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【シャニマス×ダンロン】にちか「それは違くないですかー!?」【安価進行】 Part.2

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307 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/27(木) 22:25:11.57 ID:m2HupEjL0
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【ルカのコテージ】


「……」

帰るなりベッドにどさっと横になった。
やっと今この瞬間になって、実感するものがある。

(千雪は、本当に死んじまったんだな)

千雪の死体を見た瞬間から、必死に必死に麻痺させてきた神経が活動を始めた。
神経は情報を運ぶ。強引に押し切られて以来、無理やりに作らされた共に過ごしてきた時間という情報を、手足の先から脳の細胞の一つ一つまでに行き届かせる。
あの夜初めて飲んだ熱燗の味、並んで浴びた潮風の匂い、ともに散らした花火の閃光。
そんな何気ないものが蘇っては消えていく。

「……こんなの、ガラじゃねえって……!」

ベッド脇のちり紙を目元に押し当てた。
ちり紙は水を吸い上げて、少し重くなった。
308 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/27(木) 22:25:43.49 ID:m2HupEjL0

「……クソッ、クソッ……!」

この島のコロシアイで一番苦しいのは、ここなんだろう。
遺された人間が、犯人を恨もうとしてもそれは適わない。
犯人もまた、この島に無理やり狂わされただけの哀れな存在。
恨みをぶつけたところで、その空虚さばかりが返ってくる。
更には、その犯人を殺すのは自分たち自身だ。
そこに正義も悪もない、大義名分のない死ばかりが募り、自分たちの生になる。
拳を振り上げても、下ろす先がない。



「……病んだ」



それでもなお立ち上がれるほど、私は立派な存在じゃない。
309 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/27(木) 22:27:03.50 ID:m2HupEjL0






_____だから、私は千雪が遺してくれたものと共に生きる。






310 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/27(木) 22:28:12.70 ID:m2HupEjL0
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【美琴のコテージ】

一人で立ち上がれないなら、他のやつの手を借りる。
私はまだまだ一人だけで生きていけるほど、大人じゃない。
完全なカミサマなんかじゃなくて、未成熟なただの子供だと気づいたから。


美琴「……おいしい」

ルカ「……だろ、私も千雪の受け売りだけどよ。案外いけんだろ」

美琴「うん、熱燗ってこんな感じなんだね」

ルカ「たまにはツマミぐらい食えよ、酒だけだと却って体に悪いぞ」

美琴「ふふっ、ルカも冗談言うんだね」

ルカ「……うっせ」


机の上に酒とツマミを広げ、胡坐を組んだ。
ファンの連中には見せられないような、恥も醜聞もあったもんじゃないありのままの私。
それを見せられる存在が、今再び私のもとにいることに、感謝せずにはいられない。
311 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/27(木) 22:29:01.52 ID:m2HupEjL0

美琴「そんなに一気に飲んで大丈夫?」

ルカ「大丈夫だよ、今更年上ぶんな」


照れくささで酒を仰いだ。
度数高めの酒を選んだせいか、やたらと今日は周りが早い。
やたらと額の辺りが暑くて、手を団扇がわりにする。


美琴「……ありがとう、ルカ。一人でいたら、私も不安を感じていただろうから」

ルカ「……おう、そうかよ」


美琴なりの優しさだろう。
目元を腫らして急に来訪した私に、負い目を感じさせないための言葉だった。


ルカ「成人してまずよかったと思うのは、やっぱ酒だな。酒があれば大体のことは忘れられる」

美琴「そうなんだ」

ルカ「そうなんだって……お前相変わらず飲んでないんだな」

美琴「うん、体にはあまり良くないでしょ?」

ルカ「ハッ……プロ意識が高いことで」


私とコンビを組んでいた時からずっと美琴はそうだ。
打ち上げの場でも酒は断って、ジンジャーエールを啜っていたような女。
芯がぶれないと言えば聞こえはいいが、ノリが悪いと取られたりはしていないだろうかと心配になる。
312 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/27(木) 22:29:33.95 ID:m2HupEjL0

ルカ「ま、今日くらいはいいだろ?」

美琴「うん……そうだね」

美琴「この島にいる限りは……あまり関係ないかも」

酒に中てられたのか、美琴もあまり見ない表情で弱音を零した。

美琴「……これからどうなるんだろうね。みんな、バラバラになっちゃった」

ルカ「……おう」

美琴「アンティーカも、放クラも、ストレイライトも、ノクチルも……それぞれがバラバラになって……協力して脱出なんて、できそうにないかも」


そんなこと知ったこっちゃない。
私にとって大切なのは、ただ私一人が生き残ること。
他の人間が同士討ちしようが、仲間割れを起こそうが関係ない。



……以前までなら、そう思っていた。


313 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/27(木) 22:30:35.33 ID:m2HupEjL0



≪千雪「ルカちゃん、線香花火、落ちてるよ」

ルカ「え……あ、あああああ!? お、お前今のはずるだろ!?」

千雪「私は何もしてないもの、今のはルカちゃんの負けですー」

(く、クソ……!)

ルカ「はぁ……わかったよ、私の負けだ。なんでも命令を言いな」

千雪「そっか、命令かぁ……考えてなかったなぁ」

千雪「……じゃあルカちゃんには、お友達を作ってもらおうかな」

ルカ「は、はぁ……?」

千雪「283プロのみんなともっと仲良くしましょう!」

ルカ「い、いやいや……今も花火大会に参加はしてるだろ?」

千雪「うん、だからその調子でみんなと関わり続けてほしいの。悩んだり、苦しんだりしたときに、一人で抱え込まないように」

ルカ「なんだよそれ……」

千雪「お酒の力がなくたって、ちゃんと自分から相談できるようになりましょう!」

ルカ「はいはい、わかりましたよ……」≫


314 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/27(木) 22:31:48.35 ID:m2HupEjL0

私には、あいつから与えられた命令がある。
勝負というものは正々堂々ルールに則って行われなくちゃならない、それは勝敗決定後のペナルティだって同様に。
最後まで履行されることでやっと勝負は勝負として成立させられるのだ。


____本当に、とんでもない罰ゲームを考えつくものだ。


ルカ「……畜生、とんだ難題だよ」

美琴「……ルカ?」


私は酒を一気に飲み干して、御猪口を机に音を立てて置いた。
その音に反応して、美琴の視線もこちらへ。


ルカ「……っあー! 効くな、これ」


酒の勢いに任せて言ってしまえ。
千雪の下した命令、託してくれた想い、それは私にしかできないことだ。
一度孤立無援の闇に落ちた私だからこそ、この濃霧のかかった状況を切り開くことができる。
身体が焼けるように熱い。燃えているのは、腹の中、そのもっともっと奥の底。
飲みほした酒が、その炎の勢いをより激しくする。
立ち昇る豪炎はやがて火柱へ。
そして焔は力となり、衝動となり、言葉になる。
315 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/27(木) 22:32:25.59 ID:m2HupEjL0



ルカ「……やるぞ、美琴。私たちが生きて帰るため、そんで、これ以上誰も死なさないため」



ルカ「このままじゃ、ダメだろ」


ルカ「私たちが……動かねーと」


美琴「……変わったね、ルカ」

ルカ「……うるせーよ」


美琴の言葉に乱暴な返事をしながら、また猪口に酒を注ぎ直した。
316 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/27(木) 22:33:43.43 ID:m2HupEjL0
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【???】


「……あちしは何としても戦い抜きまちゅ」


「たとえ、どんな敵が相手だって、誰があちしの前に立ちふさがったって」


「あちしは決してあきらめまちぇんよ」


「なんたってあちしはミナサンの南国生活を率いるディレクター」


「そして、あちしは希望ヶ峰学園の名前を背負って立つ超絶激かわマスコットなんでちゅから」


「希望ヶ峰学園歌姫計画……その遂行のため、あちしはこの身もささげる想いなんでちゅ!」


「だから、待っててくだちゃいね!」

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317 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/27(木) 22:34:44.19 ID:m2HupEjL0
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CHAPTER 02

厄災薄命前夜

END

残り生存者数
12人

To be continued…



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318 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/27(木) 22:36:26.18 ID:m2HupEjL0


【CHAPTER 02をクリアしました!】


【クリア報酬としてモノクマメダルを20枚獲得しました!】


【アイテム:使いかけのリップを手に入れました!】
〔CHAPTER02を生き抜いた証。使い手を失ったその独特の色合いのリップは乾燥にひび割れている〕

319 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/01/27(木) 22:41:56.74 ID:m2HupEjL0

以上で2章はおしまいになります。
振り返ってみるとルカが主人公になるにあたっての立志編のようなお話でしたね。
書き始める前はここまで千雪との関係性が濃くなるとは思っていなかったので私としても意外な展開に転がりました。
シャニ本編では美琴との関係性修復どころか、まともな絡みも(なんなら出番も)まだそんなにないんですよね……
そして、それ故に今章は前シリーズの終盤並みの文量となっていました。今後は流石にここまでにはならない……はず。

さて、3章ですがまたしばらくお時間をいただきます。
更新の前には2章再開時と同様に事前に告知を書き込みにまいりますので気長にお待ちください。
ある程度話はすでにまとまっているので、早めに完成させられるよう頑張ります。

それでは2章もお付き合いいただきありがとうございました、またよろしくお願いします。

320 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/01/27(木) 22:44:52.28 ID:/AgEgMgw0
お疲れ様でした!
毎度のことながらスレ主のアイドルの解像度と表現力には感動させられますね……
321 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/01/27(木) 22:50:21.93 ID:khpYhbWO0
お疲れ様でした!
楽しみにしてます!
322 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/01/28(金) 22:43:42.27 ID:alHUJxgp0
乙乙
323 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/02/03(木) 11:07:22.14 ID:LH4xU4B90
乙です!
続きが楽しみです!
324 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/02/04(金) 23:06:00.97 ID:yHdRIbA90
追いついた!乙です
しかし前回の生き残りメンバーが
本当にまたコロシアイに参加させられているとしたら
なかなかに鬼畜な>>1だなって思うなぁ
ダンガンロンパ公式ですら一度生き残ったメンバーは結局○ななかったのに
325 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/02/04(金) 23:55:25.51 ID:/dccSP2z0
だとすると死んだはずの浅倉がいるのが謎なのよねぇ
前作ラストの夏葉のような誰かさんみたいなカラクリかもしれないけど
326 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/02/05(土) 21:29:14.81 ID:RusAAG6B0
今2作目ですけど原作みたいに3作目も考えていますか?
327 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/02/11(金) 01:30:40.78 ID:AMOZXJTY0
俺はそれよりももう主人公変わってるし次スレのタイトルもにちかのままだったら混乱する人出そうな気がするからどうするんだろうなぁって思ってる
このまま通すとしたらまさかのにちか復活フラグ・・・?
328 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/02/26(土) 23:04:57.72 ID:OPDxX83e0
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GAMEOVER

クワヤマさんがクロにきまりました。
おしおきをかいしします。



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329 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/02/26(土) 23:06:06.02 ID:OPDxX83e0

月へと向かうキャラバンの一行。
彼らは全員その身をフードのついたケープに身を隠し、ラクダたちに乗って進んでいきます。

人里も森もない広大な砂漠、後ろを振り返っても自分たちのつけた足跡の他には何もなし。
そんな寂寥な旅路を導くのは、先導をいく桑山さんの腰につけた巾着袋。

鈴を模したその巾着には、『C.K』の刺繍が施されていました。

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ハンマープライス!

超社会人級の手芸部 桑山千雪処刑執行




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330 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/02/26(土) 23:08:08.53 ID:OPDxX83e0

あと少しでオアシス、もう少し頑張りましょうね!

そう言って後続部隊を励ます桑山さん。
ですが、そんな激励を聞きながらも隊の一人が前方を指差します。

なんとそこに居たのはモヒカンが体躯の倍はあろうかという立派なヘアスタイルの荒くれモノクマたち!!

砂漠だろうとなんのそので進んでくるバギーにキャラバンは囲まれてしまいました。
荒くれモノクマはキャラバンのメンバーを次々に荷台の牢屋に積み込んでいきます。
彼らは立派な労働力、王国まで連れていけば奴隷として買い手は引く手数多でしょう。
一人、また一人と消えていきます。

荒くれモノクマにとっては一人一人が誰かなんてどうでも良いのです、所詮は社会の歯車の一つ。
大企業の社長が役員未満の社員の顔を誰一人として覚えていないように、奴隷に売り払う人間など押し並べて同じなのです。


そしていよいよ桑山さんのところへ荒くれモノクマがやってきて、ついにその腕を引ったくりました!
ああ、このうら若き乙女も奴隷としてその生涯を終えてしまうのでしょうか!

その瞬間、腰につけた巾着が地面に落ちました。
それは、アイドルでもなんでもないただの『桑山千雪』の作った巾着袋。
原価がどれだけかかっていても、所詮1円で売り叩かれてしまうような『誰かの作った』巾着袋。


……でも、それに荒くれモノクマは『値』をつけました。

331 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/02/26(土) 23:08:57.21 ID:OPDxX83e0



バキューン!!



拾い上げようとした桑山さんを一発の弾丸が貫きました。
巾着袋を亡骸から引ったくる荒くれモノクマ。
略奪した金を入れておく分にはちょうどいいぐらいの巾着袋、これはいい掘り出し物でした。
別に、誰が作ったとかそういうのはどうでも良かったんですよね。

……え? 代金?
お金の代わりに桑山さんの命で支払ったんです。
なんたって、今の時代はキャッシュレスですからね!

332 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/02/26(土) 23:18:19.26 ID:OPDxX83e0

というわけでお久しぶりです。
結局一か月お待たせしてしまいましたが、なんとか三章の書き溜めができたので事前の告知に参りました。
問題がなければ月曜日あたりから更新できると思います。

完全自己都合で恐縮なのですが、生活環境が変わった関係もありまして次の3章から更新の時間が決まった時間では取りづらくなってしまいました。
少なくとも変更などの際にはその日のうちに前もって時間は書き込むようにしたいとは思いますが、何卒ご了承ください。

ひとまず3章の初回更新は22時ごろからということで予定しています。
ご参加お待ちしております。


※感想などありがとうございました、いただいていた質問に関しては解答させていただきます。

>>326
シャニマスのアイドルとして現段階で登場しているアイドルは1と2で全員になるので続編は今のところは考えていません。
今シリーズが終わったら一旦区切りにするつもりです。

>>327
スレタイに関しては1章での主人公交代もあるのでそのネタバレを避ける意味でPart制にしています
すぐにレスでルカが主人公だとはわかってしまうのですが、一応開く前段階からバレるのは避けたいなと……
進行上は問題なさそうですし次スレでもスレタイはこの方式のまま行く予定です。
333 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/02/27(日) 22:28:12.35 ID:dfO2/uvw0
待ってます
334 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/02/28(月) 17:43:16.40 ID:Zw9x/iv00
申し訳ない、初っ端からですが修正必須の箇所を見つけたので更新
開始日を少しずらさせてください…
二日後の水曜日の10時ごろからでお願いします
335 :更新前に現在までの状況を整理します ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/03/02(水) 21:57:03.85 ID:aUuuDLZd0
【3章段階での主人公の情報】

【超社会人級のシンガー】斑鳩ルカ
‣習得スキル…特になし
‣現在のモノクマメダル枚数…89枚
‣現在の希望のカケラ…24個

‣現在の所持品
【ココナッツジュース】
【ジャバの天然塩】
【ひまわりの種】
【エプロンドレス】
【新品のサラシ】
【オスシリンダー】
【メスシリンダー】
【トイカメラ】
【ドライビングニトロ】
【蒔絵竹刀】
【絶対音叉】
【七支刀】
【バール】
336 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/03/02(水) 21:57:57.19 ID:aUuuDLZd0
‣通信簿および親愛度

【超高校級の占い師】風野灯織…0【DEAD】
【超社会人級の料理人】 月岡恋鐘…1.5
【超大学生級の写真部】 三峰結華…0
【超高校級の服飾委員】 田中摩美々…0【DEAD】
【超小学生級の道徳の時間】 小宮果穂…1.0
【超高校級のインフルエンサー】 園田智代子…0.5
【超大学生級の令嬢】 有栖川夏葉…0
【超社会人級の手芸部】 桑山千雪…10.5【DEAD】
【超中学生級の総合の時間】 芹沢あさひ…2.0
【超専門学校生級の広報委員】 黛冬優子…0.5
【超高校級のギャル】 和泉愛依…0
【超高校級の???】 浅倉透…0
【超高校級の帰宅部】 市川雛菜…0
【超高校級の幸運】 七草にちか…0【DEAD】
【超社会人級のダンサー】 緋田美琴…0
337 :それでは3章、始めます ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/03/02(水) 22:00:10.16 ID:aUuuDLZd0




冬優子「……で? あの脅迫状、あんたはどう思う訳?」




338 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/03/02(水) 22:01:22.32 ID:aUuuDLZd0

あさひ「え? どう思うってどういう意味っすか?」

冬優子「……ふゆの性格について書かれた脅迫状。ふゆはあんたたちにしか元々この性格は見せちゃいなかった、それなのにそれ以外の人間があんな文章書いてよこすなんて、怪しすぎるじゃない」

愛依「あれ? うちもヨーギシャから外してもらえてる感じ?!」

冬優子「当たり前でしょ、あんたがあんな手の込んだ真似できるわけないし……問題外よ問題外」

あさひ「……わたしたちに見せてた冬優子ちゃんとほかに見せてた冬優子ちゃんが違うってこと、わたしたち以外にも知ってる人はいるっすよね?」

冬優子「はぁ? 何よそれ、誰のこと言ってんの?」

愛依「あ、もしかして冬優子ちゃんのお母さん的な〜!?」

冬優子「……この島にうちの親がいるならここに連れてきてちょうだい」

あさひ「冬優子ちゃんのお母さんでも、お父さんでもないっす」

愛依「え? じゃあ誰なん? もしかして、アイドルの他の子にバレてたりしちゃってた感じ!?」

冬優子「……そんなわけない、ふゆは完璧に隠し通してたはずよ」

あさひ「……?」

あさひ「何言ってるっすか? いるじゃないっすか、わたしたちの近くに」

あさひ「冬優子ちゃんのことも、愛依ちゃんのことも、わたしのことも、全部全部知ってる人が」

冬優子「あんた、それってもしかして……」
339 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/03/02(水) 22:02:55.71 ID:aUuuDLZd0





あさひ「プロデューサーさんっす」





340 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/03/02(水) 22:04:18.60 ID:aUuuDLZd0
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CHAPTER 03

Hang the IDOL!!〜弾劾絶叫チュパカブラ〜

(非)日常編


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341 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/03/02(水) 22:06:28.70 ID:aUuuDLZd0
=========
≪island life:day 11≫
=========

【美琴の部屋】

キーン、コーン…カーンコーン…

『えーと、希望ヶ峰学園歌姫計画実行委員会がお知らせします…』

『オマエラ、グッモーニンッ! 本日も絶好の南国日和ですよーっ!』

『さぁて、今日も全開気分で張り切っていきましょう〜!』


昨晩の決起集会じみた部屋飲みから目を覚まして、その気分はあまり良いものではなかった。
二日酔いの反動があるというのもそうだが、それ以前に裁判終わりの私たちの惨状。
ユニットごとの孤立を極め、この島に来ていない人間の安否不明による漠然とした不安感。
私がいつも鬱陶しがっていた283プロの結束が失せてしまっていたようなあの空気感が、今も頭に纏わりついている。
酒を飲めば忘れられるかと思ったが、その効果は寝るまでの間ですっかり切れてしまったらしい。
妙に冴えた朝が、かえって苦しい。
342 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/03/02(水) 22:08:21.10 ID:aUuuDLZd0

「……ふぅ」

肺に溜まった空気をゆっくり吐き出した。
チャイムも鳴ったし、本来ならじきにレストランで朝食会の時間だ。
今日はあるのかどうかも分からないが。

ひとまず美琴を起こしてから向かうとするか。
そう思ってベッドの方に目を向けたが、美琴の姿はない。
きょろきょろとあたりを見渡すと、掛けてあったジャージも姿を消している。

……あいつめ、私をほっぽいて早速朝練してやがった。

相棒の相変わらずの傍若無人っぷりにため息をつきながら、私はキッチンに立つ。
鍵も持っていないのにここを空けるわけにはいかないだろう。
インスタントのコーヒーでもすすりながら、美琴の帰りを待つことにした。

珈琲のあてには、昨日の飲みで余ったミックスナッツを採用した。
カシューナッツの小気味いい食感が、ぽりぽりと音を立てて私の眠気をそぎ落とす。
343 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/03/02(水) 22:09:44.54 ID:aUuuDLZd0

「……しかし、どうしたもんかな」

昨日の酒の場の勢いで、美琴に今の283プロの状況をどうにかすると啖呵を切ってしまった。
美琴のことだし、別にそれに拘るようなことはないだろうがこれは私の面子の問題だ。

アンティーカの二人は田中摩美々という中核を失ったことで不安感に襲われているし、放課後クライマックスガールズの三人は他のメンバーの安否がわからず今も戸惑い続けている。
ストレイライトに関しては……かなり厳しい。事件をさんざん引っ掻き回した芹沢あさひ……あいつだけはどうにか無力化させねばならないが、それを阻むのが残り二人。あの二人にどうにか芹沢あさひの危険性を理解してもらう必要がある。
そしてノクチルの二人は、あのユニット内でも変わりつつある。樋口円香と福丸小糸、今この島にいない面子への心配もそうだが、幼馴染相手でも頑なに口を開かない浅倉透に対し、能天気女もこれまでの認識のままでいいのか不安を抱き始めている。

それぞれのユニットごとに抱えた課題、これを私と美琴でどうにかできるのか……?

「千雪だったらこんなときでも動けたんだろうけどな……」

少し前の自分なら、こんなことを思案なんてしなかっただろうと思う。

344 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/03/02(水) 22:11:11.81 ID:aUuuDLZd0

領域外のことに頭を悩ませて、珈琲3口目。
部屋の扉がガチャリと開いた。


美琴「あ、起きたんだね」

ルカ「……出るなら起こしてから出るか、鍵置いて出てってくれ。帰ろうにも帰れねーだろ」

美琴「ごめん、すぐ戻ってくるつもりだったから」

ルカ「よく言うぜ……ったく。さっさとシャワー浴びて着替えろ、朝飯食いに行くぞ」

美琴「あっ……そっか。わかった。急いで用意するね」


本当、練習となるとそれ以外のことが頭からすっぽ抜けてしまう癖は相変わらずのようだ。
幸い珈琲はまだ残っている。美琴の支度を待つ時間くらいは潰せる。

____
______
________


ルカ「……どうだろうな、今日は」

美琴「どうって、何が?」

ルカ「朝食会……この集まり自体だよ、昨日の今日であのメガネ女もだいぶ参ってるだろうし、もしかすると私たち以外誰も来てない可能性もあるんじゃねーか?」

美琴「……その可能性は、あるかもしれないけど私たちがいかない理由にはならないでしょ?」

ルカ「……」

美琴「私たちがどうにかする……だったよね」

ルカ「あー、わかったわかった。それ以上言うな……はぁ」

美琴「……?」
345 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/03/02(水) 22:13:04.56 ID:aUuuDLZd0
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【ホテル レストラン】

道中美琴と話した通り、今日は流石にこの朝食会もその体をなしていないだろうと思っていたのだが……
意外にも、レストランにはノクチルの二人以外の全員の姿があった。
みんなが卓を囲んで、談笑しながら食事を口に運ぶ平常。


結華「あ、ルカルカ。おはよう」

ルカ「お、おう……おはよう」

夏葉「二人とも遅かったわね、どうしたの?」

美琴「ごめんね、私が自主練に夢中になって時間を忘れていたから」

智代子「あはは、美琴さんらしいな」


だが、それはいつも通りの平穏を装うとする、痛々しさをむき出しにした【平常】だった。
貼りついたような笑顔を283の連中が浮かべる度に、胸がチクチクするような心地悪さを抱かずにはいられない。
346 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/03/02(水) 22:14:09.49 ID:aUuuDLZd0

恋鐘「はい、追加のパンケーキも焼けたばい〜!」

結華「おっ、こがたんありがとう! えっと、一人一枚で……」

結華「……二枚余ってるから、果穂ちゃんとあさたんにもう一枚ずつかな」

恋鐘「……あっ、ご、ごめん結華……」

結華「ううん、気にしないでこがたん。そりゃ昨日の今日だもん、まだ実感もわかないって」

(……チッ)


この朝食会の場の雰囲気をいつも作っていたのは、あのアンティーカの二人だ。
メガネ女も長崎女もどう見ても本調子じゃない、他の連中もそれに影響されている節はありそうだ。


あさひ「あ、冬優子ちゃん。そっちのフルーツも取ってほしいっす」

果穂「あさひさん、これですか?」

夏葉「……!! 冬優子、とってやってちょうだい」

冬優子「……はい、これ」

あさひ「ありがとうっす、冬優子ちゃん」


そして、芹沢あさひが動くたびに食事の場に緊張が走る。
実際私にもどの面下げてこの場に来ているんだ、という苛立ちはあったのだが、
この場にそれを持ち込めば空気が再び昨晩のようになることが容易に想像できるため、無理やりに押しとどめた。

347 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/03/02(水) 22:15:49.42 ID:aUuuDLZd0

そんな全員が全員ぎくしゃくした食事を続けること、数分。
タイミングがいいのか悪いのか、やたら騒がしいあいつが姿を現した。


モノミ「はー、はーッ! はげしい たたかい でちた!」

果穂「あ、モノミ……ど、どうしたんですか?! ぜ、ぜんしん血まみれです!!」

智代子「あ、あれって血なの……? 血なんて絶対流れてないよねあの体!?」

あさひ「もしかして、またっすか?」

冬優子「また……ってもしかして、別の島への橋を解放してきたの!?」

モノミ「はいっ! その通りでちゅ! モノクマの配下であるモノケモノをまた一体倒してきまちたよ!」

愛依「やるじゃん! これでまた手掛かりが手に入る系!」

モノミ「もともとはミナサンのために用意された施設なんでちゅ……待ってくだちゃい、あちしが必ずすべてのモノケモノを倒して、ジャバウォック島をもとの美しい姿に戻して見せまちゅからね!」


新しい島の開放。
自分たちの身の上、そして近しい存在の安否という不安の空気に呑まれていたところに差し込んだ一筋の光。
私たちはそれに縋った。例え求めるようなものがそこになかったとしても、新しい何かを頭の中に詰め込むことができれば、それでよかった。
この鬱屈とした気持ちを忘れるだけの理由に飢えていたのである。
348 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/03/02(水) 22:17:26.65 ID:aUuuDLZd0

恋鐘「そうと決まったら、朝ごはん食べたら早速出発ばい! 中央の島からまた行けばよかとやろ?」

結華「ねえ、モノミ。今回もとおるんとひななんに伝達お願いできるかな?」

モノミ「お任せくだちゃい! ばっちり伝えてきまちゅよ〜!」

美琴「今回の分担は……ユニットごとで大丈夫そう?」

夏葉「ええ、そうね。ルカは今回は美琴と一緒でお願いできるかしら」

ルカ「……おう」


そういえば、前回の探索の時は……まだ美琴とも和解していなかったんだったか。
千雪が無理やりに私に近づいてきて、探索にも勝手についてきやがった。
その結果で今は美琴と一緒に行動しているのだから、分からないものだ。


私たちはてきぱきと無言で食事を食べ終えると、すぐにレストランを後にして新しく解禁された【第3の島】へと渡った。

349 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/03/02(水) 22:19:12.75 ID:aUuuDLZd0
-------------------------------------------------
【第3の島】

ルカ「ここが第3の島……またこれまでの二つとは雰囲気が大違いだな……」


これまでの島はあくまで南国の島という風体は共通していた。
だが、この島はどうだろうか、吹く風はなんだか乾いていて、そこらに見える地面も潤いを失った荒野のよう。
照り付ける太陽はなんだかやたらと体の水分を奪っていく。
私もあまり詳しいわけではないが、西部劇の舞台なんかはきっとこういう気候なのだろうと思った。

この第3の島で目につくのは【病院】【モーテル】【ライブハウス】【電気街】【映画館】だろうか。

これまでまともな医療設備がない暮らしを送っていた分、【病院】への期待は高まるな。私たちの生存率に直結する施設、ここは外せない。
【モーテル】は宿泊施設のことだったか? ホテル以外でもここで寝泊まりができるなら、何か便利になるかもしれない。
【ライブハウス】……職業柄血が湧いちまうな。特にソロ活動を始めてからは箱での仕事も多かった、いっちょどんなもんか見ておこう。
【電気街】、そういうのは専門外だな。美琴が扱えもしない家電を下手に持ち帰らないように、注意しておかないと……
娯楽らしい娯楽はなかったが、【映画館】はどんなもんだろうか。時間つぶしにもなるだろうし、何か一個ぐらい見れたらいいな。

さて、どこから調査するかな。


【探索開始】

-------------------------------------------------
【行動指定レスのコンマ末尾と同じ枚数だけモノクマメダルが獲得できます】

1.病院
2.モーテル
3.ライブハウス
4.電気街
5.映画館

↓1
350 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/03/02(水) 22:40:55.41 ID:jj/6TTEb0
まず3が一番自然な流れだと思うの
351 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/03/02(水) 22:45:20.31 ID:aUuuDLZd0
3 選択

【コンマ判定 41】

【モノクマメダル1枚を獲得しました!】

【現在のモノクマメダル枚数…90枚】

-------------------------------------------------

【ライブハウス】

私のような人間からすればホームグラウンドのような空間だ。
この前のクリスマスにもライブをこんな感じの箱で開いたっけ。
都会の鬱陶しいほどの華々しさ、同僚同士の付き合いとか上限関係とかのわずらわしさ、そういう息が詰まりそうなストレスを抱えた人間が逃げ込んで息継ぎをする空間がここだ。


ルカ「美琴もちょくちょくライブハウスは行ってたよな」

美琴「うん、音楽関係の繋がりもあるしね。立たせてもらったことも何回か」

ルカ「へぇ……」


コンビを解消してからの間、何回そういうことがあったのだろうと思った。
私の知らない、私の見ていない美琴のステージがあったのだと思うと少しだけ心寂しい。
私はと言うとステージの上から鬱憤をまき散らすだけだったが、美琴はきっとそうじゃない。
この小さな箱の中でも、そこにいる全員を魅了するようなパフォーマンスを追求し続けていたはずだ。
……それこそ、見る側が息苦しくなるほどの努力で。

設備自体は割としっかりしている。
コンポやスピーカーは有名なところのものを採用しているし、防音設備も充実している。
デコレーション、イルミネーションのための材料も整っているし、照明を適宜弄ることも可能だ。

352 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/03/02(水) 22:47:09.85 ID:aUuuDLZd0

結華「こういうのまみみん結構好きそうじゃない?」

恋鐘「そうやね、こういうなんかごちゃついとる……アウトローな感じとかよく雑誌で見とったばい!」

美琴「……あの二人」

ルカ「……おい、てめェら」

結華「……! なんだ、ルカルカか……どったの? 調査中?」

ルカ「ああ、まあな。てめェらの話声が聞こえたからよ、そっちは順調か?」

結華「え? あー……うん、ぼちぼち?」


そのおぼつかない解答に、アンティーカの“遺された二人”の感情が透けて見えた。
今一番苦しんでいるのは、間違いなくこいつらだ。
ただでさえ友人が苦しみ悶えて死ぬ様子を目の当たりにしたというのに、その友人は無念の果てになくなったという事実、
そしてユニットの仲間がこのコロシアイ以前にあったコロシアイに参加しており、他の人間を裏切り手にかけていたかもしれないという可能性。
一度に背負うには重たすぎる荷物が一夜のうちにのしかかってきたのだから。
朝から無理している様子が随分と痛々しかった。


ルカ「……なあ、あいつはどんな歌を歌ってたんだ」


だから、少しだけでもその荷物を下ろしてやろうと思った。
少しでも胸の内を語れば楽になるだろうと思って、千雪がかつて私にしたように耳を傾けようと努力した。

353 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/03/02(水) 22:48:53.22 ID:aUuuDLZd0


結華「……気持ちは嬉しいよ、ルカルカ」


……でも。




結華「でもさ……三峰には言えないな、まみみんがどんなアイドルだったのか、なんて」




それは下手に真似ていいものではなかったらしい。
私の一言を皮切りに、溢れ出したように言葉がつらつらと並んだ。

354 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/03/02(水) 22:50:11.73 ID:aUuuDLZd0

結華「あー……なんかダメだな、やっぱり……自分でも思ってた以上に来ちゃうかも」


一言、一言と口にするたびにその目元は潤んでいく。


結華「新しいもの見れば、どうにかなるかと思ったけど、逆かも。可愛かった“妹”たちが、これを見たらどんな反応したかなとか、これは好きそうだなとか、そういうのばっか思っちゃうし」


声も震えて、か細いものになっていき、最終的に絞り出したのは純然たる拒絶だった。


結華「……下手に踏み込んでほしくないかも、アンティーカの領域に」

ルカ「……悪い」


私は自分の無配慮と不器用さを詫びることしかできなかった。


結華「ううん、ルカルカは悪くないって。三峰がメンタル弱いのが問題ですし」

恋鐘「結華……二人ともごめん、ちょっと出てくれんね?」

美琴「ルカ、ここは二人にしてあげようか」

ルカ「……ああ」

355 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/03/02(水) 22:51:52.58 ID:aUuuDLZd0

下手を踏んでしまった。
ちゃんと考えてみればそうだ、私たちは結局ユニットというくくりで見ればただの外部の存在。
今失ったばかりの存在をたずねるような真似をしても、それはただの好奇のもとに伺ったように見えてしまうだろう。
私がやったのはむしろ傷に塩を塗りこむような行為。
相手の領域に踏み込むときには、それに足る誠意と覚悟とを持っていなければならない。
今の私には、まだそれは足りちゃいない。


美琴「ルカは悪くないよ……どっちも悪くない」

ルカ「……慰めなんかいらねえ」

美琴「……ごめんね、私も口下手だから」

ルカ「慰めがいらねえのは、きっとあいつもそうだったんだろうな」

美琴「ルカ……」



……一体、どうすればいいんだよ。


-------------------------------------------------
【行動指定レスのコンマ末尾と同じ枚数だけモノクマメダルが獲得できます】

1.病院
2.モーテル
3.電気街
4.映画館

↓1
356 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/03/02(水) 23:11:21.23 ID:agHwiFyR0
1
357 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/03/02(水) 23:16:28.17 ID:aUuuDLZd0
1 選択

【コンマ判定 23】

【モノクマメダル3枚を獲得しました!】

【現在のモノクマメダル枚数…93枚】

-------------------------------------------------
【病院】

この島での暮らしにまともな医療設備はなく、第2の島が解禁されてやっとドラッグストアが利用可能になった程度。
それも実用的かと言われたら微妙なところで、今回の病院は待望のものだと言える。
私たちのイメージする通りの設備があればの話だが。


ルカ「……結構でかいな」


ぱっと見の外装はよくある病院と変わらない。
車などないのにご丁寧に駐車場まで用意してある。
どこか緊張感を覚えながら扉を開けると、病院特有の鼻を刺すような医薬品の匂いがした。


あさひ「あ、ルカさん」

ルカ「……!! お前……!!」


思わず身構えてしまった。
人の生死をつかさどる場所に、現状最も警戒すべき対象がいたのだから無理もない。
358 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/03/02(水) 23:18:22.99 ID:aUuuDLZd0

冬優子「待って。ふゆたちもただ探索に来てるだけ、それに二人がかりでこいつには目を光らせてるから安心して」


そんな私の素振りを見かねて黛冬優子が割って出た。
中学生の頬をむにっとつねりながらそう弁解する。


ルカ「……本当だな?」


私としても今ここで事を荒立てたくはない。
ここは黛冬優子の言い分を信用することにした。
黛冬優子は千雪の事件で罪を擦り付けられかけた側の人間、いわば被害者のスタンスに立つ人間であり、証言や行動の妥当性では高く見ることができるからだ。


冬優子「あさひの手荷物もついさっき検査したけど、何も持ち出した様子はないわ。愛依とふゆが保証する」

ルカ「……お前のその手に抱えてるのは違うのか?」

冬優子「これは……水素の吸引機よ。ふゆが普段使いする用で持ち出すだけ」

(それはいいのかよ……)
359 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/03/02(水) 23:19:25.11 ID:aUuuDLZd0

愛依「あさひちゃん、別になんにも怪しいことなんかしてなかったよ! やっぱ、タヌキ?なんかじゃないって……!」

ルカ「……悪い、それを取り下げることはまだできない」

愛依「な、なんで……!」

冬優子「愛依、いいから」

愛依「でも……!」

美琴「……みんなはもう病院の中は探索したのかな」

あさひ「はいっす、ここ、どうやら泊まれるみたいっすよ!」

美琴「泊まれる……?」

冬優子「そこの『病院のルール』ってのを見ればわかるわ。『入院を要する重篤な病気の患者がいる場合、その患者と同数まで付き添いの人間の宿泊を認める』って書いてある」


黛冬優子の言うことはどうやら本当のようだ。
受付の上にあるクリップボードに印刷された文面には今言った通りの文言が書いてあった。


美琴「……治療もしてもらえるんだね」

ルカ「みたいだな、『コロシアイの進行において支障をきたすと判断される重大な事故については手術をモノクマドクターが行います』……これならしてもらわない方がマシな気もするけど」

あさひ「でも、病気は直してもらえないみたいっすね」

ルカ「……確かに、そういう文言はないな」

愛依「まあビョーキもケガもしないのが一番なんじゃん!?」

美琴「そうだね、無理はしないように」

(……美琴がそれを言うのか……)


私たちはストレイライトの三人と情報を共有を行い、三人を見送った。
中学生についていろいろと思うところはあるが、ここで追及しても仕方ない。
ひとまずは触れないという選択を取った。
360 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/03/02(水) 23:21:09.96 ID:aUuuDLZd0

美琴「……ねえ、ルカ」


でも、二人残された室内で美琴は突然口を開いた。


美琴「あの子は最初の事件から関与していたんだよね」

ルカ「……そのはずだ」

美琴「……なら、にちかちゃんはあの子がいなければ今頃」

ルカ「それは違う」

美琴「……!」

ルカ「あいつがいようがいまいが、七草にちかは人を殺そうとしていた。その恨みをあいつにぶつけるのはお門違いだ」


そう、決してあいつは殺人教唆をしたわけでも、まして手を汚したわけでもない。
あくまであいつがやったのは事態をひっかきまわして、混乱している私たちを見世物代わりにしたということ。
誰かを喪失したことに対する恨みをぶつけるのは文脈が違う。
そのことだけはしっかりと訂正した。
この島では感情の暴走ですぐに足を踏み外す。あくまで冷静さを崩してはならないのだ。


美琴「……そうだね、ごめん。視野が狭くなっていたみたい」

ルカ「気にすんな、色々とありすぎて頭が混乱するのも仕方ねえんだ」

361 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/03/02(水) 23:22:09.12 ID:aUuuDLZd0

私は美琴を窘めてから病院の探索を再開した。
ストレイライトの報告通り、入院が可能な病室が一階に数部屋、二階に付き合いの人間用の仮眠室が備えられていた。
薬品棚なども確認することができ、素人判断にはなるが薬の処方、簡単な治療なら行える施設のようだ。
勿論ケガについても同様。消毒薬や包帯、ガーゼはしっかりと完備されている。


ルカ「有事の際には積極的に利用できそうだな」

美琴「うん、少し安心した。モノクマのことだし、廃墟の病院なのかと少しだけ思っていたから」

ルカ「……あいつならやりかねないところだな」


ひとまずは信頼して良さそうだ。
お世話にならないに越したことはないが、私たちにとって一つ大きな安息地にはなるはず。

-------------------------------------------------
【行動指定レスのコンマ末尾と同じ枚数だけモノクマメダルが獲得できます】

1.モーテル
2.電気街
3.映画館

↓1
362 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/03/02(水) 23:22:40.57 ID:agHwiFyR0
3
363 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/03/02(水) 23:26:33.35 ID:aUuuDLZd0
3 選択

【コンマ判定 57】

【モノクマメダル7枚を獲得しました!】

【現在のモノクマメダル枚数…100枚】

-------------------------------------------------

【電気街】

島にはどこか荒れた雰囲気が漂っているが、ここはまた違った方向性で荒れているな。
まるで人類が投げ出した後の文明のディストピアというか、砂嵐のテレビがこうもいくつも並んでいると言い知れぬ恐怖を感じてしまう。


美琴「ルカ、見て。二層式洗濯機だって」

ルカ「今時そんなの誰が使うんだよ……おい、まさかそれ持ち帰る気じゃねえだろうな」


何か使えるものがないかと見て回る。
美琴ではないが、家電なんかは一通り使えそうな雰囲気はある。
掃除機も洗濯機も、いずれにおいても旧型というわけではなく、最新式のものまで一応抑えてはあるらしい。
ただ、ここから自分の部屋に運ぶとなると、島を二つわたる必要があるわけで。
車も何もないのに持ち帰るのは現実的じゃないかもしれないな。


夏葉「ルカと美琴もやってきたのね」

ルカ「あ? おう、何か使えるモンでもあればいいかと思ったが……」

夏葉「ええ、私もパソコン類を見てみたけど……ダメね、どれもインターネットが機能しておらず、外部の情報は遮断されているわ」

美琴「? わいふぁい……とかいうのは無いの?」

夏葉「えっと……そうね、まずパソコンというのは……」

ルカ「いい、いい! こいつに逐一説明してたらキリがねえ!」
364 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/03/02(水) 23:28:03.16 ID:aUuuDLZd0

夏葉「あ、それでも一つ気になるものはあったわ。そこのジャンク品店の品物の一つ……【中古のパソコン】はパスワードがかけられていたの!」

ルカ「パスワード付きのパソコンか……中は見れたのか?」

夏葉「いえ、パスワードに見当もつかないもの……今は触れないようにしておいたわ」


中古のパソコンか……どこから持ち込まれたのかはわからねーが、もしかすると中に外の情報が入っているかもしれない。
開錠ができれば私たちにとって何か大きなメリットになる可能性はあるな。


美琴「そういえば、果穂ちゃんと智代子ちゃんは一緒じゃないの?」

夏葉「いえ、一緒に調査中よ。二人は……あ、いたわ。あそこね」


小金持ちが指さした先、あれは電気街のうちの一つ、玩具屋だ。
なるほどラジコンなどを扱っているところらしく、小学生とチョコ女が子供っぽく遊んでいる様子が目に入った。


果穂「夏葉さーーーーーーん! 見てください、これすごい早さで走るんですーーーーーーー!」

智代子「すごいよ夏葉ちゃん! これ、音と砲台が動くよ!」

夏葉「ええ、後でそちらに行くわ!」


二人に向かって手を振る小金持ち。その横顔は、どこか物悲し気だった。


夏葉「……樹里と凛世。他のみんなのことも気がかりだけど、それ以上にあの二人が気を病んでしまうことの方が私は心配なの」

夏葉「ああして何か気を紛らわせるものでもあれば、と思ってここにやってきたのよ」


こいつのところのユニットはメンバーの間で年齢の幅が広いことがウリの一つだった。
それがゆえに、年長者である小金持ちは他のユニットとはまた別の所で、今の状況に思うところがあるらしい。
365 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/03/02(水) 23:30:03.97 ID:aUuuDLZd0

夏葉「そして……ルカ、ちょうどいい機会だわ。あなたに話をしておきたかったの」

ルカ「……あ? 私にか?」

夏葉「あさひのことよ」

ルカ「……!!」

夏葉「……あなたは摩美々の裁判であさひを、事件をかき乱す【狸】だと告発した。そのことに訂正はないのよね?」


私の目を真正面から見つめてゆるぎない瞳。
凪いだ海面のように微塵も動かない黒目に、思わず唾をのむ。
並大抵の気迫ではない。それは敵意でもなく、ましてや疑いをかけているわけでもない。
他二人の命を預かる身として、真実を見極めようという戦意に近しい感情だ。


だが、私も確信のもとにあの中学生を告発したんだ。
そこから逃げるわけにもいかない。


ルカ「……ああ、現場の状況、黛冬優子の受け取った脅迫状を併せてみても、事件をかき乱しているのはあの中学生なのはほぼ間違いないはずだ」

夏葉「……わかったわ」
366 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/03/02(水) 23:31:37.14 ID:aUuuDLZd0

夏葉「あさひのことは良く知っていたつもりだった、でもそれが事実なら認識を改めねばならないわね」

ルカ「……」

夏葉「共有する情報にも制限をかけたほうがいいかもしれない……危険を及ぼす可能性のあるものは、事前に排除しておく必要があるかしら」

ルカ「そこまでやるのか……?」

夏葉「警戒はしておく。……でも、私たちがこの島で生きていく以上は、ストレイライトの協力も必要。難しいところね」


小金持ちは複雑な表情を浮かべた。
自分自身これまで中学生との間で積み重ねてきた時間と信頼、そして今この島で他二人の命を預かる立場となった責務と緊張。
その間で板挟みとなって彼女の苦悩が、その額に顕れる。


果穂「夏葉さん、これみてください! おっきなラジコンヘリです……!」


私たちとの会話で一向に場を離れない小金持ちを待ちかねたのか、小学生と甘党女が自ら駆け寄ってきた。
手にはラジコンヘリと言うには洗練されたデザインの、回転翼の機体。


夏葉「これは……ドローンね?」

智代子「これが、ドローン……! 本物は初めて見たよ……!」

ルカ「ライブカメラとかでたまに使ったりはあるが、運転はしたことねーな……」

夏葉「……」

美琴「夏葉ちゃん……?」
367 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/03/02(水) 23:33:10.80 ID:aUuuDLZd0

夏葉「果穂、智代子。悪いのだけれど、このドローンは私が回収してもいいかしら」

果穂「えっ……!」

夏葉「……ドローンなんて、いくらでも使いようがあるわ。武器を乗せた軍用ドローンも戦場に登用されて久しいし、このコロシアイに悪用されないとも限らないの」


どうやらさっき話していた覚悟に偽りはないらしい。少しでも危険な可能性のあるものは、文字通り徹底的に排除していくようだ。
小学生と甘党女は一度は顔を見合わせたが、そのままドローンを小金持ちへと手渡した。


果穂「夏葉さん、わかりました! おねがいします!」

夏葉「悪いわね二人とも……それと、この情報はこの場にいる人間だけのものにしておきましょうね」

智代子「美琴さんとルカちゃんなら信用できるもんね!」

ルカ「……そうなのか?」

夏葉「この島に来た当初のあなたなら、そうはいかなかったけれど……千雪の事件で私たちを引っ張ってくれた今のあなたなら大丈夫だと思っているの」

美琴「よかったね、ルカ」

ルカ「……ハッ」


その場でのドローンを秘匿するという取り決めには私たちも賛同。情報交換会でも明かさないこととなった。
283プロの人間がこうした結論に至ったことは少し意外ではあったが、この異常時だ。
信じられるもの、そうでないものを見極めるのに慎重になるのは致し方ない。

-------------------------------------------------
【行動指定レスのコンマ末尾と同じ枚数だけモノクマメダルが獲得できます】

1.モーテル
2.映画館

↓1
368 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/03/02(水) 23:34:46.74 ID:PeuVYNz00
1
369 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/03/02(水) 23:35:06.43 ID:agHwiFyR0
1 夏葉死にそうで怖い…
370 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/03/02(水) 23:36:46.47 ID:aUuuDLZd0
1 選択

【コンマ判定 74】

【モノクマメダル4枚を獲得しました!】

【現在のモノクマメダル枚数…104枚】

-------------------------------------------------

【モーテル】

モーテルとは確かモーターホテルの略で、自動車で広域の旅行をするアメリカ人向けに建てられたホテルのこと……だったか。
平屋づくりの扁平とした形に、ドアがいくつも並んで個別の部屋になっている様相は日本ではあまり見慣れない形だ。
この部屋一つ一つが宿泊設備になっているんだろう。


雛菜「あ、お疲れ様です〜」

ルカ「……今回はお前ひとりなんだな」


声をかけてきたのは能天気女、いつも追いかけまわしていた適当女の姿はそこにはない。


雛菜「映画館で映画を見たいって言ってたので、雛菜は興味ないし他の探索に来たんですよ〜。絶対あの映画つまんなそ〜な感じがしたのにな〜」

(……そんなにか?)


そういえばこの島には映画館もあった、そこで二手に分かれたということなのだろう。

371 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/03/02(水) 23:38:23.68 ID:aUuuDLZd0

ルカ「お前はもうここのモーテルは見たのか?」

雛菜「はい、一応は見ましたけど……なんか、ここホテル代わりに泊まってもいいみたいですよ〜?」

美琴「そうなんだ……」

雛菜「でも、なんかあんまり綺麗そうじゃなさそうですし、お布団に虫とかいるかもって感じです〜」

ルカ「ま、マジか……」

雛菜「ぱっと見の感想ですけどね〜」


適当女の言葉もそうだが、こいつの発言も大概だ。
感覚で物を言う女の発言だし、話半分で聞いておかないとな。
能天気女は好きなだけ物を言うと、そのまま掃けていってしまった。
相変わらず掴みどころのない女だ。


美琴「一応私たちでも見ておこうか」

ルカ「おう、そうしとくか」


手近な部屋を除いてみた。
なるほど、確かに泊まれるだけの設備は十分にそろっている。
生活用品や家電もあるし、電気や水道もしっかり通っている。
まあ、ホテルでの暮らしに不自由も感じていないしお世話になることはなさそうだな。


美琴「……ここだとライブハウスにもすぐに行けるよね」

ルカ「ん? まあ、そうかもな」

美琴「……ボイストレーニングならここに泊まったほうが練習効率は良さそうだね」

ルカ「ハッ……変わんねーな」

-------------------------------------------------
【残り選択肢が一つになったので自動で進行します】

【コンマ判定によりモノクマメダルの獲得枚数を決定します】

↓1
372 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/03/02(水) 23:39:00.34 ID:agHwiFyR0
ばちーん
373 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/03/02(水) 23:39:27.81 ID:agHwiFyR0
ばちーん
374 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/03/02(水) 23:44:07.69 ID:aUuuDLZd0

【コンマ判定 34】

【モノクマメダル4枚を獲得しました!】

【現在のモノクマメダル枚数…107枚】

-------------------------------------------------

【映画館】

島の広い面積をとっている映画館。当然だが、来客は私たちの他にはなし。
受付でポップコーンを売っている店員もいないため、無駄に広い規模感ゆえに、閑散としている印象が強まっている。


ルカ「美琴は映画とか見たりするのか?」

美琴「たまに、お仕事で一緒になる方とか、昔一緒に頑張ってた子の出演作とかは見に行くかな」

ルカ「ハッ、律儀なこった」


昔からそんな感じで、美琴の趣味嗜好というのは今でもいまいち掴み切れていない。
おそらく正確にはどんなものでもほどほど楽しめる、ということなのだろうけど。
私も大体の物は楽しめる。そう映画マニアという訳でもないし、CMをしていて気になれば見に行く程度のミーハーの深度だ。

そういえば、この映画館では何を上映しているのだろうか。
ふとした興味で劇場ポスターに視線を向ける。

『モノ太郎 THE MOVIE』


……すぐに見たことを後悔した。
なるほど、当然と言えば当然か。この島でまともな映画が見れるわけなどないのだ。
どこまでいってもモノクマモノクマ、自己顕示欲もここまで行くと見上げたものだ。

375 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/03/02(水) 23:45:47.92 ID:aUuuDLZd0

モノクマ「ようこそいらっしゃいました! モノクマーズシネマへ!」

ルカ「美琴、次行くぞ」

モノクマ「あーっ! なんでそんなひどいこと言うのさ、せっかくだからちょっとぐらい見て行ってよ!」

ルカ「誰が見るかこんなクソ映画」

モノクマ「見る前から評価を下すなんて偉そうに! カミサマなんて言われて、調子に乗るなよな!」

美琴「じゃあ、どんな映画なの?」

ルカ「おい、聞く必要ないって。さっさと行こうぜ」

モノクマ「よくぞ聞いてくれました! なんとこの映画は製作費に10億円もの大金をつぎ込まれた超傑作アクションスペクタクルムービー!」

モノクマ「疾風怒濤の勢いで展開する爆発の数々、そしてヒロインとのラブロマンスには胸がキュンキュンすること必至!」

モノクマ「そして主人公が直面する世紀の大事件とは一体……!?」

モノクマ「どう、見たくなったでしょ?」

ルカ「アクションなのか恋愛ものなのかミステリーなのかはっきりしねーな」

美琴「でも、なんだか面白そうじゃない? 色々詰め込んだおせちみたいで」

ルカ「モノクマ主演って言う台無しな要素が入ってる時点で精々小学生のお道具箱だよ」

モノクマ「なんてこと言うんだ! 見る前からそんな文句言うお客さんはオマエラがはじめてだよ!」

美琴「……ってことは、見てくれたお客さんもいるの?」

モノクマ「ていうか、大絶賛視聴中だよ? もうすぐ回が終わるから戻ってくると思うけど」

ルカ「……マジか、イかれてんな」


こんな地雷とわかり切ってる映画をわざわざ見に行くなんて、とんだもの好きもいたもんだ。
私なんかは既にモノクマの説明を聞いただけで頭痛がしそうだというのに。

それからその物好きを待つこと数分、すぐにそいつは姿を現した。
376 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/03/02(水) 23:46:49.28 ID:aUuuDLZd0



透「あー、ヤバいわ。これ」



ルカ「お前かよ……」


シアターから出てきた適当女は額に手を当て、いつもより多めに息を吐いている。
一目でわかる、明らかに映画を見たことを後悔している反応だ。
いつものような余裕ぶった態度もどこ吹く風、苦虫を嚙み潰したような表情。


モノクマ「ようこそいらっしゃいました! どうでした、全米も涙した傑作の感想を是非ともお聞かせくださいな!」

透「……あ、もしかして二人ともこれから見る感じですか」

美琴「どうしようかと思って」

透「やめとき。マジで。時間の無駄」

ルカ「……だろうな」

モノクマ「またまた〜、感動の大傑作だったでしょ?」

透「これ見るくらいなら、アリの巣眺めてた方がマシ。ガチで」


あの適当女がここまでの拒絶反応を示すとは、相当なんだろう。
逆に興味すら湧いてくる。

377 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/03/02(水) 23:47:48.03 ID:aUuuDLZd0

モノクマ「映画グッズの物販なんかもありますけど?」

透「やめて、買わないって」

モノクマ「じゃあ、とりあえず来場者特典のシールだけでもどうぞ!」

透「あー……トラウマになりそう」

(……どんだけだよ)


適当女は千鳥足の様相で劇場を後にした。
これは……私たちも今のところは見ない方がよさそうだな。


モノクマ「ささ、もうすぐ次の回が始まりますよ! ぜひお二人も中へ中へ!」

ルカ「行くかよバーカ」

モノクマ「あっ、ま、待ってよー!」


私は美琴の手を引いて、背後から聞こえてくるモノクマの懇願するような声の悉くを無視して走り出した。

◆◇◆◇◆◇◆◇

新しい島の探索を一通り終えたが、私たちの心中は曇っていた。
途中で顔を合わせた連中の全員という全員が前回の裁判での禍根を引きずっている。
手掛かりらしい手掛かりもなかったことが、彼女たちの消沈っぷりに拍車をかけているようだった。


ルカ「……とりあえず、レストランに戻るか」

美琴「うん、そうだね……情報共有、大事だから」


この状況をどうすれば好転できるのか、私にはまだ視界が開けそうにはなかった。

378 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/03/02(水) 23:49:53.19 ID:aUuuDLZd0
-------------------------------------------------

【第1の島:ホテル レストラン】


レストランには調査を終えた者が徐々に集い始めていた。
どれもこれも表情は明るくない、沈黙が訪れればどこかからため息が噴き出す、お世辞にもいい空気とは言えない空間だ。


夏葉「……あら、結華はどうしたのかしら」

恋鐘「ちょっと疲れとるみたいやけん、部屋で休ませてきたばい。アンティーカの分はうちがバッチリ報告するから心配いらんよ!」

(……心配はそこじゃねーだろ)

冬優子「……黙ってても仕方ないし、さっさと報告会を始めましょ。それぞれ探索した場所と発見したことを発表してちょうだい」

ルカ「……」

冬優子「……何よ」

ルカ「いや、素のお前って結構グイグイ引っ張るタイプなんだなって思ってよ」

冬優子「……はぁ、三峰結華がダウンしてるから致し方なしによ。分かるでしょ?」

愛依「じゃあ、ストレイライトからはっぴょー! はい、あさひちゃん……どうぞ!」


中学生への信用を回復させようとたくらんでいるのか、ギャル女はわざわざ挙手をしたのち、その役目を中学生に譲った。

379 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/03/02(水) 23:51:38.93 ID:aUuuDLZd0

あさひ「えっと……そうっすね、わたしたちは病院を見てきたっす。ひどいケガとか病気をしたときは泊まれるみたいっす。患者さんと同じ数までなら、付き添いの人も泊まれるらしいっすよ!」

果穂「病院、これで安心ですね!」

あさひ「それに、緊急性が高い怪我なら手術も受けられるみたいっす!」

冬優子「あくまでコロシアイに支障が出る場合……だけどね」

恋鐘「命ば救う病院でもコロシアイのことばっかり……モノクマも抜け目なかね〜」

夏葉「お世話になる用事ができないことを祈るばかりね、モノクマの腕なんてどれほど信用できるか怪しいものだわ」


ルカ「そういえば……宿泊可能で言えば、モーテルもあったな。あそこもホテルと同様に使っていいみたいだぞ」

智代子「モーテル、洋画でしか聞いたことないよ!」

美琴「部屋も覗いたけど、ベッドもシャワーも冷蔵庫も……生活に必要なものは一通りそろっていたから。気分転換に使う分にはちょうどいいかもしれないね」

あさひ「わたし、泊まってみたいっす!」

愛依「お泊り会でもやる感じでそのモーテル?お邪魔すんのもありかもね〜」


果穂「放課後クライマックスガールズからのほう告です! 第3の島には、電気街があって、家電とか、パソコンとか、いろんな電化せい品がそろってました!」

美琴「古いものから最新鋭のものまで、幅広く揃ってたね」

智代子「持ち出すのは自由みたいだから、何か困ったことがあれば使ってみてもいいかもしれません!」

夏葉「電気街ではほかにも興味深い発見があったわ。ジャンク品が集められている中で、中古品のパソコン……しかもパスワードで鍵がされているものがあったの」

ルカ「外の情報が遮断されてる今、手掛かりになるかもしれない重要な品だな」

夏葉「一応持ち出して私の部屋で保管しているから……パスワードに心当たりがあれば申し出てちょうだい」

恋鐘「誰の持ち物かもわからんし、そう簡単には開けれなさそうばい……」

380 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/03/02(水) 23:52:52.65 ID:aUuuDLZd0
美琴「そういえば、映画館には誰か行った?」

ルカ「私と美琴で見て来たけど……あそこはいかねー方がよさそうだ、ノクチルの適当女が映画を見た後満身創痍で出てきやがった」

智代子「満身創痍って……映画館なんだよね……?」

美琴「特に手掛かりもないし、時間をつぶすにしてももっと他の方法があるかな」

あさひ「そういわれると、逆に興味が出るっす!」


恋鐘「じゃあ最後はうちらアンティーカから報告! うちと結華はライブハウスをみとったばい!」

ルカ「ああ……そうだったな」

(そんで、私が不用意に踏み込んでメガネ女を傷つけちまった……)

恋鐘「設備はだいぶよかもんが揃うとったばい、ライブもやろうと思えば今すぐにでもできるぐらいやったよ!」

美琴「……本番を想定したレッスンなんかに使えるかもね」

ルカ「お前はぶれないな、美琴」

智代子「そうだねぇ、この島に来てからボイストレーニングもあんまりできてないし、たまにはいいかもね!」

夏葉「あら、いい心がけね智代子。それなら今夜にでも予定を入れましょうか」

智代子「き、気が早いよ! たまにはいいかもって言っただけで……」

夏葉「その“たま”は今なのよ、智代子!」

智代子「ひゃ〜〜〜〜〜!」
381 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/03/02(水) 23:54:02.15 ID:aUuuDLZd0
◆◇◆◇◆◇◆◇

一通りの報告が終わった。
目立った進展は今回もナシ、そうなるとまたあの沈黙が訪れてしまう。
不安ばかりが幅を利かせる、胸騒ぎばかりがやかましい静寂だ。


夏葉「ここでじっとしても仕方ないわ、ひとまず今日は解散にしましょう」

冬優子「……そうね、お互いこうしてても疲れるだけだし」


別に敵対をしているわけではないが、どこか角が立ったような表現。
ユニットの仲間を庇っている立場上、どうしても小金持ちの警戒心には敏感になるらしい。


ルカ「……そうするか、昨日の疲れもまだ抜けてねーみたいだしな」


私も小金持ちの提案に賛同した。疲れとは言ったが、その指すところが肉体的なものでないことは誰の目にも明らかだった。


智代子「明日はどうしよっか……朝食会は、やるんだよね……?」

夏葉「……ええ、もちろんよ」


質問する側も解答する側もどこか弱弱しい。
こんな状況だ、毎日の習慣まで崩してしまえばずるずると別の所にも影響が及ぶことは容易に想像できる。


ルカ「……じゃあ、明日も朝のチャイムの後にレストラン集合で」


誰からもその返事が返ってくることはなく、私たちは無言のままに解散をした。

382 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/03/02(水) 23:55:38.34 ID:aUuuDLZd0
-------------------------------------------------

【ルカの部屋】

キーン、コーン…カーンコーン…

『えーと、希望ヶ峰学園歌姫計画実行委員会がお知らせします…』

『ただいま、午後十時になりました』

『波の音を聞きながら、ゆったりと穏やかにおやすみくださいね』

『ではでは、いい夢を。グッナイ…』


自分の部屋に戻って、ドッと疲れが溢れてきた。
私自身が不安を抱いていなくても、他の連中があんな調子だと、かかわっていても気を遣うし、妙なところに力が入る。


「……どうすんのが正解なんだよ」


千雪の命令、初日の遂行状況は最悪。
他の連中との仲を取り持つようなことは一切できず、腫れ物に触るような立ち回りしかできなかった。
しかも一部では私のせいで余計に悪化させた節さえある。
美琴とのコンビを解消してから、ずっと孤独の道をひた走っていた。
手を差し伸べようとする連中には嫌疑の視線を送り、その手を振りほどくことに躍起だった。
救いなんて、全部が全部まがい物。
そう思い込んでいた私に、何ができるというのだろう。


「……わっかんねえっての……」


そう呟いて、ベッドにぶっ倒れた。
383 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/03/02(水) 23:57:17.89 ID:aUuuDLZd0



___丁度そのタイミングだった。



ピンポーン


来客だ。
こんな時間に、しかも私の部屋に来るなんて輩は美琴しかいないだろう。
そう思って後頭部を搔きながら、煩わしそうな表情をわざと浮かべながら扉を開けてやった。


ガチャ



冬優子「……もしかして、なんか邪魔した?」



384 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/03/02(水) 23:59:01.38 ID:aUuuDLZd0

そこに立っていたのは黛冬優子だった。
到底客を向かい入れる態度ではない私を見ると、彼女は少しばかり申し訳なさそうに肩をすくめる。


ルカ「お、お前かよ……なんだよ、急に」

冬優子「ちょっと話、入ってもいい?」


こいつが訪問してくるのは予想外だった。
訪問の理由をたずねてはみたものの、この場で述べようとしない。
概ねあの中学生にまつわる話だろうと察しはついた。
前回の裁判で衆目の中私が糾弾したことにより、今こいつらの立ち位置は非常によろしくない。
その文句でもつけに来たと見るのが妥当なところだろう。
こいつの立場から考えれば、私に言いたいことがあるのも理解はできる。
それに、私にもその責任がある。私はこいつの話を正面から受け止めることに決めた。


ルカ「あー、クソ。ちょっと待て、片付ける」

冬優子「ん、早いとこ頼むわよ」


だが、生憎私の部屋にはずっと来客もなかったため、今は人を到底入れるような環境ではない。
急ぎ足で机の上の缶を袋にぶち込み、ごみは強引にクローゼットへと押し込めた。
385 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/03/03(木) 00:00:43.22 ID:cC0CFlEJ0

冬優子「お邪魔しまーす……」


部屋を見定めるようにしながら入室した黛冬優子は近くにあったクッションの上に腰かけた。
別にこいつと卓を囲むつもりはない、私はベッドの上にどっしりと座り込む。


ルカ「で、何の話だ」


分かり切っていることをあえて尋ねる。


冬優子「……この前の裁判の話よ」


ああ、やっぱりなと覚悟を決めた。
どんな罵詈雑言が来ても反論せず受け入れよう、そう思って身構えた。



冬優子「……三峰結華、あの子の抱え込んでるものをどうにかしてやりたいのよね」



だが、そこに続く言葉は意外なものだった。
386 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/03/03(木) 00:02:55.84 ID:cC0CFlEJ0

冬優子「……何よ、馬鹿みたいに口ぽっかり開けちゃって」

ルカ「な、バカってな……てっきりこっちは中学生のことで文句でも言いに来たのかと……」

冬優子「あんたバカ? あさひのことで今更文句言ったってどうなんのよ、物証が揃えられてる以上は感情論で反論しても無意味」

冬優子「こっちもこっちできっちり反証するから、それまで首を洗って待ってなさい」


随分と余裕たっぷりに事も無げな様子で切り返されてしまった。
どうやらこちらの見立てが甘かったらしい。こいつらの間にある信頼というのは並大抵のものではないようだ。
たとえその展望がなくても、確信を持った返答ができてしまうほどの信頼、もはや妄信と呼び変えてもいいかもしれない。


冬優子「で、本題。三峰結華、あの子今、かなり危ういでしょう?」


黛冬優子の危惧通り、今のあいつの状況は生存者の中でも最も危ういだろうと思う。
前回の裁判で、田中摩美々がクロと確定した時に一度あいつは確かな覚悟を決めた。
田中摩美々の心中を受け止めて、それに事件が起きる前に向き合ってやれなかった自分の未熟さを認めた。

でも、そのうえでモノクマはあいつらを引っ搔き回した。
田中摩美々の知識欲とそれと紙一重の恐怖を引きずり出し、やつの死に際を惨たらしく飾り付けた。
更には他のメンバーがこのコロシアイ以前に犯したかもしれない裏切り行為を白日の下に晒した。
あいつはその時思ったはずだ、『私は全然ユニットの仲間のことを分かっていない』、と。

あのゲームの中の幽谷霧子の様子、あれは外部の人間から見ても異常だった。
ユニットの仲間の張本人、そしてその年長者ともなると受ける精神的なショックは私たちの想像を超えるだろう。
そして実際、あいつは私からの干渉を拒絶し、とうとう自分の殻に閉じこもってしまった。

387 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/03/03(木) 00:04:06.36 ID:cC0CFlEJ0

ルカ「……私のせいだ、私が何も考えないで、あいつに踏み込んだから」

冬優子「別にあんたを責めに来たんじゃないんだけど、あんた何かしたの?」

ルカ「下手に生前の田中摩美々を思い出させちまった」

冬優子「……はぁ、緋田美琴とあんたがコンビ解消した理由がよくわかるわ」

ルカ「は、はぁ?! お前、適当なこと言ってんじゃねえぞ!」

冬優子「手順をすっ飛ばしすぎなのよ、はじめっから本題で入っていいわけないでしょ。特に三峰結華みたいな面倒なタイプはね」

ルカ「おいおい、面倒なタイプって随分な物言いだな」

冬優子「あら、違った?」


本人がいないからってずけずけと物を言う。
本当、猫をかぶっていた時と比べるとまるで別人だ。


冬優子「あの子は田中摩美々にも言ってたけど、自分の心を打ち明けるのが苦手なタイプなのよ。それこそ自分でも上手く言語化できないんじゃないかしら」

(……どっかで聞いたような話だな)


視線をそらし、静かに心中で自嘲した。

388 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/03/03(木) 00:06:06.08 ID:cC0CFlEJ0

冬優子「自分の今感じてる不安を、恐怖を、仲間に打ち明けられたらいい。そんなことは自分でも分かり切ってる……でも、それには大きな大きな壁がある」

冬優子「ああいう女は、そういうタイプよ」

(……ああ、そういうことか)


こいつは、何も同情で口にしているんじゃない。
出会ってから、この島に来るまでずっと本当の自分を隠し、偽ってきたこいつだからこそ理解できる領域における、【同調】で言葉を口にしている。
私の部屋を訪ねてきた理由もそれで合点がいった。
意地や沽券なんてくだらないもので本音を隠し続けてきた私が、今や美琴と再び肩を並べている。
黛冬優子の論点でいえば、私を協力者に据えることは確かに道理にかなっている。


冬優子「三峰結華が超えるべき壁、あんたなら分かんでしょ」


その壁は、千雪が超えさせてくれた壁。
私たちが大人ではなく、子どもであるということを教えてくれたからこそ超えられた壁。
それと同じことを、あいつにしてやれと黛冬優子は言う。

389 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/03/03(木) 00:07:14.92 ID:cC0CFlEJ0

ルカ「……簡単に言ってくれんな」

冬優子「大丈夫、ふゆが保証する。あんたはできるって」

ルカ「ハッ、無責任なこった」

冬優子「あら、ふゆが今こうやってふゆとして話してる責任の一端、あんたも担ってるはずでしょ? あんたが裁判でふゆの嘘を糾弾したからふゆは素を曝け出さざるを得なかったの忘れた?」

ルカ「……最終的に問い詰めてたのは能天気女だ」

冬優子「まあ、それはそうだけど……ふゆはあんたに協力してほしいの、それじゃ不満?」


随分と横柄なやつを目覚めさせてしまったものだ。
どうしてこうも283の連中は強引なやつばっかりなのか。
こんなところに入って平気な顔をしている美琴のことがわからなくなりそうだ。
……でも、この島の暮らしという異常事態においては、これくらいがちょうどいいのかもしれないけどな。



ルカ「……最終的には私が生き残るためだからな」

冬優子「上等。利用させてもらうわよ」



失意の夜に交わされた密約、何とも奇妙な関係が始まった。

390 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/03/03(木) 00:09:02.59 ID:cC0CFlEJ0

というわけで今回はここまで。
色々とフラグが立った感じがありますね。
次回更新は本日3/3(木)、また10時前後で考えています。
次からは自由行動に入ります。
それではお疲れさまでした、また暫くよろしくお願いいたします。
391 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/03/03(木) 00:09:48.28 ID:sTW8kTND0
お疲れ様でした
次回も楽しみです
392 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/03/03(木) 00:17:30.80 ID:ysy8bXIg0
>>1乙!
今危なそうなのは夏葉と三峰って感じかな
夏葉は被害者で三峰はどっちかっていうとクロになりそう・・・
393 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/03/03(木) 22:04:14.35 ID:cC0CFlEJ0
____
______
________

=========
≪island life:day 12≫
=========

【ルカのコテージ】

キーン、コーン…カーンコーン…

『えーと、希望ヶ峰学園歌姫計画実行委員会がお知らせします…』

『オマエラ、グッモーニンッ! 本日も絶好の南国日和ですよーっ!』

『さぁて、今日も全開気分で張り切っていきましょう〜!』


昨日の夜は予想外な来客があったせいか、なんだか眠りが浅かった。
異物感が一日経ってもぬぐえていないんだろう、
妙に気が立ち、起床までに何度か目を覚ました。
その度に無理やりに寝付こうとしたのだが、いずれも長く続かない。
睡眠不足に寝起き早々あくびを打った。

さて、今日からはメガネ女の再起のために黛冬優子との協力が始まる。
千雪の命令を守るため、向き合わねばならない難題中の難題だったがゆえに、協力関係をこぎつけたことはこちらとしても幾分か助かる。
やつらの間に立ち込める漠然とした不安感を切り開く糸口になってくれそうだ。
ただ、あいつの物言いは少しばかりこっちの癇に障るけどな。

別段状況が好転したわけでもないが、私はそんなのんきなことを考えながらレストランへと向かった。
394 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/03/03(木) 22:05:55.38 ID:cC0CFlEJ0
-------------------------------------------------
【ホテル レストラン】

レストランには既に大方の人間が集まっていたが、やはりあいつの姿だけは見えていなかった。


恋鐘「結華は今日もちょっと調子が悪かやけん、この会には参加できんらしいたい……食事は後でうちが運んでいくから、そいは気にせんとって!」

智代子「やっぱり結華ちゃん、相当堪えてるみたいだね……」


長崎女の報告を聞いて、黛冬優子はしきりにこちらに視線を送ってきた。
わかってるっての。こっちも頷いて合図を送る。


愛依「ノクチルの二人はずっと来てくれてないし、一人でも減っちゃうとやっぱ寂しいね……」

果穂「はい……結華さんにも早く元気になってほしいです……!」

あさひ「それならみんなで応援しに行くっすよ! わたし、この前スーパーで面白いもの___」

冬優子「はーいはい、後で愛依が見てくれるってー」


中学生が口を開いた瞬間に小金持ちが警戒を露わにした。
流石の黛冬優子、下手に刺激をしないように、そこのフォローは手早い。
395 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/03/03(木) 22:07:16.53 ID:cC0CFlEJ0

智代子「でも、実際どうしよっか。結華ちゃんナシはやっぱり寂しいよ」

夏葉「ずっとこのままというわけにいかないのも確かだけど……下手に干渉すべきじゃないのは確かよね」

(うっ……)


まるで自分のことを名指しされているかのように感じて、少しばかり胸が痛い。


美琴「彼女のことは彼女のこと、自分自身で克服するしかないんじゃない?」

ルカ「……まあ、それはそうだけどな」

果穂「はい! それならお手紙を書くのがいいと思います!」

夏葉「手紙……? 果穂、詳しく聞いてもいいかしら」

果穂「えっと、前に国語の時間のお話で読んだんですけど、カエルの友だち二人がけんかをしちゃうお話で……おたがいになか直りしたいのに、なかなかすなおに言えないから、お手紙をかいたんです」

果穂「お手紙だったら、直せつ顔を合わせなくても思いが伝えられるので、話す側も聞く側も、気持ちがちょっと楽になるかなって思いました!」

智代子「それ、すごくいいアイデアだよ果穂! 直接お邪魔しちゃうと負担になっちゃうかもしれないけど、手紙だったら喜んでくれるかも!」

(手紙、か……)


存外いい案が出たな、と感嘆していたが黛冬優子の反応はそうではなかった。
胸の辺りを抑えて、口元には緊張すら漂っていた。
私はそれとなく近づいて、その真意を問う。
396 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/03/03(木) 22:08:58.70 ID:cC0CFlEJ0
ルカ「……おい、どうした。何かまずいのかよ」

冬優子「……別にダメってわけじゃないけど……自分がへこんでるからって、あんな小さい子にまで気を遣った手紙を書かせちゃって、受け取った側はどう思うかしら?」

ルカ「……別に、素直に受け取ればいいんじゃねーのか?」

冬優子「……はぁ、分かんない? 『自分が迷惑かけてるんだ―』からはじまる自己嫌悪。ただでさえふさぎ込んでるんだから、ドツボにハマるときついわよ」

ルカ「おいおい、それじゃどうしろってんだよ。手紙をやめさせろってか」

冬優子「そんなことできるわけないじゃない、逆にあの子を悲しませることになるわ」

ルカ「……詰んでんじゃねーか」

冬優子「早いとこ荒療治が必要ね」


それは私に向けた返事というより、自分自身で確かめるための言葉だった。
自分の口から出た言葉を、その場で読み返すようにして、その手を顎先にあてた。
私に対する口ぶりこそ荒々しいが、こいつの思い悩んでいる様子は真剣そのものだ。
メガネ女を再起させることに対する熱意は本物らしい。
397 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/03/03(木) 22:10:33.47 ID:cC0CFlEJ0
だが、それを見ていると少しばかりの疑問もわいてくるというもの。


ルカ「……なんでユニットのメンバーでもないお前がそうまでして気にかけんだよ」


同じプロダクションの仲間だ、という理由だけではないように思った。
ユニットでもない相手のことに普通首をうんうん捻ってまで時間を当てるだろうか。
こいつには、それだけでない他の理由があるはずだ。
私が確信の下たずねると、なんだか返答に詰まりつつ、あいまいな答えを返した。


冬優子「それは……その……同族だからよ」

ルカ「ど、同族……?」


同族、という言葉の意味は測りかねたが、それ以上の追及は断るという様子で黛冬優子は離れて行ってしまった。
その反応はどこか照れくささを滲ませているようにも思え、ますますあいつのことがわからなくなった。


ルカ「……はぁ」


本当にあいつと協力して、なんとかなるのだろうか。
398 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/03/03(木) 22:12:18.82 ID:cC0CFlEJ0
-------------------------------------------------
【ルカのコテージ】

メガネ女を引きずり出す、そうは決めたもののどうもやりづらい。
千雪が私にしたような強行策はかえって逆効果、小学生の手紙のような歩み寄りも追い詰めてしまう可能性がある。
一筋縄ではいかないその歯がゆさに思わずため息が出る。

「……そう考えると、私はまだ単純な方なのかもな」

部屋の水槽を忙しなく動くヤドカリを指でつついて、言葉を零した。

【自由行動開始】

-------------------------------------------------
【現在のモノクマメダル枚数…107枚】
【現在の希望のカケラ…24個】

1.交流する【人物指定安価】※透、雛菜を除く
2.モノモノヤシーンに挑戦する
3.自動販売機を使う
4.休む(自由時間スキップ)

↓1
399 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/03/03(木) 22:12:56.81 ID:sTW8kTND0
夏葉
400 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/03/03(木) 22:20:52.80 ID:cC0CFlEJ0
1 夏葉選択

【第1の島 ホテル 夏葉の部屋】


時間をつぶしに島をぶらつくかと部屋を出たところで、箱を大事そうに抱えて歩く小金持ちの姿が目に入る。
何やらガチャガチャと機械同士がぶつかりあうような音、近づいてみるとその箱の中には例のドローンが詰め込まれていた。


ルカ「お前、これ……」

夏葉「ええ、昨日の探索で見つかった危険因子よ。……念には念を、私の目の届くところで管理しておきたいの」

ルカ「んなこと、そういえば言ってたな。……重たくねーか?」

夏葉「ふふっ、ご心配には及ばないわ。それなりに自分の体の鍛え方には自信があるのよ?」


部屋にドローンを持ち込むところにたまたま出くわし、別に手伝うでもないがそのまま流れで時間つぶしに一緒に過ごすことになった。
……そういや、こいつと過ごしたことってそんなにないな。カロリーを使いそうな相手だが、大丈夫か……?

-------------------------------------------------
‣現在の所持品

【ココナッツジュース】
【ジャバの天然塩】
【ひまわりの種】
【エプロンドレス】
【新品のサラシ】
【オスシリンダー】
【メスシリンダー】
【トイカメラ】
【ドライビングニトロ】
【蒔絵竹刀】
【絶対音叉】
【七支刀】
【バール】

プレゼントを渡しますか?
1.渡す【所持品指定安価】
2.渡さない

↓1
401 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/03/03(木) 22:22:08.67 ID:sTW8kTND0
ドライビングニトロ
402 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/03/03(木) 22:33:21.10 ID:cC0CFlEJ0
【ドライビングニトロを渡した……】


夏葉「こ、これは何!? ルカ!?」

ルカ「うおっ……急にでけー声出すなよ……なんか、数十年前にはやったガキのおもちゃらしいぞ。車のシュミレータみたいなことができる……まあ、ごっこマシーンだな」

夏葉「ルカ、あなた素晴らしいわ! 私が車好きと知っていたうえでのプレゼントの選択……センスが光っているわね!」

ルカ「いや、知らねーけど……」

夏葉「ふふっ、有栖川の名に懸けてこの車も乗りこなして見せるわよ!」

(妙に気に入られてしまった……)


【PERFECT COMMUNICATION】

【親愛度がいつもより多めに上昇します!】

-------------------------------------------------


ルカ「はぁ……29……はぁ……30……」

(お、おかしい……なんで……なんで私はこいつの部屋で、腕立てさせられてんだ……?!)


こいつと過ごすことにしてから、ものの数分と経っていないはずだ。
それなのに私は苦悶の表情で床とにらめっこしながら腕をプルプルと振るわせながら息を荒げていた。
そのすぐ横で、ストップウォッチ片手に私を見つめる小金持ち。
カウントが一区切りしたところで、私にタオル片手に寄り添った。


夏葉「お疲れさま、流石ルカ……私の見込んだ通り、よく鍛えられているのね!」

ルカ「あ? お、おう……」

夏葉「痩身ではあるものの、芯がしっかりとしていてぶれていない。それでいてパフォーマンスの迫力と勢いは一級品。やはりインナーマッスルが育っていたのね。普段からトレーニングは欠かさないのかしら?」

ルカ「いや……別になんもしてねーよ」


本当に私は何も特別なことはしていない。
日々の『斑鳩ルカ』としてのパフォーマンスの練習、それと……あいつの隣に立つための特訓だけだ。
あいつの水準が余りにも高いので、その特訓の副産物で体が育っていたのだろうと自分では納得した。
ただ、それを別のやつに語るほど私はおしゃべりな人間でもない。それ以上は口を噤んだ。


ルカ「お前、そんなに人の身体に興味あるのか?」

夏葉「ええ、もちろんよ。人間の身体はその個人個人によって違う。もちろん生まれ育ったものもあるけれど、後天的に培われた筋肉や脂肪などはその人の人生を形作る重要な要素でもある。それがよく磨き上げられているということは、それだけその人の歩んできた人生がひたむきなものだったことの証左」

夏葉「ルカ、隠したところで私にはわかるわ。あなたがどれだけストイックな人生を過ごしてきたかということはね」

(……こいつ)


1.お前って美琴と相性よさそうだよな
2.その言葉はそっくりそのままお前に返す
3.自由安価

↓1
403 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2022/03/03(木) 22:36:11.36 ID:ysy8bXIg0
1
404 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2022/03/03(木) 22:39:47.51 ID:sTW8kTND0
夏葉、美琴、千雪のお姉さん組が一緒にレッスンするコミュ見たい
405 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/03/03(木) 22:47:08.43 ID:cC0CFlEJ0
1 選択

ルカ「お前って、美琴と相性よさそうだよな」

夏葉「あら、あなたの目にはそう映ったのね」

ルカ「なんつーか、お前の話を聞いてるとあいつが被んだよ」


美琴とコンビを組んでいた頃、あいつは私の生活にも口出しをしてくることがあった。
突き詰めれば結局『私の隣に立つ人間がそんなだらしのない真似をすんな』の文脈ではあったものの、あいつのストイックさが滲み出ているような気がして、
そのアドバイスが妙にこそばゆかったのを覚えている。
今のこいつから感じているのはそれに近しい感覚だ。


ルカ「ストイックなところっつーか、時にこっちを見透かしたようなことを言ってくるとこっつーか……まあお前は美琴より数倍暑苦しいけどな」

夏葉「そうね……美琴とは通じるところを私自身感じる部分もあるわ。最近ではレッスンで一緒になることも多いからよく私から美琴に指導を乞うているのよ」

ルカ「あーそうですか……」

(なるほどな……美琴のやつが前よりも妙に人間くさいのはこいつを筆頭とした周囲の連中の影響があってか……)

夏葉「美琴は私よりもアイドルとしての歴も長い……体の洗練され具合も事務所の中では別格ね」

ルカ「へぇ……そうなのか」

夏葉「一切無駄がないんだもの。もはや芸術品としての領域……私の目指すところでもあるわ」

ルカ「ハッ、お前まで美琴と同じになったら事務所なのか美術館なのかわかんなくなっちまうな」

夏葉「ふふっ、ルカも冗談を言うのね」


美琴の283での在り方……少しだけ垣間見えたような気がする。
それに、なんだか事務所の他のやつに評価をされているってのは私としても鼻が高い。

また、話くらい聞いてやってもいいかもな。

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【親愛度が上昇しました!】

【有栖川夏葉の親愛度レベル…2.0】

【希望のカケラを入手しました!】

【現在の希望のカケラの数…25個】
406 : ◆vqFdMa6h2. [saga]:2022/03/03(木) 22:50:51.80 ID:cC0CFlEJ0
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【ルカのコテージ】


「はぁ……美琴といい、小金持ちといい付き合わされる人間の身にもなってみろってんだ」


すっかり汗だくになってしまってシャツも体にべったりとくっついていて、帰るなり速攻でシャワーを浴びた。
朝飯を食って間もないってのに、どこからあの種族の人間は動くだけの活力が湧いてくるんだ?
いや、朝食をとってすぐだから……か。
随分と稼働効率がいい身体をしているもんだなと息をつく。

既に体は若干疲れているが、流石に寝るにはまだ早い。
それに、今夜はかなり神経を使うであろう例の『説得』も待っている。


「寝てる場合じゃねーよな……」


【自由行動開始】


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【現在のモノクマメダル枚数…107枚】
【現在の希望のカケラ…25個】

1.交流する【人物指定安価】※透、雛菜を除く
2.モノモノヤシーンに挑戦する
3.自動販売機を使う
4.休む(自由時間スキップ)

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