荒木比奈「虹を描く人」

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1 : ◆U.8lOt6xMsuG [sage saga]:2020/01/31(金) 00:37:56.68 ID:F/ujmVj70
荒木比奈さんの限定SSR実装(1/3112:00までは未確定)を祝うSSです

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1580398676
2 : ◆U.8lOt6xMsuG [sage saga]:2020/01/31(金) 00:39:42.56 ID:F/ujmVj70

僕が魔法使いであり、かつ異常者である事に気がついたのは5歳の時だった

味噌汁用の出汁の香りと、具材の着られる音が響く中、僕は雨上がりの外を観ていた。夕暮れのオレンジがよく映えていた。

僕は空に向かって人差し指を伸ばし、弧を描くように空気を撫でた。すると、ガラス越しに、大きな虹が出来た。

「おかーさん、にじ、にじ」

僕はキッチンの方へ目を向け、母の背中へ目を向ける。つけっぱなしにしていたテレビからは、当時流行りだったアイドルのCMソングが流れていた

「にじ、にじだよ! にじがでたんだ!」

「んー、そうねぇ」

にんじんの切れる音が返ってきた。

僕はどうしても母に虹を見て欲しくて、もっともっと指を動かした

すると虹が一つ、もう一つと出てきて、また出て、重なって、輪になって、輝いた

この時に、虹を出したのが自分であると言うことに気が付いた。僕は魔法を使えるんだ、僕は虹をどれだけでも出すことが出来るんだ、と嬉しくなって飛び上がった

母は僕が何度も声をかけ続けることで折れ、包丁を置き僕の隣に立った

「……何これ、すご……カメラ、カメラ!」

母もまた、目の前の光景に心を奪われていたようだった。自分のしたことで喜んでいる他人の姿が、僕には誇らしく思えた

虹を眺める母親を観る。

やっぱり、真っ黒だった。


自分が虹の7色以外の色を認識出来ない事に気がついたのは、小学校に上がってからだった。

3 : ◆U.8lOt6xMsuG [sage saga]:2020/01/31(金) 00:43:59.82 ID:F/ujmVj70

虹は国によって色がの数の定義が変わる。日本では7色、アメリカでは6色、中国では5色だとか、また鳥類のカラスは虹を14色まで認識出来るとか、個人や種族、生物によってだいぶ変わる。

僕の場合は8色――赤、橙、黄、緑、青、藍、紫、白だと定義されていて、それ以外の色は全て真っ黒に視認される。

人の皮膚や表情は『肌色』だと言うらしいが、僕にとって肌は黒色だ。テレビは黒い画面に赤や青の原色が飛び交うものだった

でも、この体質をそこまで嫌がってもいなかった。小学校に上がって初めて気がついたくらいだ、僕にとって黒と原色の世界こそが普通だし、それに不自由もそれほどしているわけじゃない

幸運なことに白色は認識できるので、白目――結膜の形からまぶた、まゆの状況を察し、人の表情や気持ちをくみ取ることは出来るし、漫画だって余計な情報を全て排除して読むことが出来る。スクリーントーンを発明した人に感謝をしたい。黒の点々だけであそこまで多様な色を魅せるなんて、天才の発想だろう……まあ、カラー漫画は全然楽しめないけど

日常生活ならば、他の人よりも一工夫を加えさえすれば普通に送れる

自分が異常であると気がついてから他人には言わないようにして、中学、高校、大学と普通を装い生活も出来た。ちょっと美術の成績が悪いくらいの、普通のヤツだった。

それから僕は『この魔法はいつでも放棄でき、虹を描けなくなる代わりに自分の目は様々な色を認識出来るようになる』ということを理解していた。そこに理由はなく、ただ本能で『そう』と思うだけだった。1+1の答えが2というのを知っているけれど、どうして2なのかという証明の説明が出来ないような、そんな感じ。逆に分かりにくい例えかもしれない

きっとこれが理解出来たのも、魔法の副作用だろう。それすらもまた、本能でおもう

しかし僕は、この虹を描く魔法を捨てようと思えなかった。理由はいくつかある。さっき言ったように、僕にとっては異常にも思えるこれこそが普通だということ。普通を否定されたくなかった。そして、日常生活は送れている。

さらに何より、虹を描くことと、虹を見た人たちの明るい声が好きだ。表情は黒塗りで分からないけれど、声でその人がどんなことを感じているか分かる。子どもははしゃいで親に伝えようとするし、授業中の学生は窓の外を見て「おぉ」と、退屈な白板から目をそらす。外回り中の社会人は、電話の向こうへ頭を下げず上を向く。

僕は人々のプラスになるような、そういったことが可能なこの魔法を案外気に入っている

だから、放棄する気は全くなかった

4 : ◆U.8lOt6xMsuG [sage saga]:2020/01/31(金) 00:46:27.78 ID:F/ujmVj70

そして、僕がまだ大学生の時。

「観察眼……と言うよりも、感情の機微や心の揺らぎ、そういった人の深層を見る能力が高いねぇ。君、なんか凄い人? ティンと来ちゃった」

アルバイトの最中、そう声をかけられた。その人が僕を高く買っていることは声で分かったが、初対面の(おそらく)中年の男性にそう評荒れても不審なだけで「は、はぁ」としか返せなかった。

「ああごめんごめん、僕はこういうものでね」

その人は黒いスーツから名刺を取りだし、僕に差し出す。たまにTVで聴く芸能事務所の名前が書かれていた

「君、卒業したらウチに来ない?」

「……は?」

以上、僕がアイドルのプロデューサーになった経緯。バイトは友人に誘われてやったものだし、アイドルに興味は正直ない。ほとんど幸運で掴んだ就職だ。でも、僕はこの言葉が嬉しかった。自分がこれまでに培ったものを見抜いてくれた人の役に立ちたいと思って、僕はその人の誘いに乗らせてもらった

で、それからの日々は大変だった。プロデューサーと言ってもまだ見習いも良いところ。下っ端も下っ端だ。先輩プロデューサーのサポートをこなしながら、段々と芸能界の基礎知識やアイドルをプロデュースする上での留意点を身に着けていった。

アイドルなんて、自分にとっては知らない世界。未知の暗闇だった。そこで知識や見解を得て、だんだんと自分の歩き方を模索し、いつか来る『アイドルを担当する日』に備える。

大変な日々だ。知らないこと、分からないことしかない界隈の知識を開拓し脳内に埋め込んでいく作業の日々。機能まで意味不明だったことを反芻して、次の日には理解出来るようになるような日々。大変で、楽しい感覚が毎日訪れている

そういった日々でも、癒やしはある。たまに雨上がりなどの不自然じゃない状況の際、僕は事務所の仕事部屋から外に向かって虹を描く。主に低年齢のアイドルが窓にはりついて「虹だ」「キレイだね」「写真を撮ろう」と軽く跳ねるような声ではしゃぐ。

それが嬉しくてニヤニヤしていると先輩に「お前どうしたんだ……?」と心配されたこともあるけれど

5 : ◆U.8lOt6xMsuG [sage saga]:2020/01/31(金) 00:49:57.42 ID:F/ujmVj70

【4月】

就職してから季節が2回ほど繰り返すと『自分でアイドルを担当してみるのはどうだ』と先輩に言われた。

これまでのようなサポートとしてじゃない、ちゃんと1人と向き合いながらの活動。自分の功労や努力が認められたようで嬉しくて、先輩の言葉に頷いた

「プロデュースするアイドルとの出会いは大きく分けて3つ。1.スカウト、2.オーディション、3.移籍……3は除外してもらっていい。移籍したアイドルの担当なんてまだ任せられんな。で、お前はスカウトとオーディション、どっちで原石を掘り出す?」

僕は少し考えた後、

「……オーディション、ですかね」

と答えた。僕は虹を描くことの副作用として、人の顔が黒色に見えてしまう。街中の大勢からアイドルとして活動できるビジュアルの持ち主を見抜くなんて不可能だ。オーディションだと僕以外の人も審査に加わる。その人達の鼻の先がどの女の子に向くかを観察すれば、ルックスの把握は出来るだろう

それにオーディションは『ある程度アイドルになる覚悟や決心が出来ている娘』が来る。そういった覚悟に応えたい、力になりたいと思った。……まぁ、まだ新人のペーペーが偉そうなことを言っているのかもしれないけれど

そう思いながら、次の事務所主催のアイドルオーディションを待つ日々を送ろうとしていた。送るつもり、だった

四月の半ばごろ。街へ事務用品の買いだしに繰り出した。事務所のビル近くの、いつもお世話になっている文房具屋へ足を運ぶ

ピンク色とか言われても分からないので、商品の説明をよく読みながら、買物かごにペンや付箋を入れていく。何が切れていたか、ちひろさんがメモしてくれたものを店の中で探し回る

その、最中

胸辺りに、軽い衝撃がした。曲がり角だったので、きっと人にぶつかったんだ。僕はなんともなかったけれど、ぶつかった方の人は尻餅をついている

「ぁいてっ!」

声から、女性と言うことが分かった。黒色のフワフワした髪の毛と、緑色のジャージが上から見える。その人は買物かごの中身を床にぶちまけてしまっている

「あっ、どうもすいません、ほんと……」

尻餅をついたまま、その人はぺこぺこと謝る。僕はしゃがんで、彼女が溢してしまったものをかき集めた

「ごめんなさい、僕が前をよく見ていなかったせいで、こんなことに」

実際そうだった。僕はメモに気を取られ、あまり周りが見えていなかった

「いや、いやいや! こっちもこっちで考え事をしてたんでス……すいません」

相変わらず、彼女は謝っている。彼女が落としたものをカゴに戻していると、スケッチブックやらコピー用紙やら、ペン、インクなど絵を描くためのものが多いと気がついた。近くに美術大学があったな。そこの学生だろうか

落としたものを全て集め終わると、彼女はようやく尻餅を止めて立ち上がった

「本当にごめんなさい……拾って下さって、ありがとうございました」

謝るのは僕の方だと思うけれど、律儀な方だ。顔をのぞき込むと、垂れた目をしていて、少しのんびりとしたような雰囲気のある人だと思った

今の僕は、アイドルのプロデューサーになる前の身だ。これから先の事務所のオーディションで、自分が担当するアイドルの卵を見受ける予定だ

しかし、そうだと念頭に置き数日を過ごしたけれど、僕はその行動を止めることが出来なかった。彼女の雰囲気というか、声というか、態度というか。僕の事を見てくれた今の上司と同じ事を、僕もしようとしている

「こちらこそごめんなさい」と言おうとする代わりに、スーツから名刺を取りだし先輩から教わった『添えるべき言葉』を口に出した

「あの、アイドルに興味ありませんか?」

「……え?」

これが僕と、荒木比奈さんの出会いだった

6 : ◆U.8lOt6xMsuG [sage saga]:2020/01/31(金) 00:54:18.90 ID:F/ujmVj70

【5月】

一ヶ月もすれば、相手のことは大体分かる。美術学生ではなく、半分ニートの同人作家。緑色のジャージが好きで、同じのを5着持っている。眼鏡の度はきつく、視力は悪い。オタクで、僕と漫画の趣味が似ている。それが、スカウトした荒木比奈という人だった

「お疲れさまっス……」

「レッスンお疲れ様。今日はダンスだっけ?」

「はい……」

追加。運動も苦手。事務所に戻ってきた彼女の声色は疲労が見えるし、いつも垂れている瞳は更に垂れて、顔の黒色部分の割合が増えている。デスクワークの僕よりもよっぽど疲れているだろう。差し入れにお菓子とか買っておけば良かった、先輩にもらった最中しかないや。レッスンの後に最中はちょっと……

「……もらった最中があるけど、食べる?」

「最中……いやぁ、いまはいいっスかねぇ」

だよねぇ。

しかし、本当の本当にレッスンを始めた最初期と比べると、疲労による声の揺らぎは少ない。たった一ヶ月とはいえ、体力もついているようだ。ボイスレッスンも順調だとトレーナーさんは言う。ビジュアルは……僕じゃ分からないけど、ちゃんと評価してくれている人はいる。

彼女の成長度合いを考えると、五ヶ月後には間に合う。十月に予定している彼女のデビューライブまでには十分な実力が付くはずだ。不安な要素がないわけではないけれど、それに勝るどころか飛び越えていくような期待感が僕の心の中にあって

同時に、ちくりとした胸の痛みも生まれていた

都合の悪いことには無視を決め込んで、僕はおやつ代わりの最中を口の中に入れた。口の中の水分を全部持って行かれた。
7 : ◆U.8lOt6xMsuG [sage saga]:2020/01/31(金) 00:57:52.11 ID:F/ujmVj70
今日はここまで、続きは明日です
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/01/31(金) 13:57:29.15 ID:zdDXAeoVo
期待
9 : ◆U.8lOt6xMsuG [sage saga]:2020/02/01(土) 01:11:05.61 ID:5Wf3AIsw0
再会します

限定SSR、来ましたね
10 : ◆U.8lOt6xMsuG :2020/02/01(土) 01:12:42.48 ID:5Wf3AIsw0

【8月】

◆◇◆

私がスカウトされて、4ヶ月が経過した。まだアイドルとしてのデビューはまだだけれど、レッスンや先輩達のバックメンバーだったりと、着々と自分がアイドルに近づいているようで、少し不思議な感覚が足下にある

そして、その間に友達も出来た。17歳で高校生の神谷奈緒ちゃんと、永遠の17歳でウサミン星人の安部菜々さん。2人ともオタクで、私と趣味が合って、アイドルの同僚というよりは普通のオタク仲間って感じだ。2人の前だと素になれた

今日は「ウサミン星の惑星(地球で言う所の月)から多く野菜が届いたけれど、自分一人では食べきれないのでウサミン星(菜々さんの生活スペース)に来てくれないか」と誘われ、奈緒ちゃんと一緒にウサミン星(アパートの一室)に来ている。

『ウサミン星』のワードが持つ意味が多くて、最初は自分の中で処理していくのに時間がかかった

「それでは! 比奈ちゃんのサークル参加お疲れ様と!」

「えっ、それ聞いてないっスよ!?」

「野菜の処理を合わせまして〜……」

「『お疲れ様』と『処理』を合わせるのはちょっとあれじゃないか菜々さん」

「仕事で失敗して、今から殺される裏の人間みたいな感じが出るっスね、そう言われると」

「と、とりあえず! 野菜たっぷりのカレーです! どうぞ!」

いただきます、と私と奈緒ちゃんはカレーを頬張る。野菜のコクと豚肉の甘みが溶け出していて、加えてちょっとするピリっとした辛味がとても美味しい。ルーに合わせてお米を運ぶ手が止まらない

「これ美味しい! 美味しいよ菜々さん!」

「あぁよかった……他の人も美味しいと思う味で……」

「? どういうことっスか?」

「いやぁその……自炊が長くなって、自分の為だけに作るのが長くなると……自分が好む味しか作れなくなってるんじゃって不安になっちゃうんですよね……」

毎回思うけれど菜々さんは詰めが甘いというか、設定を守ろうとしているんだろうけどボロが出ていると言うか。これからアイドルとしてメディア露出が増えたらどうするんだろう

「本当に美味いよこれ、作り方知りたい」

「レシピとかは特に……その、パッケージの裏にあるとおりで作ってるので……」

「レシピ通りでこの美味しさって凄いっスねぇ」

そういえば、こうやって自炊の料理を食べたのはいつぶりだろう。家を出て一人暮らしを初めて2年、カップ麺やコンビニ弁当が主で料理なんてほとんど……したとは言っても、失敗したり大失敗だったり。たまに成功ても、そのとき買った調味料はそのままにして腐らせたりしちゃったし

炊きたてのご飯も、具材がゴロゴロとしたカレーも久しぶりだ。口の中で、懐かしさが広がる感じがする。……まさかアイドルを初めて、ノスタルジックな気持ちになるなんて。人生、何があるか分からないな

「おかわりしてもいい?」

「ああ奈緒ちゃん立たないで、ナナがつぎますから」

至れり尽くせりだ。このままだと私と奈緒ちゃんにとってウサミン星が第二の故郷とかになりそう

11 : ◆U.8lOt6xMsuG [sage saga]:2020/02/01(土) 01:16:19.09 ID:5Wf3AIsw0

おかわり分も全部食べて、「洗うのはナナが」と言う菜々さんを居間に座らせて私と奈緒ちゃんで食器と鍋を洗い終えて。

「比奈さんってどんな漫画描いてるの?」

「まあ色々っスねぇ。一次創作も二次創作もあるし……ジャンルも色々っス」

「いつかナナ達にも読ませてくださいよ」

「それはちょっと……ペンネームとかSNSのアカウントがバレちゃうんで……」

「ああ確かに……考えてなかったな……」

「ペンネームだけは墓場まで持って行くって決めてるんス……」

三人でアニメの円盤を流しながら駄弁っていた。二人ともオタク文化に親しく感性が近くて、話してて苦にならないというか楽というか。かなりハイコンテクスト。しかしオタクが集まるといつもこうなるというか、駄弁る話題がアニメのことや最近打ち切られたジャンプの新連載から、アイドルのことへと移っていった。

「アタシらって三人ともプロデューサーさんのスカウトだな」

「ああ、言われてみれば確かにそうっスね」

三人とも担当のプロデューサーは違う。けれど三人とも『街中で名刺を渡された』という共通点があることに気がついた。奈緒ちゃんや菜々さんはどう言う風にスカウトされたんだろう。私のプロデューサーさんのように、真っ直ぐ見つめられながら誘われたりしたのだろうか。

菜々さんが差し出してくれたお茶を啜る。カレーの後に飲む熱めのお茶はなんだか美味しかった。

「……アタシ、スカウトされた時の名刺をまだ保管してるんスよねぇ」

「あ! ナナもです!」

「やっぱなんか捨てられないよなぁ、ああいうの」

あのときもらった名刺は、自分のお財布に入れてある。これまでずっと一緒に使ってたから端っこの方がちょっと折れてヨレちゃってるけれど、大事に持ち続けていた。自分の始まりというか、出発点のような気がして、引き出しとかに入れるよりもずっと持っておきたかった。

プロデューサーさんにとっては多くの人に渡しているし、そのウチの一つに過ぎない名刺だけれど、私に撮ってはとても大切で、捨てることが出来なかった

……プロデューサー。私をアイドルにスカウトした人。私を変えてくれる人。まだデビュー前でレッスンとか下積みをたくさんしないといけないのに、コミケでのスケジューリングのわがままを聞いてくれた日と。思えば、私は彼の事をあまり知らない。そういえば、彼は何故私の目をよく見てくれるのだろうか。私の緑のジャージを褒めてくれるのだろう。私をスカウトしたのだろう。

数ヶ月一緒に仕事をしているのに、私は彼のパーソナルな部分に関して全然知らないのでは、と思いだした。ビジネスパートナーとしてはこれくらいでも良いのかもしれないけれど、個人的にはもっと彼について知りたいと思う。前に話をして分かったけれど、漫画の趣味も合うようだし。ただ、アニメはあまり観ないみたいだから、円盤の貸し借りとか難しそう

「だから布教はぐいぐい行きすぎるよりも少しフックのある所を言って掛かったところを」

「『〜が〜する所までで良いから観て!』とかはネタバレとの戦いになっちゃいますしねぇ」

「気になる人は気になっちゃうよなぁ……」

お茶を啜りながらぼんやりしている間に、二人は『どうすれば一般人をオタクの道に引き込めるか』という話題を繰り広げていた。どの道を辿ってその話題に行ったの?

円盤は見終わって、今期の深夜アニメも観て、そのままウサミン星にお泊まりをした。ずっと『最終話で流れるOPは原曲とアレンジのどっちが熱いか』とか『織田信長と言われてどの作品の信長が思い浮かぶか』みたいな、他愛ないオタ話を寝る直前までしてて楽しかった

翌朝。寝ている間に雨が降って止んでをしていたようで、朝日が照らした空に虹が架かっていた。(アイドルになってから虹を見かける事が増えた様な気がするな)と、寝ぼけた頭でウサミン星から窓の外を見て思った。
12 : ◆U.8lOt6xMsuG [sage saga]:2020/02/01(土) 01:19:00.41 ID:5Wf3AIsw0
今日はここまでです、続きは明日
限定SSR、ヨロシクね!!!
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/02/01(土) 01:34:22.84 ID:WSPZz/b9o
おつ
14 : ◆U.8lOt6xMsuG :2020/02/02(日) 23:02:13.97 ID:vefDdoZp0
再開します。今日で完結
15 : ◆U.8lOt6xMsuG [sage saga]:2020/02/02(日) 23:02:42.58 ID:vefDdoZp0

【10月】

◆◇◆

都内にある比較的小さめなライブハウス。ウチの事務所に所属するアイドルの多くがデビューライブをしてきた、歴史ある舞台だ。ここが、アイドル荒木比奈の出発点になる

……喉の奥から、何かがこみ上げてくるような感覚がある。期待と不安、緊張、焦燥感。大きく息を吸って吐く。少し楽になった。多分これは、『ワクワク』という感情なんだろう

リハーサルを終えた比奈は控え室で待機している。僕はリハ直後のステージから、会場を見渡していた。真っ黒だ。床は茶色らしい。茶色ってどんな色なのだろうか。扉は白色だから、会場の広さはある程度分かった。あと少ししたら、ここには多くの人が入って、比奈の歌を聴くんだ。

大丈夫だ。リハで聴いた感じ、今日デビューするアイドルとは思えない程の歌声だった。比奈はアニソンカラオケが好きだと言っていたし、そこら辺で培われた素養もあるのだろう。それだけじゃなく、スカウトしてすぐ後のボイスレッスンと比べると、目を見張るほどの成長がある。大丈夫だ。大丈夫なハズ、だけれど

胸の中にちくりとしたような痛みがあった。あのとき、最中と一緒に飲み込んだはずの痛みはまだ消えていなくて、心の中で痛みだけでなくもやもやも一緒に生みだしている。

喉の奥から生まれる『ワクワク』とは違う、どこか覚えてしまう違和感。恐れと言っても良いかもしれない。これから記念すべきデビューライブだというのに消えてくれない。なんだよ、これ。

「……」

わからない。自分が今何に対して恐れているのか、何を違うと思っているのか。しかし、答えが出ないのなら出ないで放っておくべきだとも思った。こんな不確定な心情を比奈に悟らせて、パフォーマンスに影響が出た場合は目も当てられない。

杞憂になることを願い、真っ黒の会場を後にして彼女の控え室へと向かった

16 : ◆U.8lOt6xMsuG [sage saga]:2020/02/02(日) 23:03:55.77 ID:vefDdoZp0

控え室の彼女は音楽を聴いていた。スマホから橙色のケーブルが耳まで伸びている

「お疲れ様、比奈」

イヤホン越しに声をかける。同時にひらひらと振った手に彼女は気がついたようで、イヤホンを外して僕の方を見た

「……プロデューサーさん、どうもっス」

比奈は既にライブ用の衣装に袖を通していた。真っ黒な衣服にまばらの白色と、虹の構成色が散らばっているのが見えた。手袋も白色だ、今は左だけつけて、右手はスマホを操作している。とても可愛らしい衣装だと聞くが、僕は実物をそのままで見ることが出来ない、それが少し残念だ。

声と両手、それらが震えていた。緊張、不安。そういう声の揺らぎ方。僕が胸に抱えているワクワクや違和感とはまた違ったものだろう。何せ、これまでレッスンしてきて、これから舞台に立つ当事者だ。

「……緊張してる?」

ストレートに聞いた。ここは僕の役割だ。彼女の緊張感をほどよくほぐし、不安を取り除く。彼女がいまどんな事を考えているか、僕には推し量れない。でも、彼女にとってのワクワクの妨げ似なる物は全力で取り除く。舞台に立ってしまったら僕はもう袖で見守り祈ることしか出来ないから。だからその直前まで、彼女のサポートに尽くすべきだ。それが、プロデューサーだ。

「……してまス、ね……緊張……」

彼女はポツリと溢した。雛鳥がさえずるような、とても小さな声だった。

「でも、ワクワクもしてるんスよ。緊張も不安も、怖いって気持ちもあるけれど……」

「ワクワク?」

さっきの小さな声とは違う、はっきりとした、芯の通る意志を持ったような声だった。

「歌詞が抜けたらどうしようとか、ステップを間違えたらとか……そういう不安はいっぱいありまス。でもそれ以上に、アタシがこれから本当にステージで歌うんだーって、ワクワクするような……言葉じゃ、言いにくいっスけどね」

輝くような言葉と、真っ直ぐ観てくる瞳が、彼女の強さを物語っていた

「もし失敗しても、次は絶対って思えるような……いや失敗ありきで考えるのはアウトっスね」

真っ直ぐ向く彼女の顔から、白い歯が見えた

「うん……そうだね。失敗はしないでほしいな、比奈は今日アイドルになるんだから」

自分が抱えていたワクワク以外の気持ちの正体に気がついた。『後悔』だ

僕は元々、オーディションで担当するアイドルを選ぶつもりだった。理由は『他の審査員の評価を知ることが出来る』からと、『覚悟を持った女の子が来るから』

アイドルなんて、並大抵の心持ちではできない。一種狂気的な思考を持ち、人生の内数年間をそれだけに捧げなければアイドルなんて出来ないんだ

だからそれほどの覚悟を持った女の子が来るオーディションから担当アイドルを選びたかった

でも、僕はスカウトで荒木比奈をスカウトした。彼女は誘いに乗ってくれたけれども『断りにくくて』という理由かもしれない

それに、もしアイドルとしての活動で失敗をしてしまったら? もし誘いに乗っていなければ? 荒木比奈という20歳で前途のある人間から貴重な時間を奪うという結果に終わってしまったら? そういうIFを考えずにいられない

僕が彼女をスカウトしたときに忘れてしまい、ずっと奥に閉じ込めていたものを、いまになってはっきりと自覚したんだ。

違和感。後悔。自分が思っていたことと違う事を喜んで、彼女の覚悟も知らないままにプロデュースを続けていた半年間に積み重なったものがそうなっていた

でも、比奈は。僕が「本当にいいのだろうか」と無意識の内に後悔していたことを、その強さで肯定してくれた。正直、僕は彼女を見くびっていた。

彼女はすでに、立派なアイドルだったんだ。それだけの覚悟を持っていた

「……すごいね、比奈は」

「えぇ、そ、そうっスか……?」

すごいよ、本当に
17 : ◆U.8lOt6xMsuG [sage saga]:2020/02/02(日) 23:04:52.31 ID:vefDdoZp0

「まだ緊張してる?」

「……はい、さっきから推しのアニソンを聴いてるんスけど、一向に……」

強さと覚悟は見えた。けれど、彼女の声から緊張はまだ消えていない。すこし、自分のと木々でそれをほぐそう。親以外には見せていない特技。あんまり口外しない方がいいと思って、ずっと隠してきたこと

この場所でみせていいのか、って気持ちもある。けれど彼女に名刺を渡したときのように、もっと大きな心の声に従って行動を移した

「これみてて」

僕は左手をポケットの中に隠し、右手は手のひらを上にして胸の前へ。

「ちょっとしたマジックだけれど、気休めにでも」

そう言いながら、ポケットの中の指を動かしイメージした。音もなく、タネも仕掛けもないマジックを右の手のひらへかける

「うわっ……えっ!? 何スかそれ!? 虹!?」

僕が認識出来る色で構成された、カラフルな橋。こちらに目を向けている彼女へ、二つ目の虹を出した

「さらに増やす」

「重なった!? うわぁ! うわうわうわ!」

「二つを消して丸虹を出す」

「漫画でしか見たことないやつっスよそれ!! どうやってんスか!?」

「マジックだよ」

「すっっっっっごぉ……」

比奈の反応が良くて、ついつい調子に乗っちゃう。指に丸虹を描けて、くるくると回転させてから、彼女の方へ投げた。彼女が手を出して落とさないようにした所で、左手を握って虹を消す

「あれ? 消え……」

「どう? すごい?」

「すごい……というか何というか……幻覚? 催眠術?」

「マジックだって」

タネと仕掛けはない、ただのマジック。驚きの目を向ける比奈が出したままの黒と白の手を握った。もう震えてはいなかった

「うん。もう緊張も大分ほぐれたみたいだね」

「あっ……た、確かにそうっスけど、その、手を……」

「あぁごめん」

これは流石に、調子に乗りすぎだ。セクハラとかで他の不安材料を植え付けることになってしまう。パッと彼女の手を離した

「……その、手品、すごかったっス。緊張、取れちゃいましたで、へへ……」

「……なら、よかった。そろそろ時間だ、頑張ってね。舞台袖から見守るよ」

「……はい、ありがとうございます!」

さっき握った右手はとても熱かった。少し汗で滲んでいて、一切震えていない、荒木比奈の手。すでに白色の手袋で覆われてしまった、黒色の手。ああ、やっぱり、ちゃんとした形で衣装を観たいなと改めて思った

18 : ◆U.8lOt6xMsuG [sage saga]:2020/02/02(日) 23:05:30.21 ID:vefDdoZp0

◆◇◆

『失敗はしないでほしいな、比奈は今日アイドルになるんだから』

控え室からステージ裏までのわずか十数メートル。その間に、先ほどの彼の言葉を思い出した。彼は今日が出発点だと言った。

けれどそれは違うと、私は言いたい。私の始まりはあの日だ。あの日、文房具店で名刺をもらった瞬間から、アイドルとしての私は幕を上げていた

ぼさっとしてて、アイドルなんて遠い世界に居た私を引き上げてくれた人。友達と一緒に駄弁ったり、カレーを食べたり、レッスンで疲れたりとか、そういう原因をくれた人。

これから舞台に立つ私の、これまでずっとそばに居てくれた人。これからもいてくれるであろう人。

そんなあなたが真っ直ぐ私の目を見て『アイドルに興味はありませんか』と言ってくれた人。あの瞬間、私の世界は変わった。あの名刺から、もう全ては始まっていた

彼の事は、まだよく知らない。虹を出すなんて、魔法みたいな手品が使えるなんて今日初めて知ったよ。もっと他にも、多くの秘密とか、私の知らないことを多く持っているかもしれない

だから、前言撤回。今日のこのライブは。私が初めて立つ舞台では。絶対に失敗しない。これから先もアイドル荒木比奈であるために。私を見つけてくれた人に、変わった事を魅せるために

「……ふぅ〜〜〜」

舞台袖で、大きく深呼吸した。さっき取り除いてもらった緊張も、良い具合のスパイスとなって私のテンションを押し上げる。運動部に入ってた経験は無いけど、試合の前ってこんな感じなのかな

分からないけど、でも。自然と口の端が上がってしまうくらいには、良い気分だ!

イントロがスピーカーから響く。これまでのレッスンで何度も聴いたメロディに合わせて、私は踊り始めた

19 : ◆U.8lOt6xMsuG [sage saga]:2020/02/02(日) 23:06:19.08 ID:vefDdoZp0

◆◇◆

事務所所属のカメラマン、本木庄助は後にこう語る

「最初はプロジェクションマッピングを疑いました。しかし、すぐに自分の考えを否定しましたね。あれはそんな、我々の既得概念では理解出来るようなものでは無かったんですよ

超常現象と言って、差し支えないと思います

私もカメラマンの端くれ、その現象をすぐに写真に治めようとしましたよ。けれど、その超常現象よりも更に魅力的な被写体が――超常現象さえも霞む存在が舞台の上にいたのです

もう、アレなんか目に入らなかったですね」

20 : ◆U.8lOt6xMsuG [sage saga]:2020/02/02(日) 23:07:41.88 ID:vefDdoZp0
◆◇◆

僕は目の前の光景を疑った。

なんだ、これ。

客の入りは上々。振られる緑色のライトの数がそれを証明している。でも、緑色だけじゃなくて。扉の白色と、瞳の白い部分と、それ以外の黒色もかき消すくらいに。色が、フロアに溢れかえっている

「虹が……出てる……!?」

僕は一切、虹を出そしていない。こんな演出を組み込んだ覚えもない。でも、彼女が体を動かす度、客席に虹が生まれている。客席の人間は演出の一貫だと思っているのか? 全然不思議そうな目をしていない……いや、違う。虹が目に入っていないんだ。こんな現象は、ここにいる人たちにとって些事でしかないんだ

多くの瞳が、ステージの上、たった一人の偶像に向かっている

「比奈……!」

彼女が、全てを奪っている。

彼女が体を動かす度に虹が生まれる。指先でなぞった通りに虹が生まれている。七色の橋が架かり、その上を歌声が駆けている。

なんで、彼女が虹を出せているんだ? あのとき右手を握ったからか? 移るのか、この魔法は? いや……原因なんか、それこそ些事だ。そもそも僕にだって判明していないものだし、考えるだけ無駄

それよりも、もっと。もっと、僕は心を奪われる。ステージの上で歌う彼女に、僕もまた奪われる

虹が描かれ、客席がカラフルになる程、僕はステージの上の彼女が気になって仕方なくなってしまう。君は今、どんなダンスをしているんだ。君は今、どんな衣装を身に纏っているんだ

君は今、どんな顔をして、歌っているんだ

客席と反比例するように、君は真っ黒のままで。僕はこの時を逃すと、一生後悔すると思って

心の底から、願った

「……もう、いらない」

他人と違うとか、僕にとって普通とか、今までの言い訳じみた『捨てない理由』が全て、心からどうでもいいと思えて。

瞬間、僕の中から重さが消えた。生まれたときからずっと抱えていた重さ。大切だったけれど、もうそうじゃ無くなったものが、消える

代わりに世界の全てが色づく

体に付いた泥が乾いて、パラパラと崩れていくように、黒色が僕の視界から減っていく。同時に客席に描かれた虹も薄く、希薄になって消えていった。黒が剥がれ、色が顔を出す。自分の手を観て、初めて肌色を知った

一度唾を飲み込んで、袖からステージを向く。

初めて見た彼女の顔は、漫画でしか観たことない笑顔だった。漫画で観たよりもずっとずっと綺麗な、楽しそうな笑顔だった

比奈は、君は、そんな顔で笑うのか

生まれて初めて笑顔を見た。彼女の笑顔を見ることが出来た。


このライブハウスで泣いているのは、きっと僕だけだろう

21 : ◆U.8lOt6xMsuG [sage saga]:2020/02/02(日) 23:10:19.98 ID:vefDdoZp0
―――
――


荒木比奈が華々しいデビューを飾ってしばらく。僕はライブハウスの外で彼女を待っていた。すでに日は沈んで月が昇っていて、星が空に浮かんでいる。星って白色じゃないヤツもあるんだと気がついた

色を知ってから、ほんの数時間。今までの数倍もある色の情報量に押しつぶされそうだし、これまで真っ黒だったものが急に明るくなってて、今まで観ていた景色全てが違って見える。全部が初体験だ

さっき行ったトイレの鏡で、初めて自分の顔を見た。『デスゲーム漫画で割と序盤に死ぬやつの顔』だなと思ってしまった

「お疲れ様っス、プロデューサーさん」

「あっ、比奈、お疲れ様。デビューおめでとう」

「ふふっ、ありがとうございまス」

黒縁のメガネと、いつも観ている緑色のジャージと、ふにゃりとした笑顔。僕の中で確立されていた像と目の前の彼女が全然違って、見とれてしまう

「その……なんか変っスか? アタシ……」

「いやぁ変じゃない変じゃない! すごい! 良いと思う!」

予め自販機で買っておいたメロンジュースを彼女に手渡す。もうこれまでのように、配列を覚えたりする必要が無いのでとても楽に買えた

「何か食べたいものとかある? デビューおめでとうと、お疲れ様の意味で何か奢るよ」

「えっ!? い、いいんスか……?」

「うん。焼肉でも寿司でも、なんでも」

彼女は手元のメロンジュースを眺めてもじもじとしている。すでにもらっているからって遠慮しているのだろうか。そんなこと考えなくてもいいのに

「……ま、駅までの道で目に入った所に入る? 僕も結構減ってるし、なんか食べたいし」

「あっ、それでお願いしまス、はい」

歩き始める。街は色の情報量が多くて、慣れてないから情報量の処理に時間がかかりそう。というか吐きそう。脳がフル回転してる。たまらず、休憩する意味で上を見上げた。夜空はまだ、これまでとあんまり変わらないし

「あっ」

「どうかされました?」

「いやいや、ほら、月の周り」

「ん〜?」

隣の彼女に、上を見るよう催促する。

「綺麗でしょ、月虹」

「月虹……あれが」

僕が認識出来ていた色は、黒以外だと8色――赤、橙、黄、緑、青、藍、紫と、月虹の白だった。

「ムーンボウとかも呼ばれてるやつ。けっこう条件が厳しくて、あんまり見られないんだよね」

「へぇ〜貴重なんスねぇ〜」

月虹。僕は一応これも魔法で出すことが出来ていた。もう二度と出来ないけれど、まあ、待っていればまた観られる。なら、そこまで魔法を手放したことも惜しくはない。

それに「観ると幸せが訪れる」と言われている月虹が、何の意味も無く、ただの自然現象として僕たちの上に浮かんでいる今のこの状況が、僕は嬉しかった。

「んじゃ、行こっか」

「あっ、待ってくださいっス。ちょっと写真を……」

休憩はもうできた。スマホのシャッター音の後、僕たちは歩き出した。さっきの月虹よりも低いところに電光掲示板があった。今まで記憶していた音声と映像が結びつく。こんな感じだったんだ……そっか、もうテレビとか映像も普通に観られるんだ

「比奈、ちょっとさ」

「なんスか?」

「いや……オススメのアニメとか、教えてくれないかな」

これまでは漫画だけだったけれど、これからはアニメも観よう。比奈が好きだと言う作品を、これから僕は観ることが出来るんだし

比奈は驚いた顔をした後、得意そうになって

「いいっスよ! ネタバレなしで、オススメしまス!」

と言った。打ち上げは、比奈のプレゼン大会になった。好きなアニメとか、作画監督とか、彼女の事をより知れた。ああ、僕は彼女の事をもっと知りたいと思っていたのだと気がつけた

【終わり】
22 : ◆U.8lOt6xMsuG [sage saga]:2020/02/02(日) 23:17:38.28 ID:vefDdoZp0
ここまでです、ありがとうございました

Hello Kids! 君はもう限定SSR荒木比奈をお迎えした? お迎えした君も、まだまだの君も、《ポケモン言えるかな?》に挑戦だ!
How's your mouth rolling today!
ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/助けてくれ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/ピ力チュウ/
23 : ◆U.8lOt6xMsuG [sage saga]:2020/02/02(日) 23:18:26.70 ID:vefDdoZp0
前作→
神谷奈緒「虹が出来る理由」https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1573480818

こちらもよろしくお願いします
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