手くいかなかったみたいだね」

皮肉っぽくなってしまったのは.僕が人間である証だ.

「弱い頭ね.要は反復と修正が大切なの.これは失敗だけれど,次につながる失敗なんだから.ピンぼけした焦点が徐々に合うように,会話の精度も高まって

いる.もしかしたら,世界で初めて彼女は独立したアンドロイドになれるかもしれないんだから」

「???」

「あんたの表情を見る限り同情するくらい,すっからかんなのね・・・一般常識の範疇なんだけれど,男仁はどこから,こんな天然記念物を連れてこれるのか

しら.電気も通ってないような山奥?それとも例のロボットとの接触を禁じられた宗教団体の一味?」

「・・・さぁ?」それらを一般常識だと思っている彼女の方こそ,乖離した環境にあるとは思ったが,口には出さなかった.

「ま.あんたのことなんてどうでもいいわ.とにかく私は自分の家を見知らぬ人間にうろうろされたくないの.そこで待ってなさい」

スピーカの向こうの相手はぴしゃりと会話を打ち切った.

「待ってくれ,まだ聞きたいことはあるんだ」

「今度でいいわよね」

「これが最後だ.そうすれば,僕は借りてきた猫みたく大人しく待っていると約束する」

「私だったら,そのこぶし大の脳味噌を,にゃーとしか言わないAIと置き換えるんだけど?」

「それが君の目指すAIならそうすればいい.犬井さんなら似合いそうなものだ,名前は合ってないけれど」

「・・・私への侮辱もそうだけれど,今度,TAKEKOを馬鹿にしたら,絞め殺すわ」

彼女は低く唸るように宣言する.

ラーメン屋のアイツ然り,科学者というのは,被創造物を嘲笑されることに耐えられないらしい.それは被創造物が,自身の弱い部分を表したものだからかもしれない.

ナイスバディで,人懐っこい犬井さんは,あるいは….今はよそう.


さて,なにについて尋ねようか.

1,スピーカの向こうの相手の名前

2.犬井さんについて

3,『独立したアンドロイド』について

直下のコンマ00〜80で1,2,3全てを行います.
81〜90で1,2を行います.
91〜99で1のみを行います.
134 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/10(火) 03:42:18.43 ID:YV58rk29o
ほい
135 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/10(火) 14:17:11.54 ID:wxT8H7uy0
高確率で全部の質問しちゃうのは、主人公の知能が高くないから?
136 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/10(火) 23:57:54.73 ID:NAcE1XbF0
>>135
主な理由はそれです.彼は不自然なほどロボットについて知りません,それで知りたいと思って,家を出て,絶縁状態になりました.
質問をしなければ,彼はロボットについて道端の石程度の知識しかありません.質問をすることは今の彼にとって,恥ではないのです
137 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/13(金) 04:36:24.04 ID:vX9epH5+0
1 

「まず聞きたいのは,名前だ」

「あんたが私の名前を知って.サジェクト汚染,ストーカー,吐き気のするあだ名をつける,一体どれをするつもり?却下」

「そんなことはしない.ただ,名前を知らないままなのはやりづらいんだ」

「あのね,実験対象に必要もないのに名前を教えて交流する研究者はいないわ.もしそれで下らない感情に振り回されることなんてあったらごめんだもの.そ

れに私も同意見.これまでも,これからもね」

その傲慢ともとれる態度はPAIに名前を付けなかった僕も,同じなのだろうか.

彼女に聞くときがくるとすれば,僕がPAIに名前を付けたときだろう.

じっと押し黙った僕を見て,名も知らぬ相手はねむそうにあくびを漏らした

138 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/13(金) 04:39:12.52 ID:vX9epH5+0
2

「犬井さんは,本当にロボットなのか」

「あのレベルの外見は見かけることはあるでしょうに,なにを気にしてるわけ?」

「なんというか,初めて会った時の犬井さんの笑顔が,本物に近いと言うか,久々に見た癒しだった」

この数か月,天使も凍りつく様な邪悪な笑みなら幾度となく見たが,それとはまるで別種だ.

「あんたの言うことも一理あるわ.笑顔は表情筋を始めとして様々な筋肉が複雑に作用して,作られてる.何度もシミュレートしても,不気味の谷に落ちてしまうことだって有るわ.笑顔が,一番作りにくい表情って,笑える話よね」

彼女は乾いた笑い声をあげた,そこから彼女の苦労がにじみ出ているようだ.すこし意外だった,

「君のことをすこし勘違いしてた.ただの性格の悪い科学者じゃないんだな」

「その糞みたいな同情をやめないと,殴るわよ.数百kgを支えながら動いてる背後のアームで」

「悪かった,本当に」
139 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/13(金) 04:40:17.62 ID:vX9epH5+0
3

「犬井さんが目指してる,独立したロボットってなんだ?」

「質問は一つまで,あんたが言ったことだわ,責任を持ちなさい」

「男仁さんが来るまでまだかかりそうなんだ,頼む」

「理論的じゃないわね.私は,そういうのが通らない相手だって気づいてるでしょう」

「確かに」

かなりの頑固者のようだ.

「それであんたが不満を持つのは,私でも分かる,次の実験がおわったら,答えてあげるから,絶対来なさい」

「は?」

「己惚れないで.あんたの価値は白紙で何も染まっていない,なにもないことなんだから.急に知識をあんまりつけると,ひどいことになるわよ」

ぶつっと音が切れた.
140 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/13(金) 04:43:59.27 ID:vX9epH5+0
気づけば4か月間を無為に過ごしました
おやすみなさい
141 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/13(金) 04:47:42.02 ID:Rt1oNBPVo
起きろ
142 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/13(金) 09:13:24.01 ID:5SfkUAnno


地味にラーメン屋にいた科学者が重要な人物なんじゃないかという気がする
143 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/25(水) 16:23:56.34 ID:lLMyajg8O
忠告にせよ酷い言い種だった。

中身がないのが価値だと彼女は言う。

それが正しいというなら、僕は空のリュックサックにも等しく、軽いのだけが取り柄のようだ。

はっきりと気分が落ち込む。

自分よりも明らかに上の立場、あるいは優れた人物に貶されることほど、自尊心を傷つけられることはない。

劣等感が毒となり体内を駆け廻るのを男仁が来るまでただ耐えていた。
144 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/29(日) 09:37:27.28 ID:2Z/zGywUO
男仁さんが戻ってきたとき、一瞬僕はどういう顔をすればいいのか判らなかった。

僕が騙されたという形にはなったが、実害があったわけではなく、気分を悪いものにしたのは主にスピーカーの向こうの相手である。

それゆえにひどく罰の悪い顔で、出迎えたわけだが彼はそれを気にしている余裕は無さそうだった。

何かに気を取られている、いやとりつかれているとさえ言える表情で彼は戻ってきた。

交渉相手とよほどのことがあったのだろうかと勘繰ったが斎場の件を考慮すると、その可能性も薄い。

男仁さんは中身を運ぶ役目を終えて軽くなったスーツケースを二つ僕に手渡して、その場を後にした。

慌てて僕はその背中を追いかけた。

いつの間にか、鉛のような曇り空が僕たちの頭上を覆っていた。雨がそろそろ降りだしそうだ。

イベント
危険の予兆の察知 PAIがいないため自動失敗

自由安価直下
145 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/29(日) 09:39:05.95 ID:2Z/zGywUO
帰り道にできることでお願いします
考え事、耳をすませる、等
146 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/29(日) 10:52:32.95 ID:d9cwb9gZo
鈴音さんについて考える
147 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/01(水) 13:40:34.45 ID:2YJgKdt60
鈴音さんについて

今日、会った中で最も繊細な印象を受けた子だった。

それは彼女が盲目である故に纏う雰囲気、そして取り巻く環境がそう感じさせる。

彼女の世界はあの斎場で完結している。

斎場で働く所以は、家族関係入れて貰えたのかもしれないし、

障害者支援法によって枠があり雇われたのかもしれない。

どちらにせよ彼女は居場所を見つけたのだ。

一つに障害者が働くことを国は推奨する。

同様にIOTチップを取り付けた人が働くことを推奨する。

逆は支援を受けられない、ぼんやりと否定される。

彼女はようやく日向に当てられた側の人間で、僕は日陰者。

羨ましいなんて口が裂けても言えないが

ともすればこうやって考え込んでしまうくらいに彼女のことが気になっている。

理由は彼女と僕は対比であり、ある意味では似ている。

鏡にうつった正反対の彼女を、僕は見ているのだ。
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