【ミリマスss】可奈「私、一人前になります!」

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22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/10(火) 23:26:35.37 ID:1PtDC+R70
可奈「は、はひ!」

園児1「はひ、だって」

園児2「変なの〜」

可奈「矢吹可奈、14歳です。大好きなのは唄うこと。今日は、みんなと仲良くなれたらな〜って思います」

可奈「唄うの大好き、矢吹可奈〜♪ みんな仲良くして、くっれるかな〜♪」

美奈子「佐竹美奈子、十八歳! 特技は、料理を振る舞うことです♪ みなさ〜ん、
ちょっとだけ手を貸してくださいね。せーの、の合図でいきますよ〜♪」

せーの

「「「「「「わっほーい!」」」」」」

朋花「天空橋朋花です〜。今日は、みんなで仲良くしましょうね〜。お痛、は私が許しませんよ〜」

園児123「はーい」

先生「アイドルの皆さんと仲良くなれるように、簡単なゲームをやりましょう。それじゃあ、準備しましょうね」
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/10(火) 23:27:06.58 ID:1PtDC+R70
――――――――――――

お昼休憩

可奈「はひ〜。やっとお昼ですね」

朋花「沢山動いたので、お腹が空きましたね〜」

美奈子「わっほ!」

可奈「美奈子さん、落ち着いてください!」

美奈子「はっ!」

可奈「大丈夫ですか?」

美奈子「ごめんね、可奈ちゃん。ありがとう」

朋花「でも、子供って元気ですね〜」

可奈「みんな疲れ知らずで、私、午後もついていけるか、不安です」

美奈子「午後は先生が、お歌を唄うって言ってたよ」

可奈「本当ですか!」

美奈子「やっと可奈ちゃんの本領発揮だね」

可奈「はい! じゃんじゃんばりばり、唄いますよ〜♪」

朋花「楽しみですね〜」
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/10(火) 23:28:09.87 ID:1PtDC+R70
――――――――――――

可奈「……」

可奈「(あの子、すごくつまらなそう)」

可奈「(どうしてかな?)」

可奈「(ずっと下を向いたまま)」

可奈(小声)「あの、美奈子さん、ちょっと行ってきていいですか?」

美奈子(小声)「あの子?」

可奈(小声)「はい」

美奈子(小声)「うん、お願いしちゃってもいいかな? 私たちも気にはなっていて……」

園児4「……」

可奈「どうしたの? 具合悪いの?」
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/10(火) 23:28:39.80 ID:1PtDC+R70
園児4「……」

可奈「お歌、唄わないの?」

園児4「唄わない」

可奈「! どうして……?」

園児4「唄わないったら、唄わないの!」

可奈「……ほら、一緒に唄おう? 楽しいよ?」

園児4「唄わない……楽しくないもん」

可奈「そんなことないよ。一緒に唄おうよ」

園児4「唄わないの!」

園児4「お歌なんてきらい! だいっきらい!」

可奈「え……」

先生「ちょっと、どこにいくの!?」

可奈「わ、私が追いかけます!」
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/10(火) 23:29:17.12 ID:1PtDC+R70
―――――――――――

可奈「ま、待って!」

園児4「付いてこないで」

可奈「つ、捕まえた!」

園児4「……」

可奈「はぁ、はぁ。ねえ、ちょっと休憩しよう?」

園児4「……い、いいよ」

可奈「は〜、疲れたね」

園児4「何で、追いかけてきたのっ」

可奈「……」

園児4「ねえ!」

可奈「……歌が嫌いって言ったから」

園児4「……きらいだもん」

園児4「お歌は唄わないよ!」

可奈「うん……」

園児4「……」

可奈「……」
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/10(火) 23:29:50.08 ID:1PtDC+R70
園児4「あたしのこと、連れてかないの?」

可奈「お歌、嫌なんでしょ?」

園児4「……うん」

園児4「で、でも、それなら、どうして付いてきたの!」

可奈「……えへへ、分かんない」

可奈「歌が嫌いって、私、よく分からなくて」

可奈「だから、つい追いかけて来ちゃったんだけど……」

可奈「……」

園児4「お姉ちゃんは、お歌、好きなの?」

可奈「うん、大好きだよ」

園児4「でも、あんまりお歌上手じゃないよ」

可奈「うぅ……」

園児4「それなのに、好きなの?」
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/10(火) 23:30:39.73 ID:1PtDC+R70
可奈「?」

可奈「歌が好きなのと下手なのと、一緒って変なのかな?」

園児4「?」

可奈「?」

可奈「でも、唄ってると楽しいよ。嫌なことも歌にすると元気になれるんだ」

可奈「それに、唄うと笑顔になってくれる人がいるから」

園児4「そ、そんなの変だよ!」

園児4「可奈ちゃん、笑われてるんだよ!?」

可奈「笑われてる?」

園児4「そうだよ! 可奈ちゃんのお歌が下手だから――」

可奈「……」

園児4「!」

園児4「あぅ、ごめんなさい」

可奈「あっ、だ、大丈夫だよ」

可奈「怒ってないよ?」

園児4「……ごめんなさい」

可奈「……」
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/10(火) 23:31:32.82 ID:1PtDC+R70
可奈「ねえ、あなたの名前は?」

園児4「あーちゃん」

可奈「あーちゃんは、お歌が嫌いなんだよね?」

園児4「うん」

可奈「それって、お歌が上手に歌えないから?」

園児4「……うん」

園児4「あのね、みんなね、あーちゃんが唄うと笑うの。
みんながね、へたくそって言うの。だから、きらいなの。へたくそだから、お歌きらい」

可奈「……」

可奈「あーちゃんは、本当にお歌が嫌いなの?」

園児4「……」

園児4「きらい、じゃない」

園児4「お家で唄うとね、お父さんもお母さんもきれいな声だって、褒めてくれるの」
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/10(火) 23:32:23.62 ID:1PtDC+R70
可奈「……!」

可奈「お歌の下手な、矢吹可奈〜♪ お歌の好きな、あーちゃんへ〜♪ 
たくさん歌を唄うから〜♪ 笑顔になってほしいかな〜♪」

園児4「……!」

園児4「お、おっきい声出さないで!」

可奈「まだまだたくさん唄います〜♪ あーちゃん一緒に唄いましょ〜♪」

園児4「う、うぅ」

園児4「分かった! 唄う! 唄うからやめて!」

可奈「ほんと!」

園児4「うぅ……」

可奈「ねえ、あーちゃん。みんながあーちゃんのお歌が下手って言うなら、
私があーちゃんのために、お歌を作ってあげる!」

可奈「あーちゃんだけの歌だから、誰も下手なんて言わないよ」

園児4「……」
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/10(火) 23:32:58.15 ID:1PtDC+R70
可奈「だからね、あーちゃん。一緒に唄おう? もし、それでも下手って
言う人がいたら、私も一緒にへたくそって言われてあげる!」

園児4「可奈ちゃんのバカ!」

可奈「!」

園児4「へたくそのままじゃ、意味ないもん!」

可奈「……」

園児4「で、でも、お歌は練習しないと上手にならないから」

園児4「だ、だからね、可奈ちゃんがへたくそって言われないように、
あ、あーちゃんも一緒に唄ってあげるっ」

可奈「ありがと〜、あーちゃん!」
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/10(火) 23:33:36.96 ID:1PtDC+R70
――――――――――――

帰り道

美奈子「あの子、元気になってよかったね」

可奈「はい! 一番おっきな声で唄ってくれてました」

朋花「でも、どうして初めは元気がなかったんですか〜?」

可奈「それが――」

朋花「――へたくそなんて人を傷付ける子には、お仕置きが必要ですね」

美奈子「と、朋花ちゃん、抑えて」

可奈「えへへ、朋花さん。ありがとうございます」

可奈「でも、あーちゃんなら大丈夫ですよ」



園児4『可奈ちゃん、今日はありがとっ』

園児4『あーちゃん、お歌、頑張って唄うね?』

園児4『あーちゃん、お歌、好きだから……///』

園児4『可奈ちゃんみたいに、元気に唄うからね』

園児4『可奈ちゃんのこと、おーえんしてるね?』
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/10(火) 23:34:50.04 ID:1PtDC+R70
――――――――――――

事務所

可奈「って言うことがあったんです……」

春香「そっかぁ」

可奈「だから、もしかして、歌が嫌いな人もいるのかなって」

可奈「あーちゃんみたいに、今は好きでも、嫌いになっちゃう人がいたら、
それって嫌だなぁって思ったんです」

春香「……」

春香「可奈ちゃんは、歌は好き?」

可奈「?」

可奈「大好きです」

春香「私もね、歌は好きだよ」

春香「この世界に入ろうって思ったのも、歌だったから」

春香「私より歌が好きな人なんていないって思ってたんだ」

可奈「……」

春香「だからね、今はすっごく幸せ」

春香「歌で、色んな思いを届けられる。歌で、色んな気持ちにしてあげられる。
私の歌が好きって気持ちで、みんなが幸せになれるんだよ?」

春香「それって、すごく素敵なことだよね」
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/10(火) 23:35:19.27 ID:1PtDC+R70
可奈「……えへへ」

可奈「やっぱり春香ちゃんは、すごいなぁ」

春香「……」

春香「可奈ちゃんの方がすごいよ……」

可奈「え? 今なんて」

春香「ううん、何でもないよ」

春香「あっ、そうだ。クッキー作って来たんだけど、食べる?」

可奈「わぁ! いいんですか?」

可奈「!」

春香「どうしたの?」

可奈「うぅ、春香ちゃん、私、いまダイエット中なんです」

春香「そうなんだ。それじゃあ一つだけ、どう?」

可奈「うぅ、ありがとうございます」

可奈「すっごく美味しいですっ」

春香「それじゃあ、私はもう行っちゃうけど、レッスン頑張ってね」

可奈「はい、春香ちゃんもお仕事頑張ってください」
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/10(火) 23:36:04.35 ID:1PtDC+R70
――――――――――――

会議室


千早「プロデューサー、御用でしょうか?」

P「ああ、急に呼び出して悪い」

可奈「……」

P「次のシアター公演の話なんだが……」

P「千早と可奈のライブバトルを企画している」

可奈・千早「!」

P「二人とも、引き受けてくれるか?」

千早「私は問題ありません」

可奈「ちょ、ちょっと待ってください!」

可奈「ぷ、プロデューサーさん、もう一度お願いします」

P「次のシアター公演では、千早と可奈のライブバトルを企画しているんだが、
可奈は引き受けてくれるか?」
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/10(火) 23:36:40.83 ID:1PtDC+R70
可奈「な、な、な」

可奈「そんなの無理ですよ〜! わ、私が千早さんとば、バトルだなんて!」

千早「……」

P「でも、最近は千早と志保と一緒に自主レッスンしてるじゃないか」

可奈「で、でも……」

P「なら、何時ならいいんだ?」

千早「プロデューサー」

P「ん?」

千早「矢吹さんが出来ないというのなら、別の人に依頼してください。
私はこの機会を譲る気はありません」

可奈「!」

P「まあ、可奈が出来ないって言う以上は――」

可奈「ま、待ってください!」
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/10(火) 23:37:35.71 ID:1PtDC+R70
P「可奈、受けてくれるのか?」

可奈「そ、その……」

千早「……」

千早「矢吹さん、やるの? それとも降りるの?」

可奈「……」

千早「ねえ、矢吹さん? あなたがアイドルになって、一番良かったと思うのは、いつ?」

可奈「それは、歌を唄ってる時です」

千早「なら、迷うことはないと思うのだけど」

可奈「……」

千早「……私は」

千早「私は、ステージに立って、唄っている時が一番幸せを感じるわ。
そこから見える、ファンのみんなの楽しそうな顔、嬉しそうな顔、哀し
そうな顔、歌をしっかりと届けられたと実感する時が、私は一番、アイ
ドルになってよかったと思う瞬間」

千早「だから、中途半端な覚悟なら、降りてちょうだい」

千早「最高のステージを、ファンのみんなに届けるためにも」
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/10(火) 23:38:26.61 ID:1PtDC+R70
可奈「……」

可奈「やります」

P「……いいのか?」

可奈「やります! 矢吹可奈、唄います!」

可奈「千早さんには、絶対負けません!」

千早「矢吹さん……本当にいいのね?」

可奈「千早さん……?」

千早「一つだけ言っておくけれど、手加減をするつもりはないわ」

千早「私は、765プロのみんなは仲間だけれど、同時に、仕事を奪い合う
ライバルだとも思っているわ。誰よりも、みんなを信頼している。それは、
どんな時も変わらないけれど、だからといって、互いに遠慮しあう、もたれあいの関係とは違う」

千早「矢吹さん、いいライブにしましょう」

可奈「……はい!」
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/10(火) 23:38:56.38 ID:1PtDC+R70
――――――――――――

可奈「……」

志保「可奈、次の公演――」

可奈「――志保ぢゃ〜ん、わ、わたじ〜」

志保「ちょ、ちょっと鼻水が付く!」

可奈「うぅ、ぢはやざんとライブバトルなんで、むりだよ〜」

志保「……」

志保「可奈、一人前になるんじゃなかったの?」

可奈「……志保ぢゃん?」

志保「可奈は、私に一人前のこと、聞かなかったわね」

志保「可奈、一人で何でも決められるようにならなきゃ駄目よ」
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/10(火) 23:39:25.23 ID:1PtDC+R70
志保「プロだもの、何が必要で、何をすべきなのか、
自分で選び取って、決められる大人にならないと」

志保「それが、私の思う一人前」

可奈「……」

志保「それじゃあ、私もレッスンがあるから」

志保「――! ああ、そうだ」

志保「千早さんからの伝言があったの」

志保「これからも合同レッスンは続けましょうって」

志保「それじゃあ、今度こそ行くわね」

志保(小声)「……可奈、応援してるから」
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/10(火) 23:40:01.90 ID:1PtDC+R70
――――――――――――

レッスン室

志保「(レッスンは前回、千早さんが出した課題曲をそれぞれが唄う所から始まった)」

志保「(課題曲は『shiny smile』)」

志保「(一番手は可奈。無邪気で、元気な歌い方)」

志保「(可奈らしいと言えば、可奈らしい)」

可奈「いつだって ピカピカでいたい♪」

志保「(歌詞に込められた前向きさを、そのまま押し出していく)」

志保「(一方、千早さんは歌全体の複雑な機微を、一つ一つ、丹念に拾っていこうとする。
大サビが最も盛り上がるように、抑揚を操って)」

千早「泣きそうな思いを 乗り越えたら♪」

志保「(乗り越えていく勇気を、唄う)」

志保「(同じ歌のはずなのに、こんなに見せる表情が違うなんて)」

可奈「志保ちゃん、次だよ」

志保「え、ええ」
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/10(火) 23:40:36.79 ID:1PtDC+R70
――――――――――――

志保「(本来、私たちは追いかける立場で)」

志保「(そんな中、千早さんがレッスンを一緒に、と誘ってくれたのは、本当に幸運なことだ)」

志保「(他の事務所なら、いくら所属が同じとはいえ、ライバルに手の内を明かすようなことは、絶対にあり得ないだろう)」

志保「(それなのに)」

志保「(追いつかなければいけないのに、この突き放されていく感覚は、何だろう)」

志保「(千早さんの技術を吸収して、一瞬でも一秒でも早く、隣に並びたいと願うのに)」

志保「(身体が気持ちについていかない……)」
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/10(火) 23:41:19.49 ID:1PtDC+R70
――――――――――――

志保「可奈っ!」

可奈「志保ちゃん……」

志保「このあと、少し付き合ってくれない?」

可奈「……」

可奈「いいよ、自主練でしょ?」

志保「ええ……」

志保「(このところ、可奈の元気がない)」

志保「(何か声を掛けてあげたいのに、何もしてあげられない)」

志保「(きっと、それは私の感じている焦りと、可奈の元気のなさは、同じものだから)」

志保「(だから、私たちは動き続けて、そんな気分を紛らわすしか方法がない)」

可奈「志保ちゃん、私ね、まだ実感が湧かないんだ」

志保「ライブバトルのこと?」

可奈「うん、そう。千早さんにも言われたんだ」

可奈「良いライブにしましょうって」
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/10(火) 23:41:57.85 ID:1PtDC+R70
可奈「だけど、全然分からない」

可奈「ライバルなのに一緒にレッスンしたり、同じ事務所の仲間なのに
競い合ったり、どうして、そんなことするんだろうって、ばっかり考えちゃう」

可奈「私、やっぱり千早さんみたいになれないのかな?」

可奈「……」

志保「……」

可奈「えへへ、ごめんね、志保ちゃん」

可奈「さ、レッスン始めよっ」

志保「……」

志保「……千早さんになれないなんて、分かりきったことでしょう?
いくら憧れたって、その人にはなれっこない」

志保「(自分の道は、自分で見つけるしかない)」

志保「だけど、可奈は……」

志保「可奈には、そんなの必要ない」

志保「……少なくとも、私はそう思うわ」

可奈「……」

志保「誘っておいて、悪いけど、可奈はもう帰ったら?」

志保「考える時間だって必要だと思うわ」

可奈「……う、うん」

志保「可奈、また明日。レッスン頑張りましょう」

可奈「……」
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/10(火) 23:42:33.10 ID:1PtDC+R70
――――――――――――

765シアター 屋上

可奈「はぁ……」

可奈「ライブバトルで意気消沈〜♪ 溜め息ばっかり、矢吹可奈〜♪」

可奈「……」

可奈「はぁ」

P「何、溜め息ばっかりついているんだか」

可奈「わっ! プ、プロデューサーさん!」

可奈「驚かさないでくださいよ〜」

P「悪い、驚かす気はなかったんだけど」

P「可奈、ライブバトル、やっぱり不安か?」

可奈「不安に決まってるじゃないですか! 千早さんとですよ」

P「相手が千早じゃなかったら、不安じゃないのか?」

可奈「う、それは……」
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/10(火) 23:43:15.06 ID:1PtDC+R70
P「前も聞いたが、可奈は何時なら不安じゃなくなる?」

P「誰が相手なら、不安じゃない?」

P「格下の相手とライブするときか? 何十回も何百回もレッスンしたあとなら
、不安じゃないか? ファンのみんなが友達だったら、不安じゃないのか?」

P「……違うよな」

可奈「……」

P「千早だって、ライブの前は指先が冷たくなるほど緊張するよ。春香も志保も、
みんな不安を抱えてる」

P「もちろん、それで可奈の不安が消える訳じゃないのは分かってる。だけど、
その不安はいつだって消えないんだ。誰だって、胸の内に隠したままステージに立つんだよ」

P「それでも、みんなやり遂げるんだ」

可奈「はい……」

P「初めてのライブ、覚えているか? 俺は何があっても忘れないぞ」
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/10(火) 23:44:05.34 ID:1PtDC+R70
P「可奈がとんでもないヘマをやったこと、それでも、最後まで唄い上げたこと、
劇場のみんなが笑顔だったこと。今でも、昨日のことみたいに、鮮明に思い出せる」

可奈「だ、だけど! わ、笑われてただけかもしれないですよ?」

可奈「私がドジだから、みんな……笑ってたのかも」

P「!」

P「まったく誰がそんなこと言ったんだ?」

P「可奈! そんなことある訳ないだろう」

P「みんな、可奈の歌を聞いて、笑顔になったんだ。可奈が楽しそうに唄うから、
みんなも楽しくなるんだよ。可奈が本当に、本当に歌が好きだって思っているから、
みんなに伝わるんだ」

可奈「うぅ、でも」

P「信用できないか?」

可奈「……」

P「なら、俺に証明させてくれ」
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/10(火) 23:44:55.59 ID:1PtDC+R70
P「可奈、次の公演、千早とのライブバトルなんか関係ない!」

P「思いっきり、楽しんで唄ってこい。そして、俺が間違ってなかった、
と証明してくれないか?」

可奈「私が……間違ってるかもしれませんよ?」

可奈「歌が好きって気持ちだけで、ステージに立つなんて、本当は違うのかも……」

可奈「千早さんだって、志保ちゃんだって、いろいろなことを考えてステージに
立ってるんですよ。それなのに、私だけ――」

P「――よし、分かった!」

P「それが正しいか、どうか、次のステージで確かめよう」

可奈「えぇっ、プロデューサーさん、でも」

P「でももだってもない! こんな話、いつまでも続けてたって結論は出ないだろ。
だったら、実地で確かめてみるしかないよな」

可奈「うぅ、どうしてそうなるんですか〜?」

P「いいんだよ……可奈はステージを目一杯楽しめば」
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/10(火) 23:45:39.07 ID:1PtDC+R70
――――――――――――

ライブ当日

可奈「志保ちゃん」

志保「決心はついた?」

可奈「うん、でも……少しだけ不安かな」

志保「……そう」

可奈「えへへ……」

志保「……」

可奈「ねえ、志保ちゃん、やっぱり怖いよ」

志保「……そうね、私も怖い」

可奈「……」

可奈「志保ちゃんも怖いんだ……」

志保「?」

可奈「私たち、いっぱいレッスンしてきたよね?」

志保「ええ」

可奈「千早さんたちにも負けないくらい、頑張ったよね?」

志保「……ええ」

可奈「……」
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/10(火) 23:46:13.69 ID:1PtDC+R70
可奈「志保ちゃん、私、まだ一人前にはなれないみたい」

志保「……私だって」

可奈「え?」

志保「誰だって、自分は一人前じゃないってもがいてる」

志保「可奈、私もまだまだ大人には程遠いけど、それでも頑張ってる。だから……」

可奈「?」

志保「可奈の歌を聞かせて?」

可奈「……」

志保「可奈の歌が、私に勇気をくれるの」

志保「だから」

志保「いってらっしゃい、可奈」

志保「応援してるわ」
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/10(火) 23:47:11.68 ID:1PtDC+R70
――――――――――――

〜♪

可奈「歌うように♪ 歩いてゆく♪」

可奈「(まだまだ怖くて、指先ばっかり見てた)」

可奈「この先に何が待ってるの♪」

可奈「(ダンスに合わせて、上げた視線の先に、オレンジ色のサイリウムのお花畑が広がっていた)」

可奈「(はっとして、次の唄い出しが遅れる)」

可奈「失敗しても♪ 次また頑張る♪」

可奈「(頑張れ、可奈! 頑張れ!)」

可奈「(下を向いてなんかいられない! まだ唄えるんだから!)」

可奈「それっきゃない♪ 楽しいから♪」
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/10(火) 23:47:46.71 ID:1PtDC+R70
可奈「(どうして唄うまで、忘れてたんだろう)」

可奈「(こんなに楽しくて、大好きなこと)

可奈「(そうだよ、こんなにキラキラして、こんなに楽しい場所で、大勢のみんなに歌を届けるんだ!)」

可奈「(私、今、すっごく幸せなんだ!)」

可奈「一生懸命♪ 今日もまた前進です♪」

可奈「(精一杯、唄うって、志保ちゃんに約束したんだ!)」

可奈「(プロデューサーさんと目一杯楽しむって約束したんだ!)

可奈「(千早さんと、良いライブにするって約束したんだ!)」

可奈「(私だけじゃない、みんなの歌なんだ!)」

可奈「もっと知りたい♪ 私へと♪」

可奈「(うん! もっと、もっと知りたい!)」

可奈「(胸の奥がうずうずして、走り出したくなる気持ち)」

可奈「(嬉しくて、悲しくて、涙が出そうになるけど、でも笑顔になっちゃう、楽しくて、切ないこの気持ち)

可奈「迷ってないで♪ 飛び込んで♪ 会いに行こう♪」

可奈「(みんなに届けたい)」

可奈「(私だけじゃないって、信じてもいいんだよね)」

可奈「やっぱり」

可奈「(良かったんだ。この気持ちのままで)」

〜♪

可奈「歌が♪ 大好きっ」
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/10(火) 23:48:33.70 ID:1PtDC+R70
――――――――――――

志保「(ステージを下りる可奈の頬に、涙が流れていた)」

志保「(可奈は舞台袖へ戻ってくると、誰とも話さず、静かに楽屋へ入っていった)」

志保「(千早さんが準備を終える)」

志保「(客席は静まり返って、可奈の歌声の余韻が、まだ響いているようだった)」

志保「(合図が来て、千早さんがそんな空気の中を舞台中央へ歩いていく)」

志保「(初め、客席は曲が始まったことにも気付いていないみたいだった)」

志保「(だけど)」

志保「(千早さんの声を聞くと、誰もが我に返るように目を見開いて、顔を上げた)」

志保「(千早さんの歌声は、圧倒的だった)」

志保「(千早さんは歌で、ステージに一つの世界を作り上げようとしていた)」

志保「(私たちは、その世界に引き寄せられて、溺れていく)」

志保「(爪先から頭まで、千早さんの歌に浸って、別の人生を生きているような錯覚に陥る。
それは、物語を聞かせるように、ゆっくりと私たちに染み渡っていった)」
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/10(火) 23:49:03.43 ID:1PtDC+R70
――――――――――――

765シアター エントランス

可奈「はれっ?」

春香「あれ?」

可奈「春香さん?」

春香「可奈ちゃん?」

可奈「あの、私、千早さんに呼ばれて……」

春香「あ、なるほど」

春香「えへへ、可奈ちゃん、わたしも千早ちゃんに呼ばれたんだ」

可奈「?」

春香「ねえ、ちょっと歩こうよ」

可奈「でも、千早さんは?」

春香「大丈夫。ね、行こう」

可奈「あっ、待ってくださいよ〜」
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/10(火) 23:49:35.40 ID:1PtDC+R70
――――――――――――

春香「はぁ、風が気持ちいいね〜」

可奈「……」

春香「今日のライブ、見てたよ」

可奈「っ!」

可奈「全然、ダメダメでしたよね?」

春香「?」

春香「どうして?」

可奈「あの、私、途中まで、その、全然別のことを考えてて」

可奈「みんなに、悪いことしちゃったのかなって」

可奈「えへへ、私、歌しかないのに」

春香「……」
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/10(火) 23:50:15.44 ID:1PtDC+R70
春香「だから、千早ちゃんに負けたの?」

可奈「! ち、違います!」

可奈「ただ、私の実力が足りなかっただけで」

春香「可奈ちゃんは、全力で唄ったんだよね?」

可奈「はい! あ、でも初めの方は……」

春香「でも、思いっきり唄ったよね?」

可奈「その……はい」

春香「なら、私が許してあげる」

可奈「え?」

春香「可奈ちゃんが悪いことしたって思うなら、私が許してあげる。
でも、可奈ちゃんは許しちゃダメだよ。可奈ちゃんは今日のこと、
ずっと忘れないで、毎日毎日、思い出さないとダメだよ」

可奈「……」

春香「それで、きっといつか、今日を思い出して、もっともっと素敵な歌をファンのみんなに届けてあげて」

春香「ね?」

可奈「はい……」

春香「ねえ、可奈ちゃん、こんな話したの覚えてる?」

春香『可奈ちゃんは歌が好き?』
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/10(火) 23:50:46.60 ID:1PtDC+R70
――――――――――――――

志保「千早さん、お疲れ様です」

千早「お疲れ様、志保」

志保「……」

千早「……何か、伝えたいことがあるのかしら?」

志保「……」

志保「あのっ! 私、諦めません」

志保「……今日は、千早さんが勝ちましたけど、いつか可奈は絶対、
千早さんに追いつきますから。私だって、絶対に追いついてみせますから……!」

千早「志保……」

志保「正直に言って、今日は負けたと思いました。悔しくて、胸が張り裂けそうなくらい、負けたんだって思います」

志保「だけど、負けません。……負けたくないんです」

千早「……」
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/10(火) 23:51:24.59 ID:1PtDC+R70
千早「私は、今日、矢吹さんのステージを見て、改めて唄うのが怖いと思った」

志保「!」

千早「いつも思うの。外から見れば、小さなこのシアターが、どうして、
舞台から眺めた時、あんなに大きく見えるのか。どうして、唄うのが怖いくらい、手が震えるのかしらって」

千早「私だって、今日の勝利が明日の勝利だなんて思ってない。それに、今日の歌だって、私だけで作り上げたものじゃない」

千早「それは、志保や矢吹さん、765プロのみんなといたから作ることの出来た歌だと思ってる」

志保「私たちの?」

千早「ええ。レッスンの時、課題曲を出したでしょう?」

千早「一つの歌でも、歌い手が変われば、曲の色も変わる」

千早「そのことを強く意識させてくれたのは、いつだって矢吹さんの歌だった」

千早「私は、矢吹さんが羨ましい」
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/10(火) 23:52:45.83 ID:1PtDC+R70
――――――――――――

可奈「覚えてます!」

可奈「歌で色んな気持ちや思いを届けられるのが幸せだって、春香さんが言ったの、覚えてます」

春香「……わたし、誰にも負けないくらい唄うことが好きだったの。それだけは負けないって、この世界に入ったくらいに」

春香「だけどね、いたの。私より歌が好きで、私よりずっと真剣に歌のことを考えている人が」

可奈「……もしかして、千早さんのことですか?」

春香「ふふっ、半分正解」

可奈「えっ?」

春香「可奈ちゃんも、そうだよ」

可奈「かな……えぇ! 私ですか!?」

春香「私は可奈ちゃんってすごいなって思うの」
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/10(火) 23:53:15.38 ID:1PtDC+R70
春香「何度くじけたって、何度でも立ち上がる」

春香「歌が大好き、ただそれだけで何度だって諦めないで、挑戦していけるのは、
本当にすごいなぁって、思うんだ」

可奈「そ、そんな、私なんて……///」

春香「私も歌が好き。だけど、それだけで立ち上がれるほど、強くないんだ」

春香「今の私は、ファンのみんながいるから、765プロのみんながいるから、
プロデューサーさんがいるから、そして、可奈ちゃん、あなたがいるから、何度でも立ち上がれる」

春香「みんなの力が、今の私を支えてくれてるんだ」

春香「……」

春香「ねえ、こんなこと初めて言うんだけどね」

春香「私、可奈ちゃんに憧れてたの」
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/10(火) 23:54:01.68 ID:1PtDC+R70
――――――――――――

志保「可奈が羨ましいって、どういうことですか?」

千早「矢吹さんの歌に対する姿勢が、悔しくて、涙を流すくらい羨ましい」

千早「志保は今日、負けたと思ったって言ったわね?」

志保「はい」

千早「どんなところが負けたと思ったの?」

志保「それは、千早さんの歌です」

志保「歌声だけで、一つの世界を作り上げて、観客を巻き込んでいく。
その技術が素晴らしいと思いました。私は、まだその域に達していない、と」

千早「技術……」

志保「え?」

千早「技術は所詮、技術に過ぎないわ」

千早「志保が素晴らしいと思ったものだって、私にとっては、付け焼刃もいいところ」

志保「……」

千早「私には、それは矢吹さんの物真似でしかないのよ」

志保「……?」
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/10(火) 23:54:35.72 ID:1PtDC+R70
千早「志保は哀しい歌を唄う時、どうする?」

志保「哀しく唄うに決まってます」

千早「……そう」

千早「矢吹さんならきっと、哀しい歌はそのまま唄うでしょうね」

志保「……あの、意味が分かりません」

千早「それがきっと、私たちの限界なの」

千早「哀しい歌を、哀しく唄うことでしか届けられない」

千早「本当はその哀しみの中にだって、喜びや憂いや華やかさがあるのかもしれない。
様々なグラデーションが隠れているはずなのに、私は、その全てを届けるだけの歌を唄えない」

千早「だけど、矢吹さんは唄うのが楽しいという気持ちだけで、一直線に観客へ歌を届けられる」

千早「今日の歌だって、それを真似ただけ。歌を大きな世界に見立てて、観客に感情を委ねた。ただそれだけ」

千早「私たちは賢しらに、歌に理由をつけてしまうけれど、矢吹さんは違う」

千早「理由がなくとも歌えるのは、単純に羨ましいわ」
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/10(火) 23:55:34.82 ID:1PtDC+R70
――――――――――――

可奈「春香……さん?」

春香「……」

春香「見て、可奈ちゃん。765シアターが見えるよ」

可奈「……!」

春香「ステージに立てば、ファンのみんなとあんなに近いのに、今はとっても大きく感じる」

春香「ライブが終わると、いっつも思うんだ」

春香「どうして、この広いシアターがライブの時だけは、あんなに狭く感じるんだろうって」

春香「多分、それって、みんながいるからなんだよね?」

春香「ファンのみんな、765プロのみんな、スタッフの人たち、みんなの熱気が集まってるから、
あんなに時が経つのが早くて、シアターが狭く感じるんだろうなって」
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/10(火) 23:56:12.32 ID:1PtDC+R70
春香「……」

春香「ああ、早くライブしたいなぁ」

春香「可奈ちゃんも、そう思うでしょ?」

可奈「……」

春香「ファンのみんなに、歌を届けたいなぁって」

可奈「……」

可奈「(『一生懸命、唄ったんだよね?』)」

可奈「(『私が許してあげる』)」

可奈「(『可奈ちゃんは自分を許しちゃダメだよ』)」

可奈「……うぅ」

可奈「うわぁぁぁぁぁ〜〜〜ん!」

春香「か、可奈ちゃん!?」

可奈「私……! 私ぃ……!」

可奈「私のバカバカバカぁ〜!」

可奈「もっともっど、ちゃんど唄えたのに……!」

可奈「みんなに、もっともっと、歌を届けられだのに」

可奈「バカ〜! 可奈のバカ〜!」

春香「……!」
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/10(火) 23:57:09.56 ID:1PtDC+R70
春香「ふ、ふふっ」

春香「うふふ、あはははは」

可奈「は、春香ざん?」

春香「ふふ、えへへ。ごめんね、可奈ちゃん」

春香「でも、笑わずにはいられないよ」

可奈「うぅ、私がドジだから笑ってるんですね?」

春香「ち、違うよ! そうじゃないの、嬉しいんだよ」

春香「やっと、可奈ちゃんが一人前になったんだなって」

可奈「一人前……?」

春香「うん、可奈ちゃんはもう一人前だよ」

春香「だから、憧れるのはもうおしまい」

可奈「?」

春香「今日から可奈ちゃんは、後輩じゃなくて」

春香「ライバルだもんね!」
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/10(火) 23:57:40.17 ID:1PtDC+R70
後日談

可奈「千早さん、デュエットしましょう!」

千早「ええ、しましょう!」

春香「いっけー、可奈ちゃん、千早ちゃ〜ん!」

志保「(まだ私が唄っているんだけど……)」

可奈「百点、狙っていきますからね!」

千早「じゃあ、低音パートは矢吹さんにお願いするわ。私は高音パートで」

可奈「はい!」

志保「(でも、楽しそうだから、いいのかな?)」

春香(小声)「志保ちゃん、次は私たちでデュエットしようか?」

志保(小声)「いいですよ、負ける気はありませんから」


おしまい
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga sage]:2018/04/10(火) 23:58:53.17 ID:1PtDC+R70
この話はこれにておしまいです。

読んでくださった方、ありがとうございました。

html化、依頼してきます。
68 : ◆NdBxVzEDf6 [sage]:2018/04/11(水) 00:53:59.36 ID:uTrY9QUx0
千早の可奈に対する考え方いいね
乙です

>>2
矢吹可奈(14) Vo/Pr
http://i.imgur.com/kB9imcc.png
http://i.imgur.com/qwPPZmc.png

北沢志保(14) Vi/Fa
http://i.imgur.com/VBYKOPg.jpg
http://i.imgur.com/ZNFva6G.jpg

>>3
如月千早(16) Vo/Fa
http://i.imgur.com/RFRxkra.jpg
http://i.imgur.com/wN651IY.jpg

>>7
天海春香(17) Vo/Pr
http://i.imgur.com/f6ombAr.png
http://i.imgur.com/7RYWSze.jpg

>>9
高山紗代子(17) Vo/Pr
http://i.imgur.com/G3Xvfmo.jpg
http://i.imgur.com/BtlBhJL.jpg

>>10
田中琴葉(18) Vo/Pr
http://i.imgur.com/NGhomXO.jpg
http://i.imgur.com/4b7MrKu.png

>>11
七尾百合子(15) Vi/Pr
http://i.imgur.com/MeJaqUS.jpg
http://i.imgur.com/PABrgaq.jpg

>>12
望月杏奈(14) Vo/An
http://i.imgur.com/olHxThh.jpg
http://i.imgur.com/4eHfLZQ.jpg

>>22
佐竹美奈子(18) Da/Pr
http://i.imgur.com/ZUzO9Qf.jpg
http://i.imgur.com/XDI4u1A.jpg

天空橋朋花(15) Vo/Fa
http://i.imgur.com/X5DIqbh.jpg
http://i.imgur.com/Zoo2awy.jpg

>>19
『shiny smile』
http://www.youtube.com/watch?v=YCBXQS7Wbiw


>>51
『オリジナル声になって』
http://www.youtube.com/watch?v=XGCS8UBJe8I
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/11(水) 16:30:10.78 ID:rE4/0rGPo
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/11(水) 21:25:17.46 ID:BLIIWFIlo
引き込まれたわ乙
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/11(水) 22:13:25.11 ID:hCHViKFPo
素敵なお話でした乙です
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