【ミリマス】ジュリア「君の光を見せてくれ」

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19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/05(土) 21:18:04.62 ID:pLwUdLuz0
――夕方、765プロライブ劇場


紬(言われるがまま来てしまったけど、何をするつもりなんやろ……)

P「おっ、紬も聴きに来てくれたんだな」

紬「聴きに来てくれたんだな、ではありません。あなたはジュリアさんの意図を存じていながら私に何の説明も講じないおつもりですか」

P「まあまあ。聴けばわかるよ。さあ、始まるぞ」


育「ジュリアさん、わたしは準備オーケーだよ」

ジュリア「こっちもオーケーだ。昨夜言ったとおり、育の好きに歌ってもらって構わないから……」

ジュリア「P、ムギ、待たせたな。それじゃあ聴いてくれ」

ジャララララ〜♪

紬「この曲は、ジュリアさんの……」
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/05(土) 21:18:44.02 ID:pLwUdLuz0
育「夢は夢として眠るときに見るものでしょう?――♪」

紬(中谷さんのかわいらしい歌声……おそらく歌詞の意味もしっかりとは汲みきれてないはず。それでも、何かを伝えようとする真っ直ぐさはちゃんとわかる)

紬(けれどそれなら、最初からこの曲のすべてを理解しているジュリアさんが歌えばいいこと。中谷さんに歌わせた意図って、一体……?)

紬「……あ」

紬(今、何かが見えたような気がする)

育「嬉しくなって優しくなって前よりちょっと強くなるの ほらあたしにだって出来ることが少しずつ増えてゆくよ――♪」


ジュリア「サンキュ」

育「ありがとうございました!」


紬「……」パチパチパチ

P「どうだった、紬。感想を伝えてやってくれ」

紬「ええ。とても素敵でした。そうですね……ジュリアさんが歌われるこの曲は、星が降る夜のようなイメージなのですが――」

紬「――中谷さんが歌うと、木々の繁る暗い森に木漏れ日が差して輝いているような……違った情景が感じられました」

ジュリア「ああ。きっとそれこそが、育がこの曲を歌う醍醐味だ。やっぱりあたしの見立ては正しかった」
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/05(土) 21:19:25.11 ID:pLwUdLuz0
P「どうだジュリア、いけそうか」

ジュリア「手応えは掴んだよ。あとはもう一声、あたしと育で「こういう曲を届けたい!」って気持ちを共有したい」

P「その様子だと、今夜中にでも共有できそうな勢いに見えるぞ」

育「えへへ。わたしとジュリアさん、おとうさんにも息ピッタリだねってほめられちゃったんだ」

P「そうか。じゃあ曲が完成したらご両親にもいち早く聴いてもらわないとな」

育「うん!」

紬「中谷さんはこれから、どんな暗い森をもたちどころに照らしてしまう素敵なアイドルになられることでしょう」

育「そうだったらうれしいな。紬さんにほめてもらうとなんだかくすぐったいね」

紬(ええ。うちも、この夢を心の奥にしまいこんだままにせんで、本当に良かった……)


ジュリア「ムギ、いい顔してくれてたな」

P「ああ。お披露目公演ではぜひ満員のお客さんを、あんな表情にしてくれよな」

ジュリア「そうなるように精進させてもらうよ。良い報せに期待しててくれ」
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/05(土) 21:20:02.74 ID:pLwUdLuz0
――その日の夜


育「気持ちのきょうゆうって、どんなことをすればいいのかな?」

ジュリア「そうだな……昨日はあたしの昔話を育に聞いてもらったから、今日は育の話を聞いてみたいかな」

育「わたしの話? うーん……塾のCMの曲だから、学校で先生に教えてもらったおもしろいお話とか、すればいい?」

ジュリア「それも気になるけど、あたしとしては育自身のことをもっと知ってみたいんだ。例えば……育にはあたしのことどう見えてる?」

育「ジュリアさんのこと?」

ジュリア「ステージでのことでも、普段のことでもいい。あたし自身が把握できてるあたしと、育から見えるあたしは、きっと違う姿をしてると思うから」

育「ジュリアさんは、いつもかっこよくて、歌や演奏にいっしょうけんめいで、ちょっぴりはずかしがり屋で……でもやっぱり、ステージの上のジュリアさんが一番かっこいいって思う」

育「ジュリアさんのライブを見るといつも、わたしもこんな風にみんなにかっこいいって感じてもらえるようなおとなになりたいって思うんだ」

育「わたしもジュリアさんといっしょのステージに立てば、かっこいいアイドルとして見てもらえるのかな。桃子ちゃんみたいに」

ジュリア「桃子?」
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/05(土) 21:20:39.97 ID:pLwUdLuz0
育「前にライブで、ジュリアさんと桃子ちゃんの二人で『オーバーマスター』を歌ったことがあったでしょ?」

ジュリア「地方ホールツアーでのカバーコーナーだったかな。あの企画は曲が流れ始めてから演者が出てくるまで、誰が歌うかわからない面白さがあったな」

育「『オーバーマスター』ってイントロが流れるとまず、お客さんが「おおー!」って言うでしょ」

ジュリア「そうだな。イントロ一つで会場の雰囲気をガラッと変えられる、パンチ力の強い曲だ」

育「わたしね、その後ステージに出てきたのがジュリアさんと桃子ちゃんだってわかった瞬間の、お客さんの大歓声が忘れられないんだ」

ジュリア(あっ――)

育「桃子ちゃんは『オーバーマスター』みたいなかっこいい曲を歌うことをお客さんにこんなに期待してもらえてるんだってわかったから、うらやましかった」

ジュリア(そうだったんだ。育自身もそんな風に感じること、あったんだな……考えてみれば当然の話か。自分のことなんだから)

ジュリア(たとえ間接的な反応だとしても、自分に刺さってくる声なら嫌でも耳に入る。福岡で、一人でギター担いでいた頃のあたしもそうだった)

ジュリア(だけど育は、そのことでイライラしたり周りに不平を言ったりしない。ほんと、この歳で大したヤツだよ)

ジュリア「……なあ育、あたしはどうしても見てみたいんだ。世界で育だけにしか表現できないロックを。育とあたしでしか見ることのできない景色をさ」

育「ほんと? ジュリアさんがいっしょなら、見られるのかな」

ジュリア「見られるさ。きっと今日ムギが言ってた言葉が大ヒントだ。だからあたしに力を貸してくれ」

ジュリア「あたしがただ育をかっこよくするんじゃない。育の力で、育とあたしをまだ見たことないかっこいいステージに連れて行ってくれないか」

育「ジュリアさん……うん! わたし、がんばる。いっしょに最高の曲を作ろうね!」
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/05(土) 21:21:15.74 ID:pLwUdLuz0
………

ジュリア(よし。ここはこういうフレーズで行った方がいいかな)

謎の声「ねぇ、あそこでギター弾いてる子、まだ中学生じゃないの?」

謎の声「平日のこんな時間から……」

ジュリア「な、なんだよこれ……ここは、地元の駅前――くそっ」ダッ


謎の声「まあ、頭が冷えるまで好きにさせればいいんじゃないか」

謎の声「他に夢中になってる物もなさそうだし、飽きれば戻ってくるだろう」

謎の声「3組の熊野さんって、あの赤い髪の子?」

謎の声「なんか他の学校の子とバンド組んでたみたいだけど、噂だとギターの子が新たに入って抜けたらしいよ」

謎の声「それで一人で駅前で演奏してたんだ」

謎の声「可愛そうだけど、ちょっと声かけづらいよね。なんか怖そうだし」

ジュリア「今度はあたしの通ってた中学校じゃねえか……どうなってんだよこれ」

ジュリア「違う……あたしの帰る場所はここじゃない。あたしには、仲間が……」

………
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/05(土) 21:22:06.24 ID:pLwUdLuz0
ジュリア「ぐぁっ――!? 夢、か……」

育「ジュリアさん……だいじょうぶ?」

ジュリア「育!? すまない。起こしちまったのか。ちょっとうなされちまってたみたいだな。情けない…」

育「こわい夢見てたの?」

ジュリア「……ああ、そうだな。あれが悪夢なんだとすれば、今が幸せであることの裏返しなのかもしれないな」

ジュリア(何もこんな日に見なくたっていいじゃないか。曲作りが進んでないこと、やっぱり内心焦ってるのか?)

育「ねぇジュリアさん、眠れないならわたしが手をつないでてあげるね」

ジュリア「えっ?」

育「小さいころこわい夢を見てうなされたとき、いつもおかあさんがそうしてくれたの。今でもきんちょうしたときとかに手をにぎってくれるんだ」

育「そしたらこわいことなんてぜんぶどこかに消えちゃうんだ。すごいよね」

ジュリア「そうだな。あたしも信じるよ。育の魔法」スッ

育「もう、わたしの頭をなでるんじゃなくて、わたしがジュリアさんの手をにぎってあげるんだから」ギュッ

ジュリア「ははは。悪い悪い」

ジュリア(暗い森を照らす木漏れ日か……ムギのヤツ、上手いこと言うじゃないか)
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/05(土) 21:22:40.14 ID:pLwUdLuz0
――翌日、ジュリアたちの高校


奈緒「なんやジュリア、午前の授業サボってるんか?」

響「そうなんだぞ。登校してきたと思ったら、いきなりギター担いで屋上に行っちゃって。先生には一応ごまかしておいたけど」

紬「もしかしたら、楽曲の着想が浮かんだのかもしれません。今日の昼食はお誘いせずそっとしておいた方がいいかもしれませんね」

奈緒「それなら後で購買のパンでも差し入れに行ってこよかな」

ジュリア「いや、その必要はないよ」

奈緒・響「ジュリア!」

ジュリア「手間かけさせちまってすまない。例の曲、無事完成だ。だから午後の授業にはちゃんと出席させてもらうぜ。誰かさんに勉強も頑張れって言われちまったもんでね」

紬「そうだったんですね。良かった……」
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/05(土) 21:23:10.36 ID:pLwUdLuz0
奈緒「あとはCMの制作側に太鼓判押してもらえるかやな。ま、ジュリアも手応え十分って感じやしきっと大丈夫やろ。発表を楽しみに待たせてもらうで!」

響「お披露目公演には自分も出させてよね!」

ジュリア「もちろんだ。ちゃんとスケジュール空けておいてくれよ」

紬「中谷さんにも連絡してあげなくて良いのですか」

ジュリア「真っ先に連絡したぜ。なにせ今回の大事な相棒なんでね」


その後、提出したデモ音源は無事CM制作側に認められ、正式なレコーディングが行われた。

育主演のCM撮影も順調に終わり、CD発売とCM放映開始の日取りも決まった。あとはいよいよ、お披露目公演を残すのみとなった。
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/05(土) 21:23:38.11 ID:pLwUdLuz0
――お披露目公演、本番


ジュリア「さあ、お次はいよいよお待ちかねの新曲だ。来てくれ、育!」ジャカジャーン


ワァァァァ!!!!!


育「みんなありがとう! もう知ってる人もいるかもしれないけど、この曲はジュリアさんが作曲してくれたんだ」

ジュリア「最高の曲ができるように、作曲の前からレコーディングが終わるまで、二人で何度も何度も話し合ってきたんだよな」

育「うん! いっぱいお話して、お客さんみんなが楽しんでもらえるように二人でがんばってきたんだよね」

ジュリア「あたしもこの曲で、育と二人で、この劇場をどんな景色に包めるのか……とてもワクワクしてるんだ」

育「それじゃあ、聞いてください。ジュリアさん!」

ジュリア「ああ。いくぜ!」ジャジャーン
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/05(土) 21:24:12.45 ID:pLwUdLuz0
――公演終了後


P「育、お疲れ様! 最高だった! ご両親もきっと喜んでくれてるよ」

育「Pさん、おつかれさま! えへへ。今日はおとうさんもちゃんと見に来てくれたんだよね。よかった」

P「ジュリアもお疲れ様。新曲はまだ発売前だが、告知動画の再生数がうなぎ登りだ。これはミュージシャンとしての注目度も高まってきそうだぞ」

ジュリア「お疲れ、P。忙しくなりそうだが、あたしはもちろん大歓迎だよ。それもこれも、育があたしをここまで連れてきてくれたからだ。ホント感謝してる。ありがとな」

育「わたしもお礼したい! ありがとうジュリアさん。今度この曲をうたうときは、今日よりもっともっとかっこいいステージにできるようにがんばるね!」


響「育、ジュリア、お疲れ様! カンペキなステージだったぞ!」

奈緒「ホンマにホンマに最高のステージやった! 私、感動して舞台袖で泣いてしもたわ」

紬「ええ。会場全体が優しい光に包まれたような……素敵な時間でした」

育「響さん、奈緒さん、紬さん、ありがとう! わたしもこんなすごいステージができてうれしい! みんなのおかげだよ!」

ジュリア「ああ。けど、誰より一番頑張ったのは育だ。今日の観客のみんなのいい顔、見ただろ? あれこそが、あたしが育と一緒に見たかった景色なんだ」

育「うん。すごくすてきな景色だった。わたし今日のステージのこと、ずっと忘れない!」

ジュリア「あたしもだ。こんな思い出深いステージを共有できて、心から嬉しいよ」
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2019/10/05(土) 21:24:46.48 ID:pLwUdLuz0
育「こんなにロックなわたしになれたのも、きっとジュリアさんとひみつをきょうゆうしたおかげだね!」

ジュリア「ま、待て、育それは……」

紬「秘密を……」

響「共有……?」

奈緒「なんやジュリア、また上手いことかっこつけて、恥ずかしいエピソードを育に黙っといてもらおうって魂胆なんとちゃうん?」

ジュリア「そ、そんなことはない! 断じて、ない!」

響「――ってジュリアは言ってるけど、ホントのところはどうなの育?」

育「ナイショだよ。ジュリアさんはかっこいいけどふつうの女の子なんだから、みんないじめちゃダメだよ」

紬「普通の」

響「女の子」

奈緒「ホー……なるほどなぁ」

ジュリア「だぁぁっ、育! その辺にしといてくれー!」



おわり
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/05(土) 21:25:52.65 ID:pLwUdLuz0
「上京高校生組は同じ芸能系高校に通っている」という独自設定で書かせていただきました。

ありがとうございました。
32 : ◆NdBxVzEDf6 [sage]:2019/10/05(土) 21:59:43.94 ID:RztxaZaW0
ジュリアの上京前の話はいろいろな想像が見られていいな
乙です


>>3
ジュリア(16) Vo/Fa
http://i.imgur.com/AC10XEb.png
http://i.imgur.com/hdR9rnz.jpg

>>4
中谷育(10) Vi/Pr
http://i.imgur.com/j9lyn4z.png
http://i.imgur.com/p64webr.png

>>1
秋月律子(19) Vi/Fa
http://i.imgur.com/anoP91T.png
http://i.imgur.com/DG3nwyU.jpg

>>5
周防桃子(11) Vi/Fa
http://i.imgur.com/1xeGWiA.png
http://i.imgur.com/79Lx8rN.png

天海春香(17) Vo/Pr
http://i.imgur.com/1lFL5DO.jpg
http://i.imgur.com/blcXwiW.jpg

横山奈緒(17) Da/Pr
http://i.imgur.com/23XZjnm.png
http://i.imgur.com/HaHGdPr.png

松田亜利沙(16) Vo/Pr
http://i.imgur.com/Aviu1cZ.png
http://i.imgur.com/EK0mf87.png

福田のり子(18) Da/Pr
http://i.imgur.com/uXF8J5D.jpg
http://i.imgur.com/6T0ZmJ4.jpg

>>18
我那覇響(16) Da/Pr
http://i.imgur.com/WnOwgO1.jpg
http://i.imgur.com/4kt2owq.jpg

白石紬(17) Fa
http://i.imgur.com/yId0WLA.png
http://i.imgur.com/McbwTmk.png

>>4
『アニマル☆ステイション!』
http://youtu.be/aeVsrr4jqcE?t=130

>>5
『HOME, SWEET FRIENDSHIP!!!!!』
http://www.youtube.com/watch?v=ZdgBjjN99zw

>>7
『流星群』
http://www.youtube.com/watch?v=Hstu1RmC0BU

>>20
『プラリネ』
http://youtu.be/pBxjzK-DkWs?t=86
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2019/10/06(日) 09:24:43.43 ID:RVHFt7l/o
おつ!
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2019/10/06(日) 13:22:11.87 ID:tg6OJszCo
おつ!良かった!
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