千歌「勇気は君の胸に」

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1 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/07/01(日) 00:19:52.49 ID:2Rh4w0SG0
ここは、とある城の大広間。

各国家の国王が会談を行う厳格な場所である。

今日もこの場には近隣にある三ヵ国の女王とその護衛が集っていた。



―――浦の星王国

―――音ノ木坂王国

―――虹ヶ咲王国



この場所は、ほんの一握りの人間しか知らない。

部外者には知られてはならない場所だった。



……そんな場所が、床や壁はボロボロに破壊され、辺り一面は血の海と無残な死体で埋め尽くされていた。


立っているのは二人。

一人は浦の星王国の女王。

もう一人は―――の―――である。


抵抗した他の女王とその護衛達のほとんどは一瞬で倒されてしまった。


唯一生き残った女王だが身体の右側がごっそりと消失しており、生きているのが不思議な状態であった。



『―――はぁ……はぁ、はぁ……』ボタッ、ボタッ、ボタッ


『意外としぶといのね。体の半分を消し飛ばしたというのに……』




SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1530371992
2 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/07/01(日) 00:24:21.89 ID:2Rh4w0SG0
『…へ、へへ………そう簡単には…くたばらない、わよ?』


『哀れな女王よ……早く楽にしてあげましょう』


『楽に、か……。ふ、うふふふふ……』



血塗れの顔で不敵に微笑む女王。

誰がどう見ても逆転は不可能な状況であるにも関わらず、何故笑えるのか理解できなかった。



『……何が可笑しい? 貴様は負けた、敗北したんだ。敗者は敗者らしく絶望しなさい』


『……は、敗者ねぇ………。確かにその通り、よ……でもね…』



―――ボッ…!



左手の中指にはめたリングに炎が灯る。

弱々しく、今にも消えてしまいそうな橙色の炎。

女王はそんな炎を見せつけるように拳を固めて突き立てた。



『―――精々、今は……今だけは勝ち誇っていな、さい………でもね、私が賭けたのは………』





『――――――……!!!』






『……くだらない戯言を。消えろ―――』スッ…




グチャッ―――


3 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/07/01(日) 00:26:11.20 ID:2Rh4w0SG0
――――――――――――
――――――――――
――――――――
――――――
――――
――



千歌「………」


えーっと、あれ、何があったんだっけ?

思い出せ……頑張って思い出すんだ高海千歌……


あ……たしか久しぶりに練習がお休みだったから、曜ちゃんと沼津に買い物に行ったんだよ。

帰りのバスまでの記憶はある。

バスの座席に座ったら眠くなって……目が覚めたら知らない場所にいた。



千歌「は? ここはどこ? 海……砂浜??」



「おお、やっと起きたね! こんなところでお昼寝してたら小麦色に日焼けちゃうよ?」

千歌「…曜ちゃん?」

「あれー? 何で私の名前を知ってるの?」

千歌「はい?」

曜「おっかしいな……どこかで会った事あったかな?」

千歌「ええっと……ここはどこ?」

曜「ここ? ここは浦の星王国にある海だね」

千歌「浦の星王国? 何を言ってるの……日本は王国じゃないでしょ?」

曜「ニホン? 君はニホンって街から来たの? 聞いた事の無い街だなぁ……」

千歌「……何の冗談?」

曜「ねえねえ、君の名前は? 私、全然覚えて無くて―――」


千歌「いい加減からかうのは止めてよ! いくら曜ちゃんでも怒るよ!」

曜「ッ!! ご、ごめん……そうだよね、君は私の名前を憶えているのに……最低だよね」シュン

千歌「え、いや、その……本当に私の事知らないの?」

曜「……うん」
4 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/07/01(日) 00:27:13.44 ID:2Rh4w0SG0



おかしい……見た目は完全に曜ちゃん。名前も曜ちゃん。

なのに私を知らない。

そもそもここが王国だって言ってたぞ……ならここは一旦―――



千歌「あー、ごめん。私さ、頭を強く打っちゃったみたいで……」

曜「頭を? なるほど、だからこんな場所で気絶していたんだね」

千歌「そ、そうそう! あなたが私の知ってる曜ちゃんにそっくりだったから間違えちゃった……怒鳴ったりしてごめんね」

曜「大丈夫だよ、私に非は無かったんだね」ホッ

曜「でもここ砂浜だよ?? どうやって記憶が飛ぶほど強く頭を―――」


ヤバイ!!?

話を逸らさなきゃ……!


千歌「ああああのさ!! 何も思い出せないからここの事を色々教えて欲しいんだ!」

曜「うん? 分かった! 曜ちゃんに任せてよ!」


これって夢……夢なの?

でも夢にしては海の匂いとか風の感覚とかリアル過ぎるよね……

ほっぺをつねっても普通に痛い。

つまりこれは夢じゃない……もしかして異世界に飛ばされちゃったの!?

漫画みたいに!?


千歌「ま、まさか〜…ないないあり得ないよ」



曜「その前に、君の名前を教えて欲しいな!」

千歌「えっ、あ、そうだね。私の名前は高海 千歌だよ。よろしくね」

曜「千歌ちゃんだね。うん、覚えた♪ それで、まずは何から聞きたい?」
5 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/07/01(日) 00:30:42.46 ID:2Rh4w0SG0
千歌「そうだね……曜ちゃんはどうしてここに来たの?」

曜「それはね、私は立派な炎使いになる為の旅をしているからだよ!」エッヘン

千歌「ほ、炎……使い!?」


千歌「ちょっと待って、炎使いって何!?」

曜「炎の事も忘れちゃったんだ。よーし…見ててね」ボッ


曜ちゃんの付けてる指輪に青い炎が灯った!?

それに手のひらに魔法陣みたいなものが……


曜「―――それっ!!」バシュッ!!!


千歌「す、凄い!! 手から水が出た!!」

曜「うおっ!!?」ビクッ

千歌「へ? 何で曜ちゃんも驚いているの?」

曜「い、いや……だってこんな威力だとは思わなかったからさ。普段だったら水鉄砲くらいいの勢いだし」

千歌「でも今の威力はその何十倍も凄かったよ?」

曜「ほぅ……つまり、旅の成果が出てるって事か! うふふ、曜ちゃんもやるねぇ〜」エヘヘ

千歌「自分で褒めちゃうんだ……それで、今のは何なの?」

曜「今のは雨属性の炎だよ」

千歌「雨属性? って言うか……炎じゃなくて水じゃん、水使いじゃん」

曜「違うんだなぁこれが。水に酷似した炎を操ってるのだ」

千歌「あれが炎? どう見たって水じゃん」

曜「それが雨の性質なの」

千歌「ふーん……他にはどんな炎が使えるの?」

曜「使える属性はこれ一つだね。中には複数の属性を使える人もいるらしいけど」

千歌「例えば木属性とか風属性とか?」

曜「そんな属性は聞いた事無いかな。炎の属性は全部で七属性ある。……らしい」

千歌「“らしい”?」

曜「自分の使える属性以外ちゃんと覚えて無いんだよねこれが」

千歌「……それでよく立派な炎使いになる旅をしているね」

曜「あ、あははは……。でも、自分の属性については詳しく知ってるよ! 各属性には特性があってね、雨は『鎮静』なんだ。特性は…ええっと確か……動きとか痛みを鈍くする、だった気がする」

千歌「あやふやだなぁ」

曜「この七属性以外にもいくつかあるらしくて、この国の王様が扱えるって話を聞いた事があるよ」

千歌「へぇ……」
6 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/07/01(日) 00:31:57.21 ID:2Rh4w0SG0


曜「私はこれから王都に向かうつもりなんだ。千歌ちゃんも一緒に来る?」

千歌「王都には何があるの?」

曜「さぁ?」

千歌「……さぁ?」

曜「私も実際に行くのは初めてだからよく分からないんだよ。ただ、技を極めるには王都に行くのが一番だってパパが言ってた」

千歌「なるほどね」

曜「ある程度の実力が無いと門前払いを受けるって話だから、一人で修行の旅をしていたけれど、今の技が出せるなら大丈夫な気がする!」


曜「どうする? 一緒に行く?」

千歌「……うん、行こうかな」

曜「やった! 決まりだね」


王都っていうくらいだから、何か元の世界に戻るヒントがありそうだよね。

今は曜ちゃんについて行こう。


曜「じゃあ、王都に向かってーーー―――」


曜「―――出発進行!!!」
千歌「―――ヨーソロー!!!」


千歌「ほぇ?」

曜「へ? よーそろー??」キョトン

千歌「あ、うん、何でもないよ」


この曜ちゃんは『ヨーソロー!』って言わないのかぁ……


7 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/07/01(日) 00:33:19.73 ID:2Rh4w0SG0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



曜「王都までは少し距離があるからバスで行こうか。ええっと、近くのバス停はどこかなー」ポチポチ


曜ちゃんに色々と質問して分かった事がある。

一つはこの国は島国ってこと。

形は静岡県に少し似ていて、海の向こう側にも島や大陸があるみたいだけれど

今は鎖国中らしい。


もう一つは文明の相違がほとんど無いこと。

普通の子が魔法みたいな力を使えるからもっとファンタジー感があると思ったけど……

普通に車が走っているし、家の作りとかも違いが全く無い。

曜ちゃんも他の人達もスマホに似た機械を持っている。

私の質問もほとんどスマホで調べて答えていたし。

ただ、肝心の炎について具体的に書いてあるサイトが一つも見つからなかった。
曜ちゃん曰く、誰にでも使える技術じゃないから存在は認知されているけど、技術等の詳細は公表されて無いらしい。

ちなみに私のスマホは電源すら入らない始末だった。



千歌「本当に別の世界に飛ばされちゃったんだね……私」ハァ



曜「―――ねえねえ」


千歌「どうしたの?」

曜「バス停は見つけたんだけどさ、千歌ちゃんお金持ってる? こんな感じのやつ」ジャラ

千歌「……持ってない」

曜「なら暫くは私が払うね」

千歌「え?」

曜「だって千歌ちゃんお金もアテもないんでしょ? 宿とか食べ物とかこれからどうするのさ」

千歌「うっ…そ、それは……」

曜「だから一緒に行動する間は私が全部払うから。曜ちゃんにドーンと任せてね!」エッヘン

千歌「で、でもいいの? 初めて会った人にそこまでして……それにお金だっていつ返せるかも分からないのに」

曜「いいのいいの。お金なら沢山あるし、一人で旅するのも心細かったからね。それにさ、その……何というか千歌ちゃんのこと放って置けないんだよね。自分でもよく分からないんだけどさ。変だよね? あはははは」

千歌「曜ちゃん……ありがとう」ニコッ

曜「どういたしまして♪ それよりも記憶の方はどう?」
8 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/07/01(日) 00:35:33.62 ID:2Rh4w0SG0

千歌「え、あ、うーん…まだ厳しい……かな」

曜「そっか……でも何かのきっかけで思い出せるかもしれないよね!」

千歌「そ、そうだね……」


うぅ、罪悪感が……


曜「………」



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


〜千歌達が移動して数十分後 砂浜〜



「―――本当にこの場所なの?」

女兵士「ええ、間違いなくこの砂浜周辺です」

女兵士「近隣の住民からも、この砂浜近くで眩い閃光が発生したと報告が上がっております」

「王都にある探知機のメーターが振り切れて壊れる程の炎が発生したんでしょ? にしては環境の変化が全くないって……絶対に変でしょ?」

女兵士「そう申されても……」

「はぁ……せっかく面白そうな敵が現れたのかもって思ったから、わざわざ私が来たっていうのに。無駄足だったわね」



女兵士「隊長、報告があります」

「何かしら?」

女兵士「この周辺で見覚えのない二人組の少女を目撃したとの情報が入りました」

「ただの旅行者じゃないの?」

女兵士「それは何とも……むつさんが近辺の住民に身分証を提示させて不審者をあぶりだそうとしています」

「むっちゃんが? そんな方法で見つかるなら苦労しないわよ……」

女兵士「合流しますか?」

「いやいや、面倒だから帰るわ」

女兵士「で、ですよね」


9 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/07/01(日) 00:36:26.02 ID:2Rh4w0SG0
「内戦中だっていうのに王都に守護者が誰もいない状況はよろしくないからね。まあ、あの女王様が本気出せば一瞬で終結するんだけど」

女兵士「女王の様子はどうなのですか? 私達のような下等兵ではお目にかかる事すら出来ないので……」

「……別に、相変わらず態度も言動も噂通りの“氷の女王様”よ。この前も命令をちょっと背いた部下を氷漬けにしていたわ」

女兵士「ッッ!!?」ゾワッ

「私も何度氷漬けにされかかった事か……」ハァ



―――プルルルル



「ん? 電話……あ、やっと連絡寄越したな」ピッ


「もしもし! 貴女一体どこに居るの!?」

『ごめんごめん、今は王都行きのバスの中よ〜』

「全く……守護者としての自覚をもう少し持ちなさいよね!」

『はいは〜い。色々と報告する事があるから、城に戻ったらすぐに会いに来て』

「報告?」

『私だってただフラフラしてただけじゃないのよ。ちゃーんと務めは果たして来たわ』


10 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/07/01(日) 00:37:54.61 ID:2Rh4w0SG0


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


〜バス車内〜



千歌「あれ!? よく調べたらこの国って今内戦中なの!?」

曜「内戦? あぁ、そう言えばそうだったね」

千歌「こんな重要な事件なのにニューストップになって無いってどういう事なのさ……」

曜「そりゃ、“大した事じゃない”からだよ。この内戦だって結構長いし」

千歌「はい?」

曜「今の王様……あ、女の人だから女王になるのか。その人が恐ろしく冷酷な人なんだよ」

千歌「独裁者って事……?」

曜「うん。前の女王様は凄く優しい王様だったんだけど、少し前に亡くなって……その代役として王の地位に即いたの」

曜「前の女王様がどうして亡くなったのか。今の女王様がどうしてこの地位に即けたのか。この辺の事情は全くの謎でね……」

千歌「闇が深いね……」

曜「そもそもこの国は―――」



―――キキィィィ!!!!



曜「うおぉ!? 急に止まった?」

千歌「事故かな?」


女兵士「………」

女兵士「………」

女兵士「………」


曜「何かぞろぞろと入って来たぞ?」



「あー、ご乗車のお客様、突然失礼します。私、王立軍の むつ と申します」


むつ…え、むっちゃん!?

顔も雰囲気もそっくりだけど、やけに大人っぽいような……
11 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/07/01(日) 00:40:21.48 ID:2Rh4w0SG0
むつ「ただ今、王都では反乱者のグループとの戦闘が勃発しました。国民の安全を確保する為、一時的に王都内への立ち入りを制限します。よって、このバスはここで終点となります」


曜「あちゃー…運が悪いなぁ」

千歌「立ち入り制限ってどのくらいの間入れないの?」

曜「早くても一週間くらいはかかるかな」

千歌「い、一週間も!?」

曜「うん。何かあるの?」

千歌「い、いや……何も、無い…」


すぐに戻れるとは思ってなかったけど、少なくとも一週間以上は帰れない……

もしかしたらラブライブの予選にも間に合わないかも知れないの!?


曜「んん?」キョトン

むつ「それともう一つ、この近辺で不法入国者と疑わしき人物が目撃されました」

千歌「!?」

むつ「これより我々が身分証の確認を取らせて頂きますので、国が発行したものを用意してその場でお待ち下さい」

曜「ほぇー、こんな事ってあるんだね」

千歌「ね、ねぇ…もし身分証が無いとどうなるの?」

曜「そりゃ、このまま軍に拘束されるよ。その後に本当に不法入国者だって分かればそのまま処刑されるだろうね。海の向こう側から来た人にはやたらと厳しいからさ」

千歌「ウソ……嘘で、しょ…?」サアァァ

曜「どうしたの? 顔が真っ青だよ?」


―――ヤバい

ヤバいヤバいヤバいヤバい!?

身分証なんてあるわけ無いじゃん!

学生証でいける?
駄目だ、絶対にバレる。


曜「千歌ちゃん……もしかしてだけど…」
12 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/07/01(日) 00:42:07.82 ID:2Rh4w0SG0


むつ「―――……君達、身分証を見せて」


千歌「ぁっ!」ビクッ

曜「どうぞ」

むつ「……はい、確認しました。隣の君も見せて?」

千歌「え、あ、はい……ええっと、その…」

むつ「……どうかした? 早く見せて」ジッ

曜「千歌ちゃん?」

千歌「あの……だからその…う……」

むつ「………」

千歌「あぅ……う、うぅぅ……」ジワッ





「―――お嬢さん、もしかして身分証を落としたんじゃないかのぉ?」





千歌「……えっ」

むつ「落とした?」

曜「お婆さん、何か知っているんですか?」

お婆さん「ほれ、私の座席の下にこれが落ちてたんじゃよ」


私の顔と名前が入った身分証!?

でも何でこんなものが…


お婆さん「お嬢さんのじゃろ? 大切な物なんだからしっかり管理しなさいな」

千歌「えっ、あ、はい。ありがとう、ございます……」

曜「なんだ、ちゃんと持ってるじゃん。良かった」



むつ「確認しました。二人とも行って大丈夫です」

曜「はーい。じゃあ行こっか、千歌ちゃん」

千歌「う、うん……」

お婆さん「うふふふ」ニコニコ








むつ「それでは、最後はお婆さんの番です。身分証の提示をお願いします」

お婆さん「……」


むつ「…お婆さん?」
13 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/07/01(日) 00:43:30.12 ID:2Rh4w0SG0

お婆さん「まだ分からないのかい?」

むつ「は?」

お婆さん「はぁ……むっちゃん最近、訓練をサボってたわね?」

むつ「何を言って―――」



―――プシュウウゥゥゥ



お婆さんの体が藍色の霧に包まれた。

シワやシミだらけだった肌はみるみる若さを取り戻す。

ヨボヨボだったお婆さんは高校生くらいの美少女に変化したのだ。

若返ると言うより、元に戻ったと言うのが正しい。
そして、むつはこの人物を知っている。

この人物は むつ の直属の上司にあたる人物だったのだ。



むつ「―――……つ、津島隊長!!!?」



善子「私は悲しいわ……ちょっと留守にしている間に、むっちゃんに顔を忘れられるなんて」オヨヨ

むつ「あ、いや、そんな事は…って、そもそも津島さんの幻術を見破るなんて出来るわけないじゃないですか!」

善子「いやいや、むっちゃんや、確かに私は“超”一流の術師よ。でも、しっかり訓練していれば見破れない幻術じゃないはずよ?」

むつ「訓練は怠っていないつもりでしたが……甘かったようです。申し訳ございません」

善子「まあ、何も言わずに王都を離れた私が叱れる立場じゃ無いんだけどねー」アハハ

むつ「そ、そうですよ! 桜内さん、かなーり怒ってますよ?」

善子「やっぱり?」

むつ「はい、『守護者としての自覚が足りな過ぎる。今度会ったら消し炭にしてやる』って仰ってました」

善子「いやだー…かんかんじゃないの」ゲンナリ

むつ「自業自得です」


善子「帰るのやめよっかな」

むつ「駄目です。一緒に城へ帰りますよ」

善子「ふぁーい……あ、梨子に電話しておこっと」ピピピ

むつ「そうして下さい」

善子「じゃ、バスの運転は任せたわよ〜」



―――プルルルル…


14 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/07/01(日) 00:45:23.11 ID:2Rh4w0SG0
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―――お婆ちゃんが拾ってくれたこの身分証……バスに乗る前に持ち物を確認した時は無かったよね?

本当に私の物なの?

このまま持っていてもいいのかな……?


曜「はぁ……王都に行けないのはガッカリだなぁ」シュン

千歌「これからどうするの?」

曜「途中で降ろされたこの街で時間を潰すしかないよね」

千歌「一週間も?」

曜「……流石に飽きちゃうよね。何日かしたら別の場所に行ってみようか?」

千歌「私はそれでも構わないよ。どこに何があるか全く分からないし……」

曜「じゃあ決まりね! 今日の宿を探しつつ、この街を散策しよう!」

千歌「お、おーう」

千歌(思い切り沼津駅周辺の街並みなんだよなぁ……)



千歌「あ、そう言えばさ」

曜「ん?」

千歌「曜ちゃんに貸してもらったスマホで色々調べたんだけれど、女王様の顔とか名前が一切検索にヒットしなかったんだ。どうしてなの?」

曜「あー……今の女王様が即位したと同時に歴代女王の情報の全てが消去されたんだよ。それだけじゃなくて、公の場に女王に関する事柄を載せたり、口に出したりしたら処罰の対象になっちゃうんだ」

千歌「どういう事? それかなり厳し過ぎない?」

曜「まあね。私は歴代の女王様の顔とか名前は全く覚えていないんだけど!」

千歌「それはそれで国民としてどうなのさ……」

曜「あ、あははは……おっしゃる通りです。もうちょっと勉強するべきでありました……」

千歌「凄く気になるけれど、話すと捕まっちゃうんじゃねぇ……」

曜「でもでも、バレなきゃ犯罪にはならないんだぜ?」ニヤッ

千歌「だとしても曜ちゃん何も知らないんでしょ?」

曜「はい」キッパリ


千歌「……」

曜「……」


千歌・曜「「あはははははは」」ケラケラ


曜「あはははは! 我ながらバカ過ぎて情けないなぁ」

千歌「ふふふふ、どんな世界でも曜ちゃんは変わらないな……凄く安心する」

曜「……変わらない? 安心?」キョトン

千歌「こっちの話〜」

曜「んん?」
15 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/07/01(日) 00:46:58.96 ID:2Rh4w0SG0


――――――
――――
――



〜夜 城内 大広間〜



「本日戦闘を仕掛けて来た反逆者についてですが、調査から戻った桜内さんと津島さんの迅速な対応により制圧が完了致しました」

むつ「こちら側の被害は?」

「建物の損傷と多少の負傷者はいますが、死者はいません」

善子「レジスタンス側に何人か強そうな奴がいたから、いつも通り幻術に嵌めて研究室にぶち込んでやったわ」

梨子「また? これ以上戦力が必要とは思えないけど」

善子「これが私に与えられた命令なんだから仕方ないでしょ。そもそも、梨子は倒し過ぎなのよ! 本当だったらもう何人か捕らえる予定だったのに…」

梨子「『抵抗する者を皆殺しにしろ』これが私に下された命令よ」

善子「はぁ……ほんっと厄介だわ。守護者に与える命令は統一して貰いたいものね」

むつ「ちょっ、ちょっと! 女王様の目の前でそんな―――」




女王「ほう、随分と生意気じゃありませんか。霧の守護者さん?」




むつ「うっ!?」ビクッ

善子「……ああ? 事実でしょ?」

女王「梨子がトドメを刺す前に貴女が何とかすれば良いのです。“生きてさえいれば”身体がどうなっていようが関係ないのですから」

善子「その通りね。でも―――」



――パキパキッ!!!



女王により善子の体が一瞬で氷漬けにされた。

隣席していた他の兵士は突然の出来事に激しく動揺する。
16 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/07/01(日) 00:47:46.49 ID:2Rh4w0SG0
女王「守護者の分際で王に意見するな」

梨子「やれやれ、善子も学ばない人ね……」

むつ「た、隊長……津島隊長!!!?」




善子「むっちゃん騒がない。大人しく席に座って」

むつ「へ? あれ、後ろ、えっ!?」



そこには氷漬けにされたはずの善子の姿があった。

氷の中には善子の体は無く、代わりに誰も座っていなかった椅子が入っていた。


予め部屋内の人間全員に幻覚を見せており、善子本人は会議が始まってからずっと むつ の後ろに立っていたのだ。

女王はさらに激情する。



女王「私に幻術を使ったな? 王であるこの私に……貴様は抵抗したな?」

善子「文句ある? 身の危険を感じたんだから使うのは当たり前じゃない」


女王「……覚悟は、出来ているんでしょうねぇ?」パキパキパキッ!!!

善子「ったく、面倒な女王様ね」ボッ!!

むつ(や、ヤバい! このままじゃ巻き込まれる!!!)



梨子「二人とも落ち着いて下さい。こんな場所で戦闘したら取り返しのつかない事態になります」

梨子「善子ちゃん、貴女の言動は女王に対して無礼極まりないわ。いい加減にしなさい」

善子「……むぅ」ムスッ

梨子「女王、ここで霧の守護者を殺してしまっては国の戦力に大きな穴が開いてしまいます。今一度、冷静な判断をお願い致します。それでも、ここで殺すべきだとお考えのならば、私が始末します」



女王「………津島 善子」

善子「…何ですか?」ギロッ

梨子「こ、この子って人は……!」

女王「貴女が無断で王都を離れていた一ヶ月間、一体どこで何をしていたのか報告しなさい。報告内容によってはこれまでの事は不問とします」

善子「女王様にしては良心的じゃない」

むつ「津島さん!!!」

善子「わ、分かったわよ……ごほん、報告は二つあります」
17 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/07/01(日) 00:48:54.19 ID:2Rh4w0SG0


善子「まず一つ、旧虹ヶ咲領土にて失踪した松浦 果南とルビィ様の生存が確認されました」

女王「……」

梨子「へぇ…あの裏切り者、まだ生きていたんだ」

善子「どうやら我々同様、散らばったAqoursリングを探しているようです。仲間もそれなりの数が集まっているようです」

善子「その仲間の一人に雲のAqoursリングを使用出来る人物がいる事も確認済みです」

梨子「雲か……」

女王「まさか反逆者側にAqoursリングを使用出来る人物がいるとは」

善子「二回の戦闘を行い、ある程度の戦力を削りましたが、致命傷を与える事は出来ませんでした。どうやら、果南はヘルリングによる『呪いの力』を宿したようです」

むつ「呪いの力?」

善子「果南はその力であらゆる炎を使用した技、匣兵器を触れただけで無力化してきます。恐らく、女王の“奥の手”に対抗する為に身につけたのかと」

女王「下らない…」


善子「奴らがAqoursリングを集めている理由は考えるまでもありません。よってリング探しは奴らに任せた方が都合がいいと判断し、私は王都への帰還を選択しました」

むつ「どう言う事です?」

善子「リングを集めているのは女王を倒す為。ならこっちが人員を割いて探さなくとも、向こうから揃えて持って来てくれる。持ち去った匣兵器も一緒にね」

女王「貴女にしては良い判断ではありませんか」

善子「そりゃどうも」

梨子「もう一つの報告は何?」

善子「……」

女王「どうしたのです?」

善子「いえ、報告は以上です。もう一つの報告は不確定な情報が多いのでまだ伝えるべき内容ではありませんでした」

女王「ほぅ…なら、今ここで殺してしまってはその報告は一生聞けないという訳ですか」

善子「まぁ、そうなるわね。どうする、私を殺す?」

女王「……いいでしょう。貴女の処分は不問としましょう」

善子「……どうも」

むつ「……ふぅ」ホッ

梨子「冷や冷やさせないでよね……」
18 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/07/01(日) 00:50:39.55 ID:2Rh4w0SG0



女王「梨子さんの方は何か分かりましたか?」

梨子「強力な炎が発生した地点の調査を行いましたが、これと言って何も…」

善子「計測器の数値がオーバーフローしたんでしょ? 何も無いわけがないじゃない」

梨子「本当に何も無かったんだから仕方ないでしょ!」


女王「……先程計測器を確認しましたが、あのパターンは間違い無く鞠莉のものです」

善子「は?」

梨子「鞠莉様……ですか!? ですが鞠莉様はすでに亡くなっているのですよ!」

善子「実は生きてたってオチじゃ……」

女王「それはあり得ません。彼女は確実に死んでいますわ」

梨子「でも死後に発動する技なんて聞いたことがありませんよ?」

女王「あの人は特別ですから。私達に出来ない事でも彼女なら出来ても不思議じゃない」

善子「仮にあれが鞠莉様の炎だったとして…一体どんな技を発動させたの?」

むつ「技術スタッフが解析を進めていますが、数値が数値なだけに数日は掛かるそうです」

女王「鞠莉…貴女は今更何をしようとしているのですか……?」


梨子「なら大人しく待つしかないのか……。なら今夜は街にでも出ようかしらね」

善子「私も行くー」

むつ「ダメです。津島さんは勝手に居なくなった分の仕事が残っているのでそれを片付けて下さい」

善子「はい……? い、今から?」

むつ「ええ」

善子「」マッサオ

梨子「自業自得ね」
19 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/07/01(日) 00:52:17.25 ID:2Rh4w0SG0


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


〜宿〜


千歌「おかしい……どんなに検索しても三年前までの歴史しか調べられない。情報規制がされてるって曜ちゃんは言ってたけど、これは異常過ぎるよ」

千歌「ネットで調べられる情報はあまり無いから、曜ちゃんや他の人から聞き出すしかないか……教えてくれるかなぁ」ウ-ン


曜「千歌ちゃーん、お風呂空いたよー」

千歌「あ、うん。分かった」

曜「何か思い出した?」

千歌「うーん、ちょっと気になることが……」



―――ピーンポーン



曜「来客? わざわざホテルの部屋に?」

千歌「私が出るよ。曜ちゃんは着替えていてよ」




千歌「どちら様ですか?」ガチャ

「夜分に申し訳ございません。王立軍の『いつき』と申します」


いつき……この人も私の知ってる いつきちゃん にそっくりだ。



いつきと名乗った彼女は千歌と同じクラスの『いつき』と瓜二つだった。

ただ、むつと同様高校生らしい雰囲気は無く、すっかり大人な女性になっている。

勿論、千歌を知っている様子は見られない。



いつき「ただ今、とある人物を探しています。この写真の中に見覚えのある顔はありますか?」



五枚の写真を見せられた千歌。

年齢も性別もバラバラで、関連性は全く無かった。

軽く目を通して誰も知らないと答えようとしたが、一人の女性の写真が目に留まる。


右眼に包帯を巻き、手脚には生々しい傷跡が残っているこの女性。
すっかり変わり果てた姿だったが、間違いなく千歌の知っている人物だった。
20 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/07/01(日) 00:53:12.41 ID:2Rh4w0SG0


千歌「―――果南、ちゃん……?」

いつき「…何? 果南“ちゃん”だと?」



千歌の発言を聞き、いつきの表情が一変した。



いつき「詳しい話が聞きたい。これから一緒について来てもらう」

千歌「え?」



そう告げると、いつきは千歌の腕を掴んだ。



千歌「な、何!? 放してよ!」



千歌の声を聞いて曜が駆けつける。



曜「なになに、どうしたの?」

いつき「もう一人居たのか」


曜「え、これって……どういう状況?」

千歌「わ、分かんないよ! この人がいきなり!!」

いつき「君、この子の関係は?」

曜「えっと、千歌ちゃんとは今日知り合ってですね……」



言い終わる前に質問を続ける。



いつき「なら、松浦 果南に心当たりは?」

曜「はい? マツウラ??」キョトン


いつき「……どうやら君は関係ないようだな」

千歌「だから何なのさ!? どうして果南ちゃんを知ってるといけないの!?」

いつき「当然だろ。何せコイツは女王の命を狙う凶悪な反逆者なんだから」

千歌「はあ!? 何を言ってるの? 果南ちゃんがそんな事をするわけが―――……あっ」



自分の知っている果南はそんな事はしない、出来るわけがない。


だが“この世界”の果南はどうだろうか?

曜でさえ、炎という規格外の力を扱うことが出来る。

果南も使えても不思議ではないし、その力を何に使っているか全く分からない。



―――そもそも、私はこの世界の果南ちゃんにまだ会ってない……

いつきちゃんの言っている事は事実なのかもしれない。


いつき「松浦 果南の情報は公表されていない。普通の国民なら、顔も名前も知らないんだよ」
21 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/07/01(日) 00:54:05.37 ID:2Rh4w0SG0
曜「でも千歌ちゃんはそれを知っていた……しかも『ちゃん』付けする程の仲がいい」

千歌「ちがっ、いや違わないけど……私の知ってる果南ちゃんとは別人だよ!!」

曜「……」



曜が冷酷な眼差しで千歌を見つめる。

そんな気がした。

だが、状況が状況だ。

今日初めて出会った記憶喪失の人間が誰も知らないはずの凶悪犯の名前を知っていたのだ。
当然の反応である。

それでも千歌の心を折るには充分すぎる反応であった。



千歌「な、なんで……そんな目で見るの…?」

曜「………っ」

いつき「さあ来い。知っている事を全て吐かせてやる」グイッ

千歌「い、嫌だ……嫌だよ!! 私は何も知らない!!」

いつき「いいから来い!!」

千歌「曜ちゃ、ようちゃん!! たす、助け……」ジワッ

いつき「無関係なその子を巻き込むの? 最低だな」

千歌「ぅ!!?」

曜「……」

いつき「騒がしくして済まなかったね。すぐにコイツを連れて―――」
22 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/07/01(日) 00:56:24.30 ID:2Rh4w0SG0















曜「…………なせよ」




いつき「ん?」



―――ボッ!



曜のリングが青く燃える。

技の発動に必要なリングの炎。
これにより、曜はいつでも技を発動する準備が整えた事を意味する。



曜「放せよ……今すぐ千歌ちゃんを放せ!!!」

千歌「…えっ」

いつき「……貴様、自分が何をしているか分かっているの? 私に逆らうという事は、女王に、国に逆らう事を意味する。反逆者と同様の扱いを受けるんだぞ?」ギロッ

曜「……ッ!!」

いつき「体の反応は素直だな。恐怖で震えているじゃないか」

曜「……う、うる、さい……!」ガタガタガタ


いつき「理解出来ない……まるで理解出来ない!」

いつき「貴様は今日出会ったばかりの人間にこの先の人生を捨てるの? このまま見捨てれば済む場面で何故そんな愚かな真似をする!?」


その通りだよ……

どうして曜ちゃんはこんな私を助けようとするのさ……?


曜「分からない……私だって何でだか全然分かんないよ!!! 今だって凄く怖い、怖くて怖くて堪らないさ!!! 見捨てようとも思った!!! でも……」




曜「―――でもここで千歌ちゃんを見捨てたら、後で死ぬ程後悔する。私の中の“何か”が、勇気を出して立ち向かえって叫んでるんだ!!!」

いつき「……」

曜「放っておけない……助ける理由なんてそれだけで充分でしょ!!」

千歌「よ、お……ちゃん」



曜「……待ってて千歌ちゃん。今助けるから」ギリッ

いつき「バカな子……死んであの世で後悔しなさい!!!」ボッ!


23 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/07/01(日) 00:58:13.62 ID:2Rh4w0SG0
今回はここまで。
不定期更新ですがエタらないように頑張るのでよろしくお願い致します。

また、一部設定には元ネタがありますのでご了承ください。
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/01(日) 02:27:19.07 ID:WlMNTj/zo
リボーンでそんな感じのあったな
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/01(日) 18:41:05.62 ID:VarbjEcFO
期待
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/01(日) 22:57:52.70 ID:IPfnx/VoO
リングに炎ときたらボックスも出てきそうな…
楽しみだ
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/02(月) 02:13:33.73 ID:jmfKYdvn0
期待
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/03(火) 19:21:14.96 ID:3EZYvOJ90
いいゾ〜
29 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/07/08(日) 01:18:43.84 ID:sR0Enwqz0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



よう『パパ〜みてみて! ようの“まほー”!!』ボッ!!

曜パパ『おお! もうここまで使えるようになったのか! 凄いな曜』ナデナデ

よう『えへへ///』

曜パパ『ただなぁ、これは魔法ではないんだよ?』

よう『???』

曜パパ『ま、まあいいか』アハハ…


曜パパ『よし、曜ちゃんにはパパが使っていたそのリングをプレゼントしちゃうぞ』

よう『いいの!?』パアァァ!

曜パパ『勿論だよ。大切に使うんだぞ〜』

よう『うん!』


30 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/07/08(日) 01:19:32.11 ID:sR0Enwqz0


曜パパ『―――なあ、曜』

よう『なーに?』

曜パパ『曜は何の為にその力を使いたい?』

よう『なんのため?』キョトン

曜パパ『その力は誰にでも使えるものじゃない。使い方によっては人を傷つける事も救う事も出来る」

よう『ん……んん??』

曜パパ『……ゴメンゴメン、まだ曜ちゃんには早かったね』

曜パパ『曜ちゃんならしっかりと訓練すれば今よりもっと凄い力を手に入れる事が出来るよ』

よう『ほ、ほんとに……!』キラキラ

曜パパ『ああ本当さ。曜ちゃんならきっとね』
31 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/07/08(日) 01:20:08.78 ID:sR0Enwqz0


曜パパ『いいかい? リングの炎に必要なのは想いの強さだよ』

よう『おもい?』

曜パパ『例えばそうだな……自分が心から守りたい、救いたいと思ったその時、そのリングは曜に力を貸してくれる。どんな強敵にも立ち向かえる勇気を与えてくれるんだ』

よう『うーん……よくわかんないや』

曜パパ『あはは。曜ちゃんにも理解出来る日がきっと来るよ』

32 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/07/08(日) 01:23:46.75 ID:sR0Enwqz0

――――――――――――
――――――――――
――――――――
――――――
――――
――



――……あーあ、言っちゃった。
これでもう後戻り出来なくなっちゃったなぁ……

相手は私より確実に格上。

戦えば怪我だけじゃ済まない。

間違い無く殺される。

運良く勝てたとしても一生追われる身となるのは確定しちゃったわけだ。


黙っていればやり過ごせた場面だったじゃないか…

今日会ったばかりの女の子でしょ?

見捨てたって誰も責めない。


でも……あの子が…千歌ちゃんが泣いてた。

泣きながら私に「助けて」って言ったんだ。



理由はたったそれだけ。

理屈なんて無い。

私のすべき事はその瞬間に決定した。


――大丈夫……私なら…出来る……!!


33 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/07/08(日) 01:27:49.89 ID:sR0Enwqz0




この世界において『技』を発動させるには二つの方法がある。

一つは詠唱によるもの。

特定の文章をリングの炎を灯しながら唱えることで発動させる事が出来る。

一定のリズム、一定の声量、一定の炎圧が必要となるこの方法は
もっとも短い詠唱でも読み終えて実際に技が繰り出されるまでに三十秒以上掛かる。

詠唱破棄や高速詠唱といった裏ワザは存在しない。



そこで編み出されたのが魔方陣による発動だ。

詠唱工程を魔法陣に置き換えて脳内にイメージ記憶として蓄積。

使用時に記憶した魔方陣をリングの炎で具現化されることで詠唱と同様の技を繰り出せる。

この方法の開発により発動までの平均時間が二秒未満にまで短縮された。

また、予め魔方陣を別の媒体に写しておけば「脳内から現実世界への具現化」という工程を省略する事も可能。



いつきも当然、魔法陣による発動を予測している。



―――奴との距離はおよそ三メートル。

リングには炎が灯っているから技の発動準備は整っている。

両手には魔方陣が記された媒体の存在は確認出来ない。

超一流の使い手でも、脳内から魔法陣の具現化には一秒かかる。
奴がそこまでの実力があるとは考えられない。

対して私は予め魔方陣を描いた用紙を既に準備している。
奴がどんな技を発動しようとしても、私の方が先手を取れるのは明白だ……!


いつきはズボンのポケットに手を入れた。
34 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/07/08(日) 01:28:45.41 ID:sR0Enwqz0



対する曜は奇妙な行動を取った。

リングを付けた手をすぐ隣にある壁へ叩きつけたのだ。



―――ブシャアァァ!!!!



その瞬間、いつきの足元から勢いよく水が吹き上げ、彼女を水流に閉じ込めた。



いつき「ゴボゴボゴボッ!!!?」


千歌「えっ、何?」

いつき「ば、馬鹿な!? タイムラグ無しで魔法を発動させただと!!?」

曜「千歌ちゃん早く! 鞄だけ持ってここから逃げるよ!!!」

千歌「逃げるってどこから!? ここ六階だよ!?」

曜「大丈夫! しっかり掴まって!!」ガシッ



ピキッ―――!



曜「ッ!? 急に力が沸き上がって来た……?」


千歌「ちょっ、待って待って待っ―――……きゃあああああああああああ!!!!!?」



千歌を抱きかかえた曜は部屋の窓から外へ飛び出し、隣の建物の屋根へと移る。


夜の街中を駆け抜ける。


35 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/07/08(日) 01:30:11.25 ID:sR0Enwqz0



曜「はぁはぁはぁ……や、やっぱりそうだ…!」

千歌「何が?」

曜「さっき技を使って確信したよ。千歌ちゃんと出会ってから私の力が急激に強化された!」

千歌「?」

曜「技っていうのは才能や使ってるリングの差はあるけれど、基本的に長い年月をかけて徐々に威力とか規模が強化されるものなの」

曜「私が使ったあの技、『水の壁(ムーロ・ディ・アクア)』は昨日まで人間の動きを封じる程の威力も規模も無かった。昼間に見せたのと同じように自分の想定よりも遥かに強かったんだよ!」

曜「それだけじゃない! 人一人抱えたまま隣の屋根に飛び移れたんだよ? 身体能力も上がってる! 千歌ちゃんは私にどんな技を使ったの!?」

千歌「いや……私は何も…。それよりも、あの時物凄い速さで発動していたよね。浜辺で見せてくれた時よりも速かった」

曜「パパから教えてもらったちょっとした裏技だよ」

千歌「裏技?」

曜「炎使いのほとんどが持っているこのリングには自分の好きな魔法陣を一つだけ記録しておくことが出来るんだ。記憶した魔法陣は発動に必要な炎をリングに灯した状態で地面か壁に手を叩きつければ瞬時に使用できるの」

千歌「他の人には知られていないの?」
36 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/07/08(日) 01:30:36.84 ID:sR0Enwqz0



曜「はぁはぁはぁ……や、やっぱりそうだ…!」

千歌「何が?」

曜「さっき技を使って確信したよ。千歌ちゃんと出会ってから私の力が急激に強化された!」

千歌「?」

曜「技っていうのは才能や使ってるリングの差はあるけれど、基本的に長い年月をかけて徐々に威力とか規模が強化されるものなの」

曜「私が使ったあの技、『水の壁(ムーロ・ディ・アクア)』は昨日まで人間の動きを封じる程の威力も規模も無かった。昼間に見せたのと同じように自分の想定よりも遥かに強かったんだよ!」

曜「それだけじゃない! 人一人抱えたまま隣の屋根に飛び移れたんだよ? 身体能力も上がってる! 千歌ちゃんは私にどんな技を使ったの!?」

千歌「いや……私は何も…。それよりも、あの時物凄い速さで発動していたよね。浜辺で見せてくれた時よりも速かった」

曜「パパから教えてもらったちょっとした裏技だよ」

千歌「裏技?」

曜「炎使いのほとんどが持っているこのリングには自分の好きな魔法陣を一つだけ記録しておくことが出来るんだ。記憶した魔法陣は発動に必要な炎をリングに灯した状態で地面か壁に手を叩きつければ瞬時に使用できるの」

千歌「他の人には知られていないの?」
37 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/07/08(日) 01:31:57.05 ID:sR0Enwqz0
曜「多分ね。まあ、今は技なんかよりも簡単で且つ強力な道具が流行ってるから―――」



―――バシュ! バシュ!



いつき「逃がすと思うな!!」

千歌「何か飛んできたよ!? ブーメラン……? それに曜ちゃんと違って赤い炎を纏ってるよ!」

曜「赤い炎は確かええっと……あっ、嵐、『嵐』属性だ!」

千歌「『嵐』? 『雨』との違いは!?」

曜「お、覚えて無い! ただ特性は『分解』って名前で、全属性の中で攻撃力が高い方だった気がする!」

千歌「『分解』……攻撃を受けたらひとたまりもない感じがする……!」ゾワッ



街には一般人もいるが、ブーメランは的確に二人に襲い掛かる。

速いが、見切れない攻撃では無い。



いつき「このっ……! ブーメラン一本じゃ足りないか。ならッ!!!」

千歌「何か取り出した……? あれはサイコロ? 箱??」



いつきが取り出したのは手のひら大サイズのサイコロ状の箱。

それを見た曜は戦慄した。



曜「ヤバイ!? もう一つ同じ“匣(ボックス)兵器”があるのか!?」
38 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/07/08(日) 01:34:28.86 ID:sR0Enwqz0
いつき「……開口!!」パシュッ



炎を灯したリングを匣の窪みに差し込むと、中から同じ型のブーメランが飛び出してきた。

あの匣のサイズからは考えられない物が出現したのだ。



いつき「―――……嵐ブーメラン(ブーメラン・テンペスタ)』」



千歌「何……あれ…?」

曜「あれは匣(ボックス)兵器。リングの炎を注入することで動く最新の兵器だよ! リングさえ使えれば誰でも技に劣らない強力な武器を使えるから、匣の方が主流になりつつあるんだ!」


曜「二本同時攻撃を避けるのは無理! ここで戦うしかない……!」

曜「千歌ちゃん降ろすよ。そのまま私の後ろに逃げて!」




いつきから放たれる二本のブーメラン。

先ほどよりも数段速い。




千歌「うわ!? 飛んで来た!!!」

曜「くっ! 『水の壁(ムーロ・ディ・アクア)!!!』」バシャッ!!


―――あれ……さっきより壁が薄いぞ!?


いつき「無駄だ! その程度の技で防げる攻撃じゃない!!!」



ジュッ―――!!!



薄くなった水の壁を易々突き破る。

曜の肩を掠った。



曜「ぐうわあああああぁぁぁ!!!」

いつき「チッ、軌道だけは外らせたか……!」ギリッ

千歌「曜ちゃん!」

曜「ぐぅ……か、隠れるよ! 来て!」




39 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/07/08(日) 01:35:02.81 ID:sR0Enwqz0


曜「はぁ、はぁ、はぁ……」

千歌「よおちゃん……うで、腕が…」

曜「だ、大丈夫。ちょっと掠っただけだよ」ドロッ…


掠っただけであんなに血が出てる……。

私のせいで曜ちゃんが…


千歌「……っ」ギュッ

曜「千歌ちゃん? いきなり手なんか握ってどうしたの……?」


千歌「私に……私に出来ることは無いの!?」

曜「えっ」

千歌「曜ちゃんの役に立てるなら何だってやるよ! 足手まといにはなりたくない……!」

曜「……」

千歌「やっぱり私には何も……」

曜「……何でもか。じゃあ、お願いしようかな」

千歌「!」
40 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/07/08(日) 01:36:29.93 ID:sR0Enwqz0
曜「あのね、実は千歌ちゃんを抱えたあの時、物凄い力が流れ込んでくる感覚がしたんだ」

千歌「だから私は本当に何もしてないよ?」

曜「でも間違いない。さっきの技も千歌ちゃんと離れて発動させたら部屋で使った時よりも威力が落ちてた」

曜「理由は分からないけど、多分私と千歌ちゃんには見えないパスが繋がっているんだと思う。そのパスは一定の距離離れると途切れてしまう」

千歌「ええっと……つまり?」

曜「現状この繋がりを保てる距離が分からない。だから私から出来るだけ離れないで欲しいの」

千歌「……」

曜「本当だったら格好良く「ここは私に任せて遠くに逃げて!」って言いたいんだけどね。私一人じゃ足止めすら厳しそう……」

曜「千歌ちゃんを無傷で守り切れる保障は無い……凄く怖い思いをさせちゃうと思うけど―――」

千歌「曜ちゃんの近くに居ればいいんだね。分かったよ」

曜「っ! 本当に分かっているの!? もしかしたらケガだけじゃ済まないかもしれないんだよ!!?」

千歌「そりゃ怖いよ……でも、曜ちゃんの力になれるなら平気!!」

曜「千歌ちゃん……」

千歌「曜ちゃんは後ろにいる私の事は気にしないで戦って! 流れ弾とかは頑張って躱すから!」

曜「……分かった。この戦い、二人で切り抜けよう!」ニッ

千歌「うん!」



コツンと拳ぶつけ合う二人。

物陰から姿を現し、いつきと再び対面する。

曜はポケットから匣を取り出した。



千歌「それって……」

曜「私だって匣は持ってるのだ」ニシシ
41 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/07/08(日) 01:37:18.18 ID:sR0Enwqz0
曜「―――開口!」カチャッ!!



パシュ―――!!




匣から出てきたのは金属製のトンファー。

いつきのブーメランと同様、リングの炎を纏わせる事で破壊力の増強と特性の付与を可能とする特別な武器だ。



いつき「トンファーねぇ……接近戦が得意なわけか」


曜「行くぞ!!!」ダッ!!



曜が踏み込んだのと同時にブーメランを一直線に投げつける。

ブーメランは本来大きな円軌道を描くように投擲し
当たらなければ自分の手元に帰って来る武器だ。

いつきの投げ方では攻撃が外れても自分の元へ帰って来ない。

ブーメランの特性を完全に殺した投擲方法だった。



見切れない速度じゃない……。

トンファーで弾く?

それとも躱す?



これは殺し合い。

一つの選択ミスが命取りとなる。

対人戦の修行はある程度こなしてきた曜だが、実戦は今回が初めてなのだ。

ブーメランがもう一本増えていることが完全に頭から抜けていた。

42 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/07/08(日) 01:38:49.76 ID:sR0Enwqz0


千歌「曜ちゃん後ろ!!!」

曜「ッ!!!?」


背後から襲って来たブーメラン。

間一髪で二つとも弾き飛ばす。



曜「ぐぅ……腕が痺れる。何て重いんだ……!」ビリビリ

千歌「弾いたブーメランが手元に戻っていく…何で!?」


いつき「ほらほら! ドンドン行くぞおお!!!」



次々と投擲されるブーメラン。

一投一投が必殺の威力。


日本は絶妙なタイミングで襲ってくる故回避は不可。


トンファーで弾き飛ばす。

だがこのままではジリ貧だ。



曜「―――だったら!」ボッ!!

43 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/07/08(日) 01:39:25.65 ID:sR0Enwqz0
いつき「魔法陣!!? 別の技か!?」



いつきの両手首を曜の技、『水の鎖(カテーナ・ディ・アクア)』が巻き付く。

裏技を使用しないで最速で発動できるこの技も以前よりも格段に強化されていた。

いつきの動きを封じる。



いつき「小癪なああ!」ブチブチ!!



嵐の炎で鎖を分解し、強引に拘束を解く。

拘束出来た時間はわずかに二秒。



曜「昨日までの私なら拘束すら出来なかっただろうね。でも二秒も止められれば充分だ!!!」
44 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/07/08(日) 01:40:43.98 ID:sR0Enwqz0


瞬時に距離を詰める。

既に目と鼻の先まで迫っていた。



いつき「近い!? ここまで詰められたのか!!?」



曜はみぞおちへ攻撃を繰り出す。


だがこの余りにも一直線な攻撃は容易に躱される。

当然、一度当たらなかった程度で攻撃は止めない。

両手に握ったトンファーを駆使して、いつきの急所を狙い撃つ。


しかし、曜といつきの実力差は圧倒的だった。

今回が初陣の曜に対し、いつきは何度も修羅場を潜り抜けてきた。

ブーメランを主体とした中遠距離タイプで近距離戦が苦手でも
曜の技量では届かない。

攻守はいつの間にか逆転し、徐々にいつきの攻撃を捌けなくなっていた。



ドスッ―――!

ドゴッ―――!!



曜「ぐっ……ぐふぅ、がぁっ!?」
45 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/07/08(日) 01:41:20.45 ID:sR0Enwqz0
いつき「なーんだ、蓋を開ければただの雑魚じゃない。わざわざ匣を使う必要も無かったな!」グシャ!!

曜「うぐああぁぁぁぁ!!!!」



振り下ろされたブーメランが左肩にめり込む。

激痛に耐えられなかった曜は、膝から崩れ落ちた。

そんな曜の顔面を容赦なく蹴り飛ばす。



バキッ―――!!!



ノーバウンドで数メートル後方の壁まで吹き飛んだ。

曜は両手で顔を覆い、地面の上で堪らず悶絶する。



曜「〜〜〜〜〜ッッッ!!!!!」ジタバタッ

いつき「顔を潰すつもりで蹴ったんだけど……意外と頑丈な顔だね」



少し離れた場所で見守っていた千歌がすぐに駆け寄る。



千歌「大丈夫!? 鼻の骨とか折れてない!?」

曜「た、多分大丈夫……滅茶苦茶痛いけど折れてはいない、と思う」
46 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/07/08(日) 01:42:44.18 ID:sR0Enwqz0

いつき「技の発動速度には驚かされたが、それだけだったな。他は全て平均以下、運動神経はマシだけどまるで使いこなせていない」

いつき「残念だがここまでだ。大人しく従っていればこんな所で死なずに済んだのに……」

曜「何言ってるの? 勝負はまだ終わってない」

いつき「終わったさ。実力差は身に染みて分かっただろう? ここからどうやって逆転出来る?」

曜「……へへ」ニヤッ

いつき「何を笑って……っ!?」グラッ



いつきの視界が急に薄暗くなる。

足元もおぼつかない

気を抜けばそのまま意識を失いそうな感覚。



曜「よかった、ちゃんと効果はあったみたいだね。気が付かれないように炎を飛ばすのに結構神経使ったんだよ」

いつき「なるほど……『鎮静』の影響か。ちょっと油断した」


曜「これで勝負は分からなくなったでしょ?」

いつき「……いいや、この程度で埋まる実力差じゃない!」



曜は今の隙に肩と顔の痛みは『鎮静』で抑えた。

動きに支障は無くなったが勝てる可能性はほぼゼロ。



曜「―――…だとしても、私は絶対に勝つ!!!」

いつき「考え方が甘いんだよ!!! そんな奇跡が起きるわけが―――」













「―――そうかしら? 案外そうでもないかもよ」






47 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/07/08(日) 01:43:20.57 ID:sR0Enwqz0
曜・千歌「「えっ?」」

いつき「は?」



いつきのすぐ隣に一人の女性が立っていた。

千歌、曜、いつき、この場に居た三人全員が彼女の出現に全く気が付かなかったのだ。


彼女はゆっくりと右手をいつきの胸の高さまで上げた。



―――ゴオッ!!!!



刹那、目が焼け焦げるような閃光と灼熱の炎がいつきの全てを焼却した。

隣にあったコンクリートの建物をも一瞬で風化させる。

いつきは自身が死んだ事すら自覚出来ないまま
骨すら残らずこの世から消滅してしまったのだ。



「折角気分転換に城からちょっと遠出したっていうのに……後始末が面倒ね」


頭を掻きながら愚痴をこぼす。


予想外過ぎるこの展開に、曜は言葉を失った。



だが、千歌は突如現れた彼女を知っている。

思わず彼女の名前を口に出してしまった。




千歌「―――…り、こ……ちゃん………?」

48 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/07/08(日) 01:44:38.48 ID:sR0Enwqz0
千歌「―――…り、こ……ちゃん………?」


梨子「……」


千歌「どうして……ウソ…人、いつきちゃ……え、こ、殺した……の…?」


梨子「……ええ、殺したわ。綺麗さっぱり跡形も無くね」


千歌「ッ!!?」ゾワッ


曜「あのリング……まさか、そんな…どうして守護者がこんな場所に!?」ゾワッ

千歌「守護、者?」

曜「この国には王に仕える六人の幹部がいるんだ。全員、私や他の人が持っているリングとは比べものにならないくらい精製度の高い特別なリングを王より授けられているの。リングの炎の色から見て、アイツは間違いなく嵐の守護者だ」

千歌「嵐の守護者……梨子ちゃんが…?」


曜「あんなに鮮やかで透明度の高い炎なんて見た事無い……! これが守護者の実力なの!?」

曜「あんなの……反則だよ………」



千歌「……あれ? じゃあ、なんで同じ仲間を……」
49 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/07/08(日) 01:46:57.63 ID:sR0Enwqz0

梨子「ああ、あれは王立軍の人間じゃない。前々から身分を偽ってコソコソと嗅ぎまわっていた反逆者よ。いい加減目障りだったから殺した」

曜「そうなの!? 偽物だったんだ……」

梨子「あなた達は運がいい。見た所この反逆者と争っていたんでしょ? 仮にコイツが本物の王立軍の人間だったら、逆にあなた達を消していたわ」


梨子「―――いや、本物だと思って抵抗したのだから危険因子である事に間違いはないのか。なら今すぐ始末するべきよね……」ジッ

千歌「ひぃ!!?」ビクッ



梨子「……なんてね。冗談よ」

曜「………うぅ」ホッ



梨子「でも気を付けなさい。私達に歯向かえば命は無いから。」

曜「……はい」


梨子「あとそこのあなた」

千歌「わ、私……?」

梨子「気安く私を梨子“ちゃん”なんて呼ぶな。虫唾が走るのよ」ギロッ

千歌「ッ!!」

梨子「分かったなら今すぐここから消えなさい。私の気が変わらない内にね」

千歌「ちょ、ちょっと待っ―――」

曜「千歌ちゃん! ……行こう。大人しく従うべきだよ」

千歌「……梨子、ちゃん………どうして……」
50 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/07/08(日) 01:49:37.95 ID:sR0Enwqz0
一旦ここまで
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/08(日) 08:37:27.74 ID:EW2fNol20
面白い
期待
52 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/07/13(金) 00:49:19.13 ID:AKpErgSY0


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


〜宿〜


曜「予想外の展開だったけど何とかなったね」

千歌「……」

曜「あの人の言う通り、いつきって人が反逆者側で良かったよ。お陰で壊した窓とか水浸しになった部屋とかの弁償がチャラになったからさ。国から追われることも無いしね」

千歌「……」


曜「あ、あの……どうしたの? もしかしてどこか具合でも悪い?」


千歌「……リングや匣を持っている人はみんなあんな感じなの?」

曜「あんな感?」


千歌「いつきちゃんは私達を殺す気で襲って来た……。梨子ちゃんに至っては平気で人を焼き殺したんだよ! 涼しい顔して…罪悪感のかけらも無かった!!」

千歌「……曜ちゃんもそうなの? いつきちゃんを殺す気だったの?」


曜「……当然だよ。炎や匣兵器は戦うための手段だもん。本気でやらなきゃ自分がやられる」

千歌「……」

曜「何かを守り抜くには力が要る。力が無ければ何も守れないし、誰も救えない……私はそんな惨めな思いはしたくない」
53 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/07/13(金) 00:50:40.69 ID:AKpErgSY0


千歌「……私を助けたのはなんで?」

曜「何でだろうね? 自分でもよく分からない。でもあの時、千歌ちゃんは私が絶対に守らないといけないって強く思ったし今も変わらない」

曜「変な話だよね……私達は今日初めて会ったはずなのに、何故か“もっと前”から関わっていたような感覚があるんだよ。どうしてだろうね?」アハハ

千歌「曜ちゃん……」

曜「前世で仲が良かった……とか? 実は本当に知り合いだったとか?」ウ-ン


―――ああ、そうか。

例え世界が違っても、曜ちゃんは……。


そんな自覚も無かったのに、曜ちゃんは命懸けで私を守ってくれたんだ。

……ならこれ以上嘘をついているわけにはいかないよね。
54 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/07/13(金) 00:51:32.76 ID:AKpErgSY0


千歌「―――あのね、曜ちゃんに謝らないといけない事があるんだ」

曜「謝る? 何かあったっけ?」キョトン

千歌「私、嘘ついたの。あの砂浜で頭は打ち付けてない。記憶も失ってない」

曜「えっ、記憶があるの? あれ、じゃあ何で……」

千歌「信じてもらえるか分からない。でも、これから話すことは全部本当のことなの」

曜「う、うん……」

千歌「ええっと……結論から話すとね………」



千歌「私、別の世界から来たんだ」

曜「……はい?」
55 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/07/13(金) 00:52:52.07 ID:AKpErgSY0

――――――――
――――――
――――
――


曜「なるほどね。だから千歌ちゃんは私やあの人の名前を知っていたんだね」

千歌「信じてくれるの?」

曜「勿論。まさか別の世界では私達が幼馴染だったなんてね。あの桜内さんとも友達とか衝撃的すぎるよ」

千歌「うん……みんな私の大切な友達だった人だから…凄くショックだった……」


曜「それにしてもスクールアイドルかぁ……楽しそうだけど残念ながらこの世界には無いものだね」

千歌「そっか……」

曜「平行世界の人間を召喚……先代の女王がそんな技を使えるって噂は聞いていたけど……」


曜「でもまぁ、千歌ちゃんの話を聞いて何で私が立ち向かえたのか理解出来たよ」

千歌「?」

曜「わたくし渡辺曜、実は平行世界については詳しく勉強していたのであります!」

千歌「炎の属性は勉強しなかったのに?」

曜「それは言わないで」
56 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/07/13(金) 00:57:36.71 ID:AKpErgSY0

曜「ええっとね、平行世界では同じ人物でも姿や性格はちょっとずつ違ったりするんだけど、出逢ったり友達になったりする人間はどの世界線でも大体一緒なの。実際、千歌ちゃんは今日一日だけでも元の世界の友達と会えたでしょ?」

千歌「ほとんどが最悪の出会い方だったけど……」

曜「ただね、どの世界線でもその人物の根底にある部分は変わらない。一番大切にしているものは同じなんだよ」



曜「―――……きっと、そっちの“私”は千歌ちゃんの事がよっぽど大好きなんだね。自分の命をかけて守りたいほどにさ」

千歌「へ……?///」

曜「そうじゃ無かったら初対面の子を助けようなんて思い立たないよ。多分、この世界の“私”とそっちの“私”はほとんど一緒なんだね。だから根底にあるものが強く表れたんだと思う」

千歌「いや、その……えっ?///」

曜「いやー…愛は世界線をも超えるのかぁ。一途といいますか、重すぎるといいますか……ヤバイな、そっちの“私”」

千歌「なんかめっちゃ恥ずかしいんだけどぉ……///」

曜「あははは! 今度本人に確認してみなよ。元の世界に帰るまで、私が代わりに千歌ちゃんを守るから」ニッ 


この世界の曜ちゃんは何でこんなに余裕なのさ!?

ちょっと気に入らない……かも。



曜「―――……それじゃあ、これからは真面目な話をするよ」



曜の顔から笑顔が消えた。



曜「この世界で平行世界から人間を呼び寄せることが可能な人物の一人がこの国の女王。正確には“大空のAqoursリング”の正統後継者だよ」
57 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/07/13(金) 00:59:11.29 ID:AKpErgSY0
千歌「Aqoursリング……」

曜「千歌ちゃんが入っているスクールアイドルグループと同じ名前だね。」

千歌「なら、私をこの世界に連れて来たのは今の女王様なの?」

曜「多分違う……幹部である守護者が千歌ちゃんと会ったのに連れて行かなかった。第一、今の女王様が呼び寄せたのならどうして自分の近くに召喚しなかったのか説明出来ない」

千歌「召喚場所を自分で決められなかったからとか?」

曜「その可能性は無いかな。女王様にしか使えないこの技がそんな欠陥を抱えているとは到底思えない」


曜「誰が呼び寄せたのかは一旦置いておいて、何で呼び寄せられたのか考えよう」

千歌「小説とかだと、世界の危機を救う為とかだよね」

曜「………」

千歌「……え、まさか」

曜「わざわざ別の世界から呼び寄せたんだもん。目的が無いハズが無い」
58 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/07/13(金) 01:02:54.94 ID:AKpErgSY0



曜「あのね、この島には浦の星以外にも『音ノ木坂王国』、『虹ヶ咲王国』の二つの王国が存在していたんだ」

千歌「他にも国があったんだ」

曜「過去に何度か大きな戦争は起こったみたいだけれど、ここ最近は比較的良好な関係を築いていたの。でも、浦の星の現女王が即位した三年前に一変した」

千歌「浦の星が他の二つの国を……滅ぼした」

曜「その通り。宣戦布告も無しに戦争を仕掛けて、瞬く間に王都を占領したんだ。日数にして約一週間。気が付いたら侵略は終わっていた」

千歌「じゃあ、反逆者グループに加わっている人は侵略された国の人々なの?」

曜「戦争で辛うじて生き残った残党で構成されているんだと思う。後は女王のやり方に不満を持った一部の浦の星国民も参加してるって噂」


曜「でも一番謎なのは、この侵略戦争がたったの一週間で終わったこと。しかも終始浦の星優勢のままだったんだよ。他の二か国だって強力なリングや匣兵器も持っていたにも関わらず…変だよね」

千歌「確かに変だね。一体何が……」
59 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/07/13(金) 01:04:48.66 ID:AKpErgSY0


曜「女王様は侵略した両国に税金とか労働力とかを厳しく取り立てているから、相当恨まれているだろうね。領土だった場所に近づけば浦の星国民ってだけで殺されかねない」

千歌「……」


曜「そして、噂によれば虹ヶ咲の女王も平行世界に干渉出来る能力を持っている。これが浦の星の女王と同じ他の世界線から人物を召喚出来る能力だとして、それによって呼び出されたのだとしたら―――」



千歌「―――……私の役目は、浦の星王国の女王を倒す事……になるんだ」



曜「……」

千歌「……」


曜「……あくまでも仮定だよ。実際に千歌ちゃんを呼び寄せた人に会ってみないと分からない」

千歌「でもどうやって探すの?」

曜「取り敢えず、明日もう一度あの場所に戻ってみよう」

千歌「曜ちゃんと出会ったあの砂浜に?」

曜「何か痕跡とかが残ってるかもしれないからね。しっかり調べてみよう」

千歌「……うん」
60 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/07/13(金) 01:08:32.67 ID:AKpErgSY0

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


〜翌日〜



―――結論から言って砂浜には何もなかった。


どこを探してもあるのは砂、砂、砂


手がかりになる様な物が落ちているわけでも、気になる痕跡があるわけでもない。


近所の人の話によれば、私達がこの場を移動してから直ぐに王立軍の人達が来たらしい。

仮に何かがあったのなら既に持ち去られた後だろう。


そこで私達は……



曜「―――ストッーープ!! 次はこのくらいの距離で試してみよう」

千歌「分かったーー! いつでもいいよ!」


曜「よーし……えいっ!!」ボッ!!



―――チョロチョロチョロ……



曜「……ショッボ。これこそ普段の私の技だね」

千歌「うーん……お世辞にも凄いとは言えないかな」アハハ…
61 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/07/13(金) 01:09:17.83 ID:AKpErgSY0


曜「千歌ちゃんの恩恵を受けられるのは九メートルくらいってことか。これ以上離れると繋がりは完全に無くなっちゃうみたい」

千歌「私が曜ちゃんの体に触れている時が一番凄かったよね」

曜「それ以外は同じ威力だったから、ここ一番の場面で千歌ちゃんに触れてもらえれば……って、それじゃ千歌ちゃんが危ないか」

千歌「でも曜ちゃんの役に立てるなら……」

曜「気持ちは嬉しいけど、千歌ちゃんが自分で身を守れる手段が無い以上、危ないから出来るだけ範囲内ギリギリまで離れていて欲しいかな」

千歌「……むぅ、やっぱり足手まといだよね」

曜「千歌ちゃんの力無しじゃ満足に技も出せない私が何言ってるんだって話だけどさ……まあ、分かってよ」


千歌「身を守る術かぁ……炎を使った技は無理でも、匣があれば―――」

曜「リングは割と簡単に手に入るけれど匣は難しいかな。あれは匣“兵器”っていうくらいだから持っている人は中々いない。私が持っている匣だってパパの形見だし」

千歌「……えっ、形見…?」


この世界の曜ちゃんパパは亡くなっているんだ……


曜「うん。私が使ってる技もトンファーの使い方も全部パパから教わったの。このリングもパパから譲ってもらった宝物なんだ!」

千歌「……そっか。パパも喜んでいるだろうね」ニコッ
62 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/07/13(金) 01:11:30.49 ID:AKpErgSY0


曜「えへへへ♪ あっ、身を守る術の話に戻すね。匣の入手は難しいから、リングの力で何とかするのが現実的かな」



曜は自分が付けていたリングを外し、千歌の右手の中指にはめ込んだ。



曜「はい」

千歌「……はい?」

曜「試しにやってみてよ。もしかしたら出来るかもしれないし」

千歌「いやいや……そもそもどうやってリングに炎を灯せるか知らないし……」

曜「一般的には『覚悟を炎に変えるイメージ』らしいけど、パパからは『想いの強さ』だって教わったよ。私はパパのアドバイスで灯った」


覚悟を炎に変える?

想いの強さ??


千歌「覚悟を炎にって言われても……イメージ出来ないよ」

曜「ならパパのアドバイスでやってみよう。今一番強く想っている事を素直に思い浮かべてみて……―――」


強く想っている事……

そんなの決まってる。

一日でも、一時間でも一分一秒でも早く元の世界に帰ることだよ!


強く、強く、強く心に思い浮かべるけど―――


千歌「―――駄目だ、全然炎が出ない」

曜「まぁ……簡単にはいかないよね」
63 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/07/13(金) 01:15:59.07 ID:AKpErgSY0


千歌「私の想いはそんなにも弱いってことなの…? そんな……」シュン

曜「そ、そんなに気を落とす必要は無いよ。確かに炎が出ない理由に気持ちの強さはあるけれど、千歌ちゃんに雨属性の波動が流れてない可能性だってある」

千歌「七種類あるって話していた属性のこと?」

曜「うん。属性が七種類あるようにリングも七種類ある。自分に流れている波動と同じ種類のリングで無ければどんなに頑張っても炎は灯らない」

千歌「つまり私の属性は雨じゃ無いんだ」

曜「断定は出来ないけどね。大抵の人は波動の強い属性を一つだけもっていて、他は微弱過ぎて表に出てこないの」

千歌「簡単に分かる方法とかは無いの?」

曜「相手の属性を見分ける装置とか技は存在するけど……今すぐにそれを用意するのは無理かな」

千歌「むぅ……無理なのかぁ」

曜「私だって最初から出来たわけじゃ無いし、焦る必要は無いよ。もしかしたら別の世界から来た人には使えない力かも知れないし」

千歌「あ、その可能性もあるかもなのかぁ…」ガッカリ
64 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/07/13(金) 01:19:37.50 ID:AKpErgSY0



曜「リングについては追々解決するとして、一旦近くの街に戻ろっか。お腹空いちゃった」グウゥゥ

千歌「そうだね。そろそろお昼の時間だし」

曜「じゃあ、街に……」

曜「………っ」ジッ

千歌「曜ちゃん?」


曜ちゃんが見つめる方向を向くと、少し離れた場所に人影が見えた。

特別な事をしているわけでは無い。

ただただ目の前の海を眺めているだけのようだった。


でも、その姿には見覚えがあった。


青い髪。

ポニーテール。

遠くてはっきりとは顔までは分からないけどあの人は……


千歌「―――…果南、ちゃん……? いや、まさかね」
65 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/07/13(金) 01:22:03.07 ID:AKpErgSY0


曜「あれって昨日襲って来た人が持ってた写真に写っている人だよね?」

千歌「……まあ、似てるかって言われたら似てるかもしれないけど」

曜「だよね」

千歌「いや、でも待ってよ。仮に本人だったとしてだよ? どうするつもりなの?」

曜「どうするってそりゃ、直接話を……」

千歌「何を話すのさ? 昨日の話が本当なら相手は凶悪な反逆者なんだよ。私が知ってる果南ちゃんとは別人。危険過ぎるよ」

曜「だからこそだよ」

千歌「はい?」

曜「元の世界で仲の良かった人が、この世界では守護者だったり反逆者だったり、何かしら重要な役割を担っている。きっとまだ出会ってないAqoursのメンバーも同じのはず」

千歌「いやいや、二人しか分かってないのに断定するのはちょっと……」

曜「だとしても、手掛かりを探しに動くにはこの縁を頼るしか無い。これもきっと偶然じゃないよ!」

千歌「で、でも……」



迷っている間に彼女が移動を始めた。

このままでは見失ってしまう。



う、ぐううぅぅ……どうする、どうしよう……。



曜「動かなきゃ変わらない。今ならまだ間に合う!」


千歌「っ!! ……追いかけよう」

曜「!」

千歌「曜ちゃんの言う通り動かなきゃだよね。それにまだ果南ちゃんが必ずしも敵とは限らないし」

曜「なら急ごう! 街に入ったら完全に見失っちゃうからさ!」
66 : ◆ddl1yAxPyU [saga]:2018/07/13(金) 01:23:00.09 ID:AKpErgSY0
短いけど今回はここまで
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/13(金) 12:20:17.78 ID:spQxkhEZO
おつ
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/13(金) 19:23:17.99 ID:1wIcf18Z0
あがってんじゃーん
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/14(土) 06:39:14.36 ID:8gVWSRd00
μ’sリングとAqoursリングと虹ヶ咲のおしゃぶりで7^3か?
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