剣と魔法と運送業

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639 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/07(月) 20:21:43.03 ID:5wGco0KU0
議員「報告します」スクッ

議員「現在、荒野の国へ向かう使節団が出立の準備を進めています」

議員「しかし問題の本質となる部分が不明瞭な為、交渉は難航しそうです」

議長「芳しくないですね」ウーム

640 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/07(月) 20:24:34.42 ID:5wGco0KU0
-鍛治職人の里 広場-


勇者「っはぁ!」ブンッ

親父「おらぁっ!」ヒュンッ

ブンッ キィンキィン!ブンッ ヒュンッ


若者「二人ともすげぇ剣速…太刀筋が見えない」アゼン

若者「俺の打った剣じゃとても耐え切れないだろうな…」

641 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/07(月) 20:25:17.64 ID:5wGco0KU0
-鍛治場-


カンカンッ…カン カンッ

親父「お前と剣を打つ日が来るとはな!」ニカッ

勇者「振るうのはともかく作るのは初体験だ、よろしく頼む!」

親父「そしたら今ちょうど作りかけのがあるから、それで練習すっか!」

642 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/07(月) 20:25:58.41 ID:5wGco0KU0
ゴォォォォ…

親父「コイツが刀身だ」ソーッ カタ

勇者「すげー!熱で真っ赤だ!」

親父「既に大まかに剣の形になってるが、コイツで叩いて…」カンカンッ

親父「少しずつ形を造っていくんだ」カンカンッ

勇者「おぉ、面白そうだ!」

親父「鉄が冷えてきたら暖め直して、また叩いての繰り返しだ」

親父「やってみるか?」

勇者「あぁ!やらせてくれ!」

カンッ!カンッカンッ!

643 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/07(月) 20:30:34.14 ID:5wGco0KU0
親父「なぁ」ドッコイショ

勇者「んー?」カンッ

親父「あいつどこ行ったんだろな」スッ シュボッ

勇者「…賢者か」

親父「やり方はともかくよ」スパァ

親父「魔王討伐っていう根っこの部分は一緒なんだよな、俺達も賢者も」

勇者「…。」カンッ

親父「お前さ、やっぱ許せねぇか?」グシグシ

勇者「んー…分かんない」ヘラッ

親父「…そうか」

644 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/07(月) 20:31:07.85 ID:5wGco0KU0
勇者「でもさ」カンッ

親父「ん?」

勇者「あいつもあいつなりに考えてる事があるんじゃないかな?」

親父「あいつなりの方法で魔王を、って事か?」

勇者「俺、思うんだ」

勇者「同じ場所を目指してるのなら」

勇者「俺達の道はまた交わるんじゃないかなって」ニコッ

親父「お前…」

カンッ!カンッカンッ!

645 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/07(月) 20:33:21.24 ID:5wGco0KU0
-隣国 絹織物倉庫-


倉庫職員「積み込み完了です」

ナビ『積み込み票印字中ー♪』ジジジ ペリッ

男「それではお預かりしますね」

倉庫職員「お願いしまーす」ニコッ

ナビ『職員さんまたなー♪』フリフリ

646 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/07(月) 20:35:57.14 ID:5wGco0KU0
-隣国 街道-


ブロロロ…

男「今日は魔力ケチってないだろうな」クスクス

ナビ『よ、よぉ覚えとぉなそんなん』アセッ

ナビ『だいじょーぶ!帰りの分もバッチリ残ってんで♪』ピース

男「了解。それなら安心だ…ん?」


ガヤガヤ…


ナビ『路肩に人だかり…なんや喧嘩かいな?』

男「片方は地元の人達っぽいな…もう片方は」

ナビ『王国陸軍やんか!』

キキッ プシューッ

男「ちょっと見てくる!」ガチャ

ダダッ

647 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/07(月) 20:36:32.45 ID:5wGco0KU0
ガヤガヤ…

農民「うちの畑を接収するなんて聞いてないぞ!」

兵士「接収ではない!一時的に借りるだけだ!」

農民「どっちにしたって聞いてないもんは聞いてないぞ!」

兵士「分かってくれ、世界の平和の為なんだ!」

農民「畑が無くなったらどうやって生活してけってんだ!」

農民「そーだそーだ!世界平和の前に明日の生活がままならねぇや!」

男「ど、どうしたんですか?」

648 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/07(月) 20:37:49.11 ID:5wGco0KU0
兵士「物流協会か、我々の宿営地を作るのにここらの畑を貸してもらおうと思っているのだが…」

農民「ふざけんじゃねーや!だいたいこんな田舎にテント張って何しようってんだ!」

兵士「だから我々はこの辺りを魔族から守る為にだな…」

農民「んなモン知るか!俺達は日々の暮らしで精一杯なんだよ!」

農民「そーだそーだ!戦争ごっこならてめぇの土地でやりやがれ!」

兵士「何だと貴様!黙って聞いていれば!!」

農民「うるせー!おいみんな!やっちまえ!!」

男「皆さん落ち着いて!落ち着いて!」

ガヤガヤ…

649 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/07(月) 20:38:32.44 ID:5wGco0KU0
-15分後-


ゴゥンゴゥン…

男「…。」ガチャ バタン

ナビ『男ちゃんおかえり!何があったん??』

男「俺達は一体何をやってるんだろうな…」ハァ

ナビ『…話してぇな。どしたん?』チョコン

650 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/07(月) 20:39:34.89 ID:5wGco0KU0
ブロロロ…

ナビ『陸軍と地元の人の衝突かぁ…』

男「どっちの言い分も分かるんだけどな…」

ナビ『大義の為に小さきものを…って、やってる事変わってへんやん!』プンスカ

男「確かに陸軍のやり方は良くない。いきなり行って畑貸せだなんて」フゥ

ナビ『せやせや!アホかっちゅうねん!』

男「…だけど地元の人にだって良くない部分はあると思うんだ」

ナビ『え?例えば?』

男「端的に言っちゃうと、自分の身の回りの事しか見えてないんだよ」

男「見えてないし、見ようともしてない」

651 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/07(月) 20:41:02.13 ID:5wGco0KU0
ナビ『男ちゃん…怒っとぉ?』

男「勇者さんが人生を捧げて戦ってきたのも」

男「その戦いを支援する為の軍の派遣も」

男「軍の派遣活動を手助けする俺達物流協会の仕事も」

男「全て、普通に暮らす人達の為だ」

ナビ『せやな』ウンウン

男「なのに、当の自分達は何も差し出さず、協力もせず」

男「それどころか、誰かが必死になって頑張ってる現実を知ろうともせず!」

男「与えられた餌に文句を付ける事しかしない…」ギリッ

ナビ『男ちゃん、それは言い過ぎやで?』

男「」 ガンッ!!

ナビ『…。』

男「…ごめん。分かってはいるんだ」フルフル

ナビ『…。』ジッ

652 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/07(月) 20:44:28.78 ID:5wGco0KU0
-荒野の国 勇者の落涙-


バシュゥゥ…!!

女「よっと」ストッ

修道女「ほっ」ストッ

同僚「とうっwww」ズコッ

ポロッ コロンコロン

修道女「同僚さん大丈夫ですか!?」

魔法石(同僚ナビ)『ちょっと!気を付けて下さいまし!』

修道女「あれ?どーちゃんも一緒だったんですか??」

魔法石(同僚ナビ)『あら修道女さん、ごきげんよう』ニコッ

魔法石(同僚ナビ)『それで、一体ここはどこですの?ウトウトしている間に妙な場所へ来たものですねー』

同僚「よう相棒www事務所に仕舞ってくるの忘れてたぜwww」

653 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/07(月) 20:45:00.16 ID:5wGco0KU0
修道女「いいですよ、私がどーちゃん持ってますから」

同僚「あれどったの珍しいwww」

修道女「また落としたら危ないですからね…ほいっ」スポンッ

魔法石(同僚ナビ)『むぐっ!?何ですのこの包み込まれるような柔らかさは!』

同僚「お前ら何かっつーとそこに入れるよなwww」

女「備品を勝手に持ち出して…逮捕されても知らないわよ?」

同僚「余罪はないから大丈夫っすww」

女「うるっさいわね」

ザッザッザッ…

654 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/07(月) 20:46:40.00 ID:5wGco0KU0
オォォォォォオォォォ…

同僚「また来ちまったな」

修道女「淵から覗き込むだけでも分かります…本当に空間がない…」ゾクッ

女「えぇ…ここで位相転移が起こったと見て間違いなさそうね」ノゾキ

同僚「おい女ちゃんwwあんま乗り出すと危ねぇぞwww」

修道女「そ、そうですよ!もし空間が消失してるところに落下でもしたら…」

修道女「ん?どうなるんでしょう?」

女「さぁ、どうなるのかしらね」ニヤッ

同僚「…おい女ちゃん」ジトッ

修道女「何か企んでますね?」ジトッ

女「ほんと息ピッタリなんだから」クスッ

女「さて…こうして見ていても、ここで何が起こったのかさっぱり分からないわ」

修道女「そうですねー、実際に見たら何か分かると思ったんですが」

女「…だから行くの、知りたいから」ピョンッ

修道女「っお!女さん!!」ガシッ クラッ

同僚「っおい!!バカ!!」ガシッ

コケッ

女「…っく!」

修道女「い、いやぁぁぁぁ」

同僚「のわぁぁぁぁ」

同僚ナビ『なななな何ですのぉぉぉ』

ヒューーーーーーン…

655 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/07(月) 20:49:26.53 ID:5wGco0KU0
本日ここまでとします
スレの埋まり具合を鑑みて、1レスの文字数を少し増やしてみたりしてます
読み難い等あれば意見下さい
それではありがとうございました
656 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/07(月) 21:08:55.65 ID:1+cDZ+QPo
657 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/08(火) 03:24:21.58 ID:Ve+smKpfO
むしろ読みやすくていいくらいな気がする乙
658 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/08(火) 04:30:05.27 ID:USi6Evwd0

特に読みにくいとかはない
659 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/08(火) 20:40:57.20 ID:LRINisEI0
文字数について、ご意見ありがとうございます
参考にさせて頂きます
660 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/08(火) 20:42:03.02 ID:LRINisEI0
それと、少し書き溜めたいので本日お休みさせて頂きます
すみません
区切りがつき次第投下します
良かったらまた覗いてみて下さい
661 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/08(火) 21:57:09.57 ID:WJvR2ftVO
次回待ってる
662 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/09(水) 18:30:19.50 ID:hL49BO6h0
投下します
663 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/09(水) 18:31:04.11 ID:hL49BO6h0
-王都 北へ向かう街道-


ブロロロ…

男「…。」

ナビ「…。」

男「(隣国での一件以降、なんとなくナビと気まずい)」

ナビ『(あん時の男ちゃん、珍しく本気で怒ってたなぁ)』

男「な、なぁナビ」

ナビ『な、なにー?』

男「…。」

ナビ『…。』

男「….その、まだ怒ってるのか?」

ナビ『へ?怒っとぉのは男ちゃんの方やろ?』

男「俺が?…あぁ、あの隣国の人達には正直思うところがあるけど」

ナビ『それは分かったんやけどな』

男「な、何だ?」

ナビ『うぅん。ただ、怒っとぉ時の男ちゃんめっちゃ怖かったんよ』

男「うっ…すまない」シュン

664 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/09(水) 18:31:43.84 ID:hL49BO6h0
ナビ『まぁそんな顔もウチやから見せてくれるんかな、と思ったら…ね』フゥ

男「それはあると思う、少なくとも親父やなんかには絶対話せないよ」

ナビ『おとさんかぁ…おとさんやったらあん時何て言うたやろな』

男「どうだろう…何も言わないんじゃないかな」

ナビ『どゆこと?』

男「背中で語る…結果で示すしかないってさ」

ナビ『誰かに後ろ指さされても、やるべき事をやるだけやーって?』

男「多分な」

ナビ『なるほどなぁ、おとさんっぽいかも』

男「あぁ、親父はそういう人だ」

665 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/09(水) 18:32:47.10 ID:hL49BO6h0
-北の山脈 麓 材木倉庫-


キキッ プシューッ

ナビ『とーちゃく♪』

男「こんにちはー物流協会でーす!」ガチャ

先輩「お、男か」テクテク

男「あれ?先輩!」

ナビ『ホンマや!先輩はんやっほー♪』

先輩「ナビちゃんやっほー♪」ニカッ

先輩「今日は何だ?」

男「補給物資の下ろしと、帰り荷で材木を積んでいきます」

先輩「そうか、補給物資はガンガンに積んでるのか?」

男「そうなんですよ、しかもバラ積みで…」ゲンナリ

先輩「大型乗ると手積みの仕事ってホント萎えるよなー」ワハハ

男「萎えますね…積むだけで1時間以上かかりましたもん」フゥ

先輩「まぁ仕方ないさ、よし!人集めてくるからちょっと待ってろ」スタスタ

666 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/09(水) 18:33:54.29 ID:hL49BO6h0
男「陸軍の兵士がいっぱい来た」

先輩「みんな悪いな、だがみんなの為に積んできた補給物資だ」

先輩「一緒に下ろしてやってくれ」

兵士「了解っす!ドライバーさんもよろしくお願いするっす!」

男「もちろんです!ナビ頼む!」

ナビ『はぃなぁ♪ウイングおーぷん!』ポチ ウィーン


<それじゃ3人、荷台上がれ!

<持つぞ!せーのっ!

<台車でどんどん運べ!


-20分後-


男「終わった…」グッタリ

兵士「ドライバーさん!ありがとうございましたっす!」ビシッ!

男「い、いえ!こちらこそ!っす!」ビシッ

ナビ『男ちゃん口調が移っとぉ』クスッ

先輩「ほいお疲れさん、水分補給しとけ」スッ

男「ありがとうございます!」ゴキュゴキュ

男「っぷは!…あれ、先輩は今日は?」

先輩「俺は運行じゃないんだ、陸軍との共同任務の件でな」

男「そうだったんですね」ゴクゴク

先輩「それと、ちょっと小耳に挟んだ噂の真偽を確かめにな」ニヤッ

ナビ『うわさー??』

667 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/09(水) 18:36:13.72 ID:hL49BO6h0
-??? 暗い坂道-


バシュゥゥ…!!

同僚「にぎゃっ」ドタッ

女「きゃっ」ドサッ

女「…っく、どうやら死んではいないようね」イタタ

同僚「…お、女ちゃ…重…」ピクピク

女「っ!あらごめんなさい」サッ



同僚「のし掛かられるのも悪くないなwww」ツヤツヤ

女「ホントにもう…さて」

同僚「ここはどこかしらーwww」キョロキョロ

女「目の前に荒れた登り坂が続いているわね」

同僚「っていうか、暗くてそれ以外なんも見えねぇなwww」

女「修道女さんはどこへ行ったのかしら」キョロキョロ

同僚「うちの相棒もなwwwどっか別んトコにいんのかww?」

女「位相転移が起こったとすれば、どこに飛ばされたのかは分からないわね」

同僚「マジかwwまぁとりあえず進んでみるかwww」

女「そうね…あ、ちょっと待って」シャガミ

同僚「どしたんwww」

女「この土質…荒野の国のものと似ているわね」サラサラ

同僚「…ホントだ」

同僚「女ちゃんの読みが正しかったかwww」

女「進んでみましょう」ダッ

668 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/09(水) 18:39:05.52 ID:hL49BO6h0
-??? 白い砂浜-


バシュゥゥ…!!

修道女「ふぇっ」ドシャッ

修道女「…っ痛」ヒリヒリ

魔法石(同僚ナビ)『むぐー!もがー!』

修道女「あらら、ごめんなさい!」スポンッ

魔法石(同僚ナビ)『ふぅ苦しかった…ん?何ですの??』パァァァァ

パシュッ

同僚ナビ「…勝手に顕現しましたわ」パチクリ

修道女「ホントだ、カーゴと接続もしてないのに」

同僚ナビ「まぁこの方が動き安くていいのですけれど」ピョンッ

同僚ナビ「ちょっと肩に座らせて頂きますわね」チョコン

修道女「ふふっどうぞ…って、ん?」

ピトッ ツンツン

同僚ナビ「ちょっと何ですのくすぐったいですわ…って、あれ?」

修道女「触れる…実体がある!」

669 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/09(水) 18:39:40.00 ID:hL49BO6h0
同僚ナビ「一体何なんですのこの場所は?」

修道女「分かりません…見えるのは青い海と真っ白な砂浜と」キョロキョロ

同僚ナビ「ん?あの林を抜けた奥に建物が見えますわ」ピョンッ

修道女「ホントですか?」

同僚ナビ「えぇ、あれは確かに建物…お城のようにも見えますわね」

修道女「ここでこうしていても仕方ないですし、とりあえず向かってみましょうか」

670 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/09(水) 18:40:54.31 ID:hL49BO6h0
-??? 赤土の断崖-


同僚「登り切ったかwww」ハァハァ

女「歩きで行けるのはここまでみたいね…目の前には切り立った崖」ペタペタ

同僚「暗くて見えないけど、これかなり上まで続いてそうだぞww?」ミアゲ

女「困ったわね」ウーム

女「一応聞くけど、同僚くん登れそう?」

同僚「無理っしょwww俺バ◯ログ様じゃねぇしwww」



ザッ

「ここで何をしている?」

女「!」ビクッ

同僚「!!」クルッ

ザッザッ…

ローブの老紳士「何をしている、と聞いている」ザッ

女「…あなたは?」ジッ

ローブの老紳士「質問に質問で返すのはあまり賢いとは言えないな」

ローブの老紳士「まぁいい。私はこの場所の管理をしている者だ」

ローブの老紳士「そういう立場から改めて問う、ここで何をしている?」

女「くっ…同僚くん、どうする?」ヒソヒソ

同僚「…ここが位相転移でぶっ飛ばされた勇者の落涙だった場所なら」ヒソヒソ

女「見たところ、その可能性が高いと思うけど」ヒソヒソ

同僚「…なら考えがあるぜ」ヒソヒソ

671 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/09(水) 18:41:31.40 ID:hL49BO6h0
同僚「はいはーいwww」キョシュ

ローブの老紳士「何だ」

同僚「俺達、荒野の国から飛んで来ましてwww」テモミ

ローブの老紳士「大陸中央部、遊牧民の暮らす国か」

ローブの老紳士「それで、ここへ何をしに来たのだ?」

同僚「…墓参りに来たんです」

672 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/09(水) 18:46:46.55 ID:hL49BO6h0
-??? 明るい林-


ザッザッ

修道女「木漏れ日が気持ちいいですね…ん」ノビーッ

同僚ナビ「そもそもここ、とても暖かくありませんこと?」

修道女「そうなんですよ、勇者の落涙と比べると体感で20度以上違う気がします」

同僚ナビ「さっきのお話からすると、私達は勇者の落涙から」

同僚ナビ「どこか別の場所へ飛ばされてしまったという事なのかしら?」

修道女「恐らく…そして、あの場所から位相転移で飛ばされたのだとしたら」

修道女「ここがどこなのか、もはや見当も付きません」


パタパタ…

「ここは妖精の国よ、妖精使いさん」

673 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/09(水) 18:48:06.79 ID:hL49BO6h0
妖精「こんにちは」パタパタ

修道女「!?な、ナビ…?」ビクッ

同僚ナビ「いいえ…少なくとも私達のような魔法石を用いたナビではなさそうですわ」

妖精「ナビ?魔法石?」キョトン

妖精「私は城のエルフ様に仕える妖精よ、あなたも妖精使いさんなのでしょ?」パタパタ

修道女「ど、どういう事でしょう」ヒソヒソ

同僚ナビ「よく分かりませんけど…何となく彼だったらどうするかと考えると」ヒソヒソ

修道女「…話を合わせるでしょうね」ヒソヒソ

修道女「は、はい!そうなんです」ニコッ

同僚ナビ「はじめまして、妖精さん」ニコッ

妖精「はじめまして!綺麗な黒髪ね、触ってもいい?」サワサワ

同僚ナビ「もう触ってるじゃないですか…別にいいですけれど」

674 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/09(水) 18:48:50.70 ID:hL49BO6h0
妖精「お城へ行くのね?それならこの林を抜ければすぐよ」パタパタ

修道女「わ、分かりました!ご親切にありがとうございます」ペコッ

青い妖精「とんでもない!何か困ったらいつでも聞いてね」

同僚ナビ「ふふっありがとう、それではまた」フリフリ

675 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/09(水) 18:51:13.19 ID:hL49BO6h0
-北の山脈 麓 材木倉庫-


男「側近…賢者さんが北西地方に?」

先輩「根も葉もない噂話だが、何となく引っ掛かるんだよ」

ナビ『確かに…北西地方ってとこが気になるなぁ』

男「あぁ、俺達の故郷…20年前に焼失した小さな村」

先輩「俺もそこが気になってな。賢者さんが何を考えているのかは分からんが」

先輩「ちょっと確かめに行こうと思ってな」ニカッ

676 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/09(水) 18:51:53.45 ID:hL49BO6h0
男「気になったら即行動…なんだかそういうとこ、女と似てますね」クスクス

ナビ『っていうか、似てきたんとちゃう??』クスクス

先輩「むっ…何だよお前ら」

先輩「…でもまぁ、悪い気はしないな」フッ

男「女の方も最近ちょっと変わってきたんですよ?」フフッ

ナビ『なー!前より開けっぴろげになったっちゅーか!』

先輩「!?」

ナビ『…いや性格がやで?』ジトッ

先輩「分かってるよ!…む、じゃあそれって」

男「たぶん先輩の影響だと思います」

ナビ『仲良しやなーこのこのぉ♪』

先輩「お前らに言われたくないさ!」ワハハ

677 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/09(水) 18:54:05.83 ID:hL49BO6h0
-??? 赤土の大岩-


ザッザッ…

ローブの老紳士「…。」

女「えっくし」クシュン

同僚「女ちゃん見かけによらずオッサンみたいなクシャミすんのねwww」ケラケラ

女「うるさいわねー」ジトッ

ザッザッ…

ローブの老紳士「ここだ」ザッ

亡骸「」

女「…。」

同僚「…。」

ローブの老紳士「これは一部だ。転移の衝撃でバラバラになったものもあった」

ローブの老紳士「ここには形を留めていたものが集めてある」

ローブの老紳士「我々には埋葬の習慣がない。死者は無に帰するという考え方があるからだ」

ローブの老紳士「お前たちがお前たちのやり方で弔いたいならば、それを止める事はしない」

678 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/09(水) 18:54:52.43 ID:hL49BO6h0
女「見事に白骨化してるわね…ただ、衣服は少し残ってるわ」スッ

同僚「あの辺りの民族衣装だろうな、この独特の模様」ツマミ

ローブの老紳士「それらをどうする?持ち帰るのであれば簡単な箱位は用意出来るが」

女「是非お願いします」ペコッ

同僚「助かります」ペコッ

ローブの老紳士「構わん。少し待っていてくれ」

ザッザッ…


同僚「…これが理由なんだよ」ナデ

女「王国と荒野の国を隔てている心の障壁…」

同僚「それは同胞…家族を失った痛み、悲しみ、失意」

女「人の心を動かすのは人の心でしかないのね」

同僚「良くも悪くもな」フゥ

679 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/09(水) 18:56:19.30 ID:hL49BO6h0
-??? 白亜の城-


修道女「こ、こんにちはー」オズオズ

同僚ナビ「人の気配がありませんわね」

ギィィ…

同僚ナビ「…っぷ、くふふ」クスクス

修道女「っ!?いきなり何笑ってるんですか!??」ビクッ

同僚ナビ「すみません、思い出し笑いですわ…」ククッ

同僚ナビ「あなたと初めてお会いした時とシチュエーションがそっくりだったものですから」クスッ

修道女「も、もう忘れて下さいよぉぉ」シクシク

680 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/09(水) 18:56:54.13 ID:hL49BO6h0
修道女「あ、誰かいますよ」

同僚ナビ「すみません、ちょっと宜しいかしら?」

エルフ1「あら、お客さん?」ニコッ

エルフ2「ホントに!珍しいわねー人間のお客さんなんて」ニコニコ

修道女「あ、あの、すみません勝手に入って来ちゃって」ヘコヘコ

同僚ナビ「尖った耳に透けるような白い肌…お伽話に出てくるエルフそのものですわ」

エルフ1「気にする事ないわ。お客さんはいつだって歓迎するんだから」

エルフ2「しかも人間の妖精使いさんだなんて珍しい!」

修道女「あ、あの私達、実はこの地に迷い込んでしまってですね」かくかくしかじか

681 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/09(水) 18:57:45.76 ID:hL49BO6h0
エルフ1「それは大変だったわねー」ウンウン

エルフ2「でも安心して!女王様ならきっと何とかしてくれるわ」ニコッ

修道女「じ、女王様ですか」

同僚ナビ「このお城の城主様といったところかしら」

エルフ1「そういう事!私達から話をしておいてあげるわね」

エルフ2「広間で待っていてくれるかしら?食事でもお持ちするわね」

修道女「そそそんな悪いですよ!」グーギュルル…

同僚ナビ「…お腹は正直なようですわね」

修道女「///」

エルフ1「ふふっ可愛い人間さんね」クスッ

エルフ2「ホントに!」クスクス

682 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/09(水) 18:59:13.37 ID:hL49BO6h0
-白亜の城 広間-


修道女「ひ、広い…」ポツーン

同僚ナビ「50人は座れそうなテーブルに私達だけですからね」チョコン

修道女「で、でも優しそうなエルフさん達でしたね!」

同僚ナビ「…それはどうでしょう?」

修道女「へ?」

同僚ナビ「何となくいけ好かないんですの、彼女達…」ギリッ

修道女「そ、それはもしかして、彼女達のおっp同僚ナビ「」ギロリッ

修道女「で、でも少しずつ分かってきましたね」

修道女「ここは恐らく同僚さんの言ってた南の果て、伝説のエルフの島です!」

同僚ナビ「実在したんですのね…」

修道女「偶然とは言え、この場所に辿り着けるとは…!」ワナワナ

同僚ナビ「エルフと言えば魔法のエキスパート、詠唱士としては興味深いですわね」フフッ

683 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/09(水) 18:59:47.40 ID:hL49BO6h0
<お客人!お待たせしました!


ズラズラッ

修道女「す、凄いご馳走が…!!!」

同僚ナビ「あの私、今実体があるんですの」ウズウズ

修道女「あ!もしかしたら食べられるかも知れないですね!!」

修道女「ちょっと待って下さいね!」キコキコ

修道女「はい!あーん!」ニコッ

同僚ナビ「あ、あーん」パクッ

同僚ナビ「…。」モグモグ

同僚ナビ「!!!!」

684 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/09(水) 19:00:22.43 ID:hL49BO6h0
修道女「ど、どうですか??」

同僚ナビ「し、知らなかった…」ワナワナ

同僚ナビ「口の中を駆け抜ける"香り"」

同僚ナビ「滑らかな"舌触り"」

同僚ナビ「そして豊かな"味わい"…」

同僚ナビ「食事というものがこんなに素晴らしいものだったなんて…!」ウルウル

修道女「よ、良かったです…」ウルウル

同僚ナビ「さ!そうと分かればどんどん頂きましょう!!」クワッ

修道女「ですね!私もいただきまーす!!」

685 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/09(水) 19:01:05.40 ID:hL49BO6h0
修道女「いやー美味しかったです!」マンプクー

同僚ナビ「初めての食事…堪能させて頂きましたわ」ツヤツヤ

修道女「ふわぁ…お腹いっぱいになったらなんだか眠く…」

同僚ナビ「話には聞いてましたが…ホントなのですね…ふわぁ」

修道女「ん…なんだか…変…で」zzzz

同僚ナビ「意識が…ぅ…」zzzz

686 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/09(水) 19:01:42.20 ID:hL49BO6h0
本日ここまでとします
ありがとうございました
687 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/09(水) 19:47:09.31 ID:BOfZaq+xO
乙!やっぱオリジナルは面白いな

あとこういっちゃなんだが、ナビはもう一人の男のようなものでしょ?
つまり自分自身を好きになった、ようはナルS(飛ばされる音)
688 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/09(水) 20:58:51.41 ID:5qbairqFo
689 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/10(木) 19:35:47.24 ID:H/U81EIU0
投下します
690 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/10(木) 19:36:32.21 ID:H/U81EIU0
ザッザッ…ガラガラ…

同僚「わりぃっすねw台車まで貸してもらっちゃってwww」ガラガラ

ローブの老紳士「20年前、この大岩が出現した時」

ローブの老紳士「世は大きな戦いの最中であった」

ローブの老紳士「お前達がやって来たという荒野の国…そこに埋まっていた魔法石が、その力を暴発させ」

ローブの老紳士「辺り一帯の土地を丸ごと、この場所に転移させたのだ」

女「それまでこの場所には何があったんですか?被害を受けた方とか」

同僚「そうだな、いきなりこんな大岩が降ってきたら」ガラガラ

ローブの老紳士「案ずるな、ここには何も無い」フルフル

同僚「何もない?」

691 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/10(木) 19:37:15.60 ID:H/U81EIU0
-??? 暗い坂道


ザッザッ…ガラガラ…

ローブの老紳士「見ろ」

女「坂道を下りきった先は…崖?」

同僚「だな…暗くてよく見えねーけど」

ローブの老紳士「見えぬのではない、存在しないのだ」パァァァァ

同僚「んなっ!?体が…!」フワッ

女「これは…飛行魔法!?」フワッ


スススーッ…


ローブの老紳士「見えるか」フワフワ

女「暗闇の中に大岩がポツンと…浮いてる??」フワフワ

同僚「なんだこりゃ…何なんだここは??」ポカーン

ローブの老紳士「ここは亜空間。お前達の住む場所とは理が異なる」

ローブの老紳士「土地は空間の中に点在し、魔法によって行き来をする」

ローブの老紳士「通常、お前達がここに入ってくる事はない」

ローブの老紳士「必要がないからだ」


692 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/10(木) 19:38:01.23 ID:H/U81EIU0
同僚「俺達には用事があったんです」フワフワ

ローブの老紳士「理解出来る」コク

ローブの老紳士「我々には無い習慣だが、お前達が亡骸を埋葬する事は知識として知っている」

ローブの老紳士「それで、用事は済んだのか?聞きたい事があるなら聞くがいい」

女「亜空間…飛行魔法…点在する土地…そして」ブツブツ

同僚「女ちゃん、どした?」

女「…あ、あの」ガタガタ

ローブの老紳士「何だ?」

女「暗闇に点在する土地…うんと遠くに見える、一際大きなあの場所」ユビサシ

女「あそこに見える建造物は…?」ガタガタ

同僚「女ちゃん?震えて…?」

ローブの老紳士「あの場所は我らが頂」

スッ スルスル…

老ガーゴイル「我々魔族を統べる者、魔王様の城だ」

693 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/10(木) 19:39:30.08 ID:H/U81EIU0
-白亜の城 応接間-


修道女「っ!!」パチ

同僚ナビ「っ!!」パチ

修道女「あれ…私達…眠って…?」グシグシ

同僚ナビ「…初めての事とは言え、あそこまで強烈な眠気に襲われるものなのでしょうか?」

修道女「いえ、さすがにあそこまでは」フルフル

同僚ナビ「となると、何かを盛られたという可能性が高いですわね」

ガチャ

「お目覚めになりましたか?」

694 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/10(木) 19:40:55.41 ID:H/U81EIU0
女王「おはようございます」ニコッ

修道女「あ、おはようございますー」ペコッ

同僚ナビ「この度は素敵なおもてなしを賜り恐縮ですわ」キッ

女王「…私達の身を守る為、眠っている間に所持品を改めさせていただきました」

女王「島のみんなを守る為なの、気を悪くなさらないで頂戴」

同僚ナビ「分かりましたわ、では私達が危険な存在ではないとご理解頂けまして?」

女王「えぇ勿論、無礼をお詫びします」ペコッ

修道女「そ、そんな!分かって頂けたなら!」アワアワ

女王「…。」ジーッ

修道女「な、何でしょう」ドキドキ

女王「…あの子達の言った通りね」ジーッ

修道女「へ??」ドキドキ

女王「あなた、人間の匂いに混じって…私達と同じ匂いがするわ」

修道女「…そ、それって」

695 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/10(木) 19:42:25.59 ID:H/U81EIU0
かくかくしかじか

修道女「私の出生についてはこんな所ですねー」

同僚ナビ「そうだったんですの…では修道院のシスター長さんが」

修道女「はい!血は繋がっていませんけど、私のお母さんです」ニコッ

女王「…。」

修道女「あ、あの、それが何か…?」

女王「…。」

女王「…20年前の戦乱の最中、私達の同胞の一人が人間の男性と恋に落ちました」

女王「当時はまだこの島も人間の世界との行き来がありましたからね」

女王「彼女は男性と共に島を去り、子を成しました」

修道女「…。」

696 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/10(木) 19:42:56.00 ID:H/U81EIU0
同僚ナビ「その後はどうなったんですの?」

女王「元々彼女は体が弱く、加えて人間の世界の空気が合わなかったのでしょう」フルフル

女王「娘を出産した直後、亡くなったと聞いています」

修道女「そ、そんな…!」

女王「その後時を置かず、行商人をしていた男性も行方が分からなくなりました」

女王「戦乱の世です、珍しい事ではありませんでした」

女王「取り残された筈の娘がどうなったのかは、誰も知りません」

697 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/10(木) 19:43:32.83 ID:H/U81EIU0
修道女「そ、それじゃ…私が…??」ポカーン

女王「…そちらの妖精さん、私達が使役する妖精とは違いますね?」

同僚ナビ「私は精霊ナビと言って、魔法石に人間の心を写し取った存在なのですわ」

同僚ナビ「今は何故か実体化して、食事まで出来ましたけれど」

女王「成る程」コク

女王「それは恐らくこの島に満ちている魔力と、修道女さんの魔力が共鳴した結果でしょう」

女王「あなたの中に流れる、エルフの血がそれを成したのでしょう」

698 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/10(木) 19:45:08.68 ID:H/U81EIU0
修道女「私の中の…エルフの血…」

同僚ナビ「突然何の話をなさるのかと思えば…」

同僚ナビ「いきなりそのような話を聞かされて、彼女の気持ちをお考えでして!?」キッ

女王「驚かせてしまってごめんなさい」ペコッ

修道女「だ、大丈夫です…」フルフル

女王「ただ、分かって頂きたいの」

女王「もう二度と会う事はないと思っていた…私達の血を分けた仲間」ジワッ

女王「私は嬉しいのです…あなたが生きていてくれた事が」ポロポロ

修道女「…。」

同僚ナビ「…。」

女王「神よ…」ポロポロ

699 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/10(木) 19:47:00.81 ID:H/U81EIU0
-北西地方 小さな集落-


ブロロロ…キキッ

先輩「小型カーゴも運転ラクでいいな」ガチャ

先輩「さて…噂の真偽や如何に」ザッザッ

先輩「すんませーん!」

老人「む?なんや物流協会か」

先輩「はい!ちょっと届け物で、最近この辺りに越して来た男性いますよね?」

老人「あぁ、あの偏屈な野郎な」フンッ

老人「そっちの林の近くにある家やな」

先輩「林の近くですね?ありがとうございます!」

老人「ん?でもあんた荷物らしいモンを持ってるようには見えへn先輩「そーだ!教えてくれたお礼に!」サッ

先輩「東の港名産!帆立の燻製です、スコッチと合うんですよー」ニコッ

老人「おぉこりゃ美味そうやな!なんや悪いなぁ」ニコニコ

先輩「いえいえ!ほんのお礼ですから」

先輩「それでは!」ソソクサ

700 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/10(木) 19:47:52.89 ID:H/U81EIU0
-林の近く 小さな家-


先輩「いかにもって感じだな」

先輩「こんにちはー!物流協会でーす」コンコンッ

ギィィ

「何だ?荷物など届く覚えは…」

ガシッ

先輩「…お元気そうで何よりです、賢者殿」グイッ

賢者「っ!お前は巨石の間にいた…!」

先輩「俺はただのドライバーですよ」

先輩「もちろんあなたを逮捕する権限なんて有りませんからご安心を」ニコッ

賢者「…何の用だ?」ギロリッ

先輩「教えて下さい、あなたが何をしようとしているのかを」

701 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/10(木) 19:48:39.83 ID:H/U81EIU0
-小さな家 ダイニング-


賢者「ウィッタードでいいか?」コポポ

先輩「まさか賢者殿にお茶を淹れて頂けるとは」

賢者「自分の置かれた状況くらい理解している、お前を追い返したところでデメリットしかない」コトッ

先輩「頂戴します」ズズッ

賢者「…。」ズズッ

先輩「…ふぅ。それで、ここでは何の研究をなさってるんですか?」

賢者「私の使命はただ一つ、魔王を討つ事だ」

先輩「…その為に、人の血で手を染める事になってもですか?」ギロッ

賢者「…神の雷と同じ威力、同じ規模の攻撃を人力のみで賄おうと思ったら」

賢者「陸軍など全員突っ込んでもまるで足りないのだ」フンッ

先輩「だからってあんたは勇者さんや男を…!」

賢者「…。」ズズッ

賢者「そして陸軍を全員投入するという事は、その全員の命を危険に晒すことだ」

賢者「遠隔攻撃である神の雷とは違い、戦う者全てを死なせる事になるやも知れん」

賢者「お前達の言っている事は、所詮甘っちょろい正義感や上っ面の理想論でしかないのだ」

先輩「そ、それは….!」ギリッ

702 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/10(木) 19:49:19.12 ID:H/U81EIU0
賢者「質問に答えよう」

賢者「現状、巨石の力は沈黙したままだ」

賢者「勇者という強い心を持った、いわば"核"が欠落しているからだ」

賢者「私は新たな"核"を生み出す為にこの地で研究を続けている」

先輩「核…それは人の心という事か?」

賢者「それに限りなく近いものだよ、お前もよく知っているだろう」

先輩「まさか…ナビシステムか!?」

賢者「左様。それこそがナビシステム開発の当初の目的だったのだ」

賢者「人の心を写し取り、魔法石に封じ込める…」

賢者「勇者が巨石に取り込まれたのとは逆のプロセスだな」

先輩「じゃあ、あの巨石をそのままナビシステムとして使うって事か」

賢者「あぁ。だが、簡単な事ではない」

賢者「20年前のあの日、この地に落ちた涙の欠片…」

賢者「そういった、心を増強する何かが必要なのだ」

先輩「心を増強する何か…」

703 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/10(木) 19:52:39.25 ID:H/U81EIU0
-亜空間 赤土の大岩付近-


同僚「いぃっ!!?ま、魔族!?」ゾクッ

女「やっぱりね…」ビクビク

老ガーゴイル「それが分かったとて、さて何とする?」

同僚「何とするって…ここでやるしかねぇのか?」

女「無理よ…今私達はあの魔族の飛行魔法で宙ぶらりんなのよ」フワフワ

同僚「確かにこの状態じゃ戦うっつってもな」フワフワ

女「そういう事。喧嘩にすらならないわ」

老ガーゴイル「考える事の出来る人間は嫌いではない」

老ガーゴイル「お前達はお前達の用事を済ませる為にここへ来た」

老ガーゴイル「そしてその用事は、無事に済ませた」

同僚「それに関しちゃ感謝してるぜ」

女「ど、同僚くん…」

老ガーゴイル「ここには我々の家があり、同胞があり」

老ガーゴイル「秩序があり、生活がある」

同僚「なんだ、人間と変わんねぇじゃねーか」

老ガーゴイル「そうだ。そして、お前達が我々に対して剣を抜くつもりがないのならば」

老ガーゴイル「私はこのまま、お前達を荒野の国へ送り届けよう」

704 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/10(木) 19:53:29.06 ID:H/U81EIU0
女「っく…ど、同僚くん、どうする?」ヒソヒソ

同僚「どうしようもなくねww喧嘩にならねぇって言ったの女ちゃんじゃんww」ヒソヒソ

女「そりゃそうだけど」ヒソヒソ

同僚「分かったよオッサン」クルッ

同僚「俺と彼女はここでアンタに剣を抜かない、それは約束する」

老ガーゴイル「そうか」

同僚「だけど他の人間は分かんないぜ?アンタらをぶっ飛ばしたくて仕方ない奴がいっぱいいるんだ」

老ガーゴイル「どうしても戦争がしたいというのならば相手になろう」ギロリッ

女「っ!」ビクッ

老ガーゴイル「だが、わざわざ同胞の亡骸を拾いに来たお前達を蹂躙するような趣味はない」

パァァァァ

老ガーゴイル「帰ってよく話せ。意味のある選択とは何か、と」



バヒューーーーーン

705 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/10(木) 20:02:26.97 ID:H/U81EIU0
女王「取り乱してしまってごめんなさい」ペコッ

修道女「い、いえいえ!」アセ

女王「人間の男性との間に生まれたとは言え、あなたが私達の同胞である事に変わりはありません」

女王「同胞…いえ、家族ですね」

修道女「か、家族…」

女王「私達はあなたを家族として迎える準備があります」

女王「あなたがもし望むのであれば、この島で一緒に暮らしましょう」

修道女「え、えぇっ!!?」

女王「勿論今すぐここで決めろ、とは言いません」

女王「ゆっくり考えて決めて下さい、私達はいつでも歓迎します」ニコッ

706 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/10(木) 20:03:39.33 ID:H/U81EIU0
-白い砂浜-


ザッザッ…

女王「私達がこの島を結界により封じ込めたのは」

女王「人間と魔族との戦が激しさを増してきた頃です」

女王「私達エルフは魔法詠唱に長けていますが…主に回復や祝福、蘇生といった類に限られます」

女王「攻撃の手段を持たぬ私達は、ただその身を潜めるしか生き延びる術がなかったのです」

修道女「…。」

同僚ナビ「…。」


ザッ


女王「ここでお送りします」

修道女「…色々と、お世話になりました」ペコッ

同僚ナビ「…。」ペコッ

女王「最後にこれを渡しておきます」スッ

修道女「これは…ペンダント?」

女王「この島は通常の方法では行き来が出来ません」

女王「このペンダントを身につけて、転移魔法を詠唱すれば外からまた訪れる事が出来ます」

707 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/10(木) 20:04:16.53 ID:H/U81EIU0
修道女「あ、ありがとうございます」ギュッ

女王「シスター長さん…あなたのお母様によろしくお伝え下さい」

修道女「…はい」コク

女王「ではお二人共お気を付けて、またお会い出来る事を望んでいます」ニコッ


パァァァァ…

バヒューーーーーン

708 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/10(木) 20:06:51.09 ID:H/U81EIU0
-夜 王都郊外 煉瓦橋-


リンゴーン リーンゴーン…

男「」シュボッ スゥ

スパァ…

男「…ふぅ」

テクテク

同僚「どったのwこんな所で黄昏ちまってよwww」ニカッ

男「そんなんじゃないよ」フフッ

男「ここから見る時計塔が好きなんだ」

同僚「王国の象徴だかんなーw今日もビシっとキマってるぜwww」

男「…吸うか?」スッ

同僚「珍しいじゃんかwwじゃ付き合いましょーww」シュボッ スゥ

スパァ…モクモク

同僚「…えほっw」ゴホゴホ

男「おい大丈夫か?無理して吸わなくても」

同僚「いーんだよww同じ味吸ってたらよwww」

男「?」

同僚「同じ気持ちになれるかも知れないじゃんか」ニカッ

男「…ありがと」フッ

709 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/10(木) 20:07:43.57 ID:H/U81EIU0
男「色々あったみたいだな」

同僚「お互いになーww」

同僚「うちの相棒に聞いたぜ?ナビちゃんの前でガチギレしたらしいじゃんww」

男「…なんか虚しくなっちゃってさ」ハァ

同僚「難しいよな、みんなどうしたって自分の事で精一杯になっちまうもんさ」

男「多分さ、ほんのちょっとした事なんだよ」

男「みんながほんの少しずつ優しくなれれば、世界はきっと…」

同僚「お前のそういうとこ、嫌いじゃないぜ」フフッ

同僚「なぁw煉瓦橋も時計塔も俺達王国民の誇りだけどよwww」

男「…もう一個あるってか?」クスッ

同僚「そのとーりwww」ビシッ

男・同僚「修道院特製エールと揚げたてのフィッシュフライ!!」

男「ハハッ!オッケー行くか!」ニコッ

同僚「そうこなくちゃよwww」ワハハ

710 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/10(木) 20:08:30.41 ID:H/U81EIU0
王都 酒場街


ワイワイ…ガヤガヤ…

同僚「俺さ、協会には報告してねぇんだけどww」グビ

男「?」ゴクゴク

同僚「勇者の落涙からぶっ飛んでった場所で、魔族に会ったんだww」

男「ま、魔族!?大丈夫だったのか??」

同僚「なんかすげー聡明な奴でよww説教?されちまったwww」ケラケラ

男「説教?魔族に??」ポカーン

同僚「んで、なんか色々分かんなくなっちまったんだ」フゥ

同僚「俺アホだからさwww難しい事は分かんないのよwww」

男「よく言うよ」クスッ

同僚「いや、マジでさ」

711 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/10(木) 20:08:59.88 ID:H/U81EIU0
同僚「お前、想像した事あるか?」

男「何を?」モグモグ

同僚「魔族にも心があるかも知れないって」

男「…お前の会った魔族ってどんな奴だったんだ?」

同僚「同胞の亡骸を拾いに来たお前らをわざわざぶっ殺す趣味はねーってよw」

男「そ、それって」

同僚「んで、最後に言ったワケw」

同僚「"意味のある選択とは何か、よく考えろ"ってな」

男「衝撃だな…」

同僚「だろーww?俺もうワケ分かんなくなっちゃってよwww」

男「うぅむ…」

同僚「なぁ、俺達のやろうとしてる事って正しいのか?」

男「…。」

712 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/10(木) 20:12:13.09 ID:H/U81EIU0
-物流協会事務局 女の執務室-


カリカリ…

女「ナビくんがいてくれて本当に助かるわ」

ショタナビ『ほめられちゃった!へへー』ニコニコ

女「それにしてもあの魔族…」ペラッ

[禁書指定 全員集合!魔族大図鑑]

女「あの姿形から見て、ガーゴイルね」パラパラッ

女「"…ガーゴイルは人間並みの高い知能を持ち、魔法詠唱に長けているぞ!"」

女「"戦闘能力も高く、剣の一振りで岩をも砕く力を持っているぞ!"」

女「…やり合わなくて正解だったわね」ゾクッ

女「でも、人間並みの高い知能って事は」

女「あの時の話は、ともすれば私達を欺く為の嘘だったのかも…?」

女「いえ、だったらもっと手っ取り早くやられていたでしょうね」フルフル

女「何故私達に遺骨を拾わせて何もせずに送り返したの?」

女「あの魔族の話が本当だとしたら」

女「私達のやろうとしている事って…」

713 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/10(木) 20:12:50.52 ID:H/U81EIU0
女「魔王についても書かれているわね」パラパラッ

女「しかしこんな文献誰が書いたのかしら…?」

女「"魔法はその存在全てが謎に包まれているぞ!"」

女「"太古の昔からの記憶を引き継ぎ、その聡明さは人間を遥かに凌ぐぞ!"」

女「"強烈な広域魔法を連続して使ってくるから要注意だ!"」

女「"この先は君自身の目で確かめてくれ!"…って」

女「最後まで教えなさいよ!」

ショタナビ『おねーさん怒ってる?』

714 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/10(木) 20:13:19.05 ID:H/U81EIU0
本日ここまでとします
ありがとうございました
715 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/10(木) 23:48:12.90 ID:m/l+EeoLo
716 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/11(金) 10:32:30.77 ID:lGtkKwZCO
まあ確かに一部の魔族は敵対したかもしれないが=全ての魔族が悪とかとは限らないもんな…
魔族にだってそれぞれの個性や考え方もあるし生活だってあるだろうし
それに魔王だって実際に目にしたわけでもなく話でしか聞いてないから伝承=本当とも限らないもんなぁ
そう考えたら何を信じたらいいかも何が正解かもわかんないよね
717 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/11(金) 19:15:40.20 ID:o9PPczQNO
-1週間後 王国議会-


議長「荒野の国から書簡が?」

局長「はい、物流協会の事務局宛てに」ペラッ

国王「…。」

局長「読み上げますか?」

議長「頼む」

局長「では…」コホン

"過去は変えられない、だが"

"貴君らは筋を通してくれた"

"彼の地を訪れ、我が同胞を連れ帰ってくれた事"

"誠に痛み入る"

"西の王国より打診された陸軍派遣について"

"世界の平和という大義の元に"

"これを承認しよう"

"これ以上、無益な骸を重ねる事のなきよう"

"くれぐれもお願いされたし"

"荒野の国 首領"

局長「以上です」

議長「どういう事だ…」ポカーン

国王「…。」

718 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/11(金) 19:16:29.06 ID:o9PPczQNO
大佐「詳しい事は分からないが、ともかくこれで荒野の国への派兵が叶うわけだな」

局長「そういう事ですね」

議長「分かりました、それでは早速使節団を派遣して具体的な話し合いをしましょう」

国王「議長」スクッ

議長「はい、陛下」

国王「私も同行する」

議長「へ、陛下ご自身がですか!?」

大佐「荒野の国までは長旅です、魔族との衝突などの危険も考えられます」

国王「陸軍の護衛では不十分だと?」

大佐「い、いえ!決してそのような事は」

国王「向こうが心を開いたのならば、こちらもそれなりの態度を示さねばならん」

国王「これは王国の長である私の責任だ」

議長「わ、分かりました」

大佐「それでは陛下のご同行を加味した上で、日程の調整などを相談しよう」

局長「承知しました、こちらも手配を進めます」

国王「…。」

719 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/11(金) 19:19:28.73 ID:o9PPczQNO
-王都 市街地-


ブロロロ…

同僚「…。」ガチャ

同僚ナビ『やけに静かですわね、拾い食いでもしてお腹壊したんですの?』

同僚「お前は俺をどういう目で見てんのよwww」

同僚ナビ『冗談ですわ』クスッ

同僚「…なぁ相棒」

同僚ナビ『何ですの?』

同僚「修道女の奴、何があったんだ?」

同僚「勇者の落涙で再会した時、ずっと塞ぎ込んでやがったが」

同僚「お前達がぶっ飛んでった先で何があったんだ?」

720 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/11(金) 19:20:06.59 ID:o9PPczQNO
同僚ナビ『何かがあった、私に言えるのはここまでですわ』フゥ

同僚「それほぼ何も言ってなくねwww」

同僚ナビ『個人的なお話なので、ご本人にお聞きになって下さいませ』フイッ

同僚「…分かった」

同僚ナビ『あ、次の届け先また不在でしたわ』

同僚「もー自分で時間指定しといて不在とか何なのww忍びの者なのwww?」

ガチャ ブロロロ…

721 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/11(金) 19:21:33.13 ID:o9PPczQNO
-物流倉庫 事務所-


男「荒野の国への運行ですか?」

ナビ『マジか』

先輩「ついに決まったか」

配車係「えぇ。一週間後に出発です」

配車係「まずシップで隣国へ渡り、向こうで展開している陸軍と合流して」

配車係「あとはひたすら東へ向かいます」

ナビ『ひゃー長旅やん!』

配車係「途中、何箇所か展開している陸軍の宿営地で補給を受けられますので」

先輩「それなら問題ないか」

男「…。」ギリッ

722 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/11(金) 19:22:08.07 ID:o9PPczQNO
配車係「それと、今回の運行では国王陛下も同行します」

ナビ『こ、国王はん!?』

配車係「荒野の国との関係上、代理の者に行かせるわけにはいかないと」

配車係「陛下直々のご意向です」

先輩「陛下を乗せて行くのか、責任重大だな」

配車係「とりあえず、来週までは通常の運行も緩めに組みますので」

配車係「体調管理等、しっかり準備しておいて下さい」

723 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/11(金) 19:23:23.28 ID:o9PPczQNO
-夜 王都酒場街-

[BAR REQUIEM]


カランッ

女「荒野の国への派兵が決まったようね」ゴク

先輩「あぁ、一週間後に出発だ」

女「…しばらく会えなくなるわね」

先輩「珍しいじゃないか、君がそんな台詞を吐くなんて」フフッ

女「あら、ご不満?」

先輩「大歓迎だとも」

女「…不安なのよ、何だか」

女「私達がやろうとしている事は、果たして本当に正しいのかしら?」

先輩「…どういう意味だ?」

女「…。」
724 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/11(金) 19:25:28.04 ID:o9PPczQNO
-鍛治職人の里 広場-


親父「そうか、荒野の国への派兵が決まったか」

男「俺と先輩で行ってくるよ」

親父「気ぃ付けて行ってこいよ」ポンッ

男「うん…」

親父「…何だ、まだ腹が決まってねぇって顔してるな」ジーッ

男「なぁ親父、あのさ」

親父「んー?」シュボッ スゥ

男「…魔王って、どんな奴なんだ?」

親父「魔王か…」スパァ

親父「実は俺もよく分かんねぇんだ」

男「そうなのか?だって20年前に魔王討伐目前まで行ったんだろ?」

親父「強いて言うなら…ありゃ本当の魔物だ」

725 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/11(金) 19:26:07.34 ID:o9PPczQNO
男「どういう意味だ?」

親父「姿は見えず、声も聞こえず」

親父「ただそこに在るだけで感じる、圧倒的な殺気…」

親父「空気が震える程のな」

男「そ、そんなのを相手に戦ってたのか…」ゾクッ

親父「勇者や賢者と旅する中で、強い奴には死ぬ程遭遇したが」

親父「あそこまでの恐怖を感じた事はなかったな」

男「…。」

親父「前にも言ったがな」シュボッ スゥ

男「とにかく生き残れ、だろ?」

親父「そういうこった」スパァ

親父「必ず生きて帰ってこい、いいな?」

男「あぁ、約束する」

726 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/11(金) 19:27:01.59 ID:o9PPczQNO
-鍛治職人の里 入り口-


ゴゥンゴゥン…

ナビ『おとさん、はじめまして』ペコッ

親父「お前さんがナビちゃんか!はじめまして!」

親父「可愛らしい女の子じゃないか!」ワハハ

ナビ『ど、どーもです』カチコチ

男「なんだよお前緊張してるのか?」クスッ

ナビ『そ、そらするやろ!男ちゃんのおとさんやで!!』

親父「懐かしいなぁその北西訛り…女の小さい頃を思い出すぜ」ニコニコ

ナビ『え、ウチとちっちゃい頃の女さんって似てるん??』

親父「容姿は違うがな、よくしゃべる所とかはそっくりだ」ウンウン

ナビ『なんか複雑やな…』ジト

男「え?俺??」

727 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/11(金) 19:27:57.91 ID:o9PPczQNO
親父「あとその"おとさん"ってのがまた…」ウルッ

男「な、なんだよ親父!急に泣くなよ!」アセッ

親父「泣いてねーよ!俺にとっちゃ大事な思い出なのさ」ニカッ

ナビ『ウチの中の記憶にあるおとさんの様子と全然変わらへん…ホンマに年とったん?』

親父「なんだよ勇者とおんなじ事をナビちゃんまで言うのかよ!褒めてねーからそれ!」ワハハ

男「まぁともかく、こいつが俺の相方なんだ」

ナビ『ふふっ。相方ってなんかえぇなぁ♪』

男「運行でもそうだし、今は魔法剣として一緒に戦う事も出来るからな」

ナビ『魔法剣なー!さすがおとさん♪あんなんよぉ思いついたわ』ウンウン

728 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/11(金) 19:29:20.23 ID:o9PPczQNO
親父「魔法剣?なんだそりゃ」キョトン

男「いやいや、親父がくれた剣に魔法石を嵌める為の穴があるじゃないか」

親父「穴?あー柄のトコの穴か!」

ナビ『そーそー!ウチがぴったりハマんねん!』

親父「ありゃな、指を入れる穴だ」

男「へ?」

親父「俺の手癖というか、あそこに指を入れると手首のスナップで剣が振れるんだよ」クイックイッ

男「そうなの!?」ガビーン

ナビ『なんやそれ…』ズコーン

親父「なるほどな、そこに魔法石を仕込むわけか!よく思いついたな!」ワハハ

男「俺はその為の穴だとてっきり…」

親父「だって俺魔法使わねぇもん」アッサリ

ナビ『ほんなら、たまたまやったん??』

親父「玉(魔法石)だけにな」キリッ

男「そんな…」アゼン

ナビ『おとさん、そんなんいらんねん…』ボーゼン

親父「まぁ偶然とは言え、今後のお前の武器になり得るんじゃねぇか?」ニカッ

男「魔王の話を聞いたら尚更戦いたくなくなったけどな…」ゲンナリ

729 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/11(金) 19:31:39.57 ID:o9PPczQNO
-夜 王都郊外 煉瓦橋-


リンゴーン リーンゴーン…

同僚「どうしたのよww勇者の落涙以降元気ないじゃんかwww」

修道女「へへ、そうですかね…」

同僚「そんなに分かりやすく元気なくなる人そういないぞwww」

修道女「…。」ウツムキ

同僚「…何かあったのか?」ポンポン

修道女「…っく、う…」ウルウル

修道女「うぅ…同僚さぁん…!」ポロポロ

同僚「おいおい何だよどうしたんだよ」アセッ

修道女「わたし…わたし…」ポロポロ

ヒシッ

同僚「…っ」ギュッ ポンポン

730 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/11(金) 19:32:13.64 ID:o9PPczQNO
[BAR REQUIEM]


カランッ…

同僚「そうか、お前の出生がな」

修道女「私、いきなりそんな話をされてもう何が何だか…」フルフル

同僚「そりゃ困るわなwwwだってお前にとっての家族はよwww」

修道女「修道院の皆さんと…シスター長さんです」コクッ

同僚「だったらもう答えは出てるじゃねぇか」

修道女「そうなんですけどねー」ベター

同僚「カウンターに突っ伏すんじゃないわよ行儀悪いwww」

731 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/11(金) 19:32:49.26 ID:o9PPczQNO
修道女「あの方…泣いてたんです」

同僚「?」

修道女「私が産まれてきて、生きてたって事が嬉しいって…泣いてくれたんです」ウルッ

同僚「…そっか」

修道女「今更家族になる事は難しいんですけど…何かしてあげたいんですよね」

同僚「何かって…肩揉みとかか?」

修道女「そこ草生やさないんですか」クスッ

同僚「冗談のつもりじゃなかったもんwww」

732 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/11(金) 19:35:30.72 ID:o9PPczQNO
-王立図書館-



男「長旅に備えて多めに借りておくか」テクテク

魔法石(ナビ)『すんげー!本がいっぱいやぁ!』ウキウキ

男「まぁ図書館だからな」フフッ

魔法石(ナビ)『タイトルを見てるだけでも面白いなぁ♪』

男「あれとこれと…あ、それも読んでみたかった奴だ」

魔法石(ナビ)『あ!男ちゃんあれは?』

男「ほう、たまにはこういうジャンルも挑戦してみるか」スッ

テクテク

733 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/11(金) 19:37:03.60 ID:o9PPczQNO
-深夜 物流倉庫 事務所-


カタカタ…

配車係「明日の配車組みはこんなもんか…んーっ」ノビーッ

ナビ『どーちゃん久しぶりやんな!』ハイタッチ

同僚ナビ『ふふっ。そういえばそうですわね』ハイタッチ

ナビ『あんなー?今日男ちゃんと図書館に行ってんかぁ』

同僚ナビ『男さんも読書家でしたわね、全く同僚さんにも見習って欲しいですわ』クスッ

ナビ『でなー?なんや面白そうなタイトルの本があってん!』

734 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/11(金) 19:37:40.86 ID:o9PPczQNO
ガチャ

女「お疲れ様です」

配車係「あ、お疲れ様でーす」

ナビ『女さんや!やっほー♪』

女「はいはい、やっほー♪」ニコッ

ショタナビ『ふわぁ…おねーさん僕もう眠いかも』ムニャ

同僚ナビ『!!!』

ナビ『あ!その子が噂の!』

女「そういえば紹介してなかったわね、私のナビくんよ」コトッ

[魔法石ノ充填ヲ開始シマス…]パァァ

735 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/11(金) 19:39:20.79 ID:o9PPczQNO
ナビ『ウチが男ちゃんのナビやで!よろしゅうね♪』ニコッ

同僚ナビ『なんと…可愛らしい…』ハァハァ

ショタナビ『こんにちは!あれ、こんばんは、か!間違えちゃった』テヘ

同僚ナビ『くっはぁ!!』ズキュゥゥン

ナビ『なぁなぁ女さん?』

女「何かしら?」

ナビ『今日男ちゃんと図書館行ってな?面白そうな本を借りてきてん!』

女「あぁこれかしら?もう机の上に出しっぱなしにして」スッ

ナビ『それヤバない?おんなじ名前の人が24人もおったらワケ分からんくなるやん!』ケラケラ

女「ふふっ、そうじゃないのよ」

女「これは解離性障害、いわゆる多重人格の人の話なの」

ナビ『たじゅーじんかく?』

736 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/11(金) 19:40:14.35 ID:o9PPczQNO
女「一人の人間の中に、何人もの別々の心が生まれてしまうのよ」

ナビ『ぶっ飛んだ設定やんなー』

女「信じられないかも知れないけれど、この本はノンフィクションなの」

ナビ『マジで!?こわっ!』

同僚ナビ『さぁ坊や…お姉さんと遊びましょう…』ワキワキ

ショタナビ『おねーさんこのひと怖い』

ナビ『ありゃ、変なスイッチ入ってもた』

737 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/11(金) 19:41:16.41 ID:o9PPczQNO
ナビ『ほんで?その人はどうなるん?』

女「統合と言って、バラバラになっていた人格達が一つになるの」

ナビ『ほぇーそうなんや…あ!』

ナビ『読む前に結末聞いてもた…』ガーン

女「あら、ごめんなさい」クスッ

ナビ『(でも…心が一つに、か)』

ナビ『(なんかえぇなぁ♪)』

738 : ◆o/5nn0YDew [saga]:2018/05/11(金) 19:43:08.01 ID:o9PPczQNO
本日ここまでとします
ありがとうございました
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