駆逐イ級「Black Lives Matter」

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/07/11(土) 20:43:35.78 ID:AgVtWUUz0
元ネタ
『艦隊これくしょん -艦これ-』

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1594467815
2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/07/11(土) 21:37:22.08 ID:AgVtWUUz0
提督 (それは普段の出撃と変わらない筈だった)

提督 (勿論軍人として、そしてこの鎮守府の司令として作戦遂行に全力を尽くすし、出撃させた艦娘が全員帰投するまでは気を揉んでいる)

提督 (作戦が成功すれば心の底から安堵するし、もし失敗でもすれば胃が痛くなるどころでは済まない)

提督 (ただ、そういったことも混みで普段通りの出撃と思っていた)

提督 (思えばあの日の出撃から、世界は狂い始めていたのかもしれない)
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/07/11(土) 21:46:02.48 ID:AgVtWUUz0
サラトガ 「Attack!」

ドドォン!

駆逐イ級 「キィィィィ!」

潮 「駆逐イ級、全艦轟沈……潮の出る幕も無かったです」

電 「最初の相手、圧勝なのです」

龍驤 「まだ序盤や、こんなのお茶の子さいさいやで」

金剛 「この勢いで提督の為にも作戦成功させます!」
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/07/11(土) 21:53:25.62 ID:AgVtWUUz0
電 「最初は上手くいっていたのです……」

潮 「提督の撤退命令が無かったら潮、沈んでたかもしれません」

多摩 「最終海域が鬼級、姫級のオンパレード、悔しいけど完敗にゃ」

サラトガ 「それでも最後の戦闘、せめて敵を1隻だけでも沈めたかったですね」

金剛 (旗艦がミーでなくて大和なら勝てたのかな……。ノー! そんな弱気、ミーらしくない)

龍驤 「命あっての物種、全員生還出来ただけでも良しとせな……じきに鎮守府やで」
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/07/11(土) 21:58:48.05 ID:AgVtWUUz0
電 「港に沢山の人が集まっているのです」

多摩 「幟に多摩達への悪口が書かれてるにゃ」

サラトガ 「デモ隊ですか……」

潮 「泣きっ面に蜂ですね」

金剛 「皆、毅然とした態度で帰還するネ。今回、作戦は失敗したけど……」

金剛 「ミー達の仕事は誇りある仕事デス!」

ベチャッ

金剛 (これは……卵!?)

ベチャッ、ベチャッ

金剛 (今度はトマト!?)

電 「はわわっ!? デモ隊から電達目掛けて色々飛んで来るのです」

多摩 「艦娘に投石は効かないから嫌がらせを重視した投擲にゃ」

デモ参加者1 「このレイシストめ!」

デモ参加者2 「恥を知れ!」

金剛 「あなた達が何を言おうとミー達は任務を遂行するだけデス」

デモ参加者3 「こいつ、自分が何をしたのか分かってないのか……?」

デモ参加者4 「艦娘にとっちゃ当たり前のことなんだろう。いくら人の姿に化けても所詮は軍艦という人殺しの道具の成れの果てだ」

電 「電達は人殺しの道具じゃありません!」

デモ参加者4 「何だこのガキは? 黙ってろ!」

電 「戦時中、電がまだ船の姿だった頃、電はアメリカの兵隊さんの救助活動をしました」

電 「それに今、電達が戦っているのは人ではありません。電達は今度こそ人を守る為に――」

デモ参加者5 「おぞましい……虫唾が走るわ」

電 「えっ……?」

電 (何だかこのオバさん、怖いのです)

デモ参加者5 「みんな! この子の見た目に騙されちゃ駄目。ロリコンに媚びを売って人気取りしてるだけよ。こういうのを擁護する連中は例外無く犯罪者予備軍だわ!」

デモ隊 「そうだそうだ!」 

龍驤 「そういうあんたは大人げないなあ」

デモ参加者5 「まあ!? ここにもロリコンホイホイがいるわ」

龍驤 「何やて!」
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/07/11(土) 22:06:34.52 ID:AgVtWUUz0
龍驤 「あのババア、ホンマムカつくわ。誰がロリコンホイホイやねん」

提督 「皆、お疲れ」

大和 「皆さんお疲れ様です」

金剛 「提督、ごめんなさい!」

提督 「今回の作戦失敗は残念だったが、また機会もあるだろう。それはさておきこちらを見てくれ」

金剛 「テートク?」

龍驤 「入渠してその後反省会やないんか」

提督 「すまんが入渠は後回しだ。そんなに時間は取らせないからこれを見てくれ」
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/07/11(土) 22:10:52.17 ID:AgVtWUUz0
多摩 (ニュースの録画にゃ……って!?)

多摩 「これ多摩達にゃ!?」

提督 「多摩、驚くのは分かるが静かに見てくれ」

多摩 「ごめんなさいにゃ」

――動画再生中――

アナウンサー 「艦娘の艦隊が最初に遭遇した敵艦隊は、全て肌の黒い深海棲艦で編成されていました」

アナウンサー 「艦娘はこのように問答無用で一方的に攻撃を加え、黒い深海棲艦の艦隊を瞬く間に全滅させました」

アナウンサー 「一方、こちらは同じ艦娘が別の深海棲艦に遭遇した時の映像です」

アナウンサー 「こちらの敵は全て白い肌の深海棲艦でした。すると……」

アナウンサー 「なんと、艦娘は敵艦隊を一隻も沈めることなく撤退を開始しました」

アナウンサー 「番組の取材に対し海軍は「明日の記者会見にて全てを明らかにする」とコメントしています」

コメンテーター1 「ここまで露骨過ぎるとむしろ清々しいですね」

コメンテーター1 「肌が黒い相手は一方的に死ぬまで痛めつけ、肌が白い相手が現れたら撤退」

コメンテーター1 「これは黒人差別以外の何物でもありません」

司会者 「相手は深海棲艦で人間ではありませんがこれも差別になるのでしょうか?」

コメンテーター1 「なります!」

コメンテーター1 「仮に黒人の方がこの動画をご覧になったらどんな気持ちになると思いますか?」

コメンテーター1 「差別される側が差別的だと感じたらその時点で差別なんです。悪意は無い、偶然だった、というのは言い訳になりません」

――動画終了――

提督 「という訳だ」

提督 「同様の番組がテレビ、ネット問わず多数放送されている」

多摩 「多摩達の画像はどうやったのかにゃ?」

提督 「おそらくはドローン撮影だろう」
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/07/11(土) 22:11:18.68 ID:AgVtWUUz0
多摩 (ニュースの録画にゃ……って!?)

多摩 「これ多摩達にゃ!?」

提督 「多摩、驚くのは分かるが静かに見てくれ」

多摩 「ごめんなさいにゃ」

――動画再生中――

アナウンサー 「艦娘の艦隊が最初に遭遇した敵艦隊は、全て肌の黒い深海棲艦で編成されていました」

アナウンサー 「艦娘はこのように問答無用で一方的に攻撃を加え、黒い深海棲艦の艦隊を瞬く間に全滅させました」

アナウンサー 「一方、こちらは同じ艦娘が別の深海棲艦に遭遇した時の映像です」

アナウンサー 「こちらの敵は全て白い肌の深海棲艦でした。すると……」

アナウンサー 「なんと、艦娘は敵艦隊を一隻も沈めることなく撤退を開始しました」

アナウンサー 「番組の取材に対し海軍は「明日の記者会見にて全てを明らかにする」とコメントしています」

コメンテーター1 「ここまで露骨過ぎるとむしろ清々しいですね」

コメンテーター1 「肌が黒い相手は一方的に死ぬまで痛めつけ、肌が白い相手が現れたら撤退」

コメンテーター1 「これは黒人差別以外の何物でもありません」

司会者 「相手は深海棲艦で人間ではありませんがこれも差別になるのでしょうか?」

コメンテーター1 「なります!」

コメンテーター1 「仮に黒人の方がこの動画をご覧になったらどんな気持ちになると思いますか?」

コメンテーター1 「差別される側が差別的だと感じたらその時点で差別なんです。悪意は無い、偶然だった、というのは言い訳になりません」

――動画終了――

提督 「という訳だ」

提督 「同様の番組がテレビ、ネット問わず多数放送されている」

多摩 「多摩達の画像はどうやったのかにゃ?」

提督 「おそらくはドローン撮影だろう」
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/07/11(土) 22:11:47.37 ID:AgVtWUUz0
多摩 (ニュースの録画にゃ……って!?)

多摩 「これ多摩達にゃ!?」

提督 「多摩、驚くのは分かるが静かに見てくれ」

多摩 「ごめんなさいにゃ」

――動画再生中――

アナウンサー 「艦娘の艦隊が最初に遭遇した敵艦隊は、全て肌の黒い深海棲艦で編成されていました」

アナウンサー 「艦娘はこのように問答無用で一方的に攻撃を加え、黒い深海棲艦の艦隊を瞬く間に全滅させました」

アナウンサー 「一方、こちらは同じ艦娘が別の深海棲艦に遭遇した時の映像です」

アナウンサー 「こちらの敵は全て白い肌の深海棲艦でした。すると……」

アナウンサー 「なんと、艦娘は敵艦隊を一隻も沈めることなく撤退を開始しました」

アナウンサー 「番組の取材に対し海軍は「明日の記者会見にて全てを明らかにする」とコメントしています」

コメンテーター1 「ここまで露骨過ぎるとむしろ清々しいですね」

コメンテーター1 「肌が黒い相手は一方的に死ぬまで痛めつけ、肌が白い相手が現れたら撤退」

コメンテーター1 「これは黒人差別以外の何物でもありません」

司会者 「相手は深海棲艦で人間ではありませんがこれも差別になるのでしょうか?」

コメンテーター1 「なります!」

コメンテーター1 「仮に黒人の方がこの動画をご覧になったらどんな気持ちになると思いますか?」

コメンテーター1 「差別される側が差別的だと感じたらその時点で差別なんです。悪意は無い、偶然だった、というのは言い訳になりません」

――動画終了――

提督 「という訳だ」

提督 「同様の番組がテレビ、ネット問わず多数放送されている」

多摩 「多摩達の画像はどうやったのかにゃ?」

提督 「おそらくはドローン撮影だろう」
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/07/11(土) 22:13:39.76 ID:AgVtWUUz0
1です
すみません。ロックかかったと思ったら連投になってました。
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/07/11(土) 22:19:35.81 ID:AgVtWUUz0
金剛 「Shit! どうしてそんな解釈になるの!?」

提督 「俺もニュース見て開いた口が塞がらなかった」

龍驤 「デモ隊の連中がレイシスト云々言うとったのはこの動画のことか」 

電 「はわわ、電達、どうなるのですか?」

提督 「電達がどうもならないにように俺はこれから始末書を書く」

サラトガ 「お手伝させて下さい」

提督 「このミーティングが終わったらお前達第一艦隊は全艦入渠だ。むしろここまで引き留めて済まないと思っている」

提督 (生卵やトマトが服に貼り付いた状態でミーティングに参加なんてさせたくなかった)

提督 「始末書は秘書艦が手伝ってくれる」

提督 「な、大和?」

大和 「はい!」

金剛 (秘書艦にしてこの鎮守府唯一のケッコン済艦、悔しいデス……)
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/07/11(土) 22:25:05.59 ID:AgVtWUUz0
提督 (件の動画が流れてから数日後)

サラトガ 「ヴヴッ……グスッ……」

提督 「どうした、サラ?」

サラトガ 「提督! ヴエエエエン!」

提督 「落ち着けサラ! 話は執務室で聞く」
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/07/11(土) 22:28:17.90 ID:AgVtWUUz0
サラトガ 「すみません提督、先程は取り乱しました……」

提督 「それは構わんが理由聞いてもいいか?」

サラトガ 「ヴ、ウウ……」

提督 「もう少し落ち着いてからでいい」

提督 (サラトガは本来日本の艦娘ではないが米国の海外派遣により来日し、現在我が鎮守府預りになっている)

提督 (ホームシック……では無いか)
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/07/11(土) 22:31:40.22 ID:AgVtWUUz0
サラトガ 「本当にすみません……」

提督 「気にするな」

サラトガ 「……大変なことになりました」

サラトガ 「Iowaが……Iowaが……」

サラトガ 「解体……されました……」

提督 「アイオワが!?」

提督 (アイオワって米艦娘の連合艦隊旗艦だろ? そのアイオワを解体?)
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/07/11(土) 22:35:54.09 ID:AgVtWUUz0
提督 「アイオワに何があった?」

サラトガ 「この前ここの鎮守府で起きたことと同じです」

サラトガ 「Iowaを旗艦とする艦隊は作戦成功を目前にして鬼級、姫級相手に撤退を余儀なくされました」

サラトガ 「序盤の海域で黒い深海棲艦を撃破し、最後は白い深海棲艦相手に撤退」

サラトガ 「それが相手の肌の色で態度を変えているとバッシングされたのです」

サラトガ 「Iowaは旗艦として責任を取らされ解体処分に……」
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/07/11(土) 22:42:42.89 ID:AgVtWUUz0
サラトガ 「提督、Iowaの責任って何ですか? 提督はIowaにどんな罪があると思いますか?」

提督 「あくまで俺個人の意見だが、彼女に罪なんて無い。アイオワのことは本当に気の毒だと思う」

サラトガ 「そうですよね……ならどうして? サラ達は艦娘だから人身御供にしても構わないというの?」

提督 「そんなことはない。あまりに理不尽だ。もしここの鎮守府の艦娘がそんなふざけた理由で上から解体を命じられれば……」

提督 「俺は全力で抵抗する。そのことで俺のキャリアは失われるかもしれない」

提督 「でも、そんなの知ったことか!」

サラトガ 「Thanks a lot。Iowaもここに来ていれば……」

サラトガ 「昨日、Iowaからメールが来たんです」

サラトガ 「メールには解体の話は全然書いてなくて、普段通りのメールで……」

サラトガ 「昨日の時点で解体は決まっていたのに、そのことをサラには打ち明けずにIowaは……」

提督 「サラはアイオワの話を誰から聞いた?」

サラトガ 「どうして?」

提督 「アイオワ本人から聞いてないということは他の誰かから話を聞いたってことだろう?」

サラトガ 「今日、Intrepidから国際電話があって……」

サラトガ 「電話越しにIntrepidが泣きながら言ったんです。Iowaに口止めされていたって! 解体前に知ったらサラが解体阻止のために動くかもしれない、そしたら今度はサラが目を付けられるから!」

サラトガ 「解体が終わるまでサラに知らせないで、とIowaが言っていたそうです」

サラトガ 「自分が明日にも解体されるって時に人の心配ばかりして……Iowa、あなた馬鹿よ……」

提督 「サラ……」

サラトガ 「ヴエエエエン!」

提督 (俺の胸に縋り付いて号泣するサラトガに対し、俺はかける言葉が見つからなかった)
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/07/11(土) 22:44:13.46 ID:AgVtWUUz0
本日はここまで。
読んで下さった皆さんありがとうございました。
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/07/12(日) 13:20:26.29 ID:IHgU1R5I0
I can't breathe
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/07/12(日) 18:30:09.69 ID:VKAUpdKS0
金剛 「OK、そういうことなら任せて、提督!」

提督 「ありがとう金剛。サラトガのケア、よろしく頼む」

提督 (古参で人懐っこく英語が堪能な金剛に、サラトガのケアを頼むのが一番いいだろう)

金剛 「それにしても、こんな最期許せない」

提督 「ああ、アイオワも無念だったろうに」

金剛 「提督はご存知でしょうけど金剛型とアイオワ型はライバル同士です。ミーはアイオワのこと、認めてたんですよ」

金剛 「なのに突然こんなことに……」

提督 (金剛……)

金剛 「提督?」

提督 「何だ、金剛」

金剛 「サラトガはミーが慰めるので、ミーは提督が慰めて下さい」

提督 「おお……分かった」

金剛 「何か気持ちが感じられない返事デス」

提督 「そんなことないって」

金剛 「フフッ、言質は取れました。だったら……」
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/07/12(日) 18:37:26.43 ID:VKAUpdKS0
金剛 「今日はショッピング付き合ってくれてありがとう提督」

提督 「そう言ってくれると嬉しいよ金剛」

金剛 「やや、心ここにあらずって感じでしたが」

提督 「いや、そんなことはない」

金剛 「大和のこと、気になりますか?」

提督 「気にならない、と言えば嘘になる」

金剛 「提督には身重の大和がいるのに今日提督を連れ出したのはミーの我儘ですが……」

金剛 「鎮守府に帰ったら怖いデスヨー」

提督 「一応大和の許可は貰っている、大分不機嫌だったが」

金剛 「Don't worry。ミーも提督の家庭壊すつもりないデス」
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/07/12(日) 18:44:41.15 ID:VKAUpdKS0
金剛 「この前、榛名に電話で言われたんです」

金剛 「『もう、フッ切った方がいい』って」

金剛 「『お姉様が不倫して傷つくところなんて見たくありません』って」

提督 「……姉想いの妹さんじゃないか」

提督 (すまん、金剛。お前の気持ちは有難いが応えられん)

金剛 「ええ、自慢の妹です」

金剛 「ミーからすれば榛名の方が将来爛れた恋愛とかしそうで心配です」

提督 「そうなのか?」

金剛 「提督は榛名と面識無いって言ってましたね」

提督 「ああ」

金剛 「あの子は無自覚に男を惑わす魔性の女デース」

金剛 「榛名が本気になれば大抵の男は堕ちますよ、きっと」
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/07/12(日) 18:47:48.21 ID:VKAUpdKS0
提督 「多摩、改ニおめでとう」

多摩 「にゃあ」

明石 「おめでとう」

武蔵 「おめでとう多摩、この武蔵もせめて改になりたいものだ」

提督 「武蔵が改になるには色々物入りだからそのうちな。……うーむ、改ニになった多摩は大人びた感じがする」

多摩 「何だか照れるにゃ」
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/07/12(日) 18:51:12.46 ID:VKAUpdKS0
提督 「よう、多摩」

多摩 「提督……」

提督 「どうした、多摩? ちょっと元気なさそうだが」

多摩 「そんなことないにゃ、失礼するにゃ」トボトボ

提督 (多摩、改ニになってこの数日、いつもに増して元気だったのに。昨日今日、何があった?)
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/07/12(日) 18:54:07.59 ID:VKAUpdKS0
大和 「ごちそうさまでした」

多摩 「ごちそうさまにゃ」

多摩 (食堂での食事、普段なら楽しい筈なのに気分が乗らないにゃ……)

大和 「多摩ちゃん……その、何か悩み事があれば……?」

多摩 「提督の差し金かにゃ」

大和 「提督にはむしろあまり根掘り葉掘り聞くなって言われました」

多摩 「ごめんにゃ」

大和 「言いにくいことなら無理に言うことはないですけど、相談したくなったらいつでも声をかけて下さい」

多摩 「……多摩は、子供に悪影響を与えてるのかにゃって」
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/07/12(日) 18:58:04.08 ID:VKAUpdKS0
多摩 「この前、駆逐や軽巡の皆で幼稚園に慰問に行ったにゃ」

多摩 「子供達は喜んでくれたにゃ。一人の女の子が『私も多摩ちゃんみたいになりたい』って言って抱きついてきたにゃ」

多摩 「そしたらその子の親御さんが無理矢理女の子を多摩から引き剥がして言ったにゃ」

多摩 「多摩の身体はモデル体型だから多摩に憧れた子供は摂食障害になる。艦娘が海でかっこよく暴れることにルッキズムがどーとかジェンダーがどーとか」

多摩 「せっかく改ニになったのに、見た目で悪口言われるとは思わなかったにゃ」

大和 「子供達は喜んでたんでしょ? 幼稚園の先生方は何ておっしゃってたんですか?」

多摩 「慰問が終わった後、園長先生に言われたにゃ。『ああいった親御さんもいらっしゃいますが、私共は感謝しております。子供達も喜んでます。ありがとうございました』って」

大和 「そんなに喜んで貰えたなら多摩ちゃんもっと自信持ちましょ、ね」
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/07/12(日) 19:04:13.38 ID:VKAUpdKS0
提督 「そんなことがあったのか」

大和 「すみません提督。提督にはあまり詮索するなって言われていたのに」

提督 「いや、俺も多摩の元気がなくなったことは気になってたからな。それに秘書艦の大和が艦娘のケアをしてくれると助かる」

提督 「でもこれで繋がったよ」

大和 「繋がった?」

提督 「今日、例の幼稚園から連絡があって、心苦しいですが慰問はこれで終わりにして欲しいってさ」

大和 「そうだったんですか……」

提督 「てっきり左寄りなクレームに園が屈して慰問を断らざるを得なくなったかと思ってたから、その時は理由聞かなかった」

提督 「流石に今回はクレームの内容が斜め上だ」
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/07/12(日) 19:09:51.40 ID:VKAUpdKS0
提督 「設置完了、これでヨシ!」

潮 「やっぱり恥ずかしいです」

潮 (今日は鎮守府の一般解放日、正門前に……)

提督 「よく撮れてる、かわいいぞ潮」

潮 (潮の等身大パネルを置くんですか!?)

提督 「これで来訪者も増えるだろう」
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/07/12(日) 19:14:16.73 ID:VKAUpdKS0
提督 (今のところ問題無しか……)

提督 (鎮守府の一般解放日、通常任務とは違った緊張はあるが、俺がしかめっ面してる訳にはいかん) 

提督 (笑顔、笑顔……)

電 「司令官さん、大変なのです!」

提督 「どうした、電?」

電 「正門前でトラブルなのです!」

提督 (ついに来たか、プロ市民共……)

提督 「分かった、すぐ行く。電は持ち場に戻れ」
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/07/12(日) 19:18:50.11 ID:VKAUpdKS0
提督 (正門前に駆けつけたが……一人?)

クレーマー 「あなたがここの責任者ですか?」

提督 「はい、そうです」

クレーマー 「本当に無神経だと思います」

クレーマー 「なんであえてこういうパネルなんですか? もう麻痺してるんでしょうけど公共空間で環境型セクハラしてるようなものですよ」

提督 (潮の等身大パネルにケチ付けてるのか!?)

潮 「……」

提督 (潮の奴、萎縮してる。俺が駆けつけるまでの間、散々酷いこと言われたんだろう。可哀想なことをした)

提督 (兎に角、この場を治める)

提督 「そう言ったところを考慮して、ご覧の通り露出の少ない服装にしており――」

クレーマー 「ほんっとほんっと気持ち悪い。吐き気がします。よく恥ずかしげもなくこういう胸が大きいパネルを掲げられますよね。しかもこれが未成年でそういう幼さとの「萌え」もギャップなんでしょう? 吐き気します。きもすぎる」

提督 「……」
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/07/12(日) 19:21:44.48 ID:VKAUpdKS0
龍驤 「離さんかサラトガ……」

サラトガ 「駄目ですよリュージョー、今、出ていっちゃ……」

龍驤 「貧乳なら誰だって、自分が初めて貧乳だと思い知らされた時のことを覚えとる」

龍驤 「毎日、自分の乳に価値が無いと思い知らされることがどんなに痛みを伴うか」

龍驤 「だからってなあ……」

龍驤 「乳がデカいだけであんな罵倒するこた無いやろ」

龍驤 「見てみい。司令官の横で潮がションボリしとるわ」

龍驤 「ウチは決してそこの女みたくはならんで。自分が気に入らんから言うてフェミニスト気取りで相手をバッシングするようになったら終わりや」

サラトガ 「リュージョーが誇り高い空母なのは分かりました。ただここは提督に任せましょう」

サラトガ 「私達は航空ショーの準備があります。行・き・ま・す・よ」

ズルズル……

龍驤 (引き摺られる……。これが正規空母の馬力か……)

龍驤 (それよりもウチを羽交い締めにしとるサラトガの乳がずっと背中押しとんねん)





提督 (結局俺は、潮のパネルを鎮守府内の人目につかない場所に移動させた)

提督 (以前、電がデモ隊に暴言吐かれたって言ってたよな。先日の多摩の件といい……)

提督 (子供はダメ、モデル体型はダメ、巨乳はダメ……)

提督 (だったら何だったら文句言わなくなるんだ……)
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/07/12(日) 19:23:12.19 ID:VKAUpdKS0
本日はここまで。
読んで下さった皆さんありがとうございました。
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/07/12(日) 20:00:34.59 ID:Zrugb2lIO
金剛の一人称はミーじゃないよ…
MVPで散々言ってるのに…
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/07/12(日) 20:10:04.49 ID:IHgU1R5I0
ミー金剛というマイノリティーを受け入れない差別主義者め
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2020/07/14(火) 08:43:44.13 ID:2Au+tQb+O
やかましいわハゲ
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/07/15(水) 19:08:46.45 ID:BoSjVsM20
龍驤 「敵さんなかなか出て来んなあ」

サラトガ 「!」

サラ 「サラの子が艦影を発見したわ」

龍驤 「あちゃー、今回サラトガか先やったかー」

サラトガ 「……」

龍驤 「どないした?」

龍驤 (何黙っとんねん?)

サラトガ 「索敵機からの情報です」

サラトガ 「艦影2、港湾棲姫及び北方棲姫と思われます」
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/07/15(水) 19:11:13.39 ID:BoSjVsM20
潮 「まだ作戦中盤ですよ。こんなところで姫級が2体も出て来るなんて……!」

潮 「あのっ! サラトガさんの索敵を疑ってる訳じゃないですよ」

サラトガ 「分かってるわウシォー。サラだって驚いてるもの」

多摩 「ここで姫級来るならラスボスはどんな敵かにゃ。先が思いやられるにゃ……」

金剛 「弱気になっては駄目、戦闘準備です!」

龍驤 「そりゃそうやけど、随伴艦無しって怪しいやろ? 罠の匂いプンプンやねん」

サラトガ 「戦闘の必要は無いかもしれません……」

電 「何かあったんですか?」

サラトガ 「索敵機からの情報によると、敵が白旗を掲げてるそうです……」
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/07/15(水) 19:13:44.52 ID:BoSjVsM20
龍驤 「大規模なクーデターが起きてクーデター軍に敗けたあんた等はここまで逃げて来た。そしてウチ等に対して亡命を求めとる」

港湾棲姫 「ソウ」

サラトガ 「提督に連絡を取って指示を仰ぎましょう」

港湾棲姫 「ダメ」

サラトガ 「どうして?」

港湾棲姫 「ツウシンヲ ボウジュサレタラ ワタシタチノ イバショ テキニ ワカル」

サラトガ 「勿論暗号電文にするわ」
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/07/15(水) 19:16:08.51 ID:BoSjVsM20
金剛 「提督の指示は『作戦中止、保護した深海棲艦を連れて帰投せよ』です」

電 「司令官さんならそう言うと思ったのです」

港湾棲姫 「ボウメイ デキルノ?」

金剛 「艦隊旗艦として言わせて貰うと……」

金剛 「貴女達の亡命を受け入れるかここでは判断出来ない。判断するのはもっと上の立場の人です」

金剛 「それを決める為にも貴女達には私達に同行して貰う。いいかしら?」

港湾棲姫 「ワカッタ。 ヨロシク オネガイ シマス」

港湾棲姫 「アナタカラモ オネガイ シナサイ」

北方棲姫 「……オネガイ シマス」

金剛 「オーケー、Follow me!」
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/07/15(水) 19:22:11.85 ID:BoSjVsM20
多摩 「クーデター軍ってそんなに強いのかにゃ?」

港湾棲姫 「イッセキイッセキハ タイシタコトナイ。 タダ ブツリョウニ マケタ」

北方棲艦 「アイツラ トッテモ カズガ オオイ」

龍驤 「そもそも何でクーデターが起きたんや?」

サラトガ (流石リュージョー。この亡命希望が本心からか、それとも何らかの謀略なのか……。敵の情報からそれを推測する必要があります)

サラトガ (クーデターの経緯を訪ね、その答えに整合性が無い、もしくは話が出来過ぎている場合は要注意です)

港湾棲姫 「ソレハ……」
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/07/15(水) 19:25:29.88 ID:BoSjVsM20
深海棲艦にとって肌の色は極めて重要である。
駆逐イ級、同ロ級、同ハ級といった低位の艦は全身の皮膚が黒く、大型艦になるにつれ皮膚の白い部分が増える傾向にあった。鬼級、姫級といった高位の艦ともなると、服や艤装が黒いことはあっても本体は一様に白い肌をしていた。
そして黒い艦は白い艦に支配され、搾取され、冷遇され、蔑まれてきた。
「ホワイトパワー」は絶対の力。中でも鬼級、姫級は特権階級とされ、彼女達の中には横暴の限りを尽くす者もいた。
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2020/07/15(水) 19:28:33.14 ID:BoSjVsM20
そしてこの戦艦棲姫もまた、特権階級たる姫級深海棲艦の一種である。黒いワンピースを身に着け、黒をベースとする巨大な艤装を従えながらも、戦艦棲姫自身は白磁のような肌をしていた。暗く深き水底においてもその存在を際立たせるかの様な白き肌は選ばれし者の証である。
今、彼女の艤装は一隻の駆逐ロ級を押さえつけている。きっと優良種たる姫級の機嫌を損ねてしまったのだろう。哀れなロ級はもがき苦しんでいる。
戦艦棲姫の艤装は、片腕だけでその大きさは本体を凌ぐ。艤装はその巨?でロ級にのしかかり、丸太のように太くかつ筋肉の盛り上がった腕でロ級を浅瀬の岩に押さえつけていた。その姿は邪鬼を踏み付ける金剛力士像さながらである。
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2020/07/15(水) 19:35:47.67 ID:BoSjVsM20
そしてこの戦艦棲姫もまた、特権階級たる姫級深海棲艦の一種である。黒いワンピースを身に着け、黒をベースとする巨大な艤装を従えながらも、戦艦棲姫自身は白磁のような肌をしていた。暗く深き水底においてもその存在を際立たせるかの様な白き肌は選ばれし者の証である。
今、彼女の艤装は一隻の駆逐ロ級を押さえつけている。きっと優良種たる姫級の機嫌を損ねてしまったのだろう。哀れなロ級はもがき苦しんでいる。
戦艦棲姫の艤装は、片腕だけでその大きさは本体を凌ぐ。艤装はその巨躯でロ級にのしかかり、丸太のように太くかつ筋肉の盛り上がった腕でロ級を浅瀬の岩に押さえつけていた。その姿は邪鬼を踏み付ける金剛力士像さながらである。
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