モバP「担当アイドルの家庭環境が想像できない」

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/24(日) 19:09:28.39 ID:jL0MBpz30

P「由々しき事態です」

ちひろ「そんな大げさな」

P「家庭は個人の土壌です。その人が育った理由が詰まってるんですよ。ファンからすれば気になるポイント、ひいては妄想しがいのあるポイントのひとつだと思うんです」

ちひろ「まぁ、人となりを見ればどんな家庭か想像できたりしますもんね」

P「そうなんですよ。例えば自らをカワイイと豪語するあのアイドル。さぞ愛されて育ったんだろうな、とか」

ちひろ「幸せな子になるよう名付けられました! って言ってましたもんね。両親の愛情が伺えます」

P「蒼いセンスなあのアイドルが育つなんて、どんな花屋なんだろうな、とか」

ちひろ「あれは本人由来だと思いますけど。たしかに想像は膨らみますね」

P「でしょう? その辺不詳のミステリアスな存在……というのも確かに魅力だとは思うんですが、うちのアイドルは……」ちらっ


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2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/24(日) 19:15:45.92 ID:jL0MBpz30

クラリス「まあ……! 音葉さん見てください見てください! のあさんのカフェラテ、ほら!」

カップ「♪」

梅木音葉「八分音符……ふふっ。譜面の上以外で揺らめく姿を、初めて見ました……。ラテアート……器用なのですね……」

高峯のあ「結実した今という瞬間をそう評してくれるなら、積み重ねた時間にも意味は生まれる……。楽しませられたなら、なおのこと…………」



P「ミステリアスにもほどがあると思うんですよ」

ちひろ「現代日本で育った存在なのかさえ怪しいですよね。兵庫、北海道、奈良出身でしたっけ」

P「他国、異世界、近未来って言われた方がしっくりきますよね」

ちひろ「キャラはもうビンビンに立ってますけど……たしかに、ちょっぴりその辺ファンに知ってもらうのもいいかもしれないですね」

P「俺らもぶっちゃけよく知りませんしね。ファンが妄想するとっかかり程度に、ちょっとだけ明かしてみましょう。そうしましょう」

ちひろ「……ちなみにさっき、のあさんはどういう意味の発言をしてたんでしょうか? 結実がどうとか」

P「練習した甲斐があった、楽しんでくれてうれしい、と。かわいいとこありますよね」

ちひろ「振っておいてなんですけど、即答できるその理解力は若干キモいです」

P「どうすりゃいいんですか俺は」
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/24(日) 19:17:39.28 ID:jL0MBpz30

ちひろ「まぁPさんのことは置いときまして、活躍の可能性を探すのはとてもいいことだと思います」

P「でしょ? なので実際に本人たちから少しだけ話を聞いてみましょう。そして、ファンがそのちょっとの情報からどう想像を広げるのかを実践しようと思います」

ちひろ「要はファンの代わりにPさんが妄想してみようって話ですね。アホらしいですがアイドルのためですし、付き合いますよ」

P「ありがとうございます。というわけで……おーい、みんなちょっとおいでー」

ちひろ「最年少でも十九才の女性陣を呼ぶのにふさわしい呼びかけなんですかねそれ。もっと無邪気な年ごろ向けでは」

クラリス「はーい♪」とててててっ

ちひろ「いやまぁ無邪気というか、邪気の真逆にいるような人ではありますけど」

音葉「え、あ……は、はーぃ……」

ちひろ「恥ずかしいならノらなくてもいいんですよ?」

のあ「…………」すいーっ

ちひろ「無言で来るのはいいんですけど、音どころか一切の上下移動がない歩き方どうにかなりませんか? フロート移動してるみたいで若干怖いんですが」
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/06/24(日) 19:18:13.69 ID:ZBIeSEcC0
あ、この前の学生時代の人か
wktk
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/24(日) 19:20:45.45 ID:jL0MBpz30

のあ「はぐくまれた場所に……思案を巡らせたいと……?」

クラリス「のあさんの出身……鹿さんがたくさんいるところでしたよね?」

ちひろ「それだと奈良中に鹿がいるみたいなんですが」

音葉「ご両親は、エーデルな……洗練された雰囲気を持つお方なのでしょうね……」

P「きっとそうですよね。ちなみにのあさん、ご両親のどっちに似てるとか言われたことあります?」

のあ「……渦巻くらせんに綴られた系譜は、神が示した道しるべのようなもの……他者からの観測に差異は少々あったけど……どうやら私のそれには、ゆりかごの色が強く反映されているみたいね……」

ちひろ「えーと………………『お母さん似って言われます』?」

P「おお、正解ですちひろさん。理解できてるじゃないですか、のあさん語」

ちひろ「勉強しましたから。割と考え込まないといけないので、Pさんが通訳してくれると楽なんですけど」

P「そこは楽しちゃダメですよ。すぐに慣れますって」

ちひろ「むしろ同じ時期から勉強始めたあんたがどうしてそこまで深く理解できてるのかが不思議です」

P「僭越ながら、語学力には自信がありますから」

ちひろ「語学研究者に怒られますからドヤ顔止めてください」
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/24(日) 19:24:01.34 ID:jL0MBpz30

クラリス「お母様はのあさんと似てる……では、お父様はどのようなお方なのですか?」

のあ「……口数が多い方ではないわね。ただ、人並み以上の熱量は常に蓄えている人よ。熱を吐き出す時と場合が偏っている、と言った方がいいかしら」

P「あー、好きなこと関連ならよく話す人ですか?」

のあ「ん……といっても、星のこと以外で言の葉を解き放つことはあまりなかったけど」

クラリス「天体観測はお父様譲りのご趣味なのですね」

音葉「キアレッツァ……夜空の輝きを娘に語り聞かせる…………。きっと、お父様にとってはとても大切な時間だったのでしょう……」

ちひろ「寡黙な父親……ん? じゃあお母さんは割と喋る方とか?」

P「のあさん語のままめっちゃ饒舌だったりしたらどうしましょう」

ちひろ「……とっても想像しにくいんですけど」

P「そうですか? 鍛えられたのあさんファンが今の話を聞けば、たぶんこんなかんじの想像が…………」
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/24(日) 19:32:11.66 ID:jL0MBpz30

P(学生)『うわ……下校のタイミングで雨なんて、なんとも間の悪い……。しょうがない、近くのコンビニまで走って…………ん?』

のあ『…………』

P『(同じクラスののあさんが、下駄箱のとこでじっと立ってる……』

のあ『…………』

P『傘なくて困って……るわけじゃないや。傘持ってる。どしたんだろ。最近喋るようになったけど、正直よく分からない人だよな)』

のあ『…………あ』

P『(あ、こっち見た) のあさん、今帰るとこ? 雨ん中帰るのって嫌だよね』

のあ『嫌いではないわ……流れ落ちる雨が、空を清める中を歩くのは…………。澄んだ世界の夜にはきっと、強い光が満ちるから……』

P『あー、日中に雨とか雪が降った日は、星空がきれいに見えるんだよね。空気中のホコリがなくなるとかどうとか、聞いたことある』





ちひろ「妄想のあさん、学生なんですね」

P「アイドル以外の社会人やってるとこが想像できなくて。俺がプロデューサーである以上、こんな逸材見逃すなんてありえませんから。地球の裏にいたって絶対見つけ出します」

のあ「…………数えきれない縁の中から、私の手を取り導くと……?」

P「もちろん」

のあ「……」すすっ

ちひろ「若干距離詰めましたね」

クラリス「むっ」ずいっ

ちひろ「張り合わんでよろしい」

音葉「あ、ぅう…………うー……」ずずいっ

ちひろ「だから、恥ずかしいならノらなくても」
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/24(日) 19:36:13.37 ID:jL0MBpz30

P『雨上がり待ちってわけじゃないよね。どしたの?』

のあ『……そこに悪意はなくとも、疎まれてしまうことはあるわ。空を澄ませてくれる流れに、そんな悲しみを背負わせたくはないの。私にできるのは、あなたを……多数の中の一人を傾けることだけだけど…………それでも、いいと思えた』

P『?』

のあ『……』

P『???』

のあ『………………あなたが傘を持っていなかったら……一緒に、帰ろうと……』

P『あ、ああそういうこと? ほんと!? いいの?』

のあ『かりそめの天蓋でも、私一人には広すぎるもの……。それに……雨音のささやきを嫌ったことはないけれど、誰かの声も悪くはないわ…………』

P『(相合傘とか気にしないんだな……。まぁ、気にするような人にも見えないけど) よーし、そうまで言われたら爆笑間違いなしのとっておきトークを披露しないと。期待していいよ』

のあ『…………じゃあ、行きましょうか』


で、歩き始めて十分くらい


のあ『…………』

P『……(くすりともしない……鉄板の滑らない話が全滅とは…………)』





P「ちなみにトークの下りですが、スカウトしたての頃の実体験が基になっています。いつかリベンジしたいです」

ちひろ「惨敗の未来しか見えませんが応援しておきます」
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/24(日) 19:38:28.56 ID:jL0MBpz30

P『(不機嫌なわけじゃない……とは思いたいんだけど、いかんせん無言だと……何を話したらいいのか……)』

のあ『……続きは……?』

P『へ? は、話の?』

のあ『紡がれる物語には、語り手が透けてしかるもの……。あなたのもそう……言葉の裏から溢れてこぼれる、心の色こそ尊いの……私はそれを受け入れたい…………』

P『お。おぉう…………?』

のあ『…………』

P『…………?』

のあ『………………楽しませようとしてくれて、うれしい。もっと聞かせてほしい…………』

P『あ、う、うん (一応、喜んでくれてるってことでいいのかな)』





ちひろ「妄想Pさんはのあさん語の理解が甘いんですね」

P「はい。ですが、分からないのも悪いことばかりじゃないんですよ」

ちひろ「どゆことですか?」

P「実はのあさん、照れくさいことほど難しく言うんですよ」

ちひろ「はぁ」

P「そういうときに、あえて分からないふりをして本人に説明させるとめっちゃ可愛いことに気づいてしまいまして」

のあ「……」むにーっ

P「いたいいたい。頬引っ張らないで。あんまりやりませんから許してください」
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/24(日) 19:41:19.35 ID:jL0MBpz30

さらに歩くこと五分くらい

P『かくして安部先生のお母さんとアイドルウサミンは同一人物じゃないかって説が…………ん? のあさんどうしたの? 立ち止まって』

のあ『…………ここ、私の家』

P『へー、初めて知った。あ、じゃあここでばいばいだね。傘、ありがとう』

のあ『まだ降ってるわ』

P『雨足弱まってきたし平気だよ。俺の家、ここから近いし』

のあ『…………。うん』がしっ

P「? ど、どうしたの? 俺の手、どうかした?」

のあ『上がって』

P『へ? い、家に?』

のあ『きっともうすぐ止むわ。それまで』

P『そこまでしてくれなくても……あ、ちょ、ちょっと引っ張らな……わ、分かったよ、お邪魔するよっ』





ちひろ「そういえばこれ、家庭妄想トークでしたね。前振り長くて忘れかけてました」

P「妄想だからこそ目当てのシーン以外が必要なんですよ。本番前の展開が雑なエロ本だと抜けないみたいなものです」

ちひろ「分からんでもありませんが、もうちょい女性が共感できる例えなかったんですかね」
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/24(日) 19:44:18.53 ID:jL0MBpz30

のあ『……ただいま』

P『お、お邪魔しまーす……。(庭付きの、白くてきれいな洋風の家……。なんだろ、贅沢ってよりも裕福というか豊かというか)』

母『……あら……』

P『こ、こんにちは。のあさんと同じクラスのPといいます』

母『そう、あなたが……』

P『(黒髪だ……。のあさん銀髪だけど、そこはお父さん譲りなのかな……。髪色以外はそのままのあさんを大人にしたみたい……見れば見るほどそっくり……)』

母『』にっこり

P『え、おう?』

母『最近うちの子に一等星の輝きが見え隠れし始めたと思ったら……! 恒星でないことは分かっていたけど、だとしたらどんな太陽が現れたのかと……! へぇ……のあったら、へーえ……!』にっこにっこ

P『(のあさんと同じ顔なのにめっちゃにやにやしとる……違和感すげえ……)』





P「のあさんファンならさっきの情報からここまで考えますよ」

ちひろ「あんた含めて鍛えられすぎじゃないですかね」
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/24(日) 19:47:56.37 ID:jL0MBpz30

のあ『お母さん、黙って。……P、こっち』

母『のあと交流するなんて、雲を掴み霧と踊るような感覚に陥るかもしれないけど、のあにはちゃんと実体があるんだから……!  分かりにくいようで本当のことしか言わない、冬の空より澄んだ実体……! 見ていればPくんのことばっかり考えてるって分かり……あ、ちょっとのあ……! まだ話は……!』

すたすた

P『……いいの……? お母さん……』

のあ『留めておくべき言葉のない声なんて、ただの音よ……。同じ音なら、雨音のほうが優しくていいと思うわ……こっち、私の部屋。入って』がちゃっ

P『お、お邪魔しまーす…………(きれいってか、物がない……フローリングに、机とベッドだけ……)』

のあ『座って』ぼふっ

P『(クローゼットからぴにゃクッション……)ど、ども』

のあ『…………』

P『えーと……楽しいお母さんだね』

のあ『……受け入れがたい評ね。星間に漂う漆黒よりも無為な言葉の集合だと思うけど……観測者によってこうもズレが生じるのね』

こんこん

P『ん? ノック……お母さんかな?』
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/24(日) 19:51:45.24 ID:jL0MBpz30

がちゃ

P『お、おぅ? (とても鋭いまなざしの男の人……それに髪型、銀髪のオールバックって…………迫力やばい……ん? 銀髪? もしやこの人……)』

のあ『……ただいま、お父さん』

父『お帰り、のあ…………』

P『ど、どうもPといいます。のあさんにはいつもお世話になっています』

父『…………』

P『(めっちゃ見られてる……。眼光の尖り方がのあさんのそれだ……すごく息が詰まる……)』

父『…………』

P『(き、気まずい……。見られてるだけなのに、胃をヤスリがけされてるような感覚が……)』





P「ちなみにお父さんとのやりとりは、初めてのあさんと会った時の実体験を基にしております」

ちひろ「よくそんな人をスカウトしてきましたねあんた」

P「そこはまあ、見た瞬間に心を掴まれたというか。この人の進む道を一番近くで見ていたい、側にいさせてほしいって思ったんですよ」

のあ「…………」すすっ ぴたっ

ちひろ「距離詰めた挙句ついには密着しましたね」

のあ「……暑いわ」

ちひろ「そりゃそうですよ。おしくらまんじゅう状態止めるか、我慢するか選んでください」

音葉「…………」ぴたっ

ちひろ「張り合いの末に我慢を選びましたね」

クラリス「冷房をお願いします」ぴたっ

ちひろ「選べってんですよこの強欲シスター」
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/24(日) 19:54:04.95 ID:jL0MBpz30

P『えーと……今日は傘を忘れたところをのあさんに助けてもらって』

父『…………』

P『いや、考えてみればいっつも助けてもらってばっかりな気もしますけどね。忘れた宿題見せてもらったり、当番の掃除手伝ってもらったり』

父『…………』

P『ほんと、のあさんって何でも涼しい顔でこなすから頼りがいがあって、クラスでもみんな一目置いてるというか…………あ、なんか三者面談の先生みたいですね。あはは、あは……』

父『…………』

P『……(む、無言……のあさんもこっち見てるし……のあさんの視線が倍に増えたみたいでめちゃめちゃ落ち着かない…………!)』





ちひろ「これ父親似じゃありません?」

P「そうでしょうか? 割と母親をのあさんに寄せてるつもりですが」

ちひろ「いや、どっちかっていうとのあさんママ、神崎の蘭子ちゃんに寄ってるっぽいんですが……あんたにはのあさんがどう見えてるんですか」

P「めっちゃ可愛い俺のアイドル」

ちひろ「そういうこと言うとまーた密着し始めるからやめてください。ほらのあさん、ほっぺたむにーってなるくらいくっつかんでください」
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/24(日) 19:58:02.53 ID:jL0MBpz30

P『(何を話すのが正解なんだこの状況……。こうなったらいっそ鉄板の滑らない話でも……のあさんには不発だったけど、今度こそ…………!)』

父『…………………』すっ

P『へ? お菓子? うわ、なんか立派な箱……』

父『……仲良くしてやってくれ』

P『え、ああ、もちろんですよ。のあさんみたいに楽しい人、中々いませんから。こっちからもぜひお願いします』

父『…………ゆっくりしていってくれ……』がちゃっ ばたん

P『(最後、かすかにだけど笑ってた、よね……? のあさんもあんな風に笑うのかな。笑うとこ見たことないから分からんけど)』

のあ『……騒がしくてごめんなさい……』

P『いや、お父さんの方は全然…………お母さんだって、普通にいい人だと思う』

のあ『…………』

P『露骨に納得いかないって顔せんでも』
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