めぐみん「やっぱり気になりますよね」ダクネス「気にならないと言えば嘘になるな」

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/04/15(木) 20:36:41.79 ID:ww8ofml6O
「ダクネス……起きてますか?」

小雨がぱらつく、静かな夜のことだ。
髪を梳かし終えて、そろそろ寝ようとベッドに横になると、コンコンと控えめなノックの後、めぐみんの小さな声がドアの向こうから聞こえてきた。

「どうしたんだ、めぐみん」
「その……ちょっとダクネスに相談が……」
「めぐみんが私に相談なんて珍しいな。力になれるかはわからないが、話してみろ」
「それが、その……」

ドアを開けて要件を尋ねても、めぐみんはなかなか話そうとはしない。どうやら言いづらいようなことだと察した私は部屋に招いた。

「どうした、めぐみん。話してみろ」

ベッドに横並びに腰掛けて促すも、めぐみんはなかなか本題に入らない。そんな彼女の様子から、なんとなくこれはあの男についての相談かと思い、口に出して反応を伺った。

「カズマのことか?」
「はい……カズマのことです」

やっぱりそうかと納得して、あの男がいったい何をしでかしたのかをめぐみんに尋ねた。

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2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/04/15(木) 20:38:08.49 ID:ww8ofml6O
「カズマがどうしたんだ?」
「私の気のせいかも知れないのですが……」

そう前置きしてから、めぐみんは続けた。

「最近、カズマとアクアの仲が良すぎると思うのですが、ダクネスはどう思いますか?」

てっきり私とカズマの関係について聞かれるのかと思っていたので、アクアの名前が出たことに驚いた。カズマとアクアの関係性か。

「カズマとアクアは長い付き合いで、なんだかんだ言いつつもずっと仲は良かったように思うが……何かあったのか?」
「あったというか、目撃したと言いますか」

目撃という言葉にぎょっとして問い詰める。

「ま、まま、まさかあの2人はもう……!?」
「ち、違いますよ! ダクネスが考えているような不埒な現場を目撃したわけではありません! ただ、2人が仲良く同じベッドで寝ているところに出くわしただけで……」
「仲良く同じベッドでだと!?」

それはもう不埒な現場だと私は思うのだが。
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/04/15(木) 20:39:35.52 ID:ww8ofml6O
「同じベッドで寝ていたと言ってもお互い服は着てましたし、如何わしいことをしたようには見えませんでした。誤解なきよう」
「そ、そうか。それはそうだろう。いつもカズマのことをクズマだとかカスマ呼ばわりしているアクアに限って、そんなことは……」

ないと、言い切れるだろうか。悩みどころ。
なんだかんだ言っても仲良しのあの2人だ。
同じベッドで寝ていて、間違いを犯さないと断言するのは難しい。俄然気になってきた。

「やっぱり気になりますよね」
「気にならないと言えば嘘になるな」
「では、行きましょう」
「へ?」

突然立ち上がっためぐみんを見上げて呆気に取られる私の手を力強く握って、宣言する。

「我が名はめぐみん。紅魔族随一の爆裂魔法の使い手にして、夫の不貞を許さない女」
「お、夫!? いつの間に!?」
「おっと、口が過ぎました。とにかく、この曇りなき赤眼で真実を見定めてくれよう!」
「それなら1人で行けばいいだろう!?」
「気になるなら一緒に行きましょうよ!」

いろいろとツッコミどころ満載なめぐみんに半ば引きずられるようにして、私たちは真実を見定めるべく、カズマの部屋に向かった。
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/04/15(木) 20:40:39.50 ID:ww8ofml6O
「おや? カズマは留守のようですね」
「おかしいな、私のすぐに後に風呂に入ったからあとは寝るだけの筈だが……」

恐る恐るドアを開くも無人で、カズマの姿は見当たらなかった。すると、足音が響いた。

「ダクネス、隠れますよ!」
「わ、わかったから押すな!?」

慌てて隠れ場所を探すも、良い場所が見つからず、仕方なくカズマのベッドの下に潜む。
ドアが開いて、カズマのスリッパが見えた。

「どっこらせっと。それにしても、毎度のことながら起きないな、この駄女神は」

ドサッとベッドに何か放り投げられた音がして、そしてカズマの声がした。駄女神と言っていたので、アクアを運んできたらしい。

「むにゃむにゃ……カズマさん、もう一杯」
「人がいくら止めても酒瓶を空にするまで飲む癖に何を言ってやがんだ。たく、幸せそうな顔しやがって。落書きでもしてやろうか」

かなり乱暴にベッドに放り投げられられた様子のアクアだが、全く起きる様子はなく、寝言まで口にするほど熟睡しているらしい。
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/04/15(木) 20:42:20.50 ID:ww8ofml6O
「さて、あとは明日の昼まで寝て同衾シーンをめぐみんかダクネスに見せるだけだな」

!?

ギシッと頭上でベッドが軋み、カズマが横になりつつ、聞き捨てならないことを言った。

「やれやれ。こうでもしないとあいつらは自分から動こうとしないからな。せいぜい俺とアクアの関係を疑って悶々と過ごしやがれ」

!?!?

あまりのクズ発言に唖然として隣を見ると、めぐみんも同じく唖然としていて、私たちはまんまとカズマの策略に嵌って悶々としてしまったことを悟った。おのれ、絶対許せん。

「アクアが横に居ると馬小屋生活の頃を思い出すから嫌だけど……不思議と良く寝れるんだよなぁ。ああ、嫌だ嫌だ、こんな習性」

嫌だ嫌だと言いつつも、カズマはすぐ寝た。
すやすやとまるで安心しきったような寝息が聞こえてきた。なので、私がベッドの下から出ようとすると、めぐみんに袖を掴まれた。

「…………………」
「っ!?」

怒りによってからか、赤い瞳が闇に輝いている。今にも爆裂魔法を放つ寸前で、焦った。
今撃てば、カズマはともかくアクアまで跡形もなく吹っ飛んでしまう。それは可哀想だ。

「ふん。やれやれってのはこっちの台詞よ」

しかし、当の本人であるアクアの声が頭上から聞こえて、私たちは揃って耳を傾けた。
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/04/15(木) 20:44:25.23 ID:ww8ofml6O
「あんな風に乱暴にベッドに放り投げられて、起きないわけないじゃないの。毎度毎度、寝たふりするこっちの身にもなって欲しいわ」

どうやらアクアは起きていたらしく、ぷーくすくすと嘲笑しながらカズマに悪態を吐きつつも、楽しそうに続けた。

「カズマさんったら、なんだかんだ言っても私が隣に居ないと寝付きが悪い癖に。めぐみんとダクネスの気を引くことなんて、建前だって丸わかりよ。ほんと、困った男ね」

!??!?

両目が飛び出るのではないかと思った。
愕然として隣を見るとめぐみんも愕然としていて高まった魔力もどこかへ霧散していた。

「よしよし。今夜は特別に手を繋いで寝てあげましょう。寝ている今なら、いくら意地悪なカズマさんでもドレイン・タッチは……」
「むにゃ……ドレイン・タッチ」
「うひゃあっ!? この男、起きてるんじゃないでしょうね? 夢の中でまで女神に嫌がらせするなんて女神たるこの私が絶対に……!」
「むにゃ……大丈夫か、アクア」
「……ま、今回だけは大目に見てあげるわ」

なんだこれは。甘ったるい空気。
我々は何を聞かされているんだ。
いろいろと心が折れそうだった。

「…………………ぐすっ」

隣を見るとめぐみんが泣いてて私も泣いた。
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/04/15(木) 20:46:23.02 ID:ww8ofml6O
「ねえ、カズマ」

これまで聞いたこともないような、優しげな声でアクアは寝ているカズマにこう囁いた。

「正直カズマのことを恨んだし、憎みもしたけど、それでも私はカズマのこと嫌いじゃないわ。起きてる時は絶対に言わないけどね。だから、おやすみ……私の勇者さま」

そしてちゅっと、キスの音が響いた。
するとちょろちょろと。隣で水音が響く。
なんだろうと思って見ると、奥歯を噛み締めためぐみんがガタガタ震えて失禁していた。

めぐみん。気持ちはわかる。わかるとも。
わかるけど、頼むから落ち着いてくれ。
めぐみんを宥めようとして、ふと気づく。
私自身も、盛大に失禁していることに。

「フハッ!」

思わず、嗤ってしまった。悪癖が出た。
もはや、私にめぐみんは止められない。
ああ、霧散した魔力が再び集まっていく。

「エクスプロージョン」

ちゅどーん!

「フハハハハハハハハハハハッ!!!!」

もう嗤うしかなかった。
一瞬で屋根まで吹き飛んだ。
ぱらぱらと、空から小雨が降ってきた。

頬を濡らすそれは雨だけでなく、カズマとアクアの深い絆に打ちのめされた悲しみの涙も含まれていて、空高くに吹き飛んだ2人が固く手を繋ぎあっているシルエットを見て、私とめぐみんは敗北感が募り、また号泣した。


【この素晴らしい女神と勇者に爆炎を!】


FIN
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/04/15(木) 20:47:30.93 ID:ww8ofml6O
お読みくださりありがとうございました。

続きまして、SS速報が落ちていた際にVIPにこっそり投稿していた作品なのですが、もしよろしければ読んで頂けたら嬉しいです。
ダクネスと同じく胸の大きい良い女繋がりで真希波・マリ・イラストリアスの短編です。

それでは以下、おまけです。
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/04/15(木) 20:48:32.56 ID:ww8ofml6O
「悲しみとー怒りにー」

マリさんが歌う懐かしいアニメ映画の主題歌に耳を傾けながら僕はアスカのことを想う。

あの日、ケンスケの家で僕はアスカにレーションを食べさせて貰った。半ば無理矢理だったけれど、絶食状態の僕には必要な処置だったと今ならば理解出来る。生かされたのだ。

もののけの姫が人間を生かそうとしたように、アスカなりに僕を生かそうとしたのだ。

「ひーそーむー真のこころー」

やり方は少々乱暴だったけど、曇りなき眼で見定めれば、アスカの優しさがよくわかる。
悲しみと怒りに潜む真の心。真心の温かさ。

ありがとう、アスカ。
おかげで僕は生かされた。
なんだか無性にアスカに会いたくなったよ。

「を、知るーはーマリーの精ー」

ガクッとズッコケる。何なんだその歌詞は。
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/04/15(木) 20:49:51.90 ID:ww8ofml6O
「マリさん!」
「ありゃ? ごめんごめん、聴いてくれてると思わなかったから、ついアレンジを……」
「アレンジするにしてももう少しやりようがあるでしょ!? なんだよ、マリの精って!」

僕が憤慨すると、マリさんは揶揄うようにふふんと鼻で笑って、試すような口調で問う。

「君に姫が救えるかにゃ?」

山犬の台詞なのになんで語尾が猫調なのかだとか、胸当たってるんですけどだとか色々言いたいことはあるけれど、僕はこう答えた。

「わからない。でも共に生きることは……」
「わぁー! 待った待った! それは困る!」

途中で遮ったマリさんのことを僕は先程の仕返しとばかりに鼻で笑って揶揄ってやった。

「焦った顔もかわいいね」
「にゃろー……なんて奴」

溜飲を下げ、こちらを睨むマリさんのことをひとしきり笑ってから、またアスカを想う。
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage saga]:2021/04/15(木) 20:51:34.08 ID:ww8ofml6O
「レーション……口移しの方が良かったな」
「洒落臭い」
「うぐっ!?」

思わず口をついて出た邪な願望を聞き咎められ、鳩尾を抉る猫パンチを食らった僕は膝から崩れ落ちて脱糞した。浮気、ダメ、絶対。

ぶりゅっ!

「フハッ!」

アスカ。君のおかげで生かされて幸せです。

ぶりゅりゅりゅりゅりゅりゅりゅぅ〜っ!

「フハハハハハハハハハハハハッ!!!!」

父さんのように拾って回収しようとしたけれど、一度出た大便は、もう元には戻せない。
排泄は不可逆なもので、便意の高まりは張り詰めた弓のようで、そしてマリさんの愉悦は切っ先のように鋭く、僕の聴覚を刺激した。

生きろ、そなたは美しい。

マリさんの哄笑にはきっとそんな意味が含まれているのではないかと推察するとアスカに「アンタバカ?」と言われるところまで妄想して、「アスカだって名前に『スカ』って入ってるじゃん」なんて僕が言い返したらやっぱり鳩尾を殴られ脱糞するのだろうと悟る。

「漏らせ小僧!」
「もう漏らしてるよ」
「漏らした君も可愛いにゃん」

そう言ってにぱっと太陽のように嗤うマリさんのほうがよっぽど可愛いと、僕は思った。


【糞、漏れ出した後】


FIN
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