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水銀燈がドールたちの『母』になるようです - パー速VIP 過去ログ倉庫

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1 : [sage]:2009/05/06(水) 20:42:12.58 ID:H9D3xnU0
○ローゼンメイデンのSSを投下させていただきます。 前作「水銀燈がドールたちの母親になるようです」の続編です。よかったら、そちらも見てやってください。


「水銀燈がドールたちの母親となるようです」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1237586655/l50


○原作とアニメの設定が(一部意図的に)ごちゃごちゃになってます。広い心で閲覧してもらえると幸いです。
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=^・ω・^= ぬこ神社 Part125《ぬこみくじ・猫育成ゲーム》 @ 2024/03/29(金) 17:12:24.43 ID:jZB3xFnv0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1711699942/

VIPでTW ★5 @ 2024/03/29(金) 09:54:48.69 ID:aP+hFwQR0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1711673687/

小テスト @ 2024/03/28(木) 19:48:27.38 ID:ptMrOEVy0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/zikken/1711622906/

満身創痍 @ 2024/03/28(木) 18:15:37.00 ID:YDfjckg/o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aaorz/1711617334/

【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part8 @ 2024/03/28(木) 10:54:28.17 ID:l/9ZW4Ws0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1711590867/

旅にでんちう @ 2024/03/27(水) 09:07:07.22 ID:y4bABGEzO
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1711498027/

にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:26:18.81 ID:AZ8P+2+I0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/gomi/1711459578/

にゃんにゃん @ 2024/03/26(火) 22:26:02.91 ID:AZ8P+2+I0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/gomi/1711459562/

2 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/06(水) 20:49:27.19 ID:H9D3xnU0
【ジュンの家 深夜0:00】 


カリカリカリカリ


ジュン「…」


カリカリカリカリ


ジュン「…」

水銀燈「…ジュン?」


カチャリ


水銀燈「…まだ、起きているの?」

ジュン「君こそ。 …あ、起こしちゃったのかな」

水銀燈「目がさえちゃっただけ。 あなたこそ、あまり無理はしないで」

ジュン「一ヶ月くらい、無理したって平気さ」


パタン


ジュン「留年なしで復学させてくれるっていうんだから」
3 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/06(水) 20:52:54.39 ID:H9D3xnU0
(梅岡「…復学する気があるって!?」)

(はい、留年でも構わないですから)

(梅岡「…いや、それは大丈夫! お前なら大丈夫だ!!」)

(は?)

(梅岡「長期にわたる欠席の場合でも、うちの学校では学力認定試験で一定の成績さえ修めればそのまま復学できる!」)

(…はあ)

(梅岡「早速手続きする! そうだ、テキスト送ってやるぞ!」)

(ありがとうございます)

(梅岡「何だったら、行って勉強見てやる!」)

(…それはいいです。 いま、家に病人がいるので…)



水銀燈「来てもらえばよかったじゃない」

ジュン「…それはいいよ」

水銀燈「話を聞く分には悪い人じゃなさそうよぉ」


ギシッ


水銀燈「まぁ、そばにいたらうざったいかもしれないけどねぇ」
4 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/06(水) 20:57:38.37 ID:H9D3xnU0
ジュン「…ボクの記憶、読んで知ってるんだろ? ボクと、先生のこと…」

水銀燈「過ちなんて、だれにだってあるわ。 わたしだって…」

ジュン「…」


トコ トコ


水銀燈「ジュン?」


ギシッ


ジュン「体、大丈夫?」

水銀燈「…ええ」

ジュン「ちょっと、見ていいかい」

水銀燈「ふふ、スケベ」

ジュン「何をいまさら」

水銀燈「あらら。 落ち着いたものねぇ… 嫌になっちゃうわ」

ジュン「背中だけでいいから、ほらほら」

水銀燈「もう、あの可愛かったジュン君はどこにいっちゃったのぉ〜?」

ジュン「はいはい、服まくるよ」

スルスルスル

ジュン「…」




(やっぱり、きれいだ…)
5 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/06(水) 21:00:30.61 ID:H9D3xnU0
水銀燈「どう?」

ジュン「あ… うーんと、翼は出ないの?」

水銀燈「出そうと思えば、出せると思う」

ジュン「…ふーん」トントントン 


コツコツコツ


水銀燈「でも、今はあまり無理しないでおくわ」

ジュン「…そうだね」トントントン


コツコツコツ


水銀燈「…でも」

ジュン「なに?」

水銀燈「なぜ、急に復学しようと思ったの?」

ジュン「…いずれ、しようと思ってた。 いい機会さ」

水銀燈「わたしたちのため?」

ジュン「別に」トントントン



(のり「…そうね、そうするしかないね…」)
6 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/06(水) 21:01:36.64 ID:H9D3xnU0
(いつかは、この家にもいられなくなる。 …さすがに、みんなのことを親には言えないよ)

(のり「わたしは高校を卒業したら働くつもりだけど…」)

(ボクも高校に進学する。 大学までいけるかどうかはともかく、少しでもマシな職に就きたい)

(のり「ジュン君は、お父さんになるんだもんね」)

(ああ。 今は無理でも、いつかはみんなを自力で養えるようになりたい)

(のり「…わたしたちも、がんばらなくっちゃね」)



水銀燈「別にって何よぉ」

ジュン「なんでもないってば」

水銀燈「…だいたい察しはつくわぁ。 ふたりの親のお金でわたしたちを養うのが、いつまでも続くわけないもの」

ジュン「…」

水銀燈「…わたしたちが、稼いでもいいのよ?」

ジュン「君たちが?」

水銀燈「競売に出るのよ」
7 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/06(水) 21:04:30.74 ID:H9D3xnU0
ジュン「『出る』? 『出す』じゃないってことは…」

水銀燈「ご明察ね。わたしたちが出るの。架空の売り手を設定して…」

ジュン「却下」

水銀燈「…やっぱりだめ?」

ジュン「犯罪まがいのことはダメ。 だいたい、落札されたあとはどうするのさ」

水銀燈「こっそり逃げてくるに決まってるじゃなぁい」クスクス

ジュン「大却下」

水銀燈「…そりゃそうよねぇ」

ジュン「そんなことしたら、ずーっと盗品として追われるハメになるよ」

水銀燈「…」

ジュン「きみらは、人間とともに生きて幸せになるんだ」

水銀燈「…そうね(これは、黙ってたほうがいいわねぇ)」



(…実はもう追われてるんだってことは…)



トントントントン コツコツコツコツ




翠星石「(ああっ、あっ、あのふたりぃっ!!)」
8 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/06(水) 21:06:59.70 ID:H9D3xnU0
真紅「…」

翠星石「(な、なにハレンチなことしてるですかっ!!)」

真紅「(…打診しているだけよ)」

翠星石「(お前はなにを冷静になってるですかー!)」

真紅「(あの子は、もともとそのためにここに来たんでしょう?)」

翠星石「(おめーは、水銀燈がキズモノにされてもジュンが喰われちまってもいいって言いやがるですか!!)」

真紅「(…どっちのことが心配なの? 私はもう寝るわ)」

翠星石「(ど、どっちって…! …?!)」

真紅「(おやすみ)」

翠星石「(…ふんっ!)」




翠星石「…」




(まったくもう、真紅のやろーめ…)
9 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/06(水) 21:12:45.82 ID:H9D3xnU0
(ほんとは翠星石よりもよっぽどドキドキしてやがるくせに、おすまししやがってですぅ)

(まーた、ためこんでためこんで、爆発することになっても知らないですよーだ)


ゴソゴソ


(でも… 翠星石は、ほんとにどっちが嫌なんでしょうね)

(ジュンが水銀燈のものになるのと、水銀燈がジュンのものになるのと…)




翠星石「…ま、考えてもしょうがないですね」ゴソッ




真紅「…」


(ああいうことをしていたことは、別になんとも思わない)

(けれど… ふたりの、あの雰囲気。かわすまなざし、かけあう言葉…)


ゴロン


(なにかが、私の心に突き刺さる。 あれは… たしか…)



(「水銀燈…起きているかい?」)

(「…ええ、お父様」)



(水銀燈… あなた、あなたって、なぜ…?)

(なぜ… いつもいつも…)

(…)
10 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/06(水) 21:16:10.81 ID:H9D3xnU0
【翌朝】

ジュン「ふわあぁ…」

のり「おはよ、ジュン君」

翠星石「…おはようですぅ」

真紅「…」

ジュン「おはよ」

のり「昨日も、夜更かししてお勉強?」

ジュン「ああ… 大丈夫だよ」

翠星石「そりゃ大丈夫でしょーとも!」


ズイッ


翠星石「水銀燈と、あーんなことやこーんなこともしてたんですもんね!」

真紅「(…あなた!)」

ジュン「なんだ、見てたのか。 …体の具合を診てただけだよ」

翠星石「み…診てただけって!(な、なんでちっとも悪びれる様子が無いですかー?!)」




真紅「…」
11 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/05/06(水) 21:17:15.21 ID:Y7Z2UZ60
誘導されて来ますた
必要無いけど支援しておくよw
12 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/06(水) 21:18:20.39 ID:H9D3xnU0
のり「銀ちゃんの具合は、どうなの?」

ジュン「…まだ、よくわからない。とりあえず、外から見える傷はないよ」

のり「外から?」

ジュン「体の中は、まだ傷ついているようだけど…」

のり「そうなんだ…」

ジュン「まあ本人は元気だし、ゆっくり治すよ。 明日はめぐも来てくれるし」

のり「そうね… じゃ、行ってくるね」

翠星石「行ってきやがれですぅ」

真紅「…」


ガチャン パタン


真紅「…じゃ、雛苺を迎えに行きましょうか」

翠星石「いまごろ寂しくてベソかいてやがるでしょうからね〜 ひーひっひっひ…」

ジュン「二人で行ってきてよ。 ボクは水銀燈とご飯食べて、片づけしてるから」

真紅「…じゃ、翠星石」

翠星石「邪魔者は退散してやるですぅ〜」



ヒューン…
13 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/06(水) 21:20:46.36 ID:H9D3xnU0
ジュン「…まったく、もう」


カチャン カチャン


ジュン「まぁ、いいけどさ」


トン トン トン


ガチャン



「水銀燈、起きているかい?」

「ええ… 『お父さん』」



ジュン「もう、みんながいるから『お父さん』って呼ばないって言ってたじゃないか」

水銀燈「ふふ、あの子たちは出かけちゃったんでしょ? なら、いいじゃなぁい」

ジュン「まったくもう、君たちってば」

水銀燈「君『たち』? …あの子たちも、なにかしたの?」

ジュン「うん…」
14 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/06(水) 21:22:20.03 ID:H9D3xnU0
【nのフィールド】


ヒューーーーー…


真紅「…翠星石、いったいどうしたの?」

翠星石「ふんっ! ふしだらなふたりをいじくってやっただけですぅ!」

真紅「それにしたってひどすぎるわ。 …まったく、子供なんだから」

翠星石「お前…」


キキッ!


真紅「きゃっ?! きゅ、急に止まらないで!」


ズイッ


翠星石「真紅、お前…」

真紅「な、何よ?」

翠星石「真紅は翠星石のことをそう言えると、本気で思ってるですか?」

真紅「えっ?」

翠星石「朝からブッチョーづらかまして、ぶすーっとぶんむくれてたのはどこのどいつですか?」

真紅「わ…わたしが?」
15 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/06(水) 21:32:00.68 ID:H9D3xnU0
翠星石「のりが家を出るときも、ジュンが『行ってきな』って言ったときも、ロクな返事もしやがらなかったくせに…」

真紅「…わ、私は、そんな…」

翠星石「あー、どーせ翠星石は子供ですよーっだ!」プイッ 



「おめーみたいにおりこうさんになんかできねーです!」


ヒューーーー


真紅「す、翠星石!」



翠星石「(…あーあ。 まったく翠星石ってば、みっともないですね)」 


(気も使えないし、ガマンもできない。 …どーしょーもなく、ガキんちょです。 だから…)


(ガキんちょらしく、してやるだけです。 かざりたててカッコつけたって、どうせもちゃしませんから)


(真紅… お前は、どうですか? お前、そのままだんまり決めこんで、ほんとにもつんですか?)


チラッ


翠星石「…おめーもちょっとは、わがまま言ったっていいんですよ」

真紅「な、なに?」

翠星石「遅れずについてきやがれですぅ!」
16 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/06(水) 21:34:47.47 ID:H9D3xnU0
【ジュンの家】

水銀燈「…そう、あのふたりが」


カチャン


ジュン「機嫌が悪くなって大変だったよ」

水銀燈「まぁ、覚悟はしていたけどねぇ。 …あなたに世話になることを決めたときから」

ジュン「覚悟?」

水銀燈「ええ。真紅に翠星石、雛苺はきっと怒るだろうなって」


コク コク


水銀燈「…あなたを横取りすることになるわけだから、ねぇ」クスクス

ジュン「逆かもしれないよ」

水銀燈「逆?」

ジュン「ボクに、水銀燈を盗られたって思ってるのかもしれない」

水銀燈「はぁ?」


ケラケラケラケラ


水銀燈「まっさかぁ。 それはないわぁ〜」
17 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/06(水) 21:41:47.08 ID:H9D3xnU0
ジュン「わからないよ?」

水銀燈「あの子たちが、わたしのことをそんなふうに想ってるわけ無いじゃなぁい」

ジュン「…きみは、ボクの記憶を読んでるんだろ?」

水銀燈「えっ? …え、ええ」

ジュン「なら、憶えてないかい?」 


「ボクとのりがふたりきりで、この家に住むことが決まったときのこと」


水銀燈「あ…」



(お母さんなんか大嫌い! いつも自分の都合ばかりで…) 

(ボクのことなんてなんとも思っちゃいないんだ! のりを返してよ!!)

(のりも嫌い! だいっ嫌い!! …ボクからお父さんを盗らないで!!)

(みんな… みんな嫌い! 大嫌い!!)



ジュン「…好きとか嫌いとかって、どっちか片一方だけしかないってことはないんだと思う」

水銀燈「…」
18 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/06(水) 21:43:44.41 ID:H9D3xnU0
ジュン「大嫌いの裏側には、大好きが張りついてる。そういうものなんじゃないかなって」

水銀燈「…あの子たちも、そうだって言いたいの?」

ジュン「真紅や翠星石を見てると、あのときのボクたちを思い出すよ」 

水銀燈「…あなたたちを?」

ジュン「うん…特に、真紅はなまじ聞き分けがいいから余計に心配」

スック

ジュン「…今度はボクが、あのときの父さん母さんの立場になるのかな」

水銀燈「…ジュン」

ジュン「心配しないで、水銀燈。 ボクは、みんなのこと大事にするって…」


(きらきーと約束…)


水銀燈「大事にするって?」

ジュン「あー、うん、大事にするよ! 片付けしてくる!」


バタバタバタ


水銀燈「…へんなお父さんねぇ」
19 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/06(水) 21:47:54.27 ID:H9D3xnU0
【巴の家】

雛苺「…」


(巴「…じゃ、そろそろ行かなくっちゃ」)

(雛苺「…いってらっしゃい、なの」)


雛苺「…」


(巴「家の人に、気づかれないようにしてね?」)

(雛苺「…おりこうにしてるの」)


雛苺「…」



(…さみしいの…)



(真紅、翠星石、早く来てなの…)



パァァァァ…



(!! やっと来たのー!)
20 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/06(水) 21:48:51.39 ID:H9D3xnU0
真紅「(待たせたわね、雛苺)」

雛苺「(真紅!)」

翠星石「(ひっひっひ、さみしくて泣きべそかいてやがったですか〜?)」

真紅「(すっ、翠星石!)」


「ヒナ、泣きべそなんかかいてないもん!!」


翠星石「(うぎゃー!! でっけぇ声出すなですぅ!!)」

真紅「(…誰か来る! 雛苺、来なさい!)」

雛苺「(翠星石のバカー!!)」


ガラッ


「あら? だれかいたのかと、思ったんだけど…」
21 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/06(水) 21:51:28.64 ID:H9D3xnU0
今日はここまで。続きは明日夜予定。


>>11 支援どうもです。こっちでも頑張ります〜
22 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/05/06(水) 21:52:39.59 ID:TQgmaQIo
乙ですぅ
23 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/05/06(水) 21:54:09.93 ID:wofzfzAo
おっつ
24 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/05/06(水) 22:00:17.22 ID:moR8Vcso


ローゼンSS書いてる友達にも前スレ教えといた。
「今までで一番完成した作品」だってさ
かくいう僕もSS作家でね……
25 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/05/06(水) 22:02:17.45 ID:Sr3NSwIo
おつです
26 :1 [sage]:2009/05/06(水) 22:10:39.32 ID:H9D3xnU0
>>22
どもですぅ〜

>>23
どもっす〜

>>24
褒めてくれてどうもです〜
完成されてるかどうかは、完走してから判定してもらうということでご勘弁を^^;

>>25
どもっす。 明日も頑張ります。
27 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/05/06(水) 23:00:55.56 ID:3BSoYlEo
おつ!
28 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/05/06(水) 23:06:54.14 ID:3x7KpWko
おつつ
29 :1 [saga]:2009/05/07(木) 18:44:46.46 ID:IqqYSQ60
>>27
>>28
支援どうもです。再開します〜
30 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/07(木) 18:46:32.88 ID:IqqYSQ60
【ジュンの家】


シャーーーー キュッ


ジュン「みんな、遅いな…」


カチャカチャ カタン


ジュン「片付け終わっちゃったし…休んでよっと」


ゴロン


ジュン「…ぐー…」




真紅「ただいま… あら」
31 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/07(木) 18:47:55.15 ID:IqqYSQ60
翠星石「ありゃりゃ。 夜更かしがたたって寝ちまったですか。しょうがない…」

雛苺「うわーい!! ジューーーン!」トテテテテ


ピョーーーン


翠星石「ひっ、雛苺!?」

雛苺「苺あたーーっく!」


ボフッ!


ジュン「もがっ?!」

雛苺「さらにジュン登り2段返し〜!」

翠星石「む、無茶しすぎですぅ!」

ジュン「むぐぐぐ…」ムクッ

雛苺「おっはよーなの、ジュン!」
32 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/07(木) 18:50:18.47 ID:IqqYSQ60
真紅「雛苺! ジュンは昨日、夜遅くまで…!」

ジュン「おっとっと…」


ヨロヨロ  


真紅「ジュ、ジュン?!」

雛苺「ふおおおおおー?!」

翠星石「や、やっぱり無茶すぎですぅ! ジュンがへろへろになってるですぅ!」

ジュン「おーっとっとっとっと…」


ヨロヨロヨロ 


雛苺「す、すごいのー! ふおおおおおー!!」

真紅「…?」

翠星石「おや…?」

ジュン「おーっとっとと、今度はこっちだぞ」 


ヨロリヨロリ フーラフラ


雛苺「お、おっもしろいのー! たっのしいのー!」



翠星石「…なにやってるですか、チビ人間は」

真紅「遊んであげてるんじゃないの?」

翠星石「…なんか、包容力のあるジュンなんてうすきみ悪いですぅ」
33 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/07(木) 18:57:28.74 ID:IqqYSQ60
雛苺「うわーい! もっとやって、やってなのー!」

ジュン「よーし、いっくぞー!」


ブルンブルン


雛苺「ひゃあぁぁぁ!? すごい、すっごーい!」

ジュン「(…まったくもう、ヒナったら。 でも…)」



(…みんな、ごめん! 恨んでくれても、殺されてもいい!!)

(みんなへの影響は最低限にするから… みんなの生命力を奪って、水銀燈を助ける!!)



ジュン「(…これくらいは、してあげなくっちゃな)」

雛苺「うゆぅ… 目がくるくるするの…」

ジュン「よーっし」ガシッ

雛苺「うゆ? ジュン?」



「このまま水銀燈にあいさつだ」トコトコトコ
34 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/07(木) 18:59:09.75 ID:IqqYSQ60
雛苺「…えっ…? そ、そんな!」

真紅「ジュ、ジュン! それは…」

翠星石「ヒナがおびえてるですぅ! 自重しやがれですぅ!」


トコトコトコ


ジュン「だいじょうぶだよ」

雛苺「だ、だ、だめなの! こんなおぎょーぎわるいところ見られたら…!」

真紅「ジュンったら!」

翠星石「やめやがれですー!」

ジュン「君らこそ騒ぎすぎだよ…」トン トン トン


ガチャン


ジュン「おはよ、水銀燈」

水銀燈「あら… みんなも、来たのね?」

雛苺「ぁ… ぁぅ…」

ジュン「ほら、ちゃんとあいさつしなよ」

雛苺「…え…」



「お、おはようございます…」
35 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/07(木) 19:01:05.48 ID:IqqYSQ60
水銀燈「…ふふっ」


「こっちに、いらっしゃぁい」


雛苺「…」

ジュン「(…大丈夫。 水銀燈、怒ってないみたいだよ?)」

真紅「(ジュン!)」

翠星石「…」

雛苺「(…ほんと?)」

ジュン「(ああ)」ニコ


トコ トコ トコ


水銀燈「…」


…スッ


雛苺「?!」ビクッ

真紅「雛苺?!」

翠星石「すっ、水銀燈?!」

水銀燈「…もう、なんにもしやしないわよぉ」
36 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/07(木) 19:03:00.02 ID:IqqYSQ60
クイッ


雛苺「あ…」

水銀燈「ほら、こっちにいらっしゃいな。 …そう、ここに座って」

雛苺「…おひざの上?」


チョコン


水銀燈「…ジュン」

ジュン「これだね」スッ

真紅「(ドール用の…ブラシ?)」

翠星石「(な、なんなんですか! あの息の合い方は!)」

水銀燈「…ありがとう」

雛苺「…水銀燈?」

水銀燈「じっとしてなさい」



シュル シュル 
37 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/07(木) 19:06:25.11 ID:IqqYSQ60
ジュン「へぇ。 …雛苺の巻き髪って、伸ばすとそんなに長いんだ」 

水銀燈「ちゃんと、お手入れしてる?」

雛苺「え、えっと… 昨日は巴がしてくれたの」

水銀燈「その前は?」

雛苺「えっと… 巴が…」

水銀燈「まったく、もう。 巻き方が右左ずれちゃってるわよぉ」


シュル シュル シュル


水銀燈「まぁ、しょうがないわね。 …ジュン、お風呂準備してくれる?」

ジュン「了解」

雛苺「うゅ? お風呂って…」

水銀燈「この際だから、最後までやってあげるわ。 いったん伸ばして、巻きなおすのよ」

真紅「水銀燈、あなた…」

水銀燈「よいしょ、っと…」


ムクリ


ジュン「あ、歩けるのかい?」

水銀燈「まだ、ちょっと無理みたい。でも、大丈夫よ」

翠星石「…どうしちまったですか、水銀燈?」

水銀燈「どう、って…」


ヨロリ フラリ

 
水銀燈「別にどうもしないわぁ。 ヒマなだけよぉ」ケラケラ

真紅「(どうしたのかしら。 ジュンも、水銀燈も…)」

水銀燈「(やさしい水銀燈ってのは、さらに気色悪いですぅ…)」
38 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/07(木) 19:09:20.12 ID:IqqYSQ60
ジュン「それじゃ、下に下りるかい」スッ

水銀燈「雛苺に手を貸してあげて。私は大丈夫」

ジュン「え? でも…」

水銀燈「メイメイ、お願い」


ヒュルルル


水銀燈「そう、そこ… よいしょ」


ヨロ ヨロ フワ フワ


真紅「(…メイメイを杖がわりに?)」

翠星石「(あれじゃ、メイメイがかわいそうですぅ)」

水銀燈「おっ、とと…」

ジュン「…」


ヒョイッ


水銀燈「きゃっ?!」

ジュン「やっぱり危ないよ」

水銀燈「も、もうっ! 声くらいかけてよぉ!」

ジュン「ほら、雛苺も」

雛苺「…はい、なの」


トコトコトコ
39 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/07(木) 19:18:24.58 ID:IqqYSQ60
ジュン「…水銀燈、ヒナをだっこしてやって」

雛苺「ふぇっ!?」

水銀燈「わかったわ。 …ほら、いらっしゃい」

雛苺「…いいの?」

水銀燈「…ほら、早く?」ニコ

雛苺「…」


ヒシッ


水銀燈「そう、しっかりつかまって…」

雛苺「はい…  ???」


(あれ…?)


ジュン「じゃ、立つよ」

水銀燈「お願い。 …階段気をつけて」

雛苺「…???」


(あれれれ…??? ヒナ、おかしくなっちゃったの…?)


ジュン「階段、下りるよ」

水銀燈「雛苺、しっかりつかまってなさい」


(なんなの…??? 息が、苦しいの…)


トン トン トン



(ムネのなかが、きゅううううってなってるの…)
40 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/07(木) 19:31:27.32 ID:IqqYSQ60
水銀燈「どうしたの、雛苺?」

雛苺「えっ… な、なんでもないの」


(ちがうの… すごく、すごく、なんでも『ある』の…)


(なんなの? これ、いったいなんなの…?)


(水銀燈…)


トン トン トン




真紅「…」

翠星石「…やーれやれ」



「やっぱり、わたしたちはお邪魔虫みたいですねー。 おい、真紅!」


真紅「…なに?」

翠星石「お茶とお茶菓子の準備するから手伝いやがれですぅ」

41 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/07(木) 19:42:08.90 ID:IqqYSQ60
真紅「わ、わたしも?」

翠星石「…そこでぼーっと突っ立ってるより、よほど気がまぎれるですよ」

真紅「え…」


ト ト ト ト


真紅「あっ、翠星石!」

翠星石「ほらほら、早く来るです」



【浴室】

水銀燈「これでよし、と」

雛苺「…きゅうくつなの」

水銀燈「ガマンなさい。火傷したいの?」

ジュン「はい、お湯沸けたよ」


チャポ


水銀燈「ありがとう、ジュン。 そこに置いておいて」
42 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/07(木) 19:43:54.75 ID:IqqYSQ60
ジュン「あと、これゴム手袋とタオル、それにヘアワックスとカーラー。…人間用でいいんだよね?」 

水銀燈「ええ、大丈夫。 その辺でいいわよ」

ジュン「火傷しないでね」

水銀燈「気をつけるわ。 それじゃ… 雛苺、頭をこっちに倒して」

雛苺「えっ… こう?」

水銀燈「そう… もうすこし。 うん、それくらい。 じゃあ、ジュン…」

ジュン「ああ、外に出るよ。 もうすこし、お湯沸かしてこようか?」

水銀燈「お願い」


バタン


水銀燈「それじゃ、いくわよ」

雛苺「…はい」

水銀燈「…動かないでね」


スル ススス カチリ


雛苺「…」


カポッ


水銀燈「はい、取れたわ」
43 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/07(木) 19:46:23.24 ID:IqqYSQ60
雛苺「…おつむがすーすーするの」

水銀燈「わたしたち、こういうときは人間ほど手間がかからなくていいわねぇ」


チャポ


水銀燈「お湯かけるわよ、下がってなさい」

雛苺「…はい」


ザァァァ…


雛苺「…くるくるだったヒナの髪が、するするになったの」

水銀燈「ふふっ。 …さっきは、ごめんね」

雛苺「…え?」

水銀燈「びっくりさせちゃって、ね」



(水銀燈「…」スッ)

(雛苺「?!」ビクッ)



雛苺「あ… ご、ごめんなさいなの」
44 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/07(木) 19:51:29.90 ID:IqqYSQ60
水銀燈「ううん。 わたしが悪いのよ。 …髪しぼってお湯切るから、待ってて」

雛苺「はい」


ギュッ ギュッ ポタポタ


水銀燈「わたしがあなたたちに手を差し出すときって、ひっぱたくか戦うときくらいだったものね…」

雛苺「…水銀燈?」

水銀燈「…」



(お、お母様…? ひぃっ?!)

(寝ぼけてるんじゃないわぁ。…わたしは、あなたたちの姉。 ローゼンメイデン第一ドール、水銀燈よ)



水銀燈「(…ごめんね、雛苺)」

雛苺「水銀燈…?」

水銀燈「…なんでもないわ。 ほら、また頭だして」

雛苺「はい…」ググッ


シュルシュル ススッ カポッ


水銀燈「熱くない?」パチン

雛苺「うん、大丈夫。 …ほかほかして気持ちいいの」

水銀燈「ふふ。 それじゃ、細かいところを整えなくちゃね」
45 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/07(木) 19:56:12.22 ID:IqqYSQ60
【台所】


シューーーー


翠星石「そっちは準備できたですか?」

真紅「こっちはお茶の準備だけだから簡単よ。 …そっちこそ」

翠星石「こっちだって練っておいたのを焼くだけ。 お手軽ですぅ」

真紅「…」


シューーーー


真紅「…さっきのことだけど」

翠星石「(しーっ!)」


ガチャン トコ トコ


ジュン「あ、お茶の準備してくれてたんだ。 …真紅まで」

真紅「…」
46 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/07(木) 20:02:08.22 ID:IqqYSQ60
ジュン「真紅までやってくれるなんて、珍しいな。 言ってくれればやるのに…」

真紅「…あなたは、昨日、眠ってないみたいだから…」

翠星石「おめーらがイチャイチャしてやがるから、気を利かせてやったんですぅ」

真紅「(…翠星石ってば!)」

ジュン「…もう、そんなんじゃないってば。 お湯もらうよ」カチリ


ジャーーーー


真紅「…」


カチリ ウボッ


ジュン「お湯沸けたら、呼んでくれるかい?」

翠星石「へいへい。行ってちちくりあってくるですぅ」

ジュン「どこで覚えたんだよ、そんな言葉」

真紅「…」


トコ トコ ガチャン


翠星石「真紅、おめーも何か言ってやったらどーですか?」

真紅「私は… 別に」
47 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/07(木) 20:06:24.07 ID:IqqYSQ60
翠星石「んじゃ、『さっきのこと』ってなんですか?」

真紅「それは…それは、別に私は気にしてなんかいないってだけ。 あのふたりのことなんか」

翠星石「…あいかわらずのブッチョーづらでなにを言うかと思ったら」

真紅「…え」

翠星石「誰から見てももう、バレバレですよ。たぶんジュンにも、水銀燈にも」 


チーン


翠星石「おめーがおなかのなかに、なにかためこんでるなんてことはね」

真紅「…」

翠星石「どうですか?」

真紅「…私は、私は…」


「…そんなことなんか」


翠星石「…へいへい」

トテトテ

翠星石「(…自分じゃ言えないですかね。それとも)」

パタン ガラガラ




(なにを聞きたいのか、自分でもまだよくわかってねーですかね…)

48 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/07(木) 20:06:24.84 ID:IqqYSQ60
翠星石「んじゃ、『さっきのこと』ってなんですか?」

真紅「それは…それは、別に私は気にしてなんかいないってだけ。 あのふたりのことなんか」

翠星石「…あいかわらずのブッチョーづらでなにを言うかと思ったら」

真紅「…え」

翠星石「誰から見てももう、バレバレですよ。たぶんジュンにも、水銀燈にも」 


チーン


翠星石「おめーがおなかのなかに、なにかためこんでるなんてことはね」

真紅「…」

翠星石「どうですか?」

真紅「…私は、私は…」


「…そんなことなんか」


翠星石「…へいへい」

トテトテ

翠星石「(…自分じゃ言えないですかね。それとも)」

パタン ガラガラ




(なにを聞きたいのか、自分でもまだよくわかってねーですかね…)

49 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/07(木) 20:09:52.57 ID:IqqYSQ60
翠星石「よっこいせっと、できあがりですぅ。 ほれ、真紅」

真紅「…なに?」

翠星石「焼きたてあつあつのスコーン、味見させてやるですぅ」

真紅「…別に、私は」

翠星石「いいから食ってみなさい」

真紅「…」


カリッ サクッ


真紅「(…おいしい。 いい香り…)」

翠星石「…まぁ、おめーは無理しなくていいです。そうやっておりこうにしてればいいです」

真紅「え?」
 
翠星石「こういうことは、おこちゃまの翠星石がやればいーんです」
50 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/07(木) 20:16:13.34 ID:IqqYSQ60
真紅「あなたが…なにを?」

翠星石「チビ人間をきゅっと締め上げて、吐かせてやるですぅ」ポキポキ

真紅「だ、だから別に、私は…」

翠星石「あー、もー。 真紅は黙って、『どきゅん』で『まぁじけーわい』の翠星石にまかせておきなさい!」

真紅「…」カリ サク 


「…勝手にするといいのだわ」


翠星石「まったくかわいげのカケラもねー妹ですね。 まぁいいです」


シューーーー


真紅「お湯が沸いたようよ」

翠星石「…持っていってやりましょうかね」カチリ


トテテテ


(とはいえ、真正面からぶつかっても、はぐらかされる可能性が高いですね…)


トテテテ


(どうしたもんでしょうか。 …まぁいいですぅ、あたってブチ砕けですぅ)
51 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/07(木) 20:17:21.52 ID:IqqYSQ60
【浴室】

ジュン「もう、入っていいかい」

水銀燈「いいわよ、足元だけ気をつけて」


ガチャン 


雛苺「あ、ジュン」

水銀燈「とと… 動いちゃだめよぉ」

雛苺「あっ、ごめんなさいなの」

ジュン「ふふっ。 …いま、お湯沸かしてもらってる」


パタン


ジュン「へぇ… ヒナって、巻き髪伸ばすとそういうふうになるんだ」

水銀燈「これから、巻きなおしちゃうんだけどね」

ジュン「これはこれで、かわいいかも」

雛苺「うゆ? ほんとに?」

水銀燈「ほらほら、まだ動かないで」
52 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/07(木) 20:19:53.60 ID:IqqYSQ60
シュル シュル シュル


雛苺「はーい」

ジュン「なにか、手伝うことある?」

水銀燈「まだ、ないけど…」


ドンドン


翠星石「お湯が沸いたからもってきてやったですぅ」

ジュン「お、気が利くなあ」ガラガラ

翠星石「手渡しじゃあぶないから、ここに置くですよ?」

ジュン「ああ、ありがとう」

翠星石「…」


ピト


ジュン「ん…?」


…ジューーー



ジュン「うわぢぃっ?!」
53 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/07(木) 20:22:42.84 ID:IqqYSQ60
水銀燈「翠星石!?」

雛苺「ふぇっ?!」

翠星石「ざまーみやがれですぅ!」


ト タ タ タ タ


ジュン「こっ、このぉ!」


バタバタバタ


水銀燈「…まったく、もう。 あの子ったら…」




ジュン「こらーっ! 翠星石、この悪魔人形!!」


ドダダダダ


翠星石「へっへっへー。 お熱い様子だったから、もっと熱くしてやったですぅ!」

ジュン「この、こっちだな?!」


ドダダダダダ
54 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/07(木) 20:29:54.01 ID:IqqYSQ60
翠星石「ここまでおいでー、チビスケベメガネ!」


ガチャン バタン!


ジュン「待てってばー!!(納戸の中かっ!)」


ガチャンバタン! 


翠星石「ひっひっひ、単純ですね」

ジュン「な? うわぁ!」


ガラガラガラ…


ジュン「ぐぇ」

翠星石「ここまできやがれですぅ!」


ブゥーン…


ジュン「こ、この…! nのフィールドに逃げる気か?!」

翠星石「あーれー、お助けですぅ!(もっと勢いよく来るですぅ!)」

ジュン「このっ!!」ダダダダ

翠星石「(…あと少し… 今ですぅ!)」


グイッ!


ジュン「うわっ?!」



ブゥーーーーーン…
55 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/07(木) 20:39:16.50 ID:IqqYSQ60
【nのフィールド】


サワ… サワ… サワ…


ジュン「こ、ここは…庭園?」

翠星石「…nのフィールドの奥の奥ですぅ」


サワ… サワ… サワ…


翠星石「わたしたちは、『秘密の花園』って呼んでますけどね」

ジュン「…秘密の…?」

翠星石「さ、そこに座るです。 ここなら、誰も来やしません」

ジュン「こ、ここ?」


ギシッ


翠星石「…もう、だいたい察しはついてますね?」

ジュン「…ああ」

翠星石「なら結構です。単刀直入に聞くです」


ズイッ




「ジュンと水銀燈の間に、いったい何があったですか?」
56 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/07(木) 20:41:23.20 ID:IqqYSQ60
今日はここまで。続きはあさって予定。
57 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/05/07(木) 20:41:49.62 ID:YCHXuoIo
乙です
58 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/05/07(木) 20:43:35.64 ID:LBQ.zn.o
おっつ
59 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/05/07(木) 20:46:42.81 ID:0eeCCTMo
この焦らし上手め
お前なんか乙だ
60 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/05/07(木) 20:57:05.34 ID:jmtcZ2AO
乙です。
続きが明後日…orz
61 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/05/07(木) 21:24:32.22 ID:X3Se8dQo
乙です
頑張ってくださいな
62 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/05/08(金) 08:14:46.41 ID:QtJkpcMo
おつ!
63 : [saga]:2009/05/09(土) 20:16:11.01 ID:ajYmqIs0
>>57-62
まとめてですいませんが、ありがとうです〜
再開します。
64 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/05/09(土) 20:16:27.46 ID:yBxcEPEo
待ってました
65 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/09(土) 20:18:29.93 ID:ajYmqIs0
【浴室】


シュルシュル クルクル


水銀燈「…もう少しの辛抱よ」

雛苺「…はい」


シュルシュル クルクル


水銀燈「…ジュン、遅いわねぇ」

雛苺「…あのね、水銀燈」

水銀燈「なあに?」

雛苺「今日ね、ジュンが… 遊んでくれたの」

水銀燈「そうなの?」


シュルシュル クルクル


水銀燈「いつも遊んでもらってたんじゃないの?」

雛苺「…いつもよりも、いっぱい、遊んでくれたの」

水銀燈「ふうん…」


シュルシュル クルクル
66 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/09(土) 20:20:28.06 ID:ajYmqIs0
雛苺「ねぇ、水銀燈」

水銀燈「なあに?」

雛苺「ジュンも、水銀燈も、今日は何でこんなにやさしいの?」

水銀燈「…まあ、ひどいわねぇ。 いつもは優しくないってこと?」

雛苺「あっ… そ、そんなつもりじゃ」

水銀燈「ふふ、冗談よぉ」


シュルシュル クルクル


水銀燈「ジュンは、いつも優しいでしょう? まぁわたしは優しくなんかないけどねぇ」

雛苺「…」

水銀燈「この体じゃ、アリスゲームどころか表に出ることもできない。ほんの暇つぶしよぉ」

雛苺「…おケガ、ひどいの?」

水銀燈「ふふ、大丈夫よ」


シュルシュル クルクル


雛苺「…ほんとに?」

水銀燈「ほんと。 …さぁ、終わったわよ」
67 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/09(土) 20:22:02.21 ID:ajYmqIs0
雛苺「…ありがとう、なの」

水銀燈「でも、まだ当分静かにしてなきゃダメだからね」

雛苺「…はい」

水銀燈「メイメイ、来てちょうだい」


ヒュルルルルル


水銀燈「よい、しょっと…」

雛苺「…」


クッ


水銀燈「ひ、雛苺?」

雛苺「…つかまって、水銀燈」
68 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/09(土) 20:24:58.15 ID:ajYmqIs0
水銀燈「…もう、ちっちゃいのに無理なんか…」

雛苺「大丈夫だもん」


ヨロ ヨロ


水銀燈「…大丈夫よぉ、かえって危ないわ」

雛苺「…がんばるもん」


フラ フラ


雛苺「あしもと、気をつけて…」

水銀燈「雛苺…」


ガクッ!


雛苺「きゃっ!?」

水銀燈「…くっ!」


ガシッ


雛苺「…あっ!」

水銀燈「あ、あなた…」



真紅「…無理しないで、ふたりとも」
69 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/09(土) 20:30:27.64 ID:ajYmqIs0
【nのフィールド・秘密の花園】


ジュン「ボクと…水銀燈の?」

翠星石「ほかにも、聞きたいことは山のようにあるですよ」


チョコン


翠星石「翠星石たちに、何が起こっていたのか。 あなたたちが、なにをしてくれたのか」

ジュン「…」

翠星石「水銀燈が、なぜ大怪我をしてるのか… あげだしたらキリがねーです」


サワ… サワ…


翠星石「でも、どーせ答えちゃくれねーだろうから、これだけでも言いやがれです」

ジュン「…」

翠星石「おめーは、契約してたわけでもねーあいつと、いったいなにをしてたんですか?」

ジュン「…」

翠星石「あのチョモランマもびっくりのタカビー女が、なんであんなになっちまってるですか?」

ジュン「そ、それは…」



サワ… サワ… サワ…
70 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/09(土) 20:37:06.96 ID:ajYmqIs0
ジュン「…」

翠星石「やっぱり、だんまりですか」

ジュン「…ごめん」

翠星石「ごまかされるよりは、マシですけどね。 でも…」


トコ トコ トコ


翠星石「正直、しんどいですよ?みんなのことなのに、自分たちだけないしょにされるってのは…」

ジュン「…」

翠星石「おめーのこともそうだし、水銀燈のことも」

ジュン「…ああ」

翠星石「真紅なんて、ほんとにほんとに苦しんでるはずです。あいつは、心が強いんです。打たれ強いんじゃなくて、やみくもに強いんです」

ジュン「…うん」

翠星石「好きになるのも嫌いになるのも、愛することも憎むことも、人間並み…いやそれ以上に突っこんでいっちまう」


サワ…  サワ…


「…そんな、やっかいな妹ですよ」



ジュン「…」




(もう、ひとおしですかね…)
71 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/09(土) 20:54:43.82 ID:ajYmqIs0
翠星石「…」

ジュン「…翠星石」

翠星石「何ですか?」

ジュン「…ごめん。 ボクは、ボクはやっぱり…」


(今です! ここで決めてやるですぅ!)


翠星石「ああ、もう! そんなに…!」


ヒシッ


ジュン「翠星石!?」

翠星石「そんなに、翠星石のことが信じられませんか? 頼りになりませんか?!」ポカポカ

ジュン「す、翠星石…」


(まずはツンツンモードで押しまくるですぅ!)
72 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/09(土) 21:00:43.95 ID:ajYmqIs0
翠星石「わたしたち… 修羅場は慣れっこですよ? ずーっと、ずーっと戦ってきたんですよ!」

ジュン「…」


(よし、ここでモードチェンジですぅ!)


翠星石「いまさら… なんでないしょにしやがるんですか…」モフッ


(とっておきを喰らいやがれですぅ!) 


…モゾモゾ


(ブラックペッパーの力を借りて、今、必殺の!)


翠星石「…」プルプルプル

ジュン「お前…」


(うそ泣きアタックですぅぅぅ!!!) 


ジュン「泣いて…いるのか…?」

翠星石「翠星石だって… つらいんですぅ… うっ… うう…」

ジュン「…」ナデ ナデ




(決まったですぅ! このうるうるまなこに耐えられるはずがないですぅ!)
73 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/09(土) 21:03:50.02 ID:ajYmqIs0
翠星石「…お願いです…」ポロッ

ジュン「う…」


(完璧ですぅ! ドンピシャのタイミングで、こぼれおちる涙!!)


「みんな、話してください…」


(このタイミングでいままで落とせなかったやつはいないですぅ!)


ジュン「…ボ、ボクは…」


トクン


(落ちろ、落ちろですぅ! …あれ?)


トクン トクン


(あれれれ? …これは…??)


トクン トクン トクン…



(こ、これって… そんな、まさか…!)
74 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/09(土) 21:06:02.16 ID:ajYmqIs0
【ジュンの家・浴室】

雛苺「真紅… ありがとうなの」

真紅「もう、一声くらいかけなさい。雛苺も…」

水銀燈「真紅…」

真紅「…水銀燈も」プイッ


グッ ククッ


真紅「足は、つく?」

水銀燈「大丈夫よ。 …ありがとう、助かるわ」

真紅「…今日は、素直なのね」

水銀燈「まぁ、ケガしてるうちはね。 …雛苺、もう大丈夫。 あなたは先にお部屋に行ってなさい」

雛苺「…はい、なの」


トテテテテ


真紅「足元、気をつけて」

水銀燈「…ええ。 それにしても…」
75 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/09(土) 21:08:14.49 ID:ajYmqIs0
真紅「なあに?」

水銀燈「いいタイミングで来てくれたわねぇ」

真紅「…翠星石が」

水銀燈「えっ?」


(ジュンから話を聞くって言ってたから…)


真紅「…」

水銀燈「…翠星石が?」

真紅「…ジュンに追いかけられて、どこかへ行ってしまったから」

水銀燈「そう…」


ト ト ト ト


(これは、いいチャンスかもしれないわねぇ)
76 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/09(土) 21:11:14.77 ID:ajYmqIs0
水銀燈「…なつかしいわ」

真紅「え?」

水銀燈「ずいぶん前、あなたにこうやって支えてもらって歩いてたことがあったわねぇ」

真紅「…ええ(…あの時…)」

水銀燈「でも、あの後に…」

真紅「…」


(このジャンク!)

(わたしは… ジャンクなんかじゃない!)


真紅「私…」

水銀燈「真紅」

真紅「えっ?」


「…」


真紅「…水銀燈?」





「あのときは、ごめんね」
77 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/09(土) 21:13:45.56 ID:ajYmqIs0
真紅「え…」

水銀燈「…私、ムキになりすぎたのよ」

真紅「…あなた…」


ト ト ト ト


(…やっと言えたわぁ)


真紅「…わたし、そんなこと…」


(言ってみると、思ってたより何でもなかったわねぇ)


真紅「…そんな、あやまってほしいだなんて、言ってない…」

水銀燈「別に、そういう意味じゃないわ。 わたしが言っておきたかっただけ」




(まぁ、仲直りまではまだ無理だろうけど)
78 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/09(土) 21:15:16.65 ID:ajYmqIs0
真紅「…水銀燈」

水銀燈「なあに?」

真紅「…あなた、どうしたの?」

水銀燈「どうしたの、って?」

真紅「なんで… なんで、そんなに…」

水銀燈「…大したことじゃないわぁ」



「先が、見えたのよ」



真紅「先…?」


ト ト ト ト


水銀燈「わたし、もう長くないかなって」
79 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/09(土) 21:17:16.53 ID:ajYmqIs0
真紅「えっ…!?」

水銀燈「ふふ、それは嘘。 …でも、このケガでそういうことを意識したのは確か」

真紅「…」


ト ト ト ト ガチャ


雛苺「…」ウツラ ウツラ

水銀燈「ふふ、雛苺ったら」

真紅「風邪、引くわよ」

水銀燈「いいわよ、寝かせてあげなさい」

真紅「…あなたは、ソファでいい?」

水銀燈「ええ、お願い」


グクッ ポフッ
80 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/09(土) 21:21:01.09 ID:ajYmqIs0
水銀燈「あなたも、座って」

真紅「…」


ポフッ


水銀燈「…今まで、わたしには時間なんていくらでもあると思ってた」

真紅「…」

水銀燈「だから、先のことなんてあまり考えたことも無かった。けど…」クイ クイ


キシ キシ


真紅「(関節が…きしんでる?)」

水銀燈「こうなっちゃって、考えたのよ。 …やりきっておきたいことをね」

真紅「やりきって、おきたいこと…?」

水銀燈「ええ。 ちょっとしたことでもいいから、後に遺したくないこと」

真紅「…さっきのも、そうだったっていうの?」

水銀燈「まぁ、ずっと気になってたからねぇ」

真紅「…」

水銀燈「真紅?」

真紅「(…あなた、あなたずっと…)」




(ずっと、あのことを気にしていてくれたの?)
81 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/09(土) 21:25:24.51 ID:ajYmqIs0
水銀燈「…まぁ、わたしが勝手にそう思ってるだけだから。別にあなたはなにも…」

真紅「…水銀燈」

水銀燈「なぁに?」

真紅「私…」 

水銀燈「(…あなた?)」

真紅「私…」



「わ、私も…」



ガチャン ガタガタ ドダン!!



真紅「なっ!?」

雛苺「ふえっ?!」

水銀燈「…何の音?! 真紅、お願い!」

真紅「ええ!」


ヒョイッ


真紅「つかまって!」タタタタタ

水銀燈「納戸のほうよ!」

雛苺「…なんなの!?」トテテテテ
82 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/09(土) 21:29:42.44 ID:ajYmqIs0
真紅「何が起きたのかしら…」

水銀燈「気をつけて、真紅」

雛苺「うゆー…」



「…っぐ …うぅ…」



真紅「誰か… いるの?」

雛苺「…?」



「う… うぇぇぇ… えっぐ」


水銀燈「…あ、あなた?」

雛苺「ふえっ?」





翠星石「び… びええええん… ひっく」


83 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/09(土) 21:32:40.90 ID:ajYmqIs0
雛苺「ど、どうしちゃったの???」

水銀燈「(ジュンにしぼられたのかしら…)」

真紅「あなた… ジュンは、どうしたの?」

翠星石「…置いてきたですぅ」

真紅「置いてきたって… どこに?」

翠星石「…」


「『秘密の花園』ですぅ」


真紅「えぇっ?! 最深層じゃない!」

水銀燈「…あなた、なんでそんなことを!」

翠星石「おめーが悪いんですぅ!!」


ガバッ!!


水銀燈「くっ?!」

真紅「翠星石!?」

翠星石「ケガしてなかったら、ぶっとばしてやるところですぅ!!」
84 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/09(土) 21:35:46.96 ID:ajYmqIs0
雛苺「翠星石! だめなの!!」

翠星石「こんちくしょーですっ!!」


ドダダダダダ


真紅「翠星石!!」


(ちくしょー、ちくしょーですっ!)


ガチャリ カパッ


(なんで… なんで、ジュンから…!!)


バタン カチャリ


(…ありえねーですっ!!) 


シュルルルル…


真紅「待ちなさい、翠星石っ!」


(待てるわけないですぅ!!)ビシュン!!



ガッシャ-ン!
85 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/09(土) 21:42:34.61 ID:ajYmqIs0
トン トン ト ト ト 


雛苺「…あ、真紅」

水銀燈「真紅、あの子は?」

真紅「カバンに入って、窓から外へ…」

水銀燈「どうしたのかしら…」

真紅「…」


(翠星石… ジュンと、なにかあったの?)


水銀燈「…真紅、ジュンをお願い」

真紅「…ええ」

水銀燈「あの子は、メイメイにまかせて」


ヒューーーン


雛苺「ベリーベルもいっくのー!」


ヒュルルルルル… 


雛苺「んもー、はっやくいくのー!!」


シュパッ!!



真紅「…それじゃ、待っていてね」 タタタタタ
86 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/09(土) 21:44:47.83 ID:ajYmqIs0
今日はここまで。続きは… ちょっと間が空いて13日に。
87 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/05/09(土) 21:45:35.81 ID:F89vb7g0
乙!
88 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/05/09(土) 21:46:01.06 ID:yBxcEPEo
乙乙乙乙
>>1に届け俺の乙!!
89 : [sage]:2009/05/09(土) 21:46:16.41 ID:ajYmqIs0
>>64
速攻支援どーもっす〜
90 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/05/09(土) 21:47:33.31 ID:C7dCLbg0
乙!
楽しく読ましてもらってるぜ
91 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/05/09(土) 21:49:35.69 ID:/HWIA8.o
乙でした。
92 : [sage]:2009/05/09(土) 21:52:50.10 ID:ajYmqIs0
>>87
いちおつどもっす〜

>>88
届きました〜^^
どもっす。

>>90
ありがとうです〜^^
ゆっくりですいませんが、気長にお付き合いください。

>>91
どもでした〜
93 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/05/09(土) 22:06:43.56 ID:qC4Q.wc0
乙!

お約束で窓ブチ破る翠星石とか
もたつくベリーベルとか
いちいち細かいところが良すぎる

応援してるぜ!
94 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/05/09(土) 22:51:30.69 ID:BBc.3foo
遅れたけど乙
95 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/05/09(土) 22:52:47.98 ID:MIFRJuIo
おつつ
>>1のためなら何日でも待っちゃう
96 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/05/10(日) 06:10:38.75 ID:yiT1fYIo
おっつ
97 : [sage]:2009/05/10(日) 22:50:11.19 ID:rmDc3rQ0
>>93
応援どもです〜
ベリーベルは次の主役です^^

>>94
おつどもです〜

>>95
遅くってすんません^^;
ゆっくりやりますがご勘弁を

>>96 
おつどもっす〜
98 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/05/12(火) 08:51:51.15 ID:LuedOgAO
99 :水銀燈がドールたちの母親になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/13(水) 08:05:48.82 ID:eFuh1Mk0
こっそり再開。
100 :水銀燈がドールたちの母親になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/13(水) 08:07:47.86 ID:eFuh1Mk0
【柴崎時計店】

柴崎「…」カチャカチャ

マツ「…」キリキリ


蒼星石「マスター、おばあちゃん。 お茶が入りました」


マツ「まあ、ありがとうね。 蒼ちゃん」

柴崎「おお、いただこうかの」


コトン コト


マツ「蒼ちゃんが帰ってきてから、おうちの中のことはお任せできるから助かるわ」

柴崎「おかげでばあさんにも、また修理を手伝ってもらえるようになったわい」

蒼星石「いえ… なんてこと、ないですよ」

柴崎「うむ、じゃがのぉ…」


ズズズ


柴崎「桜田さん… お姉さんたちのところへも、そろそろ行ってあげたらどうじゃ?」

蒼星石「…」

マツ「そうねぇ。 あれから、一回も行ってあげてないんでしょう?」



蒼星石「…わざわざ僕が行かなくても、みんながいますから」
101 :水銀燈がドールたちの母親になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/13(水) 08:10:16.11 ID:eFuh1Mk0
柴崎「蒼ちゃんのことも、みんな待ってるんじゃろ?」

マツ「お顔だけでも見せてあげたら、きっと喜ぶんじゃないかしら…」


蒼星石「…」


マツ「(やっぱり、複雑なんでしょうね…)」

柴崎「(わしらもこの子に、あのときのことはちゃんと説明してないからの…)」


(どうしたもんかの…)(どうしたものでしょうね…)


蒼星石「…片付けますね」


…ヒュルルルル


柴崎「ん?」

蒼星石「…あ、あの音は!」

マツ「…まあ、あれは!」


シュルルルル…


柴崎「か、かばんじゃと?」

蒼星石「あ、危ない!」



…ストン
102 :水銀燈がドールたちの母親になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/13(水) 08:12:49.59 ID:eFuh1Mk0
マツ「…?」



カチャリ カパッ


翠星石「…おじゃまするですぅ」



蒼星石「翠星石…?!」

マツ「まあ、いらっしゃい」

柴崎「おお、よく来たのぉ」


翠星石「…」


蒼星石「す、翠星石?」

翠星石「おじじ、おばば、…蒼星石」



「また、しばらくやっかいになってもいいですかね?」



柴崎「…おお、歓迎じゃが… なにかあったのかね?」

マツ「また、ジュン君とケンカでもしたの?」

翠星石「…そんなもんですぅ。 よくある出戻りですぅ」

蒼星石「ど、どうしたんだい?」

翠星石「…ちっと、ひとりにさせてくれですぅ」パタン カチャリ 



ヒュルルルル… 
103 :水銀燈がドールたちの母親になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/13(水) 08:14:13.87 ID:eFuh1Mk0
蒼星石「…どうしたんだろう」

マツ「…落ち着いたら、話を聞いておあげなさいな」

蒼星石「はい…」

柴崎「とりあえず、桜田さんの家に連絡せねばの」


ヒュルルル…


マツ「あら、まあ。 今度は…?」

蒼星石「…君は!」



【ジュンの家】

雛苺「みんな、大丈夫かな…」

水銀燈「…大丈夫よ」


ヨロ ヨロ


水銀燈「せっかくだから、お茶にしましょう? 真紅たちが作ってくれたのに、冷めてしまうわ」

雛苺「あ、ヒナが持ってくるの」トテ トテ


カチャ カチャ


雛苺「んしょ、んしょ…」

水銀燈「無理しないでね」
104 :水銀燈がドールたちの母親になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/13(水) 08:16:13.52 ID:eFuh1Mk0
雛苺「みんな、まだかな…」コク コク

水銀燈「まだ心配?」…コク

雛苺「うん…」サクサクカリカリ

水銀燈「大丈夫よ」…サク


「真紅はもちろん、メイメイもベリーベルもいるんだから」


雛苺「…でも、ベリーベルってばいっつも言うこと聞かないの」

水銀燈「…あなた、あの子のこと、そういうふうに思ってたの?」

雛苺「えっ?」

水銀燈「わたし、今のはベリーベルが迷ったのもわかるけど」

雛苺「…なぜ???」

水銀燈「なぜって…ん、ちょっと待って」

雛苺「???」

水銀燈「…」




「そう、やっぱり柴崎さんの家にいるのね。ありがとう」
105 :水銀燈がドールたちの母親になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/13(水) 08:18:24.87 ID:eFuh1Mk0
雛苺「…水銀燈、だれとお話してるの?」

水銀燈「だれって…メイメイよ?」

雛苺「…ええっ?! うそっ!!」


ジリリリリン!


雛苺「あ、お電話!」

水銀燈「…雛苺、出てちょうだい」

雛苺「はーい」トテテテテ


ガチャ


雛苺「もしもし、えっと…桜田なの」

(柴崎「おお、ひなちゃんか」)

雛苺「ふおお?!」

(柴崎「ど、どうしたのかね?」)

雛苺「あ… あ、おじいちゃま、もしかして、翠星石に、メイメイがそっちにいるの…?」

(柴崎「めいめい? …ああ、この子のことかね? たしかにふたりともおるけども」)

雛苺「ふおおおおおおーーー?! 水銀燈すっごいのーー!!!」

(柴崎「な、なんじゃあぁ??」)
106 :水銀燈がドールたちの母親になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/13(水) 08:23:45.67 ID:eFuh1Mk0
【柴崎時計店】

翠星石「…面倒かけますね、メイメイ」

蒼星石「やっぱり、帰らないのかい?」

翠星石「帰らないんじゃないです。 帰れないんです」


ズズズ


翠星石「…粗茶ですねぇ」

蒼星石「淹れてもらってよく言うよ。 でも、帰れないって…」

翠星石「ジュンの顔は見たくないし、ケガ人の水銀燈にブチ切れちまったし」

蒼星石「…」

翠星石「真紅には、話を聞きだしてやるなんてエラそうに言っておきながらこのザマですからね」

蒼星石「…それにしても、ジュン君となにがあったんだい?」

翠星石「…」



「よく、わからないんです」
107 :水銀燈がドールたちの母親になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/13(水) 08:35:25.07 ID:eFuh1Mk0
蒼星石「…わからない?」

翠星石「…ええ」


ズズズ


翠星石「茶菓子がないと、口がさみしいですね」

蒼星石「…まったくもう」


ゴソゴソ ガサガサ


蒼星石「はい、これ」

翠星石「塩こんぶ? …はー、いかにもじじばばっぽいですね」

蒼星石「…いらない?」

翠星石「ありがたくちょうだいするですぅ」


モム モム クミ クミ


蒼星石「…わからないって、どういうこと?」…コク コク

翠星石「そのまんまです。 なにもかにも、わからないんです。ジュンのことも、水銀燈のことも。 …それ以前に」



「わたし自身が何でここまで取り乱してしまったのか、ってところから」
108 :水銀燈がドールたちの母親になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/13(水) 08:44:37.59 ID:eFuh1Mk0
蒼星石「…よく、わからないよ」

翠星石「翠星石にもわかってないんだから、わからなくて当然ですぅ」ズズズズ


コトン


翠星石「自分のことがこんなにわからないだなんて、姉失格ですね。真紅のことなんて言えないです」

蒼星石「翠星石…」

翠星石「…とりあえず、今晩はここに泊めてくれです」

蒼星石「でも、とりあえずジュン君は連れて帰ってこないと」

翠星石「たぶんいまごろ、真紅が迎えにいってやってるはずです」

蒼星石「それでも、ジュン君ひとりであんなところにいたら危ないよ」

翠星石「…ぬかりはねーですよ。 ところで、蒼星石」モム モム

蒼星石「なに?」


モム モム クミ クミ


翠星石「塩こんぶのおかわりはねーですかね?」

蒼星石「…まったく、もう」
109 :水銀燈がドールたちの母親になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/13(水) 08:51:19.59 ID:eFuh1Mk0
【nのフィールド】


ヒューーーーー


真紅「…まったくもう、翠星石ったら」


(翠星石にまかせておきなさい!)


真紅「あんなこと言ってたくせに…」


ヒューーーーー


真紅「…」


ヒューーーー


真紅「あんなこと言ってたのに、なぜ…?」



(いったい、なにがあったの? ジュンはあなたに、何を言ったの…?)



ヒュルルル…
110 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/05/13(水) 08:51:40.13 ID:XoNfa6AO
お。再開しとる。
期待。
111 :水銀燈がドールたちの母親になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/13(水) 08:52:27.85 ID:eFuh1Mk0
真紅「それにしても、よりによってあんな奥まで… ジュン、迷子になってなければいいけれど」


チカ チカ


真紅「…?」


チカ チカ


真紅「あれは…」


チカ チカ チカ


真紅「スィドリーム!」


ヒュンッ!


真紅「…そっちね!」


ヒューーーンッ!
112 :水銀燈がドールたちの母親になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/13(水) 08:59:45.49 ID:eFuh1Mk0
【柴崎時計店】

蒼星石「スィドリームを、お守りにつけたのかい?」

翠星石「『秘密の花園』は、最深層だけど安全な場所です。じっとしてさえいれば、危険は無いです」

蒼星石「そこまで気が回るなら、そもそもなんであんなことを?」

翠星石「…塩こんぶの食いすぎで、のどが渇いてきたですぅ」

蒼星石「…はーい、はい」


コポコポコポ

コトン コト


翠星石「…蒼星石、頼まれてくれませんか?」ズズズ

蒼星石「なんだい?」コク コク

翠星石「明日ジュンに会って、確かめてほしいんです」

蒼星石「…水銀燈とのことだね?」

翠星石「それもですが、もっともっと大事なことを」モム モム 

蒼星石「そんなことが、あるのかい?」

翠星石「ええ。じつは…」




「そっ?! そんなことを僕が?!!」
113 :水銀燈がドールたちの母親になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/13(水) 09:02:46.08 ID:eFuh1Mk0
翠星石「大事なこと、なんですよ?」

蒼星石「な、なんで僕が?!」

翠星石「…あえて、くわしく説明はしません。とにかくやってみて、素直に心に浮かんだままを教えてほしいんです」

蒼星石「ふ、ふざけないでよ!」

翠星石「おおまじめです。真剣なんです」

蒼星石「そ、そんな…」

翠星石「おじじー、おばばー」


「蒼星石が、明日ジュンの家に行ってくるんだそうです〜」


蒼星石「なっ?!」

柴崎「おお、それがいい。それがいいとも」

マツ「これでちゃんと、お話できるわね」

蒼星石「な、ななな…」



翠星石「つうわけです。よろしく頼みますね?」ニッコリ
114 :水銀燈がドールたちの母親になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/13(水) 09:06:21.87 ID:eFuh1Mk0
蒼星石「いっ、嫌だっ!! いくら君の頼みでも…!」


…スッ


蒼星石「す、翠星石?」

翠星石「…どうか、このとおりです」

蒼星石「や、やめてよ! 頭を上げて!」

翠星石「だってわたしたちの…薔薇乙女の『これから』がかかってるかもしれないんですよ?」

蒼星石「…えっ?」



「…もしかしたら、アリスゲームが終わるかもしれないんです」



蒼星石「…そこまでのことなの?」

翠星石「ええ。冗談でもなんでもなく、ガチです」

蒼星石「…」

翠星石「わたしも行きますから、ね?」




「…わかったよ、でもあんまり期待しないでよ」ポリポリ

「それでこそ、自慢の妹ですぅ」ニコニコ
115 :水銀燈がドールたちの母親になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/13(水) 09:09:37.51 ID:eFuh1Mk0
【ジュンの家】

水銀燈「…どうだった?」

雛苺「メイメイは今出てったって。 翠星石は、おじいちゃまのところにおとまりするみたい」

水銀燈「…まあ、とりあえず無事でよかったわ」

雛苺「でも… なんで、わかったの?」

水銀燈「まぁ、とりあえずお座りなさいな」

雛苺「…はい」トテ トテ


チョコン


水銀燈「ふふ、素直ねぇ」

雛苺「…ねぇ、水銀燈。 なんで?」

水銀燈「あなた、ベリーベルとちゃんとお話してる?」

雛苺「お、お話って…???」

水銀燈「もしかして、自分の言うことをわからせようとしてるばっかりじゃない?」

雛苺「え…そ、そんな…」

水銀燈「あなたのほうがベリーベルの言うことをわかってあげようとすれば、いろんなことを教えてくれるはずよ?」

雛苺「ひ、ヒナが…?」

水銀燈「そうよ。例えばね…」


「そこにいるんでしょう? 出てらっしゃい」


雛苺「…水銀燈?」

水銀燈「怒らないから、ね?」



…シュルル…



雛苺「ベ、ベリーベル?!」
116 :水銀燈がドールたちの母親になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/13(水) 09:12:44.00 ID:eFuh1Mk0
雛苺「な、なんでここにいるの?! もうっ!!」


シュルルルル…


水銀燈「…私にはわかるわよ、ベリーベル」


…ポウッ


雛苺「ベ、ベリーベル?」

水銀燈「わたしのことを心配してくれたんでしょう?」

雛苺「…えっ?」


ピカッ! チカ チカ


水銀燈「ほら、ね?」

雛苺「…どういうこと??」

水銀燈「…わたしに万が一のことがあったとき、あなたといっしょに私を助けようと思ってたのよ」


チカッ!


雛苺「えっ? …そ、そうなの? ベリーベル…」

水銀燈「わたしがメイメイを真っ先に行かせたから、あなたは残ろうと思った。そうじゃない?」


チカッ! チカ チカ…
117 :水銀燈がドールたちの母親になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/13(水) 09:14:31.68 ID:eFuh1Mk0
雛苺「ベリーベル… そうだったの…」

水銀燈「仲良くしなきゃ、だめよ?(…やれやれ)」


(わたしってば、よく言うわよねぇ。 「わかってあげようとすれば」なんて)


雛苺「ごめんね、ごめんね、ベリーベル…」

シュッ シュッ シュルルル


(…そんなの、わたしが一番できてないことじゃない)


雛苺「…いいの? ほんとに? …ベリーベルって、やさしいの…」

チカ チカ 


(でも、しょうがないわぁ… 時間がないもの)



(動けるうちに、ひとつでも多く、伝えられるだけのことを伝えないと…)





ドクン
118 :水銀燈がドールたちの母親になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/13(水) 09:18:25.54 ID:eFuh1Mk0
水銀燈「…?」


ドクン ドクン


水銀燈「(…な、なに? この感じは…)」

雛苺「す、水銀燈?」


…ミシッ


水銀燈「―ぐっ!?」

雛苺「水銀燈!?」


ミシ… ミシ…


水銀燈「う…ぐぅっ…!!」

雛苺「た、たいへんなの! べリーベル!!」


シュルルルルル…


雛苺「ベリーベル? は、早く行って!! 真紅を…翠星石を…誰か、呼んできて!」


シュルルルル…


雛苺「もうっ、こんなときまで! はやく行くったら行くの! …」



(ベリーベルとちゃんとお話してる?)



雛苺「(…お、お話???)」
119 :水銀燈がドールたちの母親になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/13(水) 09:23:20.84 ID:eFuh1Mk0
雛苺「べ、ベリーベル?」


シュルルルルル…


雛苺「水銀燈の…けいやくしゃ? あっ!! わかった、わかったの!!」


ピカッ!


雛苺「ベリーベル、メイメイが来るまで水銀燈を見てて! ヒナが…」



「ヒナが、めぐを連れてくるの! 命を吹きこんでもらうの!!」



ピカピカッ!


雛苺「それで、それで… メイメイが帰って来たら、ジュンと真紅を呼んできて! ジュンに、水銀燈を治してもらうの!」


ピカピカッ!


雛苺「ありがとなの、ベリーベル!」トテテテテ


ブゥーン…


雛苺「水銀燈、ベリーベル…!」ヒューーーーン 




「みんなお願い、がんばって…!!」
120 : [sage]:2009/05/13(水) 09:24:59.75 ID:eFuh1Mk0
とりあえずここまで。続きは一両日中。
121 : [sage]:2009/05/13(水) 09:25:51.74 ID:eFuh1Mk0
>>98 >>110
支援どうもでした〜
122 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/05/13(水) 12:22:16.23 ID:j680eEE0
乙したー
123 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/05/13(水) 15:04:13.14 ID:ZdiX/82o
乙です何かずいぶん久しぶりな気がするわ
生活の一部になってるんだなこのスレが
124 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/05/13(水) 15:13:46.27 ID:EYP4Jo.o
おつつ
125 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/05/13(水) 18:33:51.79 ID:bg8M5CQo
おっつ
126 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/05/13(水) 18:53:50.16 ID:esBt4Ggo
おつ!
127 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/05/15(金) 22:53:30.38 ID:QNvMTbAo
サイカイマダー?
128 : [sage]:2009/05/16(土) 01:00:24.66 ID:gAH3DNE0
>>122-126
まとめてですいませんが、乙どうもです〜

>>127
予定が変わってしまって…
申し訳ないのですが明後日までお待ちくださいm(;_ _)m
129 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/05/17(日) 15:14:56.45 ID:IEL5MpQ0
>>1
たのしみにしてるぜ!
130 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/05/17(日) 16:37:05.77 ID:C4QOd7g0
楽しくよんでるよ
131 : [saga]:2009/05/17(日) 17:39:06.54 ID:Uel3YgM0
>>129-130
ありがとうございます〜
遅筆ですがどうかお付き合いくださいm(;_ _)m


それでは再開します。
132 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/17(日) 17:49:08.50 ID:Uel3YgM0
【夜】

カリカリカリカリカリ

ジュン「…」

カリカリカリカリカリ

水銀燈「…まだ、起きていたの?」

ギシッ

ジュン「君こそ。…また、起こしちゃったのかな?」

水銀燈「あなたのせいじゃないわ。 …今日はごめんなさい」

ジュン「いいんだよ。 みんなのおかげで、無事だったんだから」


(めぐ「水銀燈… 大丈夫?」)

(水銀燈「ありがとう、もう大丈夫よ。 …ごめんなさい」)

(ジュン「…落ち着いたみたいだね」)

(雛苺「よかったの…」)

(ジュン「雛苺のおかげだよ」)

(雛苺「…水銀燈とベリーベルのおかげなの」)
133 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/17(日) 18:00:23.84 ID:Uel3YgM0
水銀燈「…あの子に助けられるとは、思ってなかったわ」

ジュン「君が教えてあげたことを、ちゃんと守ってくれたからだよ」

水銀燈「ふふっ。 …メイメイも、ありがとう」

チカ チカ

水銀燈「今日はあちこち飛び回ってもらっちゃったわね…」

ジュン「おかげで、ボクと真紅も間に合ったけどね」



(水銀燈「…ジュン、真紅。 ふたりにも、迷惑かけたわね」)

(真紅「…メイメイとベリーベルが報せに来てくれたから」)

(ジュン「迷惑だなんて言わないでくれよ」)

(水銀燈「…ありがとう」)



(真紅「…」)
134 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/17(日) 18:07:08.10 ID:Uel3YgM0
水銀燈「…めぐにも、苦労かけちゃったわぁ」

ジュン「大丈夫だよ、きっと」

水銀燈「…そうかしら」

ジュン「立場が逆だったら、君はめぐのことを迷惑だと思うかい?」

水銀燈「…まさか」

ジュン「だろ?」カリカリカリカリ



(ジュン「めぐも、ありがとう」)

(めぐ「平気よ。 …いきなりヒナが鏡から飛び出してきたときはびっくりしたけれど」)

(雛苺「…ごめんなさい、なの」)

(めぐ「いいの。 呼びにきてくれてありがとう」)

(ジュン「…でも、予定が一日早まっちゃったね」)

(めぐ「あら、わたし、明日も来るつもりなんだけど?」)


135 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/17(日) 18:11:03.10 ID:Uel3YgM0
(ジュン「え? …でも、いま生命力をもらっちゃったし…」)

(めぐ「でも、普通に遊びに来るぶんにはいいでしょう?」)

(ジュン「あ、そうか。 …でも、それでも無理はしないでよ」)

(めぐ「わかってる。 明日の昼12時になったら迎えに来て。 …それじゃ、水銀燈」)

(水銀燈「ええ、また明日。 …元気でね」)

(めぐ「もちろんよ」)

(真紅「…それじゃ、めぐ」 …ブゥーーーン)



ジュン「手術を控えてるだろうから無理はさせられないけど、来てくれるのは嬉しいよ」

水銀燈「…あなたも、無理しないでね」

ジュン「ああ…」

カリカリカリ

ジュン「もう、痛まないかい?」

水銀燈「…今は大丈夫」

ジュン「どんな痛みだった?」

水銀燈「うーん… なんて言えばいいのかしらね…」サス サス




「結晶の調子がおかしいみたい」
136 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/17(日) 18:12:56.49 ID:Uel3YgM0
ジュン「おかしい?」

水銀燈「ええ。 どうおかしいのか、ちょっと説明しづらいんだけど」

ジュン「…いままで、あったことがない痛み?」

水銀燈「うん…」サス サス


(いつかどこかで、感じたような気もするけど…)


ジュン「今度、本格的に見てみるよ。 日を置いて、めぐの回復を待ってね」

水銀燈「そうね…」




真紅「…」
137 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/17(日) 18:17:39.89 ID:Uel3YgM0
(ジュン… 水銀燈…)

トコ トコ …パタン

(あなたたちのあいだに、なにがあったの?)

カチャリ ゴソゴソ

(まるであなたたち、あのときのお父様と、おか…)

パタン カチャリ




(…お父様と?)



(ローゼン「くれぐれも無理はしないでおくれ」)

(水銀燈「はい…」)



(あのひとは… 水銀燈? あれ…?)


(いったい、なに? いまのは…) 




(私、何を考えているの…?)
138 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/17(日) 18:30:30.27 ID:Uel3YgM0
【翌朝】


ジュン「おはよう、のり、真紅」

のり「あら。 おはよ、ジュン君」

真紅「…早いのね」カチャ

コトン

ジュン「…紅茶?」

真紅「いつも、遅くまで起きているのでしょう? …私の契約者なら、少しは体に気をつけなさい」

ジュン「うん。 …ありがとう、真紅」

真紅「…」

ジュン「(…『私の』契約者、か)」コク コク


(やっぱり気にしてるのかな…)

139 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/17(日) 18:34:01.03 ID:Uel3YgM0
のり「ジュン君、銀ちゃんは大丈夫?」

ジュン「ああ、上で待っててくれてる」

のり「ごはん用意してあるから、持って行ってあげて」

ジュン「…いつも、朝早くからありがとう」

のり「ふふふ、いいの。 それじゃ行ってくるね」

ジュン「ああ」

真紅「…行ってらっしゃい」


ガチャン バタン


ジュン「…真紅」

真紅「なに?」

ジュン「今日は、昨日よりはしゃべってくれるんだな」

真紅「…な、なあに? どういう意味?」
140 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/17(日) 18:41:38.33 ID:Uel3YgM0
ジュン「いや… 別に」カチャカチャ

真紅「…」

ジュン「水銀燈と、なにか話でもしたのかと思ってさ」

真紅「…そんなこと」

ジュン「ご飯、持っていくよ」

真紅「勝手にすればいいわ。 私は、ここで待ってる」

ジュン「ああ。…真紅、ヒナを迎えに行くときに…」

真紅「わかってる。翠星石の所にも寄るわ」

ジュン「頼むよ」

トン トン トン

真紅「…」



トン トン トン

ガチャ


ジュン「おはよう、水銀燈。 起きているかい?」

水銀燈「ええ。 …ジュン」
141 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/17(日) 18:45:30.70 ID:Uel3YgM0
ジュン「体は、痛まないかい?」

水銀燈「だいぶんいいみたい」

ジュン「よかった。 …はい、これ」

水銀燈「ありがとう。 いただくわ」


モム モム 


水銀燈「…ふう」

ジュン「…やっぱり、あんまり食べられない?」

水銀燈「うん… ごめんね。とても、おいしいんだけど」

ジュン「いいよ、ボクの朝ごはんにするから。…あれ?」


…ヒュー


ジュン「窓の外… あれは?!」


ヒューーーーー


ジュン「まっ、またあいつか!! 窓、まだ直してないのに!」


水銀燈「突っこんでくる?!」



ヒュウウウ…



キキッ!
142 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/17(日) 18:48:24.75 ID:Uel3YgM0
水銀燈「あら?」

ジュン「えっ? …と、止まった?!」


カチャリ カパッ

翠星石「おはようさんですぅ」


ジュン「おっ、お前! 昨日は…」

翠星石「…昨日は正直すまんかったです」ペコリ

ジュン「えっ?」

翠星石「反省してるです。このとおりです」

水銀燈「あなた…」

翠星石「水銀燈にも悪いことしました。 申し訳ねーです」

ジュン「…まぁ、入りなよ」カラカラ

翠星石「おわびに、人手を連れてきました」


ヒュルルルル


ジュン「人手…? うわっ!」


ドゴス!


ジュン「ぐえ」ドッテン

水銀燈「ジュン?!」




カチャリ カパッ

蒼星石「あっ… ごめん、ジュン君」
143 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/17(日) 18:50:30.30 ID:Uel3YgM0
ガチャリ

真紅「騒々しいわね… あら、あなたたち?」

翠星石「おや、真紅。 …昨日はごめんなさいです」

真紅「…翠星石、蒼星石」

翠星石「今日はどうか、姉妹ともどもこき使ってほしいです」

蒼星石「話は翠星石から聞いたよ。 …来るのが遅くなって、ごめんなさい」

ジュン「…いいんだ。 いいんだよ」ズキズキ

翠星石「それじゃ真紅、雛苺を迎えに行ってやりましょうかね」

真紅「…えっ?」

翠星石「ほれほれ、早く早く」グイグイ

真紅「ちょ、ちょっと…」

翠星石「…」



(蒼星石が、ふたりに話をしてくれるんです)



真紅「…」
144 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/17(日) 18:54:26.88 ID:Uel3YgM0
翠星石「じゃ、私たちは行ってきますね」

ジュン「…ああ」

水銀燈「…行ってらっしゃい」

真紅「…」


ブゥーー…ン


蒼星石「ふう。じゃあ…ジュン君」

ジュン「なんだい?」

蒼星石「水銀燈とふたりで、少し話をさせてもらっていいかな」

ジュン「…えっ?」

蒼星石「そんなに長くならないから」

ジュン「そ、それは…」

水銀燈「…ジュン」


カチャリ


水銀燈「ごちそうさま」

ジュン「す、水銀燈?」



「これ、片付けてきてもらえるぅ?」
145 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/17(日) 18:59:13.51 ID:Uel3YgM0
ジュン「あ、ああ」

水銀燈「ふふ、大丈夫よぉ」

ジュン「…うん。わかった」カチャリ


ガチャン パタン


水銀燈「…さて、と。話って、なによぉ?」

蒼星石「スィドリームから聞いたよ。 体、大丈夫?」

水銀燈「ええ。 …みんなのおかげでね」

蒼星石「…痛まない?」

水銀燈「こうしているぶんには、ね」

蒼星石「…」トコトコ

チョコン

蒼星石「翠星石が、君の事を言ってたよ。ずいぶん優しくなってるって」

水銀燈「…あの子ったら。 ケガしてるうちだけよ」

蒼星石「僕のマスターたちにも、丁寧につきあってくれてるそうだね」

水銀燈「…世話になったからね」

蒼星石「どういう心境の変化だい?」

水銀燈「…」



水銀燈「べつに、変化なんかしてないわぁ」クイ クイ

キシ… キシ…
146 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/17(日) 19:03:24.31 ID:Uel3YgM0
…キシ キシ

蒼星石「(関節が…)」

水銀燈「こんなロクに動けない状態で、むやみに敵を増やしたくなかっただけよ」

蒼星石「…」

水銀燈「あなたには、以前言ったことがあったでしょう? 『戦いの勝者とは、何者か』って」

蒼星石「ああ、覚えてるよ」



「…『最後まで生き残った者』のこと、だったよね」



水銀燈「そう。 たとえ、かつて敵対した相手に助けを請い、媚びを売るような恥知らずな真似をしてでもね」

蒼星石「そのために、ジュン君たちに近づいたのかい?」

水銀燈「当然じゃない。 ちょっとしおらしく振舞えばイチコロだったわぁ」

蒼星石「…」

水銀燈「ちょろかったわよぉ」ケラケラ




蒼星石「…まったく、もう」
147 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/17(日) 19:11:55.37 ID:Uel3YgM0
ズィッ

水銀燈「な、何よ?」

蒼星石「君のジュン君たちへの態度を見てると、打算以上のものを感じるように思えるんだけど?」

水銀燈「…気のせいよ」

蒼星石「あれで隠してるつもりだったのかい? 目覚めたその日にわかったよ。 それに…」

水銀燈「…何よぉ」

蒼星石「彼らに取り入るのが目的なら、わざわざそれを僕に言う必要なんてないだろう?」

水銀燈「…」

蒼星石「何を考えているんだい?」



水銀燈「…かわいくない子ねぇ」

蒼星石「姉さんたちのおかげだよ」

水銀燈「あなたの望みは何?」
148 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/17(日) 19:23:46.31 ID:Uel3YgM0
蒼星石「今、言ったじゃないか。君が、何を考えてるか知りたいんだ」

水銀燈「何をって… 何のことを知りたいの?」

蒼星石「…これから、どうする気なんだい?」

水銀燈「これから?」

蒼星石「たとえケガが治っても、そのありさまで、アリスゲームを本当に再開できるのか?」

水銀燈「…」

蒼星石「それとも、このまま戦うこともなく静かにすごすつもり?」

水銀燈「…」

蒼星石「…水銀燈?」


クスクスクス


水銀燈「…まっさかぁ。わたしが、このまま隠居でもするって思ってるの?」

蒼星石「悪いけど、そう見えるよ。 …僕たちがずっとアリスを目指して戦ってきたことを、どう思ってるのかなって」

水銀燈「…」

蒼星石「君は姉妹の中で一番、アリスになるんだお父様に認められるんだって気持ちが強かった」


「僕は君が嫌いだけど… そのことだけは尊敬しているんだ」


水銀燈「…」

蒼星石「水銀燈?」

水銀燈「…そんなに心配?」

蒼星石「えっ?」

水銀燈「心配しすぎよ。いや、ナメられてるのかしらねぇ。 あなた、そこまで言うのなら…」

蒼星石「…」



「今すぐ、ゲームを再開したっていいのよぉ?」
149 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/17(日) 19:27:55.43 ID:Uel3YgM0
蒼星石「強がらないでよ」

水銀燈「そんなのじゃないわ。 本気で私に勝てるつもり?」

蒼星石「…」

水銀燈「それにね…」


グ ググッ


水銀燈「…わたしはアリスゲームに勝つため、あらゆる手段をとってきた」

蒼星石「…そうだね」

水銀燈「策も弄したし、みんなの大事なものを踏みにじってもきた」



「そんなわたしが、いまさら『ケガしてるところに仕掛けるなんて卑怯』なんて言えると思う?」



蒼星石「…」

水銀燈「もちろん、反撃はするけどねぇ」

蒼星石「僕は、そんなことする気はないよ」

水銀燈「…甘いわねぇ」

蒼星石「僕は、君と同じことをする気はないんだ」
150 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/17(日) 19:32:25.00 ID:Uel3YgM0
水銀燈「…」

蒼星石「なんでもありの君に、僕のやり方を貫いて勝ちたいんだよ」

水銀燈「…あなた」

蒼星石「僕はアリスになりたい。お父様を安堵させたい」


「君に勝って、君を超えてそれを果たしたいんだ」


水銀燈「…知っているわ」

蒼星石「今の君からローザミスティカを奪っても、君を越えた気にはなれない。 …それだけだよ」スック

水銀燈「…蒼星石?」

蒼星石「ジュン君の手伝いしてくるよ」

ト ト ト ト

水銀燈「…蒼星石、待ちなさい」

蒼星石「なに?」

水銀燈「…」



「ケガを治すまで、もう少しだけ待っててちょうだい」
151 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/17(日) 19:37:56.18 ID:Uel3YgM0
蒼星石「…」

水銀燈「治ったら、決着をつけましょう」

蒼星石「…わかった。望むところだよ」

水銀燈「けれど…」ニヤリ


「今すぐ始めたって、わたしはかまわないけどねぇ」


蒼星石「…無理しないでよ。 ケガしてるくせに」

水銀燈「試してみる?」


「…」


シュルル…


(レンピカ…)


「…」


チカ チカ 


「…」




蒼星石「今は、やめておくよ。 翠星石からの頼まれ事もあるしね」
152 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/17(日) 19:43:17.83 ID:Uel3YgM0
水銀燈「ふふ、じゃあ楽しみにしておくわ」

蒼星石「ああ。 …嬉しいよ」

水銀燈「…何が?」

蒼星石「君が、強い『水銀燈』のままでいてくれたことが」

水銀燈「…」

蒼星石「ケガして、少し弱気になってるのかと思ってたから… よかった」 

水銀燈「ふふ、大丈夫よぉ」

蒼星石「…体、大事にしてね」

水銀燈「…ええ」


ガチャン バタン


水銀燈「…やはり、きちんとケリをつけなければいけないわね」クイ クイ


キシ キシ


水銀燈「…わたしが始めたゲームなのだから」グググッ


…ギシッ





(わたしの手で、終わらせなくては…)
153 : [sage]:2009/05/17(日) 19:46:21.60 ID:Uel3YgM0
今日はここまで。再開は明日。
154 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/05/17(日) 19:52:48.19 ID:2ff86WIo
おっつ
155 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/05/17(日) 20:03:22.06 ID:0K.YtQ6o
乙です
156 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/05/17(日) 20:13:04.56 ID:eRlEDcIo
おつ!
157 : [sage]:2009/05/17(日) 20:54:36.74 ID:Uel3YgM0
>>154-156
乙どうもです〜
158 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/05/17(日) 21:01:10.49 ID:CPq1Z5Ao
おつつ
159 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/05/18(月) 17:23:25.96 ID:LrvX8Eco
まだかなまだかなー
160 : [saga]:2009/05/18(月) 20:52:29.22 ID:6CT7wks0
>>158 
乙どもっす^^

>>159
お待たせしました〜 再開します。
161 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/18(月) 20:59:55.64 ID:6CT7wks0
【nのフィールド】


テク テク テク


翠星石「たまには、のんびり歩くのもいいもんですね」

真紅「…」


テク テク …ピタッ


翠星石「おや、こんなところにまでお花が咲いてるですよ。たくましいですね」

真紅「…」


チョコン


真紅「…」テク テク

翠星石「真紅、ちょっと待つです」

真紅「…なに?」

翠星石「ここに座って、いっしょに可憐なお花を愛でませんか?」

真紅「…ゆっくりしすぎよ。雛苺が寂しがるわ」

翠星石「いいからいいから」ニコニコ

真紅「…もう」


チョコン
162 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/18(月) 21:09:58.97 ID:6CT7wks0
翠星石「きれいな花でしょう?」

真紅「…ええ、まあ」

翠星石「だれの心に咲いている花でしょうね…」

真紅「…」


…ヒュウウウゥゥ


真紅「そろそろ行かない?」

翠星石「真紅」

真紅「え?」


「お前は、ジュンのことは好きですか?」


真紅「え… な、何? いきなり…」

翠星石「どうですか?」

真紅「…そんな、別に私は…」

翠星石「翠星石は、嫌いじゃないですよ。むしろ好きだと思います」

真紅「…」

翠星石「真紅はどうですか?」




「…まぁ、私も嫌いではないのだわ」
163 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/18(月) 21:18:47.11 ID:6CT7wks0
翠星石「かわいくないですね」

真紅「よけいなお世話よ。…それがどうしたって言うの?」

翠星石「…」

真紅「翠星石?」

翠星石「…それじゃ」



「お父さまはどうですか?」



真紅「…えっ? どういう意味?」

翠星石「言ってるままですよ? ジュンと比べて、好きですか嫌いですか?」

真紅「そんなの… 好きよ。嫌いなはずないでしょう」

翠星石「そうですよねぇ」

真紅「ジュンと比べること自体がおかしいのだわ」

翠星石「まったくそのとおりです」

真紅「…ねぇ、いったい何が言いたいの?」


翠星石「…」スック 


スタスタスタ


真紅「す、翠星石?」



「それをこれから、蒼星石に確かめてもらうんですよ」



真紅「え…何? ちょっと待って!」
164 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/18(月) 21:24:54.41 ID:6CT7wks0
【ジュンの家】


シャーーーー カチャカチャカチャ


ジュン「(そろそろ、話は終わったのかな…)」


カチャリ


蒼星石「…ジュン君」

ジュン「あ。 …話は、終わったのか?」

蒼星石「うん、とりあえずはね。手伝うことある?」

ジュン「うーん、大丈夫だよ」

蒼星石「そう。 …じゃ、お茶でも入れるよ」

ジュン「ありがとう」

蒼星石「紅茶とコーヒー、どっちにする?」

ジュン「コーヒーがいいな。 紅茶は朝もらったから」

蒼星石「わかったよ」



カチャカチャ



蒼星石「…翠星石から聞いてると思うけど」
165 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/18(月) 21:34:07.65 ID:6CT7wks0
ジュン「…話、かい?」

蒼星石「うん」…コポコポ


「ジュン君は、水銀燈のことをどう思っているんだい?」


ジュン「どう、って…」

蒼星石「何もないとは言わせないよ?」

ジュン「…」

蒼星石「僕ら姉妹は永年連れ添ってきた。…お互いのことなんて、すぐにわかるよ」

ジュン「…そうだよね」

蒼星石「…」


(否定はしないんだね…)


ジュン「でも… 翠星石も言ってたけど、君らはほかの事は気にならないのか?」

蒼星石「僕たちに何があったのか、君たちが僕たちに何をしてくれたのかっていうのは、あまり気にならないんだ」

ジュン「…そうなのか?」

蒼星石「僕らは無事にこうして生きて、ここにいるんだもの」…クルクル


ポトッ ポトッ


蒼星石「水銀燈が僕らに内緒で何かするのなんて、別にはじめてのことじゃないしね」
166 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/18(月) 21:42:47.49 ID:6CT7wks0
ジュン「そうなんだ…」

蒼星石「それらはみんな過ぎたこと、過去のこと。君たちが秘密にしたいのなら、そうすればいい」

ジュン「…」

蒼星石「でも、君と水銀燈とのことは、これからのこと。 未来のことだろう?」

ジュン「…未来?」

蒼星石「そう、未来のこと」カチャカチャ


コポポポ…


蒼星石「お砂糖とミルクはいる?」

ジュン「一杯ずつ」

蒼星石「うん」カチャカチャ クルクル



ジュン「未来の、ことって?」

蒼星石「水銀燈は、僕ら姉妹がアリスゲームを制する上では最大の障害…敵なんだ」

ジュン「…」

蒼星石「けれど、やっぱり彼女は僕らの長女でもあるんだよ」

ジュン「…えっ?」




「彼女は薔薇乙女を率いて、導いていく存在なんだ」
167 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/18(月) 21:56:32.71 ID:6CT7wks0
ジュン「君たちを、導く?」

蒼星石「そう。アリスゲームと並行して、僕らがずっと行ってきたゲームがある」

ジュン「ゲーム?」


「『生きる』っていうゲームだよ」


ジュン「…」コク

蒼星石「僕らはアリスを目指してお互い戦うと同時に、生きのびるため外からの敵とも戦っていた」

ジュン「…水銀燈からも聞いたよ」

蒼星石「そうなんだ。 …そういうときに先頭に立って戦い、僕らをまとめてきたのは彼女なんだ」

ジュン「…」コク コク

蒼星石「その彼女が契約者でもない君と、いったいどういう関係なのか。できるだけ早く、はっきりさせてほしいな」

ジュン「…」カタン

蒼星石「それは、僕ら薔薇乙女の今後に関わることだから…」

ジュン「…君は」

蒼星石「なんだい?」




「君は、水銀燈が嫌いなんだと思ってたよ」

「…嫌いだよ?」
168 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/18(月) 22:04:36.91 ID:6CT7wks0
ジュン「え?」

蒼星石「大嫌いだよ。でも、それとこれとは別」

ジュン「…変なの」

蒼星石「僕らをまとめられるのは、水銀燈しかいない。それは姉妹みんなが認める事実なんだ」

ジュン「…」



「お願いだよ、ジュン君」



「…」



「…」



蒼星石「…まあ、いいけど」スック

ジュン「…ごめん」

蒼星石「僕らにとって、水銀燈の存在は良くも悪くも大きいんだ。それだけは忘れないで」
169 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/18(月) 22:12:20.79 ID:6CT7wks0
ジュン「…わかったよ」


パァァァ…


翠星石「ただいまーですぅ」

真紅「…ただいま」

雛苺「もー、ふたりとも今日はおそかったのー! …あっ、蒼星石ー!」

トテテテ

蒼星石「ふふっ、おはよう雛苺」

雛苺「うわーい!」

ヒシッ

蒼星石「元気そうだね。よかったよ」

雛苺「ね、ね、蒼星石!」

蒼星石「なあに?」



「水銀燈とお話した?」



蒼星石「え…」

翠星石「(ぎぇー! 空気読みやがれですぅバカ苺!!)」

雛苺「あのね、あのね、水銀燈がとっても優しくなったの!」

蒼星石「…」
170 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/18(月) 22:19:38.86 ID:6CT7wks0
雛苺「この髪の毛もね、水銀燈が巻いてくれたの!」

蒼星石「…そうなんだ」

雛苺「ベリーベルとも仲直りできたのよ! 水銀燈ってすっごいの!」

真紅「…雛苺」クイクイ

雛苺「なあに、真紅?」


「水銀燈にあいさつしてきましょう?」


雛苺「わかったのー!」

翠星石「(…真紅、ナイスですぅ)」

雛苺「ねーねー、蒼星石も来て!」グイグイ

蒼星石「えっ…」 

雛苺「今日はみんなで遊ぶのー!」





(…どうしてくれますかこの空気!! いっそ殺せですぅぅぅ!!!)
171 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/18(月) 22:27:56.20 ID:6CT7wks0
ジュン「…蒼星石」

蒼星石「な、なんだい?」

ジュン「悪いけど、居間の掃除手伝ってもらっていい?」


(ジュン、『でぃ・もーると』ですぅ!)


雛苺「えー?! ジュンのいじわるー!!」

蒼星石「いいんだよ、雛苺。僕はさっき挨拶したし、今日はジュン君の手伝いをしに来たんだから」

雛苺「むー… つまんないの」

真紅「行きましょう、雛苺。あんまりうるさくしちゃだめよ?」トコトコ

雛苺「んもー、いじわるー!」トテテテテ


バタン!


蒼星石「ありがとう、ジュン君」

ジュン「…みんなで一緒に遊んでくれたほうが、良かったんだけどね」

蒼星石「え…」


グシャ!


ジュン「きゅう」

蒼星石「ジュン君?!」

翠星石「…ほめてやって損したですぅ」
172 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/18(月) 22:37:27.72 ID:6CT7wks0
ジュン「な… なんで…」ピクピク

翠星石「さー、居間の掃除でもしてやるかです。…蒼星石」

蒼星石「なんだい?」


ソーッ


翠星石「(水銀燈とジュンにしたいって言ってた話は終わりました?)」ヒソヒソ

蒼星石「(…うん、とりあえずはね)」ポソッ

翠星石「(じゃ、例のアレ。 よろしくお願いしますね?)」

蒼星石「(…)」チラッ



ジュン「」ピクピク



蒼星石「(…いま?)」

翠星石「(…さすがにこの状況ではね… 午後でもいいですよ?)」

蒼星石「(そうするよ)」
173 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/18(月) 22:44:01.46 ID:6CT7wks0
【正午】


ポォウ…


雛苺「ただいまーなの!」

真紅「…連れてきたわ」

ジュン「おかえり…あ、いらっしゃい」

めぐ「おじゃまします。 …水銀燈、待った?」

水銀燈「ふふ、元気そうでよかったわ」

めぐ「蒼星石もいるって聞いたんだけど」

ジュン「いま、翠星石と下にいるけど…」

めぐ「…お礼を、伝えてもらおうと思って」
174 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/18(月) 22:50:56.26 ID:6CT7wks0
ジュン「お礼?」

めぐ「ええ、柴崎ご夫妻に。 …『あの時』すごくお世話になったから…」

ジュン「あ… ああ」



(めぐ「ごめんなさい… 柴崎さん、マツさん」)

(柴崎「いいんじゃよ」)

(マツ「なんてことなかったわよ?」)

(めぐ「わたしを病院から連れ出したせいで…」)

(柴崎「二言三言、小言を言われただけじゃよ」)

(めぐ「お父さんからも医者の先生からも…」)

(マツ「めぐちゃんが頑張ってくれたおかげで、警察のお世話にはならずにすんだんだから」)

(めぐ「…ほんとうにごめんなさい」)



水銀燈「(…わたし、あのふたりにはもう一生頭が上がらないわね…)」
175 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/18(月) 23:02:20.01 ID:6CT7wks0
ガチャリ


蒼星石「掃除終わったよ」

翠星石「お昼の準備も出来たですぅ… おや、よく来たですね」

めぐ「おじゃましてるわ。…いただこうかな」

翠星石「…それじゃ、みんなで下に来やがれですぅ(もういいですね、蒼星石?)」

蒼星石「そうだね。みんなで食べようよ(…うん、大丈夫)」



ジュン「…久しぶりだな、こんなににぎやかなのは」モグモグ

雛苺「パーティみたいなの!」ハムハム

めぐ「…蒼星石、柴崎さんによろしくね」

蒼星石「うん、わかったよ。 …あ、そういえば」

翠星石「なんですか?」

蒼星石「僕も、伝えなきゃいけないことがあったんだ。 …水銀燈に、マスターから」

水銀燈「…わたしに、おじいさまから?」

蒼星石「うん」


「『乳酸菌、毎日摂ってるよ』って」

「えっ…?」


ジュン「水銀燈?」

水銀燈「…」




「…おじいさまの意地悪」

176 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/18(月) 23:04:52.63 ID:6CT7wks0
ジュン「え?」

水銀燈「もう絶対言わないから許してって言ったのにぃ…」ウジウジ

蒼星石「そういう意味じゃないと思うよ。 ほんとに毎日摂ってるし」

ジュン「…どういうことなんだい?」

水銀燈「説明させないでよぉ」イジイジ

めぐ「じゃ、わたしがしようか?」

水銀燈「や、やめてよぉ!」

めぐ「でも、この際ちゃんと言っておいたほうがいいんじゃない?」

水銀燈「そんなぁ…」

ジュン「…いったいなんなんだい?」

めぐ「…食事どきにする話じゃないんだけどね…」




「病院やら施設やらにいると、イヤってほど乳酸菌摂らされるのよ」
177 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/18(月) 23:09:39.85 ID:6CT7wks0
ジュン「え? …血圧を下げるため?」

めぐ「それもあるけど、一番の理由はお通じを良くするためなの」

ジュン「お、お通じ??」

水銀燈「…『便秘になっちゃうと大変だからって、食べて出せ食べて出せってまるで家畜みたい』ってめぐが言ってたのよぉ」

めぐ「私のせいにしないでよ。 ただでさえ環境が変わって出づらくなる上に、ひどい言い方だけど…」

ジュン「???」



「なかには、自分が便秘だって気づかない、理解できないような人もいるでしょ?」ポソッ



ジュン「…ってことは、水銀燈は柴崎さんのことを…?」

めぐ「そういうこと」




ジュン「…水銀燈って最っっっ低」

水銀燈「もう、だから言ったじゃない!!」
178 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/18(月) 23:18:39.32 ID:6CT7wks0
真紅「最低なのだわ」

翠星石「敬老精神のカケラもありゃしねーです」

蒼星石「こんな姉を持った僕の気持ち、わかってもらえる?」

水銀燈「な、なによみんなまで!!」

雛苺「…なんなの???」

翠星石「おこちゃまは知らなくていいです」

雛苺「もー、おこちゃまじゃないもん!」プンスカ

蒼星石「それにしても…」


カチャリ カタン


蒼星石「…その口でよくマスターのことを『おじいさま』なんて呼べるね」

水銀燈「だ、だって、あの時はまさかここまでおじいさまにお世話になるとは思わなかったし…」

翠星石「手のひらはいくらひっくり返してもすり減らねーとでも言いますか」

水銀燈「…なめられちゃダメだって思ったのよぉ!」
179 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/18(月) 23:23:31.97 ID:6CT7wks0
ジュン「さすがに、これはもうダメかも」

水銀燈「…もう、許してってばぁ!」

ジュン「ダメ。 罰として一生乳酸菌摂り続けて…」



「…あっ!」



水銀燈「ジュ、ジュン?」

ジュン「…そういうことなのかい?」

水銀燈「えっ?」

ジュン「あれだけ乳酸菌好きって言ってるのは、柴崎さんへのお詫びのつもりなのか?」

めぐ「え…?」

翠星石「へ?」

水銀燈「…そっ、そっ…」

蒼星石「…水銀燈?」



「そ、そんなことあるわけないじゃない! ほんとに好きなのよぉ!!」
180 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/18(月) 23:31:09.83 ID:6CT7wks0
ジュン「…ふーん」

めぐ「あっそ」

水銀燈「な、何よそのそっけない返事…」

真紅「ジュン、紅茶を淹れてちょうだい」

ジュン「了解」

翠星石「わたしは片付けでもしましょうかね」カチャカチャ

蒼星石「僕は庭の手入れでもするよ」トタタタ

水銀燈「…んもう、みんなでいじめないで! わたしケガ人なのよぉ?!」

蒼星石「(…さっき自分で言ってたこと忘れたのかな…)」

めぐ「ジュン君、パソコンいじらせてもらっていい?」

ジュン「どうぞ。ヒナ、めぐといっしょにいなよ」

雛苺「了解なのー!」

水銀燈「(ひ、雛苺まで!?)」

トタタタタ




水銀燈「…くすん」ポツン
181 : [sage]:2009/05/18(月) 23:33:07.51 ID:6CT7wks0
今日はここまで。再開はあさって。
182 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/05/18(月) 23:35:14.12 ID:N6fvunso
乙です
銀ちゃん可愛いよ
183 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/05/18(月) 23:37:58.85 ID:eHpWUt20
乙!
銀様かわええのぅww
184 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/05/19(火) 02:26:11.36 ID:NAF6BZ.o
おっつ
185 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/05/19(火) 04:56:50.00 ID:SOU43Mgo
おつつ
186 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/05/19(火) 08:47:55.60 ID:4Z/O/QAO
187 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/05/19(火) 11:32:05.39 ID:AA.PZYso
おつ!
188 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/05/19(火) 19:45:16.65 ID:zmu68AQ0
同人設定の乳酸菌好きが本編と繋がったwwwwwwwwww
189 : [saga]:2009/05/20(水) 20:18:44.46 ID:V.zPMVA0
>>182-183
ニヨニヨしながら書きましたw

>>184-187
乙どもっす〜

>>188
頭に浮かんだので思わずやっちまいました…^^;


再開します〜
190 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/20(水) 20:21:03.86 ID:V.zPMVA0
…コポコポコポ


ジュン「はい、真紅」カチャリ カタン

真紅「いただくわ」…コク

ジュン「…」チラッ



水銀燈「…」



ジュン「(…真紅)」

真紅「(なに?)」

ジュン「(そろそろいいかな?)」

真紅「(…別に、私に聞くことではないでしょう)」コク コク

ジュン「(はいはい)」

真紅「(…雛苺にも、声をかけてきてちょうだい)」

ジュン「(もちろん)」ニコ
191 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/05/20(水) 20:24:00.57 ID:U2chY3k0
リアルタイムktkr
192 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/20(水) 20:24:19.70 ID:V.zPMVA0
水銀燈「…」


(…ぐすん)


ガバッ!


水銀燈「きゃっ?!」

ジュン「よいしょ」

水銀燈「な、何するのよぉ?!」

ジュン「二階に行くよ」

水銀燈「え?」 

ジュン「…めぐ、お昼ご飯を下げに来られる前に帰らなきゃいけないんだろ?」

水銀燈「…そ、そうだけど」

ジュン「じゃ、早く早く」

水銀燈「…え、あ…」



「…もう」



真紅「…」
193 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/20(水) 20:25:46.92 ID:V.zPMVA0
トン トン トン


ガチャリ


ジュン「入るよ」

雛苺「あ、水銀燈!」

めぐ「あ、ジュン君。 …あれ? あなたも来たの?」

水銀燈「…もう。 『来たの?』はないでしょう?」

めぐ「ふふ、うそうそ。 ジュン君、ここにお願い」

水銀燈「え… あなたの、膝の上??」

ジュン「OK」

水銀燈「ちょ、ちょっとジュン!」

ジュン「いいからいいから」


チョコン


めぐ「ありがとう、ジュン君」

水銀燈「…んもう」
194 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/20(水) 20:28:00.62 ID:V.zPMVA0
ジュン「それじゃ… ヒナ、真紅たちが呼んでるよ」

雛苺「え? ヒナを?」

ジュン「ああ。 食後のお茶にしようって」

雛苺「わかったのー! めぐ、またねーなの!」

めぐ「ふふ。 ありがとう、雛苺。 …じゃ、ジュン君」

ジュン「うん。 時間になったら、みんなで送るよ」

めぐ「お願いね」


パタン


めぐ「…ふふふ」ニマニマ

水銀燈「何よぉ」

めぐ「ちょっとはこたえた?」

水銀燈「…意地悪」

めぐ「それは認めるけど、あなたに言われるのは心外ね」

水銀燈「まったく、もう」
195 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/20(水) 20:30:42.66 ID:V.zPMVA0
めぐ「ね、見て」

水銀燈「え? (…パソコンの画面?)」


【心臓移植について】


水銀燈「…」



○移植手術後の存命期間は長いとは言えない

○移植手術が理想的な状態で行われても完全に健康な体にはならない

○提供者はきわめて希少であり、生きて移植を受けられる患者は3人に1人と言われる



水銀燈「…」

めぐ「ひどい話よね」

水銀燈「…そうね」

めぐ「成功しても、健康に戻れるわけじゃない。 病院で暮らす時間が長くなるだけ」

水銀燈「…」

めぐ「でも、それでいい。どうせ、限られた時間なんだから」



「…あなたに残された時間と、少しでも長く重ね合わせていられるなら」



水銀燈「…めぐ」
196 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/20(水) 20:43:37.31 ID:V.zPMVA0
めぐ「…受けるチャンスがあるだけでも、感謝すべきことなのよね」

水銀燈「そうよ」


「…あなたのお父さまに、ね」


めぐ「…」

水銀燈「元気なうちに、仲直りしたほうがいいわ」

めぐ「…きっと、そうね」

水銀燈「あら、素直ね」

めぐ「あなたに父親のことを言われたら、反論できないもの」

水銀燈「…」

めぐ「…こないだ電話で『手術することにした』って言ったら、すごく喜んでくれた」

水銀燈「当然よぉ」

めぐ「それで、今度来てくれるって」

水銀燈「あら、ひさしぶりね。よかったじゃない」

めぐ「…うん」


ギシッ


めぐ「わたしが死にたがってれば、そりゃ会いにこれないよね」

水銀燈「ふふ、ちょっとはこたえた?」

めぐ「…なによ、さっきの仕返し?」

水銀燈「さぁーねぇ? ところで…」
197 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/20(水) 20:48:04.82 ID:V.zPMVA0
めぐ「なあに?」

水銀燈「手術の日取りは決まったの?」

めぐ「…まだ。 渡米することになるとは思うけど」カチャ カチャ


○日本では非常に実施困難な状況なので、患者の大半がアメリカで移植を受けている


水銀燈「…」

めぐ「詳しい日取りが決まったら、教えるから」

水銀燈「…わかったわ」

めぐ「それより、あなたのほうはどうなの?」 

水銀燈「わたし?」

めぐ「体のことよ。 …雪華綺晶ちゃんだっけ?」

水銀燈「うーん… あれから、姿を見せないのよ」


(お母さまが、『マリア』になりさえすれば…)


めぐ「…そう。でも、いずれにしろ…」

水銀燈「いずれにしろ?」

めぐ「…」
198 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/20(水) 20:51:16.31 ID:V.zPMVA0
水銀燈「めぐ?」

めぐ「自分が言われるのは、あまり好きじゃない言葉なんだけど」

水銀燈「?」



「頑張って。 …元気になって」



水銀燈「…めぐ」

めぐ「わたしも頑張る。頑張って、元気になるから」

水銀燈「ふふ、負けないわよ?」クスクス

めぐ「けれど、あなたを見送るなんてまっぴらごめんよ」ニヤニヤ

水銀燈「わたしだって」

めぐ「絶対、わたしより先に死なないで」

水銀燈「あら。でも、順番からいけば年上のわたしが先よ?」

めぐ「弱気にならないでよ。 あなたは永遠に生きるわたしの天使樣なんだから!」

水銀燈「はぁい、はい」

めぐ「…水銀燈」



…スッ
199 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/20(水) 20:56:57.55 ID:V.zPMVA0
水銀燈「なに? …え、あなた!」


…ポゥ


水銀燈「だ、だめよ! めぐ、無理したら…」

めぐ「ちょっとだけ。 みんなには内緒にして」

水銀燈「…」


パァァ…


水銀燈「(…あたたかい。 痛みがやわらぐ…)」

めぐ「…もう時間。 行かなくっちゃ」

水銀燈「…ありがとうね、めぐ。 いえ…」ギュッ

めぐ「す、水銀燈?」



「わたしの… お母さま」



めぐ「…もう。わたし、あなたよりずっと年下なのよ?」

水銀燈「いいじゃない、ちょっとくらい」

めぐ「んもう、意味わかんない」ギュッ

水銀燈「ふふふ」




「…元気でね」

「うん…」
200 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/20(水) 21:02:52.81 ID:V.zPMVA0
【ジュンの家・居間】

ジュン「そろそろ時間だね。 真紅、頼むよ」

真紅「…ええ」

雛苺「ヒナもいくのー!」

翠星石「病院では静かにするですよ?」

雛苺「むー、とうぜんなの! しずかにするもん!」

翠星石「じゃ、蒼星石とジュンでお留守番ですね?」

ジュン「うーん…蒼星石にも声をかけてくるよ」

翠星石「…え、そうですか〜?(ちっ! よけいなことするなですぅ!)」


トトトト


真紅「…さて、と」

グイッ!

真紅「きゃあ?! …す、翠星石?!」

翠星石「(ぐずぐずするなです! 上に行くです!)」

真紅「(え? 話は終わったんじゃないの?)」

翠星石「(もっと大事なことがあるんです!)」

トテテテテ

雛苺「あ、翠星石!」

翠星石「(ほらほら、ヒナも早く来るです!)」グイーッ

雛苺「きゃあぁー?」ピュー
201 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/20(水) 21:07:47.59 ID:V.zPMVA0
【ジュンの家・2階】


ドダダダダ


めぐ「あ、来たみたい」

水銀燈「なんだか騒がしいわね…」


バダン!


翠星石「お待たせですぅ! ジュンから頼まれて来てやったです!」

めぐ「…ありがとう。それじゃ、水銀燈」

水銀燈「ええ…」

翠星石「ちょっと待ったですぅ!」

水銀燈「えっ?」


「せっかくだから、水銀燈も送りにきたらどうですか?」


水銀燈「…え? そ、そんなぁ、いいわよぉ…」

翠星石「遠慮するなですぅ!」

真紅「…水銀燈」スッ

水銀燈「…真紅?」



「行きましょう。 …一緒に」
202 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/20(水) 21:13:35.87 ID:V.zPMVA0
水銀燈「…でも」

真紅「大丈夫。さあ、時間がないわ」

めぐ「…わたしからも、お願い」

水銀燈「めぐ?」

めぐ「せっかくだから、見送って?」

水銀燈「…」


「それじゃ、お願いしようかしら」


真紅「じゃあ、つかまって」

水銀燈「ええ…」


ヒシッ


めぐ「ありがとう、真紅、翠星石。 …雛苺も」

雛苺「それじゃ、しゅっぱつなのー!」

翠星石「お安い御用ですぅ!(蒼星石、お膳立てはしてやったです!)」



(あとはせいぜい、うまくやりやがれです!)
203 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/20(水) 21:19:18.15 ID:V.zPMVA0
【ジュンの家・庭】


ジュン「蒼星石? 蒼星石―?」

蒼星石「…」

ジュン「めぐが帰るから、みんなで送るよー? …どこに行ったんだろう?」

蒼星石「(…ここだよ)」

ジュン「蒼星石―? どうしたんだろう…」

蒼星石「(ここだってば… はやく見つけてよ…)」



(それにしても… 翠星石ったら、なんであんなことを僕に…)



(翠星石「明日ジュンに会って、確かめてほしいんです」)

(蒼星石「…水銀燈とのことだね?」)

(翠星石「…それもですが、もっともっと大事なことを」)

(蒼星石「そんなことが、あるのかい?」)

(翠星石「ええ。それは…」)

(蒼星石「…なに?」)

(翠星石「うーん…」)



(とりあえず、おもいっきりジュンに抱きついてきてください)
204 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/20(水) 21:25:10.39 ID:V.zPMVA0
(蒼星石「そっ、そんなことを僕が?!」)

(翠星石「大事なことなんですよ? …アリスゲームが終わるかもしれないんです」)

(蒼星石「…わかったよ、でも期待はしないでよ?」)

(翠星石「それでこそ自慢の妹ですぅ」)



(「それでは、作戦を伝えてやるですぅ」)



(でも、いったいどういうことなんだろう…)

ジュン「蒼星石ー? もう、どこいっちゃったんだ… あれ?」

蒼星石「(やれやれ、見つけてくれたかな?)」




(「まずは、お昼になったら手入れをするといって庭に出てください」)
205 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/20(水) 21:32:03.92 ID:V.zPMVA0
ジュン「こんなところで… あれ、寝てるのか?」

蒼星石「(…大丈夫かな、ほんとに…)」



(「めぐはわたしたちが送らないと帰れませんから、翠星石がなんとか蒼星石とジュン以外を連れ出します」)

(「蒼星石は、そうですね… 木陰でたぬき寝入りでもしていてください」)

(「やっさしーいジュンは、無理に起こそうとはしないで抱っこしてくれるはずです」)



蒼星石「(起こしに来たらどうしよう… むりやりでも寝てるふりするしかないかな)」

ジュン「…」


(疲れたのかな…)ソーッ


蒼星石「(…?)」


…ヒョイ


蒼星石「(うわっ?!)」

ジュン「(…起こしちゃ、悪いよな)」トコ トコ

蒼星石「(ほ、ほんとうに抱っこされちゃった…)」
206 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/20(水) 21:40:07.21 ID:V.zPMVA0
(あとは、寝ぼけたふりでもして適当に抱きついてみてください。できるだけ、密着してくださいね?)

(そして、そのときになにか起こったら… 心に浮かんだままを、翠星石に教えてください)

(あえて、詳しく説明はしません。 蒼星石の思ったままを教えてくださいね)


蒼星石「(いったい、なにが起きるっていうんだろう…)」

ジュン「(ソファじゃ… かわいそうだな)」


トコ トコ  …トン トン トン


蒼星石「(…2階へ?)」

ジュン「(静かだな。 みんな、もう行っちゃったかな)」


ガチャリ


ジュン「(…行っちゃったか。 まあ、しょうがないか)」ソーッ

蒼星石「(…い、今かな…?)」


ギュッ


ジュン「…蒼星石?(起こしちゃったかな?)」

蒼星石「う、うーん… むにゃむにゃ…(…あ、ジュン君って…)」




(意外と、胸板厚いんだね…)
207 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/20(水) 21:48:59.29 ID:V.zPMVA0
蒼星石「(…な、何を考えてるんだ僕は!)」

ジュン「(離れない… 困ったな、寝てるみたいだけど…)」クイ クイ

蒼星石「う、うーん…」

ジュン「(どうしよう… このまま添い寝ってわけにもいかないし…)」



(…もう、なんで僕がこんなことしなきゃいけないんだ…)


トクン


(…あれ?)


トクン トクン


(…えっ? これって…)


トクン トクン トクン


(う…うそだっ! うそだ、うそだ! ありえない… でも…!)



(この感覚、間違いない…!)



(間違えるはずなんかない、間違えるものか! これは、そう…)





(ジュン君… きみは、いったい…)
208 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/20(水) 21:53:54.56 ID:V.zPMVA0
ジュン「…蒼星石?」

蒼星石「…」


ギュッ


ジュン「お、起きてるのか?」

蒼星石「…」


ギュゥゥゥゥ


ジュン「蒼星…」

蒼星石「ジュン君」

ジュン「お、起きてるの?」

蒼星石「…」



「ひどいよ」



ジュン「えっ?」

蒼星石「…君は、僕らに何をしたの?」

ジュン「え?」

蒼星石「こんな、こんなことって…」

ジュン「い、いったい何?」

蒼星石「ひどいよ、こんなの… 君は…」

ジュン「…???」




「君はいったい、何者なんだい?」
209 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/20(水) 21:58:30.92 ID:V.zPMVA0
ジュン「な、何を言ってるんだ?」

蒼星石「わからない、わからないよ…」

ジュン「(まるで、これって…)」



(昨日の翠星石みたいだ…)



蒼星石「…教えてよ! 君は、いったい…?!」

ジュン「と、とりあえず座ってよ。 落ち着いて話を…」

蒼星石「嫌だ」


ギュウウウッ


ジュン「そっ、蒼星石?!」

蒼星石「少しだけでいい」



「…離さないで」



ジュン「な、なんだってっ?!」
210 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/20(水) 22:06:29.39 ID:V.zPMVA0
蒼星石「ほんの、少しだけでいいんだ。だから…」

ジュン「きききき、君はいったい…?!」

蒼星石「…くやしい」

ジュン「え?」

蒼星石「(…なんで、君から…)」



(君なんかから、この感覚が… でも…)


ギュウウウウッ


ジュン「蒼星石…」



(ああ、抗えない… 拒めない… だって、だって僕は…)

(この感覚を得る、いや… 取り戻すために…)

(ただ、そのためだけに… ずっと…)


ブゥーーーン…


翠星石「ただいまーですぅ」

ジュン「(げっ!!)」

真紅「ただいま… って…」

雛苺「あらららら…」

水銀燈「あ… あなたたち…???」



ジュン「(やっ…)」



(やばいよーーー!!!)
211 : [sage]:2009/05/20(水) 22:08:17.90 ID:V.zPMVA0
今日はここまで。 再開は…間をおいて23日。
212 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/05/20(水) 22:09:52.74 ID:IaPP1t.o
乙〜

213 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/05/20(水) 22:10:08.81 ID:U2chY3k0
乙!

考察ぶちまけたいけど、これほど野暮なことはないわな。
やきもきしながら待ってる。
214 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/05/20(水) 22:11:46.94 ID:8nEmqVgo
おつつ

またいいところで切るんだからー
どんどん調教されてる感じかしらー
215 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/05/20(水) 22:13:10.34 ID:BLbyvH2o
乙であります
良い感じに続きが気になる引きですな
とりあえず服着てきますね
216 : [sage]:2009/05/20(水) 22:13:34.45 ID:V.zPMVA0
>>212
いちおつどもっす〜

>>213
たぶん予想通りです^^;
芸がなくて申し訳ないですが…

>>214
次は大活躍かしらー(誰
217 : [sage]:2009/05/20(水) 22:20:27.64 ID:V.zPMVA0
>>215
寸止めソフトエロスに労力の9割使ってます(カエレ
218 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/05/20(水) 23:27:38.11 ID:PZVFdqco
おつ!
219 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/05/21(木) 01:04:29.65 ID:iZyyIXYo
おっつ
220 : [saga]:2009/05/23(土) 21:58:06.13 ID:MxUsOhw0
>>218-219
おつどもっす。
再開します〜
221 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/05/23(土) 21:58:54.03 ID:3Kan.Zko
待ってました
222 : [saga]:2009/05/23(土) 21:59:48.04 ID:MxUsOhw0
【数分前 nのフィールド】

ヒューーーー…


水銀燈「真紅…」

真紅「なに?」

水銀燈「重くない?」

真紅「…別に」

翠星石「帰りは替わってやるって言ったのに、無理すんなです」

雛苺「大丈夫? 真紅…」

真紅「平気よ」


ヒューーーーー


水銀燈「あなた…」ツンツン

真紅「な、何よ?」

水銀燈「わたしに『優しすぎておかしい』って言ってたのに、自分はなんなのよ?」

真紅「…そんな事じゃないわ」


(そう、そんな事じゃ…) 



…トク
223 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/23(土) 22:02:37.30 ID:MxUsOhw0
翠星石「…?」

雛苺「…真紅?」


(わたしはただ…)…トク トク


水銀燈「ま、いいけど」ツンツン プニッ

真紅「…さっ、触らないで!」

水銀燈「悪い気分じゃないわ」ニコ

真紅「…もう」


トク… トク…


(わたしはただ、この感覚の正体を知りたいだけ…)


トク… トク…


(あなたを抱きあげたときに感じた、この感覚…)
224 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/23(土) 22:06:43.72 ID:MxUsOhw0
トク… トク…


(なぜか安らぐ… ささくれだった心が潤っていく…  そして…)


水銀燈「…真紅?」


(なぜだか、とても懐かしい… なぜなの?) 


ポフッ


水銀燈「し、真紅?」

真紅「…そろそろ着くわ」

翠星石「そうですね…(蒼星石はうまくやってるですかね…)」


(うまくいけば、いい具合に修羅場になってるはずですけどね〜)ニヨニヨ


雛苺「…翠星石?」

翠星石「なんですか?」

雛苺「お顔が怖いの…」

翠星石「やっかましーですっ!!」
225 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/23(土) 22:09:14.34 ID:MxUsOhw0
【ジュンの家】


ジュン「え…えっと、その…」

蒼星石「…」ギュウウッ



真紅「…」

水銀燈「…」

雛苺「…???」



翠星石「(しめしめ…)」



真紅「ジュン! あなた… 蒼星石になにを?!」

雛苺「…ふえ???」

ジュン「ち、違うんだ! こっ、これは…」




「…ジュン君は、何もしていないよ」
226 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/23(土) 22:10:56.90 ID:MxUsOhw0
水銀燈「そ、蒼星石?」

蒼星石「…ごめん、ジュン君」スッ

ジュン「え… あ…」

真紅「蒼星石、いったい…」

蒼星石「僕が勝手にやっただけ。 ジュン君は何も悪くない」

翠星石「…」


トコ トコ


蒼星石「翠星石…」

翠星石「わたしの言ったこと、わかりましたか?」

蒼星石「…うん」チラッ

ジュン「蒼星石…?」

蒼星石「…」




「僕、帰るね」
227 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/23(土) 22:21:12.63 ID:MxUsOhw0
ジュン「え?」

翠星石「そうしましょう。 長居は無用です」

蒼星石「…それじゃ」トコ トコ

真紅「蒼星石…」


…カチャリ キィ


蒼星石「…水銀燈!」キッ!

水銀燈「…」



蒼星石「君は…」

水銀燈「…」



(君は… まさか、知っていたの?)

(あなた… まさか、知ってしまったの?)



「…」

「…」




蒼星石「…さよなら」
228 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/23(土) 22:25:08.24 ID:MxUsOhw0
パタン カチャン


ジュン「そっ、蒼星石!?」


シュルルルル… ビヒュン!


ジュン「ま、待って!」


ガッチャーン!!


ジュン「うわっ?!」

真紅「…危ない!?」

翠星石「…」


「まったくもう。 やーれ、やれ」


雛苺「す、翠星石???」

翠星石「おめーらのせいですからね? ジュン、水銀燈」カチャリ キィ

真紅「す、翠星石? あなたまで…?」


「いい加減はっきりさせやがれです!」


パタン カチャリ


ビヒュン!!


真紅「…蒼星石、翠星石…」

ジュン「…いったい、何だったんだ…??」



水銀燈「…」
229 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/23(土) 22:26:41.01 ID:MxUsOhw0
【その夜】

ジュン「…」カリカリカリカリ


(離さないで)


ジュン「…」カリカリカリ…


(君はいったい、何者なの?)


ジュン「…」…ギシッ


(おめーらのせいですからね?)


ジュン「なんだっていうんだ、いったい…」


…ギシッ


水銀燈「…ジュン?」

ジュン「あ…」



「…ごめんよ」
230 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/23(土) 22:28:01.40 ID:MxUsOhw0
水銀燈「えっ?」

ジュン「このところ、ずっと起こしちゃってるね」

水銀燈「あなたのせいじゃないわ。 …眠れないだけ」

ジュン「痛いのかい?」

水銀燈「…大丈夫」

ジュン「(…痛いんだね)」ギシッ


スタ スタ


水銀燈「…ジュン?」

ジュン「脱いでみて」

水銀燈「…ええ」



…シュル シュル
231 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/23(土) 22:29:13.68 ID:MxUsOhw0
ジュン「…」トントントン

コツコツコツ

ジュン「痛くない?」

水銀燈「…平気」

ジュン「気を使わなくていい。はっきり言って」

水銀燈「…」



「大丈夫よ」



ジュン「…もう」トントントン

コツコツコツ…

ジュン「(変だな…?)」トントン…

水銀燈「どうかしたの?」

ジュン「うーん」 



「…君らって、胸の中はどうなってるの?」
232 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/23(土) 22:31:13.65 ID:MxUsOhw0
水銀燈「…えっ? 結晶が入ってるけど…」

ジュン「じゃ、空洞があるんだよね」コツコツ…

水銀燈「…ええ、まあ」

ジュン「…???」トントン…


(おかしいな…)


水銀燈「ジュン?」

ジュン「ちょっと、確かめてみたいことがある」


「入りなよ」


水銀燈「え?」

ジュン「なあ、そこにいるんだろ?」



「…真紅」



シーン

ジュン「…お願いだよ。 ここに来てくれ」



233 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/23(土) 22:34:44.36 ID:MxUsOhw0
ガチャ …キィ 


ジュン「…ありがとう」

水銀燈「あ、あなた…」

真紅「…」


「何をすればいいの?」


ジュン「そこに座って、服をまくってくれ」

水銀燈「ジュ、ジュン?!」

ジュン「音を聞き比べたいんだ」

真紅「…わかったわ」トコ トコ


…ギシッ


ジュン「背中を向けて… そう」


シュル シュル


ジュン「じゃ、ごめんよ」…トントントン

コッ コッ コッ



真紅「…ジュン」
234 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/23(土) 22:38:11.96 ID:MxUsOhw0
ジュン「…なに?(音が違う…)」

真紅「水銀燈は…」


「水銀燈は、どうなの?」


水銀燈「…真紅」

ジュン「…わからない」トントントン

コ コ コ…

真紅「そうなの…」

ジュン「できるだけ、早いうちに本格的に調べてみる」トントン…

コッ コッ…

ジュン「めぐの回復を待ってね」

真紅「そう…」

ジュン「ありがとう、真紅。 もう大丈夫」

真紅「…」
235 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/23(土) 22:42:46.27 ID:MxUsOhw0
ジュン「真紅?」

真紅「…ねえ、水銀燈」

水銀燈「なあに?」

真紅「あなたの服…」

水銀燈「…あ、これ?」

ジュン「…」


(「…みっちゃんさんに手伝ってもらって、マタニティ仕様にしたんだ」)


水銀燈「…ケガしてるときにはきつかったから、ジュンにちょっと作りかえてもらったのよ」

真紅「そうまでして、着ていたかったの?」

水銀燈「ええ…」


サス サス


水銀燈「お父様からもらった、大事な服だから」

真紅「黒に逆十字なんて、不吉な服だって自分で言ってたじゃない」

水銀燈「ずっと、そう思ってたんだけど… 最近、ひょんなことで思い出したのよ」 

ジュン「え?」



「この服にこめられた、お父様の想いを」
236 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/23(土) 22:46:33.22 ID:MxUsOhw0
ジュン「ローゼンの?」

水銀燈「…ええ。闇夜のような漆黒の色は…」



(君は「水銀燈」 …人の手による、太陽に最も近い光を放つもの)


(けれど… 強すぎる光は、人から眠りを奪う)


(眠りを奪われれば人は荒れる。 人は闇の中でやすらぎ、夢を見る)


(だから君は闇をまとうんだ。 人に恵みをもたらす光であるために)



ジュン「…そうだったんだ」

真紅「…初めて聞いたわ」

水銀燈「わたしも、ずいぶん長いこと忘れていたからね…」
237 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/23(土) 22:50:25.34 ID:MxUsOhw0
ジュン「(…『忘れて』か…)」

水銀燈「そしてね…」



(逆十字は、聖ペトロの遺志に起源を持つ)


(主たる御子はすべての人々を救うために十字架にかかり、聖ペトロは近しい親しい人たちを守るため逆十字にかけられた)


(まずは、君の近しい人、親しい人たちに恵みをもたらせるようになりなさい)


(それこそが友愛、自然な感情。 友愛を知らぬものが、博愛にめざめることはないのだから)



真紅「…お父様が、そんなことを」

水銀燈「お父様の思想、理想を形にしたのがこの服。そして…」



「わたし自身の存在も、また然りなのよ」
238 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/23(土) 22:54:30.26 ID:MxUsOhw0
真紅「…」

ジュン「水銀燈…(きみは、そんなに大事な服を…)」


(あれはもういらないわぁ。 …お金にしてちょうだい)


ジュン「…」

真紅「だからなの?」

水銀燈「なにが?」

真紅「最近、変に優しいのは」

水銀燈「…『変に』ってなによ」

真紅「以前のあなたは、お父様が自分をどう思っているか疑っていたでしょう」

水銀燈「…」

真紅「お父様は自分を愛してくれていたのか、自分はお父様から愛されていたのかって」

水銀燈「(そうね…)」

真紅「でも今のあなたからは、そういうお父様や自分自身への疑いが無くなっているみたいに思える」

ジュン「真紅…」

水銀燈「(さすがね… でも、当然だけれど)」



(あなたもまた、お父様の理想を形にした存在なのだから…)
239 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv :2009/05/23(土) 22:59:14.74 ID:MxUsOhw0
真紅「自分に自信を持ったから、優しくなれるようになった。 …そうじゃなくて?」

水銀燈「…」

真紅「ねぇ、水銀燈」


「…何があったのか、そろそろ教えてくれない?」


水銀燈「…」

真紅「翠星石や蒼星石だって、きっと知りたいと思ってる」

水銀燈「…そうね」

真紅「せめて、いつになったら話すのかくらいは決めてほしい」

水銀燈「…」


グ グググ

…ギシッ


水銀燈「ケガが治るまで、待って」

真紅「…わかったわ」



ジュン「素直なんだな」

ピシッ!

ジュン「あっつ?!」

真紅「…失礼ね」
240 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/23(土) 23:07:34.66 ID:MxUsOhw0
ジュン「し、失礼って…」

真紅「元はといえば、あなたたちがいつまでもはっきりしないからでしょう?」

ジュン「う…」

水銀燈「…」

真紅「翠星石、蒼星石にも伝えておくわ」

水銀燈「…お願い」

真紅「お休みなさい」


トコ トコ


ジュン「…真紅」

真紅「なに?」

ジュン「ありがとう」

真紅「…」



ガチャリ パタン

241 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/23(土) 23:09:57.14 ID:MxUsOhw0
今日はここまで。 続きは明日、24日。
>>191
>>221
速攻支援どもっす〜
242 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/05/23(土) 23:11:09.36 ID:YqdqMkQo
>>241
乙でしたー
243 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/05/23(土) 23:11:37.78 ID:3Kan.Zko
乙〜

待ってるぜ
244 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv :2009/05/23(土) 23:18:34.06 ID:L/MIEe.o
乙でした

明日も見れるとはwwktk
245 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/05/23(土) 23:19:13.39 ID:3kBe0W2o
おつつ
あと24時間?余裕です
246 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/05/23(土) 23:59:41.84 ID:igl0EUYo
おつ!
247 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/05/24(日) 00:00:24.34 ID:P.xf0Fco
おつ!
248 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/24(日) 00:33:02.29 ID:B8CzieM0
>>242-245
乙どもっす。
24日になったんで再開します(ぉ
249 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/24(日) 00:34:35.07 ID:B8CzieM0
ジュン「よかった」

水銀燈「…なにが?」

ジュン「真紅だよ。 …思ったより、落ち着いてるみたいだ」

水銀燈「…そうね」

ジュン「うまくいけば、君のことも受け入れてくれるかもしれない」

水銀燈「…なら、いいのだけれど」

ジュン「…自信がない?」

水銀燈「ええ…」クイ クイ


キシ キシ


水銀燈「…とりあえずは、体をしっかり治すわ」

ジュン「そうだね」


…ギシッ
250 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/24(日) 00:36:14.68 ID:B8CzieM0
ジュン「…あのふたりも、落ち着いてくれるといいんだけれど」

水銀燈「…」


「たぶん、気づいたのよ」


ジュン「え? 気づいたって…」

水銀燈「自分たちの結晶に、あなたの命と心が含まれていることに」

ジュン「…何だって?!」



真紅「(な… なんですって?!)」



【柴崎家】


ボーン ボーン ボーン…


柴崎「…日が変わってしまったの」

マツ「わたしたちも、そろそろ寝ましょうか…」

柴崎「しかたがない。 話はまた、明日聞けばよいかの」


…パチリ



蒼星石「…」
251 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/24(日) 00:38:37.43 ID:B8CzieM0
(マスター、おばあちゃん、ごめんなさい…)


(ものもいわずに帰ってきて、ずっとカバンに閉じこもりっぱなしでいて…)


(けれど、僕…)


トクン…


(…あの感覚の余韻が、まだ残ってる)


トクン…


(…僕は…)


…コンコン


翠星石「蒼星石、起きていますか?」


蒼星石「…」


翠星石「開けますよ」




カチャリ キィ
252 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/05/24(日) 00:40:35.01 ID:P.xf0Fco
やられた
寝られん
253 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/24(日) 00:40:55.32 ID:B8CzieM0
蒼星石「…」

翠星石「…ごめんなさいですね。頼む前から、だいたいわかってました」

蒼星石「…」

翠星石「あなたがそうなっちゃうだろうな、てことは… 悪い姉です」

蒼星石「…」

翠星石「入りますね?」


ゴソゴソ


蒼星石「…」

翠星石「よいしょ、よいしょ」


…パタン


翠星石「ふたりだと、ちょっとせまいですね…」
254 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/05/24(日) 00:42:41.82 ID:VvwRuvUo

  (゚д゚)(゚д゚)(゚д゚)   ・・・・・。
(゚д゚)(゚д゚)(゚д゚)(゚д゚)
255 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/24(日) 00:44:21.11 ID:B8CzieM0
蒼星石「…翠星石」

翠星石「なんですか?」


「抱きしめて」


翠星石「…ええ」

ギュッ

蒼星石「…あたたかい」

翠星石「わたしに抱いてほしいって、言うと思ってましたよ」

蒼星石「ということは、君だってそう思ったんだろう?」



「僕に抱きしめてほしいって」


翠星石「…」

蒼星石「せつなくて、どうしようもなくなったんだろう? 今の僕みたいに…」

翠星石「…そりゃ、双子ですから」


…トクン トクン トクン


蒼星石「そう… この感覚…」
256 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/24(日) 00:48:33.50 ID:B8CzieM0
翠星石「結晶が呼び合ってます。同じ命と、心を持った結晶どうしが…」

蒼星石「…これが、ぼくらが姉妹である証」


ギュウウウウ


蒼星石「同じ結晶を分け合った、肉親である証…」

翠星石「…この感覚をわたしたちに与えられる人間は、たったひとりしかいないはずなんです」

蒼星石「そう。…それはつまり、この結晶を作った人。僕らに命と心を与えてくれた…」



「僕たちの…」


「わたしたちの…」




「お父さま、そのひとしか」




トクン トクン トクン…
257 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/24(日) 00:51:56.30 ID:B8CzieM0
蒼星石「ジュン君が、僕らのお父さまだっていうのかい?」

翠星石「…わかりません」

ナデ ナデ

翠星石「わたしは何回か、ジュンに抱っこしてもらったことはありますけど」

蒼星石「うん…」

翠星石「この感覚をおぼえたのは、あのときがはじめてですからね。その前は無かったはずです」

蒼星石「つまり、僕たちが目覚めてからってこと?」

翠星石「ええ… だから、わたしたちが眠っている間に、ジュンに何かがあった」

蒼星石「そして、水銀燈はそのことを…」

翠星石「まず間違いなく知っているでしょうね…」 



「わたしたちに言えないなにかがあったんです」
258 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/24(日) 00:58:50.27 ID:B8CzieM0
蒼星石「君が言っていた、アリスゲームが終わるかもっていうのはこういうことだったんだ」

翠星石「もしもジュンがお父さまだったとすれば、ですけどね」


「わたしは、お父さまに会えればそれでいいんですから」


翠星石「…無理にアリスになるつもりは、ないんです」

蒼星石「僕は…」


「お父さまが、望むなら」


翠星石「お父さまが帰ってきても、なお姉妹で争うと言いやがりますか?」

蒼星石「…」

翠星石「まあ、この話は後です。今は真相を探るのが優先です」

蒼星石「そうだね…(まさかとは思うけど…)」




(水銀燈が、すべてを知っていたんだとしたら…)
259 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/24(日) 01:03:39.20 ID:B8CzieM0
翠星石「ジュンにも水銀燈にも話は聞いたけど、らちが空きませんね…」

蒼星石「…たぶん、僕らが聞いてももうこれ以上は答えてもらえないよ」

翠星石「うーん…」


「不本意ですが、あいつに頼みますか」


蒼星石「やっぱりそうなる?」

翠星石「あいつは、わたしたちのなかでは水銀燈と一番仲がいいですからね」

蒼星石「…でも、最近なぜか連絡が取れないんだ」

翠星石「いったいどこでなにをしてやがるのか。まったく見当も…」

蒼星石「翠星石?」

翠星石「…」



「つかないこともないですけどね…」



蒼星石「…まさか」

翠星石「…急いだほうがいいですね」

蒼星石「手遅れになってなければいいけど…」
260 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/24(日) 01:06:37.50 ID:B8CzieM0
【みつの家】


パシャッ! パシャッ!


みつ「…そう、そうよ… 今度は、右から…」ヨロヨロ

金糸雀「み… みっちゃ…ん…」フラフラ



「そろそろ… 仮眠をとらせてくれないかしら…」



みつ「だ、ダメ… あとすこしだけ…」

金糸雀「も… もう限界かしら…」

みつ「頑張って… このために… 有休までとったんだから…」

金糸雀「せ、せめて… 外の空気を吸わせて欲しいかしら…」

みつ「…5分でお願い」

金糸雀「はい…」フラ フラ



カラカラカラ…



金糸雀「半年分を一気撮りなんて、無茶もいいところかしら…」
261 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/05/24(日) 01:08:49.68 ID:WFeb1mI0
確かに24日だが、こやつめww
262 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/24(日) 01:10:56.62 ID:B8CzieM0
ヒュウウウ…


(この数日間、ロクに睡眠も食事もとってないかしら…)


ヒョオオオオ…


(傘もとりあげられたし、鏡も全部しまわれてしまったから逃げることもできない…)


ヒュゥゥゥ…


(携帯もガードしてるし、電話線もパソコンの回線まで切ってるから外と連絡が一切取れない…)




「もはやこれは愛ではないかしら… 得体の知れない執念か何かかしら…」


チカ チカ


金糸雀「…星がきれいかしら」


ヨジ ヨジ


金糸雀「街の灯りも…」


ヒュウウウ…




(いっそここから小鳥のように飛んでしまえば、楽になれるかしら…)
263 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/24(日) 01:13:08.12 ID:B8CzieM0
金糸雀「…みんなはどうしてるかしら。 水銀燈は、元気かしら…」


キラッ


金糸雀「? あ…あれは?」


キラ…


金糸雀「北斗七星の横に、小さな星が…?!」


キラ キラ


金糸雀「そうなのね… とうとうわたしにもあの星が見えるようになったのね…」


ヒュウウウ…


金糸雀「…わたしの死期は近い。 ならばわたしもひとりの薔薇乙女としてこの生をまっとうしたいかしら…」


キィィィィン…
264 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/24(日) 01:15:47.67 ID:B8CzieM0
金糸雀「あら? あの星が…」


(近づいてくる…?)


…ヒィィィィン! 


(??? あっ、あれは?!)


ドガス!


金糸雀「あみばっ!?」ドッテン


…カチャリ パタン


翠星石「…こんな夜中にベランダに出て何をやってるですか」

蒼星石「…大丈夫?」

金糸雀「そっ… そっ…」





「…空が落ちてきたかしら…」ピヨピヨ 
265 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/24(日) 01:22:00.45 ID:B8CzieM0
モムモム ゴクゴク ハムハム


金糸雀「…助かったかしら…」

翠星石「悪い予想が的中しやがったです…」

蒼星石「今日はもう遅いから、明日にしようかとも思ったんだけど」

金糸雀「明日になってたら再起不能になってたかもしれないかしら…」


ゲップ


金糸雀「…それで、わたしに水銀燈とジュンから話を聞きだしてくれって言うのかしら?」

翠星石「まあそうです。特に水銀燈からですね」

蒼星石「…君はさいわい、水銀燈から気に入られてるみたいだし」

金糸雀「…」



「それは、大いなる誤解かしら」
266 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/24(日) 01:28:06.46 ID:B8CzieM0
蒼星石「誤解?」

金糸雀「別に、私が特別お気に入りというわけではたぶんないかしら」

翠星石「へ?」

金糸雀「みんなのことだって、水銀燈はちゃんと気に入ってるかしら…ふわぁぁ」

蒼星石「…」


ムニャムニャ


金糸雀「みんなが変に水銀燈を意識しすぎてるせいで、それに気づかないだけかしら」

翠星石「んもう、こんな時に姉さん風吹かせなくったっていいです!」

金糸雀「たまには言ったっていいかしら? かわいい妹の頼みを聞くっていうんだから」

蒼星石「…やってくれるの?」

金糸雀「ちょうど水銀燈のことが気になってたところだし、ちょうどいいかしら!」



(…脱出もできるし…)
267 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/24(日) 01:35:22.28 ID:B8CzieM0
翠星石「それじゃ、早速作戦を練るです!」

金糸雀「作戦? なんの?」

翠星石「な、なんのって… 話を聞きだすためのに決まってるです!」

金糸雀「…」



「作戦なんて必要ないかしら」



蒼星石「え?」

翠星石「なんですと?!」

金糸雀「あなた方はさっきから、ちょっと周りを意識しすぎてるかしら…」クイクイ


コキッ コキッ


金糸雀「それじゃ早速行くかしら!」

蒼星石「どこへ?」

金糸雀「ジュンの家に決まってるかしら!」

蒼星石「こ、こんな夜中じゃ悪いよ!」

金糸雀「夜中だからいいかしら。むしろ今すぐじゃないとダメかしら!」

翠星石「何を考えてやがるですか?」

金糸雀「だーかーら、考えなくてもいいかしら!」




「この金糸雀に万事お任せで間違いないかしら!」
268 : [saga]:2009/05/24(日) 01:36:15.37 ID:B8CzieM0
今度こそ終了。 続きは24日の夜。
269 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/05/24(日) 01:37:04.16 ID:jxyvqego
乙〜


さて一眠りするか
270 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/05/24(日) 01:37:10.94 ID:WFeb1mI0
271 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/05/24(日) 01:38:11.21 ID:CHVQ.mUo
今も24日の夜だよな?wwww
下らない事は置いといて取り敢えず
乙!
272 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv :2009/05/24(日) 01:38:33.80 ID:j/M548go
乙です
一日に二回見れるとは何というご褒美
273 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/05/24(日) 01:39:13.26 ID:VvwRuvUo
おつつ
とうとうカナが活躍かしらー
274 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/05/24(日) 05:29:34.05 ID:Nrf2AiEo
おっつ
275 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/05/24(日) 08:34:48.53 ID:P.xf0Fco
おつ!
276 : [saga]:2009/05/25(月) 02:46:54.47 ID:Tb./r.20
おつどもっす。
遅くなりましたが再開します〜
277 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/05/25(月) 02:47:40.89 ID:ME.WtwM0
待っていたぞ!

支援
278 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/25(月) 02:50:28.00 ID:Tb./r.20
【ジュンの家】


ジュン「そうなんだ、結晶どうしが…」

水銀燈「言わないでいてごめんなさい。そうなるかもしれないとは思っていたんだけど…」

ジュン「…いずれ、遅かれ早かれ気づかれていたね」

水銀燈「…」

ジュン「やっぱり、みんなにはまだ言えない?」

水銀燈「…」



「私は、責任を取らなくちゃいけない」グ ググッ



ギシ ギシ



ジュン「責任?」

水銀燈「ええ。 …あの子たちから、大事なものを奪ってしまった責任を…」

ジュン「…」
279 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/25(月) 02:54:42.63 ID:Tb./r.20
水銀燈「でも、この体じゃ満足に動くことさえ出来ないわ」

ジュン「ちょっと待って。 …責任を取るって、何をする気なんだ?」

水銀燈「決まってるじゃない。 終わらせるのよ」



「…アリスゲームを」



真紅「(アリス…ゲームを? あなたが?)」



ジュン「君はまだ、そんなことを…」

水銀燈「わたしが始めてしまったことだもの。 わたしが終わらせなくちゃいけない」

ジュン「…」



真紅「(水銀燈がアリスゲームを…? どういうこと?)」



水銀燈「それさえしないで、どの顔下げてあの子たちに言えばいいの?」

ジュン「…」

水銀燈「わたしが、あなたたちの…」



「…」



ジュン「…水銀燈?」

水銀燈「誰? そこにいるのは」

真紅「(!)」
280 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/25(月) 02:58:29.75 ID:Tb./r.20
水銀燈「出てらっしゃい… わかってるのよ」

ジュン「誰か、いるのか?」

真紅「(…どうしよう…)」



「ばれちゃったら、しょうがないかしら」



ジュン「なっ! 君は!!」

水銀燈「あなたは…!」

金糸雀「どうか中に入れてほしいかしら…」

真紅「(金糸雀? どうして…)」

ジュン「どうしたんだい?」カラカラカラ

金糸雀「実は…」



水銀燈「…みつったら、とんでもないわねぇ」

ジュン「道理で、最近連絡がつかないと思った…」

金糸雀「あれにはさすがにまいったかしら…」




(翠星石「作戦がいらねーって、どういうことですか?」)

(蒼星石「こんな夜遅くに、どうやって乗りこむ気?」)

(金糸雀「ムダにウソをつく必要なんてないってことかしら」)

(蒼星石「え?」)
281 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/25(月) 03:01:24.97 ID:Tb./r.20
(金糸雀「ふたりは連絡がつかないわたしを心配してここに来てくれた」)

(翠星石「へ?」)

(金糸雀「わたしはふたりに頼んで、みっちゃんには内緒でジュンの家にかくまってもらうことにした」)

(蒼星石「あ…」)

(金糸雀「何の問題があるのかしら?」)



金糸雀「なので、申し訳ないんだけれど…」

ジュン「わかってるよ、ゆっくりしていきなよ。 でも…」

金糸雀「心得てるかしら。 みっちゃんには、ほとぼりが冷めたら私から連絡するかしら」

水銀燈「あのふたりはどうしたの?」

金糸雀「あなたたちにあわせる顔がないって言って、わたしをここに置いたらさっさと行っちゃったかしら」

水銀燈「そうなの…」

金糸雀「…なにかあったの?」

ジュン「…」
282 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/25(月) 03:06:11.17 ID:Tb./r.20
金糸雀「まあ、いいかしら。 …静かな部屋を貸してもらっていいかしら?」

ジュン「ああ、和室でいいかな?」

金糸雀「ありがとうかしら…」ムニャムニャ

ジュン「案内するよ、つかまって…」

(あ…)

金糸雀「どうしたの?」

ジュン「あ、いや…(…バレるかな)」

金糸雀「…」


「おかまいなくかしら。 …ピチカート」


…ポゥ


ジュン「ごめんよ」

金糸雀「勝手知ったる他人の家かしら。 おやすみなさい…」


トコ トコ


(結晶が呼び合う感覚も確認しておきたかったけど)


カチャリ キィ


(今は、水銀燈から話を聞く事のほうを優先するかしら)


…パタン




真紅「(…なぜ、金糸雀までここに?)」 
283 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/25(月) 03:13:20.77 ID:Tb./r.20
真紅「(おかげで、聞き耳をたててたことはばれないですんだけど…)」


(自分たちの結晶に、あなたの命と心が含まれていることに)


真紅「(わたしたちの結晶に…ジュンの命と心が?)」


(ケガが治るまで待って)


…ギュッ



真紅「(ジュン… 水銀燈…)」


(あなたたちは、いったい…)





(翠星石、静かにするんだ!)

(だって、だぁぁぁあってっ!!)



蒼星石「(相手は水銀燈。あんまり声出しちゃうと、この距離だって感づかれるよ!)」

翠星石「(なにをやってるですかあいつは! とっとと下に下りちゃって!)」
284 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/25(月) 03:18:14.09 ID:Tb./r.20
蒼星石「(きっと何か考えがあるんだよ。 家にだって、あっさり入っちゃったじゃないか)」

翠星石「(あのまま寝ちまうかもしれねーです!)」

蒼星石「(…それはあるかもしれないけど、様子を見ようよ)」

翠星石「(…不安ですぅ)」



ジュン「でも…さっきの話だけど」

水銀燈「なあに?」

ジュン「君の服。…あんないわれがあったんだね」

水銀燈「…あのとき、あなたとわたしの記憶とつながったときに思い出したのよ」

ジュン「そうなんだ」

水銀燈「悪いことばかり思い出したわけじゃないわ」



「…嬉しいこと、楽しかったこともいっぱいあった」



ジュン「…きっと『強い思い出』だったんだろうね」

水銀燈「ええ…」

ジュン「僕も、嫌なことばかりじゃなかった。 嬉しかったことも、あのとき心に浮かんだ」

水銀燈「…そうなのね」
285 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/25(月) 03:20:30.48 ID:Tb./r.20
ジュン「水銀燈、今日はもう寝なよ」

水銀燈「ええ。あなたも、そろそろ休んで…」


コン コン


ジュン「ん…?」

水銀燈「だれ?」


カチャリ


金糸雀「…ごめんなさい」

水銀燈「あなた…?」

ジュン「どうしたんだ?」


金糸雀「…」モジモジ




「ひとりじゃ眠れないかしら…」
286 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/25(月) 03:25:12.08 ID:Tb./r.20
ジュン「は?」

水銀燈「まぁ」

金糸雀「最近はともかく、みっちゃんにずっと添い寝してもらってたから…」

水銀燈「(…あきれた)」

金糸雀「あの…その…水銀燈、一緒に寝てくれないかしら?」

水銀燈「え…わたし?」

ジュン「…」

金糸雀「さすがに真紅には頼めないかしら…」 


「わたしにも、姉としてのプライドがあるかしら…」


ジュン「…水銀燈、そうしてあげなよ」

水銀燈「ジュン…」

ジュン「ぼくはもう少し起きてるから、きみは和室でカナと寝てあげるといいよ」

水銀燈「…しょうがないわねぇ」

金糸雀「かたじけないかしら…」

ジュン「それじゃ、水銀燈」スッ

水銀燈「…ん、お願い」ヒシッ



金糸雀「(むむむ…たしかに、息がぴったりあってるかしら)」
287 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/25(月) 03:36:52.76 ID:Tb./r.20
水銀燈「ほら、金糸雀。 行くわよ」

金糸雀「…え?」

水銀燈「私につかまりなさい。足元が暗いから」

金糸雀「…いいの? えへへ、了解かしら」

ヒシッ

金糸雀「ジュン、重くないかしら?」

ジュン「平気。しっかりつかまって」


トン トン トン…


金糸雀「(…ジュンからちょっと離れちゃってるから、結晶には影響がないかしら…)」


…トク 


金糸雀「(おや?)」


…トク トク


金糸雀「(これが… あのふたりの言ってた感覚? でも…)」 


…トク トク


金糸雀「(…言ってたのとは、ちょっと違うかしら)」
288 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/25(月) 03:49:04.56 ID:Tb./r.20
金糸雀「(あのふたりが言ってたほど、せつなく苦しくはならない。むしろ…)」



(なんだかとっても、気持ちが落ち着くかしら)



ジュン「…じゃ、おやすみ」

水銀燈「ありがとう、ジュン」

金糸雀「ありがとうかしら… ふわぁぁ」

ジュン「じゃ」


…パタン


金糸雀「水銀燈も、ありがとうかしら」

水銀燈「…もう、甘えんぼさんなんだから」

金糸雀「面目ないかしら…」



翠星石「(…まんまとふたりっきりになりやがったですぅ)」

蒼星石「(…僕らも帰って眠ろうよ。もう、まかせて大丈夫だと思うよ)」

翠星石「(…しかたないですね)」
289 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/25(月) 03:56:39.26 ID:Tb./r.20
金糸雀「…」


トク トク トク…


金糸雀「(…どうやらこの感覚は、水銀燈から感じるもののようかしら)」

水銀燈「…」


トク トク トク


金糸雀「(なぜかしら。 とっても懐かしい…)」

水銀燈「…」


トク トク トク…


(まるで、あのときのような…)



金糸雀「…ひさしぶりかしら」

水銀燈「…なにが?」

金糸雀「あなたから、こんなに優しくしてもらえるのは」
290 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/25(月) 04:04:10.43 ID:Tb./r.20
水銀燈「…優しく、だなんて」

金糸雀「いつか、わたしとあなたがふたりきりでやりあって、負けたとき以来かしら…」

水銀燈「…」

金糸雀「あのときは、ありがとう。わたしを契約者のところへ送り届けてくれて」

水銀燈「別に、礼を言われるようなことじゃないわ」

金糸雀「…まさか、こんな日が来るとは思ってなかったかしら」

水銀燈「?」


…ギュッ


金糸雀「アリスゲ−ムが終わらないうちに、あなたにこうしてもらえるなんて」

水銀燈「…」

金糸雀「結晶を奪われてただのお人形さんにならない限り、優しくなんてしてもらえないって思ってたかしら」

水銀燈「…」



金糸雀「結晶を持っている限り、わたしたちはあなたの倒すべき『敵』になるのだから…」
291 : [saga]:2009/05/25(月) 04:05:24.51 ID:Tb./r.20
今日はここまで。続きはあした出来れば。
292 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/05/25(月) 04:07:12.37 ID:8ZEOfzco
乙!
293 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/05/25(月) 04:07:30.77 ID:ME.WtwM0
乙!
294 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv :2009/05/25(月) 04:44:19.57 ID:ML6LFUAO
乙です。
295 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/05/25(月) 06:10:56.30 ID:0/3wsSMo
おっつ
296 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/05/25(月) 17:52:24.77 ID:7G1d.DEo
おつ!
297 : [saga]:2009/05/25(月) 22:12:35.46 ID:3DMTgEw0
乙どもっす〜
再開します。
298 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/25(月) 22:19:54.46 ID:3DMTgEw0
水銀燈「…わたしは、自分の目的を妨げるものに容赦をすることが出来ない」

金糸雀「そう、あなたはいつも言ってたかしら… 『敵には容赦するな』と」

水銀燈「そうね…」


(ひとたび『敵』として相対することになったら、ほかの事は一切考えずに叩き潰しなさい)


(…相手の事情や感情なんて、自分が生き延びてから考えればいいこと)


金糸雀「…あなたからそのことを叩き込きこまれたおかげで、わたしたちは生き延びてこれたようなものだけど」

水銀燈「でも、あなたはいつも欲張りに策を練っていたわね」

金糸雀「なんのことかしら?」

水銀燈「わたしは、自分がアリスになってお父様を満足させることを考えていたけれど…」


「あなたは、アリスゲームを誰も傷つけずお父様も満足させて終わらせるにはどうすればいいかといつも考えていた」


金糸雀「そうだったかしら」

水銀燈「…よくもぬけぬけと」クスクス
299 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/25(月) 22:23:07.41 ID:3DMTgEw0
水銀燈「(そう、あの時から…)」



(水銀燈「…戦わずに、ゲームを終わらせるつもりですって?」)

(金糸雀「…なにか、いい方法があるはずかしら。楽してズルして、八方めでたしめでたしで終わるような方法が…」)

(水銀燈「ひとりでわたしのところにやってきて、何かと思ったら寝言を聞かされるとはね」)

(金糸雀「…もし、そういう方法があったと仮定したらどうするかしら?」)

(水銀燈「ようするに戦うことから逃げたいだけじゃない。順位をつけられることを恐れているだけよ」)

(金糸雀「あなたこそ、逃げてるんじゃないかしら?」)

(水銀燈「はん。 …何を言うかと思ったら」)

(金糸雀「そんな都合のいい方法があったら戦ってきたのがムダになってしまう」)

(水銀燈「…」)


(「それが怖くて、考えることから逃げてるんじゃないかしら?」)


(水銀燈「…どうやら、しゃべらせすぎたようね」)

(金糸雀「わたしが戦いから逃げてると思うなら、どうぞ試してみたらいかがかしら」)

(水銀燈「ふふふ、おチビちゃんがつっぱっちゃって…」)




パァン!
300 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/25(月) 22:26:37.90 ID:3DMTgEw0
(水銀燈「くっ!?」)

(金糸雀「なにも用意しないで、あなたの前にひとりで来るとでも思った?」)

(水銀燈「こ、このっ! 人間の武器、しかも火器を使うなんて…!」)

(金糸雀「卑怯と言いいたければ言いなさい!」チャキッ!)


ズガガガガガ!!


(水銀燈「く、ちっ、このっ?!」チュンチュンチュン!)

(金糸雀「その時がくれば、わたしは迷いもためらいもしない!」カチリ)


ズドゴォン!! 


(水銀燈「ぐぅあっ! き…貴様っ!!」)

(金糸雀「はたして口だけかどうか、とくと見なさい! 



(「わたしの本気を!!」)



水銀燈「あのときは危なかった。 …あなたを侮っていた自分を呪ったわ」

金糸雀「よく言うかしら。うまく言ったのは最初だけ、あとは予想通りぜんぜん相手にもならなかったかしら」
301 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/25(月) 22:34:34.13 ID:3DMTgEw0
水銀燈「そこまで予想してたなら、なぜやろうと思ったの?」

金糸雀「…あなたは、戦う気のない相手の話なんか聞いてくれないかしら」

水銀燈「負けて壊されて、2度と話なんかできなくなるとは思わなかった?」

金糸雀「…思ったかしら。でも…」


「その覚悟がなかったら、わたしの本気なんて伝わらないって思ったかしら」


水銀燈「…あなたはいつもそう」

ナデ ナデ

水銀燈「抜け道を探しながら、真正面からぶつかってくる。わたしに話を聞いてもらうためだけに、勝ち目がなくても挑んできたんでしょう?」

金糸雀「…うまくいけば勝てるとは思ってたかしら」

水銀燈「めげないわねぇ。…そういえば」

金糸雀「何かしら?」

水銀燈「あなたがこの家にはじめて来てたときもそうだったわねぇ」クスクス

金糸雀「げ… 見られてたかしら」
302 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/25(月) 22:39:44.91 ID:3DMTgEw0
水銀燈「本気で仕掛ける気なんてなかったみたいねぇ。 …みんなの出方を伺ってたんでしょう?」

金糸雀「…なんのことかしら〜?」

水銀燈「もしあなたが本気になったら、周到に罠を仕掛けて一気に片をつけに来るはず」


(接近戦、格闘戦で劣るあなたが勝負に出るにはそれしかないのだから…)


金糸雀「あれは、その、えーと…」

水銀燈「ケンカを売ってみて、それをあの子たちが買うかどうか…本気で戦う気なのかどうか探っていたんでしょう」

金糸雀「うー…」 


「バレバレかしら…」ションボリ


水銀燈「そりゃわかるわよぉ」クスクス

金糸雀「そうかしら…」

水銀燈「戦う戦うっていきまいておきながら、負けたらあっさり居ついてなじんでるんだもの」

金糸雀「家庭的な雰囲気の誘惑に負けたかしら…」
303 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/25(月) 22:44:44.33 ID:3DMTgEw0
金糸雀「でも、あの時わかったことだけど…」


「あの子たちだって、姉妹で戦うことはけして望んではないかしら」


水銀燈「そうね…」

金糸雀「もっと言えば、わたしたちのなかに純粋に『アリス』になること『だけ』が目的の子なんていない」

水銀燈「…」

金糸雀「水銀燈だって、目的は『お父様に認められたい』であって、アリスになるのは手段でしょう?」

水銀燈「…」


(い、言い過ぎたかしら? おっかないかしら…)


水銀燈「…お父様の望みは、わたしの望みよ」

金糸雀「…」


(こ、ここでひるんじゃだめかしら! もう一押しがんばるかしら!)


金糸雀「でも、あなたの望みが、お父様の望みだとは限らないんじゃないかしら?」

水銀燈「…」



「どういう意味?」



(おっ…おっかねーかしらー!!!)
304 : [sage]:2009/05/25(月) 22:47:54.65 ID:3DMTgEw0
ちょっと短いけどここまで。再開は明後日。
305 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/05/25(月) 22:51:20.19 ID:gkOE9Hs0
>>1
本日も堪能させて貰ったよ
金糸雀が可愛く思えたのは秘密だw
306 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/05/25(月) 23:08:56.18 ID:7G1d.DEo
おつ!
307 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/05/25(月) 23:47:47.53 ID:/xSsODgo
おつつー
308 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/05/25(月) 23:48:22.32 ID:QRquyQMo
おつつつー
309 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv :2009/05/26(火) 00:39:32.45 ID:7hp4HIAO
おつつつつー
310 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/05/26(火) 00:47:01.11 ID:l5GgpLwo
おつつつつつー
311 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/05/26(火) 09:46:11.05 ID:LpR/4Vwo
おっつ
312 : [saga]:2009/05/27(水) 21:40:59.27 ID:KPjLJaM0
おつどもっす。再開します〜
313 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/05/27(水) 21:43:51.18 ID:eP8Ag3Qo
待ってましたー
314 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/27(水) 21:43:56.00 ID:KPjLJaM0
水銀燈「…わたしが、お父様の望みをとらえちがえているとでも?」

金糸雀「…そこまでは言わないかしら。 でも…」

水銀燈「…」


(その通りなのよ、金糸雀…)


金糸雀「…水銀燈?」



(姉妹で戦いあうのは、お父様の意図じゃない… わたしが、勝手に考えてしまったこと…)

(…けれど…)



金糸雀「(黙りこくっちゃったかしら…)」



(お父様は、あのとき… たしかに力を使い果たし、息絶えたはず)

(体を重ね合わせて得た感覚が、お父様の死をなによりも確かなものとして伝えてきたのだけれど…)



金糸雀「(無言の圧力が恐怖を増幅するかしら…)」




(…それなら、あの時現れたお父様は誰?)
315 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/27(水) 21:49:14.92 ID:KPjLJaM0
(わたしや雪華綺晶、薔薇水晶と戦い傷ついたみんなの前に現れて、修復してくれたのは…)

(いったい誰なの?)




金糸雀「(…出るはずもないのに、トイレに行きたくなってきたかしら…)」

水銀燈「…誰なのかしら」

金糸雀「え?」

水銀燈「なんでもないわ」

キュッ

金糸雀「あ…」

水銀燈「あーあ、結局こんなに話しこんじゃったわ。 …悪い子ねぇ」

金糸雀「え、えっ?」

水銀燈「おおかた、あのふたりに泣きつかれたんでしょう? わたしから話を聞き出せって」
316 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/27(水) 21:53:44.78 ID:KPjLJaM0
金糸雀「てへっ♪ ばれちゃったかしら♡」

水銀燈「…隠す気なんかないくせに」

デコピン!

金糸雀「あひっ!?」

水銀燈「的が大きいと暗くても狙えるわねぇ」

金糸雀「結晶にまでひびいたかしら…」ズキズキ

水銀燈「どうせ、みつがどうのっていうのも嘘じゃないんでしょう?」

金糸雀「…それは、むしろ嘘であってほしいかしら」ゲンナリ

水銀燈「ダメよ、そんなこと言ったら。 …ちゃんと付き合ってあげなさい」

金糸雀「…えっ?」

水銀燈「みつは、あなたたちが眠っている間、ほんとうに世話をやいてくれたんだから」

金糸雀「…やっぱり、そうなの?」

水銀燈「みつだけじゃない。 おね…のりも、巴も、柴崎ご夫妻も」



「そして、ジュンもね」



金糸雀「…」
317 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/27(水) 21:56:01.42 ID:KPjLJaM0
水銀燈「わたしも、みんなには本当にお世話になった」



「…特にジュンには、体を張ってもらった」



金糸雀「ジュンが?」

水銀燈「…これくらいで勘弁してちょうだい」


ナデ ナデ


水銀燈「あとは…」

金糸雀「わかってる。 ケガが治ってから…でしょ?」

水銀燈「ええ… お願い」

キュッ

金糸雀「…水銀燈」

水銀燈「…もう寝なさい」

金糸雀「うん…」



…コヒュー コヒュー



金糸雀「(この音…)」




(水銀燈… あなたは…)
318 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/27(水) 21:59:25.46 ID:KPjLJaM0
水銀燈「(早く… 治さなくちゃね…)」


コヒュー コヒュー…


水銀燈「(…でも…)」


(もう、そう長くは… もたないかもしれない…)


コヒュー コヒュー…


(早く来て… 雪華綺晶…)




ジュン「…」


ソーッ


ジュン「(金糸雀…)」ソーッ


ギシ  ギシ



「(…ありがとう)」
319 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/27(水) 22:06:00.99 ID:KPjLJaM0
【翌朝】


チチ チチチチ


水銀燈「金糸雀。 …金糸雀?」

金糸雀「むにゃ…」

水銀燈「もう起きなさい。 朝ごはんよ」ユサユサ

金糸雀「…すぴー…」

水銀燈「…」

デコピン!!

金糸雀「あひぃっ!?」

水銀燈「しまいには拳で殴るわよ…」

金糸雀「ゆっ、ゆるしてみっちゃん!!」

水銀燈「…なんて夢見てるのよぉ」

金糸雀「あっ… す、水銀燈? おはようかしら…」

水銀燈「おはようじゃないわ。はやくご飯食べてきなさい」

金糸雀「はっ、はい…」ゴソゴソ



金糸雀「(みっちゃんにライフルで狙撃される夢を見ちまったかしら…)」プシュー…
320 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/27(水) 22:08:51.58 ID:KPjLJaM0
ガチャリ


真紅「あら、お寝坊さんが来たわ」

金糸雀「…おはよーございます」プ゚シュー…

ジュン「おはよう、カナ。ご飯食べなよ」

金糸雀「のりは、もう出かけちゃったのかしら…?」

ジュン「ああ、ついさっき」

金糸雀「うう… ちゃんとごあいさつしたかったのかしら」

ジュン「気にするなよ。昨日は遅かったんだから」

金糸雀「かたじけないかしら…」


ピンポーン


真紅「…あら? お客様?」

ジュン「こんな朝早くから…?」

金糸雀「(げっ!!)」


カサカサカサ
321 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/27(水) 22:10:10.72 ID:KPjLJaM0
ジュン「かっ、カナ?」

金糸雀「よ、よきにはからってほしいかしら…」コソコソ

ジュン「まさか…」


ト ト ト

ガチャリ


みつ「…じゅんじゅん」

ジュン「やっぱり」

みつ「え?」

ジュン「いや、なんでもない」

みつ「…金糸雀が、来てない?」

ジュン「…」


ソーッ


みつ「?」

ジュン「(いないって言ってくれって言われたよ)」ヒソヒソ

みつ「(…そうなんだ…)」グスン

ジュン「(みっちゃんさん?)」



「(ごめんね… カナ…)」
322 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/27(水) 22:19:10.92 ID:KPjLJaM0
ジュン「(みっちゃんさん…)」

みつ「(わたし…どうかしちゃってた…)」


「(嬉しかったのと、寂しかったのとで… ごめんね、カナ…)」


ジュン「…」


「(みっちゃんさん)」


みつ「(な、なに?)」

ジュン「(カナが…昨日の晩、水銀燈といっしょにいてくれたんだ)」

みつ「(え?)」

ジュン「(いっぱい話をしてた。 …来てもらって、よかったよ)」

みつ「(そう…)」

ジュン「(しばらくたったら、きっと自分で帰るよ)」

みつ「(そうね… じゅんじゅん、ごめんなさいね)」

ジュン「(ぜんぜん。 こっちは助かってるくらいだよ)」

みつ「(ありがとう …ね、これ)」


ゴソゴソ… ドスン


ジュン「(わ、大っきい。 なにこれ?)」

みつ「(…銀ちゃんに、いいと思って持ってきたの)」
323 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/27(水) 22:23:20.44 ID:KPjLJaM0
ジュン「カナ? どこにいったんだ…」

金糸雀「…」

ジュン「あ、カナ。 …こんなところにいたんだ」

金糸雀「あ… やっぱり、みっちゃんだった?」

ジュン「ああ」

金糸雀「なにか、言ってなかったかしら?」

ジュン「ごめんなさいって」

金糸雀「…え?」

ジュン「水銀燈といっぱい話して、落ち着いたら帰ってきてほしい。 無理させてほんとうにごめんなさいって言ってた」

金糸雀「うー… しゃべっちゃったのかしら。 ジュンってひどいかしら」

ジュン「きみらって、ほんとうにいい仲だよな」

金糸雀「…」
324 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/27(水) 22:34:02.91 ID:KPjLJaM0
ジュン「…」

ソーッ

金糸雀「ジュ、ジュン?」 


「(顔が近いかしら…)」ドキドキ


ジュン「(きのう、水銀燈と話してたんだろ?)」

金糸雀「(え、ええ)」

ジュン「(水銀燈、なんて言ってた?)」

金糸雀「(…)」


「(ジュンにものりにも、みんなみんなにお世話になったって言ってたかしら)」


ジュン「(そうか…)」

金糸雀「(だから、しっかりとご恩を返しなさいって)」
325 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/27(水) 22:34:59.83 ID:KPjLJaM0
今日はここまで。 つづきは明日。
326 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/05/27(水) 22:35:48.31 ID:eP8Ag3Qo
乙〜

327 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/05/27(水) 22:37:26.97 ID:TCCC5E20
乙〜
328 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/05/27(水) 22:44:54.40 ID:iTaj1lIo
おっつ
329 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/05/27(水) 22:45:39.21 ID:tH9L33Uo
おつつ
330 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/05/28(木) 07:44:22.45 ID:VcJlL6AO
おっつつー!
331 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/05/28(木) 14:45:26.60 ID:f5YkoEso
おつ!
332 : [saga]:2009/05/28(木) 15:28:37.87 ID:HpmAZ1c0
乙どもっす。早いけど再開。
333 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/28(木) 15:33:18.95 ID:HpmAZ1c0
【ジュンの家 居間】

真紅「…」…コク コク


カチャン


真紅「ふたりとも遅いわね…」


…フワフワ


水銀燈「あら、真紅。 あなたひとり?」

真紅「水銀燈…って、いったいそれは何??」

水銀燈「ふふ、みつからのプレゼントよ。いいでしょう?」

ストン

水銀燈「これで、あなたたちに手間をかけさせずにすむわ」

真紅「そう…」

水銀燈「ところで… 観ないの?」

真紅「え?」

水銀燈「テレビよぉ」

真紅「…」



「…テレビなんて、もう観ない」





水銀燈「(眠ってる間にくんくんが終わっちゃったこと、まだ気にしてるみたいね…)」
334 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/28(木) 15:39:41.84 ID:HpmAZ1c0
水銀燈「あなたたちが眠っている間に放映した分、みんな録画しておいたじゃない」

真紅「…リアルタイムで観れなかった、この気持ちはおさまらない」

水銀燈「二日間ぶっとおしで観てたくせによく言うわねえ」

真紅「…あなたなんかに、私のくんくんにかける想いがわかるものですか」

水銀燈「はいはい。じゃあわたしひとりで観てるわ」

プチッ

真紅「…何?」

水銀燈「…知らなかったの?」ピッ ピッ



[いい子のみんな! 『たんてい犬くんくん』もうすぐはじまるよ!]



真紅「こ…これは!!!」

水銀燈「今日から第2期分も朝に再放送するようになったのよ」

真紅「ああっ… なんて、なんてことなの!!」

水銀燈「さ、一緒に観ましょう?」

真紅「…」



「…今回だけは、礼を言っておくわ」
335 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/28(木) 15:49:55.43 ID:HpmAZ1c0
水銀燈「はいはい。 さ、始まるわよ」

真紅「ああ… くんくん…」ウルウル


「会いたかった、あなたに会いたかったの…」


水銀燈「なんだかんだ言って、おこちゃまなんだから」

真紅「…好きに言いなさい。今日だけは聞かなかったことにしてあげる」


[いい子のみんな、元気にしてくれてたかい?]



真紅「ああっ…」

「ああっ、くんくん!!!」

真紅「え?」

水銀燈「待ってたのよぉ!!」

真紅「…」

水銀燈「再放送が決まってから、胸の高鳴りがおさまる日はなかったわ…」

真紅「…」




「(まったくもう、どっちが子供よ)」
336 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/28(木) 15:56:20.59 ID:HpmAZ1c0
【ジュンの家 2階】


ジュン「…君は、水銀燈のことをどう思ってるんだい?」

金糸雀「どう…って?」

ジュン「うーん… 好きか嫌いかで言ったら、どっち?」

金糸雀「…」


「…むつかしいかしら」


ジュン「…」

金糸雀「大好きで大嫌い、憎たらしくて愛おしい… ひとことで言い表せないかしら」

ジュン「…そうなんだ」

金糸雀「でも間違いなく言えるのは、とてもとても大切な…大きな存在ってことかしら」

ジュン「蒼星石もそう言ってたよ」

金糸雀「当然かしら。わたしたち姉妹にとって、水銀燈はなくてはならない存在かしら」

ジュン「…なぜ水銀燈が君には心を開くのか、わかったような気がするよ」

金糸雀「??」



ジュン「カナって、自分を飾らないんだな」
337 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/28(木) 16:01:54.24 ID:HpmAZ1c0
金糸雀「…そんなことないかしら」

ジュン「気を使い、言葉を選びながらも、いいことも悪いことも思ったことを本当に正直に言ってくれる」

金糸雀「…違う。 違うの、ジュン」 


「私は、自分をそういう風に飾ってる…装ってるだけ」


ジュン「…」

金糸雀「水銀燈は口が立つし頭もいいけど、根っこのところは理屈じゃなくて感性で動く女性かしら」

ジュン「…そうだね」


(雪華綺晶のときも、そうだったな…)


金糸雀「逆に、わたしは理屈から入っていってしまうタイプかしら。けれど、理屈を押し付けたって水銀燈は心を開いてはくれない」

ジュン「わかるよ」

金糸雀「だからわたしは、意識してそういう自分をつくってから…」

ジュン「…やっぱりそうじゃないか」

金糸雀「え?」

ジュン「君は装いも飾りもする、ズルもするしウソもつくけど、それ自体は隠さないだろう」

金糸雀「…ジュン…(しまった…)」




(不覚にも、ときめいちまったかしら…)
338 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/28(木) 16:17:16.13 ID:HpmAZ1c0
【ジュンの家 居間】


[しっかりするんだ、ラビット夫人! ここで何が起きたんだ!]


真紅「だ、だめっ! そんな女に心を動かされちゃ! あなたには私がいるのに!」

水銀燈「そ、そうよ! こっちを見て、わたしだけを見つめて!!」



真紅「え?」

水銀燈「は?」



真紅「…」

水銀燈「…」



「ふんっ!」プイッ
339 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/28(木) 16:18:14.13 ID:HpmAZ1c0
[あなたを死なせはしない! さあつかまって、脱出するんだ!]


真紅「いやあっ! くんくん、やめてぇっ!!」

水銀燈「ダメぇっ!! そんな女なんか…」 


「ぐ、ぐぅっ?!」


真紅「す、水銀燈?!」

水銀燈「き、傷が…」

真紅「大丈夫?!」

水銀燈「ああ、あああ、お願い…」

真紅「な、なに?!」



「くんくん、そんな女よりわたしを助けて…」



(…大丈夫そうね…)サスサス
340 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/28(木) 16:24:31.64 ID:HpmAZ1c0
【ジュンの家 2階】


ジュン「…カナ」

金糸雀「は、はい(あらたまって、なにごとかしら)」

ジュン「くわしいことは、まだ言えない。 でも、これだけは知っておいて」

金糸雀「…なにかしら」

ジュン「水銀燈がケガをした理由」

金糸雀「え…!」

ジュン「水銀燈は…」


「きみたちを助けるために体を張ったんだ」


金糸雀「…」

ジュン「自分の身を傷つけてでも、力を失ってでも、きみたちを助けようとしていた」

金糸雀「…」

ジュン「それだけは忘れないで」

金糸雀「…」

ジュン「…カナ?」




金糸雀「…やっぱり」ジワッ
341 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/28(木) 16:29:30.94 ID:HpmAZ1c0
ジュン「カ、カナ?」

金糸雀「…やっぱり、やっぱり… そうだったかしら…」

ジュン「カナ…」

金糸雀「不安だった…」 


「信じようと思ってたけど、ずっとずっと…」ポロポロ…


ジュン「…ごめん」

金糸雀「ううん、いいの… ぐずっ、えぐっ…」



「ありがとう… ありがとう、ジュン…」…グスグス



【ジュンの家 居間】


[いい子のみんな、ありがとう! また来週!]


真紅「ああ… 夢のような時間だった」サスサス

水銀燈「ええ… 幸せなひとときだったわ…」

真紅「…落ち着いた?」

水銀燈「…なんとか」
342 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/28(木) 16:32:10.71 ID:HpmAZ1c0
水銀燈「ちょっと今回は刺激が強すぎたわ…」

真紅「体が治るまで、観ないようにしたら?」

水銀燈「…私に死ねって言うの?」

真紅「そんな…」

水銀燈「くんくんのためならこの身なんて惜しくない」

真紅「…」


(わかるわ… あなたのその想い…)


トトトト ガチャ


真紅「あら、金糸雀。 どこへ行って…」

金糸雀「しーんぱっいかっけって♪ ごっめんなさーいかっしらー♪」

真紅「…どうしちゃったの?」

水銀燈「(…おでこ、強く叩きすぎちゃったかしら?)」
343 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/28(木) 16:35:49.18 ID:HpmAZ1c0
金糸雀「あらら水銀燈。みっちゃんのプレゼント、さっそく使ってくれてるかしら」

水銀燈「なかなかいいわよぉ。お礼言っておいてね」キイ キィ

真紅「ドール用のロッキングチェアなんて、よく見つけてきたわね」

水銀燈「しかもね… メイメイ、お願い」


ポゥ… 


水銀燈「こうしてメイメイに入ってもらうと…」


フワリ


ジュン「すごい、本当に浮くんだ」

水銀燈「便利よねぇ。 これであなたたちに、手間をかけさせずにすむわ」

ジュン「槐さんの手製だっていってたっけ…」

金糸雀「…カナが動けなくなったときのために、みっちゃんがボーナスはたいて買ってくれた椅子かしら」

ジュン「…」



(みっちゃんさんって、カナのこと本当に大事にしてたんだな…)
344 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/28(木) 16:38:28.41 ID:HpmAZ1c0
真紅「…じゃ、わたしは雛苺を迎えに行ってくるわ」

金糸雀「あ、カナも行くかしら」

真紅「あなたは、ご飯食べてしまいなさい」

金糸雀「まあいいからいいから…」


トテトテ


ジュン「な、なんだい? カナ…」

金糸雀「(ちょっと、時間をもらうかしら)」

ジュン「(…)」

金糸雀「(なんとか、みんなに話をしてみるかしら)」

ジュン「(…頼むよ)」
345 : [sage]:2009/05/28(木) 16:39:21.50 ID:HpmAZ1c0
とりあえずここまで。続きは明日。
346 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/05/28(木) 16:56:08.70 ID:f5YkoEso
おつ!
347 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/05/28(木) 18:01:57.83 ID:aTiEIoIo
おっつ
348 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/05/28(木) 21:34:28.65 ID:fLnsg8Ao
おっっつ
349 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/05/28(木) 23:57:01.10 ID:JVSjMCco
おつつ
350 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/05/29(金) 02:19:47.55 ID:GnCYX6DO
おつ
ローゼンとの関わりがそうさせるのか、本人がそもそもそうなのかは知らんが
原作と創作で方向性は違えどジュンって基本的に天然タラシだよな
351 : [saga]:2009/05/29(金) 22:23:17.64 ID:7QATZq.0
おつどもっす〜
>>350
人に嫌われたくないのと、口説こうって言う意識がないのがジュンの天然たる所以かなって思ってます。
ちなみにこの話の中では、ジュンにとって水銀燈は恋人であり母であり姉であり師匠。
ほかのドールに対しては「よき父親」であろうとしているっていう解釈です。
まあ父親ってのは最初の恋人って言ったりもしますが…


それでは再開します〜
352 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/29(金) 22:25:40.47 ID:7QATZq.0
【柴崎家】

金糸雀「おじゃましますかしらー!」

真紅「…失礼します」

柴崎「おやおや、真紅ちゃんにかなちゃんじゃないか」

マツ「あらあら、ふたりともお元気そうね」

金糸雀「おじいさま、おばあさま、おはようございますかしら!」

柴崎「おうおう、明るくていいのぉ」

マツ「あの子たち、今呼んできますからね」

金糸雀「ありがとうございますかし…」


ぐきゅるるる…


柴崎「…人形も腹が鳴るんじゃの」
353 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/29(金) 22:27:51.55 ID:7QATZq.0
真紅「…だから食べてきなさいって言ったのに」

金糸雀「ふっ…不覚かしら… 一生の恥かしら…」

マツ「朝ごはんの残りがあるから、食べてお行きなさい」

金糸雀「…いえ、ジュンの家にとっておいてあるから…」

マツ「…いらない?」

金糸雀「…」


「ほんのちょっとだけにするかしら…」


真紅「まったく、もう」



翠星石「金糸雀、来たですね」

蒼星石「…お疲れ様」

金糸雀「おひゃようかひら! 首尾は上々かひら!」ハムハム モグモグ

真紅「もう、行儀が悪すぎるわ」

翠星石「…」
354 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/29(金) 22:35:04.12 ID:7QATZq.0
金糸雀「どうしたのかしら?」

翠星石「(なんで真紅までいやがるですか?)」ヒソヒソ

金糸雀「雛苺も呼ぶつもりかしら」

翠星石「(で、でけぇ声だすなです! …な、なんで…)」

金糸雀「…翠星石、なんであなたたち以外には秘密にしなきゃいけないかしら?」

翠星石「…え、えぇ?」

蒼星石「…そ、それは…」


真紅「…もう、あなたたちったら!」


蒼星石「し、真紅…」

翠星石「うへぇ、真紅が怒ったですぅ…」

真紅「ふたりだけで何かしようなんて、水臭いにもほどがあるわ」

蒼星石「…真紅」

真紅「…こういうときこそ、秘密なんて作ってほしくない」

翠星石「…わかったですぅ、すまんかったです」 

蒼星石「…真紅、ごめん」

金糸雀「話もまとまったかしら。 それでは巴の家に出発かしら…」


「…あああっ!!」


翠星石「な、なんですかっ?」

真紅「金糸雀?!」

金糸雀「たっ…大変なことを忘れていたかしら… しっ、しっ…」


「真紅――――っ!!!」


真紅「はあ?!」
355 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/29(金) 22:37:15.25 ID:7QATZq.0
【ジュンの家】


クイ クイ


ジュン「もう痛まないかい、水銀燈?」

水銀燈「…ごめんなさい、心配させて」

ジュン「治るまで、くんくん観ないようにしたら?」

水銀燈「半年間の恩を一瞬で忘れられるようなこと言わないで」ギロッ

ジュン「は、はい」

水銀燈「金糸雀は、食べないで出て行ったの?」

ジュン「うん。 …みんなに、話をつけてくれるみたい」

水銀燈「そう…」


(…みんな、不安がってる。 わたしも不安だけれど…)


(でも、ジュンも金糸雀もがんばってくれてる)


(わたしも、がんばらなくては…)





(…あと少しだけ、なんとか…)
356 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/29(金) 22:40:29.85 ID:7QATZq.0
【nのフィールド 秘密の花園】


金糸雀「…それじゃ、はじめるかしらっ!!」ブリブリ

雛苺「んもー、おはなしならはやくしてー!!」

真紅「…雛苺には謝るわ。 でもあなたは勝手にいなくなってたんじゃない」

金糸雀「くんくん第2期再放送第1話を見逃すなんて、一生の不覚かしら…」

雛苺「真紅も水銀燈も、じぶんたちだけ観てヒナのこと忘れてるのー!」

翠星石「わたしたちはおじじの家でばっちり観てきたです〜♪」

蒼星石「15分延長のスペシャル版だったね」

雛苺「翠星石も、蒼星石までひっどいのー…」グスン

蒼星石「ご、ごめんね。 …ところで、金糸雀」

金糸雀「ばっちりかしら。 水銀燈からもジュンからも話は聞けたし、いろんな情報もつかんだかしら」
357 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/29(金) 22:42:52.55 ID:7QATZq.0
翠星石「…まあまあですね。 それではちゃっちゃっと説明するです!」

金糸雀「…いいかしら。でも、その前に」

真紅「…なに?」

金糸雀「みんなの話を先に聞かせてほしいかしら」

蒼星石「ぼ、僕たちの?」

翠星石「どういうことですか?」

金糸雀「だーかーらー!」


「みんなが水銀燈について知ってること、水銀燈に対して思ってることをぜーんぶ話すかしら!」


真紅「な、なんでそんなことを!?」

金糸雀「こっちのセリフかしら。 なんで、わたしだけが全部話さないといけないのかしら?」

翠星石「そっ… それは…」

金糸雀「変に秘密を作ろうとするから話がややこしくなるかしら!」
358 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/29(金) 22:51:40.25 ID:7QATZq.0
真紅「そんな… べ、別に私には秘密なんて…」

金糸雀「往生際が悪いかしら! そもそもあなたがただって…」


「水銀燈とジュンに秘密をつくってほしくないからこんな話になってるんじゃないかしら?!」


真紅「う…」

翠星石「あう…(痛いところを突かれたですぅ…)」

金糸雀「なら、しっかり全部話すかしら! それに、これは絶対必要なことかしら!」

蒼星石「な、なぜ?」

金糸雀「ジュンと水銀燈に本音を話してもらうには、もうこれしかないかしら!」

翠星石「な、何を考えてやがるですか?」



「もう、ぐだぐだ言わないできっちり話すかしら!!」



雛苺「(金糸雀、おっかないの… いつもと違うの…)」 



(まるで、水銀燈みたいなの…)
359 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/29(金) 22:57:05.04 ID:7QATZq.0
【10分後】




金糸雀「…だいたい把握したかしら。それにしても翠星石と蒼星石は…」

翠星石「あ、ありえねー話じゃねーですよ?」

蒼星石「…僕だって、そんなこと無かったと思いたいよ。でも…」

真紅「まさか… そんな、ジュンが? 水銀燈が…?」

金糸雀「…そこまで姑息なまねを、はたして水銀燈がするかしら?」

翠星石「だってお前だって言ってたじゃないですか! 水銀燈のケガは…」

金糸雀「そう、まずこれは間違いないことかしら」


「水銀燈はほんとうにケガをしてる。 それもかなりひどいケガを」


雛苺「…ひどいケガなの?」

金糸雀「水銀燈と一緒に寝たとき、胸の中から空気の漏れる音が聞こえてきた」

真紅「…」

金糸雀「外側から見える傷がないってことは、体の内側からついた傷なのかもしれない」

翠星石「ほれ見ろです! だから言ったです!!」

金糸雀「まだ話は途中かしら!」
360 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/29(金) 22:59:58.51 ID:7QATZq.0
蒼星石「でも、僕たちが考えてしまったことだってまったく根拠がないわけじゃないってことはわかってよ」

金糸雀「あなたたちは、一番大事なことが見えなくなってるかしら」

蒼星石「一番、大事なこと…?」

金糸雀「ジュンと水銀燈が、お互い『体を張ってもらった』って言っているという一点かしら!」

翠星石「そ、それは…」

金糸雀「あなたたちの考えは、水銀燈のこともジュンのことも信用できないって言ってるのと同じかしら!」

蒼星石「…ジュン君が、水銀燈に言いくるめられてる可能性は?」

金糸雀「水銀燈は『みんなにお世話になった』って言ってるかしら」

蒼星石「…うん」

金糸雀「のりも巴もみっちゃんも、あなたの契約者もみーんな言いくるめられてると?」

翠星石「…あの女ならやりかねねーです」

金糸雀「あの水銀燈が、やすやすと契約者でもない人間の世話になろうと思うかしら?」

蒼星石「今まではそうだったけど… ケガをして、弱気になったのかもしれないじゃないか」

金糸雀「…まーったくもう!そこまで信じられないなら…」



「あなたたちの口で直接本人に聞いてみたらどうかしら!?」
361 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/29(金) 23:07:49.98 ID:7QATZq.0
翠星石「ちょっ、直接?!」

蒼星石「答えてくれるわけないじゃないか!」

金糸雀「…水銀燈の答え方で、あなたたちにはわかるはずかしら」

翠星石「う…」

蒼星石「…」

金糸雀「信じられないっていうんなら、それも含めて全部ぶつけてみるかしら!」


「あなたたちはいっっっつもその調子だからダメかしら!!」


翠星石「い、いっつもってどういうことですか?!」

金糸雀「ジュンに気に入られたくて、こっそりジュンの心の樹を弱らせてたのはどこの誰だったかしら…」

翠星石「ひっ、人の黒歴史をほじくるなですぅっ!!」

雛苺「み、みんな落ちついてー!!」
362 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/29(金) 23:17:05.65 ID:7QATZq.0
【さらに10分後】


金糸雀「ぜー、ぜー、ぜー… とにかく、これで話はまとまったかしら」

翠星石「ひー、ひー… わかったです、もう好きにしやがれですぅ」

雛苺「…みんな、怖かったの…」

真紅「…仕方がないわ」

蒼星石「僕も、もう異存はないよ」

翠星石「まったく… いつもはお気楽なくせして、なんでこういうときだけ姉さん風吹かせやがるですか」

金糸雀「…」


(わたしがいつもお気楽でいられるのは、水銀燈がいてくれるから)

(水銀燈が私たち姉妹を率いて真正面に立ってくれるおかげで、わたしは楽ができている)

(そんなわたしが、水銀燈が弱っているときにこそがんばれなかったら…)



(薔薇乙女の第2ドールなんてやめなきゃいけないかしら)


金糸雀「それじゃ、れっつごーかしら!」

翠星石「人の話を聞きやがれですっ!」

363 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/29(金) 23:32:35.88 ID:7QATZq.0
金糸雀「ちゃーんと聞いてるかしら! みんなは自分の思ってることを、ふたりの前でしっかりはっきり言うって!」

翠星石「都合のいいところだけ憶えてやがるです…」


「そのかわり、ジュンと水銀燈にも言えることは全部話してもらうかしら!」


真紅「ほんとうに、話してくれる…?」

金糸雀「だーいじょうぶ! 大船に乗った気でいるかしら!」


(正直、うまくいく保証なんてないかしら…)


雛苺「また、ケンカになったりしない…?」

金糸雀「なったらなったで、その時考えるかしら!」

雛苺「うゆー…」


(でもここは、ハッタリでもなんでも言っておくしかないかしらっ!)



「この金糸雀におまかせかしら!」

364 : [sage]:2009/05/29(金) 23:36:53.48 ID:7QATZq.0
今日はここまで。続きはあさって。
365 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/05/29(金) 23:37:49.70 ID:YST5m3co
おつつ
カナ大活躍かしらー
366 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/05/29(金) 23:38:08.45 ID:irLjzvYo
乙でした。
雪華綺晶はいつでてくるのだろうか
367 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/05/29(金) 23:39:38.23 ID:LtWYEf2o
乙〜

次回も楽しみに待ってますね
368 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/05/29(金) 23:40:47.64 ID:suD1xZYo
おつ!
369 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/05/29(金) 23:43:22.01 ID:A36U7hs0
乙!
>>351
水銀燈も言ってたけど、羨ましい才能だよな…天然ながら
370 : [sage]:2009/05/29(金) 23:55:28.42 ID:7QATZq.0
>>365
今後さらに大暴れする予定かしら〜

>>366
彼女の存在はこの話の鍵です。かなり引っ張るとだけ…

>>367
どうもです〜

>>368
おつどもっす〜

>>369
フラグクラッシャーの自分にもうらやましい限りっすorz
本人はきっと、うっとうしかったり重荷だったりすることもあるかなとも思いますが…
371 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/05/30(土) 00:15:14.76 ID:PiDXkhAo
おっつ
372 : [saga]:2009/05/31(日) 09:39:07.41 ID:GiaMjDY0
乙どもっす。再開します〜
373 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/31(日) 09:40:49.71 ID:GiaMjDY0
【ジュンの家】


カチ コチ カチ コチ


水銀燈「…遅いわねぇ、あの子たち」

ジュン「…説得に、手間取ってるのかもしれない」

水銀燈「そうね…」

ジュン「金糸雀、大丈夫かな…」

水銀燈「大丈夫よ」

…キィ

水銀燈「あの子はこれまでだって、私がいないときには姉妹を率いる立場をしっかり果たしてきた」

ジュン「そうなんだ…」

水銀燈「今回だって、きっと頑張ってくれる。 わたしたちも、覚悟を決めましょう」

ジュン「覚悟?」

水銀燈「あの子は、策を練るだけ練って準備を整えたら、あとは全力で真正面からぶつかってくる」

ジュン「…」

水銀燈「へたな小細工はしないほうがいいわ。 …あの子の頑張りを無駄にしないためにも」



ブゥーン…
374 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/31(日) 09:43:22.44 ID:GiaMjDY0
水銀燈「(…来たわね)」

金糸雀「…ただいまかしら」

ジュン「おかえり…」


ドヤドヤドヤ


真紅「…ただいま」

翠星石「…おじゃまするです」


水銀燈「みんな…」

ジュン「(雰囲気が重い…)」


蒼星石「…」

雛苺「…」




ジュン「(雛苺まで黙りこくってる…)」


金糸雀「ジュン、水銀燈。 …わたしたちから、あなたたちに話があるかしら」

ジュン「…なんだ?」

金糸雀「これから、わたしたちみんなが、自分の気になってることをはっきり言うかしら」

水銀燈「…」
375 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/31(日) 09:45:27.29 ID:GiaMjDY0
金糸雀「できるだけ、ごまかしも隠しもしない。 だから、答えられる限りでいいから…」

水銀燈「…わかったわ」

翠星石「(へっ?)」

蒼星石「(…あっけなく了承したね…)」

ジュン「…いいのかい、水銀燈」

水銀燈「ええ。 ただ何回か言ったけど、ケガが治ってからにしてほしいこともある」

金糸雀「…それもなぜなのか、聞かせてもらっていいかしら?」

翠星石「(お、押しまくるですね…)」



水銀燈「…」



金糸雀「(な、内心ビクビクかしら…)」

水銀燈「…」




「心が保たないから」
376 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/31(日) 09:47:29.49 ID:GiaMjDY0
雛苺「こころが…?」

水銀燈「体がこうじゃ、気持ちを保てる自信がない」

ジュン「…」

水銀燈「だから、お願い」


スッ…


蒼星石「 ! 」

翠星石「(あっ、頭を下げやがったですっ!!)」

真紅「水銀燈… あなた…」

金糸雀「…了解かしら。みんなも、異存はないかしら」

蒼星石「無いよ。…僕と真紅は、もともとそれでいいって言ってたはず」

翠星石「わっ…わたしは…」

雛苺「…翠星石?」

翠星石「も、もちろんそれでいいですっ!」



(ここは空気読まざるを得ないです…)
377 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/31(日) 09:49:06.53 ID:GiaMjDY0
金糸雀「それじゃ、ジュンは…」

ジュン「水銀燈と同じ。 水銀燈が答えられないことは、ボクも答えないつもり」

真紅「(…もう)」

蒼星石「…」

翠星石「(まったくあのチビ人間、最近かわいげがねーです…)」

金糸雀「それじゃ、話を始めるかしら。まずは、あなたたちから」

翠星石「へっ?!」

蒼星石「ぼ、僕らから?!」

金糸雀「あなたたちが一番ふたりを疑ってるんだから当然かしら!」

ジュン「…疑ってる?」

水銀燈「…」

翠星石「う…ううー…」

蒼星石「…わかったよ」

翠星石「そ、蒼星石?」

蒼星石「もう覚悟を決めようよ、翠星石」グッ


スタ スタ スタ
378 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/31(日) 09:50:43.92 ID:GiaMjDY0
蒼星石「ジュン君、真紅から聞いたけど…」

真紅「…」

ジュン「なに?」

蒼星石「僕らの結晶に、君の命と心が含まれてるって本当?」

ジュン「…聞いてたのか」

真紅「…」

蒼星石「本当なんだね?」

ジュン「…」

水銀燈「…ええ」

真紅「( ! )」

ジュン「(水銀燈…)」

雛苺「ほんとうなの…?」

蒼星石「水銀燈…どういうことなんだ?」

水銀燈「…」



「ジュンの命を、あなたがたの結晶に吹きこんでもらったのよ」
379 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/31(日) 09:54:30.11 ID:GiaMjDY0
蒼星石「ジュン君に、なぜそんなことが出来たんだい?」

水銀燈「…どういう意味?」

蒼星石「ジュン君は… ジュン君は、ぼくらのお父様となにか関係があるの?」

水銀燈「…」

金糸雀「もう、回りくどい言い方はやめるかしら!」 

蒼星石「か、金糸雀?」


金糸雀「さっき私たちに言ったとおり、あなたがたが疑ってることをはっきり言うかしら!」


翠星石「…」グッ


ダダッ!


翠星石「水銀燈!」

水銀燈「…何?」

翠星石「水銀燈は、ジュンがお父様の生まれ変わりか何かだと知ったから…」 

水銀燈「…えっ?」

翠星石「だから、抜け駆けして、ジュンをひとりじめしようとしてたんじゃないんですか!?」
380 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/31(日) 09:57:34.92 ID:GiaMjDY0
水銀燈「はあ?」

ジュン「えっ???」



蒼星石「…そのために僕たちの結晶を奪ったけれど、結晶の負荷でケガを負った」

翠星石「そのことを黙ったままジュンに取り入って、自分のケガとわたしたちの結晶を治してもらって証拠を消そうとしたんじゃ…」



水銀燈「…」ポカーン

ジュン「…」ポカーン


金糸雀「ふ、ふたりとも…?」

ジュン「お…」

真紅「…ジュン?」

ジュン「おまえら…」

雛苺「ジュン??」


バァン!!


真紅「?!」

雛苺「ひ?!」



「いいかげんにしろっ!!」
381 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/31(日) 10:02:06.54 ID:GiaMjDY0
雛苺「ひぃっ?!(こ、こっちがマジギレするですか?! 予想外ですっ!)」

蒼星石「ジュ、ジュン君?!」

ジュン「水銀燈は、水銀燈はな…!!」


「君たちのために…!」


ビシッ!


ジュン「わっぷ!?」

金糸雀「メイメイ?!」

水銀燈「それ以上言わないで、ジュン」

翠星石「す、水銀燈…」

水銀燈「みんなを怒らないであげて。 だって、私が悪いんだから…」

ジュン「ど、どういうことなんだ?」

水銀燈「蒼星石に言っちゃったのよ。 わたしは…」



「あなたに取り入ってるだけだって」
382 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/31(日) 10:06:00.19 ID:GiaMjDY0
ジュン「えっ? …君が?」

蒼星石「うん… 最初は、本気にしてなかったんだ。人間に取り入るなんて、水銀燈らしくないから…」

ジュン「蒼星石…」

蒼星石「…でも、そのあとでジュン君と結晶が呼び合うことを知って…もしかしたらって…」

ジュン「水銀燈…なんでそんなことを!」

水銀燈「…」

ジュン「す、水銀燈?」



「…」



「言わなきゃ、いけない?」



真紅「(? 水銀燈が…)」



「…」ギュッ



(くちびるを、噛んでる…)
383 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/31(日) 10:10:01.98 ID:GiaMjDY0
翠星石「す、水銀燈…?」



「言わなきゃ、いけないのよね…」



ジュン「(君は、何を…?)」



「…」



金糸雀「…」



「わたし…」



雛苺「…?」



「ああ、もうっ!!」



雛苺「ひっ?!」

翠星石「な、なにいきなり大声だしてるですか!」

水銀燈「わたし…わたし…」




「『水銀燈』でいなくちゃいけないって思ったの!!」



蒼星石「…えっ?」
384 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/31(日) 10:17:16.51 ID:GiaMjDY0
「たとえケガをしていても、弱っていても… 強くて誇り高くて、情になんて流されない…」


金糸雀「…」


「人間なんて歯牙にもかけない、冷酷非情の最凶ドールでいなくちゃいけないって思ったの!」


翠星石「す、水銀燈…」


「だって、わたしが弱気になったら、みんなが… みんなが…」


…ググッ


「みんなが不安がるじゃない!!!」



真紅「…あなた…」

雛苺「水銀燈…」


水銀燈「…どう、これで満足?! どうなの!」


翠星石「…」

蒼星石「…」


水銀燈「…こんな、こんな恩着せがましいこと言わせて… これでいいんでしょう!?」


ジュン「水銀燈… 君ってやつは…」

金糸雀「…」 
385 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/31(日) 10:23:40.69 ID:GiaMjDY0
トコ トコ トコ


ジュン「…カナ?」

金糸雀「水銀燈がいままで、わたしたち姉妹には絶対に言わなかった言葉があるかしら」

水銀燈「…」

金糸雀「どんなにズタボロになっても… 泥水をすすりゴミを漁ることになっても言わなかった言葉」



「…『あなたたちのために』」



蒼星石「そう、だったね…」

翠星石「水銀燈は、どうしようもないカッコつけですから…」

真紅「嫌味で言うことはあっても、本気で恩を着せようとすることは無かった。 …それを嫌悪してさえいた」

金糸雀「水銀燈。あなたは、アリスゲームでわたしたちにひどいことをしてるっていう自覚があったんでしょう?」

ジュン「…」

金糸雀「だから、アリスゲーム以外の戦いでは、あなたは何も言わずにわたしたちのために体を張ってくれていた」



「それが、あなたの第一ドールとしての… 私たちの姉としての、一番大事なゆずれないプライドだったんでしょう?」



水銀燈「…何を、わかったようなことを…!」
386 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/31(日) 10:28:40.00 ID:GiaMjDY0
金糸雀「…わたしたちもそれなりのことはしなくちゃいけないかしら」

ジュン「…カナ?」

トコ トコ 

水銀燈「…何よ?」

金糸雀「あなたにそこまで言わせてしまったんだから…」

水銀燈「…ふん。 わかったつもりで、ぺらぺらと…」

金糸雀「…」

水銀燈「あなたなんかに、何がわかるっていうのよ!」

金糸雀「…」

水銀燈「何とか言ったらどうなの?!」

金糸雀「…あなただって」

水銀燈「…え?」

金糸雀「あなただって…」




「あなただって、私のなにがわかってるっていうの?!」
387 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/31(日) 10:33:33.99 ID:GiaMjDY0
水銀燈「…何ですって?」

蒼星石「金糸雀?!」

翠星石「(む、無茶ですぅっ!!)」

金糸雀「なにもわかってないじゃない! わかろうとなんかしてくれないじゃない!!」

水銀燈「…はん」シャッ


ボスッ!!


金糸雀「うぐっ!?」

ジュン「な?!」

真紅「(…みぞおち?! そんな…)」 

蒼星石「(動作が見えなかった!)」


水銀燈「わたしがケガしてるから、強気になれるとでも思った?」


ジュン「水銀燈、君は!」

水銀燈「…あなたは黙ってて」ズイッ

金糸雀「ぐ… うぅ…」

雛苺「カ…カナが…!」


水銀燈「…なめられたものねぇ」

金糸雀「ぐ… げほ、げほ…!」キッ!




「…殴りたければ殴りなさい…! 黙って聞いていれば!」
388 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/31(日) 10:38:03.93 ID:GiaMjDY0
水銀燈「あなた…?」

金糸雀「…さっきから自分のことばっかり言って! …わたしだって、わたしだって!!」


…ジワッ


水銀燈「…」

金糸雀「あなたはいつもいつもひとりで出て行って、傷だらけになって帰ってきて、なんにも話してくれないで自分ひとりで背負って…」


…ポロポロ


水銀燈「金糸雀…」

金糸雀「あなたはそれでよくっても、待たされてるときのわたしの気持ちなんか考えたことがあった?!」


ポロポロポロ…


金糸雀「もう2度と帰ってこないかもしれないって思いながら待ってたのよ?」

水銀燈「…」

 

「バラバラの破片になって転がってるかもしれないって思いながら探してたのよ!?」



ジュン「カナ…」
389 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/31(日) 10:42:18.22 ID:GiaMjDY0
金糸雀「わたし、あなたにそんなことなんかしてほしくなかった!!」

水銀燈「…あなた」


「あなたが無事で、元気でいてくれさえすれば…! それで、それだけでよかったのに…!!」


金糸雀「わたし…わたしっ!」ガバッ!

水銀燈「…」


…ギュッ


「もうどこにもいかないで! 行くんなら、せめて一言言って、連れて行って!! 足手まといにはならない!」 


「わたしが傷ついたって壊されたって気にしないで! あなた自分で言ってたじゃない!」


「『戦いになったら自分を守ることだけ考えて』って! 『あなたを守る気なんて無い』って!!」


「戦うんなら、みんなで一緒に戦って! そのための…」 


「そのためのアリスゲームじゃなかったの…?!」


「戦って戦って… みんなで戦って、強くなるための…」


「ひぐっ… えぐっ…」



雛苺「…ぐずっ」

真紅「…」
390 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/31(日) 10:48:23.27 ID:GiaMjDY0
水銀燈「…」


ナデ ナデ


金糸雀「す、水銀燈?」

水銀燈「…あなたの勝ちよ」


サス サス


金糸雀「…水銀燈…」

水銀燈「ごめんね、金糸雀。 …痛かったでしょう」

金糸雀「うう、ううう… いいの、ごめんなさい…水銀燈…」


…キュッ


金糸雀「きっと、きっと、殴ったあなたの手のほうが、痛んでるはず、痛いはず… ごめんなさい…」

水銀燈「…こんなの、痛くもかゆくも無いわよぉ」…ズキズキ

金糸雀「わたし、わたし…ケガしてるあなたを怒らせて… わがままをぶつけて…」

水銀燈「…いいの、いいのよ。 …わたしこそごめんね、あなたを試すような真似をして」

金糸雀「あなたは、ああして相手の覚悟をはかる。 2〜3発は覚悟してたかしら…」



ジュン「(ぼくのときは20〜30発くらいだったっけな…)」
391 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/31(日) 10:52:10.91 ID:GiaMjDY0
水銀燈「…あら、いつもの口調に戻ったわね…?」

金糸雀「え…?」

水銀燈「ごめんね、金糸雀。 みんなも…」


ギュッ


金糸雀「あ…」

水銀燈「わたしがふがいないから、あなたたちを不安にさせて…」

金糸雀「そんな…」

水銀燈「もしも、あなたが…」

金糸雀「え?」

水銀燈「わたしじゃなくて、あなたが一番上のお姉さんだったなら…」

金糸雀「え… えっ??」



「こんなにみんなを不安がらせなくてすんだのかもね…」
392 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/31(日) 10:57:19.62 ID:GiaMjDY0
金糸雀「それは…! それは違う! 違うかしら!」

水銀燈「金糸雀…?」


「ぜったい! 断じて! 違う…違うかしら!!」


水銀燈「…」


「わたしは… わたしは… あなたがいたから…」 


水銀燈「…」ナデ ナデ


「あなたがいてくれたから… ああ… ああああ…」




「うあああああーーーーんっ!!」




水銀燈「金糸雀…」ギュウウウッ



蒼星石「…僕らはいったい、なにをしていたんだろう」

翠星石「わたしたち、バカでしたね…」

ジュン「…やれやれ」グスッ


(『お母さん』には、かなわないよ)
393 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/31(日) 10:59:23.49 ID:GiaMjDY0
今回はここまで。続きは明日予定。
394 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/05/31(日) 11:12:01.26 ID:vAW9Xwoo
おっつ
カナ可愛いよカナ
395 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/05/31(日) 11:25:37.02 ID:Veqn0pAo
おつ!
396 : [saga]:2009/05/31(日) 17:48:54.75 ID:dZBfbtU0
乙どもっす。
予定が早まったのでいま投下。
397 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/31(日) 17:51:03.61 ID:dZBfbtU0
【翌朝 ジュンの家】


のり「…結局、そういうことになったの?」

ジュン「うん。あれからみんなで話をして…」

水銀燈「最初だけ少しもめたけど、あとはとんとん拍子だったわ」フワフワ

ジュン「ああ、拍子抜けするくらい…」

のり「でも、よかったわ… みんなが仲直りして」

水銀燈「ちょっと騒がしくなるけどねぇ」


ブゥーーーン…


金糸雀「おじゃましますかしらー!」

真紅「ただいま」

ジュン「お、来たな」
398 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/31(日) 17:53:06.18 ID:dZBfbtU0
蒼星石「…おじゃまします」

翠星石「…おじゃまするですぅ」

のり「いらっしゃい、みんな」

ジュン「それじゃ、さっそくお願いしようかな」

のり「ダメよジュン君。お茶くらい飲んでからでもいいでしょ?」

翠星石「さっすがのり、話がわかるです!」

のり「翠星石ちゃん、蒼星石ちゃん!

蒼星石「…はい」

のり「お茶が終わったらお洗濯とお掃除お願いね!」ニコニコ

翠星石「…前文撤回ですぅ」



(金糸雀「それじゃ、わたしたちが交代で水銀燈の看病をするっていうことでいいかしら?」)

(ジュン「ああ、助かるよ」)

(金糸雀「ただし、蒼星石と翠星石は当分毎日来るかしら!」)

(翠星石「えー?!」)

(金糸雀「そしてジュンやのりたちのお世話をするかしらー!」)
399 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/31(日) 17:54:41.87 ID:dZBfbtU0
(翠星石「なっ、なんでですか?!」)

(蒼星石「…しょうがないよ、翠星石。 僕たちが話を難しくしたようなものだから」)

(金糸雀「そういうことかしら! 観念するかしら」)

(蒼星石「それにきみはもともと、ジュン君の家に住んでたんじゃないか」)

(翠星石「そ、そうですけど…」)

(金糸雀「決まりかしら!」)



ジュン「結局、毎日みんなで来そうだけどね」

のり「ふふふ、そのほうが素敵でしょ」

雛苺「うわーい、ジューン!」トテテテテ

ヒシッ

ジュン「おはよう、雛苺」

雛苺「ジュン…」

ギュ―――ッ…

ジュン「…今日は登らないのか?」

雛苺「うん…」ギュウウウウ


…トクン トクン トクン


(おとうさまの感じ… あたたかいの…)


真紅「…」



(翠星石「…じゃ、ジュンは結局、お父様じゃないってことですか」)
400 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/31(日) 17:56:43.40 ID:dZBfbtU0
(水銀燈「そう。 …あなたたちの結晶を治すために、命と心を削ってくれたんだけどね」)

(蒼星石「…どうやったら、そんなことができたの?」)

(水銀燈「それは、まだ内緒にさせて」)

(蒼星石「…わかったよ」)

(翠星石「アリスゲームが終わるかもしれないと思ったのに、残念ですぅ」)

(水銀燈「あなたたち、もしほんとうにジュンがお父様だったらどうするつもりだったの?」)

(蒼星石「え…」)

(真紅「冗談じゃないわ」)

(水銀燈「でしょうねぇ」クスクス)

(ジュン「…ちぇ」)

(翠星石「…うーん」) 


(「…微妙ですぅ」)


(水銀燈「あら、あなたも?」)

(翠星石「ジュンはジュン。 お父様とは…違うです」)

(蒼星石「…」)




(ジュン「…」ションボリ)
401 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/31(日) 17:57:45.24 ID:dZBfbtU0
(雛苺「ヒナは… 嬉しいかも」)

(真紅「な、なにを言ってるの! わたしたちのお父様は…」)

(雛苺「だって、ジュンがもしお父様だったら、いつもそばにいてくれるのよ?」)

(ジュン「よしよし、ヒナはいい子だな〜」ナデナデ)

(雛苺「えへへ」)

(翠星石「ちょっ、ちょーしに乗るなですっ! お前なんかがお父様なんて100万光年早いですっ!」)

(ジュン「光年は距離の単位だぞ」)

(翠星石「ふつうに返すなですっ!!」)

(水銀燈「ふふふ」)



真紅「(まったく…もう)」

翠星石「…真紅」ツンツン

真紅「何よ」クルッ


プニッ


真紅「…」

翠星石「また、えらく古典的な手にひっかかりましたね」グニグニ
402 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/31(日) 17:59:27.96 ID:dZBfbtU0
真紅「だから何よ?」

翠星石「何をまた、そんなにぶすくれてるですか?」

真紅「…べつに」

翠星石「いいかげん素直になりやがれです。昨日だって…」



(ジュン「あとは… 真紅からは、なにかあるかい?」)

(真紅「わたしは…別に」)

(金糸雀「もう、真紅はほんとうにガンコなのかしら…」)

(翠星石「わたしたちと話してたときも、『別に』の一点張りでしたね」)

(ジュン「ほんとうになんにもないのならしかたないんだけど、ちょっとそうは見えないんだ」)

(真紅「え…」)

(ジュン「…なにかあるんなら、なんでも言ってくれよ」)

(真紅「…」)




(「しいて言えば…ジュンは、私の契約者でしょう?」)
403 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/31(日) 18:00:37.49 ID:dZBfbtU0
(ジュン「? あ、ああ」)

(真紅「水銀燈は、ローゼンメイデンの第一ドール」)

(水銀燈「…ええ」)

(真紅「その…ふたりとも、もう少しお互いの立場をよく理解して、わきまえた上で振舞ってほしいのだわ」)

(翠星石「???」)

(蒼星石「…?」)

(雛苺「真紅…どういうこと??」)

(金糸雀「…」コホン)


(「意訳すると『ふたりで仲良くしすぎないで私にもかまってほしい』ってことかしら」)


(真紅「な、なっ?!」)

(ジュン「ああなるほど、納得」)

(水銀燈「あー、はいはぁい」ニコニコ)

(真紅「わっ、わたしはそんなこと一言も!!」)

(ジュン「真紅、いま紅茶入れるよ」)

(水銀燈「真紅ほら、こっちにいらっしゃい。 髪をすいてあげる」)

(真紅「も、もうっ!! なに言ってるのふたりとも!」)
404 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/31(日) 18:02:13.88 ID:dZBfbtU0
翠星石「強がってるくせに甘えんぼさんなんですから」

真紅「…私は甘えんぼなんかじゃない!」

翠星石「甘えるのはいけないことじゃないですよ。 甘えたいのに強がるのがダメなんです」

真紅「だから、何度言ったらわかるの?! 私は…」

翠星石「…そんなことよりも、真紅」ズイッ

真紅「な、何?」


翠星石「…ですよ」


真紅「え… えっ?」

翠星石「……ですよ…」

真紅「な、何? よく聞こえない…」

ガバッ!

真紅「きゃあっ?!」

ジュン「さあ、つかまえた」

雛苺「つかまえたのー!」

真紅「なっ、何を?! はなしてっ!」




翠星石「うしろに気をつけたほうがいいですよ〜」ニヨニヨ
405 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/31(日) 18:04:12.71 ID:dZBfbtU0
真紅「あっ、あなたったら! ジュンもやめて! やめなさい! …」


トクン トクン トクン…


真紅「や、やめて… お願い…」

ジュン「いいだろ、ちょっとくらい」

雛苺「真紅、すなおになるの!」

真紅「…」


トクン トクン…


「…もう」


ジュン「いま、紅茶入れるよ」

真紅「…自分で歩けるわ」

ジュン「みんなを迎えに行ってもらったんだから、これくらいはするよ」

真紅「…ふん、勝手にしなさい」キュッ


(口の端が微妙にもちあがってるですぅ…)

(真紅、わかりやすいのー)
406 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/05/31(日) 18:04:42.81 ID:yKVV6sAo
http://blogs.yahoo.co.jp/simba_240/10273216.html
407 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/31(日) 18:05:21.76 ID:dZBfbtU0
真紅「ごちそうさま」

のり「それじゃ、わたしはお買い物行ってくるね?」

ジュン「行ってらっしゃい」


ガチャン バタン


ジュン「…じゃ水銀燈、上に来て。 体を診るから…」

水銀燈「わかったわ」

雛苺「ヒナも行くの!」

真紅「…仕方ないわね」


トン トン トン

フワ フワ フワ


翠星石「…やーれやれ。 約束だしこき使われてやるかですぅ。 掃除機掃除機っと」

蒼星石「じゃ、僕は洗濯とお風呂場掃除をするよ」

金糸雀「蒼星石、わたしも手伝うかしら!」

蒼星石「え? でも…」

金糸雀「私が勝手にやる分にはノーカンかしら!」

蒼星石「…はいはい」
408 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/31(日) 18:08:19.89 ID:dZBfbtU0
ゴーーーーー


蒼星石「けれど…」ゴシゴシ

金糸雀「何かしら?」

蒼星石「結局、ふたりは真相をあまり話してはくれてないんだよね」

金糸雀「…ええ、そうかしら。 状況としてはあまり変わってはいないかしら」

蒼星石「なのになぜ、なんとなくでも話が落ち着いてしまったんだろう?」

金糸雀「…」ゴーーーーー



「あなたはなぜ、真相を知りたいと思ったかしら?、」



蒼星石「え? そ、それは秘密にされてたら不安じゃないか」

金糸雀「そう、不安だったかしら」


「…目的は『不安をとりのぞきたい』で、『真相を知りたい』のはそのための手段かしら」


蒼星石「…」
409 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/31(日) 18:10:54.13 ID:dZBfbtU0
金糸雀「でも、ふたりは真相をなかなか話してくれない。なら…」

蒼星石「真相がわからなくても、不安さえ解消できればいいって?」

金糸雀「そのとおりかしら!」エッヘン


「みんなの本音をめいっぱい吐き出させて、理屈抜きでお互いの思いを確かめ合えばなんとかなると思ったかしら!」


蒼星石「もし、本音を言わなかったり本音で嫌いあってたりしたらどうするつもりだった?」

金糸雀「それだったら、真相がわかったところでムダかしら。現にあなた、いま不安や不満はあるかしら?」

蒼星石「…まあ、多少はあるけど、気になるほどじゃない」

金糸雀「薔薇乙女の絆を信じていたからこその賭けだったかしら!」オッホン
410 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/31(日) 18:12:07.53 ID:dZBfbtU0
蒼星石「…でも、真相がわからない限り、きっとまた同じことになるよ」

金糸雀「確かにそうかしら。 でも、とりあえず水銀燈のケガが治るまでもてばいいかしら」

蒼星石「…そうだね」シャーーーー

金糸雀「そう、あとはケガさえ治ってくれれば万事めでたしめでたしかしら!」

蒼星石「…」


(雛苺「おケガ、治るの?」)


金糸雀「…」



(ジュン「ヒナ、君からはなにかある?」)

(雛苺「…」)

(水銀燈「…雛苺?」)

(雛苺「…水銀燈」)

(水銀燈「なあに?」)



(雛苺「体、大丈夫なの?」)
411 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/31(日) 18:13:14.68 ID:dZBfbtU0
(水銀燈「え? …大丈夫よ、今は別にそれほど痛くないわ」)

(雛苺「…ほんと?」)

(水銀燈「ほんとうよ?」)

(雛苺「ジュン… 水銀燈のおケガ、治るの?」)

(ジュン「…もちろん、治るよ」)

(雛苺「ほんとに?」)

(ジュン「ああ。 絶対治る」)

(雛苺「…約束よ、水銀燈、ジュン。 ぜったい、ぜったいに…」)

(水銀燈「大丈夫。 …大丈夫よ」)

(ジュン「ああ、約束だ。 かならず治してみせる」)

(雛苺「…」)



(「ありがとう… お願いね…」)




金糸雀「…」
412 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/31(日) 18:15:35.43 ID:dZBfbtU0
蒼星石「…ねえ、金糸雀」

金糸雀「…なにかしら?」

蒼星石「もし、だよ。 もしも…」

金糸雀「…」 

蒼星石「水銀燈の体が…」



「治らなかっ…」


「わーーーーー!!」



蒼星石「か、金糸雀?!」

金糸雀「わーわー!! 聞こえないかしらー!!」

蒼星石「…君は…」

金糸雀「絶対治る! ぜーっっっったい治るかしら! ふたりを信じるかしら!!」

蒼星石「…そうだね」

金糸雀「きっと、きっとめでたしめでたしで終わるはずかしら!」

蒼星石「楽してズルしていただき、でしょ?」シャーーーー…

キュッ

金糸雀「わ、わたしの決めゼリフをとらないでほしいかしらー!」
413 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/31(日) 18:16:48.24 ID:dZBfbtU0
蒼星石「こっちは終わったよ。あとはまかせて」

金糸雀「え? こっちはまだ途中かしら?」

蒼星石「水銀燈のところに行ってあげなよ。 金糸雀…」


「姉さん」


金糸雀「…」ポカーン

蒼星石「ど、どうしたの?」

金糸雀「…いま、なんて言ったのかしら???」

蒼星石「水銀燈のところに行ってって」

金糸雀「そっ、その後かしら…」

蒼星石「…」

金糸雀「きっ、聞き違いじゃなかったら…」

蒼星石「…金糸雀姉さん」ポソッ

金糸雀「!!」

蒼星石「…どうしたの?」

金糸雀「…」ポワーン


(金糸雀姉さん)(金糸雀姉さん)(金糸雀姉さん)


金糸雀「(のっ、脳内でリピートが止まらないかしら…)」ポワポワ

蒼星石「(まったく、もう。 …でも、今回は認めざるをえないよ)」



(君が、ローゼンメイデン第2ドールだっていうことを…)
414 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/31(日) 18:18:05.17 ID:dZBfbtU0
ジュン「…痛まない?」キュッ キュッ

水銀燈「…ええ、だいぶ楽になったわ」

ガチャ

金糸雀「おっまたっせかっしらー♪」

雛苺「あ、カナなのー!」

真紅「…騒がしいわね」

ジュン「どうしたんだい? そんなに笑って…」

金糸雀「うふふ〜 なんでもないかしら〜」クネクネ

水銀燈「来たわね。 …じゃ、ここに座りなさい」

金糸雀「…大丈夫かしら?」

水銀燈「平気よ。 約束したでしょう?」

金糸雀「うふふ、じゃあ遠慮なく、お願いするかしら♪」チョコン



(水銀燈「金糸雀。…あなたを試すようなまねをして、ごめんなさい」)
415 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/31(日) 18:21:00.40 ID:dZBfbtU0
(金糸雀「気にしないでほしいかしら… いつものことかしら」)

(水銀燈「なにか、お詫びをさせてちょうだい」)

(金糸雀「…へっ?!」)

(水銀燈「…わたしは、あなたの覚悟を汚してしまったのだから」)

(金糸雀「…そ、それじゃ…」)




(水銀燈「…そんなことでいいの?」)



金糸雀「(言ってみるものかしら…♪)」

シュル シュル シュル

雛苺「…ヒナもやってほしいのー」

真紅「あなたはこのあいだやってもらってたでしょう?」

雛苺「真紅だって昨日やってもらってたくせに、なんでカナの次にならんでるの?」

真紅「…手の届かないところに寝ぐせができちゃったのよ」

ジュン「…」クスクス


ビシッ!!


ジュン「わっつ!?」
416 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/31(日) 18:24:05.44 ID:dZBfbtU0
真紅「…ふん」

ジュン「寝ぐせじゃなくて、手くせ…いや髪くせが悪いよ…」

金糸雀「ふふふ…」


シュル シュル シュル


金糸雀「(水銀燈…)」


シュル シュル シュル…


(みんなには… 言えなかったことがある)


(あの晩… 添い寝してもらったあの晩。 あなた…) 


(ずっとわたしの背中をなでていてくれてた…)


シュル シュル シュル


(眠りながら、なでていてくれたの? それとも…)




(眠っていなかったの…?)


417 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/31(日) 18:25:59.45 ID:dZBfbtU0
(あの晩だけ? それとも… それとも…) 


(もしかしたら…)



水銀燈「終わったわよ?」

金糸雀「…」

水銀燈「…どうしたの?」

金糸雀「なっ… なんでもないかしらっ!」



(ダメよカナ、信じるの! 水銀燈のことも…ジュンのことも!)


(わたしは、いっつも笑顔でお気楽な『金糸雀』でいなきゃダメ!)


金糸雀「そ、それじゃみんなで休憩するかしら! お茶の準備をするかしら!」


トテテテテ


水銀燈「走ったら、危ないわよ!」
418 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 [saga]:2009/05/31(日) 18:29:44.10 ID:dZBfbtU0
トテテテテ


(きっと、きっと大丈夫! みんながいるから…きっと!)


トントントントン


(そう、目的と手段を取り違えないで… 目的にとらわれないで、手段にこだわらないで)


トントントントン


(自分の気持ちに正直に、できるだけ楽もして、できるならズルもして…)


「アリスゲームもこの策士金糸雀が、きっとめでたしめでたしで終わらせてみせるっ…!」



ツルッ



「かーーーーしーーーーらーーーー?!」



ゴロゴロゴロ ズッテン



水銀燈「…まったくもう、あの子ったら」




○水銀燈がドールたちの『母』になるようです【介護編】 完

これにて第1部を終了します。ご観覧ありがとうございました。
準備が出来次第第2部にとりかかります。
支援してくれた人たちに感謝します。よかったら次回もまたお付き合いください。
419 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/05/31(日) 18:31:45.80 ID:2xZ0m/Qo
乙です!
420 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/05/31(日) 18:32:23.80 ID:vAW9Xwoo
おっつ
421 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [saga]:2009/05/31(日) 18:38:43.94 ID:sNEAASY0
乙でした
第2部楽しみに待ってます。
422 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv :2009/05/31(日) 19:38:04.58 ID:5UkDVtso
乙です
423 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/05/31(日) 20:26:35.42 ID:C3nwdgAO
乙です!

楽しみに待ってるよ!
424 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/05/31(日) 20:29:46.24 ID:Veqn0pAo
おつ!
425 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/05/31(日) 23:08:36.76 ID:3d0wkCko
おつつ
楽しみにしてるかしらー
426 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/06/02(火) 07:11:28.30 ID:9KqNQew0
>>419-425
乙どうもっす〜
再開は明日夜に出来れば。
427 : [saga]:2009/06/02(火) 19:26:40.17 ID:wAavQaQ0
また予定が変わったので今から投下。あてにならなくてすみません。





銀ちゃんに幸あらんことを。
428 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/02(火) 19:29:39.54 ID:wAavQaQ0
【ジュンの家 深夜】


ジュン「…」


カリ カリ カリ


水銀燈「…」


…シュッ シュッ


ジュン「…」


カリ カリ カリ…


水銀燈「…」


シュッ シュッ シュッ…


「…ジュン」


「…」…カリ カリ





「…もう、いいのよ」
429 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/02(火) 19:32:43.39 ID:wAavQaQ0
「…」シュッ シュッ…



「もういいの。 …わたし、平気よ。 気にならないから…」



「…ごめん」



カリ カリ カリ…



「あんなにもきれいだった、きみの体を…」



シュッ シュッ シュッ…



「きみのお父さんが魂をこめて創った、きみの体を…」


「…」


「こんなにしてしまった…」


カリ カリ シュッ シュッ…




「ぼくが未熟なせいで… 無力なせいで…」
430 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/02(火) 19:35:21.54 ID:wAavQaQ0
「…あなたのせいじゃない」


グ グググ…


「わたしが…」


…カタ カタカタ


「わたしが…黙っていたから…」



「ごめんなさい…」



「…ごめん」



…ポロッ



「ぼくが… ぼくが…」


「わたしが…」


ポロ ポロポロ…




真紅「…」



(わたし… ああ、わたし…)



(とりかえしのつかないことを…)
431 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/02(火) 19:38:20.81 ID:wAavQaQ0
【ジュンの家 その日の昼間】


雛苺「…」

真紅「…」


トン トン トン


ガチャリ 


真紅「水銀燈…」

雛苺「…」


「…」


「水銀燈?」



「…起きてるわ」


グ …ググ


真紅「お茶を、入れてきたわ」

水銀燈「…ありがとう」


…カク カク  カク



雛苺「…水銀燈…」
432 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/02(火) 19:40:01.68 ID:wAavQaQ0
水銀燈「…ジュンは?」

真紅「居間のソファで、横になってる」

水銀燈「そう…」ググ グ


…ギシッ


水銀燈「このところ、無理し通しだったからね…」

真紅「(無理してるのは、どっちなのよ…!)」

雛苺「水銀燈…」

水銀燈「金糸雀は? …翠星石に、蒼星石は?」

真紅「いま、nのフィールドにいるわ。 …あなたを治すための、手がかりを探してくれてる」

水銀燈「そう…」



ジュン「…」


ゴロン




(あれから一週間…)
433 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/02(火) 19:41:38.87 ID:wAavQaQ0
(またみんなが来てくれるようになって、騒がしくなったけどだいぶ楽にはなった)



(けれど… 肝心の水銀燈は、みるみるうちに衰弱していった)



(めぐにも何度か足を運んでもらって、生命を吹きこんでもらった… 昨日も…)


…ゴロン


(けれど、そのときは少しだけ回復したように見えても、すぐ弱っていってしまう)



(そして、その間隔もどんどん短くなってきている…)



(そしてみんなも…疲れてきてる…)



(ぼくも…)



(…)




…ゴロン
434 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/02(火) 19:43:58.76 ID:wAavQaQ0
【nのフィールド】


ヒューーーー


翠星石「…行けども行けども、岩と崖ばかり…」

蒼星石「あきらめないで探そう。もしかしたら、手がかりだけでも見つかるかもしれない」

金糸雀「…」


ヒューーーー…


翠星石「…一休みしませんか?」

蒼星石「…そうだね、朝から探しづめだし…」


金糸雀「…」


ストン


翠星石「あてもなく探してみましたけど… ほんとにいやがるですか?」

金糸雀「わからないかしら」 


「…でも、じっとしてもいられないかしら」


蒼星石「そうだね… なんとか、頑張ってみよう」



「槐を見つけられれば、なんとかなるかもしれないから」
435 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/02(火) 19:47:12.61 ID:wAavQaQ0
翠星石「でも…生きてるかどうかもわからないですよ?」

蒼星石「…」

翠星石「あのとき、薔薇水晶といっしょにいなくなってから…」

金糸雀「…」

翠星石「それに、見つかったところで協力してくれるかどうかもわからないですよ?」

金糸雀「…可能性があるなら、すべて当たってみるかしら。 あとで後悔しないためにも…」

蒼星石「しっ!」


ガバッ!


金糸雀「(むぐっ?!)」

翠星石「なっ、何事…!?」



「(あっ、あれは!!)」



…ザワザワザワザワザワ…



蒼星石「(スナークの群れ…!)」


…ザワザワザワザワザワ…


翠星石「(あ… あんな大きな群れ、始めて見たです…!)」

金糸雀「(…こちらに気づいてはいないみたいかしら…)」

蒼星石「(息を潜めて、やりすごそう…)」



…ザワザワザワザワザワ…
436 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/02(火) 19:49:25.06 ID:wAavQaQ0
蒼星石「(…)」



…ザワザワザワザワ…



翠星石「(出るはずないのに…)」



…ザワ…ザワ…



金糸雀「(トイレに行きたくなってきたかしら…)」



……ザワ……



蒼星石「…行ったみたいだね」
437 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/02(火) 19:51:58.63 ID:wAavQaQ0
金糸雀「なんて大きな群れ… めったに見ないブージャムまで混じっていたかしら」

翠星石「気づかれたら、ヤバかったですぅ…」

蒼星石「…引き返そう。 あんな群れに囲まれたら、ひとたまりもない」

翠星石「そうですね…」


(『アレ』を使わないと、ヤバいかもです…)


蒼星石「次に来るときは、もっと大勢で… 十分準備を整えておこう」

金糸雀「…」



「水銀燈…」



ヒューーーー…
438 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/02(火) 19:54:43.19 ID:wAavQaQ0
【ジュンの家】


ジュン「…」


(少し… 休まなきゃ)


ゴロン


(でも… 眠れない…)


ブゥーーーン…


翠星石「…ただいまですぅ」

ジュン「お帰り。 …どうだった?」

蒼星石「…見つからなかった」

金糸雀「申し訳ないかしら…」

ジュン「君らがあやまることじゃないよ。 …僕が」…ギュッ


「僕にもっと、知識があれば… 技術があれば…」


金糸雀「あなたこそ、それは気にすることじゃないかしら」

蒼星石「僕らにだってわからないんだ、仕方ないよ」

翠星石「…チビ人間にしては、よくがんばってると思いますよ(ほんとうに…)」


(ロクに寝もしないで…)


ジュン「…真紅たちが、水銀燈を診てくれてる」


ガチャン トン トン トン
439 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/02(火) 19:56:56.56 ID:wAavQaQ0
【ジュンの家 2階】


ガチャリ 

ジュン「みんなが、帰ってきたよ」

真紅「お帰り、みんな」

雛苺「お帰りなさい…」


金糸雀「…ありがとうみんな。でも、収穫はなかったかしら…」


水銀燈「…いつも、悪いわね」

翠星石「…お礼なんて、らしくねーですよ」

蒼星石「真紅たちも、休んでよ。 交代するから…」

真紅「あなたたちだって、疲れてるでしょう?」

金糸雀「…へっちゃらかしら」

雛苺「ヒナだって、へっちゃらなの」

ジュン「じゃ、みんなで休みな。 ボクが水銀燈をみるから」

真紅「…ダメよ、あなたが一番疲れてるはず」

ジュン「少し休んだから大丈夫。さ、みんな…」



…ミシッ
440 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/02(火) 19:58:05.74 ID:wAavQaQ0
「…ぐ…」


真紅「…水銀燈?」


ミシ…


蒼星石「水銀燈?!」


「う…ぐっ…」


ジュン「水銀燈!!」


「だ… 大丈夫、気にしないで… ぐ、ううっ…」ミシ… ミシ…


真紅「…めぐを呼んでくるわ!」

ジュン「ま、待つんだ!」

金糸雀「め、めぐは昨日…!」




(ジュン「…大丈夫かい」)

(めぐ「…平気よ」フラ フラ…)
441 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/02(火) 19:59:59.69 ID:wAavQaQ0
(ジュン「…ごめん」)

(めぐ「大丈夫だってば… 気にしないで」…ヨロッ)

(金糸雀「め、めぐ?!」)

(めぐ「…平気。じゃ、明後日ね」)

(ジュン「…」)

(めぐ「水銀燈の体、ちゃんと調べなくちゃね…」)



ジュン「…だめだ、いまめぐには頼れない…!」

真紅「そんな、じゃあどうすれば!」

ジュン「水銀燈!」ガバッ! 


「水銀燈、聞こえるか?!」


水銀燈「…」ミシ ミシ…

ジュン「ボクの… ボクの生命力を奪うんだ! 君の力で!」

金糸雀「そ、その手があったかしら!」

水銀燈「…」




「だ… め…」
442 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/02(火) 20:03:09.40 ID:wAavQaQ0
ジュン「水銀燈?!」

水銀燈「人から生命力を奪うときも… 契約者の力を使ってしまう… めぐの力は、もう…」

ジュン「…くっ!!」

ミシ… ミシ…

雛苺「水銀燈!!」

ジュン「…こうなったら!」グッ


「いちかばちか!」


翠星石「ジュ、ジュン?!」

蒼星石「ジュン君…何を!?」

ジュン「水銀燈! 受け取って!!」


チュッ


真紅「?!」

翠星石「へっ?!」


チュウウウウ…


蒼星石「…!!」

金糸雀「んなっ?!(ダイタンかしらーーーー!!!)」



チュウウウウウ…



雛苺「…うわー…」
443 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/02(火) 20:10:55.87 ID:wAavQaQ0
水銀燈「…」

ジュン「…」


…スッ


水銀燈「…」

ジュン「す、水銀燈…?」



真紅「(あ…あなたたち…?!)」



水銀燈「…ありがとう、ジュン」

ジュン「水銀燈…!」

水銀燈「楽に、なったわ…」



真紅「(水銀燈…っ!)」



ジュン「よかった…」



(…ジュンっ!!)



ガチャン バダン!!
444 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/02(火) 20:14:10.28 ID:wAavQaQ0
ジュン「?!」

金糸雀「し、真紅?!」


バタバタバタ…


真紅「(水銀燈…!ジュン…! あなたたち…!)」


バタバタバタ…


(なんで… なんで!!)


バタバタバタ…


「なんでなの…?!」



「あなたたち… なんで? いったい…何が…」



「あなたたちの間に、何があったの…?!」




水銀燈「真紅…」
445 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/02(火) 20:19:10.86 ID:wAavQaQ0
ジュン「みんな! し、真紅を…」

翠星石「寄るな触るなですっ!!」

ジュン「そ、翠星石?!」

翠星石「はっ、ハレンチですっ!! スケベ人間、こっち来るなですぅぅぅっ!!」トテテテテ


カチャリ パタン 


ジュン「翠星石!」


シュルルルル…ガッチャーン!!


蒼星石「す、翠星石っ!」 


「…」チラッ


ジュン「そ、蒼星石?」


蒼星石「…っ!」カチャリ パタン シュルルルル…



ガッチャーン!!


金糸雀「…お、おじゃまでしたかしら…」ポワポワ

雛苺「…ヒナも…」


ブゥーーーーン…


ジュン「…みんな…」

水銀燈「…」
446 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/02(火) 20:27:38.20 ID:wAavQaQ0
【その日の夕】


ジュン「…」

のり「…」



水銀燈「…」コク

真紅「…」モム モム



のり「テ、テレビ観ようよ?」



真紅「…別にいい」モム モム

水銀燈「…」コクン



のり「ぎ、銀ちゃん。体だいじょうぶ?」



水銀燈「…ええ」コクン

真紅「…」




のり「(い、いったいなんなの? この重たい雰囲気は…??)」
447 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/02(火) 20:34:53.25 ID:wAavQaQ0
ジュン「…真紅」


真紅「…」


ジュン「あれは… 別に、気にするようなことじゃない」


真紅「…」


ジュン「お前が怒るようなことは、何も…」


ビュッ!


ジュン「?!」


ガッシャ-ン!!


のり「ひっ?!」


真紅「何も、ですって…?!」




「じゃあいったい、なんだっていうの?!」



水銀燈「…」
448 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/02(火) 20:42:37.42 ID:wAavQaQ0
真紅「水銀燈、あなたも何か言ったらどう?!」

水銀燈「…」

のり「し、真紅ちゃん、おちついて…!」オロオロ

ジュン「…真紅!」

真紅「『人間と心を通わせるな』って言ってたでしょう?!」バァン!! 


「『別れが辛くなるから』って言ってたでしょう?!」


水銀燈「…」

真紅「契約者さえ『糧』といってはばからなかったあなたがなぜ… なぜ…」



「なぜ、ジュンとあんなことをしたの!?」



のり「し、真紅ちゃん…」ビクビク
449 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/02(火) 20:50:17.70 ID:wAavQaQ0
ジュン「だから、あれはそういうことじゃない!」

真紅「あなたは黙ってて!」


バシィッ! 


ジュン「ぐっ?!」

真紅「なにもしゃべらないで!!」

水銀燈「…真紅!」

真紅「あなたは…なぜいつもそうなの?!(…え?)」



(…『いつも』?)



水銀燈「…」

真紅「なぜあなたは、いつも、いつも…」



(え? 『いつも』? い、いつもって…いつ?)



真紅「なぜあなたは…なぜあなたは!」




「いつもいつも、わたしの大事なひとを奪っていってしまうの?!」
450 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/02(火) 20:58:12.68 ID:wAavQaQ0
(わ、私… 何を言っているの?!)


「ジュンのことも…」


(ジュ、ジュンが大事なひと?! そんな…)


「お父様のことも!!」


(お、お父様って…?! どういうこと?! わたし…)


「あなたに… あなたなんかに…!!」


(ああ、でも、でも… 止まらないっ…!)


「壊れかけのくせに… 動けないくせに!!」


(激情があふれだす… と、止められない!)
 

「なんで、なんでなの?! この…」


(だ、だめっ! それだけは言っちゃだめ!!)



「このジャンク!!」



バシィッ!



真紅「あうっ?!」
451 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/02(火) 21:03:57.68 ID:wAavQaQ0
ジュン「?!」

水銀燈「な…!」

真紅「…あ…あなた…」



「真紅ちゃん…!」



真紅「の、のり…!?」



のり「真紅ちゃん!!」…ジワッ



「銀ちゃんにあやまりなさい!!!」



真紅「な、なぜ!? なんで…!」

のり「理由なんていいから、いますぐあやまって!!」…ポロッ


「銀ちゃんはね、銀ちゃんはね…」 


真紅「…の、のり…?」


「あなたたちのために…」



「あなたたちのためにっ!!」



ポロポロポロ…
452 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/02(火) 21:07:51.40 ID:wAavQaQ0
ジュン「の、のり… 姉さん…」

水銀燈「…のり…」


(…お姉さま…)


真紅「ば… ばっ…」



「…ばかぁっ!!」


ガシャーンッ!!


「のりのばか! ジュンのばか! 水銀燈のばかぁっ!」


ガタガタガダッ!!


「みんな…みんな… 嫌い!」 



「だいっ嫌い!!!」



トタタタタタタ…



水銀燈「真紅…」





(ごめんなさい…)
453 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/02(火) 21:15:59.96 ID:wAavQaQ0
のり「…銀ちゃん…」

水銀燈「…」

のり「ごめんなさい… わたし… わたし…」

水銀燈「あの子を…」


「あの子を責めないであげて…」


ジュン「…」

水銀燈「今なら… あの子の想いがよくわかる…」



「私はいつもいつも… お父様に手をかけさせていた…」
454 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/02(火) 21:24:56.75 ID:wAavQaQ0
ジュン「水銀燈…」

水銀燈「『水銀燈』本体も…『試作品』のわたしも…」

のり「銀ちゃん…」

水銀燈「そして今も… あの子から、あなたを取り上げてしまっている…」

ジュン「…」

水銀燈「あなただけじゃない… わたしは、あの子たちから、たくさんのものを奪い取って…」

ジュン「…水銀燈」


キュッ


水銀燈「あ…」


「自分を責めないで」


のり「そうよ、銀ちゃん… あなたは、よく頑張ってる…」

ジュン「いまは、自分の体のことだけ考えて。…元気でさえいれば、いつか仲直りできる」

水銀燈「…」


「…そうね、わたしは…」


(柴崎「お前さんが、ほんとうに罰を受けたいとおもうなら、生き延びることじゃ」)


「わたしは… 生きて償わなければ…」



…ミシッ
455 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/02(火) 21:28:29.14 ID:wAavQaQ0
水銀燈「…ぐっ?!」


…ミシミシ


のり「銀ちゃん?!」

ジュン「水銀燈!?」

水銀燈「ぐ…がぁ…っ!?」


…メリッ!


ジュン「む…胸に亀裂が!」

のり「いやぁっ! 銀ちゃんっ!!」

ジュン「水銀燈!」チュッ


チュウウウウウ…


水銀燈「(ぐあ…あああ!!)」



メリメリメリ…!
456 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/02(火) 21:33:35.12 ID:wAavQaQ0
ジュン「だ、だめだ! こうなったら…」サスサス

水銀燈「(! だ、だめっ!!)」

ジュン「一時的に機能を止めるしか…!」

水銀燈「(そ、それだけは!)」



(いま、機能を止められてしまったら…!!)



カチリ



水銀燈「あ…」カクン

ジュン「…な、なんとか…」


…ビキッ


ジュン「…え?」


バキッ…! ビシビシッ!!


ジュン「ああ…ああああ!!」


ビキビキビキビキビキィッ!!




ジュン「う、うわあああああっ!?」

のり「ぎ、銀ちゃんが…」 





「コナゴナになっちゃうううううっ!」
457 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/02(火) 21:42:35.64 ID:wAavQaQ0
【ジュンの家 深夜】


…カリ カリ シュッ シュッ


水銀燈「…ジュン。 もう、休んで…」

ジュン「…」カリカリカリ

水銀燈「傷は、とりあえずふさいでくれたんだから…」

ジュン「…」シュッ シュッ シュッ



(あれから、ほうぼうに電話をかけて… みんなを集めて… 真夜中に、めぐの病室に飛びこんだ)


(めぐは、崩壊しかけていた水銀燈を見ると半狂乱になって… 生命力を注いで…)



(一時人事不省に陥って… 今は集中治療室にいる…)



ジュン「…君をこんなにしてしまったのは、ボクの責任なんだ…」

水銀燈「…」

ジュン「ボクがもっと早く気づいてあげていれば… 君は最近、寝つけなかったんじゃない」

水銀燈「…」



「まったく、眠っていなかったんだろう…?」
458 : [sage]:2009/06/02(火) 21:43:22.91 ID:wAavQaQ0
今日はここまで。続きは明日。
459 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/06/02(火) 21:44:27.12 ID:ZeZPsLEo
おっつ
460 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/06/02(火) 21:44:33.07 ID:86cbOiso
乙っすた〜
461 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/06/02(火) 21:48:48.25 ID:7QGJ0WAo
おつ!
462 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv :2009/06/02(火) 21:49:27.91 ID:t2QEljIo
乙です
タイトルが…
463 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv :2009/06/02(火) 22:37:30.33 ID:U2iiUw.o
おつつ
悲しいタイトルだ
464 : [saga]:2009/06/03(水) 22:35:11.67 ID:t4kFE8g0
>>459-460
おつどもっす。

>>462-463
銀ちゃんに幸せにはなってほしいとだけ。


再開します〜
465 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/03(水) 22:39:18.85 ID:t4kFE8g0
水銀燈「…」


…コクン


ジュン「…やっぱり…」



「ああ、ボクは… ボクは…」



ブゥーーーン…



金糸雀「…おじゃまするかしら」

ジュン「カナ…」

トテ トテ トテ

金糸雀「水銀燈… ずいぶん、きれいになったかしら」

水銀燈「…ジュンが、頑張ってくれてるおかげよ」

ジュン「…」



(金糸雀「水銀燈…」)

(翠星石「やいっ! このバカ人間!!」)

(蒼星石「す、翠星石!」)

(翠星石「…これは、これはいったいどういうことですかっ?!」)
466 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/03(水) 22:42:30.18 ID:t4kFE8g0
(ジュン「…」)

(翠星石「この…この、全身つぎはぎ包帯ぐるぐる、フランケンのミイラ男みたいなのが水銀燈だって言うんですか?!」)

(ジュン「…ごめん」)

(翠星石「ごめんじゃねーですっ!! あの… あの水銀燈が…!」ジワッ)

(ジュン「…」)

(翠星石「こんなになるなんて…」ポロポロ)



(ジュン「…なんとかする、絶対」)



水銀燈「…あれからずっと、ジュンはわたしの傷跡を埋めたパテを磨き、色を塗ってくれていたのよ」

金糸雀「あれから4時間近く経ってるかしら…」

ジュン「あと半分。どうってことないよ」

金糸雀「ジュン…」
467 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/03(水) 22:47:20.06 ID:t4kFE8g0
ジュン「真紅は見つかった?」

金糸雀「…いいえ」

ジュン「そうか…」



真紅「(…)」



金糸雀「…ジュン」

ジュン「なに?」

金糸雀「水銀燈が、眠っていないって…」

ジュン「…聞いていたのか」

水銀燈「…」

金糸雀「やっぱり、そうだったの?」

水銀燈「気づいていたのね…」

金糸雀「…こないだ、一緒に寝てもらったときに…」

ジュン「…」


「…君にだけは、話しておくよ」
468 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/03(水) 22:50:34.79 ID:t4kFE8g0
金糸雀「…わたしだけに?」

ジュン「うん… 今の水銀燈の状態を」 

金糸雀「…」

ジュン「他のみんなに話すかどうかは、君にまかせる」

金糸雀「…どんなことでも、覚悟はできてるかしら」



真紅「(…)」



金糸雀「水銀燈の体が、崩壊しそうなんだって言われても…」

ジュン「『崩壊しそう』なんじゃない」

金糸雀「え?」

水銀燈「…」

金糸雀「ど、どういうこと…」

ジュン「…」





「崩壊『している』んだ」
469 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/03(水) 22:54:02.16 ID:t4kFE8g0
金糸雀「…え?」



水銀燈「…」



ジュン「水銀燈の体は、すでにバラバラになっているんだ」

金糸雀「…!!」

ジュン「いま彼女は、結晶の力と自分の意思で自分の体をつなぎとめて維持している」



真紅「(な…!)」



ジュン「上半身と下半身をつなぎとめていたように…」

金糸雀「そ… そんな!! 水銀燈… ウソでしょう?!」



水銀燈「…」



ジュン「だからずっと一睡もしていないはず… たぶん、ネジがとまったり結晶を抜いたりしたらその瞬間に崩壊するだろう」

金糸雀「そんな… そんな… なんで、そんなことに…」

ジュン「…」

金糸雀「そ、そうだ!! ジュン!!」ガバッ!

ジュン「か、カナ?」

金糸雀「名案があるかしら!」



「わたしのローザミスティカを抜き取って!!」
470 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/03(水) 22:56:26.55 ID:t4kFE8g0
ジュン「…」

金糸雀「そして水銀燈に埋めこんで、パワー倍増かしら!!」

水銀燈「…」

金糸雀「わっ、わたしのことなんか気にしないでいいかしら! 恥ずかしながら抜かれ慣れしてるかしら!!」

ジュン「…違うんだ」



「ダメなんだよ…」


金糸雀「ど、どういうことかしら?!」

ジュン「水銀燈、いい?」

水銀燈「…ええ」


…スルスルスル


金糸雀「む、胸を?! …なっ?!」

真紅「(?!)」



金糸雀「これは… この傷は…?!」



ジュン「…胸の痛みの正体がわかったんだ」
471 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/03(水) 22:59:38.61 ID:t4kFE8g0
真紅「(胸にまるで… 蜘蛛の巣のようなヒビが…)」



ジュン「…原因はわからないんだけど」



「結晶が、肥大化しているんだ」



金糸雀「…い、いったい…」

ジュン「水銀燈の結晶は、いま胸の中の空洞を満たしつくし、なお大きくなっている」

水銀燈「…」

ジュン「…このままだと胸を突き破りかねないほどに」

金糸雀「…な…」

ジュン「だから君の結晶をとりこんだら、たぶんその負荷に耐えられずに崩壊する…」

金糸雀「そんな…」

ジュン「…ローザミスティカを全部集めた状態に近いのかもしれない」

金糸雀「…そ、それって…」



「結晶を抜いても… 入れても… そのままにしても、ダメだってこと…?!」



ジュン「…」
472 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/03(水) 23:03:36.50 ID:t4kFE8g0
水銀燈「…」

金糸雀「ああ… あああああ!!」

ジュン「金糸雀…」

金糸雀「水銀燈… 水銀燈…!」

水銀燈「…」ナデ ナデ

金糸雀「もう… もうわたしたちにはどうにもできないの?!」

ジュン「…」



「どうにかできそうな子が、ひとりだけいる」



金糸雀「…えっ?!」

ジュン「…その子を君たちに探してほしいんだ」

金糸雀「だ、誰かしら?! 槐のこと…?!」

ジュン「違う」

水銀燈「…」



「雪華綺晶だ」



金糸雀「!!」

真紅「(…なっ?!)」
473 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/03(水) 23:08:39.98 ID:t4kFE8g0
ジュン「…彼女は、水銀燈を救える手立てを知っているはずだ」

金糸雀「…」グッ


グググ…


金糸雀「ジュン、水銀燈…」


「どういうことなのか、そろそろすべてを教えてはもらえないかしら」


ジュン「…」

金糸雀「雛苺を、蒼星石を喰らったあの子を?」

水銀燈「…」



「わたしたち姉妹をバラバラにしたあの子を何も言わずに探せと…?」



ジュン「…」

金糸雀「…」

水銀燈「…」




「…お願い」




「…」




「わかったかしら」
474 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/03(水) 23:11:51.71 ID:t4kFE8g0
ジュン「金糸雀…」

水銀燈「…ごめんなさい」

金糸雀「でも…さすがに、あの子たちに話すのは無理かしら」

ジュン「…だな」

金糸雀「そして…」



「わたしも、これが最後かしら」



ジュン「…」

水銀燈「…」



「なにも知らされず、ただ言われるままに動くのは… もう限界かしら…」




水銀燈「あなた…」

ジュン「…ごめん」

金糸雀「…」




金糸雀「もういいかしら!」ニコッ
475 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/03(水) 23:14:12.64 ID:t4kFE8g0
「ちょっとだけイジワル言ってやりたかっただけかしら!」


パタパタ 


「雪華綺晶のことは黙っておいて、ひきつづきnのフィールドを捜索するかしら!」


カチャリ


「今日は泊まっていくかしら! ジュン無理しないでね!」


パタン


ジュン「…金糸雀」

水銀燈「あなたも… もう、休んで」

ジュン「…終わらせたら寝るよ」


カリ カリ

シュッ シュッ…




真紅「…」




(雪華綺晶が…)
476 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/03(水) 23:20:39.97 ID:t4kFE8g0
…カチャリ パカッ


金糸雀「…」ゴソゴソ


…パタン カチャリ


金糸雀「…」


(はん、おチビちゃんがいきがっちゃって!)


金糸雀「…」



「眠らなくちゃ…」



(…戦いになったら、わたしを守ろうなんて思わないことね)


「…」


(傷つけて、ごめんなさいとは言えないわね… せめて、きれいにしてあげる…)


「うう…」


(いっぱい、かわいがってもらいなさい。 …さよなら、金糸雀…)


「ううう…  ううっ…」




「水銀燈…っ…」
477 : [sage]:2009/06/03(水) 23:24:05.13 ID:t4kFE8g0
今日はここまで。続きは明日。
478 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/06/03(水) 23:26:53.99 ID:I2iX8rko
おつつ

泣いた
479 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/06/03(水) 23:27:23.80 ID:6tmh/gso

長女と次女はいいな、うんいいな
480 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/06/03(水) 23:28:58.68 ID:/OvHzeYo
おっつ
481 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/06/04(木) 01:42:14.50 ID:RZZwu5o0
乙です。
482 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/06/04(木) 17:32:24.43 ID:SSJZr2Qo
おつ!
483 : [saga]:2009/06/04(木) 18:47:54.40 ID:c97lvNI0
>>478
一泣きどもっす。
この先もっとひどい展開になりますが、どうぞお付き合いください。

>>479
これからこの二人は、長女と次女から新しい関係になろうとしています。
そこらあたりを書いていければ…

>>480-482
乙どもっす。


再開します〜
484 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/04(木) 18:50:58.87 ID:c97lvNI0
【翌朝】
 


チチチ…



水銀燈「…ジュン」

…キュッ キュッ

ジュン「…」

…キュッ キュッ

ジュン「これで、いいと思う。 包帯と胸のギプスは、しばらくつけておいて」

水銀燈「…ありがとう」

ジュン「ご飯、食べてくるよ。 …っと」ヨロ…

フラ…

水銀燈「休んで。 ほんとうに…」

ジュン「…食べたら、眠るよ」フラフラ…


…バタン
485 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/04(木) 18:53:52.40 ID:c97lvNI0
水銀燈「…」


ブゥーーーン…


翠星石「…邪魔するですぅ」

蒼星石「大丈夫?」

水銀燈「いらっしゃい… あら?」



巴「おじゃまします…」

雛苺「…くー…くー…」



水銀燈「あなたまで… 学校は?」

巴「今日は、試験日なんです。 …友達の家に泊まるって、言ってあります」

水銀燈「その子は?」

巴「昨日、ずっと泣いてて… 今朝、やっと寝付きました」

水銀燈「そう… 苦労かけたわね」

巴「いえ…(こんなの、苦労のうちになんかはいらない…)」


(あなたに比べれば…)


蒼星石「…水銀燈、その包帯…」

水銀燈「これ? ジュンが、頑張ってくれたのよ」

翠星石「…あのやろー…」

水銀燈「まったく。 …ほら、よく見なさい」グイッ
486 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/04(木) 18:57:19.04 ID:c97lvNI0
翠星石「ほえ?」

…ハラリ

蒼星石「うわあ… すごい」

水銀燈「触らないと、わからないくらいでしょう? …包帯は、傷を守るために巻いてるだけよ」

…キュッ

翠星石「…」

水銀燈「ジュンは明け方までずっと頑張ってくれたんだから、悪く言わないで」

翠星石「…」



「水銀燈」



水銀燈「なに?」

翠星石「あの… その…」

巴「…」

翠星石「…水銀燈にとって…」



「ジュンはいったい、なんなんですか?」



水銀燈「…」
487 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/04(木) 19:04:14.48 ID:c97lvNI0
巴「…」

水銀燈「…ケガが治ってから、って言ったはずだけど」

翠星石「…わかってるです。 でも…」



「ほんの、ちょっとだけでも…」



蒼星石「翠星石…」

水銀燈「…彼には」



「『ダモクレスの剣』とわたしの備忘録を渡してある」



翠星石「!!」

蒼星石「…!」

巴「…どういうこと?」 

蒼星石「それは… 『ダモクレスの剣』は、お父様の形見じゃないか!」

翠星石「それに、備忘録なんて、わたしたちにだって見せてくれたことないじゃないですか!!」

水銀燈「ええ… あなたたちに、伝えておく」

蒼星石「…なに?」



「わたしに万一があったら、彼を頼りなさい」



蒼星石「…」

巴「あなた…」



翠星石「やっぱり、そうですか…」
488 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/04(木) 19:09:57.55 ID:c97lvNI0
巴「翠星石…」


「…水銀燈に、認められた人間なんですね?」


蒼星石「…」


「何百年ぶりかに、あなたのおめがねにかなった男なんですね?」



「…そして、あいつは… ジュンは…」



「水銀燈の想いに、全力でこたえようとしているんですね…」



巴「あなた…」


「…」


ガバッ!



「うわーーーーー!!」



巴「な?!」

蒼星石「!!」

水銀燈「…あなた!」



「…」



「ふう」コキコキ
489 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/04(木) 19:11:47.94 ID:c97lvNI0
蒼星石「翠星石?」

翠星石「ふう、すーっとしたです! …やい、水銀燈!」

水銀燈「…なに?」

翠星石「チビガキ人間ごときにたぶらかされて、最凶ドールなんて片腹痛いです!」

巴「…」

翠星石「『冷酷非情の最凶ドール』なんて肩書きとっとと返上して…」



「どうぞ幸せになりやがれですぅ!」



水銀燈「…」

巴「翠星石…」

翠星石「さー、部屋掃除でもしましょうかねー!」



水銀燈「…待ちなさい」
490 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/04(木) 19:15:16.76 ID:c97lvNI0
翠星石「…何の用ですか? もう話すことなんかねーですよ」

水銀燈「そんなんじゃないわ。 ほら、そこに座りなさい」

翠星石「…説教なんてごめんですよ」チョコン

水銀燈「ほら、後ろ向いて」

翠星石「へ?」


…シュル シュル シュル


翠星石「…」

水銀燈「こんな頭で家事なんかする気?」


シュル シュル シュル  …キュッ


翠星石「(『あの』水銀燈が、わたしの髪を結ってくれてる…)」


シュル シュル シュル 


(…なるほど、真紅やチビヒナが喜ぶわけです)


シュル シュル シュル  …キュッ


(クセになりそうですね)ニヤニヤ



蒼星石「(…僕も)」

巴「(わたしも)」



(髪の毛のばそうかな…)
491 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/04(木) 19:18:15.02 ID:c97lvNI0
水銀燈「終わったわよ」

蒼星石「よく似合うよ、翠星石」

翠星石「…ふん、礼を言っておきましょうかね」

水銀燈「…」ソーッ


ポソッ


翠星石「ん? 今、何か触ったですか?」

水銀燈「糸くずがついてたのよ。 …今日もお願いね」

翠星石「まかせろですぅ!」トタタタタタ…

水銀燈「ふふふ…」


(くっくっく…)


巴「す、水銀燈?」

水銀燈「それじゃ巴、雛苺はわたしが見るわ」

巴「水銀燈、お願い(…気のせいかな…)」



(今一瞬、なにか寒気が…)
492 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/04(木) 19:19:17.98 ID:c97lvNI0
蒼星石「僕は金糸雀を起こしてくる。一息ついたら、nのフィールドを捜索してくるよ」

巴「わたしは、このまま留守番してますね」

水銀燈「ええ… 蒼星石、ちょっと」

蒼星石「なに?」

水銀燈「…もっとこっちに、そう…」

蒼星石「?」


水銀燈「…伝言を頼まれてちょうだい」ニヤリ


蒼星石「(…ひさしぶりに見る顔だな…)」



トタタタタタ

翠星石「やい、チビにんげ…」

ジュン「ぐー…」

翠星石「…」




(…ご苦労でしたね)ソーッ
493 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/04(木) 19:21:32.21 ID:c97lvNI0
ゴソゴソ


(これくらいは、してやりますか)


「…よいしょ」


モフッ


ジュン「ん…」



(感謝するべきなんでしょうね…)



(…あの行き遅れをもらってやってくれるんですから)



(ちょっとだけ、くやしくてさびしいですが…)



「まあ、いいです! …雑巾がけでもしましょうかね!」



グニッ



「あれ…?」
494 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/04(木) 19:25:19.96 ID:c97lvNI0
水銀燈「…」ポン ポン


(雛苺「水銀燈… いや… いやああああああっ!!」)


水銀燈「…」 ポン ポン


(「いや、いやあ!!! ダメ、死なないでーっ!!」)


雛苺「ん…」

水銀燈「あら、起きたのね」

雛苺「水銀燈…」

水銀燈「昨日は、心配かけたわね…」


「…」ギュッ


水銀燈「ひ、雛苺?」

雛苺「…こわかったの」

水銀燈「…」


「こわい、こわいの… こわかったの…」


水銀燈「…ごめんね。…そうだ、ご本読んであげる」

雛苺「え? …水銀燈が?」

水銀燈「ええ。 …ジュンも読んでくれてたんでしょう?」

雛苺「うん… いいの?」

水銀燈「ほら、何か持ってきてらっしゃい」

雛苺「…じゃ…」


トテトテ
495 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/04(木) 19:27:08.73 ID:c97lvNI0
ゴソゴソ


雛苺「…あれ??」

水銀燈「どうしたの?」

雛苺「あの子がいないの…」

水銀燈「あの子? ああ、あれね…」ニヤリ

雛苺「す、水銀燈???」



「ちょっと借りてるわよぉ」…ニヤー



雛苺「(こ、こわいの… お顔こわい…)」…ビクビク 




(いつもの水銀燈にもどっちゃったの…)
496 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/04(木) 19:30:00.37 ID:c97lvNI0
翠星石「おや… 服の中??」


プニプニ


「なにか、入ってるですか…?」ゴソゴソ


…ズルッ


「…ほへ?」



ズルズルズル



「…」



ホワイトスネークカモーン



「うんぎゃああああああああ!!!」



蒼星石「…翠星石、水銀燈から伝言が…」


「うぎっ! うぎっ! うぎゃあああああああ!!」


蒼星石「いつかプレゼントしてもらった[削除]のお返しだって」


「あのっ、あのっ、最凶呪い人形――――!!!」



雛苺「なんだか騒がしいの…」

水銀燈「あー、スッとした」クスクス
497 : [saga]:2009/06/04(木) 19:31:38.70 ID:c97lvNI0
飯食います。今晩中に再開できればしますが、できなかったらごめんなさい。
498 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/06/04(木) 20:01:41.67 ID:SSJZr2Qo
おつです!
楽しみにしてます
499 : [saga]:2009/06/04(木) 21:33:33.51 ID:c97lvNI0
どもっす。
再開します〜
500 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/04(木) 21:34:58.42 ID:c97lvNI0
ジュン「…」


ウワー!! ハナレロデス―! シロヘビハイエノマモリガミデス―!!

オチツキナヨ、スイセイセキ


ジュン「…なんだ、騒々しい」ムクッ

巴「あ、ジュン君。 おはよう」

ジュン「…巴、来てくれたんだ」

巴「うん。 雛苺もいっしょ」

ジュン「そうか… ヒナ、落ち着いた?」

巴「ええ、いま水銀燈が見てくれてる…」

翠星石「こっ、このチビスケベ人間―!!」

ガバッ!

ジュン「な、なんだ?!」

翠星石「おめーのせいですっ!! 謝罪と賠償を要求するですぅっ!!!」
501 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/04(木) 21:39:56.03 ID:c97lvNI0
ジュン「だからなんだって?!」

翠星石「だからもへちまも…!!」


「…」


ジュン「?」

巴「…翠星石?」

翠星石「まあ、いいです」

ジュン「はあ? いったいなんなんだ…」


(そんなクマさんばっちり、ほっぺたげっそりの顔でいられたら怒れません…)


金糸雀「…ふわあ、なんだかさわがしい…」

ゲシッ!

金糸雀「かぢらっ!?」

翠星石「あー、すっとしたです」
502 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/04(木) 22:02:32.28 ID:c97lvNI0
蒼星石「翠星石っ!」

翠星石「うへぇ、怒られたですぅ…」

金糸雀「な、なにごとかひら…(舌かんじゃったかしら…)」



【ジュンの家 2階】

水銀燈「…『100万年も しなない ねこが いました りっぱなとらねこでした』…」

雛苺「…」

水銀燈「…みんな、これが好きなのね…」

雛苺「うん…かわいそうなネコさんのおはなし」

水銀燈「…」

雛苺「ずーっとずーっと生きて、たくさん死んで、お別れして、ひとりぼっちで死んじゃう…」


「ヒナたちと、いっしょなの…」


水銀燈「…」


ナデ ナデ


雛苺「す、水銀燈?」

水銀燈「…わたしも、そう思っていたことがあったわ」
503 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/04(木) 22:07:55.66 ID:c97lvNI0
ナデ ナデ…


水銀燈「永遠の命を持ってしまったゆえに、ひとところにとどまれない…」


「だれとも心を通わせられない、あわれなネコの話だって…」


雛苺「…」

水銀燈「でも、今は違う」

雛苺「…ちがう??」

水銀燈「ええ。 …これは、あわれなネコの話じゃない」


「幸せなネコの話だって」


雛苺「しあ…わせ? 死んじゃうのよ…?」

水銀燈「この子は…最後に出会った女の子といっぱい愛し合って、ふたりの子供に囲まれて、眠りについたでしょう?」

雛苺「え?」

水銀燈「ほんとうに大事なものを見つけて、手に入れて… 満たされて、旅立っていった」

雛苺「…」

水銀燈「とってもとっても、幸せだったネコのお話…」


ガバッ!!


雛苺「ちがうの!!!」
504 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/04(木) 22:11:24.75 ID:c97lvNI0
水銀燈「ひ、雛苺!?」

雛苺「幸せじゃない、幸せなんかじゃない! …死んじゃうのよ!?」

水銀燈「…え?」


「死んじゃうのよ!? 二度と会えなくなっちゃうのよ?!」


水銀燈「…雛苺?」

雛苺「死んじゃいや… 死んじゃ、ダメなの…」

水銀燈「あなた…」

雛苺「ヒナを置いていかないで…ネコちゃんも…」 



「水銀燈も…」



水銀燈「…」



…ギュッ
505 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/04(木) 22:15:54.01 ID:c97lvNI0
【ジュンの家 1階】


翠星石「…それじゃ、わたしたちはそろそろ出ますね」

ジュン「気をつけて、な」

蒼星石「水銀燈のこと、頼んだよ」

ジュン「…ああ」

金糸雀「ひゅっぱつかひら!」モグモグ

翠星石「食いながらしゃべるなですっ!」

金糸雀「ふわふわ卵焼き入りののクラブハウスサンドが、お口の中でカーニバルかしら…」ウットリ

巴「ふふ、気に入ってもらえたかな?」

蒼星石「…お昼のぶんまで食べないでね」

金糸雀「うう… あとちょっとだけ…」

翠星石「とっとと行くですっ!」ゲシッ!

金糸雀「あひんっ!」



ブゥーーーン…
506 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/04(木) 22:19:05.65 ID:c97lvNI0
【nのフィールド】


ヒューーーーン…


金糸雀「それじゃ、槐と…」

蒼星石「真紅も探さないとね」

金糸雀「真紅は、ここにいるとは限らないけど…」

翠星石「まったくあいつは…」

金糸雀「(…あと…)」


(雪華綺晶も…)


翠星石「まったくもー、あのおこちゃまは…」

蒼星石「…仕方ないよ」

金糸雀「…」

翠星石「あんなに爆発しちまうくらいなら、わたしみたいに小出しに吐き出しとけばよかったんです…」

金糸雀「…」 

翠星石「って、おい金糸雀!」

金糸雀「なっ、なあにかあしらあ?」



翠星石「『アレ』を用意するから、すこし離れてろです!」


507 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/04(木) 22:25:22.64 ID:c97lvNI0
蒼星石「そうだね… 僕も、準備するよ」

翠星石「スィドリーム、頼むですぅ」


チカ… チカ…


金糸雀「…この状況で真紅がいないのは戦力的に痛いかしら…」

蒼星石「うん… だからせめて、万全の準備だけはしておこう。 …レンピカ」


…シュルルル


翠星石「金糸雀。 おめーも、準備だけはしておくです。 …うんしょ」グイ グイ


「昨日みたいなでかい群れにでくわしたら…」


…ブォン!


蒼星石「頼りになるのは、君の力だ」カチカチ…


…シュラン!


金糸雀「…心得てるかしら。 ふたりとも、精霊を…」

蒼星石「うん、頼んだよ」

翠星石「大事に使えです!」

ヒュルルルル…

金糸雀「…水銀燈…ジュン…」


(今はただ、ふたりを信じる) 


(信じるしか、ないから…)



ヒューーーーーン…
508 : [sage]:2009/06/04(木) 22:27:35.67 ID:c97lvNI0
今日はここまで。再開は明日できれば。
509 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/06/04(木) 22:54:23.48 ID:SSJZr2Qo
おつ!
510 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/06/05(金) 00:01:28.44 ID:xiNs5oQo
おっつ
511 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/06/05(金) 01:54:15.76 ID:tqRV4FMo
おつつ
512 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv :2009/06/05(金) 06:35:46.08 ID:OyDavac0
513 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/06/05(金) 12:54:15.53 ID:mFDJMGc0
>>1
乙です!
514 : [saga]:2009/06/05(金) 23:50:08.44 ID:Tsb1GWA0
>>509-513
乙どもっす。再開します〜
515 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/05(金) 23:53:29.72 ID:Tsb1GWA0
【ジュンの家 2階】


雛苺「…すー…すー…」

水銀燈「…」


ポン ポン


雛苺「…くー…」

水銀燈「…」


サス サス

ガチャリ


巴「水銀と… あ」

水銀燈「(いらっしゃい)」ニコ

巴「(…)」

ソーッ

巴「(また、寝ちゃったんですね)」

水銀燈「(…泣き疲れちゃったのよ)」

巴「(泣き疲れた?)」

水銀燈「(ええ…下へ行きましょう)」フワリ


ソーッ パタン


雛苺「…」



「…水銀燈…」
516 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/05(金) 23:54:25.25 ID:Tsb1GWA0
【ジュンの家 1階】


水銀燈「…ふう」

巴「お茶、入れますね」

ジュン「あ、ボクが」

巴「ダメ、座ってて」

ジュン「え…」

巴「徹夜したんでしょう? これくらいはやらせて」

水銀燈「…そうよ、巴に任せなさい」

ジュン「なんだよ、ふたりとも」

水銀燈「自分の顔、鏡で見た?」

ジュン「顔?」

巴「そんな顔して動かれたら、申し訳ないもの。 お願い、やらせて」

ジュン「…わかったよ(…なんだかなあ)」


(息が合ってきたな、このふたり… まるで…)
517 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/05(金) 23:55:31.79 ID:Tsb1GWA0
カチャカチャ …コポコポ


巴「おまたせ、ジュン君…」

ジュン「…」


コックリ コックリ


水銀燈「まったく、もう」

巴「ジュン君?」


ユサユサ


ジュン「ん… あ、いけね」パチクリ

巴「…やっぱり、寝たほうがいいよ」

ジュン「ん… ごめん、そうする。 これ飲んだら…」

水銀燈「上で雛苺が寝てるから、一緒にいてあげて」

ジュン「ああ…」コク コク


カチャリ


ジュン「じゃ、何かあったらすぐ呼んで…」ヨロ…

水銀燈「…頼むわ」

ジュン「お休み…」フラフラ



…バタン
518 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/05(金) 23:57:12.10 ID:Tsb1GWA0
水銀燈「今回は、本当に無理してもらった」

巴「体、大丈夫なんですか?」

水銀燈「…大丈夫よ」

巴「…嘘」

水銀燈「…」

巴「ジュン君から、ちょっとだけ聞きました」

水銀燈「そう…」

巴「…」


「わたし…」


水銀燈「巴?」


「あなたに、なんて言えばいいのかわからない…」


水銀燈「…」


「生きていてほしいけど… 頑張ってほしいけど…」



「あなた… こうしている今も、痛いんでしょう? 苦しいんでしょう…?」





水銀燈「…難しく考えなくてもいいわ」
519 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/05(金) 23:59:07.47 ID:Tsb1GWA0
巴「え?」

水銀燈「思ったままを、言えばいいのよ」

巴「でも… でも…」

水銀燈「構わないわ。 だってわたしだって遠慮しないで言い返すから」

巴「え?」

水銀燈「嫌だと思ったら嫌だと言うし、腹が立ったらそう言うだけ」

巴「…」

水銀燈「だって、あなた、わたしに言ったでしょう?」


「『私と戦って』って」


巴「…はい」

水銀燈「なら、遠慮することはないわ。 戦いはもう、始まってる」

巴「…」





水銀燈「さあ、かかってらっしゃい」ニヤリ

巴「…」グッ


「…がんばって。 生きて、お願い…生きて」
520 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/06(土) 00:00:12.04 ID:xeVAgtc0
水銀燈「気楽に言うわねぇ。ほんとに痛いのよ」

巴「わかってる。 …いえ、わからないけど」

水銀燈「正直すぎるわよ」クスクス

巴「あと、ひといきでしょう?」

水銀燈「…ひといき?」

巴「あなたがおなかを痛めて産んだみんなと、一緒に生きていけるのは」

水銀燈「…そうね。でも…」

巴「みんなを置いていったら、かわいそう過ぎる」

水銀燈「…」




「そこまで言うなら、あなたは何をしてくれるの?」
521 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/06(土) 00:01:32.82 ID:xeVAgtc0
巴「え…」

水銀燈「ジュンは、わたしたちを助けるために、最後の最後までつきあってくれる覚悟を固めてくれた」

巴「…」

水銀燈「そして、いまそれを実行してくれている。 …あなたは、どうする?」

巴「…わ、わたしは」

水銀燈「わたしたちの絆に加えてほしい、って言ってたわね…」

巴「…」

水銀燈「きれいな言葉を並べ立ててみただけ?」 



「…安っぽい同情なんてごめんよ」



巴「…」




「わたし、ジュン君にひどいことをしたことがあるんです…」
522 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/06(土) 00:02:43.60 ID:xeVAgtc0
水銀燈「…」

巴「ジュン君が学校に来なくなってしばらくたったとき…」


(ジュン「あ、柏葉…」)

(友人「…巴、この人知り合い?」)

(巴「…え…」)

(友人「たしか、しばらく学校に来てない人だったよね…」)

(巴「…」)

(ジュン「柏葉?」)

(巴「あ、ジュン君…」)



(「さ、さよなら」)



水銀燈「…ジュンの記憶に残っていたわ」

巴「やっぱり…」



「わたし、もう二度とあんな思いをしたくないんです…」
523 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/06(土) 00:03:39.42 ID:xeVAgtc0
水銀燈「…」

巴「強く、なりたいんです…」

水銀燈「あなたが強くなりたいのは勝手だけど、ジュンやわたしたちには関わりないわ」

巴「…容赦、無いですね」

水銀燈「あなたが望んだことでしょう」

巴「…」



(せめて、ボロボロになるまで叩きのめしてほしい!)



水銀燈「まあ、あなたは無理に戦う必要はないんじゃない?」

巴「…」

水銀燈「普通の女の子でいればいいじゃない」

巴「ジュン君にも、そう言ってましたね」

水銀燈「…ええ」

巴「そのあとジュン君は、戦い抜く覚悟を示して、あなたに認められた」

水銀燈「…そうよ」

巴「…わたしは…」
524 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/06(土) 00:07:24.40 ID:xeVAgtc0
水銀燈「戦うなんて、口だけでも言えるわ」

巴「…わたしは、実力じゃあなたたちやジュン君には絶対かなわない」

水銀燈「そうね」

巴「ジュン君みたいに、みんなを治せるわけでもない」

水銀燈「…」

巴「でも… でも…」


「それでも、助けることはきっとできる」


水銀燈「どうやって?」

巴「わからない… でも、わたし、もう逃げない」

水銀燈「ふふ…それじゃ、確かめさせてもらうわね」

巴「え…」

水銀燈「これからあなたのこと、ずっと見ててあげるわ」

巴「…水銀燈」

水銀燈「逃げ出したら、せせら笑ってやるから覚悟なさい」

巴「…」


「ありがとう」


水銀燈「あなたなんかに心配されるほど、弱っては無いわ。安心して…」



ブゥーーン…
525 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/06(土) 00:09:04.21 ID:xeVAgtc0
水銀燈「あら…?」

巴「…もう、帰ってきたの?」



ゴロンドスンバタン!



巴「なっ!」

水銀燈「?!」



金糸雀「い、一大事かしら!!」

翠星石「ジュン!! ジュンはどこです!」

蒼星石「ジュン君!!」



水銀燈「あ… あなた!」





真紅「う…うぅ…」
526 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/06(土) 00:10:13.49 ID:xeVAgtc0
…クルクル キュッ

ジュン「…とりあえず、これでいいだろう」

蒼星石「よかった…」

雛苺「真紅… よかったの…」

翠星石「…ケガ人が増えやがったですぅ」

巴「いったい、何があったの?」

金糸雀「…大変だったかしら」


【数時間前 nのフィールド】


ザワザワザワザワ…


翠星石「(…な、なんて数のスナークですか…)」

蒼星石「(さっきから、同じ方向に向かって飛んでいってる…!)」

金糸雀「(あっちにあるのは… あ!!)」



ヒューン!
527 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/06(土) 00:14:03.75 ID:xeVAgtc0
翠星石「金糸雀!! 危ないです!!」

金糸雀「スナークたちは、自分の巣に向かって集合しているかしら!」

蒼星石「…え?!」

金糸雀「巣が、何者かに襲撃されているとしたら?!」

翠星石「『何者か』って…ま、まさか!!」


ヒューーーーーン…


【スナークの巣】


ザワザワザワザワザワ


蒼星石「お、大きい…!」

翠星石「前見たときは、ここまで大きくなかったはずなのに…」

金糸雀「スナークたちが、カナたちには目もくれずに巣に飛びこんでいってる! 間違いないかし…」



ドゴォン!!
528 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/06(土) 00:15:33.87 ID:xeVAgtc0
翠星石「ば、爆発?!」

蒼星石「あれは…飛び散ってるのは…!」



「薔薇の花びら!!!」

 

金糸雀「間違いないかしら、真紅はあの中にいるかしら!!!」

蒼星石「…なんて無茶を!!」シュラン!

翠星石「世話が焼けるですぅっ!!」ブォン!

金糸雀「ふたりとも先行して! わたしは…」



「『あの子たち』を呼ぶかしら!」



蒼星石「わかった! …いくよ!」

翠星石「がってんしょーちのすけですっ!!」




ジュン「そうだったんだ…」

水銀燈「なんて無茶を…」




「…真紅」
529 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/06(土) 00:18:40.63 ID:xeVAgtc0
金糸雀「やっとの思いで振り切ってきたかしら…」

翠星石「まったく、世話をかけるです。せめてホーリエくらい寄こせばいいのに」

蒼星石「スナークは、精霊や悪霊を食べてしまう。 …相手が少ないならともかく、囲まれてしまったら危なくて呼べないよ」

巴「…でも、よかった」

ジュン「ああ、なんとか無事で…(あれ?)」

翠星石「…ジュン」

ジュン「…あれ、なんだ…」

巴「ジュン君?!」

ジュン「なんで… なんで…」


「床が… 起き上がって…」


ドタリ


雛苺「ジュン?! いやああっ!!」
530 : [sage]:2009/06/06(土) 00:19:44.56 ID:xeVAgtc0
今日はここまで。再開は…間をおいて日曜日。
531 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/06(土) 00:21:14.75 ID:Pm.GGZMo
>>530
おつー
532 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/06(土) 00:21:23.46 ID:RuBLsDAo
乙ですた〜
533 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/06(土) 00:31:53.83 ID:hqlQQngo
おっつ
534 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/06(土) 00:46:19.45 ID:FXLJgr.o
おつ!
535 : [saga]:2009/06/06(土) 22:15:39.25 ID:nopDL7c0
予定が変わったので今日投下。毎度あてにならなくてすいません。
明日の投下は状況次第です…
536 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/06(土) 22:17:53.21 ID:RuBLsDAo
おお、これは嬉しいぜ

537 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/06(土) 22:18:11.73 ID:nopDL7c0
チチ チチチ


「ん…」


チチチ…


「朝…? !!」


ガバッ!!


「真紅、水銀燈?!」

のり「ジュ、ジュン君!」

ジュン「の…のり…」

のり「よかった… やっと、起きてくれた…」ジワッ

ジュン「…ボ、ボクはいったいどうなってたんだ…?」

のり「真紅ちゃんを治してから、ずっと寝てたの。 …お医者様は、過労だって…」

ジュン「ずっと寝てたって… どれくらい?!」


…ムクリ


翠星石「…三日三晩ですぅ」
538 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/06(土) 22:20:54.97 ID:nopDL7c0
翠星石「ようやく起きやがったですね…」

ジュン「三日?! そんな…!」

のり「みんな泊りがけで、あなたと真紅ちゃん、銀ちゃんの看病をしてくれたの」

翠星石「巴もみつも、おじじもおばばも、学校も会社もお店も休んで交代で来てくれたです…」

ジュン「みんなは… 真紅は?! 水銀燈は!?」

のり「真紅ちゃんは、雛ちゃんと隣のお部屋でまだ寝てる…」

ジュン「水銀燈は?! …水銀燈はどこなんだ!!」



のり「…」

翠星石「…」



「のり、翠星石!!」


ゴソゴソ


「…うっるさい、わねぇ…」



「うわっ?!」



(ボクのベッドの中…?!)
539 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/06(土) 22:23:49.73 ID:nopDL7c0
水銀燈「そんなに騒がなくても…」ムクッ 


「ここにいるわよぉ…」


ジュン「水銀燈! よかった…」


「?!」


水銀燈「どう、したの…?」…グ グググ


…カク カクカク


ジュン「ああ… 君は…! なんで…!!」


水銀燈「おおげさ、ねぇ…」…カク カクカク


ジュン「そんなに…」




「そんなにヒビだらけになるまで!!」
540 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/06(土) 22:25:57.10 ID:nopDL7c0
ジュン「どうしてボクを起こさなかったんだ!!」

水銀燈「だぁってぇ… よく寝てた… みたいだった… し…」カク カク…

ジュン「のり、翠星石!! なぜ、なぜ!!」


のり「…」


ジュン「黙ってないで何か言えよ!!」


翠星石「…」


ジュン「ふたりとも!!」

水銀燈「わたしが、いいって… 言ったのよ…」

ジュン「な、なぜ!!」

水銀燈「だって… たいしたこと、なかったから…」…カク カク




のり「…銀ちゃんは、真紅ちゃんに何かあったらジュン君を起こしてって言ったのに…」

ジュン「え?」

翠星石「自分のときは、暴れてでも起こさせようとしなかったです…」

ジュン「そ…そんな!!」
541 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/06(土) 22:27:56.15 ID:nopDL7c0
ジュン「なんで、なんでそんなことを!!」

水銀燈「うっるさいわねぇ… 男のくせに、ギャーギャーと…」

ジュン「お、お前!」

水銀燈「そこまで元気なら… さっさとわたしを治しなさいよ…」…ギシ

ジュン「こ、この…」


「バカ野郎っ!!!」


翠星石「?!」

のり「ジュン君?!」

ジュン「なんで…なんでお前は… こんなときにまで…!」

のり「ジュン君、落ち着いて!」

ジュン「落ち着いてなんかいられるか!! だって… だって… 水銀燈が…!」




「こんなになってまで… ボクのことを気遣ってるなんて…!!」
542 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/06(土) 22:32:37.04 ID:nopDL7c0
翠星石「ジュン…」

ジュン「今になって悪態つくんなら、なぜ、たたき起こしてくれなかったんだ!」

水銀燈「…ふん」

ジュン「その悪態だって… 自分に気を使わせないためだろう!? ボクをバカにするのもいいかげんにしろ!!」

水銀燈「…くだらないことばっかり… 言ってないで… さっさと…」

ジュン「ああ治すよ! 治せばいいんだろ?!」


ダダダダ…


バダンッ!


水銀燈「…元気に、なった… みたいねぇ…」カク カクカク…

翠星石「まったくこの性悪ドールは…」

水銀燈「妹に… 似たのよ…」クスクス

翠星石「ふつう逆ですっ!(まったく水銀燈ってば…)」



(わたしにまで、気を遣いますかね…)



のり「…」グスン
543 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/06(土) 22:33:50.20 ID:nopDL7c0
ドダダダダ…


蒼星石「おや? 誰だろう…」

金糸雀「…」


ガチャン バダン!

ガシャガシャ ゴソゴソ…


蒼星石「…納戸?」


ソーッ


蒼星石「…あ、起きたんだ」

金糸雀「…」

ジュン「…おはよう」ガチャリ バダン!


ドダダダダ…




蒼星石「…やっぱり、怒ってるね…」

金糸雀「…」
544 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/06(土) 22:35:21.95 ID:nopDL7c0
蒼星石「とりあえず、ご飯できたからみんなを呼ぼう」

金糸雀「…ええ」


トン トン トン


蒼星石「金糸雀」

金糸雀「…」


「話は、すんだはずかしら」


蒼星石「…」

金糸雀「あんなふざけた話を、まだ聞かされるのかしら?」

蒼星石「僕は真剣なんだ」

金糸雀「…それなら、なおのこと許せないかしら」

蒼星石「真剣に考えてくれ。 …姉さん」
545 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/06(土) 22:37:20.93 ID:nopDL7c0
ガチャリ


蒼星石「…ご飯だよ」

のり「ありがとう、蒼星石ちゃん… ジュン君は?」


ジュン「…」シュッ シュッ シュッ…


翠星石「ほっとけですぅ。 こんなバカガキ、相手にするだけ…」

ジュン「ここで食べる」

翠星石「ほへ?」

ジュン「のり、翠星石…」


シュッ シュッ シュッ


「ごめん。 あと…」


シュッ シュッ シュッ


「ありがとう」


シュッ シュッ シュッ…


のり「ジュン君…」

翠星石「…ふんっ(チビ人間め…)」



(なに、そこまで無理してカッコつけてるですか…)
546 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/06(土) 22:38:57.64 ID:nopDL7c0
ジュン「カナも蒼星石も、ごめんよ」

蒼星石「…僕らはいいよ」

金糸雀「あったかーいコンソメスープをふるまってあげるかしら」

ジュン「…楽しみだよ」ニコ

翠星石「(…まったく! おまえが…)」


(おまえが一番つらいかもしれないのに…)


(なぜ、そんなに… 笑うことまでできるですか…?)





のり「ジュン君、ご飯持ってきたよ」

ジュン「ありがとう… のり、学校は?」

のり「今日はもう、休むって連絡しちゃったの」

ジュン「そうか…」

水銀燈「…なら…」グ グググ



「しっかり、休んでおいて… お姉さま…」
547 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/06(土) 22:41:56.75 ID:nopDL7c0
のり「銀ちゃん…」

水銀燈「あなただって… この三日三晩… ほとんど眠っていない…」

ジュン「のり…」

のり「ふふ、大丈夫。 …おかたづけしてくるね」

ジュン「…姉さん、ごめん」

のり「もう、いいの。 …ジュン君こそ、もう無理しないでね」

ジュン「ああ…」


パタン


水銀燈「お姉さまの… 言うとおりよ…」

ジュン「水銀燈…」

水銀燈「別に、気にならないから… あまり綺麗にし過ぎなくていい…」

ジュン「…」

水銀燈「もともと… ジャンクだしね…」クスクス

ジュン「そんなことを言うなよ」

水銀燈「いいじゃなぁい… 別に…」

ジュン「…真紅が傷つくだろ」

水銀燈「…」


(翠星石「真紅が、うなされてるですぅ…」)

(ごめんなさい… ごめんなさい…)

(水銀燈「…」)


「そうね…」
548 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/06(土) 22:43:09.82 ID:nopDL7c0
シャーーーー


のり「…あら、みんな。 ありがとう…」

金糸雀「…お安い御用かしら」

翠星石「これくらい、やらせてほしいですぅ」

蒼星石「のりさんは、ほんとに少し休んでください」

のり「うん… ごめんね…」


フラ フラ …パタン


翠星石「…たいした姉弟ですね」

蒼星石「うん…」

金糸雀「…わたしたちにとって、彼らに出会えたことはなによりの幸運かしら」

蒼星石「…」



「じゃ、僕は帰るね」
549 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/06(土) 22:47:02.81 ID:nopDL7c0
翠星石「そうするです。おじじとおばばを、世話してやってきなさい」

金糸雀「昨日は夜遅くまでいてくれたから…」

蒼星石「ああ。 …姉さん、さっきのこと…」

金糸雀「…」

蒼星石「…考えてくれ」


ブゥーーーン…


翠星石「何か、話でもしたですか?」

金糸雀「…何も」

翠星石「へぇ…(はじめて見るです…)」



(チビカナの、こんなおっかない顔…)



【数十分前】


カチャカチャ シューーーー…


金糸雀「…てまひまかけた、黄金色のコンソメスープ♪」


クルクルクル… チョポポポ


「これなら、疲れも眠気もドッカーンと吹っ飛ぶかしら!」
550 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/06(土) 22:49:22.69 ID:nopDL7c0
蒼星石「ねえ… 金糸雀… 姉さん」

金糸雀「何かしら?」

蒼星石「…こないだ、言いかけたこと。 そろそろ真剣に考えなきゃ…」

金糸雀「???」

蒼星石「水銀燈のことだよ」

金糸雀「え…」

蒼星石「もしも、治らなかったときのこと」

金糸雀「…」

蒼星石「つらいのはわかるけど、考えなくちゃ…」

金糸雀「とにかく、治す。 それ以外何を考えろと?」

蒼星石「…」




「万が一のときのこと」
551 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/06(土) 22:50:38.34 ID:nopDL7c0
金糸雀「…万が一?」

蒼星石「きっと、来ると思うんだ。 突然、その時が来るかもしれないし…」

金糸雀「…」

蒼星石「もう、どうがんばっても治せないっていう時期が来るかもしれない」

金糸雀「…どうしろって、あなたは言うの?」

蒼星石「ぼくには、提案があるんだ」

金糸雀「提案?」

蒼星石「うん…」



「アリスゲームを再開させる」



金糸雀「なっ?! あなた…正気?!」

蒼星石「ああ。 …もし僕が水銀燈の立場だったら、それを願うと思う」
552 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/06(土) 22:53:05.72 ID:nopDL7c0
金糸雀「あなた、なんてことを!!」

蒼星石「いつ来るかわからない破滅におびえたり、2度と戦えない体でみんなの足手まといになるくらいなら…」

金糸雀「落ち着いて! 蒼星石!!」


「あなた… おかしい! おかしくなってる!」


蒼星石「…」

金糸雀「水銀燈はケガ人なのよ? …いえ、明日をも知れない体なのよ!?」

蒼星石「…僕は落ち着いてるよ。 ずっと、ずっと考えてきた上での結論なんだ」

金糸雀「なにをバカな!」 

蒼星石「水銀燈本人に聞いたら、どう答えると思う?」

金糸雀「え…」

蒼星石「僕は、たぶん彼女は賛成すると思うんだけど」

金糸雀「なっ! そ、それは…」




「それは…」
553 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/06(土) 23:01:18.55 ID:nopDL7c0
蒼星石「僕は、彼女にしたいようにしてほしいだけなんだ」

金糸雀「あなたは… あなた自身はどう思っているの?!」

蒼星石「…」

金糸雀「水銀燈に、死んでほしくないって思わないの?!」

蒼星石「思うよ!」

金糸雀「?!」

蒼星石「でも、思ったら、僕がそう願ったなら…」



「水銀燈は絶対死なないとでも言うのかい?!」



金糸雀「…」

蒼星石「…どんなに願ったって、来るときは来るんだ」

金糸雀「それは…」


「なら僕はせめて、水銀燈の望むことを…」


バァン!


金糸雀「わたしは認めない!」

蒼星石「金糸雀…」


「絶対にあきらめない!」


蒼星石「…」




金糸雀「…そう、わたしはあきらめない」

翠星石「? 何か言ったですか?」

金糸雀「いいえ… さあ、掃除でもするかしら!」
554 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/06(土) 23:22:32.41 ID:nopDL7c0
ちょっと中断。しばしお待ちを…
555 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/06(土) 23:29:36.79 ID:SNAEbxso
おおおサプライズ来てる
支援
556 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/06(土) 23:32:51.34 ID:wwNppDco
支援。
再開まっとるよ〜
557 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/06(土) 23:38:49.53 ID:FXLJgr.o
待ってますよ
558 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/06(土) 23:48:30.08 ID:ySg2jj.o
待つですよー
559 : [saga]:2009/06/07(日) 00:09:55.38 ID:M.oK11Y0
>>555-558
支援どうもです〜

>>536
いつもすいません^^:
こりずにつきあってやってください。

再開します〜
560 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/07(日) 00:17:07.07 ID:M.oK11Y0
【ジュンの家 2階】


ジュン「具合は、どうだい?」

水銀燈「まあまあね…」グ…


…カク カクカク…


ジュン「…」


(体の損傷以上に、体力の消耗が激しいんだ…)


水銀燈「真紅は…どう?」

ジュン「傷は問題ないよ。 …消耗して眠ってるだけ。 いずれ目を覚ますと思う」

水銀燈「そう… よかった」

ジュン「ボクも、一休みするよ」

水銀燈「あら…」クスクス

ジュン「…何だよ」 



「やっと… 自分から休むって言ったわね…」クスクス
561 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/07(日) 00:19:14.36 ID:M.oK11Y0
ジュン「もう2度と、あんなことはごめんだよ」

水銀燈「ふふふ… わたしこそ、ごめんよぉ」


「先に死なれでもしたら、目覚めが悪いわぁ…」


ジュン「…気をつけるよ」

水銀燈「ふふ、約束よ…」

ジュン「下に行ってくる」

水銀燈「あの子たちも、休ませてあげて…」

ジュン「ああ…」


トン トン トン…




ジュン「みんな、一休みしなよ…」ガチャ


トテテテテ… ドンッ!


ジュン「わっ?!」

金糸雀「…っ!」


トテテテテテ…
562 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/07(日) 00:22:03.53 ID:M.oK11Y0
ジュン「い、いったいなんだ…?」


ガチャン


ジュン「蒼星石、翠星石?」

翠星石「…蒼星石は帰ったですぅ」

ジュン「翠星石… な?!」


「そのかっこう… どうしたんだ?!」


翠星石「…ちょっとドジっちまったんです」

ジュン「体中、生ゴミだらけなんて…!」

翠星石「三角コーナーがいっぱいになっちまったから、捨てようとしたらひっくり返しちまったんですぅ」

ジュン「…そう、なのか?」

翠星石「ちょっと片付けますね…」


ゴソ ゴソ…


ジュン「…」



「先に着替えなよ。 ボクが片付けるから」
563 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/07(日) 00:24:57.69 ID:M.oK11Y0
翠星石「…でも…」

ジュン「そんな格好で動きまわったら、かえって散らかるよ。 まかせといて」

翠星石「…しょうがないですね、頼んでやるです」


トテ トテ トテ


ジュン「…まったく、どうしたんだ…?」


【風呂場】


翠星石「…お洗濯、しなきゃです」


シュル シュル …ボソッ

ピッ ピッ …シャーーーー


翠星石「わたし自身も、きれいにしなきゃです…」


シュル シュル …パサリ

ガラガラ


翠星石「…」


…キュッ シャーーーーー


翠星石「…」…ゴシ ゴシ
564 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/07(日) 00:28:03.21 ID:M.oK11Y0
翠星石「…」ゴシ ゴシ


シャーーーーーー


翠星石「…」ゴシ ゴシ…



(…翠星石、黙るかしら!)


…ヘタリ


(それ以上言ったら…!)


「う…」


シャーーーー…


「ううう…」



「うう… うううっ…」




ジュン「長いシャワーだな…」
565 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/07(日) 00:36:44.47 ID:M.oK11Y0
…ガラガラガラ


ジュン「…ん」


トテ トテ


ジュン「翠星石、遅かった… げっ!!」

翠星石「…」 

ジュン「どっ、どうしたんだ?」 


「下着のままで…」


翠星石「服は今、洗濯してるところです」

ジュン「な、なにか着替えは…」

翠星石「…めんどくさいから、これでいいんです」


…トコトコ


翠星石「…」

ジュン「す、翠星石…?」


…ヒシッ


ジュン「…」

翠星石「やい、チビ人間」

ジュン「なんだよ」

翠星石「翠星石の胸で泣いていいですよ。特別に許可するです」

ジュン「…」

翠星石「おめーと水銀燈、ただの仲じゃねーってことくらい察しはつきますからね」

ジュン「…お前」
566 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/07(日) 00:40:17.29 ID:M.oK11Y0
翠星石「チビ人間の分際でナマイキだとは思いましたが、あれだけ頑張ってるんだから特別です」

ジュン「…翠星石」

翠星石「ほれほれ、遠慮しないで泣きなさい」

ジュン「…」


「泣けないよ」


「なぜですか。冷血なヤローですね」


「だって…」



「君、もう先に泣いてるじゃないか」



翠星石「…」

ジュン「何が、あったんだ…?」

翠星石「しょうがないですね…」 


「おめーが泣かないなら…」 


「ジュンのかわりに、翠星石が…」 





「うう… うううっ…」
567 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/07(日) 00:44:29.71 ID:M.oK11Y0
ジュン「…翠星石」

翠星石「わたしは…」

ジュン「ん?」

翠星石「わたしは、悪魔です…」

ジュン「な…?! 何を…」

翠星石「わたしは…」



「ジュンのいうとおりの、悪魔人形です…」




【10分前】


翠星石「ふーぅ、そろそろひといきつきましょうかね」

金糸雀「それじゃ、お茶でも入れるかしら♪」


コポコポコポ…


翠星石「…」


カチャカチャ コポコポ


金糸雀「たまには日本茶もエレガンスかしら〜♪」 

568 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/07(日) 00:47:35.11 ID:M.oK11Y0
金糸雀「お茶うけは… あ、おリンゴ発見かしら!」

翠星石「…」


シュルシュルシュル… ボソッ


金糸雀「…ありゃりゃ、三角コーナーがいっぱいになっちゃったかしら…」ゴソゴソ

翠星石「…金糸雀」

金糸雀「なにかしら?」

翠星石「…」


「いつまで、こんなことが続くんですか?」


金糸雀「…え?」

翠星石「水銀燈はボロボロになって… 治るかどうかもわからない…」

金糸雀「…」

翠星石「ジュンは水銀燈を助けるためにボロボロになって…」

金糸雀「…あなた…」
569 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/07(日) 00:50:33.11 ID:M.oK11Y0
翠星石「真紅は爆発して… 雛苺もぐちゃぐちゃに泣いて… わたしたちもヘトヘト…」

金糸雀「…翠星石、黙るかしら!」

翠星石「先が見えないです… いつまで続くのか、どうなってしまうのか…」

金糸雀「ダメ…それ以上言わないで!」

翠星石「こんな、こんな終わらない毎日が続くのなら…」


「いっそのこと… 水銀燈が…」


パンッ!


翠星石「くっ…」

金糸雀「黙れと言ったら黙るかしら!! それ以上、それ以上言ったら…」


「その口の中に生ゴミを詰めこんでやるかしら!!」


翠星石「…」


「つらいです…」


「…!」


「楽になりたいです… はやく…終わってほしいです… こんなこと…」



バシャッ!!!
570 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/07(日) 00:54:29.52 ID:M.oK11Y0
【みつの家】


ブゥーーーン…


金糸雀「…」


トテ… トテ…


(だれも… いない…)


トテ… トテ…


(あれ… テーブルの上…?)


トテ… トテ…


(…)




[おかえりなさい! きょうもおつかれさま!]


571 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/07(日) 00:57:23.58 ID:M.oK11Y0
(みっちゃん…)



[わたしは遅くなるから、冷蔵庫の中に食事用意してあるわ!]


[しっかり食べて、あしたもファイト!]


(…)


「う…」 



「ううう…」



「計算が狂ってるかしら… こんなはずじゃなかったのに…」



「みんな… みんな、めでたしめでたしで終わるはずだったのに…」



「どうして… どうして…」




「水銀燈…」
572 : [sage]:2009/06/07(日) 00:58:40.70 ID:M.oK11Y0
今日はここまで。再開は…明日、できれば…
573 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/07(日) 01:02:27.79 ID:CqGNnwgo
おつつ
574 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/07(日) 01:08:41.54 ID:SmOyRS6o
乙々。
575 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/07(日) 04:20:02.71 ID:9p3l6DIo
おっつ
576 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/07(日) 07:58:34.05 ID:R3cjHowo
おつ!
577 :1 [sage]:2009/06/08(月) 00:29:18.93 ID:RWNcUWw0
ちょっと今日は中止。また明日で…
すんません。
578 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/06/08(月) 00:33:14.16 ID:habejIQ0
>>1の親切さに感動した

wwktkして待っとくぜ
579 : [saga]:2009/06/08(月) 19:00:58.68 ID:wZUCkK.0
それでは再開します〜
580 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/08(月) 19:01:27.28 ID:VNv06qYo
お、待ってた
581 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/08(月) 19:03:47.57 ID:wZUCkK.0
【ジュンの家 2階】


ジュン「…」

翠星石「…くぅ…すぅ…」


ソーッ


(わたしは… 悪魔です…)


ジュン「…」


(わたしは… わたしは、水銀燈のことを…)


…パタン


…キィ


ジュン「…水銀燈」

水銀燈「…」

ジュン「翠星石、隣の部屋で横にしてきたよ」 

水銀燈「…」

ジュン「疲れてたみたいだから、ゆっくり休ませて…」

水銀燈「…ジュン」




「隠さなくても… いいわ…」
582 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/08(月) 19:09:54.37 ID:wZUCkK.0
ジュン「…」

水銀燈「聞こえていたのよ… その子と、金糸雀のやりとりも…」

ジュン「そうか…」

水銀燈「蒼星石の言葉も…」

ジュン「蒼星石が… 何を?」

水銀燈「…近くに来て…」

ジュン「わかった」


【隣の部屋】


翠星石「…くぅ…すぅ…」

真紅「…」

雛苺「…」


「ん…」


真紅「…」

翠星石「…すぅ…」

雛苺「ん… う…」


「う… うっ…」



(…あれ… ここは…??)



???(雛苺…)
583 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/08(月) 19:13:18.14 ID:wZUCkK.0
???(雛苺…)


(おとうさま… おとうさまなの?)


???(さあ… こっちへ…)


(お… おとうさま… それに…)


???(さあ… いらっしゃい…)


(あ… あなた… は…?)


???(ほら…)



(あ…)



(あったかいの…)



(あ… あれ?)



(あれ… あれれ… い、いや…)



(ふたりとも… どこにいくの…? だめ、だめ…)



(いかないで… ヒナを置いていかないで…!)



雛苺「ううう… うあ、あうう…」

翠星石「…すぴー…?」
584 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/08(月) 19:16:27.37 ID:wZUCkK.0
ジュン「…蒼星石が、そんなことを」

水銀燈「金糸雀は… 反対していたようだけれどね…」

ジュン「君は、どうするんだ」

水銀燈「…」


「挑まれれば… 受けるわ…」


ジュン「…そう言うと思ったよ」

水銀燈「いまさら… わたしが、逃げるわけには… いかないもの…」

ジュン「なぜ… どうして、君らはそこまでアリスゲ−ムこだわるんだ?」

水銀燈「それは違うわ…」 

ジュン「違う?」

水銀燈「わたしたちは… アリスになることに、こだわっているのよ…」

ジュン「…なんだって?」

水銀燈「翠星石や真紅だって… アリスゲームに疑問は持っていても… アリスになること自体に迷いは無い…」

ジュン「同じだよ! いくらローゼンの言葉だからって、なぜ…」

水銀燈「…わたしたちからすれば…」



「なぜ、あなたたちに… 伝わらないのかが、わからない…」
585 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/08(月) 19:20:50.10 ID:wZUCkK.0
ジュン「…」

水銀燈「穢れ無き究極の少女になって… お父様に認めてもらうために生きる…」



「わたしたちにとっては、あたりまえすぎて… 考えたことも、なかった…」



ジュン「…そうか…」

水銀燈「あなだけじゃない… 今までの契約者たちとも… この話になると、もどかしい思いをさせられた…」


「…」


ジュン「…どうしたんだい?」

水銀燈「そういえば… 不思議と…」 


「めぐとは、このことでケンカになったことは… なかったわね…」


ジュン「…そうなのか?」

水銀燈「ええ… なぜ、なのかしらね…」



「いやああああああっ!!」
586 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/08(月) 19:22:23.21 ID:wZUCkK.0
ジュン「なっ! …隣の部屋?!」ダダッ!

水銀燈「…雛苺ね!」フワリ ヒューーーン



真紅「…」

翠星石「…くかー…」

雛苺「う… ううう… うあああ…」


真紅「…」

翠星石「…むにゃ?」


「いやああああああっ!」


翠星石「むがっ?!」

真紅「…」

雛苺「いやあ、ああっ! だめぇーっ!!」

翠星石「な、何事ですか…??」
587 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/08(月) 19:24:57.60 ID:wZUCkK.0
バダン!


ジュン「雛苺!」ダダッ

水銀燈「どうしたの?!」

翠星石「な、なんか寝てたのに、急に叫びだしたですぅっ!」

雛苺「ああ、ああああ、おとうさま…」



「おかあさまぁーっ!!!」



水銀燈「!!」

ジュン「なっ…!!」

翠星石「な、なに言ってやがるですバカ苺!!」ユサユサ

雛苺「うああ… あああっ…!!」

翠星石「寝とぼけてないで、とっとと起きるですぅ!!」

雛苺「ふあ… ふああ?」

翠星石「…ほれ、目を覚ませですっ!」


ベチン!


雛苺「ふえっ?!」
588 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/08(月) 19:27:57.11 ID:wZUCkK.0
翠星石「…おい、チビ苺?」

雛苺「あ… す、翠星石…」

翠星石「まーったく、ようやく起きやがったですか…」

ガバッ!

翠星石「ぐぇっ?!」

雛苺「ふあぁ… あああぁ…!!」

翠星石「なっ、なんなんですか?!」

雛苺「怖いの…」


ガクガクガク…


「怖かったの…!」


ブルブルブル…


翠星石「ひ、ヒナ…」

ジュン「…」

水銀燈「…」




真紅「…」




「…んっ」
589 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/08(月) 19:30:26.88 ID:wZUCkK.0
ジュン「…え?」

水銀燈「あなた…?」

真紅「ん…」


「ここは…」ムクリ


翠星石「真紅!」

雛苺「ふぇ… 真紅?!」

ジュン「…大丈夫か!」

真紅「わたし… わたし…」

水銀燈「…」

真紅「そう、 わたし… 水銀燈に…」

水銀燈「…真紅」


…ジリッ


真紅「! あ、あなた…」

水銀燈「真紅…」

真紅「水銀燈…! わ、わたし…」

水銀燈「…」


…ジリッ


翠星石「す、水銀燈…?」

ジュン「水銀燈!」

水銀燈「真紅…」 



「よくも…」
590 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/08(月) 19:34:41.77 ID:wZUCkK.0
真紅「な、何よ! ?! あなた… その顔…!」

水銀燈「言ったわね?」 


「よくも… わたしのことを…」


真紅「ち、違う! わたし、そんなつもりじゃ…」

ジュン「水銀燈、やめるんだ!!」

雛苺「や、やめて! ダメ!!」

真紅「く、くっ…!」



水銀燈「…」スッ


ビュン!


真紅「くっ!」

雛苺「…ひっ?!」


…ピタリ


真紅「…?」


ツンツン 


水銀燈「まったく… もう…」ツンツン プニプニ

真紅「さっ、さわらないで!」
591 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/08(月) 19:40:14.01 ID:wZUCkK.0
雛苺「よ、よかったの…」

翠星石「し、心臓に悪いです…」

ジュン「(無いだろ)」


プニプニ ムニムニ


真紅「い、いつまでつっついてるの?!」

水銀燈「…不死家」プニプニ 

真紅「え?」

水銀燈「新発売だそうよ…」ムニムニ


「マンゴーヨーグルトシェイク… 飲みたいわぁ…」


真紅「…ジュン、すぐ買ってきてちょうだい」

ジュン「はあ?」

水銀燈「みんなも… 飲みたいわよね…?」

ジュン「へ?」

翠星石「おお、ジュンは気がきいてふとっぱらですね」

雛苺「ヒナはストロベリーがいいの!」



ジュン「おまえらなぁ…」ボリボリ
592 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/06/08(月) 19:41:54.48 ID:vnXC8oo0
リアルタイムwktk
593 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/08(月) 19:43:14.03 ID:wZUCkK.0
水銀燈「雛苺… 落ち着いた…?」…チュル

雛苺「…うん」チュルチュル

翠星石「いったい、どんな夢を見やがったですか?」ヂュルヂュル

ジュン「…」

雛苺「え、えっと… うーんと…」



「…よく、覚えてないの」



水銀燈「そう…」

翠星石「にしても、真紅…」ヂュルヂュルヂュル

真紅「…なに?」チュルチュル ゴクン

ジュン「なぜ、あんなことを…」

真紅「…」


「翠星石、雛苺」


翠星石「な、なんですか?」

雛苺「うゆ?」

真紅「金糸雀と蒼星石を呼んできてちょうだい」
594 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/08(月) 19:45:42.67 ID:wZUCkK.0
翠星石「…あ、あのふたりですか?」

雛苺「ほへ? いいけど…」

真紅「みんなに、話しておきたいことがあるのよ」

雛苺「りょーかいなの。 …翠星石」

翠星石「…」


(黙りなさい! 黙らないと…)


ジュン「…大丈夫か?」

翠星石「…え、ええ」


「行ってくるです」


真紅「頼んだわよ」

雛苺「…はい、なの」

翠星石「…」


ブゥーーーン…


真紅「…行ったわね」

ジュン「真紅、話ってなんなんだ?」

真紅「…」



「わたしが話があるのは、あなたたちによ」
595 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/08(月) 19:47:49.38 ID:wZUCkK.0
水銀燈「…何ですって…?」

真紅「あの二人の前では、言えなかった。 あなたたち…」


「雪華綺晶を探していたんでしょう」


ジュン「!」

水銀燈「聞いて… いたのね…」

真紅「…」ゴソ ゴソ


…スッ


水銀燈「これは…!」

ジュン「これは! まさか… 君はこれをどこで!?」

真紅「…」

ジュン「あっ! …まさか?!」

真紅「そう…」



「スナークの巣の奥底で、見つけてきたのよ…」


ジュン「ああ… そんな、そんなばかな…!」

水銀燈「…まちがいないわ…」



「白薔薇の… 花びら…」
596 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/08(月) 19:52:44.39 ID:wZUCkK.0
ジュン「で、でも雪華綺晶のものとは限らない!」

真紅「白薔薇は、nのフィールドにはほとんど存在しない… それに、スナークは花になんか目もくれないはず…」

水銀燈「スナークが狙うのは… 悪霊や精霊たち…」 

ジュン「な…!」

水銀燈「彼らは、nのフィールドの掃除屋なのよ…」

真紅「だから、霊体の体を持つ彼女の手がかりがあるかもしれないと…」

ジュン「そんな… まさか、雪華綺晶は?!」

真紅「それは無いと思う… もしあの子がやられたのなら、私たちにはわかるはず」

水銀燈「(…これは…)」


(最悪の場合を、考えておいたほうがよさそうね…)


水銀燈「…」

真紅「…ふたりとも、教えてちょうだい。 なぜ、あの子を…」

水銀燈「…みんなが来たら、話すわ…」

ジュン「え?!」

真紅「…わかったわ」



ジュン「水銀燈…?!」
597 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/08(月) 19:56:04.56 ID:wZUCkK.0


水銀燈「みんな、そろった… わね…」

蒼星石「…真紅が気づいて、よかった」

金糸雀「心配したかしら…」


翠星石「…」


真紅「…ごめんなさい。 助けてくれて、ありがとう」

翠星石「にしても…なんでまた、あんな無茶を?」

真紅「…それは」



「わたしが… 頼んだのよ…」



真紅「え?」



水銀燈「雪華綺晶を探して、ってね…」

金糸雀「す…水銀燈?!」

ジュン「…お前?!」

翠星石「な… いったいどういうことですか?!」
598 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/08(月) 19:59:33.00 ID:wZUCkK.0
蒼星石「ぼ、僕と雛苺を喰おうとしたあいつを…なぜ!」

雛苺「雪華綺晶…?! い… いや…」

ジュン「ひ、雛苺?!」


「いや… いや… いやぁ…」ガタガタガタ…


蒼星石「雛苺、落ち着いて! …いったい、なぜ!」


クスクスクス…


蒼星石「き、貴様!」

水銀燈「ふふふ、鈍いわね…」

翠星石「だからなんなんですか?!」



水銀燈「わたしたちが… 全員そろってやることといったら…?」
 


ジュン「 !! 」

真紅「…な、なんですって…?!」

水銀燈「ひとつしか… ないでしょう…?」

金糸雀「ま、まさか… そんな…!!」

水銀燈「そうよ…」




「アリスゲームを、再開するのよ…」
599 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/08(月) 20:03:32.63 ID:wZUCkK.0
ジュン「な?! …バカな!!」

雛苺「え…!」

翠星石「!!」

蒼星石「…」

金糸雀「そんな… そんな、その体で!!」

水銀燈「この体、だからよ…」グ ググッ


…ギシッ


「これが、最後になるかも… しれないでしょう…?」


金糸雀「ああ… ああああ… そ、そんな…」

水銀燈「おせっかいを焼いてた子も、いるようだけれどねぇ…」クスクス

蒼星石「…聞こえていたの?」

水銀燈「あれだけ… 騒いでいれば、ね…」

蒼星石「…水銀燈」




「本気なんだね?」
600 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/08(月) 20:07:37.63 ID:wZUCkK.0
水銀燈「ええ、もちろんよ…」

蒼星石「…わかったよ」

金糸雀「そ、蒼星石! 何を言っているの?!」

蒼星石「…」スック


「いますぐ、探してくる」


水銀燈「なるべく早く、頼むわ…」

蒼星石「わかった。 …かならず見つけてくる」タタッ

翠星石「そ、蒼星石! …わたしも行くです!」トテテテ


ブゥーーーーン…


金糸雀「そんな…」

真紅「…水銀燈。 あなた、そういうつもりだったの?」

水銀燈「…当然じゃない…」

雛苺「水銀燈…」

真紅「…」グッ


「行くわよ、雛苺」


雛苺「え… あ…」チラッ

水銀燈「…お願い、ね…」

雛苺「…」

真紅「行ってくるわ」

雛苺「…水銀燈…」



ブゥーーーン…
601 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/08(月) 20:09:49.58 ID:wZUCkK.0
ジュン「…水銀燈! いったい、どういうつもりなんだ!」

金糸雀「あなた… 言ってたことと違うかしら!!」

水銀燈「あんまり… 大声出さないでよぉ…」

金糸雀「だって、だってあなた、あの子がなんとかしてくれるって!!」

水銀燈「…だからよ」



「ああ言えば、みんなが… 雪華綺晶を、探してくれるでしょう…?」



ジュン「え?」

金糸雀「…えっ? そ、それじゃ…」

水銀燈「ヤケを起こしたわけじゃ、ないわ… 安心なさい…」

金糸雀「…」


「よかった…」


水銀燈「さあ、あなたも… お願い…」

金糸雀「わかったかしら! …がんばって、水銀燈!」

ジュン「…」



ブゥーーーン…
602 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/08(月) 20:14:02.39 ID:wZUCkK.0
水銀燈「…ふう」

ジュン「…水銀燈」

水銀燈「なあに…?」

ジュン「ほんとうに…」


「ほんとうに今のは、雪華綺晶を探させるための方便だったのか?」


水銀燈「…」

ジュン「君は、挑まれれば受けると言っていた」

水銀燈「…そうよ」

ジュン「じゃあもし… もし、みんなで探しても見つからなかったら…」

水銀燈「…心配… しないで…」


「そのときは… うまくやるわ…」


ジュン「…信じていいのか?」

水銀燈「まだ、諦めちゃいないわよ…」

ジュン「…そうか。そうだよな…」

水銀燈「…(けれど…)」



(最悪の事態は… 想定しておいたほうが… いいわね…)


(あの子を疑っては無いけれど… もし、何らかの事故があったんだとしたら…?)


(来たくても来れない状況にあるんだとしたら…)




(覚悟を… かためておきましょう…)
603 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/08(月) 20:21:11.23 ID:wZUCkK.0
水銀燈「じゃ… わたしも、一休みするわ… 少し、ひとりにして…」

ジュン「…ああ」

水銀燈「…」


(わたしが始めてしまった… アリスゲーム…)



(このわたしの手で… 終わらせなくては…)



(それでも… わたしがあの子たちから奪ってしまったものは取り返せないけれど…)



(それさえせず… わたしが母親だなんて、どの顔下げて言えるだろうか…)



(なんとしても…) 



(…この身にかえてでも)




グググ …ギシッ



ジュン「なぜ…」 



「水銀燈、なぜ君は… そこまでして…」
604 : [sage]:2009/06/08(月) 20:22:49.28 ID:wZUCkK.0
今日はここまで。続きは明日。
>>580 >>592
支援どうもっす〜
605 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/08(月) 20:29:12.51 ID:vVV3V/Ao
おっつ
606 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/08(月) 21:04:43.52 ID:bPMdiZIo
おつつ
607 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/08(月) 21:58:12.60 ID:eY6rsOUo
おつ!
608 : [saga]:2009/06/09(火) 20:59:49.60 ID:kjH1O920
乙どうもです〜
再開します。
609 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/09(火) 21:02:07.43 ID:kjH1O920
【その日の深夜 ジュンの部屋】


…クイ クイ


ジュン「…」

水銀燈「…」


クイ クイ…


ジュン「雪華綺晶、見つからなかったね…」

水銀燈「…あせらず、構えましょう」

ジュン「…」


キュッ キュッ…


ジュン「…足、痛くない?」

水銀燈「…平気よ…」

ジュン「…」




コチョコチョコチョ
610 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/09(火) 21:03:19.65 ID:kjH1O920
水銀燈「…」

ジュン「…水銀燈?」

水銀燈「なに?」

ジュン「…なんでもない」



(下半身の感覚がなくなってる…)



ジュン「…」…キュッ キュッ

水銀燈「…気持ちいいわ」

ジュン「ほんとう?」

水銀燈「ええ… 上手よ」

ジュン「君に教わったからね(…まったく、もう)」


(水銀燈のうそつき…)


キュッ キュッ キュッ…



(しっかり、体をほぐしておきなさぁい)

(水銀燈がやってよ。 そのほうが気持ちいいもの)
611 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/09(火) 21:04:37.73 ID:kjH1O920
ジュン「…」

水銀燈「…不思議ね」

ジュン「…なに?」

水銀燈「こんな… ヒビだらけの体を見られているのに」

ジュン「…」

水銀燈「なぜかしらね…」 



「ちっとも、恥ずかしくないわ…」



ジュン「…そうなのかい?」

水銀燈「ええ… ずっとあなたに、体を治してもらって、世話してもらったと思うとね…」

ジュン「そうなんだ…」

水銀燈「わたし… やっぱり、よかった…」

ジュン「なにが?」

水銀燈「この家に着て… あなたたちと、暮らして…」

ジュン「…水銀燈」


キュッ キュッ クイ クイ…
612 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/09(火) 21:07:19.33 ID:kjH1O920
水銀燈「不安、だったのよ…」

ジュン「不安?」

水銀燈「ええ… いつも、遠巻きに見ていた… あなたたち姉弟と、妹たちの暮らし…」



「穏やかで、やすらかな… おままごとのような、毎日…」



ジュン「…」

水銀燈「わたしには… 無理だと思っていた… ふぬけてしまうと… 戦えなく… なってしまうと…」

ジュン「うん…」

水銀燈「でも… 実際やってみると… なんてこともなかった…」

ジュン「…そう?」

水銀燈「ええ… 普段の暮らしと、戦うときの切り替えが… 出来るようになっただけだった…」

ジュン「…」

水銀燈「なんでも… やってみるものね…」クスクス

ジュン「…」




「ありがとう、水銀燈」
613 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/09(火) 21:09:11.91 ID:kjH1O920
水銀燈「…なぜ、お礼なんか…?」

ポタッ

水銀燈「…ジュン?」

ジュン「ありがとう…」ポタッ ポタッ…


(君が来てくれて… ここで暮らして…)


(辛いなんて、思ったことは無いけれど…)


(でも、今のひとことで… 今のひとことで…)


「ボクは…」


「ジュン…」




真紅「…」



(…よかった)
614 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/09(火) 21:10:31.80 ID:kjH1O920
(水銀燈が、気づいてくれた)


(戦いだけがすべてじゃないことに… こういう生き方もあることに…)


(そう… よかった、のよ…)




(ジュン…)




(…)



コンコン


「真紅」


「…」


コンコンコン


「真紅?」


「…」



カチャカチャ… 
615 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/09(火) 21:12:11.57 ID:kjH1O920
「(…え?)」


ピンッ! …カチリ


「なっ?!」


…カチャリ キィ


ジュン「なあ、真紅…」

ヒュンベチッ!!

ジュン「ぷっ!?」

真紅「…眠っている乙女を襲うつもり!?」

ジュン「眠ってないじゃないか」

真紅「手先が器用なのも考えものね…!」

ジュン「君らのカバンしか開けないよ」

真紅「当たり前よ! …何の用?」

ジュン「…ちゃんと、礼を言おうと思って」
616 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/09(火) 21:14:38.21 ID:kjH1O920
真紅「礼?」

ジュン「危険な目にあってまで、手がかりを探してきてくれたことに」

真紅「…」

ジュン「ありがとう」

真紅「…私が勝手にやったことよ」

ジュン「そうか。 …なら」

グイッ

真紅「な?!」

ジュン「ボクも、勝手にやらせてもらう」

真紅「は、放しなさい! やめて!」


ヒュンビシッ! ベチッ! バチン! 


ジュン「…」



「…ごめん、真紅」
617 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/09(火) 21:15:39.86 ID:kjH1O920
真紅「え?」

ジュン「君のことを、わかってやれなくて」

真紅「…えっ…」

ジュン「…ボクは、契約者失格だな」

真紅「…」



「…わかれば、いいのよ」


キュッ


真紅「さあ、やさしく抱き上げなさい」

ジュン「ああ」

真紅「…今日は、一緒に寝てあげる。 光栄に思うことね」

ジュン「ありがとう。 …ふふっ」

真紅「…わ、笑わないで」


…ヒシッ


真紅「でも、水銀燈に何かあったらいけないから…」

ジュン「わかってるよ。 みんなで寝よう」
618 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/06/09(火) 21:17:13.21 ID:1DEIrBk0
お?再開乙
619 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/09(火) 21:18:41.78 ID:kjH1O920
水銀燈「あら… 真紅…」

真紅「…何か、文句ある?」

水銀燈「妬けるわね…」クスクス

真紅「…ふんっ」

ゴソゴソ

ジュン「…ちょっと狭いかな」

真紅「…私は平気よ」

水銀燈「…ほら、もっとこっちに寄りなさい」クイクイ

真紅「や、やんっ?! どこ触ってるの?!」

水銀燈「うふふふ」

真紅「…もう」


モゾモゾ


真紅「…水銀燈」

水銀燈「なあに?」

真紅「体を治してもらうために、雪華綺晶を探してたんじゃなかったの?」

水銀燈「…」

真紅「アリスゲームを始めるって… 本気なの?」

水銀燈「…」


「半分はね」
620 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/09(火) 21:20:37.41 ID:kjH1O920
真紅「半分?」

水銀燈「ああ言えば、みんな雪華綺晶を探すでしょう…?」

ジュン「…」

真紅「半分ってことは… もし、見つからなければ?」

水銀燈「そのときはそのときよ… 覚悟を決めるわ」

真紅「無茶よ…! 体が砕けてしまったら、あなたの自我は消えてしまう!」

ジュン「…」

真紅「たとえ結晶に意識を移しても、お父様からいただいたこの体を失ってしまったら…!」

水銀燈「…いちかばちかだけれど」

真紅「なに?」

水銀燈「わたしが… アリスになってしまえばいいのよ…」クスクス…

ジュン「な?!」

真紅「…それこそ無茶よ!! あなたの体で、結晶の負荷に耐えられるの?!」

水銀燈「やってみなくちゃわからないわ… それに、もしお父様に会えれば助けてもらえるかも…」

真紅「…それは…」

ジュン「(君は… 知っているくせに…)」


(結晶を集めたって、アリスになんかなれないし… 父親にだって会えはしないことを…)
621 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/09(火) 21:23:10.67 ID:kjH1O920
水銀燈「だから… もし、アリスゲームを再開したら… 手加減しないわよ…」

真紅「…わたしだって」

ジュン「真紅!」

真紅「わたしはあなたに勝って… アリスになって… お父様に会う!」



「そして… あなたを治してもらう…」



ジュン「…真紅…」

水銀燈「情けは… いらないわよ…」

真紅「あなた、自分で言ってたじゃない。戦ってる最中は容赦するな、だけど…」


「『戦いが完全に終わったら、敬意を持って接しなさい』と…」


水銀燈「…」

真紅「それさえなくしたら、わたしたちはただのけだものになるって」

ジュン「真紅… 君は…」

真紅「あなたが生きることをあきらめないのなら、わたしだってあきらめない」

水銀燈「…望むところよ…」



…カチャリ
622 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/09(火) 21:25:06.60 ID:kjH1O920
「…あら?」


トテ トテ トテ


「あなた…」


雛苺「みんな…」


ジュン「どうしたんだ?」

雛苺「…眠れないの」

水銀燈「…また、怖い夢でも見たの?」

雛苺「…」コクン

真紅「仕方ない子ね… ジュン、詰めてあげて」

ジュン「OK」

水銀燈「ふたりとも、そっちに詰めて。 …雛苺、こっちにいらっしゃい」

雛苺「…ごめんなさい」


ゴソ ゴソ


ジュン「(さすがにちょっと狭いかな…)」

真紅「まあ、たまにはいいでしょう」
623 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/09(火) 21:27:00.32 ID:kjH1O920
水銀燈「…雛苺、落ち着いた?」

雛苺「うん… ねえ、水銀燈」

水銀燈「なあに?」

雛苺「お話… 聞いてくれる?」



「…お昼見た、怖い夢のこと…」



ジュン「あれ? ヒナ、覚えてないって…」

雛苺「…ジュン、真紅… 笑わない?」

真紅「え?」

雛苺「水銀燈… 怒らない?」

水銀燈「…なんなの?」

雛苺「…あのね、夢の中でね、おとうさまに会ったの」

ジュン「うん…」

雛苺「それでね…」




「おかあさまにも、会ったの…」
624 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/09(火) 21:28:42.63 ID:kjH1O920
ジュン「!!」

水銀燈「…!!」

真紅「? どういうこと…?」

雛苺「ヘンよね… ヒナたちに、おかあさまなんていないはずなのに。 それでね…」

水銀燈「そ… それで…?」

雛苺「…」

ジュン「ヒナ?」

雛苺「水銀燈、怒らないで聞いてくれる…?」

水銀燈「…ええ」

雛苺「夢の中のおかあさま…」



「水銀燈の顔をしてたの」



真紅「…おかしな夢ね… ジュン?」

ジュン「…」

真紅「水銀燈?」

水銀燈「…」

真紅「…(まさか…?)」



(いえ、いくらなんでもそんなことは… ありえないわ)
625 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/09(火) 21:32:42.50 ID:kjH1O920
雛苺「夢の中のおとうさまとおかあさま、とってもやさしいの… あったかいの…」

ジュン「…うん」

雛苺「でも… いなくなっちゃうの… ヒナ、ひとりぼっちになっちゃうの…」

水銀燈「…」

雛苺「どんなに呼んでも帰ってきてくれないの… 怖かった、怖かったのよ…」

ジュン「ヒナ…」

水銀燈「…」

雛苺「…」



「水銀燈、お願いがあるの…」



水銀燈「な、なに…?」

雛苺「怒らないで、聞いてね?」

水銀燈「…怒らないわよ」

雛苺「…ほんとに?」

水銀燈「ええ、怒らない。 絶対怒らないわ…」

雛苺「…いまだけでいいの。 ほんのちょっとだけでいいの。 だから…」




「水銀燈のこと、おかあさまって呼んでいい…?」
626 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/09(火) 21:36:04.04 ID:kjH1O920
ジュン「ヒナ…!」

真紅「あなた、何をバカなことを… 水銀燈?」



水銀燈「…」



雛苺「…だ、だめ? 怒っちゃった?…」


ギュッ


雛苺「あ… す、水銀燈?」

水銀燈「…」


ギュウウッ


雛苺「水銀燈…」

ジュン「…ヒナ、いいんだよ」

雛苺「え?」

真紅「ジュン?」

ジュン「水銀燈のことを… おかあさんって、呼んであげて」

雛苺「…いいの?」

水銀燈「…」



ギュウウウウウッ
627 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/09(火) 21:38:18.49 ID:kjH1O920
ジュン「さ、早く…」

雛苺「…」



「おかあさま…」



水銀燈「…」ギュウウウウッ



「す…水銀燈? 苦しいの…」



真紅「…水銀燈?」



「う…」



ジュン「…」



「う… う…」



雛苺「水銀燈…?」



「ううっ… くっ…」
628 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/09(火) 21:41:19.66 ID:kjH1O920
雛苺「…水銀燈…」


ギュッ


水銀燈「…」


ギュウウウッ



「おかあさま…」


「(ああ…)」


「おかあさま、おかあさま…」


(あああ…)


「ヒナを… ヒナをはなさないでいて…」





(ああ… ああああ…っ…)
629 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/09(火) 21:45:56.09 ID:kjH1O920
「おかあさま、どこにもいかないで…」


(ああ、だめ… だめよ… わたし、覚悟をかためなくては…)


「ヒナをおいていかないで…」


(雪華綺晶が来れなかったときの… 万一にそなえなくては… でも…)



(でも…)



(…)



「おかあさま… お願いよ…」




(お願い…) 



(お願い… 雪華綺晶… 早く来て…)



(わたし… わたし…) 





(…死にたくない!) 
630 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/09(火) 21:49:57.38 ID:kjH1O920
(わたし…死にたくない! 死にたくないのっ!!)



(このぬくもり… この想い… 失いたくない…!!)



(生きていたい… わたし、生きたい…っ!)



ギュウウウウ…



(わたし… この子たちと… かけがえのないこの子たちと…) 



(一緒に生きていきたいのっ!!!)



(お願い、お願いよ… 雪華綺晶…)



(わたし… わたし…)





(もう… もたないかも… しれないの…)





(お願い…)
631 : [sage]:2009/06/09(火) 21:51:20.90 ID:kjH1O920
今日はここまで。再開は間をおいて、しあさって予定です。
632 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/09(火) 21:51:51.87 ID:DXRbgB.o
乙ですた
633 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/09(火) 21:53:09.01 ID:U2XUVWco
乙です

銀様の死にたくない頂きました
634 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/09(火) 21:56:46.37 ID:thHL4eAo
乙です。
うん、いいな、雛。
635 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/09(火) 23:07:03.02 ID:DwLMsrso
乙です
雛が俺の娘になりました
636 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/09(火) 23:37:57.60 ID:vQE3bEIo
おっつ
637 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/10(水) 00:14:14.82 ID:SZpCYTwo
おつ!
638 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/10(水) 01:06:28.97 ID:6vT0Xfgo
おつつ
639 :1 [saga]:2009/06/12(金) 18:54:57.95 ID:UpSLgIo0
乙どもっす〜
再開します〜
640 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/12(金) 18:57:40.13 ID:UpSLgIo0
【3日後 ジュンの家 居間】


「…」


[…地域のニュースです。ただいま有栖川市民文化会館では中国の秘法「兵馬俑」展示展が…]


「…」


[続いてのニュースはスポーツです。 有栖川市民球場では本日もプロ野球のオープン戦が…]


「…」


のり「…銀ちゃん?」


水銀燈「…」


のり「ぎ…銀ちゃん?!」


水銀燈「…」


のり「銀ちゃん? 銀ちゃん?! いやあ、ジュンくーんっ!!」
641 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/12(金) 19:02:15.71 ID:UpSLgIo0
ジュン「ど、どうした!?」

水銀燈「…」ググ


…カク カク カク…


「な… あ… に…?」


のり「ああ… あああ、よかった、よかった…」ヘタリ

ジュン「心配させないでくれよ…」

水銀燈「…このままでいるってことは… 生きてるってことでしょう…」


「死んだら… バラバラに… なるんだから…」


ジュン「…」

のり「…お願い、そんなこと言わないで…」

水銀燈「ごめんなさい… でも…」



「少し… 休ませて…」
642 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/12(金) 19:04:18.89 ID:UpSLgIo0
のり「…」

ジュン「…」

のり「…じゃ、わたし、学校行くね…」

ジュン「ああ…」


(あれから… みんな必死に探してくれたけど、雪華綺晶の手がかりはまったく見つからなかった)


(水銀燈はますます衰弱し… もう、話すこともままならない…)


プルルルルル


のり「あ…電話」

ジュン「出るよ」タ タ タ タ


ガチャリ


ジュン「はい、桜田です」

(あ… じゅんじゅん、わたし)

ジュン「あ、みっちゃんさん。 …どうしたんですか?」

(水銀燈、大丈夫?)

ジュン「…あまり、よくありません」

(じゃあ、中止でいいよね。 一応聞いておこうと思って…)

ジュン「え?」

(ほら、今週の日曜日…)
643 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/12(金) 19:05:29.92 ID:UpSLgIo0
ジュン「あっ! …ああ、ごめんなさい」

(しょうがないわ… こんな状況だものね)

ジュン「(今月はじめ、みんなで河川敷にピクニックに行く計画立てたんだったっけ…)」

(たまにはみんなで集まろうと思ったんだけど… ダメだよね…)

ジュン「はい…」


「…待って…」


ジュン「え?」

(なに?)

ジュン「君は…」


「待って… ちょうだい…」フワ フワ


水銀燈「…中止に…しないで…」

ジュン「そんな… だって君は…」

(水銀燈? 水銀燈がそこにいるの?)

水銀燈「かわって…ちょうだい…」

ジュン「あ…ああ」
644 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/12(金) 19:06:22.42 ID:UpSLgIo0
(…水銀燈?)

水銀燈「みつ…」

(…大丈夫なの?)

水銀燈「予定通り… 行ってちょうだい…」

(でも…)

水銀燈「お願いよ… わたしたちと、あなたたちが一同に会す機会なんてもう…」

(え?)



「最後になるかもしれないんだから…」



ジュン「な!」

(…)

水銀燈「だから… どうか…」

ジュン「君は…!」

水銀燈「…ええ。 …うん、それでいいわ。 …ありがとう、世話かけるわね…」

ジュン「す、水銀燈!」

水銀燈「金糸雀によろしく…」


ガチャリ
645 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/12(金) 19:11:16.17 ID:UpSLgIo0
ジュン「水銀燈…」

水銀燈「予定通り… やってくれるそうよ… 車も出してくれるって…」

ジュン「君は…」

水銀燈「いい…機会だもの…」

ジュン「…」

水銀燈「みんなの前で… 言っておきたいことが… あるから…」

ジュン「言っておきたいこと、って…」

水銀燈「…上へ、行きましょう…」

フワ フワ

ジュン「ちょ、ちょっと待ってよ」

トン トン トン


【ジュンの部屋】


トン トン トン


ジュン「…」

水銀燈「ドアを… 開けて、ちょうだい…」

ジュン「…ああ」


ガチャリ キィ


「遅かったですね」


ジュン「わっ?!」 


「待ちくたびれたかしら」



「…み、みんな!!」
646 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/12(金) 19:12:45.55 ID:UpSLgIo0
蒼星石「…ジュン君」

雛苺「ジュン…」

真紅「やっと来たわね…」

ジュン「し、真紅! みんな、いつの間に…」

真紅「…水銀燈から聞いていないの?」

ジュン「え?」


フワ フワ


水銀燈「…いらっしゃい」

ジュン「こ、これはどういう…」

水銀燈「メイメイと真紅に頼んで… 呼んでもらったのよ…」

金糸雀「話って… なにかしら?」

水銀燈「…」


「今度の日曜日… 河川敷で、ピクニックをするわよね…」


金糸雀「え? で、でもあれは…」

水銀燈「今日、みつに頼んで、やってもらうことにしたのよ…」

蒼星石「…大丈夫なのか?」


水銀燈「…」


翠星石「水銀燈?」

水銀燈「その場で… 大事な話をするわ…」
647 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/12(金) 19:14:33.89 ID:UpSLgIo0
雛苺「だいじな… はなし?」

水銀燈「ええ… あなたたちと、あなたたちの契約者の前でね…」

金糸雀「…大事な話って?」

水銀燈「…そして、その日の深夜0時…」



「アリスゲームを再開するわ…」



ジュン「なっ!」

蒼星石「!」

金糸雀「そ… そんな…!」

真紅「あなた…!!」

水銀燈「場所は… 『秘密の花園』…」

ジュン「水銀燈! きみは…きみは!!」

水銀燈「…ジュン…」



「わたし… もう… もちそうに… ないのよ…」



金糸雀「そんな… そんな!!」

真紅「あきらめちゃだめよ! なんとか、なんとかしてみせる!!」

水銀燈「もう… だめなのよ…」



「意識を保つのも… つらく… なってしまった…」
648 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/12(金) 19:15:29.14 ID:UpSLgIo0
蒼星石「…」

水銀燈「だから… せめてまだ… 話せるうちに…」

雛苺「いやあああああっ!!」


…ヒシッ


翠星石「…雛苺?!」

雛苺「いや、いや、ダメなの…! 水銀燈!!」

水銀燈「雛苺…」

雛苺「ダメ、ダメ… ダメなのぉっ!!」

真紅「水銀燈… 雛苺の言うとおりよ!!」

ズイッ

真紅「あなたの自殺に付き合う気なんてないわ!!」

水銀燈「…ふん」

雛苺「す、水銀燈…?」


ペシッ!


雛苺「きゃんっ!?」
649 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/12(金) 19:17:11.65 ID:UpSLgIo0
ジュン「水銀燈!」

水銀燈「しゃんと… なさい…」


ググッ


雛苺「す、水銀燈…」

水銀燈「あなたは… 誇り高き… 薔薇乙女なのよ…!」ギュウッ

雛苺「は…はい…」

水銀燈「泣いちゃ… だめ… 心が裂けそうでも…」



「泣かないで…」



ジュン「(す…水銀燈?)」

雛苺「…」

水銀燈「話を… 聞きなさい…」

雛苺「…はい…」

真紅「あ…あなたは、何を…」

水銀燈「…」



「区切りを、つけるのよ…」
650 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/12(金) 19:18:16.66 ID:UpSLgIo0
真紅「区切り…?」

水銀燈「ええ… もうわたしは、アリスにはなれないもの…」

蒼星石「え…!?」

水銀燈「たとえいま… 生き延びたとしても… この体ではね…」キシ キシ…

蒼星石「…」

金糸雀「あなた…」

水銀燈「だから… 勝とうが負けようが… 次がわたしの最後のゲーム…」


「次からは… あなたたちがそれそれ… アリスを目指すのよ…」


ジュン「…」

翠星石「…もう、ダメ…なんですか…?」

水銀燈「…くやしいけどね…」

真紅「あなた…」

蒼星石「…」



「…わかったよ」
651 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/12(金) 19:20:27.80 ID:UpSLgIo0
金糸雀「蒼星石…!」

蒼星石「…せめて、全力で挑むよ」

水銀燈「ふふ… 望むところよ…」


「手加減なんかしたら、承知しないわよ…」


真紅「…当然よ」

金糸雀「真紅!」

水銀燈「金糸雀… あなたも、しっかりなさい…」

金糸雀「でも… でも!!」

水銀燈「わたしがいなくなるということは…」 


「あなたが薔薇乙女の長女になるということなのよ…」


金糸雀「…そんな!! 無理かしら、ぜったい無理かしら!!」

水銀燈「大丈夫… あなたなら… みんなをしっかり、アリスに導いてあげなさい…」


ジュン「…」



「なぜ、なんだい?」
652 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/12(金) 19:21:50.39 ID:UpSLgIo0
雛苺「…ジュン?」

ジュン「もう、何度も何度も聞いたことだけれど… きみたちは…」 


「なぜ、そこまで『アリス』になることにこだわるんだ?」


蒼星石「それは言ったはずだよ。 お父様の願いだからなんだ」

水銀燈「…」

ジュン「君らにとって… 父親の存在が大きいってことは、わかってるつもりだ」

蒼星石「…ジュン君はまだ、わかってないよ」


「わかってるなら、そういう質問をするはずがないもの」


ジュン「蒼星石…」

蒼星石「僕ら姉妹で、そんなことを聞いてくる子はいない。お父様の言葉は僕らのすべてなんだ」

ジュン「でも… 君らだって、姉妹で戦うのはほんとうは望んでいないはずだ」

蒼星石「…」

ジュン「水銀燈も言っていた」 

蒼星石「何?」


「ボクの家での暮らしも、悪くないって」


蒼星石「…! それは、本当なのか?!」
653 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/12(金) 19:22:50.68 ID:UpSLgIo0
水銀燈「…もう、ジュンったら… しゃべっちゃって…」

蒼星石「水銀燈、君は!」

水銀燈「…本音よ、蒼星石。 あなただって、楽しそうにしてたじゃない…」

蒼星石「そ、それは…」

水銀燈「楽しかった… 何百年かぶりに、やすらいで暮らしたわ…」

真紅「水銀燈…」

ジュン「なら… それでいいじゃないか!」


「姉妹で戦いあって、命を投げ捨ててまでアリスを目指さなくたって!!」


真紅「…」

翠星石「ジュン…」

ジュン「みんなで安らかに暮らしていければ、それでいいじゃないか!!」

バン!

蒼星石「それは違う!」


「それは失くしちゃいけないものなんだ! 僕らの生きる意味そのものなんだよ!」
654 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/12(金) 19:25:18.01 ID:UpSLgIo0
ジュン「蒼星石、なんで君は!」

蒼星石「ジュン君こそ、なんでわかってくれないんだ!」

金糸雀「ふ、ふたりとも落ち着いて!」

雛苺「ふぇぇ…」


水銀燈「…」


…スッ


蒼星石「す、水銀燈?」

水銀燈「落ち着きなさい、蒼星石…」


「あなたが、正しいのだから…」


蒼星石「…君は…」

ジュン「…水銀燈」

水銀燈「ジュン…」…カク カクカク…


「あなたたちと… ともに暮らしたこの半年… とても、とても素敵だった…」


ジュン「…」

金糸雀「あなた…」

水銀燈「ずっと、このままでいいと思ったこともあったけど…」

蒼星石「き、君は!」

水銀燈「でもジュン、あなた… あなた自身こそが…」




「『このままでいい』なんて思ってないじゃない…」
655 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/12(金) 19:28:02.19 ID:UpSLgIo0
ジュン「…え?」

水銀燈「のりから、聞いたわよ…」 


「『今は無理でも、いつかはみんなを自力で養いたい』って…」


ジュン「そ、そうだけど…」

水銀燈「あなただって… やすらかに暮らせるだけじゃ、だめなんでしょう…?」

真紅「…ジュン、あなた…」

翠星石「…チビ人間のくせに、カッコつけやがってです」

ジュン「でも、それとこれとは…」

水銀燈「まあ… 違うけれどね…」


グ グググ


水銀燈「あなたにとって… わかりやすいとは、思う…」…ギシッ

ジュン「…そう、なのか?」

水銀燈「あなたには、わたしたちのこと… わかってもらいたいと、思ってる…」

真紅「水銀燈…」

水銀燈「…明日、みんなの前で話そうと… 思っていたこと… なのだけれど…」

金糸雀「…」



水銀燈「みんなも… よく、聞きなさい…」
656 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/12(金) 19:32:09.81 ID:UpSLgIo0
水銀燈「わたしはずっと考えていた… お父様が、なぜわたしたちに…」



「『アリスを目指せ』と言ったのか」



蒼星石「え?」

水銀燈「…体がこうだと、考える時間だけは… いっぱいあったのよ…」グ ググ


…ギシッ


蒼星石「なぜって、それは究極の少女を造ることを目指して…」

水銀燈「究極の少女を作ることだけが目的なら…」 



「『失敗作』のわたしたちを廃棄して… 新しく作り直したほうが早いと思わない…?」



蒼星石「なっ…」

水銀燈「なぜ、新しい人形をもってして、自らの手によってではなく…」



「『わたしたちを使って』『わたしたち自身に』アリスを造らせようとしたのかしらね…」



蒼星石「それは…」

水銀燈「ジュン…以前、わたしが言ったこと… 覚えてる…?」

ジュン「え?」

水銀燈「年をとることができるって… うらやましい、って…」

ジュン「あ… うん、覚えてる。柴崎夫妻のことが、とてもうらやましいって」

金糸雀「…あなたは、ずっとそう言っていたかしら。お年寄りを見るにつけて…」



「森の深くに眠る古木のように、永き時を閲した遺跡のように美しい存在だと…」
657 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/12(金) 19:34:55.50 ID:UpSLgIo0
水銀燈「…そうよ。 人間って… うらやましいわよね…」

ジュン「…」



「赤ん坊がいて… 子供がいて、若者がいて大人がいて、お年寄りがいる…」



「神に祝福されてこの世に生まれ、みんなに暖かく迎えられて育ち…」



「つれあいを見つけ… 愛し合い… 結ばれて… 子を宿し… 育て…」



「時の流れの中でつながりあった人たちに囲まれて生き… 時が満ちれば主のみもとへ帰る…」



「はるかな時代から… 連綿と繰り返されてきた… 命をつなぐ物語…」



「そんな素敵な物語が、生まれながらにして用意されている…」



「けれど…」



水銀燈「わたしたちには、お父様しかいないのよ…」

ジュン「そんな…」
658 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/12(金) 19:38:54.78 ID:UpSLgIo0
水銀燈「いないの… お父様以外には… ほんとうに、誰もいない、何も無いの…」

真紅「…」 



「お父様がいなければ… わたしたちがこの世界とつながっているあかしなんて… なにひとつないのよ…」



「けれど… お父様も人間。どんな技術をもってしても… 例外はない」



「いずれは滅ぶわ…」



ジュン「(水銀燈…君は…)」

蒼星石「…」



「お父様は考えたんだと思う… 自分がいなくなったあとに、わたしたちが何を想って生きていくのか…」



「わたしたちは子供を作れはしない… 壊れるまで、永遠に生きていくお人形…」



「『究極の少女』とは… そんなわたしたちに… 果てしない時を… 生き続けなければいけない私たちに…」




「お父様が用意してくれた贈り物… 生きるための物語なのかもしれないわね…」
659 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/12(金) 19:49:18.33 ID:UpSLgIo0
ジュン「…」



「だから、わたしたちにとって『アリス』を目指すということは…」



「人間にとって… 女にとっては子供を産み、育てることと同じくらい…」



「男にとっては… 自分の妻と子を守ることと同じくらい… 大事なことなのかもしれない…」



真紅「水銀燈…あなたは、お父様が、アリスを創るためにわたしたちを作ったんじゃなくて…」

蒼星石「僕たちのために『アリス』という存在を創ったと… そう言いたいのかい?」

水銀燈「あくまで… わたしの勝手な考えよ… 真意は、お父様に聞かなければ、わからない…」

ジュン「…」

水銀燈「でもね… 考えてみて… もし、わたしたちに…」


「『アリスを目指す』という物語が無かったら、どうなってしまっていたと思う…?」


ジュン「それは…」



「今からでも、その物語を失くしてしまったら…」 



「わたしたちは、とてもとても、つらい生を送らなければならなくなるでしょうね…」



「生きて生きて… 戦って… 逃げて… 生きて… いつか壊れてしまうだけの…」



「…先にあるものも、後に残るものもない。誰ともつながらない、何も後に残らない…」



「そんな… 恐怖と虚無が続くだけの… 哀れな生を…」
660 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/12(金) 19:55:10.92 ID:UpSLgIo0
ジュン「…」

水銀燈「…ジュン、だから、お願いよ… わたしに何かがあったら…」



「この子たちを… どうか、アリスに導いてあげて…」



ジュン「…ボクが…」

翠星石「チ、チビ人間がですか?!」

真紅「ジュンが… わたしたち全員を?」

水銀燈「そうよ…」グ グググ


ギシッ


水銀燈「彼には… わたしの持つ知識と技術すべてを… 伝えられるだけ、伝えてある…」

真紅「…」

水銀燈「ローゼンお父様には及ばないけれど… あなたたちを導く資格は… 充分にあるわ…」



「みんな、わたしがいなくなったら… 彼の言う事をしっかり聞いて… アリスを目指しなさい…」
661 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/12(金) 19:59:34.55 ID:UpSLgIo0
蒼星石「(ジュン君が… 僕たちを…)」

翠星石「(わたしたちの勘違いが… 現実になりやがったですぅ)」

水銀燈「まぁ… 頼りないのは… やまやまだけどね…」クスクス

ジュン「…」


「わかったよ、水銀燈」


金糸雀「ジュン…」

ジュン「もう何も言わない。 君たちの思うとおりにしてくれ。 ただし…」


「最後のゲーム、ボクも連れて行ってくれ」


水銀燈「見世物じゃ、ないのよ…」

ジュン「何があっても、すべてを見届ける」

水銀燈「…」


「手出しも、口出しもしない。そこで何が起ころうと…」


蒼星石「…ジュン君」

ジュン「だから…」

水銀燈「…わかったわ」



「この子たちを導いていくことを引き受けたあなたには… その義務と権利がある…」



「どうか… しっかり見ていてちょうだい…」
662 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/12(金) 20:05:40.23 ID:UpSLgIo0
水銀燈「さあ、話はこれで終わりよ…」

金糸雀「…」

水銀燈「しっかりと… 決着をつけましょう…」

金糸雀「わかった、かしら…」


トボ トボ


真紅「金糸雀…」

金糸雀「帰らせて… もらうかしら…」

蒼星石「…」


ブゥーーーン…


真紅「あなたたちは、どうするの?」

翠星石「わたしも…」

蒼星石「…僕は、ここにいるよ」

翠星石「へ?」

蒼星石「せっかく来たんだから、手伝いでもするよ。 …翠星石は、どうする?」

翠星石「わたしは… 帰るですぅ」

蒼星石「…そうだね」


ブゥーーン…
663 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/12(金) 20:17:02.84 ID:UpSLgIo0
水銀燈「それじゃ… しばらく、休ませてちょうだい…」

ジュン「…お茶でも、淹れるよ」

真紅「…ええ」

雛苺「水銀燈…」

水銀燈「…」


「ひとりにして…」


雛苺「…」


ガチャン パタン



ジュン「…」

カチャン カタン

真紅「…」

ジュン「(…水銀燈)」

コポコポコポ

ジュン「(…きみ自身はもう、アリスを目指す必要は無い)」

カチャン カタン

ジュン「(けれど… みんなは違う)」

コポコポコポ

ジュン「(なおもアリスを目指し、生き続けなければいけない…)」

カチャン カタン…



(だから… 君は…)
664 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/12(金) 20:23:48.33 ID:UpSLgIo0
真紅「…」コク

雛苺「…」ズズズ

蒼星石「…」コク コク


「…ジュン君」 カタン


ジュン「なんだい?」

蒼星石「…お茶が終わったら、少しつきあってもらっていいかい」

ジュン「…つきあうって?」

蒼星石「きみは水銀燈に剣を教わってたんだろう?」

ジュン「あ、ああ」

蒼星石「真紅からも聞いたんだ」

真紅「…」


【数日前】


ジュン「真紅」 

真紅「何?」

ジュン「…頼みがあるんだ」



「ボクに稽古をつけてほしい」
665 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/12(金) 20:27:23.67 ID:UpSLgIo0
翠星石「け、けいこ? まなぶ君の彼女ですか?」

ジュン「ここのところ、一歩も外に出てないから… 気分を変えたいんだ」

翠星石「(華麗にスルーですかー!?)」ガビーン

真紅「いいけど… 剣でいいの?」

ジュン「…ああ、頼むよ」




ビシッ! バシッ!

ジュン「はっ! やぁっ!」ビュン ブォン!

真紅「くっ! うっ!」ガキッ! ビシッ!

翠星石「真紅、なに手加減してやってるですかー?」

真紅「手加減なんか… してないっ…!」ガキィッ!


(なに… これが、あのジュン!?)


(一撃の速さ、重さ、正確さ… ここまでの水準に達してるなんて!)


(でも、でも… そんなことなんかよりも… なによりも…)




(この剣筋… 覚えがあるっ!)
666 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/12(金) 20:29:36.01 ID:UpSLgIo0
ジュン「いやぁぁぁっ!!」

真紅「(間違いない、これは…!)」



(「真紅ぅぅぅぅっ!!」)



真紅「こ、このっ!!」


ビシイッ!!


ジュン「くっ!」カラン…

真紅「…あっ!」

翠星石「な、真紅! なにやってるですか!!」

ジュン「…平気だよ、これくらい」

真紅「ジュン… あなた…」


(当てずに済ませることができなかった…)


翠星石「ダメ人間が… 強くなってるですぅ…」

ジュン「…さあ、もう一本頼むよ」

真紅「…」



「水銀燈ね?」
667 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/12(金) 20:32:42.75 ID:UpSLgIo0
ジュン「え?」

真紅「あなた… 水銀燈から、戦いの訓練を受けたのね?」

ジュン「…気づいたのか」

真紅「…わからないわけ、ないじゃない! わたしだって、水銀燈に教えを受けて…」 



「そして、彼女と、戦ってきたのよ! ずっとずっと、何百年も!」



ジュン「…」

真紅「なぜあなたが、わたしたちの中に割りこんでくるの!」

翠星石「し、真紅?」

真紅「たかが人間の、子供の癖に…!! わたしたちの絆の中に、なんであなたが!!」

翠星石「真紅っ!!」

真紅「…っ!」


タタタタタ…


ジュン「真紅…」

翠星石「んもう、バカ真紅。 …あんなになっちまうくらいなら翠星石みたいに、最初っから小出しに吐き出してればよかったんです」
668 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/12(金) 20:36:24.96 ID:UpSLgIo0
ジュン「…」

真紅「…」


「ジュン君?」


ジュン「あ…蒼星石」

蒼星石「僕も、君と手合わせさせてもらっていいかい?」

ジュン「君も、ボクに稽古をつけてくれるのか?」

蒼星石「…違う」


「きみが、僕に稽古をつけてくれ」


ジュン「…ボクが君に?? かなうはずないよ」

蒼星石「きみの剣筋は、水銀燈によく似てるって真紅が言っていた」

ジュン「あ、ああ」

蒼星石「なら、わかるだろう」


「仮想、水銀燈戦だよ」


ジュン「…君は」

蒼星石「水銀燈と約束したんだ。 …決着をつけるって」

真紅「…」
669 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/12(金) 20:40:54.74 ID:UpSLgIo0

蒼星石「…頼むよ、ジュン君」

ジュン「…わかったよ」

蒼星石「ありがとう。 じゃあ、庭に…」


ト ト ト ト


真紅「蒼星石…」

雛苺「…」




シュッ ヒュンヒュン チャキッ


蒼星石「ジュン君、準備はいい?」

ジュン「ああ。 …蒼星石は、それでいいのか?」

蒼星石「うん。これでいい」

ジュン「…わかった。 じゃ、いくよ」

蒼星石「手加減しないでね」



ガシィッ!!
670 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/12(金) 20:44:26.12 ID:UpSLgIo0
ガシッ! ヒュン ドスッ!


蒼星石「…やるね、ジュン君!」


ビシッ! ギリギリ… ガスッ!


ジュン「…よく言うよ、動きについていくので精一杯…!」 


ガシッ ビシッ ガッ!


… 


蒼星石「はあ、はあ、はあ…」

ジュン「ふう、ふう… 蒼星石」

蒼星石「なに?」

ジュン「…手加減しただろ」

蒼星石「手加減はしてないよ。小細工を使わなかっただけ」

ジュン「小細工?」

蒼星石「足を止めて、真正面から君と打ち合ったってこと」

ジュン「それにしても…」

蒼星石「きみ、ぼくが人形だってこと忘れてない?」
671 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/12(金) 20:48:30.41 ID:UpSLgIo0
ジュン「え?」

蒼星石「体重だって身長だって、リーチの差だってあるんだよ?」

ジュン「…」

蒼星石「これだけ差があると、正面から打ち合うのはきついよ」

ジュン「そうかな… なあ、蒼星石」

蒼星石「…なに?」

ジュン「その武器…」

蒼星石「ああ、これ?」ヒュンヒュン

ジュン「仮想水銀燈ってことは、庭師の鋏で戦うんだろ?」

蒼星石「そうだよ」

ジュン「じゃあ、なんで棒を2本持って二刀流で戦ったんだ?」

蒼星石「…」

ジュン「蒼星石?」



「内緒だよ」



ジュン「は?」

蒼星石「君だって、内緒にしていることはいっぱいあるじゃないか」

ジュン「…」

蒼星石「金糸雀姉さんに、教えてもらったんだ」



「…本当に本気で、壊すつもりでやらないと、水銀燈を本気にさせられないって」
672 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/12(金) 20:53:01.24 ID:UpSLgIo0
ジュン「そのスタイルが、君の本気って事?」

蒼星石「これ以上は内緒。 …そのうち、見せる機会も来るかもしれない」

ジュン「…来ないほうがいい」

蒼星石「…」


「やっぱり、戦ってほしくはないかい?」


ジュン「当然さ」

蒼星石「でも、僕たちはずっとこうしてきたんだ。…それはわかってほしい」

ジュン「うん…」

蒼星石「それに… 磨いた技を本気でぶつけ合うのは、やっぱり楽しいんだ」

ジュン「…それはわかる」

蒼星石「そう?」

ジュン「いま…君と打ち合うのも、楽しかった」

蒼星石「…」



「僕も、楽しかったよ」



ジュン「…」

蒼星石「ジュン君が…お父様かもしれないって話になったとき、正直複雑だったんだけど」

ジュン「うん?」

蒼星石「こうして、稽古をつけてくれる人がいるのって… 悪くないかもしれない」
673 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/12(金) 21:01:47.41 ID:UpSLgIo0
ジュン「ローゼンは、稽古はしてくれなかったのかい?」

蒼星石「あまり、よくは覚えてないんだけど…」


「お父様は人形師、戦いは専門じゃない。それに、すごく忙しかった」


ジュン「…そうなんだ」

蒼星石「僕らは、戦い方はもっぱら水銀燈に教えてもらってたんだ」

ジュン「真紅もそう言ってたよ」

蒼星石「…」


「僕らは、お父様の思い出はすごく大事にしてるんだ」


ジュン「…うん」

蒼星石「でも… でもね、水銀燈との思い出は… お父様との思い出よりも、よほど多くて…」

ジュン「うん…」

蒼星石「比べるものじゃないけど、同じくらい、大事なんだ…」

ジュン「…わかるよ」

蒼星石「…」


「ジュン君」


ジュン「なんだい?」

蒼星石「少し… いい?」
674 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/12(金) 21:05:34.34 ID:UpSLgIo0
ジュン「え?」


…ヒシッ


ジュン「そ、蒼星石?」

蒼星石「…少しだけで、いいんだ…」

ジュン「…」


…トクン トクン トクン


蒼星石「僕は…」

ジュン「…」

蒼星石「僕は、バカだ…」

ジュン「蒼星石…」


「僕は、お父様に認められたかったんじゃない…」


「僕は… お父様を守れる存在に、満足させられる存在になって…」


「そして、水銀燈に認めてもらいたかったんだ…」


ジュン「…」



「う… うう…っ」



トクン トクン トクン…
675 : [sage]:2009/06/12(金) 21:06:34.69 ID:UpSLgIo0
今日はここまで。 再開はあした。
676 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/12(金) 21:07:53.39 ID:Fy89Qd6o
乙カレー
677 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/12(金) 21:07:59.16 ID:pqkwY0ko
乙でした〜

蒼星石イイヨ
678 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/12(金) 21:11:24.42 ID:/9dglBAo
おつ!
679 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/12(金) 21:13:28.61 ID:tEEQlgUo
おつつ
早く続きがみたいかしらー
680 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/12(金) 21:13:48.08 ID:vkmaRnco
おっつ
681 : [saga]:2009/06/13(土) 18:26:13.54 ID:X3RBpsQ0
乙どうもっす。再開します〜
682 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/13(土) 18:29:10.08 ID:X3RBpsQ0
【土曜日 夜】


カリカリカリ…


ジュン「…」


カリカリ…


ジュン「…」

真紅「…もう、休んだら?」


コロン ギシッ


ジュン「…いよいよ、明日か…」

真紅「…そうね」



(今日は朝から… みんな必死に探してくれたけど…) 




(ついに、雪華綺晶を見つけることは、できなかった…)
683 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/13(土) 18:30:43.08 ID:X3RBpsQ0
ジュン「水銀燈は?」

真紅「隣の部屋にいるわ。今は落ち着いている」…カチャリ キィ

ジュン「…お休み」

真紅「まだ眠らないわ」

ジュン「え? だって、カバンを開けて…」

真紅「ジュン、窓を開けてちょうだい」

ジュン「え… なぜ?」

真紅「雛苺を寝かしつけに行くのよ」

ジュン「えっ?」

真紅「ずっとぐずっていたから、巴の手にはあまるかもしれない」

ジュン「…そうか」


…ガチャリ キィ


のり「…真紅ちゃん」

ジュン「のり? まだ起きてたんだ」

のり「…うん、わたしも眠れなくて。 …ねぇ、真紅ちゃん」



「私も、連れていって」
684 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/13(土) 18:31:39.55 ID:X3RBpsQ0
ジュン「えっ? …どこに?」

のり「みっちゃんさん家。 あしたの準備して… そのまま泊まってくる」

ジュン「…なんでまた、急に…」

真紅「わかったわ。それじゃ、鏡から行くからカバンを持ってちょうだい」

のり「うん。 …それじゃジュン君、行ってくるね」

ジュン「あ、ああ」

真紅「…」


「水銀燈のこと、お願い」


ジュン「…ああ」

のり「何かあったら、すぐ…」

ジュン「わかってる。 大丈夫」

真紅「…」


ブゥーーーーン…





ジュン「…なんだってんだろう」
685 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/13(土) 18:33:26.25 ID:X3RBpsQ0
【nのフィールド】


ヒューーーーン…



のり「真紅ちゃん…」

真紅「…」

のり「…ありがとう」

真紅「…礼を言われることじゃないわ」



(水銀燈「…はあ?」)

(真紅「だから… 貸すって言ってるのよ」)

(水銀燈「貸すって… 何を…?」)

(真紅「何回も言わせないで… 私の契約者を、貸してあげる」)

(水銀燈「…どうしたの…?」)

(真紅「…昨日一晩いっしょにいたから、飽きたのよ」)

(水銀燈「…」)

(真紅「好きにしていいけど、私の契約者だってことは忘れないで」)

(水銀燈「…真紅」)


(「ありがとう」)


(「…ふん」)



真紅「じゃ…」

のり「あ、真紅ちゃん。 …そっちじゃないの」
686 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/13(土) 18:37:13.86 ID:X3RBpsQ0
真紅「え? …みっちゃんさんの家に行くんじゃなかったの?」

のり「うん… ごめんね」

真紅「まあいいわ… どこに行くの?」

のり「うんと、ね…」



【ジュンの家】


…ガチャリ

ジュン「水銀燈…」

水銀燈「…」

ジュン「水銀燈?」

水銀燈「…」


…グ ググ


水銀燈「な… に…?」カク カク…

ジュン「…明日だね」

水銀燈「ええ…」

ジュン「…」

水銀燈「みんなは…?」

ジュン「…出かけたよ。真紅も、のりも」

水銀燈「…そう…(ありがとう…)」



(真紅も… お姉さまも…)
687 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/13(土) 18:46:38.46 ID:X3RBpsQ0
ジュン「なあ… 水銀燈」

水銀燈「なに…?」

ジュン「…きみがあそこまで、『アリスゲームを終わらせる』ことにこだわってた理由」

水銀燈「…」

ジュン「みんなに… 『新しい物語』を用意しようと思ってたのか?」



「『姉妹で戦いあって、たったひとりだけがアリスになる』という物語にかわるものを…」



水銀燈「…」ググ ググググ…


カクン


「そう… よ…」


ジュン「そう、なのか…」

水銀燈「わたしは… あなたたちと… あの子たちのおかげで… それを手に入れた…」



「望んでも… 望んでも、得られないものと… あきらめていたものを…」



ジュン「…『命をつなぐ物語』かい?」
688 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/13(土) 18:49:20.28 ID:X3RBpsQ0
水銀燈「ええ… あの子たちが、わたしのおなかの中にいたときの… あの感覚…」



「わたしの中に… あの子たちがいて… わたしのとなりには… あなたがいて…」



「わたしたちのまわりを… みんなが囲んでくれていた… あの… しあわせ…」



「あの子たちのおかげなのに… わたしひとりだけが… 得てしまった…」 



「あの感覚を… この想いを… わたしは、あの子たちに返したい…」



ジュン「…」

水銀燈「それが… おばあさまから、いただいた… わたしの新しい物語…」

ジュン「…マツさんから?」

水銀燈「そうよ…」




(マツ「あの子たちを立派に育てて、お嫁入りさせなさい」)
689 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/13(土) 18:52:01.21 ID:X3RBpsQ0
ジュン「そうなんだ…」

水銀燈「だから… そんな顔、しないで…」


「わたしはまだ… あきらめてない…」


ジュン「…君は…」

水銀燈「ええ… 生きて、あのしあわせを… もう一度、感じたいもの…」

ジュン「…きっと、できるさ。 …できるとも」

水銀燈「ふふ… ねえ、ジュン…」



「お願い、聞いてくれる…?」



【柴崎家】


柴崎「…」

カチ コチ カチ コチ

マツ「…」

…ボーン ボーン ボーン


柴崎「…わしらも、寝ようかの」

マツ「ええ…」


ブゥーーーーン…


柴崎「おや?」

マツ「あなた…」



のり「…おじゃまします」
690 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/13(土) 18:58:03.93 ID:X3RBpsQ0
真紅「失礼するわ」

柴崎「どうしたのかね?」

真紅「この子が… おふたりに話があると」

マツ「…のりちゃんが?」

真紅「…あのふたりは、どうしてます?」

柴崎「ひとつのカバンで、いっしょに寝とるよ。帰ってきてからすぐ、ずっと…」

真紅「そう… なら、私はこれで」

のり「…ありがとう、真紅ちゃん」

真紅「…それじゃ、おやすみなさい」ブゥーーーーン…

のり「…」


「すみません… 急に押しかけてきて」


柴崎「いや… 構わんよ、ゆっくりしていきなさい」

マツ「…あしたのこと、なんでしょう?」

のり「…はい」

柴崎「おまえさんたちばかりに、苦労をかけてしまったの」

のり「…」

マツ「…のりちゃん?」



「…ジュン君は、とってもがんばってるんです」
691 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/13(土) 18:58:12.32 ID:uJMAq0co
昨日から読み始めて前スレからココまで全部読んだ
原作読んだことはほとんど無いけど設定その他は知ってる俺でも楽しめるthx
692 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/13(土) 19:00:34.47 ID:X3RBpsQ0
柴崎「…」

のり「すごくすごく… ほんとに命がけで… 銀ちゃんのために… みんなのために…」


「銀ちゃんも… 真紅ちゃんも… みんなみんな、頑張ってるんです…」


「あんなに… あんなに頑張ってるのに…」


「なんで… こんなことに…」


柴崎「…のりちゃん」

のり「わたし、変ですね… 何言ってるのか、自分でもわからない…」


「でも… でも…」


マツ「…」

ギュッ

のり「あ… マ、マツさん…」


「…お泣きなさい」


のり「…え?」


「…いっぱい、いっぱいお泣きなさい」


のり「…」




「みんなも頑張ってるけれど… あなたこそ、みんなのために頑張ってきたでしょう?」
693 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/13(土) 19:06:34.81 ID:X3RBpsQ0
のり「そんな…わたしは…」


マツ「あなたには、あの子たちのことを悲しむ資格があるわ…」


のり「…わたし…戦うこともできなかったのに…」 


柴崎「…」


のり「あの子たちを治すこともできなかったのに… いいんですか…?」


マツ「いいのよ。 あの子たちだって、絶対そう言うわ」


「あなたはジュン君の、銀ちゃんの… みんなのお姉さんだもの」


「…」


(どうか、おおさめになってください。 お金になるはずです)


「う…」


(…わたし、一度でいいから「妹」になってみたかったの…)


「うえ…」 


(ああっ、お姉さまっ! 一生ついていくわ〜♪)


「うう… ううぅ… うぇぇぇん…」


(あなたは… ジュンをダメにしたんじゃない)



のり「銀ちゃん… 銀ちゃん…」

マツ「…」ナデ ナデ
694 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/13(土) 19:08:04.46 ID:X3RBpsQ0
【巴の家】


巴「…」

真紅「…」


雛苺「…くぅ…くぅ…」


巴「(やっと、寝てくれた…)」

真紅「(案の定だったわね…)」


雛苺「ん…」


「水銀燈…」


真紅「…」

巴「…」



雛苺「死んじゃ… ダメ…」
695 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/13(土) 19:10:24.61 ID:X3RBpsQ0
真紅「…巴」

巴「…なに?」

真紅「…もし、私が」


「もし私が水銀燈を殺してしまったら… あなた、どうする?」


巴「…」


「あなたを叩いて… なじって… わんわん泣くと思う…」


真紅「…」

巴「そして…仕返しされる」

真紅「仕返し?」

巴「きっとあなたも… 泣いて、泣いて… 私をなじる」


「『あなたなんかに、なにがわかるの』って…」


真紅「…」

巴「いっぱい泣いて… 叫んで… わめいて… そして…」




「いつかは… 思い出になってしまうんだろうなって、気がする…」
696 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/13(土) 19:13:44.30 ID:X3RBpsQ0
真紅「…」


「わたしたちは、ずっとずっと…アリスゲームにあけくれてきた」


巴「…うん」

真紅「姉妹を傷つけ… 打ち倒し… 壊してきた」


「けれど… 結晶が抜けた後の体を、粉々にしてやろうなんて誰も考えもしなかった…」


「そうして二度と再生できないようにしてやろうなんて… 水銀燈や雪華綺晶、薔薇水晶でさえしなかった」


巴「…真紅」

真紅「アリスゲームは… やっぱり『ゲーム』だったのね…」

巴「…」

真紅「…」


ガクガクガク…


巴「?…」


真紅「(…怖い…)」


ブルブルブル…
697 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/13(土) 19:16:56.69 ID:X3RBpsQ0
(あの、憎たらしい水銀燈が…)


(嫌われ者の水銀燈が…)


(いやになるほど強くて、汚くて…) 


(そして美しくて誇り高い「あの」水銀燈が…)


(ほんとうに… ほんとうに…?)


ガクガクガク…


(いや… 怖い… 怖いよ…)


(助けて、お願い… お父様…)



(…お母様…)



ガクガクブルブル…


巴「…」ギュッ
698 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/13(土) 19:20:22.64 ID:X3RBpsQ0
【みつの家】


みつ「…」

金糸雀「…」

…ゴソゴソ

みつ「…」


「やっぱり、眠れない?」


金糸雀「…」


…コクン


みつ「そうだよね…」

金糸雀「…」



(いよいよ… 明日…)
699 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/13(土) 19:28:26.37 ID:X3RBpsQ0
(ついに… 雪華綺晶も、槐さんも見つけられなかった…)


(あと、水銀燈を助けられるのはひとりだけ…)



(あの方だけ…)



みつ「…大丈夫?」

金糸雀「え… ええ(みんなと… 相談してみようかしら…)」



(…)



(翠星石「早く… 終わってほしいです、こんなこと…」)


(真紅「この…このジャンク!」)


(蒼星石「…アリスゲームを再開させる」)


(雛苺「いやああああっ! だめぇっ!! 水銀燈っ!!」)



(…)




(わたしが…)




(わたしが…やるしかない…)
700 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/13(土) 19:32:45.70 ID:X3RBpsQ0
【ジュンの家】


ジュン「…お願いって、なに?」

水銀燈「ふふ…」カク カクカク



「わたしの体を… きれいにして… くれる…?」



ジュン「…君の体を?」

水銀燈「ええ… きれいな… 体で… 臨みたいのよ…」

ジュン「わかった。 …服を脱いで」

水銀燈「脱がせて… ちょうだい…」

ジュン「…うん」



シュル シュル シュル…



パサリ



水銀燈「…ありがとう、それじゃ… お願い…」

ジュン「…」




「すごく、きれいだ」
701 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/13(土) 19:37:00.55 ID:X3RBpsQ0
水銀燈「…え?」

ジュン「きれいだよ、きみの体」

水銀燈「何言ってるの… お世辞が、過ぎるわ…」

ジュン「お世辞なんかじゃない」

水銀燈「こんな… ヒビだらけの体の… どこが…」

ジュン「みんなを守って、ついた傷だよ」

水銀燈「…」


「哀れみは… ごめんよ…」


ジュン「ほんとうに、きれいだと思ったんだ。 …きみの言葉を借りるけど」

水銀燈「わたしの言葉…?」


「深い森の奥に眠る古木のように、永き時を閲した遺跡のように、そして…」


水銀燈「…」


「人生をその身に刻みつけたお年寄りのように、いまの君はきれいだと思う…」


水銀燈「失礼ね… わたしまだ… 少女のつもりなのよ…」クスクス

ジュン「君はもう、少女じゃない」

水銀燈「…」

ジュン「きみは大人の女性… いや、母なんだ」

水銀燈「母…?」

ジュン「そう。きみは今、きみがずっとあこがれていた存在になったんだよ」



「まさにきみは、『マリア』になったんだ…」
702 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/13(土) 19:39:42.82 ID:X3RBpsQ0
水銀燈「…ふん、いやらしいわね…」


「きれいな言葉を… ならべたててみせて…」


ジュン「…」

水銀燈「中身の無い… なぐさめなんて、いらない…」

ジュン「そうだね」


…キュッ


水銀燈「…あっ」

ジュン「わかったよ、水銀燈」

水銀燈「え… ち、違う… わたし…」


…ギュッ


ジュン「…じっとしてて」 

水銀燈「わたし、そんな… つもりじゃ… だ、だめ…」

ジュン「…」カチリ


…フッ
703 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/13(土) 19:41:39.41 ID:X3RBpsQ0
水銀燈「あ、明かりを…」

ジュン「…力を抜いて」

水銀燈「あ…」



「…」



「あ… やめ…」



「やめて… お願い…」



「だめ… わたし…」



「壊れ… ちゃう…」





「……」




ああ… みんな…
704 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/13(土) 19:43:07.95 ID:X3RBpsQ0
みんな… ごめんね…



わたし…



みんなからもらったものを…



自分がしなければならないことを… 忘れてはいない…




でも… 



でも、わたし、いま… 



わたし… わたし、このひとの腕の中で… このまま…





こっぱみじんに… 砕け散ってしまいたい…




……
705 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/13(土) 19:45:14.63 ID:X3RBpsQ0
【翌朝】


チチチ…


水銀燈「…」

ジュン「…ぐー…」


チチ チチチ…


水銀燈「…」ムクリ

ジュン「…すぅ…すぅ…」

水銀燈「…ふふ」


…チュ


水銀燈「…準備を、してこなくちゃ… ね…」


シュル シュル キュッ


ブゥーーーン…


水銀燈「来たわね…」

金糸雀「…水銀燈」
706 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/13(土) 19:47:53.63 ID:X3RBpsQ0
水銀燈「いいわよ… 連れていってちょうだい…」

金糸雀「わかったかしら… 水銀燈?」

水銀燈「…なあに…?」

金糸雀「あなた、顔…」

水銀燈「あ… これ…?」

金糸雀「ジュンに治してもらうって、言ってたんじゃなかったかしら?」

水銀燈「…もう、いいのよ」

金糸雀「???」




「わたし、もう、いいの…」



金糸雀「…」
707 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/13(土) 19:51:03.90 ID:X3RBpsQ0
【nのフィールド 秘密の花園】


水銀燈「ありがとう… 金糸雀」

金糸雀「それじゃ、わたしたちは鏡を持って、さきに出発してるかしら」

水銀燈「準備ができたら、メイメイを寄こすから…」

金糸雀「…なにかあったら、すぐに報せてほしいかしら」

水銀燈「ええ…」

金糸雀「…くれぐれも、気をつけて」

水銀燈「…金糸雀」

金糸雀「…なにかしら?」



「ありがとう… ごめんね…」



金糸雀「…」



「…がんばって、水銀燈」



ヒューーーーーン…



(がんばって… あとすこしだけ…) 



(わたしが、なんとかするから…)



(水銀燈…)
708 : [sage]:2009/06/13(土) 19:53:31.69 ID:X3RBpsQ0
今日はここまで。 続きは明々後日以降です。
>>661 支援どうもでした〜
709 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/13(土) 19:54:12.30 ID:bGb47cso
乙〜
710 : [sage]:2009/06/13(土) 19:54:30.50 ID:X3RBpsQ0
ミスったorz
>>691どうもっす。
711 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/13(土) 19:58:40.35 ID:uJMAq0co
これからも楽しみにしてるから
>>1頑張れ
正直原作とかアニメの後日談 アナザーストーリー パラレルワールド的な感じで
楽しませてもらってる。
712 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/13(土) 20:25:52.91 ID:Y2Ym2DQo
おつ!
713 : [sage]:2009/06/13(土) 21:06:24.25 ID:X3RBpsQ0
>>709 >>712
乙どうもでっす。

>>711
ほめてもらってどうもです〜
書いている本人はそんな大それたことは考えてませんが…
多くの人造人間譚がそうであるように、ローゼンメイデンもまた「命とは、生きるとは何か」を問いかける物語のような気はしてます。
今後ますます暴走するかもしれませんが、どうか懲りずにお付き合いください。
714 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/13(土) 23:17:49.35 ID:yOFWqqAo
おっつ
715 : [saga]:2009/06/14(日) 12:55:45.04 ID:ODkPmRU0
乙どもっす。予定が変わったので、投下します。
毎度あてにならなくてすいません。
716 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/14(日) 12:56:52.96 ID:ODkPmRU0
【ジュンの家】


「ぐー…」


ユサユサ


「ん…」


ユサユサ


「ジュン、そろそろ起きるかしら」


「…カナ」


…ムクリ


「ひゃああああああっ?!」


ジュン「…なんだよ」

金糸雀「ふっ、服を着てっ! 前を隠してっ!!」

ジュン「あ… ごめん」


ゴソゴソ
717 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/14(日) 12:57:50.97 ID:ODkPmRU0
金糸雀「(み…見えてしまったかしら…)」ポワポワ

ジュン「着替えるから、ちょっと出ててよ」

金糸雀「はっ、はいっ!」ピュー


バタン!!


金糸雀「(水銀燈… ジュン…)」


(あなたたち… やっぱり…)


ジュン「金糸雀」

金糸雀「な、なにかしらっ?!」

ジュン「水銀燈は、もう出かけたのかい?」

金糸雀「え、ええ…」

ジュン「昨日、水銀燈から聞いたんだ」シュ シュッ



「君が迎えに来てくれるから、先に準備してるって」
718 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/14(日) 12:58:40.03 ID:ODkPmRU0
金糸雀「うん… さっき『秘密の花園』に送っていったかしら」

ジュン「そんな奥まで?」

金糸雀「…ひとりで、やりたいことがあるって言ってたかしら」

ジュン「大丈夫かな…」

金糸雀「…メイメイもピチカートもついてるけど、たまに様子を見に行くかしら」

ジュン「頼むよ。 …」


「(…胸騒ぎがする)」


チャリ…


「(…念のため)」



ガチャリ


ジュン「お待たせ。準備できたよ」

金糸雀「みっちゃんが、他のみんなをむこうに送ってからこっちに来てくれるはずかしら」

ジュン「うん…」


ガチャン パタン
719 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/14(日) 12:59:25.35 ID:ODkPmRU0
【秘密の花園】


ヒュウウウウウ…


水銀燈「…」カリ カリ カリ…


サワ…  サワ…


水銀燈「…」カリ カリ カリ…


サワ… サワサワ…


水銀燈「…」


(やっと半分…)


水銀燈「…」クイ クイクイ


…ギシッ


水銀燈「文字を書くのも… きつくなってきたわね…」


ヒュウウウウ…
720 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/14(日) 13:00:43.36 ID:ODkPmRU0
(でも… あと少し…)


カリ カリ カリ


(こういうことは、ちゃんとしておかないと…)


カリ カリ カリ


(形のあるものにして、残しておかないとね…)


…カタン


水銀燈「…ふう。 できれば… すこしでも、書きためておきたかったけど…」



サワ サワサワ…



「でも…みんなに見られたくは… なかったからね…」 


カリ カリ カリ…


「あの子たちへの分は… これでよし、と」



【Eigenhändiges Testament】
721 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/14(日) 13:01:56.58 ID:ODkPmRU0
「次は… みんなへの分ね…」



カサカサ



「…日本語だと… なんて… 書くんだったかしら…」



「…確か…」



カリ カリ カリ



【遺言状】



「…さ、あと少し…」



カリ カリ カリ…



【車内】


ブルルルルル…


ジュン「…ありがとうございます」

みつ「いいのよ、じゅんじゅん。 …」

金糸雀「…みっちゃん?」

みつ「水銀燈は… 大丈夫?」

ジュン「…」

金糸雀「向こうについたら、様子を一回見てくるかしら」
722 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/14(日) 13:02:58.59 ID:ODkPmRU0
みつ「うん… お願いね。 できれば送ってあげたかったんだけど」

金糸雀「車に揺られるより、鏡を通っていったほうが楽だって言ってたかしら」

みつ「そう…」

ジュン「…」

金糸雀「(…けれど… よかった…)」



(どうやって… 水銀燈とみんなをひき離そうかと思っていたから…)



みつ「金糸雀?」

金糸雀「…なにかしら」

みつ「何を話してくれるのかって、言ってた?」

金糸雀「…ううん、なにも」

みつ「そう…」

ジュン「(…なんだろう)」



(胸騒ぎが、やまない…)
723 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/14(日) 13:03:37.13 ID:ODkPmRU0
【秘密の花園】


ヒュウウウウ…


水銀燈「…」カリカリカリ…


…カタン


水銀燈「ふう… 疲れた」


カサカサ



(12通… やっと書きあがった)



「…それじゃ、メイメイ…」







「メイメイ?」
724 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/14(日) 13:04:52.34 ID:ODkPmRU0
…チカ チカ



(…警戒してる?)







(…?) 



(まわりから、音が消えた…)



シュル シュル シュル…



(…!)



シュル シュル シュル シュル…



(この感じ…)




…♪London Bridge is falling down,
725 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/14(日) 13:06:19.42 ID:ODkPmRU0


(そう…)



…Falling down, Falling down.



シュル シュル シュル…



(来たわね…)



…London Bridge is falling down,



(やっと… 来たのね…)



「…My fair lady.」


…ボゥッ


「…雪華綺晶」
726 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/14(日) 13:07:06.08 ID:ODkPmRU0

水銀燈「遅かったわね…」



雪華綺晶「…」



シュル シュル シュル…



水銀燈「…待ちくたびれたわ…」



雪華綺晶「…」



シュル シュル シュル…



水銀燈「…」



「雪華綺晶?」



「…」
727 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/14(日) 13:08:01.08 ID:ODkPmRU0
シュル シュル シュル…



水銀燈「…あなた…」



雪華綺晶「…」



「どういうこと?」



水銀燈「え…?」

雪華綺晶「アリスゲームを… 再開するって…」

水銀燈「…」

雪華綺晶「そんなボロボロの体で… わたしたちに勝つつもりなの?」

水銀燈「…」

雪華綺晶「くっくっくっく…」


…ザワッ


雪華綺晶「ふざけたことを… 自殺でもするつもり?」
728 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/14(日) 13:09:16.50 ID:ODkPmRU0
水銀燈「…」



「あなたに殺されるなら、悪くないわね…」



雪華綺晶「…なにを言っているの? あわれなジャンクが…」

水銀燈「…渡しておくわ」…カサ

雪華綺晶「なに、これ…?」カサッ



【Eigenhändiges Testament】



雪華綺晶「これ…」



【Liebe SchneeKristall】



水銀燈「あとで、ゆっくり読んでおいてちょうだい…」

雪華綺晶「…」
729 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/14(日) 13:10:26.60 ID:ODkPmRU0
水銀燈「雪華綺晶?」

雪華綺晶「何度言ったら… わかるの…?」



「ふざけるのも、いいかげんにしなさい!!」



水銀燈「…」



「ふざけてるのは… あなたのほうでしょう…?」ニヤリ



雪華綺晶「…あなたは…」



「泣いているわたしを… 抱きしめてくれた…」



水銀燈「…」



「わたしがいなくなれば… さがしてつかまえてくれた…」
730 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/14(日) 13:11:40.90 ID:ODkPmRU0


「歌を歌ってくれた… 本を読んでくれた…」



「ずっとずっとひとりぼっちだったわたしを… いつまでもいつまでもなぐさめてくれた…」



「そんなあなたを…数百年の孤独を埋めてくれたあなたを、わたしに殺せって言うの?!」



水銀燈「イタズラが… 過ぎたからよ…」

雪華綺晶「…」

水銀燈「ほんとうに… もうダメだって… 思ったんだから…」

雪華綺晶「…あなた…」

水銀燈「でも… よかったわ…」



「あなたが… 無事で… いてくれて…」



雪華綺晶「…」
731 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/14(日) 13:13:45.95 ID:ODkPmRU0
水銀燈「ほんとうに、よかったわ…」

雪華綺晶「…お…」



「お母さまっ…!」 …フワッ



水銀燈「お帰り… 雪華綺晶」

雪華綺晶「ああ、お母さまっ…! ごめんなさい… ごめんなさい!」

水銀燈「もう、ほんとうに… 危なかったのよ…」

雪華綺晶「ごめんね… ごめんね…!」

水銀燈「おまけに、あんなイタズラまで…」

雪華綺晶「だって… 心細かったんだもの…」

水銀燈「霊体じゃなかったら、おしおきしてるところよ…」

雪華綺晶「…ほんとに、ごめんね…」

水銀燈「そうだ… もう一回、わたしの… 心の中に、入りなさい」

雪華綺晶「え?」


「おしり… ペンペンして… あげるから」ニヤー


雪華綺晶「…それはやだ」

水銀燈「ふふ、まったく… もう…」

雪華綺晶「…えへへ」
732 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/14(日) 13:15:29.70 ID:ODkPmRU0
水銀燈「でも… なぜ、こんなに… 遅くなったの…?」

雪華綺晶「…」

水銀燈「雪華綺晶?」


「逆らえなかった」


水銀燈「…誰に?」

雪華綺晶「お母さまが『マリア』になるまで、絶対手を出しちゃいけないって」

水銀燈「それは…誰なの?」

雪華綺晶「でも… もう、ガマンできない!」


「このままだと、ほんとうにお母さまが死んじゃう…!」


水銀燈「…あなた…」

雪華綺晶「お母さま、私といっしょに来て! なんとか、なんとか頼んでみる!!」

水銀燈「いったい誰なの? まさか… お父様なの?」

雪華綺晶「違うっ!」



「あんなヤツ、お父様なんかじゃないっ!!」
733 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/14(日) 13:18:20.61 ID:ODkPmRU0
水銀燈「…雪華綺晶?!」

雪華綺晶「あいつなんか、違う! あんなヤツなんか…」


「あいつは、心を持って無い! お母さまのことも、わたしのことも、なんとも思ってないの!!」


水銀燈「…いったい…」

雪華綺晶「ごめんなさい… 言えなくて… でも、いっしょに来て!」



「お母さまが『マリア』になれなくてもいい! だから、治してもらう!!」



水銀燈「…」

雪華綺晶「だから… いますぐわたしと一緒に来て!!」






「それでは困るの」
734 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/14(日) 13:19:54.21 ID:ODkPmRU0
水銀燈「?!」

雪華綺晶「な… 誰?!(わたしが気づけないなんて?!)」



「やっと見つけたでな… おとなしくしてもらおうかの」


パカリ


…ギュォォォォォ


雪華綺晶「な?!」


ギュゴゴゴゴゴ


雪華綺晶「ひ… 引きこまれる?! こ、このっ!!」


ズワァァァァァッ!!


「無駄じゃよ」


ギュゴゴゴゴゴゴ


雪華綺晶「な… 茨までも!! 力が…吸いこまれる…!」


「(こんな、まじないに頼るのは気が進まなかったんじゃが… 効果てきめんじゃの)」


ギュゴゴゴゴゴゴゴゴ
735 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/14(日) 13:21:09.53 ID:ODkPmRU0
雪華綺晶「ああ… だめっ…!!」


「(悪霊封じの『鏡の箱』… 半物質半霊体、物理攻撃も精神攻撃も効かんこやつにはうってつけのオモチャじゃわい)」


雪華綺晶「あああ… お母さま…!!」

水銀燈「雪華綺晶!!」


ビュゴゥ!


…パタン


「お騒がせしましたな」


(く、くそっ! ここから出せぇっ! …お母さま?!)


水銀燈「貴様…!」



(錬金術師「自動人形ごとき、わしの相手になるか」)

(錬金術師「まぁよいわ、動けまい。…ええぞ、兵を突入させい。荷台の火もはよう消せ」)



水銀燈「あの時の…!!」
736 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/14(日) 13:23:31.05 ID:ODkPmRU0
(お母さま、お母さま?! …ああ… ダメ、聞こえてない…!)

錬金術師「ほほ、覚えておいてもらえたとは光栄じゃの」パチン

(お母さま、逃げて!! 戦っちゃだめ!!)


ザザザザザッ!


水銀燈「な… こいつらは…!」

歩兵「…」チャキッ

弓兵「…」ギリギリギリ

錬金術師「(兵馬俑展に偽装して、この地にこいつらを持ちこむのは苦労したわい)」

水銀燈「貴様… 何を…!」

錬金術師「まあ、落ち着きなされ。話し合いましょう」

水銀燈「…わたしの子をかどわかし、兵でとりかこみながら… よくもぬけぬけと…」

錬金術師「こうでもせんと、話を聞いてはくれんと思ったのでな」スッ…


…ペコリ


「わがはいは『レイ』と申す」
737 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/14(日) 13:24:49.40 ID:ODkPmRU0
水銀燈「レイ…?」


「まさか、あの『青髭公』だとでも言うの…?」


レイ「いかにも」

水銀燈「…錬金術、果ては黒魔術に手を染め、自らの実験のために100人とも1000人とも言われる子供を手にかけた…」

レイ「ほほ、人にはそう伝えられておるがの」

水銀燈「違うと… いうの…?」

レイ「わしは、ひとりも殺してなどおらん」

水銀燈「…?」

レイ「ほれ、子供たちならここにおるではないか」

水銀燈「…! まさか…」


歩兵「…」

弓兵「…」


レイ「そう。 みな、わしのかわいい子供たちじゃて」

水銀燈「(…こいつ…狂っているの? それとも…)」



(本気で言っているの…?)
738 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/14(日) 13:27:04.15 ID:ODkPmRU0
水銀燈「目的は… やはり…」

レイ「おっと、勘違いはなさらないでくだされ」

水銀燈「…」

レイ「わがはいは、あなたがいっしょに来ていただければ、それでよいのです」

水銀燈「…」

レイ「わがはいの研究に協力してくだされ。この子たちに…」


「もとの人間のような、心をとりもどすための」


水銀燈「…なんですって?」

レイ「罪の償いをしたいと思っておるのですよ… わがはいが殺されることになろうとも」

水銀燈「(臭うわね…)」 


(プンプンするわ… でも…)


レイ「あなたがたを壊しはしません。親子ともども、暮らせるようにしますのでな…」


(わたしは… 死ぬわけにいかない… 本当のことを言ってるのだとしたら)


レイ「手荒なまねはしたくないのです。どうか、いっしょに来てはいただけますまいか」




(いちかばちか… 命乞いでもしてみようかしら?)
739 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/14(日) 13:28:04.93 ID:ODkPmRU0
水銀燈「…」

レイ「(…迷っておるかの。 ウソは、ついておらんからな)」


(壊しはせんとも。全身を機器につなぎ、結晶が本体に与える影響を逐一観察したいのでな)


(だから… 本体にも結晶にも、なるべく傷はつけとうない)


(「御子」をうまく捕らえられたのは幸いじゃった… きゃつがいる限り、ほかの人形を手に入れても意味が無いからの…)


(結晶の再生がなされたと思いきや、姿をくらましてしまって… どうなることかと思ったわい)


(「聖母」も覚醒しておらん今が好機じゃて…)


水銀燈「…」

レイ「…いかがですかな」


歩兵「…」チャキッ

弓兵「…」ギリギリ…


水銀燈「とりあえず… その物騒なものを… 下げたらどうなの…?」
740 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/14(日) 13:29:11.49 ID:ODkPmRU0
レイ「わしも、命は惜しいのでな」

水銀燈「…用心深いのねぇ…」

レイ「相手が『水銀燈』ですからな…」

水銀燈「…ふん」


…ギシッ


水銀燈「そこまで… 知っているのに… あんなザコを差し向けたの…?」

レイ「なんのことですかな?」

水銀燈「とぼけなくっても… いいわよぉ…」


「あの… 悪趣味な生き人形よ…」


レイ「…ああ、あれですか…(さすがに、とぼけられぬか…)」

水銀燈「下品な客を寄こしてくれたわね… 掃除が大変だったわぁ」

レイ「申し訳なかったですのぉ(…下手に隠さないほうが、得策かの)」

水銀燈「おまけに… そいつの妻とか子とかいうのまで来たんだから…」

レイ「…ほう?」

水銀燈「まぁ、相手じゃなかったけれどねぇ…」


クスクスクス…
741 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/14(日) 13:31:25.50 ID:ODkPmRU0
レイ「それは知らなんだ」

水銀燈「…嘘でしょう?」

レイ「いや… それは本当にあずかり知らんこと」

水銀燈「…へぇ…本当に?」

レイ「確かに。 …いま、はじめて聞いた話ですじゃ」

水銀燈「…大変だったのよぉ」


「夫の、父親のかたきだとか… 言われてね…」


レイ「それは、災難でしたな。 あんな…」

水銀燈「…」

レイ「(…おっと)」


(…しまったか?)


水銀燈「…」




「あんな?」
742 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/14(日) 13:32:35.94 ID:ODkPmRU0
レイ「あんな… あんな、あなたとは比べ物にならん下等な生き人形ごときに…」


クスクスクス…


水銀燈「夫の、父のかたきを打とうという人形のことを、『あんな』って言えるのね…」

レイ「…」

水銀燈「それで… この兵隊どもを…『この子たち』ですってぇ?」

レイ「…」

水銀燈「わたしたちを…親子ともども暮らせるように、ですって…?」


「…くっくっく、おもしろいわねぇ…」


レイ「(…ダメじゃな、これは)」

水銀燈「笑わせて… くれるわぁ…」

レイ「…残念じゃよ」カチカチカチ


ブ―――ン…


水銀燈「ぐっ…!?」
743 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/14(日) 13:33:52.71 ID:ODkPmRU0
雪華綺晶(あれは…! だ、だめっ!逃げてぇっ!!)

レイ「結晶を痛めるから、あまり使いたくなかったのじゃが」

水銀燈「ぐ…」


カクン



(お… お母さまっ!!)



レイ「さて…動けまい。 丁重にお連れしろ」

歩兵「…」


ザッ ザッ ザッ…


レイ「傷をつけんようにの…」


ザッ ザッ ザッ…


雪華綺晶(だめ、だめぇっ! くそ、出せっ! わたしをここから出せっ!!)


…グイッ


ベキッ!!
744 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/14(日) 13:36:34.87 ID:ODkPmRU0
レイ「うおっ!?」

歩兵「!!」


ビュン グシャッ!


歩兵「…!!」

レイ「し、しまった! 振動機が!!」


「くくくくく…」


レイ「き、貴様!」

水銀燈「話が通じなかったら、問答無用ね…」

レイ「く…」

水銀燈「なにが話し合いよ…! ほんっとうに面白いわねぇ!!(…これは…)」



(どうやら…わたし…)



(…ここまでのようね…)



水銀燈「そんなガラクタ… 効かないって、知ってるはずでしょう…?」

レイ「な…なんと?!(出力は倍以上にしておるのじゃぞ?!)」

水銀燈「その子を… 返してもらうわよ…!!」

レイ「く、くっ! ものども、かかれ!」


ザザザザザッ!!
745 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/14(日) 13:39:07.44 ID:ODkPmRU0
雪華綺晶(だ… だめ! お母さま、無理しちゃだめっ!!)

レイ「こ、この子の命が惜しければ言う事を聞け!」

雪華綺晶(な?! こ…このっ?!)

水銀燈「くっくっくっく…!!」


ビキビキビキ…


レイ「は、話を聞け!」

水銀燈「その箱は…悪霊封じの鏡の箱でしょう…?!」

レイ「な?!(知っておるのか!!)」

水銀燈「『どうしても滅ぼすことのできない相手』を… 封じるための!」

レイ「(だ… だめか?!)何をしておる、かからんか! 取り押さえろ!!」

歩兵「…」

レイ「ええい、多少傷をつけてもかまわんっ!」


ザザザザザッ!!


水銀燈「ふふふふふ…」 




「あははははははははっ!」
746 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/14(日) 13:40:48.97 ID:ODkPmRU0
レイ「な…?!」 

水銀燈「ありがとうねぇ…!!」

レイ「な、なんじゃと?!」



ビキビキビキ…!!



水銀燈「ありがとうって、言ったのよ…!」

レイ「な…なにを言っておる?!」

水銀燈「だって… だってねぇ…」



バキバキバキバキ!!


レイ「な、なんじゃあ?!」

雪華綺晶(…!? お母さまっ!!)



ズワァァァァァ…!!
747 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 [saga]:2009/06/14(日) 13:45:35.74 ID:ODkPmRU0
レイ「な…!」


グシャグシャバキバキバキッ!


レイ「うぉっ?!」

歩兵「!!」

弓兵「…!!」


「ザコどもは…下がってなさい…!!」


レイ「ぜ…前列が一瞬で?!」

雪華綺晶(お母さま! だめぇっ!!)

レイ「なんだあれは、翼なのか?! お、大きすぎる!」

水銀燈「青髭公、感謝するわ!」

レイ「な、なんじゃとっ?!」

水銀燈「あなたは… あなたは、わたしに!!」



(柴崎「子供のために死ねるというのは、親としては―」)





「『最高の死に方』を、わたしにくれるっていうんだからねぇ!!!」





○水銀燈がドールたちの『母』になるようです【遺言編】 完

これにて第2部を終了します。ご観覧ありがとうございました。
第3部は明後日より投下予定です。観覧・支援に感謝します。
748 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/14(日) 13:48:22.39 ID:71Zmkv.o
おつつ
俺のきらきーがようやく来たな
大ピンチだけど
749 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/14(日) 13:49:26.66 ID:IpJ5S3Uo
>>1
750 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/14(日) 13:53:00.01 ID:qwSnWEso
銀ちゃぁぁぁぁあぁぁっん!!!!!!11
751 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/14(日) 14:21:18.01 ID:udF1Bpoo
ラストまで応援し続ける
銀様どうでもよくなったから>>1よ結婚してくれ。
そして嫉妬した銀様が来るというシチュを俺に!!
あぁああああ銀様愛してるうううううううううううううううううううううううう
752 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/14(日) 15:26:28.47 ID:D9STOqko
おっつ
753 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/14(日) 17:04:45.14 ID:hpMGsV2o
ピチカー党だったのにいいい??
大人しく水銀党に入ります
754 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/14(日) 17:35:32.36 ID:ntLtZ6.o
おつ!
755 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/15(月) 21:27:31.77 ID:.fbUmUQo

ガンバレー期待してる

是非とも銀様には生き延びて欲しい

後、錬金術師[ピーーー]、氏ねじゃなくて[ピーーー]
756 :1 [sage]:2009/06/16(火) 11:29:35.99 ID:6AkgvgE0
>>748
きらきーが早くおしりペンペンしてもらえるように頑張ります〜

>>749 >>752 >>754
おつどもっす〜

>>750
ごめんなさいとしか…

>>751
応援どもっす〜
あと俺専用カスタム銀ちゃんは俺の物(謎

>>753
おいらはピチカー党員ですってば。
この物語は「金糸雀から見た水銀燈の物語」だと思ってます。

>>755
応援どうもっす。
銀ちゃんについては…幸せになってほしいとしか…
757 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/16(火) 11:31:20.22 ID:6AkgvgE0
それでは投下します。




どうか、彼女の心が安らかならんことを。
758 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/16(火) 11:33:20.74 ID:6AkgvgE0
【河川敷】


ブルルルルル… キキッ


みつ「さ、ついたわよー」

ジュン「…ありがとうございます」

金糸雀「いざ、出陣かしら!」


バタン バタン


巴「あ、ジュン君」

のり「いらっしゃーい。 みっちゃんさん、金糸雀ちゃん、ありがとう」

みつ「大丈夫よー。 柴崎さん、今日はありがとうございます」

柴崎「いやいや。でも、意外と近くにこんないいところもあったもんじゃの」

マツ「ほんとうに。静かで、人も少なくて…」

みつ「ここなら、あんまり人目にもつきづらいですからね…」



(―永遠の安息をかれらに与え 絶えざる光をかれらの上に照らしたまえ)
759 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/16(火) 11:34:48.75 ID:6AkgvgE0
(みつ「…かれらの安らかに憩わんことを」パラパラパラ…)

(水銀燈「…アァメン」)



みつ「…」

ジュン「みっちゃんさん?」

みつ「あ、ごめんね。 車からテーブル持ってくるね」

金糸雀「はーい、お待たせかしら!」


…ヨタヨタ


みつ「…か、カナ?」

ジュン「どうしたんだよ…」

金糸雀「荷物は、これで最後かしら?」

ジュン「なにも、ひとりで持ってこなくてもいいのに…」

金糸雀「えっへん、こんなのお安い御用かしら!」

みつ「ほんとに、もう。カナったら…」



「今日の荷物の積みこみも、一人でやってくれちゃったの」
760 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/16(火) 11:35:49.66 ID:6AkgvgE0
金糸雀「これっくらいはやって当然かしら!」

ジュン「もう、無理しないでよ」

金糸雀「ぜーんぜん無理じゃないってば! じゃ、水銀燈を呼んでくるかしら!」

ジュン「鏡は?」

金糸雀「車の中かしらー!」

トテテテテ

みっちゃん「…じゃ、準備しましょ。 みんなも待ってるし」

ジュン「うん…」




(なんだろう… この感じ…)



トテテテテ バタン

金糸雀「…」



ブーーーーーン…
761 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/16(火) 11:37:00.22 ID:6AkgvgE0
【nのフィールド】



…トテ トテ


金糸雀「…」


…ゴソゴソ


金糸雀「…ピチカート」


…チカッ


金糸雀「いまからわたしがしようとすること…」 





「あなたにさせようとしていること…」









「あなたは許してくれるかしら?」
762 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/16(火) 11:37:56.36 ID:6AkgvgE0




「ごめんね、ピチカート…」



…チカ チカ



「いかなくちゃ…」クルッ




ヒューン…



【河川敷】


巴「おまたせしましたー。 …よいしょ」

パカリ

柴崎「おお、立派なオードブルじゃな」

巴「みっちゃんさんと朝から作ってたんです」

マツ「おいしそうねぇ」

真紅「…雛苺?」


雛苺「…」
763 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/16(火) 11:39:39.72 ID:6AkgvgE0
巴「ありがとうございます。マツさんの散らし寿司も、とってもきれいでおいしそう…」

マツ「のりちゃんが手伝ってくれたのよ」

蒼星石「翠星石?」


翠星石「…」


ジュン「…ふたりとも?」

翠星石「なんですか?」

雛苺「…なに?」

ジュン「食い意地の張ってるふたりが、いやにおとなしいなって…」

翠星石「…」

雛苺「…」



「さすがに、この状況じゃ食欲なんてわかねーですよ…」



ジュン「…そうだよな…」
764 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/16(火) 11:40:41.76 ID:6AkgvgE0
トテテテテ

金糸雀「ただいまかしらー!」

ジュン「あ、カナ。 …水銀燈は?」

金糸雀「もうすこし時間がかかるから、先にはじめておいてほしいっていってたかしら!」

真紅「…そうなの」

のり「大丈夫かな…」

金糸雀「メイメイもピチカートもついてるから、万一のときはすぐ知らせてくれるかしら!」

ジュン「そうか…」

みつ「心配だけど… 始めちゃおうか」

金糸雀「それがいいかしら!」

翠星石「…」

雛苺「…」


カチャカチャ…


巴「…ふたりとも、食べようよ?」

翠星石「…食欲がわかないです」

雛苺「…」
765 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/16(火) 11:42:09.31 ID:6AkgvgE0
巴「食べ物がのどを通らないのはわかるけど…」

みつ「元気がないからこそ、ちょっと無理してでも食べよ?」

マツ「…それがいいわ。銀ちゃんだって、きっとそうしなさいって言うと思うわ」



翠星石「…」



蒼星石「…はい」

スッ

翠星石「蒼星石?」

蒼星石「あーん、して」

翠星石「…」

蒼星石「はい、あーん」

翠星石「…」


パクッ


蒼星石「おいしい?」


モム モム…


翠星石「…タコちゃんウィンナー、おいしいです」クミ クミ
766 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/16(火) 11:43:47.18 ID:6AkgvgE0
みつ「ふふ、お口にあったかな?」

翠星石「…ほれチビ、おめーもあーんするです」

雛苺「…うゅ?」

翠星石「ほれほれ」

雛苺「…」


パク モムモム


雛苺「巴のから揚げ、おいしいの…」ムニュ ムニュ

翠星石「ほれ、もう一口。ミニトマトは好きですか?」

雛苺「大好きなの。 あーん…」


グニッ!


雛苺「ふむぁっ?!」

翠星石「おっと、手がすべったですぅ〜」ニヨニヨ

雛苺「も、もうっ! ひっどいのー!!」プンスカ

ジュン「…ふふふっ」

のり「…よかった…」



(銀ちゃん… 早く来て…)
767 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/16(火) 11:45:05.10 ID:6AkgvgE0
【秘密の花園】


ズワァァァァァ…


レイ「お、おのれ…!」

水銀燈「さあ、おとなしくなさい…!」


ピキ… ピキ…


水銀燈「(翼を出した背中の傷が… ふさがらない…)」

レイ「(きゃつめ、体がもう限界のようじゃな…)」



(ここは、無理にことを構えんほうが得策じゃて)



水銀燈「(長くは保ちそうにない… ならば!)」


ヒュババババッ!


レイ「ぬおっ?!」

水銀燈「さあ、その子を返しなさい!!」

レイ「み、みなのもの! 退けっ!!」


ザザザザザザ!
768 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/16(火) 11:47:52.65 ID:6AkgvgE0
水銀燈「逃すかっ!!」

レイ「戦車隊、わしを乗せて後退じゃ!! 兵どもは足止めをせい!」

歩兵「…」


ズザザザザザッ!


水銀燈「そこをどけっ!!」


ガラガラガラ…!


レイ「退却じゃ!」

水銀燈「ふふふ…!」

レイ「…ん?」


…バシュン!


レイ「なっ…!」 



ギュォォォォォォ…



「に… 逃げおった…?」






「し、しまった!!」
769 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/16(火) 11:49:00.61 ID:6AkgvgE0
ギュオオオオオ…!!



水銀燈「雪華綺晶をあの箱に『封じた』ということは、あいつらもあの子をすぐには殺せないということ…」



ギュオオオオオッ…!



水銀燈「ならば、あの子たちにこのことを知らせてしまえばいい! わたしが保たなくとも、あの子たちがいれば…!」



ギュオオオオオッ!



水銀燈「さあ、行きなさいメイメイ! やつらは引き離したわ!!」







水銀燈「メイメイ?」







水銀燈「く、しまったか!? あの『振動機』とやらのダメージを受けているの?!」



チカ… チカ…
770 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/16(火) 11:50:17.28 ID:6AkgvgE0
水銀燈「…え?」





「一刻も早く、あの子を助けたほうがいい…?」





「そして… 私の体を… 治してもらったほうが…?」





「…心配しないで、もちろん、あきらめてなんかいない。でも…」





「あいつにそれをさとられたら、逃げ回られてしまう。 そうしたら、時間のないわたしには不利よ…」





「わたしは自分の体のことなんかどうだっていいって思ってるって、あいつに思わせてやるの」
771 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/16(火) 11:51:53.90 ID:6AkgvgE0



「あなたは、とにかくあなた自身を回復させることに集中して… みんなに、このことを知らせなければ…」


…チカ チカ


「大丈夫。 あきらめてなんかいない。 …ほうら、あいつら、慌ててやってきたわ…」



ガラガラガラガラ…!



レイ「く、くそ! あの人形め、命が惜しくはないのか?!」

水銀燈「あははははっ、遅かったわねぇ!!」


(命が惜しくないのか、ですって?! 惜しいわよ!!)


水銀燈「あらあら、慌てふためいちゃって… お盛んなこと!」

レイ「貴様… 正気なのか! こやつしか貴様の体は治せんというに!!」


(わたしは… 死にたくない! 生きていたいの!)
772 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/16(火) 11:52:49.45 ID:6AkgvgE0
水銀燈「レディを息せき切って追いかけてくるなんて、年の割には枯れてないのねぇ!」

レイ「何を言うか、壊れかけのボロ人形が!!」


(あの子たちの『母』になって、みんなとともに暮らせるようになるまでは!!)


水銀燈「ふふふ… もう壊れちゃってるあなたに言われるとは思わなかったわ!」

レイ「減らず口を! 戦車隊、かかれ!!」


ガラガラガラガラ…!!


(だから… だから!)


水銀燈「ほんっとうにありがとうね! あなた素敵よ!」

レイ「な、なんじゃと?!」


ヒュババババババッ!


レイ「うおお?!」

水銀燈「せっかく封じたその子を、わざわざ私の前まで連れてきてくれるんだからねぇ!」

レイ「なっ… お、おのれ!!」




(こんなやつの思い通りに、動いてなんかやるものか!!)
773 : [sage]:2009/06/16(火) 11:54:56.45 ID:6AkgvgE0
とりあえずここまで。再開は今晩。
774 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/16(火) 12:23:15.61 ID:azVKLG.o

さて今宵の為に酒でも買ってくるか
てか毎度現行&投下後って誰も書かないんだなww
他の人のレスがないから毎度悩んでるわww
775 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/16(火) 16:40:07.87 ID:.Kh/3wko
おっつ
776 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/16(火) 18:14:12.05 ID:K8rO6Rco
乙です。
>>774
平日の昼間投下だから、さすがに少ないんじゃない?
777 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/16(火) 18:57:39.98 ID:ktKFXiAo
おつ!
778 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/16(火) 19:06:36.25 ID:gLt5Nw.o
おつつ
待ってるぜ
779 : [saga]:2009/06/16(火) 20:27:48.35 ID:w1pHHT60
>>774-776
乙どもっす。再開します〜
780 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/16(火) 20:29:36.58 ID:w1pHHT60
【河川敷】


バタバタバタ


雛苺「んもー、もう怒ったのー! 翠星石のバカー!!」

翠星石「ひーひっひっひ… バカ苺にバカと言われたって気にならないでーっす!」

蒼星石「もうやめなよ、ふたりとも…」

真紅「まったく、騒がしいったらありはしない…」

コク コク

のり「…でも、元気になってくれてよかった」

真紅「元気になったんじゃないわ。あえて、『普段の自分』を演じているだけよ」

のり「…」

真紅「いまにも泣きだしてしまいそうな自分を、ふるいたたせるために」

のり「…うん…」

みつ「…それでもいいのよ。 カラ元気も、元気のうちって言うしね」

真紅「…」

金糸雀「そのっ! とーっり! かっしらー!!」


シュタッ!
781 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/16(火) 20:31:18.53 ID:w1pHHT60
ジュン「…カナ?」

金糸雀「せっかくみっちゃんが企画してくれたのに、わたしたちが沈んでたら…」


「無理をしてでもやってって言ってくれた、水銀燈に申し訳ないかしらっ!」


蒼星石「…姉さん」

真紅「…まあ、一理あるのだわ」

金糸雀「そこでっ! ここはひとつ、みんなでダンスでもいかがかしら?」

巴「え…ダンス?」

金糸雀「みんなで二人一組になって、カナのバイオリンにあわせてステップを踏むかしら!」

翠星石「ほほー。金糸雀にしてはおもしろそうな思いつきですねー」

雛苺「だ、ダンス?? ヒナはわからないの…」

ジュン「…僕もはじめてだよ」

巴「…やろうよ、ジュン君」

ジュン「え?」


…キュッ


ジュン「…あ、巴? 巴は知ってるの?」

巴「ううん、はじめて。でも、金糸雀が教えてくれるんでしょ?」

金糸雀「おまかせかしら! むつかしく考えなくてもいいかしら!」
782 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/16(火) 20:32:35.89 ID:w1pHHT60
みつ「うん、手をつないで音楽に合わせて足踏みするだけでも、それっぽく見えるわ」

のり「え… みっちゃんさんはできるんですか?」

みつ「うん、ちょっとだけね。 …さ、のりのり。手を貸してみて」

のり「あっ… はい」


…キュッ


柴崎「それでは、わしらもやろうかの」

マツ「ええ… ずいぶん、ひさしぶりですね」

金糸雀「それじゃ、真紅は雛苺と、翠星石は蒼星石といっしょになるかしら!」


真紅「…え?」


雛苺「…真紅?」

真紅「…な、なんでもないわ」

翠星石「真紅… おめー、大丈夫ですか?」

真紅「なっ、何を言っているの?! さあ雛苺、踊りましょう?」

雛苺「…???」



「それではいくかしら! 一曲めは… 川辺のワルツ!」
783 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/16(火) 20:34:36.02 ID:w1pHHT60
【nのフィールド】


ヒュバババババッ!!


歩兵「!!」


グシャグシャバキバキ!


レイ「くっ、何という火力じゃっ!」

水銀燈「さあ、おとなしくその子を返しなさい!」

レイ「くそ、距離をとれ! 弓でけん制しろ!」


ヒュパッ ヒュパッ!


水銀燈「ははっ、そんなのあたるものですか!」


ヒュパッ ヒュパッ!


水銀燈「さあ、観念なさい…?!」



…カクン
784 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/16(火) 20:39:20.10 ID:w1pHHT60
水銀燈「く…(しまった…!)」


カク… カク カク


(思った以上に… 早すぎる…!)



バサ バサ バサ…



水銀燈「ああ…翼が… 翼が壊れていく…」



レイ「ふぉふぉふぉ、もう息切れかね?」…スッ


ザザザザザ!


レイ「翼を出しているだけでも消耗するだろうに」

水銀燈「く…」

レイ「衰弱し崩壊しかけた体で、あれだけの力を発しておったのじゃからな…」

弓兵「…」シュパッ!


ベキ


水銀燈「ぐっ?!(あ…足に! だけれど…)」

レイ「足先だけにしておけ。 あまり傷をつけるな」



水銀燈「(痛みを… 感じない…?)」
785 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/16(火) 20:41:48.24 ID:w1pHHT60
レイ「ちょろちょろと逃げ回れんようにすれば充分よ。縄付きの楔を撃ちこんでやれ」

弓兵「…」シュパッ!


ザグ


水銀燈「くっ!(…やはり…)」


(感覚がなくなってる…)


レイ「さあ、あとは距離をとって、消耗するのを待てばよかろう」

水銀燈「こ… この…」

レイ「翼をもう一度出してもよいぞ? ますます崩壊してしまいたいならな」

水銀燈「く…(わたし…)」


(ここまで… かしら… メイメイ…)





(まだ… 動けないのね…)



…ガクン



(「あれ」をやるよりほかに、ない…)




(お父様…)
786 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/16(火) 20:47:02.13 ID:w1pHHT60
レイ「お? あきらめおったか… それとも誘っておるのか」





レイ「弓だけ向けておけ。近づいてきたら、全速で後退しろ」

弓兵「…」ギリギリギリ

歩兵「…」チャキッ

水銀燈「(お父様…)」



「どうか… 許してください」



ザワザワザワザワ



レイ「ぬ?」



ズワァァァァァ!




レイ「ほう、翼を出しよったか。…ひとまず下がれ」



ザザザザザ…



レイ「どうせヤツは逃げられん…」



ヒュバッ!!
787 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/16(火) 20:50:52.49 ID:w1pHHT60
レイ「な?!」



ヒュゴォォォォォ…



レイ「逃げおった!? そ、そんなバカな! 確かにやつの足は縫い付けて…」




…ガシャッ




レイ「なにっ! あ、あやつ…」




「下半身を切り離しおった!!」



ヒュゴゴゴゴゴ…



「ごめんなさい… お父様… あなたからもらった体を…」



「でも… わたし… 生きたいんです…」



「なんとしても…」




「どんな姿であっても…」
788 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/16(火) 20:53:53.17 ID:w1pHHT60
【河川敷】


金糸雀「みんな、そろそろ慣れてきたようかしら?」


ジュン「うん、なんとか」

翠星石「おじじとおばばがすっごくきまってるですぅ…」

柴崎「昔取った杵柄というやつじゃよ」

マツ「それに、ふたりも上手よ」

翠星石「双子だから当然ですぅ!」

みつ「のりのりは、上達がすっごく早くて楽しいわ」

のり「うふふ。 みっちゃんさんの教え方が上手なんです…」

金糸雀「それじゃ、そろそろ次の曲に…」



真紅「…」

雛苺「むー…」プンスカ



真紅「わ、わざとじゃないのよ…」
789 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/16(火) 20:56:31.35 ID:w1pHHT60
蒼星石「どうしたんだい、ふたりとも?」

雛苺「真紅がさっきから、ヒナのあんよふんづけるの…」

真紅「な、慣れてないからよ。しょうがないじゃない…」

雛苺「さっきなんか、よけようとしたのに、足がおっかけてきたの…」

真紅「あ、あれは方向を変えようとしたら、あなたの足が先回りして…」

ジュン「はいはい、仲良く仲良くね」


雛苺「…」ジトー

真紅「こ、こんどこそは華麗なステップを披露してあげる!」


金糸雀「それじゃ、いったん並びなおってほしいかしら」

ジュン「了解」



「そう… あなたはそっち、柴崎さんたちはそこに… みっちゃんはそこ…」



(いよいよ… かしら…)
790 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/16(火) 20:58:06.16 ID:w1pHHT60
蒼星石「これでいいね?」

金糸雀「上出来かしら。それじゃ、次の曲に移るかしら」…スッ


〜♪ 〜♪


真紅「(…? 聞いたことの無い曲…)」グニッ

雛苺「いたぁい!!」

真紅「あ… ごめんなさい」

ジュン「これは… なんて曲?」

金糸雀「これは… 今日はじめて、みんなに聞かせる曲かしら」

雛苺「真紅、あぶない!また足ふんづけて…あれ?」


ヒュルヒュルルヒュル…


雛苺「…どうしたの、ベリーベル?」

真紅「…ホーリエ? あなたまで、勝手に出てきたら…」




ヒュルヒュルヒュルヒュル…
791 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/16(火) 20:59:35.68 ID:w1pHHT60
真紅「…これは…!!」


ヒュルルルルル…


翠星石「す、スィドリーム?」

蒼星石「レンピカ!?」


金糸雀「…」


ジュン「…みんなの精霊が、カナのところに集って…」

金糸雀「みんな…」



「ごめんなさい」



シュパッ!!



ジュン「な?!」

巴「きゃあっ!?」
792 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/16(火) 21:00:46.23 ID:w1pHHT60
真紅「な?! や、やめなさい、ホーリエ!!」

雛苺「だ、ダメなのベリーベル! やめて!!」



金糸雀「…」



ヒュパヒュパッ!!


のり「きゃ、きゃあっ?!」

みつ「これは…!! カナ、カナ!」

蒼星石「レンピカ! どうしたんだ!」

翠星石「スィドリーム! どうしちまったです!!」



金糸雀「…『戸惑いのノクターン』」



柴崎「うおっ、な、何が…?!」

マツ「おじいさん、危ない!!」


シュパパパパッ!!
793 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/16(火) 21:06:44.46 ID:w1pHHT60
真紅「金糸雀… あなたまさか!」

みつ「カナ… カナ!!」



金糸雀「すべての精霊を、わたしの支配下に置く曲… わたしの秘密兵器かしら」



蒼星石「姉さん! いったい何を…」

金糸雀「決まっているかしら」



「わたしたちが、みんなでそろってやることと言ったら、ひとつしかないでしょう?」



雛苺「…カナ…! そんな…!」

真紅「バカな真似はよしなさい!!」

金糸雀「バカな真似? ふふ…」



「あははははははっ!」
794 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/16(火) 21:08:38.14 ID:w1pHHT60
ジュン「か…金糸雀?!」

みつ「カナ…! や、やめてぇっ!!」

金糸雀「バカな真似をしようとしてたのはどっちかしら?!」



「今にも死にそうな水銀燈に、アリスゲームを仕掛けようとしていたのは!!」



蒼星石「姉さん、それは違う!」

金糸雀「違わないっ!! あなたたちは、もう信用できない!!」



「わたしがアリスになってお父さまに会う! そして、水銀燈を治してもらう!!」



ジュン「そ…それは!」

巴「ダメよ、金糸雀! それはダメ!!」

金糸雀「…もう、こうするより他にないの…」

ジュン「違う、違うんだ!! 結晶を集めても…」

金糸雀「…ちょっと黙っていてちょうだい」


パシュッ!!!
795 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/16(火) 21:09:32.86 ID:w1pHHT60
ジュン「うあっ?!」

巴「あうっ!」

真紅「ジュン! 巴!!」

金糸雀「…みんな、ごめんなさい」



パシュッパシュッ!!!


柴崎「うおっ?!」

マツ「くうっ!」

のり「ああっ!!」



みつ「…カナ!!」


金糸雀「…」



「ごめんなさい!」



パシュッ!



みつ「くっ…」
796 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/16(火) 21:14:52.06 ID:w1pHHT60
蒼星石「金糸雀… 君は!」

翠星石「なんて… なんてことをしやがるですか!!」

金糸雀「運動神経を麻痺させただけ… それに、アリスゲームとは本来こういうものでしょう?」



「だまし合い、つぶし合い… なんでもありの『殺し合い』よ」



翠星石「んもう、さっきからいったいなんですか! やってることも、しゃべりかたまで!!」



「自分が水銀燈にでもなったつもりですか!!」



金糸雀「…」

雛苺「…カナ?」

金糸雀「わたしは… ずっと考えてきた」

真紅「何を…?」

金糸雀「もし… 水銀燈がいなくなってしまったら。 わたしが一番上のお姉さんになってしまったら」

蒼星石「…」ジリッ

ヒュンッ!

蒼星石「うっ?!」

金糸雀「動いたらダメよ…」

蒼星石「く…(は…速い、速すぎる!?)」
797 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/16(火) 21:20:13.21 ID:w1pHHT60
金糸雀「水銀燈が姿を消すたびに考えて、結論はいつも同じだった。 …そう」



「わたしが『水銀燈』になる」



真紅「バカな…!」

金糸雀「もちろん、わたしは水銀燈にはなれない。…マネをすることしか、できない」


ヒュン ヒュン ヒュン…


蒼星石「(精霊が、金糸雀を… マスターたちを囲んでいる… 隙がない…!)」

金糸雀「だから考えたのよ。水銀燈の力の秘密を…彼女を最凶ドールたらしめているものは何なのか」

翠星石「あなた、何を… 何を言ってるんですか!!」

金糸雀「わたしは、それが何かをつきとめたのよ。 それは…」


「『憎しみ』『恨み』『妬み』 …暗く熱く煮えたぎる、負の感情」


真紅「…」スッ


ビヒュン バキッ!!
798 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/16(火) 21:28:18.76 ID:w1pHHT60
真紅「うあっ!」

金糸雀「動くなって言ったでしょう…?」

真紅「(お…おかしい! いくらなんでも速すぎる! 不自然なくらい…)」


(まるで、こっちの考えを読んでいるみたい… あっ!!)


金糸雀「気づいたのね。 …そう、あなたたちの精霊よ」


「今はわたしの支配下にあるけれど、まだあなたたちともつながっている…」


真紅「そんな…」

金糸雀「手に取るように、自分のことのように、あなたたちのことを教えてくれるわ」

蒼星石「…だからと言って、それだけで僕たちに勝てるとでも?!」

金糸雀「わたしがあなたたちから奪ったのは、精霊だけじゃない」



ヒュルルルル…



真紅「な…まさか!!」

金糸雀「やりなさい、ピチカート!」


ドズ


「ぐは…っ!」ゴボッ





「ジュン!!」
799 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/16(火) 21:30:29.22 ID:w1pHHT60
翠星石「ジュン! …金糸雀! お前…もう許さないですっ!!」

金糸雀「許さなかったら…どうだっていうの?」


ヒュルルルル…


金糸雀「少しでも動いたら、次は眉間をつらぬく」

翠星石「く…」

金糸雀「…わかったら、おとなしくなさい」

雛苺「…金糸雀、ジュンを治して!」ダダッ!


シュパッ!!


雛苺「ひっ?!」

金糸雀「それ以上近づいたら…」

雛苺「お、お願い!! あんなに血が出たら… ジュンが死んじゃう!!」

金糸雀「…大丈夫よ」


パアアアア…
800 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/16(火) 21:37:18.40 ID:w1pHHT60
雛苺「あ…」

ジュン「(き、傷が…!)」

翠星石「ふさがっていく…!」


パアアアア…


金糸雀「傷をふさいだだけ。流れた血までは戻せないから、しばらくおとなしくしていて」

雛苺「…やっぱり、やっぱりカナはカナなの! ありがと…」


シュパッ!


雛苺「あうっ?!」

巴「(…雛苺!!)」

金糸雀「勘違いしないで… わたしは最初から、人質に頼って戦うつもりなんてない」

真紅「何ですって…?」

金糸雀「人質をとらなくったって、勝てるっていってるのよ」


「あなたたちの精霊と契約者たちを奪いとったのは、あなたたちをここから逃がさないため」


蒼星石「なんだって…!!」

金糸雀「ジュンをああしたのは、わたしが本気だってことを思い知らせるためよ」
801 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/16(火) 21:42:13.54 ID:w1pHHT60
翠星石「なんで… なんでそんな…」

金糸雀「あなたたちを逃がすわけにはいかなかった。時間がなかったし、水銀燈に知らされたくなかった」


ヒュン ヒュン ヒュン


金糸雀「水銀燈は結晶を失えばすぐ崩壊する。 だから、みんなの結晶をすべて集めてから、水銀燈の結晶を奪わなければいけなかった」

翠星石「で、でもそんなの… うまくいくとは…」

金糸雀「限らない。 …でも、もうこれしかない!」

蒼星石「…わかったよ」

翠星石「蒼星石?!」

蒼星石「そこまで言うなら、相手になってやる!」

真紅「蒼星石! 人質がいるのよ!!」

蒼星石「金糸雀は言った、人質に頼って戦うつもりはないって!」

翠星石「そ、そんなのウソかも…!」



「ほんとうよ」



ザワザワザワザワ…
802 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/16(火) 22:01:09.24 ID:w1pHHT60
真紅「あ…あなた?」

金糸雀「だってさっきも言ったけど」 


「あなたたちに勝つだけなら、人質なんて必要ないもの…」


蒼星石「…バカにするのもいいかげんにしろ!」

ジュン「く… うぅっ…」


(みんな… 戦うんじゃない…! 戦っちゃいけない…!)


(そこにいるのは… もうみんなが知ってる金糸雀じゃない…!! そこにいるのは…)


(水銀燈と… 備忘録を読んだボクしか知らない… 金糸雀の本性なんだ…!!)



【nのフィールド】


ビュゴォォォォ…


水銀燈「…そろそろ追いついてくるはず…」


(さっきから鬼ごっこを繰り返しつつ、少しづつ表層に近づいている… あとすこし…)


ビュゴォォォォォ…


(あの子たちが追いつける程度まで表層に引き寄せて、みんなで雪華綺晶を奪還するか…)


(スキを見つけて一気にふところに入って、雪華綺晶を助け出すか)



「下半身を切り離したおかげで… だいぶ楽にはなったけれど…」




「それでも… いつまでもつか…」
803 : [sage]:2009/06/16(火) 22:02:12.06 ID:w1pHHT60
今日はここまで。続きは明日。
804 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/16(火) 22:03:22.28 ID:smywKjIo
乙ですた〜
805 : [sage]:2009/06/16(火) 22:04:08.73 ID:w1pHHT60
>>777-778
>>804
乙どもっす〜
806 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/16(火) 22:09:51.74 ID:CzysXSIo
乙でした
807 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/16(火) 22:43:15.38 ID:XfFnDk2o
おっつ
808 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/16(火) 22:51:21.58 ID:K8rO6Rco
乙です
809 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/16(火) 22:53:20.83 ID:g53qVpgo


金糸雀と銀様の悲壮な覚悟が強く印象に残った回でした

いよいよクライマックスですね頑張ってください

……クライマックス直前ぐらいに次スレかな?
810 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/16(火) 23:08:00.98 ID:azVKLG.o
酒飲みながら見てたら
投下中全部見てたのに乙するの忘れてた
今さらだけど乙
811 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/16(火) 23:10:01.06 ID:hAkewNso
乙でした
812 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/17(水) 01:08:07.91 ID:UuDPTzko
おつ!
813 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/17(水) 07:39:21.28 ID:KTq2AEAO
乙でした!
814 : [saga]:2009/06/17(水) 21:30:49.94 ID:VPGWqCk0
>>806-808
>>811-813
乙どうもっす〜

>>809
ひとつの山場にむけて、がんばりまっす〜

>>810
酒飲みながら投下してたので寝落ちしそうになったのはないしょ^^;


では投下します〜

815 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/17(水) 21:33:02.87 ID:VPGWqCk0
ガラガラガラ…


「…速度をゆるめい」


ガラガラ…


「あわてて追いかけると、あやつの思う壺よ」


…ガラ…ガラ…


「…思った以上に、粘りおるの」


カチ カチカチカチ…


「作戦変更じゃ… あまり手勢を失いたくなかったが、やむをえまい」


キュィィィィィ…


「待機している部隊に告ぐ。 近くにいるものから『聖母』を攻撃せい」


キン… キン…


「ただし極力近づくな。遠巻きにして矢を射こみ、近づいてきたら逃げろ」


キン… キン…


「絶えず攻撃をしかけ、休む間を与えるな。 物量で押せ」





雪華綺晶「(…そんなことをされたら! お母さま…!!)」
816 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/17(水) 21:37:13.56 ID:VPGWqCk0
ビュゴォォォォ…


水銀燈「…ここは… 『鏡の森』…」


ビュゴォォォ…


水銀燈「ようやく、中層といったところね…」


ビュゴォォォォ…


水銀燈「あいつらは… 追ってきていない…?(まさか…)」


ビュゴォォ…



(感づかれたかしら…)



パシュッ! 


水銀燈「く?!」ヒュン!!


「弓矢… どこから?!」


パシュ!


水銀燈「ちっ!」ヒュン!



パシュパシュッ!!
817 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/17(水) 21:40:05.82 ID:VPGWqCk0
「く、くそっ!」ビシュシュシュシュ!!



ガシャガシャァン!



弓兵「!!」ベギッ!

水銀燈「や、やったか?!」



パシュパシュパシュ!



「く!」


…ビスッ!


「あうっ!」




(よ、よけきれない…!)
818 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/17(水) 21:41:33.06 ID:VPGWqCk0
パシュパシュパシュ!!



水銀燈「(く… まずい…!!)」



(手数で… わたしを消耗させるつもりね…!)



パシュパシュパシュ!!



水銀燈「…森の中に隠れて、やり過ごすしかない!」ヒュンヒュンッ!



ビヒュン!



弓兵「…」ザザザザサ…゙





ザザザザザ…
819 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/17(水) 21:42:55.97 ID:VPGWqCk0
【河川敷】


ヒュンヒュンヒュン…


金糸雀「…さあ、そろそろ本気でいくわよ…」

蒼星石「…こっちも、全力で行くよ」


…ジリッ


ジュン「(や、やめるんだ…! 戦っちゃ、いけない!!)」

蒼星石「…さっきから演奏をやめないところを見ると…」ジリ… ジリ…

 

「精霊を操るためには、演奏を続けなければならないみたいだね…」



金糸雀「その通りよ」
820 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/17(水) 21:44:37.67 ID:VPGWqCk0
蒼星石「なに…?」

翠星石「(い、いやにあっさり認めやがったですね…)」

蒼星石「いくら僕らの動きが読めても、両手がふさがってて勝てるとでも?」

金糸雀「…弦を切ってみなさい、やれるものなら」

真紅「…ならば!」ビシュッ!


ヒュヒュヒュヒュン!


真紅「く… ホーリエ、やめて!」

蒼星石「今だ!!」シュバッ!

金糸雀「…ふん」


バシュッ!


柴崎「ぐあっ!」

蒼星石「な?!」


ビシュッ!


蒼星石「うあっ!」


ドシャ!
821 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/17(水) 21:47:08.75 ID:VPGWqCk0
雛苺「蒼星石!!」

蒼星石「く…!」

翠星石「ず、ずるいですっ! 人質は使わないって…!!」

金糸雀「あら…」


クスクス


翠星石「なっ…!」

金糸雀「ごめんなさいねぇ」クスクスクス…

翠星石「こ、…こいつ、ますます…」


(あの最凶ドールに似てきやがったですっ!!)


真紅「金糸雀、あなた!!」

金糸雀「ごめんねぇ。でも勝てるっていうのはウソじゃないわ」



「ただ、準備がいるだけ…」



ザワザワザワ…



蒼星石「準備…だって…?」

金糸雀「ええ… さっきの話のつづきだけれど…」


ヒュンヒュンヒュン…


金糸雀「水銀燈の力の源が『負の感情』だとつきとめたわたしは、実験をしてみたのよ…」
822 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/17(水) 21:50:38.31 ID:VPGWqCk0
真紅「実験ですって…?」

金糸雀「ええ… わたし自身を使ってね…」


ザワザワザワ…


金糸雀「…実験は成功だった」

蒼星石「なんだと…!?」

金糸雀「暗く熱くたぎる感情は、このわたしにも絶大な力をあたえてくれた」 


ザワザワザワザワ…


金糸雀「そしてわたしは知ったのよ」

真紅「…な、なにを…?」

金糸雀「…わたしの、名前の意味」

雛苺「な…なまえ???」



「お父様が、この名前をわたしにくれた理由をね…」
823 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/17(水) 21:55:06.89 ID:VPGWqCk0
蒼星石「な… どういうことなんだ?!」

金糸雀「今から教えてあげるわ!!」



ザワザワザワザワザワ…!!



真紅「こ…この感じ…!!」

蒼星石「バカな! これは、これは…!」



「わたしは… あなたたちは、姉妹での戦いなんて望んでいないと思っていた!」



翠星石「(むき出しの敵意、殺意…! まるで、あいつそのもの…!)」

雛苺「やめて! カナ、もうやめてーっ!!」



「だからわたしだって、あなたたちに憎しみを向けたりしなかった! いっしょに暮らそうと思った!」



みつ「(だ… だめ、カナ! ウソだと言って…!!)」

ジュン「(やめるんだ… それだけはやめるんだ、カナ!!)」



「いがみあっていた水銀燈とも、最後には仲直りしてくれると思ってた! それなのに… それなのに!!」



ザワザワザワザワザワザワ…!!



「最後が近づいていた水銀燈に、あなたたちは… よくも、よくもあんなことをっ!!」
824 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/17(水) 21:58:28.76 ID:VPGWqCk0
「真紅!」 

(この…このジャンク!)

「わたしたちのために体を張って、ボロボロになった水銀燈に…よくも!!」


…ザワッ


「蒼星石!」 

(…アリスゲームを再開させる)

「わかったようなことを言って… あなたには思い出もなにもないの!?」


…ザワザワ


「翠星石…!」 

(早く… 終わってほしいです、こんなこと…)

「あなただけは、許さない! 許せない!! ゴミまみれにしただけじゃおさまらない! ゴミにしてやるっ!!」


…ザワザワザワ


「雛苺!」

(いやああああっ! だめぇっ!! 水銀燈っ!!) 

「いつもギャーギャーわめいて! あなただけが悲しいとでも思っているの?!」






…ザワザワザザザザザザザ…!
825 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/17(水) 22:01:43.99 ID:VPGWqCk0
「みんな嫌い! みんななんか… みんななんか…!!」


バキバキバキバキバキィッ!


真紅「!!」

蒼星石「あれは…そんな!!」



「消・え・て・な・く・な・れ・えーっ!!!」



ズワアアアァァァァッ!!!



雛苺「う、うそ…」

翠星石「そんな… そんな!!」

みつ「(ああ…カナ、カナ…!!)」



【nのフィールド・鏡の森】


ザザザザザザザ…


水銀燈「(く… はあ、はあ、はあ…)」


ビヒュヒュヒュン!


水銀燈「(…ご丁寧に、森の中にまで伏兵とはね!)」


ザザザザザザ…


水銀燈「(…足がない今は、森の中を飛び回るしかない!)」


ビヒュヒュヒュン!
826 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/17(水) 22:03:57.99 ID:VPGWqCk0
歩兵「…」ザザザザザ…


水銀燈「はあ、はあ、はあ…(…力がもたない…)」


(どこか… 隠れられる場所…)



歩兵「…」ザザザザザ…



(そ、そこっ!!)バシュ!



ザザザザザ…


歩兵「…?」


(早く… 早く行きなさい!!)


歩兵「…」ザ ザ ザ ザ



(…)



歩兵「…」ザ… ザ…



(……)



ザッ…




(……)
827 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/17(水) 22:06:38.88 ID:VPGWqCk0
歩兵「…」ザッ ザッ…



ザザザザザザ…



(行ってくれた…)







(一息… つきましょう… 少しでも… 力を…)



…キラッ



(? 鏡ね…)







(わたしの… 姿…)





(…ひどいわね…)
828 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/17(水) 22:07:46.69 ID:VPGWqCk0
(翼も服もボロボロ… 下半身を失い… 上半身はヒビだらけ…)



(髪の毛もバサバサ… 顔なんて…  わたし、もう…)



(りっぱなジャンクに、なっちゃったわね…)



(…)



クスクスクス…



「…なあんだ」



クスクスクス…



「ふふふ… わたし、バカみたい…」



「わたし… こんなことを、ずっと怖がっていたの…?」



「こんなこと… 実際なってみたら…」



「ぜんぜん… たいしたこと、ないじゃない…」



クスクスクス…
829 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/17(水) 22:10:07.77 ID:VPGWqCk0
レイ「見失ったか?」


ガラ… ガラ…


レイ「いや… 放っておけ。 そのうち必ず、きゃつの方から動き出す」


ガラ… ガラ…


レイ「休んでおるのなら好都合。 今のうちに、包囲網を組みなおしておけ」



ガラ… ガラ…



「そう、小鳥狩りじゃよ…」



【河川敷】


ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ


真紅「うそ…」

蒼星石「バカな…」



金糸雀「ふふ… 驚いた?」
830 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/17(水) 22:12:15.22 ID:VPGWqCk0
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ


翠星石「…あれが… チビカナだっていうんですか…?!」

雛苺「うそ… そんな…」

金糸雀「よく見なさい。 これが水銀燈にしか見せた事がない、わたしの真の姿よ…!」



(そう… あの時にね…)





金糸雀「口先だけかどうか、見せてあげるわ! わたしの本気を!!」カチ カチッ


ドゴン! ズドォン!!


水銀燈「くっ、ちぃっ! …本気ですってぇ?! こんな小細工が!」

金糸雀「こんなの、ただのお遊び! 時間稼ぎよ! わたしの真の姿、見せてやる!!」

水銀燈「真の姿? そんなものが…!」

金糸雀「実験では成功した。あとは、実戦で試すだけ…」



ザワザワザワザワザワ…
831 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/17(水) 22:13:25.14 ID:VPGWqCk0
水銀燈「…はあ? わたしを実験台にしようってこと? ふざけるんじゃ…」

金糸雀「黙れぇっ!」

水銀燈「?!」

金糸雀「姉妹でなんか争いたくなかったのに! 憎しみあいたくなんかなかったのに!」

水銀燈「な、なんですって?!」

金糸雀「わたしに、こんなことまでさせて…! あなたさえ、あなたさえいなければ!」


ザワザワザワザワザワ…!!


水銀燈「これは…まさか、あなたまさか!!」

金糸雀「あなたなんか、あなたなんか!!」



「バ・ラ・バ・ラ・に・し・て・や・るーーーーっ!!」


バキバキバキバキ!!


水銀燈「なっ?!」



ズワァァァァァァァッ!!
832 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/17(水) 22:15:01.53 ID:VPGWqCk0
水銀燈「そ、それは… あなた!」

金糸雀「何を驚いているの…? わたしは、あなたの妹なのよ!!」


ビヒュヒュヒュン!


水銀燈「くっ! ちっ!」ヒュヒュヒュヒュン!

金糸雀「その時が来れば、いつでもわたしが『水銀燈』になる覚悟はしていたの!!」

水銀燈「あなたが? あなたが、そう… くく… くくくく…」



「くくくくく、あーっはっはっはっは!」



金糸雀「そんなに面白い!? 憎しみに身を任せたこの姿が!」

水銀燈「ええ、面白いわ! あなた、最高よ!」ビヒュヒュヒュヒュヒュン!

金糸雀「…ふんっ!」


キンキキキキンキュイン!


水銀燈「…弾かれた?!」

金糸雀「弾いただけじゃないわ…」キュオオオオオ…

水銀燈「なっ?!」


ヒュババババババッ!!
833 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/17(水) 22:19:35.00 ID:VPGWqCk0
水銀燈「く、くぅっ!(速いっ!)」ビヒュン!

金糸雀「…どう? むき出しの敵意、憎悪をぶつけられる気分は!」

水銀燈「あっはははは、ゾクゾクするわぁ! わたしってこんな感じだったのねぇ、はじめて自分の目で見たわ!」

金糸雀「あなたを真似て得たこの力、あなたに通じるかどうか試してやる!」

水銀燈「あはははははっ、いい顔ねぇ! 素敵よ、金糸雀! 可愛いわぁ!!」キュバッ!!


「わたしのことを、引き裂いてやりたくてしょうがないって顔よ!」


金糸雀「ええ、そうよ! この力を使って、はじめてほんとうにあなたのことがわかったわ!」ビュゴウ!

水銀燈「なら、わかるでしょう? 憎しみに身をゆだねたときの、この快楽が!!」ヒュババババ!




「相手が憎くて憎くて、いとおしくなってくるの! 血の一滴、骨のひとかけらまで手にとって愛したくなってくるでしょう!」
834 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/17(水) 22:23:24.78 ID:VPGWqCk0
金糸雀「ふふふふふ… わかる、わかるわ…! いま、すっごく気持ちいい!」ジャキィン!


「あなたが憎くて憎くて、たまらなく気持ちいい! すごく、すっごく気持ちいいの…!!」


ジャキン ガシッ ギャリィン!!


水銀燈「あはははは! 素敵よあなた! ほんっとうに可愛いわぁ…!」ズドン!


「血をすすり肉を喰らい、骨を噛み砕きたがってる獣の貌! それでこそわたしの妹!」
 

ズドドドドドォン!!


「なんておぞましく、みにくく、あさましい… あなたはまさに、もうひとりのわたし!」 


ザワザワザワザワ…


「…けれどねぇ!!」


ザワザワザワ… ビュゴゴゴゴ… 


「『水銀燈』はわたしひとりで十分! できそこないは消えてしまえ!!」




キシャアアアアアア!!
835 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/17(水) 22:27:20.99 ID:VPGWqCk0
金糸雀「消えるべきなのは… できそこないなのは、あなたのほうよ!!」


ザワザワザワザワ… ビュゴゴゴゴゴ…


「このジャンク!!!」


ピュイィィィィィ!!


水銀燈「言・っ・た・な・あああああっ!!!」


ドズゥン!!


水銀燈「な?!」

金糸雀「言ったわ! それがどうしたっていうの!!」

水銀燈「わたしの『闇の龍』が… 吹き飛ばされるなんて…!」

金糸雀「この程度で臆したの? さあ、かかってらっしゃい!」 


「あなたの望みどおり、存分に殺し合いをしてあげる!!」




ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ …


「さあ、かかってらっしゃい!」


真紅「金糸雀の… 金糸雀の背中から…!」


ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ …


「あなたたちの望みどおり、存分に殺し合いをしてあげる!!」



蒼星石「黄金色の… 巨大な翼が…!!」
836 : [sage]:2009/06/17(水) 22:28:26.24 ID:VPGWqCk0
今日はここまで。 再開はあさって以降です。
837 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/17(水) 22:29:53.98 ID:b8ROPTQo
乙〜

カナがかなり凄いことになってるwwww
838 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/17(水) 23:12:18.02 ID:UuDPTzko
おつ!
839 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/17(水) 23:48:53.51 ID:LlDez7wo
おっつ
840 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/18(木) 00:03:50.42 ID:ZhBqfjEo
やっぱり好きだわ
841 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/19(金) 20:11:51.21 ID:9/dlbuA0
>>837-840
乙どもっす。再開します。
842 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/19(金) 20:13:26.04 ID:9/dlbuA0
【鏡の森】


「…」


ピキ… ピキ… 


「…」


ポロポロ…


「…」



(崩壊が… 止まらない…)



…ボロッ



「指が…」



(時間が… ない…)
843 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/19(金) 20:15:26.02 ID:9/dlbuA0
(落ち着かなければ… もう、あの子をいま取り戻すのは難しい…)







(メイメイも、まだ回復していない… なんとか、すこしでも表層に近づくより他にない)


ピキッ…


(…どのルートを通ろう?)

(最短距離は…『郷愁の小路』… けれど、あそこはほとんど一本道…)


…ピキ…


(両側をふさがれたら… 逃げ場はない…)

(『イドの渓谷』はどう…? あいつらは追ってこられないだろうけれど… 遠回りしすぎる…)


…ピキ…ピキ…




(ならば… あそこにしよう… )
844 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/19(金) 20:17:26.86 ID:9/dlbuA0
レイ「ほう… 動いたか」


キィィィィィ…


「くくく、思ったとおりあすこに飛んだな… かわいい小鳥よ」


キィィィィィ…


「丁重におもてなしして差し上げろ… くぅっくっくっく…」




【河川敷】



ピシュシュシュシュシュ!


真紅「金糸雀、もうやめなさい!」


キンキン! キキュイン!


金糸雀「…そんなもの通じないなんて、まだわからない?」



蒼星石「金糸雀の翼が、真紅の薔薇も…」

翠星石「わたしの水も防いじまうです…!」
845 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/19(金) 20:18:45.35 ID:9/dlbuA0
金糸雀「防ぐだけじゃないって、何度言ったらわかるの?」


キィィィィィ…


真紅「くっ、また飛んでくる!!」


ビシュシュシュシュシュ!!


翠星石「きゃあっ!」

蒼星石「伏せるんだ、雛苺!」

雛苺「ひ…!」


シュバババババ!



金糸雀「憎しみに憎しみをぶつければ、より強い憎しみが返ってくるだけなのよ…」


シュパッ! シュパシュパッ!


真紅「くっ! …ホーリエ!」ヒュンヒュンッ!

蒼星石「なら、これはどうだ!」ジャキン!
846 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/19(金) 20:20:23.20 ID:9/dlbuA0
金糸雀「…ふん」


シュパシュパシュパッ!!


蒼星石「うあぁ!」ビシッ!

翠星石「蒼星石!」

蒼星石「(…死角から、精霊が襲ってくる… 避けきれない!)」

真紅「くっ…手ごわい!」

金糸雀「ふふ… やっとわかったのね…」

蒼星石「けれど… ここで僕たちに勝ったって、意味なんてない!」


シュパシュパッ!


金糸雀「おしゃべりねぇ」

蒼星石「…雪華綺晶はどうする気なんだ?!」ヒュンヒュン!

翠星石「そもそも、まだ見つけてさえないってのに!」




金糸雀「…おびきだす算段も、倒す算段も、もうついてる」


847 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/19(金) 20:23:19.85 ID:9/dlbuA0
翠星石「ど… どうやって?!」

金糸雀「倒し方はないしょだけど…」クスクスクス…



「あの子はどうやってアリスになる気だったか、覚えてる?」



翠星石「え…? え、えっと…」



「!!!」



蒼星石「まさか… まさか!!」

金糸雀「あの子は、わたしたちの契約者の命を使って、アリスに昇華すると言っていた…」

真紅「…あなた! それは!」

金糸雀「そうよ…『ひとりでも契約者が欠けると』アリスにはなれないと…」

雛苺「カナ… カナ!!」

金糸雀「だから、契約者をおさえていれば必ずあの子はあらわれるはず」 

真紅「金糸雀!!」

金糸雀「もし出てこないようなら…」




「ひとりずつ…」
848 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/19(金) 20:26:36.24 ID:9/dlbuA0
蒼星石「か…金糸雀ぁっ!!」シュタタタタッ!

翠星石「そ、蒼星石!」

蒼星石「真紅、僕たちが援護する!!」



「『薔薇の竜』をたたきこむんだ!!」



真紅「で… でもそれは!! ジュンの生命力がもたない!!」

蒼星石「ジュン君、がんばって! 金糸雀を… 金糸雀を止めないと!!」

ジュン「(だ… ダメだ!! 金糸雀には…)」



(金糸雀には、通じないんだ…!!)



真紅「ジュン…」



(…ごめんなさい!)



ゴゴゴゴゴゴ…
849 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/19(金) 20:28:17.18 ID:9/dlbuA0
【nのフィールド】



ヒューーーーーーン…



(…『文明の墓場』…)



ヒューーーーーン…



(無数の瓦礫が、虚空に浮かぶ空間…)



「少し飛びづらいけれど… やつらも追いにくいはず…」



ヒューーーーーーン…



「…」



(それにここは、抜け道も多い… なんとなれば、どこへでも逃げこめる…)
850 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/19(金) 20:29:23.41 ID:9/dlbuA0
ヒューーーーン…



「…」



(おかしい…)





「静かすぎる…?」




パシュッ!



「くっ!?」



パシュパシュパシュ!!



「く…来たわね!」



ザザザザザ…
851 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/19(金) 20:31:23.37 ID:9/dlbuA0

(なっ?!)



ガラガラガラガラ…



(な… 多すぎる!!)



「しまった… 読まれたか!」



ビヒュン!!



「ほほほ… いいぞいいぞ」



ガラガラガラ…



「うまく追いこめ」



ザザザザザザ…



「く、こっちからも!」



ガラガラガラガラ…
852 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/19(金) 20:33:13.84 ID:9/dlbuA0
「…まずい…! 囲まれる!!」



ビヒュン!



「…よし」



バシャッ!!



「…な?!」



…ガシャッ ジャラッ



「こ… これは…!」


ガラガラガラ…



「…上手くいったようじゃな」



「き、貴様!」…ジャラッ
853 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/19(金) 20:36:17.00 ID:9/dlbuA0
レイ「小鳥を獲るには、網が一番じゃて」

雪華綺晶(お…お母さま!!)


…ザザザザザッ


レイ「さあ、おとなしくしてもらおうか。手荒なまねはしとうない」

水銀燈「…こんなものっ!!」…ガシャッ!

レイ「やれ」


バシャバシャッ!!


水銀燈「うあっ!」

レイ「ほほ、用意した網は一枚や二枚ではないぞ。どんどん投げつけろ」

雪華綺晶(や、やめろっ! このおっ!!)


バシャバシャッ!


水銀燈「く…あうっ…!」

レイ「もがけばもがくほど、からまるだけじゃ。 あきらめい」

雪華綺晶(ああ… お母さま…! やめて、無理しないで…!)

レイ「そうあがくな。悪い話ではなかろう」…ニヤリ

水銀燈「なん…だと…?」



「親子ともども、かわいがってやるぞ」



バォッ!!
854 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/19(金) 20:37:53.75 ID:9/dlbuA0
雪華綺晶(!! だめ!!)

レイ「ほう」



「…貴様ぁぁぁぁぁっ!!!」ゴォォォォォ…



雪華綺晶(だめ、だめ! 力を使いすぎないで!!)

レイ「発火しおった。 鉄の網といえど、溶かされてしまうの」…ゴソゴソ



カチリ



バヂッ!!!



水銀燈「ぐ! がっ…?!」



…カクン



雪華綺晶(お…お母さまあっ!!!)
855 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/19(金) 20:39:25.02 ID:9/dlbuA0
【河川敷】


ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ


蒼星石「く、このっ!」ジャギン!


ヒュンヒュンッ!


翠星石「この、このぉっ!」ガシン ギャリン!

蒼星石「真紅、まだなのか!」

真紅「もう少し…!!」ゴゴゴゴゴ…

ジュン「(や… やめるんだ… みんな!!)」



ゴゴゴゴゴゴ…



金糸雀「…ふふん」




ザワザワザワザワ… ビュゴゴゴゴゴ…
856 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/19(金) 20:41:16.91 ID:9/dlbuA0
雛苺「真紅! あ、あれっ!」

真紅「え? !! 金糸雀の翼が…?!」



「ふくれあがっていく…?!」



ザワザワザワザワ…



金糸雀「アリスゲームが…」

蒼星石「…なにっ?!」

金糸雀「アリスゲームが、磨いた力のぶつけあい、ですって…?」


キュンキュン! 


蒼星石「くっ…! な、なんだって?!」ガギィン!

金糸雀「水銀燈に認められたい、ですって…?!」

蒼星石「…それが、どうかしたか!」

金糸雀「甘いのよ」


ザワザワザワザワ… ビュゴゴゴゴゴ…
857 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/19(金) 20:44:30.29 ID:9/dlbuA0
真紅「翼が…ますます大きく!」

金糸雀「『戦い』っていうのは、ただの殺し合いよ…」ザワザワザワ…



「敵を踏みにじり、奪い、汚し、犯す… けだものの所業よ!」



ザワザワザワザワ… ビュゴゴゴゴゴ…!!



蒼星石「真紅、やるんだ!」

翠星石「今ですぅ!!」

真紅「みんな、伏せて!!」ビュゴゥ!!



…キシャアアアアアアア!!



金糸雀「お互いを認め合うとか… 高めあうとか… こんなものに…!」ビュゴウ!!



「こんなものに、そんな価値なんてあってたまるかぁーーーっ!!!」



…ピュィィィィィィィィィ!!
858 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/19(金) 20:46:37.17 ID:9/dlbuA0
翠星石「あ…あれは!!」

蒼星石「金糸雀の翼が!!」


…ピュィィィィィ!!


「炎の鳥に…!!」


…ズドォン!!


蒼星石「『薔薇の竜』が!! う、うわあっ!!」


ピュィィィィィ!!


翠星石「きゃあああああっ!!」


…バォッ!!


真紅「あうっ!」

雛苺「きゃあっ!」



…ドシャッ ガシャッ



「こんな…」 




「こんなものに…」
859 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/19(金) 20:49:59.12 ID:9/dlbuA0
【nのフィールド 文明の墓場】


水銀燈「く…」


カクン


雪華綺晶(お母さま…ダメ! いま、意識を失ってしまったら!!)

レイ「ようやく、おとなしくなったの。 …ん?」



パキ… ビキビキ…



雪華綺晶(あああ… お母さまが…!!)

レイ「これはいかん、崩壊してしまう」パチン


…ザザザザザザ


レイ「これ以上、崩壊せんよう処置を施してやろう。 …用意せい」

歩兵「…」ガシャリ



ゴォォォォォ…



雪華綺晶(な… なにを!)
860 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/19(金) 20:54:34.13 ID:9/dlbuA0
レイ「よく熱しておけ」

歩兵「…」


ゴォォォォォ…


レイ「よし、それくらいでよかろう」

歩兵「…」



…ガシャッ



雪華綺晶(…まさか! や、やめろぉっ!!! このおーーーーっ!!!)

レイ「暴れられるといかん」ガシャリ



「腕は外せ」



雪華綺晶(な?! …やめろっ!! やめろーーーっ!! お母さま!!)

歩兵「…」ガッ

水銀燈「…」

雪華綺晶(お母さまにさわるな!! やめろやめろやめろーっ!!!)



グヂッ ゴリッ



水銀燈「…う、ぐ!!」
861 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/19(金) 20:58:22.93 ID:9/dlbuA0
雪華綺晶(お…お母さまが…あああっ!!)

レイ「いいだろう、押さえておけ」

歩兵「…」ギリッ

水銀燈「う… うう…」


「しっかりと、灼き固めてくれる」


雪華綺晶(やめて!! やめて…!! お願い… やめてぇっ!!)

レイ「いくぞ」…ガシャッ

水銀燈「…う…」



…グリッ



水銀燈「う… ぐっ?!」



ジュゥゥ…



「ぐ! あぁっ!!」 



ジュウウウウウウ…



「ああああああああぁぁぁぁっ!!!」





(やめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!)
862 : [sage]:2009/06/19(金) 20:59:53.09 ID:9/dlbuA0
今日はここまでです。再開は明日。
863 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/19(金) 21:01:30.42 ID:LUNNX6Yo
ぐぅおおおお続きが気になるぅぅ乙です
864 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/19(金) 21:07:03.43 ID:zX9Gslco
くぅ、燃えてきたwwwwwwwwぜwwwwww
865 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/19(金) 21:08:34.43 ID:pLprexco
866 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/19(金) 22:08:25.52 ID:pKdUevoo
otu otu
867 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/19(金) 22:19:38.21 ID:J/Vl2EAO
乙でした
ぐぅぅ気になる!
868 : [sage]:2009/06/20(土) 18:38:31.68 ID:I1h51Qk0
乙どもっす〜
再開します。



今日は少し長くなります…
869 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/20(土) 18:39:50.20 ID:I1h51Qk0
【河川敷】


ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ


「気分はどう…?」


真紅「く…」グ …ググ

蒼星石「つっ…」…ムクリ


「圧倒的な力で蹂躙される… 命も誇りも、なにもかも奪われる…」


翠星石「か…金糸雀…」

雛苺「うっ… うう…」



「これが、あなたたちの望んだことでしょう…?」



蒼星石「ふ… ふざけるな…!」

金糸雀「ふざけていたのは誰よ」シュパッ!


ビシッ!!
870 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/20(土) 18:41:45.09 ID:I1h51Qk0
蒼星石「うあっ!」

金糸雀「水銀燈が望むから… ですって?」シュパシュパ!


ビシバシボスッ!


蒼星石「く! がっ! あうっ!!」

金糸雀「たとえ水銀燈の気持ちに背いても… 彼女に生きていてほしいとは思わないの?」

翠星石「蒼星石!」

金糸雀「あなたもよ」ビシュシュシュシュシュ!


ズババババババ!


翠星石「あああ…あうっ!」…ドシャッ

金糸雀「わたしたちは、この世にたった7人の姉妹なのよ」

真紅「金糸雀… やめて…!」


ビシュシュシュシュ!!


翠星石「うああ…っ!」ガシャッ…

金糸雀「手がかかるから、大変だから、水銀燈なんかいらないって言うのなら…」

雛苺「カナリア… やめて! やめて!!」

金糸雀「あなたから先に、ゴミために投げ捨ててやるわ」


バシュッ!!
871 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/20(土) 18:42:48.71 ID:I1h51Qk0
翠星石「う…」…ガクッ

金糸雀「さあ、ここまでよ… 決着をつけてあげる」

雛苺「…」 



…トテ トテ



真紅「ひ…雛苺?」

金糸雀「…?」



雛苺「…」トテ トテ…



蒼星石「雛苺… 何を…」

金糸雀「…それ以上近づいたら…」スッ

雛苺「…カナリア」



「もう… やめて…」
872 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/20(土) 18:45:10.25 ID:I1h51Qk0
金糸雀「…なんですって?」

翠星石「…ヒナ! …や…やめる…です…!」

雛苺「ごめんね… 金糸雀…」

金糸雀「…」

雛苺「ヒナが… ヒナが、悪かったのね… 泣いてばっかりで、なんにもしなかったヒナが…」

蒼星石「雛苺!!」



「みんなも… もう、やめようよ…」



真紅「雛苺…!」

蒼星石「君は… 何を!!」

雛苺「こんなの… こんなの、もうイヤ…」


…ダラン


金糸雀「…」

雛苺「カナリア…」



「ヒナの結晶、あげる…」
873 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/20(土) 18:48:09.93 ID:I1h51Qk0
金糸雀「…雛苺」

雛苺「だから… お願い、お願い…」



「もうやめようよ… こんなこと…」



「…」





水銀燈「…終わりよ、金糸雀」

金糸雀「…く、うう…」


…ジャキッ


水銀燈「よく戦ったわ。 …ほめてあげる」

金糸雀「…ほめる…ですって…?」

水銀燈「ええ。 …いい戦いだった」

金糸雀「…いい戦い…ですって…!?」


グ… ググ…


水銀燈「…もう勝負はついてる。悪あがきはおやめなさい」

金糸雀「戦いに… 戦いに…」



「『いい戦い』なんて… あるものかっ!」ガバッ!


…バギッ!
874 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/20(土) 18:49:18.83 ID:I1h51Qk0
金糸雀「がふっ…!」

水銀燈「…とどめがほしいようね」ツカ ツカ ツカ


…グィッ


金糸雀「う…」

水銀燈「まだ、何か言いたいことがある?」

金糸雀「…」



ボソッ



水銀燈「…え?」

金糸雀「…」



ボソボソ



水銀燈「何ですって…」



ガブッ!!



水銀燈「ぐっ?!」

金糸雀「ぐぐぅ… がふぅ…!」

水銀燈「この… 離せ、離せっ!」ベキッ!



…ガシャン
875 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/20(土) 18:50:23.92 ID:I1h51Qk0
水銀燈「なんて、執念なの…」

金糸雀「…こんな…」

水銀燈「…?」



「こんなこと… もう、やめようよ…」



水銀燈「…」

金糸雀「憎みあって… 奪いあって、殺しあって… けだものになっていって…」

水銀燈「…あなた」

金糸雀「こんなことまでして… アリスになれたとしても… いったい何が残るの…?」 

水銀燈「…」

金糸雀「お願い… お願いよ…」

水銀燈「…」



「わたしは、アリスになる」…ビュッ 


ザグ


「…がっ」
876 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/20(土) 18:53:00.30 ID:I1h51Qk0
…カクン


「わたしは… 憎むことも、戦うこともやめない」


ポゥ…


「でも… あなたのことは、認めてあげる」パァァァ…


…スッ ヒシッ


「せめて、可愛いお人形として… みんなに愛されなさい」


ギュッ…


「生きることは戦うこと… 生きることを捨てれば、戦わずに済む」



「奪い、奪われ… 汚し、汚され… 犯し、犯され… けだものになりはててまで戦うのは…」 





「わたしだけでいい…」
877 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/20(土) 18:55:07.12 ID:I1h51Qk0
「(わたしだけで…)」



真紅「やめなさい… やめて、雛苺!」

蒼星石「…いますぐ離れるんだ!」

翠星石「ヒナ! そいつは、契約者までも…!」



雛苺「…そんなこと、ない」



金糸雀「…」

雛苺「カナリアはぜったい… そんなことしない」

真紅「雛苺!!」

雛苺「…お姉さんだもん。 信じるもん」

蒼星石「だ… だめだ…!」

雛苺「…カナリア、水銀燈を… お願いね」

金糸雀「…」




「約束よ…」

「…」




ザシュッ!!
878 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/20(土) 18:57:12.07 ID:I1h51Qk0
【nのフィールド 文明の墓場】


ジューーー…


水銀燈「…う…う…」

(ああっ…)

レイ「背中は念入りにやれ。 翼を出せんようにしろ」


ジュゥゥゥゥゥ…


水銀燈「く… う…」

(ああ… ああああ… お母さま… こんな…)

レイ「顔もしっかり、灼きしめておけ」


(こんなの… ひどい… ひどすぎる…)


…ガシャッ


レイ「さて、こんなものかの」グィッ

水銀燈「…う…」

レイ「気分はどうかね」


「…」
879 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/20(土) 18:59:38.90 ID:I1h51Qk0
レイ「ほほ、さすがに口もきけんか」

水銀燈「…」

レイ「まあ、時間をかけて貞淑なレディに仕こむとしようか」

水銀燈「…」

レイ「心配せんでもよい」 


「おぬしの娘たちも、契約者たちも、みな我が館に招待してしんぜよう」


雪華綺晶(なっ! …き、貴様っ!!)

レイ「皆で仲良く、おだやかに… なんの苦痛も苦労も心配もなく、暮らすがいい」

水銀燈「…」


「たっぷりもてなしてやろう。 ほっほっほ…」


水銀燈「…」


ボソッ


レイ「ん?」

雪華綺晶(…え?)



「…」ボソボソ
880 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/20(土) 19:00:36.26 ID:I1h51Qk0
レイ「…なんじゃと?」

水銀燈「…わたし…」



「わたしだけでいい…」



ガブッ!!



レイ「ぎゃあっ?!」

雪華綺晶(お母さま?!)

レイ「こ、このっ! 離せ、離さんか!!」

水銀燈「ふぅっ… ぐぅっ…!」ギリギリ

レイ「この、けだものめが!」バシッ! ビシッ!

水銀燈「ぐぐっ…!」ギリギリギリ…



(そう、わたしだけでいい…)



ギリギリギリ…
881 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/20(土) 19:01:27.60 ID:I1h51Qk0
(奪い… 奪われ… 汚し… 汚され…)


…ミシッ ブヂッ

レイ「ぐがっ!!」


(犯し… 犯されて… けだものになってまで… 戦うのは…)



レイ「うわぁ、ぐわぁぁ!!」

歩兵「…」ガシャッ



(わたしだけで…)



レイ「こ、このっ!」

歩兵「…」ブン



グシャッ



「…がっ」
882 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/20(土) 19:03:32.65 ID:I1h51Qk0
雪華綺晶(!!!)

レイ「?! こ、こら! 何をしておる!!」



「壊すなと言っただろうが!!」



水銀燈「あ… あ…」カクカク… カク…



雪華綺晶(お母さま… お母さまぁっ!!)



【河川敷】


雛苺「…」ガクン…

巴「(いやあっ!! 雛苺ーっ!!!)」


…ガシャッ


金糸雀「…」


ポゥ…


巴「(雛苺が… ああっ!)」

みつ「(金糸雀… あああ…! 悪夢だと言って…!)」
883 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/20(土) 19:04:27.96 ID:I1h51Qk0
金糸雀「…雛苺」パァァァ…



(…ごめんね…)



真紅「金糸雀…!」

蒼星石「お前…、お前! 自分のしていることを!」

金糸雀「…まだやる?」


ヒュンヒュンヒュン…


金糸雀「もう、万に一つも、あなたたちに勝ち目なんてない」

蒼星石「こ、この…!」

翠星石「(蒼星石!!)」

グィッ!

蒼星石「な… 翠星石?」

翠星石「(見なさい! 金糸雀の翼を!!)」

蒼星石「(え…?)」


ゴ… ゴ… ゴ… ゴ…
884 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/20(土) 19:05:30.55 ID:I1h51Qk0
蒼星石「(あ! …小さく、なってる…!)」

翠星石「(エネルギーを使いすぎたか… 雛苺のおかげで、憎しみが薄れたんです!)」

真紅「(でも… 雛苺の結晶を得たから、すぐに回復するわ…)」

蒼星石「(ありがとう、翠星石!!)」ババッ!



シュタタタタッ!



翠星石「蒼星石!?」

蒼星石「(刺し違えてでも… 演奏を止める!)」

真紅「無茶よ!!」

蒼星石「ふたりとも、援護して!!」

真紅「…くっ!」ビシュン! ビシュシュン!



バシュシュシュシュ!



蒼星石「くっ、ちっ!」

金糸雀「(…まずい…)」ヒュンヒュンッ!
885 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/20(土) 19:06:29.64 ID:I1h51Qk0
翠星石「え、えぇーいっ!」シュワァァァァ…!



シュパッ! シュパパパパッ!



蒼星石「うおおおおおっ!」

金糸雀「(止めきれない!)」



シュダッ!



蒼星石「もらった!」

金糸雀「…でも」



「やっぱり、甘いわ」



ドヅッ



「がはっ?!」
886 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/20(土) 19:07:19.38 ID:I1h51Qk0
翠星石「そ… 蒼星石?」

真紅「やったの…?」



「ぐ…」



…ガクリ



翠星石「!! いやあっ!」

真紅「蒼星石!!」



「ま… まさか…」ズ… ズズ…



金糸雀「…両手がふさがっていて… 翼も弱ってるけど…」

蒼星石「仕込んでいた…なんて…」

金糸雀「まだ足があることを忘れていたのね…」



(金糸雀の靴先に… ナイフが…)



…ガシャッ



翠星石「いやあああああっ!!」
887 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/20(土) 19:10:55.73 ID:I1h51Qk0
【nのフィールド 文明の墓場】


水銀燈「…あ…ああ…」


カクカクカク…


雪華綺晶(お母さまっ!! いやあっ!!)

レイ「まったく、壊すなと言っただろうが!」ガシャ



…ガシャガシャ



雪華綺晶(ああ、ああああ… あれでは…もう!!)

レイ「やれやれ、修復できるか?」ガシャガシャ…


「顔、半分…といったところか」


水銀燈「あ… うあ…(い… いけ… ない…)」カク… カク… カク…



(からだが… 壊れ… すぎて… もう…) 



カク… カク… カク…



(自我を… からだに… とどめて… おけない…)



カク… カク… カク…



(ああ… わたしが… わた… しが… 崩れて…いく…) 
888 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/20(土) 19:12:47.26 ID:I1h51Qk0
カク… カク… カク…



(ああ… あああ… 散って…いく…) 



(薄れて… いく…)







(???「…水銀燈」)



(? いま… のは…)



(???「水銀燈… 起きているかい?」)



(おとう… さま?)



(???「おかあさま… はじめまして」)



(みん… な…?  い、いけない…) 





(意識が… 混乱… してる…)
889 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/20(土) 19:15:01.08 ID:I1h51Qk0
(???「おとうさま、おかあさま! おはようございますかしら!」)



(だ…だめ… 目の前に… 敵が… いるのに…) 



(???「おかあさま… 泣いているの?」)



(意識を… 集中… しなくては… だめ…)



(???「おかあさま… あたたかいの…」)



(…な… なぜ… こんな記憶ばかり… 戦闘に… 意識を…)




(…)




(み…) 




(みん… な…)
890 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/20(土) 19:18:02.96 ID:I1h51Qk0
【?????】



ここは…?



しずかで、あたたかい… 夕暮れ?

みんな… 金色に… 染まってる…



空も… 庭も… からたちの苗も…

ああ、なんて、きれいなんだろう…





「…銀ちゃん」





あ… あなたは?  …お姉さま?





「…水銀燈」





あなたは… 巴?
891 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/20(土) 19:20:44.61 ID:I1h51Qk0
「ふふ、ぎーんちゃん♪」




…みつ…




「…水銀燈ちゃん」




おじいさま… おばあさま…




「…水銀燈」




あなたは… ジュン…




「水銀燈?」




めぐ… あなたも… それに、ああ、あなたまで…




「…水銀燈」






お父様…
892 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/20(土) 19:22:58.22 ID:I1h51Qk0
みんな… みんながいる… あれ…?

あの子たちは…?




トクン




…?




トクン トクン…




ああ… ここにいたのね…




トクン… トクン… トクン…




わたしの… おなかのなかに…

みんなが…




トク トク トク…




ここにいるのね…

つながって… いるのね…
893 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/20(土) 19:27:20.80 ID:I1h51Qk0
ああ…

うそみたい…




お父様が… いてくれて… 

お父様がつくってくれた… わたしのなかに…




かけがえのない、この子たちがいて…

わたしのとなりには…あなたがいる…




わたしが選んだひと…わたしを選んでくれたひと…

そして… わたしたちのまわりには… みんながいる…




わたしたちを… 祝福してくれるひとたち… 受け入れてくれたひとたちが…

わたしたちを… 囲んでくれている…








わたしには… 望んでも望んでも得られないと… あきらめていたものが…

いま… ここにあるなんて…




「からたちの花が 咲いたよ…」
894 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/20(土) 19:30:00.82 ID:I1h51Qk0
…めぐ?




「白い 白い 花が咲いたよ…」

…ジュン…




「からたちのとげは いたいよ…」

…みんな…? ふふっ…




「青い 青い 針のとげだよ…」

みんな…




からたちは 畑の垣根よ…

いつも いつも 通る道だよ…









わたし…




怖い…
895 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/20(土) 19:32:00.55 ID:I1h51Qk0
わたし… 怖い… 怖いよ…

わたし…




お父様を… 死なせたのに…

この子たちを… 戦いに追いやったのに…




あなたたちにも… ひどいことをしたのに…

わたしだけが… こんなに…




こんなに幸せで… いいの?

みんなのおかげ… なのに…




わたし… ひとりだけ…

怖い… 怖いよ…





幸せすぎて… 怖い…





わたし…






896 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/20(土) 19:35:14.12 ID:I1h51Qk0
…主よ




どうか… この子たちに… みんなに…

あなたの恵みが… 祝福があらんことを…




幸せになる資格なんか… なかったわたしを… 

こんなにも… 幸せにしてくれた… この子たち、このひとたちに… どうか…




そのためなら、わたし… 

どうなろうと、かまいません…




こなごなになろうとも… 




地獄の炎で灼かれようとも…



わたしはもう… なにもいりません…  

だからどうか…




どうか…






……
897 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/20(土) 19:37:20.04 ID:I1h51Qk0
【nのフィールド 文明の墓場】



水銀燈「…」

レイ「やれやれ…」


…ガシャガシャ


水銀燈「…」

レイ「まったく… ひどく壊してくれおって」

雪華綺晶(あああ… あれではもう… お母さま…っ!!)

レイ「これはもう、さすがにだめかもしれんの…」


…ミシッ


レイ「ん?」

水銀燈「…」


ミシ… ミシ…


レイ「…ま、まずい!」

雪華綺晶(お母さま?!)




ミシミシ… ビキッ
898 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/20(土) 19:38:39.54 ID:I1h51Qk0
レイ「みなのもの、下がれ! 危険じゃ!!」

雪華綺晶(ああ… お母さま、あああっ!!)

歩兵「…」


ザザザザザザ…


レイ「急いで離れろ! さもないと―」



ズドォン!!!



雪華綺晶(?!) 

レイ「うぉっ?!」



ゴォォォォォ…



(いっ…)

レイ「…自爆しおったか…」




(いやああああっ!!!)


ゴォォォォォ…
899 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/20(土) 19:40:33.46 ID:I1h51Qk0
雪華綺晶(ああ… ああああ… こんな、こんなことって…!!)


ゴォォォォォ…


レイ「火柱が吹き上がっとる… 危険じゃが、火を消せ」

歩兵「…」ガシャガシャ

レイ「せめて残骸だけでも回収…」



「ん? 待てよ…」



歩兵「…」ザザザザ

レイ「妙じゃの… 自壊したのなら…」



「なぜ… 結晶が排出されんのだ…?」



バォォッ!!



歩兵「!!」



グシャバキバキバキ!!
900 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/20(土) 19:43:44.03 ID:I1h51Qk0
レイ「な?!」

雪華綺晶(え?!)




ゴォォォォォ…




レイ「火柱が…兵どもをなぎはらいおった?!」

雪華綺晶(まさか… まさかあれは!!)




ゴオオオオオオ…



「…」



レイ「あ… あれは… 火柱ではない!」

雪華綺晶(…お母さまの、肩口から吹き上がってる… あれは!!)

レイ「まさか…ありえん… しかし!!」



「…」



「あれが『翼』だというのか!!」



「…」




…ムクッ
901 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/20(土) 19:48:34.27 ID:I1h51Qk0
レイ「まさか… あれが、あれが… そうなのか…」



「…」



…ユラリ



レイ「(…お…起き上がりおった…)」

雪華綺晶(ああ… あああ!! あれは、あれはまさしく!!!)



(???「白く輝く、炎のような翼。 膨大なエネルギーが放出されているあかし」)




「…」ゴォォォォォ…



ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ…



レイ「(ち… 近づいてきおる…)」

雪華綺晶(お母さまが… 覚醒したあかし!! でも… でも!!)


(???「確認したら、すぐに私を呼ぶのです。 おそらく彼女の体では数分と保たない」)


雪華綺晶(あああ… そんな、そんな! せっかく…せっかくお母さまが…)


(???「完全に崩壊してしまっては、助けるすべはありません。速やかに私を呼ぶのです」)




(『マリア』になってくれたのにっ…!!!)
902 : [sage]:2009/06/20(土) 19:50:37.40 ID:I1h51Qk0
飯食います。再開は今夜22:00予定。
903 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/20(土) 19:52:27.76 ID:pKzAslYo
乙です。

俺も飯にするか……
904 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/20(土) 21:53:25.21 ID:M.6Pza6o
銀さまああああああああああああああああああああああああ
あぁぁぁぁ眠い!
でも[ピーーー]ないっ!
905 : [saga]:2009/06/20(土) 22:06:58.11 ID:I1h51Qk0
再開します〜
906 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/20(土) 22:08:23.28 ID:I1h51Qk0
【河川敷】


ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ



「…まだやるの?」



翠星石「…お前こそ、まだやる気ですか?! こんな、こんなバカなこと!」

真紅「あなた… いったい、なぜ!」

金糸雀「…水銀燈を助けるためなら、どんなことだってする」

翠星石「おまえ、自分で言ったこと、忘れたですか!!」



「楽してズルして、八方めでたしめでたしで終わらせるって!!」



金糸雀「…もう、時間がない。 手段を選んでられなかった」

真紅「待って…! 待って、金糸雀!」

金糸雀「おしゃべりは終わり」



パシュパシュッ!
907 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/20(土) 22:10:53.51 ID:I1h51Qk0
翠星石「(…精霊で攻撃してくる… 翼はまだ、回復しきってないです!!)」

真紅「(今しか… 今しかない!)」シュタタタッ!

金糸雀「…くっ!」パシュッ!

翠星石「もらったですっ!」


ガシィン!


金糸雀「こ…この!」

翠星石「2度も… ケリはもらいませんよ…!」

真紅「そこっ!」シュピッ!


パツン!


金糸雀「…しまった!」

翠星石「えぇーいっ!」バシッ!

金糸雀「あうっ!」



ズザッ…
908 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/20(土) 22:14:15.88 ID:I1h51Qk0
真紅「ジュン! みんな!」

翠星石「だいじょうぶですか!」


ジュン「(真紅… 翠星石…)」

のり「(みんな… もうやめて…)」


真紅「金糸雀… もう、やめなさい!!」

金糸雀「あなたたち…」

翠星石「…ジュンに手出しはさせないですっ!」



「ジュン…?」



ザワザワザワザワ…



真紅「か…金糸雀?」

金糸雀「あなたたち…」



「水銀燈より、ジュンが大事だとでも言うの…?」
909 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/20(土) 22:21:09.19 ID:I1h51Qk0
翠星石「な… 何を言ってるですか、お前は!?」

金糸雀「人間の男の子のほうが… わたしたちのお姉さんよりも…?」



ザワザワザワザワ…



真紅「金糸雀! あなた… おかしい! ほんとうに、おかしくなってる!!」

金糸雀「ジュン… あなたたちの契約者…」



(マエストロ級の技術を持っていて…)


…ザワザワ


(甘えべたで、甘えさせ上手で…)


…ザワザワザワ


(面倒くさがりだけど、こうと決めたことにはひたむきで…)


ザワザワザワザワ…


真紅「金糸雀の翼が…!」

翠星石「さっきよりも… 大きく!!」
910 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/20(土) 22:25:48.17 ID:I1h51Qk0
(そして… そして…)


ザワザワザワ… ビュゴォォォォ…


(水銀燈が選んだひと…)



ゴゴゴゴゴゴ…



真紅「いけない! あれは、さっきの!!」

翠星石「こ、こっちに撃つつもりですか?!」

金糸雀「(ジュンは… ジュンは…)」


(水銀燈が…選んだ…)



(水銀燈と…)



(昨日の晩…)



ジュン「(…カナ!)」

金糸雀「水銀燈を…」ブァッ!


ピュイイイイイイ!!!




「水銀燈を返せぇぇぇぇぇぇっ!!!」
911 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/20(土) 22:30:41.97 ID:I1h51Qk0
真紅「ああ… よ、よけられない! よけたら、みんなに直撃する!」

翠星石「なんて無茶をしやがるですか!!」



ピュイイイイイ!!



ジュン「(金糸雀… きみは…)」

真紅「うけとめるしかない!」

翠星石「…いちかばちかです!」



ピュイイイイイイ…!



真紅「…来るっ!」

翠星石「根性見せるです!!」



ズドオン!!



真紅「ぐ…ぐぅっ!!」ギギギギ…

翠星石「み… みんなには… みんなだけは!!」ズズズズ…




ドゴォン!!!




「うあああっ!!」

「あうっ!!」
912 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/20(土) 22:33:47.20 ID:I1h51Qk0
【nのフィールド 文明の墓場】



ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ


水銀燈「…」



レイ「(な、なんという力じゃ… まるで、太陽のそばにでもおるようじゃ…)」


水銀燈「…」オ オ オ オ オ オ… 


レイ「(…お、落ち着け… 頭半分が吹き飛んでおるのだから…)」

歩兵「…」ジャキッ

レイ「(明確な意識など… 無いはず… ゆっくり、ゆっくり後退しろ…)」

歩兵「…」



ザ… ザ… ザ…



水銀燈「…」



…ミシッ



レイ「…?」
913 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/20(土) 22:38:43.55 ID:I1h51Qk0
雪華綺晶(お母さま…?)



…ミシ …ミシ



レイ「(…やはり、あれだけの力には体がもたんか?)」

(あああ… お母さま! 早く、早くあいつに知らせないといけないのに…!)



ミシミシ… メリッ



水銀燈「…」



レイ「(もう、捕らえるのは不可能じゃ… このまま自壊してしまえ…)」

(ああ、だめ、だめぇっ!!)




メリメリ… ベギベギベギ!!




雪華綺晶(!!!)

レイ「あ…あれは!!」
914 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/20(土) 22:41:28.19 ID:I1h51Qk0
雪華綺晶(お母さまの… お母さまの胸が!!)

レイ「あれは… 結晶なのか?! …バカな!」



ボォゥ…



レイ「いくらなんでも、大きすぎる! なんだあれは!!」

雪華綺晶(ああ… あれは、まさしく…)



(???「精神が完成され、覚醒を遂げたなら… その役割を終えた結晶は排出されます」)



レイ「え、ええい! このまま吹き飛んでしまえ!」

弓兵「…」シュパシュパシュパ!

雪華綺晶(あああ… お母さま!)



「…」



ズバォッ!!
915 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/20(土) 22:46:01.68 ID:I1h51Qk0
レイ「ぬわっ?!」

水銀燈「…」


ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ…


レイ「ど… どこへ行った? …前列の兵どもは…」

雪華綺晶(す… すごい…)

レイ「…まさか」



「蒸発させられたとでも…」



水銀燈「…」

レイ「に、逃げろっ!! 戦車隊、全速で下がれ!!」



ガラガラガラガラ…!



「歩兵どもは足止めをしろ!」



水銀燈「…」



バシュン!!
916 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/20(土) 22:48:04.26 ID:I1h51Qk0
レイ「は…速い、速すぎる!!」

雪華綺晶(ああ…お母さま! やめて、わたしのことはいいの!!)

水銀燈「…」バシュウウウ…!!


ウボゥ バオッ ズバゥッ!!


雪華綺晶(お母さま! やめてっ!!)

レイ「(障害物を吹き飛ばして来おる!!) ええい、抜け道に逃げこめ!!」



ガラガラガラガラ…



水銀燈「…」



ガラガラガラ…



レイ「ほ、ほほ… どうやら、まいたようじゃな」


ガラガラガラ…


レイ「やはり意識はない… 衝動的に動いておるだけのようじゃ」 


ガラガラガラ…


レイ「あとは、時間を稼げはいずれ崩壊しよう… 長くはもたんじゃろう」
917 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/20(土) 22:58:29.42 ID:I1h51Qk0
レイ「できれば手に入れたかったが。 …まあ、しかたあるまい」



ブォーーーン…



レイ「ん?」



オ オ オ オ オ オ…



レイ「なんじゃ? 急に目前の視界が悪く…」

(…? あれは??)



…ヒューン チィン キィーン… キュイン



レイ「…ち、違う!! この音は…」 



キュン…! キュバッ… キュン キュン!



「空間がゆがみ、はじける音!!」
918 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/20(土) 23:03:32.08 ID:I1h51Qk0
(まさか… まさか!!)



キュバアアアッ!!!



レイ「ば…ばかな!!! 目の前にだと!!」

(お… お母さま!!!)



水銀燈「…」 オ オ オ オ オ オ オ



レイ「瞬間移動だと… ばかな!!!」

(だめ… だめ、お母さま! 力を使わないで!!)

水銀燈「…」バォォォォォッ!!

レイ「ひっ?!」 


バォッ! バァウッ!


レイ「に、逃げろ!!」



ガララララララ…



水銀燈「…」ビヒュン!

レイ「く、くそ! 撃て! 撃ちこめ!! 破壊してしまえ!!」


ボォン ズボォン!
919 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/20(土) 23:05:58.56 ID:I1h51Qk0
(…お母さま!!)


ヒキュン キュイン!


レイ「く、なぜ当たらん!?」 

水銀燈「…」バォォォォォッ!

レイ「かわしすらしておらん、まっすぐ飛んできてるだけではないか!」


ボォン ボォォン!!


水銀燈「…」


ヒキュッ ビィン!


レイ「な… バカな…!」




「弾道が曲げられておる…!!」



バォォォッ!


レイ「く、うおお!!」
920 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/20(土) 23:10:10.84 ID:I1h51Qk0
水銀燈「…」


バォォォォ!


レイ「く… 追いつかれる!」

(お、お母さま!! もう… もうやめて!!)


バオッ!


レイ「くぅっ!」ガクン!

(あ… あああ…)



水銀燈「…」 オ オ オ オ オ オ オ オ



レイ「も… もう遅い! もう貴様は、数分ともたんはず!!」

水銀燈「…」

レイ「ここでこやつを取り戻そうと… 貴様を修復できる時間なぞないわ!!」

水銀燈「…」ボソ

レイ「…なに?」



「…ら…も…  の…よ…」



レイ「な…なんじゃと?」

(お母さま…?)




「まろ… ま… き… …だ… よ…」
921 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/20(土) 23:13:04.16 ID:I1h51Qk0
レイ「え、ええい! 狂っておる、話にならん!」


ガラガラガラガラガラ…


水銀燈「…」


ビヒュン!


レイ「く、まだ追ってきおる!」

(ああ…だめ、逃げて! 逃げてっ!!)

水銀燈「…」


バォォォォッ!


戦車兵「!!」


ボォン!!


レイ「な… 戦車までも一瞬で…!」


バァオッ!


レイ「く…もう、貴様は助からんというに!」

水銀燈「…」ボソボソ…

レイ「な…これは?」

(お母さま…?)

水銀燈「…」




「これは… 歌、じゃと…?」
922 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/20(土) 23:17:59.10 ID:I1h51Qk0
(おかあさま…)

水銀燈「…」



からた… ちの… そばで… 



泣いた… よ…



レイ「な… なんと?!」

(お母さま…!?)



水銀燈「み…んな… みん…な…」



レイ「き…貴様!!」

(おかあ… さま…! ああっ…!!)



「やさ… し…  か…っ た…   よ…」





(ああ… ああああ!)
923 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/20(土) 23:24:44.34 ID:I1h51Qk0
バォォォォォ!!



レイ「う、うおおお!」

(ああ、あああ、お母さま…!!)



「からたちの… 花が… 咲いたよ…」…ピキッ



バォッ! バァウッ!

歩兵「!!」バジュッ!



「白い… 白い…」 ピキ ピキキキキッ…



バアアアアアッ!

弓兵「!!」グシャッ!



「花… が…」パキ…ッ…



ドバゥッ!

戦車兵「…!」ベギッ!



「咲い… た… よ…」






パァ…ン…!
924 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/20(土) 23:28:24.34 ID:I1h51Qk0
レイ「ぬおっ?!」

(…えっ?)



…パラ …パラ 



レイ「…これは」

(…うそ…)



…カラン …カシャン



レイ「…助かった、のか…?」

(そんな… そんな…)



…ガシャリ ガシャッ



(お… お…)









(お か あ さ ま ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ っ!!!)
925 : [sage]:2009/06/20(土) 23:30:15.38 ID:I1h51Qk0
今日はここまでです。 続きは明日。
926 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/20(土) 23:32:24.22 ID:EC.6MSMo
乙 ぅ ぅ ぅ ぅ ぅ ぅ ぅ ぅ っ!!!
927 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/06/20(土) 23:35:04.38 ID:TJU0Ntg0
うあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!
乙ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!
928 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/20(土) 23:40:26.07 ID:ZNTMjdso
おっつ
929 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/20(土) 23:40:54.34 ID:nRUW7lAo
おつ!
930 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/21(日) 06:34:36.19 ID:fqSUjJ.o
銀様・・・
931 : [saga]:2009/06/21(日) 20:58:34.56 ID:k61sOX60
>>926-930
ごめんなさいとしか言いようが無いのですが…



再開します。
932 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/21(日) 21:00:05.72 ID:k61sOX60
【有栖川大学病院 集中治療室】



ピッ… ピッ… ピッ…


看護婦「脈拍が低下しています!」


ピッ… ピッ… ピッ…


医師「カンフルを!」


ピッ… ピッ… ピッ…


看護婦「(めぐちゃん…!)」


ピッ… ピッ… ピッ…


めぐ「…」…シュコー シュコー…




(水銀燈…)
933 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/21(日) 21:01:47.10 ID:k61sOX60
ピッ… ピッ… ピッ…


(わたしの命なんか… いくら使ってもいい…)


ピッ… ピッ… ピッ…


(だから… だから… あなたは…)



(あなただけは…)




…ピキッ




(…?)



…ピキ…ピキ



(ゆ…指輪?)


…ピキピキ…


(…水銀燈!!!)




(あなた… だめっ!!)
934 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/21(日) 21:03:58.38 ID:k61sOX60
【nのフィールド】



ガシャ… ガシャ ガシャッ…



(ああ… お母さまが… お母さまのからだが…)

レイ「…まったく、肝を冷やしたぞ…」



カラン… カラ…



(空から… 降ってくる…)

レイ「ん…?」



ボォウ…



レイ「ほう… 結晶か」

(お… 大きい…!)

レイ「とりあえず、破片と結晶だけでも回収しようか」

歩兵「…」


ザッ… ザッ…


(や、やめろっ! お母さまにさわるなぁっ!!!)



…ピキッ



(…?)
935 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/21(日) 21:05:34.33 ID:k61sOX60
レイ「残った兵力は… これだけか」

歩兵「…」

弓兵「…」

戦車兵「…」

レイ「回収が終わったら、一度兵を集めなおさんとの」

(一個きりの振動機を破壊されてしまったからのう…)



…ピキピキ



(…これは…)

レイ「…ん?」



…パキッ



レイ「何の音じゃ?」

(ああ… お母さま、お母さまっ!!)



パキッ… パキッ!
936 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/21(日) 21:09:16.18 ID:k61sOX60
レイ「…!! まさか!!」


ゴソゴソ…


「し、しまった!!」



パキッ!!



「きゃつの破片が『鏡の箱』に!!」



…パァン!



「…まずい!」



ズワァァァァァァァァァァ!!!



「うおお?!」


「よくも…」




「よくもぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
937 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/21(日) 21:11:56.14 ID:k61sOX60
「…む?」



「お母さまのかたき!! 思い知れっ!!!」



「…これはこれは」



「おまえなんか、消・え・て・な・く・な・れぇーーーーっ!!!」



「ありがたいことじゃて」



「な、なにっ?!」



「やれ」



歩兵「…」パカリ



…ビュゴゴゴゴゴゴ
938 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/21(日) 21:14:24.99 ID:k61sOX60
雪華綺晶「な?!」

レイ「一箱しかないとでも思ったか?」

雪華綺晶「し…しまった!!」



ビュゴゴゴゴゴゴ…



雪華綺晶「ああ… く、くそぉっ!!」

レイ「親も親なら子も子、汚い言葉を吐きよる」

雪華綺晶「こ、このっ!!」

レイ「逃げられたらまずいと思っていたのじゃが、これは重畳重畳」

雪華綺晶「…ああ、ああああ… 引き込まれる…!」



シュパッ!



レイ「む?!」



シュパッ シュパッ!



レイ「精霊か! こざかしい!」

雪華綺晶「メイメイ!」
939 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/21(日) 21:15:45.00 ID:k61sOX60
レイ「箱を破壊する気か… そうはさせん!」



ビュゴゴゴゴ…



レイ「来るなら来い! 一緒に引きずりこんでくれる!」

雪華綺晶「ああ… だめっ! 来ないで!」



(抗わないで)



雪華綺晶「…え?!」



(わたしを信じて 受け入れて)



雪華綺晶「(メイメイ…!?)」



ズドッ!



レイ「なにっ?!」

雪華綺晶「あうっ!!」



…カクン
940 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/21(日) 21:20:34.14 ID:k61sOX60
レイ「ば… ばかな!」


シュパッ!


「結晶を抜き出しおった!!」


シュパッシュパッ!


レイ「しまった! 『聖母』の結晶までも!」


ヒューーーーーン…


レイ「く、追え!!」

歩兵「…」


ザザザ゙…


レイ「…いや、待て」

歩兵「…」

レイ「もうどうせ、間に合わん… それに、行き先はわかっておる」

歩兵「…」

レイ「あやつらのところじゃろう。ならば、慌てる必要は無い」

歩兵「…」

レイ「あやつらはもう、わしの罠に落ちておるのじゃからな… 捨て置いて、戦力をまとめなおせ」 

歩兵「…」


「わしの罠のただなかに、結晶が飛びこんでくれるのを待つとするか」


歩兵「…」


ザザザザザザザ…
941 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/21(日) 21:24:09.38 ID:k61sOX60
【河川敷】


真紅「…うう…」


…ジャリッ


翠星石「く…」



「直撃に、よく耐えたわね」



真紅「だ…だめ…!」

翠星石「ジュン… ジュンは…」



「これで、決着よ」



みつ「(ああ… カナ! やめて!!)」

ジュン「(金糸雀…!)」


ザグ ドズ


「かはっ」

「あぐっ」
942 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/21(日) 21:25:45.87 ID:k61sOX60
ジュン「(真紅! 翠星石!!)」


…ポゥ


金糸雀「これで… あとふたつ」パァァ…


…ジャリッ


金糸雀「…雪華綺晶を、呼び寄せないと…」

巴「(…やめて金糸雀! やめて!!)」

金糸雀「…」


…ジャキッ


「…ジュン」


ジュン「…か… 金糸雀…」

金糸雀「…」

のり「(やめて! やめてやめて!!)」

金糸雀「…」

ジュン「金糸雀…」




「ごめん…」
943 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/21(日) 21:27:53.58 ID:k61sOX60
金糸雀「…え?」

ジュン「きみの…大事なお姉さんを…」


「ほんとうに… すまない…」


「…」


「もう…」



ガバッ!



「もう遅いのよぉっ!!!」



ビュン!



(おやめなさい!)



パシュッ!



金糸雀「あうっ?!」

ジュン「…あれは?!」



…ボォゥ
944 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/21(日) 21:29:56.84 ID:k61sOX60
ジュン「メイメイと…あれは…」 


「ローザミスティカが、ふたつ?!」


金糸雀「大きいのと… 小さいのと…?!」

ジュン「まさか… まさかあれは!!!」



(…もう、おやめなさい)



金糸雀「え… えっ?!」

ジュン「金糸雀…?!」

金糸雀「ああ… そんな、そんな!」



(あなたの勝ちよ。 …もう、ゲームは終わり)



金糸雀「そんな! うそ、うそよ!!」

ジュン「金糸雀、どうしたんだ?!」



シュパッ ズゥン!!



金糸雀「あうっ?!」
945 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/21(日) 21:33:13.17 ID:k61sOX60
ジュン「…メイメイが!」

巴「(結晶を…金糸雀の中に!)」

金糸雀「ああ… ああああ…(こ… これは…!)」

(水銀燈の記憶が… なだれこんでくるっ!!)



(ローゼン「君は、この子たちの母親になるべく創られた」)

(お父様!?)



(水銀燈「…はい、お父様」)

(す… 水銀燈!! まさか…そんな!!)



(金糸雀「おとうさま、おかあさま、おはようございますかしら!」)

(!! そんな… そんな!!)



(錬金術師「自動人形ごとき、わしの相手になるか」)

(! そう…わたしたちはあのとき、意識を失って…)



ジュン「金糸雀!!」

金糸雀「ああ… あああああ…」ガクガクガクガク…
946 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/21(日) 21:35:05.09 ID:k61sOX60
(そんな… 水銀燈が、わたしたちのお母様で…)



(お父様が… とうに亡くなっていて…)



(アリスゲームに勝っても… アリスにはなれない、お父様にも会えない…)



(そして… ジュンが… 水銀燈を通して… わたしたちに命を…)



(水銀燈は… わたしたちを産み落とすために大ケガをして…)



(そして… そのまま戦って…!!!)



(ああ… あああああ!!!)



(わたしが…) 



(わたしが呼びに行かなかったから!!!)



「それは違うわ」



(!!!)



金糸雀「ああ… ああああ…」ガクガクガク…
947 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/21(日) 21:39:25.63 ID:k61sOX60
ジュン「なにが… なにが起きているんだ!!」

金糸雀「あああ… あああ… す…水銀燈…」

ジュン「!!!」



(ああ…!! 水銀燈、水銀燈っ!!!)

「あなたのせいじゃない…」



(そんな… わたし、わたしがこんなことをしていたからっ!!!)

「あなたは、わたしのためにせいいっぱい頑張っていただけ」



(うそ… うそよ!!)

「なるべくしてなったこと。 気にしないで」



(そんな! 違う、わたし、わたしのせいで!!)

「…強くなったわね」



(…え?)

「いい戦いだったわ。 …あなたは、そんなもの無いって言うでしょうけど」



(そんな…)

「もう…大丈夫ね」



(え?)



「わたしがいなくても…」
948 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/21(日) 21:42:06.65 ID:k61sOX60
(!!! だ、だめぇっ!!)

「これからは… あなたが、みんなを… 率いなさい…」



(あ… あああっ! 消えないで、行かないで!!)

「ジュンや… みつ… みんなの言う事を… よく聞いてね…」



(だめ! だめっ!! わたし、あなたがいないとだめなの!!!)

「…お… 別れ… よ…」



(いやっ、いやぁっ!! わたしを置いていかないで!!!)

「さ…いご…に…」



(え? …きゃああ?!)



金糸雀「ああああ…」ガクガクガク

ジュン「金糸雀! 金糸雀!!」

巴「う…」

ムクリ

ジュン「巴!」

のり「金糸雀… ちゃん…」ヨロッ

みつ「カナ…」フラ フラ

ジュン「みんな! 大丈夫?!」

柴崎「な、なんとか…」…ムク
949 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/21(日) 21:44:35.36 ID:k61sOX60
マツ「ジュン君こそ…ケガは…?」

ジュン「…平気です!」


…ズキズキ


金糸雀「あああ… ああああ…」ガクガクガク…

ジュン「金糸雀、金糸雀! しっかりしろ! 」



「水銀燈は… 水銀燈はいったいどうしたんだ!!!」



金糸雀「…う…」

ジュン「…カナ?」

金糸雀「…うう… う…」

のり「…金糸雀ちゃん?!」



「みん…な…」



みつ「カナ…ち、違う?!」 

巴「まさか…まさか!!」




「この声は!!」
950 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/21(日) 21:45:32.56 ID:k61sOX60
「みんな… みんな…」



ジュン「…水銀燈?!」

金糸雀「…ジュン…」

ジュン「そんな… 君なのか!! 何があったんだ!!」

金糸雀「…」



「みな…さん…」



ジュン「水銀燈!!」

のり「…銀ちゃん? 銀ちゃんなの?!」



「よろしく… お願い… します…」



みつ「そんな… あなた!!」

巴「そんな…そんなっ!!」



「この子のことを… この子たちのことを… どうか…」
951 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/21(日) 21:47:05.80 ID:k61sOX60
柴崎「…お前さん…」

マツ「水銀燈ちゃん… あなた…」



「わたしの… かけがえのない… 妹たち… いいえ…」



ジュン「水銀燈!!」



「娘たちを… どうか…」



のり「銀ちゃん…!!」

金糸雀「…ああ… ああ…」



「水銀燈…」



「…金糸雀!?」



「行かないで…!」



…ガクン
952 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/21(日) 21:49:18.50 ID:k61sOX60
のり「ああ… あああ…」

ジュン「…うそだ…」

金糸雀「…」

ジュン「金糸雀! 金糸雀!!」

金糸雀「…」

ジュン「金糸雀! しっかりするんだ!」

金糸雀「…」

ジュン「金糸雀! 水銀燈は…」



「水銀燈は、いったいどうなったんだ!!」



金糸雀「…」



「…いなく…なっ…ちゃった…」



ジュン「なん…だって?」

巴「どういう…こと…?」

金糸雀「結晶は…わたしのなかにあるのに…」




「どこをさがしても… 水銀燈がいないの…」
953 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/21(日) 21:54:21.13 ID:k61sOX60
ジュン「…それは…!」

金糸雀「記憶しか… 残ってない…」 


「水銀燈自身の意思が… 自我が… どこにもない…」


のり「そんな… それって…」

巴「水銀燈が…」

みつ「銀ちゃんが…」

金糸雀「…」



「わたしのせい… わたしのせいで…」



ジュン「く… く…っ…!! そんな… そんな!!」

ギリギリギリ…



のり「ああ… 銀ちゃん…!」

(よろしくねぇ、お姉さま)



巴「うそ… うそよ! あとすこし、あとほんのすこしだったのに!!」

(あなたと、同じ世界にいてあげる)
954 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/21(日) 22:02:26.06 ID:k61sOX60
みつ「銀… ちゃん…」…ポロッ

(いつでも、どんなときでも。…あなたの頼みなら、断らない)



柴崎「…ひどい子じゃの… わしらに、一樹のことを思い出させたあげく…」

マツ「…一樹より、可愛いかもと思った矢先に… こんな…」

(ああ… おじいさま、おばあさま!)



ジュン「うう… あああ…」



あなたなんかに、なにがわかるものか!



「あああ…」



…ふふ、お馬鹿さぁん。



「く…うあああ…っ」



…♪London Bridge is falling down,Falling down, Falling down…
955 :水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 [saga]:2009/06/21(日) 22:12:27.83 ID:k61sOX60
「うああ… ぐああ…あっ…」ガクガクガク…



ふふっ。 よろしくねぇ、『お父様』。



バカバカバカバカバカぁーーーーー!!! なんで起こしてくれないのよぉーーーー!!



だめ、離れないで。 …エネルギーなんていらない。



不思議ね。ちっとも恥ずかしくないわ…



わたし… わたし、あなたの腕の中で…




「うああ…あああ…あああ…!」







「うあああああああああああーーーーー!!!」




○水銀燈がドールたちの『母』になるようです【告別編】 完
これにて第3部を終了します。ご観覧ありがとうございました。
第4部は来週中に投下開始予定です。
支援・閲覧に感謝します。
956 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/21(日) 22:14:56.04 ID:uOwT.ZEo
おっつ
957 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/21(日) 22:17:52.36 ID:UybbN9ko
958 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/21(日) 22:19:04.73 ID:EimFCFEo
乙ん
959 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/21(日) 22:19:13.54 ID:oP8JvRMo
おつでした
960 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/21(日) 22:30:26.52 ID:Lm6vRvso
おつ!
961 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/21(日) 22:57:51.28 ID:fqSUjJ.o
うるっときたじゃないか;ω;
次回投下するときは新スレ立ててくれ
962 :1 [sage]:2009/06/21(日) 23:11:53.44 ID:k61sOX60
>>956-960
乙どもっす〜

>>961
了解です。
新スレで投下開始しちゃってもいいですか?
こっちは埋めてもらっちゃうことになりますが…
963 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/21(日) 23:13:19.30 ID:sC.0Jl6o
>>962
どうぞ
964 :1 [sage]:2009/06/21(日) 23:25:52.35 ID:k61sOX60
了解です〜
それでは、前スレともども埋めてしまってください。
ご協力お願いしますm(*_ _)m


次スレ立てました。
「それでも、水銀燈は『母』になりたかったそうです。」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1245594180/l50
965 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/21(日) 23:26:00.82 ID:4aKY/d2o
この前のスレもまだ残ってたんだな
966 :1 [sage]:2009/06/21(日) 23:29:32.71 ID:k61sOX60
「このままでいい」なんて書いちまったので…^^;
埋め立てにご協力お願いしますm(;_ _)m

967 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/21(日) 23:31:54.18 ID:EimFCFEo
                   _ _
               ,.'"´<{カj}>`ヽ、
                ,イ'"´  ̄ ̄``ヽ  \
      ,r'"´「jヽ   /   /,  、 、 \、 ヽ
       /   | | ゙, / l / / ,!  ,! | |!   | ! ,ヘ
       l l | || |  ! l/l l/l/_lハ  //l/lリ  l// |
       ! 」」_」 |」/ ヽ|ヽ!r=、V ,r=、|  リL ,!
         | |    〉 ト、' ' r‐┐' ',イ ,/リ V
         /「\ / \|!`>ryr< ,/.:ヽ \\
         L ソ/ト、 /.:.:/ ujuj i!/.::::::.:\ \\.
           \.::::ゞリレ7/  V/ ハ.:::::::.::/  |  !     ということで埋めちゃうわよぉ
          |\:ゞリ::リ     j /ハ.::;イ    l /
          |/| \:ノ`¨`ー─‐{イ  !:.:::\ /|/
               | Lネリ'゙ーーーー''"^Y'|.::::::::|/
            ソ|」′  /  `,   |:.:::/!
           //     /    i  ,r,rソ_丿
          /.::/    /      l //  Tト、ヽ
         /.:::::/<{カj}>         」_L _丿 Lll
       |.:.::::::::L_ヽ         |U ̄^i  .:j|\
       |.:::::::/.::::L \__  _ _|   | _ __.,!.::::|
       L.:::/l.:.:::::::.`ー Y ノヽr─ |      |.::::::l
        \|.:.::::::::::::::::ノ.:.:::::::|.::::::::`ー── '.::::::」
           ̄ ̄\.::::::7.:::::ト.:.::::::::::::::/.:::ノ´ ̄
                  ̄ ̄|.:.::::.:.|.:.:::::::.:| ̄
                  /.:.:::::./.:.::::::.:.:|
               /.:.:::::::.:/.:.::::::::::.:.!
               `ー─'ゝ、:::::::.:.:/
968 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/21(日) 23:40:48.87 ID:EimFCFEo
     r(ヽ\   _
     (ヽ\ヽ\ノ {
      ヽ、     j
       \_  ∧_,        ,r,== {薔}ー-、_,、
         ハ/:::}::ヽ   __〆  / /   ヽヽヽ  ヽ
         /`ー':::::::lノ ||ノ,人ソj | |     | | i .} }ヽ
         {::::::::::::::ル::: く/l_|||斗七\  |メ、|/| j }|
            ', :::::::::::::::   /从|ヘ/ /   \ソ   〉/ /,イ        /:レ' ,.
          ::::::::::::::: / | |/ヽk== , r= 、ノ /l     / _,.::'´.:: ┘'.::
           ヽ::::::::::::ヽ/ \\> ┌‐┐ ゙/ 'ハ   /‐'´ .:: .:: .:: .:: .::
            ヽ:::::::::::::::::::::::\ヽ、  ヽ_ノ イ /.i | /.:: .:: .:: .:: .:: .:: .:: .::
      __、   ー-、\ ::::::::::::::::::: く`r<_父′〈 ∨__/.:: .:: .:: .:: .:: .:: .:: .::
      丶::ー-、  lヽ \:::::::::::::::ヽ〉 /八\j  ∨_}::\ .:: .:: .:: .:: .:: .:: .:: .:: .::、    とりあえず埋めていいと言ってくれたので埋めるぜ
 ._、zー-\::. ::.丶::.\ | `ヽ、:::〈 |>、/ l`´ヽ > ∨〉:::::\ .:: .:: .:: .:: .:: .:: .:: .:: .::、
:. ::. ::. ::. ::. ::. ::. ::. ::. ::. |    {ヽノ !\__j   ∨   Y、::::::::::\-、ー-、.::r 、 _ト、 ---、「丶
:. ::. ::. ::. ::. ::. ::. ::. . ::. ::. |    ̄ゝ!        / \:::::::::::::::: ̄`ヽ ヽ ̄丶 \ ̄ヽ
:. ::. ::. ::. ::. ::. ::. ::. ::. ::.   |       \/ ̄ ̄ ̄`l´ ̄ ̄`ヽ、:::::::::::::::::/:::>ー= 彡≦
::._; -‐ォ:, -―-ッ::. ::. .::. ::|       /レ-―――'⌒ヘヽ  /\::::::::/::_ハ、  r―‐‐’
              |      / r'         ヽ\l\   ̄   `ヽ)
              | /   ヽ/|        /\\\.\
              レ | / / /―┐     l´   l ヽ \l
                    レ / /l   !     ヽ_/   > \/|
                 / :l ヽ/              /    _>|、
                 l  :|            /  >く   〉
                 |  \______,/  /\ /レ'´
                 |   __     __ /\/∨
                 /丁 ̄  |  `丁 ̄l´ |  \_/ノ ̄
               ∠ .⊥ ___j, イZ____トrーレ'´ ̄/
969 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/21(日) 23:43:31.11 ID:EimFCFEo
         ,.:::'´ ̄´¨丶
  ♪   /:/ ̄ ̄´丶:ヽ
    〜 」/ l _|  |_ ! ヽ{〉
      オ| |ムト、/!厶! /小
      | l |l'( )  ( )イ,||
      ! ヽト      イj l         
    |  ゝ 二´ イ/  |
     l </::} |父| {:::ヘ >
     |≦/:::/|  ̄ ト、:::ヽ≧
 !二Y1f'⌒Y'l/  __V」::::| |
 |  | | 'ーtj-ャ=´、  〈,_ヽ! ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | ̄| |    ト、:ヾシ:::::ノ lイ  r―‐_、
 |_|_l    ヽ  ̄ ̄´ /   !ヽJ;┘
             ̄ ̄      ゝ┘
970 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/06/22(月) 04:06:19.49 ID:rHkW0SIo
梅岡
971 :1 [sage]:2009/06/22(月) 07:17:16.36 ID:EMkhPSM0
セルフ埋め。

                __
            , '´    `ヽ、
              /            ',
              /  ,       、 ',
             , ! l:. l |   l  l l|
              l | :l: l |、 l j/! /} !l
             / l Ntuトヽノjuァ' ,|
         / , イ\ ト、 _'_ 厶 /| ',
           / {./  i\`  ´ /イ´ヽ. ヽ
        /  :/   ! }   l,亠、jノ  ',
      /  :/:ハ    ',: : : ;/  ,.イ:.:..  ヽ
     / ,  .:.:.:.:.:ヽ r/ ̄  /.:/:.:.:.:.:.   \
      /:イ.: .:.:.:.:.:.:./:大{__ ィ´-,}:イ:ト:.:.:.:.:.:.:. :.. ',
     , /|:. /.:.:.l.:.:/,{  `/  :/´ Y |:.:.i:.:',:.:.:.i:.. |
    /  !:.:l|:.:./|:.:{/ ヽ/   / , _'´}.jノ|:.:l|:.:.:.!ヽ|
    |  l:.:|:i , ―'、r く .:/::::/´  `i  jノ !:.:/ l!
       ヽ| {」___ ゝ' ´:.:i ̄i.:    l   j/  /
         \  l    :.:! !:.    |       /
           ',    ::l l:.    /
           '、     !i::   /
              ヽ   l|:   /
             }:   ‖  イ


972 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/22(月) 13:52:32.67 ID:iKMWXOco
梅梅
973 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/22(月) 15:21:46.81 ID:wUfXAUAO
埋め埋め
泣いてなんかないんだもんっ!
974 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/22(月) 16:01:24.30 ID:HJj3DMoo
だめだ・・涙腺が・・・・・・
俺の休日をどうしてくれる・・・・!?
975 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/22(月) 16:37:26.53 ID:Jjoc3T2o
ume
976 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/06/22(月) 16:38:41.72 ID:rHkW0SIo
梅岡
977 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/22(月) 18:31:17.38 ID:Wl8r2Two
埋葬埋葬
978 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/22(月) 18:32:26.89 ID:Jjoc3T2o
うめ
979 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/06/22(月) 19:59:22.33 ID:JXZ.owg0
埋め
980 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/22(月) 22:10:13.43 ID:PHBDe5U0
うめ
981 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/23(火) 00:25:03.93 ID:kkEYLz6o
ありゃまだ埋まってなかったか。
梅梅
982 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/23(火) 00:32:00.01 ID:z4EBTgco
うめ
983 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/23(火) 00:32:06.31 ID:z4EBTgco
梅梅
984 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/23(火) 00:32:15.45 ID:z4EBTgco
産め
985 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/23(火) 00:32:20.54 ID:z4EBTgco
埋め
986 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/23(火) 00:32:26.36 ID:z4EBTgco
埋め埋め
987 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/23(火) 00:32:31.20 ID:z4EBTgco
埋め
988 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/23(火) 00:32:37.36 ID:z4EBTgco
倦め
989 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/23(火) 00:32:45.32 ID:z4EBTgco
産め
990 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/23(火) 00:32:55.08 ID:z4EBTgco
膿め
991 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/23(火) 00:33:00.77 ID:z4EBTgco
生め
992 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/23(火) 00:33:28.55 ID:z4EBTgco
績め
993 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/23(火) 00:34:29.03 ID:z4EBTgco
ウメ
994 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/23(火) 00:35:36.63 ID:z4EBTgco
埋め
995 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/23(火) 00:36:00.63 ID:z4EBTgco
埋め埋め
996 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/23(火) 00:36:42.95 ID:z4EBTgco
埋め
997 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/23(火) 00:37:38.49 ID:z4EBTgco
埋め埋め
998 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/23(火) 00:38:25.29 ID:z4EBTgco
埋め
999 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/23(火) 00:39:14.40 ID:z4EBTgco
>>1000は任せた
1000 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/23(火) 00:39:18.12 ID:htGQAeYo
膿め
1001 :1001 :Over 1000 Thread

 ,.――――-、
 ヽ / ̄ ̄ ̄`ヽ、   【呪いのパーマン Ver2.0】
  | |  (・)。(・);    このスレッドは1000を超えました。|
  | |@_,.--、_,>    このレスを見たら10秒以内に次スレを建てないと死にます。
  ヽヽ___ノ    次スレを10秒以内に建てても死にます。

パー速@VIPService
http://ex14.vip2ch.com/part4vip/

1000超えたのでHTML化の依頼をするでござるの巻
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1195554932/

1002 :最近建ったスレッドのご案内★ :Powered By VIP Service
貴殿はいつになったら小清水許すの? @ 2009/06/23(火) 05:10:20.24
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/vip4classic/1245701420/

漢字で「八」と書くと下の方が広がる事から末広がりを意味し 日本では幸運とされる @ 2009/06/23(火) 03:33:58.73 ID:9Fgzu3ko
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aaorz/1245695638/

【たなぽっ】そこのメンズちょっと来い!あ、レディースも67【いちがっ】 @ 2009/06/23(火) 02:03:27.62 ID:VbDXUiIo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1245690207/

変態供はジョージが無事じゃなかったことにgkbrしつつ静かに夜を送る(通算54) @ 2009/06/23(火) 01:44:57.48 ID:258DSG6o
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1245689097/

<協力者>ここだけ冒険者育成学園<求む> @ 2009/06/23(火) 01:41:32.65 ID:ZL0Ku6s0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1245688892/


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