剣と魔法と運送業

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227 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 02:15:09.93 ID:4w92xVZD0
遊牧民「ほら、見えてきたぞ」

遊牧民「あれが、お前さんの言ってた場所…」

遊牧民「勇者の落涙だ」

228 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 02:16:07.40 ID:4w92xVZD0
途中ですが今日はここまでとします
ありがとうございました
229 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/29(日) 08:44:25.68 ID:SJq5Mz65O

2部の主人公は同僚って感じなのかな?
230 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 12:57:06.96 ID:7Ie26JGBO
投下します
231 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 12:58:14.06 ID:7Ie26JGBO
-夕刻 物流協会事務局 女の執務室-


先輩「女ー?いるかー?」コンコンッ

シーン…

先輩「あれ、出掛けてるのか」

スタスタ

先輩「あ、なぁ君」

事務局職員「は、はい?」

先輩「女君どこへ行ったか知ってるかな?」

先輩「ちょっとナビシステムの事で聞きたい事があってさー」

事務局職員「女さんですか?」

事務局職員「女さんなら港湾倉庫へ管理簿を取りに行って、そのまま直帰の予定ですが」

先輩「あ、そーなんだー!」

232 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 12:58:51.75 ID:7Ie26JGBO
事務局職員「何か伝言を残しておきましょうか?」

先輩「うーんそうだね」

先輩「じゃ"君の瞳に乾杯"とでも伝えておいてくれ」

事務局職員「え、えぇ!?」

先輩「ちゃんと気持ちを込めて言うんだぞ?」

先輩「なんだかんだ女性はそういうのに弱いものさ」ウインク

先輩「ほいじゃ失礼、ありがとねー」ヒラヒラ

事務局職員「な、なんだったんだ…」

233 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 12:59:35.15 ID:7Ie26JGBO
先輩「管理簿なんて運行で訪れたドライバーにでも渡せばすむ話だろ」

先輩「しかも協会の書類を持って直帰って…んな訳あるか」

先輩「あいつ…何してるんだ?」

234 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 13:02:50.04 ID:7Ie26JGBO
-翌日夜 王都酒場街-


[BAR REQUIEM]

カランッ…

女「わけが分からないわ」クイッ

先輩「国王陛下のお出ましとは穏やかじゃないな」グイッ

女「男くんとナビちゃんとの親和性…」

女「それが向上すると何かが起こる…?」

女「ダメ…足りないピースが多過ぎる」ウーン

先輩「そもそもナビシステムって何なんだろうな」カランッ

先輩「あ、俺アードベッグおかわりね」

先輩「君は?」

女「…マティーニ、うんとドライで」

先輩「あらら…」

235 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 13:04:00.95 ID:7Ie26JGBO
<お待たせしました

女「…ナビシステムが本格的に運用され始めたのは約15年前」クイッ

女「噂では、私達の故郷である北西の村での事故を受けて開発が始まったらしいんだけど」

先輩「20年前のあれか」

先輩「それについてなら、俺も少し調べてみたんだが」

女「何か分かったの!?」ガタッ

先輩「まぁ落ち着けって…どうやら20年前のあの時、被害を受けたのは北西の村だけじゃないらしいんだ」

先輩「公式な記録には残っていないが世界各地…とりわけ大陸中央部での被害が甚大だったらしい」

女「大陸中央部?」

236 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 13:06:23.66 ID:7Ie26JGBO
先輩「あぁ。正確には大陸中央部から北に向かったある一部のエリアが消失したらしい」グイッ

女「消えた?破壊されたのではなくて?」

先輩「俺も昔のよしみで軍の奴に聞いただけなんだけどな」

女「協会(うち)に来る前は軍にいたんですっけね」

先輩「で、その消失した場所…今でも地図には載ってないらしいが」

先輩「地元では"勇者の落涙"と呼ばれてるらしい」

女「勇者の落涙…聞いた事もないわ」

先輩「…と、いう話を伝えに昨晩君のオフィスへ行ったんだが」

先輩「タイミングが悪かったらしい」

女「昨晩?…あぁ、事務局の高官に急に呼び出されてね」

女「男くんとナビシステムの事、くれぐれも頼むぞって念を押されちゃった」クス

先輩「…そうか」
237 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 13:07:01.92 ID:7Ie26JGBO
先輩「ま、とにかく20年前その場所で何かがあった」カランッ

先輩「恐らく勇者と魔王の大規模な戦闘だとは思うが」

女「そこでの被害を受けて、魔法石を用いたナビシステムの開発が始まった」

先輩「加えて言うなら、当時の陸軍が解体されて今の物流協会に再編成されたのもその頃だ」

女「…少しずつピースが揃いつつあるけど、まだ足りないわね」グイーッ

先輩「おいおい大丈夫か?」

女「大丈夫よ…ちょっと探究心に火がついてるだけ」フフッ

先輩「…そうなると止まらないからな、君は」

女「よく分かってるじゃない」ニコッ

先輩「…。」ハァ

先輩「そんなに気になるなら当事者に聞いてみればどうだ?」

女「当事者?…あっ」

238 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 13:08:11.47 ID:7Ie26JGBO
-大陸中央部 平原地帯-


遊牧民「この丘の向こうだ」

遊牧民「歩いてすぐだから見て来るといい。俺はここで待ってる」

同僚「なんすかwwここまで来て一緒に行かないんすかwww」

遊牧民「あそこは気が滅入る」

同僚「なんだよつれねーなwww了解っすwじゃ見てきますよっとww」

ザッザッザッ…

遊牧民「…。」ジッ

239 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 13:08:56.08 ID:7Ie26JGBO
-勇者の落涙-


…オォォォォォオォォォ…

同僚「でけぇぇぇwww」

同僚「小高い丘を登った先がクレーターみたいになっててw」

同僚「直径は…そーねー東◯ドーム位かしらんwww?」

同僚「で?その中は…www」ノゾキー





同僚「っ!?」ゾクッ

同僚「は、はい…!?」

240 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/29(日) 13:09:01.91 ID:oi0GoT7J0
一部はドライバー周辺の話だったのに
二部でいきなり王国の企みとか、地図作りに世界中を飛び回るとか出てきて困惑してる。もう少しゆっくり展開していかないと置いてけぼり感が半端ない。
241 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 13:09:56.15 ID:7Ie26JGBO
同僚「意味が分からん…」ザッザッザッ

遊牧民「戻ったか」

同僚「…暗くて見えないとかってんじゃない」

同僚「クレーターの中の空間そのものがまるで切り取られたみたいに」

同僚「存在してない…」

同僚「なんだありゃ…何が起こったらこんな事になるんだ??」ガタガタ

遊牧民「…20年前のあの日、この地で勇者と魔王の大規模な戦闘があった」

遊牧民「恐らく、先代の勇者はそこで決着をつけるつもりだったのだろう」

遊牧民「持てる力の全てを出し尽くし、しかし魔王には深手を負わせたものの倒す事は出来ず」

遊牧民「その時の勇者の攻撃の残滓が、彼の失意の涙と共にこの地を抉った…」

遊牧民「そう言われている」

同僚「伝聞かいwww」

遊牧民「空間が消し飛ぶ程のエネルギーだぞ?近くで見物なぞ出来るわけなかろう」

同僚「それもそうかwww」

242 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 13:11:12.16 ID:7Ie26JGBO
遊牧民「俺達は家を持たないから、勇者達がこの地に訪れると分かった時点で避難を始めた」

遊牧民「だがそれでも、少なくない数の同胞が巻き込まれて土地と共に消滅した」

同僚「し、消滅…!?」ギョッ

遊牧民「…いち早く駆けつけてくれた王国軍には感謝している」

遊牧民「勇者達の事も、仕方なかったと一定の理解はしている」

遊牧民「だが、結果として我々が同胞を…家族を失った事は確かだ」

同僚「…。」

遊牧民「勇者と、彼を擁立した王国…」

遊牧民「我々が王国と交易を結ばないのはそういった理由だ」

243 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 13:12:22.73 ID:7Ie26JGBO
同僚「すんません…なんか、俺」シュン

遊牧民「気に病むな、お前さんを責めるつもりはない」肩ポンッ

遊牧民「かつてそういった歴史があった、という話だ」

遊牧民「そして、その時の残滓…涙の欠片が」

遊牧民「ここから世界各地に飛び散ったのだ」

同僚「涙の欠片?じゃあそれが…」

爺「王国の方でも被害があったんじゃないか?」

同僚「えぇ、俺の同期の奴の故郷に」

同僚「…勇者の落涙、か」ジッ

…オォォォォォオォォォ…

244 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 13:13:20.92 ID:7Ie26JGBO
-05:00 隣国港-


ゴゥンゴゥン…

ナビ『えらい時間にえらい場所やな』

男「今日の運行は長丁場だからなー」

ナビ『えーと今日の積み地は…水の街?』ピラッ

男「街というか島だな」

男「街中に運河が張り巡らされているんだよ」

ナビ『運河って川?そんなとこカーゴで入っていけるん??』

男「いや、島内は車両通行禁止だ」

男「陸地から橋を渡った街の入り口近くに倉庫があって、そこで積むんだよ」

ブォン!ブロロロ…
245 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 13:14:50.99 ID:7Ie26JGBO
-11:00 隣国 街道-


ブロロロ…キキッ

ナビ『すごーい!海の上に橋が架かっとぉー!!』

男「橋の全長は約10km、さすがに街の様子は見えないな」

ナビ『海の向こうへ続く橋…ロマンチックやけどちびっと怖いかも』ブルッ

男「…帰って来れなかったらどうする?」ニヤァ

ナビ『いやぁぁやめてぇぇ!!』ブンブン

男「冗談だよ」ケラケラ

男「それじゃ行こうか」

ナビ『うぅ…今日の男ちゃんいじめっ子やぁ…発進しますぅ』ウルウル

ブォン!ブロロロ…


246 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 13:15:35.62 ID:7Ie26JGBO
ナビ『ほぇー…』ウットリ

ナビ『海の上を…飛んでるみたいや』

男「ホントだな、走ってるというより飛んでる感じだ」

ナビ『鳥や!ウチは鳥になったんや…!』トリー

男「おーい帰ってこーい」

ブロロロ…


247 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 13:16:50.56 ID:7Ie26JGBO
-11:15 水の街 倉庫-


ブロロロ…キキッ

ナビ『とうちゃーく!』

男「港から6時間、なかなかの距離だったな…んー」ノビーッ

ナビ『男ちゃんおつかれさま!』

男「ナビもな。お疲れ様」ポンポン

ナビ『ん。へへっ♪』ニコッ

男「さて、早速荷物を積むか」

倉庫職員「おーいこっちこっち!」テマネキ

倉庫職員「バックで入って来ておくれー!」

男「了解でーす!」

ピーッ ピーッピーッ

248 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 13:17:30.74 ID:7Ie26JGBO
倉庫職員「長旅ご苦労さん!これが今日積んでってもらうクリスタル細工だよ」

パカッ…キラキラッ

ナビ『わぁ…すっっげー!!!』キャッキャ

男「クリスタル細工といっても色のバリエーションが豊富なんですね」

倉庫職員「豊かな色味もここらのクリスタル細工の特徴なのさ」スッ

倉庫職員「ちょっと持ってみるかい?」ズイッ

男「え、いいんですか?」

倉庫職員「どの道王国までアンタに運んでもらうんだ」

倉庫職員「どんなモンか知っておいてもらって損はない、そうだろ?」ニコッ

男「そ、それじゃ失礼して…」ソーッ

ナビ『お、男ちゃん落としたアカンで!フリやないで!!』ハラハラ

249 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 13:18:31.57 ID:4w92xVZD0
男「おぉ…!びっくりする程軽い…!」

倉庫職員「クリスタルを薄く仕上げるのが職人の腕の見せ所なのさ」フフン

ナビ『そっか、薄ければその分軽くなるわけやな!』

倉庫職員「まぁ混ぜる色味によっても多少変わるんだけどね」

倉庫職員「どうだ、すごいだろ」ニカッ

男「す、すごいです」コクコク

ナビ『えぇなぁ…めっっちゃ綺麗…』ウットリ

倉庫職員「なんだいお嬢ちゃん、すっかり気に入ったみたいだねぇ!」

ナビ『こんなん女の子やったら誰でも惚れてまうって!』

倉庫職員「分かるよ!アタシも歳は食ったが心は女の子だからね!」ハハッ

倉庫職員「よし!ちょいとお待ち!」ゴソゴソ

男「?」

250 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 13:24:51.32 ID:4w92xVZD0
倉庫職員「さすがにグラス何かはちと厳しいけど、これならいいだろ」スッ

倉庫職員「クリスタル製の鈴だよ、お土産に持っていきな」チリンッ

男「えっ!いいんですか!?」

倉庫職員「可愛いお嬢さんには優しくってのがここらのやり方なのさ」ウインク

ナビ『うぉぉーマジかぃー!職員さんありがとぉー!!!』

チリンッ…


251 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 13:25:43.87 ID:4w92xVZD0
男「積み込み完了!」ゴトッ

ナビ『伝票印字中ー』ジジジ ペリッ

男「じゃあ確かにお預かりしました」

倉庫職員「頼んだよ!」

倉庫職員「そういやそろそろランチタイムだね、街で食べてくんだろ?」

男「出来ればそうしたいな、と」

ナビ『ご飯っご飯♪』ウキウキ

倉庫職員「だったらすぐそこの桟橋からヴァポレットに乗って行くといいね」

倉庫職員「カーゴは倉庫の脇に停めてって構わないから」

男「色々ありがとうございます」ペコッ

ナビ『ホンマにありがとー!!』

倉庫職員「なんて事ないさ!水の街へようこそってね!」ニカッ

252 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 13:28:49.99 ID:4w92xVZD0
-11:30 水の街 倉庫桟橋-



男「桟橋って事は舟か」

魔法石(ナビ)『職員さんの言ってはった…ば、ばぽ…』

男「ヴァポレットだったかな」

スーッ スーッ… ザブンッ

船長「あいお待ちどうさん」ゴトッ

男「すごい…手漕ぎなのか」

魔法石(ナビ)『カーゴがそこら中走り回っとぉ時代に…軽くカルチャーショックや』

253 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 13:29:41.86 ID:4w92xVZD0
スーッ スーッ… ザブンッ ザブンッ

男「座って乗って大人8人位が定員かな」

男「なるほど、手漕ぎだから本当に波の音しか聞こえない」

男「それと…」

魔法石(ナビ)『♪』チリンチリンッ

男「その鈴すっかりお気に入りだな」

魔法石(ナビ)『風に揺られる度にえぇ音が…ほんで可愛いし』ニコニコ

男「良かったな」ニコッ

魔法石(ナビ)『シップとは全然違うけど、こういうお舟もえぇな!ふぜーがあって!』ウキウキ

254 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 13:30:37.25 ID:4w92xVZD0
-11:40 広場桟橋-


スーッ スーッ… ザブンッ

船長「はいお疲れさん」ゴトッ

男「ありがとうございました」ストッ

魔法石(ナビ)『船長さんありがとー!』チリンッ

男「さて、何を食べようかなー」

チョイチョイ

男「ん?誰か引っ張ったか?」キョロキョロ

魔法石(ナビ)『男ちゃん、下や!』

男「下?」ミオロシー

仮面娘「」チョイチョイ

男「のわっ!!」ビクビクッ

255 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 13:31:36.58 ID:4w92xVZD0
魔法石(ナビ)『猫の仮面を被っとぉ女の子…めっちゃちっちゃいな』

仮面娘「お前に言われたくないぞ石っころ」

魔法石(ナビ)『な、なんやと!?』ムカッ

男「まぁまぁ、迷子かも知れない」シャガミ

男「どうしたの?家族とはぐれちゃったのかな?」ニコニコ

仮面娘「お前、光を見たな?」


256 : ◆o/5nn0YDew [saga ]:2018/04/29(日) 13:32:44.00 ID:4w92xVZD0
男「?」

仮面娘「」クルッ

タタンッ… クルクルッ

仮面娘「嘆きの夜に星粒降った」♪

仮面娘「星の礫が島を屠った」♪

男「…な、なにを」

仮面娘「涙の欠片は揺るがぬ力」♪

仮面娘「その身を救うか」♪

仮面娘「食われて死ぬか」♪

仮面娘「どちらに転ぶか心次第」♪

クルッ タタタタッ…

257 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 13:34:23.55 ID:4w92xVZD0
魔法石(ナビ)『行ってもた』ジーッ

魔法石(ナビ)『しっかしなんやあのチビっ子!ウチを石っころ呼ばわりしてからに!』ムキーッ

男「…。」ポカーン

魔法石(ナビ)『おーい男ちゃーん?』チリンチリンッ

男「光…嘆きの夜…」

男「涙の欠片…?」

258 : ◆o/5nn0YDew [saga ]:2018/04/29(日) 13:36:53.84 ID:4w92xVZD0
-13:00 水の街 倉庫-


男「…って事があったんですよ」

倉庫職員「あぁ嘆きの夜ね、20年前の」

男「20年前!?それって…!」

倉庫職員「ここから遥か北の大陸で勇者と魔王の戦いがあって、流れ弾が街に落ちたんだって」

倉庫職員「幸いこの街は運河や水路が張り巡らされてるから、大きな火災にはならなかったんだけど」

倉庫職員「それでも結構な人数が死んじまったもんだから、街の向こうの小島…まぁ本当に小さな島なんだけど」

倉庫職員「そこを丸ごと墓地にして埋葬したんだよ」

魔法石(ナビ)『島を丸ごと墓地に!?』

男「そうだったんですか…ちょうど同じ頃です、俺の故郷が同じような目に会ったのも」

倉庫職員「そうかい…まぁその頃は今より魔族の数も多かったって言うしねぇ」

259 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 13:38:09.84 ID:4w92xVZD0
男「あと、その女の子が"涙の欠片"って言ってたんですけど…」

倉庫職員「涙の欠片?そん時降ってきた流れ弾の事かねぇ」

倉庫職員「それは聞いた事ないねぇ、すまないけど」

男「いえいえ、色々とありがとうございます」ペコッ

倉庫職員「いいんだよ!」ニカッ

倉庫職員「あ、それとね」


260 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 13:40:27.14 ID:4w92xVZD0
魔法石(ナビ)『?』

倉庫職員「兄ちゃんさっき女の子って言ってたけど…ありゃ80過ぎのお婆さんだよ」

男「いいっ!??」

魔法石(ナビ)『う、嘘やろ…』ガビーン

倉庫職員「20年前に嘆きの夜に体験した事を、街を訪れる人に歌って聞かせて回ってるのさ」

倉庫職員「ま、20年前でも60過ぎだからやっぱりお婆さんなんだけどねぇ」ゲラゲラ

男「信じられん…てっきり迷子か何かだと」アゼン

魔法石(ナビ)『ホンマや…不思議な街やなぁココ…』ボーゼン

261 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 13:57:33.62 ID:4w92xVZD0
-鍛治職人の里 親父の家-




親父「女!久しぶりだな!」

女「すみません、全然顔も出せずに」

親父「なぁに気にすんな!若い奴が忙しいのはいい事だ」

女「おじ様も里の皆様も、お元気そうで安心しましたわ」

親父「ハハッ。あんなもんでくたばる程落ちぶれちゃいねぇよ」

親父「俺も、里の連中もな」ガハハ

親父「しかし珍しいじゃねぇか、事務局勤めだと運行には出ないんだろ?」スッ…シュボッ!

女「えぇ基本的には。今日はおじ様や里の皆様のご様子を伺いに」

親父「…って訳じゃねぇのは顔を見りゃ分かるぜ?」スゥ…スパァァ

女「…流石ですわ」

262 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 13:58:22.25 ID:4w92xVZD0
親父「そりゃ分かるさ、自分の娘の事だからな」ニコッ

女「…おじ様のその言葉、どんな時も私の心の支えです」ニコッ

親父「それで、今日はどうした?彼氏でも出来たか!」ケラケラ

女「ち、違いますわ!」

女「…それはまた改めて」ボソッ

親父「お、おいマジか…」タジッ

女「コホンッ!…今日はどちらかと言うと、おじ様のお話を伺いに来ました」

親父「俺の?」

女「おじ様…もとい、先代勇者一行の一人」

女「伝説の剣士様のお話を、です」

親父「…。」スパァァ…

263 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 14:05:30.94 ID:4w92xVZD0
-物流協会事務局 大会議室-


修道女「…。」ウツラウツラ

…バシュゥゥ!

修道女「っ!!」ビクッ

修道女「ど、同僚さん!?」

同僚「ただいまちゃーんwww」

修道女「お、おかえりなさい!」

同僚「いやぁ転移魔法って結構酔うのねコレwww」フラッ

修道女「ご、ご無事ですか!?」アタフタ

同僚「どうにかなwww運良く地元の人に案内してもらえたからよww」

修道女「じ、地元の人…!?」ビクッ

修道女「だだだ大丈夫でしたか!?首と胴体ちゃんと繋がってますか!??」グイグイ

同僚「何を縁起でもねぇwwwちょwwいってぇぇ引っ張るんじゃねぇぇwww」ジタバタ

264 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 14:06:36.46 ID:4w92xVZD0
同僚「なるほどなww男の意見の方が遥かに現実的だわwww」ウンウン

同僚「…現実より、な」

修道女「?」

同僚「さてw地図ぷりーずww」

修道女「は、はい!」ババッ

修道女「今回調査して来られたのは地図上でいうここ、大陸中央部の北端ですね」ツンツン

同僚「そうそうここねwwいやーありゃ地図には表せねぇよwww」

同僚「だって存在してねぇんだもんwww予想の斜め上過ぎwww」ケラケラ

修道女「そ、存在していない…?」ポカーン

同僚「まーそういうリアクションになるよねwww分かるーwww」

同僚「とりあえず勇者泣き過ぎィ!っていう話よwwwww」

修道女「何が何だかさっぱりです…」

265 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 14:07:25.85 ID:4w92xVZD0
同僚「だよねwwwまぁエールでも飲みながらゆっくり聞かせるよんww」

同僚「とりあえず今日もういいべwww飲んじゃうべwww繰り出しちゃうべwww」

修道女「し、しょうがないですねー!」

修道女「なんて。ホントにお疲れ様です」ニコッ

266 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 14:09:51.93 ID:4w92xVZD0
-19:00 隣国港-



サァァァァァ…



男「ダメみたいだな」ガチャ

ナビ『シップ動かんてー?』

男「あぁ、出航まで3時間は掛かるみたいだ」

ナビ『さ、3時間!?』

ピピッ

男「お疲れ様です男です、えぇそうみたいです、シップの故障で」

男「分かりました、はい了解です」カチャ

267 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 14:10:39.19 ID:4w92xVZD0
ナビ『配車係さん何てー??』

男「どの道待つしかないってさ」

ナビ『あちゃー』

男「その代わり、明日は仕事が少ないから休みにしてもらっちゃったよ」

ナビ『そっか、ならまぁえぇか』

男「のんびり待つとしよう」フフッ




サァァァァァ…

268 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 14:11:21.84 ID:4w92xVZD0
男「…。」ペラッ

ナビ『…。』チョコン


ナビ『(男ちゃんは時々本を読む)』

ナビ『(ウチは大体、男ちゃんの肩に乗っかって一緒に読む)』

ナビ『(おしゃべりでけへんのは寂しいけど)』

ナビ『(一緒に読みながら、男ちゃんの横顔をじっくり見られるこの時間が)』

ナビ『(案外好きやったりする)』ニヘ

男「…。」ペラッ

ナビ『(男ちゃん睫毛なが…)あっ』

269 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 14:12:13.71 ID:4w92xVZD0
男「ん?」ピタッ

ナビ『あ、ごめん』

男「ううん、どした?」パタン

ナビ『や、男ちゃん睫毛長いなーって』

男「えーそうか?」

ナビ『うん長い。でな?何で今まで気付かんかってんやろーって』

ナビ『…あ、眼鏡か。って』

男「そっか、仕事中はいつも眼鏡だもんな」スチャ

ナビ『おー眼鏡掛けるといつもの男ちゃんやー』

男「ははっそんなに変わるか?」

ナビ『うん変わる。なんや眼鏡してないと…エロい』

男「ぶっ!なんだよそれ」アハハ

ナビ『いやマジやて。あれは良くない』ウーム

男「良くないって…ダメって事なのか?」

ナビ『逆や!エロくて危ないねん』

男「…わけ分かんないなー」フフッ

270 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 14:13:21.67 ID:4w92xVZD0
ナビ『あっ本読むの邪魔してごめんな?』

男「平気だよ」

ナビ『ってか、一緒に読んでたけど』

ナビ『せつないお話やなぁ』

男「そうか?…うん、そうかもな」



サァァァァァ…



ナビ『雨、止まんね』

男「そうだな…」

271 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 14:16:14.90 ID:4w92xVZD0
サァァァァァ…


ペラッ

男「…。」

ナビ『…。』ストッ

男「(ナビとの会話が減ったのは、話さなくても分かり合える事が増えたのも確かにある)」

男「(でも、多分それだけじゃない)」ペラッ

男「(ナビは間違いなく、世界中の誰よりも俺の事を理解してくれている存在だ)」

男「(だけど、俺はどうだろう?)」

男「(俺は彼女の事をどれ程理解しているのだろう?)」

272 : ◆DTukN/b1n. [saga]:2018/04/29(日) 14:17:20.47 ID:4w92xVZD0
ナビ『♪』プラプラ

男「…おい、見えちゃうぞ」

ナビ『!』ババッ

ナビ『み、見た!?』

男「いや、惜しくも」

ナビ『っ…お、惜しいんかいな』カァァッ

男「ってかそれ、その、中までちゃんと」

ナビ『あ、当たり前やろ!ノーパンで居ろっちゅうんか!?』

男「いやそうじゃなくて…くふふっまぁいいや」ケラケラ

ナビ『なんや笑ろてるし…』ジトーッ

273 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 14:18:28.33 ID:4w92xVZD0
男「(…考え過ぎだろうか)」

男「(彼女は…俺の事…)」



サァァァァァ…

274 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 14:24:24.18 ID:4w92xVZD0
一旦切ります
後ほど投下します
ありがとうございました
275 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/29(日) 15:13:19.25 ID:H6kg9AMtO
276 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 20:28:56.32 ID:FhOGslq50
投下します
277 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 20:30:39.52 ID:FhOGslq50
-07:00 王都 街道-


ブロロロ…

男「んー今日の運行もようやく終わりかぁ…んー」ノビーッ

ナビ『今回は長旅やったなぁ…でも色んな事あって楽しかったわぁ♪』

男「そうだな、素敵なお土産も貰えたし」チリンッ

ナビ『ロリっ子みたいなおばあちゃんに会ぅたり』クスッ

男「あれには驚いたな」クスクス

ナビ『その後入ったお店で食べてたん何やったっけ?』

男「イカ墨スパゲティか、あれにも驚いたな!美味しかったけど」

ナビ『男ちゃん口の周りも中も真っ黒やねんもん!ゾンビなったか思ったわ!』ゲラゲラ

男「鏡見て自分でも思ったよ」ハハッ

278 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 20:31:59.16 ID:FhOGslq50
ナビ『…なぁ男ちゃん?』チョコン

男「ん?」

ナビ『…いつまでもさ。こうしておれたらえぇな』

男「あぁ、そうだな」

ナビ『…。』ズキン

男「いつもありがとな、お前とのコンビは本当に仕事がやりやすいよ」ポンポン

ナビ『え、えへへ…せやろ?』ニコッ

男「本当にいつまでもこうしてやって行けたらいいな」

ナビ『せやな…』

ナビ『…。』

ナビ『…あんな?男ちゃん』

男「?」

ナビ『…好きやで』ボソッ

279 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 20:33:19.21 ID:FhOGslq50
-深夜 王立倉庫事務所


ナビ『最近な?ズキズキすんねん。』

同僚ナビ『ズキズキ?システムに不具合でも?』

ナビ『そうなんかなー』

同僚ナビ『どんな時に症状が出ますの?それによってはまたメンテナンスして頂いた方が…』

ナビ『うんとね、男ちゃんの事を考えとぉ時。』

同僚ナビ『男さん?』

ナビ『うん、男ちゃんの事好きやなーって思っとぉ時。』

ナビ『でも、それが上手い事伝わらへんなーって時。』

ナビ『…ホンマは伝わったアカンねやろな、って思う時。』

ナビ『なんでウチ生身の女の子じゃないねやろ、な、って時、とか。』ウルッ

同僚ナビ『本当に…あなたって人は』

ナビ『人…って言うてくれんのどーちゃんだけやで。』ヘラ

ナビ『だって人間ちゃうもん。ウチら』

同僚ナビ『…よろしいですか?』フゥ

280 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 20:34:30.44 ID:FhOGslq50
同僚ナビ『確かに私達は生身の人間ではありません』

同僚ナビ『しかし、例え誰かを元にした存在であっても』

同僚ナビ『私達がそれぞれ独自の"心"を持っている事は紛れも無い事実ですわ』

ナビ『こころ…』

同僚ナビ『そうです。私達はそれぞれ固有の心を持つ存在』

同僚ナビ『それがある限り、私達は少なくとも"限りなく人に近い存在"と定義されても間違いではない…』

同僚ナビ『と、私は考えていますが』

同僚ナビ『如何ですか?』

ナビ『限りなく人に近い存在かぁ…』

同僚ナビ『あなたの気持ち…恐らくは恋心と言うのでしょう』

同僚ナビ『それが本当の意味で叶うかどうか、私には分かりかねます』

同僚ナビ『ですが、少なくともそういう気持ちを抱く事それ自体は』

同僚ナビ『誰にも否定されるべきではないと思いますよ?』ニコッ

ナビ『どーちゃん…』ウルウル

ナビ『じ、じゃあ…えぇんかな?』

ナビ『ウチは男ちゃんのこと好きでいてえぇんかなぁ??』

281 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 20:35:39.60 ID:FhOGslq50
同僚ナビ『そういう気持ちが芽生える事、それこそが』

同僚ナビ『私達に"心"がある何よりの証左でしょうからね』

ナビ『そ、そっかぁ…!』

ナビ『ウチ、男ちゃんのこと好きでいてえぇんや!』パァッ

同僚ナビ『…無責任な事は言えませんが』

同僚ナビ『友人として、あなたが幸福になれる未来が訪れる事を』

同僚ナビ『私は願っていますわ』ニコッ

ナビ『どーちゃぁぁん…ありがとぉ』ウルウル

282 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 20:37:23.47 ID:FhOGslq50
配車係「(…思わず息を潜めちゃったけど)」

配車係「(ナビちゃん達にまで"いないもの"扱いされる僕の存在って…)」ハァ

配車係「(でも…ナビシステムの"心")」

配車係「(それが、人間のものに限りなく近づいている)」

配車係「(陛下の懸念されている事って…この事なのか?)」
283 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 20:38:22.60 ID:FhOGslq50
-鍛治職人の里 広場-



ワーワー…ワイワイ…

親父「ここのガキ共はホントにタフだ」

親父「あんな事故があったのに、こうして元気に遊び回ってやがる」シュボッ…スゥゥ

女「子供達の笑顔を見るとホッとしますね」

親父「そうだな。同時に、何とかしてその笑顔を守ってやらなきゃと思う」

親父「…普通ってな、いいもんだ」スパァー

284 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 20:39:28.71 ID:FhOGslq50
女「…。」

親父「…。」

女「勇者の落涙という場所についての噂を聞きました」

女「20年前、その場所は先代勇者と魔王の戦闘によって土地が消失したそうですね」

親父「…。」

女「加えて、先日男くんとナビシステムの関係について、国王陛下から事務局へ進言がありました」

女「一介のドライバーに対して国王陛下が直々に、です」

女「陛下は間接的ではありますが、彼らの親和性が高まっていく事を危惧されているような口ぶりでした」

女「勇者の落涙と、その直後から始まったナビシステムの開発」

女「軍の解体と再編成」

女「陛下が危惧されている、人と魔法石の接近」

女「これらは全て関連しているように私は思うのです」

女「そしてそこには、何かが隠されているように思えてならないのです」

女「…その何かは、ひいては男くんの身に起こるかも知れない何かを示唆しているのではないか、と」

285 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 20:42:05.33 ID:FhOGslq50
親父「…。」グシグシ

親父「女は昔から知識欲が半端なかったよな」ニコ

女「…そうでしたか?」

親父「そうとも。他の子供が玩具やなんかを欲しがる中で」

親父「お前はいつも新しい本を欲しがった」

親父「今のお前を見てると、あん時沢山本を読ませてやれて本当に良かったと思うよ」

親父「その知識欲が今のお前を作ってるんだからな」ニカッ

女「感謝しています」ニコッ

親父「…。」シュボッ スゥ…

286 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 20:42:46.88 ID:FhOGslq50
親父「やらずに後悔するよりもやって後悔しろ!なんて言葉があるが」

親父「そうとも限らねぇと俺は思う」

親父「やってしまった事、それも取り返しのつかない事を…」

親父「そういう後悔はいつまで経っても消えやしねぇんだ」

親父「女ならそれが分かるだろう?」

親父「お前はあの時、男が閉じ込められた火事場に助けに入れなかった」

女「っ…。」

親父「お前はその事を悔やんでいるようだが、もしあの時お前がそこに飛び込んでいたら」

親父「お前は死んでたかも知れない」

女「…っでも!それは!」

親父「俺はお前を連れて逃げてくれた村の奴に今でも感謝してるよ」グシグシ

女「おじ様…」

287 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 20:46:12.31 ID:FhOGslq50
親父「…世の中な、知らねぇ方がいい事もあるんだ」

親父「まぁお前のことだ、俺が言わなくてもいずれ答えに辿り着いちまうんだろうが」

親父「今はまだその時じゃねぇよ」

女「おじ様!それはどういう」

親父「よく調べちゃいるが、まだピースが足りてねぇな」

親父「"もうすこしがんばりましょう"ってとこだ」ガハハ

女「…。」

親父「それにな、話の順序が違うのさ」

女「順序?」

親父「男の奴に伝えてくれ、たまには剣術の稽古に来やがれ!ってな」

親父「そろそろ、あのすっとぼけた顔に喝入れてやらなきゃならねぇ」ガハハ

288 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 20:48:49.12 ID:FhOGslq50
-夜 王都 酒場街-



ワイワイ…ガヤガヤ…



<乾杯っ!カチーンッ

同僚「ぷはーwうめーwww」

修道女「ふふっ。一仕事終えた後の一杯は」

同僚「それなwww最高wwww」ニカッ

修道女「いつものREQUIEMも素敵ですけど、こういう気取らないお店もいいですねー」キョロキョロ

同僚「だろwwwここのフィッシュフライがまた美味いんだぜwww」

同僚「ちょっと待ってろwww」ガタンッ



同僚「おまたせちゃんwwwほら冷めないうちに食べなwww」ドンッ

修道女「わ!いただきます!」ハフハフ

修道女「んー美味しいー!スイートチリソースがまた合いますねぇ!」

同僚「分かるよその表情wwwどれw俺もいただきますwww」パクッ

同僚「エールが進むこと進むことwww」ゴクゴク

289 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 20:50:04.60 ID:FhOGslq50
修道女「すごい場所だったんですね、勇者の落涙って」

同僚「すんごいわよホントww空間が無いってwwわけわかめwww」

修道女「でも、それ程の大きな爆発の渦中にいて」モグモグ

修道女「先代勇者様はどうなっちゃったんでしょうか?」

同僚「さすがに死んじまったんじゃねーのかwww?泣き疲れてwww」

修道女「またすぐ茶化すんだから…」

同僚「そもそもよwwいくら勇者とは言え空間を消し飛ばす程のエネルギーをぶちかますなんて可能なわけww?」パクッ

修道女「んーさすがに独力では不可能でしょうねー」

290 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 20:50:43.57 ID:FhOGslq50
修道女「何か大きなエネルギー源…例えば巨大な魔法石とか」

修道女「そういった何かと勇者様の力が反応して、爆発を起こした…」

修道女「そう考えるのが自然ですね…ラス1もーらい」ヒョイ パクッ

同僚「あっww」

修道女「んーおいひー」もぐもぐ

同僚「ちょw慈愛の心はどこ行ったww」

修道女「美味しいものは別ですー」ニシシ

291 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 20:52:08.77 ID:FhOGslq50
同僚「…ん?でもそうすると」グビ

修道女「何ですか?」ゴク

同僚「いやwその魔法石との反応が偶発的なモンだったとしたらよww?」

同僚「それって事故だよな?」

修道女「…!そうかも知れませんね」

同僚「魔王に本気と書いてマジの一撃を叩き込もうとしたらw」

同僚「偶然ビッグな魔法石と反応しちゃってドカーーンwwwて事だろww?」

同僚「先代勇者まじ不憫wwww」

修道女「今の仮説が正しいとしたら、王国はその事実を隠してるってことになりますよね?」

修道女「もしそうなら、冗談抜きで勇者様が不憫過ぎます…」

同僚「そしてその爆発に巻き込まれた奴らもな…」ギリッ

292 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 20:52:50.50 ID:FhOGslq50
<ありやしたー!

ガラガラッ

同僚「ふぁーww美味かったww」

修道女「またいいお店教えてもらっちゃったー」フフッ

同僚「そういやお前さいきん飲んでもとっ散らからないのねwww」

修道女「私も少しずつ大人になってるって事ですよー!」ニコニコ

同僚「何よりですwww」

修道女「あ!ちょっと同僚さん!」ササッ

同僚「ちょw何ぞww」コソコソ

293 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 20:54:40.05 ID:FhOGslq50
<やだもーウフフ

<ん…チュッ…


修道女「ま、街中でちゅっちゅしてますよー!」コソコソ

同僚「おやまぁお盛んなww」コソコソ

修道女「も、もしかして…」コソコソ

同僚「んww?」

修道女「ど、同僚さんもああいう事をその…あの…ご所望かな…なんt同僚「はい終了ww良い子は寝る時間よーっとwww」グイッ

修道女「あ!ちょっと!」

同僚「お子ちゃまには刺激が強いんじゃwww」グイグイ

修道女「そうやって子供扱いしてー!歳なんて大して変わんないじゃないですか!」ジタバタ

同僚「更に盗み見なんて趣味まで悪いwwwお天道様が見てますよwww」グイグイ

修道女「うぐ、それを言われると確かに…」


294 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 20:55:57.65 ID:FhOGslq50
同僚「分かったなら良しwwんじゃ2軒目行くべwww」

同僚「とっ散らからないって約束出来るひとーww」

修道女「はーい!」シュタッ

同僚「よーしww」

修道女「れっこらごー!」ウキウキ



同僚「…。」フゥ

295 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 20:57:38.97 ID:FhOGslq50
-西の街 第1倉庫-



ゴゥンゴゥン…

ナビ『積み込み終わったでー♪』

男「あぁ。さて次は…と、」

男「あれ、どこ行くんだっけ?」

ナビ『えー?今積んだB級品の武器防具を里の仮設工房へ持ってくんやろ?』

ナビ『もう頼むわぁ』ケラケラ

男「あーそうだった」

男「里の炉が治るまでの仮の施設を西の街の外れに作ったんだったな」

ナビ『そーゆー事!まぁここから1時間ちょっとやからすぐ着くけど』

男「了解。それなら早速行こう」

ナビ『はいなぁ♪ほな行きまっせー!』

ブォン!ブロロロ…

296 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 20:58:34.84 ID:FhOGslq50
-道中-


ブロロロ…

男「ん?あれ」ゴソゴソ

ナビ『どないしたん?』

男「いや預かり伝票どうしたかなって」ゴソゴソ

ナビ『バイザーんとこは?男ちゃんいつもそこ挟むやん』

男「あ、あった」

男「わるいわるい」ハハ

ナビ『あんなぁ…』ハァ

ブロロロ…

297 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 20:59:22.16 ID:FhOGslq50
-深夜 物流倉庫事務所-



配車係「男さんがボケた?」

魔法石(ナビ)『せやねん。疲れてるのかも知らんけど』ハァ

配車係「それは単に忘れっぽいとかって事じゃなくて、ですか?」

魔法石(ナビ)『んーそれもあんねん。けど、えっそれ忘れる!?みたいな事とか』

配車係「例えばどんな事でしょう?」

魔法石(ナビ)『この前なんて先輩さんの名前が出てこんくて10秒位フリーズしてもうて』

配車係「最近出番少ないですからね…」

298 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 21:01:29.96 ID:FhOGslq50
魔法石(ナビ)『何わけ分からん事言うてんの…でもさーそんなん忘れる?』

配車係「そうですねー。あ、これは重要な事なのですが」

魔法石(ナビ)『なにー?』

配車係「男さんが忘れてしまっている事…例えば人の名前とか」

配車係「ナビちゃんはしっかり覚えている事なのですね?」

魔法石(ナビ)『もちろん。むしろ男ちゃんの事やのになんでウチが教えてあげなアカンねん!みたいな事もあるわ』

魔法石(ナビ)『ウチはオカンちゃうねんで!って』

配車係「母でもなければ嫁でもないぞ、と」

魔法石(ナビ)『よ、嫁かぁ…』テレテレ

配車係「おーいナビちゃーん」フリフリ

魔法石(ナビ)『!』ハッ

配車係「全く可愛いんだから…」クスクス

299 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 21:02:07.94 ID:FhOGslq50
配車係「でも確かに気になりますね、ドライバーの体調管理も僕の仕事ですし」

配車係「僕の方からも少し聞いてみます」

魔法石(ナビ)『ホンマに?頼むわー!』

魔法石(ナビ)『ありがとな、配車係さんっ♪』ニコッ

配車係「(うっ…可愛い)」

配車係「(…僕もナビシステム欲しいな)」ハァ

300 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 21:03:00.07 ID:FhOGslq50
-翌日 物流倉庫事務所-



先輩「男の物忘れ?」

配車係「はい。なんでも親しい人の名前まで出てこなくなるようで…先輩さんとか」

先輩「マジか」

同僚「最近出番少なかったからなwww」ケラケラ

ゴチンッ

同僚「いってぇwww脳天直撃セ◯サターンwwww」

先輩「全くお前は」ハァ

先輩「しかしそれはちょっと心配だな」

配車係「僕から本人には聞いてみようと思ってるんですが」

同僚「まぁアイツ元々ちょっと抜けてるとこあったっすけどねwww」

301 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 21:03:46.73 ID:FhOGslq50
先輩「そうか?俺には割としっかりしてるように見えてたが」

同僚「だってアイツ、ナビシステムが自分の心を写し取ったモンだって事も覚えてなかったじゃないすかww

同僚「ほら酒場で話した時www」

先輩「あぁ再リンクの直前か、覚えてるぞ」

配車係「ナビシステムのインストールによる記憶障害は一時的なもので、だいたい半日もすれば回復するのが一般的なんです」

先輩「え、そうなのか?」

302 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 21:04:23.97 ID:FhOGslq50
同僚「ですねwww俺もインストール直後は若干ありましたけどw次の日には治ってましたわwww」

先輩「じゃあ男の場合は元々そういう傾向があって、再リンク以降その症状が進んだって事か?」

配車係「かも知れません。ただ、ナビちゃんの方にはその記憶情報がしっかり残ってたりもしてるみたいで」

同僚「ナビちゃんにツッコまれながらもどうにかやってるわけかwww熟年夫婦かよwww」ケラケラ

先輩「むぅ….女にも話を聞いてみるか」

303 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 21:06:28.79 ID:FhOGslq50
先輩「ってかお前、事務所にいるなんて珍しいじゃないか」

配車係「今日は同僚さんは内勤です」

同僚「報告書の作成wwwほらこの前新規事業のアレで飛んでった時のww」カキカキ

先輩「やっぱそういうの出さなきゃなんだな」

同僚「マジちょーめんどくせーっすwww大体地図の作成とか運送屋の仕事なんすかww?」カキカキ

先輩「抜擢された時はノリノリだったくせによく言うぜ」クスクス



304 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 21:07:21.03 ID:FhOGslq50
配車係「物流協会(うち)は国営組織ですからねー、一応公務員みたいな扱いになるので」

先輩「単に運送業だけでなく、物流に関わるあらゆる仕事をするって訳だ」

同僚「まぁ色々やる事あんのは面白いからいいんすけどねww事務仕事は苦手だwww」

配車係「日がな一日事務所に缶詰め…日頃の僕の苦労が分かるでしょう」クックック

先輩「お前ちょっとこえーよ…」

305 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 21:08:07.37 ID:FhOGslq50
-鍛治職人の里-


カンッ!カカンッ!ダダッ…!

男「うるぁっ!」ブンッッ

親父「ほい」カカンッ

親父「ほらよっ」ズバッ!

男「っく…!ぐぬぬ…」ガキンッ…ギリリッ

親父「ふっ。そんなモンかよっ」ギリリッ…バシッ!!

男「のわっ」ヨロケ

親父「そい」ビシィッ

ピタッ…シィィィン

男「…くっ。参った」タラーッ

306 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 21:08:40.97 ID:FhOGslq50
親父「いやぁー俺もまだまだイケてるじゃねぇか」ガハハ

男「ガキの頃から比べれば腕も上がったと思ってたが…まだ親父には勝てないか」

親父「確かに、実戦で鍛えてる分動きは良くなってるぞ」シュボッ スゥゥ…

親父「ただ太刀筋に迷いがあるな」スパァァ

男「迷いか…」

親父「ほれ」スッ

男「ありがと」シュボッ スゥゥ



スパァァ…モクモク

307 : ◆DTukN/b1n. [saga]:2018/04/29(日) 21:09:12.23 ID:FhOGslq50
親父「太刀筋の迷いは心の迷い」

親父「そこらのオーク位ならともかく、強い奴と対峙する時にそんなんじゃ」

親父「お前、死ぬぞ」

男「まぁ俺は運送屋だからな、そんなにヤバい魔物と遭遇する事はないだろうけど」ハハッ

親父「んなん分かるモンかよ、戦争中なんだぞ」

男「…そうだな」

親父「この前、女が来てな」

親父「お前の事えらく心配してたぞ」

男「女が?ナビとの再リンクも上手くいったし今更何を…」

親父「さぁな。お姉ちゃんはいつまで経っても弟の事が気掛かりなモンだ」ハハッ

308 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 21:11:06.24 ID:FhOGslq50
親父「聞いたぞ、再リンクの事」

親父「全部思い出したんだろ?」

男「あぁ、北西の村での事からな」

親父「…そうか」

男「親父、ほんとうn親父「あーそういうのいい!パス!」

男「パスって…」クス

親父「俺はお前と女の父親だ。以上!」

男「…うん」フフッ

309 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 21:11:42.64 ID:FhOGslq50
男「ちょっと聞きたいんだけど」

親父「んー?」

男「涙の欠片って知ってるか?」

親父「…どこで聞いた?」

男「この前、運行で水の街って所へ行ったんだけど」

男「そこで聞いたんだよ、先代勇者と魔王が戦った時の話に出てきて」

親父「水の街…運河の島か」

男「そうそう!その街に流れ弾が飛んで来たのもちょうど20年前だって言うから」

男「ちょっと気になってさ、大した話じゃないんだけど」

親父「…。」

310 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 21:13:15.21 ID:FhOGslq50
-同刻 物流倉庫事務所-




ナビ『(男ちゃんの長い睫毛)』

ナビ『(華奢な指先…ハンドルを握っとぉ時の腕の筋肉)』

ナビ『(はねた癖っ毛…優しい声)』

ナビ『(…はぅ)』キュン

同僚ナビ『…完全にやられてますわね』

ナビ『…茶色がかった深緑色の瞳』

同僚ナビ『ついに声に出し始めましたわ』

ナビ『笑うと見える八重歯…!』

同僚ナビ『…そのうち"おぉロミオ!"とか言い出しそうな勢いですわね』

ナビ『…なんか、聞こえる』

同僚ナビ『へ?』

311 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 21:14:30.07 ID:FhOGslq50
オォォォ…アァァァァ…



同僚ナビ『ほんとですわ…何ですの?この呻き声みたいな響きは』ゾクゾク

ナビ『遠くの方から…なんや苦しそうやなぁ…』

配車係「〜♪」カキカキ

同僚ナビ『生身の人間には聞こえていないようですわね…』ゾクゾク

ナビ『ってか、いたんやな配車係さん』



オォォォ…アァァァァ…



同僚ナビ『気味が悪いですわ』

ナビ『うん。でもなんか可哀想…』

312 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 21:15:13.10 ID:FhOGslq50
オォォォ…アァァァァ…



うぉぉぉぉぉぉ!!!!



ナビ『!』ビクッ

同僚ナビ『!』ビクビクッ

同僚ナビ『こ、今度は何ですの!?』

ナビ『さっきのとは違う…今のは…近いで』


グラ…グラグラ…

…ドカァァン!!!!

313 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 21:17:38.13 ID:FhOGslq50
- 同刻 物流協会事務局 大会議室-



同僚「というわけでwwww」

修道女「早速次なる場所へ向かいましょう!」バサァッ

同僚「次は〜ここwww」トントン

修道女「独自の文化を持つ極東地域…」

同僚「その中でも一際トンがった国らしいぜwwwなんでも卵を生で食うらしいwww」

修道女「げげ!マジですか!?」

同僚「更にww悪い事をした奴は自分で腹切って死ぬらしいwww」

修道女「どういう状況なんですかそれ…」

314 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 21:18:29.54 ID:FhOGslq50
同僚「まぁそんなもんは序の口らしいけどなww何しろ情報があんまりないwww」

修道女「だからこそ調査が必要、って事ですもんね」

同僚「そーゆー事www今回はお前も一緒に行くぞwww」

修道女「はい!この日の為にばっちり準備してきましたから」グッ

同僚「準備?あぁ装備とか食糧とかって事ねwww」

修道女「(し、勝負パンツとか…)」

修道女「(なんて言えねーです!)」カァァッ

同僚「ほいじゃまー行きますかwww」

修道女「はい!詠唱始めます」スゥ

315 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 21:19:26.60 ID:FhOGslq50
[風の息吹よ 大地の鼓動よ]パァァァァ…

[数多の空を駆け巡りし 勇壮なる汝の名において…]



グラグラ…グラ…グラグラ



同僚「ん?地震かwww?」



グラグラ…ガガァンッ!!!!



同僚「!!」ヨロッ

修道女「!!…っく」パァァァァ

同僚「おいおいなんかヤバそうだぞこれ」グラグラ…

316 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 21:20:17.99 ID:FhOGslq50
ピピーッ!ピピーッ!

<緊急警報 建物内にいる職員は直ちに所定のシェルターへ避難して下さい

<繰り返します 緊急警報…

同僚「緊急警報!?な、何だってんだ!!」


ガガァン!!ドカァァン!!


同僚「うおっ!!お、おい!なんかヤバそうだぞ!!」アセアセ

修道女「…っ」フルフル

パァァァァ…

同僚「今更詠唱は止められねぇか…」

同僚「しゃーねぇ!俺も男だ!」ダキッ

修道女「!!」カァァッ

[無限に翔ける翼の力で 我らを導き給え]

修道女「て、転移します!」

同僚「いっけぇぇぇマ◯ナムぅぅぅ!!!」



バヒューーーーーン

317 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/29(日) 21:21:20.78 ID:FhOGslq50
今日はここまでにします
ありがとうございました
318 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 10:54:27.48 ID:9QidveBa0
投下します
319 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 10:54:54.75 ID:9QidveBa0
-同刻 王都 市街地-




ガラガラッ…モクモク…

陸軍警備隊長「くそったれ!奴ら王都に直接攻撃を仕掛けて来やがった!!」

隊員「そこら中に攻撃の痕が…しかし、魔族の姿が見当たりませんね」キョロキョロ

隊長「逃げ足の速い奴らめ!とにかく人命最優先だ!!」

隊長「第1から第3部隊までは救援活動に当たれ!!」

隊長「第4部隊は索敵!!俺について来い!!」

隊員「了解!!ぬぁぁ魔族の野郎どもー!!」

バタンッ ブォン!…ブロロロ…

320 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 10:56:33.31 ID:9QidveBa0
-同刻 物流協会事務局-



事務局長「被害の状況は!?」

事務局高官「物流倉庫への被弾が2箇所、預り荷への被害はいずれも軽微です」

事務局高官「職員達への人的被害も今の所ありません」

局長「そうか…」ホッ

女「ただ…」

局長「女くんどうした?」

女「ちょうど攻撃の最中に、同僚くんと修道女さんが転移魔法を使用しました」

局長「マッピングシステムか」

女「はい。もし仮に、魔族からの攻撃が高い魔力を用いた詠唱だった場合…」

局長「修道女さんの転移魔法と干渉し、転移の到達点にズレが生じる可能性がある…」

局長「そういう事だね?」

女「仰る通りです」コクッ

局長「マズいな…」

321 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 10:57:25.83 ID:9QidveBa0
-同刻 王宮 陸軍警備部 監視室-


ウゥー!ウゥー!

警備部長「どこから攻撃されたか分からないだと!?」

職員「はっ。今調べておりますが、王国全域にある120の警備用の魔法石…」カタカタ

職員「そのどこにも魔族の出現は感知されておりません!」カタカタ

警備部長「人間のする事だ、如何に万全な警備体制を敷いた所でそれらが破られる事はある…が」

職員「残念ながら。しかし、そもそも魔族の出現すら発見できないなどという事は…」

警備部長「理論上有り得ない、か」

警備部長「どうなってやがる…まさか王国内部に…?」

322 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 10:58:16.75 ID:9QidveBa0
-同刻 鍛治職人の里-



<ドォォォン…!ドカァァン…!



親父「!」

男「!」



…モクモク



親父「…あっちは王都じゃねぇか」

男「ま、まさか!王都へ魔族の攻撃が!?」ダダッ

親父「っ!おい!待て!」ガシッ

男「こうしちゃいられない!協会や王都のみんなが…!」

親父「落ち着けって言ってんだよ!!!」クワッ

男「…っく」キィィン…

親父「ここから王都までどんなに急いだって2時間は掛かる、ドライバーやってりゃ分かんだろ!」

親父「王都には陸軍の奴らが常駐してるんだ、最悪の事態なんざそうそう起こねぇよ!」

男「で、でも…!」

親父「だから落ち着けって…!行くなとは言ってねぇ」

親父「ちょっと来い」スタスタ

男「…?」スタスタ

323 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 10:58:55.52 ID:9QidveBa0
-親父の家-


親父「里の炉があんなんなっちまう直前にな」ゴソゴソ

親父「ずーっと手を入れてた剣がようやく完成したんだよ…っと」ゴソゴソ

男「剣…?」

親父「あったあった」ガサッ

スチャ…キランッ

親父「持ってけ」スッ

男「親父…これって」スチャ

親父「俺が昔使ってた剣だ」

親父「お前の体格や剣技に合わせて仕立て直してある」

男「今使ってるのより少し短い…そしてすごく軽い」ブンッ

親父「お前の手に馴染むハズだぜ?何せ俺が育てたんだからよ」

親父「剣も、剣士もな」ニカッ

324 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 10:59:41.53 ID:9QidveBa0
男「ん?この柄の丸い凹みは…」

親父「いいか男」ズイッ

親父「迷いに克つんだ」

親父「剣に限らず、最後は腹括った奴が生き残る」

親父「勝とうとなんざ思うな」

親父「とにかく生き残れ」

親父「人間、生きててナンボだ」ニカッ

男「親父…分かったよ」

親父「気ぃつけて行ってこい」

親父「そして必ず無事で帰って来い」

親父「お前達の居場所はここにある」

男「あぁ…ありがとな」ニコ

325 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:00:50.69 ID:9QidveBa0
-???-



…ヒュゥゥン…バシュッ!

ドサドサッ!!

同僚「のわっ!いってぇwww」

修道女「ち、着地失敗です…あ」

ぽよーん

修道女「あ、あの同僚さん…手をどけて頂けますか…///」

同僚「む、これは失敬wwまさにこれこそラッ◯ースケベwww」サッ

修道女「もう!むしろスケベの方を伏せて下さい!」

同僚「とりあえず手の残り香をばww」クンカクンカ

修道女「へ、変態!!」バシバシ

326 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/04/30(月) 11:01:29.13 ID:9QidveBa0
シィィィン…

同僚「…どこだここww?」

修道女「真っ暗で何も見えませんね、広い空間だという事は分かりますけど」

同僚「段々目が慣れてきたなw」

同僚「ん?あのデカいまん丸いのは何ぞww?」

修道女「岩、ですかね?それにしては…ま、まさか魔法石とか!?」

同僚「いやいやいやwww魔法石にしちゃデカ過ぎでしょwwww」

同僚「ア◯ファード位あんぞwww」

修道女「ですよね、こんな巨大な魔法石なんて聞いた事が」



バババッ

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