中二「玄関あけたらどっかの宿屋」 死神メイド「中二ミーツ死神」

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198 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/22(日) 02:37:42.34 ID:sOp4ugrwo


中二 (ここで……)


パン娘 「何を言ってんのよ」

パン娘 「へい、お待ちぃ」


カボチャのドルマ
残り物ピキリア
残り物スープ


中二 (中身をくり貫いたカボチャに、何かおいしそうな炒め物が入っている?)


女郎蜘蛛娘 「きたきたー」

女郎蜘蛛娘 「残り物パン娘スペシャル!」


パン娘 「残り物は余計よ!」

パン娘 「……まだ子供だし、ここで暮らすのは大変よ」

パン娘 「それに、パパやママも心配するでしょ?」


中二 「いいえ? 全然」


パン娘 「いやいや、そうは言っても……」


中二 「まったく、心配していませんね」


パン娘 「まあ照れるのは分かるけど、心配……」


中二 「していません」

中二 「いなくなったら泣いて喜びますね」


パン娘 「…………」

パン娘 「ええぇ〜〜……」


女郎蜘蛛娘 「…………よし」

女郎蜘蛛娘 「いっただきまーす!」



199 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/22(日) 02:51:29.36 ID:sOp4ugrwo


パン娘 「ちょ、ちょっとあんた、何をのん気に食べ始めてんのよ」

パン娘 「今すごいこと言ったわよこの子!」


女郎蜘蛛娘 「残念ながらたぶん私の手に負えん!」

女郎蜘蛛娘 「食べよう!」


パン娘 「逃げんじゃないわよ!」


中二 「いただきます!」


パン娘 「ちょ、ちょっと、あんたも……!」


中二 「……!! 濃厚な甘みのカボチャとモチっとした麦のような何かのハーモニー!」


ムシャムシャムシャ


パン娘 「えぇ〜……」


女郎蜘蛛娘 「おいしいだろー、中二よ」

女郎蜘蛛娘 「パン娘の手にかかれば、半分ゴミのような食材もこの通り」

女郎蜘蛛娘 「間に合わせのファンタジスタとは彼女のことだ!」


パン娘 「何てこと言ってんのよアンタぁ!」


中二 「なるほど、食の錬金術士……」

中二 「というわけですね!」


女郎蜘蛛娘 「知らんけど」

女郎蜘蛛娘 「うーん、うまいっ!」


中二 「うまいっ!」


モグモグモグ

ムシャムシャムシャ


パン娘 「何なのよコレ、もぉ……」



200 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/22(日) 03:09:59.01 ID:sOp4ugrwo


パクパク モグモグ


中二 「こんな小さなカボチャもあるんですね」

中二 「皮が暗い紫色で……初めて見ました」


パン娘 「似てるけど違うものよ。もとは同じだけど」

パン娘 「魔女のカボチャ畑でたまにできていたのが始まりなんですって」

パン娘 「今ではお店にいっぱい並べられるくらい、簡単につくれるようになっているの」

パン娘 「栽培には毒ヨモギと角ムカゴが関係しているって聞いたけど、よく分かんない」

パン娘 「前にうちで作ってみたんだけど、だめになっちゃった」


中二 「へえ〜」


女郎蜘蛛娘 「飲む回復薬の材料にもなったりするんだよ」


中二 「コボルト娘さんが飲んでたようなものですか?」


女郎蜘蛛娘 「そうそう。あれはたぶん苦いやつだと思うけど」

女郎蜘蛛娘 「これを使うと甘くなるんだよー」


中二 「へえ。甘い方が良いですねえ」


女郎蜘蛛娘 「だよねえ」


中二 「飲む回復薬って、疲れが取れるとか、そういうものですか?」


女郎蜘蛛娘 「小さな傷もなおせるよ」

女郎蜘蛛娘 「高級なのになると、大怪我もあっという間になおせちゃう」


中二 「傷があっという間になおる……って、想像できませんけど」


女郎蜘蛛娘 「そうなんだ?」


中二 「だいたいの擦り傷とか切り傷とか、小さくてもなおるのに数日はかかります」


女郎蜘蛛娘 「怪我しにくい世界だねえ」

女郎蜘蛛娘 「まあ、こっちでも質の悪いの薬だと小さな傷でもなおすのに時間がかかったりするけどね」


201 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/22(日) 03:52:03.46 ID:sOp4ugrwo


モグモグ キャッキャ

パクパク ウフフ


パン娘 「……あ、魔動画つけていい?」


女郎蜘蛛娘 「むぃーふょー(いーよー)」


パチン

フヴォン


魔動画 『ダンジョン探索の準備は、ぜひGアント商会で』

魔動画 『上層から下層まで、Gアント商会は良質なアイテムを提供いたします!』


パン娘 「よかったあ、まだ始まってなかった」


中二 (宿オークさんのところにあったものと同じ物?)

中二 (こっちのは箱みたいだけど)


女郎蜘蛛娘 「最近熱心に見てるよね、スパットレース」


パン娘 「私の応援してるチームがいい感じなのよ」

パン娘 「とくに今日は市街戦の王子、飛行帽フォレ様の本領発揮なんだから」


女郎蜘蛛娘 「あはは、好きだねえ」


中二 (スポーツがあるのかな?)


202 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/22(日) 03:59:01.91 ID:sOp4ugrwo


女郎蜘蛛娘 「スパットっていうモンスターがいるのよ」

女郎蜘蛛娘 「それに乗って、雪原とか砂漠とか市街地とか走って速さを競ったり」

女郎蜘蛛娘 「風船くっつけて割りあったりするわけ」

女郎蜘蛛娘 「今日は夜の市街戦みたい」


中二 「ほー」

中二 (見てみないと分からなそうだ)

中二 (……ん?)

中二 「あれ? 砂漠とか雪原って、この町に……」


女郎蜘蛛娘 「ねー、中二くんよ」


中二 「あ、はい」


女郎蜘蛛娘 「今日はうちに泊まっていきなよ」


203 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/22(日) 04:18:38.47 ID:sOp4ugrwo


女郎蜘蛛娘 「このままさー」


中二 「ええっと」

中二 (女郎蜘蛛娘さんは魔動画? に顔を向けていて)

中二 (どのくらい本気か分からない)


女郎蜘蛛娘 「うちはここのすぐ上なんだけどさー」

女郎蜘蛛娘 「もう遅いし、宿オークさんには私が説明するからさあ」


中二 「はあ、ありがたいですけど」

中二 「やっぱり一度宿に戻った方が……」

中二 「ほら、なんだかゴタゴタしたまま出てきちゃったので」


女郎蜘蛛娘 「あちゃー、そうかー……」


中二 「はい……」

中二 (そうだ、あんまりゆっくりしてられないや)


女郎蜘蛛娘 「じゃあ、その辺もあした一緒に謝るってことでー……」


中二 「え?」


女郎蜘蛛娘 「あー、食った食ったあ」

女郎蜘蛛娘 「パン娘ぇ、私今日ここに泊まっていいー?」


中二 「はいっ?」


パン娘 「テキトーな子なのよ、本当……」

パン娘 「あんまり真面目に対応しすぎない方が楽よ」


204 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/22(日) 05:53:02.04 ID:sOp4ugrwo


女郎蜘蛛娘 「中二よ、君も一緒にパン娘の家に泊まるのだ」


中二 「やや、さすがにそれは……」


パン娘 「ほらほら、あんたが連れ出したんでしょ」

パン娘 「ちゃんと面倒見てあげなきゃ……って寝る体勢に入るなあ!」


女郎蜘蛛娘 「寝巻きはそこのタンスの下から二段目だからねー……」


パン娘 「そこは下着よ!」

パン娘 「じゃ無くて……寝るなあ!」


女郎蜘蛛娘 「レース始まるよ」


パン娘 「えっ」

パン娘 「やあん、本当……!」




実況A 『……皆さん、今夜のスパットレースを飲み物片手に観ようだなんて思っていませんか?』


実況B 『だとしたら、今すぐに飲み干すべきだね』


実況A 『その通り。今夜は優勝への大事な大事な大事なターニングポイント』

実況A 『各チーム、いつにも増して本気の布陣で臨んでくるこの試合』

実況A 『目を離す隙なんてどこにもありません』


実況B 『中でも注目は彼さ。飛行帽フォレ』

実況B 『さっき、調整房でロングイアーの碧眼エルフとバルカンの片翼インプと話してたんだけど』

実況B 『どちらも、彼のことをかなり意識していたね』

実況B 『もっとも僕は今、スタンド二段目にいるホットパンツの彼女から目が離せないけど……』



女郎蜘蛛娘 「声優ってこれ?」


中二 「……必要なスキルではあります」


パン娘 「あーん、もう。早く映してよ、飛行帽フォレ様を!」



205 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/22(日) 06:22:30.87 ID:sOp4ugrwo


中二 (実況の人がどんな話し方をするのか聞いていきたい……)

中二 「…………」



実況A 『さあ、各チームのメンバーを見ていきましょう。まずは……』



女郎蜘蛛娘 「くあぁ………」


中二 「…………」



実況B 『……第四戦から急遽トップフラッグを受け継いだとは思えない貫禄』

実況B 『金毛猫耳が帰って来ても、立派に席を争えるよ』


実況A 『ええ、まさに今季最も成長した選手は間違いなく彼でしょう』

実況A 『さて、皆さんお待ちかね。続いてはこのチーム……』



パン娘 「んもーう! マッスルヴァンパイアの人たちなんて映すの後で良いじゃない!」

パン娘 「見たいのはフォレ様よ、ホークアイのフォレ様!」


中二 (この実況の人たち、息が合ってるな)

中二 「実況の人たちは、いつも同じなんですか?」


女郎蜘蛛娘 「……さあ?」

女郎蜘蛛娘 「でも、たしか魔法ラジオで他の番組を一緒にやってたかも」


中二 「ほー……」

中二 (今度探して聞いてみよう)


女郎蜘蛛娘 「…………」

女郎蜘蛛娘 「泊まってく?」


206 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/22(日) 06:42:23.42 ID:sOp4ugrwo


…………

…………


少し後



ガサ ゴソ


パン娘 「……どう?」


中二 (パン娘さんの寝巻きを貸してもらった)

中二 (……お尻がぶかぶかだ)

中二 「え、えっと……」


女郎蜘蛛娘 「お尻がぶかぶかでしょ? お尻が」


中二 「あ、はは、まあ……ですね」


女郎蜘蛛娘 「ぶっかぶかだって、お尻が」


パン娘 「分かってるわよ……お尻お尻うるさいわよ!」

パン娘 「ほら、このサスペンダー使って。上は大丈夫?」


中二 「は、はい」


ハミュ ハミュ


中二 「……ど、どうでしょうか」


パン娘 「うん、うんっ、可愛いじゃない!」


女郎蜘蛛娘 「うん、可愛い。変なキノコみたい」


中二 「変なキノコですか」


女郎蜘蛛娘 「眠らせてきたり、毒にしてきたりする奴」


中二 「うわっ、やだなあ」


パン娘 「着心地はどんな感じ?」


女郎蜘蛛娘 「チクチクしない? パン族は下半身ぼーぼーだから」


パン娘 「ちゃんと洗ってあるわよ! ぼーぼーとか言うなあ!」


中二 「ゆったりして、気持ち良いです」

中二 「このまま外を歩きたいくらいですね」


207 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/22(日) 06:54:32.06 ID:sOp4ugrwo


パン娘 「そう? 気に入ってくれた?」


中二 「はい、すごく。こんなの初めて着ました」


パン娘 「ふうん……」

パン娘 「よし、じゃああげる」


女郎蜘蛛娘 「おおー」


中二 「えっ」


パン娘 「着られなくなって、どうするか迷ってたやつなの」

パン娘 「だから、あげるっ」


中二 「う、うれしいけど悪いですよ、そんな」


パン娘 「いいのいいの。サスペンダーもおまけ。私からの、この町に来たお祝いよ」


女郎蜘蛛娘 「決して、飛行帽の王子様が勝ったから機嫌が良いだけってわけじゃないからね」


中二 「……うぐっ」

中二 (いかん、泣けてきた……!)

中二 「あっ……りがと、ございますぅ゛……!」



パン娘 「ウフフッ、どういたしま……」


女郎蜘蛛娘 「どういたしまして!」


パン娘 「こらあ!」


208 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/22(日) 07:02:17.14 ID:sOp4ugrwo


パン娘 「さあってと、ベッドはどうしようかしらね」


中二 「ごめんなさい、結局お世話になっちゃって」


パン娘 「いいの、いつものことだし、一人くらい増えたって」


女郎蜘蛛娘 「これからもよろしくー」


パン娘 「あんたは自重なさいっ」

パン娘 「言っとくけど、寝床は良いとしても食費の方は本当に考えるからね!」


女郎蜘蛛娘 「大丈夫、そのあたりの加減は考えてるから」


パン娘 「なら良いけど……良くないわよ!」


中二 「計画的な、たかり……」


女郎蜘蛛娘 「あっはっは」

女郎蜘蛛娘 「また何か良い素材見つけたら持ってきてあげるからさ」


パン娘 「んもう……」


209 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2017/10/22(日) 07:07:14.46 ID:sOp4ugrwo


パン娘 「えっと、じゃあベッドは中二と私が使うとして……」


女郎蜘蛛娘 「えー、三人で並んで寝ようよー」


パン娘 「三人は無理よ」


女郎蜘蛛娘 「パン娘のお尻が大きいから?」


パン娘 「あんたの手足が長いからよ!」


死神メイド 「もしくはその両方ね」


中二・パン娘・女郎蜘蛛娘 「うわあ!?」


210 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/11/12(日) 02:14:33.96 ID:qd5Qnsz30
待ち
211 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/12/04(月) 03:34:50.45 ID:i1NFhpiW0
さらに待ち
212 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2018/01/04(木) 01:46:14.30 ID:iXjPRWkIo


死神メイド が あらわれた


中二 「び、びっくりしたあ……!」


死神メイド 「そう」


女郎蜘蛛娘 「相変わらず神出鬼没だなあ」

女郎蜘蛛娘 「ねえ、パン娘」


パン娘 「や、やめてよ! 私は知らないわよ、こんな子!」


死神メイド 「そう」

死神メイド 「傷つくわ。ショック」

死神メイド 「ねえ、パン娘」


パン娘 「やめて! かかわりたくない!」

パン娘 「あんたに関わると何かしら痛い目を見るもの!」


中二 (あれ、知り合い?)


パン娘 「私は死神メイドなんて知らない!」


イヤ イヤ


中二 「すごい拒否反応……」




213 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2018/01/04(木) 02:07:58.71 ID:iXjPRWkIo


女郎蜘蛛娘 「ほら、死神メイドって超マイペースなんだよ」

女郎蜘蛛娘 「で、パン娘は振り回されるタイプじゃない?」

女郎蜘蛛娘 「そりゃあ、嫌ってほど振り回されちゃうよねー」


中二 「へえ……」

中二 (女郎蜘蛛娘さんも、かなりマイペースだと思う……)


女郎蜘蛛娘 「彼氏ができても振り回されるんだろうなあ」


中二 「面倒見が良さそうだから、ほっとけないんでしょうかね」


女郎蜘蛛娘 「そーそー」

女郎蜘蛛娘 「で、重いって捨てられるの」


パン娘 「聞こえてるわよ、そこ!」


死神メイド 「知らないなんて言わないで。あなたと私の仲じゃない」


パン娘 「いや!」


死神メイド 「傷つくわ」

死神メイド 「ねえ、パン娘。野外喫茶の青空喫茶で働く20歳」

死神メイド 「夢は素敵な旦那様とお店を持つこと」

死神メイド 「好きなタイプは王子様みたいな人」

死神メイド 「趣味は魔動画でスパットレースの観戦」


パン娘 「いや! いや!」


死神メイド 「初恋の相手は近所に住んでいた友達のお兄ちゃん」

死神メイド 「初めての××××は、お風呂場でそのお兄ちゃんのことを……」


パン娘 「きゃあああああ!?」

パン娘 「もうやめてえ!」



214 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2018/01/07(日) 14:59:54.28 ID:1ox2ti0+o


パン娘 「どどど、どうしてそんなことまで知ってるのよお!」


死神メイド 「さあ」

死神メイド 「なぜでしょう」

死神メイド 「にやり」


中二 (にやりって言った、無表情で……)


パン娘 「やな奴!」



中二 「あのう、パン娘さんと死神メイドさんは知り合いなんでしょうか」


女郎蜘蛛娘 「職場がわりと近所だからね」

女郎蜘蛛娘 「浅からぬ縁ではあるよね」



パン娘 「もー、あんたと関わるとこっちの寿命がいくらあっても足りないから」

パン娘 「他人のふりしていたのにぃ……」


死神メイド 「他人じゃない」


パン娘 「そういう意味じゃなくてっ」


死神メイド 「そう」

死神メイド 「でも良かったわ、寿命が縮んで」

死神メイド 「死神冥利につきる」


パン娘 「くぅ〜……っ!!」

パン娘 「……はぁ」


215 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/01/09(火) 05:23:34.31 ID:B9gKTfgy0
更新来てたー
216 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/02/11(日) 17:08:35.28 ID:VdBQVJvZ0
217 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/03/02(金) 05:04:45.43 ID:xIY8o5yU0
待ってるぞ
218 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2018/03/09(金) 03:48:26.87 ID:zRjnC2Tfo


パン娘 「……うちに何しに来たのよ。仕事中じゃないの?」


死神メイド 「仕事中よ。仕事でここに来ているの」

死神メイド 「仕事じゃなきゃ来ないわ、こんなところ」


パン娘 「ぬっく……!」

パン娘 「……ああ、もう、はいはい、何の用なわけ? 私たち、これから寝るところなんだけど」


死神メイド 「あなた達がこの燃えやすそうなボロ部屋で、これから何をするのか」

死神メイド 「ごめんなさい、まったく興味ないわ」

死神メイド 「知ってる? 今月の私のラッキーアイテム」

死神メイド 「一本で巨人の家を燃やせる魔法のマッチ」


パン娘 「そっちの方がどうでも良いわよ!」


219 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2018/03/09(金) 04:01:46.93 ID:zRjnC2Tfo


中二 (今月のラッキーアイテム。今月ってことは……)

中二 (ここの暦ってどうなっているんだろう)



死神メイド 「たまたま持っていたのだけど、本当に家を燃やせるのかしら、このマッチ」

死神メイド 「試して良い?」


パン娘 「それが仕事で、そのためにここに来たんだったら引っ叩くわよ」


死神メイド 「……ちょっと、あの、ごめんなさい」

死神メイド 「私、真面目に話しているのだけど」


パン娘 「私だって、ふざけていないわよ! ふざけているのはそっちでしょ」

パン娘 「じゃあ何しに来たのよ。仕事って何なのよ」

パン娘 「っていうか、あんたねえ、うちの店どーーーっしてくれんのよ。百等自警団相手にあんなに暴れて!」

パン娘 「目をつけられちゃったらどうすんのよ!」


死神メイド 「どうしたの、急に怒りだして」


220 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2018/03/09(金) 04:16:16.77 ID:zRjnC2Tfo


死神メイド 「暴れたのはあの死に損ないの竜人族の男よ」

死神メイド 「……女だったかしら」

死神メイド 「そもそも私は、お友だちのお店に迷惑をかけようだなんて思わない」

死神メイド 「私、あなたがコソコソと逃げ出したあとも、店を守るためにあの青白い顔の生物に一生懸命言ったわ」

死神メイド 「ここは私の大切な大切な大切なお友だちの勤めているお店だから、暴れるのはやめなさいって」


パン娘 「つけられた! ぜったい目をつけられた!」

パン娘 「もー、あんた何てことしてくれたのよ。あの人たちに目をつけられたら、牢屋にいるのと違わないじゃない!」


死神メイド 「……いらないわ、お礼は」


パン娘 「やらないわよ!」

パン娘 「あー、もう、本当に目をつけられたらどうしよう……」


死神メイド 「大丈夫よ」


パン娘 「気軽に言ってくれちゃって……」


221 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2018/03/09(金) 04:18:26.97 ID:zRjnC2Tfo


死神メイド 「だから、大丈夫よ」


バサ


死神メイドは 不死竜娘の頭を 取り出した!


中二・女郎蜘蛛娘・パン娘 「ぎゃっ!」



222 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2018/03/09(金) 07:43:20.92 ID:zRjnC2Tfo


不死竜娘の頭


中二 「どどどど、ど、どどどどどどどどどどど……」

中二 (生首! 目隠しされて猿轡された)


パン娘 「あた、あたあたあた……」


女郎蜘蛛娘 「…………」


死神メイド 「…………」

死神メイド 「ね」


パン娘 「何があ!?」


中二 「じょじょじょじょじょ、じょろじょろじょろくもサン、ここここれはいったい………」


女郎蜘蛛娘 「…………」


中二 「あ!」

中二 「気絶してる……」


223 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2018/03/10(土) 04:35:05.64 ID:QqLtABPVo


女郎蜘蛛娘 「…………」


中二 (立ったままで、しかも目を開けたままで気絶している)

中二 「スウゥ……」

中二 「女郎蜘蛛さぁん!」


女郎蜘蛛娘 「!!」

女郎蜘蛛娘 「はっ……ああ、何だ、夢かあ」

女郎蜘蛛娘 「さっき、生々しい生首がさあ……」


中二 「違います違います、女郎蜘蛛さん。夢じゃありませんよ」

中二 「あたしなんてもう死神メイドさんに会ったくらいから夢見てる感覚ですけど」



パン娘 「死神メイド……あ、あんた、ついにやっちゃったの」

パン娘 「いつかやるだろうと……っていうか、もうすでに何人かやってそうだと思っていたけど」

パン娘 「ついにやっちゃったの!?」


死神メイド 「いいえ。最近、他人のお腹にパンチするのは控えているわ」


中二 (ん?)


死神メイド 「三人とも、何を慌てふためいているの」

死神メイド 「たかが生首じゃない」


ズイ


不死竜娘の頭



女郎蜘蛛娘 「ぎゃっ……」


中二 「ああっ、また」


224 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2018/03/10(土) 04:57:13.75 ID:QqLtABPVo


死神メイド 「どうして人の生首程度で慌てふためくの」

死神メイド 「小魚の生首を見ても、慌てふためかないでしょう」

死神メイド 「小魚に悪いと思わないの」

死神メイド 「料理の皿に小魚の頭が乗っていようが、あなた達の生首が乗っていようが」

死神メイド 「私にとっては同じことなのよ」


パン娘 「大事な友達とか言っておきながら小魚と同列……って、そういう問題じゃないのよ!」


死神メイド 「そうなのね」

死神メイド 「やっちゃったって、お腹にパンチのことでは無いのね」

死神メイド 「ええ、パムンク呼吸法は試してみたわ。効果があったのか、顔色は良くなる一方よ」


パン娘 「ああん、もう会話の行方が分かんないわよう!」

パン娘 「とにかくそれ、その頭しまってよ! 吐きそうなのよ!」


死神メイド 「かまわないけれど、正直嫌なのよね」

死神メイド 「ここまで、この生首、スカートの中に入れてきたのよ。またこんな生臭いものしまうなんて」

死神メイド 「とても嫌」


パン娘 「小魚がどうとか、差別するなみたいなこと、いま言ってたじゃない!」


死神メイド 「言っていたわね」

死神メイド 「ええ、そうよ。小魚の生首をスカートにしまう行為も、とても嫌」

死神メイド 「ちょっとこの生首、テーブルに置かせてくれるかしら」

死神メイド 「わりと重いのよね」


パン娘 「やめてえ!」


225 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2018/03/10(土) 05:02:49.42 ID:QqLtABPVo


パン娘 「もう嫌ぁ、やっぱりえらいことに巻き込まれちゃったじゃないのよぉ……」


死神メイド 「いい加減にしてほしいわよね」


パン娘 「あんたが言うなあ!」


死神メイド 「私だって、仕事があるのに」


中二 (死神メイドさん、平然と生首を持っている)

中二 (パン娘さんや女郎蜘蛛娘さんの反応を見るに、ここではそれが普通じゃないみたいだ)

中二 (死神メイドさんは、すごく怖い人なんだろうか……)


死神メイド 「……中二」


中二 「は、はい!?」


ビクッ


死神メイド 「説明、手伝ってもらうわ」


中二 「え?」


226 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2018/03/10(土) 05:07:02.61 ID:QqLtABPVo


シュルル チュパア


死神メイドは 不死竜娘の生首から
目隠しと猿轡を 外した!


パン娘 「ちょっとあんた、やめてよ顔なんて見せないで……」


不死竜娘の生首 「ぷあっ……」

不死竜娘の生首 「くそう、このような屈辱……」


パン娘・中二 「…………」


中二 「……ええっ!?」



227 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2018/03/10(土) 06:00:12.02 ID:QqLtABPVo



中二 「生きてる」

中二 「ええっ!?」

中二 「女郎蜘蛛さん……は、気絶しているから……」

中二 「パン娘さん、これって……」


パン娘 「私だってよく分かんないわよぉ……」

パン娘 「自警団の隊長はゾンビかそういう種族だったってことじゃないの?」


中二 「ゾンビもいるんですか」


パン娘 「うん……」


中二 (走る人骨だっていたし、何がいても不思議じゃないか)

中二 (つくづく何でもありなところだなあ……と感じるけれど、さすがに生首の持ち歩きは普通じゃ無かった)

中二 (あたしの暮らしているところとだいぶ違うだけで、ここにもちゃんと常識と非常識はあるんだ)

中二 (これは大事なことだぞ)

中二 (あたしが目指す声優界も、いわば別世界。特殊なしきたり、常識非常識があるだろう)

中二 (それをいち早く把握し適応できなければ、一緒に仕事する人たちとの信頼関係は築けない)

中二 (すぐにその世界から抹殺されてしまう)



死神メイド 「私はうちの宿でお世話しているこの子を、連れ戻そうとしていただけ」

死神メイド 「やましいことをしていたわけでは無いの」

死神メイド 「そもそも、私はあなたが言うような極悪犯罪者では無いのよ」


不死竜娘の生首 「ふん……」

不死竜娘の生首 「そうなのですか、黒髪のお嬢さん?」


中二 (生首に話しかけられた。意外と話し方は柔らかい)

中二 「お世話になっているのは本当ですけれど……」

中二 「死神メイドさん、探しにきてくれたんですか?」


死神メイド 「当たり前でしょう」

死神メイド 「大事な後輩だもの」

228 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2018/03/10(土) 06:16:05.90 ID:QqLtABPVo


…………


不死竜娘の生首 「この町に来てまだ間も無いのですか」

不死竜娘の生首 「私も外の出身です。はじめは色々と、戸惑うことが多いでしょう」


中二 「はい、ええ、もう……」

中二 (しっかりとした声。頭だけでどうやって出しているんだろう)

中二 (あたしの知らない発声法が、ここにはあるのかな)


不死竜娘の生首 「そうですか、あなたがたは、あの野外喫茶に……」

不死竜娘の生首 「巻き込んでしまい、申し訳ない」


パン娘 「申し訳ないじゃないわよ。おかげでお店が滅茶苦茶なのよ!」

パン娘 「あなたたちって、本当に乱暴なんだから。行儀悪いのも多いし」


不死竜娘の生首 「たしかに、隊の風紀は正すべきところが多いと感じております」

不死竜娘の生首 「しかし、私が今日、あそこで斧を振るったのは正義のため」

不死竜娘の生首 「町の平和を守るためなのです」

不死竜娘の生首 「それはご理解いただきたい」


229 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/03/18(日) 10:50:23.28 ID:sUVQiha00
お、来てた
230 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/04/23(月) 12:05:07.42 ID:MZWdcZzr0
231 : ◆tHMiOqNMgmiR [sage]:2018/05/14(月) 13:22:07.97 ID:pkk/VKgvo


パン娘 「平和のためって何よ」

パン娘 「そもそも自警団なんてあなた達が勝手に名乗って」

パン娘 「勝手にみんなを取り締まっているだけでしょう」



中二 「パン娘さん、ずばずばと……」


女郎蜘蛛娘 「面倒事に巻き込まれたくないわりに、怖いもの知らずなとこあるからね」



不死竜娘の生首 「もちろん、そのような声が多いことも承知しております」

不死竜娘の生首 「真実正義というものが、大衆に理解されにくいことも」

不死竜娘の生首 「しかし、我々は微かでも尽きることなくこの町に秩序を灯し続けましょう」

不死竜娘の生首 「ゆえに、我々は百等自警団なのです」

232 : ◆tHMiOqNMgmiR [sage]:2018/05/15(火) 00:02:58.03 ID:KzSAp6ZXo


パン娘 「それがありがた迷惑だって……」


死神メイド 「やめてあげて、パン娘」

死神メイド 「彼女、こんなになるまで頑張っているのよ」


不死竜娘の生首 「したのは貴様だ」

不死竜娘の生首 「今に尻尾をつかまえて、牢獄にぶちこんでやる」


死神メイド 「私に尻尾は無いわ」

死神メイド 「あるのはあなた……」

死神メイド 「ああ、そう。そうだったのね。あなたなりの冗談だったのね」

死神メイド 「気づかなくてごめんなさい」

死神メイド 「面白くないけれど、笑ってあげるわ」

死神メイド 「うふ」


中二 (真顔で……)


233 : ◆tHMiOqNMgmiR [sage]:2018/05/15(火) 00:45:44.99 ID:KzSAp6ZXo


女郎蜘蛛娘の生首 「あのさあ、ところでさあ……」

女郎蜘蛛娘の生首 「その隊長さんの頭はここにあるけど、身体は大丈夫なの?」

女郎蜘蛛娘の生首 「燃やされちゃったり食べられたりして、なくなっちゃったらまずいんじゃないの?」


中二 「女郎蜘蛛さん、顔が真っ青……」

中二 (声の震えかた、顔の筋肉の様子、しっかり観察しておかなくちゃ)



不死竜娘の生首 「ありがとうございます。私は皆様に奉仕する身。そのような気遣いは無用です」

不死竜娘の生首 「急いだ方が良いのは確かですが」


死神メイド 「私も急いで宿に戻りたいわ」

死神メイド 「誤解もとけたようだし」


不死竜娘の生首 「勘違いをするな」

不死竜娘の生首 「貴様には、先日の賭博場のことで聞き出さねばならんことがある」


死神メイド 「そう」

死神メイド 「頑張り屋さんは好きよ」


234 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/05/20(日) 05:23:39.14 ID:JSHlsnhm0
女郎蜘蛛いつのまにか生首になってる…
235 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2018/05/21(月) 12:52:40.36 ID:Ii/dtFLBo
>>234ありがとうございます



>>233訂正ごめんなさい



女郎蜘蛛娘 「あのさあ、ところでさあ……」

女郎蜘蛛娘 「その隊長さんの頭はここにあるけど、身体は大丈夫なの?」

女郎蜘蛛娘 「燃やされちゃったり食べられたりして、なくなっちゃったらまずいんじゃないの?」


中二 「女郎蜘蛛さん、顔が真っ青……」

中二 (声の震えかた、顔の筋肉の様子、しっかり観察しておかなくちゃ)



不死竜娘の生首 「ありがとうございます。私は皆様に奉仕する身。そのような気遣いは無用です」

不死竜娘の生首 「急いだ方が良いのは確かですが」


死神メイド 「私も急いで宿に戻りたいわ」

死神メイド 「誤解もとけたようだし」


不死竜娘の生首 「勘違いをするな」

不死竜娘の生首 「貴様には、先日の賭博場のことで聞き出さねばならんことがある」


死神メイド 「そう」

死神メイド 「頑張り屋さんは好きよ」
236 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/23(土) 06:27:31.04 ID:8fLqMcbv0
待ってるゾイ
237 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/07/22(日) 09:33:27.60 ID:xPNNKjIV0
238 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2018/07/28(土) 23:30:14.09 ID:JF4KlID3o


死神メイド 「何でも聞いて」

死神メイド 「気が向いたら答えるわ」


不死竜娘の生首 「その生意気な口、いつか塞いでやろう」


死神メイド 「そうしたら答えられないわ」

死神メイド 「大丈夫、あなた? 頭だけになって脳みそがなくなったから、頭、悪くなったんじゃない」

死神メイド 「あ、脳みそは頭に入っているのだったわね」

死神メイド 「私のうっかりさん」

死神メイド 「あなた、もとから脳みそが無いのね」


不死竜娘の生首 「……やはり貴様との問答は不毛だ」


死神メイド 「まるで、あなたの人生のようね」


不死竜娘の生首 「ふ……ふふふふふ……」


ユラ


中二 (不死竜娘さんから、どす黒いものがユラユラと立ち上っている)

中二 (……ような気がする)




239 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2018/07/28(土) 23:38:47.89 ID:JF4KlID3o


中二 「あ、あの!」


パン娘・蜘蛛娘・メイド・首 「?」


中二 「死神メイドさんも来てくれたことですし」

中二 「やっぱり、今日は帰った方が良いかなー、って……」


女郎蜘蛛娘 「えー」

女郎蜘蛛娘 「一緒にここに泊まろうよう」

女郎蜘蛛娘 「抱き枕になってよう。私ら姉妹じゃん」


中二 「姉妹っていうか……抱き枕?」


女郎蜘蛛娘 「私の長い手足は、一人で寝るには長すぎらあ……」


パン娘 「この子と並んで寝るの、すごく面倒くさいのよね。暑い日は特に」


女郎蜘蛛娘 「あんただって、下半身がぼうぼうだから一緒に寝ると暑苦しいって、男に捨てられたじゃん」


パン娘 「男と一緒に寝たことなんて無いわよ!」


240 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2018/07/29(日) 00:01:56.08 ID:z/bhaAKOo


女郎蜘蛛娘 「だよね」


パン娘 「ややこしい時にテキトーなこと言ってんじゃないわよ……」

パン娘 「しかも、またぼうぼうって!」


女郎蜘蛛娘 「あはは。ごめん」


死神メイド 「……パン娘」


パン娘 「何よ!」


死神メイド 「大丈夫、知っているわ」


パン娘 「何をよ!」


死神メイド 「あなたが男と一緒に寝たことがないことくらい」


パン娘 「ああそうですか!」


死神メイド 「町中のみんなが知ってる」

死神メイド 「パン娘は処女だって」


パン娘 「うるっさいわよ!」

パン娘 「子供がいるのに、変な話をしてんじゃないの!」


中二 「あの、私もそういう知識はありますので……」


241 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2018/07/29(日) 08:49:15.79 ID:z/bhaAKOo


パン娘 「だからって、ねえ……!」

パン娘 「中二、この際だから言っておくけど、この町で暮らすなら、そういうことについての守りはしっかりしておかないと駄目よ」

パン娘 「色んな種族がいるから、性に対する考え方もそれぞれなの」

パン娘 「子供だからって、そういうのと無縁とはいかないんだからね」


中二 (ここでは、私はよっぽど小さな子供に見えるんだろうか)

中二 「はい、気をつけます」

中二 (でも、演技のためには早めに知っておいた方が良さそうなんだよね)


パン娘 「そうだ、龍虎商店で淫魔除けのお守りを買うと良いわ。あと、避妊薬も」

パン娘 「相手にとって一番不細工に見える魔法の眼鏡なんかもあるわ」

パン娘 「それに……」


中二 (変なスイッチが入っちゃったみたい)


不死竜娘の生首 「嘆かわしいことです」

不死竜娘の生首 「一日も早く、我々がここを、子供たちが伸び伸びと暮らせる街にしてみせましょう」


死神メイド 「期待しているわ」

死神メイド 「頭だけで言われても滑稽なだけだけれど」


242 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2018/07/29(日) 08:57:30.15 ID:z/bhaAKOo


不死竜娘の生首 「貴様はいちいちいちいち……!」


死神メイド 「あなたほどしつこくないわ」




女郎蜘蛛娘 「中二ぃ」


ダキ


中二 「わっ……は、はい?」

中二 (抱きつかれた)


女郎蜘蛛娘 「ねえ、夜は物騒なんだよぉ。怖いんだよぉ」

女郎蜘蛛娘 「だから今日はここに泊まっていこうよ」


中二 (この人はこの人で、どうしてこんなにここに泊まらせたがるんだろう)

中二 「で、ですが……うわあ手足が絡みつくっ!」


女郎蜘蛛娘 「ねー、ねー」


パン娘 「何やってんのよ、もう!」



243 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2018/07/29(日) 09:05:45.02 ID:z/bhaAKOo


女郎蜘蛛娘 「だってさあ、せっかくのご縁じゃん」

女郎蜘蛛娘 「仲良くなりたいじゃん」


中二 「そ、それは嬉しいですけど、苦し……」


女郎蜘蛛娘 「ほらあ、中二も嬉しいって言ってる」


パン娘 「苦しがってるでしょうが」

パン娘 「それに、その子にはその子の事情もあるんだから……」


ボワン


??? 「楽しそうじゃの」



???が 現れた!



244 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2018/07/29(日) 09:32:06.85 ID:z/bhaAKOo


パン娘 「きゃっ!?」


??? 「…………」


中二 (部屋にいきなり小さな雲が現れたと思ったら、弾けて)

中二 (次には女の人が立っていた)

中二 (私より小さいけれど、なんだかずっと高いところに立っているような不思議な感じの人だ)

中二 (……耳は狐の耳? 猫? 普通の人間じゃ無いみたい)


女郎蜘蛛娘 「げぇっ……」


スルスル


中二 (拘束がとけた)


女郎蜘蛛娘 「月夜姫さま……」


中二 「姫さま?」


??? 「いかにも」

??? 「われこそは月夜姫」

月夜姫 「暁月夜比売である」


中二 「アカトキ……」


月夜姫 「九泉楼主暁月夜比売である」


中二 「キュウセンローシュ……アカト……」


月夜姫 「妓楼傾城九泉楼主暁月夜比売である」


中二 「ギローケーセーキューセ……」


月夜姫 「あっはっは!」

娼婦狐 「ま、娼婦狐と呼ぶが良い」




245 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2018/07/29(日) 09:45:46.35 ID:z/bhaAKOo


中二 「娼婦狐……さん」

中二 「さま?」


娼婦狐 「好きにせよ」

娼婦狐 「わしは名には縛られぬでの」

娼婦狐 「蛇牙猫姫、猫耳蛇娘、赤面猿姫……どれでも良い良い」


中二 「はあ……」

中二 (着物に似た服に、さっき弾けた雲のようなものを纏っている)


不死竜娘の生首 「九泉楼……娼婦ギルドのか」


死神メイド 「お久しぶりです、月夜姫さま」


中二 (あ、死神メイドが丁寧な喋り方をしている)


死神メイド 「ベイベーロッケンロー、相変わらず儲かっているみたいですね」


娼婦狐 「傾城九泉楼である」


246 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2018/07/29(日) 09:49:15.70 ID:z/bhaAKOo


>>244ミスごめんなさい




中二 「娼婦狐……さん」

中二 「さま?」


娼婦狐 「好きにせよ」

娼婦狐 「わしは名には縛られぬでの」

娼婦狐 「蛇牙猫姫、猫耳蛇娘、赤面猿姫……どれでも良い良い」


中二 「はあ……」

中二 (着物に似た服に、さっき弾けた雲のようなものを纏っている)


不死竜娘の生首 「九泉楼……娼婦ギルドのか」


死神メイド 「お久しぶりです、月夜姫さま」


中二 (あ、死神メイドさんが丁寧な喋り方をしている)


死神メイド 「ベイベーロッケンロー、相変わらず儲かっているみたいですね」


娼婦狐 「傾城九泉楼である」

娼婦狐 「そなたも相変わらずのようだ」


247 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2018/07/29(日) 09:56:08.62 ID:z/bhaAKOo


娼婦狐 「淫魔幼女は元気でやっておるかの」


死神メイド 「相変わらずの草枕よ」

死神メイド 「最近、少し優しくなったみたい」


中二 (死神メイドさんが少し笑った?)

中二 (気のせいか……)

中二 (誰のことを話しているんだろう)


娼婦狐 「ほほ、それは何より」

娼婦狐 「……では、さて?」


チラ


女郎蜘蛛娘 「ギクッ」


248 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2018/07/29(日) 10:51:35.92 ID:z/bhaAKOo


娼婦狐 「女郎蜘蛛」


女郎蜘蛛娘 「ひえっ」


娼婦狐 「まあぁー………た」

娼婦狐 「サボりかの?」


女郎蜘蛛娘 「い、いやっ」

女郎蜘蛛娘 「あは、あっはは……」


中二 (女郎蜘蛛娘さんがたじたじだ)


娼婦狐 「まったく困りものの女郎蜘蛛よ」

娼婦狐 「そなたくらいのものじゃぞ。その歳で客の一人もとっておらんのは」

娼婦狐 「男の味も知らず手足ばかり長うなりおって。それに何じゃ、その格好……」


女郎蜘蛛娘 「お、お金!」

女郎蜘蛛娘 「お金はちゃんと納めますから……!」


娼婦狐 「金の心配をしとるんではない」

娼婦狐 「そなたの、女郎蜘蛛としての将来を心配しているのだ」

娼婦狐 「いつまでもふらふらふらふらと……もうちっと種族としての自覚をじゃな……」


女郎蜘蛛娘 「はい、はいっ……」


娼婦狐 「だいたいそなたは……」


クドクドクドクド


249 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2018/07/29(日) 19:55:07.86 ID:z/bhaAKOo


パン娘 「あーん、自警団のゴタゴタだけでもいっぱいなのに」

パン娘 「どうして娼婦ギルドのお説教までうちで始まっちゃうのよぉ」


中二 「パン娘さん……」

中二 (哀れ)


死神メイド 「…………じゃあ」

死神メイド 「私、帰るわ」


中二 「えっ?」

中二 (このタイミングで?)


死神メイド 「もうここでやることなんて無いもの」

死神メイド 「ここに、この粗末な家に私の興味をひくようなものは何一つ無いわ」


パン娘 「粗末って言うなあ!」


中二 (哀れ)


250 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2018/07/29(日) 20:04:37.30 ID:z/bhaAKOo


死神メイド 「この人の身体も見つけてあげないといけないし」


不死竜娘の生首 「誰のせいでこうなっているか」


死神メイド 「あなたが弱いせいでしょう」

死神メイド 「弱いくせに頑張るからでしょう」


不死竜娘の生首 「貴様!」


死神メイド 「安心して。私、頑張り屋さんは好きなのよ」

死神メイド 「だから、助けてあげるわ」


不死竜娘の生首 「………!」

不死竜娘の生首 「まさか、貴様は……」


死神メイド 「身体が見つからなかったら、うちと取引している近所の畑に寄付してあげるわ」

死神メイド 「ちょうど案山子の頭がもげて困っていたようなのよね」


不死竜娘の生首 「貴様!!」



251 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2018/07/29(日) 20:19:24.47 ID:z/bhaAKOo


中二 「あの、だったらアタシも一緒に行きます」


女郎蜘蛛娘 「ええー!?」


娼婦狐 「こりゃ、話は終わっておらん」


ポコン


女郎蜘蛛娘 「きゅっ」

女郎蜘蛛娘 「うえーい……」


中二 「あはは……」


死神メイド 「良いわ。ここに泊まっていきなさい」


中二 「え」


死神メイド 「せっかくできたお友達なのでしょう」

死神メイド 「大事にしなくては駄目よ」


252 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2018/07/30(月) 03:48:48.80 ID:biCSRILno


中二 「でも、明日から宿のお仕事のお手伝いを覚えなくてはなりませんし」

中二 「特に明日は初日だし……」


死神メイド 「明日はあなた、お休みよ。今日来たばかりで、さらに大変なことが起きたでしょう」


中二 「こ、このくらい平気ですよ」

中二 (わりとこたえているけど……声優には体力とやせ我慢も必要なんだ)

中二 (この程度のことでへこたれていられない)


死神メイド 「宿オークも、いきなりあなたを宿娘に仕込もうとは思っていないわ」

死神メイド 「簡単な仕事は頼むかもしれないけれど、しばらくは、のんびり暮らしてもらうつもりのようよ」


中二 「ええっ。そんな、お世話になるのにのんびりだなんて」


死神メイド 「それが最初の仕事」


中二 「のんびり暮らすのが、しごと?」


死神メイド 「ごろごろしてろということでは無いわ」

死神メイド 「まずはこの街……宿のある区画にくらいは慣れることが先」

死神メイド 「街で仕事をするにあたって、その街がどんなところか、知っておくのは良いことだから」


中二 「……なるほど」

中二 (死神メイドさんが、初めてまともなことを言っている気がする)


死神メイド 「周りの人たちと仲良くとはいかなくても、どんな人が住んでいるのか、知っておくのも大事」

死神メイド 「人がいて、仕事があるの。その順番を間違えてはいけないわよ」

死神メイド 「だから、お友達はなるべく大事にしなさい」


パン娘 「どの口が言ってんのよ……」


中二 「…………」


死神メイド 「?」

死神メイド 「どうしたの、中二」

死神メイド 「ぼーっとして」


中二 「……! い、いえ!」

中二 「はい、分かりました!」

中二 「人がいて、仕事がある……ですね! アタシ、感動しています!」

中二 「死神メイドさん……いえ、死神メイド先輩!」


パン娘 「感動? うっそぉ……」


死神メイド 「そう」

死神メイド 「気味の悪い子ね」


パン娘 「……えぇ〜」



253 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2018/07/30(月) 04:01:28.13 ID:biCSRILno


死神メイド 「じゃあ、私は行くわ」

死神メイド 「このみすぼらしい生首を持って、ここを去るわ」


不死竜娘の生首 「貴様」


死神メイド 「パン娘」

死神メイド 「後輩が迷惑をかけるわね」


パン娘 「……いいわよ。一人泊まるのも二人泊まるのも一緒よ」


死神メイド 「……あなた、そんなわけないでしょう」

死神メイド 「こんな狭いボロ家なのに」


パン娘 「さっさと行きなさいよ!」


死神メイド 「そうだ、中二、朝ごはんの時間を言っていなかったわね」

死神メイド 「うちの宿では……」


パン娘 「それもいいわよ」

パン娘 「うちで食べてってもらうから」


中二 「パン娘さん……」


死神メイド 「……あなた、そんなわけないでしょう」

死神メイド 「こんな狭いボロ家にしか住めないのに、食費に余裕なんてあるわけ無いじゃない」


パン娘 「あんたねえ……!」


死神メイド 「パン娘」

死神メイド 「ちゃんと現実を見て」


パン娘 「出てけえ!!」


254 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2018/07/30(月) 04:22:06.18 ID:biCSRILno


キイ ガチャン


パン娘 「ハアッ、ハアッ……やっと行った。まったく、塩まいてやろうかしら……」


中二 「あの、パン娘さん……」


パン娘 「気にしなくて良いからね、中二」

パン娘 「これでも結構稼いでるんだから」

パン娘 「朝ごはんくらい余裕余裕」


中二 「いえ、そんな心配なんて……」

中二 「その、今日はお世話になります」


ペコ


パン娘 「……あ、あはは」

パン娘 「そんなに改まって言われると困っちゃうなあ」

パン娘 「あなたって、行儀が良いのねえ」


中二 「えへへ、そうでしょうか。気をつけてはいますけど」


パン娘 「うんうん。あいつやアイツとは大違い」

パン娘 「私相手には、もっと砕けて良いんだからね」

パン娘 「あ、でも、いい? くれぐれも、死神メイドなんかの影響を受けちゃ駄目よ」


中二 「受けようにも受けられないと思いますけど……」




255 : ◆tHMiOqNMgmiR [saga sage]:2018/07/30(月) 10:29:18.91 ID:biCSRILno


娼婦狐 「クドクドクドクド……ふう」

娼婦狐 「今日はこの辺にしておくかの。顎が疲れてしもうた」


女郎蜘蛛娘 「ぷへぇ……」


娼婦狐 「パン娘、そして……」


中二 「あ、中二、中学二年生です」

中二 (娼婦狐さん、雲のようなもので口元を隠した)


娼婦狐 「中二か」

娼婦狐 「二人とも、うちの者が迷惑をかけたのう」


パン娘 「いえいえ、慣れてますから……」


中二 (娼婦狐さんを前にすると、不思議と背筋が伸びてしまう)

中二 (パン娘さんも、緊張しているみたい)

中二 「迷惑だなんて。優しくしてもらっています」


娼婦狐 「をほほ、こやつには勿体ない者たちよ」


ポム ポム


女郎蜘蛛娘 「うへぇ……」


中二 (大人が子供にお守りされているように見えてしまう)


256 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/08/22(水) 02:55:23.29 ID:HBWvTFRI0
来てたか
257 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/08/24(金) 10:16:27.45 ID:YgpokRZgo
蛇牙猫姫と猫耳蛇娘は同一人物の別呼称だったのか
258 : ◆9eN28dDkrjul [saga sage]:2018/10/19(金) 18:50:20.00 ID:lA1CgCrd0
復活おめでとんとろ
259 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/11/01(木) 02:46:17.58 ID:HkU6/dyd0
復活してたのか
260 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/12/16(日) 06:26:28.97 ID:Y2go56Uy0
待ってる
261 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/08/17(月) 00:57:01.88 ID:exCA78GcO
おい生きてるか?
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