【安価コンマ要素あり】Master of arms−−武具の支配者−−

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248 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/03/01(火) 15:57:41.51 ID:MLjTFr9F0
四天王

【名前】デルゴゴ・ガザド
【性別】男
【種族】魔族
【魔法】拡張知覚(自分を中心とした広い範囲の視覚的聴覚的情報をいっぺんに把握する)、あと主要な攻撃補助回復魔法は一通りできる
【詳細】人型に近い姿で6本の腕と3つの頭を持つ
物理も魔法もこなし頭も切れるがどれも一流と言えるほどではない器用貧乏
そのため何でもそつなくこなせる便利屋的存在として他の魔族からあれこれ押し付けられがちなのでぶつくさ文句を言っている
でもなんだかんだで真面目で人がいいため言われたとおりにやってしまう、多少ぶっきらぼうだがいい人
腕と頭が多いおかげでマルチタスクが可能なこともあっておそらく現在魔王城で執務をしている中で一番の働き者
249 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/03/01(火) 19:45:59.59 ID:mAJ+5zS60
神様枠

【名前】海王神 ネプチュール
【性別】男
【権能】海を操り、生み出す事ができる。大津波を起こしたり、モーゼみたいに海を真っ二つにできる。
【詳細】すべての海を司る神。海のようにおおらかな性格である。海についてや海にいるすべての生物の事を人々に広めたり、一番最初に水の魔法を作り出した為、それに関わる信者は海の近くの出身や水魔法だけもしくはそれ中心に使う信者などが多い。金髪で三ツ又の槍を持っている姿がよく描かれていることが多い。権能はあまりにも危険な為、本人も気を付けている。

【名前】ウェーブ
【性別】男
【種族】エルフ
【魔法】水流系魔法 (水を操る魔法)
【詳細】ネプチュールの化身。船に乗って自由に航海を楽しんでいる海の男。金髪でイケメン顔、エルフのように耳が尖っている。海賊風の服を着ているが実際の海賊ではなくただの趣味。他にも船員がいて彼らからは頼れる船長と慕っている。自身の正体がばれないように気を付けている。いつか世界一周を達成する事を目指している。
250 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/01(火) 22:36:42.42 ID:Vh5G2MFRO
>>247、神様だとバレさえしなければほぼ全ての行動が許されます。
ただし、化身の自分を信仰の対象とさせる、などといった擬似的な神になろうとする行為は本気で止められます。

神様から嫌われてる確率高めで草。
251 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/03/01(火) 23:35:57.89 ID:xesRKDUU0
回答ありがとうございます

>>238は悪魔(魔神)であるが故に、人間の少女の前から立ち去ろうとして呼び止められたことにしてくださるとありがたいです
252 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/03/02(水) 07:43:44.35 ID:OmRPoHEN0
まあ"あなた"はよく知らない者から恋慕とか向けられても迷惑ってキャラだから……

あなたのことを深く理解していること
そのうえでぐいぐい押してくる子であること(あなたが恋愛に興味0なので相手から押さないといけない)
冒険者をする上で足かせにならないこと
あなたから塩対応されてもめげない

この主人公、攻略難度高すぎて草
253 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/03/02(水) 19:46:16.41 ID:ZxUxl4SL0
四天王枠

【名前】ヴァンプ・ソリシア
【性別】男
【種族】魔族
【魔法】摸写魔法 相手の魔法をコピーできる。相手が魔法を出した後に相手を見るとコピーできる(ただし神器の力はコピーできない)。相手が見える範囲なら遠くてもコピーできる。最大7つまでストックが可能でそれ以上だとコピー出来ない。その時はストックしたものを1つ以上消さないといけない。
【詳細】
黒髪に青のメッシュが入っているイケメンの男性。タキシードを着ており、背中にコウモリの羽がある耳と歯が尖っている。性格はナルシストで自分の事を美しいと思っている。自分の事を「魔物界の英雄」と自称している。戦争時はレイピアを使って戦っており、多くの兵士達を倒した実力を持っている。さらに戦友達の魔法を全部コピーする事もでき、戦友達は手も足も出ない状態になり魔物側が有利になろうとしていた事もあった。しかし"あなた"だけは神器を使っていた為、コピー出来ず、そして"あなた"と対決する際、前もってコピーした無効化の魔法で"あなた"の魔法を無効化する事に成功した。もちろん"あなた"は他の戦友達の魔法が使える事や無効化された事に戸惑いましたが普通に戦いました。結果は"あなた"は勝ちヴァンプは敗れてしまった。戦争後は執務に専念しており、近いうちに自分探しの旅に出ようと考えている。戦争後も戦友達の魔法はコピーしたおり「何かと便利だから」と残している。"あなた"とは同じ英雄としてライバル視しており、いつか再戦したいと思っている。
254 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/03/02(水) 20:37:01.40 ID:2VltU6UP0
四天王枠

【名前】ガルナシオ
【性別】男
【種族】吸血鬼
【魔法】転移魔法。大軍の転移、自身の逃亡などに役立てた
【詳細】
荒々しい笑みを浮かべた赤髪の美形の男。眼帯と黒いマントが特徴
戦争のために戦争を望む戦争狂。忌々しい外道だが戦争のスペシャリストであり、大軍の統率や計画立案に留まらず、情報工作や離間工作などの暗躍にも余念がない
「戦争はいつか終わるもの」とも理解しており、終戦もあっさりと受け入れた。しかしそれは長命種ゆえの視点で、遠い未来、あるいは近い未来にまた戦争が起きる事を理解しているため
本人も強大な戦闘力を持つが、大軍同士での戦争を好いており、強い個人による蹂躙、強者同士の決闘による決着を嫌う。裏を返せば個人主義の多い魔王軍で数や計略の重要性を知っていたという事でもあり、戦時中は"あなた"達を苦しめた
"あなた"の事を化物と蔑み「永遠に理解者など得られない」と嘲笑した事もある。"あなた"にとっては最も憎い敵の一人だが、下手に理解者を気取らず真っ向から敵意と悪意をぶつけてきた存在は稀なため、皮肉にもある種のシンパシーを抱いている
魔王とは不仲だが戦時中の働きは確かなもので処罰ができずにいる。膨れ上がった軍を管理できているのは彼の能力あってこそであり、軍の縮小化にも協力している
255 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/03/02(水) 20:59:36.13 ID:2VltU6UP0
神様枠

【名前】"這い上がる闇"
【性別】男
【権能】精神への干渉。他者を惑わし、信頼させ、時に仲違いをさせる
【詳細】
その名は抹消されている、古き夜の神、欲望の肯定者、悪しき魔術と知恵と美の神とされる
まだ人と神の距離が近かった時代に生まれた、月の女神に仕える司祭。司祭の身で女神を口説きその伴侶となる
しかし定命の身では女神と死に別れてしまうと嘆き、月の女神の手によって神格を与えられ、夜を統べる神となった
美しく弁舌巧みな夜の神はたちまち神々の人気者となったが、彼は天界を統べる野心を秘めていた。彼は神々の仲を引き裂き、戦争を引き起こした
やがて彼の悪意は露見し、月に封印されてしまう。地上に残る吸血鬼等の夜の種族は、夜の神が密かに用意していた己の軍勢の末裔であるという

【名前】ケルトニオ
【性別】男
【種族】吸血鬼
【魔法】己の存在。および己の支配する領域を他者の目から隠す
【詳細】
"這い上がる闇"の秘匿していた化身。人間として生まれたが後天的に吸血鬼になり、地下深くの居城で静かに時を待っている
彼の野心は未だ健在だが化身のルールは準拠しており、魔法・神器・肉体改造など、様々な手段で己を強化し続けているらしい
256 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/03/02(水) 21:52:39.90 ID:UkuH3LrI0
【神様枠】

【名前】豊穣の女神・サーシャ
【性別】女性
【権能】生命力の増強、回復、植物に実りをもたらす。星詠みによる天候予測
【詳細】
ブラウンのロングヘアー、白を基調とした服を来て、白い翼を持つ女神。
穏やかで包容力のある人格者(神)。
親しい相手の前では時折人懐っこく、無邪気にはしゃぐことも。
大地に豊穣をもたらし、傷つける人を癒やす権能を持つ。
そのため、農家や食料品を扱う人達、医療に携わる人達から特に進行される。
戦争による食糧難に頭を悩ませつつ、世界への直接の干渉はご法度なため頭を悩ませていた。
平時では新しい料理、特に甘いものの開発に余念がない。

【名前】ミリア
【性別】女
【種族】人間
【魔法】基本的な地属性、治癒魔法
【詳細】教会のシスターとして、地域に貢献しながら勉強も教えたりしている。
優しく働き者な性格jで、ご近所、特に子供達。子供達に人気過ぎてしょっちゅうじゃれつかれてはあわあわ言ってる姿が見受けられる。
甘いものに目が無く、時折「このような誘惑に負けません! 修行にもっと励まなくては! ……タルト」などと言っている姿が目撃されている。
257 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/03/02(水) 21:59:19.97 ID:UkuH3LrI0
>>256
優しく働き者な性格jで、ご近所、特に子供達。子供達に人気過ぎて〜

優しく働き者な性格で、ご近所、特に子供達に人気。子供達からは人気過ぎて〜

です。すみません
258 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/03/02(水) 22:34:53.09 ID:I8Fxqqrp0
四天王枠

【名前】ミズキ・ミュレット
【性別】女
【種族】魔族
【魔法】すばやさ上昇、投擲の威力精度上昇
【詳細】
人間に近い見た目の小娘。性格は単純で調子に乗りやすくてアホ
スピードこそ全てと考えていて速さでは誰にも負けないと思っている。パワーはあまりない
圧倒的なすばやさで縦横無尽に駆け回りながらナイフを大量に投げつつ隙を見て急所を切りつける戦法を得意としているが
ナイフを全てかわして彼女以上の速さで接近してきたあなたのデコピン1発で沈んだ
自分よりも速いあなたに憧れており勝手に師匠認定している
お菓子が好き、頭を使うような執務は苦手(アホなので)
259 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/03/03(木) 01:35:45.97 ID:1N2fhLu40
神様枠

【名前】純愛の女神・アスカルト
【性別】女
【権能】すべての力を弱体化。争いごとを鎮められる。
【詳細】
愛を司る女神。美しい美貌を持っておりまるで聖女のような外見をしている。博愛主義者で争い事が嫌い。戦争があった時は自ら止めに入ろうとしたが他の神達に止められた。多くの民達に愛とは何かを教えてきた為、たくさんの信者が存在するがどちらかいうと女性信者が多い。愛の女神なだけに他の人の恋愛や恋ばながすごく好き。アスカルトの石像が存在しそこでは恋愛成就や縁結びとして有名で多く人達が訪れている。

【名前】ラブリス
【性別】女
【種族】人間
【魔法】魅惑系魔法  (男女とはず惚れされることができる。場合には魔物とかにもできる)
【詳細】
アスカルトの化身。ピンク髪で身長160cmの女性。エリューナ王国で城のメイドをしている(恋愛小説の影響でメイドを始めた)。仕事はしっかりこなしている。誰が好きだったり、あの二人実は付き合っていたりなど恋に関する情報を多く知っている。恋ばなが好きで他のメイドとよく話している。正体がばれないように気を付けており、理由はもちろん一週間ご飯抜きが嫌いなので守っている。
260 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/03/03(木) 04:27:58.42 ID:0ZQXqV8t0
【神様枠】

【名前】鍛冶の女神・シルヴィ
【性別】女性
【権能】物質の生成・修復・消滅
【詳細】鍛冶、ひいては道具、技術を象徴する神
一人称はオレで喋り方も振舞いも男っぽい
理知的で落ち着きがあるが堅苦しさは感じさせないフランクな性格
今までに多くの神器を作ってきた

【名前】シュミット
【性別】女性
【種族】人間
【魔法】炎魔法、水魔法(仕事で使う)
【詳細】シルヴィの化身で、赤い髪でいつも作業着を着て眼帯をしている
道具の修理屋を営んでいる
全ての道具を愛していてどれも一つ一つ心をこめて修理するが特に包丁や剣の修理が好き
その質の高さから店はとても評判がいい
タバコが好き
もし人の姿になった神器を見たらそれが神器だと見抜けるだろう
261 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/03/03(木) 20:12:24.20 ID:/pt0rKLS0
今更だけど募集期間とか設けなくていいの?際限なくくるけど
262 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/03/03(木) 20:23:26.97 ID:Jali0kUf0
別に全員採用するわけでもないだろうし、良いんじゃないだろうか
263 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/03/04(金) 00:10:07.23 ID:/GN3/i0P0
>>231 >>232 "荒ぶる天神"ゼリウス 男 敵意
>>237 享楽の誘い・パリメテヒア 男 ゾッコン
>>238 至誠の魔神・シリウス 男 関心
>>242 太陽の女神 アポロティア 女 中立
>>243 歌と音楽の女神・ティセリア 女 関心
>>245 維持と秩序の神フラート 男 中立
>>246 "冥府神"オルアテプト 男 中立
>>249 海王神 ネプチュール 男 敵意
>>255 "這い上がる闇" 男 関心
>>256 豊穣の女神・サーシャ 女 恋慕
>>259 純愛の女神・アスカルト 女 苦手
>>260 鍛冶の女神・シルヴィ 女 関心

ゾッコン 1、 恋慕 1、 関心 4、 中立 3、 苦手 1、 敵意 2
「ゾッコン 1(男)」は笑う
享楽の誘いさんはいったいこの「あなた」のどこに惚れたんだ……
264 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/03/04(金) 00:39:20.89 ID:PzSBasCSO
あなたには神器の少女達と、好感度が振り切れてるフィアンセな幼馴染がきいるから(震え声)

(あなたが好き。大好き。とにかく好き。魔王討伐にもついてくし、あなたのために花嫁修業もするし、結婚直前にあなたに逃げられてもついてくし、恨み言の一つも言わない好き)

単純に字面にするとヤンデレ感半端ないけど、>>1さんの描写だと普通に器が広くて寛容で楽しい子になってるのすごい
265 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/07(月) 19:54:20.75 ID:ainypRwsO
少しばかりですが更新でございます。
266 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/07(月) 19:55:07.30 ID:ainypRwsO
目についたパーティに片っ端から声を掛けるも、撃沈し続けたあなた。
不貞腐れに不貞腐れて、真昼間からビールを呷り机に突っ伏していた。
彼らもお金が欲しくてたまらないのだから、仕方ない部分もあると納得はしていた。だが、それとこれとは話が別だ。
単純に仕事が無いのがしんどかった。仕事が無いイコールニートであり、それでは屋敷に住んでいた際のダメダメな自分と同じになってしまう。
数多の戦場を生き延びたのだから、と妹侍従その他諸々に配慮されていたが、施しを受けるだけというのも居心地が悪いというものだ。

いっそ近場のダンジョンの魔物を死滅させてやろうか、と槍の試用も兼ねての虐殺パーティーの開催を視野に入れたところで、救いの手が差し伸べられる。

「お前さん、さっき他の人に声を掛けてた奴だな。その様子だと、全員にお断りされたらしいが、狙う相手を間違ってるよ」

「貴方が声を掛けた相手はまだ冒険者になって数週間の新人です。見ず知らずの人を迎え入れられるような胆力はまだ無いですよ」

アプローチしてきた相手に視線を移す。美女と野獣。そんな感想を真っ先に抱いた。

「野獣ってなんだよ!?俺そんなに毛むくじゃらじゃねぇから!ちゃんと髭毎日剃ってるから!」

「あらあら、お口が達者ですね」

「満更でもないのやめろシルファ!お前さんにとっちゃ褒め言葉だが俺にとっちゃ言葉のナイフだ!暴力だ!」

話が進まないから落ち着いてほしい。あなたの言葉を聞いた野獣は露骨に呆れた。

「お前さんのせいだろ」

その言葉に美女は全面的に同意しながらも、褒められるのは悪い気はしないと喜色満面で漏らした。
267 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/07(月) 19:56:08.79 ID:4blY806DO
「ほー。元傭兵…ね。まだ若いのに苦労したんだな」

立ち話も何だからと遅めのランチタイムに興じたあなたたち。話題の中心は、一時的に依頼に同伴することになったあなたに代わっていた。

あなたはこんなこともあろうかと、外行きの来歴をある程度作ってある。
『仕事に恵まれずダラダラと自堕落な生活を送っていたが、腕っ節だけはあったのでそれを活かせる傭兵に就職。魔王軍との戦争が終わったので冒険者に転職した』という雑なストーリーだ。
傭兵から冒険者に転職する話はよくあるが、何故傭兵になったのか、については全く作り込んでいない。適当オブ適当と言う他ない。
だが一応、元傭兵という偽りの肩書きが彼の強さの理由になる。
あくまで冒険者として新米、冒険の経験が無いのであって、荒事に関してはベテランなのだから。

「冒険者と傭兵は勝手が違うから、大変なところもあるだろう。だがまぁ、気に病むんじゃねぇぞ。俺たちに出来ることなら手伝うし、生きてりゃ何とかなるもんだ」

エルウッドと名乗った野獣に同意する。生きていれば何かを成せること。死んでしまえばそこで終わること。それは、あなたが一番知っている。
死別した戦友は皆、願いをあなたに託した。無益な戦争の終結を。平和な未来の到来を。
人の期待に応えられるほど、あなたは人が出来てはいない。
だが、可能な限り努力はした。その結果が『天命の煌災』という異名と、破綻した価値観、人格だ。

「…何年も戦ってきたんだから、言うまでもないか。悪い」

無言のあなたを見たエルウッドは、暗い表情でそう零した。あなたは気にするな、と答える。

どういうわけか、シルファに頭を撫でられた。辛い時は誰かに頼っていいと言われたが、誰に頼ればいいのか心の底から分からなかったあなたは、首を傾げる。
それを見た二人の表情は、浮かなかった。
268 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/07(月) 20:08:15.23 ID:1qPdrujEO
書き溜めの一部がお亡くなりになったので少々お待ちください。
269 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/07(月) 20:37:04.97 ID:WPz/ijnQO
気を取り直して依頼内容の説明を受けることにしたあなたは、エルウッドの話に耳を傾ける。

「ここ数日、急に魔物の活動が活発になってな。それでなんやかんやあって、墓場に死徒(ノスフェラトゥ)が出没し始めた」

活動が活発になった原因は皆目見当も付かないが、なんやかんやの内容は察しがつく。
大方、稼ぎ時と見た新人冒険者が大勢天に召したのだろう。
ちょっと経験を積んだ新人が一番死にやすいのは、統計が示している。
あなたが戦列に加わった時も、最初の数ヶ月が一番仲間を失っていたものだ。

「依頼内容はズバリ、墓場に屯する死徒共の殲滅だ。スケルトンや屍喰鬼(グール)、屍生人(ゾンビ)が目撃されてる」

「屍喰鬼は違いますが、他の二種はどちらも死徒です。面倒な相手なのでご注意を」

「俺が前衛を引き受けて敵を集める。その隙にシルファの狙撃や精霊魔法、お前さんの攻撃で数を減らす…っていう至って普通の戦法でいく」

「私の精霊魔法は癒しの力ですが、精霊は元来神聖な存在です。故に、死しても尚行動する死徒には効果覿面、というわけです」

なるほど。四肢を砕き脳髄を潰す面倒な作業はしなくていいなら、楽な仕事だ。
あなたはあの面倒くさい作業をしなくていいことに安堵する。

「そんな処理をしてたのかよ…。もっとこう、他にやり方があっただろうに」

よりにもよって、そういった手合いの相手が大得意な戦友が負傷していた間に遭遇したのだから仕方ない。
270 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/07(月) 20:37:49.66 ID:WPz/ijnQO
「…で、お前さんは前衛と後衛どっちなんだ?槍持ちだから前衛だろうが」

なんでも出来る。あなたはそう淡々と答えた。実際、なんでも出来るのだ。
あなたはどのような武器であろうと完璧に扱える。まるで人が変わったように、その戦い方すらも手にした武器によって変える。

刀を持てば、立ちはだかる全てを断ち切る無双の剣豪に。
杖を持てば、圧倒的出力の魔法で万物を消滅させる無法の賢者に。
何も持たずとも、その両の拳で全てを粉砕する破壊神に。
その能力があるが故に、あなたは神器を扱える。あなたの強さの根幹を成す力だ。

「なんだよその能力!?反則じゃねぇか!!!理不尽にも程がある!!!!!」

剣士の悲痛な叫びを、あなたは呵呵大笑しながら肯定した。

その理不尽な能力があったからこそ、今自分は生きている。だが、強大な力には多大なる代償が付き物だ。
それを理解してから、文句を言ってもらいたいものだ。

「すいませんでしたぁ!!!」

自分の言葉に何か思うところがあったのか、エルウッドは残像が見える速度で頭を下げた。
271 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/07(月) 20:38:31.94 ID:WPz/ijnQO
人々が寝静まる深夜。生命の存在しない墓場で蠢く影が一つ。二つ。三つ。それ以上。

「…腐臭がプンプンするぜ。離れてるのにめっちゃ臭い。そりゃ誰も受けないわな」

そこまで脅威度は高くないのに、エルウッドら『付き合ってません。本当です』パーティ以外は見向きもしなかった理由が解る。
鼻が曲がりそうな強烈な臭いに、アーマリーにいて無関係のはずの神器もげっそりしている。

『………』

神器全員の目が濁っているし仮にも女性がしてはいけない顔をしている。エリーに至っては、完全に意識が吹き飛んでいた。

こんなこともあろうかと、あなたはこっそり用意していたフルーティな香りのする鼻栓をぶっ刺しているが、鼻を突く悪臭は消えていない。
正直言ってとてもしんどい。早く帰ってお風呂に入って寝たい。

「…何か聞こえますね。呻き声…?」

あーだのうーだの半死体のものと変わらない声が聞こえてくる。不審に思いながら、耳を澄ませた。

『カノジョ…ホシイ…』

『シヌマエニイッカイダケデモイイオモイヲシタカッタデゴザル』

『デッケェオッパイヲクダサイ』

『マホウツカイニナルマエニシヌトカアンマリッス』

「「………」」

未練タラタラのあまりに悲しい、悲痛な叫び。あなたは思わず涙し、エルウッドは絶望のどん底に落ちた。シルファは凍りついた笑みを浮かべており、思考が読めない。

「塵一つ残しません。片っ端から浄化しましょう」

「おう。こんなのにはなりたくねぇし見たくねぇ…。…なりたくねぇな、ほんとに」

憐れみと刺々しい殺意が場を支配する。殺意を感知した死者たちは、無念を晴らそうと行動を開始した。
272 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/07(月) 20:39:38.81 ID:WPz/ijnQO
ここまで。
273 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/03/07(月) 21:24:16.73 ID:vUSqsrw10
パーティー名はツッコミ待ちなのか

乙です
274 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/03/07(月) 21:24:41.19 ID:A3HNLLTao
おつ
275 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/03/08(火) 10:28:21.18 ID:jrGKG5veO


あなた 現状恋愛とか考えられない(ほぼフィズ次第か)
エルウッド 交際経験なし

男二人も他人事じゃないのがまた哀愁が漂う
276 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/10(木) 14:04:29.13 ID:gy+vnVHlO
少しだけ進めます。
277 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/10(木) 14:04:58.74 ID:gy+vnVHlO
悲しみを背負った亡者の群れを三人衆が蹴散らす。的確な攻撃が、彷徨える魂を空へと、あるべき場所へと還す。

「っふ!」

エルウッドは手練れの剣士だ。左手に装着した小盾で器用に攻撃を往なし、鋭い太刀筋を以って大量の死徒を無力化していく。
見ていて惚れ惚れするくらいに綺麗な太刀筋だ。きっと、この域に達するまでに数々の修羅場を潜り抜けてきたのだろう。
その迷いのない一閃を見れば、同じ剣を扱う者には解る。これでもう少し若ければモテモテだっただろうに。

「モテてなかったから今こうなんだよなぁ!!!」

怒りを込めた一刀が、スケルトンを両断する。バキバキ、と骨を砕く音が心地良い。

温もりを求める屍生人を、無数の矢が無慈悲に穿つ。一瞬でも動きを止めたが最後、精霊の加護によって魂が葬送される。

「………」

無言で矢を放つシルファの姿は美しい。傍らに佇み支援をする精霊の存在も相まって、天女のようにすら思える。

「○☆%¥$!!!!!」

さて、こちらも真面目に対応しよう。あなたは槍を片手に、迫り来る屍喰鬼を処分することにした。
屍喰鬼は文字通り、死体を食す魔物だ。死徒ではない。つまり、生きている。
そして、彼らの殆どは人に準ずる体型をしている。急所が人体に似通っているのだ。

「♪?°→#!?」

ならば、殺すのは容易い。今まで何千回と殺してきたのだ。今更殺し方を忘れるわけがない。
音を置き去りにする斬撃と刺突が屍喰鬼の群れを襲う。瞬きの間に命が刈り取られ、亡骸だけが造られていった。
極限まで効率化された殺戮は、もはやあなたからすれば簡単な作業、ルーティーンに過ぎない。
一撃で急所を突き、絶命させる。それが無理なら手足を断ち、急所を狙う。
心は何一つ動かないし痛まない。命を奪うことに慣れきったあなたは、殺める相手が家族や婚約者、戦友であろうとも全く同じことが出来る。

故に。あなたは自身を化け物と評していた。殺すことに一切躊躇もしなければ高揚もしないのであれば、それはもう人ではないから。
278 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/10(木) 14:05:56.10 ID:zJD/4HeGO
一方的な虐殺が始まってきっかり一時間。死屍累々の惨状の中に、体液に塗れた冒険者たちが立っている。
一人は涼しい顔をしているが、他の二人はグロッキーに陥っている。
あなたは昼間に購入していたポプリ入りの麻袋を手渡す。
二人は無言でそれを受け取り、顔を突っ込んだ。凄まじい鼻息が隣から聞こえてくる。相当に堪える臭いだからさもありなんだ。

鼻栓やポプリを購入するよう薦めたのはアマネだ。そのアドバイスに従って正解だった。
そうあなたは感謝の念を飛ばすが、精神的に死にかけているアマネには聞こえていないようだ。

「…帰って風呂浴びて寝る。もうこの手の依頼は絶っっっっっっ対に受けねぇからな」

「同感です。それと、ごめんなさい。半径5メートルに近づかないでくれますか?とても臭うので…」

「はい」

達成感を微塵も感じられない地獄の依頼は、冒険者の心に深い爪痕を残し終了した。
279 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/10(木) 14:06:40.71 ID:gbb6VtPHO
色々な意味で疲れた身体と心を癒すために設けた数日の休暇。
あなたはのんびりと羽を休め、次の依頼に備えようとしていた。

何をして時間を潰すか。ルーナお手製の朝食を平らげつつ思考する。

神器と遊びに出掛けてもいいだろう。彼女らからも誘いは受けているし、自分の判断に委ねるとも言われた。
顔見知りと会うのもいいだろう。折角築けた交友関係だ。この機会により強固にするのも悪くない。
墓参りに行くのもいいだろう。先日墓場で大乱闘をしたのだ。それを墓参りの理由にも出来るし、最近は顔を見せてなかったから文句の一つや二つ言いたいはずだ。

食器を洗いながら、あなたは本日の予定を立てることにした。
280 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/10(木) 14:10:33.45 ID:gbb6VtPHO
安価です。↓2を採用します。
本日はこれで終わりです。
質問雑談などは特に制限してないですが、論争にならないように平和にお願いします。

A:神器と遊ぶ。(神器一名を選択)
B:顔見知りと遊ぶ。(今までに出てきた神器以外のキャラを選択。話に出てこなかった人は対象外)
C:墓参りに向かう。(自分が指定したキャラとのコミュになります)
D:その他。(上記に該当しない行動をする。あまりにヨクバリスな行動は却下されます)
281 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/03/10(木) 15:15:46.51 ID:7fyKorBZO
B フィズ

真剣に考えるって言ったし
282 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/03/10(木) 16:00:36.81 ID:ZEUNrpISO
b フィズ
283 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/10(木) 19:18:39.86 ID:/uXtoCLOO
↓2にフィズと何をするかを。
284 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/03/10(木) 19:33:02.80 ID:Sgtmk/k+O
街探索&食事
285 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/03/10(木) 19:34:48.01 ID:7b1kD1Uh0
他の仲間が今どうしているか気になるのでそれも含めて
雑談と食事
286 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/03/11(金) 07:06:39.87 ID:5ohbaGV40
乙です

この子、あなたを王都に連れ戻す気はないってことはあなたと一緒に冒険者やるのかな。さもなくばあなたのいる町で働き口見つけるか
一緒に冒険できたりするんだろうか
287 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/03/11(金) 07:58:27.53 ID:KklPmhi7O
心情的に連れていきたいのもあるし、目の前で神器の子達を活躍させても差し支えないのも大きいから、パーティー組めるといいな
288 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/03/16(水) 22:27:22.53 ID:SZLjXS/U0
提督「嫌われスイッチ?」明石「はいっ」
http://hayabusa3.open2ch.net/test/read.cgi/news4viptasu/1427368381/
提督「嫌われスイッチだと?」夕張「そうです!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1428849410/
魔剣転生というスレの作者ですが、断筆する事に致しました。
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1602503948/

外野の反応に負けてエタった先人たち
彼らの冥福を祈りつつ我々は二の舞を演じない様に注意しよう
289 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/18(金) 14:33:24.92 ID:0OJKoHLHO
今日の夜に気力が残ってれば進めます。
290 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/03/18(金) 15:27:57.15 ID:H2FYdZa7o
報告ありがとう
291 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/03/18(金) 16:16:44.34 ID:XJ5TBbnJ0
報告乙です

フィズとのやり取り楽しみ
292 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/20(日) 20:03:00.70 ID:3w/YNLfvO
お待たせ。
293 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/20(日) 20:03:47.24 ID:CJot26XUO
「で、私を呼んだわけね。一緒に食事が出来る!ってぬか喜びした自分が馬鹿みたいだわ。あなたはそういうデリカシーの無いことを平気で言える人だって知ってたから、そこまでショッキングじゃないけど。けどなー、もう少し愛想良くしてくれたら、私も嬉しいんだけどなー。これでも私未来のお嫁さんなんだけどなー!」

ぶつくさ文句を垂れるフィズをスルーしながら、あなたはメニューを開く。
特に風変わりな料理は記載されていない。何の変哲もない貴族に人気なエリューナ料理の専門店だから当たり前だろう。
これで『ルージュスコーピオンの姿揚げ』なんかのゲテモノ料理があったら驚きである。

「私はエルダカプチーノとエリューナサンドイッチ、あとは朝採り野菜のサラダでお願いします。カプチーノには追いクリームたっぷりで!」

聴いてるだけで胃もたれがしそうなメニューだ。ただでさえバチクソ甘いカプチーノに更にクリームをぶち込むとは。
女性の味覚はよく分からないものである。

そんな思考をしながら、あなたは無難にも程がある料理を適当に頼んだ。
ビーフシチューにハンバーグ、ビーフステーキと肉だらけだが、男の食事なんてこんなものだろう。

それを見たフィズは、かなり露骨にドン引きした。
294 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/20(日) 20:04:26.70 ID:Ds3pD3OaO
料理を平らげ、デザートを賞味する二人だったが、あなたの発言により中断されることになる。

「分かってるわよ。皆が今何をしてるのか、でしょ?知ってる範囲でしか教えられないから、満足出来なくてもごめんなさいね」

構わない。そう答えたあなたは、少しだけ姿勢を整えた。

「まずは…うん。あなたもどうせ知ってると思うけど、エルヴィスは今エンジョイしまくってるわ。執務とか謀略とか。ほんっっっと楽しそうに他人を蹴落としてるわね」

「あなたが逃亡しててんやわんやになった王都で、突如爵位持ちの貴族が不正を摘発されて取り潰しになったり、酷い時には当主が処刑されたりしたの。あ、言うまでもないけどレイヴンクロフト家やあなたの家、クラウディア家は無傷よ。私たちは不正なんてしてないはずだし」

「で、取り潰しになった貴族が担当していた公務だとか領地だとかをエルヴィスが受け持って、レイヴンクロフト家はウッハウハ。どんどん勢力を増してるから、議会での発言力も大きくなってるわ」

楽しそうで何よりだ、とあなたは笑う。自身に害が無いのなら、あなたの反応はこんなものである。

「私はヒヤヒヤしてるけど。もし革命とかが起きたら、大変なことになるわよ」

その時は野となれ山となれだ。あなたには愛国心など欠片も無いので、どんな惨劇が起きようとも無視するつもりだ。

「妹さんや他の婚約者が巻き込まれても?」

ノーコメントだ。

「意外と気にしてるじゃない」

その時が来たら解る。今はまだ答えを出せない。とあなたはコーヒーを飲み、答えた。
295 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/20(日) 20:05:02.06 ID:05WNC3CFO
「他の人は…ギルバートさんは魔王軍残党狩り部隊(イヴリースハンター)の隊長を務めてるって聞いてるわ。詳しくは分からないけど」

復讐心を糧にして戦に身を投じていた彼らしい。別に彼が修羅の道を往くことを悲しんだりはしないし、依頼の邪魔をするならその時は容赦無く叩き潰すが。

「メルちゃんたちは国に帰ってラブラブ新婚生活を送ってるし、新婚旅行で世界を旅する予定って言ってたなぁ。いいなぁ〜〜〜〜!!!!」

そんなことを言いながらフィズは視線をチラチラとこちらに向ける。あなたは欠伸を返答として、口を噤む。

「あっ、そういえば、皆から手紙を何枚か受け取ってるのよ。全部あなた宛てよ」

アピールを流されたフィズだったが、特に落ち込むわけでもなく鞄から封蝋のされた手紙を取り出す。
いずれも定期的に実家に届いていたものだ。

あなたは微笑し、手紙を握り潰す。彼らの気遣いはありがたいものだが、こんな化け物に意識を向けすぎないでほしいものだ。

「………はぁ」

フィズは手紙を破棄したあなたを見て、悲しげに息を吐いた。
296 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/20(日) 20:05:38.22 ID:LMmVBsprO
「神器の娘たちとこれから旅をするのよね?羨ましいわ〜」

デザートのショートケーキを突きながら、フィズが言葉を漏らす。
あなたは肯定の意を込めて首を振る。

だが、彼女らを戦闘には関わらせない。人として生きている彼女らに、戦いの場は相応しくないのだ。戦力的な意味で。
神器である彼女たちは今、肉体という器を手に入れ人になった。
しかし、形が変わろうとも彼女は神器だ。偉大な力を持った武器なのだ。
その本質が不変である以上、彼女らは人間として見た時にへっぽことしか言いようがないほどに弱っちい。
自身を使わせることには慣れていても、自身を使うことは全く無かった。使い手を経由して出力していた権能であるが故に、彼女単体ではその強大な力は使えないし、そもそもの戦闘経験も戦いに耐え得る肉体も持っていない。

そして、あなたが神器を携えている時のみ使える魔法は、彼女ら神器が人間の姿をしている時に使える魔法なのだ。
つまり、彼女たちは戦力として計上出来ないのだ。新米冒険者であればギリワンチャン、というくらいに。
どんなに頑張っても、神器だけではエルウッド一人すら倒せないだろう。ボコボコにされてガチ泣きする神器たちの姿が目に浮かぶ。

「まぁ確かに、あの娘たちが無双している姿は想像出来ないわね。間違っても戦闘に関わらせちゃダメなタイプ」

それに、先程も言ったが人の姿をしている時も神器であることには変わらないのだ。
つまり。その弱っちい肉体が死んだ時、神器としての彼女も死ぬ。
故に、戦闘に関わらせてはいけない。神器としてなら存分に活用させてもらうが、それ以外は断固拒否する。

「ってことは、彼女たちが誘拐されたらヤバそうね」

ガチヤバである。
297 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/20(日) 20:06:18.95 ID:cQ1Kf/yhO
そういえば、と珍しく、あなたから話を切り出す。
その行動に興味を示したフィズは、身を乗り出した。

「結局のところ私が何をしたいのか。ねぇ」

あなたの問いに、フィズはクスクスと笑う。なるほど。どうやら自分の質問は馬鹿にされるようなことだったようだ。

「いや、私のことを訊いてくれて嬉しいだけなんだけど」

そんなツッコミを入れ、フィズが咳払いをする。

「私はあなたの側にいたい。あなたのためになることをしたいの。…でも、私があなたの側にいても、窮屈に思われるのは解ってる」

「あなたはただ、自由に冒険者として生きたいのでしょう?なら、私がいてもその目的は果たせない」

「今までのことを考えてみたの。そういえば、戦争の間は一度たりともゆっくり休めなかったな…って。数日の休暇がある時もあったけど、心までは休まらなかった」

今となっては懐かしい、とあなたは笑う。その目は一切笑ってないが、表情だけでも取り繕う。
そうね、とフィズは返し、天井のシャンデリアを見つめた。

「それでね。私は決めたの。何があってもあなたが安心して休める場所。それを造って護りたいなって。もちろん、あなたが望むのであれば一緒に戦うけど」

有無を言わさず着いていくとでも言い出すと思っていたあなたは呆気に取られる。
対するフィズは大真面目だ。いつの間にかシャンデリアから戻されていた視線が、あなたを射抜く。
その目は煌々と輝いていた。
298 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/20(日) 20:06:53.10 ID:0CrZuFRtO
あなたが世間話に話題を逸らし、暫しの休息を味わう。既に空は赤く染まり、月が顔を出し始めていた。

「やっぱり、お話するのは楽しいわねぇ。それが好きな人とだったら尚更」

座りっぱなしで凝り固まった身体を伸ばすフィズは、楽しそうに呟いた。
背中を伸ばす動きに合わせて、決して豊かではない双丘もふわり、と揺れた。

「…で、これからはどうするの?私はお開きでもいいし、夜の大人の時間を楽しんでも全然ウェルカムなんだけど」

「戦時中とは違って、お互い大人になったしね」

横を歩いているフィズは、顔をこちらに向けそう問い詰めた。

あなたは特に何も考えていない。思いついたことを実行する、割と行き当たりばったりな人間だ。
故に、どうするべきか考える。
299 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/20(日) 20:09:03.95 ID:0CrZuFRtO
安価です。↓2を採用します。

A:フィズとの交流を継続する。(行動権を更に消化。どういう行動をするかを記載しなければ無効となります)
B:解散。フィズとの交流を終了する。

残り行動権は3回です。
300 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/03/20(日) 20:25:06.22 ID:py4hBLfnO
A なにかしたいことがないかフィズに聞き、それに付き合う
301 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/03/20(日) 20:25:10.09 ID:byCjqQW30
A フィズと夜の町を散策
>何があってもあなたが安心して休める場所。それを造って護りたいなって
このことにお礼を言い、自分のことだから協力できることならするし、フィズに定期的に帰って顔を見せると約束
お礼と言ってはなんだけど、良いのがあればアクセサリーを購入してプレゼント
302 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/20(日) 20:54:23.78 ID:VxABnsWVO
本日はここまで。
303 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/03/20(日) 21:16:38.20 ID:a3jsqwPGo
おつでした
304 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/03/20(日) 21:20:00.55 ID:byCjqQW30
乙です

フィズが良い女過ぎる
305 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/03/21(月) 02:33:17.13 ID:4qUwka/dO
現時点で判明した極天の七災
1.あなた
2.フィズ・クラウディア>>130
3.エルヴィス・レイヴンクロフト>>123
4.ギルバート>>135
5.メルヴィ・アインシュタッド>>142
6.グスタフ・アインシュタッド>>142
7.不明

最後の一人は今後登場するのかな?
306 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/03/21(月) 10:18:21.91 ID:ebu7/hxoO
有能妹(>>133 or >>136 or >>144 or >>145)とフィズが協力してあなたの帰る場所作ってくれるなら、あなたも報われるな
それだけ頑張った結果ってことだろうけど、家族と嫁に関しては果報者だな、あなた

魔王がフレア(>>171)なら、フレア健在の間は魔族もめったなことしそうになさそうだし
307 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/03/24(木) 11:27:25.60 ID:dz9KEzXxO
SS避難所
https://jbbs.shitaraba.net/internet/20196/
308 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/03/24(木) 20:17:27.27 ID:94hEf4hOO
>>305、皆が皆七災にカウントされてるわけではございませぬ。
あなたたち以外にも魔王軍と戦闘していた化け物はおりますゆえ。

ちなみに、カウントされてるのはエルヴィス(死想の冥災)とギルバート(潰滅の黒災)の二人です。

アンケートってわけではないですが、こいつらのこういう絡みやお話が見たい!ってのがありましたら書いていただけると助かります。
その通りに書くわけではないですが、幾らか参考にさせていただきます。

一応今の予定としては、休暇終了後にある神器を確定入手出来るイベントを設けております。

生きてたら土曜に続きをやります。
309 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/03/24(木) 20:51:23.90 ID:1iP00RJbO
乙です

個人的な希望ですが
神器の子達と、まだ見ぬ妹さんとフィズが和気あいあいと話してるところを見てみたいです
“あなた”抜きで“あなた”について話すとか、”あなた“を交えて掛け合いしてるのも興味あります
310 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/03/24(木) 21:56:28.86 ID:DbHM2PgY0
この手の乞食まだいるんだな
311 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/03/24(木) 23:06:54.25 ID:QsPMsUf10
あなたのフィアンセさん、以前からあなた大好きオーラ振りまきまくってだんだよね

初期神器勢や妹、戦友達から「さっさとくっつけ」とか「末永く爆発しろ」って感じで見られてたんだろうか
312 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/03/24(木) 23:43:39.25 ID:sfldLXeeO
個人的に神器の子達が楽しく街の散歩したりする話とエルウッドとシルファが「人生何とかなるブラザーズ」と一緒にクエストに挑む話しが見てみたいです。
313 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/03/25(金) 18:30:45.50 ID:UIQ8yvyH0
あなたと別行動してるときに他の神器がどう過ごしてたかがちょっと知りたい
可能ならそこで別キャラと少し絡んだりニアミスしたりしてほしい
あとは、町で祭りがあってなんかいい感じにわいわい過ごすとか
314 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/03/25(金) 19:52:39.28 ID:s/eawSK5O
作中で「あなた」の心の闇についてちょくちょく触れるけど、「あなた」の心の傷を察してなんとかしてあげたいって様子が見えるのが、今のところフィズ(とアマネも少し)だけだから、神器の少女達が、「あなた」や「あなた」に寄り添おうとしているフィズについてどう思ってるかとか知りたいかな

上に付随して、神器の少女やフィズ達が「あなた」を巻き込んで、(心の闇を吹きとばせと)はしゃぐのも見てみたいですけど
315 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/03/25(金) 23:27:12.13 ID:YPGruadU0
クレクレ厨ばっかやな、ホンマ
ここまで来ると、安価スレにありがちな安価は絶対!みたいな読者様レベルやわ
316 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/03/29(火) 07:48:12.79 ID:q7udeSsG0
極天の七災
1.あなた 『天命の煌災』
2.フィズ・クラウディア>>130 『虚無の麗災』
3.エルヴィス・レイヴンクロフト>>123 『死想の冥災』
4.ギルバート>>135 『潰滅の黒災』
5.不明
6.不明
7.不明

つまりこういうことね
やたらおどろおどろしい名称だし、魔王軍から付けられた、魔王軍から見た特にやっかいな七人ってことかな
(人間側なら自分達の英雄を災害扱いしないだろうし)
317 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/03/31(木) 19:46:54.59 ID:PXM2DBwD0
これ"あなた"も参戦した人間軍対魔王軍の戦争の話しはやるのかなできたらその話しも見てみたいです。

他にはフィズ以外の婚約者が見てみたいので"あなた"とフィズ以外の婚約者が出会って話したり、街をまわったりしているところが見てみたいですね。
318 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/04/07(木) 01:36:25.92 ID:UNoJWrORO
進めます。
319 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/04/07(木) 01:37:03.83 ID:UNoJWrORO
このまま解散しても、どうせ帰宅して寝るだけだ。それよりかは、交流に時間を使う方が有意義だろう。
そう判断したあなたは、夜のエルダの町を散策することを提案した。

「ん。分かったわ。でも、乗ってくれるとは思わなかったわね」

そう答えるフィズは微笑しており、心なしかテンションが上がって見える。
とりあえず、あなたはエスコートしていただけますか?という言葉と共に差し出された手を握る。小さな悲鳴が聞こえた。

「こ、こうやって実際に手を繋ぐと変な気分になるわね」

それはフィズだけだ、と素っ気なく答える。あなたは緊張も何もしていない。

「あーはいそうですかー」

頬を膨らませるフィズは、ペタペタとあなたの手を触る。こそばゆい感触にあなたの表情は僅かに歪む。

「大きくて温かい手…男の人ってこういう手をしてるのね…」

感心するようにフィズはそう口にしたが、あなたとしては異を唱えたくなった。
確かに男性の手はゴツゴツしているものだが、例外というものがある。
嘗てあなたと共闘していたエルヴィスやツァルクの手は細い。手だけでどっちか判断しろと言われたら本気で悩むくらいに。

「ばか………」

デリカシーの欠片もない無粋なニブチンに、乙女は頭を抱えた。
320 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/04/07(木) 01:37:45.05 ID:UNoJWrORO
夜を迎え雰囲気が変わったブティックを複数巡り終え露店市場へ移動する二人は、小休憩を挟むべくベンチに腰掛けた。
冷たいココアを味わいながら、喧騒を奏でている人混みを眺める。
近くに恋人御用達のホテルが複数あるからなのか、カップルがかなりの人数見受けられた。
いつぞやの噴水広場を思い出す光景だ。

「…あそこに連れ込むのだけは勘弁よ。もししたら私本気で泣くから。ギャン泣きするから。白い目で見られたとしても絶対に辞めないから」

そんなつもりは毛頭ない。そも、あなたはフィズを性的な目で見たことなど一度たりとも無いのだ。
物欲その他諸々は人並みに持ち得ている。が、あなたの心は冒険者生活によって満たされているのだから、欲求不満にはなり得ない。

「そこまでどうでもいい宣言されると、女性としての魅力が無いって言われてるのも同然だから割と辛いわね」

乙女心は面倒くさいものだ。

「面倒くさいに決まってるでしょ。勝手に他人と比べて、他人との違いに心を痛めて、殻に閉じこもってた私よ?これで面倒くさくなかったら逆にヤバいわよ」

確かに。あなたは納得の意を込め、大きく頷いた。
この面倒くさい女が嘗ての自分を取り戻し前向きになるとは、人生とは分からないものである。
321 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/04/07(木) 01:38:23.91 ID:UNoJWrORO
undefined
322 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/04/07(木) 01:38:58.93 ID:UNoJWrORO
「わー…。綺麗な水晶細工ねぇ…」

食い入るように商品を見つめるフィズ。陳列されているのは、水晶を熟練の技で加工したアクセサリーや小物だ。

透き通るような緋色の水晶が神々しくも儚い不死鳥(フェニックス)を模した姿をしていたり、水色の水晶が氷原にのみ生息する氷の蝶をモチーフにした髪飾りになっていたり、とその技術の高さが伺える。
技術料や材料費も込みなので値段が張っているがそれでも、お得と言い切れる良心的な価格だ。
なお、それはあなたやフィズといったお金持ちからすればの話で、一般人からしたらかなり貯蓄をして買わないと破産待ったなし、なんとか購入したとしても背伸びしていると思われても仕方がない贅沢品なのだが。

こんなものを露店で売るとは恐れ入る。強盗に襲われても文句は言えない。
あちらからすれば、見えるところに獲物を置いてるおめーらがわりーんだよ!!!と言いたくなること請け合いだ。

「ねね、これとかあなたに似合うと思うんだけど」

そう言ってフィズが指差したのは、永生の黒龍(ウロボロス)をモチーフにした指輪だった。
夜を想起させる黒に染まった水晶が、自身の尾を喰む龍を象っている。
ウロボロスは災厄獣の一匹にして、錬金術の象徴にもなっている伝説の存在だ。
それは、万物の流転を表し、永劫そのものを示す。今ある物資を別の物質に転換し、循環させる錬金術の象徴になるに相応しい存在だ。
323 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/04/07(木) 01:39:37.56 ID:UNoJWrORO
だが、彼が実在する証拠は実はまだ見つかってなかったりする。伝承にはポンポンと当たり前のように出てくるし、どういう能力を持つかも言い伝えられているが、彼の被害に遭ったという事実、目撃情報はゼロなのだ。
何故、ウロボロスが災厄獣にカウントされているのかは永遠の謎である。

そんなことを考えながら、あなたはフィズのおすすめを却下した。指輪などを身につけても、邪魔になるだけだ。どうせ戦ったら壊れるし。

「男の子にピッタリだと思ったんだけどなぁ…」

購入されないことを知った店主は、こんなにカッコいいのに…と、落胆を隠すことなく呟いた。
心なしか、闇を背負っているようにも見える。
製作者だとしたら申し訳ないが、是非とも実用に足る耐久性を持たせてほしいものだ。
耐久性の問題さえクリアされれば、普通に買ってもいい。
デザインそのものは好きなので、心の中で更なる改良を望むあなただった。
324 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/04/07(木) 01:40:13.13 ID:UNoJWrORO
ウロボロスリングから目を逸らし商品を物色していると、可愛らしい猫のヘアピンが目に入った。
どうやら、モチーフはこれの製作者が飼っている猫のようで、スリムな顔にクリクリなお目目が付いてとってもキュートである。
何故か歯が剥き出しだが。大口を開けている必要は無いだろうに。

「ああ、可愛い顔をしてるがその猫はとんでもなくやんちゃでな。知り合いの飼ってる猫なんだが、毎日飼い主を噛みまくってるんだ。たまに訪問するだけの俺もターゲットらしくてな。ほれ」

店主が服を捲ると、生傷だらけの腕が姿を現した。治癒が済んで傷痕になっているものも多い。なんとも痛ましい光景だ。

「なんとか矯正しようと試みたらしいが全部ダメ。寧ろ噛み癖は悪化して地獄を見ているらしい。寝る時だけは超可愛いらしいけどな」

「まあ、猫だし…。自由気ままに生きてるのが良いところでも悪いところでもあるわよね」

商品に隠れた悲しき裏事情に涙し、あなたは再度物色を始める。
どれもこれも魅力的だがやはり、一番は猫のヘアピンだ。

これが良い、とあなたはヘアピンを購入することにした。実家から逃げ出したとはいえ、冒険者生活でちゃんと稼いでいるので買えるくらいの貯蓄はあるのだ。

「まいどあり。恋人にプレゼントたぁお熱いねぇ」

そんな冷やかしを流しつつ、帰路に着くことにした。
その間、フィズは怪訝な表情をしていた。
325 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/04/07(木) 01:41:25.05 ID:WTEst91rO
「で、それを誰にあげるの?私…なわけないわよね?」

訝しむような問いかけに、あなたは毅然と答える。無論、フィズに贈るものだと。

帰るべき場所を護り続ける。そう想ってくれているフィズに、少しでも感謝を伝えたいのだと。そう答えた。
そして、自分に関係あることだから、出来ることであれば協力すると、定期的に帰還して顔見せするとも伝える。
これはある意味契約金、前払い金のようなものだ。約束を守るための覚悟を分かりやすい形にしたものだ。

「…へぇ。どういう風の吹き回しなの?」

対するフィズの反応は、冷淡なものだった。何か失礼でもあっただろうか。
326 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/04/07(木) 01:41:59.41 ID:WTEst91rO
「…あのね。ほんのちょっと前まで割と塩対応されてたのよ。それが急に、ここまで優しくされたらいくら好きな人相手でも怪しむわよ」

「誤解が無いように言っておくけど、贈り物はものすごく嬉しいわ。…ただ、やった!嬉しい!って素直に受け取れないだけ」

そこまで言うと、フィズは唇を噛みながら俯いた。あなたの目には自己嫌悪しているように映っている。

「…ごめんなさい。折角のプレゼントなのに」

フィズは俯いたまま、ラッピングされたヘアピンをあなたに返却する。
迷っていたのか、返却するまでの間に数度逡巡していた。

「…こんな醜態を晒した私でも良ければ、プレゼントは受け取るから。だから、改めて私に声を掛けて。その時は、私も相応のお返しをするから」

「でも、忘れないで。もし、万が一、そのプレゼントが軽い気持ちで渡すつもりのものだったら。とりあえず渡しておけば喜んでくれるだろう。好きでいてくれるだろう。って打算の元の贈り物だったら」

「その時は私は泣くわ。…涙が枯れても、それでも。ただひたすらに泣き続ける。悲しみを流しきるまで、ずっと」

後悔を帯びた声色でフィズは告げ、背を向け走った。涙を流しているように見えたのは、気のせいだったのだろうか。
327 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/04/07(木) 01:42:40.53 ID:WTEst91rO
翌日。深い眠りから目が覚めたあなたは、ボサボサの髪を整えていた。
寝ぼけた意識をはっきりさせるため、冷水で顔を洗う。

「お、おはようございますぅ…」

後ろから声を掛けてきたのは、新入り神器のジーナだった。
同じく寝起きでボサついた髪からは女子力を感じないが、服は可愛い柄のパジャマなので女子力減衰は差し引きゼロといったところか。

「ふわぁ…。やっぱり、寝る感覚って慣れないですね…」

人になってまだ日が浅いジーナは、人間生活に四苦八苦しているようだ。
なに、どうせすぐ慣れる。とあなたは励ました。
実際、他の神器たちもすぐ順応した。それまでは惨憺たる光景ばかりだったが。
食器の使い方が分からずご飯を溢しまくるエリー。風呂の入り方が分からない、一人が怖いと泣きじゃくっていたエリー。
とまあ、そのほぼ100%はエリーが見せた醜態なわけだが。子供だから仕方ないが。

「わ、私もそうならないように気をつけます」

良い心がけだとあなたは笑い、朝の牛乳を飲み干した。
328 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/04/07(木) 01:48:40.77 ID:nfanuMWpO
ここまで。
ちなみに、登場予定の神器ですが、安置されているダンジョンの参考BGMは『天空の塔(ポケモン不思議のダンジョン)』です。
エルデンリングその他で遅くなりました。申し訳ありません。

屋敷居住時代の侍従を募集して終わります。

【侍従枠】

男女の指定なし。新人ベテランも問いません。
ただ、魔族は新人のみ限定です。それ以外の種族は新人でもベテランでも可。
あなたが逃走した今は、妹たちの補佐やあなたの捜索にあたっています。
戦える人もいますが、あなたの戦友ほど強くはありません。上限でも、エルウッドさんと互角かそれ以下程度の実力です。
329 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/07(木) 07:46:08.17 ID:mJvbRxon0
乙です

ここまでの反応、あなたは戦争のストレスやら国からのしがらみやら抱える前からフィズに大概過ぎる塩反応で、贈り物もしたことなかったんか
でなければ、多少なりともあなたが精神的に回復してきたのかなみたいな反応しそうだし
フィズもフィズで、つまり、あなたが実際に帰ってくることをほぼ期待していない、あなたの帰る場所を用意しようといたわけで……
おい重いぞこの子(大概あなたのせい)

しかもこのあなた、約束なりなんなりである程度縛り付けとかないと、「死に逃げることは許されない」と思っているから自死はないだろうけど、
どっかでアラバコア戦みたいな自暴自棄的な戦いして死んでそうなのが、またなんとも言えない
330 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/04/07(木) 11:48:21.56 ID:hYAVLnAt0
【従者枠】

【名前】カトレア・モレット
【性別】女
【種族】人間
【魔法】探知系魔法
【詳細】ベテランの従者。水色髪で長髪の女性で右目が髪で隠れている。美人でグラマラスな容姿。"あなた"が幼い頃から屋敷で従者を勤めており容姿も変わらずそのまま。冷静沈着な性格でどんな時でも冷静に対応している。年上、年下関係なく敬語で話している。武器は大きめのハンマーで今でもを使っている。元冒険者で幼い"あなた"に色んな冒険の事等を話していた。(どちらかというと"あなた"の方から興味を持っており聞いてきたりしていた)もちろん神器の事も知っている。今は魔法を使って"あなた"の捜索にあたっている。
331 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/07(木) 14:07:48.89 ID:ATJdoa6KO
あー、なるほど
元々「あなた」は普通の感性持ってたけど、恋とか愛とか知る前に戦争とかで歪んじゃったとばっかり思ってたけど
戦争前から「あなた」が他人への情とかほぼなかった(それが戦争で更に酷くなった)とすると腹に落ちる

フィズは、「あなた」にかつて持ってた人間らしさを取り戻して欲しいわけじゃなく、「あなた」に愛されることも、「あなた」が(自分以外も含む)誰かを愛することも諦めながらも、見返りを求めない愛情を振りまいてたってことなのか
ちょくちょく、もうちょっと大事にしてくれてもいいのにー! とか言ってるのは、あくまで一緒にいるための外向きの理由付けってことなのかな
「あなた」に取ってはこの前のフィズの気持ちに答える努力の、第一歩的な行動だったかもしれないが、十数年ずっと続けて、とっくの昔に諦めてたのに今更期待もたせるなってことなら、そりゃ泣く

(書いといてなんだが、大外れかもしれん)
332 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/07(木) 19:39:18.80 ID:hYAVLnAt0
>>330
すいません一部訂正します
【従者枠】→【侍従枠】
333 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/08(金) 00:59:33.67 ID:ExgwVwnq0
何度もすいません。>>330の訂正します
「ベテランの従者」→「ベテランの侍従」
334 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/08(金) 19:52:11.70 ID:p1HyUY6UO
侍従枠

【名前】ロウ・デイビス
【性別】男
【種族】人間
【魔法】分身魔法 何人もの分身をつくり出すことができ、本人と分身がお互い離れていても情報共有が可能。
【詳細】茶髪ボサボサ髪でひげがはえている40歳の男性。「めんどくさい」が口癖だが仕事はしっかりこなしている。ナイフを使った戦闘が得意。屋敷には長く侍従を勤めている。聞き上手で妹達や"あなた"の相談相手になってくれた。人柄もいいので妹達から信頼されている。分身を使って妹達の補佐と捜索にあたっている。
335 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/08(金) 22:25:59.19 ID:fwnfaUQg0
【名前】ステラ・マルーク
【性別】女
【種族】人間
【魔法】熱魔法(自在に暖めたり熱を奪って冷やしたりできる)
【詳細】青髪ショートヘアで褐色肌。年齢はあなたとその妹の間くらい
クールで気が利くなかなかの有能であり、当主となった妹の右腕的存在の一人
主に家事と当主の補佐を担当。常に丁寧語で礼儀正しくてきぱき仕事する
元々は孤児であなたの家に拾われてあなたと妹とともに育ってきた
そのためあなたと妹とはお互い幼馴染のような気安さがあり
あなたや妹に対して冗談を言ったりやや辛口なツッコミをいれたりもする
ただしプロ意識が高く侍従としてわきまえているので、やりすぎて主を不快にさせることは絶対にしない
身辺警護もするため多少腕に覚えがあり下級冒険者程度なら割と勝てる
熱魔法を繊細にコントロールして最適な温度でお茶を淹れるのが特技
336 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/11(月) 04:13:01.07 ID:Kk/fsI9l0
侍従枠

【名前】デルタ・ベヤリス
【性別】男
【種族】獣人(タヌキの獣人)
【魔法】変身魔法 (男女とはず見た相手に変身する事ができる。変身すると容姿や声が変身した相手と同じになるが魔法は真似する事はできない。魔物にも変身ができる。)
【詳細】
オレンジ髪短髪でタヌキの耳がついている。身長は160cmでタヌキの尻尾がある。18歳だが侍従になったばかりの新人、それでも有能な妹たちの為に補佐など色々尽くしている。心配性で臆病な性格なので妹たちによくいじられる。あなたに対しても心配している。普段は臆病な性格だが武器を持つと落ち着いた性格に変わる(武器は剣2本使い二刀流)。変身魔法もその人に変身すると相手になりきる為、性格もその人と同じ性格になる。戦闘では戦友達ほどではないが冒険者達の中では結構強い。こんな自分を拾ってくれた屋敷の人達に恩を返す為、日々頑張っている。
337 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/04/11(月) 19:40:29.81 ID:i0vFhw1eO
ども、次回予告に参りました。

次回は『がんばるおっさんがんばれ新人』と『目醒めし煌災』の二本立てになります。

投稿はまだ少し掛かりそうです。完成したら一つ投下、もう一つも完成次第投下する予定です。
募集は完成したあたりで締める予定です。では。
338 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/11(月) 20:46:21.04 ID:RJ9lho5To
ほうこくおつー
339 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/04/12(火) 02:41:12.54 ID:slbhixy8O
なんか筆が乗ったので前編、後編って感じでいくつかのパートに分けて出します。出来上がった部分を投下します。
340 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/04/12(火) 02:41:49.43 ID:slbhixy8O
幕間『がんばるおっさんがんばれ新人』


朝食を済ませたあなたは、ギルドの依頼を確認することにした。休暇はまだ明けていないが、ある程度の予定を立てるなら今の状況に目を通しておいた方が良いと判断したためだ。

掲示板をチェックしたあなたは、興味本位で酒場に立ち寄った。

冒険者の歓談と酔っ払いの笑い声が心地良い。冒険者とはかくあるべきだ。
あなたは満足気に頷き、何故か尻を触ろうとした変態不届き者泥酔変質者を蹴っ飛ばした。
あなたは断じて同性愛者ではない。可愛い顔立ちもしていないし、その手の男性に受ける渋い顔立ちもしていない。
激戦を生き延び過ぎたからなのかやや冷めた目付きをしていること以外は普通だと自身を評しているし、戦友からも同意を得ている。
その時の彼らの目が泳いでいたことは何にも関係ないだろう。

綺麗な放物線を描いて飛んでいく2m弱の巨漢は、頭からワイン樽にホールインワンする芸術点満点間違いなしのビューティフルな一芸を披露した。
これにはあなたも拍手喝采。オーディエンスもブラボー!エクセレント!と沸き立つ最高のエンターテイメントだ。
当然ウェイトレスから商品をダメにしたことに対してお叱りを受けたので、あなたは弁償代を支払った。悪いことをしたら代償を支払うのは、子供でも解る理屈だ。

身体を張って娯楽を提供してくれたド変態に謝辞を述べ、あなたはギルドを退出した。
341 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/04/12(火) 02:42:18.28 ID:slbhixy8O
メリッサから聴取した情報をメモに記入しつつ、店の商品を眺める。
万一の時は神器を使えば良いが、その万一が来るのは非常によろしくない事態だ。
故に、神器を使わなくてもいいようにあなたの使用に耐えうる頑強な装備を探していた。

そんなあなたの悩みを聴いた受付嬢メリッサが『オススメのお店がありますよ!』と太鼓判を押したのがこの『シュミット工房』だ。
取り扱っているのは武器、防具、装飾品などなど。鍋や包丁などの調理器具からペット用のケージまで、本当に何でも扱っている。

「おうらっしゃい。物品購入見学弟子志望なんでも大歓迎だ。だが冷やかしだけは勘弁な」

新聞を読みながらそう答えたのは工房の支配人であるシュミット嬢。炉で燃ゆる炎のような赤色の髪が鮮やかで、少し着飾れば花のような美しさになること確実な美人だと、あなたの審美眼が告げる。
まあ、その美しさは煤で黒く汚れた肌や女性らしさ皆無のタンクトップ、片目を覆う眼帯のせいで台無しなわけだが。

今は休憩中なのだろう。工房の火は小さく燻っており、シュミットは販売所のカウンターに座っている。
椅子の上で足を組み、タバコを吸うその姿からは貫禄すら感じられる。
タンクトップ剥き出しなのも、熱で火照った身体を冷まさせるためだろう。

「ん?オレをそんなジロジロ観ないでくれないか?観るなら売り物にしてくれ」

不快感を感じさせたなら申し訳ない、とあなたは謝罪し、商品に視線を移した。
342 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/04/12(火) 02:42:51.66 ID:kGyfnVX6O
目に映る商品はどれもこれも素晴らしい出来栄えをしていた。あなたは無意識のうちに、感嘆の声を漏らしていた。

「そりゃそうだろう。オレが心と全力を込めて鍛えた逸品だ。それがそこらの安物と一緒に見えるような素人に、オレはこいつらを使って欲しくないね」

「まあ、安物が悪いわけじゃないがな。あれだって、普段使いするならちょうどいい物だ。普段使いするなら、な」

そう言うシュミットの視線は、あなたに向けられている。じっとりとしていることから、抗議されていることは理解出来た。

最悪神器を抜けばいいから普段使いの武器なんて安物でええじゃろ。そんな浅ましい考えがあったことは認めるし謝る。
が、それは過去の話だ。今あなたは、自身の本気に耐えられる装備を求めていた。神器以外で。神器が手に入るのなら、それはそれとしてありがたく頂戴する。

そういう意味では、シュミットが作り上げた物はあなたの無駄に高い要求水準を見事に満たしていた。
神器顔負けの耐久性と斬れ味を持つそれは、使い手によっては後世に神器と言い伝えられてもおかしくない。
意思は内包していないので、言い伝えられたとしても神器未満の紛い物になるだけではあるが。

「だがまあ、お前にゃまだ手が届かんだろう。もっと稼いでから来な」

逸品を買うにはまだまだ寂しい懐を見透かされたあなたは店主の洞察力に脱帽し、また品揃えを観に来ることを伝え退店した。

「平和を望んでいるくせに闘争を求めている。なのに、殺すのには微塵も興味が無し、と。面白い眼をしてる奴だ」

「お前にどんな神器が相応しいか見定めてやる、天命の煌災」

くつくつと笑う女神の声は、勇者には聞こえなかった。
343 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/04/12(火) 02:43:31.23 ID:q1ulCQSxO
現実に打ち拉がれたあなたはマーケットを進む。その最中に、見知った顔と出会った。

「おう、数日ぶりだな」

「あれからどうですか?体調を崩したりしてないですか?」

一緒に墓場で一仕事をした美女と野獣コンビこと『付き合ってません。本当です』パーティことエルウッドとシルファだった。
防具と買い物の内容を見るに、これから依頼を受けに行くのだろう。

「ん、まあ、な。ちょっと新人のお守りをすることになったんだ」

「カレアードとエルダのちょうど真ん中辺りにある農村で、賊の被害が出ているんです。その対処をする依頼があるんですけど」

「どういうわけか、ベテランが対応する前にひよっ子たちに流れちまったみたいでな。再三受付嬢たちも警告したが、何とかなるって押し切ったそうだ」

「若くて血気盛んなのは良いのですが、無謀なことはしないでいただきたいので。せめて、私たちがフォローに回ろう…ってわけです」

カレアード。別名魔王領で、そちらの方が通りの良い名前だ。嘗てはあなたもカレアード内で暴れ回ったものだ。
ここから数百kmは下らない距離にある村を助けに行くとは、なんとも奉仕の精神に溢れている。素晴らしいものだと内心感心していた。
災難なことだとあなたは二人を労う。エルウッドは苦笑し、言葉を漏らした。

「ま、誰も死なないように俺が頑張るよ」

健闘を祈る、とあなたは手を振り、二人を見送った。
344 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/04/12(火) 02:44:20.92 ID:Mw9Fi4gmO
待ち合わせ時間が迫る中、二人は列車の発着場で待機していた。

「あと10分で電車が出ちまうぞ。流石にそこまでは面倒は見切れないからな」

「約束の時間を守るのは人として当たり前のことですからね。私も異存ありません」

軽食のホットドッグを頬張るエルウッドは、弓の手入れをするシルファをぼんやりと眺めている。

「これで俺より歳上だってんだから怖いよな、エルフって」

「あら、私は人間換算すればまだ成人もしていない小娘ですよ。それを怖いだなんて酷い」

「いや怖いよ。俺なんか、もう一年経つ度に身体の節々に違和感が出てきてるってのに…。お前さんは俺より歳上なのに、どんどん調子が良くなるんだろ?」

「エルフですから。まだ100年くらいしないと、エルウッドさんのような状態にはならないかと」

「その頃には俺死んでるなー、はは。…はぁ」

人種の違いか価値観の違い。分かってはいるが、彼女とは何もかもが違う。生きていた世界も、見てきた世界も。感じてきた世界も、何もかもが。

人間と他種族が交流を始めて長い年月が経ったが、個人間の認識が擦り合うまでは、まだまだ時間が掛かりそうだ。

そんな壮大な考えを、最後の一切れと共に飲み込んだ。
345 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/04/12(火) 02:45:07.64 ID:3Bd9Fv4zO
「さーせーーーん!!!お待たせしやしたーー!!!」

耳を劈く叫び声と共に姿を現したのは、元傭兵の冒険者と同年代かやや若いくらいの青年たちだった。

公共の場ではお静かに、とエルウッドはジェスチャーをすると、三人は慌てて頭を下げた。悪気があったわけではないようだ。

「ほら、急いで列車に乗るぞ。自己紹介とかは中でも出来るし、もう出発の時間だ。よその人に迷惑掛けちゃダメだからな」

「うす!」

先導するエルウッドに、雛鳥のようについて行く新米冒険者たち。可愛らしいものを見るような目で、シルファは微笑んだ。

『カレアード行き特急列車、間もなく発車します。お乗りの方はお急ぎください』

透き通るような美声が数度鳴った後、鉄の方舟はガタン、と音を立てて動き始めた。

「うおぉぉぉぉぉ!!!!」

それを青年らは、窓から顔を出して眺めていた。初めて見る光景に目を奪われていた。

彼らは知らない。勢いに任せて引き受けた依頼に潜む悪意を。
彼らは知らない。深淵に触れた人の真(まこと)の恐ろしさを。
エルウッドは知らない。ある冒険者が適当にでっち上げた経歴に隠された惨劇の数々を。

まだ、知らない。
346 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2022/04/12(火) 02:45:44.52 ID:3Bd9Fv4zO
その一終わり。続きは出来たら投下します。
347 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/04/12(火) 10:36:07.26 ID:6iTjQhqA0
早いね、乙
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