剣と魔法と運送業

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27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/26(木) 11:52:47.37 ID:5X7jDa2TO
-07:20 物流協会港湾倉庫-



ナビ『とうちゃーく!』

男「漁師さんの言う通り近かったな」

港湾職員「おはようございます」

港湾職員「港から海産物の搬入ですね?」

男「はい、これが積み込み票です」

港湾職員「それでは3番のヤードに接車して下さい」

港湾職員「降ろしはこちらでやりますので」

男「よろしくお願いします」

男「降ろしてもらってる間魔法石(キー)抜いちゃっても大丈夫ですか?」

港湾職員「構いませんよ」

港湾職員「敷地内にカフェテリアがありますのでお食事や休憩に使って下さい」

ナビ『なーなー職員さん?』ヒョコ

ナビ『そこって海見えるん??』

港湾職員「もちろん、海っぺりですからね」

港湾職員「まぁ港なので砂浜とかはありませんけど」

ナビ『っしゃぁー!!』グッ

港湾職員「ふふっ。可愛らしいナビさんですね」

男「変わった奴でして…」タハハ

男「それじゃカーゴ付けますね、よろしくお願いします」

港湾職員「了解です」無線ピピッ

(ザザッ…3番に4tカーゴ付けます…はい、港からの海産物です…)
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/26(木) 11:59:28.57 ID:5X7jDa2TO
-08:00 港湾倉庫 カフェテリア-



男「それじゃ朝食にするか」

男「しかし朝定食でアクアパッツァが出てくるとは…」

魔法石(ナビ)『わぁー海キラッキラしとぉー!』パァ

魔法石(ナビ)『あっ見てみて!船がおるよ!』キャッキャ

男「楽しそうで何よりだ」モグモグ

魔法石(ナビ)『う◯ぃーはひろいぃーなおぉー◯ぃーなぁー♪』ユラユラ

男「自分で揺れる分には酔わないんだな」カチャカチャ

魔法石(ナビ)『なぁー男ちゃん?あの海の向こうには何があるん??』ユラユラ

男「隣国だな。絹織物が名産で、王国で流通している製品の殆どが隣国産なんだぞ」ズズッ

魔法石(ナビ)『そっかー!』ユラユラ
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/26(木) 12:00:05.99 ID:5X7jDa2TO
魔法石(ナビ)『ん?ほいじゃもしかして、その絹織物なんかの物流も…』ピタッ

男「その通り、協会(うち)の仕事だ」フキフキ

男「今はカーゴがそのまま乗り込める大型のシップがあるからな、海を跨いでの運行もいずれ回ってくるかも知れない」

魔法石(ナビ)『ほんまに!?』ピョンッ

男「おい跳ねるな割れちゃうだろ」

魔法石(ナビ)『えぇなー船旅!はよ回ってきぃひんかなー♪』ピョンピョンッ

男「楽しみだな」

魔法石(ナビ)『楽しみ楽しみ♪』ユラユラ
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/26(木) 12:00:53.38 ID:5X7jDa2TO
ピピッピピッ

男「お、事務所からだ」

男「お疲れ様です男です」

配車係「お疲れ様です。運行は問題ありませんか?」

男「はい。今港湾倉庫で荷降ろししてもらっているところです」

配車係「順調なようですね」

男「今日は帰り荷はないんですか?」

配車係「それなんですが…」

配車係「実は乗せてきてもらいたい人がいまして」

男「人?協会の職員か何かですか?」

配車係「そうです。こちらの事務局の人間なのですが」

配車係「ちょうど今港湾倉庫に出張っていまして」

男「ここに?それならちょうどいいですね」

配車係「こちらから男さんのカーゴで帰路につくよう連絡しておきますので」

男「了解です」

配車係「それではお気を付けて」

配車係「くれぐれも!安全運転で!お願いしますよ!?」

男「分かりました…」ゲンナリ
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/26(木) 12:02:57.63 ID:5X7jDa2TO
男「聞こえたか?」

ナビ『同乗者やろ?おっけー♪』

ナビ『旅は道連れ世は情けや!』ニコニコ

男「これからその人を乗せて物流倉庫へ戻るぞ」

ナビ『らーじゃー♪』

ナビ『どんな人なんやろー?』ウキウキ

男「そういえば名前聞いてないな」

ナビ『おっちゃんみたいなおもろい人やったらえぇなー♪』ウキウキ
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/26(木) 12:32:32.56 ID:5X7jDa2TO
-09:00 港湾倉庫-


ゴゥンゴウン…

男「と、いうわけで同乗者だ」

ナビ『…。』

男「こちら女。協会の事務局に所属していて」

男「血は繋がってないが、俺の姉貴だ」

女「はじめましてナビちゃん」ニコッ

ナビ『車両状態よーし。魔法石充填問題なーし。おーるぐりーんやでー。』ムスッ

男「おいどうしたんだよ、さっきまであんなに元気だったじゃないか」

ナビ『べっつにー。帰り荷も積んだんやしちゃっちゃと帰ろーや。』ムスーッ

男「帰り荷って…女は荷物じゃないぞ」

女「いいのよ男くん、私の方は準備出来てるから」

女「いつでも出発してくれて構わないわ」

男「すまない、とりあえず出発しよう」

男「ナビ、帰りも頼むぞ」

ナビ『あいあいさー。ほないくでー。』ムッスー

ブロロロ…
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/26(木) 12:36:41.32 ID:5X7jDa2TO
-09:30 海沿いの街道-


ブロロロ…

男「…。」

女「…。」

ナビ『…。』

女「…静かね」

男「突然どうしたんだ」

男「いつもはうるさい位にマシンガントークなのに」

ナビ『聞こえてんでー!誰がうるさいねん!』イライラ

男「いやそういう意味じゃないぞ?」

ナビ『そんなにウチが邪魔なんやったらえーわ!』フンッ

ナビ『回線オフっといたるからお二人で仲よぉー過ごしたえぇやん!』

ナビ『ほなごゆっくりー!』プチッ
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/26(木) 12:37:32.57 ID:5X7jDa2TO
男「おい勝手に回線切る!…な…遅かったか」

男「全く何なんだ…」フーッ

女「ふふっ。モテる男はツラいわね」

男「茶化すなよ…今日はこんなんだけど」

男「いつもはほんとにいい奴なんだぞ?」

女「そりゃそうでしょうね」

女「男くんの精霊ナビなんだから」

男「?そりゃどういう」

女「…それにしても本当に久しぶりね」

女「入社時の研修以来かしら」

男「そうなるともう3年も経つのか!」

男「あの時は大変だったなー」

女「そうね」クスッ

男「荷物を運ぶだけの気楽な商売かと思いきや」

男「まさか戦闘実習があるとは」
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/26(木) 12:38:44.47 ID:5X7jDa2TO
男「物流協会の前身が陸軍だったとはいえ…」

男「まさか剣を取る事になるとは」

女「ふふっ。事務局では魔法詠唱の実習もあるのよ?」

男「そうなのか?じゃあ女も魔法を?」

女「基礎的なものだけね。例えば」

[光よ 世界を照らす恵の粒よ]

ポワァ…

男「手の中に光が!凄いじゃないか!」

女「喜んでもらえて光栄だわ」ニコッ

男「なんだかこうして話してると小さい頃の事を思い出すなー」

男「毎日一緒だったもんな」

女「…そうね」


ブロロロ…
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/26(木) 12:44:51.35 ID:5X7jDa2TO
-14:00 王都東門-


ブロロロ…キキッ

女「運転お疲れ様。私はここで降りるわね」

男「あぁ、久しぶりに話せて楽しかったよ」

女「私もよ。ナビちゃんもお疲れ様」

女「邪魔してしまって悪かったわね」

ナビ『』オフラインデス

男「気にしないでくれ、あとでフォローしとく」

女「…彼女のこと、くれぐれもよろしくね?」

男「?まぁ、分かった」

女「それじゃ」バタンッ

男「お疲れ様」フリフリ
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/26(木) 12:45:58.21 ID:5X7jDa2TO
ナビ『』回線ヲ接続シマス…ブゥン

ナビ『…ごめん…。』シュン

男「お帰り」ニコッ

男「珍しいじゃないか、お前があんなに感情むき出しにするなんて」

男「何があったか話してくれるか?」

ナビ『うぅ…自分でもよぉ分からへんねん…』イジイジ

ナビ『あんな?あんな??』グズグズ

ナビ『男ちゃんとあの女さんって人の間に流れとぉ空気って独特やんか?』

ナビ『でな?あーこれウチ入っていかれへん奴や、ウチお邪魔虫やって思ったら…』ウルウル

男「そんな風に思ってたのか…」

ナビ『なぁウチをひとりぼっちにせんといて!?ウチには男ちゃんしかおれへんねん!』ウルウル

ナビ『ウチは実体のない精霊やからぁ!』

ナビ『もし男ちゃんが望んでもエッチな事とかしてあげられへんけどぉ!』シクシク

男「急に何を言い出すんだよ…」

ナビ『でも男ちゃんと一緒にいたいねん!』

ナビ『お仕事も頑張るからぁ!!』ブワッ

ナビ『お願い…一人は嫌やぁぁ…!!』ビエーン

男「ナビ…」
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/26(木) 12:48:09.92 ID:5X7jDa2TO
男「お前は俺の相棒だ」

男「いつも助けてくれて感謝してるし、これからも一緒にやっていきたいと思ってる」

ナビ『ぅん…ぅん』ヒックヒック

男「女とは血は繋がってないが家族だ」

男「それ以外何もないよ」

ナビ『ホンマに…?』ヒック

男「お前が心配するような事はないよ」

ナビ『ちゃうて…あったってえぇねん…』フルフル

ナビ『っていうかウチが口出しする事ちゃうって頭では分かってんねん…』

ナビ『けど…』ウルウル

男「とにかくお前を置いてどっかへ行っちまうなんて事はないよ」

男「そこは安心してくれ」

男「だからこれからもよろしく、な?」ポンポン

ナビ『えへ…触れられへんけど嬉しいなぁそれ』

ナビ『あったかいわぁ…』

男「ふふっ。落ち着いたか?」

ナビ『……うん、もう大丈夫やで♪』ニコッ

ナビ『困らせてごめんな?』ペコ

男「いいんだよ」ニコッ

男「よし!それじゃ仕事締めちまいますか」

ナビ『がってん承知!やで♪』ニカッ


ブロロロ…
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/26(木) 12:50:03.97 ID:5X7jDa2TO
-20年前 王国北西の村-



カンカン!カンカン!

ゴォォォォ…!!



<火事や!誰か水ー!!

<くそっ!火の勢いが治まらへん!!

<おい消防団はまだなんか!?

<俺の…俺の家がぁー!!



幼児「おとん!おかん!なんでや…!」オロオロ

村人「おいチビ!こんなとこにおったら焼け死ぬで!!」ダキッ

幼児「みんなー!!」ジタバタ

村人「まさか…まだ家の中に…!!」

村人「とにかくお前は逃げろ!今安全な所へ連れてくでな!!」ダッ

幼児「いややー!おとん!おかん!!」ジタバタ

幼児「うわぁぁー!!!!」

ブワァァァァ…!!



幼児「…ぉ…」ポロポロ
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/26(木) 12:52:27.77 ID:5X7jDa2TO
-3日後 王立物流倉庫-

-18:00-


ブロロロ…

男「という訳で早速現実になった」

ナビ『海やぁー!!お船に乗って隣国やぁー!!』ドンドンパフパフ

男「これからこの間の港湾倉庫で海産物を積んで、そのままシップに乗り込む」

ナビ『ほうほう』

男「隣国の倉庫で海産物を降ろしたら、名産品の絹織物を扱う別の倉庫へ向かう」

ナビ『ふむふむ』

男「そこで帰り荷を積んだら元来た道程を辿って王立倉庫へ戻ってくる、と」

ナビ『了解ちゃーん♪時間出そか?』

男「頼む」

ナビ『んーと?今18:00やんな?』ピコッ

ナビ『あーしてこーして…えっ物流倉庫(ここ)帰ってくんの明日の24:00!?』ガビーン
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/26(木) 12:53:50.39 ID:5X7jDa2TO
男「確かに長旅だなー」

男「とは言え、シップに乗ってる間は俺もお前もやる事がないから」

ナビ『あ、そっか』

男「拘束時間の割には負担は少ないと思うぞ」

ナビ『まぁ一応魔法石の充填は見とくわー』

ナビ『あ!男ちゃん協会員証(パス)持った?』

男「あ、いけね」

ナビ『頼むわ!それがないと入国でけへんやろ!』プンスカ

男「なんてな。実はちゃんと持ってる」ピラッ

ナビ『』スッ

[魔法石過給装置作動シテイマス…]

男「わーやめろやめろ!からかって悪かったって!」アセ

ナビ『ほんまにこの人は…』ハァ

ナビ『まぁえぇわ!準備おっけーばっちぐーって事で!』

ナビ『ほな出発すんでぇ♪』

男「今日もよろしく頼むぞ」

ナビ『はいなぁ♪』

ブロロロ…
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/26(木) 12:56:42.58 ID:5X7jDa2TO
-23:15 港湾倉庫 積み込みヤード-


ゴゥンゴウン…

ナビ『魚がかっちかちや』

男「ここの冷凍庫で凍らせてから、俺達の保冷カーゴに乗せて運ぶってわけだ」

ナビ『ぞっくぞk男「それ以上はいけない」

港湾職員「こんばんは」

男「あ、お疲れ様です」

男「隣国行きの海産物を積みに来ました」

港湾職員「準備出来てますよ」

港湾職員「それでは早速積み込みしましょうか」

男「よろしくお願いします」

ナビ『ウイングおーぷん♪』ピッ!シュイィィン…
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/26(木) 12:57:44.61 ID:5X7jDa2TO
-15分後-

ナビ『保冷装置作動よーし!』

男「おーさぶ。長旅だからな、大丈夫だとは思うが一応荷締めを確認しとくか」ガチャガチャ

男「シップは0:00に出航するから、このまま乗り込んじゃおうか」

ナビ『おっけー!お船っお船っ♪』ルンルンッ

港湾職員「それではこちらが伝票です。シップの乗り込み口で見せて下さい」ピラッ

港湾職員「道中お気をつけて」

男「ありがとうございます」ペコッ

ナビ『ほな行くでー!』

ブォン!ブロロロ…
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/26(木) 13:10:03.55 ID:5X7jDa2TO
-00:30 海上 シップ甲板-



ザァァァン…ァァァン…



魔法石(ナビ)『…ほぇー…。』ウットリ

男「海上は遮るものがないからな」シュポッ

魔法石(ナビ)『星がこんなに沢山見えるなんて…』

魔法石(ナビ)『ダイヤモンドぶちまけたみたいや』

魔法石(ナビ)『…。』

男「…。」





ザザァァァン…ァァァン…
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/26(木) 13:11:06.74 ID:5X7jDa2TO
魔法石(ナビ)『…なんか。』

魔法石(ナビ)『昼間の海はテンションめっちゃ上がるけど』

魔法石(ナビ)『夜はなんやこう…黙ってまうな』シミジミ

男「これはこれでいいよな」グビ

ナビ(魔法石)『あれ、男ちゃん何飲んでるん?』

男「修道院特製エールだよ」

魔法石(ナビ)『あー!仕事中にー!』

男「固い事言うなよ、運転してるわけじゃなし」フフッ

魔法石(ナビ)『…配車係さんには黙っといたるわ』フフッ

男「しかしいい眺めだ」

男「まさに天の光は全て星といったところか」グビ

魔法石(ナビ)『お酒飲みながらそれはアカンやつやて…』

ナビ(魔法石)『でもこの星空の下でってのが堪らんねやろなぁ♪』

魔法石(ナビ)『えぇなーウチも飲んでみたいなぁ』ユラユラ

男「酔ってみたいなら、ほれ」コロコロ

ナビ(魔法石)『いやぁぁ魔法石コロコロせんといて!酔う!酔うの意味が違う!!』コロコロ

ワイワイ…
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/26(木) 13:12:36.83 ID:5X7jDa2TO
-02:00 カーゴ寝台-


ゴゥンゴゥン…

男「zzz」

ナビ『男ちゃん寝よったか』

ナビ『ぷっ寝顔ぶっさいくやなー』ケラケラ

ナビ『…でもその顔安心するわぁ』ニコニコ

ナビ『いつも頑張ってるんやから、のんびり休んでな?』

ナビ『今日もおつかれさま。明日もよろしゅう♪』

チュッ…

ナビ『触られへんけど、気分だけ。な』

ナビ『おやすみっ♪』

47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/26(木) 13:36:29.81 ID:5X7jDa2TO
-08:00 隣国港-



ナビ『着いたー!!』

男「んー良く寝た…」ノビーッ

男「さて、降ろし場は港のすぐ隣の倉庫みたいだから」

男「さっそく降ろしますか」

ナビ『あいあぃさー♪』

ブォン!ブロロロ…
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [aaga]:2018/04/26(木) 13:37:17.72 ID:5X7jDa2TO
-隣国港湾倉庫-

男「おはようございまーす!」

ナビ『かっちかちのお魚やでー!』

隣国港湾職員「あいおはようさん。王国からだね?」

男「はい、港湾倉庫から海産物を積んで来ました」

隣国港湾職員「そりゃご苦労さん。船旅はどうだったね?」

ナビ『夜空がめっっちゃ綺麗やったでぇー♪』ウットリ

隣国港湾職員「そいつは良かったねぇ」

隣国港湾職員「ここらの海は比較的に穏やかだからね」

隣国港湾職員「さっそく荷降ろししちまうかい?」

男「そうですね、お願いします」

隣国港湾職員「あーすまないんだけど、うちは王国ほど人手がないもんでね」

隣国港湾職員「ドライバーさんも一緒に降ろしてくれるかい?」

男「もちろんいいですよ。それでは降ろしましょうか!」

ナビ『男ちゃんふぁいと♪』グッ
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/26(木) 13:49:58.85 ID:5X7jDa2TO
-同刻 物流協会事務局-


カツカツカツ…

女「…。」

先輩「お、女ちゃんじゃないか」

女「あら先輩さん、おはようございます」ペコッ

先輩「おはよう、相変わらず美人さんだな」

女「ふふっ、先輩さんも相変わらずお上手ですね」

先輩「いやいやマジだって!」

先輩「ところでさ、最近男に会ったか?」

女「えぇ、港湾倉庫からこっちまでカーゴに乗せてきてもらいましたけど」

先輩「そうか」

女「今日は男くんは?」

先輩「隣国へのシップ便で運行中。そろそろ向こうの港に着く頃だろう」

先輩「しかしカーゴに同乗か、羨ましいなー男の奴」

女「私と男くんはそういう関係ではありませんわ」クス

先輩「そうかい?そこは別に心配してねぇんだが…」
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/26(木) 13:50:55.51 ID:5X7jDa2TO
女「…ナビの事ですか」

先輩「あぁ。この前ナビちゃんを泣かしちまったーって男が言ってたんだが」

先輩「女ちゃんの話を聞いたら何となく分かったよ」

女「…先輩さん、あなたはナビシステムについてどこまでご存知なんですか?」

先輩「俺か?まぁそもそも俺自身がナビ使ってないからなー」ポリポリ

先輩「一般的な知識以外大した事は知らないが」

先輩「それがどうした?」

女「そうですか…」

女「…。」

女「先輩さんに折り入ってお願いしたい事があるのですが」

先輩「何だ?金なら貸さねぇぞ」ケラケラ

女「違います!」

女「…男くんとナビの間で何か変わった事がありましたら、教えて頂けきたいのです」

女「お願い出来ますか?」

先輩「あぁ、構わねぇよ」

先輩「しかし本当に相変わらずだな女ちゃんは」

女「?それはどういう」

先輩「何でもねぇよ。全く男の奴が羨ましいなって話さ」
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/26(木) 13:52:55.21 ID:5X7jDa2TO
先輩「そうだ!情報を伝える報酬といっちゃ何だが」

先輩「今度メシでもどうだい?」

先輩「近くにいい店があるんだ」

女「先輩も本当に相変わらずですね…えぇ、いいですよ」ニコッ

先輩「よっしゃ!じゃあ楽しみにしてるからな」

女「私もです。それでは何かありましたら、お願いします」ペコッ

先輩「あぁ、任せとけ」

先輩「じゃあ俺これから運行だから。おつかれさん」フリフリ

女「お気をつけていってらっしゃい」フリフリ


女「…。」
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/26(木) 19:06:36.42 ID:N7L/mCFM0
-08:20 隣国港湾倉庫-



男「これでっ!最後っと!」ガスッ

男「ふぅ、終わった」

隣国港湾職員「いやぁ助かったよ。それじゃこれ伝票ね」

隣国港湾職員「それとこれは手伝ってくれたお礼に」スッ

男「いいんですか?ありがとうございます!」

隣国港湾職員「いいっていいって!」

隣国港湾職員「それでこれからどこまで?」

男「はい、このあと内陸の工場で絹織物を積んで帰る予定でして」

隣国港湾職員「それならここから街道をひたすら真っ直ぐだ」

隣国港湾職員「ただ、ここらは王国の街道と違って道路整備が行き届いているとは言えないから」

隣国港湾職員「道中気をつけるんだな」

男「分かりました、色々ありがとうございました」ペコッ

53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/26(木) 19:07:40.21 ID:N7L/mCFM0
バタンッ

男「終わったぞー」フゥ

ナビ『男ちゃんおつかれさま♪』

ナビ『ん?それ何?』

男「あぁこれな、荷降ろし手伝ったお礼にって職員さんが」フワッ

男「隣国名産の絹で織ったストールだそうだ」

ナビ『へぇー!めっちゃ可愛いやん!』キャッキャ

男「俺が着けるのもアレだから、運転席にでも飾ろうかなと思って」

ナビ『あ!それやったらココなんかえぇんちゃう?』

男「助手席のヘッドレストか、悪くないな」マキマキ

ナビ『おぉー!いこくじょうちょやな?』ニコニコ

男「意味分かってんのか…?まぁいい、そろそろ出発するか」

男「所要時間出るか?」

ナビ『はぃな♪…んーざっと2時間半位かいな?』

男「了解。それじゃ出発だ」

男「頼むぞ」

ナビ『あいあぃさー♪』

ブォン!ブロロロ…
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/26(木) 19:09:14.16 ID:N7L/mCFM0
-09:00 隣国街道-



ブロロロ…ガタゴト

男「見渡す限りの田園風景だな」

ナビ『一面緑色やね!あれはなに育ててんねやろー?』

男「恐らく桑畑だろう、蚕の餌になるのさ」

ナビ『かいこ?』

男「蚕は蛾の一種で、そいつらが繭を作るのに吐き出す糸が絹織物の原料なんだよ」

ナビ『げー!かいこって蛾なん?』ブルッ

男「意外と可愛いんだぞ?」

男「翼を取るために養殖しているキメラなんかの方がよっぽどファンキーなビジュアルをしてるよ」ハハハ

ナビ『ってかキメラって養殖なんや…』



ブロロロ…ガタゴト

55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/26(木) 19:10:09.16 ID:N7L/mCFM0
-11:00 織物工場-



ガタンッガタンッ…

男「こんにちはー!物流協会から織物を積みに来ましたー!」

工場職員「王国からですね?はるばるご苦労様です」

工場職員「製品がまだ全部揃っていないので少しお待ち頂けますか?」

男「そうですか、構わないですよ」

工場職員「午後一番には用意できますので、良かったら近くの町でゆっくりしてて下さい」

工場職員「カーゴは積み込みヤードに停めておいてもらって構いませんので」

男「ありがとうございます、じゃあそうさせて頂きますね」

ナビ『ご飯やご飯ー!』

男「一緒に来るか?」

ナビ『もちのろんやで♪』

男「了解」

ピピッ…ポンッ!

56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/26(木) 19:14:38.60 ID:N7L/mCFM0
-11:30 織物工場近くの町-



テクテク…

魔法石(ナビ)『変わった街並みやなー』

男「真っ白な石造りの壁にとんがり屋根…この辺の伝統なんだろうな」

魔法石(ナビ)『可愛えぇなー?』キョロキョロ

男「さて、せっかくだからここらの名物を食べたいな」

魔法石(ナビ)『あ!なんか旗立っとぉで』

<ご当地名物!キメラ鍋! ヒラヒラ

男「…。」

魔法石(ナビ)『…。』

男「…ま、まぁせっかく来たんだ、ものは試し!」ガラッ

魔法石(ナビ)『せ、せやな!たのもー!!』

<イラッシャーイ

57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/26(木) 19:15:21.57 ID:N7L/mCFM0
-店内-



グツグツ…

魔法石(ナビ)『なんやめっちゃぐつぐつしとぉな、案外美味しそぉやん♪』ウキウキ

男「あぁ。あのままのビジュアルで煮込まれていたらと心配したけど杞憂だったみたいだ」

男「それじゃ早速…いただきます」ハフッ

もぐもぐ

魔法石(ナビ)『どう?』

男「…美味い!!」ババーン

男「鍋というより煮込み料理だな、トマトがよく合う!」パクパク

男「そして肉は若干固めだが、噛めば噛むほど味が染み出てくる!」モグモグ

魔法石(ナビ)『良かったぁー!やっぱご当地名物やんなぁ♪』

ガラッ!

<ラッシャーイ

客「お!美味そうな匂いだな、おーいこっちもキメラ鍋ー!」アイヨー

男「人気の店みたいだな」モグモグ

魔法石(ナビ)『なー♪』

<オーイキメラシメトイテー

<アイヨー!



ダンッ!

<ギャーーーースッ!!



男「!」ビクッ

魔法石(ナビ)『!!!』ビクビクッ

男「…。」ゴクンッ

魔法石(ナビ)『なぁ、今のって』ビクビク

男「…我々は命を頂いて生きているという事だな」

男「感謝して食べねば!」ガツガツ

魔法石(ナビ)『さ、さすが男ちゃん』


58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/26(木) 19:19:44.24 ID:N7L/mCFM0
-13:00 織物工場-



ガタンッガタンッ…

工場職員「お待たせしました、積荷の用意出来てますよ」

男「ありがとうございます、では早速積んでしまいましょう」

工場職員「ロールになってますので重機で積み込みます、ウイング開けてもらえばこっちでやりますんで」

男「了解です。ナビ、頼むよ」

ナビ『あいあぃさー!ウイングおーぷん!』ポチッウィーン


59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/26(木) 19:20:27.47 ID:N7L/mCFM0
工場職員「お待たせしました、こちらが伝票です」ピラッ

男「ありがとうございます、それでは出発しますね」

工場職員「よろしくお願いします」ペコッ

ナビ『ほないくでー!』

ブォン!ブロロロ…

60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/26(木) 19:21:18.91 ID:N7L/mCFM0
-13:30 隣国街道-



ブロロロ…ガタゴト…

ナビ『…けほっ』

男「どうかしたか?」

ナビ『ん…。ここらってあんま舗装良くないやんか?ちょっと酔ぉたかも…』クラッ

男「マジか、ジャイロ効いてないのか?」

ナビ『んーなんかな?カーゴ自体もちょっと調子良くない?んかなぁ』クラクラ

男「少し休憩するか?」

ナビ『んーん!大丈夫!』フリフリ

ナビ『シップの出航時間もあるし、乗ってもうたら休憩出来るんやし』

ナビ『このまま行けるで♪』ビシッ

男「そうか、どうしても辛くなったらすぐに言うんだぞ?止まるから」

ナビ『ありがとぉな♪』ニコッ

ナビ『…。』フラッ

ブロロロ…

61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/26(木) 19:23:21.57 ID:N7L/mCFM0
-同刻 物流倉庫事務所-



ピピッピピッ

配車係「ん?アラート?」チラッ

配車係「この車番は男さんか」

[精霊ナビシステムニ問題発生]

[魔法石カラノ魔力供給が低下シテイマス]

配車係「魔力供給が低下?充填が不足しているのか?」

プルルッ…プルルッ…カチャ

男「お疲れ様です男です」

配車係「お疲れ様です。今こちらの管理システムで男さんのナビに異常ありと出ているんですが」

配車係「出発前に魔法石の充填は確認しましたか?」

男「えぇ、出発前に満タンにしました」

配車係「おかしいなぁ…どうやら魔法石からナビシステムの方に充分な魔力が供給されていないみたいなんです」

男「何ですって?」

男「おいナビ、何か分かるか?」

ナビ『!』ギクッ

ナビ『し、知らんし』アセッ

男「…お前、嘘つくとすぐ分かるな」ハァ

62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/26(木) 19:24:12.09 ID:N7L/mCFM0
男「よくよく見れば魔法石の充填がかなり減ってるじゃないか」

男「どういう事なんだ?」

ナビ『え、えーっと』タラッ

男「ちゃんと答えろ!」ダンッ!

ナビ『!』ビクビクッ

キィィィィン…!

配車係「…っ!あの男さん、無線繋がってる時にあんまり大きい声は」イテテ

男「あ!すみません」

男「ちょっと状況確認して折り返します」プツッ

配車係「あっ!ちょ…!」プーップーッ

配車係「なんなんだよもう…」

63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/26(木) 19:27:12.49 ID:N7L/mCFM0
-同刻 隣国街道-



シーン…

男「…つまり俺が寝ている間ずっとエンジンかけたままにしておいたと」

男「んで、帰りの充填が怪しくなってきたから自分への魔力供給を一時的にカットした…と」

ナビ『…ごめんなさい。』シュン

男「あのなぁ、カーゴの寝台にはちゃんと寝袋と毛布が積んであるんだから心配する事ないんだぞ?」

ナビ『だ、だって!海の上って綺麗やけどやっぱ冷えるし』アセアセ

ナビ『(それに、供給止めてでも男ちゃんと一緒におりたかったし…)』

ナビ『(なんて言われへんけど)』

64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/26(木) 19:27:45.93 ID:N7L/mCFM0
男「俺の事を心配してくれたのは分かったよ」

男「気が付かなかった俺にも責任がある。ここから先はマニュアルで行くからお前は休んでろ」

ナビ『えっ!でも!!』

男「大丈夫だよ、積み込みは終わってるし来た道を戻るだけだから」

ナビ『(ちゃうねん…シャットダウンしたらお話でけへんやん…)』

男「魔力供給が低下した状態が続くと、お前の調子にも影響が出るかも知れないからな」

男「だから、な?」ポンポン

ナビ『うぅ…それズルいわぁ』ショボン

ナビ『了解やで。ほんなら男ちゃん気をつけてな』フリフリ

男「ははっ別に今生の別れでもあるまいし」

男「それじゃおやすみ」ポチッ

ナビ『あぃ、おやすみなさい…』フッ

[精霊ナビシステムヲ終了シテイマス…]

男「よし、行くか」

ブォン!ブロロロ…

65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/26(木) 19:31:13.31 ID:N7L/mCFM0
-翌日 物流協会事務局-



女「そうですか、そんな事が…」

先輩「まぁ帰って来るだけなら男一人で何の問題もないけど」

先輩「一応大事を取ってナビちゃんは今日一日メンテナンスに出してるみたいだ」

先輩「しかし、愛だな」シミジミ

女「…。」

女「それでは、ナビが使えないなら男くんは今日はお休みですか?」

先輩「あぁ、あいつかー?」ニヤ




男「はぁ…はぁ…」タッタッタッ…




先輩「まぁペナルティって訳じゃねーんだが」スッ




男「ふぅ…ふぅ…」ガシッ




先輩「男は今日一日、同僚とコンビ組んで」シュボッ





男「ちわー!お届けものでーす!」ピンポーン





先輩「宅配だ」フゥーッ

66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/26(木) 19:36:22.26 ID:N7L/mCFM0
-同刻 王都、街外れ-



ゴゥンゴゥン…

男「ミルクだの薪だの重量物を持っての階段の登り降り…」ハァハァ

男「宅配がこんなにキツいものだとは」フゥ

同僚「かーっwwなっさけねーなwww」ケラケラ

男「しかし…みんなして重たいモンばっか頼みやがって…」グッタリ

同僚「バーカwww重たいモンだから頼むんだろがwww」

同僚「この辺じーさんばーさん多いからなwwwしゃーないwww」

男「言われてみればそうだな…」

同僚「ほれ水分補給!気合い入れ直してもう一踏ん張りだwww」ポイッ

男「ありがとう…助かるよ」ゴキュ

67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/26(木) 19:37:44.04 ID:N7L/mCFM0
同僚「それよかお前体力落ちたなーwww」

同僚「どうせナビちゃんに頼りっきりなんだろーwww」ケラケラ

男「否定はできんな…この前も手積みの仕事だったんだが昔よりキツく感じたし」プハ

同僚「戦闘だけはアホみてぇに強かったのになwww」

同僚「最初の戦闘研修の時どこの剣士が迷い込んだのかと思ったぞwwww」

男「みんなに言われるがそんなに大したもんじゃないぞ?所詮素人に毛が生えた程度のもんだ」

同僚「いーやwあの動きはとても素人じゃねぇよwww」

同僚「故郷の親父さん仕込みだったかw?ホントにただの武器職人なのかねwww」

男「そういや若い頃の話は聞いた事がないな」

68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/26(木) 19:38:49.36 ID:N7L/mCFM0
同僚ナビ『お二人共、余裕ぶちかましておいでですが大丈夫なんですの?』

同僚ナビ『配達まだ20件以上残ってますのよ?』

男「いぃっ!?そんなに??」ゲゲッ

同僚「よゆーよゆーwww二人でやりゃあっちゅーまよwww」

男「お前ほぼ運転だけじゃんか!」

同僚「この王都中の街道から細かな路地に至るまでの道路網、番地、駐車禁止なんかの交通規制などなど…」

同僚「パーペキに把握している俺からハンドルを奪おうなど100万光年早いわwww」

男「光年は距離の単位だ…まぁいい、確かに細かな道まで知り尽くしているお前が運転する方が効率がいいな」

同僚「伊達に地元っ子じゃねぇっすよwww分かったら汗水たらしておきばりやすwwww」ケラケラ

男「あぁ、それじゃ行くか!」

同僚「れっつ脂肪燃焼www」

同僚ナビ『はーい出発致しますわ』

ブォン!ブロロロ…

69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/26(木) 19:50:14.28 ID:N7L/mCFM0
-同刻 王立アカデミー研究室-



ブゥゥン…ブゥゥン…

魔法石(ナビ)『…。』コポコポ

女「…。」ジーッ

女「それで、ナビの状態は?」クルッ

研究室職員「幸い、魔力供給の低下が一時的なものだったのでダメージは軽微です」

研究室職員「記憶や人格などの各種データの損傷もありません」

女「そうですか…」ホッ

研究室職員「ただ、ついでにここ最近の蓄積情報を確認したんですが」

研究室職員「ナビシステムの人格情報に変化が見られますね」資料ペラッ

研究室職員「ここです」トントン

女「外的要因による強い不安状態…」

研究室職員「ナビシステムの心理グラフと男さんの運行データを照らし合わせると」

研究室職員「数日前、港湾倉庫から物流倉庫へ帰ってくる辺りで心理状態に激しい動きが見られます」

女(私が同乗した時ね…)

研究室職員「具体的に言うと、対外的な自己価値の喪失に対する不安…」

研究室職員「見捨てられ不安、といったところでしょうか」

女「見捨てられ不安…」

70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/26(木) 19:59:18.31 ID:N7L/mCFM0
研究室職員「これは例えば過去…幼少期が多いんですが」

研究室職員「自分の周りにいるべき庇護者を何らかの形で失うといった体験が原因となる場合があります」

女「…っ。」

研究室職員「現時点ではナビシステムの運用上大きな問題とは言いにくいですが」

研究室職員「今後、人格構造に著しい変化が見られるようになった場合…」

女「何らかの対応が必要になる、という事ですね?」

研究室職員「仰る通りです」

女「分かりました」

研究室職員「ナビシステムの性質上、ベースとなる人格情報を書き換える事は難しいですが」

研究室職員「月日と共に蓄積されていく情報についてはその限りではありません」

女「情報の蓄積…」

研究室職員「はい。蓄積された情報によって思考パターンや心理構造が変化…成長していく」

研究室職員「それこそがナビシステムの大きな特徴ですから」

女「大変参考になりました」ペコッ



ガチャ バタンッ

カツカツカツ…



魔法石(ナビ)『…。』コポコポ

71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/26(木) 20:04:07.35 ID:N7L/mCFM0
-翌日 04:00 物流倉庫-



ゴゥンゴゥン…

ナビ『たっだいまぁー!!』バーン

男「おかえり、調子はどうだ?」

ナビ『もうすっかりばっちりおーるおっけーやで♪』ピース

男「心配させやがって」

ナビ『ごめんなさいです…』フカブカー

男「まぁ、無事に戻ってきたなら何よりだ」ニコッ

ナビ『それよか男ちゃんは?昨日一日大丈夫やったん?』

男「助手として同僚の奴に散々こき使われたよ」

男「大変いい運動になった」ハハハ

ナビ『同僚ちゃんはどーちゃん共々加減知らんからなぁ』ケラケラ

男「どーちゃん?」

ナビ『同僚ちゃんのナビやからどーちゃんやで!』ビシッ

男「あぁそう…」

72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/26(木) 20:05:02.39 ID:N7L/mCFM0
ナビ『んで!今日はどこまで行こか?』

男「今日は今から物流倉庫(ここ)でB級品の武器防具を積んで、鍛治職人の里へ搬入だ」

ナビ『男ちゃんの故郷キター!!』ドンドンパフパフ

男「期待してるとガッカリするぞ?何にもない田舎の里だから」

ナビ『そんなんえぇねん!男ちゃんの故郷って所が重要やねん!!』クワッ

男「わかったわかった、顔が近い」

男「そしたらパパッと積み込みして出発しようか」

男「今日からまた、よろしく頼むぞ」

ナビ『うん!よろしくな』ニパッ

ナビ『ほな始めますかぁ?』

ゴゥンゴゥン…

73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/26(木) 20:08:48.94 ID:N7L/mCFM0
-11:30 鍛治職人の里-



カンッカンッカンッ…

男「着いたな」

ナビ『おぉーここが男ちゃんの故郷!』

男「鉄鉱石の採れる鉱山の麓には、ちょうど良く河も流れていて」

男「鍛治職人達にとってはうってつけの立地だったんだろうな」

守衛「男!?男じゃねーか!」

守衛「見ない間にずいぶん立派になりやがって!」バシバシ

男「いてて、お久しぶりです」

守衛「今日は仕立て直し用の武器防具だったな?男が運んできたとなりゃ親父さんも腕が鳴るってもんよ!」

守衛「お?今日は可愛い連れがいるのかい?」

ナビ『おっちゃんはじめまして!ナビちゃんやでー?』ピョンッ

守衛「おー元気いいな!」

ナビ『あったりまえやん!いつでも元気なナビちゃんやで?』ニコニコ

男「心配させといてよく言うよ」ハハハ

守衛「そしたら早速倉庫の方へ回ってくれるか?荷下ろし要員で若い衆集めといたからよ!」

男「ありがとうございます、それじゃ向かいますね」

ナビ『おっちゃんまたなー』フリフリ

守衛「はいよ!」

ブォン!ブロロロ…



守衛「あの訛り…北西の…」

74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/26(木) 20:35:40.91 ID:N7L/mCFM0
-12:00 鍛治職人の里 倉庫-



男「大勢で下ろしたらあっという間に終わった」

男「皆さんありがとうございました」ペコッ

若者「いやだなー礼なんていいっすよ!」

若者「男さん、里の出身ですってね?同郷の仲間なんだからこの位なんて事ないっす!」ワハハ

男「…正直少し不安だったんです」

男「親父の跡を継がなかった俺の事、里の人はどう思っているのかと」

若者「…生き方は人それぞれです」

若者「俺は里出身ですけど、仲間内には他の町や村から移住してきた奴もいるんですよ?」

男「それは、鍛治職人に憧れて?」

若者「そうです!というか、大部分の奴は親父さんに憧れてってところですけど」ハハハ

若者「ちょうど休憩入ったとこだと思うんで、顔出してあげてって下さいよ!」

男「親父か…」

ナビ『…。』

男「そうですね、せっかく来たので親父とも少し話して行きます」

男「ありがとうございました」

若者「いえいえ!ではお気をつけて!」

ナビ『みんなばいばーい?』フリフリ

ブロロロ…

75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/26(木) 20:37:13.35 ID:N7L/mCFM0
-鍛治職人の里 作業場-



シュボッ!スゥゥ…

親父「…久しぶりだな」プハァー

男「あぁ、元気そうで何よりだ」

親父「お前に心配される程まだ耄碌してねぇよ」ハハ

男「そういう意味じゃ…」

親父「冗談だ。仕事は上手くいってるのか?」

男「何とかね、色んな場所に行けるってのは俺の性に合ってるのかも知れない」

親父「…お前が鍛治職人に向いてねぇってのは初めから分かってた事だ」

親父「だからうちを継がなかった事なんざ気にしちゃいねぇからな?」グシグシ

男「…!」

男「親父には勝てないな」ハハ

親父「当たり前だ、それに最近じゃ鍛治職人になりたいなんて殊勝な奴がいるんだぜ?」

親父「そういうわけで跡取りには困ってねぇよ」ハハ

親父「….吸うか?」スッ

男「付き合うよ」シュボッ!スゥゥ

スパァァ…モクモク

76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/26(木) 20:37:54.84 ID:N7L/mCFM0
親父「お前はお前の好きなように生きろ」

親父「背負って生まれちまったもんは仕方ない、だが」

親父「そんなもんに縛られる必要はない、お前の道を決めるのはお前自身だ」

親父「お前自身が決断して、責任はお前が取るんだ」

親父「いいな?」

男「?あ、あぁ何となく」

親父「苦しくなったらいつでも戻って来い」

親父「お前の居場所はここにある」

男「…ありがと」

親父「あの子にもそう言ってやれ」

男「(女の事かな?)あぁ、分かったよ」

親父「全く、たまには剣術の稽古でもつけてやろうと思ってたが」

親父「誰かさんが仕事をどっさり持って来てくれちまったからな」ハハハ

男「ふふ。みんな親父の事を尊敬してるみたいだな」

親父「まぁな、まだまだ落ちぶれるわけにはいかねぇって事よ!」フン

親父「そろそろ行くのか?」

男「あぁ、また来るよ」グシグシ

親父「帰り、気ぃ付けろよ」

男「うん」

テクテクテク…

親父「…。」グシグシ

77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/26(木) 20:42:40.10 ID:N7L/mCFM0
-13:00 鍛治職人の里-



ゴゥンゴゥン…

ナビ『おかえりー』フリフリ

男「ただいま」バタン

ナビ『おとさん元気そうやったー?』

男「相変わらずな、俺の心配事なんてお見通しだったよ」ハハ

男「まだまだ親父には勝てないな」

ナビ『…そっか』

男「てっきりお前も付いてくるのかと思ってたんだけど」

ナビ『久しぶりの親子水入らずやん!やっぱ邪魔したアカンなーって』

ナビ『でも、男ちゃんの顔見てたら行かんで正解やったわぁ』

男「ん?俺どんな顔してる?」

ナビ『んとね、いつもより優しい顔しとぉよ♪』ニコ

男「…なんか恥ずかしいな」テレ

男「さて、そろそろ出発するか」

78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/26(木) 20:43:30.98 ID:N7L/mCFM0
ゴゴゴゴゴゴ…



ナビ『ん?なんか揺れとぉな?』

男「地震かな?」



グラッ…グラグラッ!…ガガァン!!



男「!!!!」ガシッ

ナビ『何なんこれ!?カーゴが下から突き上げられとぉみたいな揺れや!!』グワングワン

ピピッピピッ

男「こんな時に何だ!?」カチャ

男「はい!」

配車係「男さん無事ですか!?」

男「今鍛治職人の里なんですけど!突然めちゃくちゃ地面がゆれd」配車係「大変なんですよ!!!!!!」キィィィン…

男「…っく!何が起こってるんですか?」イテテ

配車係「今、鉱山の上空で大規模な戦闘が行われています!」

ナビ『上空?飛行タイプの魔族でも出たんか!?』

配車係「詳細は分かりません!ただ、こちらからも感知できる程の強力な広域魔法が使われているようで」

男「空中…強力な広域魔法…」

男「…まさか!」ハッ

79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/26(木) 20:46:43.30 ID:N7L/mCFM0
配車係「…可能性は高いです」

配車係「とにかく里の周辺は危険です!過給装置全開で出来る限り遠くへ避難して下さい!!」

男「了解!」カチャ

ゴゴゴゴゴゴ…

ナビ『なになに?何が起こってるん??』アワアワ

男「…魔族の中でも空を飛べる奴は多くない」

男「その上、遠く離れた物流協会から感知できるほど強力な広域魔法が使えるものと言えば…」

男「…魔王しかいない」

ナビ『ま、魔王…!』サァッ

男「そして、魔王と互角に戦える存在はたった一人…」

ナビ『じ、じゃあ今ウチらの頭の上で魔王と勇者が戦っとぉって事なん!?』

ナビ『ヤバいでヤバいでヤバいで!!すぐにこっから離れな!!』ピッ

[魔法石過給装置ヲ作動シテイマス…]ブォォォォ

男「待て!里の人達はどうする!?」

ナビ『分かっとぉけど!でもこのままじゃウチらも道連れや!!』

男「そりゃそうだけど…放ってはおけないだろ!!」ガンッ!



カッ………

…ッドカァァァァァン


80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/26(木) 20:47:39.37 ID:N7L/mCFM0
男「うわっっ!」グワングワン

ナビ『ぐっ!…今は言い争いしとぉ場合やないやろ!!』キッ

ナビ『とにかく避難や!落ち着いたらまた助けに来よ!?な!??』

男「…そうするしかないか」ギリッ

ナビ『ほんなら行くで!しっかり掴まっとき!!』ブォン!

男「親父…みんな…無事でいてくれ」

バヒューーーーーン…!!!

81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/26(木) 21:03:34.57 ID:N7L/mCFM0
-15:00 街道-



ブロロロ…

ナビ『この辺まで来れば大丈夫かぃな』



ブロロロ…キキッ

シィィィン…



男「…。」

ナビ『…謝らへんで』キッ

ナビ『男ちゃんの仕事をサポートすんのがウチの役目やもん。みすみす危ない橋渡らせるなんてでけへんよ』

男「…分かってるよ」フゥ

男「冷静さを欠いていたのは俺の方だ、お前がいなかったらあのまま死んでたかも知れない」

男「すまなかった」ペコッ

ナビ『…顔上げてーな』フルフル

ナビ『いきなりあんなんなったら誰でもテンパるよ』

男「…。」



シィィィン…

82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/26(木) 21:04:33.63 ID:N7L/mCFM0
男「…戦争、なんだな」

ナビ『…ね。』

男「今まではただ目の前の仕事をこなして、例えば積荷が武器防具であろうが魔法石であろうが」

男「それが何の為のものか、何に使われてるかなんて考えもしなかった」

男「”それが仕事だから”」

男「そこで考える事をやめてしまっていた」

ナビ『男ちゃん…』

男「荷物を積んで、運んで、下ろして」

男「その先にあるものを想像する事すらしなかった」

ナビ『男ちゃん』

男「俺はこのままでいいのか…?」

ナビ『男ちゃんてば!』バンバン

男「!…悪い、どうした?」

ナビ『こーれ!』ツンツン

ピピッピピッ

[前方カラ移動体ガ高速デ接近中…距離1000]

男「っ!まさか別の魔族か!?」チャキッ

ナビ『…あ、待って?これは』

ナビ『…協会(うち)のカーゴやん!』パァァ

男「何だって!?」

ピピッピピッカチャ

男「はい!」

先輩「おー男!無事かー?」

83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 01:42:19.82 ID:IDFS0p+l0
-15:05 街道-



ゴゥンゴゥン…

男「来てくれたんですね!」

先輩「ちょうど運行終わって帰ってきたとこだったからな」

先輩「倉庫にあるモンで取り急ぎ役に立ちそうなのを片っ端から積んできた」

先輩「応急手当の出来る医療品、食べ物、燃料、あと毛布やなんかも」

ナビ『先輩はん…』ウルウル

男「ありがとうございます!!」ペコッ

先輩「倉庫の物品は一応客からの預かり物だが、なぁに」

先輩「金で解決できるモンはそれでいい。人命には代えられん」

84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 01:43:27.39 ID:IDFS0p+l0
先輩「さて…俺の大型カーゴじゃ里の中まで入って行けないだろうから」

先輩「里の人の手も借りてみんなで運び込むぞ」

先輩「手、貸してくれるな?」

男「もちろんです!」ナビ『やったんで!』

先輩「ははっ、ホントにお前ら息ピッタリだなー」

先輩「あ、そうそう」

先輩「女ちゃんから伝言頼まれたんだった」

男「女から?」

先輩「”必ず無事でいて下さい”」

先輩「”決して無鉄砲に助けに行こうなどしないように”」

先輩「だってよ」

ナビ『…っぷぷ』

男「見透かされてるなぁ…」ハァ

先輩「火災が発生してるかも知れないから、軍の消防隊も要請してある」

先輩「そいつらとも協力出来る事があればやろう」

先輩「そんなとこかなー、んじゃあ行くか!」

先輩「道案内よろしくー」バタンッ

男「了解です!よしナビ、行こう!」

ナビ『はいなぁ!ほな出発?』

ブォン!ブロロロ…
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 01:48:42.30 ID:IDFS0p+l0
-17:00 鍛治職人の里入り口-



ゴォォ…モクモク…

ブロロロ…キキッ

ナビ『着いたー!』

男「…煙が上がってるな」チラッ

男「中がどうなってるか、入ってみなきゃ分からないか」ガチャ

男「ここからは手作業で運び込むから、カーゴは頼むぞ」

ナビ『了解!男ちゃん、気をつけてな』

男「あぁ、じゃあまた後で!」バタンッ



<ウイング開けるぞー

<台車持ってこーい

<いくぞ、せーのっ



ナビ『始まったわ』

ナビ『…おとさん、他のみんなも』

ナビ『無事でいてな…』



パチ…パチパチ…ボワッ!!



ナビ『!』ビクッ



<ダメだ、炉に燃え拡がる!

<おい毛布あったろ!

<水で濡らして持ってこい!



ナビ『あかん!火、が…!』

ナビ『男ちゃんに知らせなきゃ…う』



ズキン

86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 01:49:41.83 ID:IDFS0p+l0
ナビ『っ!…なんや?この感…じ』ゾクッ



ズキン…ズキン…



ナビ『この光景…見たことある…?』ブルブルッ



ボワッ!ブワァァァァ…!

<消防隊来たぞー!

<こっちだ!おーい!




ズキン…ズキン…



ナビ『うち…これ知っとぉ…火が』



ズキンズキンズキンズキンズキン



ナビ『いやゃ…こわい…なんnあぐgg??!あついあついあttttttたすけtttt』



ッパァァァァァ…



ナビ『!!!』

ナビ『いやあああああああああああ』




ピーーーーーーーーーーーーー

87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 01:57:16.57 ID:IDFS0p+l0
-3日後 物流協会事務局 女の執務室-



カリカリ…

[報告書(特)ナビシステムの不正シャットダウンと動作不良について]

女「現時点で判明しているのは、人格情報の基幹部(ベーシック)に一部損傷が見られる事、と」カリカリ

女「記憶情報の一部が内側からロックされている事…」カリカリ

女「ふぅ」カタンッ

88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 01:59:03.19 ID:IDFS0p+l0
コンコンッ

女「どうぞ」

先輩「おつかれさん」ガチャ

女「先輩さん!先日はありがとうございました」ペコッ

先輩「里での一件か?なんて事ないさ」

先輩「救援物資の運搬なんて運送屋がやらずに誰がやるんだ、ほい差し入れ」コーヒーコトッ

女「ありがとうございます」

先輩「ちゃんと休んでるか?少し痩せたんじゃないか?」ジーッ

女「ホントに相変わらずですね」クス

先輩「…ナビちゃん、どうだ?」

女「…。」フルフル

女「人格情報の基幹部(ベーシック)を外部から修復するのは難しいです」

女「というか、ほぼ不可能です」

先輩「そうなのか?」

女「…いただきます」ズズッ

女「…。」フゥ

89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 02:00:00.71 ID:IDFS0p+l0
女「ナビシステムの人格情報はゼロから作り出したものではないんです」

女「元となるデータは、被験者の人格情報…心を魔法石に写し取ったものなんです」

先輩「男自身の心ってことだな」

女「正確にはその一部ですが」

先輩「話には聞いていたが、実際そんな事が出来るのか?」

女「魔法石と、高度な能力を持った詠唱士の力があれば」

先輩「なるほどねー、人の心ん中なんて複雑過ぎて他人には計り知れんからなぁ」スッ…シュボッ

女「あ、この部屋禁煙です」

先輩「う、すまん」シマイ

女「修復する方法があるとすれば、元となった被験者の心と魔法石をもう一度リンクさせて」

女「損傷する前の人格情報をサルベージするしかありません」

先輩「…今のあいつに出来るかな」

女「やってもらうしかありません」

先輩「そうか…」

先輩「俺からも少し話してみるよ」

女「お願いします」

先輩「女ちゃん、一人で気負い過ぎるなよ?」

先輩「そんな顔してちゃ美人が台無しだ」ニコ

女「ありがとうございます」クス

90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 02:02:43.59 ID:IDFS0p+l0
-翌日 王宮 議事堂-



議員「…報告は以上です」

側近「ご苦労。さて、先日の鍛治職人の里での事故だが」

側近「救援に当たった軍の方から被害状況の報告を聞かせてもらおう」

側近「騎士長」

騎士長「はっ」ガタッ

騎士長「里の人的被害は死者はゼロ、軽傷者が数名出ている程度です」

側近「不幸中の幸いか」

騎士長「はい。しかし火災により炉の建屋が焼失、再建には時間が掛かるでしょう」

騎士長「それから、共同で救援に当たった物流協会からなんですが」チラッ

側近「申してみたまえ」

事務局長「では私から…」ガタッ

事務局長「えー里の人命保護を最優先と考え、物流倉庫での預かり品を持ち出しております」

事務局長「こちらが明細なんですが…」ペラッ

側近「どれどれ…むぅ」チラッ

国王「うむ」

側近「構わん。人命には代えられん」

側近「協会から王国宛に請求を上げたまえ」

事務局長「承知しました」

側近「しかし民間人に被害が出るなど本末転倒だ」

側近「勇者の力…早急に策を練らねばなるまいな」

91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 02:03:37.43 ID:IDFS0p+l0
…スクッ

国王「諸君」

国王「人は愚かな生き物だ」

国王「それは如何に強大な力を得ようと決して変わらぬ」

国王「いや、強大な力を持つに至ったが故に道を誤る事もままあるのだ」

国王「勇者による魔王の討伐は、民にとって希望の光」

国王「光は決して曲がらぬ」

国王「否、曲がってはならぬのだ」

国王「その事を肝に銘じてくれたまえ」

一同「はっ」
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 02:06:22.34 ID:IDFS0p+l0
-10:00 王立修道院 礼拝堂前-



同僚「ちわーっすww物流協会でっすwww」

同僚「修道院名物の特製エールと薬草を積みに参りやしたーwww」
同僚「…おーいw」ダレカー



シイィィン…



同僚ナビ『人影がありませんね』

同僚「おっかしいなーw10時着の予定だったよな?」

同僚ナビ『はい。依頼書には確かに』



…ガタンッ!



同僚「!」ビクッ



…ガタガタッ!バタンッ!!



同僚「…誰かいるのか?」

同僚ナビ『扉の中からですわね』

同僚ナビ『見てきて下さいまし』

同僚「マジかw」

93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 02:07:01.96 ID:IDFS0p+l0
ソローリ…ギィィィィ



同僚「こんちわー…」チラッ

同僚「ぬぁぁ!!!」ビクビクッ

同僚ナビ『!どうしました!?』

同僚「ひ、人が…」

94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 02:09:04.10 ID:IDFS0p+l0
「ふぇぇぇぇぇ…」





同僚「寝てる」





修道女「うぇぇ…もう飲めませぇぇん…」ヒック

95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 02:12:07.47 ID:IDFS0p+l0
-10:30 修道院倉庫-



シスター長「いやはや誠にお恥ずかしい」フカブカ

同僚「いやいやいいんすよw誰だって飲まなきゃやってられない時ってありますからwww」

シスター長「あの子の場合そういう次元ではなくてですね…」



<うぇぇぇ気持ちわるいぃぃぃぃ

<オロロロ



同僚「あーぁwww」

シスター長「彼女…詠唱士としての資質は素晴らしいのですが、あの通り酒癖が最悪でして」



<神は留守です!有給取ってカジノへ行ってます!!

<なんちってwww



同僚「確かにひでぇなwww」

同僚ナビ『しかも若干同僚さんとノリが似てますわね』

シスター長「近く、高度な詠唱の依頼が来ているのですが本人があの有様で…」

同僚「まぁ能力が確かなら、酒さえ飲まなきゃいいんじゃね?って気もww」

同僚「それによく見りゃなかなか美人じゃんかwwうはww高まるwwww」

96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 02:14:55.38 ID:IDFS0p+l0
クルッ

修道女「んーなんれすかぁぁ?神の従者たる私をナンパれすかぁぁ???」グイッ

同僚「なんか来たwww」

修道女「まぁまぁそうカッカしないでくらさいよぉ」たゆん

同僚「!!!」カッ

修道女「お兄さんいい度胸してまふねぇぇ」ヘラヘラ

修道女「気に入った!まま、おひとつ」エールドゾー

シスター長「こら!いい加減になさい!」グイッ

同僚「や、やめろって!俺はこれから運転すんだから飲めねーよ!」アセッ

同僚「…チラッ」たゆーん

同僚ナビ『はぁ。同僚さんが草生やしてない時はマジトーンの時ですわ』

同僚ナビ『ちょっとお嬢さん。その辺で勘弁して頂けるかしら?』チョイチョイ


97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 02:15:47.08 ID:IDFS0p+l0
修道女「あぁん?何ですかこのちんちくりんの貧乳は」ケラケラ

同僚ナビ『!!!』ピキッ

同僚「あ、やべw」

同僚ナビ『人の気にしている事をぬけぬけと…酔っ払いだからと言って聞き捨てなりませんわ!!!』ムキー

修道女「おーこわwボリュームも足りなければ余裕も足りないみたいねww」アハハハ

シスター長「あぁもう何たる醜態を…」オロオロ

同僚「と!とにかく荷物は確かに預かりましたんで!あざーした!」バタンッ

キュルキュル…ブォン!

修道女「あ!ナンパしといて逃げるなー!!」ジタバタ

同僚ナビ『ちょっと同僚さん!あのホルスタインにぎゃふんと言わせないと気が済みませんわ!』プンスカ

同僚「女同士の諍いに巻き込まれるなんてごめんだっつーのwwwそれじゃどーもwww」マニュアルモードオン

同僚ナビ『あ!ちょっ!』

ブォン!ブロロロ…

98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 02:17:31.30 ID:IDFS0p+l0
-夕刻 王都酒場街-



ワイワイ…ガヤガヤ…

男「あーもう次から次へと!」グイッ

同僚「煮詰まってるねーwww」ごくごく

男「勇者と魔王の戦闘で里は半壊…」

男「親父が機転を効かせてくれたお陰で里の人達は擦り傷程度で済んだけど…」

同僚「さすが親父さんww」

男「炉は焼失しちまったからしばらくは鍛治仕事も開店休業だ…」

同僚「まぁそりゃ仕方ねーっしょw里の人が無事ならきっと建て直せるさwwww」

同僚「人間そんなに弱かねぇってwww」ぐび

99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 02:18:05.85 ID:IDFS0p+l0
男「それに加えて…ナビの奴」シュン

同僚「それなwwどうしちまったんだろ?火事場にビビったかwwww」

男「…。」グイッ

男「…そもそもナビシステムって何なんだ?そりゃ仕事は助かってるけど絶対に必要かって言ったら…」

同僚「そりゃお前あれだろ?物流協会(うちら)を実験台にしてデータでも取ってんじゃねwwww」

同僚「大方、ゆくゆくは軍事利用でもしようと思ってんじゃねーのwww」ぐびぐび

男「!っそうなのか!?」ガタンッ

同僚「ちーっと考えれば分かる事だろwww軍隊大好き国王陛下の考えそうな事じゃんかwwww」

男「どれもこれも戦争の為なのか…」ギリッ

100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 02:19:08.58 ID:IDFS0p+l0
ガチャ

先輩「だったらどうなんだ?」

男「え?」

同僚「あ、先輩ちーすwww」

先輩「おつかれ。あ、俺エールね」

同僚「おいっすww男は何飲むww?」

男「…タンカレー、ショットで」

同僚「あーあww了解ww」ガタッ

101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 02:20:50.28 ID:IDFS0p+l0
<乾杯!カチンッ



先輩「…さて、仮にナビシステムの運用が軍事利用を目的としたものだったとして」

先輩「それでお前とナビちゃんの関係は変わるのか?」

男「俺たちの関係?」

先輩「そうだ。コンビで色んな運行をして、色んな所で色んな人と関わって」

先輩「お互い助け合って色んな事を乗り切ってきたんだろ?」



ワイワイ…ガヤガヤ…



男「俺は…」

男「…。」グイッ

102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 02:21:29.34 ID:IDFS0p+l0
男「…何があろうと、ナビ(あいつ)が俺の相棒って事は変わらないです」

同僚「よく言ったwwいいぞー男www」

先輩「今ナビちゃんは何かに怯えて出てこれなくなってる」

先輩「手を差し伸べられるのはお前だけだ」

先輩「あの子とお前の心をもう一度リンクさせて、隠されてるものを見つけ来い」

男「俺の心と?どういう事ですか?」

同僚「お前インストールの時に説明あったろww」

同僚「ナビシステムは使用者の心を写し取って魔法石に閉じ込めたモンだってw」

男「全然覚えてない…」

先輩「俺は使った事ないからよく分からんが、インストールの際に記憶が飛ぶのはよくある事らしい」

同僚「あれ?先輩ナビシステム使ってないんですっけw」

先輩「選考に落ちたんだよ、あれも向き不向きがあるらしい」ぐび

先輩「とにかく、ナビちゃんと心を繋げられるのはお前だけだ」

先輩「今はそれだけ覚えとけ」

103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 02:23:04.41 ID:IDFS0p+l0
-深夜 王都酒場街-



<ありやしたー!

先輩「すっかり遅くなっちまったな」

男「すみませんご馳走になってしまって」

先輩「なに、一応年長者だからな」

先輩「こんな時ぐらいカッコつけさせてくれや」

同僚「先輩ごちでーすwwwやだかっこいいwwww」ケラケラ

先輩「こいつ酔っ払ってんなぁ…ちゃんと帰れるか?」

男「ははっこれで案外大丈夫なんですよ」

先輩「そうなのか…?」ジーッ

同僚「やだ照れちゃうwww」ケラケラ

先輩「はぁ…男は大丈夫そうだな」

男「はい。っていうか先輩と話してシャキッとしちゃいました」ハハ

先輩「まぁあんまり気負い過ぎんなよな」

先輩「気ぃつけて帰れよ」

男「はい!それではおやすみなさい」ペコッ

先輩「はいよ、お疲れさん」フリフリ

同僚「おつかれサマンサーwww」フリフリ

104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 02:23:40.77 ID:IDFS0p+l0
同僚「んだよ男の奴wさっさと帰りやがってwww」テクテク

同僚「微妙に飲み足りねぇなwwもう一軒行きますかwwww」

105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 02:25:20.23 ID:IDFS0p+l0
[BAR REQUIEM]

…カランッ

同僚「こんばんわっすw」ガチャ

同僚「お嬢さんお隣失礼しますよっとw」ストッ

女性「はいどうぞ…ん?」

修道女「あ!あなたは!」ビク

同僚「げっ!お前はこの前の酔いどれ(たゆんたゆん)シスター!」ビクッ

修道女「…その節は大変ご迷惑を…」フカブカ

同僚「あれw今日は普通じゃんw」

修道女「まだ来たばかりなので…」シュン

同僚「あーシラフだとそういうテンションなのねwwなら平気かwww」

同僚「むwしwろwww」チラッ

同僚「まぁ飲もうぜww俺フィディックをロックでwwwあんたは?」

修道女「ぼ、ボストンクーラーをお、お願いします」

106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 02:26:10.69 ID:IDFS0p+l0
<お待たせしました

<乾杯!カチンッ



同僚「つーかシスターが夜な夜な飲み歩いてていいのかよwww」クイッ

修道女「わ、私のところはエールを造っている位ですので」

修道女「その辺は緩いのです」クイッ

同僚「にしてもww緩いにも限度があんだろwwww」ケラケラ

修道女「あぁぁ…あの時の醜態はどうか忘れてくださいまし」シュン

同僚「インパクトあり過ぎて忘れらんねぇよwwwww」

同僚「つか聞いたぜ?詠唱士としての能力はマジモンだってww」

修道女「わ、私なんて全然大した事!」フルフル

同僚「いやいやwwwそうでなきゃ速攻追い出されてるだろwww」

修道女「うぅ…プレッシャーに弱いのです…」シュン

修道女「近々また高度な詠唱の依頼が来ていまして…」ハァ

同僚「んん?それってもしかして人とナビシステムを再リンクする的な奴だったりする??」

修道女「ご、ご存知なんですか?」

同僚「ご存知ご存知wwwだってその対象者って俺の同期の奴だもんwww」

修道女「そ、そうなんですか!?」
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 02:27:58.27 ID:IDFS0p+l0
同僚「…ってな訳で、あんたの力を貸してちょーだいってことwwww」

修道女「…。」ウツムキ

同僚「どしたー?眠いのか?」チョイチョイ

修道女「…同僚さんっっ!」バッ

同僚「っな、何だよ」ビクッ

修道女「わたし…かんどーしました…」ウルウル

同僚「今の話のどこに感動要素があったんだよwww」

修道女「わたひ、がんばりまふ!」スクッ

修道女「ぜったいにおふたいを!さいかい!させてみせまふ!!」フンス

同僚「ちょww呂律が迷子www急に立ち上がるからwwww」

修道女「どーりょーしゃん!わたひ!わたひは!!」ジタバタ

同僚「あーもー分かった分かったwwマスターお会計wwうん一緒でwww」ヨッコラセ

108 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 02:28:36.11 ID:IDFS0p+l0
<ありがとうございましたー

同僚「結局こうなるのねww」ヨイショ

修道女「えへへーwwどーりょーしゃんとみっちゃくwww」

同僚「肩貸して歩いてるだけだろがww…しかし」チラッ

修道女「…んー?どこ見てるのかなー???」クス

同僚「っ!いやあのべつにw」タジ

修道女「まー見られて減るもんでもないしww構わんよwww」ケラケラ

同僚「そう言われると逆に萎えるwww不思議www」ケラケラ

109 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 02:29:40.19 ID:IDFS0p+l0
同僚「…。」テクテク

修道女「」スゥ…スゥ…

同僚「おぶった瞬間に寝やがったw」

修道女「」スゥ…スゥ…

同僚「まぁ、大変だとは思うが」

同僚「男の事、頼むぜ」
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 11:02:54.70 ID:nRtd3ZTwO
-3日後 王立アカデミー研究室-



ブゥゥン…ブゥゥン…

女「気分はどう?」

男「なんだか緊張するよ」

研究室職員「楽にしていて下さい」

研究室職員「これから男さんの精神と魔法石とを再リンクします」

研究室職員「まず男さんには深い睡眠状態に入ってもらい、ナビシステムの心の中へ入っていきます」

研究室職員「現状ナビシステムの人格情報に損傷が見られる為、普段とは性格が異なっている場合があります」

研究室職員「あまり気にしないように」

研究室職員「上手くコンタクトが取れたら、ロックの掛かっている記憶情報にアクセスしていただきます」

111 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 11:03:28.47 ID:nRtd3ZTwO
女「男くん、先に謝っておくわ」

男「?どうしたんだ急に」

女「あなたは忘れている、忘れていたかった…」

女「そういう記憶を直視する事になるからよ」

男「仕方ないよ、それに俺の記憶をナビの奴に肩代わりさせておくわけにもいかないし」

女「謝りたい事は他にもあるのだけれど…」

男「?」

女「いえ、直接その目で見てきて頂戴」

男「うん、分かったよ」

112 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 11:13:08.01 ID:nRtd3ZTwO
バタバタバタッ…ガチャ!

修道女「遅くなりましたー!」ハァハァ

研究室職員「詠唱士の方ですね?お待ちしておりました」

女「遅かったじゃない」

修道女「す、すみません!」ペコッ

修道女「あ、あなたが男さんですね?」

男「?はいそうですけど」

女「今回の再リンクには高度な呪文の詠唱が必須なの」

女「そこで王立修道院から選り抜きの詠唱士の方をお呼びした…のだけれど」チラッ

修道女「ど、同僚さんと約束しました!絶対にナビさんを呼び戻して来て下さいね!」たゆん

修道女「私、全力でサポートします!」たゆーん

男「同僚と?よく分かんないけど、あぁ」

男「必ずあいつを連れ戻して来るよ」

女「(負けた…)」クッ

113 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 11:14:38.46 ID:nRtd3ZTwO
-王立アカデミー 研究室-


ブゥゥン…ブゥゥン…

修道女「それでは詠唱を始めます」キリッ

スゥ…

[闇よ 月よ 全ての星々よ]

[夜の帳に舞い降りたる汝の名において]

[この者にひと時の安らかなる眠りを与え給え]

パァァァァ…

男「」zzzz

女「…寝たわね」

修道女「深い眠りです。フライパンでひっぱたいても起きません」

女「確かに」ペシペシ

修道女「続いて、男さんの精神と魔法石をリンクさせます」

女「頼むわ」

修道女「…」キッ

[数多の心の一欠片 全てを統べる金色の意志]

[夢と現の狭間に在りし 敬虔なる汝の名において]

[今ここに眠りし 小さき者達の魂を]

[慈愛の縁(えにし)で結び給え ]

パァァァァ…グワン!

修道女「…っく」ギリッ

男「」zzzz

女「(男くん…)」

女「(ごめんなさい…)」

研究室職員「魔法石とのリンクが始まりました!」

修道女「…。」ギリリッ

114 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 11:17:59.97 ID:nRtd3ZTwO
-魔法石内部 精神世界-


シィィィン…

男「…ん」パチ

男「ここが魔法石の中か…んっ」ノビーッ

男「まずはナビの奴を探すか」スクッ

男「ナビシステムを探すってのもおかしな表現だけども」クス

テクテク…

男「見渡す限り真っ白な世界だな」

男「動くものは何も見えないし、声も聞こえない」

ザザッ…ザザッ

女『男くん聞こえる!?』

男「女か?あぁ聞こえてるよ」

女『どうやらリンクは成功したみたいね』

女『どんな状況?周りに何か見えるかしら?』

男「いや、見渡す限り真っ白な…ん?」

女『何か見えるの?』

男「あれは」テクテク
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 11:18:36.19 ID:nRtd3ZTwO
男「間違いない、俺のカーゴだ」ペタペタ

女『…なるほどね、男くんとナビちゃんが最も長い時間を過ごしたのがカーゴの中ですものね』

男「とりあえず乗ってみるか」ガチャ

女『気をつけてね。精神世界は夢と想像力の世界』

女『なにが起こっても不思議じゃないわ』

男「…うん、さっそく実感してるよ」

女『!男くん!何があったの!?』



「あーもーうるさいなぁー」

「邪魔せんとって」

116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 11:19:12.21 ID:nRtd3ZTwO
女『ちょっと!おt』プツッ

男「…探すまでもなかったな」

ナビ「ちゃーお?」フリフリ

男「久しぶりだな…心配したんだぞ?」

ナビ「…夢やってん、いや今も夢の中みたいなもんやけど」

男「?」

ナビ「男ちゃんの助手席に座んの?」ニコニコ

男「…ここでは実体があるんだな」

ナビ「せやでー?ほら見てみて!隣国でもらったストール巻いてみてん」フワッ

ナビ「なぁ似合うー??」

男「あぁ、よく似合ってるよ」ニコ

ナビ「えへへー?カラダがあるで、お望みならあんな事やこんな事も出来てまうでー?」ヘラヘラ

ナビ「とりあえず、触っとく?」モミ

男「バカ言ってんなよ…でも意外と元気そうで安心したよ」

ナビ「…そう思う?」


117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 11:19:40.60 ID:nRtd3ZTwO
キュルキュル…ブォン!

ゴゥンゴゥン…

ナビ「男ちゃんはな、ウチの中に色々置き忘れてん」

ナビ「っていうかウチ自身も忘れててんけど」

ナビ「…忘れたまんまでいたかったけど。」ハァ

ナビ「見に行くんやろ?その為に来たんやもんな」

男「あぁ、お前に持たせたままじゃいられないからな」

ナビ「…言うたな?」

ナビ「ほんなら行こか。ウチらの思い出再発見ツアー?」

ナビ「しっかり掴まっとき。」

ブォン!ブワァァァァ…!

118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 11:24:49.19 ID:nRtd3ZTwO
ブワァァァァ…

ナビ「男ちゃん、ちっちゃい頃の事覚えとぉ?」

男「里にいた頃か?親父に剣術を叩きこまれたり…」

ナビ「他には?友達の事とかは?」

男「友達?…いたはずだな、よく思い出せないが」

ナビ「…ほんならその前は?」

男「その前?」

ナビ「里に来る前の事。」

男「里に来る前?いやいや俺は里が地元で…」

ナビ「ちゃうで。」フルフル

119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 11:25:34.87 ID:nRtd3ZTwO
ナビ「男ちゃんの…ウチらの産まれた場所は里やない。」

ナビ「ついでに、男ちゃんが親父って呼んどぉ人も」

ナビ「男ちゃんの本当の父親やない。」

男「っ!…おいおい何を言い出すんだ!俺は里の生まれで…」

ナビ「まぁまぁ。まずはそっからやな。」

ナビ「これからウチらの本当の生まれ故郷に行くで。」

ナビ「その場所が失われるその時へな。」

男「俺の本当の生まれ故郷…」

ナビ「そ。今から20年前の」カチッ

ガタンッブロロロ…

ナビ「北西の小さな村。」

ブロロロ…キキッ

ナビ「よぉ見とって。」

カッ…バヒューーーーーン…

120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 11:29:02.83 ID:nRtd3ZTwO


ゴォォォォ…パチッパチッ


<おい!はよ逃げぇ!!

<がはっ!煙の勢いが…!

<誰か!まだ子供がおる!!


ブワァァァァ…!


男「ここは…」

ナビ「20年前、この北西の小さな村は焼失した。」

ナビ「この前の里ん時と同じ、勇者と魔王の戦闘の巻き添え食ぅてな。」

ナビ「殆どの村人が亡くなったんやけど、ウチらは奇跡的に助かった。」

ナビ「気ぃ失っとったおかげで煙をあんまり吸い込まんで済んだんや。」

ナビ「ほら、あれ見て。」

121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 11:30:39.89 ID:nRtd3ZTwO


<いややー!おとん!おかん!

<来い!とりあえず安全な場所まで逃げるで!



男「おじさんが小さな子供を…!」

男「おい!あれが俺なのか!?」

ナビ「ちゃうで。よぉ聞いてて。」



<うぅ…おとん…おかん…

<お…とこくん…



男「っ!!!…今俺の名前を…」

ナビ「今燃えとぉあの家が、ウチらの本当の生家。」

ナビ「今おっちゃんに助け出されたあのちびっ子はな、女さん。」

男「女!?女だって!??」

ナビ「今ウチらはまだあの家ん中におんねん。」

ナビ「炎に巻かれて、逃げようにもどっちがどっちかも分からんよぉになって」

ナビ「ウチらの両親は亡くなった。」

男「そ、そんな…」ガクガク

ナビ「隣に住んでた女さんは、ウチら家族がまだ家の中におるのに気がついて」

ナビ「助け出そうとしたんや。」

122 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 11:34:39.27 ID:nRtd3ZTwO
男「女が…」

ナビ「でも無理やった。そらそうやろ?ちびっ子一人でどうにかなる訳ないやん」

ナビ「アホな女さん。」クスクス

男「な、お前、笑って…?」ゾクッ

ナビ「なぁ男ちゃん、こっから見てても始まらんわ。」

ナビ「話聞いとぉだけじゃ実感できひんやろ?今あん中におる男ちゃんの意識に繋げるから。見てきて。」

男「あ、あの中に!?」ガクガク

ナビ「だいじょーぶやて。これは記憶の世界やねんから」ケラケラ

ナビ「ほな行ってきて。」スッ

男「おい待てっ!」グワン…グワングワン

123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 11:36:55.11 ID:nRtd3ZTwO


ゴォォォォ…ブワァァァァ…!

男「…っく!」パチ

男「熱っ!ここは…暖炉の中か…!」

ゴォォォォ…パチッ!パチッ!!

男「煙がひど…えほっげほっ!」

男「何とかここから逃げなきゃ…通れそうな場所h ガシャーン!

男「!!っくそ!閉じ込められたっ」ガンガンッ

男「ダメだ、頭がぼーっとしてくる…煙を吸ったせいか…」クラクラ

男「誰か気付いてくれ…俺はまだここに…あっ!」

男「瓦礫の隙間から人影が見える…あれが女か…!」

男「…げほっげほっ!声を出そうにもこの煙じゃ…!」ハァハァ

男「頼む…気付いてくれ…」ギュッ

ブワァァァァ…!

124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 11:38:11.83 ID:nRtd3ZTwO


男「このままじゃ死ぬ…助からない」クラクラ

男「あ、おじさんが女の手を」

男「行かないでくれ…俺を」

男「俺を置いて行かんとってくれ…」

男「お願いや…誰か…!!」



<くん…! おとこくん…!



ゴォォォォ…!!

男「うぅ…もう…あかんか」パタッ

男「頼む…一人に…せんと…って」ポロポロ



キラッ …パァァァァ


男「光が…なんや、へへ、お迎え、か…」ポロポロ


ブワァァァァ…!!


125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 11:43:06.34 ID:nRtd3ZTwO
パチンッ

男「!!!」ビクッ

ナビ「はーいおかえりちゃーん♪」

ナビ「どうやった?って聞くまでもないか」ケラケラ

男「…うぅ」ポロポロ

ナビ「怖かったやろー?しんどかったやろー??」ニヤニヤ

男「…っ」グシグシ

ナビ「ウチらはあのまま気ぃ失って、あのすぐ後軍の救助隊に助け出された。」

ナビ「両親が亡くなって、天涯孤独の身になってもうたんやけど」

ナビ「そんなウチらを女さん共々引き取ってくれたんが、里の親父さん達やったっけワケ。」

男「…なんで、お前…ずっと…」ポロポロ

ナビ「言わんかったかって?せやからウチも忘れててんもん」アハハ

ナビ「ホンマに思い出してたくなんてなかった。」

ナビ「でもあの時、里の炉が燃え上がったのを見て」

ナビ「ぜーんぶ思い出してもた。」

126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/27(金) 11:43:44.06 ID:nRtd3ZTwO
ナビ「燃え盛る炎の熱」

ナビ「煙で喉が焼かれる痛み」

ナビ「暖炉の中に閉じ込められて」

ナビ「誰も助けてくれへんかって」

ナビ「女さんの姿が見えたけど」

ナビ「呼んどぉ声も聞こえたけど」

ナビ「こっちの声なんか届くはずもなくて」

ナビ「そのうちに連れて行かれてもぉて」

ナビ「また一人取り残されて」

ナビ「痛くて」

ナビ「熱くて」

ナビ「怖くて」

ナビ「悲しくて」

ナビ「寂しくて」

ナビ「…。」キュッ

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