北条加蓮「アイドル『の』オモチャにするクスリ?」

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1 : ◆FreegeF7ndth [saga]:2018/07/01(日) 12:14:50.62 ID:bLc77vRJo

あらすじ
※加蓮が、志希に焚き付けられてモバPとえっちする話です。
※えっちだけ読みたい人は4-01までCTRL+Fで飛ばしてください。
2 : ◆FreegeF7ndth [saga]:2018/07/01(日) 12:15:39.71 ID:bLc77vRJo

●0-01


あなたを『プロデューサー』と呼べなくなる日がくるなんて、思いもしなかった。


3 : ◆FreegeF7ndth [saga]:2018/07/01(日) 12:18:20.86 ID:bLc77vRJo
●1-01


Masque;radeというユニット名をつけてしまったせいか、
Love∞Destinyの頃のアタシはあなたに対しても仮面をかぶって接していた。

決してあなたの――アタシなんかをスカウトして、担当してくれるプロデューサーの――コトは、
キライじゃなくて、むしろスキだったけど、
誰かさんのようにライブ中にまでチラチラ見てるのも可笑しくて、
そういう露骨なのじゃなく、冗談めかした好意をあなたに投げつけては一蹴されていた。

『アタシを一番に見て欲しい』とか、言葉は嘘じゃなかった。
あなたは『ダメって言われるのわかってて言ってるだろ』と笑った。

たとえ拒絶されても、その拒絶は『あなたがアタシを否定したわけじゃなく』て、
あくまで『プロデューサーとアイドルという立場だからダメ』って言い方になるから、
アタシはアタシを否定される恐れなく好意を示せる、というわけだ。

馬鹿にされてる、と思った。
だいたいその言い方だと、あなたもまんざらではない、ととれる。
その職業倫理なんて言い訳に立つ壁を、揺さぶってみたくなった。



アタシの密かな願望に気づいた人がいた。一ノ瀬志希という、2歳年上の同僚アイドルだ。
プロジェクト・クローネに一緒に内定してて、同じ体力落ちこぼれ組だったので、
レッスンを組まされることが多くて親しくなった。

志希は『年上の人に対等に見てもらうのって、しんどいよね』と言った。
アメリカで飛び級しているぶん、含蓄のある響きがした。

あなたはアタシを、プロデューサーとアイドルとしてはともかく、
そこを離れれば対等に見てくれてはいなかった。そう妄想してた。



『あたしは加蓮ちゃんに肩入れしちゃう』と志希が言って、
人の判断力を奪う成分――スコポラミンとかいったかな――を配合したお手製のクスリをくれた。
『これでムリヤリ既成事実を作っちゃえ♪』と。

今どき少女漫画でもそんなコトやらないよ、とアタシは笑った。

それから志希とカラオケに行くと、耳の後ろからスカートの中まで舐めるように匂いを嗅がれた。
頭の中はライブの極彩色レーザーが、肌の下は立体音響がぐるぐる回って、
『医療用麻酔とはだいぶ違うんだな』と思った。

行為のあと、志希はクスリの使い残しをくれた。

その一瓶が仮面を脱ぎ捨てさせた。
あなたにアタシを襲うよう仕向けさせた。こうして『既成事実』ができた。

4 : ◆FreegeF7ndth [saga]:2018/07/01(日) 12:19:15.76 ID:bLc77vRJo

●2-01

アタシはあなたと、アイドルとしてふさわしくない関係をもったわけだけど、
別にアイドル活動を軽く見ているつもりはなかった。
レッスンもライブもレコーディングも握手会も収録も撮影もその他いろいろアタシは楽しんでいた。
妹分とも思ってた莉嘉ちゃんに『アイドルを楽しむことが一番』とか偉そうに言ってた。

むしろなぜか、あなたとセックスするたびに、アイドルをしっかりやろう、という気分になった。
アタシとあなたが『ヤリたい同士だけの関係じゃないんだ』と、言い訳したかったのかもしれない。

もし誰かにバレたら言い訳もなにもないのにね。その仮定さえ、ちゃんちゃらおかしい。
少なくともアタシたち以外では、志希が『既成事実』を既に知っているのだ。



あなたの手つきは、ちょっと優しすぎた。
だからアタシはあなたにオモチャを握らせ、電動の無機質な振動に身を曝した。
アタシは鞭打たれてるみたいにカラダをびくつかせた。

前戯は、脇の下とか、鎖骨とか、脇腹とか、
皮膚が薄くてくすぐったいところにローターを押し付けられるのが好きで、いつも最初はそれだった。
アタシのカラダがアタシの意思の制御下から奪われる――それがあなたのせいである、というのが心地よかった。

くすぐったさに負けて、肌や筋が勝手に震える。
肌が勝手に熱くなって汗やヨダレを垂れ流し、目はチカチカし、肺は震え呼吸さえガタガタになる。
あなたにぐしゃぐしゃに乱され奪われていく。痛めつけられる。
それが苦しければ苦しいほどココロは楽になった。



『縛って』とあなたに何度も何度も催促して、紐をどんどん増やしてもらった。
まずは両手の親指同士を後ろ手にして縛ってもらう。こうすると手首をひねって抜け出すこともできない。
おっぱいを絞り出すように締め上げてもらう。オンナにされていく実感がしてドキドキする。
胴に巻き付けてもらう。肌に食い込んで跡を残してもらう。



あなたにカメラを渡して、写真をとってもらったこともあった。もちろんいかがわしい格好だ。
安いコンデジは、アイドル・北条加蓮を切り取ってみんなに配っていく一眼レフと比べると、
だいぶ貧相だったけれど、フラッシュとシャッター音はあたしの意識をしゃりしゃりと削り取っていった。
あなたの手の中に、アタシのあられもない姿が収まっていく。レフ板もないのに肌が茹だる。

あまり早く連射ができない機種だったのが、もどかしくもありがたかった。
もしされてたら、それだけで失神してしまっていたかもしれない。



ナカに入れるときは、だいたいが後ろからだった。
あなたはアタシのカラダを明るめの照明の下で見たがったけれど、
そんな部屋でいわゆる正常位をすると、アタシの目は天井を見上げる形になって、
室内灯がまぶしく気が散ってしまう。

後ろからなら、どんな感じでも良かった。
ベッドに手を突いて立ったままされるのは、重心が高くてぐらんぐらんするのが、
かえってつながっているトコロへの集中を煽った。

四足ついてハイハイみたいにしてされるのは、腰骨をがしっと捕まえてくれて、一番安定感があって安心した。
アタシは犬のしっぽを振るみたいに髪の毛をバッサバッサ揺らして抽送に応えた。

完全に床に押し潰されるカタチは、気を抜くと意外とあっさり抜けてしまう。
だから腰を上下させてパンパンされるより、お尻と腰をぴったりつけられて、
中に入れられたのを奥の底でグリグリさせるのがお決まりだった。
あたしはベッドに磔にされ、枕を口に押し付けて、お゛おっ、お゛おっ、なんて潰れて濁った声を吐瀉していた。

お尻を突き出して、パン、パンってやられると、お仕置きされてるみたいで心が躍った。
思えばアタシは最初から行儀の悪い子だった。体力はないし、努力もしないし、冷めた態度だったし。
あなたに一服盛って爛れたセックスを繰り返すし。我ながら、ホントにひどい。

そういうどうしようもないところを、ほかでもないあなたに咎めてもらっているみたいで、
嬉しくて、アタシはマゾな淫乱のようにそれをしつこくねだった。
ねだらないと、良識派なあなたは乱暴にしてくれないもの。

そうした関係は唐突にぶつ切られた。
あなたはアタシの担当プロデューサー……どころか、芸能部からも追い出された。
あなたを『プロデューサー』と呼べなくなる日が、やってきてしまった。
5 : ◆FreegeF7ndth [saga]:2018/07/01(日) 12:20:21.42 ID:bLc77vRJo

●3-01

アタシたちの関係は露見した。
あとで知ったことだけど、志希が密告したらしい。

志希はアタシだけじゃなく他のアイドルやプロデューサーにもクスリを渡していて、
それがバレそうになり、感づいた志希が先んじて白状し、芋づる式にみんな引っかかったのだ。
志希はクスリが社外に漏れる前だったからか馘首は免れたけど、クローネ内定は取り消しとなった。

アタシは、クローネ内のトライアドプリムスというユニットでデビューがほぼ決まっていた。
そのユニットのメンバー・渋谷凛と神谷奈緒への影響を考慮して……とのことで、
アタシとあなたの関係は、真相とは逆に「あなたが関係を迫った」ものとして処理された。

あなたはバックオフィスに飛ばされてアタシとの接触禁止例を言い渡された。
馘首にならなかったのは、口止め料がわりだろうか。



あなたが居なくなって、担当プロデューサーはトライアドプリムス3人の兼任さんに変わったけど、
アタシは熱心にアイドルを続けられた。そうしなきゃいけない気がしてならなかった。

別にアイドルとして結果を出したところで、あなたではなく今の担当プロデューサーの手柄になるだけ。
トップアイドルになったところで、事案が事案だから、あなたを復帰させられる見込みもない。

なのにアタシは、凛と奈緒とともにアイドルに打ち込んでいた。
あなたが駆り立てていた。そばに居てくれていた時よりも、ずっと強く。



トライアドプリムスをクルマに例えるなら、アタシはアクセル、奈緒がブレーキ、凛がハンドルだった。
アタシがとにかくスピード出して突っ込んで、奈緒が制止してくれて、間を凛がとりもってくれた。
だから安心してアイドルに没頭できた。アタシが身を燃やし尽くす勢いでアイドルやって、
それに二人とも付き合ってくれてるのがホントにありがたかった。

燃え尽きてしまいたかった。
クスリのように一時だけ人の神経系を席巻して、
時がすぎれば跡形もなく蒸散してしまう――そんなのでよかった。



そんな魂胆じゃ、一時の成功は得られても、長続きはしない。
亀裂が明らかになったのは、奈緒との間だった。

『なぁ、加蓮。最近、ムリが過ぎてないか』

新曲・TrinityFieldをもらってすぐ、レッスン後の夜に、奈緒から忠告された。

『アイドル、楽しめてるか。楽しめなけりゃ、もたないぞ』

アイドルは、もう楽しくはなくなっていた。
その代わり、ムチャクチャに厳しいレッスンやハードスケジュールで心身を追い込むと安心できた。

『自分を追い詰めて、息も絶え絶えで……それじゃ、ファンを楽しませるなんて、できないよ』

ホント、よく二人は付き合ってくれてるもんだ。

『手を抜けって言ってるわけじゃない、ただ……分かるだろ? アタシの言いたいこと』

奈緒はすごく優しい。そして凛も奈緒と同じくらい優しい。

優しいのが、いけない。アタシには、辛い。

6 : ◆FreegeF7ndth [saga]:2018/07/01(日) 12:21:21.38 ID:bLc77vRJo
●3-02

『ほっといてよ。アタシだってもう一人前のアイドルなんだから』
『加蓮ッ、お前』

奈緒を怒らせるつもりだった。
とりあえず怒って、失望して、放って置いてもらいたかった。

けれど、奈緒は思わぬ言葉を返してきた。

『加蓮がそんなに追い詰められてたら、あの人も悲しむんじゃないか?』



……は?

『あの人って、誰よ。凛? プロデューサー?』

そんな訳はなかった。
奈緒は、アタシ「たち」の担当プロデューサーを、こんな他人行儀に呼んだりしない。

『い、言わせる気かよ、アタシに』
『言わなきゃ、わかんないじゃん』

誰の名が出るか予想できていた。

『――さん。あの、加蓮の前のプロデューサー』
『なんで、アンタがその名前を』

でも、それが奈緒のクチから出たことが、信じられなかった。

『志希から、聞いた。付き合いが長いっていうから』
『アイツ、ッ』



声を荒げちゃった。
誰に対して苛立ってるんだろう。
奈緒か。あなたか。志希か。

『今は関係、ないでしょ』
『何が、だよ』

あの奈緒がここまで無遠慮に突っ込んでくるということは、
きっと志希から『本当はアタシから迫った』と聞かされてるんだろう。
もし『あなたからアタシに迫った』という認識だったら、もっと躊躇するはずだ。

『終わったコトよ』

そして『既成事実』の作り方までは聞いていないんだろう。
知ってたら、寛容な奈緒もさすがにアタシを許さないはず。

『終わったのよ。アンタは、志希とアタシどっちを信用するのさ』
『加蓮が、終わったって態度してないだろ』
『終わったって言ってるでしょうっ』

鎖骨と顎に、何かがあたった。息苦しかった。
一拍遅れて、奈緒に胸ぐらを掴まれてることに気づいた。



やっとアタシは、奈緒を怒らせることができた。

『聞く耳も、話す口もないのかよ、加蓮』

奈緒の視線が刺さるのから逃れたくて、くちびるを引き結んだ。
できるなら、目を閉じて耳も塞ぎたかった。

夜は静かだった。アタシと奈緒のかすかな息遣い以外聞こえなかった。

『……くそっ、なんだよ。帰るっ、もう明日にするっ』

奈緒は人がよくできてて、こんなアタシ相手にも、短い悪態一つつくだけで、
また明日って言ってくれた――それで済ませてくれちゃった。

『こんなアンタとなんかアイドルできねー』ぐらい言ってくれたら良かったのに。



そうしてアタシは、あなたに電話をかけた。
7 : ◆FreegeF7ndth [saga]:2018/07/01(日) 12:22:19.32 ID:bLc77vRJo
●3-03

アタシはアイドルを続けるのが限界だった。

それはたぶん心身をボロボロになるまで追い込んでたのが原因で、一時的な不調で、
奈緒の言う通り休んだり力を抜いたりすれば解消するものだった。

でもアタシはそれができなかった。
アタシにとってアイドルをすることは、ただの夢だけではなく、
もっと重いモノが上乗せされていた。それはあなたのせいだ。

だから、あなたにアイドル失格だって罵ってもらいたかった。
そうやって燃え尽きて消えてしまいたかった。

あなたは夜にもかかわらずクルマを飛ばしてアタシを拾いに来てくれた。
おかげで街をふらついていても補導されずに済んだ。

『あなたと初めて会ったときと、今と、どっちのがひどい顔してる?』

昔はこの手に何も無さすぎて、消えてしまいたかった。
今はこの背に重い物を背負いすぎて、消えてしまいたかった。

『新曲の追い込みの時期なのに、アタシったら昔のオトコに連れられて二人きり……笑っちゃうよね。
 こんなアイドル、いないよ。いちゃダメだよ。スカウトしてくれたあなたには、悪いんだけどさ』



思えばアタシは最初から行儀の悪い子だった。体力はないし、努力もしないし、冷めた態度だったし。
あなたに一服盛って爛れたセックスを繰り返すし。我ながら、ホントにひどい。

あなたは赤信号で停車しているとき『アイドル、辞めたいか?』と聞いてきた。
『辞めたいかもしれない』とアタシは小さく返した。

そんなコトより、セックスがしたかった。
自分でもどうかと思うぐらい、あなたの痛みと辱めが恋しかった。

でもソレを直に言葉にしてねだれない。今は志希のクスリがない。
シたいといって断られたらと思うと、たまらなかった。

アタシは、信号2つ3つ通り過ぎたあたりで、狡猾な手管を思いついた。

『前さ、志希がクスリばらまいて、問題になったことあったでしょ。実はね、
 アタシとあなたが最初にシたとき、アタシはあなたにソレを盛ったんだ……知ってた?』

あなたの心を弄んだんだ。腹を立てて乱暴に犯して欲しかった。
もしあなたがソレを「許してしまったら」どうしよう、と思った。
それぐらいならいっそ幻滅して見捨てて欲しかった。

『まぁ、でもさ、あなたもまんざらでもなかったと思うの。
 あなたは、アタシがアイドルで、あなたがプロデューサーだったからダメって言ってた。
 つまり、アタシのカラダ自体は、キライじゃなかったよね?』

あなたは黙ってハンドルとシフトレバーを握っていた。アクセルを緩く踏んだ。
どこに向かっているんだろう。

何も言ってくれないのが、今までのどんな荒っぽいセックスよりも、どんなハードな仕事よりも、
ひょっとしたら忘れかけていた病気の発作よりも、身に堪えた。
十字架に組まれた焼け棒杭の燻りがアタシを焦がしていた。

あなたはきっとフロントガラスの向こうを見ていた。
あなたの目の前で、初めて泣きそうになった。

『わかった。どうせ総務も針のムシロだったし。ヤラせろよ。
 ただし、今日は加蓮が何をねだってもダメ。俺の好きにやらせてもらうからな』



あたしは携帯で志希にメッセージを打った。

『今すぐアタシのアリバイ作って。そしたら、売られた恨みは忘れてあげる』

志希の宵っ張りに賭けたら、すぐ返事が来てくれた。

『デレぽ見て』

開いてみると、アタシと志希がカラオケボックスの中にいる写真が、ついさっきの時刻でアップされてた。
『加蓮ちゃんとカラオケナイト!』――よく見ると、あたしがクスリを使われたとき、
いつの間にか撮ったであろう写真だった。アイツはホントに人を食ってる。
それに便乗してるアタシが言えた義理じゃないけど。
ともかくこれで、今夜どこに行ってたかはごまかせるだろう。
8 : ◆FreegeF7ndth [saga]:2018/07/01(日) 12:23:51.96 ID:bLc77vRJo

●4-01

あなたは蔵前三ノ輪線を流していたかと思うと、けっこうな威容のホテルに乗り付けた。
間口にはバス停が時刻表をぶら下げていた。だいじょうぶかな、それなりにするよね、きっと。

「前より奮発してくれたね。諭吉さん何人ぶん?」
「5人とちょっと。プロデューサー時代より給料上がったんだぞ、笑っちゃうだろ?」

あなたは、さも兄か年かさの親戚のような顔をして、アタシの手を引いてチェックインした。

「あんまり安いと客やホテルマンがタレ込むからなぁ」

冗談だか本気だか判断しかねる声音だった。



アタシの部屋の3倍はありそうなツインルームの窓からは、
紫色の調光を浴びたスカイツリーが、暗く濁った夜空へ、まち針のように刺さっていた。
その下には、東京の中でも本当に眠らないあたりの灯りが散らばっていて、
あの中のどれかに、アタシと同じような感じでオトコと寝るアイドルがいないかなぁと思った。

余裕で持て余してしまう広さのシングルベッドは、泣きたくなるほど柔らかくアタシを沈めた。
照明はつけっぱなしで、あなたはシャワーも浴びずに服をくつろげる。

「ちょっと太った?」
「おい加蓮、お前は乙女ゴコロを理解してないな」

冗談めかして笑うあなたは、プロデューサー時代より少しお腹が出ていた。
まぁ、あの頃のあなたは悪い痩せ方をしていたから、むしろ喜ばしかった。

「いいじゃん、血色も良くなってる気がする」

TrinityFieldのレッスンでクタクタに疲れていて――それが寝転んだときにどっと溢れ出た。
このまま寝てしまいそうになる。まどろむ意識の中、あなたの手が服をはだけさせてきた。

「シャワー浴びてくるっ」
「いいよ、このままで」
「あなた、乙女ゴコロを理解してるんじゃなかったの?」
「今日は俺の好きにって言ったじゃないか」

諦めてベッドに仰向けになった。
橙色の室内灯は、かつてより優しく網膜を焼いてきた。



あなたはアタシの前髪をたぐって額にキスを落としてきた。
アタシがこだわってるところ、わざといじってくる。しかも優しげに。

「じれったいなぁ……前みたいに、強引にシてよ」
「やだよ。お前の肌が恋しかったんだ。堪能させてくれ」
「調子のいいこと言うんだから」

柄にもなく嬉しくなってしまう。

かつてあなたとアタシのセックスと言えば、折檻と紙一重だった。
肌と肌を合わせることも少なかった。

アタシがそれを望んでいたのだ。
でも、あれじゃアタシがオモチャでオナニーしてたのと変わりなかったね。

あなたはどんなセックスを望んでいたんだろう、と今更になって思った。
今からアタシはその望みにこのカラダを委ねるのだ。
ベッドに押し包まれた背中がゾクゾク震えた。
それが期待なのか不安なのかはわからなかった。

9 : ◆FreegeF7ndth [saga]:2018/07/01(日) 12:24:30.94 ID:bLc77vRJo
●4-02

練習着のゴムが、アタシの足首に溝を刻んでいて、まだ埋まりきっていなかった。

「これじゃ、水着グラビアは撮れないなぁ」
「ないからいいでしょ、別に」

肌を出す仕事の前夜は、下着の線をつけないために、前夜は下着をつけない。
それを最初にあなたから教えられたときは、セクハラだって半分怒ったっけ。

ペディキュアもできていないどころか、なれないステップで角質のできている足をふわふわと撫でられる。
足の甲をつつ……とされると、つい力んで四本の伸筋を浮かせてしまう。

「やだ、くすぐったいよ……」

静脈をなぞられる。足の指があなたの指に絡もうとムチャをして伸びる。
それを軽くかわしてあなたの指の腹は、アタシの足球と土踏まずのえぐれを掃いていく。
セックスなのになんで足なんかくすぐられてるんだろう。
そう思ったけどあなたの手で悶えさせられる足は、これはこれでイヤらしいかもしれない。



「あ、はぁあっ……っ」

足の甲にぬめっとした感触が広がって、気持ち悪くて何かと思ったら、
あなたが従属の証のように舌を出しながらキスをしていた。
そうと認識した瞬間、気持ち悪さが何かにひっくり返されて、
また例の震えが背中を走り、アタシの胃は引きつって、肺は呼気を絞り出させられた。
かつて脇の下やらなんやらをくすぐられたよりずっとアタシは過剰反応した。

「だめ、そんなトコ、しちゃ……っ!」

あなたがアタシの前にひざまずくというフォームが耐え難く不安だった。
あなたをさんざんオモチャのように扱ってきたのに。

「前はさんざんくすぐってやったじゃないか」
「でも、その……や、イヤだって」

イヤといいつつ、アタシはあなたの前に足を投げ出したままだった。

足も皮膚が薄いとは言え、脇の下や脇腹やらに比べれば、くすぐったさは生易しい。
酸欠で頭がチカチカしたりしない。気管支がひゅうひゅうと軋んだりしない。

そこでできた意識の隙間に、ナニかが入り込んでる。
あなたの唾液のようにべっとりと沁みてアタシをふやけさせる。

「別に俺も足フェチってほどじゃないけど、前から触らせてくれなかったじゃないか。
 足首も縛らせなかったし。そういう扱いされると、逆に気になるんだよ」

あなたを見下ろすという構図が、アタシをひどくかき乱した。

あなたはいつも、プロデューサーとしてアタシの前に立っててくれたのに、
それをアタシは一瓶かその半分で壊してしまっていた。
その行状を目前に突きつけられている。



「や……あ、ぁ、あっ……」

でもこの場の実際の主導権はあなたが握っていた。
だから本気でイヤとは言えない。あなたを煽る拒絶しかできない。

あなたはそれをたぶん見透かしてて、
アタシを見上げながら、アタシの震えを甘そうにねぶっている。

ダメ、ほんとに、そんな、卑屈な姿みせないで。
アタシの、せいだから。わかったから。

「加蓮の裸は見下ろしてばっかりだったが、見上げるってのもいい眺めだぞ」

あたしが趾(あしゆび)を縮こませる間隔は、短くなったり長くなったりした。
くるぶしより下しかいじられてないのに、ふくらはぎやスネまで絡め取られた錯覚がする。

「ホントにイヤなら蹴っ飛ばせよ」
「そんなコト、できないっ、けど、ヤメてっ」
「加蓮のワガママも懐かしいなぁ」

蹴っ飛ばそうと思えば蹴っ飛ばせる「姿勢」だった。
それはあなたに「足を向けて寝ている」ということだった。
あなたとそういう構図になることが、やっぱりアタシをどんどん狂わせる。
10 : ◆FreegeF7ndth [saga]:2018/07/01(日) 12:25:34.09 ID:bLc77vRJo
●4-03


あなたに見上げられると、出会ってからのいろんなコトを責められてる気がする。
ぜんぜん素直じゃなかった。しょっちゅう体調を崩して迷惑をかけた。

いや、そんなことより、『既成事実』をムリヤリ作ってソレを振り回してあなたをオモチャにして、
挙句の果てにプロデューサーを辞めさせてしまった。

「あっ、あ、くっ、あああっ」

足元から崩れていく。膝が笑う。太腿の裏が緊張する。
腰を下ろしてるはずなのに、カラダのすべてがグラグラしてしまう。



「足、実は気に入ってたりする?」

あなたは信じられないことを言う。

「だって、ほら、濡れてる」
「うそっ」

うそじゃなかった。確かにアタシのそこはある種の体液を分泌していた。
言われるまで気づく余裕さえなかった。

「興奮してる」

あなたに冒涜的な問いを投げつけられ、声も出せず首を横に振る。
灯りとあなたの顔が左右に振り切れる。

「いいんだよ、別に」

あなたの声は振り切れなない。体温も匂いも絡みついたまま。

「前に加蓮とシてたときより、俺もソソられてるから」

今はあなたが下の体位で、主導権はあなたが握っていた。



「前より腹直筋が厚くなってないか?」
「レッスン、ハードなのもできるようになったから……もう、体力ない組じゃないよ」

あなたはアタシのヘソ周りに軽く手指を食い込ませ撫でてくる。
手指が温かさが肌の下までじわじわ染みこんでくる。
腰を引こうにも引けず、行き場を失った力みがおしりの方に逃げて、
あなたの目前でアソコが恥ずかしいひくつきを見せてしまう。

クリをあなたの手のひらが面で刺激してくる。マッサージというよりサンオイルでも塗るみたいな軽い感触。
それぐらい手加減されてるのに、アタシは足をきゅっと締めてしまう。
あなたを遠ざけようとしてるのか、近くに引き寄せようとしてるのか、という格好。

「ひあっ、あっ」

押される。擦られる。また、優しい――ダメ。
優しいと、恥ずかしさを感じる余裕がデキちゃう。
痛みみたいに思考をパリパリと叩き割ってくれない。

「あっ、んんぅっ」
「反応いいな。これなら、前から加蓮にもっと優しくシてやればよかった」

だから、ホントに、ダメ。確かにキモチイイ――キモチイイから、いけない。
こんな大切に扱われるべきカラダじゃないのに。

11 : ◆FreegeF7ndth [saga]:2018/07/01(日) 12:26:25.37 ID:bLc77vRJo
●4-04

アタシは、あなたがアソコに顔を埋めている姿を直視できない。
あなたは強いて目を向けさせようとしないけど、アタシの体液や自分の唾液を肌や粘膜に塗り延ばして、
その内側の神経を手繰って、背徳的な状況を突きつけてくる。

「やさしく、シないでよ……っ」
「それ、煽ってるだろ」

違う、違うの、そう勝手にクチが言ってしまう。

「前からおねだり上手だったが、磨きがかかった」

あなたは嗜虐的な響きを浴びせてくる。
そういえば言葉で責めてもらったことはなかった。
想像するだけで恐ろしかった。ただの痛みや辱めとは、明らかに違うと思った。

「加蓮の――これが味わえるなら、人生終わってもいいってヤツ、いっぱいいるだろうなぁ」

あなたはべたつく指を舐めて、その様子をわざわざ見せてくる。
アタシが染み出させてしまった潤みをまたイヤでも自覚させられる。



「あっ――く、ふぁっ、んぃぅう……っ」

あなたがアタシの入り口をなぞる。
触り方で、完全に凝視されてるとわかってしまう。

「縛って、とかヘンタイじみたコト言ってた割には、加蓮のココは可愛らしいもんだよな」
「……知らないよっ、そんなの」
「そんでもって、よく濡れて、エロい」

あなたの言い草は妙に悔しいけどホントだった。
あなたが指を入れてきて、それはアタシが思うよりずっとぬるりとスムーズにいってしまった。

「はぁぅぁっ、あっ――うぁっ!」

ゆっくりとゆっくりと、家探しでもするように、あなたにナカを改められる。

「可愛い声も、もっと聞かせてもらえばよかった。つくづくもったいないことしてた」

あの時と違って、声が苦痛に潰れていない。
そのぶんだけ純粋にキモチイイ感じを吐き出してしまっている。

「あっ、はぁあっ、あぁあっ」

天井を擦られる。鳥肌みたいにザラザラしてしまう。
指を鉤型に曲げられて、クリトリスの裏側あたりで小さく円を描かれる。
円が増えるごとにアタシの声も大きくなってしまう。

「ッ……ああ゛っ、はっふあぁっ、ああああ゛ッ!」

手で口を押さえ込みたい。でも、できない。あなたに『聞きたい』って言われてしまったから。

「んやああっ、あぁああっ、ふあぁぁあっ!」

あなたの指を食いしめてしまう。甘すぎる責めのカタチを覚えてしまう。
そこからカラダに亀裂を入れられてバラバラになってしまう。

「ひくっ、うあ、あ、あああああ゛っ!」

ザラザラを擦られる――ソコ、ばっかり、これ以上やられたら、もう、アタシは。

「もうムリ! ソコ、ゆるして! うあぁ、ダメっ、あ、ひああっ、ああああ――っ!
「ダメって動き、してないじゃないか」

ナニか、出しちゃう。お腹の底からじゅっじゅって溢れてる。
でも、ソレ、出したら、あなたに――想像したら、いけない。もっと、ダメになっちゃう。

「あああああぁーー!!」

イッた――真っ白になって、出ちゃった、噴いちゃった。
あなたはまだ指を動かす。止まらない。止まってくれない。

「ゆる、して……お願い、だから……」

気づいたら、許しを請うていた。
ナニを許して欲しかったか、心当たりが多すぎて『許して』としか言えなかった。
12 : ◆FreegeF7ndth [saga]:2018/07/01(日) 12:27:15.20 ID:bLc77vRJo

●4-05

「加蓮がさ、上に乗って、入れてくれないか」

あなたのソレはゴツゴツといびつな棒のカタチをしている。
まるで手の指を五本――いや、五本では少し足りない――紐で束ねたようだった。
おかげでさっきまで指を突っ込まれてたアソコの感触が蘇ってアタシは喉を鳴らしてしまう。

「その……やったことないけど、いいの?」

騎乗位という知識は知っていたけど、オトコにも馬にもまたがった経験はなかった。
うまくやれる自信? まるでない。

「ほら、俺の手を上から握れ。ゆっくりでいいから」
「オンナのヒトは、下、見えにくいんだからね……」

手を握られる。掴まれる。恋人つなぎ。ぜんぜんロマンチックじゃないけど。
手綱なんてもんじゃない。もう逃げられない。
あなたを見下ろしてしまう、それを否応なく認識させられる。
さっきあたしのナカで弾けた興奮が今キてくれたら気が紛れたのに。

「ああぁ、んくっ……」

すっかり出来上がってしまってるアソコに、あなたをねじ込む。
抉られる太さが、角度が、違う。何より、アタシが動ける。動けてしまえる。

久々にみっちりとナカを満たされちゃった。
ああ、上に乗っちゃった。串刺しにされちゃった。
アタシがあなただけを楽しませるための姿勢だ。

「動いてくれ。前後が、いいな」
「そだね、迂闊に上下したら……加減わからなくて、抜けちゃいそう」

言われるがまま慣れない腰を使う。
さっき作られた引っ掻きキズのような指のあとに、あなたのモノの硬さと熱さが沁みる。
またキモチいいのに追い込まれて、我を忘れちゃう。



腰をゆすり続ける。
アタシの吐息が上から、あなたの吐息が下からやってきてぶつかって曇ってまざる。
あなたはキモチいいって思ってくれてるんだろうか。

「ふぁ――あ、んんっ――んんぅう――っ!」

声を噛み殺そうとして、押し留めきれなかった喘ぎを、行儀悪くポロポロこぼす。
ナカが割られちゃう。ほぐされて、媚びちゃう。
あなたの侵入を思い出す。でもあのときより、ずっと優しい。

「んんぁああああ――っ!」

だから、優しいのはダメだって。感じちゃう。
キモチよくなったら、その分、あなたへの申し訳無さで胸が苦しくなる。

13 : ◆FreegeF7ndth [saga]:2018/07/01(日) 12:28:00.50 ID:bLc77vRJo

●4-06

「気をやっちまっても構わないぞ。そのほうが、俺も愉しい」

でも、言葉でタガを外されちゃった。
ずるいぐらいあなたはアタシのことわかってるんだ。もう自分がどう動いてるのかわからない。
とにかく動いてしまっていた。勝手に動いて、キモチいいのに浸って、アタシのカラダ、暴走してる。

「や、やらぁっ! あなたを、キモチ、よく、するの――っ」

身体が躍りだしてしまいそうな、逆らい難い衝動につんざかれる。
すっかりアテられてる。

「いいぞ! もっと……加蓮っ」

あなたの言葉に衝き動かされると感傷的になって涙が出てくる。
さっきも泣いたのに泣いちゃった。
泣きながらアタシはあなたの上にまたがってゆさゆさ腰を振る。
それに合わせてあなたも息を荒げる。二人共もうメチャクチャ。

動きは前後から上下になっちゃう。奥、ツンとヤられると、切なくて、声が大きくなる。
この先が、たぶん、イクってことなんだろう。

「あぐっ、うっうっ……うあっ、あああっ!」

どんどん追い詰められる。
アタシのカラダは前のセックスと違ってふわふわ浮かされていた。

好き放題動けた。動いてしまっていた。いいところをこすりつけてあなたをナカでさんざん貪る。
そうするとあなたの目も蕩けておちんちんもびくびく動いてますます興奮する。



うれしいのかな。アタシ。セックスってうれしいものだったんだ。
あなたもうれしいとおもってくれてるかな。

て、ぎゅっとされて、ナカをきゅんとされちゃう。
アタマもナカもまるごとゆだってたまらなくなる。

「あっ――も、もう、げん、かい……アタシ、イッちゃう……っ!」

イク、ダメっ――ダメじゃない、ダメじゃないよね?

イッても、いいよね?
アタシ、あなたときもちよくなってもいいよね?

「俺も――い、イク、出す、ぞっ――!」

びくんびくんする。もっともっとぎゅってシちゃう。
アタマがまっしろになって、カラダがとけて、
ナカまであつすぎてびりびりして、もうせなかもまっすぐにできない。

「あっ、うああっ、あああああ゛っ!」

こえ、でちゃう。

さけんじゃう。

ぎゅって、ヤっちゃう。
とまらない。

だめ。

イク、イク――っ。

14 : ◆FreegeF7ndth [saga]:2018/07/01(日) 12:30:14.75 ID:bLc77vRJo
●5-01

ホテルから出るとき、

「加蓮に、ハマっちゃいそうだわ。クスリなしでも、いずれヤっちまってたかもなぁ」

とあなたはボヤいた。

言葉と裏腹に、声音は満足げだった。
アタシもなんだか晴れ晴れしていた。

「楽しかった。じゃあな」

と短く言い残して、あなたは去っていた。



TrinityFieldをファンに披露した直後、あなたが退職届を提出したと知った。

あなたのいないアイドル界に馴れるのは、まだ時間がかかりそうだった。

(終わり)


●あとがき
一ノ瀬志希が催淫剤をバラまいてバレた顛末は下記にありますのでよろしければ。

一ノ瀬志希の占有【R-18】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1435507873/

15 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/07/02(月) 03:46:57.71 ID:Cwk37ABjO
おつ
16 :以下、名無しにかわりましてSS速報Rがお送りします [sage]:2018/07/03(火) 06:28:15.60 ID:ClrzX3HBo
おつおつ
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