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ブルー「俺達は…」ルージュ「2人で1人、だよねっ!」『サガフロ IF】

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918 :以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします [sage]:2022/07/12(火) 02:56:08.76 ID:6AnDoZSg0
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919 :以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします [sage]:2022/07/13(水) 03:00:47.65 ID:njtu5HLN0
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920 :続き土日、もしかしたら早いかもしれない [saga]:2022/07/17(日) 06:43:48.44 ID:XJ4v8BTp0

 ギャングスターは一言も発しなかった。握りこぶしを作ってただ打ち震えていた。…それから暫くの沈黙が続き、やがて



 カバレロ「……足を洗えだと?また一からやり直せだと?…よくもまぁ簡単に言ってくれる」ハァ


 項垂れて大きく息を吐いた。ネオン輝く無法土地の支配者は降参だと言わんばかりに手を上げる。
"城<ファクトリー>"も潰れて、[ボロ]での資源横領、政治屋相手の裏取引ももうできまい…年貢の納め時だろうな

 成り上がったギャングは天を仰いだ、[スクラップ]の夜天光はいっそ忌々しい程に瞬いてた





【双子が旅立って11日目 午後 20時17分 [スクラップ]】

―――
――



 発着場の自動ドアが開かれて湿気を含んだ何処か黴臭さのある風が鼻腔を掠めた、まだ1日も経過していないのに
この空気と雑踏、喧騒…それに[スクラップ]とは違ったいやらしさのあるネオンの光が妙に懐かしく思えたのは
砂埃と暑さに苛まれる土地に居た所為か

 術士一行は[クーロン]に帰ってきた。ただ一名を除いて





   エミリア「えーっ!?じゃあリュートってば[ヨークランド]に帰っちゃったの!?」

    ブルー「まぁな、帰ったと言ってもアイツは俺達が[ディスペア]に潜入する前には帰ると言ったがな」
    アニー「しっかし、カバレロもなんだかんだで人望あったのね、部下がこぞって付き合うなんてさ〜」


 術士は発着場での出来事を思い起こす…。弦楽器を背負ったニートが[クーロン]までカバレロ一味を全員連れてきて
それから次の様に発言したのであった…。




 -リュート『つーわけで、俺ちょっくらカバレロ達を連れて[ヨークランド]に里帰りするわ』-

  -ブルー『放って置けばよかろうに、そんなならず者集団など…』-

 -リュート『冷てぇこと言うなってカバレロ一味もちゃんと心を入れ替えて真面目に働くってきっと!』-

 -メイレン『貴方も変な所で真面目よね、仕事探しを手伝うってアレ本当にやるんだから』-


 -リュート『へへっ、あれから機内でも一人一人になにやりてぇんだ?とか趣味や特技を聞いたんだ』-

 -リュート『したら「あれ?コイツ等農業とか得意なんじゃね?」って思ったからよ、地元の知り合いの伝手を使うさ』-



 このニートは不思議な事に"気づけば身の上話やらなんやらを語ってしまう奇妙な魅力があった"、故にギャング一味から
話を聞いて、暑い風土の[スクラップ]生まれ特有のど根性や、なんやかんやで荒事ができるくらいに力仕事にも自信があり
[鋼の傭兵団]に乗って操縦できて工場機材の稼働に精通することからトラクター等の農作機械も教えれば割とできそうで

 もっと言えばカバレロファミリーの構成員の大半が"メカ"と例のジャンク屋の蜥蜴含めた"モンスター"種で色んな意味で
[ヨークランド]という土地は人種問わずで農業のノウハウを学ばせるのには適した土地なのだ…
 人種、経歴に対して偏見的な物の見かたは無いだろうし色々考えた結果が地元の顔が利く農家に
彼らを紹介してみようという話に纏まったのである

 [沼地]などの水源も近く、田畑が多い所為で勘違いされがちだが時期によっては相当に暑い土地だ、乾燥した風が吹く
そこより暑い土地柄で育った彼らにとっては涼風と呼べる程度で、根性もあるとくればやり切れる筈だ

 ある程度仕事を覚えたら[スクラップ]の土壌でも育つ作物の種、…例えば開拓時代の某国を代表するジャガイモなんかだ
そういった物で一からやり直させるのも悪くはない、心をちゃんと入れ替えているのなら最悪そのまま[ヨークランド]で
受け入れて貰える可能性もあるかもしれん…



   エミリア「…ふぅん、すぐ戻って来るとはいえ賑やか担当がいなくなるとちょっと寂しいわね」

    ブルー「なに直ぐに戻って来る、彼奴は母親に遭ったら殴られると言っていたからな遭遇する前に来るさ」

    アニー「まっ、そうだよねぇ…リュートだもん」
921 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/07/17(日) 18:21:07.05 ID:cX2aZAnO0
おつー
やるなあリュート
922 :予定より数日遅れてすみません、2レスですがどうぞ [saga]:2022/07/26(火) 11:00:47.90 ID:PgghdCB30
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―――
――



        レッド([天地二段]…!)


 飛翔した少年の剣技が緑髪の少女目掛けて振り下ろされる、それを彼女が[ディフレクト]する
紅き妖刀を盾代わりに、手に重い衝撃が伝わった事で感じる痺れに思わず貌を歪める少女アセルス…そんな彼女に少年は
面打ちからの胴斬りへと移行するように剣を横凪に振るう


     アセルス「…天地……二段が、来るのはわかっているッ!」キィィンッ!


 少年の二連撃を防ぎ、更には防いだ妖刀をそのままスイングさせて彼を弾き飛ばす
数々の死闘を潜り抜けた事で彼女自身の戦闘能力も培われてきたが、鮮血を連想させる紅い劔の柄を握った今の彼女は…!
[幻魔]の力を解禁した今のアセルスは以前とは比較にならない強さを手にしたのである…ッ!



「[生命波動]!!」

「[幻夢の一撃]―――――[ジャッカル]よ!」


 雑木林の中、レッドを樹木の幹に叩きつけた後そのまま追撃に向かおうとした緑髪の少女目掛けて二方向から術が飛ぶ
彼女から見れば右斜め後ろの方角から翆玉色の光で出来た鎖が伸び、左斜め後ろからは異界の門より現れし魔獣が牙を向け
 彼女は瞬時に脚で落ち葉の絨毯を蹴り飛ばし[京]の空へ…天へと跳び発ち劔を振るったッ!
地表から上へと向かって突き上げる様に剣を上方へ…ボクサーが利き腕の拳で渾身のアッパーでも振るうかの如く…ッッ!



  アセルス(後方二方向から飛んでくるルージュと白薔薇の術はフェイント…本命は…っ!)

  アセルス「[ライジングノヴァ]!!!」


 緑髪の少女が下から上へと突き上げる様に振るった剣閃、その動きは剣技の中でも最上位技に数えられる技…!


……とは言え、まだ彼女の練度は完璧とは言い難い。

 技名を口に出し実際に放ってみたものの…本来の[ライジングノヴァ]に匹敵する威力には満たない上に
"闘気<オーラ>"による小規模爆発も発生しない、未完成技であった…


 ズパァン!!   ―――…チュドーン!


 術士と妖魔による囮の術攻撃、本命は真上…二人と違って術の詠唱も必要無く、ノータイムで且つ無音で攻撃が可能な
ラビットの[ミサイルポッド]だ…!アセルスが後ろを振り返り、思念の鎖と異界の魔獣を切り捨てる事に思考を
持って行かれていれば間違いなく弾頭が少女にぶち当たり爆発アフロヘアーの出来上がりで本日の戦闘訓練は終了だった

 なんちゃって[ライジングノヴァ]もどきで音も無く放たれた頭上のミサイルを切り裂き、2分割された実弾兵器は彼女の
後方から迫っていたルージュの魔術と白薔薇の召喚した魔獣目掛けてヒュルヒュルと落ちていき衝突、火球を作って消えた




 BJ&K「データ解析…、昨日に比べて動きが随分と良くなりました、戦場全体を見通す視野も広がり陽動にも掛からず」

 BJ&K「敵の実弾兵器を切り裂き、切ったその破片で後方の相手2人の攻撃を相殺して対処もできる」


 BJ&K「一旦小休止としましょう。怪我を治療します」ウィーン!



 アセルス「ふぅ…大丈夫?烈人くん」チャキッ

  レッド「イテテ…ちょっぴり背中がヒリヒリするけど平気だ、姉ちゃん強くなったなぁ…」



 ラビット「発射音、ミサイルの飛来音、共にステルス性の高い方式を採用したつもりでしたが気付くとはお見事です」

 アセルス「ありがとう、でも…今回の戦闘は反省点が沢山あるんだよ」


 武器を納刀した彼女は口元に手を当てて考え込む、咄嗟にレッドの攻撃を[ディフレクト]で防いだが護るよりも攻めに
徹するべきだったかもしれない、対峙した時の金獅子から感じた並みならぬ闘気…アレを倒そうと思うのならば
[幻魔双破]や[かすみ青眼]の様なカウンターも狙っていく必要性があるのかもしれない、と…
923 :続きは土日のどちらか予定 [saga]:2022/07/26(火) 11:01:55.51 ID:PgghdCB30

 それに彼女との果し合いに備えて新技開発にも勤しんだがさっき使った[ライジングノヴァ]も正直言って稚拙な出来だ
形だけはそれっぽくした"なんちゃってもどき"でしかない、本来の威力と精度でなければ効くどころか当たるのかも怪しい



  アセルス「…もっと、強くなりたい…っ!」




 白薔薇を護りたい。


 親友のルージュや旧知の仲である烈人、この旅で知り合った仲間達だってそうだ――せめて己の手が届く範囲の人を…!





 ピトッ


  アセルス「ひゃああぁぁっ!?!?」ビックゥ

   白薔薇「アセルス様、根を詰め過ぎるのはよろしくありませんわ」つ『冷えたラムネ』


 不意に頬にひんやりとした感触が宛がわれる、思考の淀みに沈みかけていた彼女の意識が現実に引き戻され何事か!?と
顔を向ければ[京]の出店では然して珍しくも無い、どこか懐かしさのある炭酸飲料の入った瓶が視界に入った


  ルージュ「適度にリフレッシュしないとね、こういうのってパフォーマンスに影響するからさ」


 紅き魔術師とサボテン頭の少年が露店で購入していた飲料を何時の間にか手に持って笑っていた
「こういう時、BJ&Kが簡易冷蔵庫みたいな役割で助かるぜ」と少年が笑い、「本来は医薬品を冷やす為ですが」と
心なしか不満げな感情を伴っている様に聞こえる機械音声の声が聞こえてくる

 目をぱちくりと瞬かせて、遅れてアセルスも笑い出した
妖魔の国で12年の時を経て目覚めてからは何かと肩の力を抜くことを忘れがちになっていたものだ…

 ひとしきり笑ってから緑髪の少女は天を仰ぐ、鍛錬中に何度も見上げてた筈の空の色なんてすっかり気にも留めなかった
気付けばどうだ?暗色に染まり、遥か彼方で輝く"惑星<リージョン>"の星あ光が見えるではないか


 ラムネ瓶の栓を軽く叩いて、ポンと飲み口を塞ぐビー玉を落とし込む
炭酸の気泡に包まれた硝子玉と瓶から溢れ出す飲料を眺めて、懐かしい甘さを口に含んだ


  アセルス「…美味しい」

   白薔薇「ふふっ、そうですね!私も初めて飲みましたが良いものですね」




  ボォン! ボン!ボン!


 ルージュ「んんっ?何の音?」キョロキョロ
  レッド「おっ!見ろよアレ!花火だぜ…っ!そういや花火大会があるっつってたがこっからでも見えるもんだなぁ」


 雑木林の中、木々の間から覗かせる漆黒の帷に複数の光が打ち上がり大輪を花咲かせた
近くにあった大岩の上に腰掛けて一行は暫し合間、ラムネの瓶を片手に花火に見とれていた、少年曰く詳細は知らないが
この"惑星<リージョン>"で今日は何かの記念日だったらしくそれで[庭園]の方で花火が上がっているそうな


  アセルス「…なんだか夏祭りみたいだね」

   レッド「ああ、ガキの頃を思い出すぜ…」
  ルージュ「お祭りかぁ…僕はこんなお祭り参加できる機会がそうそう無かったからなぁ…」


  ラビット「でしたら今から行ってみませんか?鍛錬も本日予定していたスケジュールをクリアしたので気分転換で」

   レッド「おっ!イイコト言うじゃねぇかラビット!もしかしたら今行けば食い物の出店もあるかもしれねぇしな!」


 空っぽになった瓶を手に彼らは雑木林を抜けて街道へと躍り出る、着物姿の地元民から他所からの観光客まで皆が一様に
一か所を目指し、ある者は川辺や花火の見やすい茶店の席へと腰を下ろす、群衆に紛れて紅き術士一行も束の間の休息を
楽しむのであった… 来るべき金獅子との約束の刻限まで残り2日と5時間近く……

【双子が旅立って11日目 午後 21時15分 [京]】
924 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2022/07/26(火) 11:17:08.63 ID:jNG8MUzp0
読んでるよ、支援
925 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/07/28(木) 04:38:00.58 ID:eV4+hLm30

アセルス姉ちゃんと烈斗くんで訓練とかたまらんシチュだなあ
926 :引換券 [saga]:2022/07/31(日) 23:16:33.58 ID:69/vRtt50
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―――
――
























               【双子が旅立って12日目 午後 18時05分 "[ディスペア]" 】
















  ディスペア看守A「いや…なんというか作業員さん、アンタでっかいねぇ…こう逞しいというか体格に恵まれてるな」




     サンダー「えっ?そ、そうかなぁ…///」テレッ//


     リュート「なははっ!コイツが便利なんスよ〜!力仕事で大活躍するもんでして」

      ブルー「…。」




 リージョン界における凶悪犯罪者が収容される刑務所の"惑星<リージョン>"…[ディスペア]、此処にはブルーが兼ねてより
"印術の試練"を達成するために必要な[解放のルーン]が刻まれた巨石がある為ずっと来たがっていた場所であった

 此処に潜入したい、ただそれだけの為にアニー相手に(ブルー基準では)遜った態度で接しご機嫌を取り続けてきたのだ
色々あって"刑期100万年の男"に会いたいらしいクーン一行も交えて今この場に彼は立っているが…


  ディスペア看守A「そんだけゴツいなら檻越しに凶悪犯を見ても大丈夫そうだな!逆に向こうがビビるか!はははっ!」



     サンダー「ひえっ!凶悪犯!?!?こ、こわいよぉぉぉぉぉ!!アニキ〜〜〜!!」ガクブルガクブル

     リュート「…たはは!コイツ、ナリはこんなんだけど怖がりなんスよ…あはは」



      ブルー(…本当に連れてきてよかったのか、選択ミスったんじゃないのか俺よ)ハァ…


 蒼き魔術師一行に新たなメンバーが1人追加されていた…名前はサンダー、[オーガ]種のモンスターで
見た目通りの怪力、最初から習得している技も優秀なラインナップで並み大抵の雑兵なら蹴散らせる猛者である


 何故かちゃらんぽらんな無職の男をアニキと呼び慕うこの強面がどうしてこの場に居るのか?遡る事数時間前…―――
927 :次回は次の土日か早ければ水曜日 [saga]:2022/07/31(日) 23:17:13.45 ID:69/vRtt50

【双子が旅立って12日目 午後14時27分 [クーロン]】


   ブルー「…これがその指輪か?」

   クーン「そうだよ、えへへ〜!ブルー前から指輪の兄弟たちを見てみたいって言ってたけど、どう?どう?」

   ブルー「ふむ、確かに一つ一つには奇妙な魔力が宿っているがコレで願いが叶うとは思えんな…」



 祖国に伝わる古い御伽話、魔法の指輪を集めた賢王が[マジックキングダム]の国民を更により良い暮らしと豊かな富を
享受できるように"天国"への門を開き、多くの人々が楽園で夢の様な生活をできるようになった…という主旨の伝承がある

 御伽話と謳われる程の昔話は史実の中で本当にあった出来事を子供向けに簡略化した話として次世代へ伝え聞かせたり
あるいは長い歴史の中で伝言ゲームの要領で途中から間違った伝播のされ方をした語りだったり…
何れにせよ元となったネタが何かしらある筈なのだ


 自分が生まれ育った故郷、自分を育ててくれた祖国、御国の為に命を投げ捨てる覚悟の術士だ


 愛国心から"そういう事柄"には興味関心はある。


 緑の獣っ子から集めた指輪を観させてもらったが…正直なトコロやはり単なる作り話だったか、と彼は落胆した
確かに奇妙な魔力は宿っている、天に掲げれば認識阻害の効果や大人数を溢れんばかりの生命力で治癒することもできる
 それは認めるが…それだけのマジックアイテムに過ぎない


 とてもじゃないが何でも望みが叶うなんて出来過ぎた代物とまでは行かない、と彼は判断したのであった…




 ………ブルーの評価は間違っていない。


 個々の指輪は単なる"核<コア>"となる部位の力を増幅させるオプションに過ぎないのだから、一番の大本命つまり…
"核<コア>"となる大事な指輪を一目でも鑑定できる機会があればブルーの評価は180度裏返った事だろう






 指輪の兄弟の中で最も重要な指輪にして、最大の厄介者…メイレンが隠し持っている"黒の指輪"の存在さえ知っていれば




 カラン、カラン…!



 臨時休業中の札を掛けてある筈のイタ飯屋の扉が開かれた、カバレロ一味を地元の知り合いに預けてきた無職の男が
戻って来たのだろうと踏んで術士は入口の方を振り向く


 ブルー「―――やっと帰ってきたかリュー…トぉ!?」ビクッ


 手にしていた指輪をテーブルの上に置き、彼は振り返った…するとどうだ、そこには想像していた顔とは違った人物が
…否、それ以前に見た目が違った

 座ったままの姿勢と言えども振り向いた彼の視界に入ったのは立派な胸筋と腹筋、肌の色は真っ赤
少し首を下に向ければ靴も履かない剥き出しのゴツイ脚と鋭い爪を覗かせる爪先、上に向ければ厳つい顔した鬼の顔がある


  サンダー「えっ、ええっと…ど、どうも、オレ、サンダーって言うんだ。」オドオド


 図体とは裏腹にやけにオドオドした感じの[オーガ]種のモンスターが口を開いた、そんな巨漢の背後からひょっこりと
弦楽器を背負った無職が「よう!ブルー今帰ったぜ!!」と陽気な声で言いながら出てきた


   ブルー「お、おいリュート!!なんだコイツは!?」

  リュート「ああ、そうだった…なぁブルー、どうだろう?俺の弟分でサンダーっていうんだ」

  リュート「一緒に連れてってもらえないか?」


 帰ってきて早々にこの男はそんなことを言い出したのである。
928 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/08/01(月) 17:44:06.17 ID:Vk4ncGAa0
おつー
そういやマジックキングダムも指輪と関連深いんだな
929 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2022/08/03(水) 23:04:49.87 ID:k6E2CZHl0

 蒼き魔術師は品定めでもする様に紹介された弟分とやらを眺めた、容姿からも分かる通り腕っぷしは頼って良いと見た
戦力はあって困るものでもない…それに――――


  ブルー(…"モンスター"という種族も存外侮れんからな)チラッ

  スライム「(´・ω・)? ぶく?」ノソノソ


 術こそ全て、そんな魔術至上主義の民だったがリージョン界は彼が思う以上に広かった。

 少なくともこの旅の合間で何度このゲル状生物に助けられたことか…、一角獣の形態に代わり治癒や戦闘を繰り広げた事
地下で[巨獣]との闘いの時に[マリーチ]の姿になり最終的なトドメを刺したクーン

 戦闘形態でなくとも素の[スライム]の状態で[メイルシュトローム]の脅威から救われたのだって記憶に新しいだろうに


   ブルー「貴様の弟分か…。」ジッ

  サンダー「あ、あぅ…だ、ダメ?」ビクッ


   ブルー「よかろう、同行を認める…ただし!俺達は然る目的の為に[ディスペア]の監獄に潜入する」

   ブルー「しくじれば獄中生活を余儀なくされる事になるッ!…これを聞いて尚も覚悟は変えんか?」


  サンダー「う、うん!オレはアニキが行くなら何処へだって着いて行くよ!!」グッ!

   ブルー「…そうか、ならば何も言うまい。」


  リュート「おぉ!!良かったなぁ!サンダー!」

  サンダー「やったー!やったー!」ピョンピョン!


 大柄で無骨な鬼が無邪気な子供が如くぴょんぴょん飛び跳ねる、イタ飯屋の内部に振動が走る
扉奥からライザがやって来て「下の階までドスドス響いて来るからあまり暴れないで頂戴」とお小言を受ける程である
 そんなやり取りがされる中で魔術師はアニーに顔を向けて監獄潜入にこの新参者を連れてく上での確認を取る


 ブルー「確か…アニー、お前が用意してた潜入用の偽装IDや小道具には予備があったよな?」

 アニー「ああ、それね…なんかの手違いで潜入前にダメにしちまった時の為にって1人分多くは作らせてたわね〜」


 グラディウスなんて裏社会の仕事柄、何時どこで恨みを買ってる連中からの鉄砲玉が飛んでくるか判らない
不測の事態に巻き込まれて破損や紛失が有ってもいい様に最低でも1名分は余分に偽装IDは作らせていたが…。


 アニー「作業服に関しては…んー最悪モンスターの作業員ってコトでどうにかなるかなぁ」


 そう呟いてマグカップの中に注がれたモカを口にした、クーンはじめスライムも作業服は必要としない。
[ディスペア]潜入に置いてIDがあれば"モンスター"はどうにかなる、業者の服が必要なのはあくまで"人間<ヒューマン>"だ



  リュート「へへっ!ブルー、サンダーの奴を一緒に連れてくのを許してくれてありがとな!」ガシッ!

   ブルー「…フン、礼を言われるような事をしたつもりはない。」

   ブルー「そんなことよりも連れていくからにはコキ使うからそのつもりでいろ…戦闘面は頼りになるんだろう?」


 腕を伸ばして術士と肩を組む無職の男が朗らかな笑みを浮かべながら感謝を述べる、そんな男の馴れ馴れしさに
ため息を吐きつつも術士は腕を払い除けはしなかった。いい加減一々相手をするのも面倒になったからである
 同行を許したからにはお前の弟分と言えども戦力として使わせて貰うからな?とブルーが男に言う
すると彼はニィっと笑って次のような返事を口にした。




      リュート「サンダーは見た目は恐いが、本当に恐い奴だよ。」



…だから心配しなさんな。っと


―――
――
930 :次回は土日か月曜日予定 [saga]:2022/08/03(水) 23:05:25.83 ID:k6E2CZHl0


―――――そして現在




  ディスペア看守A「…あー、なんというか意外と怖がりさんか?」ポリポリ


    サンダー「だ、だって凶悪犯だなんてぇ…」ガクガク

     リュート「…あははは、ま、まぁ…コイツやる時はやる奴なんスよ」



   ブルー(…頭痛くなってきた)ハァ…




  ディスペア看守A「しかし今日は賑やかなもんだ、こんな美人さんまで居ると来た」

     メイレン「いやだもうっ!お世辞を言ってもなにもあげませんよ//」テレッ//



 褒められて気を良くしたのか破顔した顔で看守に手を振るメイレン、そんな作業服姿の彼女に笑いながら
お世辞じゃありませんよと肩を竦め看守は業者のIDコードのチェックに入る、サンダーの時と言い中々に口が巧いのだろう


  ディスペア看守A「許可書確認と。はい、どうぞ―――」




   「待て」




 看守がIDコードを機械で読み取り術士一行を通そうとしたところ、野太い声で止められる。声の主に視線を
送ればそこに居たのは立派なスーツに身を包み白い帽子を深々と目元近くまで被った男が立っていた。
 看守はその男の姿を見るや否や顔を強張らせて姿勢を正した。


 ディスペア看守A「しょ、所長ッ!」ビシッ


      所長「…いつもと違う作業員だな?」ジッ

 ディスペア看守A「許可書は本物です」


 部下からそれを聞くと監獄の最高責任者はふむ…っと顎に手を当てて暫し考え込む素振りを見せて彼に次の様に言った


    所長「ふむ、この業者は次の入札から外せ。孫請けに仕事を丸投げしおって…」


 やれやれ、最近の企業はコレだからいかんなと首を振った、それから一呼吸置いて所長はジッとクーンとスライムを見る


    所長「そこの犬達も作業するのか?」



      クーン「犬じゃないやい!」ムーッ
     スライム「(; ・`д・´)ぶ、ぶくぶくぶーーーっ!」ピョンピョン!


  メイレン「鼻が利くんです、何かと便利なんですよ」
   ブルー「本日はパイプ修理も承っております、聞けば野生の[ゼノ]や[スライム]が勝手に住み着いているとの事で」


 咄嗟にそれっぽい理由をつけてモンスター従業員も居るんですよとアピールしておく、パイプ管内部のゲル状生物共を
どうにかする為に鼻の利く奴や同種の生物を探せそうな奴も居るのだと。


   所長「…。」ジッ

   所長「よかろう、作業は迅速、かつ、確実にな」クルッ、…コツッ、コツッ、コツッ


 それだけ言って[ディスペア]の所長は踵を翻してその場を立ち去って行った…。ヒヤッとしたが第一関門は突破できた
931 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/08/05(金) 04:01:24.48 ID:/ymg/ilM0
クーンかわゆい
932 :次回は土日予定、早まる場合もあり [saga]:2022/08/08(月) 22:49:43.76 ID:a0fbJpcP0
―――
――



    アニー「ふぅ…さっきのは焦ったわ、よ、っと!」ヌギヌギ


 監獄内部に入り込んだ一行は作業着を脱ぎ、動きやすい普段着へと直ぐに着替える

 この刑務所の"常連客"だったアニーは所長が現れた時、心臓が飛び出すかと思った…冤罪で囚われたエミリアを
グラサン上司からの命令でライザと共に救出しに来たのはまだ半年も経っちゃいない割と最近の出来事であった
 [解放のルーン]が刻まれた巨石に触れて晴れて放免となった瞬間もあの道楽所長に顔を見られていた筈だ…
だから反射的に背を向けて顔を見られない様にもしたが、人数の多さとサンダーの巨体の影に居たのが功を成したのか?


怪しまれない程度には適当に電装関連の修理と配管の整備の方をしておいた、"ガワ"だけはそれっぽく見える雑な整備だが
わざわざ裏の流通ルートからアニーが時間を掛けて仕入れてきただけの事はある
 修理工の知識なんぞ空っきしの素人集団でもある程度は誤魔化しが利く位には修繕できる万能キットだったな


    メイレン「ええ、ヒヤッとしたわね…じゃあ道中の案内お願いするわよ」

     アニー「OK。そっちは"刑期100万年の男"に用があるんだったわね…」

     アニー「あたしもどんな奴か知らないけど場所に心当たりならあるわ」


 刑期100万年の男、どんな罪状で捕まったのかは知らないがその囚人は顔も年齢も何もかもが不明で、ただ一つだけ
[ディスペア]の最奥にある独房が彼の"塒<ねぐら>"であるとされている、あくまでも噂の域だが
 エミリア救出作戦時にルーファスから叩き込まれた地図の間取りやその他事前情報から照らし合わせると
やはりその謎に包まれた区画しか候補が残らなくなるので間違いないだろう


    ブルー「…おい、その囚人とやらも良いが俺の方の依頼は忘れてないだろうな?」ジトーッ

    アニー「ああっ、もうっ!わかってるわよ!忘れてないから!巨石の方でしょ!!…近い方から先に行くのよ」


 同じ刑務所で方やとある囚人に、方や刑務所内にある特別な巨石に、目的別の依頼人がそれぞれに居るのだ
ガイドしてやるのは構わないが生憎と黄金髪の女は分身の術なんて器用なモンは使えない
どの道[ディスペア]内部を歩き回るのだからまずは道中でクーン一行を目的の場所まで連れて行ってその後、ブルーを
ルーンの刻まれた石へと案内する手順だ

 ここまで[解放のルーン]の為だけに何日もお預けを喰らった蒼き魔術師からすれば逸る気持ちもあるがグッと飲み込む
リージョン界の凶悪犯罪者が繋がれる施設だ、下手に単独で動くよりは勝手知ったる者達と共に歩むが吉、と理性で抑える


 階段を下り、長い梯子を下りてきた所でアニーが先頭に立ち「こっちよ。」と先導を始める、彼女に倣い太いパイプ管に
繋がっている梯子を昇り始める一行…しかし…


  リュート「ととっ…!?やべっ、着替えに手間取ってたら皆先に行っちまってらぁ!?」タタタッ

  リュート「……あり?あいつ等どっちに言ったんだ?」キョロキョロ


  サンダー「アニキーーーっ!置いてかないでくれぇ〜!」ドタバタ



―――――ドンッ!!


  リュート「おわっ!?サンダーばっかお前押すな!?」ワタワタ


 後ろから走って来た赤い巨体に押されて体勢を崩したリュートはそのままサンダーと縺れる様に転がりその先は―――




  ダストシュート『 「燃えるゴミは火・水」 』ドォーン!



 廃棄ゴミを捨てるためのダストシュートだァァッッ!!!転がる二人はそのままダストシュートから下層のゴミ捨て場に
あわや真っ逆さまに落ちていくゥ!!!


  リュート&サンダー「うわああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?!?」


 実に間抜けな話だが、こんなそんなで早速一行から逸れメンバーが出てしまったのであった…人数の多さ故か
パイプ管から入って行った魔術師一行もクーン一行もこれに気が付いていないという…
933 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/08/08(月) 22:53:46.64 ID:ghhlLhHXo
孫請けに仕事丸投げはいけないよね(戒め
934 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/08/09(火) 04:51:38.55 ID:5QpmsiA60
おつー
935 :以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします [sage]:2022/08/11(木) 03:11:54.82 ID:pc0lMB0V0
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
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936 :1日遅れて申し訳ない 続きは土日予定 [saga]:2022/08/15(月) 16:34:56.91 ID:rBkd7eZT0

 田舎出身組の二人がゴミ捨て場に落下する中、先行した面々は太いパイプ管の道を通っていた
エミリア曰く「まるで学食だわ」と評した囚人達の食堂の真上を通り、規則性のある動きで出現と消失を繰り返す
ゲル状生物の住処と化した湿り気のある配管の中を潜り抜け、その先の梯子を昇り…


  アニー「こっちよ、いつもなら此処を降りてくルートだけど今回はそっち、向こう側に飛び乗るわ」シュバッ!


 そう言って道中放し飼いにされていたモンスターを切り裂いた剣を鞘に納めた彼女が向こう側へと跳ぶ、それに倣うよう
他の潜入者達も跳んで行く、長い降り階段の先に厳重警備がされた扉が一つ


   メイレン「此処に刑期100万年の男がいるのね…」

  フェイオン「私が開けよう」スッ


 人の生涯が何人分費やされれば償えるかもわからなくなる途方もない罪科を背負った人物が待ち受ける部屋だ
慕っている女の身に大事があっては困ると辮髪の男が前に出て無骨な腕でドアの取っ手を掴む
 彼が戸を開けるとそこに居たのは……!!





       所長「ご苦労だったね、やはりここの囚人に用があったのかね。」




  アニー「なっ!?道楽所長…ッ!」


 独房の中に囚人など居なかった。いたのは[ディスペア]の最高権力者…この監獄の所長その人だったのだ…ッ!
全員が身構える、このままでは憐れ一行は刑務所の愉快な仲間入りを果たしてお揃いの囚人服で臭い飯を食うハメになると

 しかし…所長は身構えた一行を一瞥してからフッと笑い、手を振る「拘束する気はない、落ち着き給え」との言葉付きで


 メイレン「どうして、バレたの…」ゴクリッ


 入口の所で最初に出会った時からだろうか?こちらにはアニーが居た…やはり顔を見られていたのか?当然の疑問を
紫髪の女性が投げかける…すると所長は右手の甲を見せる様に軽く手を挙げた、その薬指に嵌められた装飾品を見せる様に


  所長「君らが来た時、これが光ってね。そう…私は"ここの所長でもあり、同時に囚人でもある"」


 彼は事も無げにさらりと言ってのけた、自分は監獄の最高責任者だが、同時に囚人なのだと…この事実を知る物は
世界に数える程しかいない、自由の身でありながらも囚われの身―――なんと矛盾した立場であろうか…。


  所長「この[ディスペア]全てが私のための監獄と言ってもいいだろう…」


 どこか遠くを見つめる様にそう呟いた所長の表情は…深々と被った帽子の所為で目元は見えにくいが
口元は何処か皮肉めいた自嘲とも取れる笑みを零していた。
 長い年月を同じ場所で、同じ様なルーチンワークばかりしていた、そんな疲れ切った男の顔に見えたのだ…

 「今日を解放の日とする。」などと宣い、腕に自信のある囚人が自由を掴むために監獄内を奔走する様を眺める娯楽を
愉しむという道楽に耽る理由も全てそこにありそうな気がした


  メイレン「…一体、何したの?」


 純粋な疑問を投げかけた、目の前の男は間違いなく風変りな変人だが…極悪人には見えなかったからだ
それに対して、痛い横腹を突かれたと言った具合の苦笑を浮かべながら彼は言う


  所長「フッ、指輪が欲しいのではないのか?」

 …触れて欲しくない内容なのだろうな、露骨に話題を逸らした所長と、そんな彼の前にトコトコ歩いて行くマイペースな
緑の獣っ子が「うんっ!」と元気に声を上げる


   所長「何故だ?」

  クーン「んっとね…――――――」

―――
――
937 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2022/08/18(木) 01:28:47.68 ID:dMToGOzu0

所長妙に印象的よね
938 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2022/08/18(木) 04:20:06.98 ID:1Z0kFobQ0
スパイクタンパク単体で心臓やその他臓器に悪影響を及ぼすことがわかっています

何故一旦停止しないのですか

何故CDCが接種による若い人の心筋炎を認めているのに情報発信がないのですか
20代はたった1ヶ月で接種後死亡がコロナ死と同等になってます
因果関係の調査は?
939 :以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします [sage]:2022/08/19(金) 02:57:33.52 ID:e+DWnUH90
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940 :続き次の土日かもしれない [saga]:2022/08/21(日) 23:25:49.27 ID:3wW5IvOu0

 理由を問われたクーンはめちゃくちゃな説明をした。額に手を当て溜息を吐くメイレンや苦笑するフェイオン
それを眺める術士組達…なんとも混沌とした場だが、所長は顎に手を当て「そうか…まぁ、よかろう」と薬指に嵌めていた
[隠者の指輪]を取り外し差し出した


   所長「こんな所まで私に面会に来る者はそうはいない、持って行け。」


  クーン「良いの!?わーい!やったーっ!」ピョンピョン

  アニー「随分と気前が良いじゃないの」


   所長「さっきも言ったが君達が来た時にその指輪が光ったのだ、共鳴し合っていたから引き合わせただけだ」

   所長「退屈なのだよ、私は…。だからこそソレを君達に渡したらどうなるのか興味がある。」




   所長「クーンと言ったな?指輪を全て集め終えて君が目的を果たした暁には旅の話を聞かせてくれないか?」

  クーン「旅のお話?」

   所長「あぁ…とびっきりの冒険譚さ、どんな結末が待ち構えていたのかを語って欲しいんだ、私の退屈凌ぎになる」


 指輪をタダでくれてやる代わりに道楽所長は故郷の星を救いたがっている少年の物語を御所望のようで…
こうして変わり者の最高責任者と二言、三言ほど言葉を交わした後に一行は独房を後にした
 目的の一つ刑期100万年の男から指輪を得る事ができたのだ…であればもう一方の目的、[解放のルーン]が刻まれた石に
触れる為に監獄の最奥へと足を運ぶ必要がある

 それを聞いた所長は「ほう、また面白いショーを見せてくれるのかね?前の時同様に期待しているぞ」とアニーに言い
彼女は彼女で「げっ…やっぱりアンタ覚えてたのか…」と嫌そうな顔をしたそうな

―――
――



   ブルー「さて…長い遠回りだったが漸く、[解放のルーン]をこの[小石]に刻めるんだな」スッ


 蒼き魔術師は[バックパック]から取り出した石を眺めて感慨深く言葉を零した。4つあった石も残り2つ
その内の1つも今日この場でルーンが刻まれ、"資質"を得るのもそう遠くない未来になった訳だ…

 祖国から賜った使命…弟であるルージュと殺し合いをするという運命の日はまた近づくのだ


 クーン等一行は別に[印術]を極めたいワケではないので所長の計らいにより一足先に[ディスペア]の出口まで護送された
ボク達は一緒に行けないけど頑張ってね!と激励の言葉を受け彼らは来た道を戻り
アニーがいつも"客"を案内する本来の道順まで戻って来た


 スライム「(; ・`ω・´)ぶくぶくぶー」ノソノソ


  ブルー「ああ…一気に人手が少なくなったからな、警備ロボや放し飼いのモンスター共を相手取るのも疲れる」

  ブルー「1体1体は決して強くないが徒党を組まれて囲まれたとあってはな…改めて、戦いは数が物を言うと学んださ」


  アニー「へぇ〜、前までスライムが何言ってるのか全然分かってなかったのにまるでリュートみたいじゃん!」

  ブルー「あのボンクラと俺を同列にするのは止めろ!…別に理解してる訳じゃない、ただ大体言いたい事がわか――」



  ブルー「…。」



  ブルー「そういえばリュートで思い出したが、奴は何処だ?」キョロキョロ

  アニー「え」



 クーン達がパーティーから抜けた事で人員が減り戦力が大幅に落ちた、だから妙に手数が足りていないと思っていた
現状この面子3人しか居ない…っ!大所帯から一気に数が減った事で初めてリュートとサンダーが逸れた事に気が付いた

  ブルー「あ、あ、あんの大馬鹿野郎!!!何処に行ったんだァ!?」

 所内に術士の怒声が木霊した…。最近ちょっと見直したと思ったらコレである。
941 :色々立てこんだり不調だったりで遅くなりすまない、4レスだけですが投下 [saga]:2022/10/02(日) 23:46:48.30 ID:nkkEfNMT0

 蒼き魔術師は怒鳴り散らした後、冷静になろうと努めた…

 これまで通って来た道を思い出せ、ゲル状生物も沸く配管の中は多少複雑な部分はあったが構造からして結局の所は
一本道と言ってもいい道筋だ…これと言って枝分かれした道と呼べる物も無い
 強いて言うのであれば刑期100万年の男の独房と巨石へ通ずるルートとの分岐点だけである


 もしもリュートがパーティーから逸れてしまったと推測するのであれば何をどう間違ったか知らないが自分達に
置いて行かれて独房行きの道順へ続く足場へ跳ばずそのまま道なりに巨石ルートへ進んだであろうと考えた





 ……実際の所は、ブルー等が考えるよりももっとずっと前の段階からダストシュートから落っこちて行ったという話だが



  ブルー「…チィ、世話の焼ける奴らだ…ルーンの刻まれた巨石の部屋に行くついでに連中を見つけて回収せねばな」

 スライム「(;´・ω・) ぶくぶー…」


 分岐点まで戻って来た一行は下層へと飛び降り、直地地点からすぐの入り口へと入る…
元は山積みにされていたコンテナだったと思われるものが崩れていてそれを足場に降りていく、コンテナの中身だったのか
途中無造作に転がっていた[シェルガード]が目に付く、憶測だが[ディスペア]職員の備品なのではないだろうか?
 アニー曰く、この監獄の従業員用ロッカーに何故か[ハンドバズーカ]が入ってるらしいのでそれを踏まえると
脱獄犯を取り押さえるための装備なのだろうと思われる


 廊下に繋がる部屋の出口へと歩いて行く最中に蒼き魔術師が声を掛ける


  ブルー「アレには乗らんのか?」

  アニー「あぁ、あの作業用エレベーターね…あれ乗っちゃうと面倒臭い事に入口までほぼ強制で戻る道のりになるの」

  アニー「真っすぐ目指すなら廊下を出て、廃材置き場のマンホールから下水を通るのがベストよ」


  ブルー「ふぅん…そういう物なのか」


 ガチャッ





「キェェェェェェェェェー――ッッッ!!」



 扉を開くと同時に[ピックバード]が鋭い[クチバシ]を突き出しながら飛来してきた!番犬ならぬ番鳥ッ!
初めから侵入者が出てくることを知っていたかのような動きで突飛してくる鳥を視認すると同時に急ぎ戸を閉める

 廊下に出ようとした手前から直ぐ様にエレベーターの部屋に戻り鉄製の分厚い扉を引くと、ドッ!と強い衝撃と激突音が
伝わる…どうやら先程の鳥がそのまま扉に激突したようだ
 もう一度ゆっくりと戸を開き、隙間から何も居ないか覗き込む様に廊下を見れば…


 「ガーッ!ピーッ!侵入者の反応あり 侵入者の反応あり」
 「[ディスペア]内部に侵入者だ!今日は所長も視察に来ている日だぞ!!なんとしても捕らえるんだ!!」



  リュート「ひえ〜!勘弁してくれぇ〜!」ドタバタ
  サンダー「お助け〜!!!」ドタバタ



 向こう側から大量の警備兵と雇われモンスター等、そして警備ロボを引き付けてきたリュート等の姿が…っ!



      ブルー「 何 し て く れ て ん だ 貴 様 ァ !! 」



   リュート「あぁっ!!ブルー良い所!!助けてくれぇぃ!!」

    アニー「…いやぁ、あの数は雑魚とは言え骨が折れるわ、うん」

942 :実際 解放のルーンはアニーの道案内ガン無視した方が早い [saga]:2022/10/02(日) 23:48:17.11 ID:nkkEfNMT0

 勝てない敵ではない、これまでの戦いで術力にも余裕が出てきたブルーの[ヴァーミリオンサンズ]で楽に一掃はできる
しかし、一発二発で掃討完了とはいくまい…修理業者の人間として変装して入って来たから持ち込めた荷物も戦いに適した
いつもの服装と武具、最低限の回復薬のみであり[術酒]の類は生憎と今回は置いてきている

 やれなくはないが念には念を入れるのであれば温存と行きたいところだ


 三十六計逃げるに如かず―――こうなればリュート等の後続から迫って来る[ディスペア]職員達の集団とエンカウントを
してしまう前にひたすら先へ先へと駆けて目的の地点まで逃げ込むなりするのが吉であろう


   ブル−「ええい!こっちだ着いて来い!」バッ!

  リュート「えっ!?術で全員ぶっ飛ばすんじゃねーの!?」

   ブルー「そうしたいのは山々だがな!」




   アニー「こっちよ!」ガチャッ!


 監獄内を走り続け術士達はある一室を目指す、道中でふと見覚えのある道を走っている事に気が付いたリュートが叫ぶ


  リュート「オイオイ!その部屋はゴミ捨て場だぞ!」
  サンダー「ダストシュートから直通で落ちてきた場所だ〜!」

   アニー「こっちで合ってるの!良いから早くアンタ達も入りなさい!内側から鍵かけるからっ!」


 全員がゴミ捨て場に入ると同時にアニーが手早く鉄扉を閉じて鍵を閉める、当然職員達はマスターキーを持参している為
ほんの僅かな時間稼ぎにしかならない、そこで彼女は―――


  アニー「ゴミ捨て場なら板切れでも[鉄パイプ]でもなんでも手頃な物があるでしょう!心張り棒の代わりにするのよ」


 外側から簡単に開けない様にすべく廃材の山へと走り出す、ゴミ捨て場というだけあって何処から湧いたのか
虫系統のモンスターが二匹沸いてダンゴムシの様に転がりながら接近してくるが「邪魔よ!」の一言と共に切り捨てられる
 幸いにも塵置き場の格子扉は鍵が掛かっておらず簡単に開けることはできた、程よいサイズの鉄棒や木板、針金を手にし
戻ってきて手早くドアノブと扉上部のドアクローザーに細工を仕掛ける、これで簡単には鉄扉を突破できまい


  アニー「ふぅ、どうにかなったわね」

  ブルー「貴様、手慣れてるな…」

  アニー「そりゃあ仕事柄ね、で目的の場所だけどそこのマンホール下を通っていくわ」


 黄金髪の女が指差すはゴミ置き場から向って左の隅にある蓋の外れたマンホールであった
それを見て弦楽器を背負った男が「なんだ、わざわざ廊下に出なくてもそこの下に潜れば良かったのか」と嘆いていた


  リュート「サンダーと一緒に上のダストシュートから落っこちてそこのゴミ袋の上に着いたんだけどさ」

  リュート「そのまんま下水の方に行ってれば早かったのね…がっくし」ハァ…



  ブルー「もしや……貴様がいつも使う道案内ルートよりもコイツ等の来た道の方が最短ルートだったのではないか?」

  アニー「うっ!……こ、今回はクーン達をあの所長のトコに連れてく為にあのルートを通ったのよ!」


 ふとブルーは思った事をそのまま口に出してみた、いつもアニーは巨石に用がある顧客を
配管の上を伝うあの道順で案内してルーンへと連れて行く様だが、会敵の危険性と到達時間を顧みてもコレが最適解ではと

 断じていつも自分が"客"を案内する道順が遠回りなのではない!本来なら安全かつ最短で自分もダストシュートを使う!
…等とアニーが主張しているが本当かどうか怪しいものであった


 スライム「(;´・ω・) ぶくぶー、ぶくぶー、ぶくぶく!」ピョンピョン

 リュート「うん?幾ら扉に細工したって警備員が時間掛ければぶち破って来るから早く行こうってか?それもそうか…」


  ブルー「…今度は逸れるなよ」ジトーッ

 リュート「わ、分かったってば睨むなよ…」
943 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2022/10/02(日) 23:48:55.04 ID:nkkEfNMT0
―――
――


 ぴちょん…ぴちょん…。


 梯子を下りて黴臭さと古い油の様な匂いが入り混じった下水道を通っていく、時折"解放の日"に
チャレンジした者の遺体と思われる物か、随分と年季の入った囚人服と皮膚が腐れた遺体が下水の水に浮いていた…

 アニーが知り得る限り、ルーファス含む自分達以外に[ディスペア]の脱獄を試みた者はほぼ居ない、今の道楽所長の代に
変わってから成功させたのは初めてがあのグラサン上司なのだから…ここに浮かんでいるのはそれよりも
前のチャレンジャー達の末路と言った所だろうな


 金網状の床の上を歩き道中で遺骨を舐めていた[フェイトード]を蹴り飛ばし、梯子を上って出た先ではサーチライトの
強い光が床を照らしていた、"解放の日"を除いた厳戒態勢時はあの明かりが忙しなく動き回り
監獄内を忍び歩く者を探す役目を果たすのだが、幸いにもまだアレは稼働していないようであった

 そのまま道なりに進んでいくと路が途切れた場へと躍り出る、道は無く、ただ飛び降りる事で眼下に広がる通路に
一方通行でのみ向かう事ができる、ガラガラと音を立てて動く年季の入ったコンベアは鉄屑を何処かへと運んでいく



 目当てのブツは大階段を下った先の地下にある、であれば跳ばぬ理由など無いと言わんばかりに術士一行は飛び降り
コンベアの真横も通り抜けて長い長い降り階段へと…




 コツッ…コツッ…!



  アニー「さてとコレをアンタ達に渡しとくわね」スッ

  ブルー「? なんだこの不細工なヘルメットみたいな物は?」


 唐突に守銭奴の女から渡された奇妙な物体を手に蒼き術士はマジマジと眺める、自動二輪車を駆る者が着用する
バイザー付きのヘルメットの様にも見えなくはないソレを見て彼は言った…。


  ブルー「…いや、待てもしやコレは[赤外線スコープ]とやらか」


 多少部品を弄られた、ジャンク品の形跡はあるが確かにそれは赤外線を視認することができるようになる機器であった
術士に渡した物と同じ物を着用した女が口を開く、曰く「この先、入る度に変わる赤外線の迷路がある」とのことだ

 赤外線に触れれば即座にアラートが鳴り、どこからともなく警護のメカがすっ飛んでくるという寸法だ
リージョン界の名立たる悪党が投獄される監獄だけあって配備された戦闘機の能力はトリニティのお墨付き、モンド基地に
居た私兵団と同等か下手をすればそれ以上の場合もある


  アニー「避けれる戦闘は避けた方が良いでしょ」

  ブルー「…確かに」


 階段を降り切り、件のフロアへと扉を開き脚を進めると…


 リュート「おっ!!こりゃあすげぇや…マジに赤い線の壁が見えるぜ」

 サンダー「えぇ…そんなに凄いのかいアニキ?」
 スライム「('ω')ぶく?」


 "装飾品<アクセサリー>"しか装備できないモンスター種族達が"人間<ヒューマン>"に尋ねる、頭部装備ができる彼らにしか
視えざる壁の迷路の道を知る事はできないのであった…
 サンダー等からすればただ広っい空間に奇妙な円筒が一定間隔で大量に突き出てるだけの奇妙な間取りにしか見えない


  リュート「すげぇのなんのって、あえて遠回りするような道順だったり結構複雑に張り巡らされてんだよ」

  リュート「スパイ映画の主人公目線になったみたいだぜ…」テクテク


 ヒューっと口笛を吹いてすっかり上機嫌なリュートとその背にぴったりとついて来るモンスター種達、見えないからこそ
密着するように歩いて行くしかない
 落ち着いて赤外線の迷宮を通り抜り抜けて、[ヘッジホグ]が二体戯れている小部屋に辿り着く
赤外線のフロアが防衛ラインとして大本命だったのか抜けた先の守衛は強い物では無かった、容易くそれらを倒し
向って左側の梯子をよじ登り[ディスペア]のエアダクトへと一行は進んで行った
944 :今回ここまで 次回 土日予定 [saga]:2022/10/02(日) 23:50:14.34 ID:nkkEfNMT0

 ごうん…ごうん…!と人間どころか大型の貨物トラックさえ入りそうな巨大エアダクト内の突き当りでは換気扇が音を
立てながら回り続け、施設内に工業地帯の様な匂いと妙な湿り気を帯びた外気が空気を送り込んでいた

 向かい風の形で吹き付けてくる空気に逆らい、最奥まで進み壁伝いにちょっとした鉄格子があることを確認する
曰く、此処が目当ての巨石がある部屋へと通ずる抜け穴らしい
 工具箱から取り外し様の道具を漁り鉄格子を外す作業に掛かり出すアニー、彼女は術士達に向かって言う


  アニー「チョット後ろを見張ってて」

  ブルー「後ろだと?」

  アニー「ええ、"変なもの"が来るかもしれないから」


 以前エミリアを連れて此処を脱獄した時に背後から気色の悪い怪物がやってきたらしく
どうにもルーンを目指す者を襲う様にこの付近を塒<ねぐら>にしているらしい、雇われたモノなのか偶然ここの環境を
気に入り住み着いたのかは不明だが道楽所長はソレを大層気に入っていた


  サンダー「うぅ…なんか嫌な感じがする」


 後ろを見張る様に命じられた2人と2匹は自分達が入って来た入口の方に目線を向ける
換気扇の風切り音に混じってカタカタと妙な音が聞こえ始めたのは来た道を見つめて間もない事であった
 小心者の鬼人の言葉に応えるかの様に"ソレ"はやってきた

 生き物の死骸が長らく放置された腐臭と土の匂いを混ぜた異臭を漂わせ、ムカデを思わせる節足と蝙蝠の翼
先端からぶら下がったギョロ目付きの人間の頭蓋骨――――[ニドヘッグ]と呼ばれるモンスターが歯をガチガチ鳴らして
笑いながら此方へとやってきた…ッ!



  ニドヘッグ「ゲヘゲヘゲヘ… にお い" す"る…ケヒェヒェ…」ズルズル…!


 4本の赤い腕の様な触手から伸びた鋭い爪は宛ら騎兵隊のランスか何かか、死体喰いの百足は低い声で唸りながら
獲物達の姿を捉え…


    ズダダダダダダダダダダダダダダダダダ…!!!


 槍の様な四本腕を前に突き出す姿勢で猛進撃を繰り出して来た…ッッッ!!4本槍と無数の針の様な脚で
獲物を踏み刺して行かんとする一直線上に放たれる技、[百足蹂躙]であるッ!


   ブルー「各員、左右に散開しろ!!」バッ

  リュート「うひ〜っ!でっけぇムカデだぁ〜!気持ちワリィぜ!!」スチャッ!


 術士とゲル状生物が、[ヨークランド]組がそれぞれ左右に分かれる様に飛び退き各々の武器を手にする
[鬼走り]の射線同様、分かりやすい技であるが為に避けやすくだがそんなことは想定済みだと言わんばかりにすれ違い様に
4本腕を器用に動かし左右に分断させた4名目掛けて[突き]を繰り出す

 瞬時に[ユニコーン]に変化したスライムに運ばれて刺突から免れた術士組に対して田舎出身組は
方や手にした武器で見事に[ディフレクト]し、もう片方は憶病な性格は何処へやら、ガッシリと大樹の様な太い両腕で
死体喰いの腕を受け止めたではないか…ッ!!



   ニドヘッグ「!!!」ググググ…ッ

    サンダー「ひぃ〜…危うく眉間に穴開いちまうトコだったぁ〜!!」


 情けない声とは裏腹に掴んだ相手の腕はピクリとも動かない、見た目通りの剛腕は確かに脱獄を試みた人物を何人も
葬って来た怪物の刺突を受けきっていたのである


    ブルー(…ほう?リュートと共に監獄内を逃げ回っていたが…なるほど、見掛け倒しではないということか)
   スライム「(;´・ω・)ぶくー?」パカラッ!パカラッ!

    ブルー「…なんでもない、少し考え事をしてただけだ、それよりも俺を乗せてるんだ前見て走ってくれ」


 回避の術士組と防御の田舎組、避ける事と受け止める事とで違いはあるがどちらもダメージを完全に無効化している事に
違いはなかった…。[ニドヘッグ]は下手に全員を狙うよりも各個撃破を優先すべきと考え、回避よりもガードに専念する
[ヨークランド]組を狙う事に決めたようだ
 赤い四本腕の根元…つまりは肩に当たる部位が開き、そこから目玉が現れる…!両肩の眼球と宙ぶらりんの頭蓋骨から
覗かせる一つ目が怪しく輝いた
 黄光を纏った魔眼をリュートに向けて"凝視"する…ッッッッ!!
945 :今回はここまで 次回は火曜日か水曜日予定 [saga]:2022/10/09(日) 22:53:06.48 ID:Mza6y9UQ0

 死体喰いの百足が魅せたのは[マヒ凝視]だ、先端からぶら下がった人骨の一つ目が彼奴の主眼であるのあらば両肩から
浮き出る眼球は副眼と言えよう、単純に視覚範囲を広げる為だけに非ず…自身の生態系に詳しくない敵が死角を攻めようと
主眼では見えない懐に飛び込んだ者あるいは肩背部目掛けて強襲を仕掛けようと動き出した者に対してのカウンターだ
 初見で肩に[マヒ凝視]を発生させる魔眼が隠されていると知らずに接近した敵対者を絡めとり
身動きが取れなくなった所を逆に討ち取るというのが彼奴の手口なのである


  リュート「ぐぉっ」ガクンッ


 浮かび上がる瞳を直視した為、急速に力が抜け落ち手足が痺れ出す。
思う様に身体が動かなくなった所へ[ニドヘッグ]は身体を撓らせて器用に無数の脚をリュートの方へと向ける

 向けられると同時に百足の細く鋭い脚が胴から飛びぬけた…ッ!

 無数の[針]が機銃の弾丸の如く青年目掛けて放たれた、それを見た弟分が「アニキ!」と叫びながら
腕から発生させた電流を百足と青年の中間点目掛けて撃ちだす



   ドッグォォォォン…!!



  サンダー「アニキ!大丈夫かい!?」

  リュート「お、おう…たひゅかったぜ、しゃんらー」


 麻痺の影響で呂律が回らないながらも礼を述べるリュート、サンダーが習得していた[電撃]が上手いこと相手の[針]に
当たり小規模な爆発を起こして相殺したのであった。


   ニドヘッグ「お…おの…れ ぐぐぐ…クヒャ――――ッ!」ビリビリビリビリ…!!



   ブルー「っ!?こ、これは…」クラッ

   アニー「うるさっ!?」
  スライム「Σ(・ω・;) ぶくっ!?」


 耳を劈く様な音、大気さえも震わす振動が辺りに響き渡る、[ユニコーン]形態のスライムが思わず竦み脚を止め掛け
騎乗中のブルーも眩暈を覚える"音"による攻撃、ここがダクト内部という筒状の空間だからこそ
反響音が増すという点もあるのだろう前線から離れてるアニーでさえ耳を抑えたくなる"悪環境に恵まれた[スクリーム]"が
容赦なく[ヨークランド]組の二人を襲った…!


  リュート「ぐぅぅぅぁ―――――!!」ビリリリリッ!
  サンダー「うわあああああああぁぁぁっ!!」ビリリリッ!


 "音撃波<ソニックウェーブ>"が相手とあっては[ディフレクト]で防ぐことはできない、直撃を受けて尚もまだ立っていられる
タフさ売りのサンダーと流石に膝をついたリュートを見て死を喰らう百足は笑い出す



    ニドヘッグ「 よ わ い ナ ぁ 」ゲヘゲヘゲヘ!

    ニドヘッグ「みな…ごろ…し… うケェーッケッケッ…」



 百足から垂れ下がる頭蓋骨は下卑た笑みを浮かべ、腸の様に長くグロテスクな触手を喉奥から伸ばす
管の様なソレの先端には注射器の針に似た骨が付いており相手の生体エキスを奪い取るモンスターの技能、[生気吸引]に
使われるソレであることが分かった、まだ麻痺で動けぬリュートに狙いを定めてソレを伸ばし…!



  ブルー「汝、現世においてあらゆる束縛から解き放たれん!――[解放のルーン]よ!」フォンッ!フォンッ!



  リュート(おぉっ!身体の痺れが消えた―――動くぞ!恩に着るぜ!)スチャッ、ズジャッ!!!

  ニドヘッグ「ぐぎゃあああああああああ"ああ"あ""あぁ"ぁぁ…!!」ビチャァァ!


 自由を授ける文字の加護を得たリュートは即座に剣を振るい自分目掛けて飛んできた触手を切り飛ばす
赤黒い飛沫を上げて暴れ狂うソレ、切断された先端部位は骨針を何度も床に叩きつけながらビチビチと暴れ…次第に
強い日差しに照られた蚯蚓の様にゆっくりと動かなくなった

946 :次回は火曜日か水曜日予定 [saga]:2022/10/12(水) 18:01:02.52 ID:GiLQJumW0

 切り飛ばされた器官を一瞥して死を喰らう百足は怒りを体現せんと長い胴体を振り回す
地下空洞に住まう[巨獣]や基地の護り手を担っていた[巨人]…野心家が産み出した"力"の結晶[グレートモンド]…etc
蒼き術士一行はこれまでも強者と死闘を繰り広げてきた身だ、その彼らをして見れば目の前の蟲は決して強いとは言えない

 監獄内で追って来る職員と警護ロボ、モンスターの群れといった数の暴力とも違って相手は単一


 激戦に次ぐ激戦を抜けてきた事で最早、[ニドヘッグ]程度なら主戦力のアニーが居なくとも
そこそこに渡り合えるレベルには成長していた…

 この戦闘で注意すべき点は"空間"の問題だろう。

 筒状のダクト内だからこそ[スクリーム]の音響が響き威力も底上げされ、巨大百足と言った風貌の[ニドヘッグ]にとって
程よく自分は動けることが可能でありながらその巨体ゆえに相手の移動を妨げる事ができるという点だ


    ニッドッグ「 ぐ が あ あ あ あ ! …よ、よ"くも、やった"ナぁぁぁ!!」


   ニドヘッグの腕『 』ブォン!
   ニドヘッグの胴・脚『 』ヒュッ!


――――パシィィィン…!

 両肩の眼玉もフル活用して視野を広げ、4腕のランスで逃げる得物を串刺しにしようと[突き]を繰り返し
胴を鞭の様に振り回してダクト内部で幾度と無く叩きつけていく
 時折[百足蹂躙]を織り交ぜて突撃と移動を繰り返し、果てはこの場が筒状である事を利用し壁を、天井をと移動していく


  リュート「うへぇぇぇ…天井をカサカサ言いながら這ってやがるぜ…やっぱデケェ百足ってのは気色悪いなぁ」


 見上げれば赤と黒の長い胴がジグザグに動いて先端の頭蓋骨が自分達を―――地上を見下ろす形で垂れ下がっている
そして骨は口を開き音波攻撃を垂れ流して来る
 器用に天井に張り付いたまま、地表目掛けての[スクリーム]を放出しながら動き回る


   スライム「(;´・ω・)ぶく…!」
   ブルー「チィ!厄介な…爆ぜろ[インプロージョン]!」キュィィィン


 8の字を描く様に首を振り回す逆さ吊りの百足、それに応じる様に"音撃波<ソニックウェーブ>"が照射された床が砕け罅割れる
無茶苦茶な軌道で飛んでくるそれを避ける一角獣の背から振り下ろされない様にしがみ付きながらもブルーは術を唱え
 長い胴体の内の幾つかを消し飛ばす…!弾ける蟲肉片、上がる悲鳴、致命傷を与えられなかった事に彼は舌を打つ


    ブルー「ええぃ!まどろっこしい…あんなにも動き回られては狙いが定まらんかッ!」


   リュート「ブルー狙いさえ定まればなんとかなりそうなのか!?」

    ブルー「…ああ、あのクソ忌々しい一つ目付きを粉微塵に爆破してやれるさ!」

   リュート「OK!サンダー俺をぶん投げろ、その後はお前のアレでワンツーフィニッシュ決めるぜ!」


 術士にそれだけを確認すると糸目の青年は弟分にそう笑いかける、それを見て彼の隣を走っていた気弱な豪鬼は青年を
掴み取柄の剛腕で天井を走る百足目掛けてリュートを投擲するッ!


   サンダー「うおおおおおぉぉぉ!アニキーッ!行ってくれぇぇぇぇぇッ!!」ブンッ


 豪鬼の筋力で天井目掛けて打ち上げられた青年は[刀]を手に[諸手突き]の構えで死を喰らう百足の先端――頭蓋骨が
ぶら下がった胸部へと一直線に飛んで行く


   ニドヘッグ「…く…くルな…!!」


 風を切り飛ぶ男目掛けて両肩の魔眼を開き幾度も瞬く、だが…!解放の加護を受けた彼に[マヒ凝視]は意味を為さない
四つ腕の[突き]を放つもリュートの刺突は突き出された腕ごとへし折りながら胸部へと突き立てられ
 百足は悲鳴をあげて地に落ちる…、背にジリジリと伝わる落下の衝撃、そして一つ目を見開けば天には大きな人影が…!


     サンダー「[グランドヒット]だぁぁぁぁ!!」ゴォォォッ!!


 筋骨隆々の巨体がその身を活かした急降下を仕掛け[ニドヘッグ]に重い一撃を与える、百足は降って来た重量に
呼応するかのように上体を仰け反らせ、掛けられた圧で頭蓋骨から目玉が飛び出しそうになった
 飛び出しそうな一つ目が"最期に"網膜に焼き付けた物は…地にサンダーと言う名の杭で止められた自身に向けて
魔術を唱える蒼い衣を纏った術士の姿であった…っ!
947 :続き来週の火水のどっちか予定 [saga]:2022/10/18(火) 22:31:10.98 ID:OAoGcI+90

 …ジュゥゥゥゥ…!


 宙ぶらりんだった頭部は黒ずみ、焼け崩れては消えていく…それに合わせて長い百足の胴体も蜃気楼の如く消えて行った
かくして監獄内で蠢いていた一匹の蟲は生涯に幕を下ろしたのであった


    ブルー「終わったな」


 一角獣形態から元のゲル状に戻ったスライムが言葉も無く頷いた、…モンスターは倒したモンスターを破片でもいいから
取り込むことで相手の生命情報を取り込み"技"を得とくできるが…どうやらこのゲル状生物も兄貴分を担ぎ上げてる豪鬼も
[ニドヘッグ]というゲテモノを取り込まなかったようだ


 …まぁあの百足を取り込んだ所で大した物は得られんだろう、彼奴が使ってきた[百足蹂躙]と
悪趣味な生涯の記憶くらいしか手に入りそうにないだろうし



               「やーっと!開いたわ!!」ガコンッ


 ブルーが振り返ると螺子回しとスパナを手に汗を拭うアニーの姿がそこにはあった、「やっと開いたか」とだけ呟いて
我先にと彼は目当てのブツが保管されているであろう部屋へと進んでいく


     アニー「あぁっ!ちょっと待ちなさいよっ!もうっ!」タッタッタッ!

    リュート「俺達も行くぞ!サンダーあの穴の中に突っ込め!」
    サンダー「おう!任せてくれよ」ドドドドッ!



―――
――

【双子が旅立って12日目 午後 19時48分 "[ディスペア]" 】


 シュタッ!


 監獄の最奥にその巨石はあった、美術館の展示品か何か様に囲われたソレにはアルファベットのPに似た文字が刻まれ
誰を待つでも無く佇んでいた…天井から巨石を照らす様に射す一筋の光が照明の物か、はたまた天窓か何かの月明かりか…
神秘性を含んだルーンの巨石を目の当たりにしたブルーにとってはどちらでも良い事だった


  ブルー「おぉ…!遂に…やっと、やっと3つ目のルーンを…っ!」フラフラ…



 万感の思いだった。

 祖国を旅立ちまだ2週間と経たぬ間だが、この3つ目のルーンを得る為だけにどれだけ遠い回り道をしてきたことか…っ!



 此処に忍び込む為だけに守銭奴の女に媚び諂い、金策に走ったり、知り合った連中の騒動に巻き込まれたり
胸に色んな感情や悩みを抱えた奴らと出会い、自分の知らぬ文化や世界を知ったり…

 …気づけば、喧しい馬鹿共と騒ぐ時間を悪くないと思い始めてしまったり…。


 そこまで考えて彼は首を横に振った、鞄からルーンの小石を取り出しふらふらと蛍光灯に釣られる羽虫の様に階段を昇り
巨石に手を伸ばし―――――


                フォン…!

  i'⌒  \    
  |  | \ \  
  |  |  / /    フォン…!
  |  レ゙ /     .
  |  /      .
  |  |        
  |  |        
  弋,丿       

  フォン…!


           『解放のルーン』を手に入れた!
948 :続き来週の火曜日か水曜日予定 [saga]:2022/10/25(火) 23:56:42.09 ID:GxthtBYw0

 手にした小石に刻み込まれたルーンを眺める、そこには求めて止まなかったやまなかった解放の象徴があった…。
これで残す巨石巡りもあと一カ所、しかも場所の特定も出来ている―――今、ブルーが成り行き上で下宿しているイタ飯屋
あそこの店主がやたらと[シュライク]の古墳へ「男のロマン」がどうこう言いながら語って来るのだ


 最後の巨石はその古墳に在り。


 遺跡の一種というだけあって中に挑み行方不明者となった者は数知れず、如何なる罠や魔物が潜むか分からぬ以上
最善を考えるのであれば場所の特定はできていても単騎で突っ込むのは得策ではない

 …グラサン店主が行きたいと豪語しているのだ、折角だからもう少しグラディウスの連中を利用させて貰おうではないか




  アニー「ちょっとアンタねぇ…!一人だけ抜け駆けってのはズルいでしょーが!!」タッタッタ…!グイッッ!

  ブルー「く"え"っっ!?」ギューッ



 そこまで考えていた術士を思考の底から引き摺り上げたのは守銭奴の女であった、…仲間を置いて一人で勝手に先行して
巨石に触った事にお怒りの様で術士の法衣についてる霊獣の毛皮を使ったショールを引っ掴みそのまま首を絞められる術士


  リュート「とうちゃ〜く!…おろ?なんだなんだ、ブルーの奴まぁたアニーにシメられてらぁ…おっかねぇ」シュタッ

  サンダー「うひ〜…ブルーさん顔がトマトみたいに赤くなったと思ったら青くなってる…助けた方がいいんじゃ?」


 危うい顔色をし始めた所でギブギブ!と叩いて来る術士を黄金色の髪をした女は解放した、息を切らせながら術士は
首を絞めてきた彼女を睨みつけ「先走ったのは悪かったが少しは加減しろ!」と怒りを表した







  「はっはっはっ!愉快愉快、準備の抜かりなさといい、先程の戦いぶりといい、それにコメディまで見せるとはね」




 パチパチと手拍子と共に称賛の声が上部から浴びせられる、首を天へ向ければ強化硝子の窓越しに道楽所長が此方を
見下ろしているのがわかる、キャスター付きの椅子が二つに監視用なのか古いタイプのパソコンが2台置かれた小部屋から
彼は術士一行のこれまでの動きを見ていたようだ



    クーン「ブルー!おめでとー!」ピョンピョン

  フェイオン「我々もこの部屋から君達の活躍を見て居たぞ、やったな!」



     所長「良い退屈凌ぎになったよ、そこの扉を開けてあげるから出給え」カチッ


 ルーンの小石集めには参加していないクーン等とすっかり御眼鏡に叶ったのか上機嫌な道楽所長に今のやり取りを見られ
ムスッとした顔で退室する術士とそれに続く面々、かくして[ディスペア]潜入は幕を閉じたのであった。

―――
――


 文字の刻まれた小石を3つ、大事そうに眺めながら彼は[クーロン]の繁華街を歩いていく
監獄から帰ってきた一行は発着場で各々に解散、ブルーはアニーと共にイタ飯屋への帰路に着いていた


 アニー「ず〜っと石なんかを眺めちゃって気持ち悪いわねぇ…」

 ブルー「フン、なんとでも言え、俺にとってはルージュと対峙する際の力に近づけた証なのだ」

 アニー「はいはい、前エミリアが話してた決着つけたい弟さんね…子供の喧嘩みたいなことに態々資質集めなんて」ヤレヤレ



 カランカラン…!

 未だ双子で殺し合いをするという真実を知らぬアニーは店の扉を開けて「ただいまー」と一声掛ける
休業中の店内にはまだ奥に置き場所が無いのか大量の武器が置かれていた…ジョーカーとの決戦に向けての物資だ
これだけのブツをアジトに持ち込んで来たということはいよいよ以て大規模作戦も間近といった所なのだろう
949 :続き来週の火曜日か水曜日予定 [saga]:2022/11/02(水) 02:08:46.97 ID:WxhF7TZs0

 搬送されていく物資を眺めながら「随分と物々しいな」と術士の青年は独り言ちる、そこへ通り掛った赤紫色の髪をした
女性が「今追っている巨大な敵との決戦だからね」と声を掛けた


  ライザ「これまでも色んな奴を相手取って来たけど…ジョーカーはそんな連中とは一線を画するわ」


  ライザ「仮面の下の素顔は勿論の事、正体に関連する尻尾を掴ませずそれでいて
         様々な犯罪組織や政界の大物と接触を図れるコネクションや情報量…用意の周到さ」


  ライザ「他のグラディウス支部は当然として雇えるのなら外部の手を借りてでも戦力を集めて総力戦で行きたいわ」


 と、告げて蒼の術士をジッと見てくるライザの視線からそそくさと逃げる様にブルーは割り当てられた自室へと向かう
修練には丁度良いのかもしれんが監獄帰りで疲れてる今そういう話はパスだ
 さっさとシャワーを浴びて布団の上に倒れ込んでしまいたいという気持ちが大きかった


 …残りの巨石巡りもあと1カ所…、ルーファス等を戦力として組み込んだパーティー編成で最後の一つに挑みたい所だが
御覧の通りジョーカー戦に向けた準備に加え(決着がつくまでは午後4時から10時までの短期経営だが)店の経営もある

 グラディウス組を同伴しての[シュライク]までの遠征は少し時間を要する…暫し暇になるだろうな




 …なに?グラディウス組が駄目ならリュートとサンダーを連れて行けばいいじゃない、だって?



 今日の[ディスペア]での教訓である、戦力として頼れはするが変な罠踏んだり余計な仕事も増やすからリカバリーが要る
指輪集め御一行はもう次の指輪を求めて何処かに旅立った事だろうし…
 術士は歩きながらそう言えば次にクーン達が何処に行くか訊いていなかったな…と考えもしたが
尤も旅の目的も違うし俺とはもう会う事もあるまいと、そこで思考を止めた


 ガチャッ


 自室に戻った術士は背負っていた荷物を降ろして衣服棚からバスタオルとこっちでの生活に合わせた寝間着に手を伸ばす
初めの頃は魔法王国の一般的な服と違う意匠に戸惑いもあったが随分とラフな服装にも慣れたものだと思える

 ふと、手を伸ばした彼の眼には棚の中に大事そうにあ保管していた一枚のディスクが留まった
3日前にレオナルドから渡されたデータの入った円盤だ


  ブルー「…そういえば、これも暇があれば[IRPO]に渡してくれと頼まれていたな」


 勝利を冠する印を取得できるのはグラディウスの最終準備段階が終わった頃だ…
ともすれば近々届けてやるのも吝かではない

 衣服とタオルを手にした彼はぼんやりとそう考えながら棚を閉じ、ゆっくりと蒼の法衣を脱いだ

―――
――


     [ディスペア]からの帰還からそのまま就寝して…さらに1日、アニーからいつも通りの稽古を受け

  裏通りにあったpzkwXの店から譲り受けた大量の重火器と各地から仕入れてきたトラップの類を運ぶ手伝いをし

   ……偶にウザ絡みしてきたリュートをモップで撃退なんかもして丸一日を過ごし



そして祖国を発ってから14日目の正午…

【双子が旅立って14日目 午後12時00分 [IRPO] 】



  ブルー「なんでお前等までついて来ることになったんだか…」

 リュート「いやぁ〜お前が警察に行くなんて何事かと思ったし〜?聞けばレオナルドさんの頼みらしいじゃん?」
 サンダー「アニキが世話になったって人の頼み事ならオレも手伝いたいよ!」

  アニー「ルーファスの奴が何かこれからアンタと会う刑事は顔が利くからモンド潰しの土台を今から築けってさ」
 スライム「(`・ω・´)ぶくっ!」フンス


 機械博士の頼みでモンドが関わっているからと田舎出身の二人が駆けつけ、金髪の女は上司が"ジョーカーを倒した後で"
遠からぬ未来でグラディウスが標的にするであろうとモンドへの一手として布石を巻く為に派遣した、スライムは説明不要
950 :今回2レス 次回来週の火曜日か水曜日予定 [saga]:2022/11/09(水) 10:46:30.62 ID:UAPF01160

 理由はともあれ各々がブルーの用事に付き合うらしい、彼はそんな仲間達と共に[IRPO]の受付へと向かい
桃色髪に白い帽子をちょこんと乗せた受付嬢に声を掛ける


  [IRPO]受付嬢「一般の方はご遠慮下さい。」

     ブルー「ヒューズ捜査官、…ロスター捜査官に取り次いでもらいたい。」


 良くも悪くも組織内で有名な不良警官のコードネームではない、本名を告げられて受付嬢は少し考える。
捜査官は基本的に自身の名を明かさない物で、それを知っているとなれば信頼ある人物、もしくは信頼に足る者から紹介…


  [IRPO]受付嬢「失礼ですが、ご用件をお伺いしてもよろしいでしょう?」

     ブルー「とある人物から彼にこのディスクを渡して欲しいと頼まれたのだ。」


  [IRPO]受付嬢「…。わかりました、では応接室の方へどうぞ。」

―――
――


 通された部屋は一面に赤糸で紡いだ絨毯が敷かれた会議室の様な間取りで中央に大机が置いてあり、それを取り囲む様に
茶色い革ソファーが八脚程置かれていた、通された一行は件の刑事が来るまでの間、椅子に腰かけ談笑に花を咲かせたり
キョロキョロと応接室の内装を落ち着かなさそうに眺めたり、出された茶を啜り頬杖を突いたり…三者三様に待ちぼうけた

 どれ程、待ったことだろうか?ブルーが空っぽになった湯飲みの底をぼんやりと眺めていた時、陽気な声と共に彼は来た



  ヒューズ「いやー、待たせたね。なんかウチにヤバい案件のタレコミに来たんだって?………んっ?」ピタッ



 ロスター捜査官は術士の顔を見て、歩みを止めた。時を同じくしてブルーも彼の顔を見て固まった。




       - ブルー『自己紹介がまだだったな、ブルーだ』 -

    - ヒューズ『俺はヒューズ、見ての通り[IRPO]所属の刑事だ、そっちの小僧はレッドってんだ』 -





  ヒューズ「あっ、アンタはあの時キグナスに乗ってた術士じゃないか!」

   ブルー「そういうお前は…あの気に喰わん名前の奴と一緒に居た…!!
               そうかヒューズという名、何処かで聞いた様な名だと思ったが…お前の事だったのか」


  リュート「えっ!?なんだブルー、お前さんこの人と知り合いだったのか?上京したての頃に俺もバーガー屋で…」



   アニー「……なんていうか、世間ってかなり狭いわね。会う人が大体誰かと誰かの知り合いじゃないの…」ハァ…



   アニー「あー、知り合いなら話は早いわね、ブルーが受付の子に用件を伝えた後であたしも付け加えたけどさ」

   アニー「あたしは"ルーファス"のお使いで派遣されたアニーよ、よろしく」



  ヒューズ「ほぉ〜?ルーファスん所の…」ジーッ


   アニー「?」

  アニーの胸『 』ボインッ!



  ヒューズ「…なるほどなぁ、ルーファスの奴め良い部下持ってるじゃねぇか〜!」デヘヘ


―――
――
951 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2022/11/09(水) 10:47:20.52 ID:UAPF01160



 ヒューズ「……えー、つまりアンタ等はモンドの野郎が裏でコソコソやってる悪事の証拠データを持ってきたと」ヒリヒリ



 頬っぺたに出来た真っ赤な紅葉をまだ抑えながら、ヒューズは受けた説明を確認するように問う。
先程まで鼻の下を伸ばしながらアニーの胸を凝視していたのとは打って代わり真面目な顔で彼は言葉を続ける…
平手打ちの乾いた音が反響するくらいには程良い間取りの会議室でジロリと一行を一瞥しながら。


 ヒューズ「事情は分かった。だがね、ハイそうですかじゃあウチの方で見ますねと直ぐにはならんのだよ。」

  アニー「は?なんでよ…」


 ヒューズ「仕事柄でね、色んな所から恨みを買っちまうんだよウチは。」

 ヒューズ「分かるかい?レオナルド博士からの紹介っつーことで一定の信頼はあるけどな
          お巡りさんトコのPCをハッキングされたりウイルスを送られたりとかそーいうのあんだわ」


 ヒューズ「お役所特有のクソめんどくせぇ手続きだの申請だのと色々必要なんだよ…。」ポリポリ


 ヒューズ「持ち込まれた"ネタ"もネタで特級にやべぇ奴だし、これ開示するにあたってアンタ等の素性も問題になる」



 ヒューズ「何よりパトロールの活動に協力してもらわにゃならんのよ、規則なんでね」


 "規則だから"彼は術士にそう言い切った。


 [IRPO]では"盾のカード"を欲する旅人が後を絶たず、資質の為にカードを集める者と同行して任務をこなし
その人物の人間性、器量、力を得た後でそれをどのように使いこなすか…悪事に転用しようとする傾向があるのか等を
見定めるという一環がある。



 ……生憎と"ヒューズはブルーという人物の人柄を直接その目で見ていない"



 キグナス号で確かに双子の弟のルージュとは出会い、直接言葉を交わし…彼が温厚で正義感溢れる人物であると理解した
だが対して僅かな時間とはいえ邂逅のあったブルーは紅き術士とは正反対に、「自分が気に入らないから名前だから」と
そんな理由で手を組む事を否定し、更に船が動かなければ自分が困ると…

 要するに言ってしまえば自己中心的な性格と、あの時に見受けられた。


 自分さえ良ければ周りがどうなろうと構わない、そういうタイプの人間は自分の利益の為に殺人や盗みなど犯罪にも走る


 …無論、それは極一部の例であって皆が皆そうではないのだ。だが彼が絶対的にそうでないと言い切れる保証も無く
紹介があったから流石に無いと思いたいがブルーが実はモンドか[IRPO]に敵対的な誰某に金で雇われたスパイの様な存在で
レオナルドからのディスクと称して[IRPO]にとって不都合なスパイウェアにすり替えて此処に来たという線もゼロではない


 刑事なんて職業やってれば人を疑うのは間違っちゃいない。故に"盾のカード"譲渡を含む重要案件が転がり込んだ場合は
馬鹿馬鹿しい話だと思うが、パトロールの任務活動に協力するという規則が付いて回るのであった



       ブルー「わかった。何をすればいい?」

      ヒューズ「物分かりがいいな。」






      ヒューズ「[ムスペルニブル]に行くぞ。」ニィ



 パトロールの活動を協力してもらう、その一環として彼は兼ねてより組織が抱えている"人材不足"という案件の解決と
ついでに上司に頼まれていた山頂に咲く黄色い花の採取をしようと考えたのであった。


  ヒューズ(…にしても、本当にそっくりだぜ…流石は双子ってトコか?ルージュの奴とは性格も雰囲気も違うが)
952 :次回来週か早ければ今週中にもう一回更新 [saga]:2022/11/16(水) 19:20:45.41 ID:39lyyz6t0
―――
――


【双子が旅立って14日目 午後16時26分 [ムスペルニブル] 】


―――――ヒュォォォォォ…


 氷炎の地と称される"惑星<リージョン>"…大地は永久凍土に覆われ吹き荒ぶ風が何者をも凍てつかせる風を呼び
広がる空は煉獄という単語を思い起こさせるほどに燃え盛る、険しい環境の土地であった

 間違っても観光旅行で来たくない場所No.1に輝く地獄みたいな"惑星<リージョン>"がここ[ムスペルニブル]なのだ

 そんな辺鄙な場所なので当然の様に定期船は全くと言っていい程無い。あの[クーロン]からでさえ日に一便どころか
1週間で一度出航するかどうか怪しい土地なのである

 しかも、険しい土地ゆえに此処にまともなシップ発着場を建設・運営するというのはほぼ不可能で
地獄に居を構える【とある御方の宮殿】に直接寄港するという形式を取っている…その宮殿の主というのが妖魔の君という
相当地位の高い御人なのだが、…人間社会と交友を持つ妖魔の例に漏れず相当な変わり者で(比較的に)他種族に対しても
友好的に接してくれる器量を持った愉快な花火職人でもある


 常に娯楽に飢えてるから自宅の一部を改築して星の海を越えて船が寄港できる乗り場を玄関にわざわざ用意して"指輪"を
求める冒険家、あるいは"術に関する探究の旅"をする旅人、…模範的な解答と真逆を行く"おもしれー奴"と呼べる風来坊等
 そんな連中が何時の日か自分を尋ねにやってきてくれるだろうことを心待ちにして宮殿の主は発着場を政府に提供した




 さて、長々と語ったがつまり何が言いたいかというとだな…  山 中 に 向 か う 船 が 無 ぇ っ!!




 一般的な公的機関の"宇宙船<リージョン・シップ>"は先も述べた通り【ヴァジュイール宮殿】直通ルートしか存在せず
間違っても途中下船は出来ない、指輪の君と畏れられるヴァジュイール様の御力で炎上する空に亀裂を作り
機体が凍結したり熔解しない様ちゃんと結界が張られた進路を進むのが普通であって恐ろしいモンスターが生息する山中に
間違っても直接降りるというのは普通に有り得ない

 特殊任務の為に耐久性と渡航能力に秀でた[IRPO]専用のパトカーに酷似した船でも業火の空の小さな綻びを潜り
唯一降りれそうな地点に降り立ってから徒歩で山頂まで目指すしかないのだ…間違ってもシップで直接山頂まで乗りつけて
目当ての黄色い花を持ち帰るだとかいう反則技はできない



   アニー「へっぷしぃっ!!」

   アニー「うううぅぅぅ…さ、さぶぅっ!!!」ブルブル…


   ブルー「…当たり前だろう、そんな薄着同然の恰好で来ればそうなる馬鹿か貴様は」


   アニー「あ、あ、あ、あアンタはいいわよっ!そんな首元に温かそうな毛皮巻いちゃってさぁぁぁ!」ガタガタ


   サンダー「まぁまぁ…!アニーさん落ち着いて、ほら?パトカーで上空に居た時は蒸し風呂みたいに暑かったよ」

   リュート「そうそう、周りの空気が燃えてて車内も冷房効かせてんのに暑くて、厚着のブルー馬鹿にしてただろ〜」


   アニー「ずずっ…うぅっ、そ、そうだけどさ…確かにアンタ見てて暑苦しいわねぇって汗だくなの笑ったけどさぁ」


   ブルー「…はぁ、仕方ない羽織っている上着を貸してやるか、リュートが」


   リュート「えっ、オレェ?」


    アニー「りゅ、リュート…そのヨーク綿の服貸しなさいよ〜」ガシッ、グググッ!
   リュート「あっ、ちょ!まずいって!!こんなトコで脱がさないで〜!…ぎゃああ寒いぃぃぃ!!雪が!雪がぁ!」


 極寒の大地に脚を降ろした術士一行は来て早々に騒いでいた、青年の上着をはぎ取ろうとする女と、それを必死に
引っぺがそうする青年、そんな二人を見てオロオロとする豪鬼とゲル状生物…一人だけ蒼の法衣とマフラー代わりにした
霊獣の毛皮ショールでぬくぬくと暖を取り目の前の諍いから目を背ける術士


   ヒューズ「…あー、本当におたくらと一緒で大丈夫かね、こりゃ…」


 この纏まりの無いパーティーに一抹の不安と危機感を覚えるパトロール隊員がその場に立ち尽くすのであった
953 :以下、VIPにかわりましてVIP警察がお送りします [sage]:2022/11/17(木) 02:43:18.45 ID:VnLHUDWi0
VIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すなVIPRPG完全終了さっさと畳んでもう二度とVIPに姿を現すな
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954 :次来週の火、水予定 [saga]:2022/11/23(水) 23:40:39.01 ID:Hx58Wf5U0

 凍土の山を昇りながら術士は捜査官に尋ねる、この山の山頂に咲く黄色い花を採取する任務の手助けをするというのは
説明されて分かったが、もう一方の[IRPO]の人材難を解決する手立てにも手を貸す、というのはどういうことなのか


 ヒューズ「よく聞いてくれたな、昔ちょいとばかりに小耳に挟んだ話さ。」

 ヒューズ「この山の何処かに[氷漬けにされた朱雀]がいるんだよ」


 険しい環境の山である為、ここには最上位モンスターの[朱雀]が生息しているわけなのだが…どういうワケだか
一体だけ山の中腹に氷漬けにされた[朱雀]が居るのだ

 指輪の君が居を構える山だ、そこそこに妖魔が出没するらしく…女性型の妖魔が顔馴染の相棒と共に
悪戯で凍らせて封印しただとか噂されているそうな
 とどのつまり、この捜査官は件の神鳥を助けて恩を売り、[IRPO]の隊員として迎え入れようという魂胆なのだ



  ヒューズ「――――つーわけで、優しくてナイスガイな俺が[朱雀]を助けて勧誘しようって事よ」

   ブルー「…そう上手くいくものなのか?助けた瞬間に襲われる可能性もあるのではないのか?」


  ヒューズ「なぁに、その心配はないさ。[朱雀]ってのは高位のモンスターなだけあって受けた恩義は忘れねぇんだ」

  ヒューズ「基本的に話の分かる種だから、自分から相手の縄張りに土足で踏み入るとか無礼が無ければ襲って来ない」



 とりあえずは神鳥を悪戯感覚で氷漬けにした雌型妖魔を見つけて適当にしばき倒して、救援に来る相方の[霜の巨人]も
ボコボコにして氷の呪いを解呪するように交渉を持ちかけるという主旨を彼は語った
 そう上手く話が行くだろうかと疑問に思いながらもブルーは彼の隣を歩いて山中を進んでいく…そして道中にて



  リュート「へっっぶしぃぃ!!!」ブルッ

  リュート「うぅぅぅ…ささささ、さみぃ!!アニーの上着取られちまったぜぃぃ…!」ガタガタ


  サンダー「アニキ…しっかり!…何処か暖を取れそうな所は…」キョロキョロ

  サンダー「んん?」ピタッ




 山道にある謎の洞穴『 』




  サンダー「あ、あれだ!丁度良い所に洞穴がある!あそこで焚き火でも起こせば温まれるぞ、オイラ見てくる!」ダッ


   ブルー「!? お、おい!勝手に先行するな馬鹿!」

  サンダー「大丈夫だよー!ちょっと様子見てくるだけだからー!それにアニキだけじゃなくて皆も冷えてるからー!」

   ブルー「違うッ!そういう問題ではな―――」


 険しい雪と寒さに覆われたし土地ならばビバークするには最適な洞穴で暖を取るというのは選択としては間違ってない
ただしその際には注意点があるのだ…冬山の登山客が遭難した際に緊急避難先として洞穴に逃げ込むのはよくあるがそこに
冬眠中のクマが居て、春先までの保存食第一号になってしまうというケースもあり得るのだ


 こんな険しい環境下の"惑星<リージョン>"ならば洞穴に潜んでいるのは熊どころの騒ぎではない…!!



        サンダー「  ウ  ワ  ア  ァ  ー ! ! 」



  リュート「サンダー!?」ダッ!!
   アニー「あっ、リュート待ちなさいよ!」

   ブルー「ええぃッ…遅かったか!」


 舌を打ちながら術士と隣にいたパトロール隊員がサンダーの身を案じて次々と芋づる式に仲間が入って行く洞穴へと足を
踏み入れた、そこで見た物は洞穴の奥で輝きを放つ金銀財宝の山とそれを護る番人か何かの様に咆哮をあげる2頭…!
 燃え盛る火を連想させる[赤竜]とそれよりも一回り大きく、黒々とした鱗を持つ[黒竜]であった…ッッ!!
955 :色々忙しくて更新できず すまなかった 書き溜め4レス投下 [saga]:2023/02/02(木) 00:19:16.21 ID:RogDpt0n0

 鬼が出るか蛇が出るか。


 答えは竜が出た。


 洞穴の中に潜む2頭のドラゴン…剥き出しの牙を覗かせながら炎の吐息を漏らす[赤竜]と、その竜が蜥蜴の赤ちゃんに
思えてくるくらいには凶悪な[黒竜]が塒に飛び込んで来た保存食を睨みつける

 赤いのは兎も角、黒い方は大問題だ…


 希少種のドラゴンでありあらゆる攻撃を防ぎきる頑丈な鱗と皮膚、防御面も然ることながら攻撃性も相当に高い
[タイタスウェイブ]を始めとして一撃で命を刈り取る[デスグリップ]や[石化ガス]のブレスを吐き出し敵対者を石に変える


  リュート「さ、サンダー…!!」


 弦楽器を背負った青年が洞窟に踏み入れ見た物は二頭の竜…の眼前にて恐怖の表情のまま文字通り石化した弟分の姿…!
恐らく[黒竜]の吐き出したブレスによって変えられてしまったのだろう




  ブルー(くっ、これは不味いぞ…)




 自分達は[グレートモンド]を倒した。

 あの時とは人数も戦力も大分違うがそれでも実力には確かな自信がある
ドラゴンを相手取ったとしても連携を組んで攻め続ければ勝ち筋は十分に見えはするのだ…。然しながら問題がある


 "このパーティーは【状態異常:石化】を治せない"という点だ。


 スライムが一角獣の姿に成ることで使える[マジカルヒール]を以てしても石化だけは治せないッ!
術の力で治す事ができるがその術がよりにもよって[印術]の反術である[秘術]なのだ
 印術を選考したブルーには[杯]を唱える事はできない、従って石化を解くには竜を倒すことで解除するか
デカい石像と化したサンダーを引き摺って一時退却して医療機関にでも連れてくかの二択


 …長期戦は不味い、―――1人、また1人と石化すればそれだけ戦力は減る、石化解除が不可能ならばそのまま全滅もある


  ブルー「汝、現世においてあらゆる束縛から解き放たれん!――[解放のルーン]よ!」フォンッ!フォンッ!


 そこまで考えて咄嗟に彼は印を切った、この戦闘で懸念すべきは人数の欠員が出る事、欠員を出す一番の要素は石化だ
ならばルーンの加護を付与して予防線を張るべきだ、勿論最優先は我が身である
 自分が真っ先に落ちれば[解放のルーン]を使える術者が居なくなるのだから。


         「グオオオオォォォォン!!」


 竜共が吼える、赤は雄々しく叫びをあげた後に息を吸い込み体内から熱を放出する準備を、黒は呪われし吐息を溜め込み
吐き出された[火炎]と[石化ガス]の二種が交差するように吹き出される


   ヒューズ「やべぇっ!!おい!リュート恨むんじゃねぇぞ!!」ゲシッ!


 危機を察知した不良刑事はすぐさま前に飛び出し"サンダーの石像に蹴りを放った"…ッ![キック]を見舞われた豪鬼像は
ずしんっ!と音を立てて倒れる…。戦闘面においては無数の修羅場を潜り抜けてきたヒューズだからこその判断
 彼は石化中のサンダーを盾にするという機転を利かせたのである

 [黒竜]程の強きドラゴンの力で石化させられたのだ、目の前の二頭と自分達の猛攻がぶち当たったとしても砕けない
背丈も横幅も人の倍はあるサンダーであれば遮蔽物の無いこの洞窟内に置いて丁度いい土嚢代わりになる

 真っ赤な猛火と黒々としたガスが噴き出され、倒したサンダー像の懐に滑り込んで来た捜査官やリュート、スライムが
息を止めてガスを吸わぬ様に耐え忍ぶ…


  リュート「あちちっ…!!背中に当たってるサンダーが焼けてるせいで…このままじゃ石焼芋になっちまうぜっ!」

  ヒューズ「直火焼きか彫像になるよかマシだろ!!――それよりブルーとアニーはどうなった!?アイツらいねぇぞ」


 ブレス攻撃が止まり、彼らが武器を手にサンダー像の影から様子を伺う…如何にサンダーが大柄でも全員が
隠れられる体格ではなく更に言えば距離も離れていた、比較的に像から近かった3名は間に合ったがあの位置では…!
956 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2023/02/02(木) 00:21:06.23 ID:RogDpt0n0


 「ッ〜…ッッ!」



  リュート「ハッ!その声は…ブルー!大丈夫だったのか!?」バッ



 声の方を振り向けば法衣が所々焼け焦げ、火傷に歯を食いしばる術士の姿がそこにあった
肩で息を切らせながらも剣を手に眼前の竜を睨みつけるブルーにリュートが駆け寄る


  リュート「アニーはどうしたんだ!?」

   ブルー「…」フイッ


 答えず、ただ視線を向こうへと向ける…その眼差しの先を追えば、そこには…


 リュート「うっ…!」ゴクリッ




  石化したアニー『 』




 利き手に[刀]を握りしめながらもう片方の手で口元を覆い、咽返している彼女がそのままの姿で石になり果てていた
間違いなくこのパーティー内で1、2を争う最高の物理アタッカーがこの戦線から脱落したことを意味する…ッ!

 高い"STR<筋力>"から繰り出される多様な技を使うサンダー、同じく高火力の剣技を放てるアニー


 直実にこちらの人員は削られている…っ!もう4人しかいない、5人連携技も望めぬ状態になってしまった…ッ!



  リュート「…こいつぁ、ひょっとしなくても不味い展開ってヤツか?」タラーッ

   ブルー「見りゃ分かるだろうが阿呆め…ああなりたく無ければそこでジッとしてろ今[解放のルーン]を掛ける」



  ヒューズ「待ってくれ、先に俺に掛けてくれや……そうすりゃ全員分の時間くらい稼いでやるぜ」



 弦楽器の青年に加護を付与しようと印を切る直前でロスター捜査官が声を掛けた、「やれる保証はあるんだろうな?」と
尋ねる術士に対して「ったりめーだろ」と彼は返す…。蒼き術士はジャケットの男へと印を切り出したのであった…

―――
――



「グルルルル…」
「グゴォッ」


 二頭の竜は自分達の吐き出したブレスで燃え上がる炎の中をジッと見つめていた。赤々とした熱のカーテンの向こう側で
蠢く人影が数体…最初に縄張りに飛び込んで来た[オーガ]の石像を巧い事利用して餌達が難を逃れたのは彼らも理解した
 燃える幕の向こう側に後何匹無事な者が居るのかまでは生憎と分からない

 だが間もなく吐き出した炎は完全に消える、そこからは的確に1匹ずつ仕留めて行けばいいだけの話と考えた…


 弱肉強食の世界に置いて上位に立つ彼らは焦らず疲弊しきった餌達の姿を見てから次の一手を掛ければいいのだと。
所詮は群れねば何も成せぬ弱者の集まりであろうと


―――――だからこそ一人の男が炎の壁を突き破って突撃してきた事に驚いた



 ヒューズ「――るァ!!喰らいやがれクソ蜥蜴が!」


 ピーカブースタイルのガード姿勢で炎を突っ切って来た黒ジャケットの男はそのまま拳を振るい、[赤竜]の下顎を殴り
アッパーをかましたと思えばそのまま相手を掴んで何発も何発もひたすら殴打する[どつきまわす]行為に出た…ッ!
957 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2023/02/02(木) 00:22:32.38 ID:RogDpt0n0

 紅き竜は角を掴まれそのままひたすらに殴られる、[黒竜]は同胞に襲い掛かる矮小な生物を硬化させてやりたかったが
今[石化ガス]を打ち込めば[赤竜]をも巻き添えにしてしまうと改めて鋭い爪で人間のみを弾こうと試みた


 ヒューズ「ぐあっッ」ザシュッ、ドサッ!

「グ、グゴオオオオオオオオオオオオオォォォォ!!」


 ワナワナと肩を震わせた[赤竜]が怒声を上げてヒューズを尾で岩壁に叩きつけ、先程の再現の様に黒の竜と
呼吸を合わせた2種のブレスを浴びせる、[解放のルーン]のお陰で彼はその身が石になってしまうことは無いが
人体に有害なガスと燃え盛る[火炎]を同時に受ける


 二頭がブレスを吐き終えた頃には、焼け爛れた男が石壁から力なくボタリと地に落ちていく…


"これでまた1匹数を減らしてやった"


 竜達はそう内心で嗤い、次なる標的を求めてヒューズから視線を逸らそうとした…その矢先―――



  ――――BANNG! カンカンカンッ!




「グギャオッ!?」ブシャッ


 [赤竜]の眼球が弾けとんだ、銃声と共に岩窟内を跳ねまわった[跳弾]が竜の急所を…眼球という鍛え様の無い一点を
正確無比にぶち抜いたのであるッ!彼らは直ぐに銃声のなった方を見る…





  ヒューズ「スゥーッ、ハァーッ スゥーッ、ハァーッ…ったく、今のでこの俺様を殺れたとでも思ったか?大間違いだバーカ!」




 先程、"致命傷を負わせたと確信した相手が何事も無かったかのように起き上がり"、銃を此方に向けていた…ッ!



  ヒューズ「昔取った杵柄って奴さ…持ってて良かった[克己]ってなァ!不死身のヒューズ様を甘く見んじゃねーぞ!」


 その昔、ルーファスと共に[京]で[心術]の資質を得る修行をした彼だからこそ使える[克己]…ッ!どれだけ死に掛け様と
精神を一点集中させて体内の気で完全回復を可能とする術…っ!
 仕事柄、[IRPO]隊員にとって命の危機なんてものは日常のようなモノだ、特に鉄砲玉の様な性格の彼は尚の事
致命傷を負っても直ぐに復帰できる自己回復能力と彼はこれ以上ない程に相性が良かった


  リュート「ぬおおおおりゃあああああぁぁぁぁ―――ッ!」
  スライム「(`・ω・´)ぶくぶくぶー」パカラッ!パカラッ!


「!?」



            4連携 [ 諸 手 跳 弾 エ ナ ジ ー 角 ]



 リュートが一角獣形態をとったスライムに騎乗して丁度掻き消える寸前の炎の中から現れた、一角獣は身をブンと振るい
乗っていたリュートを射出、放り出された勢いの儘…柄を両手でしっかりと握りしめた[諸手突き]の姿勢のリュートが
[赤竜]の腹部にダーツの矢が如く突き刺さり、それに少し遅れてもう片方の眼球にヒューズが放った[跳弾]がぶち当たる

 腹部と眼球の痛みに竜は身体を大きく仰け反らせ泣き叫ぶ様に天井へ首を向けて哭く


 紅き竜が悲鳴をあげた刹那、サンダー像の影から飛んできた魔術師の思念の鎖が[赤竜]の首に絡みつく
その様は西部劇に登場するカウボーイが牛の首に投げ縄でも引っ掛けたようだった…、術力で構築された念の鎖は
天井を見上げる様にあげられていた竜の首をそのまま念力で下方に向かって勢いよく引っ張る

 身体を大きく仰け反らせていた[赤竜]の首は大地に向かって引っ張られるのだから当然、前のめりに倒れ込む…そして
倒れ込むその先には、リュートを投げ飛ばした後すぐに滑り込んで来た一角獣の立派な[角]が…ッ!!

958 :今回ここまで 次回早ければ土日 遅くとも火水 [saga]:2023/02/02(木) 00:25:26.35 ID:RogDpt0n0

―――ブヂャッッッ!!


「グギャッ!! ギャッ …ッッ ッ"―――!!」


 前のめりに崩れ落ちた[赤竜]の顎下から脳天まで、そこには[ユニコーン]の[角]が深々と刺さっていた。
さしもの竜と言えど脳髄まで貫通されては生きてはいない

 一連の流れの下、彼らは竜を一体討ち倒したのであった


「ッッ!! グ、グオオオオオオオオォォォォッッ!!」


 残された[黒竜]は同胞を斃した者を石に変えようと[石化ガス]を吐き出す、だが…もう遅い!




 ブルー「無駄だ…貴様らはヒューズに時間を掛け過ぎたな、もう全員に[解放のルーン]を掛け終えている…」コツッ、コツッ

 ブルー「[デスグリップ]や[タイタスウェイブ]と脅威はあるが…最大の危険因子を排した今、貴様は恐るに足りん」



―――[バカラ]の地下で[巨獣]との激戦、[ワカツ]における強敵達との死闘、カバレロ一味の秘蔵の殲滅兵器…etc


 この面々は決して弱くはないのだ、何なら国家転覆を企む野心家を倒してリージョン界を一回分くらい救ってるレベルだ
ただ【石化】という状態異常にどうしようもなく手も足も出せなくて危うく全滅仕掛けたというだけの話


 この山に住む[黒竜]と[赤竜]は一般的な個体よりも間違いなく強い、険しい自然環境がそうさせたと言えよう
そんな彼らの想定外は彼らよりも戦闘能力が上の者達がやって来たという事だ
 これが1対1のタイマンなら単純な個としての戦闘能力とお得意の石化なんて搦め手で完勝だっただろうが
搦め手が通用しなくなって連携を取られたとあってはこうなるのも道理だったと


「グッ、グゴッ…!」


 ジリッ…ジリジリッ…!

 先程まで餌だと認識していた連中がにじり寄って来る、自然界のヒエラルキーに置いて絶対に位置していた竜は今
初めて喰われる立場という物を思い知るのであった……ッッ!!

―――
――




  アニー「……んっ」パチッ

  サンダー「ああっ、アニーさん!!良かった目を覚ましたんだね!」


  ヒューズ「った〜く、ちったぁ反省しろよサンダー」

  サンダー「うぅ、ごめんよぅ…オレ、アニキや皆の役に立つと思って…」シュン


 黄金色の髪を持つ女は焚き火の音で目を覚ました、自分はどうなったのだろうか?
確か黒い竜の吐き出したガスを吸ってしまってそこから意識が無い…。


   アニー「……あー、まだ頭がボーっとする…けど、こうして無事って事は勝ったってことよね」

   ブルー「まぁな、ほらよ」スッ


 身体中がまだ硬くてぼんやりとしたまま額に手を当てて独り言ちるアニーの声に答えたのは湯気立ち昇るカップを持った
蒼い法衣の魔術師であった…手渡された陶器の中の泥の様な黒さとカフェインの香りは少しだけ彼女の意識を覚醒させた


   アニー「あたし等の持ってきた豆じゃないね、コレ…香りが全然違うし」ズズズッ…

   ブルー「…奥の先人達の私物だ、ギリギリ消費期限切れじゃないから安心しろ」ズズズッ


 女の問いに対してコーヒーを啜りながら答えた男の表情が苦々しいモノだったのはブラックだからというだけじゃない
宇宙旅行中の事故で遭難した者、[ムスペルニブル]にやってきた密猟者…宝探しに来た盗賊、先人達も寒さから逃れる為に
この洞穴に逃げて来て…そして喰われたのだろうというのが"奥の様子"を見てきたヒューズの見解だ
959 :4レス投下 次回火曜水曜 どちらか予定 [saga]:2023/02/04(土) 22:56:50.57 ID:A+l32mxj0


 アニー「うへぇ…目覚め早々でにっっがい話ねぇ〜…」ズズズッ


 お砂糖もミルクも無いブラックコーヒーを啜りながら"奥に居るであろう変わり果てた先人達"の姿を想像してしまう
尚、彼らの持ち物と思われる[オクトパスボード]や[ロードスター]、[ゴールデンフリース]などの希少品と金品もあるとか
所有者は死後相当な時間が経過しており身元の断定も難しいパスポートも大半が焼けてる、この場合は[IRPO]隊員の指示に
従って拾い物をどうするか…という話だが、どうやら彼の特権で奥のモノは術士一行に譲渡するらしい。

 任務に付き合わせたお駄賃半分、もう半分は今後も険しい山道になるのだからコレで装備を整えろ、という事らしい。

 おっかない蜥蜴を2匹ぶちのめしたお陰で身元不明の遺体も船に乗せ帰って検死に回せるし供養もできる
バチは当たらんだろうさ、と不良刑事は手をひらひらさせながら言った


  ブルー「もうしばらくは、此処で暖を取るぞ…身体が十分に温まったら出発だ」

  アニー「はいはい」ズズズッ


―――
――




【双子が旅立って14日目 午後19時51分 [ムスペルニブル] 】


 洞穴を出立して山道を歩き始める、空を見上げ瞳に映るのは宵闇を覆う程の真っ赤な炎のベールだ
こんな環境の"惑星<リージョン>"故に夜が近づいていても辺りは暗がりに包まれはしない

 竜達に襲われた被害者の遺品を有難く頂いた彼らは使える防具は装着、道具はいつでも取り出せる場所に携帯し
目当ての妖魔を探す…最初は吹雪の中だから視界も悪く何度か洞穴に戻っては暖を取る出戻りも多かったが
歩いて少し戻った地点で飛び回っていたのをサンダーが発見した

 声を掛ければ泉の精を思わせる相手が嘲る様な笑みを浮かべて襲い掛かってきたので返り討ちにする


 オンディーヌ『シクシク…ヨクモ、ヨクモ! アナタタチ、ユルサナイワ…!』


 ヒューズ「確かにレディに手を上げるのは紳士な俺様らしくないがね、先に手を出してきたのはアンタが先だぜ?」

 オンディーヌ『トモダチ ノ シモノキョジン ニ コロサレチャエ!!』ダッ!


 ヒューズ「あっ!オイ待て…あ〜あ行っちまったよ…悪戯感覚で他人を氷漬けにすんじゃねーぞって説教してねぇのに」


 目当ての神鳥を氷漬けにした[霜の巨人]は何処に居るのか、それを聞く前に妖魔は飛び立ち山の中腹へと向かっていく
あそこに相手が居るのか、何にしても後を追わねばと術士一行は[ムスペルニブル]の山道を進んでいく

 道沿いに歩いて行き山中洞窟の中に足を踏み入れると岩肌を背に横たわる人骨と辺りに散らばった荷物が落ちている
襤褸の布切れや柄部分がボロボロの手斧…これも先の洞穴で見た遭難者のなれの果てかと?警戒しながら歩いて行く


 すると…


カタッ! カタタタッ!


   リュート「何の音―――うげっ!?死んだ人が動き出したァ!?ナンマンダムナンマンダム〜!」

    ブルー「なに馬鹿な事を言ってるよく見ろ!あれは[スパルトイ]や[マッドアクス]だろうがッ!」


 冒険者や密猟者を襲うべく遭難者の成れの果てに擬態していたのだろう動く人骨や意思を持つ手斧…襤褸布は[ワカツ]で
戦った[ゴースト]へと姿を変えて一行へと迫って来る…一々相手取るのも面倒だと一気に洞窟内を駆け抜けようと決め
天井から落ちてくる[ゼノ]や更に奥で待ち伏せていた別個体の人骨達を撒いて彼らは洞窟の行き止まりに辿り着く


   リュート「なぁなぁヒューズさん、もしかして俺達道を間違えちゃったりしたかな?」

   ヒューズ「かもしれねぇな…さっきの分かれ道で右側に思わず走っちまったが、左が出口だったか…」ポリポリ


 冷凍庫の中にでも迷い込んだかと錯覚するほどに寒い…このフロア全体が奇妙な凍気に満ちていた
4人と2体は目前にある異彩を放つ氷のオブジェを眺めながら道を間違えたなと一同に思った…。


 "氷漬けの燃え盛る鳥"が飾られたその部屋に立ち尽くしながら…。
960 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2023/02/04(土) 22:57:34.90 ID:A+l32mxj0

 それは神話に登場する火の鳥であった……氷漬けで尚その姿は美しく現代アートだと言われればそのまま頷きそうな程に


  アニー「コレが氷漬けの[朱雀]ってヤツね」ジーッ

 リュート「ひゃ〜…すっげぇな、燃えてるのに凍ってるぜ、シュールだなー」


  ブルー「コレの封印を解けばいいんだよな?」クルッ


 ヒューズ「そうさ、さっきボコした妖魔の相方をしばき倒せば氷が溶ける…
       恩を売りつけてウチの職場でバリバリ働いてもらいたいがね…打算抜きでも万年氷漬けってのは可哀想だ」


 早いトコ探しに行こうぜ、踵を翻してその場を後にする捜査官に他の面々も続いて出ていくのであった…

―――
――



 氷漬けの神鳥を後に来た道を戻り次は分岐路を左側へと進む……外の光が少しだけ漏れてきている、どうやらこの道で
合っているらしい―――山の中腹に出て彼らが目にしたのは一面氷の湖だ、完全に底まで凍り付いていて表面を歩いても
砕けて落ちて溺死…なんて事にはならなさそうで安心する

 獣系統のモンスターが3体スケートリンクで遊ぶ子供よろしくとツルツル滑ってその辺の"雪だるま"に
突っ込んで遊んでる姿しか見受けられない…話に聞く神鳥を凍らせる程の魔人は姿かたちも見えない


  ヒューズ「…っかしいな、確かに[オンディーヌ]はこの辺に向かって飛んでったはずなんだがな…」

  ヒューズ「奴が逃げた先に相方は居る…そうアタリを付けてたんだが、外しちまったかな」キョロキョロ


   アニー「どう見ても[バーゲスト]3匹と"雪だるま"ぐらいしかないわよね…あっ、また1匹その辺の奴に激突した」




  スライム「Σ(・□・;) !?」バッ!

  スライム「(;´・ω・)ぶくっ!ぶくっ!」ピョンピョン!!!



  リュート「あん?どしたんだ?あの雪だるまが気になるのか?」


 何を想ったのか突然、雪だるまを眺めていたスライムが愕きの感情と共に跳ねあがった
遅れて豪鬼が同じ雪だるまを眺めて身震いしながら「ア、アニキ…あの雪だるまやべぇよ…」と消え入りそうな声で囁く
 モンスター種の彼らが一様に感じ取ったナニカが何なのか…それは周りを観察していた仲間も気が付いた



  アニー「…さっきからあの3匹、アレとあの辺の雪だるまにだけは衝突しない――ううん、それどころか避けてる。」

 ヒューズ「何?」ジッ


 言われてみれば不自然に避けてる雪だるまがある、まるで"触らぬ神に祟りなし"とでも言いたげに
武器を手に術士達は"それ"に近づき――――突如として雪塊は膨張を始めたッ!


  ブルー「―――ッ!全員陣形を組め!奴がターゲットの魔人だ!」バッ!


 ただの二頭身サイズの雪玉が風船のように膨れ上がりあっという間に[巨獣]の様な体積へと変わる
アラビアンナイトに描かれるランプの魔人じみた逞しいマッシブボディの雪塊が緑眼を輝かせながら黄色い牙を覗かせる
 雪だるまに擬態していた巨人が正体を現したのに呼応するように離れた位置にある雪だるまが二つ、本来の姿に戻る


  雪の精A『ヒョォォォ…』
  雪の精B『ヒュゥゥゥ…』


 ブルー「チィ…挟み撃ちか、リュート!貴様は[傷薬]でサンダーとヒューズの援護に回って後ろから来る奴らをやれ!」

 ブルー「スライムは俺とアニーの回復を任せる!可能な限りの連携で一気に押し切るぞ!」



   霜の巨人『 グ モ ォ オ オ オ オオオオオオオ オォォォ!!!!』
961 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2023/02/04(土) 22:58:31.17 ID:A+l32mxj0

 雄々しく雄たけびを上げた巨人は雪で出来ているとは思えない硬さを秘めた拳で叩きつける様な[アイススマッシュ]を
蒼の術士目掛けて撃ち込む、詠唱を始めた術士と剛腕の間に電光石火で割り込む女剣士がすかさず一撃を[ディフレクト]し
巨大な腕を跳ね除けた…っ!


     ブルー「爆ぜろ![インプロージョン]」―――カッ!


 ボジュッ!!!


 術が発動し、光で構築された変形二十二面体の檻が巨人の肘から先を圧縮しては爆破する…雪の塊が蒸発する音に遅れて
魔人の呻きが聞こえ…辺りには蒸気が舞う。



  ブルー「今のは助かった!礼を言うぞ――……アニー、貴様その手は…」

  アニー「っ……気ぃ付けな、[フリーズバリア]って奴だよありゃ…ちょっと弾いただけなのに手がこうさ」


 愚鈍そうな見た目に反して機敏な動きで拳を振るった魔人の初撃を防いだ女の得物は刃先が真っ白に凍り付き
それの柄を握りしめていた彼女の手も凍傷を僅かながら負っていた、痛みはするが武器を振るう分には支障は無いが…


  アニー「ほんの一瞬、弾く際に接触しただけでこれだ…アイツに直接攻撃は悪手だわ、面倒な事にね」


 モンド基地で散々利用したバリア系だ…敵に回られるとこの上なく厄介な能力であることはお互い重々承知済み
ブルーとスライムの術や技主体の攻撃か、剣気を飛ばす手法で切り飛ばす…あるいは突破力のある強い連携で
バリアの発動が間に合わない程に一気に畳みかけて消滅させてやるかだ


  霜の巨人『オデの腕…溶かしたなァ!!!グオオオオオォォォ!!!』


 肘から先が圧縮爆破された[霜の巨人]が雫の滴る断面を術士一行に向けて咆える…するとどうだ!?彼奴の肘先から
放水砲の様に大量の水を高圧で噴出されるではないかッ!!溶けた相手の肉体の一部が意思を持つ水となりて一行を襲う

 弾数にして裕に4発分もの[水撃]が撃ち出されたッッ!


 スライム「(;´・ω・) ぶっ、ぶく!!」バッ!ササッ!


 それを見て直ぐに一角獣から元のゲル状生物の形態へと戻り二人の盾となる様に前に出るスライム、カバレロ一味の
秘蔵兵器が使った[メイルシュトローム]を無効化したように2発までは水の砲弾を取り込み吸収できたが盾となるのが遅い
 残りの[水撃]は防ぐ前に術士と女剣士に当たり、彼らを後方へ吹き飛ばす

―――
――



  ブルー「…ぐっ、クソッタレめ…っ![朱雀]を凍結させるだけの力はあるか…っ!」ゼェ…ゼェ…!

  アニー「水鉄砲ごときでこの威力ってのは厳しいわね…っ」ヨロッ


  ブルー(これはマズイかもしれん、状況を打開できる策を講じねば…っ 何か…何か無いのか!!)キョロキョロ


 遠目に[雪の精]と戦うヒューズ達の姿が見える、あっちはあっちで雪精の放つ[強風]を受けてボロボロの姿が目に付く
リュートの回復支援が入ってどうにか拮抗している状態だ、援軍は……期待できそうにない


  ブルー(うん?一匹[雪の精]が居ない……?どこに―――! あんなところに亡骸が…あいつ等一匹は倒せたんだな)


  ブルー「…。…!待てよ…もしかしたら…アニー耳を貸せ!」バッ!

  アニー「わっ!?な、なによ!?……えっ、…できるけど、少し時間がかかるわよ」

  ブルー「構わん、できるならそれでいい」


 作戦を伝え終えた所で[水撃]のプッシュ効果で後方に飛ばされた"人間<ヒューマン>"組の元へスライムが吹き飛んできた
ゲル状生物の状態で所々氷結しかけている辺り、水鉄砲から間髪入れずの[冷気]を吹きつけられたのだろう…


  ブルー「スライム、貴様まだ動けるか…?」

 術士の問いに、小さくだが「ぶく!」と肯定で返すスライムの言葉を聞き蒼の魔術師は次の様に言った「あれを喰え」と
横たわる[雪の精]を指差して…。
962 :今回はここまで [saga]:2023/02/04(土) 22:59:16.33 ID:A+l32mxj0

 モンスター種は倒したモンスターを一部でも吸収することで能力を得ることができる、細胞を取り込み
その個体へと成長することが可能だ…

 ヒューズ達が激戦の中でどうにか1体だけ倒せた個体、コレをスライムに吸収させ…目当ての技を引当てられれば…!

 [雪の精]をスライムが取り込む最中、飛んでくる物理攻撃を黄金髪の女剣士に[ディフレクト]してもらい
中距離から術士が発動の早い[エナジーチェーン]で牽制を行う
 攻撃を一見か細い人間の女に防がれ、絶妙なタイミングで瞳などの急所を狙ってヘイトを買って出る術士の連携に
苛立ち始めた[霜の巨人]は多少隙を作ってしまうのを覚悟の上で怒りに任せて息を大きく吸い込み[強風]を吐く準備に入る


  アニー「…はぁ…はぁ…くっ、こんだけやれば流石に手がしんどい…っ!悪いけどあたしはここまでだ!」


 [ディフレクト]要因の剣士が縦横無尽の歩みを止め、その場で立ち止まり得物を持ったまま…静かに目を瞑る
手は何度も氷結界に接触した為、ひどい有様でどんなに頑張ってもあと一振りしか剣も振るえまいと言った所
 そんなアニーを見てようやく観念したかと空気を取り込み更に膨れ上がった巨人は見下ろす

 今から全体範囲に向けて吹き付ける[強風]を受けて、彼らがそれでも立っていたと仮定しよう
盾となる剣士が機能しないのであればもう攻撃は防ぎようが無い、それこそ純粋な拳ひとつで勝てる…


 [霜の巨人]が大きな口を開き、暴風を吐き出さんとしたその瞬間…!






       ブルー「このタイミングだ!!やれェ――ッ!!」バッ!


     スライム「(。-`ω-)ぶくぶくぶーーーーーーーーーっ!!!」ビュオオオオオオオオオオ!!




   霜の巨人『!? ウゴオオオオ!?』グラッ!


 吸収を終えたスライムが飛び出しそして――――"[強風]"を使ってきたのであるッッ!!


 [雪の精]から低確率で取得できる技…それは[シルフィード]と言った風精を撃ち出す技を使ってきたスライムにとっては
容易く使える物で地表から斜め上に目掛けた、魔力を帯びた超局地的な暴風はものの見事に魔人の姿勢を崩す事に成功した

 本来であれば眼下にいるブルー等に対して吐き出すつもりだった相手の[強風]は大きく前のめりに姿勢を逸らすことで
真下に――凍てついた氷の床へと叩きつけられ、そして[霜の巨人]は上方へと昇っていく…!
 宛らシャトルロケットがノズルから火を噴き天へと上がっていくようだ


  ブルー(大気を取り込む際の隙と姿勢を崩したまま空に舞うだけの時間があれば此方も放てるというもの―――)

  ブルー「 [ ヴ ァ ー ミ リ オ ン サ ン ズ ] !! 」


 蒼が放つは紅き大紅玉の嵐、熱を帯びた宝石の破片槍が次々とスライムの[強風]による追い風に乗って雪塊に突き刺さる
[インプロージョン]で肘から先が溶けた時からそう…見た目通り、熱に対する攻撃に耐性が無い彼奴はドロドロと溶け出す


  霜の巨人『グ、ググ…オノレ…!!』


 ドロドロと身体の6割近くが溶けたがそれでも術士の大技を耐えきった魔人は
残り4割の肉体で[ダイビングプレス]を仕掛け憎き魔術師とモンスター種を滅ぼさんと急降下し始める…っ!

 溶け落ちた部分の滴りも既に魔人の力で霜と化し、最早…胴体から下は氷柱の剣山となり果てていた

 今から[ヴァーミリオンサンズ]の2発目を唱えるには少しばかり時間が足らない、詠唱を終えるより先にブルーが
降って来る巨人の身体に潰され圧死する方が早い…もう誰にも止められまいッッ!

  そう[霜の巨人]は思っていた…。



  ブルー「ここまでお膳立てしたんだ!さっきの打ち合わせ通り決めてやれアニー!!!」




  - 手は何度も氷結界に接触した為、ひどい有様でどんなに頑張ってもあと一振りしか剣も振るえまいと言った所 -


 そう…"あと一振りは剣を振るえる"んだ……ッッッッ!!
963 :次は来週予定 [saga]:2023/02/08(水) 22:08:37.02 ID:4PgZO7k10



         霜の巨人『 ナ、ナン ダト ォ ォ ォォ ォ!?!?』ゴオオオォォォ!!





- [ディフレクト]要因の剣士が縦横無尽の歩みを止め、その場で立ち止まり得物を持ったまま…静かに目を瞑る -



 歩みを止めたのは諦観したワケではない。

 静かに目を瞑ったのは最期を悟ったからではない。



 半溶の巨人は辛うじて残っている緑眼で見た、歩みを止めた場から一歩も動かず練り上げた闘気を纏った女剣士の姿を






 - アニー『わっ!?な、なによ!?……えっ、…できるけど、少し時間がかかるわよ』 -

 - ブルー『構わん、できるならそれでいい』 -


 時間の掛かる大技は1発だけじゃあない…2発あったッ!

 揺らめく闘気、極寒の大地に居るのに大火を前にしているような熱量を感じる気迫…ッ!
黄金髪の女剣士は口角を釣り上げ振って来る氷塊を見上げた
 対照的に彼女を見下ろす魔人は本能的に死を悟り表情が凍り付いた…っ!


――――ダンッ!!!


 しなやかなに[柳枝の剣]でも放つような流れる動きと共にアニーは天へと高く跳ぶ
ゆらめく炎…否、太陽の光を思わせる"闘気<オーラ>"を纏った彼女の剣閃が魔人の身体を下から上へと一気に切り裂いた

 無論、言うまでもないが最後のあがきで[フリーズバリア]は展開していた…だがバリアが
対象にダメージを与えるよりも早く術者が消滅しては効力を発揮しない、そういうものなのだ





            アニー「 [ ラ イ ジ ン グ ノ ヴ ァ ] !! 」




 生命の輝きによって生み出された極小の太陽は小規模な爆発を引き起こす
その熱量は神鳥に対し永久凍結の呪いをかけた魔人を[フリーズバリア]諸共溶かすには十分過ぎた…。

―――
――




   雪の精B『ヒョ、オォ、…オ』ドサッ


  ヒューズ「ふぃーっ、こんなもんか…」ボロッ

  サンダー「うぅ…死ぬかと思った…アニキー…[傷薬]欲しいよぉ…」

  リュート「おう、お疲れさんっと…ほらよっ!」ゴソゴソ、スッ…!


  リュート「こっちはどうにか終わったなブルー達の方はどうなって……んおっ!?なんだぁ今の爆発!?」


  ヒューズ「……ほー、あの姉ちゃんやるなぁ、デカブツ結構弱ってたがトドメ持って行っちまったぞ」


  リュート「へへっ、どうやら心配いらなかったみてぇだな!」

  ヒューズ「んじゃま、こっちも合流しに行こうぜ…こんで朱雀の呪いも解けるだろうよ」
964 :続き早ければ土日、もしくは火水 [saga]:2023/02/15(水) 20:56:12.26 ID:+5X5accz0

 "闘気<オーラ>"を纏った斬撃で魔人を打倒した一行は一度来た道を戻っていた…なにゆえ戻るのか、その疑問を提案者に
ぶつけた者は当然いた、「さっさっと用件を済ませてこんな悪環境から帰還した方がよかろうに」と不良刑事に言うが
それに対して彼は呪いが解けた朱雀に会い、仲間になってもらう為だと口にした

 ここから先は山頂に登り頼まれていた黄色い花を採取してくるだけ…とはいえ道中何があるか分からない
増強できる戦力は大いに越したことはないということだったのだ


 渋々ながら一行は納得してきた道を逆そうした訳なのだが…








   ブルー「で?これについてどう説明してくれるんだ、ん?」


  ヒューズ「あっれぇ…おっかしぃなぁ〜」メソラシ





  氷漬けの朱雀『 』カチーン





 [霜の巨人]を倒せば呪いは解ける、それで神鳥を仲間にして[IRPO]の人員も増やせてウッハウハ!!という目論見を
完全否定するかのように目前の凍れる芸術はそこに依然として存在した…。

 聞いてた話と違う。――そう叫びたいのはヒューズも同じであった、然し実際に解呪されていないのだから仕方ない


 ヒューズ「ぐぬぬ…これじゃあ俺様の負担を減らす計画が…」


 頭を掻きむしりながらこれから先も減らない仕事量の事を考え苦渋に満ちた顔をする刑事を尻目に術士は考える
呪いを掛けた妖魔は滅した、にも関わらず解呪できなかったのは何故なのか…
 学院に居た頃に読み漁った多くの本に記された記述を記憶の底から洗い出してみる



  ブルー「……もしや、あまりにも長い年月が経ち過ぎて定着したのか?」

 ヒューズ「なに?」


  ブルー「呪いの中に稀に存在する事象だ、例えば石化…これが千年や万年単位で解かれず続いたとしよう」

  ブルー「保存状態が良ければ何ら問題が無いが、野晒しで酸性雨や暴風に長く晒され罅割れたり欠けた場合
         状態異常を治す為の医薬品や魔術による施術を行使しても元に戻せないというパターンがある…」

  ブルー「昨今の技術力の進展と石化した者への早期発見と応急処置が普及した現代じゃほぼあり得ないことだがな」


  アニー「じゃあ、この[朱雀]は…」

  ブルー「その線が有り得るということだ、この山中洞窟でどれだけの間凍ってたかは知らんが」


 サンダー「…あのぉ、ブルーさん、無理は承知でもコイツなんとかしてやれませんか?見てて可哀想なんだけど」


  ブルー「今しがた説明した通りだ、術者も倒してこの有様ときたもんだ
          呪氷が相手じゃ単純に炎に放り込んでハイおしまいという訳にもいかんさ…」


 ましてや妖魔絡みの呪いだ、妖魔の使う術は"科学的超能力<サイオニック>"の学問でも未解明な点がまだある、と付け加えた
それを聞いて何かを閃いたようにヒューズがハッと顔をあげて叫んだ


  ヒューズ「そうだ!妖魔だ!!…餅の事は餅屋に聞けばいい、なぁんで直ぐに気付かなかったんだ!」

   ブルー「どうした突然?」


 叫びをあげた不良刑事に怪訝な視線をくれてやる蒼き術士、そんな彼に対してニカっと歯を見せて笑いヒューズは言う
「"普通の炎に放り込む"じゃ駄目なんだろう?強い力を持った妖魔の特別な炎ならどうだ?」と
965 :続き来週予定 [saga]:2023/02/23(木) 00:00:59.87 ID:rapeIGqr0

 ヒューズ「ちょっと心当たりがあんのさ!妖魔絡みで強い炎って奴によ」

 ヒューズ「コレが終わったらコイツを[ファシナトゥール]まで運ぼうぜ!」


  アニー「いやアンタ運ぼうぜ…って、簡単に言うわね」


 まずは山頂の花とやらを取って来なければならない、それが終わったらこのデカい氷塊を妖魔の御国に運びましょうと?
とんだ重労働である、道中の竜が居た所にあった遺骨の一件といい何回山を往復することになるんだ…
 パトカー型の船をこの山に乗り捨てる前提で[ゲート]を使えば早いだろうが、そういう訳にもいかんだろう


  アニー「…はぁ、頭が痛くなりそうね」

 リュート「サンダー、お前の頑張りどころかもしれねぇぞ、地元でも祭りの神輿担ぐの得意だっただろ?」

 サンダー「うえっ!?オ、オレ…?そうだけど…」チラッ



  氷漬けの朱雀『 』ズーン…



 サンダー「流石にデカさの規模が違い過ぎるよぉ…」ガックシ






 …この後、術士一行は山頂まで行って、黄色い花を採取しようとした所を別個体の[朱雀]に"縄張りに侵入してきた"と
勘違いされて襲われたり、下山の際も全員でわっせ!ほいさ!と"氷漬けの朱雀"を背負いながら帰路に着く途中で
サンダーがうっかり足を滑らせたりアクシデントに見舞われながらもシップに戻るのだが…それは割愛するとしよう…。


―――――
――――
―――
――



*******************************************************
―――
――




ヒュォォォォォ…



 一陣の風に木枯らしが吹かれていく…





【双子が旅立って15日目 深夜0時00分 [京] 】




  ルージュ「……時間、か。」スッ


 旅館の一室で椅子の背凭れに身を預けていた紅き魔術師がそう呟く
日付はもう、変わった。


 目配せでもする様に湯飲みに口を付けていたレッド少年の方を見やれば彼もまた顔つきが険しい物になっていた
[メタルブラック]との死闘に身を投じた日、戦闘終了後に現れた獅子の如き姫との約束―――その刻限も2時間に迫る


 レッド「俺達はできる限りの事をやったさ、後は姉ちゃんがベストコンディションになるように休養を取らせて」

 レッド「そんで今は[心術]の道場んトコに無理言って奥の座禅部屋も借りてる…精神統一ってヤツをしてるさ」スクッ


 白薔薇姫と体調確認の為にBJ&K、更に何かあった時の為にラビットも護衛としてつけさせている
アセルスと合流して約束の果し合いの地に赴こうと立会人の男二人も立ち上がるのであった…。
966 :続き次の火水予定 [saga]:2023/03/01(水) 22:10:29.39 ID:uq9Mbitq0

 宿泊先から出て橋を渡り[京]の北西に位置する修行場へと赴く、受付の者は彼らを見て静かに来たか、とだけ呟き
奥の部屋に目線を向ける…。
 場所を提供してもらったことに一礼し二人が瞑想の間へと踏み込むと――――



  レッド(! …姉ちゃん見違えたな)

 ルージュ(あ、あぁ…、見た目は何一つ変わっていないのに…これは)ゴクリ




  アセルス「……ん? 二人とも迎えに来てくれたんだね、ってことはもうそんな時間かー」パチッ


 座禅を組む様な姿勢でずっと目を閉じていたアセルスお嬢が目を開き仲間二人の姿を認識した
これから…どう見積もってもあの[メタルブラック]と同等かそれ以上の強敵と1対1で対峙することになるというのに
どこまでも落ち着いた…何事も無いかの様な澄んだ雰囲気を漂わせて彼女は思ったより早かったなぁ〜っと言ってみせた


 この数日、彼女との鍛錬に付き合ってきたからこそ分かる

 彼女は以前と比べて明らかに強くなった、[幻魔]を握りしめたとてその力に振り回されることも無い
自らの意志で妖刀を御せるだろうとも

 心は極めて澄んでいる、波風も波紋の一つすらもない澄んだ水面…明鏡止水に至れていると言ってもいい


 ゆっくりと立ち上がり、ん〜!と背伸びして歩き出す、そんな彼女に付き添う様に白薔薇姫が
その後ろからBJ&Kとラビットが続いて行く


  アセルス「さぁ!行こうか!」


―――
――



【双子が旅立って15日目 深夜1時58分 [京] 】



 [庭園]へ続く橋を渡り、一行はその場で待つことにした…

 三日前、黒鉄の武人を討ち取ったこの地にて…――――炎上していた[書院]の火は近隣住民の手によって鎮火し
なんとか形は残っていて、また[メタルブラック]の残骸も撤去済みでこうしていると
あの日は何も起きていなかったんじゃないかとすら思ってしまう

 腕を組み目を閉じたまま柳の木に身を預けたままのレッド少年、その傍らに物言わず立つBJ&Kの上に着地したラビット
[庭園]の中央に立るアセルスをじっと見つめたまま微動だにしない白薔薇…

 そんな仲間達の様子を見渡していた紅き術士は天を仰ぐ様に夜空を見上げる…星明りと月明かりが嫌にハッキリとしてて
雲の流れも全くと言っていい程に無い


 天すらも此度行われる決闘を観戦する気でいるのだろうか…


 ルージュは随分前に購入した携帯電話の液晶画面を覗き込む時間は深夜の1時59分……――――




   ルージュ「ぁ…」




 ―――から、たった今、2時00分に変わった。





 コツッ…コツッ…コツッ…



 靴底の音と共に橋の向こうから幽鬼が如く姿を現した黄金の騎士が視認できたのは彼が声をあげるのとほぼ同時刻だった
金獅子姫が…[黒曜石の剣]を携えてやってきたのだ。
967 :続き来週、もしかしたら再来週になるかもしれない [saga]:2023/03/08(水) 22:41:44.46 ID:G3ja2Li40


 アセルス「獅子姫…。」


 月明りの下、現れた寵姫を見て彼女は名を口にした
[庭園]の中央に立ち対峙する騎士は少女とその仲間達を一瞥する


  金獅子「刻限通りに来られたようですね、アセルス殿…まず約束通り1対1での決闘に応じて頂き感謝します」


 中央に戦士が二人、そこから離れて窺うギャラリーとして術士達一行が立っている…二人の戦いに水を差さない様に
一騎打ちの決闘を見守る為に…!
 たとえアセルスがどれだけの重症を負おうと首と胴体が泣き別れすることになったとしても手出しはしない
それが事前の決め事だ、その代わり彼女が敗けたとしても他の仲間達に危害は加えない


  幻魔『 』スッ


  金獅子「…ほう?見事な業物ですね、ゴサルスが打った物とお見受けします」


 紅く染まった妖刀を鞘から引き抜く彼女を見て金獅子は目を見開いた、生半可な者では[幻魔]を扱い切れない所か
その力に振り回されるだけに過ぎない、しかしそれを手にするアセルスにそういった物は見受けられない


 アセルス「始めましょう」

  金獅子「フッ、そうですね…いざ尋常に参るッ!」



 その一声を口火に両者は動き出した、百獣の王が如く俊足で駆け出し[スマッシュ]を叩き込む動作…っ!
重い[黒曜石の剣]の一撃を[ディフレクト]で防ぎ[切り返し]ていくも獅子姫は右腕に装着した盾でそれを防ぐ
 お互いにノーダメージの初撃…続けて獅子姫は飛び退き距離を開け[冷気]を吐き出す


  アセルス「ぐっ…!」ピシッ、ピキッ…


   白薔薇「アセルス様!!」


 [京]の季節にそぐわない極寒の風、ほんの少し浴びているだけなのに前髪の先から凍り付いて手も悴んで動きが
ぎこちない物になりそうだった、致命的なダメージこそ負わないがこのままでは鈍った所を狩られる…ッ!



  アセルス「[燕返し]!!」シュバッ!
   獅子姫「むぅっ!?」ブシャァッ!


 凍える暴風の中を突っ切り発生源へ飛来する剣技の一撃を受けて獅子姫がよろめく
その隙に素早く呼吸を整えて[克己]を発動させて自身の傷を癒す


   獅子姫「フフッ!そうこなくては面白くない…![払車剣]」ビュオッ!


 額から血を垂らしながらも笑いながら彼女は身を捩じらせ大きく振り被った一振りを放つ
瞬間、"鎌鼬<かまいたち>"が幾つも重なって発生しアセルス目掛けて襲い掛かる―――!



  レッド「あぁっ!姉ちゃん…!!」
 ルージュ「アセルス!!!」


 見届け人である彼らには何も出来ない、ただアセルスの勝利を信じて待つしかない。

 この数日で間違いなくアセルスは強くなった、だが相手もまた強者であった…剣気の嵐に晒され身を切り刻まれた少女は
これは堪らないとばかりに地を蹴り空へと逃れようとするが…!


  獅子姫「甘いっ!」カッ!


 練られた妖気により生じた[落雷]が天高くに居たアセルスの身に落ちる―――ッッ!


  アセルス「きゃあ"ああ"ああ"あ"あ"あ"―――ッ」バチバチィ…!…ドサッ!

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