【ミリマス】ジュリア「君の光を見せてくれ」

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/05(土) 21:05:37.92 ID:pLwUdLuz0
プロデューサー(以下、P)「――はい、よろしくお願いします。それでは失礼します」ピッ

P(よし。ひとまず営業成功だな。しかし悩ましいことになったぞ。うーん…)

律子「お疲れ様ですP。何やら思案中のようですけど」

P「ああ律子、お疲れ様。実は今育の新しい仕事が決まったところなんだ。学習塾のテレビCMだ」

律子「おおっすごいじゃないですか! けど、どうやら一筋縄ではいかない案件みたいですね」

P「それがな、先方は出演者自身にCMソングを歌って欲しいそうだ。ただ俺が粘りに粘って承諾に持ち込んだこともあって、楽曲の手配などは白紙の状態なんだ」

P「もし先方で作曲家のブッキング等がうまくいかなかった場合、この話はなかったことになる。もちろん俺としてはそれは避けたい」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1570277137
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/05(土) 21:06:27.57 ID:pLwUdLuz0
律子「なるほど。ということは、先方が納得するだけのCMソングを先手を打ってこちらで用意して持ち込んでやろうって策略ですね」

P「理想をいえばそういうことなんだが……期日以内に曲を持ち込み、かつ先方の注文に逐次答えて曲や歌詞を調整しなきゃならない」

律子「確かに難しい案件ですね。いつもお世話になっている作曲家さんたちもみんなお忙しいでしょうし、いきなり複雑な条件で発注するとなると難航しそうですね」

P「ああ。せめて俺と一緒に先方と連絡を取り合える作曲家がいればいいんだけど…」

律子「あら? いるじゃないですか。ウチにもとっておきのミュージシャンが」

P「そうか、ジュリアか!」

律子「ええ。今日のレッスンでも何やら気持ちが高まってる様子でしたよ。本人の中でも、いい曲が作れそうな気配が漂ってるんじゃないかしら」

P「よし。じゃあジュリアに頼んでみよう。ありがとう律子!」

律子「お構いなく。私も楽しみにしてますよ」
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/05(土) 21:07:26.31 ID:pLwUdLuz0
P「――というわけで、ジュリアに育の新曲を頼みたいんだ」

ジュリア「話はわかったけど、随分急なんだな。それにCMのタイアップソングってことは、色々制約とかあるんじゃないのか?」

P「一応これがCMのコンセプト資料になる。とはいっても基本的にジュリアの好きに進めてもらって構わないよ。細かい調整は完成した曲を先方に提出してからでも遅くない」

ジュリア「へえ。先方に却下される心配はしてないと……随分あたしのこと買ってもらってるんだな」

P「何やら良い曲が作れそうな雰囲気らしいと聞いたもんでな。それにロック調の曲は育も歌い慣れてるし、ジュリアが適任だろう」

ジュリア「ああ。ちょうど作曲したくてウズウズしていたところなんだ。けど、育の新曲か……面白そうじゃないか。いいぜ。やってやるよ!」

P「ありがとう、助かるよ。次の定期公演に向けた準備と並行してもらうことになるけど、大丈夫そうか?」

ジュリア「問題ないよ。劇場なら好きなだけギターも触れるし、何かあればすぐアンタにも相談できるからな」

ジュリア「それにこれはあたしとしても挑戦だ。曲を発表できる算段がついたら、ぜひ育と一緒にお披露目公演に出させてくれよ」

P「ああ。もちろん最初からそのつもりだ」

ジュリア「育と一緒にどんな景色を見られるのか、今から楽しみだよ。ただその前に、今度の桃子のセンター公演の方も期待しててくれよな」
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/05(土) 21:07:59.32 ID:pLwUdLuz0
――翌日


育「ジュリアさんがわたしの新曲を作ってくれるの? やったぁ!」

P「ただどんな曲にしたいかもまだ決まっていない段階だから、もう少し待ってもらうことになりそうだ。何か動きがあれば連絡するよ」

育「ジュリアさん、次の桃子ちゃんのセンター公演に出るんだよね。忙しいのに作曲までできちゃうんだ。ジュリアさんってすごいね!」

P「育もジュリアに負けないように、今度のこのみさんのセンター公演頑張ろうな」

育「うん! わたし真さんや莉緒さんたちといっしょに、セクシーでおとなっぽいポーズを練習してるんだ。ライブでひろうするのが楽しみだなぁ」

P「う、うーむ……セクシーはまた今度にしようか。このみさんたちにもそう言っておくよ」

育「えーっ!? なんで?」

P「なんでって言われてもなぁ……そうだ! ロックなレディで行くのはどうだ? これならこのみさんたちも納得だろう」

育「ロックって、ジュリアさんみたいな? うん! 『アニマル☆ステイション!』のときから成長したところ、お客さんに見てもらいたいな」

P「よし、その意気だ。頑張ろう!」

P(このみさん、莉緒……頼みますよホント……)
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/05(土) 21:08:39.54 ID:pLwUdLuz0
――桃子センター公演当日


桃子「劇場に来てくれたみんな、ありがとう! 今日は桃子たちから目を離しちゃダメだよ。最後まで楽しんでいってね!」


ワァァァァ!!!


ジュリア「さぁ、早速二曲目にいくぜ。次はリコッタのみんなと、あたしのギターの共演だ。聞いてくれ」

桃子・春香・奈緒・亜利沙・のり子「HOME, SWEET FRIENDSHIP!!!!!」


……
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/05(土) 21:09:22.81 ID:pLwUdLuz0
春香「次はいよいよ、桃子ちゃん、のり子ちゃん、ジュリアちゃんの三人での朗読劇だね」

奈緒「本日の目玉やからな」

亜利沙「はい! 桃子ちゃんセンパイの代名詞といえばやはり演技ですからね。こんな間近でその様子を見守れるなんて……ムフゥ」

奈緒「亜利沙……テンション上がってるとこ悪いけど、シリアスな劇なんやからちゃんと舞台袖で大人しくしてるんやで。雑音でも入ったらえらいこっちゃ」

亜利沙「わ、わかってますよぉ」

春香「『果てしなく仁義ない戦い』の一部を生で聞いてから曲に入るなんて、贅沢な演出だよね」

亜利沙「Pさん曰く、先日まで行われたアリーナツアーの演出を参考にしたそうですよ」

奈緒「環とひなたがピコピコプラネッツの幼稚園イベントと重なって出られへんのは残念やけど、それでも見に来てくれたお客さんの心はバッチリ掴んでくれるはずや」

亜利沙「はい。そして朗読劇で会場の空気を掴みきったその流れで、あの名曲が――」
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/05(土) 21:10:08.19 ID:pLwUdLuz0
桃子「空を彩る星に乗ってあたしは未来へ――♪」

ジュリア「……」ポロロン

ジュリア(いいぜ、桃子。練習頑張ってきた甲斐があったな。……いや、これは想像以上だ)

桃子「ずっとずっと夢見てたキラキラのステージへ――♪」

ジュリア(客席の視線が――いや、心が完全に桃子に釘付けになってる。桃子自身も、演技から歌に入ったからなのか、助走を付けて飛び上がったみたいに軽やかだ)

ジュリア(これはあたしにとっても思い出深い曲だ。今までこの曲と一緒に、色んな景色を見てきた。悔しい舞台もあれば、夢みたいな時間もあった)

ジュリア(けど今日の景色は、そのどれとも違う。あたしが歌うだけじゃ、この景色は見られなかった。演奏の感覚もいつもとまるで違う。アコギだからってわけでもないはずだ)

ジュリア(桃子があたしを、ここまで連れてきてくれたのか。すげぇ……桃子って、こんなことまでできちまうのか)

桃子「願い事はもう唱えた? あたしと未来へ――♪」

ジュリア「……」ポロローン

桃子「……ありがとう」


ワァァァァーーーッ!!! パチパチパチ…
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/05(土) 21:11:17.57 ID:pLwUdLuz0
P「みんな、今日はお疲れ様! 最高のライブだったよ」

春香「えへへ。ありがとうございます」

亜利沙「伝説を目撃できました……ありさ、感無量です……」

桃子「もう亜利沙さんったら……。でも、桃子も……今日は楽しかったよ」

亜利沙「ふおあああああ桃子ちゃんんんんん!!!」

のり子「あははは。さて、じゃあ早いとこ着替えて打ち上げの準備をしよっか」

奈緒「せやせや。Pさん、私もうお腹ペコペコや」

P「そうだな。じゃあ俺もぼちぼち撤収作業を進めておくよ。また後で落ち合おう」

のり子「オーケー。控え室でのんびり待ってるね」
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/05(土) 21:12:01.81 ID:pLwUdLuz0
ジュリア「……なぁP、ちょっといいか?」

P「ジュリア? どうしたんだ。着替えに行ったんじゃないのか」

ジュリア「ああ。その前にちょっと相談しておきたいことがあってな……育の新曲と、お披露目公演のことだ」

P「……その顔だと、良いアイディアが浮かんだって感じではなさそうだな」

ジュリア「そうだな。むしろ逆だ。今作りかけのヤツでは、とても納得できそうにない。かといって、別の良い案が浮かぶとも思えない」

P「随分行き詰まってしまってるみたいだな」

ジュリア「今日までは順調なはずだったんだ。CMを観た小学生たちが客席を埋めて、育のステージで盛り上がってくれてるイメージも浮かんでたんだ」

ジュリア「あたしも育の横でギターを弾くのが楽しみだった……けどそのイメージも全部吹っ飛んじまった。きっかけはさっきのライブ、桃子と演った『流星群』のステージだ」

P「ああ。あれは本当に最高だったよ。会場はしっとりとした雰囲気に包まれていたけど、ジュリアもとても楽しそうだった」

ジュリア「そう。自分でも想像していた以上に楽しかったんだ。曲を聴く観客の表情も最高だった。また同じことをやれと言われても、ちょっと自信ないくらいにな」

ジュリア「それで思っちまったんだ。あたしが育の曲を作って、育と一緒に見たかった景色って、こういうことだったんだなって……」

P「育と一緒に辿り着くはずだった景色を、桃子がもう見せてくれたわけか…」
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/05(土) 21:12:35.92 ID:pLwUdLuz0
P「つまりジュリアは、それを超える景色を育と一緒に見られるとは思えないってことだな」

ジュリア「認めたくないけど……そういうことになる。桃子と見た景色を超えるモノを育と一緒に打ち出せるイメージが、どうしても抱けないんだ」

P「なるほど。ジュリアの言いたいことはよくわかったよ」

P「どうしてそう思うのか。それはきっとジュリアが育の持つ可能性を見つけられてないからだ」

ジュリア「可能性……」

P「俺だってまだとても全部は見つけてあげられてないさ。だから俺がそうであるように、ジュリアにも育の可能性を見つける作業が必要なんだと思う」

ジュリア「見つけるための作業か……育とじっくり過ごす時間でも取れれば、あたしにも見つけられるんだろうか」

P「そうだな。二人で合宿してみるなんてどうだ? ひょっとしたら、俺も知らない、ジュリアにしか見つけてあげられない可能性に気づけるかもしれないぞ」

P「育の親御さんなら、事情を話して頼み込めば一泊くらいさせてもらえるだろう。だからあとはジュリア次第だ。どうだろう?」

ジュリア「……ああ。やらせてくれ。このままじゃ自分に納得できないし、何より育に会わせる顔がないからな」

P「よし。そうと決まれば早速明日交渉してみるよ」


その後、ジュリアの中谷家へのお泊まりはすんなり決まった。育も大喜びで、当日までの日々を待ち遠しく過ごしていた。
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/05(土) 21:13:05.46 ID:pLwUdLuz0
――中谷邸


ジュリア(噂には聞いてたけどマジで広い家だな。花壇とかもきれいに整えられてたし。なんか緊張するな……)

育「ただいまー!」

育の母「おかえりなさい、育」

ジュリア「こんばんは。初めまして、ジュリアです。おじゃまします」

育の母「こんばんは、ジュリアさん。いつも育がお世話になっています」

ジュリア「えっと……今日から二日間、よろしくお願いします」

ジュリア(ああ、なんか変な感じだ。こういうとこあまりみんなには見られたくないな…)

育「えへへ。なんだか今日のジュリアさん、かわいいね!」

ジュリア「なっ……またそういうことを素直に言う…」

育「?」

育の母「うふふ。さあ、夕ご飯もできてますよ。冷めないうちに召し上がってくださいね」
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/05(土) 21:14:13.14 ID:pLwUdLuz0
ジュリア「いただきます」パクッ

ジュリア(……! 美味い……。豪華なディナーってわけじゃないけど、美味しくて安心する。これが家庭の味ってやつか)

育「どう? ジュリアさん。わたしのおかあさんの作るご飯、おいしいでしょ?」

ジュリア「ああ。最高だよ。育は毎日これを食べてるんだな」

ジュリア(劇場の連中とワイワイ食べることも多いから気にすることなかったけど……考えてみればあたし、こうやって家で誰かと食卓を囲むのってかなり久々だ)

ジュリア(それこそ、上京する前まで遡ることに……ん? 育の母さん、台所からラップを持って戻ってきたけど…)

育「おとうさん、今日もおそくなるんだね……」

育の母「ええ。でもご飯は帰ってからしっかり食べるって連絡があったわ。きちんと栄養を摂らなきゃ元気が出ないって、ちゃんとわかってるのね」ペリッ

育「おとうさんにはわたしがいつも言ってあげてるからね。おかあさんの作るご飯を食べると、わたしも元気になるもん。魔法みたいだよね」

ジュリア「魔法……そっか。そうかもしれないな」

ジュリア(育の親父さんは、どんなに疲れていても家に帰ればこの夕食と、奥さんと娘が待ってるんだな。月並みだけど、良い関係だな…)

ジュリア(あたしは、何だろうな……いつからか、そういうのに甘んじるのが嫌になって……それでギターにのめり込んで)

ジュリア(だからなのか、上京して劇場に来てからも、親父さんと一悶着あるらしいシズのあの焦ってる感じを気に入ったりなんかして……)

ジュリア「不思議だよ。こういう食卓って、あたしにはあんまり似合わないと思ってた。けど、良いもんだな」

育「わたしもジュリアさんといっしょにご飯が食べられてうれしい。今まであんまりなかったんだもん」
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/05(土) 21:14:50.04 ID:pLwUdLuz0
――そして夕食後


育「ここがわたしの部屋だよ。どうぞ」

ジュリア「ああ。おじゃまします」

ジュリア(なるほど。この部屋なら確かに一人くらい泊めても平気そうだ。桃子や環も何度も泊まったことがあるみたいだし…)

ジュリア「かわいい部屋だな。気に入ったよ」

育「そうでしょ? ジュリアさんも自分のお部屋だと思ってゆっくりしてね」

ジュリア「サンキュ。そうさせてもらうよ。ギターはこの辺りに置いておけばいいかな」

育「うん。そこでだいじょうぶだよ。ねぇジュリアさん、わたしも後でギターさわらせてもらってもいい?」

ジュリア「もちろん構わないぜ。演奏のリクエストなんかにも答えられるぞ。育の『アニマル☆ステイション!』のリフ、なかなかクールであたしも気に入ってるんだよ」

ジュリア(けど……本当に必要なものが何もかも揃ってる部屋だ。不自由することもなさそうだけど、逆にそれに窮屈さを感じたりしないのかな。いや、育にはまだ早いか)

ジュリア(環境を用意されることだって、別にダサいわけじゃないって今ならわかるのにな。大事なのはそこでどう自分を表現するかなんだから…)

ジュリア(それで言えばエミリーも星梨花も最高にロックだし、ヒナなんて地元で幸せに暮らしてたのに中学生で一人で上京して……)
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/05(土) 21:15:24.43 ID:pLwUdLuz0
ジュリア「……あたしが生まれて初めてギターに触ったのは、うちの父さんにギターショップに連れて行ってもらったときなんだ」

育「そうなんだ。ねぇ、ジュリアさんのおとうさんって、どんな人なの?」

ジュリア「よくいる九州のオッサンさ。ただ、若い頃バンドをやってたらしい。みんなでプロを目指してビッグになってやるぜ、なんて夢を語り合ったりもしたそうだ」

育「? じゃあ、どうしてプロにならなかったの?」

ジュリア「あたしも昔父さんとケンカになったときに、勢いで尋ねたことがあったんだ。そしたら、こう言われたよ――」

ジュリア「――みんな、大人になったってことに気づいちまったからだ、ってな」

育「どういうこと? おとなになるって、いけないことなの?」

ジュリア「そういう意味じゃないさ。あたしもそのときは意味がわからなかった。ただそう言った父さんの、寂しそうだけど懐かしさにしみじみしたような顔が、今でも印象に残ってる」

育「プロになる夢は叶わなかったけど、悲しいだけじゃないんだね」

ジュリア「そうなのかもしれない。夢を追ってたときの思い出までも否定されたわけじゃないからな」

ジュリア「夢に折り合いをつけなきゃいけなくなったこと、なんだかんだ自分らで折り合いをつけられちまったこと……それが青春の終わりってことなのかもな」

ジュリア「それがどういう感覚なのか、今のあたしもまだよくわからない。というより、わかっちまうときが来るのが怖い」

ジュリア「歌とギターのないあたし、アイドルじゃないあたし、劇場の仲間がいないあたし――今はどれも考えられないからな」
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/05(土) 21:15:55.03 ID:pLwUdLuz0
育「わたしも、ジュリアさんと会えなくなっちゃったらさみしいよ」

ジュリア「そうさ。あたしはあの物好きなPについていって、失いたくない仲間に出逢えたんだ。それも親が上京にゴーサインを出してくれたからだ。転校の手続きもしてくれたしな」

育「そっか。ジュリアさんが東京で一人で住んでても平気なのは、おとなだから当たり前なんだと思ってたけど……わたしたちがいるからさみしくないんだね」

ジュリア「そういうことだな。おっと、今喋ったことはみんなには内緒だぜ? ロックなオトナはこうやって秘密を共有するんだ」

育「わあ! ロックってやっぱりかっこいいね! わたしももっとロックな歌、うたってみたいな」

ジュリア「……そうだ。なあ育、明日の夕方劇場のステージを借りて、あたしの『プラリネ』を歌ってみないか? もちろん伴奏はあたしが担当するよ」

育「いいの? けど、ジュリアさんの大切な曲、わたし上手に歌えるかな……」

ジュリア「変にかっこつけて歌おうと意識しなくても、育の好きに演ってもらっていいんだ。あたしが育の世界に着いていくから」

ジュリア「知りたいんだ。あの曲を育が歌ったときに、ステージからどんな世界が見えるのかをな」

育「わたしも知りたい! わたしだって、もっとかっこいい歌たくさんうたいたいもん。断る理由なんてないよ」

ジュリア「決まりだな。じゃあ早速、Pにメッセージを送っておくよ」
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/05(土) 21:16:24.93 ID:pLwUdLuz0
――翌朝


育「いってきまーす!」

育の母「いってらっしゃい。ジュリアちゃんも、普段と違う通学ルートになるから、気をつけてね」

ジュリア「あ、はい。いってきます」

育の父「良かったな、育。お姉ちゃんができたみたいだ」

育「えへへ。まあね」

ジュリア(一晩ですっかり家族の一員みたいになっちまったな。むず痒い…)

育の父「じゃあ二人とも気をつけて。いってきます」

育「いってらっしゃーい」

ジュリア「いってらっしゃい――って、育は駅まで行かないのか?」

育「わたしはスクールバスだよ。ジュリアさんと同じバス停で待つんだ」

ジュリア「ほんとだ。もう同じ制服の子が何人か待ってるな」
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/05(土) 21:16:55.28 ID:pLwUdLuz0
育の友人A「あっ、育ちゃんおはよう!」

育の友人B「えっ、その人ってもしかして――」

育の先輩「マジで!? D/Zealのジュリアさんだ!」

ジュリア「へぇ。ボウズ、D/Zealのファンなのか。嬉しいね。サンキュ」

育の後輩A「すげー。本物だ」

育の後輩B「中谷さんも本物だけどな」

ジュリア「ま、あたしはこの見た目だし、仔猫ちゃんたちにとってはちと珍しいかもしれないな」

育「あっ、みんなバス来たよー」


育「それじゃあジュリアさん、いってきまーす!」

みんな「いってきまーす!」

ジュリア「い、いってらっしゃい……えーっと、勉強頑張れよ」

育たち「ジュリアさんもねー!」

ジュリア「はい」
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