真・恋姫夢想【凡将伝Re】5

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335 :一ノ瀬 ◆lAEnHrAlo. [saga]:2023/07/17(月) 20:01:37.05 ID:deQqUpEU0
「二郎殿はこれより先、進むに及ばず。お疲れであろう、御身の養生をのみお考えください」

「は?」

稟ちゃんさんから放たれた言葉。それに俺は言葉を失う。何言ってんの?、と。

「呂布の単騎特攻。邪道と言って貶めるのは容易いですが、その有効性は確定的に明らかなもの。
 蜀なぞと標榜する武装集団。そこには未だ関羽、張飛、馬超という傑出した武人がおります。そして蜀勢が狙うのは二郎殿の首ひとつでありましょう。
 既に逆賊の狙いは明らか。洛陽にて療養していただくのがよいと愚考いたします。
 なに、華佗殿も洛陽に向かわれていますし……」

「まて。
 ちょっと待って」

「ああ、身辺の警護については典韋殿、李典殿、陳蘭殿を充てます」

不足ですか?と首を傾げてくれる。
無論。

「気に食わないな。これは俺の喧嘩だ。俺の戦争だ。
ここで引けとかありえんだろうが」

 そして、いっそ冷たいばかりの視線を。

「感傷、という奴ですか。
相手の勝利条件は二郎殿の首級。であればそれを避けるのは必然。
お気に召さずとも聞いていただきますとも」

淡々とした言葉、だが俺の神経を逆撫でるそれにしみじみと思う。
なんか、ありがたいなあ、と。諫言、有難し。
だが、それはそれ、これはこれである。

「風、蜀勢の動きについて現状報告!」

「はい〜。その軍勢を集結させ東へ向かっていますね。襄平は既に孫家によって落とされていますからねぇ〜。
 なお、近隣の村落を扇動し、引き連れている模様ですね〜。
既に数千の民が同行。ほどなく数万に膨れ上がるかと〜」

どこぞの笛吹き男かよ!
まあ、それも想定内である。つまり。

「民の歩みの遅さ、その分厚さに追撃が困難ということだろう?」

ぴく、と稟ちゃんさんの鉄面皮が揺らぐのを見て。笑う。

「民を肉の壁となしての逃亡。厄介この上ないだろう?
 追撃するならば民を馬蹄の犠牲にせんといかんだろうさ。
そして、その汚名を背負うのは俺の仕事だ。
 そう、その通り。そして自称天の御使いたる北郷一刀を。蜀なぞという幻想に生きる蒙昧どもを教育してやろうじゃないか。そうさ、つまり」

――魔王からは逃げられないのさ。
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