清霜「Saxophone Colossus 」

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1 : ◆0rjCWOlcd8we [saga]:2019/05/09(木) 17:31:18.38 ID:0g5bjTyFO
ジャズに、恋をした


2019年1月21日 午後5時17分
鎮守府 埠頭

「...」

「よし!」

夕雲型の最終番艦、清霜
彼女は一人、鎮守府の誰も来ない埠頭に立っていた
聞こえるのは鳥の鳴き声と波の音
そして手にしてるのはーーー

「絶対に... 絶対に...」

金色に輝く、テナーサックスだった

「ジャズの巨人になる!」

埠頭に、彼女のサックスがこだまする

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1557390678
2 : ◆0rjCWOlcd8we [sage saga]:2019/05/09(木) 17:33:11.18 ID:0g5bjTyFO
第1話
Stairway to the Stars

2015年4月13日 午後3時02分
鎮守府 間宮の食堂

「ねえ武蔵さん! 今度どこか一緒にお出かけしようよ!」

そう武蔵に持ちかけたのは彼女を慕う清霜だった
同席していた大和と朝霜は興味ありげに話かけた

「武蔵さんとでかけんのか! どこ行くんだ?」

「あら、水族館とかに行くの?」

「え? うーん... 場所は特に決まってなくて... いろんなところ行きたいなーって」

清霜は場所などは決めていなかったようだった、同じ時間を過ごすということに意識が行き特に考えていなかった

「...ならば清霜よ、今度ライブハウスに行かないか」

「ライブハウス...?」

「ああ、最近外でいい店を見つけてな よかったら一緒に来ないか?」

憧れの大戦艦からの誘い、しかも自分の知らない世界に連れて行ってくれる
このことだけで彼女は舞い上がってしまった

「いいいいいいんですか!?」

「はっはっはっ 今週末時間が合えば夜にでも行こうと思うんだがどうだ?」

「ぜ、ぜひ行かせてください!」

「よかったな清霜!」

「ふふ、大和たちもどこか行ってみる?」

「いいぜー! 大和さんなんかおすすめあんの?」

「ラーメン博物館」

「まさかの飯だった」
3 : ◆0rjCWOlcd8we [sage saga]:2019/05/09(木) 17:33:48.23 ID:0g5bjTyFO
2015年4月18日 午後6時00分
ジャズバー「Nomad」

「おおーここが...」

目の前には自分の知らない世界へと通じる扉
それを武蔵と共有できるという期待で彼女の胸はいっぱいだった

「入るぞ」


ガチャ

ガヤガヤガヤガヤ...


(思ったより人いる...)

20代から60代まで、男女様々な人たちだいた
しかしその場にいた子供は彼女だけ、本当にここにきてよかったのかと一瞬彼女の脳裏をよぎる

「さ、席につこう ここでいいか」

真ん中のやや後ろの席、ここが一番よく聴ける場所だと武蔵は言う

「何か飲むか? ジュースとかはこっちだぞ 私も今日はジュースにしておこう」

「え、えっと... じゃありんごジュースで...」

「じゃあ私はジンジャーエールでも」

注文を待っている間武蔵は清霜がどこか落ち着かない様子であることに気づいた

「どうした、清霜よ 落ち着かないようだが」

「う、うん なんか落ち着かなくって...」

「ははは、初めて来るから緊張してるだけだ すぐに忘れるさ」

ウェイターが注文の飲み物を持ってきた

「ご注文承りましたりんごジュースとジンジャーエールでございます」

「ああ、ありがとう おや、髪型変えたのか?」

「ええ、昨日変えたばかり あら? その子は? はじめましてようこそNomadへ」

「は、はじめまして!」

「まあ妹みたいなもんだ、今日はちょっと一緒に連れてきたんだ」

「まあ! 今日はどうぞごゆっくり楽しんでいってくださいね」

「は、はい!」
4 : ◆0rjCWOlcd8we [sage saga]:2019/05/09(木) 17:34:17.75 ID:0g5bjTyFO
午後6時30分

「お、始まるぞ!」

拍手とともにプレーヤーたちが舞台に上がる
ピアノ、ベース、ドラム、テナーサックス、トランペットのクインテット

「ワン、ツー、ワンツー」

ドラムがカウントを始める


バーバー バッバー!!


5人が一つのサウンドを奏でた


バラッバッバババー! パーーーー!


(すごい... なにこれ...)

初めての体験だった、皆が演奏したかと思えばテナーサックスだけが、今度はトランペット、そしてピアノベースドラムの掛け合い
音を、生で作り出していた


ウォーッ! ヒュー! パチパチパチパチ


ソロの度に歓声があがる


(こんなものがあったなんて...)


まるで音で会話しているようだった

そしてこの体験は彼女にある考えを浮かばせた



私もやってみたい





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