【わたモテ】モテないしもっと教えてもらう【かともこ】

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/07(木) 20:07:02.41 ID:CkJdm4Eg0

●全90レス前後(予定)
●キャラ曲解・崩壊注意
●加藤さんは聖女で悪女で、普通の女の子

前作↓
【わたモテ】モテないし教えてもらう【かともこ】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1521022330/

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1528369622
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/07(木) 20:10:15.23 ID:CkJdm4Eg0



「いい子」だね、って、よく言われます。




わたしも、そうなろうと思ってました。

お父さんが元気だったころから、ずっと。



お母さんを、悲しませたくなかったから。

お父さんに、つらい思いを、させたくなかったから。

そして、なれたんだと思います。 「いい子」に・・・




…「聞き分けのいい子」に。 

「都合のいい子」に。



3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/07(木) 20:11:09.16 ID:CkJdm4Eg0


わたし、人の顔色をうかがうのが、上手かったんです。

この人、わたしのこと好きなんだろうって思ったら、好かれるようにしました。

そうでない人からは、そっと離れるようにしてました。



そのうち、なにをしたら喜ばれるか、なにをしたら嫌がられるか。

自然と、つかむことができるようになってたと思います。

お母さんからもらったものなんだろうって、気がします。



人がしてほしいだろうことを先回りして、喜んでもらえるように。

人が嫌がるだろうことを抑えこんで、嫌われてしまわないように。

・・・いつのまにか、それがあたりまえになってしまってました。


4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/07(木) 20:12:51.11 ID:CkJdm4Eg0


でも、人から言われて、はじめて気づきました。

わたし、思いっきり怒ったり、笑ったり、泣いたりしない子だって。

そんなつもり、なかったんですけど。



わたしだって、嫌なことがあれば怒ってます。

楽しければ笑ってます。 悲しいことがあれば泣いてます。

だけれど、みんなには、そう見えないみたいなんです。



友だちに、言われました。 お芝居してるみたいだって。

怒っても笑っても泣いても、どこか他人事みたいだって。

・・・思い当たることが、ありました。



わたし、お父さんとお別れするとき、泣けなかったんです。



5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/07(木) 20:14:35.42 ID:CkJdm4Eg0


涙は、出ましたけど。 でも、泣けませんでした。

声を上げて、なにかにすがって、おもいきり泣きたかったんだけれど。

でも、できませんでした。 ・・・唇をかみしめてる、お母さんの顔を見てしまったら。



お母さんには、言えなかった。

お母さんのせいで泣けなかったなんて思われたくなかった。

悪いのは、わたしなんです。 ・・・・・・・・・・・



・・・・・・・・・・・・



・・・ああ、わたし、やっぱりこういうふうにしか考えられない。

自分のことより、誰かのことが、いつも頭をちらつく。

わたし、いい子なんかじゃ、ない。





わたしのなかに 、『わたし』が 、いないだけ ―


6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/07(木) 20:16:24.23 ID:CkJdm4Eg0



キーン コーン カーン

 キーン コーン ・・・




「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」




【――― 。 ―――――――――・・・】




「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・わあ」




【―――?!  ―――! ―― 、――・・・!】





「すごい・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」




【―――、――・・・ !! !、――!】

7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/07(木) 20:17:13.24 ID:CkJdm4Eg0

「わあ、こんなになっちゃうんだ」

「・・・ ・・・ ・・・」

「黒木さん、これが、『薔薇』なの?」

「い、いえ。 これは、その・・・」

「なあに?」

「あ、あの、その・・・」コソッ

「・・・しょたほも???」

「こ、声っ!」

「あ、ごめんね」ニコッ




黒木「も、もう・・・」ドキドキドキ




この子が、黒木さん。 黒木智子。

素直で可愛いけど、ちょっと悪い子で、ちょっぴりエッチな子。

わたしのクラスメートで、知り合い以上・・・ 友だち、未満。



こっそりふたりきりで、いけないことをやっちゃう仲 ―。



いつもこうして放課後に、いろんなことを教えてもらってる。

悪いこと、いけないこと、わたしが知らなかったことばかり・・・

8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/07(木) 20:18:28.41 ID:CkJdm4Eg0

切れ長でぱっちりした大きな目、細くとがった顎。

化粧してないのに、とってもチャーミング。




小柄できゃしゃなからだ、細くてまっすぐな手足。

それでもすごく体力がある。 走られちゃうと追いつけない。




いつもひとりでいるのに、だれかがとなりに来ることも、みんなでいることも嫌がらない。

意地悪でおっかないところもあるのに、とっても可愛くて素直。




男の子にモテたいって言ってるのに、女の子のこともヘンな目で見てる。

いつもわたしの胸とか、ふとももとか・・・ ふふふ。




女の子なのに男の子みたいで、妹みたいだけど弟っぽくもあって。

だのに、お姉さんみたいに、お兄さんみたいに思えることもある。




会うたび、話するたび、ドキドキワクワクしちゃう。

とっても不思議で、魅力的な子。




はやく、ちゃんと、友だちになりたいな・・・

9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/07(木) 20:19:52.19 ID:CkJdm4Eg0


【―! ―! ―! 〜〜〜〜〜!!!   ・・・――― 】



「・・・男の子どうしって、こんなふうにするんだ」

「(・・・か、加藤さん・・・)」

「気持ち、よさそう・・・」

「(加藤さんっ! 声、声っ!)」

「・・・怖い? ふふふ」

「(だ、だって、ここ・・・)」



小宮山「何してるの」



黒木「!!」サッ!

加藤「あ、小宮山さん」

小宮山「・・・加藤さん」

黒木「・・・・・・・・・・な、なんだよ」ドキドキドキ

小宮山「図書室は、携帯の使用は禁止じゃないけど。 ・・・できるだけ静かに使って」

加藤「・・・ごめんなさい」

小宮山「加藤さんのせいじゃないです、どうせこいつが悪いんでしょうから」

黒木「・・・・・・・」ムスッ

小宮山「まさかと思うけど、お前」 ジ ロ 。



「加藤さんにヘンな動画見せたりしてるんじゃないだろうな」
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/07(木) 20:22:57.31 ID:CkJdm4Eg0

黒木「!!!」ビクッ!

加藤「・・・・・・」・・・ピクリ

小宮山「あんた、そんなことしたら今度こそ怒られるだけじゃすまないぞ」

黒木「そ、そんな、こと」ダラダラダラ

加藤「うーん ヘンなのかも しれない」

黒木「!!!!」ドキン!

小宮山「・・・え?」



「いま 黒木さんに アニメのこと 教えてもらってたの」



小宮山「えっ・・・」

黒木「え」

加藤「うん。 この本 アニメになったって聞いたから」

小宮山「あ、あー・・・ そうでしたっけ」

黒木「(加藤さん・・・)」ドキドキ

加藤「根元さんと 話をあわせたくって」

黒木「(あいかわらず、すごい度胸だよ・・・)」ドキドキドキ

小宮山「そう、だったんですか」

黒木「(顔色一つ変えずに、もっともらしいことをスラスラと・・・)」ドキドキドキドキ

小宮山「・・・ほんとあんた、迷惑かけるんじゃないぞ」ジロリ




「加藤副会長にな」

11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/07(木) 20:24:31.74 ID:CkJdm4Eg0

加藤「・・・・・・・・・・・・・・」

黒木「わ、わかってるよ」

小宮山「あんたは自業自得だけど、加藤さんが巻きこまれたらかわいそうだろ。

生徒会役員なんだから、それなりの立場ってものがあるだろう」

黒木「・・・わかってるって、言ってるだろ」

小宮山「それならいいけど・・・ あ、はい。 いま行きまーす」



タッ タッ タッ タ ・・・



黒木「・・・・・・・」ドキドキドキドキドキ

加藤「ふふ、ドキドキしたね」 ニ コ 。

黒木「ど、ドキドキどころじゃないよ、加藤さんったら・・・」ドキン ドキン ・・・

加藤「また、本読んでるフリしよっか」ニコニコ

黒木「い、いいけど・・・ はああ (加藤さん、もう・・・)」グッタリ



(加藤さんってば、ここんところ、どんどん大胆になってく一方だよ・・・)



加藤「・・・・・・・・・」パラリ

黒木「(放課後の教室とか、学食とか、中庭とか・・・)」

加藤「・・・・・・・・・・・・・・」パラッ

黒木「(・・・そのうち、授業中に見せろとか言ってくるんじゃないだろうな)」
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/07(木) 20:25:20.99 ID:CkJdm4Eg0

黒木「(これって、あれかな。 いままで真面目にやってきた反動ってやつ)」

黒木「(・・・・・・・)」

加藤「・・・・・・・・・・・・・・」パラ パラッ

黒木「(・・・とんでもないことに目覚めさせちゃったなあ)」

加藤「・・・・・・・」パ ラ リ 。

加藤「・・・ね、黒木さん」

黒木「えっ」

加藤「また、見せて」

黒木「え、で、でも」



小宮山「―――。 ・・・―、――・・・」



加藤「だいじょうぶ。 小宮山さん、取り込み中みたいだし」

黒木「それでも・・・」

加藤「・・・だめ?」

黒木「・・・ちょ、ちょっと、だけなら」

加藤「ごめんね、黒木さん」

黒木「は、はい(・・・とほほ、まいったなあ)」

加藤「・・・・・・・・・・・・」ジーッ



【―――― 、――――――――・・・】
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/07(木) 20:26:03.80 ID:CkJdm4Eg0

黒木「(そろそろ止めさせないと、ほんとうにバレちゃうかも。 でも・・・)」

加藤「・・・・・・・・・・・・わっ。 ・・・」



【―――? ・・・・・・・・ ―、――・・・?】



加藤「・・・こんなことも、するんだ。 へえ・・・」

黒木「(加藤さんを目覚めさせちゃったの、わたしだからなあ)」



【?! ――! ・・・! ・・・・!! !!!】



黒木「(わたしのせいなんだから、あんまり強くもいいづらいよ。 はああ・・・)」

加藤「こんなことまで。 ・・・ね、黒木さん」

黒木「は、はい」

加藤「今度、いつにする?」

黒木「わ、わたしは、いつでも。 ・・・加藤さんの都合で」

加藤「ほんと? ありがと、ね」

黒木「え、あ、いえ・・・ でも」ドキドキ

加藤「なに?」

黒木「こ、こんどは・・・ あそこで、お願いします」

加藤「・・・あそこ?」

黒木「は、はい。 あの、西側の・・・」

14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/07(木) 20:28:36.82 ID:CkJdm4Eg0

加藤「あ、うん。 わかるよ、はじめて見せてもらった場所だよね」

黒木「・・・はい」



― 教えてあげます。 根元さんが声優になるって、言えなかった理由。

  これが、声優の仕事なんです・・・



黒木「あそこなら、その・・・ 行くところさえ、見つからなければ」

加藤「・・・そうだね。 やっぱり、やりすぎちゃったかな」

黒木「え、いや・・・ あ、その。 わたし、も」

加藤「うん。 今日と同じでいいのかな」

黒木「い、いや。 教えてもらいたいのが。 ・・・・・」

加藤「・・・それで、いいの?」

黒木「はい、ぜひ」

加藤「わかった。 きっとかわいくするからね」

黒木「あ、ありがとう・・・ ございます」

加藤「うん(・・・まだ、ダメかな)」



 ク ス ッ 。



こんどは、もっと悪いこと、してみようかな?




クス クス クス ・・・
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/07(木) 20:29:42.15 ID:CkJdm4Eg0



ザワ ザワ ザワ

 ガヤ ガヤ ・・・




田中「ゆり、何にする?」チャリン チャリン

田村「ミートスパ」

黒木「あ、同じの、で」

根元「夏野菜カレーでお願いー」

田中「はーい」ピッ ピッ ピ



   カチャ カチャン

  ガタ ガタ ガタッ



田中「いただきます」

根元「いただきまーす」

黒木「(育ちいいなあ)」ズルズル

田村「・・・・・・・・・・・」モム モム

根元「なんかひさしぶりだなー、クロとごはん食べるの」

黒木「そ、そうだっけ」

根元「だってここ最近、いっつも加藤さんといっしょでしょ」

16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/07(木) 20:31:06.35 ID:CkJdm4Eg0

黒木「い、いっつもなんて、そんな」

田村「・・・昨日食べてたでしょ。 先週も」… ブ ス ッ

黒木「このメンバーが一番多いよ」

田村「放課後だって、いつも一緒にいるくせに」ム ス ・・・

黒木「・・・いつもだなんて、そんなことないだろ」




加藤「・・・・・・・・・・・・」




根元「加藤さんに生徒会の仕事が入ってない日は、ほとんど一緒じゃん」

黒木「そ、それは」ドキン!

根元「ま、クロは美人に弱いからね」 ニ ヤ リ 。

田中「(ふたりとも、すごくイライラしてる・・・)」ヒヤヒヤ

黒木「だ、だから、そんなんじゃ・・・」モゴモゴ

加藤「(・・・・・・・・・・・・黒木さん)」



(黒木さん、やっぱり、わたしに気をつかってるんだな・・・)



田村「・・・ほんと、会うたび、いやらしい顔で笑ってる」 ム ス ッ 。

根元「ほーんと、そのうちなんかやっちゃうんじゃないかなー」 ニ タ ッ 。

17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/07(木) 20:31:41.99 ID:CkJdm4Eg0

加藤「(あのふたりもやっぱり、わたしに含むところがある)」

加藤「(・・・仕方のないことだけれど)」



黒木さん、お弁当いっしょに食べよ。

クロー。 一緒に学食いこ?



加藤「(わたしが黒木さんと仲良くなったのは、あのふたりよりあと)」

加藤「(それにわたし、黒木さんとふたりきりで会ってばっかりだし)」


加藤「(・・・ほかの人と一緒だと、黒木さんが遠慮しちゃうから)」

加藤「(でも、わたし、黒木さんをひとりじめしちゃってるんだよね・・・)」



黒木「そ、それならお昼、加藤さんもいっしょに・・・」

田村「わたしはいい」イライラ

根元「どうしようかなー」ニタニタ



加藤「(できればわたしも、田村さんたちと、いっしょにいたいんだけど・・・)」

加藤「(田村さんは、わたしを避けてる。 根元さんも、なにか、ひっかかってるみたい)」

加藤「(黒木さんのこと? それとも、茜のことなのかな。 ・・・・・・・・)」




わたしだって、うらやましいのに。 あなたたちのこと ―

18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/07(木) 20:34:25.71 ID:CkJdm4Eg0

「ネモってやることなすこといちいち萌えキャラくさいんだよな」

「え?! ・・・ど、どこが??」

「そうやって小首かしげるところ」

「もうクロと口きかない」プンスコ



根元さんの前にいるのは、ちょっと意地悪な黒木さん。



「やっぱりあれは、女子高生の陰謀。 ハニートラップ」

「夜中に男の部屋行くなんてどう考えたって変」

「すごいわかる」

「(また同意した?!)」



田村さんの前にいるのは、ちょっと悪い子の黒木さん。



「・・・いつも、ありがとう、ございます。

嫌じゃない、です。 また、お願いします」




わたしの前にいるのは、可愛くて素直な黒木さん。

・・・・・・・・・・・・・




・・・ちょっとよそいきの、黒木さん。
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/07(木) 20:35:30.46 ID:CkJdm4Eg0

田村さん、根元さん。 わたしだって、あなたたちがうらやましい。

ふだんぎの黒木さんに、わたしも会いたい。 会いたいよ。



・・・・・・・・・・・・・・・・



[ 明日香は上品すぎるからなあ。 お高くとまってるわけじゃないけどさ ]



茜の言う通りなのかも。 上品だなんて、そんなつもりないんだけど。

でも「いい子」では、あるんだと思う。




「聞き分けのいい子」。 「都合のいい子」 ―




[ 加藤さん、副会長やってみない? ]

[ あなたなら立派に務められると思うの ]


(― なかなかみんな手を挙げないし、この子なら無下に断ることは無いでしょう。)


[ ・・・・はい、やります。 せいいっぱい務めさせてください ]




・・・・・・・・・ああ、いやになっちゃうなあ。

わたしってば、いつもそうなんだから。

20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/07(木) 20:36:32.29 ID:CkJdm4Eg0

人の言う通りのことばっかりして。

他の人の顔ばっかりのぞきこんで。


文句があるなら、自分の口で言えばいいのに。

相手のほうが遠慮してくれるのじっと待ってて。


いつもいつも、もっともらしいことしか言わない。

どんなときでも、あたりさわりのないことしかしない ―



[ こんなこと教えたなんて知られたら ]

[ わたし、今度こそ、この学校にいられなくなるから ]



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



黒木さん、ねえ黒木さん。

意地悪な黒木さん、悪い子の黒木さん。


もしもわたしが、黒木さんみたいに悪い子になったなら。

そのときは、ふだんぎの黒木さんに会えるのかな?



ねえ、黒木さん・・・



ザワ ザワ ザワ ガヤ ガヤ ・・・
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/07(木) 20:37:32.90 ID:CkJdm4Eg0

キーン コーン カーン

 キーン コーン ・・・



田村「おはよう、黒木さん」

黒木「お、おはよ」



 スタ スタ スタ



田中「あ、加藤さん」

加藤「おはよう、みんな」

黒木「お、おはよ」

田村「・・・・・・・・・・・・」

黒木「(お、おいおい。 シカトはないだろ)」ヒヤヒヤ

田中「(・・・ゆりったら) ね、ねえ。 加藤さん・・・」



ダダダダダッ!



加藤「え」

田村「え、なに」

「せーんぱーーーーーいっ!!」
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/07(木) 20:38:41.45 ID:CkJdm4Eg0

黒木「げっ!!」

「せんぱーい! 黒木せんぱーい!!」ドダダダダ

田中「あ・・・ あなた、比留間さん?」

「あっ、田中先輩! それに田村先輩・・・ ああ、加藤さまも!!」

加藤「か、かとうさま??」

比留間「はい! はじめてお目にかかります! 2−Bの比留間恵理子です!」

黒木「騒ぐな、バカ! 何の用だ!」

比留間「はい! 新刊ができあがりましたので、ぜひお目にかけたく参上つかまつりました!」

加藤「しんかん? つかまつる???」

比留間「はい! 加藤さまもぜひ、ごらんになってください!」ガサゴソ

黒木「や、やめろバカ!」

比留間「どうぞ先輩、お目通しを!」サッ!

黒木「く、くそ・・・」カサッ



《 ある愛の詩 》



田中「あ、愛?」

田村「・・・なにこれ」

黒木「・・・・・・・・・」パラリ



《・・・お姉さま。 ああ、お姉さま・・・》
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/07(木) 20:40:31.65 ID:CkJdm4Eg0

加藤「これ、黒木さん? それに・・・ えっ?!」

田中「まさか、加藤さん、なの?」


           モトコ
《こわがらないで、基子。 力を抜いて・・・》

《い、いや・・・ やめて、お姉さま》



加藤「これ、わたし?」

田村「(・・・気持ち悪い)」



《ふふ。 ・・・ふたりきりのときは、なんて呼ぶんだった?》
           ア ス ナ
《・・・・・・・・・あ、明日菜・・・》



比留間「捕食者系完璧超人お姉さまと、獲物の小動物系お姉さまですっ!」

黒木「・・・・・・・・・・・・・・・」

比留間「絶対的強者に噛み砕かれ飲みこまれる愉悦! ああ、尊いっ!!」

黒木「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

比留間「今年の文化祭でみなさまにおひろめを・・・」

黒木「よしわかった。 死 ね 。」



バリーーーーーーッ!



「あ゛ーーーーーーーーーーーーーっ!!??」
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/07(木) 20:41:17.71 ID:CkJdm4Eg0

黒木「・・・騒がせてゴメン。 行こう」

田中「放っておいていいの?」

黒木「いつものことだから」



比留間「        」ヒク ヒクヒク …



田村「知り合い?」

黒木「去年の体育祭の騎馬戦で、馬やってもらった子」

田村「ふうん」

田中「漫研の子なんだっけ」

黒木「うん。なんか知らないけど、わたしにつきまとうようになって」

黒木「ヘンな漫画のネタにしてきて、もう参ってる」

田村「加藤さんとイチャイチャしてるからでしょ」

黒木「だから迷惑だっての。 わたしと加藤さんはそんなんじゃ・・・」

田中「(黒木さん、ゆり!)」



加藤「・・・・・・・・・・・・・・・・」



黒木「・・・あっ」ドキッ!

田村「・・・・・・・・・」

加藤「・・・・・・・・・」・・・ギュッ

25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/07(木) 20:42:08.16 ID:CkJdm4Eg0

黒木「そ、その」

田村「・・・・・・・・・」

加藤「(・・・・・田村さん。 わたし・・・)」ギュウ




わたし・・・わたしだって、そんなつもりじゃ・・・ でも。

やっぱり、黒木さん、困ってるのかな。

迷惑してるのかな・・・




加藤「・・・・・・・・・・」ギュ…

田村「・・・・・・・・・・」

黒木「あ、あ・・・」

加藤「黒木さん。  わたし ―」キッ!

田村「黒木さん、今日のお昼はどうするの」

黒木「え?」

田中「・・・ゆり?」

田村「わたしたちと? 加藤さんと? それとも・・・」




「それとも、みんなで?」
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/07(木) 20:42:50.85 ID:CkJdm4Eg0

加藤「え」

黒木「み、みんな? いいの・・・」

田村「・・・嫌なら」

黒木「みっ、みんなでっ! みんなでお昼食べるっ!」

田村「じゃあ、みんなで」ニ コ 。

田中「・・・ゆり」

加藤「ありがとう・・・」

田村「別、に」



キーン コーン カーン・・・





…… … ────────────── … ……





ザワ ザワ  ガヤ ガヤ



田中「加藤さん、生徒会の打ち合わせだって」

田村「来られないの?」

田中「ちょっと遅くなっちゃうって」

根元「・・・そうなんだ」

黒木「席、とっておこう」イソイソ
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/07(木) 20:43:36.20 ID:CkJdm4Eg0



ザワザワ ガヤガヤ ザワザワ …



加藤「・・・ありがとうね、茜。 手伝ってもらっちゃって」

岡田「いいよ。 わたしも明日香と陽菜たちとで、いっしょにごはん食べたかったから」

加藤「みんな、どこにいるかな・・・」




「えー?! やだぁー!」

「ヘンなのー!」 「でしょー?」




岡田「・・・ん」ピクリ

加藤「・・・・・・・・・」



南「ほらほら、これ」ピッ

ノリ「きゃははは! これ、黒木?!」

マキ「ウケるー!!」



岡田「・・・あいつら」

加藤「・・・・・・・・・・・・・」
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/07(木) 20:45:12.34 ID:CkJdm4Eg0

南「そうー! 明日香にメイクしてもらってこれだってさ!」

サチ「え? 加藤さんに?」

南「そうそう! よっぽど素材がアレなんでしょ!」

ノリ「いえてるー!」



岡田「明日香ぁ? くそっ、調子に乗りやがって」ムカッ!

加藤「・・・・・・・・・・・・・」



マキ「あいつ最近調子乗ってるよね」

南「ほーんと。 自分でわかってないんだよ、あいつ」

南「だから、言ってやったんだ」



[ ・・・おまえさ、ちょっとは身のほどってやつをわきまえたら? ]

[ お前の顔なんかを明日香にメイクさせるから、あーんなみっともないことになっちゃうんだよ。 ]



岡田「・・・・・・・あの野郎」

加藤「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」



ノリ「ほんとにそーだね。 言ってあげるのも優しさだよ」

南「でもさ、あいつ、なんて言ったと思う?」



[ わたしも、そう思う。 でも、わたしはあれ、気に入ってる。 ]

[ 加藤さんもかわいいって言ってくれた。 だから、わたしはあれでいい。 ]

29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/07(木) 20:46:17.90 ID:CkJdm4Eg0

加藤「!」

岡田「・・・黒木」



サチ「うわー、なにそれ? ちょー痛い」

南「痛い通りこして気持ち悪いよ、なんなのあいつ」



岡田「・・・もう我慢できない」ズイッ!

加藤「待って」グッ!

岡田「明日香?!」

加藤「早く行こう、みんな待ってる」

岡田「でもなあ!」

加藤「・・・黒木さんが笑われてるのは、わたしのせい」

岡田「・・・・・・・・・・・・・」

加藤「わたしが、下手だったから。 みんなが笑うのも仕方ないの」

岡田「でも、なあ」

加藤「わたしはもう、いいの。 行こう・・・」



南「だからわたし、あいつに教えてあげたんだよ。 ほんとのこと」



[ ・・・はー、あんた、おめでたすぎるよ。 ]

[ 明日香が自分からあんたと仲良くしようだなんて、するはずないでしょ。 ]



南「明日香は、荻野に言われて、あんたの面倒みてやってるだけだってさ!」

30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/07(木) 20:46:59.80 ID:CkJdm4Eg0

ノリ「え、そうなの?」

南「うん、そうだよ。 わたし聞いちゃったもん」

サチ「あー、でもなんかわかる。 荻野も加藤さんもおせっかい焼きだしねー」

南「ほんっと、そう。 まあ上手くいってたんじゃない?」



カツ カツ カツ



南「あいつ、あんなに浮かれてたんだから。 なーんにも知らずに!」

サチ「うん・・・ あっ」



カツ カツ カツ カツ ・・・



南「教えてやった時の黒木、ちょーうけたよ! なんか口のなかでもごもご言ってさ!」

ノリ「あ、あ・・・」



― か つ っ 。



南「薄気味悪い目つきでにらんできてさ・・・」

マキ「(小陽、うしろ!!)」

南「は?」クルリ




加藤「                   」

31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/07(木) 20:48:13.38 ID:CkJdm4Eg0

サチ「あ、加藤・・・さんっ」

南「なんだー、明日香じゃん」

マキ「・・・こ、小陽」

ノリ「(ちょ、ちょっと待ちなよ)」

南「聞いちゃってた? あはははー」



加藤「              ええ」



サチ「・・・!」ビクッ!

南「ごめんねー、笑っちゃって。明日香のメイクだなんて思わなかったからさー」

南「しょうがないよね、素材がアレじゃ。 明日香もたいへんだよねー」

マキ「・・・・・・・・ちょっ、ちょっと、小陽!」

ノリ「(こ、小陽っ! もうやめ・・・)」

南「あんなやつにつきあわされちゃってさー」

加藤「             ごめんなさいね」

南「はあ?」

加藤「            黒木さんがああなったのは わたしのせい」

南「なに言ってんの、素材が最悪なんだよ」ケラケラ

加藤「 わ た し の せ い な の 」 す う ・・・




 黒木さんの きれいな目 可愛い顔を 台無しにしてしまった 。

 みんな わたしのせい ―

32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/07(木) 20:49:14.14 ID:CkJdm4Eg0

南「・・・は?」

ノリマキサチ「「「・・・・・・・・」」」ブルブルガタガタ

加藤「 でも わたしの下手なメイクを 黒木さんは ほめてくれた 」ギュ・・・

加藤「 気に入ってくれた 『最高だよ』って 言ってくれた ― 」

南「な、なによ、その言い方。 わたし、あんたが大変だろうと思って」

加藤「 わたしは 先生に 何も言われてなんか いない 」

南「え」

加藤「 あなたが 言ってたようなことは なにも 」

南「う、うそ。 わたし、ちゃんとその場で」



「 な に も 言 わ れ て な い の 」



南「なっ・・・」ビクッ

加藤「 みんなも 勘違い しないでね 」 じ っ 。

ノリマキサチ「は、はいっ・・・」カクン カクン

南「明日香、さっきからなによ! わたしは・・・」

加藤「 それから 南さん 」 ぎ ろ っ 。



わたしと あなたは 名前で呼びあうような 仲じゃない 。



「 え っ ― 」


・ ・ ・ ・ ・ ・
あ な た だ っ て わたしから 小陽なんて呼ばれたら




 迷  惑  で  し  ょ  う  ?

33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/07(木) 20:50:13.55 ID:CkJdm4Eg0


「ひ・・・ ひっぐ・・・ うえっ・・・」

「・・・・・・・・・・・・・」カツッ



カツ カツ カツ カツ ・・・



岡田「明日香・・・」

加藤「・・・行きましょう、茜」

南「ふぐう・・・ あ、あんなのって・・・ あんなのって、ないよ・・・」



カツ カツ カツ ・・・



南「わたし、あ、あすっ・・・・・・・・ かとう、の、ために・・・」

南「ぐず、ひぐっ・・・ なんで・・・ なんでぇ・・・」

岡田「・・・・・・・・・・・・・」



カツ カツ ・・・



岡田「いい薬、だな」

加藤「茜」・・・カツッ

岡田「うん?」

加藤「あなたの言う通りだった」

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