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【艦これ】提督「墓場島鎮守府?」如月「その2よ!」

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73 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/07/29(日) 00:04:21.07 ID:CC2XuYRUo
間が開きましたが続きです。
74 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/07/29(日) 00:05:01.52 ID:CC2XuYRUo

 * しばらくのち、牢屋前 *

五月雨「……」

利根「……」

明石「……まあ、意外だと思うかもしれないけど、単純に練度が高いのはこの人たちね」

神通「……」

初雪「……初雪、です」

伊8「……ハチです」

五月雨「ほ、本当ですか?」

利根「神通はわかるが、正直、意外な面子じゃな」

明石「少なくても、五月雨ちゃんよりは練度は上よ」

五月雨「……」

初雪「……」

伊8「……」

神通「伊8さんがいたとしても、このままだと水雷戦隊ですね」

初雪「? なに? このみんなで、艦隊組むの?」

明石「ここに長門さんと不知火ちゃんも入るわ」

伊8「よくわからない編成ですね」
75 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/07/29(日) 00:06:30.51 ID:CC2XuYRUo

利根「して、その二人はどうしたんじゃ」

明石「提督に呼ばれたらしいですけど、もうすぐきますよ」

不知火「お待たせしました」

長門「なるほど、彼女が五月雨か。私は戦艦長門だ」

不知火「不知火です」ビシッ

五月雨「あ、はいっ! 五月雨っていいます!」ペコッ

長門「おおよその話は提督から聞いている。私たちの力を借りて、敵戦艦を撃破したいと言う話だったな」

五月雨「はいっ!」

長門「結論から言わせてもらう。残念だが、お前の思いには応えられない」

五月雨「ええっ!?」

明石「な、長門さん!? 何を言ってるんですか!!」

長門「これを見てくれ。提督がもらったレ級に関する資料のコピーだ」

不知火「司令から、全員が目を通しておくよう指示がありました」

明石「……なんですか、この冗談みたいなスペック……」ペラ

神通「対潜攻撃まで備えてるんですか……」

五月雨「……」ペラッ
76 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/07/29(日) 00:08:41.02 ID:CC2XuYRUo

長門「実際に戦った五月雨はわかると思うが、いざ数字にしてみると、良く助かったと言うべきだ」

長門「今の我々では、レ級に対してあまりに無力。仮に不意を突いたとしても、まともにダメージが通るかどうかすら怪しい」

明石「……」

長門「それから、この鎮守府には航空母艦がいないのも致命的だ」

五月雨「え、ええ!?」

神通「……確かに、そうですね」

長門「このレ級が出没する海域には、夜間でも爆撃機を飛ばしてくるヲ級改がいる」

長門「ヲ級改の艦載機に発見されれば、レ級を探し出すより先にこちらと交戦せざるを得なくなるだろう」

利根「となるとやはり空母と戦闘機の出番じゃな。比叡に三式弾を、でなくば防空艦……せめて高雄型がおればな」

長門「そして一番厄介なのはレ級の性格だ。この海域のレ級の目撃情報は大まかに3か所で、性格もその場所によって異なる」

長門「こちらに興味を持ってちょっかいを出し、いたぶって反応を楽しむ『遊びたい』奴」

長門「自らの被害は一切顧みず、ひたすら戦闘行為を楽しもうとする『戦いたい』奴」

長門「そして、ただただ艦娘が轟沈するところを見たい『沈めたい』奴。五月雨が遭遇したのは、おそらく最後のやつだ」

明石「最悪ですね……!」

長門「ああ。しかもそいつは、決まって帰投中や撤退中の艦娘を狙っては不意打ちを仕掛けるらしい」

長門「こちらから探りを入れれば逃げていき、こちらが弱って退くときに迫ってくる、典型的な卑怯者だそうだ」
77 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/07/29(日) 00:09:51.84 ID:CC2XuYRUo

五月雨「そんな……そんな相手に、みんなは……!」グスッ

五月雨「私、やっぱりじっとしていられません。そんな敵を放っておいたら、被害が増える一方です!」

長門「五月雨!」

五月雨「やらなきゃ、また誰かがやられるんですよ!? また、私たちみたいになるんですよ!」

利根「それはそうだが……」

五月雨「それに、P少将に信じてもらえないままは嫌なんです! 今までたくさん、お世話になったのに……」

五月雨「一緒に戦ったみんなだって、たくさん、思い出があるんです……なのに……!」

神通「……」

五月雨「なんとか……なんとかできませんか!?」

長門「いや、なんとかしたくてもだな……」

五月雨「明石さん!!」

明石「……ごめんね」

明石「五月雨ちゃんの気持ちにはどうにか応えたいけれど……」

明石「こうやって具体的な数字を示されたからには、それを無視するわけにはいかないの」

五月雨「そんな……っ!」
78 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/07/29(日) 00:11:03.17 ID:CC2XuYRUo

五月雨「……だ、誰か、いないんですか……!」

初雪「えっと……」

五月雨「初雪ちゃん!」

初雪「……私、行きたくない」

全員「「!!」」

五月雨「それは、なんで……」

初雪「五月雨は、前の鎮守府で、たくさん可愛がってもらって、たくさん思い出がある……よね?」

初雪「でも、私……思い出、ないから」

五月雨「え……!?」

初雪「ここに来る前の鎮守府で、そこの司令官だったN提督と話したのは、数回だけ」

初雪「誰のものでもない声の言うことを聞いて、ただただ遠征して……笑った記憶も、泣いた記憶もないの」

利根「初雪……」

初雪「でも、ここへ来て……ここに流れ着いて、全部変わった」

初雪「私、まだ、思い出を作ってる途中、だから」

初雪「私は、もう少し、ここに引き籠ってたい」

五月雨「ひ、引き籠って、って……」
79 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/07/29(日) 00:12:04.33 ID:CC2XuYRUo

伊8「……はっちゃん、その気持ち、わかります」

五月雨「!」

伊8「資材を探してオリョールに行って、少しでも休むとものすごく怒られて……はっちゃん、おかしくなってました」

明石「……」

伊8「……はっちゃんも、つらい思い出しかありません」

伊8「少し、考えさせてください」ペコリ

五月雨「あ……」

 (牢屋前から初雪と伊8が去っていく)

不知火「……」

長門「……思い出、か」

 ガタン!

神通「と、利根さん!?」

利根「……」ブルブル

明石「ど、どうしたんですか! 顔色が真っ青ですよ!」

利根「……吾輩、は……ここは、どこだ……!?」ガチガチ

明石「利根さん!?」
80 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/07/29(日) 00:13:06.59 ID:CC2XuYRUo

利根「……あ、あ……あああ……やめて、くれ……やめ……ぇ……」ガタガタガタ

神通「利根さん! しっかりしてください! 利根さん!!」

長門「おい……もしかして、利根も昔のことを思い出したんじゃないのか!?」

明石「早く落ち着かせないと!」

神通「すみません、私は利根さんをドックに連れて行きます!」グッ

長門「明石、お前も一緒に行ってやってくれ!」

明石「は、はい!」

利根「……ひっ! か……ぁ……ぎゃあああ!!」ガクガク

神通「利根さん! もう、もう大丈夫ですから! 利根さんっ!!」

 (利根が神通と明石に抱えられて出て行く)

不知火「……大丈夫でしょうか」

五月雨「……」

長門「……五月雨を助けるどころの話ではなくなってしまったな」

五月雨「……なにが、あったんですか」

長門「利根は、前の鎮守府で殺されかけた」

五月雨「!?」
81 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/07/29(日) 00:14:31.25 ID:CC2XuYRUo

長門「建造されて間もなく地下牢のような場所に閉じ込められて、何週間も拷問にかけられたと聞いている」

不知火「……あの様子から察するに、フラッシュバック、というものでしょうか」

長門「ここも牢屋だからか……まだ、全部忘れてしまえるほど日も経っていない。迂闊だった」

五月雨「……」

長門「なあ、五月雨。お前は仲間の敵を取るために出撃するのだな?」

五月雨「は、はい……!」

長門「どうやって相手をおびき出す? どうやって叩きのめす?」

五月雨「え? え、ええと……」

長門「私もな、絶対に始末したほうが良いと思っている奴から、身の危険を感じて逃げてきたんだ」

五月雨「……え?」

長門「それは私がかつて所属していた鎮守府にいる司令官だ」

長門「司令官が相手では、下手をしたらこちらが問答無用で解体されてしまうだろう」

長門「私には、打てる手がなかった。だから逃げて、最初に心の平穏を求めた」

長門「五月雨がはやる気持ちもわからなくない。だが、どうやったら確実に仕留められるか、落ち着いて考えるべきだと思うんだ」

長門「でなければ、きっと後悔する」

五月雨「……」
82 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/07/29(日) 00:15:45.39 ID:CC2XuYRUo

長門「それに、もし、お前と私が出て行って敵を討てずに沈んでしまったら、P少将と同じ思いを提督にさせてしまうだろう?」

五月雨「そ、そうかもしれませんが! あ、あんな乱暴な言い方する人が……」

長門「いいや、ところがそうでもない」

不知火「不知火も、司令に助けられた一人です」

五月雨「……」

不知火「その司令からの言伝です」

不知火「この鎮守府にいる艦娘と一通り話をしろ。その上で、お前がどうしたいかを決めろ、とのことです」

長門「……相変わらずだな」フッ

不知火「不知火は、これから鎮守府内を回って、皆さんに五月雨と話をするように伝えます」ビシッ

不知火「では」クルッ スタスタ…


長門「五月雨、教えてくれ」

長門「私は、お前が仲間を撃ったと聞いているが、どうにも信じられない」

長門「お前があの海で何をしていたのか、戻ってきてから何があったのか。ゆっくり、話を聞かせてくれないか」

五月雨「長門さん……!」ウルッ

83 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/07/29(日) 00:16:26.74 ID:CC2XuYRUo

 * それから *

朝潮「……これは、強敵ですね」

霞「っていうか、今のあたしたちにこんな奴の相手は無理よ。あいつが怒るのも無理ないわ」

朝潮「すみません、練度を上げるための時間が必要です」

朝潮「霞、司令官へ演習の機会を増やせないか相談してみませんか?」

霞「あいつもそうだけど、資材とも相談しないと駄目よ」

五月雨「……」

 * *

電「……ちょっと、遠慮したいのです」

敷波「あたしも。これ、なんとかすれば勝てるって感じの相手じゃないもんね」

由良「そうね……どうやってダメージを与えたらいいのかしら」

敷波「あいつだったら、これ見ても、行けって言ってたのかなー」ポツリ

電「……」

由良「……あまり、考えたくはないわね」

五月雨「……」
84 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/07/29(日) 00:17:20.55 ID:CC2XuYRUo

 * *

初春「ふむ。わらわたちにこやつを始末せよと。ならば体に魚雷を巻きつけて、突撃するほかあるまいな」

吹雪「は!?」

朧「それって、どうなのかな」

吹雪「だよね!?」

朧「確かにダメージは与えられるかもしれないけど、確実じゃないんじゃない?」

吹雪「って、そうじゃなくて!! なんでそこを真面目に返してるの!?」

初春「まあ、もしやるときは、の話じゃぞ。やりたくなくばやらんで良かろう」

朧「そうそう。吹雪は無理だよね。前の鎮守府の司令官を見返すって目標があるし」

吹雪「……朧ちゃんだって、鳳翔さんを悲しませるわけにはいかないでしょ」

朧「……まあ、そうだけど」

初春「ふむ。となると、できるのはわらわだけじゃな」

朧「……初春だけ余裕ぶってるみたいでなんだかムカつく」

吹雪「長門さんにだっこされてデレデレしてた上に降りたくないって駄々こねてたくせにー」

初春「お、おぬしどこでそれを!?」カオマッカ

五月雨「……」

85 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/07/29(日) 00:18:50.55 ID:CC2XuYRUo

 * *

暁「力を貸してあげたいのはやまやまだけど……勝てるかしら」

大和「この海域の攻略は難しそうですね……」

五月雨「そうですか……」

朝雲「……ねえ、これこそ余所の立派な鎮守府にお願いしてみたらいいんじゃない?」

古鷹「提督にお願いしてみましょうか!」

 * 執務室 *

提督「俺たちが何か言うまでもなく、現場の奴らも上の連中も、もうレ級対策を検討してるけどな」

古鷹「そうでしたか……それもそうですよね」

提督「ただ、情報はあっても、それを有効活用できる艦隊がそうそういねえらしい」

提督「P少将の艦隊だって、うちとは比べ物にならないくらい鍛えられてる。それで負けてるんだから、どうしようもねえ」

暁「その、攻撃対象だけおびき出す、ってことはできないの?」

提督「それなんだが、そのレ級がなかなか出てこねえんだ。レ級に勝ち目がなさそうだとおとなしくしてるらしい」

朝雲「それじゃ、狙い撃ちすら難しいってこと?」

提督「だな。その海域を制圧してる敵空母のヲ級の撃ち漏らし……っつうかおこぼれか、それを狙うハイエナみたいなもんだからな」

提督「気に入らねえだろうが、今、俺たちが向かってもヲ級にすら会えねえだろうな」

大和「海域へ挑む以前の問題ですか……」

提督「今の俺たちにできることっつったら、必死こいて訓練するしかねえんだが、資材にも余裕がねえし……どうしたもんかね」
86 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/07/29(日) 00:19:53.83 ID:CC2XuYRUo

 * 牢屋前 *

牢屋の毛布の上で横たわる五月雨「……はぁ……」

潮「あ、あの、五月雨ちゃん? 大丈夫……?」

五月雨「っ……は、はい!」ムクッ

如月「だいぶ疲れてるみたいね」

潮「その……ごめんね、ここから出してあげられなくて」

五月雨「いえ……」

如月「ね、五月雨ちゃん、腕を出して。手錠を外してあげるから」

五月雨「……え!? は、はい!」

 カシャン カシャン

如月「これでいいわ」

五月雨「あ、あの、鍵は准尉さんがこの前曲げてしまったんじゃ……」

如月「ああ、あれはスペアキーよ」

五月雨「」

如月「ごめんなさい、司令官ってちょっぴり意地悪なの」

潮(ちょっぴり……ちょっぴりなんだ)
87 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/07/29(日) 00:20:37.42 ID:CC2XuYRUo

如月「それより、お腹へってない?」

比叡「軽食持ってきました! さあ、冷めないうちにどうぞ!」

 っ「おにぎり&味噌汁&たくあん」

五月雨「え? え……っ?」

潮「手錠したままじゃ食べづらいだろうから、って……提督が」

如月「まだここから出すわけにはいかない、って言ってたから、もう少しだけ待っててね」

五月雨「いえ、あの……」

 グゥ

五月雨「……///」

潮「……」ニコ

如月「……」ニコー

五月雨「い、いただきます……」カァァ

比叡「はいっ、どうぞ!」ニコニコー
88 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/07/29(日) 00:21:38.42 ID:CC2XuYRUo

 * *

五月雨「ご、御馳走様でした……!」キラキラキラ

比叡「お粗末さまでした!」ニコニコー

潮(五月雨ちゃん、すっごいきらきらしてる……)

五月雨「とってもおいしかったです……この島の鳳翔さんってすごいんですね」

如月「あら。この島には鳳翔さんはいないわ?」

五月雨「え?」

潮「このごはんを作ったの、比叡さんですよ」

五月雨「……え??」

比叡「あはは、まあそういう反応されちゃうよね!」タハハー

五月雨「い、いえ! た、大変失礼しました!!」ドゲザッ

比叡「まあ、しょうがないのかなあ……みんなの反応を見る限り、どこの私もお料理はからっきしみたいだし」

潮「そ、そうですね……ここの比叡さんは特別だと思います。も、もちろん、いい意味でとっても特別です!」

五月雨「……あ、あの」

比叡「?」

五月雨「あの、比叡さんも、余所の鎮守府から来たんですか? なんか、みんなから話を聞いてると、そういう艦娘ばっかりで……」

比叡「ん……まあ、言いづらいけど、そうよ?」

五月雨「……」

比叡「でも、今はそこまで不幸じゃないかな。こうやってお料理作って、おいしいって食べてくれる人がたくさんいるし!」ニコッ

五月雨「……」
89 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/07/29(日) 00:22:42.87 ID:CC2XuYRUo
というわけで今回はここまで。
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/29(日) 01:18:29.88 ID:i+NibcNbo
いつも楽しみにしてる
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/29(日) 06:38:46.57 ID:cPHDOclRO
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/30(月) 00:38:29.99 ID:Hq6ewwvvO
あぁ、比叡の笑顔が眩しいっ……!
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/31(火) 14:49:45.70 ID:QcbWHsM/0
更新だぁ(泣)
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/05(日) 15:29:52.46 ID:xNo1bCIX0
ここのひえーさんは悪い意味で浸透したメシマズネタのとばっちりを
理不尽に喰らってるという割とリアルも絡んだ笑えない生々しさを感じる。
艦これ二次の闇というか
95 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/08/05(日) 21:28:52.16 ID:8XHthzk5o
割と多いですよね、風評被害。
個人的に一番ひどいのは鹿島あたりじゃないかと。

では、続きです。
96 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/08/05(日) 21:29:49.35 ID:8XHthzk5o

 * *

五月雨「……」ションボリ

提督「邪魔すんぜ」

金剛「Hey, 五月雨! How are you !」

五月雨「!」

提督「……五月雨、少しは落ち着いたか?」

五月雨「は、はい……」

提督「そうか。じゃ、誰を道連れにするかも決めたのか?」

五月雨「……そ、それは……」

提督「何人かからは昔話も聞いたんだろ?」

五月雨「……はい。あの、准尉さんは……わかってて、話をさせたんですね?」

提督「ふん。そこまで気付いたんなら俺の意図はわかってんだな?」

五月雨「……」コク

提督「俺が言うよりかは、あいつらから直接行けない理由を聞いたほうが説得力あるしな」

提督「そういうわけなんで、死にたいって連中以外は連れて行くな」
97 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/08/05(日) 21:30:25.27 ID:8XHthzk5o

五月雨「……私が行くのは引き留めないんですか?」

提督「そいつも最終的にはお前が決めることだしな。生きてても希望が見いだせないなら、それも道の一つだろ」

五月雨「……」

提督「ま、神通にもな、同じように我慢してもらってんだ」

提督「あいつも敵討ちがしたいんだ。それをやっちまうと、この鎮守府の存続が危ういことになる」

提督「だから、我慢してもらってる。申し訳ねえとは思ってるんだがな」

五月雨「……倒せる相手なんですか?」

提督「ああ。ただ、その相手ってのが海軍中将の息子なんだ。どうする? やれたとしても、その後をどうするよ?」

五月雨「……」

提督「悩むだろ。倒したい相手が強いだけなら練度を上げてひっくり返せるとは思うが、地位的なもんが絡むと途端に面倒くさくなる」

提督「そんなこんなで欲をかくと、助けてやりたくても助けられないことが出てきてなあ……」スクッ

提督「ま、お前が一人で行っても歯が立たねえ。かといって、この鎮守府の連中を当てにしてもらうのは、こっちも困る」カチャカチャ

五月雨「? じ、准尉さん?」

 牢屋の鍵<カチャン

提督「とにかく、今はお前を助けてやることはできねえ。悪いな」ギィッ
98 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/08/05(日) 21:31:34.78 ID:8XHthzk5o

五月雨「……」

金剛「五月雨どうしまシタ? 鍵は開いてマスヨ?」

五月雨「は、はい……でも、いいんですか?」

提督「お前、まだレ級退治に行くつもりか?」

五月雨「……それは……」

提督「ちゃんと考えることができるようになったんだろ? 誰かに噛み付いたりもしねえよな?」

提督「だったら、ここに閉じ込めておく理由はねえ」

五月雨「……」

金剛「テートク? 私をここへ連れてきた理由はなんデスカ?」

提督「ん? ああ、五月雨もいろいろ話を聞いたことだし、お前にも語ってもらおうかと思ってな」

提督「つうか、そもそも俺も聞いてねえ。金剛、お前はなんでこの島に送られてきた?」

提督「言いづらいんなら、執務室で訊くがどうする?」

金剛「No probrem. ここで問題 nothing デス」

99 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/08/05(日) 21:34:08.56 ID:8XHthzk5o

 * *

金剛「端的に言ってしまうと、前の提督……Q中将の夫婦喧嘩に首を突っ込みすぎたのが原因デース」

五月雨「Q中将ですか!?」

提督「知ってんのか」

五月雨「演習で一度だけお会いした覚えがあります。たしか、ものすごく厳しい方だったと……」

金剛「Yes. とーっても厳格な、まさしく軍人! って感じの方デース」

提督「……で、夫婦喧嘩ってのはなんなんだ?」

金剛「Q中将と奥様の間に息子さんが一人いらっしゃったんデスが……」

金剛「5年ほど前、彼が海外留学中に亡くなったことで、Q中将が奥様と向き合わなくなってしまったんデス」

金剛「そのために仕事の鬼となったQ中将は、自分の体を顧みず、日々深海棲艦の撃滅の指揮を執り続け……」

金剛「つい先日倒れて、検査したら……癌やら何やらで、全身ぼろぼろだったそうデス」ウツムキ

五月雨「ど、どうして奥さんとの仲が悪くなったんですか?」

金剛「息子さんはQ中将に憧れて海軍へ入ることを熱望していたので、二人とも海外留学に諸手を挙げて賛成したわけデスが……」

金剛「それが原因で亡くなったこともあって、Q中将は息子さんが事件に遭ったことを自分のせいだと考えていたようデス」

金剛「おそらく、Q中将は悲しい出来事を忘れようとして、仕事だけに向き合っていたんだと思いマス」

五月雨「そんな……それじゃ奥さんが可哀想ですよ!」
100 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/08/05(日) 21:35:17.31 ID:8XHthzk5o

提督「……Q中将の息子はなんで死んだんだ」

金剛「……喧嘩に巻き込まれて、刺されたと聞いていマス」

五月雨「……っ!!」

提督「……」

金剛「犯人は警察によって捕まったそうデスが、Q中将にかける声なんてどこにもありまセン。慰めるなんてこともできませんでシタ」

金剛「こんなことがあって、4年前に私がQ中将の艦隊に着任した時には、みなさん冷や汗が止まらなかったそうデース」

提督「……くそが。笑えねえな」

金剛「Yes, of course. But, そのまま人生から笑顔を絶やすことが幸せだとは思いまセン」

金剛「笑うことを忘れては人生は死んでしまいマス! いくら悲しくても、逃げずに一度は向き合わなければいけないと思いマス」

金剛「私もこの話を聞いたとき、Q中将はそのことから目を逸らしているだけに見えマシタ……!」

提督「だから首を突っ込んだと?」

金剛「Yes. はっきり言って、見ていられませんデシタ」

金剛「それから、それとは別に、私が鎮守府に着任した時期、こちらも4年ほど前に、鎮守府の中を探ろうとする不審者が現れまシタ」

金剛「それがQ中将の奥様でシタ。奥様が言うには、Q中将はその事件以降、奥様のいる邸宅に殆ど近寄らなくなったそうデス」

金剛「全然帰ってこないものだから、心配で様子を見に来たけれど、いざ入ろうと思ってもQ中将に追い帰されそうで怖い、と仰ってマシタ」
101 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/08/05(日) 21:36:01.39 ID:8XHthzk5o

五月雨「そ、それでどうなったんですか……!?」

金剛「Q中将に内緒で、鎮守府の食堂で働いてもらうことにしまシタ!」

提督「……いいのかよ」

金剛「私が着任する前から、Q中将の心配をしていた艦娘は大勢いまシタ」

金剛「奥様も、陰から気付かれないように見守りたいと言う、たっての希望デスから、問題 nothing デース!」

提督「見守ってるだけでいいってか。俺にはよくわかんねえな」

金剛「世の中にはそういう奥ゆかしい女性もいるということデス」

金剛「私も見かねて、執務室に連れて行こうと画策してまシタが、奥様は頑なに拒否していマシタ」

金剛「私が彼の前に姿を現すことで、平静を保っている彼を動揺させてしまうのではないか、と、仰っていましたネー」

提督「……変わってんな」

五月雨「強い女性なんですね……」

金剛「そういう生活が続きまシテ、いい加減、奥様のことをQ中将にお話ししようかと話し込んでいたのがつい先日デスガ……」

金剛「Q中将の後輩である、P少将の訃報が届いたんデス」


五月雨「…………え?」

提督「なに?」
102 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/08/05(日) 21:36:58.35 ID:8XHthzk5o

金剛「それを聞いたQ中将は倒れて緊急入院しマシタ。私は、奥様を連れて病院へ行ったんデスが……」

金剛「勝手なことをするなと怒られて、こちらの鎮守府に異動させられた、というのが顛末デス」

提督「……」

五月雨「……」ボーゼン

金剛「? 提督? 五月雨? どうしまシタ?」

五月雨「……あの、いま、P少将が……なんて、言ったんですか?」

金剛「え? P少将の訃報が……」

五月雨「……ふほう……死んだん、ですか……?」

金剛「五月雨? アナタ、まさか……」

提督「そうだよ。五月雨は、P少将の初期艦だ……!」

金剛「しょ……!?」

五月雨「准尉さん……P少将のこと、知ってたんですか? 死んだこと……黙ってたんですか!?」

提督「ああ。こんなタイミングで話す気はなかったがな……!」

五月雨「どうして……!? どうしてみんな、私に黙ってどこかへ行くんですか!?」

五月雨「そんなに私を仲間外れにしたいんですか!? そんなに私が嫌いなんですか!!」

五月雨「みんな……なんで、私を置いて……」

金剛「五月雨……」

提督「……」
103 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/08/05(日) 21:38:00.69 ID:8XHthzk5o

五月雨「……准尉さん。私、やっぱり敵討ちに行きます! たとえ死んでも……」

提督「ああ、好きにしろ。だがな、P少将の敵討ちなら、海軍が相手だぞ」

五月雨「……え?」

金剛「テートク!? どういう意味デスカ!?」

提督「P少将は、海軍の特別警察隊に射殺されたんだ」

金剛「Why !?」

提督「P少将はな、大量の爆薬を詰め込んだ航空機で敵に突っ込もうとしてたんだ。それを海軍は軍部への謀反と判断したらしい」

金剛「……カミカゼ attack 、デスカ」

提督「ああ。どっちにしろ死ぬつもりだったってことだ」

五月雨「な、なんで……なんで、そんなこと……」

提督「お前を連れてきた憲兵の隊長が言ってたぜ。お前はP少将と似てるってな」

提督「要はそういうことだ。P少将も、仲間の敵を取りたかったんだよ」

五月雨「ですから、それは私が……!」

提督「だから、それに加えて……いや、それよりも、五月雨を死なせたくなかったんだよ」

五月雨「っ!」
104 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/08/05(日) 21:39:38.42 ID:8XHthzk5o

提督「憲兵連中の腕に噛み付いてまで、敵討ちに行きたがってたのは誰だ?」

提督「今のまんまじゃ勝てないことも理解っておきながら、レ級を探しに行こうとしてたのはどこのどいつだ?」

提督「お前を放っておいたら、せっかく仲間たちに助けてもらった命を捨てに行ってしまいかねない」

提督「P少将は、それを何よりも恐れて、お前をこの島に送りつけたんだ」

五月雨「……」

提督「お前もP少将も、海域を制圧した気になって油断したせいで仲間たちを沈めた、って、自分を責めてたんだろ」

提督「思うに、二人とも懺悔する場所が欲しかったんだ。だから特攻しようとした……命を絶とうとした」

提督「これは俺の勝手な予想でしかねえが、お前もそうなんじゃねえのか?」

五月雨「……私は……」

提督「俺は、お前をここに送ったP少将の行動には少し共感できる」

提督「本当に大事な相手は、自分がどうなってもいい、嫌われてもいい、とにかく助けてやりたい……生きていて欲しい。そう、思うもんだ」

五月雨「……そんなこと、言わないでください」

提督「言うなと言われても、そうとしか思えねえ。P少将の手紙もここに預かってる」

五月雨「どうして……そんなんじゃ、私……戦えなく、なっちゃいます……!」

提督「いいんだよそれで。多分、P少将はお前に戦うなって言いたかったんだろうさ」

五月雨「そんなぁ……それじゃ、私、どうしたら……」
105 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/08/05(日) 21:40:23.19 ID:8XHthzk5o

提督「今のお前に必要なのは懺悔じゃあねえな。練度だ」

提督「お前は、仲間を見捨てたかったわけじゃねえだろ。お前の仲間は、お前に後を託したんだろ?」

五月雨「……」ポロ

提督「P少将も、同じだったんだろうさ。じゃなきゃ、こんな手紙、俺に寄越すはずがねえ」ガサ

提督「五月雨、こいつはお前が持っとけ。下向いて読むなよ、涙でインクが滲んだら読めなくなっちまう」スッ

五月雨「……はい……」

金剛「五月雨」

五月雨「金剛さん……?」

金剛「アナタは、みんなから愛されてたんデスネ」ギュ

金剛「艦隊のみんなもP少将もきっと、あなたが大事だったんデス……」ナデ

五月雨「……」グスッ

金剛「死ぬのは簡単デスガ、あなたの仲間も、P少将も、そんなことは望んでいないでショウ」

金剛「あなたの命が明日までしか持たないと言うのなら話は別デスが、そうでないのなら、焦る必要はありまセン」

金剛「みんなの敵を打倒できる確信を得られるその時まで、耐え忍んで修練に励むのも、艦隊に所属する私たちの重要な務めデス」

五月雨「……金剛さん……!」
106 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/08/05(日) 21:41:05.52 ID:8XHthzk5o

金剛「やるからには万難を排して、完膚なきまでに叩き潰して、良い報告をしまショウ! それが敵討ちというものデス!」

金剛「それまで、死ぬわけにはいきませんヨー!」ニカッ

五月雨「……はい……っ!」グシグシ

金剛「But ! つらい時には、泣いていいんデスヨ? いくらでも胸を貸してあげマース!」ギュゥ

五月雨「わぷ……!?」ムギュウ

提督「元気出せっつったり泣けっつったり、どっちなんだよ。五月雨で遊んでんじゃねえぞ」

金剛「Oh, テートクこそ行くなと言ったり好きにしろと言ったり、五月雨を惑わせてマスヨー?」

提督「……そんなん俺のせいじゃねえよ」プイ

金剛「ンー、テートクもいい加減デスネー」ナデナデ

提督「とにかく、俺は言いたいこと言ったから、後の判断は五月雨に任せる」

提督「悩んでるなら保留で構わねえし、漠然とでもやりたいことが言葉にできるようなら俺に報告しろ」

提督「俺がサポートできる範囲なら手を貸すぜ」

五月雨「……」

金剛「……五月雨?」

五月雨「……」スー

提督「……寝てんのか?」

金剛「失神したみたいに眠ってしまいマシタ。ずっと気を張り詰めていたのかもしれまセンネー」ナデナデ

提督「そうか……焦らせやがる」
107 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/08/05(日) 21:42:16.44 ID:8XHthzk5o

金剛「テートク。私はあなたに謝らなければいけまセン」

金剛「あなたには Love が不足していると言いまシタガ、あなたにはちゃんと、他人を思い遣る心がありまシタ」

提督「そんなことはねえよ。たまたまだ」

金剛「謙遜しなくても大丈夫デース!」

提督「謙遜なんかじゃねえよ。そもそも、お前んとこのQ中将の奥さんの話だって、心情が理解できねえ」

金剛「Hm, いまどきの男性には理解しづらいのかもしれませんネ。昭和の男性にとっては、理想的な女性だと思いマスヨ?」

提督「そこまで男についていくことがか? その夫婦ん中でQ中将はそんなに偉いもんなのかよ……」

金剛「それはわかりまセン。Q中将を私個人の感想で言うなら、家庭のことは一切持ち出さない、良くも悪くも頑固なお方でしたネー」

金剛「ただ、私たち艦娘には、Q中将からの Policy の押し付けは一切ありませんでシタ」

金剛「前線に立つ者の不満は極力取り除き、良い気分で戦えるようにするのが上に立つ者の役目、と仰ってまシタし……」

金剛「ご自身のご病気を誰にも悟らせないほどの精神力をお持ちでしたカラ、 Stress がどれほどのものだったのかは判断できかねマス」

金剛「むしろご家族のことを心配すると『下世話だ』『自分の心配をしろ』と怒鳴られるくらいなので、誰も触れられませんでしたネー」

提督「……」
108 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/08/05(日) 21:42:52.99 ID:8XHthzk5o

金剛「……テートク? What's a matter ?」

提督「なんでもねえよ……」

金剛「……!」

提督「?」

金剛「テートク? you could understand English !」

提督「……」

金剛「Okey, そうでシタカ。テートクはQ中将の心境も理解できてるみたいデスネー」

提督「知らん」プイッ

金剛「ヘーイ、テートク! こっち向いてくだサーイ!」

提督「うるせえ。五月雨が目を覚ますぞ」

金剛「Oh, Sorry ! I'll be quiet !」

提督「五月雨をこっちに寄越せ。部屋に連れてって寝かせてくる」

金剛「……いきなり部屋に連れて行っても、鎮守府を案内してないんですカラ、そのあと迷子になったりしまセンカ?」

提督「……じゃあ、執務室のソファーか」

金剛「私も一緒に行きマース。五月雨も抱っこして連れて行くネー」

提督「……わかった、起こすのも悪いし、悪いが任せるぜ」
109 : ◆EyREdFoqVQ [saga]:2018/08/05(日) 21:45:07.47 ID:8XHthzk5o
というわけで今回はここまで。


金剛:愛情から目を背ける提督を説得し続け、煙たがられて左遷 ←New!
五月雨:玉砕覚悟の敵討ちを望むも、仲間を沈めた濡れ衣を着せられて追い出される ←New!

今のお話が一区切りついたら、番外編に入る予定です。
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/06(月) 02:32:30.89 ID:vg2/L6Yu0


意外とこういう鎮守府の静かな日常とか見てて安心するかも
111 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/08/09(木) 21:59:40.01 ID:RShIxy3No
続きです。
112 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/08/09(木) 22:00:35.98 ID:RShIxy3No

 * 執務室 *

暁「そうだったの……つらいわよね、仲間や司令官を一度に失って……」

提督「まあ、緊張の糸が切れたんだろうな」

五月雨「……」スヤァ

比叡「それで、金剛お姉様の膝枕で、五月雨ちゃんが寝てるわけなんですね」

提督「ああ」

比叡「……ちょっと羨ましい」ボソッ

金剛「Oh, 仕方ありまセンネ、比叡にも後でしてあげマース!」

比叡「本当ですか!?」キラキラキラッ

暁「……」

提督「……ん? 暁もやって欲しいのか?」

暁「べ、別にそういうつもりじゃないわ!」
113 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/08/09(木) 22:01:27.49 ID:RShIxy3No

提督「甘えたかったら甘えてもいいだろ。ずっと気を張り続けてるのもしんどいぜ?」

暁「で、でも、司令官こそ誰かに甘えたりしてないじゃない」

提督「俺はいつも気を抜いてるからな。誰かに甘やかされたいと思うようなことはねえ」

暁「なんだか釈然としないわ……」

提督「俺はずるい大人だからな。真面目じゃねえから、これでいいんだ」

暁「……どこが真面目じゃないんだか」フンッ

提督「いや、本当に不真面目だろ? 暁にまでそう評されるとは思ってもみなかったんだが」

暁「いくら暁だって、司令官が不真面目できなくて、無理してそうなときがあることくらい見てわかるわ。失礼ね、ぷんぷん!」

提督「……例えばいつだよ」

暁「え? えっと……砂浜に行ったときとか。いつも泣きそうなの我慢してるように見えるわ」

提督「……よく見てやがんな」ハァ

比叡「結構よく見てくれてるんですよ? 暁ちゃんは」

提督「ふーん。小さくても姉は姉ってことか」

暁「そうよ!」フフーン

提督「……なあ比叡?」

比叡「はい?」
114 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/08/09(木) 22:02:08.13 ID:RShIxy3No

提督「お前、暁に膝枕してもらったらいいんじゃねえの?」

比叡「どうしてそうなるんですか!?」

暁「……ど、どうしよう、かしら」ニラニラ

比叡「暁ちゃんも、満更でもないような顔しないで!?」

暁「えっ!? い、いいのよ!? もっと甘えても!?」

比叡「何言ってんの!?」

提督「……」ニタニタ

比叡「司令も変な顔で笑いをこらえてないで止めてくださいー!」プンスカ!

 ヤイノヤイノ

五月雨「……う、ん……」パチ

金剛「五月雨! 目が覚めましたカ?」

五月雨「……ここは……」

提督「執務室だ。お前が眠っちまったんで、そのまま連れてきた」

提督「気絶させられて牢屋に入れられたんじゃ、この鎮守府の間取りも全然わかんねえだろ。金剛がそうしようって言ってくれたんだ」

五月雨「……」メヲゴシゴシ

提督「金剛には感謝しとけよ。眠ったお前をここまで運んでくれた上に、寝かしつけてくれてたんだからな」

五月雨「……?」

提督「まだ寝ぼけてるっぽいな」
115 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/08/09(木) 22:02:58.35 ID:RShIxy3No

金剛「Hey, 五月雨。体は大丈夫デスカ?」

五月雨「私は……牢屋に入れられたんじゃ?」

提督「ああそうだ。夢じゃねえぞ」

五月雨「……」キョロ

提督「……」

五月雨「……夢じゃ……ないんですね」

五月雨「P提督も、みんなも……」ポロッ

金剛「五月雨……」

五月雨「だい、じょうぶ、です……」ポロポロ

五月雨「私は……わたしはぁ……」グスッ

金剛「五月雨、我慢しなくていいデス」ナデ

五月雨「わたし……わたしぃ……! う、うわあああああ……!!」ギュウ

金剛「……」ナデナデ

比叡「……」ウツムキ

暁「……」ウルッ

提督「……」
116 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/08/09(木) 22:04:21.74 ID:RShIxy3No

 * *

五月雨「ぐすっ、ひっく……」

金剛「落ち着きまシタカ?」

五月雨「すんっ……は、はい。ありがとう、ございました……!」ペコリ

提督「……今なら聞いても良さそうだな」

比叡「? なにをです?」

提督「五月雨。お前、生きたいか、死にたいか。どっちだ」

五月雨「……!」

提督「生きたいんなら、できる範囲でサポートしてやる。無理難題吹っかける気ならそれ相応のリスクを覚悟しな」

提督「死にたいんならどこへでも行け。俺は止めねえし、これ以上関わる気はねえ」

提督「どうする、五月雨?」

五月雨「……私……」

金剛「……」

暁「……」

比叡「……」

五月雨「……まだ、死ねません」
117 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/08/09(木) 22:05:33.88 ID:RShIxy3No

五月雨「私、やっぱり、みんなの敵を取りたいです」

五月雨「でも、今のままじゃ、駄目だって、気付きました……」

五月雨「みんな、それぞれに大切な人がいたり、大事なものがあったりするから……それを、無視しちゃ駄目だって」

提督「……」

五月雨「私、もっと強くなります」

五月雨「みんなと一緒に強くなって、協力してもらえるよう、頑張ります……!」

提督「……そうか。いいんじゃねえの」

提督「お前が時間に迫られてない限りは、焦ったっていいことなんかねえからな。ま、ゆっくりやりな」

五月雨「はいっ!」

提督「ああ、それとだ。金剛、お前にも礼を言っとくぜ。気を遣わせて悪かったな」

金剛「Oh, it's so easy operation デース!」stund up!

比叡「さすが金剛お姉様!」

金剛「私も頑張りマーシタ! と、いうわけでぇ……テートク、ご褒美が欲しいデース!」ジリジリッ

提督「」

暁「」

五月雨「?」クビカシゲ

比叡「ちょっ、金剛お姉様ー!?」ガビーン
118 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/08/09(木) 22:06:07.65 ID:RShIxy3No

五月雨「私、やっぱり、みんなの敵を取りたいです」

五月雨「でも、今のままじゃ、駄目だって、気付きました……」

五月雨「みんな、それぞれに大切な人がいたり、大事なものがあったりするから……それを、無視しちゃ駄目だって」

提督「……」

五月雨「私、もっと強くなります」

五月雨「みんなと一緒に強くなって、協力してもらえるよう、頑張ります……!」

提督「……そうか。いいんじゃねえの」

提督「お前が時間に迫られてない限りは、焦ったっていいことなんかねえからな。ま、ゆっくりやりな」

五月雨「はいっ!」

提督「ああ、それとだ。金剛、お前にも礼を言っとくぜ。気を遣わせて悪かったな」

金剛「Oh, it's so easy operation デース!」stund up!

比叡「さすが金剛お姉様!」

金剛「私も頑張りマーシタ! と、いうわけでぇ……テートク、ご褒美が欲しいデース!」ジリジリッ

提督「」

暁「」

五月雨「?」クビカシゲ

比叡「ちょっ、金剛お姉様ー!?」ガビーン
119 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/08/09(木) 22:07:08.04 ID:RShIxy3No

 扉<ガチャバーン!

大和「提督の御身に危険が!」

如月「司令官、大丈夫!?」

暁「なんでこのタイミングで現れるの!?」

比叡「どこに潜んでたんですか!?」

金剛「Shit ! 邪魔が入る前に、テートクの heart を掴むのは、この私デース!」バッ!

大和「抜け駆けするなんて!」ダッ

如月「許さないんだから!」ダッ

金剛「Burrrrrrrrrning !! Looooooooo」ガシッ

暁「あ」

提督「落 ち 着 け」アイアンクロー

金剛「Yaaaaaaaaaaaaa !?」メキメキメキメキ

大和「今だわ! 提督、今こそこの大和の愛」ガシッ

提督「お 前 も だ」ヒダリテアイアンクロー

大和「ひぎいいいいいいいい!?」メキメキメキメキ
120 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/08/09(木) 22:08:00.80 ID:RShIxy3No

如月「はっ! 両手の塞がってる今がチャンスだわ! しれいかーー」ガシッ

金剛「Oh, 助かりマシタ」ミギテハナシテ

提督「いい加減にしろ」ミギテアイアンクロー

如月「いやああああああああ!?」メキメキメキメキ

金剛「Okey ! やっぱり私の」ガシ

大和「あ、外れたわ……提督、やっぱり私が」ガシッ

如月「あっ、やっぱり私を」ガシ

提督「お前らしつけえぞくそがああ!!」ガシ パッ ガシ パッ

暁「なにやってるのよ……」アタマカカエ

比叡「……金剛お姉様……」アタマカカエ

五月雨「……あ、あの、何が起こってるんですか?」アセアセ

 バヂン! バヂン! バヂン!

提督「落ち着けって言ってんだろが……!」ピキピキピキ

大和(仰向け倒れ)「はい……」シュウウウ…

如月(仰向け倒れ)「ごめんなさい……」シュウウウ…

金剛(仰向け倒れ)「こんなに痛いデコピンは初めてデース……」シュウウウ…
121 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/08/09(木) 22:08:54.22 ID:RShIxy3No

暁「……大和さんはもっとレディだと思ってたのに」ズーン

比叡「金剛お姉様……」ズーン

五月雨「な、なんですか!? 何が起こったんですか!?」オロオロワタワタ

不知火「みなさん司令が好きすぎて、襲い掛かったら返り討ちに合っただけです」ヌイッ

五月雨「!?」ギョッ

暁「不知火も出てくるタイミングが良すぎよ……」

不知火「いえ、単純にこの二人を追いかけただけですので」ペタペタ

五月雨「な、何をしてるんですか?」

不知火「デコピンされた3人の額に、冷やした熱冷ましシートを貼り付けているんです」ペタペタ

暁「それこそ準備良すぎよ!?」

比叡「あ、金剛お姉様には私が貼ります! 一枚ください!」

不知火「どうぞ」スッ

比叡「あれ? 何か書いてある。『煩悩退散』?」ペタペタ

金剛「Noo ! これはボンノーなんかじゃないデース!!」

不知火「ではこちらにしますか」っ『自主規制』

金剛「なんでそんな四字熟語を用意してるデース!?」
122 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/08/09(木) 22:11:14.34 ID:RShIxy3No

如月「ねえ不知火ちゃん? 恋愛成就はないのかしら?」←『安全第一』と書いてある

不知火「いえ、それは用意しておりませんでした」

大和「そうですか……残念です」←『商売繁盛』と書いてある

暁(……書いてある四字熟語のチョイスが微妙だわ)

比叡「ちなみにこれ、すっごい達筆でダイナミックなんだけど誰が書いたの? 長門さん?」

不知火「潮です」

比叡「マジで!?」

提督「潮か……不知火、無病息災か堅忍不抜あたり、ねえか?」

不知火「はい、どちらもあります。こちらに」

暁(あるんだ……)

提督「おう、ありがとな。五月雨、お前はこいつ貼っとけ」

五月雨「え……? わ、私ですか?」

提督「そうだ。今日のところは、お前は飯食ってこれ貼って寝ろ」

提督「自覚がねえと思うが、お前、相当疲れてんぞ。さっきだっていきなり眠っちまったこと、ちゃんと覚えてるか?」

五月雨「……い、いえ」
123 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/08/09(木) 22:12:38.70 ID:RShIxy3No

提督「恨んだり怒ったり、憎んだりし続けるってのは、意外と体力も精神力も使うもんだ」

提督「おまけにハイになるから、自分自身が疲弊してるのに気付けねえ。相談相手も失ったお前なら尚更だ」

提督「やりたいことは決まったんだから、いっぺん背負ったものを降ろせ。今だけ忘れろ。何も考えんな」

提督「本気を出すのは明日からにしておけ」

五月雨「准尉さん……」ウルッ

暁「……」

提督「? どうした暁」

暁「……その調子なら、司令官も心配ないみたいね」クスッ

提督「おかげさまでな」

五月雨「……私、そこまでおかしかったんでしょうか」

提督「ま、冷静じゃあなかったな。疲弊してたんだろうが、金剛に抱きしめられてすぐ寝ちまったのは俺も驚いた」

五月雨「あの、おぼろげながら思い出してきたんですけど」

提督「?」

五月雨「私、金剛さんにぎゅってされたとき、多分安心しちゃったんです」
124 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/08/09(木) 22:13:30.90 ID:RShIxy3No

五月雨「その、抱きしめられたのに、ふわーっとした感じで、とっても優しくて、とろーんってしちゃったんです」

五月雨「なんて言ったらわかりませんけど、こういう感じって、お母さんみたい、って言うんでしょうか……」

暁「お母さんかあ……」

提督「言われてみれば、俺に愛を教えるだの、世話焼きなところがあるな。お節介なかあちゃんってとこか」

金剛「Noooooooooooo !!」

五月雨「うひゃあ!?」

暁「きゃ!?」

提督「うお、びっくりした。どうした金剛」

金剛「私、かあちゃんじゃありまセン! そんな年齢じゃないデース!」プンスカ!

暁「そこなの!?」ガビーン

金剛「五月雨は駆逐艦デスから甘やかしマスけど、提督には甘えたいデース!」

提督「……いや、お前比叡の姉だろ?」

金剛「だったら今日から比叡の妹になりマース!!」

比叡「金剛お姉様!?」
125 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/08/09(木) 22:15:15.00 ID:RShIxy3No

金剛「Noooo !! 比叡、今日から私のことは金剛ちゃんと呼ぶデース!!」

比叡「ええええ!? ……ど、どうしよう、かなっ」ニラニラ

暁「比叡さん、満更でもないような顔してる!?」

比叡「し、しょうがないなあ! 甘えてくれてもいいんですよ?」

暁「比叡さんキャラが変わってるわ!?」

金剛「比叡も納得したことだし、これでテートクに甘えられマース!」ダキツキー

提督「うぼあ!?」ドボォ

如月「ちょっと金剛さん!?」ムクッ

大和「なにしてるんですか!」ムクッ

比叡「こっちに甘えてくれるんじゃなかったんですか金剛お姉様ー!?」

金剛「No ! 私は妹様デース!」

暁「妹様ってなに!?」

五月雨「っていうか、さっきちゃん付けで呼んでいいって言ってたんじゃ……」

金剛「Yes ! テートクに是非とも呼んで貰いたいデース!」

比叡「」シロメ

暁「ひ、比叡さんがたったまま失神してるわ!?」

不知火「これをどうぞ」っ「『絶対安静』と書かれた熱冷ましシート」

暁「……もうちょっとほかの四字熟語がなかったのかしら」ガックリ
126 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/08/09(木) 22:16:59.03 ID:RShIxy3No

如月「っていうか、どうしてそこまで司令官にくっつこうとするの!?」

金剛「素敵な殿方なら当然の反応デス! そうは思いまセンカ!?」

如月「そんなの否定する方がおかしいわ!?」

大和「事実ですけど、いくらなんでもがっつきすぎです!」

提督(お前が言うな)

金剛「そうは言いマスガ、私だって我慢の限界デス! 私だって Burning Love したいデース!!」

金剛「前の鎮守府でもQ中将にイチャイチャしたかったのに、既婚者だったから遠慮してたんデスヨー!?」

暁(……貞操観念が高いのか低いのかわかんないわ)タラリ

金剛「でもここのテートクは、反応を見る限りそんなことはありまセン! Is'nt it !?」

不知火「まあ、その通りと言えばその通りですが」

金剛「デスヨネ!?」

如月「ちょっと不知火ちゃん!?」

金剛「そういうことだからテートク! 私の Burning Love !」ダキツキッ

金剛「受け取ってくだサーイ!」カオチカヅケ

提督「……」ハァ

金剛「ン?」ガシ

提督「悪いが断る」

金剛「テ、テートク!? どうしてデスカ!?」ヒキハガサレ
127 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/08/09(木) 22:18:26.27 ID:RShIxy3No

提督「お前に返してやれる愛情がねえからな。つうか、愛とか俺はどんなもんか知らねえしピンと来ねえ」

金剛「ですから私がそれを教えてあげマース!」

提督「いらん」

金剛「Why !?」

提督「俺が何かさせられるのは御免だ。そんなことより、俺は艦娘がやりたいことをやらせてる」

提督「ちゃん付けで呼べというくらいなら、やらないこともないが?」

金剛「hmm ... じゃあ、 Hug して欲しいデス」

提督「ハグ?」

金剛「Yes , さっき私が五月雨にやったみたいに、優しく抱きしめて欲しいデス……」ポ

提督「……まあ、そのくらいならいいか」ギュ

金剛「!!」

如月「ああっ……!!」

大和「なんて羨ましい……!!」

比叡「……はっ、私はなにを!?」

暁「あっ! 比叡さん、気がついた!? 大丈夫!?」

 (比叡の目の前で提督と金剛が抱き合っているのを目撃)

比叡「」チーーン

暁「比叡さん!? 比叡さんっ!!」

不知火「また気を失いましたか」

五月雨「!?!?」(←状況に追いつけていない)
128 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/08/09(木) 22:19:44.48 ID:RShIxy3No

金剛「テートク……私は……こういう situation に憧れてマシタ」

金剛「また、こうやって hug して欲しいデス……!」

提督「……ま、週に一回くらいなら付き合ってやっても……」

金剛「Really !? Thank you テートク! I'm so glad !!」カオチカヅケ

大和「そこまでです」ガシッ

如月「私たちも我慢の限界よ?」ガシッ

金剛「Oh ...」

大和「提督? 私たちも同じ条件で同じことをお願いしたいのですが」ニコー

如月「いいわよね? 司令官」ニコー

提督「……しょうがねえな」

如月「やったわ!」ハイタッチ

大和「やりました!」ハイタッチ

金剛「ふ、二人ともそろそろ放して欲しいデース」

大和「そうですね、提督から離れて戴きましょうか」ニコー

如月「そうよね、司令官に抱きついたりキスしたり、好き放題したものね」ニコー

大和「そういうわけですから、私たちとゆっくりお話ししませんか?」グイッ

如月「そうね、それがいいわ」グイッ

金剛「Oh ...」ナミダメ
129 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/08/09(木) 22:21:19.53 ID:RShIxy3No

提督「んじゃ、金剛のことは任せる。俺は気を失ってる比叡を部屋に連れて行くからよ」ヒエイダキカカエ

金剛「比叡!? お姫様だっこされるなんて羨ましいデース!」

大和「金剛さんはこっちですよー」グイグイ

如月「余所見しちゃだめよ?」グイグイ

金剛「Noooooooooooo !!」ズルズルー

暁「……」ズツウ

提督「なんだろうな、ありゃ。暁、とりあえず比叡の部屋まで付き合ってくれ」

暁「え、ええ、わかったわ……」

不知火「五月雨、私たちも一緒に行きましょう。あなたの部屋に案内します」

五月雨「あ、は、はい!」ハッ

提督「……それにしても。比叡のやつ、重たくなったな」

暁「もう、司令官! レディにそういうこと言うの、失礼よ?」

提督「馬鹿、最初来たときのこと考えろ。あん時の軽さは異常だろ?」

暁「……あのときと比べるのが失礼よ。でりかしーがないわ?」

提督「そうか。ま、ここまで回復できてなによりだ」

五月雨「……」

不知火「どうしました」

五月雨「私、すごいところに来ちゃったんですね」

不知火「はい。慣れるまで時間がかかるかもしれません」

五月雨「……大丈夫です。私、頑張っちゃいますから」

五月雨「P少将や、みんなに、いい報告ができるように……!」

不知火「……はい」コク


130 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/08/09(木) 22:23:35.54 ID:RShIxy3No
というわけで、五月雨と金剛編はここまで。

>>117>>118で重複書き込みしてしまったのはご容赦ください。


次回は予告通り番外編です。
131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/11(土) 21:19:00.92 ID:gLmtGU0SO
やはり金剛はババア
132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/15(水) 04:46:45.56 ID:SJfAwa9Y0
提督は表面上キツイだけでめっちゃ優しい。演習は有るだろうが
出撃は基本無く轟沈の可能性ほぼ無い。俗世のしがらみもほぼ無いと
良い所だけ書くと凄く良い鎮守府なんだよな
133 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/15(水) 10:44:34.84 ID:DZ93CiQA0
>>132
唯一、中佐というしがらみの塊が余計モノよねぇ…
134 : ◆EyREdFoqVQ [saga]:2018/08/17(金) 22:55:47.68 ID:PvAq2ipeo
それでは番外編、
舞台はN中佐のいた鎮守府になります。
135 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/08/17(金) 22:56:52.69 ID:PvAq2ipeo

 * N提督鎮守府 卯月たちの部屋 *

卯月「ただいまだっぴょーん!」ドアバーン

望月「んお、おかえりー」ネッコロガリ

弥生「……おかえり。遠征、お疲れ様」

卯月「おお!? みんな読書中だっぴょん?」

望月「卯月がいないと静かでさー。すっげー過ごしやすい。快適すぎ」

卯月「辛辣ぴょん!?」

弥生「……否定、できない。とても落ち着く」

卯月「こっちも辛辣ぴょん!?」

望月「実際卯月がいたら、こんなにごろごろできないしー? ふあぁ……」

卯月「うーちゃん放っておいてどんな本を読んでるぴょん?」

弥生「……これ。封神演義」スッ

卯月「弥生はまた小難しい本を読んでるぴょん……ついていけないぴょん」

卯月「で、望月はまたエロマンガ読んでるぴょん?」チラッ

望月「あ? よく見ろよー」

 っ『食べ歩き観光スポット120選』

卯月「!?」ズガーン!
136 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/08/17(金) 22:58:08.64 ID:PvAq2ipeo

卯月「で、出不精の望月が……食べ歩きだとぉ……っ!?」ヨロッ

望月「……語尾が取れるくらい驚くとか、さすがにムカつくんだけど?」

卯月「望月、熱はない? なにか変なもの拾い食いした? 鳳翔さんのおっぱい揉む?」キリッ

望月「殴んぞ」イラッ

卯月「冗談はさておいて、どういう風の吹き回しぴょん?」

望月「あー、墓場島で食べた料理さ、めっちゃおいしかったじゃん?」

卯月「あー……確かにそうだったぴょん」ジュルリ

望月「鳳翔さんもあっちの比叡さんからいろいろ教えてもらったみたいだし」

望月「次は何を作ってもらおうか選んでたんだー」

卯月「出歩く気ゼロぴょん!?」

弥生「……もっちらしい」

望月「別にいいじゃん? 鳳翔さんの料理は確実においしいんだから、そういう意味でも絶対外れをひかないし」

卯月「はぁ……安心するくらい全然ブレてないぴょん。心配して損したぴょん」

望月「心配してたようには見えなかったんだけど?」
137 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/08/17(金) 22:58:57.96 ID:PvAq2ipeo

弥生「……それはそうと、卯月が帰ってきたんなら、次は私の番」スクッ

望月「ん? そっか、もうこんな時間かー」ムク

卯月「うん? 二人ともどこに行くぴょん?」

弥生「私は遠征」

望月「あたしは鳳翔さんに頼まれごとがあってさー」

卯月「せっかくうーちゃん帰ってきたのに、一人ぼっちぴょん!?」

望月「しょうがないよ、みんなの負荷を考えて回り番にしてるんだしさ」

弥生「ごめんね、卯月。すぐ戻るから、おとなしくお留守番してて」

望月「あたしもどーせ大したことない用事だと思うからさ。昼寝でもしてなよ」

 パタン

卯月「……退屈だっぴょん」

卯月「弥生も、なんでこんな難しい本を読むのかわかんないぴょん……」ペラペラ

卯月「文字ばっかりで眠くなるぴょん……」

卯月「遠征で疲れたし、ちょっとだけ寝るぴょーん」ゴロン

卯月「……」

卯月「スヤァ……」

 * * *

 * *

 *
138 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/08/17(金) 22:59:41.50 ID:PvAq2ipeo

 ドタドタドタ

 扉<バンッ!

弥生「卯月!」

卯月「……ぴょん? どうしたぴょん」ムニャムニャ

望月「良かった、無事だったんだ」

卯月「???」

望月「早く逃げるよ!」

卯月「な、なにがあったぴょん!?」

弥生「! 隠れて。静かにして」


憲兵?「おとなしくしろ!」

「は、放して!」

「私たちが何をしたっていうの!?」

憲兵?「連行しろ!」


卯月「……何が起こってるぴょん?」

弥生「わからない。でも、この鎮守府の艦娘を全員どこかに連れて行こうとしてるみたい」
139 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/08/17(金) 23:00:31.48 ID:PvAq2ipeo

卯月「でも、あれ、本当に憲兵ぴょん? 特警でもないぴょん?」

望月「だよねえ、全員顔隠してるし……どっかの特殊部隊みたい」


憲兵?「これで全員か?」

憲兵?「いや、まだだ! なんとしても探し出せ!」


弥生「こっちに来た!?」

望月「と、とりあえず逃げとかない!?」

卯月「それならこっちぴょん!」



 * 鎮守府内のどこか *

卯月「みんなここに隠れるぴょん」

弥生「……ここは」

卯月「うーちゃんしか知らない、秘密の隠し通路ぴょん」

望月「なんでこんなとこ知ってるのさ……」

卯月「いたずらした後の逃亡用っぴょん」

弥生「……」

望月「……いや、いいけどさあ」
140 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/08/17(金) 23:03:17.42 ID:PvAq2ipeo

卯月「それよりこれからどうするぴょん?」

望月「いやもうマジどうしよーか? 展開がまるっきりパニック映画じゃんか」

卯月「まさかゾンビが出てきたりするぴょん?」

望月「あー、まあこの展開だと有り得そうかなー。いや、ないとは思うけどさあ」

卯月「出たとしても、どうしたらいいぴょん」

弥生「……待ってるしか、ないと思う」

望月「嵐が過ぎ去るまで、かあ」


 * *


卯月「……まだ騒がしいぴょん」

望月「いつになったら帰るんだよぉ……いい加減ヒマすぎぃ……」フワァ

弥生「……」ソワソワ

卯月「弥生?」

望月「もしかして……」

弥生「……おトイレ、行きたい」モジモジ

卯月「い、今、外に出たら危ないぴょん!」

弥生「で、でも……」
141 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/08/17(金) 23:03:56.66 ID:PvAq2ipeo

望月「んなら、あたしも一緒に行く。卯月はここで待ってて」

卯月「だ、大丈夫ぴょん!?」

望月「スネークならよくやってるし」

卯月「ゲームの話ぴょん!」

弥生「……」プルプル

望月「弥生も我慢の限界だし、ちょっと行ってくるわー」タッ

弥生「ごめん」タッ

卯月「気を付けるぴょん!!」

卯月「……」

卯月「……」

卯月「無事に戻ってきてくれるといいぴょん……」

 * * *

 * *

 *
142 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/08/17(金) 23:04:31.65 ID:PvAq2ipeo


卯月「……」ウツラウツラ

卯月「……はっ!」

卯月「い、今何時だぴょん!?」キョロキョロ

卯月「……」

卯月「結局、弥生も望月も戻ってこなかったぴょん」

卯月「うーちゃんもおとなしく捕まったほうが良かったぴょん……?」オソルオソル

卯月「……」

 ギィ

卯月「……」

卯月「……めっちゃ静かだぴょん」

卯月「……」テクテク

卯月(人の気配がしないぴょん)

卯月「……」テクテク
143 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/08/17(金) 23:06:24.41 ID:PvAq2ipeo

 * *

卯月「本当に誰もいないぴょん……」

卯月「執務室にも、食堂にも工廠にも……大淀さんも間宮さんも明石さんも、妖精さんもだーれもいないぴょん」

卯月「おまけに、みんなのお部屋の中も、何もなくなってるぴょん……」

卯月「書庫の本棚も、厨房の冷蔵庫もからっぽ……執務室には段ボールだけ」

卯月「うーちゃんの部屋の家具も、全部なくなってるって、どういうことだぴょん?」

卯月「……ここ、本当に鎮守府……? ここはいったいどこなんだぴょん……!?」


 * 夜 *

卯月「……わけわかんないぴょん」

卯月「……あいてる部屋を全部見てみたけど、何もかもなくなってたぴょん」

卯月「うーちゃんは、何をすればいいぴょん?」ソラヲミアゲ

お月様「」

卯月「……うーちゃん、どこに行けばいいぴょん」グスッ

卯月「みんな、どこに……どこ行ったぴょん……!!」ポロポロポロ

144 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/08/17(金) 23:07:28.19 ID:PvAq2ipeo

 * 翌朝 ロビーのソファ *

卯月「……」パチ

卯月「……」キョロキョロ

卯月「やっぱり誰もいないぴょん……夢じゃ、なかったぴょん」ガクッ

卯月「……」

卯月「弥生……」

卯月「望月ー……」

卯月「鳳翔さーーん……妙高さーーーーん!」

卯月「誰か……誰かいないぴょん……!?」

卯月「……誰かぁ……!」グスグス

卯月「うああああああん!」ボロボロボロ

145 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/08/17(金) 23:08:27.24 ID:PvAq2ipeo

 * 鎮守府正面玄関 *

卯月「……」フラフラッ

卯月「そうだぴょん。外に出れば、誰かに会えるぴょん……」

卯月「外に出れば……」

「卯月?」

卯月「ぴょん!?」ビクッ

望月「卯月? なにしてんのさ!?」

弥生「なんか……泣いてるみたいだけど、どうしたの」

卯月「……やよい? もちづき……?」

望月「んあ? ああ、あたしは望月だけど……」

卯月「……ど、ど……どこに行ってたぴょぉおおおん!!」ウワーン

弥生「え!?」

望月「ちょっ、いきなり泣き出すとかなんなのさ!?」
146 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/08/17(金) 23:09:25.89 ID:PvAq2ipeo

鳳翔「どうしました?」

望月「あっ、鳳翔さん、なんか卯月が……」

卯月「うわああああん、鳳翔さぁぁぁん!!」

卯月「う、うーちゃん、もう、みんなに会えないかと思ったぴょおおおん!!」ビエーーン

鳳翔「もう、大袈裟ですね」ナデナデ

弥生「大丈夫。もう、大丈夫」

卯月「ぐすっ、ううう、良かった……良かったぴょん」エグエグ

望月「はぁ〜、初対面からこれじゃあ、先が思いやられるなあ……」





卯月「……え?」


147 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/08/17(金) 23:10:18.25 ID:PvAq2ipeo

鳳翔「そうですね。でも、これからはみんな一緒ですから」

弥生「うん。卯月、よろしくね」

卯月「…………」

望月「ん? どした?」

卯月「……いま、なんて」

卯月「なんて、言ったぴょん?」

鳳翔「どうか、しましたか?」

弥生「? さあ……」

卯月「……みんな、誰ぴょん?」ジリッ

弥生「え!?」

望月「だ、誰って、あたしは望月に決まってんじゃん? こっちは鳳翔さんで……」

卯月「……嘘ぴょん」ジリッ

卯月「だったらどうして、みんな、うーちゃんのことを覚えてないぴょん!?」

鳳翔「そ、そんなことを言われましても……」

望月「だからさっきから何言ってんだよぉ!?」
148 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/08/17(金) 23:12:07.23 ID:PvAq2ipeo

卯月「N中佐のことは!? N中佐について行った妙高さんのことは!? 墓場島の提督准尉のことは!?」

弥生「え……急に、そんなこと言われても」オロオロ

卯月「覚えて……ない、の?」

望月「っつーか、誰さ?」

卯月「あり得ない……全部忘れちゃうなんて、絶対……っ!!」プルプルプル

鳳翔「う、卯月さ……」

卯月「来ないでっ!!」バシッ

鳳翔「つ……っ!?」

弥生「卯月……!?」

望月「お、おい! いくらなんでも鳳翔さんに失礼じゃんか!?」

卯月「……みんな、うーちゃんのこと、覚えてないのは、失礼じゃないの?」

弥生「え? えっと……」

望月「お、覚えてるもなにも……」

鳳翔「初めまして、ですよね……?」

卯月「……」
149 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/08/17(金) 23:13:19.13 ID:PvAq2ipeo

卯月「わかったぴょん」

卯月「……うーちゃん、知らない鎮守府に来ちゃったみたいだぴょん」クルッ

卯月「……」トボトボ

弥生「う、卯月……どこへ行くの……!」

卯月「……っ」ダッ

望月「おい!?」

弥生「卯月!!」

鳳翔「卯月さん!?」
150 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/08/17(金) 23:14:46.30 ID:PvAq2ipeo

 * 太平洋上 *

卯月「……」

 ザザァ…

卯月「どこへ行くって……どこに行ったらいいぴょん」

卯月「妙高さんは、N中佐と一緒に、どっかの鎮守府に行ったって聞いたけど……」

卯月「行先、わかんないぴょん」

卯月「あとは……提督准尉のところくらいしか、行くところがないぴょん」

卯月「……提督准尉は、うーちゃんのこと、忘れてないよね……?」ウルッ

卯月「うーちゃんは……」

卯月「准尉にまで忘れられたら、どこに行ったらいいぴょん……」

 ヒュウウウ

卯月「!?」

 ドガァァン

卯月(中破)「あう!?」ヨロッ
151 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/08/17(金) 23:15:47.32 ID:PvAq2ipeo

ツ級「……」シュゥゥ…

卯月「……あ……」

リ級「……」ジャコッ ドォン

 ドカドカァン

卯月(大破)「ぐ……ぅ……!」

卯月「回避……回避する、ぴょ……」

タ級「……」ガシャッ

卯月「!!」

 ドガァァァァン

卯月「ぎゃ……!!」ズガァァン

卯月「……あ……」フラッ

卯月「……じゅ……い……」

 ドポンッ

 ザァァ…


 ザザァ…



152 : ◆EyREdFoqVQ [saga]:2018/08/17(金) 23:16:32.07 ID:PvAq2ipeo

今回は、これまで。


N中佐は「チートやツールを使った提督」として描いていたので、
その鎮守府のその後、というイメージで描いております。
153 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/18(土) 03:10:03.24 ID:D36plFK40
せめてここのうーちゃんアケ仕様だったら最初の中破以外
無傷で逃げれたのだが原作スタイルだったか(違
154 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/18(土) 09:58:53.61 ID:zLXYci6A0
おつ
BANされちゃったわけか…
155 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/18(土) 17:14:01.65 ID:XaN3Mr5JO
乙!
記憶をリセットですか、弥生が出て来ないから逃げれたのかな?
156 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/08/25(土) 17:15:47.94 ID:Q82r3i52o
続きです。
157 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/08/25(土) 17:16:40.10 ID:Q82r3i52o

 * ??? *

 ザッ…ザッ…

卯月(……何の音ぴょん?)

 ザクッ…ザクッ…

卯月(ここはどこだぴょん? 体が動かないぴょん)

無言で穴を掘っている提督「……」ザクッザクッ

卯月(……提督、准尉……?)

卯月(もしかして……)

提督「……」チラッ

卯月(うーちゃん、沈んで島に流されてきたぴょん?)

卯月(……やっぱり、声が出ないぴょん……)

提督「……」

卯月(抱えられてるけど、全然感覚がないぴょん……うーちゃんはこのまま……)

提督「……」ザッ

卯月(やっぱり、うーちゃん埋められるぴょん……)
158 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/08/25(土) 17:18:53.22 ID:Q82r3i52o

卯月(……)

卯月(だんだん、真っ暗になってく……)

――……!

卯月(みんな、お別れだぴょん……!)

――き……!

――づき……!

卯月(なんだか、懐かしい声が聞こえるぴょん……)

――うづき!

卯月(弥生……うーちゃんは、弥生のこと、忘れないぴょん……!)



弥生「卯月!!」

159 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/08/25(土) 17:19:39.17 ID:Q82r3i52o

 * N鎮守府 卯月たちの部屋 *

卯月「……ぴょん?」パチリ

弥生「な、なにがあったの!?」

卯月「」パチクリ

弥生「泣きながら寝てたから、なにがあったのかって……びっくりした」

卯月「夢ぴょん?」

弥生「夢?」

卯月「……」

弥生「……」

 扉<ガチャバーン

望月「弥生! 鳳翔さん呼んできた!」

鳳翔「卯月さん大丈夫ですか!?」

卯月「……」

鳳翔「こんなに目元を腫らせて……怖い夢を見たんですね!」ガッシ

卯月「おうっ!?」ギュウ
160 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/08/25(土) 17:20:25.93 ID:Q82r3i52o

鳳翔「可哀想に……怖かったでしょう!」ナデナデギュウウ

卯月「もごー!?」ジタバタ

望月「鳳翔さん、卯月めっちゃ苦しんでんだけど」

鳳翔「はっ!? ご、ごめんなさい!」パッ

卯月「び、びっくりしたぴょん……!」ゼーゼー

弥生「……それで、いったいなにがあったの」

卯月「ぴょん……」

 * *

望月「うへえ……なんて夢みてんだよぉ、ぞっとしねえし」

弥生「でも、確かに、今一番頼れる人って准尉さんになるかも」

卯月「今、艦隊に来てる人は本営からのつなぎの人ぴょん。ちゃんとした司令官はいつ来るぴょん?」

鳳翔「それでしたら、先程その本営から連絡がありましたよ。艦隊の指揮を引き継いでくれる方が決まったそうです」

卯月「本当!?」

鳳翔「はい。この鎮守府の体制もそのままで良いそうです、大淀さんから聞きました」

望月「マジで!? やったじゃん!」
161 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/08/25(土) 17:21:41.18 ID:Q82r3i52o

弥生「……どんなひとなの?」

鳳翔「さすがにそこまでは。噂では、自殺を図ったこともあるそうですが」

弥生「ええ……?」

望月「それはそれで超不安なんだけど」

鳳翔「それから、先日この鎮守府に監査に来た方の先輩だそうですので、それなりに実績がある方のようですよ」

望月「監査に来たってーと……あー、あの准尉と話してた士官の人?」

鳳翔「O少尉ですね」

望月「えー、准尉より階級上なんだ……」

鳳翔「准尉はどういうことか冷遇され続けていますね……」

弥生「L大尉が言ってたけど……やっぱり、中佐のせいじゃないかな」

望月「まー、そうなんだろうけどさあ……」

卯月「とにかく、どのくらい信用できるか、時間がたたないとわかんないぴょん」
162 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/08/25(土) 17:23:22.58 ID:Q82r3i52o

 * それから一週間後 *

 * N提督鎮守府 執務室へ向かう廊下 *

鳳翔「申し訳ありません、まさかカレーが苦手だとはつゆ知らず」

新提督「気にしないでくれ、これは私の我儘だ。海軍にいてカレーを嫌ってしまった私が悪い」

鳳翔「しかし、半ばトラウマなのでしょう?」

新提督「……私の未熟ゆえだ。それに、食べられないわけじゃない」

鳳翔「あの挨拶もみな一様に驚いています。あそこまで頭を低くされなくても……」

新提督「私はかつて、その部下の心を蔑ろにしたために轟沈させてしまっている」

新提督「勤め先が変わったからと言って、その愚行を忘れて繰り返す馬鹿者にはなりたくないんだ」

鳳翔「……然様でございますか」

新提督「むしろ、初日から気を遣わせてしまってすまないな。わざわざ執務室に夕餉を運んでくれるとは」

鳳翔「個室なら不快になる者もいないと思いまして。苦手なのでしたら、残してくださって構いません」

 扉<チャッ

鳳翔「こちらへどうぞ」

新提督「……」スン
163 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/08/25(土) 17:24:02.22 ID:Q82r3i52o

新提督「……鳳翔?」

鳳翔「はい?」

新提督「このにおい……」

鳳翔「あの、どうかなさいましたか」

新提督「この、カレーは」

鳳翔「お、お気に召しませんでしたか」

新提督「いや、とんでもない。この食欲をそそられるこの香り……」

鳳翔「……」

新提督「鳳翔。このカレーは、あなたが作ったのか?」

鳳翔「え、ええ、そうですが」

新提督「……すまない、言い方が悪かった。このカレーのレシピは、あなたのオリジナルか?」

鳳翔「そういう意味でしたら……違います」

新提督「……誰に習ったかを聞いても?」

鳳翔「も、申し上げてよろしいのでしょうか……」

新提督「ああ、頼む」
164 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/08/25(土) 17:26:10.27 ID:Q82r3i52o

鳳翔「とある鎮守府の……比叡さんに教わりました」

新提督「! ……それは……いつ教わった?」

鳳翔「いつ……!? ほ、ほんの一か月前くらいです」

新提督「……そうか」

鳳翔「提督? 大丈夫ですか? お体が震えてるようですが」

新提督「ああ、大丈夫だ。すまないが、席を外してもらえるか? 食べ終わったら電話で呼ばせてもらいたい」

鳳翔「……承知致しました。失礼致します」ペコリ

 パタン

新提督「……」

新提督「……」カチャ

新提督「……」モグ

新提督「……」

新提督「……」モグ

新提督「……」

新提督「……あの味だ」ポロ

新提督「懐かしい……あの味だ」

新提督「もう二度と、口にすることはないと思っていたのに」ポロポロ

新提督⇒V提督「生きて、いたんだな、比叡……!!」

V提督「良かった……! 本当に、良かった……!」

165 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/08/25(土) 17:27:30.88 ID:Q82r3i52o

 * 太平洋上 海軍護衛艦艦内 *

O少尉「このたびは無茶なお願いを聞いていただいて、ありがとうございます」

O少尉「……ええ、無事に着任したと。はい……はい」

O少尉「とんでもありません、私こそ若輩の身で差し出がましいことを……」

O少尉「いえ、艦娘のみんなは、我々や国民のために身を粉にして戦っているんです」

O少尉「私がしなければならないのは、彼女たちを労い、一緒に笑える雰囲気を作ってやることです」

O少尉「今も、傷付いた彼女たちをどうにか癒してあげなければと、暗中模索しているところですから」チラッ

瞳に光の宿っていない伊168「……」

瞳に光の宿っていないU511「……」

O少尉「……はい。ありがとうございます。ご武運を」

 ピッ

O少尉「……」

木曾(O少尉秘書艦)「O少尉。そろそろ港に着くぞ」

O少尉「そうか。木曾君、報告ありがとう」

木曾「……今、通信で話していたのは、W提督か?」

O少尉「ああ、そうだよ」

木曾「聞く限り、W提督ってのは、いろいろやり手らしいな?」

O少尉「戦況の見極めが上手、というべきかな? 本営にも一目置かれてるみたいだね」
166 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/08/25(土) 17:29:41.16 ID:Q82r3i52o

木曾「大将の甥っ子と同期ってだけで、ちやほやされてるわけじゃないんだな」

O少尉「だからこそ目を付けられてるところもあるけどね。それに、君の長姉ともよくやっているみたいだよ」

木曾「なるほど……球磨姉と仲がいいなら、悪い奴じゃあなさそうだな」

木曾「で? これから会うX提督ってのも信用できんのか? そいつこそ親の七光ってわけじゃあないだろうな?」

O少尉「この前の……艦娘八つ裂き事件で本営に集められた時に、X提督は潜水艦のゴーヤとイクを連れて行ったそうだ」

木曾「……変態じゃねえの?」

O少尉「ちゃんとセーラー服とスカートを着せて行ったそうだよ?」

木曾「変態だ!」

O少尉「なんでだよ!?」

木曾「そこまで気遣いできるなんて、絶対変態だ。間違いねえ」

O少尉「もしかして褒めてんのかい? よくわかんないね、木曾君も」

O少尉「まあ、そういうわけだから、君たちにも決して悪いようにはならないよ」

伊168「……」

U511「……」

O少尉「伊8君が沈んでしまったことは、本当に無念と言うほかなかった」

O少尉「だからと言って、君たちまで同じ目に合わせるわけにはいかない」

O少尉「どうか、君たちの未来のためにも、私たちに力を貸してほしい」

木曾「……フッ、どこまで甘ちゃんなんだか」
167 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/08/25(土) 17:32:47.95 ID:Q82r3i52o
というわけで今回はここまで。



かつて比叡の司令官で、ピストル自殺を図ったV提督がN中佐の後釜に。
そして、中佐の部下だったO少尉は、伊8がいたブラックな某鎮守府を
指揮することになりました。


当初、夢オチにせずに島に卯月が埋まってる設定にしようとも考えましたが、
他のキャラやいろんな救済を考えた結果、こんな形に収まりました。
近いうちに余所の鎮守府や関係者がどうなったかも
書いてみたいと思います。
168 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/25(土) 19:05:40.31 ID:vwW4HyINO
169 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2018/08/28(火) 02:57:55.62 ID:i82TJZyhO
卯月以外の艦娘は結局なんだったの?
170 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/10/15(月) 22:28:14.67 ID:ANe0enUYo
復活ktkr!

>>169
アカウントが消された場合、所属の艦娘はどうなるか……?
という前提の書き方をしたのでわかりづらいですが、
卯月以外はリセットしちゃったパターンです。
卯月のように放逐されて闇に葬られるパターンもあるかもしれませんし、
鎮守府ごとなかったことにされるとか、人によって捉え方は様々でしょうが、
そのうちの一説として書いた次第です。

結果として夢オチにしてしまいましたけど。


今回は日常編です。
171 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/10/15(月) 22:34:04.07 ID:ANe0enUYo

 - きっかけは一冊の雑誌 -

 * 休養室 *

朧(読書中)「……」

 扉<チャッ

伊8「……」テクテク

伊8「……」ゴトン

伊8「……」ペラリ

朧「……伊8さん?」

伊8「ハチ、で、いいよ?」

朧「……ハチさん、その分厚い本、なんですか? 電話帳?」

伊8「これ? 通販のカタログ。この前の物資の、別の箱に入ってたから、持って来たの」

朧「通販?」

伊8「うん。通販」ペラリ
172 : ◆EyREdFoqVQ [sage saga]:2018/10/15(月) 22:34:41.42 ID:ANe0enUYo

朧「……」ノゾキコミ

伊8「……」ペラッ

朧「……あ」

伊8「?」

朧「いえ、なんでもないです」

伊8「なにか、欲しいものでもあった?」

朧「ま、まあ……」

伊8「ふぅん……あ」ペラリ

朧「ハチさんも何か見つけました?」

伊8「うん。これ」

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