城ヶ崎美嘉「いつまでも」

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1 : ◆WO7BVrJPw2 [saga]:2019/10/03(木) 21:05:29.72 ID:JpWGvtY50

――楽屋 ライブ後

城ヶ崎美嘉「お疲れさまでーす!」

スタッフ「お疲れさま!」

アイドル「おつかれー!」

美嘉「ん、あれ、プロデューサー!」

モバP(以下P)「おう、お疲れさま」

美嘉「お疲れさま。楽屋来てたんだ」

P「どうだった、初のステージライブ」

美嘉「緊張したよ。でも、めっちゃ楽しかった」

P「いい返事だ。初めての店舗ライブでガチガチだったときより、だいぶ慣れたな」

美嘉「い、いつの時の話してんのさ。アタシだってちゃんと成長してるんだから」

美嘉「……って言ったけど、ちょっと嘘。お客さんが目の前に、あんなにたくさんいるなんて初めてだった」

美嘉「ステージに立っているとね、照明が自分に当たるから、顔とかほとんど見えないじゃん?」

美嘉「でも、見えた。サイリウムが波のように揺れているのが、あのひとつひとつがいま私を見てくれている光なんだって、はっきりわかった」

美嘉「イントロくるまでちょっと意識飛んじゃってたよ」

P「おいおい」

美嘉「ジョーダンジョーダン★ やり切ったの見ててくれたでしょ」

P「まあな」


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1570104329
2 : ◆WO7BVrJPw2 [saga]:2019/10/03(木) 21:06:34.87 ID:JpWGvtY50

美嘉「……すごかったぁ。完璧……じゃなかったかもしれないけど、今できることをやってきたと思うな」

P「それでいい、いまはそれで十分だ」

P「この調子で、これからも頑張っていってくれよ」

美嘉「うん。……プロデューサー」

スッ

P「ん? ああ」

パシッ

美嘉「へへ……ちょっと手のひら痛い」

P「えっ、あっ、すまん!」

美嘉「大丈夫。プロデューサーもテンションアゲちゃったカンジ?★」

P「そんな……いや、そうかもな」

美嘉「あははっ、プロデューサーも楽しんでくれたなら嬉しいよ」

美嘉「ま、アタシに目ぇつけたプロデューサーだもん。アタシの輝くところ、一番近くで見ててよね」

P「ああ」

P(やっぱり、パッションにして正解だったな)
3 : ◆WO7BVrJPw2 [saga]:2019/10/03(木) 21:07:09.66 ID:JpWGvtY50

P「……」

美嘉「?」

P「なんでもない。打ち上げはするのか?」

美嘉「うん。他の子何人かと……」

P「今日のステージのか」

美嘉「そう。年近い子たちで」

P「ん、それじゃあ気を付けてな」

美嘉「あ。あのさ、プロデューサーは?」

P「え?」

美嘉「えと……打ち上げ」

P「ああ、裏方組のやつ行くけど」

美嘉「そっか」

P「未成年組が来てもいいけど、ちょっとお酒は飲ませらんないな」

美嘉「そこはキチンとしてるし! でも、んー……」

P「なんだ」

美嘉「ううん、プロデューサーとも打ち上げしたかったかなーとか」

P「んー……担当ばかりが固まっているってんなら考えるけどさ……その集まり、俺の担当美嘉だけじゃないか。アウェーすぎるよ」

美嘉「あはは、だよねー。仕方ない、諦めるか」

P「まぁ、ライブ成功で何か連れてってやるくらいは」

美嘉「ほんとっ?」
4 : ◆WO7BVrJPw2 [saga]:2019/10/03(木) 21:07:38.97 ID:JpWGvtY50

P「行きたい店あったら教えといてな」

美嘉「うん!」

P「じゃあな。お疲れ、美嘉」

美嘉「お疲れさま、プロデューサー」

−−−

P(城ヶ崎美嘉は、割と最初から優秀なアイドルだった)

P(宣材写真で「城ヶ崎美嘉らしく」なんて注文を付けてもこなせて見せた)

P(自分らしく、なんて普通なら難しい要求なのに)

P(元読者モデルとしての場慣れはプラスの方向に働いたし、派手な見た目はファンの目を惹いた)

P(なにより彼女の一番の才能だと思ったのは、その見た目に反して地道な努力というものを知っていることだった)

P(お陰で彼女を育てるのに苦労はしなかったし、表に出せばすぐに人気が出ていった)

P「カリスマって言うが、本当、その通りだよな」

美嘉「え、何々? いきなり褒められたけど?」

P「いや、別に。次でデザートだな」

美嘉「ん〜、なんだろ。楽しみ♪」
5 : ◆WO7BVrJPw2 [saga]:2019/10/03(木) 21:08:06.12 ID:JpWGvtY50

P「定番ならジェラートとかか」

美嘉「いいね〜。メインのパスタも、普段うちで作るのと全然違うし、美味しかったなぁ」

P「それはなにより。そんな高級ってわけじゃないイタリアンだけど」

美嘉「いーよいーよ。フレンチとか堅苦しそうだし。緊張しないで食べられる方が美味しいじゃん」

P「一理ある」

美嘉「それにー、プロデューサーのお財布にも優しいし?★」

P「ありがたいけど心配されるほどじゃないよ」

美嘉「ふふ……お願い聞いてくれてありがとうね、プロデューサー」

P「まあ、約束だったしな」

美嘉「……こうしてゆっくり話せたのも嬉しかったな」

P「話くらいなら、事務所でいつも聞くぞ」

美嘉「んー、そういうんじゃなくて」

P「どういう?」

美嘉「んと……んー……」

店員「お待たせしました。シチリアレモンのジェラートです」

P「あ、はい」
6 : ◆WO7BVrJPw2 [saga]:2019/10/03(木) 21:08:32.57 ID:JpWGvtY50

美嘉「やっぱりジェラートだった」

P「定番だよな」

シャク

美嘉「わっ、なにこれ。レモンの皮入ってる」

P「おー……噛み潰すと香りが広がるな。市販のアイスでも似たようなのあるけど、全然違う」

美嘉「触感にも違い出て面白いねー」

P「えーと、それで何の話をしたいんだったっけ」

美嘉「んっ…… そんな話してたっけ★」

P「そうか? まあいいや」

美嘉「ん〜、さっぱりしてるのに満足感あるってイイね」

P「ああ」
7 : ◆WO7BVrJPw2 [saga]:2019/10/03(木) 21:09:05.85 ID:JpWGvtY50

店員「ありがとうございました」

美嘉「ごちそうさまでした」

P「ごちそうさま」

美嘉「プロデューサーにも、ごちになりまーす」

P「おー、良きにはからえ」

美嘉「……じゃあ」

P「駅まで歩くか」

美嘉「うん」

コツ コツ スタスタ

美嘉「陽が落ちても暑いよねー」

P「嫌んなるよな」

美嘉「歩いているだけで汗出るし、そのくせ電車は寒いし」

P「家でのクーラーもな、かけっぱなしにすると朝だるくなるし」

美嘉「だよね! 朝起きるの辛くてびっくりしたよ」

P「かけっぱなしは喉にもよくないぞ」

美嘉「うん、それ以降はやってない」

P「喉によくないといえば……レストランの水が炭酸だったな。ガス無しにしてもらえばよかったか」

美嘉「そこまではいいよ。明日ライブがあるわけじゃないんだし」

P「まあ、炭酸なにも飲めないのも辛いか」

美嘉「そうそう。あ、でも甘くない炭酸って新鮮だったなー」

P「あー、慣れると悪くはないけど、やっぱり味がないと寂しく感じるよな」

美嘉「だよねー。せめてちょっとくらいね」

コツ コツ コツ
スタスタスタ

美嘉(あ……)

美嘉(……ふぅん)
8 : ◆WO7BVrJPw2 [saga]:2019/10/03(木) 21:09:35.70 ID:JpWGvtY50

P「この先の通りから人増えるな。なんか、髪隠せないか」

美嘉「あ、うん。帽子持ってるから……オッケー」

P「おう」

美嘉「あーあ、せっかく髪セットしてきたのに」

P「すまないが、目立つからなぁ……」

美嘉「あっ、でもめっちゃ芸能人っぽいねコレ★」

P「芸能人だけどな……しかし、それでも見た目気にするっていうのはさすがだよ」

美嘉「そりゃもう。見た目で業界わたっていくわけだし?」

美嘉「それに、レッスンの最初の頃に言われたんだ。『見られることが仕事なんだから、常に見られているという意識を持て』って」

P「何人かのアイドルに聞かせてやりたい」

美嘉「あはは★ まあ、それはそれでそういうトコが魅力だったりするじゃん」

P「そうかもしれないけど。やっぱりそういうところはポイント高いだろ」

美嘉「ふふふ、ありがと。……プロデューサーもね」

P「ん?」

美嘉「ちゃんと歩調合せてくれてるの、ポイント高いよー?」

P「……」

美嘉「んふふふっ」

P「……」

コツコツコツコツ

美嘉「あっ、ちょっと! わざと早歩きとか、もー!」
9 : ◆WO7BVrJPw2 [saga]:2019/10/03(木) 21:10:22.16 ID:JpWGvtY50

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――駅前の書店

美嘉「あ」

P「ん?」

美嘉「プロデューサーはっけーん★」

P「外で会うのは珍しいな」

美嘉「どしたの、サボり?」

P「事務所に戻る途中にさっと寄っただけだよ。ちひろさんには黙っておいて下さい」

美嘉「あはは、おっけ。どうして本屋に?」

P「芸能雑誌のパラ見」

美嘉「ふーん。でも、アイドル誌とかなら事務所にも置いてあるじゃん」

P「うちのアイドルが載っている本ならな。この業界、狭いようで広いから、店頭に並んだ本を見るだけでもいつの間にか、知らないアイドルがデビューしてる。アンテナは常に張っておいた方がいいだろ」

美嘉「市場調査ってやつだ」

P「そういうこと。例えば……このユニットはCDデビューしたから、単独ライブも遠からず発表があるし、ファン層と規模からするとハコが絞りこめてくる」

美嘉「そういうのも分かるの?」

P「うちだってCD出すならライブも織り込んでるだろ」

美嘉「そういえばそうだね」

P「事務所ごとに特色はあるけど、売り出し方はそんな大きくは変わらないよ」
10 : ◆WO7BVrJPw2 [saga]:2019/10/03(木) 21:10:49.60 ID:JpWGvtY50

美嘉「へー……あ。この表紙、うちの事務所の子だよね」

P「あー、速水さんか。そうだな」

美嘉「事務所で見かけた気がしたんだ。……わ、オフと印象変わらないってすごいなー」

P「確か同い年じゃなかったか」

美嘉「えっ、マジ? フツーに年上だと思った」

P「わかる」

美嘉「えー……17? えー」

P「今度話してみたらどうだ。何か共通の話題でもみつかるかもよ」

美嘉「考えとく」

P「もしかしたら、ユニット組むなんてこともあるかもな」

美嘉「どうだろうねー」

パラパラ

P「お。……へぇ」

美嘉「なに?」

P「身長体重、美嘉と同じだ」

美嘉「もっ……もーっ、何見てんの!」バシバシ
11 : ◆WO7BVrJPw2 [saga]:2019/10/03(木) 21:11:16.58 ID:JpWGvtY50

P「悪い悪い、仕事の癖で」

美嘉「プロフ見るのはともかく、アタシにそれ言う? フツー」

P「悪かったって」

美嘉「……っていうか、数字覚えてるの」

P「ん、まぁ。なんなら本当の数字も把握してる」

美嘉「えー、やらしくなーい?」ニヤニヤ

P「仕事だから仕方ないだろう」

美嘉「だよね★ まあでも、ちゃんと知っててくれているのは悪くないかも」

P「……そんじゃぁ、そろそろ事務所戻るか」

美嘉「はーい、アタシもご一緒するよー」

P「あ、じゃあちひろさんへの言い訳立ったな」

美嘉「おっと、アタシをダシにする気?」

P「んー……タダじゃなんだよな。じゃあ、途中にあるスタバでなんか頼め」

美嘉「やった★ んー……バニラクリームフラペチーノをモカシロップにして……チョコレートソース、チョコレートチップ、エクストラパウダー!」

P「よく分かんないけど、カロリー凄そうなのは分かる」

美嘉「にひひっ。一口あげてもいーよ?」

P「うーん、遠慮しておく」
12 : ◆WO7BVrJPw2 [saga]:2019/10/03(木) 21:11:43.11 ID:JpWGvtY50

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――事務所

美嘉「あ、プロデューサー! お疲れ、いま帰るとこ?」

P「ああ、そっちもあがりか」

美嘉「うん。ラジオ終わって帰ってきたトコ」

P「直帰しなかったのか」

美嘉「えっ」

P「え、って」

美嘉「あそっか、あははは★ そうね、うん、直帰ね」

P「お疲れさん。じゃあ」

美嘉「えーっ、送ってってくれないの? せめて駅までとかさ」

P「まあ、構わないけど」

美嘉「やった」

P「飯でもたかる気か?」

美嘉「んー……それもいいけど、今日はお母さんがご飯作ってるし」

P「そりゃあ帰った方がいい」

美嘉「プロデューサーもまた、うちに来てよ。莉嘉も喜ぶし」

P「まあ、いずれな」
13 : ◆WO7BVrJPw2 [saga]:2019/10/03(木) 21:12:12.94 ID:JpWGvtY50

美嘉「それじゃあ……」

P「駅まで行くか」

美嘉「うん」

−−−

コツ コツ コツ
スタスタスタ

美嘉「さっきまで夕暮れだったのに」

P「日が短くなったよな」

美嘉「毎年同じように秋になっていってるのに、なんでいつもしみじみ思うんだろね」

P「だな。俺の歳でも思うよ」

美嘉「プロデューサーの歳でも変わらないんだ」

P「まぁ……っていうほど離れてねーって」

美嘉「あっははは」

P「……」

美嘉「……」

P「どうした?」

美嘉「あ……ううん」

コツ コツ コツ
スタスタスタ

美嘉「プロデューサー」

P「ん」

美嘉「すぅ、はぁ……手、繋いでほしいなー、なんて」
14 : ◆WO7BVrJPw2 [saga]:2019/10/03(木) 21:12:43.41 ID:JpWGvtY50

P「深呼吸が気にはなったが……どうした」

美嘉「えーと、その、暗いから?」

P「……」

美嘉「……」

P「なんていうか、雑」

美嘉「ひどっ」

P「いくら変装してるとはいえなぁ」

美嘉「まあ、確かにプロデューサーはそう言うかもね」

P「分かってるんじゃないか」

美嘉「でもさ。莉嘉なら?」

P「うん?」

美嘉「プロデューサー、莉嘉に言われたら、OKしてると思うんだよね」

P「……つまり?」

美嘉「莉嘉はOKで、アタシがダメな理由があるんだなーって」

P「んー……いや、年頃なわけだろ」

美嘉「莉嘉は、そういう対象外なんだ」

P「……」

美嘉「アタシは、そういう対象ってコトでいーのかな?」

P「あーもう、わかったよ。駅前の、明るいところまでな」

美嘉「う、うんっ」

キュッ

美嘉「♪」ニコニコ

P「いくぞ」

美嘉「うん」

P「……」
15 : ◆WO7BVrJPw2 [saga]:2019/10/03(木) 21:13:25.94 ID:JpWGvtY50

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

――控室

P「トークショーはまぁ、いつもの感じでいいか。放っといても延々喋れるだろ君ら」

セクギャル「そーだね」「うんうん」「ぽよ〜」

P「長めに時間とっているけど、あんまり脱線するようなら修正利かせてな。まぁ……美嘉がやることになるだろうが」

大槻唯「美嘉ちゃんよろしくね〜」

藤本里奈「頼りにしてるぽよ☆」

美嘉「はいはい……まぁ、任せておきなさいって」

唯「よっ、日本一!」

P「なんのだよ。時間が来たらそのままサイン・握手会。まぁ、こっちもそんな緊張することもないだろ」

美嘉「はーい」

P「終了したらそれで解散でいいぞ」

唯「えー、Pちゃん、ごはんたべにいこーよー」

P「終わっても15時だよ、まだ仕事あんだから」

唯「ちぇー」

P「じゃあ、あとは時間まで待機。トークで新曲の告知は抑えといて」

里奈「りょーかーい」

P「俺は打合せと挨拶回りいってくる。それじゃあ」

バタン

16 : ◆WO7BVrJPw2 [saga]:2019/10/03(木) 21:14:03.52 ID:JpWGvtY50

里奈「プロデューサー、マジ忙しそうだよねー」

唯「ねー。まぁ、唯たちのためにやってくれてるんだし」

美嘉「そうそう、仕事取ってくるのもつなげていくのも大変だもん」

唯「けどさー、Pちゃんって唯たちにそっけないよねー」

美嘉「あーうん、ちょっとわかる」

里奈「アタシらせくちーよ? セクシーギャルズよ? もっとなんか、こー、ねぇ?」

唯「変な視線感じないよねー」

美嘉里奈「「あはははっ」」

里奈「やだー、変な目で見られてもマジヤバじゃーん?」

美嘉「ま、大事にしてくれてるのは分かるけど」

唯「……」

里奈「……」

唯里奈「「ふーん」」ニマニマ

美嘉「えっ、な、なにさ」

里奈「唯っち唯っち、これはミカちゃん、なにがあったっぽー?」

唯「いやいや、あれは彼女ポジションの主張っぽいしょ〜」

美嘉「なっ、にゃっ……!」

里奈「わぉ、美嘉ちゃん顔真っ赤っかー♪」

唯「Pちゃんも、これくらい分かりやすいといいのにねー」

里奈「やっぱー、分かりやすい方がイイカンジ?」

唯「何考えてるか分かんないよりマシぢゃん?」
17 : ◆WO7BVrJPw2 [saga]:2019/10/03(木) 21:14:37.46 ID:JpWGvtY50

美嘉「……まぁ、唯はそういう方がいいのかもしんないけどさ」

唯「あ、ナンパ男とかは、ちょっちどーかなーって思うよ」

里奈「でもプロデューサー、ナンパはできそーじゃん? スカウトみたっちゃん?」

美嘉「えー……できるかなぁ」

唯「そんなんしなくても、美嘉ちゃんめろめろっしょ」

美嘉「むぐぐっ」

里奈「寄ってくるんならぁ、ナンパとかしそーににゃーね。よかったね☆」

美嘉「ちょっと、あんたたちね……」

唯「でも、Pちゃんだいぶお堅いから、逆に大変かも」

里奈「知ってーの?」

唯「まえに抱きついたら引き剥がされた」

美嘉「抱きっ!?」

唯「唯には、ふつーじゃん? なんかその時はライブ後で楽しかったから抱きついたんだけどー」

里奈「どー?」

唯「ふつーにお説教されちゃった」

里奈「あーねー」

美嘉「……」フゥ

唯里奈「「ほっとしてるー」」

美嘉「うっ、うるさいうるさい!」
18 : ◆WO7BVrJPw2 [saga]:2019/10/03(木) 21:15:27.67 ID:JpWGvtY50

唯「必要以上には接触してこないよね」

里奈「レッスンはよく見ててくれるけど」

美嘉「……どこまでの仕事できるか見てるんだよ」

唯「あくまでアイドルとプロデューサーかー」

コンコンコン

セクギャル「「「はーい」」」

スタッフ「そろそろ出番でーす。よろしくお願いしまーす」

セクギャル「「「はーい!」」」

美嘉「……やばっ、宣伝内容チェックしてないっ」

唯「美嘉ちゃんの恋バナ付き合ってたから忘れちゃってたね」

里奈「しゃーないぽよ〜」

美嘉「アタシのせいじゃないっ! えーと……」ガサガサ

美嘉「繋げて振るから、唯がこっち、里奈がこっち読み上げ!」

唯里奈「はーい」「ぽよー」

−−−

唯「セクシーギャルズ〜」

美嘉里奈「「トークショー! いぇーい☆」」

唯「みんなー、この前のライブ、観てくれたかなー?」

美嘉「やっぱりアタシ達の目玉は、新曲初披露! だったね!」

「――」「――」
19 : ◆WO7BVrJPw2 [saga]:2019/10/03(木) 21:15:59.58 ID:JpWGvtY50

美嘉(……あー)

美嘉(やっぱりなぁ。他の子達も扱いは同じか)

美嘉(特別扱いはされていない。だからって別に)

美嘉(別に……)

−−−

P「お疲れ。難なく終わったな」

美嘉「お疲れさま……結構必死だったよ」

P「ん、そうか?」

唯「直前までわたわたしてたもんねー」

里奈「話が別の方向に盛り上がっちゃーしー」

美嘉「ちょ、ちょちょちょっとぉ!」

唯「Pちゃん、唯たちがぁ、何の話してたかキョーミない?」

美嘉「あっ、待って、唯っ!」

P「いや特に」

里奈「えー。おもしろくないぽよー」

P「君らに面白がられるためのプロデューサーじゃないだろ……そんじゃぁ、解散。お疲れさんでした」

セクギャル「「「お疲れさまでしたー」」」

P「気を付けて帰れよ」

美嘉「あ……うん」

唯里奈「「……」」
20 : ◆WO7BVrJPw2 [saga]:2019/10/03(木) 21:16:27.82 ID:JpWGvtY50

里奈「プロデューサー、事務所戻るーん?」

P「ん? ああ」

里奈「お仕事だからごはんとかはむりむりだけどぉ」

唯「代わりに美嘉ちゃんも事務所に連れてってねー」

美嘉「へっ」

P「なんか用あるのか」

美嘉「ぇあー、っとー……」

唯「次のライブ資料、持ってきてもらおうかなって」

里奈「このあとで打ち上げするしー、ちょーどいいぽよ?」

P「まだだいぶ先だけど……なんだ、取りに来るか」

美嘉「へっ、あ……う、うん」

P「ふたりは?」

唯「先にお店抑えてるね♪」

里奈「そーそー♪」

P「じゃあ、あまりゆっくりはしてないからさっさと準備してくれよ。外にいるから」

美嘉「わかった」

パタン

美嘉「……」

唯里奈「「ふぁいとー♪」」グッ

美嘉「……ぁりがと」
21 : ◆WO7BVrJPw2 [saga]:2019/10/03(木) 21:16:54.34 ID:JpWGvtY50

−−−

ガタンゴトン ガタンゴトン

美嘉「……」

P「……」スッスッスッ

美嘉「……そのタブレットって、仕事用?」

P「ああ。ノートPCだけど、折り返すとタブみたいになる」

美嘉「立ちながらキーボードはちょっと無理だよね」

P「まあな。……」スッスットン

美嘉「何か確認してるの?」

P「タスクを登録しているだけ……戻ってからの仕事の順番付けな」

美嘉「ふぅん」

P「……」

美嘉「……」

ガタンゴトン ガタンゴトン

美嘉「今日のトークさ、危なげなかったって言うけど、実は直前までヤバかったんだよね」

P「そうなのか?」

美嘉「里奈と唯が話脱線させていくからさー、スタッフさんから声かかるまで告知確認ギリだったよ」

P「それにしちゃ、つつがなく進行してたな」

美嘉「そりゃ、アタシが引っ張ったし?★」

P「頼もしいな。また、よろしく頼むよ」

美嘉「任せといてよ」
22 : ◆WO7BVrJPw2 [saga]:2019/10/03(木) 21:18:24.44 ID:JpWGvtY50

P「……」

美嘉「……えーと、あとね!」

P「わかった、話付き合うから、声のトーンは少し抑えてな」

美嘉「あっ、うん。……へへ」

美嘉「それでね……」

美嘉(……)

美嘉(ちょっとずつ)

美嘉(ちょっとずつ、近づいているよね)

美嘉(それで……どこまで近づいたら、どうする?)

美嘉(いける、って思ったら言えばいい?)

美嘉(言うの? 告るの? プロデューサーに伝えるの?)

美嘉(……)

美嘉(そりゃぁ……いつかはそれっきゃないっしょ)

美嘉(なんか、いい雰囲気になった時に……)

美嘉(い、いますぐなんて、それはムリだけど)

美嘉(でも、いつかは)

−−−

――事務所

北条加蓮「それダメなヤツだよね」

美嘉「は?」

加蓮「だってそーでしょ。いつかって、いつ来るのさ」

美嘉「それは……」

加蓮「コクって落としにかかった方が早いって」

美嘉「……人事だと思ってぇ」

加蓮「人事だけどさ……あ、ちょっと指先動かさないで」
23 : ◆WO7BVrJPw2 [saga]:2019/10/03(木) 21:19:38.17 ID:JpWGvtY50

美嘉「うー……じゃあ加蓮は好きって思ったらすぐ言うワケ?」

加蓮「さぁ。アタシ初恋らしい初恋もしてないしなー」

美嘉「それってアタシに何か言えるほどの経験ある?」

加蓮「そりゃ無いけどね、でも『いつかは〜』なんてやってたらダメだってことくらいわかるよ」

美嘉「…………やっぱそーだよねぇ」

加蓮「……ねぇ、やっぱり恋っていいもん?」

美嘉「えっ。……いいとかそういうのは考えてなかったけど」

美嘉「気づいたら、とか。いつの間にか、とか……そういう感じだったし」

加蓮「幸せになる?」

美嘉「ん? ん……その人のこと考えていると、ほわって身体が温かくなるし」

美嘉「会えたら嬉しい。声かけてくれたら嬉しい。……近づきすぎるとちょっとテンパるけど」

加蓮「やっぱ幸せなんだろうね」

美嘉「うん……うん、たぶん」

加蓮「ちょっとネイルはみ出させよ」

美嘉「あっ、ちょっと!」

加蓮「冗談、やらないよ。……恋はいいものって言うのは見ていてわかる気はするな」

美嘉「えへへ、そう?」

加蓮「でも、それ成就しなかったら失恋になっちゃうじゃん」

美嘉「そーかもしんないけどぉ……」

加蓮「はい、左手」

美嘉「ん」
24 : ◆WO7BVrJPw2 [saga]:2019/10/03(木) 21:20:22.89 ID:JpWGvtY50

加蓮「……歳の差もあるけど、立場がきついよね」

美嘉「障害多い……」

加蓮「だから攻めないと勝ち目がないって。あのプロデューサーさん、環境いいでしょ」

美嘉「環境?」

加蓮「女の子はいっぱいだし、アイドルならまず可愛いし、歳の近いアイドルまで……なんなら障害のない同僚とかも」

美嘉「ぐむ」

加蓮「美嘉のプロデューサーさんが美嘉にぞっこんなら心配しなくてもいいかもしれないけど、その塩対応じゃねぇ。やっぱり攻めるしか無くない?」

美嘉「うん…… ……どうアピールしたもんかなぁ」

加蓮「そういった話となると、アタシじゃ経験不足かなー」

美嘉「そこをさ、なんかヒントになりそうなことでもいいから」

加蓮「んー…… 話を聞く限り、拒否られてないから脈なしってことは無いと思うけど」

美嘉「うんうん」

加蓮「やっぱり一緒にいる時間が長いって有利だと思うんだ。できるだけ一緒に帰るとか」

美嘉「割とやってるんだけどなぁ」

加蓮「もっとだよ。攻めて攻めて、美嘉がいないときに寂しさを覚えさせるような感じでさー」

美嘉「んん、それは悪くないかも……」
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