【デレマス(デレステ)】黒埼ちとせ「私の望みは――」

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115 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/18(日) 01:28:55.47 ID:aY4zmbJYO
約2週間後、ちとせの病室


ガラガラガラッ

P「……ハァッ……ハァッ」

P「ち……ちとせ……」

ちとせ「う、うん……ちとせ、だけど」キョトン

P「お前が目を覚ましたって聞いたから……」

ちとせ「……走ってきてくれたんだ」

P「当たり前だろ……」

ちとせ「ありがと、嬉しい」

P「体調は、どうなんだ」

ちとせ「そりゃあよくはないんだけど、でも、辛くはないよ」

ちとせ「それに……あなたが来てくれたから、もっと元気になっちゃったかも」

P「そうか……それは良かった」

ちとせ「さっきね、先生がね」

ちとせ「病院の敷地内だったら、散歩してもいいって。一緒に行ってくれる人がいれば」

ちとせ「ねえ、私を、連れて行ってよ――」


P「……」

カラカラカラ

ちとせ「あっはは……ごめんね。歩いて散歩するのは、ちょっと無理っぽいんだ」

ちとせ「立てないわけじゃ、ないんだけどね」

ちとせ「体力的な問題で」

ちとせ「でも、車椅子からの眺めも新鮮で楽しい……ちっちゃい頃は、こんな高さの目線だったんだろうなって思う」

ちとせ「……」

ちとせ「……千夜ちゃん、元気にしてる?」

P「ああ。テレビには安定して出ているし、ラジオの仕事だってある。ラジオは、レギュラーもあるしな」

ちとせ「千夜ちゃんが出てたドラマ、ちひろさんが録画してくれていたみたいだから、後で見るんだ」

P「いいな、それ」

ちとせ「千夜ちゃん、無理してない?」

P「どうだろうか……お前がいないから、どこか寂しそうには見えるよ」

ちとせ「そっか……」

P「相変わらず、弁当は作ってくれる」

ちとせ「わお、ラブラブだね」

P「そんなんじゃないさ」

ちとせ「まあ、私がそんなこと言う資格はない――か」

ちとせ「うまくやってよね、あの子とはさ」

P「……善処する」
116 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/18(日) 01:41:50.71 ID:aY4zmbJYO
P「なあ、ちとせ」

ちとせ「? なあに」

P「お前に、聞きたいことがある」

P「お前は、俺に約束しろと言ったな」

P「覚えているか」

ちとせ「……うん」

P「3つの、約束だ」

ちとせ「覚えてるよ、ちゃんと」

P「お前を退屈させないこと、お前に嘘をつかないこと……」

P「……だが、まだ3つ目を聞いていない」

P「俺のエゴなのは百も承知だ。でも、お前の口から聞きたい」

P「3つ目……お前は何を約束させたかったんだ?」

ちとせ「……うーんと、ね」

ちとせ「……」

ちとせ「……ひみつ!」

P「……は?」

ちとせ「だーかーら、ひ・み・つ」

P「え、いや、でも……」

ちとせ「今は言いたい気分じゃないの」

P「そんな悠長なこと……!」

ちとせ「私がいますぐに死ぬとでも?」

P「っ……!」

ちとせ「ごめん。いまのは、いじわるだったよね」

ちとせ「でもね、いまは言いたくない」

ちとせ「私を信じて……必ず、あなたには言うから」

ちとせ「お願い」

P「……わかった」
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/08/18(日) 01:45:46.79 ID:aY4zmbJYO
とりあえずここまで。
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/09/04(水) 22:27:12.53 ID:lEP1w3jq0
>>1です。また忙しさが落ち着いたら更新します。少々お待ちください。
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/09/21(土) 17:50:05.39 ID:KnBe1FwIO
1ヵ月半後、都内某病院、某個室

Pの予想するちとせの死まで1ヶ月


コンコン

「……入るぞ」

ガラガラッ

P「ちとせ……」

ちとせ「ぁ……」

P「いい、無理してしゃべらなくて、いいから」

ちとせ「わた……し、目、覚めた……んだよ」

P「ああ……、わかる、わかるよ」

ちとせ「……ぁ……た、ま……」

P「な、なんだ?」

ちとせ「撫でて……欲しい、の……」

P「こう、か……?」ナデナデ

ちとせ「ぅん、きもちぃ……」

ちとせ「ふふっ……ずっと、夢を見てた」

ちとせ「長い、長い、……夢」

ちとせ「私とあなた……そして千夜、ちゃん……の3人で」

ちとせ「……仲良く……お屋敷に住むの」

P「ああ……」ナデナデ

ちとせ「それで、ね……あなたは、私と千夜ちゃんの……ふたりをお嫁さんにしてるの」

P「何をやってるんだ俺は……」ナデナデ

ちとせ「夢の、中……だから。別に、いい……でしょう?」

P「まあ、お前がいいならな」ナデナデ

ちとせ「夢の中の千夜ちゃんは……いまみたいな僕ちゃんじゃ……なくって」

ちとせ「むかし、みたいな……かわいい女の子、なの……」

ちとせ「どっちがあなたとイチャつくかで、喧嘩したり……」

ちとせ「一緒に、あなたを喜ばせるために、お料理したり……」

ちとせ「そう、やって……暮らしてるの……」ポロポロ

P「ああ……ああ!」ポロポロ
120 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/09/21(土) 18:02:20.36 ID:KnBe1FwIO
ちとせ「……ゃ、くそく……」

P「!?」

ちとせ「3つ、目、の……。まだ……ちゃんと、伝えてない」

P「それは……」

ちとせ「ち、よちゃん、と……」

ちとせ「……っっ、……」ヒューッヒューッ

P「おい……しっかりしてくれ……ちとせ……!! 死ぬな……!!!!」

ちとせ「かはぁっ……、はぁ……っ、はぁっ……」

ちとせ「だ、いじょう、ぶ……」

ちとせ「これ……伝えずに、は……死ねない、から……」

ちとせ「……もっと、近くに、……来て」

P ズイッ

ちとせ「3つ目は……ね」






ちとせ「――――千夜ちゃんと、幸せになって」
121 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/09/21(土) 18:14:54.16 ID:KnBe1FwIO
1ヵ月後、都内某教会

Pの予想するちとせの死まで――0日


千夜「……なんだか、気恥ずかしい」

ちひろ「そう言わないでくださいって、Pさんと、選んだんでしょう?」

千夜「それは……そうですが」

ちひろ「とても、似合っていますよ。綺麗です。千夜ちゃん」

千夜「ちひろさん……ありがとう」

ちひろ「それにしても、世間はいま頃大騒ぎですよ」

ちひろ「――人気絶好調のアイドル、白雪千夜がプロデューサーと電撃結婚、だなんて」

千夜「改めて言われると照れる……」

ちひろ「照れてる千夜ちゃん可愛いです」

ちひろ「……ちとせちゃん、最後にすごいお願いをしたものですね」

ちひろ「自分の命日になりそうな日に2人が結婚する姿を見せてくれ、だなんて」

ちひろ「それもあって、この結婚式も、参加者は、事情を知る聖職者の方々と、私と、お2人と――」

ちひろ「――ちとせちゃんだけですし」

千夜「お嬢さまが饒舌にお話になられたら、聖職者に手伝ってもらったから灰になってしまう……だなんて冗談を言うかもしれませんね」

ちひろ「ふふっ、そうかもしれません」
122 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/09/21(土) 18:26:17.50 ID:KnBe1FwIO
ちひろ「……千夜ちゃん」

千夜「?」

ちひろ「プロデューサーさんを、助けてあげてくださいね」

ちひろ「結局、私にはそれが最後までできませんでした」

ちひろ「でも、千夜ちゃんなら……」

ちひろ「いいえ、こう言ったほうがいいかしら。千夜ちゃんとちとせちゃんなら、と」

千夜「ちひろさん……」

ちひろ「……グスッ。こ、こんなの、野暮な話ですよねっ。ごめんなさい……」

ちひろ「昔の女の戯言です……忘れてください……」

千夜「そんなこと……」

千夜「私は、お嬢さまの願いの成就のため、ちひろさんの叶わなかった思いのため、そして――」

千夜「――なによりも、あの人のために、生きていきます」

ちひろ「うんっ……うん!」

千夜「……それに」

千夜「あの人にふさわしい女は、ちひろさんではなく私だと思い知らせてあげますよ」フフフ……

ちひろ「あーっ、言ってくれますね、もうっ!」プンスコ

ちひろ「……あははっ」

千夜「ちひろさんの顔に笑顔が戻った」

千夜「そうです、ちひろさん。まだ泣くには早いですよ」

千夜「式は、これからですから――」
123 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/09/21(土) 18:45:25.99 ID:KnBe1FwIO
――新郎が、入場する。

P「……」

その男は、かつて自らが生み出してしまった災厄に苦しむ少女を救おうとした。

それと同時に、その災厄に苦しめられていたのは男も同じであった。


――新婦が、入場する。

千夜「……」

その女は、贖罪のために友を主とし、あろうことか主の想い人を愛してしまった。

しかしそのことが、主の救いであるということに気づいたのであった。


――高潔な女が、そこにいる。

ちとせ「……」

その女は、最初からいた。最初からいて最後までいないよう努めて存在しているが、それでもなお存在感が絶大な女がそこにいた。

女は新婦の主であった。けれども、今日をもってその契約は終わる。

それは、女の最後の望みであった。


――また別のところには、諦めてしまった女がいる。

ちひろ「……」

その女は、新郎を支え、救いの手を差し伸べようとした。だが、その手が男をつかむことはなかった。

しかし、女は最早後悔していなかった。男を救う別の女が、現れてくれたから。


――式が、進んでいく。


――誓いますか? Y/N

P「俺は――」

千夜「私は――」

ふたりは誓いを交わした。新婦の主は無言でそれを眺めている。
124 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/09/21(土) 18:57:56.41 ID:KnBe1FwIO
――新郎と新婦は唇を重ねあう。


――結婚した事実が宣言される。


――一連の流れは、無事終了した。



ちとせ(ああ、とっても幸せ)

ちとせ(私が、なによりも望んでいたコト……)

ちとせ(私の愛する貴方が、長年の災厄からようやく解放され、救われる)

ちとせ(私の愛する貴女が、長年の呪縛からようやく解放され、救われる)

ちとせ(私は貴方・貴女(あなた)たちに十分愛された……今度は、貴方・貴女(あなた)たちが愛し愛され――愛し合う番)

ちとせ ニコッ

ちとせ(Pさん……貴方、とてもかっこいいよ。何度でも惚れてしまいそう。その姿にも、自ら招いたモノによる翳りも)

ちとせ(千夜ちゃん……貴女、とても可愛いよ。いまの千夜ちゃんは、もう、一人の女の子なのね。それで、いいのよ)

ちとせ(幸せ……幸せしあわせシアワセ!!)

ちとせ(幸せすぎて死んでしまいそうなの――なんてね)

ちとせ(これは、いつもの私の冗談めかしたセリフなんかじゃない……もう、そろそろだよね)

ちとせ(私は……)
125 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/09/21(土) 19:06:18.16 ID:KnBe1FwIO
「……とせ、ち……せ!!!!」

「……さま!! お……さ……」


なんだか騒がしいなあ、もう。

私がこうなっちゃうことなんて、ふたりとも知っていたでしょ?

まあでも、いざそうなりそうになると、冷静じゃいられないのかもね。

ありがと。私のことを想ってくれているの、ちゃんとわかってるよ。

そうだ、最期に、あれだけ言っておかなくちゃね。

きちんと、自分の言葉で。

だから、いまだけは声を出すんだ、私!!!!!!!!!


ちとせ「あなた、幸せになりなさい」


――――――――。
126 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/09/21(土) 19:12:25.60 ID:KnBe1FwIO
6年後、都内某所、一軒家。


??「おかーさんっ! 早く早く!!」

千夜「もう、そんなに急がなくてもコンサートは逃げないというのに」

??「だってはやてちゃんとなぎちゃんが歌ってるところ、はやくみたいから!」

千夜「出てくる時間はもう決まっていますよ。別に早まるわけじゃない」

??「んー?」

??「あ、そーいえば、おとーさんは、来れないの?」

千夜「いいえ、あの人なら先に向こうについているはず」

??「あ、そっか。ぷろでゅーさーっていうの、やってるんだもんね」

千夜「そういうこと」

千夜「……そうだ。ちょっと忘れていたことがありました」

千夜「ねえ、もうトイレは済ませましたか?」

??「あ! まだいってないや」

千夜「じゃあ、いま行ってきなさい」

??「うんっ!」テテテ……
127 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/09/21(土) 19:20:49.56 ID:KnBe1FwIO
ちとせの遺影の前。

千夜「お嬢さま……いいえ、ちとせちゃん」

千夜「あの子が、私たちがしていたような仕事に興味を持っているようです」

千夜「あの子は……どのように成長していくんでしょうか」

千夜「健やかに、長生きできるようにと、名前をつけました。それも、あなたがどこかであの子を守ってくれるように」

千夜「私たち夫婦も、まだまだこれから学んでいくんでしょうね」

千夜「ずっと、見守っていてね、ちとせちゃん」

千夜「……いってきます」


??「トイレ終わったー!」

千夜「忘れ物がないか、確かめた?」

??「じゅんびかんりょー、です!」

千夜「ふふっ……そうですか」

千夜「それじゃ、行きましょうか」

千夜「おいで――」


千夜「――千歳(ちとせ)」








END.
128 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/09/21(土) 19:21:32.01 ID:KnBe1FwIO
以上です。ありがとうございました。
129 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/09/21(土) 19:54:20.95 ID:KnBe1FwIO
過去作を一応貼っておきます(完結したもの一覧):
・【安価】世莉架「安価でタクを楽しませちゃうよ」【CHAOS;CHILD】https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1487424130/#footer

・【デレマス(デレステ)】久川颯「はーはPちゃんが好きなの」https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1554736389/
130 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/09/21(土) 19:56:24.86 ID:KnBe1FwIO
※冒頭でも述べたように、このSSと【デレマス(デレステ)】久川颯「はーはPちゃんが好きなの」は世界観を共有しています(ただし、こちらはSS速報Rなので注意)。
131 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/09/21(土) 19:57:59.53 ID:KnBe1FwIO
また、時間があるときに、何か書こうと思います。
132 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/09/21(土) 20:03:28.65 ID:3or7ch/DO
えーと、つまり……はーちゃんは捨てられて、Pは千夜とくっつくと?
133 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/09/21(土) 20:10:03.22 ID:KnBe1FwIO
>>132

世界観は共有していますが、冒頭で述べたようにPはそれぞれにおいて別の人物です。このSSの中では、区別するために前作のPを「miroirP」と表記しています。
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