都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達…… Part13

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123 :次世代ーズ ◆V64jkvSK0tu/ [sage]:2017/11/14(火) 23:04:12.59 ID:9Rqj/fkFo
 

「へえ、キミは春先に引っ越して来たばかりなんだ」
「はいまあ、でも直ぐ慣れるもんすよ。住めば都って言いますし」


 日没後、まだ夜の闇が完全には訪れていない頃

 商業高校の制服を着た男子が大きなトランクを持って
 コート姿の女性の後に従うように南区の歩道を進んでいた


「本当に親切で助かる。久し振りの学校町でちょっと戸惑っちゃって」
「いやぁまあ困ったときはお互い様っす」
「でもいいの? 人探してるんでしょう? 着いたらお姉さんも手伝おうかな?」
「そんな、気にしなくて大丈夫ですよ! 行き先も一緒ですし!」


 女性に先導され、商社ビル同士の隙間を進んでいく
 そこは表とは異なり一気に照明の届かなくなる影の世界だ


「ヤマダ君って学校でモテるでしょ? 優しいし気が利くし」
「無いっす! マジ無いっすよそれは! モテるだなんて可能性のカケラも無いっす!」
「そうなの? でも絶対モテるよ、ヤマダ君。意外と女の子たちに目を付けられてるかもよ?」
「えー、ど……どうっすかねー……」


 男子の方は控えめに見ても女性に対してデレデレの様子だ
 無理もない、コート着用のためはっきりと分かるわけでは無いが
 女性の容姿は思春期の男子にとって中々刺激的なスタイルのようだ


「重いトランクも運んで貰ってる訳だし、お姉さんにヤマダ君の人探し手伝わせてね」
「そんな! 悪いですって!」
「いいのいいの、お姉さんの知り合いに人探しのプロがいるから」
「プロ、ですか。探偵みたいな感じっすかね?」
「んーまあそんなとこかな」


 女性と男子は路地裏を縫うように進んでいく
 もう、そこは人気の全く無い一角だ
 繁華街の喧騒が何処か遠くに聞こえる


「ちなみに探してるのってどんな子なの?」
「幼稚園生くらいの男の子っすよ、知り合いの子なんですけど」
「へー、南区で迷子になっちゃったのかな?」
「ええ、もう居なくなって大分経つらしいんで自分のとこにも探してくれって連絡が」
「へー」


 ようやく女性はビルの前で立ち止まった
 陽も落ちており、灯りは遠くからの便り無い光のみだ
 その為おぼろげにしか分からないが兎に角古いビルのようだ

 古いビルの裏口に来ているらしい
 二人は今、やや錆び付いた金属製のドアの前に立っていた


「じゃあ、お姉さんは知り合いに連絡してみるから
 ヤマダ君、悪いけど最期の一仕事お願いできる?」
「任せてください!」
「そのドア開けたら階段があるから、地下のバーまでトランクを運んで欲しいの」
「了解っす!」


 女性の言葉に従い、男子はドアノブに手を掛ける
 意外と抵抗の強いドアは、金属の軋む音と共に押し開けられた
 内部から一気に生温かく、埃臭い空気が男子に向かって押し寄せてきた

 中に照明は無く、闇一色だった

 よし、一仕事だ

 地下へ続く階段へと運び込もうとしたトランクを、男子は横合いへと投げ捨て
 後方より振るい下ろされた警棒を、生成した“黒棒”で振り返ることなく受け止めた

 
124 :次世代ーズ ◆inf1WNjJ1sIa :2017/11/14(火) 23:05:02.84 ID:9Rqj/fkFo
 



          ●



「生成が甘いぜお姉さん。それとも“お巡りさん”と呼んだ方がいいか?」
「……っっ!?」


 「ラルム」に行ったものの千十ちゃんとコトリーちゃんには会えず
 おまけにバイトのお姉さんには絡まれるし、東高校の女子には睨まれるしで
 早々に退いた帰りに、「人面犬」の半井のおっさんから連絡があった
 聞けば「知り合いの『コロポックル』のガキンチョが一匹迷子になった」らしい
 で、即答で迷子捜しの手伝いに加わることになったが、早速都市伝説と遭遇だ

 はっきり言えば切っ掛けは偶然だ
 繁華街の手前で堂々と俺に声を掛けてくる都市伝説に会った
 普段なら適当に言い訳してナチュラルにその場を早急に立ち去るんだが
 このお姉さんから問題の『コロポックル』の子の“波”を微かに感知したとなれば話は別だ

 (お前は犬かよ)
 半井のおっさんにはイヤミ言われたが、まあなんだ
 事前に『コロポックル』の子の服から“波”を嗅いどいて正解だったな、うん


「まさか……っ、契約者だったなんて……!?」
「俺をこんな所まで誘い込んでどうする積りだったんだ、『偽警官』さん」
「くッ……!!」


 動揺を振り切るようにお姉さん、「偽警官」はコートを脱ぎ捨てた
 コートの下は警官の制服だったようだ

 「偽警官」の手が腰へと動いた、だが、その動きは予想出来てる

 “黒棒”の形成を崩し鞭のようにしならせる

 彼女の手を打ち据えると同時に得物を奪い取った
 旧式の回転式拳銃だ


「ぐぅ……っ!」
「 跪け 」
「うっ、ああっ!?」


 一気に畳み掛ける
 「偽警官」は膝から崩れ落ちた


「ちょっ、調子に乗るなよぉぉっ、ヤマダぁぁっ!!」
「 這い蹲れ 」
「ぐっ、んんッ うっ、あ゙っ


 一応断っておくが俺の名前は山田では無く早渡だ
 山田ってのは「偽警官」に会ったとき咄嗟に名乗った偽名だ

 彼女は完全にうつ伏せ状態になっていた
 時折痙攣したように身を震わせるが、もう立ち上がることは出来ないだろう


「こっ、……こんな、餓、鬼にぃぃっっ……っ


 何処となくエロっぽい声を上げてるのは気の所為ですかね?
 まあいい、倒れた「偽警官」を見下ろし
 そのとき初めて彼女の傍らに注射器が落ちているのに気づいた

 彼女の右手の直ぐ傍だ、直前まで隠し持っていたものか
 周囲の気配に警戒しながら、それを拾い上げ、遠くの灯りを元に確認してみる

 赤い薬剤が詰まった注射器だった


 
125 :次世代ーズ ◆rq441qm2oDFn [sage]:2017/11/14(火) 23:05:59.49 ID:9Rqj/fkFo
 

 「偽警官」のトランクに入っていたのは謎の白い粉の詰まった無数の袋
 色々疑惑と想像が働くものの、今俺が探しているのは「コロポックル」の少年だ

 廃ビルの中に踏み入り、階下へと進んでいく
 当然ながら灯りは無い、そして当然ながらその先に何らかの気配を感じる

 間違いなく都市伝説がいる、こちらを待ち構えているようだ
 だがそれだけじゃない、先程よりも件の「コロポックル」の子の“波”が強くなってる気がする

 恐らくここだ、ここにいる

 階段を下り切った直ぐ横にあったのは木製のドアだ


 蹴破るように中へ押し入る


 空間を無数の殺気が奔った

 だがあまりにも直線的、おまけに殺気の元は全てある一点だ

 手に持った“黒棒”を振るい、鞭のようにしならせる

 警戒しろ、油断するな、罠かもしれない

 “波の先触れ”に警戒しながら

 殺気の源へと“黒棒”の先端をやたらめったらにぶち込んでいく

 手応えは、あった


「げほっ、ンがっ、あ゙っ、ごっ!!」


 暗闇の向こうから押し殺した呻き声が断続的に響いた
 何というか、軽い、軽過ぎる

 気配と呻きの響き方からして相手は床に倒れているようだ
 少なくとも直前までの殺気は完全に消え失せていた

 ポケットをまさぐり携帯を引っ張り出す
 相手をボコボコに叩き伏せたとはいえ、こうも暗いと流石にやり辛い
 ライトを点けようと携帯を弄って、で、どれだ? あ、これか
 一瞬の眩しさの後に映ったのは真っ黒の塊が床に蹲っている光景だった
 いや、真っ黒の塊というより真っ黒に汚れた男がそこに居た
 よく確認すれば、何というか普通に居そうな髭面のおっさんだった


「ぐはっ、ごほっ、くっ、まさか、こんな、餓鬼に」
「上でも聞いたぜ、おんなじセリフ」


 “黒棒”を解き、鞭の形状にすると天井へと振り上げた
 先端が天井を突き破り、裏に這わされていた配線を掴んだ
 これを使おう、再び天井を突き破り一直線におっさんへ突き刺すと
 配線コードを利用する形でおっさんの体をがんじがらめにした
 そのまま一気に引っ張り上げる


「ぐおおおおっ、貴様ぁっ!?」


 丁度問題のおっさんは今、天井から吊り下げられるように縛り上げられていた
 見たか、これが修行の成果だ

 
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