最上静香の「う」_四杯目_

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16 : ◆kBqQfBrAQE [saga]:2019/08/30(金) 22:05:53.96 ID:SegpilIM0

 静香はこのうどんの四重奏に魅了された。ひとたび虜になれば、没頭する一途である。静香はひたすらにうどんを食べた。うどんを、出汁を、一口重ねるごとに静香は魅力に囚われていく。スダチを潰して出汁を啜り、麺を食らう。再び出汁を飲み、B丼へ箸を移し、スダチの輪切りを齧ってみては、仄かな苦酸っぱさに顔を顰める。相変わらず一連の動作は流麗であるが、これまでの空腹もあるのだろうか、普段以上に動きに途切れが見られない。

 彼女のプロデューサーは、自らもうどんに没頭しながら、無意識に静香の動きに付いていく。彼のうどんに立ち向かう姿もまた実に鮮やかである。

 二人のうどんを啜る音、出汁を飲む音、丼に当たる箸の音が融けるように重なっていく。音階もない無機的な音にもかかわらず、二人によってメロディが、詩が紡がれていく。レノン=マッカートニーのように、美しい曲が形成される。店内の客、スタッフは、静香とプロデューサーが織りなす音楽に聴き入ったかのように、ぼんやりと二人を眺めていた。

 連弾のようにも、ジャズのセッションのようにも聴こえる二人の応酬である。静香はうどんへ相対しながら、この二重奏を心地良く感じていた。普段は彼の言行に尖ったことばかり言う静香だが、こうした無意識から彼女の素直さが滲み出てくるものである。

 二人の即興は最高潮を迎える。丼を掲げると、冷やかな出汁が凛とした感覚を与え、二人は喉を潤す。最後の一滴まで飲み干そうと高く高く丼を傾け、そして、卓へ丼を置く音が同時に響いた。

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