ヒーローとその姉(オリジナル百合)

Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

80 : ◆/BueNLs5lw :2017/01/10(火) 01:14:13.04 ID:n7o06QMFO
「あの、もし良かったらスカート貸しましょうか。私、下に短パン履いてるので」

「だ、大丈夫だからっ」

と断られたのだけれど、一応脱ぐ。

「職員室に行くまで履いておいた方が……」

先生はかなり迷った末に、私の手からスカートを受け取った。
ノートを半分に分けて運ぶ。先生は、私の後ろに隠れるようにして、廊下を進んだ。
職員室の前に来た頃には、予鈴のチャイムが鳴った。

「先生、私、もう行きますね」

「え、あ、絵さん」

「それ、また今度返してください」

引き止められたけど、短パンは寒かったので、持ってきていたジャージをさっさと履きたくて私は教室へ戻った。
渚先生が私のスカートを普通に履けてしまったことに関して、一抹の驚きを感じつつ、会話らしい会話ができたことにも感動を覚えていた。

「嬉しそうじゃん」

桜田ちゃんが席に着く私に言った。

「うん」


81 : ◆/BueNLs5lw :2017/01/10(火) 01:15:44.20 ID:n7o06QMFO
寝ますわ
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/01/10(火) 02:03:51.83 ID:oUq858mDO
おやすみ
次は安価競える時間でまた
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2017/01/13(金) 02:46:09.48 ID:isjqRCBYO
次は安価参加したいな
84 : ◆/BueNLs5lw [saga]:2017/01/14(土) 21:10:34.92 ID:Mp8FYmWR0
人がいたら安価します
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2017/01/14(土) 21:52:14.73 ID:iIWproWjO
居ますよー
86 : ◆/BueNLs5lw [saga]:2017/01/14(土) 22:20:09.89 ID:Mp8FYmWR0
食わず嫌いだったのかも。
なんて、独りごちる。

「そう言えば、スカートは?」

桜田ちゃんが尋ねた。

「渚先生が履いてる」

彼女は大きく首を傾げたのだった。



放課後。
桜田ちゃんと帰ろうと思って、玄関を出た時だった。

「絵さん!」

渚先生だった。
スカートは履いてない。
代わりに先生もジャージだった。
いつもタイトスカートで、いかにも女教師な恰好だったので、なんだか体育の先生みたいで笑ってしまう。
87 : ◆/BueNLs5lw [saga]:2017/01/14(土) 22:34:51.27 ID:Mp8FYmWR0
「ごめんなさい。呼び止めちゃって。これ……」

恥ずかしそうに、右手にぶら下げていた紙袋からスカートを取り出した。

「お洗濯に出そうかとも思ったんだけど、替えのものがなかったらいけないと思って確認しにきたの」

「え、私持って帰るんで大丈夫です」

紙袋をそのまま引っ掴んだ。

「だめよ」

と、二の腕に軽く触れられた。

「ひァっ」

小さく飛び跳ねる体。
先生もびっくりしていた。

「痛かった? け、怪我してるの?」

「そ、そういうんじゃないんですけど」

あれ、おかしいな。やっぱまだだめか。
何か上手い言い訳をと思っていると、

「せんせー、絵さん最近女性関係でもめてるそうなので相談に乗ってあげてください」

桜田ちゃんが突然のカミングアウト。

「ちょ、ちょっと桜田ちゃん!?」

「そろそろ、一人くらい相談しておかないとさ……、あんたホントに卒業できなくなっちゃうよ」

と珍しく険しい表情。

「あ、いや、その……」

解決してきてるというか、未だというか。
あとちょっとっぽいというか。

「何か、相談事があるなら……先生で良ければ」

前々から良く注意を受けられている私を気遣うように先生も言った。
確かに、味方が居れば学校でも上手く立ち回れるけども。
私は悩んだ。


1、じゃあ、お言葉に甘えて
2、なんでもないです

>>88(被ったら↓)
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2017/01/14(土) 22:37:43.44 ID:iIWproWjO
1
89 : ◆/BueNLs5lw [saga]:2017/01/14(土) 22:49:51.54 ID:Mp8FYmWR0
「じゃあ、お言葉に甘えて」

確かに、もう一人で抱え込んで苦しむ必要なんてない。
だって、こうやって話ができるくらいになったんだから。
もはや、体の条件反射的なもので、嫌気があるわけでもないし。
先生は、私の言葉を聞いて少しほっとしたような微笑みを浮かべた。

「それじゃあ、ちょっと職員室に行きましょうか」

「え」

「どうしたの?」

「あー、他の先生には聞かれたくないです」

「大丈夫、荷物を取りに戻るだけなの。進路指導室が開いてたと思うからそっちで」

私は軽く頷いた。
担任の先生とも上手く喋れてないのに、渚先生とは波長が合うのか話しやすい。
ちょっと抜けてる所があるせいかも?
90 : ◆/BueNLs5lw [saga]:2017/01/14(土) 22:58:40.67 ID:Mp8FYmWR0
桜田ちゃんの計らいで、私は進路指導室のソファーに埋もれるように座っていた。
対面で座ると緊張すると言ったら、横ならどうかと言われて立ち上がられてしまったので、すぐにこう言った。

「わ、私、年上の女性がトラウマなんですっ」

「え」

先生が、ぴたりと止まった。
まるで、そこだけ時間が停止したみたい、とはこのことか。
先生は立ち上がって、座ろうか歩き出そうか迷った挙句、座った。

「ええと」

きっと質問とか用意していただろうに、意表を突かれた先生は人差し指を立てて、

「どうして?」

と簡単に聞いた。
91 : ◆/BueNLs5lw [saga]:2017/01/14(土) 23:07:08.18 ID:Mp8FYmWR0
可愛い仕草ですね、と質問と全く関係のないことを考えながら、
私はとある日の幼馴染の話をし始めた――。




「それで、さっきも、飛び跳ねて……すみません」

話し終えて、玄関での奇妙な行動の動機を理解した先生に、ぺこりと頭を下げる。

「変な子ですよね……」

「ううん、こちらこそ……気づかなくて、ごめんなさい」

気づけなくて当然だとは思う。

「突然だとびっくりするんです。分かってて触られたりすると、そのまま耐性がついたりし出したんですが」

「そうなの……」

先生の反応があまりにも薄い。
うー、先生に変人と思われているような。
やっぱり言うんじゃなかったかな。
後悔。
92 : ◆/BueNLs5lw [saga]:2017/01/14(土) 23:12:36.99 ID:Mp8FYmWR0
「分かってたら、大丈夫なの?」

先生は私の弱点でも探っているんじゃないかというくらい、目を細めた。
疑っている?

「は、はい」

「……いい?」

「え?」

「触ってみてもいい?」

先生は、意外と大胆だった。


1、い、いいですけど
2、だ、だめです


>>93(被ったら↓)
93 : ◆/BueNLs5lw [saga]:2017/01/14(土) 23:19:58.91 ID:Mp8FYmWR0
寝ます(被ったら↓)
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/01/14(土) 23:42:14.15 ID:42VdLZ/n0
2
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/01/15(日) 01:21:07.24 ID:mTlUeBoDO
おつ
96 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2017/01/15(日) 04:35:11.58 ID:8XZKPgIA0
おつ
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/01/16(月) 11:53:25.59 ID:zusmDc7WO
ちあきさんはもう出てこないのかな
98 : ◆/BueNLs5lw [sage]:2017/01/16(月) 21:44:19.04 ID:FLPfmWnC0
>>97
93が先生のフラグを折りましたので、先生ルートがいったん回避されました
99 : ◆/BueNLs5lw [sage]:2017/01/16(月) 22:09:49.88 ID:FLPfmWnC0
「だ、だめです。慣れてきてるだけで、もしかしたら倒れるかもしれません」

「そ、そうなの? そんなデリケートな問題なのね……」

先生はますます疑わし気だ。ちょっと手のひらが汗ばんできた。
からかってるんじゃないんです。
本当なんです。
私のために、渚先生が悩んでいる。
どうしよう。ちょっとどころかかなり汗掻いてきた。
ちあきさんの時は、色々あったから平気だったのかな。
正面から、私の事だけを考え、見られている。それが、だんだんときつくなってきた。

「それなら、やっぱり病院とかでちゃんと診て頂いたほうがいいんじゃないかしら」

先生は学校の近くの病院名をいくつか挙げる。

「そ、そうですね」

緊張のせいで、教えられた病院の名前が右から左に流れる。覚えられない。
適当な相槌を打ってやり過ごす。
100 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/01/16(月) 22:18:23.30 ID:pXxNG/0kO
先生ルート意外と厳しいのなw
少なくとも四回選択肢ミスったらフラグ折れるのか
101 : ◆/BueNLs5lw [sage saga]:2017/01/16(月) 22:47:34.48 ID:FLPfmWnC0
>>100
あと、1のその時の気分ですw
102 : ◆/BueNLs5lw [sage saga]:2017/01/16(月) 23:09:24.16 ID:FLPfmWnC0
「男の人は大丈夫?」

「それは、はい……」

全く、問題ない。
むしろ、なんの感情も沸かない所が問題かも。

「同い年の女子も大丈夫? 年下も?」

「問題ないです……」

先生は、まだ色々聞きたそうに口を開きかけたが、

「ねえ、もしかして今、辛いんじゃ?」

私は正直に頷いた。
呆れられただろうか。
心配そうに覗くその瞳が怖くなってきた。
ドキドキしてきた胸の部分に手を当てて、立ち上がった。
先生が呆然と見上げている。
部屋の狭い感じは、家の自室と同じくらいなのに。
もう無理だった。

「ソ、ソーリー……先生」

自分でも情けない声を出して、

「絵さんっ」

先生の声を無視して逃げた。
103 : ◆/BueNLs5lw [sage]:2017/01/16(月) 23:38:52.27 ID:FLPfmWnC0
ああ、みんな男の人だったら良かったのに。
というか、みんな男だと思って話せばいいのかな。
そもそも、男と女の何が違うんだろう。
外見?
脳の構造?
腕力?
みんな桜田ちゃんみたいだったら、平気なのに、きっと。
こんなんで生きていけるんだろうか。
私は鼻をすすりながら、帰宅したのだった。


2、3日、私は今度は渚先生の通らないルートを選択して登校した。
先生は廊下ですれ違うと気づかわし気にこちらを窺ってくるのだけど、気づかないフリをしてやり過ごした。
ある夜、ひろ君から電話があった。
お風呂上りの牛乳をぐびぐび飲みつつ、子機を片手にリビングのソファの上に座る。

「え、ちあきさんが熱?」

『うん、なんか、たぶん、俺のせい』

「今度は何」

『あれから、毎日、一日中、気遣ってる。俺に話しかけないように……それで、たぶん知恵熱みたいなの出た』

「はあ?」

極端な話に、牛乳をこぼしそうになる。
104 : ◆/BueNLs5lw [saga]:2017/01/16(月) 23:50:48.26 ID:FLPfmWnC0
あのブラコンは本当にやることが極端だな。
それだけ、愛してるってことなんだろうね。

「でも、良かったじゃない。ひろ君離れし始めてるってことだよ」

『そうなんだけど、調子狂うし……それで、絵ちゃんに頼みたいことあってさ』

「うん、何」

『俺、明日ちょっと家に帰るの遅くなるんだ。学校の帰りに、姉ちゃんがちゃんと寝てるかだけ確認して欲しいんだ。窓から覗いたら分かるようにカーテン少しだけ隙間空けておくから』

あんたもシスコンだな。
と、ツッコミたくなった。

1、見るだけなら
2、桜田ちゃんと映画に行く予定で……
3、先生に呼ばれてるの。自分で見に行きなよ

>>105(被ったら↓)
105 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/01/16(月) 23:56:19.07 ID:pXxNG/0kO
いち
106 : ◆/BueNLs5lw [sage]:2017/01/17(火) 00:04:30.32 ID:WFsTsYlO0
「見るだけなら、まあ」

『助かる』

「てか、どこ行くのひろ君は」

『先輩が、バイク乗せてくれるって』

「補導されないようにね」

『へーい』

失恋の憂さでも晴らしに行くのだろうか。

「そう言えば、5万」

『あ、はい』

「あ、はい、じゃないから。ちゃんと返せこの野郎」

『も、もうちょっと待って』

「待って出てくるものなの? ちあきちゃんに相談……するわけないよね」

『絶対無理』

107 : ◆/BueNLs5lw [sage]:2017/01/17(火) 00:19:19.22 ID:WFsTsYlO0
ひろ君は、今月中には必ず、と何度も取り立てられた借金滞納者みたいなことを言っていたのだけど、
私は気長に待つよ、と返答して電話を終えた。
ちあきちゃんが熱かー。
何か持って行こうかな。
ただ、渚先生の件もあって、私は少し警戒もしていた。
治ったり、治っていなかったり。
ちあきちゃんに会いたい気持ちもあるけれど、その実、やはり体が強張る感じも拭えていない。
弱くて頭の悪い自分を見透かされてしまう。
鋭い眼光を、頭の中で何度もリフレインさせてしまうのだ。
それがいけないのだと、ネットにも書いてあった。分かっている。
でも、一度不安の回路が開いたら、光通信よろしくどんどん別の不安回路に接続されていくのだった。
108 : ◆/BueNLs5lw :2017/01/17(火) 00:20:32.52 ID:WFsTsYlO0
今日はここまでー
109 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2017/01/17(火) 00:29:44.75 ID:KAjaBrO+O
ちあきちゃん久々で楽しみ
110 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/01/17(火) 07:45:38.07 ID:DJ0+3vY6O
いいぞお
111 : ◆/BueNLs5lw :2017/01/17(火) 22:25:30.78 ID:Uw2lHI160
次の日は朝から曇天だった。天気予報では雨または雪。
昼休みに桜田ちゃんと雪が降りますようにと祈ったのが天に通じたのか、
学校からちあきちゃんの家に行く途中で、白い埃みたいなものが腕について、鳥の糞かと思って慌てた。

「あ、雪」

紺色のコートにどんどん引っ付いていく。
空を見上げると鼻の中に雪が入ってきた。

「っくしゅん!」

コートのフードを頭に被る。
積もったらいいのに。

「雪だるまつく〜ろ〜」

小声で歌う。
その声が角を曲がって来た小学生にしっかり届いていて、
まじまじと見られてしまって恥ずかしいったらありゃしなかった。
112 : ◆/BueNLs5lw :2017/01/17(火) 22:48:44.77 ID:Uw2lHI160
私がちあきちゃんの家の前に着いた頃には、私のコートが漂泊されたみたいになっていた。
使われてなさそうな車庫の奥の階段から庭に入って、裏の方に周り、カーテンの隙間から中を覗いた。
ベッドの上には誰もいない。トイレかな。ざくざくと砂利を踏む。近隣住民に、不法侵入のストーカーと勘違いされそう。
反対側のリビングの方は、灯りはともされていなくて、暗がりの中、ちあきちゃんの姿を探す。

いた。
ソファの上。
クッションかと思ったら、ブランケットに身を包んだちあきちゃんだった。
うずくまっているようにも見える。

「え、だ、大丈夫……?」

恐る恐る、ガラス戸をコツコツと叩く。
ちょっと覗くだけにしようと思っていたのに。
予想外の事態に、私は焦った。

「ちあきちゃん?」

小さな体がピクリと動いた。
顔だけ上げてこちらを見ている。
だるそうだ。
ぶるぶると震えつつ、這うようにこちらに向かってくる。
113 : ◆/BueNLs5lw :2017/01/17(火) 23:04:59.43 ID:Uw2lHI160
「む、無理しなくていいよ」

とガラス越しなので聞こえてないのか、カーテンが開け放たれた。
戸を開けて、ちあきちゃんが言った。

「寒いから、早く入って」

苛立ち気味だった。

「は、はい」

玄関からじゃなくていいのか、と聞くこともできずに、
私はそこに靴を脱いで転がりこんだ。
中は暖房が効いていて、冷え切った手足がじんと痺れた。
ちあきちゃんはまたソファの元の位置に戻って体を縮こませる。

「……大丈夫?」

「大丈夫に見えるなら、眼鏡かけた方がいいんじゃない」

相当機嫌が悪い。
というか、しんどいのだろう。
114 : ◆/BueNLs5lw :2017/01/17(火) 23:32:57.21 ID:Uw2lHI160
「絵ちゃんこそ、コートびしょびしょになるよ……」

「え、あ」

急いで袖やら裾やらの雪を手で払って戸を閉める。
ちあきちゃんが力なく物干しスタンドを指さした。
あそこに掛けておけと言うことらしい。

「……何しに来たの」

手袋もついでに乾していると、ちあきちゃんが言った。

「熱出たって聞いたから」

「ひろ君に聞いたの?」

「うん」

「そ、暇なのね」

「なんか、さっきからトゲある」

「だって、絵ちゃんはひろ君と喋ってるでしょ。ずるい。ひろ君もずるい。二人は普通に話せるのに……私だけ、仲間外れだし。どうしてよ」

ソファの背に隠れて、ちあきちゃんがどんな顔で言ったのか分からない。
でも、きっと年上の癖に、可愛い仏頂面をしているに違いなかった。
元凶はちあきちゃんなんだけど、それを言うほど私も子どもじゃない。

「ごめんね。そういうつもりじゃないからね」
115 : ◆/BueNLs5lw :2017/01/17(火) 23:46:18.92 ID:Uw2lHI160
ソファーの正面に周り、

「ちあきちゃん」

小声で呼ぶと、手でしっしっと払われる。

「ところで、なんでここで寝てるの」

「ひろ君の帰り待ってるのよ……」

「今日は夜まで帰らないって」

ちあきちゃんの体がぴくりと動いた。
何か叫ぶかと思ったが、その気力もなかったらしい。
ほんとに、こんな人が怖いだなんて。
大きな赤ん坊みたい。
116 : ◆/BueNLs5lw :2017/01/17(火) 23:47:52.44 ID:Uw2lHI160
いかん、寝ます
117 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/01/18(水) 00:36:22.24 ID:M7FEmY8rO
良い…
118 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2017/01/18(水) 03:51:40.32 ID:xteJy95eO
一転してちあきさんにグイグイ行くのがすばらしい
119 : ◆/BueNLs5lw :2017/01/18(水) 21:43:55.32 ID:m7LCNG3t0
ちあきちゃんは、ちゅうー、とネズミのような鳴き声を発して、

「絵ちゃんはいつまでいるの」

「ちょっと様子見に来ただけだから、すぐ帰るよ」

「そうなの……」

言って、しんと黙る。
少し、息切れしてる感じ。

「ね、デザートにマンゴープリン買ってきたけど食べる? 口に合うか分からないけど」

「うん……」

「今、食べる?」

「う……んん」

どっちだ。

「ちあきちゃん、しんどい?」

「……ん」

話に聞いていたより、かなり重症じゃない?

「ひろ君に家にいてって言えば良かったのに」

「……あんたが言ったんじゃない。ひろ君以外に目を向けろって」

120 : ◆/BueNLs5lw :2017/01/18(水) 22:42:36.24 ID:m7LCNG3t0
「もしかして、ちあきちゃんがひろ君に頼んで、私を呼んだの?」

「そうよ」

「偉い」

「偉くないわよ」

彼女の頭に手を置いた。
ゆっくり撫でる。
大丈夫。
ふいに、腕を掴まれる。
力は無くて、くにゃりと折れた。

「部屋で休もうよ、ちあきちゃん」

「おんぶして……」

それは無理。

「しっかりしてよ、大学生」

でも、その弱弱しい姿を見れて私は満足もしていた。
悪く言えば、気味が良かったのかもしれない。
もっと苦しめばいいのに。
ウソウソ。
私、そんなキャラじゃない。
そうだよね。
121 : ◆/BueNLs5lw :2017/01/18(水) 22:56:17.32 ID:m7LCNG3t0
「ねえ、絵ちゃん、今日は……しないの?」

彼女が言った言葉が聞き取れなくて、

「え、何?」

聞き返す。

「ほら、ぎゅっと……してくれたじゃん」

熱に浮かされて、ちあきちゃんが恥ずかしい台詞を吐いている。
後ろから抱き付いたことだと悟った。

「あれ、すごく落ち着く」

「やだ、どしたの。甘えん坊」

ソファの上でもじもじしていて、ちょっと可愛いかもしれない。
122 : ◆/BueNLs5lw :2017/01/18(水) 23:19:15.48 ID:m7LCNG3t0
「したら、部屋で休む?」

「うん」

今なら、たぶん大丈夫かな。
ソファの上に座らせてもらい、ダンゴムシのようなちあきちゃんに起き上がってもらう。
細い胴回りに手を交差させて、抱きしめてあげた。
温かい。
今日は甘い匂いはしない。
動悸もほとんど無くて。
経過は良好。
抱き心地がふわふわで、酔ったように私は肩に顔を埋めた。

「絵ちゃん……温かい」

「ちあきちゃんもだよ」

「昔、逆にひろ君にしたら、突き飛ばされた」

「そりゃそうだよ」
123 : ◆/BueNLs5lw :2017/01/18(水) 23:59:56.63 ID:m7LCNG3t0
熱があったのに、私はちあきちゃんと昔の話をした。
ちあきちゃんに泣かされた話。
ひろ君がおねしょした話。
私がちあきちゃんの家にお泊りに行った時に怖くてすぐに家に帰ってきた話。
でも、ちあきちゃんが送ってくれたっけ。
過去の思い出には、いつもひろ君とちあきちゃんがいた。
ちょっと前まで、思い出しても気が滅入る事の方が多かった。
それを正直にちあきちゃんに伝えてから、

「私、ちあきちゃんにお礼を言わないといけないことばかりだったね」

「……馬鹿ね」

私が思っていた以上にちゃんと繋がっていたのかもしれない。
何を怖がっていたのか。
そんなに怖いものなんてなかったのに。それを確かめずに。
トラウマ何てそんなものかな。
124 : ◆/BueNLs5lw :2017/01/19(木) 00:20:05.75 ID:ewI4O/lC0
「……小さい頃の事なんだから」

それだけ言って、ちあきちゃんは私の体にまた体重を預けた。
うん。
その程度の過去。
私が思うより、幸せだったんだろう。
将来に不安もなく、目の前の事だけが全てだった頃。
誰かを傷つけたとか傷つけられたとか。
許すとか。
いちいちそんなことも考えなくても良かった。

「絵ちゃん? どうしたの?」

「うん……」

「泣いてるの?」

「……少し」

「なんで」

「分からない」

きっと、私の心は人よりだいぶ大げさ過ぎる。
125 : ◆/BueNLs5lw :2017/01/19(木) 00:32:51.99 ID:ewI4O/lC0
気が付いたら、私は眠っていた。
ちあきちゃんの膝の上に頭を置いて、彼女の手を握っていた。

「病人より先に寝る?」

「ごめんね」

私は小さく笑う。
怖い?
ううん。
嫌い?
ううん。

「……」

自分の頬を触ると熱を持っていた。
トラウマじゃなければ、この昂ぶりはなんだろうか――。






おわり
126 : ◆/BueNLs5lw :2017/01/19(木) 00:33:37.02 ID:ewI4O/lC0
ということで、終わりです
また機会があれば
127 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/01/19(木) 06:46:47.64 ID:MEE5snxeO
終わりか...残念だ
128 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/01/19(木) 08:21:57.68 ID:vzgiv2FGo

特に関係ない話なんだけど
女教師x女生徒が見たいなぁと思いました
129 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2017/01/19(木) 16:21:37.57 ID:SyNSCGOrO
第2部を楽しみにしてるよ
130 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/01/20(金) 02:48:46.93 ID:v9xWcqNE0
乙です ラビットの方も楽しみにしてます
69.98 KB Speed:0   VIP Service SS速報R 更新 専用ブラウザ 検索 全部 前100 次100 最新50 新着レスを表示
名前: E-mail(省略可)

256ビットSSL暗号化送信っぽいです 最大6000バイト 最大85行
画像アップロードに対応中!(http://fsmから始まるひらめアップローダからの画像URLがサムネイルで表示されるようになります)


スポンサードリンク


Check このエントリーをはてなブックマークに追加 Tweet

荒巻@中の人 ★ VIP(Powered By VIP Service) read.cgi ver 2013/10/12 prev 2011/01/08 (Base By http://www.toshinari.net/ @Thanks!)
respop.js ver 01.0.4.0 2010/02/10 (by fla@Thanks!)