ドロシー「またハニートラップかよ…って、プリンセスに!?」

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62 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/04/24(火) 01:11:15.14 ID:EkOf6jxk0
…そして夕日が沈み…

アンジェ「……あぁっ、んんっ、んぁぁ…っ///」

プリンセス「んっ、んっ……んんっ♪」

アンジェ「はぁ、はぁっ…プリンセス、脱がすわよ……」

プリンセス「ええ、私もシャーロットの事脱がしてあげ……痛っ」

アンジェ「…どうしたの」

プリンセス「あのね、アンジェのふとももの所に何か固いものがあって…膝をついたら食い込んじゃったわ……」

アンジェ「あ…ごめんなさい」気まずそうにガーターベルトのように取りつけていた革ベルトとホルスターを外すと、中身の「ウェブリー・フォスベリー」リボルバーごとナイトテーブルの上に置いた

プリンセス「ううん、いいのよ…それじゃあ脱がすわね……あら、上等な万年筆ね」二本あるうちの一本に手を伸ばした…

アンジェ「だめ、触らないで…!」

プリンセス「?」

アンジェ「…こっちのはインクが劇薬になっているの…うかつに触ると確実に死ぬ。ちなみにこの便せんは毒じゃない方のペンで書いて少し熱すると、書いた文字が化学反応で透明になる」

プリンセス「ふぅ……アンジェ、他にも「びっくりスパイ道具」があるなら自分で外してもらえるかしら?」

アンジェ「ええ、そうね…プリンセスを怪我させるわけにはいかないもの」

プリンセス「全く、私の別荘にまでそんなものを持ちこんで」

アンジェ「全てプリンセスの安全のためよ…」黒革の胴衣(ボディス)を縫っている糸の一本を抜き取り、ナイトスタンドの柄に巻きつけた…

プリンセス「それは?」

アンジェ「細い金属ワイヤー…相手の首を絞めるのに使えるわ。それから……」胴衣の型崩れを防ぐため縦に入っている「骨」の数本を引き抜いた…

プリンセス「まだあるの?」

アンジェ「ええ。こっちが刺殺用のニードル、こっちは鍵開け用のキーピック二本……あとは…」銀鎖のついた懐中時計をナイトテーブルの上に置く…

プリンセス「それは私も持っているわ…裏面の蓋を開けると粉薬が入っているのよね?」

アンジェ「ええ……故障した時計をいじるふりをしながら相手のグラスに薬を入れることができる……私の場合自白剤だけど、プリンセスは眠り薬だったわね」

プリンセス「ええ、そうよ……それは?」

アンジェ「普通のコンパクト……に見えるけど二重底になっていて手紙を隠せる。手鏡自体は外して正しい位置の窪みにはめ込むとルーペになるから、ものを拡大したり…光を反射させて合図を送ってもいい」

プリンセス「ふんふん…」

アンジェ「この印章付きの指輪は、印章の部分を半回転させておいてから相手に押し付けると小さい針が出てくる…これも触ると毒よ」

プリンセス「ずいぶんたくさん持っているのね…?」

アンジェ「ええ…この不格好な眼鏡のフレームは鉄で出来ているから、いざとなれば相手の喉を突く武器になる」

プリンセス「……まだあるの?」

アンジェ「このハンカチはなかなか破けない生地になっているし、特定の角度で日に当てながらロンドンの地図と合わせると……月ごとに変わるセーフハウス(隠れ家)の位置が分かるようになっているわ。…これはみんな持っているわね」

プリンセス「ええ…♪」

アンジェ「それから……」

プリンセス「ねえ、アンジェ」

アンジェ「なに?」

プリンセス「まだかしら…私はもう脱ぎ終わってしまったのだけど♪」白い絹の下着だけでにこにこしながら立っている…

アンジェ「…ごめんなさい、すぐ脱ぐわね///」慌てて「Cボール」を置こうとする…と、プリンセスがそれを取り上げる

プリンセス「ふふっ、これって「Cボール」よね……アンジェ♪」片手でCボールをもてあそびながら、急に意地の悪い笑みを浮かべた……

アンジェ「ええ…Cボールを手にしてどうするつもり?」

プリンセス「ふふふっ……えいっ♪」

アンジェ「えっ、ちょっと…///」二人とも寝室の天井近くまで浮き上がり、緑色の光に包まれている…


63 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/04/24(火) 01:44:42.40 ID:EkOf6jxk0
アンジェ「…プリンセス、Cボールで何をする気?」

プリンセス「ふふっ…♪」アンジェが下着に着ている胴衣の胸元をほどくと、空中で脱がせるプリンセス…

アンジェ「ねぇ、ちょっと…///」

プリンセス「一度空中でアンジェとえっちしてみたかったのだけど、いつもはCボールを手元から離したことがないし……ふふっ、やっとスキをみせてくれたわね♪」

アンジェ「別に意地悪でしていたわけじゃないわ…Cボールはトップ・シークレットの道具だし扱いが難しいから……って、何をしているの///」

プリンセス「んー…空中でアンジェのここを眺めるなんて新鮮な気分ね♪」

アンジェ「わ、悪ふざけはよして///」

プリンセス「もう。私は「シャーロット」の事が大好きなのに、どうしてそういうことを言うのかしら……んちゅ…っ♪」

アンジェ「プリンセス、止めて……だめ、そんなところを舐めないで…っ///」

プリンセス「んふ、んくぅ……ふふ、アンジェの味がするわ」ちゅく…っ、くちゅり……♪

アンジェ「ゆ、指も駄目……っ///」

プリンセス「でも、だとしたら……あ、分かったわ♪…アンジェは「貝合わせ」がしたいのね♪」

アンジェ「!?……プリンセス、今…か……って…///」

プリンセス「あら、間違えたかしら…お互いに「めしべ」と「めしべ」をくっつけ合うことでいいのでしょう?」

アンジェ「ええ…合っているわ///」

プリンセス「ならそれをしましょう♪…ふふ、空中だと姿勢を変えるのが難しいわね♪」くるりと一回転してしまい、アンジェの顔を胸で挟んでしまうプリンセス……

アンジェ「…っ///」

プリンセス「あら、ごめんなさい…どう、気持ちいいかしら?」

アンジェ「……い///」

プリンセス「んー?」

アンジェ「…柔らかくていい匂い///」そのまま胸元に顔をうずめるアンジェ…

プリンセス「もう、アンジェったら…ふふ♪」白く滑らかなアンジェの背中に手を回して抱きしめる…

アンジェ「んんぅ…すぅぅ……れろっ///」

プリンセス「きゃっ…もうアンジェったらどこを舐めているの♪」

アンジェ「…谷間」

プリンセス「んっ、もう……で、お味はいかが?」

アンジェ「……甘酸っぱい初恋の味///」

プリンセス「まぁまぁ…♪」

アンジェ「…もういいでしょう、遊びの道具じゃないわ」

プリンセス「だーめ、まだ空中でしてないもの♪」

アンジェ「……本当にする気なの?」

プリンセス「ええ。それじゃあ行くわね♪」くちゅ…っ♪

アンジェ「えっ、ちょっと待って…んんっ///」

プリンセス「あっ、これすごく気持ちいい…っ♪」

アンジェ「んひっ、んんぅ、んあぁぁっ…!」

プリンセス「はぁ、はぁ、はぁっ……これ…っ、アンジェの柔らかい感触だけが伝わってきて……すごく幸せ…っ♪」ぐちゅぐちゅっ、にちゅ…っ♪

アンジェ「んんっ、んひぃ…んっ、ひぐぅ……は、早く降ろして……っ…あぁぁん…っ♪」ひくっ、とろとろっ……くちゅり…っ♪

プリンセス「んっ、んっ……あぁぁ、これ癖になっちゃいそう♪」

アンジェ「そんな癖は求めてないわ…んぁぁぁっ///」ぷしゃぁぁ…っ♪

プリンセス「んっんっんっ…あぁ、アンジェのイっている顔……とっても可愛い♪」

アンジェ「…ば、ばか///」

64 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2018/04/26(木) 02:35:39.43 ID:Z87B3+jB0
………

アンジェ「プリンセス……んんぅ」

プリンセス「シャーロット…あむっ、んちゅ……///」

アンジェ「んふぅ…んちゅぅ、ちゅぷ……///」

プリンセス「んんっ、シャーロット……もっと、して…///」

アンジェ「ええ、行くわよ…///」くちっ…にちゅ……っ

プリンセス「あぁ、あぁぁ…んぅ……っ!?」Cボールの明るい緑の光に包まれ、空中に浮かんだままいちゃついていた二人…が、プリンセスが間違ってCボールを解除してしまった……

アンジェ「…わっ!?」ぼふっ…!

プリンセス「ごめんなさい……大丈夫、シャーロット?」

アンジェ「私は平気よ。プリンセスは?」

プリンセス「私も大丈夫よ……ところで、重くなかった?」

アンジェ「大丈夫、羽根のように軽かったわ…///」

プリンセス「もう、シャーロットったら…♪」

アンジェ「…ふふ」

プリンセス「ふふふふっ…♪」

アンジェ「ふふふっ♪」

プリンセス「あはははっ♪」

アンジェ「あははっ♪」

プリンセス「あーおかしい…自分で始めておきながら心配ばかりして♪」

アンジェ「全くね。しかも機密扱いの道具をこんなことに使うなんて…でも気持ち良かったわ……///」

プリンセス「ふふ、もう終わりのつもり?」

アンジェ「だって……もう数時間は経ったはずよ?」

プリンセス「ふぅん…でも私はまだまだ大丈夫だし、シャーロットだってもっとしたいんじゃないかしら?」

アンジェ「わ、私はそんな風に思ってないわ…///」

プリンセス「ふふ…相変わらず私の前では嘘が苦手ね?」

アンジェ「そんなことないわ……私はもう充分よ」

プリンセス「……そうかしら?」ベッドの上に両手をつくと、じりじりとアンジェに覆いかぶさるプリンセス…

アンジェ「え、ええ…だから放してちょうだい」

プリンセス「…本当は?」

アンジェ「……もっとしたいわ///」

プリンセス「ほらやっぱり♪」

アンジェ「…明日は確実に寝不足ね」

プリンセス「それなら一緒にお寝坊しましょうよ…シャーロット♪」…ちゅっ♪

アンジェ「ええ…どうやら私に選択肢はないようだものね」……ちゅ♪


………
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/04/27(金) 04:28:17.46 ID:z0vn+8vyo
66 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/04/28(土) 01:25:07.26 ID:eZY8j6IF0
…翌朝…

ドロシー「おー、起きてきたか……」

アンジェ「ええ…太陽が黄色いわ……」

ドロシー「…で、プリンセスは?」

プリンセス「おはよう、ドロシーさん♪」

ドロシー「うわ!」

プリンセス「どうかなさったの?」

ドロシー「い、いや…何でもない……」

プリンセス「ふふ、変なドロシーさん…おはよう、ベアト♪」

ベアトリス「おはようございます、姫様。紅茶でよろしいですか?」

プリンセス「ええ、ありがとう♪」

ドロシー「アンジェは何がいいんだ……おい、アンジェ!」

アンジェ「…なに?」

ドロシー「朝食は何がいいんだ……って言ってもこの時間だとブランチ(朝食と昼食の間)って所だけどな」

アンジェ「…任せるわ」

ベアトリス「もう、アンジェさんったら仕方ないですね……じゃあ私が適当に作ってきますから」

アンジェ「ええ、それでいいわ」

ちせ「…ふむ、規則正しい生活を送らぬと身体に悪いぞ」

アンジェ「こればかりは不可抗力よ」

ちせ「…ふむぅ?」

ドロシー「あぁ、まぁなんだ…普段頑張ってるわけだし、ちょっとくらいいいんじゃないか?」

ちせ「まぁそれもそうじゃが……しかしアンジェどのがこのような寝ぼけまなこなのは珍しいの」

ドロシー「あー…まぁ、そのぉ……あれだ…時差とか旅行疲れとかそういうのだろ」

ちせ「アンジェどのがそのようなことで、かくも疲れた様子なのはどうも奇妙じゃがの」

ドロシー「えーと…あ、アンジェはポーカーフェイスだけど、意外と旅行の前とかわくわくして寝られないタチなんだよ!」

プリンセス「ふふ、そうなの…アンジェったらはしゃぎ過ぎちゃったのね♪」

ちせ「さようか……ならばしばし休まれるとよかろう」

ドロシー「お、おう…それがいいや。ところで、よかったらこの後あたしと海岸へ遊びにでも行こうぜ?」

ちせ「ふむ、たまにはそれもよかろう……ご一緒いたそう」

ドロシー「うーし、そんじゃああたしたちはお先に…プリンセスもよかったら後からどーぞ♪」

プリンセス「ふふ、そうね♪」

ベアトリス「あれ、ドロシーさんにちせさん…お出かけですか?」

ドロシー「ばか言え、ちょっと浜辺で遊んでくるだけさ……ベアトリスも後で来いよ♪」

ベアトリス「全く、ドロシーさんは元気ですね…姫様、半熟のゆで卵にトースト、フルーツの盛り合わせです♪」

プリンセス「ありがとう、ベアト…片付けは後で構わないから海岸へ行ってらっしゃい♪」

ベアトリス「姫様、よろしいのですか?」

プリンセス「ええ、もちろん…私はアンジェさんとブランチをいただいてから浜辺に参りますから♪」

ベアトリス「分かりました、それでは失礼します」

プリンセス「はい……ふふ、それじゃあアンジェ…「あーん」してあげる♪」

アンジェ「別にいいわ、自分で食べられるもの…」

プリンセス「はい、あーん♪」

アンジェ「…あーん///」

プリンセス「はい、よくできました♪」
67 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/04/30(月) 03:12:43.10 ID:KQGGRw0c0
…浜辺…

ドロシー「そぉれ、捕まえちゃうぞぉ…♪」

ベアトリス「いやあぁぁ…なんでドロシーさんったら飲んだくれているんですかぁ!?」

ドロシー「おいおい、朝から飲んだくれる奴があるかよ。あたしはしらふだ……ただ、ちっこいベアトリスを抱きしめてあちこち触ったりしたいなぁ…ってだけさ♪」

ベアトリス「それでしらふだなんて、余計タチがわるいですよぉぉ…!?」

ドロシー「そう気にするなって…あたしら仲間だろ?」

ベアトリス「それ、「仲間」の使い方が間違ってますよ…ひぃぃ!」

ちせ「…おぉ、よい走りじゃ。鍛錬としては充分な効果があるじゃろうな」

ベアトリス「ひぃいやぁぁ…っ!?」

ドロシー「よぉーし、ベアトリスが一生懸命逃げるなら……あたしも全力で追いかけないとなぁ♪」

ベアトリス「いやぁぁぁ…!」

アンジェ「ベアトリス、うるさい」

ベアトリス「えぇぇ、私が悪いんですかぁ!?」

アンジェ「ええ…だいたい走って逃げるのに叫んでいると息が無駄になる。黙って走るべきよ」

ベアトリス「そ、そんなこと言ったってぇぇ…!」

アンジェ「それにドロシー、貴女も……ベアトリスが嫌がっているのに追い回すのはよくないわ」

ベアトリス「はぁ、よかった…そうですよドロシーさん!」

アンジェ「私は疲れているからそう言う声は聞きたくないの…ベアトリスで何かしたいなら向こうでやって」

ベアトリス「…え?」

ドロシー「あいよ……それ、つーかまーえた♪」

ベアトリス「いやぁぁぁっ!?」

アンジェ「だからうるさい」カチリ…

ベアトリス「…!……!!」

ドロシー「それじゃあまた後で…んふふ♪」

プリンセス「…あら、ドロシーさんったらベアトを抱えてどちらまで?」

ドロシー「あぁプリンセス…いやぁ、ちょっと抱きしめてなでなでしようかなぁ……なんてね?」

プリンセス「そうですか……ふむふむ」

ドロシー「あぁ、いや…もちろんプリンセスが「ベアトは私の専用です」って言うならお返しするけどな?」

プリンセス「そうですねぇ…」

ベアトリス「…!……!!」パクパク…

ドロシー「…で、どうする?」にいっ…と口の端に笑みを浮かべる

プリンセス「決まりましたわ」

ドロシー「それで、プリンセスはどうする…?」

ベアトリス「……!!」

プリンセス「わたくしも参りますわ…ふふ、ベアトとドロシーさんを一緒に味わえるなんて……なかなかそんな機会ありませんものね♪」ドロシーの耳元でささやいた…

ドロシー「…お、おい///」

ベアトリス「!?」

プリンセス「…それじゃあ参りましょう、ドロシーさん……♪」ドロシーの腕に自分の腕を絡め、にこにこと邸宅の方に戻っていく…

アンジェ「…」

ちせ「おや…プリンセスどのはせっかく水着になったと言うのに、どうして戻ってしまったのじゃろう?」

アンジェ「きっと色々あるのでしょう……まったくもう」

ちせ「?」
68 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/05/01(火) 09:19:14.35 ID:Ym7Nn+VP0
…その日の夕食時…

ドロシー「…なぁアンジェ」テーブルナイフで「鴨肉のロースト・オレンジソースがけ」を切りつつ声をかけた…

アンジェ「何?」

ドロシー「……ベッドの上のプリンセスっていつもああなのか?」

アンジェ「ノーコメント」

ドロシー「そうかよ…それにしても可愛い顔してとんだじゃじゃ馬……」

アンジェ「ドロシー、今なんて言った?」

ドロシー「な、何も言ってないぞ。…って言うかその表情でナイフをつかむなよ、心臓に悪いだろ……」

アンジェ「なら結構」

プリンセス「ねぇアンジェ、二人だけの内緒話も結構だけれど……せっかくですしわたくしも混ぜて?」

アンジェ「ええ」

ドロシー「……なんでプリンセスはくたびれた素振りすらないんだよ。あたしはもうヘロヘロだっていうのに…」

ベアトリス「…うぁぁ」

ドロシー「ベアトリスにいたっては…ありゃ魂が出て行った後の抜け殻だな……」

ちせ「どうしたのじゃ、ベアトリスどのはずいぶん気が抜けておるが…?」

プリンセス「…きっと日頃の雑用から離れて気が抜けているのでしょう……こんなに疲れさせていたかと思うと、わたくしも何かとベアトに頼る癖を改めなくてはなりませんね……ふふっ♪」

ベアトリス「あー……」

ちせ「それにしても疲れ切っておるな…そういう時は……」ごそごそと着物のたもとをかき回すと、何やら赤っぽいものを取り出した…

プリンセス「それは何ですか?」

ちせ「これは「梅干し」と申す酸っぱい漬物じゃ…わが国では疲労回復に効果があると伝えられておる。それ、ベアトリスどの…」

ベアトリス「ふぇ…?」

ちせ「口を大きく開けて「あーん」…じゃ」

ベアトリス「はい、わかりました……あーん…」

ちせ「ほい」

ベアトリス「………すっぱ!?」

ちせ「そういう物じゃからな」

ベアトリス「な、何を放り込んでくれたんですか!?」

ちせ「じっくり漬けた「梅干し」じゃ…疲れに効くぞ?」

ベアトリス「何か酸っぱくてぱさぱさした皮とにゅるにゅるした果肉が…うわぁぁ!」

ちせ「ふむ、見ての通りあっという間に元気になったじゃろう?」

ベアトリス「違います!おかしなものを口に放り込まれたせいでパニックなんですよっ!」

ドロシー「なら吐きだせばいいじゃないか」

ベアトリス「姫様の前でそんなこと出来る訳ないじゃありませんか、ドロシーさんじゃあるまいし!」

ドロシー「なんだとぉ?」

アンジェ「いいから静かにして…食卓で騒ぐのはマナー違反よ」

プリンセス「ふふ、相変わらずベアトは面白いわね♪」

ベアトリス「もう、姫様まで……と、とにかく口の中をゆすがせて下さいっ!?」ごく、ごくっ……

ドロシー「お、おい…それ」

ベアトリス「…きゅう///」

ドロシー「……水じゃなくて酒だぞ…」

プリンセス「あらあら…」
69 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/05/01(火) 09:42:55.73 ID:Ym7Nn+VP0
アンジェ「…お帰りなさい」

ドロシー「あぁ……とりあえずベッドに寝かしてきた」

プリンセス「ありがとう、ドロシーさん」

ちせ「すまなかったのぉ…まさか梅干しにあんな拒否反応を示すとは」

ドロシー「それだけ強烈だったのかもな……どんな味なんだ?」

ちせ「たべるかの?」

ドロシー「それじゃあ一つ……見た目はしわくちゃのプラムみたいだけど、もっと小っちゃいな」

プリンセス「せっかくの機会ですから…ちせさん、よかったらわたくしにも下さいな?」

ちせ「うむ、どうぞお取りになってくだされ…アンジェどのはいかがじゃ?」

アンジェ「そうね…一応味見くらいは」

ちせ「うむ、ではドロシーどのと半分こでいいかのぉ?」

アンジェ「…」

ドロシー「…あー、あたしは一個食べるつもりでいるから…そーだ、プリンセスと半分こしたらいいんじゃないのかなー?」

プリンセス「そうね、それもいいかもしれないわね…それじゃあ半分こ♪」柔らかい大粒の梅干しを手で割いて、片一方をアンジェに渡す…

アンジェ「あ、ありがとう…///」

ドロシー「それじゃあ……うわ、酸っぱいな!?」

アンジェ「…」

プリンセス「わぁ、面白いお味ね?」

ちせ「ふむ…こちらにはこのようなものが少ないからのぉ……」

ドロシー「うー、すっぱ……これはあれだ……ジンの中に放り込んでフレーバーにすれば…」ごくっ…

ちせ「ほぉ…日本では焼酎に入れることもあるが、それをご存じとは……ドロシーどのは物知りじゃな」

ドロシー「いやぁ、別にそう言うつもりじゃなかったんだけどな…おっ、こうすれば意外とすんなり飲めるな♪」

アンジェ「…」

ドロシー「おいアンジェ、さっきからやたら無表情だけどどうした…まさか酸っぱいのは苦手か?」

アンジェ「そんな訳ないわ、黒蜥蜴星人である私が酸っぱいものを食べられないはずがない……ただ」

ドロシー「…ただ?」

アンジェ「思っていたのと違う酸味を感じて驚いただけ…」

ドロシー「はぁん…それはつまり「苦手」ってことだなぁ?」

アンジェ「苦手ではないわ。少なくともベアトリスみたいに礼を失するような騒ぎ方はしない」

ドロシー「あれと比較する時点で相当苦手だろ…ちせには悪いが、嫌なら吐き出しちゃえよ」

ちせ「ふむ、貴重な梅干しとは苦手とあらば致し方ない……構わぬよ、アンジェどの」

アンジェ「大丈夫、もう飲み込んだわ」

ドロシー「しかしこの「ミス・パーフェクト」にも苦手があったとはなぁ…ふふーん♪」

アンジェ「嫌な笑い方をするわね…言っておくけれど、私に何か仕込んだりしても無駄よ」

ドロシー「おいおい、そんなことしないって……んふふ♪」

アンジェ「…もしそう言うことをしたら間違いなくやり返すから」

ドロシー「へいへい……それじゃあデザートの方に取りかかりますかね…♪」

70 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/05/01(火) 10:17:39.26 ID:Ym7Nn+VP0
…夏休み明け…

ドロシー「あーあ…夏休みもおわっちったなぁ……」

アンジェ「その方がいいわ、任務がないと身体がなまるし用心深さが足りなくなる……たとえば」ドロシーのそばでわざとグラスを落とす…

ドロシー「おっと…!」ぱしっ…!

アンジェ「私たちのような人間は、こういう時とっさの反応が出来るかどうかに命がかかっているわ」

ドロシー「……だからってあたしで試すなよ」

アンジェ「貴女を頼りにしているからこそよ」

ドロシー「そ、そっかぁ…アンジェに「信頼している」って言われると、なんかくすぐったいなぁ///」

アンジェ「心理戦の方もおとろえていないようね」

ドロシー「おい…それもトレーニングかよ」

アンジェ「冗談よ」

ドロシー「ははっ、こちらも同じく冗談さ……アンジェがあたしにまぁまぁ気を許してくれていることくらい分かってるって♪」

アンジェ「そうかしら」

ドロシー「あぁ、じゃなきゃナイフの届く距離にまで入ってくるわけがない…だろ?」

アンジェ「…かもね」

プリンセス「ねぇ二人ともご覧になって…イギリスが見えてきたわ♪」

ドロシー「おー、ほんとだ…こうやっていると緑豊かで綺麗なもんだな……」

プリンセス「…本当に綺麗ね♪」

アンジェ「ええ」

ドロシー「空の上から見るとなおのことな…ところでちせとベアトリスはどうしたんだ?」

プリンセス「ふふ、ちせさんは飛行船が怖いからお部屋に…ベアトは降りた後の荷物を整えているわ」

ドロシー「そっか…んじゃちょっくら「顔を出して来る」かな」

アンジェ「ええ、それがいいわ…ちせなら一人でも大丈夫だけど、ベアトリスは近接戦が未熟だから」

ドロシー「あぁ、一応形だけな……じゃあプリンセスを頼んだぜ?」

アンジェ「ええ」

プリンセス「……また二人きりになれたわね」

アンジェ「それが一番いいわ」

プリンセス「あら…ずいぶん素直な意見に聞こえるわ」

アンジェ「…か、勘違いしないで…私が言いたいのは「相互にカバーできる」という意味よ///」

プリンセス「ふふ、でも赤くなってる…♪」

アンジェ「まさか…本当に?」手鏡を取り出すアンジェ

プリンセス「ふふ……引っかかった♪」

アンジェ「…」

プリンセス「ふぅ…それにしてもアンジェ」

アンジェ「なに?」

プリンセス「この綺麗な国が二つに割れているなんて、誰が想像できるかしら…?」

アンジェ「……でも「二つに割れているから」こそ、私たちも出会えたのよ」

プリンセス「でもお互いに……ううん、何でもないの」

アンジェ「…分かっているわ。貴女こそ本当のプリンセスよ…それにたとえ何があっても、貴女は私のプリンセス……それだけは絶対に変わらない」

プリンセス「…シャーロット///」

アンジェ「さぁ、もう着くわよ。下船の準備をしましょう」

プリンセス「ええ、そうね…もっと遅い乗り物ならよかったのに……///」
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/05/03(木) 11:19:01.59 ID:wu0Sc/wro

絶倫ひめさま
72 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/05/05(土) 00:40:56.57 ID:wV+taHey0
>>71 実は「チーム白鳩」はプリンセスが夜な夜な「プリンシパル」するためのものであった……訳ではないですが、プリンセスはしとやかそうな外見に反してかなりのタチなので……



73 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/05/05(土) 01:27:29.35 ID:wV+taHey0
…case・プリンセス×ベアトリス「over the fence」(越境)…


…ロンドン市内・公立図書館…

アンジェ「すみません…「ブリタニアの歴史」第13巻はどこにありますか」

7「第13巻ですか?失礼ですが「ブリタニアの歴史」は12巻までしかありませんよ?……歴史書ならあちらの棚だったと思いますわ」

アンジェ「そうですか、どうもありがとう……」ずっしりと重い歴史書をどかすと、背中合わせに本のページをめくりながら書棚越しで小声のやり取りをする二人

7「それで…夏季休暇は楽しめた?」

アンジェ「おかげ様で……ところで「L」はどうしたの。連絡は彼からのはずだけど」

7「残念ながら「L」は来られなくなった」

アンジェ「そう…答えはもらえないでしょうけれど一応聞いておく。……理由は?」

7「一応答えておくわ…「L」は今度公開される劇場版「プリンセス・プリンシパル」の席を予約しに行っているの……もうかれこれ数時間は行ったきりよ」

アンジェ「……は?」

7「聞こえなかった?」

アンジェ「いえ、聞こえたわ……劇場版?」

7「ええ」

アンジェ「そう…で、今回の任務は?」

7「今回の任務はとある人物の越境を支援すること……まずはその人物に越境の意思があるかどうかを確かめる必要があるわ。詳細は追って連絡する」

アンジェ「…了解」


………

…寄宿舎・中庭…

ドロシー「…で、今度は越境の支援だって?」

アンジェ「ええ。まずは対象者に越境の意思…それに特別な条件があるかどうかを確かめる」

ドロシー「それが一番ヤバいやつだ。王国防諜部ならオーバー・ザ・フェンス(越境)を目論んでいそうな奴なんて軒並みマークしているだろうし、場合によっては連中が仕組んだ罠かもしれない……ちっ、参ったな…」

アンジェ「そうね…でもこちらも用心はしている」

ちせ「…ほう?」

アンジェ「連絡はデッド・レター・ボックス(置き手紙)方式で、メールドロップへのメッセージ投入もカットアウト(使い捨て可能なエージェント)が行う…」

ドロシー「おいおい、だとしたらどこであたしたちの出番が出てくるんだ?」

アンジェ「ドロシー、最後まで聞いて…」

ドロシー「へいへい」

アンジェ「…今回は私たちが越境を担う訳ではない」

ベアトリス「それってどういうことですか?」

アンジェ「私たちはあくまでも王国防諜部の影がないか確かめ、ないとなったら対象者の越境を支援する…」

プリンセス「それじゃあまた見張りなのね、アンジェ?」

アンジェ「そうとも言えるしそうでないともいえる…場合によっては当初のグループが陽動を行い、その隙に私たちが王国防諜部から対象者を「抽出」する必要が出てくるかもしれない」

ドロシー「いずれせよ、まずは観察あるのみ…か」

アンジェ「ええ」

………
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/05/06(日) 17:01:55.04 ID:Bb0iBrVNo

劇場版くるんか
75 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/05/07(月) 01:28:56.86 ID:lpYrGx040
>>74 2019年から六章に分けて劇場公開…「チーム白鳩」のその後の活躍をぜひスクリーンで体感しよう!(←いわゆるダイマ)

…一期を上回る豪華声優陣(おもにベアトリスのヴォイスチェンジ)にも期待ですね(笑)


……と、そこまでは素晴らしいことなのですが近隣に映画館のない人間はどうすれば……ぜひとも「コントロール」にはカバーの「文化振興局」と言う部分で頑張ってもらいたいものです…
76 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/05/07(月) 02:12:27.15 ID:lpYrGx040
…ロンドン・リージェント公園…


アンジェ「…それじゃあ手はず通り、ドロシーは味方のエージェントと交代を……接触する際は交代するエージェントから紙袋いっぱいのリンゴを買うことになっているけれど、もし青リンゴだったら「危険」だから何食わぬ顔で立ち去るように」

ドロシー「了解…で、赤リンゴだったら予定通り公園のベンチでリンゴをかじっていればいいんだな?」

アンジェ「ええ、その通りよ……その間私とプリンセス、ベアトリスは各所から監視を行う。…ちなみにちせはあちらのトップと会談する予定があって来られない」

ドロシー「あいよ…ところで接触するのはいいんだけど、なんで私が「リンゴを食べながら」なんだよ……」

アンジェ「合言葉がそうだからよ……ベンチの隣に座った相手が「綺麗なリンゴですね…子供の頃はよく近所の森でもいでいたものです」といったら…」

ドロシー「私が「その森って…もしかしてシャーウッドの森ですか?」って答えるんだったな」

アンジェ「その通りよ」

ドロシー「……リンゴでお腹がパンパンになる前に来てくれることを祈るよ」

アンジェ「別に頑張って食べる必要はないわ」

ドロシー「分かってるっての」



………

エージェント「……リンゴはいりませんか、新鮮なリンゴですよ!」

ドロシー「すみません、リンゴを一袋下さい」

エージェント「はい、毎度あり♪」

ドロシー「……赤リンゴか…」ベンチに腰かけるとはしたなく見えないよう……また、接触までに食べ過ぎることのないよう、小さな口でリンゴをかじる…

アンジェ「…」

プリンセス「……」

ベアトリス「…今のところ王国防諜部は見当たりませんね」

プリンセス「とはいえまだ分からないわ…」

ドロシー「…しゃく……しゃくっ…」(ちくしょう、まだなのか?……もう三つ目だぞ、おい…)

初老の紳士「…隣、よろしいですかな?」

ドロシー「ええ、どうぞ?」

アンジェ「……対象者が来たわ」

プリンセス「今の所動きはないわね…」近くの空き部屋から監視を続けるプリンセスとベアトリス…

ドロシー「…むぐっ、しゃくっ……」

紳士「…綺麗なリンゴですね…子供の頃はよく近所の森でもいでいたものです」

ドロシー「……それってもしかして、シャーウッドの森ですか?」

…監視場所…

アンジェ「…接触したわね」

プリンセス「……ドロシーさんがリンゴを渡したわね」

ベアトリス「確認できましたね」



紳士「おや、あの森をご存知ですか?…何とも懐かしいですな」

ドロシー「ええ…きっと週末にでも行きたい(予定通り越境を希望する)でしょうね?」

紳士「むろんですとも……何しろ都会は嫌になってしまいましたから」

ドロシー「何しろいい空気を吸うにもいちいち出かけないといけませんものね?」

紳士「おっしゃる通りです…」
77 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/05/07(月) 09:56:35.70 ID:lpYrGx040
アンジェ「……ドロシーが引き上げてくるわね」

プリンセス「じゃあ撤収しましょうか、ベアト?」

ベアトリス「はい、姫様」

アンジェ「これで二人は手はず通り裏から抜ける……プリンセス、気を付けて…」プリンセスたちが撤収する様子を観察しながら小声で祈るアンジェ…

…寄宿舎…

ドロシー「…あ゛ー、つっかれたー……おまけに酸っぱいリンゴの食べ過ぎで胃がムカムカする…」

アンジェ「ご苦労様」

ドロシー「おー…そう言えば越境の日取りは決まったのか?」

アンジェ「私はまだ聞いていないわ」

ドロシー「コントロールのやつ、ぎりぎりまで明かさないでおくつもりだな…まぁいいや」

アンジェ「夕食はどうする?」

ドロシー「いや、リンゴでお腹がふくれてるし今はいいや……っぷ」

アンジェ「つわり?」

ドロシー「そんなわけあるか、リンゴのせいだって言ってるだろ…うー、ムカムカする」

アンジェ「ご愁傷様」

ドロシー「おー…ったく、あんな酸っぱいリンゴを仕入れやがって……後で危険手当を申請してやる」

アンジェ「じゃあ夕食はパスね?」

ドロシー「あぁ、この調子じゃあ食べられそうにないしな…」

ちせ「……なら私が粥でも作ろうかの?」

ドロシー「おっ、戻ってきたのか」

ちせ「うむ…詳細は明かせぬが今後の方針について話し合ってきたのじゃ」

アンジェ「ご苦労様、すぐに夕食の時間よ」

ちせ「うむぅ…ところが向こうで遅い昼餉(ひるげ)をごちそうになって来てしまっての……今は満腹じゃぁ」

アンジェ「分かった……それじゃあまた後で」

ドロシー「あいよ……うっぷ」

ちせ「どうしたのじゃ…つわりか?」

ドロシー「だからつわりのはずないだろうが…だいたい誰との子だよ」

ちせ「……まぁ、それはそうじゃが…もしうちの子供だったらと思うと……///」

ドロシー「はぁ!?」

ちせ「べ、別に想像を巡らせるくらいよいではないか…!」

ドロシー「いや、だって女同士で…でも待てよ?…ちせとあたしの子供か……」

………



ちせ(和風美人)「うむ、うちらの子供は相変わらず可愛いの…ぉ♪」

ドロシー(貴婦人)「おー、本当だよな……それにしても眉毛はちせそっくりだ♪」

ドロちせの子供「えへへぇ…ドロシーおかあしゃま♪」たゆんっ…♪

ちせ「そしてこの年でこの身体…ここはドロシーの血じゃな……むぅぅ」

ドロシー「そうすねるなよ…後でなぐさめてやるって♪」

………

ちせ「……な、なんじゃ…いきなりニヤニヤして」

ドロシー「いや…ちせとあたしの子供……結構いいかもな♪」

ちせ「!?」
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/05/08(火) 03:14:02.13 ID:XTJCk+auo
79 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/05/09(水) 01:56:26.78 ID:RVy5WGke0
…深夜・部室…

ドロシー「うー…腹減ったぁ……」ごそごそと棚やティーセットの周りをかき回すドロシー…

ドロシー「…ったく、あのリンゴのせいで胃はむかつくわ夕食は食べ損ねるわでエライ目にあった……その上いまになって腹ペコになって…」

ちせ「…誰じゃ!」

ドロシー「うわ…っ!?」

ちせ「……なんじゃ、ドロシーか?」

ドロシー「ちせ?」

ちせ「うむ、私じゃが……こんな夜更けにいったいどうしたと言うのじゃ?」

ドロシー「いや、それはあたしの台詞だって…ちせこそいつもは早寝早起きのはずだろ?こんな時間に何してるんだ?」

ちせ「そりゃあもちろん…あー、アレじゃ……」

ドロシー「いや、「アレ」って何だよ…見回りか?」

ちせ「あー……うむ!…そうじゃ、見回りじゃ。いや、とっさに英語が出てこなくての」…きゅうぅぅ

ドロシー「そうだよなぁ、ちせたんは見回りだよなぁ……ふふっ♪」

ちせ「な、何がおかしいのじゃ……むしろドロシーこそ何をしに参ったのじゃ///」

ドロシー「えっ、あたしか?……それは……何だ、まぁ言うなれば……アレだ…アレ」

ちせ「何じゃ?」

ドロシー「えーと、だな…」ぐぅぅ…

ちせ「……どうやら「見回り」の目的は同じのようじゃな」

ドロシー「ああ……なら一緒に行くか♪」

ちせ「ふむ…どこへ行くのじゃ?」

ドロシー「ここの厨房さ……いくら片づけたとしても、ちょっとした残り物くらい転がってるだろ」

ちせ「しかし、ここの寮監に見つかったらタダでは済まんぞ?」

ドロシー「おいおい……あたしたちの「本業」は何だっけ…?」

ちせ「それは…間諜じゃな」(※間諜…「かんちょう」いわゆるスパイ・工作員の事)

ドロシー「なら寮監ごときに見つかるわけがない…だろ?」にやりと不敵な笑みを浮かべると、スパイ活動用のマントを取り出した…

ちせ「ふむ……間諜としての技巧を私利私欲のために使うのははなはだ不本意ではある…が、背に腹は変えられぬ……同道いたす!」

ドロシー「おーし、それじゃあ行きますか…♪」

…廊下…

ドロシー「…よし、行け」黒マントに黒いハンチング帽で、廊下の入れこみに身を沈めて合図をする…

ちせ「うむ……」音も立てずに廊下を小走りで移動するちせ……黒に紅椿が入った着物姿で、覆面をしている…

ドロシー「…ここを右だ」

ちせ「うむ……待て、寮監じゃ」

ドロシー「ちっ、こんな時に限って仕事熱心なこった……ちせ」

ちせ「うむ…!」ひらりと開けた窓から身を躍らせる二人…

寮監「……ん?…まったく、どうして開けっ放しなのだ……ぶつぶつ…」カチン…

ドロシー「……よし、ランタンは見えなくなった」

ちせ「それはいいがの…どうやら窓の鍵を閉められたようじゃが?」

ドロシー「そこは腕の見せ所ってやつさ…♪」窓の外側にある壁の装飾に脚をかけたまま、鍵穴に細いピックを突っこんで軽く動かした…

ちせ「…どうじゃ」

ドロシー「はは、こんな鍵なんかピース・オブ・ケーク(一片のケーキ…朝飯前)だっての……ほらきた♪」カチリ…

ちせ「さすがじゃな」

ドロシー「おうよ……さ、行こう♪」
80 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2018/05/09(水) 02:25:55.98 ID:RVy5WGke0
…厨房…

ドロシー「おーし、鍵が開いたぞ…♪」

ちせ「うむ……かたじけない」

ドロシー「なぁに、お安い御用さ……さてと」

ちせ「何か食べ物じゃな」

ドロシー「あぁ…不思議と任務中は空腹なんか感じないのに、どうしてかいつもはすぐ腹ペコになるんだよな…」

ちせ「それはやはり任務中は集中しているからじゃろうな……おや、パンがあったぞ」

ドロシー「こりゃまたずいぶんカチカチだが……ま、ないよりはいいや」

ちせ「ふむ…とはいえパンだけではさすがに寂しいの」

ドロシー「へっへっへ……「そうおっしゃると思いました」ってやつだな♪」

ちせ「なんじゃ?」

ドロシー「チーズの切れっぱしがあった…そこそこ大きさのあるチェダーチーズだから、二人でも十分だろ?」

ちせ「おぉ…♪」

ドロシー「さらにそこへ持ってきて…ハムの残りがこんなところから…♪」

ちせ「おぉぉ…♪」

ドロシー「洋ナシも一個あった」

ちせ「おぉぉぉ…♪」

ドロシー「さて…そうなると今度はプロダクト(産物…スパイ活動での成果)を無事に運ばないとな」

ちせ「うむ、ここにぐずぐずしているのは愚の骨頂じゃからな」

ドロシー「そういうこと…♪」

ちせ「では、参ろうではないか」

ドロシー「おーし、任せておけ……」

…廊下…

ちせ「それにしてもどこでこれを食すことにいたそうかの?」

ドロシー「それはまぁ…部室だろうな」

ちせ「やはりそうかの?」

ドロシー「あぁ…あそこなら寮監だって来ないしな」

ちせ「うむ、こんな時間にあそこにいるとは夢にも思うまい」

ドロシー「それにナイフや皿もあるしな」

ちせ「確かに…しっ、また寮監じゃ」

ドロシー「今日はイヤに律儀だな……もう一度出よう」

ちせ「…うむ」

寮監「……よし、何も異常はない…と」

ドロシー「ふー…今度は外から鍵もかけてやったし、怪しまれもしなかったな」

ちせ「うむ。しかしこの調子ではいつ出くわしてもおかしくないの…」

ドロシー「仕方ない…ロープがあるからこれで部室まで登ろう」小さくたためて、目立たないよう黒染めにしてある絹のロープを取り出すと、輪っかを作ってそれを投げ上げ、上階の壁飾りにひっかけた…

ちせ「うむ、それが一番よい方策じゃろうな……よいしょ」

ドロシー「まったく…これじゃいつものスパイ活動よりきついな……」

ちせ「そう言うでない…美味しい夜食のためではないか」

ドロシー「あぁ、そうだな……♪」

81 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/05/10(木) 09:03:55.60 ID:77naKrMoo
82 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/05/11(金) 00:40:50.14 ID:seBLmBr70
…部室…

ドロシー「はぁ…壁をよじ登るなんて久しぶりだったな……やれやれ」

ちせ「うむ……さすがにいい鍛錬になったのぉ…」

ドロシー「ま、「空腹は最高のスパイス」だって言うしな…ちょうどいいや」

ちせ「それでは食べることにいたそうではないか」

ドロシー「おう、それじゃあ準備してやるから待ってな?」食器棚からテーブルナイフを持ち出すとパンをスライスし、堅いチェダーチーズにハムを切って乗せる……

ドロシー「…お待たせ♪」月明かりだけが室内を照らす暗がりでニヤリと笑みを浮かべ、皿に乗せたパンと二つに切った洋ナシの片方を差しだした…

ちせ「うむ…それでは、いただきます……」

ドロシー「あいよ…んぐ、はぐっ……むしゃ…」

ちせ「んむ…んむ……」

ドロシー「なぁちせ、何かこうやってこっそり食べているとさ…いつもより美味しく感じないか?」

ちせ「その気持ち、分からんではないな……すっかり固くなってしまったパンの切れ端がこんなにも五臓六腑に沁みるとは思わなかった……」

ドロシー「な?……あぁ、うまかった♪」パンのかけらが付いた指先を舐め、洋ナシを口に放り込んだ…芯のギリギリまですっかり食べると、周囲を見渡して残った芯を食器棚に放り込んだ……

ちせ「ドロシー…芯を食器棚に放り込んでどうするのじゃ?」

ドロシー「私が明日早起きして回収する…それからバラ園にでも埋めて来るさ♪」

ちせ「うむ…かたじけない」

ドロシー「気にするなって……それよりちせはこんな時間まで起きていたら体にこたえるだろ、後は任せて寝に行けよ♪」

ちせ「うむ…しからばご免」

ドロシー「あいよ……ふわぁぁ…私も食べたら急に眠くなってきたし……とっとと寝るとしますか」


………

…翌日…

アンジェ「……それでこうなっていたわけ?」

ドロシー「あー…悪ぃ……」

アンジェ「…わざわざプリンセスのお皿に洋ナシの芯を載せておくなんて……気が利いているわね」

ちせ「済まぬ…ドロシーも私も決して意図して行ったわけではないのじゃ……!」

アンジェ「分かっているわ…それにしても深夜に二人で厨房から食べ物をくすねて来て、ここでネズミみたいに飲み食いしたと言うのはいただけないわ」

ドロシー「…悪いのは分かってるけどさ、その時は腹ペコで寝られそうになかったんだよ……な?」

アンジェ「見張りや監視任務で空腹に耐える訓練もあったはずよ、ドロシー?」

ドロシー「それはそうなんだけどさ……でもわかるだろ?」

アンジェ「いいえ」

ドロシー「…黒蜥蜴星人は腹も減らないってか?」

アンジェ「そう言うことじゃないわ……仮にも学生のふりをしている私たちがこの学園で少しでも常人離れした動きやおかしな真似をしたら、それだけで「チーム白鳩」のカバーそのものが危うくなる…ドロシー、貴女はたかが一時の空腹のために全員を危険にさらしたのよ」

ドロシー「そう言われると身もふたもないな……確かに学生気分で甘えてたよ…」

ちせ「全くじゃ…これは仕置きを受けても致し方ない真似をいたした……」

アンジェ「分かればいいわ……それに」

ドロシー「…それに?」

アンジェ「優秀なスパイはとっさの空腹時に何か食べられるよう、常に保存の効く食べ物を身近に備えておくものよ…それも美味しいものを」食器棚の皿を取り出して奥の羽目板をいじるとカシェット(隠し棚)が開いて、中からショウガ入りクッキーの袋が出てきた…

ドロシー「…は!?」

アンジェ「これに懲りたら、今後は馬鹿な真似をしないことね」二人にジンジャークッキーを一つずつ渡し、また袋をしまった…

………
83 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/05/11(金) 01:12:11.84 ID:seBLmBr70
…しばらくして…

アンジェ「……以前の接触で対象者の越境希望は本物であることが分かったわ。…と言うことは同時に、王国側の防諜機関が血眼になって私たちを追いかけてくる……と言うことでもあるわ」

ドロシー「…今度は残り物のパンをくすねるようにはいかないだろうな」

アンジェ「そう言うことよ……しかしこちらとしても黙ってその締め付けを甘受するつもりはない」

プリンセス「…何か策があるのね?」

アンジェ「ええ」

ベアトリス「アンジェさん…その策って言うのは何なんです?」

アンジェ「まず、スパイ活動にとって重要なのは相手に警戒を抱かせないこと…とはいえすでに相手は警戒状態に入っている…なら」

ドロシー「…「相手に警戒を解かせるか、丸っきり見当違いの方向を警戒させればいい」だな?」

アンジェ「その通りよ。王国防諜部は誰かが越境を試みようとしていることは知っている…とはいえ、それが誰なのかはまだ知らない……そこでベアトリス、あなたの出番よ」

ベアトリス「わ、私ですか?」

アンジェ「ええ。以前あなたが舞踏会で出会ったことのある人物で王国防諜部が目を付けている人物……そうした人間をコントロールに探してもらって手紙を送りつけ、上手くロンドン市内に誘い出した…」

ベアトリス「…それで?」

アンジェ「王国防諜部は「監視リストの人物に動きがあった」と、越境阻止に動くはず…そこをあなたが声色を使って防諜部のエージェントを引きずり回す」

プリンセス「…でも、ベアト一人で何かあったら……?」

アンジェ「心配はいらないわ……プリンセス、この時あなたにはロンドンでショッピングをしてもらう」

プリンセス「……ショッピング?」

アンジェ「例によって例のごとく、お役所なんていうものはお互いに縄張り意識を持っている…」



L「へっぐし…!」

7「…どうなされました、「L」?」

L「ふむ、きっと誰かに噂でもされたのだろう……」

………

アンジェ「…特にプリンセスの警護に当たるエージェントと防諜部のエージェントはどちらも玄人で、その分ライバル意識も強い……どちらかが何かをしようとしたら、「妨害」とまでは言わなくても、積極的に手助けしたりはしない……つまりベアトリスがロンドンの各所で防諜部エージェントを声色で連れ回し、そのたびにプリンセスの車とドロシーの車を乗り換えて素早く移動し、防諜部をきりきり舞いさせる」

ドロシー「…でもあたしがそっちに回ったら「抽出」する越境希望者はどうするんだ?」

アンジェ「そこは私が考えてあるし、私とちせはバックアップに回り全体を俯瞰している…何かトラブルが起きたら駆けつけるわ」

ドロシー「それは頼もしいな…期待してるぜ?」

アンジェ「ええ」

………
84 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/05/11(金) 11:06:33.17 ID:seBLmBr70
…越境決行日・王宮…

プリンセス「……わたくし、今日はお買いものに行きたいの♪」

女性エージェント「は…では私たちが警護いたします」日傘とシンプルなドレススタイルをまとった二十代後半のオールドミス…に見える護衛のエージェントがプリンセスの左右に付く……

プリンセス「いつもありがとう♪」

エージェント「いえ、それが務めですので…車を手配させます」

プリンセス「ええ、よろしくね」


…ロンドン市街・公園…

貴族「さて…手紙で言われた通り来てみたものの……誰もいないじゃないか」

ベアトリス(CV…石塚運昇)「……貴様が陛下の治世に異議を唱えている不満分子だな?」

貴族「な…私はそのようなこと……!?」

ベアトリス「…私を知っているかね?」

貴族「あ、あぁ…アルビオンの公安部……」

ベアトリス「ならば話が早い。貴様が王国に尽くす貴族であることを行動で示せ……まずは十五分以内にチャリング・クロス駅へ行け」

貴族「…行けば私を助けてくれるのか?」

ベアトリス「質問するのは貴様ではない…早くしろ」

貴族「わ、分かった…!」



王国エージェント(新聞売り)「……対象に動きあり」

エージェント(靴磨き)「…確認した、合図を」新聞売りは朝刊を振り、合言葉として記事にないニュースを叫ぶ…

エージェント(店の御用聞き)「追跡開始……了解」御用聞きはサボリをやめ、さも忙しそうに駆け出す…



…公園を見渡す屋根の上…

アンジェ「案の定ね……ちせ、あなたは先回りして」

ちせ「うむ」…さっと屋根裏部屋の窓から屋内に滑り込み、裏口から出て行くと何ということもなく歩き出す……

アンジェ「それじゃあ私も…」するりと屋根裏部屋から玄関へと回り、女学生らしく歴史書を不器用に抱えて出て行った…

………

…チャリング・クロス駅…

貴族「そ、それで私はどうすればいいのだ…」

ベアトリス「……新聞を買え。王国寄りの「ロンドン・デイリー・ニュース」を買って「株式市場」のページを表にしろ」

貴族「わ、分かった…」

エージェント(新聞売り)「対象は駅に入ったな…どうやって越境する気だ……」

エージェント(御用聞き)「とにかくこの格好では駅には入れん…増援を要請しよう」合図に台帳をパラパラとめくる…

エージェント(紳士風)「……奴は駅だな?」

エージェント(新聞売り)「はい、そうです」

新聞売り「おい!ここは俺たちの場所だぞ、勝手に入るなよ!」

エージェント「すんません…何しろ今日はじめたもんで!」

新聞売り「ったく、ふざけんなよ!」

エージェント(紳士)「まぁまぁ、落ち着きたまえよ。彼もおわびしていることだし、私も喧嘩など見たくない…君からも買ってあげよう」

新聞売り「どうもありがとござんす、貴族の旦那…♪」

エージェント(紳士)「なに、構わんとも……急ぎ事務所に行って増援を呼べ、対象「C」に動きあり……とな」

エージェント「…了解」

アンジェ「……それでいいわ」
85 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/05/11(金) 11:40:57.69 ID:seBLmBr70
プリンセス「あ、ここはチャリング・クロス駅……そう言えば近くに素敵な服地屋さんがあったわね、そこに行きたいわ♪」

エージェント「分かりました。プリンセスの言う通りに車を回して」

…駅構内…

貴族「…言う通りに新聞を買って、株式欄を開きました……」

ベアトリス「よろしい、ではそのページから「アルビオン・インペリアル貿易」の株価を調べて最初の数字と末尾の数字を並べろ」

貴族「…は、はい……数字は「15」です…」

ベアトリス「…ではホームを見て車体に「15」のつく客車を残らず探せ……そして見つけたらその最初の一等客車に乗り、15番目の駅で降りろ」

貴族「は、はい…」

ベアトリス「もし15駅なかったら折り返して15になるまで乗れ…いいな?」

貴族「わ、分かりました……15…15のつく客車…」



エージェント(紳士)「奴か…なるほど、新聞の株式欄片手にしきりに周囲を見回しているな……」

エージェント(旅行者)「…押さえますか?」

紳士「ばかを言うな。奴が共和国の連中とコンタクトした所で両方を一気に取り押さえるのだ……む、奴が目的の列車を見つけたようだぞ」

旅行者「それでは私が乗り込みます」

紳士「私もだ……いいか、君は二等に…私は一等車に乗る」

旅行者「了解…しかしここが手薄になります」

紳士「構わん、奴の動きから言ってあれが本命だ…」



…駅のそば・裏道…

ドロシー「遅いぞ、ベアトリス」

ベアトリス「ふー、遅くなりました…」

ドロシー「……まずはその声を戻せよ」

ベアトリス「あ、そうでした……はー、やっと元の声に戻れました」

ドロシー「よし、それじゃあ今度は別方面だな…」



…一方・高級百貨店…

プリンセス「まぁ、これお洒落ね♪」

支配人「わざわざお越しいただき光栄でございます」

プリンセス「いいえ…これなんてどうかしら?」

支配人「大変よろしいかと存じます」



…百貨店の裏通り…

エージェント(記者風)「…おい、タレコミのランデブー・ポイント(会合地点)だってのはこの辺りだろ?」

エージェント(貧乏人風)「……おかしいな、誰もいやがらないぜ…?」

プリンセスの警護官「…おい、そこの二人…止まれっ!」

エージェント(記者)「な、何ですか…私は「アルビオン・タイムズ」の記者ですよ!」

プリンセス警護官「それが仕事をさぼって貧乏人とひそひそ話か?…確保しろ!」

エージェント(貧乏人風)「くそ、こっちも同業者だぞ!」

警護官「ほざけ、おおかたプリンセスに危害を加えようという共和国の回し者だろう…どうだ?」

警護官B「は、やはり小型リボルバーを隠しておりました!」

警護官「そんなことだろうと思った…至急プリンセスを退避させるようにと連絡しろ!」

………
86 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/05/12(土) 10:51:16.02 ID:gpKb5FU20
…百貨店・店内…

警護官「…プリンセス、お買いもの中に申し訳ありませんが」

プリンセス「はい、どうかなさいまして?」きょとんと頭をかしげるプリンセス…その間にも警護官のオールドミス数人がさりげなく脇についた……

警護官「はい、ちょっとした問題が……申し訳ありませんが移動をお願いいたします」

プリンセス「分かりました…支配人さん、どうもありがとう♪」

支配人「いえ、いつでもお越しくださいませ…」

警護官「では参りましょう」



…大通り…

アンジェ「…これでさらに二人減った」

ちせ「うむ…このどたばたでちっとは「お出かけ」が楽になればよいがの」

ベアトリス「そうですね……で、肝心の「あの人」はどうやって「お出かけ」するんですか?」

アンジェ「それはまだ言えない……こちらとしてはお膳立ては整えた。あとは実行班が上手くやるのを待つだけよ」

ちせ「うむ」



…王室専用車…

プリンセス「……それで、一体何があったのです?」

警護官「わざわざプリンセスのお耳を汚すことではありませんが…我々の一員が、プリンセスがお買いものをなさっていた百貨店のそばで「怪しい人物を確保した」と」

プリンセス「そうですか……怖いことですね。ではその警護官の方々にはわたくしから「心より感謝している」とお伝えになって?」

警護官「これが務めですから…ですがそのように伝えておきます」

プリンセス「ええ、お願いします。でもせっかくのお出かけがフイになってしまったわ」

警護官「申し訳ありませんがプリンセスの安全が最優先ですので」

プリンセス「分かっております…けれど時には自由にお出かけしたりしてみたいですね……」

警護官「お察しします」

プリンセス「すみません…わたくしの安全を守って下さっている方々にこのような愚痴を言うべきではありませんね」

警護官「いえ、我々も出来うる限りでプリンセスの希望に沿えるよう尽力いたしますので…」

プリンセス「ありがとう、ミス・レモン」

警護官「はっ…私の名前を憶えておいでなのですか?」

プリンセス「もちろんですとも…だって命をかけてわたくしを守って下さる「白馬の騎士」のようなお方なのですから♪」

警護官「……期待に応えるよう全力を尽くします///」


87 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/05/12(土) 11:30:38.17 ID:gpKb5FU20
…国境検問所…

出入国管理官「停まれ!…身分証を!」

…アルビオン王国・共和国間を隔てる「ロンドンの壁」に数か所だけある国境検問所…その中の「チェックポイント・チャーリー」(検問所C)には、やむを得ない事情で国境を通る人たちや、「職業上」しばしば越境する人が並んで検査を待っていた……次々と車や馬車が停められてイミグレーション(出入国管理局)のチェックを受ける…

運転手「は、はい…」

管理官「壁のあちら側へいく理由は?」

運転手「…わ、私は「アルビオン・タイムズ」の配送係でして……大使館や貿易会社など、購読者の所に届ける新聞を載せています」

管理官「よろしい…では積み荷を見させてもらうぞ」数人の管理官に合図を送るとランダムに新聞の束をめくり、床板が上げ底でないか確かめる……

運転手「…」

管理官「……結構、行ってよし!」

運転手「ふぅぅ…」

管理官「…次!」

運転手「…お、お願いしやす」手には身分証が差しだされ、冷たい目をした出入国管理官を前に一般人らしいおびえ方をしている…

管理官「ふむ……葬儀屋の運転手だと?」

運転手「へ、へい…」

管理官「…どうして葬儀屋の霊柩車が越境する必要があるのだ」

運転手「ど、どうもあっしには運転手なんで細かいことは分からねぇんですが…何でも壁のあっち側からきていた実業家だかが交通事故にあって、それで向こうに持って行く必要があるらしいんで…」

管理官「ふむ…棺を開けさせてもらうから少し待っていろ」

運転手「へ、へい…」

管理官「……おい、防諜部から「越境の可能性あり」と連絡があったが…きっとこれだ」

管理官B「ああ…しかし「壁の向こう」の連中だからな、バレたとなったら強行突破しかねないぞ…ゲートはまだ開けないでおいてくれ」

管理官「…分かってる」

管理官B「よし、開けるぞ……ややっ?」…立派な棺の蓋を開けると、そこには監視対象者とは全く違う立派な身なりの人物が安らかに眠っていた……

管理官「…どうした」

管理官B「この男じゃない…まるっきり別人だ!」

管理官「それじゃあ防諜部の情報はハズレか……結構。通ってよし!」

管理官C「やれやれ、緊張していたのがバカみたいでしたね…紅茶でも淹れてきます」

管理官「うんと甘くな……はい、次!」

運転手「よろしくお願いします…」

管理官「身分証を!」

運転手「は、はい…!」
88 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/05/12(土) 11:58:32.12 ID:gpKb5FU20
管理官「積荷は?」

運転手「…ジャガイモです」

管理官「ジャガイモ?」背伸びをしてみると、確かにトラックの荷台一杯にジャガイモが積まれている…

運転手「ええ…コヴェントガーデン(ロンドンにある青果市場)にある卸業者から向こうに持って行くところなんです」

管理官「ふむ。どうしてジャガイモを向こうに持って行く必要があるんだ…ジャガイモならこっちでだって売れるだろう」

運転手「あ、はい…うちの卸は向こうにも事務所を持ってまして、値段がいい方に持って行って売るんで……」

管理官「なるほど…一応調べさせてもらうぞ」

運転手「…別に腐ってたり青くなったりしてない、いいジャガイモですよ?」

管理官「そんなことを調べる訳じゃない…っ!」

管理官B「ははっ……青果卸ともなると何でも野菜と関係があることだと思うんだな」

管理官「全く、からかわれた気分だ…いまいましいからしょっ引くか?」

管理官B「ばか言え、ひっくくったところでポケットからニンジンでも出てくるのがオチだぞ?」

管理官C「あの、紅茶が出来ましたよ…?」

管理官「あー分かった分かった……もういいな?」数個のジャガイモを取り上げてたが、ごく普通のジャガイモに見える……

管理官B「ああ、もういいだろう…よーし、通れ!」

管理官「それじゃあお茶にしよう……おい、ここを代わってくれ」

管理官D「了解」


………

…数十分後・アルビオン共和国大使館内…

7「……L、共和国の農務担当官から連絡が入りました」

L「ほう…どうだったのかね?」

7「はい、「本日のジャガイモ市場…イモは大ぶりで痛みもキズもなく、ポンドあたり6ペンスの値段が付いた」とのことです」

L「よし、結構だ……時間を空けて各班に作戦終了を伝達してくれ」

7「了解…♪」

L「うむ、頼むぞ」パイプをふかしつつまた書類仕事に戻る…

7「はい」残りのメンバーも黙々と作業にいそしむなか、7も通信文の原稿を起こした…

………



…その夜・部室…

アンジェ「…というわけで、コントロールから私たちにメッセージが届いているわ」

ドロシー「あぁ、何しろロンドン中を走り回ったからな…ちっとは「慰めと報酬」ぐらいあったっていいさ」

アンジェ「まぁ中にはそう言う意見もあるでしょうね」

ドロシー「……冷血人間」

アンジェ「何か言った?」

ドロシー「うんにゃ、何も…♪」

ベアトリス「…くすくすっ♪」

アンジェ「ベアトリス、何がおかしいの?」

ベアトリス「な、何でもありませんっ」

アンジェ「よろしい…ちなみにプリンセスはそろそろ戻ってくるから、それまでにお茶の支度でもしておきましょう」

ちせ「それがよかろう……疲れて戻って来るじゃろうし」

ドロシー「まったくだ」
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/05/14(月) 11:06:38.33 ID:7fsvJIzGo

スパイシーンの力の入りようがすごい
90 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/05/15(火) 02:15:21.90 ID:xl/WhS+80
>>89 もとよりスパイ小説は好きでしたので、あちこちから正しい用語などを探して頑張っています…えっちする場面と落差が大きいですが、メリハリをつける意味ではそれもいいかと……本当ならもっと地味に活動するのが正解なのでしょうが、あくまでもスチームパンクのスパイ活劇と言うことで……


…ちなみに越境の場面では、当初もっと冗談めかして「リボンの騎士」に出てくる「大食い大会向けの巨大パンに人を隠す」シーンを物真似しようかと考えていました…「ジャムパンだから突き刺したら剣がさびるよ?」と言うくだりがある場面です……


…お待たせしましたがそろそろプリンセスが「プリンシパル」します……
91 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/05/15(火) 02:49:17.43 ID:xl/WhS+80
…しばらくして…

プリンセス「皆さん、ただいま戻りましたわ……安全が確認できないからってしばらく王宮で足止めされちゃったの♪」

アンジェ「お帰りなさい、プリンセス…大方そんなことだろうと思っていたわ」

プリンセス「ふふ…ただいま、アンジェ♪」

ドロシー「お帰り…ちなみコントロールから「ジャガイモは無事店先に並んだ」とさ♪」

プリンセス「ただいま、ドロシーさん……それは朗報ね♪」

ちせ「うむ。まずはよう戻られた……息災で何よりじゃ」

プリンセス「ありがとう、ちせさん」

ベアトリス「…もう、みんなしてあいさつ責めにして……姫様が座れないじゃありませんか」

ドロシー「何だ…もしかして最初に挨拶したかったのか?」

ベアトリス「な、何を言ってるんですかドロシーさんは…///」

ドロシー「おーおー、真っ赤になっちゃってまぁ……うぶだねぇ♪」

ベアトリス「か、からかわないで下さいっ…!」

アンジェ「養成所なら不合格ね」

ちせ「ふむ…ベアトリスはまだまだ不動心が足らぬようじゃな」

ベアトリス「うぅ…///」

プリンセス「まぁまぁ、私はベアトの気遣いが嬉しいわ…ありがとう、ベアト♪」

ベアトリス「…ひ、姫様///」

アンジェ「…」

プリンセス「…私はアンジェのさりげない気遣いも好きよ?」

アンジェ「……そう」

ドロシー「おいおい……そっけない反応のふりをしてるけど顔がニヤけてるぞ、黒蜥蜴星人」

アンジェ「冗談言わないで…」

ドロシー「…と言いつつちらっと鏡を見るあたり、なにか心当たりがあるんだな?」

アンジェ「ないわ……でももしかしたら自覚していない反射があるのかもしれない。そう思っただけ」

ドロシー「へいへい…ところでプリンセスに紅茶を淹れてやれよ、ベアトリス」

ベアトリス「ええ、そうでした……姫様、紅茶をどうぞ」

プリンセス「ありがとう、ベアト…とっても美味しいわ♪」

ベアトリス「お菓子もありますよ?」

プリンセス「美味しそうなスコーンね…いただくわ」

ベアトリス「お茶がお済みになりましたら、私が着替えをお手伝いいたしますね」

プリンセス「ええ、ありがとう♪」

ドロシー「それじゃあ私たちも引き揚げますか」

ちせ「そうじゃな」

アンジェ「ええ…それではプリンセス、お先に失礼させていただくわ」

プリンセス「そうね、みんなもゆっくりなさってね?」

ドロシー「これはどうも…それじゃあまた♪」

ちせ「うむ…しからばご免」

ベアトリス「…みんな出て行っちゃいましたね?」

プリンセス「ええ、これで二人きりね……ベ・ア・ト♪」にっこり微笑んで立ち上がると、ドアに近寄り鍵をかけた…

ベアトリス「あ……あの、姫様?」
92 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/05/16(水) 10:11:20.16 ID:g6SgyiRE0
プリンセス「ふふふ…♪」じりっ…

ベアトリス「ひ、姫様……何だかとっても悪い笑顔をなさっておられますが…」

プリンセス「あらベアト、そんなことないわ…ほぉら、いつもみたいにわたくしの所においでなさい?」

ベアトリス「いや、どう見ても怪しいですよ…」

プリンセス「大丈夫大丈夫…ね、ちょっとなでなでするだけだから…♪」

ベアトリス「うわぁ、それ絶対に怪しいじゃないですかぁ…!?」

プリンセス「ふぅ、冗談はさておき…ベアトが手伝ってくれないなら仕方がないわ、よいしょ……」シルクの長手袋や首にかけた真珠のネックレスを外してテーブルの上に置いていく…

ベアトリス「あっ…私がやりますよ、姫様」

プリンセス「そう?」

ベアトリス「はい、特に真珠はお手入れをしないとくすんでしまいますから……ドレスも型崩れしないようにきちんとしまわないと…」

プリンセス「助かるわ、ベアト……もう、ぎゅうぎゅう締め付けるようなコルセットやペチコートにはうんざりしちゃう」

ベアトリス「分かります…でも姫様はドレスがよく似合いますよ?」

プリンセス「あら、嬉しい。ベアトがそう言ってくれるから私もがんばってドレスを着ているのよ?」

ベアトリス「ひ、姫様はまたそう言う事を言って…///」

プリンセス「ふふふ……ありがとう、これでやっと楽になれたわ♪」

ベアトリス「いつでも喜んでお手伝いいたしますよ、姫様」

プリンセス「ベアトは優しいわね……」

ベアトリス「そんな…ほかならぬ姫様のためですから///」

プリンセス「…ベアト」

ベアトリス「……姫様///」

プリンセス「…と、ベアトが油断した所で♪」

ベアトリス「きゃあっ!?」

プリンセス「はぁぁ…もうベアトったら簡単に引っかかってしまって……でもそこが可愛いわ♪」頬ずりするプリンセス…

ベアトリス「は、離して下さいっ…///」

プリンセス「嫌よ♪」

ベアトリス「即答ですか!?」

プリンセス「だってこんなに可愛いベアトが目の前にいて……はぁ、はぁ…我慢できる訳ないでしょう♪」

ベアトリス「ひ、姫様っ…スカートをめくるのは止めて下さい…っ///」

プリンセス「だって、ベアトがすべすべの脚をしているのがいけないのよ?…さ、一緒にベッドに入りましょう♪」

ベアトリス「ち、ちょっと待ってくださいよ…話が早すぎませんか!?」

プリンセス「まぁまぁ…ベアトったら大きい声を上げてはしたないわよ?」

ベアトリス「そ、それも私のせいですかっ…!?」

プリンセス「ええ、だってわたくしはプリンセスですもの……♪」

ベアトリス「姫様、それは横暴ですっ!」

プリンセス「わたくしは可愛いベアトを手に入れるためならアルビオンを売ってもいいし、暴君にだってなれるわ♪」

ベアトリス「うわぁぁん、そんなこと自慢げに言わないでくださいよぉ…!」

プリンセス「まぁ…まぁまぁまぁ♪…涙目のベアト、とっても可愛い…もっと泣かせてしまいたくなるわ♪」

ベアトリス「ひぃぃ…っ!?」

プリンセス「大丈夫よベアト、何もしないから♪」

ベアトリス「その顔でおっしゃられても全然信用できませんよぉ…」


93 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/05/16(水) 11:06:17.25 ID:g6SgyiRE0
プリンセス「はぁぁ…ベアトったら可愛い……ちゅっ♪」

ベアトリス「わわっ……んちゅ///」

プリンセス「ん…ベアトのお口の中、甘いミルクティーの味がするわ……他にはクローテッドクリームのついたスコーンね?」

ベアトリス「わわっ、せめてキスする前に口の中をゆすがせて下されば///……うぅ、せっかくのキスが食べ物の味では台無しですよ…」

プリンセス「そうかしら…むしろ私は空腹だったから……刺激されちゃったわ♪」んちゅぅぅ…れろっ、ちゅぷ…♪

ベアトリス「んっ…んふぅ……んむっ……んんぅ///」プリンセスは舌で丹念に歯茎をなぞり、それから器用にベアトリスの舌と絡めた……

プリンセス「ぷは……んちゅっ、ちゅるっ……ちゅぅぅぅ……っ♪」

ベアトリス「んくっ、んんっ…んふぅぅっ……!?」

プリンセス「ぷはぁぁ…はぁぁ、ベアトの舌は温かくてしっとりしていて……出来たてのスフレみたいね♪」

ベアトリス「うぅぅ…プリンセスの舌がねちっこく絡んできて……頭がぼーっとなっちゃいます……///」

プリンセス「ふふふ…♪」…立ったままメイド服をはだけさせると、丹念にベアトリスの姿態を眺めまわした…

ベアトリス「そんなに眺めても私のぺったんこな身体じゃあ面白くないと思いますよ…///」

プリンセス「あら、その「ぺったんこ」な所がまたそそられるのよ…♪」

ベアトリス「へ、変態ですかっ…!?」

プリンセス「もう、プリンセスに対して「変態」だなんて……これはお仕置きが必要ね♪」…無邪気な笑顔でベアトリスの顔を胸元に押し付けるプリンセス……

ベアトリス「きゃあっ…んぐっ!?」

プリンセス「はぁぁ…ベアトの吐息が暖かいわ……身体もふにふにでとても触り心地がいいわ♪」ベアトリスのつつましいお尻に手を這わせ、背中を優しいタッチで撫で上げる……

ベアトリス「も、もうっ…姫様ったら……ぁ///」

プリンセス「そう言いつつも顔がすっかりトロけているわよ?」

ベアトリス「だ、だってぇ…///」

プリンセス「でもわたくしはワガママだから、もっとベアトのとろけた表情が見てみたいわ……♪」なだらかなベアトリスの乳房を撫でまわし、ゆっくり優しくこね回す…

ベアトリス「んぁぁ…ふわぁぁ……あふっ…///」

プリンセス「ふふ、ベアトの胸は手のひらに収まる大きさでちょうどいいわ…♪」むにゅ…むにっ……

ベアトリス「はぁぁ…んあぁぁっ……///」顔を赤らめ困ったように眉をひそめ、しきりにふとももをもじもじさせている…

プリンセス「あらあら…ベアトったらわたくしをほっぽらかして自分だけそんな気持ちよさそうに……もう、いけないメイドさんだこと♪」

ベアトリス「ふぁぁ…らって……ひめさまが…あふぅぅ……///」にちゅっ、くちゅっ…♪

プリンセス「ふふふ…それじゃあわたくしの事も気持ち良くしてほしいわ…ね、ベアト?」

ベアトリス「…ふぁい、ひめしゃま……///」ぺたんとお尻をついてプリンセスの足もとにへたり込むと、とろっと焦点の合わない目をしてふとももを舐めはじめる…

プリンセス「うんうんっ…ふふ、気持ちいいわ……んくっ♪」

ベアトリス「んちゅ…れろっ、ぴちゅっ…ぴちゃ……///」

プリンセス「んぅぅ、んふっ……あふぅ…あっ、んぅっ♪」

ベアトリス「んちゅ、ぺろっ…れろっ……んちゅぅ…///」

プリンセス「はぁぁ…んんぅ……ベアト、上手よ…んふっ///」

ベアトリス「……きもひいいれすか、ひめひゃま…?」

プリンセス「ええ……私も濡れてきちゃったわ♪」

ベアトリス「それふぇしふぁら…わらひがご奉仕いふぁひまふ……///」(それでしたら、私がご奉仕いたします)

プリンセス「んんっ、あっ……そこ気持ちいい…っ♪」とろりと濡れた秘所を熱心に舐めあげるベアトリスに、甘い吐息を漏らすプリンセス…

ベアトリス「きもふぃいいれふか…ひめひゃま?」

プリンセス「ええ……でもやっぱりこれだけでは我慢できないわ♪」とんっ…とベアトリスを絨毯の上に押し倒しぐっしょりと濡れた下着をずり下ろすと、口の端からよだれをたらしてとろけきっているベアトリスの上にまたがった…

ベアトリス「あ…ひめさま……んひぃぃぃっ///」ぐちゅ、にちゅっ、じゅくっ…♪

プリンセス「んぅぅっ、ベアトったらすっかりびちょびちょね…ふふ♪」ベアトリスの下半身をふとももできゅっと挟み込み、腰をねちっこく動かす…

ベアトリス「んはぁぁ、ふあぁぁぁっ♪」びくっ、びくんっ…!

94 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2018/05/18(金) 11:39:05.46 ID:UI02SxFd0
プリンセス「んふぅ…はぁ、はぁ、はぁっ……日頃乗馬の訓練をさせられていてよかったわ…♪」

ベアトリス「んぁぁぁっ!姫様っ、ふとももの締め付けがきついです…っ///」

プリンセス「うふふ、ベアトは可愛いお馬さんね…乗りこなしやすいからトロット(速足)でも大丈夫そう♪」ぐちゅぐちゅっ…にちゅっ

ベアトリス「はひぃ、はぁあぁぁっ…!」

………

…廊下…

アンジェ「さてと…この後は食事の時間まで何もないわ」

ドロシー「あぁ…おい、ちょっと待てよ……アンジェ、眼鏡はどうした?」

アンジェ「え?」

ドロシー「眼鏡だよ、眼鏡……まさか部室に忘れてきたのか?」

アンジェ「…女学生ごっこですっかり気持ちがたるんでいるわね……教えてくれてありがとう」

ドロシー「なぁに、こういう時はお互いさまだろ……先に行ってるぞ?」

アンジェ「ええ」



…部室…

プリンセス「はぁ、はぁ、はぁ…ベアトのつるつるのあそこ……ふふふ♪」

ベアトリス「ひぐぅぅっ…んひぃぃっ!」

プリンセス「もう、ベアトったら絨毯まで汚しちゃって……そんなに気持ちいいの?」

ベアトリス「い゛ぃっ、んひいぃぃっ…はひっ、はひぃぃ……だって…姫様にこんな事をしてもらっていると思うと……あひぃぃっ!」びくびくっ…ぷしゃぁぁ…っ♪

プリンセス「まぁ、ベアトがのけ反った瞬間に私の身体が持ち上がったわ…♪」

ベアトリス「はぁ……はぁ…姫様…も、もう無理ですよぉ……」

プリンセス「そうなの……でも、せっかく二人きりになれたのだから…もうちょっとこうしていたいわ」

ベアトリス「そ、そんな風に言うなんてずるいです……///」ふとももをもじもじとこすり合わせて甘い声を上げる…

プリンセス「ふふふ…可愛いベアト……ちょっと待って?」

ベアトリス「ひ、姫様…ここでおあずけなんてひどいですよぉ……んくっ、んっ…姫様…ぁ♪」くちっ、くちゅっ…にちゅっ♪

プリンセス「しーっ…足音が聞こえるの……こっちに近づいてきているわ」

ベアトリス「んふぅ…はひぃ……んんっ…♪」

プリンセス「…ベアト、隠れましょう」

ベアトリス「そ、そんなこと言ったって……ひめしゃまぁ…///」くちゅくちゅっ、じゅぷっ…とろっ♪

プリンセス「もう、ベアトったら仕方のないメイドね……さ、早く…!」クローゼットを開けるとベアトリスを押し込み、ついでに自分も入って扉を閉めた…

ベアトリス「ひ、姫様の甘い匂いで…わらひ、もうイっちゃいますぅっ……んんっ///」とろっ…ぷしゃぁっ♪

プリンセス「もう、ベアトったら♪……気づかれちゃうといけないから静かにね…」かちかちっ…かちり

ベアトリス「…あっ///」びくびく…っ♪

プリンセス「ふふ、私たちすごい密着しているわね……それにベアトったらすっかりとろけた顔で、こっちもとろとろのびしょびしょ…♪」片手を濡れたベアトリスの下半身に這わせて、指を入れる……

ベアトリス「……♪」がくがく…っ、ぷしゃぁぁ…とろっ♪

プリンセス「それでやってきたのは…アンジェね。…どうやら眼鏡を忘れて取りに来たみたい♪」

ベアトリス「…///」びくっ、びくんっ…にちゅっ♪

アンジェ「……ふぅ、プリンセスもベアトリスもいないようね…わざと足音を立てたのが無駄で済んでよかった…わ」

プリンセス「…お気遣いありがとう、アンジェ♪」じゅくっ、ぐちゅっ♪…小声でお礼を言いながら、ベアトリスの秘部をかき回す……

ベアトリス「…!……///」がくがくっ、ぷしゃぁぁ…びくん…っ♪

アンジェ「…」
95 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/05/20(日) 01:27:35.72 ID:WYZVcsNZ0
プリンセス「……ふふ、もしかしてアンジェに見つかってしまうのではないかと思うと…ぞくぞくしちゃうわね、ベアト?」

ベアトリス「…!……///」

プリンセス「……あらあら、一生懸命お口をパクパクさせて…もっとしたいのね?」

ベアトリス「……!!」顔を真っ赤にし、ぶんぶんと首を振る…

プリンセス「…ふむふむ…「姫様にもっとめちゃくちゃにしてほしいです♪」ですって?……ええ、任せてちょうだい♪」

ベアトリス「…!?………!!」

プリンセス「…それじゃあ……ふふっ♪」

アンジェ「…分かったうえでやっているわね、プリンセスは……って、これ…///」床に落ちているプリンセスのペチコートを拾い上げ、ちらっとクローゼットを横目で見てからポケットにねじ込んだ…それから眼鏡をかけると平然とした様子で出ていった……


プリンセス「ふぅ…ようやくクローゼットから出られたわね……ふふ、いま声を戻してあげる♪」カチカチ…ッ

ベアトリス「もぅ、姫様のいじわるっ…///」顔を真っ赤にして、うつむき加減のベアトリス…

プリンセス「ふふ、ごめんなさい……ベアトが余りにも可愛くって、それでつい意地悪してしまうの…♪」

ベアトリス「うぅぅ…私の憧れていた、花も恥じらうような清純な姫様はどこへ行ってしまったんですかぁ……?」

プリンセス「ふふ、大丈夫よ…私がベアトを思う気持ちは清らかなまま変わらないわ♪」

ベアトリス「ひ、姫様ぁ……///」

プリンセス「さぁベアト、お部屋に戻る前にちゃんと着替えないといけないからお手伝いして……あら、私のペチコートは?」

ベアトリス「え、さっきまでそこにあったはずですが…そこにありませんか?」

プリンセス「それが見当たらないの……どうしましょう?」

ベアトリス「えぇっ…と、ここに着替えのセットはありますが下着までは……」

プリンセス「仕方ないわ……別に誰かに見られる気づかいもありませんし、下にまとう物はこのボディス(胴衣)だけで構いません」

ベアトリス「し、承知いたしました……ではお着替えを…///」

プリンセス「それにしてもどこに行ってしまったのかしら……って、まさか?」

ベアトリス「何か…?」

プリンセス「いいえ、何でもないわ…♪」


…アンジェ私室…

アンジェ「ふぅ、んくっ…はぁぁ……」


…アンジェの部屋のドアには、留守中誰かが入って来たかどうか分かるよう何でもない物……少しでもノブやドアを動かすと落ちるようなバランスで小さな針が乗せてあり、卓上のノートやメモ帳もアンジェにしか分からない特定の規則でずらしてあって、もし誰かがいじったとしてもすぐわかるようになっている……が、そのどれもが無事だったことを確認するとポケットからプリンセスのペチコートを取り出し、お仕着せの上衣とスカートを脱いでベッドにもぐりこんだ…


アンジェ「んくっ、んんぅ……すぅー…はぁー……」ポーカーフェイスのままプリンセスのペチコートを通して息を吸ってみたり、頬ずりしたりするアンジェ…

アンジェ「んっ、ふぅ……プリンセスなんて嫌い…プリンセスなんて嫌い……プリンセスなんて嫌いっ…プリンセスなんてっ……ん、んんぅぅっ…///」

アンジェ「……ふぅぅ、はぁぁ……プリンセス…大っ嫌いな私だけのプリンセス……んくぅ…っ♪」

………



アンジェ「ふぅぅ…これは後で洗って返せばいいわ……さてと、早くコントロールに提出するレポートの続きを書かないと…」机に向かって紙を置いてペンを取り上げたが、ちらりと自分の洗濯物に混ぜてあるプリンセスのペチコートを眺めると手に取り、もう一度ベッドに潜りこんだ…

アンジェ「…あまりこんな機会はないし、もう一回だけ…それにしても冷たい私と違って、プリンセスの温もりが伝わってくるみたいね……」小声でひとり言を言いながらプリンセスの下着に頬ずりした…


………

96 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/05/20(日) 02:37:38.08 ID:WYZVcsNZ0
…case・ちせ×ベアトリス「The blade and pickles」(刃と漬け物)…

…ある日・校舎の裏手…

?「よく来たわね……待っていたわ」

ちせ「…ふむ、なにやら私の下駄箱に文(ふみ)が入っておると思ったら……やはり果たし状であったか…」

フェンシング部部長「ええ…さぁ、この間は出来なかった勝負の続きをいたしましょう!」

ちせ「ふむ…自らの腕を誇示したいがために果し合いを申し込むとは愚かなこと……しかし、うっとうしい取り巻きを連れずに「さし」で勝負とは、見上げた態度よ……ならば…参るぞ!」

部長「ひっ!?…ですが東洋のおかしな剣術ごときに……わたくしが負けるものですか…っ!」

ちせ「甘いっ!」小柄なちせは胸元を突こうとするエペをかいくぐり、地擦りから必殺の一撃……は浴びせずに刀を一閃させた…

部長「…ひぃやぁぁっ!?」エペが空中に跳ね上げられてくるくると回転し、地面に突き刺さる……そして次の瞬間には防具が見事に切り裂かれて、ふっくらした白い乳房があらわになる……慌ててしゃがみこみ、涙目になるフェンシング部の部長…

ちせ「いかん……こ、これは…五分ばかし踏み込みが大きかったか…///」(※五分…約一・五センチ)

部長「うぅぅ…ど、どうしてくれますの……っ///」フェンシングの面を取って真っ赤になっている…

ちせ「こ、これは困ったのぉ……とはいえお互い剣士として刃を交える以上、恥を受けることもあれば誉を一身に受けることもある…それが定めと言うものよ……」

部長「そんなことはよろしいですから、早く何とかなさってくださいっ…///」

ちせ「むむ…とはいえ私の服では大きさが合うまいし……むぅぅ…」

ベアトリス「はぁ……やっと見つけましたよ…って、何をしているんですかっ…///」

ちせ「おぉ、ベアトリスか。ちょうど良い所に来た…済まぬが針と糸でこれをどうにかしてくれんかの?」

ベアトリス「…え?」

ちせ「見ての通りなのじゃ…ちと踏み込みが大きすぎた……」

部長「うぅぅ…お願いいたしますわ///」

ベアトリス「わ、分かりました……もう、ちせさんったら何を考えているんですかっ!」

ちせ「なに…?」

ベアトリス「だってそうでしょう、普通は本物の剣や刀で勝負なんかしませんよっ!……だいたいわたしたちは目立たないようにするのが任務でしょう…」耳元に顔を近づけ、小声で叱る…

ちせ「むぅ、それはそうなのじゃが…しかしこれでも武人の端くれ、果たし状には応えねばならぬのだ……」

ベアトリス「…それで正体がばれたらどう言い訳するつもりなんですか……っ」

ちせ「…すまぬ……」

ベアトリス「はぁぁ…すみませんが、一応着られる程度には直しておきましたから……改めてお店に修理してもらって下さい」

部長「わ、分かりましたわ……と、ところで…///」

ちせ「何じゃ?」

部長「こ、このことは誰にもおっしゃらないで下さいませ……わたくし、これからは本物のサムライに対して決して生意気なことなど申しませんから……」

ちせ「うむ、承知した……私もこのことは言わないでおく」

部長「…助かりますわ///」

ちせ「ではお互いに出会ったことなどなかったかのように、時間を空けて表に行こう…」

部長「ええ///」

ベアトリス「…ふぅぅ、これでどうにか秘密は守れましたね……」

ドロシー「あぁ…まさかあの娘っ子を口封じに始末するわけにもいかないしな……お手柄だったぞ、ベアトリス♪」

ちせ「…なに、今までどこに……?」

ドロシー「なぁに、茂みの中に潜んでいたのさ……あの「果たし状」を訳してくれって持って来ただろ?…その後すぐにここへ来て潜んでいたんだ」

ベアトリス「ちせさん…もしかしたら本当の刺客だったかもしれないんですよ?」

ドロシー「あぁ…まぁいずれにせよだ、今日はどうにか秘密を守れたからいいようなものの、頼むから今後は「果たし状」とかにつられてノコノコ一人で行っちゃダメだぞ?」

ちせ「うむ…迷惑をかけたな……」

ドロシー「なに、気にするなって……しかしあのフェンシングの部長、いい乳してたな♪」

ベアトリス「も、もう…どこを見ていたんですかっ///」

………
97 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/05/21(月) 10:08:26.35 ID:7Y7F72guo

やっぱりベアトプリンセスアンジェ三点セットはいいね
98 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/05/22(火) 23:47:43.11 ID:XbPSWCMc0
>>97 まずは「乙」をありがとうございます。遅筆ではありますが、時間を見つけてまた投下していきますので……


……確かにこの三人は安定感がありますね…よく「主人公たちが奇数だとカップリングに入れないキャラクターが出て悲しい」と言う意見が多いですが、この三人ならプリンセスが二人を手玉にとって食べ散らかせるので……(苦笑)

99 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/05/23(水) 10:51:35.71 ID:9OpwdMO+0
…お茶の時間…

アンジェ「事情は聞いたわ、ちせ…今後はそう言うことのないようにお願いするわ」

ちせ「うむ…あい済まなかった……」

アンジェ「分かってくれたなら結構…さて、今回の任務よ」

ドロシー「えー、また任務かよ……コントロールときたら、あたしたちを機械か何かだとでも思ってるのか?」

アンジェ「それだけ私たちが役に立っていると言うことよ…嬉し泣きでもすることね」

ドロシー「おいおい、ずいぶん冷たいじゃないか…んん?」

アンジェ「ドロシー、頭を撫でくり回すのは止めてちょうだい」

ドロシー「へいへい…で、任務の中身だな」

ベアトリス「そうですよ、ふざけている場合じゃないです」

アンジェ「全くね……ちなみに今回の任務は「舞踏会に出ること」よ」

ドロシー「…は?」

プリンセス「まぁ…そこで情報の交換をするのかしら?」

アンジェ「その答えは当たらずと言えども遠からずね……今回の舞踏会は王国外務省主催の国際的なもの。当然各国の「同業者」が来るわ」

ドロシー「それはめでたいな…それで?」

アンジェ「ちせはよく御存じのようにアルビオンが「王国」と「共和国」に分かれていることで、諸外国はどちらを支援するのが有利なのか……はたまた、アルビオンの植民地や海外の権益を横取りする機会はいつなのかを、目を皿のようにして注視している」

ちせ「うむむ…確かに私の国もこちらで言う「極東」の権益を確保しておこうと必死じゃからな……」

アンジェ「そうでしょうね…そこでコントロールとしては、各国のスプーク(幽霊…転じてスパイのこと)が誰なのかよく見ておきたい……もしこれから必要になったら王国の弱点を流してもいいし…それが反対に「アルビオンそのもの」に対する脅威だとしたら、どこかで食い止める場合も出てくる」

ドロシー「要はスパイの見本市…だな?」

アンジェ「ええ。とはいっても私たちは「本物」のスパイだから、やすやすと顔を知られるわけにはいかない……あくまでもプリンセスの「ご学友」として、楽しく優雅に振る舞ってくれればいいわ」

ドロシー「それはいいや…私は純情な女学生だからな♪」

アンジェ「…ちょっと耳の聞こえがおかしかったみたいね……何て言ったのかしら、ドロシー?」

ドロシー「おいこら…まるで人を女たらしみたいに言いやがって」

アンジェ「違うの?」

ドロシー「…こんにゃろー……」

ベアトリス「…でもそういう事でしたら、王宮から招待状を出さないといけないですね?」

アンジェ「そこの手はずはプリンセスにお願いするわ……表向きは普通の舞踏会だから、ぜひとも「大好きなお友達をお招きしたいの」とねだってみてちょうだい?」

プリンセス「ええ、任せておいて♪」

アンジェ「というわけで、今回はコントロールから「L」も顔見世のために現地に来る…と言っても、王国防諜部やらノルマンディ公の部下がうようよいるから、あまり意識しすぎたり話しかけたりすることのないように」

ドロシー「…ああ、分かってるって♪」

アンジェ「それじゃあ舞踏会までにダンスとフランス語のおさらいでもしておくことね」

ちせ「むぅぅ…私はどうもあの「社交ダンス」というヤツが苦手じゃ……」

ドロシー「なら私が「手取り足取り」教えてやるよ…んふふ♪」

ちせ「な、なんじゃ…その薄気味の悪い笑顔は……」

ドロシー「そんなことないって…なぁアンジェ」

アンジェ「…さぁね」

プリンセス「……後で私たちも練習しましょうね、ベアト?」

ベアトリス「はい、姫様♪」

100 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/05/24(木) 01:29:49.43 ID:6l21Rb3C0
…舞踏会当日…

アンジェ「…準備はいいわね?」

ドロシー「おう…しっかし丸腰だと落ち着かないな……」

アンジェ「…一応言っておくけれど、アルビオン外務省主催の舞踏会にスティレット一本でも持ち込もうものなら、たちまちのうちに王国防諜部が猟犬みたいに駆けつけてくるわよ」

ドロシー「わかってるっての……だから丸腰なんだろうが…うぅ、どうも落ち着かないなんだよなぁ……」

アンジェ「…だったらアメでもしゃぶっていたら?」

ドロシー「あたしは子供かよ?」

ベアトリス「ぷっ、くすくすっ…♪」

ドロシー「おいベアトリス、何がそんなにおかしいんだ……んー?」

ベアトリス「な、何でもないですよぉ…」

アンジェ「仕方ないわね。ほら…口を開けなさい、ドロシー」

ドロシー「は?…まぁいいや…あーん……って、ホントにアメ玉なんて持ってるのかよ!?」

アンジェ「ええ…たとえば「機密書類をあさっている時にその屋敷の子供に出くわす」…とか、そう言った想定外の出来事があったときのためにね」

ドロシー「そんな限定的なシチュエーションがちょくちょくあるとも思えないけどな……ま、もらっておくよ……ん♪」アンジェがどこからともなく取り出した黄色い大きなアメ玉をしゃぶりつつ車を運転する…

アンジェ「黄色でよかったわね、ドロシー…赤は毒入りよ」

ドロシー「げほっ、ごほっ…!」むせたせいで車がテールを振り、慌てて席にしがみつくベアトリス…

アンジェ「……冗談よ」

ドロシー「おい、私を殺す気か!?」

アンジェ「いいえ…軽いユーモアで緊張をほぐしてあげようと思って」

ドロシー「あのなぁ、本当に「毒入りアメ玉」を仕込みかねないヤツがそういうことを言うのは「ユーモア」って言わねぇよ…」

アンジェ「…そう」

ベアトリス「そ、それはそうとして…私たち、今日は一段とステキなドレスですよね♪」普段はなかなかおめかしも出来ないベアトリスのためにプリンセスが選んだ、裾のフリルもたっぷりあるパステルピンクのドレスと、小さなシルクハット風の飾りつき帽子…

ちせ「うむ…しかしこのドレスはちと恥ずかしいの///」肩をむき出しにした黒いパーティドレスには大ぶりなケシの花と紅いリボンがあしらわれ、日本ならではの白い大粒のパールが首元を飾っている…

ドロシー「そんなことないって…よく似合ってるぜ?」渋いがぐっと大人びて見えるディープグリーンとクリーム色のドレスに、貴婦人のような大きな帽子をかぶり、胸元を白い羽根飾りが引き立てている……

アンジェ「ええ、とてもいいわ」アンジェは「田舎出身の女学生」というカバーストーリーに合わせて見立てた少しデザインの趣味が悪いミルクティー色のドレスと、それに似合わないオレンジ色の造花がついた帽子を選んでいる…

ドロシー「……さてさて、そろそろ会場にご到着…ってな♪」

アンジェ「ではいつも通りに…」

…舞踏会・会場…

衛兵「あー…失礼ですがお嬢さまがた、招待状はお持ちですか?」

アンジェ「は、はいっ…!」小さいポーチの中をかき回しつつあたふたしている…ふりをするアンジェ

衛兵「…慌てずとも大丈夫ですよ。他のお嬢さま方もどうぞ招待状をお見せください」

ドロシー「はい、これね……♪」

ちせ「…うむ」

ベアトリス「はい、お願いします」

アンジェ「あぁ、あった……こ、これですね?」

衛兵「ええ、そうです…はい、どうぞお通り下さい」

ドロシー「えぇ…と、車はどこに預ければよろしいのかしら?」

衛兵「は、それは次のゲートで運転手たちがお借りして停めておきますので…どうぞごゆっくり」

ドロシー「ええ、ありがとう♪……ふぃー、あたしのカスタム・カーじゃなくて普通の車で来てよかったぜ…」

アンジェ「そうね…そろそろ玄関よ」

ドロシー「オーケー……アメはしゃぶり終わってるし、大丈夫だ♪」

アンジェ「結構」
101 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/05/24(木) 04:29:38.60 ID:nZfabGBCo

楽しみに待ってるから自分のペースで頑張ってください
102 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/05/24(木) 10:01:48.46 ID:6l21Rb3C0
>>101 ありがとうございます、劇場版の公開まで…とはいかなくても、せめてこのスレは書ききるつもりで頑張ります

…特に書き溜めたりなどしていないので時間ばかりかかっていますが、思い出した頃にのぞきに来てもらえれば少しづつ投下されているかと……
103 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/05/24(木) 11:29:12.27 ID:6l21Rb3C0
…大広間…

ドロシー「おーおー…さすがにアルビオン外務省主催ともなると豪華なもんだ」

アンジェ「ええ。それに来客の顔ぶれも見事なものよ」…アンジェたちのような「一般人」は別として、入り口では誰かが来るたびにトランペットのファンファーレが鳴り、係が会場に向けて来賓の(本名であったりなかったりする)名前を張り上げる……

ドロシー「ああ…あそこでどこかの貴婦人と話しているのは王国の外務次官……その隣で静かにしているのが王国防諜部の対外課長だな」

アンジェ「ええ。それに「L」もすでに来ているわ……さぁ、固まっているとおかしいから飲み物でも取りに行きましょう」

ベアトリス「そうですね…それじゃあ私は姫様のお側に行っていますから」

ちせ「なら私は……お、堀河公はもうおいでになっておられたのか…」

堀河公「おお、ちせ…それに皆も……」

アンジェ「…堀河公、息災で何よりです」

堀河公「うむ、以前は助けてもらったな。本来なら厚く礼を言いたいところだが…ここはあちこちに目があるのでな、世間話のふりで勘弁していただきたい」

アンジェ「それで十分です…私たちは影の世界に住むものです。日なたに出て勲章をもらうためにやっているのではありませんから」

堀河公「…なるほど、噂以上の冷静さよ……すまんが王国のエージェントがこちらを見ている。楽しく会話しているふりをお願いしたい」

アンジェ「はい…ふふふっ♪」

堀河公「ははは、そうかそうか……「ちせ」さんと申したか…異国の地で見かけた日本人に声をかけてみたら、何とも素晴らしいご学友をお持ちとあって安心しましたぞ!」

ちせ「はい、素晴らしい朋友たちです♪」

堀河公「それはよかった、大事にするといい……それでは」ちょんまげに羽織袴の目立つ格好で歩いて行った…

ドロシー「……ふぅ、シャンパンでもとって来よう…」

アンジェ「私は水でいい」

ドロシー「おいおい…って、来賓のご到着だぜ?」物見高い女学生らしくグラスを片手に来賓を眺める…

お触れの係「…駐アルビオン日本国大使、伯爵「阿路本仁左慈」(あじのもとのひとさじ)卿!」

ドロシー「ふぅん…あれが「表」の大使か……」シャンパンをすすりつつちらっと流し目をくれる…

お触れ「アルビオン・イタリア王国文化交流協会局長「ウンベルト・ショボクレティアヌス」伯!」

アンジェ「あれは「ローマ皇帝の末裔」とかいう噂のある人物ね…見た目はあの通りやつれているけれど、暗殺にかけては天下一品らしいわ」

ドロシー「ほーん……まぁイタリアって国は要人の暗殺が多いからなぁ」

お触れ「駐アルビオン・オスマン帝国大使館付商務官「アブドゥル・ババ・ヤスク・ウル」様!」

ドロシー「…ターバンに裾の長い服、つま先の尖った靴……まるで「アラビアン・ナイト」だな?」

アンジェ「ええ…あれはどうやらオスマンのスパイのようだけど……あの見た目ではなかなか大変そうね」

ドロシー「ははっ、確かに…♪」

お触れ「在アルビオン・オランダ王国商務省輸出担当課長、子爵「スヘルデ・オラニエン・デ・スウェヘニンヘン」様!」

ちせ「なに…「スケベ人間」じゃと?」

アンジェ「…スウェヘニンヘン…オランダの地名よ」

ドロシー「ああ…しかし「輸出担当課長」ねぇ……どう見たってチューリップを売り込みに来ている顔じゃないぜ?」

アンジェ「ええ。何しろアルビオンが「ボーア戦争」で南アフリカのオランダ植民地を奪った後だもの……きっと植民地に向けた武器の動きを調べに来ているのね」

ドロシー「そいつはありえるな……やれやれ、アフリカのジャングルなんかよりロンドンの方がずっと弱肉強食のサファリだよな?」

ちせ「うむ…うかうかしていると自分の国がいつ列強に食われるか分かったものではないからの……恐ろしいものじゃ」

アンジェ「そうね」

お触れ「…駐アルビオン・ロシア帝国大使夫人「エレーナ・クリオコワ」様!」

ドロシー「ふぅ、これでめぼしい顔はみんな来たか……ちせ、そこにちょっとしたビュッフェもあるんだし、うまいものでも食べてきたらどうだ?」

ちせ「ふむ…では失敬する」

アンジェ「さぁ、そろそろダンスの時間よ」

ドロシー「そう思ってちせに声をかけたのさ…ダンスは苦手だろうし、一緒にいると何かと目につくだろうからな」

アンジェ「ええ、そうね」
104 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/05/27(日) 01:30:40.27 ID:oodsxoY00
プリンセス「……皆さん、舞踏会は楽しんでおられますかしら?」

アンジェ「…あ、あの、そのっ……お、おら…いえ……わたくしはこんな立派な舞踏会は…は、はは初めてで…っ!」

プリンセス「ふふ、お楽に…アンジェさん♪」

アンジェ「あわわわ……」プリンセスに声をかけられて、しどろもどろになっているふりをするアンジェ……

ドロシー「ふふ、これはこれはプリンセス……このような立派な舞踏会に私どものような「ただの女学生」までお招きいただき、恐悦至極に存じます…♪」と、こっそりウィンクするドロシー…

プリンセス「いいえ、構いませんわ…だってわたくし、難しい外国との取引や他の国のエライ人たちのお話なんかよりも、皆さんとおしゃべりをしながら一緒に楽しく過ごしたいですもの……♪」と、背後にいるノルマンディ公に聞こえる程度の声を上げた…

ノルマンディ公「…おやおや、王女様とあろうものがそれでは困りますな……ところでこちらはご学友の方々ですか」

プリンセス「ええ、紹介いたしますわね……皆さん、こちらがわたくしの叔父にあたりますノルマンディ公でいらっしゃいますわ…♪」プリンセスから紹介されるとドレスをつかんで腰をかがめ、一礼するドロシーたち…

ノルマンディ公「……さて、舞踏会はいかがですかな?…可愛らしいレディの皆様」

ドロシー「は、はい…王族の方や外国の方がいっぱいでドキドキしておりますわ……///」

ノルマンディ公「はは…この舞踏会は外務省主催とはいえ大したものではありませんよ……どうぞ気楽になさるとよろしい」

ドロシー「あ、ありがとうございます…」

ノルマンディ公「…それで、そちらのお嬢さんはいかがですかな……?」

アンジェ「あ、あの……わたすは……いえ、わたくしは…///」

プリンセス「おじ様、あまりおどかさないであげて下さいな……地方からおいでになったものですから、あまり社交界には馴染んでおりませんの」

ノルマンディ公「おやおや、これは失礼した…では、ごゆっくり……」

プリンセス「またね、おじ様♪」

ノルマンディ公「うむ…いつかまたお会いしたいものですな、レディの諸君……」

ドロシー「はい、それでは……ふー、誰が二度とお会いするかっての……」

プリンセス「…いきなり声をかけて来るなんて驚いたわね?」

アンジェ「ええ、まさかノルマンディ公とはね……でもドロシー、私はもう一度会いたいわよ」

ドロシー「おいおい、マジかよ…」

アンジェ「ただし、銃の照準に捉えた状態で…だけれど」

ドロシー「あー…それなら話は別だ……」

プリンセス「……ベアト、もうしゃべっても大丈夫よ?」

ベアトリス「はぁぁ……さすがに背筋が凍りつきましたよぉ」

アンジェ「でもよくポーカーフェイスを維持したわね…上出来よ」

ベアトリス「そ、そうですかぁ…?」

ドロシー「今は出来てないけどな…完全にニヤけてるぜ?」

ベアトリス「むぅぅ…いいじゃないですか、アンジェさんに褒められるなんて滅多にないんですから」

ドロシー「そんなことないさ、アンジェは褒めるのも上手さ……ただ、あんまりにもかすかだから普通の人間には分からない…ってだけで」

ベアトリス「それじゃあ褒めてないのと一緒じゃないですかぁ…」

アンジェ「もっと表情を良く読み取ることね……ちせは?」

プリンセス「えーと…さっきまでビュッフェテーブルで何かつまんでいたようだったけれど……?」

アンジェ「そう…もう頃合いでしょうし、そろそろ撤収しましょう」

ベアトリス「じゃあ私が呼んできます」

プリンセス「お願いね♪」

………
105 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/05/27(日) 02:12:45.54 ID:oodsxoY00
…しばらくして・部室…

ベアトリス「もう、ちせさんったら信じられませんっ…!」

ちせ「何を…っ!」ベアトリスは服の内側に差したウェブリーの小型ピストル「ウェブリー・ベスト・ポケット」に手が伸ばせる位置…ちせは脇差の柄に指が届く位置でにらみ合う……

………

…事の発端…

ドロシー「ふぃー…今日は気疲れで参ったな……車の整備だけしたら早めに寝よう…」

アンジェ「私もレポートを書く必要があるから…失礼するわ」

ちせ「うむ…それではまたの」

ベアトリス「おやすみなさい、アンジェさん」

アンジェ「ええ」

ちせ「それにしてもプリンセスどのもおらぬしアンジェどの、ドロシーどのも席を外してしまったの……二人きりじゃが何か出来ることはないものじゃろうか…?」

ベアトリス「うーん…それでしたらお茶でも淹れましょうか」

ちせ「おぉ、それはよい……一杯淹れてくれるかのう?」

ベアトリス「ええ、いいですよ……それじゃあその間に何か「お茶請けになりそうな物」を用意してくれませんか?」

ちせ「うむ、承知した…♪」


…数分後…

ベアトリス「ちせさんっ、これはいったい何なんですかぁぁ…っ!?」鼻にしわを寄せて両手をわきわきさせるベアトリス…

ちせ「……お茶請けじゃが?」可憐なウェッジウッドの菓子皿に載った……しんなりと良く漬かったきゅうりのぬか漬け…

ベアトリス「こんなヘンテコなきゅうりのどこがお茶請けになるんですかっ…もっと、こう…普通はクッキーとかスコーンみたいなものでしょう!?」

ちせ「それはあくまでもそちらの決めつけじゃろうが…日本では漬け物が由緒あるお茶請けとして認知されておる」

ベアトリス「そんなこと知った事じゃないですよっ、それにとっておきのお菓子皿になんてものを載せてくれるんですかっ…!」

ちせ「そうガミガミ言うことではあるまい…もし気に入らぬのなら後で洗えばよかろうが?」

ベアトリス「そう言うことじゃないんですよっ、だいたいちせさんは朝方だってフェンシング部の部長さんと決闘まがいのことをするし……防具を糸でかがったりなんだりしてフォローした私の身にもなって下さいよっ!」

ちせ「別に私は「助けてくれ」だのなんだの懇願した覚えはないぞ…それこそ余計なお世話じゃな」

ベアトリス「あーそうですか、そういうことを言うんですかっ……これだから「東洋人は」って言われるんじゃないですかっ!?」

ちせ「…貴様、私に気に入らぬことがあるなら直しもしよう…じゃが「東洋人」と十把一からげに馬鹿にするとは……許せんな」

ベアトリス「じゃあどうしますか、また「果し合いごっこ」でもしますか…っ!?」

ちせ「よかろう…言っておくが、貴様が「虎のひげを引っ張る真似」をしたのじゃからな……!」

ベアトリス「いいですよ、かかってくればいいじゃないですか…!」

ちせ「……むむっ」

ベアトリス「…くっ」張りつめた空気のなか、テーブルの上に置かれた砂時計の砂だけがさらさらと流れ落ちる……

ちせ「…」

ベアトリス「…」きゅぅぅ…っ

ちせ「…おい」

ベアトリス「な、何ですか…///」

ちせ「…もしや、空腹なのか?」

ベアトリス「ええそうですよ……プリンセスのメイドが舞踏会の間、自由にものを食べたり飲んだりできる訳ないじゃありませんか」

ちせ「……それで茶を淹れて何かつまもうと思ったのか…?」

ベアトリス「ええ、そうですよ」

ちせ「ぷっ……それでそんなにかんしゃくを起こしておったのか」

ベアトリス「そ、そうですよっ…悪いですかっ///」

106 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/05/27(日) 02:59:12.18 ID:oodsxoY00
ちせ「なんじゃ…そうならそうと早く言えばよいものを……やめじゃやめじゃ♪」

ベアトリス「…な、なんで止めるんですか……///」

ちせ「空腹の相手に青筋を立てても仕方あるまい…漬け物は私がもらうから、ベアトリスは何か自分の好きな菓子でも何でもつまむがよかろう」

ベアトリス「それがないから困っているんですよっ!」

ちせ「なんじゃ…いつも菓子の一つや二つくらい用意してあるじゃろうに?」

ベアトリス「それが今日は舞踏会の準備で、それどころじゃなかったんですよ……うぅぅ」

ちせ「そういう訳であったか……お、そう言えば♪」

ベアトリス「何か私が食べられるものがあるんですかぁ…もし本当にあるなら今まで言った事は全部撤回して謝りますから……」

ちせ「うむ…ちと待っておれ……ほら、どうじゃ?」食器棚の奥にしつらえてある小さな「爪」を探り当ててカシェットを開け、ショウガ入りクッキーを取り出すちせ…

ベアトリス「わぁぁ…そう、こういうのですよ!」

ちせ「ほれ……しかし、軽々しく刀に手をかけようとした私も悪かった…済まぬ」

ベアトリス「いえ…私もちせさんを馬鹿にしてすみませんでした……ちょっと一日の疲れと緊張がたまっていたみたいで…」

ちせ「なら改めて茶をいただこう……ほ、牛乳もあるようじゃな♪」先にミルク差しからミルクを注ぐちせ…

ベアトリス「…むっ」

ちせ「ふむ…ぬか漬けと牛乳はちと相性が悪いの……ずーっ…」音を立てて紅茶をすするちせ…

ベアトリス「……ちせさん」

ちせ「なんじゃ…満足したか?」

ベアトリス「…このお茶を飲み終わったら……決闘です!」

ちせ「なに?」

ベアトリス「紅茶ではなくミルクを先に入れる…音を立ててお茶をすする……どうみても淑女の振る舞いじゃありませんよっ!」

ちせ「ほう……せっかく私がいさかいのタネを水に流してやったと言うのに、また話を蒸し返すとは…どうやらよほど痛い目にあいたいらしいの?」

ベアトリス「むぅっ…私だって訓練は受けました……そう簡単に負けはしませんっ!」

ちせ「ほほぅ…ベアトリスよ、おぬしはもう少し利口だと思っておったぞ……では、この一杯を終えたら参ろうではないか」

ベアトリス「ええ、それでいいですよ!」ショウガ入りクッキーを食べ終わると食器を片づけ、邪魔な椅子とテーブルをどかした…

ちせ「音のする銃は使えんが……それでよいのか?」

ベアトリス「ええ、ですから得物はなしで行きましょう…それならいいでしょう?」

ちせ「なるほど…よかろう!」脇差と小柄をテーブルに立てかけ、さらしで袖を「忠臣蔵」の討ち入りのように縛り上げる…

ベアトリス「……それじゃあ、行きますよ!」

ちせ「いざ……はっ!」

ベアトリス「…っ!」訓練の成果か、見事に正拳突きを受け止めるベアトリス…

ちせ「ふんっ…!」続けてみぞおちに突きを放つちせ…

ベアトリス「まだまだ…っ!」

ちせ「何をこしゃくな……っ!」

ベアトリス「そっちこそ…!」

ちせ「むむ、なかなか……じゃが!」柔道の寝技で押さえこみにかかるちせ…同時に首を締め上げるが、ベアトリスの首は義体化されていて効果がない……

ベアトリス「くっ…むぅぅ!」反対にちせの顔を胸元へ押しつけて窒息させようとするベアトリス…

ちせ「むむっ…ふうっ、ふぅぅ……っ!」

ベアトリス「んっ…ふぅ、ふぅぅ………んふぅ//」お互いにしばらくもがきあっているうちに、妙に艶めかしい吐息を漏らし始めたベアトリス…

ちせ「んくっ……すぅ、はぁ……むふぅ…///」一方、ベアトリスのつつましい胸のふくらみに押し付けられていたちせからも殺気が無くなり、急に「すーはー」と音を立てて、ベアトリスの甘い香水の香りを吸い込み始めた…

ベアトリス「ちせさん…っ……さっきから…なに変な声を上げているんですか……んんっ///」

ちせ「それは……こちらの言うことじゃ……さっきから甘ったるい声を漏らしおって…んふぅ///」
107 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/05/31(木) 01:37:10.28 ID:z96TdMic0
ベアトリス「またそういう減らず口を…こうなったら力づくでも黙らせないとダメみたいですね!」

ちせ「ほう、出来るものならやってみるがよかろう?」

ベアトリス「…言いましたね……んふっ、ちゅるっ…ちゅうぅ……///」

ちせ「んんっ!?……んんぅ、んんっ…!」

ベアトリス「ん…ちゅるっ、ちゅぅ……じゅる…///」

ちせ「んーっ、んんーっ!…んふっ、んくっ…んんぅ、んっ………」

ベアトリス「ぷはぁぁ…どうです、声の一つも出なかったでしょう?……ちせさん?」

ちせ「…うっ、ううぅ……///」

ベアトリス「…あ、あれ?」

ちせ「…ほわぁぁ、今まで剣の道に捧げてきたこの身体……それを惑わす口づけの…何と甘美で……の、のうベアトリスよ///」

ベアトリス「なんです?」

ちせ「…そ、その……もう一回だけしてみてはくれぬか…」

ベアトリス「……あー、ちせさんったらもしかして私のキスでメロメロになっちゃったんですかぁ?」

ちせ「そ、そんな訳あるか!…ただ……このままやられっぱなしと言うのは私の性に合わん……うむ、そうじゃ…今のは無しとして、ここから三番勝負にいたそう///」

ベアトリス「…私はいいですよ?……でもちせさんはキスに耐性がないですし、終わったときにはとろとろにとろけきっちゃいますよぉ?」

ちせ「ありえぬ…わ、私とて剣士の端くれ……どこからでもかかって来るがいい…!」

ベアトリス「……そうですか、それじゃあ遠慮なく♪」ぐいっ…♪

ちせ「ま、待て…いきなりとは言っておらぬぞ、せめてお互いに一礼するとか…何かこう……!」

ベアトリス「…ふぅ、ちせさん……」

ちせ「な、なんじゃ」

ベアトリス「前に姫様が言っていました……「キスと戦争は奇襲に限る」って…はい、スキありっ♪」

ちせ「な、なにっ!?…んんぅ、んちゅぅ……れろっ、ちゅ…っ///」

ベアトリス「…はい、一回目は私の勝ちですね」

ちせ「な、何を言う……だまし討ちなどと卑怯な真似をしてからに…まぁよい、まだ二回ある///」

ベアトリス「そうですね……あ、アンジェさん♪」

ちせ「…っ!?」

ベアトリス「嘘ですよっ……んちゅぅぅっ、ちゅるっ、ちゅぷっ……ちゅぅ、れろっ…んちゅ……ちゅぷっ…♪」

ちせ「んふぅぅっ、んんぅ…んっ、んっ……ふぅ…ん///」

ベアトリス「はい、これで二勝です……それにしてもちせさんのお口の中、甘いミルクティーの味がします……ね///」

ちせ「……ず、ずるいではないか…来てもいないアンジェどのを……///」

ベアトリス「普段のちせさんだったら気配だけで分かるはずじゃないですか…やっぱりキスで骨抜きにな……」

ちせ「なっておらぬ!……とはいえベアトリスもほのかな紅茶の香りとクリームの味が…まるで菓子を食べているようじゃ…」

ベアトリス「ふふ…じゃあもうちょっとだけ……スコーンとクローテッドクリームの味見をしますか?」

ちせ「う、うむ…この勝負は一旦あずける…ので…その、さっきのような…舌を絡めるやり方で頼む……///」

ベアトリス「…いいですよ……んちゅる、れろっ…じゅるっ……ちゅる…っ…ちゅぷっ///」

ちせ「んふぅ、れろっ…ちゅむっ……ちゅぅぅ…んっ、ふぅぅ……ちゅぅぅ///」

108 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2018/05/31(木) 02:23:19.78 ID:z96TdMic0
ベアトリス「…ところで、ちせさん」

ちせ「なんじゃ……もうおしまいか…?」

ベアトリス「……いえ…そこに大きなソファーがありますよね……」

ちせ「うむ……床の上では堅くてかなわぬか?」

ベアトリス「ええ」

ちせ「…さて……しかしなんじゃな……」

ベアトリス「はい?」

ちせ「こうして見ると今日のベアトリスはいつにもまして可愛いの……口づけしたせいじゃろうか?」

ベアトリス「ちせさんってば…いきなりそんなこと言わないで下さいよ///」

ちせ「いやいや、世辞や酔狂で言っているわけではない……正直…もっとしたくてたまらぬ…///」

ベアトリス「…奇遇ですね……私もです…」

ちせ「んちゅ…ちゅぅっ♪」

ベアトリス「んむっ、ちゅっ♪……ふふ、いきなり上手になりましたね?」

ちせ「何事も練習あるのみ……あるいは私も「色仕掛け」を使う場面が来るやも知れぬし、いつまでも「接吻の仕方も知らない東洋人」では格好がつかぬ……んちゅぅぅ…ちゅぽっ///」

ベアトリス「んんぅ…んっ、ふ……はぁ、はぁ…///」

ちせ「んちゅっ……ふぅ、ふぅぅ…///」

ベアトリス「そ、それじゃあ……脱がせてあげますね///」

ちせ「…着物の脱がし方を覚えるいい機会じゃな♪」

ベアトリス「んー…あ、あれ?」

ちせ「…」

ベアトリス「おかしいですね…簡単にほどけると思ったのに……うぅ」

ちせ「……」

ベアトリス「ここをこうしたら……あれれ、何で絡まっちゃうんですかぁ?」

ちせ「………えぇい、もどかしいっ!」手を払いのけてさっさと着物を脱ぎ捨てるちせ…ついでにベアトリスの服も脱がしにかかる…

ベアトリス「あっ、ダメですってば!シルクなんですからそう言う風に扱ったら糸が伝線しちゃうじゃないですかっ」

ちせ「その手をどけぬか!…まったく、西洋人のおなごは一体何枚の布きれで隠れておるのじゃ!」

ベアトリス「や、止めて下さいってばぁ!…あぁもう…後で取りに行かなきゃならないんですから、スカートを向こうに投げないで下さいよっ///」

ちせ「ふぅ、ふぅ…私を焦らしたベアトリスがいけないのじゃ……」

ベアトリス「だからって、もう…後で甘いキスの刑ですからね♪」

ちせ「ふふ、望む所じゃ…♪」お互いに邪魔なブラウスやリボン、着物の帯をソファーの背もたれ越しに放り出していく……

ベアトリス「……はぁっ、あぁっ…はぁぁんっ♪」

ちせ「おっ、おぉぉ……何と温かで気持ちのいいことよ……はぁ、ふぅっ…んんぅぅっ♪」

ベアトリス「はひぃっ、あふぅぅっ♪」

ちせ「んくっ、あぁぁぁ…っ♪」

アンジェ「……どうやらお取込み中みたいね」ソファーの向こうから次々と服や装身具が投げ出され、ちせとベアトリスの甘ったるい喘ぎ声が聞こえてくる…

ドロシー「だな…それにしても、二人ともまぁ夢中になってること……ぷふっ♪」

アンジェ「…何がおかしいの」

ドロシー「くっくくく、そりゃおかしいさ……なにせ部屋に入った瞬間にそれだもんなぁ♪」

アンジェ「ドロシー…後で覚えておくことね」…部室に入るなり飛んできたベアトリスのストッキングが頭からぶら下がっている……

ドロシー「あーおっかない……それじゃ二人の時間を邪魔しないように、私たちは退散するとしますか♪」

アンジェ「ええ…」

………
109 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/01(金) 06:21:58.70 ID:8px5q3zbo
110 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/06/02(土) 00:31:37.23 ID:Cmorf5lF0
>>109 まずは見て下さってありがとうございます。

…さて、書いているうちに「ちせ×ベアト」もアリなのではと思う今日この頃ですが……皆さまはどんなカプがお好きなんでしょうか?


111 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/06/02(土) 01:37:34.28 ID:Cmorf5lF0
…case・アンジェ×ちせ「The vampier in the fleet street」(フリート街の吸血鬼)…


…深夜・フリート街にほど近い裏通り…

男「…うーい……今日は飲みすぎちまったなぁ…もうどこのパブも酒屋もやってねぇや……」男は家路に向かう途中で、近道をするために裏通りへと曲がると散乱するごみを蹴散らしながら千鳥足で歩いている…


…深夜の裏通りは人の気配もなく、道路の中央に付けられている排水溝にはドブネズミの死骸や野菜くず、垂れ流された大小便などが放置されている……表通りから届く街燈の灯りも夜霧と煤煙のためか、やっと足もとが見える程度に薄く霞み、靴音だけが寂しく反響して響く……本当なら夜道を照らしてくれるはずの月も、今は霧に隠れてぼーっと青ざめている…


男「…ぶるるっ、なんだよ…いやに冷え込む夜じゃねぇか……」背中にぞくりと冷たい夜気が這い上がって来て、思わず腕をさすりながら背中を丸める…

男「……ま、まぁ俺ァさんざ飲み明かして一文無しだからな、追いはぎの心配もねぇや!」薄暗い通りに怯えつつ、強がりでひとり言をつぶやいてみる…が、その声も薄汚れたレンガの壁に吸い込まれていく……

男「…ちっ、早道だからってこんな道通らなきゃよかったな……なにくそ、構うもんか!…こちとらロンドンっ子よ、この世にいる訳もねぇ「化け物」だの「悪魔」だのにおびえるわきゃねぇってんだ!」…いっそ回り道でも大通りに引き返そうかと後ろを見たが、今さら引き返すのも弱虫みたいでしゃくだと、ロンドンっ子らしい威勢のいい啖呵(たんか)を切りつつ足早に歩き出す……


…裏通りの真ん中あたり…


男「へっ…やっぱり何でもねぇや……お化けだの何だのってのは怖ぇ怖ぇと思ってるから、何でもねぇ物まで見間違えちまうんだ…出てこられるもんなら出て来てみやがれってんだ!」…もはや表通りのかすかな明かりさえ届かなくなった裏通りの真ん中あたり…左右は家々の裏手に当たる高いレンガ塀で、相変わらずあちこちにゴミや小動物の死骸が転がっている……


黒マント「…」不意に男の前に姿を現した長い黒マントとシルクハットの姿…黒マントの裏地は紅のビロードらしく、かすかに吹き抜ける夜風にはためいている…

男「うわっ!…おい、いきなり出てきておどかすんじゃねぇや……ぶるっちまったじゃねぇかよ…」

黒マント「…」

男「…へ、返事くらいしてみたらど、どうなんだよ……え?」

黒マント「…」軽く帽子の縁に手を当て、会釈のような仕草をすると近寄ってくる黒マント…

男「な、なんだよ…紳士のための表通りなら向こうだぜ……?」

黒マント「…!」マントを後ろにはねあげ、男に向かって駆け出してくる…

男「わぁぁっ…!!」尻もちをつきながら反対の方向に駆け出す男…酔いのせいでふらつく脚を必死に動かし、ごみくずにけつまずきつつ来た方へと戻ろうとする…

黒マントB「…」

黒マントC「…」

男「あ、あ……うわぁぁぁっ!!」…退路を塞ぐように小さな脇道から出てきた別の黒マントと、最初の黒マントにかこまれた男……その絶叫は霧深いロンドンの夜空に吸い込まれていった…

………



…翌日・寄宿舎の部室…


アンジェ「…今日みんなに集まってもらったのは、この記事を見てもらうためよ」テーブルに数紙の新聞を置いたアンジェ…

ドロシー「新聞ね……こういうのって、一番ふざけてるように見えるやっすいタブロイド新聞みたいな方が物事の核心をついていたりするんだよな」

アンジェ「そうかもしれないわね…とにかく中ほどの記事を見てちょうだい」

ドロシー「あいよ……って、何だこりゃ?」

アンジェ「見ての通りよ」

ベアトリス「えーと『ロンドンの吸血鬼…またも犠牲者!』って書いてありますね?」

ちせ「…『首には二つの傷痕、被害者は血の一滴も残さず…ヴァンパイアの吸血痕か?』じゃと…ふむ、英国にはまだ吸血鬼とやらがおるのじゃなぁ」

ドロシー「バカ言え、そんなもんがいてたまるかよ……で、このふざけた記事がどうかしたのか?」

アンジェ「ええ…コントロールからの指令で、今回はこの事件を調べることになったわ」

ドロシー「は?…おいおい、こんなのはフリート街にたむろしてる特ダネ記者のやることだろ……?」

プリンセス「…何か事情がありそうね?」

アンジェ「ええ、それを今から説明するわ…」

………
112 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/06/02(土) 02:39:50.43 ID:Cmorf5lF0
…その日の午前中・図書館…

アンジェ「…ヴァンパイア?」

7「ええ……この事件は一見すると「ホンモノ」の吸血鬼の仕業に見えるわ…被害者の年、職業、性別もバラバラ……共通点といえば暗い通りで襲われ、首に噛み痕のような二つの傷と、ほとんど血が残っていない死体だけ……でもね」

アンジェ「ええ」

7「十数人にも上る被害者のうち、こちらの送り込んだ工作員(スパイ)が一人、カットアウトが一人含まれているの……」

アンジェ「……異常な数字ね」

7「その通り…「L」もそう言っていたわ、「一人なら偶然もありうるが、二人なら故意だ」とね」

アンジェ「ええ、そうね」

7「…そこであなた達には、次に「吸血鬼」が活動しそうな場所を歩いてもらって……連中の「本性」を暴いてもらうわ」

アンジェ「了解」

7「結構…何か聞いておきたいことは?」

アンジェ「……本物のヴァンパイアだった場合は?」無表情な中に、精一杯のユーモアを込める…

7「そうね、もし本物だったら…こちらの工作員を「味見」するとどうなるか教えてあげてちょうだい……必要なら十字架とニンニクの首飾りを用意させるわ」

アンジェ「ええ…生命保険の「吸血鬼特約」をつけて、ぜひ用意してもらいたいわね」

7「そうね……とりあえずこちらで分かったことをまとめた資料があるから、熟読したうえで活動にあたって」

アンジェ「了解」

………



アンジェ「…と言う訳で、どうやら本物のヴァンパイアに出会うことは出来ないわね」

ドロシー「だってさ…残念だったな、ちせ?」

ちせ「うむ、異国の妖怪に出会う絶好の機会だと思ったのじゃが…しかし工作員を「消去」するのに、なぜそんな手の込んだ真似をするのじゃろう?」

ベアトリス「ほんとですよね、普通に交通事故とか…酔って川で溺れるとか……」

プリンセス「そうね…食中毒とか、濡れた床で脚を滑らせるとか……いろいろあるのにどうして「吸血鬼」なのかしら?」

ドロシー「…理由はいくつかあるな」

ベアトリス「そうなんですか?」

ドロシー「ああ…いわゆる「血抜き」は尋問の手段としてよくあるんだ……よく「頭に血が回らない」って言うように、人間って言うのはある程度血を抜かれると聞かれるがままに物事を話しちまうからな」

アンジェ「その通りよ…それに事故死なら「スコットランド・ヤード」(ロンドン警視庁)もある程度死因や状況を調べるでしょうけれど、「吸血鬼」なんて言われたら真面目に調べる気もなくなってしまう……それが相手の狙いなの」

ドロシー「そういう事……その上ちょっとばかり被害者の素性がおかしかったとしても、単なる「ロンドンでうごめく吸血鬼」だとか「切り裂きジャックの再来」に襲われた被害者だ…なんて面白おかしく書きたてられて、ひとまとめにされちまう」

ベアトリス「でも被害者は十数人いるんでしょう……残りの人は何なんです?」

アンジェ「つじつま合わせよ」

ドロシー「ああ…いくらなんでもこっちの工作員やカットアウト、協力者だけを選んで襲っていたんじゃどんな間抜けや駆け出しの記者だって「イチ足すイチ」で誰が何のためにしていることか分かっちまうからな……それを目立たせないように、適当に暗い夜道を歩いていた一般人を同じやり口で「シメちまった」んだ」

アンジェ「木を隠すには森…死体を隠すならモルグ(死体置き場)という訳ね」

ベアトリス「そんな…あんまりです……」

ドロシー「ま、そういう世界だからな」

アンジェ「ええ…ちなみに「やられた」工作員は三流新聞の記者、カットアウトは夜中から仕込みに忙しい屋台のパイ売りだそうよ」

ドロシー「なるほど、夜道とも縁がありそうだな」

アンジェ「そうね…ちなみに今回は相手が玄人なのが分かっているから、プリンセスとベアトリスは後方支援……ドロシー、ちせ、私が二人組の入れ替わりで事に当たるわ」

ドロシー「了解……それじゃあ吸血鬼退治と行きますか」

アンジェ「ええ、まずは資料をよく読み込むことからね」そう言って新聞記事の切り抜きから、ブラム・ストーカーの「吸血鬼ドラキュラ」まで揃っている資料を差しだした…

………
113 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/02(土) 16:20:41.63 ID:t3pR/E5qO
おもしろい
114 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/06/04(月) 01:02:12.88 ID:kGuf3bgl0
>>113 まずは読んで下さってありがとうございます…書くのが遅いもので数日ごとに2〜3スレ分しか進みませんが、引き続きがんばります
115 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/04(月) 03:27:52.16 ID:Ec5rudJMo

アンジェ攻めプリンセス受けが好きだな
116 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/06/05(火) 01:25:42.62 ID:JFQuf9Xe0
>>115 そう言ったリクエストがあると助かります…アン×プリはまだ書いていないのでそのうちに……
117 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/06/06(水) 01:44:07.87 ID:14QzkPMt0
…しばらくして…

ドロシー「……なぁアンジェ…この資料って本当に使えるのか?」

アンジェ「どうして?」

ドロシー「だってさぁ、『吸血鬼の撃退にはニンニクや十字架が効果的である……が、根本的な解決法としては吸血鬼の就寝中、胸元へ聖水で清めた杉の杭を打ち込むことが最もよい』って……あたしは吸血鬼の退治法が知りたいわけじゃないんだよ」

アンジェ「分からないわよ…もしかしたら本物の吸血鬼も混じっているかも知れないし、そのうちに任務でトランシルバニアに派遣されるかもしれないでしょう」

ドロシー「そんな馬鹿な?」

アンジェ「…まぁ冗談を抜きにしても、なんの知識が役に立つかなんて分からないわよ」

ドロシー「それはそうだけどさ……なんかなぁ…」

アンジェ「いいから、読み終わったらそれを貸してちょうだい」

ドロシー「はいよ」

ベアトリス「……うーん…どうも今回の「吸血鬼」はフリート街のまわりで活動していることが多いみたいですね……」

プリンセス「フリート街……新聞社や印刷所が多い所ね?」

アンジェ「そうね…アルビオンにおいて、あらゆる情報が最も早く手に入る所……しかも深夜は人通りはほぼない上に、印刷機や何かの音で物音も聞こえにくい…」

ドロシー「印刷所の裏通りともなれば窓一つあるわけじゃないし、物音を聞く住民もいない……誰かを拉致するには理想的だな」

アンジェ「ええ」

ドロシー「それじゃあルートはそのあたりを中心にして……後はどうやって本拠地まで跡をたどるかだよなぁ…」

プリンセス「裏通りでは車も馬車も通れないし、かといって表通りで待っていては目立ちすぎるものね」

ちせ「ならばと徒歩(かち)で行って、あちらが車を用立てていたとしたら目も当てられん……思案のしどころじゃな」

アンジェ「…そこは私に考えがある……地図を見てちょうだい」

ドロシー「どれどれ…ふぅ、それにしてもよくもこうせせこましく建物を建てたもんだよな……」

アンジェ「ええ…それだからこそ使える手段がある」

ちせ「…ほう?」

アンジェ「みんなはもう「Cボール」を知っているわよね……これを使って屋根伝いに追えば、入り組んだ路地を駆け回らずに済むわ」

ドロシー「なぁるほど…さっすがアンジェ、冴えてるな♪」

アンジェ「からかってるの?」

ドロシー「とんでもない……だけど目立たないか?」

アンジェ「そう言うと思って、事前にそのあたりの建築図を調べてみたわ……この辺りは通りが細い上に建物の高さがあるから、もし屋根の上にいる人物を見ようと思ったら、首の骨が大変なことになるでしょうね…」

ドロシー「ああ、資料にも入ってた……で、反対にこっちは屋根の上からのぞきこめばいい…と♪」

アンジェ「ええ…今回の主目的は相手のネスト(巣)までついて行って、何を調べているのかを探り出し…ついでにこの「吸血鬼」どもを片づけること……月の明るい日は誘拐が行われていないから、作戦は天気の悪い時か月のない日の深夜……今日は月の入りを考えて、今夜の十時ごろにフリート街に着くように行動しましょう」

ドロシー「了解だ♪」

ちせ「…うむ」

プリンセス「ええ、分かったわ」

ベアトリス「はい」


………
118 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/06/08(金) 11:02:25.64 ID:niR4GZkr0
…十数日後の夜・フリート街…

ドロシー「うー…なんだか今夜は霧も濃いし、ことさらに「吸血鬼」が出そうだな……」

アンジェ「結構なことね」

ちせ「うむ…見回りを初めて十数日、ここまで何も起こっておらぬし……そろそろ次の犠牲者が出てもおかしくない頃合いじゃろうな」

アンジェ「ええ。それに「コントロール」としても、消去されたエージェントが何の情報をつかんでいたのか…あるいは逆に、何を「歌った」(白状した)のかが分かれば、あちらに対して情報漏れを防ぐ手立てが取れるようになる……つまり結果を出すのは早い方がいい、ということね」

ドロシー「だな…それにしても「血抜き」の尋問をやるような奴らを相手に「トマトスープ」作戦とはね……悪趣味もいいところだ」

アンジェ「仕方ないでしょう。そういう訳で、向こうがこちらに対してどこまで「食い込み」を図ったか分からない以上、作戦名の流出もあり得る……だとしたら、簡単に連想できるような吸血鬼関係の単語を使った作戦名は使う訳にはいかないわ」

ドロシー「あぁ、そのおかげで私が「ニンニク」、二人が「玉ねぎ」と「ニンジン」なんだもんな」

アンジェ「そういうことよ…さぁ、そろそろ時間ね」そう言いながら、ちせにお守りのようなアンクレット(足飾り)を付けた

ドロシー「了解…「ニンジン」の得物はこっちで預かるよ」

ちせ「うむ、よろしく頼む…しかし寸鉄も帯びていないとどうも落ち着かぬな……」

ドロシー「だろうな……気持ちはよくわかるよ」

アンジェ「ええ…それじゃあ始めましょう」ドロシーの手を握ると「Cボール」を起動し、屋根の上にふわりと着地した…

アンジェ「……思っていたより霧が濃いわね」

ドロシー「あぁ…「もや」っていうよりは「霧」だな……」

アンジェ「こうなると尾ける距離を縮めないといけないわね」

ドロシー「だな……」



ちせ「うぅむ…それにしても倫敦(ロンドン)の下町がこうも汚らしいとはの……これが「世界の中心」とは思えぬほどよ…」

ちせ「……なにやら煙ったいような臭いも立ちこめておるし、古くなった食材のすえた臭いもするようじゃな……見てくれはともかく、倫敦の下町は鼻に悪い都のようじゃ…」小さい歩幅でトコトコと歩いていくちせ…


…柳のバスケット(手提げカゴ)を持って、両脇を建物に挟まれた狭い裏通りをてくてく歩いていくちせ……黄色っぽい霧が地面を覆い、灯りの消えた暗い裏窓が、骸骨の眼窩(がんか)のように通りを冷たく見おろしている……貴族の邸宅では舞踏会や晩餐会でまだまだにぎやかな「宵の口」ではあるが、貧しい裏通りでは疲れ切った労働者が泥のように眠っているか、はたまた貴族のお屋敷で下働きにいそしんでいるために、家々からは明るい光が一つも見えない…


ちせ「…別におっかないとも思わぬが、こうして見ると陰気じゃなぁ……」

ちせ「……おっと、ネズ公の「ホトケ」を踏みそうになってしまった…せめて成仏してくれるといいが、それもこの辺りでは難しそうじゃの……」

ちせ「…む?」ふと視線を上げると、闇の奥にぼんやりとしたシルエットが浮かび上がってきた…

黒マント「…」

ちせ「…何か用かの?」まずまずの英語で声をかけるちせ…

黒マント「…」

ちせ「もし…そこの御仁に問うておるのじゃが……?」

黒マント「…」カツッ、カツッ…と石畳に靴音を響かせて近寄ってくる黒マント

ちせ「…な、なんじゃ……」うろたえたふりをして反対側に向かって駆け出すちせ…

黒マントB「…」

黒マントC「…」

ちせ「あ、あぁぁ……」あくまでも「か弱い小さな小間使い」のふりをして黒マントに取り囲まれるちせ…

黒マント「…」騒がれないよう喉を締め上げて気絶させると、目覚めても声を出せないよう猿ぐつわをかまし、手足を縛りあげた…そのまま肩に担いで運んでいく黒マント…



ドロシー「…よし、食いついた」

アンジェ「ええ……追うわよ」

………
119 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/09(土) 00:28:09.30 ID:8OKBrK5qO
ちせちゃん尋問シーンかな?
120 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/06/11(月) 00:38:09.73 ID:8WNUnJLU0


ドロシー「ところであのアンクレットだけどさ…ちゃんと効果あるんだな?」

アンジェ「なければ使わないわ」

…ちせに渡した「お守りのアンクレット」に含まれているケイバーライトが、アンジェの「Cボール」にだけ反応して淡い緑色に光る……屋根の上をそっと尾行しながら、不可視の「道しるべ」を追っていく二人…

ドロシー「まぁな……それにしてもあの連中、どっから現れてどこに行くのやら…」

アンジェ「知らないわ…それを知るのが任務でしょう」

ドロシー「いや、分かってるけどさ…ちせには背中を預けたこともあるし……どうも、こう…冷静なままじゃいられないんだよな」

アンジェ「分かっているならなおの事冷静になりなさい…それこそ「大事な仲間の命」がかかっているのよ」

ドロシー「ああ……ん、奴ら角を右に曲がったな…」

アンジェ「…飛ぶわよ、つかまって」

ドロシー「あいよ」アンジェの腰に手をかける…

アンジェ「連中は…向こうの建物に入ったわね……」

ドロシー「何の建物だろうな…印刷所か?」

アンジェ「…そうみたいね」

ドロシー「それじゃあ急いで知らせて来いよ。私はここで監視にあたる」

アンジェ「頼むわね……数分で戻るわ」

………

…数分後…

アンジェ「戻ったわ」

ドロシー「ああ…「早かったな」って言いたいが……中の様子を見る限り、早すぎて困ることはないらしい」

アンジェ「…みたいね」


…薄暗い建物の中はしっくいの塗ってあるレンガ張りで、二人の位置からようやく中が見える小窓からは殺風景な部屋が見えた……室内には手術台のような拘束具つきの台が置かれていて、周囲には時間が経って赤茶けている血の染みが飛び散り、天井からは鎖付きの手錠もぶら下がっている……吊るされた鎖から届く範囲の壁は犠牲者が痛みのあまり爪を立てたらしく、しっくいが剥げ落ちている…


ドロシー「で、情報は届いたか?」

アンジェ「ええ…後は私たちが片づければいいわ」

ドロシー「分かった…それじゃあちせを救いに行こうぜ?」

アンジェ「待って…見張りは?」

ドロシー「なし。変にうろちょろしてると怪しまれるからだろうな」

アンジェ「…侵入ルートになりそうなのは?」

ドロシー「やっぱり裏口だろうな…鍵はかかっているだろうけど」

アンジェ「了解……それじゃあ行くわよ」Cボールを使ってひらりと飛び降りる二人…

………



121 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/06/11(月) 01:17:49.35 ID:8WNUnJLU0
…室内…

ちせ「むぅぅ……ん」

黒マント「お目覚めかね、東洋人のお嬢さん?」

ちせ「…」


…ちせは上に来ていた小間使い風の衣服をはだけられ、かぼちゃ袖のついた上下つなぎの下着姿で「手術台」に繋がれている…室内にはかな臭い血の臭いを上回る勢いで、インクや紙の強い臭いが漂ってくる……ちせを見おろして紳士風の話し方をする相手は、シルクハットに口元まで覆った襟の高いマントを着ていて、表情まではよく分からない…


黒マント「ふむ…私も最初は君の事を、ただの下働きや小間使いの東洋人だと思ったが……いろいろ調べさせてもらうとなかなか興味深いことに気が付いた…」

ちせ「…」

黒マント「…まず柳のバスケットはそこまで使い込まれていないし、着ているものも古着らしく擦れてはいるがそこまで汚れていない……それに君も貧相な身体ではあるが、髪もよくとかされていて身体も汚れていない…こんな下町の下女にしてはいい待遇だ…違うかね?」

ちせ「…」(余計なお世話じゃ…にしても、ここは一体どこじゃろう……アンジェたちは無事にここを見つけることができたじゃろうか…?)

黒マント「それに普通なら悲鳴を上げるか失神するか…それなりの反応を見せてくれるはずが、そっと周囲を観察して機をうかがっている……実に肝が据わっているよ」

黒マントB「…あの」

黒マント「まぁ待ちたまえ……それに君の身体のバランスは左右で微妙にずれている…普段は左の腰に何を差しているのか気になるところだ……おっきな大砲かね、それとも東洋人の大好きな刀かな?」

ちせ「…」

黒マント「まぁいい……それもおいおい分かることだ…君」

黒マントB「はっ」

黒マント「準備にとりかかれ」

黒マントB「はい」

黒マント「さて、と…ではそろそろ吸血鬼のタネ明かしと参ろうかな?」シルクハットを脱いでマントの留め紐を解くと、隅にあるコート掛けにきちんとかけた…

ちせ「…」

初老の紳士「私の事をご存じかな?…ここの印刷所を始め、このフリート街にいくつか会社を持っている者だよ」

ちせ「…」ゴーストグレイの髪に笑っているような口もと…が、冷たいブルーグレイの目は冷徹で感情らしいものはかけらもない…感情に左右されない分アクシデントにも機敏に対応できる手ごわいタイプ……と、ちせは見て取った

紳士「さてさて…どうやら君は以前「話を聞いた」連中のお仲間らしいからある程度はご存じだろうが……一応説明しておこう」

ちせ「…」

黒マントB「用意できました」

紳士「結構……今からちょっとばかり首筋がチクリとするよ…注射は嫌いかね?」

ちせ「…」

紳士「まぁ好きなものはいないだろうね……だが安心したまえ、針と言うやつは差すときと抜く時が一番痛いのだが…君はそのうちの片方だけしか感じずに済む」…返り血が点々と残っている革の前掛けに絹の長手袋をすると、針の先端を丁寧にアルコールで拭った…

ちせ「…っ」

………



122 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/06/11(月) 02:21:26.42 ID:8WNUnJLU0
…数分前・裏口…

ドロシー「私が見張ってる…急げよ?」

アンジェ「開いたわ」キーピックを差しこみ静かにしていたが、数秒もしないうちに裏口を開けた…

ドロシー「よし…それじゃあ行こうぜ」音がしないようにと、ガーターベルトに仕込んだ鞘からスティレット(刺突用の針)を抜いた…

アンジェ「…ええ」アンジェもスティレットを抜き、背の高いドロシーが援護できるよう前に立って歩き出した…



見張り「……まったく、この作戦が始まってからは昼夜逆転でやりきれねぇな」前後反対にした椅子の背に、あごをのせて腰かけている…

見張りB「そう言うな、何しろこちとらはロンドンを騒がす「ウワサの吸血鬼様」なんだからな……」

見張り「そうは言っても女まで「血抜き」にかけるなんて……あの人が近くにいないから言うけど、あんまりいい気分じゃないぜ?」

見張りB「しーっ!……お前は諜報部のくせに思った事をペラペラと…お前のお袋はおしゃべりな庭のアヒルか?それとも口から先にでも生まれたのか?」

見張り「悪かったよ…あ、ちょっと手洗いに行ってくる」

見張りB「…いいけど見つかるなよ……とばっちりで怒られるのは嫌だからな?」

見張り「ああ…まったく、何もあんなに言うことはないだろ……」

ドロシー「だよな…ま、これで静かにできるさ」後ろから羽交い絞めにすると口もとにハンカチを当て、心臓を一突きした…

アンジェ「片付いた?」

ドロシー「…静かになってるよ」

アンジェ「結構…それなら急ぎましょう。さっきの口調だともう尋問が始まっているかもしれない」もう一人を片づけて、相手のネクタイでスティレットを拭うアンジェ…

ドロシー「ああ……尋問は相手を捕まえた直後が一番「落としやすい」からな…」愛用の「ウェブリー&スコット」リボルバーを抜くと足音を立てずに速足で歩き出した……

…廊下…

見張りC「…ぐぅっ……!」

アンジェ「どうやら…ここのようね」

ドロシー「ああ、血の臭いがしやがる……いいか?」

アンジェ「いいわ」…いつもの「ウェブリー・フォスベリー」ピストルを抜いて、かちりと撃鉄を起こすアンジェ……

ドロシー「…それじゃあやってくれ」

アンジェ「ええ」ドアを蹴り開け、室内に転がり込むアンジェ

助手「うわっ!」

紳士「…くっ」一瞬のうちにホルスターに差していたリボルバーを抜き、撃鉄を起こす…

ドロシー「…っ!」バンッ!…狭い室内で爆発のように大きく響く銃声……肩から血が噴きだし、リボルバーがぽろりと床に落ちる

助手「…この!」

アンジェ「…遅い」バン、バンッ!…助手に二発撃ちこんで始末すると、「紳士」の手から落ちたピストルを部屋の隅に蹴り飛ばして、離れた場所から銃を突きつけた…

ドロシー「おい、大丈夫か?」

ちせ「うむ……どうやら「吸血」はされずに済んだ…ずいぶん早かったの?」

ドロシー「当たり前さ、仲間がこんな連中の手にかかってるのに黙ってられますかっての……それと、任務とはいえ悪かったな」手足に付けられたリングを外しつつ謝るドロシー…

ちせ「構わぬ、これも定めじゃからな……」そう言いつつも、西洋ならではの現代的な医学と科学を駆使した尋問にゾッとしているちせ…珍しく顔が青ざめ、かすかに震えている……

ドロシー「無理するなよ…あ、あとこれを」ちせの太刀を差しだすドロシー

アンジェ「こっちも持って行って…私には邪魔だから」ぴたりと銃の狙いを定めたまま、片手で脇差を渡すアンジェ…

ちせ「うむ…これで人心地ついた気分じゃ」

ドロシー「よし…それじゃあこのロクデナシはここに閉じ込めて、残りを片づけようぜ?」

アンジェ「そうね…ありがたいことにこの建物はレンガの壁が厚くて防音になっているようだし……」まずはスティレットで「紳士」の手足の腱を切ると、舌を噛み切って自殺することができないようネクタイで猿ぐつわをし、その上で手術台に大の字に寝かせ、手錠と足輪をかけるアンジェ…

ちせ「うむ、では参ろう…!」ドロシーが服の下に包んできてくれていた着物を身につけると、刀の鯉口を切った…

ドロシー「あぁ、本命は捕えたからな…あとは一人も逃がさないようにすればいいだけだ」

123 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/11(月) 13:43:05.55 ID:czN9O8Iio
124 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2018/06/16(土) 01:25:07.35 ID:xaeY1CgR0
>>123 コメントありがとうございます…遅くなりましたがまた投下していきます
125 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/06/16(土) 02:17:12.09 ID:xaeY1CgR0
…建物内…

王国エージェント(ベテラン)「くそっ…ジャック、マシュー、トミー、向こうへ!」ワイシャツにぴったりしたグレーのチョッキを着て、肩に「ウェブリー・スコット」リボルバーのホルスターを吊るしている老練なエージェント…銃声が響いた瞬間に仮眠用のベッドから飛び起き、矢継ぎ早に指示を飛ばす…

王国エージェント(若手)「了解!」

中堅「ハリー、モーガン、ナイジェルは尋問室へ急行!」

王国エージェント(中堅)「はっ!」それぞれピストルを持った王国諜報部のエージェントが靴音を響かせて駆け出していく…

ベテラン「マイルスは通信機を立ち上げて本部に警報を入れ、ヘンリー…お前と私は通信が終わるまでここを守る!」

王国エージェント(中堅)「了解」

…廊下…

アンジェ「……来たわね」

ドロシー「ああ、足音からすると……三人だな」4インチ銃身のウェブリー・スコットを抜くと、木箱の陰に身をひそめた…

若手「……マシュー、敵は見えるか?」

若手B「いや…どこにもいないぞ」

若手C「しー…声を出すな……」

ドロシー「あれだけ足音を立てておいて…今さら黙ったって無駄だっての」バンバンッ、バンッ!

若手「がはっ…!」

若手B「ぐぁぁ…っ!」

アンジェ「ふっ…!」バンッ、バンッ!

若手C「ぐあっ!」

ドロシー「よし、片付いたな……まだこいつは息がある」

若手「うっ…うぅぅ……た、頼む…助けてくれ……」

アンジェ「仲間は何人いる?……教えてくれるなら傷を見てあげるわ」

若手「うぐ…っ……この班を入れて十二…人……」

ドロシー「ふぅん…思っていたより多いな」

アンジェ「そうでもないわ…実際に誘拐を行う三人、監視・予備グループが一つでもう三人…控えが三人に、尋問係とその助手…あとは雑用係兼連絡役が一人って所ね」

ドロシー「してみるとこいつの言うことはあながち嘘でもない…か?」

アンジェ「ええ、そうね」

若手「ごほっ……頼む、しゃべったか…ら…」壁にもたれて咳き込んでいる…と、アンジェが額にウェブリー・フォスベリーを向けた…

アンジェ「…スパイは嘘をつく生き物よ」バンッ!

ドロシー「ああ…それに可愛いちせにあんな真似をしてくれたんだ…それ相応の目にあってもらわないとな」手早く残りのエージェントにも「とどめの一発」を撃ちこみ、中折れ式のシリンダーを開いて弾を込め直す…

アンジェ「…ドロシー、任務に私情を挟むと周りが見えなくなるわよ」

ドロシー「あぁ、悪い…どうもちせを見てると小さい頃を思い出すみたいで、穏やかじゃいられないんだよな……」

アンジェ「だったらなおの事よ」

ドロシー「あぁ、そうだな…ちせは「出来る」けど、今はまだ身体がすくんでるはずだ……急ごう」

………
126 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/06/16(土) 03:33:52.31 ID:xaeY1CgR0
…尋問室からの廊下…

中堅「…」指と手のハンドサインだけで指示を出し、慎重に廊下を進むエージェント…前の二人が廊下の端を歩いてお互いをカバーし、後ろの一人が数歩遅れて援護射撃できるように歩いている……角からはす向かいの場所を撃ちやすいよう、左側を歩くエージェントは右手に、右側を歩くエージェントは左手にピストルを持っている…

中堅B「…」(こっちだ)

中堅「…」(分かった…お前は援護しろ)

中堅C「…」(了解)

中堅B「……あっ!」さっと6インチ銃身の「モーゼル・ピストル」を構えて廊下に飛び出す中堅…

ちせ「…ふんっ!」たたたっ…と駆け込むと、抜き打ちで腰から肩にかけて切り上げる…鮮血がほとばしり、刃の表面を球になって流れる……

中堅B「ぐぅぅ…っ!」

ちせ「…!」そのまま身体を屈めて相手の下を潜り、続く一太刀で援護役を袈裟懸け(けさがけ)に切り倒す…

中堅C「がは…っ!」

中堅「ぐっ…!」バンッ!…素早く身体を回して一発撃ったが、それまでの訓練や任務では見たこともない小柄なちせに照準が狂い、ウェブリーの弾は頭上にそれた…

ちせ「ふん…っ!」真っ向から竹割りで叩き斬るちせ……刀を拭うとまた鞘に納め、走りやすいように収めた太刀を手に持った…

…通信室前…

ベテラン「どうなんだ、マイルス…通信機はまだ温まらないのか?」…通信室は印刷機が並んでいる大部屋の脇にある事務所風の小部屋で、ベテランと中堅のエージェントがドアの陰から様子をうかがっている……大部屋は暗く、印刷機やインクの缶、紙の束や木箱が雑然と並んでいて見通しが悪い…

中堅D「…はい、もう少し……」

ベテラン「…夜じゃ鳥目になるから伝書鳩も飛ばせんしな……ヘンリー、ジャックたちは?」

中堅E「いえ、戻って来ません」

ベテラン「なるほど…共和国の連中、最初からそのつもりであの東洋人娘を送り込んできたな……抜かるなよ」

中堅E「はい」

ちせ「…」

ベテラン「…ヘンリー、援護を頼む!」3インチ銃身のウェブリーを抜き、一発ずつ冷静に撃ちこむ…

ちせ「…っ!」壁沿いに積まれた印刷用インクが入った亜鉛張りの缶に身体を寄せ、再装填のタイミングを待つが、二人が交互に射撃を続けているので好機が得られない…

…反対側の隅…

アンジェ「……ちせが足止めされているわね」

ドロシー「…ああ、なら助けてやろうぜ」…にやりと不敵な笑みを浮かべるドロシー

アンジェ「そうね……出るわ!」バンッ、バンッ!

ベテラン「…っ、左だ!」

中堅E「ぐうっ!」

ベテラン「そこだ…っ!」

アンジェ「…ふ」アンジェが盾にした木箱へ、立て続けに銃弾が撃ちこまれる…と、かすかに微笑したアンジェ

ちせ「…はぁぁっ…っ!」一瞬の隙をついて飛び出し、渾身の一撃を見舞う…

ベテラン「……ごふ…っ!」

中堅D「あっ…!」

ドロシー「…」バン、バンッ!

アンジェ「…どうやら通信は発信されていないようね……」

ドロシー「ああ…ちせ、無事か?」

ちせ「うむ…この男は出来る相手じゃったな」

ドロシー「……私たちほどじゃないけどな」

アンジェ「そうかもしれないわね……あとはこちらの処理班と入れ替わりに撤収すればいいわ」

ドロシー「だな…ま、これで「フリート街の吸血鬼騒動」は一件落着……と」

ちせ「うむ…」

ドロシー「それと…あとで風呂に入れよ、ちせ?インクと返り血でエライことになってるぞ?」

ちせ「…そうじゃろうな」
127 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/16(土) 12:55:52.32 ID:w+mgGI4+O
貴重なプリプリスレ支援
出来れば劇場版までずっと続けて
128 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/06/17(日) 00:55:12.34 ID:+LbiLgi70
>>127 ありがとうございます。プリプリの百合ssは少ないので、せっかくなら書いてみようと……引き続き頑張ります(劇場版まで…?)

…「プリンセス・プリンシパル」は十九世紀末のスチームパンク×スパイ物と言うことで、霧深いロンドンのダークな雰囲気と、独自のガジェットや世界観が秀逸ですよね……時々「参考資料」として怪奇小説の「モルグ街の殺人事件」や「盗まれた手紙」、国際謀略物の小説などで雰囲気を作っています(笑)…


…あとは他にも「アトリエシリーズ」や「P3P」などで百合ssを書きたいところですが…遅筆なのでパンクするのが関の山とまだ自重しています…
129 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/06/17(日) 02:17:42.25 ID:+LbiLgi70
………

…しばらくして・寮の部室…

ドロシー「…お疲れ、アンジェ」

…ソファーに腰かけて膝にボロ布を広げ、ウェブリー・スコットのシリンダーを外して試験管洗いのようなブラシを突っこんでいるドロシー…いくら新式の無煙火薬を使うモデルとはいえ、シリンダーや銃身には燃焼かすや汚れが溜まっている……シリンダーを壁のランプに向けて透かして見ると、また改めてブラシを突っこみ、掃除を続ける…

アンジェ「あの程度何でもないわ…ドロシーこそ疲れたでしょう」

ドロシー「なぁに、私は平気さ……それよりちせだ」

アンジェ「ええ…さっきは抜き身を持ったまま警戒しているふりをして、私たちには気づかれないようにしていたけれど……あの最後の一人を片づけた後、手がこわばっていたものね…」

ドロシー「ああ…ちせほどの使い手が「初めての時」みたいに、手がこわばって指が開かないなんてな……あの尋問官の奴、可愛い「ちせたん」をどんな目に合わせやがったんだか……コントロールの尋問官にかかって、同じ目に合えばいいんだ」

アンジェ「ドロシー、いい歳して「ちせたん」はやめなさい…かなり痛いわよ?」

ドロシー「うっさい!……とにかくちせはかなり参ってるぞ…」

アンジェ「分かってるわ……それで彼女は?」

ドロシー「ベアトリスがボイラーを動かしてお湯を沸かしてるから、「先に入れ」って言っておいた…あんな目にあったし、そう言う時は身体が冷え切ったような気がするからな……終わったら私もシャワーを浴びようかと思ってるよ」

アンジェ「それがいいわね…それじゃあ様子を見て来るわ」

ドロシー「ああ、それがいい……それに私は火器のメンテをしなきゃならないしな…良ければやっておいてやるけど?」

アンジェ「…そう言うのは自分でやらないと落ち着かないのは、貴女が一番よく知っているでしょう?」

ドロシー「ああ…正直言うと、誰かに触られるのも嫌だ。どんな細工をされるか分かったものじゃないしな」

アンジェ「つまりそういう事よ……でも、気持ちは受け取っておくわ」

ドロシー「いいんだ…私もアンジェに「感謝してる」って気持ちだけ伝えたかったから」

アンジェ「ええ、伝わったわ」

ドロシー「そっか…じゃあ私なんかに構ってないで、ちせの所に行ってやれよ♪」

アンジェ「ええ…お休み」

ドロシー「ああ」

…浴室…

ちせ「……く、何と無様なことよ…「明鏡止水」の精神で臨むべき時に恐怖で手がこわばってしまうなど、剣士として未熟もいい所じゃ…」熱いシャワーの下に立っていながらも背筋には冷たい感覚が残り、まだ手足を拘束され欧州の「洗練された」尋問を受けそうになったおぞましさと恐怖を感じている……じっと手を見ると、まだかすかに震えていて止まらない……

ちせ「…こんな時、父上ならどうしていたのじゃろう……あるいは「白鳩」の皆は…」

ベアトリス「……どうですかぁ、ちゃんとお湯になってますかー?」

ちせ「うむ、快適じゃ……ベアトリスとて暗殺者や尾行の恐怖に耐えて頑張っていると言うのに…私は何とだらしない……」

ベアトリス「それじゃあお休みなさい」

ちせ「うむ…」タオルで髪を拭き、ベアトリスから着替えを受け取ると、口数も少なく部屋に戻る…

…ちせの部屋…

ちせ「…むむ…平常心、平常心じゃ……」ベッドの上で座禅を組み、ぶつぶつと念仏を唱えてみたり剣術の形をおさらいしてみるちせ…が、何度やっても冷たい手術台に乗っていた時間を脳内で再生してしまう……

ちせ「…くっ、一体どうしたと言うのじゃ……座禅を組んでさえ、いつもの澄み切ったような感覚が戻って来ぬとは……誰じゃ?」

アンジェ「私よ、ちせ」

ちせ「アンジェどのか……済まぬが今はちと…」

アンジェ「邪魔して欲しくない?」

ちせ「…うむ」

アンジェ「申し訳ないけれど、私もそのことで来たの」

ちせ「ふぅ……察しの良いアンジェとドロシーじゃから、薄々気付いてはおるじゃろうと思っておった…入ってくれ」

アンジェ「失礼するわね」

ちせ「…アンジェどの、今日はあのような有様で情けない限りじゃ……どうかだらしのない私を笑ってくれぬか…」

アンジェ「ちせ」

ちせ「…なんじゃ」

130 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/18(月) 13:34:21.41 ID:7FqG3QuMo
131 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/06/19(火) 01:45:53.99 ID:HLj5+czc0
アンジェ「私やドロシーがあなたを笑う訳がないでしょう」…ぎゅっ

ちせ「!?」

アンジェ「仮にもし「恐怖を感じない」なんて言うエージェントがいたら、それは異常者か、さもなければよほどの強がりかのどっちかよ……私だって銃の狙いが定まらないほど震えたこともある…」ベッドに腰掛けて、横に座っているちせを優しく抱きしめるアンジェ…

ちせ「そ、そのような同情は要らぬ……アンジェは私がおびえているのを知って、使い物にならなくなると困るから…そういう慰めを言うのじゃろう?」

アンジェ「いいえ…今の私はお互いに玄人(プロ)の工作員同士として話をしているわ」

ちせ「…まことか」

アンジェ「ええ…黒蜥蜴星人でも怖いものは怖いわ」

ちせ「そ、そうか…じゃが、私はあの時……まるで青二才の剣士のように手がこわばって…う、うぅ……」

アンジェ「ちせ、あなたは十分頑張った…私だって、あの状況におかれたら恐怖で身体がすくんだかも知れない」

ちせ「……ぐすっ…かたじけない…」

アンジェ「構わないわ…ここは安全な場所よ。聞き役が私でよければ、吐きだせる限りの気持ちを吐き出してごらんなさい」

ちせ「…うむ……実を言うと…あの台に拘束されて尋問を受けそうになって、もし二度とアンジェたちと出会えないようなことになったら……そう思ったらむしょうに寂しく思ったのじゃ…」

アンジェ「…ちせ」

ちせ「おかしいじゃろう?…仮にも間諜として訓練をうけた私が、情報を吐くことよりも、再び生きて朋友に会えるかどうかを不安に思うなど……」

アンジェ「…んっ///」

ちせ「んっ、んんっ…!?」

アンジェ「おかしくないわ……むしろスパイだからこそ「仲間」をもっとも大事にするものなのよ……あむっ、ちゅっ……んちゅ…っ…」薄く冷たいアンジェの唇が、まだわなわなと震えこわばっているちせの唇にそっと重なる…

ちせ「ん…ふ……んむぅ…///」

アンジェ「…ちせ」ちせをベッドの上に押し倒すと、両腕をまとめて頭の上に持って行って片手で押さえ、着ていた浴衣をはだけさせる……

ちせ「アンジェ…その、本気なの……か…?」

アンジェ「…私に言わせる気?」

ちせ「い、いや…じゃが……その…」

アンジェ「んむっ、ちゅっ…ちゅぽっ、ちゅるっ……んちゅぅ…っ///」

ちせ「んんっ、んふぅ……んむぅ…///」

アンジェ「はぁ、はぁ、はぁ……んちゅぅぅっ…んちゅるっ、ちゅぽっ…ちゅくっ……ぴちゃ…」

ちせ「…んむっ、ちゅぅ…ちゅっ……んはぁぁ…んちゅぅぅ……はふっ、んはぁ…///」

アンジェ「んっ…んくっ…んぅぅっ……ちゅっ、れろっ…ちゅぱ……んちゅっ///」

ちせ「ふぁぁぁ、口づけとは……こんなに凄いものなのか…甘くて……腰が抜けそうじゃ……んむぅ、ちゅぅぅぅ…♪」

アンジェ「んちゅっ、ちゅるっ……れろっ、ぴちゃ…じゅるっ…ちせ、何も言わなくていい……今はただ私とキスして……怖かったことなど全て忘れて…」

ちせ「う、うむ…んふぅ、んふっ……はむっ、ちゅるっ…あふっ……///」

アンジェ「ん…ふっ……触るわね、ちせ」

ちせ「触る…って、一体どこを……んくぅぅ///」

アンジェ「…引き締まっていて、ちょうど手のひらに収まる大きさね……それに甘い匂いがするわ…」

ちせ「さ、さっき石けんで洗ったからじゃろう……ん、んぅぅっ///」

アンジェ「ん、ちゅぱ…ちゅぅぅ……ここはきれいな桜色ね…」

ちせ「い、いちいち言わずともよい…あっ、あっ、あぁっ///」

アンジェ「……それじゃあ黙ってするわ…んっ///」ちせにまたがりふとももの間を重ね合わせ、相変わらずのポーカーフェイスを少しだけ紅潮させてゆっくりと前後させる…

ちせ「はぁっ、んっ、あっ……んあぁぁっ…///」

アンジェ「んっ、ふ……んくぅ…///」にちゅっ、くちゅ…と湿っぽい水音が、灯りを弱めているちせの部屋に響いた……
132 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/06/21(木) 01:55:22.96 ID:xnK2Y7oF0
…数十分後…

ちせ「…あっ、あっ…んあぁぁ…っ!」

アンジェ「はぁ、はぁ…んっ、んんっ……!」

ちせ「……はぁ…はひぃ……ふぅ…」

アンジェ「ふぅ…それじゃあ今度は「ここ」を責めさせてもらうわね……ん、じゅるっ……///」足下に這いずっていくと、ちせの脚の間に顔をうずめるアンジェ……

ちせ「一体どこを…?…んっ、あぁぁっ!?」

アンジェ「ぴちゃ…じゅる、じゅるぅっ……静かにしないと寮監に気づかれるわよ?」

ちせ「…んっ、くぅぅっ……アンジェ、おぬし一体何を考えておるのじゃ…!?」

アンジェ「さぁ」

ちせ「ん、んぅぅ…こ、こんなみだらな真似をしておきながら「さぁ」で済むわけが……んぁぁ、んっ、んっ……んっ、くぅぅっ///」

アンジェ「それじゃあ指の方がいいかしら…大丈夫、技術にかけてはドロシーのお墨付きよ」

ちせ「お、おぬしらは一体どんな関係なのじゃ……んふぅぅっ///」シーツの端っこを噛みしめ、必死になって声を抑えるちせ…小さい身体がひくついて海老反りになるたびに、上にまたがったアンジェを持ち上げる……

アンジェ「私がまたがっているのに…見事な筋力ね」

ちせ「か、感心してないではよう止め……んぁぁぁっ///」

アンジェ「さてと…それじゃあ今度は向きを変えて……タロットカードなら逆位置ね」ちせと互い違いになるように寝そべったアンジェ…

ちせ「…な、なんのつもりじゃ///」

アンジェ「聞かなくたって想像はつくでしょう?」

ちせ「う、うむ…確かに今までのアレコレを考えればおおよそ想像はつく……が、実際にするとなると…その……///」

アンジェ「じゃあいいわ。ちせがしてくれるまで私はどかないから」

ちせ「正気か!?」

アンジェ「ええ。別に私だってあなたに「ご奉仕」してあげるために来たわけじゃないわ…スパイの世界で自分に利益のない取引はあり得ない」

ちせ「む、むぅぅ…いきなり押しかけて来て、勝手に始めておきながらこの言いぐさよ……なんという手前勝手な言い分じゃ…んんぅ、んっ…///」

アンジェ「文句があるなら私を満足させなさい…そうしたらさっさと帰ってあげるから」

ちせ「……致し方ない、では……参る!」

アンジェ「それでこそよ……んっ、ん…ぴちゃ、ちゅるっ…」

ちせ「んぅ…ここを舌でまさぐってやればよいのか……間諜の技術はいろいろ教わってはきたが、房中術は入っていなかったからの……ん…っ///」くちゅくちゅっ…ちゅるっ……

アンジェ「それにしては上手よ…んぅぅ、んふ……っ」

ちせ「そうか。ならば…一気にたたみかけてくれよう!」

アンジェ「んっ、んんっ……あっ、あっ、あっ…!」

ちせ「…おぉぉ、この…真珠色をしたアンジェの秘所が……ぬらぬらと濡れて…んむっ、じゅるぅ……んちゅぅぅ///」

アンジェ「んぁぁぁ…あふっ、あんっ……んっ、くぅぅぅっ♪」びくっ、びくんっ…とろ……っ♪

ちせ「……なんじゃ、存外あっけないの…アンジェは「その道」でも達人だと聞いておったが、拍子抜けじゃな…?」

アンジェ「はぁ、ふぅ…あんっ……ちせ…私もう……」

ちせ「……ふぅ、ならばもう出て行ってくれぬか…今夜は芯が疲れる晩であったし、明日も早いのじゃから……」

アンジェ「…「腰が抜けちゃって立てないの」……とでも言うと思ったのかしら」

ちせ「…何?」

アンジェ「ふぅ…今から私が、本気で身体の芯までとろけさせてあげるわ……それこそ声も出ないほどにね」

ちせ「な、何じゃ……この恐ろしい殺気は…」

アンジェ「……ちせは楽にしているといいわ…終わったら勝手に出て行くから」

ちせ「…い、嫌じゃ…近寄るでない!」

アンジェ「逆らっても無駄よ」くちゅり…じゅぷっ……♪

ちせ「あっあっあっ……んっ、あぁぁっ…♪」

………
133 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/06/21(木) 02:32:20.54 ID:xnK2Y7oF0
………



ちせ「はひぃ…腰が……何と甘美な…んくぅ…///」くちゅ…くちゅっ♪

アンジェ「ふふ…育成所時代の初心だったころのドロシーもそんな具合だったわ」

ちせ「何…あのドロシーがか?」

アンジェ「ええ…甘ったれた顔をして、腰をがくがくさせながらね……耳たぶを甘噛みしながらささやいてあげたら、蜜を垂らして悦んでいたわ…」

…浴室…

ドロシー「…へっくし!」

ベアトリス「大丈夫ですか?…ボイラーの火力を調節しましょうか?」

ドロシー「いや、平気だ……うー、今夜は冷たい屋根の上で腹ばいになってたりしたからなぁ……それとも、誰か噂でもしてやがるのかぁ…?」

ベアトリス「ふふっ、いつも授業をさぼったりしてるからじゃないですか?」

ドロシー「なんだとぉ、このちびっこが♪」

ベアトリス「うわっ…もう、お湯を跳ね散らかさないで下さいよ!……それに静かにしておかないと、寮監に見つかっちゃいますよ?」

ドロシー「はは…寮監に捕まるほどドジじゃないっての♪」

ベアトリス「それはまぁ、そうですけど……私も寝たいですし、そろそろ上がってくれませんか?」

ドロシー「お、悪ぃな…それじゃ上がるから、ボイラーの火を落としてくれ」

ベアトリス「はい。それじゃあお休みなさい」

ドロシー「ああ、お休み……それにしても、アンジェは上手い事ちせを慰められてるかな…って、アンジェの事だから心配はいらないか。軽くブランデーでも引っかけて、とっとと寝よう…っと♪」

………

…ちせの部屋…

ちせ「ふぁぁぁ…あふっ、んぁぁ///」

アンジェ「これがいいみたいね……きゅうっと締め付けて来るわ…」

ちせ「い、いちいち言わずともよい…恥ずかしいじゃろうが…ぁ///」

アンジェ「…こんなので恥ずかしがっているようでは、ドロシーみたいな役回りはおぼつかないわね…もっとも、逆に初心な所がそそるかも知れないけれど……」くちゅっ…♪

ちせ「あっ、ふわぁぁ…///」

アンジェ「すっかりとろとろね…もうそろそろおしまいにしようかしら」

ちせ「……と…」

アンジェ「何か言いたいなら、はっきり言ってちょうだい」

ちせ「…もっと……して欲しいのじゃ…///」

アンジェ「そう…ならもうちょっといてあげるわ……私も人恋しい気分だから…」

ちせ「んむぅ…ちゅぅぅ……♪」

アンジェ「んちゅ…ちゅっ♪」


………

134 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/21(木) 05:21:41.46 ID:Wmqgk04co
135 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/06/25(月) 01:56:05.45 ID:sYEs481N0
…翌日…

ちせ「うー…昨夜は気の迷いとはいえ……なんということを…///」

ベアトリス「…さっきからちせさんは何をぶつぶつ言っているんでしょうね?」

ドロシー「ま、色々あったんだろ…聞かなかったふりをしてやれよ?」

ベアトリス「私は別に……でも、気になりませんか?」

ドロシー「お、ベアトリスも周りの物事に注意を払うようになってるな……スパイらしい感性が身についてきたじゃないか♪」

ベアトリス「えー、こんなことがですかぁ?」

ドロシー「バカ言え。その「こんな事」って言うような事が、この世界じゃ意外と役立つんだよ」

ベアトリス「そんなものですか?」

ドロシー「ああ。私だって「犬のしつけ方」から「ゆで卵の見分け方」まで何でも頭に入ってるぜ?」

ベアトリス「それがどんな役に立つのかはさておき…ちせさん、ずいぶん顔を紅潮させていますね」

ドロシー「ありゃきっと何か恥ずかしい事を思い出して真っ赤になってるクチだな……それにしてもあのちせがねぇ…やっぱりアンジェはけた違いだな」

アンジェ「ドロシー、私がどうかしたの?……おはよう、みんな」

ドロシー「何でもないさ。おはようさん」

プリンセス「おはよう、アンジェ♪」

ベアトリス「おはようございます、アンジェさん」

ちせ「お、お早う……うぅぅ…///」

アンジェ「みんな、昨夜はご苦労さま……コントロールからもメッセージが届いているわ」アルビオン王国の主要紙「アルビオン・タイムズ」の、小さな広告欄を指差した…

ドロシー「どれどれ…えーと「売家あります…面積一エーカー、造作、庭付き、状態良好。雨漏りなし」か」

アンジェ「ええ…『売家』が対象人物、『造作・庭付き』は対象が役に立つかどうか…『状態良好』は読んで字のごとしね……それに『雨漏りなし』とあるから、こちらへ王国情報部の手は及んでいない……結構な成果ね」

ドロシー「やったな…ま、今回はあちらさんもアラが目立ってたしな」

アンジェ「王国諜報部と、王国防諜部……ノルマンディ公に近い立場の防諜部に対して、王国諜報部が手柄を立てようと焦ったのね」

ドロシー「その辺の縄張り争いみたいなのはどこの国も変わらないさ……それより見てみろよ♪」新聞をテーブルの上に広げてうさんくさいゴシップ記事を突っついた…

ベアトリス「…えー「またも吸血鬼騒動か、フリート街で中堅新聞社のオーナー行方不明」ですって」

アンジェ「こっちのエージェントに「血抜き」をやっていたのはそいつよ…王国情報部から資金とニュースのネタを流してもらっているのだから、上手くいくに決まっているわよね」

プリンセス「ええ…それにしても王国情報部は、いつの間にこんなことにまで手を出すようになったのかしら」

アンジェ「おそらくノルマンディ公の動きの活発さに刺激を受けて、王国情報部も先鋭化しているのでしょうね」

ドロシー「結構なことで…ところでアンジェ、道具のメンテがらみで聞きたいことがあるんだけど…この後、少しいいか?」

アンジェ「ええ……どうしたの?」

ドロシー「…うまくいったか?」

アンジェ「ええ…私が色々としてあげたから、最後はすっかりとろとろの甘々で愉快な気分になっていたわ」

ドロシー「そっか……チームの状態を保つためとはいえ、悪かったな」

アンジェ「気にしないで、ドロシー…おかげで私も舌が軽くなって、色々ドロシーの弱点をしゃべらせてもらったから」

ドロシー「…おい、こら」

アンジェ「冗談よ」

ドロシー「はー…アンジェ、お前はポーカーフェイスが上手いから何でも本気に聞こえるんだよ……心臓に悪いから止めてくれ」

アンジェ「ええ、以後つつしむわ……ふー…♪」無表情のままドロシーに顔を近づけると、耳元に息を吹きかけた…

ドロシー「うひぃ!?…おい、ふざけんな…耳は苦手だって知ってるだろ///」

アンジェ「ええ……一応、再確認させてもらったわ」

ドロシー「…覚えてろよ。いつかぎゃふんと言わせてやるから」

アンジェ「いつでもどうぞ…勝てるならね」

ドロシー「やれやれだな…」肩をすくめて首を振った…
136 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/06/26(火) 15:37:13.83 ID:cvQxA0Mm0
…caseアンジェ×プリンセス「The princess and I」(姫様と私)…

…とある日・部室…

ドロシー「……うーん、新しい銃の申請はどうしようかなぁ……隠しやすいからってつい2インチとか3インチ銃身のばっかり申請しちゃうんだよなぁ…」ペンを唇の上に乗せ、天井を向いて思案している…

プリンセス「あの…ドロシーさん、少しお時間をよろしいかしら?」

ドロシー「何だい、プリンセス?」

プリンセス「ええ……ここでは少し話しづらいので、よろしければわたくしの部屋まで来ていただけませんか?」

ドロシー「ああ、いいよ…どうせ暇を持て余しているし、構いませんよ……っと♪」ひっくり返っていたソファーから跳ね起きると、プリンセスに続いて部屋を出た…

…プリンセスの部屋…

プリンセス「どうぞ、おかけになって?」

ドロシー「ああ、どうも……それで、話って言うのは?」

プリンセス「ええ…それがわたくしのプライベートにも関わることで、なかなか話せる相手もいなくて…それでドロシーさんに相談しようと……」

ドロシー「ほう…しかし信頼して打ち明けてくれる気持ちは嬉しいけどさ、そういう事だったらぞんざいな私なんかよりも、ベアトリスとかアンジェの方がいいんじゃないかな……特にアンジェはプリンセスの事がよく分かってるみたいだしさ」

プリンセス「実は、それが出来ないのでドロシーさんにお願いするんです……紅茶をどうぞ?」

ドロシー「…なんか悪いな、プリンセスに紅茶を淹れさせるなんて……」(アンジェやベアトリスにも打ち明けられない事でプライベートにかかわる…となると「チェンジリング作戦」絡みか王室関係の問題か……いずれにせよ重大なトラブルと見ていいな…)

プリンセス「いえ、わたくしもこうしたこまごましたことで手を動かすのは好きですから…♪」

ドロシー「それならいいんだけど……お、道理でいい香りがすると思った…フォートナム&メイソンのダージリン、ファースト・フラッシュ(一番茶)だ♪」

プリンセス「ええ、わたくしが自分に許しているちょっとしたぜいたくです…♪」

ドロシー「ははーん、それで分かった…実はお忍びで紅茶を買いに行きたいのに車がないと……よろしいですとも、私の運転でよければ乗せて行ってあげますよ♪」

プリンセス「いえ…そうではなくて…」ティーカップの水面に視線を落とし、浮かぬ声のプリンセス…

ドロシー「ふぅん…どうやら茶化していいような問題じゃないらしい……」いつもの皮肉っぽい不敵な笑みを消すと、椅子の上で姿勢を正した…

プリンセス「ええ…実は……」

ドロシー「…実は?」

プリンセス「……アンジェが本当に私の事を好きなのか、分からなくなってきてしまって」

ドロシー「…は?」

プリンセス「いえ、ですから…///」

ドロシー「いや、私の両耳はちゃんと聞こえているよ…だけどどうやら、脳みその方がまだ理解できてないらしくてね……」

プリンセス「そうですか…それで、ドロシーさんはどう思いますか」

ドロシー「アンジェがプリンセスの事を嫌いなんじゃないか…って?」

プリンセス「ええ」

ドロシー「そんなの天地がひっくら返ったってあり得ないね…もし間違ってたらこのティーカップをばりばり食ったっていい」

プリンセス「でも…」

ドロシー「そもそもアンジェはいつもあんなだし、ことさらに冷徹に感じるならそれもアンジェの愛情表現さ…「自分の愛する女性(ひと)を自分の気のゆるみで失くしたくない」ってね……それと業界が業界だけに「好き好き大好き♪」って触れ回ってて、それを敵方に使われたら困ると思ってるのさ…きっとアンジェの事だから、もし目の前でプリンセスが銃を突きつけられていたとしても、まばたき一つしないで助け出すための策略を練ると思うね」

プリンセス「そうでしょうか…でもあんまりたびたび「嫌い」って言われていると、何だか切ない気持ちになってきてしまって…」

ドロシー「あのポーカーフェイスだからなかなか分からないだろうけど…アンジェのやつ、プリンセスの前じゃかなり甘ったれてるぜ?」

プリンセス「…そうですか?」

ドロシー「ああ。アンジェが私たちに向ける表情と比べたら「桃とイチゴが一緒になって笑ってる」…ってな具合さ」(おいおい…まさかの惚気かよ……)

プリンセス「…お互いに背中を預け合ったドロシーさんの言うことですから本当でしょうけれど…でも、やっぱり寂しいです……」

ドロシー「あー…それならアンジェがベタベタの甘々になる「とっておき」の方法があるから、伝授しておくよ♪」

プリンセス「ええ、お願いします」

ドロシー「はいよ…ただし、私から聞いたってことは秘密にな…♪」

………
137 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/28(木) 04:52:14.45 ID:ylsKCAboo
138 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/06/30(土) 01:55:06.33 ID:Uici38xW0
…翌日…

アンジェ「……前回の作戦で得られたプロダクト(産物)の中から、コントロールが私たちに必要なものをまとめて寄こしたから読み込んでおくこと…それぞれ別の資料だから、読み終わったらお互いに回すようにして」

ベアトリス「はい」

ちせ「うむ…しかし事前に学習したとはいえ、英語を読むのはおっくうじゃな……なになに…『えむばしい』……?」

ドロシー「そりゃ「エンバシー」(大使館)じゃないのか?」

ちせ「おぉ、それじゃ…どうも横文字は読み方と綴りが一致しなくていかん」

ドロシー「ま、私らが「漢字」とやらを覚えるよりは簡単だろうけどな…プリンセス、そっちの資料は読み終わったかい?」

プリンセス「ええ、どうぞ……それじゃあ「アンジェさん」、わたくしにその資料を貸していただける?」

アンジェ「…ええ」

プリンセス「ありがとう、「アンジェさん」」

アンジェ「…」

ドロシー「それで…と、今度の目的は「ケイバーライト鉱石」の取引情報か……」

アンジェ「それが分かれば王国が建造する空中戦艦の隻数が予測できる…軍艦の建造には少なくとも数年かかるから、一度遅れを取ったらその間の劣勢はなかなか取り戻せないわ」

ドロシー「それだけじゃない…ケイバーライトの価格がどう上下するかで、『ザ・シティ』(ロンドンにおける商取引の中心地)、ひいてはアルビオン中の株式市場が動くからな……」

アンジェ「ええ…今やケイバーライト鉱石は石炭や鉄鉱石、それどころか金よりも価値があるわ」

ドロシー「だな……なぁベアトリス、読み終わったか?」

ベアトリス「待ってくださいよぉ…それよりドロシーさんってば、そんなに風にパラパラめくっただけで……ちゃんと覚えられてるんですかぁ?」

ドロシー「当然だろ?…信用してないなら私が回した方の資料から、何でも適当に質問してみな」

ベアトリス「えーと……それじゃあ今月の「王国先物取引」における、鶏肉の取引相場は…?」

ドロシー「ヨークシャー産の赤色プリマスロック種なら、モモ肉一ポンドで3ペンス…胸肉で2ペンス」

ベアトリス「むぅ……それじゃあジャマイカ島産胡椒が…」

ドロシー「よせよ…黒胡椒なら一オンス当たり2ポンドと半シリングさ♪」

ベアトリス「むむむぅ…」

ドロシー「あのなぁ、一体何年こんな事やってると思ってるんだ…いい加減「見たものを記憶する癖」ぐらい身についてるっての♪」

アンジェ「…それじゃあ先週末に通りがかった劇場でやっていた舞台は?」

ドロシー「あー…そりゃシェークスピアの「マクベス」だな……だろ?」

アンジェ「…その「マクベス」のポスター、地の色は何色だった?」

ドロシー「なに?…えーと、ちょいまち……確か緑だったな」

アンジェ「結構…歳の割に記憶は良いみたいね」

ドロシー「だーかーら、まだ二十歳のぴちぴちだって言ってるだろ!?」

アンジェ「怒りやすいのは老人になっている証拠よ」

ドロシー「……こんにゃろー…」

ベアトリス「ふふ、相変わらず仲がいいですね♪」

ちせ「そうじゃな…お互いに知り尽くしているからこそできる冗談じゃな」

プリンセス「ふふふ…っ♪」

ドロシー「まるで嬉しくないけどな……ははっ♪」

139 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/06/30(土) 02:38:14.62 ID:Uici38xW0
ドロシー「……それじゃあアンジェ、また後でな」

ちせ「続きはお茶の時間と言ったところか……しからばご免」

ベアトリス「それでは私はプリンセスのお召し物を用意してきますので…アンジェさん、また後で」

アンジェ「ええ……ところでプリンセス、ちょっといい?」

プリンセス「何かしら…「アンジェさん」?」

アンジェ「いえ……プリンセス、いつも通りにやってもらわないと周囲からの目線を集めることになるわ」

プリンセス「…「アンジェさん」わたくし、いつもと違いました?」

アンジェ「それは……いえ、何でもないわ…」

プリンセス「なら大丈夫ですね、「アンジェさん」?」(…王室の外交儀礼のように丁寧でよそよそしく……)

アンジェ「ええ…」

………

…ドロシーの部屋…

ドロシー「…で、第一段階はどうだった?」

プリンセス「ええ…やっぱり戸惑っているみたい…」

ドロシー「だろうな。まずはプリンセスに嫌われんじゃないかと思わせて、アンジェに精神的動揺を与える…相手を不安がらせ、疑心暗鬼の状態に陥らせるのはスパイの常道だからな」

プリンセス「でも、アンジェだってそうした「スパイのいろは」は知っているはずですよね?」

ドロシー「それが動揺しているんだから、アンジェの愛はホンモノってことさ。まさかプリンセスがそんなことをするとは思っていない…あるいは頭で分かっていても、感情が追いつかない……ってところかな?」

プリンセス「そうですか…でもどれくらい続ければいいのかしら……アンジェの不安げな顔を見ると、正直わたくしも辛いわ」

ドロシー「あんまり長くは続けないさ…アンジェにおかしくなられちゃ困るしな」

プリンセス「そう…よかった♪」

ドロシー「でもその間だけは完全に冷え切った態度じゃないと…何しろアンジェは表情から相手の気持ちを汲み取るのが上手いし」

プリンセス「そうね……ふっと思っていることを言い当てられたりするのよね」

ドロシー「ああ…プリンセスみたいに外国の腹黒い連中と外交で渡り合うのと、私やアンジェみたいに飲んだくれた親父とか、貧民街の親分に殴られたりしないようにしていたのと……案外似ている所があるのかもな…」

プリンセス「かもしれませんね……それで、次は「第二段階」ですね?」

ドロシー「ああ…この状態を数日続けて、ようやくその雰囲気に慣れてきたところで別な動揺を加える……ハニートラップに引っかかった相手へブラックメイル(脅迫状)を数日ごとに送りつけて、「いつバレるか」とか「証拠をばら撒かれるんじゃないか」…ってビクビクさせるようなもんかな」

プリンセス「…まぁ」

ドロシー「ふぅ…いくら相手が誘惑に弱かったとはいえ、この世界はそう言う後ろ暗い部分も多くてね……だから私たちみたいなスパイの事を「スプーク」(幽霊)って言うんじゃないかな?」

プリンセス「人を怯えさせるから?」

ドロシー「ああ…それに「足跡も残さない」しな♪」

プリンセス「なるほど……それでは「第二段階」の開始は…」

ドロシー「見極めが難しいが…早くて数日後かな」

プリンセス「分かりました……ですけれど、わたくしも早く元のようにアンジェと仲よくしたいです…」

ドロシー「まぁまぁ…オレンジを食べるのに皮ごと食べる奴はいないってわけでね……まずはしっかり下準備をしなくちゃ」

140 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/06/30(土) 10:48:24.93 ID:Uici38xW0
…数日後・寮の廊下…

アンジェ「…」(ここ数日プリンセスが妙によそよそしいわ…どうして私を避けるの、プリンセス…?)

アンジェ「…ふぅ」(…いいえ、プリンセスと私の関係はたとえ「白鳩」の中でも知られるわけにはいかないのだから、これでいいのよ……あくまでクールに、距離を保って…利用できる時は利用する…それでいいはずでしょう……?)

アンジェ「……?」(……部室から声…プリンセスとベアトリス……?)

アンジェ「…」一旦はドアノブを回して入ろうとした…が、思い直してしゃがみこむと、鍵穴から中の様子をのぞいた……

…部室…

ベアトリス「…さぁ姫様、紅茶をどうぞ?」

プリンセス「ありがとう、ベアト♪」

ベアトリス「わわっ!?…もう、私だって子供じゃないんですから、頭を撫でられたら恥ずかしいですよぉ///」

プリンセス「ふふふっ、いいじゃない……それにベアトったら、この間資料を読み込んでいた時に私の事を「姫様」じゃなくて「プリンセス」…って♪」

ベアトリス「あぁもう、その話を蒸し返すのは止めて下さい…だってドロシーさんとかみんな姫様の事を「プリンセス」って呼ぶから、つい……///」

プリンセス「これだけ私のお付きをしているのにつられちゃうベアト……可愛い♪」

ベアトリス「ひぁぁぁっ…///」

プリンセス「うふふ、私のベアト…ちょっとからかうとすぐ真っ赤になっちゃって……いじらしくて、本当に可愛い♪」角砂糖をつまみあげると口に入れてアメ玉のようにしゃぶり、それからベアトリスに唇を重ねた…

ベアトリス「ひゃぁぁ…っ……んんぅ///」

プリンセス「ん、ちゅぷっ……ふふ、甘いでしょう?」

ベアトリス「姫様…ぁ……///」

プリンセス「あら、そんなにとろけた顔をされたら私だって我慢できないわ…ん、ちゅぅ♪」

ベアトリス「んちゅ…んむっ、ちゅぅぅ……///」



アンジェ「…ふぅー…すぅー…」(…落ち着くのよ、アンジェ……プリンセスとベアトリスは敵だらけの王宮でお互いに支え合う仲…秘密を打ち明けたり、寂しさを慰め合っている間にこんな関係になっていたとしても、何もおかしくないわ……)

アンジェ「……ふー…失礼するわ」(…どうやら終わったようね)

ベアトリス「!」

プリンセス「…あら、「アンジェさん」…どうかなさったの///」ソファーの上で身体を寄せ合っていたが、慌てて離れる二人……一瞬口の端からつーっと銀色の糸が伸びた……

アンジェ「いいえ」

ベアトリス「…あっ、あの///」

アンジェ「何?」

ベアトリス「よ…よろしかったらお紅茶でもいかがですか?」

アンジェ「そうね、頂くわ……それとベアトリス」

ベアトリス「な、何でしょうか…///」

アンジェ「前回の資料、まだ暗記出来ていないでしょう……プリンセスのお世話も大事でしょうけれど、優先順位を間違えないで」

ベアトリス「は、はいっ!」

アンジェ「分かったなら行動に取りかかりなさい」

ベアトリス「え、えーと…あわわっ」ティーカップを持ったままあたふたするベアトリス…

アンジェ「紅茶は自分で注ぐからいいわ……慌てないで順番に行動しなさい」

ベアトリス「すみません…っ!」

アンジェ「謝罪なんて必要ない…その分の時間を有効活用しなさい」

ベアトリス「ごめんなさ……いえ、分かりました」

アンジェ「結構」気を静めようとウェブリー・フォスベリーの手入れをし始めるアンジェ…が、時折プリンセスがベアトリスに向けて微笑んだり、それとなく親しみを込めた仕草をするたびに気に障った……

アンジェ「もういいわ。紅茶をごちそうさま…ベアトリス、資料は明日までによく読み込んでおくこと」

ベアトリス「分かりました、アンジェさん」

プリンセス「それでは「アンジェさん」…また後でお会いしましょう」

アンジェ「…ええ」
141 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/06/30(土) 11:13:06.91 ID:Uici38xW0
…さらに数日後…

ドロシー「…どうしたよ、アンジェ」

アンジェ「何が?」

ドロシー「何が…って、らしくないぜ?」

アンジェ「そう…それを説明してくれる気がおありなら、どう「らしくない」のか教えていただけるかしら」

ドロシー「……その態度さ」

アンジェ「別に…いつも通りよ」

ドロシー「やれやれ、そうは見えないぜ?」

アンジェ「なら貴女の目がおかしいのよ…目薬でも差したら」

ドロシー「…それだよ。いつも冷静なお前が工場の煙突みたいにイヤミと皮肉をまき散らして…一体どうしたんだ?」

アンジェ「黒蜥蜴星人だからそう言う時もあるわ」

ドロシー「嘘だね…蜥蜴なら冷血だからそんな感情はないはずだろ」

アンジェ「……しつこいわね。スパイじゃなくて防諜部に転任させてもらったら?」

ドロシー「おあいにく様、私みたいなテキトーな人間は向こうから願い下げだとさ……良かったら話してみろよ」

アンジェ「結構よ…貴女も私に油を売っている暇があるなら、自分の方の仕事をしたらどう」

ドロシー「そうかよ…ま、もし相談事があるなら声をかけろよ?」

アンジェ「はいはい、そうさせていただくわ」(…出来る訳ないでしょう…「私とプリンセスの関係がぎくしゃくしている」なんて……)

ドロシー「……そろそろ頃合いだな」

………

…プリンセスの部屋…

ベアトリス「ん…姫様宛にメッセージカードですよ」

プリンセス「ありがとう、ベアト♪」

ベアトリス「一応ですが、毒針とか仕込まれてないかだけ確認させてもらいますね」

プリンセス「ええ」

ベアトリス「えーと…はい、大丈夫みたいです」

プリンセス「ありがとう、ベアト…ちゅ♪」

ベアトリス「もう、姫様ったら…///」

プリンセス「ふふ……まぁ♪」

ベアトリス「何かいいお知らせですか?」

プリンセス「ええ、そう言った所ね。…ところでベアト、今度私の代わりにお買いものへ行ってきてほしいの……いいかしら?」

ベアトリス「もちろんですよ、私は姫様のお付きなんですから」

プリンセス「ふふ、助かるわ。そうしたらね、ちょっと量が多いけれどお願いするわ……かわりに私がお金を出してあげるから、好きなお買いものをしていいわよ?」

ベアトリス「もう…子供のおつかいじゃないんですから……いつですか?」

プリンセス「そうねぇ…今度の週末がいいかしら」

ベアトリス「分かりました…それじゃあ私に任せて下さい」

プリンセス「ええ…♪」(いよいよ「第三段階」ね…)

142 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/07/03(火) 03:16:43.27 ID:UhXl/ke10
…週末・部室…

ドロシー「……なぁ、ちせ」

ちせ「なんじゃ?」

ドロシー「悪いけど、ちょっと手伝って欲しいことがあるんだ……本当はベアトリスにでも…と思ったんだけど、プリンセスの頼まれごとで買いものに行っちまってさ……軽く数時間はかかるだろうけど、いいか?」

ちせ「無論じゃ。何せお互い背中を預けた「チーム白鳩」の戦友同士…断るわけがあるまい」

ドロシー「そっか、そいつは助かるよ……実を言うと今度の作戦に備えて、新しいナイフとかスティレットを用意してもらったんだけどな…」

ちせ「…ほう?」

ドロシー「この間試してみたら、どうも切れ味が鈍い感じがするんだ……よかったら研ぐのを手伝ってくれないか?」(あれだけ刀を使いこなしているちせの事だ…刃物と聞いたら時間をかけていじくりまわしてみたいと思うはずさ…)

ちせ「ふむ…やはり鍛え上げた玉鋼(たまはがね)と画一的な工業製品では格が違うのじゃろう……構わぬよ、私も興味が湧いてきた」

ドロシー「おっ、いい返事だな…それじゃあ「ネスト」(巣…拠点・アジト)まで行こうぜ♪」

ちせ「うむ……では失礼する」

ドロシー「ああ…それじゃあプリンセス、美味しいお菓子でも食べて「甘い時間を有意義に」過ごしてくれ♪」(…「第三段階」開始だ)

プリンセス「ええ、ドロシーさんも大事な道具ですし「念入りに」手入れして下さいね?」(ふふ、いよいよね…ドロシーさん、出来るだけちせさんを引きとめて下さいね♪)

ドロシー「ああ、分かってるよ…♪」

アンジェ「……私も行きましょうか、ドロシー?」(…ここ最近の精神状態でプリンセスと二人きりになるのは避けたいわ)

ドロシー「おいおい、そうやってサーカスみたいにぞろぞろ行列でも組んでいくのか?……人目を引きたくないし、私とちせで充分だよ」

アンジェ「…それもそうね……分かったわ」

ドロシー「ああ、それじゃあな…もしやることがないなら銃弾の選別でもしておいてくれ」

アンジェ「ええ」

プリンセス「…」

アンジェ「…」

プリンセス「……ねぇ、アンジェ?」

アンジェ「何?」

プリンセス「アンジェは私の事…嫌いなの?」

アンジェ「嫌いよ」

プリンセス「…ほんとに嫌い?」

アンジェ「ええ。大嫌いよ」

プリンセス「ほんとのホント?」

アンジェ「ええ……嫌い、大嫌い」

プリンセス「……そう……ぐすっ…ひっく……私、今までアンジェ…いえ「シャーロット」の事、勘違いしていたみたい……」

アンジェ「…プリンセス?」

プリンセス「だって…最近のシャーロットはいっつも冷たい態度ばっかりで…カバーストーリーだって大事でしょうけれど、何も私たちが……二人きりの時まで…お芝居をしなくたっていいはずよね……だとしたら…ひっく……」

アンジェ「ぷ、プリンセス…私は貴女に危害が及ばないようにと……」

プリンセス「いいえ、そんなの信じられない…きっとお互いに命を預け合ったドロシーさんの方が好きなんでしょう……!?」

アンジェ「…まさか。そんな訳ないわ」

プリンセス「……だったらどうして優しくしてくれないの、シャーロット…?」

アンジェ「ふぅ…さっき言った通りよ。誰に利用されるか分からない以上、私があなたを大事に思っているなんて露ほどもさとられたくないの……本当なら「白鳩」のメンバーにさえ知られたくないわ」

プリンセス「…でも、せめて私と二人きりの時だけは…優しくして欲しいのに……」

アンジェ「ふぅ……私もつい甘えてしまいたくなるから、本当は教えたくないのだけど……一つだけ…方法があるわ……」

プリンセス「…シャーロット?」

アンジェ「私に向かって「ハニートラップの訓練をしましょう」って言ってくれればいい…そうすれば練習にかこつけて、それ相応に甘い言葉を投げかけることくらい出来るし……///」

プリンセス「…シャーロット♪」

アンジェ「……そのかわり、息が切れるまで付き合ってもらうから///」ちゅっ…♪
143 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/07/03(火) 04:32:16.41 ID:2s/yTJ+uo
144 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/07/05(木) 01:33:02.14 ID:9raDQw6J0
>>143 ありがとうございます、引き続き投下していきます

145 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/07/05(木) 02:19:46.16 ID:9raDQw6J0
プリンセス「んんぅ、んむぅ…んちゅ……っ♪」

アンジェ「…ふふ、可愛いプリンセス…二人で遊んだあのころを思い出すわ……♪」

プリンセス「私がシャーロットと同じ服を着てラテン語の授業を受けて、シャーロットがサボったり…ね♪」

アンジェ「ええ…それにあの時もこうやって、ベッドの上に寝転がっていたわよね……♪」

プリンセス「ふふ、そうだったわね…シャーロットったらいっつも私の事や街の様子を根掘り葉掘り聞いて……あの時からスパイの素質があったのね♪」

アンジェ「反対にプリンセスはどんなことでも物覚えがよくって……プリンセスも案外スパイ向きかも知れないわ」

プリンセス「もう、シャーロットったら……♪」

アンジェ「ふふ、ごめんなさい…ちゅっ♪」…必要となればとてもチャーミングな性格になれるアンジェ……口の端に小さいえくぼを浮かべると、いたずらっぽくプリンセスのほっぺたにキスをした…

プリンセス「んぅっ…シャーロット♪」

アンジェ「プリンセス……好き、好きよ……愛してる♪」

プリンセス「まぁ…///」

アンジェ「可愛い笑顔も、さらさらの髪も、綺麗な澄んだ瞳も……全部大好きっ♪」

プリンセス「もう…シャーロットってば…ぁ///」きゅんっ…♪

アンジェ「…ね、昔みたいに「ちゅう」しましょ?」プリンセスの手に指を絡め、熱っぽく瞳をうるませた…

プリンセス「あぁもう、シャーロットったら……相変わらずおませさんなんだから///」

アンジェ「だって、プリンセスが可愛いんだもんっ…♪」…子供っぽい口調でプリンセスに抱き着いて甘えるアンジェ

プリンセス「はぁぁんっ…シャーロットにそんなことを言われたら、私なんでも許しちゃうわ♪」

アンジェ「……それじゃあ早く「ちゅう」しよ…っ?」

プリンセス「うんっ♪」

アンジェ「……ん、ちゅぅ…ちゅっ……♪」

プリンセス「んふ……あむっ、ちゅぅぅ♪」

アンジェ「…ふふ、「ちゅう」って気持ちいいのねっ…♪」

プリンセス「そうね、シャーロット……あふっ、んっ、くぅっ…///」

アンジェ「ふふ…それじゃあ脱がせちゃうわね……わぁ、相変わらず真っ白ですべすべ♪」

プリンセス「シャーロットこそ……えいっ♪」アンジェの胸を優しくこねるプリンセス…

アンジェ「あんっ…やったわね?……はむっ、ちゅぅ…れろっ♪」

プリンセス「ひぁぁぁんっ…シャーロット、先端は舐めないで…っ///」

アンジェ「ふふ、ワガママなプリンセス。それじゃあ仕方ないから…」こりっ…♪

プリンセス「んっ、あぁっ…甘噛みはもっとだめ……ぇ♪」じゅんっ♪

アンジェ「むぅぅ、ならプリンセスはどこがいいの?」

プリンセス「……それは、その…///」

アンジェ「ふふ…早くしないと飽きてやめちゃうかも知れないわよ?」

プリンセス「もう、シャーロットったらせかさないで…♪」

アンジェ「ほぉら、早くはやくっ♪」

プリンセス「あぁ、どこもシャーロットに触って欲しくて決められないの…♪」

アンジェ「もう、よくばりなプリンセス…それじゃあ、「シャーロットの気まぐれメニュー」でいい?」

プリンセス「うんっ…シャーロットにいっぱい触って欲しいの♪」

アンジェ「決まりね……プリンセス、大好き…♪」耳たぶを甘噛みしながらささやくようにつぶやく…

プリンセス「はぁぁんっ、それ……反則ぅっ♪」…とろっ♪

アンジェ「ふふ、これは二人だけのトップ・シークレットよ……私の愛しいプリンセス♪」

プリンセス「あひっ、ひうっ…シャーロットったら、そんなのずるい…っ♪」

アンジェ「ふふ…いつも素直になれなくてごめんなさい……可愛いプリンセス♪」くちゅ…にちゅっ、じゅぷっ♪

プリンセス「あっ、あぁぁぁ…んっ♪」
146 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/07/07(土) 09:20:56.78 ID:B6EWHCLYo
いいね👍
147 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2018/07/08(日) 00:58:21.87 ID:RhFidgqo0
…しばらくして…

アンジェ「ふふ、プリンセスの白くて細い指……ちゅぱ…ちゅぷ…っ♪」

プリンセス「んぁぁ…はぁ…んぅ……くっ…んんぅ…///」

アンジェ「それじゃあプリンセス…私の指も……舐めて?」

プリンセス「ええ、シャーロット…んちゅ…ぅっ、ちゅぱ…ぁ……ちゅぷっ…///」

アンジェ「んっ…付け根の所は少しくすぐったいわね……さてと…」プリンセスの口中から指を引き抜くと、とろり…と銀の糸が伸びて、そっと滴り落ちた……

アンジェ「…この濡れた指を……んっ♪」くちっ…にちゅっ♪

プリンセス「んぅぅっ!…んくっ、んぅ…んっ、んっ、んっ…くぅぅ……ぅっ♪」

アンジェ「ふふ…プリンセスのここは暖かくて…とろっと粘っこくて……たまらないわ」ぐちゅぐちゅっ…じゅぶっ♪

プリンセス「はぁぁ…あぁんっ…ん、くぅぅ……シャーロット…ぉ///」くちゅっ、とろとろっ…ぶしゃぁぁ…っ♪

アンジェ「ふふっ…惚けたような表情も可愛いわ……ん、じゅるっ…じゅるるぅ……っ♪」

プリンセス「はぁぁ…あんっ……いいの…っ、シャーロットの…舌…這入ってきて……気持ちいい…っ///」

アンジェ「んむっ、じゅる…っ……じゅぅぅ…っ、れろっ…ぴちゃ…ぴちゃ…っ♪」プリンセスの太ももの間に顔をうずめて、一心不乱に舌で舐めあげ、とろりとこぼれる蜜をすするアンジェ…

プリンセス「はあぁぁ…んくぅ、んっ…あぁ……ん、ふっ…♪」

アンジェ「ん…じゅる…じゅぅっ……れろ…ちゅる……ぷは…ぁ」

プリンセス「んんぅ…シャーロット……私、腰が…抜けちゃった……みたい…♪」

アンジェ「プリンセス……♪」べとべとになった両の手のひらでプリンセスの頬をそっと包み込むと、舌先を突きだして唇の間にねじ込んで歯茎をなぞり、ねっとりと時間をかけて舌を絡めた……

プリンセス「んむ…ぅ……シャーロット…ぉ///」とろけた表情のプリンセスが唇を開くと、アンジェの舌先からねっとりと雫が垂れる…

アンジェ「…舐めて///」今度はプリンセスの着ているフリルブラウスを裾まで開き、頭の側に馬乗りになる…

プリンセス「ええ…んちゅ……ちゅむ…っ♪」

アンジェ「んっ、んっ……ふふ、私も負けないから♪」

プリンセス「ちゅぷ…っ……ふふふ…だったら私もシャーロットの事、うんと気持ち良くしてあげる♪」

アンジェ「なら勝負よ…♪」

プリンセス「うふふ、私だっていろいろ「お勉強」しているんですもの…負けないわ♪」

アンジェ「…それはどうかしら。黒蜥蜴星仕込みのテクニックに耐えられたら大したものよ……んっ、じゅぅぅっ♪」

プリンセス「あんっ、不意打ちだなんて……いいわ、シャーロットがそういう手段を取るなら、私だって…二本入れちゃうから♪」じゅぶっ、ぐちゅっ…にちゅっ♪

アンジェ「んくっ……プリンセスの指が…入ってきて……いいっ…んっ、んぅぅっ♪」

プリンセス「ほぉら、シャーロット…気持ちいい?」

アンジェ「んっ、んんぅ…んっ、くぅぅっ……でもね、プリンセス…私の方が一枚上手のようね…」じゅぶっ、ぐちゅり…っ♪

プリンセス「あっあっあっ……は、あぁっ…んっ、あぁぁっ……!」

アンジェ「ん…ぴちゃ、れろっ……じゅるっ、ちゅく…っ♪」

プリンセス「あっ、あぁぁ…はぁぁぁ……っ…!」

アンジェ「……プリンセス、だーいすき…ちゅっ♪」

プリンセス「…シャーロット、そんなのずる…ぃっ、んぁぁぁっ♪」

………
148 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/07/09(月) 01:41:14.92 ID:2yBp7old0
…後日…

プリンセス「…ドロシーさん、少しよろしいですか?」

ドロシー「んー?」

プリンセス「いえ……この間はドロシーさんのおかげで、大変に素敵な時間を過ごさせていただきました」

ドロシー「あぁ、あれか…お役にたてて良かったよ♪」

プリンセス「ええ。そのおかげで数日に一度とはいえ、わたくしも心ゆくまでアンジェを堪能できるようになりました///」

ドロシー「……あー、それは…その……まぁ、よかったじゃないか」(あれから一週間経つか経たないかの間で「数日に一度」って……ちょっと多くないか…)

プリンセス「ええ、ふふっ…アンジェとの甘い時間が待っていると思うと、どんなことでも頑張れそうです♪」

ドロシー「ははっ、それは頼もしいな……悪いけど、ちょっと野暮用を思い出したから失礼するよ?」

プリンセス「ええ、それではまた…ごきげんよう♪」

ドロシー「ごきげんよう……はたしてアンジェの奴はどうなってるやら…入るぞ?」

…アンジェ私室…

アンジェ「……おはよう、ドロシー…」

ドロシー「おはようさん……どうした?」いつも通りポーカーフェイスのアンジェ…が、長い付き合いのドロシーにはピンと来た……

アンジェ「…何が」

ドロシー「しらばっくれるのはよせよ…休日とはいえ、こんな時間になってまだベッド、おまけに顔を赤らめて……なにをそんなに恥ずかしがってるんだ?」

アンジェ「それは…あなたには関係ない事よ///」

ドロシー「はぁーあ……いつぞやの時はどこかの誰かさんのために、援護に飛び出してやったのになぁ……」

アンジェ「それは任務の上でしょう……だいたいドロシーに話すような事柄ではないわ」

ドロシー「私に話すような事柄じゃないってどうして分かるんだ?」

アンジェ「…私個人に関わることだからよ」

ドロシー「ふぅーん、そっか…私は家庭の事情までしっかりアンジェに知られてるって言うのに、アンジェは情報のきれっぱしも教えてくれないのか…スパイ同士とはいえアンジェは戦友……対等な関係だと思ってたのになぁ…!」

アンジェ「しつこいわね…」

ドロシー「そりゃスパイだからな…で、何があったんだ?」

アンジェ「ふぅぅ…いいわ、どうしても聞きたいようね……」

…数分後…

ドロシー「……なるほどな」

アンジェ「これで満足したでしょう…///」プリンセスとの関係は抜かして、ベッドの上でのことを簡単に話した…

ドロシー「ああ、満足したぜ……それにしてもアンジェ、お前がそんな甘ったれた言葉を使えるとはな…♪」

アンジェ「…もし誰かに漏らしたりしたら、本当に撃つから」

ドロシー「よせよ…私とアンジェの仲だろ?」

アンジェ「そう言う間柄こそよ」

ドロシー「へいへい……にしても、あのプリンセスがねぇ…♪」

アンジェ「……いくら責めたてても「もっとして♪」の連続で…さすがに疲れたわ…」

ドロシー「やれやれ、王室のプリンセスって言うのは色ボケなのも素質の……」

アンジェ「…プリンセスの悪口は聞きたくないわ」

ドロシー「分かったよ……とりあえずお茶でも淹れておいてやるから、顔でも洗ってから来いよ」

アンジェ「……いの」

ドロシー「なに?」

アンジェ「…それが、腰に力が入らないの///」

ドロシー「……プリンセスか…何かと大変な存在だな、ありゃあ…」

………
149 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/07/12(木) 02:55:36.52 ID:VsYf/iSVo
150 : ◆b0M46H9tf98h [saga]:2018/07/13(金) 12:15:59.91 ID:NLI3ntYH0
…case・ドロシー×アンジェ「The other side of the wall」(壁の向こう側)…


…とある日…

アンジェ「それじゃあ、新しい任務の説明をさせてもらうわ」

ベアトリス「またですか…スパイってこんなに忙しいものなんですか?」

ドロシー「いや、本来はじっくり腰を据えてやるものさ……一回の工作に数年かけるなんてざらにあるぞ?」

アンジェ「それだけ王国側の動きが活発だと言うことよ…いいかしら?」

ドロシー「ああ、始めてくれ」

アンジェ「四日前のお茶の時間にも言ったけれど、最近アルビオン王国の市場相場の変動がいちじるしいわ…身近な肉やじゃがいもに始まり、金やケイバーライトみたいな鉱物資源……果ては西インド諸島のシナモンやクローブ、インド産の綿に至るまでね」

プリンセス「ええ、そのようだけれど…それが私たちにどう関係してくるのかしら?」

アンジェ「ええ、実はね……」


…数日前・ロンドン市内の劇場…

アンジェ「はぁ…ロンドンの劇場は、えかくでっけえもんだなァ……おらの村より大きいかもしれねぇだ…」一幕だけ舞台を見て、ホールに出ると丸縁眼鏡で辺りをきょろきょろと見回すアンジェ…制服こそメイフェア校の生徒であることを示しているが、いかにも「おのぼりさん」のような態度は明らかに田舎者丸出しに見える…

老婆「ちょっとよろしいかしら、お嬢さん?」

アンジェ「なんだべな…こほん!……どうかなさいまして///」

老婆「ハンカチーフを落としましたよ…あなたのでしょう?」腰の曲がった親切そうなおばあさんがアンジェのハンカチを持っている…銀髪をひっつめにしていて、十年は遅れている古めかしいデザインの服を着ているが決して身なりは悪くなく、丁寧な口調で品もいい…

アンジェ「ええ、私のです……と言っても『本当は伯父のくれたもの』ですが」

老婆「それはそれは…『ライリー伯父さんも大事にしてくれて嬉しい』でしょうね?」人気の多い場所でランデブーするときには欠かせない合言葉が、およそスパイには見えないおだやかな老婆の口から出てきた…

アンジェ「ええ…それじゃあ『ライリー伯父』によろしく」

老婆「はいはい……失くさないでよかったわねぇ。次は落とし物をしないよう、気を付けて帰るんですよ…お嬢さん」袖の内側ですっとハンカチをすり替えると、それだけ言ってするりと出て行った…

アンジェ「…あんなエキスパートを連絡役に回して来るなんて、コントロールも粋な真似をしてくれるわね……」

………



ベアトリス「えー、あの舞台を見に行ったんですかぁ…私も見たかったのに、アンジェさんが「任務の準備があるから」って……」

ドロシー「おいおい、冗談はよせよ」

ベアトリス「…何がですか?」

ドロシー「ふぅ…ベアトリスがアンジェと鉢合わせしてみろ、きっと愉快に手を振って「アンジェさーん、アンジェさんも舞台を見に来たんですかぁ♪」とか声をかけるに決まってるだろ……あたしらみたいな業界の人間が不特定多数の前で名前を呼ばれるなんて、ちょっとした悪夢だ」

アンジェ「完全に悪夢ね」

ベアトリス「もう…私だってちゃんと「敵監視下にある工作員接触法」を学んでいるんですから、そんなことしませんよぉ!」

ちせ「じゃがベアトリスはまだまだ目線が動いてしまうからの……アンジェどのを見つけたら「見るまい」として余計に挙動不審になるのがオチじゃろう…」

プリンセス「ベアトは素直だものね♪」

ベアトリス「むぅぅ…姫様まで……」

ドロシー「ま、ベアトリスだってベアトリスなりのやり方があるさ…そうへこむなって♪」

アンジェ「……話を戻していいかしら?」



151 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/07/17(火) 01:14:19.10 ID:pfGmhdHc0
ドロシー「お、悪い…それにしても「L」のやつ、今度は「ライリー伯父」さんか……前回は「従姉妹のマリー」だったよな…」

アンジェ「ええ。それで、受け取ったのがこれよ」

ちせ「普通の花柄が刺しゅうされたハンカチーフじゃな…」

プリンセス「あら、でもこんなところに刺しゅうでメッセージが…「私の大事な家族へ、これを見るたびに私を思い出してほしい…L」とあるわね?」

アンジェ「ええ、これが暗号よ……まずはこれがいるわ」ロンドンの地図を取り出すとハンカチを乗せる…紙のように薄い絹のハンカチだけあって、ロンドンの地図が透けて見える……

ベアトリス「わ…下が透けて見えます」

アンジェ「ここで刺しゅうの文字の「私」(My)「家族」(family)「見る」(see)から「M」の左上の頂点を寄宿舎の正門に合わせて「f」と「s」をロンドンの地図を合わせると……」

ドロシー「行きつくのは高級菓子屋だな……まだ新しい店だけど、プリンセスが行きつけにしていそうな店だ」

プリンセス「まぁ、ドロシーさんったら…このお店はまだ行ったことがありませんよ♪」

アンジェ「その事はいいわ……そしてこのメモが…」無秩序にアルファベットが並んでいるメモを取り出した…

ドロシー「『一回限り暗号帳』か…コードブックは?」(※一回限り暗号帳…文字変換のやり方を決める特定のパターンと、そのコードブックになる本をセットにして初めて解読できる暗号)

アンジェ「今回は「アルビオン王国・その正統なる歴史」とか言う、王国におもねる連中の本ね……その三ページ目から始めて、三つ目のアルファベットを逆算して戻す…」

ベアトリス「えーと…それだと最初の文字は「r」になりますね?」

ドロシー「おっ、ベアトリスも暗号が分かって来たな♪」

ベアトリス「当然です♪」

アンジェ「結構…さて、解読が終わったわ」

プリンセス「えーと「木曜日、フィナンシェを買いに行け」ですって」

ちせ「…すまぬが「フィナンシェ」とはなんじゃ?」

アンジェ「フランスの焼き菓子よ…英語のファイナンス(財政・融資)と同じで「銀行」や「小さな金塊」のような意味ね」

ちせ「なるほど」

ドロシー「ちなみにこんがり焼き上がった色と形が「小さい金塊」みたいだから名付けられたんだとさ」

アンジェ「そうと分かればもうメモはいいわ」暖炉にメモを放り込み、きっちり灰になるまで火かき棒でかき回した…

ベアトリス「……ねぇ、アンジェさん」

アンジェ「何?」

ベアトリス「お菓子屋さんに「買いに行け」って言うことは、ちゃんとお菓子も手に入るんですよね?」

アンジェ「でしょうね…それが?」

ベアトリス「もしよかったら…お菓子の方はもらってもいいですか?」

アンジェ「別にいいわよ」

ベアトリス「やったぁ…♪」

プリンセス「ふふ…だったらベアト、わたくしと一緒にお茶の時間でいただきましょうね?」

ベアトリス「……さ、最初からそのつもりでした///」

プリンセス「…あら♪」

ドロシー「ひゅぅ…熱いねぇ♪」

アンジェ「ベアトリス、任務完了まで浮かれないで…プリンセスとドロシーもよ」

ドロシー「あいよ……なぁプリンセス、こりゃあアンジェのやつ…プリンセスとベアトリスの仲むつまじいのに妬いてるぜ…?」

プリンセス「ふふっ…アンジェったら、意外とそう言うところは分かりやすいのよね♪」

アンジェ「……何か言った?」

プリンセス「いいえ♪」

ドロシー「ああ、何にも言ってないぜ……うー、おっかない…♪」

ベアトリス「…ふふ、美味しいお菓子とお紅茶でプリンセスとティータイム……なんて///」

ちせ「洋菓子というやつもなかなか美味であるからな…楽しみじゃ」

………
152 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/07/19(木) 03:52:16.02 ID:JrnunPB8o
153 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/07/20(金) 01:15:25.35 ID:uECM4/980
…木曜日…

ドロシー「さてと、菓子を買いに行くにしてもそこそこ敷居の高そうな店だからな……気の利いた格好じゃないと入れないよな…」濃いチェリーレッドのデイドレスに白絹の長手袋をつけ、パラソルを差している……口の端に浮かぶいつもの不敵な笑みは穏やかで優しい大人の女性の微笑みにとって代わり、いかにも優雅な貴族令嬢に見える…

アンジェ「馬子にも衣装ね、よく似合っているわ」…特徴の捉えづらい地味なクリーム色の地にスレートグレイの縁取りがされた渋いドレスを選び、髪の結い方と眼鏡を変えている…それだけでぐっと印象が変わり、よく見ないとアンジェとは気付かない…

ドロシー「おい、「馬子にも衣装」は余計だろ…アンジェこそ、いつもの冷血っぷりが嘘みたいに可愛いぜ?」

アンジェ「え…ドロシーとはそう言う関係になるつもりはないのだけど…」

ドロシー「おいこら、あからさまに引くなよ……せっかく褒めてやったのに」

ベアトリス「もう、二人ともおふざけはいいですから…ちゃんと準備は出来ました?」

ドロシー「あぁ、大丈夫さ。留守番はよろしくな?」

ベアトリス「はい、おみやげを忘れないで下さいよ?」

ドロシー「へいへい、任しておけって♪」

ちせ「気を付けての」

アンジェ「心配はいらないわ……尾行なら撒けるし、間接護衛の方はお願いね」

ちせ「うむ」

…しばらくして・パティスリー「フルール・ドゥ・リス」…

ドロシー「あら、素敵なお店…ライリー伯父さまが教えて下さっただけのことはありますわね♪」

アンジェ「ええ、そうですね」

ドロシー「んー…でもわたくし、フランス語はあまり堪能ではありませんの……「フルール・ドゥ・リス」ってどういう意味かしら?」

アンジェ「あら、それならブルボン王家の紋章にもなっている「百合の花」という意味ですわ」

ドロシー「それで金百合の花が扉に描いてありますのね…♪」

アンジェ「そうだと思いますわ……いいわよ、尾行はないわ」

ドロシー「…あぁ。これ以上三文芝居を続けていたらじんましんが出そうだ……入るぞ」

アンジェ「ええ…」

店員「ボンジューゥ。ようこそ「フルール・ドゥ・リス」へおいでくださいました、お若いマドモアゼルの方々♪」

ドロシー「メルシー♪」

アンジェ「まぁ、綺麗…どれにいたしましょうかしら?」

…金の縁取りがされたガラスケースにはマドレーヌや艶やかなチョコレートケーキ「オペラ」、フランボワーズのタルトやクイニーアマンが並んでいて、壁には花の活けてある大きな花瓶に、店の標語らしい「幸福な砂糖生活(ハッピーシュガーライフ)」と、ミュシャ風の美人画が描かれたポスターが飾ってある…

ドロシー「ええ、本当に……どれも宝石のようで目移りしてしまいますわ♪」

店員「ふふ、メルスィ…何かご希望があればお伺いいたしますよ?」

アンジェ「ええ、実はわたくし「ライリー伯父」からここのフィナンシェが絶品だとうかがって参りましたの…♪」

店員「……さようでございますか、お目が高くていらっしゃいますね。当店一番の自慢の品でございます」

アンジェ「…ではそれをいただきますわ」

店員「さようですか。ちなみに「お召し上がりはいつ頃」に?」

アンジェ「そう…「きっと明日が晴れたなら」お茶の時間にいただきますわ」

店員「承知いたしました…ではフィナンシェを五つと、店の名刺をお付けしておきます。ライリー伯父さまにもよろしくお伝えください」

アンジェ「ええ、ありがとう」

店員「こちらこそ…では今後ともご贔屓に♪」

アンジェ「ぜひともそうさせていただきますわ……さ、帰りましょう」

ドロシー「おう…やれやれ、のっけからフランス語とはね……違う意味で冷や汗をかいた…」

アンジェ「それにしては悪くなかったわよ」

ドロシー「そりゃどうも。後は持って帰るだけだが……袋ごしでもいい匂いがするじゃないか♪」

アンジェ「今は貴族のお嬢さまなんだから、つまみ食いなんてしないでちょうだいね」

ドロシー「誰がするかっての…!」
154 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/07/23(月) 01:58:03.92 ID:23Rqv0Nj0
ドロシー「…戻ったぞー」

ベアトリス「あ、お帰りなさいっ…それでお菓子は?」

ドロシー「そう焦るなよ…ほーら、いい子にしてたベアトリスにはお菓子をあげよう♪」

プリンセス「ふふっ、ドロシーさんったら」

ベアトリス「わ、美味しそうなフィナンシェですね…さぁ姫様、お茶の準備は整っていますから一緒にいかがですか?」

プリンセス「そうね……二人とも、よろしいかしら?」

アンジェ「構わないわ、私たちに必要なのはお菓子じゃなくて紙袋の方だから…」

ちせ「私は菓子よりも任務の方が重要と分かっておるからの…もし用があるならばここに残るが……」

アンジェ「必要ないわ。これはちせの分よ」

ちせ「そうか…ではさらばじゃ♪」分けてもらったフィナンシェを手早くハンカチに包み、ほくほく顔で出て行った…

アンジェ「ええ、また後で…」

ドロシー「…ねーねー、ドロシーちゃんもお菓子が食べたいよー」

アンジェ「…」

ドロシー「……なんだよ、せっかく空気を和らげてやったのに…で、メッセージは?」

アンジェ「待って…解読できたわ」紙袋ののり付けされた部分を丁寧に剥がすと細長く糊のついていない部分があり、そこに細かく暗号が書きこんである…

ドロシー「相変わらず早いな……えーと「ザ・シティの『アルビオン・マイルストーン商社』より、金の先物取引価格を入手すべし」ねぇ…今回は経済スパイに早変わり、ってわけだ」

アンジェ「ええ。何しろ王国側にある「ザ・シティ」での先物取引価格が共和国に伝わるのはたいてい半日から一日遅れ……王国は検閲や発送に時間をかけることでわざと取引価格の情報を遅らせて、その間に王国系の投資会社を通じて共和国の先物取引市場で商売をし、利益を上げているわ」

ドロシー「…いわゆるインサイダー情報ってやつだな。しかも政府が一枚噛んでやっているんだからタチが悪い」

アンジェ「その通り……しかもこれを主導している「誰か」はかなりの切れ者のようで、いつもこのカードを使う訳じゃない…」

ドロシー「そりゃいっつも未来を予知するような具合にやっていたら、バカでも気がつくってもんだからなぁ」

アンジェ「その通りよ。リストにある商社や投資会社は一見するとそう儲けているようには見えないけれど、よく計算してみるとかなり分のいい利益を得ていることに気づく」

ドロシー「しかしだ…当然その「時差」を使って一山当てようって連中は他にもいくらだっているだろ?」

アンジェ「ええ、もちろん。これまでも冴えた投機家や取引会社の中にはこのカラクリに気づいて、パイにありつこうとした者もいないわけではないわ」

ドロシー「そういう連中はおおかた「不運な事故」でテムズ川にドブン…か?」

アンジェ「いいえ……一部は当人も知りえないうちに手駒として組み込まれて時々おこぼれにあずかり、特に頭の切れる者は内密に王国側の組織へスカウトされているらしいわ」

ドロシー「一見すると前と変わらないのに、実は王国の下請けになっているわけか」

アンジェ「そういうこと。まぁ王国の諜報機関としては楽な副業ね…トップシークレットをはじめとする情報を真っ先に知ることが出来て、自分たちの都合次第で公表するもしないも自由……」

ドロシー「要は山に積まれたカードをめくりながらポーカーをするようなもんだからな…そりゃ笑いが止まらないだろうさ」

アンジェ「だからこそよ。コントロールとしても王国諜報・防諜機関の活動費が潤沢になられては困る」

ドロシー「とにかくこの「商売」は金のかかる商売だもんなぁ…この「素敵なお召し物」にしたって、軽く百ポンドはかかってるだろうし……」

アンジェ「そういう事よ……毎度あなたが請求する車のメンテ部品やパーツ代なんかもね」

ドロシー「そう言うなよ。あの車のおかげで何度任務が成功したことか……」

アンジェ「とにかく、今度の作戦では派手なのはご法度…そして何より頭が冴えていなければいけないわ」

ドロシー「了解、ドンパチは厳禁な」

アンジェ「ええ…という訳で、お待ちかねのお菓子よ。これで糖分を摂取しなさい」

ドロシー「お、ありがとな…うん、美味い♪」

アンジェ「これで頭が回るようになるといいわね…それじゃあ私も……」

………

155 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/07/25(水) 07:50:48.17 ID:AftFpxlpo
156 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/07/26(木) 00:54:57.68 ID:1vlYKvQM0
>>155 見て下さってありがとうございます。暑い日が続きますし、体調には気を付けて下さいね
157 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/07/26(木) 02:06:58.04 ID:1vlYKvQM0
…数週間後「ザ・シティ」の商社…

男「ふむ…君たちが掃除婦になりたいって人だね?」

ベアトリス「はい…張り紙を街で見かけて、それで……」

ドロシー「あたしは牧師から話を聞いてね」

…貧乏な娘の一張羅といった格好で、商社の人事係と向かい合わせで座っているドロシーとベアトリス…年中こうした応対をしている商社の男はさして興味もなさそうに二人を眺めている……そして当然ながらお茶の一杯も出してはくれない…

男「結構。掃除してもらうのはここのフロアと一つ下のフロアだけで、来てもらうのはオフィスの者たちが完全に帰ってから…つまり夜の八時以降になる」

ドロシー「分かってます」

男「ならいい。給与は時間当たり6ペンス…さ、ここにサインして」机ごしにペンと書類を滑らせる男に対し、困った様子のドロシー

男「……どうした?」

ドロシー「いや、あたしは学者じゃないもんで」読み書きができないふりをしているドロシーは、上下逆さまの書類を前に困り果てている…が、すでに逆さまの書類をさっと読み通している……

男「あぁ、書き方を知らないのか。なら名前の所…ここにバツ印を付けてくれればいい。私が代筆してあげよう」

ドロシー「どうも、あいすみませんねぇ…」

男「なに、よくいるんだよ…名前は?」

ドロシー「エマ・ジョーンズ」

男「結構。では「署名…エマ・ジョーンズ、代筆す」と」

ドロシー「どうも、ありがてぇこってす」

男「いいんだ……なぜか知らないが、今まで雇っていた掃除婦が二人ばかり急に辞めちゃってね」

ドロシー「へぇー…?」(そりゃこっちがそうなるよう仕向けたんだからな…)

男「だからちょうどよかったよ…明日から来てくれ。裏口の警備員には君たちの事を話しておく」

ベアトリス「…は、はい」

男「緊張しなくたっていい、単に掃除をするだけだ…ただし机の上の物はいじったり盗ったりしないように……そういうことをすると警察に突きだすから、よく覚えておいてくれ」

ベアトリス「ひっ…!」

男「じゃあこれで……さ、帰ってくれ」

ドロシー「ありがとうござんした」…下町にある薄汚い下宿の裏口へ入ってしばらくすると、薄汚れた「メイク」(灰と土埃に少しの古い油を混ぜたもの)を落として髪型をもとに戻し、制服に着替えた二人が表から出てきた……手には「恵まれない婦人たちへの愛の寄付を」などと書かれたリボンが巻いてある、柳のカゴを持っている…

ベアトリス「…ずいぶんすんなりいっちゃいましたね?」

ドロシー「ああいうインテリ連中は「無学で読み書きも出来ない」って聞くと油断するのさ……そもそも時間当たりの給与には「10ペンス」って書いてあったろ?」

ベアトリス「私も気づきました…言いませんでしたけれど」

ドロシー「ああ、さっきのは利口だったぜ……もっとも言ってみたところで、あちらさんも「手数料」だとかなんとか、上手い言い訳は作ってあるだろうけどな」

ベアトリス「それにしても都合よく二人辞めているなんて…幸運でしたよね」

ドロシー「はは、この業界で「幸運」があることなんて滅多にないさ……今回のもこっちの仕込みだよ」

ベアトリス「…え?」

ドロシー「そうやってベアトリスは表情に出やすいからな…ちょっと言うのを忘れてたよ♪」

ベアトリス「それじゃあ…」

ドロシー「前の掃除係だった二人には、片方が「遠縁の親戚の遺産」が転がり込んだから……もう片方にはコントロールが割のいい働き口を斡旋してやった」

ベアトリス「…」

ドロシー「そう言う顔をするなって…いきなり遺産が転がり込むなんて「リアリティに欠ける」から、強盗に見せかけてバラしちゃう案もあったんだぜ?」

ベアトリス「だ、ダメですよそんなの!」

ドロシー「ああ、死人は必ず「誰かの注意を引く」からな…だからコントロールも百ポンド近い出費にゴーサインを出したのさ」

ベアトリス「……そもそもお金と人の命って、釣りかえの効くものなんでしょうか?」

ドロシー「少なくとも、この業界ならある程度はね……ま、明日からはよろしく頼むな」

ベアトリス「はい」

158 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/07/28(土) 01:33:55.44 ID:Sr3hIotA0
…寄宿舎…

アンジェ「その様子だと上手く行ったようね?」

ドロシー「そりゃあ「細工は流々」ってところさ……ちなみに明日から来てくれ、だと」

アンジェ「なら授業を終えたらすぐ行かないといけないわね」

ドロシー「ああ。尾けられていないかどうかも確認しなきゃならないし、着替える必要もあるもんな」

アンジェ「そうね」

プリンセス「気を付けて下さいね、ドロシーさん……ベアトもよ?」

ベアトリス「はい、姫様///」


…次の晩…

ドロシー「こんばんはー」裏口の脇にある警備室をノックするドロシー…中では警備員が二人、小銭を賭けたトランプに興じている……

警備員「…あー、あんたらか。話は聞いてるからとっとと行きな」

ベアトリス「よろしくお願いします」

警備員「ああ」

警備員B「…おい、お前の番だぜ?」

警備員「分かってるよ。ハートの4だ」

警備員B「ハートの4だって?…へへっ、それで上がりだ」

警備員「ちっ…じゃあもう一回」

ドロシー「……それじゃあ「メアリー」はそっちをよろしくね」掃除用具入れを漁って、モップとバケツ、ちりとりに箒を取り出す……箒とちりとりをベアトリスに渡し、水を含むと重くなるモップとバケツを受け持ってやるドロシー…

ベアトリス「分かりました」

ドロシー「……言っておくが、少なくとも数週間は掃除だけだぞ…相手が気を緩めるまで待つんだ」

ベアトリス「…分かってます」

ドロシー「ああ……それじゃあここから始めるわよ?」

ベアトリス「はい、分かりました」…プリンセスのお付きだから…という訳でもないが、てきぱきと手際のいいベアトリス……

ドロシー「…本当にそう言うのが好きなんだな」少しからかいながらも、感心した様子のドロシー……モップの柄の先端に両手を乗せて、その上にあごを置いている…

ベアトリス「そうですね……って、少しは手伝ってくれませんか?」

ドロシー「はいはい、分かりましたよ…っと」いかにもおざなりな態度でモップがけを始めるドロシー…

ベアトリス「全くもう。いくら何でももうちょっとやる気を出して下さいよ……」

ドロシー「…言っておくけどな、この掃除の仕方にも結構コツがいるんだぜ?」

ベアトリス「え?」

ドロシー「普通さ、スズメの涙みたいなやっすい賃金で雇われた貧しい娘っこがやる気なんか出す訳ないよな?」

ベアトリス「ええ、まぁ…」

ドロシー「だからさ、あんまり綺麗にしすぎると怪しまれるんだよ…「こんな真面目に働くなんておかしいぞ?この娘っこは窃盗団の下見役じゃないか」とか何とか……要は「裏」があるんじゃないか、って」

ベアトリス「なるほど」

ドロシー「かといって不真面目過ぎてもいけない…クビになっちまったら元も子もない」

ベアトリス「それじゃあ、そこまで考えて…?」

ドロシー「そういうこと……ま、そこそこ手抜きした方が楽でいいって言うのもあるけどな♪」

ベアトリス「やっぱり手抜きなんじゃないですか…」

ドロシー「そう言うなって。あと、紙くず入れは私がやるよ」

ベアトリス「分かりました」

ドロシー「……どんな情報が書いてあるか分からないからな」

………
159 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/07/28(土) 15:30:11.53 ID:mLoLCUb4o

1もお気をつけて
160 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/07/30(月) 00:07:07.75 ID:5ZesipIh0
>>159 ありがとうございます。次回の投下はまた数日後になってしまうかもしれませんが…
161 : ◆b0M46H9tf98h [sage saga]:2018/07/30(月) 01:08:36.98 ID:5ZesipIh0
…一か月後・「アルビオン共和国文化振興局」事務所(コントロール)…

L「…それで、エージェント「D」(ドロシー)は食い込みに成功したのか」

7「はい。レポートによりますと警戒は緩んでいるとのことです」

L「そうか…時間がかかるのは致し方ないが、我々がこうしている間にも向こうは着実に活動資金を増やしているのだ。あまり差をつけられたくはない」

7「はい」

L「…おまけにこちらには何かと首を突っこみたがる「ジェネラル」をはじめとした軍部のこともある……おかしな話かもしれんが、無理解な同国人よりあちらの同業者の方がまだましな気がするな」パイプをくゆらせながら渋い表情の「L」…

7「ええ」

L「基本的に軍人はこうした活動に向かんのだ。この世界は「敵と味方」に分けられるようなものではなく、引き金を引いて銃剣突撃を敢行すればいいものでもない……」

7「分かっております」

L「しかし軍人は常に単純だ…敵・味方ははっきりしているし、より大きい大砲をより多く持っている方が勝つ」

7「ええ」

L「そして「男は勇敢に戦い、女はそんな男のために裁縫と料理をしていればいい」と思っている…」

7「ですから私もクビになりかけました……女はタイプを打つ程度の能力しかないのだから引っ込んでいろ、と」

L「うむ…だが私はそうは思わない。共和国人でも裏切り者はいるし、王国の人間だからとてすなわち敵ではない…物事にレッテルを張ってひとくくりにするのは簡単でいいかもしれない……が、私はそうはせずに全ての物を「疑惑の目」というふるいにかけ、残った真実のかけらを集めて鋳造するのだ…まるで砂金掘りのようにな」

7「なるほど」

L「すまんな…君にもやることがあるだろうに、少ししゃべり過ぎた」

7「いいえ、大丈夫ですわ」

L「うむ…ところで今度の予算の件だが……」

………



…数日後…

アンジェ「……そろそろ行動に移れと言ってきたわね」

ドロシー「ああ」

アンジェ「出来そう?」

ドロシー「そうだな…そろそろいいだろう」

アンジェ「結構……欲しい情報はあちらの「買い」と「売り」の情報よ」

ドロシー「ああ、分かってるさ」

アンジェ「繰り返しになるけど銃も殺しも…はたまた派手な爆発も無しよ」

ドロシー「任せておけ。髪の毛一筋だって残しはしないさ♪」

アンジェ「ええ、そうしてちょうだい」

ドロシー「ふー、これでモップだの雑巾だのからおさらばできる目途がついた…ってわけだな」

アンジェ「何を勘違いしているの。急に辞めたら怪しまれるから、しばらくはそのままよ?」

ドロシー「そのくらい分かってるさ……だけど目安にはなるだろ?」

アンジェ「それはそうでしょうね」

ドロシー「だろ…もっとも、ベアトリスは案外気に入っているみたいだけどな」

アンジェ「そのようね」
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