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【艦これ】艦娘「ショタ提督に好かれたい」照月「その35!」【安価】

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652 : ◆0I2Ir6M9cc [!red_res saga]:2019/11/21(木) 23:38:43.20 ID:A0yYdP+m0

























――そうなるはずだった。しかし、運命の歯車は……既に狂い始めていたのだ。



――その狂いが……"彼女"が、彼と彼女に……容赦無く牙をむくこととなる。
























653 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/11/21(木) 23:40:34.78 ID:A0yYdP+m0
今回はここまでです。お付き合いいただきありがとうございました!
それではまた次回の更新でお会いしましょう。
654 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/22(金) 00:13:42.96 ID:C6MN51IdO
おつ
655 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/22(金) 14:03:33.31 ID:txQ+KR+y0
早い話が全部42週目提督が悪いってことか
656 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/11/29(金) 17:45:16.78 ID:HEE8sNIQ0
22:00〜23:00頃開始予定です。
657 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/11/29(金) 22:08:53.17 ID:HEE8sNIQ0
始めます。
658 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/11/29(金) 22:13:39.94 ID:HEE8sNIQ0
話は数年前……彼が浜辺で目覚め、彼女らに保護されたところまで遡る。

既に述べたが、"その存在"は42周目提督により2つに分裂させられてしまっている。

彼が目覚めたということは……もう片方の存在も、意識を取り戻すことは予想出来たことだろう。

しかし、もう1人の"彼"……否、"彼女"は……運命の歯車の狂いによるしわ寄せを、とてつもなく受けてしまったのだ。

「……ん」

(ここは……どこ?それに、私は……一体……)

彼女は、彼との分裂の果てに具現化された存在。故に、彼とは"同一の存在"と言える。

しかし彼女は、彼とは対照的に……少女の姿をしていた。理由はもちろん、42周目提督への精神干渉による影響だ。

彼は42周目提督自身の姿を参考としていたが、彼女は42周目提督の記憶にある……潮と羽黒の姿を、無意識の内に再現した。

よって、彼女は潮と羽黒を足して2で割ったような外見をしていた。それが後々、彼女に不幸をもたらすこととなる。

だが、彼女には既に危機が迫っていた。目が覚めた場所は森。猛獣等が数多く生息している地だ。そんなところに丸腰でいれば……その後の末路は想像に難くない。

「グルル……」

「……え?」

(な、何……この、大きい生き物は……?)

「……グワアアアアアアアアアアッ!」

「こ、こっちに来た!?いやっ、来ないで!?ひゃああああああああああああっ!?」

猛獣にとって、人間は良い餌だ。そして武器を持たない人間が、突然襲い掛かってきた猛獣に勝つことなど出来るだろうか?

答えは否。彼女は無残に猛獣に襲われ……その身を噛み千切られ、貪り食われることとなる。

「グルルルルッ!グワアアアアッ!」

「嫌ああああっ!?痛い!?やめっ、やめてええええええええええっ!?」

だが、彼女は人間ではない。どれだけ痛めつけられたとしても、その傷は瞬く間に回復する。

更に、血しぶき等が飛び散ることさえ無い。傍から見れば、猛獣が人型の玩具にじゃれ付いていると言えなくもないだろう。

しかし、今の彼女の認識は人間のそれと変わらない。故に、彼女にとっては噛み殺される痛みが延々と続くこととなる。

それでも、やはり元が神である為、通常の人間とは違い精神崩壊を引き起こすことはない。

だが、その肉体及び精神に与えられる苦痛は決して無視出来るものではなく……

「ガアアアアアアアアッ!グルルルルルルルルッ!」

「嫌……嫌ぁ……っ!」

(顔を食べないで……腕を引き千切らないで……!お腹を抉らないでぇ……っ!)
659 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/11/29(金) 22:29:22.23 ID:HEE8sNIQ0
グサッ!

「ギャアッ!?」

「うぅ……え?」

グサッ! グサッ! グサッ!

「アガァ……ッ……!」

(な、何が起こったの……?)

彼女が痛みと混乱に取り乱していると、突如猛獣に向かって何かが投げ付けられる。

そして無残に猛獣の体中に刺さっていく。しばらくすると、猛獣が痛みと出血で動きを鈍らせていく。

「グルゥッ……」ピクピク

「……!」

(あれは……私と同じような姿をしてる人達が……もしかして、私を助け……)

彼女は、少し離れた位置にいる者が自分のことを助けてくれたのだと考える。

しかし、その期待は一瞬にして裏切られることとなってしまう。

グサッ!

「はぐっ!?」

グサッ! グサッ! グサッ!

「ど、どうして……うぐっ!?い、嫌っ!やめ……うぁっ!?」

猛獣の息の根を止めた何か……石槍が彼女の身体を貫いていく。

石槍を投げる者……狩りをする原始人達は、まだ猛獣を仕留めたと考えていない。

同時に、猛獣と比べて小さい彼女の体が見えておらず……彼らは容赦無く石槍を投げ続けた。

その結果、彼女の身体のいたるところに石槍が刺さることとなった。

無論、石槍が刺さったと同時に石槍は消滅し、彼女の傷も完治する。だが、それでも彼女にとっては耐え難い苦痛に変わりないのだ。

(こ、ここから逃げなきゃ……でないと、ずっと痛い目に遭わされる……!)ヨロヨロ

彼女は震える手足で、体中を石槍で貫かれながらも、何とかその場から遠ざかることに成功した。
660 : ◆0I2Ir6M9cc [!red_res saga]:2019/11/29(金) 22:30:13.94 ID:HEE8sNIQ0






























――――――だが、彼女の苦しみはまだ終わらない。否、まだ始まったばかりなのだ。





























661 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/11/29(金) 22:41:06.79 ID:HEE8sNIQ0
「はぁっ、はぁっ……!」

彼女は飲まず食わずで、汗と土で汚れた身体を動かして……眠ることさえせず、走り続けていた。

飲食・睡眠・その他休息等を一切必要としない存在でも、今の彼女は己に対する認識が人間と同等である。

そのような状況で、こんな無茶を続けていれば……彼女の精神は疲労困憊していく。

「ぜぇ……ぜぇ……ここ、は……?」キョロキョロ

無我夢中で走っていた彼女は、気が付けば見知らぬ土地へと辿り着いていた。

少なくとも、獰猛な野生生物と殺意に満ち溢れた人間に襲われた場所ではない。

「………」ヘナヘナ

彼女は一先ず安全を確保出来たと考え、ようやく警戒を解き、その場に座り込む。

本来であれば、体力の概念等存在しない彼女だが……今だけは、ボロボロの身体を休めなければと思っていた。

「………」キョロキョロ

(周りに、何もいない……これなら、大丈夫……よね……?)

辺りは既に暗闇で覆われている。これ以上、無暗に移動したとしても迷ってしまうだけだろう。

彼女はそう結論付け、その場で仰向けとなり、静かに目を閉じる。

(……日が昇ったら、もう少し安全そうな所へ行かないと……)

例え睡眠が不必要な存在だとしても、意識を休ませることは出来る。

だが、彼女の選択は間違っていた。闇夜に紛れていた上に、己の認識が朦朧としていた彼女は見逃してしまったが……

原始人A「あれは……女、か?」

原始人B「……みたいだな」

彼女を舐め回すように見ていた、人の皮を被った野獣が近づいていたことに……
662 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/11/29(金) 22:59:37.68 ID:HEE8sNIQ0
しかし彼女は、身体を休めることに意識を集中させていた。故に彼らの接近を察知出来なかったのだ。

彼女はそのまま彼らに拉致され、住処まで運び込まれる。無論、それだけで済むはずがなく……

原始人A「はぁはぁ……」

「んっ……ぁ、え……?」

(何だか、身体が……おかしような……)

原始人B「早くしろよ」

原始人C「次は俺だぞ」

原始人A「分かってるよ!いいから黙ってろ!」

「……っ!?」

(えっ、こ、これって……嫌っ!嫌ぁっ!?)

例え汚れだらけで、ボロボロだったとしても……彼女の容姿は間違いなく美少女に分類される。

そんな彼女が、現代人よりも本能のままに行動する原始人に見つかれば……こうなることは確実だった。

「や、やだ……!やめっ……!」

原始人A「ん?目が覚めたのか?」

「あっ、あぁっ……!嫌……っ!」

原始人B「どうせならそのまま眠ってくれてた方が良かったんだがな」

原始人A「関係無い。このまま犯すだけだ」

「やめてっ……!お願いだからぁ……!」

彼女の肉体を堪能する原始人。当然、そこに愛情等は無く、あるのは醜い欲望だけ。

彼女が必死にやめてほしいと訴えたところで、猿と化した彼らの耳に届くはずがない。

原始人A「んくっ……!」

「うぅっ……どうして……どうしてぇ……!」ポロポロ

原始人C「よし、交代だ!」

無論、今の彼女はどれだけ性行為をしたとしても……本人が望まない限り、妊娠することはない。

だが、それを忘れてしまっていた彼女は……目の前が真っ暗になった。汚らわしい男達の欲を何度もぶつけられ、そのたびに――

原始人D「お前は女なんだ……!俺達の子孫を産んで、増やしてもらわなきゃな……!」

「ぐすっ……うぅっ……!」ポロポロ
663 : ◆0I2Ir6M9cc [!red_res saga]:2019/11/29(金) 23:00:40.53 ID:HEE8sNIQ0






























――――――計り知れない絶望が、彼女の精神を蝕んでいき……同時に、彼女の目から涙が溢れ出していった。





























664 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/11/29(金) 23:06:33.89 ID:HEE8sNIQ0
原始人B「あースッキリした!明日もこいつでヤろうぜ!」

原始人A「だけど生かしておくとなると、その分の食料も必要だぞ?」

原始人C「こいつに取らせればいいだろ。誰が奴隷の為の飯なんざ調達するかよ」

原始人D「それもそうだな!」

スタスタ…

「………」ピクピク…

(……どう、して……私が、こんな目に……)

彼女の目には光が宿っていなかった。その瞳の奥は、ドス黒い闇で澱んでいた。

だが、彼女の絶望はこの程度では終わらない。心無い男達に犯された翌日、彼女は無謀な狩りへと連れ出されていた。

原始人「ほら!とっとと歩け!」ガッ!

「うっ……」

原始人「ここで適当に狩りをして、自分の飯くらい何とかしろ!」

「………」

原始人「何だ?逆らうのか?それとも逃げようと企んでるのか?」

「………」

原始人「この辺りは俺達の狩り場なんだ。変な気を起こそうとしたら、すぐに仲間を呼んでお前を犯すからな」

「……どうせ私が言う通りにしても、後で……昨日のようにする気でしょう?」

原始人「当たり前だ。お前の体、最高に気持ち良かったからな!」

「………」ジワッ

(酷い……私、何も悪いこと……していないのに……)

助けを求めようとしても、周りには敵しかいない。自分1人で立ち向かおうにも、あんな大人数の男に敵うはずが無い。

彼女は彼らの言う通りにせざるを得なかった。そこから先は、彼女の地獄のような日々が続いてゆく。
665 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/11/29(金) 23:17:59.02 ID:HEE8sNIQ0
「ガルルルッ!ガアアアアアアッ!」

「かはっ……!うぐっ……!」

ある時は、無謀な狩りのせいで猛獣に襲われ、その身を噛み千切られる。

それで絶命することが出来れば、どれほど楽だったことだろう。

だが、どれほどの傷も瞬く間に全快する彼女にとっては、延々と苦痛が続いてしまう。

原始人「1つも取れなかっただと!?まさか俺達の飯をあてにしてるんじゃないだろうな!?」

「そんな、つもりじゃ……」

原始人「うるせえ!だったら今日は飯抜きで俺達に犯されてもらうからな!」グイッ

「うぐっ……!」

(目の前の人達は、何かを口にして……私は、それさえ与えられず……ただ、体を汚されて……)

ある時は、ロクに食料を得ることすらままならないまま、飲まず食わずで強姦される。

それだけではない。彼らは彼女を人として扱わず、性奴隷としか見ていなかった。

彼女に人権等存在しない。ただ強姦されるだけでなく、彼らの機嫌次第では……

原始人達「糞ッ!お前のせいで俺達まで飯抜きじゃねえか!!」バキッ!

「あうっ……!?」バタッ

原始人達「せめてお前が食い物を取っていれば、それでしのげたかもしれないのに……っ!」グイッ

「く、苦し……っ!私のせいに、しないで……っ!」

原始人達「俺達に口答えするなッ!!」バキッ!

「かはっ……!?」バタッ

ストレスの捌け口として、サンドバッグのように暴行を加えられることも多かった。

どれだけ「やめて」「嫌だ」と叫んでも、彼らの心に……彼女の心情が届くことは無い。

否、むしろ……彼らの醜い欲望ばかりが……"穢れを知らなかった"彼女に注がれてゆく。

「……っ」プルプル

(最低な、人達だ……いつも、私に……酷いことばかり、して……今だって、私のことを……汚すことしか、考えていない……)

(それだけじゃない……イライラしたり、何か気に入らないことがあれば……私を、殴って……蹴りつけて……っ!)
666 : ◆0I2Ir6M9cc [!red_res saga]:2019/11/29(金) 23:21:29.53 ID:HEE8sNIQ0






























――――――そんな日々を過ごす内に、彼女の心には……人の"悪意"ばかりが植え付けられていき、彼女自身も……歪んでいった。





























667 : ◆0I2Ir6M9cc [!red_res saga]:2019/11/29(金) 23:27:09.28 ID:HEE8sNIQ0
あれから何年経過したことだろう。彼女は強姦され、猛獣に身体を食い千切られ、暴行される日々が当たり前となっていた。

最初は事あるごとに絶望していたが、いつしか……彼女は常に濁った目で、何もかもを諦めていた。

途中、彼らが狩り場を移動したり、住処に集う原始人が入れ替わったりもしたが……不幸なことに、彼女を労わる者は誰1人いなかった。

「………」

原始人A「はぁっ、はぁっ……こいつ、最近何も喋らないな」

原始人B「下手に反抗されるよりはマシじゃないか?」

原始人A「それもそうだな。この体をずっと使えると思うと興奮するぜ!」

「………」

だが、彼女は気がついていなかった。全てに希望を見失っていた彼女であったが……

「………」ギロッ

原始人A「……ん?」

原始人B「どうした?」

原始人A「いや、こいつ、こんな真っ赤な目してたっけか?」

彼女には……"その存在"には、彼らや猛獣達の欲望と憎悪……"悪意"が注ぎ込まれ続けていたことに。

それだけでは無い。彼女は、己を支配する"絶望"と、その身に植え付けられた悪意に侵食され……

「……す」

原始人AB「は?」

「……す……す……」

原始人A「な、何だよ?」

原始人B「全然聞こえねえぞ?言いたいことがあるならはっきり言えよ」

彼女の心は……既に限界を超えていたことに。そして、悪意と絶望が入り交じり、今にも破裂寸前だった彼女の"感情"が……
668 : ◆0I2Ir6M9cc [!red_res saga]:2019/11/29(金) 23:29:46.78 ID:HEE8sNIQ0






























「お前達、全員……皆殺しにしてやる……ッ!!」


原始人AB「ッ!?」


――――――今まさに、大爆発を起こしてしまったことに。





























669 : ◆0I2Ir6M9cc [!red_res saga]:2019/11/29(金) 23:31:32.90 ID:HEE8sNIQ0
一瞬であった。彼女の溜め込んだ怒り、憎悪、絶望……その全てが、この一帯に拡散した。

「はぁはぁ……」

原始人A(骨)「」ガラガラ…

原始人B(骨)「」ガラガラ…

その他原始人達(骨)「」ガラガラ…

「……は、ははっ。凄い……急に胸の奥からドス黒い感情が込み上がってきて、それに身をゆだねたら……憎くて仕方なかった奴らが、亡骸に変わり果てるなんて……!」

それが直撃した原始人達は、彼女の膨大な絶望に飲まれ……その命が即座に散ることとなった。

「………」キョロキョロ

(いや、こいつらだけじゃない。よく見ると、周りの動植物も……)

骨×大量「」ガラガラガラ…

周囲は地獄絵図と化していた。動物は肉さえ残らず骨となり、植物は真っ黒に変色し、全てが朽ち果てていた。

この光景を見て、彼女は……確信した。自分には、生物や無生物を問わず……全てを破壊する力が宿っているということに。

否、正確には……彼女が本来持っていた力が、人の悪意に染められてしまったことで……このような力に変異してしまったのだ。

「……ははっ。あははっ……あははははっ!」

(そう……そうよ……!この世を生きている奴らなんて、どいつもこいつも……汚らわしくて、醜くて、最低で……ゴミのような奴ばっかり……!)

(私だって、ずっと酷い目に遭わされてきた……!どいつもこいつも、人間も動物も……みな存在価値など無い。あるとすれば、醜くて反吐が出る憎悪と欲だけ……!)

そして彼女は、最悪の存在と化する。彼らのせいで、本来であれば宇宙に生を与えるはずの存在だった彼女が……

(だからこそ、私が……全部、ぶっ壊してやる……!1人残らず、欠片も残さず……滅ぼしてやる……ッ!!)

この世の全てを憎み、滅ぼす存在となってしまう。今や彼女に、かつての面影は無い。

目は怒りで赤く染まり、身体は絶望で黒く染まり……肌は"無を望む"かの如く、真っ白となっていく。

彼女の姿が変貌を遂げた、まさにその時……彼女は、ある"少年"と少女達を見つける。

「……ふふっ」

(ちょうど良い。手始めにあいつらから滅ぼして…………ッ!?)

そして、彼女は衝撃を受ける。人間は滅ぼすべき醜い存在としか思っていなかった彼女にとって、少年と少女達の様子は……あり得ない光景だったのだ。
670 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/11/29(金) 23:32:29.33 ID:HEE8sNIQ0
グレ「そっかそっかぁ。2人が夫婦になるとはね〜!」

ショタ提督「………」ニコ…

ナトリ「えへへ……♪」

アサカゼ「それで子供はいつ作るの?」

グレ「あっ!それ私も気になる!」

ショタ提督(……子供?)

ナトリ「ふえっ!?そ、それは……///」モジモジ

ユー「あ、アサカゼ……!それにグレも……!」アセアセ

アサカゼ「あははっ、ごめんなさい」

ナトリ「え、えっとっ……いずれは、その……///」モジモジ

ショタ提督「……?」

グレ「……50周目提督、もしかして……意味、分かってない……?」

ショタ提督「………」

ナトリ「……そっか。そうだよね……何もかも、忘れちゃってるもんね……」

グレ「でも大丈夫!ナトリが1から全部教えてくれるから!」

ナトリ「ふえええええっ!?///」

ショタ提督「……本当?」

ナトリ「あぅ……///」

アサカゼ「もう。そんなことで照れてたら、いつまで経っても子供を産めないわよ?」

ユー「だ、だからその話題からは離れた方が……」アセアセ
671 : ◆0I2Ir6M9cc [!red_res saga]:2019/11/29(金) 23:33:05.78 ID:HEE8sNIQ0





「……何よ、あれ」

(どうして……あんなに楽しそうに、会話して……)

少年……50周目提督は、ナトリ達と楽しく会話し……明るく賑わっていた。

彼女がこれまで味わってきた、耐え難い苦痛とは……何もかもが正反対だ。

(どうして……人間は、酷い奴らばかりじゃ……)プルプル

彼女は混乱していた。今まで辛い思いばかりしてきた彼女にとって、ナトリ達のような人間は……受け入れるには、眩し過ぎたのだ。

それだけでなく、彼らが仲良くしている姿を見ていると……心の奥から、今まで感じたことが無い……ドロドロとした黒い感情が湧き上がってくる。
672 : ◆0I2Ir6M9cc [!red_res saga]:2019/11/29(金) 23:34:22.99 ID:HEE8sNIQ0
























――どうして……お前は人間と仲良くしている?




――私は人間共に酷い目に遭わされたのに。




――どうしてお前は人間と話していて、そんな幸せそうな顔をする?




――私は人間に対して、殺意しか抱いたことが無かったのに。




――どうシてお前ダけ良い想イをしテいル?




――私ハずっとト辛い思イばカりしテきたノニ




――許セナイ。




――許セナイ……許セナイ……!























673 : ◆0I2Ir6M9cc [!red_res saga]:2019/11/29(金) 23:37:45.34 ID:HEE8sNIQ0
ユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイ――――――
674 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/11/29(金) 23:40:02.20 ID:HEE8sNIQ0
今回はここまでです。お付き合いいただきありがとうございました!
更新頻度が少なくなってしまい申し訳ありません。ただ、回想パートはまだまだ続きます。
それではまた次回の更新でお会いしましょう。
675 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/29(金) 23:41:48.95 ID:fBSE6ZRco

片割れが提督になってもう片割れは深海棲艦になったのか
676 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/30(土) 00:52:27.46 ID:AUi+rTBwO

42週目提督の爪痕が深すぎる
677 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/30(土) 01:45:47.71 ID:Eg572+gm0

大戦犯42週目提督
お前のせいでやべーことになってんじゃねーか!早くなんとかしろよ!
678 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/30(土) 07:50:57.44 ID:O+CSTEuU0
乙乙
42週目提督と嫁たちは早く彼女を何とかしろ
679 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/30(土) 09:38:58.78 ID:zY0xDS6o0
しかし42週目とENDをむかえてしまった上、片割れに勝手に姿を使われたうえ深海棲艦の祖の姿にされた潮と羽黒がある意味不憫すぎる
680 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/11/30(土) 11:01:59.95 ID:yx0oMozlO
ああ深海の皆さんがやけに卑猥なのっそういう……
681 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/12/02(月) 13:46:46.53 ID:kAE8VbC50
そして42週目はこんなことになってるとも知らずにこの時代で楽しく暴れまくってんだろうな絶対
682 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/12/02(月) 20:07:42.23 ID:ilfFHXzRO
片割れが深海棲艦なら現代の艦娘とかショタ提督たちは神(の片割れ)と戦争してるって事か?なんか神話っぽいな
そして深海棲艦の元ネタになった42週目嫁コンビェ・・・これ狭霧と速吸が知ったらネタにして爆笑しそう
683 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/12/03(火) 23:11:59.61 ID:Qxttyyvg0
狭霧は絶対爆笑してるかも
速吸はむしろ一応失恋したことに感謝の涙が止まらなくなってそう……失恋艦唯一の例外だし
失恋艦で集まっても速吸に関してはむしろ本当に失恋したことが救いになっちゃってる特異例すぎるね
684 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/12/04(水) 20:49:03.46 ID:jD9SdfWF0
22:00〜23:00頃開始予定です。
685 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/12/04(水) 23:01:01.63 ID:jD9SdfWF0
始めます。
686 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/12/04(水) 23:02:41.29 ID:jD9SdfWF0
それは、我々の言葉で言い表せば……"嫉妬"。

自分ばかりが人間共に虐げられてきたのに、目の前の少年はあろうことか、人間と楽しげに会話しているではないか。

そのような光景が……残酷な事実が、心に飛び込んできて……平然としていられるほどの冷静さは、既に彼女から消え失せていた。

ショタ提督「……っ!?」ゾワッ

ショタ提督(な、何だ……!?今、氷のようにつめたく、マグマのように熱い悪意を感じたような……)

ナトリ「……50周目提督?」

それほどの黒い感情を込めていれば、人の想いに敏感である彼も当然それを察知する。

しかし、彼女は彼よりも早く己の力を解き放っていた。

彼女の心が、炎のような"嫉妬"という悪意で埋め尽くされ……気がつけば彼女は……彼らを攻撃していた。

「………」カッ

ショタ提督「……危ないッ!!」バッ!

ナトリ達「え?」

バシュウウウウウウウウウンッ!

ナトリ達「きゃあっ!?」

ショタ提督「はぁはぁ……」

ショタ提督(と、咄嗟に身体が一人でに動いて……だけど、そのお陰でナトリ達を守れた……!)

彼は反射的にナトリ達の前に立ち、その身に込められた"善意"の力を発揮し……彼女の力を防ぐ。

しかし、彼女の力はとてつもなく強い。故に、完全には防げず……周囲に分散してしまう。

彼とナトリ達の周辺に生えていた草花は黒く染まり、その生命に終止符が打たれてしまった。

ナトリ「は、花が枯れてる……!」

グレ「木もシワシワになっちゃたよ!?」

アサカゼ「う、嘘……何で……」

ユー「こんなことって……」

「……へぇ。まさか、今のを防ぐなんて」

ショタ提督「……!」クルッ

ナトリ達「だ、誰……!?」クルッ

「………」ズゴゴゴゴゴ…

ショタ提督(……ナトリ達と同じ、女の人……?)

ナトリ達(女の、子……?だけど、目が赤いし……肌も真っ白で……)
687 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/12/04(水) 23:19:17.71 ID:jD9SdfWF0
「……どうしてお前達は仲良くしているの?」

ショタ提督「……どういう、意味?」

「どうしてそんなゴミ同士で楽しそうにしてるかって言ってるのよッ!!」カッ!

ショタ提督「っ!」バッ

バシュウウウウウウウウウンッ!

ナトリ達「ひゃあっ!?」

ショタ提督「……っ!」

ショタ提督(ま、また身体が一人でに……それに、あの女の人の力を防ぐと……周りの植物から、生気が失われて……!)

彼と彼女は、元が同一の存在だとしても……今、己に宿る力の方向性は真逆と言って良いだろう。

ナトリ達から優しさや思いやり、温かさ……"善意"を注がれた彼は、人間や生物を癒し、幸福に出来る力に変貌した。

だが、心無い男達から凌辱され、人としての尊厳さえ与えられなかった彼女は……あらゆる者を破滅させる、災厄を起こす力へ変り果ててしまった。

そして、両者の考え方も正反対……彼と彼女の対立は、もはや定められた運命と言って良いだろう。

ショタ提督「……どうしてこんな酷いことをするんだ」

「酷い?馬鹿じゃないの?人間なんて……いや、この世全ての者は、どいつもこいつも醜い欲だけでのうのうと生きているゴミばかりじゃない!」

ショタ提督「そんな訳無い。人間は……いや、どの生き物も、生きる為にいつも一生懸命で……生気と活力で満ち溢れている」

「ハッ!自分のことしか考えていない馬鹿な奴らの集まりでしょうが!お陰で私は……私はずっとっ……!」ギリッ…!

ショタ提督「………」

ショタ提督(やはり感じる……彼女から、全てを埋め尽くすほどの……黒い感情を)

「それに……お前達を見ていると、凄くイライラするのよ……!」

ナトリ「い、イライラ……?」

「どうしてうわべっつらだけの、まやかしの優しさなんて向けてるのよ。どうせお前だって、そこの餓鬼のことなんか……どうでも良いと思ってるんでしょ?」

ナトリ達「……!?」

ショタ提督「………」
688 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/12/04(水) 23:37:03.60 ID:jD9SdfWF0
「だって、こいつと仲良くする理由が無いじゃない!夫婦?何を馬鹿なことを!一緒にいれば食料は多く減っていくし、狩りに出そうにもチビで役立たずでしょうが!」

ナトリ「………」

グレ「役立たず!?そんな風に考えたことなんて無いよ!」

「はっきり言ってただの邪魔者でしかない!それなのに夫婦!?どうせ性欲処理用の道具としか考えていないんでしょ!?」

アサカゼ「せ、性よ……っ!?」

「だったら何?何の利用価値さえ無いこいつと仲良くしたり夫婦になる理由は!?無いでしょ!?無いわよねぇ!?ただの無駄な行為でしかないものねぇ!?」

ユー「……何、言ってるの、この人……怖い……」

「私からすればお前達人間の方が醜くて最低な存在よ!この期に及んで性処理の為に餓鬼に媚びを売るなんて!これだから人間は度し難いゴミでしかないのよ!」

もはや彼女は自分でも何を言っているか分かっていなかった。だが、それだけ人間を含む全てに憎悪を抱いていた。

光を失った瞳で、狂気的な笑みを浮かべながら……ただ彼らに自分が抱く憎しみを洗いざらい吐き出していた。

その姿は、まさに狂人と呼ぶに相応しい。人間の"悪意"を、その身に刻まれ続けてきた彼女は……もう、戻れない領域まで堕ちてしまっていたのだ。

ショタ提督「………」

ショタ提督(ダメだ。話が通じそうにない……一体、何故この女の人は僕達を……人間をそこまで憎んで……)

対する、人の"善意"に包まれてきた彼は……彼女の言っていることが理解出来なかった。

人は優しく温かい気持ちを抱いていることを体感してきた彼は、彼女と反対の考え方なのだ。それで彼女の気持ちを理解しろというのが無理な話。

だが、彼女が異常な程に全てに対して憎悪を抱いていることだけは把握していた。彼女の思考が危険であることも、無意識の内に感じ取っていたのだ。

ナトリ「……して」

「は?」

ナトリ「今の言葉……取り消して」

「取り消す?」

ショタ提督「……ナトリ?」

ナトリ「利用価値?性欲処理……そんなこと言わないで!私は……そんな馬鹿な考えで、50周目提督と一緒にいる訳じゃないよ……!」

「……ッ!?」

ショタ提督「……!」

だが、彼女の"悪意"に真正面から反発する者が現れた。そう、50周目提督と恋仲となった……ナトリである。

ナトリにとって、彼女の言葉は……最愛の50周目提督を馬鹿にされただけでなく……

自身が抱く気持ちさえ、勝手な理由で否定されたのだ。そんな彼女の言葉を、許す訳にはいかない。絶対に、許してはいけないのだ。
689 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/12/04(水) 23:49:45.53 ID:jD9SdfWF0
ナトリ「貴女がどうしてそんなことを考えてるかは分からないけど……そんな言い方されて、黙っていられるほど……私は落ち着いていられない……!」

ナトリ「私はこの子を……右も左も分からないこの子を、ただ助けたいと思っただけ……!」

ナトリ「狩りがどうとか、役に立つかなんて……そんなこと、関係無い……!一緒にいたいと思ったから、私はこの子と一緒にいるんだよ……!」

「……やめて」

ナトリ「そんな捻くれた考えでこの子を傍に置くほど、私は酷い人間じゃない……!」

「やめなさいよ……」

ナトリ「でも、それ以上に許せないのは……!」

「やめなさいって言ってるでしょ……!」









ナトリ「大好きな50周目提督の悪口を言ったこと……!この子を悲しませるようなことをするなら、私が許さない……!」









「――ッ!!」

ショタ提督「ナトリ……」

ナトリ「……これが私の気持ち、だよ?」ギュッ

ショタ提督「……うん。僕も、同じだよ……」ギュッ

ナトリの心の叫びは、彼にしっかりと届いていた。彼の心に……その存在全てに、温かさと優しさ……"絆"が刻まれた。

「……殺す」

だが、その言葉は……感情は、彼女にとって、最も不愉快で……すぐにでも消し去ってしまいたいと思える程に、憎い言葉だったのだ。

「殺す……殺す殺す殺す殺す殺す殺すッ!全員殺してやるうううううううううううううううううッ!!」カッ

ナトリ達「っ!?」ビクッ

ショタ提督「危ないっ!」バッ

バシュウウウウウウウウウンッ!

グレ「あぁっ!?向こうの花まで枯れて……!」

アサカゼ「そ、それに……遠くで走っていた動物が、ほ、骨に……!」

ショタ提督「……どうしてこんなことをするんだ。何の罪も無い生物を痛めつけるなんて……」

「うるさいっ!お前なんかに……お前達なんかに、私の気持ちが分かってたまるかああああああああああああああああッ!!」カッ

ユー「ま、また……!」

ショタ提督「っく……!」バッ

バシュウウウウウウウウウンッ!

ショタ提督(このままでは、周囲が死の土地となってしまう……何とかしなければ……!だけど、どうやって……)
690 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/12/05(木) 00:06:57.80 ID:jYzv0GcH0
「糞ッ!」

(あいつがいる限り、私の力が分散される……周りはどんどん酷いことになっていってるけど、肝心のあいつらを滅ぼせないんじゃ……!)

(そもそも、どうして私の力を防げるのよ!さっきの男共も、向こうにいた動物も一瞬で骨になっただけなのに……!)

怒りに身を任せている彼女だが、同時に現状を分析することも怠っていなかった。

彼は少なくとも、普通の人間でないことだけは分かる。もしかすると、彼女のように得体のしれない力を行使出来る存在かもしれない。

だが、こちらの力を分散させることしか出来ないということは……少なくとも、彼女を消し去れるだけの力は持っていない可能性もある。

(……それだけじゃない。あいつは自分よりも、傍にいる女共を守ろうとしている……チッ、反吐が出るわね……)

自分より他人を優先する等、かつて自分の身体に欲をぶつけてきた人間からは想像も出来ない行動だ。

それも、私に似た力を持っているにも関わらず……人間というゴミを守る為に力を行使するという、愚かにも程がある行為。

(……気持ち悪い。気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪いッ!!こいつだけは……こいつらだけは絶対に滅ぼす……ッ!)サッ

そう考えた彼女は、力の使い方を変化させる。今までは彼らに対し、己の力をぶつけようとした。

しかし、それは彼の手によって防がれてしまう。しかし、それが突然……"ぶつける"のではなく、こちらに"引き寄せる"性質に変化したとすれば……

「……だったらこれならどう!?」カッ!

ナトリ「……っ!」ギュッ

ショタ提督(またか……!でも、力を分散させれば……!)スッ

(引っかかったわね?)ニヤリ

グレ「……あぁっ!?」ドクンッ

アサカゼ「……うっ!?」ドクンッ

ユー「……あぅっ!?」ドクンッ

ナトリ「……っ!?」ビクッ

ショタ提督「……?」

ショタ提督(おかしい……先程までとは違って、こちらへ向かって来る力を感じない……)

グレ「」バタッ

アサカゼ「」バタッ

ユー「」バタッ

ナトリ「い、今……身体が、フワッとしたような……えっ、ぐ、グレ?アサカゼ?ユー!?」チラッ

ショタ提督「ナトリ!?どうし……ッ!?」ゾクッ

ショタ提督(そ、そんな……!グレ達から、生気を感じない……!?)

「……ふふっ。くっふふ……あはっ、あはははははははははははっ!見事に騙されてくれたわね!」

ショタ提督「……グレ達に何をした」

「決まってるでしょ?力をぶつけても防がれるなら、いっそのこと……お前達の魂を吸い取って、私が直々にぶっ壊してやろうと思ったのよ!」

ショタ提督「っ!?」

ナトリ「た、魂を……?」
691 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/12/05(木) 00:18:10.17 ID:jYzv0GcH0
「でも、どうしてお前だけ無事なのかしら?4人仲良く魂を奪い取ってやろうと思ったのに」

そう。彼女の言う通り、ナトリだけは彼女による攻撃から免れることが出来ている。

結論から言えば、ナトリが彼の手を握っていたからである。そのお陰で、ナトリは彼と"共鳴"し……守られたのだ。

ナトリ「………」ギュッ

ショタ提督「……!」

ショタ提督(もしかして、僕の手に触れていたから……)

「ま、1人くらい後でどうにでもなるか。まずはこいつらの魂から消滅して……っぐ!」

ショタ提督「や、やめろ……!」

ナトリ「グレ達に何をする気……!?」

「……チッ」

(こいつら、魂になってまで抵抗するなんて……!しかも、変な力を感じる……!)

魂となったグレ達は、肉体から引き離されるも……まだその意識や精神まで消し去られてはいなかった。

それに加えて、グレ達の魂には……ある共通点があった。それは――

(眩しくて、生温くて……耐え難い気持ち悪さが体を駆け巡る……!あいつから感じる嫌悪感と同じ……!)

(……そうか。そういうことか……これがあいつの力か。どうしてこいつらに同じ力が宿っているかは分からないけど……)

――かつて彼と彼女がばら撒いた"力の欠片"。それらがナトリ、そしてグレ達の魂に宿っていたのだ。

無論、彼と彼女が持つ力と比べれば、その魂に宿る力は微々たるもの。

だが、その力は……彼と彼女が証明しているように、己が抱く想いに比例して変質し、強化されてゆく。

(……私にとって、身の毛がよだつくらい……憎くて、たまらない……ッ!!)ギリッ…!

このまま消滅などしたくない。そして……彼とナトリを守りたい。その想いが、彼女の力に抗っていた。

ショタ提督「……!」

ショタ提督(……感じる。目の前の女から……グレと、アサカゼと……ユーの想いを……!)

彼はグレ達の魂と、己の力の欠片と"共鳴"し……グレ達がまだ生きていることに気がつく。

ナトリ「……!」

ナトリ(……どうして、かな。グレ達は……まだ、死んでない……はっきり、分かる……心に、そう伝わってくる……!)

そして、グレ達と同じように彼の"欠片"を宿したナトリも、また……同じ欠片を持つ者同士で"共鳴"し、グレ達の生存を確信する。

まだ間に合う。例え肉体から魂が引き離されてしまっても、魂さえ失われていなければ……助けられる可能性は残されているのだ。
692 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/12/05(木) 00:32:09.70 ID:jYzv0GcH0
ショタ提督「……今すぐグレ達の魂を元に戻すんだ」

「言う通りにするとでも?」ギロッ

ショタ提督「………」

「あのねぇ?お前、自分の立場を分かってるの?私があのゴミ3人の魂を握ってるのよ?」

「仮にお前が私を攻撃したとしたら、私の中にいるゴミ3人も一緒に苦しむでしょうねぇ?」

ショタ提督「くっ……」

ナトリ「どうして……どうしてそんな酷いことが出来るの……!?」

「うるさいッ!!優しさなんて、思いやりなんて……全部、幻想に決まってるでしょうが!」

「人間なんか……いや、この世の何もかもがいらない……全部滅ぼしてやるッ!!」

ショタ提督「そんなこと……させる訳が……!」

「まだ言う!?それなら早く私を消してみなさいよ!私が握っているゴミ3人を犠牲にしても良いならね!」

ショタ提督「……っ!」

「ほら、早くやりなさいよ。やりなさいよ……やりなさいって言ってるでしょッ!?」

ショタ提督「………」

「どうして何もしないの!?どうせ上辺だけで仲良くしてた奴らでしょう!?どうしてそんな苦しそうな顔をするのよッ!?」

(悩むような表情をするな……悲しげな表情を見せるな……!誰かを思いやるような、生温い顔を見せるなああああああああああああああああッ!!)カッ

ショタ提督「ッ!?」

ナトリ「あっ……!?」

彼がグレ達を心配し、その身を案ずる表情を見れば見る程……彼女の"嫉妬"は膨れ上がる。

私はこんなにも苦しんだのに。私は誰にも心配されなかったのに。私は誰からも助けてもらえず、ずっと酷いことばかりされ続けてきたのに。

その黒い感情が、彼女の力を更に凶悪なものにし……今もなお抗おうとするグレ達の魂を、更に消滅まで追い詰める。

そして同時に……この世で最も憎み、汚らわしいと思う目の前の存在を……

かつて同一の存在であった彼を、消し去らんとばかりに絶望の力を打ち込む。

ショタ提督(さ、さっきの何十倍も……いや、何百倍も強い感情の力が……!だ、ダメだ、防げな――)
693 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/12/05(木) 00:49:43.72 ID:jYzv0GcH0
ナトリ「ご、50周目提督……ッ!」バッ!

ショタ提督「――!?」

彼女の力をまともに受ければ、恐らく彼は無事では済まない。本能的にそう感じた彼女は、思考より先に体が動いていた。

そして彼に覆い被さるように抱き締め、迫り来る攻撃から彼を守ろうとする。

(馬鹿ね!お前如きが盾となったところで、どっちもまとめて地獄に叩き落して……!)

ズバアアアアアアアアアアアンッ!

「……なっ!?」

ショタ提督「……え?」

ナトリ「……うぅ」バタッ

ショタ提督「な、ナト……リ……?」

ナトリは彼女の攻撃を、その身で全て受け止めた。普通の人間であれば、そのまま骨と化し……否、肉体さえ残らないだろう。

だが、ナトリは彼の"欠片"を宿し……彼と深い絆で結ばれ、そして……

彼を救いたいという強い想いが、ナトリの存在を強くし……彼女の力に抗ってみせたのだ。

それでも、やはり無傷では済まない。ナトリの身体は、生きているのが奇跡と言えるほどボロボロとなり……

ゆっくりと倒れたナトリは、既に虫の息だった。

ショタ提督「そんな……どうして……!」

ナトリ「ゴホッ……だって、50周目提督を……守りたかった、から……」

「嘘……嘘よ。あの力を食らって、生きているはずが無い……そんな馬鹿なこと、あり得る訳……!」ワナワナ

ショタ提督「……っ!」

ショタ提督(ナトリから、生気が失われていく……!このままでは、ナトリの魂が……!)

ショタ提督「……嫌だ。嫌だよ……ナトリ、死なないで……!」ギュッ

ナトリ「ぅ……」

「……こ、こんなことがあってたまるかぁッ!!自分を犠牲にして人を守る!?人間共にそんな思考が出来る訳無いッ!!これは嘘!嘘嘘嘘ッ!!嘘に決まってるッ!!」

ナトリ「……嘘なんかじゃ、無い……!」

「何……!?」

ナトリ「私、は……ゴホッ……50周目提督のことが、大好き……だから……っぐ、心の底から、愛してる……から……っ!」

ナトリ「だから……私は、自分が傷ついたとしても……ううっ、はぁっ……!この子を、守りたい……この、気持ちに……嘘なんか、無い……!」

「――ッ!!」ギリッ…!

ショタ提督(ナトリ……僕の為に……僕の、為に……そこまで、してくれて……)
694 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/12/05(木) 00:53:21.98 ID:jYzv0GcH0
ナトリ「はぁっ、はぁっ……ゲホッ!」

ショタ提督「っ!な、ナトリ!しっかり……!」パァッ…!

吐血したナトリを見て、彼はすぐにでも己に宿る力でナトリの苦痛を癒そうとする。

だが、そうは問屋が卸さないとばかりに、怒りが頂点に達した彼女が……刃を向ける。

「……させるか。これ以上、私に……その忌々しい光景を見せつけるなあああああああああああああああああッ!!」バッ!

ショタ提督「……っ!」

ショタ提督(あの女の攻撃を防がないと、全滅する……!だけど、ここで治療を止めれば、ナトリが……!どうする!?一体、どうすれば……!)

ナトリ「……50周目、提督……」ギュッ

ショタ提督「あっ……」

ナトリ「もう、いい……もう、いいの……きっと、この"身体"は……もう、助からない……」

ショタ提督「諦めちゃダメだよ!生きている限り、望みは……!」

ナトリは既に覚悟していた。このままでは、自分の身体は数分ももたないということに。

そして、仮にもう少しだけ身体が持ちこたえたとしても……目の前にいる女が攻撃すれば、自分達はただでは済まないと。

そして同時に、ナトリは確信していた。彼女がグレ達の魂を奪い取ったように……不思議な現象を引き起こせる彼なら、同様のことが出来るかもしれない。

ナトリ「……50周目提督」

ショタ提督「な、何…………ッ!?」

ショタ提督(い、今……ナトリを通じて、頭の中に……何かが、伝わってきて……!これって、ナトリの考えていること……?)

互いに親密な関係となり、魂の"共鳴"が強まった2人。既に彼とナトリは、言葉にせずとも……想いが通じ合う絆で結ばれていた。

そして彼は、ナトリの最後の手段を"把握"する。もはや賭けに近いが、現状を打開出来るとすれば……この方法しか無いだろう。

ナトリ「伝わった……みたい……うん、これなら……!」

ショタ提督「で、でも……万が一、失敗したら……」

ナトリ「大じょ……うくっ!あぁっ……大、丈夫……私を、信じ……て……!」

ショタ提督「ナトリ……」

「死ね……死ね死ね死ね死ねッ!死ねええええええええええええええええええええええッ!!」カッ!

ナトリ「お願い……っ!」

ショタ提督「っ!!」カッ…!

ナトリが彼の手を強く握り、同時に彼もナトリの手を強く握る。その瞬間、彼らの視界は眩い光に包まれ……
695 : ◆0I2Ir6M9cc [!red_res saga]:2019/12/05(木) 00:54:29.83 ID:jYzv0GcH0






























――――――ズバアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!





























696 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/12/05(木) 00:55:46.21 ID:jYzv0GcH0
「はぁはぁ……や、やった!目障りな奴らを、これで……!」

彼女は勝利を確信していた。怒りに身を任せ、己が持つ力を……彼らにぶつけた。

あれを食らえば、いくら謎の力を持った人間だったとしても……ひとたまりもないだろう。

「……なッ!?」

だが、彼女が確信した勝利は、すぐさま撤回されることとなる。何故なら、彼女の眼前には……

ショタ提督「……っ!」バッ!

凄まじい速度で接近する、彼の姿が……無傷どころか、身体に光を纏った彼の姿があったからだ。

「ど、どうして!?あれほどの力を込めたのに!?どうして無事なのよ!?」

ショタ提督「……ナトリの力」

「は……?」

ショタ提督「ナトリが、僕に……グレ達を救い、お前を退ける力を与えてくれたからだ……!」

「な、何を言って…………ッ!」

彼女は彼の背後に視線を移す。すると、そこには……

ナトリ「」

絶命し、瞳から光が失われていた……ナトリの姿があった。否、そこにはるのは、ナトリの亡骸だ。

「……は、ははっ。あはははははっ!お前、やっぱり人間だな!私からあのゴミ共を助ける為に、夫婦だとか言っていた奴を犠牲にするなんて!」

ショタ提督「………」

彼女は、後ろに横たわる亡骸を見て……彼はナトリを盾とし、その隙を突いて自分に接近したと思い込んでいた。

ショタ提督「……何を誤解しているんだ?」

「……え?」

ショタ提督「……ッ!」ドンッ!

「あっ……!?」ドサッ

(う、動けない……!それに、

彼は有無を言わさず彼女を押し倒し、両手で掴みかかる。そして己の力を込め、彼女が再び力を行使出来ないようにする。

ショタ提督「僕は言ったはずだ……ナトリから、力を与えてもらったと……」ググッ

「は、離せっ!だからそれは、あの女を犠牲に……」

ショタ提督「犠牲になんか、していない……ナトリは、今も……!」
697 : ◆0I2Ir6M9cc [!美鳥_res saga]:2019/12/05(木) 00:57:04.45 ID:jYzv0GcH0






























ショタ提督「僕の中にいる……!」



ナトリ『私なら、50周目提督の中にいる……!』





























698 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/12/05(木) 00:58:09.17 ID:jYzv0GcH0
「ッ!?」

(まさか、そんな……こいつは、私と同じ力を使って、あの女の魂を自分の中に取り込んだとでも言うの……!?)

ショタ提督「……そうだ」

「なっ……!?」

(今、私の心を読んで……)

ショタ提督「それだけじゃない。こうして、お前に触れて……ようやく分かった。いや、"思い出した"……!」

ナトリ『私も、50周目提督と1つになって……そして、貴女を魂で感じて……全部、分かった……!』

「思い出す……うぅっ!?」

その瞬間、彼女の脳裏に……失われていた記憶が蘇り、朦朧としていた認識が……覚醒した。

彼と彼女は、元は同一の存在であったこと。第三者の襲撃により、2つの存在に分離してしまったこと。

片方は、少年の姿となり……ナトリ達と共に幸せな日々を送っていたこと。

もう片方は、少女の姿となり……心無い人間や、猛獣達に……壮絶な苦痛を与えられ続けてきたこと。

そして、彼女が思い出した出来事は……同時に、元が同じ存在である彼も思い出し、彼に取り込まれたナトリにも知れ渡る。

ショタ提督「……そう、だったのか。それで、あんなことを……」

ナトリ『………』

「……ああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!」

ショタ提督「うわっ!?」

ナトリ『ご、50周目提督!?大丈夫!?』

「殺す殺す殺すッ!!お前だけは……お前だけは絶対に!何としても殺してやるッ!!うがあああああああああああああああああああああああああッ!!」

全てを思い出したことにより、彼女の絶望は……より一層、深くなってしまった。

どうして元が同じ存在なのに、少年となった自分自身ばかりが良い思いをして、私ばかりが惨めな思いをしなければならないのか。

私が醜い人間共から欲望のままに乱暴されていた裏で、こいつは呑気に楽しく暮らしていたのだ。

それを許すことなど、出来るはずがない……受け入れて、納得出来るはずが無い……彼女の怒りは暴走し、自分を押し倒す"自分"を滅ぼそうと決めた。

ショタ提督「っぐ……!?ば、馬鹿な真似はやめるんだ……!」

「お前なんかに私の気持ちが理解出来るかッ!!お前が楽しく暮らしていた時に、私は……私はあああああああああああああああああああッ!!」

ナトリ『だからって……何の罪も無いグレ達の魂を奪うことが、許される訳……!』

「うるさいって言ってるでしょッ!!こいつ諸共、お前も消してやる!絶対に消してやるううううううううううううううううッ!!」

ショタ提督(す、凄くドロドロした、黒い感情の力が流れ込んでくる……!それだけ、"僕"が感じた絶望は……!)ググッ

ショタ提督(……だけど、それでも……ナトリや、グレ達を傷つけようとするなら……僕は、"僕"を……退けなければならない……!)

彼女の途方も無い絶望……そして、その記憶……彼は彼女の全てを知るも、やはり彼女との和解は出来ないと結論付けた。

何より、彼女は既にグレ達の命を殺めようとしているのだ。せめて、グレ達を救ってからでないと……まともに話し合うことなど、出来ないだろう。
699 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/12/05(木) 00:59:16.04 ID:jYzv0GcH0
「殺す殺す殺す殺す殺すッ!絶対に殺すッ!お前だけは許さないッ!死ねええええええええええええええええええええええええッ!!」

ショタ提督「ぐぅっ……!」

ナトリ『だ、大丈夫……!?』

ショタ提督(な、何とか……一刻も早く、グレ達の魂を救い出さないと……!)

『……けて』

ショタ提督「……!」

ナトリ『この声って……!』

グレ『助けて……!もう、限界……っ!』

アサカゼ『ずっと抵抗してたけど、これ以上は……っ!』

ユー『私達、消えちゃう……!』

ナトリ『皆……!』

ショタ提督「……っ!」

彼女の心の奥から、確かに聞こえてきた……グレ達の声。

それは今にも消えてしまいそうで……グレ達の魂、すなわち、命が尽きるまで……猶予が残っていないことを示していた。

その瞬間、彼の中に……今まで抱いたことが無かった、強い感情が湧き上がってきた。

ショタ提督「……せ」

ナトリ『あっ……!』

ショタ提督「返せ……グレを、アサカゼを、ユーを……僕の大切な人達を……返せえええええええええええええええええええッ!!」カッ!

「うぐっ!?あっ、ぁ、ぁあああああああああああああああああああああああああああああッ!?」

それは"怒り"。それも彼女のような、自分本位の怒りでは無い。

彼の怒りは、大切な者を傷つけ、その命を散らそうとしている……誰かの為の怒りだ。

ナトリ『……そうだよ。返してよ……!私の大切な友達を、返してええええええええええええええええええッ!!』カッ!

「がああああああああああああああああああああああああああああああああッ!?」

それに加えて、彼に取り込まれたナトリも……彼と同様、グラ達を傷つけたことに対する怒りが爆発した。

両者の怒りが莫大なエネルギーとなり、容赦無く彼女を襲い掛かった。

その瞬間、彼と彼女、そしてナトリのエネルギーが……彼と彼女の身体の中で1つとなり、互いに激しく衝突した。
700 : ◆0I2Ir6M9cc [!red_res saga]:2019/12/05(木) 01:00:10.40 ID:jYzv0GcH0






























――――――だが、今の彼と彼女は……既に互いが背反する存在となっていた。



――――――そのような者同士が、強い力を持って衝突すれば……あるいは、1つになろうとすれば……待ち受ける結果は、ただ1つのみ。





























701 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/12/05(木) 01:01:22.95 ID:jYzv0GcH0
ズバアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!

「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああッ!?」

ショタ提督「うわあああああああああああああああああああああああああああああッ!?」

ナトリ『きゃあああああああああああああああああああああああああああっ!?』

互いに正反対となった存在が持つ力が触れ合ったことで、彼と彼女は互いに反発する力に耐えられず……再び破裂してしまう。

ただ、42周目提督が介入した時とは異なり、今回はあくまでも彼と彼女の存在が分裂してしまったことに留まり、物理的な爆発は起こらなかった。

しかし、破裂した彼と彼女は無事で済むはずが無く、身体が凄まじい勢いでバラバラとなってゆく。

同時に、彼と彼女の身体が破裂したことにより、2人が持つ力の破片を……再び、時空を超えてこの世へばら撒いてしまうこととなった。

「あ……あがっ……糞っ……糞ぉっ……!絶対……絶対に、殺してやる……ぅ……」

ショタ提督「……"僕"が……消え、た……」チラッ

魂(グレ)『………』シュンッ…

魂(アサカゼ)『………』シュン…

魂(ユー)『………』シュン…

ショタ提督「……っ」

ショタ提督(ごめん、なさい……グレ達のこと、救ってあげられなかった……元に、戻して……あげられなかった……)

ショタ提督(だけど……魂さえ消滅していないなら……あの世へいくか、もしくは……輪廻転生して、新たな生命に……)

ショタ提督(強い未練を残した時は、幽霊としてこの世を彷徨うこともあるけど……でも、グレ達は違う……既に、旅立とうとして……)

薄れゆく意識の中、グレ達の魂が彼女から解放され……肉体を失ったことにより、天に召される姿が見えた。

恐らくこのまま、あの世へと旅立っていくのだろう。もし、彼に十分な力が残されていれば、すぐにでも魂を肉体に戻していたことだろう。

だが、彼にはもう、そのような力は残されていなかった。旅立つ魂を、眺めていることしか出来なかったのだ。

グレ達を救えなかった無力感と悲しさが、彼の心を締め付ける。だが、それ以上に……彼にとって、救えなかったことが悲しくてたまらない人物がいた。

ナトリ『……50周目、提督……』

ショタ提督「……ナト、リ……君も……」

ナトリ『……うん。グレ達と一緒に……消えちゃう、みたい……』

ショタ提督「……ごめん、なさい……僕が、ナトリを……救えなかった、から……!あんなことを、させて……しまったから……っ!」ジワッ…

それは、彼が初めて流した"涙"だった。今まで、彼はナトリ達人間が持つ優しさに包まれて過ごしてきたが、別れは経験したことが無かったのだ。

無論、全てを思い出した彼は、知識として別れを理解していたが……それでも、このような形で……最愛の人と別れることになるとは、思ってもいなかったのだ。

ショタ提督「……っ!」ポロポロ

ショタ提督(離れたくない……!僕に、温かい気持ちを……ずっと、注いでくれたのに……!僕が、初めて……好きになった人なのに……!)ポロポロ

ショタ提督(逝かないで……!僕の傍にいて……!お願いだから……っ!)ポロポロ

涙がとめどなく溢れ出す。最愛の人との、永遠の別れになるかもしれないという状況とならば……元が神と言える存在だったとしても、悲しくてたまらない。

否、彼がこれほど人間らしい感情を持つようになったのは……やはり、ナトリやグレ達との交流を経たお陰だろう。
702 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/12/05(木) 01:02:25.14 ID:jYzv0GcH0
ナトリ『………』ダキッ

ショタ提督「あ……っ」ポロポロ

ナトリ『……ありがとう。私のことを、そこまで……好きになってくれて……』ギュウッ

ナトリは消えゆく身体で、彼を力一杯抱き締め……既に透け始めた手で、彼の頭を撫でる。

同時に、ナトリの魂を通じて……彼に、温かい感情とナトリの"心情"が注ぎ込まれてゆく。

ショタ提督「……ナト、リ……」ポロポロ

ナトリ『50周目提督、今……輪廻転生って、考えたよね……?また、新しい生命として……生まれ変わるって……』

ショタ提督「………」ポロポロ

ナトリ『……大丈夫。私と50周目提督の"絆"は……こうして、魂同士で繋がった"絆"は……そう簡単に、途切れたりはしないよ』

ナトリ『今はお別れになっちゃうかもしれないけど……私は、また……絶対に、貴方へ会いに行く』

ショタ提督「……!」ポロポロ

ナトリ『どんなに気が遠くなるほど、離れ離れになったとしても……いつか、必ず……もう1度、こうして貴女を抱き締めに戻って来る……!』ジワッ

ナトリ『約束、する……!私が好きなのは、今も……そして、これからも……こうして、命がけで守ってくれた……貴女だけ、だから……!』ポロポロ

ショタ提督「……うん、うんっ……!約束、だよ……?絶対に、また……会おうね……?ずっと、待ってるからね……!」ポロポロ

互いに薄れゆく意識の中、彼とナトリは……再び出会うことを約束した。彼はいつか目が覚めた後に、ナトリは輪廻転生を経た後に。

ナトリ『……んっ』チュッ

ショタ提督「ん……」

彼とナトリは……生まれて初めて、キスをする。お互いの、不滅の愛を誓い合うように。

そして……どれほど離れ離れになったとしても、いずれ再会すると誓い合うように。

ナトリ『……50周目提督』

ショタ提督「……ナトリ」
703 : ◆0I2Ir6M9cc [!美鳥_res saga]:2019/12/05(木) 01:03:34.27 ID:jYzv0GcH0






























魂(ナトリ)『……また、ね……?今度は、ずっと一緒に――――』シュン…


ショタ提督「……うん。また……今度こそ、ずっと……一緒に……」


ショタ提督(……恐らく僕は、再び永い眠りにつくだろう。けど、次も必ず目を覚ましてみせる……ナトリの為に――――)


そして、ナトリの魂はあの世へ旅立ち……彼の意識は無くなり、再び力が集うまで……永い永い眠りへとついた。





























704 : ◆0I2Ir6M9cc [!美鳥_res saga]:2019/12/05(木) 01:08:48.02 ID:jYzv0GcH0
今回はここまでです。遅くまでお付き合いいただきありがとうございました!
え〜っと、もはや艦これ要素がほとんど無いような……(白目)
ですが回想パートとしてはようやく半分〜2/3が終わったかな?という感じです。はい、まだ続くんです。
打ち切りみたいな〆ですが、まだまだ続きます。相変わらず長くてすみません。

それではまた次回の更新でお会いしましょう。
705 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/12/05(木) 01:09:28.11 ID:jYzv0GcH0
黒字に戻すのを忘れるミス……何度もすみません!今度こそ次回の更新でお会いしましょう。
706 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/12/05(木) 01:09:46.95 ID:23Uzi1OAO
707 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/12/05(木) 07:43:51.21 ID:xeKfT5g/O
おつおつ
42週目ショタ安価でギャグ補正やばすぎる提督が選ばれた時は笑ったがまさか最終回でこんなことになるとはな・・・
このスレで「だいたいこいつのせい」がこれほど当てはまるキャラは42週目提督以外にいないと思う
708 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/12/10(火) 10:53:50.62 ID:XXOJRMNp0
これで42週目の時ギャグ補正ヤバすぎ提督が選ばれてなかったらどうなってたんだろう
709 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/12/15(日) 16:56:07.82 ID:AjcP0Ezj0
22:00〜23:00頃開始予定です。
710 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/12/15(日) 22:33:12.71 ID:AjcP0Ezj0
始めます。
711 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/12/15(日) 22:35:41.26 ID:AjcP0Ezj0
ナトリ「……!」ガバッ

グレ「うぅ……」ムクリ…

アサカゼ「あ、れ……」ムクリ…

ユー「私……さっき、消えちゃいそうになって……」ムクリ…

魂となり、現世から旅立ったナトリ達は……とある場所で目覚める。

そこは綺麗な花畑が広がり……虹がかかる青い空を、小鳥が飛びながらさえずっている。

グレ「ここ……どこ……?」

アサカゼ「凄く綺麗な場所だけど……」

ユー「……何だか、温かい」

ナトリ「………」

温かいそよ風が、ナトリ達の体に優しく触れる。そう、ここは正しく、死者の魂が集う"あの世"だ。

グレ、アサカゼ、ユーは現状を把握出来ていなかったが……ナトリだけは違っていた。

ナトリ(……私達がここにいるということは、やっぱり……)

彼と文字通り"1つ"となり、様々な想いを共有したナトリは……この場所の意味を理解していた。

自分はやはり"死んだ"のだと。そして……グレ達も"死んでしまった"のだと。

グレ「それに、私達以外……誰もいないよ……?」

アサカゼ「そういえば、確かに……」

ユー「……?」キョロキョロ

ナトリ「………」グッ…

ナトリ(だけど、私は諦めない……約束したから。50周目提督と……あの子の元へ、必ず戻るって……!)

ナトリ(こんな場所で立っている場合じゃない……一刻も早く、"転生"しないと……!でも、どうやって……)
712 : ◆0I2Ir6M9cc [!美鳥_res saga]:2019/12/15(日) 22:36:55.06 ID:AjcP0Ezj0






























「……それについては、僕が説明するよ」





























713 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/12/15(日) 22:42:52.17 ID:AjcP0Ezj0
ナトリ達「……っ!?」クルッ

「………」

ナトリ(50周目提督と、同じ服を着た……男の子……?)

突然、後ろから声が聞こえる。ナトリ達が振り向くと、そこには……彼と同じ白い服と帽子を身に着けた、"少年にしか見えない男性"が立っていた。

その表情は、どこか穏やかで……同時に、どこか悲しげで……しかし、そこには確かな意志が宿っていた。

ユー「だ、誰……?」

「……ごめんなさい。驚かせちゃったね」

グレ「………」

アサカゼ「………」

「………」

(本当に、名取さんやグレカーレちゃん、朝風ちゃんやユーちゃんにそっくり……そうか。彼女達が……)

ナトリ「……説明」

「……!」

ナトリ「説明、してくれるんだよね……?"転生"して、もう1度……50周目提督に会える方法を……」

グレ「……ハッ!?そ、そうだよ!私達、さっきまで50周目提督に守ってもらって……」

アサカゼ「あれ?だったらどうして私達はこんな所に……」

ユー「それに、ナトリも……」

「……うん。順を追って説明するね?まず、落ち着いて聞いて欲しいんだけど……君達は"死んでしまった"。ここは"あの世"……死んだ人達が来る場所なんだ」

グレ達「ッ!?」

ナトリ「………」

謎の少年から告げられた事実に、グレ達はショックを受け、激しく動揺する。

無論、既に全てを察していたナトリだけは、少年からの言葉を冷静に受け止めているが。

グレ「そ、そんな……!」ガクガク

アサカゼ「じゃあ私達は、皆あいつに……っ!」ギリッ

ユー「嫌……嫌ぁっ……!」

ナトリ「……だけど、貴方がこうして来てくれたのは……それで終わりじゃないから、だよね?」

「……うん」

グレ達「……え?」
714 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/12/15(日) 22:50:19.54 ID:AjcP0Ezj0
「貴女達は、現世に強い未練を……あるいは、それに近い信念を持って……絶命した。だからこそ、チャンスを与えられることになったんだ」

グレ達「チャンス……?」

ナトリ「………」

「ほら、あれを見てごらん?」スッ…

サアァ…!

ナトリ達「……!」

少年が指を向ける先。そこには虹色の光に包まれた……1つの穴があった。

「あの穴に飛び込めば、貴女達はもう1度……人生を初めからやり直せる……」

グレ「ほ、本当に!?」

アサカゼ「じゃあ、生き返ることが出来るの!?」

ユー「また、50周目提督に……会える……!?」

「………」

ナトリ「……!」

しかし、ナトリは見逃さなかった……少年が一瞬だけ見せた、僅かな陰りを。

そして、ナトリは確信した。恐らく少年は、次に辛い事実を突きつけて来るであろうことを。

「……普通なら、ね。だけど、貴女達の場合は……魂に、真っ黒な呪いが染み付いてしまっている」

グレ達「の、呪いって……まさか……!」

ナトリ「……あの女の子の力?」

彼女の力をまともに受けてしまったグレ達、彼と共に彼女に対抗したナトリ。

その魂には、多かれ少なかれ……彼女の、ドス黒い絶望が混ざり込んでしまっていたのだ。

「正解。今は"あの世"……死後の世界にいるから、その呪いの影響を受けていない。でも、このまま現世に戻れば……どんなことになるかは、僕にも分からない」

ナトリ達「………」

「少なくとも、同じ自分に乗り移る完全な"転生"は……ただ、来世の自分に乗り移る"輪廻転生"なら、何とかなるかもしれない。その時には1度、魂が浄化されるはずだから」

ナトリ「……!」

「だけど、それでも……きっと、何かしらの影響は出てしまう。恐らく、染み付いた呪いを洗い流す時に……前世の記憶、つまり、今の貴女達の記憶が失われてしまうかもしれない」

ナトリ達「……ッ!」
715 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/12/15(日) 22:57:43.44 ID:AjcP0Ezj0
「……転生出来るタイミングはこの瞬間だけ。この機会を逃してしまえば……もう2度と、転生することが出来なくなってしまう」

ナトリ「………」

グレ「………」

アサカゼ「………」

ユー「………」

グレ達は大いに悩んだ。例え生き返ることが出来たとしても、今まで過ごして来た思い出を全て忘れてしまうこととなるのだ。

そうなってしまえば、自分の今までの人生を全て否定し、壊してしまうことと同義だ。

ナトリ「……それでも」

グレ達「……!」

だが、ナトリだけは違った。仮に記憶を失ったとしても……ナトリには、確固たる意志があった。

ナトリ「このまま、本当の意味で死んでしまうより……もう1度、新しい人生を歩みたい」

ナトリ「そして……50周目提督に会いたい。約束したから……絶対に、また会うって……!」

ナトリ(もし、記憶が消えてしまっても……私の魂に刻まれた、50周目提督への想いは消えない……絶対に、消えたりしない……!)

彼を愛する気持ち……彼と魂を通じて1つとなった、あの時の感覚……彼と出会い、今まで深め合ってきた絆……それが消えることは無い。

記憶が無くなってしまっても、彼と出会うことさえ出来れば……必ず思い出す。ナトリはそう信じていた。

グレ「……そう、だよね。私、まだ……お礼言ってないよ。助けようとしてくれて、ありがとうって……!」

アサカゼ「……えぇ。50周目提督は、自分の身を削る思いで、私達を助けようとしてくれたのに……感謝の気持ちさえ伝えられないままだなんて……!」

ユー「そんなの、嫌……!ちゃんと、50周目提督に……お礼を言いたい……!」

「……決まったみたいだね」

少年はまるでこうなることを予想していたかのように、微笑みながらナトリ達を眺める。

ユー「うん……!」

アサカゼ「私達は……」

グレ「全員……転生して……」

ナトリ「……50周目提督と、再会する」

ナトリ(そして……今度こそ、ずっと一緒に……!)

「………」ニコッ

(うん、感じる……4人の気持ち、いや、魂が……1つの気持ちで繋がっているのを……!)
716 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/12/15(日) 23:01:04.46 ID:AjcP0Ezj0
ナトリ達「………」ザッ…

ナトリ達は静かに、しかし力強く穴の前に立つ。その瞳に迷いは無かった。

ナトリ「……ありがとう」

「……ううん。お礼を言われる程のことじゃないよ。僕はただ、貴女達に……転生出来るという事実を教えたに過ぎない」

ナトリ「それでも、言わせて……?私に……私達に、あの子と再会出来るようにしてくれて……本当に、ありがとう……!」

グレ達「ありがとう……!」

「………」ニコ…

(……僕が知っている名取さん達とは違う。紛れも無く別人のはずなのに……やっぱり、重ねてしまう。どこからどう見ても、その笑顔は……名取さん達で……)ギュッ

ナトリ達「………」

ナトリ達(この穴に入れば、私達は……よし、覚悟は出来た。せーのっ!)

ナトリ達「……っ!」ピョンッ!

パシュウウウウウウウウウウウンッ!

「うっ……!」

スゥッ…

ナトリ達が穴に飛び込んだ瞬間、穴は眩い光を出しながら輝き……ナトリ達と共に消失した。

それを見た少年は、ナトリ達が現世へと旅立ち……輪廻転生していったのだと確信する。

「………」

(大丈夫。名取さん達に、その強い想いがある限り……いつかきっと、今までの出来事を思い出すはず)

(僕だって、ここに来てから……1度も忘れたことが無い。今だって、ずっと……"見ている"から)

(最愛の人の人生を……息子と娘、そして……"孫"が歩む人生を……それだけじゃない。尊敬する"先輩"の人生を……)
717 : ◆0I2Ir6M9cc [!美鳥_res saga]:2019/12/15(日) 23:01:50.62 ID:AjcP0Ezj0






























48周目提督(……神風ちゃん、1周目父、かみかぜ……1周目提督……今は元帥となった、先輩……)

48周目提督(約束したから。例え死んでしまっても、僕は……ずっと、神風ちゃん達を愛してるって……!)ギュッ

48周目提督「………」

48周目提督(でも……現世へ旅立っていった、名取さん達のことも……時々、見るようにしようかな)

48周目提督(乗りかかった船だし……いずれ、また……出会うことになるだろうから。もしかすると、近い内に……)
718 : ◆0I2Ir6M9cc [!美鳥_res saga]:2019/12/15(日) 23:04:43.51 ID:AjcP0Ezj0






























――体が、フワフワして……落ちているはずなのに、宙に浮かんでいるような……


――同時に、頭の中が……洗い流されていくような……あれ?私……何して……


――ッ!?いけない!忘れちゃダメ……!私は、50周目提督と再会する為に……


――50周目提督……?誰のこと、だろう……


――うっ、うぅっ……!だから、忘れちゃ……ダメ……!


――あの子は、私の……大好きな、人で……それで……


――それ、で……?私、一体……何を考えて……





























719 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/12/15(日) 23:05:49.08 ID:AjcP0Ezj0






























――――――ナトリ達……否、彼女らは、その魂が浄化され……少年の懸念通り、前世の記憶を失ってしまった。


――――――永遠と言えるかもしれない。あるいは、ほんの一瞬の出来事だったのかもしれない。


――――――己が何者で、どのような存在であるかさえ、不明瞭だった彼女らが……再び目を覚ます時が訪れる。


――――――全てが消え失せてしまったかと思われたが……そうでは無かった。ただ1つだけ、忘れてはいなかったのだ。





























720 : ◆0I2Ir6M9cc [!美鳥_res saga]:2019/12/15(日) 23:07:02.96 ID:AjcP0Ezj0

























――真っ暗で、何も見えない……

――私は、“何”……?何、なの……?

――分からない……何も、分からないよ……

――だけど……どうして、かな……?




――――――ずっと、待ち望んでいたかのような……




――温かくて、安心する……でも、それと同じくらい……

――切なくて、悲しい……

――私、どうして……こんな気持ちに……?

――自分が“何者”かも、はっきりしないのに……




――――――でも、これだけは言い切れる。

――――――私の、この気持ちは……!今、抱いている“想い”は……!
























721 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/12/15(日) 23:08:33.42 ID:AjcP0Ezj0






























――――――"彼"との再会を望む気持ちを。そして……"彼"を、この世の誰よりも愛しているという……"魂に刻まれた想い"を。





























722 : ◆0I2Ir6M9cc [!red_res saga]:2019/12/15(日) 23:10:10.89 ID:AjcP0Ezj0






























――――――だが、その間に……"彼"と"彼女"による、骨肉の争いと言う言葉さえ生温く、それでいて……静かな攻防が繰り広げられていたのだ。





























723 : ◆0I2Ir6M9cc [!red_res saga]:2019/12/15(日) 23:12:30.04 ID:AjcP0Ezj0
彼と彼女の拒絶反応により、2つの存在は再び破裂してしまい……時空を超えて力の欠片をばら撒いてしまう。

それがきっかけで、彼と彼女は己の存在を維持出来なくなり……永い眠りにつくこととなった。

その間に、各時代で力の欠片を宿した存在が生まれ……時には"善意"を、時には"悪意"を生み出すこととなる。

無論、そのような力とは無関係に……人は他者を思いやり、同時に憎しみを抱く。

彼と彼女は、無意識の内に……前者は"善意"、後者は"悪意"の想いを集めてゆく。

だがそれは、1つ1つが小さい力にしかならない。故に、再び彼と彼女が具現化されるまで……実に数万年の時が流れた。

それも、彼と彼女が全く同じタイミングで具現化されたのでは無い。

「……うぅ」

冷たく暗い海の底。そこで……"彼女"は目が覚めた。

彼が抱いていた"希望"より、彼女が感じていた"絶望"の方が大きく深い。故に彼女の"悪意"を引き付ける力が上回ったのだ。

「ここ、は……海?それも、かなり底の方ね……」

彼女は具現化された直後、全てを把握した。以前のような、自我さえ朦朧としている状態にはならなかった。

1度は彼と合体し、全てを"思い出した"ことは……彼女の絶望を深めるだけでなく、存在の安定にも繋がったのだ。

「………」

(あれから一体、どれほどの時が経ったのかしら……本当なら、今すぐにでも全てを破壊してやりたいけど……)

(自分の姿形を保つのがギリギリである以上、"今"はまだ無理ね……しばらくはここから、ゴミ共の憎しみを集め続けないと……)

今は憎悪の化身となってしまった彼女だが、元は神と言っても差し支えない存在。

仄暗い海の底にいたとしても、人間が生み出す"悪意"を吸収する程度のことは造作も無いのだ。

(真っ赤な瞳に、真っ白な肌……ハッ。確かに私には、こういう誰も近付けない深海がお似合いかもね……)

(それにしても、あんなこの世に必要の無いゴミ共の感情を利用しないといけないなんて……っ!)ギリッ…!

(でも、そいつらを利用するだけ使用して……後で文字通り、ゴミとして処分してやれば……そう考えれば、少しは怒りも鎮ま…………ん?この気配って……)

そこで彼女は気が付く。海の底に、それはもう憎く……同時に、今まさに必要としていた存在が近づいていたことを。

そしてそれは、同時に"その人間"にとって……とてつもなく不幸と言えるであろう運命の時が迫っていることを意味していた。
724 : ◆0I2Ir6M9cc [!red_res saga]:2019/12/15(日) 23:15:05.33 ID:AjcP0Ezj0
15周目提督(10)「」ゴボゴボ…

(まさか……人間?でも、こんな過酷な場所、あんなゴミが生存出来るはずが……)

そう。謎の存在により不老不死の力を与えられ、孤独に苦しみながら800年を生き続けた……15周目提督である。

彼女が目覚めたのは、正しく15周目提督が溺れてしまった日……言い換えれば、彼に不死の力が植え付けられた日であったのだ。

「………」

(いや、違う。あいつ、後少しで死ぬわね。呼吸も止まってるし、魂がいまにも肉体から離れようとしている……)

彼は溺死寸前であった。このまま放置していれば、ものの数分で死に至るだろう。

仮に命だけが助かったとしても、長時間の呼吸停止による何かしらの後遺症は避けられない。

(あははっ、無様ね。人間の分際で調子に乗って海を泳ぐからよ。このままこいつの身体が腐り果てていくのを眺め……いや、待てよ?)

そこで彼女はあることを思いつく。目覚めたばかりの状況で、自身の力がどこまで人間に作用するのか。

いずれはこの世を滅ぼそうと考えていても、力が足りなければただ深海で身を潜めることしか出来ない。

しかし、もしかすると……現時点でも、深海から人間に干渉出来るだけの力は集っているかもしれない。

(……こいつで試してみましょうか。どうせ失敗したところで、こいつが無残な死を遂げるだけだもの)スッ…

彼女は、顔面蒼白となった彼に手を向け……己が持つ力の、それも僅かな量を注ぎ込む。

最大の力を発揮し、また永い眠りにつくことになってしまえば本末転倒だ。こんな状況で無茶は出来ない。

「……っ!」ピカッ!

15周目提督「」

「……さて、どうなるかしら」

15周目提督「」

「………」

(反応が無いわね……やはり失敗かしら。となると、しばらくはここで"悪意"を集めるしか……)

15周目提督「」ピクッ

「……!」

15周目提督「………」ピクッ…ピクッ…

(……死にかけていた肉体の生命活動が再開した?それに、血色もどんどん良くなって……こいつの魂が、私の力で……肉体に縛り付けられて……)

彼女が力を注ぐと、死亡直前まで追い込まれていた彼は……再び息を吹き返し、みるみる内に健康体となってゆく。

まるで先程まで溺死寸前だったと言われても信じられない程に……"死の概念さえ存在しない"と思い込んでしまう程に。
725 : ◆0I2Ir6M9cc [!red_res saga]:2019/12/15(日) 23:17:19.92 ID:AjcP0Ezj0
「……これは収穫だわ。どうやら、今の私でも……ゴミ共にここまで干渉することが出来るなんて」

(まさか、魂と肉体ががんじがらめになることで不老不死となるなんて……ま、私が与えた力だし、その気になればいつでも取り払えるけど……)

15周目提督「うん……あれ?オラ、確か溺れとったはず……」

「………」ニヤリ

(当然そんなことする訳無い。こいつには、無限の寿命を生き続ける地獄を味わってもらわないとね……そして私の糧にしてあげるわ)

己の力が人間に干渉出来る。その事実を知ることが出来ただけでも、彼女にとっては朗報だった。

無論、彼のように至近距離では無く、深海から干渉するとなれば、それだけ彼女の干渉による影響力は小さくなってしまう。

だが、1人の人間を容易く不老不死にしてしまう程の力であれば、人々の不幸をかき集めるには十分過ぎる程だ。

「気がついた?ふぅ……その様子だと間に合ったみたいね」

(本当なら、今すぐこいつに絶望を突き付けたいけど……まずは希望を与えて、その後に叩き落した方が……あはっ)ニヤッ

15周目提督「んぁ?おめぇ誰だ?もしかしてオラを助けてくれたんか?」

「まぁそんなところ。危なかったわね〜、私が見つけなかったら今頃海の底で骨になってたわよ?」

(うげぇっ……嘘でもこんな演技をしなきゃいけないなんて反吐が出るわ。でも、後に取り込む絶望の為……!)

15周目提督「うえぇ!?そ、そうだったんか……あんがとな!おめぇはオラの命の恩人だ!」

(恩人、ね……あははっ、馬鹿じゃないの?)

「まったく……次はもっと浅瀬で泳ぎなさいよ?」

15周目提督「いやぁ〜あはは……」

「………」

(何も知らないまま地上に返すか、あえて不老不死の事実を教えておくか……後者ね。この歳のガキなら、きっと不老不死になったと思えば喜ぶはず……)

(そしていずれは、自分が不老不死という呪われた存在にされたことに絶望……あはっ。ゴミにはお似合いの末路ね)ニヤリ

「……1つだけ、いい?」

15周目提督「ん?どした?」

彼女は彼に、自身の力を与えて不老不死にしたことを伝える。現在とは違い、まだ不老不死の怖さを理解出来なかった彼は、当然喜んだ。

見事に己の策略通りの展開となり、彼女は彼に気づかれないようほくそ笑む。

同時に、人間がいかに浅はかで救いようのない存在であることを再確認した。
726 : ◆0I2Ir6M9cc [!red_res saga]:2019/12/15(日) 23:19:39.96 ID:AjcP0Ezj0
「それこそ矢が刺さろうが火で焼かれようが刀で斬られようが……痛くも痒くも無いわ」

15周目提督「おおー!オラの体は鋼鉄じゃー!どんな敵でもかかって来い!あはははは!」キャッキャ

(ハッ。本当に何も知らないのね……"殺してくれと思う程の絶望を味わっても、死ぬことさえ許されない"ことが、どれほど苦痛なのかを……)

15周目提督「そんで、オラはどうやって元の場所に帰ればいいんだ?いつも遊んでる2人が待って……」

「それなら普通に泳いで行けばいいわ。ここは貴方が溺れていた場所の真下だから、上に泳ぎ続ければ10分くらいで浜辺に着くわ」

15周目提督「そっか!あんがとな〜!んしょんしょ!」ゴボゴボ

「……はぁ。私って甘いなぁ……どうせこの先、人類と争うことになるのに……」

彼は……無限の命を与えられてしまった15周目提督は、上機嫌で海上へと泳いで行った。

その様子を、さも申し訳無さそうな表情を……浮かべる演技をしながら、無知な彼を見上げる彼女。

「……なんてね。恩人?甘い?馬っ鹿じゃないの!?誰がお前のようなゴミを善意で助けるかっての!」

(お前は後で想像を絶する苦しみを味わえ……不老不死という事実が、どれ程に耐え難い苦痛なのかを……あはっ、あはははははっ!)

彼女の思惑通り……彼はその後、村から化け物として追い出され、両親に先立たれてしまう。

それどころか、自殺して後を追うことさえ許されず、800年もの長い間、出会いと別れ……そして、孤独に苦しめられることとなる。

だが、それはまだ彼女が引き起こす絶望の前座に過ぎないのだ。現に彼女は今……

「まだこの世を全て壊し尽くすには足りない……全ッ然足りない!だけど、人間に干渉出来ることは分かった……」

「だったら、私が全盛期の力を取り戻すまで……深海からでも、ゴミ共を不幸のどん底に叩き落してやる!」

(直接は干渉出来なくても、間接的な干渉なら……そうね。人間共の思考や精神に影響を与えて、憎悪を引き出すくらいのことなら簡単じゃない)

……人の精神、否、"魂"に干渉し……人々が自ら"悪意"を生み出す方向へ誘導するという最悪な手段を思いついてしまったのだ。

言わば因果へ干渉するのと同義。無論、今の彼女の力では、全人類を同時に操ることは不可能だろう。

しかし、それならば1人1人の悪意を増大させてしまえば……その後は人間同士が勝手に同士討ちし、醜い争いを勃発させるだろう。

(あははははっ!どうよ!止められるもんなら止めてみなさい!この世の誰よりも憎くて、今すぐにでも消し去ってやりたい……もう1人の"私"……!)

(お前がいつ目覚めるか、もしくは永久に目覚めないか……どっちにしても関係無い!お前が私の前に現れる頃には、全てを手遅れにしてやるッ!!)

もう1人の自分……"彼"に対する執念と怒り、その他考え得る"悪意"が、彼女の持つ力をより一層強化してしまう。

彼女と彼は、元は同一の存在。そう言われて瞬時に理解出来る人が、果たしてこの世にいるだろうか……否、いるはずが無いだろう。
727 : ◆0I2Ir6M9cc [!red_res saga]:2019/12/15(日) 23:21:26.24 ID:AjcP0Ezj0






























――――――後に15周目提督は"不思議な男の子"、彼女は"海の精霊"として……人々の間で、伝説として語り継がれることとなる。


――――――その正体は、不老不死という絶望を抱えてしまった不幸な少年と……この世に災厄を振り撒く邪神とも言える、最悪の存在だったのだ。


――――――そして彼女は、"彼"が再び目覚めるまでの数百年間……世界各地の人間の魂に干渉し、ありとあらゆる不幸を生み出すこととなってしまう。


――――――同時に、人々の"悪意"を全て吸収し……時が経つにつれて、彼女は失われた力を取り戻してゆく。


――――――しかし、そのような状況は彼女のある1つの考えによって変わることとなる。実はこれこそが……





























728 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/12/15(日) 23:23:04.72 ID:AjcP0Ezj0






























――――――――――――人類史のターニングポイント。"艦娘"と"深海棲艦"の誕生である。





























729 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/12/15(日) 23:24:20.01 ID:AjcP0Ezj0
今回はここまでです。お付き合いいただきありがとうございました。進行が遅くなってしまい申し訳ありません。
実は15周目提督を不老不死にした存在というのは、40周目くらいまではかなりフワッとしていて、細かい設定等は考えていませんでした。
しかし50周目を最終回にすると決めた以上、伏線回収もとい後付け設定で何とかしようと考えた結果、このような展開となりました。

それではまた次回の更新でお会いしましょう。
730 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/12/15(日) 23:31:56.40 ID:n3ZkqXgRO
おつ
731 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/12/16(月) 00:17:33.77 ID:KSvh5nv7o
おつあつ
732 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2019/12/30(月) 19:48:12.75 ID:Zvz8DNa30
更新が滞ってしまい申し訳ありません。
何とか三が日前後に1回は更新出来るよう努力しますので、それまでお待ちいただけると幸いです。
733 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/12/30(月) 20:10:33.79 ID:HtpkdOvno
了解
良いお年を
734 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/01(水) 03:00:42.59 ID:D9yTOLWRO
なんだかんだこれで最後だからね
急いで雑になるよりじっくり時間を掛けて最終回に相応しいクオリティにしてくれた方が嬉しいからいつまでも待つよ
735 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2020/01/02(木) 16:46:03.64 ID:h7aoNFy80
18:00〜19:00頃開始予定です。
736 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/02(木) 17:07:54.52 ID:0gDBXoSpo
あけおめよろ
737 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2020/01/02(木) 18:33:27.95 ID:h7aoNFy80
始めます。途中で休憩を挟む予定です。
そして申し遅れましてすみません。あけましておめでとうございます!今年もよろしくお願い致します。
このスレも残り僅かとなりましたが、最後までお付き合いしていただけると幸いです。
738 : ◆0I2Ir6M9cc [!red_res saga]:2020/01/02(木) 18:46:50.55 ID:h7aoNFy80
彼女が15周目提督に絶望を植え付けた日から、実に数百年の時が流れた。西暦にして、およそ1900年前後と言ったところだろうか。

その有り余る時間を、彼女は人間の魂に干渉し……"悪意"を貪ることに費やした。

1日、否、1秒たりとも休まず……ただひたすら悪意を吸収し続けた。

全てはこの世を絶望で覆い尽くし、破壊する為。そして何より、最も許せない存在……"彼"を葬り去る為。

それだけを考えながら、彼女は己の都合で……罪の無い、多くの人々を不幸に叩き落してきた。

冷たく暗い、海の底に佇みながら……執念の炎に燃えた、赤い瞳を輝かせながら。

「………」

(足りない……まだ足りないわ。これだけじゃ、まだ全てを壊すには……全然足りないッ!!)

だが彼女は憤慨していた。人間の精神に干渉し、これまで多くの争いを生み出してきたものの……

かつて全盛期だった頃の、万物を手に取ることが出来る程の力は取り戻せていなかったのだ。

(ゴミ共の醜い欲を刺激して、見るに堪えない戦争ばかり引き起こして来たというのに……まだ足りないというの……!?)

彼女は焦りを感じていた。いくら自分が先に目覚めたとしても、いずれは彼も再び具現化するだろう。

無論、彼女とてその可能性を危惧していなかった訳では無い。だが、今の力では彼を消滅に追い込むには……まだ不十分だ。

(……このままあいつらの悪意を煽るだけでは限界がある、か。だからと言って止める訳にはいかない。何か、あいつらを更に絶望へ叩き落す方法は……)

ドォーン…

「ん?この音は……戦艦か。本当に、少し悪意を刺激するだけであいつらってすぐ争いごとを始めるのよね。ハッ、私を苦しめた時と何も変わっちゃいない」

(お前達のせいで、私は……あんな目に……っ!出来ることなら、私が自らの手であいつらを皆殺しにしてやりたいのに……"自らの手で"……私、が……)

「……!」

彼女は閃いた。閃いてしまった。今まで以上に効率的に人間達から絶望を吸収し、己の糧にする方法を。

「……そうよ。私が自ら戦争を……ゴミ共の争いを激化させてやれば良いのよ。目覚めたばかりの私なら無理でも、今の私なら……!」グッ…

「もちろん、私が"直接"大暴れするには……悔しいけど、まだ力が足りない。だけど、今までと同じように"間接的な"方法でやれば……!」

「それこそ、深海からゴミ共に干渉するのと同じように……遠隔操作で海上に出現させて、そこで大暴れさせてやれば良い……!」

(今まで溜め込んだ力を節約し、尚且つあいつらを震え上がらせる為には……そうね。あいつらが戦争で使う"破壊兵器"で……!)

(それも、奴らと同じ姿をした……それこそ、私のような女から、容赦無く攻撃されれば……惨めで、悔しくて、情けなくってたまらないでしょうねぇ!)

人類が開発した兵器は、実に多くの人間達を殺めてきた。それなら、奴らの絶望をより深くする為にも……奴らと同じ兵器で攻撃してやれば良い。

そう考えた彼女は、己に込められた悪意の力を凝縮させ……人類の破壊兵器を、それも"人間の姿"で具現化する。すると、彼女の目の前に現れたのは――
739 : ◆0I2Ir6M9cc [!red_res saga]:2020/01/02(木) 18:58:42.61 ID:h7aoNFy80
パシュンッ…!

ヲ級「………」

レ級「………」

深海棲艦「………」

「……あははっ、どこからどう見ても人間にしか見えないわ。一部どう見ても人間じゃ無い奴もいるけど、それはそれで怪物みたいだしゴミ共も悲鳴を上げるはず……」ニヤリ











――深海棲艦。人類や艦娘達を攻撃する、謎に包まれた存在。

そう、彼女こそが……深海棲艦の"生みの親"ということになる。











深海棲艦が海で大暴れしていた全ての原因は……文字通り、彼女の海よりも深い絶望にあったのだ。

そして深海棲艦が人間の少女のような外見をしていたのも、彼女の策略と……

そして、42周目提督から読み取っていた記憶が無意識の内に反映された結果だ。

同時に、"彼"が人間達にもてはやされていたことに対し、強い"嫉妬"を感じたからこそ……

似た外見の少女で人類を襲うという、歪んだ"憎しみ"が反映されたとも言えるだろう。

故に深海棲艦は、人類や艦娘達に殺意を抱き……理由も無く攻撃し、不幸に陥れる存在となってしまった。

(こいつらを深海から操って、人間共を無残にぶっ殺していけば……今まで以上に奴らの絶望や憎しみを取り込むことが出来る……!)

(しかも具現化するのに消費する力より、人間共から得られる悪意の方が遥かに多い。これからはこいつらを増やせるだけ増やして、今まで以上にゴミ共を苦しめてやる……!)

(そしていずれは、全盛期の力を取り戻して……何もかも、滅茶苦茶にしてやる……!)

(この世に生き物なんて、必要無い……あんな馬鹿で、愚かで、どうしようもない奴らなんか……ッ!)ギリッ

深海棲艦「………」ギラリ

「……ふぅん。良い目をしてるじゃない。じゃあ早速、奴らが戦争してるところに突撃して、思う存分血の雨を降らせて来なさい!」

深海棲艦「………」コクリ

彼女がそう言うと、深海棲艦達は殺意に満ち溢れた表情をしながら……ゆっくりと、海上へ向かって行く。

今正に世界各地で戦争を始めている人類を、より深い奈落の底へと叩き落とす為に……
740 : ◆0I2Ir6M9cc [!red_res saga]:2020/01/02(木) 19:25:51.92 ID:h7aoNFy80






























――――――彼女が深海棲艦を生み出したことがきっかけで、各国で戦争中の人類の前に……最悪の存在である深海棲艦が現れる。


――――――ただでさえ人間の醜い欲で包まれていた状況に、深海棲艦が介入したことで、戦争は我々が知る歴史より泥沼化する。


――――――当然、犠牲者も激増してしまい、太平洋も大西洋も……どの海にも血が降り注ぎ、正しく彼女の目論見通りとなってしまった。


――――――無論、彼女は深海棲艦によって生み出された人々の悲しみ、憎悪、絶望……全てを飲み込んでいく。





























741 : ◆0I2Ir6M9cc [!美鳥_res saga]:2020/01/02(木) 19:27:17.90 ID:h7aoNFy80






























――――――だが、世界は……人類はこのまま絶望で支配されることにならなかった。


――――――何故なら……彼女より数百年の遅れをとってしまったが、ついに……"彼"が目覚める時がやって来たからだ。





























742 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2020/01/02(木) 19:40:49.76 ID:h7aoNFy80
ショタ提督「……ん」

彼は偶然にも、かつてナトリ達と共に過ごした浜辺の浅瀬で意識を取り戻す。彼女程ではないが、彼もまた、海の中で目が覚めた。

ショタ提督「ここ、は……そうだ!?ナトリ達は!?」ガバッ

彼女同様、彼も分裂前までの記憶を失っていなかった。最愛の人であるナトリや、グレ達を探そうとするも……

ショタ提督「……いない、か」

当然、見つかるはずが無い。彼はまだ知らないが、ナトリ達は既に転生している。

そして、転生したナトリ達は……"まだ"この世に存在していない。

ショタ提督「………」

ショタ提督(ナトリ達の生命反応を感じない……でも、僕は諦めない。このまま待ち続ければ、いずれ……)

ズドォォォォンッ…!

ショタ提督「……何の音だ?海の上から聞こえて……っ!?」

そして、彼は気が付く。自分が長い時を眠っていた間、何が起こっていたかを……

ショタ提督(あ、あれは一体……海の上に立ち、人間達に攻撃している……それに、あの姿は……!)

ショタ提督(まさか……"もう1人の僕"の仕業か?くっ……!そうか、僕より先に具現化されて……)

彼は全てを"見通し"、瞬時に把握した。彼女が先に意識を取り戻していたことと……

彼女が人間の魂に干渉することで争いを生み出し、挙句の果てには得体のしれない存在で人類を攻撃していたことを。

ショタ提督(人間同士の争いで、罪の無い多くの人々が命を落とし……それだけじゃない。"僕"のせいで、更に犠牲者が……)

人類は自らが開発した兵器で深海棲艦に攻撃するが、全くと言って良い程に効果が無い。

仮にもかつては神とも言える存在だった彼女が生み出した産物に、人類程度の力は……無意味なのだ。

こうしている間にも、深海棲艦は人類を攻撃し……その命を奪っていく。人類を絶望で覆い尽くしてゆく。

傷つき、絶望に呑まれ、悲鳴を上げる者もいれば……発狂し、自ら命を絶つ者も現れる。

ショタ提督「……させない。そんなこと……させるものか……!」

ショタ提督(これ以上、"僕"の思い通りにはさせない……!絶対に、食い止めなければ……だけど、どうすれば……)

人類同士の紛争であれば、こちらも彼女の同様の手段で対抗することが出来る。

しかし、深海棲艦という存在にどう対抗すべきか。人類の兵器が通用しない以上、人間の力では太刀打ち出来ない。

かといって、今の彼の力では正面から戦うことは不可能だ。眠る間に吸収した力は彼女より多いとしても、先に目覚めた彼女が貪り続けた力にはまだ及ばない。

ショタ提督「……っ」グッ

ショタ提督(……"僕"を止められるのは、僕しかいない。あの得体のしれない存在……深海棲艦の暴走を止める為には、僕も……!)カッ

彼女が生み出す"悪意"に対抗する唯一の方法。それは、彼女とは正反対の"善意"の力……そう、彼が持つ力のみ。

そう考えた彼は、彼女と同じように……自身に込められた力を利用し、"ある存在"を生み出す。
743 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2020/01/02(木) 20:03:50.49 ID:h7aoNFy80
パシュンッ…!

妖精達「………」

ショタ提督「………」

ショタ提督(僕の力では、まだ深海棲艦に対抗出来る存在を直接生み出すことは出来ない。だからこそ、こうして……)

彼は"装備妖精"を生み出す。彼女らは彼の力を保有しているが、彼女らだけで深海棲艦と戦うことは難しい。

無論、彼もそれは理解している。妖精達を生み出した理由は……彼女同様、"間接的に"人類に干渉する為だ。

妖精達「………」

ショタ提督(彼女達を海の上……それも、人類の軍施設に送り込む。その後は、彼女達に僕の力を利用してもらって……)

ショタ提督(……深海棲艦に対抗することが出来る技術を組み込む。既存の兵器に、僕の力を注ぎ込めば……)

力を直接行使することが難しいのであれば、既に完成した兵器に力を宿せば良い。

そうすれば、力の消費を可能な限り節約しつつ……深海棲艦から人類を守ることが出来る。

ショタ提督「……皆、ごめんなさい。本当なら、こんなことに皆を巻き込みたくないけど……」

ショタ提督「でも、"僕"を止める為……そして、この世界を守る為なんだ。だから、お願い……!」カッ

妖精達「………」シュンッ…

ショタ提督「………」

ショタ提督(妖精達を海上の、それも人類が持つ海軍施設へと送り込む。そして妖精達と人間の精神に少しだけ干渉して……それだけではダメだ。後は……)

―――

元帥(※本編時間軸に登場する元帥とは別人)「はぁ……」

元帥(突如海から現れ、我々を襲う謎の存在……更に、こちらの攻撃が一切通用しない。)

元帥(このままでは、我が軍の損害は大きくなるばかり……どうすれば奴らに対抗することが出来るんだ……?)

「……ねぇ」

元帥「……ん?」チラッ

妖精達「深海棲艦を何とかしたいの?だったら私達に任せて!」

元帥「なっ……!?こ、これは一体……私はついに幻覚を見てしまう程に追い詰められたというのか!?小さい女が目の前に……」

妖精達「幻覚なんかじゃないよ!本当に、私達なら深海棲艦と戦う武器を作ることが出来るから!」

元帥「……本当、なのか?」

妖精達「うん!だからさ、私達を船渠に案内してくれないかな?」

元帥「………」

元帥(……ダメで元々だ。今は藁にも縋る思い……こいつらに賭けるしかない、か)

元帥「……分かった。ついて来ると良い」

妖精達「はい!」
744 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2020/01/02(木) 20:19:52.16 ID:h7aoNFy80
―――

元帥「着いたぞ。ここが船渠だ」

妖精達「わぁ……大きな船が沢山あるね!」

元帥「当然だ。我が軍が誇る軍艦の数々だからな」

妖精達「ようし!それじゃ早速……作っちゃうね!」シュバババ

元帥「え?」

妖精達はどこからともなく工具を取り出し、小さな身体とは思えない程の動きと速度で船を改造していく。

元帥「お、おい!?何を……」

妖精達(深海棲艦と戦う為には、このままじゃダメ……"私達が"、ちゃんと作り替えないと……!)シュバババ

妖精達は目にも止まらぬ早さで、軍艦に彼の力を注ぎ込んでゆく。

ただ、妖精達には"己に込められた彼の力を宿している"という"自覚が無い"。

そして数分もしない内に、船の改造が完了する。それを見た元帥は、その変貌に度肝を抜かれることとなる。

妖精達「これでよし!」

元帥「なっ……!?」

元帥(う、嘘……だろ……!?あの巨大な船が……)




吹雪「………」キラキラ

電「………」キラキラ

五月雨「………」キラキラ

漣「………」キラキラ

叢雲「………」キラキラ




元帥(人間の女の姿になった、だと……!?)

そう。吹雪、電、五月雨、漣、叢雲。この5人こそが、人類史上初の艦娘だったのだ。

軍艦だった彼女らに妖精達の技術……彼の力が注がれたことで、深海棲艦と同様に人間の姿へと進化を遂げた。

妖精達「どう?凄いでしょ!これなら深海棲艦相手でも十分に戦えるはず!」

元帥「……そう、なのか?いや、あれだけの巨体がここまで小型化する技術……そう考えれば、奴らに応戦することも……!」

元帥(だが、いきなり実戦に利用するのは不安だ……まずは試験的に運用してみなければ……)

―――

ショタ提督「……!」

ショタ提督(やはり僕と"僕"は、本質的に同一の存在、か……船が人間の姿へ形を変えるとは……)

海の中から"見通して"いた彼も、吹雪達の姿を見て驚いていた。

深海棲艦を生み出した彼女と同じように、自分も力を行使した結果……船を人間に変貌させてしまったのだ。

これもまた、42周目提督の記憶を読み取った影響である。彼も彼女も、無意識の内に42周目提督の記憶に感化され、彼女らを生み出した。

ショタ提督「………」

ショタ提督(いや、今は驚嘆している場合ではない。とにかく、これで深海棲艦から人類を守ることが出来るはず……)

ショタ提督(僕の"誘導"通り、人間は"妖精達の存在に対して必要以上に疑問を抱いていない"し、妖精達も"自分自身の存在や能力を疑問に思っていない")

彼は人間や妖精達の精神に干渉し、船を人間にする技術や妖精達の存在を追及しないようにした。

そして同時に、妖精達や人間となった船……艦娘も、自分の存在を深く考えないようにした。言わば思考・因果のプロテクトだ。

こうすることで、人間と妖精達がスムーズに交流することが出来るようになり、そして艦娘とも交流することが出来る。

それだけでなく、万が一人間や妖精、艦娘が真実に辿り着いてしまい……混乱してしまうことを防ぐ為でもある。

一刻も早く人類を深海棲艦から……彼女から守る為、彼は罪悪感を抱きながらも、人の心に干渉することに決めたのだ。
745 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2020/01/02(木) 20:28:52.02 ID:h7aoNFy80
少し休憩します。21:30〜22:30頃再開予定です。
吹雪達の進水日(?)が現実と違っていますが、この世界ではこういう歴史だと考えていただければ幸いです。
746 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2020/01/02(木) 22:32:42.61 ID:h7aoNFy80
再開します。
747 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2020/01/02(木) 22:35:45.46 ID:h7aoNFy80
その後、元帥は吹雪達を「艦娘」と名付け、妖精達と共に旧15周目鎮守府や一部の鎮守府に派遣する。

そこで活動させることで深海棲艦にどこまで戦えるかを見極めようとしたのだ。

ショタ提督「………」

ショタ提督(良かった……旧15周目提督が、艦娘達を人として扱ってくれる良い人で……)

元々が船だった艦娘を不気味に思うことなく、1人の人間として受け入れてくれるかどうかが彼の不安だった。

しかしその心配は杞憂に終わる。旧15周目鎮守府に所属する旧15周目提督は、吹雪達や妖精達を温かく迎え入れたのだ。

―――

旧15周目提督(以下・旧提督)「見ろ!これが我が鎮守府自慢の艦娘だ!」

15周目提督「艦娘とな?」

吹雪「あの、司令官。この子は一体……?」

叢雲(随分とボロボロの服を着てるのね)

漣「うはっ!ショタktkr!」

五月雨(ネットすら存在しない時代でネットスラングを使うなんて……)

電(五月雨ちゃんのその台詞もアウトなのです……)

しばらくすると、かつて彼女によって不老不死となってしまった15周目提督が旧15周目鎮守府を訪れた。

その様子を"見ていた"彼は当然、15周目提督に宿された力の正体を看破する。

―――

ショタ提督「ッ!?あ、あれは……まさか……!」

ショタ提督(あの子の魂から、"僕"の怨念を感じる……魂が肉体と雁字搦めになっていて、絶対に死なないように……それも、数百年以上の間……)

彼女と同じく魂に干渉出来る彼は、15周目提督が過ごして来た時間を瞬時に理解した。

同時に、15周目提督が抱き続けて来た絶望と孤独感も見抜いてしまう。

ショタ提督「……っ」グッ…!

ショタ提督(くっ……僕が先に目覚めていれば、こんな悲劇を防ぐことが出来たかもしれないのに……っ!)

ショタ提督(だけど、今の僕にあの子の呪いを解く程の力が無い……"僕"が込めた"憎しみ"の力が、あまりにも強過ぎる……)

ショタ提督(……ごめんなさい。"僕"のせいで……!)

だが、そんな彼に追い打ちをかけるような悲劇が起きてしまう。

そう。15周目提督が現代にこの地へ赴く理由となった、あの悲しい出来事が……
748 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2020/01/02(木) 22:55:01.45 ID:h7aoNFy80
―――

15周目提督「………」

旧提督「」ゴボボ…

15周目提督「……っ!」ギリッ

吹雪達や旧提督が深海棲艦相手に応戦するも、数の暴力には敵わず……敗北してしまう。

否、ただ負けただけならまだ良い方だっただろう。だが、この戦いで旧提督は……死亡してしまった。

15周目提督「……こんな……こんなことって……っ!」

無論、15周目提督は呪われた不死の力を宿している為、ただ1人生還した。生還"してしまった"。

15周目提督「くそッ!!ワシは……ワシは子供の頃から何も変わっとらんじゃないか!親しい者1人助けることが出来ないなんて……っ!」プルプル

旧提督「」

だが、それが15周目提督の心をより追い詰める結果となってしまった。彼は再び絶望したのだ。

無限の命を持つ15周目提督では、後を追うことさえ許されない。常にただ1人……この世に取り残されてしまう。

―――

ショタ提督「そ、そんな……」

一方、海から様子を"伺っていた"彼も、この敗戦に驚愕していた。

確かに苦戦することは想定内だった。相手が大人数で攻め込むことも考慮していた。

しかし……最初こそ善戦していたが、相手に数隻増援が来ただけでここまで惨敗するとは思ってもいなかったのだ。

ショタ提督(僕は確かに、吹雪達……いや、吹雪さん達に、妖精達を通じて僕の力を注いだはず、なのに……)

―――







吹雪(駆逐艦)「」ゴボゴボ…

五月雨(駆逐艦)「」ゴボゴボ…

漣(駆逐艦)「」ゴボゴボ…

叢雲(駆逐艦)「」ゴボゴボ…

電(駆逐艦)「」ゴボゴボ…







ヲ級「あの駆逐艦達……案外弱かった」

レ級「そりゃあ5対10じゃね〜!」

ル級「私達の圧勝でしょ!」

吹雪達は戦いに敗れ、海の底へと沈み……"人の姿から、傷付いた軍艦の姿へと戻った"。

現代の艦娘とは異なり、吹雪達は"既存の船に彼の力を宿した存在"……故に、その命が尽きた瞬間、"元の軍艦の姿へと戻ってしまう"。

―――

ショタ提督「………」

ショタ提督(……ごめん、なさい……僕のせいで……そして、"僕"のせいで……ごめんなさい……っ!)

彼には謝罪することしか出来なかった。自らが生み出した存在が傷付き、命を落とす光景に……胸が締め付けられる。

だが、彼はその光景から目を背けることはしなかった。出来なかった。せめて、沈みゆく吹雪達の姿を……心に焼き付ける。

この先、このようなことが起こらない等という楽観的思考は許されない。この現実を噛み締めて、彼はそれでも……人類を守る。

ショタ提督(……だけど、ここで止まる訳にはいかない。ここで全てを投げ出してしまえば……"僕"や深海棲艦が、何をするか……分からない……!)

ショタ提督(僕が食い止めないと……それが出来るのは、僕しかいないんだ……っ!)グッ…!
749 : ◆0I2Ir6M9cc [!red_res saga]:2020/01/02(木) 22:58:13.60 ID:h7aoNFy80






























「……ふぅん。あいつ、ついに目を覚ましたんだ」


「何やら私の真似をして、よく分からない奴らを生み出してるけど……そんなガラクタで私を止められると思ってる訳?」


「私が感じた苦しみや絶望は、その程度なんかじゃない……お前如きが、理解出来るはずが無い……!」


「これ以上、邪魔をするというのなら……潰す。潰してやる……ぶっ潰してやる……!」


「そして、今度こそ……お前をこの世から葬り去ってやる……ッ!!」





























750 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2020/01/02(木) 23:22:01.96 ID:h7aoNFy80
その後、人類は深海棲艦との戦いだけでなく、世界規模の大戦争を引き起こすこととなる。

彼女が人間の悪意を刺激し、その度に彼が人間の善意を刺激するも……数百年間の重みが、彼にハンデとして圧し掛かる。

大日本帝国海軍は、連合国及び深海棲艦との戦争に対し、少しでも技術的に優位に立とうと妖精達を総動員させて軍艦を艦娘に変えてゆく。

しかし、そうすればそうするほど……当然だが、犠牲も増えてゆく。人となった艦娘が傷付き、海底に沈んでは大破した船へと変貌する。

当然、彼もその光景を目の当たりにしていた。そして彼にとって、最も辛かったのは……

―――

妖精達「完成!」

名取「………」キラキラ…

軍人「よし!お前にも早速戦ってもらう!」

名取「は、はい……!」

―――

ショタ提督「……!」

ショタ提督(な、ナトリ……いや、違う。彼女は……名取さんは、ナトリとほぼ同じ姿だけど、別人なんだ……"宿っている魂が違う")

軽巡洋艦『名取』が……彼にとっての最愛の人、ナトリと非常に似ていたことだ。

愛する者と瓜二つな少女を戦場に出さなければならない……その事実が、彼の心をより締め付ける。

ショタ提督「……っ」フルフル

ショタ提督(いけない……私情を挟んではならない。"僕"や深海棲艦から、人類を守らなければ……)

だが、彼は彼女と深海棲艦の暴走を食い止める為、妖精を通じて軍艦に己の力を注ぎ込み続ける。

そしてその度に、艦娘達は深海棲艦と戦い、傷付き……犠牲となった者が増えてゆく。

それだけでは無い。元は深海棲艦から人類を守る為に艦娘を生み出したというのに、人類同士の戦争にまで利用されてしまっている。

ショタ提督「………」

ショタ提督(……まさか、"僕"の仕業……なのか……?"僕"が誘導したからか……?)

彼はその可能性に気が付く。深海棲艦や人類同士の争いは、目覚めた時から既に彼女の仕業だと把握していた。

しかし彼女はそれに加えて、彼が生み出した艦娘さえ人類同士の争いに利用し、人々の絶望を生み出す手段として活用しているのだ。

ショタ提督「………」

ショタ提督(……いずれにしても、このままではダメだ。深海棲艦との戦いだけでなく、人類の戦争の被害にまで……)

彼は彼で人間に干渉し、少しずつだが確実に人々の人生を幸福に向かわせ、その都度"善意"や"温かい気持ち"を吸収している。

そして彼女による"悪意"の誘導も、可能な限り横から介入して阻止している。だが、それでも限界がある。

この状況が続けば、艦娘達は深海棲艦と世界大戦の板挟みとなり、犠牲者が増えてゆく一方となってしまう。
751 : ◆0I2Ir6M9cc [saga]:2020/01/02(木) 23:50:19.06 ID:h7aoNFy80
ショタ提督「………」グッ…

ショタ提督(これ以上、僕の力を争いに利用したくない……利用されたくない……)

ショタ提督(だけど、そんな我儘を言っている状況ではない……艦娘達を、今までよりも"強く"しなければ……)

彼は"善意"を集め続けたお陰で、現在は目覚めた時よりも多くの力を宿している。

すなわち、艦娘達に注ぎ込む力を増やすことが可能となったのだ。

ショタ提督(最初は人類が生み出した兵器に力を宿せば、僕の力の節約になると考えていたけれど……それが間違いだったんだ)

ショタ提督(そのせいで艦娘達は少ない力で深海棲艦と戦い、消耗しているところに人類同士の戦争にまで巻き込まれてしまった)

ショタ提督(理想を言えば艦娘を戦わせず深海棲艦の暴走を鎮めることだけど、それが不可能である以上……艦娘達を強化するしかない)

彼は大いに悩んだが、罪の無い人々を深海棲艦から守る為と考え……苦渋の選択で艦娘達を強化することを選ぶ。

今までは既存の船に力を注いでいたが、それでは宿す力が少ない為、艦娘達は真価を発揮することが出来ない。

ショタ提督「………」スッ…

ショタ提督(……"0から生み出す"。それでいて、"注ぐ力の量を増やす")カッ

―――

妖精達「……っ!」ドクンッ…

軍人「……どうした?」

妖精達「……作らなきゃ」

軍人「え?」

妖精達「艦娘達を"0から生み出す"為の設備を……作らなきゃ……!」ダッ

軍人「あっ、おい!?どこへ行く!?お前達にはまだ改造して欲しい船が……!」ダッ

―――

ショタ提督「……成功、か」

ショタ提督(本当なら、その場で艦娘を生み出すことも出来たけれど……少しでも自然な形にする為に、設備を開発するところから始めた)

ショタ提督(僕が干渉すれば、その技術に疑問を持たないようにすることは可能だ。でも、その手段を乱用すれば……やっていることが、"僕"と同じになる)

ショタ提督(後は設備が完成次第、僕がその都度妖精達に力を注ぎ……生み出された艦娘達にも、僕が力を注ぐ)

ショタ提督(そうすれば、以前よりも飛躍的に強い艦娘達を沢山生み出すことが出来る。もちろん、無暗に増やす訳にはいかないけれど……)

ショタ提督(僕が持つ力にも……限界がある。せめて、人類同士の戦争が終わらないと……多くの艦娘達を生み出すことは……)

妖精達が迅速に工廠を改造し、以後は既存の船が無くとも艦娘を"建造"出来るようになった。魂も安定し、轟沈さえしなければ不老の存在となった。

それだけでなく、艦娘達がいつか戦いを終えて自由となった時、あるいは愛する者と人生を歩むことを誓った時、限りなく"人間"に近い存在になれるようにもした。

艦娘達の艤装を"解体"すれば、すかさず彼が艦娘に宿った力の一部を回収し……不老の効果を無くし、人間として余生を歩めるようにしたのだ。

何故"一部"なのかと言うと、力の全てを回収してしまった場合、艦娘は人としての姿を保てなくなり、その存在が消滅してしまう為だ。

これにより大日本帝国海軍の戦力は飛躍的に向上し、深海棲艦に対しても以前より善戦するようになる。

もっとも、世界大戦に関しては既に大日本帝国は敗戦寸前まで追い込まれていた為、そこから事態を好転させることは出来なかったが。

だが、これで戦力の問題は解決したとしても……新たな問題が浮上することとなる。
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