淫魔の国と、こどもの日

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199 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2018/05/25(金) 07:03:08.32 ID:go34Zxb90
サキュAエロの補充しにきました
200 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/05/25(金) 09:37:24.59 ID:yRwiI5YSO
Bに甘やかされたい人生だった…
201 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/05/25(金) 23:36:03.49 ID:KF+q9nyDO
Cに美味しいケーキ差し入れしてなかなか気が利くじゃねーかって言われたい
202 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/05/26(土) 02:08:43.48 ID:3ltYXf/90
遅れた、遅れた

投下始めます
深夜二時に

>>199
もうちょい後になるんだ、済まない
203 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/26(土) 02:09:18.38 ID:3ltYXf/90

*****

???「ほほう……堪らなく良い。この……頼りない軽さ……腿から伝わる、柔な感触……」

勇者「……おい、もういい、だろ……!?そろそろ……!」

???「急くでない。其方こそ……堪能せぬか。罰当たりじゃの」

勇者「……っ」

がら空きの店内に漂う優艶な香が、その場を包む
人里離れた化生の庵に漂う空気に似たそれは、淫魔のそれとは違う……香木を炊く事で放たれる純粋な物質界の芳香だった。
その中で勇者は、店内の一角で、芳香の主の膝にちょこんと座るように身を預けながら話す事となっていた。

???「ああ、愛い……愛いぞ。この、汗くさく埃っぽい頭皮の薫り……脳髄の奥までとろけるようじゃ……」

膝上に座る童を愛でるように頭を撫で、鼻先を寄せてくんくんと匂いを嗅がれるこそばゆさと気恥ずかしさを覚え
歯痒さを堪えている勇者の目に映るのは獣毛に覆われたいくつもの黄金の尾。
それらが視界の端でわさわさと蠢き、もふ、もふ、と膝小僧や腕に触れ、足が届かずぷらぷらと投げ出しているスネに巻きつき、くすぐる。
204 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/26(土) 02:10:07.00 ID:3ltYXf/90

???「この体毛の少なさといい……人間の童は一番よ。何とまぁ、愛い。この骨ばった膝も……
     嗚呼、ずっとこのままでも構わぬのに。何故に時など流れるのじゃ」

勇者「っ……だから……!」

抗議の声を上げようとすれば、指の一本一本までが細く、ひんやりとした手で目隠しをされる。
更に、睫毛を指の腹で撫でるようにさわさわと撫でられると……眠気を催すような、涼やかな風がそよぐ錯覚すら起こる。
遠い世界の果ては吹き飛ばされ、風に弄ばれるような心地を起こさせるのは――――獣毛の尻尾の愛撫によるものだ。
もはや、自分の体勢すら意識できない。

???「……くふ。どうした?少しぐらいは抗ってみせい」
205 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/26(土) 02:10:48.54 ID:3ltYXf/90

*****

――――話は、ほんの二十分ほど前に遡る。
“狐の酒場”まで辿りついたところでサキュバスAは別口を少し当たると言い残して去り、勇者は一人で聞き込む事になったのが発端だ。
酒場へ訪れても当然営業時間外だったものの、奇怪にも扉は開いており、呼びかけとともに扉をくぐる。
その店内には……見慣れない姿があった。

一番奥の席で、すっかり客の引けた店内の静けさをものともせずに……指先でつまめるほどの、
硝子細工の器を啄むように彼女はひとり嗜んでいた。

入り口の窓から洩れてくるかすかな日差しを受け止め愛でるように、薄暗い店の奥で。
琥珀色の瞳は哀愁に沈んだように潤み、吸い込んだ酒の一口一口に嘆息する儚げな美貌を浮き立たせる。
薄暗い遠目でも見てとれる、重厚な絹を幾重にも織り金銀の糸で刺繍したそれを――――さらに幾重にも重ねて着る、見慣れぬ装い。
長い裾から微かに覗く足首の白さと、指で作る輪に収まってしまうような細さが目を奪う。
澄み渡る、その透明感ゆえ金とも銀ともつかぬ髪がほのかな風に揺れ、ゆっくりと彼女は振り向いた。

???「おぅ……?済まぬな、童。開けてはおらぬ。それに……此処は童の入る場ではない。
     迷うたか?ならしばし待たせてやらぬでもない。座るが良い」
206 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/26(土) 02:11:41.50 ID:3ltYXf/90

柔らかさの中に格調を感じさせる、細面の吊り目を引き絞り、瞬く。
それだけの仕草が誘因するような、抗えない感覚をも引き起こし――――しかしすんでのところで気を取り直し、椅子を引き、彼女の対面へ座る。

???「……ヒトの童が何故かような地へ。癖の悪い夜魔どもの慰みか?まったく、せわしないの」

勇者「あ、いや……俺は。それより、いつもの給仕は……?」

???「さての。その口ぶりだと一見客ではないか?折角じゃ、付き合え、童」

通りに面した扉と、窓から差し込む日が届いてこない最奥の席が彼女の輪郭をおぼろげなものにする。
気付けば勇者の目の前に小さなグラスが置かれ、その中を透明な液体が満たしていた。
鼻を寄せれば、甘みの強い酒精の香が立ち上るのが分かる。
穀物の発酵臭にかすかに顔をしかめれば……目の前の奇妙な“客人”が、更に目を細め、愛おしむようにじっと見つめている事に気付いた。
その視線は、さながら――――籠に閉じ込めた小さな鼠が懸命に餌をかじる様子でも見ているような悦楽、そして慈しみに溢れていた。

視線に呑まれるようにグラスに口をつけ少量吸い込むと、口の中を、芳醇な甘さが覆い尽くす。
その甘さに覆い隠されてはいても、酒精は高く……まだ飲み込んでなどいないのに、カッと体が熱くなるようだった。
207 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/26(土) 02:12:40.09 ID:3ltYXf/90

勇者(……何だ、今……)

最初の一口を飲み込むと、視線がぐらりと揺れた拍子に奇怪なものが見えた。
それは、彼女の背後に揺れ蠢く数本の影だ。

???「……ほう、まさか飲み下せるとは。いけるのぅ、童。気に入ったぞ。そぅら……褒美じゃ。こちらへ来やれ」

この姿で酒を入れたせいか、それとも……目の前の“魔性”から漂う妖艶な色香の所業か。
ふわり、ふわり、と、まるで漂うように招き寄せられ――――抱え上げるように、勇者は今まで座っていた席を対面に望んでいた。
下肢から伝わるのは、危険なほどに柔い太ももの弾力。
もしも頭を預けたのならば……二度と起き上がる事ができなくなってしまうのではないかとすら思えた。
重厚な絹の装いからは、炊き締めてまとわせた香木の匂いが更に深く嗅覚を惑わせる。

勇者「だから、……貴方は……いったい……」

???「……いや。名乗るまいて。時には、何者でもなき一時も欲しゅうなるもの。ましてそれがやんごとなき……いや、忘れよ。それにしても……」

上気したように赤みを帯びた手が、ゆっくりと、勇者の顎、頬とさするように撫でた。

???「愛いのう。……実に、愛い」
208 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/26(土) 02:13:52.24 ID:3ltYXf/90

*****

そして時は、今へ戻る。
それからというもの、足を組み換える事すら許されないまま、ひたすら膝の上に抱かれ、
弄ぶように撫でられながら、彼女の“肴”となっていた。
卓上の小瓶からは無限のように酒が注がれ、硝子細工の杯を何度も傾け
彼女はそれを乾すと、喉に笑いを潜めながら満足げに勇者の頬を、顎を、頭を撫でた。
装束から漂う媚香と酒の匂い、そして、日差しを浴びて手入れされた毛皮のような甘酸っぱい香りに、思わず身震いする。
彼女の太腿から伝う体温が、更には――――股間を持ち上げる。

???「くふ……あまり、もぞもぞするでない。尻癖を落ち着けぬか。妾とて……妙な気分になってしまうぞ?」

勇者「……そろそろ、下りても……」

???「嫌じゃ」

勇者「嫌、って……」

???「嫌じゃ。絶対に嫌じゃ。妾の膝から下りたいとな?無礼者め。無礼な童は……こうしてくれようぞ」

勇者「っわ……!?」
209 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/26(土) 02:15:30.40 ID:3ltYXf/90

膝の上からテーブルに正対する姿勢が、真横へ傾けられる。
そうさせたのは腕ではなく、彼女の持つ数本もの獣の尻尾によるものだ。
気付けば左を向けられ、視界には板壁があるだけで――――更に、
背をもたれさせるように支える尻尾が段々と傾き、視線は天井へと移っていく。
やがて、天井と、“獣の魔性”――――彼女の細面を同時に視界に捉える。
ほぼ寝そべるほどまでの体を支えるのは……城の寝台に劣らぬ寝心地の三本の尻尾が、背中を。
そして太腿に尻を支えられ、脚にも更に一本の尻尾が支えに入る。
そうなってから、ようやく――――彼女の頭部がはっきりと間近に見えた。
頭頂部近くにぴょこんと鋭く突き出た、二つの長い耳がぴくぴくと蠢く。

勇者「……狐?」

???「……ほう、童。妾の耳が見えるか?面白い。……それよりも、気の利いた事ぐらい言えぬか」

酒精を含んだ甘い吐息をかけられ、目を閉じた刹那――――背を預ける尻尾が柔らかくうねる。
矮躯をぴったりと包み、受け止め、雲の上にいるかのような心地良さに……ようやく、気付いた。
傾けた彼女の頭から垂れる、細い金糸のような髪が頬を撫でる。
それは、夢の世界へ誘うような上質の愛撫。

???「……ふふ、眠りたいか?どれ……あぁ、しかしじゃ。こちらは……まだ起きていたいとな?」

一抹の涼しささえ感じないままだった。

“彼女”の指が、そこを……優しく、直に、捉えたのは。
210 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/26(土) 02:22:47.93 ID:3ltYXf/90
今夜分終了

>>198
やるとしたら、多分pixivの方に短編でやるかもしれません


それではまた明日か、明後日への変わり際にお会いしましょう
211 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/05/26(土) 03:11:54.61 ID:mwuLk6GT0
新キャラからのオネショタ…しかも狐っ子だと…神過ぎる
212 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/05/26(土) 07:36:53.75 ID:gQeIqCwAO
もふ神様キター!乙乙
213 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2018/05/26(土) 12:46:41.10 ID:8GBFImU70
ポチが言ってた狐の女将さん?
214 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/05/27(日) 23:57:20.23 ID:wBqm68ka0
こんばんは
始めるぞ
215 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/27(日) 23:58:08.97 ID:wBqm68ka0

???「何と、慎ましくも逞しい萌芽よな。今にも眠りそうな主人とは違うの」

いつの間に――――と声を上げる間もなく、彼女は露わになった“それ”を手で優しく触れた。
ぴんと反り立ったそこを文字通り手中に納めて、手の中で暖めるように包み込んで嘆息する。
紅を引いた唇を引き絞り、口角を持ち上げて目を細める表情は……彼女の持つ耳と相まって、ますます“その動物”に似る。

???「ほう……。熱いのぅ。それに……夜魔の匂いが濃い。童、よもや……吐き出したのかの?酷い目に遭うたようじゃ。
     ……あぁ、起きんでよい。楽にせい、目を閉じよ」

包み込まれた手の内で、むくむくと更に血が滾り、起き上がっていく一方、勇者の頭の方は、
右手に再び持った杯の縁で小突かれるように
三本の太く毛量の多く詰まった尻尾のベッドへ預けさせられた。
首を優しく支える尻尾から、くすぐったさは覚えない。
滑らかな絹のような心地良さだけが、ただあった。
背を支える尾は体重を全て受け止めながらにして、背骨に沿うよう柔らかく沈む。
自然と肩が開き、軽く胸を張るような寝姿へといざなわれ――――肩口の血の巡りを妨げないよう
微細な心遣いが毛の一本一本、さらにはその先にまで張り巡らされていた。
216 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/27(日) 23:59:39.77 ID:wBqm68ka0

???「くふ。寝心地は如何じゃ?それ、こちらも……そろそろ、慰めてやろうの」

右手に酒杯を持ち、尻尾で勇者の体を受け止め、横たえて――――そして左手は、
膝の上に預けられた小さな下肢の小さな情欲を捉えて離さない。

勇者「っう……!」

???「痛くなどなかろう?妾の手管ぞ。お主はただ楽にせい。……それ、こうか?」

左手の中に包み込まれていたそれが――――尖端の包皮を一息に剥かれながら、彼女の指の合間を抜ける。
鮮やかな桃色の亀頭に彼女は目を見張ると、喉をこくりと慣らし……親指と人差し指の間を抜けたそれを、ゆっくり、上下に扱いていった。

それは、雲霞がおぼろげに形を成し、その中に包まれ、無に還されるような快感だった。
有るのか、それとも、無いのか。
小さな欲の茎が、今もそこにあるのか。
既に射精に至ったのか、吐いている最中なのか、それとも、まだなのか。

そんな――――魂そのものを絡め取られるような、絶妙の手技を与えられていた。
217 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/28(月) 00:00:53.50 ID:eVu8RPoA0

???「嗚呼……何と、愛いのじゃ。斯様に汗を滲ませて……我慢などしなくてよいのだぞ?いくらでも吐くが良い。
     妾が、直々に……この手で受け止めてやろうとも」

勇者「……ぅ……!くっ……はっ……」

???「これ、堪えるなと言っておろう。聞き分けの悪い耳は……こう、じゃ」

にわかに、ぐぐっ、と上体が持ち上がるのを感じる。
尻が彼女の太ももから浮くか浮かぬかの高さになった時……不意に、甘やかな酒気を帯びた吐息を近くに嗅ぎ取る。
その吐息を耳朶に感じた、直後――――左耳が湿り気のある水音に閉じ込められ、微かに尖る硬質の何かがゆっくりと耳朶を挟んだ。

???「く、ふっ……どうじゃ……?云う事を聞けぬ悪い耳は……いらぬなぁ?」

勇者は、動けずにいた。
その言葉の恐ろしさからではなく左耳から伝わる、どろりと入り込んでくる沼のような感覚の故に。
恐らくは自身の左耳をすっぽりと閉じて仕舞いこんだ唇。
耳朶の溝を余さず這い、てろてろと滑る長い舌の愛撫。
かり、かり、と軟骨を甘噛みほぐす歯の心地良さ。
耳穴の奥、鼓膜を通して脳にまで流し込まれるような――――彼女の、囁き。

全てが。
何もかもがどうでもよくなるような――――沼に引きずり込まれるような。
雲に連れ去られるような。
五体を蕩けさせられるような、手足を動かす事すらしたくないほどの――――凄まじい快楽に、溺れていた。
218 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/28(月) 00:02:10.39 ID:eVu8RPoA0

???「んっ……!ふふっ、震えて来よった。強情ももはや張れぬぞ。観念して、妾の手を……白く塗りたくるが良い。
     一滴残さず、召してやろうぞ?」

勇者「んっ……はっ……がっ、く……ぅ……!や、やめ……!」

???「止めぬ。妾がこうまでしておるのに……嘆かわしいの。それとも、気持ちよくないのかえ?妾では満足いかぬか?」

捕らわれていない右耳だけが、手淫のかすかな音を拾う。
上下に扱かれているだろう音はほとんど聞こえず――――せり上がるような感覚すら、今はない。
彼女の口振りだけが、未だ自分は達していないという事の証左だった。
もはや、自身の欲棒の在りかさえ。
持ち主さえ誰なのか、分からなかった。

自身の体が今、どこを漂っているのかさえも分からない。

やがて。

???「くひっ……!?……ふ、ははっ……驚いたのぅ。妾の顔にまで散ってしまったではないか。……だが、まぁ。許してやろうかの」

下肢が脱力し、萎えて感覚を失ってしまった。
その一瞬の感覚と、彼女の言葉で――――射精感を伴わない射精は終わる。
219 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/28(月) 00:03:13.92 ID:eVu8RPoA0

霞む視界の中で、今も抱き留めていてくれる彼女の顔を汚す白濁を見てとる。
透き通るような髪に。紅を差した頬に、薄く整った唇に、すっと通る鼻筋に、指で摘まめそうなほどに粘り濁る液が穢していた。
だが、彼女は怒るでもなく長い舌を伸ばし、頬へ垂れてきたそれをぺろりと舐め取り――――。

???「……ほぅ。やはり……童の精は甘露よな。寿命が延びる……。嗚呼、生き返るぞ。ふふっ……妾の面を穢すとは無礼じゃが。
     此度は堪忍してくれよう。美酒に免じてな」

そう告げる間にも、彼女の――――鼻先を舐める事すらできるほど長い赤い舌が、自らの顔にこびりついた精液を舐め取って舌鼓を打つ。
下ろしていた左手は掬い取るように、萎れかけた肉の茎を幾度もなぞり、残滓を集めていく。

やがて、じわじわと……失っていたかのような下肢の感覚が戻ってくる。
霧のかかったような意識も段々と冴え渡り、今の状況もまた段々と掴めてくる。
ここは。
この場所は――――。

狐給仕「ちょっと、師匠!久しぶりに見えたかと思えば何やってんですか、いったい!」

???「ん?おお……何処へ消えておった。これからというに……無粋よな」

勇者「えっ……!」

声に慌ててズボンを引き上げ、声の元へ、未だ尻尾に支えられたまま顔を向ける。
そこには、この場所――――酒場の、もっとも馴染んだ顔が非難するように紅潮した顔を向けている。
220 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/28(月) 00:04:39.18 ID:eVu8RPoA0

*****

狐給仕「……一体何やってんですか。師匠?そもそも勝手に酒に手ぇつけて……」

狐女将「硬い事を言うでない。せっかく久し振りに会うたというに、ぶつくさと垂れるとは実に……なっておらんのぅ」

勇者「……貴方が?」

狐女将「如何にも。妾こそ、この酒場の主ぞ。こうして話すのは初めてじゃのう。……のぅ、この国の主殿?」

勇者「気付いていた?……ならどうして……!」

狐女将「いや、何。よもや……そういう遊興(ぷれい)なのかと思うてな。忍びで城下に下りては、夜魔どもに絞られる趣味でもあるのかとな。
     許せ主殿。これ、この通り」

そう言う割には彼女は頭を下げず――――どころか、椅子に身体を預けたまま、杯を更に一口啜る不遜さを見せた。

狐給仕「っ……陛下。この人いつもこんなんなんですよ。この酒場を開く時だって……どんなだったと思います?」

勇者「……どんな……とは?」
221 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/28(月) 00:06:18.64 ID:eVu8RPoA0

狐給仕「酒場を開こう、と言っといて。いざフタ開ければ師匠は料理もできない、酒も仕入れられない。
     “持て”と言いつければ誰かが捧げてくれると思ってたんですよ。この女狐」

狐女将「女狐はそなたもじゃろう。何と口の減らぬ事よ。妾は哀しいぞ」

狐給仕「おまけに開店直後に即隠居、顔を見せれば飲み潰れる。挙句の果てには“ここがようない”、“この酒は不味い”のなんのと。
      出す金以上に口を出す見下げ果てた大酒飲みなんですよ」

狐女将「しかし、繁盛しておるではないか。妾の薫陶の賜物かの」

狐給仕「……ほらぁ……。何言っても応えないんですよ、この人……毒牙にかかるトコでしたね」

狐女将「褒めるな。何も出ぬぞ?」

内心、彼女のこの手応えのなさに既視感を覚えながら勇者はようやく思い出す。
この酒場に来た目的を。
222 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/28(月) 00:07:08.32 ID:eVu8RPoA0

勇者「そうだ。……聞きたい事があったんだ」

狐給仕「はい、何ですかね?」

勇者「昨日サキュバスAに分けたという肉について、知りたい。あれはもしかして……」

そう。
――――この姿になる前日の事。
名状しがたい“何か”から液を浴びる寸前、偶然に立ち寄ったこの店で舌鼓を打った。
狐給仕いわく、“これ以上なく上質な仔豚”と云われ、思わず釣られて入ったのだ。
出されたのは分厚く切られた、鉄皿の上で脂の焼け爆ぜる音を軽快に奏でる単純な仔豚肉のステーキだ。
確かに彼女の言う通り、ナイフで触れるだけで切れる特上の柔らかさは――――この国でさえ食べた事のない逸品だった。

狐給仕「ああ、あれ。陛下が召し上がったのと同じ仔豚です。まだいますよ」

勇者「やっぱり。…………待った。今、何て言った?」

狐給仕「? ですからまだいますよ、その仔豚」

勇者「……何頭残ってる?」

狐給仕「え、最初から一頭だけですけど。どうか?」
223 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/28(月) 00:07:43.55 ID:eVu8RPoA0

捌いた肉そのものがまだ残っているというのなら、そんなおかしな表現は使わない。
複数頭いたうちの残りというなら、彼女の言葉がますます不自然だ。
ただ頭の上に疑問符を浮かべるだけの応酬に、勇者も、狐給仕も、どちらも次の言葉が思うように浮かばず。やがて――――

狐給仕「あ、そうか!陛下、ちょっと待ってて下さい。今連れてきますから」

勇者「連れ……?」

狐女将「全く、忙しい奴じゃ。のう?主殿。せっかくじゃ。もう少し堪能させぬか。童の……陽のような匂いは堪えられぬわ」

勇者「……俺は元に戻りたいんだ」

狐女将「ほう?勿体ないのう。その齢よりやり直すも良かろうに。……“若返り”を追い求めて、定命の者らがどれだけ血眼を上げたと?」

勇者「そんなものはいらない。俺は……やり直したくない。過ごした時を、無かったことになんかしたくない」

狐女将「……頑迷よの。だが、好ましい。それでこそよ。なればその暁には。……妾を、さぞや……乱れさせてくれような?」

224 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/28(月) 00:08:49.91 ID:eVu8RPoA0
今夜の分、投下終了です

ではまた
また!
225 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/05/28(月) 00:23:22.61 ID:8iaeeJdLo
お疲れ様です
226 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/05/28(月) 01:56:22.58 ID:3bZETekMo
狐は最高だ
227 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/05/28(月) 02:19:45.94 ID:5jIZQa+50
228 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/05/28(月) 11:44:13.15 ID:5/PNrnvoo
エッッッッッッッッ
229 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/05/28(月) 17:46:43.12 ID:PBockNKio
ッッッッロ
230 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2018/05/29(火) 09:41:28.31 ID:XbTogL4X0
今って2日に1回でおけ?
231 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/05/29(火) 23:37:23.15 ID:Fw3tchmF0
なんか今回は基本二日に一回、稀に連日投下できたりという感じになっておりますね気付けば

投下始めたいと思います
232 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/29(火) 23:41:10.11 ID:Fw3tchmF0

*****

サキュバスC「ん、よォ、お帰……って何だオイ、何連れて帰ってんだ。拾ったか?」

勇者「いや。……少し信じがたいんだ。“彼”は……」

城へ戻った勇者とサキュバスAを真っ先に見つけたのは、堕女神ではなくサキュバスC。
彼女は出迎えたと言うよりは、ふらふらと出歩いているうちに偶然鉢合わせたという風情で――――サキュバスAの携えた綱の先をちらりと見る。
そこには、まるまると肥えた“仔豚”が繋がれていた。

サキュバスC「……ふーん。そっかそっか。エラいなぁ、坊主。“夕飯のおつかい”成功かぁ。撫でてやろっか?」

勇者「…………はぁ。言うと思った。絶対言うと思ったんだ、お前」

サキュバスC「ンっだよ、付き合い悪ぃなぁ。んで何だよ、マジで」

サキュバスA「この子はね。――――昨日食べたお肉よ」

サキュバスC「……はァ?食べ、って……生きてんじゃんソイツ。イミわかんねぇよ」

勇者「……あぁ、俺もだ」
233 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/29(火) 23:41:57.48 ID:Fw3tchmF0

勇者に振る舞ってくれた仔豚肉。
サキュバスAが持ち帰り、淫魔二人と堕女神で肴にした肉。
そのどちらも――――紛れもなく、“この仔豚”の肉だったというのだ。

だが今、当の仔豚は鼻を鳴らしてサキュバスAの足もとをうろうろ歩き回り、つぶらな瞳を輝かせながら、刈り込まれた芝の上に蹄の痕をつける。
つやつやとした毛並みには傷一つなく、先の言葉が冗談としてすら成立していないのも明らかだ。

狐給仕の語るところによれば、この豚は、狐女将が近郊で見つけて連れてきたという。
花見酒を楽しんでいた彼女が手土産にと捕まえ、連れてきていざ狐給仕が捌いて調理すれば、驚きだった。
その肉質も味も、かつて味わった事がないほどに柔らかく、濃く、骨からは上質のスープが取れたと。
どの部分を調理しても無類の味わいとなって、更には。
――――“減らない”のだ。

サキュバスA「彼女曰く。調理した翌日の朝には復活。どれだけ肉を切り取っても朝には元通り。“いくら食べても減らない無限の肉”だそうね」
234 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/29(火) 23:42:44.11 ID:Fw3tchmF0

サキュバスC「……お前、なんてモン食わすんだよコラ!」

サキュバスA「あら、美味しかったじゃない?」

サキュバスC「味の問題じゃねぇだろ!怖ぇーよ!ンな不気味なモン食わしやがって……っ……うぇっ」

サキュバスA「今さら吐いても多分出てこないわよ。観念して消化なさい。……それと、安心して」

サキュバスC「あァ?」

サキュバスA「私が平気なんだから、貴女も平気のはずよ。でも、そうね。……平気じゃなかったコがここにいるわね」

サキュバスC「……あぁ、なるほどね?」

勇者「俺か。でも……本当にその肉のせいだったと?」

サキュバスA「ええ、間違いなく。……いくつか伝聞との食い違いはありますわね。それ以外はおおむね……
         上質の豚肉、いくら切り取ってもなくならず、いくら食べても元通り」

235 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/29(火) 23:43:30.68 ID:Fw3tchmF0

淫魔二人は何ともなく、人間である勇者と、神性存在、堕女神だけはこうなってしまった。
その正体にサキュバスAだけは気付いているようで――――節回しはどこか楽し気でもある。

サキュバスA「推察するに、この仔豚……淫魔の国の存在ではありません。陛下はきっと、人界で聞いた事がおありでは?」

勇者「……人界、で?俺が……?」

サキュバスA「ええ。恐らくは極地。氷雪の島々にて」

勇者「……待て。待てよ……そうだ、確か……ある。聞いた事がある」

――――人間界を旅していた頃、世界の各地を回った。
武具を求めて、魔法を求めて、伝承を求めて、あらゆる土地の人々と触れ合い、知り合った。
その折いくつもの神話と民話を、いくつもの篝火と焚き火を囲み聞いた。
数々の口伝の中に――――彼女の言葉で絞り込めたものがある。

氷の島々の屈強な戦士達から大杯の酒とともに振る舞われた、彼らの信じる伝説、神話だ。
戦場で死した真の英雄は見初められ、戦神の軍団として戦う栄誉を得るという。

勇者「……“宴の翌日には生き返る豚”」

その楽園で振る舞われる料理のひとつが、それだ。
いくら肉を切り取ろうとも明朝には復活し、永遠に食べ続けられる、英雄たちと神々をもてなす使命として供される“豚”。
236 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/29(火) 23:44:25.39 ID:Fw3tchmF0

サキュバスA「名答。……私の考えではまさしくそれですわ」

勇者「だけど……そんなものが、本当に……?」

サキュバスA「あら。淫魔や魔王、更には女神までもいたのですから不思議でないでしょう。
         ……しかし、ここにいるのは不可思議ですわね。とりあえず食べますか?」

サキュバスC「……アタシはいらね。パス」

サキュバスA「情けないのね。……ひとまずこの子は厩にでも泊めておくとして……」

勇者「ところで、堕女神は?」

彼女の姿がいっこうに見えない事に気付き、そう訊ねると……サキュバスCは唇を引き結び波打たせ、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。

サキュバスC「あ。……ん〜……」

勇者「まさか、またやらかしたのか?」

サキュバスC「いやァ……からかってやろうと思っちゃいたけどさァ……予定、だったんだけどなァ……んー……」

滅多に見ない――――粗雑で荒っぽく勝ち気な彼女の、困った表情だった。
更には腕組みをしながら当てどなく視線を彷徨わせ、真鍮製の右脚を“仔豚”が嗅いでいても気付かない。
237 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/29(火) 23:45:33.30 ID:Fw3tchmF0

サキュバスC「……アタシに聞くより、あのチビに訊け。多分一緒にいるから……」

勇者「……?」

サキュバスA「貴女の事だから、“背中かと思った”とか“これじゃ駄女神だな”とか“見てて涙が出てくる貧しさ”とか
         “事象の地平線”とか“まな板にメロンの種が載ってる”とか“一夜にして現れた絶壁”とか言ったのではなくて?」

サキュバスC「言うかよ!」

勇者「というか何でそんなポンポン出てくるんだお前は……」

サキュバスA「さておき。堕女神様はお任せしますわ、陛下。私はお暇を。サキュバスC。貴方も一緒に来るかしら?」

サキュバスC「……おぅ」

勇者「……なんだか、いつになっても落ち着かないな」
238 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/29(火) 23:46:30.13 ID:Fw3tchmF0

*****

勇者「……で、調子はどうなんだ?」

サキュバスB「あ、陛下……相変わらず小さくってカワイイんですね」

勇者「もう一発食らいたいんだな?」

サキュバスB「や、やだなぁ……冗談ですって。あ、ははっ……」

勇者「……まぁ、いいか。で……」

戸口に立っていたサキュバスBと厨房を覗けば、見慣れない姿の彼女が――――それでもいつものように励んでいた。
調理台には踏み台を使って覗き込み、沸き立つ大鍋も勝手知ったるように掻き混ぜ、小さな子供の姿になってしまった堕女神が忙しなく動き回っていた。

勇者「いつも通りじゃないか?」

サキュバスB「ええ、何かしてる時はそうなんですけど……手を止めると、ほら」

勇者「ん」
239 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/29(火) 23:47:27.38 ID:Fw3tchmF0

堕女神がふと調理の手を休め、浮かんだ汗を拭うと――――とたんに、表情が曇る。
調理台の高さを、歩幅の小ささを、手の小ささを、信じられないかのように彼女は俯いた。

勇者「……重症だな」

サキュバスB「そりゃ、陛下は……子供の頃に戻っただけでしょうけど。堕女神さまの場合は、ありえないはずの姿になってる訳で……」

勇者「だけ、って事もないだろ。充分異常な……何か言ったのか、お前」

サキュバスB「ええ……色々、フォローはしたんですよ。“ちん○んが生えた訳じゃないんですから、そんなに気にしなくて……”とか……」

勇者「すごいな、全然フォローになってない」

サキュバスB「……CちゃんはCちゃんで、あの様子が気の毒すぎたのか変な空気になって……どっか行っちゃいますし……」

勇者「……うーむ……」

サキュバスB「たぶん、不安なんですよ。言いましたけど、陛下がその姿になったのと違うんですから」
240 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/29(火) 23:48:23.35 ID:Fw3tchmF0

彼女は、今の姿は神位を失った姿であるからだ。
その姿に子供時代などあるはずもなく――――なのに、今、彼女はその特徴を残したまま子供の姿になった。
鴉羽色の髪、赤黒の縦細い瞳、黒い爪。
しかし、子供の姿になった事で――――足元が見えないほどの双丘は姿形もない。
落とした視線は真っ直ぐに足元までを映して、手指と同じく黒い足の爪まで見えた。
思わず吐いた溜め息もまた……真っ直ぐ、足元まで落ちていく。

サキュバスB「陛下。後で……話して差し上げてくださいね」

勇者「勿論だ」

サキュバスB「ほんとですね?お姉ちゃんと約束ですよ?」

勇者「……やっぱり一発張っておこうか?お姉ちゃん」

サキュバスB「いや、勘弁してくださいってば……あれ、起きてからもお尻がぴりぴり痺れてたんですよ……」

勇者「効き目があるなら何よりだ。……それにしても」

――――何を言ってやれるものか、と勇者は考え込み、厨房の小さな堕女神の姿を忘れないように――――その場を、後にする。
241 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/05/29(火) 23:49:16.32 ID:Fw3tchmF0
今夜の分終了

では
242 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/05/30(水) 00:23:45.39 ID:Vvl7FJnf0
乙!
サキュBのフォローがフォの字もなくて笑う。
243 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2018/05/30(水) 01:53:24.25 ID:kbQpvbpx0
サキュバスBにちん○ちんが!?(難視)
244 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/05/30(水) 18:08:57.79 ID:nQV70z3KO
この作者ならやりかねないしAもやりかねない
245 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/05/30(水) 18:59:03.41 ID:LQeoNo7Vo
サキュバスは尻尾を股の間に通すとちん○ちんになるんじゃ
246 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2018/05/31(木) 11:55:21.23 ID:YI765JGPO
でかすぎて伏せ字で隠れてないぞ
247 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/01(金) 11:14:36.81 ID:MMMn3OU10
mixiで紹介されてきました
リアルタイムで見れて感激です
Cが大好きです
248 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/01(金) 13:08:33.85 ID:KaBcPINpo
mixiとかまだ生きてたのか…
249 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/01(金) 16:05:47.43 ID:K9rtyi72O
珍しいルートだねぇ
250 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/01(金) 22:36:27.79 ID:fIQh43W5o
夏休みじゃないだけ静かでいいな
251 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/03(日) 00:07:23.16 ID:2NPOjsgs0
会社 燃えろ

かなり空いたが投下しますー
252 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/06/03(日) 00:09:40.25 ID:2NPOjsgs0

*****

勇者「サキュバスC……結局、笑うだけ笑って帰ったな」

今朝、堕女神までああなってしまった事を彼女は笑えるだけ笑い――――やがて想像以上に重苦しくなった事に耐えかね、帰ってしまったのだ。
それほどまで堕女神は事態を重く受け止め、必死で何かする事で気を紛らわせていた。

そんな彼女とは裏腹に、勇者はこの姿にだいぶ順応する。
疲れはするが体力の回復が驚くほど早く、普段の姿よりも元気なほどだ。
子供の特性なのか、したたかにぶつけた脛の腫れももう完全に引いており、触れても痛むことはない。
城内ですれ違う者達も聞いたか、慣れたか、それとも触れぬよう意識しているのか――――誰も、驚かない。
それもそれで寂しく思わなくもないが、現状、生活に不便はない。
相変わらず執務室の机は高く、大食堂の椅子も高く、シャツとズボンはともかく羽織るガウンのサイズがない。

勇者は今、就寝前に城内を練り歩いていた。
どうしてもまだ眠気が下りてこず、すとんと寝る事が出来た昨晩とは違う。
狐の女将に疲れを文字通り“抜き取られた”せいなのか――――とぼんやり考えながらの、ささやかな夜の散歩だった。
253 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/06/03(日) 00:10:48.03 ID:2NPOjsgs0

夜の冷え込みを少し防げれば、と身に着けていたのは、“あの日”に身に着けていた、“あの日々”の思い出の品。
魔王との決戦で更に擦り切れて無残に成り果てたからこそ今羽織るのに丁度いい丈の。
淫魔の国へと繋がったあの日、身に着けていた物の一つ――――“勇者のマント”だった。

糸ひとつひとつまでが魔力を帯びて丹念に織られ、霊薬に浸し、秘奥の染料で染め抜いた逸品で、
その強靭さは鎧にすら匹敵し、なおかつ薄く、羽のように軽い。
数々の戦いを経るたび、少しずつでも傷はつき、その輝きも薄れていった。
しかし、それでも魔法の外套は――――最終決戦にて“魔王”の攻撃すら防いでみせたのだ。
最後の力を振り絞るように、勇者の身を守ってくれたからこそ……魔王への最後の一撃を放つ体力を、残させてくれたのだ。

魔力も何もかもを使い果たした“ぼろきれ”となって、今もそのマントは、この国で勇者の眠る時いつも、クローゼットの隅に畳んでおかれていた。
勇者はたまに、それを広げて――――偲ぶ。

大人の姿の足首までも隠せた丈は、魔王の爪牙により裂けて、子供の姿の腰までしか残らない。
だからこそ皮肉なことに……ちょうど今、よい具合なのだ。

勇者「……使い方が荒くて悪かったな。許せよ」
254 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/06/03(日) 00:11:34.65 ID:2NPOjsgs0

更に、静まり返った城の中を歩く。
夢魔の絵画を並べた回廊は、まるで――――魔王の城のような威圧感だった。
もっともここは魔界であり、淫魔の王族の居城なのだから間違いではない。
油断をすれば絵画の中から魔物が、亡霊が現れるのが“向こう”ではお決まりだったが、この城でそれはない。
角と翼と尾を持つ魔族と出くわしてもそれは敵ではなく、地下牢に巣食う“触手”の主もまた同じく敵ではない。
厩にいる夢魔の牝馬も、会いに行けばイヤそうな顔をするだろうが――――襲ってはこない。
それが、自分の墓標となったはずの“城”との違いだった。

勇者「ん……」

そろそろ部屋へ戻るか、と踵を返したとき、中庭へ繋がる扉の向こうに月光を吸い込むような黒い人影が見えた。
今の自分とそう変わらない背丈の人影は夜風に吹かれながらぼうっと佇んでいるようで、影だけが認識できた。

だが、それだけで情報は充分で……すぐに、誰なのか理解できた。
255 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/06/03(日) 00:12:05.03 ID:2NPOjsgs0

勇者「寒くないのか?何を……」

堕女神「あ……。いえ、何でもありません」

後ろ姿を覆い隠していたのは、長さを残したままの彼女の髪だ。
元から長かった髪は、そのまま背丈が縮んでしまったおかげで、引きずるほどに。
今朝の時点では編み込み、結い上げていたが、今はまっすぐに足もとまで下ろされている。
バルコニーの手すりにもたれるように庭園を覗き込み……空にある満月にも見向きもせず、ただ黄昏ているだけに見えた。

勇者「……ぷっ」

堕女神「陛下?」

勇者「い、や……昨日まで……ははっ。逆転されてたのになぁ。背丈……また元通りだ」

堕女神「ええ。……また、貴方を見上げてしまいますね」

勇者「……不満?」

堕女神「いえ。落ち着きます」
256 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/06/03(日) 00:12:31.68 ID:2NPOjsgs0

勇者「俺もだ。……なんでこうなったんだろうな」

堕女神「一応、サキュバスAから報告は受けましたが……どうすればよいのやら」

勇者「全く。何がなんだか……ともあれ、病気じゃないのは分かった。なら解く方法が必ずある」

堕女神「はい。……陛下。我が儘を申しても?」

勇者「ん。……何だ」

堕女神「折角です。ちょうど、良い月も出ている事ですし……少し、歩いてはいただけませんか?」

勇者「……先に言うな」

庭草を踏み締め、石畳を蹴り、眠気を呼び戻すようにしばし庭を歩く。
どちらも縮んでしまったからこそ“いつもどおり”の差で歩く二人の刻。
ときおり勇者は隣を見て、何度見ても信じられない――――小さな少女の姿に変わってしまった彼女を見ては苦笑する。
もはや、笑うしかない。
こうなってしまった以上、一晩や二晩寝たところで治らないのだから。
257 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/06/03(日) 00:13:00.35 ID:2NPOjsgs0

夜が深まるにつれ、空気は段々と冷たく澄んでゆく。
いつともなく、どちらともなく繋いでいた手は、それでなおも冷たい。
外套を着込んでいる勇者ですら冷えるのだから、肩口から先を露わにするドレス姿の彼女はなおの事だ。

勇者「……中、入ろう。冷えてきたし、もう寝よう」

堕女神「…………あ、の」

手を引いて城内へ戻ろうとするも堕女神の歩みは一瞬止まり、振り返ると彼女は俯き、唇を震わせていた。
こういう表情をする時、彼女は必ず――――何かを迷っているのだ。

堕女神「そ、その……些か……不謹慎かも、とも……」

勇者「分かってる」

もう、彼女の言葉を待つ必要はない。
そっと手を引けば、彼女はそれ以上踏みとどまらずに庭園を歩いていた時と同じ歩調でついてくる。
未だ掴めない歩幅を、確かめながら。
引かれる手を、頼りにするように。
258 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/06/03(日) 00:19:32.65 ID:2NPOjsgs0
投下終了

実際サキュバスは生やす事ができたとしてもあまり使わないんじゃねぇかね
というかサキュバスにあんな物体を生やすなんて冒涜だ

ではまた明日か明後日
明日か明後日!絶対!
259 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/03(日) 00:21:48.12 ID:zXtZn8oao
お疲れ様です
260 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage saga]:2018/06/03(日) 01:05:43.45 ID:LbfwbVXi0

美しい肢体のサキュバスにバベルの塔など不要
261 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/03(日) 01:11:33.99 ID:UUSPqmw+0
262 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/03(日) 02:23:36.99 ID:Y3a7AtxC0
乙!
このしんみりした雰囲気や空気感、良いなぁ。
263 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [Sage]:2018/06/03(日) 03:21:52.15 ID:WRKIKzoy0
ロリショタキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
264 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/03(日) 08:25:28.13 ID:iCxc183W0
魔法使いや僧侶とのエッチもいずれ見たい
265 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/03(日) 13:16:57.72 ID:BlmpW4MYo
そこはあくまで過去だからいい気が……
266 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/03(日) 23:40:12.70 ID:NvKnuJ940
蛇足
267 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/04(月) 00:56:35.80 ID:4vITcl3l0
まぁでも勇者の仲間の後日談辺りはあってもいいな
無かったことにされてる天界の話もしかり
268 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/04(月) 03:01:37.61 ID:164qAO77o
作者の好きにしてくれ
269 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/04(月) 07:31:47.98 ID:Umy049DYO
作者はサキュバスだから焦らしプレイが得意なんだ…全裸で静かに待ってようぜ!
270 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/04(月) 13:45:44.77 ID:WBOF/HgF0

一作目でもそうだが過去の哀愁?が感じられるシーンがすごい好き
271 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/04(月) 23:46:17.55 ID:8cby2wIa0
今夜の分を始めます

またしても書いてて犯罪感がひっでぇ……
272 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/06/04(月) 23:47:09.90 ID:8cby2wIa0

*****

辿る道のり、ふだんの倍かかる時間の後に――――いつもの、ように。

勇者「……何だか……」

サイドテーブルに置かれていた水を一口飲み込んでようやく潤したばかりの喉が、すぐに、乾く。
不釣り合いなほど大きなベッドに並んで腰かける姿は、さながら留守中の両親の寝室に忍び込んだ兄妹と呼べた。
三人、四人で絡み合うように夜を明かす事さえできる豪奢なベッドは、たとえ二人いるとはいえ子供では余りある。
その上で思いきり飛び跳ねても頭をぶつける心配がないほど高い寝台も。
神殿の屋根のように、遠かった。

勇者(――――何だか……)

ちらりと横を向けば、いつもと違い落ち着かない様子で――――どうすればよいのか必死に考え込むような堕女神がいた。
少女の年頃に遡った事で、むしろ……触れがたい美貌は、濃縮された。
黒い眼、赤い瞳はさらに丸くぱっちりと開いて――――夜行する獣の仔のような、あどけない誘引力まで宿していた。
元より細やかな肌理を持っていた肌は、更に縮まり――――見える柔肌が、一枚の継ぎ目ない白磁にすら見えるほどだ。
それは、決して――――人たる身で触れてはならない輝きだ。
ただ見る事すら、神官の長にしか許されない領域の存在だ。

見つめていると、やがて小さな女神は困惑したように唇に隙間を作り、白く、小さな前歯を覗かせて小首をかしげるように振り向く。
273 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/06/04(月) 23:48:26.77 ID:8cby2wIa0

堕女神「……どうか、なされたのですか?」

勇者「いや。ちょっと……気圧されて……」

考えられないほど。
普段とは。そして、さっき手を取り合っていた時を思い出しても考えられないほど。

勇者は――――緊張を露わにしてしまっていた。
こうして間近で、誰に邪魔される事も無く見れば見るほど……罪悪感すら覚えるほどに、今の堕女神は可憐だったから。
艶気を振り撒く大人の姿ではないからこそ、触れがたく、怖気を振るうような神性の存在感が際立つのだ。

堕女神「陛下。あの外套……身に着けられたのですね」

勇者「……ん、あ……」

堕女神「僭越ではありますが、あの外套は……私が、洗わせていただきました。もう……一年は経つのですね。……そして、驚きました」

勇者「堕女神が?……驚いた?」

堕女神「……いえ、感じ入ったというべきなのでしょうか。あの外套を織った者達の、祈りを」
274 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/06/04(月) 23:49:41.40 ID:8cby2wIa0

“勇者のマント”を織るためには、とある森に生息する特殊な虫が必要だった。
その森を守るべく立ち向かった勇敢な戦士達と勇者一行は協力し、魔王の軍団を返り討ちに遭わせた。

虫が吐いた糸を精製するためには更に時間がかかり、織り合わせる間には呪文を唱え続けなければならず、不休の仕事だったという。
霊薬を抽出して浸し、魔法の染料で染めて――――最後には、森の神殿での儀式を行う必要まであった。

“勇者”へ渡す、たった一枚のマントのために。
男たちは戦い、子ども達が虫を集め、女達は糸をつくり、身を削り――――“祈り”を込めた。
“魔の王へ挑み、世を救う者に木々の御魂の護りあれ”と。

堕女神は、何もかもが擦り切れ、役目を果たしたマントにそれでも残っていたものを確かに感じ取ったと。

勇者「……怒られるかな、こんなにしちまった。……っ!」

そうとまで想われていた事をあらためて知り、聖剣までも折ってしまった自分の物持ちの悪さに申し訳なく思った時。

――――ふ、と頬に触れる微かなものを感じ取る。
275 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/06/04(月) 23:51:06.08 ID:8cby2wIa0

撫でられたのではない。
風ではない。
髪が頬を掻いたのでもない。

堕女神「……っ……く」

勇者「堕女神?今……」

もう一度振り向いてみれば……堕女神が必死に口もとを抑え、もう片手でドレスの裾を握り締めて、垂れた髪で横顔を隠すように何かを堪えていた。
しゃくり上げる音も聞こえない以上、それは――――嗚咽ではない。笑いであるはずもない。
となれば。

堕女神「……ど、どう……した、事でしょうか……。ただ、頬に……」

勇者「頬に?」

堕女神「頬に、した……だけ、なのに……顔が、熱くて……止まりません……」
276 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/06/04(月) 23:51:49.39 ID:8cby2wIa0

*****

やがて、戯れるように抱き合い、雪原の如き広いベッドの上で堕女神を仰向けにさせる。
長い黒髪が墨をこぼしたようにシーツに広がり、堕女神がゆっくりと目を閉じた。
呼吸でかすかに上下するなだらかな胸は、その薄さゆえ胸の高鳴りも、見て取れた。
穏やかに閉じて見えた目は震えるように皺を作りながら強く瞑り、眉間にも浅く皺が走る。
期待、もしくは怯えるような――――その時を待つ供犠のように。

覆いかぶさるように。
ゆっくりと、その身を重ね合わせながら……同じく今は軽い矮躯へ還った勇者が、“少女神”の警戒を解きほぐすようにゆっくりと頬を撫でた。

堕女神「っ……!」

手に吸い付くように柔らかい頬に触れると彼女は竦むように反応を返し、震える。
真っ白いシーツの上で、影のように広がる濡れ羽色の持ち主は薄目を開くと――――緊張のあまり潤んだ瞳から、涙の粒を眦に膨らませた。

堕女神「あ――――」

勇者は、いつものように。
数え切れぬほどしてきたそれと同じだけの“想い”を込めて唇を寄せる。
277 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/06/04(月) 23:53:06.51 ID:8cby2wIa0

堕女神「んっ……はぅ……ふ……っ!」

数日前の夜とは違う――――“等しい”口づけだった。
勇者の唇に、柔らかく、暖かく血の通った……小さな唇が重なる。
ほのかに湿った唇を、同じく唇で塞ぎ、押し上げると粘膜は突っ張り――――ただの、キスをしているだけの圧力で破れてしまいそうな頼りなさだった。
漏れだす吐息はいつに増して熱く、甘酸っぱさを増した小粒の苺のような香りをまとい、口の中を満たす。

堕女神「む、ふ……っちゅ、ぷふぅ……ひゃ……っ!」

更に、微かにすぼめて開いた唇の隙間から舌を滑り込ませると、
途端に更に濃密な果実の呼気が押し寄せ……噎せ返るような甘さで、意識が振り動かされた。
心地良い弾力を宿す唇は、唾液を帯びてぬるぬると滑らかに舌を迎え入れる。
堕女神の唇の裏を舐るごとに彼女はぴくりと震え、その心地に狩り取られそうな意識を保つべく爪先に力を込め、膝をゆっくりと立ててシーツを掻いた。

ぬめるように湿った水音と、くぐもった喘ぎと、媚態の混じった吐息。
熟した者同士が奏でるはずの、“夜”の淫律だった。
だがそれを発するのは、ほんの小さな少年と、少女。

不釣り合いなほど広いベッドの上で、まるで――――大人達の目を忍んで重ねる悪淫だ。
決して許される事は無い、自分達のしている事の重さを分かっていない戯れのように。

何でもない無邪気な戯れが、やがて――――本能に後押され、好奇心に突き動かされ、
無知ゆえに純前の快楽へと開眼してしまう、“禁断の遊び”の光景だった。
278 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/06/04(月) 23:54:59.17 ID:8cby2wIa0

堕女神「はっ……あ……!あ、貴方の……舌……きもひ……い……ふひゃぁっ……!」

鼻先を幾度も突き合わせて、少女は喘ぐ。
自らも前歯の隙間から舌を差し出し、自らの前歯と舌の間で抑えこむように“少年”の舌のざらつきを舐めとり、繕うようにと。

勇者はそれを抗わず、振りほどかず舌先を蠢かせ、彼女のすっかり小さく、細く、きっしりと整い生えそろった下顎の歯を、犬歯から犬歯までなぞった。
磨き上げた宝石のようにつるつるとなめらかな舌触りにより、互いを快感が繋ぎとめる。

堕女神「はふっ……!ひ、……っも……も、っと……っもっと……!」

必死に瞑る目尻から流れる涙が、堕女神の昂ぶりを代弁する。
もはや彼女の背筋はちりちりに、灼けるように昂ぶりきってしまっていた。
それはほんの数日の間だったのに、溜まってしまっていた感情によってだ。

――――“ヒト”の子を、もう一度抱き締めたい。

かつて掛けた願いは叶ってから、ずっと――――想っていたから。

――――どんな姿であれど、“彼”は、“彼”だ。
――――私の、想いは変わらない。
――――でも、やはり。

――――肌の限り、吐息の限り、心の、限り。

――――“求め合いたい”。

279 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/06/04(月) 23:57:08.34 ID:8cby2wIa0
今夜の投下終了です

七割の確率で明日また会いましょう
ではー
280 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/05(火) 01:25:01.44 ID:BVU7kgG3O

残りの3割は今からと言うことだな
281 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/05(火) 01:28:57.82 ID:IJqgWq5V0
乙ー
ちびっ子同士が求めあってるのも、どちゃくそエロい
282 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/05(火) 13:06:41.86 ID:jngyvxym0
なんてえっちなこどもなのだ
283 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/05(火) 14:11:01.37 ID:vjiZxZnso
ちびっこ繋がりでわt…ナイトメアちゃんを乙乙
284 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/05(火) 14:50:37.53 ID:0iplxfnD0
くそほどシコい
285 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/07(木) 00:00:08.36 ID:DV4BlFTo0
いかん、考えすぎて思考がうまく滑らんかった

投下開始
286 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/07(木) 00:00:49.01 ID:DV4BlFTo0

*****

小さな唇、短い舌、細い歯の奏でる水音は一時止んだ。
上体を起こし、後ろから堕女神を支える形で細い肩を抱き締めると
髪をかきわけて覗けた首筋は白く透き通り、暗闇の中で輝きを放ってすら見えた。
普段はち切れんばかりの双子の果実を支え、ぴっちりと首にまでかかり覆い隠しているドレスの胸元は、今もなお忠実だった。
だが、そこに主張はなく、下腹、腹から一直線に首まで続く起伏のない平坦がある。

堕女神「くぅぅ、んっ……!あぁ……っ!」

脇腹から沿い、両手をするりと服の下へ滑り込ませると堕女神はくすぐったさに身を捩り、吐息を放つ。
汗ばんだ肌は生地の舌で手にもちもちと吸い付き、空けさせられた隙間からは閉じ込められていた、甘く熟した果実のような汗の芳香が漏れた。

堕女神「っふぅ……!や、あ……むね、は……やめ……て……!」

勇者「どうして?」

堕女神「それ、は…………恥ずかしい……ので……」

勇者「……小さいからか?」

堕女神「……楽しく、ない……でしょう……?」
287 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/06/07(木) 00:02:00.70 ID:DV4BlFTo0

弱々しい独白を打ち消すように、勇者は服の中に手を更に潜らせる。
土中を進む生き物の痕跡のように黒絹のドレスの前面の布地が盛り上がり、
ゆとりを作りながら――――ふたつの手が、ふたつの“頂”へ伸びていく。

堕女神「ひっい…………!」

布地の中で、かすかな手触りの違う箇所を見つけた。
尖ってはいない。
決して目立たない、押せば引っ込むような、出たばかりの芽のような頼りなさを指先に感じた。
平坦な胸の、その中心の“輪”と思しき部分は周辺の肌と比べてもややなめらかで、指先だからこそ感じ取れる違いがあった。
絞り込み、探り当てると――――今しがた一瞬だけ触れた、平原に芽吹いたささやかな“芽”をどうにか見つけ出した。

堕女神「や、ぁ……!だめ、やめ、て……と……ふあぁぅっ!」

摘み取るようにきゅっ、と摘まむと、普段よりも敏感な反応を返し、電流を受けたように堕女神の体が震えた。

堕女神「っ……!う、ぁっ……ひぃぃ……!」

勇者「……硬くなってきた。もう、すぐ分かるな」
288 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/06/07(木) 00:02:40.90 ID:DV4BlFTo0

こりこりと人差し指と中指で摘まみ、転がすと――――小さな“芽”はむくむくと起きて、硬さを増していく。
小さな突起は胸の布地越しにも分かるほど硬く尖り、その萌芽を示す。

堕女神は縋るように勇者の手首を掴もうとするが、それすらおぼつかずに宙を掻いた。
その袖を掴む事ができても、すぐに――――胸に走る感覚に身震いし、離してしまう。
指が埋まるほどの質量はなくとも、その感度は変わらず、否……それ以上に鋭敏化していた。

ドレスの中に隠していた未発達の“種”を芽吹かせられ、地表を持ち上げるように。
春の萌芽のように、小さな堕女神の“乳首”が、浮かび上がらされていく。

堕女神「は、ぁぁ……!もう……やめ……!む、胸……が……熱くて……溶け、そうで……ふぁぁぁ!」

こり、こり、こり、と――――見えない乳首を摘まみ回し、すぐに肋骨を感じてしまうほど薄い胸を撫でると彼女は震え、
うなじから立ち上る香りに汗のそれが混じる。
勇者は掌にかいた汗を擦り込み、ぐち、ぐちっ、と段々と湿り気を帯びたものに変わりゆく音を愉しみながら、
麺麭生地を捏ねるように弄び続ける。
涸れた息のような喘ぎが漏らすのは苦悶ではなく。
再び、堕女神の体が、“女”へと変わっていく過程だ。

少女の姿に変わってしまってなお、悦びを改めて思い出すように。

やがて、勇者の右手が脇のからするすると抜かれる。
その手が向かったのは――――――
289 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/06/07(木) 00:03:24.34 ID:DV4BlFTo0

堕女神「きゃはっ……!?」

腰骨近くまで深く切れ込んだスカート部分のスリットから、堕女神の秘部へ指先を差し伸ばす。
だが、思っていた手触りとは違い――――ほんの一瞬、ぴくり、とたじろぐように指先が振れた。
想定したのは滑らかな手触りの下着の感触。
だが指先が捉えたのは、直に触れた人肌ほどの蜜液の筋。
そして熱く膨らんだ、むき出しの柔肌。

勇者「堕女神……まさか、今日、一日……」

堕女神「……はい」

答える彼女の顔は、勇者からは見えない。
だが、うなじを燃え上がらせるように赤く染めているのを見れば歴然だった。
彼女はひどく羞恥を覚え、今にも消えてしまいたい、と――――そう思っているように口を噤む。
勇者はそんな彼女を愛おしむように――――

堕女神「ひあっ……!」

再び、下肢のスリットから指を差し入れ直し……まっすぐに、そこへ向かう。
肌理細かく吸い付くような内腿を撫でるたびに堕女神は甘い声を漏らし、くったりと脱力し、体重を真後ろの勇者へ預け、しなだれかかっていく。
張り詰めた内腿の皮膚をなぞり上げ、数度往復させる後……人差し指の先が、隠れて見えない彼女の“そこ”を突く。
290 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/06/07(木) 00:03:50.78 ID:DV4BlFTo0

堕女神「んふ、あぁぁっ……!」

漏れ出した清水の粒を突き弾き、とうとう、その裂け目を探り当てた。
ぴっちりと閉じた裂け目は、軽く指先で上下になぞれば――――縦一筋の線である事が掴めた。
じわりと濡れている事も容易に掴めて、打ち震えるそこは、臆病な生き物にも似た愛らしさすら感じたほどに。

堕女神「あふっ……!そん、な……こす、ら……ないで……くださ……ぁっ……!」

勇者「……まだ、そんな……何も」

堕女神「変、です……!こんな、びん、かんに……あぁんっ……」

愛撫と呼べるほどの愛撫は行っていない。
熱く火照る秘肉の裂け目を、上下に――――撫でるように指先を行き来させているだけだ。
爪の先すら侵入させてなどいない。
上に行きついたところにある小さな鞘入りの“豆”にも触れていない。
下にある、彼女が密やかに覚えた快楽の薔薇にも触れていない。
とろとろと溢れてくる蜜液が、勇者と同じく――――鋭敏になってしまった神経を物語る。
291 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/06/07(木) 00:04:44.72 ID:DV4BlFTo0

*****

堕女神「……あ……むふっ……ぷちゅ……っは、ぷ……っ」

勇者「……っ!」

次は、堕女神から――――勇者へ。
見慣れない大きさ、形へ変わってしまったそれを眺めてから、彼女はおずおずと、薄桃の唇を開き、
同じく血色良い桃色の亀頭を覗かせた、“茎”を、震えながら含んでいく。
平素のそれとはくらべものにならないほど小さく幼い茎なのに、今は堕女神もまた少女の現身へと変じているため――――奇しくも、釣り合う。
小さな茎と、小さな唇は、普段この部屋で交わし合う“大人”の刻と同じ比率の、唇に収め切れない口淫をなぞる。

ずるり、ずるり、と堕女神が収められたのは、肉茎の中ほどまでだ。
続けば喉奥にまで迫るため、少女の顔が赤らみ、一度止まる。
そこで――――彼女は、口の中で舌を蠢かせると、皮に包まれた裏筋をなぞり上げる。

堕女神「ん、ぷぁ……!ふふっ……この御姿になられても……貴方のお悦びになる処は、お変わりないようで……」

直に触れると、ほどよい刺激ではなく痛みにすら感じる亀頭、その裏筋へ彼女は続けるように、皮越しに舐め上げる。
舌で舐め上げ、同時に唇を締めながら引き抜く。
彼女の唾液にまみれ淡く銀色に光る茎が、やがてもう一度吸い込まれ、裏筋から精液の道まで舐め下される。

いつもと、まるで変わらない。
堕女神が、勇者のためだけに自ら施す――――慈しむような口技が、あった。
292 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/06/07(木) 00:05:11.72 ID:DV4BlFTo0

堕女神「はふっ……ちゅ、じゅぷっ……んくっ……! ふるえ、て……ます……貴方の……」

亀頭へかかる皮を下ろさぬように。
多く吸い込み、隠す事のないように。
唇の圧力を精妙に捉え、堕女神は、この姿の勇者へ初めて施す“女神の口づけ”に神経を傾ける。

触れれば痛みを感じるような敏感な亀頭へ、触れぬように。
熱と呼気を受けて震えるそこを、包み隠させぬように。
少しでも長くの間、自らの口の中で、暖かさと、吐息を感じていてくれるように。
皮の中でだんだんとエラを張り、良く知る姿に近づく亀頭を皮越しになぞりながら、“少女”は奉仕する。

それは、密やかな戯れを重ねるうちに行きついてしまった、“堕楽”の光景そのものだ。
目を盗み重ねるうちに、やがて邪淫の果てへ堕ちてしまった少女の姿、そのものだ。
そう。
そう――――見えはしても。彼女は今、満ち足りていた。

“求め合う”という至上の快楽を、叶え合っていたから。
293 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/06/07(木) 00:05:45.58 ID:DV4BlFTo0

堕女神(……あ、ぁ……貴方の……モノ、が……私の、くち、犯して……)

咽返るような剛直も、反りもない。
雄の昂ぶりもない。
今、飴を含むだけでいっぱいになってしまうような口の中に感じるのは皮膚のなめらかな舌触りだけだ。

堕女神(ですが……私……貴方の、……好、き……もっと……もっと、舐め、たい……です……)

姿も、形も、関係なかった。
“それ”が、彼のモノであるという事だけで――――充分だったのだ。

幾度も含み、幾度も吐き出させ、幾度も――――飲み干した。
幾度も迎え入れ、幾度も突き抉られ、幾度も――――満たした。

堕女神(き、っと……私の、中は……もう、貴方の形を覚えてしまって、いるのでしょう……か)

だから、きっと――――今も。
今も、自分の中は――――今の彼を、待っているはずだ。

堕女神「もう、耐えられません。陛下」

昂ぶり、膨らんだ肉茎をゆっくりと抜き出し、懇願とともに呟く。

堕女神「――――……下さい……」
294 : ◆1UOAiS.xYWtC [sagesaga]:2018/06/07(木) 00:07:15.64 ID:DV4BlFTo0
今夜の投下は終了です
では、また次回

295 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/07(木) 00:17:46.82 ID:+zSZDJy40
乙!
めっちゃドキドキしてきた
296 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします :2018/06/07(木) 03:29:17.56 ID:xsWXIdWE0
いい・・・
297 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/06/07(木) 15:27:40.31 ID:YcRizmtVO
eros……
298 : ◆1UOAiS.xYWtC [saga]:2018/06/09(土) 23:56:35.05 ID:3S1batlM0
申し訳ねぇ、時間かけて書き過ぎた……開始します
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