都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達…… Part13

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61 :次世代ーズ 25 「週末のひととき」 1/5 ◆John//PW6. [sage]:2017/06/27(火) 22:11:46.73 ID:PvzAKfBpo
 



 色々あったけど今週もようやく金曜を迎えた
 というわけでこの日の放課後、俺は「ラルム」にやって来ていた


「ねー教えてよーザベ子の彼氏ってアンタでしょー?」


 いや別に毎日「ラルム」に通い詰めてたってわけじゃない
 ただ何というか、自分の中では既に
 金曜の夕方は「ラルム」で過ごそうっていうのが出来上がっていた


「ねーってばー黙ってないで教えろよー、なー」


 そんなわけでこの日の夕食を「ラルム」で、ってわけだ
 注文したのはクロックムッシュ、コトリーちゃんイチオシのメニューだ


「いーじゃんいーじゃん別に恥ずかしがんなくてもさー、聞いてる?」


 確かに美味しい、うん、美味しいんだ
 ただ、それを伝えようにも、今日はコトリーちゃんもお休みらしい
 もっと言うと千十ちゃんも居ない。代わりに居るのはおばちゃん店員さんと


「てかこのお店に独りで入っといてさー恥ずいとか今更じゃんねー」


 この、さっきからやたら俺に絡んできている女子大生のバイトのお姉さんだ
 「ラルム」の制服の上からでも分かる程なかなか豊かなお胸の持ち主のようですが
 どうしてこんなにも心ときめかないんだろうか、我ながら不思議でならない


「あ、聞いてる? どうなの、ホントにザべ子の彼氏?」
「違います、ていうかザベ子って誰っすか」
「ウソウソ、絶対ウソ! そういうのわかっちゃうんだよね。絶対ザベ子の彼氏でしょ!」


 ダメだこの人、全然話を聞いてくれない
 しかも声が大きいので割と店の中に響いてる
 他のお客さんにもバッチリ聞かれてるんじゃないか?

 バイトさんに悟られぬように店内に眼を走らせるが
 聞こえてないのか、それとも知らない振りしてくれてるのか
 こっちを見ているお客さんは皆無だった
 一見すると、前に会ったオバちゃんズの姿は無いものの
 「ラルム」の客層って、全体的に年配の方々が多いようだな


 いや、待て



 
62 :次世代ーズ 25 「週末のひととき」 2/5 ◆John//PW6. [sage]:2017/06/27(火) 22:12:58.02 ID:PvzAKfBpo
 

 女の子と目が合った
 見たところ、学校町東区にある高校の制服だ
 あの「怪奇同盟」本部の墓地の近くにある高校の子らしい


 眼鏡の女の子だ

 目が合うどころでは無かった

 女の子は物凄い形相で俺の方を睨み付けていた


 な、なんで!? なんで睨まれてるんだ!?
 こっちのバイトさんに対して、ってわけじゃないよな?
 すると俺か!? 何かまずいことでもしたのか、俺は?


 「ねー、ウチのバイトのどっち狙いなワケ? ザベ子? それとも千十っち?」
 「すいません、もうそろそろ帰るっす」
 「えーなんで!? 食い終わったらそのまま帰るって、ちょっとねえ、アタシと話しよーよー」


 ちょっと睨み付け方が尋常では無い
 特に恨みを買う覚えは、無い、と断言できない所があれだが
 少なくとも、女子に対して何か失礼なことをしでかした覚えは無い
 これは断言していい
 あ、でも「七尾」出身者だった場合はちょっと話が変わるぞ

 少なくとも、ここは早く退いた方が良さげだ
 俺を睨んでるあの子に直接話を聞くってのも手だが
 あの睨み方じゃ穏やかに話が出来るかどうか、全く自信がない

 しかも今日は千十ちゃんもコトリーちゃんも居ない
 仕方がない、もう今日は帰った方がいいだろう


「この店さー若い子あんまし来ないんよー、もっと話しよー?」
「いやホントすいません、もう帰らないとヤバいんで」
「えー!?」

 ブー垂れてるバイトさんを適当にあしらいつつ
 俺はもう席を立った



 俺を睨んでた子、何だか生真面目そうな雰囲気の子だ
 もしかしたらこういう雰囲気の店に
 俺のような商業男子が居ること自体許せないってクチかもしれない
 そうだとしたらやっぱり早々に店を出るに越したことは無い、また日を改めよう








 
63 :次世代ーズ 25 「週末のひととき」 3/5 ◆John//PW6. [sage]:2017/06/27(火) 22:13:53.76 ID:PvzAKfBpo
 



          ●



「っ違います! そういうんじゃありません!」
「えー違うのー?」


 聞き慣れた声に、日向ありすは顔を上げた
 テーブル席にやって来たのは同じクラスの遠倉千十だ
 急いで来たのか、肩で息している


「ごめんありすちゃん、待った?」
「ううん、全然」


 読みかけの文庫本を閉じて応じる
 時間で言うと日没直後だろうか
 千十がやって来たのは先程の商業男子が店を出て十数分後のことだ


「先生、仕事溜め込んでたみたいでようやく終わったの」
「あー、まあ仕方ないわね、うん」


 親が家を空ける為、ありすは今日の夕食を外で取る積りだった
 すると千十も一緒に行きたいと言うので「ラルム」へ行くことにした、が
 放課後、急に千十が教員に捕まって仕事を手伝わされることになったのだ


「でも千十、今日シフト休みだったんでしょ? いいの?」
「大丈夫だよ、本当は今日お仕事だったんだけど」


 そんなことを口にしながら千十は横目を向ける
 つられてありすが顔を向けると、バイトの女子大生さんがキッチンへ入って行く所だった


「急にシフト交換するように言われちゃって……」
「それで休みになったんだ」
「うん、でも今日はお仕事の方が良かったな」
「へえ。千十、働くの好きなんだ?」


 笑いながらありすはそう尋ねるが
 彼女はむう、と口を曲げてキッチン入口の方を見詰めるだけだ


「それより日も暮れちゃったけど、ありすちゃんは大丈夫なの?」

「平気平気。どうせ母さん、お父さんの所に行ってるし、明日まで帰らないわよ
 愛に飢えてるとかどうとか言ってたし」

「ラブラブっていいね、羨ましいなあ」

「そういうもんでも無いと思うけど。あ、千十はどうなの?
 今日はお姉さん遅いの?」

「うん、上司に居酒屋でお説教されるんだって」

「お説教って……、お姉さんも大変ね」

「お姉ちゃんにはいい薬だよ、ほんとにもう」


 不貞腐れたような表情の千十を見て、思わず笑ってしまう


「あ、千十。帰りは私も一緒に行くからね」
「え、大丈夫だよありすちゃん、心配しないで」
「だーめ、最近は以前より物騒になってるの知ってるでしょ?」
「でも、ありすちゃんのお家と反対側だし、ありすちゃんも危ないよ」


 
64 :次世代ーズ 25 「週末のひととき」 4/5 ◆John//PW6. [sage]:2017/06/27(火) 22:14:43.02 ID:PvzAKfBpo
 

「私にはメリーがいるし、いざってときは大丈夫だから!
 それに今、ちょっとヤバい奴が居るみたいだから尚更警戒しないと」


 恐らく千十は知らない
 このときのありすの言葉に、僅かに怒りが籠ったことを


「千十ちゃんと、ありすちゃんね、いらっしゃい。ゆっくりしてってね」


 女子大生さんでは無く、おばちゃん店員の方がメニューを持ってきた
 お礼と共にメニューを受け取る
 千十と一緒に何度か来ている所為か、もう名前を覚えられている
 先程の会話は、多分聞かれてはいないだろう
 まあ聞かれていたとしても、今の所は特に当たり障りの無い話なのだが


「最近、変態が活気づいちゃってるみたいでね」

「へん、たい?」


 おばちゃんが立ち去るのを確認した後でありすは切り出した
 彼女の言葉に、水の入ったグラスを握ったまま
 千十はきょとんとした表情で聞き返した


「そ。性質悪いことにそいつ、契約者よ
 早く『首塚』に捕縛されてほしいんだけどね
 でなきゃ『組織』に仕事してほしい所なんだけど」

「怖いね……」

「大丈夫よ、目星は付いてる」

「え?」


 このとき、ようやく千十も気づいたようだった
 ありすの言葉に、明確な敵意が滲んでいることに


「この手で始末するわ、必ずね……!」


 静かにそう告げるありすの眼は
 真っ直ぐ、「ラルム」の入口に向けられていた







 
 続く……?
 
65 :次世代ーズ 25 「週末のひととき」 5/5 ◆John//PW6. [sage]:2017/06/27(火) 22:16:28.04 ID:PvzAKfBpo
 













「何だろうな、今の寒気は」


 南区に向けて歩道を行く早渡はこのとき、謎の悪寒に襲われていた
 生来勘が鋭いというわけでは無い早渡だが
 時折このような嫌な予感に襲われることがあるらしい


「やっぱ今日はすぐ家に戻った方が、って、うん?」


 早渡の携帯が震え出したのは丁度そのときだった
 表示を確認すると「半井」からの着信だった
 人面犬、半井のおっさんだ


「もしもし、早渡です。うん、半井のおっちゃん? うん」


 通話に応じた早渡だったが、彼はすぐに眉をひそめた


「迷子? え、何? はあ、『コロポックル』ね
 俺は多分、まだ会ったこと無い子だよね、うん
 今日なの? ああ、そう。分かった。南区ね、おうよ」


 早渡は通話を切る


「家に戻ってシャワー浴びる時間は、無いよなあ」


 独り言ちた後、暫し黙考し
 やがて早渡は走り出した


「まあ、このままでも問題は、無いか……!」








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