唇学園生徒会 志希√

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35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/02(月) 03:09:52.47 ID:CZSdHeLy0
頼むエタんな
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/02(月) 12:12:34.28 ID:bRW2SRWCo
ゆっくりでいいから待ってる
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/05(木) 23:24:04.49 ID:UeDYtXkK0
この作者のss面白いからエタらないでほしい。
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/07(土) 14:33:01.38 ID:2sklQBAG0
Masque:Radeは書ききってくださったので味を占めてる
お願いします待ってます
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/07(土) 14:35:01.10 ID:azy5B0kzo
Scarlet Daysが終わったら再開するってさ
40 : ◆x8ozAX/AOWSO [saga]:2018/07/26(木) 17:26:30.53 ID:xLfIWZPs0


P「いや、ほんとなんかもうアレ」

美嘉「まぁまぁそのうち慣れるって。面白い人ばっかりだし」

翌日、美嘉と並んで通学路を歩きながら昨日の事を話してみた。

信じてもらえなかった。

俺が疲れてるって事にされた。

つらい。

P「ってかマジでさ、無理じゃない?誰も俺に興味ゼロな感じじゃん」

美嘉「あー……あの、さ……」

なんだか申し訳なさそうに、美嘉が俯いた。

P「どうかしたか?」

美嘉「えっと、昨日は場の流れであんな風に言っちゃったけど……その……」

志希「おっはよ〜美嘉ちゃん。今日も元気してた?」

がしっ!っと。

校門の陰から飛び出して来た一ノ瀬先輩が美嘉に飛びついた。

美嘉「……おはよー志希★うんうん、アタシはいつでも元気だよ!……あははー……」

突然明らかに元気が無くなった。

なんだ、何を言おうとしてたんだ。

P「おはようございます、一ノ瀬先輩」

志希「……は?」

P「……志希」

志希「…………は?何?」

どっちで呼べば良いんだほんと。

今はどっちの人格なんだ。
41 : ◆x8ozAX/AOWSO [saga]:2018/07/26(木) 17:26:59.51 ID:xLfIWZPs0


美嘉「仲悪くない?これから一緒に活動してくんだし志希ももうちょっと優しくしてあげたら?」

志希「必要性が感じられないから却下。いくら美嘉ちゃんの頼みでもねー、イヤなものはイヤだから」

美嘉「……P、何かしたの?」

P「心当たりが全く無いんだよ……」

志希「反省の色はナシ、と。うん、良いんじゃない?その方がこっちとしてもテキトーにやれるし」

美嘉「……本当に心当たり無いの?P」

P「無いって……まぁいいや、教室行こうぜ美嘉」

冷たく接してくる人にワザワザ媚び諂う必要も無いし。

そんな事より遅刻したらマズイ。

美嘉と共に教室に向かおうとして……

志希「あーキミキミ、色々思う所も言いたい事もあると思うけどちょっとお仕事」

一ノ瀬先輩に呼び止められた。

志希「なーに、あたしも奏ちゃんに頼まれちゃってるだけでキミと馴れ合うつもりは無いから安心していいよ?」

安心の要素がどこにあったんだろう。

P「……んじゃ美嘉、先に行っててくれ」

美嘉「はいはーい、また後でねーP」

42 : ◆x8ozAX/AOWSO [saga]:2018/07/26(木) 17:27:27.56 ID:xLfIWZPs0



すたすた

P「あの、一ノ瀬先輩。何すれば良いんですか?」

すたすた

P「あ、あのー……」

すたすた

P「……一ノ瀬先輩?」

志希「……はぁ、黙って着いて来なよ。あたしが先導してるんだから目的地に向かってるに決まってんじゃん」

そうは言ってもなぁ。

まぁ美嘉が担任の先生に伝えといてくれるか。

廊下を走る生徒達が教室に飛び込んだと同時、チャイムが鳴った。

これで美嘉が伝えといてくれなければ俺はお説教だ。

志希「さ、入って」

到着したのは生徒会室。

良い思い出の無い部屋の扉を、重い腕で開けて。

バタンッ

ガチャ

……ガチャ?

なんで鍵が閉められた……?
43 : ◆x8ozAX/AOWSO [saga]:2018/07/26(木) 17:28:05.35 ID:xLfIWZPs0




志希「おっはよ〜P。昨日別れてから15時間27分32秒あたしと会えなくって寂しかった?あたしは寂しかった!」

ぎゅーっと抱き着かれた。

ほんわりと漂う甘い香りと柔らかい感触。

当然そんなのを堪能する程俺の心も脳も余裕は無いけど。

P「……いや、別に……」

志希「素直じゃないにゃあ、あたしちょっと傷付いちゃうんだケド」

もんの凄い猫撫で声だ。

ほんの数秒前の無感情な感じは一切ない。

あと別に、本当に寂しくはなかった。

志希「でもごめんね、あたしも冷たくって。他の人が居るとどうもね〜。アメリカ居た時ずっとあんな感じだったから、なかなか上手く出来なくってさ」

P「あー……成る程」

アメリカに居たって言ってたもんなぁ。

今より若い年齢でアメリカの大学みたいな実力社会(?)にいたらそうなっちゃっても仕方ないのかもしれない。

だから鍵閉めたのか、他の人が入って来れない様に。

志希「実はあたし、もう大学卒業してるんだ〜」

P「はえー……」

凄過ぎて語彙力が旅立った。

分かってはいたがとんでもなく頭ヤバい。

44 : ◆x8ozAX/AOWSO [saga]:2018/07/26(木) 17:28:40.58 ID:xLfIWZPs0




志希「ねーねー、一緒に朝ご飯食べよ〜よP。あたしお腹空いちゃった」

P「……あの、一ノ瀬先ぱ」

志希「志希って呼んでって言ったでしょ〜?」

P「……志希腕引っ張らないで強い強い減っちゃう腕減っちゃう」

志希「お腹減ってるの、あたし。腕減ってるの?P」

朝からこのテンションは非常にカロリー過多だ。

フレデリカさん以上に色々と自由過ぎる。

P「そう言えば仕事って言ってませんでした?」

志希「Pを連れ出す為のウソに決まってるじゃーん」

P「……」

志希「騙される方が悪いって古来から言われてるしね〜。でもま、お詫びに手を繋いであげる。ぎゅーっ!」

より強く抱き締められた。

俺の身体は手ではない。

P「……俺、教室行くんで」

志希「まぁまぁまぁまぁ、もうちょっとくらいあたしに付き合ってもバチは当たらないんじゃない?」

45 : ◆x8ozAX/AOWSO [saga]:2018/07/26(木) 17:29:43.76 ID:xLfIWZPs0


P「……昨日の夜何食べた?」

志希「えっとね、カルビ風ピザそうめん」

P「ふーん……じゃ、俺教室行くんで」

一ノ瀬先輩から離れようとする。

あっ思ったより力弱い。

志希「ちょっとちょっとへいへいそこのキミ!今糸口いっぱいあったよね?会話広げられたよね?ツッコミ入れたくなったよね?!」

P「……」

涙目でブレザーの背中掴むのはズルいんじゃないかな。

P「……ピザそうめんって生物学的にはどっち分類されるんだ?」

志希「野菜かな、小麦粉含まれてるから野菜かな」

P「野菜で一番好きなのは?」

志希「アメリカンポテト、脂ぎって塩たくさんかかってるやつ」

P「お塩は温めますか?」

志希「お祓いの相手にも小さな優しさ!」

P「盛り塩について一言」

志希「外なのにお盛んだね〜」

P「ポイントカードは?」

志希「野菜じゃないと思う」

P「支払いは如何なさいますか」

志希「未来の旦那さんにツケといて〜」

P「……テキトーに言ったのによく返せたな……」

フレデリカさんと会話してる時みたいな心地良さだ。

志希「ど?もっとあたしと話してたくなった?」

P「頭に何詰まってんだろうなとは思いましたね」

志希「恋する乙女の頭の中は、お砂糖とスパイスと……あと、キミの事が詰まってるの」

ほんと凄い思考速度だな。

志希「にゃっははー。契約書要らずの自動更新、お部屋に置くだけお手軽設置。一家に一台どう?あたし」

P「…………」

志希「絶対退屈させないよ?」

クラっときた。

確かに一ノ瀬先輩は他の生徒会のメンバーに負けず劣らず美人だし。
46 : ◆x8ozAX/AOWSO [saga]:2018/07/26(木) 17:30:11.10 ID:xLfIWZPs0


P「でも勝手にいなくなりそうだな……」

志希「そこはまー、持ち主の技量じゃない?」

P「俺次第ねぇ」

志希「Pがあたしに構ってくれる限り、あたしは何処にも行かないよ?」

あと、まぁ。

昨日も思ってたけど。

重い。

志希「なんなら事前登録しとく?特典としてキスがプレゼントされるよ」

P「マジで?!」

志希「おっ食い付いた食い付いた。男子って単純だにゃあ」

けらけらと笑う一ノ瀬先輩。

P「……騙された……」

志希「んにゃ?ウソじゃないよ、今の」

P「えっ?」

いつのまにか、一ノ瀬先輩は俺の目の前に居て。

少しずつ、その顔が近付いて……
47 : ◆x8ozAX/AOWSO [saga]:2018/07/26(木) 17:30:37.96 ID:xLfIWZPs0


ガチャ

奏「…………朝からお盛んね、二人とも」

P「……あ、あぇーっと……おはようございます、奏さん」

奏「おはよう、鷺沢君。それと昨日言ったでしょう、同い年なんだから敬語は要らないわ」

P「んじゃ、おはよう奏」

奏「……あら……呼び捨てまで許したつもりは無かったのだけれど……」

ん、そう言えば。

一ノ瀬先輩は……

志希「……キミ、なに急に近付いて来てんの?キミのパーソナルエリアは5センチ未満なの?」

あーほらもう……

奏「体勢的には志希ちゃんの方からキスしてる様に見えるけど」

志希「キスしてくれないと仕事しないとかふざけた事言ってたから、ちょっとお説教してあげようとしてたダケ」

そんな事言ったっけ俺。

まぁ、もう慣れた。

今は奏居るからな、素直になれないんだよな。

奏「……鷺沢君、貴方本当にユニークね。気に入ったわ」

P「いや、あの……」

奏「でも困った事に、志希ちゃんは嫌がってるみたいなのよ。だから……申し訳ないけれど、代わりに私のキスで良いかしら?」

P「えっ?」

志希「はにゃっ?!」

何言ってんだこの人。

奏「あら、私じゃ不満?」

P「いや、そういう訳じゃなくて……そもそも俺キスしろなんて言って無いし……」

奏「そうなの?志希」

志希「奏ちゃんはあたしと新人、どっちを信じるの?」

奏「もちろん志希ちゃんよ。だからキスしようとしてるんじゃない」

志希「え、あぇー……志希ちゃんちょっとヤラカシちゃったかもねー……」

P「……きょ、教室行くんで!お疲れ様ですまた放課後!」

奏「……ふふっ、可愛い子ね」

志希「あー……折角のリラクゼーションタイムが〜……」

こんな場所に居られるか。

心が保たないわ。


48 : ◆x8ozAX/AOWSO [saga]:2018/07/26(木) 17:31:04.41 ID:xLfIWZPs0




P「って事があったんだよ」

美嘉「はいはい、授業中寝てたもんねP。夢の話でしょ?」

夢の話にされた。

6時間目も終わり、また俺たちは生徒会室に行かなければならない。

はぁ……疲れる。

美嘉「お疲れ様ー★」

P「お疲れ様です」

周子「あ、おつさまおつさまー。まだ奏ちゃんも志希ちゃんも来てないよ」

ふぅ……良かった。

美嘉「周子は何してるところ?」

周子「んー……分かんない。しゅーこちゃん今何してたんだろ?」

P「えぇ……」

周子「あ、丁度いいとこに新人君。悪いんだけどさ、ちょっと来週のジャプン買って来てくんない?」

P「ちょっと隣のコンビニでみたいなノリで未来にパシらせるってエグく無いですか?」

周子「いやー、続きが気になり過ぎて仕事に身が入らないんだよね」

美嘉「仕事してたの?」

周子「いや別に?」

美嘉「先月の収支報告用の書類は出来てる?」

周子「そりゃーもちろん、とっくに終わってるからこうやってダラけてんの」

塩見先輩も、どうやらかなり有能らしい。

ある程度のラインを超えた有能な人は変な人になる法則でもあるんだろうか。
49 : ◆x8ozAX/AOWSO [saga]:2018/07/26(木) 17:31:37.48 ID:xLfIWZPs0



周子「ところで新人君って一人暮らし?」

P「ん?いや従姉妹の姉と住んでますけど」

周子「……そっかー、ならいいや」

美嘉「なになに?周子もPの事実は狙ってる?」

周子「別にそーゆー訳じゃないし、なんなら美嘉ちゃん今自爆してるよ」

美嘉「……っ!」

P「……?」

周子「……今月末までにがんばー」

ガチャ

奏「お疲れ様、みんな」

志希「はろーはろー、いっつそーしきにゃ〜ん!」

残る二人も入って来た。

女子ばっかりで大変居心地が悪い。

志希「しゅーこちゃん、何か良いネタなーい?」

周子「生徒会便りに載せるやつ?ならそれこそ庶務が就任とかでええやん」

志希「……なんであたしがそんな事書かなきゃいけないの?」

周子「……新人君、志希ちゃんに何したん?」

P「何もしてないです、本当に」

周子「あ、奏ちゃん。書道部と漫研から来年度は部費増やしてくれって申請来てたよ」

奏「そこ二つなら自分達で造札出来るから放置で良いわ」

良くないだろ。

明らかにそれ犯罪だろ。

周子「あと一ヶ所収支合わないとこあったんだけど、先週誰か無申請で260円使った?あ、あたしがジャプン買ったんだった」

おい。

志希「んにゃ、ネタが……うーん、ピンと来るのが無いにゃあ」

周子「なら適当にでっち上げちゃえばええやん。速報!速水生徒会長に恋人の影!みたいな」

奏「やめて頂戴、より一層誰からも告白して貰えなくなっちゃうじゃない」

志希「うーん……此処は身を削ってネタの提供を……こないだ発見した新元素でも発表しちゃおっかなー」

美嘉「生徒にウケる?それ」

志希「ウケ悪そー、やめとこっか」

なんというか、会話のレベルが違い過ぎる。

50 : ◆x8ozAX/AOWSO [saga]:2018/07/26(木) 17:32:41.43 ID:xLfIWZPs0



周子「新人君も何かネタだしたげたら?」

P「えっ、俺ですか?なら」

志希「却下」

P「はい」

オチは見えてた。

もう慣れた。

周子「ところで、今日あたしの下駄箱に映画のチケットが入ってたんだけど、今日の夜のなんだよね。あたし行けないんだけど誰か要らん?」

美嘉「それ絶対誰かからのお誘いだったんじゃない?」

周子「なんか手紙も添えてあったんだけど、下駄箱開けた時風で飛んでっちゃった」

うわぁ。

奏「それは何というか……送り主君にはご愁傷様と言うしか無いわね」

志希「あ、あたしはパース。この後したい事あるし」

美嘉「アタシも良いや。仕上げなきゃいけない書類あるんだ」

奏「あら、なら此処は私が有り難く受け取らせて貰おうかしら」

奏がにっこにこな笑顔をしていた。

映画、好きなんだろうか。

周子「んじゃ、新人君と二人に決まりやね」

P「えっ?」

奏「あらっ?」

周子「あれ?言ってなかった?チケット2枚入ってたんよ」

すっと此方へチケットを渡す塩見先輩。

それを奏は受け取って……

奏「それじゃ、鷺沢君に付き合って貰おうかしら。この後空いてるわよね?」

P「え、あーまぁ。俺でよければ」

志希「……じーざす、ちょっとそこのキミ過去に戻ってチケット破って来てよ」

奏「……あら志希、本当は貴女も行きたかった?」

志希「えっ?ごめんねー今奏ちゃんがバージェス生物群と交際を開始って記事書いてて聞いてなかった」

奏「せめて陸上で現代の生物にして。あとオスかメスか分からない形状もお断りよ」

と、言うわけで。

奏「それじゃ……行くわよ、鷺沢君」

奏と、映画館に行く事になった。


51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/27(金) 12:17:17.42 ID:2dQGFaT00
なんというカオス空間
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/27(金) 14:38:41.17 ID:KTt7DrL1O
おつ

で続きは?
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/28(土) 18:48:59.63 ID:qhevbymk0
マダー?
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/30(月) 20:23:24.82 ID:ALTbqfyJ0
まだー?
55 : ◆x8ozAX/AOWSO [saga]:2018/08/03(金) 16:03:58.51 ID:I9ixU+FX0


P「……おそいな、奏」

校門から少し離れた所で、俺は待たされていた。

少し準備するから校門の外で待ってて頂戴、と言われて早15分。

何してるんだろう、化粧直しだろうか。

それにしても。

他の生徒に俺が大人気生徒会長速水奏とデートしてるとこ見られたら殺されるんじゃないかな。

大丈夫?背後から刺されたりしない?

「ごめーん、待ったー?」

ガシッと、俺の腕が掴まれた。

え、奏こんなキャラだった?

P「いや、今来たとこ……」

驚いてそっちに目を向けると……

P「…………誰?」

加蓮「……アンタ誰?」

いやこっちのセリフだけど……

なんか茶髪の女子生徒がいた。

加蓮「ってのは冗談で。へー……アンタが鷺沢、へー……なんていうか普通」

P「えぇ……」

初対面の女子に名前把握されててなんか普通とかガッカリされた。

ってかマジで誰だこいつ。
56 : ◆x8ozAX/AOWSO [saga]:2018/08/03(金) 16:05:01.63 ID:I9ixU+FX0



加蓮「あ、もしかしてアンタ……クラスメイトの名前覚えない系男子?草食系じゃん」

P「……あ!お前教室で見た事ある!!」

加蓮「よしよしもう一歩!はいあんよが上手!」

P「名前は確か……ほ……ほう……ほうじ……法事?」

加蓮「そんな名前の訳無いでしょ?」

P「豊穣?」

加蓮「実り豊かな子に育って欲しい、そんな願いを込めて私の苗字は豊穣って名付けられたのってそんな訳無いでしょ!!」

……テンションたけぇなこいつ。

加蓮「はーバカじゃんアンタ、脳みそ熱で溶けてるの?バカバカし過ぎてバカンスなんだけど、頭南国トロピカルなんじゃない?」

P「で、マジでお前誰?んで何?」

加蓮「名前は加蓮。で、北条」

P「北条、マジ北条お前誰?ん北条何?」

加蓮「怖い怖い暗号みたいになってる、『で』が『北条』になってる」

P「……なんで抱き着いて来たの?」

加蓮「あ、5千円ね」

P「しかも金取んのかよ」

加蓮「アタシだってしたくてした訳じゃ無いし!!」

じゃあなんでしたんだよ……

加蓮「デモンストレーション?人柱?アンタの反応チェックとかそんな感じ」

P「誰かに報告するのか?」

加蓮「さっきの反応は悪くは無し、と。それは私が言わなくてももうすぐ分かるよ。それじゃー良きバカンスを。じゃあね鷺沢、また明日」

手を振って北条が走って行った。
57 : ◆x8ozAX/AOWSO [saga]:2018/08/03(金) 16:05:34.83 ID:I9ixU+FX0



なんだったんだ、あいつ。

マジでなんだったんだ、あいつ。

P「……はぁ」

奏「溜息なんて吐いちゃって……幸せが逃げてくわよ」

P「あ、奏か。いや今なんか変なのに絡まれて……」

奏「……すぅー……ごめんなさいっ!待たせちゃったかしら?」

がしっ、っと。

再び俺の腕が掴まれた。

奏「でも安心して。貴方が幸せを逃した分、私が幸せにしてあげるわっ!」

ぎゅーっと強く握られる。

……なんで?

奏「……何か言いなさいよ」

P「奏、知ってるかもしれないけど人には得手不得手ってものがあるんだよ」

奏「好きこそ物の上手なれとも言うわ」

P「……で、なんで急に抱き着いて来たんだ?」

周りからの視線が非常に痛い訳だけど。

おいばかそこ写真撮るのやめろ。
58 : ◆x8ozAX/AOWSO [saga]:2018/08/03(金) 16:06:20.72 ID:I9ixU+FX0


奏「言ったでしょう。私、恋愛経験が無いから……こういった場合はどういう距離感で過ごせば良いのか分からないのよ」

P「普通にすれば良いんじゃない?ってかえ?恋愛経験?それ必要ある?」

奏「でも、今回はデートでしょう?背後から彼氏の腕に抱き着いて笑顔でこっぱずかしい事を言うのが普通って加蓮も言ってたわ」

あぁ、あいつが。

んでもって、そんなアホみたいな事を奏が信じてるって事は……

奏「さ、デートよ。こういった事は初めてだから、彼氏である貴方がエスコートして頂戴」

P「いや、あの……奏」

奏「何かしら……あ、そうね。まずは貴方が私の容姿を褒めるところからスタートだものね……ふぅ。はい、どうぞ」

……あぁ、成る程。

予想通りだ。

この人も、アホだ。

男子からの人気はあるし、クラスメイトとしての距離は完璧に掴めているんだろうが。

いかんせん、恋愛抜きにしても男女二人きりの場合の知識がなさ過ぎる。

んでもってあの北条に唆されたのであれば、まぁ。

P「……デートじゃないぞ?」

奏「……ふふっ、バカね鷺沢君。貴方は恋愛経験が無いから分からないのかもしれないけれど、放課後に男女が二人きりで何処かへ出掛けるのはデートって言うのよ」

P「……そうですか」

奏「……えっ?あらっ?違う?これデートじゃ無かったのかしら……?」

あたふたしてる奏さん。

なんていうか、思った以上に等身大な同い年の女の子だった。

奏「え、実は貴方を誘ったとき物凄く心臓がバクバクしていたのだけれど……もしかして、私だけだったのかしら……」

P「……デートかもしれない」

奏「ふふっ!そうよね、デートに決まっているわ。さ、鷺沢君」

P「おう」

奏「手を繋ぐフリをしましょう」

繋がないのか。

そこでフリだけで済ますのか。

奏「流石にそこまではしないわよ……そういうのはお付き合いを始めて月日を重ねてからでしょう?」

……うん。

なるほどね……

P「……じゃ、行くか」

奏「ええ、そうね」




59 : ◆x8ozAX/AOWSO [saga]:2018/08/03(金) 16:06:51.39 ID:I9ixU+FX0






『僕達、以前どこか古代エジプトで……』

『……そうだ。ようやく思い出したようだなボッター』

『……!君の名は!』

奏「……っ!」

スクリーンをジッと見つめる奏の横顔を、俺はずっと眺めていた。

いやだって、映画意味分かんないんだもん。

これジャンル恋愛なの?SFなの?ファンタジーなの?ホラーなの?

目まぐるしく変わる展開についていけず、最終的に俺は奏の反応で楽しむ事にした。

奏「……バカッ!なんでそこで火属性の魔法を撃つのよ……!」

小声でツッコミを入れている。

おかしいな、さっきまでお互いの事を忘れた恋人達が再開するシーンのはずだったのに。

奏「っ!キスでしょう?そこはキスするシーンでしょう?!」

上がったテンションを抑える為かジュースをちゅーちゅー吸っている。

映画、好きなんだな。

こんなので楽しめてるんだもん。

奏「なんっっでそこで一人になるのよ!早く戻って赤い方の導線を切りなさい!!」

程なくして映画が終わった。

……これ、元々塩見先輩を誘おうと思ってた男子生徒はどんなつもりだったんだろう。
60 : ◆x8ozAX/AOWSO [saga]:2018/08/03(金) 16:07:50.57 ID:I9ixU+FX0


奏「ふぅ……まあまあと言ったところかしら。85点くらいね」

P「高い」

奏「出演者や監督、演出等は高水準なモノだったもの。問題があるとすれば……」

P「展開だろ」

奏「飲み物から氷抜いて貰うのを忘れていたところね」

自分のせいじゃん。

映画側に一切非がない。

しかもそこに15点も割かれているのか。

奏「鷺沢君は楽しめたかしら?」

P「あーうん、めっちゃ楽しかった」

主に奏の反応が。

奏「ふふっ、この程度の映画で楽しいだなんてまだまだね……今度、また一緒に見にきましょう。ホンモノを教えてあげるわ」

あーなるほど。

こうしてサラッと次を誘えるあたり、奏の学校での人気の秘密が分かる。

でも奏さっきこの映画絶賛してたよな。

奏「さて、この後どうするの?彼氏さん」

P「んー、なら喫茶店でも言って感想会でもやるか?」

時間はまだまだ余裕あるし。

何かしらの作品を見た後は語り合いたくなるものだと文香姉さんも言ってたし。

問題は俺が一切映画見てなかった事だけど、それも適当に言ってればなんとかなりそうな作品だった。

奏「そうね……それじゃ、行きましょう」

61 : ◆x8ozAX/AOWSO [saga]:2018/08/03(金) 16:08:42.06 ID:I9ixU+FX0





奏「だから私言ったのよ、そこでかえんほうしゃはプレイミス、って。結果どう?やっぱり軽くいなされてしまっていたでしょう?ほらみなさい」

お洒落な喫茶店で、優雅にコーヒーを傾けながら。

奏が先ずは登場人物の行動にケチを付けていた。

奏「演出上そこで改めて敵は火属性が効かないってアピールする為だから仕方ないとは思うのよ。けれど、それならワザワザ天才タイプの彼を噛ませにしなくても良かったでしょう?お調子者の城之内で良かったじゃない」

城之内がディスられている。

誰。

映画ほっとんど見てなかったから覚えてない。

奏「あと、本編120分の内90分は背景でエイリアンとプレデターが踊ってたのも謎。インド僧なら分かるわ、マレフィセントでも許せるの。でもあの気持ち悪い形状の生き物が終始踊っているのは非常に目障りよ」

そんな映画だったんだ。

奏「ごほんっ、私ばかりごめんなさい。貴方は何か言いたい事は無いの?」

P「ん、俺ずっと奏見てたから分かんないや」

奏「……あ、あら……」

P「あ、やべ」

声に出てた。

映画を見てなかった事がばれてしまった。
62 : ◆x8ozAX/AOWSO [saga]:2018/08/03(金) 16:09:09.91 ID:I9ixU+FX0



奏「……ダメじゃない、まったく。私に糠漬けになってしまうのは仕方ないにしても、そこは少しは取り繕わないと」

P「釘付け、釘釘。釘が糠になってる」

奏「で、貴方は120分私に釘付けだったのね」

P「反応が見てて楽しかったしさ」

奏「自分をそういうコンテンツとして見られるのは正直不愉快だわ」

P「んじゃ言い直すけど、コロコロ表情が変わって可愛かったから」

奏「あら、鷺沢君からそう言って貰えるなんて後衛だわ」

P「あ、俺が前衛」

奏「男の子なんだから、恋人くらい守って頂戴」

にっこにこな笑顔の奏。

どうやら、本当に映画が好きなんだな。

奏「好きよ、とても好き。こうして誰かと観に来るのは初めてだったけれど……悪くないわね」

P「またいつでも誘ってくれれば付き合うよ」

奏「あら、鷺沢君からは誘ってくれないの?」

P「生徒会長としての業務命令?」

奏「恋人からのお願い、の方が素直に受け入れられるかしら?」

ふふっ、と小悪魔的な微笑みを浮かべる。

P「ま、なんか気になるタイトルがあればで」

奏「そ、期待せずに待ってるわ」

なんやかんや楽しかった。

こんな感じで気軽に話せるなら、学校でももっと話しかけても良いかもしれない。
63 : ◆x8ozAX/AOWSO [saga]:2018/08/03(金) 16:09:37.26 ID:I9ixU+FX0



奏「ところで、さっきからスマホに通知が来てるみたいよ」

P「ん?あ、ほんとだ。ちょっとすまん」

ラインを開くと、大量に通知が来ていた。

一ノ瀬先輩から。

端折った部分もきちんと添えると。

ライン交換した覚えの無い、一ノ瀬先輩から。

奏「どちら様から?ガールフレンドかしら?」

P「……まぁ、一応間違っては無いけど……」

確認するのが怖い。

でも放置すると翌日が怖い。

コーヒーを一気飲みして、トーク欄を開いた。

64 : ◆x8ozAX/AOWSO [saga]:2018/08/03(金) 16:10:22.01 ID:I9ixU+FX0


『にゃっはは〜、もう映画見終わった?』

『そのあと一緒に夕飯どーお?』

『むむむ、これは奏ちゃんと楽しく感想会してる気配』

『あたし帰るね〜』

『帰るよ?ほんとに帰っちゃうよ?』

『あと120分だけ学校で待ってたげる』

『返信くれると嬉しいんだけどにゃあ』

『おーい!おーい!お茶!』

『寂しさであたしは震えてるのにあたしのスマホは震えない』

『連絡寄越せー!』

『つらたん』

『声聞きたい』

『この悲しみを論文にする』

『飽きた』

『あ、正座占いの結果あたし体育座り』

『虚無』

『暇』

『あいたい』

『かなしい』

『いちのせ』

『せいとかい』

『いまどこ』

『こないとないちゃう、さびしい』

『いっぴつしたためるしょぞん』

『んがついた、終わり』

P「……ちょっと俺学校行ってくる」

奏「忘れ物かしら?」

P「……まぁそんなとこ。んじゃ、また明日」

奏「そ、また明日ね。鷺沢君」

65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/04(土) 11:03:28.49 ID:yCQt3g3oO
ええと思います。
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/04(土) 14:32:48.39 ID:3i453RudO
続きはよと思う所存
67 : ◆x8ozAX/AOWSO [saga]:2018/08/04(土) 16:03:54.86 ID:xvBcI1+k0


周子「……ひまー……」

雨の止まない木曜日。

暖房がガンガンに効いて眠くなるような生徒会室にて。

志希「んにゃ……ねむ……むり……りもねん……」

美嘉「ねぇ志希寝るなら業務終わってからにしてよ」

奏「終わってるみたいよ。志希だもの」

それぞれが作業に打ち込んでいるなか、俺もまた押し付けられた業務をこなしていた。

誤字脱字のチェック、思ったより辛い。

奏も美嘉も塩見先輩も一ノ瀬先輩も滅多に誤字をしないからこそ、あっても見落としてしまう。

周子「うんうん、寒い日に暖房効いた部屋でガリガリさんを食べる幸せ。いやー人生って幸福に満ち溢れてるね」

奏「そ、私達は作業に満ち溢れてる訳だけれど」

周子「ねー暇。なんか無いの?」

奏「手伝って欲しい作業ならあるわ」

周子「やーんお仕事したくなーい」

奏「そんな素直で愉快な周子にはこの真っさらな書類をプレゼントするわ」

周子「奏ちゃんがあたしをいじめるー。新人君、助けてくんない?」

P「えっ?俺ですか?」

突然振られてビックリした。

そして当然嫌だ。

俺だって今別の作業してるし。
68 : ◆x8ozAX/AOWSO [saga]:2018/08/04(土) 16:04:25.82 ID:xvBcI1+k0


周子「きみ以外に新人はいないし。手伝ってくれたらしゅーこちゃんがデートしたげるんだけどなー」

志希「ダメ」

突然一ノ瀬先輩が起き上がった。

周子「ありゃ、ごめん起こしちゃった?」

志希「ダメダメ周子ちゃん、新人を甘やかしても今後つけあがるだけだよー」

周子「だってあたしこの後暇やし。なんなら現在進行形でいと暇持て余しだし」

いと暇持て余し。

なんて古風で今の分かり辛い言い回しなんだ。

あと仕事あるだろ塩見先輩。

周子「って言うかまぁあたしがダーツしに行きたいだけなんだけど、美嘉ちゃんも奏ちゃんも忙しそうだし。新人君付き合ってよ」

P「んー、俺そんなダーツやった事無いですけどそれで良ければ」

志希「断りなよキミ。何様のつもり?周子ちゃんとデートとか身の程を弁えなよ」

周子「あたしそんなお高い女じゃないんだけどなぁ」

P「ま、作業早く終わったらで」

周子「おっけー、ならあたしも軽く手伝ったげる」

志希「おっけー、ならあたしが重く妨害したげる」

69 : ◆x8ozAX/AOWSO [saga]:2018/08/04(土) 16:04:54.36 ID:xvBcI1+k0




P「っし、終わりっと」

ッターンッ!とエンターキーを押す。

心地よい音と共に本日の業務が終わった。

周子「おっけー、それじゃ行こっか」

志希「はいはいはい!あたしも行きたーい!!」

周子「志希ちゃんさっきまであんなに乗り気じゃ無かったのにどしたん?」

志希「前世のプロダーツ選手としての血が疼いちゃった?的な?」

奏「あ、志希。貴女この生徒会新聞書き直しよ」

志希「えーなんで?面白く書けたと思ってるんだけどにゃあ」

奏「面白く無いわよ。『生徒会会長速水奏、カブトムシ採集に夢中』だなんて見出し、私はちっとも面白くないわ」

周子「張り出した次の日には奏ちゃんの下駄箱がカブトムシで埋まってそーやね」

美嘉「この時期ってまだ幼虫じゃなかったっけ?」

志希「そこはまーほら、時代の先取り的な?」

奏「書き直しよ」

志希「はにゃーん!明日やる明日やるから!!」

奏「ダメよ、貴女いつもそう言ってやらないじゃない」

志希「じゃあ明後日やる!」

奏「明日刊行なのよ、明後日じゃ遅いわ」

志希「……新人君直すの手伝いなよ」

P「……塩見先輩、行きませんか?」

志希「無視するなし!」

騒がしい一ノ瀬先輩を置いて、塩見先輩と生徒会室を出た。

うーん、ずっと座ってたから身体痛い。

周子「ん、あれ。今日雨降っとるやん」

P「傘持ってます?無ければ二本あるんで貸しますけど」

常日頃から折り畳みも持ち歩いてて良かった。

周子「ありがと、それじゃーれっつらごー」


70 : ◆x8ozAX/AOWSO [saga]:2018/08/04(土) 16:05:27.11 ID:xvBcI1+k0



ひゅん、とんっ。

P「おー、上手い」

周子「ふふーん、どうよしゅーこちゃんの腕は」

心地良い音と共に、ダーツがボードのど真ん中に命中した。

既に2本刺さっているのに、よく上手く隙間を縫う様に刺せるものだ。

上のパネルに表示された数値が150減り、俺との差が広がる。

P「凄いですね、塩見先輩」

周子「うーん、先輩って呼ばれるのは慣れんなぁ。普段美嘉ちゃんも奏ちゃんも呼び捨てしてくるし、きみも塩見か周子で良いよ?」

P「じゃあ俺塩見になります」

塩見「それ婿入りしてるやん」

P「さて……俺の番ですね」

持ち方もまだ覚束ないけど、それっぽく投げてみる。

サクッと、1に刺さった。

P「……もうちょい右か左にズレてくれればいいのに」

周子「ふぁいとー」

P「よしっ!」

ひゅんっと指からダーツがすっぽ抜けた。

たんっ!

周子「おー、ブルやん」

P「……や、やれば出来るもんですね!」

完全にマグレだけど。

もう一本投げる。

ボードに当たりすらしなかった。
71 : ◆x8ozAX/AOWSO [saga]:2018/08/04(土) 16:05:55.00 ID:xvBcI1+k0




周子「……んー、もうちょい持ち方と投げ方変えてみたら?」

P「ペン持つみたいな感じじゃダメなんですかね?」

周子「まぁそんな感じやけど。ちょっと腕失礼するよ」

P「っんんっ!」

背後から塩見先輩に腕と手を握られた。

そのまま二人羽織の様な体勢で腕を動かされる。

周子「っとね、こんな感じで肘はあんま動かさずに……こうっ、そーそーそんな感じそんな感じ」

そんな感じではない。

距離が近過ぎてそんな感じどころでは無かった。

周子「ん?おやおや、照れていらっしゃる感じ?」

P「……そんな感じです」

周子「うぶだねぇ鷺沢君は。顔真っ赤にしちゃって」

P「いや全然うぶじゃねぇですし」

周子「じゃーもっと密着したげる」

うぉぉぉぉぉっ!

背中に!背中が!!

親方!背中から幸せが!!

空腹でも無いのに背中とお胸がくっつくぞ!

P「あーだめだめ全然恥ずかしく無いですね」

周子「声裏返っとるよ?」

P「塩見の耳が裏返ってるんじゃないですかね」

周子「うーん、これまた揶揄い甲斐のある……」
72 : ◆x8ozAX/AOWSO [saga]:2018/08/04(土) 16:06:23.29 ID:xvBcI1+k0




ピロンッ

俺のスマホが震えた。

もう大体送り主が誰か分かってるけど……

P「ちょっとすみません、確認だけ」

通知画面は……一ノ瀬。

よし、後ででいいや。

周子「ん?志希ちゃんから?」

P「あー、はい」

周子「仲悪そうやったけど、連絡来るんやね」

P「結構な頻度でライン送られてきますね」

周子「ん……?ライン?志希ちゃんラインやっとんの?」

P「え?あれ?」

皆んなは知らなかったんだろうか。

特に生徒会で一緒に活動する事が多いだろうに。

周子「ってかあの子スマホも持って無かった筈。前までパソコンにメール送っとったもん」

だからいつもなかなか返って来ないんだよねーと笑う塩見先輩。

もしかして、一ノ瀬先輩は……いや、志希は。

俺とラインする為にスマホを契約したんだろうか。

途端に色々と申し訳なくなってくる。

P「……ちょっとすみません、返信します」

スマホを開いた。

『にゃっはは〜!はろはろーP!』

『ナウ、いと寂し過ぎるが進行形でサムシングがさみしんぐ〜!』

『コーラしゅわしゅわ、飲むとぱちぱち、これなーんだ』

『あ、コーラじゃん』

『やば、奏ちゃんの書類にこぼしちゃった』

『…………怒られた。コラーって怒られた』

『(´・_・`)』

『たすてけ』

…………

…………うん。

P「特に返信の必要は無さそうです」

周子「ほーん、まぁいっか。続けよー」
73 : ◆x8ozAX/AOWSO [saga]:2018/08/04(土) 16:07:07.00 ID:xvBcI1+k0


さくっ、さくっ、さくっ。

心地よい音と共に、再びハットトリックを出す塩見先輩。

果たしてこれに勝ち目はあるんだろうか。

周子「20のトリプル連打すればまだワンチャンあるんじゃない?」

P「塩見が手加減してくれた方が勝率上がると思うんですよね」

周子「そこはほら、勝負やし。なんなら何か賭ける?」

P「現時点で249差が開いてる訳ですけど、それを埋められる様な条件じゃない限り呑みませんよ」

周子「んじゃーキスしたげる」

P「さーてやるか、ちょっと本気出すんで」

全部7に刺さった。

ブラックジャックだったら勝ち確なのに。

周子「あ、きみが負けたらこの後アイス買ってね」

P「……ガリガリさんで良ければ」

周子「あたしのキスは随分と安いなぁ」

P「引き分けの時は両方でいきましょう」

周子「このスコア差だと難しそうやけどね」

俺と会話しながらも、どんどんスコアの差を広げてゆく塩見先輩。

まぁ、分かってはいたけど。

勝ち目、無いよな。
74 : ◆x8ozAX/AOWSO [saga]:2018/08/04(土) 16:08:00.01 ID:xvBcI1+k0
周子「よーし残り101、次で終わりやね」

P「俺は……残り555か、次で終わりだな」

周子「チートやん」

P「俺の時だけ数字10倍になってくれないですかね」

周子「下一桁ある時点で10倍じゃ終わらせられなくない?」

P「ま、最後までやれるだけやってみます」

よし、もう一回くらいど真ん中に当てたい。

狙いを定めて……

ひゅんっ、プツッ

P「…………あれ?」

周子「…………ん?」

ダーツのパネルが真っ暗になった。

なんだ?何が起きた?

店員「すみません、その台ちょっと不調で時々電源落ちちゃうんです。大変申し訳ありませんが、隣の台に移って頂いてよろしいでしょうか?」

P「え、あ、まぁ」

店員に従い、隣のダーツに移った。

……まぁ、最初からになるよな。

P「もっかいやります?」

周子「もち、それじゃ次はクリケットにしよっか」

P「さっきの勝負は?」

周子「ドローでええよ」

P「だとすると賭けは……」

周子「どっちも…………無効試合!無効無効!途中で終わっちゃったし、そもそもあのまま続けてたらあたし勝ってたし」

P「……」

ん……もしや、塩見先輩。

そういった経験、無いのでは?

P「……ところで塩見、誰かとキスの経験は」

周子「そりゃよくされてるよ」

だよなー。男子に大人気だろうしな。

周子「……志希ちゃんに」

P「……男子は?」

周子「……空中はセーフ?アウト?」

空中キスって何。

周子「さーて次の試合の始まりだよ」

P「……んふっ」

周子「おーこら新人きみ笑ったな?逆に聞くけどきみはあるん?」

P「男子とキスした事なんてある訳無いじゃないですか。さー次の試合ですね」

からかうのはこれくらいにしておこう。

うん、塩見先輩、思ってた以上にフレンドリーで面白い人だ。

これからも仲良くしよう。

クリケットはフルボッコにされた。

奢らされたガリガリさんはとても冷たかった。

75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/04(土) 16:27:13.25 ID:0LAiEV0IO
もっともっと
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/06(月) 10:51:16.69 ID:5avaqmaGo
はよ
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/10(金) 23:28:12.19 ID:bENWDdU40
飢えちまうよ続きはよ
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/23(火) 12:05:28.92 ID:mxmtdSF/0
復活しないかなあ
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/23(火) 13:47:27.57 ID:ZpK1WyeSO
まつ
80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/10/24(水) 22:05:23.39 ID:Nt6nwU6M0
ヘーイ
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/11/04(日) 19:42:31.65 ID:QYvp733J0
ヘーイ
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/12/06(木) 12:03:55.08 ID:r0CA9Mqz0
ヘーイ
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/03/18(月) 12:08:24.85 ID:fg2rVOXM0
ヘーイ…
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/04/05(金) 09:15:02.16 ID:NKl+mF28O
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