自衛艦隊これくしょん3―おおすみ、出航します!―

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/30(土) 00:14:09.49 ID:y+HZEnIj0

 軍艦と言えば歓迎される時代があったというのは、平成の世、軍や戦争という言葉すら忌み嫌われる時代に生まれた身にしてみれば信じられないことでした。

 特に私、海上自衛隊初のほぼ全通甲板を持つ輸送艦、おおすみからすれば。



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1530285249
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/30(土) 00:14:49.65 ID:y+HZEnIj0
本作は自衛艦の艦娘風擬人化モノです。ほとんどオリキャラしか出てこないので、タイトルのわりに艦これ要素はほぼありません。

今回は実際の事件を下敷きとしていますが、あくまでフィクションであり、事実と異なる点、脚色されている点が多くございます。また実際の組織、人物、団体、事件、艦艇その他作中に登場する一切すべては現実とはまったく関係ありません。ご了承ください。

タイトルに3、とありますが、1、2とは特につながりもありません。こちらからお読みくださっても全然大丈夫です。
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/30(土) 00:16:02.97 ID:y+HZEnIj0

 1998年。

 私は、横須賀の第1輸送隊に所属する先輩を訪ねていました。

みうら「初めまして、おおすみ! 私はみうら型輸送艦、一番艦のみうらだよ!」

 私に比べれば小柄な、若干高校生ぐらいの女性でした。明るい茶髪を後ろで一つ括りにした、快活そうな少女です。

 みうら型の制服でもある灰色のブレザーを身にまとっているため、本当に高校生に見えました。もちろん、年齢も経験もかなり上ではありますが。

おおすみ「来月就役致します、おおすみ型輸送艦おおすみです! 若輩者ではありますが、ご指導ご鞭撻の程、よろしくお願い致します!」

 一方の私は、おおすみ型の新しい制服である詰襟の学生服とスカートに、制帽です。髪色は黒で、首元までの短さに揃えてあります。
 
 排水量は海自でもトップクラスの8900トンのため、身体の方は大学生ぐらいでしょうか? 曖昧な答えになってしまうのは、実年齢はまだ2歳だからなんですが……。

4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/30(土) 00:16:49.50 ID:y+HZEnIj0

みうら「いーよいーよ、そんなに固くなくて。輸送艦同士がんばろーね! にしても……」

 みうら先輩は、私の身体と艤装をなめるように上から下まで見回します。

みうら「ほんっとーに空母みたいだねー。すごいなー、海自もまさかこんな艦娘持つまでになるなんてなー。こんごうの時でも驚いたのに」

おおすみ「いえ! 私は空母なんかじゃありません! 航空機の運用も全然できませんし……」

みうら「でもあれ使えるんでしょ? LCAC! すごいよねー。最先端だよねー」

おおすみ「ええ、まあ。いっちゃん、にぃさん、みうらさんにご挨拶を」

5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/30(土) 00:17:51.72 ID:y+HZEnIj0

 私の後ろから、少女と幼女の境界ぐらい位の女の子が二人顔を出します。エアクッション艇の制服である、シャツとサスペンダー、灰色のスカートとカボチャパンツでばっちり決めていました。

 ちなみに髪型はおそろいで、二つ括のお団子です。

LA-01「どーも! いっちゃんたい!」

 一人はもじゃもじゃの髪の毛と良く日に焼けた肌を持つ、ぱっちりおめめの1号さん。

LA-02「同じく02どす。どうかよろしゅう」

 もう一人は、対照的に白い肌と癖のない黒髪、狐のような切れ目の2号さん。

 この二人が、私が搭載するLCAC、エアクッション型揚陸艇のお二人です。実はアメリカ出身なのですが、なぜこんなに訛っているのか……。

みうら「おーおー、元気イイ子たちだねー!」

いっちゃん「子供扱いしとったらダメやけんね? これでもみうら達より色んなとこ行けるんよ?」

みうら「そりゃすごいねー! おねーさん頼りにしちゃうよー!」

 みうらさんが二人の頭をごしごしと撫でると、

みうら「二人とも! うちの司令がお菓子用意してるから、ちょっともらってきな!」

いっちゃん「ホントっ!? はよ行くばい、にぃ!」

にぃさん「ちょっとイチ? そない走ると転びますえー!」

 二人はLCACの機動力を見せつけるように、バタバタと応接間を出て行きました。

6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/30(土) 00:18:43.88 ID:y+HZEnIj0

おおすみ「……もしかして、何か?」

みうら「うん。ちょっとあの子たちには聞かせたくなくて、さ」

 みうら先輩の顔は、さっきまでの柔和な表情から一変、真剣そうに引き締まっていました。

みうら「あなたの配属先が、呉に決まった」

おおすみ「呉、ですか?」

みうら「ここでなら、ある程度あなたを守れたんだけどね」

 先輩は少し悲しそうに顔を伏せました。しかし、私にはあまり意味が分かりませんでした。

みうら「私さ、これでもハマの番長って呼ばれててね。ある程度顔が利くんだけど、向こうじゃちょっと……。だからもしかしたら、あなたをつらい目に合わせてしまうかもしれない」

 みうらさんの瞳がまっすぐ私に飛び込んできます。

みうら「でも、これだけは覚えておいて。おおすみ、あなたはこれからの日本に絶対必要な艦娘なんだから。あなたの力が、いつか誰かを救うから」

7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/30(土) 00:19:27.94 ID:y+HZEnIj0
〜〜〜〜〜〜
 
 呉の港には、大勢の人々が集まっているのが見えました。 

おおすみ「人が多いですね……。歓迎、かな?」

と思ったのは、私もまだまだ未熟だったからでしょう。出迎えてくれたのは歓声ではなく罵声と怒号でした。

『侵略兵器おおすみ配備反対!』

『空母おおすみは出ていけ!』

『騒音の塊LCACはいらない!!』

 色とりどりの幟と横断幕に彩られた激しい拒絶の言葉に、私の身体は一瞬固まってしまいました。

8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/30(土) 00:20:19.71 ID:y+HZEnIj0

『憲法違反の自衛隊は、とうとう海外派兵のために本格的な強襲揚陸艦を……』

『おおすみは侵略に十分活用できるうえ、空母になる! 周辺諸国に脅威を……』

『おおすみ配備は軍国主義再来の象徴だ! 軍靴の音が……』

 拡声器を通した声が、海まで響いてきました。基地周辺の岸壁に出張っていた人だかりは、海上の私の姿を認めるとさらに勢いを増します。

おおすみ「え、えっと、その……」

 私は空母じゃない。

 侵略なんかしない。

 必死で言葉を紡ごうとしますが、あまりの衝撃に声になりません。せめてこの光景をLCAC達に見せないよう、背中のウェルドックをぎゅっと抑えることしかできませんでした。

9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/30(土) 00:21:12.97 ID:y+HZEnIj0

「何してんの?」

 突然声をかけられました。振り返ると、私と同じ艦娘の方が、迷惑そうに私を見つめていました。

 見るからに気が強そうな方でした。長い黒髪には、頭の上の四角い飾りがついたカチューシャ。身長は私と同じほどでしたが、私と違ってグラマラスで年上の雰囲気を漂わせていました。

 郵便局員を思わせる制服と、武装のほとんどない艤装、そしてその特徴的な髪飾りから、補給艦の方とお見受けします。

 彼女は嫌そうに言いました。

「ここで立ち止まられると邪魔なのよ。入港しないならさっさと帰ってくれない?」

おおすみ「すみません! 私、本日付けで呉基地に配属になった……」

「新型輸送艦でしょ? おおすみ、とかいう。知ってるわ。沢山お客さん引き連れてきちゃって、こっちはずっと迷惑してるのよ」

おおすみ「も、申し訳ありません! あの、あなたは……」

「私? 私は」

とわだ「とわだ、よ。とわだ型補給艦の」

 これが、私ととわださんの出会いでした。
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2018/06/30(土) 00:23:58.55 ID:y+HZEnIj0

総監「あー、悪いな、おおすみ。盛大に歓迎してやりたかったんだけど、外があんな状況だから……」

おおすみ「いえ、滅相もありません」

 海自自衛艦娘艦隊呉地方総監部総監は申し訳なさそうに窓の外、門の前で抗議活動を展開する市民団体の皆さんに目をやりました。

総監「にしても……、本当に空母みたいだな。まさか全通甲板型の艦を海自が持つ時代が来るとは」

おおすみ「その、それってそんな珍しいんでしょうか?」

 私は自分の艤装を見回します。全通甲板、と言うわけではありませんが、確かに右側に寄った艦橋と言い、何もない平らな甲板が艦尾から艦首まで続く様と言い、空母と間違われるのも無理はないかもしれません。

総監「空母保有は海自の悲願だからなぁ。二次防で潰されてから……っと、そんなことはどうでもいい。おおすみも、航空機の運用能力はあるんだろう?」

おおすみ「いえ、せいぜい離発着が出来るぐらいです。それも甲板後部にヘリ一機分の飛行甲板があるだけですから……。固定翼機ももちろん飛ばせません」

総監「ああ、それは聞いてる。だがひえいの奴が興味津々だった。また話をしてやってくれ」

おおすみ「私なんかで良かったら……」

総監「頼むよ。あと寮の部屋なんだが、君は自衛艦隊の直轄艦になるわけだから……」

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