マリオ「最近、テニスやパーティーにゴルフばかりで…何かを忘れているような」

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338 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2018/08/19(日) 18:42:46.31 ID:qb8LSMyc0
続きは…続きはまだか…
339 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/08/29(水) 00:59:50.07 ID:HGcxoHs30
―――
――




ワリオ「……」望遠鏡スチャ、ジーッ






ヨッシー「ワリオさーん、どうですかー?」

ワリオ「ちったぁ待ってろってんだ!今視始めたばっかだ!!」ジーッ





ワリオ「旗は取っ払われて悪趣味な旗が上がってやがるぜ、ケッ!」

ワリオ「主張の激しいこったぁ、落城からそんな時間経ってねぇのに」


ヨッシー「キノコ王国の国旗の代わりに"旧"クッパ軍のですか」


ワリオ「おう!だせぇデザインだよなァ!
        『W』って旗掲げた方が格好いいぜ」ガッハッハ!






キノピオ「おおおお、お二人共!何を暢気な事を言ってるんですか!」


テレサ「笑止!闇に染まりし王城を笑う時を見誤ろうとはな…」
 訳:(そ、そうですよぉ!お城が侵略されたんですっ!
              笑ってる場合じゃありませんよ!!)






ワリオ「ほーん、んで?てめぇ等みてーに慌てりゃ解決するってか?」


キノピオ「そ、それは…」



ワリオ「しねぇだろ」

キノピオ「…」



ヨッシー「焦る気持ちは分かります
       ですが無策で突っ込んでも返り討ちが関の山ですね」



キノピオ「…こういう時、僕は自分が情けなく思います」



キノピオ「僕たちお城を護る役目のキノピオは
            一体何のために居るんだろうって…」ギュゥッ



テレサ「…隣国の遣いよ、自らを責める出ない」ピトッ
  訳:(キノピオさん…そんなに自分を責めないで…)


340 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/08/29(水) 01:51:01.38 ID:HGcxoHs30


ヨッシー「その考え方はどうかと思いますけどね、私は」ヤレヤレ…

キノピオ「…?」



ヨッシー「一体何のために居るんだろう、ですって?
        今しがた自分で口にしたじゃありませんか」


ヨッシー「城を護る為に居ると」



キノピオ「っ…それで、守れなかったから…自分は何なんだろうって!」


ヨッシー「そこですよ、そこ」







ヨッシー「君は、自分を完璧無欠のスーパーヒーローか何かとでも?」



ヨッシー「譲って超人的な能力を携えていたとしても
      100%護れるなんてそんなバカげたは話はありえませんね」




ワリオ「だな、俺やコイツが居たにも関わらずあのザマだからな」

ワリオ「っつーか、何か?さっきからそれは
        てめぇより強ぇ俺達への当てつけか?あぁ?」



ヨッシー「ええ、そうです、マリオさんが居たとしても同じです」

ヨッシー「奪われる時は奪われ、落とされる時は落とされます…」






ヨッシー「そして奪われた度にマリオさんは
             何時だって走り出して取り戻しました」


ヨッシー「重要なのは、守れなかったなら守れなかったなりに
     その時々で如何にベストな行動を迅速にできるかです」





ヨッシー「初めから奪われない前提なんていうのは
      馬鹿げている所じゃありませんね…寧ろ烏滸がましいです」



キノピオ「ッ!」


テレサ「喰人蜥蜴…!言葉が過ぎるぞ!」
  訳:(ヨッシーさん、そんな言い方あんまりですよ)



ヨッシー「事実です」

ヨッシー「自分の脳内で思い描いた局面が常にあるワケがないんですよ」

ヨッシー「どれだけ訓練を積もうが、どれだけ危機的状況を予測しても」

ヨッシー「"護れない時は護れないのだから仕方ない"の一言に尽きます」
341 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/08/29(水) 02:46:35.28 ID:HGcxoHs30


ヨッシー「二度言いますよ?重要な事は守れなかったのなら
       守れなかったなりに、次にすべきベストを尽くすです」



ヨッシー「くよくよして、めそめそ泣いて後悔して
      そうやって停滞してても解決なんてまずありえません」







ヨッシー「反省会は何もかもが全て終わってから、それで良いんですよ」





キノピオ「…」





ヨッシー「それに私が見る限りベストな行動をとってたと思いますよ?」

ヨッシー「現にこうしてテレサさんと合流後に逃げ遅れた人を
      私達が近くに居た最寄りの避難所へ誘導してたんですから」


ヨッシー「胸を張って誇って良いんですよ、君は」

ヨッシー「えっへん!と大威張りで踏ん反り返るだけの事をしてます」



キノピオ「…ありがとうございます」



ヨッシー「はいはい、どういたしまして…」ニコッ

ヨッシー「さっきから静かなワリオさん、そっちの状況はどうですかー」



ワリオ「…んあ?なんだいありゃあ…」ポリポリ


ワリオ「城の裏っ側にある資材置き場だかゴミ捨て場があんだろ?」

ワリオ「奴さん、なんか"妙なガラクタ"をわんさか運んでるぜ」


ヨッシー「ガラクタ?」


ワリオ「…ほらよ」スッ


ヨッシー「どうも……、ふむ…どう見ても鉄屑ですね」パシッ、ジーッ


ワリオ「戦車のパーツ…でもねぇな、本当にタダの鉄の塊だ」

ヨッシー「…バリケード? あ、この国の工業区に持ってて
          鋼鉄製戦車の量産を…いや、それにしては…?」





 この国の工業区…ドンキーコング等が居た
工場地帯に運び戦車を造る為の資源にする気か…

そう考えたが不自然だ、その資源を木製戦車の強化に当てればいいのだ
確かに、コストパフォーマンスや修復のし易さを売りにした造りだが

 確認できた限りで、全てがソレだ、1、2両ぐらい鋼鉄製を造っても
問題無さそうだが…?
342 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/08/29(水) 04:12:30.50 ID:HGcxoHs30


ワリオ「あの屑鉄は一旦置いといてだ」

ワリオ「城の周りはさっきまで街中にわんさか居た【カロン】共だ」

ワリオ「んで、ご丁重に各方面に戦車数両と城ン中にも外には居ない
     【ブル】公共と【ハンマーブロス】の団体様だ」



ワリオ「唯一手薄そうなのは…」







ヨッシー「"空"、ですか…」






ピーチ城、庭園は無論…外敵の侵入を防ぐための御堀周辺にも兵は大勢だ

地上からの正面突破は骨が折れる…ともすれば手は3つ



1つ、水中だ



嘗て、クッパが"ピーチ姫を絵画の中に閉じ込めた事件"の時

 秘密裏に開発していた潜水艦で海から城内に攻め入った事がある
潜水艦が発見された場所…【クッパのウォーターランド】と呼べる場所で
それが発覚した




2つ目は地中


地下から穴を掘っての潜入
時には城ごと地面から宇宙まで持ち上げた事もあった



ピーチ城は先に書いた通り、御堀がある

御堀というのは古典的だが効果的な防衛機構だ

敵兵が容易に入り込めないような深さを誇る水堀というのは古来から近世
長く使われてきたモノで地上からの侵攻を難しいモノへと変える



こういった地上からの防御力はそこそこあるのだが
 反面、地下や上空からの侵攻には滅法弱いのである…



ワリオ「俺らが攻め入る側に回るとな…あの正面の橋を通るっきゃねぇ」

ワリオ「敵は橋んとこ重点的に兵を配備してやがるし
    突破してすぐのエントランスも団体さんが居やがるんだろうよ」

ワリオ「くそっ、こーいう時に限って城の無駄に高い防衛力が恨めしい」




ヨッシー「…そうですね、私は泳げませんからね
     南の島でバカンスしてた頃よく溺れました…水堀はちょっと」


キノピオ「えっ…ヨッシーさん普通に泳げたんじ「私は泳げません」

キノピオ「あ、はい…」
343 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2018/08/29(水) 17:10:09.58 ID:+v/KCasj0
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
344 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/08/29(水) 23:41:29.71 ID:YdfDsdr30
待ってた
345 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/09/02(日) 19:44:27.36 ID:lRgst/FI0
あのヨッシーはクッパJrがマジックブラシで描いた別物と考えてたが...てかあのヨッシーの消え方エグイよね
346 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/09/03(月) 00:46:27.43 ID:CC6vyMrd0
>>345
どっちにせよオデッセイで入水すると即死するからセーフ
347 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/10/17(水) 00:29:46.46 ID:B47M+ekK0

「そりゃまいったなァ…バレルジェットも持って来てないしなぁ」


ワリオ「お?帰って来たな、どうだあっちの避難所から使えそうなのは」




ディディー「んー、缶詰とか乾パンがこんだけ」ドッサ

ディディー「あとは毛布とかかなー」


ドンキー「人も連れて来たけど…ここに集めた人皆じゃ足りないよね」

ワリオ「…だな、収容できる数に限りあるしなァ」ポリポリ




キノピオ「あの…すいませんね、街の防衛に手を貸していただいたのに」


現クッパ軍ブロスA「いえ、自分達は協定に則っただけであります!」

現クッパ軍ブロスB「当然の事です!」ビシッ



キノピオ「でも、怪我をした人も居るのに地べたに寝かせててなんだか」



現クッパ軍カメック「いえいえ…我らは丈夫ですゆえ」

現クッパ軍カメック「スペースに限りがあるなら民間の方を優先せねば」



 国中に居た兵の大部分は今や"旧クッパ軍"の軍旗をはためかせる
ピーチ城の衛兵と転じていた


牙城と化した城に乗り込む事も現戦力ならば不可能、ではない

ただ、乗り込んだ後が問題だ


 殴り倒してもすぐに蘇る【カロン】を始め
ヨッシーでも飲み込めない屈強な部隊がわんさか来るのは目に見える

頼みの綱はこの場に居る現状戦力たちだけだ、それが一網打尽にされては
本当にもうどうしようもなくなってしまう




何か、現状を打破できる…"流れ"…それを誰もが欲していた…っ!





ディディー「はぁ〜あ、クランキーはランキー達と反対側に行ったけど」

ディディー「きっと碌なモン見つかんないだろうなぁ…」ゴロン


ディディー「…」ポケー



止まった流れ…停滞にうんざりとした顔で少年は寝転び空を見上げる


白い雲、青い空…煙を上げながら城に向かって飛んでく機影





ディディー「…は?」

348 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/10/17(水) 00:37:16.31 ID:0gNI2E660
きたか……(ガタッ)
349 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/10/24(水) 00:26:25.58 ID:02eM91jv0

白い雲に絡みつくように黒ずみの煙は空に昇り混ざっては消えていく


 煙を燻らせるのは嘗てこの国に災禍を齎した宇宙からの来客のモノで
それを目にした一同は眼を丸くした



キノピオ「あ、あ、あれはゲドンコの!?」


ヨッシー「ワリオさん、ちょっとそれ拝借しますね」ペロンッ

ワリオ「あっ!てめっ、この…俺の望遠鏡を舌で盗るんじゃねぇ!!」


ヨッシー「いいじゃあないですか、別に食べたりしませんよ」スチャ





ヨッシー「…」ジーッ






ヨッシー「…ふっ、ふふふ!」


キノピオ「よ、ヨッシーさん…?」オソルオソル

テレサ「ど、どうしたのだ…一体?」

ワリオ「…んだよ、ほくそ笑みやがって何見えてんだオイ」






ヨッシー「ワリオさん、これ返しますね」ポイッ

ワリオ「わっ!馬っ鹿お前コレ高ぇんだぞ!!」ガシッ


ヨッシー「みなさん、状況が変わりました
          私は今から城攻めに行ってきますので」ビシッ



ワリオ「ハァ!?状況を説明しろって!」

ドンキー「待ってよ、1人じゃ危ないよ」




ヨッシー「すいませんねぇ…柄にもなくちょっと興奮してるみたいです」

ヨッシー「あの宇宙船左から2番目の割れた窓ガラスをご覧ください
          内部の様子がくっきり見えますので…では!」シュタッ




ワリオ「あっ!…糞がッ!!
       あの野郎何の説明も無しになんだってんだ!」スチャ!


ワリオ「…!」ジィー






ワリオ「…ハッ!そういうことかよ…はしゃぎやがって…」

ワリオ「誰よりも先に合流して文字通り美味しいトコだけ食うってか」

350 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/10/24(水) 00:42:36.29 ID:02eM91jv0


ワリオ「アイツ一人に…
    いや、"アイツ等"に御馳走喰われて堪るかってんだよォ!」バッ!



キノピオ「わ、ワリオさんまで!?一体何が起きたんです!」





ワリオ「…」ピタッ


ワリオ「へへ…死んだ魚みてーな目をした奴が…漸く光取り戻したんだ」





  ワリオ「 マ リ オ が 記 憶 取 り 戻 し て 帰 っ て 来 や が っ た ぜェ!!」




―――
――




ルイージ「うひゃぁ…こりゃ凄い、数時間ぽっちでもうお城がアレだ」

ルイージ「随分と手がお早いことで」ヤレヤレ


マリオ「おっ、城門が開いてぞろぞろ出て来るな」

マリオ「流石に煙あげた友軍機(?)がこっちに飛んで来たらそうだな」



ルイージ「ハハッ!派手な凱旋パレードだなぁ〜
             …み〜んな目をまん丸くしてらぁ」


マリオ「だな、此処は1つ歓迎の出迎えに答えてやるとするか」ハッハッハ!




マリオ「早速、こいつを"不時着させる"とする」






真面な操縦の仕方など知らぬ

単に、直感…計器の位置や、ゲドンコの手足のパーツ的にどのスイッチ
どんなレバーがどういう役割か、重要なモノであれば当然押し辛い位置に
無いだろうという憶測などから来る…"感"で操縦していたマリオは


その異星の乗り物を地に降ろす方法だけはしっかりと分かっていた



マリオ「ふんッッッッ!!」つ【ハンマー】ゴッッッ!


操縦桿『 』メシャァァ!!


…バチッ!バチチチッ!…BON!



 …異星の乗り物は、ゆったりと
それでいて徐々に加速しながら"着陸"体制に入った…

火を噴きながら悲鳴を上げ始めた城門前で構えていた旧クッパ軍目掛けて
351 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2018/10/25(木) 18:20:28.41 ID:EoHReGLz0
叩いて直すどころか叩き落しおったwww
352 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/02(金) 23:55:44.73 ID:vBgNsOZB0



「う、うわあああああああああぁぁぁぁぁぁっ!?!?」



最初に悲鳴を上げたのは果たして誰だったか

炎上する機影はそのまま何事か!?と出て来た旧クッパ軍の頭上目掛けて
真っ逆さまだ、異星人の機体は質量弾としてピーチ城の門前に落下した




  バ ッッッ グ オ ォォォ ォ―――z_____ン!!



"着弾"…ッ!と同時に同心円状に広がっていく爆炎と黒々とした煙

宇宙人が何を使っているかしらないが恐らく燃料に引火したのだろう




 炎環は広がり切って、尻切れ蜻蛉のようになって消え去った頃には
城門前は地獄絵図と化していた…




「ぎゃあああああああああああああぁぁぁっあっ ぁ アアアアアアア」

「ひぎぃいいいいい!熱ぃ!!あぁぁァちぃぃぃぃぃ!」メラメラ

「た、助けてくれぇぇ焼け死ぬ」ボォォォ





身体全身が炎上し、火をもみ消そうと文字通り死に物狂いで地べたに
転がる【ブル】や【ハンマーブロス】隊

不運にも最前線に配備された者が宇宙船の墜落時に飛び散った液体
(ゲドンコ星の化学燃料と思われる)を浴び…そのまま引火して全く
身体についた火が消えないという



酷い者だと真っ黒こげでプスプスと煙をあげたままピクリとも動かない
辛うじて生きているのが奇跡的である…クッパ軍での日々の鍛錬の賜物か



「ほ、堀だァ!堀に逃げ込め!!」メラメラ…ダッ!

「み、水…っ!水ぅぅぅぅ!」ダッ!バッ…バッシャーン!




ピーチ城の廻りが水堀で良かった



敵城と化したピーチ城の第一関門、城門および、一階エントランス内で
待機する大軍はこの"傍迷惑な「ただいま」の挨拶"でほぼ一掃された…

水に飛び込む者、倒れて危篤状態の者に「しっかりしろ!死ぬな!」と
呼びかける者…誰も迎え撃てる状況ではなかった



さて、今しがた"ほぼ一掃された…"と言ったが、まだエントランスには
控えの兵が居る為、全滅ではない、そういう意味合いではまだ第一関門は
突破されていない




 ―――これから本格的に蹂躙され墜ちるのであるッッ!!

353 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/11/03(土) 00:10:20.18 ID:ELlyQQ25O
大惨事じゃねーか!w
354 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/11/04(日) 02:42:02.61 ID:XmOuHxLu0
すげえ、汚物がどんどん消毒されていく
355 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/11/05(月) 00:14:23.81 ID:l6Jin1090
スーパークラウンがでたから投降したピーチが本物か分からんなと思ったまだ発売してないけど1月発売だしオデッセイの時みたいにプライ後更新で設定変わるかな?
356 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/27(火) 22:34:13.26 ID:MLiJuYZS0



 阿鼻叫喚と化していた城門前にて、倒れ伏した一人の兵士がゆっくりと
重たくなった瞼を開き、今しがた焼土になった母なる大地から顔を離す


緑色のヘルメットは罅割れ、砕けていて…密かな自慢である髪型も焼け
焦げ臭い匂いを漂わせる片腕で目元を抑え立ち上がる




仲間達はどうなった?



一体何が起きたのだ?



何故ゲドンコの機体が降って来た?







周りで同胞が同じく負傷した者の肩を支えこの場から退避する姿が映る




【カメック】医療班を呼べ!大丈夫か!?死ぬなとしっかりしろ!と
戦友を励まし喝を飛ばす者…




そして、この彼のように立ち上がり事態を把握しようとする者


それがこの場に居る歴戦の兵達だ、割れたメットを被った首を左右に振り
被害状況を確認、そしていつも手にしていた槌に手を伸ば―――


…先の爆破で柄から先が焼き切れ、鉄製の頭も何処ぞに失せたようだ




苛立たし気に小さく舌を打ち、棒きれになった柄だけでも握りしめる
無いよかマシだ



「くそったれ!なんだってんだ!」


 少し離れたところで自分の内情を代弁したような声を同志が口にする
彼も自身同様に…膝をつきながらも爆心地を眺めていた

じっと、警戒するように…













     不意に、空が暗くなった。





357 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/27(火) 22:58:14.96 ID:MLiJuYZS0






1つ、―――たった1つだけ思い違いをしていた






彼等はこの奇襲に対して臨戦態勢を取ったのは良い



問題は次だ、彼等は何処を警戒したか、だ



 ブービートラップ、という単語を洋画や漫画で小耳に挟むことはあるか
簡単に説明してしまえば、それは戦術における1つの技法だ

相手の目に見える範囲に目立つモノを"ワザとおいて"そっちに注意を惹き
近づいた相手はBOMM!という罠の一種だ




 何もこれに限った話ではないが
人の意識や関心を多方面に逸らすという手段はあらゆる分野で存在する



 例えば手品だってそう、ありきたりな脱出マジックだって
壮大な前フリでデカい箱の鎖だの鍵だのに目線が集まってる中、手品師は
床下の隠し扉や鍵を掛ける大勢のアシスタントに変装して紛れて去ったり

ネタが分かると「ああ、騙された…そういうことか」と思わされる物だ





炎上する異星人の機体…
    その残骸から乗って来た人物が馬鹿正直に出てくる筈が無い…









気付いた時にはもう遅い、急に空が暗くなった事で彼は天を見上げた













    ルイージ「 Y e a h h h h h h  h!! 」ヒューッ






太陽のど真ん中に逆光で黒塗りとなったシルエットが1つ



遥か上空からッ!あの墜落の間際にカタパルトから射出した戦闘機の如く

新緑色の四輪駆動のマシーンがッッ!!英雄兄弟を乗せて跳んで来たのだ!
358 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/11/27(火) 23:18:32.08 ID:MLiJuYZS0


ヒューーーーーッ!!





ルイージ「そらそらそらぁ!!退いた退いた退いた!!」ビー――ッ!!


ルイージ「撥ねちゃっても知らないよォ!
       轢かれても生命保険は下りないんだからさァ!!!」





けたたましい警笛<クラックション>の音が空から響き渡る

ハンドルの中央に掌を押し当て何度も圧を掛けて暴走族よろしくな騒音を
捲し立てるのは帰って来た永遠の2番手だ


そしてその背後には……紅い悪魔ことマリオが控えているッ!!





マリオ「俺が言えた口じゃないが
      その警笛連打はどうなんだ?族っぽくないか…」ヤレヤレ

ルイージ「いやぁ〜、レースやパーティーじゃない冒険は
       久々だからついね?テンション上がっちゃってさ」ハハハ!






 笑いながら落下してくる悪魔の姿に
"既に戦う前から満身創痍"の兵は戦慄した



1台の機体に【ダブルダッシュ杯】を彷彿させる二人乗りスタイル…

緑の弟の背後には片手に"ナニカ"黒い物体を持った英雄が居る



太陽光のせいでそれが何なのかは初めは分からなかったが徐々に彼等が
地表に近づくにつれて影のシルエットは取り払われ…輪郭が見え始めた









  「ぼ、ぼ、ボム兵だぁああああああああああぁぁぁぁッッッ!!」








白いグローブの上にちょこんっ♪と可愛らしく椅子でも座ってるように
鎮座する黒い物体はネジ付きの玩具そのもののようだった


 自我を持たないタイプのボム兵の虚ろな目がただただ
冷たく怯える兵達の顔を映していた…

359 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/11/28(水) 11:55:12.23 ID:Ap7FEeqZ0
>>355
キノじい「わしじゃよ」
360 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/12/04(火) 03:34:42.58 ID:eNf+JF4a0
>>359
キノピコ「えっ!?」
361 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/01/02(水) 00:01:24.55 ID:WJWP6H930



「ひ、ひぃぃっ、つ…潰されちまうっ」サッ!

「うわぁぁぁぁぁあああ!!」ゴロッ…ゴロゴロ




満身創痍の身体の何処にそれほどの力があったのか最後の気力を振り絞り

 人間二人分の体重を上乗せした四輪駆動のマシンの落下地点に居た兵は
身を捩らせるように転げてその場を離れ九死に一生を得る



ギュルルルルルゥゥゥン…ッ!



滞空中にエンジンを唸らせ、マフラーから排気ガスを吐き出し車輪は宙で
文字通り空回りする、着地と同時に摩擦熱を生み出しながら車体は前へ…





ルイージ「ヒュゥウゥゥィィゴオオオオォォォ!!!」ドギュゥゥゥン

マリオ「ほらよっ!」ブンッッ!!





機体の後方に立ち乗りするマリオは軽い一声と共に火薬の塊を投げる

それは嘗て、何の気まぐれか国を挙げて開催された野球大会
通称"マリオスタジアム・ミラクルベースボールGC杯"の時と全く変わらぬ
投球フォームでした、金属の塊が磁石に吸い寄せられるかのように



ボム兵はピーチ城の玄関口にコツン、と可愛らしい音を立てました












          B O O O O M !!





「ぎへぇぇぇえええええええええぇ!?」
「ごびゅっ――」
「あああ"あ あ あ あ"あああぁぁぁ"ぁああ"" あ」




城内から悲鳴が上がります

一番扉に近い位置でのたうち回っていた城外の兵も悲鳴を上げます




ルイージ「おっっわ、痛そ〜……」

マリオ「なるべく倒れてる奴は轢かないように気を付けて運転しろよ?」

ルイージ「"なるべく"、ね」

マリオ「ああ…"なるべく"、な…やむを得ん場合は目を瞑る」
362 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/01/02(水) 00:29:13.80 ID:WJWP6H930

 目を瞑る、であって絶対に轢かないではないのだ

…とはいえ

いくらテロ被害だと、国の一大事とは言えそのような人道に反する行いは
そうホイホイとは流石にしないだろう




ルイージ「っと、言ってる側から道幅を陣取るように敵が…」

ルイージ「参ったなこりゃ、迂回どうこうでどうにかなるレベルじゃない」






マリオ「ならばアクセル全開で直進すれば良いだろうに」キッパリ







…前言撤回、普通に横たわる怪我人を撥ね飛ばしていくようです





マリオ「なに、たかだか車両による人身事故程度のダメージだ」

マリオ「スター状態で吹っ飛ばすのに比べれば有情だ」

ルイージ「それもそうか」ギュルルルルルルッ!





「 お ぎ ゃ ああ あ あ あぁぁ―――ッ、
              お、俺のて、手がぁぁ」メギョ、バキョ!


「ふ "お" ぉ   ぉおおおお」片脚グシャ





「ご、ごほ…なんだ今の爆発はっ!?」
「無事な奴は手を貸せ!怪我人を運べ!」
「お、おい……そ、外を見ろよ!!英雄兄弟<マリオ・ブラザーズ>だァ!」
「マリオだ――っ!マリオが帰って来たぞ!!」
「同志たちを轢きながらこっちに来るぞォ!!」
「容赦なしかよ!!」
「じょ、冗談じゃねぇぇ…!」



ざわ…ざわ…っ!


「ばかやろぉぉぉぉ!!何ビビッてやがんだ!
          むしろ俺達はこれを望んでただろォ!」



「!!」


「そうだ俺達の闘い…闘争が…――敵でありながら憧れた強さが」ゴクリッ

「…へ、へへっ!此処で俺達も日和っちまったなぁ…っ!!」

「ウオオオオオォォォ!!立ち向かうんだァァァ―――ッ!」

363 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/01/02(水) 21:11:53.59 ID:WJWP6H930

【ピーチ城:エントランス】


ちらちらと粉雪の様に降って来るのは灰…煤、さしずめ黒雪とでも呼ぶか




 冬を象徴する妖精とは対極の色合いのそれは純白の石橋を暗色に染め
その真上を四輪車が豪快に突っ切る、後にはタイヤ痕がくっきりと残る


ボム兵の先制攻撃で門の役割など当に果たせなくなった"大穴"に躊躇なく
兄弟の乗った機体は突っ込む、そこで彼等が目にしたのは…っ!




ルイージ「oh…こりゃぁ、また…」BROOoo…!

マリオ「…ほう?」ニヤリ




「全軍突撃ィィ―――ッッ!!」

「英雄兄弟<マリオ・ブラザーズ>っ!此処であったが30年!今度こそ!」キッ

「俺達が…俺達が勝利の栄光を掴むんだぁぁぁぁ!!」





ギラついた眼差し……血走った目






己の内にある恐怖心、戸惑い―――

―そして、同時にそれらに自ら克服し恐怖を乗り越えようとする『意志』



負の感情と、正の感情、"相反するソレ"が入り乱れた者

奥に行けば行く程、迷いなど元から無いと言いたげな眼つきをした熟練兵


逢いたかった…逢いたかったぞ!宿敵<トモ>よ!と目で訴えかけてくる者



誰も彼もが【逃げる】という選択<コマンド>を選ばない…っ!!






 初手で爆弾が飛んできて、死にかけて、次いで四輪車に乗ったやべぇ奴が
何の躊躇いも無く人を撥ね飛ばしたり車輪で轢き逃げしていく光景を
目の当たりにしたら普通は恐怖したり、逃げたいと思う



 が、歴戦の兵は逃げない、最初こそ狼狽えたがすぐに
奥の方に控えていた最古参たちの一喝で戦う意志を見せた




ルイージ「あぁ…やだやだ、ああいう目したのって僕、苦手なんだよね」

ルイージ「こう…なに、なんてーの?躾が成ってて人を襲わない無害でも
          ブルドックの凄味のある顔は苦手だなぁ〜的な?」


マリオ「俺はああいう顔つき嫌いじゃないがな、血肉躍るじゃあないか」
364 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/01/02(水) 21:45:50.68 ID:WJWP6H930


ドドドドドドドドドド…!!


ブル「ウオオオオオオオオオオォォォ―――ッ!!」


 まだ生き残っていた【ブル】部隊の一人が我こそが一番槍だ!と
鍛え抜いた肉体を以てマシンへ駆けだす、その勇士に連なる様に
2人目、3人目…4人目と押し寄せる波となって彼等は突撃する





 …これが一人、であったなら正面衝突で
ガソリンエンジンに押し負け吹っ飛ばされるまでが予定調和だが


 永く語り草となっている"三本の矢"の教訓と同じだ
束となればそう易々とへし折れはしないッッ!!








ルイージ「…はぁ〜…どうする兄さん?」

マリオ「関係ない、行け」ニィ!



ルイージ「へぇへぇ、だと思いましたよ」グンッ!




既に分かり切った質問だが弟は兄に問う



自身がさっき言ったがこの手の眼つきをした相手は苦手だ


"苦手"、ではあるが…"嫌い"だとは公言していない

苦手と嫌いでは微妙にニュアンスが違う、つまり――――




ルイージ「ああいうのは俺なりの礼儀を尽くす、だろ…ったく、もうっ」



 グン!とアクセルを思いっ切り踏み込み、城内で急加速をつけながら
緑色の帽子が後方に飛ばないように鍔を掴み抑える最中


 『…あぁ、なんだかんだ言ってやっぱ、僕もこの人の弟だなぁ』と思い
後方の同乗者と自分自身に呆れながら兄の美学を口にした







   立ち向かう戦士は礼儀を以て踏み越えていく


"喩え、それが1匹の非力なクリボー、ノコノコでも関係なく踏みつぶす"


…十数年もの間、今までだってずっとそうしてきたことだ


365 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/01/08(火) 22:58:16.96 ID:Q0z8+1q50



       ゴッッッッッガッ!



ブルA「お" ぶっぅ…ぅ ゥゥウウウウ、ぬおおおおおおオオ!!!」




 踏み込まれるフッドペダル、それによって加速した機体は
ブル軍団の先頭を走っていた切り込み隊長の腹にぶち当たる

 普通ならこれで吹っ飛ぶが、力学的に衝突先の相手が
ぶつかって来た相手より質量がある場合はその例に当てはまらない



たった一人じゃない


その後ろには先頭の彼を支えるように多くの仲間が押し寄せる
暴徒が集まり大型のバスやトラックを横転させるようなそれと同じだ


堅いプロテクターと甲羅に身を包んでいるとはいえ前門の四駆、後門の波




前後から"サンドイッチ"にされた彼は目を見開き、失神しかけた…









そう、"しかけた"だ、 彼は意識を手放さなかった






ブルA「ぐ、ぐがががが、ハアアアァァ―ーー!!!」

「押し切れぇい!!」
「俺達の意地を見せたれ!!」
「後ろの最古参のジジイ共にも俺達の矜持を見せつけるんだよォ!」



ブルA「フーッ!フーッ!」



【ブル】…その名の通り、闘牛<ブル>を思わせる鬼気迫る気迫…っ!


充血した眼、血の滲む唇を噛み締め、込み上げてくる胃の中を気合で抑え


彼は…ッ!





ブルA「行かせねぇ…っ、 ビビッてなんかいねぇ…」フーッ フーッ!プルプル

ブルA「お前達、英雄兄弟<マリオ・ブラザーズ>の伝説は
       俺達が終わらせるんだ…、俺達が勝利するんだよォ!!」




気力を振り絞り、痛みに振るえる両手を大きく広げ…なんと!

   こともあろうに彼は両手の指を回転する車輪に突っ込んだァ!!
366 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2019/01/24(木) 21:59:33.04 ID:N0+TQ+1m0
a
367 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/01/26(土) 21:11:07.98 ID:uwnhlGTmO
b
368 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/01/29(火) 21:46:31.35 ID:HnK3lFPi0


ベシャアアアアアアアアアァァァ―――ッッ!


ブルA「ぐ"ふ・…ご、おおおおおおおおおおおおおおおおおぉ!」ブシャァァ



カート車輪「」バゴンッッッ


 5本の指はカート前輪のホイールを突き破り、その回転を止めた
それだけに留まらず…闘牛が如し彼はソレを素手で引き抜いたァ!!



マリオ「…ほう」

ルイージ「うわっ!タイヤぶっこ抜かれた…」


 がこんっ、前輪を失った事で車両全体は前のめりに沈む様になった
車体はそのまま前面を床に擦りつける…このまま走行すれば間違いなく
磨れていくこと間違いなしだ



ブルA「へ、へへ…これでテメェらの侵攻はおし、まい――だ…」フッ



 先頭の勇士は言葉を言い切ると同時に意識を手放し
昏睡という名の水底に沈んで―――


         ガシッ



マリオ「良い『覚悟』だな、こいつをやるよ」グッ!『スーパーキノコ』

マリオ「ふんっっ!!」ブンッ





口にキノコ突っ込まれたブルA「―――」ヒューン…ゴシャアアァァン!




マリオ「ルイージ、やれ」

ルイージ「あいあいさー、っと」カチッ



 意識を手放したブルAの首を鷲掴んだ白い手袋は
そのままエントランス端にある柱へと彼を投げ飛ばし、弟に指示を飛ばす




今、この兄弟が乗る四輪駆動のマシンは…っ!





――フェッフェッフェッ!
    君の機体にはあのバキューム同様の特別機能がある…!





ルイージ「兄さんには素の実力で勝ちたい
       だからレースじゃこれは使わなかった…」


ルイージ「でもこれはレースじゃない、博士使わせてもらいますよ」

369 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/01/29(火) 22:19:00.93 ID:HnK3lFPi0

 さて走行中にタイヤが外れ、脱輪状態で尚走り続ければどうなるか

諸君は想像がつくだろうか―――アクション映画ならば車体をすり減らし
火花を散らしながらも前へと進んでいくだろう


 そして映画の中の機体は決まって"都合よく"ハンドルの切った方角に
正しく曲がり、さも何事もなかったかのように運転できるだろう






現実の自動車がそんなフィクションの世界通り、思い通りに動くものか




 コントロールを失うわ、そもそも地面とキスをし続ける車体半分が常に
摩擦を生み出すブレーキの役割を果たす

まともな走行など不可能である



そう、それが普通の自動車であったならばだ







 ブルAが人間一人の片腕で軽々と、お手玉遊びか何かのように
放り投げられた事でその後続に続く者がトップに躍り出る

 先任者の決死の行動により停止状態に近い減速とバランスを崩した車体
そして後ろの仲間達に押しつぶされる形にこそなったが
そのダメージは先のブルAよりも遥かに軽いモノだった




ブルB「――な、なんだってんだこりゃあ!」



 これで食い止められると心の奥で勝利を確信した彼は、脳裏に浮かんだ
栄冠のヴィジョンが波打ち際の砂の城のように崩れていくのを感じた








        ルイージの機体が"変形"した


いや、変形といってもただ後方部にノズルが一本生えて来たようなモノだ




そう、排気ガスを噴出するマフラーの真横、1本…



"掃除機のノズルのような何か"が…だッッ!!




  ルイージ「一応、確認ね、やっちゃっていいの?」

   マリオ「構わん、やれ」



あーあ…壊しちゃったら博士怒るかなぁ、と
             ぼやきながら弟はそれを稼働させた
370 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/01/29(火) 22:37:48.11 ID:HnK3lFPi0

ハンドルの右側に『R』と書かれたボタン、左側に『L』と刻まれた物
緑色の鍔付き帽子を被った彼は迷わず自分のイニシャルと同じソレを押す



 BUOOOOOOOOO−――――!!!!





【オバキューム】…それは嘗てルイージがあの白衣を着た初老の男と
初めて出会った日に譲り受け、そして以来、事あるごとに巻き込まれる
お化け騒動の解決に必ず持ち出す相棒のような存在だ


お化けを吸い込む掃除機という文面だけ見ればシュールな機械だが

 その吸引力たるや計り知れないモノだ、そのちっぽけなマシンの何処に
それだけの馬力があるというのか

あからさまに機械そのものの数十倍以上の重量を遠くから吸い寄せ
逆に"噴出"することさえ可能にするのだ





そして、この後ろから伸びるノズルは…『L』のトリガーを引かれた事で









        ドギャアアアアアアアァァァァー――――ン




ブルB「ぐ"べ"ッ―――」

後方のブルs「「「おごぉぉおおおおおっ!?」」」」





"噴出"……ただ空気を出すだけ、たったそれだけだった



だが、問題は量である


 もしも、これを何かに喩えろと言われれば宇宙進出のシャトルや
軍事兵器のミサイルの姿勢制御にさえ使われる
小型液体ロケットエンジンのスラスターと比喩してもいい




ギイイイイ―――ぎぎいぎぎっ


前輪を失い地面に触れたままの車体は――――





 ―――――そのまま金属製のボディを地面に擦り合わせ
            嫌な音を奏でながら火花を散らして前へ進む


否、後ろから"暴力的な力"で押し出されるように突き進んでいるのだッ!


371 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/01/29(火) 22:52:02.45 ID:HnK3lFPi0



ブルB「が――ほ"ば―――」







声が 出ない




声を発しようにも肺が空気を取り込めない
深呼吸して酸素を取り込もうにも絶叫系マシンの降りと捩れコースターを
一回転する時の遠心力で息がつまる時の感覚に酷似している


 暴力的な空気のジェット噴射によって推進力を得た四輪駆動は
車体のボンネットに群がるように体当たりした集団諸共前へ突き進む



―――そしてこのままいけば壁にでも衝突するという間近で進路を変えた




ブルB(い、ったい なに が   ハッ!?)




身体全体に激しいGが掛かる中で彼は見た…何故前輪を失ったこの機体は
止まる事も無く、更に方向転換ができるのか?



残った後輪だけで無理くり方向転換をしているのか?朦朧とする意識の中
ブルBは確かに見た






      "離陸してる"機体の後輪「 」カラカラ…







 ブルB「―――――――」




  ブルB(しゃ、車輪が『既に中に浮いてやがる』…ッッ!)






 この機体はもはや車輪の力で動いてない、完全に後ろのジェット噴射で
推力を得て更に方向転換もそれ頼みになっているのだ



ルイージがハンドルを切ればそれに対応して掃除機ノズルが向きを変え

文字通り宇宙ロケットのスラスターと同じように姿勢制御を為している
完全に浮遊はせず車体の前半分が地面に擦れたまま後ろ半分が宙に浮いた



そんな出鱈目で滅茶苦茶で頭トチ狂ってるとしか言い様の無いゴリ押しで

372 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/01/29(火) 23:27:25.45 ID:HnK3lFPi0


 排出される暴風圧は更に勢いを増し
遂には蜜を掛けた砂糖菓子に群がった蟻のような集団をふっ飛ばした…!


高速道路上を猛スピードで走れば勝手にワイパーを動かすまでもなく
フロントガラスの雨雫が横へ流れて振り落とされるのと同じだ


プロテクターに身を包んだ巨漢たちはそのまま城の室内壁に叩きつけられ
大きな罅割れを作る


 失神する群衆には目もくれず英雄兄弟は弾丸と化した機体に乗って
階段を登っていく



ズガガガガガガ!!!




…国一番の石工が手塩にかけて作った高品質の大理石製の石階段が
擦れる車体の先端でゴリゴリ削れていく、ルイージに機体を託した博士は
なにゆえ、此処まで機体強度を上げたのか…


 その気になれば大気圏突入可能な推力を発揮するモンスターエンジンを
搭載したのだ、車体全体がGに耐え切れずに分離することを阻止する為か




水の力だけでマグマ煮えたぎる火山洞窟から一気に上空まで飛び上がれる
ロケットノズルなんてモノを平然と開発してドルッピク島に置いたり

タイムマシンを開発できる科学力だ、掃除機で大気圏突入くらい余裕だ






ブルがめり込んだ城の壁『 』ボロ…

砕け散った柱『』ペキョ…メキメキ

最初にマリオがぶん投げたボム兵の爆風で割れた窓ガラス『』風ヒュゥウウ




辛うじて生きてる"旧"クッパ軍面子「――」チーン




機体が去った後には金属片と摩擦熱の煙―――というより床が焦げて
お高い高級絨毯がチリチリと燃え始めている



この部屋だけピンポイントで落雷つきの台風が発生したかのようだった





タッタッタ…!!



  ヨッシー「……!ははっ!派手にヤってるじゃあないですか!!」


  ヨッシー「血が騒ぐって奴ですねこれは…!」


  ヨッシー「他の人差し置いて一番乗りで来たんですから
              僕の見せ場も残してくださいよ…!」ダッ


373 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/17(日) 02:36:13.90 ID:HGQPydB/0

【ピーチ城 2F】



「ぐげっッ!?」ドゴォ!

「ほげばっ!」グシャッ!




前へ突き進む度に損壊していくマシン『 』ズジャジャジャジャ―ッッ!!



ルイージ「はいはい!退いた退いたぁ!!暴走車のお通りだぁ!」



 相も変わらず機体の前半分は地面に擦って削れながら走り続ける
いつかは無敵時間が終わる【スター】かはたまた【キラー】状態の様に
目の前に立っていた者全てを撥ね飛ばして突き進む



ルイージ「で、一応確認取るけど上でいいんだよね」

マリオ「お決まりのパターンだろ、クッパと煙は高いが好きなのさ」







マリオ「…以前、メタコロ病が流行ったあの時と同じだ」

マリオ「【ゲラコビッツ】を体内に宿した【ダーククッパ】が居た屋上」




ルイージ「…OK、OK、毎度の事ながらラストバトルは雰囲気重視ね」



"旧"クッパ軍の大将首は……この一連の騒動の主犯は天辺に居るッ!!

 既に小破から中破と呼んでも差し支えないロケットエンジンの機体に
更に喝を入れる…ッ!


スラスターからは噴出する風はある種の台風を凝縮して放つかの様な
勢いでノズル部分さえも悲鳴を上げ始める


当然のことながら悲鳴を上げるのは後方部だけではない

それだけ全力でぶっ飛ばせば、力学的に見て当然ながらGも増す
 ついでに撥ね飛ばされる敵兵の悲鳴も種類が増える




「おぎゃあああああぁぁあぁぁぁああああぉぉぉおほほおっ!?」ボキャッ

「げびゃっっッッッッッッッッッッッッッッッッッッ?!」メキョッ


通り過ぎた機体の衝撃波で粉砕した城の美術品『 』パリン!

通り過ぎた機体の衝撃波で粉砕した城の備品『 』バキッ

機体が突っ込んで破壊し尽くされた扉『 』ボッッッキャァァァ!!


―――
――


374 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/17(日) 02:36:48.84 ID:HGQPydB/0

―――
――




ブーメランブロス「わ、わしの相棒がぁぁぁぁ!!」



ヨッシー「ふぅむ…これは良い素材ですね
      磨き上げた樫の木を加工したモノとお見受けします」モグモグ

ヨッシー「この香ばしさ、この歯応え…!」バリバリ、ゴクン




  ヨッシー「いやはや美味ですよ、美味!」ニッコリ




ブーメランブロス「返せぇ!!かえせぇぇぇ…わしの長年の相棒…っ!」

ブーメランブロス「かえせぇぇぇ、びぇぇぇぇん!――へこ"っ」ドサッ



ワリオ「ふぃ〜…オイ、あんま遊んでやんなよ」

ヨッシー「いやぁ、こうして本格的に"敵を食べてもOK"なのって裕に
       1年ぶりでしたもので、つい食レポを交えたくなりまして」


ワリオ「…趣味わりぃ〜の」ブンッ 腹パン!ボコォ!


ガボン「ごは"!」ドサッ

ガボンが咥えてた鉄球『 』ドスンッ



ヨッシー「それにしてもワリオさん流石ですね」

ヨッシー「ドンキーやディディー君も居たのに一番早く追いつくなんて」


ヨッシー「私、かけっこには自信あるんですよ?
       もっと距離を離してたと思ったんですけど」ペロンッ♪

靴クリボー「ひぃっ!く、喰うな!死にたくない助けt―グチャッ、バリボリ






……ポコンッ♪




ヨッシーのタマゴ (ストック6個目)『 』コロコロ…♪



ワリオ「…アイツ等よりかは街の地理も詳しいからな近道したんだよ」

ヨッシー「な〜るほど、…これ以上持てませんね、え〜いっ!」タマゴ ポイ


ヨッシーのタマゴ『時速190Km』ゴォォッ!!


ヒマンブロス「へ?」

―――ゴッッッッ!!

ヒマンブロス(頭部陥没)「 」ドサッ

375 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/17(日) 02:37:30.60 ID:HGQPydB/0

ワリオ「…‥」


ヨッシー「さぁて!!地上の部隊は全滅してましたけども」

ヨッシー「運良くマリオさん達に遭遇せず無事だった兵が
      上の階から下りてきますね、飢えずに済みそうですね」ニコッ




ワリオ「俺やっぱお前苦手だわ」




ヨッシー「はい?何か言いましたか?」ペロンッ、タマゴ ポコン

ワリオ「何も言ってねぇよ喰えねぇ奴、んな事よりテメェ気づいてっか」



ヨッシー「…はて、なんのことでしょう」ヒップドロップ!



ワリオ「ケッ!白々しい…城の外や1階の玄関でくたばってる奴らはよォ」

ワリオ「"主犯格"共にとっちゃあ有象無象の雑兵だろうが…」


ワリオ「幹部だ何だと箔付きのお偉方は高ぇ所に居んのが王道だ」

ワリオ「将棋で言やぁ王将の近くに金銀、んで飛車だ角行と居んだよ」




ワリオ「…あの馬鹿兄弟が何やったか知らねぇが"歩兵"共はほぼ全滅」




ワリオ「今、上の階層から下りて来てんのは必然…
             今回の首謀者一派の中枢だろォが」



ワリオ「雑魚共ぶっ飛ばされてんだ、側近や近い奴を送り出すしかねぇ」

ワリオ「…」チラッ





ブーメランブロス「 」(気絶中)

ガボン「 」(気絶中)

フーフーパックン「 」(以下略)

靴クリボー「  」

ヒマンブロス「  」




ワリオ「…俺は見覚えの無い、この敵さんのラインナップよな」

ヨッシー「…」ペロンッ ウギャァァァ!!ばくっ!


ワリオ「倒せば倒すだけ親玉の芯の部分に近づく、雑兵が居ない分
     グループの中心核の連中が動く他ねぇ…そうでなくても――」



ヨッシー「…"あの時代"の戦車を改修できて、運用可能
           答え言っちゃってるようなモンですよねぇ」

ワリオ「わかってんじゃねぇかよオイ」
376 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/17(日) 02:37:59.04 ID:HGQPydB/0


ヨッシー「いえいえ、僕もワリオさんと同じですよ」

ヨッシー「僕は『"現役時代"のこの方々と戦ったことはありません』」


ヨッシー「ワリオさんは尚更、見覚えも無いのは無理の無い事でしょう」


ヨッシー「ただ、クッパ軍にはよく文通してる知人が居ましてね」

ヨッシー「茶葉とクッキーの交換なんかもよくしてるんですよ」



ヨッシー「それで闘争の無い期間、オフの時は他愛も無い話をよくして」


ヨッシー「実際その眼で見た事はありませんがね
       よく武勇伝を語ってくれましたよ、ええ」



ワリオ「…まぁ、国が7つも乗っ取られるデカい話だったからな」

ワリオ「国同士のパイプが切れて株式経済に問題があった」

ワリオ「人伝くらいにゃぁ俺も聞いた事ぁあんだよ」

ワリオ「で、見覚えの無い顔のオンパレードだからな、消去法で行けば」




ヨッシー「はい、その通りです…
        今頃上で暴れてるマリオさん達もお気づきでしょう」



―――
――





マリオ「邪魔だ」つ『道中ブーメランブロスからパクった武器』シュッ!



ブーメラン『 』ヒュルルルルルゥ…!




ファイアスネーク「ぐびっ」(頭部かき消え)ボジュッ

パタメット「ひゅぶっ!」ボガッ

ファイアブロス「げろばッッ!」ゴスッ!



マリオ「」パシッ!ブーメラン キャッチ


ルイージ「おっと、曲がり角だ、あっそーれカーブ!」ギュイィン

中破マシン『 』グゥオオンッ!!



<ズゴォォォン!!ズガガガガガッ キィィーーーーーッッ!



ウォーク「」ピクピク…

クッキー「」(粉々)

リフトメット「…ぐ、ぶ――ダ ダレカ タスケ"" デ」

377 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/17(日) 02:38:41.19 ID:HGQPydB/0





マリオ「…こういう時」

ルイージ「ん〜、なんだい兄さん」


マリオ「国や姫が一大事なこの時に不謹慎なんだろうが敢えて言いたい」







  マリオ「ひどく懐かし気持ちだ…」

  ルイージ「……」



  マリオ「何もかもが煌めいていたあの頃」

  マリオ「今よりも弱くて挫けそうな事が何度もあって」

  マリオ「それでも姫を救う旅を止めずにやり遂げたあの日々…」





 マリオ「ああ、帰って来たんだなって思えるんだ」






何度も何度も次のステージへ続くステップが踏み出せなくて

幾度も幾度も足を踏み外して、次こそ行けると思った矢先で敵に阻まれて



 それでもめげなかった、それでもタイミングを合わせて遂には憧れた
冒険の終着点を超え続けた…


見る顔ぶれ全てが懐かしい


あの頃を嫌でも思い出させてくれる、嫌な事もたくさんあった
 ひょっとしたらトラウマだったかもしれない

 それでも…それでもあれから幾年と経った今では
それさえも"古き良き思い出"で語れてしまう程に



 改修工事が行われたピーチ城の3階、教会のような神秘的な
ステンドグラスが左右にずっと続く長い通路を機体は走る…



  赤い鍔付き帽子を目深く被り感慨深く兄が呟く

  緑の鍔付き帽子を人差し指で上に少しだけ弾き弟も「そうだね」と…




ルイージ「悔しいけど、それは…同意、かなぁ…ハァ、本当悔しいけど」

マリオ「…ああ」




黄金時代

栄冠の時代と呼べたあの頃、…若き日を思い起こす
378 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/17(日) 02:39:16.00 ID:HGQPydB/0


感慨深く言葉を吐き出す兄の言葉



それを真に理解できるのは自分と姫……と、キノピオが1人だけだろうな


 長い付き合いのヨッシーですら、それは分からない
ルイージは思った、同じく兄の方も身内と姫とキノピオの中の一人だけと


"体験した当事者"だからこそのシンパシーだ




 ステンドグラスから射す光に照らされて
モンスターマシーンで駆る2人の影が床には映し出される


右と左、両サイドからの日光で丁度、真後ろに、影が尾を引く様に連なる




 マリオ「あの頃は楽しかったな…」

 マリオ「オレンジ色の音符ブロックを踏んだら空飛ぶ宝船に乗れて」

 ルイージ「ああ、コインがザックザクッ!ってね」ハハ!



 マリオ「ふざけて白いブロックの上でずっとしゃがんでたら…」

 ルイージ「うわっ、それよく覚えてるわぁ〜」

 ルイージ「何故かすり抜けて笛を持ってたキノピオの隠れ家に行った」

 マリオ「だな、そんな便利なモノあるなら出し惜しみせず寄越せとな」

 ルイージ「あははっ!二人で旅の道中愚痴ってたよね〜!」ケラケラ


 マリオ「まぁ、コックパに荒されてる国を放置はできんかったがな」

 ルイージ「うんうん、土管の国とか空の国とか…」

 ルイージ「あ、敵とかブロックがめちゃデカい国にも行ったよね」


 マリオ「あったあった、初めて見た時は驚いたもんだ」ハハハ!




 マリオ「…屋上で待ち構えてるのはアイツだろうな」

 ルイージ「此処まで一度も見てないモンなぁ…実力あるのに」



 マリオ「まずは会って殴り飛ばすそんで眼を覚まさせてやろうぜ」

 ルイージ「荒治療だけど仕方ないよな…」



 マリオ「だが、その前に」
 ルイージ「うん」



 ステンドグラスから射す光に照らされて
モンスターマシーンで駆る2人の影が床には映し出される

右と左、両サイドからの日光で丁度、真後ろに、影が尾を引く様に連なる


379 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/17(日) 02:39:46.50 ID:HGQPydB/0













 " 右と左  『 両 サ イ ド か ら の 日 光 』で "
























   ステンドグラス『 』ガシャァァァン!!





マリオ「そら来た左からだぞルイージぃぃぃ!!!」


ルイージ「ハッ!上等だい、何度も同じ手が効くモンですかってんだ!」







 鮮やかな景色の中、空を舞い囀る平和の象徴に手を伸ばす一国の姫君を
表現したステンドグラスは割られ、ソイツは入って来た




城内の絨毯『 』ボッッッ!!メラメラ

城内のカーテン『 』ボワァッッ!ゴォォォ…

飾られた花瓶の花『 』メラメラ…




      たいよう「―――――」ギラギラギラ…!ヒューーン



そいつは何が憎いのか、恨みがましい視線を向けながら自分の周囲を…!
 ありとあらゆる物を怒りの炎で焼き尽くさんと無関係なモノまで
巻き込みながら兄弟の後を追い始めた…!


熱源体、ソイツそのものが【バブル】や【ウォーク】と同じで
"火"そのものなのだ…っ!

380 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/17(日) 02:43:22.60 ID:HGQPydB/0
*********************************


          今回は此処まで!


  【たいよう】…登場作品 マリオ3

 砂の国(砂漠ステージ)で画面上部に居て見た目まんま太陽

 初見者はただの背景だと思うが、れっきとした敵キャラで

 ある程度進むと、突然急降下攻撃を繰り返してくる

 その意地悪そうな顔通り、粘着質で執念深くプレイヤーを追い回す







  実は、ノコノコの甲羅を掴んで投げれば倒せるという…



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381 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/02/17(日) 06:26:40.35 ID:T9jN7aTI0
うっわ、うっわ、まさに小学生の頃のトラウマだわこいつ
マリオ3はファミコンではさらに難易度が高かったっていうんだから先輩方どんだけ厳しいゲーム時代をくぐりぬけて来たんだよと思った
382 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/02/17(日) 14:12:30.50 ID:aWIbMkpdO
同じくトラウマ...
めっちゃ焦って回避ミスってた
倒せるんだあいつ
383 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/02/18(月) 13:41:57.79 ID:PacNkGlNO
懐かしいやつが出てきたな…アレは確かに難敵だ
384 :書き溜め少し投下 [saga]:2019/02/22(金) 17:36:10.74 ID:EOANnSFz0


たいよう「―――」ボォォォ!メラメラ!



じりじりと照りつける日差しを背に半壊に近い状態のロケットが突き進む
 長い通路の終着点が見え始め、次に取るべき道順を組み立てる


この先は城の改修工事に伴い、広々としたスペースになった間取りだ


 元々は【チクタクロック】があった場所だが
巨大化したクッパとの戦後修理で今は全く違う、円柱が立ち並ぶ
多目的ホールとして再利用されている



 兄弟からすれば只の障害物でしかない円柱だが、後ろの奴からすれば
柱をぶち抜いて突っ込んでくるだろう




マリオ「ルイージ、少し早いが予定繰り上げだ、"花火"をかましてやれ」

ルイージ「アイアイサー!じゃあさジグザグで行こう」




たいよう「――――」ズオオオオォォォォ―――ッ!!




城内の絨毯『 』メラメラ

城内のカーテン『 』ボォォォ…




城の石床『 』コンガリ

城の石壁『 』クロコゲ



ルイージ「見た目まんま太陽だけどアイツは粘着質な見かけ倒しだから」

マリオ「ああ、布みたいな素材は兎も角、奴の熱量では…」

マリオ「質量のある石材は直に触れてもすぐに熔解はしないだろうさ」


マリオ「この先の柱は利用できる、ジグザグで行け」



半壊の機体『 』ズゴォォォ…!




  ピシッ、ペキッ…ペキッ パキッ カランッ



Gに耐え切れずに外れた後輪『 』カランッ


 規格外の負荷を掛け既にガタが来ていた後輪の結合部が外れ出す
ナットとボルト、幾つかの螺子が子気味のいい金属音を立てて落ちていく

背後からの太陽光に照らされたホイールが
 回転したまま光の発生源に呑まれていく…ジュッ!焼ける音がして
小さな車輪は焼失した、ナットやボルトの様な小さな部品は
燃え尽きた後輪以上にタイムラグも無く世から失われた


ルイージ「広間に突入するよ、作戦開始だ!」

385 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/22(金) 17:37:06.28 ID:EOANnSFz0

 彗星だ、英雄の駆るそれは夜空に一筋の尾をひく流星と表現される


見る者が居れば、きっとそのように評したに違いない
 摩擦熱で真赤に照り出した機体前半分は火花を上げ、外面のパーツも
自壊し、とうの昔に道中に置き去りにしてきた


剥き出しになったエンジンが悲鳴の様に熱気をあげ、過ぎ去った後には
燻った金属片をばら撒いていく





 "太陽と彗星の鬼ごっこ"は間もなく終わりを迎えようとしていた…!




マリオ「そろそろ削れ過ぎてエンジンまで擦りそうだ、角度を調整しろ」

ルイージ「はいよ」カチッ!


"つんのめり"から少しずつ機体を浮上させる、今度は逆に後輪を失くした
後方部を地面に擦りつけ、代わりに前方部を上へ

 鮫や海豚<イルカ>が海面からひょっこりと顔だけ出す様な姿勢だ



 ズジャヤァァァァァァ!!



 大破寸前の煙をあげた機体が一際大きく揺れ
思わず帽子が飛びそうになったマリオは片手でそれを抑えた

ばきっ、排気ガスを吐き出すマフラーが折れて太陽に直撃する



たいよう「―――−」ギリィ、ギラギラ…!



顔にあたったそれに顔を顰め、つり上がった眼を更に釣り上げる
 太陽と機体の距離は徐々に縮み始めていた…っ!



ルイージ「oh、今のでバキュームノズル、ヤっちゃったかな?」


マリオ「いや、じれったいのが嫌いな奴さんがペースアップしたのさ」



前のめりの姿勢から後ろを引き摺る姿勢にすればどうなるか

"四輪車"として最早全く機能しないこのカートが唯一前へ突き進めるのは
オヤ・マー博士のオバキューム機構の賜物だ


マフラーのすぐ傍の掃除機ノズルが推進力を生み出すスラスター代わりに
なっているからだ…


 マフラーが折れるような無茶な姿勢にしたことで、もしかしたら
罅の1つでも入ったかもしれないし、なにより障害物となる円柱を避けて
ジグザグ走行をしている


 敵は躱すことなく、そのまま顔面から真っすぐ突っ込んで柱ごと
ぶち抜いてくる、距離を詰められるのは当然だった




――……では、何故そのような不利にしかならない行為を行うのか?


386 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/22(金) 17:37:46.09 ID:EOANnSFz0


大破寸前の機体『  』パキィィィ!

 バキッ!メシッミシミリミリミ――ッッ


ルイージ「…!兄さん、掃除機ノズルはッ!」

マリオ「うろたえるな、無事だ……そろそろだな、用意しろ!」



 姿勢制御に集中し後方下部を見れず焦りの声をあげる弟に対して
後ろに掴まっている兄は冷静に、用意しろ、と声を掛けた




     たいよう「―――――」…メラメラ、 ニタァ




 太陽が哂った。


 長距離走の選手だゴールテープを目視し、短距離走の如く形振り構わず
全力で突っ走るそれと同じだ



たいようは一気に速度をあげ

遂には英雄兄弟の背にあと僅か50pあるか否かというところまで迫った!




  マリオの背『 』プスプス…ジュッ!


 マリオ「…っ……日焼けサロンなら勘弁して欲しいところだ、全くっ」

 ルイージ「兄さん!」


 マリオ「……」


 マリオ「ちと、背中がヒリヒリするが…どうにか間に合ったようだな」

 マリオ「ルイージ!今だ!やれ!」



 たいよう「――――グォォォォオオオ」ゴォォォォ



 たいよう は 大きく くち を あけ 兄弟を 飲み込もうとした!





 ルイージ「そらぁ!とべぇぇぇぇぇ!!」グイッ



 ボッッッッ!ドゴオオオオオォォォォォォォォォ!!


  たいよう「――−!?」ググッ



 大破寸前の四輪駆動が、飛んだ



 マリオ「間に合ったな、"減量"成功だ」ニィ
387 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/22(金) 17:40:03.69 ID:EOANnSFz0


ルイージ「よく咄嗟で思い付いたね、こんなアイデア」

マリオ「ああ、キノピオのおかげだよ」

マリオ「レースの時に余分なパーツを限界ギリギリまで引っこ抜いて
          加速性を高めた骨抜きマシーンにしてただろう?」


マリオ「下から【チョロプー】に突きあげられて勢いよく飛ぶ程だ」


マリオ「俺とお前、大人二人分の体重と機体そのものの重量だ」チラッ




 無数に散らばる機体の破片『 』




マリオ「コイツが地を駆る馬から、鳥になるまで削る必要があったのさ」




ちょっと背中熱かったけどな、と苦笑しながら、後ろを見やる


大破寸前の鉄屑が、宇宙空間で自由に飛び回るロケットの様に宙を行く
 喰らおうと大口開けていた太陽は浮上した際にノズルから噴出された
空気圧と捕食対象が大きく移動した事で攻撃を見事に外した


マリオは確かに悔しそうな顔をする太陽を見た



彗星は太陽を翻弄してやったのだ




 ルイージ「こりゃあいいねぇ!飛べるって最高!」ゴォォォォォ!

 マリオ「ああ!後ろのに構う必要はない狙うは大将首だ!」


  マリオ「窓ガラスぶち割って一気に屋上まで浮上しろ!」



  たいよう「――――−っ!」




 ピーチ城は水堀という防衛機構だ、故に地上からの侵攻にはある程度は
守りに徹せられる、しかし、地下と上空からの攻撃には滅法弱い



そう、上空から攻められれば、いともたやすく外敵の侵入を許す

こいつら兄弟は城内を馬鹿正直に攻略する気はないッ!
 散々、城の中で暴れて軍をひっかきまわした挙句、外に一度出て
そこから攻めると言っているのだ…っ


見過ごせるわけがない…っ!!



たいようは、彼はそう判断した



    たいよう「―――――」ギュゥゥン!!



たいようは空飛ぶ屑鉄に乗った兄弟を追う
388 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/22(金) 17:42:38.49 ID:EOANnSFz0


窓ガラス『 』ガッシャァァン!



 ゴオオオオォォォゥゥゥゥン!


 ギュゥゥゥゥン!



 黒煙上げる機影と遅れて発光体が城内から飛び出す…っ!そして―――





     たいよう「―――ウゥっっっ!?」







        本物の太陽『 』カッッッ

      太陽に向かう機影『 』ゴオオオォォォ!



 逆光だ


 外に出て、英雄兄弟の乗った鉄の羽馬は太陽に向かって上昇するように
高度を上げていた、眩しくないとでもいうのか


たいようが、太陽の、そのまばゆい輝きに視力を奪われる



 光の中に一点の黒星、煙を噴き出し日光で煌めく流れ星が在る



 たいようは、"気づけなかった"





       たいよう「――――――」ギラギラギラギラ ビューンッ!








「やーれやれ…馬鹿正直に僕を追って来たのかい、ならキミの負けだ」


 声が、自分よりも高い位置から降り注いだ







「お前から見て光を背負う形だ、何人乗ってるか識別できないだろ?」


 声が、自分よりも低い位置から投げられた




      たいよう「――――!?」ハッ!

389 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/02/22(金) 17:44:09.14 ID:EOANnSFz0

  ゴゴゴゴゴゴゴゴ…!

 マリオ「…」ガシッ!



 窓際に男は立っていた、茶色のブーツ、赤い帽子にオーバーオール
片方の白いグローブは壊れた窓枠を掴み、もう片方の手では



 たいようが壊した円柱『 』ゴゴゴゴ…!



たいようが英雄兄弟<マリオブラザーズ>を追い回した際に突っ込んで壊した
あの柱を…っ!巨樹の丸太の様に太く長いソレを
大工が角材を肩に乗せるかの如くマリオは担いでいた


たいようの眼にはそこから先の一連の動作がスローモーションに見えた


担いでいた円柱を今から投擲競技でもやると言わんがばかりの姿勢で持ち



たいよう、弟の乗った機影、太陽が一列、一直線に並んだところで放つ

有史以前から人類が狩猟や闘争で培ってきた投擲をそのまま直に…!




 それと並行して、マリオの方を振り向いた【たいよう】の背後では
モンスターマシンが宛ら航空機と見紛う宙返り飛行を見せUターンし始め


 太陽に向けて高度をあげる、からの たいように向かって急降下だ




  マリオ「はああああああアアぁぁぁぁぁぁぁっっッッ!!」グゥオォン!



  ルイージ「いいいいぃぃィィやっっはぁぁぁ――――ッ!」ギュォォン!






  投擲槍と化した円柱『 』ギュンッッッ!!

   大破寸前の機体『 』キィィィィ――ンッ!



    ゴッッッ!


 たいよう「―――――ォゴヴッッ」



 質量の多い石材は瞬時に熔かす事ができない、先端はじりじりと
焼け始めたが当然、偽りの太陽の身体にぶち当たる前に焼失はできず


 柱は太陽を後ろから突き上げ、そのまま加速する…ッ!
熱源体を先端に鏃にした一本矢と化したソレは慣性に従い…その先はッッ



   急降下してくる大破寸前の機体『 』ズオオォォォォォォ…!



 元は四輪駆動車だ、そう…今でこそオバキュームという掃除機の
空気圧の排出力だけで飛ぶというトチ狂った怪物機だがあれは、自動車だ

即ち……"ガソリンを入れた燃料タンク"がまだ中心部にあるッッ!
390 :今回ここまで [saga]:2019/02/22(金) 17:44:49.12 ID:EOANnSFz0

 全ての点が重なり合う、投げた柱、たいよう、機体、太陽…

【たいよう】は下からの衝撃と上からの加速をつけた重量に挟まれる



  ルイージ「博士に壊してごめんって謝らないとね…!」

  ルイージ「ヨッシー式乗り捨てジャンプ!とぉッ!」ピョイーン



 弟は操縦席から身を乗り出し、そのまま飛び降りる
ギリギリまで軌道を修正し、激突確実のコース、そして爆発の巻き添えに
ならない絶妙な位置で愛機から飛び出したのであった


…もう塗装も剥げ墜ち、イメージカラーのグリーンは何処にもない

燃え尽きた色、灰色で所々煤まみれの機体…そんな彗星の最期の輝きだ







       たいよう「―――ォ、ォオオオオオオォォォ!!!!!!!」





   ズゴオオオオオオォォォォォォッッ!!

  ベシャッ!メシャッ!グシャァァッ!!




 衝突音、中身が空になったスチール缶を踏み潰したような音





   機体中心部の燃料タンク『  』…ボッ!








    ボッガアアアアアアアァァァァァァァ―――z_________ン!!








  ルイージ「ひゅー!たっまやーーーー!!」ヒュゥゥゥゥ―――ン


    ガシッ!


   マリオ「ああ、どでかい花火だったな」

  ルイージ「ナイスキャッチ、ありがとね」


   マリオ「さて…、此処からは地道に行くとするか」

   ルイージ「っても、もう天辺までは本当に直ぐだけど」


 爆散する前の彗星で割って出た窓を潜り城内へ戻る

…道のりはもう僅かである
391 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/03/04(月) 01:02:07.81 ID:EA79ZvnW0

 外と内、窓枠の境界線を越えて再び城内へと戻り
兄弟は荒れ果てたフロアを歩く、目指すは屋上へ向かう階段


 マリオ「今回は妙な術が掛かっちゃいないようだな」



目を凝らして階段の1段目から先行きが見えぬ上部まで見てから彼は言う

あの見た目だがクッパはあれでも魔法の才があった
 赤ん坊の頃から箒に跨った優秀な魔法使いが教育係だったのもある


城のあちこちに散らばった【スター】を一定数集めねば絶対に最上階には
辿り着くことができない魔術が掛けられた階段を経験したことがある


今回その類の術は掛かっていない…




この先にいる奴自身にはそこまでの魔法に対する素養がないからだ



完全な武闘派タイプ、両腕を大きく振り回しながら突進してくる大柄な男


倒されても倒されてもめげず、そして…努力家でもあった





 コックパ等による侵略戦争時にマリオ達の進軍を堰き止める砦を
一任されるほどに人望が厚く、そこそこに強さもあった


何度打ち破られても、すぐに戦線復帰を果たし、鍛えに鍛え
自力で飛行能力を身に着けるなど、進化し続ける努力家


それが、おそらくこの城の一番上で待ち構える男なのだ




なればこそ"旧"クッパ軍の面子が従うのも頷ける

血気盛んで武闘派揃いの【ブル】軍団も通ずる所があるからこそ
容易く引き抜けたのだろうな



  コツッ…コツッ…



調査を続ければ続ける程に、靄の掛かった人物像は抽象的から具体的に

コクッパ七人衆の事変で戦った戦車や古き軍勢を束ねられ実力もある
その時点でかなり限定的だった人物像はあっという間に兄弟に特定された



ただ、ひとつ、ひとつだけ…調査の際に腑に落ちない点があった



 コツッ…コツッ…コツッ…



それは、爆発狂の下衆鼠こと【ドン・チュルゲ】との接点だ



 今回の一件は本当に全て、"指揮官殿"とやらが
1から10まで全て仕組んだのか…そこが引っ掛かったからいつも以上に
調査に時間を割いたのであった
 故に兄弟は落城前に帰って来ることができなかったという耳の痛い話だ
392 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/03/04(月) 01:02:35.54 ID:EA79ZvnW0

 ドン・チュルゲは一体どこで、"旧"クッパ軍が戦<いくさ>準備に
精を出していると知ったのか


…いや、平和という奴を心底毛嫌いする溝鼠のことだ


マリオが記憶喪失の期間に"退屈"から解放される面白そうな情報が無いか
裏社会を歩き回っていたかもしれない

それこそルイージにオヤ・マー博士が以前進言していた
『"記憶が戻らん間に事を起こそう"と思う者』とやらだった可能性だ




……にしても、だ


 あまりにも"準備が良すぎる"…【メカキャサリン】の設計図だって
チュルゲが常に持ち歩いていたのか


もっと言えば永久凍土の下で眠るゲドンコ星人をどうやって探り当てた?

 考古学者や発掘隊でさえ、雪山に金属反応があると分かったのが最近だ
彼等を出し抜ける速さで先回りしての採掘







コツッ…コツッ…コツッ…コツッ… ピタッ





きっと、これは単純な話じゃない



何者かが……もっと大きな存在が裏で暗躍してるとしか思えかった



階段を昇りつめ、脚を止めた二人は扉の奥に居るであろう指揮官

             ――の後ろに控える存在に目星をつけていた




"旧"クッパ軍にチュルゲとの接触を図れて
ゲドンコ達の埋まった地点の情報も誰にもバレずに流されるような奴



その手段と方法は何か、どんな些細なことだって構わない

最近、奇妙なことは無かったか…誰の目から見ても不自然じゃなく
怪しまれない情報の伝達方法は何だ!?


 英雄兄弟<マリオ・ブラザーズ>は思い当たる全てを考え、そして
直感的にコレだと思い当たったモノを挙げ、ひとつ確認を取った



そもそも語源違い言葉が通じない異星人のゲドンコが
どうやって"旧"クッパ軍と意思疎通を図り、同盟を結んだか


 翻訳手段は、確かにあったのだ、城まで乗って来た宇宙船の中に





それで98%ほどの疑いは100%の確証に変わった――アイツが首謀だ、と

393 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/03/04(月) 01:03:09.32 ID:EA79ZvnW0


ギィィィ…!



  マリオ「よぉ…久しぶりだな、ブンブン」

 ルイージ「あのさぁ、こういうのみんな困るんで止めて貰えます?」



年季の入った棘付きの甲羅には少しだけ罅が入り、肌は皮膚荒れの様に
カサカサとしているのが見て分かる

 ただし薄皮一枚の下は現役時代のそれと変わらぬ
逞しい筋肉隆々とした肉体美で、ギリシャ彫刻に匹敵する一種の美だった



  マリオ「周りに取り巻きの一人も伏せておかないとはお前らしいな」


 ブンブン「…久しいのう、戻ってきおったか」ニィ



嗄れた声で紡がれた「戻ってきおったか」には万感の意が籠もっていた


  マリオ「色々言いたい事はあるが、まずテメェはぶん殴る」

  マリオ「細かい事をくどくどいうのはその後だ」


 ブンブン「ワシの様な老人を労わろうとは思わんのか?英雄兄弟」


 ルイージ「はっはっは、御冗談を!そういうのはか弱い老人の言葉さ」

 ルイージ「アンタの様なゴリマッチョな老人が居て堪るか」



 ブンブン「ふっ、ならば仕方ないなワシはワシ自身を護る為に
       暴行を振るおうとする悪漢共にささやかな抵抗をしよう」



そういって、歴戦の老兵は鍛錬を1日たりとて欠かさず築いた腕を広げた



             ――ダ
                   ヒュッ ヒュッ



 赤と緑が同時に跳ねた、地表の人影が小さな豆粒になる前にその上を
両腕を広げた老人が過ぎ去った

 大きく振り被りながら回転させた腕とは裏腹に出鱈目な機敏性を見せ
影の真上を過ぎる直前で踵脚を床にめり込ませ、急制動を掛ける


               ―――ンッ


言葉通り音を置き去りにして突撃をかました老兵は急制動からの減速
 そして、めりこませた踵脚から重心を爪先に移動させながら
膝を折り曲げ身体を屈める、そしてジャンプ台の足全体のバネを利かせて
脚力だけで飛び上がった…ッ!


 手足を折り曲げ、首も引っ込める、罅の入った棘付き甲羅に籠り
自身が回転する棘鉄球と化す


最初の突撃で生じた前方向への慣性を利用し、マッド運動の前転の如く
回転方向事体は全面に、しかし、脚力で跳ねた方角は真後ろに居る
二人目掛けてのスピンボールだ

躱されて、地に落ちたなら卓球の変則球と同じで回転に合わせて再び
英雄兄弟<マリオ・ブラザーズ>目掛けて跳ねる追撃球となる
394 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/03/04(月) 01:03:41.18 ID:EA79ZvnW0

―――
――


【ピーチ城 中庭】


ドシャァァ!ガラガラガラ!!


ムーチョA「うわぁぁぁ!」ササッ


モンスターマシンで暴れ回った兄弟と【たいよう】の疾走戦で城の上層は
火災が発生し、中庭で作業に従事する工作兵の横に燃える瓦礫が落下した


ムーチョB「大丈夫か!?」

ムーチョA「あ、ああ…」


ムーチョB「なんとしてもこれを完成させるんだ!」



 中庭に集められた鉄屑の山、それはワリオとヨッシーが避難所から
双眼鏡で眺めていた、"ガラクタ"の山だった

 対した戦力にならない兵、監督を務める一部のブンブン指揮官殿の側近
ここで造られている何かを死守する為に防衛に回された者

皆が何かに憑りつかれたかの様に鉄屑を繋ぎ合わせていた


古戦場から破棄された戦車たち、そして運ばれたこのガラクタは…

"武器"の墓場から連れて来た残骸だった
既に魂など無い鋼の骸をパズルのように合わさるそれは既に
"胴体"が出来ていた、中央の黄色い星の印、右手には金鎚を握るその身体




 ムーチョC「た、大変だぁぁぁぁぁ!」ドタバタ!

 ムーチョB「なんだ!?どうしたってんだ!」

 ムーチョB「既に上では記憶を取り戻したマリオが居るんだぞ!」



これ以上何があるというんだ!そう言うと…


ドォォォン!!


地響きと同時に城門前で上がる黒煙、そして―――






     クッパ「皆の衆よ!道を開けぇぃ!!」





怒鳴り散らしたムーチョも疲弊しきった工作員も守備に回された老兵さえ
それには震えあがり縮こまった

いよいよ以って"終わり"がやってきたのだ



―――
――


395 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/03/04(月) 01:04:18.57 ID:EA79ZvnW0


  クッパ「繰り返す、戦闘行為を直ちに中止し、道を開けろ!」


  クッパ「開かぬというならばワガハイへの反逆とみなし処罰する」




 クリボー「クッパ様!!サラサランドより援軍が
        デイジー姫の指揮で間もなく到達するそうっス!」

 ノコノコ「此方、マメーリアからの兵団が国境を越えてきたそうです」

   クッパ「うむ、ご苦労であった」



 クランキー「うしゃしゃ、どうじゃ!亀ぇウチのタル大砲は!
               全くもって良い精密性じゃろうぉ?」

  ドンキー「クランキーやめなよ、それでクッパ、次はどうするの」

 ディディー「粗方、マリオ達がやっちゃったしねぇ」

 ディディー「残りも先に行ったワリオとヨッシーでやったでしょ多分」



 キノピオ「でもまだ、潜伏してる人も居るんですよね」
  テレサ「…」ギュッ


 クランキーが即座に造ったタル大砲に応急手当を施されたキャサリンが
チュルゲ産の弾薬を詰め込む

溝鼠を退治して得た物は奴の置き土産の火薬と
チュルゲが裏社会で手に入れたスーパースコープとカートリッジだ

 クッパの指示で空港にあった動ける航空機
旅客機でもバスでもタクシーでもなんでも使える物を利用して
ありったけの物資と使える人員を引き連れてきたのだ…っ!



中庭に居た者達は、その現状を知りどうしたか?




 ムーチョB「う、うおおおおお!!こうなりゃ自棄だ!」

 ムーチョB「守備に回ってる奴も交代制で休んでる奴も全員だ!」

 ムーチョB「急ピッチで作業を進めるんだ!!!」



 「「「お、おおおおぉぉぉぉぉ!!」」」



―――
――


 ギュルルルルルゥッ!


  マリオ「そらぁああっ!」ブンッ、ガスッ!

 ルイージ「ほらよっと!」タッ、ゴッ!


バウンドした棘球を兄弟はそれぞれ左右に大きく離れるように避ける
 二度目の着地と同時にブンブンは横軸に身体を捻り、スピンを掛ける
赤帽子目掛けての跳弾となった彼は何処に隠しもっていたのかハンマーで
高く飛ばされ、その直後に飛び跳ねた弟に地表目掛けて叩き落とされた

排球で謂う所のトスからスパイクとでも言った所か、城の屋根にめり込み
回転を止めた老兵は甲羅から顔と手足を出し、ゆっくりと起き上がる

396 :少し投下 [saga]:2019/03/11(月) 22:38:15.11 ID:g926szxQ0

起き上がると同時にぱらぱらと屋根瓦の破片が落ち、肩に残ったそれらも
払うように手を動かす、ぐるりと準備運動前の軽い肩慣らしの様に



 ブンブン「…はっ 相も変わらずようやるわい」ニヤリ

 ブンブン「じゃがのう、これはどうだ?」ブゥゥン!!



グルグルグルグル…!


 意外ッ!それは人間手裏剣ッッ!

両腕を大きく広げ、脚をピタリと合わせての大回転、チリチリと摩擦熱で
地面が焦げ臭い匂いを放ち始めたその瞬間、老人の身体は宙を舞ったァ!



  ブンブン「ぬははははっ!まだこれで終わると思うなァ!」シュンッ!



この男は努力家だった、それはマリオもルイージも認めていた

一度倒した後、再び相見えた時は決まって成長した姿で兄弟を苦しめた
背中から羽を生やし自ら飛行能力を手にし、着地と同時に甲羅の棘を使い
兄弟の【ジャンプ攻撃】を返り討ちにしたこともあった


そして今回も彼は進化を見せた



  ルイージ「へぇ、【テレサ】の真似事かな?」

   マリオ「お次は透明人間化とはな」



  ギュルルルル

                    ブゥゥゥン

          グルグルグルグル




見えない。



超高速で動く人間手裏剣は音を自分が過ぎ去った宙にばら撒く


四方八方にブンブンが複数人いるとしか思えない程に…



                 「ぬははは!」
    「覚悟せいっ!」

                「今日こそ引導を渡してくれる!」
         「ワシが捉えられるか!?」
  「行くぞ!」
          「ぬははははは!」






    マリオ「シッッ!」シュッ!



右拳を顎の上まで上げてから軽いジャブを繰り出す―――


         ベキャッ
397 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/03/11(月) 22:39:00.43 ID:g926szxQ0


   ブンブン「……――」フラッ



 マリオ「つい最近まではトレーニングもせず長い休暇を満喫したがな」



 マリオ「…俺達はお前以上の実力を持つ強敵と戦った経験がある」

 マリオ「今更、その程度の小細工が通用するものか」



   ブンブン「…」ヨロッ





あまりにも、


あまりにも、呆気ない終わり方だった…たった一発


これほどまでの騒動を起こし、国家を一つ短時間で支配した軍の指揮官が




ワンパン

たった一発の拳で、…ついぞさっきまで記憶喪失だった男が


暢気に球技大会やカートレースを満喫してた腑抜けが



敵の宇宙船で大遅刻して戻って来た様な人間たった一人のワンパンで…!




  ブンブン「…ぉ、ぉぉぉおお・・・」ガクッ


膝を地に着けた





  ブンブン「…ハァ、はは、どうした?まだワシはこの通りじゃ」

  ブンブン「気絶なんぞしとらんぞ?意識がある…ピンピンしとるわ」


  ブンブン「いつもみたく、あと2回は強烈なのお見舞いせんかい…」



  マリオ「…」

  ルイージ「……あー」ポリポリ



無言で佇む兄と、気まずそうな顔で後ろ頭をかく弟は目の前にいる

 過去の栄光を捨てきれない老人をただ見つめていた


 ブンブン「今は息があがっとるが、すぐに整えてお前等を叩き潰すぞ」

 ブンブン「…はやくトドメを刺さんかい、…はやくやらんかいッ!」


  ブンブン「そんな目で見るな!早くトドメを刺せぇぇ!!」

   マリオ「…もう、やめろよ、気が済んだだろ」スッ
398 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/15(金) 19:04:52.99 ID:JOkB8aDH0
面白い
>>1の他作品ってある?
399 :少しだけ投下 [saga]:2019/03/19(火) 22:35:12.73 ID:RPhB0ynO0


  ルイージ「もう止めときなって」

  ルイージ「アンタはチェスや将棋で言うなら王様取られたんだよ」



  ルイージ「気は済んだだろ」



"気は済んだだろ"

兄も弟も、同じ言葉を口にする



 指揮官殿――いや、ブンブンは嘗て共に戦地を掛けた多くの同胞を
伴って今回の騒動を起こした


蜘蛛の巣が張られた薄暗い部屋の隅っこで、埃被って、そのまま朽ちて…


 輝かしい栄光も名誉も、『誇り』を【埃】で埋もれさせて錆びていく
平和に馴染めない不器用な男が、過去の栄光を求めてこんな馬鹿げた事を
しでかしたのだと…



 戦いでしか生きがいを見いだせない者にとっては
平和は自身を蝕む甘い毒でしかない


 甘い毒よりも鮮烈で口の奥が鉄の味で満たされるような苦みの強い薬を
誰よりも求めた、たったそれだけの話なのだ
 おそらく、この話を冷静な人間が聞けば十中八九、そんな理由で
国1つ侵攻したのかと呆れ、鼻で嗤うだろう



だが、マリオブラザーズは笑わない



彼等とて、同じ世界観を持っているから



頭打って記憶喪失になるくらいに身体を鍛えまくり、常に己の限界突破を
目指すチャレンジ精神旺盛な冒険野郎で大馬鹿野郎のマリオ


一見、お気楽でマリオよか客観的に物事を見てそうで何だかんだで
やっぱりこいつ等兄弟だ、血は争えないと思わせるルイージ



戦いに生きたい、強者との闘いで人生に"華"を持ちたい

勝利し、栄冠を掴んで、凱旋を果たす…そこに意義を感じるタイプの人種





 同族だからこそ共感できる慣性がそこにある
       …だから、ブンブンを嗤わない

  彼の行いを"肯定こそしない"が"否定もしない"のである



もしも、自分が同じ立場だったら…



  マリオ「………俺も、お前の気持ちは、…あー、なんだその」

  マリオ「…解っちまうんだよ、俺も同じ、だから…な」


マリオは、ブンブンを一瞥して、目を閉じた
400 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/03/19(火) 22:35:57.03 ID:RPhB0ynO0
********************
――――――
―――――
――――
―――
――


 -ルイージ『…その、さ
         兄さんは今の生活ってどう思ってるの』-

 -マリオ『…? 今の生活だと?』-



-ルイージ『普通に暮らして、たまに配管工としての依頼があって
           そんでその賃金で生活してく今の生活だよ…』-


-マリオ『別段何も思わないさ、収入は少ないがそれなりに
                  充実した毎日だと俺は思う』-



-マリオ『ただ…』-

-ルイージ『ただ?』-



-マリオ『…去年ぐらいか俺が"下水管の修理中に頭を打ったらしいな"
                 その頃からずっと違和感がある』-


-マリオ『ずっと"大切な物を忘れてる"ような感覚でな
               特にそれが最近強くてな』-





-マリオ『寝ても覚めてもソレばかり考えてしまって
     他の事が頭に入らない、お前やピーチ姫、ヨッシーと
   遊びに行ったり美味い物を食べたりしてる時だってそうだった』-







-マリオ『最近、何をやっても満たされない
      何をしても面白いとか楽しいって思えないんだ…』-




-ルイージ『…』-








-マリオ『どう言えば良いんだろうな…抜け殻みたいに生きてるような
              "生きてて楽しくない"っていうかな…』-









-ルイージ『兄さん、それは言いっこ無しだ
        生きてる事をつまらないとか言わないでくれ
              僕やヨッシー、それに姫だって哀しむ』-

-マリオ『…ああ、すまんな』-


401 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/03/19(火) 22:37:51.71 ID:RPhB0ynO0

――
―――
――――
―――――
――――――
********************




 マリオ「……解っちまうんだ、解ってしまうんだよ、俺も同じだから」

 ルイージ「兄さん…」




カートレースよりもずっと前、テニス大会前のまだ記憶喪失だった頃…


何をしても満たされず、"生きている事がつまらない"そう感じたマリオが
胸の内をルイージに語った時の事を思い起こしていた



 人生に生きる意味を感じない、衣食住も金銭も人間関係も
どんなに恵まれていても、どれほど周りの眼から見て羨むような環境でも

それが本人にとって幸せとは思えない事もある


 人間、一人一人が異なる価値観を持ち、誰かにとっての幸せは
当人にとっては幸せでも何でもなく

逆にその人にとって不幸だと思える境遇は別の価値観を持つ人からすれば
喉から手が出る程に渇望する幸福という場合もあり得る





  嗚呼、こいつは"同族"だ、…こいつは俺と同じなんだ。




 マリオは目の前の老兵を見て、…いや、此処に来る前から正体に見当を
つけていた時からも、そして老兵の下に集い、自分達も大手挙げた奴らも

みんな、自分と同じで、ずっと死んだように生きていたんだと



ただ心臓が動いていれば生きているんじゃない

ただ裕福で不自由ない生活をしてれば幸福なんじゃない




薄暗い部屋の隅で埃を被って、儘ならない想いだけを塵芥よりも募らせて
燻った魂の火を燃やし続けた


…止められるワケが無いじゃないか、それはマリオ自身に置き換えるなら

お前はこれから二度と冒険に出るな



今後、冒険どころか何一つ活躍もせず、時代と共に消えて
遠い未来で、自分が生きた痕跡さえ薄れて…

昔、子供達に憧れられたヒーローとして語り草になることさえも無い


そう言われているようなモノ


 サンタクロースが子供に夢を与える仕事と免許を剥奪されて
人生の生きがいを失くして、未来永劫、指を咥えて延々と生殺しにされる

喩えるならそんな状態だ
402 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/03/19(火) 22:38:31.32 ID:RPhB0ynO0


 ブンブン「……」


 マリオ「お前は十分凄かったさ」

 マリオ「300人近くだぜ」



 マリオ「クッパに忠義を誓う古株連中の奴らでさえもお前に賛同した」

 マリオ「"アイツ"が裏で手引きしてたのも確かにあったかもしれんが
      それでもお前と同じ気持ちでここまで多くの奴が来たんだ」


 マリオ「お前に共感し、賛同させた
      ……例え老いたとしてもあのクッパに
       何の許可も取らず、自分の意志で行動を起こさせた」



 マリオ「感服モンだよ、全く」


 ルイージ「どうせ、乗っ取ったはいいけどこの城もすぐ奪還される」

 ルイージ「ワリオやヨッシー、それに僕がレースから帰れば直ぐに」



 ルイージ「一時の儚い夢って分かっててやったんだろ?どうなんだい」



 ブンブン「……」

 ブンブン「…。」



 ブンブン「そう、さな…一時の儚い夢、じゃのう…」



 呼吸を整えるように、一間開けて、やがて…
彼は観念したように言葉を漏らした



 そして、思い出したように彼は英雄兄弟を見つめ尋ねた



 ブンブン「…のう、さっきの『"アイツ"が裏で手引きしてた』とは…」


 マリオ「…ああ、多分、お前は無自覚なんだろうなって思ってた」

 マリオ「いや、お前だけじゃない…お前の部下たちもそうだって」


 ルイージ「僕達が昔懲らしめてやった往生際の悪い奴さ」

 ルイージ「アンタは利用されたんだよ、ブンブン」




 眉をあげて、それはどういうことだともう少しだけ詳細を求めようと
彼は口を開きかけたところで…舞台に更なる役者が降り立った



  ―――プロロロロロ!…シュバッッ!!!   ヒュゥゥゥゥゥン





   クッパ「マリオォォォ――――ーッッッ!!」ヒュウウウゥゥン!


403 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/03/19(火) 22:39:11.09 ID:RPhB0ynO0


  城上空に響き渡る重低音、耳の鼓膜が引き千切られるんじゃないかと
錯覚するような怒鳴り声に、思わずルイージが耳を塞ぎ
ブンブンも顔を歪め、ただ1人…名前を呼ばれた男だけは
平然とした表情で声の主を見上げていた



   クッパ「――――コォォォォォッッ!!!!」カパッ!ボォォォッ




  ルイージ「はぁ!?あの馬鹿嘘でしょ!」バッ!



此方に振って来る怪物は大顎を開き、喉奥で燃え盛る紅蓮を見せる
 脳がそれを認識するや否や、猛炎を吐き出す1秒前のクッパに
文句の1つでも投げながら倒れたブンブンの腕を無造作に掴みその場を
飛び退いた



 紅炎が屋根の上に叩きつけられ、四散したのはその直後だった


 桶いっぱいの水を物見台の真上から地表にひっくり返したような勢いで
獰猛な紅桜の花びらが吹雪く、一枚一枚が触れただけで大火傷の花弁に
見える美しい炎の揺らめき、恐ろしい熱量の桜吹雪だ


見慣れた赤い帽子の男はブレス攻撃の火線からは既に外れていた

ブンブンを連れてその場を飛び退くのに気を取られ何時、マリオが其処を
離れて好敵手の火炎攻撃から逃れたのかは見えなかったが


 燃え盛る灼熱の有効範囲からは数メートル先の地点にマリオは居た



ギュルッ!


 プロペラ機から飛び降りた奴は火を吐き終えた後、上体を大きく捻り
そのまま大きく身体を旋回させながら着地地点を赤い帽子に定めた


初めからルイージは眼中に無い



 利き手の指を曲げて何かを鷲掴みにする様な動きで
爪による切り裂きを繰り出すッ!



  クッパ「喰らえぇぇぇ―――ッ!」

  マリオ「通用するとでも思ったかぁぁぁぁっっ!!」



 剣の達人が抜刀術の構えで神速の一閃を放った、凡人の眼には
それほどの恐ろしく早い振り下ろしに見えたことだろう


パシッ!乾いた音と同時に片手でクッパの腕を掴み、上空から降って来た
その巨体の重量ごとマリオは彼奴を受け止めた


   クッパ「甘いぞ!」シュッ

   マリオ「むっ!?――うぐぁ!」ドガッ! ズサーーーッ!


  クッパ「ワガハイに尻尾がある事を忘れたままか!バカめ!」


 利き腕を封殺されもう片方の腕を振り下ろす――のではなく
彼特有の武器である尻尾を振るい、マリオの横腹を思いっ切り叩きつけた

404 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/03/19(火) 22:39:45.97 ID:RPhB0ynO0

人間の構造には無い尻尾による追撃ですっぱ抜かれ、ゴルフボール並みに
飛んで尖り屋根に叩きつけられるマリオは、小さく呻き声をあげる…


【たいよう】の熱で少し焼けた時よりも

【ゲドンコ星人】のビームで機体を壊され谷底に落ち身体打った時よりも


今日、戦った敵から受けた攻撃で一番に効いた一撃である



 クッパ「ハァッ―――とぉっ!」シュバッ!――ヒュゥゥン、ズシンッ!


 クッパ「ガハハハ!情けないものだなマリオよ!」

 マリオ「いってぇ…な、このクソ野郎…」ヨロッ…


 クッパ「あれほどお前が掴んで飛ばした尾に今度はお前が飛ばされる」

 クッパ「これを笑わずして何が笑えるか!」


 マリオ「久々に会って早々に嫌味かよ…ったく」



 クッパ「…フン!」














     クッパ「…よくぞ帰って来たな、待っていたぞ」






     マリオ「…あぁ、悪かったな、待たせちまった」







 ルイージ「兄さん!クッパ!!」


 クッパ「なんだ緑のヒゲ、貴様も居たのか…」

 ルイージ「…へぇへぇ、どーせ僕は緑のヒゲでごぜぇますよーだ」


 クッパ「…。」チラッ、ジッ

 マリオ「見ての通りだ、全部思い出したさ…ルイージにも聞いた」

 マリオ「お前は俺が思い出せない間自分の家おとなしくしてたんだろ」


 マリオ「苦労かけたな、一番暴れたがりの問題児のお前が抑えたんだ」


 マリオ「…だが、再会の記念で出合い頭に殴りかかるんじゃねぇよ」



ブレスに爪、尻尾、常人なら数回死んでる"挨拶代わり"である
405 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/03/19(火) 22:42:53.97 ID:RPhB0ynO0
*********************************



       少しですが、今回は此処まで!


>>400の会話文は>>23の回想ですね、幸せの定義は人それぞれ違う…





>>398 あります、これ以外で速報Rに現在進行形で3〜4ほど
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406 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2019/03/19(火) 22:45:08.23 ID:HAF6rTto0
お疲れ様でした

いよいよクライマックスかぁ
407 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/19(火) 22:59:16.52 ID:1kqpZAiP0
乙 クッパ様楽しそう
408 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/20(水) 20:10:51.05 ID:mW6FecrY0
良かったら作者の他のスレの名前教えて?
409 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/03/21(木) 04:21:04.79 ID:EtWlXE4rO
ついにクッパと合流か、乙
410 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/04/12(金) 23:05:10.49 ID:+3E/zLSV0

 ブンブン「クッパ様…」ヨロッ

 クッパ「ブンブンよ、此度の件はわかっているな」


痛む箇所を抑えながら老人は仕える者に声を掛けた
 この後の事は分かっている


 御叱りのお言葉も、罰も甘んじて受けよう…
どうしても抑えきれない、このまま胸の内に押しとどめては
胸が張り裂けんばかりの情動があった

主君の為と言いつつも心の片隅には自分の為が無かったとは言えない


 英雄兄弟と再び、戦って負けて…心は満たされた


 勝敗云々じゃない、老いて手足すら皺くちゃで動かす度にプルプルで
もう二度自力で身体を動かすこともできない要介護老人になる前に
恋焦がれた戦場に戻った、人生の大半を打ち込んで来た場所に返り咲いた



――――戦うことができた、それだけで、心はもう満たされていた



 道半ば一度、朽ちて錆びついた車の車輪が再び磨き上げられて
今度こそ旅の終着点に到達出来た様に
 ずっと停滞していた彼の世界はもう一度動きだせたのだから


 ブンブン「…。はい、ワシの独断で軍を動員させました」

 ブンブン「覚悟はできておりますゆえ」


 クッパ「お前がやったことはワガハイが協定を組んでいる国に
     対して攻撃を仕掛けるというワガハイの顔に泥を塗ることだ」

  クッパ「不問には、できん」


 ブンブン「…仰る通りです」








 クッパ「…だが、だ」



 クッパ「お前の暴走も元を正せばワガハイにも非があるのだ」

 クッパ「軍の肥大化を理由にお前達一人一人をよく見てやれなかった」


 クッパ「…。」

 クッパ「…実践経験の浅い若手たちの指導教育、それが必要と考えた」

 クッパ「だからマリオ達と戦場で戦う兵の半数以上を新しく入った
     新兵ばかり配備して最古参で実力のあるお前達は城に置いた」



  クッパ「それが古くから仕えて来たお前達にとって
       耐え難い苦悩を与え、誇りを奪い取る結果になったのだ」



クッパ「人員が増えすぎた事で軍が抱える不満や実情の監督不十分と」

クッパ「新人教育の名目、その二つを盾にお前達を蔑ろにしてしまった」


   クッパ「…すまなかったな」
411 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/04/12(金) 23:05:37.44 ID:+3E/zLSV0



   ブンブン「〜〜ッ…っ!クッパ様…」グッ




  クッパ「…お前の処遇は城に帰ってから言い渡す」

  クッパ「最後に、まだ一つだけ大仕事が残っているからな」

  マリオ「…もう、いいのか」


 クッパ「うむ、我が軍を好きにしてくれた落とし前は
              キッチリとつけさせてもらおう…!」


 終始を眺めていたマリオもルイージも常に気を張っていた
"何か"に警戒していたのだ…
 騒動の大将首であった指揮官殿ことブンブンを倒した今も…ずっと



 クッパ「最後に一つだ、ワガハイの非もあるがもう一つ…」

 クッパ「お前含めて全員に酌量の余地がある」



 ルイージ「…そうそう、クッパが落ちて来た所為で説明できなかった」

 ルイージ「さっきも言ったけどブンブン、アンタ利用されたんだよ」





     - ぐふ、ぐふふ…! 流石やなぁ… -




 ブンブン「な、なんじゃこの声は…頭に直接響いて…」




 マリオ「…はぁ、溜息も吐きたくなるぜ」

 マリオ「テメェをぶちのめしたあの日から何年経ったと思ってるんだ」

 マリオ「そんなに復讐がしたかったのか」




- 当たり前やろボケェ!ハァ〜…
   あんさんが記憶失くした言うとるから
       ビッグチャンス到来やで!!思うとったのに -


  - せーっかく、ワイが立てた計画が全部パーやで… -




 ルイージ「回りくどい作戦だなぁ、クッパのより杜撰だよ」ヤレヤレ

 クッパ「おい緑のヒゲ」



   - どや?中々凝った演出やったろぉ? -

 - あんさんが過去にぎょーさん倒して来た敵が大集合 -


 - なのに、そこ亀ジジイはこうもあっさり負けるわ使えんわホンマ -


 …姿は見えない、だが声の主は確かにこの場に居る全員に語り掛けた
412 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/04/12(金) 23:06:10.11 ID:+3E/zLSV0


 マリオ「語源が通じない宇宙人のゲドンコ共と手を組んでる」

 マリオ「その時点で疑問は持ったさ、そしてあらゆる可能性を考えた」




 マリオ「どうやってゲドンコとブンブン達は意思疎通が出来たのか」


 マリオ「"ある意味催眠に近い暗示"だったな…」

 マリオ「ブンブン…お前、いや軍全体がこれと同じモノを持ってるな」





 マリオはそういって一つ、手にした物を掲げて見せた
老人はそれに見覚えがあった…
 それは一見すれば何処のご家庭にもある何の変哲もない生活用品
強いて言うなら、甘い香りがしてフカフカで安眠が約束されそうな"枕"だ




  ブンブン「それは…確かにワシ等が使ってた枕じゃが…」






-『…へっへっへ、ありがとよキャプテン・シロップ』-


-シロップ『にしても、"あんた等"も変な奴等だね、こんな雪山で
      降ろして欲しいだなんてさ、オマケに…
      なんだい、その荷物は?

       アタシにゃ唯の"枕"にしか見えないけどねぇ』-


-『"枕"が変わるとイイ夢見れないんでね…俺達は』-

-シロップ『ふぅ〜ん、まぁなんでもイイんだけどね』-




 あの日、ゲドンコ星人が埋まっている雪山まで採掘する為
脱獄させた女海賊の船での会話をふと思い出す

何故、それを彼が持っているのか




 マリオ「ゲドンコ星人の宇宙船をパクって来た時に中で見つけたのさ」

 ルイージ「君らさぁ〜、これ幾つ盗んで来たワケ?」

 ルイージ「いや少数を発言力のある偉い人等で使い回したかもだけど」



 クッパ「ほぉ〜、懐かしいモノだな」フム


 クッパ「黒幕の正体は鼠から聞き出したから知ったが…」

 クッパ「そうか、それを使ってかナルホド…」


 マリオ「ん?あぁ〜、チュルゲの奴ことか、それでお前知ったのか」

 マリオ「さて、話はそれたがこの【ユメまくら】だ」


 マリオ「【マシュマロ王国】にあったこれをお前は利用した」


413 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/04/12(金) 23:06:40.96 ID:+3E/zLSV0













         マリオ「違うか、"マムー"」











414 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/04/12(金) 23:07:18.66 ID:+3E/zLSV0


 - …ぐふ、ぐふふ…!ご名答…せやで! ワイこそが悪夢そのもの -



 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴオオオオォォォォォォ…!



       マムー『悪夢の大王 マムー様や…』ボォォォ



 緑の体色、腹部には大きな白が円を描きそこに赤い宝石を嵌めた
首飾りがぶら下がっていた、爬虫類の蛙そのものと言った顔に
性根の悪さをこれでもかと言わんばかりに主張した二重目をしている

 恰幅の良いでっぷりとした体格に加えて戴冠式の王族が着る様な
マントの裾に鋭い爪の生えた腕を通し頭には王冠を乗せ
 アラビアンナイトを思わせる空飛ぶ絨毯に
踏ん反り返るように奴は座っていた


  ブンブン「こ、こやつは…」ググッ



  マムー『おおっと、今あんさん達が見とるのはワイの幻や』

  マムー『殴ろう思っても無駄さかい、そのつもりでな』



  クッパ「なるほど…初めて見たな」フム




  クッパ「お前がマメーか」

  マムー『マムーや!!人の名前間違えんなや亀ェ!!』



 覇者は何処か皮肉めいた微笑を浮かべて悪夢の帝王に次のように言う


 クッパ「おぉ、すまんな、…このような回りくどいやり方しか
         できん輩の名など一々覚える気も起きんのでな」


 クッパ「夢を変幻自在に操れる者が居るとだけは噂に聞く事があった」

 クッパ「だがこれで高が知れたものだな」



  マムー『…今の内に好きかってほざいとけや』



 マリオ「【マシュマロ王国】は観光地として良い場所だからな」

 マリオ「心に付け入る隙があるクッパ軍の古参兵が立ち寄るのを狙い」



 マリオ「そして、名物の【ユメまくら】を
          使った者の夢にお前が入り込み、暗示を掛ける」


 マリオ「大方、枕を盗んで同じ不満を抱いてる者にそれとなく使う
             そんな暗示を心に植え付ける悪夢だろう?」


 マリオ「目が醒めた後は"夢"の内容は残らない」

 マリオ「しかし植え付けられた暗示は残り続け
      お前からの命令を無意識の内に実行しようとする」


 マリオ「不自然な点や疑問にさえ気づかない
            それを含めての"催眠"…いや"洗脳"か」
415 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/04/12(金) 23:08:50.15 ID:+3E/zLSV0


 ルイージ「最初は1人、2人だったのが伝染病みたいに増えてって」


 ルイージ「少しずつ拡大、んでブンブンとか要になる人物も取り込む」

 ルイージ「そうやってお前はゆっくりと侵食した」



 ルイージ「ブンブンや他のクッパ軍、全員の心を煽り立てる様な夢で」

 ルイージ「"旧"クッパ軍を扇動させたのさ…」


 ルイージ「当然、そこには自分にとって都合良く動く暗示も
              こっそり混ぜた極上の夢を使ってね」




 ブンブンは声を出せずにいた。

 今まで自分は自分の心情と信念に従って動いたと思った
だが、戦士として戦いたかったという想いすらも、全て見知らぬ誰かに
突っつき回されて思うように誘導された行動だったというのか…ッ!


 マリオ「ゲドンコ共とは言葉で会話してたワケじゃない」



 マリオ「"夢"ってのはよ、便利なモンだよな」

 マリオ「抽象的でふわふわとしててさ…」

 マリオ「明らかに不自然でありえない物事が起きても」

 マリオ「見てる間は何の疑問も持たず受け入れるんだ」



 マリオ「あの言葉が通じないエイリアン共にも通用するさ」

 マリオ「アイツ等の夢なんだから、語源関係なく誘導できる」


 あるいは、毒々しいあの宇宙人の精神に感応することでマムーも
かの惑星の語源を覗き見て、メッセージを夢越しに送れたのか…


ブンブン含め、誰一人として言葉が通じないのに自分達に協力してくれる
そういう思想を疑わない、そもそも何故、その前提で物事を進めた?


 初めから誰一人、疑問を持たないのだ


 深層心理に『脳がその事実に気づかいてはならない』という命令を
発信する暗示という棘を…っ

過去の栄光に今一度縋りたくなるような心地よい夢という名の麻薬で
深々と差し込んでいくからだ


 城攻めの大まかな作戦も統率も取れていたワケじゃない

 どっちもある意味、洗脳された状態だったから
お互いの関係を怪しまなかったに過ぎない




 "旧クッパ軍"が戦<イクサ>を起こそうと思い立ったのも

 ゲドンコが埋まってる場所を知らせ、目覚めたばかりで協力的なのも

 ドン・チュルゲがどうやって騒動が起きる情報を握って参戦したのかも



何もかも、夢の支配者であるマムーの策だったのだ…ッ!
416 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/04/12(金) 23:09:22.96 ID:+3E/zLSV0


 クッパ「それで、どうする気だ小物?」

 クッパ「今目の前にいるお前が幻だから殴れないならどうだという」


 ルイージ「そうそう、お前夢の世界の住人じゃん?」

 ルイージ「前は【サブコン】に入ったから僕達で物理的に干渉できた」

 ルイージ「逆に言えばお前そっちからじゃ現実世界の僕達に触れない」



 ルイージ「この数年で僕達も色んな人と仲良くなってね」

 ルイージ「特に夢の世界に干渉することに
      掛けてはプロの人とも知り合いになったんだ」


 ルイージ「ゆっくりと態勢整えて
       大勢の仲間とそっちにボコりに行ってもいいんだぜ?」





  マムー『そらぁ困るわな、態勢整わん内に潰さんとあかんなァ〜』


  マムー『ぐふふ!安心せい、ワイはそこんとこ考えてんで』

  マムー『夢の世界だけじゃなく現実も乗っとる為に』

  マムー『ごっつぅエエモン造らせたんや…』ニィ



ゴゴゴゴゴゴゴゴ…



  クッパ「なに!?」

 ブンブン「うぉっ!…この揺れは、まさか中庭のアレが完成したのか」



 マムー『ワイはご存じ夢の世界の住人や現実世界に肉体が無い』


 マムー『無いならなぁ、"造れば"ええねん』

 マムー『さぁて!!過去からの贈り物作戦のメインディッシュ登場や』



  マムー『目ん玉かっぽじってよぉく
           見とけぃマムー様のニューボディーをな!!』



  ゴゴゴゴゴゴゴ…!

 ルイージ「なんだって!?」ハッ!?



 マリオ「っ!?…まさか、…クソッ!野郎なんて物をッ」
 クッパ「なるほど、鉄屑を集めて作っていたのこれか…厄介だな」



英雄と覇者は表情を苦々しい物に変えた

それは彼等の激戦の記憶にある鋼の肉体…

そいつは"武器"の墓場から連れて来た残骸だった
既に魂など無い鋼の骸をパズルのように合わさるそれは既に
"胴体"が出来ていた、中央の黄色い星の印、右手には金鎚を握るその身体


  「ぐふ、ぐふふ…良い身体や、ワイの新しい身体ぁぁぁ!!」
417 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/04/12(金) 23:13:09.42 ID:+3E/zLSV0





 緑の帽子を被った英雄は額から出た汗を拭った

 彼は実物を見た事は無いが、音に聞いたことだけはあった


 それは老兵のブンブンとて同じだった




 「うおおおぉぉぉぉ!guoo…!GUOOOOOOO!!!!」ゴオォ!




 その全容が露わになり、過去の産物の名を英雄と覇者が呼んだ





        マリオ/クッパ「【カジオー】…ッ!」








 マムーinカジオーボディー「ぐふふ!ぬぅふふ!ぬははははは!!」

 マムーinカジオーボディー「さぁ!!ラストバトルの開幕や!!」



418 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2019/04/12(金) 23:34:55.59 ID:+3E/zLSV0
*********************************


            今回は此処まで!


  解説(?)【メカマムー】


 スーパーマリオくんネタ、かなり前に仰った通りマリオくんネタです

 大事なことだから2回ry)



 マリオUSAに置いて夢の世界【サブコン】を支配し
 悪夢の世界を作ろうとした存在【マムー】

 元はマリオとは別のゲーム【夢工場ドキドキパニック】世界の住人



 口を開いて泡を吐き出す攻撃を行う巨大カエルで野菜が大の苦手

 野菜を引っこ抜いて口の放り込んで倒すのが本来の攻略法である




 マリオくんだと今まで倒して来たUSAボスを取り込んだ姿になり

 身体が【チョッキー】で頭部から三首蛇の【ガプチョ】が生え
 また【ヒーボーボー】の炎を利用も可能なうえ


 ハンマーやたぬきスーツ、フラワーからキノコまで全て


 "現実世界から持ち込まれたパワーアップアイテムを消し去る"という

 とんでもないチート能力まで発揮したのであるッ!
 夢世界サブコンを支配するだけあるようだ




 そして最後は倒したと思いきや巨大メカになってまだ襲い掛かるという
 怒涛の展開が――――




    ―――と思いきや、ヨッシーに一口で喰われて終わった








 マムーinカジオーボディー



 急ピッチで造られたマリオRPGのラスボス【カジオー】の最終形態を
 現実世界での肉体としたマムー

 最終決戦の幕が開くッ!!


>>408

サガフロンティア長編SS

【ブルー「俺達は…」ルージュ「2人で1人、だよねっ!」『サガフロ IF】】


ラブライブ安価コンマスレ

穂乃果「えっ…此処、何処なの…?」【せいぞん・たんさく・げぇむ】【R-18】


他にもあと2〜3ほど
*********************************
419 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2019/04/13(土) 00:00:58.62 ID:K9BzqPMK0
お疲れ様でした
サガフロは何となく予想ついてたけど、せいぞん・たんさくもだったとは気が付かなかった
420 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/04/13(土) 22:25:34.93 ID:v4h1z8C+O
続き来てた、サガフロとラブライブの人だったのか 乙
421 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2019/04/16(火) 08:37:36.04 ID:bLGnBEnNO
なるほど、黒幕はどんな奴かと思ってたが過去のラスボスかつ長らく登場していないキャラだからふさわしい人選だな
422 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/06/28(金) 21:17:54.56 ID:FIRVIzfnO
おつ
423 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/07/11(木) 03:14:00.63 ID:iNLImay40
マメーもマリオくんネタだったなw懐かしい
424 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [age]:2019/07/29(月) 21:17:28.08 ID:jPyqYXbgO
加藤純一(うんこちゃん) Youtubelive
アーカイブ(7/28配信)

スーパーマリオメーカー2 配信 Part7

マリオメーカー2 バトルモードSランク目指す
/高難易度コースクリアする。

https://www.youtube.com/watch?v=QVNzwdSr39o


Jun Channel

https://www.youtube.com/channel/UCx1nAvtVDIsaGmCMSe8ofsQ
425 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/09/29(日) 20:32:32.54 ID:tFZrzOMN0
更新停止して半年近くになるのか...
426 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2019/12/07(土) 22:21:25.53 ID:v6a1EmI10
つい最近ここまで読んだよ
色んなマリオシリーズ遊んだことあると目頭も熱くなる展開があって感動
作者の方は今どうしてるか分からないけど続きを待ってます
427 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/04/11(土) 22:50:41.52 ID:fB7UWkNV0
一年か...
428 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2020/07/26(日) 03:06:49.78 ID:NSZsnUVN0



 言葉通り血肉持たざるボディは世に再臨した。


 原始から始まった人間は楽園の林檎を齧り、いつしか知恵を手にした
身に着けた探求心と好奇心はあらゆるものを創造した



その過程で創られた―――鉄と火薬、それらを用いた暴力


 鈍い輝きを放つ命を感じさせない不気味なソイツは忌むべき人の叡智を
これでもかと言わんがばかりに繋ぎ合わせたような象徴だ



 カジオーボディ『グオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォ』カッ



 再構築された鉄屑の魔王は産声を上げる
夕刻、朱色の空へ唸る様に咆えた、恨みがましい怒りとも
現世に舞い戻った事に対する歓喜にも受け取れるような叫びと共に
 彼奴は起動と同時に倒れていた上体を起こし右手の鉄槌を振り回す
砂場で創った泥の城を壊したかのように脆く崩れる城壁
当然ながら一部を破壊された城は傾き英雄兄弟達も落ちそうになる



 ブンブン「う、うおぉぉぉぉぉ!!」ズザーッ

 ガシッ



 マリオ「くそっ!城の修繕費が高くついちまうぜ…!」ガシッ

 ブンブン「す、すまなんだ」

 マリオ「礼は良い、んなことより手ぇ放すんじゃねぇぞ」



 傾いた屋根の縁を掴み、持ちこたえるマリオは嘗て倒したモノを睨む


 【カジオー】の頭部は過去の決戦で数パターンの変形を見た
戦車であったり魔法使いを模していたりだが現在対峙している頭部形態は




   マムーヘッド『ぐふ、ぐふ…ぐふふ』ニタニタ

 ルイージ「うわぁ、きっしょいな、どデカい鉄のカエル頭かぁ」シュタッ


 夕光を反射する鉄色の顔面はでっぷりと膨らんだ頬、丸みを帯びた鼻や
ツインアイの上部に再現された二重…マムーの特徴を捉えていた


 マムー「なんやワレ人の顔にケチつけたらアカンって
                 親に教わらんかったんか〜?」


 マムー「ほな、あんさんから潰れた顔になってもらいまひょか」
 カジオーボディ『ウゴオオォォォォォォォ!!』グワァン


 胴体は右手を振り上げる、鉄槌がオレンジの光源を遮るように掲げられ
照らされた武器は太陽の色に染まる様に変色する


 じゅわり…っ!



 空気が揺れる、鉄塊が熱を帯びて輝黄赤色へと変わる
真夏日の雨上がりに見るアスファルト上の蜃気楼じみた空間のぶれ

屑鉄魔王の肉体に寄生した悪夢の脳は鉄槌を下す指示を送る
429 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2020/07/26(日) 03:09:14.91 ID:NSZsnUVN0

 焔の槌は振り下ろされる、高度が下がるにつれてルイージの頭上に点を
合わせた黒い影は大きくなり、終いにはピーチ城の屋根を粉砕する



―――ゴシカァン!!



  ルイージ(うまく挑発に乗ってくれるじゃあないか!)ガシッ

  壊れた窓枠『』



 ギリギリまで敵の攻撃を引き付けてからの飛翔、屋根から離宮の屋根へ
飛び去ろうとする際に壊れた窓枠を拾いあげる


 そして跳んだ弟の視界に映ったのは…




 マムー「ぐっふっふ!そないな遅さで逃げられる思うたんかボケェ!」



 愚鈍に見える巨体からは想像もつかない機敏性
振り下ろした筈の右腕は既に引かれていて、振り翳したまま身体を捻り
横軸にフルスイングをぶちかまそうとするマムーの姿だったッッ!!



   ルイージ「おおっと!?…こいつぁやべぇかも」タラーッ



 初手で挑発をかまして自分にヘイトを向けさせて
自分は彼奴の攻撃回避に専念、その隙に火力の高い兄とクッパが
がら空きになったマムーの背部から叩くッ!



 というのが想定していた理想の動きだったのだが…
如何せん【カジオー】と対峙した経験が無い故に相手の俊敏性を見誤った


 早速"保険"を使うことになるとは思わなかったと、冷汗がタラリ…




夕陽を背景に屑鉄王の影が迫る、赤焼けに良く映える黒い鉄槌が

巨影の後ろに何かを抱えた人影と甲羅を背負った怪物の影も



  マムー「死にさらせぇぇぇぃぃぃいいいいいいッッ!!」



  ゴベキャッッッ!!

 鋼鉄の腕は確かに、物体を潰した感触を感じ取っていた
ニタニタと笑うカエル頭の口角が更につり上がる…!



   マムー「っしゃぁぁまず1匹ぃぃっ!!」グルンッ!



 生物の構造上決してありえない首の動き、180℃頭部がぐるりと回って
後方から迫る二人を捉えた



    マリオ「どらぁぁぁぁッ!!」グッ!

    クッパ「破ァァッッッッッッ!!」ブンッ

430 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2020/07/26(日) 03:11:13.87 ID:NSZsnUVN0

首が旋回した時、既に跳躍した英雄と覇者は目先に居た


 年季の入ったブーツで顔がこちらを向く事など初めから想定済みだと
謂わんばかりに顎下から蹴り上げる姿勢を見せる


 英雄より僅かに低い位置には裂けぬ物など無いと仲間達に誇らしげに
語っていた爪を振り上げて首元から胴を掻っ捌いてやろうと両腕を己が
背まで振りかぶる覇者の姿もあったのだ



   マムー「しゃらくさいわ!」カッ!



 鉄蛙の両目に赤紫色の怪しい光が灯ったかと思えばそれは放たれる
本来のカジオーには備わっていない高出力の破壊光線が空へと穿たれるッ


 逃げ場のない空中でこの距離、速度では歴戦の勇士も巧くは避けれまい
そんなマムーの予測を上回る動きをやってのけるのが真の英雄達だ




   マリオ「恨んでくれていいぞ!」ドガッッッ!

   クッパ「おうッ!後で100倍にして返してやろうぞ!」ガッッ




 さて振り返ってみよう、マリオは鉄蛙の顎下を蹴り上げる為に飛び
その僅かに低い位置に同じくクッパが喉元から下に向かって裂くべく居る



 咄嗟の判断…っ! 歴戦であるが故の応用…っ!


 なによりも、好敵手<ライバル>であるが為に可能な阿吽の呼吸…っ!




 大魔王クッパは自身の甲羅の棘に触れるかどうかまで振り上げた両腕を
十字にクロスさせて頭の上に乗せる

 英雄マリオは…そのまま"クッパを踏み台にした"…ッ!!



 真冬にできる凍りついた水溜りをパリンっ!と踏み割る様に鍛えた脚で
自分の真下に居るクッパの頭部を――頭を護る様に交差した野太い両腕を

力強く下方向に向かって蹴落とす様に踏みつけたのだ…ッ!




 結果…っ!


 上から圧を加えられることによって急速落下していく覇者
 彼を踏み台にしたことで更に上昇していく英雄


 宛ら磁石の同極同士をくっつけた時に発生する反発力の如く…っ!
お互いが宙でそれぞれ上下に分かれて迫りくる破滅の光を回避したのだ!




  マムー「ぬぅぅ!?…サーカスのピエロかいなっ」チッ




「サーカスの曲芸はお嫌いかい?じゃあマジックショーなんてどうさ!」


431 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2020/07/26(日) 03:13:53.58 ID:NSZsnUVN0


 マムーの照準は好敵手を踏み台にした事で更に高く、それでいて一気に
距離を詰めてきたマリオに合わせられることは必然であった


 破壊光線の第二波までに掛かる時間ならギリギリ赤帽子を撃墜できた筈
頭部はマリオを凝視し、胴体部は当たるかどうか分からずとも
クッパへの牽制になれば良いと鉄槌で薙ぎ払う様に振るう




   そこで聞こえてきたのがもう一人の英雄の声だ




 マムー「!?」ハッ!



 ルイージ「無防備な頭を〜〜っ ダブルスレッジハンマーでドーン!」


――――ドガッシャァァァ




  マムー「 く" が っッッ!?」グワンッ




 プロレス技に置ける打撃技の一種、両手を組んで作った拳の鎚で
思いっ切り相手の頭部を殴打してやるハンマーパンチが炸裂する

 声の主は間違いなく"手応えありだった相手"…

いや確かに死んだかどうかまで確認はしていなかったが、ありえない
 マリオでさえクッパを踏み台にしたことで得た高高度を
自分を殴りつけてきた緑のヒゲはあっさりと得ていたのだ

 屑鉄帝王の背丈よりも遥かに高い制空権を獲得した英雄の弟に
殴りつけられたことによりマリオに向けていた筈の照準は外れ
赤紫色の破壊光線は虚しく地平線の彼方へと飛んでいく



 マリオ「上のお次は下からだぜ?忙しいだろう…なァア!!!」ヒュゴッ



 汚れ切った茶色の靴が下顎を撃ち抜く、自動車のボンネットが
潰れた時に聴こえる嫌な音が響いて鉄の蛙は天を見上げさせられる


 ウゲッ!!っと声を漏らして破壊光線射出装置と化した眼球が言葉通り
眼を回し、中央の瞳が渦を巻く


       ―――ザ ン ッ  ッッ ッッ



ギィギギギギッ…!メキキィィィーッ


 次いで聞こえたのは腹部から分厚い金属板を強引な力で引っぺがす音だ
視界がグルグル回る悪夢の帝王はまだ揺れる視界の中で腹の皮を一枚裂き
剛腕で剥がす亀族の覇王を見た…っ


  クッパ「ムッ?金属板の腹を破ってもまだ金属板があるのか…」

  クッパ「まるでタマネギの皮のようだな」グググッ!


  クッパ「フンッッッッ!!」


 鉄屑ボディをタマネギと吐き捨てて右ストレートを繰り出す
圧倒的な体格差にも関わらず、よろめき思わず二歩後退る鉄屑の帝王
432 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2020/07/26(日) 03:16:37.58 ID:NSZsnUVN0


  ルイージ「いってぇぇぇぇ…っ!」シュタッ



  ルイージ「くっそあの蛙、石頭…あっ、いや鉄頭か?」ヒリヒリ

  ルイージ「無駄に硬くなって帰って来やがって、あー!もうっ!!」



  マリオ「…"保険"を掛けていたとしても甘く見過ぎだ、気を付けろ」

  マリオ「【奴】はあの見た目に反してそこそこ早いからな」



  ルイージ「…わかってるよ、実際想像してたのより速かったからね」



 鉄蛙の鉄頭を思いっ切り両手で殴りつけた英雄の弟は
白いグローブ越しにヒリヒリと痛む手に息を吹きかけていた

主役は兄、二番手は大人しく囮や陽動のサポートに…と
手慣れた動きをしようと思えば想定外の鉄槌スイングが来たから驚きだ



  マリオ「お前なら、壊れた窓枠を拾うだろうと思って俺も拾ったが」

  マリオ「俺がもし窓枠を抱えながら走っていなければどうする気だ」


  ルイージ「なぁに、兄弟の絆を信じたまでさ」ヘヘッ!




   クッパ「お喋りしてる場合でもなかろう…」スクッ!

   クッパ「見ろ、ワガハイ達の攻撃を受けてもあの通りだ」





  マムーinカジオーボディー「……。」ヒュゥゥゥゥ…



 ほんの僅かにへこんだ後頭部と顎下にできた窪み、そして覇者によって
"文字通り皮一枚"の損傷…経験者2人は与えたダメージの少なさから
頑丈な肉体を得たマムーを一瞥して『そうだろうな』と思った



  マムー「ぐふ、ぐっふっふ…」



 ゴゴゴゴゴ…!





討ち滅ぼされた筈の異界の王、その形骸を依り代とし"夢魔"は大地に立つ





 マムー「ぬはははははっ!ええやないかっ!!ワイのボディーはァ!」





 黒鉄の巨人は心底愉快そうに笑い半狂乱気味に鉄槌を振り回す
ただ目の前の3人に当てるでもなく、軽い準備運動でもするように

その肉体が徐々に自分に馴染んでいくように…ッ!!
433 :今回ここまで [saga]:2020/07/26(日) 03:44:10.46 ID:NSZsnUVN0


 ルイージ「うっわ、そんなありかよ…」

  クッパ「!…これは厄介だな」



  マムー「何を驚いとんねん、ワイはマムー様や…」ニタァ…

  マムー「【夢世界】を支配する悪夢の王のマムー様なんやで!!!」



―――
――




 悪夢は現実となりて。



 胡蝶の夢という思想があり曰くソレは『夢と現実の区別がつかない』
そんな状況を表現した言葉だそうだ


 現在進行形で目の当たりにしている光景はそんな思想さえも上回る状況
幻夢が現実との間にある明確な境界線を飛び越え現世に干渉するのだから




  カジオーボディー『…グオオオオオオ!!』シュウウウウウゥゥゥ…!




  マリオ「オリジナルのカジオーも自己修復機能があったがな…」

  マリオ「形態変化もせずに、それも生身の人間みたいな治り方とは」



 英雄兄弟、大魔王が与えた傷はみるみる内に塞がった
頭部に出来た窪みも、切り裂いた腹部の装甲も…
カジオー本来が持つべき修復機能を遥かに上回る回復速度で
 血肉の通った有機生命体の擦り傷が細胞の力でどんどん治る様に…っ



  マムー「悪夢を実現させるのが夢世界の支配者や…」

  マムー「どや?タダでさえ頑丈な鋼の肉体が人間みたいに治る」

  マムー「どれだけ殴っても先が見えない、終わりの見えぬ"悪夢"」




マムー「現実で自由に活動できる肉体を得たからこそ夢から現実に…!」

マムー「悪夢の王たる力がなさしめる能力で干渉可能になったんや!」



  マムー「にしても…あんさん等」

  マムー「…ちぃっと見ん内におもろいことできる様になったやんけ」

  マムー「そっちの緑がどうやって助かったんかやっとわかったわ」



 ルイージ「…へへ、面白いマジックショーだっただろ」グッ


 あの時、クッパとマリオがマムー目掛けて飛翔した時…
確かに赤い英雄は"何かを抱えていた"…その何かというのは城の窓枠だ


 ルイージ「【あちこちウィンドウ】…種も仕掛けもありませんってね」

434 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2020/07/26(日) 07:50:35.11 ID:fNbM6Bbt0
久々に来たな、そして新作も発売されたけどその新キャラたちは出演しないのかな
435 :>>434 折り紙さん世界は残念ですが今からの出演はちょっと… [saga]:2020/07/26(日) 21:48:59.11 ID:NSZsnUVN0


 マムー「はんっ!種がわかればどうってことのないトリックやな」

 マムー「ワイが手応えありと感じたんはあんさんの骨やなく窓枠や」


 マムー「そっちの赤い方が亀と跳んどった時に抱えてたブツを投げた」

 マムー「ワイの頭上より上空に投げられたブツ…窓枠から瞬間移動と」

 マムー「そないなとこやろ?」


 念のために用意していた"保険"…万が一にも避け切れないという事体に
なった場合は拾い上げた窓枠を【あちこちウィンドウ】として利用して
 そこからマリオが拾った方の窓枠へワープすることで緊急離脱
焔槌がぶち当たる頃には弟の姿は既に鋼鉄巨人の上に投じられた窓枠から
出てくるという寸法だ


 回避と同時にそのまま奇襲攻撃への流れを自然に持っていく
首が旋回して此方を見ることまで何もかも織り込み済みで
マリオも敵の死角となる後頭部側にルイージが現れる様に投げた



……とはいえ、本当にただの"保険"であって
  いつでも視覚外から仕掛けられる布石として撒く程度のつもりだった


 これほど早く使うことになるなど想定外だ




  マムー「惜しかったな〜?初見なら対応に困るやろけど」

  マムー「初見殺しは、一度見てしもうたら初見殺しやなくなるで?」




 手札を知られたのは確かで、更に3人の一斉攻撃でも
あれだけしかダメージを与えられなかった


 その癖カジオーの修復機能を圧倒的に上回る常時自動回復を見せつける
マムーの"悪夢の力"による回復力…っ!
 もう鉄屑帝王の肉体には外傷と呼べる物は無くなっていたッ!



  マムー「ぬはははっ!ワイは無敵の力を手に入れたんや!」

  マムー「目ぇかっぽじってよぉく見ときやぁぁぁ!」メキッ、メキッ



 ビキビキ…ベキョッ!

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…!



 マリオ/ルイージ「「…!」」

 クッパ「なんなのだ…あやつらは…」




ぺきぺき…にょきっ!

うじゅる…うじゅる…!

ぼぉぉぉぉぉ…めらめら…っ!



 ルイージ「悪夢の王、ね…確かにこりゃあ名にふさわしいバケモンだ」

  マリオ「ああ…マムー軍総出でお出ましとはな」

436 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2020/07/26(日) 21:50:41.23 ID:NSZsnUVN0

 黒鉄の胴体、頭部に罅が入り内側から"何か"が出てきた…
卵から孵化した雛が嘴で殻を打ち破る様にソイツ等は姿を見せたのだ


 身体の両サイドから生えた甲殻類を思わせる計6本の節足と
肩部からメキメキと音を立てながら生えてきた
蟹の鋏を思わせる金属製のロボットアーム


 背部に円形状の穴が開いたかと思えばガス管に酷似した配管が数本出て
恐らく可燃性のガスと思われる気体を噴出
 それが勢いよく発火してマムーが大火を背負うかの様であった
背景にある夕陽と相まって神話に出る太陽を背負う王か何かだ


 最後にマムーの頭部を模した王冠付きの蛙頭の天辺から3つ
うじゅるうじゅると蠢きながらそれは伸びていた


蛇だ。

三又の蛇が牙を覗かせ、クッパには目もくれずに英雄兄弟を見て嗤う
何がおかしいのか、愉快そうに…お道化ながら彼等は口にした



 「ガーです、くくくっ」
 「プーですっ、へへへ!」
 「チョでーすっ、きひひっ」


 「「「皆合わせてガプチョでーすっ!ギャハハハハハハ!」」」



 人を喰ったような態度と底意地の悪そうな吊り上がった目元
金属のメカメカしい姿に変わっても尚健在で嘗てのマムー軍幹部は嗤った


  マリオ「三馬鹿蛇に蟹部分は【チョッキー】か、背部からの炎は…」

 ルイージ「【ヒーボーボー】だろうね」


 ブンッッッ!


 右腕の鉄槌による薙ぎ払いが飛んでくる


 シュバッ!シュバッ! ギュリィィィィン―――ッッ!


 胴体から伸びる鋼鉄の6本脚がそれぞれ鉄槍と化して迫って来る

 蟹鋏のアームがドリルじみた螺旋回転を加えて左右から振るわれる


 マムー「くたばれやぁぁぁぁぁぁ!!」ガッ、ビィィィッッ

 ガプチョ「「「そらそら」逃がしゃしねぇよ」喰っちまうぞ!」


 赤紫色の破壊光線がマムーヘッドの眼球から撃たれる

 三つ首の蛇がそれぞれ火炎・叩き潰し・毒牙を使って来る



 ドッッッ!!ベギャッ!ゴッガアアアアアアァァン!


 さしもの英雄達も手数の多さに舌を打った、付け根部分から直線状に
飛んでくる蟹足の槍を躱しながら本体を叩きに向かう兄弟、その進路を
潰す様に三つ首蛇の中央が鉄の身体で圧し殺そうと身を振り
 赤と緑が左右に分かれて跳ぶと赤に目掛けて破壊光線と火炎弾の雨が
緑側には執拗に追尾して毒液を滴らせる牙を剥ける蛇頭がそれぞれ向かう

 英雄兄弟<マリオ・ブラザーズ>と比べて素早さが若干足りていない覇王は
横薙ぎの焔槌を屈むことで紙一重に回避するも
 ドリル回転の鋏が両サイドから挟み込む様に攻めて来る、自慢の剛腕で
それを受けきり回転を止めるまでに至るのだがマリオ目掛けて撃たれた
破壊光線がそのまま城の屋根伝いを焼きながらクッパの元へやって来る
437 :短いけどここまで [saga]:2020/07/26(日) 23:14:45.75 ID:NSZsnUVN0


  クッパ「おのれ、止むを得んかっ!」バッ!シュバッ!


 回転を止めた蟹鋏くらいはそのまま腕力でへし折ってやりたかったが
眼先に迫った赤紫色の光のカーテンに呑まれるわけには行かない

 ガッシリと掴んでいた両手を放してチョッキーの腕を解放し
その場を飛び退く、破壊光線の光に今しがた立っていたピーチ城の屋根が
灼かれたのは直ぐのことであった


―――
――



  ルイージ「しつこいんだよっ!この蛇頭!」

   「うひゃひゃ誉め言葉だぜ!そして余所見してる場合か〜?」


  ルイージ「うげげっ!?」

   「前からどうもこんにちはってなァ!!」


 追尾してくる頭部とは別でさっき自分達を叩き潰そうとした頭が
前方から突っ込んでくる、前門は蛇、後門も蛇と来たモンだ…ッ!

 噛み砕かんとする相手の動きを見切り踏みつけても後ろは未だ
追い続けて、そうこうしてる内にまたもう一体が態勢を整える
 一向にマムー本体への攻撃が加えられない…っ!


―――
――


  ボォッ! ボォッ!

  火炎弾『』ボォォォォ!!


  マリオ「ふゥっ!はっ!でやぁぁぁ!」タンッ、タタンッ、シュタッ


  「ちょこまか動いてんじゃねーよ!!!」ボォォォ
  マムー「いい加減に墜ちろぉぉぉ!!」ビィィィィーッ


  マリオ「遅い…っ!そして貰った!」サッ!ググググ…!
  マムー「甘いわ!」


―――――ボオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!


  マリオ「うっ、ぐわあああああぁぁっ」ジュウウウッ


 マムー「只単に死角となる背中を護るだけやと思うたか!」

 マムー「背部のヒーボーボーは前含む全面防御範囲やわかったか!?」



  マリオ「〜〜っ!」スタッ

  ルイージ「兄さんっ!」タッタッタッ…!


 マリオ「クッパの火炎ブレス並の火力とはやるじゃねぇかよ…」

 マリオ「背面攻撃が炎壁で防がれたから今度は正面と思ったらコレか」


 瞬時に受けたダメージを回復する常時自動回復機能、頑丈な肉体
攻撃を仕掛けようとする者を焼こうとするカウンター
 更にあまりにも多すぎる手数と重火力


 認めたくはない…が、認めざるを得ない、攻守共にヤツは完璧だ
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