【ラブライブ】穂乃果「お前の罪を数えろ」【仮面ライダーW】

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18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/24(火) 19:41:54.56 ID:2WSYAqqIO
更新遅めとあるけど遅すぎじゃねやる気あんのかよ
19 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/07/24(火) 20:45:15.52 ID:AxfniYg+0
やっと時間ができたので更新します。
20 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/07/24(火) 20:54:09.07 ID:AxfniYg+0
〜〜〜〜〜〜



幸せは長く続かない。
幸せを感じれば、すぐに絶望がやってくる。

そう。
例えばーー




海未「穂乃果!!」

穂乃果「うぅぅぅ、もう無理だよぉ」



穂乃果「こんなに勉強したら死んじゃうよぉ」



楽しいお泊まり会が一瞬で絶望の勉強会にへんぼーしたように。



穂乃果「大体、勉強なんて今、やんなくたっていいじゃん!」



海未ちゃんの勢いにやられて始めちゃったけど。
定期テストがあるわけでもないから、必要ないと穂乃果は思うんです。



海未「学生の本分は勉強です。私達がスクールアイドルであってもそれは変わりません! ね! ことり!」

ことり「ま、まぁ、そうかなぁ」



くっ!
まるでお母さんか先生みたいなことを……!

……こうなったら!



穂乃果「ことりちゃん!」

ことり「な、なぁに?」

穂乃果「海未ちゃんに惑わされちゃダメだよ!」

ことり「え、えぇぇ!?」
21 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/07/24(火) 21:03:50.61 ID:AxfniYg+0
ことりちゃんろーらく作戦だ!



穂乃果「ことりちゃん」

ことり「は、はい」

穂乃果「穂乃果たちは、じょしこーせーです」

ことり「しってます」

穂乃果「じょしこーせーの本分は勉強ではありません」

ことり「え?」

穂乃果「じょしこーせーの本分はガールズトークです」

ことり「えぇぇ!?」

穂乃果「甘いもの……例えば、ことりちゃんが今日のために作ってきてくれた美味しいおかしを食べながら、恋バナとかをするのです」

ことり「恋バナ……」



おぉ!
反応あり!
これなら……!



海未「……穂乃果」



と、ここで海未ちゃんが口を出してきた。
けど、もう遅い!
ことりちゃんはもう穂乃果側についてる!
これならば、海未ちゃんにも勝てる!



穂乃果「なにかな、海未ちゃん」

海未「恋バナなんて、貴女できないでしょう?」

穂乃果「………………」

海未「…………」



穂乃果「…………ス、スクールアイドルに恋してる!」



海未「…………はぁぁ、ほら、やりますよ。甘いものはそのあとです」

穂乃果「うぅ……がくっ」

ことり「もうちょっとだけがんばろ、穂乃果ちゃんっ」



結局、穂乃果たちはその晩、勉強し続けたのでした。



〜〜〜〜〜〜
22 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/07/24(火) 21:05:11.81 ID:AxfniYg+0




ーー ザザザザザザザザザッ ーー



23 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/07/24(火) 21:12:45.12 ID:AxfniYg+0
〜〜〜〜〜〜



凛「練習終わったにゃぁぁ!!」



休日の練習も終わって。
凛ちゃんの声に、開放感を感じて、穂乃果もひとつ伸びをする。



凛「穂乃果ちゃん!」



と、凛ちゃんに声をかけられた。
お隣には花陽ちゃんもいる。



穂乃果「なに? 凛ちゃん? 花陽ちゃん?」

花陽「もしよかったら、一緒にご飯行かないかなって」

穂乃果「ご飯?」

花陽「うん!」



ふむ。
凛ちゃんと花陽ちゃんが一緒ということは、恐らくラーメンとご飯が美味しいお店なんだろう。
ならーー



穂乃果「行かない理由はないよ!」ガシッ

凛「そう言ってくれると思ってたにゃ!」ガシッ



凛ちゃんと固い握手をする。
そうと決まれば、あとは行動に移すだけだ。
24 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/07/24(火) 21:18:00.53 ID:AxfniYg+0


穂乃果「凛ちゃん、花陽ちゃん……」

凛「…………」コクッ

花陽「……」チラッ



やるべきこと。
それは、



海未「…………絵里、ここのステップなのですが……」

絵里「あぁ、私も気になってたのよ。海未はどう思う?」

海未「私はもう少し大きく動いてから、次の見せ場にーー」



そう。
海未ちゃんにバレずに動くことだ!

ラーメンとご飯。
それは高カロリーの化身。
海未ちゃんにバレたらきっと止められる。
その上、ダイエットも課されることになるのは目に見えている。

けど、穂乃果はあきらめないよ。
二人が見つけた美味しいご飯屋さんに行くんだ。





真姫「海未、また穂乃果と花陽が高カロリーなもの食べようとしてるわよ」



穂乃果「!?!?!?」

花陽「!?!?!?」

25 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/07/24(火) 21:21:57.35 ID:AxfniYg+0
予想外の人物からの裏切り行為。
な、なんで……なんで真姫ちゃんが……?



穂乃果「真姫ちゃん!?」

花陽「なんで!?」



真姫「いや、だって、貴女たち最近、少し…………」



ほのぱな「「え……」」



なに?
最近少し……なに……?

真姫ちゃんの言葉の先。
それを聞こうとして、でも、それは叶わない。
だって、



海未「……………………」



ほのぱな「「ひぃぃぃぃぃ……」」



ご飯は食べれました。
けど、そのあとのランニングのことは思い出したくありません。



〜〜〜〜〜〜
26 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/07/24(火) 21:22:57.64 ID:AxfniYg+0




ーー ザザザザザザザザザッ ーー



27 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/07/24(火) 21:37:29.74 ID:AxfniYg+0
ーーーーーー



警察病院に入院してる凛ちゃんと海未ちゃん。
まだ意識が戻らない二人のお見舞いからの帰り道。



真姫「ボロボロね」



ポツリと。
真姫ちゃんがそう言った。



穂乃果「うん」

真姫「私には理解できないわ」



ボロボロになってまで戦う理由なんて。

真姫ちゃんからしたら、友達が傷ついていくのは見てられないだよね。
それはもちろん、穂乃果だって同じ。
でも、



穂乃果「凛ちゃんが戦ってくれたから、海未ちゃんは救われた」

真姫「……分かってるわ」

28 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/07/24(火) 21:43:04.67 ID:AxfniYg+0

真姫「でも、それとこれとは別よ」

穂乃果「…………うん」

真姫「友達が傷つくところなんて、見たくないもの」



そう、だよね。



真姫「穂乃果」

穂乃果「なに?」

真姫「あなたは…………ボロボロになっちゃダメよ」

穂乃果「……わかってるよ」

真姫「誰かを助けようとするのはいいけど、自分を犠牲にしたら意味ないわ」

穂乃果「……大丈夫だよ。穂乃果は」



大丈夫。
だって、穂乃果には誰かを助ける力なんてない。
だから、大丈夫。
29 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/07/24(火) 21:48:57.82 ID:AxfniYg+0

穂乃果「穂乃果の協力者も動いてくれるみたいだし」カチャッ



穂乃果のポケットにあるこの『メモリ』も、彼に返そう。
穂乃果が持ってても、宝の持ち腐れだもん。



真姫「…………」ジッ

穂乃果「って、どうかした?」



なんだか真姫ちゃんにじっと見られてたけど……?
なんだろう?
穂乃果の顔になにかついてる?



真姫「……ついてないわよ」

穂乃果「そう?」

真姫「えぇ……ただ…………」



ただ?
なに?



真姫「ううん」

穂乃果「?」

真姫「……ねぇ、穂乃果。約束して」



真姫「無茶しないでよ?」

穂乃果「…………あはは、心配性だなぁ、真姫ちゃんは」




穂乃果「わかってるよ。約束する」




ーーーーーー
30 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/07/24(火) 23:03:36.93 ID:AxfniYg+0
ーーーーーー



『真姫ちゃん』

真姫「なに?」



『穂乃果ちゃんのこと見ててな』



真姫「急に電話なんてしてきて、なにかと思ったら……」

『ごめんなぁ……でも、なんだか危ういから』

真姫「危ういって、穂乃果が?」

『うん。今は海未ちゃんもことりちゃんも穂乃果ちゃんの近くにはおらんし』

真姫「……………………」



真姫「………………分かったわ。でも、私にできることなんて限られてる」



『それでも……』

真姫「約束させる。絶対に無茶しないって」

『そうやね』

真姫「そっちも……絵里と亜里沙、大丈夫?」

『うん。二人とも落ち着いてる』

真姫「そう。なら、よかったわ」

『そういえば、海未ちゃんたちのお見舞いはもう行った?』

真姫「ううん。まぁ、明日辺り穂乃果も連れて行ってくるわ」

『……うん』



ーーーーーー
31 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/07/24(火) 23:04:15.44 ID:AxfniYg+0
ーーーーーー
32 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/07/24(火) 23:05:44.51 ID:AxfniYg+0
短いですが、本日はここまで。
仕事が一段落しましたので、更新の時間もとれるかと思います。
お付き合いしていただける方、待たせてしまいすみません。
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/24(火) 23:54:08.02 ID:XQ9Vhp6IO
おつゆっくりでええよ
なんか変な構成
どういうことだ?
34 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/07/25(水) 18:21:49.23 ID:j77SC5FaO
本日更新予定。
35 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/07/25(水) 20:29:44.58 ID:tbddUgdn0
ーーーーーー



ーー コンコン ーー



穂乃果「入るね?」



音乃木坂のアイドル研究部の部室の扉を開く。
冬休みに入ってるけど、中には部員はいなかった。
一人を除いて。



花陽「穂乃果ちゃん」

穂乃果「こんにちは、花陽ちゃん」



中にいたのは、花陽ちゃんだけ。
椅子にちょこんと座り、何かにペンを走らせていた。



穂乃果「それは?」

花陽「日記だよ」

穂乃果「へぇ」



ちらっと見る。
可愛らしい字……花陽ちゃんの字だ。

毎日、なんとなく書くのが習慣になっちゃって。
そう言って、花陽ちゃんはペラペラとページをめくる。

そして、あるページで、ピタッとめくるのを止めた。



花陽「…………」

穂乃果「花陽ちゃん……?」


36 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/07/25(水) 20:37:35.39 ID:tbddUgdn0


花陽「…………海未ちゃんのこと、だけど」



うつむいて呟く花陽ちゃん。
なにを言おうとしてるのか、それだけでなんとなく気づいた。
なら、穂乃果が言うべきことはひとつだけ。



穂乃果「気にしないで」

花陽「っ、でも!」



穂乃果「海未ちゃんは助かったんだから」

穂乃果「それで、もういいんだよ」



井坂医院での戦いの前。
そこへ向かう道中で凛ちゃんから聞いていた。

花陽ちゃんが海未ちゃんをことりちゃんの元へ呼んだこと。
それを花陽ちゃんはずっと後悔してたってことも。

だから、凛ちゃんはあんなになるまで戦ったんだと思う。
でも、だからこそ、勝てたんだとも思う。
花陽ちゃんの想いも背負ってたから、恐ろしく強い海未ちゃんを倒すことができたんだ。
37 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/07/25(水) 20:48:44.40 ID:tbddUgdn0

穂乃果「穂乃果の協力者が言ってたんだ」

穂乃果「凛ちゃんは『メモリ』の性能を限界まで……ううん、それ以上にまで引き出したんだって」



えくすとりーむ? だったっけ?
いまいち詳しいことは分からなかったけど。




花陽「それって……」

穂乃果「うん。凛ちゃんが倒れちゃったのもそれが原因らしいんだ」

花陽「…………っ」



限界以上の力で戦った故の代償。
まぁ、2、3日もすれば目は覚めるらしいけど。

でも、そんな力を引き出せたのは、単に適合率が高かったからだけじゃないらしい。



穂乃果「ガイアメモリは使用者の心に大きく左右される」

穂乃果「嫉妬。憎しみ。欲望」

穂乃果「特に、負の感情に反応してメモリは強くなる。花陽ちゃんも見てきたもんね」

花陽「…………うん」


そうして、強い感情はその人自身の心を飲み込んで、壊れてく。
それを穂乃果たちは見てきた。
でも、




穂乃果「凛ちゃんは違った」

穂乃果「凛ちゃんは皆との約束で、皆の想いで強くなった」



穂乃果「ほんと、すごいね、凛ちゃんは」

花陽「…………うん。ほんとに凛ちゃんはすごいんだっ」


38 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/07/25(水) 21:02:26.70 ID:tbddUgdn0





ーー prprprprprpr ーー



穂乃果「っ、ごめん!」

花陽「え、あっ、うん」



急に鳴った電話の音に、体が震えた。
画面を見ると、そこには穂乃果の協力者の名前が表示されていた。



穂乃果「………………」



スマホじゃなくて、こっちの携帯にかかってきたってことは……。
…………よし。



穂乃果「……花陽ちゃん」

花陽「う、うん」スッ



全部を言わなくても、花陽ちゃんは察してくれたようで。
凛ちゃんが使っていた『それ』を、穂乃果に差し出した。



穂乃果「うん。確かに受け取ったよ」ガシャッ

花陽「…………うん」

39 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/07/25(水) 21:12:25.13 ID:tbddUgdn0
ヒンヤリとした機械の冷たさ。
そして、重さを感じる。
たぶん……にこちゃんや凛ちゃんにはこれがもっと重く感じたんだろうなって考えて。
巻き込んでしまったことへの罪悪感が沸き上がる。



花陽「……あ、あの、穂乃果ちゃん」

穂乃果「え?」



ふと、名前を呼ばれた。
手元のそれから視線をそらし、顔を上げる。
目の前の彼女は、なんだか少し言いずらそうにーー。



花陽「ずっと言いそびれてたから……その……」




花陽「凛ちゃんやにこちゃん……みんなの力になってくれて」

花陽「ありがとう」




穂乃果「っ」

花陽「たぶん、穂乃果ちゃんがいなかったら、花陽たちはもっと危険な目にあってたはずだから」



ありがとう。
花陽ちゃんはそう言って微笑んだ。
…………ううん。
違うんだよ。
穂乃果はただ、二人を利用しただけ。
感謝なんてされるようなことなんてーー。



花陽「でも、穂乃果ちゃんが来て、『それ』を渡してくれなかったら、きっと皆もっと大変なことになってた」

穂乃果「それは、結果論、だよ……」

花陽「それでも、ありがとう」

穂乃果「…………」



その言葉は、でも、やっぱり受け取れない。
私のせいで……。
そう思う部分はやっぱりあるから。
その思いは無くならない。



花陽「…………そっか」

穂乃果「……うん」

花陽「ならーーなら、約束です!」

穂乃果「……え?」




花陽「ちゃんと戻ってきてね」

花陽「ことりちゃんと一緒に」




穂乃果「っ、うん!」



ーーーーーー
40 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/07/25(水) 21:22:59.32 ID:tbddUgdn0
ーーーーーー



ーー prp



『やっと出たね』

『『ドライバー』は…………回収できたなら、これ以上は文句は言わないさ』



『さて、用件だがーー』

『……………………』

『察しがよくて助かるよ』

『あぁ。その通り』



『『亜坂真白』の居場所を突き止めた』



『これから僕たちは動く。彼女の野望を終わらせるために』

『君は…………そうか』

『いや、そういう人間だったね』

『僕がなにを言っても聞かない頑固なところ、『相棒』とそっくりだよ』

『いや、何でもない。こっちの話さ』



『まぁ、確かに君は依頼人だ。ならば、事件の結末を見届ける権利がある』

『分かった』



『それじゃあ、『鳴海探偵事務所』まで来たまえ』

『役者が揃い次第、終わらせるとしよう』



『ーーこの事件を』




ーーーーーー
41 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/07/25(水) 21:23:43.04 ID:tbddUgdn0
ーーーーーー
42 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/07/25(水) 21:24:40.15 ID:tbddUgdn0




ーー ザザザザザザザザザッ ーー



43 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/07/25(水) 21:25:08.93 ID:tbddUgdn0
短いですが、本日はここまで。
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/26(木) 20:49:18.28 ID:gFO0EFdGo

続き楽しみ
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/07/26(木) 22:54:57.57 ID:AdbNglM+0
続き待ってるよ
46 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/07/28(土) 22:31:01.08 ID:CzeWMJpw0
更新します。
47 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/07/28(土) 22:39:41.31 ID:CzeWMJpw0
〜〜〜〜〜〜



穂乃果「なんで」

凛「凛たち」

にこ「こんなところで勉強なんてしてるわけ!?」



バンッと机を叩いて立ち上がるにこちゃん。
それに倣うみたいに、穂乃果たちも立ち上がった。



穂乃果「そうだ、にこちゃんの言う通りだよ! 凛ちゃん!」

凛「なに!」

穂乃果「今、世間はどんな時期!」

凛「クリスマス!!」

穂乃果「その通り!!」



そう!
今、世間はクリスマスムードで盛り上がってる。
イルミネーションで街灯もいつも以上に輝いて、なんとなく街全体が浮かれている時期だ。
真姫ちゃんじゃないけど、みんなクリスマスは楽しみにしてたはずだ。

なのに!




にこ「穂乃果! 凛!」

ほのりん「「うん!」」

にこ「こんなところで油を売ってる暇はないわ!」

ほのりん「「にこちゃん!」」

にこ「今すぐこんなところから脱出してーー」





「穂乃果?」

「……ちょっと、凛」

「にこっち〜〜?」




にこほのりん「「っ!?」」
48 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/07/28(土) 22:47:43.18 ID:CzeWMJpw0
一致団結した穂乃果たちの後ろ。
部屋のドアの方から声が聞こえた。
買い出しに行ったはずの3人の声が…………。

いや、いやいやいや。
そんなわけないよね。
ここから近くのコンビニまでは少し歩かないといけない。
だから、こんなに早く帰ってくるのはありえーー




海未「穂乃果?」

穂乃果「ひぃぃぃ!?」




いやぁぁ!?
やっぱりいたよ!?



真姫「まったく……少し目を離すとこうなんだから」

海未「まったくですね」



呆れたようにため息を吐く二人。

赤点を取って、本戦に進めなくてもいいんですか?

うっ……。
海未ちゃん、それを言うのはずるいよぉ!
確かに、それは困るけどさぁ……。



希「ん〜、真面目にやらないならしゃあないなぁ」

穂乃果「? 希ちゃん」



希ちゃん?
なんだか腕組みして唸ってるけど……?



希「真面目にやらないなら、ワシワシするよぉぉ♪」

にこほのりん「「ひぃぃぃ!?」」



49 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/07/28(土) 22:54:59.42 ID:CzeWMJpw0
あの手の動き!?
そして、あの表情!?
本気だ!?



凛「はい! 凛はちゃんとやろうとしたよ!」

にこ「ちょっ!?」

穂乃果「凛ちゃん! それはずるいよ!」

凛「二人はやってられるかって言ってたけど、凛はそれはそれはちゃんとえーごの勉強を!」

にこ「なに言ってんのよ! あんた、単語じゃなくてイラスト描いてたでしょ!」

凛「!?」

穂乃果「はい! 穂乃果はちゃんとやってたよ! ほら、えっと…………るーとのやつ!」

凛「穂乃果ちゃんも凛と絵しりとりしてたにゃ!!」

にこ「ふっふーん、その点にこはビブンセキブーンやってたし〜♪」

穂乃果「それこそにこちゃんはポーズの練習してたじゃん!」

にこ「なっ、と、というか、アイドルには数学なんて必要ーーーー」



希「……まぁ」

にこほのりん「「っ」」ビクッ




希「皆、おしおきやね♪」ワキワキワキワキ

にこほのりん「「ひぃぃぃぃぃぃ!?!?」」


50 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/07/28(土) 22:58:02.58 ID:CzeWMJpw0



ーー ガチャッ ーー



絵里「希〜、ケーキ買ってき………………なにしてるの?」

花陽「ピャァ!?」

ことり「ほ、ほのかちゃん?」



にこほのりん「「」」ピクピク



希「ん〜? おしおき♪」ニコッ




〜〜〜〜〜
51 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/07/28(土) 23:23:19.76 ID:CzeWMJpw0
〜〜〜〜〜〜



穂乃果「よし! 肝試しだ!」

にこ「はぁ?」

ことり「え、えっと……?」



穂乃果の家で、衣装の相談をしていた時のこと。
穂乃果はこの間から考えていたことを切り出した。

にこちゃんとことりちゃんは何を言ってるのか分からないといった様子。
一方の凛ちゃんは、



凛「やろう!」



即答だった。
流石、次期リーダー!
52 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/07/28(土) 23:29:42.68 ID:CzeWMJpw0

ことり「えっと、穂乃果ちゃん……?」

穂乃果「なに? ことりちゃん?」

ことり「なんで、今、肝試しなんて……クリスマスも終わって、もうすぐ大晦日だよ?」

穂乃果「ふむ」



ことりちゃんの疑問はもっともだね。
普通は夏にやるものだし。
それに、本戦が目前に迫ってる時にやることじゃないかもしれない。



にこ「本戦前よ?」

穂乃果「分かってるよ。でも、やりたいんだ」

にこ「…………なにか理由があるのね」

穂乃果「うん」



さすがの穂乃果でも、こんなことなんの理由もなくは言わないよ。
それ相応の理由がある。



凛「ごくり……」

にこ「聞こうじゃない」

穂乃果「うん。それは……」

ことり「……それは……?」





穂乃果「海未ちゃんをギャフンと言わせたい!」

にこ「乗った!!」




ことり「えぇぇぇ……」
53 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/07/28(土) 23:36:29.96 ID:CzeWMJpw0

穂乃果「流石はにこちゃん!」

凛「さすにこにゃ!」

にこ「そうと決まれば、早速日にちと場所、時間まで決めるわよ!」

ほのりん「「おー!」」


ことり「ちょ、ちょっと待ってぇぇ」




穂乃果「?」

凛「どうしたの、ことりちゃん?」



計画を立て始めようと意気込んだその時、ことりちゃんが大きな声をだした。

珍しいね。
ことりちゃんが大きな声出すって……。
うーん。
どうかした?


ことり「ど、どうかしたじゃないよぉ。たしかに本戦まで少しだけ余裕はあるよ?」

穂乃果「うん。新曲自体は出来てるし。練習もしてるし、ね?」

凛「うん! ダンスもバッチリにゃ!」



あとは衣装だけって話だったもんね。
だから、今日も集まったわけだし。



にこ「あっ、大丈夫よ。衣装作成はにこたちも手伝うし」

ことり「そ、そうじゃなくてっ」

凛「?」



ことり「そんなことやってる場合じゃないと……ことりは思うんだけど……」



にこほのりん「「…………」」
54 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/07/28(土) 23:43:23.10 ID:CzeWMJpw0

にこ「……」チラッ

穂乃果「…………」コクリ



にこちゃんとアイコンタクト。
うん。
うまく伝わったみたいで、にこちゃんはことりちゃんの肩を軽くつかんだ。



にこ「ことり、いい?」

ことり「う、うん」

にこ「新曲の練習は完璧よ。だからこそ、ここで少しゆるめるべきだわ」

ことり「ゆるめる……?」

にこ「えぇ。例えば、気合が入りに入りまくってる海未には、少しガス抜きが必要だと思わない?」

ことり「そ、それは…………うん。たしかに、海未ちゃん、根をつめすぎかなって思うよ?」



よし!
にこちゃんの説明に、ことりちゃんも納得しかけてる。
これならーー



ことり「でも、それなら肝試しじゃなくたって…………お泊まり会とかでも……」

にこ「っ、それは…………そうね」



にこちゃん!?
なんで、納得してるの!



にこ「…………」チラッ

穂乃果「……」コクリ



しかたない。
穂乃果が話をするしかないね。
55 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/07/28(土) 23:46:26.68 ID:CzeWMJpw0
穂乃果「ことりちゃん!」

ことり「は、はい!」




穂乃果「怖がる海未ちゃん、かわいいよ、きっと!」




ことり「…………………………」

穂乃果「……………………」

ことり「…………」




ことり「お母さんに聞いてみる! 学校使おうっ」




にこほのりん「「よしっ!」」



ことりちゃんは堕ちた!
これなら…………。

フフフッ!
覚悟してなよ、海未ちゃん!




〜〜〜〜〜〜
56 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/07/28(土) 23:47:17.90 ID:CzeWMJpw0




ーー ザザザザザザザザザッ ーー







『フフッ♪』


57 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/07/28(土) 23:47:48.40 ID:CzeWMJpw0
短いですが、本日はここまで。
レス感謝です。
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/29(日) 00:21:59.65 ID:sUZfZtHro

マケミちゃん楽しみ
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/29(日) 10:38:38.96 ID:cCg4kBD+O
ほのぼのしてんのが逆に無気味
60 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/07/29(日) 22:49:37.68 ID:zErQY17t0
書きます。
61 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/07/29(日) 22:58:08.75 ID:zErQY17t0
〜〜〜〜〜〜



夜の学校。
普段はこんな時間に学校になんて入らないから、すごく新鮮に思える。
それに、みんなも一緒だっていうのがもっとワクワクを加速させてて。



希「楽しそうやね?」

穂乃果「うん! すごく!」



肝試しでペアになってる希ちゃんの問いかけにうなずく。



希「ふふっ、それにしてもさすが、穂乃果ちゃんやね」

穂乃果「?」

希「冬に肝試し、なんて普通は考えつかんよ」



えっと……?
ほめられてる、のかな?



希「ほめてるよ〜。少なくともウチは思いつかないよ」

穂乃果「まぁ、ほら、みんな根を詰めすぎだったからね。こーいうのもリーダーの役目だよ」

希「クスクス」



って、ありゃ?
なんで笑われたの?



希「ほんとにそれだけ?」

穂乃果「うっ」

希「穂乃果ちゃんとにこっち、凛ちゃん発案なんて、悪巧みしてるようにしか考えられんけど?」

穂乃果「そ、それは……いや! ことりちゃんもこの肝試しの計画には参加してるから!」

希「ふぅん……まぁ、そういうことにしとくね」



また、希ちゃんは笑う。
……まぁ、でも、希ちゃんにはバレても協力してくれそうだし。
もしもの時は仲間に引き込んでもいいかも!
62 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/07/29(日) 23:06:15.65 ID:zErQY17t0

希「それにしても、あのペア分けは大丈夫なんかなぁ」

穂乃果「……え?」

希「ほら、ウチと穂乃果ちゃん。にこっちと凛ちゃん、それから、海未ちゃんとことりちゃん」

穂乃果「うん」



と、今、言ったような組み合わせになってる。

にこちゃんと凛ちゃんは仕掛人としていつでも動けるようにセットで。
それから、海未ちゃんの怖がる顔を一番近くで見るために、ことりちゃんは海未ちゃんと組むらしい。
…………焚き付けてなんだけど、ちょっとことりちゃん怖い。



希「まぁ、そこまではいいんやけど」

穂乃果「あー、うん」



問題は最後のペア、というかトリオで。



穂乃果「絵里ちゃんと真姫ちゃんと花陽ちゃん」

希「あかんと思う」



うん。
正直、穂乃果もそう思う。



希「ちょっと驚かしたら、3人ともパニック起こしそう」

穂乃果「あー」



たしかに、その光景が簡単に想像できるよ。
普段はしっかり者の絵里ちゃんも怖いのダメだしなぁ。
というか、最後までやらないってぐすってたの絵里ちゃんだったし。
63 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/07/29(日) 23:16:00.35 ID:zErQY17t0

希「しかたない。あとでおどかしにいこか」

穂乃果「お、おー」



希ちゃん、悪い顔してる……。
……冗談だよね?



希「おっと、こんな雑談してる場合じゃなかったね。早く講堂に行かないと」

穂乃果「あ、そうだった!」



今回のコースは、部室をスタートして講堂に人形を置いてくるって流れになってる。
それで、前のペアが部室に帰ってきてから交代でスタートって感じ。

だから、早くしないと次の海未ちゃんたちがスタートできない。
たぶんもう、前のペアのにこちゃんたちは持ち場に着いてるはずだしね。



穂乃果「それじゃあ、早く行こっか!」

希「そうやね」






ーー ザザザザザザザザザッ ーー






穂乃果「?」

希「穂乃果ちゃん? どうかした?」

穂乃果「え、あっ、ううん。なんか今…………」



なにか聞こえたような……?

……………………。
たぶん、にこちゃんたちが準備してる音だよね。



穂乃果「……ごめん、なんでもないよ」

希「そう? じゃあ、行こか」

穂乃果「うん!」



〜〜〜〜〜〜
64 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/07/29(日) 23:20:08.86 ID:zErQY17t0
〜〜〜〜〜〜



希「ふぅ、これでOKやね」

穂乃果「うん」



結局、何事もなく講堂に到着して、人形もステージの上に置くことができた。
ステージの上には、にこちゃんと凛ちゃんのペアが置いた人形もちゃんとあって。

……うん、不自然なことはなかった。
これなら、きっと海未ちゃんに今回の目的を悟られることもないよね!
あとは、ことりちゃんが怖がる海未ちゃんを写真に撮ってくれれば…………。






ーー カタンッ ーー



穂乃果「…………え?」



65 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/07/29(日) 23:23:20.21 ID:zErQY17t0

なにかが動く、音。
誰もいないはずの講堂に、その音が響いた。



穂乃果「っ」

希「穂乃果ちゃん……い、いまの……」

穂乃果「……………………」



穂乃果「…………にこちゃん?」

穂乃果「…………凛ちゃん?」



穂乃果「………………………………いるの?」




返事は、ない。

う、うん。
計画でも、ここには何も仕掛ける予定はなかったはず。
だとしたら、今の音は…………?
66 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/07/29(日) 23:26:10.13 ID:zErQY17t0



ーー カタンッ ーー



穂乃果「っ」



また!?
気のせい、じゃないっ!?



希「穂乃果ちゃんっ」

穂乃果「希ちゃんっ」

希「早く出よう! なんかここ変な感じがすーーーー







ーーーーーー ガシッ ーーーーーー
67 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/07/29(日) 23:33:04.57 ID:zErQY17t0



希「キャァァッ!?!?」




悲鳴。
隣を見る。
そこには、




ーー ザザザザザザザッ ーー




黒い、靄。
ノイズのかかったような音と共に、突然現れたその靄から、『なにか』が出てきていた。
その『なにか』は希ちゃんの腕を掴んでいて、




穂乃果「っ、希ちゃんを、はなせっ!!」ブンッ




怖かった。
でも、それより、希ちゃんが危ないって思ったから。
考えるより先にその『なにか』の腕を殴ろうと、してーー




ーー スカッ ーー




ーーけれど、その感触はなかったんだ。
68 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/07/29(日) 23:39:10.86 ID:zErQY17t0

穂乃果「な、んで!?」



確かに、穂乃果はその『なにか』を殴ったはずなのに!?
すり抜けた!?



希「ほ、のかちゃんっ」

穂乃果「っ、希ちゃん! 掴まって!」

希「っ、うんっ!」



穂乃果が差し出した手に希ちゃんはしっかりとーー




ーー スカッ ーー



穂乃果「え……」

希「な、えっ……!?」



つかめなかった。
まるで、さっきその『なにか』を殴ろうとした時みたいに。
穂乃果の手は、希ちゃんの手をすり抜けた。



希「な、んでっ、わたしっ」

穂乃果「希ちゃんッ!!!」

希「いや、わたし、こんなっーーーー





ーー ザザザザザザザッ ーー



ーー プツンッ ーー

69 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/07/29(日) 23:46:03.21 ID:zErQY17t0



穂乃果「……え、希ちゃん…………え」




目の前で希ちゃんが黒い靄に飲み込まれて、消えた。

理解できなかった。
一体、なんなの……?
これは、なに?



穂乃果「…………希ちゃん、どこに……いったの……?」





ーー prprprprprpr ーー



穂乃果「っ」



放心していた穂乃果を引き戻したのは、その音。
スマホの着信音だった。

って、そうだ!
みんなにもこのことをっ!

そう思って、着信の相手を確認する。
画面には、星空凛の文字。



穂乃果「っ、凛ちゃん!」



すぐに通話ボタンを押す。
そして、凛ちゃんと話をーー!



穂乃果「凛ちゃん! 大変! 希ちゃんがーー」





『助けてっ、ほのかちゃんっ』



70 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/07/29(日) 23:57:17.07 ID:zErQY17t0
電話の向こう側から聞こえてきたのは、確かに凛ちゃんの声。
だけど…………。



『た、たす、け、ほのかちゃ……』

穂乃果「凛、ちゃん……?」



声はガタガタと震えてて、呂律も回ってなかった。
電話口から伝わってくるこれは、寒さなんかじゃ決してない。
それは、恐怖だ。



穂乃果「凛ちゃん……おちついてっ! どうしたの!? なにがあったのっ」

『ば、ばけものっ……りん、にげてて』

穂乃果「っ、化け物!?」

『う、んっ、包丁みたいなの、がっ、からだから生えてて、今も音、するからっ』



信じられない。
何て言ってる場合じゃない。
希ちゃんのことがあったから。
……なにかはわかんない。
けど、よくないことが起こってるのは確かだ。

………………ふぅ。
一旦、落ち着こう……。
今、穂乃果がやることは……。



穂乃果「凛ちゃん、一回深呼吸して!」

『え、あ、う……うんっ』



まずは何があったか確かめなきゃ!
そして、皆とすぐに合流しよう。
そのために、



『ご、ごめん、凛……』

穂乃果「ううん。それより、凛ちゃん、今、どこにいるの?」

『あ、え、えっと……そのっ』

穂乃果「ゆっくりでいいよ」

『…………っ、調理室に』



調理室。
……そうだ。
そこで仕掛けをするって言ってたもんね。
71 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/07/30(月) 00:03:54.09 ID:9hYSKwnQ0
って、そうだ!
計画ではにこちゃんもそっちにいるはずだ!



穂乃果「凛ちゃん、にこちゃんは? 一緒じゃないの?」

『あ、え、にこちゃんは……用意するもの、あるって……美術室に行って……』

穂乃果「…………わかった」



美術室なら調理室からは遠い。
なら、にこちゃんはまだ、凛ちゃんが言う『化け物』に見つかってない可能性が高い。
…………よし。



穂乃果「凛ちゃん、今からそっちに行くよ!」

『え、でも、あの怪物がっ』

穂乃果「うん。だから、凛ちゃんは海未ちゃんに連絡とってみて! それから身を守るように包丁を近くから探して!」

『っ、う、うん! わかった!』




穂乃果「すぐに行くからっ!」




凛ちゃんがそれに答えるのを聞いてから、通話を切った。

何がどうなってるのかはわかんない。
けど、今は急がなきゃ!!




〜〜〜〜〜〜
72 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/07/30(月) 00:14:00.29 ID:9hYSKwnQ0
〜〜〜〜〜〜




『なによそれ!?』

穂乃果「わかんないよっ! でも、早くみんなと集まらないと!」



凛ちゃんのもとへ走りながら、穂乃果はにこちゃんに電話をかけた。
幸いにこちゃんはその『化け物』にも、 希ちゃんを飲み込んだ『なにか』にも会ってなくて。



『…………ほんとなのね』

穂乃果「うんっ」

『わかった。信じるわ』



正直、信じられないけど。
必死なのは伝わったから。

そう言って、にこちゃんはすぐに信じてくれた。
ありがたい。



『で、どうするのよっ』

穂乃果「穂乃果は調理室に向かってる。たぶん海未ちゃんとことりちゃんも来てくれるはず」

『海未に電話すれば、一緒にいる絵里と花陽、真姫ちゃんにも話は伝わるわね』

穂乃果「うん。だからーー」

『おーけー、にこもそっちに向かうわ』

穂乃果「うん! でも、気をつけて!」



みんなが合流する前に、『化け物』に会うのが一番最悪のはず。
それだけは避けなきゃ!



『分かってるわ。今のうちに、にこが警察へも電話しとく!』

『だから、あんたは凛のところへ急ぎなさい!』



穂乃果「うん!!」




〜〜〜〜〜〜
73 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/07/30(月) 00:14:49.33 ID:9hYSKwnQ0
本日はここまで。
明日ももしかしたら更新できるかもしれません。
そのときはまた少しお付き合いください。
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/30(月) 17:23:17.65 ID:SVtD0KCuO

話進んできた
のんたん…
75 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/07/30(月) 22:11:23.46 ID:DjxDjhd20
〜〜〜〜〜〜



穂乃果「凛ちゃん!」



調理室に駆け込む。
と同時に、体に軽い衝撃。



凛「っ、ほのか、ちゃっ!」

穂乃果「よ、よかった……」



穂乃果の腕の中に飛び込んできた凛ちゃんを抱きしめる。

……ほんとによかった。
間に合ったみたいだね。

凛ちゃんを落ち着かせるために、頭を撫でながら、



穂乃果「海未ちゃんたちには?」



それを尋ねる。
まだ着いてないみたいだけど。



凛「う、うん……電話したよ。すぐに来てくれるって言ってたけど……」

穂乃果「……そっか」



なら、待とう。
ここで待ってれば合流できるはずだ。
76 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/07/30(月) 22:21:41.21 ID:DjxDjhd20
それから少し時間が経って、調理室の扉が開いた。
そこにいたのは、



にこ「凛!」



凛「っ、にこちゃんっ!」



美術室にいたというにこちゃんだった。

って、え?
ちょっと待ってよ。



穂乃果「なんで、にこちゃんが先に……?」

にこ「穂乃果?」

凛「…………穂乃果ちゃん?」



おかしい。
凛ちゃんが海未ちゃんに電話したのと、穂乃果がにこちゃんに連絡したのはほぼ同時のはず。
なのに、ここから距離が遠いはずの美術室にいたにこちゃんが先に来るのは……。

なら、考えられるのはーー



穂乃果「海未ちゃんたちになにかあったのかも……」

凛「!」

にこ「…………ありえない、話じゃないわね」



もしかしたら、あの『なにか』に誰かが飲み込まれたとか?
もしかしたら、『化け物』に襲われてるとか?



穂乃果「っ!」

にこ「穂乃果」



穂乃果「みんなのところに向かおう!!」



そうだ!
ここで待ってなんかいられないよ!
もし、みんなに何かあったならーー



穂乃果「っ、穂乃果、行ってくる!」

凛「穂乃果ちゃん!?」




にこ「待ちなさい!」ガシッ




調理室から出ようとした寸前に、にこちゃんに止められる。
77 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/07/30(月) 22:30:09.36 ID:DjxDjhd20

穂乃果「はなして! 行かなきゃ!」

にこ「行って、なんになるってのよっ!!」

穂乃果「っ」

にこ「…………行ったところで、にこたちには何もできないのよ」



そう言って、にこちゃんはさらに穂乃果を止める手に力を入れる。

……そんなの、分かってる。
でも、穂乃果は、



穂乃果「行かなきゃ……」

にこ「っ、このわからず屋! 行ってって何もできない! なら、ここであいつらが来るのを待ってーー」




穂乃果「ーー穂乃果のせいだからっ!!」




にこ「っ」



にこちゃんの言葉に被せるように、穂乃果は叫ぶ。

そうだよ!
これは、こんなことになったのは、穂乃果のせいなんだ!
穂乃果が肝試しやろうなんて言わなければっ!
みんなを巻き込まなければっ!

希ちゃんはっーー!



にこ「っ」

凛「そ、それは違うよっ。凛たちだって、それに乗っかってたし!」



穂乃果「ううんっ、それでも、穂乃果は…………っ」ダッ



にこ「なっ、穂乃果っ!!」



止める二人を振り切って。
穂乃果はみんながいるはずの部室へ駆け出した。



〜〜〜〜〜〜
78 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/07/30(月) 22:39:42.98 ID:DjxDjhd20
〜〜〜〜〜〜



穂乃果「はっ、はっ…………」



必死で走ったおかげで思ってたよりもすぐに部室に着く。
どうにか息を整えてから、



ーー ガラッ ーー



穂乃果「みんな!」



部室の扉を開いた。



穂乃果「なっ!?」



中の状況は、さっきまでとは一変していた。
机やイスは叩きつけられたように変形し、そのほとんどが使い物にならない状態で。
グッズやライブで使う衣装だって、無惨にも壊されていた。

そんな滅茶苦茶にされた部室の真ん中。
ポツンと設置されたイスに、彼女は座っていた。



穂乃果「っ、花陽ちゃんっ」



駆け寄る。
けど、返事はない。
それどころか、なんだか…………。



花陽「……………………」

穂乃果「どうしたの、花陽ちゃんっ!」



寝ている訳じゃない。
目は開いていて、でも、どこか焦点が合っていない。
79 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/07/30(月) 22:43:54.70 ID:DjxDjhd20



穂乃果「花陽ちゃんっ! しっかりして!」

花陽「…………」

穂乃果「花陽ちゃんっ! 花陽ちゃんっ!」



軽く揺さぶりながら、何度も何度も呼びかける。
その甲斐あってか、何度目かの呼びかけでやっと反応があった。



花陽「………………て」

穂乃果「! 花陽ちゃん、わかる!?」

花陽「……………………だか…………て」



ポツリと小さな声だけど、反応してくれた!
よかった!
…………よし、ちょっと大変かもだけど、花陽ちゃんをおぶって、調理室まで連れていけば!







花陽「はなれて」



穂乃果「え?」
80 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/07/30(月) 22:46:37.16 ID:DjxDjhd20
いま、なんて…………?



穂乃果「はなよ、ちゃん……?」

花陽「おねが、い……はな、れーー」




ーー ドクンッ ーー




『アァァぁぁぁっ、アァァ!!!!』




目の前で。
花陽ちゃんの姿が変わっていく。

『化け物』に。
81 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/07/30(月) 22:53:12.33 ID:DjxDjhd20


穂乃果「な、に…………なんなの……」



なにが起こったか分からない。
でも、目の前にいる『それ』が『化け物』であること。
そして、その『化け物』が




『アァ、ハナレ、テ……アァぁぉっ』




穂乃果「はなよ、ちゃん……?」



花陽ちゃんだってことだけは理解してしまった。
信じられないし、信じたくもないけど。
目の前で起こってしまったから。



『ハナレ、テっ』 グッ

穂乃果「っ!?」




ーー ブンッ ーー



ーー バキィィッ ーー




思い切り振り下ろされたその右腕が、さっきまで穂乃果がいた場所を破壊した。
穴が空くほどの力で、花陽ちゃん、うつん、花陽ちゃんだった『それ』は床を破壊した。



穂乃果「ひっ……!?」



逃げなきゃ……!?

そう思った。
そう、思ってしまった。
82 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/07/30(月) 22:55:07.29 ID:DjxDjhd20



穂乃果「うっ、あぁ……あぁぁぁっ!!??」



穂乃果はそのまま、震える足で部室を飛び出した。

助けに来たはずの花陽ちゃんを置いて。
1人で逃げ出した。



〜〜〜〜〜〜
83 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/07/30(月) 22:55:59.98 ID:DjxDjhd20





ーー ザザザザザザザザザッ ーー





『もう少しかしら』
84 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/07/30(月) 22:57:17.06 ID:DjxDjhd20
本日はここまで。
レス感謝です。
書いてて辛いところもありますが、しばしお付き合いいただければ幸いです。
85 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/08/01(水) 20:31:20.82 ID:utsh52s10
ほんの少しだけ更新。
86 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/08/01(水) 20:47:12.94 ID:utsh52s10
ーーーーーー



協力者の彼からの電話を受けて、穂乃果は風都の『鳴海探偵事務所』に向かった。
そこには、穂乃果の協力者の人と、もう1人。



「はじめまして、でよかったかな」

穂乃果「い、いえ。一度だけ」

「あぁ、照井を迎えに来たときの子か。あの時はすまなかったな」

穂乃果「い、いえ」




ヒダリ「『ヒダリ』だ。よろしくな、お嬢さん」スッ

穂乃果「あ、はい。よろしくお願いします」




『ヒダリ』
そう名乗ったハットを被った彼が差し出した手を握る。
どこか、安心できる手の平だった。



穂乃果「それで、あの……」

ヒダリ「ん? あぁ、相棒か? あいつは……」チラッ



ヒダリさんの視線の先には、沢山の帽子がかけられた壁……じゃなくて、扉があった。
確か、ここに最初に依頼に来た時も、あの扉から彼が出てきたんだったよね。

…………懐かしい、というほど昔じゃないけど。
それでも、あれから半年が経ってしまっていた。



…………うん。
もう少しで助けてあげられるからね、ことりちゃん。



ヒダリ「まぁ、とにかく相棒は後で合流するはずだ。俺は…………って、本当についてくる気なのか?」

穂乃果「……………………」

ヒダリ「……はぁ、仕方がねぇ」



無茶はすんなよ。
そんな風に釘を刺されてしまう。

真姫ちゃんにも言われたけど、ほぼ初対面の人にも言われるって……。
穂乃果ってそんなに危なっかしい……?
87 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/08/01(水) 20:54:37.15 ID:utsh52s10

ヒダリ「とにかく、俺たちはこれから『この場所』に向かう」



そう言って、ヒダリさんは一枚の写真を取り出した。
そこには、とある建物が写っていて。
って、え!?



穂乃果「ちょ、ちょっと待ってください!」

ヒダリ「ん? どうした?」

穂乃果「えっと、その! 本当に、ここにいるんですか!?」

ヒダリ「あぁ。俺と俺の仲間たちが調べた情報から相棒が検索した結果だ。まず間違いないぜ」



『亜坂真白』
すべての元凶。

きっとことりちゃんを孵化させるために、どこか誰にも見つからないような場所に隠れてる。
そう思ったのに…………。



穂乃果「…………まさか」



ヒダリさんが差し出した写真。
そこには、私達の母校。

音ノ木坂学院が写し出されていた。



ーーーーーー
88 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/08/01(水) 20:57:33.73 ID:utsh52s10
ーーーーーー
89 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/08/01(水) 21:06:14.95 ID:utsh52s10
ーーーーーー



理事長に人払いを済ませてもらった後。
穂乃果とヒダリさんは校舎の中へと入った。
そして、向かったのはーー




ーー コンコンッ ーー

ヒダリ「邪魔するぜ」



そう言って入ったそこは、アイドル研究部の部室。
勿論、人払いしてあるから誰もいない。



穂乃果「ヒダリさん……」

ヒダリ「……………………」

穂乃果「やっぱり、いないんじゃーー」



ーー ガキィィッ ーー



穂乃果「!?」



突然、ヒダリさんは何かを投げつけた。
見れば、穂乃果も持ってるスタッグフォンが、壁に刺さって…………あ、あれ?



穂乃果「空中に……刺さってる……?」



決して広くはない部室。
だから、あんなに乱暴にスタッグフォンを投げつければ、それは壁かもしくはアイドルグッズに刺さるはずなのに……。
でも、目の前のスタッグフォンは空中で何かに阻まれるみたいに止まっていた。



穂乃果「こ、これ……」

ヒダリ「相棒が検索した通りって訳か」



ヒダリ「出てこいよ! 亜坂真白!」



90 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/08/01(水) 21:08:08.96 ID:utsh52s10




ーー ザザザザザザザザザッ ーー




「乱暴な男ね」




ーーーーーー グニャリ ーーーーーー



91 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/08/01(水) 21:13:19.94 ID:utsh52s10
目の前の景色が歪む。
ゆらゆらと蜃気楼か何かみたいに、景色が歪んで、変わっていく。
そして、目の前には、




真白「こんにちは」

真白「高坂穂乃果ちゃん」




彼女の姿があった。
その顔には不気味に微笑みが張り付いていて……。



穂乃果「っ」ゾワッ



背筋が凍るような感覚を覚える。
本当に、この人はイヤだ。
92 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/08/01(水) 21:23:47.98 ID:utsh52s10

ヒダリ「おっと」スッ

穂乃果「あっ……」



ヒダリ「乱暴なノックで悪かったな、レディ」



穂乃果と彼女の間に入るように、ヒダリさんが前に出た。
そのおかげで、彼女の視線は彼の方へ移る。



真白「本当ね。野蛮な男は嫌いよぉ」

ヒダリ「はんっ、構わないさ。確かに外見は真っ白だが、中身が真っ黒な奴に好かれたくはねぇよ」

真白「そう。私も構わないわ。貴方のような品性の欠片もない男に何を言われようともねぇ」



真白「そう。私が愛しているのは」

真白「井坂先生、ただ1人なのだから」ニタァァ



穂乃果「……っ」



そう言って、また笑う。

またその名前……。
その井坂って人は……?
93 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/08/01(水) 21:36:21.99 ID:utsh52s10
穂乃果の内心を読み取ったのか、ヒダリさんはその『井坂』という人のことを話し出した。



ヒダリ「井坂深紅郎」



ヒダリ「数年前だが、風都で内科医をやってた男だ。奴がやっていた病院には行ったんだろ?」

穂乃果「……内科医……あ! あの廃病院!」

ヒダリ「そう、あそこの医者だ。人当たりもよく腕もよかったみたいでな。評判は悪くなかった……表向きは」

穂乃果「え?」

ヒダリ「そいつの裏の顔はまったく違う」

ヒダリ「ガイアメモリに取り憑かれ、自分のメモリの力を引き上げるために、何の罪もない人たちを使って実験をしていた」

穂乃果「そ、それって……」

ヒダリ「その上、何人もの人を殺しやがった」



ヒダリ「……悪魔みてぇな男だ」



吐き捨てるように、ヒダリさんはそう評した。
94 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/08/01(水) 21:46:23.33 ID:utsh52s10



真白「悪魔……?」

真白「馬鹿なことを言うのね」



小さな呟き。
けれど、その声は嫌に響いた。



ヒダリ「馬鹿なこと、だと?」

真白「えぇ。井坂先生の考えを理解できない。それこそが最も愚かなこと」

ヒダリ「奴の考え……だと」




ヒダリ「っ、自分のメモリのために、人の命を、人生を弄んだ男を理解できるわけがないだろうが!」

真白「………………」




穂乃果「っ」



『井坂』という人のことは詳しくは知らないけど。
ヒダリさんの話を聞くに、その人物は確かに悪魔みたいな人だと思う。

メモリのために人を[ピーーー]?
メモリのために人を実験台にする?

意味が分からない。
だから、なおさら、




穂乃果「なんで」

真白「…………なにかしら?」




穂乃果「なんでそんな人を慕ってるの……?」



95 :>>94差し替え ◆6cZRMaO/G6 [saga]:2018/08/01(水) 21:48:06.48 ID:utsh52s10
真白「悪魔……?」

真白「馬鹿なことを言うのね」



小さな呟き。
けれど、その声は嫌に響いた。



ヒダリ「馬鹿なこと、だと?」

真白「えぇ。井坂先生の考えを理解できない。それこそが最も愚かなこと」

ヒダリ「奴の考え……だと」




ヒダリ「っ、自分のメモリのために、人の命を、人生を弄んだ男を理解できるわけがないだろうが!」

真白「………………」




穂乃果「っ」



『井坂』という人のことは詳しくは知らないけど。
ヒダリさんの話を聞くに、その人物は確かに悪魔みたいな人だと思う。

メモリのために人を殺す?
メモリのために人を実験台にする?

意味が分からない。
だから、なおさら、




穂乃果「なんで」

真白「…………なにかしら?」




穂乃果「なんでそんな人を慕ってるの……?」



96 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/08/01(水) 21:52:36.81 ID:utsh52s10
そんな人を慕う彼女のことが分からない。

思えば、彼女のしたことは、その『井坂』って人に通じてる。
ことりちゃんや海未ちゃん、亜里沙ちゃんのことも実験台にしていた。
まるで、それは『井坂』って人がやってたことを真似ているようで。

なんでそこまで……?



真白「…………教えてあげましょう」

真白「私はーー」



真白「ーー井坂先生に命を救われた」


97 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/08/01(水) 22:03:54.78 ID:utsh52s10
ーーーーーー



彼女の話。

『井坂』と知り合ったのは、彼女が大学病院で看護師として勤務していた頃。
同じく『井坂』は大学病院で内科医として勤務していた。

彼女は主に外科を担当することがほとんどだったから、何も接点はないはずだった。


彼女がとある病気で倒れるまでは。


彼女の病気は所謂不治の病ってやつで。
多くの外科医が匙を投げ、最終的に内科…………というよりも投薬による緩和的な治療がされたらしい。

二人が知り合ったのは、その時だ。

生きる希望を失っていた彼女に、『井坂』はこう言った。



『私ならば、君を治してあげられる』

『終末期医療ではなく、より先進的なものになりますがねぇ』

『さて、君は』



『人為らざる者の領域に踏み入る覚悟はお持ちかな?』



彼女は頷いた。
そして、一命を取り留めた彼女は、どんどんと回復し、日常生活を送れるほどに回復したのだった。



ーーーーーー
98 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/08/01(水) 22:14:25.80 ID:utsh52s10

真白「こうして私は救われた」

真白「他の医者とは違う。私を見放した奴らとは違う」

真白「…………私を救ってくださったあの方こそ救世主」

真白「あの方はすべて正しい」

真白「あの方がそうしろと言うのならば、私はこの命すら投げ出せるわぁ」



穂乃果「っ」



狂信者。
穂乃果の協力者の彼や照井さんは、彼女のことをそう呼んでいたらしい。

なるほど。
確かに、その通りだ。

彼女は『井坂』って人のことを信じている。
……狂ってしまうほどに。



真白「フフッ」



ひとつ、笑い、彼女は続ける。



真白「けれど、あの愚か者の手で、井坂先生はこの世を去ってしまった」

ヒダリ「あぁ。だが、その選択は間違っちゃいねぇ」



穂乃果もそう思う。
その人がいないって事実を聞いて、ホッとしてる自分がいる。
99 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/08/01(水) 22:22:18.35 ID:utsh52s10


真白「…………間違いよ」

真白「間違いだらけ」




真白「だから、私が間違いを正すのよぉぉ」ニタァァ





穂乃果「うっ……」フラッ




その言葉は静かで。
だけど、吐き気を催すほどに邪悪な意志を感じてしまった。
目眩もして、少し足元がふらつく。
そんな穂乃果の前に、



ヒダリ「大丈夫か、穂乃果ちゃん」

穂乃果「っ、は、はい……」

ヒダリ「……無理もねぇ。俺でも気持ち悪くなる相手だ」



そう言って、ヒダリさんはさらにもう一歩進む。
けど、それを彼女は止めた。



真白「それ以上は近づかない方がいいわぁ」

ヒダリ「っ」

真白「じゃないとーー」




ーー ザザザザザッ ーー




また目の前が歪む。
そして、現れる。
彼女の手元に、『それ』が……。
100 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/08/01(水) 22:26:13.94 ID:utsh52s10



真白「穂乃果ちゃんのお友達が……いえ」

真白「お友達だった『モノ』が壊してしまうかもしれないわぁ」ギュッ




ヒダリ「っ!!」



彼女の腕に抱かれるその白い『それ』
それ、は……!!




穂乃果「っ、こ、ことりちゃんっ!!!」





101 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/08/01(水) 22:27:10.81 ID:utsh52s10
ーーーーーー
102 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/08/01(水) 22:27:57.11 ID:utsh52s10
本日はここまで。
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/08/02(木) 09:15:42.74 ID:G5lGyNJJO
また井坂先生外道なことしてる
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/08/04(土) 17:33:54.04 ID:PlEEtaBUO
乙待ってる
105 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/08/05(日) 22:18:41.38 ID:F1R5k62/0




ーー ザザザザザザザザザッ ーー



106 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/08/05(日) 22:24:45.40 ID:F1R5k62/0
〜〜〜〜〜〜



真姫「穂乃果っ!」



部室から逃げ出し、調理室に戻る途中で、真姫ちゃんたちに合流することができた。



穂乃果「真姫ちゃん。絵里ちゃん……よかった、無事だったんだね……」

真姫「っ、よくないわよっ!!」

穂乃果「っ」



真姫ちゃんの叫び声に、思わず体が跳ねる。
真姫ちゃん……?



真姫「花陽がっ!」

穂乃果「!」



そっか、そうだよ。
花陽ちゃんは真姫ちゃんたちと一緒にいたんだもんね……。
なら、花陽ちゃんのちゃんがああなったのも見てるはずで……。



真姫「なんでっ!! なんで花陽があんなっ!!」

絵里「……落ち着いて、真姫」

真姫「っ、これが落ち着いてられる!? 希だってーー」




絵里「おねがいだからっ!!」





真姫「っ」

絵里「おちついて…………ね?」

真姫「絵里…………ごめん」

絵里「いいえ。こんな状況だもの…………」



そう言う絵里ちゃん。
だけど、その手は震えていた。
107 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/08/05(日) 22:30:05.74 ID:F1R5k62/0
穂乃果「花陽ちゃんがなんでああなったのか聞きたいところだけど……」

絵里「……えぇ、まずは安全なところに」



それが最優先だ。
……安全なところなんてあるか分からないけど。
でも、少なくとも皆が集まってた方がいいはず。



真姫「…………調理室だっけ?」

穂乃果「うん」



凛ちゃんとにこちゃんは少なくともそこにいるはず。
……って、そうだ。



穂乃果「ねぇ! 海未ちゃんとことりちゃんは?」

絵里「え? 二人は凛の電話を受けて、すぐに調理室に向かったはずよ?」

真姫「えぇ。そのあと……いいえ。この話は後に」




穂乃果「…………ちょ、ちょっと待って」

穂乃果「二人、まだ来てなかったんだよ?」




少なくとも、穂乃果がこっちに来るまではいなかった。
でも、凛ちゃんの電話の後すぐに向かったんだとすると……。

やっぱりおかしい!
108 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/08/05(日) 22:31:52.62 ID:F1R5k62/0

嫌な汗が背中を伝う。

海未ちゃん。
ことりちゃん。



絵里「……とにかく、調理室に行きましょう」

真姫「穂乃果」

穂乃果「う、うん……」



〜〜〜〜〜〜
109 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/08/05(日) 22:40:30.49 ID:F1R5k62/0
〜〜〜〜〜〜




ーー コンコン ーー



静かに、調理室の扉をノックする。
それから二人の名前を呼んだ。



穂乃果「にこちゃん……凛ちゃん……」



でも、返事がない。



真姫「……穂乃果」

穂乃果「…………う、うん」



なにかあるかもしれない。
そう思って。

だから、真姫ちゃんと絵里ちゃんの前に立った。
二人を守らなきゃ。
穂乃果はそんなことを考えてた。



穂乃果「入る、ね?」



結果から言うと、



ーー ガラッ ーー




穂乃果の予感は当たっていた。

その扉を開けた目の前の光景は、到底二人には見せられないものだった。
だから、穂乃果は、




穂乃果「二人ともっ!」

穂乃果「見ないでっ!?!?」



ーー ピシャリッ ーー



勢いよく閉めた扉。
その向こうに広がっていた光景。

きっと、それは嘘だ。
現実なはずない。
ありえない……ありえない……。

なんでーー
110 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/08/05(日) 22:41:40.29 ID:F1R5k62/0



なんで、凛ちゃんとにこちゃん。


二人とも血溜まりの中に倒れてるの……?



111 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/08/05(日) 22:48:58.24 ID:F1R5k62/0
二人には絶対見せられない。
そう思ったのに、二人は強引に扉を開けて……。

目の前に、またその光景が広がる。
同時に、鉄臭い血の臭いがして……。



絵里「え…………え……?」

絵里「………………え……?」



絵里ちゃんはその場に膝をついて茫然としてた。



真姫「なに、これ……」

真姫「凛……? にこちゃん……?」

真姫「……なんで、二人とも倒れてーーっ!!」



真姫「二人ともっ!!!」



真姫ちゃんは目の前の光景に愕然としながらも、すぐに駆け寄って応急処置をしようとしてる。
でも、素人から見ても、その血の量は異常で…………。
112 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/08/05(日) 22:56:31.64 ID:F1R5k62/0



穂乃果「また、助けられなかった……」



希ちゃん。
花陽ちゃん。
そして、凛ちゃんとにこちゃん。

もし、穂乃果が違う選択をしていたなら、助けられたかもしれない。
だけど、みんなーー



真姫「穂乃果っ!!」

穂乃果「っ」



真姫ちゃんの声に、我に返る。
見れば、真姫ちゃんは服や手を真っ赤にしながらも、応急処置を続けていた。



穂乃果「な、なに?」

真姫「私だけじゃ止血の手が足りないわっ! 手伝いなさいっ!」



手伝って。
真姫ちゃんは
そう言った。
…………でも、もう……。



真姫「穂乃果っ!!」

穂乃果「あっ…………」



見ると、真姫ちゃんの目からはもうすでに大粒の涙が溢れ出していた。
それでも、真姫ちゃんはーー



穂乃果「っ、うんっ!! わかった!」



……そうだ。
まだだ!

まだ、穂乃果にはなにかできるはずっ!!
なにもしないなんてありえない。

そう、諦めたら終わりだもんっ!
だから、



穂乃果「真姫ちゃん!」

穂乃果「どうすればいいっ!?」

穂乃果「どうすれば二人をーー
113 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/08/05(日) 22:59:02.16 ID:F1R5k62/0




ーー バタンッ ーー




穂乃果「え…………?」



114 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/08/05(日) 23:05:56.19 ID:F1R5k62/0
なにが起こったのか、分からない。
だけど、穂乃果の目の前で起こったことは、



真姫「…………」

絵里「…………」



穂乃果「真姫ちゃん……?」

穂乃果「絵里ちゃん……?」




二人が倒れたってこと。
それだけははっきりしてて。



穂乃果「っ! 真姫ちゃん!」ユサユサ

真姫「……」

穂乃果「えりちゃんっ!」ユサユサ

絵里「……」



呼びかけに答える声はない。
二人とも顔色がどんどん変わっていく。

白く。
真白く。

生気が抜け落ちていく。



穂乃果「…………あ、あぁぁ……」

穂乃果「あぁぁぁぁぁっ!?!?」



まただっ!
また、穂乃果の目の前で、仲間が……っ!
115 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/08/05(日) 23:10:20.42 ID:F1R5k62/0


穂乃果「なか、ま……」

穂乃果「そ、そうだっ」



海未ちゃんとことりちゃんっ!
二人を探す……探さなきゃっ!



穂乃果「っ」



穂乃果は慌てて立ち上がる。

足に力は入らない。
足元の血で滑るから余計に。

それでも、どうにか立ち上がって。
穂乃果は進む。




穂乃果「はっ、は……はぁはぁ…………っ」




息が思うようにできない。
できても、血の臭いのせいで、気持ちが悪くなる。

でも、進まなきゃ。
二人を探して、二人だけでも穂乃果が守らなきゃ…………!




〜〜〜〜〜〜
116 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/08/05(日) 23:11:09.81 ID:F1R5k62/0




ーー ザザザザザザザザザッ ーー




117 : ◆6cZRMaO/G6 :2018/08/05(日) 23:11:38.88 ID:F1R5k62/0
本日はここまで。
嗚呼辛い。
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