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ブルー「俺達は…」ルージュ「2人で1人、だよねっ!」『サガフロ IF】
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194 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2018/01/23(火) 22:55:11.74 ID:Wwx/aAqe0
【双子が旅立って2日目 午後15時20分】
結局、今日一日は機械仕掛けの摩天楼で足止め…
ルージュ等一行はエミリアの誘いで裏組織"グラディウス"の[マンハッタン]支部で一夜明かす事になった
此度のドタバタ騒ぎでどこのホテルも空きは無い、路上のベンチや飲み屋街の看板を抱き枕にして倒れる旅行客すら居た
自棄酒もここまでくればいっそ清々しいモノだ
ルージュ「…それじゃ、明日はどうにかして[クーロン]のヌサカーン先生?って人に会いに行くとして」
ルージュ「僕は今の内に術を使って[ドゥヴァン]へ行こうと思うんだ…印術か秘術か、気になる方を取って来るから」
エミリア「二人は任せて頂戴、此処なら妖魔の1人、2人来たって平気だから」
追われる身にある妖魔二人が匿ってくれる金髪美女達に恭しく頭を垂れる、行く宛てもなく、保護してくれる人も居ない
そんな彼女等にとってエミリアの誘いはこれ以上ない申し出であった
一夜限りとはいえ、安心して眠りにつけるのは有難い
ルージュ「[ゲート]!…[ドゥヴァン]へ!」ヒュン!!
光の粒子に包まれて、何光年と先の遠い宇宙<ソラ>の先にある他所の小惑星<リージョン>へ瞬間移動したルージュを見届け
エミリアは受話器を取り、ダイヤルを回す…
アセルス「エミリアさん、何処へ電話を?」
エミリア「うん?あぁ、友達の所にね、…ほら?今日の騒ぎでシップのチケットが駄目になったからそのことで」
…プルルル! プルルルル!
エミリア「…もしもし!」
受話器の向こうの声『エミリア!!!アンタ無事だったのね!!』
エミリア「ええ!なんとか命からがらね、それとジョーカーの件だけど…収穫は無かったわ」
受話器の向こうの声『…そっか、いや、そんなモンどうだって良いわ!無事で良かった、ライザも心配してたわ』
受話器の向こうの声『あ、言っとくけどライザはグルじゃないからね…』
エミリア「うん…」
195 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2018/01/23(火) 22:58:50.82 ID:72kpGaSCo
おお、続き来てる
196 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2018/01/23(火) 23:07:57.76 ID:Wwx/aAqe0
エミリア「もう、ニュースになってると思うけどさ」
受話器の向こうの声『ええ、シップが全便欠航でしょ…本当災難よね』
エミリア「なんとかならない?できれば早めに[クーロン]に帰りたいのよ…」
エミリア「訳あって連れてかなきゃいけない子が居て」
受話器の向こうの声『ふーん…OK!アタシに任せな!何人だろうと問題無く[クーロン]に連れてくから!」
エミリア「本当!?…詳しく事情は聴かないのね」
受話器の向こうの声『なぁに言ってんのよ!アタシとエミリアの仲じゃん!気にしないっての!』
エミリア「ありがとう、アニー」
受話器の向こうの声『お安い御用よ、明日の便で帰れるように手配しとく!で?連れは何人』
―――
――
―
【双子が旅立ってから2日目 午後16時01分】
ルージュ「…」
「では!この4枚のカードを…ってお客さん聴いてます?」
ルージュ「え、あ、あぁ…ごめんなさい、少しボーっとして」
「なんだか顔色が優れませんが…ハッ!?まさかルーンの誘いのテントで怪しい勧誘でも受けたんじゃ!」
ルージュ「ははは…いえ、そういうんじゃないんで」
「あそこは悪徳ですからねー!それに比べて秘術は素晴らしいぃ!!」
「誠実、安心、最高の術ッ!あんなオンボロテントとは大違いです!あなたは実にお目が高い!!」ドヤァ
ルージュ「ははは…」
"既に双子の兄がやって来た"その事実を先程、そのオンボロテントで聞いた…自分を殺す為に旅立った双子の片割れの事を
…夢でもなんでもなく、本当に自分の兄が資質集めの旅、――自分を殺す旅路ををしてると実感を得る証言だった
197 :
◆zJZqNVVhtuCN
[saga]:2018/01/24(水) 00:04:36.62 ID:CmfbuI/m0
出逢った事はなくとも、血の繋がりがあるのならばあるいは―――心の何処かでそんな淡い期待はあったかもしれない
だが、実際に兄…ブルーの姿を見たという人間の証言を聞いてしまうと
「お客さん、本当に大丈夫ですか、冗談じゃなく本当に顔色悪いですよ…まるで」
まるで死人か何かだ
そう言いかけて、慌てて取り繕うように「そんな時こそ!『杯』の術は如何ですかー」と誤魔化す目の前の人間に
気にかけて頂きありがとう、と愛想笑いをしてルージュは出て行く…
ルージュ(…ここに、本当に兄さんが来たんだ)フラフラ
ドンッ!
ルージュ「あっ!…す、すいません!よそ見してて」
余程、精神的にキていたのだろう…覚束ない足取りの彼は小さな少女とぶつかってしまった…
転生した幼女巫女「……おぬし、嫌なニオイがするな」
ルージュ「ぇ?」パチクリ
転生した幼女巫女(…オルロワージュの匂い、いや…これは残り香というべきかのう)
転生した幼女巫女「おぬし、最近妖魔か何かと知り合いになったか?」
転生した幼女巫女「悪いことは言わん碌な目に遭わん内に縁を切るのじゃな」
198 :
◆zJZqNVVhtuCN
[saga]:2018/01/24(水) 00:37:17.67 ID:CmfbuI/m0
出会い頭に奇妙な事を言われたものだ、紫色の髪…小さな背…しかし、目先の子供から感じる大人びた物腰
ルージュ「…あの、つかぬ事を窺いますか貴女は」
どう見ても自分よりも年下だ、だがこの人物には"目上の人に対する態度"で接せねばいけない、直感的に彼はそう思った
転生した幼女巫女「なに、そこの神社で巫女をやっておる身じゃ、忠告はしたからな」クルッ ザッザッ
ルージュ「あ、ちょ、ちょっと待ってください!…行っちゃったよ」
ルージュ「…どういう事だろう…」
<まぁまぁ!かてぇ事言うなって
<リュート!!貴様ァ!
ルージュ「なんだかあっちの方が騒がしいな…はぁ…僕も帰ろう」
―――
――
―
*******************************************************
【双子が旅立って2日目 午後15時31分】
リュート「いやぁ!にしてもアレだな!俺達はやっぱ運が良いよなぁ!」テクテク
ブルー「…」テクテク
リュート「俺達が[ネルソン]で金を買って、んでその直後だろ?なんか[マンハッタン]でテロがどうとかって」
リュート「シップは全便欠航、俺達はこの機に乗じて金塊を転売しまくる」
リュート「他の資産家は他所のリージョンに行けないから実質俺達の独占だったよな〜、金融市場」
ブルー「…」テクテク
[タンザー]帰りのお土産「…(´・ω・`)ぶくぶくぶくぶー!」
ブルー「貴様はいつまで俺達の後をついてくるんだ」イラッ
199 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2018/01/24(水) 15:28:09.86 ID:CmfbuI/m0
[タンザー]帰りのお土産「…(´;ω;`)」ブワッ
リュート「オイオイ、ブルー…何もそんな冷たい言い方するこたぁないだろう?見ろよ?」
リュート「このスライム泣いてるだろ」
ブルー「俺には違いがさっぱり分からん」
[タンザー]から脱出の際、ブルーの脚に引っ付いていたモンスターが1匹、ぬるぬるとしたゲル状のボディー
それ以上でもそれ以下でもない、そう[スライム]だ
スライム「ぶくぶくぶく…;つД`)」ポロポロ…
リュート「なぁブルー、こいつの目を見ろよ?こーんな円らな瞳なんだぜ?涙ぐんで、可哀想に」
ブルー「そいつの何処に目玉がついてるのか分からん、強いて言えばそのヌメッとした粘液が噴出してる所か?」
ゲル状生物の…顔?にあたる部分から湧き水のように粘液が出ている、そこが眼なのか…?
リュート「なんでもお前に一目惚れしたらしくスライムプールから出て来てお前についてきたってよ、健気だろ?」
スライム「ぶくぶー (`・ω・´)」キリッ
ブルー「俺はお前が何故『ぶ』と『く』しか発音できない生物がそう言ってるように思えるのか不思議だ、病気か?」
リュート「いや、俺ン所にモンスターの知り合いが多くて自然と分かるようになったっつーか、それよりもどうだ」
リュート「こいつを連れってやろうって思わないのかい?こんなに一途なんだぜ?」
ブルー「思わん」キッパリ
リュート「思う、だって!?良かったなァ!連れてってくれるってよ!」
スライム「ぶくぶーーーー!(`・ω・´)」
ブルー「言ってないだろうが!!」
リュート「ハハハハ!まぁまぁ!かてぇ事言うなって」ヒョイ(スライム抱き上げ)
スライム「Σ(・ω・ノ)ノ!ぶくっ!?」ビックリ!
リュート「そーれっ!」ポーン ベチャッ!
朗らかに笑いながら、抱き抱えたスライムちゃんをポーン!とブルーの肩目掛けて放り投げるリュート
べちゃっ!!ミネラル成分満載の可愛い可愛いスライムちゃんがブルーの肩に着地!
ブルー「リュート!!貴様ァ!」
200 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2018/01/26(金) 00:58:09.93 ID:hJQN+BIeo
スライムの表情……?言葉……?
こればっかりはブルーに全面的に同意するぞリュート……
201 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2018/01/26(金) 22:35:58.78 ID:Squ3hirp0
キィィ―ィィイイィン…!
ブルー「!」ピクッ
リュート「わわっ、悪かったって!確かに悪ふざけが過ぎ…ってあり?」
スライム「(。´・ω・)?」ノソノソ
肩に乗ったモンスターを払いのけ、拳を強く握り後ろのお気楽男を怒鳴りつけた所で術士は魔力を感じ取った
それは…自分がよく使う[ゲート]の力と同じような
ブルー「いや…まさか、…"居た"、というのか?」バッ!
急に熱が冷め、忙しなく周囲を、人の姿を探すかのようで、身構えていたリュートは思わず尋ねた
リュート「誰か知り合いでも見かけたのか?」
ブルー「…」
ブルー「…いや、気のせいだ」
リュート「そうか?一儲けができてすぐにこのリージョンに飛んだからてっきり此処に知り合いか誰か居て探したのかと」
ブルー「違う、そんな理由じゃない」スッ
術士が首を振り、蒼い法衣の袖先はこの土地で一番小高い場所を指さしていた
鳥居の先にポツンと居を構える祭神の家、此処の観光地の1つともされる神社であり、彼が[クーロン]に戻らず
此処へ寄り道に来た理由の一つであった
ブルー「以前訪れた時には留守だったようだが、あそこの社に居る巫女が『"時術"』…『"空術"』に関して知っている」
ブルー「そう聞きつけてな、今日ならば帰ってきていると聞いたんだ」
リュート「ふぅん?」
噴水広場を突っ切って、左手にアルカナ・パレスそして昨日の喫茶店を、と横切り奇妙な狛犬(?)達の間を抜けて
年中紅葉が頂上からヒラヒラ舞ってくる山の石段を登っていく…
―――
――
―
202 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2018/01/26(金) 22:55:12.79 ID:Squ3hirp0
*******************************************************
【同時刻:マンハッタン 『キャンベル・ビル :社長室』
「しゃ、社長!例の物はなんとか回収し終えました!」
機械仕掛けの摩天楼、そのリージョンの一等地にあたる立地条件で尚且つ大規模の高層ビルがある
大手ブランドメーカーとして名を馳せる、大企業"シンディー・キャンベル氏"の経営する会社だ
社長室内に慌ただしく駆け込んだ女性社員の声に落ち着きなさいな、と背を向けたまま口を開く
女社長「今日、[クーロン]行きになる筈だった品物は全品回収したのね?」
「は、はい……それにしてもとんだアクシデントでした、まさか爆破テロが起きてシップの立ち入り調査とは」
ギィ、音を立ててキャスター付きのリクライニングチェアが向きを180℃変わる赤紫の帽子を被り
女社長ことミス・キャンベル氏は妖艶な笑みを浮かべて煙管<キセル>を吹かす…
キャンベル「うふふ…それもまた一興というものよ」ニコッ
「は、はい…//」ドキッ
キャンベル「あら?顔が赤いわね…階段を駆け上がるのに息を切らせたのかしら…それとも」スッ
煙管を手にしたまま、女社長は立ち上がる
高そうな絨毯の上をゆったりと歩き、女性社員のすぐ間近で立ち止まる…品定めでもするように
息の上がった顔、少しはだけたカッターシャツから脚の爪先までをじっと眺める
キャンベル「私に逢いたくて堪らなかったのかしらねぇ?」クスクス
「しゃ、社長!お戯れを…」
キャンベル「あら、冗談ではないわよ、私の眼をごらんなさい」
女性社員は目の前の美しい瞳を見つめた、そして思うのだ「ああ、いつ見てもお美しい、ずっと眺めていたい」と
まるで "蜘蛛" に絡めとられた蝶にでもなった気分だ
同じ女性でありながら、こうも夢中にさせられる、その辺の人間には決して感じられない色香に惑わされる
…この会社に居る多くの人材がそうであった
キャンベル「…貴女、この後空いてるかしら?」
「はい?…あっ、いえ、あ、空いてますが…」
203 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2018/01/26(金) 23:24:33.38 ID:Squ3hirp0
キャンベル「――――――」ボソボソ
「〜〜〜〜っ!!///」
- 貴女さえよければ、私の愛する人にならない?その気があるなら今夜、社長室にいらっしゃい -
耳元で愛の言葉を囁く
「あ、あぅ…」
言葉は女性社員の胸に火を灯す、耳たぶから顔全域が真っ赤だ
キャンベル「冗談ではなくてよ?…ふふ、貴女みたいな可愛い子は食べてしまいたいと思うわ」
ミス・キャンベルが舌なめずりをする、唇の端から反対側まで紅い舌の動きを目で追ってしまう…
胸の動悸が収まらない、火照った身体が時よ、過ぎ去れ、陽よ今この瞬間に沈めと願ってしまう程に熱い
夜の冷えた外気に肌を晒したくて仕方ない、この女性の前で晒したいと強く想わずに居られない
キャンベル「どうかしら?……この世の物とは思えない多幸感を教えてあげるわよ」スッ…ススッ
ゆっくりと腕を女性社員の背に回し、後ろ首を撫でる…獲物を捕食せんとする蜘蛛の動きそのものだ
「わ、わたしでよろしければ…!!!」
キャンベル「ふふっ、良い子ね…そういう子は好きよ」ナデナデ
キャンベル「楽しみにしているわ、今夜をね」
「は、はい!…し、失礼しました…!」ダッ
キャンベル「まぁ、あんなに慌てて走ってしまって…そんなに恥ずかしいのかしらねぇ」
キャンベル「…今夜、私の元に来れば貴女に至福を与えることを約束するわ…」
キャンベル「我らが【ブラッククロス】の劣兵として生まれ変われる至福を、ね」ジュルッ
…もう、後ろ姿さえ見えなくなった女性社員に、女社長はそう呟いた
204 :
◆zJZqNVVhtuCN
[saga]:2018/01/27(土) 00:10:06.93 ID:WitPJlKy0
キャンベル「…あの子を初め、社員の4割は事実を知らないわね…」スッ
煙管を再び口につけ、椅子に腰を下ろす背凭れに身体の重心を預け室内に誰も居ないことを再度確認して独り言ちる
"表向き"は新作のブランド物バックに欠陥があったため、出荷前に全品回収という筋書きだ
だが、本当の所はそうじゃあない
[クーロン]の"シーファー商会"なる場所にあるブツを発送する手筈だった…法律に触れるヤバい奴を、だ
偶然にも今回のテロ騒動で全便欠航、立ち入り調査が起きた為、事が発覚する前に社員に急ぎで
欠陥品のブランド物の衣服や鞄を回収、世間様に自社のお株が下がってしまうようなお恥ずかしい事がばれる前に
引き取りをしました、とでも普通の社員は思っているだろう
まさかこの会社が国際的な犯罪組織の武器を秘蔵に創り
組織の支部に送っていると…犯罪の方棒を担がされているなど夢にも思うまい
キャンベル「さて…」カタカタ
煙管を置き、オフィスデスクのPCを立ち上げ、明日のリージョンシップのデータを見る…
キャンベル「まったく…シュウザーも急な注文を寄越すものね…戦闘員の育成がうまく言ってないのかしら」カタカタ
キャンベル「……明日、[クーロン]にあれだけの荷物を積載しても問題なく、その上で最短で到達する船は―――」
――――液晶画面には、白く美しい白鳥のフォルムを模った船が映し出されていた
キャンベル「リージョン・シップ『キグナス号』…ええ、今日のテロ騒動で配達できなかった分はこの船に乗せましょう」
社長室で…人ならざる女社長は魔女のような唇を釣り上げて笑う
―――
――
―
205 :
◆zJZqNVVhtuCN
[saga!蒼_res]:2018/01/27(土) 00:59:40.76 ID:WitPJlKy0
…俺は何をしてるのだろうか
俺には使命がある
国家から、"親"である祖国に忠義を尽くすという大事な責がある
だというのに、どうしてこうなった…
206 :
◆zJZqNVVhtuCN
[saga]:2018/01/27(土) 01:54:54.97 ID:WitPJlKy0
*******************************************************
―――
――
―
【双子が旅立ってから2日目 夜19時07分 [クーロン] アニー視点 】
- エミリアも御人好しよねー、潜伏先に基地で知り合った男女3人を連れてきたいか -
- ブルーの奴に『キグナス号』の乗船代を約束させたけど、流石に明日までに用意しろー、とか無理よね -
- しゃーない
そんときゃアタシのポケットマネーで建て替えときますかね、っと!このお惣菜半額シールじゃん!ラッキー! -
九龍<クーロン>街にあるスーパーマーケット、そこは一般的な主婦もよく出入りする"普通"の店舗であった
大概、この街の店と呼べるモノは普通じゃない…マンホールの下で本物の拳銃の取引が行われたり
裏通りで政府軍の兵器が横流しで売られたり、白衣を着た怪しい学者風の男が[裏メモリーボード]を売ってたりする
一見普通の飲食店にしか見えないイタリアンレストランだって金さえ振り込まれれば違法捜査やらなんやらを行う
裏組織があったりするのだから困る
買い物籠を腕にぶら提げ、"次の仕事"があるまで長期休暇の女が1人、仲間の無事を確認できたことからその祝いも兼ねて
ちょっとした酒盛りをしようとつまみを買いに来ていた
活発な印象を受ける短髪の金髪ショートヘアー、男が見れば釘付けになるだろう裾の短いショートパンツに
ブラジャー一枚の上に緑のジャケットを羽織っただけのいつものラフな恰好
昨晩、ブルーと共に粗蟲の群れを撃退した女性アニーであった
余談だが、蟲に破かれたジャケットは自分で塗って縫合したらしい
アニー(エミリア帰還祝い、うんっ!パーッと飲み明かそうっと!)
緑の買い物籠の中は缶飲料(チューハイ)や酒瓶が数本、あとは缶詰の類や閉店間近の値引きシール付きお惣菜で埋まる
アニー(店が閉まるギリギリだと財布に優しいから良いわよね〜、人参に大根、胡瓜、生野菜スティックも悪くない)ヒョイ
瞬く間に籠の中身は埋まっていく、片手で持つには少し重くなった籠を両手で持ってレジへ運び会計を済ます
郵便局で施設に居る弟にも生活費の仕送りも済ませた、やるべきことは完璧、あとは友人…ライザ辺りを誘って
朝まで酔いつぶれてしまおうという算段だったが
アニー「えっ、ライザ来れないの!?」
受話器から聴こえる声『ごめんなさい、ルーファスと作戦の相談があって』
アニー「! へぇー、ルーファスとねぇ〜」ニヤニヤ
受話器から聴こえる声『…作戦の相談だけよ、他意はないわ』
アニー「わかってるわ、ちょっとからかいすぎたわ…それじゃ!頑張ってね!」
ちょっと、アニー!と受話器から聴こえてくる声を半ば無視して通話を切る
『close』と書かれた看板をぶら提げたイタ飯屋に帰って1人寂しく、店内で飲み会か、とアニーは夜空を仰いだ
207 :
◆zJZqNVVhtuCN
[saga]:2018/01/27(土) 02:30:08.06 ID:WitPJlKy0
- 独りで酒飲みかぁ…エミリアの帰還祝いをライザと祝うつもりだったけど、しゃーない、か… -
彼女は賑やかな雰囲気や盛り上がる事が好きだ
宵が深まれば輝きを増すネオンの煌めきも、この暗黒街の喧騒――住んでいる人々の営み―――も好きなのだ
どうにも湿っぽい空気というのは性格上、嫌いで…寂しがりなのかもしれない
酒は飲めば、気分が高揚してくる
嫌な事も辛いことも一時の思考の揺らぎに任せて投げだせる、だが、親友と隣同士、語り合って飲む酒は何よりも旨いのだ
身内を養う為、命を担保にして出稼ぎを行う人生を選んだ彼女が明日を生きていく上で学んだ事だ
誰かと飲んでふざけ合って、愚痴を聞いたり言い合ったり、それこそが最高の肴なのだと
アニー「他の連中もみーんな、次の作戦に備えて他所のリージョン…船は動かないから当然帰ってこないし、参ったわね」
ガサガサと両手のビニール袋が音を鳴らす、デザートを買おうにもお気に入りの物が売り切れていたから
多少、出費が上がるが一度荷物を置いて近場のコンビニエンスストアで適当に洋菓子でも買って行こう
ぼんやりとそんなことを考えながらアニーはイタ飯屋へと向かっていた
その矢先である…
リュート「んじゃ!またなブルー!ほら行こうぜスライム!(金塊で)臨時収入も入ったから飯たらふく食わせてやるよ」
スライム「ぶくぶく…(´・ω・`)」シュン
ブルー「やれやれ…そいつを連れてさっさと行ってくれ」スタスタ
アニー「…ブルーに、リュート?何、アイツ等知り合いだったの?」ハテ?
アニー「…」
アニー「!!…ふふ!暇そうな奴みーっつけた!」ニヤリ
酒というのは誰かと飲んでこそ楽しい物である
特に普段スカした態度の奴が酔いつぶれて醜態を晒せば、それは最高の笑いの種(酒の肴)になる
208 :
◆RUyHyPiEvo
[saga]:2018/01/27(土) 02:37:42.71 ID:WitPJlKy0
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, ソ , '´⌒ヽ、
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〈 :,人__.,,-''"ノ.。ヘヾi::::::ト
Y r;;;;;;;;ン,,イ'''r''リヾヽ、|;;)
ヽ-==';ノイト.^イ.从i'' 人
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レノ-' |`-、、__ ト、、_, -' ´ _,ノヽ~
~` -、、フヽ、__ ,, -'´ ̄ル~'
ヘ`~i、 ̄ ̄リ ノヽ ̄~
`|;;;;;;|ヽ〜-←−ヘ
|;;;;;| ヽ- ┤
l::::人 .ヽ .|
/// ヽ .|
ノ´/ .ヽ |
` ̄ .ト、 .ヽ
ヾ、.A
.ヽノニ'
今 回 は 此 処 ま で !!
次回!飯テロ(酒飲み)回!
*******************************************************
209 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2018/01/27(土) 13:42:18.72 ID:azD7lB7YO
ブルー逃げてー!
210 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2018/01/27(土) 16:08:12.80 ID:rTEAR8ByO
いやむしろ捕まってしまえブルー!
211 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2018/02/12(月) 00:36:41.79 ID:ADsMexAi0
続きまだー
212 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2018/02/20(火) 22:48:19.37 ID:uP7l6IcA0
―――
――
―
ブルー「しかし…あの男が居なければこうも短期間で金を工面することはできなかったのも事実か」スタスタ
バチバチ、と消えかけのネオン看板の下で座り込んだ浮浪者の視線が突き刺さる
荒んだ眼差しが注がれているのは彼の片手に引っ提げられた黒いアタッシュケースだった…
[ネルソン]で購入した金塊を無法都市[クーロン]で売り捌いたのだ、当然ながら"鼻の利くハイエナ"達の間ですぐ噂になる
近場の店で売られていた黒革のケースに眼を惹かれた彼は財布に到底収まらない額のクレジットを収納する為に
即決で買い取り、札束を入れ店を去った
世間知らずの魔術師お坊ちゃんをお金に困った方々が、これまたよろしくない感情の入り乱れた眼差しで見送った
…スライムとリュートが一緒だったため手出しはしなかったが
単独である今の彼はまさしくサバンナの真っ只中を歩く高級和牛肉と同じである、後ろからブスリとやって金を盗るだけだ
ブルー(…チッ、汚らわしい)
ブルー(人をジロジロと、敵意と欲望の籠った目線…本当に汚らしい、俗物共め)
彼とて殺意に気がつかない訳では無い…襲い掛かって来ようものならその場で焼殺死体に変えてやろうくらいの気がある
さて、どうしてくれようか?そう考えていたら…殺意とも敵意とも違う、…欲望は含まれる声と視線が背後から掛けられた
アニー「ブルー!!良い所であったわね!」タッタッタ!
ビニール袋引っ提げた金にがめつい女が、良からぬ事を考えながら走って来たのだ…
ここ、九龍街で喧嘩を売るとヤバい奴リストに含まれる裏組織の女が
つい最近も数人の男をぶちのめして刑務所送りになったばかりのヤバい奴が、だ
その姿を確認してある者は舌を打ち、ある者は苦々しい思い出をぶり返してブルーの尾行を止めた
アニーの知り合いであり、金を持っている人物から金品を毟り取るという行為は…
自分のタマを投げ捨てるようなモンであると、金と命を天秤に掛けて割りに合わないと判断したのだろう
213 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2018/02/20(火) 23:28:43.16 ID:vkrsvmLpO
キター
214 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2018/02/20(火) 23:58:50.44 ID:NdDuEhDAo
アニーの獲物を横取りとか遠回しですらない自殺という暗黙の了解さすがです
215 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2018/02/21(水) 00:08:58.04 ID:FhNODQ0S0
ブルー「貴様か、アニー…」(すごく嫌そうな顔)
アニー「何よ、その顔」
アニー「ってか、その鞄どうしたのよ?随分良いモンじゃん」
本革製のアタッシュケース、それはビジネスに成功した経営者のトレードマークと言っても過言ではない
安物の鞄ゆえに『間違って知らない誰かの鞄と取り違えましたー』などと言った不測の事態を
避けるという理由もそこにはある、値が張るものであればあるだけ仕事上の大事な書類の入った鞄を見失うリスクも減る
儲けている人間程ブランド品を好むが、何もただ単に成金趣味という訳では無いのだ
…このような土地では逆に悪手かもしれんが
ブルー「あぁ…これか、丁度良い嵩張るからな貴様にさっさと渡してしまうか」
アニー「はぃ?」
ブルー「ほら、約束の金だ、[ディスペア]への潜入に必要な費用、先日の礼代わりの船賃もそろって入ってるぞ」
アニー「…なっ!アンタ、マジで用意したワケぇ!?」ガーン
ブルー「…貴様が要求したんだろうが、要らんなら別に良いんだぞ」イラッ
アニー「あぁ!!嘘嘘、要るから!…っつーか見ろって!アタシ両腕塞がってるじゃん!」つ『ビニール袋』
ブルー「むっ」
アニー「はぁ…参ったなぁ、あわよくばアンタに荷物持ちさせようって思ってたのに」
ブルー「そんなこと考えってたのか貴様」
アニー「でも、そうねー…金払いの良い客はアタシ好きよ、特別に飲み会に付き合わせてあげるわ!」ニィ!
勿論、あたしの奢りで酒も飯も食わせてやる、感謝しなよ、などと言い出したが、むしろそれが本命である
べろんべろんにブルーを酔わせて、ダウンしたところを壮大に笑ってやろうと思っている
気前のいい客だから気に入った、酒と飯を奢ってやると一見善意に見えて相手を後々小馬鹿にするための口実を作る気だ
アニー「ほら、昨日イタ飯屋覚えてるでしょ、そこ行くわよ」ダッ!
ブルー「あっ、おい!」タッタッタ!
アニー「その重たい鞄でいつまでも手を塞ぎたくないんでしょ!なら置いて手も自由になる一石二鳥じゃん!ほら早く!」
216 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2018/02/21(水) 02:51:14.10 ID:FhNODQ0S0
―――カラン、カラン
ブルー「ほう?中々悪くない店じゃないか」
『Close』そう書かれた札付きの戸を開錠して、店内へ脚を踏み入れた蒼の術士の感想は好意的なモノだった
入口から入ってすぐの所にイーゼルに掛けた黒板があり、描いた者は絵心があるのだろう素人目から見ても
才あるデザインのチョークアートが施されていた
赤茶色の床タイルは仄かに薄暗い照明に当てられて雰囲気が出ていてカウンター越しに見える
石窯や木製ピザピール・パドル等調理器具への拘りも見て取れた
厨房奥では当店自慢のミートソースが仕込まれて、置いてあるのだろう何やら良い匂いがした
四枚羽の天井扇風機<シーリングファン>によって効率よく室内に行き届いた暖房の温かさは夜は冷え込みの増す九龍街を
歩いてきた来店客への気配りが行き届いていた
アニー「よっと!さぁ〜てブルー、どうやって一日で大金稼いだのよ?銀行強盗でもしたの?」クスクス
ブルー「おい、人聞きの悪いことを抜かすな」
ムッ、と眉間に皺を寄せて不機嫌を露わにする男に「冗談だってば、カリカリすんのはカルシウム足りてない証拠よ?」と
ビニール袋をカウンターレジの横に置いてアニーはケラケラと笑う
アニー「でさぁ、悪いんだけど中身だけ確認させてもらって良い?職業柄ね、こーいうのって見とかないいけないのよ」
偽札をつかまされたり、ずっしりと思い鞄をいざ開けてみたら中身は札束じゃなくその辺のスーパーのチラシの山でした
なんてことがザラなのが裏稼業というモノだ
ブルー「ふん、勝手にしろ」ドサッ
アニー「はいはい、じゃあお言葉に甘えて勝手にさせてもらいますよーだ」カチャッ パカッ!
札束の山『 』
アニー「…」スッ
アニー「…本物みたいね」
ブルー「当たり前だ、前金で払ったんだ…仕事はしてもらうぞ」
アニー「OK、契約成立よ…代金はしっかり頂いたわ」
アニー「どうやって稼いだか知らないけど、実の所助かったわ…急遽明日までにシップの乗船代が欲しかったのよ」
ブルー「なんだと?」
アニー「友達が今色々あって[マンハッタン]に居るの、その子が連れを3人連れて[クーロン]に帰りたがってたのよ」
アニー「なんにしても助かったよ、自分のポケットマネーから立替たとしてかなり今月ピンチになる所だったわ」
217 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2018/02/23(金) 22:02:27.91 ID:HsaKbXJw0
その鞄諸共くれてやる、無駄に重い荷物を手放す為にブルーは彼女にそう言い放つ
その言葉にアニーはヒューッっと口笛を1つ、彼の持って来たアタッシュケースをレジ裏に置いて飲み会の準備を始める
アニー「っと、そうだったわね」ハッ!
アニー「あたしのお気に入りのデザート売り切れてたからコンビニ行こうと思ってたんだ、ねぇ!」
ブルー「なんだ」
アニー「お高い鞄を丸ごとくれた釣銭って訳じゃないけどさ、アンタもなんか奢ってやるからついてきなよ」
ブルー「荷物持ちなら御免だが」
アニー「わぁってるっての!」
カランカラン…!
イタ飯屋の出入口を1組の男女が出てベルが鳴る、鍵を一度施錠し戸締りを確認したうえでアニーを先頭に歩き出した
魔術師はルーン探しの為に一通りこの無法都市を散策したものの地元民と比べれば圧倒的に土地勘が劣る
徒歩10分もしない内に二人がとある店舗に辿り着く、緑、白、空色、3本カラーリングの横縞が印象的な看板灯が見えた
幟が立ち並ぶ店先には『家庭ごみの持ち込みを固くお断りします』と書かれたゴミ箱が綺麗に並び
その隣には煙草に火をつけながら屯うガラの悪い若者が座り込んでいた
ブルー「」ポカーン…キョロキョロ
アニー「ん?なんか欲しいモノでもあったわけ?」
ブルー「いや…この『"こんびにえんすすとあ"』とやらは…随分と変わった店なのだな、と」キョロキョロ
[マジックキングダム]にはコンビニという物が存在しない
異文化交流…ちょっとしたカルチャーショックを受ける魔術師、慣れた手つきで緑の籠に次々と甘味を放り込む女
なんとも奇妙な組み合わせであった
ブルー(…なるほど、確かにこの街は人口が多いし生活リズムも皆バラバラだ)
ブルー(24時間営業でも利用客はある程度確保できるか、人数も必要最低限で人件費も――)う〜む
アニー(…こいつ、何そんなに難しい顔してんの?、そんなにコンビニが珍しい文化なのかしら)ヒョイ、ガサゴソ
218 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2018/02/23(金) 22:30:10.80 ID:HsaKbXJw0
ブルー「むっ!!!」
『プッチンプリン』
ブルー(カスタードプティングか…)ジーッ
アニー「何か欲しいモンでもあった――――ぷっ!!」
不愛想な男が棚に置いてある商品を1つマジマジと眺めていた、何かと思えばそれはお子様なら誰もが喜んだことだろう
お皿にひっくり返してポキッ!とやるあの3個入りのプリンだったのだ
アニーは思わず笑いそうになって口を手で押さえた(堪えきれなかったが)
ブルー「…なんだ、貴様悪いか」ギロッ
アニー「…くっ、ぷぷ、…い、いえいえ、なぁ〜んにも悪ぅございませんよ?人それぞれですし」プッ ククッ…
[ドゥヴァン]のカフェで砂糖とミルクたっぷりの珈琲を褒めちぎったストレスを貯め込みやすい優等生は迷わずプリンを
アニーの籠に入れてやった
レジで会計を済まし二人は荷物を置いてきたイタ飯屋前へと再び戻る、アイスクリームを購入した事もあって若干急ぎ足で
帰路についた彼女は鍵を開けて店内に入る…その彼女の後ろを根に持ったてるのか膨れっ面の魔術師が追う
アニー「…」
アニー「」チラッ
ブルー「…人が何を喰おうが勝手だろうが…そもそも、それを言えば…」ブツブツ
アニー「…」
- なんだよ!姉ちゃんに関係ねーじゃん! -
- うるせぇよ!好きなモンは好きなんだし仕方ねーじゃん!ふんだっ! -
アニー「そういうとこ、似てんのよね」ボソ
ブルー「は?」
アニー「なんでもないわ」
219 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2018/02/23(金) 23:17:30.77 ID:HsaKbXJw0
―――
――
―
ストトトトトト…!
ストンッ!
アニー「ほいっ!一丁あがり!」つ『生野菜スティック』
人参、大根、胡瓜、セロリ、買ってきた野菜を5pほどに均等に切り分け、透明なグラスカップに入れておく
小皿にそれぞれマヨネーズとケチャップ…オーロラソースを乗せて運んでくる
テーブルの上には半額シールの惣菜たち…焼き鳥だったり、コロッケや胡椒を利かせたイカ下足炒め
麻婆茄子と皿に薄く切り分けたチーズやハム等が並べられた
ブルー「アニー…これは、どうやって飲むんだ?」つ『缶チューハイ』
アニー「はぁ?どうって…普通に開けて飲むんだろ」
ブルー「…俺は生まれてこの方、缶を開けた事が無いんだ」
アニー「はぁ〜…ほれ、貸してみな…イイ?ここん所にプルタブってのがついてんでしょ?これに指を引っかけて」プシュ
ブルー「!…こうやって開けるのか」
アニー「アンタ、よくそんなんで世間に出て来れたわね、術よりまず一般教養を学びなよ」ヤレヤレ プシュッ
ブルー「…善処はする」
アニー「それじゃ!乾杯!」
ブルー「ああ、乾杯」
ブルー(……)
<んん〜!!うまいっ
ブルー(…俺は…)
ブルー(…俺は何をしてるのだろうか)
220 :
>>205 冒頭 ブルー独白に戻る…
[saga]:2018/02/23(金) 23:29:28.38 ID:HsaKbXJw0
ブルー(俺には使命がある)
ブルー(国家から、"親"である祖国に忠義を尽くすという大事な責がある)
ブルー(だというのに、どうしてこうなった…)チラッ
アニー「んっ、んっ…んぅ?何よ、アンタ飲まないワケ?」キョトン
この女には【利用価値】がある
コイツが居なければ刑務所のリージョン[ディスペア]に潜入できない
"解放のルーン"を手にできなければ試練はクリアできない
それに、頭の悪そうな女だが…剣の腕は立つ、戦闘の際いざとなればコイツを囮や盾代わりにして保身に走ることもできる
…だから、"上辺っ面"だけでも取り繕い、友好的な関係を築いておいて損は無いのだろう
こいつの戯言に適当に付き合い、今のような突発的な誘いにも顔を出してご機嫌取りせねばならんのが癪だが…
せめて…[ディスペア]潜入、そしてルーン取得まではこの女の顔色を窺わねばならんな
用済みになったらすぐにでもこんな奴、こっちから捨てて――――
アニー「ちょっとぉ!!聞いてんのかって!」
ブルー「…」
ブルー「聴こえているぞ、叫ぶな」
221 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2018/02/23(金) 23:59:54.00 ID:HsaKbXJw0
アニー「缶持ったまんま微動だにしないし、呼んでも返事しないし、そりゃデカイ声だって出すに決まってんじゃん」
ブルー「すまなかった、少し考え事をしていてな」
ブルー(…こんな下らん茶番に付き合う時間が惜しいというのに)
ブルー(俺が呑気にこんなことをしてる間にもルージュは資質を集めているかもしれんというのに…!)
アニー「だったら飲みなよ?酒飲みなんて一人でやってもつまんないから暇そうなアンタ誘ったのよ?」フゥー
アニー「酒は誰かと騒いで飲むのが一番楽しいからね」ゴクゴク
ブルー「…」ゴクッ
缶に口をつける…祖国には缶飲料はあった、免税店や他所のリージョンからの観光客を狙った店先で扱われる事が多く
基本的に魔法薬を瓶詰で保管していた歴史から塩漬け、酢漬けのピクルスなどは皆、瓶と最先端魔法技術で保存してきた
学院の学生寮で育った彼は缶を見る機会こそあれど口にしたのは初だった
ブルー「美味い…」
自然と口に出していた言葉だった
アニー「でしょー、食わず嫌いせずまずは何でも飲んだり食ったりするもんなのよ、缶持って硬直してたけどさぁ」
アニー「自分トコじゃ珍しい文化だからって偏見を持つのはよくないわ、うん」ゴクゴク
…別に動きを止めていたのはそういう理由じゃなかったのだが
黒い背景に桃と柑橘系のイラストが描かれたチューハイ、香りも果物の独特のフレーバーを活かし初心者でも飲みやすい物
一方対面する女の手には対照的に白に染め上げた缶でまろやかな喉ごしのサワーだった
ブルー「……まぁ、見た目だけで判断するのは誤りがあるのは確かだな、貴様の言う通りだ」ゴクッ
目の前の人物の第一印象は「ガサツな女」「頭の悪そうな奴」「どうせ男に身を売ってるような奴」だったが
正しく見た目で判断してはいけない例だったと、打ちのめされたばかりである
222 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2018/02/24(土) 00:32:25.62 ID:bwScDHXt0
ブルー「……貴様には兄弟が…『弟』が居た、のだったな」
アニー「ん、そうよ…前に話したじゃんか」ポリポリ
頬杖を突きながら金髪の女はスティック胡瓜にマヨネーズをつけて食べていた
意外にも話しを切り出した男を少し意外そうに見ていた彼女に彼は続けた
ブルー「お前にとって、『弟』というのは…自らの身を削ってでも守るべき存在なのか?」
ブルー(…俺は、本当に何を言ってるんだろうな)
アニー「そんなん当たり前じゃん、『家族』なんだから」ポリポリ
女は男の質問に、さも事も無げに言ってのけた
アニー「前にも話けど、あたしには妹と弟が居んのよ、んで妹は[ヨークランド]の金持ちの家に養子になったけどさ」
アニー「悪ガキで小さい弟はあたしが養うしかないのよ」
前にも話された事だ、両親が居ないから長女である彼女が年下二人の面倒を見ていると
ブルー「お前はその養育費を自分の為に使おうと思わんのか?」
ブルー「今までつぎ込んできた仕送りの額がどれ程かは知らんが人間1人を食わせて行けるだけの金額だ」
ブルー「命の危険を冒す職務などせずとも穏やかな土地で平穏に過ごせるだろう」
ブルー「そいつの事を見捨てたとしてもそれを責める人間が、そのような環境がお前のすぐ傍にあるとでもいうのか」
この無法都市で、明日を生きるためなら隣人から財布を掠め盗るような街で
…そうでなくても365日、常に誰かが貧困の中でその命を消してしまうような土地で
誰に自身の生命を優先することを咎められようか?
ブルーが言ってるのはそういうことだ
223 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2018/02/24(土) 00:55:27.20 ID:bwScDHXt0
アニー「…」ゴクッ
アニー「ま、アンタの言い分も分からなくないよ…そりゃあ誰だって自分で頑張って稼いだお金を自分の為に使いたい」
アニー「そう思うことは間違いじゃあないし、こんな街なら…ましてやあたし等みたいなのは庇護されない」
アニー「自分の身の安全も生活の保証も何もかも全部自分でどうにかするっきゃない」
アニー「ああ、アンタは間違ったことは言ってないよ…けどね、そういうんじゃないんだよ」
ブルー「…なんだというのだ」
アニー「そうだねー、あたしは頭良くないからさ、巧いこと説明できないけど、強いて言うなら『心』ね」
アニー「あたしの『心』がそうしたいから、損得とかそういう話じゃないのさ、…それじゃ納得できない?」
ブルー「……俺には理解できん、そこまでして『弟』を守ろうという思考が」
弟<ルージュ>を殺す
その【思考】で祖国を出た男には、女の『感情』が今一つ理解できずに居る
アニー「ああああ!!もうっ!あたしは楽しく酒飲みたいの!なに!暗い話してんのよ!」
アニー「やめやめ!湿っぽいのは本当嫌いなんだってば!」ゴクゴクゴク!
ブルー「そんなペースだと酔いが回るぞ」ゴクッ
アニー「うっさい!!…あ、空になった、次の空けよ」ゴソゴソ
コンコン!!
<おーい!!アニー!エミリアー!ライザー!誰か居ないかー!開けてくれぃ
<ぶくぶくぶー!
ブルー「…この声は」
224 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2018/02/24(土) 01:06:37.72 ID:bwScDHXt0
アニー「はいはい、今開けるわよ…」ガチャガチャ
ブルー「お、おい…」
バーーーン!!
リュート「イエーイ!アニー!久しぶりだなぁ!!さっき、そこの店でおっちゃんが蟹の安売りしてたんだ!」つ『蟹』
スライム「ぶくぶくぶー!(`・ω・´)」つ『白菜、ネギ、しらたき…etc鍋セット』
リュート「いやぁ!色々あって金塊売りまくって臨時収入があってさぁ、景気よくパーッと…んあ?」チラッ
ブルー「…」ゴクゴク
リュート「ブルー!お前こんなとこに居たのかよ!丁度いい!お前も鍋パーティー参加な!!」
スライム「ぶくぶくぶくぶく!(/・ω・)/」ワーイ!ワーイ!
ブルー「貴様、この女と知り合いだったのか…」
ブルー(…あの時、リュートが言ってた知り合いの女ってアニーの事だったのか)
リュート「おう!そうそう…いやぁ〜!なんつーか奇遇だよな!」
アニー「そうね、人の縁って不思議よね〜」ポリポリ
ブルー「…酔いが回ってきたのやもしれんな、頭が痛くなってきた」
自分は酒には強い筈だったんだがな、とため息交じりにブルーは席を外す、少し夜風に当たって来たいと一声かけて
<リュート、このスライムなに?
<ブクブクー
<面白れぇ奴だろ!話し見ると結構楽しい奴だぞ!
ワイワイ…ガヤガヤ…!
225 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2018/02/24(土) 01:25:46.59 ID:bwScDHXt0
―――
――
―
【店の外】
ブルー「…ふぅ…ドアの向こうから声が丸聴こえだ」カラン
氷の入ったミネラルウォーターを口に含む…昼も夜も変わらない明るさが変わらない常灯の摩天楼で
イタ飯屋の壁に背を預け、騒がしい女と男、そしてゲル状生物の声を聴く
ブルー「…やれやれ、まったく喧しいったらありゃしない」ゴクッ
ヌサカーン「ほう?その割には中々にキミは楽しそうにしているがね?」
ブルー「フッ、まさか…そんな事あるわけないだろう…」ゴクッ
ブルー「!?!?!?!?!?!?!?!?!?」ブ―――ッ!!!
ヌサカーン「口に含んだ水を勢いよく噴き出すのは上品とは言えないな…」ヤレヤレ
ブルー「貴様ァ…!いつからそこに居た!」
ヌサカーン「うん?あぁ…今来たところだ、此処の店は良い所だ、偶にサングラスの店長が作ったグラタンが恋しくなる」
気がついたら、当たり前のように自分の隣に居た上級妖魔…そう、あの粗蟲共の元へ共に行った妖魔医師ヌサカーンだ
相変わらず白衣を身に纏い、そしてブルーの隣に違和感なくブランデー入りのグラスを持って立っていた
ヌサカーン「キミ、気づいていないのかもしれんがね、彼等の声に耳を傾けていた時何処となく楽しそうに見えていたよ」
ブルー「そうか、そう見えたのならば眼科へ赴くことを奨めるぞ、闇医者」
226 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2018/02/24(土) 01:40:08.84 ID:bwScDHXt0
ヌサカーン「中々にイイ傾向だ、他者との交流、会話は自分の感情に彩をつける」
ヌサカーン「現にキミは【呆れ】や【驚き】時に【怒り】そして……相手の思考が読めない事から【戸惑い】や【疑問】」
ヌサカーン「様々な『感情』を抱き始めているではないか、交流の無い者は次第に心を閉ざしていく」
ヌサカーン「キミの心に巣食い始める病の予防薬になるだろう」ゴクッ
ブルー「突然現れて訳の分からないことを抜かすな」
ヌサカーン「そうかね…まぁ、良い、今日はキミにしばしのお別れを告げにきたのだよ」
ブルー「"お別れ"…だと?」
ヌサカーン「うむ、実は…訳あって私はしばらく[クーロン]を去る事になったのだ」
ヌサカーン「勘違いしないでくれたまえ、ただ[ヨークランド]に病気の少女が居ると今日来院した者に言われてな」
ヌサカーン「少し往診をしに行くのだよ」
ブルー「ふん!そんなことをわざわざ俺に言いに来たのか、暇してるようだな藪医者」
ヌサカーン「本当ならキミの旅に同行しようかと思っていたのだがね、キミは中々興味深い人間だからね観察したかった」
ブルー「それを聞いて尚更安心した、さっさと往診に行くがいい、そして戻って来るな」
ヌサカーン「やれやれ冷たいものだ、……結構な長旅になるんだがなぁ」
ヌサカーン「[ヨークランド]で患者を診た後で、もう一人気になる患者が居るから…本当に当分の間戻って来れんのだよ」
ヌサカーン「しばらくの間、私の病院に留守にしている、という主旨の書置きは残しておくが」
ヌサカーン「念のためキミに伝えておこうと思ったのだ、何かあっても私は居ない、とね」スゥゥ…
それだけを言い残し白衣の男は影となって消えた、後には空になったグラスだけがアスファルトに取り残された…
ブルー「…夜風に当たりに来たというのに、余計に気分が悪くなったな」チッ
ブルー「戻るか…」
227 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2018/02/24(土) 02:22:40.57 ID:bwScDHXt0
蟹すき鍋『 』グツグツ…!
リュート「豪富さんトコかぁ…そういやぁ俺が旅に出る時よりも前に言ってたっけなぁ、施設から女の子引き取ったって」
アニー「ええ…その子ウチの妹よ、生まれつき身体の弱い子だったのだけど」
アニー「それにしてもリュートが引き取り先の人の事知ってるなんてね、本当アンタ顔が広いわね」
リュート「[ヨークランド]は俺の地元だし、まぁ知ってるさぁ〜…と!そろそろカセットコンロの火弱めようぜ!」カチッ
スライム「ぶくぶく(・ω・)/『お皿&ポン酢』」
ブルー「今、戻ったぞ」ガチャッ カランカラン…
リュート「おう!丁度いい感じ煮えて来たぞ!」
アニー「ブルーの分の小皿とポン酢もあるからね」スッ
―――
――
―
リュート「うめぇ!!」ガツガツ!
アニー「あっ!蟹取り過ぎよ!!」
ブルー「元はリュートが持って来たモノだろう」モグモグ
―――――騒がしい空気
『…おい、見ろよ、ブルーだぜ』
『学院の成績トップ、首席は揺るがないってあの…』
『アイツ気に喰わないよな、あのお高くとまった態度…ちょっと勉強できるからって』
リュート「ほらほら、もっと喰えよ!よそってやるから」スッ
ブルー「なっ!?貴様!勝手に人の皿にそんな大量に!」
――――馴れ馴れしい連中
『なんでアイツに勝てないんだよ、俺達だって必死で勉強してんのに』
『あいつ、死なねぇかな…』
アニー「それでさ!その時エミリアってばおかしんだよ!」あははっ!
ブルー「そのエミリアという女がどんな奴かは知らんが聞く限り頭の悪そうな奴なのは分かった」
―――人の気も知らないで絡んでくるこいつ等…
228 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2018/02/24(土) 02:48:58.16 ID:bwScDHXt0
スライム(素面)「ぶくぶくぶーー!(*´ω`*)」モグモグ しあわせ〜♪
アニー(ほろ酔い)「よーしっ!3番!アニーちゃん!いっきまーす!」
リュート(酔い)「いいぞ!そん次俺な!4番リュート、歌っちゃうからヨロシクぅ!!」
<あーっははは!!
ブルー(素面)「…」パクッ モグモグ…ゴクゴクッ
アニー(ほろ酔い)「ジャグリング!そらそらぁ!!この酒瓶をお手玉のように落とさず回し続けるわよ!!」
リュート(酔い)「おおおっ!すげぇぇぇ!!!」
――――………
―――…妬みも僻みも無い…純粋に接して来る馬鹿共
-ヌサカーン『ほう?その割には中々にキミは楽しそうにしているがね?』-
ブルー「…ふ、馬鹿馬鹿しい…そんなことあるものか」ゴクッ
リュート「おおっ!ブルーが笑ったぞぉ!」アハハッ
アニー「マジ!?仏頂面のブルーが!よっしゃ!なんかテンション上がって来たわ!」
ブルー「笑ってなどいない、貴様らいい加減酔いを覚ませ…水置いとくぞ」ハァ…
229 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga!蒼_res]:2018/02/24(土) 03:00:13.99 ID:bwScDHXt0
俺には使命がある
国家から、"親"である祖国に忠義を尽くすという大事な責がある
こんなことをしてる暇なんて無いのに、…くだらない、こんな馬鹿馬鹿しい茶番劇に付き合って…それで―――
―――――それで、このふざけた空気が、少しだけ悪くないとも思ってる
…俺は何をしてるのだろうか
…本当に何をしてるんだろう、…酔いが回ったな、悪酔いしてるようだ
230 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2018/02/24(土) 03:23:47.59 ID:bwScDHXt0
―――
――
―
【クーロン:イタ飯屋前】
リュート「うげぇ…飲み過ぎたぁぁ…ぶ、ブルー…歩けねぇ…手伝ってくれぇぃ」
ブルー「マヌケが、一人で這ってでも帰れ」スタスタ
アニー「あたた…頭痛い……なんか予定と違ったような…いたた…」ヨロッ
スライム「ぶくぶく!(;゚ω゚)」ササッ!ピトッ
アニー「あっ、転びそうな所、支えてくれてありがとう…」
スライム「ぶくぶくぶく(;´ω`)」ススッ
リュート「あ、肩(?)貸してくれんの?わりぃ助かる」フラフラ
―――
――
―
【クーロン:シップ発着場前】
クーン「あーっ!先生!待ってたんだよ!」
ヌサカーン「クックック!済まないね、知り合いに別れを告げて来たところだ」
フェイオン「準備はよろしいですね、ヌサカーン先生」
メイレン「さっ!シップに乗り込みましょう!」
―――
――
―
【マンハッタン:グラディウス支部】
ルージュ「…」
白薔薇「こんな所で何をなさっているのですか?」
ルージュ「星空を、眺めていたんです………そうしたい気分だったもので」
白薔薇「何か悩み事、ですか?」
ルージュ「まぁ…」
アセルス「あっ!二人共こんなとこに居た!晩ご飯ができたってよ」
エミリア「明日には宇宙船<リージョン・シップ>『キグナス号』で[クーロン]に行けるわ、ご飯を食べて寝た方がいいわ」
アセルス「はいっ!…[クーロン]かぁ、ヌサカーン先生って人になんとしても会わなくちゃ!」グッ
―――
――
―
【マンハッタン:キャンベル・ビル】
「社長!停泊中の『キグナス号』に例のブツの詰め込み完了しました!警察にも見られていません!」
キャンベル「ウフフ!いい子ね…後は貴女に任せるわ!可愛い子猫ちゃんを待たせてるからね」
「はっ!」
231 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2018/02/24(土) 03:45:26.52 ID:bwScDHXt0
―――
――
―
アニー「調子に乗り過ぎたわね…」フラッ…
アニー「明日はエミリアを迎えに行くために始発で[マンハッタン]に行って合流してから『キグナス号』に乗るのに」
アニー「……ブルーの奴、ぜんっぜん酔わないし……うぅ、飲み過ぎたわ…んっ?」
紙袋『 』
アニー(カウンター裏の…あたしがブルーから受け取った鞄の横に、これ…あのコンビニの包装?)ガサッ…パサッ
-『アニー へ
此処に酔い止めの薬を置いておく
飲んで治してさっさと[ディスペア]潜入の用意を進めろ ブルー』
アニー(…あぁ、アイツ夜風に当たりたいって出て行ったわよね…)
アニー(蟹すき鍋がに煮えるまで戻ってこないのは遅いと思ったら)
アニー「……命令口調なのはアレだけど、一応ありがとう、ってとこかしらね」
―――
――
―
リュート「ブルー…ありがてぇ、ありがてぇ…」
ブルー「酔い止めの薬くれてやったんだ、さっさと帰れ」
リュート「何だかんだ言いつつ、薬買って俺を待っててくれるなんてありがてぇ…流石相棒だぜぇ」グスッ
ブルー「良いから!さっさと帰れ!…まったく、金塊の件はこれでチャラだ」スタスタ
各々の夜は更け、そして…朝はやってくる…双子の旅立ち、三日目
…運命の交差点<ターニングポイント>――― 紅と蒼の道がほんの僅かに重なり合う『キグナス号』の日が…
232 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2018/02/24(土) 03:52:41.30 ID:bwScDHXt0
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今 回 は 此 処 ま で !
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,-‐'´::::,ゝ _γ:ヽ ,.ィ
l::::::,' ̄`⌒`ヾ{:::`:,、⌒/ /
{::::ノ {γ´ {_;;ヽ<´ <生命の雨
ヽL_ | ヽ::}
'-l_.iヽ ヽ ━ l
{;;;} `ー---、ム }、
{;;;;}` ̄I;;;}
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233 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2018/02/24(土) 07:57:29.66 ID:x5kik7Vc0
おつ
234 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
:2018/02/24(土) 13:11:28.84 ID:bnQ3YhIs0
乙十字乙
アセルスェ…、ヌサカーンはブルーとクーン主人公でしか仲間にできないキャラなんだよな
235 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2018/02/24(土) 13:26:23.36 ID:nXEkGPRpO
乙乙
キグナスと言えば赤も……?
236 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2018/02/25(日) 07:48:14.28 ID:TfghkQbHo
乙
赤と言えばブルーとスライムも運命の赤い糸で繋がってるという感じになってるなこれ
ブルーは色が気に食わんと言いそうだけど
237 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2018/02/27(火) 16:19:32.80 ID:jkvYKC5i0
キグナス強襲イベント楽しいよね、スポット参戦だけどエミリア以外最後まで仲間にできないアセルス姉ちゃんや他主人公と夢の共演できるし
238 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2018/02/28(水) 03:53:27.56 ID:ZdG8Shi80
*******************************************************
オマケA【妖魔医師、ヌサカーンの診断書<カルテ>】
【双子が旅立ってから2日目 夜 9時 54分】
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239 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2018/02/28(水) 05:55:50.41 ID:ZdG8Shi80
その日は多くの人間にとって"散々な1日"だったことだろう
政治の中枢たるリージョンで大規模な爆破テロが起きた、それによって各地のリージョンでシップの運行が停まった
この御時世で宇宙船<リージョン・シップ>が全便欠航となれば流通は当然ストップするのだから堪ったもんじゃない
物販店からはいつもなら棚に陳列している商品が企業や工場からの出荷が来ないという嘆きを体現するようにガラ空きで
仕事帰り、あるいはこれから出勤予定"だった"スーツ姿のリーマンが会社から居酒屋の暖簾の奥へと姿を消す
誰も彼もが立ち往生、明日まで何処にも行けず帰れずという不測の事態に陥った
もし幸運があるとすれば目的地に丁度到着したところでシップの運行停止に巻き込まれた者等だろう
「お客さん!ワタシ身体よく効くクスリ持ってるネ!今なら安くしておくヨ!」
フェイオン「すまないが他を当たってくれ」
暗黒街[クーロン]…大通りで堂々と"おクスリ"を販売する怪しい男の誘いを突っぱねる弁髪の男は仲間達の元へ急いでいた
フェイオン「いかん、情報収集にかなりの時間を喰ってしまった…メイレンが怒っているだろうなあ」タッタッタ
彼は今日のまだ朝陽が昇り始めて、そう長くない時間までずっと巨大生物[タンザー]の体内に居た男だ
ひょんなことから、どこぞの蒼い術士と弦楽器を背負ったニートのおかげで久しく見る事の叶わなかった日光を拝んだ
巨大生物の体内から脱出した後、彼は恋人であるチャイナドレスの似合う彼女と滅びゆく故郷を救うべく旅する少年等と
【 全 て 集 め る と ど ん な 願 い も 叶 う 魔 法 の 指 輪 】 を集める旅に同行した
モンスター族の少年への恩返しと恋人の女性を護る為の同行だ
そんな彼は…今、汗水たらして長らく目にしていなかった人間社会の人混みを掻き分けていた
汗水たらして、と今しがた表現したが何も全速力で走っているから汗をかいたというわけではない
これは恐怖から来る冷汗だ、彼は知っている……自分の恋人は怒ればどんな怪物よりも恐ろしいヒステリックを起こす事を
240 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2018/02/28(水) 06:16:12.64 ID:ZdG8Shi80
男は恋人の女が取った宿が見え始めた所でラストスパートと謂わんばかりに過去最高の脚力で駆け出し
自分達の部屋へ転がり込む様に入り込んだ
フェイオン「メイレン!遅くなってすまな「こんのぉ大馬鹿ぁぁぁ!!!」ぐぎゃあああああああっ!!」
メイレン「情報1つ見つけて来るのに何時間かかってんのよォ!!ええ!?」メキメキ
フェイオン「おぎゃあああああああぁぁぁ腕があああああああぁぁぁ変な方向にぃいいいいいいいいっ!」
クーン「わぁ〜!すっごーい!僕だってあんなふうに腕を曲げられないのに…フェイオンは身体が柔らかいんだね!」
バンバン!「ギブ!ギブ!降参だ!たすけてぇぇぇ!!」と男の悲痛な叫びが宿の一室に木霊する最中
純真無垢なピュアっ子で獣っ子な緑色の少年が目の前の惨事を見て目を輝かせていた
メイレン「まったく……[ヨークランド]で"指輪"を持ってる大金持ちの豪富…その養子の女の子を治せそうな医者を探す」
メイレン「私達がわざわざ一度[クーロン]までシップに乗って逆戻りしてきたのはその為なのよ?」
クーン「僕たち運が良かったよね!!僕たちが丁度[クーロン]に戻ってきたら、船がぜーんぶ動けないんだもん」
メイレン「…クーンはポジティブで良いわね」ハァ
クーン「???」ニコニコ
メイレン「この暗黒街は大勢の人間が集う、此処を探せばあるいは…と考えたわ」
メイレン「実際、この街に妖魔の医者が居ると小耳に挟んだこともあるしね…」
メイレン「その人の居場所を手分けして探しましょうって所までは良かったわ、ええ…」
メイレン「でもね、…なぁんで探し出して2時間で私達が掴めた情報を8時間近くかけて見つけられてないのよ!!」ギリギリ
フェイオン「うぎゃああああああああああああぁぁぁぁ死ぬぅぅぅぅうううううううう!!!!」ジタバタ
241 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2018/02/28(水) 06:36:14.25 ID:ZdG8Shi80
―――
――
―
メイレン「ぜぇ…ぜぇ…まぁ、良いわ、私は今からクーンと例の医者の所に交渉に行くから…」
メイレン「あなたはシップ発着場で[ヨークランド]行きの始発のチケットを手に入れて来るのね」
フェイオン「ま、待ってくれメイレン……始発のチケットは誰だって喉から手が欲しい筈だ、簡単に手には――」ボロッ
メイレン「 」ギロッ
フェイオン「ひぃぃ!?分かった!なんとかする!なんとかするから!なっ!?」土下座
クーン「わぁ〜!こういうのって『かかあてんか』っていうんだよね!」
メイレン「クーン、変な言葉を覚えてきちゃ駄目よ、さぁ行きましょう…フェイオン」
メイレン「場合によってはこの部屋を交渉材料に使う事ね」
フェイオン「へ?」
メイレン「あなたも見たでしょうけど…どこもかしこも事前に宿泊施設は今日のゴタゴタで帰れない旅行客で満室よ」
メイレン「この状況で宿をとれるのは、お金が腐る程あるって奴かあるいは"早いもん勝ち競争"に勝てた人よ」
メイレン「路上で寝てればいつ身ぐるみ剥がれても、…いえ、人身売買にすら持ってかれるかもしれないこの無法都市」
メイレン「宿部屋をあげるからチケットを譲ってくださいと頼み込めば、始発便に乗れるかもしれないでしょう?」
フェイオン「!!…なるほど」
メイレン「うまくやりなさい、…期待してるわよ」ボソ
―――
――
―
【クーロン裏路地:ヌサカーン病院】
ヌサカーン「…それにしても彼、ブルーと言ったか…中々興味深い身体だったな」カキカキ
白衣を着た長髪の人物、その眼鏡のレンズに映っているのは現在進行形で綴られていく自分の筆跡で埋まっていく診断書だ
ヌサカーン「…彼は中身が半分、いや…あの国家は確かにそういうところがあったな…」
ヌサカーン「そういえば[シュライク]の例の研究所にも裏で資金提供を行っていたのだな、ふむ…そう考えるならば」ピタッ
242 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2018/02/28(水) 06:51:20.26 ID:ZdG8Shi80
妖魔医師はインク壺に筆を戻す、上級妖魔であるがゆえに彼は力の流れを探ることに長けていた
彼がこの街の地脈を流れる"保護"の力を捉え、それが弱まっていることも察せられたように…
ヌサカーン「……これは、どうしたことだ?こんなドス黒い力の塊は久しく診ていないな」
妖魔の中でも変わり者、そう評される彼の生きがいは…
『誰も見たことの無い世にも奇妙な病原菌と遭遇したい』
『不治の病と呼ばれる病魔を治してみたい』
『未知との遭遇を愉しみたい』
と言ったものだった
彼はこの世で一番"病気を愛する医者"なのだ
病気を殺す、が…同時に病気を美しい女性か何かのように愛しているのだ、医者が一番病んでる、ヤンデレ
ガチャ!
クーン「あなたが…ええっと、ぬさかーん先生?入口の仕掛けすごいね!ボクすごくビックリしちゃった!」
メイレン「…あの悪趣味な仕掛け…はぁ、いいわ、文句を言いに来たんじゃないし」ゲンナリ
ヌサカーン「……」ジーッ
クーン(ボクの顔何かついてるのかな?)キョトン
ヌサカーン「…」クルッ…スタスタ ジーッ
クーン(あ、ボクを無視してメイレンの方をジーって見始めちゃった、ちょっと悲しい)ショボーン
メイレン「…?」
ヌサカーン「……」ジーッ
ヌサカーン「…… "君が患者か"?」
メイレン「違うわよ…私のどこをどう見て患者だと思ったのよ(こいつヤブ医者かもしれないわね)」
243 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2018/02/28(水) 07:08:02.82 ID:ZdG8Shi80
ヌサカーン「そうか…それは失礼した(…ふむ、自覚症状なし、か)」
妖魔医師は至って身体は健康そのものと呼べる女性を見た…
いや、厳密に言えばちょっと違う…女性の"薬指についてるモノ"を診た…
クーン「あの!先生はよくわからないけど、すごいお医者さんなんですよね!!」
クーン「えっとね!えっとね![ヨークランド]って所に身体の弱い女の子が居て、その子に変な病気が憑いてるの」
クーン「どんな願いも叶う"指輪"の力でその子は死なないで済んでるけどそれも時間の問題で苦しそうで…」
クーン「お願いだよ、助けてあげて…あの子はちゃんと皺くちゃのおばあちゃんにならなきゃだめなんだよ」
自分の故郷の惑星<リージョン>……寿命で惑星のコアが持たないリージョン、滅びゆく[マーグメル]を少年は思い出す
指輪を全て集めて故郷を救う、だがその為に病気の少女を生き永らえさせている指輪を取り上げるのはまた違う
ちゃんと大人になって、お婆ちゃんになって、そして穏やかに眠らなくちゃ駄目だとクーンは言う
それに対して医師は眼鏡の位置を指先で少し上げなおして―――
ヌサカーン「往診は基本的にしないことにしている、例外はあるがね」
メイレン「相手は大富豪の娘よ、報酬は思いのまま」
ヌサカーン「ふむ、報酬か…興味深い患者だな」
半分本当で半分嘘だ
報酬で"指輪"を仮にもらえたら、それは興味深い…だが医師は何も指輪の力で願いを叶えたいなどといった理由ではない
この医者は今、"一番興味深い患者"の旅に同行してその病の進行状態を間近で観察したいのだ
その病は"指輪"が深くかかわって来る…実に興味深い
[ヨークランド]に居る患者も確かに興味深いが、むしろそっちはオマケ程度にしか見ていない、大本命は目の前に居る
244 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2018/02/28(水) 07:31:41.07 ID:ZdG8Shi80
メイレン「ではヌサカーン先生、私達と共にご同行を―」
ヌサカーン「あぁ、待ちたまえ…少し時間をくれ、この街に昨日知り合ったのだが[マジックキングダム]の術士が居てね」
ヌサカーン「しばしの間、[クーロン]を離れると別れを告げてきたいのだ、構わないかね?」
メイレン「ええ、問題ありませんわ、準備は大事ですものね」
ヌサカーン「では先に宿にでも戻っていると良い…君たちは見たところ他所から来たのだろう?」
メイレン「いえ…シップ発着場で落ち合いましょう」
ヌサカーン「ふむ、分かったではまた後程」
ヌサカーンは二人の背中を見送る、眼鏡のレンズには去っていく少年と患者の背が小さくなっていくのが映る
ヌサカーン「さて、まずは書置きだな…私が留守の間にヒューズの奴がくるかもしれん、っとその前に診断書も書かねば」
妖魔医師の脳裏には『ぬーべー!助けてくれぃ!』などと叫びながらタダで診察してもらおうとする不良刑事の顔が浮かぶ
あれで[IRPO]隊員なのだから不思議だ
そういいつつも何だかんだでタフで面白い奴リストに含まれる彼の為に一応書置きは残しておく
しばらく留守にするぞ、と
ヌサカーン「双子…命、…[シュライク]にある[生命科学研究所]への裏金と技術提供による…」カキカキ
ヌサカーン「大昔に滅んだリージョンの伝承に残る技術…同化、継承、7人の英雄、皇帝… 死によって 力の譲渡」カキカキ
ヌサカーン「同じく死によって、資質の…技術の髄を寄せたコレにより本来ならば得られぬ筈の――…」カキカキ
ヌサカーン「ふむ、こんなものか、…まだ時間がある、さっきの患者の診断書も書いておくか」ペラッ カキカキ
その後、ヌサカーンは"診断書"をいくらか書いてから鞄に一頻りの荷物を纏めて自宅を後にした
なお、此処で詳細を語る必要が無い為、大雑把に書いておくがフェイオンは
その後、家族8名で狭い客室に雑魚寝するしかなかったらしい大家族と宿部屋の権利を譲る交渉で
見事シップの一室を得てメイレンに褒められ、シップ発着場にやってきたヌサカーン医師共々にシップの客室に入り
始発の時間まで一夜を明かしたらしい
〜 オマケ2 完〜
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245 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2018/02/28(水) 15:27:29.96 ID:2BCBPe4fO
フェイオンは悪い人じゃないんです
ただちょっと運が悪くて不器用なだけなんです
がんばれフェイオン
246 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2018/02/28(水) 16:22:47.69 ID:SPIc5TLw0
実際フェイオンいいヤツだよな
自分から協力を突っぱねるブルーにも嫌な顔ひとつしないで道案内して、それ以外の主人公6人の仲間になってくれる。
247 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2018/02/28(水) 21:37:20.10 ID:qiIH9IZs0
…ん?診断書に書いた内容ってロマサガ2のアレか?
248 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga!red_res]:2018/03/06(火) 22:37:11.29 ID:THw2g2L10
僕が祖国[マジックキングダム]を旅立って今日で3日目になる
国家からの支給品としてもらった資金、[リージョン移動]媒介用の宝石、医療品を入れた[バックパック]
そして…今、僕のこれまでの資質集めの旅を書いている小さな手帳
誰に書けと言われた訳じゃない、ただ僕が自主的に書きたいから書いているんだ
いつまで続くか分からない旅路だけど、その終着点が見え始めて、その時、この手帳を僕が見返して
「あっ、あの時はこんなことがあったんだなぁ〜懐かしいな」と思い出を振り返って笑う事ができるかもしれないから
…あるいは―――
――…あるいは、もしかしたら…ううん、やめておく、縁起でもないからね!
249 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2018/03/06(火) 23:06:15.88 ID:THw2g2L10
*******************************************************
―――
――
―
【双子が旅立ってから…3日目、朝7時20分】
ルージュ「」パシャッ!バシャバシャ
ルージュ「…あ、また寝ぐせが…髪長いのも問題だよなぁ」つ『ブラシ』
エミリアが所属する裏組織の支部でお世話になり、そして陽が昇り始め
人々の生活音が目覚ましのアラーム代わりに鳴り始める頃、紅き術士は洗面台の鏡に映る自分と睨めっこをしていた
瞼裏に残った眠気を洗顔で共に洗い落とす、サッパリとした気分で仲間達が待つフロアへと降りていくと
エミリア「あら、おはよう…ってあなたアホ毛みたいに寝ぐせがピンっとしてるわよ」クスクス
ルージュ「あはは…一応濡らしたんだけどなー」ポリポリ
エミリア「それと…はい、これっ!」っ『乗船チケット:キグナス号』&『キグナス号パンフレット』
ルージュ「ありがとうございます…へー、白鳥の形をしたシップかぁ」ペラ
エミリア「ええ…サービスも充実してる、とてもいい船なのよ」
いい船だ、目の前の金髪美女はそう告げるのだ、一瞬だけ哀しそうな顔をしたのを彼は見逃さなかった
エミリアが裏組織に入った経緯は…婚約者である男声を殺害され、その濡れ衣で刑務所[ディスペア]に送られたこと
そして刑務所からの脱獄にアニー、ライザという2名の女性の助力を得て成功
後に婚約者の仇"ジョーカー"という仮面の男をこの手で討つべく、アニー等が所属する組織に加入したという
…キグナス号、この船には事件が起きる前に、エミリアが婚約者のレンという男性と共に乗っていたそうだ
同僚の女性二人にもそのことは話していないらしく、ある意味辛い思いをさせる船旅になってしまうのだろう
亡くなった彼氏との思い出の船に乗船するのだから…
エミリア「そ・れ・よ・り!!フライトまでまだ時間があるわ!街に出て何か朝食を取るなり旅支度をするべきよ!」
溌剌とした持ち前の性格で彼女は術士の背を叩いて、そう促す
もしかしたら強引に話題を変えたかっただけかもしれない…それを彼が計り知ることはできないが
250 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2018/03/07(水) 01:17:45.47 ID:afQLpd/f0
最先端科学のリージョンを自負するだけはあり、人々の従来は目を目を見張るものであった
シップが運行を再開した[マンハッタン]のモール街を歩く経営者の靴音、重たい荷物を運ぶロボットの機械音
田舎から上京してきた所謂"おのぼりさん"という人なのだろう、恰好からして[京]から来た人なのだろうか
ルージュ「…護身術ですか」
エミリア「ええ、ルージュは術士なのはわかるわ…でもね、いざという時に術力が切れてしまったら、その時どうするの」
ルージュ「それは…」
アセルス「エミリアさんは銃が無くても体術が使えるんですよね?」
エミリア「ええ、ライザ…ああ、私の同僚の女性なんだけどね、彼女に色々と技を教えてもらったのよ」
「…変な覆面つけられたけど」と何か遠い目をして明後日の方角を向き始めたエミリアを尻目にルージュは考えた
もしも肝心な時に術力が切れてしまったら…
魔術師が力を使い果たして術を使えない…それは銃弾が切れ補充すらもできないピストルと同じだ
その時点で戦いに置いて"敗け"が確定してしまう
ルージュ「そうか、…ならば僕も自分だけの武器を手にするべきなのか」
ルージュ「…よし、決めた!」
ルージュ「エミリアさん、銃を手に入れられるお店ってありませんか!」
エミリア「なんであの時"仮面舞踏会"と"仮面武闘会"を間違えたのかしらね…ハァ…えっ?何ごめんよく聞いてなかったわ」
ルージュ「銃ですよ、銃!銃なら剣や体術と違ってあまり身体を鍛えていない僕でも望みがあるかもしれないと…!」
エミリア「う〜ん、銃ね…実際使った事無い人は分からないと思うけど」
エミリア「あれって発砲の時、反動で肩とか結構持ってかれるのよ?」
エミリア「私も組織に入って間もない頃、射撃訓練で腕がパンパンになるほどやったし…」
エミリア「…なんにしてもこのリージョンじゃ難しいわ、[クーロン]なら顔の利く店もあるし」う〜ん
エミリア「低反動で負担の少ないのあるか聞いてみましょう?」
ルージュ「本当ですか!?ありがとうございます!!」
アセルス「ルージュってばはしゃぎ過ぎだよ、子供じゃないんだからさ」クスッ
アセルス「ね!白薔薇もそう思わない――――」クルッ
『現在パーティーメンバー』
ルージュ
エミリア
アセルス
白薔薇 ←(迷子)
アセルス「……」
アセルス「し、しろばらあああぁぁぁぁぁ!!!!」ガーン
251 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2018/03/07(水) 01:48:14.48 ID:afQLpd/f0
―――
――
―
わらわら…
がやがや…
ざわざわ…
わいわい…!
白薔薇「」ポツーン
白薔薇(ど、どうしましょう…また皆さんとはぐれてしまいましたわ…)オロオロ
『 待 て や ァ ァ ァァ!! ゴ ル ァ ァァ!!!』
『お、俺がなにしたってんだよォ!!!!』
白薔薇「! この声は…確かヒューズさん?…まぁ!なんという幸運でしょうか!!」ダッ!
迷子の迷子の白薔薇姫さんは、知り合いも何もいない大都会のど真ん中で独り
しかし、これは僥倖か…?昨日お近づきになった不良刑事の怒鳴り声が聞こえて来たではないか?
困り果てた彼女は知り合いの声と、必死な年若い男性の声がする方へ駆けて行った
252 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2018/03/07(水) 02:13:57.53 ID:afQLpd/f0
ヒューズ「こんの餓鬼ァ!!人突き飛ばしといて逃げるたぁどいう了見だァァァ!!」カチャ! ダダダッ
サボテンみてーな髪型した特撮ヒーロー「ひぃぃぃーーー!そりゃ俺がわりぃけどよぉぉ!」
サボテンみてーな髪型した特撮ヒーロー「知らないおっさんが銃構えて走ってきたら逃げるだろうがぁ!!」
ヒューズ「 誰 が お っ さ ん だァ!!俺ぁ 2 7 だあああぁぁぁぁ!!」バキューン!!
サボテンみてーな髪型した特撮ヒーロー「うわぁああああああああ!?!?おっさんじゃねーか!!」ヒョイッ
サボテンみてーな髪型した特撮ヒーロー「くっそぉ…!なんなんだよぉ一体!?」ぜぇぜぇ
サボテンみてーな髪型した特撮ヒーロー「俺はキグナス号の積み荷の事を知りたいだけだってのに!!」
ヒューズ「…あ"?キグナスの積み荷だぁ?」ピタッ
サボテンみてーな髪型した特撮ヒーロー「はぁ…ッ!はぁ…?なんだあのおっさん動きが止まった?」
サボテンみてーな髪型した特撮ヒーロー「とにかく逃げねぇと!この曲がり角を曲がればっ!!」バッ!
白薔薇「えっ」バッ!
サボテンみてーな髪型した特撮ヒーロー「なっ!?―――あ、危ない!!ぶつかるッ!」
253 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2018/03/07(水) 02:16:27.25 ID:baTL5JL40
なんてベタベタな
254 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2018/03/07(水) 02:30:32.45 ID:Vlhc3VN+0
レッドキター
255 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2018/03/07(水) 08:02:12.59 ID:xOk3hmniO
ルージュとレッドなら衝突せずに済むな
256 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2018/03/07(水) 16:40:03.89 ID:CKtUB43BO
遂にレッド登場かwktk
257 :
サガフロ主人公 小此木 烈人<オコノギ レット>編 OP
[saga!red_res]:2018/03/13(火) 21:53:39.12 ID:or25wmVp0
*******************************************************
父さん、母さん、藍子――――――
――――――俺は、俺は…絶対にブラッククロスを許さねぇ!必ず仇をとってみせる!!
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258 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2018/03/13(火) 22:43:09.88 ID:or25wmVp0
【 双子が旅立つ "数日前" 朝9時27分 】
『レッドの回想:[シュライク]の高速道路』
都市型リージョン[シュライク]…経済特区として知られ、自然環境も整った緑溢れる街
ロボット産業を始め、生命の神秘を日夜追究する研究所も存在し独特な食文化や歴史もある平和な土地であった
四輪駆動のエンジン音を響かせながら一台の自動車が高速道路上を走行する、乗っているのは二人組の男性
運転席でハンドルを握る男はまだ年若い19歳の子供、その横には壮年の男性―――子供の父親が乗っていた
ありふれた光景だったとも、この街じゃさして珍しくもない
親子で自家用車に乗ってドライブなんて何の変哲もない普通の事だった、だから神妙な顔つきの父親を横目で見る
若者もこの後に起きる悲劇など予想だにしなかった
バイオメカニクスの権威、 小此木<オコノギ> 博士
助手席に座る父親は誰もが知る著名人だ
彼はその腕に茶封筒を抱き抱えるように持ち重々しくその口を開いた
小此木博士「これは…Dr.クラインが悪の秘密結社ブラッククロスの幹部と結託している証拠だ」
小此木博士「この封筒を[IRPO]本部に持って行けば彼の悪事を阻止できる」
小此木烈人…愛称でレッドといつも呼ばれていた少年は訝し気に父親に尋ねた
レッド「父さん…なぜそこまでしてそこまでしてDr.クラインに拘るんだい」
小此木博士「彼と私は共に学んだ仲だ、だが彼は研究の為ならば手段を択ばなくなっていった」
小此木博士「私は…それを知りながら止めることができなかった、私には学会から疎外されていく彼を救えなかった」
小此木博士「私は彼にこれ以上悪事を重ねて欲しくない、あんなふうになってしまっても、彼は私の友だ…」
259 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2018/03/13(火) 23:03:29.44 ID:or25wmVp0
自らの知的好奇心の為、飽くなき探求心の為、―――道を踏み外し外道の道に堕ちても
それでも掛け替えのない友だから、博士は自分の気持ちを打ち明けた
ヒュッ!ゴスッッッッッ
レッド「なァッ!?」ギュルルルゥ
哀しみ、憐れみ…そのどちらともつかない表情<カオ>の父を横目で見やった僅かな瞬間だった
突如として真上からボンネットに"鋼鉄製の何か"――今思えば、鎧武者の甲冑のようにも見えた――それが飛びついてきた
ずっしりと重みのある金属の塊が飛来し、乗用車は嫌な軋音をあげてバランスを崩した
真冬の凍り付いた路面を夏用タイヤで走ったような嫌な感覚、ブレーキペダルを踏み、ハンドルを正面に戻そうともした
だが、その金属製の人型は腕を振り上げ、車体に拳を叩き込み配線をブチブチと引き千切って操縦不能にして飛び去った
親子の乗る乗用車は長いカーブで蛇行し、最後にはカードレールを突き破って崖下に真っ逆さま
少年が最後に見たのは金属製のボディーと、その脇に抱えられた父の姿だった
キイイイイイィィィィ ガシャァン
―――
――
―
レッド「…ぅ、…ぐ」ムク
どれだけの時間意識が沈んでいたのだろうか、彼が眼を覚ました時視界に飛び込んできたのは木漏れ日の射す緑の屋根
身体を動かしてみる、奇跡的に目立った外傷は無い、上体を起こせばフロントガラスの破片がパラパラと頭から落ち首を
動かせば拉げた自家用車が黒煙をあげていた…本当によく無事だったものだ
260 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2018/03/13(火) 23:15:18.38 ID:or25wmVp0
レッド「いってぇ…」
レッド(くそっ…何が起きたってんだ、車運転してたら時代劇の鎧武者みてーなのが降って来て)
レッド「はっ!?父さん!…父さん!!!!」
レッド「くそぉっ!やられた!!ブラッククロスの奴らめ…」ダンッ
拳を大地に叩きつけ、歯軋りを1つ…あの鎧武者は、恐らくブラッククロスの手の者に違いない
証拠品をパトロール隊員に渡す算段を何処で知ったか知らないが連中はそうなる前に彼等親子を亡き者にしようとしたのだ
レッド「…!」ゾワ
そこまで考えて彼は背に薄ら寒いモノを感じ取った
犯罪組織は証拠隠滅の為に自分達親子を襲った…そして父の身柄拘束、ならば…
――――ならば、自分、父と来て"次は何を狙う"
レッド「…か、母さん、藍子…!!」ワナワナ
ブラッククロスの次の狙いは、恐らく小此木博士の妻と娘…即ちレッドの母と妹だ
レッド「ち、ちっくしょおおおおおおぉおぉぉ!!!」ダッ!
その場から彼は走り出した、ペース配分も何もあったもんじゃない、喉が痛くなる程の全力疾走
茂みを掻き分け、郊外にある一軒家へ、家族が居るはずの自宅へと
261 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2018/03/14(水) 00:14:58.01 ID:zLD7jsdH0
レッド「ハァハァ…!」
[シュライク]郊外の美しい森林、その中に佇む豪邸…まだ自分が幼かった頃はすぐ外で木登りや蝶々を追いかけたあの道
レッド「…ハァ、うぐ!」ドテッ ズサーッ
まだ赤子だった妹を抱き微笑を浮かべる優しい母、休日には自分を肩車して森の中を散策した父との思い出
レッド「……こんなとこで転んでる場合じゃねぇんだよ」ググッ
学者である父の所へ都心部から自転車で本の配達に来る憧れのアセルス姉ちゃん、よくヒーローごっこに付き合ってくれた
何もかもがレッドの脳内で鮮やかに輝いていた、在りし日の思い出が
立ち上がり森林の悪路を走る、何度も転び、泥にまみれ、傷を作っても止まらずに…
寿樹の香り…花の匂い、
焦げ臭い匂い、何かが燃える音
自宅に近づけば近づくほどに【当たって欲しくない予測】が現実になっていく
乗用車の襲撃から崖下への転落、眼が醒めた時はまだ木漏れ日の射す時刻で…彼が自宅へと戻った時は既に夕刻であった
オレンジの空、茜色の雲…そして
空の色と同じように燃え上がる実家が…
262 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2018/03/14(水) 00:40:43.57 ID:zLD7jsdH0
【 双子が旅立つ "数日前" 夕方16時47分 】
【炎上する小此木邸 前】
パチパチ…メラメラ
現実は…残酷だ、さっきまで彼の脳裏には家族との温かな思い出が美しい鮮やかな景色があった
だが、目の前の鮮やかな"赤"はそれを否定する
頬に飛んできた火粉が当たる、熱い、ああ、熱いとも…痛いくらい熱い
これが崖下に転落し未だ昏睡状態の自分が見ている夢、幻ではなく無情な現実なのだと嫌でも彼に悟らせる痛みだ
レッド「う、ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ―――――ッ!!!」
それを目の当たりにして彼は折れてしまった、膝から崩れ落ち、大粒の涙を流した
屋敷は全焼、あれではもう母も妹の藍子も……
泣くしかなかった、ただただ哭くしかなかった
しかし、世界はどうやら彼に悲しみ途方に暮れる時すらも与えてくれぬようだ…燃え盛る炎の篝を背に彼の元へ影が伸びる
項垂れていたレッド少年の頭上から声が浴びせられた
「キサマ、小此木博士の息子だな、死ね 母と妹の後を追わせてやる」
263 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2018/03/14(水) 01:16:19.75 ID:zLD7jsdH0
レッドはゆっくりと顔を上げた、赤々と燃える炎を背に揺れ動く人影がこちらに歩いてくる
眼を擦り、涙を振り払い暈けて見えた輪郭はしっかりとその姿を現した…
思わず声を漏らし掛けた、何せ自分の目の前には自分よりも一回りも身の丈がある大男が立っていて
その男は両腕が義手だったのだから
義手…それも"普通の"ではない、事故で腕を切断し生活が儘ならない人間が手術で義手や義足をつけること自体は
なんら普通の事と呼べたが、目の前の男のソレは明らかに日常生活が目的で造られたソレとは異なっていた
人間にあるべき腕が無く、肩から先は無機質な金属…手首の先は鉤爪で、刃先には血糊が付着していた
自分の数歩前に男が来たことで漸く焦げ臭さと共に生臭い血の匂いが鼻孔に入り込んだ…
よく見れば男の口元にも血液が付いていた、ギラついた眼差しでレッドを見下ろし、口元の血をジャムでも舐めるように
ペロリと舐めていた異様な人物
その両隣には護衛であろうか、顔すらも覆いつくす全身青タイツの人物が二名
青の生地に黒い帯が交差するように腹部、そして頭部についているのがなんとも奇妙な出で立ちだ
いや、この際そんなことはどうでもいい、重要なのはそこではなく――――
レッド「…てめぇ、今…なんっつった」
ゆっくりとレッドは立ち上がった、青筋を立てて、未だかつてない程の怒りを、腸が煮えくり返る程の憎しみを声にした
――――死ね 母と妹の後を追わせてやる
目の前の人物は間違いなくそう言った、それが意味する事はつまり
「フン、なんだ落下の衝撃で耳がイカレたのか、天国の母と妹の元へ送ってやると言っているんだ」
264 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2018/03/14(水) 02:10:36.11 ID:zLD7jsdH0
プツン、頭の中で何かが弾け飛んだ音がした
全身の血流が一瞬だけ真逆になったかのようだ、冷静さも思考も要らない、ただ「コイツをぶちのめす」それだけがあった
レッド「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァぁぁぁぁァ!!!!」
やんちゃ坊主でよく喧嘩もしていた、著名人の父を護りたいと空手教室や銃の訓練もまともな学び舎で習った事がある
そんな彼の怒りの一撃は
ドゴッシャアアアアアアァァァッッッァァァアアア――――ッ!!!
「今、何かしたのか?」ニィ
レッド「うっ!?」
怒りの一撃は…腹部に放った渾身の蹴りは、あまりにも無力だった
「死ね」ザシュッ
小五月蠅い便所蠅を叩き落とすように軽く振るった左腕、5本指の鉤爪は自分の力が一切通用せず唖然とする
レッドの肉を一振りでズタズタに裂いた
265 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2018/03/14(水) 02:19:49.47 ID:zLD7jsdH0
ずしゅり、身体が痛い、あまりにも呆気ない
レッド(…俺、死んじゃうのかよ)
ドサッ…
横たわった彼が真っ先に思ったのはそれだ、生温かい…自分の血ってこんな感じなんだな、血は温かくて抜け出ていく度に
身体が氷漬けになるみたいに冷たくなってく
「へっ、口先だけの餓鬼が…」レロォ…
鉤爪の男は刃先に付着した血を舐め取り、踵を翻す…この傷じゃ助かるまいと判断したのだろう
レッド(うそだろ、俺まだ死にたくねぇよ…まだ俺は…俺は…)
レッド(おれ、は…みんなの、父さん、母さん、藍子… あいつ、まだカタキ…)
ズリッ…グッ、グググッ
「…あぁ?」ピタッ
「……ほー、まだ立ち上がるのか、まるで生まれたての子鹿だな」クルッ
レッド「ハァ…ぜぇ、み んな カタ キ…てめぇ、だけは…っっ」プルプル
「健気だなぁオイ、泣かせるじゃあねぇか、その敬意に表して確実に殺してやる」
266 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2018/03/14(水) 02:39:30.33 ID:zLD7jsdH0
鉤爪の男は両腕を組むような姿勢を取る、そして肩を竦めると―――
ガシャッ、ガコンッ…!
レッド「な、んだと…!!」
「へっ、面白れぇもんみせてやるよ!ゆけぃ!![クロービット]」
男の義手が外れ、そしてその両腕は――――ッッ!!
クロービット『』ヒュンッ ヒュンッ
クロービット『』ヒュンッ ヒュンッ
レッド(義手が飛んでやがるッ!―――俺の方に回転しながらマズイッ)
鉤爪の男の両肩、腕が外れた部位は機械で出来ていて…大男は所謂サイボーグという奴だった
悪の秘密結社ブラッククロス、狂気の科学者クラインが手を貸す前から人攫いを積極的に行い
攫った人間を改造手術で怪人に改造する……まるで日曜日の朝に特撮ヒーロームービーでやってるようなふざけた話だ
だが、その狂った内容を現実<リアル>で、三次元でやってるから警察も血眼になって探す犯罪組織なのだ
父から聴かされた時は最初あまりにも馬鹿馬鹿しい話だと思い冗句か何かだと思ったが…
機械男をこうして見せられては信じざるを得ない
「な?面白れぇだろ、俺様の腕はこの脳髄の遠隔誘導操作システムで動いてるんだ…あの世で家族に自慢しな」
クロービット『』グルグルッ ギュゥウウウ――z__ン! ドブッジャアアアアアア!!
クロービット『』グルグルッ ギュゥウウウ――z__ン! ドブッジャアアアアアア!!
レッド「ぐっぁああああああああああああああああぁぁぁ……」パタッ
採掘ドリルよろしく螺旋を描きながら飛んできたソレは無慈悲にも彼の胃腸、肺に大穴を開け、男の元へ戻っていく
断末魔、そして―――家族の仇をとることすら叶わず朽ちていく自分の非力さに涙しながら彼は地へと伏した…
267 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2018/03/14(水) 03:25:01.07 ID:zLD7jsdH0
正義のヒーロー「シャイニングキィィィィイイイク!!!!」シュピーン!ゴシャッ!!!
「おごぁァ!?!?!?!?」
レッド(…ぁ、? なん だ だれか いるの か もう みみ も まともに きこえな )
正義のヒーロー「くっ、遅かったか!シュウザー!!私が相手だ!」
シュウザー「うぎ・・ぎぎ、キサマァ…」ギロッ
その時、何処からかともなく一人の男が現れた全身鎧スーツを身に纏う男は光り輝く蹴脚[シャイニングキック]を放った
鉤爪のサイボーグ…[シュウザー]は脊髄から脳に痛みという電信信号を伝わらせた人物を恨みがましく睨みつけた
シュウザー「きえええええええええぇぇぃぃいい!」ヒュッ シュバッ!
正義のヒーロー「遅いっ![ブライトナックル]!!」
全身鎧スーツの闖入者目掛けて貫手、からの袈裟切りを繰り出すもそれを見越した動きで闖入者は紙一重に躱す
そして光り輝く拳を勢いよく踏み込んできたシュウザーの下顎目掛けて打ち込む
敵の上半身はこちらへの踏み込みで、自身の拳は一回りも大きい巨体の下顎へ、お互いの体格差と動きを利用した拳は
下顎をぶち抜く、敵の方から正面衝突しにきたようなものである
シュウザー「か"っ"…ぐ、ぶ」ツー――ッ、ポタッ
シュウザー「俺様の顔に、よくも…クソ覚えていろ!!」バッ!ギュルルルル
唇の端から血を垂れ流したサイボーグは片脚を軸に独楽<コマ>のような大回転、砂埃を舞わせそれを煙幕代わりにし
護衛を連れて去って行った
268 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2018/03/14(水) 04:02:03.07 ID:zLD7jsdH0
正義のヒーロー「取り逃がしたか…、いやそんなことよりも…!」バッ
正義のヒーロー「おい!君しっかりするんだ!おい…しっかりしろ!!」
レッド(瀕死)「 」
正義のヒーロー「いかん、このままでは助からない……ならば」カッ!!!
レッド(瀕死)『 』パァァァァ…!
レッド(?)『』ガシィィン!!
正義のヒーロー「おい、しっかりしろ!"アルカイザー"」
レッド(?)(ある、かいざー?)
薄れゆく意識の中、レッドは暗闇に差し込む光を見た、あの落下事故で目覚めて最初に木漏れ日を見た様に
そして違和感に気がつく
レッド(?)「…うん?」ガシャッ
レッド(?)「アンタ…なんだそのふざけた格好は…俺にもこんなもの着せてふざけてるのか!」ガシャガシャ
違和感、それは…目覚めてすぐ目の前にいる全身よろい鎧スーツという
まるで特撮物に出てくるヒーローのようなコスプレをした男と全く同じような衣装を自分も着ているということだ
つま先から肩まで全身に頑丈なアーマー、頭部はバイザー付きでユニコーンの角が生えたようなヘルメット
正義のヒーロー「混乱する気持ちは分かるが、…いいかよく聞け、君の命を救うにはこれしか方法がなかった」
正義のヒーロー「本来は君にその資格があるか調査し、宇宙<ソラ>の彼方にある[サントアリオ]のヒーロー協会に行き」
正義のヒーロー「審査が通り次第、力を分け与えヒーローにするのが正式な手順だ、だが細かく調べる時間が無かった」
269 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2018/03/14(水) 04:31:50.31 ID:zLD7jsdH0
にわかに信じられないような話だった、目の前のコスプレ男は宇宙の彼方にあるヒーローのリージョンからやってきた
フィクションでは無い、正真正銘本物の正義のヒーローで、悪の組織ブラッククロスと戦っていた最中で
瀕死のレッドとこうして出会い、彼にヒーローに変身する力を授けたのだという
この鎧スーツ男…名をアルカールというらしいが
レッド改めアルカイザー「ま、待ってくれ話を整理させてくれ……すると俺は本当にヒーローになっちまったのか?」
アルカール「そうだ、君は今日から正義の使者『アルカイザー』だ」
アルカール「ヒーローになってしまったからには"ヒーローの掟"に従わねばならない!」
アルカール「【ひとつ、ヒーローにふさわしくないと判断されれば君は消去される】」
アルカール「【ふたつ、一般人に正体を知られた場合は記憶を全て消される】」
悪の組織に、特撮番組に登場する変身ヒーローのお約束みたいな"掟"…いよいよ以って現実かどうか頭が痛くなってきた
頭痛がする、痛いのならこれは残念ながら現実なのだろう…信じがたいが
…信じがたいが消えかけていた命の灯を救われたのもまた事実、そして
アルカイザー「…なぁ、ヒーローは強いのか?俺を強くしてくれたのか?」
あの時、朦朧とする意識の中、光り輝く脚で自分の技が通用しなかった家族の仇を"ヒーロー"は確かに圧倒していた
アルカール「…君が今何を考えているのか大体予想はつく、ヒーローの力は『正義の為』に使わなくてはならん」
アルカイザー「ブラッククロスの奴らをこの力でぶちのめすッ!!!」ギリィッ!!
アルカール「復讐はいかん!!正義の戦い以外に力を使えば君は消されてしまうのだぞ!」
アルカイザー「はっ!どのみち俺は死んでたんだろう、ブラッククロスは…ブラッククロスだけは絶対許さねぇ!」
270 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2018/03/14(水) 04:44:06.34 ID:zLD7jsdH0
―――
――
―
その日から、小此木烈人…レッドは父親の親友だったらしいホークという人物の誘いで
[キグナス号]という船の機関士見習いとして住み込みで働き各地のリージョンを転々とする日々を過ごした
あの日の事は一日たりとも忘れない、家族を殺され、復讐を誓ったあの時の気持ちを…!
ある時は巨大カジノのリージョン[バカラ]でシュウザーを見たという情報が入り
そこでブラッククロスの戦闘員と怪人を倒し、またある時は[シュライク]に戻り女児誘拐事件を起こした戦闘員たちを
ヒーローに変身して次々と打ち倒していった
…その時は誘拐された女児の証言や、都市型リージョンということもあり大々的に新聞にも載ったが
変身した姿を見られなくて良かった…
そして、時は現在に戻る
[マンハッタン]の爆破テロでシップの運行が一日遅れたが彼は[キグナス号]と共にやってきた
そして…ひょんなことから船内に大量の密輸武器を見つけてしまった!!何処かで戦争でもやるというのか
こんな物騒なブツを一体どこの誰が持ち込んだのだッ!
家族の仇への復讐心は忘れない、だがそれとは別に元から彼は正義感の強い男だった
だから今回の密輸武器の真相を突き止めるべく、[キャンベル・ビル]に向かう矢先で妙な不良刑事に追い回された、と
そして―――
白薔薇「きゃ、きゃああああ!!!!」
レッド「う、うわぁぁぁぁぁ…あ、ぶつかる訳にぁ行くかぁぁぁぁ!!!」キキィ―ッ!!
271 :
今回は此処まで!
[saga]:2018/03/14(水) 05:41:21.67 ID:zLD7jsdH0
───────===========ニニニニニニニニニニニニニニニニニニニ三三三三三三三三三三三三三
今回は此処まで!!!
『BGM:サガフロより…戦え!アルカイザー!』
https://www.youtube.com/watch?v=ZqhEamURFyM
液晶画面の前に居るちみっこの諸君ッッ!!今日はみんなのヒーロー、アルカイザーについて解説するッ!
説明しようッッッ!!アルカイザーとは!!正義のヒーローが住むリージョン[サントアリオ](原作中名前しか登場しない)からやって来た
正義のヒーロー、アルカール男爵から力を授かった小此木烈人<オコノギ レット>少年が変身した姿であるッ!
彼は一部のイベント戦闘を除き全ての戦闘で『変身』コマンドが使用可能なのだ
【人間<ヒューマン>】【モンスター】【妖魔】【メカ】その4種族のどれにも属さない【ヒーロー】という特殊な種族であり
専用技ヒーロー技という特殊な技術を閃くぞ!
レッドは変身に1ターン消費してしまうが、変身した場合はHPが全回復し
『 最 大 HP が 2 5 0 も 上 昇 ! 最 大 VIT 7 5 更 に 他 の ス テ 値 が 全 25 上昇 』
『 気絶(即死)、石化 、睡眠 、麻痺 、毒 、精神(魅了や混乱)といった全状態異常が効かなくなるのである』
ただし、ヒーローに変身した場合戦闘終了時にステ値が上昇しないので基本は生身で殴り合いをした方が良い
噂によると変身時に自動的に装備される[レイブレード]等のヒーロー装備によってステ補正が付くから成長しないシステムだとか…
サガフロは基本的に装備すると大幅に能力値が上がる武具を装備すると成長の妨げになる
アセルス編で調子ぶっこいて[幻魔]頼りにしてるとアセルスが修行不足になりやすいとか…
結論:ヒーローたるもの日々の鍛錬を疎かにしてはならないッ!
なお、変身シーンを一般人(仲間キャラ)に見られる訳にはいかない為、味方がレッドの変身を目撃できない状態でない限り変身はできない
※ヒーロー協会は『見られさえしなければOK』のスタンスらしく、仲間が麻痺、暗闇、睡眠、石化、戦闘不能、混乱など
仲間が全員レッドの変身を認識できない状態異常なら可能
ちなみに、人間、妖魔、モンスターは駄目だが、メカには見られても良いらしい、命令を固く守るロボットは人に言いふらさないし、無機物だからである
───────===========ニニニニニニニニニニニニニニニニニニニ三三三三三三三三三三三三三
} ヽ |∨/ // ____
} `、 ./ /∨// , ・'" `、
ヽ ,r'´/~ヽ|//|/// |
ヾ/|‐/_,/ ||//|<_ ..-‐=、 `ヽ、
_........-―‐i / / |.|~`/,r―-) }}――‐-=}、_
 ̄ ̄ ̄ ̄|ソ ./ .//|_/ }_/、 /li // ヽ、
.ヽ ./_//)'/ヽ_,r‐' \ヽ__.// __/ .|
,、o {`'~>‐'´ `ヽ-.、 ヽ〈、 ̄~ ,'.l´}`lz、 |
_,..-''"`}l .人 |~ヽ `、/ヽ、 | .| ヽヽヽヽヽ./
_}}__ }ヾ_ / >-' .`、 .`、 ヽ__ノノ} <ヽ```ヽ/
/ }} `ヽ、~} / .,/ ./ `、 } <ー'、  ̄ ̄ヽ
,xー=x、_..-、,r}ヾ、 ``}}ー'|,-}___ }ー--/ .∧_| `、
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./ // 〉=/ r-,'~)、__..‐'‐、 /~/_`ヽ__)ヽ、,..'|" ノヽ .`、 `、
./ //_,.-||// ,' ,' / |~}) >'-/__  ̄)ー-、 ) `-{´ .`、 .`、 `、
/ ,.-'´ ̄ ̄ // ) `ー'-'-'/=ー-='―' .ノ_  ̄ (~`、 ./.} `、 `、 `、
/ /  ̄ </~ヾ、/| ̄フチフく´ `ー、ヽ ヽ / /,--、 | `、 |
ヽ ./|.,ト/ /,.|  ̄`ー―.'-‐'´ ̄~~| ,' | .ヽ.| `、 |
\/〉´`l //ソ ./~`ヽ___|,' | `、 `、 ./
|/ .|/ ./ / ./ .| } .}`、 `、 ./
.,rl_/ /ー―'''´ ∧ } } } ``‐--‐ヽヽ_,、
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272 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2018/03/14(水) 14:27:58.18 ID:3yZnWKRZ0
乙
変身システムはレッド一人だけになるまで追い詰められた時にお世話になったのでよくできてるなぁと思いました
273 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2018/03/15(木) 16:07:41.61 ID:clHs7vPPO
テロ後のレオナルドはシステム的にはやはりロボ扱いなんだろうなぁ……
274 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2018/03/16(金) 03:46:54.58 ID:axptN3b50
真・アルフェニックスは前情報なしで閃きたかった……
275 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2018/04/10(火) 22:58:28.22 ID:hrl4ammY0
全身全霊を掛けた急ブレーキ、靴底の踵部分が一気に数pすり減り、路面はマッチ箱を擦ったかのような跡と摩擦熱が残る
あわや惨事になる寸での所で彼と彼女は激突を免れた
レッド「だ、ダイジョウブ、か?」
恐る恐る、眼を開いた白薔薇に対して、心拍数が2倍速でリズムを刻む彼は片言ながら尋ねた…
白薔薇「は、はい…」
レッド「よ、良かったぁ〜」ヘナヘナ
とりあえず、女性を全力で跳ね飛ばさなかった事に心底安堵したようで、彼はその場にへたり込んだ
そんな二人の元へ遅れてやって来るのは不良刑事ことヒューズであり手にした銃を下げ目の前に奇妙な光景に眉を顰める
ヒューズ「…昨日のレディか、また迷ったんですか?」
レッド「うげっ!?お、おっさ―――ごほんっ、知り合いなのか?」
どうやら目の前の貴婦人はこの不良刑事の知人らしい
怒り狂って先程までレッドを焼き焦がそうとしていた凶悪な重火器は――知り合いの前だからか――既に彼を狙っておらず
兎にも角にも事態が自分にとっていい方向に転がりそうな気配を少年は感じ取った
…此処で間違っても「おっさん」などと言って怒りの導火線に再点火しない限りは
白薔薇「まぁ…!ヒューズさん!またお会いできましたね!」ニコッ
ヒューズ「へへっ!いやぁ〜連日のように美人さんに巡り合えるとは俺もツイてますなぁ、はっはっは!」
白薔薇「そちらの方はどうかなされたんですか?なにやらお急ぎで逃げていたようですが」
ヒューズ「え、あ、あ〜、いやね?ここは大都会でしょう?白薔薇さんと同じようにこの坊主、迷子になってたんですよ」
ヒューズ「それで俺がいち警官として道案内してたってワケで」
レッド(このおっさん…よく言うぜ)
っと、見た目麗しい貴婦人の前でマジメな警察を演じ始めたおっさんに内心毒づいたが
それで自分が助かるならば何も言うまいとレッドは合わせる事に決めた
レッド「いやー、そうなんですよ、俺、あのビルに行こうとして、急ぎの用だったんで全速力で走ってて…」
レッド「本当にすいません、さっきはぶつかりそうになって」ぺこっ
白薔薇「いえいえ、良いんです、私もぼんやりと歩いていたのが悪いのですから」
ヒューズ「(…そう来たか)くぅ〜…なんて良い人なんだ、オイ小僧、次からは気ぃつけて歩けや!」
レッド「わかってるって…んじゃ俺は急ぎの用なんでこれで!」タッタッタ!
道すがりの女性を利用したようで気が引けたが、ともかく彼は不良刑事のリンチから逃れるチャンスを生かし、場を去った
276 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2018/04/11(水) 02:59:17.74 ID:0WsO7RUb0
アセルス「白薔薇ぁぁぁぁ!!!!!」タッタッタ!
ルージュ「や、やっと見つけた…」ゼェゼェ
白薔薇「まぁっ!アセルス様!ルージュさんもエミリアさんも!」
ヒューズ「げっ!?エミリア…!!」ビクゥ
ヒューズ「な、仲間が来てくれてよかったじゃないですか!じゃ、俺はこれで!」ビシッ!ダッッ!
アセルス「駄目じゃないか!!勝手に居なくなって!」
白薔薇「も、申し訳ございません…」
エミリア「まぁまぁ…それより行きましょう?」
―――
――
―
【双子が旅立ってから…3日目、朝8時07分 :[マンハッタン]シップ発着場】
アニー「着いたわね![マンハッタン]」
サングラスを掛けた男「そのようだな…、後2時間もすればエミリア達と合流し[クーロン]に帰る事になるだろう」
アニー「じゃあさ!!それまで買い物楽しんできても良い!?此処のアクセサリーショップ人気高いんだよね〜」
アニー「風邪で寝込んだライザの分までなんかお土産買ってあげたいし」
サングラスを掛けた男「好きにしろ」
サングラスを掛けた男「君はどうする?ライザのチケットが余ったからとアニーに連れられたのだろう?」
ブルー「…別に」
元は自分の金で買った乗船チケットだ、急遽来れなくなったアニー等の仲間の1人の代わりに自分が乗る事になった
この3日間で"保護のルーン"…なにより遭遇できるかどうかさえ怪しい[タンザー]の体内にあった"活力のルーン"を発見
その功績は大きいと言っても良い、そして…
サングラスを掛けた男「…それにしても中々感心した、君のような男が居るとは…勝利こそ男のロマン!分かっているな」
アニー「うわっ、出たよ…ルーファスの病気が」ハァ〜
ルーファス「アニー、何を言うか、勝利は良いモノだ、女のお前には分からんだろうがな…!」
277 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2018/04/12(木) 20:21:58.35 ID:MRpS5VUSO
なんであんなに勝利フェチなんだろうなこのグラサン
278 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2018/04/13(金) 22:27:03.36 ID:idnRdBzy0
"勝利のルーン"
印術の資質を修得する為に乗り越えねばならぬ4つの試練、その内2つは既に乗り越え、もう半分は今この場に居る男女が
試練の成功へと繋がる鍵を握っている
刑務所への潜入はアニー、そして…―――この日の朝、ブルーが知り合ったルーファスというサングラスの男
彼はどういう訳か"勝利のルーン"が刻まれている遺跡によく赴き
観光目的で訪れた男性客に『勝利ッ!それは男の勲章!そう思わんかね?』と問うらしい…それだけ聞けば変質者である
先述の通り、この3日間で試練を2つも踏破したのは功績として大きい、陰と陽の資質は先日の事件が切欠で今は誰ひとり
修行することができない為、ブルーもルージュも指を咥えて待つか他の資質集めに奔走する他ない…
先に[ドゥヴァン]で小石を受け取り、既に半分試練を終えたブルーには余裕があった
仮にルージュが秘術ではなく印術の試練を選択していたと仮定しても、追い抜かれることはほぼ無いに等しいし
万が一にも弟が兄より優れていてこの3日間で秘術の4試練を全てクリアしてたとしてもだ
[ルミナス]の封鎖が解除されるまで暇を持て余すのだ
ブルー(術の鍛錬…それと、術力が切れて魔術が使えなくなった時の対処法を練るなりしようと考えていたが…)
ブルー「ルーファス、本当に"勝利のルーン"について詳しいんだな?」
ルーンの刻まれた巨石付近は力に引き寄せられてモンスターが出没する、粗蟲共然り、スライムプール然りだ
前情報を得られるならば、聞いておいて損は無かろう…
ルーファス「ああ、何度か[武王の古墳]には潜ったことがあるからな、経験譚を聞かせてやろう」
腕を組み相変わらずサングラス越しの眼はどうなってるのか分からんが微笑を携え、それはそれはご機嫌といった様子だ
アニー「ルーファス!!ちょっと買い物行ってくるからねーーー!」
ルーファス「ああ!…さて何から話したものか…まず、入口から入って左側の奥に宝箱が3つある部屋があるがそれは」
―――
――
―
279 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2018/04/13(金) 23:06:23.35 ID:idnRdBzy0
ルージュ「お、おぉ…!あれがキグナス号!!」
シップ発着場の展望エリアから眺める宇宙船<リージョン・シップ>の機影に銀髪の彼は目を輝かせた
白く美しい白鳥をモチーフにしたデザインは実に見栄えの宜しい外装であった、一眼レフカメラを手に
その姿を写真に収めるマニアのシャッター音が激しいのも頷ける
白薔薇「…綺麗ですわ」
アセルス「どう?機械にもああいうのがあるんだ」
白薔薇「ええ…[ファシナトゥール]に居た頃は全く想像もつきませんでしたが…これは」
エミリア「…」
エミリア(キグナス、か……レン、私達あの日、二人で一緒に乗ったわね…パトロール隊員なんて危険な仕事辞めてって)
エミリア(私があそこであんな事言わなければ喧嘩なんてせずに済んだの…?)
エミリア(気まずさも何も無く、もっと陽の高い内からウェディングドレスを持って家に行けて…そうすればレンも)ジワッ
エミリア「…っ!」フキフキ
エミリア「いつ見ても!綺麗な船よね!!!三人共!売店でも見に行かない?観光ガイドとか必要でしょ」ニコッ
「…おい、あの船か?」ヒソヒソ
「ああ、情報は確かだぜ…」ヒソヒソ
「よし、ノーマッドのお頭に報告だ」ヒソヒソ
様々な思惑、想い、人々を乗せて、白鳥の乗降口は閉ざされていく…
【10時25分】 [マンハッタン]発 [クーロン]行き便は今、大空の彼方へとその翼を広げ飛び立った…
280 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2018/05/22(火) 23:04:56.70 ID:2Lg3471g0
混沌、それは雲が悠々と流る青空を突き抜けた先にある"空の先にある空"の事だ
その空間は死が充満していて、あらゆる生命は放り出された瞬間に身体が圧縮されて潰れ、消滅すると学者は説いた
大気圏、という世界<リージョン>を覆うフィールドバリアに護られているからこそ地上の生物は生きていける
だが大気圏の外、即ち混沌の空では身体が重力の激流に常に晒され肉も骨も軋み縮み、最後は圧縮されて粉微塵となり死ぬ
どこかのリージョンでは混沌の事を"宇宙空間"という名称で呼ぶようだが…それは少数派である
ブルー(悪くないな)
死の空を白鳥を模した光り輝く箱舟が渡航していく
金の髪を束ねた魔術師は船内を暇つぶしがてらに散策していた
オーバーワークな鍛錬も祖国からの任務も今日は遂行しない、適度に急速を取らねば効率が落ちる…
テラスから眺める空は、月並みな言葉しか出せないが綺麗だった
雲を突き抜け、星が矢の様に眺める自分達の視線から外れていく…
こんなにも美しいというのに、外は一歩出れば身体が朽ちて死に至る空間だというのだ
紙コップに入った甘いカフェラッテを傾け、彼は穏やかな時間を過ごして居た…思えば初めてかもしれない
祖国に居た時は術士としての学業に明け暮れ、寝ても覚めても参考書の文面とにらめっこで
いや、遠い昔、学院を抜け出して同い年の誰かと遊んだような気がするが…この歳になってからは初めてだ
アニー「あっ!居た居た!アンタねぇ!勝手に居なくなって探したわよ!」タッタッタ!
ブルー(…鬱陶しい女が来たか)ハァ…
アニー「ちょっと、なにさ、その顔…露骨に嫌そうな顔を」
ブルー「別に、それより何か用があって来たのか?」ゴクッ
面倒臭い、そんな態度を顔に思いっ切り出しながら紙コップを口元に運び甘味を嗜む
相変わらずの不愛想な男に少しだけムッとしつつも金髪の女は答えた
アニー「あたしの知り合いとこの船で合流する予定って前言ったじゃん?」
ブルー「ああ(聞く限りで頭の悪そうな女か)」
アニー「時間帯も丁度いいしバイキングを楽しみながらって思ったのよ、ブルーも来る?」
ブルー「結構だ」
豪華客船のビュッフェは彼自身も興味はあるが、アニーだけでなく更にうるさそうなのが一緒なのは御免だ、そう思った
281 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2018/05/22(火) 23:17:01.84 ID:ycsGzSzQ0
きたきた
282 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2018/05/22(火) 23:23:59.76 ID:Kh9TbcU/O
キター‼
283 :
このレスは判定に含めない
[saga]:2018/05/23(水) 00:27:33.33 ID:j4kZd+nl0
アニー「そうかいそうかい、ならそこに1人で居るんだね」
折角人が飯に誘ってやったのに、と文句の1つ言ってやりたいが…
此処で騒ぐのも他の乗船客に迷惑だな、と彼女は慎む事にした
上司であるグラサン男はVIP専用の部屋で趣味の東洋刀を磨いている頃だろう…隠れ刀マニアで[シュライク]まで赴いては
[刀]を何処かの古墳から拾ってきたがっていたそうな…
青い法衣の男に背を向け、彼女は階段を下りてレストランへ向かっていく
アセルス「…美味しい」
エミリア「ふふっ!なら良かったわ」クスッ
レストランは人気が高く、昼食を求めてやって来た家族連れも含め大盛況と言っても良いだろう
銀食器で切り分けたガレットを一口、アセルスお嬢は蕩けるようなチーズとハムのハーモニーに正直な感想を漏らした
エミリア(この子も歳相応な笑顔をよく魅せるようになったわね…)
エミリア(突然、拉致同然で連れてかれてしかも人間としての生涯を奪われて…)ホロリ
アセルス「それにしてもこの料理…なんだかクレープみたいだね」
白薔薇「これはガレットですわ、痩せた土地で栽培が可能な粉を練った物で何世紀もの時を得てクレープになったのです」
アセルス「ふぅん?要するにクレープの御先祖様なんだ」クルクル
切り分けて生地で半熟卵<スクランブルエッグ>やハム等を巻いて食べる料理をマジマジと見つめる
まだ[シュライク]で普通の女子高校生として暮らしてた頃、帰り際に寄っていた屋台で売られてるホイップクリームだの
苺やバナナを包んだデザートの元となった物なのか、と感慨深げに眺めてそれからもう一口、噛み締める
白薔薇「それにしてもルージュさん、船内を探検したいだなんて」
アセルス「ルージュもあれで結構子供っぽいとこあるからなー…」
この場に居ない紅い魔術師は目を爛々と輝かせて船内を歩き回っている
機械文明がそれほど盛んではないリージョンからやって来たのも相まって色々と見て回りたいのだろう
特に、医務室前で[医療用ロボット]を見た時なんか視線がもう釘づけで―――
アニー「エミリアーーーーっ!!」パタパタ…
エミリア「んん?アニー!アニー!!」ガタッ
アセルス(走って来る女の人、あの人がアニーさんか…綺麗な人、っていうか胸が大きい…)じーっ
284 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2018/05/23(水) 02:46:23.14 ID:j4kZd+nl0
【双子が旅立ってから3日目 午後13時40分】
レッド(…まさか、この船に兵器が積み込まれてるなんてな、クソ!キャンベルビルの社長め)
レッド(あのヒューズって刑事のおっさんと成り行きで一緒に行ったけど証拠もつかめない以上何とも言えなかったし)
ホーク「レッド!作業が雑になってるぞ!」
レッド「あ、わりぃ…」
ホーク「気をつけろ、俺達機関士は船に乗ってる客の命を預かる身でもあるんだからな」
レッド「ああ!」
―――
――
―
アニー「そう…アセルスちゃん、だっけ?今あの白い人に連れてかれた子」
アニー「彼女も相当苦労してるのね」
エミリア「事情は分かったでしょ?この子を[クーロン]の闇医者の所に連れて行きたいの」
アニー「ええ!そういうことならお姉さんも協力しちゃうわよ!」フフンッ
エミリア「さっすが!アニー!話がわかるわ!」
アニー「所で?あと、1人居るんじゃなかったの?」
エミリア「ああ、術士が1人居るんだけど…今は船の中を散歩中よ」
アニー「へえ?…"術士"…奇遇ね、あたしも今は連れに術士の男が居るのよね…」
エミリア「あら?本当に」
―――
――
―
ルージュ「凄いなぁ、モニター画面をタッチすると船の案内図がでるんだぁ」ピッ!ピッ!
白薔薇「あら、ルージュさん」
ルージュ「お二人共、どうしたんです?」
アセルス「あ、うん……調子に乗って食べ過ぎちゃって///」カァ///
―――
――
―
「うん?」
「どうした」
「機長、未確認シップ急接近が衝突コースに入ります」
「なんだと!コンマ1回避、エマージェンシーパルスで警告!一体どこのヘタクソだ…」
285 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2018/05/23(水) 03:06:02.47 ID:j4kZd+nl0
―――
――
―
ルージュ「ほらほら!これ凄いでしょ!ボタンを押すと船の見取り図が」ピッピ!
白薔薇「まぁ…!機械というのは不思議ですわね」
アセルス「う〜ん、二人にはそんな風に見えるのか…」
―――
――
―
ブルー「…」テクテク
ブルー(道に迷った…)ズーン
<ほらほら!これ凄いでしょ!ボタンを押すと船の見取り図が
<まぁ…!機械というのは不思議ですわね
ブルー「うん?なんだ曲がり角の先に人が居るのか…丁度いい、此処がどの辺なのか訊くか」スタスタ
―――
――
―
アニー「それでさぁ!その男…すっっごく嫌味な奴なのよ!…変なとこで律儀だけどさ」ハァ
エミリア「何か話聞く限りその術士の人、かなりアレな人ね」
アニー「うん…悪い奴じゃないんだろうけどね」
エミリア「アニーってば、飲みすぎじゃないの?」
アニー「べっつにー、ちびちび飲んでるから良いのよ、それに迎え酒だから飲んだ方が良いのよ」
エミリア「あ、術士同士なら魔術とか共通の話題があるじゃない?アセルスの連れの彼と会わせてみない?」
アニー「うーん?あの協調性ゼロ男とぉ〜」ヒック
エミリア「丁度この船に乗ってるんでしょ?これも何かの縁って奴よ」
アニー「うーん、アイツとねぇ…」
―――
――
―
「だ、駄目です!回避パターンに追随してきます!進路を押さえています…これは!!」
「海賊船<パイレーツ・シップ>か! 緊急事態発令、全乗客・乗員を速やかに固定位置に!急げ!」
286 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2018/05/23(水) 09:56:42.68 ID:6x/HGBPUO
なんと言うニアミス
てかもしかしてアニー置いて一人で脱出するのかブルー……いやいやまさかね
287 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2018/05/24(木) 20:58:10.58 ID:nadEptv50
【双子が旅立ってから3日目 午後13時48分】
豪華客船の順風満帆な渡航は一転、最悪のアクシデントを迎える事となる
機長の的確な指示によって突如として鳴り響いたアラートは旅行客のアルバムに忘れられない思い出の一頁になるだろう
未来予想図を語らう新婚旅行に出ていた男女、子供連れの裕福な一家、経費で優雅な船旅を楽しんでいたリーマン
酷く耳障りなサイレンと慌ただしく逃げ惑う乗客、そんな群衆を避難誘導する乗組員
――――混沌の大海原をフライト真っ只中、逃げ場の無い宇宙船<リージョン・シップ>内部は"檻"と呼んでも良い
近くに着陸可能な小惑星<リージョン>は無い
これが普通の水面を走る帆船で、しかもただ座標しただけとあらば、救命ボートなり何なり出すだろうが
生憎とこれは星空を走る船、もっと言えば後ろからは武装した海賊船…乗客を乗せて緊急艇を射出しようものならどうか?
…まぁ明るい結末にはならないな
「大変だー!海賊だぁ!パイレーツが船を襲いに来たぞぉ!!」
乗客の誰かがその言葉を叫んだ、次に叫んだのは女性だった、お決まりのように「きゃー」なんてシンプルな悲鳴
毛を逆立てた猫が飛び跳ねるが如く椅子から立ち上がるスーツ姿の男、酒気を帯びた真っ赤な顔が真っ青になる中年女性
子供を抱き抱え妻の手を引き何処かへ逃げようとする旦那、我先にと他人を押し退け、押し倒し逃げる自分勝手な輩
阿鼻叫喚の絵図と化したレストランに取り残されたエミリアとアニー…
二人の女性もまた騒ぎの渦中から抜け出そうと藻掻いていた
「ひ、ひいいいぃぃぃ、た、助けてくれぇぇぇ!!」バタバタ
「ど、どけぇぇ!!俺が先だぁぁ!!」ドガッ
エミリア「きゃあっ!?」ドサッ!
アニー「エミリアっ!――――あたしの連れに何すんだこのクソ野郎!!」バキャァ!!
「うげーーーーっ!!」ベキッ!ズサァ―――ッ!!
アニー「エミリア、大丈夫?立てる…」スッ
エミリア「い"っ…あ、脚が…」ズキッ
288 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2018/05/24(木) 21:24:06.33 ID:nadEptv50
アニー「さっきのハゲおやじに突き飛ばされた時、思いっ切りぶつけたから…そん時に挫いて、くそっ」
アニー(武器はルーファスの所に置いて来てる…よりによってこんな時に)ギリッ
エミリアの肩に手を貸し友人をどうにかして安全な所へ移動しよう、彼女がそう判断すると同時に船体は大きく揺れた
―――
――
―
「コンマ5最大減速後にコンマ3回避だ!それから1コンマゼロの緊急出力で振り切る!」
「りょ、了解!パターン準備完了ですカウントダウン開始しま―――」
ド ガァ ァァ アアアアァァァァ―—…ッッ!
「こ、攻撃です!パイレーツが砲撃を うわぁっ!」グラッ
「い、いかん…!カウントダウン停止しろ!ミニマムドライブまで減速だ………くっ、これでは奴らに乗り込まれるな」
「き、機長…」
「…おお、神よ」
―――
――
―
ブルー「うぐっ…」ドガッ
ブルー「なんだ…さっきからこの揺れは…海賊が外から撃って来てるのか!」
<あ、アセルス様!此処から離れましょう!
<わかった!二人共行こう!
<う、うん!あっちに乗組員さんが居るから僕たちも!
<タッタッタ…!
ブルー(あっちに行けば良いのか、…とんだ船旅だな)チッ
今しがた壁に打ち付けた背中を擦りながら蒼き術士は声がした曲がり角の先に行こうとしたが…
ウエイトレスの少女「! あ、あんなところに逃げ遅れた人が! そこの人!!!こっちへ早く来てください!!」
彼は自分を呼び止める声に脚を止め、振り返った、紺色のショートヘアーに如何にもウエイトレスですと主張する
白いフリフリのホワイトプリムを頭に付けた娘と……医療用ロボットが一機
ウエイトレスの少女「此処からなら向こうの東ブロックより西ブロックの避難エリアが最寄りです!」
289 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2018/05/25(金) 00:16:45.98 ID:SYiJmmwLO
ユリアか?
290 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2018/05/25(金) 07:49:08.96 ID:oDhSmZuwo
ユリアとBJ&Kだろうな
そういやゲームでは思わせ振りなわりにあっさりフェードアウトしちゃったなユリア
291 :
>>290 ブラックレイ潜入前に一度戻るんだから会話ぐらいあっても良かったですよねー
[saga]:2018/05/29(火) 22:43:30.05 ID:9EwUrBht0
―――
――
―
ドカッ!バキィ!
「うわらばっ!?」
「おぎゃっ」
「あばっぷぅッ」
ヒューズ「ふぃーっ、…よう、小僧」コキコキ
キグナス号を襲撃した海賊が優先的に狙ったのは機関室、そして機長らの居る操縦室だ
機関士見習いのレッド少年は世話になった父の友人ホークを人質に取られ両手を上げて降伏することを余儀なくされていた
そこへいつの間に紛れ込んでいたのか、あの不良刑事が瞬きする間もなく相手を叩き伏せたのだ
レッド「ヒューズのおっさん!アンタもこの船に乗り込んでたのか!」
ヒューズ「だ・か・ら!俺はおっさんじゃ―――ああ、このやり取り何回やらせんだボケ!」
ヒューズ「いいか、連中の狙いはこの船に積み込まれた密輸武器だ」
ホーク「海賊共が情報を掴んだのか?」
ホークが帽子を被り直し、刑事に問う「ああ、だが情報を流したのはキャンベル社長さ、あの女、大したワルだ」と頭を
掻きながら刑事は吐き捨てる様に返答を返した
レッド「!キャンベルが海賊を使って武器の密輸売買してるって情報を隠滅しようとしてたのか!!」
ヒューズ「まっ、そういうことだわな、偶々この船に乗り合わせた乗客の皆さんにゃいい迷惑だ」
ヒューズ「ざっと見て来たが奴ら迅速だったぜ、ブリッジの占拠から避難区画に逃げ遅れた乗客を船室に押し込んで人質」
ヒューズ「こりゃモタモタしてたらあの女社長の犯罪を暴く為のブツも海賊がお持ち帰りしちまう」
レッドは正直言って碌な印象の無いヤクザ染みたこの男を初めて見直した、これでも厳選された刑事なんだな、と
ホーク「そこの配管から上へ伝って行けばレストラン方面へ出られる、どうする?」
レッド「決まってんだろ!ヒューズ!海賊共をとっちめるんなら俺も協力するぜ!」
ヒューズはしばし、考えたがこの船に詳しい奴が1人でも居れば策は練りようがある
連れて行く価値があると判断し同行を許可した
ヒューズ「いいだろう、やり方はお前に任せるぜ、機関長のおっさんは此処を見張っててくれ」
292 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[saga]:2018/06/02(土) 00:33:36.26 ID:yH3SqLpn0
動力室のパイプダクトをよじ登り、天井の小さな緊急用の出入口に手を触れる
有事の際に天井扉を潜り狭い道を進んでいけばレストランに置いてあるピアノの真下に出て来れる仕組みだ
乗組員だけが知っている緊急避難ハッチ、レッドは機関長に手渡された工具で天井の戸を開けて入り、その後を刑事が続く
レッド「…まさか、ガキの頃みたスパイ映画みてぇな事するなんてなぁ」
ヒューズ「へっ、スパイ映画か…笑える例えだぜ、全く」
レッド「この真上だな、今開ける」カチャカチャ
ヒューズ「おう、匍匐前進で狭い中を野郎のケツばっか見んのも嫌だからな早めに頼むぜ」
カチャカチャ…!カチッ!
レストランフロア緊急ハッチ『 』パカッ!
―――ヨジヨジ、ゴソゴソ…ヒョコッ!
レッド「 」キョロキョロ
レッド「よし、誰も居ない!」バッ!
ヒューズ「……めっちゃくちゃだな、料理の乗ったテーブルひっくり返ってらぁ、勿体ねー」キョロキョロ
刑事は、ホルスターからIRPO隊員に支給される[ハンドブラスター]の電源を入れる
敵を痺れさせるパラライザー形態から電光剣と化すソード形態にもなる多様性のある重火器だ
レッド「野郎共め…!通路を楽器で塞いでやがる」
ヒューズ「コンサート用の楽器か、出鱈目に積み上げてバリケードのつもりか」
レッド「…右側の通路と左側の通路、どっちから攻める」
ヒューズ「右だな、俺の勘だが左は奴さん達が見張ってると見たね」
スタスタ…!
ヒューズ「! 待ちな」ガシッ
レッド「おわっ!」
ヒューズ「声出すんじゃねぇ!…ほれ見て見てろ、俺の勘は正しかったろう、曲がり角の向こう」スッ
レッド「あぁ!人影が…」
ヒューズ「この船の構造上、どう見る?」
レッド「…この先に行けばグルっと回り込める…俺とアンタでアイツを挟み撃ちにできそうだ」
ヒューズ「決まりだな、レッドお前はあっちから行け」
293 :
以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします
[sage]:2018/06/02(土) 00:35:29.00 ID:5VvMLvIe0
ここ無言で目配せかハンドサインしてんのかと思ってた
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