戦士「うはwwwww勇者逃亡したwwwwww」

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239 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/18(日) 15:08:03.15 ID:i2KJyjXvo
人間には攻撃しないように指示出来ないなら迷惑極まりないな…
240 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/18(日) 15:09:59.82 ID:Y99USQago
>>237
対下層の撃退用ならゴーレムや周囲に合い言葉書いてないか?

ゴーレムを処分するならロープで作ったtrapを蟲壺のそばに仕掛けて転倒させる、とかは無理そうかな?ロープを絡ましたくらいでは転けないか
241 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/18(日) 15:11:30.88 ID:Y99USQago
>>237
魔法使いさんの意見は?
242 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/19(月) 19:59:52.80 ID:zTX1gfQw0
やあおはよう
レスが遅れてすまなかった。魔法使いと僧侶に隠れながらやってるので許して欲しいところだ
今日もまた色々とあったんだが、まずは俺たちの最新のステータスをお披露目しておこう
243 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/19(月) 20:04:42.81 ID:JaIQ+Bw+o
待ってたで
244 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/19(月) 20:14:34.70 ID:zTX1gfQw0
俺(戦士)
適性:戦士
年齢:21
性別:男
練度:LV6
技能:[剣技Lv3][かばうLv1][感知Lv1][+]/+[剣技Lv4][かばうLv2][感知Lv2][自然治癒Lv1][対魔力Lv1]
装備:[ゴブリンの石斧][鋼のつるぎ(壊)-1][古ぼけたツルハシ-1][鉄の鎧(壊)-1]
持物:[ヒーリングポーション]*3,[安物の砥石]*1,[松明]*2,[安物のナイフ]*2,[旧式カンテラ],[寝具],[調理油],[調味料],[食器と携帯鍋]

魔法使い
適性:魔法使い
年齢:17
性別:女
練度:LV5
技能:[炎魔法Lv4][詠唱Lv1]
装備:[樫の杖][魔女のマント][とんがり帽子]
魔法:[Lv1:灯る指先][Lv2:炎の矢][Lv3:夕焼けを熾す][Lv4:赤き刃]
持物:[魔法の触媒(火/下級)]*7,[ヒーリングポーション]*2,[ブランド物のナイフ],[創成のクリスタル(青)],[寝具]

僧侶
適性:僧侶
年齢:14
性別:女
練度:LV5
技能:[光魔法Lv3][薬師Lv1][罠師Lv1]
装備:[鋼の槌][修道服+1]
魔法:[Lv1:癒やしの滴][Lv2:明ける知識][Lv3:祓の水]
持物:[聖典(下級)],[ヒーリングポーション]*2,[瑞々しい毒消草(14日)]*12,[うさぎのぬいぐるみ],[ロープ(4m)-1],[寝具]
245 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/19(月) 20:17:17.21 ID:zTX1gfQw0
俺の技能候補として、[対魔力]が追加された
これは魔法攻撃を受ける時、段階的にそのダメージを減少させる技能だ
どの技能を習得、あるいは伸ばすかについては、ここで一度相談してからにしようと思ってとりあえず保留してるぜ
246 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/19(月) 20:19:45.89 ID:zTX1gfQw0
さて、まず今朝の話をしよう

スチールゴーレムとジャイアントクイーンの部屋に挟まれた俺達は、あれから一日じっくりと話し合った
選択肢はみっつ
ゴーレムをぶっ倒して先に進むか
ワームを殲滅して先に進むか
それともこの階層を更に探索するか
247 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/19(月) 20:23:58.03 ID:zTX1gfQw0
安全面で言えば第三の選択肢が最も確実だ
今対面することのある二体のモンスターは、共に俺たちの適性レベルを遥かに超えている
基本的に冒険者ってのは安全を最優先するからな
普段の探索であれば、こいつらはスルーするのが正しい選択肢だ

ただ、そうも言ってられない事情があるんだよな
今の俺達は消耗戦
数少ないリソースが尽きる前に、リソースの補充をしなきゃならない
248 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/19(月) 20:32:07.21 ID:zTX1gfQw0
ここまでを見てくれたみんなならある程度察しているだろうが、第一層の残リソースは本当に限られてる
なぜなら第一層は地上から最も近い階層で、アーティファクト等の絶対数そのものが少ない上に、殆どの冒険者がそれを取り尽くしてるからな
勿論未探査地域もそれなりにあるが、そこにも果たしてリソースがどれだけあるかといったとこだ

何よりいい加減、二人の精神力が底をつきかけていた
僧侶は涼しい顔をしているが、その顔色は見るからに悪い
まあ街の騒動で既に疲れ切ってる所に、風呂にも入れずこの数日間迷宮を歩き続けている
治療やステータス確認のために魔力も使ってるし、物理的な消耗も激しい
そして何より魔法使いだ。何も知らされていない分、彼女のほうが消耗しているかもしれない
松明に限りがある以上探索用の灯りや焚き火も彼女の魔法に任せていて、戦闘でもその力に頼っているのは否めない
当初は帰りたいと連呼していた口数も、殆どなくなってしまっていた
249 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/19(月) 20:39:39.75 ID:guvqWjJsO
来てたか!今日も一日生き延びてたみたいで良かった
250 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/19(月) 20:46:29.36 ID:zTX1gfQw0
そんな訳で、満場一致でこの場を切り抜けることにする
まあ実際にはかなり悶着があったんだが
全員血と頭が回ってない状態だったので、生産性のある話は出来てない

続いての問題は、どっちのモンスターに狙いを向けるかだが
倒しやすさだけで考えるなら間違いなく[ジャイアントクイーン]だろう
それはモンスターのレベルが比較的低いのもあるが、その技能も対して強くないからだな
ジャイアントクイーンの技能は[産卵Lv4][感知Lv1][吸血Lv1][魔力の籠Lv1]
レアスキルもひとつだけ、しかも割り振りの殆どが[産卵]スキルに偏ってる
レベルは高いが、Lv7のモンスターにしては比較的弱いほうだ
251 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/19(月) 20:55:55.55 ID:zTX1gfQw0
一方でスチールゴーレムの方だが、こっちはむしろLv8相当の強さじゃないステータスがある
スチールゴーレムの所持技能は[鉄の身体Lv3][対魔力Lv2][鉄拳Lv2][魔導生物Lv1]
所持しているスキルは全て優秀なもので、特に身体に刃が通らない[鉄の身体]は俺にとって天敵だ
[対魔力]の関係から魔法使いの[炎魔法]も通りが悪いし、正直このメンバーでの勝ちの目は限りなく薄い

そういった理由から、当初俺と魔法使いは[ジャイアントクイーン]の討伐を予定していた
それに異を唱えたのは僧侶だ
普段口数の少ない彼女が、珍しく強気な口調で俺たちに言ったのは、幾つかのリスクと作戦

彼女は言ったのだ。
[スチールゴーレム]に確実に、しかも安全に勝利する手段があると
252 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/19(月) 20:56:15.09 ID:7e97H2NO0
ワームは倒せば食えそうだが、ゴーレムはそうもいかんな
何か弱点、あるいは弱点になりそうな特徴はないの?
253 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/19(月) 21:08:23.95 ID:zTX1gfQw0
それから俺たちは、[1F-採掘地域]へと再び足を踏み入れた
土を踏み歩く度に、乾いた砂が舞い散っていく
積み上げられたズリ山が、魔法使いの炎を反射してきらきらと輝く
壁で赤茶色に輝いているのは、採掘され逃した鉱石だろうか

やがて、俺達の前に小さな部屋が現れる
部屋の中央にあるのは、下階層へと向かう長い階段だ
そしてその手前に、一つの大きな影が座り込んでいる
石と鉄で出来た手足と、丸太のように太い胴体
胸の中心には深緑色の宝石が埋め込まれ、呼吸のように明滅している
瞳に当たる部分は窪みとなっており、今は光を灯していない
第一層の番人のひとつ。魔法によって作られた命無き門番
鉄の魔導兵器、スチールゴーレム

俺たちが部屋へと入ると、同時にゴーレムの両目に稲光のような灯火が入る
まるで石像のように静止していた顔が、こちらへと上がる
これは意志を持って行っているものではない
ゴーレムは探知したのだ。俺たちを。いや正確には俺たちの体内を循環する、マナの奔流を
生物の身体に遍くマナを感知し、それに向けて攻撃する
それがゴーレムというモンスターだ
254 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/19(月) 21:17:56.64 ID:zTX1gfQw0
戦闘の開始を告げるのは、一際強く輝いた深緑色のクリスタルだった
ゴーレムはその巨体を引きずるようにゆっくりと起き上がると、俺たちを殲滅せんと足を踏み出してくる

まず、足止めするのが俺の役目だ
長く続く探索に重くなった足を引きずって、俺が前線へと身体を出す
奴よりも小回りの効く身体を動かして、石の斧を奴の腹部めがけて振りかぶる
石と鉄がぶつかり、鋭い音が部屋を鳴り響いた
ゴーレムにダメージはない
奴は――そんな筈は無いのだが――嘲るように瞳の輝きを明滅させると
右腕を大きく振り払って俺を吹き飛ばそうとする

だがその右腕に、鋭い炎の矢が突き刺さり、小さな爆発を起こした
俺を突き飛ばそうとした奴の腕が静止し、石の顔が俺の後方を見る
もはや説明するまでもない。この炎の矢は、魔法使いが放った魔法の一閃だ

魔法使いは立て続けに魔法を詠唱し始める
それと同時、ゴーレムが俺を無視して魔法使いの方へと向かっていく
これはゴーレムがより純度の高いマナの方へと向かっているからに他ならない
ゴーレムはマナの強度によって生物か非生物かを、或いはその生物が強いか弱いかを判別している
それこそがゴーレムの一番恐ろしいところだ。奴は前衛を殺さない。後衛こそを殺すのだ
255 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/19(月) 21:31:19.41 ID:zTX1gfQw0
魔法使いの手元に、薄い赤色の光が集まっていく
これはマナだ。魔法使いの体内に渦巻いているマナが出力され、集中し、詠唱によって変質していく

魔法というのは幾つかのプロセスに従って発動される
即ち体内に充溢するマナを特定の範囲に出力し、それを詠唱式によって具体的な形状に変質させ、攻撃する
もしマナを出力できても、詠唱式によって形状が変質していなければ、やがてマナは空気に霧散する
同じように正しい詠唱式を唱えていても、体内のマナが足りなければマナは十分な変質を出来ず、現象は中途半端に終了してしまう
魔法という行為は、中空で霧散する性質のあるマナを、詠唱式によって変質させ固定する技能なのだ

俺は全身を使って、まるで相撲のようにゴーレムの進行を押し止める
壁として攻撃を塞ぐことすら困難な立場でも、奴の動きをほんの少し遅くすることならできるはずだ
踏み縛る足は耐えきれずに交代し、部屋をずり下がっていく
完全に留めることなどできはしない。それでも、俺の体重分だけ遅く出来るなら十分だ
奴の動きが俺によってほんの少し鈍くなったことで、ゴーレムの手が届くよりもほんの数刻早く、魔法使いの詠唱が完了する
出現した矢の数は、今度は四本。空中でゆっくりと具現化した炎の矢は、くるりと空中で一回転すると、ゴーレムへ矛先を向ける。
魔法使いが俺に叫ぶ。それと同時に、俺が一歩後ろへステップする。
それと同時、鋭い音を立てて四つの赤い線が中空を奔り、 ゴーレムの右腕へと集約した。
256 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/19(月) 21:47:58.99 ID:zTX1gfQw0
四つの小さな爆発が立て続けにゴーレムの右腕を襲った
ゴーレムがまるで悲鳴をあげるように、瞳の輝きを曇らせる
小さな爆発はゴーレムの[対魔力]を貫き、右腕を半分以上も欠損させていた
なんという威力だろうか
通常、[炎の矢]は炎属性の魔法の中でも最も基礎的であり、そして最も威力の低い攻撃魔法だ
[炎魔法]技能自体が他の魔法系統と比べ威力が高く攻撃的な魔法が多いとはいえ、普通は[対魔力]持ちのゴーレムの腕を吹き飛ばす程の威力はない
それを行えたのは魔法使いの平均値を遥かに超えた魔力量と、卓越した魔力コントロールが為せる技だろう
普段こそそうは見えないが、魔法使いは天才なのだ
数いる冒険者の中から、勇者のパーティに選ばれ、行動をともにする程度には

凡人と天才との決定的な差に僅かに心を燻られながらも、俺は必死にゴーレムを足止めする
魔法を発動した後こそが、最も危険なタイミング
高密度のマナを出力した魔法使いは、おそらく相当な気怠さが身体に押し寄せているのだろう、動きが鈍くなっている
これこそが魔法を扱う者の最大の弱点。マナを急激に失うと、身体に強烈な気怠さと眠気が発生するのだ
これが限度量を超え、体内の魔力が完全に尽き果てると、以前の魔法使いのように気を失ってしまう
そこまでの消耗は無いようだが、彼女もまた大きなマナの消費に、身体が驚いているのだ
そして大規模なマナを消耗したということは、周囲にかすかなマナの残り香があるということ
ゴーレムの目が大きく瞬く。左腕を伸ばし、マナのある場所――魔法使いの身体を掴み取ろうとする
必死に押し返す。だが、その勢いは止まらない
開かれた掌が、魔法使いの眼前まで迫る
魔法使いがきゅっと目を閉じ、なぜか俺の名を呼ぶ、

その時

静かに、三節の詠唱が囁かれた
そして僧侶の目の前に現れたのは

巨大な、ステータスウインドウ
257 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/19(月) 21:54:22.66 ID:MCX/oHuH0
この相撲力・・・戦士というよりはパラディンだったか・・・
258 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/19(月) 22:05:19.84 ID:zTX1gfQw0
Lv2光魔法、[明ける知識]
詠唱すると対象物の情報を数値化(冒険者の間ではこれをステータスを呼ぶ)し、中空に光の文字として可視化させる
数値化した情報は冒険者の強弱を測るのに用いられる他、技能を成長させる際にもこの魔法を必要とする
言わずもがな、冒険者にとっては必須級の技能だ
故にどんな冒険者もパーティには必ず[光魔法]技能持ちを連れて行くし、或いは自身のステータスを識ることのできるアーティファクトを持ち出している

そしてこの[明ける知識]は、世界で唯一の「マナをマナのまま保持できる魔法」なのだ
通常マナというのは、ある特定の現象や物体に変質させる必要がある
それはマナ自体に長時間空間に維持される離散する性質があるからに他ならない
変質させなければ、現象を起こすまでもなく、体外に出力されたマナはそのまま霧散し消失してしまう

だが[明ける知識]という魔法は、マナをマナのまま中空に保持する
[明ける知識]によってマナが変質しているのは、情報そのものである。特定の人物の情報に変質することが、[明ける知識]の本質といっていい
しかし当然のことだが、知識は物体でもなければ、現象でもない。可視することも具体化することもできない、極めて抽象的な概念だ
"変質する"ことが性質であるはずのマナが、"変質できない"。
その矛盾を解消するために、マナはマナ自身が可視化して中空に留まることによって、間接的に情報へと変質しているのだ


……と、ここまで長々と書き連ねてきたが、正直俺にはこの理屈は半分以上理解できてない
ここまで書いたのも魔法使いと僧侶の受け売りを、自己流に解釈して書いたものだ
何言ってるのかさっぱりだと思うが、俺にもさっぱりだ。すまんな
259 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/19(月) 22:14:37.82 ID:2acAJLNN0
つまりどういうことだってばよ?
260 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/19(月) 22:23:52.93 ID:ToCbtc0DO
囮になるって事か
261 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/19(月) 22:31:17.70 ID:zTX1gfQw0
兎に角、僧侶が詠唱した[明ける知識]によって、僧侶自身のステータスが中空に出現する
[明ける知識]はその詠唱の文句と込める魔力の大小によって、表示されるステータスの詳細が変わるらしい
簡易的な詠唱であればその人間の技能のみが表示されるし、
より複雑な詠唱と多量の魔力を用いれば、その人間が覚えている魔法の一覧を出したり、所持している道具を表記させることもできる

僧侶の目の前に現れていたのは、俺がこれまで見た中で、最も大きなステータスウインドウだった
いつも俺たちが出現させているものの、十倍はあるだろう
巨大なウインドウには性別や年齢、技能、持ち物
生年月日に血液型、身長や体重スリーサイズ、
そして彼女の14年の経歴が、長々と箇条書きされていた


適性:僧侶
生誕:魔王歴6代203年12月24日09:20:31.42
年齢:14 (魔王歴7代001年03月19日11:13:22.01時点)
性別:女
血液:A型
身体:146.2cm 37.9kg 73(A)-52-76
練度:LV5 (Exp 230516/412210)
技能:[光魔法Lv3][薬師Lv1][罠師Lv1]
装備:[鋼の槌][修道服+1]
魔法:[Lv1:癒やしの滴][Lv2:明ける知識][Lv3:祓の水]
持物:[聖典(下級)],[ヒーリングポーション]*2,[うさぎのぬいぐるみ],[ロープ(4m)-1],[寝具]
経歴:
6:203/12/24:父(神父)、母(教徒)、姉(教徒)の元に誕生
6:210/04/02:帝都第一神徒学校 入学
6:212/07/11:[闇魔法Lv1]習得
6:212/07/12:父(神父)、姉(教徒)が身焼事故にて死亡
6:212/07/12:潜在技能[記憶喪失Lv2][失語症Lv1]発現
6:212/07/12:[記憶喪失Lv2]に伴い、習得済みの技能の内――


ここまでを一瞬だけ読んで、すぐさま俺は目を離した
それは俺たちを助けるために、きっと出したくないものを無理に出したもので
それは彼女にとって、見られたくないものだろうから
262 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/19(月) 22:42:40.70 ID:v8PuWANdo
割と重大な情報が色々出てるんじゃが
263 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/19(月) 22:44:40.40 ID:zTX1gfQw0
彼女が出現させた光の羅列は、暗闇の中で煌煌と光り輝いていた
マナを感知するのが苦手な俺が感じ取れるほど、そこには多量のマナが費やされていた
それを作り出した彼女の顔には、色濃い疲労が浮き出ている

そして、まるでその光に吸い寄せられるが如く、ゴーレムが光の方を振り向いた
魔法使いに迫る手が、その動きを留める
その光の煌きが、どこか訝しげにウインドウを見つめている
彼女の半生を描いたステータスを

そう、ゴーレムの基本性質
ゴーレムはより多くのマナに反応し、それに近づく性質がある
それ故多くのマナを消費する魔法使いの方へと近づいていくのだ
通常、マナは変質したあとはマナとして扱われないため、高純度のマナを何かに変質させても、その瞬間にマナでなくなったものをゴーレムは追いかけない
だがこの魔法なら。[明ける知識]に限っては
マナそのものが保持されるそれに限っては、ゴーレムはそれを人間だと誤認し、そのマナが大きければ追いかけるはずなのである

ゴーレムがゆっくりと旋回し、僧侶の方へと近づいていく
正確にはその手元に出現したステータスウインドウへと
最早こちらには目もくれない。先程まで追いかけていた魔法使いなど、まるで眼中にないようだった
そして、ゴーレムが無防備な背中をこちらに向ける
264 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/19(月) 22:54:47.94 ID:guvqWjJsO
ヤバイ……色々と重大そうな情報が山盛りだったり状況自体が緊迫してるってのに俺ってやつは恐ろしいことに気づいて……あぁ
265 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/19(月) 23:02:01.57 ID:zTX1gfQw0
呆けていた時間は一瞬だった
魔法使いが、俺の折れた剣に魔法をかける
計七節の詠唱が発生させるのは、Lv4の炎魔法[赤き刃]
刀身がまるで赤熱するように輝き出し、その灯りは陽炎のように伸びていって、マナで形作られた揺らめく刃へと変幻する
俺の手に握られていたのは、最早折れた剣ではなかった。それは陽炎を映し出す、一本の長剣であった
手元で一回転させる。以前よりは遥かに軽い。だが、石斧よりは遥かな重みが、俺の右手にしっかりと応えてくれる
魔法使いに礼を言ってから、ゴーレムへと走り出す

ゴーレムはゆっくりと僧侶に近づいていた。僧侶はウインドウを出現させたまま、微塵たりとも動かない
ステータスウインドウを出現させる唯一の弱点。それは移動すると、ウインドウが閉じてしまうこと
故に一歩も動かないまま、僧侶は迫りくる巨体を待ち続けている
計画では限界まで近づいたらウインドウを解除する手はずなのだが、彼女にそれを行う意思は見受けられない
そこにはどこか、痛々しいほどの自己犠牲が見え隠れしていた

未だに歩き続けるその背中に、緋色の刀身を振りかぶる
左の肩口に刃が埋もれ、5cm以上の傷をつける
そこで刃が止まる。進まない
焦りが募る。ここで奴を止めないと、僧侶が、

そう思った時、不意に刀身の輝きが強まり、周囲を明るく照らし出す
驚いて背後に顔を向ける。魔法使いが苦しそうに顔を歪めながら、こちらに手を向けて詠唱を続けている
[赤き刃]の追加詠唱。それに伴って刃が太く、大きくなる
刀身を形作る緋色はやがて剣の鍔を超え、俺の手を優しく包み込む
その暖かな温もりに、不思議と俺の心も落ち着いていく

恐れはなく、ただ確信のままに、刃を深く落としていく
ゆっくりとゴーレムの身体に、緋色の傷跡が刻まれていく
腕の筋肉は燃えるように熱く、血管は実力以上の力を出すことで千切れそうになっている
だが痛みすらも彼方に追いやり、刃を落とす

そして

俺の刃が鉄の身体を突き抜け
一瞬の間を置いて、ゴーレムの身体が二つに分断された
266 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/19(月) 23:09:16.87 ID:zTX1gfQw0
分断されたゴーレムはもう動き出す気配が無かった
まあそれも当然で、半身が切り落とされた途端、ゴーレムの身体からクリスタルが抜け落ちたからな
因みに抜け落ちたクリスタルは魔法使いが回収していた。何でも、魔法の触媒としてかなり優秀な素材らしい

ここからは第二層に降りてからの話になるんだけど
今日はここまで。続きは明日話すよ
267 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/19(月) 23:12:11.39 ID:HBMjnJMEo
闇魔法かあ
268 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/19(月) 23:16:30.02 ID:zTX1gfQw0
>>235
[1F-ゴブリンの本拠地]に行くことは俺も考えたんだが
危険性が高いのと、そもそも行くまでに資源が保つのかって問題で今回は敬遠した
もし行ってたら、現状に対する回答もあったんだろうか

>>238
まあ、俺は魔法も使えねえし、大した技能適性も無かったからな
覚えられることは頭の片端から突っ込んで、なんとか冒険の役に立てるようにしてたんだ
それでもアーティファクトの細かい能力まではわからないけどな

[ジャイアントワーム]はマナを貯め込む性質があるし、誘い込みたくはあったんだが
基本的にゴーレムってのは決まった活動範囲を超えて生き物を追いかけたりはしないもんだからなあ
おそらくモンスターの撃退用と、あと同じ人間への威嚇・殺害用に置いてたんじゃないかな
ここの[1F-採掘地域]も、今はそうでも無いが、昔はかなり採掘が盛んだったからな
独占してたギルドが他に取られるのを防ぐために色々としていても、何もおかしくはないぞ
269 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/19(月) 23:20:02.35 ID:zTX1gfQw0
>>239
結構巷ではゴーレムは便利なサーバントみたいに見られるが
基本的に生き物の区別をしたりはできないものだからな
だからこそ合言葉を共有したり、特定のマナの動きで行動を制御するための技術がある
とはいえ、迷惑ってのは全面同意だ

>>240
ロープを絡ませるのは一つの手だったが、もしロープ側が耐えきれなかった時の取り返しがつかないからな
今回はより確実で的確な手段を僧侶が考えてくれたので、そっちを使った
とはいえ、当初は僧侶と魔法使いでスイッチして攻撃を受けないようにする予定だったんだが……
僧侶の行動は、こういう時にイマイチ判らない

>>241
当時は街に戻りたいって言ってた
まあ詳しく説明してないから、当然といえば当然か
270 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/19(月) 23:21:15.42 ID:zTX1gfQw0
あああと、俺の技能をどうするか
もし意見があったら是非教えてくれ
こういうの、悩みきりでいつも決めかねるんだよな
271 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/19(月) 23:31:48.76 ID:W0R10vtS0
死霊術師のスキルがおすすめ、実質殺した相手が仲間になるゾ
272 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/19(月) 23:38:24.58 ID:2acAJLNN0
剣技か自然治癒上げようぜ

現状のパーティーで物理アタッカーは戦士だけなんだから質を上げておきたい
273 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/19(月) 23:38:44.50 ID:7e97H2NO0
そこら辺のものを引っ掴んでとっさに盾に使うスキルはどう?盾に使った後は相手に放り投げるとか
あとは毒があったり、不味かったりするものを食えるレベルにできる調理スキルとか、毒は取った後武器に使えばいいし
274 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/19(月) 23:50:08.21 ID:guvqWjJsO
乙!今日は対ゴーレム戦で三人とも消耗してるだろうからゆっくり休めるところが見つかることを祈ってる

技能についてだけど、今日みたいな戦闘が不可避な状況がこの先ある事を考えた時に一番無駄にならないのはやっぱ自然回復かな
今回の戦闘で魔法での援護や補助を受ければ結構な攻撃翌力が出せるって分かったし
ちゃんとした武器が手に入るまでは戦闘するにも逃げるにも時間稼ぎの壁役としての役割が主だろうし
戦士の生存力をあげとくのがパーティー全体の生存力を上げるのに繋がるかと思う

>>271 >>273
戦士の技能欄>>244にある/の右側が戦士の取れる技能候補なんでないかい?
275 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/20(火) 00:01:00.10 ID:ddRQkvBiO
ところで、もし間違ってるなら全力で否定してくれて構わないんだが

今までは単純に防御値に換算できないから、或いは情報の必要性や重要度の低さ、スペースの問題から省かれてるだけだと思っていた、ある情報
それが僧侶ちゃんの生年月日からスリーサイズ、半生すらも記述するレベルの詳細なステータス表示にさえ記述されていない事から導き出される一つの答え

即ち、僧侶ちゃん パンツ はいて ない?
276 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/20(火) 00:05:57.82 ID:n0cdoo12o
ガチで頭良い奴って常人とは見えてるものが違うんだなと改めて思った
277 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/03/20(火) 07:29:21.62 ID:pkAwye1/O
>>276
>>275の後だから僧侶のこと言ってるのか>>275を煽ってるのか解んねぇなww

スキルは感知の使用感による、目に見えて敵との遭遇率が下げれてるなら上げたいし、そうじゃないなら別のに回したい
自然回復がどうなるかだよなぁ、状態異常回復速度上昇とかじゃないの?その辺他のメンバーにもどういうスキルなのか聞いてみたい
対魔力は上げなくても大丈夫そう、というか盾スキルが壊滅的な時点でメイン盾にはなれないから闇討ち要員に徹するしかないし
優先順位としては感知(使用感あり)>自然回復(HP回復の確証あり)>剣技>感知>自然回復>かばう>対魔力あたりか
278 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/20(火) 08:18:18.45 ID:6B9DV8lj0
みんなおはよう、今日もいい朝だろうか
俺たちはもう朝日を忘れて一週間経つ
279 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/20(火) 08:27:31.90 ID:YEB2cEwdO
マナのリソースが限られてるから、時間が経てば回復出来る自然治癒が第一候補か
剣技あげて敵を一撃で倒せるようになれば反撃貰わなくなるけど、敵が複数いたらそうもいかないからなあ
280 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/20(火) 08:33:52.48 ID:6B9DV8lj0
>>252
既に記述した通りだが、ゴーレムはマナに向かって進む性質があるのが弱点らしい弱点だろうか
とはいえステータスウインドウを囮にするなんてのは想定外過ぎたけどな
あとこれは後から知ったことなんだが、[スチールゴーレム]の保有属性[鉄]は[炎]属性の攻撃に弱いらしい
昨日の攻撃の切断面を見ると、ゴーレムの身体は力で両断された訳ではなく、熱に寄って溶切されたように見える

>>257
まあ所詮俺の力じゃ、この巨体を押し戻すことはできなかったがな
こういう時トコトン俺の技能は中途半端だと思う
他の二人が有力な技能を持っていて、それを使いこなす頭があるから余計にな

>>271 >>273
そう言えば言っていなかったが、普通技能ってのはステータスウインドウに表示されてるものから選び取るものなんだ
俺の場合は

技能:[剣技Lv3][かばうLv1][感知Lv1][+]/+[剣技Lv4][かばうLv2][感知Lv2][自然治癒Lv1][対魔力Lv1]

こういった表記になっているが、この場合[剣技Lv4][かばうLv2][感知Lv2][自然治癒Lv1][対魔力Lv1]の何れかの習得になる
冒険者の間じゃ当たり前の話なんだが、確かに冒険者以外じゃあんまり知られない話かもな
281 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/20(火) 08:39:28.41 ID:6B9DV8lj0
>>272 >>274 >>279
[自然治癒]能力か
因みにこれは傷を受けた時、それの回復速度が早まる技能だな
毒や病気なんかの状態異常の自然回復力は、[免疫]技能によって回復力が高まるぞ
[自然治癒]取得が良いだろうか?

>>275
どうだろう……ステータスウインドウが表示する情報は明らかに偏りがあって、その辺どうなってるかは俺にもわからないんだ
でもそういえば、確かに僧侶がショーツの類を身に着けてるとこを見たこと無いが
いや、まさかね

>>277
[感知]はLv1時点で、壁越しに[ジャイアントクイーン]の存在を感知できたりはした
小型モンスターまでは感知しきれない感じだな
あと[スチールゴーレム]の存在も感知できなかったので、生命を持たないものには反応しないのかもしれない
勿論技能レベルによってこの辺りは強化されるだろうが
282 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/20(火) 09:38:57.06 ID:/zJ6Q/yN0
そろそろ剣技あげて攻撃技増やそうぜ。
いつまでも魔法使いの魔法に頼っているのも、魔翌力が切れたら使えないから危なくなるし、
なにより男としては自分の腕一本で女を守るのに憧れるね。
283 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/20(火) 09:41:03.29 ID:S7eFgFnLo
感知1でそこまで使えるなら自然治癒取った方がいいと思う
僧侶の負担減らせるし
284 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/20(火) 10:04:53.76 ID:YEB2cEwdO
剣技上げて範囲攻撃技を習得できるなら剣技でもいいと思うけどね
285 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/20(火) 10:13:45.59 ID:Z8KqCBgcO
僧侶に今余裕あるか聞いて見たら?
余裕ないなら自然治癒だけど、なんとかなりそうなら攻撃手段ない僧侶の手を空けるより剣技上げて攻撃翌力上げたほうがいい気がする。蛇の洞窟いくなら感知もありかな
まあ協力してもらわないと剣がないんだけど
286 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/20(火) 10:22:45.43 ID:ddRQkvBiO
>>281
そっか、情報に偏りが……ってちょっと待て?ショーツの類を身につけてるところを見た事が……?
いやまぁ、同じパーティーにいれば直ぐそばで着替えたりするような機会もあるかもしれないけども
それにしたってショーツを身につけてるところなんて普通だったら……いや、それってつまり……ふむ


やっぱり二層での行動方針が重要になってくるよなぁ、特に気になってるのが【盗賊のねぐら】
盗賊ギルドがどんなものか知らんからアレだけど、協力を取り付けられるなら色んな問題が何とかなりそうなんだよなぁ
→武器、食料、情報、人材
287 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/20(火) 10:45:26.82 ID:ddRQkvBiO
>>286
盗賊のねぐら ×
盗賊の根城 ◯

だったわ、間違えてスマン
288 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/20(火) 10:58:49.21 ID:S7eFgFnLo
戦闘のたびに体力が一定値回復なら雑魚戦繰り返すだけでどんどん回復してくから強いんだけど
一日経たないとダメなら確かに弱いかな。でも剣がないのに剣技を上げても効果はどのくらいなのか
289 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/20(火) 12:15:14.37 ID:wqLmrrsSo
読み飛ばしてたらすまんがかばう技能の上昇に意味はあるのか?
物理法則越えて無理矢理かばえたり被ダメ軽減効果とかあんの?

まあどちらにせよ今は剣技か治癒かな
治癒の効果速度はもう少し具体的に知りたいが
290 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/03/20(火) 12:49:04.88 ID:pkAwye1/O
属性[鉄]なのにアイアンゴーレムじゃなくてスチールゴーレムなのか・・・いやまぁ下位か上位にアイアンゴーレムが居るのかもしれないけども

剣技か治癒なんだろうけど
剣技とか2Fでは効果あっても3Fとかになってひたすら逃げるか知識絞って撒く以外の選択肢がなくなった時点でゴミスキルにしかならなそうなんだよなぁ
治癒も同じレベル、掠っただけで体力半分以上削られるようなの出たらほぼ意味無いし
2F楽にするだけならどっち選んでも大差ない気がしてきた
291 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/20(火) 12:56:38.09 ID:n0cdoo12o
戦術に変化をもたらすようなスキルが入る場合剣技は悪くない選択になる
肝心の剣は都合良く落ちてるのを拾えるか剣持ちの敵を倒すかになるか
292 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/20(火) 13:27:20.15 ID:fFvmBEelo
戦士の鎧は二層で壊されたのか?
ならば、状況がわからないとアドバイス出来ないよ
293 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/20(火) 14:49:34.42 ID:6vsYpo3SO
ひたすら逃げるとか撒くのは無理だろ。感知上げてても後衛二人がいるならある程度は戦わんとだし進むために戦わなきゃいけない状況も出くわすと思う
あと盾がない以上壁役やるにも剣技は必要じゃね。スキルは長所作れればレベルでは格上相手でも腐るってことはないだろうし
294 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/20(火) 15:08:52.41 ID:6B9DV8lj0
途切れ途切れで済まない
今日の朝も色々とあったんだが、これも後回しにしようか
とりあえず報告として、俺が[毒]にやられた
今は[毒消草]で治療してるんだが、あと六時間は治療に必要だな……
不甲斐ない限りだ。どうも役に立ててない感じがして、焦りを覚える

技能について色々と考えてくれてありがとう
今の所、[剣技Lv4]か[自然治癒Lv1]かで意見が別れてる感じだろうか

一応補足しておくと
[剣技]技能を上げることで上昇するのは、単純な刃物による攻撃力だ
新しい技が使えたりする訳ではないが、基本的に下層に降れば降る程[鉄の身体][硬質]を始めとする対物理技能を持つモンスターが増えるからな
そういった敵にどれだけダメージを与えられるかが[剣技]技能の数値だと考えてくれれば良い

対して[自然治癒]技能の回復は、基本的には戦闘中か否かに限らず常時適用される
ただ戦闘中は回復力が大幅に低下するので、Lv1程度なら無いのと同じようなもんだな
戦闘後の治療による魔力消費が減らせる程度と考えてくれたら良い
ただもしLv4程度まで成長させれば、戦闘中でも目に見えて傷が塞がり始めたりするぞ
295 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/20(火) 15:14:23.22 ID:6B9DV8lj0
とりあえず今段階でのパーティのステータスを確認していこう
昨日と殆ど変わっていないので、昨日のレスを見た人は見なくても大丈夫だ

俺(戦士)
適性:戦士
年齢:21
性別:男
練度:LV6
技能:[剣技Lv3][かばうLv1][感知Lv1][+]/+[剣技Lv4][かばうLv2][感知Lv2][自然治癒Lv1][対魔力Lv1]
装備:[ゴブリンの石斧][鋼のつるぎ(壊)-1][古ぼけたツルハシ-1][鉄の鎧(壊)-1]
持物:[ヒーリングポーション]*2,[安物の砥石]*1,[松明]*2,[安物のナイフ]*2,[旧式カンテラ]
持物:[瑞々しい赤彼岸の葉(36日)]*12,[寝具],[調理油],[調味料],[食器と携帯鍋]

魔法使い
適性:魔法使い
年齢:17
性別:女
練度:LV5
技能:[炎魔法Lv4][詠唱Lv1]
装備:[樫の杖][魔女のマント][とんがり帽子]
魔法:[Lv1:灯る指先][Lv2:炎の矢][Lv3:夕焼けを熾す][Lv4:赤き刃]
持物:[魔法の触媒(火/下級)]*7,[ヒーリングポーション]*2,[ブランド物のナイフ],[創成のクリスタル(青)],[寝具]

僧侶
適性:僧侶
年齢:14
性別:女
練度:LV5
技能:[光魔法Lv3][薬師Lv1][罠師Lv1]
装備:[鋼の槌][修道服+1]
魔法:[Lv1:癒やしの滴][Lv2:明ける知識][Lv3:祓の水]
持物:[聖典(下級)],[ヒーリングポーション]*2,[瑞々しい毒消草(13日)]*8,[うさぎのぬいぐるみ],[ロープ(4m)-1],[寝具]
296 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/20(火) 15:15:34.01 ID:6B9DV8lj0
さて、じゃあ昨日の段階まで話を戻そう
丁度、ゴーレムを倒してからだったな
297 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/03/20(火) 15:22:44.05 ID:pkAwye1/O
>>293
50がレベルキャップとか言われてる世界で深部が6Fだぞ?
単純に10とかの刻みでレベル上げてかないとキツいって言ってるようなもんなのにまともに戦える訳ないじゃん
298 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/20(火) 15:32:27.33 ID:U9WHqk/t0
それなら僧侶の負担を減らすために自然治癒でどうや

1で大差なくてもこれから先、長期戦なのは間違いないんやから
2まで上げれる下地を今のうちに作らへんか?
299 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/20(火) 15:32:37.20 ID:n0cdoo12o
攻撃役がもう一人いたなら自然治癒に振って壁役になっても良かっただろうが魔法使い一人だけとなるとな
その魔法使いも魔翌力消費が激しかったり尽き掛かったりすると危険な状態に陥るわけだろ
となるとやはり剣技かと思うが
戦闘は速攻志向、他に上げていくなら感知か
300 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/20(火) 15:34:49.08 ID:6B9DV8lj0
ゴーレムを倒した俺達は、[明ける知識]で各々のステータスを確認した後、[1F-採掘地域]の階段をゆっくりと降りていった
各々の顔には疲労と緊張、そして僅かな期待が見え隠れしている
まあ俺たち駆け出しの冒険者にとって、二層以下の迷宮ってのは未知そのものだ
一層までなら何だかんだそれなりに行くことがあるからな
それだけに二層以下ってのは一層とは全く違う重みがあって、それは恐くもあり、そして楽しくもある
こんな状況で何を言ってるんだと思うかも知れないが、この未知への憧れがなかったら、結局冒険者なんて命知らずな仕事を好き好んでやってないんだよな

二層が見えてくると、同時に横風が俺たちに吹き付ける
そこは花畑だった
洞窟自体は筒状になっている。上が狭く、下が広く。円錐状、って言えば伝わるかな
俺たちは傾斜面になっている壁の一角へと出たようだった

まず驚くべきなのは、立っているのが土の上ではないこと
生い茂る草と花の下にあるのは、巨大な樹なのだ
壁から生えた横幅4mはあるであろう枝が幾重にも重なって、だだっ広い円錐状の空間に足場を作っている
枝で出来た道は俺たちが出た道を含め、八つの道に分岐していた
まずは東西南北。これら四つの道は、上方向に枝が伸びている。おそらくこれらの道は全て、別の一層に繋がってるんじゃないかな
北側に続いているのが俺たちが出てきた、[1F-採掘地域]に繋がる道
西側に続いているのは石煉瓦で舗装された比較的綺麗な道。これも一層のどこかに繋がっている筈だ
東側に続いているのは、土で出来た洞窟の道。これも一層に続いているはず

そこまで見て、俺たちは咄嗟に道を引き返した
なぜなら南側に続く道に、ある存在を見たからだ
その道だけは明確に、知性あるものが住んでいる証があった。なぜなら木の扉があったのだ
一層のどこかへ繋がる筈の入り口に扉があり、そしてその手前に、二体の人影が見えた
人型モンスター、[ゴブリン(Lv5)]。その姿を見るのも久しい気がする
301 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/20(火) 15:46:34.77 ID:6B9DV8lj0
ゴブリン達は俺たちに気づいた様子もなく、右手に持った石斧で肩を叩きながら、魔物語でなにか話しているように見える
とはいえ、これだけ広い部屋では流石に何を話しているのかは判らない
魔法使いにも聞いてみたが、やっぱり声は聞き取れないらしい

俺たちはゴブリンに気づかれないよう壁に隠れながら、再び周囲を探索する
残りの四つの道はそれぞれ下り道になっている
北西の道と南東の道は、入り口に鉄で出来た扉が為されている
扉には遠目からでも鍵穴が確認できるな
北東の道は、土で覆われている
土の周りには多種多様な植物が張り巡らされていて、その奥は見えない
最後に南西の道だが、なんとこの道だけ、他の道とは完全に分断が為されている
おそらくは元々あった枝の道を、火か何かで焼いたんだろう。道の分断面には焦げ跡が見える
その所為でもし南西の対岸へ行くのならば、数十メートル以上の絶壁を飛び越えなきゃいけなくなってる
302 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/20(火) 16:05:15.00 ID:6B9DV8lj0
……と
ここまでを観察してた辺りで、北西の扉から何かの音がする
がちゃん、と何かを開ける音。次いで鉄が掠れる耳障りな音
北西の扉が開かれたんだ
掠れた音を立てて開いていく扉の奥に居たのは、一つの人影だった

長く艷やかな黒髪を持つ、美しい女の上半身
豊満な胸元を、ビキニにも似た布で心もとなく隠している
露出された皮膚は白く、その上に黒い文様が所狭しと刻まれている
形の良い口元に浮かんでいるのは、怪しげな笑み
正直、一瞬目を奪われた。それくらい美しい姿だったんだ

ただ一方で、下半身は明らかに人間であることを否定していた
蛇なのだ。腰から下が、黒く長い蛇の下半身になっている
漆黒の鱗が艷やかに光を反射している。尻尾は地面を這いずり、ゆっくりと彼女の身体を動かしていく

二層の代表的な人型モンスター、ラミアだ
モンスターレベルは11
魔物図鑑に記述されている習得技能は[炎魔法Lv5][魅了Lv2][変身Lv1][吸血Lv1]。後の2枠は個体により変わるという
303 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/20(火) 16:21:15.46 ID:6B9DV8lj0
モンスターレベルを見て分かる通り、今の俺達にとっては途方も無い強敵だ
発見数の少ない二層の希少なモンスターと図鑑には表記されていたが……
まさかこんなに早く遭遇するとは

息を殺して、敵が通り過ぎるのを待つ
手を、石斧の柄に。横を見れば魔法使いは杖を、僧侶は鉄槌をぎゅっと握りしめている
ラミアが身体を揺らめかせて、北西の扉から離れていく
部屋の中央へ。そのままもしこっちに来れば、反撃の間もなく首を落とす
ゴーレムとの戦闘で休みを求める身体に鞭を打って、息を止め、意識を集中させる
ラミアがどこへ向かうのか。それを見極め、迎撃するために

しかしラミアは、俺達が居る道へは近づいてこなかった
枝の道をたどって彼女が向かうのは、南側の道
その先には木で出来た扉と、2匹のゴブリンが居る

ラミアがゴブリンの方へ近づくと、ゴブリン達がだらしなく顔を緩める
まあ、あれだけの美人が近づいてきたらモンスターだって嬉しいよな
ラミアが微笑を浮かべたまま、ゴブリン達になにか話しかける。会話はやはり聞こえない
ゴブリンたちが大げさにラミアの発現に頷いた後、木の扉を開いて、ラミアを奥へと誘導する
まるで姫をエスコートするみたいにな
ラミアが彼らに連れられて、南側の向こうへ消えていく

そうして彼らの姿が完全に見えなくなって
俺たちはやっと、溜めていた息を吐き出した
304 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/20(火) 16:22:01.80 ID:6B9DV8lj0
おっと、僧侶が戻ってくる
続きは後でな
305 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/20(火) 18:51:16.81 ID:AOqjTQWuo
お疲れ様。
ラミちゃんはきついなぁ。
技能だけど生き残るには自然治癒が良いんじゃないか。
僧侶の負担軽減、僧侶の技能を他に回せる事になるし。
君らは少数。支援も期待できない。器用貧乏でも出来ない事が少ない方がいい気がする。
306 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/20(火) 19:52:58.72 ID:ddRQkvBiO
毒状態!? しかもラミアと遭遇しかけたとか……二層に入って早々かなりギリギリじゃないか
焼き落とされてた通路とか鍵付きの扉とか色々と気になる事ばかりだけど、今は焦らず体を治すのに専念するんだぞ

しかし昨晩のステータスでも地味に増えてた毒消草だけど、これは二層に入って採取したって事になるのか?
だとしたら今いるところは【血溜まりの花畑】だったりするのかな?
307 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/20(火) 19:57:32.84 ID:6B9DV8lj0
さて、続きだ

ラミアが去ってから、まだ暫く俺たちは壁の裏側でじっとしていた
あのラミアで出てくるのが終わりとは限らなかったからな
5分経ち、10分経ち、ようやく本当に一息ついてから、俺達はそれでも小声で作戦会議をする

とはいっても、この[中央区]から行くことの出来る範囲は本当に少ない
八つの分岐道のうち、東西南北の四つはすべて一層に繋がってる
しかも一つは俺たちが入ってきた道だし、もう一つにはゴブリンとラミアが居る
今から突撃するにはあまりに迂闊だ

となれば、残りの道は四つ
うち二つは扉に鍵がかかっているし、そもそも人工物ということから向こう側にはモンスターか人が居る
片方はラミアが出てきた事からもモンスターの根城の可能性が高い
そして残りの二つのうち、片方の扉は道が焼き落とされてて入れない
壁越しに吹き抜けの穴を見れば、通路の穴は底が見えず、冷たい風が吹き荒ぶばかりだ
ここを飛び降りるなんて自殺行為だろう

ともすれば、行ける場所は一つしか無い
最後に残った下り道
植物が生えた細い通路へと、俺達は小走りで進んでいく
308 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/20(火) 20:34:24.21 ID:6B9DV8lj0
植物に囲まれた小さな洞窟を進むたび、若い葉が掻き分けられ、乾いた音を立てる
先程ラミアに会っていたからか、過敏になった神経がそれを過剰に聞き分ける
背中に冷や汗
奴らは全く異なる扉に入っていったと知っていても、この道を辿るのは勇気がいる

そんな思いに急かれながら、それでも前方に気をつけてゆっくりと進んでいく
やがて、通路に甘い香りが漂い始める
シュガーやクリームの、人工的な香りじゃない。花が放つ、昆虫たちを誘う罠の香り
同時に、周囲の草の様子が変わり始める。雑多とした緑から、白い小さな花をつけた草へ

やがて視界が開け、目の前に広大な丘が現れる
まず驚いたのは、"明るい"ということ
言わずもがな、ここは地下深くの迷宮ダンジョン
灯りはなく、それ故に魔法使いの[灯る指先]によって与えられた光こそが、俺たちの見える全てだった

しかしそこは、それらとは関係なく"明るい"のだ
洞窟を抜けた先にあったのは、小高い丘だった。俺たちは丘の上に立っている
丘の上にあるのは、白い小さな花の群れ。俺は知らなかったが、僧侶がこの花の名を知っていた
キンコウソウ目の多年草、イカリシア。別名[毒消草]
草の名前は知らなかったが、別名は冒険者の間で良く知られている
キンコウソウ――通称[禁香草]と呼ばれる毒花の一種で、他の[禁香草]と異なり、煎じることで薬用として用いることが出来る
そして何より、この[毒消草]は"他の繁栄している植物に寄生して"成長するのだ

丘の向こうを見る
そこには海があった
波打つ花びら
紅い海
まるで血の海のよう
強烈な甘い香りが漂ってくる

[赤彼岸]。[腐人華]。[幽霊散香]。[沙華散香]。[葉知らず華知らず]。様々な異名を持つ毒草
そして、異名の一つに[殺し白ず]
華が咲く前の草を食むことで、本人が死んだと感じる間もなく死に絶える、致死性の猛毒
毒に蝕まれたものが毒性によって鬱血し肌を白くすることから名付けられた異称
シシャカクシ目リコリシア科の多年草、リコリシア
[赤彼岸]の群草が、丘の下を埋め尽くしていた
309 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/20(火) 20:57:21.38 ID:6B9DV8lj0
それを見た時、俺は本当に眼前の光景を赤い海だと誤認したんだ
これを見ている皆も知っているだろうが、[赤彼岸]は希少植物
しかも葉にこそ猛毒が充溢しているが、冬場に咲く花弁は薬効があり、酒類に混ぜることで非常に高級な味が出る
[エール]に[赤彼岸]の花蜜を混ぜることでミルクのようにまろやかな味と僅かな酸味を付け足す[レッドアイ]は
高級食品を用いた美味なる飲料として、上流階級の間で嗜まれてきた
俺も一度だけ呑んだことがある。20歳の誕生日に義理の親父が用意してくれたそれは、本当に人生で一番美味い飲み物だったと思っている

そんな希少な植物が、満開の花を咲かせて俺達の目の前に広がっていた
鼻に届いてくる甘い香りは、[赤彼岸]の花が発する独特のものだ

その時、俺の意識は半分以上酩酊していた
[赤彼岸]が発する甘い香りは、生物の頭を溶かし、花の奴隷にするための成分がある
だからこそ[赤彼岸]はその有用さの割に大量の栽培が出来ず、その香りが効果を及ぼす程の香りを嗅ぐ事も無かった
しかし、その時は違った
花に届く香りが、否が応でも俺の花を刺激し、脳を刺激し、記憶を刺激する
俺の脳髄に浮かんでいたのは、既に目の前の紅い花畑ではなかった
故郷の喧騒。宿屋の女将の笑い声。食堂の男どもの汗臭さ。鍛冶屋の親父の視線。父親が出してくれた、エールの味。もう戻らない日々
その全てが目の前に広がっていた

無意識に歩みを進めていた
そこに迷いはなかった
ただ俺は、意識の何処かで求めていたあの日常に手を伸ばしていた
もう戻らないと知りながら、子供のように求めていたあの日常を渇望していた
伸ばした手の先に、街の人々を、仲間を、そして両親を見た
その手を掴もうとする
最後に映ったのは、幼い頃の魔法使い
今とは似ても似つかない、しかしどこか面影のある微笑みが、俺に手を伸ばした

そこまでを幻視して、俺は両腕に強い引力を感じて、現実を取り戻した
後ろを振り向けば、右腕と左腕を、それぞれ僧侶と魔法使いが掴んでいる
そして俺のつま先のすぐ先には、崖の終着点が見えていた
乾いた音を立てて、崖の石が転がり落ちていく
310 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/20(火) 21:55:04.74 ID:Cc6aSzDYO
面白い もっとやれ
311 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/21(水) 01:15:35.29 ID:75wzgDJiO
312 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/21(水) 13:52:17.72 ID:5y9Klee+0
やあおはよう
昨日はレスしながらいつの間にか眠ってしまっていたみたいだ
度重なる探索で、身体が僅かに重い……
313 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/21(水) 14:03:07.63 ID:5y9Klee+0
さて、続きだ
既に一昨日の話になっているが


身を投げる寸前に意識を取り戻した俺は、一瞬の間を置いて、ようやく自分がした事を理解した
[赤彼岸]の郡草が放つ香りが、俺の脳に投身という命令を下していたこと
慄いて一歩引けば、ようやく崖の下を直視する
そこには山となった死体があった。人間のもの、ゴブリンのもの、オークのもの、ラミアのもの……
翌々見れば、死体はそこだけではなかった。崖の下に広がる美しい紅の海は、土の上に出来たものじゃない。死体の上に出来たものだった
俺はようやく、自分がどこに居るのかを理解する
第二層でも指折りの美しさを持つという迷宮区

[2F-血溜まりの花畑]

美しいと評判の割に、そこは二層でも屈指の危険地域だという
俺はそれを、危険なモンスターが存在しているからと勘違いしていた
そうではない
この花畑においては、モンスターすら只の餌に過ぎないのだ

恐ろしい考えが頭を過る
[赤彼岸]は普段、ここまでの郡草を作らない。地上では野原に稀に二・三本咲いている程度だ
だからこそ希少な植物として扱われてきた
であるならば
この[赤彼岸]は、本来はこの地下迷宮に生息していた固有種ではないか?
我々はその本当の恐ろしさを知らずに、この花を地上に持ち帰ってしまったのでないか
いや、寧ろ
"持ち帰らされた"のではないだろうか
314 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/21(水) 14:17:56.28 ID:5y9Klee+0
僧侶が、ここに長時間留まるのは不味いと口にする
見れば残りの二人も、まるで酒が入っているかのごとく頬が紅潮し、目が虚ろに垂れ下がっている
先ほどの俺と違い、意識を完全に持っていかれているようではない
しかし長時間の滞在は、今度こそ俺たちを[赤彼岸]の餌に仕立て上げるだろう

俺は両手で頬を叩くと、二人の手を引いて別の道を探す
見れば幸運なことに、丘の上から小さな道が分岐して、別の空間に繋がっているようだった
若い草と白い花を掻き分けて、一刻も早くそこから離れるように移動する

暫く歩いていると、甘い香りは遥かに遠くなり、霞がかかった意識も現実に引き戻されていく
やや覚束ない足取りだった二人の焦点も定まっていき、魔法使いが頬を紅潮させて俺の手から離れる
遊んでそうな割には、こういうとこは初心だよな
僧侶は手を握られたまま無表情に歩いているが、俺が手を離して大丈夫か聞くと、無言で頷いて手を離した

草の通路を抜ければ、すぐに違う部屋が見えてくる
そこは小さな空間だった。再び暗くなった洞窟を、[灯る指先]で照らしてもらう
部屋の中央には湖が存在している。近づいてみれば、底は浅く、小魚がふよふよと浮かんでいる
手を入れてみると、驚くほど冷たい
まあ地下に出来ている湖だからな。冷たいのは当然なのだが

湖の周りには、ドーナツ状に花畑が広がっている
白い小さな花をつけたそれは、[毒消草]の花の群れだ
微かに甘い香りが漂っているが、それは先ほどの危険な甘さじゃない

女性二人組が、湖を見て甲高い声を上げる
珍しいことに魔法使いだけでなく、普段あまり大声を上げない僧侶も声を上げて喜んでいた
まあ無理もない。二人共肌は泥だらけだし、髪はぱさついて艶をなくしている
周囲をぐるっと見渡すが、どうにも危険が生物が居る様子はない
俺たちはここで、暫しの休息を迎えることにした
315 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/21(水) 14:23:00.11 ID:msYSz8Lfo
おー、水と魚ゲットか。やったな
316 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/21(水) 14:40:50.40 ID:5y9Klee+0
と、ここまでが一昨日の話だ
この後、俺たちは湖の水で身体を禊いだ後、それぞれにやるべきことをした

俺は花畑から本格的に入り乱れている[迷宮区]へと向かい、その日の食事を探す
かつて見た迷宮図によれば、[2F-血溜まりの花畑]は動物型モンスターや植物型モンスターが非常に多い地域だ
実際に探索してみれば、[迷宮区]の至る場所に背中に花を生やす豚が歩いている
[フロラルピグス(Lv8)]。[2F-血溜まりの迷宮]のメインモンスターの一体で、背中の花は擬態用に寄生させているらしい
レベルの割に大人しく、一刀で屠るのも楽だ。背中の花の侵食具合にもよるが、火を通せばかなりの可食部が期待できる

魔法使いは迷宮区の空いた小部屋で火を焚いて、捕れた魚や肉を燻製にしていく
まあ完全な密閉もできないし、簡易的なものだが
それでも食品として、暫く携帯できる程度には作ってもらうつもりだ

僧侶は[毒消草]や香辛料の採集
それから魔法使いと一緒に仮の拠点を整えてもらっている
モンスターの侵入を察知できるよう、縄と調理用具で簡単な鳴鈴を作ったりな
317 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/21(水) 14:52:31.32 ID:5y9Klee+0
一昨日の食事は湖で取れた[オイルトラート(Lv4)]の香草詰め
トラートの腹を捌いて肝を抜き、代わりに[毒消草]と保存食を砕いたもの、胡椒粒を入れる
その後トラートの外側をもう一度[毒消草]の束で巻いて焼いたものだ
オイルトラートは火を通すことで油が抽出できるので、それは保存して置いておく

まあまともな食事そのものが本当に久しぶりなので、それはもう美味かった
空腹と貧しさは最高のスパイスだな
僧侶はいつも少食なくせにペロッと一尾食べきってたし、魔法使いは涙すら浮かべてた

身体も洗えたし、飯も食えたし
長時間の探索で消沈してたパーティのやる気が、一気に漲っていくのを感じた
まだやれる、それが俺たちの総意だ
318 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/21(水) 15:01:04.00 ID:xuo/9YoA0
今北産業 質問なんだが、深層にもギルドのポータルがあるならギルドの生き残りとかが避難+救援求めに来るとかないの?ジャイアントワームのところもそうだし。
既に誰かから聞かれてたらすまない。
319 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/21(水) 15:09:49.21 ID:5y9Klee+0
さて、一日置いて
ここからは昨日の話だ
質問等は後で纏めて答えるぞ

それなりに満ち足りた食事と、綺麗で魚も多い水辺
前日までとは打って変わって幸福な眠りに身を任せていた俺たちは、僧侶が作った鳴鈴の音で目を覚ました

すぐに武器を持って、周囲を警戒する
見れば[迷宮区]の奥から、一つの人影が迫ってきている
その姿は豚を人に近づけ、直立させたものによく似ている
身体には[鉄の鎧]を着込み、右手に持っているのは[鉄の手斧+1]
所持技能は[繁殖Lv3][剣技Lv2][嗅覚Lv2][自然治癒Lv1][免疫Lv1]
二層の主要人型モンスター、[オーク(Lv9)]だ

オークは花をひくつかせて俺たちを見つけると、にたりと笑って、魔物語で何かを言っている
俺には聞き取れないが、魔法使いと僧侶を見て気持ち悪い笑みを浮かべた辺りで、大体何を言ってるのかは察した
様々な逸話にもある通り、オークっていうのはそういう事を非常に好むモンスターだからな
320 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/21(水) 15:16:47.93 ID:5y9Klee+0
オークがこちらに向かって突進してくる。数は一体
その眼にあるのはぎとぎととした欲望だった
思わず魔法使いが身を引いている。まあ、気持ちはわかるよ

そして、僧侶が手に持っていた紐を勢いよく引く
見えないように花畑に隠されていたロープが、勢いを持って結ばれる
その収束点は奴の右脚だ
太い足にロープが絡み合って、オークの巨体を支えきれなくなる

奴が花畑に盛大に顔を突っ込むと同時、俺の石斧が奴の首に振り下ろされる
まあぶっ倒れて動けない相手の首なんて、木偶よりも楽だ
両断、
風切り音とともに勢いよく首が飛んで、返り血が俺の鎧を濡らした
321 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/21(水) 15:29:34.09 ID:5y9Klee+0
オークの首が飛んでいくのを確認してから、俺たちは今後の行動を相談した
既に説明したが、この二層には[2F-豚の山岳]って区域がある。まあオーク種の拠点だな
オークがここに来たって事は、[2F-豚の山岳]も近くに隣接している可能性が高い

今は数が少なかったから良いが、オークってのは元々かなり個体数が多い種族だ
もし集団で見つかれば、一溜まりもなくやられちまう
この拠点に長居するのは、あまり得策では無いかも知れない
322 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/03/21(水) 16:16:41.05 ID:oTbX/n32o
よし、まともな武器ゲットだ
・・・その手斧を泉に投げ込んだら金と銀の斧になったりしないかな
323 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/21(水) 18:07:52.79 ID:5HOwNeqo0
やっぱりオークはそういう生き物なのね
同族メスに欲情しろよ、ガリ専かよ
324 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/03/21(水) 20:17:06.96 ID:oTbX/n32o
なんもかんもBASTARDが悪いんや
トールキンは繁殖力が強いってだけ書いたんだ、他種族交配しまくる生殖おばけにしたのは萩原のせいだ・・・
325 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/21(水) 22:51:26.28 ID:63Ur/w6Go
安全確保出来るならレベリングやりたかったんだがなー
正直どっかでレベリングしないと結局詰みそうなんだが

あと打算込みなんだろうけど手を引いて止めてくれたことは嬉しいな
326 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/03/21(水) 23:04:38.41 ID:xuo/9YoA0
というか巨大ワームのポータルは無視していいんかな? 後々面倒なことになりそうなんだけど
327 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/22(木) 01:38:49.69 ID:0TknjQHp0
さて、続きを話そう

オークの首を飛ばした俺達は、拠点を出る準備をしながら周辺を探索した
具体的には[迷宮区]から下層への入り口、或いは別の区域への入り口を見つけようとしたんだな
[2F-血溜まりの花畑]の[迷宮区]は洞窟型で、不規則に分岐し道も暗い。その分だけ潜伏しながらの移動には丁度いい塩梅だ
ただこの[迷宮区]特有の特徴として、足元に草花が生い茂り、移動音を発生させるってことがある
移動時の靴音を減少させる[忍び足]技能が無いと、耳の良い相手には音を聞き分けられる可能性がある
まあそれは、こっち側も同じことが言えるんだが

兎も角俺たちは灯りを消し、ハイディングしながら他ルートを探した
移動している時に稀に大きな音が鳴り、背筋に冷たい汗が流れる
328 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/22(木) 01:48:29.16 ID:0TknjQHp0
この[迷宮区]は高低差のある道が少ない分、横の広がりが大きい
迷宮には幾つかの小部屋が存在しており、それぞれに草花が生えている

[迷宮区]を探索して40分程が経過したろうか
不意に暗闇の中に灯りが現れ、俺達は反射的に身体を隠す
それは鉄でできた扉だった。扉の奥からは灯りが漏れ、肥溜めのような異臭が漂っている
音を立てずに近づいて、扉に耳を当てる
扉の奥からはオーク特有の、鼻に詰まったような聞き苦しい声が、何重にも重なって聞こえてくる
この扉の奥には複数体のオークが存在しているのは間違いない

そしてオーク達の笑い声の奥に、一瞬、甲高く何かの声を聞いた気がする
この唐突な直感は、[察知]技能によるものだろうか
声の正体は判らない。ただその声らしきものが聞こえた時、オーク達の笑い声が一瞬留まる
そしてまた魔物語による対話。俺には聞き取れない。魔法使いにも聞いてもらったが、詳しく判別できないという
もしこれを正確に聞き取るなら、[聞耳]の技能が必要だろうか

ともかく、ここに留まっているのは危うい
俺たちは迅速にその場所から離れる
扉が完全に見えなくなった頃、後方で扉が開く音がした
危ない所だ
329 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/22(木) 02:10:43.88 ID:0TknjQHp0
引き続き迷宮を探索する
気力も充溢しているので、行けるところまで行きたい所だ
またダラダラしてたら、モンスターに見つかる可能性もあるからな

草で覆われた、道とも言えない道を進んでいく
やがて通路はどんどんと狭くなり、寝そべって匍匐で進まないといけなくなってくる
ここまでか? とは思ったが、こんな道ならばオーク達も通れはしまい
より安全を求めるために、俺達は狭い通路を少しずつ進んでいくことにした
一列になり、唯一光源を持てる魔法使いに先頭になってもらう
僧侶は真ん中、俺は殿だ

道は変わらず草で覆われ、視界を遮っている
更に土は湿り気を帯び、泥が服にこびり付く
草を掻き分けると小さな虫が現れて、口や眼に入ってこようとする
正直、この道を選んだことを少し後悔したね

しかしそんな道も、いずれ終わりを迎える
現れたのは、なんと一面の白色だった
一瞬、ただ光の中にいるのかと勘違いするほど
[赤彼岸]に似た形をした花が、床を、壁を、天井を埋め尽くしている
それを見た瞬間、思わず口元を塞ぐ。あの甘い香りを警戒してのことだ

けれども、一向に幻惑の香りが漂ってくることはない
恐る恐る手を放すが、意識が飛ばされた様子もない
残りの二人も同じように見える
330 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/22(木) 02:15:59.52 ID:0TknjQHp0
安全性を確認した後、俺はじっくりとその花を観察した
花や茎の形は、[赤彼岸]によく似ている
葉はない。これもまた[赤彼岸]の特徴と一致する。赤彼岸は花を咲かせる寸前に、全ての葉を落としてしまうのだ
遠くから香りを嗅いでみる。特に匂いはしない
[赤彼岸]の亜種だろうか。花が白いということ以外、[赤彼岸]にそっくりだ
図鑑でも見たことのない植物
それが新種かどうかはわからないが、俺達は便宜的にそれを[白彼岸]と名付けた

[赤彼岸]が死体の上に咲くのに比べて、これらの花はまるでそういった様子はない
[白彼岸]が咲いているのは、一面の草原や草の上
天井まで咲き揃っていることを除けば、その咲き方は普遍的な植物と何も変わらない
331 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/22(木) 02:55:20.21 ID:0TknjQHp0
そんな普遍性の中に、違和感を覚える
具体的な何かがあったわけではない
ただ直感的に、そこにある強大な存在を感知する

俺の左前方
僧侶が四つん這いになって、じっと白彼岸を観察している
[薬師]技能を持つ彼女にとっては、初めて見る植物が珍しいのだろう
その目線は、目の前の白い花畑ばかりに向いている

そんな彼女の、腹部付近の土
そこが少しだけ盛り上がった、気がする

見間違い、と理性が待ったをかける
しかしそれより早く、その存在を感知した身体が動き、僧侶を突き飛ばす
驚きと恐怖とを綯い交ぜにしたような表情、次いで俺の顔を見て抗議の色
それすらも意識することなく、鉄の手斧を振り抜く
盛り上がりが更に大きくなる、そこに斧を振り下ろす
中空に鉄の残滓が閃き、呼吸ひとつ分を置いて斧が土の中に潜っていく
手首に感じるのは、柔らかな土を掻き分けるものじゃない
繊維を突き破る、生々しい感触

斧の刃先と土の接触面から、紫色の液体が飛び散る
次いで土が盛り上がり、その奥に隠されていた巨体を顕にする
332 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/22(木) 06:02:27.93 ID:0TknjQHp0
土を掻き分けて出てきたのは、巨大な茎だった
俺の身長の二倍はあろうかというほど伸びた茎が、触手のように蠢いている
茎には葉もついておらず、その根本は土に隠れて見えない
茎の先端には、二枚貝に重なった葉がある。重なる二枚の葉の間には無数のトゲが走り、その間からまるで涎のように粘液が流れ続けている
それは植物型モンスター[フライトラップ(Lv2)]によく似ていた

故に俺は最初、それを突然変異した巨大なフライトラップだと勘違いした
突き刺した鉄の手斧は、奴の捕食器たる葉に突き刺さったままだ。そこからは紫色の体液が、絶えず垂れ落ちている
奴が勢いよく地面から表れ出た所為で、斧を手放してしまったのだ

俺は石の斧を構え、その茎を分断しようとする
フライトラップはけして強いモンスターではない。例え突然変異していても、この三人なら余裕を持って勝てる筈だ

しかしその時、背後で悲鳴が聞こえた
振り返ると、同じ茎が他に三つ、地面から現れて蠢いている
フライトラップの群生、と瞬時に考える。現れた三つの茎もまた、同じように涎を垂れ流している
僧侶は足元から現れたそいつに、思わず腰を抜かしてしまっているようだった

そして、そいつは現れる
四つの茎の対角線の交わる点、即ち中心点に、もう一つ土が隆起する
五体目のフライトラップか
その予想に反して現れたのは、巨大な球根だった
球根の頂点には、生々しく滑っている眼球がくっついている
そして、球根の側面には四つの茎があった。それぞれは、今しがた出現した茎に繋がっている

そこまで見て、俺はようやく真実に気づいた
この四つの捕食器は、個別に存在するモンスターではない
一体の大型モンスターの、手足なのだ

巨大な一つ目が、ぐるりと俺を見つめた
瞼も何もない赤い虹彩が、まるで獲物を見定めるかのように
333 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/22(木) 06:10:34.08 ID:0TknjQHp0
なんだこのモンスターは!

それだけが頭を過る
見たことのないモンスターだ。魔物図鑑には乗っていなかった。レベルはいくつだ、技能は。戦うべきか。いやしかし武器が
頭の中で幾つもの考えが通り過ぎていく
その一瞬の間をついて、四つの捕食器が一斉に俺に襲いかかった
鉄の斧はない。俺は再び石の斧を取り出すと、襲いかかった捕食機の一つを切り落とそうとする
しかしその右手を、別の捕食器が絡め取る

ただの植物型モンスターではない
通常、植物型のモンスターは決まったルーチンでしか動かない
しかしこいつには明確な意志があった。生々しい眼球に映っているのは、自らを傷つけた俺への復讐心だった
別の捕食器が、俺の脇腹に向けて大きな"口"を割り開いた
茎に巻き付かれながらも、回避を図ろうとする
しかしその時、腕に絡まっている茎が、驚くほどの勢いで俺を引っ張った
筋力にはそれなりに自信のある俺が、全く太刀打ちできない程の力だ
それは丁度脇腹に"口"が当るように調整されている
回避の余地はなかった

しかし捕食器が当る寸前、炎の矢が俺を束縛する茎の根本に直撃する
束縛されていた腕が突然軽くなり、俺はバランスを崩した
突如姿勢を変えた俺に擦れるようにして、"口"が背後を通り過ぎていく
334 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/22(木) 06:18:33.79 ID:0TknjQHp0
魔法使いを見る
詠唱短縮の簡易[炎の矢]を唱えた彼女は、再び次の呪文を唱え始める
視線だけで礼をしながら、ベルトホルダーにしまっていた剣を取ろうとして――

――気付く。剣がない
取られているのだ、剣が
いや、荷物そのものが
見れば先程俺の背中を通過した茎が、その"口"に鞄を咥えている
先程擦れ違ったほんの一瞬で、俺の背後から荷物をスリとったのだ
只の植物にできる芸当ではない

茎は荷物をそのまま地面に投げ捨てると、ゲレゲレゲレと耳障りな笑いを発した
それは他の二つの茎にも伝染し、笑いは三重になって空間に響く
嘲笑っている。このモンスターは明確な意志を持ち、俺を嘲笑っている

魔法使いが詠唱を始める。球根ごとこいつを焼き払うつもりだ
炎の矢が空間に現れ、球根を照準する、その時
不意に魔法使いが詠唱を止めた。いや、止めざるを得なかった
地面から現れた五本目の茎が、彼女の口元に巻き付き、詠唱を禁じていた
335 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/22(木) 06:26:08.47 ID:0TknjQHp0
魔法使いを助けなければ
斧を握るが、しかし俺の周りの三つの茎もまた、再び俺を拘束せんと動き始めた
とても彼女の所までいけない。三つの"口"の猛攻を、避けるので精一杯なのだ

斧を空に舞わせ、近づいてきた茎を振り払う
茎は巧みに俺の攻撃を避けていた。直線的な動きを理解し、曲線的に動いていた
攻めきりたい所なのに、蠢く多数の触手のせいで攻撃すら困難な状況
それでも一瞬のスキをつき、茎の群れから抜け出して魔法使いの元へと向かおうとする、

その右脚がつんのめる

思わずそこを見る
右脚が拘束されている
どの茎だ。思わず見渡して、愕然とした
その茎は、地面から生えていた
六本目の茎

そして体制を崩した俺の右肩に、今度こそ、
涎を垂らす"口"がかぶりつく
336 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/22(木) 06:26:36.36 ID:0TknjQHp0
最初に感じたのは、熱
337 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/22(木) 06:34:08.10 ID:0TknjQHp0
次いで鋭い痛みが、俺の右肩を貫く
葉の内側にある棘が、皮膚を突き破っている
貫かれる痛み。だがそれすら、前座でしかなかった

皮膚の内側に潜り込んだ"牙"から、何かが"漏れて"いる
それに気づいた時には既に、狂おしいほどの熱さが、血液に乗って全身に流れていく
じんわりと熱さが広がり、まるで身体の内側が火傷になっているかのように、その熱を増していく
熱が、痛みに変わる
痛みの奔流が、全身を駆け巡っていく
そう、痛み!

余りの熱量に、痛みに、芯から身体が燃えていく
まるで熱暴走を起こしたみたいに、全身が熱くて、痛い
最早耐えきれなかった
苦痛を身体の中に抑えきれず、俺は大声で吠えた
痛みに咽び泣いた
叫んだ

そうしてすら、この痛みは増していくばかりだ
338 : ◆ALICE6.PAk [saga]:2018/03/22(木) 06:44:41.97 ID:0TknjQHp0
目に見えているものが何かがわからなくなっていく
全身を巡る熱が、俺の脳を溶かしているみたいだ
だが唯一つの本能に従って、この拘束から抜け出そうと身体を揺らす
抜けない。解けない
何故か。それを考える余裕すらなく、ただ我武者羅に身体を動かす
その分だけ全身が熱く滾り、身体に溜まる何かが広がっていく
それが苦痛で、更に身体を動かす
その悪循環すら、意識することはできない

不意に、少し遠くで何かを千切る音がした
小さな女の子が、手に持った鋭い何かで、綺麗な誰かの口元にある何かを切っている
何か? 誰か?
それが何かすら判別できない

視界の橋で、赤い線が奔る
俺の右肩に、何か強烈な熱を感じた
うめき声のようなものが聞こえ、身体を縛り付けていたものが楽になる
景色が回転する。違う? もしかしたら自分が回転している
強い衝撃にぶつかるより先に、柔らかな何かが俺を抱きかかえている
俺を呼ぶ声が聞こえる。ふたつ。どちらも逼迫した声。なんとなく、珍しいなと思った
少し遠くで、何かが蠢いている。綺麗な誰かが、赤い線を奔らせてそれを遠ざける
もうひとりの女の子が、俺の右肩に触れている。暖かな光が右肩を包み込んでいく

それでも、俺の身体の芯は氷のように冷え固まっていた
どうしようもなく寒くて、微睡みはいよいよ限界に達していた
俺を覗き込むふたつの影が、ぼやける
そしてそこに、俺はみっつめの影を見た
遠い昔に死んだ、俺の妹を見た

そこで一旦、俺の意識は闇に沈む
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