右京「タイムパラドクスゴーストライター?」

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/07/01(水) 00:24:33.81 ID:A7tKNGJh0
相棒×タイムパラドクスゴーストライターのクロスssです。
よろしければどうぞ。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1593530673
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/07/01(水) 00:25:53.45 ID:A7tKNGJh0


「くぅ〜!ハッピーエンドで終わってよかったなぁ〜!」


五月某日、警視庁特命係の部屋で組対5課の角田課長がマイカップに注がれたコーヒーを飲みながらある雑誌を読み耽っていた。
その雑誌とは集英社から毎週月曜日に出版されている全国の子供たちが愛読する少年ジャンプ。
昭和の時代から発行された少年向けの雑誌を中年の角田課長がそれも警視庁の職場で読み漁っていた。


「角田課長、いくらなんでもここで少年ジャンプを読むのはどうかと思いますけど…」


そんな少年ジャンプを読み漁る課長を冠城亘が思わず注意を促した。
いつもみたくコーヒーを飲みに来るのであれば冠城も咎めたりはしない。
だがいい歳をした中年が、それも組対5課の課長ともあろう人が少年ジャンプを読んでいれば注意されるのは当然だ。


「固いこと言うなよ。家だと女房が鬼滅の刃のコミックスを独占して満足に読めないんだからさ。」


「鬼滅の刃…それっていま話題のあの漫画ですか…?」


「そうだよ。8000万部も突破したあの超人気漫画だよ。うちの連中みんな夢中でさ…」


そんなことを言われて冠城が隣の組対5課を覗くと殆どのデスクに鬼滅の刃のコミックスが置かれていた。
冠城も名前だけは知っていたがまさかここまで人気だとは思いもしなかった。

3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/07/01(水) 00:26:38.86 ID:A7tKNGJh0


「いやいや、ここ警察ですよ。それも警視庁!部下が漫画読み耽ってるんだから上司として注意したらどうなんですか!」


「何言ってんだよ。鬼滅は他の漫画とはちがうんだよ。こんな感動する漫画ならデスクの手元に置いても全然OKだよ。」


オイオイ、こんなことで首都の治安を守れるのかと思わず心配してしまうが…
だがみんなが夢中になるのも無理ないのかもしれない。現在8000万部も突破した化物コンテンツだ。
そうなると…当然この男も読んでいるのではないのか?


「ひょっとして右京さんも鬼滅の刃を読んでるんですか…?」


まさかと思った冠城は右京に鬼滅の話題を振ってみた。
ちなみに右京だが至っていつも通りだ。自分のデスクにて優雅に注いだ紅茶を嗜んでいた。
よかった。さすがにあの杉下右京が少年漫画にハマるなどありえないだろうとそう思ったのだが…

4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/07/01(水) 00:27:30.41 ID:A7tKNGJh0


「甘いぞ冠城。警部殿のデスクをよ〜く見てみろ。」


なんと右京のデスクには鬼滅の刃のコミックスが置かれていた。
あの右京が少年漫画を読んでいるだけでも驚きなのにさらに驚くべきことはなんと現在発売中の全巻コミックスが揃っていることだ。


「あの…右京さんそれは…」


「見てわかりませんか。これは鬼滅の刃の単行本(職場用)ですよ。」


「ちょっと待ってください!(職場用)て何ですか!?」


「字のごとく職場での鑑賞用に決まっています。まさか冠城くんは鬼滅の刃を一冊も持っていないというのですか?
まったく…キミという男は熟熟無思慮で呆れますね。」


いやいや、呆れるのは右京さんの方だからと言ってやりたかったがなんとかグッと堪えてみせた。
しかし右京のデスクに置かれている漫画本が職場用なら自宅用も置かれているのだろう。
右京のことだから下手をしたら保存用や布教用まで揃えているかも…

5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/07/01(水) 00:28:16.97 ID:A7tKNGJh0


「警部殿、前の号借りるぞ。」


そんな悩める冠城を余所に課長はジャンプを読み続けていた。
まさかこのジャンプも右京の所持品なのかと疑っていた時だ。
課長がジャンプを持ち出そうと右京のデスク周りにある本棚を開けていた。
よく見るとその本棚は以前なら辞典やら紅茶のカップやらが置かれていたはず。
それが今ではどうだろうか。すべて少年ジャンプの雑誌に変わっていたことに気づいた。


「なんじゃこりゃぁぁぁぁぁっ!?」


「見ればわかるでしょう。これは少年ジャンプですよ。」


「そんなことに驚いているんじゃないですよ!どうして右京さんが少年ジャンプをこんなたくさん持っているんですか!それも職場に!?」


「それは簡単ですよ。鬼滅の刃が載っているのは少年ジャンプだけですからねぇ。だから置いてあります。」


冠城に問われても悪びれる様子もなく平然と答える右京。
まあそれはともかく右京の棚に置かれている少年ジャンプだが鬼滅の刃が始まった2016年11月号から現在に至るまでの雑誌が置かれていた。

6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/07/01(水) 00:30:09.32 ID:A7tKNGJh0


「俺なんて可愛いもんだろ。警部殿は相当重症だぞ。」


「そりゃわかりますけど俺…今日まで一緒にいて全然気づきませんでしたよ…」


「警部殿は隠すのがうまいからな。それに金次第でどうにもどうにでも出来る世の中だぞ。」


その話を聞いてようやく納得した。右京は以前に結婚していたが今は離婚して独身の身だ。
そんな独り身ならば気兼ねなく趣味に散財することが可能だ。
いい大人だからこそハマった衝動というのが大きいというのはたまに聞くがそれが自分の周り…
しかも相棒がそれだとはさすがの冠城も予想は出来なかった。いや、出来るものかと…


「ところで冠城くんは鬼滅の刃を未見だと聞きました。
僕としたことが迂闊でした。相棒のキミが鬼滅の刃という名作を知らないとは不甲斐ない。
仕方ありません。こちらの布教用を貸してあげるので存分に堪能してください。」


いやいや、さすがに警視庁で漫画本読むためにわざわざ法務省辞めて転職したわけではないのに…
いい歳して漫画にのめり込む右京と課長を前に冠城は思わず呆れるしかなかった。
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/07/01(水) 00:31:53.70 ID:A7tKNGJh0


「へぇ、杉下さんまだ鬼滅の刃なんて時代遅れな漫画にハマっているんですか。」


そんな右京に喧嘩腰で嫌味を吐くようにサイバー犯罪対策課の青木が現れた。
まったく妙なタイミングで現れたようだが…
そんな青木に対して珍しく右京が感情的になって睨みつけていた。


「青木くん、僕のことは構いませんが鬼滅の刃を侮辱する発言は聞き捨てなりませんね。」


「あれれ〜?杉下さんキレちゃってるんですか。たかが漫画のことで〜?」


「黙りなさい。これ以上鬼滅の刃を罵るのなら容赦しませんよ。」


やばい…いつもの右京なら青木の嫌味など平然と聞き流していただろう。
それがどういうわけかいつもよりもムキになっているどころか肩をプルプルと震わせていた。
凶悪な犯罪者相手ならともかくこんな漫画のことを貶されたくらいで激情をぶつけるのは考えものだ。
そして取り乱した右京の態度を茶化しながら青木は今週号のジャンプを持ってある漫画を紹介してみせた。
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/07/01(水) 00:35:12.87 ID:A7tKNGJh0


「もう鬼滅の刃は終わりです。これからはホワイトナイトの時代ですよ。」


ホワイトナイト、それは先ほどまで課長が読んでいたジャンプの表紙をほぼ独占している漫画だ。
中身は読んでないが表紙に載っている甲冑姿の主人公らしき少年が冒険する内容だというのはなんとなくだが予想はついた。


「読んだ感想はどうですか?そう面白すぎるでしょ!
キャラも設定もドラマ展開も完璧!!文句のつけようがない読み切り!!むしろ僕は読み切りだけで泣いた!!」


あの偏屈な青木がここまで絶賛するとは珍しいと思い冠城も一応雑誌を手に取り読んでみた。
読んでみた感想は確かに悪くはないのかもしれない。
絵も無難に描けているし話もそこそこ構成されていて悪くはない。
それでも冠城には青木ほどこの漫画が面白いとはどうしても思えなかった。


「なによりも主人公のキャラがいい……爽やかでいいヤツだから好感が持てる事もさることながら不遇な生い立ちが同情を誘う…」


そんな冠城の意見などお構いなしに青木はなにやらブツブツと感想を呟いていた。
ここまでいくと最早宗教にハマった信者にしか思えない。
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/07/01(水) 00:36:30.60 ID:A7tKNGJh0


「どうですか杉下さん。ホワイトナイトこそ令和のジャンプを象徴する漫画成り得る存在ですよ。」


「いい加減にしなさい。そういってキミが以前に勧めたサムライ8はどうなりましたか。無惨な最期だったではありませんか。」


「それは…あのNARUTOの作者が原作やってたんですよ!誰だって期待して当然でしょ!けど今回のホワイトナイトは名作になると断言してみせますよ!」


「それで打ち切りになるとすぐに他の作品に乗り換える。キミの悪いところですね。けど僕は忘れていませんよ。
サムライ8の1〜2巻同時発売のせいで鬼滅の刃17巻を発売初日に手に入れられなかった無念を…」


それは右京にも問題があったのでは…
前もって書店で予約するなり今なら電子書籍で読めるのだからと言おうとしたがこれ以上の面倒事に関わるのは御免だと思い冠城はなんとか堪えてみせた。
そんな冠城だがこのホワイトナイトを読んでひとつ気になることがあった。


「この漫画…作者は…佐々木哲平…男なのか…」


「あん?そりゃ少年漫画なんだから男が描くに決まってるだろ。」


「いや…作風からしてなんとなく女性の気がして…」


女性関連には特に鋭い感性を持ち合わせている冠城だからこそふと気になったがまあ些細なことだと思いこの時は気にもとめなかった。
なんとなく疑問に思いつつも冠城は今だに面倒な口論を続ける右京と青木の仲裁に入った。
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/07/01(水) 00:37:09.79 ID:A7tKNGJh0


「ところで青木、まさか仕事を放り出して漫画の自慢しに来たわけじゃないだろ?」


「当然ですよ。職場で堂々と漫画を読めるアンタたちとちがってサイバー犯罪対策課の僕が暇なわけないでしょ。
さっき千代田区神保町の交番から応援の要請がありました。それで暇そうな特命係に行ってもらいたくて呼びに来たんですよ。」


それならそうと早く言えばいいだろと青木を小突きながら冠城は出かける準備を行った。
今だに口論している右京を引っ張り出して二人は千代田区の神保町へと向かった。


11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/07/01(水) 00:39:51.38 ID:A7tKNGJh0


「いや〜まさか本庁の方々が来られるとは…」


「頼まれたらなんでも引き受けるのが特命係ですのでお気になさらず。それで状況は?」


「それがどうにも妙な話でしてね。」


千代田区の派出所を訪れた右京と冠城はそこの駐在である警官から大まかな状況を聞いた。
数時間前に神保町である通報を受けた。とある出版社の前で制服姿の少女が凶器を用いて若い男を襲っている。
その通報を受けてこの警官が駆けつけると被害者の男性はいなくなったがなんとかこの少女を補導することに成功。
だが少女は事情を打ち明けることもなく黙秘を貫いたまま。正直どうしたらいいのか見当もつかないのでお手上げな状況らしい。


「それでこの子が襲っていた加害者の女の子です。」


派出所の奥の部屋に座りながら下を俯いて黙秘を続ける制服姿の少女。
端正な顔立ちでショートヘアが特徴的な背格好からして年齢は16〜17歳くらいの女子高生だろうか。
いまだに名前も名乗らずにいるのでなんと呼んでいいかもわからない。
唯ひとつ気になることだが少女は何かを大事そうに抱えていた。


「それでこれが凶器なんですよ。」


警官が少女から取り上げた凶器を右京たちに見せた。
一見するとペンだ。切っ先がやたら尖っているがこんなものを持って人に襲いかかれば下手をすれば大怪我を負わせることになる。しかし疑問だが何故ペンなのだろうか?
確かにこれだけ尖ったペンなら人に怪我を負わせられるかもしれない。
けれど確実に相手に傷を負わせるなら普通に刃物の方が効果的だ。
それなのにどうしてと疑問に思う冠城とは裏腹に右京はこのペンを眺めながらあることに気づいた。
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/07/01(水) 00:42:44.86 ID:A7tKNGJh0


「これはつけペン、それもGペンですね。」


「Gペン?それって漫画を描く時に使うっていうペンのことですよね。」


「ええ、これはかなり使い込まれている年季の入ったモノですよ。」


確かに凶器に使われたペンは長いこと使い込まれた手触りだ。
しかしそうなるとかなり奇妙だ。制服姿の女子高生がGペンを持って男に襲いかかった。
そこにはどんな動機があったのか気になるところだ。


「ひょっとしてあなたは漫画を描いていますね。こちらへはその漫画を出版社へ持ち込もうと訪れたのではありませんか。」


「そんな…右京さん彼女は女子高生ですよ…漫画を持ち込みなんて…」


「いいえ、おかしな話ではありませんよ。
漫画を描くのに年齢や性別など関係ない。それに彼女は出版社の前で人を襲っていた。
そして凶器に使われたのはGペン。恐らく被害者の男性と漫画についてトラブルがあったのではありませんか。」


それが現状でわかる右京の推理だ。確かに筋はあっているかもしれない。
だが漫画を描くのは青木みたいなひと目でオタクだとわかる人間だろう。
こんな端正な美少女が漫画を描くなど冠城のイメージから余りにもかけ離れていた。

13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/07/01(水) 00:43:36.41 ID:A7tKNGJh0


「…今の刑事さんの推理だけどちょっとちがいます。」


そんな時、これまで黙秘を貫いてきた少女が急に話しだした。
それから少女は大事に抱えていたモノを右京たちの前に見せた。
ちなみに彼女が抱えていたのは原稿用紙だ。それも漫画だ。
まさか右京の推理通りこの少女が漫画を描いていたとは意外だ。
だが一番に気になるのは表紙のタイトルだ。


「ホワイトナイト…?」


どこかで聞いたようなタイトルだなと思ったがそういえば青木が絶賛していた漫画がそんなタイトルだったことを冠城は思い出した。


「ひょっとしてこの漫画だけどジャンプに載っていたあのホワイトナイトかい?」


「はい。私もホワイトナイトを描いていたんです。」


「ホワイトナイトを描いていた…だって…?」


ありえない。先程ホワイトナイトの漫画を読んだが確か作者は佐々木哲平という名だ。
名前からして間違いなく男であることが伺える。
それでいて目の前にいるこの少女はどう見ても女性であり明らかに佐々木哲平ではない。
奇妙な話だ。作家志望の人間が出版社へ持ち込む際は自身のオリジナル作品でなければならない。
それなのに他人の作品など描けばそれは単なる二次創作という扱いを受ける。
下手をすれば版権を侵害されたと訴えられる恐れすらある。

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