【モバマス】綾瀬穂乃香「雨音のワルツにのせて」

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1 : ◆tues0FtkhQ [saga]:2018/07/19(木) 21:46:30.01 ID:x7qnHV6E0


モバマスの綾瀬穂乃香ちゃんのSSです。
のんびりしたお話です。

https://i.imgur.com/qLfmllL.jpg
https://i.imgur.com/CZze0Fq.jpg


ふわっとつながってる前作

喜多見柚「グリルドスクエア」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1529774144/

喜多見柚「レインショーがはじまる」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1531504653/

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1532004389
2 : ◆tues0FtkhQ [saga]:2018/07/19(木) 21:48:14.59 ID:esT0DnQ70


ガチャ

穂乃香「Pさん、お疲れ様です」

P「おっ」

P「穂乃香か、レッスンお疲れ様」

穂乃香「はい……ありがとうございます」

P「雨、大丈夫だった?」

穂乃香「大丈夫ですよ……梅雨ですから」

P「それなら良かった」

穂乃香「ふふっ」

P「?」

穂乃香「Pさんはそんなところも心配してくださるんだな、と」

P「……なんか恥ずかしくなってきた」

穂乃香「とても嬉しかったですよ」
3 : ◆tues0FtkhQ [saga]:2018/07/19(木) 21:49:16.01 ID:esT0DnQ70


ザァァァァ…


P「全然止みそうにないなぁ」

穂乃香「今日は諦めた方が良さそうです」

P「……」

穂乃香「……」

P「……つい外をぼーっと眺めちゃうな」

穂乃香「ふふ、どうしてでしょうね」

P「前までは外を見てても憂鬱だーって思ってたんだけどさ」

穂乃香「……?」

P「今はキレイだなって思うようになったよ」

P「ほら、たくさんの傘がくるくる回って、雨の日ってこんなにカラフルだったんだなって」

穂乃香「わぁっ、ほんとだ……素敵ですね」

P「……うん」

穂乃香「……」

P「忍と柚がさ、教えてくれたんだ。雨の日だってそんなに悪くないって」

穂乃香「私も聞きました。ふたりともPさんと過ごせてすごく嬉しそうでしたよ」

P「……あんまり言いふらされると困るんだけどな」

穂乃香「なかよしカルテット……ですから♪」

P「だからって情報が早すぎるよ……このままだと全員となにかありそうで怖い」
4 : ◆tues0FtkhQ [saga]:2018/07/19(木) 21:49:46.71 ID:esT0DnQ70


穂乃香「……そう、ですね」

P「その点、穂乃香は無茶言わないから安心する」

穂乃香「……」

穂乃香「……」ムー

穂乃香「……」ムーン

P(真面目に考え込んでしまった……やらかしたかな?)

P「……ちょっとくらいならいいぞ?」

穂乃香「は、はい……あ、あのっ」

P「どうした?」

穂乃香「Pさんのお仕事が一段落したら、駅まで送ってもらえませんか?」

P「いいよ、もうちょっと待っててくれる?」

穂乃香「はい」

P「えっーと、この仕事は明日に回して……」

穂乃香「……やったっ」

P「……穂乃香?」

穂乃香「な、なんでもないですっ」
5 : ◆tues0FtkhQ [saga]:2018/07/19(木) 21:50:16.06 ID:esT0DnQ70


ポスン


穂乃香「……」

穂乃香「……」


ザー…ザー…


穂乃香「静か……ですね」

穂乃香「……」

P「……」カタカタ

穂乃香(Pさんのお邪魔をするわけにもいきませんし)

穂乃香(こういう時、今時の女子高生はどうやって待っているのでしょう?)

穂乃香(……変わったと思っても、まだ分からないことだらけです)

P「……」ウーン

穂乃香(あっ、Pさんの顔が険しくなってる。ふふっ)

穂乃香(って、私は何をじっと見つめてるんでしょうか)

穂乃香(……もうちょっとだけ、わがままを言っても怒られない……かな?)
6 : ◆tues0FtkhQ [saga]:2018/07/19(木) 21:50:49.91 ID:esT0DnQ70


P「穂乃香ー、とりあえず仕事片付けたぞー」

穂乃香「え、っと……その」

P「?」

穂乃香「す……少し、お、お話していきませんか?」

P「ふふっ」

穂乃香「も、もうっ、笑わないでください!」

P「そんなに緊張してるなんて、珍しいなと思ってさ」

穂乃香「やっぱり……慣れないことをするときは緊張します」

P「うーん、雨が強くなる前に帰ったほうが……」

穂乃香「……」

P「……」

穂乃香「忍ちゃんと柚ちゃん」

P「ぐぬぬ」

穂乃香「そ、そんな脅したりしたいわけじゃないんですけどっ」

穂乃香「でも……その……」

穂乃香「私も、Pさんと雨の日を楽しんでみたいなって」

P「……」

穂乃香「……」ドキドキ

P「そうだな、ちょっとのんびりしていこうか」

穂乃香「あ、ありがとうございます……♪」
7 : ◆tues0FtkhQ [saga]:2018/07/19(木) 21:51:17.34 ID:esT0DnQ70


P「と、言ってもどうしよう?」

穂乃香「コーヒーでも片手にお話するのはいかがですか?」

P「冷房でちょっと身体冷えてきたしな、さっと淹れてくるよ」

穂乃香「あっ、待ってください! 私が、その、Pさんに淹れてあげたいんです」

P「おぉー」

穂乃香「感心されるほどでは……ちょっと練習してるんですよ」

P「いつもインスタントだからすごい楽しみ。横で見ててもいい?」

穂乃香「どうぞ、誰かのためにやるのは初めてなのでお手柔らかにお願いしますね」
8 : ◆tues0FtkhQ [saga]:2018/07/19(木) 21:52:13.76 ID:esT0DnQ70





穂乃香「まずこのミルで豆を挽きます」

P「こんなの事務所にあったのか」

穂乃香「コーヒーが好きな方もたくさんいらっしゃいますからね」

P「確かに」


ガガ、ガガガガガガガッ……


穂乃香「こうして豆から粉にすると、ほらっ」

P「コーヒーのいい香りがする」

穂乃香「ふふ、私もこの香り、好きですよ」

P「そうしたらお湯でぐるぐるってするんだっけ?」

穂乃香「そうですね、その前にコップを沸いたお湯でさっと温めておきましょう」

P「ふむふむ」

穂乃香「そうしたらドリッパーにフィルターをのせて、コーヒーの粉を入れます」

P「どりっぱー、ふぃるたー」

穂乃香「それからちょっとだけお湯を注いで、蒸らすのが大事なんだそうです」

P「むらむ……むらす?」

穂乃香「Pさん?」

P「ちょっとついていけなくなってた、一杯のコーヒーも手間かかってるんだなぁ」

穂乃香「美味しさのひと手間ですから……なんだか私が先生みたいです」

P「よろしくお願いします、穂乃香先生」

穂乃香「も、もう……」
9 : ◆tues0FtkhQ [saga]:2018/07/19(木) 21:53:00.85 ID:esT0DnQ70


P「ぽこぽこしてきたな」

穂乃香「豆が新鮮だとぽこぽこするみたいですね」

P「……もう一回、ぽこぽこって言ってくれる?」

穂乃香「え……ぽこぽこ?」

P「かわいい」

穂乃香「ま、真面目にやりますよ」

P「穂乃香はこれ全部覚えたのか?」

穂乃香「はい、料理の練習のついでにちょっと挑戦してみたくって」

P「すごい、いろいろ挑戦できるのが穂乃香のいいところだな」

穂乃香「ありがとうございます、大事なことをたくさん学んでいる途中ですから」

穂乃香「……飲んでくれる人のことを想って、一生懸命に優しさを込めること、とか」

P「……?」

穂乃香「フリルドスクエアではみんなあんまりコーヒーを飲まないんですよ……Pさん♪」
10 : ◆tues0FtkhQ [saga]:2018/07/19(木) 21:53:31.66 ID:esT0DnQ70


穂乃香「さて、蒸らしたらお湯をそっと注いでいきます」

穂乃香「真ん中で『の』の字を書くようにするのがコツなんだそうです」

P「ほー」

穂乃香「こう、やって。ぐるぐるっと」

P(穂乃香までちょっと回転してる)

穂乃香「……Pさん?」

P「いや、一緒に身体まで動いちゃってるのかわいいなって」

穂乃香「!? わわっ」

P「大洪水」

穂乃香「ぴ、Pさん! 不意打ちはやめてください!」

P「……不意打ちじゃなかったらいい?」

穂乃香「そ、それは……黙秘します」

P「かわいいって言うぞーって声かければいいんだな」

穂乃香「そ、そういう問題でもないと思います!」
11 : ◆tues0FtkhQ [saga]:2018/07/19(木) 21:54:05.35 ID:esT0DnQ70


穂乃香「あとはコップにふたり分注いで……」

P「できたー」

穂乃香「ふふっ、じゃあ向こう持っていきましょうか」

P「もう香りがいつもと全然違う……楽しみだなぁ」

穂乃香「あ、あんまり期待されると恥ずかしい気持ちですね」

P「穂乃香が入れてくれたんだから美味しいに違いないよ、ありがとな」

穂乃香「はい!」


ゴクッ


穂乃香「ど、どうですか?」

P「おいしい、とっても」

穂乃香「よ、よかったぁ」

P「よい、よい……あー、おいしいなぁ」

穂乃香「果敢に挑んだかいがありました、ふふ」
12 : ◆tues0FtkhQ [saga]:2018/07/19(木) 21:55:07.27 ID:esT0DnQ70


ザー…ザー…


P「ふー、そういえばあれ穂乃香が作ったのか?」

穂乃香「?……どれですか?」

P「ほら、窓枠に吊るしてある、てるてる坊主」

穂乃香「はい、そうですね」

穂乃香「最初は私だけだったんですけど、あとからフリルドスクエアのみんなも作ってくれて」

P「柚は逆さまに作ったって言ってたぞ」

穂乃香「ふふっ、ちゃんと後で戻しに来てました。きっと楽しい雨の日があったんですね」

P「……そのへんで追求は勘弁しといてくれ」

穂乃香「あずきちゃんが一番たくさん作ってると思いますよ、ほら」

P「……?」

穂乃香「反物の余り布を飾りに使ってるんです、和風で素敵ですよね」

P「ほんとだ、あずきらしいセンスだなぁ」

穂乃香「ちなみに私は……」

P「緑のぶさかわ、だな」

穂乃香「ぴにゃこら太です!!」

P「よく作ったもんだ。それっぽい、それっぽい」

穂乃香「ぴにゃこら太を再現するにあたって、たくさんこだわりました!」

P(どや顔かわいい)

P「あれ? 逆さまのぴにゃ坊主も何体かいるけど……」

穂乃香「それは、その……」

P「?」

穂乃香「な、内緒です!」
13 : ◆tues0FtkhQ [saga]:2018/07/19(木) 21:55:59.09 ID:esT0DnQ70


ザァー…ザァー…


P「雨、早く上がるといいな」

穂乃香「はい、梅雨が明ければ夏ですね」

P「……」

穂乃香「……」

P「なんか、穂乃香といるとほっとするよ」

穂乃香「いつもはみんなが賑やかだから、ですか?」

P「それそれ」

穂乃香「私もこうやって静かにPさんとお話したの久しぶりです」

P「……」

穂乃香「……」

P「……雨の音がよく聞こえるな」

穂乃香「……小さな音楽みたいですね」


ティン、トン、タン


P「ワルツ」

穂乃香「ワルツでしたね」

P「雨に踊ってみる?」

穂乃香「ふふっ、それも良いかもしれませんね」

穂乃香「つい、ステップを踏みたくなります。抜けたと思ってもバレリーナの頃の癖は癖のままみたいです」

P「ワルツステップ、だっけ?」

穂乃香「そうですね、一緒に練習してみますか!?」

P「覚えても使いみちがないよ」

穂乃香「それもそうでした……」シュン

P(穂乃香もいろんな表情をするようになったなぁ)
14 : ◆tues0FtkhQ [saga]:2018/07/19(木) 21:56:30.80 ID:esT0DnQ70


P「穂乃香はもうちょっと気を抜いてもいいんじゃないか?」

穂乃香「……これでもだいぶリラックスしていますよ?」

P「それにしては姿勢が良すぎるよ……」

穂乃香「これは長年のバレエで培った物ですから」

P「なんというか、こう、たまにはソファーにぐだーってしてみるのも悪くないぞ?」

穂乃香「柚もあずきもよくそのへんに転がってるし、さ」

穂乃香「……う、うまく身体が動かないというか、どうしたらいいのか分からないというか……」

P「ソファーを大きいぴにゃこら太だと思ってさ」

穂乃香「えっと……うーんと……。えいっ」


ボスン


P「そうそう」

穂乃香「な、なんか慣れないですね」

P「たまには身体の力も抜いておかないと、いざという時に柔軟性が発揮できないぞ」

穂乃香「そ、そうだったんですか。それはちゃんと練習しておかないといけません!」

P「ごめん、適当に言った」

穂乃香「も、もうっ、Pさん!」

P「……」

穂乃香「……」

穂乃香「ふふふ、いろんなものが緩んでしまいそうです」

P「そんな穂乃香も見れて嬉しいよ」
15 : ◆tues0FtkhQ [saga]:2018/07/19(木) 21:57:08.38 ID:esT0DnQ70


穂乃香「そういえばPさんはあまり姿勢が良くありませんね」

P「ぎくっ」

穂乃香「姿勢は集中力や疲れなどにも影響するんですよ」

P「分かっているだけど……どうしてもな」

P「んーーっと、ほら、体中がぼきぼきって言ってる」

穂乃香「……」

P「……穂乃香?」

穂乃香「マッサージとストレッチをしましょう!」

P「え?」

穂乃香「マッサージとストレッチをします!!」

P「いや、別に今じゃなくても……」

穂乃香「マッサージとストレッチをするんです!!!」

P「ハイ」
16 : ◆tues0FtkhQ [saga]:2018/07/19(木) 21:57:39.93 ID:esT0DnQ70


穂乃香「肩だけでもすごい凝ってますね」

P「なんかやらせてるみたいでゴメンな」

穂乃香「いえ、私が好きでやってるんですよ」

P「あー、効く、効く」

穂乃香「ふふっ。……いつも本当にありがとうございます、Pさん」

P「……」

穂乃香「いつだって側にいて励ましてくれる人、そんなPさんのためにできることがあるならしたいんです」

P「……その気持ちだけでお腹一杯だよ」

穂乃香「支え合えるのも、歓びですから」

穂乃香「さぁ、次はストレッチですよ!!」

P「しまった、穂乃香スイッチが入ってしまった」

P「ほどほどで、よろしく頼むよ……」
17 : ◆tues0FtkhQ [saga]:2018/07/19(木) 21:58:40.65 ID:esT0DnQ70





ザァァァァ…


P「散々な目に合った」

穂乃香「ご、ごめんなさいっ。お嫌……でしたか?」

P「そんなまさか……でもちょっと新鮮だったな」

穂乃香「……?」

P「穂乃香とこうやってぐだーっとするなんてあんまりなかったからさ」

穂乃香「それは……きっと心を許しているから、ですよ」

P「……」

穂乃香「それから、こんな雨の日だからかもしれませんね♪」

P「雨の日も悪くないだろ?」

穂乃香「はい、素敵な一日になりました」
18 : ◆tues0FtkhQ [saga]:2018/07/19(木) 21:59:25.14 ID:esT0DnQ70


P「じゃあ、そろそろ送っていくよ」

穂乃香「はい」

穂乃香「あっ、少しだけ待っていただけますか」

P「おう……?」

穂乃香「よいしょっと」

P「逆さまのぴにゃ坊主、元の向きに戻しちゃうのか」

穂乃香「ええ、だって待っていた雨の日は来てくれましたから」

P「……」

穂乃香「ふふっ、あとは晴れて夏が来るのを待つだけですね」

P「だ、だな」

穂乃香「次はあずきちゃんの日かもしれませんけど」

P「だよなー、あずきも雨の日が良いって言われそう」
19 : ◆tues0FtkhQ [saga]:2018/07/19(木) 21:59:51.25 ID:esT0DnQ70


穂乃香「あ、あの……」

P「またこんな静かな午後を過ごせたらいいな」

穂乃香「は、はいっ。……Pさんにはなんでもお見通しですね」

P「俺にとっても良い一日だったから、かな」

穂乃香「そう言っていただけると嬉しい、です」
20 : ◆tues0FtkhQ [saga]:2018/07/19(木) 22:00:18.04 ID:esT0DnQ70



穂乃香「またこんな静かなワルツのような一日をぜひ♪」
21 : ◆tues0FtkhQ [saga]:2018/07/19(木) 22:00:48.00 ID:esT0DnQ70


おしまい。
穂乃香ちゃんと並んで雨音に聞き入りたい。
ぜったいに心が豊かになりそう。
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2018/07/20(金) 03:49:13.00 ID:Y//51HwDO



次はあずきの出番大作戦ですな
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