男「アライさん虐待トーナメント?」

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244 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/12/17(日) 16:56:25.47 ID:gUZcLOX6o
待ってます
245 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/12/25(月) 18:10:07.59 ID:AMsxMPzu0
アライちゃんA「クエエェ…キューン……」

アライちゃんAは目を細めて苦しみ後は死を待つだけとなったが、妹に何か伝えようとか細い声で言った。

アライちゃんA「い…いもーと…アライしゃんのぶん…まで…がんばっていきる…のだ…やくそく……のだ……」

アライちゃんB「おねえじゃあああんん…わかったのだぁ……りっぱなアライしゃんになってみせるのだあ…」

その言葉を聞くとアライちゃんAは目を閉じ、首がガクッと揺れた。事切れたんだろう。

目出し帽男「害獣として立派なアライさんの間違いだろ。本当にまともなアライさんがいるなら見てみたいけどな。

まあいいやお前は約束通り逃がしてやるよ」

目出し帽男はナイフを使い、アライちゃんBの拘束を解いてやった。大分きつく縛られていたせいなのだろうか
縄が解かれてもアライちゃんBの動きはどことなくぎこちなかったが、特にケガなどは無い様に見えた。

男はアライちゃんBがそのままその場から去るのかと思ったが、何故か木の根元で死んでいる母親のそばへと移動した。

アライちゃんB「おかーしゃん、おかーしゃん、そろそろめをしゃますのだ。おねーしゃんのおかげで

あらいしゃんたちはじゆーになったのだ」

アライちゃんBはいまだに母親が寝ているだけと思っている様だ。アライちゃんCと姉の死に様を見てなお察する事が
出来ないとは…。目出し帽男もさぞあきれてる事だろう。

アライちゃんB「おかーしゃん、どうしておきないのだ?………もういーかげんにするのだ!

いくらおかーしゃんでもおこるのだ!」

アライちゃんBはいつまで経っても反応を示さない母親に対し怒りをあらわにし始める。

アライちゃんB「もとはといえばおかーしゃんがねてなければ……おかーしゃんがたすけてくれればおねーしゃんが

あんなめにあわなくてすんだのだ!おねーしゃんがうごかなくなったのはおかーしゃんのせいなのだ!

……きっとそうなのだ、アライしゃんはわるくないのだ!」

自分の身代わりになって姉が死んだ事を認めたくなかったんだろう。母親に責任をなすり付けるとは将来有望なアライちゃんだ。
そもそも目出し帽男がこの一家を悲惨な目に遭わせた張本人なのに、そこから目を背けているのが救えない。
246 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/12/25(月) 18:12:20.48 ID:AMsxMPzu0
アライちゃんBが恨み言を言い終わった後、何かに気づいてハッとした様な表情を見せてブツブツ呟き始めた。

アライちゃんB「おねーしゃんがうごかない…おかーしゃんがうごかない…おかーしゃんもうごかない…?

おねーしゃんとおかーしゃんはおなじなのだ…?」

そう言うとアライちゃんBの顔は青ざめていく。それとほぼ同時にアライちゃんBの体は目出し帽男によって持ち上げられた。

アライちゃんB「きゃあ!なにをするのだあ!?」

目出し帽男「残念だが時間切れだな」

アライちゃんB「っ!?……やくそくがちがうのだ!はなしてなのだぁ!」

目出し帽男「逃がす約束はしたが、また捕まえないとは言ってねえだろ」

アライちゃんB「そんなのしらないのだ!いやいやなのだ、にんげんしゃんはずるっこなのだあ!」

目出し帽男「うるっせえな。大体本当に逃げられると思ったのか?俺の願い事聞いてたよな?

アライさんを絶滅させたい人間がどうしてお前らを逃がすんだよ」

男は「まあ知ってた」と心の中で思った。アライさん虐待ファンの間では一度捕まえたアライさんやアライちゃんは
どんな形であれ必ず殺す、というのが鉄則なので目出し帽男がなんやかんや理由をつけてアライちゃんBを逃がすはずが無い、
というのは最初から分かっていた。

アライちゃんBの縄が解かれてからここまで4〜5分だから、仮に全速力で逃げていたとしても四つん這いで
移動できる距離はたかが知れている。目出し帽男からすればちょっとした追いかけっこをする程度の事だ。

ともあれ目出し帽男に再び捕まってしまったアライちゃんBはこれから自分がどうなるのか想像でもしたのか
みるみる泣きそうな顔になり、すぐに大声で泣きだした。

アライちゃんB「うびゃああああああ!びゃああああああんんん!!…いやなのだあ…おねーしゃんとおかーしゃんと

おなじになるのはいやなのだあああぁぁぁ……アライじゃんはおおぎぐなりだいのだぁ……

おおぎぐなっで、がぞぐをづぐっでっ…ずっどずっどながよぐぐらずのだぁ……やぐぞぐっ!…やぐぞぐじだのだあぁ……」

汚い声でわめき散らし、涙と鼻水を流し真っ赤になった不細工な泣きっ面がズームアップされた所で動画が終わってしまった。
せっかくいいところだったのに…。

なぜ目出し帽男がここで動画を終わらせてしまったのかは分からないが、アライちゃんBが姉達と同じ様に木に打ちつけられたか
はたまた別の方法で殺されたかという事だけは確実だろう。

しかしこきたない泣き顔のどアップでシメるとは目出し帽男も人が悪いな。死に顔よりも印象に残ってしばらくの間思い出してしまいそうだ。
247 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2017/12/25(月) 18:13:21.95 ID:AMsxMPzu0
余韻に浸りつつ動画のコメント欄を眺めていたら、ちらほらと英語で書かれたコメントが目についた。
外国にもアライさん虐待ファンがいるというのは知っていたが、こうやって直接コメントを見たのは初めてだ。

「クール」「日本人ばかりアライさんで遊んでズルイぜ」「クレイジー」「アライさんは神からの贈り物」

「日本に移住したいが銃は使えるのか?」「oh.japanese hentai」「キモかわいい、特にアライちゃんが」

「アライさんを捕まえると金がもらえるらしいが、俺は金払ってでもハンティングしてみたいよ」「アライを讃えよ」

「他のアニマルガールと比べて汚すぎないかアライさん」「アライさんがよく言う『なのだ』ってなんだ?日本語はわからん」

よく分からないコメントもあったが、おおむね日本の虐待スレで言われている事と同じ様なものだな。
しかし批判的な感想が無いあたり、外国人から見ても不快に映っているらしいのが流石アライさんといったところか。

そんな調子で結局休日は他のアライさん虐待動画を漁っていたら終わってしまった。

―――――――――――――――

3月のとある休日、今日は以前約束したおじさんの山のアライさんの駆除を手伝う日だ。
山ならまだちらほら雪が残っているかもしれないが、今日いっぱいは天候も良く特に問題はなさそうだ。

早朝、待ち合わせ場所の以前おじさんと知り合った時に招待された作業場に車で行き、車を停めていると
音で気づいたのかおじさんが建物から出てきて出迎えてくれた。

男「おはようございます、今日はよろしくおねがいします」

おじさん「おはよう、カトウさん。手伝いに来てくれて本当に助かりますよ。駆除と言っても別に仕事って訳じゃないですから

気楽に考えて下さい。もちろん山に入る事に関しては用心しなければなりませんが」

男「わかりました」

おじさん「罠の設置などは事前に終わっているので、今日は罠の回収・アライさんがいたら即刻処分するといった

作業をするつもりです。何か聞きたい事などはありますか?」

男「いえ…今のところ特には」

おじさん「では不明な点があれば気づいた時に遠慮無くどうぞ。…何箇所か回らないとならないので、着いてすぐですみませんが

早速出発しましょう。トイレなどは大丈夫です?」

特に尿意は無かったが一応、ということで便所を借りる事にした。


続く
248 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/12/25(月) 18:21:24.44 ID:RrrBtDJL0
249 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/12/25(月) 20:07:00.82 ID:v5hk9Y0F0
投下お疲れ様です!
アラ虐SSスレで一番楽しみにしてます!
250 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/12/25(月) 20:21:08.85 ID:74lhuLpR0
乙でしゅ。投稿あって嬉しいです
あえてBの結末を描かないのも良いですね。どんな最期を迎えたか想像する楽しみがあります。次回も楽しみです
251 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/12/25(月) 20:41:11.29 ID:ExmiRshlO
乙です
外人コメントがすき
252 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/12/25(月) 21:58:16.32 ID:8TcPmb1z0
とっても待ってました・・・・
No1アラ虐だと思ってます!
253 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2017/12/26(火) 22:09:14.44 ID:2FcYxh8C0
更新乙です!
作者さんのアライさんどもが嬲りものにされる描写には、毎回癒されます。
254 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/01/09(火) 08:32:01.83 ID:v0622kg2O
しかしトーナメント始まらないなぁ
255 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/01/28(日) 23:46:49.49 ID:qDVzpU490
続きまってます・・・・・
256 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/02/28(水) 00:08:09.25 ID:Plhmte8N0
待つ
257 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/03/03(土) 16:18:16.43 ID:jUuNTeVy0
俺も待ってます…
258 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/03/18(日) 18:14:32.83 ID:0H0vUuCl0
用を足し終わり外に戻ると、おじさんが作業場の壁際で煙草を吸って待っていた。

男「お待たせしました…タバコ、吸われるんですね」

おじさん「ええ。まあ禁煙に失敗したんですがね。今回はもった方ですよ」

ハハ、と笑いながらおじさんは地面に置いてあった水が張られている一斗缶に煙草を投げ捨てると

おじさん「山の中腹までは車が通れる道があるので車で移動します」

車に乗れ、という事だろう。促されるままにおじさんのワゴン車の助手席に乗ると、おじさんも運転席に乗り
シートベルトを締めた後、車を発進させた。

禁煙か。子供のころ俺の親父も禁煙したのはいいが、嫌な事があったり短気を起こすたびに換気扇の下でタバコを吸ってたな。
おじさんと親父が同じとは思わないが、何か腹が立つ事でもあったのかもしれない。

土と砂利の混じった細い道を進んでいると、

おじさん「ところで前に会ってからアライさんは捕まえましたか?」

男「いいえ…今年はまだ捕まえに行ってないです。シーズン初めなのでまた話を聞きたいと思いまして」

おじさん「ああ、なるほど。…さっきカトウさんがここに着いた時は急かすような言い方をしましたが、

実のところ罠の回収は半分以上終わっているので、滞りなくいけば昼頃には終わると思いますよ。

ですので今回はお役に立ちそうな話ができるかはわかりませんねえ」

男「そうだったんですか。罠の設置や回収は全部お一人で?」

おじさん「昔からの猟仲間数人に手伝ってもらいました。私も彼らの作業を手伝ったりする事もありますから…

まあ持ちつ持たれつってヤツです」

男「いいですね、そういうのって。それでアライさんは何匹捕まったんですか?」

おじさん「今のところ二匹です。離れた場所で成体のアライさんが一匹ずつ捕まりました。

どこから来たのか聞き出した後にすぐ処分しましたが」

男「どこから来たんです?」

おじさん「それが二匹とも冬の間に移動してきたのではなく、去年の夏から秋にかけて来たみたいでして。

一応見回りなどはしていたんですが…。このぶんだとまだこの山で年を越したアライさんがいそうですねえ」

おじさんは少し顔をしかめながら言った。
259 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/03/18(日) 18:15:38.89 ID:0H0vUuCl0
男「やっぱり完全に駆除するのは難しいんですねえ。去年の春にも駆除されたんですよね。その時はどうだったんですか?」

おじさん「その時はここで年を越した成体のアライさんが一匹、冬の間によそから移動してきたアライさんの親子が二組でした。

親子はどっちとも親一匹、子供一匹といった具合です」

男「全部で五匹ですか。それより少ないといいですねえ」

おじさん「比較する為に罠の設置した場所や数は去年とほぼ同じにしましたが…冬期の平均気温や天候が違いますので

あまり参考にはならないでしょうね」

その後しばらく道を進むと、作業場があった所の様な少しひらけた場所に出て、おじさんは車を停めた。

おじさんと男はリュックを背負い、準備をする。

おじさん「じゃあここからは歩いて行きましょう。特に足元が危険な場所はありませんが、念のため私の後に付いてきて下さい」

男「わかりました」

おじさん「おっと…こいつを忘れてました」

おじさんはワゴン車の後部ドアを開け、ストックを一本取り出した。男は最初、それを登山用のストックだと思ったが
よく見るとスキーで使うストックだった。ストックの先に付いている円盤状の部品が外され、先端は機械で削ったのだろうか鋭利になっている。

削られて露出した、銀色に鈍く光る金属面には赤い物が付着しており、何に使うかはおおよそ察しがついた。

男「ストックですか。そういえば子供の頃はよくスキーの練習をしてましたね」

おじさん「私はからっきしですね。今でもおやりに?」

男「就職して地元を離れてからはすっかりやらなくなってしまいましたねえ」

おじさん「そうでしたか。…ではそろそろ出発しましょう」

男は頷いて返事をし、おじさんの後に続いて歩き出した。しばらく森を歩いていると

おじさん「さっき子供の頃の話が出ましたが…。私は運動はあまり得意では無かったですが、よくこの山で遊んでいましたね。

昆虫を採集したり色々な押し花を作ったりしたものです」

話を聞くと、この山はおじさんの曾祖父の代から引き継いでいるもので、七年前にそれまで元気だったおじさんの父親が
急病で亡くなってからはおじさんが管理している。

子供のころはおじさんと友人達の良い遊び場で、生き物や植物に興味を持つきっかけになったのだそうだ。
260 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/03/18(日) 18:16:50.76 ID:0H0vUuCl0
おじさん「父が死んだ後、何かに利用している訳でも無いので山を手放したらどうか、と親族から言われましたが…

私には出来ませんでしたねえ」

おじさんにとっては思い出深い場所という事だろう。そんな場所がアライさんに好き勝手されるのは我慢ならないというのは容易に想像できる。
だが他にもいわゆる害獣と呼ばれている動物はいる訳で、おじさんの中では害獣とアライさんとの間にさらに線引きがある、という事か。
それはアライさんだけは虐待する、という事から見ても明らかだ。

そういえばもう一年前になるのか。俺の家を荒らしたのはアライさんだと警官に告げられた時、言いようの無い怒りを感じた事があったな。
もしこれが人間の泥棒だったら?ただのアライグマだったら?勿論ムカつきはしただろうが、処理場を見学した時の様に死に顔を拝んでみたい、
とは流石にならなかっただろう。

結局しばらく考えていてもアライさんに対する不快感の正体はわからなかった。
もしかしたらおじさんも俺と同じ様な感情をアライさんに抱いているのかもしれない。

おじさん「そろそろ罠のある所ですね」

箱罠は空っぽだった。アライさんがいないに越した事は無いが、単に罠に引っ掛からなかっただけかもしれないので素直に喜べない。
罠の中の餌はそのままになっており、周りにもアライさんや野生動物の足跡らしき物も無い。罠をスルーした訳では無く、
ただこの場所には現れなかっただけの様だ。

おじさんが罠を持ち上げて運ぼうとしたので、男は「自分がやりますよ」と声を掛けたがおじさんは「じゃあ次の罠はお願いします」と返事をした。

―――――――――――――――

一旦車に戻って空の罠を積み、二個目の罠の回収に向かった。到着すると罠の中にはアライさんが一匹閉じ込められていたが、
やせ細っている上に丸く縮こまっていたので、よく見なければ成体のアライさんだとは気が付けなかった。

アライさんは物音を感じ取ったのか頭を上げ、

アライさん「また人間なのだ…。お前たちもアライさんを追い回すのか?違うならここからアライさんを出すのだぁ…」

この口ぶりを聞くに、元々この山にいたのでは無く最近どこからかやって来たアライさんの様である。
聞く手間が省けたので後は処分するだけだろう。おじさんがストックを構えると、

アライさん「その棒はなんなのだ…お前たちもやっぱりアライさんを叩くのか?でもこの中にいればアライさんを叩く事なんて出来ないのだ。

アライさんを叩きたいならここから出すしかないのだ。ほらほらどうするのだ?人間?」

挑発してるつもりなんだろう。出た瞬間にお前たちに噛み付いて逃げてやろう、という意思が目つきから見て取れる。
爪や牙を持っているクセに、刺すという発想は無いのか。

おじさんは罠の上の格子からストックを挿し込むと、アライさんの胸に狙いを定めて突き刺した。

アライさん「ぶふぉおっ!?」

アライさんは目を丸くして我が身に突き立てられたストックを両手で握って抵抗した。


続く
261 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/03/18(日) 19:15:30.04 ID:wYqx4pn80
乙です
帰って来てくれるとは・・・待ってました
262 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/03/18(日) 19:27:05.80 ID:8CeOXWs1o
まさかの更新!乙でした
263 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/03/18(日) 21:50:17.12 ID:t8EZQHF90
来た!!!
また読めるなんて嬉しいぜぃ!
応援してます
264 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/03/18(日) 23:55:54.04 ID:7VTk3KwO0
待ってたよー!
乙です
アホのくせに挑発はいっちょまえにしてくるとかムカつく
265 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/03/19(月) 03:15:51.06 ID:x/2VXvjB0
ウヒョー!!久々の更新!
266 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/03/19(月) 21:20:39.62 ID:6SU8knWa0
あなたの慈悲のない扱いが一番すき!
267 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/03/24(土) 18:14:01.25 ID:f2KwpAYj0
おじさんは右手でストックのグリップを握り、左手を上からかぶせる様に置いてストックに体重を乗せた。
ストックはズブズブとアライさんの体にめり込んでいく。

アライさん「ぐぎぎぎぃぃ……」

アライさんは口を噛み締めながらストックを掴んで自分の体にそれが沈んでいくのを阻止しようとするが、
弱って力が出ないのかすぐに腕から力が抜けていく様子が見えた。

アライさん「なんで…アッ…アライさんを…のけものにする…のだ…。アライさんは…なにも…してなぃ……」

搾り出す様にそれだけ言うとアライさんは目をつむり動かなくなった。細い棒で刺しただけなら痛みでかえって暴れだしそうなものだが…。
よほど衰弱しきっていたのか、それともおじさんの手際が良かったと言う事なのか男にはわからなかった。

おじさん「力尽きた様ですね。ではこの罠はお願いしてもいいですか?」

アライさんの死体は罠に残ったままだ。死体はここに打ち捨てていくと思っていたので一瞬疑問に思ったが、
きちんと回収して然るべき方法で処理をするという事だろう。

さっき質問は遠慮なくしてくれて構わない、と言っていたがわざわざ聞く程の事でも無いか。
それに今日はあくまでおじさんの手伝いに来ているだけだから、余計な口を挟むべきではない。

男「わかりました。よっこいせ…」

返事をし、おじさんの後に続く。久々に持ち上げる罠はズシリと重く、冬の間にジムにでも通っておくべきだったなと少し後悔した。

男「このアライさん、どこか別の所から来たみたいですけど、場所は聞かなくて良かったんですか?」

このくらいの質問はしてもいいだろう。普通に気になったしな。

おじさん「あの態度ではまともに話をする気は無かったみたいですので、前々からこの山にいた訳ではない事が分かれば十分でしたね。

それに方角を理解しているアライさんはほぼいないですから、聞いたとしても満足のいく返事は得られなかったと思いますよ。

せいぜいあっちとかこっちといった言い方しかしません。時間によって太陽の位置が変わるくらいの事は知っている個体もいる様ですが、

方角に結びつけて考えるには至っていないんでしょうね。ましてや星を観測して方角を知るなんて以ての外でしょうなあ。

…じゃあ今度またアライさんが捕まったら、試しに聞いてみますか?」

男「はあ、そういう事だったんですか。そういえば人間に追われてここにやって来た、みたいな事言ってましたけど

そういうアライさんって警戒心が強いんですよね?それなのになんで罠に引っ掛かったんでしょう」

おじさん「あの衰弱ぶりを見るに罠に掛かる前から弱っていたでしょうから、単に背に腹は代えられなかったんじゃないですかね。

あんな状態でも自分なら大丈夫だろう、みたいな過信もあったのかもしれません」

男「つくづく目先の事しか考えない生き物ですねえ」
268 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/03/24(土) 18:14:58.90 ID:f2KwpAYj0
その後、休憩をはさみながら次々と罠を回収していったが、罠は空だったりただの野生の小動物が掛かっていたりもした。
野生動物だった場合、おじさんは衰弱した様子が無いか確認した上で逃がしてやっていた。

おじさん「次の罠で最後になります。もうひと踏ん張りといきましょう」

男が腕時計を見ると十一時を少し過ぎた頃で、このまま順調にいけばおじさんの見立て通り昼には作業が終わるだろう。
やがて罠に近づいてきた時、何か金属が鳴る音と共にアライさんとアライちゃんのものと思われる声が聞こえてきた。

アライちゃん「おかあしゃん、おかあしゃん、まだでられないのだ?」

アライさん「さっきからたくさん蹴ってるのに全然開かないのだ…。なんでこんなに硬いのだぁーー!」

箱罠の中にアライさんがいて、外側から一匹のアライちゃんがそれを見ているという形だ。声の大きさや比較的活発な動きからするに、
罠に掛かってからまだ余り時間が経っていないとみえる。箱罠の天井は低いので、アライさんは横向きに寝そべっているといった姿勢だ。

おまけに横幅はアライさんがギリギリ通れるくらいしか無いので、膝を折って蹴るといった動作がしづらいらしく、
蹴るというよりは単に足で押しているだけといった感じだ。あれでは到底塞がった入り口をこじ開ける事は出来ないだろう。
もっとも全力で蹴ったとしても問題ない強度なのだろうが…。

先に外にいるアライちゃんを始末した後、アライさんをさっきと同じやり方で処分するのだろう。
とそう思っていた矢先、おじさんはリュックから袋を出した。アライちゃんは生け捕りにするのか?

アライさんは自分の足先ばかり見ていたので、まだ人間の存在には気が付いていない。
しかし地面に尻をつき、脚をまっすぐ伸ばして座っていたアライちゃんはこちらに気付いたらしく、首を傾げながら言った。

アライちゃん「のだ?…おかあしゃん、だれかきたのだ?」

アライさん「なんなのだ?……人間なのだ!?ちびぃ!早く隠れるのだ!」

アライちゃん「なぜなのだ?それにおかあしゃんをここにおいていけないのだぁ」

アライさん「いいから早く行けなのだあーっ!人間に捕まってしまったらタダでは済まないのだ!」

アライちゃん「いやいやなのだ!おかあしゃんのそばにいたいのだ!はなれたくないのだあ!」

アライさん「ばか!そんなわからずやはウチの子じゃないのだあ!!」

アライちゃん「!?…ひどいのだ、なんでそんなこというのだぁ…?アライしゃんはおかあしゃんがすきなだけなのだぁ…」

アライさん「ああああ!!とっとと行くのだ、ちび!!……人間っ、こっちに寄るななのだあ!!」

親の言う事は何でも聞くのかと思っていたが、そういう訳でもないらしい。ぐずぐずしてくれた方がこっちの都合は良いけどな。

おじさんは両手で目をこすりながらベソをかいているアライちゃんを掴み上げ、袋に放り込んだ。
269 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/03/24(土) 18:16:00.15 ID:f2KwpAYj0
アライちゃん「のぎゃっ!?ここからだしてなのだっ」

ブラブラ揺れる袋の中からアライちゃんのわめき声が漏れ出てきた。久しぶりに聞く活きのいい悲鳴だ。これだけで今日ここに来た価値がある。

人間を知っていてかつ敵視しているあたり、さっき処分したアライさんと似た様な境遇だったのであろう事はわかるが、
それでもおじさんはあえてアライさんに質問した。

おじさん「こんにちは、アライさん。アライさんはどこから来たの?」

アライさん「うるさいのだ!ちびをはなせなのだぁ!」

おじさんはアライちゃんが入っている袋を地面に落とすと、

アライちゃん「ぷぎゃあ!?おしりいたいのだぁ!」

おじさん「答えてくれないと、アライちゃんがどうなるか賢いアライさんなら分かるね?」

地面でモゾモゾと動いている袋を踏みつける様なジェスチャーをするおじさんを見たアライさんは、

アライさん「うぬぬ…わかったのだ…。アライさん達はとなりのとなりの山から来たのだ…」

おじさん「隣の山じゃ分からないなあ。このあたりは山が多いからね。私が聞きたいのはどっちの方向から来たの、って事だよ」

アライさん「方向なんてわからないのだ…。必死で食べ物を探していて気が付いたらここにいたのだあ」

おじさん「なるほどね。じゃあここに来たのはつい最近って事でいいのかな?」

アライさん「……………人間、アライさん達がどこから来たのか知りたいならアライさんが案内してやるのだ。

だからこの箱からアライさんを出してほしいのだあ」

今しがたどっちから来たのか知らないって言ったばかりだろうに。わざとらしい間を空けてまで必死で考えた騙し文句がこれだ。
しかしアライさんでも人を騙そうとするんだな。その場しのぎの言動が多い事を考えれば意外という訳でも無いが、
アライさんは良くも悪くも正直というイメージがあったので、やはり意外というほか無かった。

実体験や動画などを通してアライさんの事を少し知った気になっていたが、実のところ俺はまだ良く分かっていないんだなあ、と気付かされる。

おじさん「別に案内してくれなくてもいいよ。それよりもさっきの質問に答えて欲しいんだけどねえ」

おじさんはそのへんの事も良く心得ている様で、無視して話を続けた。

アライさん「えーっと、ええと、ついでにアライさんのおうちにも案内してやるのだ。あったかくて広くていい所なんだぞー、

そっ、それにごちそうもいっぱいあるから食べさせてやるのだ」

立派な家と十分な食べ物があるのになんでこんな所にいるんだよ。アライさんは嘘に嘘を重ねてもう自分でも何を言ってるのか分かってないんだろう。

おじさん「じゃあ質問を変えようか。アライさんの子供はこのアライちゃんだけかい?」

アライさん「そう!そうなのだ!聞いてほしいのだ!」

おじさんの質問を聞いたアライさんは待っていたと言わんばかりに急に大声を出して喋り出した。


続く
270 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/03/24(土) 18:33:20.58 ID:pdakyDSSO
そろそろ虐待タイムかな?
楽しみなのだー
271 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/03/25(日) 00:13:01.42 ID:2qXkMj6n0
乙です、純粋にアラ虐するSSが何より大好きです
続き期待してます
272 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/03/25(日) 04:07:37.27 ID:292MxKuE0
乙です。親子セットで虐待する話が久しぶりに見れるかもと思うとワクワクします
273 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/03/28(水) 18:19:30.90 ID:nA7XTHUk0
アライさん「ちびがどれだけアライさんにとって大切か教えてやるのだ。……アライさんはとなりのとなりの山よりもっと遠い所で生まれたのだ。

優しくて聡明なお母さんに育てられたアライさんは姉妹の中で一番早く独り立ちしたのだ」

もしかしてアライさんの身の上話が始まる流れか?どうでもいい気もするが、アライさんの生態について何か分かるかもしれないからちょっと聞いてみるか。
おじさんの反応次第だが…。

おじさん「……それで?」

アライさん「一番早く独り立ちした優秀で有能なアライさんはしばらくしてちびを作ったのだ!ちびは三人産まれて、どれもアライさんに良く似た

かわいくて賢いちび達だったのだ」

おじさん「だった、とは?」

アライさん「それが…ちび達はすくすく育ってたけど、最初の寒い時期を越せなくてみんな死んでしまったのだあ…」

おじさん「それは残念だったねえ。原因は何?」

アライさん「あの寒い時期にあんなに食べ物が無くなるなんて知らなかったのだ…。ちび達を満足に食べさせてやる事が出来ず、

みんな細い棒みたいになって死んでしまったのだ…。そんな寒い時期でもアライさんを育ててくれたお母さんは、

やはりすごくて偉大だったのだとその時に気付いたのだ」

おじさん「お母さんの話はひとまず置いといて…その後どうしたの」

アライさん「その後またかわいいちびを二人産んだのだ!今度は失敗しない様に、寒くなる前に食べ物をいっぱいいっぱーい貯めておいたのだ!

山にある分だけじゃ足りないから、人間のナワバリに行って食べ物を拾ったりもしたのだ。アライさんが見つけた食べ物を人間が奪おうと追っかけてきて、

何度が捕まりそうになったりもしたけど逃げてやったのだあ。その時にお前ら人間はなんて野蛮な奴らなのだ、と思ったのだ。

そして今度はなんとか寒い時期を乗り越えられたのだ!」

おじさん「それが今連れてたアライちゃん?もう一人はどうしたの?」

アライさん「今回の寒い時期は前より長かったから、体があまり丈夫じゃなかったちびは寒さに耐え切れずに死んでしまったのだあ…」

確かに今年の冬は例年より気温の低い日が長く続く事がたびたびあった。人間が普通に生活する分にはせいぜい暖房費がかさんだり
野菜が高くなったりする程度の影響しかないが、野生のアライさん達にとっては命に関わる出来事だったであろう。

アライさん「でもちび一人だけはなんとか守り抜いたのだ。寒い時期さえ越せればちびが独り立ちするまではなんとかなるのだ」

生態について何か新しい事が分かるかもしれないと期待したが、結局分かったのはアライさんは相変わらず子育てに関しては
無策で行き当たりばったりという事だけだった。

アライさん「ふふん、どうなのだ?これだけ話せばちびがどれだけアライさんにとってかわいくて大事であるか、人間の頭でも理解できたのだ?」

おじさん「へえ、アライさんも苦労したんだねえ」

アライさん「そうなのだそうなのだ。アライさんは苦労に苦労を重ねてきてやっとここまでちびを育てあげたのだ。そんなアライさんを

箱に閉じ込めて嫌がらせするなんてひどいのだあ!アライさんがかわいそうだと思わないのか!?」
274 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/03/28(水) 18:20:36.08 ID:nA7XTHUk0
要は同情を引く目的で身の上話をした訳だ。一応話に不自然な点は無いし、ペラペラと流暢に喋っていた様子からするとおそらく本当の事だろう。
しかしさっき騙そうと嘘をついた事もあるし、完全に信用は出来ない。わざと先に支離滅裂な事を言っておいて、より真実味を増そうとした疑いすらある。

身の上話が本当だろうが嘘だろうが、殺して処分する事に変わりはないからどうでもいい事なのだが、どうも引っ掛かる。
こういうのは一度疑い出したらキリがなくて、アライさんは思慮が浅くて単純だと分かっていても、もしかしたらという思いが頭を駆け巡り結論を出せなくなる。

今後もアライさんを捕まえたり、話をしたりする機会はあるだろう。その時アライさんが嘘をつかないとは限らない。
その時の為にアライさんが嘘をついているかどうか探る方法を考えてみるのもいいかもしれない。

おじさんの作業に余計な口は挟まないと決めていたが、好奇心の方が勝ってしまった。まずはおじさんに話をしなければ。

男「モギさん、少しいいですか?」

おじさん「なんです?」

男はおじさんをアライさんから少し離れた場所へと誘導し、小声で自分が考えている事を簡潔に話した。
作業を中断されたにも関わらずおじさんは嫌な顔ひとつせず、ときおり相槌を打ちながら男の話を聞いていた。話を聞き終わったおじさんは少し黙り込んでいたが、

おじさん「ふーむ。するとカトウさんはアライさんが我々の同情を引く為に嘘を言ってるのではないか、と言いたいんですね?」

男「そうです。今の話はほぼ本当の事だとは思っていますが、どうしても白黒つけたくて」

おじさん「私も本当の事を言ってるとは思います。しかし平然と嘘をつくアライさんがいないとは言い切れませんし、

確かめてみるというのは良い試みだと思いますよ。まあ暴力で脅せば一発でしょうけど、それは本意ではないのでしょう?」

男「ええ。出来るだけ普通に会話して探りたいのですが…」

おじさん「単純なアライさんといえど心を完璧に読むのは神様でもなければ無理でしょうね。神様がいればの話ですが…。

しかしアライさんの本音を垣間見るくらいなら出来るかもしれません」

男「どうするんですか?」

おじさん「そうですねえ…ではこういうのはどうでしょうか?」

おじさんはアライさんの方へ近づくと、

アライさん「何をコソコソ話していたのだ人間。アライさんに隠し事をしても無駄なのだあ!」

おじさん「待たせてごめんねアライさん。アライさんの思いは良く伝わったよ」

アライさん「じゃあここから出す気になったのだ?」

おじさん「その前にもう少し話がしたいんだけどねえ」

アライさん「出してくれたらいくらでも話してやるのだあー」
275 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/03/28(水) 18:22:33.30 ID:nA7XTHUk0
おじさん「まあまあ…すぐに終わるよ。例えばの話だけど、アライさんとアライちゃんのどっちかだけしか助からない場合、アライさんならどうする?」

アライさん「何でそんな事聞くのだ…。そんなのちびを助けるに決まってるのだ!そしてかっこ良くアライさんも助かるのだ!」

おじさん「それだと質問の答えにならないけど、とりあえずアライちゃんを優先するって事でいいんだね。

私も家族がいるからその気持ちは分かるよ。でも本当にそうかな?」

アライさん「どういう事なのだ?」

おじさん「考えてごらん。どっちかしか生き延びられない様な厳しい状況でアライちゃんだけ生き残っても、その後どうなると思う?」

アライさん「何が言いたいのだ…」

おじさん「その場ではアライちゃんの事はあきらめて、アライさんが助かる道を選ぶ方が今後の為にはいいんじゃないかな?」

アライさん「!!…とんでもない事を言ってるって分かってるのか!?これだから人間はくずで浅はかなのだ!

それに比べればアライさんのちびは賢いから、アライさんがいなくてもどうにかなるって信じてるのだ!」

おじさん「アライちゃんを信じるのは勝手だけど、いかに賢くてもアライちゃんがその後すぐに死んでしまわない保証なんて無いよねえ。

それにさっきアライさんも言ってたよね。お母さんの偉大さに気付いた、って。もし寒い時期にお母さんがいなければ

まだ小さいけど優秀で有能だったアライさんでもどうなっていたかは、苦労しながら子育てしてきたアライさんなら分かるよね?」

アライさん「うぐぐ…それでも…それでもアライさんは……ちびを選ぶのだ…」

おじさん「アライちゃんなんてまた産めばいいじゃない」

アライさん「っ!?…お前は最低なのだ!ちびを…ちびをなんだと思っているのだあ!!」

おじさん「でも事実、アライさんはそうしてきた訳じゃないの?最初の寒い時期に三人のアライちゃんを失ったって言ってたよねえ」

アライさん「うぐう…あれは…あれは仕方が無かったのだあ…。アライさんのせいじゃ無いのだ…寒いのが悪いのだぁ…」

アライさんがここまで思い悩むという事は、さっきの身の上話やアライちゃんの身を案じているという気持ちは本物だった、という事か。
平然と嘘をつく様なアライさん(実際にいるのか全くもって疑わしいが)なら、話の内容を突っつかれてものらりくらりと言い逃れていただろうからな。

おじさんも目的は果たしたと考えた様で、男の方を向き軽く頷いた。その後アライさんの方に向き直し、

おじさん「別にアライさんの事を責めている訳じゃないよ。その経験のおかげで今度はアライちゃんを無事に育てる事が出来たんだしね。

でも状況によっては非情になる事も必要なんじゃないかなあ」

アライさん「うう…わ、わかったのだ…。人間もたまには役に立つ事を言うのだ…」

アライさんは大分落ち込んでる様子だ。おじさんは地面に転がっていた袋からアライちゃんを出すと、罠の前に置いてやった。

アライちゃん「ぷはぁー、やっとでられたのだあ、くるしかったのだ。あ、おかあしゃん!たすけてなのだ!ひとしゃんがいじわるするのだあ!」

アライちゃんを一目見たアライさんは少し元気を取り戻し、

アライさん「ちび…かわいいちび…アライさんの大事なちびぃ…今助けてやるのだ。やい人間、話をしてやったんだからアライさんをここから出すのだ!」

おじさん「アライさん、もう一度聞くよ。アライさんとアライちゃん、どっちかしか助からない状況になったらどうする?」


続く
276 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/03/28(水) 18:27:18.09 ID:CQcSbArtO
盛り上がってきましたな
277 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/03/28(水) 18:46:27.19 ID:ejHTU4Ico
越冬失敗
この四文字はシコい乙
278 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/03/28(水) 22:06:39.88 ID:LqkI9olK0
乙です、最近更新増えて嬉しいです〜
早く続きがみたいですね
279 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/03/29(木) 00:16:56.82 ID:oB3YWYV60
乙です。次回どうなるか楽しみでなりません
280 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/03/29(木) 23:39:53.75 ID:FpCeOGiq0
281 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/04/06(金) 01:08:15.82 ID:HZiXolyA0
待っております
次回超楽しみなんだけど笑
282 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/04/06(金) 16:47:39.58 ID:XWMH566CO
楽しみに待ってます
283 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/04/09(月) 18:15:12.22 ID:xEEURsTj0
アライさん「もうその質問はいいのだ。そんな事は考えたくないのだ…」

アライさんは目を逸らしてうつむきながら言う。さっきみたいに即答しないあたり、答えはほとんど決まっている様なものだ。
返答を聞いたおじさんは、四つん這いになって折れ曲がっているアライちゃんの右脚のふくらはぎをギュッと踏みつけた。

アライちゃん「ひぎいぃ!?いだいのだ、ひとじゃんっ、やめるのだあ!!」

アライちゃんは尻尾をブンブンと振り回しながら訴えている。おじさんはすぐに踏むのを止め、足をどかした。力加減はしていたらしく、
痛がってはいるもののアライちゃんの脚が折れているといった様子は無い。一方アライさんはアライちゃんが踏まれた瞬間を見ていなかった様で、

アライさん「ちびに何をしたのだ!?ちびが嫌がる事をするのは許さないのだあ!」

おじさん「はっきりと答えてくれないと困るねえ。アライさんは今そういった状況に置かれているのだから」

今更言うまでもないが、おじさんは遊んでいた。これが最後の罠だし、時間もまだ正午前で余裕はある。だからそういった事をしたくなる気持ちは分かるが、
いかに慣れた場所とはいえ何が起きるか分からない山中で悠長に遊ぶのはいかがなものか。いたぶるのなら下山してからじっくりやればいいのではないか。
どうにも今まで見てきた彼らしくない。

…と思ったが良く考えてみればすでに答えは出ていて、要するにおじさんはじっくり遊ぶ気なんて無いという事だ。
適当に言いくるめておじさんが望む言葉をアライさんから引き出した後、速やかに処分するつもりなんだろう。相変わらず趣味が悪い。

アライさん「もう答えたくないって言ってるのだ!そんな事よりとっととアライさんとちびをかいほーするのだあ!今ならまだ許してやるのだ!」

おじさん「じゃあアライさんにだけ聞くのは不公平だからアライちゃんにも聞いてみようか。アライちゃん、さっきみたいな痛い事をアライちゃんか

お母さんにするけど、どっちがいいと思う?」

アライちゃん「ひいっ。アライしゃん、いたいのやーなのだぁ…。でもでも、おかあしゃんがいじめられるのもいやなのだ…。

……ひとしゃん、アライしゃんがいたいのがまんすれば、またおかあしゃんとあそべるようになるのだ?」

おじさん「遊べる様にはならないねえ。それだとアライちゃんがいなくなってしまうからね」

アライちゃん「えっ、アライしゃんいなくなっちゃうのだ?アライしゃんきえちゃうのだ?……じゃあおかあしゃんががまんしたらどうなるのだ?」

おじさん「今度はお母さんがいなくなってしまうから、同じ事だよ」

アライちゃん「おかあしゃんがいなくなったらおかあしゃんとあそべなくなるのだ…。アライしゃんがいなくなってもおかあしゃんとあそべないのだ…。

いったいどうすればいいのだ……アライしゃん、きめられないのだぁ…」

おじさん「どっちを選んでも結果が同じならアライちゃんが楽な方を選べばいいんじゃないの」

アライちゃん「それもそうなのだ。おかあしゃんも『むだなことはしてはいけないのだ』ってよくいってたのだ。

あと『そうしないとやせいではいきていけないのだ』ともいってたのだぁ」

おじさん「いい教えだねえ。それはぜひ実践するべきだね」

アライさん「ちょっと待つのだ」

おじさん「どうしたのアライさん」
284 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/04/09(月) 18:16:30.23 ID:xEEURsTj0
アライさん「さっきから黙って聞いてれば何を勝手な事を言ってるのだ!そもそもお前らの言う事をきく必要なんてないのだあ!

ちびもちびなのだ、何を人間となかよく話なんてしてるのだ!そんなヒマがあったらとっとと逃げるのだぁ!」

アライちゃん「でもおかあしゃん、ひとしゃんにしゃからったらなにしゃれるかわからないのだあ…。アライしゃん、しゃっきすごくいたかったのだ」

アライさん「それは……うぐう…とっ、とにかく!ちび、お前は人間にだまされてるのだ、目を覚ますのだあ!」

窮地に立たされている事を認めようとしない母親よりアライちゃんの方がよっぽど今の状況を理解しているな。成体のアライさんほど我が強くない分、思考が柔軟なのだろうか。
いや単純と言うべきか?それとも単に痛めつけられた恐怖によるものか…。

アライちゃん「しゃびしいけど、おかあしゃんがいなくなってもアライしゃんはりっぱにいきるのだ!アライしゃんはそーめーだからあんしんしてほしいのだあー」

おじさん「決まったね。じゃあアライさんにいなくなってもらおうかな」

アライさん「ちょっと待つのだあ!」

おじさん「またなのアライさん。今度は何?」

アライさん「わかったのだ、アライさんも覚悟を決めたのだ。こんな事を言うのは本当につらいけど言うのだ。…ちび、今回お前の事はあきらめるのだ」

アライちゃん「ええー」

おじさん・男「ええー」

アライさん「なんなのだお前達…」

アライちゃん「おかあしゃんはアライしゃんがいなくなってもへいきなのだ?」

アライさん「残念だけど仕方ないのだ。またちびを作ってやりなおすのだ」

アライちゃん「おかあしゃんははくじょーなのだ…アライしゃんはかなしいのだ…」

おじさん「アライさん、さっきアライちゃんを優先するって言ってたよね。どうして心変わりしたの?」

アライさん「お前がそうしろって言ったのだあ!」

おじさん「命令した覚えは無いんだけどねえ。そう決めたのはアライさん自身だよ」

アライちゃん「おかあしゃん、しゃっきアライしゃんのことを『たすける』とか『しんじてる』っていってたのはうそだったのだ?」

さっきアライちゃんが袋に閉じ込められてる時にそんな事言ってたな。聞こえてたのか。どうやらアライさんが声を荒げていた部分しか覚えていない様だが…。

アライさん「う、うそじゃないのだ!ちびの事は信じてるけど…とにかく今回はアライさんにゆずるのだあ!ちびならアライさんの言う事をきくのだ!!」

アライちゃん「でももういたいのいたいのやーなのだ。おかあしゃんならアライしゃんのためにがまんするのだあー」

おじさん「アライさんも大人なんだからさあ、明るい未来のあるアライちゃんに譲ってあげなよ。二回出産したんだしもう十分でしょ?」

アライさん「おまえええ!!さっきと言ってる事が違うのだああ!!」

おじさん「そう?じゃあ話はもう終わりという事で。…カトウさん、良かったら処分してみませんか?」

アライさん「おい、待つのだ!アライさんはこんなの認めないのだあ!!」

ここで俺に振ってくるとは思わなかったが、せっかくの機会だから引き受ける事にしよう。はい、と返事をしストックを受け取る。
285 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/04/09(月) 18:18:03.72 ID:xEEURsTj0
アライさん「何する気なのだ!?その棒を向けるのはやめるのだぁ!やるならちびにするのだあ!!」

ストックを構えてアライさんの胸を狙ってみたが、アライさんは仰向けになり両腕でガードする様な姿勢をとっていたのでなかなか狙いがつけられない。
攻めあぐねていると、突然後ろからアライちゃんの叫び声が聞こえてきた。

アライちゃん「ぴぎゃああああああああ!!おがあじゃん、だじゅげでええええ!!」

アライさん「っ!?……やっぱりちびが死ぬ運命なのだ!アライさんは運命に勝利したのだ!!もうちびなんて助けてやらないのだ、くたばればいいのだあ!」

男が振り向くと、おじさんがアライちゃんの尻尾を踏みつけている。男を見兼ねてアライさんの注意をそらす為にしてくれたんだろう。
アライさんの防御に隙間が空き、胸が見えた。今だ。

アライさん「ぎゃぼおおおお!?」

刺そうとした瞬間にアライさんが背中を仰け反らせる様な動きをしたため、胸ではなくみぞおちのあたりに刺さってしまった。グニュッとした感触が伝わってくる。

アライさん「いだいのだあああ!!なんでアライさんもおおおおお!?やぐぞぐがぢがうのだああああ!!ヒーーッ、ヒィーー……」

アライさんは叫び声を上げながら暴れだし、罠を大きく揺らした。その衝撃で思わずストックを引き抜いてしまったので
腹に空いた穴から血があふれ出てきて、アライさんの毛皮が赤く染まっていった。

おじさん「こうなるとしばらく暴れ回ってしまうので、少し待って大人しくなってから隙を見てもう一度胸を刺してみて下さい」

男「わかりました…やってみます」

アライさん「うぐうううう!!ぐごごおおおぉぉ……」

アライさんは両手で腹を押さえ、涙を流しながら声にもならないうなり声を出している。

アライちゃん「ひいいいい……。いつものおかあしゃんじゃないのだ…。おかあしゃんがけものになっちゃったのだあ…」

アライさん「おまえらぁ…おまえらニンゲンも…ヂビもぉ…ゆるざないのだ…ゴロジデヤルのだぁ……!」

おじさん「怖いねえ。アライちゃん、お母さんがあんな事言ってるけど」

アライちゃん「あんなのはもうおかあしゃんじゃないのだ…。ただのけだものなのだあ…」

アライさんの動きが少しずつ弱まってきたので、もう一度胸を狙いストックを刺す。今度は狙い通りに突き刺さった。

アライさん「ウギギ……グガアァ!!」

アライちゃん「こわいのだ…すごくこわいのだぁ…………………のだ?ちょっぴりおしっこがでちゃったのだぁ〜……」

アライさんは徐々に弱っていったがその表情やうなり声はまさに憎悪の塊といった風で、しばらくの間アライちゃんを怯えさせた。
やがて抵抗する腕力も失ってされるがままになっていき、ようやくアライさんは涙と鼻水で顔をグシャグシャにしながら息絶えた。
死んでも目を見開きツリ上がったままになっていたのがアライさんの諦めの悪さを体現していて、いかにも相応しい最期であったと言えよう。

処分が目的だから無駄に痛めつける気は無かったが、結果的にそうなってしまった。しかし久々に直に苦しむ顔を見る事ができたのは少し得した気分だ。

男「手間取ってしまいすみません」

おじさん「余力のあるアライさんを処分するのは少しコツがいりますからね。別に気にする事はありませんよ。じゃあ戻りましょうか」

男「はい…それでアライちゃんはどうするんです?」

おじさん「この場で始末してもいいですが、アライちゃんはそれなりに使い道があるので…後で適当に処分しておきますよ。何か案があったらお気軽に」

おじさんはいつの間にやら袋に詰められたアライちゃんを持ち上げながら言った。


続く
286 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/04/09(月) 19:35:24.97 ID:SlZ5ZgTp0


ストックでくたばるとは急成長のせいで案外脆い?

まぁ人間でも本気の突きを食らったらどうなるかは分からんがね
287 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/04/09(月) 20:17:19.65 ID:iBf6ZuIpo
ある程度尖らせてあれば結構刺さるんでね?
288 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/04/09(月) 22:41:20.32 ID:QRpv7N+80
乙です
処分用だし刺さりやすいように尖っているとは思うよ、多分
289 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/04/10(火) 01:57:02.45 ID:yv952MXC0
>>259
>よく見るとスキーで使うストックだった。ストックの先に付いている円盤状の部品が外され、先端は機械で削ったのだろうか鋭利になっている。

普通に凶器だぞ
290 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/04/12(木) 01:02:38.95 ID:Nyb1y+XP0
殺傷用に改造してるんだろうな
アライさんとしゃんとちゃんを楽しく[ピーーー]ために
291 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/04/17(火) 18:23:15.30 ID:TKxEcWkT0
作業場に戻る車中、車の振動が心地よく急に眠気が襲ってきたので何か喋ろうと口を開いた。

男「さっき言ってたアライちゃんの使い道って…またカメ君(性別が判らないのでとりあえず君をつけた)の餌にでも?」

おじさん「それもいいですが冷凍アライちゃんが貯まっていて、そっちを消費しないといけませんからねえ。何か別の事に使おうかと」

冷凍アライちゃん……冷凍マウスみたいなノリで言われてもな。あのマヌケ面がカチコチになっているのを想像したら少し可笑しくて、

男「今更言うのもなんですが、アライさんみたいな得体の知れないものを食べさせて大丈夫なんですかね」

おじさん「言いたい事は解ります。毒かもしれないものをペットに食べさせるとはなんて酷い飼い主だ、という事でしょう?」

男「いえ、そこまでは…」

眠気が覚めた。

おじさん「ハハハ、冗談ですよ。ところでアライさんが野に放たれてから十年…いや十一年程経ちましたが、野生のアライさんの研究は存外進んでいませんね」

?…なぜ急にそんな話題を振ってきたのか。

男「そうなんですか?あんな不思議な生き物を研究しないのは不自然だと思いますが」

おじさん「研究者さん達はフレンズにご執心で、野生のアライさんには大して興味が無いんですよ」

男「あんなに農業被害を出しているのに?研究して対策するべきでは?」

おじさん「主に農業被害しか出してないからじゃないですかね。この言い方だと少し語弊がありますけれども。ああ、あなたは空き巣の被害に遭われてたんでしたね。

それはともかくアライさんは人間から危害を加えたり、なんらかの理由で勘違い…例えばアライさんの持ち物が人間に盗られたとか勘違いでもしない限り、

アライさんの方から襲ってくる事はあまりありません。そのせいでそこまで危険視されていないんですよ。もちろん凶暴化したアライさんは危険であり

傷害事件が起きたケースもいくつかありましたが、それは野犬等にも言える事なのでアライさんだけ特別視する者は数年前までは少なかったですね」

言われてみれば男も実際に被害を受けるまでは「何か良く知らないが迷惑で嫌われ者の動物」といった程度の認識しかなかった。

おじさん「とはいえ農業被害も当事者にとっては死活問題ですから一応国や自治体により研究対策は進められていますが、人員と予算が足りていないのが現状です。

それに加え他にも害獣はいますから、アライさんにばかりかかりっきりという訳にいかないのも対策が遅れた要因でしょう」

男「どうしてそんな話を?」

おじさん「そういった状況でしたので、四年前に私なりにアライさんの事を調べる事にしたんです。まず最初は昆虫にアライちゃんを食べさせてみました」

そういう事か。昆虫やおそらくその他の動物達…ネズミみたいな小動物だろう…に食べさせて安全性はとっくに確認してある。だからペットのカメに食べさせるのは問題ない。
そう言いたいのだ。

男「ええ…もう大体わかりました」

おじさん「理解いただけた様でうれしいです。アライさん達が捕食されるのは私達の知らない自然界ではもはや当たり前の様に起こっている事ですし、

今後その影響も研究されていくのでしょうね。私としては一刻も早くアライさん達に消えて欲しいですが」
292 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/04/17(火) 18:24:09.28 ID:TKxEcWkT0
その後作業場に着いて車から降りると、おじさんはアライちゃんを袋から出してやった。

アライちゃん「ふきゃっ。くらいところからきゅうにでたからまぶしいのだぁ…」

アライちゃんは目が慣れるまでは余り動こうとせず、四つん這いの姿勢のまま目をパチパチさせたり手でこすったりしている。
こんな場所に出してもう処分するのかと思っていたら、おじさんはアライちゃんを掴み上げて地面に叩きつけた。

アライちゃん「のだっ……きゅう〜〜……」

殺すのではなく、気を失わせるかぐったりさせるのが目的だったのか。

おじさん「すみませんが、そこにある脚立を持って付いて来てくれませんか」

おじさんは車からロープを出しながら作業場の入り口の方を指差して言った。男は返事をして脚立を取ってきておじさんの後に続いた。おじさんに首根っこを掴まれた
アライちゃんの口はだらしなく開き、よだれがブラーンと糸を引きながら垂れている。林道の脇に生えていたとある樹の前まで来ると、

おじさん「ここに脚立を立ててもらっていいですか」

男が言われた通りにすると、おじさんはアライちゃんとロープを持ったまま軽い身のこなしで脚立を上っていき、地上から二メートル位の所で幹から分かれていた
枝の根元付近にアライちゃんを手際よく縛りつけた。

おじさん「後はここにカメラをセットしておけば稀に面白いものが撮れるんですよ」

男「はあ」

おじさん「とりあえず作業はこれで終わりですかね。お疲れ様です、本当に助かりましたよ」

男「こちらこそアライさんについて色々知れたので来て良かったです」

おじさん「ところでこの後何か予定はありますか?」

男「特にありませんが」

おじさん「それなら少し話したい事があるんですが…もうお昼ですし、とりあえず何か食べながら話しましょう」

風が少なく日差しも出てきたので、外にテーブルとイスを出して食べる事になった。持参したおにぎりと菓子パンといった味気の無い物ではあったが、
自然に囲まれているのとおじさんが湯を沸かして淹れてくれたお茶のおかげで幾分おいしく感じられた。

男「話というのは何ですか?」

おじさん「カトウさんは自宅でアライさんで楽しまれているのでしたよね」

男「ええまあ…」

おじさん「失礼ですが、不便な事もあるのでは?」

男「そうですねえ。確かに火は使えないので不便と言えばそうですが、元々大掛かりな事をする気はありませんし、そこまで不満は無いです」

おじさん「でも出来ればやってみたいとはお思いで?」

男「それはまあ…多少は」

おじさん「そこでなんですが、ここの近くに昔動物を飼育するのに使っていた場所があるんですよ。あなたさえ良ければ使ってもらっても構わないのですが」

そういや初めて会った時に色々生き物を飼ってたって言ってたな。爬虫類がなんとか…。
293 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [saga]:2018/04/17(火) 18:25:44.19 ID:TKxEcWkT0
いい話だとは思うが、正直少し迷った。おじさんは目上の人間ではあるが、共通の趣味を持った知り合いといった間柄であるから借りを作ってしまうと
今後の付き合いがやりにくい。しかしおじさんも今日のお礼の意味でこの話を持ちかけてきたのだとしたら、彼の方も俺に借りを作りたく無かったという事で納得がいく。

男「今日のお礼という事ですか?」

おじさん「そう受け取ってもらっても構いません」

そういう事ならありがたく受けた方がお互いにスッキリするだろう。

男「わかりました。良ければ使わせて下さい」

おじさん「受けてくれますか。使わないでいると朽ちていく一方ですので助かりますよ。では早速案内します…とその前にアライちゃんの前にカメラをセットしておきましょう」

作業場からカメラを取ってきたおじさんに付いていくと、

アライちゃん「ひっ、ひとしゃん!めがしゃめたらアライしゃんがきにくっついてうごけないのだ!アライしゃんをたすけるのだあああ!!」

おじさん「しばらく何事も起きなかったらそのうち助けてあげるよ」

アライちゃん「アライしゃんになにかあったらどうするのだ!いますぐたすけるのだあ!アライしゃんのいうことをきくのだあー!!

しゃっきアライしゃんのかわいいしっぽをふんだのはゆるしてやるからあーーーっ!!」

なんかさっきよりも態度がでかくなってるな。自分の方が高い位置にいるから偉くなったとでも思っているのか?
カメラをセットし終えたおじさんが背を向けて戻ろうとすると、

アライちゃん「ひとしゃんーーーっ!いっちゃだめーーーっ!あっ、そっちのひとしゃんでもいいのだ!アライしゃんをたすけしゃせてあげるのだ!!」

この耳をつんざく声が響くと痛めつけてやりたい気持ちが湧いてくるが、成り行きに任せてみるのも面白そうだ。
アライちゃんの嘆願…いや命令を無視し、男とおじさんは各々の車に乗り込んだ。

―――――――――――――――

作業場から車で十五分位の場所にその建物はあった。トタン屋根の平屋といったおじさんの作業場とほぼ変わらない外観だが、しばらく放置されていたせいか壁は薄汚れている。
しかし建物の周りの雑草はきれいに刈り込まれており、最近手入れされたものである事がわかる。おじさんがドアの鍵を開けて入っていったので付いていった。

中も特にこれといった特徴は無く、壁際にいくつかのスチールラックと水槽が残っている他には何も無い部屋だった。

おじさん「電気と水道は通っているのでご自由にどうぞ。あんまり使われすぎると困ってしまいますがね」

男「気をつけますよ…といいますか光熱費は自分で払いますが」

おじさん「知り合い同士でお金のやり取りをするのは性に合わないので気にしないでいいですよ。では鍵を渡しておきますので後は好きに使って下さい」

男「ありがとうございます。それとさっきのアライちゃん、何か面白いものが撮れたら私にも見せてもらっていいですか?」

おじさん「それは勿論。何か撮れたらデータを送りますよ。では私は戻りますがカトウさんはどうします?」

男「私は少しここに残ってから帰ります」

おじさん「そうですか。では私はこれで失礼…またそのうち食事かなんかでも」

おじさんが車に乗って去るのを見送った後、男は建物に戻った。ここを使うのはどうしても家でやりにくい事をする時だけにしよう。
とりあえずイスと机だけは用意しておいた方がいいな。後は自宅に帰ってから必要な物をじっくり考える事にするか…しばらく楽しみが増えて仕事にも力が入れられそうだ。


続く
294 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/04/17(火) 19:00:34.40 ID:lf6JJO1X0


盛り上がって来ました!
295 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/04/17(火) 23:58:55.65 ID:XeMWssCy0

吊るされたアライちゃんの行く末が楽しみでなりません
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