魔女娘「あたしを弟子にして下さい!」手品師「なんで!?」

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/30(月) 19:04:57.39 ID:bJSsrpC50
― バー ―

手品師「今、私の右手にはコインが握られております」グッ…

手品師「これがなんと!」パッ

手品師「左手に瞬間移動しちゃいました〜!」



シーン…

「でさぁ〜!」 「マジでぇ〜!?」 「例の件だけどさ……」



店主「ご苦労さん。はい、今日のギャラ」

手品師「どうも……」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1525082697
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/30(月) 19:06:50.11 ID:bJSsrpC50
― 夜道 ―

手品師(来る日も来る日も、手品なんかろくに見てない連中を相手にショーをして……)

手品師(ほとんどスズメの涙みたいなギャラをもらう……)

手品師(どうしてこうなった……。いつまでこんな生活すりゃいいんだ……)

ドンッ!

酔っ払い「……ってえな」

手品師「す、すみません」

酔っ払い「あら? オメー、さっき手品してた奴だろ」

手品師「あ、どうも! 覚えててくれたんですね!」

酔っ払い「ふうん……そうだ!」

酔っ払い「オイ、手品師なら、オレをどうにかして消してみろよ!」グイッ

手品師「な、なにを……! やめろ……!」

酔っ払い「手品師なら手品でどうにかしてみろよ! オラオラァ!」

手品師「で、できるわけない……! た、助けて……!」
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/30(月) 19:08:08.26 ID:bJSsrpC50
「やめなさーいっ!」

手品師「!?」

酔っ払い「な……誰だ!?」

魔女娘「乱暴はやめなさい!」

酔っ払い「なんだ……女じゃねえか。どっから湧いてきやがった!」

酔っ払い「ちょうどいいや! お嬢ちゃん、ちょいと胸でも触らせてくれや!」

手品師「君……逃げろ! 近くの交番に駆け込むんだ!」

魔女娘「大丈夫です!」
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/30(月) 19:09:31.17 ID:bJSsrpC50
魔女娘「吹っ飛べ!」パァァァ…

ドンッ!

酔っ払い「うぎゃ!?」ブオッ

ドザァッ…

酔っ払い「…………」ピクピク…

手品師(なんだ!? 手も触れないで、酔っ払いをふっ飛ばした!)

魔女娘「大丈夫ですか?」

手品師「は、はい……」
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/30(月) 19:11:47.69 ID:bJSsrpC50
手品師「君は今……何をしたんだ? いわゆる、気功……みたいなやつ?」

魔女娘「いえ、あれは魔法です!」

手品師「魔法!?」

魔女娘「あたし、これでも魔女でして……つい最近、魔女の里で見習いを卒業させてもらったんです」

魔女娘「それで、人間の街にやってきたところなんです!」

手品師(なにいってるんだ、この子は……)

手品師(だけど、さっきの技、俺の目でもタネがあるようには見えなかった)

手品師(信じるしかない……この子は本当に魔女なんだろう)
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/30(月) 19:14:04.55 ID:bJSsrpC50
手品師「ありがとう、助けられたよ。なにかお礼をしたいけど……」

魔女娘「いえいえ、お礼なんて! それより実はあたし、あなたにお願いがあって来たんです!」

手品師「お願い? 俺に?」

手品師(なんだろう……?)

手品師(なんたって魔女のお願いだし、まさか生贄になってくれ、とかじゃ……)

手品師(それもいいか……どうせこのまま生きてたって――)

魔女娘「あの……あたしを弟子にして下さい!」

手品師「…………」

手品師「…………?」

手品師「なんで!?」
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/30(月) 19:15:51.30 ID:bJSsrpC50
魔女娘「なぜかというと、あたし、手品が大好きで……手品師になりたかったからです!」

手品師「手品が大好きって、君の方がよっぽどすごいことできるのに……」

魔女娘「お願いします!」ペコッ

手品師「…………」

手品師(本物の魔法を使える子が、手品ができるようになりたい? ……わけが分からん)

手品師(でも、さっきは助けられたわけだし……)

手品師(どうせ暇な時間は多いし、手品を教えることでいい気分転換になるかもしれない)

手品師「……いいとも。君を弟子にしよう」

魔女娘「本当ですか!? ありがとうございます!」
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/30(月) 19:18:15.52 ID:bJSsrpC50
魔女娘「じゃ、じゃあ今から練習を……」

手品師「ちょっと待った! これでも俺は仕事を終えたばかりなんだ」

手品師「悪いけど、明日からにしてくれ」

魔女娘「あっ、そうですね! すみません!」

手品師「えぇと……手品グッズに紙とペンがあったはず……」ゴソゴソ

手品師「明日の昼、この地図の場所に来てくれ。ここが俺の家だから」サラサラ

魔女娘「分かりました!」

魔女娘「それじゃ明日、家にうかがわせていただきます!」サッ

ドヒュンッ!

手品師「…………」ポカーン…

手品師(ホウキに乗って飛んでった……もうあんな遠くまで……)

手品師(世界一の手品師でも、あんなことはできねえだろうなぁ……)
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/30(月) 19:20:18.62 ID:bJSsrpC50
次の日――

― 手品師のアパート ―

手品師「ふあぁぁ……」

手品師(昨日の女の子はいったいなんだったんだろう……)

手品師(もしかしたら、俺は夢でも見てたのかもしれないな)

手品師(でも、記憶はしっかり残ってるし……一応、手品グッズを用意して待ってるか)

手品師「今日の朝飯は、目玉焼きだ」コツッ

パカッ ジュアァァァァ…
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/30(月) 19:22:10.53 ID:bJSsrpC50
昼すぎになり――

手品師(……来ない)

手品師(やっぱりあれは夢だったのかもしれんなぁ)

手品師(あるいはからかわれただけかも。魔女が手品師の弟子になるなんておかしな話だし)



ピンポーン…



手品師「!」
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/30(月) 19:25:23.86 ID:bJSsrpC50
手品師「はい」

ガチャッ…

魔女娘「す、すみません……道に迷っちゃって、遅くなりました」

手品師「あっ……!」

魔女娘「前にも来たことあるのに、人間の街はなかなか複雑で……」

手品師(夢じゃなかった……。ていうか、迷うような場所じゃないんだけど)

魔女娘「それじゃさっそく、稽古をつけて下さい!」

手品師「あ、ああ……分かったよ」

手品師(魔法使いに手品を教える……うーむ、不思議な気分だ)
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/30(月) 19:27:53.52 ID:bJSsrpC50
手品師「じゃあ、簡単なマジックから教えよう」

魔女娘「はいっ!」

手品師「よし、いい返事だ」

手品師「右手にコインを握る……今、右手に入ってる……むむむ、と唱えると……」

魔女娘「むむむ……」

手品師「ほら、左手に瞬間移動にしてる!」パッ

魔女娘「すっごーい!」パチパチパチ

手品師(こんなすごい反応もらったの久しぶりだな……)

手品師「じゃあ、タネを教えるからやってみせてくれ」

魔女娘「え、教えてくれるんですか!」

手品師「当たり前だろ」
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/30(月) 19:31:17.19 ID:bJSsrpC50
手品師「まず、右手にコインを握る」ニギッ

手品師「左手を動かしながら、まだ右手に入ってますよアピールをする」ヒラヒラ

魔女娘「ふむふむ」

手品師「この時、客に見えないように左手にパスするんだ」サッ

魔女娘「あっ!」

手品師「で、あとはいかにも念力でコインを瞬間移動させるような仕草をする」

手品師「あとは、もうとっくに左手に入ってたコインを見せるだけ」

手品師「タネというより、指先の速さや正確さが求められる手品だな」

魔女娘「なるほどー!」
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/30(月) 19:36:07.64 ID:bJSsrpC50
手品師「じゃ、やってみせてくれ。最初はゆっくりでいい」

魔女娘「はいっ!」

魔女娘「ゆっくりと……」ノロノロ

魔女娘「あっ」ポロッ

チャリーンッ

魔女娘「ああ……」シュン…

手品師「初めてなんだから仕方ない。速くやろうとしないで。さ、もう一回だ」

魔女娘「は、はいっ!」
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/30(月) 19:37:04.45 ID:bJSsrpC50
チャリンッ

チャリーンッ

チャリリーンッ

……

……

魔女娘「はぁ、はぁ、はぁ……」

手品師(こりゃかなり不器用だな……)

手品師「もしかして、魔法の習得もかなり手こずったりした?」

魔女娘「なぜそれを!? それも手品ですか!?」ギクッ

手品師(そりゃ分かるって……)
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/30(月) 19:40:36.18 ID:bJSsrpC50
手品師「今日はこの辺にしておこうか」

魔女娘「いえ、まだやれます!」

手品師「焦ることはない。なにも期限が迫ってるって話じゃないんだろ?」

魔女娘「それは……そうですけど」

手品師「なぁに、練習すれば君も必ずできるようになる。手品ってのはそういうもんだ」

魔女娘「……あ、その言葉……」

手品師「ん?」

魔女娘「いえ! なんでもないです! はいっ!」

手品師「…………?」
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/30(月) 19:44:32.66 ID:bJSsrpC50
手品師「それに、今日はもう仕事でね。ショーがあるんだ」

魔女娘「ショー!?」

手品師「だから、君はもう帰っていいよ」

魔女娘「いえ、あたしも行きます!」

手品師「いや、だけど……面白いもんじゃないよ?」

魔女娘「あたしも連れてって下さい! 弟子として! お願いします!」

手品師「そこまでいうなら、いいけど……」
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/30(月) 19:47:39.82 ID:bJSsrpC50
― ショッピングモール ―

手品師「お買い物中の皆さま、これから手品を始めま〜す!」

手品師「ぜひ足を止めてご覧になって下さいね!」



シーン…



手品師(いつもこうだ……)

手品師(みんな、ショッピングに夢中でこっちなんか見ちゃいないんだよなぁ)
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/30(月) 19:49:00.30 ID:bJSsrpC50
手品師「ほら、布をこすったら……花が出てきました〜!」サッ

魔女娘「わーっ! すごいすごい!」パチパチパチ…

手品師「お、おい……君が驚いてどうすんだ」

魔女娘「もっと! もっとやって下さい! アンコール!」

手品師「ああ……分かったよ」



「なんだ?」 「あそこ、えらく盛り上がってるな」 「ちょっと見てみるか……」

ワイワイ… ガヤガヤ…



手品師「あ……」
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/30(月) 19:52:18.54 ID:bJSsrpC50
手品師「ふぅ〜……それなりに客を集めることができたな」

魔女娘「お疲れ様でした!」

手品師「いや、疲れたのは君の方だろ」

手品師(一人で三十人分騒いでくれて……)

手品師「いつもは閑古鳥なんだけど、君のおかげで助かったよ……ありがとう」

魔女娘「?」

魔女娘(なんで、あたしがお礼いわれるんだろ?)
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/30(月) 19:54:42.24 ID:bJSsrpC50
― 手品師のアパート ―

手品師「ほら、出来上がり」サッ

魔女娘「わぁっ、おいしそう!」

魔女娘「手品師さんって、お料理も得意なんですね!」

手品師「昔から手先が器用だったからな。こういうことは得意なんだ」

手品師「テレビでも見ながら、くつろいでてくれ」

魔女娘「では、お言葉に甘えて!」

魔女娘「あ、今日はテレビでマジックの特番があるんですよ! 見ちゃおっと!」
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/30(月) 19:56:26.45 ID:bJSsrpC50
テレビ『さぁ、マジシャンさんの登場です!』

テレビ『ワァァ…! パチパチパチ…!』

テレビ『会場は大盛り上がり! 今や超売れっ子のマジシャンさん、華麗にステージへ降り立ち……』

魔女娘「あ、この人知ってます! 最近よくテレビに出てますよね!」

手品師「…………」ピッ

プツッ…

魔女娘「あっ……?」

手品師「悪いな、同業者の手品はあまり見ないことにしてるんだ」

魔女娘「あ、そうだったんですか。すみません……」
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/30(月) 19:59:08.85 ID:bJSsrpC50
魔女娘「今日はごちそうさまでした!」

魔女娘「また明日から、よろしくお願いします!」

手品師「ああ、当面の目標は、コインの瞬間移動ができるようになることだな」

魔女娘「はいっ!」

ドヒュンッ!

手品師(ホウキで飛んでった……すごい速さだ。あ、でもちょっと危なっかしいな)

手品師(やっぱりまだ理解できん……魔女が手品を習うだなんて)
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/30(月) 20:00:50.13 ID:bJSsrpC50
次の日――

― 手品師のアパート ―

魔女娘「今日もよろしくお願いします!」

手品師「元気がいいな。さっそく練習を始めよう」

魔女娘「はいっ!」

魔女娘「えいやぁぁぁぁぁっ!」ポロッ

チャリーンッ

魔女娘「あぐぅ……」

手品師「そんなに気合入れなくてもいいよ。さ、落ち着いてもう一度」
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/30(月) 20:02:15.25 ID:bJSsrpC50
魔女娘「…………」モタモタ…

手品師「よし、今のは形はできてたぞ。それっぽかった」

魔女娘「ホントですか!?」

手品師「あとは今のを素早く出来るようになれば、人にも見せられる手品になる」

魔女娘「やったぁ! ありがとうございます!」

手品師「ハハ……」

手品師(こりゃ、一人前どころか半人前にするのも手こずりそうだ)
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/30(月) 20:04:31.11 ID:bJSsrpC50
手品師「ところで、君は魔法を使えるんだろ?」

魔女娘「はいっ!」

手品師「魔法を使って、コインを瞬間移動させることはできる?」

魔女娘「できますよ!」

手品師「やってみせてくれる? たとえば、俺の手元に瞬間移動させるとか」

魔女娘「分かりました……えいっ!」パァァァ…

パッ

手品師「うわっ!?」

手品師(俺の手元に……コインが……!)
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/30(月) 20:06:45.11 ID:bJSsrpC50
手品師「うーん、どう見ても君のやったことの方が、手品よりすごいと思うんだけど……」

手品師「なぜ手品を習いたいんだ?」

魔女娘「前にもいいましたが、あたし手品が大好きですから!」

手品師「どうして手品が大好きなの? なにかきっかけがあったの?」

魔女娘「そ、それは……は、恥ずかしいので秘密です! ――すみませんっ!」

手品師「いや、俺こそ変なこと聞いて悪かった。忘れてくれ」

手品師(ま、いいか……)
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/30(月) 20:09:34.10 ID:bJSsrpC50
そんなある日――

― 手品師のアパート ―

手品師「今日の予定は、あるマジックショーに出演することだ」

魔女娘「おお〜!」

手品師「といっても前座だがな。俺の後にもっとすごい人が控えてる」

魔女娘「前座でもすごいです。後にはどんな人が?」

手品師「それが……運営側からは知らされてないんだよ。まあ、知る必要もないが……」

手品師(久々の“まともな仕事”だ……腕がなるぜ)
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/30(月) 20:11:57.84 ID:bJSsrpC50
― 会場 ―

ワイワイ… ガヤガヤ…

魔女娘「小さな会場ですけど、かなり人が集まってますね」

魔女娘「もしかして、手品師さん目当てで、皆さん駆けつけてくれたんじゃ!?」

手品師(そんなわけがない。しかし、この人の多さ……)

手品師(メインで出る演者は……まさか!)





「よぉ〜、来てくれたのか! “前座”クン!」
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/30(月) 20:14:09.11 ID:bJSsrpC50
マジシャン「久しぶりだな」バサッ

手品師「やはりお前か……!」

魔女娘(あっ、この人は……!)

魔女娘(今一番売れてる奇術師である……マジシャンさん! うーん、マントがかっこいい!)

マジシャン「わざわざ元ライバルの前座になってくれるなんて、本当にありがとう!」

マジシャン「同じ舞台に立つんだ。仲良くやろうぜ。ま、ギャラは何倍も違うだろうが」

手品師「お前の前座だと知ってたら、来なかったよ……」

マジシャン「そりゃそうさ。だからマネージャーに伝えないようにいっておいたんだからな」

魔女娘「…………」ドキドキ…

魔女娘(この二人、知り合いだったんだ……)
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/04/30(月) 20:16:21.53 ID:bJSsrpC50
手品師「帰る」クルッ

マジシャン「仕事を引き受けておいてドタキャン〜?」

マジシャン「おいおい、とうとうプロマジシャンとしての誇りもなくしたのか?」

手品師「冗談だ……手品はちゃんと演る」

マジシャン「そうこなくちゃな! じゃ、しっかり前座をこなしてくれよ!」

マジシャン「前座のレベルが低すぎると、かえって俺が引き立たないからな!」

手品師「……ああ」ギリッ…

魔女娘(こんなに険しい手品師さんの顔……はじめて見た……)
32 : ◆giYLo4fN2M [saga]:2018/04/30(月) 20:16:52.31 ID:bJSsrpC50
今回はここまでとなります
次回へ続きます
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/04/30(月) 20:37:07.34 ID:b9QZmYiOO

楽しみ
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/05/01(火) 03:30:39.04 ID:NeJiNTVU0
乙期待
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/01(火) 19:13:52.91 ID:bBDZCTAW0
マジックショーが始まった――

パチパチ…

手品師「それでは、手品を始めていきたいと思いまーす!」

手品師「よっと」サッ

手品師「まずは花を取り出させていただきました〜!」



パチパチ… パラパラ…



魔女娘(こんなにお客さんがいるのに、拍手がまばらだ……)
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/01(火) 19:16:49.90 ID:bBDZCTAW0
司会「どうも、ありがとうございましたー!」

パチパチ… パラパラ…

手品師「……くっ!」

手品師(精一杯やったが……全く盛り上がらなかった……)

魔女娘「手品師さん、お疲れ様でした! 飲み物とタオルです!」

手品師「ありがとう……」



司会「さぁ、それでは皆さんお待ちかね! グレートイリュージョニスト・マジシャンの登場です!」

マジシャン「待たせたね、みんな!」バッ

ワァァァッ!!!
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/01(火) 19:18:55.40 ID:bBDZCTAW0
マジシャン「こうして念じると……ほらっ、花束が出た!」サッ

マジシャン「う〜ん、いい香りだ」クンクン

マジシャン「ほら、みんなも嗅いでくれよ!」ポイッ



ワァッ!!!

パチパチパチパチパチ…

ヒューヒュー… ピーピー…

「マジシャンさーん!」 「ステキーッ!」 「すっげぇ〜! どうやってんだ!?」



魔女娘(やってること自体は、手品師さんとあまり変わりないのに……)

魔女娘(盛り上がり方が全然ちがう……!)
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/01(火) 19:20:29.11 ID:bBDZCTAW0
……

手品師「…………」ガックリ

マジシャン「ほら、今日のギャラだ。ありがたく受け取れよ」

手品師「…………」

マジシャン「どうした? あらためて実力差を目の当たりにして、自信喪失しちまったか?」

手品師「だ、誰が……!」

マジシャン「じゃあ、この盛り上がりの差をなんとも思ってないわけか」

マジシャン「なおさらどうしようもないな」

手品師「なんだと……!」

マジシャン「お前さぁ……もう手品師辞めろよ」

マジシャン「忍びないんだよ。かつて競い合い、憧れさえした男が落ちぶれるのを見るのは……」
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/01(火) 19:22:43.40 ID:bBDZCTAW0
マジシャン「もう分かってんだろ? 自分にはパフォーマーとしての才能がないって」

マジシャン「いわゆる普通の人生を歩むなら、今の年齢くらいがラストチャンスだ」

マジシャン「俺が今日、前座をやらせたのはだな。お前にそれを思い知らせるためだったんだよ」

手品師「ふざけるな! やめてたまるか!」

マジシャン「しょぼい手品師として、わびしい人生を終えるか……ま、それもお前の勝手だ」

マジシャン「狭いアパートの一室で、埃をかぶった手品道具に囲まれながら」

マジシャン「みじめに哀れに孤独に死んでいくんだろうなぁ……」

手品師「お前……!」

マジシャン「お、怒ったか? まだいっちょ前にプライドだけはあるようだな」

マジシャン「ほら、殴ってみろよ。手品師を引退するいい理由になるぜ」

手品師「…………」ググッ…



魔女娘「――ちょっと!」
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/01(火) 19:24:38.78 ID:bBDZCTAW0
魔女娘「いい加減にして下さい!」

魔女娘「ずっと黙ってましたけど……いくらなんでも言いすぎです!」

マジシャン「ん、なんだ君は?」

魔女娘「手品師さんに絡むのをやめないと……」ムクムク…

魔女娘「ガオォォォォォォッ!!!」

マジシャン「わわっ!?」ビクッ

マジシャン(顔だけライオンに!?)

魔女娘「さ、行きましょ!」スタスタ

手品師「あ、ああ……」スタスタ

マジシャン(なんだったんだ、今の……!? マジック……!?)
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/05/01(火) 19:26:09.38 ID:bBDZCTAW0
手品師「さっきのは……魔法か」

魔女娘「はい、顔だけライオンに化けたんです」

手品師(魔法ってのはそんなこともできるのか……ますます手品がみじめになる)

手品師「ありがとう、助かったよ」

魔女娘「いえ……」

手品師「今日はもう疲れただろう。ここで解散しよう」

魔女娘「あ、でもアパートまで……」

手品師「いや、解散しよう」

魔女娘「……お疲れ様でした!」
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