【リコリス・リコイル】千束「……本気で言ってるの、それ」

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1 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/04/20(木) 15:02:32.54 ID:m5lu7S3d0
1日目 朝

喫茶リコリコ

千束「えへへー」ウキウキ

たきな「もう、何を浮かれているんですか」

千束「だって今日はたきなとデートなんだも〜ん」ニヒヒ-

たきな「本当、子供みたいなんだから。それに、遊んでいいのは午後だけですよ。午前中はあくまで病院の検査への付き添いですからね」

千束「定期健診なんていうけど、全然問題ないのになぁ。DAの山岸先生のところで済めば早いのに……」

たきな「山岸先生は町医者でしょ?異常が見つからないかを大きな病院で定期的に診てもらわないといけないからこその定期健診じゃないですか。それに、心臓を新しくしたのは、ついこないだの話ですし」

千束「ぶ〜」

ミズキ「ま、確かに見守り役は必要ね」

千束「私、そんなに子供じゃないよーだ」

たきな「行きますよ。山岸先生からの紹介状は持ちましたか?」

千束「あ、いっけな〜い!」

ミカ「ははは、二人とも気を付けてな」

ミズキ「行ってら〜」

千束・たきな「行ってきます!」カランカラン

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2 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/04/20(木) 15:05:21.91 ID:m5lu7S3d0
お昼前

都内 K医大病院

心臓血管外科医「うん、人工心臓の調子は良さそうだね」

循環器内科医「そうですね。足に浮腫もなし、画像も問題なし……と。はい、心エコー終わり。服を着ていいよ」

千束「うぅ……おっぱいにローション塗りたくられて弄られた……お嫁に行けないよぉ……」

循環器内科医「まったく……人聞きの悪いことを……」

たきな「そうですよ。ちゃんとした検査なんだから、茶化しちゃだめです」

千束「えへへ」テヘペロ

心臓血管外科医「特変なし……ということで山岸先生には返書書いておくよ。えっと山岸先生は……総合診療科だったっけ……」

千束「ありがとうございました!」

循環器内科医「……ただね、よく聞いて。君は元々拡張型心筋症だ。今更言うまでもないが、いくら今が元気だと言っても、薬は一生飲み続けなければならないし、癌や感染症になるリスクも高い。突然死を起こす可能性だって、ないとは言えないんだ」

千束「……!」

循環器内科医「それだけは肝に銘じて、今を大切に生きて欲しい」

千束「……はい!」

心臓血管外科医「次はまた半年後に来てね」

循環器内科医「何か異常があったらすぐに山岸先生のところに行くんだよ」

千束「は〜い」

たきな「お世話になりました」
3 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/04/20(木) 15:07:01.93 ID:m5lu7S3d0
その頃 都内 

警視庁による一斉検問

警察官1「はいご協力ありがとうございました〜行ってくださ〜い」

警察官2「次、ハイエース二台来ます」

警察官1「すみません、窓開けてもらっていいですか」

運転手「……」スーッ

警察官1「免許証の提示をお願いします」

運転手「……」スッ

警察官1「ありがとうございました」

警察官2(……このハイエース二台、えらく車体が沈んでるな)

警察官2「すみません、念のため車内を見せてもらってもいいですか」

運転手「……!!」

ブォォォン!

警察官1「うわ!急にバックするな!止まれ!」

キキッ ブォオオオオ

警察官1「うわあ!!突っ込んでくる!」

警察官2「こ、こいつら突破するつもりだ!!威嚇射撃!!」チャッ

パン!パン!

ブォオオオオ ドカッ ガシャアアアン

警察官1「け、検問を突破しやがった!」チャッ

警察官2「撃て!撃て!」

パン!パン!

警察官1「●●検問・警視47号より!白のトヨタ・ハイエース2台が検問を突破し港区方面へ逃走!ナンバーはねずみのね、●●―●●、たぬきのた、●●―●●!検問PCは自走不能!手配願います……!」
4 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/04/20(木) 15:09:23.86 ID:m5lu7S3d0
K医大病院 病院食堂

心臓血管外科医「お、助教、お疲れ様」

外科医「あ、お疲れ様です。今日は珍しいですね、お二人揃ってるなんて」

心臓血管外科医「行政からの依頼で、ちょっとVIPな患者がいてね、特別に二人揃ったんだ。今から帰るとこだよ」

外科医(……心臓移植でも受けた患者か?まぁウチは設備の充実に関しては都内有数だからな)

循環器内科医「調子はどう?」

外科医「救急外来なんて、もうかったるいですよ。僕、もう当直医から外してもらおうかなと」

循環器内科医「まあまあ、まだ若いんだから」

外科医「あ〜あ、毎日早く帰ってゆっくりしたいんだけどな」

心臓血管外科医「中々そうはいかないよね〜」

外科医「こんな事なら、先生方のように非常勤になるか、どっか転職してもっと楽な訪問診療とかやろうかなって思っちゃいますよ。先生、良いところご存じないですか」

心臓血管外科医「はは……いやぁ……」

心臓血管外科医・循環器内科医(こいつ、助教のくせに、ほんっとモチベ低いなぁ……)
5 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/04/20(木) 15:13:34.59 ID:m5lu7S3d0
お昼過ぎ

K医大病院 1階ロビー

クラーク「はい、処方箋と明細とお釣りです。お疲れ様でしたー」

たきな「病院の会計って時間かかりますね。さて、お金も払ったし……」

千束「あとは処方箋を持ってお薬もらうだけだね。薬局はどこだっけ……」

たきな「いったん正面玄関を出て左みたいですね。あっちが玄関なので、行きま……」

パパパパーン

たきな「!?」

千束「銃声っ!?」

たきな「ど、どうしてここで銃声が!?」

千束「見て、たきな!」

たきな「っ!!玄関に武装した男がおよそ一個小隊……!!」

パパパパン

たきな「た、建物の裏側からも……!」

たきな「どうします、応戦しますか!?」チャッ

千束「ダメ!一般の人が多すぎる!銃はしまって、私について来て!」ダッ

たきな「了解です!」ダッ
6 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/04/20(木) 15:15:26.54 ID:m5lu7S3d0
1階ロビー 女子トイレ

千束「たきな、銃と予備弾倉とDA貸与のスマホ出して!」

たきな「は、はい!」チャッ

千束「借りるよ!それと、そこのトイレのタンクの蓋を開けて!」

たきな「え……!?」

千束「急いで!」

たきな「は……はい!」ガコッ

千束「えい!」パチャン トプン

たきな「な、何するんですか!」

千束「私のもこの中に沈めとくから!」パチャン トプン

たきな「ええええ!?」

千束「……いいの。だって、今から……」ガコン

ガチャ

テロリスト「おい、そこの学生、両手を挙げてロビーに出てこい!!」チャッ

千束「……こうなるんだから」

たきな「……分かりました。ここは彼らに従いましょう……」
7 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/04/20(木) 15:17:56.71 ID:m5lu7S3d0
その後 喫茶リコリコ

カランカラン

ミカ「いらっしゃ……おや」

ミズキ「珍しいお客が来るもんだね」

クルミ(やば、DAの司令官じゃん。押し入れに隠れよっと)ソソクサ

楠木「邪魔するぞ……私だって、美味いコーヒーを飲みたいと思う時もある。それにしてもここは静かだな」

ミカ「まぁ、今日は千束もたきなも外出しているからな。それを見計らって来たのか?」

楠木「あの二人はいないんですか。偶然ですね」

ミカ「仕事の話か?」

楠木「それも今日は特にありません」

ミカ「そうか。ほら、ブラックで良かったな?コーヒーお待ちどうさま」

楠木「ん……やはり、ミカのコーヒーは逸品ですね」ズズッ

ミカ「今度来るときはフキとサクラも連れてくればいい。おかわりはどうだ?」

楠木「頂きます」スッ

TV「……番組の途中ですが、臨時ニュースです。警視庁によりますと、正午前に都内●●の警察の検問で、不審な車二台が警察官の制止を振り切って逃走、またこれの関係は不明ですが、都内のK医大病院の一部が、先ほど詳細不明の武装勢力に占拠された模様です」

楠木・ミカ・ミズキ「!?」

楠木「な、何だと……」

ミズキ「……その様子だと、DAも兆候は掴んでなかったようね。ラジアータもヤキが回ったのかしら?」

楠木「恥ずかしい話……言い訳かも知れんが、この占拠事件はおそらく計画的ではないと思う。何か偶発的な……」

ミカ「……なんてことだ」

楠木「どうしました?」

ミズキ「千束とたきなが、今日、あの病院に行ってるの」
8 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/04/20(木) 15:20:29.47 ID:m5lu7S3d0
1階ロビー

テロリストのリーダー「我々は武装組織・日本赤色解放戦線である!!」

リーダー「傷ついた同志の治療の為、やむなくこのK医大病院を占拠した次第である!」

リーダー「日本警察が更なる手出しをしてこない限り、本病院の安全は保障される!」

リーダー「こちらからの要求については、追ってまた連絡する!」

リーダー「という訳だ。先生、仲間の治療をお願いしますよ。さっき警察の検問で何発か喰らって、軽傷とはいえ怪我人が出てるんでね」ニヤリ

外科医「わ、分かった……治療が終われば、すぐに解放してくれるのか?」

リーダー「それは、日本政府の心がけ次第だな」
9 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/04/20(木) 15:22:18.12 ID:m5lu7S3d0
リーダー「ったく、想定外だったな。海路で国外へ出るはずが、予期せぬ検問のせいで予定が狂っちまった」

副リーダー「日本の警察も、なぜか分かりませんが神経質になっていますね。今日も、ためらいを見せずに水平射撃してきましたし……」

リーダー「……日本警察も、我々にとっては悪い意味で欧化していくのかもしれん」

副リーダー「しかし、あの限られた時間の中で、病院を占拠して交渉カードにするというのはいい判断でしたね」

リーダー「元々考えていたことだ。同志の治療はもちろん、インフラも人質も揃ってるからな、まさにおあつらえ向きの拠点というわけだ。と言って、長居するつもりもないがな」
10 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/04/20(木) 15:24:40.48 ID:m5lu7S3d0
テロリスト「人質の諸君は、ここ1階ロビーに集まって昼夜過ごすように!許可なく行動した場合は、生命の保障はしない!!」

ザワザワ ヒソヒソ 

千束「AKの……あれ、47かな?74かな?」

たきな「弾倉とストックの形からして、あれはAK74です」

千束「マカロフ持ってる奴もいる。共産圏の骨董品ばっかだね」

たきな「殺傷力の高い骨董品ですね。でも、時代遅れのAKなら、千束なら余裕ですよね!」

千束(……そうでもないんだよ、たきな。AKは弾がブレやすいから、避けるのも地味にしんどいんだよ……)

たきな「身のこなしからしても、奴ら、一定以上の軍事訓練は受けていますね」

千束「爆弾やブービートラップの類は……今のところ、どこにも仕掛けてなさそうだね」

たきな「はい」

千束「とりあえず、今分かってる情報だけ楠木さんに報告してくるね!」

たきな「ありがとうございます、お願いします」

千束「すみませ〜ん!おしっこ行きたいで〜す!」ブンブン

たきな「なっ……ちょっと千束!」
11 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/04/20(木) 15:27:28.32 ID:m5lu7S3d0
喫茶リコリコ

ピコーン

楠木「……!!」

ミカ「楠木、スマホが鳴ったぞ。それ、もしかして・・・・・・」

楠木「ああ……千束からです。やはり、たきなと一緒に病院の旧棟で人質にされてます。敵の全体数はおよそ二十名、メインウエポンはAK74。リーダー格らしいのはマカロフ拳銃も持っている……と」

楠木「人質は、棟内の介護医療院に入院している25名と、見舞客5名、外来は千束と付添いのたきなのみ、医療関係者は救急外来の外科医1名、看護師12名、クラーク1名、MSW(医療相談員)1名」

ミズキ「共産圏で武装訓練と武器を得た連中だったとはね。面倒ね」

ミカ「どうするんだ?」

楠木「当然、情報は警察に上げます」

ミカ「DAは……出る幕ではないな」

楠木「これは既に周知の事件になってしまっています。警察が対処すべき事案です」

ミズキ「で、私達はどうするの?」

ミカ「現に千束達が人質となっているだろう、当然フォローだ。それで、千束達にはこれからどうさせる?」

楠木「とりあえずは情報収集させるにとどめておきます。どの道、敵と人質の人数が報告通りとすれば、あいつらも今はそれしかできません」

ミカ「……そうだな。あとは、警察が対応を誤らなければいいんだが……」

楠木「……」

楠木「…………」

楠木「………………」ウーン
12 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/04/20(木) 15:32:48.94 ID:m5lu7S3d0
その後

首相官邸 地下 危機管理センター

ワイワイ ガヤガヤ

警察庁警備局長「長官!!お電話です!!」

警察庁長官「ああ!?誰からだ?」

警備局長「DAの楠木局長です!」

警察庁長官「DAだと?今はそれどころじゃない!!後にしろ!!」

警備局長「は、はぁ……」

警察庁長官「……お待たせしました、総理」ガチャ バタン

警視総監「お疲れ様です、長官」

警察庁長官「おう、お疲れ様」

首相「二人とも呼び立てて済まない。共有しておきたい情報がある。アメリカからだ。K医大病院を占拠した日本赤色解放戦線についてだが、奴ら、昨年中東●●国の米大使館を攻撃した国際武装勢力の一味らしい」

警視総監「そうだと思いました。やはり地続きでしたか……」

首相「生かして日本国内から出すな、だそうだ。逮捕……もしくは射殺せねばならん。国外に厄介払いするというのも、さすがに諸外国に対して無責任だ」

警視総監「恐らく彼らは、我々に航空機を用意させて中東辺りへ高飛びする計画でしょう。過去のよど号ハイジャック事件のように」

警察庁長官「彼らだけで出国する、とはまず考えにくいです。目的地に着くまでは、敵は人質を手放さないでしょう。そうなると、離陸後に遠隔で機を爆破して処置、という訳にもいきますまい」
13 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/04/20(木) 15:34:16.88 ID:m5lu7S3d0
首相「つまり……何が何でも奴らが病院を占拠しているうちに事件を処理しなければならんということか」

警察庁長官「はい。ちなみに、アメリカは手出ししてくるのでしょうか?」

首相「例のごとく静観だ。装備が必要なら貸すと言ってはいる」

警察庁長官「屁の突っ張りにもなりませんな」

警視総監「我々のSATにお任せください」

首相「報道は管制下にある。その点は先ほど総務相とも話をした。存分にやり給え」
14 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/04/20(木) 15:36:26.15 ID:m5lu7S3d0
その後 喫茶リコリコ

プルルルル ガチャ

警察庁長官『なんだ、しつこいぞ』

楠木「DAの楠木だ。さっそく報告がある。K医大病院で、リコリスが二人人質となっている」

警察庁長官『なんだと……?』

楠木「おや、そちらではやはり未確認の情報だったか」

警察庁長官『憎まれ口をたたくな。それで、その人質はどうなっている?』

楠木「敵の監視下にあるが、武装と通信機器は隠匿に成功し、定時連絡は可能な状態にある。目下、敵の情報収集をさせている状況だ」

警察庁長官『情報収集ならこちらでもやっている。敵の戦力はあらかた見当がついたところだ』

楠木「現場の要員からの情報も重要だ。どうせ、SATを使う作戦を予定しているんだろ?別に貸し借りにするつもりはないから、情報提供はさせてもらいたい」

警察庁長官『お断りだ!貴様らDAが関わると、ロクなことにはならん!だいたい、この間の延空木事件とその後の銃器回収で、貴様らのケツを拭いてやったのは誰だと思ってるんだ!』

楠木「それについては感謝している!だが今は……」

警察庁長官『とにかくだ!貴様らDAの関与は拒否する!』

楠木「そんな意地を張っている場合か!」

ガチャン ツー ツー

楠木「……頭の固い木っ端役人めが!」

ミカ「先が思いやられる……」

ミズキ「とりあえず、私達でできることをやるしかないわね」
15 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/04/20(木) 15:39:09.35 ID:m5lu7S3d0
危機管理センター

警視総監「今の電話は、DAの局長からですか?」

警視庁長官「ああ。この国の汚れ仕事は全部自分たちが背負ってると勘違いして我々警察を見下し、いい気になっているいけ好かん奴らだ!」プンスカ

警視総監「そのくせ予算はふんだんに使っているようですから、腑に落ちませんね。一人一人の装備も交番巡査より充実しているようですし」

警察庁長官「DAは金喰い虫だ。あれだけの規模の組織を国民の眼から秘密裏に運営するには、かなりのカネがかかってる。噂では、全てのインフラに優先する最強のAIも動かしているそうだからな」

警視総監「その予算を出しているのはこちらなのですから、もうちょっと我々に従順になってもいいのにですね。独自に予算を請求できるほど明朗な組織でもないくせに……」

警察庁長官「……ちょっと語弊があるな、総監」

警視総監「え?」

警察庁長官「確かに我が警察庁はDAの運営費を拠出しているが、それは一部に過ぎんのだよ。考えてもみたまえ、警察庁が100%も拠出したら、必ず国会で追及される額になってしまう」

警視総監「となると……残りはどこから?」

警察庁長官「それが分からん」

警視総監「……内閣機密費でしょうか」

警察庁長官「それもどうも違うらしい。それに内閣機密費程度では足らんだろう」

警視総監「いずれにしても、気味の悪い組織ですね」

警察庁長官「いずれにしても、奴らDAの指図は受けんぞ!」
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/04/20(木) 15:41:43.89 ID:m5lu7S3d0
2日目 朝

病院1階ロビー

たきな「おはようございます、千束」

千束「おはよ。うーん……さすがに床にマットレスだと、腰が痛いよー」ノビー

たきな「ですね……」イタタ

テロリスト「食事が搬入されてきた。人質諸君、取りに来い」

たきな「ザ・病院食ですね。お粥に薄い味噌汁、パサパサのメザシ、果物ゼリー……」

千束「仕方ないよ。こんな状況下で、ちゃんとした食べ物が出るだけでも感謝しなきゃ!」

たきな「……そうですよね」

子ども「……」ジー

千束「あれれ?僕、ゼリー欲しいの?じゃ、あげる!」

子ども「ありがとう、お姉ちゃん!」

母親「すみません、ありがとうございます……」

たきな「子どもに優しいのは良いことかもしれませんが……千束も栄養はしっかり摂らないと……」

千束「私……グレープフルーツは食べられないから」

たきな「……そうでしたね」

千束「ってことで、ご馳走様でした!じゃあ食後のお薬……」

千束「あ……」

千束(……そっか。お薬、受け取れなかったんだった……)

千束(たぶん数日で解放されるだろうし……ま、いっか!)

たきな「千束?どうかしましたか?」

千束「う、ううん、何でもないよ!」
17 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/04/20(木) 15:43:40.83 ID:m5lu7S3d0
ちょっと外します
18 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/04/20(木) 16:44:13.29 ID:m5lu7S3d0
その頃

喫茶リコリコ

クルミ「病棟の防犯・監視カメラに入り込めたぞ。ついでに、K医大病院の電子カルテにも潜入成功だ」

ミズキ「電子カルテ?」

クルミ「カルテってのは病院の患者ごとの診療録で、電子カルテってのはそれをPC上で管理しているシステムのことだ」

ミズキ「病院のシステムってことでしょ?よく入り込めたわね」

クルミ「こんなもの、病院の職員が自宅のPCやスマホからでもやろうと思えば入り込めるレベルだぞ」

ミズキ「え、何それやばっ」

ミカ「千束のカルテを出してくれ。特に異常はなさそうなのか?」

クルミ「大丈夫。DAの山岸っていう医者宛てに、特変なしっていう旨の診療情報提供書が昨日付けで作成されてる。次回受診は半年後でいいそうだ」

ミカ「ああ……良かった。とりあえず、体調面は一安心というところだな」

クルミ「それはそうとして……ちょっと気になることがある……」

ミカ「何か問題が?」

クルミ「この病棟、古いよね。カメラもあまり解像度が高くないやつだし、そもそも病棟内全部をカバーできてない」

ミカ「ああ、確かK医大病院は旧棟から新棟へ機能移転をしている最中って話だ」

ミズキ「旧棟は1階にロビー、事務室、食堂、そして救急外来センターとナースステーションと地域連携室があって、2階から4階は病室。5階は屋上。新棟とは3階の連絡通路で繋がっていたが、既に解体作業により孤立……か」

クルミ「もし警察がこのカメラだけを頼って敵の戦力分析に当たっているとしたら……けっこうザルだ。警察の画像解析能力が、僕やDAのラジアータに勝ってるなんて思えないしな。ラジアータも……恐らく、同じことを懸念してるんじゃないだろうか」

ミカ「……とりあえず、警察に任せるしかないが、分かることがあったら探ってみてくれ」

クルミ「分かった」
19 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/04/20(木) 16:55:00.30 ID:m5lu7S3d0
K医大病院 1階 事務室

リーダー「羽田にC2輸送機と、こちらの屋上にCH47ヘリを今日中に速やかに準備させろ。もちろんパイロット付き、燃料は満タンでだ。ヘリとの通信周波数も準備するよう伝えろ。金は要らん、余計な時間は取りたくない」

副リーダー「分かりました。これを日本政府が速やかに承諾し実行すれば、我々も晴れて海外拠点へ戻れると言う訳ですね」

リーダー「……ならいいんだがな。油断は禁物だ」
20 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/04/20(木) 16:57:35.76 ID:m5lu7S3d0
4階 介護医療院病室

千束「は〜いおばあちゃん、オムツ替えますよ〜。向こう向いてくれますか?」

おばあちゃん「あら、済まないねぇ」

おばあちゃん「長生きなんか、するもんじゃないねぇ」

千束「そう……かな……」

おばあちゃん「でも、お嬢ちゃんみたいな優しい子に会えたから、満更でもないかもねぇ」

千束「……!」

千束「ありがとね、おばあちゃん。じゃあ、今度はこっち向いてね」
21 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/04/20(木) 17:08:54.77 ID:m5lu7S3d0
1階ロビー

千束「ふぅ……オムツ交換は終わりっと。もうすぐお昼ごはんか……」

看護師「ごめんなさいね、千束ちゃん。本当に助かるわ、ありがとう」

千束「全然です!」

たきな「……千束。病院側も人手が足りてないのは分かりますが、ちょっと頑張りすぎじゃないですか?」

千束「いいのいいの!こうして動いてないと、身体がなまっちゃうでしょ?」

千束「ほら、たきなも!この子に絵本読んであげて!!私は定時連絡を確認してくるから……」

子ども「お姉ちゃん、ご本読んでくれるの……?」ジーッ

たきな「え、えっと、じゃあ読むね。『そらいろのたね』……」
22 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/04/20(木) 17:11:49.97 ID:m5lu7S3d0
1階ロビー 女子トイレ

チャプ……

千束「水の中でも使えるのがDAのスマホのいい所だけど、そろそろ充電が心もとなくなってきたなぁ……」

千束「お、来てる来てる。クルミからだ。えっと……」

千束「『病棟の防犯カメラを遡って精査したところ、2階のリネン室に、敵がトランク大の荷物を幾つか持ち込んでいる模様。恐らく何らかの武器と思われるが、リネン室内にはカメラがないため、可能なら肉眼にて確認して欲しい……』か……」

千束「了解……っと」
23 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/04/20(木) 17:12:51.39 ID:m5lu7S3d0
1階ロビー

千束「……って内容だった。私が見てくるよ」

たきな「か、確認は私がやります!」

千束「たきな、無理しなくていいんだよ。視力も私の方が良いんだし、あそこには見張りもいるんだし」

たきな「無理してるのは千束の方です。私だって眼は良いですから、私に任せて下さい!」

千束「わ、分かったよ。じゃあ、くれぐれも気を付けて……」
24 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/04/20(木) 17:14:41.40 ID:m5lu7S3d0
2階 リネン室

たきな「2階のシーツ交換をするので、シーツを取りに来ました」

テロリスト「入れ」

たきな「ありがとうございます」

テロリスト「手早く済ませろ」

たきな「シーツ、シーツっと……」

たきな(……あれだ!部屋の隅にある金属製のケース……)

たきな(何だろう、確かに軍用ぽいケースだ。も、もうちょっと近づけば……)

テロリスト「……おい、何を見ている」チャッ

たきな「!!」
25 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/04/20(木) 17:16:52.72 ID:m5lu7S3d0
たきな「あ、え〜っと、シーツの枚数がどうも足らないみたいなので、ひょっとしたら新しいのがその中に入ってるのかな〜って……」

テロリスト「……」

テロリスト「その荷物は我々の食糧だ。必要な枚数を取ったのならもう出ろ」
26 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/04/20(木) 17:18:18.69 ID:m5lu7S3d0
1階ロビー

千束「ご苦労様!で、どうだった!?」

たきな「『食糧だ』って言われました」

千束「なぁんだぁ、レーションかよぉ」

たきな「ただのレーションに、わざわざ見張りをつけるわけがないですよ……一瞬だけチラ見したら、箱の側に小さく刻印がありました」

千束「なんて書いてあったの?」

たきな「不鮮明でしたが……私の視力に狂いがなければ……」

たきな「RPG―7≠ナした」
27 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/04/20(木) 17:20:49.61 ID:m5lu7S3d0
首相官邸 地下 危機管理センター

警視監「犯人……いえ、敵と呼称しますが、敵は大型ヘリと輸送機の要求をしてきました。傷ついたメンバーの治療は終了したようです」

警視総監「予想通りだな」

首相「それで、SATはどう対応するのかね」

警視監「敵を回収する大型ヘリにSAT隊員を載せ、敵の要求通り、K医大病院の屋上へ降下します」

警視監「同時に、独歩可能な人質回収目的で用意した大型バスを正面玄関前につけます。これにも、SAT隊員を載せます」

警視庁長官「なるほど、病棟の上下から突入して挟み撃ち、という訳だな」

警視監「病棟の防犯・監視カメラの分析によれば、人質は1階ロビーに固まっているそうです。その上、恐らく敵もヘリの確保のためにまとまった人数を屋上に廻すでしょう。つまり、敵の戦力を大まかに二分できるという形です」

首相「なるほど……」

警視監「作戦名は、『トロイの木馬』と呼称します。作戦開始は、本日18時とします!」
28 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/04/20(木) 17:23:31.38 ID:m5lu7S3d0
コンコンコン ガチャッ

警備局長「失礼します。総監、長官、DAの楠木局長からご伝言です」

警察庁長官「DAから伝言だと!?……まあいい、一体何だ?」

警備局長「それが……その、K医大病院にいるリコリスからの報告によれば、『敵はRPG-7を院内に数基程度持ち込んでいる模様』とのことです」

警察庁長官「……」

首相「私の記憶が正しければ、RPG-7とは確か携帯対戦車擲弾……だったな」

警備局長「おっしゃる通りです。仮にですが、敵がこれを使用した場合……」

警察庁長官「使用した場合だと?それはどういう状況だ」

警備局長「対人に使用するとは考えにくいですが……例えば、SAT隊員を載せたヘリに対して使用された場合……至近距離であれば、回避するのはほぼ不可能です」

警察庁長官「何を言っているんだ。ヘリに対して使用?そもそもヘリを要求してきたのはあいつらだ。自分たちの羽田までの足を自分たちで叩き落とすなど、常識的に考えられるか!ヘリは絶対安全だ」

警備局長「も、申し訳ございません」

警視総監「長官のおっしゃる通りだ。それに、我々のカメラ解析によれば、そもそもRPG-7と疑わしきものは存在していない。そうだろう?」

警視監「はい」

警視総監「存在するかどうかも分からんモノに踊らされる必要はない。そのリコリスが不確かな情報を伝達して来ただけだ。まったく、けしからん小娘どもだ」

警察庁長官「我々はかねての予定通り、我々の『トロイの木馬』作戦を粛々と実行するだけだ。それでよろしいですね、総理」

首相「あ、ああ。構わん」
29 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/04/20(木) 17:27:23.61 ID:m5lu7S3d0
喫茶リコリコ

クルミ「……!警察が動くぞ、今日の18時だ!」カタカタ

ミカ「何、間違いないのか!?」

クルミ「ああ、警視庁のSAT一個班が動いてるようだ」

ミカ「念のために楠木にも共有しよう」ピポパ

ミズキ「……何もなければいいけど、落ち着かないわね」

クルミ「ああ。一応、僕のドローンを飛ばして現場の様子を見ていようか」

ミズキ「それが良いわね。お願い!」
30 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/04/20(木) 17:32:44.01 ID:m5lu7S3d0
18時前 

K医大病院 旧棟 屋上

リーダー「18時には輸送機もヘリも用意できる……か。日本政府の動きも早いようで何よりだ」

バラバラバラ

テロリスト「来ました!CH47です!」

副リーダー「お、駐車場にバスも来ました。人質の受け入れ用のやつです」

リーダー「……」
31 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/04/20(木) 17:36:06.72 ID:m5lu7S3d0
1階ロビー

テロリスト「人質諸君!まもなく18時に解放する。ご苦労だった」

ザワザワ ヨカッター アトスコシダヨ

たきな「15時の定時連絡通りですね。人質解放の時間です。バスが来ました……やっぱり、カーテンを閉め切ってますね」

千束「そうだね……あ、ヘリのローター音だ!……いよいよ、上下からSATが突入してくるんだね」

たきな「どうします、私達も動きますか?」

千束「そうだね。上はヘリに任せて、私達は人質を守るフォーメーションをとろう!私達の存在はSATも知ってるとは思うけど、敵の一味に間違われないように注意!」

たきな「了解です。銃も回収済みですから、いつでも……!」
32 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/04/20(木) 17:38:34.58 ID:m5lu7S3d0
屋上

バラバラバラ……

副リーダー「おかしいですね、あのヘリ、さっきからホバリングしたままだ。なぜ、さっさと降りてこないんでしょう?」

リーダー「……嫌な予感がする。まるで何かのタイミングを待っているように感じる」

リーダー「トランシーバーはあるか?ヘリのパイロットに通信。ヘリを屋上でなく駐車場に降ろさせろ」

副リーダー「……は?1階にですか?」

リーダー「そうだ。急げ」

副リーダー「こちら日赤戦線。着陸場所の変更を指示する。正面玄関前駐車場に着陸せよ」

ヘリパイ『な、何だと?今更着陸場所を変えられるか!』

副リーダー「屋上に亀裂を確認した。旧棟のため老朽化したものと思われる。着陸場所を変更せよ」

ヘリパイ『待て!駐車場にはバスがいるだろう!』

副リーダー「バスはこれからどかす」

ヘリパイ『そ、それに駐車場周囲には電線もあるため危険だ!安全に着陸する自信がない!』

副リーダー「だったら亀裂の入った屋上に着陸を強行するか?そちらはおろか、我々と人質の安全も危険に晒すことになるぞ」

ヘリパイ『そ、そうであれば、屋上には接地せずに超低空でホバリングしながら君らを受け入れる!それなら問題ないだろう!』

副リーダー「申し訳ないが、我々は貴官の操縦の腕を完全に信頼している訳ではない。それに、我々はいいとしても、人質として連れていく医療従事者らが安全に搭乗できる保証もない」

リーダー(いやに抵抗するじゃないか。どうしても屋上に着陸したいという訳か)

リーダー「……ということは、嫌な予感は的中という訳だ」

ヘリパイ『と、とにかくいったん上に確認する!しばらく待て!』
33 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/04/20(木) 17:40:34.80 ID:m5lu7S3d0
危機管理センター

警視監「総監!敵がヘリを屋上ではなく1階駐車場に着陸させろと指示してきたとのことです!」

警視総監「……そうなると、病棟の上下から挟撃するという作戦が実施不可になるな」

警察庁長官「敵に感付かれたということか……?」

警視監「総監、いかがされますか?敵の指示に従った上で、SATをすべて1階から突入させるという形に変更しますか?」

首相「ま、待て!その場合、1階の人質に被害が出る可能性は高まるのか!?」

警視監「敵も1階に全員下りてくるでしょうから、可能性は上がります!」

首相「そ、それは困る!何としてもヘリを屋上に行かせろ!」
34 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/04/20(木) 17:42:11.98 ID:m5lu7S3d0
リーダー「……タイムオーバーだ。もう遅い。撃て」

テロリスト「RPG―7、発射!」

バシュッ!

ドガァアアアアンン!!!

リーダー「1階に降りるぞ。仕上げだ」
35 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/04/20(木) 17:45:16.97 ID:m5lu7S3d0
1階ロビー

千束「こ、この音はっ!?」

たきな「ああっ、千束!外を見て下さい、ヘリが……」

ヒュルヒュルヒュル…… ドシャアア

千束「ヘリが……駐車場のバスの上に堕ちた……!」

ゴォォォォォ…… ギャアアアア!!

千束「嘘……ヘリとバスから、火だるまになった人たちが……!」

たきな「あれ、SATの隊員ですよ……!」

リーダー「やはり、我々を騙していたな。我々と人質を回収すると見せかけ、SATを投入する肚だったのだな!」

千束「は、早くあの人たちを手当てしないと!!」

たきな「千束……!」

リーダー「無駄だよ。あの火傷ではどのみち助かるまい。なぁ?先生、そうだろう?」

外科医「あれでは、手当のしようがない……手遅れだ……」

千束「そんな……」

リーダー「だが、慈悲はくれてやる。玄関ドアを開けろ」

テロリスト「はっ!」

ウィーン

リーダー「日本警察よ、これが貴様らの愚かさの代償だ。思い知れ!」チャッ!

タタタタタタタタタッ!!

千束「っ……!」

リーダー「全員、楽にしてやった。いいか!人質諸君!!我々は本気だ!!」
36 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/04/20(木) 17:50:10.70 ID:m5lu7S3d0
その後

危機管理センター

警視監「長官、来客です」

警察庁長官「……帰らせろ。誰かに会える気分じゃない……」

警視監「そ、それが……DAの局長と教官が……」

ツカツカ

楠木「なぜ私達の情報を無視してSATをヘリで投入した!?」バンッ!

ミカ「……愚の骨頂だな」

警察庁長官「……」

楠木「追加の情報にあったはずだ、敵の武装にはRPGー7もあると!!それがあると分かっていれば、無闇にヘリを使うオプションは取り下げることができたはずだ、そうだろう!?」

警察庁長官「……」

楠木「おかげで虎の子のSAT隊員が大勢殉職した。その責任は、長官、あんたにあるんだからな!!」

ミカ「それに、警察の今回の失態は、大勢の人質を危険に晒したも同然だ。幸い、今のところ何もないようだが、相手によっては激高して人質に報復的処刑をしてもおかしくなかった。そうだろう?」

警察庁長官「……」

楠木「何か言いたそうだな。警察の初手がいきなり躓いたから、我々の手を貸してほしい、とか?」
37 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/04/20(木) 17:53:17.90 ID:m5lu7S3d0
警察庁長官「……情報収集に関しては、やはりそちらに一日の長があることは否定しない。情報については、今後はぜひともそっちのパイプを使わせてほしい」

楠木「貸しだな。……で、次の作戦はどうする?」

警察庁長官「敵にRPGがあることは分かった。もう地上から突破するよりほかない」

楠木「リコリスも次の作戦に参加させる。あんたらだけでは頼りないからな」

警察庁長官(自分たちの存在を政府にアピールする場が欲しいか……まぁ、今度ばかりは仕方ない)

ミカ「千束とたきなは、今は私が預かっている。私が親だ。私も話に加えて欲しい」

警察庁長官「人質となっているリコリスのことか。……仕方なかろう」

楠木「現状では、あの二人の身元は割れていない。定時通信で生存は確認できているし、それに携帯しているはずの銃とスマホも見つかっていないということだからな。人質になる前に、どこかに上手く隠匿したんだろう」

ミカ「だが問題は、スマホのバッテリーがいつまで保つか、ということだな」

楠木「まさにそれだ。軍用の代物だから水中でも2日は電源が保つが、それ以降は通信もできなくなる」

楠木「次の作戦をフォローするためにも、怪しまれずに病院内に入れる要員があと二人は欲しいな……」

ミカ「……私にアイデアがあるが、いいかな?」

楠木「助かります」

ミカ「これには、東京消防庁にも協力してもらう必要がある。ふふっ、彼らに協力してもらうのは、二度目だな」

警察庁長官「消防庁に……?よく分からんが協力できるよう手配はする」

ミカ「よろしくお願いしたい」
38 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/04/20(木) 18:00:35.64 ID:m5lu7S3d0
その後

首相官邸 廊下

楠木「……あ」

厚労相「おお、久しぶりだな」

楠木「ご無沙汰しております、大臣」

厚労相「元気そうだな……とも言い難いか。K医大病院占拠事件の件で、君も頭を悩ませているだろう」

楠木「は、はい。……恐縮です」

厚労相「身体を壊さんように。頑張ってくれ」

楠木「はい……大臣。いつもDAの運営にご協力頂き、ありがとうございます」

厚労相「我々の財布もそう暖かくはないが、まぁ力になれているのなら嬉しい」

厚労相「……DAの存在を黙認し、なおかつ援助しているという事実。私は死んでも極楽には行けんな」

楠木「それは私もです、大臣」

厚労相「……望まない・恵まれない妊娠による棄て子、災害孤児、交通遺児……。里親・養子縁組制度が根付かない我が日本社会において、君らDAは唯一、積極的に彼ら・彼女らを受け入れてくれている。それに感謝している厚生労働大臣たる私を、君は軽蔑するかね」

楠木「我々は……必要悪ですから」

厚労相「……我々厚生労働省はしょせん二流官庁扱いだ。何か積極的な生産活動に従事しているわけでもない。だが、仕事に誇りは持つべきだ。そうだろう、楠木局長」

楠木「……はい!」
39 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/04/20(木) 18:03:23.47 ID:m5lu7S3d0
夜中

1階ロビー

子ども「あ〜ん!お家に帰りたいよ〜!」

テロリスト「うるさいぞ!さっさと黙らせろ!!」

母親「す、すみません……ほら、いい子だからねんねしましょ……」

子ども「やだぁ!うわぁ〜ん!!」

テロリスト「うるさいっつってんだろうが!!」

たきな「子どもなんだからしょうがないでしょう!むしろ、うるさいのはあなたの方です!」

テロリスト「な、何だと!」

千束「ちょっといいですか、お母さん。お子さんをお借りします」

母親「は、はい……」

千束「ほ〜ら怖くない怖くない、べろべろばぁ〜」

子ども「……」

子ども「……」ニコ

千束「夕方のあの光景が怖かったんだよね……でも、今はほら、怖くないでしょ?」ユサユサ

子ども「うん!」キャッキャ

母親「いつも済みません……」

テロリスト「ちっ……」

たきな「……」ホッ

たきな(SATの件で、人質はもちろんだけど、敵もストレスがかなり溜まってきてる……)
40 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/04/20(木) 18:05:54.08 ID:m5lu7S3d0
3日目 朝

1階ロビー 事務所

TX「K医大病院の占拠事件のニュースです。警察は、人質救出のために警視庁特殊部隊・SATを現場に投入しましたが、武装組織・日本赤色解放戦線側の抵抗により、殉職者を出し、人質救出には至らなかったと発表しました。なお、この件につきましては、出所は不明ですが映像もネット上に出回っており……」

副リーダー「SAT隊員の遺体回収と、人質の一部開放。よく受け入れましたね」

リーダー「……ヘリ撃墜の映像が、どこかのドローンに録画されてネット上に流れた。誰がやったのか知らんが、こっちにとってはいい迷惑だ。このままでは、我々に対する国内外からのイメージが最悪なものになってしまう」

副リーダー「今更な気もしますが……」

リーダー「それに、自力での身動き困難な重症の人質はこちらも抱え込んでおきたくない。介護医療院の入院患者はこの際出て行ってもらう。どの道、この病棟は閉鎖される予定だったらしいしな。残る人質は見舞客と外来の患者だけで十分だ」

リーダー「我々はISのような人殺し集団ではない。そこははっきりとさせておきたい」

副リーダー「日本政府に、更なる要求はしますか?」

リーダー「輸送機は言うまでもないが、我々の羽田までの移動手段については今回は防弾車両を要求する。我々全員と、人質が載るだけのやつをだ。あとは要らん」

副リーダー「はい、日本政府に通告します」

テロリスト「隊長、副隊長。ちょっと来てください。地域連携室に電話が入っておりまして……」

リーダー「何だ……?」
41 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/04/20(木) 18:10:12.92 ID:m5lu7S3d0
K医大病院 地域連携室

救急隊員『こちら東京03及び04救急隊。●●通りで女子高生のバイクの二人乗りの単独事故発生。二人とも外傷あり、意識はあります。受け入れ願います』

MSW(医療相談員)「あの、こちらの状況をニュースで見てないんですか?ここは武装勢力に占拠されてるんです!」

救急隊員『それは分かっていますが、救急外来に余裕がある受け入れ病院が他にないんです。地域的にもそちらが近く設備も整ってますので、どうか受け入れ願います』

MSW「えらく粘ってくるわね……ちょっと待ってください」チラ

リーダー「話は聞こえていた」

副リーダー「どうします?どうせ人質も一部解放しますし、突っぱねましょうか」

リーダー「……いや、受けよう。これで外部に好印象を稼げれば言うことはない」

副リーダー「分かりました」

MSW「ありがとうございます。医師に連絡してきます」ダッ

外科医「はぁ!?二人も受け入れるのかよ……こんな時に、まったく……」ブツブツ

看護師「意識はある女子高生二人ですね、分かりました」

MSW「す、すみません……よろしくお願いします……」
42 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/04/20(木) 18:12:44.96 ID:m5lu7S3d0
ピーポーピーポー

救急隊員「救急隊です!女子高生二名、搬送しました!ストレッチャーを降ろします!」

ガラガラガラ

テロリスト「おっと!そこまでだ。救急隊はそのまま怪我人を置いて帰れ」

救急隊員「え、でも……ストr」

テロリスト「なんだ、貴様らも人質になりたいのか?」チャッ

救急隊員「わ、分かりました!帰ります!」

ブロロ……

テロリスト「さて先生、悪いが自分も処置に立ち会わせて頂く」

外科医「ダメだ!感染症の危険がある、不必要な人間は出てってくれ!」

テロリスト「何だと……」

外科医「どうしても立ち会いたければ、全身消毒のうえガウンとN95マスクを着用してくれ。そうでなければ立ち会いは医師として絶対に拒否する」

テロリスト(……医療用のガウンとマスクを着ければ、こちらの動きが鈍る)

テロリスト「……分かった。ただしすぐ外に控えているからな。この機に乗じて変な真似をしようとするなよ」ガチャ バタン

外科医「分かってるっつーの……」ボソッ
43 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/04/20(木) 18:15:53.17 ID:m5lu7S3d0
外科医「まったく、一人で二人を捌けって……いい加減にしろってんだ」ブツブツ

看護師(この先生、手技は確かなのに、口は悪いんだから)

外科医「……ん?これは……血じゃない?何かの塗料か……?」

外科医「……」クンクン

外科医「アル綿を」

看護師「はい」サッ

外科医「……」スッスッ

外科医「おいおい……この子、どこにも外傷なんかないじゃないか……」

フキ「先生、お静かに」

外科医「う、うわっ」

フキ「私達は警察≠フ者です。皆さんを救出するために来ました」

看護師「ええっ!?」

外科医「え、ということは、もう一人も警察ってことか?」

フキ「はい」

サクラ「ども〜」ピース

外科医「ち、ちょっと待ってくれ!怪我人でもなく、ましてや警察を受け入れたとバレたら、危ないのはこっちなんだぞ!」

フキ「ですが、今さら私達をつまみ出すのも不審がられると思います」

外科医「〜〜!!」

フキ「私達は大ケガをした女子高生です。先生はそれを通常通りに受入れ治療しているだけ。その体でお願いします。それと、人質の女子高生二人に連絡を」
44 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/04/20(木) 18:18:32.51 ID:m5lu7S3d0
テロリスト「怪我人の女子高生の受け入れ、終わりました。外科医と看護師が処置に当たっています」

リーダー「お前も立ち会え、と言ったはずだが?」

テロリスト「それが、感染症のリスクを盾に、拒絶されてしまいまして……」

リーダー「……なるほど。で、何も異常はなさそうだったか?」

テロリスト「はい。救急隊がストレッチャーを降ろしたので、そのまま受け入れて帰らせました」

リーダー「……」

リーダー「……ん?その救急車はストレッチャーごと患者を置いていったのか?」

テロリスト「は、はい」

リーダー「バカ野郎!お前の眼は節穴か!?」

テロリスト「え?」

リーダー「救急隊が自分たちのストレッチャーを回収していかないなんてことがあるか!普通、救急隊は運んだ患者を病院のストレッチャーに移してから自分たちのストレッチャーを回収して撤収していくんだ!」

リーダー「行くぞ!ついて来い!」

テロリスト「は、はい!」
45 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/04/20(木) 18:21:48.34 ID:m5lu7S3d0
救急外来 処置室

リーダー「邪魔するぞ、先生!」

外科医「な、何だ!」ビクッ

リーダー「処置は一通り終わったのか?」

外科医「あ、ああ。今終わったところだ。ベッドに横にしている」

リーダー「ベッドに……と言うことは、救急隊のストレッチャーは今どこにある!?」

看護師「そ、そこに置いてます……」

リーダー「あんたたち、医療従事者でありながら、救急隊がストレッチャーを残して行ったことに何も疑問を抱かなかったのか?」

看護師「だって、あ、あなたが『そのまま怪我人を置いて帰れ』と言ってたじゃないですか」

テロリスト「あ……」

リーダー「お前、そんな事言ったのか」

テロリスト「は、はい……言いました」

リーダー「それでビビッて置いてったのか、その救急隊は」

リーダー「何だ……思い過ごしだったようだな」

リーダー「……」

リーダー「念のため、ストレッチャーを改める」チャ!

看護師「きゃあ!!!!」

パパパパン!

ストレッチャー「」バラバラ

リーダー「……特に何も隠している様子はないな」

リーダー「騒がしくして悪かった。邪魔したな」ガチャ バタン
46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/04/20(木) 18:23:51.93 ID:m5lu7S3d0
外科医「ふぅ……まったく、肝を冷やしたぜ」

看護師「……」ヘナヘナ

サクラ「へへっ……先生、あっしらのせいで、済みませんね……」

外科医「……君はどう見ても中学生か高校生にしか見えないな。しかもそんな髪型だ。本当に警察官か?」

サクラ「」ギクッ

サクラ「わ、私けっこう幼く見られちゃうんっすよねー!だから今回の役目を任されたって訳で……あはは……」

外科医「それに君ら……つい最近、何かの広告でも見た気がするんだが……何だっけな……」

サクラ「…………」ダラダラ
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/04/20(木) 18:25:59.09 ID:m5lu7S3d0
外科医「ま、いいか……」

外科医「……それにしても……君ら以外に救搬受け入れのない病棟は……暇だな」

サクラ「先生は暇なの、しんどいっすか?」

外科医「しんどいって訳じゃないが……今までが忙しすぎたから……逆に拍子抜けしてる」

サクラ「……なんだかんだで、忙しい方がいい感じすか?」

外科医「……ふん」ボリボリ

サクラ「まあ、救急外来の外科の先生っすもんね」

外科医「……」

外科医「ったく、面倒ごとばっかり降って来やがって……まったく問題のない患者の受け入れなんか、前代未聞だよ」ブツブツ

サクラ「……」

サクラ「……でも、受け入れてくれてありがとうっす、先生!」

外科医「……ふん」
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/04/20(木) 18:27:51.95 ID:m5lu7S3d0
1階ロビー

千束(……痛っ……)ズキン

たきな「千束、どうかしましたか?」

千束「う、ううん!大丈夫だよ!」

たきな「ちょっと疲れてるんじゃないですか?占拠以来、ずっと動いてるから……」

千束「そ、そうかな……」ヘヘヘ……

看護師「ねぇ……ちょっと」

たきな「はい?」

看護師「……二人とも、救急外来まで手伝いに来てくれるかしら?」

千束「わっかりました!」

たきな「……?」

看護師「すみません、この二人を救急外来の手伝いにお借りします」

テロリスト「よし、行け」
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/04/20(木) 18:30:08.56 ID:m5lu7S3d0
救急外来

千束「ちょっ……援軍が来たかと思ったらフキかよ!」

フキ「ああん!?私らで悪かったな!?」

サクラ「あんたら、仲が良いのも今は止しましょうよ……」

たきな「そうですよ。私達もあまりここに長居は出来ません。早く!」

フキ「私達が来たことの意味は説明しなくても分かるな。新たなSATの突入作戦が、明朝実施される。私達はそのフォローだ」

千束(明朝か……やっとお薬が手に入る。良かった……)ホッ

フキ「とりあえず、ほれ、予備のスマホとモバイルバッテリーだ」

千束「さんきゅ!」

たきな「ありがとうございます」

フキ「それと予備弾倉。一人五マガジンな。ストレッチャー内に分解して持ち込めたのはそれが限界だ。最後に音響閃光弾っと。奴らが感付く前にストレッチャーから出しておいて良かったぜ」

フキ「千束がフランジブル弾、たきなが9パラ弾だったか。ったく、揃いも揃ってバラエティに富んだ弾丸を使いやがって。お前らは旧日本陸軍か」

千束「へへへ……」

たきな「……すみませんね」
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/04/20(木) 18:32:16.94 ID:m5lu7S3d0
フキ「作戦概要を伝える。あ、先に言っておくが、基本的に私らはSATのサポートに当たるわけだが、SATはSATの指揮系統で動くとして、私ら四人の現場の指揮はそれに準じて私が執るからな」

たきな「ちょっと待ってください。現場は私達のほうが熟知しています。現場での行動は私達にイニチアチブを持たせてください」

フキ「ぁあ!?セカンドが指揮するってのか?指揮はあくまでファーストの私、私が倒れたら千束ってのがセオリーだろうが」

千束「……たきな。DAや警察からの情報を客観的に見てきたのはフキ達の方だよ。それに、フキとサクラは、あらかじめAK74の射撃速成訓練も受けて来てるはず。でしょ?」

フキ「ご明察だ。拳銃弾を撃ち尽くしちまえば、AKを奪って戦うシミュレーションも済ませて来てる。なぁ、相棒?」

サクラ「は、はい!(……今、相棒って言ってくれた!)」パァア

千束「ここは、同じファーストとして、私はフキに現場指揮を執ってもらおうと思うんだ」

たきな「千束がそう言うなら……」

フキ(何だ……?それにしても千束のやつ、今日はえらくしおらしいじゃねえか……?)

フキ「……ふん。まぁ、付け加えたい情報があるんならあとでまとめて言え。今は私が話をする番だ」

たきな「……失礼しました」
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/04/20(木) 18:34:34.61 ID:m5lu7S3d0
フキ「Xデーは明日、X時は0700時。敵の大部分と人質が一階ロビーに会する朝食時を狙う」

フキ「前回のヘリ撃墜の失敗を鑑みて、屋上からの強襲は期待できない。事前に発見されれば、またぞろ撃墜されてしまうからな。その穴は私ら四人で内側からカバーする」

フキ「間髪入れず、SATの二個小隊が正面玄関と裏から突入してくることになっている」

フキ「最初に私らがしなければならないのは、何と言っても1階にあるRPG-7の無力化だ。これができないと、突入してくるSATが車輌ごと吹き飛ばされてしまう」

フキ「その点ではヘリ強襲と同じリスクを負うが、少なくとも空からヘリで接近するよりは敵に暴露する時間が短いからリスクは低い。それでSATは全員車輌で投入されることとなった」

フキ「同時に、人質達の防衛だ。戦闘中にパニックになって走り回られたら大ごとだ。SATが突入と同時に、車輌の陰に受け入れる体制を取ってくれるから、私らは私らで人質を病棟外に誘導する必要がある」

フキ「人質の誘導役は、たきなに任せたい」

たきな「ま、待って下さい。私の射撃スコアはこの中でもトップクラスです。攻撃班に入れてください!」

フキ「人質の誘導も重要な任務だ。人質を伏せさせて、タイミングを見計らって誘導し、SATに保護をリレーする。どれ一つミスっても成功しねぇ。私や千束のようなファーストならともかく、経験の浅いサクラには任せられねえし……」

サクラ「……」グヌヌ

たきな「ですが……」

フキ「それに、いくら千束とお前の射撃スコアが良いとは言っても、私らが持ち弾丸を使い果たしてしまった場合を考えろ。AKの扱いは、今の私とサクラには及ばねぇはずだ」

サクラ「……」フンス

フキ「ましてやお前はただでさえ血の気が多い。下手したら銃撃戦に夢中になって、周りが見えなくなるだろ」

たきな「……、……」
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/04/20(木) 18:36:17.60 ID:m5lu7S3d0
フキ「って訳だ。たきな、嫌か?」

千束「私も、たきなが適役だと思うな」

フキ「SATに人質をリレーしたら、思う存分攻撃に加われ。そっから先はスタンドプレーで構わねぇ。前みてぇにな」

たきな「……分かりました。たびたびわがままを言って、済みません……」

フキ(ふん……先生のところに行ってから、前に比べりゃずいぶん成長したじゃねえか)

フキ「私達は一人一人が一個小隊の動きをしなくちゃなんねぇ」

千束「質問だけど、他にDAからの増援はないの?」

フキ「ああ、私らだけだ。あまり大勢で動くと、またマスコミにバレちまうだろうしな」

千束「ふ〜ん……(何だろう、何か嫌な予感がする……)」

フキ「解散だ。明日に備えて、今夜はしっかり休養しろ」

千束「おっけ〜。んじゃ、たきな行こう?」

たきな「……」
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/04/20(木) 18:40:06.44 ID:m5lu7S3d0
たきな「……フキさん」

フキ「何だ」

たきな「今更と言われるかもしれませんが、あの銃器取引事件の件、覚えてますか」

フキ「ふん……忘れようにも忘れらんねぇよ。確かに今更だな」

たきな「あの時、私がとった行動について、私は今でも最善の行動だったと思っています」

フキ「……ちっ、何だ。現場指揮官として何もできなかった私を、いまだに責めてるのか」

たきな「そうじゃありません。とにかく、私は後悔していません。ただ……」

フキ「……何だよ」

たきな「あの時、行動の前に、現場指揮官であるフキさんに、ひとこと言っておくだった……それだけは、反省しています」

フキ「……へっ。そうされたところで私は反対したろうし、時間もなかったし、お前はどのみち撃ちまくったろうさ」

たきな「……そうだったとしても……とにかく、私の話は終わりです」

フキ「……」

たきな「明日は、よろしくお願いします」

千束「……」フフッ

ガチャ バタン

サクラ「今の……たきななりの、けじめのつけ方だったんすかね……」

フキ「……知るかよ。寝るぞ」

サクラ「先輩、今、すごく晴れ晴れとした顔をしてますよ」

フキ「……うるせぇよ」
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/04/20(木) 18:41:19.05 ID:m5lu7S3d0
>>53 訂正

たきな「……フキさん」

フキ「何だ」

たきな「今更と言われるかもしれませんが、あの銃器取引事件の件、覚えてますか」

フキ「ふん……忘れようにも忘れらんねぇよ。確かに今更だな」

たきな「あの時、私がとった行動について、私は今でも最善の行動だったと思っています」

フキ「……ちっ、何だ。現場指揮官として何もできなかった私を、いまだに責めてるのか」

たきな「そうじゃありません。とにかく、私は後悔していません。ただ……」

フキ「……何だよ」

たきな「あの時、行動の前に、現場指揮官であるフキさんに、ひとこと言っておくべきだった……それだけは、反省しています」

フキ「……へっ。そうされたところで私は反対したろうし、時間もなかったし、お前はどのみち撃ちまくったろうさ」

たきな「……そうだったとしても……とにかく、私の話は終わりです」

フキ「……」

たきな「明日は、よろしくお願いします」

千束「……」フフッ

ガチャ バタン

サクラ「今の……たきななりの、けじめのつけ方だったんすかね……」

フキ「……知るかよ。寝るぞ」

サクラ「先輩、今、すごく晴れ晴れとした顔をしてますよ」

フキ「……うるせぇよ」
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/04/20(木) 18:43:42.69 ID:m5lu7S3d0
4日目 夜明け前 

皇居前広場

SAT隊長「長官に対し!敬礼っ!」

ザッ!

警察庁長官「警視庁SAT隊員の諸君、この度は、日本赤色解放戦線の占拠下にあるK医大病院への出動、誠にご苦労である!」

警察庁長官「不幸にして、諸君の同僚で先鋒を勤めた一個班が全滅してしまったこと、これは本官にも責任がある。指揮官の一人として陳謝したい……!」

警察庁長官「だが今次作戦は前回の反省を踏まえ、必ず成功するものと信じている!」

警察庁長官「人質の生命の安全を第一に、この任務を全うしてもらいたい!」

警察庁長官「以上、解散!!」

SAT隊長「各員、車輌に乗車しろ!」

ザッ!

警視総監「……隊長、ちょっと」

SAT隊長「総監、お疲れ様です」

警視総監「あちらで長官がお話があるそうだ。行ってくれ」

SAT隊長「は、はい……?」

警視庁長官「ご苦労さん。しっかり頼むぞ」

SAT隊長「長官、激励のお言葉ありがとうございました」

警察庁長官「今次作戦だが、DAのリコリス四名が参加する。ギリギリまで伏せていて済まなかった」

SAT隊長「リコリスが……?既に潜入しているんですか?」

警察庁長官「ああ。露払いとして参加してくれるそうだ」

SAT隊長「それはありがたい話です。女子高生くらいのリコリスと共闘するというのも気恥ずかしい話ですが、お互いに犠牲者を出さないよう、しっかりと……」

警察庁長官「その話だ。敵を無力化したのち、速やかに、彼女らリコリス四名を……」
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/04/20(木) 18:48:18.44 ID:m5lu7S3d0
警察庁長官「処分してもらいたい」ボソッ

SAT隊長「!!??」

SAT隊長「そんなことを……よろしいのですか!?」

警察庁長官「問題はない。罪には問われん。その点は法務省にも確認した。首相も法務相も警視総監も承知の上だ」

SAT隊長「そういう問題ではありません、もっと……」

警察庁長官「……我々日本警察は、もっと強くあらねばならんと思っている。銃器を有する凶悪犯に対しても、我々は警察官一人一人が装備と訓練、そして心構えからして対抗できるようにならねばならん。それは君も同じ考えだろう?」

SAT隊長「確かに、年端もいかない少女に銃を持たせて凶悪犯に当たらせるというのは……我々警察官という存在がありながら、いかがなものかと……」

警察庁長官「君の言うとおりだ。我々は強くならなければならん。明治以来の悪しき伝習はここで絶たねばならんのだ。……今回作戦に参加するリコリスはほぼ全員が、現在のリコリスの要と言える能力者であるとの事だ。彼女らが消えれば、DAの影響力は間違いなく低下する」

警察庁長官「……SATは隊員を務められるのも25歳まで。隊員がそれ以降のキャリア形成に不安を抱えていることも、私は重々承知している」ポン

SAT隊長「……」

警察庁長官「DAを、潰すのだ。……君らにはその嚆矢を務めてもらいたい」
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/04/20(木) 18:52:34.50 ID:m5lu7S3d0
4日目 朝6時

K医大病院 1階ロビー 事務室

副リーダー「おはようございます、隊長。いよいよ今度こそ、日本最後の朝ですね」

リーダー「……7時に人質解放、および警察の用意した車で医療関係者の人質とともに出発予定だが、今回も日本政府は何かしら小細工をしてくるだろうか。それが気になる」

副リーダー「ヘリ撃墜とSAT全滅で、奴らも少しは学んだでしょう。杞憂かと思いますが」

リーダー「……にしては不審な点がまだある。昨日の女子高生バイク事故の件だ」

副リーダー「何か気になる点が?」

リーダー「なぜあの事故の件がまったく報道されない……?今朝辺りには出ると思ってたが……」

副リーダー「……報道されていないんですか?」

リーダー「ネットニュースくらい見ろ。敵の出方が透けて見えることもあるからな」

副リーダー「まさか、あの女子高生たちが警察のエージェントとか」ハハハ

リーダー「……それ、あるかもな」

副リーダー「え、冗談ですよ」

リーダー「いや、あの救急搬送のゴリ押し……よく考えれば不自然だ」

リーダー「副隊長、しばらくロビーを任せる。二名、ついて来い!」

テロリスト「はいっ!」
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/04/20(木) 19:06:49.19 ID:m5lu7S3d0
1階ロビー

千束「ふぁあ、おはよう、たきな!」ノビー

たきな「おはようございます。いよいよですね……。銃とバッグ、持ちました?」

千束「うん、準備オーケー!」

たきな「……」

千束「そんなおっかない顔しないの。ね〜?」

子ども「お姉ちゃん、大丈夫……?」

たきな「お、お姉ちゃんは大丈夫よ!ありがとね!」ナデナデ

千束「ねえ僕、たきなお姉ちゃんにご本読んでもらいなよ〜」

子ども「わぁ!」キラキラ

たきな「じゃ、じゃあ読むね。『はらぺこあおむし』……」

千束「ふふふ……」

千束「」ズキン

千束(!!……また、胸が……)
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/04/20(木) 19:11:41.62 ID:m5lu7S3d0
救急外来

リーダー「……」ツカツカ

サクラ「おはようございます。もうメシっすか〜?早いっすね!」

フキ(……こいつが敵の頭目だったな)

リーダー「全身打撲で運ばれてきた割には、ずいぶん元気そうじゃないか」

サクラ「う、運が良かったってやつですかね」

フキ(……嫌な予感がする)

リーダー「これは邪魔だな」バッ

サクラ「きゃっ!何するんすか!毛布、返してくださいよ!」

リーダー「搬送されてきた怪我人が、どうして病衣に着替えず、制服のまま寝ている……?」

フキ(……!)

サクラ「な、何なんっすか!?何をするってんですか……?」

リーダー「お前らは一体何なんだ……?二人とも、身体に聞いてやろうか……!?」

サクラ「やだ……やめろよ……!こっちは全身怪我して動けねえんだから……!」

リーダー「それを確かめてやるっつってんだ。おい、この女の股を開いてみろ」

テロリスト「はい!」ウヒヒ

外科医「や、やめろ!重症患者に何をする!」

看護師「乱暴はやめて下さい!」

リーダー「お前らは黙ってろ!」チャッ
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/04/20(木) 19:13:51.02 ID:m5lu7S3d0
サクラ「ひっ……やめろ!マジでやめてーっ!!」ガタガタ

テロリスト「うるせえ、大人しくしろ!!」ガシッ

サクラ「嫌ぁーっ!!」

フキ「……!!」

テロリスト「……あ?股が開かねえ……」グググ

サクラ「……ふっ!!」

ガシッ

テロリスト「ぐ、ぐぇっ……」

リーダー「な……両太腿で首を絞めやがった……!?」

サクラ「乙女の股に手ぇ掛けるなんざ、良い度胸だなぁおい……!」グッ

グキッ

テロリスト「」ドサッ

リーダー「や、やっぱりこいつら、警察の……」

フキ「動くなっ!」チャッ

リーダー「こ、こいつ!」チャッ

パパーン!
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/04/20(木) 19:14:47.83 ID:m5lu7S3d0
1階ロビー

副リーダー「銃声だ!全員戦闘態勢っ!」

テロリスト「副隊長!救急外来の女二人から拳銃を含む攻撃を受けました!ただちに小隊を呼集してください!」

副リーダー「……何だと、やはりあいつらが!?おい、小隊集まれーっ!救急外来へ向かえ!」
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [sage]:2023/04/20(木) 19:16:04.40 ID:m5lu7S3d0
SAT特殊車輛内

SAT隊員「病院内で銃声です!」

SAT隊員「どうします、作戦を前倒しして開始しますか……?」

SAT隊長「司令本部にお伺いを立てている暇はない。直ちに突入!!」
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