魔法使い「私の事、スカウターで覗くのやめてくださいっ!」 勇者「やだ」

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192 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/18(月) 13:35:10.79 ID:CiSWVk5A0
面白い
193 : ◆rRu4LM9vFs [saga]:2018/06/21(木) 23:20:18.53 ID:iJui9JJa0

――弓射手の家の前


弓射手「さぁ、ついたわ。私の家へようこそ、可愛い子供たち」

魔法使い「おかあさんの、家…?」

勇者「二人は一緒には住んでいないのですか」

謎の男「うん、僕はあの街の入り口に家を借りているんだ。どうしても仕事柄、保護した魔族をすぐに手当てしたりする必要もあるから聖王の領地に近くないといけなくてね」

魔法使い「お父さん、おかあさんの事が大好きなのに寂しくないの?」

弓射手「…」

謎の男「ふふ。寂しくなんかない、むしろ弓射手にばかり寂しい思いをさせてるんじゃないかっていつも謝っているくらいだよ」

弓射手「別に、私は寂しくなんか・・・」

194 : ◆rRu4LM9vFs [saga]:2018/06/21(木) 23:20:46.15 ID:iJui9JJa0

勇者「……不安になったりはしないんですか」

弓射手「え?」

勇者「あ、いえ…。なんでも、ありません」

弓射手「…? ともかく中に入って。久しぶりの大所帯ですもの、用意がまだ整いきっていないの。ごめんなさいね」

魔法使い「大丈夫だよ。私、冒険者だもん。外でだって眠れるよ」

謎の男「たくましくなったあぁ」ムギュ

魔法使い「もうお父さんにだっこされるのは、ちょっとヤダ…」モガモガ

謎の男「 」ガーン

195 : ◆rRu4LM9vFs [saga]:2018/06/21(木) 23:21:14.27 ID:iJui9JJa0

――弓射手の家の中

弓射手「さて。魔法使いは一緒にお手伝いをして頂戴ね。縛人は勇者様と少し話や説明をまとめておいて頂戴」

勇者「縛人・・・?」

謎の男「僕のここでの名前だよ。僕の魔法は束縛や拘束が基本にあって、魔物や動物を捕まえて保護をする。それでこんな通称がね」

勇者(名前があったのか)

魔法使い「……あの」

勇者「…え?」

魔法使い「……い、いえ。なんでもありません。お母さんを手伝ってきます」

勇者「あ…うん」


魔法使いと弓射手が去って行った!

196 : ◆rRu4LM9vFs [saga]:2018/06/21(木) 23:21:46.32 ID:iJui9JJa0

縛人「――さて。どこから話そうか」ニコ

勇者「…明日は魔王城へ?」

縛人「え、ああ。うんそうだね。でもそれはきっと彼女に任せておけば大丈夫だから」

勇者「え、でもそれ以外にあんたと話すことなんて俺…あ」

縛人「正直だね?」クス

勇者「…悪い」

縛人「構わないよ。うん。勇者さんが弓射手には敬語なのに僕にはタメとかだってこともね、うん、全然気にしないよ」ニコニコ

勇者「す、すいません」

縛人「ふふ。いや、皮肉じゃなくて本当に構わない。むしろ普通に話してくれた方がいいよ


勇者「……」
197 : ◆rRu4LM9vFs [saga]:2018/06/21(木) 23:23:20.19 ID:iJui9JJa0

縛人「勇者さんに話すことが無くても、僕は勇者さんと話しておきたいことがあるんだけど、いいかな」

勇者「…?」

縛人「さっき…勇者さんが彼女に“不安にはならないんですか”ってたずねていただろう?」

勇者「ちっ。聞いてたのかよ…」

縛人「うん。…実はね、彼女はとても寂しがり屋ではあるけれど、僕の事で不安にはなって彼女自身が揺らぐようなことはないってことを僕は知っているんだ」

勇者「知ってるって…どうやって?」

縛人「僕は彼女との結婚にあたって、指輪じゃなくてひとつの魔法をプレゼントした」

勇者「魔法?」

198 : ◆rRu4LM9vFs [saga]:2018/06/21(木) 23:23:52.59 ID:iJui9JJa0

縛人「僕は“縛る”ことを専門にする魔法職でね。その特異性から自分で魔法を作ったりもする」

縛人「その一つが彼女に送った魔法・・・“赤い糸“」

勇者「胡散臭い上にネーミングが痛い」

縛人「う、うるさいなぁ」

勇者「それで、その魔法はどんな効果があるんだよ」

縛人「この魔法の糸は、普段は指輪を装って僕たちの手に結婚指輪として収まっている…ほらね」

勇者「…指輪には気づいてたけど…そんな赤い指輪だから、何かの魔術アイテムだとおもっていたよ」

縛人「この指輪は、2つの条件のうちどちらかかでも反応すると、切れるようになっているんだ」

勇者「条件?」

縛人「“指輪の対の持ち主である相手を疑うこと”、それと“心が離れてしまうこと”さ」

勇者「……」

199 : ◆rRu4LM9vFs [saga]:2018/06/21(木) 23:25:10.58 ID:iJui9JJa0

縛人「僕のこの指輪は、結婚のときに彼女と一緒につけてから一度だって切れたことがないんだ」

勇者「のろけかよ」

縛人「ふふ。のろけたいところだけど、そうじゃない」

縛人「……僕は、彼女の指輪をこれまでに3回も切ったことがあるんだよ」

勇者「え……」

縛人「彼女がとても寂しがり屋なのは、付き合っていた頃から知っていた。それでも僕とのこんな生活を続けて飄々としていられるのは、本当は別に男でもいるんじゃないかって勘ぐった時が1回目」

勇者「……」

縛人「僕はただ不安でそんな風に思ってしまっただけだった。だから僕はまさかそんなことで彼女の指輪が切れたことなんて気付かなくてね」

勇者「自分でかけた魔法なのに?」

縛人「切れても、きれたまま存在し続けるんだ。魔法が消えたわけではないからわからなかったんだよ」

勇者「…それで?」

200 : ◆rRu4LM9vFs [saga]:2018/06/21(木) 23:25:59.38 ID:iJui9JJa0

縛人「彼女は自分の指輪が切れたのを見て、どうしたと思う?」

勇者「……殴り込みに来た、とか?」

縛人「いや。彼女は、その切れた指輪を小さな袋にいれて、ネックレスのように持ち歩いて
。普段通り、何の連絡もよこさないままだった」

勇者「………あんたに冷めたのか」

縛人「いっただろう。僕の指輪は切れたことがない…彼女は、僕が彼女を疑ったか心を離したかしたのを知っても、僕の事を思い続けて黙ることにしていたんだよ」

勇者「…………」

縛人「僕が、彼女の指輪が切れていたのを知ったのはその半月後だった」

縛人「僕は彼女が、切れた指輪を胸元に飾って、それでも僕の指輪を切らさないように想いつづけていてくれたことを知って、すごく泣いたよ」

勇者「泣いたのかよ…」

201 : ◆rRu4LM9vFs [saga]:2018/06/21(木) 23:26:28.13 ID:iJui9JJa0

縛人「ヤバいくらい泣いて、そしたら指輪が彼女の手の中でまたつながった」

勇者「……」

縛人「…つながった指輪を見て、嬉しそうにその指輪をはめられた手を笑ってみていた彼女が何よりも愛しかった」

勇者「いや、そのノロケはいいから…」

縛人「2回目に僕が彼女の指輪を切ったのは、彼女が子供を宿した後の事。僕が父親になることがうれしくて精いっぱいがんばらなくてはと仕事に夢中になってね」

勇者「…」

縛人「……夢中に、なりすぎたんだろうね。彼女と子供のためにとがんばっていたはずだったのに、いつしか好きなだけやりたい好きな仕事をする言い訳になっていたんだろう」

縛人「一日中魔物をおいかけて、充実して家にかえって。疲れ切って、一日の仕事の話なんかをしてお酒を飲んで、眠って」

縛人「朝になって仕事にいって……彼女が指輪をはめていないことに気が付けたのは、一緒に住んでいたにも関わらず三日後の話さ」

202 : ◆rRu4LM9vFs [saga]:2018/06/21(木) 23:27:03.85 ID:iJui9JJa0

縛人「彼女は身ごもった体で家にいて、僕の帰りを待ちながら過ごしていたはずで。指輪が切れているのだから、僕の心がすっかり仕事の方に向いてしまっているのも気づいていて」

縛人「……一体、どんな気持ちだったんだろうと、今でも想像することがあるよ」

勇者「…どうせまた泣いたんだろう」

縛人「うん、指輪が切れてることに気付いた時にすごく焦って、よくきいたらもう三日も前の話で、落ち込んで、言葉も出なくて、顔面蒼白にして謝って…」

縛人「それでも・・・・・・黙ったまま、僕のどうしようもない言い訳を、小さく微笑んだまま聞いていてくれる彼女の視線を感じながら、うつむいて弁解をしながらずっと泣いていたよ」

勇者「で、そのうちに気が付いたら指輪が彼女の指に嵌っていた?」

縛人「すごいね勇者さん。どうしてわかるの?」

勇者(展開が読めるっていうのはこういうことをいうんだな)

203 : ◆rRu4LM9vFs [saga]:2018/06/21(木) 23:27:37.41 ID:iJui9JJa0

縛人「じゃぁ…3回目はどうして切れたと思う?」

勇者「え。…知らねえよ」

縛人「知ってたら怖いよ」

勇者「そういう意味じゃねえよ」

縛人「ふふ。じゃぁ3回目の理由は内緒にしておくよ」

勇者「うわ、モヤモヤするから言うならいえよな…」

縛人「だってもともとそんな話がしたかったわけじゃないから」

勇者「こんだけ好き勝手話しておいてそれかよ!!」


縛人「…魔法使いのことがいいたかったんだ」

勇者「……魔法使いの、こと?」

縛人「魔法使いは僕に似て、とても精神が未熟なところがある。悪いことを考えて勝手に落ち込んだり、嫌な妄想に囚われてしまったり」

勇者「……」
204 : ◆rRu4LM9vFs [saga]:2018/06/21(木) 23:28:03.85 ID:iJui9JJa0

縛人「そして彼女にも似ていて、とても深い愛情を持っている。根の部分が揺らがない、強くて深い愛情のある子だよ」

勇者「……それがなんだってんだよ」

縛人「……深い愛情を持っているのに、とても傷つきやすいところがある。どうか…誤解のないように、大事にしてやってほしいんだ」

勇者「………」

縛人「勇者さんとあの街で別れて、魔法使いは深い不安に襲われながらも、ずっと勇者さんの事を考えていたよ」

勇者「……」

縛人「…今も、そうなんだ。勇者さんの事を思っているのに、不安に襲われてつらいのを耐えている」

勇者「は… 知らねえよ。そんなのはあんたの気のせいだろ」

縛人「……」

勇者「あいつは俺の事なんて、別に…」

勇者「…………別に…」

205 : ◆rRu4LM9vFs [saga]:2018/06/21(木) 23:28:34.26 ID:iJui9JJa0

縛人「――弓射手と魔法使いは、もうひとつよく似ているところがあってね」

勇者「……」

縛人「本当はとても怖がりで。本当に否定されてしまうのが怖くて…大事な人の大事な気持ちを、うまく自分から聞けないんだ」

勇者「………」

縛人「どうか、勇者さんから声をかけてやってほしい。教えてあげてほしいんだ。――勇者さんの、本当に思っていることを」

勇者「………そんなことして、俺が本当にアイツを今度こそ傷つけるとんでもないことを言ったらどうするつもりなんだよ」

縛人「僕は“本当”を教えてやってほしいっていってるだけだよ」

勇者「だから! 俺が本当はやっぱりキツいことばっか考えてたらどうすんだって――!」

縛人「本当に魔法使いを大事にしていない人だったら、そんな風に僕には聞かないさ」クス

勇者「っ」

206 : ◆rRu4LM9vFs [saga]:2018/06/21(木) 23:29:30.40 ID:iJui9JJa0

縛人「これでも、君よりはずっと年上でそれなりに人を見る目も養ってきたんだよ。それに元もと、喋らない動物を相手に仕事をしている分、気配や感情には敏感でね」

縛人「……勇者さんも魔法使いも、きっともっと本当のことを言えた方が…お互いにとても楽になれると思った。それだけさ」

勇者「………なんだよ、それ――」

縛人「ん?」ニコ

勇者「あんたなんかに、俺の何がわかるっていうんだ!」

カチャ…

勇者「俺がこの短期間の間に、あいつのことでどんだけ――……!!!!」ガタッ!!

魔法使い「きゃ、きゃっ!?」

勇者「ッッ!?!?」ビックーーー!!


魔法使いが現れた!
弓射手が現れた! 

207 : ◆rRu4LM9vFs [saga]:2018/06/21(木) 23:29:58.12 ID:iJui9JJa0

弓射手「ちょ、何? ドア開けた途端にそんな大声を急に・・・。び、びっくりするじゃないの。ケンカ?」


縛人「い、いや。こっちも正直、君たち以上に驚いたよ」ドキドキドキドキ

勇者「 」ドキドキドキドキドキドキドキ


弓射手「はぁ? …ケンカでもないっていうなら、何があったの?」

魔法使い「…ゆ、勇者…様…?」


勇者「……聞いてたのか?」

魔法使い「……えと…。いえ、勇者様の大きな声のところだけ、ですけど…」

勇者「……」

魔法使い「……アイツ、って… もしかして、私の事…ですか…?」

勇者「……」

魔法使い「……やはり・・・その…勇者様は、その…」

勇者「……」

魔法使い「…………っ…」


208 : ◆rRu4LM9vFs [saga]:2018/06/21(木) 23:30:43.46 ID:iJui9JJa0

〜〜〜
縛人『否定されてしまうのが怖くて、聞けないんだ』

縛人『勇者さんから、声をかけてやってほしい』
〜〜〜


勇者(………魔法使いが…“俺に否定されるのが怖くて”聞けないことがある…?)

勇者(………なんだよ、それ…)


魔法使い「………」


勇者「………続き」

魔法使い「っ」ビク

勇者「……俺が… “やっぱり”、なんだって?」

魔法使い「――っ」


勇者「は。『やっぱり勇者さまは怖い』とかか?『ひどい』とか『つめたい』とかか?」

魔法使い「…ぇ?」

209 : ◆rRu4LM9vFs [saga]:2018/06/21(木) 23:31:37.39 ID:iJui9JJa0

勇者「なんて言おうとしたんだよ。べつにそんなことくらい言ったって怒りはしねえ」

魔法使い「え、いえ、私はそんなことは別に…」

勇者「じゃぁなんて言おうとしたんだよ… 黙り込むほど言えないことなのか」

魔法使い「あの……」


魔法使い「………勇者様は、やはり・・・ 私に愛想をつかして、私と一緒に居たくないんじゃないかって…」…ポロ

勇者(…………? ………? )



勇者「………は? 悪い、ちょっとわかんなかった」


210 : ◆rRu4LM9vFs [saga]:2018/06/21(木) 23:32:11.61 ID:iJui9JJa0

魔法使い「で、ですから。その…私が、頼りないしうるさいしで・・・面倒事ばかり起こすし…。それで、もう…」グス…ポロ

魔法使い「もう… 嫌になってしまって。だから、私のいないところに行く、とか ここからは一人で行くとか、そんな風におっしゃるんですね…って……」ポロポロ


勇者(………いや、なんか、ネガティブすぎるだろ…)


勇者「あ。もしかして、そんなことずっと考えてたのか…?」

魔法使い「…ご、ごめんなさい…っ」


勇者「俺は…お前こそ、俺に嫌気でもさしたか他の男の事でも考えてるのかと思ってたよ」

魔法使い「…え?」

勇者「誰かさんのせいだけど」ジロ

縛人「あ、あれ?」アハハー

魔法使い「? お父さん、なんで笑うの…。ひどいよ、嫌い・・・」

縛人「 」ガーン

弓射手(自業自得・・・)

211 : ◆rRu4LM9vFs [saga]:2018/06/21(木) 23:33:04.86 ID:iJui9JJa0

魔法使い「……嫌気なんて…そんなの、私は全然・・・」

勇者「…じゃぁ魔法使いの表情が 縛人の家で再会してからずっと冷たい理由は? よそよそしく離れていく理由は?」

魔法使い「…どんな顔して勇者様のそばに居たらいいのか…わからなくなっただけです」

勇者「どんな顔しててもいいからそばにいりゃいいんだよ、クソ」

魔法使い「え」


勇者「面倒なこと考えて紛らわしいことしやがって…はぁ」

魔法使い「勇者様…いいんですか…?」

勇者「なにが」


魔法使い「私… 勇者様のそばにいても、いいのですか…?」

勇者「………今は俺の同行だろ…むしろ居なくちゃダメなんじゃねえの」

魔法使い「………――っ」パァ・・・


魔法使い「はいっ・・・はいっ! ――ずっと、そばにいさせてくださいっ」ニコッ

勇者「っ」ドキ



勇者に会心の一撃!

212 : ◆rRu4LM9vFs [sage saga]:2018/06/21(木) 23:33:38.94 ID:iJui9JJa0
ここまで
213 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/21(木) 23:57:21.75 ID:HtIu4ar0o
おつ!
214 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/22(金) 01:04:47.18 ID:R7J80rcDO

ええなあ…
215 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/23(土) 00:09:11.87 ID:aKcfaC3fo
乙です
216 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/06/27(水) 07:01:31.85 ID:wdMwt5wEO
勇者があまりにも精神が未熟すぎる
217 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/19(木) 07:56:39.34 ID:qYhuhMO/0
待ってるぞぉ
218 : ◆rRu4LM9vFs [saga]:2018/07/19(木) 22:09:22.86 ID:XRdwJlJb0

翌日

勇者「おはようございます」

魔法使い「おはようございますっ! 勇者様!」

勇者「元気だな、魔法使い」

魔法使い「ぁっ、もう! 朝からスカウターで私のこと覗くのやめてください!」

勇者「スカウターなら切ってるよ」

魔法使い「え、え?」

勇者(昨夜、どうにも意識しすぎてスカウター見てばっかで寝れなくなってたとか言えない)

魔法使い「でもいま、私が元気だって…」

勇者「それくらいなら、普通に見てわかるだろ。声のトーンと表情とか」

魔法使い「……」カァ

219 : ◆rRu4LM9vFs [saga]:2018/07/19(木) 22:10:12.21 ID:XRdwJlJb0

勇者「?」

魔法使い「な…なんだか、スカウターで覗かれるよりアレかも…っ。私の事、見ないでくださいっ!」

勇者「えっ」ガーン

魔法使い「…//」テレテレ


弓射手「…朝からみんな元気なようで何よりだわ」

縛人「さぁ、ご飯も出来てるよ。みんな座って」ニコ



一同「「「「いただきまーす」」」」

220 : ◆rRu4LM9vFs [saga]:2018/07/19(木) 22:11:15.80 ID:XRdwJlJb0

縛人「昨夜はよく眠れたかい?」ニッコリ

魔法使い「うん!」モグモグ

弓射手「いつも通りね」パクパク


勇者「…俺は若干、寝付けなかったけど。でも布団は心地よかったし、ゆっくり休むことは出来ました」

弓射手「ふふ。ありがとう」


縛人「うんうん、まぁ今日は魔王のところに行くんだし、勇者さんみたいに寝付けないのはむしろ当然なのだとおもうよ。実は僕も少し緊張してねれなくて」

弓射手「あら・・・」

勇者(いや、俺は本当は、魔法使いにあんな風に言われちゃって、一つ屋根の下にいるんだよなとかドキドキして変な妄想までしたせいだとかいえない)

221 : ◆rRu4LM9vFs [saga]:2018/07/19(木) 22:11:46.12 ID:XRdwJlJb0

縛人「あは。実は久しぶりに弓射手と一つ屋根の下にいると思ったら、ドキドキしちゃって久しぶりにいちゃいちゃしたいなぁとか妄想しちゃったせいなんだけどね!」

弓射手「馬鹿じゃないの?」

縛人「うっ」ガーン

魔法使い「そういうちょっとエッチなところ、あんま好きじゃない」

勇者「 」ガーン

弓射手「? なんで勇者さんまでちょっとヘコんだの?」

魔法使い「?」


縛人「さ、さぁ! 気を取り直して! 今日は、魔王のもとへいくよ!」

勇者「行くよ、って言われても やっぱりあんまり実感がわかないんだけど」
222 : ◆rRu4LM9vFs [saga]:2018/07/19(木) 22:12:28.53 ID:XRdwJlJb0

縛人「実はね、昨夜のうちに、彼女が嘆願書をだしておいてくれてるんだ」

魔法使い「嘆願書? 魔王城までの案内ができるのは聞いていたけど…。そんなもので魔王とあえるの?」

縛人「彼女の嘆願書は少し特別さ。理由はまぁいろいろだけど」

勇者「昨日聞いた、“人間との綱渡し”の役目・・・?」

縛人「それもあるけど、そんなに簡単な話じゃないよ」

弓射手「私みたいに、何かしら人間との橋渡しの役目を負ってる職は他にもいるの。人間も、魔族もね」

弓射手「でも、普通に嘆願書を魔王城に送ったところで、魔王に届く前に“揉みつぶされる”事の方が多いんじゃないかしら」

勇者「…和平反対派、ですか」

弓射手「ふふ。これ以降、あまりむやみにそのことは口に出さないほうがいいわ。こう思っておくの。魔王宛の手紙は、“運の悪い配送事故”によくあうものだ、ってね」

223 : ◆rRu4LM9vFs [saga]:2018/07/19(木) 22:13:00.52 ID:XRdwJlJb0

魔法使い「…でも、ならどうしてお母さんが昨夜出した“嘆願書”は無事だってわかるの?」

勇者「あ、さては縛人。なにか手紙に細工の魔法でも?」

縛人「あはは。そんなことをしたら、まず間違いなくそんな怪しい手紙は真っ先に処分されると思うよ」

勇者「????」

魔法使い「じゃぁ、なんで・・・?」

弓射手「…さぁ。魔王のきまぐれじゃないかしら」

縛人「行けば、わかると思うよ」クスクス

224 : ◆rRu4LM9vFs [saga]:2018/07/19(木) 22:24:31.38 ID:XRdwJlJb0

勇者(……なんだか少し釈然としない物言いだな)

勇者(何か裏がある…? 例えば弓射手さんは実は諜報かスパイか…なにかそういう仕事を特別にこなしている、とか)

勇者(魔法使いがあまり両親について知らないまま育ったのも、すこし過剰すぎる気がするし…まだもう少し、聞いていない何かがあるのも確かだろう)

勇者(魔王、か。平和を望むというのは本当なのだろうか。魔法使いの両親だからと、話をうのみにしてもいいものなのか?)

勇者(第一、魔王自身のことについてあまりにも語られなさすぎる…)

勇者(終わらせることもなく、暗黙の了解の元で沈静化だけした戦争。水面下で人間とのアクセスを望む行動。それは本当に、ただ和平を望むだけの行動なのか)

勇者(…………いまだ多い反対派、か。それこそ…本当の魔王の真意に仕えている可能性があるのではないだろうか)

勇者(魔王城。こんなに簡単に乗り込めてしまうものなのか…? それに、もしそうなったら… って、あれ…? なんだか・・・)


勇者(……なん、だか………)ゾクッ


225 : ◆rRu4LM9vFs [saga]:2018/07/19(木) 22:24:59.73 ID:XRdwJlJb0

縛人「――だからまぁ少なくとも、“彼女は”魔王に会えるだろう。だからそれについて、いっしょに行っておいで。きっときみたちも会えるさ」

勇者「………っ」


弓射手「どうかしたの? 勇者さん」

縛人「っと、ごめん。少し話が長かったかな」


勇者「…い、いえ」

魔法使い「勇者さま、なんだか顔色が…?」


勇者「あの…」

縛人「?」

226 : ◆rRu4LM9vFs [saga]:2018/07/19(木) 22:25:29.70 ID:XRdwJlJb0

勇者「昨夜の和平の話などはもちろんちゃんと聞いていました。でも、反対派も多いというのも聞きました…」

弓射手「そうね」

勇者「…本当に、いいんですか? 魔王の意には沿ったとしても、反対派にとっては俺を連れていくことは何よりも目障りな行為のはず」

弓射手「……」

勇者「俺をここまであからさまに連れて行っては、弓射手さんが、生活しにくくなるような…いや、危険な目にあうようなこともあるのでは…」

弓射手「…優しい子なのね、勇者さんは」

勇者「魔王が和平に積極的とは聞いたけど…。そうではない魔族にとっては、これは魔王に勇者を仕向けるような行為です」

魔法使い「勇者様…」

227 : ◆rRu4LM9vFs [saga]:2018/07/19(木) 22:26:49.53 ID:XRdwJlJb0

勇者「それに・・・二人とも、この魔族の町にすっかりなじんで生活していて。あまつさえ弓射手さんは魔族の血も引いている」

弓射手「…それが?」

勇者「………魔族に好意的なお二人の前でこんなことを言うのも難ですが…」


勇者「俺が…魔族を嫌って、姿を見たとたんに 刺しに行かないとも限りませんよ」



弓射手「…………」

魔法使い「勇者、さま…?」

228 : ◆rRu4LM9vFs [saga]:2018/07/19(木) 22:27:18.55 ID:XRdwJlJb0

縛人「ふふ。魔王城に向かうには、いい気構えと雰囲気になったね」

魔法使い「お父さんっ」

縛人「なぁに、大丈夫さ」ナデナデ

魔法使い「わ」

縛人「…僕はね、娘のことを信じているよ。その娘の選んだ人も…そんなに軽率なだけの人間じゃないって、信じている」ニコリ

勇者「………」

魔法使い(……勇者、さま…?)

229 : ◆rRu4LM9vFs [saga]:2018/07/19(木) 22:28:21.82 ID:XRdwJlJb0

勇者「……すみません。魔王に、悪意を今のところ抱いているわけじゃないんです」

弓射手「…」ホッ


勇者「もともと、俺は戦闘狂でもない。魔王の元へも政治交渉がメインだと聞いてこのたびに出たくらいです」

弓射手「それなのに、どうしてそんなことを?」


勇者「・・・急にふと、とても嫌な予感がして」

弓射手「…」


勇者「何か…とても、自分の嫌悪する何かが待ち構えているような、そんな胸騒ぎがしたんです」

勇者「もし、そうなれば…と考えているうちに、いくつも懸念事項が思い浮かんで。それだけ、です」

230 : ◆rRu4LM9vFs [saga]:2018/07/19(木) 22:28:47.72 ID:XRdwJlJb0

縛人「……穏やかじゃないね」


魔法使い「…おとうさん、おかあさん・・・」ギュ

弓射手「どうしたの、魔法使い」

魔法使い「……大丈夫、だよね…?」


縛人「…」

弓射手「………」


縛人(…勇者の素質。それは戦闘スキルや頭脳もあるけれど、なによりも必要とされ、選考の基準とされるのは…)

弓射手(………天性の、カンの良さ。未来を選び取るだけの、予知にも近い“予感能力”・・・・・・)

231 : ◆rRu4LM9vFs [saga]:2018/07/19(木) 22:29:37.86 ID:XRdwJlJb0

縛人(経験や場の慣れによって、状況を見極める訓練に慣れた騎士団長などがこれまで勇者になってきた)

弓射手(でも、今回のこの勇者はそうじゃないのは明らか。どう見ても、戦闘や訓練によってそういうのを覚えたわけじゃない)

縛人(これまでの勇者は魔王の元へたどり着くことはなかった…それは、彼らが“真正”の勇者ではないのが明らかだったからだ)

弓射手(経験や戦術で未来を読むものは、小手先に騙される。それは安易に裏切る可能性を秘めている。だからこそ、“遠い本物の未来”を選び取れる勇者を待っていたはず…)


弓射手(………その“本物”が、ここにきて感じた嫌悪・・・)



縛人(……進むべき道を間違っているのは)

弓射手(手に取るべき相手を間違ったのは)


((――本当に、自分たちではないと、言いきれるだろうか?――))


232 : ◆rRu4LM9vFs [saga]:2018/07/19(木) 22:30:44.91 ID:XRdwJlJb0

魔法使い「……お・・・」


勇者「魔法使い」ポン

魔法使い「!」ビクッ


勇者「………怖がらせて、悪かったな」

魔法使い「勇者さま…?」


勇者「………せっかくついてきてくれるっていうのに、ビビらせたから。その…スマン」


魔法使い「……ううんっ!!」ブンブン

魔法使い「大丈夫です! 私…勇者様といれるなら、怖くないです!」ニコ

勇者「そうか」ニコ

魔法使い「…っ」カァ


弓射手「……」

縛人「……」

233 : ◆rRu4LM9vFs [saga]:2018/07/19(木) 22:31:35.53 ID:XRdwJlJb0


勇者「―――――行こう」


勇者「旅の終わりへ。――魔王城へ、行こう」


234 : ◆rRu4LM9vFs [sage saga]:2018/07/19(木) 22:33:05.02 ID:XRdwJlJb0
短いけど今日はここまで
235 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/20(金) 01:08:59.52 ID:MVmndSTDO
236 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/20(金) 14:58:57.02 ID:AjX19L6wO
おつ!
237 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/21(土) 22:27:00.50 ID:/I7s2iOPo
238 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/30(木) 08:21:17.16 ID:cQKN9KmJO
まだかなー
239 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/30(木) 14:07:31.34 ID:cQNLwzpHo
>>238
今やってます
240 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2019/06/12(水) 23:12:34.71 ID:wo3B5+dYo
おい
241 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/02/26(水) 09:11:31.03 ID:o3NNGNyDO
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