【安価】で異世界なろう転生

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8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/21(火) 21:28:56.59 ID:TrARNAc5O

?「ひとつ…とある本を授けます。必ず貴方の役に立ちますので、有効にお使い下さい」




男「本?魔導書?あ、やっぱ魔法ならこの精神力ってのを使うんですか?」




?「ご武運を」



ちょっと待ってと手を伸ばすと、自分の手が見えた。
いつの間にか俺は知らない場所に転送…いや、転生されていた。


見た感じ教会らしき所の空中に俺は居る。
下を見れば多からず少なからずの人達が祈りを捧げていた。



男「(いきなりだな、ほんとに)」



俺の真下にはいかにもな魔法陣が敷かれており、これは察するに召喚の義だろう。


つまりここでスキルを使えば俺が英雄、または勇者として爆誕するという展開だ。
そうとなれば話は早い、早速使おうじゃないか。



男「……どうやって使うんだ?」



ただの一般人だった俺にスキルの使い方なんか分かるはずもない。
謎の声の主め…そういうとこだぞ。



男「あ、そうだ」



そういえば本を貰った筈だ。俺の役に立つと言うなら、そこに何か書かれていてもおかしくはない。
先程から俺の隣でフワフワと分厚い本が浮いているが、恐らくこれが貰ったという魔導書だ。



男「どれどれ……【攻略本】……え?」



何だこれは?攻略本?とてもじゃないが魔導書には見えないぞ。
最初のページを開くと目次が大量に書かれている。


異世界の歩き方、スキルの使い方、魔物図鑑etc.....数えたらキリがない。
物凄く文句を言いたいが、あまり時間もかけてられないな。
スキルの使い方のページを開き、しっかりと読み込む。



男「よし……」



精神力という曖昧な概念を意識して声に出せば発動するみたいだ。



男「実体化」

9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/21(火) 21:43:41.65 ID:TrARNAc5O

魔法陣を見ながら呟いたら、急に地面が近くなった。
そしてこの、地に立っている感覚、身体が在るという実感、どうやら成功したみたいだ。
視線を前に向けると、皆跪いていた。



神父「ようこそ、勇者様。貴方様の降臨を、我々は待ち望んでおりました」


男「…………」



ここは俺の事を誰一人として知らない世界。
普段の俺を誰も知らないのだ。
つまり、最初が肝心。


どういった態度で今後やっていこうか。





1 いつも通り
2 謙虚に
3 偉そうに
4 自由安価

安価下
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/21(火) 21:44:34.88 ID:+vUCcHowo
2
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/21(火) 22:22:46.38 ID:zrAYageu0
幽体ということは物理攻撃とか壁とかすり抜けられるならなかなか便利なのでは
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/22(水) 01:26:53.56 ID:tHbViWRO0
攻略本とかどう考えてもチート能力なんだけど、それでも転スラと比べると完全下位互換というね。なろう小説は魔境やでほんま。
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/22(水) 14:44:30.60 ID:WPSzylAGO

ここは謙虚にいこう。勇者って言っても特別な力や超人的な能力がある訳でもないしな。
それにこの攻略本…どの程度役に立つかは分からないが、何も無いよりはマシだな。



男「あ、どうも…」


「「オォォォーーッ!!」」



突然の歓声に吃驚してしまう。この世界での勇者ってのはこんなにも期待されているのか。



神父「お許し下さい勇者様。我々は貴方様の顕現を待ち望んでおりました故…騒がしくて申し訳ありません」


男「あ、頭を上げて下さい。俺は大丈夫ですよ」



俺に期待を寄せられれば寄せられるだけ、自分の能力の低さに引け目を感じてしまう。
持ち上げられる事に縁が無かった俺には非常に気まずい。



神父「ありがとうございます。早々で申し訳無いのですが、この私めにご同行願えますでしょうか?」


男「はい、いいですよ」



一刻も早くこの場から離れたい。視線が刺さるという表現をここまで実感するのは初めてだ。



━━━━━



俺が神父に案内されたのは、城の玉座の間。
城なんて写真でしか見た事ないが、生は迫力が違う。
案内された部屋の玉座に腰掛けるのは、見るからに王様と分かる風貌のビゲモジャのおじさん。



神父「勇者様。この方が我が国、光の都の王で御座います。では、私はこれで…失礼致します」


男「はい、ありがとうございます」



神父は俺と王様に一礼すると、玉座の間を後にする。
とはいえ勝手が分からないので、とりあえず王様に向かって跪いて頭を垂らす。



王様「よい。堅苦しいのは無しだ、勇者よ。頭を上げよ」


男「はい」


王様「うむ。改めて歓迎するぞ、勇者。貴殿が何故此処へ召喚されたのか…そこから話そう」


男「あ、自分が転s……召喚されたのは、この世界を救う為です王様」


王様「神父から聞いたのか?その通りだ」



話長そうだし、分かってる事はちゃちゃっと答えてしまおう。
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/22(水) 15:14:44.16 ID:WPSzylAGO

王様「ならば話は早い。魔王の復活により、この世界再び危機へと陥っておる。勇者よ、魔王討伐…頼まれてくれるか」


男「勿論です、その為に来ましたから」


王様「うむ。それと…だ。貴殿かからすれば見知らぬ世界、一人では何かと不安もあるだろう。2人程旅のお供として同行させよう」


男「ありがとうございます」


酒場で仲間を集めるみたいな感じかと思ったけど、手間が省けたな。
2人か、どんなやつが来るんだろう。



王様「うむ。呼んで参れ」


護衛兵「はっ!」



王様は玉座の脇に居た兵士に指示を出し、兵士は扉へと駆けていく。
それから2分くらい経って先程の兵士が帰ってきた。



兵士「連れて参りました!どうぞ、お入り下さい!」


男「お…」









同行させる2人



【種族】
【職業】
【性別】
【強さ】


安価下
安価下2
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/22(水) 15:28:36.72 ID:zgxZy0zzo
【種族】人間
【職業】侍
【性別】男
【強さ】集団の賊を一人で撃退出来る
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/22(水) 15:57:53.78 ID:vdPP8n7Ao
【種族】人間
【職業】シスター
【性別】女
【強さ】祈りを捧げて魔物の魂を浄化する程度(直接戦闘できる能力はない)
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/22(水) 21:25:05.54 ID:tHbViWRO0
この二人に関することも攻略本に赤裸々に書いてるんやろうなぁ
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/23(木) 13:34:39.83 ID:FHhmQRdJO

中に入ってきたのは着崩した和服に刀を腰に差している男。
もう1人は修道女の様な服に、少し大きめの十字架を手に持った女。
2人は入るなり俺を一瞥すると、その場で片膝をつく。



王様「紹介しよう。刀使いの冒険者、侍と光教会司祭の娘、シスター。この2人を同行させよう」


男「あ、ありがとうございます」


王様「うむ。して、今後についての話になるが───



━━━━━



王様から仲間を2人あてがって貰った後、俺は城の一室で休憩している。


あの後王様から聞いた話では、魔王に対抗する為に四大精霊と契約を行わなければならないらしい。
四大精霊は各都に居る姫と契約していて、その契約をこちらへ更新するという話だ。


勇者の俺にはその適正があるらしいが、ステータスを見た感じそんなものは無いと思ったが…。
まぁ適正があると、この世界の住人が言うのならそうなんだろう。


他には軍資金を貰ったが、贅沢をしなければ3人で半年は持つ金額だそうだ。
ゲームなら装備買ったら無くなる程度の軍資金を貰うのが定番だが、やはりこれはゲームとは違うね。


出発は明日からとなっている為、今日は自由行動が可能だ。




何をする?

1 観光
2 攻略本を読む
3 待機している仲間の部屋に行く
4 自由安価

安価下
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/23(木) 14:58:14.42 ID:aoXGnUNTO
4 壁に埋まったまま実体化したらどうなるか実験
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/23(木) 16:34:30.99 ID:d5FZ6G6Q0
えぇ・・・
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/23(木) 17:12:22.95 ID:FHhmQRdJO

もう一度ステータスでも確認しておくか。
ええと、ステータスの出し方は…


攻略本を開き、該当するページへと飛ぶ。
開いてみると出し方ではなく、そこにステータスが書かれているではないか。


ただ分厚い本の為、その都度探すのは面倒だな。
俺はステータスのページに折り目を付けて、今後開きやすいように細工をする。


栞があれば良いんだが、まぁこれでも十分だ。
見た所ステータスもこれと言って変化は……



男「ん?」



いや、変化はしている。
俺の状態を示していた項目が幽体から実体になっているのと、精神力が大分減っている。


俺が実体化してからは数時間は経過している筈だ。
これがバフ系ならば一定時間で幽体に戻ってもおかしくない。


もしかして切り替え型なのか?つまりは反対の幽体化が必要なのではないか。
俺は目次へと戻り、スキルのページへと飛ぶ。


俺の勘が当たっているならば幽体化がある筈だ。
探している最中、俺はこの攻略本の凄さに驚かされる。


共通する魔法の他、個人が所有するスキル、固有スキルまでもが網羅されているのだ。
正直ここを見ているだけでも厨二心が刺激されて堪らないのだが、これは後後の楽しみにしておこう。



男「…あ。あるじゃん」



見つけた、幽体化。
このスキルは高位魔術のひとつで、本来ならば実体化と並行して覚える魔法らしい。


俺は特殊なせいなのか、実体化しか持ち合わせていない。
この世界にレベルを上げてスキルを覚えるという概念があるかは分からないが、この先覚えられなければ幽体には戻れないみたいだな。


まぁいつでも幽体実体切り替えられたら普通に考えて強いよな。
いや、転生なんだからそれくらいしてくれても良いのになーとは思うが言っても仕方の無い事。


22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/23(木) 17:54:55.54 ID:dX07zI3Bo
ってことは攻略本持ってるだけの雑魚じゃねえかこいつ
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/23(木) 17:57:42.53 ID:FHhmQRdJO

コンコン


お?誰か来たようだ。
ベットから腰を上げ、扉を開ける。



男「あ、君は…」


「やっほー勇者様、さっきぶりだね」



扉を開けた先には、シスターという修道女が立っていた。
修道女という職は、温厚でお淑やかなイメージを持っていたんだが、この子はどうやら当てはまりそうに無い。



シスター「入っていい?」


男「あ、うん。どうぞ」



シスターを部屋へと入れて扉を閉める。
何しに来たんだろうか。
男女が密室で2人きり、何も起きない筈もなく。



シスター「…あのね」


男「え?なに?」


シスター「実は…最初見た時から、気になってたんだよね」


男「え?えっ!?」



おいおいマジかよ、いきなり来る?展開はえーなおい!
俺はまだ君の事何も知りませんけど??
まぁ据え膳食わぬは男の恥とも言うし俺的にはやぶさかではないていうかなんていうかねぇ!



シスター「あれ…見てもいい?」


男「……あれ?」



シスターの指の先、それはベットに置かれた攻略本に向いていた。
なんだよ気になってたってそっちかよ!
でも残念だったな!それはえっちな本じゃ無いんだよ!



シスター「だめ?」






1 良いよ
2 企業秘密だ
3 取引だ
4 自由安価

安価下
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/23(木) 18:01:39.23 ID:LdYbWH+DO
1
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/23(木) 18:59:37.61 ID:d5FZ6G6Q0
いいんかーい
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/24(金) 14:53:26.57 ID:P9ioZkcEO

男「良いよ」


シスター「やった、ありがとー」



期待から大分外れたけど、シスターの笑顔が可愛かったのでそれで良しとする。



シスター「………?」



不思議そうな顔をして攻略本をパラパラと捲り続けるシスター。
目当てのページが見つからないのかな?



シスター「ねぇ、勇者様」


男「ん?」


シスター「何でこれ…全部白紙なの?」


男「え?白紙?」



そんな馬鹿な。俺はシスターの側に寄って攻略本を覗き込む。
そこには白紙なんかではなく、普通に文字や挿絵が描かれている。



男「白紙じゃないよ?ほら、いっぱい書いてある」


シスター「え…?私には何も見えないけど…」


男「マジで?」



つまりは攻略本は俺にしか見えない?
これは転生者の特権みたいなもんなのかな。まぁ確かに色々と赤裸々に書いてあるしな、この世界の人が見たらたまげてしまう内容かもしれない。



シスター「勇者様にしか見えないんだー残念だなー」


男「そうみたいだね。あ、読んであげようか?」



見えないならば俺が読めば良い。
我ながら気の利いた男よ。



シスター「聞きたい聞きたい!でも、これって何の本なの?」


男「あー…」


27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/24(金) 14:58:15.89 ID:P9ioZkcEO


攻略本って言っても伝わらなさそうだしな、何て言えば良いんだ。
ゲームの攻略本みたいになんでも書いてあるしなー…ん?
そうか、そのまま伝えれば良いのか。



男「この世界の事なら何でも書いてあるよ。何が知りたい?」


シスター「え、この世界の事を何でも?」


男「そうそう。俺もまだ全部読んだ訳じゃないけどね」


シスター「今日の晩御飯もわかるの?」


男「ごめん、それは書いてないと思う…」


シスター「えー!何でも書いてあるんじゃなかったの?」


男「何て言うか、そういうんじゃなくてね…もっとこう、知りたい事?みたいな。何か無い?知りたい物とか」


シスター「知りたい物ー?……んー…あ、えー…でもわかるかなー…」



何でもというのは逆に難しいのはわかる。何食べたいからの何でもいい、みたいな。
顎に拳を置いて、シスターはぶつぶつと唸っている。



シスター「…あのね、勇者様」


男「?」


シスター「私の将来とか…わかるかなぁ?」


男「いやぁそれも…」



いや待てよ、攻略本には人物紹介があったはずだ。
将来かは分からないが、何かしら書いてあるかもしれないな。



男「あるかは分からないけど、見てみるね」


シスター「ほんとに?お願い!」
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/24(金) 15:24:22.76 ID:P9ioZkcEO

目次を確認した後、人物紹介へと飛ぶ。
名前順になっていて、人物紹介は1ページ丸々使った設定資料みたいなものだ。


シスターの行までパラパラと捲る。
そして、今目の前に居る子とそっくりの設定資料を見つけた。


光教会に務める司祭の娘。
修道女としての振る舞いが苦手で、いつも司祭からは怒られている。
食事全てスイーツで良いと豪語するくらいの甘党。

この世界では珍しいとされる治癒魔法を使い、勇者を手助ける。
戦闘能力は皆無に等しいが、アンデットや不死の魔物に対しては浄化と称した神聖術を使える。

前回の勇者に同行して命を落とした母は聖女が呼ばれる存在であり、シスターもまた聖女の血を引いている。
適正の無い勇者に代わり──────代償として────。



男「……?」


シスター「手が止まってるけど、あったの?」


男「あ、いや…」



不自然に文字間に空白がある。何かしら書いてあったんだろうが、これでは読めない。
というかこれ…伝えて良いのか?



シスター「勇者様?」





1 伝える
2 ごめん、書いてなかった
3 それよりケーキでも食べに行かない?
4 自由安価

安価下
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/24(金) 15:26:12.13 ID:mKJ5WVnJo
1
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/24(金) 16:36:42.84 ID:P9ioZkcEO
undefined
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/25(土) 13:02:23.89 ID:/STiq4KJO

見た感じ本人なら知っていそうな部分もあるし、話しても問題ないかな。
俺は先程黙読した部分をシスターに教えた。



シスター「それって、私が聖女って事?」


男「そうなるよね。シスターは聖女なんだ」


シスター「えぇ!凄くない!?私聖女だって!」


男「う、うん?凄いね」


シスター「聖女だよ!!」


男「いでで!わかってるって!」


シスター「んふふ…」


男「な、なんだよ…」



コンコン


男「あれ、また誰か来た。ちょっと待ってて」


シスター「はーい!」



次は誰かな、なんて思って扉を開ける。
そこには祭服を着た中年の男性、俺は直感でシスターの父親だとわかった。ここへ来た理由も単純明快。
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/25(土) 13:32:01.34 ID:/STiq4KJO

男「あちらに」


祭司「えっ…あ!やっぱりここに居たか!馬鹿娘が!」


シスター「げっ」



苦虫を噛み潰したような顔で父親を睨む娘。
祭司は俺に一礼してから中へと入り、ずかずかとシスターの元へと行く。



祭司「明日から発つというのにお前まだ荷造り済んでないだろ!すみません勇者様!何か失礼を…すぐに連れ戻します!」


男「いえいえ、特に何も」


シスター「失礼なんてそんな事しないよ!荷造りだって後でやろうと思ってたし…」


祭司「言い訳はいい!行くぞ!」



祭司はシスターの修道服の襟首を掴み、ずいずいとシスターを引きずる。



シスター「いやぁ〜〜!勇者様助けてぇ〜!」


男「また明日ね〜」


シスター「うらぎりものぉぉ!」



引きずられて行くシスターに俺は手を合わせ、特に意味もなく黙祷した。



─────



翌日。
軽く朝食を済ませた後、正門で侍とシスターが待っているというので俺は軽い手荷物を持って正門へと急いだ。



男「ごめーん、お待たせー!」


シスター「おはよー勇者様…」



シスターに元気が無い、あの後こってりと絞られたんだろうなぁ。



侍「応、来たな勇者」


男「あ、どうも。たしか…侍さんですよね。男です、宜しくお願いします」


侍「あー!硬っ苦しいのは無し無し!これから共に旅する仲間なんだから、もっと気楽に行こうぜ?」


男「あ、じゃあ……わかった。改めて宜しく、侍」


侍「そうそう!それで良い!」

33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/25(土) 13:44:53.79 ID:/STiq4KJO

もっと怖い人かと思ったけど全然そんな事は無くて少し安心した。



侍「っと、その前に少し良いか?勇者」


男「ん?」


侍「ほれ」



侍は腰に差していた刀を俺に向かって放り投げてくる。
吃驚したが、なんとか落とさずにキャッチした。



シスター「ちょっと!危ないじゃん!勇者様が怪我したらどーすんのよ!」


侍「おーそりゃ悪かった。でも取っただろ?」


シスター「それは結果ー!」


男「それより何で俺に刀を?」


侍「旅立つ前に、俺と少し腕試ししようぜ」


シスター「は」


男「え…」


侍「やっぱ勇者って言うからには、さぞ腕が立つんだろ?仲間の力量を知る上でも大事な事だしな、良いだろ?」


シスター「……」


侍「この娘っ子も見たいってよ、勇者」


シスター「や、別にそんなんじゃ…」



そんなチラチラ俺を見られても困る。



侍「別に本気でやる訳じゃねぇさ、軽くだよ軽く」






1 戦う
2 戦わない
3 自由安価


安価下
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/25(土) 13:47:54.87 ID:MR1pre/nO
3、慎重に戦う
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/25(土) 15:25:31.53 ID:/STiq4KJO

男「…確かに侍の言う通り、仲間の実力を知っておくのは大事だね」


侍「どうやら…やってくれるみたいだな?話が分かる奴で良かったぜ。そうと決まりゃあ場所を移そう、ここじゃ目立つからな」


男「わかった、案内して」



俺達は正門を抜け、都の外へと出た。
少し歩いて人気の無い辺り、言うてもだだっ広い草原の適当な場所でやる事にした。


何事もやってみなくては分からない。
刀なんて使った事も持つのも初めてだし、少し慎重に行こう。



侍「ここら辺で良いだろ。さぁ、早速始めようぜ」


男「…ふぅー」



分かっては居たが、緊張する。ろくすっぽ喧嘩もしないような平和な生活をしていた俺に、これから斬り合いをしろと言うのだ。


だが、今更引けない。平常心だ、平常心。
呼吸を整え、俺は某漫画の真似をして居合いの構えに移行する。
それに呼応する様に、侍も刀を抜いて、だらりと垂らして構える。


侍「"それ"…使えんのか?」


男「……」


シスター「頑張って勇者様ー!」



俺が構えを取ってから数十秒。
互いに動かず、いや俺は動けないだけだけども。
お見合いが続いている。



侍「どうした?来て良いんだぜ?」


男「はは…ちょっとね」



来て良いと言われても、踏み込む勇気が無いよ。
下手に動くより、まずは様子見だ。



侍「ま、来ないならこっちから行くぜ」



語尾を聞き取ると同時に侍は俺に向かって駆けてくる。
よくある高速移動とかでは無いが、見えない訳じゃないが、とにかく……速い。



男「くっ──!」




1 ビビって適当に斬りまくる
2 飛天●●流
3 よく見て、避けてみる
4 自由安価

安価下
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/25(土) 15:31:35.13 ID:WoEG5S4z0
トンファーキック
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/25(土) 15:34:17.26 ID:iaNJ2uwPo
4
刀投げつけて飛びかかる
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/25(土) 15:46:32.97 ID:oHaPRbCc0
寸止めしてくれないと普通に斬られそう
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/25(土) 19:15:55.35 ID:/STiq4KJO

正攻法じゃダメだ。理由は分からないが俺の勘がそう言っている。
相手の意表を突く、それなら──。


俺はタイミングを合わせて、構えのまま右足で前蹴りを繰り出す。
トンファーキックならぬイアイキックじゃい。が、意表を突いたつもりの攻撃虚しく足は空を突く。というか侍が消えた。



男「消え──」
侍「まさか蹴ってくるとはねぇ」


男「なっ!?」



背後から侍の声がして、咄嗟に振り向く。
侍は薄ら笑いを浮かべながら顎をさすっている。
いつの間に移動したんだ?全く見えなかったぞ。



侍「ほら、チャンスだぜ?」



侍は挑発しているのか、刀をしまって両手を挙げている。
流石に力量は測られただろうが、このまま終わるのは癪だ。
一太刀でも浴びせてやる!



男「オラァァ!」



もはや構えは崩れ、俺は刀を抜いて上段で襲いかかる。
侍は俺のその様を見て、また笑った。



シスター「勇者様!?」



─────



後頭部には柔らかい感触。おでこ辺りを誰かに撫でられていて、俺は目を覚ます。



男「ん…」


シスター「あ、起きた!勇者様!大丈夫?」


男「あれ…俺…」



ついさっきまで侍と勝負していた筈なのに、何でシスターに膝枕されて……膝枕…だと…?



侍「よう、やっと起きたか」


男「……一体何が?」


シスター「覚えてないの?」
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/25(土) 20:43:06.16 ID:/STiq4KJO

男「うん。何が起きたの?」


シスター「あのおっさんが刀を飛ばしたの!」


侍「おい、俺はおっさんじゃねぇ。まだ20代前半だ」


男「刀を飛ばすって?」


侍「今のは嬢ちゃんの言い方が悪ぃ。要は鍔を弾いたのさ、こうやってな」



侍は刀を立てて親指で鍔を弾くと、刀が数センチ上へと上がる。



シスター「そう。それが勇者様の顎に当たっちゃって…」


男「なるほど、それで気を失ったって訳か」


侍「加減したつもりだったんだけどな、打ち所が悪かったみてぇだ。すまん!」


男「いやいや、俺が弱いから…」

41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/25(土) 22:44:28.05 ID:/STiq4KJO


侍「そうだなぁ、確かに俺が抱いてた期待からは大分外れてたな」


男「だよね…」


侍「なに、気に病むことはねぇさ。弱ぇなら強くなりゃ良いだけの事。お前次第という訳よ」


男「俺次第…」


シスター「大丈夫!勇者様なら強くなるよ!絶対!私が保証する!」


男「はは、言い切ってくれるね。でも…ありがとう」


侍「どんなモンでも磨きゃぁ光る。積み上げたモンは裏切らねぇ。だから、頑張ろうぜ」


男「ありがとう。頑張ってみるよ」



異世界転生者としての補正で今後強くなる可能性は捨てられないけど、それを抜きにしても俺は強くなろうと心に決めた。

42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/25(土) 22:45:14.07 ID:/STiq4KJO

侍「さてと、少し動いたら腹減っちまったな。嬢ちゃん!野営の準備くらいあるんだろう?飯にしようぜメシ!」


シスター「あるけど…てかおっさん荷物少なすぎ!勇者様のサポートするのが私達の役目でしょーが」


侍「おっさんじゃねぇ!」



─────



設営後。
シスターは魔道具を使って調理をし、もらう事になり基礎体力や筋力作りをしている。



侍「それが限界かー?」


男「はぁ…はぁ…もう、無理ぃ…」


侍「まぁ、平均ってとこだな。教えるのは構わねぇんだが、勇者はまだ身体が出来てないからな。戦いを覚える前に、まずは基盤を作らねぇと話にならん。技術はその後だ」


男「はぁ…が、頑張ります…」


シスター「ほらーそこまでー!ご飯出来たよー!」


侍「おー!今行くー!」



筋トレから解放され、少し安堵する。
強くなりたいと言ったとはいえ、やはりキツイ物はキツイ。


悲鳴を上げる筋肉に無理をいわせ、突っ伏した身体を起こして用意された椅子へ座った。


43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/25(土) 22:46:38.99 ID:/STiq4KJO

簡素な物になるかと思った食事だが、思いの他しっかりとした飯だった。
大皿の上に肉や野菜に米、缶詰とかスープみたいな物と思っていたからこれは嬉しい。



侍「美味そうだなぁ!中々やるな、嬢ちゃん」


シスター「別にこれくらい…」


男「でもほんと美味しそうだよ。普段から作ってるの?」


シスター「うん、普段からお父さんの分も作ってたから」


男「へぇ、偉いねー」


シスター「自然とそういう風になっちゃっただけだから。でも褒められると嬉しいね、えへへ…」


侍「ここに酒がありゃ最高だったんだけどな、あるか?」


シスター「ない」


侍「ぐぅ…残念だ」


男「あ、そういえば今ってどこに向かってるの?」


シスター「風の都だね。5日くらいあれば着くかなー」


男「へぇ5日……5日!?近いのに?」


侍「足があれば話は別だが、徒歩だからな」


男「そうかぁ…そういうもんなのか…」


シスター「途中から魔物の出現頻度も上がるから気を付けようね勇者様」


男「魔物……うん、気を付けよう」


侍「心配すんな、魔物からは俺が守ってやる。安心していい」


男「うん。侍が頼りだよ今は」


シスター「ちゃんと勇者様守るんだよ。怪我させたらご飯抜きだからね」


侍「ははは!そりゃあ命懸けで守らんとな!」



その後も他愛ない会話が続き、歩を進めて陽が落ちてきた。
今夜は道中にあった森の中へ入り、そこで野宿する事になった。


食事を済ませ、朝までは自由行動だ。




何かする
安価下
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/25(土) 22:49:38.04 ID:Oih+5yxQo
攻略本で何が出るか調べる
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/26(日) 05:18:19.35 ID:P+bZFFJF0

やはり謎多き攻略本を俺が攻略しなくては。
この世界の事をゲームの攻略本の様に書いてくれているが、とてもじゃないが読み切れる量ではない。


余談になるがこの本、厚さの割には全然軽い。
昨日シスターから重くないの?と言われて初めて気が付いた。
これもあの神様の計らいかね。


そうと決めたら天幕の中へと入って攻略本を取り出す。
今回は適当に開いた場所を読む事にしよう。



男「さぁ、何が出るかな」





開いた内容
安価下
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/26(日) 05:40:48.11 ID:Q21vrTLQo
スタッフインタビュー
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/26(日) 06:07:02.31 ID:QDpOuiOo0
スタッフwww
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/26(日) 07:24:15.45 ID:weAb4RHqo
制作陣いるのは草
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/26(日) 14:56:14.64 ID:P+bZFFJF0

男「……なにこれ?」



●神界情報処理局業務の実態へ迫る!

私:
本日は宜しくお願いします。早速なんですが『攻略本』が完成した時のお気持ちは?


?:
そうですねー、幻界の情報を集めるのにスタッフ騒動員で掻き集めましたから、騒々しかったけど楽しかったね(笑)
普段と違う事するから疲れちゃった(笑)


私:
普段と違う事とは?


?:
私達局員の仕事って転生者に『神託(アンカー)』を渡す事なんですけど、基本的には超人的な能力や最高位の魔術を使えるとかが多くてですね、こういった『物』を渡すというのは初めてでしたね。


私:
大変だったんですね。でも、能力とかでは無ければ転生者は辛くないですか?


?:
本来ならとても辛いです。ですが私達の作った『神託』というのは、リアルタイムで転生者の思考や行動の強制、或いは能力の覚醒、臨機応変に対応しています。
序盤は苦しいかもしれませんが、物語が進むにつれて転生者は強くなる様に設定してあります。


私:なるほど。では管理している幻界のバグ、『魔王』の処理は完璧という訳ですね。


?:
そうですね、攻略本の手順通りに働いてくれれば問題無く除去出来ます。
ただ『神託』というのは気まぐれなので、実際はどう転ぶか私達にもわかりません(笑)
局員はあくまで『傍観者』ですからね、悪い流れでも手を出せないのはもどかしいです。


私:
まさに『神の気まぐれ』ですね。本日はありがとうございました。



男「……ゲームかな?」



攻略本らしいっちゃらしいけど、こんな物まであるとは。

50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/26(日) 16:19:43.98 ID:QDpOuiOo0
意外とノリの軽い天界であった・・・・・・なろうだと普通か
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/27(月) 15:03:15.75 ID:wAJWBosNO

他にもあるけど、一体何人関わってるんだろうか。
天界だの幻界だの神託だのと、聞き慣れない単語もあるし。


結局その日は、寝るまでスタッフインタビューなる物を読み耽る事になった。



─────



3日後。
俺達は今、広大な森の中に居る。
ここを抜けなければ風の都へと行けないらしい。



侍「見ろ、魔物の足跡だ。ここでの野営は魔物に襲われる可能性が高くなるからな、気ぃ付けろよ」


男「りょーかい」


シスター「出てきちゃったらパパパーってやっつけちゃってよね」


侍「応。何かあったらすぐに──しっ!」



先頭を歩く侍が警戒しろという合図を出す。
俺は何も感じられないが、魔物が近いのだろう。



侍「そこの茂みに隠れるぞ」



無言で頷き、指示された茂みへと入る。
数秒後、進行方向の脇から魔物の群れが現れた。
数にして5匹、それぞれ手には槍を持っている。



侍「コボルトか。奴ら、強くはないが知恵があるのが厄介だぞ」


シスター「弱いんでしょ?倒しちゃえば?」


侍「倒すのは簡単だが、1匹でも逃げられたら後々面倒なんだ」


シスター「そうなの?でもこんなとこで足止め食らいたくないし」


男「侍なら普通にやれそうだけど…」


侍「魔物の群れってのには役割があってだな、1匹でも逃がした日にゃ倍の数で報復に来るだろうよ。奴らは匂いを追えるからな」


男「なるほど。野宿の危険性が高まるのか」


侍「そういう事」




安価下
1 殺っちまおう
2 やり過ごそう
3 自由安価
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/27(月) 15:20:28.95 ID:McaisyIN0
3 コボルトの魔物ランクとステータスとドロップするアイテムと経験値を2人に聞いて(攻略本使ってもいい)お得そうならやる。割りにあってなさそうならやりすごす。
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/27(月) 15:32:08.13 ID:McaisyIN0
なろうっぽい要素羅列したけど、そんな設定ないならないでもいいよ。
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/28(火) 12:56:43.84 ID:8vh+K5SvO

男「…こっちにはまだ気付いてないんだよね?」


侍「ああ。それがどうした?」



なら…と呟き俺は攻略本を取り出す。勿論開くのは魔物図鑑と書いてある所だ。



シスター「え、何でこんな時に本呼んでるの…」


男「……」


侍「何か考えがあるんだろうさ。それにしたって本当に白紙にしか見えないよな。どんな仕掛けなんだ?」


男「俺にもその辺はさっぱりで──あった」



魔物図鑑からコボルトの項目を発見。


●コボルト
ランク:E

生命:50
精神:5
体力:25
技術:5
感性:30
知力:30

経験値:70

弱点:炎

主要ドロップ:
汚れた細槍、ボロ布のマント
レアドロップ:
コボルトの首飾り

概要:
森に住処を作り、縄張りに入った人間を攻撃する犬頭が特徴の小人族。
群れで行動する習性があり、腕にスカーフを巻いたコボルトはリーダー兼、戦闘から離脱して増援を呼ぶ役割を持つ。



男「なるほどね」



こうやって見ると本当にゲームの攻略本見てる気分になるな。
経験値があるって事はレベルの概念もある?書いてないけど。


少なくとも基礎値は俺より高いって事は、1匹でも倒せば俺自身の成長は見込めそうだ。
問題はパーティとしての経験値があるか、だ。
俺自身が倒さなくてはならないのなら、1匹どうにかして倒してみたいな。

55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/28(火) 12:59:28.27 ID:8vh+K5SvO

男「侍」


侍「どうした?」


男「あいつら、倒してみよう」


シスター「え?やり過ごした方が良くない?」


侍「別に構わないが、良いんだな?」


男「うん。腕にスカーフ巻いた奴を最初に狙って、それで何とかなるから」


侍「ほう?」


シスター「大丈夫なの?逃げられたらやばいんでしょ?」


男「そこは侍を信じるよ」


侍「任せときな。確実に1匹仕留めるなんざ造作もない。念の為に勇者も刀持っときな」



侍は差している刀を俺に渡す。



男「ありがとう。でも…使わない事を祈るよ」


シスター「本当に?本当に大丈夫?」


侍「おいおい、とんだ心配性だな嬢ちゃんは」



侍はシスターの頭をポンポンと叩き、静かに茂みから出る。
刀を抜き、重心を落として刺突の構えを取る。



侍「見とけよ勇者、これが"技"だ」



重心が前に傾いたと思ったその瞬間、侍の姿が消えた。
いや、消えた訳では無い。初動が速すぎて目で追えなかったのだ。


群れへ目をやると既に1匹、スカーフを巻いたコボルトが絶命していた。
その一撃でコボルトは1匹が残って他は散り散りに逃げるが、侍はそれを許さない。
2.3匹目をすぐに斬り伏せ、反対へ逃げた2匹を追う。

56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/28(火) 13:00:23.35 ID:8vh+K5SvO

男「すげぇ…あっという間に倒しちゃってる」


シスター「い、言うだけはあるね…」



視界から消え、見えない所で戦っている侍の心配は先程の戦闘を見て心配は無くなった。


ガサガサ!



男「え?」
シスター「何の音──」


俺達の後ろの茂みから音──と思った時には遅い、こちらへ向かってコボルトが飛び出して来た。


だが好都合だ。先程侍が倒しても変化は起きなかった。つまりは俺が倒さないと駄目だ。
この1匹、何としてでも倒す。



シスター「きゃぁぁ!」


男「シスター下がって!」



俺はシスターの前に立ち、刀を抜く。
勢いを殺さずに直進してくるコボルトの気迫に負けそうになるが、ここで怖気付く訳にはいかないんだ。


コボルトは勢いのまま、細槍を繰り出してきた。



展開安価
安価下
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/28(火) 13:26:20.58 ID:6DnQeh3bO
運良く回避し咄嗟の反撃がクリティカル
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/28(火) 13:31:51.15 ID:8vh+K5SvO
安価早くくれるのに、いつも亀レスですまん
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/28(火) 14:08:12.24 ID:8vh+K5SvO

狙いは腹。大丈夫、避けれる。避けるのは簡単。
…なのに、俺の頭によぎるのは『死』という一文字。


殺意の込められた一撃に足が竦んでしまっているのだ。



男「う、うわあああっ!」



恐怖に呑み込まれ目を閉じてしまい、無我夢中で刀を振る。



コボルト「グギ……!」


男「えっ…」



何が起こったか分からないが、俺はコボルトの一撃を避けていて、振り下ろした刀はコボルトの首に深く食い込んでいる。


次第にコボルトの抵抗が弱くなり、そのまま地に伏せる。
倒したのか…?俺が?



シスター「や、やった…!倒した!凄いよ勇者様ー!」


男「う、うん…」



生き物を斬る感触の気持ち悪さよりも、倒したという高揚感に支配されていく。
やったんだ…俺が、倒したんだ…。
拳を握り締め、勝利を噛み締める。



男「ん……何だこの感覚…」



身体の奥底から何かを感じる。
次第にその感覚は消え失せ、よく分からないなリフレッシュした様な気分になり、力が湧いてくる。



男「(もしかして…レベルが上がった?)」



俺は身体の感覚を確かめ、攻略本を取り出す。



シスター「勇者様?どうしたの?」


男「ちょっとね」



俺は折り目を付けたステータス画面を開いた。
侍に鍛えられているおかげか、体力の数値が元より上がっている。



安価下
生命 45/45→?
精神 50/50→
??体力 15→?
技術 11→?
感性 18→?
知力 17→?


スキル:
『実体化』『安価下2』
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/28(火) 14:28:47.51 ID:6DnQeh3bO
>>58 ええんやで
ステはコンマの数だけ増える感じかな
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/28(火) 14:45:47.94 ID:8vh+K5SvO
説明不足だった、すまん
安価下は好きな数値に書き換えてもらってOK
安価下2は新しいスキル

改めて
ステータス上昇安価下
新スキル安価下2
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/28(火) 14:53:05.47 ID:qYjpA9Pv0
+6、+6、+2、+1、+6 実際に1D6でダイス振って決めた。
毎日しっかり投稿してくれてるし無問題よ。
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/28(火) 15:35:07.05 ID:qYjpA9Pv0
空中浮翌遊
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/28(火) 15:36:24.91 ID:qYjpA9Pv0
>>63
すまん不思議な誤字りかたした。空中浮翌遊ね。
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/28(火) 15:38:38.43 ID:qYjpA9Pv0
NGワードかなにかにひっかかってる?飛行で。
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/28(火) 16:03:37.52 ID:H/AgiUhpo
メール欄にsagaで回避できるよ
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/28(火) 16:10:39.91 ID:qYjpA9Pv0
>>66
ありがとう。次回からそうする。連投申し訳ない。
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/28(火) 18:26:30.77 ID:8vh+K5SvO


生命:51/51?
精神:56/56?
体力:15?
技術:13
?感性:19?
知力:23

スキル:
『実体化』『空中浮遊』




やはり成長していた。著しい伸び方なのかは分からないけど、魔物を倒せば俺は強くなれる。
それに新しいスキルも覚えてるじゃないか。


空中浮遊!これはかなり便利じゃないか?
後で攻略本で詳細を調べておこう。


俺は本を閉じて周りを警戒する。コボルトがもう居ないとは限らないからな。



シスター「あれ?これ何?」


男「ん?あ、それは…」



シスターが拾ったのは首飾り。パーツに骨で作られた造形物があるが、何の骨かは分からない。先程倒したコボルトの辺りにあった様だ。


確かレアドロップにコボルトの首飾りがあったよな、運が良い。



男「コボルトの首飾りだね。装備してみる?」


シスター「へぇ〜。でも趣味じゃないかな。勇者様が倒したんだし、勇者様が貰って」



それもそうかと頷き、シスターから首飾りを受け取り、掛ける。
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/28(火) 18:27:29.91 ID:8vh+K5SvO

シスター「ぷ…あはは!」


男「え、なんで笑うの…?変かな?」


シスター「あ、ごめんね違うの。ただね、勇者様が本当に嬉しそうにそれ掛けるから、何か可愛いなって」


男「俺そんな顔してた?全然気付かなかったよ」


シスター「してたしてた」



シスターはまた少し笑う。可愛いって言われるのは何か変な感じだな。



ガサガサ…



男「…!シスター離れて!」



またか?もう一度あんな事出来るなんて限らないってのに!



侍「お、こっちだったか。やっぱ森の中を走り回ると迷子になって駄目だな……っておい?」


男「侍か…なんだ…はぁぁ〜」



侍の顔を見て変に脱力してしまい、ぐにゃぐにゃと膝から落ちる。
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/28(火) 18:27:58.93 ID:8vh+K5SvO

シスター「もー!驚かせないでよね!」


侍「なんだなんだ?何があった?」



俺は侍にここで起きた事を話すと、やるじゃねーかと褒められて頭を撫でられた。
撫でるのはどうなんだと思ったけど、悪い気はしない。


死ぬかと思ったけど、俺達は再び風の都へと歩き出した。



─────



2日後。
辺りが暗くなった頃に俺達は風の都に到着した。
夜風が吹いており、肌寒くなく心地良い。
光の都は中世な街並みだったが風の都は中央に巨大な大木が生えていて、太い枝木の上には建物がいくつも並んでいる。


大木から離れた四方には大きな風車塔があり、それぞれ何かしら役割をしていると侍が教えてくれた。
田舎物の様に俺は辺りを見回し、街道を歩きながら宿を目指す。


男「何か緑ー!って感じだね、ここは」


シスター「風の都は見ての通り草木がいっぱいあるしね。作物も豊かだし、自然に囲まれてて長閑なとこだよ」
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/28(火) 18:30:48.76 ID:8vh+K5SvO

男「長閑って……魔物に襲われたりは?」


侍「なぁーに、この都には『風障壁』があるからな」


男「風障壁?」


シスター「風姫様の結界だね。絶対不可侵領域の風障壁って言われるくらい強固なの」


男「へぇ〜そりゃ凄いな」


侍「おっ、宿が見えてきたな。久しぶりに風呂にありつけるなぁ!」


シスター「ほんとだよね、森とか入って臭うし…。あ、風姫様への謁見は私が明日話通しとくから、今日はゆっくり休んでね。勇者様!部屋とったら後で買い出し行こ!」


男「うん、良いよ」


侍「なんだー?俺は仲間外れかー?おーん?」



侍はシスターの頬をぷにぷにとつつく。
もー!とその指を払い除けるシスターはぷんぷんと腰に手を当て侍を指さす。



シスター「おっさんは自分で好きな物買ってきて!1人で!どーせ酒とツマミだろうけど!」


侍「おっさん言うな!なぁ勇者〜嬢ちゃんが冷たい!どうにか言ってくれぇ!」


男「ぷ、あはは!」



俺は今更ながらこの2人と仲間なんだなーと、しみじみ思う。元の世界では味わえなかった経験だ。
が、道のど真ん中で勇者とか騒ぐから道行く人の興味を集めてしまい、俺達はそそくさと宿へと入った。



─────



翌日。
昼頃に王城へ向かったシスターの帰りを待ちながら、俺と侍は都を練り歩いていた。


侍「んぐ…うんめぇなー!この鳥串!そして…酒!ごく…くーっ!たまらんッ!」


男「行くとこ行くとこの露店で買い食いしすぎじゃない?夕飯食えなくなるよ」


侍「それはまた別腹だ」



よく食うなと呆れつつ、俺はふとした店が目に留まる。
表に出ている物からして、武具屋だろう。



男「魔物の侵攻が無いのに、武器とか売ってるんだね」


侍「んぐ……ん?ああ、そりゃどこの都にも冒険者は居るからな。ここも然りだ」


男「そっか、そうだよね」

72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/28(火) 18:31:34.25 ID:8vh+K5SvO

侍「ちょっと覗いてくか?何ならおめぇさんに合う武器があるかもしれないぜ?」



1 侍の刀で良いよ
2 ちょっと覗いてこうかな
3 無駄遣いダメ、絶対
4 自由安価
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/28(火) 18:46:35.61 ID:so877iHe0
1
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/28(火) 18:49:03.86 ID:qYjpA9Pv0
自然と一体化した町っていいよね
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/28(火) 21:07:39.74 ID:8vh+K5SvO

男「いや、俺は侍の刀で良いよ。使いにくい訳じゃないし」


侍「そうか?ま、おめぇさんがそう言うなら良いけどよ」


男「そういえば気になってたんだけど、何で刀を2本持ってるの?二刀流って訳でも無いし、別に俺の為に持ってる訳じゃあるまいし」


侍「ああそれはだな……あー…趣味…かな?」



若干濁した?話したくないのかな。
深く聞いてもはぐらかされそうだ。



男「そうなんだ」


侍「それより、おめぇさんが刀を使うってんなら…」



侍はいつもの刀を鞘ごと俺に渡してくる。
こんな街中でと少し困惑しながら受け取った。



侍「やるよ」


男「え、いいの?」


侍「良いさ。おめぇさんに使ってもらった方がそいつも喜ぶ」


男「そっか。ありがとう」


侍「応!」



歯を見せるその笑顔を見て、俺も小さく笑ってみせる。

76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/28(火) 21:12:19.20 ID:8vh+K5SvO

シスター「あー!いたいた!やーっと見つけたー!」


侍「遅かったじゃねぇか。どこで道草食ってたんだ?」


シスター「食ってないし!ていうかね、宿から出るなら置き手紙くらいしてよね!私がどれだけ探したか…はぁ〜…」


男「確かに。ごめんね」


侍「そう怒るなって。甘菓子奢ってやるから」



提案する侍にシスターは再び深い溜息を吐く。
顔を俯けると指を4本立て、こちらへ向けてくる。



シスター「…4つ…」


侍「え?なんだって?」


シスター「あそこの特製パフェ4つで許してあげる!って言ってるの!」


男「あそこって…昨日の夜食べたあのお店?」


侍「4つも食うのか!?どんだけ食うんだよ!」


シスター「これでも抑えた方だし!甘い物はいくらでも入るもーん!自腹で払ってよね、こんな事で国のお金使えないし!」


侍「自腹だと!?おまっ!そんな!」



侍が俺に顔を向けてくる。
残念だが、財布を握るのはシスターなんだ。
自腹となっては俺にはどうしようもないぞ。



シスター「勇者様は国のお金しか持ってないから全部おっさんの奢りだね♪」



侍「そんな…!勇者…!」



俺は無言で侍の肩に手を置き、諦めろと首を振る。
その時の侍の顔は、しばらく忘れそうにない。



─────



同日、夜。
俺と侍は同室で部屋をとり、シスターだけ別の部屋になっている。


謁見は明日となり、またもや自由な時間が訪れる。



何をする?
安価下
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/01/28(火) 21:51:53.16 ID:yxKRHJni0
空中浮遊を試してみる
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/29(水) 17:58:12.09 ID:O6DVEjJNO

そういえば空中浮遊をまだ試してなかったな。
とりあえずは攻略本で詳細を調べよう。



俺「ふむ…」



『空中浮遊』

取得難度:
B+

消費精神力:
5/秒

種別:
Active

詳細:
精神力を消費して100M上空まで飛ぶ事が出来る。
縦の移動は早いが、横には通常の半分の速度になる。




男「ふーん…」



となると、飛べるのは11秒ってとこか。
物は試しだ、浮くという感覚を味わってみよう。俺は深呼吸をして、空中浮遊を唱える。


男「お…?おおっ!?」


侍「ん?どう──なにぃ!?」



身体が浮いてる!何だこの感覚、凄い!
地面から2Mくらいの高さをふわふわと、俺は浮いているのだ。
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/29(水) 17:59:00.27 ID:O6DVEjJNO

侍「お、おい勇者…?おめぇさん一体何を…?」


男「見て!凄くない?俺の新しいスキル!」


侍「浮遊魔法ってやつか?凄いな!」


男「そろそろかな。よっ…と」



空中浮遊を解除して地面へと着地する。
楽しいが、これを使うと消費が激しい上に長くても今は11秒。
練習と使い所を見極めないとな。



侍「いつの間にそんなの出来る様になったんだよ〜うりうり〜」



首元をホールドされて、頭を拳でぐりぐりされる。
手加減しているだろうが普通に痛い…痛い!



男「割れる!痛い!割れちゃう!」


侍「おぉすまんすまん、軽くやったつもりだったんだが」



腕を何度もタップして解放してもらい、痛む部分を摩る。



侍「で、どうしたんだ?」


男「あれだよ、前のコボルト。あいつ倒したら使える様になった」


侍「へぇ…倒しただけで?鍛錬しないでか?」


男「そう。倒した時にこう…身体から力が湧いてきて…で、使える様に」



ジェスチャーで表現するが、なんだそれと侍に笑われてしまった。頑張ったのに。



侍「おいおい悪かったって、いじけるな。ほれ、お前も呑め呑め」



侍はテーブルに置いたお猪口を持ってきて俺に差し出してくる。

80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/29(水) 18:03:20.81 ID:O6DVEjJNO

男「俺、飲んだ事ないし」


侍「だぁーい丈夫だって!案外イけるかもしんねーぞ?」



未成年だし、と思いつつもここは元の世界とは違うからと自分に言い聞かせ。
俺は人生初の酒を飲む。



香り良く、透明で、見た目は水。
口当たり良く、喉が焼け、俺は吹き出した。



侍は大笑いしていた。



─────



翌日。
本日は風姫との謁見の為、俺達は王城へと向かう。
シスターが久しぶりだな〜と呟いていたので、風姫とは顔見知りなのかな。


王城まで着くと、鎧を着込んだ人物が城門前で軽く会釈をする。
その爽やかな笑顔と顔立ちは、俺が女だったら一目惚れしてもおかしくない程クソイケメン。


シスター「風騎士さーん、久しぶり〜!」


風騎士「久しぶり。シスターちゃん大きくなったねぇ。昔から可愛かったけど、今も凄く可愛いね」


シスター「ちょ、もー!やめてってばー!恥ずかしいってぇー!」



シスターは頭を撫でられて、照れ隠しに風騎士なる男の鎧を叩く。
なんやこいつ!とブチ切れそうになるが、親戚のおじさん的反応だと自分を制して深呼吸をする。



風騎士「其方のお二人も、初めまして。僕は風の都、第一精鋭騎士団、団長をやっている風騎士です」



握手を求めてきたので、よろしくと渋々手を握り返す。
次に侍と握手をすると、風騎士は不敵な笑みを浮かべた。



風騎士「貴方…強いですね」


侍「あんたこそな。いつかやり合ってみたいもんだ」



侍も笑みを返し、握手を終えると風騎士は王城内へと案内してくれた。
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/29(水) 19:32:28.27 ID:jLrHSg5JO

広いエントランスを通り、二又の階段の踊り場に巨大な鉄製の扉。恐らくここに風姫が居るのだろう。


だが、その大扉には入らず二又の階段を上がり、俺達は客間へと案内される。



風騎士「申し訳ありません。先客の方が少々長引いているみたいで、しばしお待ち下さい」



風騎士は軽く頭を下げると客間から退室する。
俺達は円卓に置かれた椅子にそれぞれ腰掛け、中央に置かれたお菓子を摘んで時間を潰す。



シスター「んー♪おいひー♪」



侍「そうかぁ?甘ったるくてしょうがねぇ」


男「(見た事も食った事もないのに、元の世界の何かに味が似てる。何だったかは思い出せないけど)」



シスター「あ、そういえば勇者様」


男「ん?何?」


シスター「今は私達だけだけど、仲間って今後増やして行きたい?」


男「あー、仲間か」


侍「多いに越した事はないんじゃないか?相手はあの魔王だ」


シスター「でもさ、多いとその分お金もかかるよ?」


侍「この旅だって長引きゃ金も尽きて稼がなきゃならないだろ?早いか遅いかの違いじゃねぇか?」


シスター「そうなんだけどさ。勇者様はどう?」


男「そうだな…」



俺は、今後仲間を───




1 増やしていく
2 増やさない
3 自由安価
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/29(水) 19:40:10.48 ID:6USLjXqDO
1
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/29(水) 20:43:40.78 ID:a3zShowTO

男「増やしていくよ。ただ適当に見繕うよりちゃんと選びたいけどね」


侍「ま、当然だな」


シスター「勇者様が増やすって言うなら私は文句なーし!」


男「はは、ありが───



ドォーーーン!!!



突如、爆音と地震が俺達を襲う。



男「な、なに…?」


シスター「なんだろ…今の音…」


侍「只事じゃねぇのは確かだな、どうする?」



1 皆で行こう
2 俺が見てくる
3 シスターを残して2人で
4 自由安価
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/29(水) 20:45:35.94 ID:PeNvi8YJ0
1
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/30(木) 18:23:33.46 ID:KxIwakRoO

男「行こう。ここでじっとしてるのも飽きたしね」


侍「だよな!」


シスター「言えてる。とりあえず風姫様の所行こっか」



俺達は部屋を飛び出して案内された道を戻り、2階の通路から中央のエントランスが見下ろせるフロアまで到着する。
1階のエントランスには衛兵が何十人も倒れており、生死は不明だ。



男「一体何が…!」


シスター「酷い…」


侍「……ありゃ死んでるな。ちっ、しかも相当な手練だぜ」


シスター「わかるの?」


侍「ああ。情報は沢山あるからな、それを見れば解る。さぁ急ごうぜ、グズグズしてちゃ風姫が危ねぇ」


男「うん、急ごう!」



階段を降りて、大扉の前に辿り着いた。
この先に"何か"が居る。
深く息を吸い、大扉をゆっくりと押し開ける。


開いた先。
そこに居たのは膝を付く風騎士と、つまらなそうに風騎士を見下ろす謎の男。


俺達は急いで駆け寄り、風騎士の容態を確認する。



シスター「風騎士さん!!」


男「風騎士さん!大丈夫ですか!」
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/30(木) 18:35:08.84 ID:KxIwakRoO


風騎士「…勇者さんにシスターちゃん?…はは、格好悪い所を見せ…ゲホッ!」


「なんだァ?お前ら。邪魔すんじゃねぇよ」


男「…ッ!!」


シスター「あ……あ…」



素人でも十分に分かる。この男は…危険だ。
睨まれただけで俺とシスターは硬直してしまう。

が、その硬直を破るのは───


───侍。



男「侍!?」



前に森で見せた電光石火の如きあの技を謎の男に放つが、その刃は男に受け止められてしまう。




「おいおい!久しぶりだってのに、とんだご挨拶じゃねェか!」


侍「この…!クソ野郎が!!」


「はーっはっは!なんだよ俺ァ会えて嬉しいんだぜ?」



「お前だって嬉しいだろ、なあ?……"弟"よ」






謎の男の職業は
安価下

87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/01/30(木) 18:36:06.63 ID:PBi8fRUbO
死霊術師
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/31(金) 12:51:50.31 ID:/I6erM76O

な、なんだと…?弟?侍が?



侍「ふざけんな!死霊術師!てめぇはもう兄貴じゃねぇ!」


死霊術師「そうかい。そりゃ残念だ」



侍の刀を受け止めていた禍々しい杖を軽く動かすと、侍は派手に転んでしまう。



死霊術師「ちったぁマシになったかと思ってたんだが…がっかりだぜ」


侍「うるせぇ!」



すぐに立ち上がった侍は刀を掬い上げる様に斬り掛かる。
俺の目には逆袈裟から斬り掛かった様に見えたが、一瞬で侍は袈裟斬りに切り替わっている。


だがその技は当然の如く死霊術師に受け流され、腹部を杖先で強打されて侍は遠くへ吹き飛ばされる。



シスター「おっさん!!」


死霊術師「なるほどな。さっきといい今のといい…馬鹿かお前。俺に"それ"は通用しねぇのは良くわかってんだろうが。刀なんか使いやがって…お前、"杖"はどうした?」


侍「関係ねぇだろ…!ぐっ…!くそっ…!」



侍は辛そうに腹部を抑えて片膝を付いてしまう。
あの侍がこんな簡単にやられるなんて…。



男「侍──」
侍「来るなッ!!」



見た事のない侍の顔と怒号に、俺は萎縮して動けなくなってしまった。
呼吸を整えた侍は立ち上がり、再び刀を構える。
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/31(金) 12:52:26.00 ID:/I6erM76O

死霊術師「やめとけ。無駄だって───」
風騎士「忘れてもらっちゃ困るよ」



負傷していたはずの風騎士が一瞬で距離を詰め、死霊術師を杖ごと薙ぎ払う。
傷は与えられなかったが、衝撃で地を少し後退りさせる。



死霊術師「ヒュー、危ねぇ危ねぇ。騎士様は教練で不意打ちもやってんのかい?」


風騎士「全く…検討したくもなるよ…!」



風騎士と死霊術師の激しい打ち合いが始まるが、真剣表情の風騎士に対し死霊術師は楽しそうに笑う。
誰が見ても優位は一目瞭然だ。


そしてその激しい打ち合いに、再び侍が迫る。



侍「てめぇは此処で!俺が殺す!」


死霊術師「良い感じに邪魔だよ、お前!」



なんて恐ろしい奴だ。
2人相手だというのに、遅れをとることなく捌き、弾き、躱し、迎撃する。
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/31(金) 12:53:43.54 ID:/I6erM76O

シスター「ね、ねぇ…大丈夫かな、あれ…」



すっかりモブと化した俺とシスターは、ただこの戦いを見守る事しか出来ない。
下手に横槍を入れるなら大人しくする他ないのだ。



男「多分…拮抗してるし、このまま行けば…」



だがその想い虚しく、その拮抗は崩れた。
躱しながら振り回す死霊術師の杖頭が風騎士の顎に当たり、風騎士が糸が切れたかの様に崩れ落ちる。



死霊術師「はっ!やっとくたばったか!」


侍「ちぃっ!」



侍は距離を一直線に詰める。
それに対して死霊術師は杖頭による打突を繰り出すが、その打突は侍の幻影を突く。
当の本人は瞬時に死霊術師の背後に回っていた。



男「あれは!」



侍と勝負をした時に見た技だ。
こうして横から見ても凄い速さ。
鬼気迫る侍の上段、決まった。

91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/31(金) 12:55:10.06 ID:/I6erM76O

と思ったのに──



侍「……がはっ!」



その刃は届かず、死霊術師の杖先が侍の腹を


貫いていた。



死霊術師「はぁ〜…」



死霊術師は深い溜息を吐き、侍の腹部を貫いた杖を引き抜く。
血が噴出し、侍はその場に倒れ込む。



死霊術師「"空蝉"ってのは本来、間合いで加速して相手の横をすり抜けざまに腹部、振り向いて頚椎を強打する2連打」


死霊術師「さっきの"しょーもない"技もそうだ。ありゃぁ"瞬電"を崩しただけだろ?得物が変わりゃ歩法も感覚も変わる。慣れねぇ事すっから未完成なんだよ、お前の技は」


死霊術師「ま、言っても仕方のねぇ事か。じゃあな」



死霊術師が杖を振り上げ、トドメを刺そうとしたので俺とシスターか咄嗟に飛び出して侍を庇う。



男「侍!おい!しっかりしろ!」


シスター「起きてよおっさん!こんなとこで死んだら許さないから!」



死霊術師「何だァ今更…退けよ」


男「」




台詞or行動安価
安価下
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2020/01/31(金) 14:05:08.72 ID:+Hfe/T94O
攻略本の購入者特典のシリアルコードが光を放ち始める
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/31(金) 14:28:05.84 ID:/I6erM76O

男「や、やめろ!もう良い──」
死霊術師「あ?なんだそれ」



死霊術師と俺は同じ所、俺の持つ攻略本へと目をやる。
本の隙間から主張するような光が漏れている。



男「な、なんだ…?」


死霊術師「……」



死霊術師は杖を降ろして背にしまうと、腕を組んで俺の様子を伺い始めた。
開いてもいいって事なのか。
光が放たれるページを開いてみると……



男「…購入者特典…シリアルコード…」



羅列された数字が光っている。
こんな物まで作っていたのか、凝ってるな。
じゃなくて!何の冗談だこれは。



死霊術師「おい、そりゃぁ何だ?」


男「いや…俺だって訳が…」






開いた事により起きた事安価
安価下
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/31(金) 14:31:04.94 ID:g6iP37l5O
使役モンスター『狂滅龍』が召喚される
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/31(金) 15:28:06.40 ID:/I6erM76O

オオォォォォォン…


男「え…今度は何…」



遠く。いや、恐らく外から何かの雄叫びが聞こえた。
シリアルコードの光は既に消え失せ、元の攻略本へと戻っている。



死霊術師「……上か」



死霊術師は見上げると一気に後方へ飛ぶ。
その瞬間、玉座の…いや城の天井を突き破って巨大な黒龍が俺の前に降り立つ。


衝撃で城は揺れて瓦礫が所狭しと落ちてくるが、黒龍が俺達を覆うように羽を広げて落石から守ってくれている。


俺は呆気に取られ、何が起こっているのか分からず黒龍を見据えて呆然とする。
だが、俺が……いや、この攻略本がこいつを呼び寄せたのは間違いない。



男「味方…なのか…?」



俺の言葉に呼応したのか、顔を俺の高さにまで下ろして目の前に黒龍の鼻先が来る。


腰が抜けるくらいにビビるが、俺は怖気付きながらも差し出されたその鼻先に手を伸ばして、撫でてみる。
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/31(金) 15:30:58.82 ID:/I6erM76O

「オォォン…」


男「は、はは……味方…何だな…」



偏に言うならこれは、召喚獣か何かなのか。
刺々しい漆黒の巨体、鼻から生える一本角、爬虫類の様な大きな瞳、巨大を覆い尽くせる程の巨大な翼。


こんな恐ろしいやつを俺が呼び寄せたのか?
もしかして俺は実はビーストテイマーか何かだった…?
流石にこれは規格外過ぎるが…。



死霊術師「はははは!!おいおい!あんちゃんよぉ!お前一体何者なんだァ!?」



黒龍の反対側から死霊術師の声が聞こえる。
どうやら瓦礫の下敷きにはなっていないようだ。
ただの転生者だよと言いたい所だが俺は黙りを決め込む。



死霊術師「まぁいい!思わぬ収穫だ!今日の所は退いてやるよ!次会うときゃぁこのドラゴン!"貰って"くぜ!」



そして、ずっと感じていた死霊術師からの圧が次第と消えていき、俺達は本当に見逃して貰えたようだ。



男「た、助かった……はっ!侍!侍は!?」


シスター「ねぇ……勇者様……」


男「え?なに?」


シスター「前に…私の事、その本で見てくれたよね…覚えてる?」


男「え、あ、うん…それが…?」



そんな事より侍は、と聞きたいが彼女から発せられる声色と雰囲気から言葉が詰まる。



シスター「…嘘、ついた?」


男「え?」
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/31(金) 15:47:20.32 ID:g6iP37l5O
https://i.imgur.com/AUuoOgK.jpg

こんな感じで
98 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/31(金) 15:48:44.18 ID:g6iP37l5O
って鼻からツノ生えてるのか…ごめん
99 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/31(金) 15:55:12.14 ID:kEWEoR3J0
>>97
破壊竜ガンドラっぽい
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/01/31(金) 16:10:37.84 ID:/I6erM76O


─────



俺は風の都の宿に戻り、ベットで横になって天井を見上げていた。

何故かあの後すぐに崩壊した玉座の間に、治癒魔法の使える者と医療班なる人らが侍と風騎士を保護して連れて行ってしまった。


関係の無い者が黒龍に最初は驚いていたが、俺が何を言うでも無く、王城の広大な庭に置かせてもらっている。


シスターが言うには治療も黒龍の事も、風姫様が手配してくれたそうだ。
あの場には居なかったが、見ていたのだろうか?


それに……シスターが言ったあの言葉。
あれが頭から離れず、今も俺の思考を支配していた。


そのままの意味で取れば、俺が読み上げたアレが嘘って事だよな。
でも嘘は言ってなかった筈なんだが…どういう意味なんだ。


シスターは頭冷やしてくると言って、どこかへ行ってしまって俺は今一人だ。
侍の傷が癒えるまでは風の都からは出られないし、シスターも居ないし、俺はどうすれば…。






自由安価
安価下
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/31(金) 16:11:34.19 ID:/I6erM76O
>>97
え、凄いww
安価下
102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/31(金) 16:18:00.67 ID:qrF14qrRO
黒龍のデータを読む
103 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/31(金) 17:46:02.82 ID:mbRDWCfw0
攻略本大活躍だなぁ
104 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/31(金) 18:50:49.63 ID:HFXOd/5HO
つまるところ莫大な情報っていう剣にも盾になりうるデタラメな武器だしなあ
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/31(金) 21:51:52.82 ID:zYCOPKPc0
>>97
検索結果に表示されないんだけど‥もしかして俺だけ?
106 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/01(土) 14:23:18.91 ID:+2zekXHdO

まぁ……何にせよ、だ。あの黒龍の事を知っておくのは先決だろう。
俺は攻略本を開いて手が止まる。
そういえば、黒龍の名を俺は知らない。


この膨大な量から探すのは相当だぞ…。
一先ず目安として目次を開くと、案外すぐに目当ての項目が見つかる。



男「使役可能魔物一覧……」



ペラペラと捲り、そこに載っている魔物の数は実に数百。
あの黒龍は後ろの方に居た。


─────
●狂滅龍

使役ランク:
S+

種族:
ドラゴン

種別:
固有


概要:
本土外にある孤島に位置する闇の都の山岳地帯に眠っていた古代龍。

同胞を食い殺し、本土大戦時に自ら戦地へと赴いて両軍に致命となる深手を負わせる戦狂い。

巨大な口から放たれる紫炎は全てを滅し、敵味方問わずに焼き付くす。
本土を荒らし回った末、勇者一行により討伐された。


●使役説明
使役可能時間:
6時間

使役時間に関わらず解除した時点で使用者は72時間催眠状態となる。
使役紋章をスライドて使役開始、使役解除。
──────



男「……これは…ヤバいの手に入れたんじゃないか…?」



伝説級じゃね?割とマジで。
気になるのは72時間の睡眠と使役紋章だ。


6時間…狂滅龍を呼んでからどれくらい経ったんだっけ、もうすぐかな。
にしても3日か……長いな。
107 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/02/01(土) 14:32:58.87 ID:+2zekXHdO

危機が迫ってる時や死霊術師みたいな…ああいう危険な相手には使って良いと思うけど、普段使いとしては勝手が悪い。


待てよ。どうせ寝てしまうなら今のうちに使役解除とやらをやってしまおう。
俺は起き上がり、使役紋章を探す。



男「んん…?どこだ…?」



手鏡を取りに行き、顔やらを見るが肌が見えている部分には無い。
次に服の袖を捲ると、左手の前腕の表側に刺青の様な紋章がある。
やだ、かっこいい。


早速スライドしようとした時、俺は思いとどまる。
そうだ、3日も寝込むなら書き置きしておかなきゃな。


またシスターに怒られてしまう。
俺は書き置きを残す為に、備品の紙とペンを取り出した。




─────



男「ん…」


シスター「あ、起きた?」



目を開けると、そこにはいつもと何ら変わらぬシスターがベットに腰掛けて俺を見下ろしていた。



侍「よっ!」


男「侍…?え、侍!?」



真横で椅子に座り、腹部を刺されて重体だったはずの侍が居て俺は飛び起きた。
ついでにベットに腰掛けていたシスターは変な声を出して転げ落ちる。


いくらなんでも動くには早すぎないか?
あ、でも3日経ったのか…いや3日だけじゃん!



男「き、傷は…?もう治ったの?大丈夫?」


侍「心配かけちまったよな。ほれ、この通り」



侍は着物をずらして刺されたであろう腹部を俺に見せてくる。
サラシの如く巻かれた包帯の下には傷口があるそうだが、数日激しい運動をしなければ完治するそうだ。
数日て……異世界の治癒魔法ってのは凄いな。



男「そ、そっか…良かったぁ…」


侍「あん時は悪かった、怒鳴っちまったよな。すまん」



両膝に手を置き、深々と頭を下げる侍。



男「いや、良いんだよ。アイツと何があったかなんて聞かないし、行為を責めたりはしないけど」
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