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勇者「信じて送り出した僧侶が触手に侵食されてるなんて……」
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29 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/19(火) 01:36:28.32 ID:GWu14NEY0
【寝室】
魔王「…………」
魔王「……んぉ?」
魔王「……あー、どっこだここ」
魔王「死後の世界にしてはずいぶん閉塞的だこと」
魔王「あ、隣にもベッドある」ボフッ
魔王「……これは、女の子の良い匂い……!」
魔王「えらいとこ来ちゃったぞ! これってもしやそういうお店か!!」
魔王「うっわー。どうしよう。きちんと護ってきたのに。いいのか、こんななし崩しにプロの方にお預けしちゃって」
魔王「いやでも、そんなに大切だった訳でもない。ない、はずなんだけど……」
魔王「……待て待て、魔王ともあろう者が。不安がる必要がどこにある。折角の機会なのだから、どしりと構えて楽しむのがれ」
ガチャ
魔王「あ、ちょっ、まだ身体洗ってなくって、あっ」
勇者「…………」
魔王「……あれ」
勇者「…………」
魔王「あ、そういうコンセプトなの!?」
勇者「何を言ってるかわからんがたぶんちげーよ!!!」
30 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/21(木) 15:49:13.67 ID:VueDlSwgO
僧侶「出ましたよ」ツヤツヤ
戦士「だろうな、ハリツヤが違う」
勇者「浴槽の底はぬるぬるしてないだろうな」
魔女「……うん、まあ、気にならないよ」
勇者「気にしてんだよ!」
側近「……」
魔王「なぜ目をそらす」
側近「……申し訳ありません」
魔王「何にだし」
側近「全てです……」
魔王「あのなあ……まあいいや、はよ寝ろ。俺の寝てた部屋だろ? ありゃいいベッドだったぞぉ」
側近「……っ」
魔王「あ、ちょ、泣くなって! 勘違いされちゃうでしょ!」
僧侶「起きたと思ったら、変な人ですね。魔王」グネグネ
魔王「そもそもお前はマジで人かおい!?」
魔女「あんたも魔族でしょうに」
魔王「ん?」
魔女「……いや」
魔王「……なーるほど。把握」
勇者「?」
31 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/25(月) 19:27:58.19 ID:TyuFrRgj0
勇者「……はあ」
勇者(やっと全員寝たか……騒々しくておちおち食器の片付けもできないよ)
勇者「…………」
勇者「はは……今口減らしとか考えたな、俺」
魔王「え、マジ?」
勇者「いやいや、流石にな」
魔王「あ、良かった。助かるわ」
勇者「…………」
魔王「魔族は寝ないのよ」
勇者「嘘こけ。眠くないだけだろ、誰よりも寝てたから」
魔王「んははは」
勇者「……今、ここにお前が居なければ、お前らの寝室に行ってたかもしれない」
魔王「剣構えてか?」
勇者「……わからないけど」
魔王「なら最初から我と側近がここに入った時に斬ればよかっただろう。もしくは、その素性が分かった時か」
勇者「無理だ」
魔王「なぜ?」
勇者「仲間意外でな、生きてる相手と喋るのが久しぶりだったんだ」
魔王「それが宿敵だと分かっても?」
勇者「さっき思い出したんだ、そのことを」
魔王「……ばっかだねえ。お仲間の方が余程仕事熱心じゃんか」
勇者「依頼者が居ないんだ。仕事なんざ達成する意味もない」
魔王「不真面目だこと」
勇者「放っておけ」
32 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/25(月) 19:45:10.85 ID:TyuFrRgj0
魔王「でも仕事をする気が起きたんだろう」
勇者「…………」
魔王「……分からんでもない。夜に一人、水の音だけ聞いておれば、思い出したくないことでも思い出す」
勇者「テメェ――ッ!」
魔王「分かってるッ!!」
勇者「!」
魔王「……自分のしたことを棚に上げてるのは分かってる。ただ聞け」
勇者「…………」
魔王「古の協定を破ったのも、大陸に魔物を放ったのも、我ではない」
勇者「この期に及んで何を……」
魔王「我は魔王ではない」
勇者「それ以上ふざけたことを抜かすなら、本当に叩っ斬る」
魔王「ふざけているように見えるなら斬ればいい」
勇者「…………」
魔王「側近が我を魔王と呼ぶのはな、王家の人間がすべて『霧』にやられたからだ」
勇者「!」
魔王「……そりゃ俺だって継承権持ってるけどさ。第五位だぞ、最下位だぞ。そもそも継承されようが、国ごと無いんだから。王と配下一人の国って笑えないか?」
勇者「……知らねえよ……!」
魔王「……こんなこと言って言い訳しているように見えるかもしれん。けど、私は侵攻反対派筆頭だったんだ。まあ、こんなガキの戯言に賛同する者が居なかっただけだがな」
勇者「うるせえつってんだろ!!」
魔王「人の話は全部聞けよ!!」
勇者「話せとも言ってねえ、聞きたくもねえ!!」
魔王「…………っ」
勇者「寝る」
魔王「食器は!?」
勇者「テメェが洗え……もう知るか……」
魔王「……そうかよ」
33 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/26(火) 02:13:50.62 ID:j7snuwyDO
乙
34 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/26(火) 23:48:11.14 ID:+Lw/GeRvO
魔王「…………」カチャカチャ
側近「洗いますよ」
魔王「Wow!?」
側近「なんですか?」
魔王「あ、いや、寝てるもんだとばかり」
側近「……あんなに怒鳴られては、寝られる訳がないでしょう」
魔王「……わー。だっせー俺ー」
側近「ださくありませんよ」
魔王「いやいや……他のやつにも聞かれたかなあ、あー恥ずかしい……」
側近「ださくないです」
魔王「……分かったよ」
側近「なら構いません、陛下」
魔王「陛下って言うな」
側近「真名を呼ばないのがここのしきたりでしょう」
魔王「お前なあ……」
側近「……ふふ」
魔王「はあ……」
ガチャッ
勇者「ちゃんと聞いてこいって戦士に殴られた……あと皿も洗えって……」
側近「くそださいですね」
魔王「くそだっせえわ」
35 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/28(木) 13:37:01.78 ID:BcS5dZm00
魔女「……」
僧侶「寝ないのですか、魔女」
魔女「寝たら襲われるかもしれないじゃん?」
僧侶「ほう?」ウニョウニョ
魔女「冗談。今日はなんだか、本を読みたくなって」
僧侶「いつも読んでいますよね、それ」
魔女「好きなんだー、『砂の国』」
僧侶「私は本を読まないもので、よくわからないんですよねえ」
魔女「お、初めて知った」
僧侶「プライド高めでしたからね、自分のことは話したくなかったのです」
魔女「くだけたねぇ。触手さまさまだ」
僧侶「なにが良いのですか、『砂の国』は」
魔女「読書の良さじゃなく?」
僧侶「たぶん、良い本に出会えばそれもわかるかと」
魔女「言えてる」
36 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/28(木) 13:48:13.45 ID:BcS5dZm00
魔女「この本のいいところはね、誰も特殊な力を持っていないところなんだ」
僧侶「どういう話なのですか?」
魔女「構造は簡単だよ。平和な国があって、それを脅かす者がいて、戦ってまた平和を取り戻す」
僧侶「ネタバレです」
魔女「そこは全然面白くないもん」
僧侶「場当たり的なハッピーエンドの物語自体は好きなのですがねえ」
魔女「戦うにしたって、単なる力と数のぶつかり合い。魔法もないし、ファンタジーらしい“キカイ”なんてのも存在しない。だから人は考える。敵も味方もね」
僧侶「地味ですね」
魔女「そう、ひとつひとつは人間の地味な考えの積み重ね。それが大きく情勢を動かすのが、痛快でさ」
僧侶「……」
魔女「納得いってないね」
僧侶「分かります?」
魔女「あまりに眉間にシワ寄ってんだもん」
僧侶「……考えるという能力も、充分特殊な力だと思っています」
魔女「でも、みんなその力は持っているよ」
僧侶「優劣はあります。劣が集まっても、優の閃きに敵うとも思いません」
魔女「……うん」
僧侶「言っていた力と数もそうです。大は小を兼ねますが、小をいくら集めても大に敵うとも思えません」
魔女「そこは、そうだね」
37 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/28(木) 14:02:45.06 ID:r3vYjMfbO
僧侶「人の考えは、そうではないのでしょうか」
魔女「私はそう思ってる。人が集団を作るのは、どんなに力で劣る者、ましてや知識で劣る者でも、その人にしかできない考え方がある」
僧侶「有用になるかは問わないのですか」
魔女「それを有用にするのが力と知識だよ。もちろん、普通にできないこともあるとは思うけどさ」
僧侶「…………」
魔女「納得できない?」
僧侶「……私が『こう』なろうと思った考えは、良いものだったのか」
魔女「…………」
僧侶「隣に誰か居たなら、違う考えに導いてくれたのでしょうか」
魔女「…………」
僧侶「…………」
魔女「……僧侶?」
僧侶「…………」
魔女「……寝ちゃったかな」
僧侶「…………」
魔女「お疲れ様。……私はね、止めなかったと思う。他はわからないけどさ」
僧侶「…………」
魔女「だって僧侶が、私たちの中で一番頑固で、……自分が戦いにおいて無力だと、一番嘆いてたから」
僧侶「…………」
魔女「でも今、あなたが辛いのなら……自分を強くなったなんて思わないで。私たちだって、自分を強いなんて思っていないから。だから、一緒に辛くなろう」
僧侶「……、……」グネ
魔女「……ぷふっ」
僧侶「笑うなぁっ!」
38 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/29(金) 01:47:07.84 ID:4to6+qHDO
乙
39 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/29(金) 21:31:19.21 ID:GLvLQ+wM0
戦士「く……ふあ……っと」
側近「おはよう」
戦士「……おはよう」
側近「誰だか認識するのに時間が掛かったろう」
戦士「バレたか。寝起きはどうもな」
側近「他の連中は?」
戦士「勇者はまだぐっすり。女子連中は分からんが、いつも通りなら魔女は農畜産物の為に魔力を使い果たしてダウン。僧侶は……まあ、流石に疲れてるんじゃないか」
側近「なるほど、じゃあいつも1番早く起きるのは戦士か」
戦士「まあな、だから朝食は俺の担当。代わり映えしないがね」
側近「へえ……」
戦士「作れるのか、って顔したな?」
側近「……バレたか」
戦士「勇者程じゃねえよ。言った通り朴訥なメニューしか作れない」
側近「ふうん」
戦士「そういや、魔王はどうなんだ?」
側近「……私より早く起きられて、『今日は風邪が弱いから』と外へ出ていかれてしまった」
戦士「!? おいおい、それは大丈夫か?」
僧侶「ある程度は大丈夫だと思いますよ?」
40 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/29(金) 21:39:29.81 ID:GLvLQ+wM0
側近「僧侶」
僧侶「“霧”は視認できるのが唯一の救いですからね、私が出ていった時は急に風が強くなってしまって」
戦士「なら今日だって!」
バタン
魔王「俺、風魔法使えっから」
戦士「……なるほど」
魔王「ただ、ありゃあしつこいね。何度吹き飛ばしても生物目掛けて漂ってくるわ。半分くらいは魔力持ってかれたもん」
側近「ご無事で何よりです」
魔王「おーう」
戦士「霧は元からそういう性質なのか」
魔王「みたいよ? なんとなく出てる方向は分かった気はするが、ありゃまともな人間は近付ける訳ないね」
僧侶「そこで私ですね」グネグネ
魔王「おうとも非まとも代表!」
戦士「無礼にも程があるぞ」
側近「すまない、こんなんだから誰もついてこなくてだな……」
魔王「無礼にも程があるぞ!」
41 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/06/29(金) 21:49:42.09 ID:GLvLQ+wM0
勇者「――それで、僧侶を突入させたいと」
魔王「おう。今日は魔力を大分消費しちまったから、明日辺り俺と僧侶で見てきたい」
勇者「…………」
魔王「ま、嫌がるわな」
勇者「分かってるなら言うな」
魔王「ただ、ここで停滞しても状況は変わらんだろ」
勇者「…………」
魔王「……お前」
勇者「なんだよ?」
魔王「もしや、本気でこのまま地下で暮らそうとでも思っているのか?」
勇者「……まさか」
魔王「…………」
勇者「信用できないか?」
魔王「正直」
勇者「……仲間を失うリスクを、どうしても見逃せない」
魔王「馬鹿か……? あれがここのハッチの隙間からだって、漏れ出してくるだろう? 水に溶け出して食うもんにも紛れてきたら? 噴出を止めなければただ死ぬのを待つだけじゃねえか!?」
勇者「だとしても……」
魔王「ここで一緒に死にてえってか。ふざけんなよ、あの仲間はお前の子守りか!?」
勇者「……声がでかい」
魔王「いいよ全部バラしたる!!!」
勇者「ンなッ!?」
魔王「やーい勇者のガキんちょ〜!」
勇者「絶対斬る絶対斬る絶対斬る絶対斬るッッ!!!!」
魔女(うっせぇ……寝かせろや……)
42 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/06/30(土) 02:50:47.45 ID:MFmypnUDO
乙
寝る
43 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/07/05(木) 14:55:37.25 ID:2scru185O
側近「その深刻な話ができない病気は治すべきです」
魔王「はい……」
僧侶「勇者様も、勇者なら勇ましいとこ見せて欲しいんですけどね。仲間を信じられないのは情けないですよ〜」
勇者「……」
戦士「まあ心配なのは分かるが……任せるしかないだろう。俺達には霧に抗う力はない」
側近「今日すぐに、ではないんですよね」
魔王「ああ、霧を払う魔力が回復してから行こう」
勇者「……僧侶」
僧侶「はい?」
勇者「平気か、辛くないか?」
僧侶「おやおや。ご心配ありがとうございます」
勇者「からかうな」
僧侶「……心に全く負荷がないと言えば嘘になりますが、どちらかといえば事態が進展しそうなことの方が喜ばしくて、大きいです」
勇者「大きな力に振り回されることだけは」
僧侶「分かっています。ほんと、いつもそればっかりなんですから」
勇者「……」
戦士「魔王。僧侶を任せるぞ」
魔王「任せていい相手じゃないと、改めて思うね」
戦士「お前は魔王じゃない。俺はお前の名前を呼んだだけだ」
魔王「……そうかい、んじゃやれるだけやるよ」
44 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/07/05(木) 15:02:18.52 ID:2scru185O
魔女「…………」
魔女「うーん。なんとなく、上手く行く気がしないんだよなあ」
魔女「こんなこと言ったら戦士くんは怒るし、勇者ちゃんは卒倒するだろうけど」
魔女「……まあ、万が一の準備はしとこうかな」
魔女「うらうらうらー、魔力をねりねり〜っと」
コンコンコン
勇者「魔女、起きてるか?」
魔女「はーいよ。ごはん?」
魔女(やっば、聞かれてたら死んでたわ)
勇者「ご飯もそうだし、伝えたいこともある」
魔女「お、人類滅亡の危機を前にして、子作り計画かい」
勇者「うるせえ早く来い」
魔女「ちぇー」
45 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/07/06(金) 01:13:53.05 ID:UsTeNwHDO
乙
46 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/07/06(金) 02:10:39.60 ID:3Q9fBK/a0
――――――――――――――――
魔女「そー、うー、りょー、ちゃん!」
僧侶「おや、珍しく朝から起きてますね」
魔女「旅立ちの前にこちらをどーぞ!」
僧侶「お、ハイテンションなのはこれを用意してたからでは」
魔女「まあねー、お守りって奴ですよ。やっぱ愛情って時間に出るよね〜」
僧侶「ありがとうございます。しっかり持って帰ってきますよ」
魔女「ほーい、じゃあおやすみ〜」
バタン
僧侶「……都合の良いことで、何よりですよ」
魔王「え、俺には何もないの?」
側近「魔王様は何もなくても帰ってくるでしょう」
魔王「信頼されてるのは嬉しいけど、愛情をくれたらもっと嬉しいよ?」
側近「……帰ってきたらあげますよ、じゃあ」
魔王「お、いいね。俄然やる気が出るわ〜」
側近「そんな単純なものなのですか?」
魔王「男はみんなそうだよ、なあ勇者」
勇者「知らないよ……あ、死ぬなら僧侶より先にな」
魔王「おーう辛辣ぅ」
戦士「どっちも死ぬな、それが一番だ」
僧侶「はい!」
魔王「善処する」
勇者「……頼んだぞ」スッ
魔王(……手、震えてら)
魔王「おう」ギュッ
47 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/07/06(金) 02:27:18.11 ID:3Q9fBK/a0
【外】
魔王「っかー、昨日より濃くなってやがる。こりゃ本当に底無しだな?」
僧侶「喋っていないで“霧”を飛ばしてください、私も浄化がどこまで間に合うか、っ分からないんですからっ!」シュォオ
魔王「分かってる分かってる。んで、出処はやっぱりこっち側か?」ビュオォ
僧侶「みたいですね。私達の根城から北東方向、森の奥深くです……あ、ここで私『土の神』の信仰をしましたね」
魔王「……もしや、その文明と“霧”に関係があるのか?」
僧侶「……どうなんでしょうね。神と同化してからというものの、こちらから意思疎通を取ることもできません」
魔王「……本当に神か、そいつ?」
僧侶「今のところは信用するしかないで、しょうっ!」シュォオ
ガサガサッ
魔王「! 何か来るッ!」
僧侶「えっ? ……自分の風魔法では?」
魔王「意図してないとこから音がしてんだよッ!!」
ガサッ
僧侶「あれは――ッ!?」
魔王「獣型の魔物……でも、この“霧”で生きてるってのは……」
僧侶「逃げて!!」
魔物「…………ッ」
ビュオッ
魔王「は――――ッぐぅ!?」ドゴッ
魔王(おいおいなんだよそのスピード! しかもただの体当たりって、こいつ死に物狂いか?)
魔物「…………」
僧侶「魔王、そいつから離れて!!」
魔王「――へっ、やなこった。俺の顔を忘れたってんなら、思い出させてやるのが主の務めだろ」ゴォォ
僧侶(火魔法の詠唱……!)
48 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/07/06(金) 02:36:07.64 ID:3Q9fBK/a0
魔王「燃えろ、せめて痛みのないよう一瞬でな」
ゴォオオッ!!
魔物「……ッ!」
魔王(……真正面から受けた? あれだけのスピードを持ったまま、なぜ?)
僧侶「来ますよ、魔王ッ!!」
魔王「はぁ?」
魔物「……ッ!!!」
ゴォオオッ!!
魔王(同じ魔法!? 詠唱もなく――いや、もしかして魔法ではなく……!)
魔王「吸収して、そのまま打ち返してやがるのか――ッ!?」
ヒュルルルッ パシッ
僧侶「間に合った……」
魔王(触手で引っ張ってくれたのか……こっちもなんてスピードとパワー、精密性なんだか)
魔王「助かった……しかし、ありゃどうすりゃいい? そもそもなぜ気づいたんだ?」
僧侶「今になって口を開いたんですよ、『神』が!」
魔王「へえ、それで神はなんだって?」
僧侶「って、聞いてる間にもう来てるんですよッ!!」
魔物「……ッ」ビュオッ
魔王「うおおっ!?」サッ
僧侶「すんでのところじゃないですか! 敵から目を離さない!」
魔王「いやすまんすまん、経験がなくてだな」
僧侶(……ああそうだ、この人おぼっちゃんなんだ……)
49 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/07/08(日) 02:54:53.12 ID:GvEsY0kDO
乙
50 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/07/16(月) 00:43:28.95 ID:yb6M87nA0
まだ?
51 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/11/30(金) 03:42:21.13 ID:vtNJeIWG0
魔王「それで、神はどんなお告げをくれやがったんだ?」
僧侶「『霧』は魔力を吸い取り蓄えることができます」
魔王「そんなの見りゃ分かんだよ! 他は!?」
僧侶「得た魔力を、魔物の精製に使うことができます」
魔王「! ――へえ、なるほどな」
魔物「…………!」
僧侶「もちろん霧から生まれた魔物は『霧』自体の特性を持っています。……分が悪いですね」
魔王「魔法に特化してるからな、俺もお前も。俺らが出てくる前に早く言えよ神とかなんとかさんよ」
僧侶「文句を言う前に霧払い!」
魔王「へいへい」ビュオッ
僧侶「ので、魔法は一旦禁止。なしで戦えますか、おぼっちゃま?」
魔王「嘗めんな触手女。お前のその小狡い獲物よりいい動きしてやんよ」
僧侶「あ、傷ついた。まあいいです」
魔物「……ッ!」ビュゥ
僧侶「与太話は聞いてられないそうですから――ねッ!!」ビシュルッ
52 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/11/30(金) 22:31:19.67 ID:7TE8WEdA0
乙おひさ
53 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/12/01(土) 23:52:14.51 ID:+sG8l/jDO
乙
待ってた
54 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/12/02(日) 19:34:14.04 ID:vVrCtcIU0
勇者「…………」
勇者「………………」
勇者「……………………………」
魔女「ソワソワすんなみっともない」ペシッ
勇者「んぶっ」
魔女「ほんっとに意気地のない勇者だね〜、きみ」
勇者「ほっといてくださいよ……」
魔女「あ、敬語戻った」
勇者「う……」
魔女「おーおー懐かしいねー。まだその癖直ってなかったか」
勇者「直したはずなんだけどな……」
魔女「だいたい『きみ』って呼ぶと戻っちゃうんだよね」
勇者「……わざとじゃないか」
魔女「きみがわるい」ニヤ
勇者「その顔のが気味が悪い」
魔女「んはは」
55 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[saga]:2018/12/05(水) 01:12:14.06 ID:yudOt+H50
勇者「……ありがとうございます」
魔女「だーから敬語やめなっつってんでしょ」
勇者「俺が勇者らしくないことをした時、いつもあなたは俺を笑わせに来る」
魔女「自意識過剰だぞー?」
勇者「ならそれでもいい。勝手に良く思っています」
魔女「そーかいそーかい。なーんかババア扱いされてる気がして気に食わないなあ」
勇者「お節介おばさんだなとは思っています」
魔女「ははは滅す」
勇者「冗談です、二割」
魔女「八割焦がせばいいんだな」
勇者「死ぬより辛いなあ」
56 :
以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします
[sage]:2018/12/06(木) 02:02:01.90 ID:n89ZokWDO
乙
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