【艦これ】 続 外地鎮守府管理番号88

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171 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/24(火) 02:05:35.77 ID:rmPTD1ZgO

Freddy Fazbear's Pizza出前始めたのか
配達員はFoxy以外でお願いします
172 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/27(金) 12:17:56.34 ID:1qMkjndu0
海外勢で88鎮守府に来た理由が判明してるのってスパ子とガン子だけっしょ。

それにスパ子は味方殺しだし、ガン子の内容が残念なスパイ行為と比べるのは流石にスパ子が可愛そうだと思うの
173 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/02(水) 12:14:49.67 ID:oh37T7z4O
>>172
グラーフ「視聴者に忘れられた…泣きっ面に蜂とはこの事か」
174 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/05(土) 00:17:38.64 ID:SaFztU7r0
>135 第五話×→第六話○ の間違えです
誤字が誤変換が無くならない相変わらずの残念クオリティ……
今回のエピソードは時代劇の短編でボツネタを追加した際に告知しておりました
鎮守府創設初期のお話です、ボツネタって何?という方は 必殺! 仕事人! の艦これSSをお読みいただけると幸いです
では、本日の更新をさせていただきます
175 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/05(土) 00:18:09.75 ID:SaFztU7r0

第七話 嘘つき兎と泣き虫駆逐艦 前編
176 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/05(土) 00:19:03.15 ID:SaFztU7r0

それは88鎮守府が出来てすぐのお話し。

鎮守府に所属している人数がまだ少なかった頃の話。



雪風「しれぇ!雪風、帰って来ました!」

提督「お疲れ。戦果報告は不要だ。

   お前はいつも最善手で最高の結果を出してくれる。」

雪風「信頼してくださりありがとうございます!」

提督「お前になにかある様じゃここも終わりだ。尻に帆をかけて逃げるさ。」ナデナデ

雪風 エヘヘ

提督「にしても、お前も俺について来なくても良かったんだぞ?」

雪風「しれぇは雪風を幸運艦雪風ではなく駆逐艦雪風として見てくれました。」

雪風「雪風を雪風の能力のみで評価してくれたしれぇはしれぇが初めてです。」

雪風「実力で公平に評価してくれる限り雪風はしれぇに付いていきます!」

提督「面と向かって言われるとなかなかおもはゆいな。」フフフ

提督「食事にするか……。」

雪風「はい!」
177 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/05(土) 00:19:55.94 ID:SaFztU7r0


食堂



不知火「司令、お疲れ様です。リストが届きました。」

提督「ありがとう。不知火も食事にするか?長門は一緒か?」

長門「あぁ、提督。ここに居たか今度の補充兵なんだが。」

提督「まぁ、食事を先にしようや。飯だけはいいぞ。」

不知火「司令、次回の補給と共にくる補充兵ですが志願兵も幾人かいます。」

長門「後は死刑、服役免れの懲役兵だな。いずれにしろはみ出し者だ。」

提督「解体で死ぬより此処に来て少しでも長生きする事を選ぶ連中だ。」

提督「多少なりとも灰汁が強くないと面白くないだろ。」

雪風 モグモグモグ

提督「にしても雪風はよく食うな。これも食べるといい。」

不知火「司令、食事はしっかりと食べないといけませんよ。」

提督「俺は食が細いんだよ。勘弁してくれ。」



不知火から受け取った書類をペラペラとめくりながら

88鎮守府へ送られてくる囚人達を確認する提督。
178 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/05(土) 00:20:34.37 ID:SaFztU7r0

提督「ほとんどがワンウィークだろうな。」

不知火「不知火もそう思います。」

雪風「ワンウィークですか……。」ショボン

提督「あぁ、すまない。話題が悪かったな。」

提督「長門、不知火。すまないが続きは後程執務室で頼む。」
179 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/05(土) 00:21:33.52 ID:SaFztU7r0

執務室



提督「さてと、話の前に一服いいか?」

長門「駄目と言ったら?」

提督「遠慮するさ。俺はコブラが好きだからな。」

長門「宇宙海賊か。」フフ

提督「あぁ、スターバックスでは流石に遠慮するそうだ。」フフ

長門「成程。禁煙の場所では奴も葉巻は控えるからな。」

提督「あぁそうだ。」

長門「ならば遠慮してくれ。」

提督「そうか。」ヤレヤレ

不知火「そうです。健康は大事です。」

提督「そうか。」ショボン

不知火「はい。」

180 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/05(土) 00:22:52.72 ID:SaFztU7r0

提督「本題に入ろうか。何人使えそうだ?」

長門「教導をやっていた不知火との意見交換での結論だが来た内の1割残ればいい方だな。」

長門「他は葬儀屋を手配する方が早い。」

提督「………。ここの危険度を考えればもう少し少ないと思っていたが意外と多いな。」

長門「大甘採点の私と辛口採点の不知火とでの中間だから問題ないと思う。」

提督「そうか。足して割っていい塩梅か。」

提督「雪風がまた悲しむなぁ……。」

長門「提督よ、あの雪風は『 死なず 』の雪風なのか?」

提督「やっぱり気付いていたか。

   雪風はその渾名で呼ばれるのは好きじゃないから止めておいてくれ。」

不知火「私からもお願いします。」

長門「言われずとも。纏う雰囲気が駆逐艦のそれじゃなかったからな。」

長門「ただ、あの雪風を使いこなすとは。提督よ。お前の過去もその内聞かせてくれ。」

提督「そのうちにな。」

提督「まぁ、渾名の由来となっているが雪風は色々移動が多くてね。」

提督「俺が丁度10人目の提督だそうだ。だけに、仲間を大切にしたがるんだ。」

長門「10人目。」

提督「あぁ、鎮守府機能を失うような敵の攻勢にあった激戦区ばかりを経験している。」

長門「問題があるのか?」

提督「誰か死ぬ度に人知れず物陰で泣くような繊細な奴なんだよ……。」

提督「そして、仲間を大事にするくせに仲良くなりたがらない。」

提督「腹の底を見せ合える相手になるのは大変だぞ?」

長門「私は仲良く出来ているが。」

提督「あいつがお前を認めているからだよ。良かったな。」

長門「そうか、誇らしいな。」

不知火「話題を戻しますが懲役組みで見所がありそうなのはこの数人だけです。」



ペラペラと艦種、艦名、略歴を確認する提督。

そして、ある駆逐艦の所でその手が止まった。



提督「駆逐艦卯月か。ほう。睦月型のカタログスペックをハンデにせず戦うか。」

提督「面白そうな奴じゃないか。」

不知火「雪風とペアを組ませてみようかと思っています。」

提督「いいぞ。それで進めてくれ。」
181 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/05(土) 00:24:24.65 ID:SaFztU7r0

数日後 大会議室



室内には志願組みと懲役組み双方が集められ鎮守府での特殊システム。

懲役の軽減や脱走時の取り扱いについて、武器、弾薬の供給について説明がされていく。



提督「事前の契約状況を確認すると全員傭兵契約を結んだようなので

   それを前提として話を進めるぞ。」

提督「燃料や弾薬はお前達に支払われる給料からそこに居る明石を通して購入してくれ。」

明石「どうぞ宜しく。」

提督「この明石はお前らがいた鎮守府のアイテム屋と熟練度が違う事を先に言っておく。」

提督「何かして返り討ちにあいミンチになっても俺は関知しない。面倒は嫌いなんでな。」



そして、鎮守府での細かなルールや契約についての説明が終わった後、質疑応答の時間。



卯月「質問。懲役組みが武装蜂起して鎮守府を乗っ取ったらどうなるぴょん?」

提督「やってくれてかまわんぞ。出来るならな。」



提督があっさりとした口調で言い終わるより前に

質問した卯月の頭には既に数名の砲口が突きつけられていた。



提督「定時連絡が無くなると指揮官死亡でここを丸ごと、

   地図から消す勢いで空爆、砲撃する事が事前の取り決めで決まっている。」

提督「俺を人質に立て篭もるつもりの奴に先に言っておくが

   俺の首は南瓜祭りのランタン程度の価値もないからな。」

提督「それに脱走も含めて反乱分子には自動的に多額の賞金

   もしくは刑期軽減報酬の報酬がつけられる。」

提督「金か懲役年数の軽減目的の奴には寧ろ出てくれた方がありがたいんじゃないのか?」

提督の言葉に色めき立つ志願組みと不敵に笑う一部の懲役組み。

提督「そういう事だ。余計な事は考えずに仕事に当たってくれ。」



そういい残し提督は部屋を出て行ったのだった。



卯月「碌でも無いぴょん……。」
182 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/05(土) 00:25:17.92 ID:SaFztU7r0


数ヶ月後 鎮守府埠頭



鎮守府の面子は殆どが入れ替わり最初から残っていた者も極わずか。

任務を終えた卯月は埠頭の係留杭に腰かけ水平線に沈む夕日を見ながら黄昏ていた。



卯月「命が紙切れ一枚より軽い所だぴょん……。」

長門「なればこそ生きている事を楽しめよ。」



卯月が声に気付いて顔を上げれば生ける伝説、

但しここに来るまでは死んだと思っていた戦艦長門のネームド。



卯月「長門かぴょん。今日の戦闘でも死ななかったぴょん。」

長門「仏との縁より閻魔との縁が強かったらしくてな。」

長門「八大に就職する前に現場経験を積んで来いというありがたい天の采配だ。」

卯月「へらず口ぴょん。」

雪風「卯月さんは演技していますよね。」オツカレサマデス



長門との会話に続くは一緒に出撃をしていた雪風の言葉。
183 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/05(土) 00:25:58.61 ID:SaFztU7r0

卯月「 ! 」

卯月「いつから気付いていたぴょん?」

雪風「最初の顔合わせで雪風のファンネルマークに一瞬驚きの表情を見せた時からです。」

雪風「雪の一文字だけをファンネルマークに登録している雪風は私だけです。」

雪風「そして、そのマークを知っているのは雪風と何処かで接点のあった艦娘。」

雪風「雪風は自慢ではありませんが激戦区ばかりを渡り歩いています。」

雪風「どの激戦区も一瞬の油断で閻魔が拝める場所でした。」

雪風「それらの場所を生き抜いた艦娘が並みの筈がありません。」

卯月「降参。『 死なず 』と言われた貴方には敵わないよ。」



白旗をあげましたといった表情の卯月の口調はいつものそれではなくなる。

184 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/05(土) 00:27:33.28 ID:SaFztU7r0

卯月「ラバウルで隣の戦区で戦って偶然命を拾ったの。」

卯月「ラバウルも酷かったさね。私が居た鎮守府も塵になったし。」

卯月「命をどうにか拾った時に思った。」

卯月「卯月って艦娘は『 頭うーちゃん 』なんて馬鹿にされるくらい

   アホキャラ扱いされているのならそれを演じ、

   味方に戦闘に使えないと思って貰った方が

   後方任務ばかりで楽なんじゃないかって。」

卯月「艦娘それぞれに若干の個体差があるように私の語尾も後付のキャラ付けよ。」

卯月「演じるうちに地になりそうで嫌気もさしていたけどね。」

雪風「随分と苦労されたんですね。」



雪風の言葉に手をひらひらと振り否定する卯月。



卯月「他の艦娘卯月に倣い嘘をついて後方任務に回っていたから雪風程は苦労してないよ。」

卯月「最もその嘘がばれて敢闘精神無しの烙印を押され、

   挙句に見に覚えのない失敗諸々込みの軍法会議で懲役50年。」

卯月「収容先は、お偉いさんが艦娘を食い散らかす為にある様な所でね。

   どんな変態プレイでも修復材ざばぁーで元通り。」

卯月「異物挿入、四肢切断なんて序の口と聞いて頭がいかれてると思った。」

卯月「それなら死に場所が選べるこっちの方がいいかと思ってこっちを選んだだけ。」

雪風「そうですか。」



さしだされる雪風の手。



卯月「握手?」

雪風「改めてです。

   お互いに命を預ける相手であれば隠し事無くいける事が重要と雪風は考えています。」

卯月「あぁ、成程。それじゃぁよろしくお願いするぴょん。」

雪風「……、口癖が地になるって怖いですね。

   後、雪風は死なずの渾名は好きじゃないです。」ニギニギ

卯月「……、うっかりするとどうしようもない。渾名については了解。」ニギニギ

卯月「これから改めて宜しく。」ニコニコ

雪風「こちらこそです。」ニコニコ
185 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/05(土) 00:28:33.09 ID:SaFztU7r0

それからの雪風と卯月のコンビは報酬金ランキングの駆逐艦部門で常に上位に有る様になった。

鎮守府が開設して半年を過ぎる頃には面子の入れ替えは相変わらず激しいものの空母や戦艦。

軽巡、重巡、軽空母、潜水艦、志願、懲罰といった種別に関係なく戦力は充実していった。

そしてそれに合わせて鎮守府に寄せられる任務という名の無茶難題、

依頼という名の民間協力要請も右肩上がりに増加していた。
186 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/05(土) 00:29:59.76 ID:SaFztU7r0

ある日の埠頭



提督「先客か。」



提督が一服の為に埠頭までやって来ればそこには咥え煙草で水平線を見つめる卯月が居た。



卯月「なんだ司令官か……ぴょん。」フィー

提督「実にわざとらしい語尾だな。」

卯月「面倒だから素でいい?」

提督「かまわんよ。お前も喫煙習慣が?」



胸元から煙草を取り出した提督の紙巻に慣れた手つきで火をつける卯月。



卯月「見た目に精神年齢が引き摺られる事がないからね。」

提督「今日び喫煙者は肩身が狭くていけない。

   ついには執務室ですら禁煙になってしまった。」ヤレヤレ

提督「それはそうと雪風と上手くやってくれている様で感謝する。」

卯月「………。」

提督「生き残ればそれだけ他人の死に際に立ち会う事が多くなるからな。」

卯月「死神だの三途守だの言われているのは知っている。

   でも、あの娘。見た目に精神年齢が引っ張れているようには見えないけど?」

提督「強くあらんとしているからだろうな。」

提督「それでお前はどうするんだ?」

卯月「どうとは?」

提督「任務に仕事で稼いだ金は結構な金額になっている。」

提督「今のペースで行けば来年の今頃には懲役分の金は払えるぞ?」

提督「払った後を如何するかはお前さんの勝手だがな。」

卯月「そうだねぇ。

   まぁ、無一文で此処を出て行くのもあれだから終わっても暫くは働くと思うよ。」

提督「その時は一声掛けてくれ。契約の切り替えが有るからな。」

卯月「分かったぴょん。」

提督「お前、どっちが素なんだよ。」フフ
187 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/05(土) 00:31:47.16 ID:SaFztU7r0

卯月「長い間キャラを演じているとどっちか分からなくなるのよ。」

卯月「それより司令官。新しく空母が来るって聞いたけど?」

提督「志願組みだがな……。」

卯月「ワンウィークかぁ……。」



適合者が艤装との適正試験を経て艦娘として海軍に入る。

しかし、よく言えば公務員。

賃金、身分の保証、福利厚生はしっかり出来ているし世間での最低水準よりはずっといい。

だが、あくまで最低よりなのだ。

稼ぐ理由があるから海軍を志願した者には圧倒的に足りないのだ。



卯月「雪風と潜水艦狩や輸送船団護衛にも飽きてきたと話をしていた所。」

提督「ん?長門やそれ以外にも空母連中とかと

   合同で敵泊地強襲とかもよくやってなかったか?」

卯月「司令官、察してよ。」

卯月「女心の分からない朴念仁って言われない?」

卯月「大きな仕事を請けて儲けるには面子の入れ替わりの無いチームを作らないと。」

提督「今度来る空母をチームに入れて飛躍を狙うつもりか。」

卯月「Exactly」

提督「随分と丁寧だな。」フフン

提督「まぁ、お前が面倒みてくれるなら俺も頭を悩まさずに済む。」

提督「宜しく頼むよ。」



そう言いフィルター部分まで燃え尽きた煙草を消すべく携帯灰皿を探す提督。
188 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/05(土) 00:32:26.37 ID:SaFztU7r0

提督「ん……?」ペタペタ

卯月「どうした?」

提督「何処かに落してしまったらしい。」

卯月「それならこれを使うといいぴょん。」



自分が咥えていた煙草を消し提督に使えと自らの携帯灰皿を差し出す卯月。



提督「兎型のか。随分ファンシーな小物だな。」

卯月「うーちゃんも女の子ぴょん。」

提督「こきやがれ。女の子は煙草なんて吸わねぇよ。」



受け取りながら卯月の女の子発言を否定する提督。



卯月「ぷっぷくぷーだ。」ベー



そう言い残し去っていく卯月の背中を見送り携帯灰皿を返し忘れた事に気付く提督。



提督「……、まぁ、そのうちでいいか。」



そう考え提督は卯月から借りた携帯灰皿をズボンのポケットに仕舞った。

189 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/05(土) 00:37:48.16 ID:SaFztU7r0
以上で本日分更新終了です
設定をお借りしているエリア88っぽい雰囲気を維持出来ているのかなぁと考えながら書いています
オリジナルエピソードの方が多いので何ともなのですが……
かと言ってまるっとそのままでも海と空の違いがあるしなぁと思考の袋小路へ
更新が最近は今までより遅れがちでお待ちいただいている方へは申訳ありません
次回更新はなるべく早くとは思っています、本日もお読みいただきありがとうございました
乙レス、感想レス、励みになっています、レス書き込みありがとうございます
では、また次回もお読みいただけると幸いです
190 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/05(土) 01:06:14.17 ID:CPxkHb7A0
おつおつ
何もかもを完璧にとはいかんから、やりたいように適当な塩梅が良いと思うよw
191 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/05(土) 09:24:00.59 ID:aDhDnmxaO
ポーラの壊れっぷりが好きかも!

気が向いたら、掘り下げて欲しいかも!
192 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/05(土) 23:04:10.77 ID:dcjuRa1A0
明石が来たとこは省略か…
193 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/12(土) 00:32:53.56 ID:s6Hdwak90
一週間に一度くらいの頻度で更新できたらなぁと考えつつ
本日の更新に参りました、お時間宜しければお付き合いいただけると幸いです
卯月編は次回で最後でございます、ほっこりとした感じでの進行、たまにはいいかなぁと
194 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/12(土) 00:33:50.93 ID:s6Hdwak90

第八話 嘘つき兎と泣き虫駆逐艦 中編
195 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/12(土) 00:37:56.59 ID:s6Hdwak90


ブ ――――――――――― ン  ブロロロロ


提督「秋津洲、港から倉庫に行くところか?」フカー



キッ!



秋津洲「そうだよ!倉庫に行ったらそのまま納品書を執務室の不知火に届けに行くかも。」

提督「そうか。ついでに俺も執務室に納品してくれ。」ヨッコイショ



秋津洲が運転するターレットに繋がれた荷車の上に腰掛ける提督。



提督「一服しに港まで歩いてきたが本館建屋に歩いて帰るのがめんどうくさくなてなぁ。」

秋津洲「煙草は駄目だよ!」



胸元をごそごそとしていた提督を一瞥し先手を打つ秋津洲。



提督「今日入った荷物か。」ヤレヤレ、キンエンカ

秋津洲「うん!明石さんがゴニョゴニョした艤装かも。」



ゴニョゴニョとは出所不明の試験艤装のちょろまかし。

日本から技術供与を受けた国も最近、艤装の開発に成功し実戦配備が進んでいる。

そんな中、実戦配備前の試験用である為に量産性を無視し、

スペックを追い求めた艤装なんかも当然存在する。

所謂、Xナンバーが割り振られる艤装である。

そして試験、実験用艤装は役目を終えれば機密保持の為に厳重な管理の下処分される。

話は変わるが、提督の鎮守府は稼動を始めて今の所、葬式が出ない日は無い状態である。

提督曰く後1年もすれば実力の有る奴、無い奴が篩い分けられるだろうとの事だが。

そして、死んでしまった娘の艤装は可能な限り回収される事となっている。

なにせ五星紅旗を掲げた船が海上警備といいつつ大破艦娘の強奪や

深海棲艦の死体漁りを行っていたりする現状が有る以上

戦後を考えれば機密情報が漏れるのは少ない方がいいのだ。

そして資源が少ない我が国では素晴らしき、

もったいないの精神もあり再使用可能な艤装は整備、修理の上で次の艦娘へ提供されるのである。

後はお分かりだろう、この回収した艤装の登録番号と試験艤装の番号を

チョイチョイと入れ替えてあら不思議、艦名と、がわは同じだけれど

スペックがおかしな日本艦娘艤装が一丁あがりという訳なのだ。

もっとも最近は艤装の提供元も心得たもので

一般的な鎮守府の稼働率ではないここの稼働率に目をつけ

耐久試験代わりに明石に『 スクラップ 』で処理したとして艤装を提供していたりもする。

見返りは深海棲艦へ使った実戦データーである。

非合法取引なのに信用第一というおかしな信頼関係もあったりするのでお笑いだ。
196 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/12(土) 00:41:12.57 ID:s6Hdwak90

提督「まぁ、あんまりおかしな物にしなけりゃ何も言わんがね。」

秋津洲「三個一、四個一が珍しくないから今更かも?」

提督「だな。まぁ、リサイクルは大事って事だな。」



艤装のリサイクルは時として部品取りなどして

幾つかを一つにした物を新造艤装として申請する事もあった。

その時は基となった艤装以外の登録番号を抹消する事になる。

だから、がわの再利用などで新造番号の登録を行う提督は明石達のやっている事を知っているのである。

明石商会用に割り当てられた倉庫の一棟の中までターレットを運転し

棚前で荷車から荷物を降ろし納める秋津洲。



秋津洲「提督。それとってかも!」

提督「ん。これか?」



荷車に腰掛けたままの提督をまるで自分の小間使いの如く使う秋津洲。

暫くの間手伝い「んあぁー」と倉庫外で親爺臭く腰を伸ばす提督は気付いた。


197 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/12(土) 00:42:19.89 ID:s6Hdwak90

提督「雪風。お前、また泣いてるのか?」



倉庫と倉庫の間の隙間で身を縮めて声を押し殺して泣いている雪風に。



提督「雪風。」

雪風「あっ……。」グス

提督「また一緒に出撃した娘が沈んでしまったか?」



哨戒だけさせていた本当に初期の頃と違い今は艦隊を組んで出撃している雪風。

荒くれ、逸れ者ばかりで挑めば当然の如く沈む者も多く

提督は把握しているものの今まで雪風に直接尋ねる事はなかった。

雪風がどんな反応をするかを知っていたから。

提督として職務を続けていれば艦娘として志願した者の遺族へ会う事も有る。

そういう場面で述べる言葉というのは当然、士官として知っている。

だが、仲間が死んだと肩を震わせて声を押し殺して無く幼子にかける言葉は何であるべきか。



提督(数をこなしていても慣れるものではないな。)フゥ

卯月「あっ!雪風こんな所にいた!ご飯食べるよ!」

提督「おう。」



提督がなんと言葉をかけたものかと考えていたら卯月がやってきてそのまま引き摺っていった。
198 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/12(土) 00:43:12.93 ID:s6Hdwak90

卯月「艦娘も生まれてくればいつかは死ぬ、

   それが早いか遅いかだけぴょん。」

卯月「どうすれば仲間が死なないかなんて馬鹿の考え休むになんとかぴょん!」

卯月「ほら!今日は新メンバーが来る日ぴょん!」



ずるずるという擬音がぴったりな状況で雪風は連れ去られていった。



提督「ああいった強引な奴がいれば雪風も笑っていけるのかもなぁ。」



そんな益体のない事を見送りながらぼんやりと提督は考えていた。



秋津洲「提督、もう少し手伝って欲しいかも!」

提督「お前なぁ……。まぁ、いいか。」

秋津洲「手伝ってくれたら御礼に後ですっごい物あげるかも?」

提督「ほう。まぁ、期待しないが頑張ろうか。」

199 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/12(土) 00:44:17.81 ID:s6Hdwak90

執務室



卯月「司令官。おつかれぇぃ↑」



ハイテンションな卯月がドアを蹴破る勢いで入ってくる。



提督「………。」

卯月「カップ麺?」

提督「おう。秋津洲の手伝いをしたら1箱くれてな。珍しいだろ?」

提督「10分うどんとやらが美味いらしい。」

卯月「食堂で食べないの?」

提督「募集をかけちゃいるんだがなぁ、

   今の時間を受け持ってくれる調理士が来ないんだ。」

卯月「ふぅん。じゃぁ私が簡単なのつくってあげるよ。」

提督「料理できんのか?」

卯月「基本艦娘は出来て当たり前よ?まぁ、中にはあれなのもいるけどね。」



話をしながら執務室横の給湯室扉を開けたまま、室内にある台所で冷蔵庫内のあり物で料理を始める卯月。
200 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/12(土) 00:45:32.23 ID:s6Hdwak90


卯月「料理がプロ級の比叡も居れば磯風だって居るし。

   うーちゃんが前いた所の比叡はお金取れるレベルだった。」

提督「ほう。」

卯月「ジョエル・ロブションの店で働いていたとか嘯いてたけど。まぁ、料理は美味かったよ。」

卯月「私も戦後を考えて料理を基礎から教わったから

   戦後は稼いだ金で店でもやりたいねって思ってる。」

提督「やめとけやめとけ、食い物屋の8割は1年持たずに潰れるのが関の山だ。」

卯月「じゃぁ、適当な男でも捕まえて永久就職するかぁ。」

提督「捕まるといいな。」

不知火「はい、不知火もそう思います。」ズズー

不知火「このうどんは少々伸びてしまっている気もしますが。」ジロリ



この獲物は私のだと卯月を睨む鋭い眼光に提督は気付いていない。



卯月「……、でっできました。」



その殺気籠もった視線に震えつつ軽食を差し出す卯月。



不知火 ぐぬぬ! モグモグ

提督「うん、美味いな。卯月はいい嫁になれるぞ。……、と忘れていたな。」モグモグ

提督「何用があって来たんだ?」



提督の言葉に目的を思い出した顔をする卯月。

201 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/12(土) 00:46:49.75 ID:s6Hdwak90

卯月「そうだった、この空母をメンバーに入れたいの!」

提督「雲龍。」



だんと執務机の上に叩きつけられたのはドラフト指名用紙。



不知火「先日相談いただいた際にお見せした資料ですね。」

提督「……、雲龍か。」



現在の卯月のチームメイトのバランスで言えば間違いなく必須の空母勢。



提督「卯月。」

卯月「ぴょん。」キラリーン☆

提督(可愛く取り繕う必要はないんだがな。)

提督「面倒みてやってくれ。」

提督(にしても、実に濃い面子があつまったチームになったな。)

提督(うちに集まってきた連中の生き残りで癖のある奴らばかりを集めてやがる。)

提督「面白い。新旧ごちゃ混ぜ。そこに最新鋭空母か。なぁ、不知火。面白そうだな。」

不知火「雪風が泣く事が減るなら不知火は何でもいいです。」

提督「お姉ちゃんしているんだな。」

不知火 ぬい! フンス
202 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/12(土) 00:47:37.16 ID:s6Hdwak90

その後、チームが結成してから暫く。

彼女達は民間からの仕事を請け多額の報酬を得ていた。



卯月「金剛ネキは砲撃準備!」

卯月「雲龍はタンカーの艦橋を攻撃準備!停船しなかったら爆撃!」

卯月「天さんは護衛艦娘に停船勧告及び退避勧告を複数チャンネルかつ平文で!」

卯月「後で聞いていないなんていわれないようにね!」

卯月「加古ちゃん!」(無線)

加古「あいあいよー、雪風とお客様をエスコートしてるよー。」(無線)

卯月「やるぴょん!」



ザッザリザリザリ

卯月が拡声器をもってタンカーへ向けて停船勧告を行う。
203 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/12(土) 00:49:14.19 ID:s6Hdwak90


「あっ、あぁー……。こちら○×カンパニーの債務取立てを頼まれた

 88鎮守府所属卯月ぴょーん。」

「○○国保有××資源公社への○×カンパニーの投資資産を

 ○○国政府が行った強権的国有化に対し国際刑事裁判所が

 ○×カンパニーへ対抗措置を認めた為、貴船を差し押さえするぴょん。」

「停船しない場合は軍事行動が認められているぴょん!

 なお!捕虜の取り扱いについては投降した場合において

 ジュネーブ条約における捕虜、民間人の取り扱いに基づき丁重に取り扱うぴょん!」

天龍「卯月、ありゃ停まるかね?」



タンカーは停まる素振りを見せず寧ろ海賊と判断したか増速する選択をしたのか煙突からは黒煙が上がり出す。



卯月「ネキ!ブリッジの端をやっちゃって!」

金剛「Yes!死ねやぁ!」



戦艦の砲撃が見事に決まり轟音と共に艦橋の端が吹き飛び脅しではないと判断したタンカーは停船した。



卯月「まぁ、航行に支障はないでしょ。」



そして、数十分の後、プレジャーボートより少し大きめのボートが雪風と加古の護衛つきで近づいてくる。
204 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/12(土) 00:51:13.07 ID:s6Hdwak90


「いやぁ、お嬢さん達すごいねぇ。おじさん感心しちゃったよ。」

卯月「あんたが○×カンパニーの代理人?」

「と、これは失礼。私、蔵王の柳と申します。」コレメイシ



眼鏡をかけたいかにもジャパニーズビジネスマンと言った風体の男が畏まった様子で名刺を指しだす。



卯月「へぇ、超大手の総合商社じゃん。いつから町金の真似事を?」

柳「いやね。差し押さえた石油製品。まぁ、ナフサなんだけどね。」

柳「差し押さえの実行部隊に後の護衛も

  うちが手配するから割引価格で一部債務譲渡して貰ったんだよ。」

卯月「日本の総合商社は利益が出るなら悪魔とでも商売しそうだね。」

柳「おたくの明石さんと私が個人的に知り合いじゃなかったらうちも買わないよ。」

柳「もう少ししたらうちが手配したボースン達が来るからもう少し待って貰える?」

柳「後、出来れば次の目的地まで護衛をお願いしたいかなぁと。」ニコニコ

卯月「うーちゃん達の仕事はここまで。後は追加料金。」

柳「5000ドル。」

卯月「一人に付き2万。」



その後、暫しの間、価格交渉が熱く行われ。



卯月「12500。これ以上はビタ一文もまけないぴょん。」



降参と相手が両手を挙げて見せた事で交渉終了。



卯月「お宅はいい取引をしたぴょんよ?」

柳「そうありたいね。」

205 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/12(土) 00:52:25.84 ID:s6Hdwak90

鎮守府埠頭



卯月「今日も儲けた!」

金剛「卯月が商売上手なおかげで儲かるネー。」

天龍「このまま行けば来月には俺はここを卒業出来るぜ。」

卯月「またチームメイト集めはだるいから天さん契約延長してよぉ。」

天龍「金は十分稼いだからな。お断りするぜ。」

卯月「また軽巡探しかぁ。」

金剛「私も順調に稼げてるネー。でも、もう暫くは世話になるヨー!」

卯月「ネキ。愛してる。」



護衛を終えた一同は夜も遅くに帰ってくる。

そして、そんな一同を待ちわびたかのように提督は港で待っていた。



提督「全員お疲れ。

   お前さん達が現地で請け負った護衛の報酬払い込み確認の紙を持って待っていたぞ。」

雲龍「ありがとうございます。」

雪風「しれぇ!ありがとうございます!」

提督「礼にはおよばんよ。出番が欲しいだけさ。」ユキカゼノアタマナデナデ

提督「後な、今月のチーム別戦果ランキング1位の報酬だ。

   休暇3日もしくは1000。好きなのを選べ。」



そう言い残し提督は各書類を卯月に渡し去っていった。
206 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/12(土) 00:53:50.43 ID:z9suzpUxo
ELANも懐かしいな
207 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/12(土) 00:54:00.04 ID:s6Hdwak90

卯月「ここはなんだかんだで艦娘が優遇されているよね。」



去り往く提督の後姿を見送りなんとなく出た感想。



雪風「しれぇは艦娘をぞんざいに扱って後ろ弾くらう愚を冒すより

   気持ちよく働いてもらって戦果をあげた方が賢いって

   以前お話をした際に雪風に語ってくれました!」

金剛「確かにその方が賢いネー。ここの提督は信賞必罰がしっかりしてるヨ。」

加古「あぁ、賢い。あたしが前に居たところなんか働いても働かなくても最低保障があったもん。

   それならだらだらしていた方がずっといいってなる。」

加古「でもここは戦果稼がないと即あの世だからね。

   まぁ、あたしは志願で好んで来た口だから稼げるここの仕組みは大好きだね。」

天龍「俺なんかやる気はあっても旧型で非力だからってことで前線に出してもらえなかったからな。」

天龍「自分で戦場を選べて尚且つがっつり稼げる。前の糞鎮守府から比べれば天国だ。」

天龍「んでもって現場での裁量がでかいから

   今日みたいに追加の仕事もその場の自己判断でいけるからありがてぇ。」

加古「確かにねー。普通だったら鎮守府に連絡して許可貰ってーって感じで時間掛かるよねー。」

加古「ただ、本当に実力がないと生き残れないけどね。」

金剛「確かにその通りデース。指示を貰う事に慣れているとここでは生き残れないネ。」

金剛「雪風は提督との付き合いがここに来る前からあったと聞きましたが

   此処に来る前はどんな提督だったデス?」
208 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/12(土) 00:56:30.47 ID:s6Hdwak90

雪風「負けもありましたが大きな負けはなかったです!」

卯月「………。」

金剛「………。」

天龍「まぁ、常に勝ち続ける提督なんていねぇわな。」

加古「どうせ、なんかやらかして左遷くらったんだろうと思っていたけど

   負けがあるんなら意外と並の提督なのかもね。」



雪風の言った言葉の意味を金剛と卯月は正しく理解。



金剛(被害を最小限に抑える、被害を数字で考えられる提督デスか。)

金剛(優秀ゆえに上に煙たがられたタイプですネー。)

金剛(更にいえば、ここに左遷される原因となったのも

   大きな負けをした訳では無いというのが別の原因がある事を物語ってるデース。)

卯月(数字の先にある命を敢えて無視出来るタイプかぁ。怖いタイプだね。)

卯月(戦略参謀でもやっていたのかな。触らぬ神になんとやらだねぇ。)

卯月「それじゃぁ今日は解散で!明日もよろしくぴょーん。」

雲龍「あの、こんなにお金いただいてもいいのでしょうか?」
209 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/12(土) 00:58:19.55 ID:s6Hdwak90

ようやっと声を上げたのは先程まで提督から渡された振込み通知書に書いてある金額に目を回していた雲龍。



卯月「おぅ。何事かと思ったぴょんよ?」

金剛「雲龍は志願だったネー。」

雲龍「あっ、はい。弟妹達を食べさせるために志願したのですが

   お金がとても足りなかったのでより稼げると聞いてこちらへ来ました。」



ずびしっとでも音が聞こえてきそうな勢いで手をあげ此処へきた理由を述べる雲龍。



金剛「弟妹達の生活費稼ぎ。大変ネー。」オウ

雲龍「はい、ですが稼ぎ頭のチームにお誘いいただきありがとうございます、です!」



ぐぅ〜。



卯月 ブホッ

加古 ブハハ

雪風 クスクス

雲龍「あっ。」



照れて赤面する雲龍。



卯月「あっ、あぁー、うん。ごめん、なんか意味不明の笑いが。」フフフッ

天龍「酷い。」フフフフ

卯月「食堂は只なんだからしっかり食べないと。」

加古「でも時間が夜8時までなんだよね。

   夜間作戦の時が閉まってて自販機しか使えないのが辛い。」

天龍「あー、それな。しかも週に1回全休の日があるのがなぁ。味はいいのに。」

金剛「Oh、今日は全休だったネー。調理士増やして欲しいデース。」

雪風「お腹が空いたです……。」



そして、全員の視線が卯月に注がれる。
210 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/12(土) 01:00:01.75 ID:s6Hdwak90

卯月「仕方ない。うーちゃんが飯を作ってあげるぴょんよ?」

卯月「ヌーベルキュイジーヌ、特と味わえぴょい。」

金剛「卯月はキャラがぶれぶれネー。」

加古「まっ、余所の卯月と根本から違うよね。」

卯月「ここは演技しなくて素でいれるいい所だと思うよ。

   後、料理はフレンチ以外もいけるから好きなの注文してね。」

卯月「無理なのは作らないだけだから。」

金剛「oh、せめて無理の一言は欲しいデース……。」

天龍「あー、これは作れない料理とか頼むと

   最後まで出てこなくて空きっ腹抱えないといけなくなる奴だ。」

雪風「そういえば卯月さんは煙草辞められたのですか?」

卯月「もともと極々たまーになんとなく吸ってただけだしね。」

卯月「それにいつまでたっても美味しく感じられないし。」

卯月「司令官はあんな糞まずい草の塊を好んで吸ってるけどね。」



そこで何か思い出したように言葉を切る。



卯月「いつぞや貸した携帯灰皿はあげるって司令官に伝えておいてよ。」

雪風「はい!雪風了解しました!」

雲龍「お料理、楽しみです。」



こうして料理上手のリーダーがいる『 チーム兎さん 』はより結束を強めるべく食堂へ向け抜錨したのだった。
211 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/12(土) 01:01:45.48 ID:s6Hdwak90

執務室

提督「………そろそろか?」

不知火「申訳ありません。」

コトッ

提督「カップ麺。」

不知火「申し訳ありません。」



席を立ち給湯室の台所を覗こうとすると全力で阻止されそうになるが。



提督「んっ………。」



フライパンの上には卵焼きを作ろうとしたのか失敗したなにか。



提督「そぼろにして刻み海苔を作って、そうだな。挽肉があっただろ。」

提督「三色丼でも作るか。」

不知火「!」

提督「不知火が手伝ってくれたからな。きっと美味いだろうさ。」

不知火 ぬい!

提督(部下の笑顔はPriceless か……、買えるものなら千金積んでも惜しくはないな。)



うきうきと提督の手料理を、箸を握りながら待つ不知火の姿をみてそんな益体のない事を提督は考える。

明日をも知れぬ命なら今を楽しむ事が大事だとある古参の艦娘は言った。

それぞれが食事への思いを馳せながら激戦区の夜は更けてゆく。
212 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/12(土) 01:09:39.55 ID:s6Hdwak90
以上で本日の更新終了でございます
蔵王の柳に気付かれるとは恐るべし、割とマイナー作だと思ってたのですが
関係ないですが応援させていただいていた方の艦これ2次が無事に新スレたってて一安心の今日この頃です
更新の間がかなり空くかただったので立ってくれぇと念じていたのは内緒
イチャコラ成分の少ない物は書き手が少ないと思うのですが皆様はどう思われますでしょうか
ビバップとかブラックラグーンみたいなのを書く、書こうとしてエタるのはたまに見るのですが
需要はあれど供給が少ないのがなぁ……と思ってしまいます(自分でやれと言われそうなのがまたなんとも)
いつも感想、乙のレスいただきありがとうございます
SS速報自体が過疎なんて事もたまに聞きますがこれからも可能な限りは更新を続けてまいりますので
今後とも宜しくお願いいたします
213 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/12(土) 01:39:12.33 ID:ApEJ5A6A0
おつおつ
商魂の逞しさとえぐさに笑ったw
次回が怖いなあ…
214 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/12(土) 10:06:13.41 ID:ALDA5f5LO
うーちゃん料理食いたい
215 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/14(月) 18:32:39.31 ID:/5RZSnR70
火付けの柳キタか!

……ELANの柳さん蔵王だったか。
ジェントル萬での活躍は認識してたけど、ガッデムには不参加だったのはその影響かよ

次はクレオパトラかアイリーンあたりが出てくれるのかな?
216 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/14(月) 19:05:31.16 ID:3lu/pmZUo
正確には『座』王だわな
砂の薔薇は相性よさそうだけどアメリ艦娘で固めるか、国内でまとめるか悩ましいな
217 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/17(木) 11:44:00.45 ID:FugZg+KIO
蔵王… キツネ村行きテェ
218 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/19(土) 00:24:45.40 ID:7jmJC1/U0
ナチュラルに座王を蔵王と勘違いしておりました、読者の皆様申訳ありません…
書く前に読み直しておけという話ですね……
相変わらずのぐだぐだですが、今日の更新もお時間宜しければお付き合い下さいますと幸いです
219 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/19(土) 00:25:42.76 ID:7jmJC1/U0

第九話 嘘つき兎と泣き虫駆逐艦 後編

220 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/19(土) 00:26:23.25 ID:7jmJC1/U0



以下の者 ポイントD-97にて撃沈の為除籍手続きを行うもの也。

艦娘名 卯月 

2×××年○月×日 外地鎮守府管理番号88より除籍

敵魚雷4本を被雷し航行不能となった所を敵集中砲撃にあい撃沈

艤装登録番号 8-8-U-so800 製造番号 a-L-I4ve5963 両番号を同日付で抹消



221 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/19(土) 00:28:03.86 ID:7jmJC1/U0


提督「と、終わりかな。」

不知火「艦隊司令部へ送る今月の戦死報告書を受け取りに来ました。」

提督「あぁ、丁度まとめ終わった所だ。これも頼む。」

不知火「今月も多いですね。」

提督「金持ちだろうと貧乏人だろうと教皇だろうと麻薬の売人だろうと。」

提督「死だけは平等に訪れる。」

提督「仕方の無いことだ。」

不知火「その……。」

提督「あぁ、まぁ、その何だ。淡泊と言いたいんだろ?」

提督「感覚が麻痺してくるというより淡々と処理した方が哀しみというのは少ないものだ。」

提督「嘆いても死者は帰らない。俺に出来るのは忘れない事だけだ。」

不知火「不知火も忘れない、いえ、忘れません。」



鎮守府埠頭


提督「チームに居た者は雪風以外みな本土へ帰還か。」

提督「五体満足でここを出られるのは喜ばしい事だ。

   生きている喜びを噛締めてくれ。」

金剛「提督の呼びかけならいつでも応じるネ。」

提督「そういって貰えると嬉しいが此処には二度と来るな。俺が言えるのはそれだけだ。」

提督「志願にしても金を必要分稼いだら自分から地獄を覗くような真似はするな。」

天龍「なんつーか面白い提督だよな。」

加古「提督に最初に会えていたらと思うよ。」

天龍「それな。」

提督「ここでの事は忘れろ。全ては邯鄲の夢だ。良いも悪いも夢だ……。」

雲龍「提督。」

提督「卯月からの頼まれだ。あいつの残した金は全て雲龍に渡してくれと言われている。」

提督「あいつは身寄りが無くてな。雲龍の弟妹への生活費に当ててくれだそうだ。」

提督「それなりの額がある。受け取ってやってくれ、それがあいつへの手向けになる。」

提督「死者に囚われるな。……、俺が言えた台詞じゃないがな。」



そういい提督は鎮守府から日本本土への定期船便が来るのを待ち、

それへ乗り込む一同を見送り執務室へと踵を返したのだった。


222 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/19(土) 00:30:06.68 ID:7jmJC1/U0


執務室

雪風「しれぇ。」

提督「雪風。辛いと思うが卯月がどうしてああなったのか聞かせてもらえるか?」

提督「知っておきたいんだ。」

雪風「はい。」



そして、雪風は語り始める。卯月がなぜ撃沈したのか。

それは卯月がチームリーダー、艦隊旗艦として作戦を受けた最後の出撃。

その日の波は穏やかだった。



卯月「おおまかに掃討終ったかな。」

卯月「皆!ごはんにするよ!」



そう一声かけて取り出すはカツサンド。



雪風「ちょっと温かいです。」

卯月「艤装の排気煙突付近で食べる前に暖めるのが秘訣なのじゃよ。」フォッフォッフォ

金剛「どこの怪しい仙人デス。」



卯月が取り出したカツサンドを頬張りつつ帰投後どうすると楽しげに会話をする一同。



天龍「にしても本営から仕事を受け持った正規の連中はなんつーかなぁ。」モグモグ

加古「言われた通りにこなすだけだから他に気が回んないのよねー。」モチモチ

金剛「自分の出来る範囲内で好きにやれるのは楽しいですネー。」モグモグ

金剛「けれど敵を潰すほどに金になるのは欲張りすぎるからいけないデース。」コウチャホシイネー



大規模作戦に出た正規軍の露払いを終え先へ進む正規軍の艦隊を見送っての帰路。

その雰囲気は一仕事終えた高揚感もあり和気藹々としたものだった。



223 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/19(土) 00:31:31.23 ID:7jmJC1/U0


ぞわり

ぬるぬるとした足元からまとわり付く、滑りのある、あの世からの湿った空気。

足を絡め取る手。無数の亡者の手。

水底へ引き摺りこもうとする……。

その、黄泉の入り口から流れてくる瘴気に真っ先に気付いたのは雪風、そして卯月だった。



雪風「黄泉路が開いたようです。」

卯月「血と脂の匂いがする。」



そして、続いて気付いたのは金剛。



金剛「……、Hey! 地獄の釜蓋が開いたネー。死にたくなければ褌締めやがれネ。」

卯月「雲龍。周辺の索敵状況を教えて!」



促され慌てて四方へ索敵機を飛ばす雲龍。



雲龍「向うに死体が沢山。食人鬼がたくさん。」

雲龍「たくさん……。」



青褪めた顔をして索敵機からの状況を伝える雲龍。

艦娘の死体を漁る深海棲艦が食人鬼に見えるのは仕方無い事か。



卯月「チッ。」



盛大に舌打ちを一つ。



卯月「馬鹿が……。」

天龍「卯月。どうする?」

卯月「雪風。」

雪風「はい。」

卯月「どうみる?」



天龍への答えは当然撤収、ただ、艦隊を預かる卯月が考えるのは

自艦隊が被害無く撤収出来るかという事。

自分だけの考えではなく同じ、いや、それ以上の技量にある者に意見を求めるのは当然であり。

雪風の返答は。

224 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/19(土) 00:33:23.98 ID:7jmJC1/U0


雪風「雪風達だけなら帰りつけると判断します。」



自分達だけなら可能、それが意味する所は。



加古「友軍の生存は無いものと考えますかねぇ。」ヤレヤレ



居たとしても連れ帰るは困難。

金で命を売り買いする一同なれば天秤の針の位置は自ずと決まる。



卯月「全力で海域離脱。敵からの追撃に注意。」



ほんの数十秒で素早く判断を下すが雲龍の動きが鈍かった、

いや、離れたくないようだった。

そして、泣き始めた。



卯月(ちぃ。断末魔を拾ったか。)

雪風(生存者に偵察機を見つかりましたか。)

雲龍「あの、前に所属していた鎮守府の娘が……。」

卯月「同名艦娘の間違いじゃないのと言いたいけど。」

卯月「雪風、私に万一の事があれば旗艦宜しく。雲龍何人残ってる!?」



卯月の発言に誰も異を唱える事無く新たに陣形を組みなおす一同。

軍隊である以上の最低限のルール。

負傷者は可能である限り収容し連れ帰ること。

つまり、気付かなければ負傷者は存在し得ない、しかし、雲龍が気付いた。

そして、何がしかの交信をしている、

故にここで見捨てて行ってしまうと友軍を見捨てたとの『 けち 』が付くのだ。

その『 けち 』は時として軍法会議という結論ありきの軍事法廷への招待状となるから厄介なのだ。


225 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/19(土) 00:34:53.61 ID:7jmJC1/U0


卯月「生存者はいる!?」



現場へ向かい、いくつかの無線周波数帯で呼びかける。

うっうぅ……。

イ級に食い散らかされたか所々パーツがない艦娘を見つける。



卯月「楽になるための鉛弾なら只だけど?」



相手の目が頷くように閉じたのを確認して卯月は主砲を向け撃つ。



卯月「お疲れ。」



ドン



卯月「救いようの無い馬鹿な作戦をさせられているもんだ……。」

卯月が楽にした相手の装備は何にでも対応できるようごちゃ混ぜに持たされていた。



敵姫級達への情報が不足していたのであろう。

その所為で道中の敵に対応が出来ず無駄死にとなってしまっている。



金剛「大方こうなる事も踏まえての編成ですネー。」

金剛「死んで情報とって来いのやり方ネ。気に入らないヨ。」

金剛「雲龍、前の鎮守府の提督はどんな奴だったデス?」

卯月「ネキ。提督が代わっているかもしれないし聞くだけ詮無いことだよ。」

天龍「さてと皆さんおまた〜?」

天龍「一応周囲捜索で五体満足で生きてたのはこの娘だけ。」



ぺいと天龍が肩から下ろしたのは睦月。
226 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/19(土) 00:37:26.32 ID:7jmJC1/U0


卯月「あー、輸送任務で連れて来られていたぴょん?

   今の状況分かるぴょん?」



卯月の口調で形式上の姉に語りかける卯月。



卯月「体が小さくてよかったぴょん。

   被弾面積が小さくて済む。生き残りやすいぴょん。」



この一言が余計だった。



睦月「あああぁあぁぁぁあああ!!!!」

加古「あらら。精神的にきちゃってたか。」

加古「軽口に反応できないんじゃ寝てもらってた方がいいか。」



笑顔で腹に拳を決める加古。



加古「で、どうする?救援依頼だしても仲間が来るには少し時間かかるよ?」

卯月「どうもこうも、帰るしか無い訳ですから。」

金剛「とんだ残業ですネー。」

卯月「サビ残で残業代が出ないのはどうしたものか…。」



軽口が叩けるうちはまだまだ余裕がある証拠。



金剛「といっても。周囲にだいぶ敵が集まってきてるヨ。」

金剛「禿鷲どもが死肉を漁りに来てるネー。」

卯月「全力で撤退!加古ちゃんは睦月を担いで!」

加古「あいよ。」

卯月「雪風、天さん!露払いは宜しく!うーちゃんは殿をやる!」

卯月「残業代の払いは敵の命!

   うちらの残業代は高くつくと身を持って知ってもらおうじゃないの!」



しかし、敵の追撃は凄まじく帰路であった事もあり、弾薬の残りも少なく

時間経過と共にだんだんと追撃を裁ききれなくなっていっていた。
227 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/19(土) 00:38:33.24 ID:7jmJC1/U0


卯月「あっちにスコールの雨雲が溜まっている。」

卯月「このまま直進すれば最短距離。さてどうする?」

雪風「スコールに紛れて敵をやり過ごし救援を待つのが最適です。

   救援に向かってきている方々に不知火さんが居ますので心丈夫です。」

天龍「だが、敵さんも楽に逃がしてはくれないみたいだぜ。」



ふーっと大きく一つ息を吐く卯月。



卯月「ネキは傷病兵として足を飛ばした元提督と添い遂げる為の資金稼ぎ。」

卯月「天さんは出身の児童福祉施設の経営建て直しの資金稼ぎ。」

卯月「加古ちゃんは相棒の古鷹だった娘の目の手術代稼ぎ。雲龍は弟妹の生活費。」

卯月「雪風は司令官との腐れ縁。」

金剛「卯月、急にどうしたネ?」

卯月「んー、みんなが生き残らないといけない理由。」

天龍「この状況での生き残らないといけない理由って俗に言う死亡フラグって奴じゃね?」

卯月「違う違う、あれよ、立てすぎた死亡フラグは生存フラグって奴よ。」

卯月「こんだけ建てておけば大丈夫でしょ?」

加古「よっ、一級フラグ建築士!」


そして、スコールの中へ転進し敵をやり過ごし、88鎮守府からの救援との合流まで後僅かとなったとき。


228 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/19(土) 00:39:29.24 ID:7jmJC1/U0


卯月「なんとか帰ってこれたぁ。」フゥ



この一瞬の気の緩みが首に死神の大鎌を当てさせる事となる。

シューッ

ドン!

それはスコールにより荒れた海面を走ってきた為に発見が遅れた。

そして殿を務めていた卯月に命中。



卯月「あっ、これ駄目なやつだわ。」



被雷とともに停止した主機にさっさと見切りをつける卯月。



卯月「まいったねぇ。生存フラグは他人からの借り物で建てるのは効果が無いらしいや。」



ボフボフボフ モスン



卯月「まっ、標的艦程度にはなるでしょ。」ウシッ

卯月「それじゃ皆、私はここまでだから!雪風、荷物は佐世保に宜しく!」



そう言い卯月は全員へ自分を残し撤収するようへ指示を出した。
229 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/19(土) 00:40:35.43 ID:7jmJC1/U0


提督「後は皆が指示にしたがい救援部隊との合流を急いだ訳だな。」

雪風「はい。」

提督「救援部隊と合流後に卯月を救援へと向かったが時既に遅しだったという事か。」

雪風「はい。」

提督「雪風、卯月は最後まで闘ったか?」

雪風「はい。」

提督「そうか。」

雪風「しれぇ。」

提督「ん?」

雪風「雪風は最後まで沈みませんから!」

雪風「沈みません!」

提督「ん。」ナデナデ
230 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/19(土) 00:42:12.24 ID:7jmJC1/U0


時は過ぎ、現在。

時雨「夜間出撃前に食事を採る事が出来る様に

   食堂が24時間営業ってのは改めて凄いと思う。」

雪風「ここが出来た当初は営業時間が限られていたのですが

   優秀な調理士さんをお迎えできたので24時間営業が可能になったんです!」

スパ「実際かなりの腕前ですよね。」

「おまちどおさまー。ゆっくりしていってね!」



ウォースパイトが注文していたのはカツ丼である。



スパ「いただきます。」



器用に箸をとりどんぶりの蓋を開け、

上がる蒸気のふわりとした鼻腔をくすぐる甘い香りを楽しみ、ウォースパイトはカツを一切れ。

そう、ふわりととじられた卵からカツを取りだし、ゆっくりと。

口へ、運んだ。



ザクリ。 ジュワァッ。



下ごしらえがしっかりとされた豚肉のロースにはあえて脂身が多く残されている。

そして、サックリとした食感を残す為に衣は厚めで煮込む時間は短め。

カツ丼のメイン食材のカツはフランス料理のコートレットが起源と言われている。

そのカツは脂身の脂が溶け出すギリギリのタイミングで油からあげるのが肝なのだ。

その揚げられた豚肉に付いた脂身からは

甘みが溶け出し衣に少しだけ湿り気を与え、その味の良さと来たら……。

231 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/19(土) 00:44:13.78 ID:7jmJC1/U0


スパ「絶妙。」



新玉葱をざっくりと切りこちらは適量を丼つゆに入れカツをその玉葱の上に載せる。

そして贅沢に卵を大量にときその上からかけ鍋の蓋を閉じる。

そのふんわりとした食感はオムレツをほうふつとさせ、食道をつるんと通過してゆく。



スパ「あぁ……。」



すでに言葉にならない程の味に震える状態だがカツ丼の良さはこれで終わりではない。

否、カツ丼の味を語るのであればその味の良さは寧ろこれからが本番なのだ。

カツを卵でとじ少しの間、煮てカツへ味をつける、その丼つゆこそが隠れた主役。

丼つゆはこの食堂では鰹節、昆布をベースとしたものを使い、醤油は九州産の甘口。

これらがおりなす絶妙な味のハーモニーは想像に難くないだろう。

その丼つゆが米へと染み、カツから染み出た脂が飯に染み、

丼つゆの効いた卵とカツとあつあつの飯を同時に口へ運べば……。



スパ「うっまぁぁああああ―――――い!」



高貴な出自?やんごとない身分?

そんなものなど糞食らえとばかりに品なくガツガツと音をたて食べるウォースパイト。

胃袋へそれらが落ちしっかりと満たされていく感覚に幸せを覚えつつ。



スパ「お代わり!」



ウォースパイトはお代わりを頼んだ。



提督「実にいい食いっぷりだな。」

提督「料理人も料理人冥利に尽きるだろう。」

スパ「そほふへつへへかへひたひでふ。」モグモグ

提督「この時間帯の料理人はフランス料理が得意でな。

   歴史的にイギリスの貴族はフランス料理人を雇っていたとは聞くから

   舌に馴染みのある味なのかもな。」

スパ「この味はフランス料理がルーツ……。

   成程、懐かしい感じがしたのはその所為ですね。」モグモグ

時雨「本当にお貴族様なんだね。」アキレ

雪風「何でこんな所でカツ丼食べて感動してるんですか。」マッタク



232 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/19(土) 00:45:38.72 ID:7jmJC1/U0


「お代わり持ってきたよー。」

「あれ〜?司令官この時間は珍しいね。って、相変わらず食が細いね。」

提督「あぁ、まぁな。」

「不知火からもしっかり食べろって言われてない?」

提督「あー、あいつには黙っててくれ。」

「分かった。この寸胴の決裁通してくれたらね。」

提督「まったく、お前は調理器具コレクターだな。」

「料理が私に残された最後の戦場だからね。」

「ここから皆を支えるのさね。」

提督「確かに食は重要だな。」

提督「これからも頼む。」

「提督もさ、たまにはフランス料理のコース食べに来てよ。」

「ジョエル・ロブションの弟子の弟子、つまり孫弟子が美味しい料理つくるからさ。」

提督「そのうちな。」



提督は料理人の熱いお誘いをにこやかにかわし食堂を去っていった。



「雪風、司令官は相変わらず?」

雪風「いいえ、最近は以前より少しだけ楽しそうです。」

「ふーん、そっか、それならいい感じなのかな。」

雪風「はい!」

雪風「では、雪風はそろそろ失礼しますね。」

「そう?じゃ、これ注文の二人分のカツサンド。」

「食べる前に艤装の排気煙突から少し離れた所において置くといい感じに暖められるよ。」

雪風「懐かしいですね。」

雪風「では!」



雪風はそう挨拶し時雨と二人夜の海へと出撃していった。



時雨「雪風はあの料理人と知り合いなの?」

雪風「はい。あの方とは古い知り合いであり戦友だった方ですよ。」

雪風「昔の話ですが。」

時雨「そう…。そっか。」



233 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/19(土) 00:48:02.17 ID:7jmJC1/U0


おまけ超短編!  不知火の改二!



不知火 ぬい!

提督「ん。」

不知火 ドヤァ

提督「ん。」

明石「いや、提督。そこは何か言ってあげましょうよ。」

提督「ん?今までもこれからも俺が頼りにするのには変わらんだろ?」

提督「確かに戦力として改二が実装されたのは喜ばしいが……。」

提督「公試のデーター見る限りうちでの改造艤装以下のスペじゃねぇか。」

明石「いや、まぁそうなんですけどね。」

提督「量産機が試作機に及ばないのは良くあることだ。気にするな。」

不知火 ぬい〜ん

提督「結局の所はがわの流用だな。」

明石「まぁ、中身は以前以上に弄ってますけどね。」

提督「ベースが底上げされた分だけ全体的にスペがあがったという事か。」

明石「そうですね。例えていうなら今まで軽自動車にフェラーリのエンジン積んでたのを

   今度はフェラーリの車体にフェラーリのエンジンを積んだ感じです!」

提督「成程な、スペックを無理なく引き出せるようになったという事か。」

明石「マージンが、がっつり増えたんで色々改造余地もありますよ!」

提督「そうか、逞しく、頼もしくなった訳だな。」

提督「これからも宜しくな。」

不知火 ぬい!

明石「何格好良く話をまとめてるんですか。」

提督「たまには格好つけても良いだろう?」

提督「薄毛のおっさんが格好良くあらんとするなら

   気取った言葉の一つくらいは言えんといかんもんさ。」

明石「難儀ですねぇ。」

提督「そういうものさ。」

提督「不知火。」

不知火「はい!」

提督「改めてだが、これからはよりいっそう頼りにするぞ。頼んだぞ。」

不知火「お任せ下さい。」ヌイ!

明石「よっ!禿げてても男前!」

不知火 ぬい? ギロリ



この後、不知火の新型魚雷発射装置、火器管制、

アサルトライフル式主砲のテストに明石が喜んで付き合わされたのは言うまでも無い事である。



時雨「明石さんが標的艦役やるって珍しいね。」

スパ「アルゼンチンタンゴ踊ってますね。」

雪風「ひぇ……。あの状態の不知火さんに近づいたらいけませんよ。」
234 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/19(土) 00:56:24.44 ID:7jmJC1/U0
以上で本日分の更新終了です
皆様、春のミニイベされていますでしょうか?
1は現在偏りという悪魔に魅入られており 米36 梅干3 海苔2 お茶2 という有様です
S勝利とってこんなに偏るなんて……、米どんだけ出やすく設定してるんだというお話
しかもこれ 米 と他の食材が出るところが被ってしまっている所為で余計に他のが出にくくなっているので辛い
今後の予定ですが後、1つか2つ程やってこのスレを落すような形になるかと思います
こちらで活動を始める前に活動していたSS投稿サイトで更新が止まっているのに
未だにしおりをつけたくださったり、お気に入りに登録してくださっている方がいるので
そっちの方の更新もしなくちゃという感じです、はい、エターナルはやっちゃいけませんです、はい……
ではでは、次回もお付き合いいただけると幸いです
235 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/19(土) 01:30:16.86 ID:or4ML6fA0
おつおつ
新たな道が開けてなにより…
236 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/19(土) 07:01:43.55 ID:z6wpXQKYO
生きてた
237 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/19(土) 19:25:42.52 ID:bwX9ROqU0
まあ死なないよね
238 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/20(日) 10:15:50.41 ID:g9q9r3fTO
艤装番号が嘘八百で製造番号がご苦労さんだった。

うーちゃんの轟沈自体偽装工作だったり?
239 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/05/21(月) 22:50:32.05 ID:1gvq7mE60
>>238
しれっと食堂の主やってるみたいだな。
240 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/21(月) 23:58:51.17 ID:cd4B+0uA0
なんだage荒らしか
241 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/23(水) 12:26:13.12 ID:DlY+gEt8O
新スレあったのかよ気づかなかった俺のバカ
乙!!!!
242 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/25(金) 12:08:43.86 ID:6CPUfdoS0
ところで、スパ子はカツ丼食いながらなんて言ってるんだろ。
243 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/25(金) 12:18:15.14 ID:D9ff12A5o
多分「祖国へ連れて帰りたいです」
244 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/29(火) 22:13:56.42 ID:9fFsrfIG0
俺も持ち帰りたい
245 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/02(土) 00:08:52.83 ID:PHQWvqIW0
皆様、こんばんは、更新に参りました
春イベの進捗状況は如何でしょうか?
2-4で福江を掘り当てバケツと資源で殴るハイペースで任務を片付けたので
後はカタパルト1枚分確保すれば1は終了です、現在のんびりモード中
変態仮面のSSで次回のおぱんつ様の安価?を頂いておりましたので
雪風、川内、くまのん、陸奥の順番でやっていけたらなぁと思っています(利根は履いていないから無理なのだ!)
ただ、筆が遅いのでそっちはこちらの気分転換で書く様になるので多分、間が空くかなぁと……
では、前書きが長くなりましたが本日もお時間宜しければお付き合いの程宜しくお願いいたします
246 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/02(土) 00:09:37.22 ID:PHQWvqIW0


第十話 天国への扉 前編


247 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/02(土) 00:10:16.11 ID:PHQWvqIW0


彼女は誰にも理解をして貰えず。

彼女は誰にも助けて貰えなかった。

それでも彼女は戦い続けた。

傷つき。

油も、弾もつき、その最期の時が来るまで。

いつか自分を理解してくれる。

仲間が現れるその時を夢見て。


248 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/02(土) 00:11:24.97 ID:PHQWvqIW0


88鎮守府 食堂



雪風「しれぇ、胡椒をとっていただいていいですか?」

提督「ん。これか?」

雪風「ありがとうございます!」

提督「雪風はよく食べるな。」

雪風「体が資本ですから!」

提督「そうか。すまんがこれも食べて貰えるか。俺には量が多くてな。」

雪風「餃子が10個。まったく箸をつけられていないようですが。」

提督「流石に食べさしを食ってくれと言って差し出すほどあれじゃない。」

雪風「雪風は食べさしでもかまいませんが。しれぇは食が細くないですか?」

提督「俺は事務屋だからな、それほど腹がへらないのさ。」

雪風「ではいただきます。」



提督が雪風と一緒のテーブルを離れた所にウォースパイトが食事を載せたトレー片手に現れる。


249 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/02(土) 00:12:05.53 ID:PHQWvqIW0


スパ「雪姉さん、一緒いいですか?」

雪風「どうぞどうぞ。」

スパ「今いたのはAdmiral?」

雪風「しれぇですね。」

スパ「先日もでしたけど士官も私達と一緒の食堂で食べるんですね。」

雪風「しれぇは一人で食事をするのは好きじゃないという事でここを利用されています。」

雪風「それに一人だけ特別メニュー等を食べるのも嫌われる方ですから。」

スパ「軍隊で士官が兵卒と同じ所で同じ食事を取るって珍しい。」

雪風「それも含めてここですよ。」

雪風「個性的な食事を食べたいのでしたら明石さんの所に行くといいですよ。」


250 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/02(土) 00:13:31.97 ID:PHQWvqIW0


明石の工廠

秋津洲「明石さん、最近お肉ばっかりでバランス悪いかも。」

明石「お肉は大事ですよ!?いいですか?

   お肉はタンパク質です。体を作るのに欠かせない栄養源ですよ?」

明石「米軍の特売を買ったら肉しか入ってなかったんですよ。我慢してください。」

秋津洲「提督にお願いして果物貰ってこようかなぁ……。毎食ステーキは辛いなぁ。」ベソベソ

明石「あんまり提督に迷惑かけちゃだめですよ。

   私達の経歴を誤魔化すのにも色々骨折って貰ったんですから。」

明石「私の元旦那が提督の恩師だった縁もあってここにおいて貰っているのですから。」

秋津洲「そうだったかも。でも、果物は欲しいかも。」

提督「だろうと思って持ってきたぞ。野菜と果物だ。」

明石「あっ、提督。」

提督「すまんな。南太平洋の悲劇の生き証人は

   全員最前線の弾除けに配置換えされていたからな。」

提督「海軍の大失態で証人が生きていちゃまずい訳だ。死んだ奴だけがいい奴だってな。」

提督「可能な限り師匠の部下だった連中は退役させて伝手を頼って逃げさせたが…。」

秋津洲「他の鎮守府の娘達は水底に還っていったかも。」


251 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/02(土) 00:14:58.19 ID:PHQWvqIW0

明石「私らは一番の危険人物ですからね。」

明石「何が起きて何が原因で負けたか。

   うちの旦那が懇切丁寧に私達に解説して逝きましたからね。」

提督「師匠の手紙を持って来た時に何が起きたかは悟ったがな。」

提督「流石の師匠だよ。

   死んだ後の事まで見越して大まかな敵の動きを予測して対処のやり方を細かく指示。」

提督「手紙の末尾にお前なら適当にやっても勝てるだろ、だからな。」

明石「あの人らしい。」

提督「あげくに艤装管理の穴をついて死者を生者に生者を死者にする手品を教えたりと。」

明石「昔から壁の上を歩いて落ちなければセーフと言っていましたから。」

提督「道徳、倫理観は横においておくとして、

   取り締まる法律が無ければ法律違反ではないという奴だな。」

明石「ここに送られてきた中で何人かそれで外に出していますよね。」

提督 ………。

提督「なぁ、明石。お前は最近の敵の動きどうみる?」

明石「どう、ですか……。」

明石「海軍の上の方に敵に通じている奴が居ませんか?」

提督「やはりそういう感想になるか。」

明石「それか、敵に知恵の回る参謀職の個体が複数生まれたか。」

明石「敵の作戦行動の質が上がってきている雰囲気はありますね。」

明石「よく言う『 他人の嫌がる事は率先してやりましょう 』を理解して動いています。」

提督「こっちは提督になる連中の質の低下は激しいってのに……。」ヤレヤレ

明石「珍しいですね提督がぼやきをいれるなんて。」

提督「いれたくもなるさ。海軍参謀……、

   軍令部の不始末を現場が必死こいて尻拭いしてるんだからな。」

252 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/02(土) 00:16:45.07 ID:PHQWvqIW0

提督「艦娘にしても初期から居る

  『 二つ名持ち(ネームド) 』の殆どが水底だからな。」

提督「精鋭が簡単に死んでいく戦場なんざ悪夢以外の何物でもない。」

秋津洲「そもそもネームド制度が時代の徒花かも。」

提督「まぁな。今は無くなってしまったが

   ネームドとして二つ名を登録する事が

   艦娘の目標みたいな時期はあったくらいだがな。」

提督「大量の個人戦果と幾つかの叙勲、

   そして所属鎮守府の提督からの推薦で登録なんていう

   華々しい経歴持ちでもないと申請が出来なかった制度だ。」

提督「その実、ネームドなんて危険な前線に回されて使い潰されるのが関の山で

   給料が増える訳でもなければおまけとして個別認識マークが許されたくらい。」

提督「艦娘側にまったくメリットのない制度だったな。」

提督「更に言えば一緒に出撃した他の娘から戦果を期待され無駄なプレッシャーに押し潰される者もいたらしい。」

明石「まぁ、国威発揚目的で導入した制度ですからね。

   聞こえは良いけどその実は地獄行き特急のグリーン席に座れます程度の実しかなかった糞制度。」

明石「秋津洲さんが登録した年が最後でしたっけ?」

秋津洲「かも!前の提督さんが付けてくれたかも!」

253 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/02(土) 00:18:29.28 ID:PHQWvqIW0


提督「師匠はそういうの好きだったからなぁ。

   部下の功績をきちんと評価してどうおだててれば

   気持ちよく働いてくれるかを知っている方だったよ。」

提督「時代が英雄とか英傑ってもんを必要としていたのさ……。」

明石「時代ですかね。」

秋津洲「ネームド制度が終了した事を差し引いてもここは結構異常かも。」

提督「まぁな。ネームドとして登録しているのが秋津洲いれて4人。」

提督「更に言えば4名全員公式での複数名持ちだからな、

   頭の螺子が捻じ切れているとかでもない限り

   複数名が付けられるなんて事はめったにない。」

提督「艦娘同士の渾名での二つ名ではなく公式での二つ名持ちは今や絶滅危惧種だ。」

秋津洲「もっと褒めていいかもよ!?」ドヤァ

提督「たればこそ、上の胡乱げな動きへの備えになるのさ。」

提督「ある訳が無いという事が無い訳が無いという事だ。」

秋津洲「禅問答かも?」

提督「全ての可能性を捨てるなという事だ。」

提督「いつだって最悪の結果というのはそこにある。

   俺がその結果を踏まないのは運がいいだけさ。」

254 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/02(土) 00:19:32.70 ID:PHQWvqIW0


明石「それはそうと頼まれていたのを提督が来てくれたのでついでで渡しておきますね。」

明石「知り合いから引っ張ってきたロイズの戦争保険のアンダーライターの名簿です。」

バサリ

明石「きな臭い匂いだらけですよ。でも、どうしてこれが必要に?」

提督「今更だがウォースパイトがここに来た話がちょいと引っかかったんでな。」

提督「吹き飛ばした島がな。」

明石「金融のエアポケット。租税回避地で名高いバージン諸島の島でしたっけ?」

提督「後、付け足すならマネーロンダリングに会社の登記誤魔化しの温床でもある。」

提督「そんでイギリス領でありながらドルが公的通貨として採用されている。」

提督「なんでな、ユダ公に恨みでもあったかと思ったんだがな。」

提督「金融関係者かと思ってウォースパイトの出自を調べたんだが。」

提督「どうにも出自が上位過ぎるんだ。それも、アホみたいにな。」

255 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/02(土) 00:21:36.27 ID:PHQWvqIW0


明石「どの位上の方だったんですか?」

提督「スチュアート家の血を引いた嫡出子、更に言えば直系だ。」

明石「まじもんのやべぇ奴じゃないですか………。」

提督「案外国内で命を狙われていて亡命目的のカモフラージュかもしれんぞ。」

明石「そんなので地獄の一丁目に送り込みますかね?」

提督「憶測だ。冗談とでも思ってくれ。」

提督「でだ、まぁ、本題なんだが。取り寄せた理由についてだが。」

明石「はい。」

提督「深海棲艦が出てから船舶、海上保険なんてもんは機能しなくなっただろ?」

明石「ですね。船を出した端から撃沈じゃぁ、保険そのものが引き受けできませんからね。」

提督「だが、物流において船程一度に大量に運べるものはないから

   艦娘システムが出来てからこの方、色々な国、

   企業といった団体が艦娘による船の護衛に飛びついた。」

提督「日本政府にしても艦娘制度の維持には莫大な金が掛かるからな。」

明石「日本単独ですと国家予算における割合が半端ないですからね。」

提督「そうだ、金融屋ってのはどんな物でも金に出来る頭があるから金融屋なんだ。」

提督「昔のサブプライムローン問題も本来は借金出来ない連中がした借金を

   優良顧客の借金と合わせて証券化して一見まともな債権金融商品に見せかけた。」

提督「優良顧客の債権はだいたいが格付けとして上位だったから

   抱き合わせの債権も当然のように格付けが良かった。」

明石「で、みんな買っていざ借金が返せない人達が続発してくると

   債権の価値は一気に下がって紙くずへ、でしたっけ。」

秋津洲「始めに売り逃げた人だけが得したかも。」

提督「そういう事。話を戻すと保険も金融債権の一種な訳でな。」

256 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/02(土) 00:23:30.95 ID:PHQWvqIW0


明石「話が見えてきましたよ。

   艦娘が護衛する航路を決める権限のある連中が

   保険証券で金儲けをしているという事ですか。」

提督「どこを受け持つか、そして、どの艦種の艦娘が護衛に付くかで保険料率は大きく変わる。

   保険を受ける時の掛け金が大幅にだ。」

提督「ロイズのアンダーライターにそれを決める位置に居る奴がいたりすると……。」

明石「勝ち馬が分かった競馬ですね。

   しかも気に入らない相手には駄馬に糞騎手をあてがう事が出来る。」

提督「その通りだ。ロイズはあくまで保険の取引の場を提供しているだけに過ぎないから

   そこを通過する保険の内容については引受人であるアンダーライターと

   保険の加入者の問題でしかないからな。」

提督「だからウォースパイトを利用してその辺りを強化しようとしたらそのあてが外れ、

   儲けの仕組みを知ったウーォスパイトがここに逃げて来たのかなと思ったんだよ。」

明石「もしくは護衛を自由に引き受けるここを利用している同業への探り目的のスパイですか?」

提督「何が信用できて何が信用できないかなんてのは分からんからな。」

提督「探照灯が明るかろうが人生の先の闇は見通せんからな。」

明石「分かる頃には死人がどれだけ出る事やら。」

秋津洲「命のバーゲンセールかも……。」

明石「にしてもユダ公って。昔からシティもウォールも雲の上はそうですけど。」フフ

提督「皮肉が効いてんだろ。裏切り者だけにな。まぁ、気にするな。」

257 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/02(土) 00:24:55.64 ID:PHQWvqIW0


秋津洲「これも万が一の備えかも?」

提督「外れていてくれるとありがたいんだがなぁ。」

提督「それにぱっと見ただけで分かるような事するほど敵さんも馬鹿じゃないとは思うがね。」

提督「保険だよ。」

明石「保険屋相手に保険ですか。気の利いた冗談ですね。」

提督「見えてるだけじゃないからな。

   金融屋ってのは戦争を飯の種にする連中の中で一番性質が悪い。」

明石「お金の出し手は一番強いですからね。」

提督「実弾の前に跪かない人間は珍しいからな。」

秋津洲「時雨ちゃんの件に繋がっているかも?」

提督「お前は時にするどいな。」

提督「だが、分からんとしか言いようが無い。

   実際、上の連中はどっかで繋がりはあるだろうし、

   繋がりの無い奴を探す方が難しいだろうよ。」

提督「用心に越した事は無いがな。

   連中の手は長い、絡め手は意外とそこら辺りにまで伸びてるかもしれんぞ?」ニヤリ

明石「実際分からないってのは薄ら寒いものがありますね。」

提督「見えているものにしか対処出来ないからな。」

提督「やらざるを得ない状態にされるってのは好きじゃない。」

提督「だが、そうせざるを得ないのが今の状況だ。」

提督「実際、この戦争の落し所を探る動きが上層部にある感じがする。」

提督「ただ、平和にしても勝ち取って得た平和と与えられた平和の2種類があるからな。」

提督「どっちを望んでいるのかが分からん。」

258 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/02(土) 00:25:59.59 ID:PHQWvqIW0


秋津洲「2種類の平和?」

提督「難しかったな。忘れてくれ。俺の立場で口にしていいものじゃない。」

明石「国の先行きを考えるとどちらが正解かって所ですね。」

提督「誇りで飯は食えんが誇りがないと国は保てん。」

提督「……と、飯時の茶のみ話にしちゃぁ、ちょいと内容が重かったな。」

明石「いいですよ。不知火さん相手じゃ出来ない話もあるでしょ。」

明石「私も心得ていますよ。」

提督「すまんな。また何かあったら頼む。」

明石「お話1時間1万円なら。」

提督「キャバクラ並だなとも思ったが……、器量じゃキャバクラが負けるか。」

秋津洲 エヘヘ

提督「じゃぁ、まぁ、その時は頼むよ。」

秋津洲「お待ちしているかも!」



提督を見送る二人。



明石「本当に支払う気ですかね?」

秋津洲「お金とるようだと私、明石さんの事を本当に見下げ果てた奴だと思うかも。」

明石「挨拶みたいなもんですよ。」

明石「もうかりまっか?ぼちぼちでんな。みたいなね。」

秋津洲「かも。」

明石「元旦那より先に提督に会ってたらと思うときはありますけどねー。」

秋津洲「提督の想い人には勝てないかも。」

明石「流石に相手がこの世にいないんじゃ勝負が成り立たないですからね…。」

259 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/02(土) 00:26:48.50 ID:PHQWvqIW0


執務室

不知火「司令。艦隊司令部より辞令が届いています。」

提督「ん?辞令?」



厳封され封筒の口には古式ゆかしい封蝋。



提督「めんどくさそうな予感しかないなぁ。」



ペーパーナイフを隙間にあて封を開ける。



不知火「中身はなんでしょうか?」

提督「俺を少将に格上げだとさ。」

不知火「おめでとうございます。」

提督「そんなにめでたいもんでもないさ。」

不知火「ぬい?」

提督「階級があがればそれだけ面倒が増えるって事だ。」

260 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/02(土) 00:27:37.43 ID:PHQWvqIW0


提督「しかも、俺を上に上げた推薦人。まぁ、これを見てくれ。」

不知火「三元帥のうちの深海融和派と中立派のお二人ですね。」

提督「元帥方が三人でそれぞれ意見対立をして一方に傾かないようにして均衡を保ってる。」

提督「そんななかで荒くればっかり集めた一見、強固派に見えるここの指揮官をだ。」

不知火「まったく別の派閥の長が推薦して昇格人事ですか。」

提督「何を企んでいるのか不気味だ。」

提督「流石に辞退はできんよなぁ。将官も大分減ってきているとも聞くし。」

不知火「人材の枯渇ですか。」

提督「そんな所だ。」

不知火「人は育てるのに時間が掛かりますから。」

提督「育つ前に使い潰しているのが今の状況だからな。」

提督「艦娘を提督にするって話も進んでいるらしいし先が見えないのは良くないな。」

不知火「………。」

提督「なんとか俺達の代で終らせたいもんだ。」

不知火「はい。」

提督「年をとると面倒臭がりが増すのと、なにかと涙もろくなるから良くない。」

提督「年はとりたくないなぁ。」

不知火「不知火は今の司令が好きです。」

提督「ありがとうな。」


261 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/02(土) 00:28:19.99 ID:PHQWvqIW0


88鎮守府近海

一人の艦娘が単艦で海上を駆け抜けていた。

彼女が身につける制服はボロボロ。

そして、彼女が彼女足りうる理由の連装砲も1体は小脇に抱えられ。

他の2体も彼女の後ろを付いていくのがやっとの状態。

しかし、彼女は足を止める事無く、何かに取り付かれたように航行を続けていた。

262 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/02(土) 00:28:58.99 ID:PHQWvqIW0



「うちからの救援は出せない。」

「そんな!一番近いのがここなのに!」

「みんなが死んじゃう!」

「うちも助けを出せる程余裕がなくてね。」

「余所をあたってくれ。」


263 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/02(土) 00:29:35.59 ID:PHQWvqIW0


「うちからは助けにいけないなぁ。」

「なにぶんここは要衝なのでね。」

「敵からの攻勢が激しいから救援を出すほどの余裕がないんだよ。」

「本土まで行けば救援を出して貰えるかも知れない。」

「そんな!ここから本土までなんて!」

「燃料と弾薬くらいの補給は分けてあげよう。」

「私のところもなにぶん資材の余裕は少なくてね。」


264 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/02(土) 00:31:51.81 ID:PHQWvqIW0

「本土まで後、どれくらいかなぁ。」

「周りの鎮守府全てに救援を断られるだなんて……。」

「後、何日かかるかなぁ………。」

「でも、急がないと皆が待ってるし。」

ボン!

「あっ。」

「もう、駄目なのかな。」

「ここまで来たのに……。皆、ごめんなさい。」グス

川内「諦めるのはまだ早いよ。」

川内「と言うかどうしたのよ。」



機関が火を噴きついに力尽き前のめりに

沈んでいこうとしていた少女を抱き起こしたのは川内だった。



雪風「随分とボロボロですが何があったのですか?」

時雨「単艦でここら辺を航行している事から

   何かあったんだろうとは思うのだけど。」

長門「グラーフが島風を偵察機で発見したと連絡して来たから急行したが。」

長門「随分と酷い有様だ。」

島風「あっ。」



ぐるりと周囲を見渡せば同じ艦娘仲間達の顔。



島風「お願い!皆を助けて!」

川内「ん?」



そう一言、言うと島風は力尽き気絶した。
265 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/02(土) 00:33:22.97 ID:PHQWvqIW0


88鎮守府埠頭



提督「何拾ってきた。」

雪風「付近を単艦で航行中でギリ中破でした。」



島風の状況を一瞥。

そして、付いてきていた不知火に、物珍しがって見に来た明石の二人に指示。



提督「不知火、所属全艦娘に出撃状態で待機命令を出してくれ。」

提督「その後、横須賀に問い合わせてくれ。」

不知火「何をですか?」

提督「救援依頼を出している鎮守府があるかどうか。」

提督「それと、俺の少将権限の再確認だ。」

提督「本来の意味での提督、1個戦闘団の指揮官としての提督なのかだ。」

提督「明石、所属を洗ってくれ。」

提督「それから治すのに時間はどれくらいかかる?」

明石「治せるかじゃなくて治すのに掛かる時間を聞いてきますか。」

提督「当たり前だろ。」

明石「なるだけ早くやりましょう。所属は直ぐに分かると思います。」ニカ

提督「頼む。」

時雨「提督、何か大事なのかな?」

提督「単艦でそれも、速さといえば艦娘で右に出る者のいない島風が

   こんな状態で彷徨ってるとくれば相場は決まってる。」

提督「所属鎮守府が襲撃にあい包囲網を強行突破。

   更に周辺鎮守府からの応援を望めなかったから本土へ向けて全力航行。」

提督「ここまでは頭がめでたい奴でも想像はつく。」


266 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/02(土) 00:35:02.13 ID:PHQWvqIW0


長門「で、不知火に自身の権限の確認をさせた理由は?」

提督「俺が最近昇進したんでな。将官といえば本来の意味での提督だ。」

提督「司令長官とか呼ばれて、そうだな旧海軍でいえば艦隊指揮を執る立場だ。」

提督「米軍とからな第○艦隊司令官とかの立場だな。」

提督「なんでな、場合によっちゃ現地の部隊再編も可能。後は分かるな?」

長門「成程な。与えられた権限は良く考えて有効に。

   そして上の言質をとった上でか。」

長門「悪党だな。」

提督「前にも言った事があると思うが俺ほど善人はいやしないさ。」

グラ「どうだろうか?」

摩耶「詐欺師は自分の事を詐欺師とは自己紹介しないもんな。」

川内「提督は詐欺師というより博打打ちの方が近いかな。」

川内「ポーカーとかで負け札でも平気でレイズして相手に心理的揺さぶり掛けた挙句。」

時雨「口八丁で相手を騙すのは得意そうだよね。」

雪風「相手にドロップさせる最低の博打打ちです。」

提督「やれやれ、散々な評価だな。」

長門「なに、それだけ皆提督が凄いと褒めているのさ。」

提督「博打ってのは運じゃねぇ。

   モナコのカジノに入店禁止になった、かの名将も言っている。」

提督「高等数学の確立から言って必ず勝てる時が来るから

   それまでひたすら待ち続ける事がカジノで勝つには重要ってな。」

提督「俺が運に頼るのは最後の最後さ。最悪の結果を踏まないように祈る時だけだ。」

長門「そうか。」

提督「そうだ。」

267 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/02(土) 00:43:53.75 ID:PHQWvqIW0
本日の更新はここまでです
今回のお話は今までの話と比べて一番重たくなる感じです(1基準で)
なので明るいSSを書いて気分転換を図りたくもなる訳です、はい
提督の呼称ですがゲーム内の提督は鎮守府責任者の扱いですが本来の意味で行くと将官以上(少将以上)
米軍基準でいくと准将、代将も含める形で艦隊指揮官、第七艦隊とかのあれを指揮する指揮官の事みたいですね
本来の鎮守府であれば提督でも間違いないのですが階級が少佐とか佐官がいるからあれれ?という状況
○○水雷戦隊とかの指揮官は司令官とか司令長官という呼称が正しいようです、ややこしいですね
その辺りは不備が有るかもしれない為詳しい方がいらっしゃいましたら指摘頂けると感謝です
ではでは、次回もお付き合い頂けると大変ありがたく思います
乙レス、感想レス、励みになっております、本当にありがとうございます
268 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/02(土) 01:08:20.69 ID:+x2f0qNA0
おつおつ
色々とどす黒くて笑うべきか呆れるべきかw
269 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/02(土) 07:29:25.39 ID:llkzI4mv0
オツカーレ

そもそもスタートの時点で新米少佐が鎮守府を任される末期状態だものw

秋津洲が可愛くて仕方ないかも!
出番増えて欲しいかも!
270 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/02(土) 09:09:19.12 ID:DJ7zjYtHO
おつ!
毎度読み応えあって良いね
271 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/02(土) 18:44:32.39 ID:9gvFvlMs0
やったぁ、連装砲ちゃんキター!
272 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/12(火) 00:18:41.55 ID:AIWieGRW0
1です、1週間に1回の更新を目指すもあえなく失敗
また、中編を1度の更新で終わらせようと企むも2回に分けるような形に…
計画性ない作者だなという謗りが聞こえてきそう
感想レス、いつもありがとうございます、読み応えがあるとのありがたいお言葉
今後も精進してまいりますので引き続きお読みいただけると感謝
では、本日分の更新をさせていただきます、お時間宜しければお付き合い宜しくお願いいたします
273 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/12(火) 00:19:46.26 ID:AIWieGRW0


第十一話 天国への扉 中編

274 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/12(火) 00:23:44.75 ID:AIWieGRW0

明石の工廠内

提督は簡素な椅子に座り紙巻に火を付けずに咥えていた。



秋津洲「吸わないの?」

提督「ん、なんとなくな。」

提督「火気厳禁じゃなかったか?」

秋津洲「アークにアセチレンやるから今更かも?」

提督「まぁ、屋内の灰皿が無いところでは吸うべきではないだろ。大人のマナーだ。」

提督「連装砲は直ったか?」

秋津洲「うん!直ったよ!」



工作艦としての経験もある秋津洲は手先が器用な為、

明石の艤装修理を手伝う事も多く、明石が島風の様態を見ている間に連装砲の修理を行っていた。



秋津洲「長10cm砲ちゃんの部品と共通が多いから割と助かったかも。」

提督「首から下は部品を共有できる所は共有しないと製造コストが跳ね上がるからな。」

提督「島風型はただでさえ姉妹艦がいない分、部品供給がきつい艦娘だからな。」

秋津洲「そうだね。生産数は確かに少ないかも。」

秋津洲「ほとんどワンオフに近い高価な艤装かも。」

秋津洲「テストベッドの天津風ちゃんとも違う部品が多いし。」

秋津洲「天津風ちゃんは陽炎型だから意外と使いまわせる部品が多いんだよ!」

提督「ほう、結構奇抜な艤装と思っていたがそうでもないんだな。」

秋津洲「実は雪風ちゃんや時津風ちゃんと部品の交換が可能かも。」

提督「艤装は色々知らない事が多いから勉強になるな。」
275 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/12(火) 00:27:26.89 ID:AIWieGRW0


秋津洲「連装砲ちゃんが自立型艤装の走りなのは提督も知っていると思うけど

    自立型は使用者負担が重いから適正のある子は意外と少ないかも。」

提督「? 自立型なら使用者が操作しなくていいから負担は少ないんじゃないのか?」

秋津洲「AI自体が処理してくれるから索敵とか迎撃とかは使用者が指示すれば良い訳なんだけど。」

秋津洲「連装砲ちゃんへの命令を出すのは使用者だから

    常にデーターのやり取りを使用者とする事になるのね。」

提督「あー……、つまり、つねに3人から、

   ねぇねぇ、どうする、どうする?って話しかけられるみたいな物か。」

提督「恐ろしくうざいな。」

秋津洲「長10cm砲はその辺を押さえたんだけど……。」

提督「成程、長10cm砲が単独で水上航行出来ないのは使用者負担軽減の為に機能をオミットしたからか。」

明石「ですね。機能削除しただけで使用者への負担が60%減ですからね。」

提督「おっ、明石、治療は終ったのか。」

明石「えぇ、後は王子のキスを待つだけです。」

提督「洒落た事を。」

明石「島風型の量産性が無いのは艤装の軽量化の為に演算処理を使用者の脳負担に任せている所為ですよ。

   内緒のお話ですけどね。」

明石「連装砲の一番大きいサイズを3つ運用させたら脳負担が大きすぎて被験者が廃人に。」

提督「そんなやばい代物だったのか。」ウヘァ

明石「そんなギリギリのやばい代物だから島風型以外の自立型航行機能付きの艤装は出て無いんですよ。」

明石「負担が増すと脳が沸騰しますからね。」

提督「なかなか酷ぇ代物なんだな。」

明石「艦娘運用初期に出てきて色々模索されていた時期だからこそ黙認された倫理観の欠如って奴です。」

明石「秋月型なんかは自立型ではありますが自力航行はしませんし

   普段使用は腰の艤装と接続して使用者負担の処理をかなり減らしていますから。」

提督「島風の適正持ちが個体能力値が高いのはそういった理由があったからなんだな。」

明石「艤装も今は大分見直しが入っていますし初期の娘達の艤装も

   改二や丁改、乙改等で見直し、機能、性能の向上は進んでいますしね。」

明石「今の技術ならもう少し負担を減らして性能向上はやれますよ。」

提督「時間が経てば積み上げた屍から経験値を重ねられるという事か。」

明石「そうなりますかね。」



提督の言葉にどちらの屍かという事を問わず。

しらけたとも、やるせないともとれる表情で言葉を返す明石。


276 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/12(火) 00:31:12.31 ID:AIWieGRW0


提督「島風の所属は分かったか?」

明石「修理に合わせて色々機関の入れ替えもやりましたからね。」

明石「通常整備ではやらない、

   封印入っている箇所も分解してやりましたので艤装の製造番号から辿れましたよ。」

明石「そしてですね、提督。驚く事無かれ、

   彼女、あのネームドの『 最速 』の島風です。」

提督「あの…、あの、ブルーリボンのか……。」



まさしく絶句。



提督「俺が提督候補生として海軍大学に通っていた頃の憧れみたいな艦娘がねぇ。」

明石「あら、珍しい話ですね。」

提督「大学生の皆で観覧した観艦式の余興でな、ネームド達による模擬戦で一際目を引く強さと速さだった。」

提督「敵の魚雷をその速度で交し、艦載機による急降下爆撃をその身のこなしの軽さで交し。」

提督「俺達提督候補生は皆、一様に駆逐艦島風すげぇって、それこそ少年の様に目をキラキラさせていたもんだ。」

明石「どこの小学生ですか。」

提督「航空主兵論ばっかりの提督の卵には劣勢の中、

   敵の攻撃をものともせずに一矢報いようとする島風が御伽噺の主人公の用に見えただけさ。」

明石「大艦巨砲主義とかいなかったんですか?」

提督「そんな頭のめでたい奴はそもそも入学できねぇよ。」

提督「だいたいそれが前大戦の敗因の一因でもあるだろうが。」

明石「ですよねー。」

提督「日本人は判官贔屓、勧善懲悪。とにかく弱い奴が強い敵を倒すって言うのは大好物だろ。」

提督「提督候補生皆がいつかは自分達もあんな凄い部下を持ちたいものだって夢を語ったものさ。」ホウ



提督の昔話、それも提督になる前の、いや、提督になる志を抱いた者達を虜にした憧れ。

そんな懐かしみを、遠くを見る目で提督はしみじみと語った。


277 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/12(火) 00:33:17.99 ID:AIWieGRW0


時雨「ブルーリボンって何だい?」

提督「何だ、いたのか。」



時雨がいた事に少し照れを感じたのかぶっきらぼうに返す。



時雨「島風の様子を見にね。それで、ブルーリボンって何だい?」

提督「昔の話だ。20世紀初頭にな大西洋航路最速の客船に贈られたブルーリボン賞ってのになぞらえてな。

   海軍の中で速さの記録持ちをそう呼んでいた時期があったのさ。」

提督「トラックやパラオといった南方と本土を物資を積んで行き来する。

   その掛かった日数の少ない艦娘を毎年選んで表彰していたんだ。」

提督「その速さ類まれなる優秀艦、体のいい飛脚便みたいな扱いだったがな。」

提督「艦娘が積める物資なんざ、たかがしれているしな。」

時雨「それは、その…。」

提督「察しの通りだ。激戦地で独楽鼠の様に休み無く働かせたんだよ。」

提督「島風って艦娘になる奴はどいつもこいつも気のいい奴らでなぁ。」

提督「自分が利用されているってのが分かっていても動くけなげな奴よ。」

提督「俺が提督になって直ぐに持った鎮守府でパシリ扱いしていた戦艦連中をどつきまわした事もあったなぁ。」

時雨「提督、意外と苛烈な一面もあったんだね。」

提督「最初に持った鎮守府は他人の異動により空いた所に就いた形だったからな。」

提督「戦力は整っていたが艦種によるヒエラルキーがあったんだ。」

提督「ついたその日に目の前で駆逐艦に銀蝿を強用する連中をみたりと最悪だったな。」

提督「んで、意識改革して艦娘の戦艦と空母連中を半分くらい他所と入れ替えたりとかな。」

提督「とにかく派閥解体工作よ。そして、駆逐艦の地位向上の為にまぁ、色々だ。」ニヤリ

時雨「あっ、悪党の顔だ。」

提督「初期艦にして秘書艦の叢雲が新任新米の俺には過ぎた出来た奴でな。」

提督「その後も幾つか鎮守府を渡り歩く事になるんだが随分助けてもらったもんさ。」



昔を懐かしむ滅多に見せない提督の顔に意外と人らしい所もあったんだなと思う時雨。

はたと気付く事もあったがそれは今、聞くべき事ではないのだろう。

そして、タイミングよく不知火が提督の下へやって来る。


278 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/12(火) 00:33:52.13 ID:AIWieGRW0


時雨「ブルーリボンって何だい?」

提督「何だ、いたのか。」



時雨がいた事に少し照れを感じたのかぶっきらぼうに返す。



時雨「島風の様子を見にね。それで、ブルーリボンって何だい?」

提督「昔の話だ。20世紀初頭にな大西洋航路最速の客船に贈られたブルーリボン賞ってのになぞらえてな。

   海軍の中で速さの記録持ちをそう呼んでいた時期があったのさ。」

提督「トラックやパラオといった南方と本土を物資を積んで行き来する。

   その掛かった日数の少ない艦娘を毎年選んで表彰していたんだ。」

提督「その速さ類まれなる優秀艦、体のいい飛脚便みたいな扱いだったがな。」

提督「艦娘が積める物資なんざ、たかがしれているしな。」

時雨「それは、その…。」

提督「察しの通りだ。激戦地で独楽鼠の様に休み無く働かせたんだよ。」

提督「島風って艦娘になる奴はどいつもこいつも気のいい奴らでなぁ。」

提督「自分が利用されているってのが分かっていても動くけなげな奴よ。」

提督「俺が提督になって直ぐに持った鎮守府でパシリ扱いしていた戦艦連中をどつきまわした事もあったなぁ。」

時雨「提督、意外と苛烈な一面もあったんだね。」

提督「最初に持った鎮守府は他人の異動により空いた所に就いた形だったからな。」

提督「戦力は整っていたが艦種によるヒエラルキーがあったんだ。」

提督「ついたその日に目の前で駆逐艦に銀蝿を強用する連中をみたりと最悪だったな。」

提督「んで、意識改革して艦娘の戦艦と空母連中を半分くらい他所と入れ替えたりとかな。」

提督「とにかく派閥解体工作よ。そして、駆逐艦の地位向上の為にまぁ、色々だ。」ニヤリ

時雨「あっ、悪党の顔だ。」

提督「初期艦にして秘書艦の叢雲が新任新米の俺には過ぎた出来た奴でな。」

提督「その後も幾つか鎮守府を渡り歩く事になるんだが随分助けてもらったもんさ。」



昔を懐かしむ滅多に見せない提督の顔に意外と人らしい所もあったんだなと思う時雨。

はたと気付く事もあったがそれは今、聞くべき事ではないのだろう。

そして、タイミングよく不知火が提督の下へやって来る。


279 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/12(火) 00:35:31.41 ID:AIWieGRW0
あっ、ダッブってしまった……
>>278は無しでお願いいたします、申訳けありません
280 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/12(火) 00:37:24.92 ID:AIWieGRW0


不知火「司令。仰せつかった件。調べて参りました。」



不知火は一気呵成に報告を始める。

それは、先程までの会話を聞いていてその先に続いたかもしれない言葉を遮るためかのように。



不知火「艦隊司令部では意味がないと思い軍令部へ直接連絡を取りました。」

不知火「権限の確認の為、人事局責任者へ話を通し人事参謀長へ確認。」

不知火「人事における将官の権限ですが現地部隊の再編の人事権も

    緊急時に於いて認めると言質を引き出しました。」

提督「ほう。あまり時間が経っていない割りによくそこまで連絡を取れたな。」

提督「人事参謀長の言質について録音は?」

不知火「抜かりなく。」

提督「救援依頼を出している鎮守府については?」

不知火「現状としては無い事を確認しています。」

提督「もし、それを受けていながら報告をせずに握りつぶしている鎮守府があったとしたら?」

不知火「海軍省法務局に問い合わせ、万一その様な事態があったと証明されるのであれば

    利敵行為として軍法会議への出頭を命じる可能性も有り得ると確認済みです。」

不知火「当然ですがこれも担当者とのやり取りは録音済みです。」

提督「俺が次に何を考えているか分かるな?」

不知火「先日、陥落させ現在米軍が管理している基地に連絡をとり

    観戦武官の参加と引き換えに揚陸指揮艦のレンタル交渉を行っています。」

不知火「あちらからは二つ返事で了承を頂いています。補給艦も手配済みです。」

不知火「また潜水艦の娘達にも作戦の発令に向け待機させています。」

提督「パーフェクトだ、不知火。」ニチャァ

不知火「感謝の極み。」



正しく不敵。

そう表現するのがぴったりな笑顔を見せ提督は明石の方へ向き直る。


281 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/12(火) 00:38:28.52 ID:AIWieGRW0


提督「明石、何機用意出来る?」

明石「何機御所望で?」

提督「予算の範囲内でだ。」ニタリ

明石「標準でいいですか?」

提督「あぁ、今回は数重視だ。」

提督「不知火。今年の予算割り当ての残額だが。」

不知火「こちらに。」



ここに回される任務だけでは緊急時、それこそ突発的な事態に対応出来ない事もある。

そんな時の為に毎年幾らかの予算が組まれていて提督が不知火に訊ねたのはその残り。

言うまでも無いが明石の協力の下、毎年の予算の残りは形を変えプールされていたりする。

戦争とはとかく金が掛かるものなのだ。



提督「全員に払う金はあるか。」フン



不知火の提示した書類に記載された金額を確認。



提督「でだ、明石、島風の所属はどこだ?」

明石「こちらですね。」



明石が女袴の笹ひだ部につけたポケットから海図を取り出し位置を示す。

ふーっと提督が大きな溜息を一つ。


282 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/12(火) 00:40:18.26 ID:AIWieGRW0


提督「明石、お前の事だからここの提督の素性も調べていると思うんだが。」

提督「優秀か?」

明石「並ですかね。」

明石「ただ、周辺から比べれば階級こそ低いものの良。ですね。」



頭に手を当てやれやれと言いたげな提督。



提督「凸部じゃねぇか。まったく。せめてそこそこの階級の奴をあてがえよ上も。」

時雨「凸部?」

提督「あぁ、敵さんへ食い込む形での凸部だ。救援に行くにも相当面倒な事になる。」

提督「敵もそりゃ本腰いれて落としに来る訳だ。」

提督「明石。すまないが島風が目を覚ましたら執務室によこしてくれ。」

提督「ちょいと気軽に助けに行ける場所じゃない。」

提督「きっちり作戦を練らないとこっちがやられちまう。」

不知火「執務室へ戻り必要な物を用意しておきます。」

提督「頼む。」



そして、提督は足早に執務室へ戻ろうとして振り向く。



提督「秋津洲。お前が重要になる。島風が目を覚ましたら来てくれ。」

秋津洲「かも!?」


283 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/12(火) 00:41:44.78 ID:AIWieGRW0


執務室



提督「さぁてと、上の盆暗ぶりに嫌気が差してきたな。」

提督「さらに言えば周辺鎮守府の提督どもを皆、物理的に首を挿げ替えたいくらいだ。」



不知火が用意した海図にマジックで色々と書き込み現状確認を進めていく提督。



提督「ここの重要性を軍令部で理解出来る奴がいないってのは質の低下が激しいのか。」

提督「はたまた襲撃されている事を知らないから暢気に構えているのか。」

提督「どちらなのかねぇ。」

グラ「Admiral、入るぞ。」

提督「ん?どうした?」

グラ「あぁ、明石から頼まれたので島風を連れてきた。」



目を覚ました島風を連れて執務室に来たのはグラーフ。



提督「明石は?」

グラ「予想される物資の用意に忙しいんだそうだ。

   だから私が島風の付き添いで来たんだ。」

グラ「各所に追加注文をしなきゃと慌しく動いていたぞ。」

提督「商売人だな。」

グラ「それと秋津洲も一緒だ。」

秋津洲「提督、来たかも!」


284 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/12(火) 00:43:20.26 ID:AIWieGRW0


島風「あの!助けていただきありがとうございました!」

提督「礼にはおよばんよ。」



島風の謝辞に返事を返し、海図を再度見直しフムと考え、一同に向き直る。



提督「グラーフも居てくれた方がいいか。守りの要はグラーフになるだろうしな。」

提督「と、私がこの鎮守府の指揮官である提督だ。」

提督「普通の鎮守府には場所が知らされていない中、

   ここの近くを航行していたのは運が良かったと言える。」

提督「おおよその状況は理解している。詳細を島風の口から話してもらってもいいかな?」

提督「あぁ、そうだ。島風が自分の所の提督に義理立て等があるなら

   俺の呼称は適当に呼んでくれてかまわんよ。」

島風「あの、おじさんがここの提督さんなの?」



妥協の上での提督『 さん 』呼び。

おじさんかと苦笑しつつそうだと答える提督。


285 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/12(火) 00:45:09.05 ID:AIWieGRW0


島風「提督さん、あのね、私の居た所がね。」



そして、島風から、島風が包囲網を抜け出てきた段階での敵勢の確認。



提督「日数的に陥落していてもおかしくないな。」



情報を改めて整理して感想を一言。



島風「そんなぁ……。」

提督「おいおい。俺は救援に向わないとは一言も言ってないぞ?」

提督「最悪敵の手に渡っているかもしれないが落されてすぐなら奪還する。」

グラ「それ程の要衝なのか?」

提督「まぁ、見てくれ。」

グラ「………。」

グラ「これは、攻守の違いがあれど、バルジの戦いみたいな状態だな。」

提督「日本でなら有名所で長篠の戦だな。」

提督「面で構成される敵との防御線にこちら側が敵側に凸る形で食い込んでいる。」

提督「陸の場合でもそう変わりはないんだがこういう風に

   飛び出た部分は敵地へと侵攻していくのに重要な火点に成る場所だ。」

提督「逆に敵からしてみればわざわざ飛び出てくれているから叩きつぶしやすいという一面もある。」

提督「そして、敵にしてみれば放っておくと蟻の一穴になりかねない。」

提督「攻める側にしても守る側にしても確保しておきたい場所だな。」

秋津洲「それで私が呼ばれた理由はなにかも?」

提督「先日の瑞鶴とグラーフの模擬戦覚えているだろ?」

秋津洲「あぁ、明石さんが試していた新システムの奴かも?」

提督「あれの幾つかの問題点を考えられる範囲内での改善をして実戦に投入してみようと思ってな。」


286 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/12(火) 00:46:54.56 ID:AIWieGRW0


提督「それでいくと航空管制でバトルオブブリテンを経験している

   ドイツ娘のグラーフに守りを任せるのが適任だろ?」

グラ「負けた側だがいいのかな?」クックック

提督「なぁに、問題ないさ。紅茶ジャンキーどもが構築したシステムだ。」

提督「科学技術だけなら何処にも負けないドイツ様のお前がやるんだ。」

提督「他の誰よりもあてにしているさ。」

グラ「嬉しい事を言ってくれるなぁAdmiralよ。

   だが、電探等の性能は英国の方が上だ。」

提督「今回の戦争は前の戦争の勝ち組、負け組み皆仲間だ。負けようがない。」

グラ「イタリアも一緒だが?」クックック

提督「………、ポーランドボールネタはやめてくれ。」クックック

グラ「だが、かなりの距離の移動に拠点確保も難しいようだが

   艦載機の補充が追いつくだろうか。」

提督「それは心配しないでくれ。我に秘策有りだ。」

287 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/12(火) 00:48:57.55 ID:AIWieGRW0


提督「不知火。留守番組の選定は任せる。」

提督「これより3時間後にブリーフィングを行う。

   その後、米軍に挨拶して救援へ向うぞ。」

島風「あの!提督さん!救援を待っているみんなの所に知らせに行ってもいい!?」

提督「それは許可出来ない。」



島風からの問いに即答。



島風「どうしてぇ!?」

提督「お前さんが単独で航行していたことから鎮守府通信設備が

   破壊されている等で艦娘が直接乗り込んで知らせるしかないというのは分かっている。」

島風「だから私が!」



島風の必死の訴えを手で制し言葉を続ける提督。



提督「更に敵からしてみれば島風が包囲網から抜けた事で

   何がしかの救援が来る事は予想している筈だ。」

提督「つまり、島風が今から救援が来るよと知らせに帰るのは

   敵が手ぐすね引いて待っている所に自分から突っ込んでいく愚行だ。」

提督「俺たちは戦争をしている。だから犠牲を出さずに勝てるなんて甘っちょろい青二才な考えは持っていない。」

提督「だがな、出す必要性のない犠牲を出す気は毛頭無い。」

提督「救援が出ている事を知らせる為だけの犠牲を出すような真似をするのは無駄の極みだ。」

島風「………。」



切り捨てるような言い方だが提督のいう事は最も。

しかし、理屈では分かっても感情では理解できない事も時としてあるのだ。

今しばらく食い下がるかと思ったがあっさりと引いたのを見てとる提督。


288 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/12(火) 00:49:52.42 ID:AIWieGRW0


提督「不知火。暫く島風を監視しておいてくれ。」

提督「単独で抜け出して救援先に行くような素振りを見せたら力尽くでとめろ。」

不知火「了解しました。」



とぼとぼと執務室を出て行く島風の後姿を見送り不知火に指示。



提督(止められるだろうか…。)



艦娘としての最古参、そして最速の名を頂く駆逐艦。

手負いなれば止められるかもだが明石が修理して万全の状態ともなれば。



提督(止めようとしたという口実作りでもあるが…。)

提督(不知火には損な役回りをさせる。)



そして、提督が執務室にて秋津洲とグラーフとで綿密な打ち合わせを行って丁度3時間後。

いつぞやの敵北海道侵攻作戦を挫いた時の再現のように大会議室には艦娘達が勢ぞろいしていた。


289 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/12(火) 00:51:58.52 ID:AIWieGRW0


提督「今回の救援については敵を徹底的に叩く事が主目的だ。

   そこはいつもと変わりがない。」

提督「ただ、敵の指揮官については今までと毛色が違う事が予想される。」

川内「どーしてー?」

提督「今までどおりにお馬鹿さんな相手なら

   自陣地に凸った地点なんか放置していただろうからさ。」

提督「現に今回の救援対象の鎮守府は設立されて結構な年数経っている。」

提督「俺が敵の指揮官なら鎮守府施設なんか作られる前に潰しているよ。」

長門「今回の作戦にはゴーヤ達も参加するのか?」

提督「俺の学生時代に潜水艦娘を上手く指揮して演習で痛い目合わせてくれた同期が居てな。」

提督「そいつから面白い手品の種を聞いているんだ。」

提督「敵のほうが数は多い。当然ながら潜水艦連中もいるだろうよ。」

提督「ならこっちも使って遊んだところでばちは当たらんだろ?」

長門「米軍から海底データを貰うつもりか。」

提督「あぁ、目的地周辺はあちらの方が詳しいだろうからな。」



提督と部下達の軽い冗談のようでお互い手の内を知っている者同士の応酬。

それが終われば留守番の者達も含めて全員に作戦内容の連絡。



時雨「それで、提督。勝てるのかな?」

提督「勝てるのかな?じゃない。勝つだ。」

提督「勝算の無い作戦など立てんよ。」

摩耶「提督ぅ〜、えらい自信が有るみたいだけど大丈夫かよ〜。」

提督「当たり前だ。いいか?物語ってのは主人公が勝つように出来てんだよ。」

提督「人外の良く分からん生物対人間とくれば

   古今東西、人間様の勝ちって相場が決まってんだ。」

提督「それなら人間側の俺達の勝ちだろが。」

摩耶「ひでぇ根拠だな。」

雪風「ですが、何故か説得力があります。」

グラ「まぁ、我々はやるべき事をやる。それは今までとなんら変わらんさ。」



こうしてブリーフィグを済ませた一同は米軍基地へと移動を始めたのである。



290 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/12(火) 01:02:19.00 ID:AIWieGRW0
本日の更新は此処までです
残りは近日中に更新を予定しております、お待ちいただけると幸いです
そして中編の山場は後半、次回更新の方……、計画性無くてすみません
連投が途中あり御迷惑をお掛けしました、今後の予定としてはこの島風の話が終われば
スレを落そうかどうか思案している所です、燃え系のSSって増えないですね……、なんでだろう……
スレの始めの方で触れましたが砂の薔薇的な番外のような本編の様なのもプロット書きが終了して
少しずつ書き溜めをしている所なのでどこかのタイミングで上げれればなぁとは思っています
最近SSまとめ速報なる存在を知り、このSSも纏められコメントがついて居る事に驚きました
SSまとめ速報でコメントを下さっている読者の皆様、コメントありがとうございます
後、もし宜しければ本スレの此方も覗いてこちらにレスいただけるとありがたいです(←レス乞食)
長々と長文での挨拶失礼いたしました、感想レス、応援レス、いつもありがたく拝読しています
次回以降の更新も宜しければお付き合いいただけると感謝です
291 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/12(火) 01:06:14.67 ID:MpivStNto
初期艦叢雲で沈没済み……いや、違うんだろうけど
292 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/12(火) 01:06:55.22 ID:MpivStNto
っと乙、HKの方も期待してます
293 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/12(火) 06:54:04.24 ID:Q/uTBaQqO
おつ
294 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/12(火) 07:24:48.10 ID:WPmZlLt80

まじで面白いからいつも更新楽しみにしてる
できるだけ長く続けて欲しいなあ
295 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/12(火) 11:45:01.05 ID:0GkYu2uh0
島風鳥居強右衛門説
296 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/12(火) 14:45:58.69 ID:YjPL8qXA0
まだ時雨の謎と不知火登場編見てないんだが
297 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/13(水) 14:36:58.53 ID:xUswDFZdO
オツカーレ

実はまとめからきたんですよね
298 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/13(水) 19:11:59.53 ID:E2AFYQFiO
まとめから来ました。
今まで見てきた艦これのssの中で最高に面白い!
毎回更新楽しみにしてるので、最後まで書ききって欲しいです。

299 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/13(水) 23:43:16.61 ID:S8287FqX0
おつ
300 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/14(木) 03:56:49.47 ID:Pj3sFZoho
まとめサイトとかいうクソみたいな悪習もSS作者からしてみればいい宣伝の場にもなるのよなぁ
不愉快な思いをするのが元々いる住人だけってのがせめてもの救いか
301 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/14(木) 10:33:23.43 ID:eD/fmY0JO
個人的にはお間抜け熊さんのガンちゃんのその後が見たくある
302 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/15(金) 00:29:50.58 ID:IyUJskK70
黒潮改二!先日の春のミニイベでカタパルト3枚とったから設計図使って
五航戦二番艦を一気に改二にしたり軽空鈴熊を増やしたから設計図は1枚しかなかったんだ!
伊勢の改造はその内、便利なんだろうけどまぁ、急ぐものでもないかなぁと思っています
陽炎、不知火を先に改二にしてたのでハブる訳にもいきませんしね、可愛い、黒潮病、1は致命傷で済みました

本日の更新をさせていただきます、また、本日の分の更新で中編は終了です
お時間宜しければお付き合いいただけると幸いです
303 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/15(金) 00:34:28.74 ID:IyUJskK70


提督達の一行が米軍基地へ向けての行軍を行う中、

1人の艦娘がこっそりとその列を離れようとしていた。

隊列から少しずつ少しずつ距離を離し、違和感無く外れていった。

そして、行軍の列から外れると彼女は海上を別方向へと航行していく。



島風「もうそろそろ全力航行に移ってもばれないよね。」

島風「えへへ。あれだけ沢山の人達が救援に来てくれるんだから。」

島風「皆、絶対助かるよね。」

島風「皆に知らせてあげないと。」ウキウキ



連装砲達もそれに同意するように頷く。



不知火「お気持ちは分かりますがそれは阻止させていただきます。」

島風「オゥッ!?」



島風の後ろから声を掛けるのは不知火。



不知火「死なない程度に壊すことは司令より許可をいただいています。」

不知火「貴方が救援に向かっている事を知らせる事により

こちらの打つ手が幾つか潰されるのは困ります。」

不知火「また、何より許すまじは司令が貴方の身を案じ知らせる事を許可しなかった

その心を貴方が理解していない事です。」



淡々と、しかしその怒りはまさしく怒髪天を衝く。



不知火「故に、多少の痛みは覚悟していただきます。」



言い終わると同時に動き始める。

艤装のパワーを全力で乗せた手刀による突き。

ひゅうと風を斬る音が手が突き出てきた後に聞こえたのは気のせいか。

304 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/15(金) 00:35:41.29 ID:IyUJskK70


島風「執務室で観察していて猛者揃いの鎮守府だとは感じていたけど。」

島風「避けなかったら確実に殺られていたかも。」タラリ



背筋に冷たいものが流れる。



不知火「挨拶代わりです。司令に憧れを抱かせた艦娘だけありますね。」ギリッ



周囲の空気が震える。

艦娘達の中でも一際頭の螺子が外れた連中が集まるのが陽炎型。

その一人一人が何がしかのエピソードを持ち、

雪風の様に幾つもの大きな海戦を駆け抜け終戦まで生き抜いたような猛者も居る。

その他の姉妹は華々しく、戦場の華として散っていった。

その2番艦不知火。艦名の由来は九州八代海の夜に現れるという蜃気楼。

科学が発達していなかった昔は妖怪の仕業とされていたとか。

その名の由来の如く、不知火は海上の波の上下動を利用し島風の空間認識をずらし始めた。



島風「あれ!?」



連装砲に不知火を撃たせ討ち取ったと思うが、その砲撃は逸れてしまう。



不知火「その様な砲撃は当たりませんよ。」



ぐいと島風の眼前に迫りその顔に拳をみまう不知火。


305 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/15(金) 00:37:09.81 ID:IyUJskK70


島風「へぶぅ!?」



まるで漫画表現の様に宙を舞う島風。

しかし、華麗に着水。



不知火「さぁ、駄々をこねていないで帰りますよ。」



ぐしと唇を切ったらしく垂れる血をふき取る島風。



島風「強いね。」



そして島風もまた纏う雰囲気が変わった。

ここからは、さながら頂上決戦の様相を呈した戦闘が行われていく。

蹴りを繰り出す不知火をいなしその懐に潜り込み拳を繰り出す島風。

更にそれを交し先に繰り出した蹴りの勢いを生かして回し蹴りを繰り出す。



島風「体裁きのレベルが高い。」



感心するように不知火に声を掛ける。



不知火「最古参の艦娘である貴方に褒めて頂けるとは恐悦至極。」



島風が回し蹴りも交し距離をとったのを見て取りインファイトスタイルで構えなおす不知火。



島風「ごめんなさい。私はここで時間をとられる訳には行かないの。」

島風「どうして主砲と魚雷を使わないのか理由は知らないけど。」

島風「武器を使わないで私を止める事なんて出来ないんだから!」

不知火(来る!)



最速の名に恥じない全力の突撃。

その動きを予測し体を逸らし島風の突撃をかわす!

だが…………



不知火「おうふぅ。」



島風の突撃をかわしたと思ったら足に感じる激痛とわき腹に感じる痛み。

島風の陰に隠れての連装砲からの砲撃。

一瞬ふら付いた不知火の体勢を見逃さずに不知火の背中の艤装に手を掛け一気に後ろへ引っ張る。


306 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/15(金) 00:38:36.03 ID:IyUJskK70


島風「えへへ。速き事。島風の如し!だよ!」

不知火「くっ。」



体勢の崩れたところに島風が足をかけ転倒させ排気煙突を海面に水没させる。

ボスボスボス



不知火「機関に海水が入りましたか…。」



機関の燃焼に違和感を感じ若干の出力低下を確認。



不知火「逃げられてしまいましたか。」ハァー…



不知火を始めとする背負い式の艤装は後ろ側に重心がよりやすい為、引っ張られると転倒しやすい。



不知火「背負い式の弱点を突かれましたね…。」



最速の二つ名は伊達ではなく、そして『 島風 』の名を頂く艦娘の系譜。

初代の駆逐艦島風が沈んだ後に2代目駆逐艦島風が島風の名前を付けられた過去の経緯を思い出し。

『 その速き事、島風の如し 』

この言葉がその魂を引き継いだ事を意味していた事を思い出す。



不知火「負けたとは思いませんが、司令にご迷惑をお掛けする事になりそうです。」ゲホッ



痛む脇腹を押さえ足を引き摺りながら島風を行かせてしまった事を報告すべく

不知火は提督達の居る方向へ移動を始めた。


307 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/15(金) 00:42:20.52 ID:IyUJskK70
米軍基地内

(会話は英語で行っていると脳内補完いただけると幸いです。)



提督「アメリカ級揚陸艦なんて豪華な物は出していただかなくて大丈夫ですよ。」

米海軍中将(以下中将)

「いや、是非使ってくれ。

というよりもだ。我が国の実験的部分でのデーターも取りたいのでね。」

提督「国力に余裕のある国は考える事のスケールが大きいですね。」

中将「景気対策は元より軍艦製造の技術継承を考えると

年で1隻は何がしか作らないといけないという呪いだ。」

中将「1隻受注させれば起工から就役まで数年分の仕事が出来る。」

提督「議会が煩くはないのですか?」

中将「議員へ積極的にロビー活動している投資家連中の耳元に、船が沈むぞと耳打ちすれば議会は黙る。」

提督「ははは。」



アメリカという国が本当に恐ろしい理由は食料から石油まで、川上から川下まで。

その気になれば全てを自国内だけで賄う事が可能という点にある。

何せ第二次世界大戦中、多くの国が食料困窮で配給制度などを用いて糊口を凌いでいたのに対し。

アメリカは嗜好品への切符制配給はあったものの他の国と比べれば不足と言うには些少な物。

タイムライフ社の「パールハーバーの衝撃」という写真集には

ガダルカナルでビール片手にステーキを焼く小隊の写真が掲載されていたり

食事にステーキが出なかった事に抗議行動を行う米兵の写真があったりと

記録宣伝用写真というのを割り引いてみても前線へ食料を過不足無く送ることが出来た能力は

同じガダルカナルで戦っていた日本側が飢えに苦しんでいたのを考えると

圧倒的であると言えるだろう。

また、コーヒーや砂糖といった嗜好品が軍用携行食糧に必ず付いていた事も

その国力の豊かさを象徴すると言える。

そして、陸続きでもある南北アメリカ大陸の上へ下へと手を伸ばせば

不足する資源も揃えられると正に無敵。

その有り余る生産力は他国へ輸出する形で余剰分を解消している為、

中将の船が沈むぞという脅しは各種価格を一気に乱高下させる可能性のある脅しなのだ。

提督が乾いた笑いで返すのも無理からぬ事である。

308 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/15(金) 00:43:08.91 ID:IyUJskK70


提督「富める国は更に富み、貧しきはより貧しく、ですかな。」

中将「あぁ、同盟国である日本が艦娘というのを発明してくれて実に助かっているよ。」

中将「艦娘を大量に用意して我が海軍が世界の海に平和を取り戻す。」

提督(典型的なパクスアメリカーナの軍人か。やれやれ。)

中将「君の救援策に同行する観戦武官だが、私の部下の大佐をつかせよう。」

中将「それから我が軍からサラトガとアイオワも出すから好きに使ってくれ。」

提督「宜しいのですか?」

中将「あぁ。私の予感が正しければ我が国が今後考えている艦娘運用を君が行うだろうという気がしてね。」

中将「君がそれに彼女達を組み込んでくれれば今後の運用が楽になるという事だよ。」

中将「まさか拒否はしないよな?」



にこりと笑う笑顔は否やを言わせぬ脅し。



提督「えぇ、喜んで。」


309 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/15(金) 00:44:34.63 ID:IyUJskK70


米軍基地埠頭

明石「こりゃぁまたどえらいの貸してくれましたね。」

貸してくれたアメリカ級揚陸艦に持ってきた色々を積み込み据付、

さらにゴニョゴニョしながら明石が感心する。



提督「さらに艦娘を2名も貸してくれる気前の良さだ。」

明石「ひゃぁー。ありがた過ぎて涙がちょちょぎれますねぇ。」

提督「皮肉が過ぎるなぁ。」マッタク

明石「あからさま過ぎて。」シレッ

提督「まぁな。だが、同盟相手が強くなってくれるなら俺達の負担も減るだろ。」

明石「ですかね。」

秋津洲「提督〜!この船、凄いかも!まるで移動式鎮守府かも!」

提督「なんというかまぁ、凄いよなアメリカさんは。」

もともと12番艦まで建造が決まっていた強襲揚陸艦が深海棲艦の出現により建造が停止されていたのだが、

艦娘の出現により深海棲艦を駆逐していく事に成功。

これに自信をつけたアメリカ海軍は揚陸指揮艦としての機能も持たせた

ワスプ級の次級として建造予定があったアメリカ級の設計を見直し揚陸艦としての広大な格納スペース。

指揮艦としての通信、電探設備、3番艦以降に復活したウェルドック。

これらをそれぞれ入渠ドック、出撃ドックと改造改装し、

開発、建造、解体といった機能を削除、

空いたスペースに艦娘用の資材に燃料、弾薬、食料を積み。

更に居住スペースを追加して簡易式移動海上鎮守府を作ったのだ。



提督「国力がアホほどないと構想は出来ても実現は出来んなこれは。」



ましてや気前良く貸し出すなどという真似は出来る訳が無い。



310 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/15(金) 00:45:54.31 ID:IyUJskK70


秋津洲「つくづくおかしな国と思うかも。」

提督「なー。」アキレ

長門「ましてや動かす人間まで貸してくれるのだからな。」

長門「太っ腹以外のなにものでもないだろ。」

提督「俺としてはブルーリッジ級くらいかと思っていたんだがな。」

長門「運用実績とデーターとりだろ。お互いにWinWinという奴だ。」

提督「ここの総司令中将殿の掌の上感が半端ないな。」

長門「踊るのは得意だろ?」

提督「俺が踊ると腹踊りになっちまわなぁ。」

明石「実際これだけのサイズの艦を動かそうとすると

護衛の艦娘がかなり必要になりますからね。」

秋津洲「大きさが大きさだけに的になりやすいかも!」

提督「最近就役したジョン・C・バトラーの船が居ただろ。」

明石「あぁ、対潜の尖った性能持ちのサムちゃん。」

提督「安価で大量供給可能な目処がたって護衛用駆逐艦娘の当がついたからって事なんだろうさ。」

明石「大量生産大量消費がこの御時勢に可能ってのは流石アメリカですねぇ。」

提督「なー。」



敵じゃなくて味方で良かったそんな感想を抱きつつ明石と艦を見上げていたところに不知火が帰ってきた。


311 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/15(金) 00:47:36.63 ID:IyUJskK70


不知火「司令、申訳ありません。」ケホッ

提督「力尽くで止めろとは言ったが沈めろとは言わなかったからな。」

提督「おおかた兵装の使用をせずに止めようとして返り討ちにあったんだろ?」

提督「明石。手当てをしてやってくれ。秋津洲。瑞鶴、川内、雪風、時雨を呼んできてくれ。」

不知火「司令。」



不知火の頭に手を当て言葉を続ける。



提督「島風の力量を見誤っていた俺の落ち度だ。不知火。良く帰ってきてくれた。」

提督「生きていてくれて良かった。命があれば次に生かせる。次の作戦に備えゆっくり治せ。」



そう優しく声を掛け。提督は強襲揚陸艦へと繋がるタラップを艦内へ向け歩みを進めていった。

ザザァ。

提督達の乗った船より先行して移動している瑞鶴一向。



川内「提督とゆく楽しい遊覧観光の旅が―――……。」

瑞鶴「強行偵察ね……。」



瑞鶴に伝えられた指示は強行偵察。

つまりは島風の救出は無理と提督が判断したという事。



時雨「実際島風が本気で航行した場合は僕らじゃ追いつけないよね。」

雪風「救出は無理なのでしょうか……。」

瑞鶴「島風も分かっていて向っているんだろうから覚悟の上だと思うわ。」

瑞鶴「提督が強行偵察をわざわざ出したのは最期を看取らせる為なんじゃないかな。」

瑞鶴「それとプレゼントも渡して来いって言われているし。」

川内「提督も私達に指示を出す時、相当に渋い顔していたからね。」

川内「本当は死なせたくはないんだと思うよ。」

瑞鶴「さてと、そろそろ偵察機を出す頃合かしら。」



背中の矢筒から彩雲の矢を取り出し提督に渡されたプレゼントを括り付け弓に番え放つ。

ぶんと一際強いエンジン音を轟かせ彩雲は消えていく。



瑞鶴「拡張スロにケーブル挿して。視界の共有してあげるから。」



彩雲の搭乗員妖精の視界を時雨達も見られるようにケーブルで瑞鶴の艤装と接続。



瑞鶴「島風の勇姿。きっちりと見届けてあげようじゃないの。」

雪風「………。」


312 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/15(金) 00:48:30.63 ID:IyUJskK70


救援予定鎮守府近海



提督や瑞鶴の予想通りに島風は捕まっていた。

艦娘同士が使う短距離用無線の通信範囲内に入る前の事である。

捕らえられた後、連装砲達は全て破壊、艤装の通信機能も壊されていた。

島風が突破した事を知っていた深海側は周囲に近づく者達へ厳重な警戒網を敷く。

そこに救援の知らせを持った島風が帰ってきたのだ。

敵が手ぐすね引いて待っている所に帰ってきてしまったのだ。

そして、今、その島風の周囲には姫、鬼級。深海棲艦の指揮官達がずらりと集まる。

戦艦水鬼、戦艦棲姫、重巡棲姫、空母水鬼、空母棲姫。

駆逐棲姫に駆逐古姫。

例えるならG7首脳会談といった様相。


313 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/15(金) 00:50:58.48 ID:IyUJskK70


戦艦水鬼(以下戦鬼)「あなた、最速の島風よねぇ?」



妖艶な雰囲気を漂わせ艦娘の血で紅を引いていると噂されるその唇から底冷えのする声が漏れる。



戦鬼「あなたの事は知っているわぁ…。敵でありながら目を引く強さだったもの。」

戦鬼「それが、使いぱっしりなんてねぇ。」

戦艦棲姫(以下戦姫)「水鬼ともなると何度か拳を交えた事があるのね。」

戦鬼「えぇ。ただ、多くの場合が戦闘能力の高いこの娘を単騎突撃させて攪乱させる。」

戦鬼「なーんて、策も何もあったもんじゃない命を捨てて来いって形が多かったわ。」

駆逐古姫(以下古姫)

  「島風自体は強いのだけどそれを妬ましく思う他の娘達が連携を嫌っていた事が多かったな。」

空母水鬼(以下空鬼)「俊敏な動きで艦載機の爆撃をよく避けられたものよ。」ニッコリ

戦鬼「島風頼みの一点突破型の強攻策を何処の戦場でも採っていたわね。」

戦鬼「それが正解になってしまうほどにあなたは本当に強かった。」



捕らえられ口に猿轡を噛ませられている島風の頬をついと撫でる水鬼。



戦姫「となればそうそうに始末するのかしら?」

重巡「そうだな。見せしめに惨たらしく殺すのがいいんじゃないのか?」

戦水「まぁ、待って頂戴。私は思うのよ。」

空母棲姫(以下空姫)「何をかしら?」

戦鬼「この島風は私達に近いんじゃないかって。」

一同「?」

戦鬼「ねぇ、島風。私は見たことがあるわ。

    貴方が庇って被弾したにも関わらず庇われた相手が

    礼を言うどころか差し出したその手を跳ね除けるのを。」

戦鬼「そんな仲間以下の相手を助ける意味なんてあるのかしら?」

戦鬼「島風が良ければ私達、深海陣営に来ない?歓迎するわよ?」

戦鬼「あなたの強さがあれば姫、ううん。水鬼級の強さを発揮できるわ。」



そして、耳元で囁く。


314 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/15(金) 00:51:51.35 ID:IyUJskK70


戦鬼「あなたの魂は私達深海に近しいと思うの。」

島風「………。」

戦姫「確かに魂の有り様で新たな姫級の誕生を見るのも面白いわね。」

重巡「艦娘のまま我々の姫級として指揮官にか。」

古姫「まぁ、いいんじゃない?実力主義が私達の基本なんだし。」

駆逐棲姫(以下駆逐)「……、それより猿轡外さないと何も喋れないんじゃないかな。」

古姫「あぁ、忘れていたわ。」ゴソゴソ

古姫「これで話せるでしょ?」

戦鬼「ねぇ、島風?どうかしら?私達の仲間にならない?」

戦鬼「一緒にあなたを苦しめてきた連中を沈めていきましょう?」

島風「……、それってそんなに気持ちがいいの?」

重巡(しめた。乗ってきた。)

島風「確かに私は今まで酷い扱いを受けてきた。」



島風の目から光が消え、纏う雰囲気が影を背負う。


315 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/15(金) 00:53:10.13 ID:IyUJskK70


島風「もう、人間を守る為に戦うなんてうんざり。」

戦鬼「いいわ。実にいいわ!そう、強き者はそうあるべきよ?」

島風「手始めに目の前の鎮守府の残党を血祭りにあげたい。」

重巡(こちらに傾いてきているか…。新たな姫の誕生も間近かな?)

重巡(そういえば、地中海での戦いで生まれた同級の重巡棲姫も艦娘由来だったな。)フフン

古姫(強者の艦娘が元の姫。どんな強者に生まれ変わるか。見物ね。)クスクス

戦鬼「それじゃぁ、目の前の連中に絶望を味合わせてあげるなんてどうかしら?」

島風「絶望?」

戦鬼「えぇ、あなたは確か救援を呼びに包囲網を突破して出て行ったのよね?」

戦鬼「今も目の前の拠点に、鎮守府施設が破壊されているにも関わらず

   周辺の森や茂みに隠れて貴方の元仲間は殊勝にも抵抗を続けているの。」

戦鬼「その連中の心を、そう、抵抗を続けている連中の心を折ってしまいましょう。」ンフフ

戦鬼「拘束を解いてあげるから抵抗を続けている連中に貴方が私達の無線で語り掛けるのよ。」

戦鬼「自分は援軍を、救援を呼びに行ったけどどこも応じてくれなかった。援軍は来ないって。」

戦鬼「援軍が来ると、貴方に全てを押し付けてしまっている糞みたいな連中の絶望に沈む顔が見えて来ない?」

駆逐(サディストねぇ。)

島風「その提案、いいね。」

島風「援軍が来ない。皆は死ぬしかないって言えばいい?」

戦鬼「えぇ、それでいいわ。」ンフフ



そして、島風は立つ。

嘗て、味方だった艦娘達へ援軍は来ないと伝える為。

316 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/15(金) 00:54:38.44 ID:IyUJskK70


戦鬼「周波数は何かしら?」

島風「自分でやる。無線機ごと貸して。」



周波数を聞いてくる戦艦水鬼へ無線機を渡してくれと言う島風。



島風「絶望を叫ぶ連中の声を聞きたいの。」



その返事に満足し無線機を渡す戦艦水鬼。

ブロロロロロ



戦姫「あら?あれは敵の偵察機かしら?」

重巡「ほう。島風が此方側に寝返ったのを敵へ視覚的に見せるのに丁度いいじゃない。」

古姫「撃ち落すのは止めておいた方がよさそうね。」

戦鬼「操作は分かるかしら?」

島風「何となく。」



機械操作に長けた人が良くやる何となく操作。

説明書は困った時に読めばいいのあれで島風は無線機を操作。

そして、嘗ての仲間達の艤装に積まれている短距離用無線を呼び出すことに成功した。



ブゥン ――――――

ザリッザリッ


317 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/15(金) 00:56:11.06 ID:IyUJskK70


「○×鎮守府の皆!」



島風は呼びかける。



「この声は島風?」

「島風の声だ!」



目の前に広がる森林から歓声こそ上がらないものの

島風が帰ってきたことに沸き立つ雰囲気は伝わってくる。

そして、身を隠しながら沖合いを見やれば敵に囲まれた状態で海上に立つ島風が見えた。



「嘘。」

「島風が捕まってる………。」

「えっ…、じゃぁ、救援は来ないって事?」



広がり始める動揺。



「そんなぁ……。」



救援が来るかもしれないという一筋の希望が見えてからの絶望。



「皆!近隣の××鎮守府からの救援は来ない!」

「△×、□○鎮守府も皆、皆、救援を断ったの。だから近隣からの救援は来ない!」



正に奈落の底へ、絶望に底と言う物があるならその底へ叩き込む。

助かるかもしれないと言う蜘蛛の糸を見せ上り始めた所を鋏でぶった切るかの如き言葉。



戦鬼(あぁ、実に素晴らしいわぁ。)

戦鬼(敵の顔が絶望に歪むのが見えて来そうよ……。)



島風の呼び掛けに恍惚の表情を浮かべ満足そうに笑う戦艦水鬼。



「もう、助けは来ないのか……。」



ぽつりと漏れる悲痛な叫び。



島風「皆、後、もう少し頑張れば楽になるから!」

古姫(死を楽になると言うのであればなんという鬼畜)クスクス

駆逐(その変わり身の素早さは驚嘆に値します。)


318 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/15(金) 00:57:01.68 ID:IyUJskK70





                     「だって………。」




319 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/15(金) 00:58:19.65 ID:IyUJskK70






          「もっと、もぉ――――――っと強い鎮守府の人達が助けに来てくれるもん!」





320 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/15(金) 00:59:47.96 ID:IyUJskK70


ざわりと騒ぎ出したのは深海棲艦達かはたまた立て篭もる艦娘達か。



島風「私達の使っている装備よりずっと洗練された装備を持っている娘達。」

島風「その鎮守府に居た人達は皆、皆、一目見れば強いって確信できる人達だったもん!」

島風「すごいんだよ!全力で避けようとした私の顔に拳を入れる娘が居たんだよ!」

島風「こんな、へなちょこ深海棲艦なんか簡単にやっつけちゃうんだから!」

島風「だから!」

島風「だから皆!希望を捨てないで待っていて!」

島風「救援は今もこっちに向って来ているから!」



一気に言い切った島風から無線機を奪いとる駆逐棲姫。

しかし、島風が追いすがりそれを奪おうとしたため已む無く破壊。



「救援が来る!」

「島風が強いと言うとてつもない精鋭が来る!」



目の前の敵拠点が一気に熱を帯びてくるのが分かる。

島風の言葉は立て篭もり耐えている艦娘達にとってこれ以上ない希望となった。


321 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/15(金) 01:02:08.17 ID:IyUJskK70


戦姫「やってくれたわねぇ。」フフフ

戦姫「いえ、その見上げた根性。天晴れと言うベきね。」



味方と連絡を取る為の無線機を壊され、

必死に考えた結果が演技をし敵の無線を利用する事で味方達に希望を与えるという事。

そこに自分の命の事など一切を考えない高潔さ。

してやられたはずの戦艦棲姫をして天晴れと評価する程の自己犠牲。



戦鬼「でも、困ったわね。私達深海陣営に加わらないのなら死んでもらうしか無いわね。」



そう、深海棲艦陣営に寝返る事が島風生存の為の絶対条件。

先程の無線での援軍が来る連絡は間違いなく反故にする連絡。



重巡「普段なら艦娘の死体なんざ、イ級達のおやつなんだがなぁ。」



ぽりぽりと頭をかきながら語る重巡棲姫。



重巡「肉片を残さず綺麗に吹き飛ばしてやるよ。」

重巡「私はねぇ、あんたみたいに根性が座った奴は嫌いじゃないんだよねぇ。」



なればこそ。



重巡「その死体を下級連中の餌にするのは忍びない。」



方向の捩れた敵への敬意の払い方。だがそれは彼女なりの最大限の賛辞なのだろう。

そして速やかに刑は執行へ移される。



戦鬼「あなたが私達の仲間にならなくて残念だわ。」

戦鬼「これは心からの本音よ。」



戦艦水鬼、戦艦棲姫、重巡棲姫、そして駆逐棲姫に駆逐古姫。

主砲を一斉に向け、更には魚雷を持つものは魚雷発射管を島風へ向け。


322 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/15(金) 01:03:28.16 ID:IyUJskK70


戦姫「最後に言い残す事はあるかしら?」

島風「えへへ。そうだなぁ、あえて言うなら…。」

島風「悔いは無い、かな!」

戦鬼「総員!砲撃始め!」



ドン!



複数の砲声が鳴り響き、複数の魚雷が炸裂。

標的艦への砲撃演習かの如く全弾島風に命中し、島風は文字通り跡形も無く散った。

深海棲艦達の哨戒網ぎりぎりの所で瑞鶴達は偵察機の視界を通してそれを見ていた。



瑞鶴「島風……。」

時雨「……。」

雪風「島風さん……。」

川内「格好よく散っていったね。」

瑞鶴「提督さんから言われたプレゼントを敵に渡したら私達は帰るよ。」

瑞鶴「皆も分かってると思うけど、あいつらをぶっ潰すのは私達なんだから。」



静かに闘志を燃え上がらす瑞鶴に同意する一同。

グオォォォォオン

彩雲に括り付けていた荷物が切り離され戦艦水鬼前に落ちてゆく。


323 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/15(金) 01:07:41.39 ID:IyUJskK70


駆逐「爆撃!?」

戦姫「いえ、落下傘が開いたわ。別の物の様よ。」


静かに着水。

それは軍用ではなく民生品のごくごく有り触れた無線機だった。

ザザッ


「そこに総指揮官はいるか?」



無線機から漏れ聞こえるは年齢を重ねた男の声。



重巡「爆弾の可能性もあるかも?」

古姫「やるつもりならこんな回りくどい遣り方しないわよ。」


呼び掛けに応える戦艦水鬼。


戦鬼「私が総指揮官よ。何か用かしら?デートのお誘いには思えないけど?」

「あぁ、あんたが総指揮官か。名前を聞いてもいいか?」

「俺は今からお前さん達の頬っ面を引っ叩きに行く予定の少将提督だ。」

戦鬼「私の名前は戦艦水鬼よ。

   それにしてもレディの頬を引っ叩くなんて紳士にあるまじき行為じゃないかしら?」

提督「はっはっは。寝ぼけてるんじゃねぇや。お前ら深海棲艦どもがレディなんて名乗ってみろ。」

提督「暁が泣くぞ。」クックック

戦鬼「暁?あぁ、貴方達の駆逐艦にそんな娘が居たわね。

   私達を駆逐艦程度に見ているのかしら?」

戦鬼「随分と下に見られたものね。」

提督「ははは。馬鹿言うな。お前達はそれ以下だ。

   なぜなら俺が率いる部隊が貴様らを海の藻屑に変えるんだからな。」

提督「未来の死体が何をかいわんやだ。口を慎みやがれ。」

戦鬼「女性への口の利き方と言うのをまったく知らない下衆の様ね。」

提督「悔しかったら俺の顔にビンタの一発でも決めてみせるんだな三下。」

戦鬼「分かったわ。女性の扱いを知らない馬鹿に教育をしてあげる必要が有る様ね。」


提督からの安い挑発。


提督「あっはっは。」


戦艦水鬼を完全に馬鹿にした大笑い。


提督「出来るもんならかかって来い。俺は逃げも隠れもしねぇ。」

提督「待ってるぜぇ。」


ブツン

言いたいだけいい提督は無線を切った。


324 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/15(金) 01:08:37.49 ID:IyUJskK70


戦鬼「何て失礼かつ馬鹿げた態度をとった奴なの!」



島風の様に敵でありながら尊崇の念すら抱かせるような敵をいれば。

なんて失礼極まりない。目の前にいれば唾を吐きかけて殴りつけてやるというのに。

提督がとった態度に戦艦水鬼は激怒した。

その憤怒の相は周囲の味方達が提督の挑発に対して激怒した事を忘れさせるほどに気持ちを引かせた。

325 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/15(金) 01:09:35.71 ID:IyUJskK70


強襲揚陸艦内 艦橋



米海軍観戦武官大佐(以下大佐)「随分な挑発をされますね……。」

提督「ははは。大佐。これくらいで引いていちゃ軍を率いていけませんぜ?」



少将という上の階級でありながら友人の様に気さくに話しかける提督。



提督「とりあえず敵を幾らかこっちに吊り上げない事には始らないんですよ。」

提督「まぁ、吊り上げるのに失敗したところで痛くもないですがね。」

提督「あの程度の安い挑発で吊り上げられるくらいなら金を払ってでも吊り上げたいもんですよ。」

大佐「勉強になりますな。」

提督「大佐。気楽に行きましょうや。」


326 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/15(金) 01:10:36.14 ID:IyUJskK70


提督「敵は島風が……、

   恐らく自己犠牲により我々が救援に向っている事を知らせた事に感動しているでしょう。」

提督「逆の立場でも私は感動しますからね。

   感動して、その余韻が残る所に私からの挑発ですよ。」

大佐「あぁ…、感動映画を見た後にスタッフロールでお笑いNGシーンを見せられる様な。」

提督「そうです。感動をぶち壊し。怒らない奴などいない。」

大佐「怒りは通常以上の力を発揮させる可能性がありますが?」

提督「怒りは冷静さを失わせる。戦場で最初に死ぬのは冷静さを失った奴からですよ。」

大佐「相手の心理を手玉に取る為に怒らせますか。」

大佐「少将殿は随分と豪胆な神経をお持ちの様だ。」

提督「とんでもない。私ほど臆病者は海軍の何処を探しても居ませんよ。」

提督「大佐。戦場で長生きするのは臆病者ですぜ?」

大佐「肝に銘じておきましょう。」

327 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/15(金) 01:11:49.49 ID:IyUJskK70


秋津洲「提督!準備出来たよ!瑞鶴さん達もこっちに向ってきているって!」

提督「随分と早いじゃねぇか。」

秋津洲「深海棲艦達をぶちのめすっていきまいているよ。」

提督「……、冷静になれと言ってやれ。出番は俺が作ってやる。」

提督「まだ、ミュージカルの幕は上がってねぇ。」

大佐「ミュージカルですか。」

提督「えぇ、命が燃え尽きるまで舞台の上でそれぞれ与えられた役を演ずる。」

提督「殺す、殺す、殺す、と歌を謳い敵の断末魔がそれを彩る痛快ミュージカル。」

提督「コーラスラインからこっち側で役を演じられたいのでしたら

   無用な口出しは止して頂けると助かりますよ。」ニヤリ

大佐「ははは。少将殿は日本海軍より我々米軍に居た方がいらぬ頸木に捕らわれずに活躍出来そうですね。」

提督「ははは。」



提督と大佐。

艦橋に響く士官達の笑い声は他の乗員達にどの様に聞こえたか。

開戦の幕が上がるのはもう、間もなくである。


328 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/15(金) 01:27:06.91 ID:IyUJskK70

本日の更新は以上で終了です

前回の更新において叢雲が轟沈済み、島風が鳥居強右衛門の役割なのを見抜かれた方、洞察力鋭いと感心しておりました

また、まとめスレからこちらを読んで感想レスを頂きました読者の方、ありがとうございます、多くて驚きです

これからも末永く、どうぞ宜しくお願いいたします

まとめサイト、主にエレ速での自分の作品は長いとか、なろうとか言われ放題なの把握しているので、

頂いたレスが酷い事言われなくてほっと一安心したのは私が小心者だからですね……

SSまとめ速報は現在進行形のものも掲載されていてい珍しいなぁと思いましたので

前回の更新時に話題として取り上げさせていただきました

その件につきましては御不快な思いをされた方がいらした様で申訳ありませんでした

今回の話でノーフォークで埃を被った鉄屑が将来的に出てきても大丈夫ですよね!うん

後編は先にいいますと2回くらいに分かれることになるかと思います、下手したら3回……

計画性が無くて申し訳ないですがどうぞ、お時間宜しければお付き合いいただけると幸いです

後、ネタばれ的な感想レスについては自分は全然問題ないと考える方です

いい意味で予想を裏切る、或いはより良いものに出来ればなぁと考えている感じです(今回の島風の役割とか)

正直に言いますとレスが付かない方が読んでいただけているのかと心配でかえって怖いです

今回も色々御挨拶が長くなりましたが次回もお時間宜しければお読みいただけると幸いです

329 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/15(金) 01:31:25.11 ID:ea2kGIw+O

次も楽しみにしてる
330 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/15(金) 02:32:24.81 ID:OFZefjA50
島風が想像以上に強右衛門らしい最期だった
そういや米議会で強襲揚陸艦のお古を日本に売りつけようって話がこないだ出てたな
331 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/15(金) 07:44:25.42 ID:BvTq+bulO
おつ!!
332 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/16(土) 01:17:55.82 ID:viuQ9QhA0
おつおつ
面白くて多くの人から期待されてるんだから、ああいうサイトの品評はそこまで気にしなくてもいいかと
長年かけて書き上げてきた大作やら力作を、終わった後から扱き下ろすようなのも多いんだからほどほどで十分でしょ
333 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/17(日) 13:48:50.41 ID:NeI/xumR0
それにしても
ボツネタ供養でちょっと書かれた話からここまでの大作になるとは……
334 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/18(月) 12:07:14.35 ID:HjXIVpU6O
やっぱり面白い! 時間があったら最初の話から何度も読み直してる。
335 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/23(土) 13:43:10.93 ID:YRAJ7cSBO
強右衛門って誰だっけ?

って思ったら長篠の戦いの人か。

戦国史も嗜む>>1は凄いな
336 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/02(月) 12:42:02.01 ID:orDGxRGHO
続きが気になって仕方がない。
337 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/02(月) 13:08:10.40 ID:ig4QiBhw0
長篠近隣には強右衛門の功績を讃えてJR鳥居駅があります(マジ)
338 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/03(火) 00:01:46.50 ID:HSNWcwmZ0

_(:3」∠)_ 

これ結構長引く奴だ……
1です、久しぶりの更新となります、お時間宜しければお付き合いいただけますと幸いです
339 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/03(火) 00:02:58.74 ID:HSNWcwmZ0


第十二話 天国への扉 後編

340 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/03(火) 00:04:16.18 ID:HSNWcwmZ0

強襲揚陸艦艦橋

提督「それにしても艦番88とは…。」

大佐「どうされました?」

提督「あぁ、いえ、この艦の艦番なんですがね。

   私が普段指揮を執る鎮守府の管理番号と同じでしてね。」

提督「なんの因果かと思いましてね。」

大佐「あぁ、それでコールサインが88なのですね。」

提督「えぇ。こういうのは普段どおりの方がいい。」ニッコリ



提督と大佐がにこやかに談笑している所に開演のブザーが鳴る。



「ワイルドギース01から入電!

 敵の偵察機がエリア3 −A―01からこっちに来てるかも!」(無線)

提督「こちら88コントロール。伯爵、聞こえているか?」(無線)

グラ「こちら伯爵。加減は?」(無線)

提督「1〜2機は帰してやってくれ。

   こっちの居場所を知ってもらわない事には始らない。」(無線)

グラ「こちら伯爵了解した。」(無線)

大佐「こちらの位置をわざとにばらすのですか?」

提督「えぇ、そうですよ。あくまでメインステージは此方ですから。」

提督「踊るならこちらで踊ってもらわないと色々と折角の舞台演出が無駄になりますからね。」

提督「スポットライトの舞台装置に大道具。全て重要ですよ。」

341 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/03(火) 00:06:00.56 ID:HSNWcwmZ0

強襲揚陸艦から救援予定鎮守府方向20海里地点 水深70m



ゴポリ

伊58「海底に岩だらけでち。」



提督から渡されたドラム缶を面倒くさそうに海底にアンカーで固定しながらゴーヤが言葉を紡ぐ。



伊8「米軍の海底データが役立ちますね。」

伊13「その…、海水がねっとりとしてて……。温度も……。」

伊58「提督はなかなか潜水艦ってのを良く理解しているでち。」

伊58「米軍のデーターが無いとこんな大胆な作戦は考えられないでち。」

伊8「私達が一番槍……、ですね。」

伊58「敵さんの探信儀に聴音機じゃここに潜むゴーヤ達は見つけられないでち。」

伊8「先駆けからの大物食い、ですね。」

伊13「ですが…、そのタイミングが。」

伊58「その通りでち。でち達からも敵の音は拾いにくくなるでち。」

伊58「だけど、敵は大艦隊でち。

   拾う為の努力をせずとも大音量が聞こえるはず。」

伊8「提督が言っていました。

   敵は提督へのカンツォーネを謳いながら来るだろうから煩いだろうって。」

伊13「……、あの、敵はセイレーンか何かなのでしょうか……。」

伊58「魅了されたら海に引き摺り込まれるという意味ではそうかもしれないでち。」

伊8「後は急速浮上後の目標の推進音を間違えないようにしないと。」

伊13「…提督は間違えても周辺護衛を仕留めれれば御の字って言っていましたが。」

伊58「大物食いは刑期大幅短縮、それに提督の話を信じるなら。」

伊8「大物食いに成功すれば解放されます。」



海上での戦闘というのは陸の平原戦と似ているが

海中という不可視の要素が加わるのが厄介である。

何故なら、海中に潜む潜水艦というのは

時として局面を引っくり返すワイルドカードに成り得るからだ。

適切な位置とタイミング。

テーブルに並べられたコミュニティカードに自分の手札。

当たり前だがカジノでの勝負と同じようにお互いの手札は見えず伏せられたまま。

戦場というテーブルに敵、味方、加えて地理的要因という場札。

そして、手札には自軍の戦力。賭けるチップは自軍部下達の命。

提督と深海棲艦のポーカー勝負は既に始っている。

342 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/03(火) 00:07:28.14 ID:HSNWcwmZ0


強襲揚陸艦内



提督「初手からチェックなんぞしていちゃ心理戦に持ち込む以前の話ですぜ。」

大佐「だからと言って初手からベットして行きますか。」

提督「ホールデムは相手をいかにフォール。下りさせるかの勝負ですぜ。」

提督「特にプレイヤーが2人なら下りさせれば勝ちだ。」

大佐「ですが初手、

   まだゲームが開始されたばかりだとコールやレイズをしてくるのでは?」

提督「それが狙いですよ。大佐。」

大佐「賭け金を吊り上げさせるだけ吊り上げますか。」

提督「ラストターンまで待つ気はないですがね。」

提督「今回は私も頭に来てましてね。

   フォールの声を聞くつもりはないんですよ。」

大佐「既に役が出来ているという事ですか?」



ここで提督はさぁてねと意味ありげに手をひらひら。



提督「敵についてですが今回は姫の上の格。鬼級が出張ってきている。」

大佐「あぁ、先程のお互いの自己紹介でそう言っていましたね。」

提督「深海棲艦の指揮官個体は艦種での違いは無く同格だそうですよ。」

大佐「指揮系統が複雑そうですね。」

提督「と思いきや鬼号個体が指揮を執ればそれに従う。

   鬼同士では指揮系統の順位があると海軍の研究が出ています。」

大佐「敵の総指揮官は戦艦水鬼でしたですか?」

提督「えぇ、今回の敵の総指揮官は戦艦水鬼です。なかなか厄介な手合いですよ。」

大佐「油断ならぬ相手、という事ですか。」

提督「えぇ、救援を呼ぶ艦娘が出られないように包囲網を適切に構築しているようです。」

提督「島風が這い出てこられたのも島風だからと言って過言じゃないでしょう。」

大佐「随分と強個体だったようですね。」

提督「えぇ、死なせるには惜しすぎる艦娘でしたよ……。」



艦橋内にある各種モニターに映る光の明滅を見ながら提督がぽつり。



提督「時に大佐は博打の必勝法を御存知ですかな?」

大佐「はて?」

提督「賭けない事ですよ。」

大佐「違いない。」

提督「まぁ、相手が目の前に居なくてよかったですよ。」

大佐「?」

提督「私はポーカーフェイスってのが苦手でして。顔に出やすいんですよ。」ニタァ

大佐「成程、良い笑顔ですね。」


343 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/03(火) 00:09:40.03 ID:HSNWcwmZ0


敵にも居るはずの潜水艦。

しかし、提督はこれが自分達救援部隊への迎撃に向ってこないと計算していた。

そして、仮に向ってきても脅威足りえないと。



コーン


          シャッシャッシャ


     コーン


シャッシャッシャ
         コーン



空鬼「敵の潜水艦は居ないようね。」

駆逐「えぇ。外周に配置したナ級の報告では探信儀に敵の反応は無いわ。」

空鬼「敵救援艦隊は随分大きな的を備えている様ね。」



グラーフがトニー賞俳優顔負けの迫真の演技で逃した偵察機からの情報で

深海迎撃艦隊は提督達のいる方向へと進路を向けていた。

ソナーには2種類あるのは皆さんも御存知だと思うが探信儀と聴音機。

この2種類の違いについては今更説明する必要性はないと思う。

潜水艦の探知については探信儀の方が性能が高いのだが

自軍に潜水艦が随伴している場合は現代艦で構成される機動艦隊は控える事が多い。

では、何故深海棲艦は探信儀を気兼ねなく使っているのか?

単純明快、自軍の潜水艦が随伴していないからである。

艦隊行動をする上で潜水艦の随伴というのは良くあるのだが。

潜水艦の基本の戦い方は待ち伏せ。

現代では機関や形状等が進化した事により潜行したまま艦隊についていけるが

第二次世界大戦時は浮上航行した上で会敵予想海域に潜むというのが専らの戦い方なのだ。

であるからこそ、既に防御線を構築している状態から潜水艦を引き抜き

艦隊に随伴させるというのは少々戦い方として無駄がある事になる。


344 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/03(火) 00:11:16.61 ID:HSNWcwmZ0


駆逐「敵の包囲網に使っている艦を回すわけには行かない……。」

空鬼「ここが難しいところよね迎撃側になる此方は速力重視になってしまうから

   速力に不足がある潜水艦は艦隊行動について来れない。」



現代艦艇の潜水艦と比べればその速力は浮上航行時でも当然遅く更に。



空鬼「敵潜水艦が待ち伏せて襲撃をかけて来ると予想される中で

   爆雷対処を行った場合に味方の潜水艦を巻き込む恐れが有るのよねぇ。」

空鬼「音を立てずに海中に潜んでいると見つけにくいのよね。」

駆逐「無闇にソ級達を沈めると潜水棲姫に怒られる…。」

空鬼「今回の作戦にあの娘の軍勢借りてるから無駄に沈めると後が煩いのよね…。」



現代兵器であればキャビテーションノイズ等で艦事の区別は付くのだが……。



空鬼「敵味方の潜水艦入り乱れての混戦になると却って困るのよね。」

空鬼「浮上航行の潜水艦なんて鈍亀もいい所だし。」

駆逐「浮上航行している潜水艦は敵にとっていい的でしかない。」

駆逐「私達の爆雷は潜水艦を[ピーーー]。敵も味方も無い…。」

空鬼「であるならば対潜に力を入れて探信儀で

   広範囲に捜索をかけて敵を先に見つける事に重点を置いた方がいいわ。」

空鬼「陣形の外周を探信儀持ちで固めて広範囲の捜索。

   発見した場合は同じく駆逐、軽巡で処理。これが一番現実的かつ合理的よね。」

駆逐「そう…ね…。」



深海側が採っている陣形は空母機動艦隊、米軍が海上航行をする際にとる輪形陣である。

単純にかつざっくりと陣容を説明するなら

外周の的がやられても内側の空母等の重要艦を沈めさせないという陣形である。

だけに。


345 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/03(火) 00:12:31.12 ID:HSNWcwmZ0


伊58「内側に完全に入り込まれると対処がしにくくなるでち。」ニタリ



提督から事前に話された敵がとってくるであろう陣形。

それは輪形陣の一陣形、

アイロン型の陣形で内側に深海側にとって重要艦を固めて来るであろう事。

そして、提督から艦内で改めて聞かされた

今まで色々な鎮守府が撮り貯めてきた深海棲艦達の各艦種、姫、鬼級達の推進音。

それを思い出し。



伊58「海のスナイパー。潜水艦の真骨頂を見せ付けてやるでち。」ニタリ



ゴポリ



伊8(そろそろです……。)



10……9……8……7……6……



5………4………3………2………………1



0 !



一秒が一時間にも感じられる程の張り詰めた雰囲気の中、

頭上を通り過ぎていく敵艦隊の推進音は

音が拾いにくい所にいるはずのゴーヤ達の所にもしっかりと届いていた。



伊58「今でち!」



70mの海底から一気に急速浮上。目標とする敵の後ろを取る。

その完璧なタイミングを推し量り、潜水艦達は急速浮上をかけた!



駆逐「潜水艦の浮上音!?」



敵輪形陣中央に浮上。


346 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/03(火) 00:13:21.23 ID:HSNWcwmZ0


伊58「海の中からこんにちは〜!」ザバン!



シャコーン

冷たい立体反響音が当たりに響く。その正体は魚雷発射管が開く音。



伊58「そして、[ピーーー]ぇ!!」



敵の真後ろ、提督達のいる方向へ向けて航行中のため急に後ろを振り向く事など出来るわけも無く。



シャ ――――――――― !



ズドン!



ゴーヤ達3人の放った魚雷が一斉に扇形に広がり輪形陣の中心にいた深海棲艦達に命中!

そして上がる命中の水柱。



伊8「全弾、命中確認、ですね!」

伊13「敵被害確認、カメラでの撮影完了!」

伊58「長居は無用でち!急速潜行で海域から離脱でち!」



その存在を検知出来なかった場所からの敵。

ゴーヤ達の奇襲は完璧なまでに決まり、成功した。



347 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/03(火) 00:15:25.92 ID:HSNWcwmZ0

空鬼「駆逐ちゃん。」

駆逐「何?」

空鬼「あなたに指揮権を移譲するわ。機関をやられたわ…。」

空鬼「艦載機の発着艦は出来るけど後方からやられた所為で

   このまま敵本隊にぶつかればいい的にしかならないわ。」

空鬼「自力航行不可能よ……。」

駆逐「離脱するのね……。」

空鬼「えぇ、後は宜しくね……。」


ゴーヤ達の魚雷は艦隊の中心部に居た空母水鬼に見事命中。

他にも多数の重巡達に大破や中破といったダメージを与える事に成功していた。


駆逐「ナ級達。敵潜水艦を沈めて頂戴。」


艦隊外周の駆逐艦達に冷静に見える様でありながらも腹立たしい表情で指示を出すが。


駆逐「敵の反応が無い?」

駆逐「馬鹿な!敵にそんな高速潜水艦等居るはずがない!」


だが、返ってくる言葉は不明(ロスト)の返答。


駆逐「忌々しい!」


駆逐棲姫が毒づく言葉を吐き周囲への爆雷攻撃を命じる。

ゴーヤ達を探知出来ている訳では無い。

だが、潜水艦の脅威を放っておくわけにはいかない為周囲全体に爆雷を大量に撒く。

そして。


駆逐「敵艦からの浮翌遊物を確認。」


撃沈したと思しき大量の油と敵艦娘特有の制服を確認。

ナ級からの報告に溜飲を下げる駆逐棲姫。

進軍速度を落とし被害の確認。

空母水鬼が大破撤退したものの空母全体でみれば被害は軽微。

そして、重巡や軽巡、戦艦といった者達にも撃沈が出てはいるがこれもそれ程数が減った訳では無い。

まして、奇襲という手を食らって敵と一合も刃を交えず退くという事など。


駆逐「選択肢としてない!」


事前の偵察機からの情報では艦隊の数、そして空母艦載機数で圧倒できる。


駆逐「地獄を見せてやる!」


激昂し普段あまり表に出さない感情を顕わにし。


駆逐「絶対[ピーーー]!」


怒りのままに進軍速度を早めたのだった。


348 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/03(火) 00:16:42.34 ID:HSNWcwmZ0

強襲揚陸艦内艦橋


不知火「司令、ゴーヤさん達から入電です。」

提督「読み上げてくれ。」

不知火「トラ!トラ!トラ!我、奇襲に成功せり! です。」



不知火の読み上げる電文に苦笑する士官二人。



提督「大佐、これは申訳ありませんな。」

大佐「いえいえ。お気になさらず。」



そして、不知火から敵に与えた被害を聞き満足そうに頷く提督。



大佐「あまり敵に与えた被害が大きくは無いようですが。」

提督「とんでもない。連中は値千金の仕事をしてくれてますぜ?」



提督の言葉に疑問を持ったのか腑に落ちなさそうな顔をする大佐。



提督「大佐、指揮官を一人、

   それも空母水鬼を行動不能に出来たというのはこっちの防衛戦は勝ったも同然です。」

提督「空母水鬼とその他の指揮官では艦載機の管制が雲泥の差。」

提督「制空争いに余裕がかなり出来ることになるんですよ。」

提督「敵の数が勝っていたとしても質で此方は拮抗に持ってはいけますがね。」

提督「あくまで拮抗。勝つための決定打が足りない。」

提督「その決定打を今、潜水艦の娘達が敵に与えたって事ですぜ?」

大佐「それなりに策は用意されているかと思っていたのですが?」

提督「えぇ、おっしゃるように勝つための策は用意していましたがね。」

提督「使う必要性が無いなら使わない方がいい。

   私の所はそちらほど台所事情がよくないのでね。」


349 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/03(火) 00:18:29.89 ID:HSNWcwmZ0


大佐「それにしてもそちらの潜水艦の娘達は実に大胆な手法を取られましたね。」

提督「もともと其方がこの辺りを縄張りにしていた御かげで

   蓄積されていた海底データが役に立ちましたよ。」

大佐「やはり温度躍層に、ですか?」

提督「手品のタネを明かすならそうですね。

   曳航式ソナーなんて敵は持っていませんしな。」

提督「攻めてきた側の連中が周辺海域の詳細海底データーを持っているとは思えませんし。」

提督「知っているなら対策もとっていたでしょうや。」

大佐「成程。なかなか面白い事を考え付かれますね。」

提督「簡単に真似出来ると思ってはいただきたくないですね。」ニィッ

提督「今回海中に潜んでいた連中は何百、何千と深海連中を沈めてきた歴戦ですからな。」

提督「御存知とは思いますがうちの特性上沈めた艦種によって報酬は大きく変わる。」

提督「だからこそ、狙う前に敵の機関の推進音を一瞬で聞き分け、

   より報酬がでかくなる対象を狙う。」

提督「急速浮上から奇襲、そして急速潜行、戦域離脱。

   普段から死線をギリギリでさまよっているうちの連中だからこそ出来る芸当ですぜ?」

提督「まちがっても余所の錬度でやっちゃ駄目ですな。

   急速浮上後に目標を見つけられずに沈められるのが関の山ですからな。」

大佐「精鋭揃いなのですね。」

提督「えぇ、精鋭も精鋭。気を抜くと自分の首に大鎌が押し当てられますので。」

提督「最初に敵に与えたこの攻撃で敵の先手は取った形になります。」

大佐「切り札を最初に切ったと?」

提督「えぇ、切り札なんてもんは温存しといて

   切るタイミングを失うよりさっさと切ってしまった方がいいんですよ。」

大佐「成程、どこかの国の戦艦がそんな最期でしたな。」

提督「……、皮肉がすぎますな。」ハハッ



始めの電文に対しての軽い応酬。


350 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/03(火) 00:20:01.45 ID:HSNWcwmZ0


大佐「これは失礼しました。ですが、今後の展開も楽しみですね。」

提督「楽しむ余裕があるというのは重要ですよ。」

提督「余裕があるうちは頭も動いている証拠ですからね。」

提督「さてと、不知火。」

不知火「はい。」

提督「この艦の周りに配置についている連中に連絡だ。」

提督「幕は上がったとな。」

不知火「了解です。」

提督「さてと、大佐にはプロデューサとしての私の腕前を見ていただきますか。」

大佐「地方公演なしにいきなりのブロードウェー。素晴らしい大作なのでしょうな。」

大佐からの皮肉に、にこやかな笑顔を返し。

提督「勿論ですよ。まぁ、I dreamed a dream になる訳にはいきませんので。」

大佐「レ・ミゼラブルですか。」

提督「御名答。」



艦橋内で提督からの指示を

強襲揚陸艦外周辺海域に展開する各艦娘と連絡を伝え全員が意気軒昂なのを確認。



提督「さぁ、舞台は整った。」



後は敵をいかに潰すか。手札の役は既に敵にとって致命傷。

敵の積み上げたチップを全て残らず奪い取る。



秋津洲「ワイルドギース02から88コントロールへ!」(無線)

秋津洲「敵艦載機編隊がエリア2−A―03より襲来!」(無線)

提督「了解!全員褌締めて掛かってくれ!

   前哨戦だがここから先は全て息を切らさぬクライマックスの連続だ!」



提督の呼び掛けに全ての無線は応とかえってくる。



提督「気を抜くと尻の毛全て毟られるぞ。」



提督の台詞に笑う無線の返事多数。



提督「さぁて、いつも通り。行こうか。」



ぽんと手を一つ叩き、艦橋内の各種モニターを見つめ

どう敵を料理しようかと提督は不敵な笑みを浮かべるのだった。

351 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/03(火) 00:28:19.57 ID:HSNWcwmZ0
本日の更新はこれにて終了です、次回へ続きます

次回嘘予告

追うものと追われるもの。そのおこぼれを狙うもの。
牙を持たぬ者は生きて行かれぬ暴力の海。あらゆる悪意が武装する、赤い海。
ここは深海との戦いが生み出した死の戦場。
時雨の体に染み付いた硝煙の香りに引かれて危険な奴らが集まってくる。
次回、『 出会い 』。時雨が飲む、鎮守府のコーヒーは苦い。

337様、本当に駅あるんですねググってびっくりしました
333様、本当に数レス上げたボツネタ供養からここまで続くとは思っていなかったです
ボツネタに対して続きは?と多くのレスをいただき背中を押していただいた部分も多いかと思っています
実際、ボツにした理由も需要ないだろうなぁと思っていた部分が大きかったですので
ですので更新の度に多くのレスをいただいている現状は1としてありがたいやら恐縮するやらで……
このお話の後に砂の薔薇をベースにした番外編をやれるようそちらも筆を少しずつ進めていますので
これからもお時間よろしければお付き合いの程宜しくお願いいたします
感想レス、乙レス、いつも励みになっています、本当にありがとうございます
変態仮面のSSも書いてます、方向性が180度違いますが間違いなくどちらも同一人物が作者です、はい
では、また次回の更新で!!
352 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sagesaga]:2018/07/03(火) 00:31:58.09 ID:HSNWcwmZ0
あっ sagasageを打ち込まなかった所為でピーが発生してる…
>>346は死ね
>>347は殺す
ですね、締まらないなぁ…、御迷惑お掛けします……
353 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/03(火) 21:21:02.34 ID:vD/ykc1n0
読み返して気付いた。

ちゃんと、島風が強右衛門ポジになる下ごしらえが>>285 でされていたんだなぁ。

そして、学のない人間にすねえもんなんて初見で読めるわけがないw
354 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/04(水) 13:16:59.91 ID:UnA7/8nW0
後世強右衛門の献身が無ければ徳川の世は来なかったとまで言われ、あの恩知らずな家康が一族を幕末まで手厚く遇した程のターニングポイントになった一件だから島風の死は戦争の趨勢を激変させるかもしれない
島風好きとしては期待しちゃう
355 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/07(土) 21:25:05.61 ID:NNlPl4c30
賢い相手ならこの被害で一旦艦隊を下げるんだろうけど
実は相手は勝負から降りれない状況に追い込まれているのですか

嫌な博打打ちだな(褒め言葉)
356 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/09(月) 00:09:14.23 ID:NNCuyt2G0
前回は他の作者様のとこに書き込みしてsageになっていたのを直さず投稿してご迷惑をお掛けしました
良く忘れてやらかす…、駄目駄目ですね……
少しまた期間が空きます事のご連絡とおまけネタで読んでみたいとレスいただいていました
ガングートのお話を少し、宜しければお読み下さい
357 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/09(月) 00:10:14.40 ID:NNCuyt2G0

おまけ話  ガングートは底辺から脱出したい

358 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/09(月) 00:12:27.25 ID:NNCuyt2G0

ガングート着任初日

その日、不知火は提督からのお使いで艦隊司令部に行っており

既に帰途に付いていたものの帰ってくるまでにはまだ時間が掛かるはずだった。



ポンポンポン



いつもの様に軽快なエンジン音を立て艀に接岸するボートが一艘。



提督「お疲れー。今回の荷物は外交問題だって?」

水兵「ははは。私からはあまり詳しくは。」

提督「うちに厄介ごとの丸投げ止めて欲しいもんだよ。まったく。」



そしていつもの通りにお互いの認識票を端末に翳して受領手続き。

その後、水兵が去った後に荷物の拘束を解いていた所に不知火が帰ってきた。



不知火「司令!不知火、帰投しました!」



みえない尻尾がぶんぶんと。

振り切れそうな勢いで振れているなぁと提督はぼんやり。



提督「うん。お疲れ。予定より早いようだが。」

不知火「途中で船を降り艤装で全力航行してきました。」



頭を撫でろと差し出しくる不知火の頭を撫でていると罵声が飛んできた。



「貴様!駆逐艦の相手などせずにさっさと外せ!この馬鹿者が!」



猿轡を先に外し、足の拘束を外そうとしていた提督に偉そうな口を利く艦娘。

ブチッ



不知火「2割殺しで許してやる。」



たった一言。余分は不要。

メキャァ



提督「あっ。」



提督は後に時雨に語った、艦娘って戦艦でもあんなに吹っ飛ぶもんなんだなぁと。



時雨「あれで2割なんだ……。」



とは時雨の返答。

359 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/09(月) 00:15:08.69 ID:NNCuyt2G0

そして、1週間程、意識が三途の向こう側へ行きかけた後。

栄養を取る為に彼女が食堂を利用した時の事だった。

昼食をとりに提督が食堂へ顔を出せば揉めている声がする。


ガン「なんだと!?ボルシチが出せないだと!?」

「いや、予め言ってくれれば用意はするけど。」

「普段からメニューにないのを急に作れって言われても無理だよ。」

提督「まぁまぁ、落ち着いて。」



提督がなだめようと間に入るが……。



ガン「何が落ち着けだと!?貴様!銃……「露助、司令官を敬え。」



一閃、綺麗な兎飛びアッパーが決まる。

ボゴォ゛



提督「あっ。」



提督は雪風に語る。天井に人が突き刺さるって事があるんだねぇと。



雪風「装甲は腐っても戦艦ですから。」



とは雪風の言葉。
360 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/09(月) 00:18:46.94 ID:NNCuyt2G0


そして、三途の渡し守から追い返されてから三日後。



秋津洲「今日は二式大艇ちゃんの整備日和かも!」

提督「二式大艇ってこう、なんか愛嬌あるデザインだよなぁ。」



執務室が禁煙にされてしまっている為、煙草を吸いに埠頭まで来ていた提督が秋津洲に語りかける。



秋津洲「さっすが提督!よく分かってるかも!」

秋津洲「でも煙草に火をつけたまま近づくのは危険だから駄目かも!」



ジュッ

咥えた煙草を奪われ火を消される。



ガン「頼もう!」

秋津洲「はーい、いらっしゃいませかもー!」

ガン「すまないが燃料と弾薬を売ってくれ。支払いはこれで。」

つ ルーブル

秋津洲「げぇぇ。まじもんの紙屑かもぉ!」(1ルーブル≒1.78円)

ガン「なにぃ!?貴様!我が祖国を愚弄するか!?」

秋津洲「ここでの使用可能通貨はドルかも。」

ガン「その様な物等ない!」

提督「ルーブルは流石に両替を受けてないな。」

秋津洲「お金が無いならお帰りはあちらかも!」指差し

ガン「金は無いが武器はある。」チャキッ

秋津洲「きゃぁ――、強盗かも ――(笑)。提督を守らないとかも――(笑)。」


役得とばかりに提督に抱きつき、えいっと可愛らしくパンチを一つ。


ドゴ!



提督「あっ。」



秋津洲の右ストレートが炸裂。

二式大艇は自重だけで約18t、爆装等込で最大重量約35t。

それを片手で担ぎ上げる秋津洲のパンチが決まったのだ。

提督は後に長門に語る。反跳爆撃で飛んでいく爆弾の様に水を切りながら飛んでいったと。



長門「学ばない奴だな。」



とは長門の言葉。


361 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/09(月) 00:19:52.32 ID:NNCuyt2G0


そして。



明石「金を稼ぐ前から修理代ばかり嵩ませて、

   払うあてが無いなら艤装ばらしてあんたの部品を担保にして貰おうか?」

明石「人体ってのは綺麗にばらせば300万にはなるんだ。腎臓の一つでも売ってみるかい?」



鬼より怖い明石に睨まれ。

艦娘が入れる生命保険等ある訳も無く。



ガン「身の程を弁えず申訳ありませんでした ――――――― !」



提督に地面で額を摺りきらんばかりの勢いで土下座をかまし。



ガン「助けてください〜。」



全力で泣きを入れた。



提督「あー、まぁ、うん。気をつけろよ。」

不知火「2度は無い気をつけるんだな。」ヌイ!

ガン ヒィィ!



提督が明石に上手く取り計らい、ガングートは内臓を売る事無く着任する事が出来たのである。

マイナスからのスタートなのは言うまでも無い。

362 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/09(月) 00:23:24.97 ID:NNCuyt2G0
以上超短編
お読みいただきありがとうございました、最近板自体が管理人さん不在の所為かスレ建て荒しなどの放置が目立ちますね…
そろそろ移住を考えた方がいいのやらやら……
では、ここまでお読みいただきありがとうございました
乙レス、感想レス、いつもありがとうございます!励みとして続きを書くエネルギーに変換しています!
では!また次回の更新でお会いいたしましょう!
363 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/09(月) 00:31:59.94 ID:u9XalqOB0
同志不甲斐ないの
364 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/09(月) 00:38:48.52 ID:s0soUc7zo
いくらなんでも可哀想過ぎて草生える
365 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/09(月) 02:59:57.68 ID:tzXzQ8Xk0
乙です
ガングートには申し訳ないけど爆笑してしまった
366 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/09(月) 07:40:19.84 ID:cWuepcgo0
前回の続きと言うか前日談って感じかな?

それにしても…

笑うわこんなんw
367 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/09(月) 20:33:20.79 ID:FkzLrHbpO
乙です。 続きは時間かかるみたいですが、楽しみに待ってます。
ガングート可哀想ではあるけど、ほぼ自業自得なのが笑いを誘います。
368 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/09(月) 22:14:28.76 ID:cWuepcgo0
秘書艦に食堂のおねーちゃんに海の遊撃手と殴られてなおかつ、裏ボスにドヤされてようやっと理解したのね…

てゆーか、約1名現役じゃない方がいらっしゃるんですが
369 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/10(火) 09:53:44.57 ID:hhl0TaDXO

ここのうーちゃん大好きだわw
370 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 00:05:05.06 ID:4HB+eitj0
8月に入る前になんとか更新出来そうなので更新に来ました
久しぶりにフライトシミュやったけどコクピットモードで3D酔い、ゲーム自体は好きなんだけどなぁ…
少し長めの更新となりますが宜しければお付き合いいただけますと幸いです
371 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 00:07:01.24 ID:4HB+eitj0

グラ「Falke(隼)02は01と協力して3―B―01だ。」



自己管制下にある最新鋭機Ta152艦載型の編隊を敵の襲来している空域へ差し向ける。

ポン!



グラ「と、お次はAdler(鷲)01と02、3−A―01だな。」



ポン!ポン!



グラ「正面と右翼からの浸透か。」

グラ「まずはお手並み拝見と言ったところか?」



高高度作戦機が豪とエンジンの唸りを、

咆哮をあげ提督が乗る強襲揚陸艦へ襲撃を掛けてくる敵機を落とす。



グラ「高高度における機体性能は私の機材の方が上の様だな。」



ポ―ン!



グラ「と、このエリアはサラトガだったな。」



ポ―ン!



グラ「ふむ。Conder(コンドル)を援護に回そう。」



先程からグラーフの目に映っているのは周辺戦闘空域に飛来している敵機編隊数。

グラーフはウェラブル端末の透過式グラスの表面に表示される

敵飛来方向等から自艦載機部隊に戦闘指示を出している。

そのグラスはポーンポーンと軽快に音を立てては戦況を随時更新。



グラ「外周のピケットが食われないようにしないとだが…。」

グラ「フム、初月達が動いたか。電探持ちがやられるときつくなるからな。」

グラ「Conder(コンドル)02、03はそのまま上空で二式大艇の護衛を続けてくれ。」

グラ「敵増援が来れば護衛機は追加しよう。艦隊の目だ。くれぐれも落とされないでくれ。」



グラーフは一体何をしているのか?


372 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 00:09:22.95 ID:4HB+eitj0


強襲揚陸艦 艦橋



不知火「大艇からのデーターだと、敵艦隊はこちらの方角です。」



不知火が二式大艇に積まれた機上電探からの情報を

提督が机代わりにしているタブレットを大きくしたような大型モニターに

データとして表示させながら説明する。



提督「そろそろグラーフだけでの管制は厳しくなってくるだろうな。」

提督「俺が管制の指示を出そう。」

大佐「航空管制の経験がおありですか?」

提督「うちの国は人材がつねに不足していましてね。なんでも出来ないと提督は務まらんのですよ。」

提督「もっとも、なんでも出来た所為で辺境の指揮官なんてものをやっていますがね。」


373 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 00:10:02.71 ID:4HB+eitj0

大型モニターに数字と襲来方向の矢印、

そして、敵機を表す光点が徐々に増え始めるのを見て提督が頭にレシーバーを嵌める。



提督「うち所属の空母艦娘ども、敵の数が借金取り並だ。」

提督「ここからは俺が管制をする。

   指示は各々がつけてるウェラブルグラスに迎撃に向わせる空域と編隊名が出るからその指示に従ってくれ。」

提督「後、米国からのお客様、サラトガ嬢は未通女(おとめ)なんでな。」

提督「悪い虫が付かないように守ってやってくれ。以上だ。」



提督からのいつもの軽口付きの指示。

どうやらいつも通りやれているようだ。いつも通り、普段の様に頭が動いているなら。



グラ「Admiralの勝ちだな。」



にしても。



グラ「カバー範囲が広いものよな。」



だが。



グラ「私になら出来るというAdmiralからの信頼。それに応えぬ訳にはいくまいよ。」



上官への尊崇。それ以外もあるが。口には決して出せない秘めた思い。



グラ「火事と喧嘩は江戸の華だったか。」



なれば鉄火場こそ己の魅せ場。

纏う火の粉を紅に変え、硝煙の香りを上等のフレグランスへ。

堅牢な城門を壊し城を陥落させるようにあの朴念仁を堕とそうではないか。



グラ「独逸撫子もいいもんだとあの男に言わせねばならんのでな!」

グラ「必勝と行かせてもらうか!」

374 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 00:11:20.09 ID:4HB+eitj0


高度1万メートル

高高度作戦機の縄張りであり空気は薄く、

大馬力エンジンが支配する絶対空域。

馬力の無いエンジンを積んだ飛行機では辿り着けても

敵に追いすがる事など出来ない性能こそが神として君臨する空域。

その高度をグラーフの管制下にあるTa152の各編隊は悠々と飛行していた。



大隊長「編隊長から各機へ。ターキーショットと思って手を抜くなよ。」

大隊長「グラーフ嬢が想い人にいい所を見せようとしているようだ。」

副長「それは気合いれて掛からないといけないですね。」

隊員A「でも、告白するんですかね?」

隊員B「いつも寸前で止まってますからねぇ。」

大隊長「相手は昔の女に捕らわれているらしい。」

副長「男としては憧れますが。」

隊員A「好きになった女にとっては迷惑極まりないですね。」

大隊長「なればこそ我らが戦果をあげていい女として認めて貰えるように頑張らねばな!」

一同「「「 Ja!」」」



軽口を叩く妖精一同。

そして、グラーフの指示に従い眼下に見える敵機編隊へ襲いかかりる。

ドイツ空軍、ルフトバッフェの基本戦術2機1小隊を2つにして4機で1編成のケッテとよばれる編成単位。

ドイツ空軍が採用の後、実戦に投入しその有用性に目をつけた英国空軍も取り入れ4本指、

フォースフィンガーという名称でこの編成方法は知られている。

彼らは定石通りに高空から一気に眼下の敵編隊へ襲い掛かった!


375 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 00:13:19.53 ID:4HB+eitj0


ドドドドドド!

機銃の音が空間へ響き渡り深海棲艦の機体を撃墜!



隊長「Falke(隼)大隊長01より各小隊長へ!被害報告をされたし!」



突入してのそのままの勢いで急降下をしている状況で余裕の被害確認。

Falke隊からの急襲を散開させることによりなんとか逃れた深海棲艦の艦載機は急降下で追撃!



「02小隊被害なし。」

「03小隊同じく被害なし。」

「01了解。Adler(鷲)編隊!準備は!?」

「こちらAdler大隊長01。いつでもどうぞ。」



各編隊からの報告に満足したように頷くと

急降下していた状態から一気に操縦桿を引き機首を上方へ向ける。



大隊長「馬力のある機体が逃げる時は下じゃなく上が定石だからな。」



攻撃を仕掛けた編隊が急に機首を上に上げたのに合わせ急降下で追撃していた敵機も追いすがる!



大隊長「まったく、japanの言葉でダボハゼだったか?」

大隊長「ちったぁ罠を疑えってな。」

大隊長「Falke大隊長01よりAdlerへ。お客さんをお連れした!盛大に歓迎してやってくれ!」



ドドドドドドドン!



Adler大隊長01「Willkommen(いらっしゃい)コーヒーは如何かな?」



上空へと逃れるFalke隊を追いかけてきた敵機は次の瞬間全機撃墜される!



大隊長「待ち伏せお疲れ。」

Adler大隊長01「どういたしまして。敵は余裕が無い様だ、コーヒーの誘いを断られたよ。」

大隊長「紅茶好きだったんだろ。」

Adler大隊長01「成程、それは粗相したな。」



何のことはない。

急降下突撃した部隊が敵の生き残り編隊を急上昇で吊り上げ

高空で待機していた別の編隊へ上がってきたところを叩かせる。

上昇力に明確な差があるからこそ出来る戦術であり。

二式大艇からの電探情報、提督からの敵機位置情報、

各編隊との無線機でのやり取りがばっちりと嵌ればこその戦術である。


376 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 00:15:11.24 ID:4HB+eitj0


大隊長「釣り野伏せだったか?」

副長「japanでの名称ですか?」

大隊長「あぁ、瑞鳳嬢の旗下連中から聞いたんだが

   japanの戦闘民族が得意とした戦法なんだそうだ。」

副長「我らゲルマン民族の様に勇猛果敢な民族もいたもんですな。」

大隊長「そうだな。Falke大隊長から大隊全機へ!

    最初の突撃で担当空域内に侵入している敵は3割しか落せていない!敵が多すぎるな!」



大隊長の言葉に笑いが漏れる楽しい職場。



大隊長「ここから先は各個撃破となる!各小隊の奮闘期待する!以上!散開!」

Adler編隊長「同じくAdler隊も散開!各個撃破だ!以上!」



高空からの奇襲は一度限りの先手必勝。それを使えば後は一撃離脱の回数を重ね敵を落すしかない。

こうして狼達は野に放たれた。

ギュオォォォォォオオオォン!

機体性能を十分に活かし再度の急降下突撃。



大隊長「逃すか!」



一気に敵を3機程屠った後、僚機を従え他の敵機が飛ぶ高度で水平飛行へ!

そして機体性能を活かし速度を上げ敵の背後を取り敵機を更に撃墜!



大隊長「これが生身の人間なら体に掛かるGが激しいんだろうなぁ。」

副長「妖精に転生してその辺りの負荷があまり感じなくなりましたからねぇ。」

大隊長「先の大戦時でもそうだが、ますます人間を辞めた感があるな。」

副長「元々人間でしたっけ?」

大隊長「そういわれるとそうだな。」



ドドドドドド!

鼻先僅か10m。敵機が艶やかな華を咲かせ、ばらばらに散っていった。



副長「撃墜のコツは。」ニカッ

大隊長「自分の機体を当てる心算で近づけ。」ニヤリ



Ta152量産型の20mm機関砲、2機分、合計6門が火を噴けば並大抵の装甲では耐える事など出来やしない。


377 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 00:16:57.34 ID:4HB+eitj0


ダダダダダダ!

大隊長「早漏だねぇ。」

副長「そういえば、深海棲艦の艦載機は男が乗ってるんですかね?」

大隊長「女なのか?あれ?」

副長「そもそも操縦士が乗っているのかどうか?」

大隊長「……、機械に落とされるのは癪だな。」



水平飛行を続ける二人の機体に敵が仲間の敵とばかりに攻撃を仕掛けてくる!

が!その銃撃はあまりにも遠すぎる為か当たらない!

なにより数多の修羅場を潜った末に妖精に転生している二人は

殺気を感じた時点で機体を次の行動へ移すべくタイミングを計っていたのだ。

二機の機体のエンジンが更に唸りを上げ速度がどんどん上昇。



大隊長「重力なんてもんを感じなくてよかったよ。」

大隊長「感じてたら奥歯の一本は覚悟しねぇとならなかったかもしれないからな。」



ふわり。

それは一瞬の出来事である。

機首を上げ機体を右方向へ捻りこみながら縦方向へ180度のループ。

ループをしながら機体を捻るためループ終了後の機体は水平に。



戦技 インメルマンターンの炸裂である!



敵の上方へ進行方向を逆にする形でターンする為、隊長達の機体の下を敵機がすり抜ける!

その結果、互いの速度差で距離が一気に離れていく!



大隊長「お疲れさん。」



水平飛行へ移行後少しばかりの距離を飛んだ後、2機は再度、下方向へのループを行った!

インメルマンターンの逆バージョン。



戦技 スプリットS である!



両方の技は共に少しの操縦ミスで機体の失速を招く高難度空中格闘戦技であり

それを間髪入れずに行うのは耐Gスーツを着ていたとしても

その体はもとより機体そのものに掛かる重力は凄まじいものとなる。

エアショーで機体が地面とフレンチキスをやらかして

大事故になる事が多いのもだいたいどちらかの戦技の失敗だったりする。


378 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 00:19:07.13 ID:4HB+eitj0

副長「まぁ、敵の技量はうちの飛行隊だとワンデイですな。」


ピタリと追撃してきた敵機の後ろに付け2機の銃撃により敵機小隊は撃墜された。


大隊長「まったく、インメルマンの後にスプリットなんぞやってたら普通死ぬわ。」

大隊長「体への重力のかかり方が死ねる。」

副長「敵との距離が離れていましたからねぇ。」

副長「ビタ付けしている状態だったらそのままループだけでよかったんですけどね。」

隊長「敵がどん亀なのが悪い。」

副長「そーですそーです。」

大隊長「さぁて、敵の残りをいただきますか。」

大隊長 副長「「我らがグラーフ嬢の為に!」」



そして、2機は再度、敵編隊へと襲い掛かかっていくのだった。



グラーフ「 /// 。」



穴があったら入りたいとはまさに今のグラーフの為にある言葉だろう。

各妖精隊に指示を出す為に無線を繋ぎっぱなしのグラーフには

先ほどからのやり取りは全て筒抜けだった。



初月「やぁ、伯爵。そんなに赤面してどうしたんだい?」

グラ「あぁ、初月か。初月が来たという事は。」

初月「うん。そろそろ敵が抜けてくるだろうからって提督からの指示だ。」



現実的な話上空で空戦を行っている戦闘機だけで敵の攻撃機全てを落せる訳がない。



提督「時に大佐。この船の喫水線防御なんですが。」

大佐「強度としては大戦時の大和級準拠ですよ。」

提督「流石に色々と資料を残されている国は違いますな。」

大佐「大和級の固さは我が国にとって悪夢でしたからね。」

大佐「深海棲艦達の使う魚雷が大戦時の物と同じという情報を信用するなら

   単純に喫水線下の防御を固めるのが対策として至極簡単です。」

大佐「おかげで基準排水量がかなり増える事になってしまいましたがね。」

提督「さてと、接触と磁気、どちらの信管か。」

大佐「接触だと思いますよ。」

提督「ですかね。」



誘導装置が魚雷に搭載されたのは先の大戦も終戦間近、今までの深海棲艦達からの攻撃データーからの判断でも。



提督「敵の魚雷は接触式信菅とみて動きますか。」



そして、針路変更の指示を出す。

379 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 00:20:56.88 ID:4HB+eitj0


提督「面舵20度」

大佐「艦の進行方向を変えますか。」

提督「魚雷からの回避行動といえばジグザグ航行が一般的ではあります。」

提督「ですが、うちの防空艦連中の腕を信用するならばこの程度の針路変更で問題ないですよ。」



強襲揚陸艦が針路を変える少し前。

初月率いる対空兵装を満載した防空駆逐艦隊は提督の指示に従い

上空の防空網を抜けてくる敵機を探す為空を睨んでいた。



初月「そこだぁ!!」



初月の長10cm砲、対空機銃が豪快な音を立て上空の網を抜けてきた敵艦攻隊を撃ち落とす。

ドドドドンドンドンドン!      

キンキンキンキン!



ボフォースからの薬莢が海中へ綺麗な放物線を描きながら消え

傾き始めた西日を受けきらきらと戦場に不釣合いな美しさを描き出し海中へ消えていく。



初月「ここは通さない!」



初月達防空艦達の対空砲火を浴び敵機が次々と火達磨になり消えていく。

だが、艦攻の役割は魚雷を投下し敵艦へぶつける事がその主目的である。

撃墜されたとしても魚雷を落せれば勝ちなのだ。

初月の対空砲火を浴びた敵機が、当たれば儲け、鼬のなんとやらとばかりに魚雷を投下した。



グラ「初月!魚雷が!」

初月「くそぅ!この方向はまずい!」



雷跡が提督達が乗る強襲揚陸艦へと走る。

が!



提督「当たらんよ。」



敵機から放たれた魚雷は強襲揚陸艦の左舷艦首先を駆け抜けていく。



提督「面舵30度。」



淡々と操舵指示を出す提督。

380 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 00:22:36.62 ID:4HB+eitj0


大佐「魚雷が来る事も予想されていた……、

   というより射線を制限しているという方が正しそうですね。」

提督「あぁ、やはり分かりますか。」

大佐「自分の部下を完全に信用しているから出来る芸当とは思いますがそこまで部下に命を預けれますか。」

提督「流石に配られた手札で勝負せにゃならんですからね。

   いかさま無しの一発勝負となれば手前の手札をいかに有効活用するかですよ。」

大佐「成程。」



そして、机代わりのモニターに広がる数字を見て。



提督「敵の数がこちらの3.5倍は居るようですからね。打ち漏らしも出て当然と考えないといけませんよ。」

大佐「という事はこの艦が被雷、被弾することもあると言われる。」

提督「出来れば無いと願いたいですがね。まぁ、そこの所は神に祈りましょうや。」

大佐「神に祈るですか。」



これまでの用意周到振りを考えれば似つかわしくない言葉。



提督「たまには神様に仕事をしてもらわないと、

   いざという時に仕事の仕方を忘れていたじゃこちらが困りますからね。」

大佐「ははは。」

381 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 00:25:11.77 ID:4HB+eitj0


再び海上



グラ「流石Admiral 魚雷が抜けることも考えて予め回避行動をとっていたか。」



そう、提督は上空の防空網にわざとに穴を開けていた。

全ては敵の攻撃機がそこの穴から攻撃を仕掛けてくる様に仕組む為に。

それは城にわざとに攻めやすい弱点を設けることで

敵の攻撃をそこへ集中させ守りやすくする篭城戦の基本戦術のようである。

だが。



初月「まるで僕が失敗をするのを見越していたようで癪にさわるな。」イラッ



決してそうではないのだが。



初月「これより全ての敵機は通さない!」

初月「全防空担当駆逐艦に編隊長初月の名において命ずる!」

初月「これより我ら修羅になる!敵機は一機残らず血祭りだ!」


382 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 00:25:53.49 ID:4HB+eitj0


提督が艦を動かしたのは万一に備えての事であり決して初月達の能力を侮ったからではない。

しかし、この行動は初月のプライドを著しく傷つけた。

更に避けていなければ被雷していたという事実もその初月のプライドを傷つけるのに拍車をかけ、

より闘志を燃え上がらせる燃料となる。

だけに。



初月「そ こ だ ぁぁぁぁあぁあぁぁ !!!!!!」



ワルツを踊るように滑らかに駆け抜け機銃弾の薬莢、長10cm砲から上がる砲煙。

そして秋月型特有の白を基調とした制服は日が傾き橙色に染まる海上へ彩を添えた。



グラ「ほう、なかなかこれは。」



美しいものだなと声がでかかるが戦場という美と程遠い世界に居るものが

語るべきではないなと思い続く言葉を噤むグラーフ。

ポーン!



グラ「流石に数を頼みとする深海連中だけある。」



身に着けるウェラブルグラスには敵の編隊がまだまだ相当数いる事が表示されている。



グラ「とっ、2―D―02からのお客さんか……、これは瑞鳳のエリアだな。」



格闘王瑞鳳。



グラ「相手が哀れと言うかなんというか。」



狂気王瑞鳳。



グラ「Admiralが艦後方に位置する所に配置しているのはそういう事なのだろうな。」



瑞鳳の配置場所は米軍からの借り物でありゲストのサラトガの近く。



グラ「味方であれば心強いのではあるのだがいかんともなぁ。」



383 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 00:27:36.32 ID:4HB+eitj0


瑞鳳常識無知也。



瑞鳳「んふふふん。」ヌチヌチヌチ



その少女はポールダンスを踊るストリッパーの様に体をくねらせ全身から歓喜の声を上げていた。



瑞鳳「あっ、駄目、溢れてきちゃう。」



戦場に長く身を置く事で常識感覚が欠如して戦闘狂になる兵士というのはよく居る。



瑞鳳「あっ、んっ、あっ。」



戦闘狂であれば御する事は容易い。

しかし本当に危険なのは狂っていながらも冷静さを併せ持つ相手。

88所属の瑞鳳はネームド制度が終った後に艦娘になった為二つ名持ちではない。

彼女は敵を殺すことに快楽を求め、

性的要求を満たす為に敵をさながら蟻を潰すかのごとく嬲り殺すことが好きだった。

その残虐性に一緒に出撃していた艦娘がPTSDを発症する事も珍しくなく、

敵を時間を掛け嬲り殺す事を最大の快感とし、

それを止めようとした味方艦娘を殺しかけた事が原因で此処に流されてきた。

そして、提督はそれを受け入れた、曰く。



「敵を確実に殺すんなら何も言わんよ。結果を出し続ける限りはお前の味方だ。」



今まで瑞鳳を狂っているとした鎮守府の無能達と違い彼は結果を出せばどうでもいいと、

瑞鳳に道端へ転がる石を見るような無関心とも言える冷たい視線をくれるだけだった。

それが瑞鳳にどういう印象を与えたのかは不明なのだが。


384 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 00:28:51.66 ID:4HB+eitj0


瑞鳳「んっ、あっ、提督ぅ〜。」ビクビクッ



絶頂を向え暫しの余韻の後、改めて自己担当空域に迫る敵の数を確認する瑞鳳。



瑞鳳「んっ、さて、私の場所を守るためにも頑張らなきゃ。」ホウッ



お漏らしをした様に濡れた袴。

愛液が滴る指を振りその雫を飛ばした後、

彼女は意識を既に上空へ展開済みの自己艦載機群へと向ける。



瑞鳳「さぁてと……、徹底的に嬲り殺そうかぁ。」ニタリ



グロロロロロ

零戦のエンジン音が甲高くなり増速を始める。

敵機が進入してきている高度はやや低め。

高度にして6000m。

瑞鳳が使う、否、帝国海軍が様々な悲しい事情も含めて

終戦時まで主力として使用した零戦シリーズが得意とする高度である。

じゅるり。

待ちきれない。そして、来た。

敵機を見つけ、瑞鳳は今か今かと待ちわびる自己艦載機編隊に迎撃の指示を下した。

385 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 00:30:47.59 ID:4HB+eitj0



「全機突撃じゃぁ  ―――――――― !!!」

「おはんら深海の蛸どは鬼ころ飯じゃぁ !!!」

「ちぇすとぉぉぉぉぉ ――――――― !!!」

「命(たま)置いてけやぁ ――――― !!!」



機体に色とりどりのペイントアート。

戦闘機の塗装は空に溶け込むもの、

あるいは海上の色に溶け込むものを使用するのが主なのだが。

その零戦の一団は機体全体に派手派手しく極彩色の塗装がされていた。

それら機体に乗る妖精達は使用者の瑞鳳が頭一つ跳び抜けて狂気を持っている影響もあってか狂気の塊。

しかし。

その空戦格闘技術はまぎれもない本物。



「貴様(きさん)しんどけやぁ ―――― !」



槍合わせの形になる正面からの突撃!

方向桿を操作し操縦桿を逆方向へ入れ機体を横滑りさせる!



「奪ったどぉ ――――― !」



横滑りしながら正面敵機を撃墜!

正面突撃を全力ですれ違った零戦の後ろをまた別の敵機が取った!

速度は悲しいかな零戦の方が遅くエンジン馬力も深海棲艦の最新鋭機と比べれば非力。

だが、瑞鳳航空隊の狂人妖精達には誰一人としてそれを不利とするものは居ない!

後ろを取られた瑞鳳隊の零戦が敵機から逃れるべく上昇を始めるがその後ろを敵機が猛追!

そして、上昇を続ける零戦は暫くすると急に失速し機体が左右に振れ始めた!

これは決して操縦を誤ったものではない、狙って行っている操縦である。

そう!零戦の運動性能だからこそ可能とされる戦技!



木の葉落とし である!



木の枝から葉っぱが地面へ落ちるように左右に大きく揺れながら動く為

その名が付けられた空戦機動戦技である!

失速した零戦を追い越した敵機の背後に付き直す零戦!



「ちぇすとおぉぉぉ ―――――――― !」



気合一声、敵機撃墜!

零戦の性能で垂直上昇時の失速は零戦の機体性能では起こり得ないともされるが

彼らはそれを無理やり、そう、道理を力で捻じ伏せる事で可能にしていた。

386 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 00:32:00.32 ID:4HB+eitj0


「そこんお前(はん)!命置いてけやぁ ―――――― !」



視界の端に見えた敵機へ急降下をかけ撃墜。

敵機が撃墜され搭載燃料や弾薬に火がつき方々であがる艶やかな華。



「ここが戦場(いくさば)、命捨てがまるは今ぞ!」



狂人戦闘機集団。

搭乗員妖精は使用者である空母艦娘が撃沈されない限りは熟練度が落ちこそすれ同じ存在として黄泉還る。

だからこそ。



「はぁっはっはっは!共に黄泉路を逝きたもっそ!」



ぼうぼうと別の敵からの銃撃により機体から火の手があがる零戦。

建て直しが出来ないと判断するや手近の敵機へと突っ込み戦果を積みあげ、逝った。

彼らの思想はいたって単純明快。



「瑞鳳の姫御さえ残れば俺達が勝ちじゃぁ!」



そう、軽空母艦娘瑞鳳さえ残れば勝ち、大将さえ生き残れば勝ちなのだ。

であるからこそ、戦闘不能となれば敵機へ突っ込む事になんら躊躇いはない。



387 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 00:33:32.40 ID:4HB+eitj0


深海空母機動艦隊



ヲ級F「あっ頭が狂ってやがる!」



気配、殺気や狂気に色があり目に見えるとしたらきっと丹とか真紅とか鈍錆とかだろう。

瑞鳳の艦戦部隊がとる狂人の戦い方は相手取る深海棲艦達を震撼させた。

まともな相手なら、武人として相手とれるなら戦う事も誉れになるだろうが。



ヲ級F「ひぃっ!笑いながら突っ込んで来る!」



自己管制下の艦載機に意識を乗せていれば特攻をかけてくる瑞鳳隊妖精の顔も見え、

その搭乗員妖精はひとり残らず狂喜の笑顔。

死ぬ事を喜びとする狂人のそれ。

自分の命を路傍の石程度にしか考えていない狂気のそれ。



ヲ級F「来るな来るな来るなぁ!!」



一機一機を細かく操縦している深海棲艦は艦載機から受ける情報は艦娘より多い。

その為、瑞鳳の艦戦隊から伝わってくる狂気は空母深海棲艦を恐慌へ駆り立てた。



「ん?ぼかっと動きが鈍なった?」(急に動きが鈍くなった?)



耐え切れなくなったヲ級が自己艦載機との意識の接続を切ったのだ。

先ほどまでの精細を欠けば精鋭狂人達の相手ではなく結果、

瑞鳳の受け持つエリアに侵入した敵艦載機は一機残らず撃墜された。



瑞鳳「ねーねー、グラたーん。瑞鳳の応援いりゅ?」エヘヘ

グラ「申し出はありがたいがそろそろ完全に日も落ちる。敵も一旦引き上げるだろう。」

グラ「となれば私達の艦載機も一旦収容する必要があるかと思う。」

瑞鳳「あっ、うん!そうだね!そうだよね!じゃぁ、夜間ハラスメントいきゅぅ?」

グラ「あぁ、エスコートさせていただこうか。」

瑞鳳「グラたんのそういう優しい所好きぃ〜!」



無線での可愛らしい(?)やり取り。

388 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 00:34:42.43 ID:4HB+eitj0


強襲揚陸艦 艦橋内作戦司令室



提督「秋津洲。二式大艇は全部降ろしてくれ。」

秋津洲「いいの?」

提督「夜間警戒を考えれば欲しいところだが替えが効かない。」

提督「夜間の敵が見えない状況で落とされるほうが痛い。」

提督「夜間の警戒は外周のピケット連中とグラーフの夜間機に任せる。」

提督「明日に備え休んでくれ。」

秋津洲「了解かも!」



インカムを通してやり取りをする提督。



提督「不知火。ちょっと眠気覚ましに顔を洗ってくる。

   その間に被害状況を纏めておいてくれ。」

不知火「了解です。」

389 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 00:35:45.95 ID:4HB+eitj0


艦内 士官用 個室



びちゃびちゃと吐瀉物を吐く音が室内に響く。



提督「なかなか。きついなぁ……。」フィ

「ねー。」

提督「なに勝手に入ってきてるんだ?」

「そろそろご飯の時間だからリクエストをと思ったっぴょーん。」

提督「何か見たか?」

「げーげー吐いてる汚いおっさんを見た。」

提督「見てたか。」

「うん。」

提督「他の連中には黙っていろよ?」

「指揮官が体調崩してるなんて吹聴して回るほど野暮じゃないよ。」

提督「…………、ちげぇよ。プレッシャーに弱いだけさ……。」

「プレッシャー?」

提督「あぁ、毎度の事だが鎮守府総勢を動かすとなるとな。敵もやはり強力だからな。」

提督「被害0なんて事はまず無理だ。」

「そんなものかなぁ?」

提督「誰も死なずに勝つなんてのは物語の中だけだ。」

提督「昨日まで一緒に飯食ってた間柄の奴が今日死ぬとかがざらだ。」

「繊細なのねぇ。」

提督「毎度毎度、胃がきりきりと痛むのさ。」

提督「俺の指示が一つ間違えば全員死ぬなんてのが有り得る。」

提督「傲岸不遜で通して行きたいがな。やはり不安なのさ……。」

「じゃぁ、夕飯は胃に優しいもの作ってあげるぴょん!」

提督「あぁ、頼む。」



吐いた物を洗い流し、口元を含め綺麗に顔を洗い、改めて気合を一つ。

そして、提督は艦橋へ再び戻ってきた。


390 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 00:36:13.24 ID:4HB+eitj0


艦内 士官用 個室



びちゃびちゃと吐瀉物を吐く音が室内に響く。



提督「なかなか。きついなぁ……。」フィ

「ねー。」

提督「なに勝手に入ってきてるんだ?」

「そろそろご飯の時間だからリクエストをと思ったっぴょーん。」

提督「何か見たか?」

「げーげー吐いてる汚いおっさんを見た。」

提督「見てたか。」

「うん。」

提督「他の連中には黙っていろよ?」

「指揮官が体調崩してるなんて吹聴して回るほど野暮じゃないよ。」

提督「…………、ちげぇよ。プレッシャーに弱いだけさ……。」

「プレッシャー?」

提督「あぁ、毎度の事だが鎮守府総勢を動かすとなるとな。敵もやはり強力だからな。」

提督「被害0なんて事はまず無理だ。」

「そんなものかなぁ?」

提督「誰も死なずに勝つなんてのは物語の中だけだ。」

提督「昨日まで一緒に飯食ってた間柄の奴が今日死ぬとかがざらだ。」

「繊細なのねぇ。」

提督「毎度毎度、胃がきりきりと痛むのさ。」

提督「俺の指示が一つ間違えば全員死ぬなんてのが有り得る。」

提督「傲岸不遜で通して行きたいがな。やはり不安なのさ……。」

「じゃぁ、夕飯は胃に優しいもの作ってあげるぴょん!」

提督「あぁ、頼む。」



吐いた物を洗い流し、口元を含め綺麗に顔を洗い、改めて気合を一つ。

そして、提督は艦橋へ再び戻ってきた。


391 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/30(月) 00:37:21.36 ID:4HB+eitj0
また二重投稿やってしまった……
>>390は見なかった事にしてください
392 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 00:41:21.40 ID:4HB+eitj0

艦橋内 作戦司令室


提督「前半戦は終了だ。こっから先はブラフをいかに効かせるか勝負だ。」

提督「配られた手札は変えれねぇ。不知火。被害報告を頼む。」



気合を入れるかのような独り言を一つした後、不知火からの報告を受ける。



不知火「撃沈ですが外周ピケット担当艦の駆逐艦娘が4名。

防空担当艦に2名。空母艦載機艦戦隊の損耗が搭載機数の5割です。」

提督「グラーフ達以外が結構落とされた感じか。」



精鋭揃いといえど規格外はほんの一握り。



提督「存外、被害が少なく済んでいるな。」

大佐「流石ですね。」

提督「えぇ、ここまで少ないのは後の作戦も有利に運べますからね。」



「General!」



大佐と会話をしている所に指揮官としてのジェネラル呼びで提督を呼び出す声がする。

提督「指揮官の少将提督だ。サラトガか?どうした?緊急事態か?」



所属はあくまで米軍。

その為指揮権を一時的に借り受けている形の為階級での呼び出しをしてくるとしたら

サラトガかアイオワのどちらかだろう。

そして、タイミングがグラーフ達へ夜間ハラスメントを指示しようかとしてのタイミングだった為

サラトガかと推測したのだが、それは間違いではなかったようである。



「サラの子も参加させていただいて良いでしょうか?」

提督「?」

提督「夜間攻撃機を所持しているなら是非お願いしたいが……?」



F6F-5Nといった機材は米軍から日本海軍へも供与されている。

わざわざ使用許可を取るような物ではないはずと頭で考えれば目の前の大佐がやっちまったの表情。

ははぁ、成程。



提督「大佐、新鋭機をお持ちですか。」


しかも夜間攻撃へ移ろうかというタイミングでの申し出。となれば夜間攻撃機で間違いない。


大佐「すみませんね、隠す心算ではなかったのですが。」


新鋭機ともなれば同盟相手でも出来れば秘匿しておきたい物だ。

この狸め、と思いながらどんな新鋭機が出てくるのやらとはやる気持ちを押さえ訊ねる。
393 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 00:42:47.50 ID:4HB+eitj0


提督「サラトガは一体何を持ってきているのですかね?」

大佐「F7Fですよ。」



こいつぁ驚いたと提督が驚いた顔をして見せればしてやったりの大佐。

双発艦上戦闘機、それも夜間用とくれば3Nのレーダー強化型に違いない。

しかし、指揮権を借り受けているとは言え

秘匿しておきたい新鋭機をわざわざ自分に使用許可を求めてくる辺り……。

どうやら大佐も苦労してそうだと、なんとはなしに同情を禁じえない。



提督「うちにも是非、融通していただきたいものですな。」



明石のルートに出回ってないという事は完全に試作も試作。少数生産も良いとこの物。

何とは無しに明石の悔しがる顔が思い浮かぶ様である。




大佐「それは……、少将次第でしょうか?」



含むような言い方に言外の意図を悟る。



提督「休憩がてら甲板に出ますか。夜間攻撃はあくまで嫌がらせですからね。」

提督「グラーフ。」



レシーバーのスイッチを入れグラーフを呼び出す。


394 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 00:43:55.02 ID:4HB+eitj0


グラ「Admiral、何か用かな?」

提督「夜間攻撃の指揮はお前に任せる。編隊の数が少ないから任せても大丈夫だろ?」

グラ「承知した。」

提督「頼む。」



提督から頼むといわれグラーフは瑞鳳隊の援護の為、自己艦戦隊の夜間攻撃機を上げる。



グラ「Adler隊は上空援護、Falke隊が下りてUhu(鷲ミミズク)隊があがってからだ。」



Uhu隊、その愛称を部隊名にそのままに艦載型へ無理やり改造した部隊。

He219改艦上型 双発夜間攻撃機であり機上レーダーを積んだ夜の愛し子。



グラ「さてと瑞鳳の方はどうであろうか?」

瑞鳳「大丈夫、彗星艦爆隊は準備万端なんだから!」



頭がおかしい狂人集団の中でも一際いっちゃってる搭乗員妖精が乗る艦爆隊。

彼らは夜間攻撃隊でありながら急降下爆撃もやるいかれ。



瑞鳳「がんがん殺っちゃうんだから!」

サラ「Hi ! Generalから許可をいただきました!サラの子も護衛しますね!」



といってもその武装は胴下パイロンに魚雷を一発抱える艦攻仕様でこちらも同じく殺る気まんまん。

血の気の多い姫達だとやれやれ感のグラーフ。

期せずしてここに独、日、米の夜間攻撃隊が揃い踏みとなった。

395 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 00:45:29.28 ID:4HB+eitj0


強襲揚陸艦 甲板



提督「煙草を吸ってもいいですかね?」



相手からの承諾を得て手持ちの紙巻に火を点ける。

ふいと一息。



「それで 「まずはお話したいことが。」」



二人同時に話始め。どうぞどうぞと譲りあった後、提督から話が始った。



提督「米軍は私達からの応援要請がなくても自分達だけで出撃される心算だったんではないですかね?」



無言の肯定。



提督「うちの不知火がそちらに救援への援助打診をした後が早すぎたのが気になりましてな。」

提督「あらかじめ準備済みだったという気がしてならんのですよ。」

提督「それが悪いとか言うつもりは一切ありませんし

   寧ろ大助かりな現状をみれば何ゆえにそれを備えていたのかを伺えないですかね?」



暫しの間が空き。



大佐「成程、ペンタゴンの分析通りのお方のようですね。」



CIAではなくペンタゴンね。と心の中でごちる提督。



大佐「我々は現在救援に向っている拠点が敵に襲撃を受けていた事は事前に把握していました。」

大佐「ですが、そこはそちらの海軍の拠点であり我が国が同盟国であったとしても。」

提督「勝手に救援を派遣するのは侵略行為と他の国にとられかねないでしょうね。」



そう、仮に同盟相手が攻撃を受けていたとしても救援の要請が無い限り

勝手に動けばそれは内政干渉であり侵略行為の烙印を押されかねない。



大佐「我が国が攻撃を察知した時点でそちらの上層部、軍、政府双方へ

   外交ルート等を用いて救援の必要性を説いていたのですよ。」



はて?ならば何故軍令部が把握していなかった?

単純な疑問が思い浮かぶがそれの答えは提督が口に出す前に大佐が答えてくれる。

396 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 00:46:44.52 ID:4HB+eitj0


大佐「我が国は少将提督の国の上層部に強い懸念を抱いています。」



成程、つまりはそういう事か。



提督「情報を止めた連中が居ると。それも思いもかけないような上の方に。」

提督「それでは、独自に私が救援に出ると言う話を持ちかけたのは渡りに船だったという事ですか。」

大佐「その通りです。因みに我々の方でも救援に向う上で日米合同の形を取りたかったですからね。

   その上で少将提督の鎮守府に出撃していただきたかったと言うのはあります。」

大佐「そして、今後を見据えて我が国の利益を守る為にも少将提督には協力者であって戴きたい。」



本題が来たかと思う提督。

そして、成程なと得心。

言葉の端々に大佐が同じ軍人でもエスタブリッシュの出身臭い教養を感じては居た。

米軍人としての出世コースの一つである潜水艦乗りとしての知識、

かと思えばミュージカル等の文化教養も備えている。

加えて自分より随分と若そうでありながら中将の補佐として観戦武官も勤め上げる。

397 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 00:49:42.12 ID:4HB+eitj0


提督「質問ばかりでなんですが大佐はTIMEの表紙を飾られるおつもりですか?」

大佐「今ではなく4年後に。」

提督「州知事?上院議員?どちらの道を進まれるおつもりですか?」

大佐「はははは。少将提督は実に聡いお方だ。」

大佐「今後とも、どうぞ良しなに。」



質問への答えをはぐらかすように握手を求める手。だが、答えは既に出ている。


398 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/30(月) 00:50:46.99 ID:Cs8Z4y0/O
乙です。
更新されてないか毎日確認するのが日課になる程楽しみにしてました。 良かった〜

人間なんだからミス位しますよ、気にしない気にしない。


399 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 00:51:52.17 ID:4HB+eitj0


提督「えぇ、今後とも宜しく。

それで今後も仲良くする為に教えていただきたいのですが

この船の乗員は海兵隊の者が多いようですが拠点救出後は制圧作戦でもするつもりなのですかね?」

大佐「必要とあらば。体つきで分かられましたか。」



同じ軍人でも特殊部隊員と一般機関員とではやはり色々違い、ろくでもねぇと思うが。



提督「何ゆえにかの理由をお教えいただけないですか?

まさか星を1つ増やす目的ではないでしょう?」

大佐「この救援作戦は南太平洋での潮目を変えるのは間違いないでしょう。」

大佐「南太平洋一の大国との航路が復活すれば資源や食料、その他色々の輸出入が活発化します。」

提督「パワーバランス、軍事ではなく経済の方での問題ですか。」

大佐「えぇ、我が国がこれからも優位を保ち続ける為に。」



えげつない。敵からの監禁が味方からの監視付監禁に変わるだけか。

とはいえ解放した後の海上航路の護衛を向こうが引き受けてくれると言うのなら利用しない手は無いだろう。

日本に余分を裂くだけの国力は無い。



提督「我が国の担当をきちんと同席させてケーキの配分にありつけさせていただけるんでしょうか?」

大佐「もちろんですよ。」

提督「公文書館に残る形でお願いしたいもんですね。」



口約束では困る。



大佐「決定権のある上に上申しておきましょう。」


ここまで準備出きる権限を与えら得ている人物の上。

恐らくはアメリカという国を一人称で語れる人物。

大佐の後ろ盾を垣間見たようで少し背筋に冷たいものを感じる。



大佐「余計な詮索はおよしくださいな。お互いの為にも。」



そういい残し大佐は艦内へと帰って行った。

深く、ちりちりと煙草が一気に燃え尽きるまで肺に煙を送り深く深く吐き出す。

そして、兎型の携帯灰皿で火を消す。



提督「予想以上にこっちの尻に火が付いている状況か。」

提督「ろくでもねぇ。」



吐き捨てるように呟くと提督もまた艦内へと戻っていった。


400 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/07/30(月) 00:59:58.55 ID:4HB+eitj0
レス数を抑える為に1レスに詰め込もうとすると改行のしすぎって怒られますのん……
今回の更新はこれにて終了です、当初の予定が大幅に狂っています、ごめんなさい、まだ結構続きそうです
計画性の無さが露呈していますが宜しければ今後もお付き合いいただけると幸いです。



次回嘘予告他

どこかの鎮守府

大淀「提督が死んでいる!」

明石「……、頭を鈍器で殴られたようですね。」

明石「これは…、南瓜?」

大淀「まさか!?」

涼月「てっ提督がわるいんですよ…。」

涼月「南瓜はもう飽きたって言われた提督が……。」

88鎮守府

提督「上官を撲殺。」

不知火「ですが対空に関しての戦績はなかなかのようです。」

提督「何が原因なんだ?」

不知火「痴情のもつれと書いてありますが。」

提督「困ったもんだ、まったく。」

こうしてまた問題児が一人地獄へ着任した。


Q1 グラーフの艦載機は最新鋭なのに何故瑞鳳の機体は零戦なんですか?

A  敵に体当たりして壊す事が多いのでその度に買い換えていたらお高くなる為コスパ優先だからです

Q2 サラトガの機体はどうしてF7Fなの?もっといい機体あるじゃん!

A 双発機のロマン優先です。
  またF8Fの夜間攻撃機もありますが調べている上で武装がロケット弾等になっていた為採用を見送りました


感想、応援レスいつもありがとうございます!いつも楽しみにしています!よかったら気軽にレス下さい!(レス乞食)
以上で本当に更新終了です、ではまた次回の更新でお会いしましょう!
401 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/30(月) 01:04:54.18 ID:4HB+eitj0
エリア88モチーフなので空戦描写をどこかで入れたいと思ってやりました後悔はしてないです
燃え系のSS増えないですね、追っかけてた方のまた止まっているし……
増やす為にはまず自分からの意思もあり書き始めたものの別のところでやったほうがいいのかしら……
萌え系SSは多いのだけど、なぜでしょうねぇ……、ぐぬぬ
需要が少ないであろうSSにお付き合いいただいている皆様に改めての感謝です
402 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/30(月) 11:43:01.59 ID:C719rEF5O
確かに燃え系は少ないねぇ
だからこそここを楽しみにしてるのもあるんだけど
あとうーちゃんに出番あって嬉しかったw

おつ!
403 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/30(月) 11:58:55.93 ID:Cs8Z4y0/O
乙です。
萌え系が多いからこそ、この燃え系が際立ってます。

更新されてるのが嬉しくて、作者殿が投下してる時にコメ打ってしまい作者殿、読者の方々申し訳ありません。
404 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/30(月) 16:50:15.79 ID:eFB3GoitO
グラーフの妖精さん達は、あの姿でこの会話をしているのだろうかw

ずほの妖精さん達は薩人マッシーンじゃないですかーやだー

戦場にいるシェフとかもうアレじゃん!
勝ち確じゃない!


とツッコミ満載で楽しかったです。
405 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/30(月) 18:36:17.82 ID:QVQRpYBUO
だが待ってほしい。沈黙の戦艦だった場合乗ってる船が……
406 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/30(月) 19:11:31.66 ID:Cs8Z4y0/O
405>>
あれはマズイ料理作るコックのおっちゃんだったからヘーキヘーキ
407 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/30(月) 20:34:11.71 ID:q8mFYEtB0
空戦中エクスクラメーションマーク山盛りだったけどちょっと多すぎで熱くなるより軽くなってしまった感w

大佐の取り扱いは至難を極めそうだなあ、提督が目を離したらあっという間に内地に食い込んでいそう
乗りたくもない御輿に乗せられんように気をつけないと
408 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/30(月) 22:07:28.93 ID:S7i/OmjHO
番外編でうーちゃんの1日が見たくなった
仕込み終わったら何してんだろね
409 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/31(火) 20:58:08.72 ID:i9bYQBct0
新谷世界にはファントムで木の葉落としやるイカレ自衛官がいたなそういや
410 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/06(月) 09:59:36.89 ID:aKOmevrqO
薩人マッシーンが居るってことはだ。

筋肉モリモリマッチョマンの変態な妖精さんも居る可能性が?

セガールは鎮守府にいたし
411 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/06(月) 12:51:41.83 ID:q/J8+Z29o
ちょっとエリアが違うと変態仮面もいるからなぁ
412 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/12(日) 09:09:35.72 ID:Rhs3aauG0
空母の夜戦のダメージだと夜間ハラスメントって良い表現かも
413 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/12(日) 23:56:04.74 ID:G/dalB0W0
夜になっても気温が落ちない……
毎日暑いですね、頭に話は浮かんでもなかなかアウトプットにまで時間が掛かる……
本日の更新に参りました、お時間宜しければお付き合い下さい
414 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/12(日) 23:57:54.04 ID:G/dalB0W0


強襲揚陸艦付近 海上



グラ「夜間攻撃に出ている部隊が敵と接触するまで少し時間があるか。」

グラ「サラトガに瑞鳳、よかったら珈琲はどうかな?」



無線での珈琲ブレイクのお誘いに二人がグラーフの元に集まる。



瑞鳳「流石グラたん。珈琲美味しいね!」

サラ「うぅ〜ん。実にperfectな味です。」



夜間攻撃隊を出しているのは3人だけであり

その管制を行う者が一箇所に固まるのは良くないのだが。



瑞鳳「南の海でも夜は少し冷えるね。」

グラ「ならば私のマントを貸そう。」

瑞鳳「やだ、グラたん。天然スケコマシなんだから…… /// 」

瑞鳳「そういう所愛してるぅ〜 /// 」ダキツキ



ポーン!



グラ「あぁ、ありがとう。さてと、とりあえず、

   此方の部隊が敵に届け物をするより先にお客さんがお越しのようだ。」

サラ「確かに、電探に機影が幾つか反応しているようですね。」



ウェラブルグラスに新たに表示される敵編隊襲来の報。

先遣隊と接触することなくどうやら上手くすれ違ったようである。

抱きついてきた瑞鳳を体から剥がしながらサラトガのほうに向き直る。



グラ「こちらに夜間攻撃機があるなら当然相手にもあると考えて当然であるな。」

サラ「でしたらサラにお任せいただけますか?」



ふわりとスカートの裾をたくし上げる。

415 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/13(月) 00:01:21.03 ID:tMhG3Ubb0


サラ「サラはお茶会を邪魔する不埒な深海棲艦を許しましょう。」



あら大胆と瑞鳳が感想を漏らす間に

スカートのドラムマガジンをトミーガンに模した射出装置に嵌める。



グラ(ほう、心が広いのだな。)



思ったよりまともなのかなとグラーフが感想を抱いて直ぐ後。



サラ「だが!このトミーガンが許すかなぁ!?」



憤怒の相をしたサラトガがサブマシンガンをぶっぱなし始める。



グラ  ブフォー 

瑞鳳  ブハー



サブマシンガン特有の弾のばら撒きが始まり強烈な音が

けたたましく空間に響き渡り艦載機が顕現し夜空へと消えていった。



サラトガ「ふぅ〜、快感 /// 」



一仕事やりとげた。そんな晴れやかな顔を見せるサラトガ。

夜の闇にF6F-5Nが舞い上がり溶け込み消えていく。

暫くすれば仕事をきちんとこなしているのか方々で火の手が上がるのが見える。



グラ「ふむ、私の部隊とスコア勝負をしようというのか。面白い。」

グラ「見せてもらおうか。合衆国の夜間攻撃機の性能とやらを!」



どうやら艦隊の上空警戒として先に上がっていたグラーフの夜間戦闘機と

サラトガの夜間戦闘機の搭乗員同士無線での会話で撃墜数勝負をする事が決まった様である。

しかして30分もすれば勝敗が決まる。



サラ「Oh My God …… 」

グラ ンフ― (ドヤッ)

416 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/13(月) 00:01:46.76 ID:tMhG3Ubb0


このドイツ人!新人への容赦なし!



グラ「さてと、勝負であったからな。」



ずいと差し出すのは手袋を嵌めた両手。



サラ「これを差し上げたのは内緒にしてくださいね。」

グラ「勿論だ。」ンフー



勝負に勝ったグラーフはサラトガから夜間戦闘機F6F-5Nをカツアゲ、

ではなく善意で1機、コレクション目的で受取っていた。

417 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/13(月) 00:05:58.72 ID:tMhG3Ubb0


グラーフ達が迎撃に当たっていたその頃、

提督は艦内でせわしなく作業をしている明石を見つけ色々打ち合わせを小声で行っていた。



明石「流石アメリカ級ですね。

   艦内に手術室やらまぁ、まぁ、色々充実してますよ。」

提督「ワスプ級の拡大発展型だからな。その辺も数は増えているだろうさ。」

明石「キッチンがちょっとしょぼいと感想も聞きましたけどね。」

提督「あいつは料理……、そうだな料理が生きがいだからな。」

明石「たまに料理に違う意味も混じってきますがそれは置いておきましょう。」

明石「ところで提督はどういった御用ですか?」

提督「分かっているんだろ?俺はこいつの簡易ドックのシステムが欲しい。」

提督「データとして持って帰れそうか?」

明石「流石に提督は悪ですねぇ。御参考にどう使うか教えていただけます?」

提督「コンテナモジュール化できないかなと思っているんだ。」

明石「ははぁ、成程。」



提督の考えはこうだ。簡易入渠施設を海上輸送に使用される

12フィートコンテナに納まるように改造、

ひとつのユニットとして独立させるという物である。

コンテナという規格の中に押し込めることで簡単に運搬、展開が出来るようになる。

こうする事で貨物タンカーや鉄道貨物、あるいはトラックに載せて海上、陸上。

場合によっては貨物輸送機からの現地への投下。

すばやく艦娘を展開する為に必要不可欠な修理施設を設置可能になるという考えなのだ。



提督「コンテナでモジュール化しておけば

   貨物タンカーが移動鎮守府として使えなくもないだろ?」ニヤリ

明石「提督の考えはどちらかというと見た目の偽装に重きが置かれているようですがね。」ニヤ

提督「お前には敵わねぇな。」

明石「付き合いが長いですからね。」

提督「じゃぁ、まぁ、そういう訳だ。頼むよ、あぁ、それから飯について何か聞かれたら

   あいつには艦橋に持ってきてくれと伝えておいてくれ。」

提督「あとな、他にもぶっこ抜いてるデータ、ばれない様にしとけよ?」

明石「勿論ですとも。」



去り行き際に小声で注意する提督に同じく小声で返す明石。

悪巧みは計画的かつ内密にという奴なのである。


418 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/13(月) 00:09:02.64 ID:tMhG3Ubb0
艦内をぐるりと色々見て回って後。

提督は艦橋にある作戦司令室へと帰って来た。



提督「いやぁ、休憩ついでに物見遊山とばかりに
   
   艦内を散歩してきたのでお待たせしました。」

大佐「いえいえ。私のほうは先に夕餉をいただいていますよ。」

大佐「実に腕前のいいコックをお持ちですね。」

提督「料理の質は士気に直結しますからね。」

不知火「司令。グラーフさんから此方に襲撃をかけてきていた

    敵夜間攻撃隊の迎撃を完了したとの報告が来ています。」

提督「敵に追加を出す余裕は無いだろうが一応第二陣、第三陣の可能性もあるから

   気を引き締めて引き続き警戒に当たるよう指示を出してくれ。」

提督「防空担当連中はどうだ?」

不知火「現時点での追加の撃沈は出ていません。

    また、長門さんを始めとする別働隊には出撃をしていただきました。」

不知火「他にも再度の補給が必要だった娘達には補給をすませ

    夜間のうちに交代で休憩に入らせています。」

提督「敵の機動部隊との接触は?」

不知火「現在の速度のままですと明朝、夜明けと同時くらいです。」

提督「払暁戦か。」



日の出、日の入りの時間というのは敵味方双方の判別がしにくくなる為本来は避けるのが定石。

当然ながら提督達所属の艦娘や使用艦載機に敵味方判別装置を積んではいるものの

空母艦載機は発着艦はしにくくなったり艦娘は視認性が落ちるなど積極的に仕掛けるべき時間帯ではないのだ。



提督「グラーフ達の夜間攻撃隊がどれくらい嫌がらせを出来るかが重要そうだな。」

大佐「夜間ハラスメントですか。」

提督「その重要性についてはお国でしたらお心辺りがあるのでは?」



ベトナム戦争時、ベトナム兵狙撃手による連日の夜間襲撃に業を煮やした米軍が

山一つを大量の軽機関砲に対空砲で禿げ山にしたのは軍事界隈では有名なお話。



大佐「眠らさせてもらえないというのは判断能力が落ちますから。」



苦笑しながら返事を返す大佐。



大佐「私どものサラトガも仕事をしてくれるでしょう。」

大佐「それに期待する事にしましょう。」

提督「ですな。」

提督「で、敵の機動部隊を叩いた後の話なのですが、敵の物資集積所。」

提督「デポを叩く方を優先します。」

大佐「敵の糧道を断つのは戦争を行う上での初歩ですしね。」


419 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/13(月) 00:11:20.23 ID:tMhG3Ubb0


再び強襲揚陸艦付近 海上



グラ「さてと、そろそろか……。」



機上レーダーが敵の艦隊郡を捉え巡航高度から

一気に敵艦隊に向け高度を下げ始める夜間攻撃隊。



グラ「サラトガ、一番槍は譲ろう。盛大に花火をあげてくれ。」



3人の夜間攻撃隊は艦攻、艦爆、艦戦の役割分担。

蝿叩きがグラーフの仕事ならば。



サラ「Okey−dokey  まずは、定石どおり外周から、ですね!」



野戦攻城、蟻の一穴。

艦隊布陣を城に見立てるのであれば

城の本丸に陣取る大将とその護衛を引き吊りださねばならず。

城に籠もられていては倒せない。

その為にも外堀、石垣に相当する外側を突き崩し。

野戦に持ち込まないといけないのだ。



グラ「敵に祈る神が居るとすれば祈る時間が来たようだな。」



敵艦隊上空に展開する夜間警戒機を叩き落しながらグラーフがポツリ。



サラ「No、深海棲艦達の神は留守です!」

グラ「?」

瑞鳳「?」

サラ「休暇を取ってベガスに行っていますから。」フフン

得意げにドヤ顔をするサラトガ。

グラ「成程、それは痛快だな!」

瑞鳳「うふふ。瑞鳳艦爆隊、がんばっちゃうんだから!」



グラーフ達の夜間攻撃は徹底して外側のみに集中して行われた。

陣形内側にまで浸透攻撃をする必要性は零だから。

嫌がらせ、ハラスメントは敵の神経を逆撫でする事に意味がある。


420 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/13(月) 00:17:07.85 ID:tMhG3Ubb0


深海機動艦隊



駆逐「くそう!陣形外側の駆逐ばかり!」

駆逐「いや、駆逐だけを狙って?」

駆逐「そんな!いや、これは明らかに駆逐のみを狙っている!」



駆逐艦という艦種は一番使い捨てになりやすいが実の所、

一番数が居ないと駄目な艦種でもある。

数が多いが故に多少の損害も甘く見られがちだが……。

補充が利きにくい状態での損害は致命傷となり易い。



駆逐「敵の攻撃は一方向に集中されている…。」



輪形陣内の空母達で夜間攻撃可能な者達に迎撃に向わせるも。



駆逐「逃げられた!?」



蝶のように舞い、蜂のように刺す。

その嫌がらせはヒットアンドアウェーの徹底。



瑞鳳「盆の迎えに、ちょいと早いが、迎え火一つ、点けましょう〜♪」



軽い鼻歌、それこそ近所のコンビニへ買い物にでも行くような気楽さで指示を出す瑞鳳。

この瑞鳳が敵にとって最悪なのは

サラトガ隊の魚雷が当り火が灯れば損害無視の艦爆隊を突っ込ませる事。



駆逐「外周のナ級達が……!」



そして。



駆逐「うっ、眩しい!」



嫌がらせとばかりに落とされる照明弾。

夜の暗さに慣れてきている所に照明弾の強烈な光は目に刺さり、

同じくついでで音響爆弾も落としていく周到さ。



駆逐「味方同士での砲撃は止めろ!」



どんどんと響く音をすわ敵からの砲撃かと

勘違いした愚か者が音のするほうへと砲撃を開始する始末。
421 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/13(月) 00:17:35.31 ID:tMhG3Ubb0


駆逐「おのれ!おのれぇ!!」



波状攻撃での嫌がらせは自分達への物理的被害は少ないが。



駆逐「艦隊全艦は敵の再度の夜間襲撃に備えろ!」



残存艦全てに指示を飛ばし緊張を持って夜間警戒に当らせる駆逐棲姫。

夜間攻撃に対して予め備えており警戒はさせるものの交代で休憩をさせる事の出来た提督達と

艦隊全艦で休憩を入れる事無く敵からの再襲撃に備えた深海棲艦達。

その差が出るのはもう、間もなくである。
422 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/13(月) 00:19:12.76 ID:tMhG3Ubb0


提督達が駆逐棲姫達の機動艦隊へ向け針路を取っていた丁度その頃。

また幾つかの部隊が海上を夜陰に紛れ移動をしていた。



時雨「ねぇ長門。」

長門「どうした?」

時雨「ゴーヤ達の報告を考慮して

   敵の機動艦隊指揮官は何人くらい残っているかな?」

長門「そうさな提督達が向っている機動艦隊については少なくとも1名。」

長門「多く見積もっても2名ほどだろうさ。」

川内「そんなものなの?意外に少ないんだね。」

長門「あぁ、敵の攻撃パターンからいって

   あまり機動艦隊に置ける艦載機の扱いになれていない節がみてとれたからな。」

長門「敵が指揮艦へ攻撃を仕掛ける際の攻撃が3方向からだった。」

長門「外周配置のレーダピケット艦……、本来のレーダーピケット戦術とは違うんだがな。」

長門「まぁ、とりあえずでの問題ではない、電探での早期警戒艦と思ってくれ。」

長門「艦隊の頭脳をやるつもりなら処理負担を増大させ

   処理落ちさせるのが教本通りでの攻め方になる。」

時雨「そうなんだ。」

長門「あぁ、戦術的な話をするのであれば艦隊の目を潰すのが最優先だ。」

摩耶「確かに敵の偵察機やら電探持ちを落すのは重要だもんな!」

423 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/13(月) 00:21:10.44 ID:tMhG3Ubb0


長門「それを考慮すれば敵がとるべき攻撃は一方向に飽和攻撃をしかけ

   一点突破を目指すやり方が正解だったんだ。」

時雨「でも、それを取らなかったんだね。」

瑞鶴「だから機動艦隊の指揮に慣れていないものが指揮官であると判断できたわけね。」

長門「そういうことだ。」

瑞鶴「じゃぁさ、なんで最大で2名なの?」

長門「それはこの周辺海域の状況からの話から説明しないといけないな。」

川内「結構面倒そうだね。」

長門「まぁ、聞いてくれ。

   今回敵が割ける指揮官クラスの人員としては前線から後方支援まで考えても最大10名ほどだ。」

長門「これ以上を割くと他の戦線の支障が出るギリギリだな。」

長門「その中で前線に遅滞なく物資を送る補給線の構築を考えると

   最低で2名以上は集積地の拠点守備に回さなければならない事、

   前線での攻撃と攻撃地点以外の各鎮守府への牽制に必要な人数を考えていけばだ。」

長門「機動艦隊にまわせる指揮官クラスは2名から3名。

   その内の1人についてはゴーヤ達が仕留めている為、

   最大2名と結論づける事が可能という訳だ。」
424 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/13(月) 00:22:57.84 ID:tMhG3Ubb0


時雨「流石だね。」

時雨「それで、今、僕らが向っているのは?」

長門「大小幾つかあるなかで

   敵にとってやられると痛いであろう集積所だ。」

摩耶「でもまぁ、本当にあるのかねぇ。」

長門「この周辺の海域図と以前から掴んでいる敵泊地に拠点。」

長門「それらから割り出した凡そこの辺りにあるだろうでの位置だからな。」

長門「我々の部隊かウォースパイト達の部隊のどちらかが壊滅させればいいさ。」

摩耶「まっ、私としちゃ出番があればそれでいいけどさ。」

瑞鶴「島風の死を無駄にしないためにも派手に暴れてやろうじゃない!」

長門「提督曰く、敵の退き口を潰す為の布陣だそうだ。」

時雨「相変わらず提督の考えはえぐいや。」

川内「まぁ、敗軍の将っていうのは必ず討ち取るべきだからね。」

時雨「そうだね。」

川内「負けた相手を逃がせば相手は臥薪嘗胆の思いで復讐に帰ってくる。」

川内「それも前回の負けを己の糧として一回り強くなって帰ってくる。」

摩耶「あぁ、そうだね。そいつだけはいただけない。」

瑞鶴「負けは人を強くするもんね。負けを知らない奴はここぞという時が弱い。」

瑞鶴「ぎりぎりの戦いをする上でそういう心が弱い娘とは組みたくないわ。」

長門「同感だ。まぁ、ここに居る者達には心配はないと思うがな。」

長門「我らを送り出した提督はなんと言ったって人生の負け組みだからな。」

時雨「それは本当かい?」

長門「あぁ、勿論だ。でなければ88鎮守府の提督なんかやっていないだろうさ。」

川内「じゃぁ、敗北の味を知っている提督が指揮を執る私達が勝つというの当然かー。」

摩耶「まっ、そうだろうさ。」



ここで一同大笑い。



長門「天国の扉は開いた。」

長門「後は我々が階段を上らせてやるだけだ。」

瑞鶴「ふふふ。良いわね。それ実にいいわ!」

長門「全員、気を引き締めて掛かるぞ!」



応とその場に居た者達が全員が応じる。

この戦いにおける天王山の訪れはもう間もなくである。


425 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/13(月) 00:29:07.01 ID:tMhG3Ubb0
本日の更新はここまで
次回から話のタイトルが変わります、といっても単なる続きに繋がるだけですが…
後編が長く無計画に続いちゃっているので仕切りなおすべくタイトルだけ変更
次回から天国の階段編へとつながります、尚、雪風はウォースパイト、北上、ポーラ組みと行動しております
乙レス、感想レス、いつもありがとうございます、色々勉強になるレスも頂く事があり感謝です
空中格闘戦の部分が空回っていたとのレス、申訳ありませんでした
量を減らすべきだったかと頂いたレスを見直して反省です
関係ないですが、点滴を受けている間の時間って何も出来ないで暇ですね
皆様、体調にお気をつけください、以下、もう少しだけ瑞鳳を採用するか隼鷹を採用するかで迷っていた際に書いた
隼鷹の艦載機発艦シーンのみを投稿させていただきます、ここまでお読み頂きありがとうございました
426 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/13(月) 00:34:51.11 ID:tMhG3Ubb0

酒瓶に口をつけ、くぴりと一口。

肺活量を活かし全開噴射。

あたりに酒精の香りが漂う中。

軽空母隼鷹はばさりと音を立て一巻の巻物を豪快かつ手荒に広げた。



隼鷹「剛気詔(ごうきみことのり)!」

隼鷹「黄泉の国の国主、洗鼻神、建速須佐之男命の名において召還す!」

隼鷹「黄泉より英霊、今、舞い戻り我が兵となり敵をニライカナイへ案内(あない)せよ!」

隼鷹「一二三四五六七八九十、布留部 由良由良止 布留部、布留部 由良由良止 布留部」

隼鷹「勅命! 英霊召還 急急如律令!」



死者蘇生の詔。

酒で場を簡易的に清め召還術式の発動。

陰陽師型軽空母の発艦儀式。

ぽうと巻物に挟まれていた人型に切られた式神が光り始める。

詔をあげる必要性から少し発艦に時間は掛かるが。

読み終えてしまえば一度に全機発艦が可能となる。



隼鷹「全機! 発艦!」



轟と一度に全機が上がる様は正しく圧巻。



隼鷹「何度やってもこの瞬間はたまんないねぇ。ヒャッハァー!」



彼女もまた、88鎮守府の特色ある一人なのである。



※途中の言上は布瑠の言(ふるのこと)をそのまま使用しています
 読みとしては ひと ふた み よ いつ む なな や ここの たり、ふるべ ゆらゆらと ふるべ
 中二漫画で巫女さんが割とよく使う詔でお馴染みでしょうか?

格好いい隼鷹さんを演出したかった形になります、以上ボツネタでした。
427 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/13(月) 01:52:01.05 ID:/FA5Tqqu0
陰陽道寄りの古神道か
428 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/16(木) 20:16:17.79 ID:eBmgxYMsO
続きを待ち焦がれるss です。
429 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/17(金) 10:32:11.95 ID:4/sjaTWnO
九字で召喚する艦娘も居るんだろうか
430 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/27(月) 23:33:31.85 ID:5tYPiHSO0
Html化で海域リセット!皆様、どこまで再解放されていますでしょうか?
やっとさ6-4まで辿り着きましたが相変わらずの糞さ加減にストレスマッハでございます
秋津洲は鬼回避するのになにお前さん達はなに大破してるんですかねぇ……、とイライラしだしたら止め時……
左ルートはCマスが鬼門かつお祈りポイント、仕方ないです
では、久しぶりの更新をさせていただきます
431 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/27(月) 23:37:08.94 ID:5tYPiHSO0


おまけ日常編  とある料理長のお品書き




「うし、夜間の人達への引継ぎ分の仕込みも終了。」

「さぁてと、今日は露助リクエストの食材を買いに市場へいきますかねぇ。」



パンと糊の利いたエプロンを叩き、着替えを終えると明石達の工廠へ。



明石「あっ、こんにちは。今からですか?」

「うん、司令に許可貰ってるからね。市場に買出し。」

秋津洲「預かっていた包丁の研ぎなおしも終わってるかも!」

「自分で研いでいてもやっぱり何回かに一回は研ぎなおしにださないと切れ味が落ちるからね。」

「見せてもらっても?」

秋津洲が店の奥からいかにも業務用といった包丁を数本抱えてやってくる。

秋津洲「切れ味はこんなだよ!」



ぷつりと自分の銀髪を一本抜いた後、ふっと風に乗せる秋津洲。

その髪は風にのり包丁の刃先に当った髪は抵抗なくさっくりと二つに切れた。



「いい仕上がりだね。」

明石「この包丁で斬られた人は斬られた事に気付かない事を保障しますよ。」



その切れ味、名刀級。



「市場で持ち歩くわけには行かないからね。買出しからの帰りに受取るよ。」

秋津洲「よろしくかも!」



そして、分かれた後、拠点から少し離れた所にある巨大な市場のある島へ。

432 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/27(月) 23:39:24.73 ID:5tYPiHSO0

雪風「護衛、いります?」

「まー、司令官が付けとけって言うからさ。」



脱走を危惧という訳ではなく行方不明を危惧してである。

脱走は無い訳では無いが脱走は確定と同時に高額賞金首へ変貌。

それもあり、艦娘によっては作戦中にわざと隙を見せ

懲役組みの脱走を誘発する者もいたりとなかなか闇が深い。

そして、行方不明というのも作戦中に脱走ではない原因で消える事もあるという事なのだ。



「まー、艦娘やめているとはいえ私ってば、か弱い乙女だからさ。」

雪風「よくいいますよ。」



見た目こそ少し成長した中学生くらいの少女とその妹らしき雪風。

ただ、危険度は歩く核弾頭。



「雪風はこういうのどうなの?」



雑多とした市場ならではの衣類のまとめ売りダンボール箱の中からぴらりと見せる女性物下着。



雪風 ブフォォォーッ



なんだ、その反応、乙女か。



雪風「ゆっ、ゆきかぜにはまだ、早いと思います……。」



顔を真っ赤にし手で顔を覆いちらちらとこっちを見る雪風。

ちくせう、萌え死にさせる気か。



「でも、司令官ってこういうの好きそうだよね。なんかむっつり系なエロ?」

店主A「それなら箱1つで10ドルだよ?」



超安値。



雪風「10……、10ドルですか……。」ムムッ



鎮守府の定期便で足りない物を買いに来ることもあれば。

休暇中の艦娘が複数人数で相互監視のもと、市場に訪れる事もある。

あるいは、作戦が終わっての帰りに市場の露店で一杯と割と自由でもある。

ついでに言えば周辺海域の治安維持も88鎮守府が担っているといった

様々な事情も有り市場の人達とは大体が顔見知りでもある。

その為か気さくに声をかけられることも多い。


433 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/27(月) 23:40:03.36 ID:5tYPiHSO0

「結構安いのね。」



セクシーランジェリーの部類になるのだが予想外の安さ。

10ドルという言葉を呪文のようにぶつぶつと繰り返す雪風。



「これは童貞殺し。」



いわゆるタンキニという奴が箱から覗いていたので引っ張り出し雪風の眼前にちらり。



雪風 ブフォ ――― ッ



なるほど、戦場の鬼神と言われる雪風にも弱点はあるようだ。

少し意地悪をしてみたくなるのも性という奴である。



「こんなのどうよ?」

雪風「あっ、それは天津風さんが着用しているのを見たことあります。」



Vストリングなのだが、まじか、あの痴女。



雪風「随分前に所属していた所での話ですが。

   上官であるしれぇが強要していたんですよ。」

「あぁ……。」

雪風「当時の雪風に今ほどの力があれば事故死して貰っていたんでしょうけれどね。」



ちょっと嫌なことを思い出させてしまったらしい。

434 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/27(月) 23:41:14.92 ID:5tYPiHSO0

店主B「おーい、料理長。いい加減うちの店に来てくれよ。」

「ん?おう!おっちゃん。ごめんよ!忘れていた!」



少しばかり重くなっていた空気を読まずに声をかけてきた精肉店の店主へと向き直る。



店主B「和牛を輸入するのは大変だった。」

「その分の金は払っているでしょ?」

店主B「いただく物はいただいているからね。」

重そうに店主Bが肩から下ろしたのは。

雪風「今日のメイン食材ですか?」

「そ、露助からのリクエストに使う食材。」

「司令官に正規の手続き踏んで申請してきてたからまぁ、応じてあげようかって所。」

「故郷の味が食べたいってね。」

雪風「故郷ですか。」

「木の股とかから生まれたのでなければ誰しも故郷と呼べる場所くらいはあるさ。」

「いい思い出にしても悪い思い出にしてもね。」

雪風「そう、ですね。」



少し思う所があるのか小さく首肯する雪風。



「そのダンボールの衣類は私が雪風に買ってあげるよ。高いもんでもないしさ。」

雪風「えっ!?いいんですか!?」



なんだこの喜びようは小動物か。



「後は、頼んでいた香辛料を受取って帰るよ。」

雪風「はい!」



大き目のダンボール箱にブロック肉が入ったクーラーBox。うん、なかなか量がかさばる。



店主A「台車を貸してあげよう。ちょっと待ってて。」

「ありがとうね!」

店主A「台車は次回にでも返してくれればいいから。」



そういい店主Aは何処かへと去っていった。

大きな荷物を抱え店主Aの帰りを待つ二人。

435 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/27(月) 23:42:19.59 ID:5tYPiHSO0


「ちょっと道の横に避けていようか。」

雪風「そうですね。」



通りの邪魔にならないように荷物を避けていた時に事件は起きる。



チンピラ「あいたたたぁ!」



雪風がどけたダンボールにわざとらしくぶつかり大げさに痛がるチンピラ。

そして、そこに台車を持って戻ってくる店主A。



チンピラ「これは治療費と慰謝料をもらわねーとなぁ。ガキ共よぉ。」

チンピラ「両方あわせて1000ドルで我慢してやるわ。」

店主A「オイオイオイ。」

店主B「死んだわあいつ。」


436 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/27(月) 23:43:21.27 ID:5tYPiHSO0


1分後



雪風「1000ドル分の治療費ですともう少し骨を折らないと駄目でしょうか?」

「うーん、両手両足折ったから後もう少しとなると肋骨かなぁ?」

チンピラ「たったすけ」

「1000ドル渡したでしょ?だったら金の分だけいい声あげなよ。」

「1000ドル分だけの美声聞かせてくれるつもりだったから声かけたんでしょ?」

「じゃ、後は肋骨ね。」



笑顔で拳を振り上げた丁度その時だった。



顔役「姉さんたちうちの馬鹿がすみません!」



血相を変えて市場の顔役がやって来た。そして、その勢いのまま土下座。



雪風「土下座なんて知っているんですね。」

「まぁ、知っている知っていないはどうでもいいけどそんな価値の無い土下座されてもね。」

「顔役ならさー、治安を良くするべく動くべきなんじゃない?」

顔役「返す言葉もございません。」

「いやさぁ、1000ドルって大金よ?」

「それをさー。」



艤装の力を使わなくても強い艦娘は強い。

そして、自分達以外にも被害が起きている可能性もある訳で

ねちねちと嫌味を言い続ける。

その結果。

437 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/27(月) 23:45:22.38 ID:5tYPiHSO0

「ただいまー。」

明石「あっ、お帰りなさい。楽しめました?」

「それがさー、聞いてよー。」



女子会のノリで市場での出来事を話す二人。



「侘び代わりに私達が買った商品代金返してくれたのはいいんだけどさー。」

「あの露助がね、

 みんなから離れて買い物していた時にかつあげされてたのが発端みたいでさー。」

秋津洲「情けない艦娘かも。」

「本当だよ。かつあげされたのが恥ずかしいからって黙っていたせいでこの始末よ。」

明石「申告してくれていたら対処出来ていたわけですしね。」

「そーそー、それで、そのチンピラが味を占めたのか今回の馬鹿に及んだって訳。」

雪風「まったくもって艦娘の恥さらしです。」

「そんな訳で雪風と話して楽しいブートキャンプに御招待と思ってね。」

明石「いいですねぇ。」

明石「丁度色々新製品を試してみたかったんですよ。」

「いいねぇ。」

「私はコマンドサンボとかカポイエラとかの格闘技中心に三途の川を渡って貰おうかなって。」

雪風「雪風はスパルタンに仲間全員に声をかけてサバイバル形式で行こうかと。」

秋津洲「ちょっと同情しちゃうかも。」ウヘァ

明石「最近は大規模作戦も来ないから皆さん暇してますしね。」

「そういう台詞はフラグじゃない?」

明石「まぁ、鎮守府総員が出撃とかなると私の場合は潤うんで。」

明石「ありがたいですかね?」

「商売人だねぇ。」

明石「死んだ人間、艦娘の魂以外なら。」

明石「金さえ払っていただければ「クレムリンだろうと引っ張ってくる。」

雪風「だったですね。」


明石の決め台詞に雪風が被せる。


「だったらちょいと頼まれない〜?」ウヒヒヒヒ

明石「楽しくて利益の出る事でしたら。」ニヒヒヒ



後日、ガングートが色々な意味で死んだ事を話の結びとして語らせていただく事とする。



ガン「いやぁ〜 ――――――――― !」

 ボガーン!    

                                              ヒュ ――――――― ン!

時雨「戦艦ってあんなに飛んでいくものなんだね。」

長門「なんだ?鎮守府ホームランダービの開催か?」

スパ「いいですねー。」

438 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/27(月) 23:46:45.59 ID:5tYPiHSO0


第十三話 天国への階段


439 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/27(月) 23:48:29.59 ID:5tYPiHSO0

駆逐「こんなの聞いていた話と違う!」


この作戦における総旗艦戦艦水姫から迎撃の任務を受けた時の説明は。


「簡単な迎撃任務よ?」



自分と空母水鬼に与えられた空母、戦艦、重巡等。

それらの戦力は機動艦隊としてそこらの敵鎮守府を1つ2つは余裕で叩き潰せる。

なんなら敵の大規模拠点を落しにいくことさえ出来る程の過剰戦力。



駆逐「おかしい!」



自分の置かれている状況を考えれば絶叫せずには居られない。

最初の敵との接触で空母水姫が撤退。それはまぁ、どうでもいい。

問題はその後だ。



駆逐「勝てるはずなんだ!」



敵の空母達が搭載している艦載機を凡そ半分は落とした。

敵の駆逐艦だって何隻か沈めた。

にも、関わらず。

自分達が連れてきている空母達の艦載機の数は全体で4割も落とされている。

空母の数で言えば自分達の方が当然多いため

母数が大きくなる自分達の方が同じ4割でも敵の半数より多く落とされている。

しかし、見方を変えれば6割という未だ、いや、敵を圧倒できる筈の戦力があるのだ。



駆逐「なのに、なんで夜間攻撃なんて仕掛けてくる!?」



夜間攻撃は戦果が得にくい物であり

自軍の残機が少ないのであれば控えるべき物。

敵の被害を考えれば夜間攻撃機があったとしても

夜間哨戒を自艦隊周辺に上げるくらいがせいぜい。

自分が敵の立場であれば仕掛けるなんて思考の外である。



440 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/27(月) 23:53:18.63 ID:5tYPiHSO0

駆逐「あり得ない!」



敵の夜間攻撃隊はそれでいて自軍のナ級達や

同士討ちをした愚か者共の所為もあり一定の戦果をあげ悠々と帰還。

此処に来て思い知る自軍との錬度の差。

そして、脳裏によぎるのは認めたくない二文字。



駆逐「私が負ける!?」

駆逐「この私が!?」



深海棲艦において敗北というのは単純に負けるだけでは済まない。

武威を示す事こそがその存在理由とする者達が多い中で、

更に言えばその最上種たる姫級。

となれば敗北は頂点からの転落を意味する。

此処に来てその矜持が彼女の判断を狂わせた。



駆逐「敵の機動艦隊を直接叩く!」

普段の自己評価が高い者程陥る罠。

駆逐「敵の旗艦、そう、指揮官の人間が乗る船を沈めて殺せば私の勝利!」

駆逐「私の勝利だ!」

駆逐「私達の被害もあるけれど敵の被害は私達以上。」

駆逐「であれば敵は全力での殴り合いでは絶対に勝てないはず!」



そして、自分がこうであるから相手もこうであるだろうという単純な思考の帰結。

この思考が彼女に此処での敗北を齎し、結果、海の藻屑へと還らせる事へとなった。

441 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/27(月) 23:55:31.36 ID:5tYPiHSO0


強襲揚陸艦 艦橋内 作戦指揮所



提督達は定時連絡による位置確認で更新されていく

分遣隊の海図の光点を見つめながら会話をしていた。

その内容は、もうまもなく訪れる払暁戦に備えての会話である。



提督「相手の心理、行動を推し量る際に

   自分ならどうするかという風に考えるのは誰しもがやる事です。」

大佐「確かに。」

提督「私も自分ならどう動かしどう弱点を突くかと考えますからね。」

提督「自分がこう考えるなら相手もこう考えている。

   それならば相手はこう出るはずとの自分の行動原理が下地になる思考。」

大佐「それでその思考における問題とは一体?」

提督「そうですね。思考については誰もがやりがちですし、実際にやる事です。」

提督「私が問題とするのは正常性バイアスですね。」

提督「自分は大丈夫。自分ならこの状況を切り抜けられる。」

提督「相手がこう出るのは間違いないから自分は切り抜けられるという考え。」

提督「ある程度までならポジティブシンキングとも言えなくは無いですがね。」

大佐「過ぎれば損切のラインを見誤るという事ですね。」

提督「その通りです。」

提督「ここは人によって賛否が出るところでしょうがね。」

提督「軍隊という組織である以上、

   結果とは勝利であり勝利という結果を残せない将は無能の烙印が押される。」

大佐「確かに。」

提督「その上で無能の誹りを恐れずに敗北を受け入れられるかどうか。」

提督「それが本当の名将の条件になってくるでしょう。」

提督「常勝無敗などというのは幻想ですよ。」

大佐「…………。」

提督「百の兵を失いつつも千の兵を残し雪辱を果たすべく備えるのと、

   全ての兵を失い雪辱を果たす事すら敵わない。」

提督「どちらの将が愚将とされるかは明白でしょう?」

大佐「負けを知っていれば敵への対処方も考えられますしね。」

提督「そうです。賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ。」

提督「命があれば学べる機会がある。その機会があるだけ儲け物です。」

大佐「引き際は大事ですね。」

提督「えぇ、つねに自分の中で引き際を決めて掛かる事は大事ですよ。」



珍しく苦々しく、そして重苦しそうに提督は言葉を紡ぎ会話を終えた。

442 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/27(月) 23:56:34.73 ID:5tYPiHSO0


そして、数時間の後。

お互いの艦隊が近付きその先鋒を早期警戒の二式大艇が電探に捕らえる。

早期警戒機の役目をさせている二式大艇からの索敵情報。

つづいて敵を補足した艦隊外周に配置している電探担当駆逐艦隊からの電探情報。

それらを強襲揚陸艦のデータ処理能力を活かし

敵艦隊から飛来する敵機の高度、方向、数を正確に分析処理。

そして、艦隊の全員へ一斉に伝達。



グラ「Achtung!!」



すでに警戒用の艦戦は上がっている。

グラーフが母国語で傾注、あるいは敵発見の言を大声で吐いた。



グラ「全機発艦!Vorwärts!!」



この号令は空母機動部隊の旗艦として所属空母達への一斉攻撃の命。

それは実にあっけない幕切れだった。

この結果を演劇などに例えれば手抜きとも消化不良とも尻切れ蜻蛉。

あるいは打ち切り漫画。

そういった誹りを受けてしかるべき位に間の抜けた最後。

その最後を決めたのは空母艦隊決戦にはあるまじき戦艦の一撃だった。

443 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/27(月) 23:57:32.29 ID:5tYPiHSO0


グラ「アイオワ、諸元入力を頼めるか?」



グラーフから無線を通して手持ち無沙汰気味に対空射撃をしているアイオワへの依頼。



アイ「What?」

グラ「外周駆逐艦からの電探情報、二式大艇からの敵艦隊位置情報。」

グラ「それに迎撃に上がっている私の艦載機。」

グラ「それら情報を総合した上で敵の旗艦位置情報を伝える。」

アイ「いいのかしら?」



戦艦が主砲をぶっぱなす。

ともなれば弾道はもちろん標的周囲に展開する飛行機は敵、味方区別無く消滅である。



グラ「巻き込まれる味方機なぞおらんよ。」



何を言っているのかと木で鼻をくくる返答。

つまりはその程度の艦載機しか扱えない空母艦娘等居ないという意思表明でもあり。

お前のところはその程度なのかという嘲笑も含めた冷たい態度の返答。

444 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/27(月) 23:59:17.95 ID:5tYPiHSO0


アイ「Hey!Holy Shit!That’s great !」

アイ「Ok!Come on !」



戦艦としての仕事が出来る事に喜びと興奮を隠せないアイオワ。

また、自分達を見くびるような態度への反発も入り挑発気味な返答。



グラ「頼んだ。」クスリ



自尊心の高い米軍海兵であればそうなる事を計算ずくでのグラーフの先の態度。

扱いやすくもあり素直であるとの事に少し好ましさを感じる。

強襲揚陸艦で情報が統合され位置が確定。

そして、先ほどからグラーフの艦載機がへばりつき位置を常に追いかけ続けている敵の旗艦。

最新鋭の戦艦に搭載されている演算装置にデータが送られ入力処理が完了。

ガコガコと音を立て主砲が向きを変え見えない位置の水平線の向こう側。



アイ「Lock on !」



敵艦隊の一番後ろに居る敵を葬るべく主砲が火を噴いた。



アイ「Yeeeeeeeeeeeya!」

アイ「Yippee yi yea , Mother Fuker!」

瑞鳳「うわぁ――。」



スラングに瑞鳳がややドン引きするが、その火力 is Powerな砲煙と。



グラ「空気振動の凄まじさは流石だな。」



ビリビリと空間を揺らす振動に巻き込まれ落ちてゆく敵機。

445 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/28(火) 00:01:14.75 ID:Glxp+2M40

アイ「Fire! Fire! Fire!」



深海側 艦隊最後尾



駆逐「なんで?どうして?」

駆逐「どうしてこうなるの?」



自軍の自慢の艦載機は敵機に落とされ

敵の駆逐艦娘達が先陣を切って雷撃戦を仕掛けてくる始末。

艦隊の前列は今、愁嘆場となっている。



駆逐「逃げなきゃ!」



此処に来てようやく生存本能が矜持を上回るが。



グラ「とき既に「遅しよ!」



艦載機達でマークし動きを完全に補足しているグラーフの一言。

そして瑞鳳はグラーフの言葉に被せどや顔。

当たり前に敵へ聴こえるはずはないのだが、二人ともしてやったり、と、いい笑顔。

446 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/28(火) 00:02:37.81 ID:Glxp+2M40


アイ「Well done !」



初弾は駆逐棲姫の鼻先に着弾。



駆逐「ひっ!」

アイ「Go to Hell !」



アイオワ型戦艦の主砲弾が南方特有の豪雨の様に降り注ぐ。

その様は正に悪夢。



駆逐「いやぁ!まだ!まだ死にたくない!」



懇願むなしくその狙いは正確に。全弾が命中した。



アイ「Good Game! Well played!」



アイオワが相手の健闘を讃える頃には駆逐棲姫はその活動を停止していた。



グラ「残心であったか?」

瑞鳳「擬態を警戒!瑞鳳艦爆隊の皆!殺っちゃって!」



殺り残しの無い様にしっかりと止めを刺す両名。



サラ「Oh …… ミンチより酷いです。」



惨状の確認をして漏らす言葉は心からの本音。

そして、駆逐棲姫は完全に活動を停止した。

また、時を同じくして別々の海域では此方もクライマックスへ向け動き始めていた。

447 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/28(火) 00:05:45.44 ID:Glxp+2M40


旗艦雪風 第一分遣隊



雪風「艦隊の空母の皆さんは全機発艦をお願いします!」



通常の鎮守府であれば戦艦や空母、

或いは重巡といった者が旗艦を任されるわけだが。



雪風「旗艦雪風から全員へ連絡です!」

雪風「まもなく敵の哨戒網に引っかかると思われます!」

雪風「敵からの猛攻が予想されますが敵の後方基地を破壊できれば

私達救援部隊の戦略的勝利がより達成しやすくなります!」

雪風「総員、気を引き締めて掛かってください!」



そこは通常という常識の外の連中。

旗艦を勤めるのは最も修羅場を潜った者になるのが自然な成り行きでもある。



「雪風さ〜ん?」



個人通信回線で旗艦の雪風を呼び出す声がする。



雪風「雪風です!ポーラさん、何用でしょうか!?」



雪風が自身が見落とした何かがあったのかもしれないと思いつつ返答。



ポーラ「あの〜。あのですね?」

ポーラ「もしも〜、もしもですね?

敵の旗艦が重巡棲姫だった時はポーラに譲っていただけませんか?」

ポーラ「戦果はお譲りしますから沈めるのだけはポーラに殺らせてもらえませんかね?」

雪風「そこに拘る理由があるんですね?」



場数を踏んでいる雪風ならではの勘で何かを察する。

恐らくそれは瑞鶴が88鎮守府に流れてきたのと同じ理由。

448 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/28(火) 00:07:43.35 ID:Glxp+2M40

ポーラ「 Si 」



返答に満足気に首肯をすると無線を艦隊全員へ飛ばす。



雪風「総員傾注!」

雪風「敵旗艦が重巡棲姫の場合、空母のエアカバー以外は一切の手出し無用!」

雪風「旗艦雪風の名においてポーラさんへの邪魔立ていっさいを禁じます!」



艦隊全員へポーラがその首級を挙げることへの妨害行為等を禁じる旨を宣告。



雪風「舞台は整えます。重巡棲姫が敵旗艦の場合は存分に。」

ポーラ「Signorina Yukikaze Grazie di cuore!」



そして、先に接触した空母艦娘の哨戒機からの報告。



雪風「ポーラさん!敵旗艦は重巡棲姫だそうです!」

雪風「後、角が一本、折れているとかだそうですよ?」



旗艦として情報を受取りそれをポーラへと伝達。

敵旗艦は珍しく身体的特徴があるようだ。




ぞる。




幾度となく死線の向うとこっちを行き来してきた雪風ですら久しぶりに感じる殺気。

今まで様々な種類の姫、鬼級達と対峙してきたがその中でも特級。

歴戦の姫、鬼級、片手の指で納まる程にしか体験した事のない殺気。

それは思わず振り返らずには居られないほどの殺気。

そこには恍惚とも憎悪とも、歓喜に震える、あるいは激情の怒りに震える。

雪風をして異様と言いたくなる艦娘が居た。

449 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/28(火) 00:10:21.13 ID:Glxp+2M40


「尻尾を引きちぎって。」


「右腕を引き抜いて。」


「左腕を食いちぎって。」


「右足を吹き飛ばして。」


「左足をぶっ潰して。」


「腹に主砲をぶっこんで。」


「内蔵を掻き出して、引っ張り出して。」


「内側からミンチにして。」


「頭を最後に踏み潰す。」


「足りない、足りない。」


「こんなんじゃ、全然足りない。」


「十遍でも、百篇でも、千篇、万遍。苦しませて。」


「あぁ、日本語で万死に値するだったかしら?」


「そう、姉さまはもっと苦しんで死んでいったはず。」


「姉さま以上に苦しませてやらなきゃ。」



そして。



「 み   つ   け   た  。」


450 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/28(火) 00:12:01.42 ID:Glxp+2M40


恋焦がれ、相手の事しか見えなくなる。

つねに相手の事を考え続けいつしか相手の感情と同化する。

しかして、それは恋愛感情ではなく。

純然たる、純度100%の。




憎しみ。





「北上〜。」

北上「あいよ―。」

ポーラ「背中、宜しく。」

北上「あいあい。」

ポーラ「彼女には命を持って支払いをしていただかないといけませんねぇ。」

北上「マフィアか。」

ポーラ「シチリアでは女はショットガンより危険ですよぉ〜。」

ポーラ「ポーラは幸せです。北上という得がたい友人を得る事が出来ましたから。」

ポーラ「どんなに強い者でも友人は必要ですからね〜。」

北上「よせやい。照れるぜぃ。」ニシシ



重巡と雷巡コンビ。

今、重巡棲姫を倒す為に両名が並び立つ。

451 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/28(火) 00:20:00.26 ID:Glxp+2M40
本日の更新は以上でございます
駆逐棲姫は最初から噛ませ犬の予定でしたのでその最期はお読みいただいている皆様から
お叱りを受ける事覚悟のあっさりかつ淡泊な最後とさせていただきました
ポーラが頭ぶっ飛んでいた理由はそういう事ですので次回はポーラと北上コンビ戦となります
体調が優れないことが多く亀更新となりつつありますが今後とも宜しくお願いいたします
質問でいただいております九字護法での召還士は事前設定では正直に言いますと作って無かったです
龍驤、雲龍のパターンとかは考えてはいたのですがどちらも中国導師寄りでした
乙レス、感想レス、いつもありがとうございます、書くための励みになっています
お時間よろしければ次回もお読みいただけると幸いです
それでは、また、次回
452 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/28(火) 02:47:36.49 ID:X8TfpFaD0
何度も妖精が死ぬ姿を見たくないからと一度死んだ妖精の顔に呪符貼ってキョンシーとして使役する雲龍とかだったら怖いなあw
それが仲間に向けられたら…gkbr
453 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/28(火) 22:30:32.15 ID:ADezDfxT0
更新乙なのね!

九字について質問したもんだけど、お答えありがとうデーす


ホームランダービー上位ランカーは熊野だったり?
454 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/28(火) 23:22:02.49 ID:+57E5a+rO
乙です。
毎日更新ボタン押して続きを待ち焦がれる日々です〜
実は艦これやった事ないし、艦娘もメジャーどころしか知らないのですが、読み物としてとても面白いから毎回楽しみにしてます。
455 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/29(水) 22:40:19.90 ID:8d3QiO9b0
>>452
あきつ丸キョンシーが似合いすぎるがそんな狂った優しさを振りまく雲龍は嫌じゃw
456 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/30(木) 00:23:52.88 ID:IyCYBxLK0
1でございます
元々用意していてボツにした雲龍の召還に>>452さんのネクロマンシーな雲龍というのを
実際にやったらどうなるかをやってみました、なんとなく雰囲気ありげなものになったかと思います
御笑納下さい
457 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/30(木) 00:25:12.35 ID:IyCYBxLK0



「独り……。」



空母艦娘、雲龍の出撃はいつも独り。



「そう、敵発見、ね。」



偵察機からの報告にぽつり呟く。

そして、背中に背負っていた錫杖を取り出し前方へ勢いよく振る。

侃。

金属の環の音が冷たく響き渡る。

そして、その錫杖に吊り下げられた一幅の掛け軸がざぁっと音を立て開く。



「東嶽大帝が臣、冥吏雲龍が命ずる。」



艤装から桐製のお札入れを取り出す。

ぶつぶつと小声で何かを呟くと

御札入れがふわりと空中に浮かび灯りが灯った。

458 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/30(木) 00:26:10.54 ID:IyCYBxLK0

ジャラン

「起来!」



ぶわり。

箱の蓋が開き、中から人型が周囲に溢れ術式が展開。

そして。

キキキキキ



「猴鬼。連れて来た?」



提灯を持った猿の姿をした鬼がトコトコと雲龍の周囲に這い出てくる。



「お連れしましたよー。」



こくりと小さく頷く。



「命!」

「東嶽大帝の旗下に集う者達よ!」

「仮初の宿に今、その魂を宿せ!」



普段の淡々とした口調からはまったく想像がつかないほどにはきはきと命令を下す雲龍。

そして。

人型に切られた紙に書かれた文字が光り始める。


459 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/08/30(木) 00:27:02.70 ID:IyCYBxLK0

武征王  大戦艦 長門

飛虎大将軍 空母 赤城

鉄騎大将軍 空母 加賀

狼威将軍  重巡 足柄

安国将軍  重巡 妙高

人型に書かれた称号と名前が光り、その名前に書かれた艦娘が受肉し。

顕現していく。

征蕃校尉 陽炎型駆逐 陽炎

征蕃校尉 陽炎型駆逐 黒潮

同じく次々と駆逐艦の名が紙の表面に浮かび上がり受肉。

顕現。



「皆さん。先日の戦場ぶりです。」

「本日もまた、お力をお借りします。」



生気のまったく無い空ろな目をした艦娘達。

そして、雲龍が突撃の命を下すといっせいに敵へと向っていった。

雲龍が使うのは道教の禁術。

死屍術であり、嘗て轡を並べて戦った仲間であり。



「鎮守府の皆さん。お力お借りします。」



嘗て同じ鎮守府に所属していた仲間達である。

総勢、200余名。

矢尽き、刀折れ、死して尚、深海棲艦達を相手に現世に彷徨い。

護国安寧の為に戦う。

帝国幽霊艦隊。

Imperial Ghost Fleet

それを呼び出し、使役した艦娘であり、師匠龍驤から受け継がれた道術。

道士、雲龍

海軍史においてその存在が不確かな者とされ、記録にすら残されなかった独りの艦娘である。
460 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/30(木) 00:30:55.36 ID:IyCYBxLK0
雲龍がヤベーイ
東嶽大帝は道教におけるあの世の支配者、早い話、閻魔大王です
閻魔大王は色々称号が仏教とか道教とかで色々違っていたりします、泰山王とかも割りとメジャー?
その他称号は適当ですのでどうぞ宜しくお願いいたします
艦これあまり詳しくない方にも読み物として面白いといっていただけるのは本当に嬉しいです
構成で勝負できているという風に好意的に解釈させていただきました、次回も燃える展開をお届けできればと……
ほんと、他に増えないですね……、なぜだ……
461 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/30(木) 00:45:55.03 ID:UjlZZBBR0
ちょっと書いた雲龍がえらいものになって帰ってきたw
もっと屍臭漂う感じをイメージしてたけど読み物としてはこの方向性だと絵になるね
462 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/30(木) 18:34:18.94 ID:w85aXa/00
おっかないなぁ
しかしくなると烈風拳とか紫電掌とか流星拳とかガチで使える
あきつ丸がいても不思議じゃなくなるか
463 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/30(木) 21:34:32.63 ID:5NZfoTU70
さて本戦はどうなることやら
出てきた情報は断片的だが本隊との艦隊決戦に引きずり込んでから長門隊での金床戦術を狙っているようにも見える
まだ鉄の温度が低すぎて叩けないけど
464 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/16(火) 13:50:33.67 ID:PDjQeAQu0
鯖が復活したが1はいつ気づくか…
465 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/17(水) 10:40:46.39 ID:JPKB8/QMO
今回は長かったからなー…
466 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/19(金) 01:09:52.96 ID:5ji6/SRC0

かーごめかーごーめ

かーごのなーかーのとーりーは

いーつ いーつ でーやーる

よあけのばーんに

つーるとかーめがすーべったー

うしろのしょうめんだぁーれー

加羅加羅加羅



手に持った摩尼車に内側からの灯りが灯る。

加羅加羅加羅

加羅加羅

加羅

摩尼車の表面に刻まれた孔雀明王陀羅尼の真言が空間に浮かび逝く。

467 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/19(金) 01:10:35.02 ID:5ji6/SRC0

「今宵も良き月夜ですなぁ。」

白粉により不自然なまでに白く染め上げられた顔に紅一つ。

そう彼女が呟いたと同時に昼夜が反転。

覇!

右手を前に出し頂点から右下、左上へと手を素早く動かす。

「黄泉と顕世の道、今繋がったであります。」

彼女が手で空間に描いたのは星型の図形。

ドーマンセーマンともセーマンドーマンとも呼ばれる魔除の図形。

「術者である自分が巻き込まれる訳にはいかないでありますからなぁ。」

ぞるり。

ぞん、ぞるり。

彼女が立っている足元の海面から黒い飛翔物体が形を成し現れた。

それは三本足の烏でありあきつ丸の肩に止り一声。

「有耶ァァ!」

八咫烏が無耶と鳴けば。大平を。

有耶と鳴けば。

鬼が出る。

468 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/19(金) 01:11:42.64 ID:5ji6/SRC0

「有耶ァァ!」

彼女の立っている海面のみを残し周囲の海面が一気に泡立ち始めた。

ぼこり。

あたり一面に焦げた肉の饐えた香りや、

腐った肉の酸い香りが立ち込め、それは正しく地獄の瘴気。

ぼこ。

べちゃり。

「臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前!」

手に持った摩尼車を艤装に置き両手で手早く印を結び。

「千曳の闇、黄泉より今、舞戻れ皇軍の戦士達!」

印を結び終えた片手を海面に。

梵!

軽い爆発音と共に生え繁る白骨達の腕。

梵!梵!梵!

萬!

僅かに数瞬。

術者の周囲には嘗ての陸軍兵装を着込んだ骸兵士達が群を成す。

白骨化しているものもあれば生前の形もとどめた者もいたりと種々様々。

その数。

「参千の英霊達。皇国に仇なす不届きもの達の成敗をお願いするものであります。」

餓嗣。

髑髏の首が下に頷く様に触れたかと思えば。

数にして三個大隊、時として連隊とも数えられるほどの髑髏兵達が

一斉に敵へ向って突撃をしてゆく。

地の底から響く亡者達の雄叫びが周囲の空間に木霊する。
469 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/19(金) 01:12:36.97 ID:5ji6/SRC0

阿亜唖唖啞吾あああああああああ!


「壮観でありますなぁ。」


重機関銃を始めとする各種機関銃や終戦間際の試作無反動砲。

それらを周囲の敵へ向け進軍していく。

ある者は食らいつき敵をその胃袋へと納めて行く。

ごしゃごしゃばりばり。

がいん、ごきん。

ごくん。

その咀嚼音は敵の悲鳴さえも飲み込んでゆく。

くけぇ ――――。

判刻後、周辺に動くものは術者のあきつ丸を除いて生者は残っていなかった。


「無耶ァァ ―――― !」

「無耶ァァ ―――― !」

「皆様、お疲れ様であります。」


ぱしり。

柏手を一つ。

ぐらりと空間が揺れたと思うと敵を屠り

その場に立ち尽くしていた英霊達が一瞬にして崩れ落ちた。

470 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/19(金) 01:13:13.89 ID:5ji6/SRC0

「無耶ァァ ――――― !」

「鬼がいなくなれば無耶と鳴く。」

「有耶無耶。有耶無耶。」

「なにもかもが不確かであります。」

「塵は塵に。灰は灰に。」

「万物は流転。海軍さんの尻拭いは応えるでありますなぁ。」



戦場火消し請負人。

陸軍技術本部第九研究所、通称登戸研究所。

防疫や偽札製作、怪力光線の研究を行っていた研究所。

その第五課の所属、記録上も第四課までしか存在しないとされる。

しかし、オカルト、陰陽道、真言密教、神道等の研究を行い敵を呪詛、呪殺。

それを目的とした秘匿組織があったと噂されている。

陸軍艦娘 あきつ丸。

彼女はこの第五課が実験的に世へ送り出した艦娘である。
471 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/19(金) 01:18:59.92 ID:5ji6/SRC0
皆様お久しぶりです
鯖落ちでハーメルンへ移動しようかと小説形式に書き直していた矢先の復活
取り急ぎの生存報告を兼ねてあきつ丸さんに出張っていただきました
尚、本編とはまったく関係ない模様
本編の更新は今週末にはお届け出来るるかと思います
初秋イベに秋刀魚と色々ありまして、ゲームのほうを満喫しておりました
初月2人目にプリンツを2人、ゴトランド2人に岸波も確保!
初秋イベ後に燃料が6桁きりましたがまぁ仕方ないですね!
秋刀魚のすぐ後に秋イベこられたら詰みです、はい
とりいそぎではありますが生存報告兼ねまして、それでは皆様また次回の更新でお会いいたしましょう
464様、465様、こちらへの気遣いのレスありがとうございます、無事、復活に気付きました
今後も宜しくお願いいたします
472 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/19(金) 02:04:37.36 ID:XIdjV85D0
気が付いて何より
登戸研究所近隣住民としては突然の登場に噴いたw
未だに雑木林の地中からヤバそうな瓶が出て騒ぎになったりするが大体空振り(稀にあたり)
473 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/19(金) 09:27:24.40 ID:5Tf+35pjO
乙です。
あきつ丸さんおっかないですねぇ。
陰陽軽空母達とは術式や使役するモノが違う感じなのでしょうか
474 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/19(金) 10:01:47.04 ID:F4N3XPR4O
おつ!
475 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/21(日) 00:19:49.80 ID:Ba0DEi5B0
週末にあげますと宣言通りに更新にやってまいりました
鯖復活後の最初の本編更新をさせていただきます
宜しければお付き合いいただけますと幸いです
476 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/21(日) 00:20:57.20 ID:Ba0DEi5B0

ポーラが思い起こすは自分に優しかった姉。



ザラ「ほら、ポーラ。リボンが曲がってるわよ?」

ポーラ「戦えばどうせまがるです〜。」

ザラ「もう、そういう事は言わないの。

普段からの身だしなみは大切よ?」



二人は血の繋がった姉妹だった。

艦娘は適正のある人間が選ばれ、なるもの。

となればその血縁者ともなると自然姉妹で適正があるという事も珍しくなく。

二人もまた適正有りとされ艦娘へなった。

それも、イタリア海軍の重巡艦娘ザラ、

そしてその妹ポーラとして選ばれた。

世話焼きな姉は軍へ入った後も

つねに自分の事を気にかける少し妹離れの出来ない困ったさん。

ポーラという艦娘は酒好きが多いようだが自分はそこまで好きではなかった。

どちらかといえば嗜む程度。

だが、あの事件以降は少し、そう、少し飲む量は増えた。

477 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/21(日) 00:21:52.08 ID:Ba0DEi5B0


数年前 地中海上 某所



ザラ「ポーラ!貴方は逃げて頂戴!」

ザラ「これは負け戦よ!」

ザラ「でも!戦訓を後に生かすためにも誰かがその負けた事実を。」

ザラ「どうして負けたかを伝えなければいけないわ!」

ザラ「貴方にとても辛いお願いをしているのは分かっているわ。」

ザラ「でも、貴方にしかお願い出来ないの!」



姉から託され全力で振り返らずそれこそ恥という物を知らないほどに逃げた。

そして、上層部は必死の思いで持ち帰った負けの報告を仕方なしの一言で片付けた。

また、ポーラへの処罰は当たり前かのように無かった。



ポーラ「仕方ない?」

ポーラ「冗談じゃない。」

ポーラ「まるで、負けることを初っから分かっていたみたいじゃないですか。」

ポーラ「時間稼ぎの捨て駒?」

ポーラ「 Vaffanculo !」(糞食らえ)



雌伏しその後もイタリア海軍に在籍を続け姉の仇の情報を集め続けた。

自分の足りない実力の所為で姉のあの最後を迎えてしまったという思いがあった為。

最後に見た姉の姿と姉の砲撃により折れた相手の角。

相手が修復していたらそれは消えてしまう手掛かり。しかし幸にして。

相手はそれを修復していなかった。

そして、その出現情報を追い続けるうちに敵は追いかけられない範囲の外へ出た。

478 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/21(日) 00:22:37.74 ID:Ba0DEi5B0


ポーラ「だから、ポーラはここに来たんですよ。」



外地鎮守府管理番号88。

この鎮守府は任務、仕事の形態で通常の軍管区の括りに捕らわれない。

それは国ごとの受け持ちの外にあり、過去については問わず語らずの傭兵稼業。

その作戦行動海域は受けた任務、仕事によって世界の何処へでも形式上は出撃可能。



ポーラ「まさか、ここで 相見える事が叶うとは。まさに姉様の導き。」



艤装の主機が大きく咆哮を上げ速度を上げ始める。


479 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/21(日) 00:24:28.51 ID:Ba0DEi5B0

深海側拠点



重巡「敵の艦隊が迫って来ているか。」



頭上を通過していった敵偵察機、

自軍の哨戒網に引っかかった敵艦隊の情報。



重巡「ここの重要性を考えれば来ない方が変ではあるな。」

重巡「出番か。」

重巡「楽しめるといいねぇ。最後の最後まで足掻いてくれる。」

重巡「先日の島風、さらにその前の重巡。仲間の為に自分の命を差し出す。」

重巡「そんな気合の入った虫けらがくると……、実にいい。」



その性格。

サディストである。



雪風「皆さん!敵艦隊と接触します!」

雪風「乱戦になるかと思いますが各員の奮闘期待します!」



艦隊が敵艦隊と接触、方々で砲撃の歓声が上がり始める。



雪風「ウォースパイトさん!」

スパ「Yes Ma'am !」

雪風「敵の大将はポーラさん達に任せるので雪風達は雑魚退治です。」

雪風「加えて敵の揚陸済みの物資の破壊。設営済みの地上拠点の破壊が主な仕事です。」



雪風からの指示にこくこくと頷き確認をするウォースパイト。



雪風「それと。」

雪風「イタリア語だと思うのですが先程からポーラさんが歌われているこの歌なにかわかります?」

それはポーラが上機嫌で歌っている歌。

スパ「あぁ、この歌ですか。」

スパ「有名なオペラ、椿姫の曲で乾杯の歌っていう歌ですよ。」

雪風「乾杯ですか。」

スパ「えぇ。」

雪風「勝って祝杯をあげるつもりなのでしょうね。いい事です。」



乾杯の歌は娼婦のヒロインを好きになった主人公がめぐり合えた事に感謝して歌うといった場面で歌い上げる歌。

その場面としてはとても情熱的かつ実に盛り上がる歌であり椿姫の中で一番有名な場面とも言える。

スパ(でも、最後はヒロイン死んじゃうんですよねぇ。)

流石にどちらが死ぬかがわからない現状でそれを口にすべきではないだろう。

戦場では結果を口に出す、それが時として言霊として戦う兵を縛るからである。
480 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/21(日) 00:26:54.18 ID:Ba0DEi5B0


雪風「ウォースパイトさん!面舵一杯です!」



雪風の指示に慌てて反応し面舵を取れば。



スパ「あっぶな!」



避けた眼前を敵砲弾がすり抜け後方の海面に着弾。



雪風「敵の大将首が来ますよ……。」



砲煙の向うから現れるのは敵の指揮官とその随伴達。



重巡「チッ。勘のいい奴だ。」



そして、眼前からの敵指揮官艦隊に対峙するのは。



ポーラ「敵を取り違えてんじゃねぇ、mommone(マザコン野郎)。」



後方から主機を全開でぶん回しやって来たポーラ。

雪風とウォースパイトの間を抜き重巡棲姫に向け砲撃を試みるポーラ。

その砲撃を体を横にしてかわす重巡棲姫。



重巡「なんだ、随分いきった小娘がいんじゃねーか。」

重巡「遊んでもらいたいってのかい。」



ニタニタと笑顔を向け尻尾の砲塔を向ける重巡棲姫。



ポーラ「遊ぶ?testa di cazzo!(このち○こ頭)」

ポーラ「歯は磨いたか?聖書の一節はきちんと諳んじれるか?」

ポーラ「これから先はお前が死ぬその寸前まで5秒おきに手前が命乞いをするショーだ。」

ポーラ「トイレには行って来い。今ならまだ待ってやる。」



普段の何処か抜けたような喋り方と打って変わって一言一言が殺意を持った喋り。



重巡「いいねぇ。いい感じに頭が切れてやがる。」

重巡「It’s Shoutime !」



重巡棲姫が大声をあげると一気に距離をとり始める両名。

お互いに同じ重巡であればお互いの砲の性能や魚雷性能も凡そ予想がつく。

481 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/21(日) 00:28:15.10 ID:Ba0DEi5B0


雪風「おっと、随伴のお友達は雪風達がお相手です。」



重巡棲姫の随伴艦たちを遮る雪風とウォースパイト。



重巡「この距離ならお互いに必中かぁ!?」



ドンドン!



ポーラ「はん、表六玉。当るわけが無い。」



上半身を右へ逸らし重巡棲姫の砲弾を交す。

いずれは当る事が望める挟叉というより

どちらが当てるかを先に挑むロシアンルーレット。



ポーラ「さぁ!避けろ、避けろ!手前の命を賭けてあがけ!」



重巡棲姫の周囲をぐるぐると円を描くように動くポーラ。

それに呼応するように重巡棲姫も

円軌道を取りながら互いに砲弾を交していく。

スン



雪風「!」

雪風「ウォースパイトさん、二人から距離を取りますよ!」



スン



スパ「これは?」



雪風が砲煙に混じる火薬の香り以外に油。

それも艦娘が艤装に使用している燃料の香りに気付いた。



スパ「周囲ではまだ誰も沈んでないですよね?」

雪風「だからですよ!火に飲まれたくないなら距離をとって下さい!」



雪風がポーラと重巡棲姫との決闘している周辺から

離脱するようウォースパイトに指示を出したと同時だった。

ゴォウ

海上に流出していた燃料に火がつき炎上。

482 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/21(日) 00:30:11.20 ID:Ba0DEi5B0


ポーラ「邪魔が入っちゃ困りますからねぇ?」

重巡「お前、自分の艤装から燃料を撒いて火をつけたのか!?」



その言葉に返事を返す事無くニタリと微笑みを返す。



ポーラ「さぁ、楽しもうか。」



笑顔で砲撃が再開される。

間断なく周囲に響き渡る砲声。



重巡「?!」



そして、重巡棲姫は気付いた。



重巡「ちぃ!燃料の炎の所為で陽炎が出来やがる!」



強力な火炎により出来る空気の密度混ざり合い、

そこに昼間であるがために光が当ると屈折して見える自然現象。



ポーラ「昔ですね。

少しの間、コンビを組んだ事のある駆逐の娘に教えてもらったライフハックですよ〜。」

重巡「照準がずれる!」



お互いが視認出来る距離での砲撃戦。

当然ながら目視での照準付けのため

陽炎によりその距離感を狂わされればその命中精度も落ちる。



重巡「敵も同じはずなのに!!」



しかしポーラからの砲撃は確実に当り始めている。


483 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/21(日) 00:30:49.44 ID:Ba0DEi5B0

ポーラ「あんたがこっちの挑発に、踊りのステージに上がった次点で敗北は確定なんだ。」

ポーラ「この火炎の舞台は私のフィールドだ。ボレロといこうじゃないか。」



ドンドン



重巡「ちぃっ!」



しかし、姫級の装甲は伊達ではない。

装甲へ与えるダメージは少ない。



重巡「それなりに痛いだけだぁねぇ。」

重巡「それに照準がずれるのも慣れてきた。

今度は此方からの攻撃と洒落込ませて貰おうか。」

ポーラ「その程度は予想してる。かかって来いよ。」



不敵に笑い手で挑発。

炎上する海上でポーラと重巡棲姫達の砲撃戦が続く。

484 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/21(日) 00:32:50.80 ID:Ba0DEi5B0

そして、その周囲。


雪風「慈悲を請え。今日の雪風は優しいです。」

雪風「苦しませずにあなた方をあの世へ送ることを保障しましょう。」



重巡棲姫の随伴として来ていた

ル級や雷巡チ級達と雪風、ウォースパイトが対峙していた。

ドン!

問答無用とばかりに雪風達へと砲撃を開始するル級達。



雪風「ウォースパイトさん。」

スパ「はい!」

雪風「背中任せます。期待に応えて下さいよ?」ニヤリ



前衛を雪風、後衛をウォースパイト。

また別の戦いも始っていた。

そして、重巡棲姫は砲撃の照準をつけることに慣れてきた頃合でまた別の疑問にぶち当たっていた。



重巡(あたらねぇ。回避性能が段違いに上じゃねーか…。)

重巡(こっちの魚雷も綺麗に回避しやがる。)



ポーラは重巡棲姫の砲雷撃を全て華麗にかわしていた。

それは氷上を踊るスケーターの如く。



重巡(回避能力は知っているイタリア重巡と違う。)



重巡棲姫の本来の受け持ちは地中海方面部隊。

そこで普段相手取っているイタリア海軍の重巡艦娘と比べても格段に反応がいい。



重巡(なぜだ?まるで排水量そのものが違うような……。)

重巡(!)



重巡棲姫はポーラが先程から自分の砲撃を超回避し続ける事が可能である理由を把握した。

それは自身の攻撃を予測してかわしているというのは大前提であるがそれ以外にもう一つ。

艤装から燃料を捨て、自身の、艦そのものの重さを軽くした事により

機関の速度上昇等の恩恵を受けやすくしたのだ。

それはさながらカーレースやバイクレースの優勝常連チームが

あえて燃料を補給する回数を押さえギリギリにする事により

タンク内燃料の重量すら速度増加の敵とするかのように。

今、ポーラは燃料を限界まで捨て去った事により

カタログスペック以上の速度と回避性能を手に入れたのである。

485 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/21(日) 00:34:53.72 ID:Ba0DEi5B0

重巡「そして、捨てた燃料は攪乱に使うか。」

重巡「見た目以上に頭が働いているじゃねぇか。」



血が滾る、好敵手、たり。太平洋にはなかなか歯応えのある敵が居る。

そう考え、にやついていたときだった。

砲弾ではない何かが頭上に飛んでくる。

砲弾のような速度ではなく人の手で投げたようなもの。

それはゆっくりと放物線を描き飛んできた。



重巡「とっ。」



音速に近いスピードの砲弾は敵が撃つ前に砲撃を予測して避けるのが当然なのだが。



重巡「なんだこりゃ?」



いかにも投擲といった形で飛んできたそれはスピードがあるとはいえ充分視認可能な速度。

そして、真横に落ちる。



ポーラ「チッ。」



ドンドン



重巡「なんだこりゃ?」



砲撃の音声に混じり飛んでくる酒瓶。

対空機銃弾で割ってみれば内容物が周囲に霧状になり広がる。

一部は飛散し重巡棲姫の体に降り注いだ。

スン

自分の体に掛かった液体の香りを嗅ぎ、その正体を確認。



重巡「ワインか。勿体無い事をしやがる。」

ポーラ「私の故郷に世界最大の詐欺集団の総本山がありましてね?」

ポーラ「連中の元締めである神曰く、ワインは自分の血であるとかで。」

ポーラ「神の血を浴びれば負の塊である

あんた達も浄化出来るんじゃないかと思いましてー。」ゲラゲラ



ワインを頭から被った敵の姿が笑いの壷に入ったか笑うポーラ。



重巡「……?謎理論だな。」

ポーラ「お前をあの世に送ってやるという意味ですよー。」


なおも砲撃の間にワインの投擲は続く。

486 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/21(日) 00:36:15.72 ID:Ba0DEi5B0

野球で速い球ばかりに慣れていたバッターが

急に遅い球を投げられた所為でバッティングを崩し討ち取られる事がある。

ポーラの投擲はそんな影響をじょじょに重巡棲姫へもたらし始めていた。

敵の砲撃をかわすには敵が自分の位置の先読みをして

砲撃してくるさらにその先を読まないといけない。

ポーラのワイン瓶の投擲はその先読みした着弾点のちょっと手前、

或いはちょっと先、つまり砲撃が当らないように避けた地点に落ちてくる。

しかもタイミングを効果的にずらしながら。



重巡「うっとうしい!」



機銃で対処せざるを得ない事が何度か。

しかし、中身は所詮、ワインである。

次第にその中身を被る事に抵抗はなくなる。



重巡(私をワインまみれにしたいだけとはいえ。どれだけの量を持っているんだ!?)



すでに10に近い瓶を投擲され。その間も続く砲撃をかわし続け。

いくつも機銃で撃ち落し少なくない量のワインを体に被っている重巡棲姫。

ポーラからの間断ない攻撃を交し、応撃する事に全神経を集中。

ワインは料理のフランベに使えるほどアルコール度数は高くない。

その為体に掛かったところで火が付くことはない。

その為重巡棲姫はワインが体に掛かっても大して気には留めてることはなくなっていた。

せいぜいが酒臭くなるな程度。

であればこそ。ポーラの罠に嵌ったのは仕方のない事といえよう。

487 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/21(日) 00:38:28.27 ID:Ba0DEi5B0

ボン

幾本にも渡り打ち抜いてきたワイン瓶。

重巡棲姫は迂闊にもそれを打ち抜いてしまった。

幾度となく中身が無害なワインであれば飛んできたそれを疑う事無く、

今回もまた中身はワインと思ってしまったのも無理はない。

しかし、この一本。

そう、この一本はスペシャル。特別製だった。

ビチャァ

打ち抜いたそれの内容物は周囲に広がり、一部は重巡棲姫の表面に掛かった。



重巡「ヴェアアァアァァァァァァァァァアアアァァ!!!!」

重巡「あぁぁぁ!!痛い!痛い!焼ける!ぁぁあぁぁぁぁ!!!」



ポーラが投げたそれはアルコールに限界まで

カプサイシンの結晶を溶かした物の瓶詰め。

その液体が体に掛かれば激痛という言葉表現では生温い痛みが曝露箇所を襲う。

そして、アルコールである。可燃性の液体なればこそ周囲の火が燃え移った。



重巡「あぁぁぁああぁぁぁぁ!!!!」



その炎は視界を奪い、顔周辺の酸素を奪う。

呼吸でもしようものなら炎は口から喉へ通り気管を焼く。



ポーラ「その酒は奢りだ。味わって飲みやがれ。」

ポーラ「末期の酒にはちょいと刺激がありすぎたかもしれないがな。」



重巡棲姫の視界を奪い激痛を与える。

痛みと炎は全ての思考を止めさせ行動する事を不能とする。

そして、動きを止めたその一瞬。

そう、その一瞬をポーラは狙っていたのだ!

488 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/21(日) 00:39:46.92 ID:Ba0DEi5B0

シャー!



重巡「!?」



ポーラの実艦であるザラ級重巡洋艦は本来魚雷発射装置はついていない。

日本にイタリアから来ているザラ級の彼女達が

魚雷を搭載可能なのは日本で改造をされたからという裏事情があったりする。

普段の相手がある意味での純正イタリア艦相手であった事。

この一瞬のその時までポーラがまったく魚雷を使ってこなかった事。

そして、それらを気取らさせないように

砲撃やワイン瓶投擲を繰り返し意識を一切向けさせなかった事。

また、海面に燃料を撒き火をつけることにより海中、炎の下を通る雷跡を見難くした事。

詰め将棋のように一つ一つを組み立て、最後の王手。

その全てが繋がり。攻撃が決まった。

ドン!

派手にあがる水柱は命中を確信させる祝砲。

489 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/21(日) 00:40:49.22 ID:Ba0DEi5B0


ポーラ「Che gioia !」

ポーラ「死にましたかねぇ?」



うきうきとした様子でポーラが重巡棲姫の生死を確かめる為近付く。



ポーラ「と、止めはしっかりとは基本でしたね。」



そして、念入りにとばかりに近付く前に魚雷をもう1発。



ポーラ「これで……。」



ドン!



ポーラ「終わりです。」



そして、戦果を確認の為、警戒しながら近付く。



ポーラ「……。死んでいますかね?」



腰をかがめ、波間に漂う重巡棲姫の顔を覗き込み生死の確認。

その瞬間だった。

ポーラの首を掴み重巡棲姫が海面に再び立ったのだ!

490 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/21(日) 00:42:21.13 ID:Ba0DEi5B0

重巡「やってくれたなぁ!!!!!」



その表情には先ほどまでの余裕は一切無い。



重巡「ここまで。」

重巡「ここまで追い込まれたのは生まれて初めてだよ!」



憤怒と恍惚、両方が入り混じったどちらとも取れない表情の重巡棲姫。

それに対してポーラの表情は絶望。

無理も無い先ほどまでの確定的な勝ちからの逆転負け。



重巡「あんたはよくやったよ。あれだけの仕込みをして最後の最後まで。」

重巡「切り札をとっておいた。これはなかなか出来る事じゃない。」

重巡「実際、私の装甲でもぎりぎりだったよ。

   もう少しダメージを食らっていたら終わっていた。」

ポーラ「でも、勝てなきゃ意味がないです〜。」



首に手を回され宙に体を持ち上げられる。

その足はすでに海面に立ってはいない。



重巡「まぁ、確かにその通りだね。」

重巡「にしても、今のあんた、実にいい表情をしているよ。」



重巡棲姫の手に籠めた力がぎりぎりとポーラの首を絞めていく。



ポーラ「そ…う…ですか…?ちょっと首が…しまりすぎな。そんな気がしますがねぇ…。」

重巡「私はねぇ。愉悦に浸っていた相手の顔が絶望に染まる瞬間の顔が大好きでねぇ。」

重巡「今のあんたの表情。実に。」

重巡「実に最高だよ。」



重巡棲姫の艤装の砲塔。

尻尾のような砲塔が一斉にポーラの顔へ向く。



重巡「この距離じゃぁ、あんたらの防壁も役をなさないだろ?」

ポーラ「あぁ……、確かに…、少しばかり厳しいですかねぇ。」



艦娘の防御はその艤装が展開する障壁と衣服の反応装甲の2種。

しかし、至近距離からの重巡、

それも姫級の砲撃ともなれば流石に戦艦であろうとただではすまない。

ましてや、ポーラは重巡である。

491 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/21(日) 00:43:48.05 ID:Ba0DEi5B0

重巡「まぁ、あんたは頑張ったよ。面白かった。退屈しのぎにはなったさ。」

重巡「太平洋には骨のある、根性座った奴らが多いねぇ。」

ポーラ「んん…、褒められるのは悪い気がしませんねぇ…。」

重巡「……、その艤装の煙突に書いてあるクロバーリーフに唐辛子の意匠。」

重巡「昔に見たことあるな。」

ポーラ「やっと思い出したかこのスカポンタン。」

重巡「ははぁ。成程ねぁ、姉妹の仇討ちか。実に、実に殊勝な心がけじゃないか。」

重巡「ただ、その願いも叶わずここで妹もまた私の手にかかると。」

重巡「実に喜劇じゃないか!」



笑いながら語る重巡棲姫。



ポーラ「あー……、あんたに伝えたい重要な事があるのだけど?」

重巡「あん?」

ポーラ「いいですか?一度しか言わないのでそのボロ耳よーくかっぽじって聞きやがれ。」



自分の首にかかる重巡棲姫の手を両手でやや引き離し話しやすくした状態で会話を続ける。



ポーラ「まず、一点。今のポーラは海面に立っていません。」

重巡「?」

ポーラ「次にもう一点。ポーラは現状一発も。そう、一発も被弾していません。」

重巡「お前、何言っているんだ?」

ポーラ「そして、最後に一番重要な事。」

ポーラ「絶望とは幸せの絶頂から叩き落される時が最も大きくなる。」

重巡「何いってんだお前?」

ポーラ「今、そう、正に今だ。」



ポーラがそう言い終えた。まさにそのタイミングだった。

炎が壁として立ちはだかりその姿を捉えることの出来ない向こう側。

ポーラと重巡棲姫の戦闘はそれぞれが望んだこともあり邪魔が入らない状態。

であった、いや、故意にポーラがそう思わせていた為に思考の完全に外からの。

492 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/21(日) 00:44:36.64 ID:Ba0DEi5B0





北上「片舷20門、全40門。」











北上「93式酸素魚雷!やっちゃってぇ ―――――!」





493 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/21(日) 00:47:32.09 ID:Ba0DEi5B0

その速力45kt

弾頭重量は艦艇用の増量型の三型のため780kg

その無機質な死神達の群が一斉に海面を走り重巡棲姫に襲い掛かる。

死神達は接触式信菅であり触れたものの首を切り落とす。

始まりは一本の命中。それによる爆発が周囲の魚雷の誘爆を起こし一気に爆発。

爆発による衝撃波、爆風、炎熱。それらは周囲で戦闘していた雪風達の元にも届き。

ポーラの艤装から撒かれた油についていた炎さえも消し飛ばす程の物であった。



北上「ポーちゃんは生きてるかなぁ?」



重雷装巡洋艦の魚雷一斉射。

その量は姫、水鬼級達を屠るに余りある量である。



ポーラ「かろうじて〜……。」

北上「あら――。セクスゥィー。」



艤装の全防御能力集中での防壁に制服による反応装甲、

それら全てで爆発の衝撃を和らげてなお。



ポーラ「あと少しで轟沈でしたよぉ〜。」

ポーラ「でも、北上ならポーラの意を汲んで

    容赦なく撃ってくれると信じてましたよ〜。」

北上「相方が覚悟を決めたんだ。」

北上「それならその覚悟に応えるのが相棒ってもんでしょ?」

ポーラ「流石の北上です〜。」

北上「よせやい。照れるぜぃ。」



そうなのだ、ポーラは万一に備え、そう、自身が仕留めそこなった時。

その最悪の事態まで想定して備えていたのだ。

重巡棲姫と最悪刺し違えるまでを考え、最後は北上の暴力的物量の魚雷による飽和攻撃。

自分が囮となり相手の動きを止めさせ注意を引く。

足が止まった艦への魚雷は目を瞑っていたとしても当る。



ポーラ「流石に機関が死んでますね。浮いているのが不思議です〜。」

北上「ポーちゃんってこうみるとグラマラスだね。」



制服が形をなしていないためその服下から覗くサイズのよい胸を眺めながら北上が語る。



ポーラ「おっぱい揉んでみます〜?」ユサユサ

雪風「それもいいですが、敵旗艦の死亡確認です。」



ル級達を鎧袖一触とばかりに一掃し爆心地のポーラの元へ現れた雪風が気を引き締める一言。
494 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/21(日) 00:48:49.92 ID:Ba0DEi5B0


雪風「大願成就、おめでとうございます。」

雪風「ですが、敵の死体を確認するまでは気を引き締めてでお願いします。」



旗艦としての一言。



北上「だねー。さぁて、敵さんは何処へ吹き飛びましたかねぇ。」



ポーラがもといた位置からかなり吹き飛ばされていた事を考えれば

重巡棲姫もかなり吹き飛ばされていておかしくは無い。



スパ「雪姉さん。あれ?重巡棲姫の体?じゃないですかね?」



周囲の戦闘もあらかた片付き既に残敵掃討に移っている状態の中で

波間に漂う重巡棲姫らしきものをウォースパイトが発見。



ポーラ「おぉ。いい形になっているじゃないですか〜。」


その視線の先には胸から下がなくなり腕も右しか残っていない。

どうにか人と判別できるだけの状態の重巡棲姫が文字通り波間を漂っていた。

495 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/21(日) 00:49:58.73 ID:Ba0DEi5B0


ポーラ「美人になりましたねぇ〜。」

北上「随分過激なダイエットに成功したもんだ。」



そして、ポーラがそれの髪を掴み引き上げた。



ポーラ「ざまぁないねぇ。今の気分はどうだい?」

ポーラ「もっとも生きて口が利けるかどうか知りゃぁしないが。」

ポーラ「姉さまの仇も無事討ち取れました。」

重巡「……、さすがあいつの妹と言ったところか。」

ポーラ「まだ喋れますか。今、楽にしてやりますよ。」

重巡「まぁ、まてよ…、こんな状況じゃなにも出来ねぇ。最後の話くらい聞けよ。」



重巡棲姫がポーラに吊り下げられ、



重巡「お前の姉は…。煙突にクロバーリーフと太陽のモチーフをペイントしていなかったか?」

ポーラ「えぇ。それが何か?」



いぶかしみ、眉根を潜める。

自分の艤装のファンネルマークに見覚えがあれば

姉のファンネルマークに覚えがあってもおかしくはない。

瞬時にその考えにいたるのだが重巡棲姫の質問には言外の含みがあった。

496 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/21(日) 00:50:52.17 ID:Ba0DEi5B0

重巡「お前の姉なぁ?生きてるよ。」

ポーラ「!」

重巡「地中海でな?深海棲艦の地中海方面軍第二艦隊旗艦やってる。」

重巡「まぁ、ここで私が死ぬから格上げで地中海方面軍の総旗艦だ。」

重巡「めでたいよなぁ〜?」



ニタリと笑った後に大音声での笑い声があたりに響く。



ポーラ「そんな、姉様が生きていて。」



知りたくなかった事実。その事実がポーラの反応を遅らさせた。



重巡「さようならは…、なんて言うんだったかな?」

重巡「あぁ、そうだった。Addio だったな。」

重巡「これで最期だ。Addio !」

雪風「ポーラさん!離れてください!」



重巡棲姫が自身の最期の力を集中させての道連れの自爆。

その瞬間、周囲を爆炎と爆音が空間を支配した。

497 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/10/21(日) 01:03:57.14 ID:Ba0DEi5B0
本日の更新はこれにて終了です、なにげに1年近くやっているのかと少し感慨深くもあるところ
カプサイシンの結晶ですが市販されたもので1600万スコルビィル値だそうです
デスソースの一番辛い奴で10万スコビィル値、やばさはお察し下さい
因みに素手で触るなどは危険とされゴム手袋の着用が推奨されています(触って何かあっても知らないよという奴)
ご質問いただいていた陰陽道系統の1の設定としては陰陽道自体が道教、神道、密教系仏教のごちゃまぜなので


師匠 龍驤 弟子雲龍型 →道教系陰陽道(キョンシーとかがこの辺りの系列)

飛鷹、隼鷹       →神道系陰陽道(神、英霊を降ろす系列)

あきつ丸        →真言密教系陰陽道(蘆屋道満、お化け、妖怪とかの類の系列)


とこんな感じでの設定です、本編に関係ないところではあるのですが…


鯖落ちでお読みいただいていた方々が戻ってきて下さっているのか多少の不安がある状態ではあります
レスいただけてると、読んでくださっている人いたんだよかったと胸をなでおろす状況
こういう内容のSS増えないですねぇ……、ほんと、なんでなんだろうか……
感想レス、応援レス、本当にありがとうございますでは、また次回の更新でお会いしましょう!
498 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/21(日) 01:41:25.28 ID:FCaRUqGd0
おつ
艦娘が深海側にいることがあるってのが本当なら逆もあるのかもね
立川流真言(風説)で姫級を虜にして引き連れる秘匿艦隊とか
499 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/21(日) 03:14:24.89 ID:rbTkvgYQ0
乙!
相変わらず面白い!続きが楽しみ
500 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/21(日) 10:16:50.48 ID:Y4fwZyQcO
乙です。
海外艦の所属事情がそれぞれ違って面白いです
501 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/21(日) 10:53:58.86 ID:qWzHYLQDo
おつ!!
502 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/21(日) 23:18:03.05 ID:RYCVlyX/0
いいねぇ、痺れるねぇ、ポーラさんょぉ
503 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/02(金) 00:18:31.53 ID:voPzULVm0
皆様こんばんは
こっそりと更新に来ました
今回の更新部分は艦これ二次SSではあんまり語られない?世界情勢というかその辺りが少し
エリア88ベースである以上触れずにいる事が出来ないわけで……
読み飛ばしていただいてもそれ程問題はないかな?
では、お時間よろしければ本日の更新にお付き合いいただきますようお願い申し上げます
504 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/02(金) 00:21:23.49 ID:voPzULVm0

悲痛な叫び声が響く。

今まで彼女と同行した者がいたとすれば

恐らく初めてと言えるかもしれない叫び声。



雪風「あぅぅぅ!」



とっさで重巡棲姫とポーラの間に割って入った雪風が

その体に全ての衝撃を受け吹き飛ぶ。

いかに改装を重ね装甲を増しているとは言えその装甲はあくまで駆逐艦。

ポーラを守った事により雪風はあっさりと大破した。


雪風「……、涼しくなってしまいました。」イテテ

ポーラ「雪風!?」

雪風「雪風はいいワインを所望します。」ニマァ



大破ながらにまだ余裕の有り気な雪風。



ポーラ「……、Si、戻ったらバローロの当たり年を開けましょう!」



明るく応じるポーラを確認し。



雪風「第一分遣隊総員傾注!」



一匹の獣として敵拠点を屠りつつあった部隊の全員に聴こえるように連絡。



雪風「旗艦雪風大破の為、旗艦権限を戦艦ウォースパイトへ移譲します!」

スパ「うぇぇぇ!?」

雪風「ウォースパイトさん、あとは任せましたよ。」

雪風「雪風は後方へ下がります。」

北上「やー、これは責任重大だねぇ。まぁ、私は二人を曳航して下がるからー。」

北上「がんばってね。」ニヤニヤ



そして、ウォースパイトへの個人無線へ雪風が一言。



雪風「島風さんの無念晴らしてきて下さい。」

雪風「雪風は一旦後方へ下がります。」

スパ「えっ、でも雪姉さん!?自分でいいんですか?!」

雪風「雛が巣立って鷲になるのを見せて下さいな。」

雪風「しれぇから説明を受けた作戦、Operation Woodpecker (きつつき作戦) 」

雪風「成功に導いてくださいよ?」



プレッシャーとも期待の一言ともとれる言葉をつげ雪風達は海域を離脱した。
505 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/02(金) 00:22:43.82 ID:voPzULVm0

強襲揚陸艦内



不知火「司令。雪風からの連絡で大破の為後方へ下がるとの事です。」

不知火「旗艦はウォースパイトさんへ引き継ぐと。」

提督「珍しいな。雪風が大破するとは。」

不知火「此方に向け同じく大破されたポーラさんと向って来ています。」

提督「ポーラも大破か。」

不知火「はい。大破については2名だけだそうです。」

提督「第一分遣隊の状況は?」

不知火「敵拠点の破壊、旗艦の排除に成功、ウォースパイトさんの指示の元、

    第二分遣隊との集合地点めざし艦隊の再編成を行っています。」

不知火「また、残敵追討についてはリスク考慮の上で不要判断をウォースパイトさんが下しています。」

提督「うん。及第点だ。状況完了までの時間は?」

不知火「完了まで後2時間程を予定と報告がありました。」

提督「そうか。長門達の方の状況も確認してくれ。タイミングが大事だからな。」



さも当然、想定内といわんばかりに淡々と確認作業を行う提督。

そして、それに従う不知火。

艦橋内の海図を再度見つめなおし、ふんと鼻をならした所に大佐が話しかけてきた。

506 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/02(金) 00:29:41.89 ID:voPzULVm0

大佐「少将、その?」

提督「どうなさいました?」



その顔は大丈夫なの?とでも言いたげ。



大佐「そちらの鎮守府に所属の雪風といいますと

    Queen of Heartsだったと思うのですが?」

提督「ハートの女王ですか。随分なコードネームが割り振られているもんですな。」

大佐「そちらの登録名は死神や生還者だったと思うのですが。」

提督「えぇ、それなら間違いなくそうですが。」



それがどうした?



大佐「そちらの鎮守府において相当な戦力と認識しているのですが。」

提督「英雄を頼みとして作戦立てをする程おろかじゃないですよ。」

提督「戦力としてみた時に一人ひとりの能力が高いという事は実に重要ではありますが。」

大佐「英雄頼みになるような戦場は既に劣勢であるという基本ですね。」

提督「おっしゃる通りです。

   一人の英雄が戦況を左右するような事というのは正直いいとは言いがたいですね。」

提督「戦争というのはいかに標準規格の兵士と物資を

   いかに効率よく消費と配置で勝つかが重要ですので。」

大佐「確かに英雄は所謂『 規格外 』になってしまいますね。」

提督「私が率いている連中が一般鎮守府の理の外にある事は自覚しています。」

提督「ですが、それを頼みとしての作戦の立案は後に繋がらない。」

大佐「少将はその後の事もお考えと。」

提督「そうです。我々は此処に常駐する軍ではないですからね。」

提督「今いる連中で後の対処も出来るように見本を見せないといけないわけです。」

提督「持てる力全てで相手を叩き潰しますが、

   一般兵レベルでも倒せるというやり方を覚えてもらわにゃならんのです。」ハァ



言外に出さぬ現上層部、そして味方である正規軍連中への不満。

まさしく自分の部下達を独楽鼠の如く北へ南へと

動かざるを得ない状況を溜息と共に吐き出したのだった。

そして、それは同盟軍であり本来の太平洋の盟主である米国。

目の前の相手への不満でもある。

だけに大佐が述べた質問はある種のカウンターパンチであり不意打ちだった。

507 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/02(金) 00:31:58.34 ID:voPzULVm0

大佐「時に話は変わりますが、

   そちらに英国王室の血を引かれる方がいらっしゃいませんか?」

提督「!?」

大佐「そのお方は次期国王陛下としても家柄、血筋、序列が申し分ない。」

大佐「実に次期国王として相応しいと思いませんか?」



少しばかりの沈黙。



提督「……。」

提督「その様な高貴な出自の艦娘がいるかどうかは分かりかねます。」



正しく後頭部をハンマーで殴られた衝撃。

普段の提督であれば質問の意図を考える為に思考を巡らせられたであろう。

だが、内容がまったくの不意打ちだっただけに

考えるのが一瞬遅れ動揺したのが顔に出てしまった。



大佐「初めに御紹介いただいたように表情を隠せない方のようだ。」

大佐「 『 艦娘 』とは私は一言も言ってはいませんよ?」

提督「!!」



動揺したが故の失言。



大佐「我が国は大西洋戦線における現英国政府を見捨てる選択をとろうとしています。」



あっさりと質問をした理由を述べ、人懐っこくニコニコとした顔で提督の顔を覗きこむ大佐。

508 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/02(金) 00:33:37.84 ID:voPzULVm0

提督「……、その、どうしてそのような?」



鏡があれば映る顔は引き攣った顔なのは間違いないだろう。



大佐「お教えしたいのはやまやまですが宜しいのですか?」

提督「…………。」



先ほどから我が国を強調する大佐。これはつまり個人で国を代表できる人物。

米国大統領が関わっている、それもアフリカや中南米の後進国の国家転覆等ではなく。

先進国、それも国連での五大常任理事国の一国を紐付きにしようという謀略。

その話しを聞くのは正しくパンドラの箱を開けるが如しであり底に希望は残らない。

だが、提督は既に、そう、うっかりと決定がされた理由を尋ねてしまった。

これは見ようによっては協力はしないが容認はすると言っている様なものである。

さらに提督の失態が有るとすれば

初めに英国王室関係者、王族がいる事を強く否定しなかった事。

そればかりかうっかりと艦娘にそれがいると言ってしまった事。

これは以前に明石との会話でも漏らしたように何某かの切り札になるかもしれないと、

面倒ではあるが使い方によっては強力な毒にも薬にもなる代物と判断していたという背景がある。

その所為で大佐に匿っているという情報を与え、

その出自を把握している事を自白したも同然なのである。

そして、続いた衝撃の計画。

初めに鍵を握っている人物が自分の手元にいる事を仄めかしてしまった為にその計画を阻止すればどうなるか。

そして、阻止できない事を提督程の人物ともなれば理解が出来ない訳ではない。

ゆえに、積極的に協力は出来ないとなれば消極的に何もしないという選択肢しか残らないのだ。

つまりは沈黙と黙認、ということである。それを理解し、大佐が言葉を続ける。


509 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/02(金) 00:35:45.02 ID:voPzULVm0

大佐「考えられているほどに最悪の事態ではありません。」

大佐「我が国はあくまで現英国政府が

   信用の置ける友好的政府へ交代していただきたいだけですよ。」



それは、つまり、現政府は信用に値しないという事。それも政権交代を考えるほどに。

でも、どうやって?



大佐「現女王陛下は高齢で公務を全て代理の方が行われている状況です。」

大佐「新国王の即位は英国民が望んでいる状態でもあります。」



話が見えてきた。国王が変われば国璽も変わる。

英国政府の公文書に押される印は殆どが当代国王の戴冠する姿を表した国璽である。

つまりは現女王から印を預かる大法官を含めて英国政府の一部、

或いは全部が勝手に印を押し国家を正しく我が物としている。

大法官の任務は庶民院からの議員が選ばれなくはないが

慣習として貴族の有力者が選ばれ、そして大臣としての権能は法務に関わる。

地味ではあるがその役割は意外と大きく、なにより英国を体現する貴族社会の有力者のみがなりえる仕事。



大佐「新国王への忠誠を盾に英国貴族達を割る予定です。」



それは今までの国璽が変わるという事実をつきつけ

敵か味方かの踏み絵を貴族たちへ迫るという事でも有る。

議会と貴族社会に睨みの利く要職が変わる。

それはそのコミュニティに所属する者からすれば正しく青天の霹靂であろう。



大佐「これから先の話は世界の趨勢にも関わりますので

   少将にも覚悟いただきたいのと、一つ条件を飲んでいただきたい。

   我が国からの駐在武官をそちらの鎮守府で引き受けていただけないでしょうか。」



それは同盟国全ての政治について話が大きくなっているという意味。

旧き友人から託されたバスクリン缶の中身に、先の保険の引受人の一覧。

時雨やウォースパイトが88鎮守府に流れ着いた理由。

一見関係ないように見える、一つ一つの点と点がつながり線になる。

510 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/02(金) 00:38:18.65 ID:voPzULVm0


現英国政府は深海棲艦と何某かの

それも同盟国に対し隠すほどの密約を結んでいるという事。

大方、カリブに浮かぶバージン諸島がそれらの裏取引の舞台になったのであろう。

考えてみれば当然とも言える。

日本のように自国で艦娘を独自開発という事無く、まして、島国。

大陸諸国であるドイツ、フランス、イタリアといった国と比べ

海上封鎖ともなれば圧倒的な不利が出る。

加えて多くの海外領、それらの安全の保証は盟主であるイギリス本国の責任でもあるのだ。

深海棲艦達と取引せざるを得ないだけの事情はある。だがしかし。

世界はそれをどう判断するであろうか?

ましてや現状として世界の海で船の航行の安全が保たれていない状況において。

英国が島国であり自国周辺に欧州棲姫や水姫といった強個体がいるにも関わらず国を保てている。

ドイツ、フランスが軍港等の軍事的重要拠点を奪われ、

イタリアが地中海の制海権を完全に掌握していない状況から見ればどうであるか?

日本からの救援部隊が幾度か送り込まれたのが敵深海棲姫達を容易に撃退出来たのも実は出来レース。

疑われない為の猿芝居。更に言えば戦後の事まで考えた二枚舌外交。

英国は深海達と手を組み人類側を裏切っている可能性まで有り得ると言う事である。

そして、考えたくは無いが最初に艦娘を作り出した日本もまた島国なのである……。

自国の利益を最大限にするのが外交ではあるが

世界のリーダーを自負するアメリカからすれば英国のそれは容認できるわけがない。

また、似た地理的状況の日本に疑念の目が向くのも納得のいく理由では有る。

511 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/02(金) 00:39:51.57 ID:voPzULVm0


提督「……、条件ですが、駐在武官の派遣という事でしたら

   駆逐艦娘をお願いします。」

提督「この一線は越えられませんな。」



提督が黙ること数分。考えられる限りの可能性を考え出した結論。



大佐「この一件はお分かりかと思いますが貴国政府にも無関係ではないです。」



そう、今回の一件、現在、救援に向っている所が

襲撃を受けているという情報が故意に握りつぶされた。

恐らく、遅れていたという表現に置き換わるのだろうが。

それを自分が察知し撃退したとなれば。



大佐「そちらの国内の敵対勢力。そうですね。

   そちらに少将提督は皮手袋を投げつけたようなものでしょうか?」



ニコニコと満面の笑みを浮かべる大佐。

救援を遅らせることが予め密約として成り立っていたのであれば

それを壊した提督は当然の如く敵となる。

提督の階級が責任と仕事を増やし動きを鈍くする事を

狙ったかの様に作戦前に上がった事を考えると敵は自ずと見えてくる。

それは間違いなく軍上層部。人事を自在に出来る立ち位置に居る。

そして、時雨をここに叩き込んだ相手に繋がっているだろう。

512 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/02(金) 00:41:34.28 ID:voPzULVm0


大佐「駐在武官で駆逐艦ならば受け入れていただけるという事でしたら……。」

大佐「そうですね。サミュエル・B・ロバーツを派遣いたしましょう。」

大佐「駆逐艦でなければ少将提督も安心出来ないでしょう?」



想定内、いや予めその答えを予定していたと言わんばかりに艦娘名を挙げる大佐。

戦艦や空母といった艦娘の派遣はすなわち派遣先を

武力制圧する可能性も見据えているという意思が見えなくも無い選択。

また、逆の見方、提督と敵対する相手からみれば

米軍から戦力の支援を受ける事が容易であるという誤ったメッセージを送ることになる。

敵がはっきりとしていない状態で緊張をより深めるのは賢いとは言いがたい。

それらを抑えつつでのギリギリの妥協点が駆逐艦なのである。

さらに言えばそれらを配慮する必要が有るという事は

米国側も日本国内の敵をはっきりと特定しきれていないということでもある。



大佐「財閥系の企業、軍上層部。我が国の諜報機関の全力で調べても解明は難しいですな。」

大佐「何せ人種そのものが違いますから。」



欧米の顔つきとアジア人の顔つき。当たり前といえば当たり前。

直接動けば人種の違いは枷となる。



大佐「我が国は戦後もリーダーであり続けることを自認しています。」

大佐「少将の協力、感謝いたします。」

この一言に含まれる意味。

それは日本が戦後に艦娘を利用しての海洋権益の拡大は元より、

現在の提督にとっての不明な敵が英国とも繋がっている可能性、いや繋がっているという事。

そして、米国は決してそれを許さないという強い決意表明であり

敵対勢力は容赦なく制裁するという事。


513 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/02(金) 00:43:12.62 ID:voPzULVm0


大佐「太平洋の盟主は今後も中国などでは無く我が国です。」



中国をわざわざ挟むという事は国内の敵は中国とも通じているという明示。



提督「……。軍人の私が政治に嘴を挟むわけにはいきませんので……。」

提督「とりあえずは目の前に集中しましょうか。」



自分の手には余る話し。関わりたくないというのが本音。

そして、それは望むと望まざると今後に関わってくるといううんざりするほどの現実。



提督(目の前の深海連中を叩きつぶすだけの方がどんなに楽か。)



目の前でニコニコと笑う相手の顔が

これほど憎らしく見える事はこれからもまずはないだろう。

頭を切り替え、やるべき事。再び海図に目を落す提督だった。

時を遡り雪風達が重巡棲姫達と事を始める頃と同じ時。

長門達もまた敵の部隊と事を構えようとしていた。

514 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/02(金) 00:44:43.43 ID:voPzULVm0


深海陣営 後方集積所守備隊 泊地

戦艦棲姫は一人、思考を巡らせる。



戦艦「……、あの指揮官が出てきていたら負けねぇ。」



脳裏によぎるは北方水姫が鮮やかに負け、沈んだ先の一戦。



戦艦「それに、あの時の、あの場所に居た戦艦の艦娘達。」



そして、自身の目の前で行われた鮮やか退き口。



戦艦「英雄に頼らなければいけない戦場は駄目だけれど

   英雄というのは時として全ての事象を引っくり返すトリックスター。」

戦艦「世の理を無視する事の出来る者。」

戦艦「この泊地の位置は本隊への補給拠点、

   そして、周辺敵鎮守府への睨みを効かす意味でも重要な場所。」

戦艦「巧妙に隠してはあるけれど。

   それを理解できる相手、そして、こちらを先に排除する事を目的としてくる相手ならば。」



本隊の後ろを取るつもりであるという意思は明確。

さらには重巡棲姫が守る泊地へまで敵が部隊をまわしている可能性は充分にある。

そしてその二つを襲撃、壊滅された場合は。本隊の退路が絶たれる事になる。

515 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/02(金) 00:46:21.97 ID:voPzULVm0

戦艦「敵が優秀だと、相手が打つ手を予想しやすいからいいことだけれど。」



最悪の結果になる事はいただけない。いや。そこまで出来る相手ならば。



戦艦(部下の兵の質も当然良いでしょうね。)

戦艦(敵が羨ましい。)



将として上に立つ者であれば

配られた手札で戦わねばならないのは兵家の常だが。

無いものねだりをしたくなるのも性である。



戦艦「タ級ちゃん、頼まれごとをお願いできるかしら?」



迎撃に出たはずの駆逐棲姫が既に水底に沈んだ事は把握済み。

敵が愚かしい事を願うは無策の極み。



タ級「戦艦棲姫様。用事と言うのは一体?」

戦艦「駆逐古姫様に意見具申を。」

タ級「駆逐古姫様にですか。」



姫級は艦種の違いはあれど対等。

これは基本原則ではあるが何事にも例外という物はある。

名前に古(いにしえ)とわざわざつけられる様に

その個体は極初期から確認されていた。

艦娘システムがある程度制度化し同盟国と国際コードネームで

情報の共有を行っていく中で割り振られた名前が古姫。

それは姫達の中でも古(いにしえ)とあえてつけられる古参兵である。

駆逐艦というその艦種も先駆けを誉れとする艦種という事も考えれば、

生き残り、そこに存在する事の意味は自ずと分かるというものである。

なればこそ姫級であれば敬意を払わないものはおらず、

水鬼級指揮官も参謀職として重用したりしている。

そして、この戦場の深海側総旗艦である戦艦水姫もまた、

彼女を参謀として用いていた。

516 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/02(金) 00:49:09.78 ID:voPzULVm0

戦艦「私達のいるこの泊地、もしくは重巡棲姫が守っている泊地。

   どちらかが落ちるような場合があれば即時撤退をと、駆逐古姫様に伝えて頂戴。」

タ級「無線での連絡ではなくですか。」

戦艦「今は無線封鎖中よ。それに戦う前から撤退の話しを無線でしてみなさい。」



誰が聞いているか分からないのに、いらぬ動揺を招くでしょと察しの悪い自身の部下を叱責。



戦艦「あの方ならば私からの言葉を聞いてくださるわ。」



既に損切の期限は過ぎている。戦艦棲姫は確実に理解していた。

そして、自分たちの将である戦艦水鬼に思いを馳せる。優秀ゆえに負け知らず。

百戦百勝、全戦全勝、常勝無敗。

で、あるが故に。部下からの意見を聞き入れたがらない一面もある。



戦艦(今回の負け戦を負けと認めるまでには時間が掛かるでしょうね。)



タ級が駆逐古姫へのメッセージを持ち泊地を出て行くのを見送る戦艦棲姫。



戦艦「今度の戦で戦艦水鬼様は一回り大きく、より強き将へなられるはず。」

戦艦「将は大敗をして真の名将になる。」

戦艦(なればこそ。命惜しむ訳にはいかないわね。)



駆逐棲姫への意見具申が仮に通ったとしても

いままで掛けた損害をそうやすやすと損切出来るとも思えず。

ましてや敵の拠点は後一歩で陥落寸前まで来ている。



戦艦(ゴール目前での撤退なんて考えないわよね。)



総旗艦ではなくあくまで艦隊の一員であるがため

思考に余裕があるからこそ見えてくる現状。

総旗艦であれば恐らくは自身も損切のラインを見誤っているであろう事。

駆逐古姫へ意見具申した撤退を考えるラインも実は遅いのではないかと少し思っている事。
517 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/02(金) 00:54:55.21 ID:voPzULVm0

戦艦「全てに時遅し。」

戦艦「なれど…、なれど退くは恥。死して時を稼ぐもまた配下の将の勤め。」



惜しむらくは。



戦艦「深海棲艦としての今後の行く末を見届けられない事かしらね。」



戦艦水鬼がこの方面の指揮官として移動をしてきて共に巡った戦場の思いに浸る。

今まで上官が無能であったが故に放置されてきた敵の突出部への侵攻作戦。

先任へ幾度かその重要性について意見具申をしたことはあったが無視されてきたもの。

ゆえに戦艦棲姫も放置を決め込んだ突出部。

新しい総旗艦は幾度かの戦役を過ごした後、自身の才能でその重要性に気付き

敵拠点の奪取を計画、立案、実行。

それは戦略的勝利に今一歩のところまで迫ってはいた。

戦艦棲姫に己の命を掛けてもよいと思わせるほどの才能の片鱗。



戦艦(敵の指揮官が有能であったという事ね。)

戦艦(あの世があるならば。)

戦艦(敵の指揮官が死んだ後にでもあの世で教えを請いたいものね。)



戦艦棲姫は指揮官として優秀な将である為、

現状、自分の命が助からない事を悟っている。

敵の偵察機などは来ていないが間違いなくまもなく接触するはず。

願わくばその命、燃え尽きるまで、立ったままで死ぬることを願い。

彼女は配下の深海棲艦へ即時戦闘態勢を取る事を命じたのだった。

518 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/02(金) 01:02:30.77 ID:voPzULVm0
本日の更新これにて終了です

どうにかこのスレ内で救援の話は終われそうな感じです

88メンバーでのスピンオフ?的番外編は多分、別スレになる予感

それまでにはスレ建てバグがなおっているといいなぁと思います

Rに建てられるとか困りますね本当、アゲ荒しがいるのか特定のスレがあげられているのが目に付きますし

管理人さん管理して……の現状こまりました、愚痴的な部分が多く申訳ありません

本日も、長々とした本作品をお読み頂きありがとうござました

こういったシリアス系SSが増えない中ニッチなのを読んでくださっている方がいるのは本当に感謝です

応援レス、感想レス、いつもありがたく拝読しています

どうぞ、お気軽にレスいただきますようお願い申し上げます
519 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/02(金) 01:12:06.90 ID:GRb6sIzI0
乙です
何やらきな臭くなってきましたが次回以降の更新も楽しみです
520 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/02(金) 01:18:29.50 ID:NwSxQws40
あれだけ自分が政治的に危険な状態にあり尚且つ目の前にいる人物が危険だとわかっていながらこの大失態
このままじゃ新設された日本州から移動鎮守府でも用意してトンズラこくしか生きる道がなくなりそうだ
521 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/02(金) 08:42:22.26 ID:ZRuABN9GO
乙!
522 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/05(月) 00:12:04.54 ID:VuM8kfT60
久しぶりにケルベロスよんでてふと思いついた一発ネタ
よろしければ御笑納ください
523 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/05(月) 00:13:02.78 ID:VuM8kfT60

鹿児島県 海軍 岩川基地



大淀「提督、救援要請です。」

提督「救援依頼を受理した。」

提督「至急、救援を送る。」

大淀「相手先へは?」

提督「30分程我慢してくれと連絡を。」



太平洋某所



陽炎「後、30分我慢しろですって!?」

陽炎「30分も持つわけが無いわ!」

陽炎「だいたいこの近くの鎮守府から救援に来るっていったって30分でなんて無理でしょう!!」

叢雲「……。」

叢雲「救援を30分で届けるっていったのね?」

陽炎「えぇ、そうだけど。」

叢雲「もしかして『 明王 』が来るのじゃないかしら?」

陽炎「明王ってあの特殊作戦群の?」
524 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/05(月) 00:14:00.41 ID:VuM8kfT60



キィィィィィ



機長「高度維持。」

副機長「了解。」

機長「これより1分後、荷物を投下する。」

副機長「了解。」

機長「こちらB1輸送隊、近隣の友軍へ連絡。まもなく部隊の輸送が完了する。」



ガポン



「こちら不動隊。降下準備良し。」

機長「了解。爆弾庫の扉を開ける。Good luck!」



バシュッ



陽炎「ウィングスーツが6人!?」

叢雲「来た!戦場の死神!軍神!」



シュー!



バッ!



ドン!



叢雲「空中からの砲撃が敵に命中したわ!」



「ガァァァ!」



叢雲「艤装にペイントされている部隊マークは不動明王!間違いないわ!」

叢雲「あれは、四菱重工製 重火力強化型外部追加艤装 紅朱雀 試製甲型!」

叢雲「他の戦場で一度だけ見たこと有るわ!」

叢雲「あれは戦場の伝説!不動明王隊よ!」

525 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/05(月) 00:14:57.25 ID:VuM8kfT60

超音速の爆撃機をただ前線に兵士を送るためのタクシー代わりに利用。

音速の世界には深海棲艦の持つ艦載機がどんなに優秀であろうと。

追いつける者などいやしない。

海軍岩川基地は海に面していない代わりに特殊部隊が配属されたいた。

特殊機動降下猟兵、不動明王隊。

深海棲艦を圧倒的戦力で打ちのめす姿が仏敵を容赦なく討ち滅ぼす

その姿に似ていたことからいつしか戦場の伝説と呼ばれるようになった。

彼らは先行試製追加艤装を使用し危機的状況に陥った部隊の救援活動を行っていた。

また、超音速爆撃機を利用した強襲作戦も行い戦果をあげていた。

その追加艤装を用いた艦娘は駆逐艦娘でも戦艦の火力を優に超える。



「岩川海軍基地所属 特殊作戦群 不動明王隊所属 夕雲型 19番艦 」



「 清霜!救援に推参! 」



彼女達が通った後には敵の骸が転がっていたという。

この物語は一人の駆逐艦娘が軍神へと至るまでの物語である。

526 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/05(月) 00:16:41.34 ID:VuM8kfT60
本編すすめず何やってんだ
岩川基地所属の提督の方いらしたらごめんなさい
海が無い基地の岩川って実はこういった感じで艦娘を出撃させてるんじゃない?という
なんとなーくな妄想からの一発ネタでした、お読み頂きありがとうございました
527 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/05(月) 00:27:34.84 ID:nQK9sJXH0
軍神(戦艦にはなれず)
528 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/11(日) 00:21:03.68 ID:gduTkyzB0
戦艦通り越して軍神になったかぁ…
529 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/11(日) 00:30:11.01 ID:0SQgp8xMo
駆逐艦は一応狭義の軍艦ではないからなぁ
530 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/14(水) 00:44:14.14 ID:N7yw9PNn0
少しだけ本編更新
体調が優れない日が多い…
お時間よろしければお読みいただけると幸いです
531 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/14(水) 00:45:18.58 ID:N7yw9PNn0

戦艦「敵偵察機に逃げられたのね。」

戦艦「そう、随分と愉快な敵みたいね。」



哨戒に出ていた部隊からの報告に微笑む。

敵の偵察機は戦艦棲姫達のいる泊地を確認後、全力でこちらの迎撃機を振り切り離脱。

離脱時に平文で『 我ニ追イツク敵機ナシ 』と挑発して消えていった。



戦艦「来るのね。」



偵察機が敵泊地を発見し強襲。

各所で戦端が開かれそこかしこに砲煙があがり火蓋は切られた。

532 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/14(水) 00:46:25.21 ID:N7yw9PNn0

長門「………。」

時雨「どうしたの?」

長門「瑞鶴!」

瑞鶴「何?」

長門「すまないが旗艦を任せてもいいか?」

瑞鶴「ずっとはやらないわよ?」

長門「何、直ぐに済ませるさ。」

長門「時雨。川内と二人で瑞鶴の護衛を頼む。」

時雨「任されたよ。長門はどうするの?」

長門「一仕事だ。」

時雨「そっか。」

時雨「……。Good Luck!」b サムズアップ

長門「あぁ、行って来る。」フッ



そこかしこで戦闘が行われる中、

長門は一人、一番激しく戦闘が行われている所へ向った。
533 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/14(水) 00:48:02.45 ID:N7yw9PNn0


深海泊地 守備隊本隊



戦艦「この首、あなた達雑兵にくれてやるほど安くはないわよ!」ドンドン!

戦艦「さぁ!どうしたの艦娘というのはその程度のものなの!?」



その激戦区では戦艦棲姫が部下を従えず一人で複数の艦娘達を相手していた。

普通に考えれば1対複数となれば多勢に無勢で負ける。

だが、これはあくまで一般論。

相手との力量差が明らかに大きければ大きいほど

複数で戦うほうが不利になる。



戦艦「それを狙っていたのは分かっていたわよ?」



巨大な人型艤装を軽々と移動させ自身の正面に居た艦娘を

背後から他の艦娘が自分へ向けて撃った魚雷で仕留める。

戦艦棲姫は自分を狙った軽巡艦娘の魚雷を自分の艤装を影にして射線を見せず

その背後からの攻撃をさらに利用して正面に相手どっていた重巡艦娘に当てたのだ。

そう、1対複数での戦いは敵が老練であればあるほどこちらの攻撃が味方への攻撃として利用される。

そして、乱戦ともなれば空母艦載機による爆撃も味方への誤爆もある為、ほぼ不可能。



戦艦「あら、足を止めちゃ駄目でしょう?」



陣形を整え一丸となって戦おうと

態勢を立て直し始めた艦娘達の集団に戦艦棲姫は一気に突っ込んだ。



戦艦「他愛の無い物ねぇ。」



陣形の中に突っ込まれると味方同士の距離が近い為

魚雷等の射線が制限されてしまう。

そして、近接距離での砲撃戦になると当然。

534 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/14(水) 00:49:35.28 ID:N7yw9PNn0

戦艦「私の勝ちよ?」



立て直しつつあった陣形の中に突っ込まれ

中から切り崩された結果、艦娘部隊は全員死亡した。



戦艦「思った程、強くない相手だったかしら?」



闇夜を切り取ったかの様な

漆黒のロングドレスに付いた敵の肉片を手で軽く払う。



戦艦(駆逐古姫様への進言は杞憂だったかしら?)



上空を睨み、敵攻撃機への牽制の対空射撃をしつつ

益体もない事を考えていた時だった。



戦艦「!」ゾクッ

戦艦「この感覚は……。」

戦艦「恐怖!?」



背中に一筋ながれる冷や汗。

敵の姿は見えていない、それでも感じる威圧感。

姫級としていくつもの戦場を渡り歩いてきたが。

とうの昔に忘れたはずの感覚。であるにもかかわらず。



戦艦「再び恐怖を感じる事があるなんて。」



その身に感じるは高揚感。

ドン!

敵の砲弾は自身の目前に着弾した。



戦艦「挨拶代わりというわけね。」



面白い、間違いなく、あの時のあの戦艦が来たのだ。

535 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/14(水) 00:52:02.23 ID:N7yw9PNn0

ザリザリザリ



戦艦「あなたが砲撃をしたのかしら?」



無線での呼び出しがあり、それに応答する。

恐らくは総旗艦と会話をした際に使われた無線と同じ周波数。



長門「そうだ。」



やはりか。



戦艦「何のようかしら?降伏勧告かしら?」

戦艦「悪いけれどキャッチセールスなら間に合っているわよ?」

長門「ふん。なかなか冗談の出来る相手のようだ。」

長門「お前か?」

戦艦「そうよ。」

戦艦「貴方が?」

戦艦「そうだ。」



なれば。



戦艦 長門「「言葉は不要!!」」



オレンジの砲火に大量の砲煙、砲撃の轟音が周囲に響き渡る。



戦艦(反応の速さは流石ね)



戦艦棲姫の人型艤装についた砲塔が回転し終わる前に舵を切り回避。



長門「私を仕留める心算なら目で追っているようでは無理だぞ?」

戦艦「厄介な相手ねぇ。」ニヤリ

長門(あれだけの巨体を細やかに動かすか。)



高火力、高出力、大きい事はいいことだを地でいく艤装でありながら

長門の攻撃を目で確認した後で回避をする。



長門「戦い難い相手だなぁ。」ニィッ



空母艦載機による攻撃が艦艇に対して有効ともなれば航空主兵論が台頭するは当たり前。

そんな中での戦艦ともいえば時として時代遅れとも揶揄される。

一人の艦娘と一人の深海棲艦。

戦艦という同じ艦種の二人は今、その生まれ持っての役割を大いに楽しんでいた。
536 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/14(水) 00:53:18.94 ID:N7yw9PNn0

砲撃して離脱。艦砲射撃の基本、同航戦を避け、ジグザグ航行。



長門「その程度の基本を守った所で。」

戦艦「倒せるような相手ではない事は分かっているわよ?」



ガコガコガコ

長門の艤装の第一砲塔、第二砲塔がクロスショットを狙い仰角を修正。



戦艦(第三砲塔はあえて外すわけね)



第一、第二砲塔は散布界を重ねる様に砲撃。

そして、戦艦棲姫の進路を制限する為に第三砲塔は回避行動の先へと砲撃。

戦艦棲姫はその意図を読んでか長門の狙う方向以外へと回避。



長門(流石に見え透いた罠にはかからんか。)



何度かの反航戦の後、先に仕掛けたのは戦艦棲姫だった。

537 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/14(水) 00:55:15.23 ID:N7yw9PNn0

巨大な人型艤装の腕が海面に向って打ち込まれる。

どどん!

その深海の姫級の全力で打ち込まれた海面からは巨大な水柱があがる!

そして!海水の壁が出来、長門と戦艦棲姫の間の視界を塞いだ!



長門「目くらましか!」



直前の戦艦棲姫の位置、そして自分の位置。

それから敵が砲撃を仕掛けてくるであろうポイントを即座に判断し、

それに備え防御態勢をとる。

しかし、次の瞬間に長門を襲ったのは砲弾では無かった!



長門「これは!」



水壁を突きぬけ飛んできたのは砲弾でも戦艦棲姫でもなく。

視界に飛び込んできたのは先ほどまで周囲で戦艦棲姫と戦っていた仲間達の骸だった。

長門だからこそ、戦闘中もそれが視認出来る程の余裕があった訳だが。

その余裕が長門に一瞬の躊躇をさせた。

ドン!

戦艦棲姫の砲撃音が響き長門の位置へ全弾着弾。



戦艦「水柱を抜けて威力が多少は落ちているでしょうけど。」

戦艦「当れば只ではすまないでしょう?」ニマァ



その笑顔は命中を確信してのものであり。



戦艦「あなたの仲間の死体を目くらましに使ったことを卑怯だなんて。」

戦艦「まさか言うようなタマじゃないわよね。」



水柱が納まるのを待ちつつ、戦艦棲姫は備える。

なぜなら自身の砲撃を一、二発受けた程度では沈む訳がない事を確信しているから。



戦艦「まだ、終わりじゃないでしょ?」



戦艦棲姫は戦闘態勢のまま、正面を睨みつけた。
538 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/14(水) 01:01:05.70 ID:N7yw9PNn0
今日はここまでの更新です、ホント少しだけ
現実的な話、艦娘同士の一騎打ちとかは条件がかなり限られると思います
話の盛り上がりの為にポーラや長門において採用していますが笑って許していただけると感謝です
バトル部分も擬音だけですませると味気ないしなぁとかとか色々悩みますね……
感想、乙レス、いつもありがたく拝読しています
本当に感謝です、レスが付かないのは書いていて色々心配になる性格なので本当……
では、こんな感じではありますが次回もお読みいただけると感謝です
539 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/14(水) 07:51:52.00 ID:mw7/nX+CO
乙!
540 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/14(水) 16:22:51.56 ID:PKDINovE0
どっちも戦士ではなく将だからちょっとやそっとの奇手は鼻歌交じりでかわしそうだがなりふり構わないラフファイトはどっちが上手かな
541 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/30(金) 00:19:33.65 ID:of9urzBn0
だいぶ間が空きましたが年内に終わらせれるように頑張ります
多分、このスレ内で第二部?的な形でのある程度キリがいい所まで話しを進める事は出来ると思っています
艦これSS書いていた人達で定期的に挙げていた人達がやめちゃったのか数が少なくなりましたね……
どこに移動したのやら、それでは本日も長めで申し訳ないですがお時間よろしければお付き合いください
542 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/30(金) 00:21:17.63 ID:of9urzBn0

ドン!

砲声に構え人型艤装の左腕が守るように戦艦棲姫の前に被さる。

戦艦(やはり生きていたわね。)ニヤリ

顔が緩むのが自分でも分かる。

そして、その一瞬を突かれた。

シャーッ!



戦艦「ばかな!」



そう、それは敵が自分と同じ戦艦であれば本来は使えないはずの兵装。



長門「なに、私は人から艦娘になったのでな。」

長門「最初の、艦娘としての初等訓練で駆逐艦種の訓練も受けていたに過ぎんよ。」

長門「ほんのお遊び程度だがな。」



長門が放った魚雷は周囲で兵装をつけたまま死んだ艦娘の魚雷である。

戦艦棲姫の水柱を目隠しにしての攻撃を長門も利用し

周囲に漂っていた駆逐艦娘の魚雷発射装置を利用したのだ。

そして、その魚雷は見事に戦艦棲姫に命中した。

543 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/30(金) 00:22:38.37 ID:of9urzBn0


戦艦「やるじゃない。」



被雷直前に人型艤装の右手が海面に刺さり

魚雷が重要機関へと当るのを防いだ事もあり。

戦艦棲姫には見た目にさほどダメージは入っていないようである。

だが、後方の人型艤装の右手は指が吹き飛び

ダメージを与える事に成功しているのは間違いない。



長門「お前さんほどではないさ。」



水柱による視界の制限、味方艦娘の死体を利用しての不意打ち。

長門はこれに対応する為に一時的に姿勢制御システムを手動でダウン。

これにより砲撃の反動の衝撃が長門の体へ直接伝わる事になる。

砲撃の反動を緊急回避に使用した形である。

しかし、体への負担はどれだけの物か。



戦艦「大丈夫かしら?」

長門「心配してもらうほどではないさ。」

長門「それよりお前の方こそ大丈夫なのか?」

戦艦「それこそそっくりそのまま返すわ?」



お互いの状況をじっくりと眺め、互いのダメージを推し量る二人。



戦艦「ふっふっふっふ。」

長門「くっくっくっく。」



二人はお互いの状況を確認して笑い出した。

そして、ひとしきり大声で笑った後。どちらからともなく。

544 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/30(金) 00:23:43.62 ID:of9urzBn0


戦艦「名前を聞いてもいいかしら?」

長門「名前?」

戦艦「えぇ、戦艦長門ではなく。

   そうね、貴方ほどの将なら二つ名の一つや二つあるんでしょ?」

長門 フン

長門「名乗る程の名ではないが……。」

長門「そうだな。火車曳兎が一番古い名か。」



長門の言葉に驚くような顔をする戦艦棲姫。



戦艦「あなたが……、そう。

   あなた、私達の間で名の知れた賞金首(アイドル)よ?」

長門「そうか。それならサインに握手でもしてやろうか?」

戦艦「冗談。」

長門「それで、随分と我々人間側の事情に明るいようだが?」

戦艦「今こうして貴方と会話をしている。お互いの言葉を理解出来ている。」

戦艦「あなた達が私達を研究しているように。

   私達もあなた達の事を研究していない道理が無いわよね?」



言われてみればそれは至極最も。

つまりは占領した地域に残った鎮守府施設などから

可能な限りの機密情報などを拾い上げこちらを研究しているという事であり。

場合によっては人間側と何某かのやり取りを行っているという事。

人類側は決して一枚岩では無いと言う事である。

545 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/30(金) 00:25:26.31 ID:of9urzBn0

長門「で、私だけ名乗るというのは不公平なのではないかな?」

戦艦「あぁ、これは失礼したわね。」

戦艦「そうね。私の名前ね。」

戦艦「私達の間での呼び名はあなた達の言葉では発音できないわね…。」



そして、思い出したかの様に言葉を繋ぐ。



戦艦「あなた達が私につけた名前は……、そうね。

   確か。グレモリーだったかしら?」

長門「………。貴様が。貴様がグレモリーか。」



瞬間、空気が震えた。



戦艦「えぇ、そうよ。お互いに、面白い縁だとは思わない?」

長門「成程、ソロモン……、アイアンボトムサウンド以来という事か…。」



お互いに因縁浅からずという奴である。

そして、将として、名乗りを挙げれば

その戦い方は自ずと決まる。



戦艦「小細工無しなんてどうかしら?」

長門「部隊を率いる指揮官のする戦い方ではないな。」

戦艦「あら?いやだったかしら?」

長門「いや?久しく一騎打ちなどしていなかったのでな。」



三次元での戦いを仕掛けることの出来る空母艦載機が主兵力となる戦場へ移行する中で、

戦艦である彼女達がその活躍をする機会と言うのは実際には少なくなってきている。

その活躍の場といえば艦隊の主力となる空母の護衛であったり、

味方が敵艦隊の航空戦力を屠った後での殲滅、止めの一撃。

更に言えば連合艦隊の旗艦として、

指揮艦として全体の流れを見て指示を出すという責任ある立場になれば

一騎打ちは元より最前線で戦うなどという機会はまずない。

だけに二人にとってのそれは一軍を率いる将ではなく一戦士としての決闘。

546 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/30(金) 00:26:41.66 ID:of9urzBn0

戦艦「戦いの合図は任せても?」

長門「随分と信用して貰ったもんだ。」

戦艦「こういう時の戦い方の相場はあれでしょ?

   あなた達の映画でみたわ?」

長門「西部劇か?」ニヤリ

戦艦「そうねぇ。

   『 賢い者程、最後まで銃を手に取らない 』だったかしら?」ニヤリ

長門「それであれば、銃を、いや、初めから砲で語り合う我らはなんであろうなぁ?」ニタリ

戦艦「そうねぇ、少なくとも賢者ではないわよね。」ニタリ

長門 フフン



そして、上着のポケットの中から一枚のコインを取り出す長門。



長門「クオーターか……。」(25¢硬貨)

長門「こいつでどうだ?」

戦艦「実に雰囲気がらしくていいじゃない。」



そして、長門が手に乗せたコインを指で上空に弾いた。

チィ ――――――― ン

コインが上空へと飛び上がった瞬間から

長門の艤装が黒煙を大量に吐き出す。

そして、戦艦棲姫の人型艤装もまたその瞬間に備え

大きく振動を始め口から大きく息を吐いた。

一秒が一分にも、一時間にも、あるいは一日。

スローモーションでコインが上空から二人の間に落ち。

チャプン

海に沈んだ。

547 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/30(金) 00:28:08.62 ID:of9urzBn0


その瞬間からの全ての支配者は砲声と砲煙だった。

仰俯角、共に零でお互いに回避が出来ても

間に合わない距離からの砲撃が開始された。

砲煙は周囲に黒々と広がり視界を封じる。

お互いに回避行動をとりつつ砲撃を続ける、

相手の姿は煙の中で見えないはずだが。



長門(回避行動での動きで空気が動けば。)

戦艦(煙も動く。その始まりに相手はいる!)



砲撃を行えばその衝撃で煙は晴れるがまたその砲撃で発生した砲煙で周囲が煙る。

間断なく激しい砲声が続き周囲を黒々と染め上げ時折なかで火花が明滅。



戦艦(砲撃の最適距離の確保を!)



戦艦棲姫は砲撃の為に距離をとる。

お互いの息遣いが聞こえそうな距離での砲撃戦は

被害が甚大になりやすく通常選択するべきではない選択肢。

そして、戦艦棲姫は小細工なしとはいったが彼女自身の目的は時間稼ぎ。

自分が長門をこの場に引き止めていれば

それだけ本隊の逃げる時間を稼げると算盤を弾く。

そして、敵の長門にしても自分と戦った後がある。

だから被害が大きくなるのは避ける筈。

指揮官として戦艦棲姫は冷静判断し距離をとった後、

砲弾の雨で長門を倒す選択をした。
548 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/30(金) 00:29:38.54 ID:of9urzBn0


長門「最後まで将であるか。」

煙の中から眼前に突きつけられたのは長門の第一主砲塔。

そう、長門は被害無視で戦艦棲姫が後退したのに対し、

真逆で前に!前に出たのだ!

ガオン!



戦艦(チィイイィィィ!)



盛大な舌打ちをし人型艤装の手で砲身を殴りつけ砲撃を逸らす。

ズァッ!



戦艦(蹴り!?)



その蹴り自体に自分を撃沈できるだけの威力は無い。

しかし、戦艦の艦娘の全力が乗った蹴りである。

当たれば無事である訳がない。

眼前に迫る長門の蹴りをギリギリで見切り交す。



戦艦「次はどこから!?」



それは驚喜。自分の予想を超えてくる敵がいた事に対して。



戦艦「そっちかぁ!」



空気が動く、ちりちりと肌が焼ける気配。

砲塔の回転が間に合わない。

長門が人型艤装の脇を蹴りを交された勢いを利用してすり抜ける!



長門「背後をとったぁ!」



腰を低く落とし戦艦棲姫の背後をとった長門が砲撃の構えに入る!

ドォン!

長門の砲撃と同時に人型艤装の左手が長門の横っ腹に直撃した。

横へ大きく吹き飛ぶ長門、

だが、その視界には敵の艤装の右腕が彼方へ吹き飛ぶのを捉ええていた!

549 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/30(金) 00:30:54.57 ID:of9urzBn0


長門「こいつは効くなぁ。」



長門は掬い上げるように殴られた為に

艤装左側、第三砲塔と副砲が破損。



戦艦「やられたわね。」



片や戦艦棲姫は艤装の右腕を犠牲に重要機関が砲撃されるのを防いだ。



戦艦(全ての砲撃を防ぎ損ねたわね。)

戦艦(艤装の背骨をやられたみたい…。神経伝達が上手く行かないわね…。)

長門(第三砲塔と副砲であれば火力は落ちるが致命傷ではない。)

長門(こちらより向うの方が受けたダメージは大きいようだな。)ニヤリ



ぐいと口から垂れる血を拭い。



長門「死ぬ前のお祈りは済ませたか?」

戦艦「月並みな台詞ねぇ。気の利いた台詞を考えなさいな。」

長門「お前さんを倒した後にでもゆっくり考えるさ!」

戦艦「簡単には逝かないわよ!」



再びの砲撃戦。長門の主砲弾は戦艦棲姫の艤装砲塔を直撃した。



戦艦「主砲が死んでも、まだ!まだやられないわ!」

戦艦(敵の右側の砲塔の動きにだけ集中すれば弾道を読める!)

戦艦(少しでも!少しでも時間を!)

長門(敵の艤装の損傷は予想以上!ここは一気呵成に!)



時間を稼ぐ為の守りへ入る戦艦棲姫、そして、一気に畳み掛ける長門!

550 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/30(金) 00:32:43.11 ID:of9urzBn0


戦艦「あなたは、あなたは何の為に戦っているの!?」



長門の砲撃の直撃を交しながら長門へと問いかける。



長門「そうだな。貴様に私の話しを少ししてやろう。」

長門「私には守るべき故郷といえるものはない。」

戦艦「国を守っているのではなくて!?」ブン!



人型艤装の残った左腕が長門へと振り下ろされる。

そして、頭の上でそれを両手で受け止める長門。



長門「ぐぅ!なぁ、戦艦棲姫よ…。

   指揮官として幾つもの海戦を戦えばいつの間にか感情。」

長門「そうだな。

   部下をいつしかただの駒としてしか見なくなっていてな。」

それは戦場を俯瞰的に考える事が多くなれば成程、

そして立場が上になればなるほど。

そうあれかしとして求められる視点。



戦艦「それがどうしたというの?普通じゃない!」



勝つためには犠牲が必要。当たり前の話。



長門「あぁ、お前にとっては普通なんだろうな。」

長門「嘗ての私にとってもそれは普通だった…。」



艤装のフルパワーで耐えるが戦艦棲姫の艤装の力の方が勝るのか

徐々に海中へと押し込まれ始め少しずつ体が沈んでいく。



戦艦「それなら!ここで納得して沈みなさい!」

長門「私はな…、とある事が切欠で変わることが出来たのでな……。」



ガコガコガコ



戦艦「はん!変わったからといって何になるというの!?」

戦艦「結局はここで血みどろの戦いに明け暮れているだけじゃない!」



戦艦棲姫本人がなかなか沈まない長門に痺れを切らし長門の首を直接絞め始めた!
551 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/30(金) 00:34:14.83 ID:of9urzBn0

長門「確かにな。結局は戦いに明け暮れるだけの毎日だ。」

長門「だがな。

   ここで、今の鎮守府に移動して得た物がたった一つだけある…。」

戦艦「一体なにって言うの!!」

長門「絆だ。」ニヤリ

戦艦「なんですって!?」



なおも長門の首を絞める手に力が入り続け、

長門を押さえつける腕にも力が込められる。



長門「戦場を生き抜いて、

   仲間と今日も生き残ったとお互いに馬鹿を言う。」

長門「息の根が止まるその時まで一戦士として生き。」

長門「そして、戦場で互いの為に命を張る。」

長門「例え最後に燃え尽き、灰になったとしてもだ……。」

長門「仲間との絆ってのはそんなもんだ……。」

戦艦「取るに足らないわ!」



ドゴォン!



長門の艤装右側、第一砲塔、第二砲塔が火を噴いた。

避けようのない必中距離からの砲撃は戦艦棲姫の体を貫通。

これが致命傷となり二人の戦いを終わらせる幕引きとなった。



戦艦「絆…、絆ね…。」

戦艦「そんなものを持っていると……、重くて疲れるわね……。」グラリ



死す時は前のめり。

戦艦棲姫は前向きに倒れ、その体が海中に没した。

552 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/30(金) 00:35:17.22 ID:of9urzBn0


分遣隊本隊



時雨「瑞鶴、長門は大丈夫かな?」

瑞鶴「大丈夫よ。長門だもの。」

時雨「………。」

瑞鶴「私はね。長門を知っているから。」

時雨「そっか。」



二人がなかなか帰ってこない長門について会話をしていた時、無線が入る。



長門「瑞鶴。」

瑞鶴「分かってるわ。

   護衛を出してあげるから後方へ下がりなさい。」

長門「すまない。」

瑞鶴「いいわよ。そうなるだろうと分かってたわ。」

瑞鶴「それより。満足した?」

長門「あぁ。」

瑞鶴「そう、じゃぁ、後は任せなさい。」

長門「頼む。」



戦艦棲姫との戦いを終えた長門はその損傷が激しい為、戦線を離脱した。

553 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/30(金) 00:37:07.88 ID:of9urzBn0


川内「大まかに敵拠点の破壊終了といったところかね。」

瑞鶴「そう、分かったわ。ありがとう。」

川内「なんというか、試合に勝って勝負に負けたといったところかねぇ。」

瑞鶴「そうね。

   敵の目的が本隊撤退の為の時間稼ぎだとすれば目標達成でしょうね。」

瑞鶴「よく分かったわね。」

川内「敵の動きが拠点から出て迎撃というより遅滞防衛、

   早い話が死守をする形だった。」

瑞鶴「『 かわうち 』は時に鋭いわね。」

川内「どーも。」

川内「で、時間の遅れと今後の行動はどうする?『 旗艦 』様。」

瑞鶴「どうもしないわ。いつも通りよ。」

川内「了解。」



そして、とんと拳を付き合い交す二人。



川内「時雨。これからきつくなるよ。」

時雨「分かってるさ。」



そして、こちらも同じく拳を交し気合一声。



川内「さて、散歩いきますか。」

時雨「気楽に言うね。」

川内「こういうのはいつも通りが大事なの。」

時雨「了解。」



時雨と川内は残敵掃討へと向ったのであった。

554 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/11/30(金) 00:39:55.26 ID:of9urzBn0
以上終了です、お読み頂きありがとう御座いました
いつも、乙レス、感想レス本当にありがとうございます
何度も読み返し、書く気力をいただいています、本当にありがとうございます
冒頭でも触れましたが艦これSS、落ちる前に比べて数が減りましたね……
燃え系のSSは今後望めないのだろうかと少し不安です、増えて欲しいのですが……
では、お読み頂き本当にありがとうございました!
555 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/30(金) 01:26:24.17 ID:71PjXoN7o
乙乙
556 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/30(金) 02:35:28.31 ID:woVZz3J10
鯖の長期故障という前代未聞の事態で焼け野原状態からの再起だしな
新しい作者が生まれたり復帰者が出るには時間がかかるかるし気長に待つしかない
燃え系の旗振りとして頑張っておくれ

勝ったようで勝ってない日本は対米政策込みで苦しい立場になりそうだなあ
大鉈振るわないと提督ジリ貧
557 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/11/30(金) 06:40:13.93 ID:fNa+BlyVO
SSで何日後、来週、今月中に投稿または終らせるといって其が守られた事など皆無に等しい
558 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/30(金) 08:48:52.76 ID:N3Ed6B31O
乙です
軍上層部は白兵戦用の武器の携帯をみとめるべき
せめて錨ぐらいはね
559 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/30(金) 13:00:22.61 ID:UmwWb0HC0
錨が猫に見えた

戦力物量に劣る側が近接兵装持つと大体万歳アタックフラグ
560 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/06(木) 00:03:22.06 ID:g2Ml+n1F0
少しだけ更新です
お時間宜しければお読みいただけると幸いです
561 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/06(木) 00:05:14.50 ID:g2Ml+n1F0

救援部隊本隊 強襲揚陸艦艦内指揮管制室



提督「長門は修理の為に帰還か。」

不知火「はい、その様に連絡が入りました。」

提督「長門が戦線離脱か。」



正しく予想外。

いつだってこちらの想定通りには事が運ばないと心の中で一人ごちる。



提督「……、遅れはどのくらいだ?」

不知火「凡そ1時間程の遅れが出ていますが想定の範囲内だと思われます。」



主力である雪風、北上、ポーラに長門。

88鎮守府の看板役者が戦線を離脱。

彼女達の実力は88以外の鎮守府であればどこででも即で一軍。

それも主力中の主力をやれる実力の持ち主である。

並みの鎮守府であれば作戦続行を諦めるほどの物である。

であるにも関わらず、想定の範囲内と言うかと。

不知火の見解に頼もしさを感じると共に、

自軍がいかに規格外かを改めて実感。

そして。

562 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/06(木) 00:06:22.06 ID:g2Ml+n1F0

不知火「現在、ウォースパイトさんが旗艦を勤められる第一分遣隊と

    瑞鶴さんが旗艦を勤める第二分遣隊との合流、部隊の再編成は後30分程で完了との連絡。

    総旗艦は瑞鶴さんでよろしいですか?」

提督「あぁ、その様に進めてくれ。」



そして、少しだけ黙考。



提督「細工は終わったな。」

大佐「いよいよですか。」

提督「えぇ、グランドフィナーレ。最終幕の開幕です。」

提督「不知火。無線の全回線オープンだ。」

不知火「了解です。」

提督「周辺全鎮守府へ通信!」

提督「進軍命令!Operation Woodpecker (きつつき作戦)発動!」



提督の指示に従い強襲揚陸艦から海域にある全鎮守府へ

進軍命令の符丁が打電される。


563 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/06(木) 00:07:45.11 ID:g2Ml+n1F0



『 真鐡(まがね)の城達よ!皇国(みくに)の四方を守るべし! 』



『 汝らの弾撃つ響きは雷(いかづち)なり! 』



念をいれ、複数回の打電が行われる。
564 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/06(木) 00:09:26.84 ID:g2Ml+n1F0


大佐「勇ましい符丁ですね。」

提督「うちの連中が全力で後顧の憂いを断つべく

   敵の後方拠点をつぶしましたのでこの周辺の臆病者(チキン)連中に

   仕事をしてもらわにゃならんという訳です。」

大佐「臆病者(鶏)が突撃兵(きつつき)ですか。」フフッ



きつつきが連続して木を叩く音は時として銃声の様に形容される事を意識して

突撃小銃を持ち敵を掃討する突撃兵ときつつきを掛ける大佐。

また、余談ではあるが、きつつきの一種ウッドスパイトに掛けて

敵の船に穴を開けるとして戦艦ウォースパイトの艦船紋章に一時期使用されていた事もある。


565 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/06(木) 00:11:24.34 ID:g2Ml+n1F0


提督「私が今回の一件を知る事になった島風なんですが。」

大佐「はぁ。」

提督「この周辺鎮守府全てに立ち寄り救援を求めていた

   その航行記録はきっちり艤装に残っていたんですよ。」

提督「そしてですね。私の鎮守府での島風との会話は全て録音済みなんです。」

大佐「成程……。」

大佐「更迭、収監、懲役のお買い得3点セットを選ぶか救援の。

   救国の英雄になるかの簡単な二択を選ばせたという事ですか。」

提督「えぇ。とはいえ選択肢のない選択にはなります。」

大佐「一般的に前者を選ぶ人間はいませんかね。」フフッ

提督「おっしゃる通りです。」

提督「私が事前に本土の主管に問い合わせて

   救援を断った連中がどうなるかというのを教えたやりましたからね。」

提督「私が連中の説得に使ったのは

   お買い得3点セットの書類を先に作っておいたくらいですかね。」

提督「ここへ救援に向かっている間に幾人か

   周辺鎮守府へ連絡に向かわせていましてね。」

提督「もちろんきっちりと公式に記録に残る形で、です。」

大佐「不測の事態で連絡が来ていなかったとの言い訳を封じられますか。」

提督「椅子磨きに長けている連中は磨くのに長けておりますからな。

   よく滑りを良くするワックスを持っています。」

大佐「成程、口の滑りはいいでしょうなぁ。」

提督「ワックスの製造業者をお聞きしたいと囁くように部下には申し伝えてもいます。」

大佐「随分と人が悪い方だ。」



つまりは無能でありながらその地位にいるというのは口八丁、話術に長けるという事。

言い逃れをされては敵わないという奴である。

そして、そのワックスとは人と人の関係をよくする麗しきかな潤滑剤(賄賂)でもある。

小人なんとやら本土から離れた鎮守府ともなれば不正が横行するのもままあるわけで。

提督がその交友関係にある旧き友人にそれとなく連絡をとっていたというのは言うまでも無い。

566 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/06(木) 00:13:41.07 ID:g2Ml+n1F0


もっともその友人曰く。



「肥え太らせた後に出荷するつもりだったけどまぁ、どうぞ。」



と、軍人としての才ではなく商人としての才能は評価していたようである。

最も事態を説明した後、早く言えと慌てて証拠を送ってきたり

何処で情報が止められていたのか調べておくと言ってきたりとなかなかな友人でもある。

それらの合わせ技ともなれば麻雀ではないが数え役満で収監後、銃殺。

なんて結果になってもおかしくは無いわけである。



提督「願わくば尻に火が付いたアホ指揮官が部下を浪費しない事ですかね。」

大佐「消費ではなく浪費は困りますね。」

提督「おっしゃる通りです。」

大佐「しかしてこの作戦ですが……、Battle of Kawanaka?」

提督「よくご存知で。

   正しくは何度かあった川中島の戦いで特に有名な第四次の戦いで用いられた戦法です。」



武田の名軍師。

山本勘助がきつつきが木の表皮を叩き虫を中から叩き出し

その食べる姿から構想を得たと言われる作戦である。

この作戦自体は敵の上杉に見破られ成功はしなかったのだが

その作戦内容としては単純かつ有効な作戦である。


567 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/06(木) 00:15:58.21 ID:g2Ml+n1F0


基本的な流れとしては鉄床戦術そのものであり敵の背後を急襲。

そして正面に布陣した本隊とで挟み撃ちで叩くという物である。

しかし、違いも勿論有り通常の鉄床作戦は

前線で歩兵部隊が囮となりひきつけている間に敵後方を襲撃するのに対し。

今回のきつつき作戦は敵後方を急襲させ

敢えて作っている逃げ道へ敵を誘導するというやり方である。

当然ながらその逃げ道には本隊による待ち伏せつきな訳である。

総旗艦として無線機能の充実、経験の申し分ない瑞鶴がこれに当るのは当然といえる。



提督「周辺鎮守府の全力で当たらせれば後方急襲部隊の数は。」

提督「そうですね、数だけは我々が減らしたぶん敵を上回るでしょう。」

大佐「そして逃げ道に殺到したところを叩くわけですな。」

提督「航空戦力については艦載機の扱いに長けている連中を此方に残していますからね。」

提督「本音を言えば瑞鶴についてもこちらにまわしておきたかったくらいです。」



三次元機動可能な航空機による攻撃というのは直線軌道で飛んでくる大砲の弾より厄介な物である。



大佐「なかなかに見ものなようですね。」

提督「最後の仕上げですからね。画竜点睛とならぬよう締めてかかりましょう。」

568 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/06(木) 00:17:48.47 ID:g2Ml+n1F0


分遣隊集合地点

部隊を分け敵後方拠点を叩いていた部隊が合流する。

その集合地点に時雨の姿はない。



スパ「総旗艦に敬礼!」ガッ

瑞鶴「あー、そういうの良いから。」

スパ「礼を欠くと雪姉さんに後で怒られちゃう……。」

瑞鶴「よく教育が行き届いている事ね。」

瑞鶴「雪風は、確かに異質だけどねぇ。」

スパ「やっぱりそうなんですか?」

瑞鶴「あの娘が本気だすと電探でないと存在を追えないわよ?」

瑞鶴「存在が完全に周囲と同化しちゃうから。」

瑞鶴「居る、しかし、存在はしない。

   矛盾を含んでるけどそう表現するしかないもの。」

川内「だねー。だてにうちの駆逐No1じゃないよ。」

川内「提督がどこから拾ってきたか割りと謎だけどね。」

川内「瑞鶴。周辺鎮守府連中の木っ端どうする?」

瑞鶴「私達との艦隊行動は練度が段違いに低いから望めない。

   個別に戦闘目標を設定してつぶして貰ったほうがいいでしょうね。」

川内「了解。」

瑞鶴「ウォースパイト、私と、あなたが積んでる通信機の出力が大きいから

   そっちでも語りかけて貰えるかしら?」

瑞鶴「複数チャンネルで聞こえて居ませんでしたってのは勘弁願いたいからね。」

スパ「了解です!」ビシッ

瑞鶴「この作戦の肝は全軍の動きを合わせないといけない事なのよね。」

瑞鶴「たたき出す方向を間違えるとこっちが面倒な事になる。」

スパ「瑞鶴さん!各部隊への指示命令は何と打電しましょうか?」



川内との打ち合わせ中に88鎮守府以外の艦娘達へ何と指示を出すかとウォースパイトが訊ねてくる。



瑞鶴「………そうね。」

瑞鶴「あなたの国の有名な提督が言った名言でいいんじゃない?」

スパ「おぉ。あの名言ですか。」

瑞鶴「個別の標的を指示するよりいいでしょう。

   最優先事項だけはっきりさせて頂戴。」

瑞鶴「何をすべきかの作戦の概要はきっちりと理解しているでしょうからね。」



こうしてウォースパイトから各鎮守府の艦娘へ指示が出された。

その内容は。

569 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/06(木) 00:18:40.28 ID:g2Ml+n1F0



『 我が国は各員がその義務を果たすことを期待す! 』



570 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/06(木) 00:20:50.45 ID:g2Ml+n1F0

すこしだけ変えられた名言ではあったが。

簡潔なその電文は勇ましい文言ではないからこその

飾り気のない言葉が参加している艦娘達を奮いたたせた。

島風が周辺に助けを求めて回っていたことを

中央に報告していなかったとしても現場。

その現場に居た艦娘達が目撃をしていない訳がなく、

また人の口に戸は立てられないもの。

ともなれば今回の救出作戦を待ち望んでいた者の方が多いのは当然でもある。

88メンバー達と比べ練度低かれど、その意気軒昂也。

窮地に陥った仲間を救出せんと鬨の声をあげる。



瑞鶴「いいじゃない。」

川内「だね。時雨は別働?」

瑞鶴「えぇ。時雨クラスになれば考えて動いてもらった方が楽よ。」

瑞鶴「何人か下つけて自由にさせてるわ。」

川内「まー、将来の指揮官だよねー。」

瑞鶴「なんでうちに流れて来たのやら。」

川内「じゃ、ま。仕事をしますか。」

瑞鶴「あんたはいいの?」

川内「そうだねー。いつもの面子と以外だとね……。」

川内「一人の方が気楽かな?」

川内「まぁ、瑞鶴のお守りをしますかね?」

瑞鶴「へーへー。それでは背中宜しくお願いしますだよぉ。」

川内「任された。」

瑞鶴「よろしく。」


訳知り合った頂上同士のコンビ。

猟犬は野に放たれ、狩りは始まった。

571 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/06(木) 00:27:43.63 ID:g2Ml+n1F0
近接兵装はロマンですよね…、一部艦娘は所持したイラストになってますが使うことあるのでしょうか?
ボツネタにしたので近接で戦う川内姉妹のネタはあるんですがね
そういうのも書く人少ないなぁでそれなりに量は書いたものの筆がとまっている
イチャコラ読んでりゃ他のも読みたくなるというやつで…、自分で需要を満たすのもなんか違うと思うのです
他のSS作者様で書いてくださらないものかねぇと思うこと最近、増えませんね
愚痴が多くてすみません、皆様からの乙レス、感想レス、いつもありがたく拝読しています
本当にありがとうございます、宜しければお気軽にレスいただけると感謝です
今日はこれにて終了です、本当に少しで申し訳ないです、またの次回も御待ちいただけると幸いです
572 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/06(木) 01:51:17.77 ID:GTH0gUlO0
瑞鶴最後の通信である機動部隊の誘引に成功が栗田艦隊に届くことはなかったことを思い出すと通信設備が充実しているというくだりが悲しみを誘う
島風を見捨てた周辺海域の提督への報復はいずれ元締め潰した後にシレッと蒸し返して完遂したいもんだ
573 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/06(木) 13:56:47.31 ID:333pmtaK0
乙乙
近接と言うと雷と天龍がまず浮かぶが他にいたっけ
574 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/06(木) 19:24:20.85 ID:ru7CQCFs0
乙乙乙です
近接といえばヤバレカバレでになって手持ちの魚雷で殴りかかるなんてのも
有り得そうで怖い
二水戦の逆落としはすれ違いざまに相手に直接魚雷を叩き込むなんて話も
575 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/06(木) 21:27:36.65 ID:tDnlfRh70
速報に拘らなきゃ、割と熱い艦これはあると思うけどね
576 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/06(木) 22:19:12.07 ID:GTH0gUlO0
>>573
叢雲 伊勢型 ゴトさん 皐月 多分文月など
577 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/07(金) 02:05:02.75 ID:HnBEtA56O
文月は持ってないぞ
武功抜群は皐月艦長に贈られたから皐月だけのもの
578 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/13(木) 00:22:28.82 ID:FWWFZVbA0
お世話になります、更新に参りました
いよいよ大詰めへ、何とかこのスレ内に納めるぞ…
579 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/13(木) 00:24:46.26 ID:FWWFZVbA0

瑞鶴達88鎮守府救援部隊分遣隊の合流2時間前



敵 深海側包囲軍 駆逐古姫隊



古姫「連絡…、遅かったわね…。」



タ級からの伝言を苦悶の表情で受ける駆逐古姫。



タ級「………。」

古姫「みなさい。あれを。」



駆逐古姫が指差す方角、水平線の向こう側からは黒々とした煙が上がるのが見えた。



タ級「あの方角は!」

古姫「えぇ、貴方の主である戦艦棲姫が

守将として守備に付いていた後方拠点のある方角。」



その煙の量をみれば拠点が陥落した事は察しが付く。



古姫「戦艦棲姫は覚悟を決めていたのでしょうね……。」

タ級「………。」

古姫「仇討ちや後追いはやめなさい。」

古姫「戦艦棲姫が貴方を此方に遣した意味を考えなさい。」

タ級「意味ですか?」



はるか遠くの煙を睨み付ける表情をしていたタ級へ嗜めるように言う駆逐古姫。



古姫「あの娘が撤退の進言に貴方を遣したという事は

貴方にしか出来ない役割が此方であるという事よ。」



タ級は戦艦である。そして、その装甲は厚い。

何かに思い至ったかはっとする表情を見せるタ級。

580 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/13(木) 00:28:13.04 ID:FWWFZVbA0


古姫「そういう事よ。

戦艦棲姫は貴方に戦艦水鬼様を逃がす際の殿を託したのよ。」



戦艦棲姫の覚悟とその託された想い、

それを知ったタ級はがっくりと項垂れる。

重巡棲姫との連絡も付かなくなっている。

これから導き出される敵の行動は……。

駆逐古姫は考える。考える為の時間は少ない。

自身の経験、そして、敵が設定しているであろう勝利目標。

自分達の現状を考えれば撤退しか道はないのだが

どうすれば安全に総旗艦の戦艦水鬼を逃がす事ができるか。

敵の目的は何であろうか?

至上命題なのはこの地に残る味方戦力の救出なのは間違いない。

では、こちらの殲滅についてはどうであろうか?

その答えを導く鍵は敵が先に後方拠点をつぶしに掛かったという点。



古姫「一般的な鉄床戦術を取るのであれば

   本隊となる部隊で前線を押さえる陽動を図るはず。」



そう、一般的な鉄床戦術は装甲に勝る兵科で前線の敵をひきつけ

機動力に勝る兵科で敵の後ろを奇襲し前後で挟み撃ちを行う包囲殲滅戦。



古姫「挟み撃ちをするのであれば

   先に行動を起こすのは後方拠点の襲撃ではないはず。」



正しく行うなら、先に本隊を叩き、本隊側に後方拠点から援軍を送らせるなどをして

後方への注意が逸れた時に機動力を持った精鋭で突き後方を陥落させるのが定石。

だが、敵は順番が違う。



古姫「理由は?そうせざるを得ない理由があるという事?」



一般的?そう、一般的ではない。

一般的な鉄床作戦は前方で釘点けにする本隊と

後方襲撃の部隊とは連携が密に出来ないと無理なのだ。

それは作戦の決行において双方の部隊の練度が同程度

或いは後方側担当が精鋭である事が望ましい。

581 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/13(木) 00:30:01.64 ID:FWWFZVbA0


古姫「なるほど。」



一つの推論。いや、それこそが理由であり結論だろう。



古姫「後方部隊は数が多いけれど存外錬度の低い兵の方が多い?」

古姫「連携に不安要素がある。」



敵に囲まれ後方を、

退路を絶たれ逃げ道を指定されている中での一筋の光明。



古姫「艦隊参謀長駆逐古姫麾下の全軍へ告ぐ!」

古姫「我が部隊は敵拠点攻略を停止!別命あるまで待機!」



自分の指揮権下にある部隊へ敵攻略の手を止め待機命令を下す 。

これは臆病風に吹かれてのものではなく。

総旗艦からの撤退命令が出れば即応させる為の物であり

その後の目的については。



古姫(突破口を切り開く為の捨て駒に……。)

古姫(麾下の皆。すまない……。)



ここからは時間との戦い。

敵が後方拠点を潰したのであれば現在包囲している敵

目の前の敵救援対象が呼応して反攻してくる可能性もある。

その事態は避けたい。



古姫「戦艦水姫様の下へ行かないと!」



自分の麾下部隊へ撤退の為の方角と指示を飛ばし

撤退時は先頭を切れるような状態にして駆逐古姫は本陣へと急いだのだった。

582 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/13(木) 00:31:40.39 ID:FWWFZVbA0


深海敵地攻略部隊 本隊 戦艦水鬼部隊 本陣



戦水「状況は分かったわ。」

戦水「正面の敵拠点攻略は諦めましょう。」

空鬼「私が最初に負傷し敵本隊の迎撃に失敗したばかりに…。

   申訳ありません。」

戦水「あなたに問題はなかったわ。あれについては敵を褒めるべきかしらね。」

空姫「正面を攻略し我々が拠点とするのはいかがでしょうか?」

戦水「愚作。それこそ無能の極みよ。

   これだけの相手に篭城戦を戦える自信は私は無いわね。

   それよりも敵の包囲網が完成する前に

   撤退をすべきと言う駆逐古姫の進言が正しいわ。」

戦水「今なら損害は多いけれど全滅は避けられる段階。

   全軍に撤退命令を出して頂戴。」

古姫「進言を受け入れてくださりありがとうございます。」



予想以上にあっさりと進言を受け入れ撤退の決意をする戦艦水鬼。

状況が不利と判断すれば撤退する事に迷いが無い辺りは

他の水鬼級と比べ秀でているであろう。

だけにもっと早く、そう、空母水鬼が負傷し戻ってきた時点で撤退を決めていれば。

駆逐棲姫達の部隊は元より重巡棲姫、

そしてなにより戦艦棲姫を失わずに済んだであろう。

583 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/13(木) 00:33:01.46 ID:FWWFZVbA0


戦鬼「嘆いても時は戻らないわ。

   古姫、どの方向へ逃げるのが最適解と思うのかしら?」

古姫「はい。私が考えるにこの方角に敵の包囲網の穴があると思われます。」



そして、駆逐古姫の指揮下で深海の撤退戦が、提督の指揮下で艦娘の追撃戦が始まった。



強襲揚陸艦 艦橋 指揮司令室



提督「大佐。始まりましたよ。」



司令室内のモニターに明滅する光を見ながら提督が語りかける。



大佐「見事に前方へ叩きだす事に成功したようですね。」



それは敵が見事に策に嵌ったとの証の明滅。



不知火「司令。こちらを。」

提督「減った戦闘機、艦攻、艦爆も到着予定か。」



不知火が渡してきたメモ紙に目を通す。



大佐「あぁ、初めの戦闘で減った機材の補充ですか……。」



強襲揚陸艦には艦娘用の艦載機の予備は

それ程積んできては居なかったはずだがと思う大佐。

最初の防衛戦時に当てはあると言っていたそれが着くのであろう。

だが、この光点の数は……。まさか?!

584 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/13(木) 00:34:53.88 ID:FWWFZVbA0

提督「お気づきになられましたか。」ニヤリ

大佐「確かに船で輸送するより直接飛ばした方が早いですね。」



船で運ぶより飛行機を飛ばしたほうが運搬という点では早いのは当たり前。

ただ、人でやろうと思えばパイロットの疲労問題や

人員の都合などでとてもではないがやれたものではない。

更に言えば長距離、長時間飛行した後にさぁ、戦え、根性だ。

となればいかな熟練パイロットであろうと最高の結果を出す事は困難だろう。

だが、艦娘の使う艦載機のパイロットは疲労しらずの妖精さん達である。

妖精達の疲労は使用者の艦娘に移るとの話でもあるが……。

その頃の海上では栄養補給にいそしむ姿があった。



グラ「疲労回復の為に甘味を採るか。」ゴソゴソ

瑞鳳「あっ、そろそろ?」

グラ「あぁ、瑞鳳も食べるといい。」

瑞鳳「じゃぁ、お茶にすりゅ――?」

グラ「いただこうか。」



そう、艦娘には疲労回復専用の戦闘糧食。甘味間宮羊羹がある。


585 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/13(木) 00:36:55.44 ID:FWWFZVbA0

大佐「成程。成程。実に合理的だ。」

大佐「ですが。航続距離については?

   空中給油機など無いはずでは?」

提督「それについてはそちらの同盟国の

   フォークランド時の対応を参考にさせていただいています。」

大佐「Operation Black Buck ?」(ブラックバック作戦?)

提督「その通りです。爆撃機と戦闘機や艦爆といった違いはありますが

   無理やり航続距離を伸ばすやり方は参考にさせてもらっています。」

大佐「成程。敵の尻を蹴りだせばこちらに向ってくる敵の方角は

   分かりきってますから早期警戒機の幾つかを誘導に回せるという事ですか。」

提督「我々の鎮守府からこの海域までのあいだに補給艦と護衛隊をつけた空母を配置。」

提督「燃料を補給後離陸。それの繰り返しで艦載機を飛ばし続けている形です。」

大佐「なるほど補給艦をリレーで回すことで

   空母艦娘とその護衛艦隊へ燃料、弾薬を切らさない形ですね。」

大佐「空母へは燃料だけの補給で良い訳ですから

   補給艦娘に積む燃料も弾薬を減らして多く積めますね。」

大佐「艦載機については収容可能数以上であったとしても救出先に地面はありますしね。」

提督「そうです。仮に我々の空母娘達で収容出来なくても

   周囲に島が幾つもありますからね。そこへ降ろせばいいわけです。」

提督「奇策で理屈は分かっても普通はやらないという奴です。」

大佐「かの国はそれをやりますからね。」

提督「かの国の柔軟な発想は当り外れありますが様々な戦訓を与えてくれます。」



提督の言葉に頷く大佐。

586 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/13(木) 00:38:16.14 ID:FWWFZVbA0


「You have control 」(無線)

グラ「I have control 」モチモチ(無線)



グラーフが艦載機の管制を中継した艦娘から無線を通し受け継ぐ。



グラ「零52型が中心か。」

グラ「フム。さてと、艤装を無理やり拡張しているからな。」

グラ「どれだけ余分に動かせるかといった所か。」

瑞鳳「リミッター外す感じ?」

グラ「うむ。

   艤装の寿命を縮めるから好ましくはないが贅沢も言ってられまい。」

グラ「我々が始めて、我々が終わらせる。」

グラ「ともなれば主人公は我々であろう?」

瑞鳳「やだ、グラたん口説いてる?」

グラ「Shall we dance ?」ニヤリ

瑞鳳「きゃぁ ――――― ///」

587 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/13(木) 00:39:20.22 ID:FWWFZVbA0


秋津洲「ワイルドギース01より管制へ!」

不知火「こちら88コントロール。どうされました?」

秋津洲「敵艦隊発見!艦影のライブラリへの照会よろしくかも!」

不知火「確認しました。照合します……。」



二式大艇から送られてきたデータの照合。



不知火「照合完了、艦影、空母水鬼です!」



にわかに色めき立つ司令室内。



提督「敵の将官か。優先して狩ってくれ。」



提督の指示が排除への優先順位を告げる。



グラ「艦載機の数で押せるのであれば我らが有利!」

瑞鳳「艦攻隊に艦爆隊のみんな!やっちゃぇ!」



正面、提督達本隊の空母艦娘が管制する艦載機部隊が一斉に哀れな獲物。

空母水鬼へと襲いかかる!


588 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/13(木) 00:43:02.11 ID:FWWFZVbA0

空鬼(来たわね!これでいい!これで!)



空母水鬼の随伴は対空に定評のあるツ級ではなく駆逐ナ級。

もっともナ級自体が最新鋭である為それもなかなかの対空ではあるのだが。



グラ「ふむ。なにやら覚悟を決めた様子だな。」

瑞鳳「負けを悟った感じ ――― ?」

空鬼「そういうことよ!さぁ!かかって来なさい!」



覚悟を決めた空母水鬼。

最後の足掻きと自身の艦載機を全て出しグラーフ達の部隊に抗う。

だが、最初の接触時と違いその戦闘機や艦爆、艦攻の数は決定的に違う。

空母水鬼の随伴は徐々に数を減らし、その直援機もついには零となる。

飛行機達の攻撃が集中すれば制空の取られた状況では為すすべなどある訳が無く。

空母水鬼は集中攻撃を浴び、大破炎上、そして轟沈へ。



グラ「なかなか頑張った。いい、戦争だった。」フム



お互い顔の見える距離ではない。

グラーフははるか遠くの距離で炎上、

ゆっくりと沈降して轟沈してゆく相手へ最大限の賛辞を贈った。



空鬼「これで、これでいい。」

空鬼「私は役割を果たした………。」

空鬼「戦艦水鬼様……。後は。後は、宜しくお願いいたします……。」



そして、空母水鬼は役割を果たし、

満足した顔で水底へと逝った。



589 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/13(木) 00:46:50.23 ID:FWWFZVbA0
今日はこれにて終了
お読みいただいている皆様には展開が遅いよ!と怒られそうですがもう少しでなんとか…
今まで何も動いていなかった娘達がようやく出番です!(雪風達負傷組みは……)
後少しで終われそうですので今しばらくお付き合いいただけると幸いです
乙レス、感想レスありがとうございます、いつもありがたく拝読しています
どうぞ、お気軽にレス残していただけると幸いです
590 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/13(木) 06:18:30.33 ID:kKA6vi+u0
更新乙です
深海側の描写も多いので肩入れしたくなってしまいますね
591 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/13(木) 06:47:12.55 ID:2pwfk3YdO
乙!
592 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/13(木) 13:28:43.73 ID:Xmrg0bnv0
ブラックバックまで持ち出すとは…

あとは袁術殲滅戦よろしく十面埋伏の中ですり潰されるのか金ヶ崎の退き口となりトップは逐電しおおせるか
593 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/17(月) 16:08:51.68 ID:CRptWKzG0

艦娘だからできる戦術ってええなあ
594 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/20(木) 00:32:01.15 ID:O5Yg9HcV0
私事でばたばたしてきておりますが更新にきました
お時間よろしければお付き合いいただけますと幸い
595 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/20(木) 00:33:42.88 ID:O5Yg9HcV0
提督達救援対象鎮守府



その鎮守府の指揮は提督が嘆いたように少佐が執っていた。

階級としてそれは余りにも低く提督として新米と言えた。

しかし、彼は踏ん張り救援が来るまで耐えきった。



少佐「敵が。敵が撤退していく?!」



目の前の包囲網が解かれ、敵が撤退していくのが見える。



少佐「ここは敵の追撃を!」



今まで篭城戦を戦ってきていた全員に命令を下す少佐提督。



「島風の仇!」

「仲間の恨みを!」



目の前で惨殺された島風、

そして、幾度にも及ぶ攻撃で散っていった仲間達の仇を討つ。

その強い意志が極限まで追い詰められ疲労しているはずの彼女達に力を与えた!



ウォォォォォォオオオ!


596 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/20(木) 00:34:51.56 ID:O5Yg9HcV0


古姫「包囲していた敵が追ってきたわね…。」



予想の範疇。

既に深海勢は撤退戦に切り替えて部隊を素早く退いている。



タ級「空母水鬼様撃沈の報!」

戦鬼「空母水鬼が撃沈?!」



彼女程の豪の者であれば

包囲網を抜けられると思っていたのにも関わらず轟沈したと?

包囲網の穴と思われる所へ斬り込みを掛けていた自分の部下、

指揮官級がやられた事は戦艦水鬼に更なる衝撃を与えた。



古姫「戦艦水鬼様!立ち止まられてはいけません!」

古姫「空母水鬼様が何の為に沈んだと思っているのです!」

戦水「駆逐古姫……。ここを攻めたのは間違いだったのかしら?」

戦水「戦艦棲姫を始めとした優秀な部下を失ってまで獲るべき場所だったのかしら?」



自身の部下が次々と為すすべなくやられていく戦況というのは

今まで負けなしできていた戦艦水鬼には実に耐えられない物の様であった。


597 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/20(木) 00:36:15.40 ID:O5Yg9HcV0

空姫「戦艦水鬼様?」

戦鬼「敵は強いわねぇ、私達、皆、死ぬのかしら……。」

戦鬼「ねぇ、どうせ皆死ぬのなら敵の旗艦を潰して…「この痴れ者!」パァン!



自暴自棄になりかけた戦艦水鬼に駆逐古姫の張り手が決まる。



古姫「貴方という方は何を考えているんですか!!」



戦艦水鬼の発言に怒り心頭に発した駆逐古姫が戦艦水鬼の服の襟首を掴む。



古姫「戦艦棲姫や空母水鬼様が何故に死んだと思っているのです!?」

古姫「皆、貴方に次の、深海棲艦の未来を託し、

   生き延びて欲しいが為に死んでいったのですよ!?」

古姫「この世界の支配者の器たる才を貴方に視たからこそ

   彼女達は命を賭して貴方が逃げる為の時間を稼ぎ敵を防いだんです!」

古姫「ここで貴方が折れてどうするんですか!」

古姫「死んでいった者達にすまないと思うなら

   生きて敵を滅ぼす為に再起を誓うべきではありませんか!」



激昂し、その怒りのままに戦艦水鬼を叱り飛ばす駆逐古姫。

そして、戦艦水鬼のドレスの襟首を掴む手は怒りに震えていた。



戦鬼「手を……。手を服からどけてもらえるかしら。」

古姫「これは…、無礼いたしました…。」

戦鬼「いえ、私が愚かだったわ。」



その顔からは迷いが消えた。



戦鬼「私は全力で逃げるわ!」

戦鬼「駆逐古姫!空母棲姫!二人とも殿は頼んだわ!」



そして、戦艦水鬼は護衛を連れ全力で海域を離脱していった。


598 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/20(木) 00:37:41.07 ID:O5Yg9HcV0


古姫「ふ ―――― …。

   戦艦水鬼様が全力で逃げるなら追いつけないでしょうや。」

空姫「流石に戦艦水鬼様ほどの方になると逃げっぷりもさまになるわねぇ。」

古姫「あれくらい豪快に逃げてもらわないと困るわ?」

空姫「そうね。戦艦水鬼様には逃げて深海棲艦の戦力を立て直していただかないと。」

空姫「それにしても、始めに敵の本隊の力量を見誤っていなければ

   犠牲は少なかったかもしれないと思うのだけれど。」

古姫「やめときましょう。戦の『たら』『れば』なんて言い出したらきりがない。」

古姫「今回は敵がたまたま一枚上手だっただけよ。」

古姫「私達はここで私達がなすべきことをしましょう。」

空姫「えぇ。そうしましょう。」

空姫「エンドロールが流れ始めたからといってまだ完全に終わった訳ではないですもの。」



二人の姫が敵へ向き直り咆哮を挙げた。

599 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/20(木) 00:40:48.40 ID:O5Yg9HcV0


強襲揚陸艦内 艦橋司令室

不知火「秋津洲さんから入電です!」

提督「どうした?」

不知火「撤退中敵旗艦艦隊と思しき艦隊を発見するも

    敵艦隊の攻勢激しく警戒機の護衛が落とされたので

    撤収するとの事です。」

提督「敵さんも必死こいて逃げているようだな。」

提督「位置は?」

不知火「此方です。」



机代わりにしている大型モニターにタップして敵を表示させていく不知火。



大佐「ははぁ。これは敵に天晴れな才を持った者が居たようですね。」

提督「確かに。これは上手い事こちらの隙間を突いて来ています。」



駆逐古姫が戦艦水鬼を逃がす為に戦闘を行っている場所は

丁度、提督達88鎮守府組み本隊と周辺鎮守府連中の合わせ目だった。

三角形をイメージしていただけるだろうか。

包囲網が三角形で構成された場合、一辺を瑞鶴達遊撃隊、

もう一辺が周辺鎮守府部隊。

そして、底辺が提督達本隊。

ただ弱いところを突くというのであれば周辺鎮守府部隊を潰せばいいのだろう。

だが、思い出していただきたい。

深海棲艦達が攻め立てた場所の特徴を。

そう、この場所は敵、深海棲艦の陣地へと食い込む形に突出した場所である。

だけに周辺鎮守府で構成された部隊の方向を突き抜ければ

そこは深海棲艦達にとって敵である艦娘側勢力下なのだ。

寡兵でもって敵の支配地域を追撃を交しながら逃げるというはとても困難である。

たまたま上手くいった狂人集団達が歴史にその名を残してはいるが普通は行わないもの。

失敗した者の方が多いのは当たり前でそれが語られる事が無いのは歴史が雄弁に物語る。

で、あればという事で駆逐古姫が目をつけたのが包囲網端である。

中心部分からの面の構成ははどうしても端の部分の展開が遅れる。

駆逐古姫はそれを巧みに見抜き一番脱出できる可能性がある方向を目指していた。

600 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/20(木) 00:42:03.15 ID:O5Yg9HcV0


提督(……、救援の目的は達したと言えなくは無いか。)

提督(敵の指揮官をどうみるか……。)



後顧の憂いを断つのは基本なれど。



提督(手札が足りない。大役は狙うべきではないか。)

提督(現状で目的は達して後はボーナスを狙うかどうか。)

提督(ポーカーにしてもなんにしても賭け事ってのは引き際が肝心だ。)

提督(伏せ札で一枚とっておきがあるとは言え、

   今時点で幕を下ろすのもありか。)

提督(周辺鎮守府連中には期待できんしな……。)



88鎮守府の主力に負傷者が出ている現状で最優先の目的は達成済み。

となれば逃げる敵は追うべきではないか?

死に物狂いで逃げる敵と言うのは時として予想以上の力を発揮する事がままある。

その必死の力に盆を返されてはたまらない。

提督がそう考えた時だった。

601 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/20(木) 00:44:02.54 ID:O5Yg9HcV0


不知火「司令。瑞鶴さんから無線通信が入っています。」

提督「繋いでくれ。」

瑞鶴「提督。空母棲姫が頑張っているって?」(無線)

提督「あぁ。」(無線)

瑞鶴「私がやるわ。」(無線)

提督「そうか。頼んだ。」(無線)



そして、瑞鶴からの無線通信を終えたくらいに

また一人の艦娘からの通信が入る。



不知火「司令。時雨さんからも通信が入っています。」

時雨「提督。」(無線)

提督「瑞鶴の護衛ではなく移動していたんだな?」(無線)

時雨「うん。察しが良くて助かるよ。僕も行くよ。」(無線)

提督「頼んだ。」(無線)



瑞鶴からの許可を得て、

手勢を連れ遊撃隊として行動していた時雨は

予め包囲網の穴となりそうな場所を予測して動いていた。



提督(敵の殲滅……、いけるか?)

提督(総大将を逃がす為に敵は必死になるだろうが。)

提督(瑞鶴に時雨…。自分で考え動く事が出来る、

   更に有効打を打てる兵というのは実に得難い。)

提督(指揮官として将として。次代を担える存在だ。)

提督(追撃戦は大事だが。二人を失う愚は避けないといけないな…。)


602 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/20(木) 00:47:34.02 ID:O5Yg9HcV0
88鎮守府敵後方襲撃部隊


瑞鶴「川内!私の体の護衛頼まれてくれない?!」

川内「……。全力でいくの?」

瑞鶴「敵の艦隊を追っかけるのに

   私が向っていちゃ間に合わないしね。」

瑞鶴「今飛んでるのを直接向わせるしかないでしょ。」

川内「そっか。」

瑞鶴「魂降ろし(フルダイブ)をやるわ。」

川内「了解。お姫様の体には指一本触れさせないよう頑張るよ。」

瑞鶴「宜しく。」



そして瑞鶴は意識を集中させ両手を顔前で合掌した。

嘗て、深海棲艦への対抗策として艦娘が出始めた頃の事。

まだ二つ名持ち(ネームド)制度が始まる前の事。

比類なき強さを誇った、

その種類の艦娘として艤装の製造番号が初期の艦娘が居た。

一人は呑波の赤鬼と呼ばれもう一人は呑舟の青鬼と呼ばれた。

呑波、呑舟、どちらも意味は同じで舟を喰らう程の大魚。

二人はその名の通りに多くの舟、深海棲艦を喰らい沈めた。

そしていつしか、二人を合わせて呑波呑舟、大喰らいの一航戦と呼ぶようになる。

その強さ比肩する者なし、時として国士無双と賞されるほどだった。

強すぎた艦娘。

強すぎた為に敵深海棲艦に徹底的に狙われ

最優先排除対象とされ最期は水底へと消えていった。

その半ば伝説として語られる二人が得意とした、

いや二人だけが使えた特殊な艦載機操縦方法がある。

それは艦載機に自己の意識を載せるやり方『 魂降し 』と呼ばれ、

それは艦載機の搭乗員妖精と自己を完全に同化する手法だった。

同化した艦載機達は一個の群体として動き敵を屠っていった。

ある程度の指示を与えた後は搭乗員妖精に任せる通常の操縦方法と違い

艦載機全てを操り自己の視界とするするその操縦方法は

艦載機妖精同士の連携が不要となり最強を誇った。

しかし、それを行う艦娘への負担は計り知れないほど大きく、

結局、この二人以外行えた者は居ないとされる。



瑞鶴「加賀さんみたいに降ろした後にお握り摘むような余裕は無いけどね。」



パンと改めて一拍。


瑞鶴「88鎮守府筆頭空母、瑞鶴!相手仕る!戦技!魂降し!」


その瞬間、瑞鶴が繰る艦載機達の纏う気配が変わった。

603 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/20(木) 00:49:49.64 ID:O5Yg9HcV0


殿軍部隊 空母棲姫



空姫「敵の攻撃隊は温いわねぇ!」



撤退する深海棲艦軍の殿軍を駆逐古姫と

空母棲姫は自己の手勢と共に勤めていた。



古姫「予想通り後方を襲撃した連中と比べて練度が低いわね。」



機関全速で撤退する中で追撃を仕掛けてくる敵の艦載機攻撃隊は動きが鈍重。

そして、艦娘による砲撃も雷撃も命中精度は低かった。



古姫「回避しやすい単調な攻撃というのは助かる。」



ひょいひょいと敵の攻撃を交し追撃部隊にお返しとばかりに砲雷撃。



古姫(これなら私と空母棲姫も脱出できるかもしれない。)



そんな淡い夢を見たときだった。

戦う二人の間を一陣の風が吹き抜けた。


604 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/20(木) 00:51:16.67 ID:O5Yg9HcV0

空姫「駆逐古姫様……。」



急に敬称をつけて駆逐古姫を呼ぶ空母棲姫。

一体どうしたというのか。



古姫「どうしたの?」

空姫「重要機関をやられました。」



そんなばかな。たった今のその一瞬で?

そんな動きの取れる敵機は対空戦闘が始まった先程からまったく見ていない。



空姫「胴体シンボルに加賀梅鉢。尾翼マークに二羽飛び鶴。」

空姫「私の真横を一瞬ですが見せ付けるように飛んでいった部隊がいました…。」

空姫「青鬼の弟子でしょうや……。」

古姫「あの!あの青鬼に弟子がいたの!?」



駆逐古姫程の古参となれば敵の強兵の名を知っているのは当然であり

その名は驚愕を伴いつつ古い記憶を呼び起こした。



空姫「過去の因果が追いついたと言うところでしょうか。」

空姫「あれの弟子がここにいる以上は足止め出来るのは私だけでしょう。」

空姫「操る艦載機全てが落とされるまであがき時間を稼ぎます。」

空姫「戦艦水鬼様をどうぞ。よろしくお願いいたします。」



畏まり深々と頭を垂れる空母棲姫。



空姫「お行きください。」



そして駆逐古姫を見送ると空母棲姫は改めて追撃部隊の方へ向きなおる。


605 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/20(木) 00:52:53.39 ID:O5Yg9HcV0


空姫「殿軍としての務め。しっかりと果たしてみせましょう。」

瑞鶴「いいじゃない。その覚悟。受取った。」



瑞鶴の意思が乗った艦載機、いや、瑞鶴そのものと言って過言ではないだろう航空隊が

覚悟を決めた空母棲姫へ襲い掛かる。



空姫「動きが捉えきれない!」



敵の攻撃隊を一言で形容するなら俊足俊英。

一機が魚雷を落せばその機体とまったく同じ高度、位置につけた二番機がそれに続く。

前衛の機体を盾に後続が全て突撃。突撃タイミングはコンマ以下秒のずれもない、

そして迎撃機が敵の死角位置から後ろを取れば迎撃機の死角に敵が居る。

背中に目がついているのかはたまたその敵機は本当にそこに居たのか或いは未来予知?

いいように翻弄され空母棲姫はあっという間にダメージを重ねていく。



空姫「私が相手をするには力不足だったようね……。」

空姫「……、青鬼の弟子という事であればこんな戦場では

   仮に旗艦を勤めているのであったとしても役不足なのでしょうけれど。」

空姫「自分の命を奪っていく相手の顔くらいは拝みたかったわね。」



既に艦攻からの魚雷の命中弾が数発。

そして、艦爆からの直撃弾も食らっている。

錬度の低い敵攻撃隊に上手く紛れて攻撃してくる精鋭。

その姿、気配を見ることは最期まで敵わなかった。



空姫「ここまでですか……。」

空姫「これほどの強さを誇る艦娘がまだ隠れていたとは……。」

空姫「我々の完敗ですね……。」

空姫「駆逐古姫様……。

   後は、どうぞ、どうぞ…よろしくお願いいたします。」
606 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/20(木) 00:54:05.63 ID:O5Yg9HcV0

瑞鶴「ふん。なかなか頑張ったじゃない。」

瑞鶴「でもね。ひとつだけ訂正して逝きなさい。」

瑞鶴「私に技を教えてくれたあの人はこんなもんじゃないわよ。

   正しく鎧袖一触だったわ?」

瑞鶴「私はあの伝説の足元にも及ばないんだから。」

瑞鶴「私はあの伝説と比べて自分がそれに並べるなんて思っちゃいないわ。」

瑞鶴「あんたがここで負けたのは、

   たまたまあんたが私より弱かっただけよ……。」



意識を載せた艦載機達の視界に

空母棲姫が炎上、轟沈する様を捉え瑞鶴は意識を体へと戻した。

607 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/20(木) 00:55:49.25 ID:O5Yg9HcV0


瑞鶴「……、川内?」

川内「お帰り。」

瑞鶴「迷惑掛けたわね。」

川内「いえいえ。戻ってきたなら何より。」



敵の必死の猛攻は意識がなくなり

棒立ち状態だった瑞鶴を格好の的としていたようである。

瑞鶴が自分の体に戻ってきた時、

体の護衛を頼んでいた川内はかなり消耗しているようだった。



瑞鶴「あの人達みたいに意識を飛ばしていても

   自分の体を動かすなんて芸当は無理ね。」

瑞鶴「まだまだ修行が足りない事を痛感したわ。」

川内「んー、まぁ、瑞鶴は瑞鶴でいいんじゃない?」

川内「まっ、確かに明確な目標があったほうが

   やりやすいってのはあるかもだけどね。」

川内「で、首尾は?」

瑞鶴「上々よ。」

川内「じゃま、後は時雨にまかせますか。」

瑞鶴「そうね。さすがに疲れたわ。」

瑞鶴「ウォースパイト?」(無線)



瑞鶴が無線でウォースパイトを呼び出す。



スパ「お呼びですか?」(無線)

瑞鶴「疲れたから旗艦よろしく。

   副官として補助はしてあげるから頑張んなさい。」(無線)

スパ「えぇ!?」(無線)



そして、二の句を告げさせず無線を切る。



川内「いいの?」

瑞鶴「そろそろ一人立ちさせるべきでしょ?」

瑞鶴「這えば立て、立てば歩めの親心よ。」

川内「スパルタだねぇ。」

瑞鶴「雪風が過保護なのよ。」



そう川内に返し瑞鶴はゆっくりと自己の艦載機を再度発艦させた。


608 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/20(木) 01:06:09.77 ID:O5Yg9HcV0
以上更新終わりで御座います

590様、そういっていただけると何よりです
深海側のドラマもある程度あると主人公側も引き立てられるかと思いながらの話づくり
主人公側を面白く見せるには魅力あふれる敵役も重要と自分は思っています

591様、乙レスありがとうございます

592様、いつも話の展開を考えて感想レスを下さっている方でしょうか?
考察ありがとうございます、戦国史好きなら外せない戦いですよね、自分も好きです

593様、レスありがとうございます
軍艦としてではなくあくまで艦娘だから出来る作戦や手法をいくつか足した話し作りのほうが
他の艦これ2次と差別化できるかしら?と無い知恵をうんうん絞ったかいがありました

次回は時雨が満を持して主役(?)の貫禄。ヒーローは遅れてやってくる!
何とか年内に終われるよう頑張ります、この救援話しだけでスレの半分くらい消費している事実
もっと上手くまとめれないと駄目ですね…
いただいているレスには目を通して返せる場合はレスを返しますのでどうぞお気軽にレスを残していただけると嬉しいです
では、次回もお時間の都合が宜しければお読みいただけると幸いです
ここまでお読み頂きまことにありがとうございました
609 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/21(金) 00:39:25.78 ID:k98FMmF90
乙です
既に戦没している一航戦のヤバさが半端なくてなんとも
ここの瑞鶴的に他の鎮守府の一航戦(特に加賀)が自分に対し
舐めた態度とったりするとやっぱブチギレ案件なんでしょうかね
610 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/21(金) 01:04:16.11 ID:yBUtarlV0
たまたま上手くいった狂人集団(名指し)

深海は札2枚、提督は1枚 うーむ
提督としてはうまいこと少佐提督が大将首を挙げる状況を創出出来れば功の上げすぎも多少隠せるがそんな状況意図してでっち上げるのは難しいなあ
そういやでっちの姿見ないような
611 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/12/21(金) 06:41:36.27 ID:f4OjJbdSO
私の艦載機は最近航続距離や威力が弱い気がする
亜鉛飲んだほうがいいのかなぁ
612 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/21(金) 10:15:02.90 ID:SE5IBpml0

フルダイブって敵味方の動きをほぼ随時把握しつつリアルタイムで細かく指示できるようなものなのか
鬼かよ
613 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/29(土) 00:23:13.35 ID:KSP3WUqy0
室内の吐く息が白い、少しだけ更新します
イベントやる気が出ない、皆様もう突っ込まれてます?
新艦は可愛いなぁと思うのですが、にんともかんとも
614 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/29(土) 00:25:05.97 ID:KSP3WUqy0

深海棲艦達の撤退は三々五々、

四分五裂といったいかにもな敗残軍の撤退ではなく。

駆逐古姫が逃げるべき方向を示し、

その他の姫級たちが死ぬ最後まで指揮を執っていたことも有り只の敗残兵とは違った。



提督「負けているにも関わらず統制が執れている敵というのは厄介ですね。」

大佐「えぇ、平時の練度と敵の統率力の高さを窺い知れます。」



ここで多くの敵指揮官を倒せた事は後々有利に働くと二人は考える。



提督「時雨はそろそろか。」



先の無線時に聞いた座標から秋津洲が連絡してきた敵旗艦艦隊の座標とを見比べ、

手元の時計を見て呟く。

本隊の艦載機部隊は提督の指示の元、

撤退しつつある敵旗艦艦隊以外の敵を先に始末していっている。



大佐「丁寧な仕事ですね。」

提督「今、敵主力に向っている部下が任せろと言ったんです。」

提督「上がやれることはその言を信用して

   周りの邪魔が入らないようにすることですよ。」

大佐「部下を育てる為に裁量を与え見守るという事ですか。」

提督「最悪仕留めきれずともこの戦域における絶対的勝利は我々のものです。」

提督「我々の強さを知れば復讐を誓うにしても相応の期間を置くでしょう。」

提督「現状、時間は我々にも必要です。」



提督の言葉には大佐から示唆された色々な面倒事を片付ける為の時間が居るという事であり。



大佐「銃後の面倒事、政治の方は厄介ですからね。」

大佐のこの一言は根が恐ろしく深い事をしめしている。

615 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/29(土) 00:27:09.10 ID:KSP3WUqy0

深海棲艦 殿軍 駆逐古姫隊



古姫(電探に敵機影が映り始めたわね。)



空母棲姫を残し自軍の直参を連れ

戦艦水姫の殿軍を勤める駆逐古姫の部隊にも

グラーフや瑞鳳の艦載機達が迫ってきていた。

しかし。



ツ級「ツァ!」



駆逐古姫直参部隊ともなれば、深海を支える精鋭なのだ。



グラ「ふむ。さすがに普段使わない52型だと操作に難ありか。」

瑞鳳「へぇー、あそこまで海面スレスレに飛んでる艦攻隊を落せるかぁ。」



艦攻隊が海面スレスレを低く飛ぶのは対空機銃の俯角には限界値があるため。

機銃を下向きにした範囲内で狙えなくなる範囲の内側にまで入り込めば

雷撃はやり放題になる。

だが、敵の殿軍の精鋭達はそれをさせてくれない。



グラ「雷撃のコースに乗る前に落とされると抱えた魚雷が無駄になるな。」

瑞鳳「うん。余り意味の無い物になっちゃう。」



追撃隊の艦載機達が落とされ始めた時にグラーフ達の無線に連絡が入った。



時雨「ようやく敵殿軍に追いついたよ。」(無線)

グラ「時雨か。」(無線)

時雨「道中の抵抗もなかなか厳しくてね。」

瑞鳳「直接やる?」(無線)

時雨「うん。僕がやる。任せて貰えるかな?」(無線)

グラ「上空は任せて貰えるか?」(無線)

時雨「お願いするよ。」(無線)

瑞鳳「それじゃぁ、周辺のお掃除はこっちがするね!」(無線)

時雨「うん。お願いする。」(無線)


616 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/29(土) 00:28:11.64 ID:KSP3WUqy0


古姫(ここに来て、まだ強兵の手札を切れるか……。)

古姫(敵の…、敵の救援部隊の層のなんと厚いことよ…。)



迫ってきた時雨の纏う雰囲気は歴戦の古参兵のそれ。



古姫(なれど、救援部隊の中核のみが頭抜けて質が高いだけのようね。)

古姫(全体の軍の質であれば我ら深海側の方が上なのは揺るがない。)

古姫(それだけ相手は全体的に追い詰められてきている。)

古姫(なればこそ、今回は相手が一枚上手だった。)

古姫「それにつきるわね。」

時雨「?」

古姫「こちらの独り言よ。」

古姫「今、この場に立つということは

   あなたもそれなりに名のある艦娘と思うのだけれど。」

古姫「名乗る名があるのなら聞いてもいいかしら?」



古姫が連れていた直参の深海棲艦達は

時雨が瑞鶴に任された部下達が相手取り

グラーフ、瑞鳳の攻撃隊がそれを援護する。
617 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/29(土) 00:29:37.91 ID:KSP3WUqy0

時雨「名乗れる程の名は無いけれど。」

時雨「そうだね。

   僕は外地鎮守府管理番号88所属。」

時雨「白露型二番艦、時雨だよ。」

古姫「此方の求めに応じてくれて感謝するわ。」

古姫「流石にこの首、

   知らない相手にくれてやるには惜しいかと思っていたのよ。」

時雨「それで、君は?」

古姫「深海南方方面軍戦艦水鬼艦隊が参謀長駆逐古姫。」



名乗りを終え、武者両名の戦が始まった。

先の先、先の後、後の先。

剣道でよく言われる試合運びの為の対峙法であるが

武芸者同士での戦い方の心得の一つ。

相手の動きを先読みしそれに対して先に動く。

また、相手が仕掛けてきた際に出来た隙に対してカウンターを返す。

先に長門と戦艦棲姫が演じた演武の様に戦うが。

その駆逐艦たる二人の動きは正しく自由自在。

砲が擬装に固定され砲の動きが制限される戦艦達と比べ

駆逐艦である二人の砲は携行式。

そこには仰角、俯角という艦艇に固定される砲の概念はない。

更には。

618 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/29(土) 00:31:42.59 ID:KSP3WUqy0

時雨「流石にいい所に魚雷を撃ってくる。」



ひらりとかわし避けきれない魚雷を砲撃。



古姫「軽くかわしてくれるものねぇ。」



時雨がお返しとばかりに

返してくる魚雷を避けた先の砲撃を交しつつ返す駆逐古姫。

ただ、戦艦同士の戦いと違い。

こちらは駆逐艦である。

一撃一撃はお互いに致命傷になる確実なダメージとなる。

駆逐古姫の方に装甲の分があるとは言え

流石にそれに頼った戦いは出来ないだろう。

お互いに死への一撃を軽くいなす戦い。



時雨「そろそろ観念してその首、渡しておくれよ。」

古姫「今はまだあげられないわねぇ。」



魚雷を放った後にその後ろで加速して突っ込んで来る時雨。

これは駆逐古姫が魚雷を避けきると確信しているからこそ出来る芸当。



古姫「自身の放った攻撃を

   一撃も無駄にしないその心意気は素敵だと思うわよ?」

古姫「でも、魚雷が私に当っていたら貴方、爆発に巻き込まれていたわよ?」


ほいと時雨の放った牽制の蹴りを

海老ぞりで交しつつ言葉をかける駆逐古姫。



時雨「あれに当ってくれるような君なら

   僕が此処で戦っていなくて済むんだけどね。」



蹴り抜けた足の勢いを活かし

駆逐古姫の後ろを取ろうとした時雨に駆逐古姫が砲身の先を向けてくる。

それを体を捻らせ砲撃で逸らし言葉を返す時雨。



古姫「本当に困った相手がいたものね。」

時雨「どうも。」



この期に及んでというのが正しいのかは別として。

相手を褒めるに困った相手というのは適切なのかどうか、

そしてそれに謙遜ともとれる無気力な返事。

弛緩した雰囲気が漂うが周囲は敵味方入り乱れ命のやり取りが行われている愁嘆場。
619 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/29(土) 00:33:52.28 ID:KSP3WUqy0

古姫「貴方が敵でなければ

   野点の一つでもと誘いたいところなのだけれどね。」



幾度にも及ぶ砲雷撃。

それを交わし続ける二人に少しづつの変化が出始めていた。

方や明石によりつねに最新の技術を投下され進化し続けている兵装。

そして、その体力は無尽蔵ともいえる若さからくる。

対峙する駆逐古姫は、その名の示すように時雨と比べれば年をとっている。

更に、艤装そのものが持つ性能は決して悪い物ではないのだが。

事、ここに至っては総合力で時雨に分があるのである。

更に元々の戦況も今は時雨に味方する。

時間が経てば経つほどにこの海域に敵が、

艦娘が集まってくるのは明らかである。

時雨の三つに編んだお下げが回避行動にあわせくるりと揺れる。



古姫(美しいものよな。)



だが、見惚れていては自分の首に当てられた死神の鎌が振り下ろされる事になる。



時雨「なかなかに時間を稼いでくれるね。」

古姫「あら、流石に見抜かれていたわね。」

時雨「消極的な戦い方をされているとね。」

時雨「ここに僕の仲間が集中すれば

   君が逃がそうとしている総旗艦を追う者は少なくなるからね。」

時雨「かといって君の相手が単騎で出来るのは僕くらいだろうしね。」

時雨「乱戦で戦う方が得意なタイプと見るよ。」

古姫(本当に困った相手だ。)



その双眸はこちらを良く観察しこちらが得意とする戦いへ持ち込ませないように

周囲の部下へ戦闘の参加を禁じ、自分たちを無視し本来の追撃を行わせている。



古姫(こちらの手をきっちりと封じてくる。)


会話を楽しんでいるように語っているが実際は

自分を引きとめ戦艦水鬼へ追撃隊を殺到させているのだろう。

お互いにお互いを引きとめておきたいという意味では利害が一致しているとも言えるが。
620 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/29(土) 00:35:07.03 ID:KSP3WUqy0

古姫「貴方だけしか止められないのであればそれは意味無き事。」

時雨「なんだ、こっちの意図も読まれてたか。」

古姫(涼しい顔で。子憎たらしい。)



しかし、その内心は晴れやか。

死出の旅路によき敵に合間見えた事、その喜びが大きい。



古姫「今、再び、一武人として戦える。」

古姫「時雨。あなたに感謝を。」

古姫(といっても体がもう気持ちに追いついて来ないわね。)

古姫(歳はとりたくないものね。)

時雨「……。」

時雨「改めて。僕は外地鎮守府管理番号88所属。白露型二番艦時雨。」

時雨「相手をさせて貰うよ。」

古姫「深海南方方面軍戦艦水姫参謀長 駆逐古姫。」

古姫(あぁ、成程。)

古姫(此方が一息入れるだけの。その一息で調子を戻せと。)



時雨が改めて自分の名乗りをあげ、敢えて作った間の意図を見抜き。

621 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/29(土) 00:36:41.60 ID:KSP3WUqy0

古姫(尚も全力を出せと目の前の将は言うか。)

古姫「貴方は貴方の指揮官に老人を敬えと教わらなかったのかしら?」

時雨「労わらなければいけないほどの歳なのかい?」



ここに来て、駆逐古姫はようやっと時雨の意図を理解し

その行為に敬意を払いたいという、いや払うべき行為と気付いた。

時雨は自分に全力を出し切らせ、そして武人として死なせる。

最大限の名誉を与え死なせる心算なのである。

殿軍の将といえば追撃され命を落とす事が多いのが常。

更には名の知らぬ者に狩られその死体は切り刻まれ辱めを受ける事が多い。

時雨が味方から信頼されて部下を良く使っているのを見れば分かる。

時雨自身、それなりの位置にいる者なのだろう。

実力で他のものに自分の命令を聞かせるだけの力がある。

その者が自ら自分を倒し、

誰とも知らぬ者に首を獲らせ不名誉な死に方はさせぬとの意思表示。

名誉ある死を与えると言っているのだ。

戦い、銃口を、魚雷を突きつけ合わせた僅かな時間で時雨の人となりは理解出来た。


622 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/29(土) 00:38:21.36 ID:KSP3WUqy0

古姫(………。

   戦艦水姫様が電探の感知範囲から消えて大分たつ。)



一呼吸入れさせて貰ったものの時雨の動きに自分の老いた体は再び遅れ始めている。



古姫(………、どうやらここまでですか。)

古姫(いえ、よく持ったといえますか。)



反応速度の遅れから時雨の放った魚雷が駆逐古姫に命中した。



古姫「時雨。貴方の勝ちよ。」

時雨「君はまだ動ける。」

古姫「流石に老体にこれ以上は無理よ。」

古姫「そして、時雨、ごめんなさいね。

   この体。貴方達の研究材料にくれてやる訳にはいかないわ。」



時雨程の人物がそれをするとは思わないが。



古姫「代わりにこれを討ち取った証拠にしなさい。」



シュルリと髪を解き纏めていた、りぼんを時雨に投げる。



時雨「とっとっと。」



時雨が手を出して拾おうと目を一瞬だけ離した隙だった。

623 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/29(土) 00:40:38.12 ID:KSP3WUqy0
ズドン!



時雨「!」



駆逐古姫は自分の主砲を自分に向け発砲。

そして、自沈した。



時雨「なんて覚悟だ。」



自らの腹部を吹き飛ばした後、

艤装に残っていた砲弾を砲身内でわざとに爆発。

誘爆がおきて駆逐古姫が沈み消えるまではあっと言う間だった。



古姫(これで、これでいい……。)

古姫(戦艦水姫様に足りなかったもの。敗北の経験。)

古姫(それが、やっと、やっと足りた……。)

古姫(電探の範囲から消えて大分たつ。

   無事逃げおおせたでしょう。)

古姫(この敗北の経験は戦艦水鬼様を真の名将にしてくれるでしょう。)

古姫(皆さん、やりおおせました。)

古姫(先に逝った戦艦棲姫や空母棲姫。空母棲鬼様にこれで顔向け出来る。)

古姫(笑って出迎えてくれるでしょうね…。)



海底へ向け沈み行く体、薄れ行く意識の中で駆逐古姫は考える。

その表情は笑顔。



古姫(後は……、今しばらく、今しばらくの時間を。)



目の前で駆逐古姫が沈んでいくのを見届け

時雨はようやく自身の電探を起動させた。

時雨は余裕をある風を装っていたが

電探を切りそれで生じた処理能力の余分を艤装の他の動作処理に回していたのだ。

いや、回さざるを得なかった。

実際はそこまでしなければならないほどに駆逐古姫は手強かった。

そして、電探の範囲内には敵の部隊と言えるものが残っていない事に勝利を確信。

そしてまた敵の大将はまんまと逃げおおせた事を把握した。

624 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/12/29(土) 00:41:56.83 ID:KSP3WUqy0

瑞鶴「とまれ勝利は勝利よ。」(無線)



測ったように。いや。

ブィィィィィン---



瑞鶴「見てたわよ。彩雲を通して。」(無線)

時雨「やれやれ。壁に耳あり空には彩雲ありか。」(無線)

瑞鶴「お疲れ。」(無線)

時雨「うん。ありがとう。」(無線)

川内「今回はお守りだったぁ ―――― 。」(無線)

瑞鶴「あんたは縁の下の力持ちやったんだから誇りなさい。」(無線)

川内「えぇ ―――――― 。」(無線)



時雨と瑞鶴の無線に活躍の場が無かった川内が割り込む。

実際には瑞鶴の護衛として充分以上の働きをしていたのだけれど。



瑞鶴「は ―――― 。あんたには私の報奨金あげるから。」(無線)



それで満足しなさいと恐らく言葉が続いたのであろうが。



川内「わ ――――― い。」(無線)



無邪気な歓声でそれはかき消された。
625 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/29(土) 00:48:43.83 ID:KSP3WUqy0
相変わらず地の文多めです
クリスマスギャグスレ建てたらRに飛ばされちゃいました
スレ建てバグ直ってないみたいですね、新スレ建てるのに専ブラどうなのさ日向状態
このお話はもうちょっとだけ続きます!今年もあと少し!
ねっ年内には終わらせるし!31日の12時までは年内だし!
E3の輸送で涼月掘りたい、所持制限無いみたいですよみなさん(尚、掘れるとは)
イベ、やる気持が出らんですねぇ、複数持ちしたくなるのが涼月くらいしかない
乙レス、感想レス、いつもありがたく拝読しています、どうぞ、お気軽にレスを残していただけるとありがたいです
では、次回で最後の更新とできる様に頑張りたいと思っています
ここまでお読み頂きありがとうございました
626 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/29(土) 00:50:57.06 ID:KSP3WUqy0
ところどころ水鬼が水姫になっているのは
お読みいただいている皆様の心の中で訂正いただけると感謝いたします
いっちの不始末です
627 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/29(土) 05:24:19.06 ID:kUOKECOpO
乙!
628 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/29(土) 19:16:11.69 ID:asNWcBC30
更新乙です
どっちの陣営にも魅力的なキャラが多すぎぃ
629 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/30(日) 03:24:36.04 ID:8mCFG6w50

ゲームでこんなんが相手じゃなくてよかった
630 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/30(日) 22:59:08.23 ID:N0c9OvKf0
S勝利絶対させないウーマンさん流石の捨てがまり
足枷気味の部下抜きで鬼姫級連合艦隊と88主力連合艦隊の激突なら結果は逆になってたんだろうなあ
生き死ににたらればはないけど
631 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/01(火) 01:05:47.60 ID:ihf9M2Jd0
年内間に合わなかったぁ!?
いや!まだ2018年12月31日25時!?(悪あがき)
最後の更新となります、お時間よろしければお付き合いください
632 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/01(火) 01:08:56.44 ID:ihf9M2Jd0

深海勢力と人類側勢力の境界付近



チャプ

時刻は夕暮れを迎え日は水平線の向うへと消えようとしていた。



伊58「敵艦影、いまだ発見せず。」

伊8「目視範囲内には敵は居ないよ。」

伊13「同じくこちらも見つけられません。」

伊58「もうすぐ日が暮れるでち。」



夜は潜水艦にとって一番襲撃を掛けやすくなる時間帯。

だが、今、待ち伏せをしている場所は敵と自勢力の境目。

彼女達に指示を出した提督は敵を沈められなくてもいいと言った。

それは初めの会敵後に魚雷と燃料の補給の為に一旦戻った時の事だった。



提督「この方角に逃げてくるだろうぐらいしか分からん。」

提督「海は広いからな。」

伊58「適当でち。」

提督「柔軟性を持った対応といってくれ。」ハハ

提督「まっ、それはさておきだ。」

提督「この作戦を終了すればお前さん達は晴れて自由の身だが国内には戻せない。」



58達の過去を考えれば当然。

633 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/01(火) 01:10:45.89 ID:ihf9M2Jd0

提督「でだ、再就職先に米軍の新設潜水艦艦隊の教導の席を用意した。」

提督「収監中の伊14については既にアラスカ経由でアメリカに入ってる。」



こいつを見てくれと提督がノートPCを取り出す。



「あっ!姉貴−!」



通話アプリに姿が写るのは伊14。



伊13「イヨちゃん!?」



暫しの会話の後、伊14がアメリカに間違いなく居る事を確認。



伊58「どんな手品でち?」

提督「例のウォースパイトが頑張った作戦があるだろ?」

提督「あの後に色々米軍と仲良くしておいたんでな。」

提督「お前さん達は今回の仕事が終わったら

   こっちの方向へ向かってくれ。」

提督「米軍の収容部隊が来ている。

   表向きには観戦、情報収集という形だ。」

提督「相手先はこの時間には引き上げるから絶対に遅れるなよ?

   遅刻は無しだ。」

提督「いいな。この船には戻るな。」



そういうと三人に小冊子を渡し始める。



提督「本物の偽物だ。

   米国に着いたらグリーンカードに切り替えるから直ぐに不要になるが

   とりあえずの身分証明に必要だからな。渡しておく。」



そして続いて渡すのはプラスチック製のカード。



提督「洗濯機を回して綺麗にした奴を入れてある

   バンカメのキャッシュカードだ。」

提督「暗証番号はここでの個人認識番号の下4桁だ。向うに着いたら直ぐ変えとけよ。」



最後に3人へと腕時計を取り出す提督。
634 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/01(火) 01:12:46.39 ID:ihf9M2Jd0

伊8「これは…、パネライ、ですか?」

提督「流石、博識だな。」

提督「餞別だ。金に困ったら売るといい。」



一人ひとりの腕に巻く姿を見た後に一言。



提督「二度と帰ってくるな。せっかく生きて出られるんだからな。」

提督「新天地で頑張れよ。」



ポンと伊58の肩を叩き提督は司令室へと踵を帰す。



伊13「あっ、あの!」

提督「なんだ?」

伊13「ありがとうございます!」



司令室に戻りかけた体を再度三人の方に向け、

思い出したように敬礼。

そして、伊13の言葉に笑みを返し提督は艦橋へと帰っていった。

635 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/01(火) 01:13:44.99 ID:ihf9M2Jd0


伊58「最後の大立ち回り。」

伊8「なんとか成功させたいですね。」



だが、自分たちを収容する予定の艦隊との合流時間は迫っている。



伊58「………、時間でち。」



提督が示した敵の退却経路。

移動を考えればその範囲内に留まれる時間はもう無い。



伊13「敵艦隊発見!」



待ち伏せである為に電探で

自己の位置を逆探される様な電波を出すわけには行かない中。

そして、夕暮れを迎え夜の帳が下り、

目視での敵艦影が発見しにくくなるギリギリ。

伊13が敵旗艦艦隊を見つけた。

636 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/01(火) 01:15:14.10 ID:ihf9M2Jd0

伊58「敵艦確認!」

伊58「魚雷発射後全力離脱!」

伊58達が発射した魚雷は敵へ向って一気に殺到した!

ネ級「右舷30度!距離300!敵魚雷!」



魚雷の針路は図ったようにまっすぐと戦艦水鬼への衝突コース。

命中かと思われたタイミングだった!

ズドン!



タ級「どうにか、お役目果たせたようです。」

戦鬼「タ級!?」

タ級「戦艦棲姫様に胸を張って会いに行けます。」

タ級「後ろを振り返らずこのままお逃げ下さい。」

タ級「敵の艦影が見当たらない以上は潜水艦からの攻撃。」

タ級「立ち止まれば敵の思う壺です。」

戦鬼「タ級、ごめんなさい。」



その謝罪は曳航せず、置いていかざるを得ない事への物であり。



タ級「覚悟の上です。いえ、最後の奉公が出来てよかったです。」



タ級が戦艦水鬼を庇って被弾したのは伊58達にも見えていた。

637 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/01(火) 01:16:19.19 ID:ihf9M2Jd0

伊8「もう夜になるからもっと近付かないと視認出来ないよ!」

伊13「聴音襲撃だと敵艦隊の隊列が密だから聞き分けが困難です!」

伊8「どうする!?」

伊58「………。」

伊58「撤収でち。」

伊8「!?」

伊13「ここまで来てですか!?」

伊58「ゴーヤ達をアメリカへ送り出す為に

   提督は危ない橋を渡っているのは間違いない。」

伊58「わざわざ腕時計を餞別に贈って来た意味を考えろ。」

伊58「時間だ。」



敵艦隊の艦種までは判別出来ないほどに既に周囲は暗闇の中。

そして、敵勢力圏は直ぐそこ。

いや、既に内側に入っていておかしくない。

提督がなぜそこまでをしたのかを考えれば。

伊58が強い口調で撤退を言うのは当然ともいえる。

638 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/01(火) 01:17:57.83 ID:ihf9M2Jd0

伊58「もう一度言う。撤退。」

伊8「……、了解。」

伊13「了解しました……。」



提督が仕掛けた最後の罠はタ級の献身的犠牲により不発に終わった。

そして、明けて翌日、残敵の掃討終了、

当該海域での戦闘終結宣言がなされこの海域での戦闘は終了した。



一ヶ月後  88鎮守府 荷揚げ用埠頭


長門「こんな所にいたのか。」

提督「色々な処理がある程度落ち着いたんでな。」

提督「さぼりだ。」

長門「そうか。それでよかったのか?」

提督「よかったのか、というのは?」

長門「例の不正を行っていた鎮守府の提督連中は処分保留だそうだが?」

提督「首をほいほい挿げ替えられるほど人間が残ってないのさ。」

提督「お前が提督になるのを受けてくれていれば話は違ったんだがな。」


先の作戦時に島風が救援を求めて立ち寄った鎮守府の提督達は

救援を断った事、他にも色々とあった不正への処分は保留されていた。

639 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/01(火) 01:19:28.89 ID:ihf9M2Jd0

提督「だいぶ前の作戦のときに首を飛ばしすぎた。」

提督「これ以上飛ばすとなり手が居ないだとさ。」

長門「私はやらんよ。」

提督「艦娘でベテランの連中を

   提督へってのは前から少しずつは進められているんだがなぁ。」

提督「要件を満たせる奴がほとんどいない。」

長門「だから私はやらんよ。」

提督「分かってるよ。二度も繰り返すな。」

長門「大事な事だからな。」

提督「処分保留にして

   手綱を握っておいたほうがいいだろうと考えたらしい。」

長門「大丈夫なのか?」

提督「一応あの辺りの人事異動はやったそうだ。」

提督「例の救援にいった所な?

   あそこの提督は後ろに下げて不正をやらかしてた連中で

   一番階級の高かったやつらから近い順に最前線。」

長門「ははぁ。死にたくなければ頑張れよと。」

提督「あぁ、例の頑張った少佐は昇進して周辺に睨みを利かせる事が出来る位置に移動だ。」

長門「なるほどなぁ。」
640 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/01(火) 01:20:50.42 ID:ihf9M2Jd0

長門「ところで、教導の昔の部下だった娘から

   今回の救援作戦が艦娘養成学校の教科書に掲載されたと聞いたのだが?」

提督「月並みだがな。人の寿命は二つあるって奴だ。」

長門「肉体の、命が尽きたときと人の記憶から忘れ去られた時の二つだったな。」

提督「そうだ。島風が生きた記憶を。生き抜いてなした事を。」

提督「島風の自己犠牲の精神を真似ろとは言わないが、その高潔さを知って欲しい。」

提督「そして、皆の記憶の中に残れば、残っている間は島風も死んでいないだろ?」

長門「……、そうだな。島風は皆の心の中で行き続けるだろうな。」

提督「あぁ。」



そして少しの間があって長門がまた提督に話しかける。

641 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/01(火) 01:24:54.10 ID:ihf9M2Jd0

長門「グラーフやポーラが本国へ帰ると聞いたのだが。」

提督「今回俺たちは目立ち過ぎた。」

提督「グラーフに関しては

   それを面白く思わない連中が手を回してうちの弱体化を狙ったんだろ。」

提督「ポーラはもともと志願だ。契約が終われば帰るだろうさ。」

長門「他にも人員が抜けるようだが?」

提督「出る杭は打たれるのが世の慣わしだろ?」

長門「打たれるどころか引っこ抜かれそうな勢いだな。」

提督「今回は目立ち過ぎた。それだけだ。」

提督「日陰者は日陰者らしくしとけという事さ。」

長門「これから厳しくなるな。」

長門「我々は守れただけだからな。」

提督「それが理解出来ているお前はさっさと艦娘やめて提督になってくれよ。」

長門「だからならぬと言っているだろうが。」

提督「あー…、そうだったな、すまん。」

長門「………。」



そして、また、しばしの沈黙。



提督「………。なぁ、長門。」

長門「なんだ?」

提督「島風は死ななきゃいけなかったのかな?」

長門「止められたのに止めなかった事を悔いているのか?」

提督「お前は察しがいいな。」

長門「付き合いは長いからな。だが、それは、たら、ればだろう?」

提督「……、そうだな。議論するだけ意味の無い事だったな。」



そして、また間が空き提督が口を開く。
642 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/01(火) 01:27:35.47 ID:ihf9M2Jd0

提督「長門。煙草を吸ってもいいか?」

長門「……、あぁ、いいぞ。」



そして、一本取り出し。火をつける提督。



長門「……、鬼の目にも涙か?」

提督「ちげえよ。煙草の煙がな……。」

提督「煙草の煙が、目に染みただけさ……。」



人生の最後が幸せに迎えられたかどうか。

それを決められるのは本人だけだろう。

或る者は裏切られ、また或る者は金を稼ぐ為。

或る者は復讐を胸に誓い、或る者は世話になった者への忠誠を誓う。

ここは外地鎮守府管理番号88。

様々な艦娘達の人生が交差し、また離れていく場所でもある。

ここへ送られてくるのは人生が終わりの一方通行ではなく交差点である。

彼女達の活躍は仲間の心に、記憶に残る。

それだけで充分だろと彼女らは今日も出撃する。






続外地鎮守府管理番号88 完
643 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/01(火) 01:31:47.63 ID:ihf9M2Jd0
以上一年近く長々と続きました第二部完でございます
お付き合いいただき本当にありがとうございました、途中でネタやおまけなど色々脱線ありましたが…
最後までお付き合いいただき本当にありがとうございました
お読みいただいている皆様の乙レス、感想レスにやる気をいただきながらの作成でした
本当にありがとうございました、依頼を出しに行き、このスレは終了とさせていただきます
スレがあまっているのでボツネタの投下等に使うかもしれませんがその際は生暖かい目で見てやっていただけると幸いです
ではでは、本当にお付き合いいただきありがとうございました!
644 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/01(火) 02:55:20.98 ID:x60SYXEX0
おつ 完結は惜しいがお疲れ様でした
最後の一枚は不発だったがでっちが出番あって何より
645 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/01(火) 08:06:32.99 ID:nuOcqu1j0
第3部に期待
646 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/01(火) 14:41:02.99 ID:ytlaAwaU0
お疲れ様でした
海外勢以外のメインキャラの中から多くの移動者が出ていたら
本当にきつそうですね
(現地裁量でメリケンからの人員支援を受けるてもあるかもしれませんが)

第三部の開始期待してます
647 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/01(火) 23:47:21.89 ID:91iE+9l40
お疲れ様です
熱いストーリー良かったっす
自分も3部期待です
648 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/02(水) 14:33:30.76 ID:7UJ5uOv70
乙!
完走お疲れ様でした、第3部も期待してる。
649 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/02(水) 20:34:04.42 ID:zbHNqNyT0
別スレのおまけにボツネタ供養でちょっと書かれた話を
もっと書いてとお願いしたのは1年以上前でしたか。
本当に良かったです。
650 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/05(土) 03:44:41.65 ID:ul40+rcH0
お疲れ様
知識が浅いから難しい所はあったけど戦い方は凝ってて読んでてワクワクした。
熱い艦これ待ってます!
651 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/07(月) 00:07:36.63 ID:S4P9bhGd0
おまけネタ 日常を少しな話し
652 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/07(月) 00:08:41.94 ID:S4P9bhGd0


提督「今日は何曜日だったか…。」



或る冬の日、窓からの日差しは暖かくまさしく小春日和だった。



不知火「今日は月曜日ですね。どうされました?」

提督「あぁ。今度、定例の提督会議があるだろ?」



各方面軍事での提督が集まっての戦略会議。

提督曰くおっさん達の同窓会だとか。

早い話、中身がないという事でもある。

以前に時間の無駄とばっさり言いきっていた程でもある。



提督「出席しないと後の割り当てにケチが付く。」



防衛を担当している戦域からの『 あがり 』。

燃料等のその他工業製品の割り当てはこの会議の後の打ち合わせで決まる。

当然の様に戦果が一番大きい提督の所が割り当ては大きいわけだが、

その打ち合わせの場に居なければ減らされてしまうというのもありえてしまう。

必要な所に必要なだけ送るという基本的な事にも、

袖の下、派閥、階級なんてものが付いて回るのである。

653 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/07(月) 00:10:00.56 ID:S4P9bhGd0

不知火「鼻薬、手土産、お歳暮は手配しております。」

提督「あぁ、いつも助かっている。」

不知火「では?」



何か落ち度でも?と言いたげに首を傾ける不知火。



提督「月曜日は理髪店協会の加盟店は営業しないんだ。」



自身の頭をぽんぽんと叩く提督。

なるほど散発かと合点がいく不知火。



不知火「それでしたら。」

提督「ん?」

不知火「お切りします。」ヌイ!

提督「そうか。では頼もうか。」



そして、窓辺の明るい場所で散髪が行われたのだった。
654 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/07(月) 00:11:24.21 ID:S4P9bhGd0

チョキチョキチョキ

軽快な鋏音。



提督(窓ガラス越しの日差しというのは暖かいな……。)

南方というのを考えれば暑いくらい。

提督(少し、眠くなってきたな……。)zzzz

提督 Zzzzzzzzzz



チョキチョキチョキ



そして、悲劇は起こる。



提督 Zzzzzzzzzz カクッ



チ゛ョ゛キ゛ン゛



不知火「!」

不知火「ヌイィィィ!!」



眠りに落ちた提督の首が傾く。

そして、鋏はそれに対応できず、

余分に切りすぎてしまった……。



不知火「バッバランスを!」



チョキチョキチョキ



不知火「まっ、まだなんとかなるはずです……。」



チョキチョキチョキチョキ



不知火「こっ、こっちを……。」



チョキチョキチョキチョキチョキ

655 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/07(月) 00:13:11.14 ID:S4P9bhGd0

30分後



提督「と、思わず寝てしまった。」

提督「不知火。すまなかったな。」

不知火「………。」

提督「?」

提督「随分とさっぱりしたのか気持ち頭が軽くなった気がするよ。」

不知火「!!」

提督「鏡はあるか?」

不知火「申訳有りません……。」

提督「あぁ、鏡なかったか。まぁ、いいさ。」

提督「少し、眠気覚ましに散歩に行って来る。

   どうにも眠くてな。」フワァ



そして、提督は執務室を出て散歩へと向った。



長門「おっ、提督。」



提督の後ろ姿を見て声をかける長門。



提督「ん?なんだ?」クルリ

長門「………。その、随分と思い切ったイメチェンだな。」

提督「そうか。不知火に頼んだんだ。」

長門「そうか。」

提督「眠気覚ましに散歩中でな。どうだ?付き合うか?」

長門「いや、遠慮しておこう。」

提督「そうか。」



その後、長門以外にも幾人かと会話を交わしたのだが

何故か皆、歯切れの悪い会話。

そして、提督はウォースパイトとの会話で気付いた。

656 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/07(月) 00:14:44.98 ID:S4P9bhGd0

スパ「Admiral」

提督「ん?どうした?」クルリ

スパ「あっ、Admiralのお客様でマフィアの方でしたか。」

スパ「勘違い失礼いたしました。」ペコリ

提督「…………。」



埠頭まで来ていたこともあり明石の工廠に立ち寄れば。



明石「どこのヤクザの組長が来たかと。」

秋津洲「マフィアのボスでも相当ヤバイクラスかも!」

提督「忌憚無い感想ありがとうな。」ハァ―



提督は自分の状態を把握した。



明石「なるほど道理で皆さんが

   紫電改を注文に来ると思いました。」

提督「艦載機のか?」

秋津洲「育毛剤かも。」

提督「あー、成程……。」



なお、育毛剤は間に合わず、

この状態で提督会議に出席した提督は

他の提督にいつも以上の威圧を周囲に与えていたそうである。



不知火「この不知火。自沈してお詫びを……。」

提督「いいさ。結果的に上手く事は運んだし暫く髪を切る必要もなくなったし。」

提督「前向きに考えるさ。」

スパ「元々少なかったですしね。」



余計な一言が原因でこの後ウォースパイトが

楽しい演習に参加する事となったのは言うまでもない。

657 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/07(月) 00:17:30.50 ID:S4P9bhGd0
ちょっとした鎮守府の日常ほのぼの
お読み頂きありがとうございました
完結にあたっての第三部期待のコメント沢山ありがとうございます
改めてここに御礼もうしあげます
コネタや日常ネタなんかで今後もこちらにあげることあるかもしれませんが
その際は温かい目でみてやっていただけると幸いです
658 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/07(月) 05:52:52.69 ID:SIB406j6o

スパ子…
659 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/07(月) 09:00:14.46 ID:T2YiU9iLO

ヤポンスキー的な空気の読み方は難しいのかな
660 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/01/07(月) 09:34:32.19 ID:3FOkM2/5O
ヤクザの組長は金子信夫の演じる役は最高
661 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/07(月) 10:30:01.67 ID:LeL6M+b5o

ここのスパ子ほんと好きだ
662 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/07(月) 11:57:24.20 ID:MP8xFXdx0

信頼と安心のオチ担当
663 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/07(月) 19:30:25.52 ID:5pJ1sCJv0
提督は進化すると禿になるからね仕方ないね
リアップが良いらしい
664 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/18(金) 23:53:29.98 ID:CIcpqvvX0
艦これ小ネタスレにだいぶ昔に投下して
色々考えて続きを書いたけど結局やめたものを供養代わりに投下します
御笑納ください(続きはかかないんだからね!)
665 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/18(金) 23:56:35.07 ID:CIcpqvvX0

『 赤備え 』


じゃらん。

錫丈の鐶の音が響く。

暗闇に、水底に敵を引きずり沈めゆく。

奴等は赤備え。

奴等が通った後には深海棲艦は一隻として残らない。

全てが灰燼に。

灰は灰に塵は塵に。

軽巡陸人の近接切り込み戦隊。

彼女達を知るものは言う。

陸人の女武芸者達には近寄るなと。

鐶の音が聞こえた時には手遅れだと。

奴等の艤装は敵の返り血で染められたものだと。

冥府の使者、黄泉比良坂の案内人。

血濡れの錫丈、仕込三味線、地蔵菩薩の代弁者。

彼女らを表現する言葉は無数に有る。

魂を送り届ける先は黄泉の国か、はたまた冥府か。

面頬に隠れたその下を覗くはその命、無きものと知れ。

彼女らが何処から現われ何処へ消えるか知る者は居ない。

ただ、その艤装が赤く染められている事からか

海軍の公式記録には

『 赤備え 』の所属不明な壱団有りと記されている。

666 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/18(金) 23:57:43.45 ID:CIcpqvvX0
『 闇に咲くは地獄華 』



都内高級料亭 上客用離れ



大将「いや、座敷遊びまで手配しておるとはな。」

中将「大将閣下には日頃お世話になっておりますので。」



ベンベンベンベべべべ。

はぁーっ!

〽  妖も人も 死ねば変わりは無き事よ

大将「舞を踊っている舞妓もだが、三味線奏者もなかなかだな。」

〽  少し渚に人待てば 果てる命はなかるるに

中将「向島の置屋で一番の綺麗所をお願いしていますので。」

〽  この世儚く 夢落つる

大将「ふん。なかなか美形さな。」

〽  憂き捨てて 捨てて憂き世の浜千鳥

ぺぺぺぺぺん。いよっ!


中将「次の作戦であの鎮守府を・・・・。」

大将「あぁ、あの生意気な若造を潰す。

無理な作戦海域を割り当てて引責よ。」

中将「まぁ、口のきき方も弁えぬ小僧でしたからな。」

大将「ふん。」



酒をほとほとと飲み始める二人。

酔いが回り始めた頃にそれは起きた。

じょあぁぁぁーーーん。

三味線の音と共に照明が一斉に消えたのだった。



大将「むっ?停電?まぁ、直ぐに元に戻るだろう。」

「さぁて、灯りが戻るまで命が持てばいいけどねぇ。」



言うが早いか白刃一閃。

大将の首が椿の花が落ちるが如くぼとりと落ちる。
667 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/18(金) 23:58:52.79 ID:CIcpqvvX0

中将「なっ!何事?!何も見えない、聴こえないぞ!?」

「あの世で閻魔にあったら私の名前を出すといい。

刑期の割引をしてくれるはずだよ。」

「川内にやられたってね。」



背中側を三味線の撥による袈裟斬り。

斬った本人は撥に付いた血を相手の軍服で拭う。



「撥には毒が塗ってあるんだー。

えへへ、万が一にも助からないよねー。」

「姉さん、早めの撤収を・・・。」



カラリと襖が開く。



「姐さん、こっちも終わりやした。」

「天さん達も終了かい。こっちも今、方が付いたよ。」

「那珂。そこの鞄を忘れずにね。」

「はーい!」

「書類鞄は後でじっくりと拝見と行こうじゃないか。」

「姉さん、ここはこのままで?」

「海軍の偉いさんが何をしていたって話でしょ。表沙汰には出来まいよ。」

「帰ったら風呂にするよ!豚の血は臭くて敵わないわ。」

「姐さん、そいつは豚に失礼ですぜ。」

「あぁ、俺もそう思うな。」

「姉さん、私もそう思います。」

「そうねぇ〜。私は豚の方がまだ可愛いと思うわ〜。」

「那珂ちゃんも完全同意!」

「あらま。まぁ、いいや。フタフタマルマル、作戦終了。帰投するよ。」

「了!」



東京不夜城。

夜の闇に今日も命の灯が消えた。

668 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/19(土) 00:00:48.48 ID:7HM3/1m90

『 始まりの詩 』



2×××年

人ならざる者達が諸国沿岸に現われ人類へ攻撃を開始した。

始めは大型海洋哺乳類のような異形の物達が

統率されることなくただ暴れていた。

多くの国家は自国の軍事力で多大な労力と犠牲を払い撃退。

そして、段々と敵は人型を取るようになり

ある一定の水準を超えたとき劇的に進化した。

彼らの進化により現代兵器での戦闘は割りに合わなくなった。

世界はその敵を深海棲艦と名付けた。

敵は現代兵器を満載した船舶をあざ笑うかのごとく沈めていく。

しかし、海に出ない限りは襲ってこない。

結果として巨大輸送船団の護衛に軍を回せる国のみが生き残る。

大陸諸国は自国が生き残る為に弱い国を侵略。資源の収奪を繰り返す。

世界最強の国は自国だけで全てが回せる為沈黙を貫く。

そんな中、極東の島国がオカルト的アプローチにより事態の解決を図る。

『 相手が得体の知れない化け物ならこっちも化け物で応じればいい 』

これがプロジェクトを進めたものの台詞。

研究は進められ、嘗て皇国の四方を守った鉄の城達の御霊。

これを燃料、弾薬、鋼材、ボーキ、そして開発資材という名の有機物。

5つの要素をいい塩梅で混ぜて御霊を降し、艦娘と呼ばれる兵士を作り上げた。

彼女ら兵士は強かった、

そして海軍は分霊(わけみたま)で同じ艦娘を複数作り上げて行った。

人ならざるものに人ならざるもので戦う。

倫理観等はそこに有る訳も無く

彼女達を押し込み留めた場所は鎮守府と呼ばれる収容施設。

ここには幾人もの兵士が押し込まれていた。

同じ武器、同じ顔、同じ名前。ややこしいと思うだろう。

同じ物であったとしてもそれが価値あるものであれば

双方とって置くのだろうが特に価値が無ければ?

取り置くのは片方だけ、それも先に有る方だけだろう。

兵士から『 魂 』を抜き元の無機物に戻す作業を彼ら海軍は『 解体 』と呼んでいた。

これはある収容施設に拾われ解体されるはずだった者達が逃げ出したことから始まる物語。
669 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/19(土) 00:02:17.79 ID:7HM3/1m90

『 不要とされた者 必要とした者 』



ザザーン。



大淀「こちらが本日ドロップ現象で

入手したと連絡のあった艦娘の報告です。」


艦娘を海軍が創り出した時、

黄泉路は開かれ偶に海軍の意図しない降霊が起きる事があった。

海上の有機物、海草の塊や、水生生物の死体といった有機物を憑代として

艦娘が海上に生まれることを海軍は魂が堕ちるという意味も含め

ドロップ現象と名付けていた。



提督「ちっ、レアはいないんだろ?」

大淀「・・・・、川内型が3人です。」

提督「けっ、ハズレかよ・・・、ったく。

艦隊が戻り次第全員解体にまわしてくれ。」

提督「いや・・・・、今日は何曜日だ?」

大淀「日曜日ですが。」

提督「ちっ、めんどくせぇ。

明日の任務入れ替わりの際の近代化合成任務用においといてくれ。」

提督「逃げ出したりしないように営倉につっこんどけ。」

大淀「・・・・、了解しました。」

提督「まったく、今更夜偵なんざいらねぇし。育てる資材も勿体ねぇ。」



ぶつくさと太った身体をゆすらせながら

提督と呼ばれた男は鎮守府建屋へと消えて行った。

程なく帰投を告げる無線の声が聴こえ、

出撃をしていた艦娘達が帰ってきた。

そして、大淀は連れて帰ってこられた艦娘の一人に目を留める。

自分と同じ。

純粋じゃない目。

混ざり者の目。

大淀はそれを見て予てよりの計画を実行に移す決意をした。

670 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/19(土) 00:05:07.03 ID:7HM3/1m90
以上導入部分だけ
お気付きの方もいらっしゃるかと思いますが隼鷹さんを始めとする
軽空母や空母の艦載機の設定は元々はこっち用で用意していたものです
こういうシリアス系の奴は書いていて乙レスいただけにくいのでモチベが保てない奴です
モチベが保てないとエタっちゃう……、うん、ごめんなさいです
お読み頂きありがとうございました、とりあえずのボツネタ供養でした
671 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/22(火) 01:01:47.47 ID:c5Ong7Rw0
もしやゴーヤは海を漂う野菜から生まれたのかw
672 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/24(木) 01:33:39.92 ID:jo7lW8fX0
ボツネタその2
カウボーイビバップとブラックラグーンを足して割らない感じのをやろうとして止めた奴です
それと、瑞鶴の師匠との思い出話しを少し
お時間よろしければお読み下さい
673 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/24(木) 01:36:04.39 ID:jo7lW8fX0

阿賀野型が主人公になるSSってみないなぁとの考えからのお話です




Cowgirl 阿賀野



※この作品は喫煙、暴力、麻薬、キャラ下げ等の内容が含まれます。
 これらが駄目という方は読むのは御遠慮いただきますようお願いいたします。



人類と深海棲艦達の長期にわたる戦争は終結し世界は平和を取り戻した。

人類と深海棲艦達の間には和平が結ばれ世界は復興へ向け歩み始める。

嘗て深海棲艦を敵として人類は一つとなり世界政府という、壮大な。

そう、戦争前には夢物語と言われた物が樹立され

その構成メンバーに深海棲艦を迎え入れるという形で平和を得た。

だが、深海棲艦達の中には破壊と殺戮を好む者も多く残り

彼女らは本能の赴くままに破壊活動を行っていた。

更には退役した艦娘が犯罪組織を作り非合法活動を行うなど

正しく魑魅魍魎が跳梁跋扈し戦争中より混沌とした状況となってしまう。

その為、事態を打開すべく嘗て艦娘として人類を守り、

平和を向かえ人員削減を迎えることとなった彼女達の一部へ

世界政府はある許可を与えた。

そう、さながら、アメリカ西部開拓時代のように賞金稼ぎ、

Cowgirlとして無法者達を取り締まるべく新たな活躍の場を彼女達へ与えたのだ。

674 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/24(木) 01:38:17.17 ID:jo7lW8fX0

大型クルーザー 前部甲板



ペコリ

ペコリ

フン! ハッ

      ガッ ゴッ ベキ!

ヅン!  ホッ!

阿賀野「ねぇ!能代!矢矧!ごはん出来たよ!」

酒匂「ぴゃん!阿賀野お姉ちゃんの特製炒飯だよ!」



クルーザー内 食堂



矢矧「ねぇ、阿賀野姉。

   海老無し具無し焼き飯は炒飯って言わないんじゃないかしら?」

阿賀野「矢矧、お金が無い時はただの焼き飯も炒飯っていうんだよ。」

能代「今月はちょっと厳しいからね。

   船の燃料と税金払ったらかつかつだわ。」

酒匂「そんな皆にグッドニュースだよ!」

能代「あら、何かしら?」

酒匂「ジャーン。空母イントレピッド、賞金100万ドル。」

阿賀野「何したのその芋。」モグモグ

矢矧「えーっと?麻薬密売、臓器売買に政府機関への襲撃。」

能代「悪の総合デパートかしら?」

酒匂「艦娘として働いていた時からの悪事みたいだよ!」

阿賀野「あー、アメリ艦でも一人だけ白系華人っぽい顔立ちだったからねぇ。」

矢矧「中共のスパイ説もあったわね。」

能代「華が無かった。」

矢矧「華人なのに華が無いとはこれ如何に。」

阿賀野「まぁ、それらはおいておくとして100万はでかいわ。」

矢矧「確かに。」

能代「矢矧は今度は気をつけなさいよ?

   この間捕まえた相手ぼこぼこにしすぎて顔が変わっていた所為で引き渡した後、

   阿賀野姉と二人、警察に文句を言われたんだから。」

矢矧「能代姉もかなり殴ってなかったかしら?」

酒匂「とりあえず、今回はこの元艦娘が獲物だよ!」

一同「了解。」

675 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/24(木) 01:40:27.50 ID:jo7lW8fX0


アジアのとある港町



ガン「さてと、ラングレーの人間が

   こんな辺鄙な所にバカンスへ来た理由を聞こうか?」

ヴェル「同志、葉巻を持ってきたよ。」

ガン「あぁ、ありがとう。さてと、ヤンキーの貴方は煙草は好きかね?」ン?

ガン「私は大好きでね。特に葉巻が好きなんだよ。」

ガン「君も吸うかね、1本どうだ?

   シガーパンチで吸い口を作ってあげようじゃないか。」

バチン

ガン「どうだね?此処へ来た理由を話してみないかな?」

フン

ガン「そうか。実に残念だ。

   ところで葉巻と指の太さは近い物があると思わないか?」

ガン「あぁ、いやいや。君がそう震えなくても大丈夫だ。」

ガン「ここには10本ある。ゆっくりと考えてくれて大丈夫だ。

   私もゆっくりと切るからな。」

ブツン

ギャァ!!

ガン「やれやれ、まだ1本しか切っていないんだがな。」フゥ

ガン「話したくなったかね。そうかそれは実にいいことだ。」

ガン「君にはこの葉巻を進呈しよう。何、遠慮なくたっぷりと吸ってくれ。」

ガン「キューバ産の上物だ。」

ゴトゴトゴト

ヴェル「同志大佐。準備が出来たよ。」

ガン「Молодец では、我々は帰るとするか。」

ガン「あぁ、その葉巻は落すなよ?命が惜しければな。

   ん?何?燃えるのが早い?」

ガン「君用の特別な葉巻だからな。ゆっくりと味わってくれ。」

ギィィ

バタン

ドゴン!!

ヴェル「同志大佐。欲しい情報は手に入ったのかい?」

ガン「あぁ、ヤンキー共が戦争の下調べに来た理由は分かったよ。」

ガン「予想通り例の麻薬絡みだ。雪風に繋ぎを取ってくれ。

   陽炎と直接話をしなければいけないな。」

ヴェル「了解。」

ガン「まったく厄介な芋が。」

ガン「同じ芋でも酒の原料にもなりゃしない。」

ガン「頭が痛い話だ。」

676 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/24(木) 01:42:27.45 ID:jo7lW8fX0
とあるアジアの仏教国

阿賀野「入港の手続きも終わったから情報を集めに行きましょ!」

矢矧「阿賀野姉ぇ。ここは確か。」

能代「陽炎ちゃんが仕切ってた街だよね。」

酒匂「今は雪風ちゃんが代表しているみたいだよ!」

阿賀野「雪風と連絡とってるの?」

酒匂「うん!陽炎ちゃんは今、日本の本拠地を固めてるんだって。」

酒匂「それで東アジア地域は雪風ちゃんが担当してるんだよ!」

阿賀野「雪風なら話がしやすいわね。」

酒匂「うん!」



とある酒場

ドラムがテンポを刻み始め、

トランペットの音が甲高く流れる。

続いてサックスが謳い始める。

ガン!

入り口扉を蹴破る音がした後、二人の少女が入り口に立っていた。



「ちょうどいい曲ではないか。踊って貰おうか。」

「磯の字。曲名はSingじゃけぇ踊るゆうより謳うやわ。」

「むっ?そうか?」

「まぁ、ジャズダンスいうのもあるからあながちハズレやないかもしれんけど。」



元艦娘の1人が取り出したのはM134



「うちのシマで勝手やってくれとるのを

  見逃すんは他に示しがつかんからねぇ。」



ドドドドドドド キンキンキン



「セッションにはちょいと無粋な金属音やったかねぇ。」

「浦風よ、今気付いたのだが生存者が残らないな。挽肉だ。」

「肉屋を開店出来る勢いだぞ。」

「あぁ、まぁ仕方ないねぇ。

 うちらのシマで薬物捌いてるあほぼん残すんは雪風も嫌っていたし。」

「ふむ。まぁいいか。火は付けて置くか?」

「そうやね。後始末が楽でええね。」

「ふむ。秋刀魚を持ってきていれば良かったな。料理にいい感じの火力になりそうなのだが。」

「せやろか。」

「うむ。料理は火加減こそ大事だと浜の子も言っていたからな。」ムフー

「帰るか。」

「せやねぇ。」


677 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/24(木) 01:43:41.02 ID:jo7lW8fX0
以上これまた導入でとまったボツネタ供養

続いて瑞鶴の過去話、おまけです
678 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/24(木) 01:46:51.68 ID:jo7lW8fX0

「やれやれ、どっこい祥鳳」

「ちょっ。(笑)」


目の前で疲れたとばかりにブイのように漂う敵の死体を腰掛にするのは

私の教導を勤める先輩というか師匠の加賀さん。

そしてその僚艦の赤城さんは先の駄洒落におなかを抱えて笑っている。



加賀「これに喧嘩売るにはまだ早いっていったでしょう。」ゲシッ



これ、とはレ級である。



加賀「喧嘩を売ってでも仲間を逃がす為に時間を稼ごうとした心意気は褒めますがね?」

加賀「あのね?そういうのは実力があって初めてかっこよくやれるのですからね?」

赤城「加賀さん、おこ?」

加賀「おこです。下手したら死んでいたのかもしれないんですよ?」



げしと尻下のレ級だった物に蹴りを入れる師匠。



加賀「瑞鶴?あなたに死なれると目覚めが悪いんですから。」

赤城「加賀さんね?貴女が殿を務めているって聞いて全力で来たんですよ?」


それは分かる。

自分をしとめに来たレ級その他が目の前で瞬殺されたのをみて

それが出来るのは自分が知る限り2人しか居ないから。

679 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/24(木) 01:48:26.61 ID:jo7lW8fX0

加賀「反省しました?」

瑞鶴「はい。」

加賀「うん。よろしい、では、帰りましょうか。」

赤城「今日の夕飯のデザートは瑞鶴さんの奢りということで。」



加賀がそういうと周囲にいた駆逐艦の娘達もわあと歓声をあげる。



瑞鶴「えっ。」

加賀「あらん?」ギギギギギ



ニッコリと笑っているが鬼の形相で振り返る加賀。



瑞鶴「おごらさせていただきまぁす。」

赤城「よろしくお願いしますね。」キャッ

瑞鶴「はぁー、強くなりたい。」



二人の、伝説といわれる二人の

大きな背中を見ながらぼやきを入れる毎日である。



提督「まぁ、無事でよかったよ。」



そういってくれるのはここの提督で初老に見えるのは苦労が耐えないからか。



提督「うちに新人が配属されるなんて何年ぶりだったか。」



いやまて、本当にここだったのかと突っ込みを入れたいが。



提督「しかも最新鋭空母だなんてねぇ。」シミジミ

瑞鶴「頑張ります。」

提督「一航戦の二人とは仲良くやれてる?破天荒な二人だから苦労していない?」

瑞鶴「あの、今更ですけどここって特殊というか結構激戦地?なんですか?」

提督「あの二人が強いからね。

   色々な戦役を重ねていたら精鋭ばっかりになっちゃってね。」



一航戦の二人が戦果を重ねるほどにやらされる事が増え

結果それに付いていける者だけが残ったという事である。

実際駆逐艦娘も精鋭ばかりで毎日足をひっぱる日々で肩身が狭い。

680 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/24(木) 01:50:01.09 ID:jo7lW8fX0

提督「だから新人なんて来る筈がないと思ってたんだよ。」



いきなり右も左も分からないひよっこを最前線に叩き込めばどうなるか?

当たり前の話だが訃報の電報が着任の翌日に遺族に送られる事になるのは想像に難くない。

では、なぜ瑞鶴がそんな所へというのは。



瑞鶴(辞令書がどうも配属先の鎮守府の管理番号を間違えていた臭いのよね…。)



そう、この激戦区の鎮守府は横須賀鎮守府第108番。

そして瑞鶴が本当は着任するかもだった新人向け鎮守府は111番。

お気付きだろうか?辞令書は漢数字で書かれるのが慣わしであるため。

111、この文字列が百と11に別れ、

手書きでその草案を書いた担当者の字が汚かった不幸もかさなり。



「えーっと?百……八?」



養成学校から卒業した後に大量に作成される着任の辞令書の前に

そのうっかりはそのまま何事も無かったようにスルーされ。



瑞鶴「気が付いたら激戦地。」



しかし、新人が来た事に鎮守府あげて歓迎してくれた事もあり。



瑞鶴「笑顔が絶えない明るい職場だけれど瑞鶴は元気です。」



実家への手紙にはそう書くしかなかった。

そして、一航戦の二人の指導は、はちゃめちゃだった。


681 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/24(木) 01:51:15.07 ID:jo7lW8fX0

加賀「矢なんてとりあえず飛べばいいのよ。」

瑞鶴「えぇ!?」

加賀「当たり前田のクラッカーでしてよ?」



養成学校では的へ命中させる事とか

射るときの姿勢とか煩かったのになぁ。



加賀「無駄ね。」

瑞鶴「えぇ!?」

加賀「じゃぁ聞くけど、あなたの敵は的なの?」

瑞鶴「いえ、深海棲艦です。」

加賀「そう。深海棲艦の相手は矢に降ろした艦載機の妖精さん達が殺るわね。」

瑞鶴「うっす。」

加賀「だから本当に重要なのは矢を放った後の艦載機の動きへの指示ね。」

瑞鶴「まじですかー。」

加賀「学校では指示の出し方とか色々教えたと思うのだけれどね。」

加賀「妖精さんがある程度勝手に敵を倒すからあんまり深く教えなかったでしょ?」

瑞鶴「えーっと。そうですね。」

赤城「学校では深く教えてくれない!何故か!」

加賀「無知だからよ。」

瑞鶴「えー…。」

加賀「例えば駆逐艦が輪形陣で守る空母がいたとします。」

瑞鶴「はい。」

加賀「これを妖精さんにまかせちゃうとどうなるか分かります?」

瑞鶴「空母から攻撃ですか?」

赤城「ファイナルアンサー?」

加賀「ライフライン残っていますよ?」

瑞鶴「ファイナルアンサーです。」

赤城 加賀「「…………。」」

赤城 加賀「「正解。」」


682 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/01/24(木) 01:52:44.36 ID:jo7lW8fX0

瑞鶴「でも、攻撃方法として敵の頭を叩くのは重要なのじゃないでしょうか?」

加賀「最後はそうあるべきよ。

   でもやるべきは先に周りの駆逐艦を潰すのが先。」

赤城「天下に名高い堅城として知られた大阪城も

   堀を埋められたらあっという間に落ちたですよね。」

赤城「それと同じで『 将を射んと欲するならばまずは馬を射よ 』という事なんです。」

加賀「駆逐艦は的が小さいから精密操作をして指定してあげないといけないの。」

赤城「特に魚雷を落すタイミングなんかは近すぎても遠すぎても駄目なんですよ。」

瑞鶴「成程。」

加賀「そういうわけで今日の訓練は!」

赤城「流星隊チキチキ艦攻勝負!」ヒャッホウ!

瑞鶴「あの。」

加賀「なにかしら?」キリッ

瑞鶴「敵に囲まれつつあるこの状況で訓練ですか?」



偵察機に電探の情報では既に周囲を敵機動部隊が

2艦隊程迫って来ているようなのだが?



加賀「習うより慣れろ!でしてよ!」オホホホ!

赤城「実戦こそ最高の訓練と偉い人はいいましてよ!」オホホ!

瑞鶴「お嬢様口調で騙されませんから!」

加賀「生き残れれば名誉一航戦の称号を与えます!」ヒャッホゥ!

赤城「ワォ!こいつはすごいや!ジョンに連絡しなくっちゃ!」ヒャッハァ!

瑞鶴「命の危機感ゼロだ ―――― !後、ジョンって誰だぁ!」ウワーン!



そして月日は流れ現在。



瑞鶴(よくもまぁ、あの人外の後ろを付いていけてたものね。)

瑞鶴(とはいえ無茶はさせても無理はさせない人達だったからなぁ。)

瑞鶴(だからこその強さだったんだろうな。)

瑞鶴(まだまだ背中が遠い。)

瑞鶴「つくづくとんでもない人達と肩を並べて戦っていたものね。」



在りし日の記憶。今は昔の記憶である。

683 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/24(木) 01:58:31.30 ID:jo7lW8fX0
あくまで個人的な話しですが弓道うんぬんって敵が迫ってる状態で姿勢うんぬんなんじゃいなーと
とりあえず矢がとべばいいんだ、こまけぇこたぁいいんだよな感じの姿勢の一航戦がいてもいいじゃないと
とにかく数をあげる、弾幕うすいよ!じゃないですけど艦載機をさっさと飛ばせやぁ!って感じでしょうか?
こんな師匠たちと一緒に戦っていればそりゃ強くなりますって奴です
冒頭のどっこら祥鳳はツイ?だったかでみかけたよっこら翔鶴の派生、元ネタのよっこい正一の派生と思います
今後もこちらには小ネタなどをあげて行きますので宜しければお読みいただけると幸いです
メンバーの話しとかで気になる部分とかありましたら可能な限りはお答えしたいなぁとも思っています
お読み頂きありがとうございました
684 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/24(木) 03:22:03.92 ID:dxLx/UMt0
戦国時代、一歩半の間合いまで接近してきた敵を弓で射殺できる名人が結構いたときく
685 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/01/24(木) 15:10:18.19 ID:VQ6uKs2rO
乙です
このすてきな一航戦が既に故人なのが残念です
686 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/25(金) 02:57:42.14 ID:geK92fWH0
乙乙
強いから生き残ることもあれば強いから生き残れないこともあるって、いいよね…
687 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/01/28(月) 15:57:52.79 ID:8NUmY+3h0
瑞鶴の敵空母に関する反応から一航戦絡みだろうとは思っていたけど
ここまでの一航戦だとは思いませんでした(月並みな感想)
688 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/20(水) 00:52:58.54 ID:MNrFkHzD0

ある日の食堂

時雨「そういえば瑞鶴と初月ってコンビを組んでる事が多いけど

此処に来る前からの付き合いなのかい?」

瑞鶴「いきなりなにかと思えば…。」

初月「そうだな。僕が瑞鶴とコンビを組んでいるのは瑞鶴の師匠によるものが大きいな。」

雪風「あー、あの、知らずの一航戦のお二人が関わっていたんですか。」アキレ

瑞鶴「あれはそうね…、私が着任一周年を迎えた日の事だったかしら……。」

689 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sagesaga]:2019/02/20(水) 00:55:34.05 ID:MNrFkHzD0
それは丁度着任一年目の事だった


回想

加賀「赤城さん、懐かしいですね。」ナツカシイ

赤城「えぇ、ボストンバッグを肩にした瑞鶴さんが

青褪めた顔をしていたのを思い出します。」シミジミ


ゴトゴト バタバタ

瑞鶴が着任した日は丁度大規模作戦の真っ最中で。



瑞鶴「野戦病院さながらでしたねー。」

瑞鶴「周囲に転がる死者累々。」

赤城「バケツぶっ掛けるのが追いつかずで入渠待ちがいっぱいいました。」

加賀「ドックとセットで使用しないといけないというのはもどかしいものです。」

瑞鶴「最前線の空気というのを感じました。」

加賀「それからでしたねぇ。とりあえず手が足りないから空母なら直ぐに来てと。」

赤城「ボストンバッグを奪い、艤装をつけさせて出撃させたのでしたねぇ。」

瑞鶴「いきなり矢筒渡されて、大丈夫だから背中はちゃんと守るからと言われたのを思い出しました。」

瑞鶴「沈んでも直ぐ引き上げるからとか言われたの忘れていませんよ!?」

加賀「いやぁ、懐かしい。」

赤城「懐かしいです。」

加賀「ほんとに1年ちゃんと生き抜いてくれて…。」ベソベソ

赤城「立派になりました。」ベソベソ

加賀「よく戦力に……。」



ムームー!ゴトゴト!



瑞鶴「あの、やっぱり1年持たないんですか?」

加賀「うちの損耗率は極端に低いですが、理由はあります。」

赤城「それは全員が余所の鎮守府であればその艦種のエース。

切り札足りえる程に精鋭だからなんですね。」

瑞鶴「異常に練度は高いですよね。」

加賀「ここが出来た当初は酷かったんですよ?そりゃもう。」

赤城「2人に2人が死ぬ状況でしたねぇ。」

瑞鶴「あれ?それだと致死率100%…。」

加賀「あれ?」

赤城「あら?」

瑞鶴「あれ?」

加賀「………。」

加賀「そんな訳で生き残れば誰でも精鋭になれる状況だったわけです。」
690 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sagesaga]:2019/02/20(水) 00:59:26.64 ID:MNrFkHzD0

瑞鶴「さらっと流したぁ!?」

赤城「私達二人は空母として苦労しましたから

後輩が出来る事があれば苦労させたくないねと

以前から話しをしていたんです。」

瑞鶴「うっそだ ―――― 。」

加賀「いえいえほんとのほんとですよ?」

赤城「最短で戦力になるように所謂パワーレベリングをやってきたわけです。」

加賀「私達ベテランが新人の貴方をお守りしながら危険地帯にハイキング。」

赤城「あれですよMMORPGとかでギルドのベテランが初心者のレベリングに装備作り。」

加賀「さらにはハイランクモンスターの狩り方の立ち回りとかを全て教えてあげるあれです。」

瑞鶴「確かに最初から命の危機に瀕した状況スタートだと

物事を覚えるのは早かったです。」

加賀「でしょ!」ドヤッ!

赤城「ですよね!」ドヤドヤッ!

瑞鶴(うわっ、なんか腹立つわ)



モガモガ!ジタバタジタバタ!



瑞鶴「その、それで先程から気になっているんですけど……。」

瑞鶴「その動いているのはなんですか?」ユビサシ

加賀「よくぞ聞いてくださいました!」

赤城「瑞鶴さんの着任1周年記念に私達からのプレゼントです!」


691 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sagesaga]:2019/02/20(水) 01:00:18.99 ID:MNrFkHzD0




時雨「あっ、なんとなくオチが読めたよ…。」

瑞鶴「まぁ、予想通りよ。

その袋のなかに猿轡嚙まされた初月が突っ込まれたのよ。」

雪風「流石(常識)知らずの一航戦……。」




692 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sagesaga]:2019/02/20(水) 01:01:35.64 ID:MNrFkHzD0

瑞鶴「なにしてるんですか!

なにしてるんですか、真面目に、ほんっと!」

瑞鶴「貴方達馬鹿ですか!?

うちに新人というか最新鋭駆逐艦の新人とか着任するわけないじゃないですか!!」

瑞鶴「どっから拉致してきたんですか!!」

加賀「拉致だなんて人聞きが悪い。」

赤城「きちんと配属希望申請出ていますよ。」

つ 配属希望書類

瑞鶴「あれ、本当だ……。」


693 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sagesaga]:2019/02/20(水) 01:04:24.94 ID:MNrFkHzD0


時雨「その、それは捏造とかでは無かったんだね。」

瑞鶴「まぁ、捏造に近いかしらね……。」

初月「あぁ、養成学校卒業前の僕に

   しこたま酒を飲ませて酩酊状態にした挙句。」

初月「外泊証明書と嘘を言ってサインさせたのが捏造で無ければね。」

瑞鶴「手続き上はサインを本人が書いた物である以上は希望が通るのよ。」

雪風「あぁ、そうなんでしたか…。」

初月「そして僕がそれに気が付いて再度の訂正をしようとする前に。」

雪風「拉致されたという事なんですね。」

初月「朝起きたらどうやって生徒寮に侵入したのか

   如何にもエージェント然とした二人が立っていて、

   バチッとされて気が付いたら袋の中だったんだ。」

瑞鶴「で、私が謝罪したおして着任してもらった感じかなぁ。」

初月「その後も色々と演習や前線に引き摺られて行ったのは

   今となってはいい思い出かな。」

694 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sagesaga]:2019/02/20(水) 01:05:56.68 ID:MNrFkHzD0

対空訓練中


加賀「初月さん!

   あなたと言う方は一体いつになったら

   撃ち落すべき艦爆の区別がつくようになるんですかねぇ!?」



ギューン!



赤城「回避すべきなのと撃墜する必要のある物の区別がつけられないなんて

   駄目ですねぇ!?」

初月「明日までにはなんとか!なんとかする!」タタタタ!テテテテテ!

加賀「明日の何時になれば一体習得できるんですか!?」

初月「明日の、明日の6時までには!」ドドドドド!

加賀「6時!?一体いつの6時ですかねぇ!?」

初月「夕方だ!」ダダダダダダ!

加賀「赤城さん!!」

赤城「えぇ!」サッ ←携帯を取り出す



ピポパポ



赤城「あっ、いつもお世話になっています。

   横須賀第108鎮守府の赤城です。」

赤城「はい。はい…。えぇ、はい。」

赤城「加賀さん!何人で予約しておきますか!」

加賀「とりあえず明日の非番は20人くらい居たので25人くらいで!」

加賀「足りない時はお隣の大笑いの二人を連れてきます。」キリッ

赤城「加賀さん!いつもの焼肉店の予約とれました!」

加賀「初月さん!明日は終われば焼肉食べ放題に飲み放題です!」

加賀「頑張りましょう!」

初月「あぁ!頑張る!」トトトトト!


695 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sagesaga]:2019/02/20(水) 01:06:28.10 ID:MNrFkHzD0


時雨「ツンデレかな?」

初月「とはいえ出撃とかは無茶苦茶だったよ。」

初月「初陣は対空母棲姫だったかな。」

瑞鶴「あぁ、あの裸踊り事件だったわね……。」

雪風「なにをさせたんですか……。」

瑞鶴「艦隊は守ったんだけど迎撃段階で中破した初月に師匠達が切れてねぇ……。」



696 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sagesaga]:2019/02/20(水) 01:09:04.35 ID:MNrFkHzD0

加賀「あっといっちまい!」イヨッ

赤城「あっといっちまい!」ゲラゲラゲラ

陸奥「あの、とどめ刺してもいいかしら?」ヤレヤレ

加賀「あっ、いいですよ。」

赤城「装甲を少しずつ剥いていくのも飽きましたんで。」

陸奥「身につけてるのが下一枚って器用な攻撃するわね。」

加賀「うちの新人を可愛がってくれたお礼です。」ニタリ

赤城「覚えとけ糞虫が、うちの新人を中破させたらどうなるか。」Fuck!

加賀「あの世でしっかり敗北を噛締めるといいわ。」b→q ビシッ!

赤城「日が昇る東の水平線から、日が沈む西の水平線まで。」

加賀「私達一航戦は敵を討ち地獄へ送る。」

赤城「私達の支配する領域に貴方達の居場所はありません。」

加賀 赤城「「あの世へ特等席で待っていなさい。」」

ボガーン!

697 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sagesaga]:2019/02/20(水) 01:11:30.95 ID:MNrFkHzD0

瑞鶴「師匠の二人が本気で切れてたからなぁ…。」

初月「今だから言えるがあの時加賀達の恐ろしさに

   少しだけ漏らしてしまったんだ。」

雪風「仕方ないかと。初陣で生死の境に触れれば無理もないですよ。」

雪風「さらに言えば、瘴気纏った一航戦が近くにいれば、まぁ…。」

時雨「そうだね。

   それを笑う者が居るとしたらこっちとあっちの

   境界が分からない鈍感くらいだろうさ。」

雪風「にしても聞きしに勝る規格外だったんですね。」

瑞鶴「いまだに語り継がれる変態だからね……。」

瑞鶴「さてと、まぁ、そういう訳でコンビをずっと組んでるわけよ。」

初月「あぁ、どちらかが死なない限りは解消される事もないだろう。」


698 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sagesaga]:2019/02/20(水) 01:12:49.18 ID:MNrFkHzD0

食堂で時雨達の近くにいた長門



長門(死が二人を別つまでか……、夫婦かな?)

長門(まぁ、大方瑞鶴は守るものがあったほうが

   強さを発揮できるタイプだからな。)

長門(そういう所を見抜いた上でのコンビを組ませたんだろうな。)

長門(守るものが無い時に強さを発揮できるもの。)

長門(或る方がより発揮できるもの。)

長門(その辺りは人それぞれだ。……、瑞鶴が少し羨ましくはあるな。)

瑞鶴「あっ!長門!」

長門「うん?なんだ?」

瑞鶴「戦艦の随伴お願いしたいんだけど!」

長門「私は高いぞ?」

瑞鶴「敵の泊地強襲のピンポンダッシュやるから報酬はいい作戦よ。」

長門「報酬と危険度は比例するぞ?」

瑞鶴「今更でしょ?成功10万の頭割りよ。」

長門「チームは私を入れて何人だ?」

瑞鶴「今居る5人にかわうち入れて6人。割ったときの細かいのはかわうち行き。」

長門「いいだろう。一口乗ろうか。」

瑞鶴「じゃ、食事終わったら出撃ドックで。」

長門「あぁ。」

モグモグモグ

長門「さてと、明日の飯代の為に仕事に行きますか……。」

長門「料理長。食器は返しておくぞ。」

「了解。」

「長門!」

長門「む?」

「いってらっしゃいぴょん!」b ビシッ

長門「あぁ、いってきます。」ニヤリ


699 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/02/20(水) 01:15:14.88 ID:MNrFkHzD0
メインのPCお亡くなり、サブのPCも挙動が怪しい、お金ない…
プロットが全部飛んだのが痛い……
香港編も死んだし、変態仮面も死んだし、はぁ……
久しぶりに少しです、お読み頂きありがとうございました
700 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/20(水) 06:57:15.88 ID:NXN5ibhG0
更新感謝
一航戦と言うか生え抜きのエースはみんなおかしい!!
701 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/20(水) 14:01:58.53 ID:NoK+7gIB0
そういう大事なもんはクラウドにも保管しとくんだ!
onedriveやDropboxといった無料分で充分使えるもんがある
702 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/02/21(木) 03:42:42.24 ID:x6Mn1+l00
乙乙
思ってた以上に変態だ一航戦。
バックアップ大事慢心ダメ絶対
703 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/01(月) 00:29:23.20 ID:+N3qmstH0
少しばかりはお話前、後編
香港編を記憶に頼りに再度書いてますが艦娘同士の戦闘分が少ない!と感じたのでこっちで補給
なにやってんだ!さっさと更新しろ馬鹿!という声が聞こえてきそう…
お時間宜しければ読んでやってください
704 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/01(月) 00:31:00.71 ID:+N3qmstH0

それはほんの軽い冗談のような切欠だった。

それは、ある日の食堂での仲間同士での軽い会話だった。



スパ「駆逐艦の方々は妙にオーラというか雰囲気のある方が多いですけど、

   実際誰が一番強いんですか?」

提督「うん?それは俺への質問か?」



食堂でウォースパイト達の席近くでうどんを啜っていた提督が

自分への質問かと確認の声をあげる。



スパ「もちろんですよ。」



提督の答えに近くに座っていた一同が聞き耳を立てる。



提督「そうだな。普段任務に出る奴らでなら時雨か雪風だな。」



妥当。



周囲に居るもの達はみな納得という風に頷く。



スパ「任務にでる娘っていう事はその他も加えると

   更に上がいるという事ですか?」



後日、川内は語った。

こんな時だけなぜに聡いのかと。



提督「あぁ。まぁ、そうだな。全員という事でなら不知火を推す。」

提督「総合的に判断してだがな。」ズルズル

スパ「えー、前回の作戦で早々に戦闘不能になっていませんでしたっけ?」



馬鹿者というのは時として地雷原を全裸で全力疾走することが有る。

705 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/01(月) 00:33:24.92 ID:+N3qmstH0

長門(さっ、寒い!なんだこの空気の冷え込みは!?)

瑞鶴(体感気温が急に下がった!)

提督「あれは俺の不始末だ。不知火に責はねぇ。」

スパ「前回の作戦で駆逐艦で一番戦果を上げたのは時雨さんですよ。」

スパ「最強は時雨さんなのでは?」

提督「お前は不知火に散々可愛がられた記憶が抜けているのか?」

スパ「あっ、いえ、そういう訳では無いですけど……。」ガタガタ

提督「なら議論しなくても分かるだろう?」

スパ「………。でも、普段事務職されていますし……。」

提督「それは俺がそれを望んでいるからだ。」



提督がウォースパイトの議論を切ろうと手を翳すが……。

提督は何かに気付く。



提督「………、時雨。

   3日後、予定を空けられるか?」ハァ……

時雨「僕に用かな?」

提督「あー、まぁ、そのなんだ。

   あっちの入り口で静かに闘志を燃やしている奴がいてな。」

提督「もし良ければ演習の相手をしてやって欲しい。」

時雨「僕で相手が務まるかな?」

提督「あぁ、大丈夫だ。気軽に付き合ってやってくれ。」

提督「不知火。3日後だ。

   ルールはありあり、戦闘システムダウン、

   もしくは降参宣言させた方の勝ち。いいな。」



言い切った後にうどんのスープを飲み干し。



提督「時雨、迷惑掛けるな。」

提督はそういい残し出て行った。

雪風「時雨さん、御武運を。」

時雨「一度、全力ではやってみたかったんだ。

   胸を借りるつもりでいくよ。」

706 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/01(月) 00:35:37.04 ID:+N3qmstH0
そして迎えた3日後



明石「えー、おせんにキャラメルいかがですかー?」

秋津洲「キンキンに冷えたビールあるかもー!」

摩耶「あるの?ないの?」

秋津洲「あるかも!じゃなかったあるよ!」

摩耶「一つ貰おうか。」

秋津洲「毎度ありかもー!」

提督「ちょいとしたお祭り騒ぎになってるな……。」

明石「まぁ、時雨さんに不知火さんの演習対決ともなればですねぇ。」

提督「一応聞いておくが賭博なんかやってないよな?」

提督「まぁ、成立するとは思わんがな。」

明石「ところがどっこい。」



提督が明石の言葉に頭を抱える。



明石「ウォースパイトさんが逆貼りで。」

提督「………。」

明石「ちゃんと証文も作ってますよ!」

提督「あー、なになに?

   負けた者が勝った者に酒を一杯奢る。か…。」

提督「時雨が勝てばウォースパイトの総獲りでその酒代がお前の丸儲け。」

明石「負けてもウォースパイトさんが皆に奢るので私のお店は潤います。」

提督「お前、二枚舌外交の本家のお国をよくもまぁ……。」

明石「日本語は難しいですからねぇ。」ニヤニヤ

提督「まぁ、身から出たなんとかだな。」

明石「ですとも。」ニヤニヤ



そして、提督が埠頭に用意した椅子に腰掛け。

明石がその近くの大型陸上設置型電波探信儀の電源を入れた。

707 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/01(月) 00:37:33.35 ID:+N3qmstH0

提督「アメリカ製か?平面座標表示が出来るようだが?」

明石「戦後の技術を突っ込んで改良できるといっても

   ベースが二次戦ですからね。」

明石「元のスペックが良いものを観戦用に用意しました。」

提督「どうせ実験的データー獲りも兼ねているんだろ?」

明石「御明察。後は秋津洲さんの大艇で現場の映像をライブで流しますよ。」

明石「提督はどうみます?」

提督「途中までは五分だな。」

提督「だが、最後は不知火が勝つ。

   どう勝つかは分からんが結末は読める。」

提督「それだけだ。」

明石「さようで。」

提督「見届け人で長門と瑞鶴にでばってもらっちゃいるが……。」

雪風「止め時は見誤らないようお願いします!」

提督「あぁ、分かっているさ。」

明石「一応お二人の艤装にダメージ計測装置積んで演習用モードにしちゃいますがね?」

提督「あの二人なら演習用モードでも敵をぶっ殺せるからな。」

提督「長門達にもまずいと思ったら俺の判断待たずに止めに入れともいっちゃいる。」

雪風「しれぇ!万一の時は雪風も行きます!」

提督「そこまで理性のなくなるような事にならない様祈るよ……。」


なんで許可しちゃったかなぁと言いたげに提督が雪風に答える。

708 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/01(月) 00:38:54.22 ID:+N3qmstH0

そして、埠頭から離れた本日の演習用にわざわざ設定された海域では。



長門「という訳だ。万一の際は我々の判断で止めに入るからな。」

時雨「うん。宜しくお願いするよ。」

瑞鶴「といってもま、気の済むまでやるといいわ。」

不知火「お気遣い感謝します。」

不知火「時雨さん。」

時雨「なんだい?」

不知火「胸をお借りします。」ヌイッ!



艶やかに、そして神々しいまでに白い

陽炎型専用手袋を再度きっちりと嵌めなおし。

時雨へと礼儀とばかりに頭を下げる不知火。



時雨「それは僕の台詞だ。」

時雨「今の僕が君に何処まで通用するかは分からないけど……。」

時雨「全力で行かせて貰うよ。」

不知火「望むところです。」ギチギチッ



手袋の嵌り具合を確かめるようにグーパーを行う不知火。



長門(やれやれ。頼むから我を忘れるような事にはなってほしくないもんだ。)

長門「それでは。両者いいかな?」

時雨 不知火「「勿論」」

瑞鶴「では、只今より演習開始!」


709 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/01(月) 00:40:31.73 ID:+N3qmstH0

モモモモモモモモ

演習の火蓋が切って落とされると同時に

時雨の機関から大量の黒煙が上がり始める。



長門「初手煙幕か。」

瑞鶴「悪くわないわね。」



埠頭



提督「成程。やはり初手煙幕か。」



双眼鏡を最大倍率で覗きながら提督が言う。



川内「これは不知火との実戦経験の差をつめるためのものかな?」

雪風「ですね。目視下での攻撃であれば

   不知火さんの方に間違いなく軍配が上がります。」

スパ「それほど差があるんですか?」

雪風「実戦に出る機会が少ないですが不知火さんの強さは本物です。」

雪風「砲撃の精度はその類まれなる感性に寄るものです。」

川内「でも、どんなに狙撃能力に優れようと敵を目視、照準を決めて、撃つ。」

川内「この動作は避けられない。」

川内「不知火はそこに居るという気配だけで撃ってくるような化け物だけどね。」

川内「だけど、その気配だけで撃つ事を続けるのは

   通常の砲撃から比べると精神的な負担は大きい。

   いつまでもやることは出来ない。」

雪風「その通りです。ですので煙幕でその視界を奪うというのは理にかなっています。」

雪風「本来の煙幕の使用方法とは違いますが……。」


710 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/01(月) 00:42:07.48 ID:+N3qmstH0

演習海域



瑞鶴「なかなか考えたものね。」

長門「あぁ、だが……。」

瑞鶴「やっぱり?」

長門「昨日、提督と話しをしたのだがまぁ、予想していたぞ。」

瑞鶴「あのハゲ親爺はほんと食えないわねぇ。」

長門「起こりうる事象を複数考えて

   それに一つずつ対処方法を考えるのが参謀職といってたからな。」

長門「といっても負けをやる前から悟っているなら

   やらせないのが仕事とも言っていたぞ?」

瑞鶴「どの口が言うかと言いたいわね……。」

瑞鶴「まっ、公正を期すために不知火に対処法を教えたりはしていないんでしょうけど。」

長門「秘書が長いからなその思考は似通っている。

   不知火もまぁ、読んでいるだろうよ。」

瑞鶴「まったく食えない上だわね。」

長門「まったくだ。」

711 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/01(月) 00:43:20.27 ID:+N3qmstH0

煙幕内



時雨「煙幕内であれば電探性能にまさる僕の方が有利だよ。」



時雨の艤装につまれている電探は最新鋭のアメリカ製。

オシロスコープで敵の映像を捉え電探の方向を手動で変えている

旧式の日本製と異なり最新鋭で全てが自動で行われ。

その受像機である平面座標表示には敵への距離、方角が明確に表示される。



時雨「艤装の性能差が実力差を埋めてくれる。」

時雨「そして、それをカバーする為に不知火が集中するならば。」

不知火「私の消耗が早いという計算ですか……。」



ドゴン!

煙幕内での砲撃が開始された。



不知火「流石に艤装の性能差は致し方ありませんね。」

不知火「ですが、音の方向でより正確に方角が分かりました。」



そして始まる砲撃戦。


712 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/01(月) 00:44:43.12 ID:+N3qmstH0

埠頭



摩耶「煙幕内での戦い方となると魚雷の使い所が難しいだろうね。」

提督「あぁ。闇夜での戦闘と変わりないからな。」

提督「闇夜ってのは思っている以上に感覚を狂わせる。」

提督「艦娘の皆は夜戦を幾度もなく行っているからわかると思うが

   戦闘に集中してしまうと自艦の位置を見失いやすい。」

雪風「夜間の戦闘は魚雷が見えにくくなりますから味方にうっかり魚雷が怖いです。」

スパ「でも、一対一での演習ですよね?」

提督「あぁ、だからお互いに魚雷は撃ち放題。」

提督「だがな、魚雷を撃つって事はお互いの必殺アイテムを減らす事になる。」

提督「駆逐艦の砲撃ってのは大したダメージを与えねぇ、あくまで本命は魚雷だ。」

雪風「ですのでそれをそうそうに撃ち尽くすのは勝率を自分から落す事になります。」

川内「どこで撃つかを考えながら煙幕内を接近していっている感じかな?」

提督「不知火からしたらそれしかないからな。」

提督「不知火の艤装の電探性能では相手の懐に入らないとどうしようもならん。」

提督「あいつは俺の部下扱いになるから艤装の改造の自由が少ないのが裏目にでちまってる。」

スパ「あぁ、それでノーマルに近いんですね。」

提督「機関の交換とかはしているがな、あいつには悪い事をしてると思っているさ……。」

713 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/01(月) 00:51:47.96 ID:+N3qmstH0

演習海域


時雨「流石に距離を開けさせてくれないか。」



砲撃を繰り返しながら一定の距離を保ちつつお互いに煙幕中を移動していた。



不知火「時雨さんの方が正確な砲撃をしてきますね……。」

不知火「やはり砲撃タイプの違いも影響しますね。」



ドン!

冷静に分析する不知火の頬を時雨の砲撃が掠めていく。



不知火「着弾の位置を調節しつつ当てて来ますね。」

不知火「二丁拳銃の強みをしっかりと生かされています。」



時雨の砲は単装砲のように一つずつ手にもつ二丁拳銃スタイル。

対して不知火の砲はアサルトライフルの様に構えスタイル。

駆逐艦の砲は艤装に固定されない。

その為、一度に砲撃できる範囲については時雨の砲に優位である。

これはやろうと思えば前方と後方を一度に撃つ事が可能な

二丁拳銃スタイルの強みでもある。

砲撃の際にカバーできる高さの範囲についても

二点同時砲撃可能な時雨有利になるのである。

上、中、下の高さで砲撃をしようと思った際に時雨は

上、下あるいは上、中さらには中、下等といった組み合わせで砲撃が可能となる。

対して不知火の場合は上で撃った後に高さを変えて持ち替える必要がある。

それは当然ながら反応の遅れとなり敵への砲撃の遅れとなる。

結果、仰角、俯角、手に持っての調整で

より多くの範囲を時雨の場合はカバーできることになるのだ。
714 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/01(月) 00:52:37.31 ID:+N3qmstH0


不知火「煙幕で此方の視界を奪い、電探で位置を測り。」



ゴン!

不知火の艤装に演習弾が掠め着弾を示すペイントが広がる。



不知火「音で微調整ですか?」



スイッ。

細かく移動し位置を掴みにくく行動する時雨。

それに対して不知火は電探の性能上、時雨を探知する為にあまり激しく動く事が出来ない。

いや、敢えて動こうとせずに単調な動きを続けている。



時雨「反攻戦に誘っているということか。」

時雨「いいね。流石、その誘い、乗ろうか。」



ここまで煙幕を張ってまで慎重に運んできたかのように振舞ってきた時雨にしては大胆な。

いや、ともすれば愚かとも言える挑発にのる。

715 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/01(月) 00:53:53.59 ID:+N3qmstH0

埠頭



川内「あら?時雨が不知火の思惑にのるのかな?」



電探の受像機に表示されている光点を見ながら川内が呟く。



摩耶「らしくねぇな。」

雪風「当然の様に策があっての物だと思いますが……。」



雪風が時雨に何を売った?と明石を見れば。



明石「おおっとそれはこれからのお楽しみですよ?」ニヒヒ

提督「まぁ、何が起こるか。楽しもうじゃないか。」

秋津洲「提督余裕の表情かも!」

提督「時雨にゃぁ悪いが俺の中での絶対的評価は変わらねぇ。」

提督「どうせ最後に勝つのは不知火だ。」

提督「過程なんざ糞喰らえだよ。」

明石「上に立つものの言葉じゃないですねぇ。」ニヤニヤ

提督「俺があいつを信用しなくて誰が信用してやんだよ。」

提督「あいつが勝つと言ったなら俺は黙って結果を待っていればいいんだ。」

提督「今の俺に出来る事は黙って待っていることだけさ。」



提督はそういうと煙幕で見えないはずの向こうに再び双眼鏡を向けるのだった。

716 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/01(月) 01:00:04.24 ID:+N3qmstH0
次回決着!
日本とアメリカのというか二次戦時の電探で最も技術が進んでいたのはイギリスです
日本もですね、大戦末期には追いついてきてはいたようです、ようです…
作中にも触れていますが受像機がそもそもしょっぼい、アメリカ側は全自動で敵を追尾して距離も方角も自動表示してくれるのに
日本側はオシロスコープみたいなものにぼやーん…、そして計算尺で計算!そら負けますわ
冶金術が連合国と比べて劣っていた所為も有り純度の高い銅が作れなかった為真空管の性能についてもかなり低かったそうです
というかですね?電探(探知機、探信儀)の基礎理論ね?マイクロウェーブ含めて日本の先生が提唱ですよ?
ホント、新しい物を積極的に取り入れていなかった所為でという奴ですね
といっても取り入れていたところで物量に勝る米帝に勝てていたかというとまた別のお話にすぎません
どうせ負けています、早いか、遅いかだけです、はい、春イベ、モチーフどこでしょうねー、資源備蓄してまってます!
717 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/01(月) 06:08:57.23 ID:YcDuEXdb0
乙です
馬乗りになったりなられたりの殴り合いになる前に誰かが止めてくれれば良いのですが
金マンと銀マンの争いの末路だけは勘弁してください
718 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/01(月) 13:25:09.77 ID:T7lRSDE60
電探の死角をかいくぐって肉薄攻撃を仕掛けてきた時雨を組み伏せ、手にしていた計算尺で尻をペンペンするぬいぬいか
胸が熱いな
719 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/01(月) 17:13:11.50 ID:LqH2JZLE0

下手な電探より優秀そうだなぬいぬいのカン
720 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/19(金) 02:26:10.57 ID:aBfZ3KXR0
デデン!
3部へ向けてプロット作っているデース!
金剛改二丙デース!デース!
とりあえず、続きになります、お時間宜しければお読み下さい
721 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/19(金) 02:27:21.62 ID:aBfZ3KXR0


スパ「にしても、なんでわざわざ煙幕内で?」

提督「それはあれだな。

   魚雷を装備として使わない者だから出てくる意見だな。」

雪風「確かに煙幕内で戦うのは最善手とは言えません。

   ですが、駆逐艦の主兵装は魚雷です。」

雪風「煙幕を嫌って外に出れば電探の性能上

   一方的に魚雷を撃たれてしまう可能性が高くなってしまいます。」

提督「そうだ。少なくともお互いに魚雷を打ち合ったときに

   安全距離をとれない状態を維持していれば鍔迫り合いの状況に持っていける。」

提督「レーダーレンジ(電探の感知できる範囲)が不知火の方が狭いからな。」

提督「その外から移動しながら撃たれると不知火も被弾の危険性が高くなる。」

提督「さらに言えば魚雷は電探に写らないからな。雷跡を見て避けるしかない。」

雪風「ですが、時間を掛ければ不知火さん有利な状況ではあります。」

雪風「いずれ煙幕は晴れますから。

   時雨さんにしても何度も張り直せるほどの追加は持っていないでしょう。」

スパ「だから不知火さんが仕掛けたのに時雨さんは敢えて乗ったという事?」

提督「勝算があっての賭けだろうがな。」

722 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/19(金) 02:28:44.77 ID:aBfZ3KXR0
煙幕外


長門「と、この反応は……。」

瑞鶴「時雨がデコイを蒔いたみたいね。」



煙幕内



不知火「……、こちらの電探が低性能である事をとことん突くようですね。」

不知火「敵の弱点を分析した上で利用できるだけしますか。流石ですね。」ヌイ!

時雨(大方、関心されているんだろうなぁ。)



埠頭



ガン「あの〜、今、どんな状況なんでしょうか?」

提督「ん?なんだお前も居たのか。」

ガン(ひどい!)



着任時のぐだぐだの所為で若干空気気味なガングートが

恐る恐るといった感じに提督に声をかける。



川内「そうだねぇ。明石のレーダーの情報を見る限りは

   これは時雨がいつぞやのデコイを蒔いたようだね。」

摩耶「だね。だけど、不知火の電探の性能を考えるにこいつは不利なんじゃね?」

提督「そうだな。明石のこれはアメリカ製だから有る程度の数が分かるが…。」コンコン

明石「日本製電探の不知火さんのだと多分、塊になってるでしょうね。」コワサナイデクダサイヨ?

川内「いいとこ大きな円表示かなぁ。」

ガン「という事は、不知火さんは時雨さんの位置が分かっていない状態という事ですね?」



そう、時雨が使ったのはいつぞやの千島列島作戦で使用されたデコイつき魚雷。

それは電探に実像を写すデコイ付き。

速度に関しても駆逐艦の範囲内に納まるように調整された代物である。

723 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/19(金) 02:30:29.10 ID:aBfZ3KXR0


煙幕外



長門「密集状態だと電波の反射が拾いにくくなるな。」

瑞鶴「そうね。艦戦、艦攻が編隊組んで飛ぶのと同じ理由になるわね。」

長門「あぁ、確かまとまる事によって

   電波反射での数の把握をしにくくする目的があったな。」

瑞鶴「そうよ。攻撃機の全体数の把握を抑える効果があるわ。」

長門「となると、不知火はこの煙幕の中だと時雨本体が探しにくくなるか……。」

瑞鶴「不知火が煙幕の中から出ずに戦う事を

   選択する事を見越した上での準備だったと見るべきでしょうね。」

長門「確かにな。時雨が作り出した時雨に有利な状況に敢えて乗ったわけだからな。」

瑞鶴「不知火の慢心、或いは。」

長門「それを力で捻じ伏せれるだけの策があるのか。」

瑞鶴「はたまたそれすらも利用するつもりだったのか?かしらね。」

長門「なぁ瑞鶴。こんな言葉を知っているか?」

瑞鶴「何?」

長門「飼い犬は飼い主に似るそうだぞ?」



それは個体差はあるものの艦娘の不知火という艦が提督の指示を忠実に、

そう、狂気的に守る事から狂犬とも忠犬とも言われる事を揶揄したものだろうか。



瑞鶴「あれが犬?狼かなにかの間違いじゃないの?」ジョウダン

長門「………、確かにな。」ジョウダンダ

瑞鶴「飼い主というとあの曲者だものねー。」

長門「提督だからな…、不知火が何手先まで読んでいるかだな。」

瑞鶴「詰め将棋みたいね。」

長門「結局は相手との心理戦だ。

   いかに騙し、相手を躍らせるか。だ。」

瑞鶴「時雨は割と純だからねぇ。」

長門「いい意味で汚れてないからな。」

瑞鶴「あら、私達がひねくれているみたいじゃない。」

長門「自覚がないのか?」

瑞鶴「あるわよ。大有り。」クスクス

長門「さて、どうなるかな。」

瑞鶴「楽しんでるわね。」

長門「まぁな。」

724 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/19(金) 02:32:13.83 ID:aBfZ3KXR0

煙幕内



不知火(成程、いい判断です。)

不知火「間違いなく最後尾に陣取っているのでしょうが、

    このデコイに使用している魚雷は弾頭有りや無しや?」

不知火「それを判断するに当って

    行動分析においての最適解の建て方をよく理解されています。」

不知火「不知火にとって敗北につながるのはこの魚雷が弾頭有りであった場合、

    そして、もう一つのパターンが無弾頭であり

    時雨さんがこのデコイに紛れて不知火に接近、

    致命傷を負わせる事を狙う場合です。」

不知火「私がそれを防ぐには当然ですが飽和的に魚雷を撃ち接近を防ぐしかありません。」

不知火「成程、考えたものです。」

不知火「不知火が安全策、つまり最悪を事前に潰す事を好むのを良く考えられていますね。」



不知火が喋りながら魚雷を次々と発射するのは

自身に爆発の衝撃が来ないようにする安全距離ギリギリの為。



時雨「そう、不知火は魚雷で対処しなければならない。」

時雨「自分が不利になる可能性を考えた際に

   それを無視することが最悪の結果を齎すと判断するのであれば。」

時雨「例えそれが無弾頭のデコイであったとしてもだよ。」



正面のデコイへ向けて放たれた魚雷の第一陣だろうか、深度設定を間違えたのか。

デコイ群をすり抜け時雨のはるか下の海中を魚雷が抜けていく。

魚雷が深度設定の問題から敵の艦底をすり抜けて行くことは稀にある事。

だから時雨はこれをあまり気に留めなかった。



不知火「……、やはり無弾頭でしたか。」

時雨「であったとしても、潰さなければならない状況なのは辛いよね。」

不知火「さすがに先手を取られてしまった状況ですので。」ヌイッ


725 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/19(金) 02:33:16.62 ID:aBfZ3KXR0

埠頭



提督「煙幕が薄れだしたな。」

雪風「煙幕内での魚雷の爆発音もかなりありましたから

   それで煙もそれなりに流れたと思います。」

川内「魚雷の残りの残段数で行くと不知火が不利だろうね。」

摩耶「といっても有視界での戦闘になってくると不知火に軍配があがるかな?」

スパ「ここからは砲撃もお互いに精度の高い争いになるという事ですか?」

提督「そうだな。

   だが煙幕内での戦闘においてダメージを蓄積させられているのは不知火の方だな。」



お互いの損傷状況を知らせるモニターをちらりと見る提督。



雪風「不知火さんの魚雷の残弾数は最大で残っていても一斉射分。」

川内「四連装2基に残る8本で終わりだろうね。」

摩耶「いざという時までは撃てない。」

提督「そうだな、使い方を誤ると負けだな。」

スパ(勝ったな。)



中破寸前の不知火に対し、カスダメ程度の時雨。

726 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/19(金) 02:34:03.03 ID:aBfZ3KXR0

演習海域近く



長門「まさしく土俵際といった所か。」

瑞鶴「古典的な言い方をするなら俵を割る寸前かしらね。」

長門「で、どっちが勝つと思う?」

長門の質問に無駄な質問をといわんばかりに鼻を鳴らし。

瑞鶴「勝敗が読めないほど仲間の力量を見誤るもんじゃないでしょ?」

長門「まぁ、そうだがな。」

瑞鶴「時雨は強いわよ。私の背中を任せていいくらいにはね。」

長門「ほう。」

瑞鶴「だけど、敵は深海棲艦ではなく不知火だった。」

長門「あぁ。」

瑞鶴「それだけよ。」

727 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/19(金) 02:35:14.28 ID:aBfZ3KXR0

演習海域



煙幕が薄れてきてお互いの姿をしっかりと捉えてからの砲撃戦が始まる。

時雨が煙幕を張ったのは電探の優位性を生かし

視界不良下でのレーダー射撃を行うのが主目的。

と思わせておいてその実は不知火の継戦能力を奪うべく

魚雷を大量に使用させることが目的だった。

そして、視界がクリアになれば不知火は一撃必殺の為の残り少ない魚雷を生かし。

尚且つそれを叩き込む為の一瞬の隙を狙うべく砲撃を行う。

となれば。



時雨「狙ってくるのは勿論」

不知火「魚雷発射装置。」



時雨と不知火はお互いに距離を保ちつつ再び砲撃戦に興じている。

ただ、砲撃の弾を当てるだけであれば面積の多い胴体を狙うが常套。

しかし、魚雷の誘爆を狙うのであれば正確な射撃が必要となる。



時雨「残りの魚雷をここで使うのかい!?」



自分の進路を遮るかのように放たれる4本の魚雷。

煙幕内であれば雷跡、発射のタイミングは見えない為避ける事は難しいだろう。



時雨「でも、もう煙幕は薄れている状態だ。」



だからこそ回避は容易。



不知火「太腿の魚雷発射装置を狙うために方向転換をしていただく必要性がありましたので。」ヌイ!



時雨の魚雷発射装置は足、対して不知火の魚雷発射装置は背中の機関のサイド。

正面から撃ちあいすれ違う反攻戦を繰り返すのであれば狙いやすさについて。


728 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/19(金) 02:36:10.06 ID:aBfZ3KXR0

時雨「不知火に分がある。」

不知火「ギリギリで耐えてきたかいもあると言うもの。」



さらに言えば魚雷を先に撃てるだけ撃ってしまっている分、

不知火の方が魚雷の誘爆の危険度は少ない。

いや、既に1基分は空の為、

背負い式の艤装の機関を守る防御盾、装甲代わりに使えなくも無い。



不知火「すれ違う際に既に空になっているサイドを盾にさせてもらいます。」



そして、すれ違い相手の背中をとる一瞬を逃さず狙いを付ける不知火。



時雨「目に頼りすぎて電探を忘れちゃ駄目だよ。」

時雨「せっかくの2丁拳銃スタイルなんだ。」

時雨「あちこち撃てなきゃ意味が無いよね!」



ドン!

しかし、電探の反応に従い後ろを振り返らずに砲撃をする時雨。

それにより一瞬のチャンスは潰された。

シャーッ!

そしてここぞとばかりの魚雷のおまけつき。



不知火「なかなかこれは面白いですね。」

729 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/19(金) 02:37:21.49 ID:aBfZ3KXR0
埠頭



スパ「勝てそう!」

雪風「時雨さんが確実にポイント貯めて来ていますね。」

提督「問題ない。」

明石(あれ?なんかやばい?)

摩耶「不知火は後、2〜3発もらうと終わりか?」

川内「不知火らしいといえばらしいかなぁ。」

雪風(劇的な逆転劇を演じて後々の

   トラウマを植えつけるおつもりでしょうか?)

雪風(心底恐ろしい)

提督「そうでもないさ。

   不知火は時雨と演習ができるのを本気で楽しみにしていた。」

提督「トラウマみたいなものを与える心算なら初めから全開でやるさ。」

提督「あいつはスロースターターだからな。」

提督「それに演習用の炸薬量が抑えられた魚雷にペイント弾だ。」

提督「ステゴロをやらかすような事にはならんよ。」



身震いをしていた雪風の頭に

その考えを見透かしたかのように手をポンと置く提督。

まもなく演習海域では雌雄を決する時が訪れようとしてた。

730 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/19(金) 02:39:28.75 ID:aBfZ3KXR0

演習海域

時雨(なかなかしぶとい!)



それは時雨が不知火の方へ向け進行方向を変えた時だった。

ドン!

轟音を立て、足元の海中が急に爆発。



時雨「えっ!?何が!?」



何が起きたかは分からない、

だが、この一瞬を相手が見逃すわけが無い。



時雨「不知火は!?」



バランスを建て直し不知火の方向を顔を向けた。

正にその瞬間だった。

一瞬の出来事に気がとられ電探ではなく

直接目で見て不知火の位置を確認しようとしたのが裏目にでる。



時雨「あぁ!!」



強烈な光、探照灯の灯りを目に当てられ完全に視界が消失する時雨。

駆逐艦用の探照灯でも約10万カンデラ、ワット数で凡そ1600W。

それだけの明りを照射されれば視力は一時的に失われる。

その一瞬を不知火が見逃すわけが無い、

瞬時に判断を下した時雨が次にとった行動は。



時雨「降参。」

時雨「不知火はここまで読んでたの?」



電探の端に魚雷の安全距離に位置取る不知火を捉え敗北宣言をする時雨。



不知火「不知火の仕事は司令の事務仕事の手伝いです。」

時雨「うん。そうだね。」

不知火「日々、皆さんの提出される戦闘映像を分析し報酬の支払い査定を行っています。」

時雨「うん。」

不知火「ですので、皆さんの戦闘行動時の思考パターン、

    行動パターンはある程度トレースが可能です。」

時雨「あー、つまり初めから全て読まれていたという事か。」

時雨「どうやら僕は孫悟空だったようだ。」
731 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/19(金) 02:40:38.24 ID:aBfZ3KXR0

一瞬の照射だったおかげでようやく視力が戻ってきた時雨が

不知火の方へ近付き手を差し伸べてくる。



不知火「彼を知り己を知れば百戦殆うからず、

    戦う前に相手の情報を徹底的に洗える相手。」

不知火「つまり時雨さんだったからこそ勝ちを拾うことが出来たといえます。」



握手を交わし、時雨へと感謝を述べる不知火。



不知火「いい演習、ありがとうございました。」ペコリ

時雨「は ――――――。君の爽やかさに毒気が抜かれるよ。」

時雨「僕の完敗だ。まだまだ君には敵いそうにないや。」

不知火「いえ、いずれ、すぐに抜かれてしまうかと。」

不知火「ですが、不知火より強い方が増えるのは

    全体の戦力の底上げになりますので大変喜ばしい事と思っています。」

時雨「やれやれ、かな……。」



器の大きさも負けた。本当の意味での完敗である。

732 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/19(金) 02:42:16.63 ID:aBfZ3KXR0


埠頭



提督「勝負が付いたようだな。」

雪風「しれぇ、不知火さんはどういう手品を?」

提督「ん?雪風ほどの者でも分からないか。」

ガン「あの、解説お願いします…。」

川内「足元の爆発は魚雷?」

摩耶「機雷を用意していたようには見えなかったし、

   そもそも自分も危ないもんな。」

提督「あれは遅延信管を仕込んだ魚雷の接触信管を感度あげまくってたんだろ。」

提督「信管の感度設定をみすると魚雷が海中で波などの衝撃で

   作動した結果、敵に当る前に爆発する事があるだろ?」

雪風「感度設定は確かに難しいです。」

提督「その感度を良くした状況で魚雷を投げれば勝手に作動するわけだ。」

川内「成程、つまり本来は戦艦等の装甲を破って突き刺さった後に

   破孔をより大きくする為に使う遅延信管を使用した事で

   魚雷が時限爆弾に化けたわけか。」

提督「うまいこと爆発するタイミングを見計らったという事なんだろ。」

摩耶「よくもまぁ、上手くいったもんだな。」

提督「さらに言えば燃料も少なめにして魚雷が余り走り過ぎないように調整したんだろ。」

川内「全ては時雨のデコイを掃除する時に仕込んでいたってわけか……。」

提督「それ以外に進路を読まれないように砲撃で制限し、

   魚雷が潜んでいるところに誘導したり、

   自分の残り少ない魚雷を使ったというのが手品の種明かしだ。」

733 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/19(金) 02:44:11.58 ID:aBfZ3KXR0

ガン「でも、時雨さんがその場所へ行く保障なんてないのでは?」

提督「人間だれしもピンチに陥った時の一瞬の閃きを勘とかよく言うだろ?」

川内「あぁ、やま勘って奴だね。」

提督「そうだ、だがな。勘なんてものはあるようでないもんなのさ。」

雪風「?」

提督「勘だの閃きだのと思うのは全て、

   本当は自分の今までの経験や知識の中から最短距離で

   自分が正解と思えるものを導きだしているだけなのさ。」

摩耶「てことは時雨が勘で避けてくるのは折込済みだった?」

提督「普段の業務で得た時雨の戦闘データーで全て読んでいたということだな。」

提督「どこを狙えばどう避けるか、魚雷の回避は右と左、どちらを好むか。」

提督「全て、想定内、いや、そう思わせることすらも不知火の術中なのかもしれないな。」



胸元から煙草を取り出し、一本咥え、火をつけふいと煙を吐く。

提督の周りの艦娘はその圧倒的格上な不知火の実力に溜息を漏らす。



提督「さてと、勝負は付いたわけだ。」

摩耶「あっ、そうだった。」

川内「宴会だねぇ。」

明石「ウォースパイトさん!これ。支払い宜しくお願いしますね!」



そして渡される請求書。



スパ「えっ、何この金額。」

提督「俺は助けないからな。」

明石「いっぱい(many)飲まれる方が多いですからねぇ。」

スパ「a cup of (一杯)じゃないんですか!?」

明石「契約書は絶対。」ニヤニヤ

スパ「Nooooooooooooo !!」


絶叫を上げるウォースパイトを背に

提督は戻ってきている不知火達を迎えにいったのだった。
734 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/19(金) 02:45:01.61 ID:aBfZ3KXR0

長門「なかなかいい試合だったな。」

瑞鶴「探照灯で視力を奪うとはね。」

長門「らいしといえばらしいな。

   時雨がああすれば負けを認めると読んでいたんだろうな。」

瑞鶴「そうね。あっさりと負けを認めたというのがよかったわね。」

長門「我々の出番もなかったからほっとしたよ。」ヤレヤレ

瑞鶴「そうね。殴りあいはまだしも虐殺状態になるのは勘弁だったわ。」

長門「不知火がその辺は弁えたという事かな?」

瑞鶴「そうでしょうね。いい意味で丸くなったと思うわ。」

長門「確かに、見ていてそう思う。」

瑞鶴「何が切欠なんでしょうね?」

長門「さぁな。」



そして長門達もまた宴会に参加すべく鎮守府へと戻ったのである。

尚、皆が飲んだ酒代の所為で

ウォースパイトが数ヶ月ただ働き状態だったのはまた別の話である。

735 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/19(金) 02:46:35.68 ID:aBfZ3KXR0

とある日の鎮守府会議室

提督は米軍の将校二人と会議を行っていた。



提督「と、以上で打ち合わせについては終了ですかね?」

米中将「あぁ、実に有意義な会談だったよ。」

提督「いえ、先日の救援作戦においては色々助けていただきましたし

   その際の礼もありますので。」

米大佐「こちらに我が国から派遣する駆逐艦に付いてですが

    最新鋭に交代させていただいて宜しいんですね?」

提督「えぇ、そのくらいの変更を受け入れないほど狭量でもありませんよ。」

米中将「最新鋭の方が抜けるデーターも多い?」

提督「虐めるのはお良し下さいな。」ハハ

提督「と、先日の救援のお礼という訳では無いですが

   宴席を用意させていただいるのでどうぞ食べていっていただけませんか?」

提督「うちの料理長が腕を奮っておりますので是非。」

米中将「大佐から腕のいい料理人がいると聞いている。是非に食べさせていただくよこう。」

提督「ありがとうございます。」



そして。
736 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/19(金) 02:47:51.32 ID:aBfZ3KXR0


「こちら前菜でございます。」



いつもと違い、シェフ然とした格好の料理長が配膳を行う。



米大佐「実に素晴らしい彩……。」

「桜と薔薇をイメージし、当鎮守府周辺で取れた野菜を使用しております。」

米中将「実に素晴らしい味わいだ。」



一つ一つの料理に料理長が素材の産地や料理方法を説明していく。

前菜が終わり、メインのスープが終わる。

そして、魚介料理へとメニューが移ってゆく。



「こちら、あこや貝の貝柱バターポワレ、

 ほうれん草のグリーンソース添えになります」

米中将「あこや貝かね?」

「はい、あこや貝そのものは食べれたものではありませんが、その貝柱は別物」

「本日の貝柱は三重県、伊勢湾産を使用しています」

米大佐「うーん。お酒は日本酒ですか?」

「えぇ、獺祭ですよ。

 日本酒は魚貝にあう物が多いので気に入っていただけたのでしたら幸いです。」



そして尚もコースは続いてゆく。

737 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/19(金) 02:50:11.77 ID:aBfZ3KXR0

「此方、鳩肉の唐揚げ香草添えになります。」

米大佐「鳩肉ですか。」

「えぇ、フレンチのではなく中華の香炸。

 予め下味をつけた物を揚げています。」

「蜂蜜や老酒で下味をつけています。詳細はお教えできませんが…。」

米大佐「実に食感も素晴らしいですね。」



そしてメインデイッシュも終盤へ。



米中将「目の前で切り分けるパフォーマンスかね?実に素晴らしい」

「牛フィレ肉フォアグラと抱き合わせにしロッシーニ風に仕上げ」

「どうぞ」

提督「ソースのコントラストが美しいものですな」

米大佐「あぁ、ジョエル・ロブションの期間限定メニューで見た事がありますね。」

米中将「……、再現出来る腕前とは恐れ入る。」

提督「肉が綺麗な円形に整形されている。」

「その様な形になるように型にいれ整えておきましたので。」

そして楽しい食事会は最後のデセール(デザート)へ。

「こちらミニャルディーズ、プチフール、

 季節の果物、春の香り添えになります」

米中将「あぁ、実にいい香り、味。」

米大佐「実に素晴らしい。」



人は本当に美味しいものを食べると語彙力が無くなるとか。

提督が設けた二人の米軍高官をもてなす食事会は無事終了したのだった。

そして、帰路に着いた米軍人の二人は船内で改めて提督について話をしていた。



米中将「会議で表明できない自分の立ち位置を料理で伝えてくるとはな。恐れ入る。」

米大佐「大使館勤務経験のある料理人だったのでしょうか?」

米中将「かもしれん、そこは分からんが。超一流なのは間違いない。

    それと、少なくとも、あの提督は我々と事を構えるつもりは無いようだ。」

米大佐「歴史に従うという事ですか。」

米中将「あぁ、そして脅威となる連中についてもある程度示唆してきていたな。」

米大佐「終わった後の事でも共闘できる部分はするということでしょうか?」

米中将「あの料理のメニューで判断する限りではな。」



738 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/19(金) 02:51:17.37 ID:aBfZ3KXR0

鎮守府食堂



提督「上手く伝わったかな?」

「司令官の意思に添える料理は出したと思うよ?」

「ただ、それを読み取れるかどうかは相手次第でしょ?」

「それにそれを読み取れない程度のニブチンならかえって扱いやすいんじゃないの?」

提督「まっ、そうだな。」

「司令官も大変だねぇ。」

提督「なに、手元に有効な手札があったんだ。使いたくもなるさ。」

提督「今日はありがとうな。また、頼むよ。」



戦場は何も魚雷と砲弾が飛び交う場所だけではない。

政治の駆け引きもまた戦争なのである。

739 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/04/19(金) 02:55:26.45 ID:aBfZ3KXR0
以上で更新おわりでございます!
首脳会談時の晩餐会や昼食会での料理のメニューは様々なメッセージがこめられている事が多いので
興味をもたれましたら調べてみるのも面白いかもしれません
個人的に記憶に残っているのは習近平がイギリスに行った時の皮肉たっぷりな晩餐会メニュー
色々、隠されたメッセージを受信出来ないと無能呼ばわりされる外交の世界
こわいですね!ここまでお読みいただきありがとうございました!
また、更新間隔がのびのびになっていることをお詫び申し上げます
乙レス、感想レスいつもありがとうございます、お気軽に残していただけるといっちが喜びます
740 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/19(金) 06:37:39.75 ID:v2h3PD9i0
乙です。
うーちゃん うーちゃん うーちゃん∩( ・ω・)∩ ばんじゃーい
741 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/19(金) 11:40:37.78 ID:bHIkmmrD0

うーちゃん意外と出番あるどころか切り札になってて嬉しい
742 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/19(金) 19:22:50.63 ID:ibELC143O
ここのうーちゃん大好きだわ
743 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/20(土) 19:07:35.85 ID:9mofOjPQ0
あの有名店を再現出来る腕前って一体…

でも有能なうーちゃんって好きだなぁ
744 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/21(日) 19:38:00.35 ID:RgAMSUgF0
半分くらいは料理のメッセージ読み取れたと思うけど第3部ヤバすぎやしませんかねこれw
745 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/08(水) 00:30:33.58 ID:nFQLBL4F0


「はぁ ――――――――― 。」



大きな溜息を一つ。

いや、分かっている、自分が原因である事は。

しかし、あれを見過ごす事は断じて許せないのだ。



「といっても4回目の出戻りはなぁ ――――― 。」



初期艦として選ばれて提督の秘書艦として本来は仕事していたはずなのだ。



「いや、犠牲が出ることがあるのは当たり前なのよ。」



そう、その犠牲の出し方が糞なのは実に許しがたいのだ。



「だからといって意見具申も許されないなんて。まったくやになっちゃう。」



恐らくは自分が更迭された後、自分が助ける為に動いたあの娘達は水底へ。だろう。

それを考えれば。



「はぁ ――――――――――― 。」



巨大な溜息が出るのは仕方のない事だろう。


746 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/08(水) 00:32:10.31 ID:nFQLBL4F0


「あら、今度もお早いお帰りでしたね。」

「あぁ、教官。また、お世話になります。」

「いったじゃありませんか。あの方は叢雲さんとは真逆ですよって。」

「そうはいいましてもですね。向うが指名してきた以上はですね。」



にこりとこちらを威圧してくる教官は

艦娘養成校にその人有りと知られる練習巡洋艦鹿島。

鹿島といえば可愛さが売りなんて思われているけれど

今、私の目の前にいるこの女は全然違う。

いや、見た目を最大限に擬装欺瞞、

相手の油断を誘う事に費やしているのだから一番危険なタイプだろう。

中身が陸上自衛隊で格闘徽章持ちの美女にして野獣とよばれ

一体何人の男性を正しくベッドへと沈めて来たことやら。

艦娘の適正があった為海軍に編入する事になった際、

別れへの悲しみの涙……、ではなくうれし涙を流した隊員が多かったとか。

そういえば昔、私、脱いだら凄いんですなんてCMあったなぁと。

もっとも目の前のゴリラは筋肉ダルマなのだ。ふふ。そりゃ彼氏も出来ませんよねぇ。



「叢雲さん?余計な事を考えていませんか?」

「いえ!考えていないです!」ビシッ



目が笑っていない。

あっ、これ後でお説教というなの楽しい格闘訓練時間だ。泣きたい。

だが、神というものは時として降臨あそばされるものなのだ。



747 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/08(水) 00:32:56.18 ID:nFQLBL4F0

「あー、お嬢さん方。申し訳ないのだがこちらの校長室はどちらか教えていただけないだろうか?」



やった!この場を離れられると振り返ったそこに居たのは。

まぁ、このうだつが上がらない雰囲気のセールスマンが私の最初の印象だったかしら。

その後もこのそうと思わせない見た目に騙され続けていく事になるんだけど。

そうね。とりあえず、私が最初に感じた印象は胡乱げな、

それこそ詐欺師かなにかみたいなだったわ。

後々、あんた、お前の仲になるなんてまったく思っていなかったわ。

748 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/08(水) 00:34:44.03 ID:nFQLBL4F0
提督の初期艦叢雲との出会いを少し
しょっぱなから詐欺師扱いの提督、仕方無いね!
お読み頂きありがとうございました、番外編の方も宜しくお願いいたします!
感想、おつレスいつもありがとうございます!お気軽にレスいただきますといちが喜びます
749 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/08(水) 04:05:17.92 ID:VKqyDi2aO
乙!
750 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/08(水) 08:20:08.64 ID:IERZX957O
乙!楽しみにしてる!
751 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/08(水) 12:47:01.14 ID:cPzWr1k90
カシマ・カシマ
752 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/09(木) 07:12:57.52 ID:kgM+/xCGo
お嬢の浴室的鹿島か。
753 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/12(日) 00:26:55.58 ID:TYakSQdC0
ちょっぴりばかりの更新
754 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/12(日) 00:28:35.14 ID:TYakSQdC0

校長室に案内して聞き耳を立てたところで。



「叢雲さーん。」ネットリ

「あぁぁぁぁ ―――――――― !」ズルズルズル



私は曳航されたのだった。



「外でなにやら断末魔が聞こえたようですが?」

「あぁ、まぁ、君が気にする事ではないよ。中……。」

「申訳ありません。階級については。」

「あぁ、そうか。にしても君が前線に回されるとはね。

 いよいよ人材の底が見えるようだ。」

「いえいえ。私が動ける、動かせる状態であればこそです。」

「軍令の全員で前線整理の道筋つけて後方のお片づけをしてです。」

「ここだけの話しですが南太平洋の悲劇。

 あれは戦線を押し下げる抜群の効果がありました。」

「君の師匠はつねづね撤退を提案していたのだったか?」

「えぇ、教授は拡大を続ける戦線の整理縮小の必要性を言われていました。」

「国力全てを注いでの維持はいずれ破綻が来る。歴史に学べという事です。」

「力を貯めてまた取り戻せばいい、国際社会を巻き込めと。」

「そして、それが敵わないが故に前線で嫌がらせを続け

 戦術的に対処療法的な止血作業をされておりました。」

「おしい方をなくした。」

「最後まで軍人であったようです。」

「奥方がいらしたと風の噂で聞いていたがどうされている事やら。」

「艦娘と結婚をしたと聞いてはおりました。

 年をいった上での初婚だったからか手紙にのろけが多かったですね。」

「あの鉄面皮がね。」

「教授はあれで表情豊かではあったと思うのですが。」

「私が軍令に居た頃とは大分違ったようだな。」

「でだ。本題に入ろう。事前に受取ったこの書類に間違いないのかね?」



机の上に出される軍令部の各部署の責任者の名前が連ねられた一枚の書類。

755 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/12(日) 00:29:35.35 ID:TYakSQdC0

「えぇ、士官学校で提督課程は学びはしましたが

 最低限ですので改めて学びなおしたいと思いました。」

「君なら不要と思うが上には私も逆らえん。」

「にしても、ここを卒業後の君は各鎮守府の建て直し作業が主になるのかね?」

「どうしても戦闘ドクトリンを徹底させるには

 現場に出向いて指導する者がいりますからね。」

「といってもやらかした所の建て直し。

 例えるならピアノの調律師の様なものです。」

「正しく、綺麗な音が出るように調整。調整後は演奏者に任せる。」

「私はあくまで裏方ですよ。

 そのうちどこかに腰をすえるかもしれませんが今はその時ではないです。」

「軍令の戦略参謀長の渋面が思い浮かぶようだよ。」

「兄弟子筋に当る方ですから可愛がっていただきました。

 だけにお前以外に頼めないとも言われましたので腰を上げたという状態です。」

「縁は時として有効であり時として己を縛る……だな。」

「私のような無能が参謀の末席を汚すのは

 偲びありませんのでまじめに仕事をする次第です。」



(狸め。)

(狐野郎。)


756 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/12(日) 00:33:00.52 ID:TYakSQdC0

笑顔で楽しい世間話という名の腹の探りあいは社会人の嗜み。

否、社会人の名刺交換という初級講座レベルの基本スキルである。

そう、オンシャノツギノプロジェクト、ジュチュウヨロシクネー!の言葉の後に

モットヤスクシテクレマスカ?ヨロシクヨー!が続いたかと思えば。

ザッケンナコラー!ミツモリタケエゾコラー!

ザッケンナコラー!ノウキギリギダゾコラー!

の楽しい宣戦布告となるあれである。

先日まで情報の坩堝にして中枢に居た相手から

何某か有益たる情報を引き出せたらと水を向けるも

相手もそれを知ったもので自分が知る以上の話しを語ろうとしない。

情報の統制がしっかりとされていることと

相手は自分が把握している情報のレベルを

しっかりと知っている事を確認できたに過ぎない。

なれば。



「君につける補佐の艦娘だが。

 大和型、翔鶴型、君の望む娘をつけようじゃないか。」

「あー、余計な気遣いは不要です。校長。」

「寧ろ通常の提督候補生と同じように初期艦課程を修了している者をお願いします。」



艦娘養成校でのそれは士官学校におけるそれとあまり代わらない。

提督候補生に艦娘一人を補佐につけ無事任官(卒業)した後は

そのまま一緒に鎮守府に着任となる形なのだ。

そんななかで即戦力として活躍可能な戦艦、空母をつけましょうと申し出てくる。

つまるところ、ようはこの校長。



(おべっかを使ってでも軍令、本営に近いところに知己を得たいという事か。)



参ったものである。



(好意をうけとれや若造!)

(ふざけんなや!はげ!後、俺はもうおっさんだっつーの!)

(黙れこの若造!

 手前もハゲだろうがハゲって言う方がハゲじゃ!!)

(薄毛ですぅ!?薄毛!!

 ないのと薄毛は天と地ほどの差があるわ!!)



お互いに目で鍔迫り合いを行う、

恐らくモノローグが見えるのであれば上の様なやり取りが見えた事だろう。

757 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/12(日) 00:35:53.38 ID:TYakSQdC0


「では、挨拶はこのくらいで。提督候補生向の寮へ向わせていただきます。」

「あぁ、そうか。であれば、教官との顔合わせも兼ねて案内させよう。」



校内での専用電話的なもので呼び出してきたのは……。



「練習巡洋艦鹿島、お呼び出しに従い参りました。」

「こちらの方を部屋まで案内してさしあげて。」

「了解です!」



廊下を歩く道すがら。



「提督候補生さんは民間候補生に偽装ですか?」

「こちら側の匂いがしますねぇ。こらからもよしなに。」



手身近に自己紹介をされる。

これはあれだろうか?

胡散臭いもの同士は惹かれあう。

昔見た漫画の一節を思い出す。

成程、前を行く艦娘の背中は何かを語るには充分すぎる。



(なんとか神拳とかの伝承者と名乗られても納得するやもしれん。)



それほどに目の前の艦娘の背中は自己主張をしていた。

漢なら背中で語れ。目の前の背中はそう語っていた。



(いや、艦娘は女性だよ………な?)



益体もない事を考えている内に割り当てられた寮の部屋へと辿り着いたのだった。

そして野戦将校の行李並に小さく荷物を纏めたトランクからノートPCを取り出す。

文明の利器というのは昔のように

大量の書類などと言うものを持ち運ばなくてもいいようにしてくれる。

しかし、逆に出来る事を増やすという事でも有る。



「軍令の参謀職から離れたにも関わらず椅子がそのままか……。」



おぉ素晴らしき官僚機構。

万一提督として卒業できなくても参謀として

再度お仕事出来るように籍はそのままにしておくよとの「ありがたい」お言葉。

裏を返せば参謀の人数足りないから

提督課程を勉強している間も出来る事はやってね!という事である。

758 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/12(日) 00:37:40.88 ID:TYakSQdC0


「人手の足りなさ、いや、足らぬ足らぬは工夫が足らぬか。」



つねに軍令部に詰める形とは代わる為仕事の量は減っているものの。



「確認して対策とらねぇといけないことが多すぎねぇかこれ?」



支給されたPCで軍令部の専用クラウドにアクセスすれば

スパムメールが如き書類の量。

軍令部の参謀総長の顔が思い出される。



いずれ仕事の量は減らすといった………。

今回、まだ、その時と場所の指定まではしていない……。

君はそのことをどうか思い出していただきたい。

つまり、参謀本部がその気になれば仕事を減らすのは10年後、20年後ということも

可能だろう……ということ!



「死者を生き返らせてでも仕事をさせそうだ。」



提督候補として軍令部を離れる間の仕事量は減るかなと

期待した方が間違いだったようである。



「実際、こちら側の人材の不足も戦線の縮小理由ではあったんだよな。」

「師匠もとんでもねぇ宿題を残してくれやがるぜ、まったく。」



そして、人事部から手に入れた艦娘養成学校の所属艦娘候補生の資料に再度目を通し。
759 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/12(日) 00:40:43.78 ID:TYakSQdC0


「提督秘書以外の仕事のつぶしも効く奴を見繕わにゃならんな。」



彼、便宜上、提督とするが提督が軍令部の戦略畑の長、

軍令部総長から受けていた指令に一つ艦娘の中で

提督の資質がある奴がいれば引き抜けという指令があった。



「提督になる為にはただ単純に士官としての資質があればいいってわけでもないか…。」



艦娘を総べる提督と呼ばれる職位は

単純に提督として勉強をすればいいというものでもなかった。

単純かつ絶対的な要素「艦娘から無条件で好かれる」これがなければならない。

組織の長ともなれば調整能力は必要であるが女性を、ともすれば100から200人。

それだけの人数運用ともなれば間違いが起きればそく内部崩壊。

艦娘として生まれ変わった元人間の女性たちに早い話

「なんかいい人ね」と思わせる何かがいるのだ。

何か?とぼんやりした物なのはそれが判明していれば

今頃提督を量産出来ているという上側の恨み的な物が入っている事なのは言うまでもない。

提督候補として艦娘養成学校に送られてくるのは最低限をクリアしている事になる。

軍令、司令部付きの艦娘達が士官学校、

或いはその他選考過程で○、×をつけている事は上の方の人間の一部しかしらないのである。

現場の鎮守府で真っ黒運用をやらかしてもめったに後ろ弾案件が起きないのはそういう事。

ともすれば狂信的な好意があるおかげで

運営がなりたっている鎮守府があるのもそういう訳なのだ。

だけになれる人間が少なく民間人の積極的(但し適正者は少ない)募集も行うという

人手不足が極まっている状態なのだ。

しかし、艦娘になれる適性を持つ女性は意外に多い。

ならば艦娘に提督を兼ねさせて人数不足をとなるのは自然の流れでもあったわけである。

人材の不足というのが組織の大小関わらずなのは悲しい世の現実なのだ。

叩き上げの将の出現を待つよりは早いうちに芽を見つけて

悪い方向へ育たないように植え替えてという事。



「まぁ、現場叩き上げの方が結局は面白い奴が育つんだがねぇ。」



優先度は低く、掛けられる時間は少ない。


「頑張って提督になるべく勉強をしますか……。」

といっても士官学校を卒業し、参謀課程を修了、

尚且つ直近で軍略参謀を務めていれば児戯が如き内容な訳であり。


「ベッドってこんなに柔らかかったんだねぇ……。」スヤァ


改めて提督向の教本等を読む気にもならず日頃の疲れからか睡魔に勝てる訳もなく、

提督はのんびりと久方ぶりのベッドの感触を楽しむのだった。
760 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/12(日) 00:43:30.06 ID:TYakSQdC0
以外!それはボクカワウソ!
あれが着ぐるみになるとかよそう出来た人いるわけないと思います
イベントの具体的日程はステージでご案内とかとか
まぁ、そうなるな
秋津洲4人目でねぇといいつづけて暇暇周回してきていてS勝利100超えました、出ない時は出ない
バケツがやばいですね、ここまでお読み頂きありがとございました
761 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/12(日) 14:27:37.96 ID:6Ah90Ll+O
762 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/18(土) 19:09:35.67 ID:fPhBGAbI0
乙乙ボーキくれる遠征はもちっと欲しい
763 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/28(火) 00:10:20.75 ID:o6WlkERf0
今回のイベント難易度おかしくないですかね?
後、甲限定装備全般オーパーツ気味…
運営さん、ちょっと?さすがにおかC
すみません愚痴入りました、お時間宜しければ少し更新しますのでお読みいただけると幸いです
764 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/28(火) 00:11:23.02 ID:o6WlkERf0

「うわっ、煙い」



そいつの部屋に入っての最初の感想はそれ。



「この部屋はバルサンでも焚いてるの?」



締め切った個室に充満する煙草の煙。

物流が死んだこの情勢で煙草をこれだけすきに吸えているって時点で

それなりに怪しい奴と気付くべきだったと今にして思う。

まぁ、あれよね、私が未熟だった。それにつきるわ。



「お嬢ちゃんが、叢雲かい。」

「提督候補生として今後とも宜しく。」



差し出してくる手は見た目の胡散臭さとは別にしっかりとした厚みがある手。



「わたしを選ぶなんて物好きね。」

「今までの経歴には目を通した実に立派な経歴だ。」



何かの皮肉かしら?私は今まで4回も秘書艦を首になってるんですけど?



「上官反抗の角で秘書艦解任。実に面白い。」



こいつ、意図的に地雷を踏み抜きに行く奴かしら?

765 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/28(火) 00:12:29.49 ID:o6WlkERf0

「意見具申として記録に残っているものに関して目を通させてもらった。」

「俺の意見を言えば叢雲。嬢ちゃんの意見が正しい。」

「広い視野、現場に出撃したものならではの戦況判断。」

「熟練の兵の指揮と言われても俺は納得するだろうな。」

「ただ、相手を説得するには言葉を選んだ方がいい。」

「美辞麗句でもって相手を褒めて煽てて

 きちんと思考誘導してやった方がいい。」

「人間、欠点を直で指摘されると腹立つもんだ。

 特にそれが正しい場合は尚更だ。」

「合理的に割り切れる人間ならいい。

 が、曲りなりに組織の長だ、顔を立ててやれ。」

「嬢ちゃんは恐ろしく頭が切れるのは俺には分かる。」

「だからな、少しは馬鹿の気持ち、そうだな下々の思考もちょいと配慮してやってくれ。」


なんだろう、この胡散臭い詐欺師みたいな奴の言葉が

この時はすっと入ってきたのよね。

例えるなら子を諭す親みたいな話し方に……、まぁ、いいわ。

どうせ深く考えた所で結論が出ない事だってあるわけだし。

それで、まっ、この詐欺師との共同生活がスタートしたってわけ。


766 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/28(火) 00:13:31.68 ID:o6WlkERf0

「えーっと。」



名前そういえば聞いてなかったわねと詐欺師の顔を見る。



「あぁ、俺の事なら好きに呼んでくれ。

 中二っぽくMr,CigaretteとかSmokingmanでも。」

「普通に候補生何某でも。呼び名に大した意味などないからな。」



顔に似合わず茶目っ気を、いや、これ私をおちょくってるじゃない!



「あんたなんか煙男(けむお)煙男で充分よ!」

「というかもうね!あんた呼びにしてやる!名前なんて勿体ないわ!」

「ひでぇや。だが、まぁ、それでいいか。」



で、まぁ、こいつとの候補生、その秘書艦生活がスタートしたって訳。

提督候補生といってもまぁやる事自体は普通に鎮守府運営でやる事と変わりないわ。

艦娘訓練課程の娘達が通うこの学校で所属艦娘を指揮して演習しての毎日。

後は座学で鎮守府運営の基礎や艦隊指揮を学ぶって訳。

そうしていくなかで当たり前のように……、

そう派閥って物も出来るのよね。

まったくめんどくさいったらありゃしない。馬鹿よね。馬鹿。


767 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/28(火) 00:14:37.91 ID:o6WlkERf0

「あー、これはこれは。」



講堂でおべっかを使うあいつ。

基本的に候補生同士の個人情報、

民間出身だとか軍大学出身だとか?

そういうのは学校側がばらすことは無い。

教官や艦娘達へも先入観の排除という事でわざわざ知らせることはない。

自分から吹聴して回らない限りは

誰がどんなご出身でございなんて分からない。

私から言えばそういうのを自分から吹聴して回るのって

いかにも小者って感じがするのよね。

あいつみたいにおべっかを使ってくれる相手が欲しいんでしょうね。

まったく。

にしてもまぁ、なんというかヨイショが堂に入ったものね……。

民間ならきっと上に気に入られるタイプなんだろうなぁ。

ああいう言葉づかいは見習わなきゃかしらね。

そしてあいつの部屋で細々とした話しをしていたときに一言。



「口が軽いやつは情報を得やすくて助かるな。」

「叢雲もそう思うだろ?豚もおだてればなんとやらだ。」



同意を求めるなっての!ほんと、厄介な奴だわ!

にしても……。

768 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/28(火) 00:16:00.80 ID:o6WlkERf0

「一体何者なの?」



直球で聞く。



「さぁて?」

「とぼけないで、私が4回も戻されている事が連絡されていたとしても。」



そう、初対面の時に感じた胡散臭さはこれ。



「どういう状況でどういう内容の意見具申をしたかなんてまでは

 候補生風情で調べられるわけがないわ。」



その断言に、にこにことした笑顔。



「やっと気付いたか。まっ、心して聞けよ?秘密だからな。」



結局ここで騙されたのよね。ほんと詐欺師なんだから。



「俺はな、海軍の特務機関、諜報畑の人間なんだよ。

 ちょいとな内部調査でな。」

「色々調べてるんだ。なに、叢雲。お前の立場に身分は保証しようじゃないか。」

「条件があるなら言ってくれ。可能な限り応じる。」

「条件ね。まぁ、それは後でもいいわ。」

「それより私にそんな事打ち明けて大丈夫なの?」

「なんだ?心配してくれるのか?

 この部屋は毎日『 掃除 』してるから安全だ。」

「相手を思いやれるたぁ、見かけよりずっといい女だな。」

「ばか!」



辻褄も合うしそれっぽいなと思ったのがすべての終わり。

769 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/28(火) 00:17:03.73 ID:o6WlkERf0

こいつがすべて終わって卒業した後で言った言葉。



『 嘘をつくときは相手が望む、信じたいと思っている嘘をつく事。 』



えぇ、騙されたって訳。

まっ、学校を卒業した後は私に対して嘘はつく事なかったから許してあげるって所かしらね。



「それで、なんで私はパシリの手伝いさせられているのかしら?」

「まぁ、まぁ。」



あいつが色々な連中におべっか使って取り入って…、

までは良かったんだけど。

いや、よくはないか。ううん、あいつだけで完結してたからいいのよ。

で、それで調子づいた連中があいつに色々本来するべき事を押し付けてきたのよね。

提督としての仕事を学ぶ為に色々な資材の手配のやり方とか、

指揮の実務経験を積む為に割り当てられた艦娘達の訓練、

演習カリキュラムを組んだりとか。

まぁ、めんどくさい事務仕事が色々あるわけよね。

それをあいつはぜ ――――――― んぶ引き受けたってわけ。

そしてあいつは私にもその片づけを手伝わせるんだから信じらんないわ!



「その候補生Aのところの戦艦だが命中率に難ありだ。」

「じゃぁ、砲撃訓練を集中強化ね。」

「あぁ、頼む。それとそれに伴う燃料、弾薬の手配もだな。」

「ついでで演習相手に候補生Bのとこを組むと相互でいい塩梅になる。」

「わかったわ。」



まっ、優秀な私に掛かればこの程度の手伝いなんて朝飯前ね。

770 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/28(火) 00:18:04.14 ID:o6WlkERf0
「きっちり、がっちり、俺たちは優秀だろぉ?」

「おべっかを使うのといらない仕事を増やす程度にはね!」



にたりと笑うあいつに怒りの返事。

私達が受け持った娘達の演習、

訓練カリキュラムもやらないといけないわけだし。

こういっちゃなんだけど同時に並行して

いくつものを鎮守府運営をやっているような気分になるわね。


「楽しくなってきただろ?」

「そんなわけあるか!」



図星の指摘をされ照れ隠し。

まっ、この作業が後々重要だったって気付くのもまた別の話し。

人生に余裕と無駄がない男って本当に退屈だわ。
771 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/05/28(火) 00:23:04.79 ID:o6WlkERf0
今日は此処まで
お気付きかとは思いますが小説形式になれるべく少し書き方を変えて練習をしております
こうしたらいいよとか、読みにくいとか色々意見をいただけるとありがたいなぁと…
にしても、今回のイベ色々おかC E2のラスダンまではいきました、はい
正直な話しボスへ陸攻を飛ばすより21熟練MAXや基地の陸戦で対空値高いのを大艇でのばすなどして飛ばした方が
空母おばさんの艦載機を枯らせますのでそっちの方がいいと思います、陸攻はどうせダメでません…
ぜかましさんなんかをみながら色々攻略サイトを見ながら試行錯誤
普段から予備艦などを鍛えていてよかったと思うことひとしおです、ですが、一言いいたい
運営、かげんしろ馬鹿と
ここまでお読み頂きありがとうございました、乙レス、感想レス気軽に残していただけるとイチが喜びます
772 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/28(火) 00:34:23.32 ID:f4CPZcTI0
乙で。
今からE2輸送を始める身としましては戦力yゲージ攻略が恐ろしくて仕方ない次第です
773 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/28(火) 00:53:07.42 ID:DrYnfxxx0
陸偵+陸戦を当てて涼月のCIが綺麗に入れば割とおばさんは黙らせられると計算したけど到達までのリスク管理が偶然頼みで実質無理と判断して噴進砲ルートで楽して叩き潰した
E3-2ラスダンなう

嘘は適度に真実を入れておくと信じやすくなるからそのさじ加減こそ腕の優劣だとどこぞの軍学署に書いてあったなあ
774 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/28(火) 04:22:08.46 ID:82eRS9qA0
乙乙
難易度もそうだけど最終回域まで御札はお辛い
最後くらい何でもありの総力戦にして欲しい
775 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/05/30(木) 17:15:52.89 ID:wAudkZcn0
久し振りにブックマークで残して有った某纏めサイトで読み返ししてたら
>>459の次が>>466と端折られていたので
「あれ?あきつ丸?雲龍じゃ無かったの?」と混乱したわ
やっぱ、途中の雑談も大事よねー
776 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/06/01(土) 00:20:02.62 ID:PUP4laW20
特定の艦娘(故人)をイメージした香水を自作してその香りでトランス状態に入って故人を降ろし闘う降霊術系のオシャレなコマさんとかふと思いついた
777 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/04(木) 00:32:58.74 ID:2HdN4PtG0
>>776様 シャーマン系でしょうか面白いですね今やってる候補生時代が終わりましたら
    ちょこっと書かせていただきたいなと思います

イベントも終り焦げ付いた資源をかき集め日々の艦隊運営を行っているイチの鎮守府
今月のEOもぼちぼちやらななーです、後、ネジ任務、イベについては他で触れたのでもう不知火
サーカスとかやるらしいですけど地方の田舎民なんでほーん状態、京本政樹さんには驚きましたが
行かれる方は是非楽しまれてください(リアイベよりゲーム内イベの方が嬉しいと思っているのは内緒)
では、すこしばかり更新させていただきます
778 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/04(木) 00:34:26.47 ID:2HdN4PtG0

そして、私達はパシリ扱いをされながら候補生達の一大イベント。

卒業試験を兼ねた大演習大会を迎えたってわけ。

このイベントは連合艦隊としての最小単位である12人の艦娘を運用して

トーナメント式の勝ちあがり方式で対戦していく形ね。

で、優勝者は当然ながら色々優遇を受けて赴任先へって訳。

最下位も当然ながら決められてその最下位は卒業不可判定になる。

早い話、あなたは永遠に提督になれませんよって奴かしら。

この演習の対戦相手については今までの戦績などで公平に決められる形になるわ。

そして海軍のお偉いさん達も招いて、そうね、さながら観閲式ね。



「のんびりいこうぜ?」



その一大イベントが数ヵ月後に控えているっていうのに……。



「はぁ、不幸だわ……。」

「そうか?山城。お前さんの砲撃の腕前は一級だ。」

「俺の言うとおりにやれば三面六臂の活躍ができるぞ?」

「あなたの言うとおりに動いていたら負担が酷いのだけど。」

「戦艦には期待してるよ?戦艦だものなぁ。」

「不幸だわ……。」

「山城、頑張りましょう……。」

「姉さま……。」



ニタリと笑顔を向ける相手は扶桑型戦艦の妹山城。

そしてそれを励ますのは姉の扶桑。

あの気難しいマイナスガール達を上手く手懐けたのか

上手くあしらいながら訓練させているのは口先が上手いあいつならではね。

779 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/04(木) 00:36:29.72 ID:2HdN4PtG0

「候補生さん!だいぶなれてきたなのね!」

「潜水艦は体が冷えやすいからな。温まっとけよ?」

「イク、お前さんの魚雷の精度は抜群だ。頼りにする。」

「お褒めの言葉ありがとうなの。それと、カイロありがとうなのね!」

「はぁー、あったまるぅ。」

「イムヤ、お前もっともってけ。」

「なんか見ていて寒い。」

「ありがとうございます!」



なぜか、いや、艦隊運営という事であれば

潜水艦も居ておかしくないんだけど……。



「先日いただいた本、大変いいものでした。」

「だろ?温故知新。古き軍略家達の思考ってのは面白い。」

「なにか気付いた事あれば教えてもらいたい。」

「あの、はっちゃんとしてここが気になりました。」

「ん?どれどれ?」



連合艦隊の12人を選抜するうえで何故4人も最大に潜水艦娘達を入れた。

と、貴重な枠を潰す事への疑問を抱えていれば。



「おーい、ゴーヤ。」

「なんでち?」

「潜水艦隊の隊長として動いているお前の総評を聞きたい。」

「郡狼作戦への水上艦との連携はどうだ?」



こいつ最悪だわと納得。

つまりはやろうとしていることは敵を誘引撃滅という事かしらね。
780 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/04(木) 00:37:50.58 ID:2HdN4PtG0

「あんた手心とか。」

「叢雲。実戦形式に手心なんてしてたら相手に失礼だろ。」

「教育ってのは痛い目をみて覚えるって事も大事だとはおもわねぇか?」

「じゃぁ、教育というかご教授いただきたい事があるんだけどいいかしら?」

「さて?」

「空母姉妹が飛鷹、隼鷹。そして駆逐艦が特V型三姉妹。」



叢雲の指摘は当然としてしたり顔で返す提督。



「制服、背格好。みなよく似てる、そして似せて貰っている。」

「目的はなにかしら?」



ある程度は分かっているけどきちんと確認したいわけで。



「答えは出ているんだろ?」

「あの、私は艦影を似せる事での混乱を狙ってのものだと思うんです。」



猫を1000匹くらい被った隼鷹が口を挟む。

全体に知られた隼鷹って艦娘と180度違う感じなのよね。

飛鷹が二人いると言われれば

納得できるくらいのお淑やかな感じ。

話しをしてみればこいつの渋い中年顔に一目惚れとか言ってたけど……。

恋は盲目と誰がいったものかしらね。



「なかなか理解が早くて助かる。その通りだ。」

「目視下での艦種、艦名判断だと似ている艦娘が多いと攪乱できるからな。」

「つまり艦隊を分けて動かした際に

 どちらがどっちか分かりにくくするという事ですね。」

「そして、そのまま罠、潜水艦の娘達がある所へ連れて行くという訳ですね。」

「隼鷹は賢いな。」

「いえ〜。そんな〜。」



デレデレ顔がなんというか腹立つ。

781 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/04(木) 00:38:52.94 ID:2HdN4PtG0

「でも、叢雲がいるとまずくないのかしら?」



冷静に指摘するのは飛鷹。

私が指摘したかったのに……、

ってなによこれじゃ私が隼鷹に嫉妬してるみたいじゃない?!



「いい所に気付いた。だが、それはわざとだ。」

「わざと?」



あいつの答えに疑問を返す飛鷹。



「あぁ。そうだな。すべて教えても勉強にはならねぇな。」

「次回の訓練までに考えておいてくれ。」



そういい踵を返してあいつは自室へと向っていく。



「響は分かる?」

「あぁ、暁には難しかったかい?」

「なによ!響は正解分かったの!?」

「あぁ、私の考えが正しければあの候補生さんは相当な策士。」

「あるいは稀代の詐欺師だね。相当に曲者なのは確かだよ。」



暁と響の姉妹の会話。

782 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/04(木) 00:41:25.19 ID:2HdN4PtG0

「ねぇねぇ、響、後で教えて頂戴!」

「雷も少しは考えた方がいいと思うのだけれど。」



電が初期艦として外れている為特V型姉妹が三人だけ。

そういえば響は私と同じ髪色だったわね。



「叢雲は答えが出ているんだろ?」



私の方を見ながら響が確かめるように質問。



「えぇ、まぁね。たぶん響と同じよ。」

「あいつはとことん人の心をもてあそぶやり方が好みみたいね。」

「とはいっても多用は出来ないと思う。」



響はなかなか鋭いと思う。



「えぇ、その通りよ。」

「叢雲、暁に雷に説明してもらってもいいかい?」

「いいわよ。あいつから強奪した特A甘味配給券で

 羊羹貰ってきてそれでも食べながら話しをしましょう。」



共に演習大会を戦い抜くのであれば打ち合わせも大切よね。

あいつから奪った特A甘味配給券(通称間宮券)で

貴重品の甘味を貰ってこよう。

にしてもどういう伝手で入手してるのかしらね。

まっ、他の連中を手伝ったりした礼で手に入れているんでしょうけど。

秘書として艦隊を円滑に動くように裏から支えるのは重要よね。

783 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/04(木) 00:42:19.57 ID:2HdN4PtG0

「いひひ、イク達もお世話になるのね。」

「あら、勿論私達もお誘いいただけるわよね?」



結局艦隊全員に奢ることとなり強奪した配給券がすべてなくなったのよね。

迂闊だったわ。


784 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/04(木) 00:49:02.53 ID:2HdN4PtG0
叢雲はなんというか恋女房とか古女房とか相棒とか
そんな感じの言葉がしっくりくる艦娘、他の初期艦と一味違う雰囲気が好きです
本編では故人ですが………
第三部!需要あるかどうかしらんが第三部!書いてまーす!(一応宣伝)
第一話はアブーンがでます、みんなの鎮守府で過労死寸前の阿武隈ですよ!
大体の予想されるとおりな癖が酷い、一癖も二癖もある感じのキャラ付けでございますが
他に書いてるのを早めにけり付けないとですね
更新期間がどんどん空いていってるのでレスが付かないくらいに忘れ去られた状況に
先日更新したのなんて2レスもつけていただきホント忘れられていなくてよかったと胸を撫で下ろした始末
なるべく更新期間を短めに頑張らないとだめですね、では次回もお付き合いいただけると幸いです
感想、他、お気軽にレスいただけるとイチがよろこびます、どうぞよろしくお願いいたします
785 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/04(木) 02:41:00.37 ID:inENqlmm0
前の鎮守府で酷使されすぎ壊れて多重人格になり赤疲労になると次の人格が出てきて働き続ける阿武隈(うちはトリプル阿武隈だからかなりホワイトですよニッコリ

しかしまあお若い士官候補生様から見たら卑怯もお経もあったもんじゃない策を用意するもんだ
もうこの時期から情勢が悪くなる前提で運用実験してるのかな
786 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/04(木) 03:19:59.89 ID:KLGGXsonO
乙!
待ってるぜ!
787 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/04(木) 09:55:58.26 ID:reh7MeH0O
続き楽しみ
788 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/04(木) 22:57:52.47 ID:inENqlmm0
何かしらの理由で絶対に提督にするわけにはいかない奴を確実に不適格者にするために師匠に送り込まれたのかも知れぬ
789 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/08(月) 04:23:59.86 ID:YX4H6MyE0
乙乙
見た目の偽装って深海棲艦にも効果あるのだろうか
阿武隈の服とか着させたら真っ先に狙われたりして
790 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/15(月) 00:59:43.95 ID:ZkrAgJQR0
8月下旬にイベでーす!
まじかよ……(真顔)
資材カンスト無理そうデース!(やけ)
更新デース!
791 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/15(月) 01:01:16.34 ID:ZkrAgJQR0

それから暫くして卒業検定代わりの演習試験が始まったわ。

一番端っこの最下位から始まったにもかかわらず

勝ちあがっていく度にメンバーの皆が盛り上がる。


「のはいいんだが俺の部屋は談話室じゃねぇぞ?」

「候補生さん。あの、候補生さんのおかげで

 旧式といわれている私達姉妹がもの凄く注目を浴びる事が出来ています。」

「ほんとうに感謝いたします。」

「扶桑、やめてくれ。拝むな。」



提督を拝みだす扶桑。



「まぁ、姉さまが凄いだけだけど?あなたも頑張ってるんじゃない?」



扶桑に続き山城がまあまあねといった具合に褒め始める。

実際、演習のトーナメント表は順調に勝ちあがっている。

勝つほどに結束も強まり、いつのまにかこいつの部屋で反省会やら

次回に向けての打ち合わせが全員で自主的に行われるようになってきたのよね。

792 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/15(月) 01:01:59.58 ID:ZkrAgJQR0

「叢雲。すまねえ。ちょっと外に出てくる。」

「ちょっと。」

「流石にちび達がいる部屋で煙草はまずいだろ?」



私には遠慮しなかったくせに…。

そういいあいつは外へと出て行った。



「叢雲。」

「響?どうしたの?」

「候補生さん、ライターを忘れていっているみたいだから届けてくるね。」

「あっ。」



私が持っていくわと言う前に出て行っちゃった…。

そして、養成学校近くの港にて提督は煙草を吸おうと

ポケットから煙草入れを取り出したところで、ライターがない事に気付いた。

793 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/15(月) 01:03:17.59 ID:ZkrAgJQR0

「まいったね。」

「候補生さん。忘れ物だよ。」

「………、響かありがとう。」

「となり、座ってもいいかい?」

「あぁ、いいぞ。」

「煙草、吸わないのかい?」

「ちびっこが近くにいるのなら遠慮するのが大人のマナーだ。」

「私はちびっこになるのかな?」

「少なくとも俺の中ではな。それで、何か用か?」

「うん。候補生さんに二三聞きたいことがあってね。」

「答えられる範囲内でならいいぞ。」



提督が座るベンチの横に腰掛ける響。



「候補生さんはこの卒業試験を

 外部から調整する任務かなにかを受けているの?」

「さて、どうしてそう思った?」

「叢雲の言がヒントになったのだけれど、彼女曰く、らしくない。」

「短期間での付き合いにも関わらず叢雲にあそこまで言わせるなんてね。」

「候補生さんはかなり叢雲に信頼されているようだね。」

「そうならありがたいね。」



続きがあるんだろ?と目で促す提督。

当たり前だが響が感じた疑念の根拠というにはまだ薄い。

794 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/15(月) 01:05:00.72 ID:ZkrAgJQR0

「候補生さんは追撃すれば圧勝できる状況でわざと見逃し相手の被害を抑えた。」

「或いは此方に被害を出せずに勝てる状況でわざとに軽微な被害を食らう。」

「それら一つづつは違和感なく行われているし最もな理由付けも可能だよ。」

「例えば追撃をせずとも此方の勝利は確定しているため被害軽減に努めた。」

「多少の被害を出すことにはなったが

 強引に進めたため勝利を確実に物にすることが出来た。とかね。」



響の説明は尚も続く。



「演習はこれまでのテスト等で成績上位者が

 演習海域もしくは勝利条件を選択して、残った方をもう一人が選択する。」

「成績最下位でスタートした候補生さんは

 相手が有利に進められるはずの条件全てにおいて勝ってきている。」

「辛勝という風に見せかけた試合運びから

 圧勝という試合運びのものまで自在に演習結果を操作しながらね。」

「その手際は熟練の司令官に並ぶとも劣らないと思う。」

「そして試合内容と対戦相手を改めて見比べれば

 私達艦娘候補生の間で評判が宜しくない相手には容赦なく

 逆の相手には手心を加えている。」

「私も叢雲が『 らしくない 』といわない限りは見比べようとは思わなかった。」



響がいい終わると提督の顔を見た。



「なかなか叢雲はよくみてるな。」



響の説明に相槌を打つ提督。

その表情は生徒が正しい答えを述べるのを満足そうに見つめる教師の様である。

795 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/15(月) 01:07:55.01 ID:ZkrAgJQR0

「その事を踏まえて本来は私達に知らされていない採点基準があって

 候補生さんはそれを調整しているのじゃないかなと思ったんだ。」

「叢雲がらしくないと言ったのも相手に加点、或いは減点させるものだった。

 候補生さんが採点基準を知る立場にあると仮定すれば……。」

「不自然な艦隊指揮にも納得がいくと。」



それはある種の確信を持った結論。



「それに、候補生さんはあまりにも指揮が慣れすぎているのだもの。

 暁や私が司令官と呼びそうになるくらいにね。」

「それほど堂に入っていると思われているわけか。」

「そうだね。」



そして少しばかりの間が空き提督が笑う。



「まっ、いいだろ。及第点という所か。もう少し早く気付くかと思ったがな。」

「その推測の通り俺は採点基準を知っている。

 当たり前だが勝ち負けだけで艦隊運営されちゃ敵わんからな。」

「敵を殲滅したが自分の艦隊も壊滅しました、じゃ話しにならんだろ?」

「それはそうだね。」

「さらに言えば敵拠点を破壊、確保したとしても

 今度は敵が奪い返しにくるのに対して

 守る為の余力が無いと奪ってもまた直ぐに取り返されてしまう。」

「艦隊を動かすってのは1つ終ればそこで終了ではない。

 連続で次がある。それを見据えた指揮が必要なんだ。」

「時には負けて勝ちをとる必要もあるっていうことだ。」

「敵の被害を多くすることを主目的として

 積極的に勝ちに行かない事も必要という事だね。」

「そういう事。ただの試合の勝ち負けよりそういう将来を見据えた指揮が

 出来ているかどうかのほうに成績の採点は重きを置いている。」

「さらに言えば鎮守府運営を模擬的にさせることで部下へ仕事を投げる事、

 早い話采配上手か独善的に全てを自分でやりたがる残念さんかを見分けたりとかな。」

「人となりも採点されているという事なんだね。」

「工場出荷の製品が足りないからといって不良品を出荷するわけにはいかないだろ?」

「なるほど、司令官は不良品を取り除く検査員という事なんだね。」

「俺は、ただの候補生にすぎんよ。司令官呼びはやめてくれ。

 まぁ、俺の役割としてはそんな所だ。」

「ふふ、油断すると司令官呼びしてしまうね。」

「私達は既に皆、卒業後も貴方、候補生さんの部下でありたいという部分で意見は一致しているのだけど?」



続く言葉は可能かという事。
796 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/15(月) 01:10:14.05 ID:ZkrAgJQR0

「すまねぇ。そいつは無理だ。

 俺の立場上、一つの鎮守府に納まり指揮する事はない。」

「そっか。」

「代わりに一線級の精鋭が集まる鎮守府に配属されるように手引きはしてやる。」

「俺の下でいる間は色々勉強になっただろ?」

「それは間違いなく。」

「それを役立てて欲しい。

 そしてその言を入れないような無能な上なら教育してやって欲しい。」

「まぁ、傲慢かもしれんがな。」

「確かに傲慢だね。」



そして隣に座る響の顔を覗きこむ提督。



「そして、本題に移るか。」



提督の言に体をこわばらせる響。



「電から情報の提供を頼まれたんだろ?」

「隠し事は出来ないね。」

「隠し事というよりバレバレだ。諜報活動は基本のきだしな。」

「卑怯だとかは言わないんだね。」

「戦争にルールはある、が、だからといって

 卑劣な手を使うなという訳じゃないだろ?」

「それを入れての採点だ。諜報にしてもされる事前提で動いているかどうかも一つの基準だよ。」

「妹の電に頼まれたんだろ?流したいだけ流すといい。」

「暁は俺に隠し事できないだろうし肝心の情報を抜くには頼りない。」

「雷だと俺に直接聞けとつれてきそうだしな。それはそれで楽しそうだが。」



くっくっくと笑いながら響の顔を見る提督。
797 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/15(月) 01:10:45.92 ID:ZkrAgJQR0
「ま、そういう訳でこっそりどういう戦術をとるのか

 聞き出してくれと頼めるのがお前さんという単純な消去法だ。」

「いいのかい?」

「いいさ。ただ、俺はお前さんの妹を秘書艦に選んだ候補生を徹底的に叩き潰すつもりでいる。」

「そいつはどうあがいても変えられない必定だ。」

「知ったからこそ負けを悟るという事もあると言う奴だ。

 しかし、電が秘書艦を勤める候補生にはそれを望めるほどの才はねぇ。」



そして、煙草を咥え、火をつける仕草をしようとしてやはり止め。



「無能の七光りは刈り取らねぇといかん。

 すまねぇがお前の妹には辛い目に遭ってもらう。」

「妹から聞いちゃいると思うが最終戦の相手は『 屑 』だからな…。」

「うん。」

「電に聞かれたことはすべて教えてやれ。俺はそれを上回る。」

「傲岸不遜と笑うならそれでもいい。だが、勝つのは俺だ。」



圧倒的強者の余裕。その言葉を聞き何かに納得したのか安心したのか響は席を立ち帰って行った。
798 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/15(月) 01:12:37.76 ID:ZkrAgJQR0

そして、提督が煙草に火をつけ一服。



「叢雲?いるんだろ?」



建物の物陰に一言。



「あんたは…。」



気付いてたのと言いたそうに出てくる叢雲。



「やっぱりいた。」



煙草を手に持ち替え、笑い声を上げる提督。



「ちょっと、かまかけたっていうの!?」

「その通りだ。まんまと引っかかったな。」



はーっと溜息を一つつく叢雲。



「凡そは聞いていたんだろ?」

「えぇ、まぁ。」

「響に手の内を全部教えてやれ。どうせ使わん。」

「あんたって本当に性質が悪いわね。」

「なに、相手が勝手に踊ってくれるんだ。

 こっちは踊りを鑑賞すればいいのさ。」

「それにこっちが流した情報を馬鹿正直に信じるアホなら、

 はなから提督業なんぞ務まらんよ。」

「あっきれた。」



そして、提督は脳裏に思い出す。

叢雲が今まで秘書艦を務めその能力に問題有りとした提督連中の

所属する派閥の長が今度対戦する演習相手の血縁である事を。


「叢雲。」

「なによぉ。」

「勝つぞ。」

「当たり前よ!」

「いい返事だ。」


この演習が後に卑劣上等、型破りな演習で

敵を圧倒したとして記録に残ったのはまた別の話しである。

そして、一人の提督とその秘書艦が、

悪名でその後有名になる切欠となる最初でもあった。
799 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/15(月) 01:19:27.86 ID:ZkrAgJQR0
次回オシオキデース!
試験の採点はナルトの中忍試験をイメージいただければいいでしょうか?
勝ち負けで提督の資質を判断してるわけじゃないよという奴ですね
レスで篩にかける&落さないといけないやつをつぶすために来たとのレス
良くお読みいただいた上での考察ありがたいと思っております
お読みいただいている皆様のレスはこの先の展開を色々推察していただいていてというのが前から多く
本当に感謝です、とはいっても次回はうわ、これは卑劣だわという戦い方になります
屑を相手どる以上仕方無いね!
ここまでお読み頂きありがとうございました、乙レス、感想レスいつもありがとうございます
励みになっております、他のも頑張って更新するべく頑張っておりますので更新の際は呼んでいただけるとありがたいです
では次回の更新もよろしくお願いいたします
800 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/15(月) 02:40:33.80 ID:BfU/kMLOo
乙しか言えなくて悪いがいつも楽しみにしてますよ
乙!
801 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/15(月) 06:35:00.52 ID:1+v62k180
乙。
もっと早くに続きが読みたいわ
802 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/15(月) 10:07:35.70 ID:Ju8Z49gj0
乙!
803 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/15(月) 11:49:24.17 ID:a16hG/ur0
完全に叩き潰し将器がないとレッテル貼るとなると艦娘へ調略仕掛けておいて演習中に次々と離反させるくらいしか思い付かないがそれだと群狼戦術のフリが勿体無いなあ、展開が楽しみだ

この提督適性は軍学者に見えるがやってることは軍師の仕事なんだよな
この歪みがいつか大きな失敗招きそうで怖い
804 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/25(木) 00:23:44.38 ID:1e9/xGBr0
暖かいレス、ありがとうございます
更新速度をあげれるよう頑張りたいものの相変わらずの亀更新
本当に申訳ありません、という訳で今回の更新です
お時間宜しければお付き合いくださいますと嬉しいです
805 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/25(木) 00:25:36.24 ID:1e9/xGBr0

そして、決勝戦の時が来た。

その日はいつになく軍令部や艦隊司令部から、

所謂お偉いさんの方々が養成学校へと集まってきていた。



「これはこれは元帥まで……。」

「軍令部参謀総長に誘われてな。」



養成学校の校長が摩擦から火を起こせるのではないかという勢いで揉み手し迎える。



「養成学校はいくつかあるが此処の決勝戦はレベルが高いと元帥と話しをしていてね。」



元帥と気さくに会話をするのは

軍令部参謀総長にして戦略参謀長の大将。



「将来有望な艦娘候補生がいれば横須賀にいただきたいものですな。」

「君の所は充分だろう。なかなか欲張りだな。」



元帥と参謀長の会話に加わるのは

横須賀連合艦隊司令部長官にしてこれもまた同じく大将。

そして。



「決勝進出の提督候補生だが三重尾(みえお)中将の息子が出ているそうですね。」



司令長官が水を向ければ。



「ええ、息子の春蔵(はるぞう)が出ます。」

「これはなかなか優秀なんでしょうな。さすがですね。」

「卒業後は南方方面軍で中将の右腕として活躍してくれそうですな。」



中将と階級で呼ばれた相手は

今だ戦線整理を進めている南方方面を指揮する司令長官である。

806 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/25(木) 00:27:05.75 ID:1e9/xGBr0

「えぇ、いずれその様にはと考えています。

 それにしても対戦相手はなんとも……。」



お茶を濁すがその言葉にはいかにも見下した印象が伺える。

一番下から勝ち上がってきているとはいえ

一見すれば運がいいだけのような勝ちあがり方。



「息子の対戦相手には力不足ですな。」

「これはしかり。

 中将の息子殿にとってこの様な未熟者の相手は役不足でしょうなぁ。」



中将が息子を褒めればその腰巾着の大佐が言葉を重ねる。



「はは。まぁ、ここまで頑張ってきたんだ。

 それなりには実力もあるのだろう。」



参謀長がその中将の言葉に理解を示しつつも嗜め。



「運も実力のうちといいますからな。」



司令長官がそれにつづけば。



「圧倒的格上に当れば今までのメッキも剥げるだろう。

 我らはそれを見ていればいい。」



元帥が会話を纏めた。

そして、演習の開始時間が迫る中。

二人の候補生はそれぞれが選んだ出撃地点近くに移動を完了していた。

807 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/25(木) 00:28:18.10 ID:1e9/xGBr0

「随分と上層部の方々がいらしていたな。」

「勝てば上層部への覚えも目出度くなる事間違いなし。」



自分の父親以外にも上層部の重鎮達が集まっていたことを思い出し。



「おい、電。演習相手が使う戦術とかすべて間違いないんだろうな?」

「はっはい。間違いないのです。」

「もし間違えていたら『 罰 』を覚悟していろよ?」



下卑た顔とそしてねちっこい視線を電へと向ける。

彼が言う罰とは精神的、性的な苦痛。

彼はそれを自己の親、

寅の威を借るなんとやらでそれを外へ漏らさないようにしている。



「雑魚の三下が生意気なマネをしやがって。思い出すだけで腹が立つ。」



提督が俺が勝つと挑発したこともありこの三重尾候補生は

成績上位者が先に選ぶ演習海域、もしくは勝利条件で勝利条件を選択していた。

その選択した勝利条件とは敵艦隊の殲滅である。

そして提督が後から選んだ演習海域は

国際海峡であるマラッカ、シンガポール海峡を想定した多島海海域。

島がそれなりに点在する形の演習海域である。


808 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/25(木) 00:29:27.49 ID:1e9/xGBr0

「小型艦に旧式のポンコツ戦艦を抱えている連中だけあって頭が回るな。」

「だが、連中の潜水艦に気をつけていればこっちの艦隊の敵じゃない。」



自身が率いる艦娘は大和型に翔鶴型。最新鋭の艦娘達に駆逐にしても島風。

軽巡は球磨、長良と火力重視、おまけに重巡は摩耶、鳥海と

成績優秀な娘達を自分の親の立場を利用して選んでいる。

対潜、火力、制空。全てにおいて、万に一つも負ける理由がない。



「そろそろ演習開始です。」



不正が無いかの監視役として来ている教官の鹿島が開始時刻の到来を告げた。

そして。

演習は午前9時きっかりに始まった。



「全艦娘、出撃!」



出撃地点に設けられた出撃ドックから

次々と艦娘達が出撃していくのを見送り始めた次の瞬間だった。

海面に雷跡が走り、最初に出撃していった駆逐、軽巡の艦娘達に魚雷が命中。

複数本の魚雷による水柱が派手にあがる。



「馬鹿な!?相手は出撃地点をどうやって!?」



双方の出撃地点は幾つかある中から

公平性を期すために養成学校側がランダムで選ぶ。

だからそれを知る事ができる訳が無い。まさか。

809 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/25(木) 00:31:50.65 ID:1e9/xGBr0

「買収して出撃地点を事前に知っていただと!?」


狼狽し、とんでもない独り言をつい口走る候補生。


「言葉には気をつけていただけますか?

その様な工作は受け付けていませんよ。」

「それとも御自分がされている事の自己紹介ですか?」



冷ややかな笑顔で候補生の独り言を即座に否定する鹿島。



「駆逐艦 電、大破、軽巡 球磨、長良、大破、重巡 鳥海、中破。」

「駆逐艦島風 小破、重巡 摩耶 小破。被害判定は以上ですね。」



淡々と被害を確認し告げる鹿島。



「こっ、こんなの無効だ!無効試合だ!!」



演習開始と同時の潜水艦による攻撃。

相手の準備が終ってないところを攻撃する卑劣な一手。

無効な攻撃であると言いたくなるのも分からないではないが

鹿島が次に口を開け述べた言葉は呆れだった。

810 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/25(木) 00:33:05.87 ID:1e9/xGBr0

「随分とよく喋る無能さんですね?」

「なっ!?貴様!誰に口を聞いていると……。」

「思っているか?ですか?

 当然、目の前にいる状況を把握していないお馬鹿さんですよ?」



銀色のふんわりとウエーブの掛かった髪が、

その腹のそこから来る笑いを抑えているのが分かる程に揺れる。



「いいでしょう、理解出来ていないようなので特別に教えて差し上げます。」

「私達がお知らせしている演習日時、

 演習の開始時刻はあくまで開始時刻に過ぎません。」



蟲惑的笑みを浮かべ、口の前に指を一本立てて鹿島は解説を始める。



「開始時刻は開始する時刻であって出撃する事を表す時間ではありません。」



鹿島のこの言葉にいまだに要領を得ないという顔を見せる候補生。

その候補生の顔をみて、

やれやれとでもいいたげに眉根を寄せてさらに説明を続ける。
811 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/25(木) 00:35:02.93 ID:1e9/xGBr0

「演習の開始時刻はあくまで作戦開始時刻に過ぎないという事です。」

「今まで皆が皆、開始時刻に出撃を律儀に守ってきた事もあってか

 開始時刻=出撃時間と勘違いが進んでいたようですがね。」

「開始時刻前に攻撃をしたりしなければ

 演習海域の何処に潜んでいても

 それはルール違反にはならないという事です。」

「じゃっ、じゃぁ、何故それを全員に言わない!?」



鹿島の言葉に反駁しようとする候補生。

しかし、それを遮り言葉を続ける鹿島。



「私達学校側になんら不都合もありませんので

 それをいちいち訂正、説明する必要性が無かったという事です。」



つまりは勝手にやれという事。

そして、目を細く、獲物を見つけこれから嬲る心算の捕食動物の顔をして鹿島は続ける。



「その程度の事を気付けない、

 見抜けない方が実戦でものになるとでも?」

「改めてお伝えします、この演習開始と同時の攻撃には

 なんらルール違反はありません。」



鹿島はこの事態を予感していた。

対戦相手の候補生に最初に会った時に戦場帰りの香りを感じていた為。

実戦の現場に立った経験があるかどうかは別として

その相手からは実戦を知っている人間が纏う独特の香りがしていた。

だからこそ。

この演習時刻が作戦開始時刻に過ぎないことを踏まえ演習をぶつけてくる事を見抜いていた。
812 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/25(木) 00:36:17.16 ID:1e9/xGBr0

(とはいえ、最後の最後で見せて来るというのは

 他に真似をされて自分に使われる事を防ぐ目的もあるという事でしょうね。)



だけに。



(提督に任官されている方であれば

 ここで冷静に作戦中止の判断を下されるのでしょうか?)

(最も実戦であればそもそもの対潜哨戒網が抜かれているという時点で

 間抜けどころではないでしょう。)



ここでの演習終了は鹿島にとって面白くない。

鹿島はもっと、もっと、この面白い状況を見たいのだ。

人の不幸は蜜の味。

それも、親の権力、権威を傘に着て

好き勝手してきた相手が不幸に墜ちるさまを見るのは………。

至極。愉悦である。

813 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/25(木) 00:37:25.43 ID:1e9/xGBr0

(で、あれば。私が演じるべき役割も自然と決まるものですね。)

「それで、候補生さんは演習を続行されますか?」



この手の無駄に自己評価が高い相手を引けなくさせるためには煽る事が一番。



「ここで演習の終了を選択する事も良いと思いますよ。」

「御来賓の皆様がどう思われるかは分からないですけれど……。」



海軍上層部がこの演習を見ているという事実を思い出させてやる。

そうすればこの手の無能は頭に血が上り冷静な判断は下せなくなるだろう。



「続行に決まっているだろうが!!

 まだ、大和型戦艦の2人に空母の五航戦の2人も無傷。」

「重巡の2人にしたところで中破と小破だ!

 対潜にしても島風が残っている!

 演習を続けるのに支障なんぞない!」

「了解いたしました。では、演習続行という事ですね。」

「大破判定を出した子達については規定どおりに

 演習海域から離脱させ学校の方へ向わせます。」



所謂ゾンビ行為を防ぐ為である。

そして、鹿島は目の前の候補生が安い挑発に乗せルビコンを渡らせる。

その返答を聞いた鹿島の笑顔は実に恍惚であった。

814 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/07/25(木) 00:42:36.63 ID:1e9/xGBr0
鹿島がS女王
お馬鹿島もいいですしエロ女王なのもいいです
実際他の作者様での鹿島は割とそんな感じの役どころが多いですし…
ですが、こういう知恵が回り尚且つサドっ気のある鹿島もいいなぁって思うんです
物語の進みが遅くて本当に申訳ありません、香港のなんか現実がやばい事なっててあれれ?な状況
中国そこまで馬鹿じゃないと思っていたんですが現実は小説よりも奇なり……
いつも乙レス、感想レス本当にありがとうございます
前回の更新の後にいただいたいくつかの暖かいレス、固定で読んでくださっている事のありがたみを
改めて実感いたしました、なるべく更新を早めに行えるよう頑張っていきますのでこれからもお付き合いの程
どうぞ、宜しくお願いいたします
815 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/25(木) 01:30:47.21 ID:t9cxth530
回りこみやすい島だらけの地形を選んだか
これは似たもの艦隊が生きるね
816 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/25(木) 06:09:55.11 ID:TrT726nr0

固定観念にとらわれると現場に出てから困ることはよくある。
欺いてかわして隙きを突かねばこの先生き残れないね。
817 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/25(木) 08:11:47.34 ID:usIqfFKPO
携帯からですが1です
相手側の人数足りていないことに今更気付きました
長門、陸奥がいる事にしてください
申し訳ありません
818 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/07/25(木) 20:33:43.02 ID:4j9W/cXN0
乙乙
立ち絵だけ見た時の鹿島のイメージが完全にこれだ
サド鹿島いいよね
でもやはり本家のゆるふわ鹿島を二次創作で見ない
819 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/03(土) 00:14:41.08 ID:xNtdGOdc0
このスレを使い切る勢いで提督の過去編を頑張るぞ…
暑い毎日が辛い、少しだけ更新いたします
820 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/03(土) 00:16:14.07 ID:xNtdGOdc0

私、今回の演習の監視員である練習巡洋艦香取は考える。

目の前の候補生という人物について。

今まで見てきた候補生と比べ明らかにそれは異質だった。

そして、それが異質であると気付く相手がいるかどうかを

本人は観察して楽しんでいるようでもある。

さらに言えば。



「あっ、香取先生。そろそろ移動しますので無線機もっていきますね?」


開始時刻を過ぎて僅か10分ほどで

艦娘達への指示を出すのに使用する無線機のみもち移動を開始しようとするありさま。



「どちらへ移動されるおつもりですか?」



「はぁ。演習におけるルールブックを読む限り演習開始後は

 開始地点にいなくてもよいようですので

 司令部としての機能を他所へ移動しようかと思ったしだいです。」



演習開始時、候補生は所定の開始地点にいる事。

この一文の解釈をそうとるかと腹の中で笑う。

確かに妹として一緒に教官を務める鹿島が気に入る訳だ。

この候補生はルールの穴を解釈の仕方でいかようにも取れるというやり方を心得ている。

この手の人物は相当な曲者なのだ。

821 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/03(土) 00:17:36.06 ID:xNtdGOdc0

「いずれ敵がここを直接殴りに来るでしょう。敵司令部の破壊は基本ですからね。」

「はて。そう思われる根拠は?」



あれ?という顔で此方を見てくる。

しまったかしら?どうやら相手はこちらを高く評価してくれていたらしい。

これは下手をうったかしら?



「教官はなかなか点数を与えるおつもりが無いようですな。

 さすがに手厳しい方と評判なだけある。」



あっ、黙っていたら何か勝手に解釈してもらえてみたい。

これはいい兆候ね。



「成程。今までの演習の記録を見る程度の注意力のある候補生であれば

 同じ演習海域の使いまわしくらいには気が付きます。」

「出撃ドックにしても帰還ドックにしても設備を一朝一夕で設ける事はできません。」

「簡易的、その時だけ使えればいいやという事で作る事も可能でしょうが

 学校として卒業試験以外の様々な訓練での使用を考えると

 固定で作ってしまう方が楽なのは自明の理。」

「どうぞ。続けてください。」



ここはもう少し喋らせた方がよさそうね。存外饒舌に語る人物の様ね。
822 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/03(土) 00:18:50.44 ID:xNtdGOdc0

「演習時のドックの選び方にあえての法則性を作っているように見ました。」

「お答えしかねますね。」

「気付くものが気付けば勝手に利用してくれというやり方ですね。

 まさしく事前にどれだけの情報を仕入れ、

 それを分析し己の優位性を確保できるかどうか。」



候補生の情報収集、分析能力についても

裏での採点ポイントなのを気付いているみたいね。

この候補生さんはやるわね……。



「過去のデーターにアクセスできるようにしているのも、

 やってみろと言っている様で。なかなか楽しめました。」

「あらあら、これは、なかなか。」

「私程度の者が考え付くのであれば相手も考え付くというのはまた真理かと思います。」



そんなわけないだろと突っ込みを入れたくもある。

よっぽど丹念に複数年分の演習記録を見ないと

法則性など分からないだろうに。



「演習開始時点での開始位置。

 司令部を置いている位置が分かれば、私なら殴りに行きます。」



確かに敵司令部を殴ってはいけないというルールには書いていないけれど。

清々しい笑顔で爽やかにルールに違反していませんよねと

言外に含むのは悪党だなと思わずにはいられないわね。

823 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/03(土) 00:20:34.89 ID:xNtdGOdc0

「コロンブスの卵とは言いますが自分が一番であるかどうかはまた別ですから。」

「となれば敵にやられる前に尻に帆をかけて三十六計逃げるになんとかですよ。」

「部下にやることは伝えていますから面倒がやってくる前に雲隠れです。」



なんとまぁ、この候補生は指揮をとる気が無いらしい。呆れた。

いえ、これはあれね。戦が始まった時には既に終っている。

ここまで丹念に情報を分析しそれに対処すべく細工を終らせているという事。

開始直後の相手被害状況も考えれば後はやる事が無いという事ね。

準備段階での差が勝敗を決めるとはよく言ったものね。



「了解いたしました。候補生さんとご一緒しましょう。何が手伝えますか?」

「あっ、お手伝いいただくようなことはなにも……。」


恐縮したような態度を見せるがこれは絶対にそう思ってないやつね。

なんて油断の置けない相手であろうか。

本当に恐ろしい相手だわ。
824 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/03(土) 00:22:22.25 ID:xNtdGOdc0

香取が提督と会話をして提督の人となりを改めて分析していた時。

提督もまた、候補生として考えていた。

目の前にいるこの練習巡洋艦香取という女性は恐ろしく侮れない相手だと。

なんせ、あの雰囲気だけで人を殺せそうなものを漂わせていた鹿島の姉妹艦娘だ。

そのおっとりとした雰囲気は紛れも無い欺瞞という奴だ。

見た目だけの妹と違いその雰囲気までもおっとりとかつ言葉は悪いが凡庸に見せかける。

並大抵のものじゃ出来ない。

先程の質問への答えに対してもそうだ。

移動を開始すると告げる前のやり取りに対してもそうだ。

何故かと問うて来た。

その質問の意図が分からずに間抜けな顔を見せてしまったに違いない。

これは恐ろしく減点をされているかもしれない。

825 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/03(土) 00:23:43.78 ID:xNtdGOdc0

なぜなら試験の答案用紙に

その答えに至った課程を一切書かずに答えのみを書くようなものだからだ。

論理的にその答えに至った過程も見るのがこういった演習型の試験にも関わらず

答えのみしか答えない生徒というのは非常にまずいだろう。

その答えに至った理由を説明できないというのは

理解が悪い自分の部下に対して何も説明できないという事。

早い話指揮官能力に問題ありと言える。

自分の指示を部下に納得の行く形で説明が出来ないというのは実に不味い。

命令の一言で済ませることが出来るというのが軍人ではあるが

部下へ嚙んで含んで理解、納得した上で動いてもらわないと

その成果は芳しくないのが当たり前。

さらに言えば人徳、人望など望むべく無く、

戦場の露となるべく後ろ弾を拝領するという事になりかねない。

だが、提督はまた、香取教官は以外に慈悲深い相手なのやもしれないと思った。

826 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/03(土) 00:25:01.00 ID:xNtdGOdc0

というのも質問の後に敢えて沈黙という間を作ってくれたからだ。

これがこちらをとがめる心算であれば

即時に何故その考えに至った事を説明しないなどととがめられただろう。

間を作って敢えてこちらに答えを促したという事は

こちらに多少なりとも好意的であるということ。

となればやることは一つ。

説明の不足を一気に語り、減点されることのなきようにというやつだな。

身分を校長以外知らない以上、流石に上の面子を潰すわけには行かない

饒舌に喋りすぎていないかが心配だ。

なんせ下から這い上がる演出の為にわざとに成績を落とした状態である。

これ以上減点を貰おうものなら幾ら自分の実力を上が把握しているといっても

渋顔の一つくらい覚悟しなければならないだろう。

無能に座らせる椅子は無いというのが上の立場だからだ。

説明は終ったが……、どうだ?満足してくれたかな?

………、よし、了解してくれた!

まったく。この教官は何を考えているか分からないから恐ろしい相手だ。

827 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/03(土) 00:25:40.88 ID:xNtdGOdc0

そして、提督が香取の底知れなさについて畏怖の念を覚えている時。

この候補生さんの思考の柔軟さはなんとも恐ろしいわね。

香取もまた、候補生である提督に畏怖の念を覚えていた。

結果、お互いの考えは同じであるがため、抱く感想はまた同じ。



((まったく、油断の出来ない相手だ(ね)、苦笑しかでない))



提督と香取はお互いの顔を見てひきった笑顔で笑い合うのであった。

828 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/03(土) 00:26:54.98 ID:xNtdGOdc0

提督達が笑い合っていた丁度その頃、

山城は腕時計で作戦開始時刻になったことを確認し動き出す。

彼女が立つのは海面………。

ではなく、演習海域のとある丘の茂みの中である。



「虫が多くて気持ち悪い……、はぁ−、不幸だわ……。」



と、いつもの愚痴をいい。

事前に提督から伝えられた作戦内容を思い出しつつ。



「ほんと、相手が不幸だわ……。」



彼女はにんまりとその口唇を吊り上げたのだった。
829 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/03(土) 00:30:21.62 ID:xNtdGOdc0
ここまでお読み頂きありがとうございました
皆様、熱中症にはお気をつけください、経口保水液がおいしいとか感じられるような状況はアウトです
いつも感想レス、乙レス、ありがとうございます
周りこめる地形条件、ウルフパック作戦、そして色々
卑怯だろ!というやつです、まさしく勝てばよかろうなのだ!を時で行く糞野郎を提督はやります
ではでは、次回の更新もお読みいただけると幸いです、ここまでお読み頂きありがとうございました
夏イベント、ほんとどこいくんでしょうね?バケツが不安だわ…
830 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/03(土) 07:52:51.12 ID:6nwtO7WdO
乙!
831 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/03(土) 09:45:32.06 ID:33TPt9nPo
香取からそこはかとないポンコツ臭がして笑った
832 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/03(土) 11:31:04.13 ID:f1uEgEbX0
乙乙
別にポンコツではないんだろうけど比較対象がずば抜けてるせいでポンコツに見える
833 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/03(土) 12:11:39.44 ID:ONkDfwo2O
乙です。
猛暑でおかしくなりそうですが
続きをはやくはやく希望します
834 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/03(土) 13:07:59.41 ID:PVnQXPBi0
このお互いに先の先まで読みすぎて結局普通の結論に落ち着くところが好き
835 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/03(土) 13:09:54.60 ID:gAoWBJj30
提督賢しすぎて回りこみすぎた挙句一周回ってお互いいいところに落ち着いとるw

孫子をしっかり修めてなお将たる素養のうち五分の二が片鱗も現れないとこ見るとこの時点では響に言った通り腰落ち着けて艦隊指揮する気なかったんだろうなあ
836 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/21(水) 00:27:28.30 ID:pvOQ4SiX0
毎週何曜日に更新とか出来る程に筆が早いといいんでしょうけれど…
などなど思いつつちまちました更新速度です
お時間宜しければお読みいただけると幸いです
837 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/21(水) 00:29:47.98 ID:pvOQ4SiX0
扶桑、山城達が別行動をとっている際、

叢雲たちもまた行動を開始していた。



「それにしてもこう、ばらばらでいいのかねぇ」



猫かぶりの口調から普段の口調に戻り隼鷹が分隊の旗艦を務める叢雲に聞く。



「戦力の分散、逐次投入は無能と言いたいのは分かるわよ。」

「実際私も馬鹿じゃないのって具申したわよ。」



そして叢雲へ提督が返した言葉は。



「あいつったらこう言うのよ?

 まともに敵を圧倒的暴力で殴れるなら策を練ったりする必要なんかねぇ。」



提督の口調を真似しつつ。



「圧倒的な暴力の前には戦術、戦略なんか意味がねぇんだ。

 って開きなおるのよ?!」

「あー、確かにあの提督なら言いそうだわ。」



艦隊内では既に候補生という呼び方ではなく提督、

司令官呼びで通っているらしく隼鷹が叢雲の物まねに相槌を入れる。



「俺達みたいな弱小戦力の寄せ集めじゃ奇手奇策。相手を出しぬかねぇと勝てねぇ。」

「なら相手を徹底的に虚仮にしつつ怒らせるのが重要だ。怒りは最も我を忘れさせるからな。」

「怒りに我を忘れた相手を潰すのは簡単だ。」

「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし。だそうよ。」



提督の口調を真似しつつ隼鷹に話す叢雲。



「負けない要素をがっつりつくって相手のミスをまつか……。」

「負けた相手の精神を食い破るえげつなさ。惚れるねぇ。」

「千年殺しでもするつもりかね。」


相手にトラウマでも与える心算かという隼鷹の指摘。


「さてと、出番はそろそろかしらね。」


叢雲が片手をあげ近くにいる暁に出番が近いことを教える。


「待ちに待った出番ね!」

「えぇ、そうよレディ。幕はあがったわよ。」


そして、叢雲達が待ち構えるなかまた演習相手も動き出した。
838 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/21(水) 00:30:50.18 ID:pvOQ4SiX0

「この演習は既に負け戦なのではなかろうか?」



最初の不意打ちを受けて艦隊の被害甚大にあるにも関わらず

指揮官の候補生が演習続行を選択した事に疑義を唱える長門。



「行けといわれた以上は行かねばなるまいよ。」



長門の疑義を命令であるがゆえに仕方なしと答える武蔵。



「翔鶴さんに瑞鶴さん。偵察機の索敵状況はどうですか?」



空母の二人に敵艦を見つけたかどうかを尋ねる大和。



「偵察機が敵を見つけたわ!駆逐2の軽空母1よ!」



瑞鶴が報告を上げる。



「敵の部隊として随分と細かく戦力を分けているな……。」



長門がいぶかしむのも無理ない。

初手で潜水艦娘達による奇襲を受けたのだ。

戦力的に見て劣勢である叢雲達がその戦力を更に細切れにさせて行動しているという事は

何某かの策、伏兵なりが存在していると考えるに難くない。

839 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/21(水) 00:32:39.94 ID:pvOQ4SiX0

「潜水艦を何処かに潜ませておいて伏せ撃でしょうね。」



敵の今までの演習内容をみれば

俗に言う郡狼戦術を好んで利用している事が分かる。

ましてや自分達の対潜能力のある艦娘達が

最初にそのほとんどを退場させられている事を考えればその意図は明らか。



「でしたら空母艦載機での遠距離攻撃のみで、艦砲射撃は止めますか?」

「今回のMVPも私達姉妹が貰う事になりそうですね。」



含みのある笑みと共に翔鶴が言う。

演習大会については当たり前だが提督候補生の指揮能力だけではなく、

その指揮下にある艦娘の能力も当然、考査の対象となる。

成績最優秀で卒業するには当たり前だが

優勝したチーム内で当然の様に戦績を重ねる事が重要。

候補生の調整能力が長けていればチームとなる艦隊内での役割分担や

演習後の報告書での手心などで不満が出ないようする事も出来るであろう。

そういったマネジメントが上に立つものには欠かせないのである。

それを疎かにすれば鎮守府ないで戦果を争う者達で派閥が出来たあげくの

足のひっぱりあい等が起こるというもの。

だが、この艦隊を率いる候補生はその辺が実にお粗末だったようで

空母の姉妹は戦艦の砲撃よりも長射程である艦載機の攻撃を生かし

常に戦果をほしいままにしていた。

島風や大破判定で退場した娘達はまだ対潜での活躍の場もあったが

長門や陸奥、大和や武蔵。

そして重巡の二人からすれば空母の姉妹に

活躍の場の殆どを取られている状況が大会中ずっと続いている。

その胸奥に渦巻く感情は一体どれほどのものかといえよう。

840 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/21(水) 00:34:25.88 ID:pvOQ4SiX0

一方その頃、提督と香取は既に移動した先でポーカーに興じていた。



「これは随分ブラフを効かせていたのですね。」



香取が降りた後に提督が出した手札はただのワンペア。

それに対して香取の手札はスリーカード。

何試合目かの感想戦。香取は提督が口八丁、手八丁。

そして顔の表情を目まぐるしく変えて

その表情を読むことを難しくさせていたことへ驚嘆を込め言葉を語る。


「そうですね。私は顔に出やすいですから。」

「とはいえ、これでやっと五分ですか。」


香取と提督のポーカーは勝敗がやっと同じになった。



「続けますか?」



香取の問いに対して提督は答える。



「止めときましょう。

 どうも勝ちを譲っていただいているような節もありますし。」

「五分に持ち込めて気持ちよく終れる間に終るのがマナーというものでしょう。」

「遊びは禍根を残さないようにという事ですか。」

「えぇ、今後も気持ちよく付き合いたいのであればですね。」



香取は提督の言葉の含みを捉える。


「成程、足るを知る者は富む、ですか。」


香取が中国の故事で応じれば。


「和を持って尊しを為すでもあります。」



提督は日本の故事で応じる。
841 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/21(水) 00:35:59.67 ID:pvOQ4SiX0

「ですが、やろうとしていることは風林火山ですね。」



提督の行動がその実、間逆である事を香取は指摘。



「敵と味方の区別は大事ですですから。」



そして提督はその理由を述べる。



「気持ちは分かりますが……。」



しかし、と指を一本立て香取は語る。



「組織の中に敵を作りすぎるのはよくないと思いますよ?」

「この演習の結果は既に見えている通りでしょう。」

「ですが相手の候補生は提督として着任する事は間違いないと思います。」



香取が語る。


「………、それを私に語っても大丈夫なのですか?」


提督が疑問をぶつける。



「話せる範囲内で、機密漏洩に当たらない

 ぎりぎりのサービスではありますが心配はご無用です。」



香取が語る内容は提督にとっては既知の事。

そして提督はそれを阻止する為に動いているわけだが

香取がそれを知ることは無い。

重要なのは香取が語ったという事にこそある。



「意味の分かる方と見込んだ上ですので。」



こともなげに言うと思うが。



842 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/21(水) 00:36:46.39 ID:pvOQ4SiX0

「………。そこまで私を買っていただく理由はなんでしょうか?」

「そうですね。

 妹ほど私は戦闘能力が高いわけでは有りませんので

 観察能力を高めた結果といった所でしょうか?」

「教師という職務上、人を見る目がないと勤まらないのは当然ですが

 それを更にどう選別、育成するかというのは経験以外の部分も必要です。」



香取がメガネをくいと持ち上げる。



「文字通りにお眼鏡にかなったと?」

「そうですね、個人的に応援をさせていただきたくなる程度には、です。」

「………。今後も精進いたします。」



提督が香取と友誼を結ぶ。

それはあくまで個人としてだが、

後々を考えればお互いの利を見据えてでもあった。

843 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/21(水) 00:38:52.99 ID:pvOQ4SiX0


「じゃぁ、まっ、私と翔鶴姉ぇがさくっと倒すのを見てて貰いましょうか。」



悪気を感じさせはしないのだが…、

だけに性質が悪く、聞くものによっては癪に障る。

びんと音を立て放たれた矢が艦爆、

艦攻へと変化するのを長門達は見届け動き出す。



「隼鷹、そろそろお客さんが来る頃よ。」

「任せときなって。陰陽型の取り得はねぇ……。」



ばざりと巻物を一気に広げ祝詞を言祝ぐ。



「迎撃が早いってことさねぇ。」



彼女の巻物から召喚されたそれは戦闘機のみであった。

しかし、その数は。



「あたしの扱う艦載機は全て戦闘機だ。

 腹に魚雷、爆弾抱えた鈍重どもには遅れをとらないよぉ!」



まして提督がその操作の癖を見、

悪い所を相手へ付け入る隙に見せかける騙しを教え、

長所を徹底して伸ばさせた騙しの出来る艦載機妖精達。

そしてそれでいて本流は外れない。

あくまで応用は基礎の上に成り立つ。


「へへへ。さぁてぇ、性能に胡坐をかいたお嬢さん方にどれだけ通用する事かねぇ。」


ひゃっはぁ!と特大の感嘆詞をあげ全機無事発艦させたのだった。

程なくして演習相手の偵察機が自分達の方へ再度やってくるのを見届け

叢雲は自分達の艦隊内で使われている周波数で無線を飛ばした。


「こちらチェックメイト、ホワイトルーク!」

「キング!クイーン!ビショップ!ナイト!応答願うわ!」


チームとしての呼称、小隊、

といっても少ない戦力を更に細かくしているだけなのだが。

それを呼びかけ、叢雲の呼び出しに艦娘達が応ずる。


「虎は檻に入った!繰り返す!虎は檻に入った!」


提督が最初の奇襲で演習を相手がリタイアしなかった場合の、

もっとも続行するだろうがと付け加えた上で叢雲へ語った作戦を実行に移す。

その上で思い出すのは。
844 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/21(水) 00:40:20.86 ID:pvOQ4SiX0

「俺の艦隊指揮での仕事は作戦立案の参謀職だ。

 現場で即応して人員を動かす上での指揮官はお前さんだな。」

「指揮官とはいってもだ、現実その場にいるわけじゃないからな。

 お前さん達には独断専行してもらった方がいい。

 責は俺が負うから好きにしろ。」

「臨機応変、場合によっちゃ勝ちをくれてやれ。

 お前達を何かで失う方がおしい。」



勝つつもりではあるがその中心にすえる価値観の天秤はつねにぶれない。

そういう提督の真摯な態度が好ましいなと改めて思い、

できない事は出来る相手に投げるというなんとも鷹揚な態度を思い出す。

相手が任せると投げてくるなら、こっちはやる事をやるだけと

今まで司令官と仰いだ連中との違いに少し頬が緩むのを感じる。



「さて、みんな!締めて掛かるわよ!」



叢雲が掛け声を掛ければそれに応と一同が答えるのだった。

猛獣とて檻に入れば逃げられない。敵は既に術中にある。

最初に異変を感じたのは当然ながら空母姉妹だった。



「あれ?攻撃隊が全部おとされちゃった。」

「軽空母の搭載機数にしちゃ数が多い気がする。」



瑞鶴が攻撃隊の第一陣があっさりと撃墜された事に感想を漏らす。



「こちらへの攻撃は考えずに全艦載機を戦闘機にしているようですね。」



冷静に自己の艦載機を動かしながら翔鶴が分析する。



「あたしらが一方的にスコアで負けてるもんなぁ。」



摩耶のこの一言は余計だった。

現状の認識として実に正しいのだが、余計な一言だった。



「確かに負けていますね。」


大和が言えば。
845 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/21(水) 00:42:18.72 ID:pvOQ4SiX0

「流石に何日も演習に時間を割くことは無いだろうしな。」

「艦隊殲滅が勝利条件として設定されてはいるが

 せいぜい掛けて一昼夜といった所か。」



と大和の言葉をひきとり武蔵が言う。



「まさかとは思いますが敵はこちらを適当にあしらい

 時間が来るまで逃げる気でしょうか?」



大和が懸念を述べれば。



「夜戦となれば向うに分がある。

 ましてや潜水艦が残っている事を考えれば日が落ちれば此方は分が悪い。」



冷静に分析するのは長門。

ちっと盛大に舌打ちするのは誰であったか。



「敵は戦力を分散して逃げ回る事で

 此方を戦果で上回させることなく判定勝ちを狙う心算ですか。」

「随分と腰抜けで卑怯な作戦ねぇ。」



大和が叢雲達はそうと目論んでいる物と断定し

翔鶴がそれを軟弱者となじる。

もっとも時間切れによる判定勝ちを狙う心算なのであれば

叢雲達が戦闘に消極的であり戦力を細かく分散させて

ひたすら逃げるというのは一見、理に適っている。

(だが、果たしてそうであろうか?

 初手でこちらに潜水艦がいるという事を特に印象づけた相手が

 その様な単純な考えで動くのであろうか?)

(確かに初手のあれは卑怯ではあるが実に有効であり

 こちらの耳を奪うという意味でも重要であったし。)

(何より、戦力でみれば潰した方がいい戦艦である私達ではなく

 対潜艦を先に狙うという明確な意思が見られた。)

(しかし、それほどの相手がその様な稚拙な策をとるのであろうか?)

(こちらが既成概念に捕らわれているのを馬鹿にしたような戦術だが……)



勘という奴だろうか、長門は大和と翔鶴の考えに疑問を感じた。

艦隊の旗艦は大和である。なので、長門が出来たのはあくまで助言。

846 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/21(水) 00:43:19.50 ID:pvOQ4SiX0

「敵の意図が分かりかねる。

 一旦どうするか指揮官の候補生殿に指示を仰いではどうだろうか?」

「そうね、長門の言う事ももっともだと思うわ。

 慎重に進めるべきではないかしら?」



陸奥の援護射撃。そして。



「私も摩耶もここは慎重に行くべきだと意見は一致しています。」

「潜水艦に対する備えは今の私達には薄いです。」



鳥海が懸念を述べた。

叢雲達であればわざわざ提督に指示を仰がずとも意思決定が出来ただろう、

また、提督に判断を仰いだとして提督ならば相手の企みを看破、

或いは単純に乗らないという選択をしたのだろうが……。

提督との、その指揮官の差がここでも運命を分けた。



「小細工があったところでお前達の戦力なら蹂躪できるだろうが!」

「いいから敵をぶっつぶしてこい!

 戦力を分散しているなら各個撃破しやすいだろうが!」

「これ以上俺に恥をかかせるな!」



候補生からの怒気と苛立ち交じりの無線が返ってくる。

そしてそれを聞いた大和が長門へよこす視線は余計な事を聞いた所為で

いらぬ叱責を受けたといわんばかりのそれである。

結果、彼女達は指揮官である候補生が命じるまま叢雲達に対峙することとなったのだった。

847 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/21(水) 00:48:15.29 ID:pvOQ4SiX0
ここまでお読み頂きありがとうございました、本日の更新終了です
欧州3海域かぁ…、有用艦娘掘り放題!(尚掘れるとは)だといいのですが
前回みたいなうぇぇ…、じゃない事を祈るばかりです
作品中で少し鶴姉妹の性格が感じ悪いのは申訳ありません、
あくまで作中の演出的な部分なので嫁にされてる方には本当に申訳ありません
お分かりかと思いますが既に内部分裂の兆しがががが……
いつも乙レス、感想レスありがとうございます、お読みくださっている皆さんからの暖かいレス本当に感謝しております
次回の更新もお時間よろしければお読みいただけると幸いです
848 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/21(水) 02:29:08.04 ID:uVpe+Wos0
社会学者が講演会でいってた「3人集まれば文殊の知恵というが馬鹿は何人集まろうが烏合の衆です」が実に刺さる未来が見える
そして聞きたかった作戦時間がかなり長いことがわかって楽しみが増えた
霧などの気象確率もリサーチ済みだろうしまだまだブッ込んできそう
849 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/21(水) 03:34:26.60 ID:jeokajMT0
おつです
候補生のうちにいやらしい相手との戦闘を経験できている大和たちは
運が良いのかもしれませんね。
850 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/08/21(水) 23:46:59.62 ID:GNzJAKyY0
乙乙
ゲームだとMVPだけだけど実際妬み僻みとかありそうだよなあ
851 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/09/01(日) 00:47:46.46 ID:sON5tDsC0
皆様こんばんは
イベントにつっこんでおりますいっちです
サブ欧州艦が豊富だったためさっそくリシュリューのサブでE1やってます
今回は楽に全てが終るといいなぁと、終りよければ全て良しでいきたいですね
今回の分の更新となります、お時間宜しければお読みいただきますようお願いいたします
852 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/09/01(日) 00:49:09.32 ID:sON5tDsC0

「敵、攻撃機部隊第一陣撤収を確認!」

「了解!私達ホワイトルーク小隊は

 手はずどおりに水道を抜ける形に進路を取るわよ!」



隼鷹が翔鶴達正規空母の攻撃隊に自己の全艦載機を

戦闘機に振り分けた上での迎撃に成功した旨を旗艦の叢雲に報告。

それを受けて叢雲達は島と島の間、彼女達中小型艦艇が小回りを利かせやすい水路、

一般に言う水道を通る進路を選択する。



「隼鷹!艦載機の収容は!?」

「完了!」

「レディ!目標は!?」



叢雲の呼びかけに少し先を先行する暁が応える。



「偽装ブイを発見したわ!」

「了解!さぁ、かくれんぼの時間よ!」



叢雲達はある意味で大和達を相手する心算はなかった。

先にも述べたが横綱相手に幕下がまともに戦って勝てるか?という奴である。

番狂わせなんてものはそうそう起こるものではない、

起こり得ないからこそ番狂わせなのだ。

そして、それを起こす為の下準備はきっちりとしてきていた。



「偽装ブイ確認、各員無線、電探使用は敵艦隊をやり過ごすまで禁止よ!」



枝、葉をこんもりと生やし、一見すれば島の一部のように見せかけたただのブイ。

よっ、と、そのブイの枝を掻き分け中にある空間の中に身を潜ませる一同。

853 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/09/01(日) 00:50:08.48 ID:sON5tDsC0

「第二次攻撃隊、目標ロスト。」



第一次攻撃隊が全滅したため改めて発艦させた

二次攻撃隊から目標とする相手の失跡報告。



(どこへ雲隠れした?)



翔鶴が第一次攻撃隊が居た海域周辺を探る。

程なくして、駆逐2、軽空母1の敵編成を見つけた。



「居たわね……、雑魚は大人しくやられるといいわ。」



敵の小隊へ向け艦隊全体を移動させている最中で

翔鶴の下卑た笑顔に長門は嫌気する。

味方であるはずの仲間に対して嫌気がさすとはな、

と、やや自嘲気味に今の境遇を考えれば。



(最初に負けが確定しているのに続けるこの演習になんの意味があろうものか。)



今やっているのは負けを認められずに悪戯に時間を引き延ばすだけの行動。

実戦であれば撤退戦に移るべき局面なのだ。



(忌々しい。)



戦局を見極められない軍隊の結末は相場が決まっている。
854 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/09/01(日) 00:51:33.64 ID:sON5tDsC0

そもそも。



(第一次攻撃隊が向って全滅の後、第二次攻撃隊が見つけた敵の位置は

 敵が移動していると考えたとしても距離が離れすぎている。)

(連中の編成をみれば軽空母は低速に分類される飛鷹型。移動速度があり得ん。)

(となれば、この小隊は先のとは別物と考えるが妥当。)



と考えを纏めるも先の意見具申の結果を思えば。



(せん無きことか。)



「長門さん、この先は島と島の間の狭くなっている水路をゆく事になります。」

「複縦陣で中央に翔鶴さん達を配置する形で進軍しようと思います。」



大和の声に意識を戻し意図を理解する。



「島風に先陣を切らせ対潜哨戒に当たらせ

 我ら長門型が先頭警戒、前衛という事か。」

「えぇ。摩耶さんと鳥海さんのお二人は中央側へ回し、

 私達姉妹は後方警戒、後衛を行います。」



妥当。狭い水路を通るのであれば最も脅威となるのは潜水艦での待ち伏せ。

こちらの対潜能力を初手で削っている状態であればそれを狙わない訳は無い。

だが、こちらとしては最も長距離攻撃に長ける空母が生きていれば良い為、逆転を期待する事は出来る。

演習相手の艦娘は自分達砲撃に長ける戦艦達とまともに組み合える戦力ではない。

敵艦隊直掩航空隊を奪う、あるいは戦艦の射程内にとらえてしまえばこちらが蹂躪できるのだ。



(だが、それをさせてくれる相手ではないだろうな。)

(そして付け加えるなら潜水艦娘達の逃げ道が無くなるような場所で伏撃は行わないだろう。)

(だろう、だろうの推論ばかりか……。まったく。)



負けと悟り自身の指揮官の無能さをしればこそ

第三者的視点で客観的に現状を分析できるだけに

敵の愚に期待するのは無能だろうと思う。
855 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/09/01(日) 00:52:41.09 ID:sON5tDsC0

「了解した、陸奥との二人で前衛を任された。」



隊列を組みなおし改めての進撃。



「ホワイトビショップよりキング、クイーンへどうぞ!」

「敵の釣り上げに成功!といっても食べても鉄と脂でしょうけどね!」

「こちらキング。了解。配置についているわ。」

「釣り上げお疲れ様。戦域離脱を確認次第砲撃へ移行するわ。」



飛鷹の呼び出しに扶桑が答える。



「同じくクイーン。

 これからは私達がおもてなしの時間という事ね。」



飛鷹が翔鶴達空母の第二次攻撃隊からの攻撃をかわしながら

扶桑と山城へ無線を飛ばす。



「前方に敵潜水艦の脅威は今の所見当たらないよ!」



島風が聴音機、探信儀それぞれの反応で潜水艦がいない事を連絡。

艦隊が警戒しながら水道へと進んでゆく。

攻撃隊が見つけた敵目掛けてわき目も振らずに……。

そして、その時は来た。



「ようこそ、お客様。お客様をお迎えできた事は実に無上の喜び……。」

「さぁ、貴方達を歓待するために私達姉妹がお贈り致しますは、素晴らしき。」

「あなた方の為の……、極上のランチ。」



まさにこれから敵を蹂躙する事への喜びからか山城がうきうきと歌いだす。

856 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/09/01(日) 00:54:21.67 ID:sON5tDsC0

「Be our guest 」



熱い、鉄の、それも砲弾という名のプレゼントによるおもてなし。

時刻は丁度昼時に差し掛かる。



「Be our guest 」



扶桑、山城、両名が歌う歌が無線から聞こえてくる。



「あらら、ご機嫌ね。」



とは大和達を釣りあげた飛鷹。



「うちの砲火力の女神達がご機嫌だと相手にとってご愁傷さまね。」

「そうだね、戦場の女神といえばいつだって勝利の女神。」



飛鷹が相手を気遣う台詞をいうのを引き取り響が更に続ける。



「敵にとっては死神かもしれないね。」

「戦士をあの世へと連れて行く戦乙女(ヴァルキリー)には

 人数が足りないのじゃないかしら?」



戦乙女は9人、対して扶桑達は2人。



「飛鷹さん。だからこそ私達にとっては勝利の女神なんじゃないかしら?」



飛鷹と響が扶桑達を勝利の女神か死神かと話している所に雷が結論づける。



「確かに雷の言うとおりだね。」



大和達がもしも、島へ注意を向けていれば違和感に気付いたかもしれない。

偵察機たちが飛鷹達を追うだけではなく周囲の島の地形を

注意深く見ていれば気付けたかもしれない。

だが、彼女達の注意は潜水艦へのそれと、駆逐艦が有する長距離射程武器である魚雷、

自分達が現在負けているスコアを逆転させる為に飛鷹達を叩き潰す事へ向けられていたため

その注意が左右の島へ向けられる事はなかった。

結果、彼女達は再び一方的に殴りつけられることとなった。

857 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/09/01(日) 00:55:38.50 ID:sON5tDsC0

雷鳴の如き砲声が海峡に響く。



「あ゛ぁ゛!?」



それは実にタイミングをきっかりと合わせた砲撃。

右の島の山の山頂付近と左の島の丘陵地帯のやはり頂上付近からの砲撃。

初弾は翔鶴の眼前に着弾。



「初弾から本射だと!?」



目標物への観測用の砲撃もなくいきなり当ててくる本射、

効力射に驚愕する長門。

砲撃の一発目が撃たれたという事は続く運命は……。



「総員、耐砲撃態勢!各員左右の敵砲撃に応戦!」



前衛の長門が指示を出すが。



「当たり前といえば当たり前だけど……、敵の位置には当てずらいわね……。」



陸奥が扶桑達が居るであろう場所を睨みながら呻く。

海上から陸上にある目標物への砲撃は

戦艦同士での砲撃と比べ当たり前だが当てづらくなる。

沿岸要塞に設置される沿岸砲の攻略には艦船での攻撃は向いておらず

真珠湾攻撃が航空機による奇襲作戦になったのもオアフ島に揚陸できる場所が見つけられなかった結果、

要塞の無数の沿岸砲の前に艦船での攻撃は全滅と判断された経緯がある程である。

それほど陸に固定された、特に高所に設置された砲というは厄介なのである。


858 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/09/01(日) 00:57:00.30 ID:sON5tDsC0

「上から下を狙うのと、下から上を狙うのではまた威力が違うものよね。」



くすりと笑い砲を撃ち続ける扶桑。



「欠陥だ、時代遅れだ、色々口さがない事を言う人達も多いけれど

 戦艦の主砲の威力は本物よ?」



山城の主砲が火を噴き、砲声が雷鳴の如く響く。



「散布界が狭いだと!?」



当ててくるその砲撃に長門が驚愕する。

戦艦の主砲の命中は良くて撃った弾の2〜3%と言われる。

これをカバーする為に数を撃つのが本来の戦艦同士での砲撃戦である。

そして、目標に対して最も遠い着弾点と

最も近い着弾点の距離を表したものが散布界と呼ばれる物だが。

それが狭いという事は当然ながら目標物に対して集弾されているという事であり。



「左舷に被弾!」



瑞鶴が悲鳴をあげ、被弾の報告。



「みなさん!左右の島の砲撃地点へ向けて砲撃を行ってください!」



旗艦の大和が指示をだす。



「ちぃ!」



武蔵が苛立ち舌打ちをする。

左右の島からの砲撃は丁度、その散布界が重なるように砲撃をされており

特に砲弾が集約するように狙われている。

その狙いは明確。そう、空母の鶴姉妹である。

艦隊で目となる高空からの視野を持つ二人。

散布界が重なれば命中弾も増える。まして左右からの挟み撃ちによる砲撃。

当てないほうが難しい状況である。

859 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/09/01(日) 00:58:18.10 ID:sON5tDsC0

「させるかよ!」



武蔵が砲弾の雨の中、左の島の丘陵地を狙うが目立った効果を挙げることはない。

先程から続く島からの艦砲射撃は海面を揺らし照準が揺れる大和達は正確な砲撃が出来ない。

火力がいかにあろうと狙いが悪ければ効果は望めない。



「砲撃を休む事無く行い弾幕をはり敵からこちらを見えなくするんだ!」

「敵の位置を把握できない以上は手数を稼ぐ形で敵の反撃を防ぐんだ!」

「皆!この海峡を早く抜けるぞ!」



大和が指示を出しきれていない事をみてとった長門が矢継ぎ早に指示をだす。



「島風、水道の出口が一番危険になる!

 先に抜けて周囲に敵潜水艦が居ないか確認を頼む!」



長門が島風に指示をだす。島風は既に扶桑達の砲撃の範囲外にある。

潜水艦を伏せるなら一番効果が認められる位置が水道の出口。

その付近に潜水艦が居ない事を唯一残っている対潜艦の島風に

急ぎ確認させている間に砲撃は止んだ。

860 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/09/01(日) 01:00:12.15 ID:sON5tDsC0

「敵に砲撃をさせないためこのまま砲撃を行いつつ離脱だ!」



長門が陸奥達へと指示。



「大和!水路を抜けた後一旦全体の被害の確認を行う事を進言する!」

「……、わかりました。」



砲撃が途中で止んだのは長門達の砲撃が

扶桑達に当たり黙らせる事に成功した訳では無いことを長門は理解している。



「戦艦の私達を移動砲台として機動的砲撃、

 機動火力として陸上戦力として組み込むやり方。」

「提督は柔軟な思考をされる方と思わない?」



大和や長門達の砲撃が本格化して被害を出す前に悠々と離脱せしめ、

海上を移動する扶桑が近くを並走する山城に言葉をかける。



「そうですね。私達姉妹の能力を考えた上で

 これが最も適切と言ってきたのには少々腹が立ちますが。」


姉の扶桑へ返す言葉には含みがある。



「ですが、姉さまもそうだと思いますが。

 私達よりずっと性能が上とされる娘達を一方的に砲撃して蹂躪できたというのは

 実に楽しく気分が高揚しました。」

「貴方は正直ね。でも、私もそうよ。」

「それに、随分と無駄に弾薬の消費もさせる事ができたわ。」



その表情は実に晴れやかかつ誇らしく堂々としたものである。



「はい。私達が退いた後も無人の場所への砲撃で無駄に弾薬を消費してくれていましたね。」

「えぇ、そうね。山城。これは実に大きなアドバンテージになると思わない?」

「はい、姉さまの言うとおりです。」



そして、無事役割を果たした事を叢雲達仲間へと無線にて連絡したのだった。

861 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/09/01(日) 01:01:08.93 ID:sON5tDsC0

「翔鶴は大破か……。」

「電探に敵艦影は反応なしよ…。」



長門が被害を確認している間に陸奥が周囲の状況確認。



「あたしと鳥海も大破だな。敵さんの砲撃は恐ろしく精度が高かったかんな。」

「多島海での演習ですから敵の方々がまた同じような作戦をとる可能性はあると思います。」

「まっ、あたし達は大破だからここで演習終了だ。」

「茶番劇を終れると思うと清々するね。じゃ鳥海いこうぜ。」

「そうですね……、皆様。御疲れ様です。」



そういい、摩耶と鳥海は艦隊を離れていった。



「翔鶴姉。」

「瑞鶴?貴方をとっさに庇ったおかげで貴方は発着艦が出来る程度の損害で済んでるわね。」

「大破で抜ける私達の仇、しっかりとって頂戴。」



がしっと瑞鶴の肩をつかみ気合を入れる翔鶴。

その目は自分を大破に追い込んだ敵を許すなと物語る。

そして、潜水艦への周囲警戒を行いつつ

大和達は自分達の被害確認を行い再度指揮官の候補生へ連絡を行った。

862 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/09/01(日) 01:03:02.03 ID:sON5tDsC0

「………、お前達から相手はみえなかったんだろ?」

「なら、どうせ誰が大破したかなんか見えてないだろ。」

「違反行為だ?監視の教官をどうするか?……、お前達が考える事じゃない!」

「翔鶴は中破だ。改二改装相当の艤装を持たせてるんだぞ!?」

「あっさりやられてるんじゃない!敵は周囲にまだいるだろ!?」

「待ち伏せしてこそこそやっている様な卑怯な連中だ!実弾つかってでも倒して来い!」



鹿島が席を外す…、花を詰みに行っている間に

大和達から来た無線での連絡に違反行為をしろと指示を下す候補生。



(なぜ傍受されていないと思うのでしょうか?理解に苦しみます。)

(それに艤装の被害状況も逐一モニターされているというのに馬鹿極まってますね。)

(しかし、このままの放置したほうが楽しいのでしょうが、

 放置しておくと今後の問題になりますし。)

(さて、いかにしたものでしょうか……。)



鹿島はこの状況に一人頭を悩ませるのであった。

863 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/01(日) 01:20:00.31 ID:sON5tDsC0
鹿島が頭を抱えるくらいのお馬鹿!という事で本日の更新はここまでです
戦略爆撃機なんか実装される事ないやろーとか冗談で2部の頭で敵に使ったら運営さんが実装してきたよ…
やめて?と本気で思いましたです、基地というか資源にどれ程の被害が出ることやらやら
今回の更新の途中で触れています艦砲射撃ですが対地で狙う時は要塞なんかの目標物がでかければまぁまぁあたりますが
多くは牽制とか戦艦などをずらーっと並べて下手な鉄砲なんとやらで数で圧倒して陸上の敵を潰すやり方になります
ノルマンディーの時はウォースパイトもその前の海戦で船底に大穴が開いていたにも関わらずコンクリートで穴を塞ぎ
艦砲射撃の為の数として無理やり参加させられていました、それ程に数が足りなかったともいえますが……
一般的には迎え撃つ陸上側は、数的劣勢の場合はさっさと海岸線を放棄して内陸へ誘引し個別に撃破
あるいはもっとも無防備になりやすい敵上陸部隊の上陸時を狙うようなやり方で対抗する事になります
ノルマンディーがブラッディービーチになったのはこういう事情、艦砲射撃他でしっかり敵の陣地をつぶせなかったり
上陸に対しての敵障害物をしっかり排除できてなかった、また、E2甲報酬の風呂桶がかなりの数、沈んだなどなど
兵士を裸で敵地に放り出すみたいな事をやらかしていたからああなったわけですね、兵士の命が紙切れ一枚より軽い
真珠湾は作中でも触れましたが上陸させる事が不可なのと砲の数でも上回ることが出来なかった為航空機での奇襲となりました
毎度、更新がまちまちかつ不定期ですがお読みくださりありあとうございます
感想レス、乙レス、お気軽に残していただけるといっちが喜びます、是非お願いいたします
864 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/01(日) 02:55:59.09 ID:CJjHi2JM0
チャーチルが駄々こねて嫌がるアメさんにシングル作戦主導してもらった手前、イギリスはノルマンディを意地でも成功させないといかんかったしね
手柄立てないと戦後のケーキの奪い合いに参加できない
しかしまあ不甲斐ない五航戦だわw
俯瞰視点で戦場を見ることのアドバンテージを全く活かすことができないどころか理解すら出来てないな
攻撃機の道中とか全く見てないまである
865 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/01(日) 04:28:17.83 ID:MymPi0qMo
866 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/01(日) 06:20:07.49 ID:M4DjwyLv0
おつです
867 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/01(日) 12:53:16.01 ID:rtkQe4OMo

まあ一応養成校の新米艦娘だし若きハゲ提督とその手解きを受けた娘達の相手をしろって方が酷だって話だよね
全てが終わった後に受け入れるかどうかよな、楽しみ
868 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/02(月) 20:49:34.48 ID:sfVbGD7w0
何となく思ったが扶桑姉妹は人間だった時一卵性双生児だった気がする
他の姉妹艦娘となんか雰囲気が違う、何というかお互いの精神的な距離が近いというか限りなく類似な印象
869 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/06(日) 19:59:24.33 ID:jv7eHjiXO
続きまだなのか
870 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/10(木) 15:48:14.43 ID:InPKVz0go
気付いたらもう一月以上か
わたしまつわ
871 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/10/25(金) 00:03:22.49 ID:Tz4B+Khy0
色々やる気の問題でまったく書き進められず書き貯めを作る事もできず…
残念っぷりが爆発しておりましたが生きていました
お時間宜しければどうぞ、読んでやってください
872 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/25(金) 00:05:54.99 ID:Tz4B+Khy0

鹿島が頭を悩ませていた頃、提督達は何をしているかというと。



「香取先生、コーヒーが入りましたよ。」

「色々準備されているんですね。」



香取がちらりと見やるのは濃い緑色のコーヒーメーカー。

電動工具で有名な会社の現場作業向カラーの製品。



「ポータブルバッテリー式ですか。」



なかなか事前に準備をして物を持ち込んでいると考える香取。

演習海域に点在する島々に色々と物資を持ち込んでいるのだろう。



「いつの間にご準備を?」

「さぁて、そいつは内緒です。」



直接に聞いて答えるわけは無いか……。

演習時、艦娘は出撃後は燃料、弾薬の補給は補給艦を随伴させていない限り、

帰還して補給するのはルール上は禁止されている。

これは実戦的演習を行う為の一環であり出撃後に

補給が受けれない場合を想定の元でのルール。

しかし、物資を海上に隠す、つまり点在する島などの拠点に

あらかじめ置いておきそれを演習中にこっそりと利用する事は禁止されていない。

というよりもする人が居る事を想定していない為ルール上、

それを裁くため基準が無い。



「コーヒーはブラックがお好きですか?

 それともミルクを入れてカプチーノにされますか?」

にこにこと笑顔で聞いてくる相手のその言葉はまるで。

(黒じゃなければ白であると言っているようね。グレーは限りなく黒であっても黒ではないか……。)



つまりは。


(グレーは白。つまりルールになにも違反はしていない。彼を減点したり裁く事は出来ない。)

873 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/25(金) 00:06:51.53 ID:Tz4B+Khy0

裁く法がなければ合法という屁理屈、

しかしそれを罰するには法がなければ罰する事が出来ないのもまた事実なのだ。



(どこでこんなずるを覚えたものか…、

 この候補生は本当に何者なのだろうかしら?)



受取ったコーヒーを飲みながら相手を見れば

演習海域が映るタブレットに表示される駒をせわしなく動かしている様子。

だが、部下である艦娘達へ指示を飛ばすことは無く、

受ける連絡は位置と戦果の報告のみである。

そしてたまに、報告の確認を監督の為についている自分へとするのみである。

タブレットへ入力している時以外はカードゲームや読書、

或いは飲食で暇つぶしを優雅に行っており指揮を見せることが無い。

その所為も有り香取は提督の実力を今だ把握できずにいた。

そんな中、提督の手が大駒、おそらく空母を相手艦隊から除外入力をした所で

香取からの視線に気付いたのか手を止めた。
874 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/25(金) 00:08:24.38 ID:Tz4B+Khy0

「部下達からの連絡で相手の空母に大破判定を与えたとありましたので

 戦果の確認をしていただけますか?」



恐らくは間違いないのだろうが本部側に連絡されているであろう

相手側の被害とのつき合わせ。

最初の潜水艦たちによる奇襲を含めてどこでどの艦娘を落すのかを

計算ずくと思われることを考えれば目の前でのけた空母の駒は既に大破判定と思われる。



(テストの答案の答え合わせをしているような感覚を覚えるわね……。)



奇妙な感覚を覚えつつ香取は提督の催促に促され監督官として戦果の問い合わせを行った。



(えっ!?)



提督が目の前で除外した空母が健在。つまりは。



(鹿島ぁぁぁ ―――――― !!!!!!)



報告を行わなかったのかと妹に怒りの無線カットインを行う。

もちろん提督の前で行う事は出来ない為、

少し離れた位置で、である。
875 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/25(金) 00:10:47.73 ID:Tz4B+Khy0

「どういうことなの!?」

「あっ、あのですねぇ?

 私にも流石にどうしようもない事ってのはある訳ですよ。」



無線の向うからは普段の様子とは180度真逆のおたおたした声が聞こえる。



「だからといって戦果、被害報告を誤魔化して良い訳ないでしょう!?」

「でっ、でもですね?あちらの親は……」



演習相手の親は中将。

確かにもっている権力で言えば黒を白に出来る相手。

更に言えば今日の演習最終戦は海軍の首脳陣が観覧しているのだ。

忖度したくなるのも判る。



「それでも審判である私達が不正を黙認して良い訳がないでしょう!?」



まったくもってその通り。ぐうの音も出ない正論である。



「まさか、あなた…。」



面白さを優先して不正を黙認したんじゃないわよねと

言い掛けた辺りで香取は背後から突き刺すような視線に気が付いた。



「香取先生、いかがなさいました?」



その声の主は、笑顔で、ゆっくり、はっきりと聞こえる声で語りかける。



「確認に時間がかかっていらっしゃるようですが?」



願いが叶う物なら振り向か無くていいでしょうか?と何かに縋りたくなるような

そんな思いで香取が振り向けば其処には満面の笑顔を浮かべた提督がいた。

大きく息を吸い酸素を脳に送る、

これは笑顔に見えるが絶対に笑っていない奴であると

香取の自己防衛本能が最大限の危機を知らせているためである。

その危険を知らせるというのは、この危険を目の前にしては

まったく意味の無いものであるが……。

そう、目の前の手を振り上げて今にも振り下ろす寸前の羆を指差して、

これ危険ですよね?と訊ねるくらいに無意味である。

876 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/25(金) 00:12:13.41 ID:Tz4B+Khy0

「香取先生……、煙草をいただいてもいいですかねぇ?」



先程までの無駄に畏まった口調がとれ、

やもすればこちらを馬鹿にするかのような

野卑た笑顔の口元から発せられた言葉は意外にも喫煙の許可だった。

どうぞと相手の落ち着き払った笑顔に引き攣った笑顔で返せば、

慣れた手つきでオイルライターの火をつける提督。

提督がポケットから取り出した煙草は

現在流通している中では高級品に分類されるもである。

それを口に咥え、火をつけ、フィルターの限界まで燃え尽きるように一気に息を吸い、

肺へとそのバニラのアロマを含んだ煙を無理やり流し込む。



「…………、やぁ、随分と不味い煙草だ………。」



一言、煙草の感想を述べ吐き出した煙が周囲に燻り、その煙を提督が纏う。

その佇まいは此の世に悪魔というものが顕現したのであれば

そうだと信じてしまえそうな程に禍々しい雰囲気と気配を纏っていた。

そしてゆっくりとした動作で眉間に出来た皺を揉み解すようにもんだ後に一言。



「馬鹿の相手も疲れるな……。」



ポツリと漏らしたその言葉は間違いなく本音から来るものであろう事は間違いない。

香取が恐怖そのものへと視線を向けている中、その恐怖は無線機のスイッチを入れた。



「あの……、その……。」

「あぁ、えぇ、それ以上は不用ですよ。何が起きたかは理解しました。」



香取が言葉を紡ぐ前にそれを手と冷ややかな笑顔で制す。

877 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/25(金) 00:15:44.03 ID:Tz4B+Khy0

「それを言えば知らなかったが『 お互いに 』成り立ちません。」



にかりと歯を見せて笑う提督、

その笑顔はとても直視できるものではない。

憤怒であろうか、いや、失望とも幻滅とも。

それら様々な感情が提督を支配しているように見えた。



「やれやれ、仕事といきますか……。」



こきこきと首を動かし、ぐるりと肩を回し無線機の送信スイッチを押す。



「ホワイトルーク他全小隊、CPの提督だ。応答してくれ。」

「ホワイトルーク、旗艦叢雲よ。」



提督からの呼びかけに各小隊の旗艦達が応じる。



「今からCPの俺が全体指揮を執る。各員死ぬ気で動け。

 マップコードは聞き漏らすな。」

「俺がお前達を最適な射線、射角が取れるように誘導する。敵は一人も逃さん。」



そう言うとタブレットに映る海図に配置された駒を一気に動かし

矢継ぎばやに移動先の指示を出し始める提督。



「両舷全速で動かしてくるわね……。」



提督から次々と出される移動指示に艤装の主機が唸りを上げている状態。



「叢雲、索敵情報は全部提督へ先に送るのかい?」

「えぇ、指示前は私に送ってもらっていたけど今からはあいつへ先に送って頂戴。」

「今の所、此方の経路指定が主だけれど先程までの双子(ジェミニ)作戦から

変更されたのは間違いないわ。となると索敵情報は今まで以上に重要になる。

だからあいつは今必死に頭を回転させて敵を潰す方法を幾通りも考えている所だと思うの。」

「まぁ、既に答えが出ているような気もしなくもないんだけれどね。」

「だからその答えを早く出す為にも敵の位置は間違いなく重要よ。」



叢雲が隼鷹に索敵機の増数も含めて指示をだす。
878 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/25(金) 00:16:16.84 ID:Tz4B+Khy0
「まぁ、敵さんの位置は大まかにつかめてっからそれはいいんだけどさ。」



叢雲の言葉に隼鷹が先程まで有利に展開を進めていた作戦を

何故捨てるのか提督の意図が分かりかねると疑問を述べる。



「あぁ、あいつの意図が分からないってことかしら?

 そうね作戦名から察するに大まかには変更はないと思うわ。

 それから、そうね…、うーん、あいつの考えが私の考え通りなら

 そろそろ索敵機の帰還に関して欺瞞行動をやめて

 こちらの位置をばらす方向の指示がくるはずよ。」



叢雲が言い終えると同じくして提督からホワイトルーク小隊の隼鷹へその通りの指示が来る。
879 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/25(金) 00:17:24.22 ID:Tz4B+Khy0

「へぇ〜。言った通りだよ。」

「そう、それならそろそろ扶桑か山城と合流になるんじゃないかしらね。」

「えぇ、その通りよ。私が貴方達と合流よ。お世話になるわ。」



声のする方向をみやれば海上迷彩仕様の

ブルージャケットを被った扶桑がその姿を見せた。



「扶桑がこちらに来てくれたのね。となると山城は単艦移動かしら?」

「えぇ、提督からの指示を個別に受けていたからあの娘は単艦で指定位置へ移動でしょう。」

「妹を危険な目に合わせてごめんなさいね。」



戦艦を単艦で移動させる。それは囮にするという使い捨てとしか言えない行動。



「いいぇ、提督の指示を聞けば一番重要な役割のようですし。」

「ただ、単艦行動中に敵に見つからないといいなとは思っているわ。」



叢雲の言葉に首を振りつつその言を否定する。

つまり役割としては囮ではない事を理解しているという事。



「そうね、囮の役割は恐らく飛鷹達かしらね。」

「そう上手く食いついてくれるかねぇ?」



叢雲と扶桑は山城の役割を理解しており

敵を釣り上げる役割の囮は叢雲達か飛鷹達という事になる。

880 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/25(金) 00:20:02.17 ID:Tz4B+Khy0

「山城の移動が航跡等で見つからないといいのだけれど……。」



不安の声を漏らす扶桑。その心配は姉として当たり前である。



「扶桑。短期間ではあるけれどあいつの下で

 一緒に演習を勝ち上がってきたのなら分かるでしょう?」

「今回の双子作戦について海上迷彩仕様のジャケットを渡してまで

 移動が分からなくしておきたかった貴方を

 わざわざ分かるようにして此方に寄越したのよ?」

「こちらかあっち、まぁ、あっちなんだろうけれど。

 とりあえず山城に注意が行かないように細工をしているに決まっている。」

「万一、敵に見つかったとしても、それを計算に入れていないわけは無いでしょうね……。」



叢雲が提督の計算高さを知っているでしょうと扶桑に同意を促せば。



「そうね、司令官が私達の自主性に任せた作戦行動から

 自らの禁を破ってまで指揮を執るっていうんだもの。」

「何も考えていないわけはないわ!」



どやっと暁が言葉を返す。



「でも……。」

「あら?どうしたの?」



暁が少し不安そうに顔を曇らすのに扶桑が何事かと訊ねれば。



「司令官にそれだけの決断をさせたって事は

 よっぽど腹に据えかねる事態が起きたって事でしょう?」

「相手がかわいそうだなぁって思ったの。」

「そういえば貴方の妹が相手方に居たわね。提督に任せておけば多分大丈夫よ。」



妹の心配をする暁に同じく姉として妹を思う気持ちは同じと扶桑が応じる。


「妹の電は大丈夫かしら……。」


ふと思い出すのは暁の妹が相手方の秘書艦であるという事。


(寧ろ、問題があるとするなら響かしらね………。

 と私が考えるくらいの事ならあいつが思いつかないわけないし。)

(双子作戦なんて事を考えてもそうなのだろうし…、

 飛鷹には私に話がされていない指示が出て居そうね。)

「まぁ、あいつの事だから何も考えていないという事は無いでしょ。」


そう答えると、叢雲はさんと房状になったお下げを揺らし無線で出された移動目標へ向きなおすのだった。
881 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/25(金) 00:24:27.43 ID:Tz4B+Khy0
少ないですが今回更新分終了です、秋刀魚、鰯漁の間にまた頑張って書き溜めれるように気合を入れなおします
提督お怒りモード!そして残り1000に行くまでに終れるか!?のチキンレースの模様、まぁ大丈夫でしょう
では、また次回の更新もお付き合いいただけると大変ありがたく思います、1ヶ月以上も音沙汰無しで申訳ありませんでした
ご心配のレス、ありがとうございます、お読みいただいた貴方に感謝しつつ、本日もこれにて!
ではでは!ここまでお読み頂きありがとうございました!
882 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/25(金) 06:05:44.08 ID:qjuzyHLk0
乙です
鹿島さんも中間管理職なんですねぇ
883 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/25(金) 09:37:24.98 ID:V2dXL6DLo
おつ
884 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/30(水) 03:55:53.03 ID:pNhlXE5C0
乙乙
提督は勿論だけど叢雲達もすげぇ優秀なのでは
885 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/06(水) 00:48:41.44 ID:ADblsM4a0
秋イベやるんか…
秋、冬合同とおもってたんだけどなぁ…
ねじ稼ぎがとまんないのに…
少しばかり更新です
886 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/06(水) 00:50:27.78 ID:ADblsM4a0

本部観覧用テント内



元帥が状況の説明を受けながらふむと口を開く。



「なかなか、中、小型艦艇の強みを生かした戦い方をしているな。」

「表示されている艦艇の位置関係をみれば相手に対峙しているのは

 二つに分かれた小隊のうちの一つになるように誘導しているようだな。」

「多島海という地理的優位性を実によく利用している。」



元帥が海域選択を褒めれば、軍令部戦略参謀長の大将が続く。



「それもですが初手で王手を掛けるに等しい

 潜水艦隊での奇襲というのもなかなかですな。」

「校長に聞けば演習相手の出撃地点はお互いには知らされることが無いそうですよ。」



ほうと元帥が続きを促すように口元を緩める。



「つまり何某かの諜報活動、分析なりで

 相手の出撃地点を割り出し事前に潜ませていたという事か。」

「相手の戦力を最初に最大限削る。実に実戦的なやり方だな。」



元帥が提督を褒める。



「とはいえ、あまりにも卑劣なやり方ではないでしょうか?」

「禁止をされていないからやっても罰を受けることが無いという

 確信犯的行動はいただけないかと思います。」



否定的言を述べるのは現状いいとこなしの候補生の父親である中将。

彼からすれば息子の肩をもたねばというより

息子の評価が地を這うことになれば自分の評価も下がるのは必定。

少しでも自分への被害を抑える為に相手である提督を扱き下ろさねばならないのだ。



「中将、君は深海棲艦達との戦争で負けたとして

 相手が卑怯であるという言い訳が立つと思っていたりするのかね?」



提督の評価を下げようとする意見に眉間に皺を寄せ、

睨付ける視線を中将へ向け咎める様な強い口調で訊ねる司令長官。

887 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/06(水) 00:51:29.83 ID:ADblsM4a0

「まさかと思うが人外連中相手に君は交戦規定が必要とでも言い出すつもりかね?」

「確かに演習は艦娘同士で行うがその想定はあくまで対深海棲艦だ。」

「我ら人類の不倶戴天の敵である奴らから

 勝利を得る為に卑怯だのといっていられる現状かね?」



鬼気迫る、いや、無能な部下への呆れと叱責、

その双方ない交ぜの感情が中将へと向けられる。



「司令長官の仰る通り、やはり決勝戦まで勝ちあがってきただけありますな。」

「決勝戦だけありましてどちらの提督候補生も優秀なようです。」



上官の発言が司令長官の不興を買ったのを察知し、

司令長官の覚えが目出度い候補生を褒めつつ

それに張り合える相手もなかなかだとその双方を褒める大佐。

ようは自分の上司の息子の肩をもちつつ、

さらに上が褒める相手もよいしょというなかなか計算が効いた世辞というやつである。



「……、そうではあるか。」



ふむんと考え込むように手を顎に当てる司令長官。

そして。



「校長、それぞれの候補生が率いている艦娘候補生達の総評を聞いてもよいかね?」



司令長官が横に控えていた校長へと水を向けた。

888 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/06(水) 00:52:54.24 ID:ADblsM4a0


「はい!ええっとそうですね。

 こちらの、重量艦を多用されている中将殿の息子様が率いている艦隊に

 所属する候補生達は個人としての成績は実に優秀です。」

「特に大和型の二人の命中率は成績優秀でして……。」



長々と続く説明を冷ややかな目で眺めつつ参謀長が分かった分かったと口を開く。



「成程、今現状負けている側の艦娘達が成績優秀なのはわかった。」

「そして、勝っている側の艦娘が平均的、

 いや、一部においては評価が良くない事もわかった。」



そして、校長を黙らせる一言が出る。



「ならば何故、勝負の勝敗が逆ではないのかね?」



しんとテント内が静まり返る。

この問いに答えられる者がいるとすれば……。



「参謀長もなかなか答えにくい質問を投げかけるじゃないか。」



やれやれと笑い声を押し殺したような顔で元帥が口を開く。


889 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/06(水) 00:54:17.27 ID:ADblsM4a0

「単純に指揮官の差が出たといった所だろう。

 そして、その指揮官がいかに艦娘本来のポテンシャルを引き出せているかと言った所だな。」



明朗快活、実にはきはきと、面白くてたまらないといった声音で元帥が語る。



「指揮官と部下の関係が良好である事、問題における意識の共有、

 つまりはパーフェクトコミニケーションがなされねば

 命令以上の事はこなそうとしないだろう。」

「軍人として命じられた事以外をしないというのは有る意味正しい。」

「命令以外の行動をとった結果の作戦失敗という事もあるからな。」



元帥の言葉はテント内にいる全員に語りかけるかのように続く。



「だがだ、命令を実行し戦果、

 そう、我らにとって重要な勝利という目標の達成には

 時として与えられた命令について出来る事を考える必要性が有るのだよ。」

「命令の範囲内で出来る事を拡大解釈というのは時として

 独断専行という言葉で悪く言われる事もあるがね、

 それを自己で考えて実行できる者程逆境に強い。」

「そして、好機においては時として猪突猛進を行い赫赫たる戦果をあげる。」

「これが成せるのは普段から考える事を訓練付けられているからだ。」

「考えるという事は常に事態打開の為に動く為に足を止めることをしない。」

「そういった底の、地の部分を勝っている側の艦娘候補生は鍛えられているのだろう。」

「扶桑型といった艦種として旧型に分類される彼女達を

 陸上砲台として利用する等の柔軟性。実に良く考えられているではないか。」



元帥が戦術、艦娘の素質について褒めれば戦略参謀長も続く。

890 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/06(水) 00:55:42.29 ID:ADblsM4a0

「負傷して砲のみ稼動可能な艦娘を砲台代わりに使った事例は

 最前線で何例か報告がある。」

「そういった戦訓も良く情報として収集し

 自己の艦隊の作戦に落としこんでいるのは工夫だな。」

「そして、ここ一番という所で、初手の潜水艦での攻撃にしても、

 この砲台としての利用にしても最大かつ最適なタイミングだ。」

「この最終戦に至るまではその手札を見せなかった事により

 相手に使われるかもしれないという警戒心を抱かせる事を防いだのは実に見事。」

「知る者は言わず、言う者は知らず。情報の重要性という事も実によく心得ていると言える。」

「結果として艦娘の成績が優秀であった側が負けている。」

「もっとも、成績に関してはここまで相手がしてやられているのを考えれば

 能ある鷹は爪隠すの可能性がないとも言い切れんがな。」



参謀長の言葉に司令長官が畳み掛けるように続く。



「付け加えるなら部下として運用している艦娘達それぞれに、

 大局、情勢を見て自由に動けるだけの権限を投げているであろう事も分かりますな。」



目を細め面白そうに司令長官に続きを促す元帥。



「通信記録を見る限り勝っている側の候補生は位置情報、

 戦果報告程度しか受取っていないようですからな。」

「作戦内容を事前に話した後は現場の裁量で内容の変更等を認めているのでしょう。」

「最終目標が達成されれば問題ないという大胆な割り切りですな。」



ちらと参謀長の方をみる司令長官。

891 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/06(水) 00:56:44.06 ID:ADblsM4a0


「耳が痛いな。

 確かに作戦を我々軍令部が立案しそれを各鎮守府に作戦大綱として伝達した後は

 各鎮守府に歯車として動く事を強要している部分はある。」

「そうせねば軍という一つの群、全体を動かすのに綻びが生じるからだ。」

「時として一つの作戦を実行するのに緻密にいくつもの作戦が絡み合う。」

「それこそ精密機械の様にだ。一つの破綻が全体の破綻につながりかねんのだよ。」



現状の再確認とばかりに参謀長が答える。



「といっても現場で状況に応じて修正が効かぬのでは時として死ねと言うのに等しいだろう。」

「もう少し作戦に柔軟性を持たせるべきだろう。

 現状では我々前線で指揮をとる提督達はただの繰り人形に過ぎん。人材が育たんぞ?」



それぞれの立場での危機感から軍が抱える問題点へと話が逸れていき始めるが……。



「まぁまぁ、二人ともそこまでにしときたまえよ。」

「君達二人のいう事はどちらも正しい、ゆえにいつまでたっても結論はでぬだろう。」

「その議論についてはまた別の機会を設けようではないか。」

「それに今はそれを論ずる為にここに来ている訳では無いという事を思い出したまえよ。」



元帥が大将の二人を諌めて場を納める。

892 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/06(水) 00:58:08.63 ID:ADblsM4a0

そして。



「存外それについての一つの答えがこの演習に詰まっているとも言えるとは思えんかね?」



元帥が大将の二人に問いかける。



「君達はこの演習の勝敗をどう考える?」

「そうですな。このまま順当に終るでしょう。」


司令長官が述べる。



「私もそう思いますな。盤面を引っくり返すとすれば関が原における小早川。」

「あるいはハンニバルに対するカルタゴ政府。

 強烈な裏切り者でも用意出来ない限りは無理でしょう。」



参謀長もまた同意する。



「成程、現場と作戦畑の長それぞれの意見は同じか。」

「まぁ、私もその様に思うが何があるか分からんのが戦場だからな。

 最後まで楽しませてくれるといいとは思っている。」

「中将。君はどう思うね?」



元帥、大将二名の意見に反論を述べる事が出来るわけも無く。



「私も御三方のおっしゃる通りの結果になるかと思います……。」



消え入るような声で賛同を示すしかない中将だった。

893 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/11/06(水) 01:02:53.85 ID:ADblsM4a0
以上更新此処まです
艦これSSでは提督と艦娘が主人公なの為そのバックボーンというか背景というか
偉い人達が現状を語るみたいなのあんまり無い印象を受けますね、
退屈ととられかねないので書かないという部分もタタあるのかもしれませんがその辺り良くわかんないですね…
難しいです…、自分の作品内ではくどくならない程度には触れていきたくもあります
そうしないと提督の立場とか世界情勢が分かりにくいので、お読みいただいている方にはご迷惑をおかけします
ではでは、お読み頂きありがとうございました、乙レス、感想レスいつも励みになっております
お気軽に残していただけるといちが喜びます、では、次回もお読みいただけると幸いです
ここまでお読み頂きありがとうございました!
894 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/06(水) 01:11:52.57 ID:VSMiXmnP0
乙です
895 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/06(水) 10:46:34.25 ID:jkjSOFCMO
乙です。
元帥以下の高級将校に艦娘を率いた経験がるか。その辺りはどうなんでしょうか。
896 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/06(水) 11:18:01.20 ID:HGZqT1Ovo

最後に不穏な雰囲気を感じさせてきたな
もし裏切り者が出るとしたらまあ誰かは想像つくけど……よく考えれば無能提督にそんな甲斐性があるわけもないか
897 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/07(木) 00:54:03.94 ID:WJ/zw5AN0
将、軍に在りては君命をも受けざる所あり
孫子の九変は確かに中々難しい所だ
馬謖然り、これを引用して大敗を喫した将は数知れず
大勝を収めたものはあまり語らない
海軍が提督に求めている待命は兵卒の美徳だし海軍は艦娘の運用体系がまだ定まってないと見た
898 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/07(火) 02:29:52.50 ID:7JwiKUZmo
あけおめほ
899 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/01/20(月) 22:58:55.64 ID:NMWLJ5Lo0
皆様、大変遅くなりましたが新年あけましておめでとうございます
Win7のサポート終了に伴い不調のPCを更新したらいろいろデータの互換がなかったり
オープンオフィスのワードの使い勝手の悪さに閉口
そして、定番化しつつある書けない病の発症で遅くなりました
保守感謝いたします、忘れずにお待ちいただいてくれている人がいるのは励みになりますね…
よろしければ、どうぞお読みください、少しばかり人によっては胸糞な話があるかもしれません
900 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/01/20(月) 23:04:37.71 ID:NMWLJ5Lo0
「はい、ではそのように。」


中将の子息、その候補生からの指示を翔鶴が受ける。

提督たちが微修正を行い艦隊の再度の展開を行っている頃、

相手もまた作戦変更を行っていた。


「翔鶴が旗艦となり指示を出すのか?」


索敵範囲が広い偵察機を飛ばせる空母が旗艦として艦隊の指揮を執るそれはおかしくないのだが。

それが何故今になって本来の大和から変更されるのかという疑問を長門は抱かずにいられなかった。

さらに言えば翔鶴は本来、大破判定でこの場から撤収していないといけないはずでもある。


「翔姉ぇ、敵艦隊の位置が分かったよ。」


索敵機を回収しながら手短に叢雲たちのいる位置を伝える瑞鶴。


「了解しました。今まで位置をわからないように行動をしてきたわりに

 あっさりと見つかる様な行動をとっているようですね。」

「まー、何某かの罠だよねー。」


翔鶴の言葉に瑞鶴が返す。


「翔鶴、すまないが疑問に答えて貰えないだろうか?」


あくまで丁寧な態度を崩さずに翔鶴に今になっての旗艦変更や何故、

とどまっているのかの疑問を再度ぶつける長門 。


「チッ。うるせぇなぁ。いい加減、黙ってくれない?」

「候補生から何も言われてないんだろうなって事はわかってたけどさぁ。」


いかにも長門への返答が煩わしいと言わんばかりに言葉遣いがぶっきらぼうになる翔鶴。


「あんた達はさ、成績は優秀だけどいつも中将の息子である候補生に意見をよくしてたじゃない?」


「あれさ、ほんと迷惑だったのよね、正しいのかもしれんないだけどさ。

 あんたが意見するせいでしょっちゅう不機嫌になってたのよね、あれ。」


自分達の指揮官をあれと呼び本当に嫌そうな顔をしながら話をする。

実際、長門は候補生の指示がおかしな時や理解し難い指示が来た際には

納得がいく説明を求めたり自分の立場から意見の具申をする事が多かった。

遠ざけられる事を覚悟はしての意見具申は候補生の為を思えばこそ。


「あんたさ、卒業してさ、前線というかまぁ、あれよ。鎮守府に着任(つける)と思ってる?」


長門の質問に答えずに長門へ質問を返す翔鶴。
901 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/01/20(月) 23:09:42.94 ID:NMWLJ5Lo0
「一体どういう意味だ?」

「あー、やっぱりねぇ。そうよねぇ。」

「いえね、なんという事でもないのよ。

 大和型は未だにレア、稀少艦娘。適合者も少ないから猶更よね。」

「でも、私たちは違う。」


翔鶴が語気を強め言う。


「私に瑞鶴、それにあなた達長門型。今となってはその艤装の入手も容易い。」

「最前線の提督たちの誰もが渇望した初期と比べれば今は十分に揃っている。」

「さらに言えば、新米兵士が艤装性能が勝るといえどベテラン勢に割って入れるか?」

「少し考えればその可能性くらい頭のいいあんたならわかるでしょ?」


長門を睨めつけながら言葉を吐く。

艦娘の艤装が開発され新型としてロールアウトされてから

月日がたてば稀少といえどある程度の数は普及する。

その製造に莫大な資材を消費する事と適合する者が少ない大和型は

未だに稀少だがそうでないものはちょっと珍しい程度にまで収まっているのだ。


「珍しいって稀少価値、そうね、プレミアってのは何も提督連中だけに作用するわけじゃないわけよ。」

「まして、私たち艦娘の一般人への情報は制限されている。」


話の意図が読めないと長門が翔鶴へ告げる。


「前線であぶれた艦娘の行き先の噂くらいあんたも聞いたことあるんじゃないの?」


間抜けを見るといった笑顔で翔鶴は語る。


「艦娘の中でもレア、さらに言えば前線の提督達の手垢がついていない処女(新品)」

「なかなかいい商品だと思わないかしら?」


つまりは海軍の闇である。

深海棲艦との戦いに国際社会を巻き込んで同盟国と共同でといくら負担を分散した所で

戦争というのは穴の開いた樽に水を灌ぐかのように金が消える。

特別措置法で新税の設立や国債の発行を行ったり、

海運を使う企業に協力を要請という形で恫喝しての出資を募ったり。

裕福な篤志家や著名な投資家達へ海軍への寄付を呼びかけ。

考えられる様々な方法で金が集められる中で相手への見返りとして

最も手軽かつ手早い手段の一つが売春という胸糞の悪い手段である。

もちろんだが世間一般的な人身売買的なものよりはいい待遇なのは当たり前ではある。

場合によってはそのまま除隊後に妾、あるいは本妻として結婚というのも僅かばかりにはあるらしい。

さらに、メリットだけいえば海軍は不要な艦娘の面倒をみずに済み、

相手はそこいらの一般女性が束になってもかなわない美女とくれば満足のいかない男はいない。

少し、性癖に歪んだ相手がいたとしても海軍があまり酷い目に合わないように

監視はしているという事であるから問題はないのであろう。

建前上はであるが。 また、それを行っているのも海軍が主体としてやっている事ではないという形らしい。

すべてはらしい、かもしれない、の噂である。
902 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/01/20(月) 23:15:25.20 ID:NMWLJ5Lo0
「私はそんなの嫌よ?だから我慢してあのピザに抱かれたってのに……」

「ここで負ける様な事になればそんな目になるかもしれない。」

「負けなくてもまぁ、あんた達はわかんないけどね。」


ふんと鼻をならし再度、長門達を睨みつける翔鶴。

なにせ指揮官は海軍内でそれなりに権力のある中将の息子である。


「で、まぁ、私はあんた達よりあれから信用を受けてた分こういう時の指示も受けてるって訳。」

「ここまで言えば理解できんだろ、お前ら娼婦になりたくないなら私に黙って従え。」


乱暴にしかし、あくまでも目的は勝利という事への秘策があると続ける。


「相手の中から裏切り者が出る手筈になってる。」


なっ、と驚愕の言葉を言いかける長門。

だが、自分達の指揮をとる候補生の事を考えればなりふり構わずやるだろう事は理解できた。

そして、時を同じくして翔鶴達が今後について移動をしながら話をしていた時。

叢雲たちも今後の動きについて話を行っていた。


「さてと、連中はどっちの部隊に食いついてくれることかしらねぇ。」

「あら、私たちのいるこちらで間違いないのじゃないかしら?」


叢雲の言葉に扶桑が返せば。


「何事も絶対はないって言いたくはあるけど間違いないだろうというか………。」

「そうね、あいつ、まぁ、司令官なんだけど。」

「あいつが言うには相手にはったりを利かすためには自信が無いような事でも

 自信をもって堂々とした態度でいれば相手側が確信をもって会話をしていない限りは

 引くことがおおいそうよ。」


どういう事かしらと暁が尋ねそれに叢雲が続ける。


「会話をしていて相手がつねに堂々として話をしていれば

 相手の専門外の事なんかだと簡単に騙せるって事かしらね?」

「詐欺師の手口とも言えるのだけどね?権威や客観的に見えるデータ。

 つまりは騙そうとしている相手が客観的に見ても信用できるデータとかね。

 大学教授とか公的機関認証とかそういった類よ。」

「あいつ曰く、嘘ってのは本当が9割、嘘1割くらいでつくとまずバレないそうよ?」

「あとから聞いても本当に細かい部分でしかないから、
 
 そんなことありませんと言えば相手もそうだったかな?になりやすいそう。」


脈絡もなく詐欺師、人をいかに騙すかの講座が始まったことに疑問符を浮かべる隼鷹、暁。
903 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/01/20(月) 23:20:36.37 ID:NMWLJ5Lo0

「つまりは提督の変更した仕掛けは信じる者は掬われるという最低な罠という事かしらね?」


扶桑が理解したとばかりに言葉を続ける。


「あー、そうそう、そういう事。

 詐欺とか騙される人って自分が信じたい嘘を言われるとそれを信じちゃうみたいなのね。」

「信者と書いて儲け(もうけ)みたいなやつよね。」

「今の私たちのいる位置と飛鷹達のいる位置を考えてもらえるかしら?」


隼鷹が現状の二つの艦隊の位置について説明、全員での認識の共有を兼ねて話始める。


「そうだねぇ、飛鷹達はいま島影に停泊している状態だね。」

「側面の島にはそれなりに高さのある山もある。

 周囲についちゃ敵の侵攻方向を制限しやすいがこちらの脱出口も限られるあまりいいとはいえないね。」


と隼鷹が一般論を言えば。


「だけれど水深はそれなりにあるから

 潜水艦の娘たちも待機できる場所がそれなりにあるわけよね。」


事前の下調べで分かっている海底状況について暁が述べる。


「付け加えるなら空襲での強襲という事であれば山側から行えば

 山が壁になるから電探が働かないので練度の高い艦載機乗りが高度を低く山伝いに飛ぶことで

 ギリギリまで気付かれにくいという敵側への利点もあるわ。」


扶桑が敵側からの視点について意見を述べる。


「一方で、私たちのいる場所については四方が開け確認をしやすく、

 また足下の水深もまた潜水艦が潜むのに十分。」

「こういった状況下で取るとしたらどうでるかしら?」


叢雲がにこりとしながら暁に語り掛ける。

「そうね、順当に考えるなら飛鷹さん達の方へは襲撃をするにしても艦隊ではないのじゃないかしら?」

「あまりにもあからさまに罠っぽいもの。」

暁の言葉にうなずく叢雲。

「そうさねぇ、あたしらはしょせん軽空母だからね。」

「艦載機を艦戦に全振りして敵の数を減らしたといっても

 あっちの正規空母の娘達にはまだ攻撃機は残っているだろうしね。」

「少しでも提督の罠に懲りているならあからさまな方にはいきたかないねぇ。」

隼鷹がそういえば。

「罠を仕掛けられていても私たちの方へ攻撃を仕掛けるのであれば、

 まだ四方が開けている分だけ対処しようあるかしら?」

と扶桑が続く。

「私達のそれぞれの位置がどちらかが襲撃されても

 直ぐに駆けつけることができるような位置取り展開している事をつかんでいたとしても。」

「こちらに来ざるを得ないってわけよね。」

最後に叢雲が引き取る。
904 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/01/20(月) 23:23:01.73 ID:NMWLJ5Lo0

「相手に選択肢を与えているように見せかけて巧妙に、

 いや今回については強制的に一つの選択肢しか与えていない。」

「最初の潜水艦娘達の襲撃に海峡部での伏撃。

 二度あることはなんとやらじゃないけど流石に見え見えの罠にのるわきゃないわな。」



隼鷹がもっともな意見を言う。



「さっきの詐欺師の話じゃないけれど言葉巧みに相手の思考誘導して騙すって事で

相手は騙されたと気づかないって話もあったわね。」

「あくまで、自分がそうと決定したと認識させる事が大切だって。」

「提督もつくづく悪だねぇ。」


叢雲達に攻撃がいくように仕掛けた提督の思考への罠に感想を述べると隼鷹がその感想を述べる。

叢雲達がちゃくちゃくと準備をしていた時、提督も動き始めていた。



「えっ、あっ、はい。了解いたしました。」



香取が提督達の艦隊の被害報告を提督から受ける。


「軽空母飛鷹、駆逐艦雷、中破、駆逐艦響、小破。ですね。」

「ほんとうに宜しいんですね。」

「えぇ、よろしくお願いいたします。」


提督が香取に自艦隊の被害を報告する。

提督の態度があまりにも余裕綽々であったため聞き返してしまったが……。

どうやら間違いはなかったようである。

一体何を考えているのやらと香取が提督の思考に思いを馳せる。

そして、その意図に気づき背中に冷や汗が噴き出るのを意識するのはほんのあと数分後の事であった。
905 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/20(月) 23:31:53.39 ID:NMWLJ5Lo0
以上少ないですが本日分の更新です
1レスの改行ぎりぎりまで入れての巻いていっております!残りが少ないから仕方ないですね!
皆様、イベントどうでしたか?いちは甲甲甲甲乙甲!で駆け抜け初の全艦娘コンプいたしました、めでたい
そして、初月も追加で掘り更に鎮守府の層を厚くしていっておりますです
イベ後の大型でサラトガ狙いましたが大鳳(三人目)が来ました…、うん、色違いで持てるから便利ですね!(白目)
この後の展開は多分毎回察しのいいレスを下さってる方とか気付かれるんじゃないかしら?と思っています
お読みくださっている皆さんがいろいろ考えてレス下さってるのはいい意味で毎回ドキッとしながら読んでいます
では、最後に一言いっちから、提督は狡猾、さんはい!提督は狡猾!
ここまでお読みいただきありがとうございました、乙レス、感想レス、いつも励みになっています
お気軽にレスを残していただけると本当にありがたいです、次回もよろしければお読みください
906 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/21(火) 01:19:52.03 ID:nkxRqoEX0
新年投下乙です
自分も甲甲甲甲乙甲での攻略でしちゃ
907 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/28(火) 14:27:12.79 ID:+asJ9zFC0
へぇ中破…なるほど

艦隊側でやりたいことはなんとなく分かったけどこれ敵のおつむが程よく悪いが絶望的にバカではないという絶妙な残念さが大前提な気が
長門が土壇場(今)で一皮剥けると負けはしないが冷や汗かかされそう
908 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/05/19(火) 01:01:33.30 ID:cQpzdrR50

「この局面で中破かね?」


飛鷹達の中破の報せはそれぞれに驚きを与えた。

ある者は失点を取り返す好機ととらえ顔を喜色に染め。

ある者はこれから何が起きるのかと好奇に染めた。

また、ある者はやれやれ悪い癖が出たと呆れ気味に顔をしかめ。

そしてある者はここでその中破という事態が

どう盤面を動かすのかと深く思考を巡らせる。

まさしく三者三様。

しかし、その根底で皆が考えるのは、もうすぐこの演習の結果が終わるという確信である。

その結果がどうなるかというのは別にして、という但し書きはつくが。



「よし!よし!よし!」



まさしく小躍りするという表現が正しい様にその候補生は喜んでいた。



(今までいいようにやられていましたからね……)



その様を呆れと憐れみを持った表情でみる鹿島。

最も教官としての彼女から見れば相手が偉いさんの息子というだけでやっている行為はすべて黒。

演習相手の提督と比べて黒に限り無く近い白色ではなく純然たる黒なのである。

ゆえに自分の職務を遂行するのであれば早々に、いかにこの試合を終わらせるか、

そして自分に火の粉が掛かってこないように立ち回るか。

それが重要なのである。
909 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/05/19(火) 01:04:10.08 ID:cQpzdrR50

といっても香取と比べれば鹿島の頭痛と胃痛の負担は軽いものではある。



「さてと、馬鹿が喜んでいるんだろうなぁ。」



下卑た笑いを浮かべ口に煙草を咥え火をつけ呟くのは提督である。

香取はこの相手の素性をここに来てようやく把握した。

違和感の正体、そう、ここで提督の素顔が見れた時点でようやく把握したのだ。

この相手。海軍上層部が送り込んだ現役の提督、それもバリバリの前線帰り。

恐らくその目的は養成学校の調査、綱紀粛正。

冷徹かつ確実にその任務を行うことの出来る相手であることは間違いないだろう。

どおりで妹の鹿島が鼻につくくらいの血の香りがする相手と喜ぶわけだ。

或いはそれに類する戦歴を持ったピカピカの勲章持ち、

一言でいえば大好き深海殺し、である。

普通なら優位に進めている戦況で部下の中破をわざわざ受けに行くわけがない。

いや、その報告は欺瞞情報であろうことは間違いなく、そして報告させた意図が不明なのだ。

なにせ、ここまで周到に準備を行い敵の機先を制し、

相手の策をすべて児戯として捻じ伏せてきている者がである。

まともな思考を持っていればこの中破をわざわざ受けたのは何かの罠としか考えないだろう。

いや、むしろ敵を破滅させる為の一里塚、

もといすでに首に匕首が突きつけられていると気づこうものである。

更にこれを罠としてみれば恐らくは中破のダメージは受けていないであろう事が考えられるのだ。



「香取先生?いかがなさいましたか?」



にこりと向けるその笑顔、試合開始までは爽やかに見えていたが、

今となってはその笑顔はまるで魔王か混沌の破壊神か。

一つ返事を間違えればそこで終わる。

この相手、間違いなく自分も粛清対象に入れているに違いないのである。

返事を間違えればリストの一行目に見事、華丸急上昇なんてことになりかねない。

自分に見せたこの笑顔はまさしく死刑判決前の、次はお前だの予告に違いないのである。

これはいけないと香取はその頭脳をフル回転させ、薄氷を踏む思いでその喉奥から絞り出す。

そして、その返事はこれだった。



「全ては計算づくですか。なかなかのお手並み。これは特別に加点が必要なようですね。」



あくまで余裕を持った対応と思わせることに主眼を置きつつ

言葉は冷静さを保った上で自分の動揺を悟られないようゆっくりと語った。

香取はこっちに怒りの矛先を向けないでくれぇと

土下座せんばかりの心持ちなのは悟られないように全力で表情を装う。

この場にいるのは誠実に、そう職務に忠実な一人の教官なのである。

そういう体を装わないと間違いなく粛清されてしまうと

香取が笑顔を引きつらせながら返事をしたのは無理からぬ事であるのだ。
910 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/05/19(火) 01:08:54.16 ID:cQpzdrR50

一方の提督はというと顔に出さないものの内心実に穏やかではなかった。

敵のやり方へ怒り心頭に発する、という訳ではなく

冷静さを失い自分の素をよりにもよって香取の前にさらしたことについてへの焦りである。

これは実にまずい、今日の演習は偉い人たちが来ているのである。

今日はこれまでやってきた事の集大成を上司の前でプレゼンして商品、

つまりは自己の売り込みをして次の仕事への権限を勝ち取る為の場なのだ。

あくまで一候補生が落ちこぼれな底辺から優勝という逆転劇を演じなければならない

という上司が描いた台本の演目に沿った演技が求められているのである。

なればこそ、最後の最後まで単なる提督候補生を演じて、

香取達にはそうと思って貰わないといけないのだ。

だが、現実はどうだろうか?

冷静さを失い演習相手を全滅させる事へ作戦を大幅に変更しようとしている。

実践において平均的な提督であれば作戦目標が達成できないとなれば出来る範囲内で行動するだろう。

負けているのであれば被害を抑えつつの撤退、

勝利しているのであれば戦果拡張を狙うか被害を出さないためにそこで戦闘を終結するかである。

そう、あくまで平凡手、手堅い一手しか打たないものだ。

敗北状況下で全滅か逆転かの博打を打ったり勝利状況下で休むことなく敵殲滅の為の前進、

追撃殲滅戦をやる為に作戦変更するなど余程の経験や自信がないと出来たものではない。

所謂、勝負勘、ここが引き際、ここが攻め時の機を見る感覚は

実戦経験が無いと培われるものではないからだ。

そう、つまり、ここで提督がそれを指示したことによって

香取に私はこういうものですと名刺を渡してしまったようなものなのである。

冷静になった後に香取をみてみれば引きつった笑みが能面の様に張り付いている。

やり過ぎた、そして悟られた。

提督がこう思わないはずがないわけで、提督は相手の心情を図るべく

駆逐艦が潜水艦の位置を知るために探信儀から音を出すように様子見の声掛けをした。

素性がバレてしまえばそれを理由に、そう、不正入学として今行われているこの試合を

強制的に終了されても仕方がない場面だからだ。

そうなれば上が書いた台本から外れるばかりか期待された役割を演じきれない愚か者の烙印を押されかねない。

それは実に困るなんてものではない、だからこそ、提督は香取に一声かけた。

『いったいどうされましたか』 と。

提督の心の声が聞こえたなら、頼む、気づいたことをみなかったことにしてくれという絶叫が聞こえていただろう。

そして、一瞬の沈黙、それはほんの数秒だが体感として実に長く重い間であった。

待ち望んだ香取からの返事は。

『 特別に加点が必要のようですね 』である。

そう、提督は勝ったのだ。勝訴を勝ち取った被告人の様に全身でその喜びを表現したいくらいである。

教官の香取は提督の正体に気づいていながら敢えて見なかった事にすると宣言したに等しいのである。

ふふふふふ。

うふふふふふふふ。

お互いの心の声を押し殺し二人は笑う。お互いに自分の望む結果を得られたと確信して。

提督と香取のこのお互いへの誤解は結果としては良い方向へ向かう事となったのは言うまでもない。
911 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/05/19(火) 01:11:23.73 ID:cQpzdrR50

その頃、海上では隼鷹が自身の旗下にある艦載機達へ指示を飛ばしていた。



「中破ねぇ。盛り上がってきたわね。」



叢雲が語れば。



「これも一つの可能性として提督は語られていましたし、

 対処も事前に決められていた想定内ね。」


扶桑がこれからの動きが楽しみと返す。

敵のやり方に不満を覚えていた叢雲達が提督が敵を殲滅に目標を変えた事に喝采をあげていた。

そして敵対する翔鶴達もまた中破の報で作戦を変更していた。

そして長門と陸奥は考えるのを止めた。

二人は先の裏切り者が出る予定であると翔鶴に告げられた時点でこの試合を投げる事に決めた。

それは姉妹艦であるが故の阿吽の呼吸でアイコンタクトでの意思疎通。

今も目の前で中破の報せに良しと喜び

事実確認のための偵察機を飛ばそうともしない翔鶴達に愛想も尽きたのだ。

実戦ともなれば卑怯、卑劣も当たり前のように起こるだろう、そして行わねばならないだろう。

名誉を求める事の出来ない作戦に携わらねばならないこともあるだろう。

だが、と、長門は考える。自分の命を掛け金として積むのだ。

納得のいく命令を下す提督の下で働きたい。

正式に艦娘として戦うようになり命を落とすような事になるのでれば悔いのないように散りたい。

しかして、今自分に指示を出している奴はその対極に位置しておりその下では死んでも死にきれない。

だからこそ、端的に言えば『 やってらんねぇや 』と二人がなったのだ。

そして、艦隊の助言役としてこの最終戦以外でも

色々細かく旗艦をフォローしていた長門が投げた事でこの試合の趨勢は決まった。

試合後、何故に我らの指揮官が相手の候補生でなかったのかと

ため息交じりに長門は叢雲に語ったそうである。

912 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/05/19(火) 01:14:31.27 ID:cQpzdrR50
エタ……エターナルフォースブリザード!
少しだけ更新です、お待ちいただいていたかたおりますでしょうか?
いらっしゃると少しばかり僅かな期待……、愛想つかされてて仕方ないわけですしね……
仕方ないね…、お読みいただきありがとうございました
感想、乙レス、気軽に残していただけるとイッチが喜びます
誤解の美学は考えるのが結構大変、でも読んでいて楽しいですね、お互いに誤解したままだけどいい結果が出て万事よし!
大事です
913 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/19(火) 01:21:35.42 ID:3AQFTJmWo
>>912
乙乙
待ってたよー
914 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/19(火) 04:41:35.96 ID:ZGUAbTGSo

待ってた
915 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/19(火) 08:00:54.47 ID:mjcAsGAB0
おつ
まってたよー
916 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/19(火) 10:50:06.70 ID:DRSrIhJ/O
香取と提督の深読みが微笑ましい
917 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/05/19(火) 21:16:33.98 ID:0l/yy0DGo
待ってた乙
帰ってきてくれて嬉しいわ
918 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/04(木) 00:05:04.56 ID:RmhDnurG0
投げたのは「試合」だけかな
惨敗確定の現状、お偉いさんに価値を示すなら祁山の王平たるしか
島津の退き口じゃあ大した提督にはスカウトされそうにない
919 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/28(日) 00:56:29.92 ID:E0/y+fbuO
920 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/28(日) 00:59:56.00 ID:E0/y+fbuO
書き込みに問題ないようですね…
モバイルWifiなんでちょっと書き込みテストしました
一月ぶりでなんですが更新いたします
921 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/28(日) 01:02:45.50 ID:E0/y+fbuO

「やぁ。そろそろ合流できそうだから撃たないでもらえるかな?」


長門達の無線に周波数を合わせた上で連絡を入れてきたのは。


「響?きちんと始末はしたんでしょうね?」


翔鶴がその首尾の確認の返答をすれば。


「まぁ、てこずって私も被害を受けたけどきちんと行動不能にはしておいたよ。」

「偵察機で確認はしなかったのかい?」


言外に当然しているよねの雰囲気に、してないと言えるわけもなく当然のようにしたと答える翔鶴。


「響はこれから我々と行動を共にするのか?」


不平不満、不信と疑念、それらをないまぜにした表情そのままに響へと尋ねる長門。

922 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/06/28(日) 01:05:10.46 ID:E0/y+fbuO

「長門が私を警戒するのは分かるよ。むしろ、しないほうがおかしい。」

にこりと笑いながら長門達の付近に現れ合流してくる響。


「更に言葉を続けるなら味方を裏切ってまでこちらに来る相手が

また、裏切らないかと警戒しないのならそれは実に目出度いね。

私なら、そんな相手は警戒してしかるべきだと考えるよ。」



長門の心の内奥を見透かすかのように話を続ける響。

曰く、姉妹艦にして長門達の候補生の秘書艦を務める電を

助けるために裏切りを引き受けた事。

そして同じく姉妹である雷、そして仲間である飛鷹を攻撃するのには

やはり躊躇いが無かった訳ではない事。

しかし、この試合で響達を指揮する提督が負けずに勝ってしまった場合に

電が受ける責め苦を考えれば裏切り者の不名誉を受けてでも提督に負けて貰わなければならない事。

後の事を考えれば響の指揮官であれば裏切った理由についても説得ができるであろう事。

そして。



「私の指揮官の候補生はなかなか情にもろいからね。

後で涙でも見せれば許してくれるよ。」

「彼は甘ちゃんだ。」

「それで、私は陣形のどこに位置取りをすればいいのかな?」



響が語った事について長門は意見を口に出さずに考えていた。

それは一見、筋は通っている。だが、と長門は考える。

響の語った話はあらかじめ用意された答えではなかろうかと。

そして訝しみ、胡乱な視線を向ければ響はやれやれといった仕草をした。

923 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/06/28(日) 01:07:41.45 ID:E0/y+fbuO
「長門は私に対しての警戒が実に強いようだね。

仕方ないとは思うけれど、少しは信用してもらえないかな?」



気持ちが顔に出て苦虫を嚙み砕したかのような顔をしていたのであろう。

響が苦笑する。そして長門を咎める様に眉根をひそめ、睨みつける翔鶴。

翔鶴に睨まれたこともあり、意見する具申する気もなかったが

更なる不興を買いこれではもう何を言っても聞き入れてもらえないだろうなと考える長門。



「やれやれ、信じて貰えないのは仕方ない。じゃ、信用の無い私は先頭で体を張りますか。」



そして、旗艦の翔鶴と二三会話を交わした後、

響はそう言い残し輪形陣の外周、その先端へと移動していった。

恐らく響の役割に気が付いたのは自分だけなのだろうが

これを翔鶴に具申する気力は長門にはとうに無くなっていた。

また、先の響の言葉による毒。

これが艦隊内での適切な意見のやりとりを阻害する事を達成したことを考えれば

仮に意見具申したとしてもその結果を予想することは容易い。

響の役割は恐らくこういう事なのだろうなと長門は考え始める。

響は自身の指揮官を形式上、裏切り仲間を中破へと追いやりこちらの艦隊に合流。

一見すれば裏切るという予め言われていた任務を達成し、

その報告の為に翔鶴達に合流、さらには減った部隊の戦力の増強とプラスになる部分が大きい。

しかしこれは希望的観測に過ぎないのだ。

響が自分から長門へと語ったように響が裏切っておらず、

飛鷹達の損害も偽装されたものであった場合どうであろうか。

翔鶴達の部隊はいつ牙を向くか分からない敵という、

内に危険を抱えたまま演習を継続する事となる。

一連のやりとりを考えればいつ自分達へ魚雷をむけるかもしれない相手を輪形陣の後端、

或いは内側へ抱え込むことなど出来るわけがないと考えるのが当たり前である。

924 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/06/28(日) 01:09:53.95 ID:E0/y+fbuO
だからこそ響が陣形の一番外、かつ先頭に行くのを止めることはしなかった。

だが、と首筋にちりちりとした物を感じながら長門は考える。

試合が開始されてから自分たちをいいように翻弄してきている相手である。

響の裏切りが仮に相手候補生の予想外だったとして

それに対処できない程の相手なのか?という事には、

はなはだ疑問であると言わずにいられない。

いや、すぐにそれを利用して何か仕掛けてくるような相手であろうなと考える。

寧ろ、響が裏切る事を予測して、そしてそれを響本人から指示が出ていることを聞き出し

裏切ったように見せかけて合流しなさいと電を救う手立てを考えた上で命じている可能性もある。

此方と比べてあちらはお互いへの信頼関係の醸造も出来ていると見受けられる事から

そういった他者へ言えない秘事も相談出来る環境は出来ていると考えられる。

長門達の候補生からの命令を守りつつ本来の指揮官への義理を通すやり方はいくらでもあるだろう。

そう、なにも響がこちらに合流した後に長門達を攻撃せずとも

相手を利するやり方など幾らでもあるのだ。

例えば現在先頭を務める島風と交代して自分が先頭に立ち、対潜警戒をするといったもの。

敵の艦隊には現在、魚雷の残弾も残っており行方が掴めていない潜水艦娘達がいる。

彼女たちが近づいてきた際に故意に報告をしなければ長門達には見つけるすべがない。

その危険性を考ると島風と位置を入れ替えさせることが出来ない。

消去法的に響を先頭へと向けたが先頭であってもその危険性は変わらず、

他の手段を取られる可能性もある。
925 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/06/28(日) 01:12:52.17 ID:E0/y+fbuO

もし響が自分たちの位置情報を垂れ流していたとしたらどうか?

艦隊での艦の位置が予め分かっていれば空母艦載機による攻撃の順番もおのずと決まる。

場当たり的に目標をばらけさせるのではなく集中運用で一人ずつ確実に屠ればいいのである。

攻撃が始まれば響は対空射撃のふりをして攻撃機をスルーすれば長門達の被害は増えるだろう。

さらに響が先頭である理由を付け加えれば、

響たちの艦隊からの攻撃による『 誤爆 』のリスクを低くする事も考えれ、

艦隊の進行方向を誘導する意図もあると深読みできなくもない。

つまり、響は先ほどの会話で仕方なしに先頭へ行ったように見せかけて

実は先頭以外に行き場が無いように誘導し、

先頭に立つ事でいくつもの優位性を敵へ与える可能性があるのである。

この相手候補生の勝利へのあくなき執念は

自分たちの指揮官のそれと比べて実に丁寧かつ精緻、

そして何よりギリギリのルール違反にならないであろう所を見極めたやり方。

なにせ自分たちの候補生が先に指示した裏切りの指示を利用して

響に敢えて合流後は『 何もしない 』を響にさせるのである。

何もしなければ何かする事と比べ事が露見することは、まずない。

響を電を利用して裏切りをさせた事実は演習の記録に残るかもしれないが

その裏切りを利用して何もさせなかったというのは何もしなかっただけに記録に残らない。

長門は妙な強者への妙な信頼感というべきか、いや、相手の候補生が優秀だからこそ、

その思考をなぞり次の手を考えらる単純さに感嘆を覚えていた。

これが仮に自分たち指揮官だった場合は却って何をしでかすか分からない所だろう。

寧ろそれ見た事かと裏切りを審判としてついている教官に報告し

その場で試合終了をさせるかもしれない。

或いは後々の強請等のネタに利用しようとするかもしれない。

何にしろ、どうせ碌なことにならないだろう。

翻って、この演習相手候補生の動きを考えば、将棋で対局相手の性格、

癖を熟知した上でその上を行くために何手も先を読み考える楽しさがそこにはあった。

ひとつ、問題点があるなら今回の相手は常に真剣を首筋にあてた上で

禅問答をしてくるような情け容赦の無い相手という事だろうか。

答えを間違えれば即で首が跳ねられる、そして、こちらの艦隊内、

指揮官との不和を見抜いて響に自分の信頼を落とさせるダメ押しをさせている事を考えれれば

自分が艦隊の要となっている事も見抜かれていると考えるに容易い。

強者に認められるというのは名誉なことなのだがな、と、少しばかり嬉しくなるものの。

その結果が徹底的なまでの離間工作である。

926 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/06/28(日) 01:17:37.30 ID:E0/y+fbuO
長門が思考を巡らせていた頃、響は輪形陣の外側へと移動し、

対潜警戒を行いつつ艦隊の早期警戒艦として先頭を務める島風に声をかけた。

「お疲れ様。島風は流石の速度だね。」

響の機関と島風の機関ではその最大船速には当たり前のように差があり、

結果、島風が響のやや前を行くような形で航行する形となる。

そして、詰将棋の様に相手の思考をなぞっていた長門は響がこちらに来た理由、

島風を救う事は難しいかもしれない事を理解したために行動へ移った。

響が翔鶴率いる艦隊に合流した結果何が起こるかが理解できれば、

その時が来れば響は必ず行動を起こす。

何もしないことを行動を起こすというのもおかしな話だと

自嘲の笑みがこぼれるのを抑える事に苦労しつつ、

長門は翔鶴に万一の際の盾としてと具申し響と他の仲間の間に位置する順番へと移動する。

…………

……………………

ぱしん。

とある地点にて静寂に包まれる中、音が響き渡る。

周囲にもうもうと煙が立ち込める中、その柏手はよく響いた。

その拍手をした者は二礼し、何かの儀式でも始めようかという雰囲気を纏う。

拍手をし、その厳かな雰囲気を身に纏うは飛鷹である。

飛鷹は胸元から何かが書きつけられた紙を取り出し、よく通る声でそれを朗々と読み上げ始めた。

「高天原に神留り坐す 皇親神漏岐 神漏美の命以ちて ………」

飛鷹が読み上げるそれは大祓詞と呼ばれる祝詞である。

内容としては大まかには穢れ、罪、過ちを祓うものである。

その為、飛鷹が読み終えた後、その場は静寂に包まれ、

言いようの無い厳かな雰囲気が場を支配していた。

そして、その中で飛鷹が発艦用為に巻物を開け甲板の巻物の上に何かの部品らしき物を置いた。

実に小さな部品であったのだが、

一瞬にしてそれを中心として周囲の空間を歪めるようにして大気が凝縮されていき

そこに戦闘機が複数顕現した。


「靖国より現世に戻りし英霊の皆さん、敵の殲滅、どうぞよろしくお願いいたします。」


普段の命令的口調ではなくあくまでお願いという形で召喚、

発艦用の巻物の上に顕現した戦闘機達に告げる飛鷹。

そして、その艦載機に乗る者たちは鷹揚に頷くとその機体のエンジンを轟と響かせ大空へと消えていった。


「お疲れ様!」


飛鷹の執り行っていた儀式を黙って見つめていた雷が声をかける。

「ありがとう。にしても、提督もどこからあんな物を手に入れたのかしら……。」

飛鷹があんなものと言うのは先ほどの召喚に使われた媒体である。

「そんなに危険なものなの?」

雷の問いかけに陰陽型軽空母にもそれぞれ得意とする発艦方式の違いはあるけれどと

前置きした形で飛鷹は説明を始める。
927 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/06/28(日) 01:25:10.73 ID:E0/y+fbuO

一般的な陰陽型は神道型も道術型も共通して紙の人型を使い

それに英霊を降ろして妖精として顕現させて戦闘機妖精、攻撃機妖精として行動して貰う。

魂を卸す媒介が紙という事もあり妖精そのものの意識は薄く、

コントロールという部分は容易い。

しかし、容易い分、指示を出す側が熟達していなければ恐ろしく弱なる問題点がある。

これは弓道型も同じでありその艦載機の強さは召喚者の熟練度に依存する形となる。

極めれば呑波呑舟、大喰らいの一航戦と強者として名をはせた艦娘程となる事も可能ではある。

飛鷹が今回行った召喚方式はこの一般的な物とは少し違う。

英霊を降ろす媒介がその英霊に所縁のある物を利用している点である。

この降ろし方であれば指示者の熟練度はそれ程必要としない。

何故ならば英霊を降ろすのに所縁ある物を使用している為

現世との結びつきが人型を使った場合と違い強固になる為であり。

その結果として顕現した艦載機達は英霊になる前と同じように

自己の意識をしっかり持ちその持てる技量で敵を殲滅することが可能であるからである。

その為、降ろす英霊が名のある搭乗員の英霊であればあるほど

その強さは桁違いとなり艦載機操作の熟練度は低くともその強さを大喰らいの二人に迫る事も出来るのだ。

928 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/06/28(日) 01:37:18.42 ID:E0/y+fbuO
ここまでお読みいただいた方は、

なぜその方式が一般的ではないのだろうかと思われるだろう。

そう考えるのは無理からぬ事であり実際にそう思われても仕方のない事である。

しかし、メリットがあればデメリットがあるというもので

これに関してはデメリットが大きすぎて採用がされていないのである。

そのデメリットとは術者、この場合は召喚主である艦娘の巫女としての力量が問題となってくるの為である。

この力量が不足していた場合、英霊を現世に繋ぎとめるために多くの霊力を奪われ

最悪生命力を持ってそれに変える事となり死に至る事があるのだ。

デメリットの方が大きすぎる事もあり紙製の人型での召喚方が確立されてからは

その方式で英霊を召喚する者はいない。

もとより使いこなせたのも陰陽師型軽空母では過去に一人居たのみであり。

その者は千曳岩の龍驤、黄泉路塞ぎの龍驤、冥府の官吏、死霊使いの龍驤。

いくつもの呼び名を持ち圧倒的な霊力で持って多くの英霊を使役したと言われる存在。

また、英霊として呼びだした中には『 艦娘 』も含まれていたとか。

海軍の記録上居たという在籍記録は無いがその活躍により命を繋いだものもいるという話はあり

かといって何処かの鎮守府に在籍していたのかどうかは定かではない。

先の召喚方法についてもどこからともなく一人で救援に来た龍驤が目の前で艦載機を呼びだし

『 艦娘 』を顕現させたときに行ったやり方から推測、そして研究をされての推測に過ぎない。

その研究の過程で命への危険性が指摘され

巫女としての力が足りないものには絶対にさせない事とされた禁術でもあるやり方なのだ。

提督は飛鷹にその危険性をじっくりと説いた後に

本人の希望を聞き安全幅を多めに取ったうえでその媒介物を渡している。
929 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/06/28(日) 01:41:19.65 ID:E0/y+fbuO

「とはいえ、普通に降ろすよりどんどん霊力を持っていかれている気がするわ。」


艦載機妖精たちは疲労しない、その代わりにそれを使役する艦娘達が疲労する。

これは空母艦娘達に共通ではあるが、飛鷹は疲労以外に自身の術者としての霊力の減少を訴える。


「そんなに大変なの?」

「えぇ、でもそれに見合うだけの力は感じられるわね。」

「実際に戦闘が始まってみないと分からないけど、

 とっておきの切り札として提督が隠しておきたかったのは理解できる危険な手札よ。」

「へぇ、さすが司令官ね!」



常にどれほど先を見据え手を先じて打っているのかと考えると

自分の指揮官でありながら空恐ろしいものを感じる飛鷹ではある。

味方にさえ恐れを抱かせることすらある上官というのはあまり上に居て嬉しいものではない。

しかし、雷の様に盲信し、追従をするのであればこれ以上なく最高の指揮官なのであろう。

きっと提督として前線に立つのであればうまく立ち回らないと

煙たがられるタイプなんだろうなと考えうまくその補佐をしてあげる位置に、

卒業後も共に戦えるのであればいいのにと思わずにはいられない飛鷹であった。

930 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/06/28(日) 01:55:14.37 ID:E0/y+fbuO
イベント始まりましたねぇ
前段でのドロップがすごく豪華、タシュケにサラトガ、涼月、大和
未確認ではありますがイヨも落ちるとか?これは追加で掘らねばなりませんね
報酬、泥艦については特に…です、心があまり現状ではときめかないです
何事も守りに入ると衰退するというのはよくありますがあんまり攻めすぎると寿命を縮めるだけですね
時代劇のような王道、テンプレ物がなぜ人気を獲得でき長寿なのであるか?という部分の話になりますが
いつぞやの最終海域報酬艦みたいに、報酬艦として画像が出た段階で 「…………」 となったのを思い出す次第です
あの時の最終報酬艦さんはぶっちゃけ未だに慣れないこともありモスボール状態です
あれ?可愛いと言われる方のなんというか?どこが可愛いのか未だに理解できないんですよねー……
戦力が整ってくると報酬、ドロの新艦は艦娘としての性能より長く愛でていくことができるかの方が重要です
性能駄目でも別の艦に置き換えられますし、その逆もまたしかりです
(但し、ネルソンのみ除く、彼女はいるといないで取れる選択の幅がかなり変わりますので…)
戦艦としてみたとき性能としては劣るものの人気を獲得している新顔のコロラドとか、ガンさんとか
フレッチャーは改二が早かったなぁという印象、あれ、龍驤のパリピから普通に戻った?くらいの衝撃でしたね
なんというか、にんともかんともですね、新艦より既存レア艦の複数艦持ちを目指してしばらくは攻略より堀優先になりそうです
ではでは、みなさまここまでお読みいただきありがとうございました
待ってたとのありがたいお言葉をおかけいただき本当にありがとうござす、次の更新を早められるよう頑張ります!
感想、乙レス、お気軽に残してください!是非、よろしくお願いいたします!
931 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/28(日) 09:36:30.18 ID:Ypn7o10hO
話が良く練られているだけに途中での感想って書きづらいのよね
続きも期待してます
932 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/28(日) 12:14:11.38 ID:KcJx1UaiO
乙です。
イベントは7月に入るまで様子を見てから挑むつもりです
933 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/29(月) 00:45:16.74 ID:h3jkQ5aI0
最善も次善も許されない状況で意地を見せるかビッグセブン
934 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/30(火) 12:56:15.40 ID:1QOw9AC7O
久々の投稿とおもったら小説みたいな投稿で
全飛ばしで読む記もおきない
935 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/06/30(火) 13:27:22.00 ID:5nIEh8DjO
バカ城の嫉妬みたいな日本語やめーや
936 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/09(日) 04:54:53.67 ID:+Gkhv7lWo
937 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/08/17(月) 00:52:17.49 ID:IHuDNWy0O
久しぶりに投稿来てたと思ったらなんだか趣向が変わったのかな?これじゃないって書き方で…
938 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/12/16(水) 12:36:14.81 ID:g0F72HIno
まだかなー
読者様()の声気にせず今まで通りの続き待ってます
939 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/01/26(火) 10:36:47.18 ID:3HVfbF9+o
940 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2021/08/18(水) 08:05:46.88 ID:XOKMFNjpo
待機
941 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/03/02(水) 22:09:51.86 ID:pFIuXi+uo
942 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/03/21(月) 07:59:22.51 ID:chSqu/uAO
ほしゅ
943 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/07/05(火) 04:02:40.38 ID:TlMAbIL40
保守
944 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/07/30(土) 06:16:26.25 ID:w7ZUY/D30
はい
945 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/04/22(土) 22:45:45.53 ID:90u/NGitO
流石にもう厳しいか?
946 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/12/14(木) 05:26:54.82 ID:zZ2HOdTfo
保守
947 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2024/03/19(火) 20:11:53.27 ID:Cd2Lx5Zh0
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