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何故立てたって?暇だったからだよpart23 - パー速VIP 過去ログ倉庫

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1 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/05/10(日) 11:40:21.00 ID:nu0bZB.0
このスレでは様々な作品のSS、クロスSSを本作者が投下していくスレです。中には
ネタばれを含むものがありますので、予めご了承ください

また、基本的に投下速度は作者の暇さ加減に左右されます。投下スピードが速い時
もあれば非常に遅い時もあるので、まったりだるだる気楽にくつろいで頂ければ幸
いです

中には掲載された作品が「これ何処かで見たんだけど?」的な内容が含まれる場合
があるかもしれませんが、多分それは本作者が他のスレでの投下を全て破棄してし
まった事による副産物です。基本的に本作者が書いた(手掛けた)レスしか掲載し
ませんので、全然別の作者さんとネタがかぶっていた場合には、それはたまたま偶
然です。パクっている訳では無いのでその点についてはご理解ください


それでは投下を開始します
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【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part6 @ 2024/03/16(土) 18:36:44.10 ID:H9jwDXet0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1710581803/

昔、スリに間違えられた @ 2024/03/16(土) 17:01:20.79 ID:TU1bmFpu0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/part4vip/1710576080/

さくらみこ「インターネッツのディストピアで」星街すいせい「ウィキペディアね」 @ 2024/03/16(土) 15:57:39.74 ID:7uCG76pMo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1710572259/

今日は月が……❤ @ 2024/03/14(木) 18:25:34.96 ID:FFqOb4Jf0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1710408334/

どうも、僕は「げじまゆ」をヤリ捨てた好色一代男うーきちと言います!114514!! @ 2024/03/14(木) 01:23:38.34 ID:ElVKCO5V0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1710347017/

アサギ・とがめ・新生活! @ 2024/03/13(水) 21:44:42.36 ID:wQLQUVs10
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1710333881/

そろそろ春だねー! @ 2024/03/12(火) 21:53:17.79 ID:BH6nSGCdo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1710247997/

【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part5 @ 2024/03/12(火) 16:37:46.33 ID:kMZQc8+v0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1710229065/

2 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/05/10(日) 11:42:48.23 ID:nu0bZB.0


        ベジータ「………エルゴの王?」

3 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/05/10(日) 11:43:55.30 ID:nu0bZB.0
???「古き英知の術と我が声によって今ここに召喚の門を開かん…」

???「我が魔翌力に応えて異界より来たれ…」

???「新たなる誓約の名の下にトリスが命じる」

???「呼びかけに応えよ…異界のものよ!!」

      チュドオォォォォン



ベジータ「……ここは何処だ?」

誰かの声が聞こえたと思うと俺は見覚えのない部屋に居た。
4 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/05/10(日) 11:45:04.86 ID:nu0bZB.0
???「うまくいったかしら…って、人間?」

ベジータ「誰だ、貴様は?」

???「あのー。はじめまして…あ、あの…私、トリスって言います」

トリス(何で人間が?…まさか失敗?ど、どうしよう)

ベジータ「ここは何処だ?」

トリス「あ、蒼の派閥の本部です…一応演習場の近くです…はい」

ベジータ「蒼の派閥?聞いた事ないな」
5 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/05/10(日) 11:47:02.73 ID:nu0bZB.0
トリス(会話は出来るみたいね、一応。それにしても何か凄いオーラが
    出てるんですけど)

トリス(ま、まあコミュニケーション取れるなら取っておかないと不味い
    わよね。私の護衛獣なんだし……多分)

トリス「と、ところで…あなたのお名前を教えて頂きたいんですが…」

ベジータ「俺様の名前?ふん!良いだろう。良く覚えておけ」

ベジータ「俺様の名前はベジータ様だ!」
6 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/05/10(日) 11:49:18.48 ID:nu0bZB.0
トリス(何でこんなに偉そうなのかしら?)

ベジータ「おい、そこのお前、トリスとか言ったな」

トリス「は、はい!」

ベジータ「さっき蒼の派閥とか言っていたが、ここは西のm」

フリップ「無駄口はそこまでにしてもらおうか?」

ベジータ「何だこいつは?」

トリス「フリップ様よ。私の試験監督なの」
7 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/05/10(日) 11:50:23.73 ID:nu0bZB.0
ベジータ「試験監督?」

フリップ「ふははは、トリスよ。どうやら低級な獣人を呼び出したようだな」

フリップ「メイトルパの獣人と言えばその風貌からも分かるように獣の姿を
     しているからこそリィンバウムの人間にはない力や瞬発力、持久
     力、その他の特殊能力を持っているのだ」

フリップ「しかし、お前が召喚したのは猿のしっぽが生えているだけの人間!」

フリップ「これではそこらの平民と大差ないわ。護衛獣としてどれほど役に立つやら」
8 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/05/10(日) 11:51:23.43 ID:nu0bZB.0
ベジータ(こいつ!言いたい放題言ってくれるじゃねぇか)

ベジータ(俺様を只の尻尾が生えているだけの平民だと!?惑星ベジータ
     の王子であるこの俺s……尻尾?)

ベジータ「…………」フリッ

ベジータ「ぬをおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
     おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
     おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
     おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
     おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
     おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
     おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
     おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
     おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」

トリス・フリップ・ラウル「!!!!!」ビクッ
9 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/05/10(日) 11:52:06.74 ID:nu0bZB.0
ラウル「どうしたんだい?ベジータ君?」

ベジータ「俺様に尻尾が戻ってきたーーーーーー」

フリップ「おい君…」

ベジータ「ついにサイヤ人の象徴とでも言うべき尻尾が!!!!!」

ベジータ「俺様の尻尾がーーーーー」

トリス「聞いちゃいないですね」(テンション高ぇ)
10 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/05/10(日) 11:52:55.00 ID:nu0bZB.0
数時間後


ラウル「落ち着いたかい?ベジータ君」

ベジータ「う、うむ。ぬ?お前は誰だ?」

ラウル「あぁ、私はこの子の一応師匠みたいな者だ。今日は試験管補佐と言った処かな?」

トリス「あなた少しはしゃぎ過ぎよ」

ベジータ「む、むぅ」

フリップ「あのー、そろそろ試験を始めたいんだがもう良いかな?」
11 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/05/10(日) 11:54:24.58 ID:nu0bZB.0
トリス「あ、はい!大丈夫です」

ラウル「彼も落ち着いたようですし大丈夫でしょう」

フリップ「ゴ、ゴホン!…ともあれお前と共に試験を受けるべき護衛獣はここに召喚された」

フリップ「ではトリスよ!お前の召喚した下僕と共に、これより始まる戦いに勝利せよ。
     奥に魔物を待機させておる。護衛獣と力を合せ、見事勝利をおさめるのだ」

トリス「ええええええっ?魔物ーーーー?」

トリス「あ、あのー…もしもしっ?そんなこと…聞いてないんですけど」

フリップ「お前の戦うべき相手はこの者たちだ」
12 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/05/10(日) 11:56:07.11 ID:nu0bZB.0
トリス「え?えとえと…」

トリス「!!!」ピコーン

トリス(人間に近いとはいえ、尻尾が生えてるんだし獣人には違いないはず!だったら
    それなりに戦闘も…)

ベジータ「おい!トリスとか言う奴。俺様は家に帰りたいんだが西のm」

トリス「ベジータさん!!!」

ベジータ「何だ?」

トリス「目の前の魔物を私と一緒に倒してくれたら、後で家まで送ってさしあげます」
13 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/05/10(日) 11:57:08.05 ID:nu0bZB.0
ベジータ「本当だろうな?」

トリス「勿論です!」

ベジータ「…フン!良いだろう」

フリップ「それでは試験開始!」ベジータ「ギャリック砲!」

         チュドオォォォォン

ベジータ「フン!それでは家まで送って貰おうか」

トリス・フリップ・ラウル「…えええええぇえぇぇぇ!?」
14 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/05/10(日) 11:57:42.36 ID:nu0bZB.0
トリス「や、やりーっ?」

ラウル・フリップ「…………」ポカーン

ラウル「…………はっ!」

ラウル「フ、フリップ殿、試験結果の報告を…」

フリップ「!!!そ、そうだった。み、見習い召喚師トリスよ。試験の結果を
     持って今よりお前を…正式な蒼の派閥の召喚師とみなす?」

ラウル「おめでとう」

フリップ「なお、派閥の一員となったお前には、相応の任務が命じられる。いったん
     自室へと戻り呼び出しを待つがいい…以上だ!」
15 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/05/10(日) 11:58:22.51 ID:nu0bZB.0
ベジータ「お、どうやら終わったようだな。では家まで送って行って貰おうか」

トリス「あ、あのちょとだけ時間良いかしら?この後任務についての報告が有るから」
    その後、必ず家まで送るわ」

ベジータ「まぁ、少しくらいならば良いだろう」

トリス「ありがとう」
16 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/05/10(日) 12:00:01.90 ID:nu0bZB.0
一時間後


フリップ「トリスよ。お前に最初の任務を与える。心して聞くがよい」

フリップ「先ほどの試験で、蒼の派閥の所有する建造物にかなりの被害が出た」

トリス「え?」

フリップ「しかし、お前が弁償できるだけの財産を持っていないのは、ここに居る
     誰もが知っている。そこで……だ。お前はこれより護衛獣と共に、修行
     を兼ねた資金探しの旅に出るのだ」

トリス「え?あの、ちょっと?」

フリップ「なお、任務の期間は、そこの護衛獣が壊した弁償代分の資金が集まった時、
     それをもってこの任務の完了とする」
17 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/05/10(日) 12:02:16.76 ID:nu0bZB.0
トリス「……」

ベジータ「…おい、トリスとか言う奴」

トリス「……」スクッ

トリス「うじうじしてても仕方ないわ!資金探しの旅に出るしかなさそうだし、
    こうなったらやってやるわよ!!!」

ベジータ「おい、俺は家に帰りたいんだが…」

トリス「……」チラッ

トリス(確かにこの人の所為で旅に出る羽目になったけど…私が召喚した護衛獣
    なんだし、責任は私にもあるわ。そうよ、この人を使いこなせないようじゃ
    いつまでたっても半人前のまま。必ず完璧に扱えるようになってやる!!!)
18 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/05/10(日) 12:02:56.94 ID:nu0bZB.0
トリス「しばらく私はあなたが壊しちゃった所の弁償しなくちゃいけなくなったし
    ……何時までかかるか分からないから少しだけで良いから手伝ってよ、ね?」

ベジータ「確かに俺様の所為でもあるが…」

トリス「よし!じゃあ決まり!弁償しきったら家まで送ってくわ」

ベジータ「なっ?……くっ。まあ良いだろう!俺様の所為だと言われ続けても寝覚めが
     悪いからな。だが返済しきったら今度こそ家まで送れよ?」

トリス「良いわ!約束する。…じゃあはりきって、しゅっぱぁ〜つ」
19 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/05/10(日) 12:03:26.51 ID:nu0bZB.0
そんな感じで、私はこのベジータさんという人?を、元居た世界に還してあげる前に
弁償代を稼ぐための旅に出なくちゃいけない羽目になったんだけど…



         ネス「あれ?僕、空気?」


         どうなる事やら……続く?
20 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/05/10(日) 12:04:51.97 ID:nu0bZB.0


          第0話 旅立ち前日(笑)

               完

21 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/05/16(土) 12:42:43.10 ID:BqxvfQw0

             第1話 流砂の谷

22 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/05/16(土) 12:46:56.48 ID:BqxvfQw0
トリス「さ〜て、ではでは、改めて資金探しの旅に出発するとしますか」

トリス「……と、その前に」

ベジータ「何だ?」

トリス「ねぇベジータさん。これからしばらく一緒に旅をすることになるんだし、
    他人行儀で片っ苦しいからさ。『ベジータ』って呼んでも良いかな?」

ベジータ「フン!何だそんな事か。俺は別にそんな呼び名にいちいち拘ったりはせん」

ベジータ「貴様の好きなように呼べ。ただし、あまりにも可笑しな呼び方をしやがると
     後で消し炭にしてやるからそれだけは心に留めておくんだな」

トリス「分かったわ。これからよろしくね?ベジータ」

ベジータ「フン」
23 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/05/16(土) 12:55:13.62 ID:BqxvfQw0
トリス「と、まぁそれはそれで良いとして…問題は何処に向かうかよね」

ベジータ「そんなもの決まっているだろう。金を持っていそうな奴のところに行って根こそぎ
     奪ってくるしかあるまい」

トリス「……ベジータ。あんたはこれ以上の罪を私に重ねさせたいの?」

ベジータ「だがしかし、貧乏人の所に行っても集まる物でもあるまい」

トリス「……それはそうなんだけどさ。ああぁぁ!!!誰かお金をたくさん持ってて、その癖
    ちっとも使わないで、いえ、使っていたとしても全然余裕があって、困っている人に
    無償で配ってる奇特な人はいないのかしら?」クルッ

トリス「何処に向かえば資金が稼げるか………てぇぇえええええええっ!?」
24 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/05/16(土) 13:00:09.42 ID:BqxvfQw0
ベジータ「どうした?」

トリス「あ。あそこ見て!!!」

ベジータ「街道の休憩所だな、誰か襲われているが。…襲っている人数は6人。凶器は
     全員サバイバルナイフのみか。しかしナイフは威嚇にしか使っていないな。
     あの持ち方では、いざ近接戦闘になったr」

トリス「何冷静に分析してるのよ!助けるわよ!!!」
25 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/05/16(土) 13:02:27.33 ID:BqxvfQw0
ベジータ「しかし襲われている奴らはあまり金を持ってなさそうだぞ。助けたところで
     あまり弁償代の足しになるとも思えんが…」

トリス「何言ってんの!こんな街を出てすぐにイベントらしき物が発生したのよ?これを
    見逃す奴は居ないわ!!!たとえ、今回の件で大した成果が得られなくとも次に
    進むための重要なフラグが立つのよ!」

ベジータ「イベント?フラグ?何の話だ?」

トリス「良いから!!!もしかしたらベジータを家に送るの、意外に早くなるかもしれないのよ?」

ベジータ「!!!!!…良いだろう」 トリス「さっ、行くわy…」

ベジータ「破っ!」

            チュドオォォォォン

盗賊たち「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁあああああぁぁぁぁあああああああああああ」

トリス「………………」
26 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/05/16(土) 13:15:00.02 ID:BqxvfQw0
行商人「あ、あぁぁあ危ない所を助けて戴いてあああああ有難うございます」

トリス(あちゃあ、完全にびびっちゃってるわね。まぁあんなの見せられたら
    誰でもこうなっちゃうか)

行商人「わわわわわわ私に出来る事ならば何でも致しますゆえ、でででででで、
    ですから、何卒、何卒命だけは…」

トリス(これじゃあ誰が襲ってるのか分からないわ)

行商人「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい
    ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい
    ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

トリス(どうするかなぁ?)
27 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/05/16(土) 13:28:24.80 ID:BqxvfQw0
ネス「まぁまぁ、行商人さん。落ち着いて下さい」

行商人「へっ?」

トリス(あら、ネス?居たんだ。気付かなかった)

ネス「実は僕達、こう見えても召喚師なんです」

行商人「は、はぁ」

ネス「勿論、さっきからそこで暇を持て余しているツンツン髪の彼も召喚師です」

ベジータ「……」

行商人「そうなんですか」
28 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/05/16(土) 13:45:14.96 ID:BqxvfQw0
ネス「ここまで言えばもうお分かりになったと思いますが、先程あなたを襲っていた
   盗賊、あいつらをぶちのめした光の球は召喚術の一種です」

行商人「?はい」

ネス「本来なら召喚術を盗賊相手に使うのもどうかと思ったのですが、あなたの身に
   危険を感じたので、思わず彼が術を使い、助けた…とまぁ、つまりこういう訳
   です。びっくりしたかもしれませんが、あなたを助けるためにやむを得ず、使
   わなければならなかった。と、そうご理解ください」

行商人「……あぁ、成程。すみません。召喚術など、お目に掛った事が今までありま
    せんでしたので…成程ねぇ。人づてから聞いただけの知識しかありませんで
    したが、いやはや、凄いものですな、召喚術というものは」

トリス(どうやら落着きを取り戻してきたみたいね)
29 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/05/16(土) 13:55:12.84 ID:BqxvfQw0
トリス「そうなんですよぅ。本当はもっとスマートに助けたかったんですけど…」

行商人「いえいえ。タネが分かればもう大丈夫です。そうでしたか。召喚師さんでしたか。
    危ない所を助けていただいて、有難うございました」

トリス「いえ、お気になさらず」

行商人「そうだ。お礼と言っては何ですが、これを差し上げましょう。私も他の行商人から
    受け取ったのですが、何せ使い方が分からず持て余していた物です。…もしかしたら
    召喚師さんなら使い方が分かるかもしれません」

トリス「ありがとう。大切に貰っておくわね」
30 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/05/16(土) 13:55:43.02 ID:BqxvfQw0
         『トリスは”懐中時計”を手に入れた』

行商人「おそらく異界の物だと思われますが、針が無いんですよね。もしかしたら壊れている
    かもしれませんが…」

トリス「大丈夫!気にしないで」

行商人「そう言って頂けると幸いです。では私達はこれで…」

トリス「うん!気を付けてね?」

行商人「では……」
31 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/05/16(土) 13:56:07.69 ID:BqxvfQw0
ネス「さて、じゃあ僕らも一旦町に戻ろう?」

トリス「へ?何で?」

ネス「盗賊たちをこのままにしておくのも危険だろう。目が覚めたらまた人を襲うかもしれない」

トリス「それもそうね」

ネス「だから役人に連絡してくる必要がある。こいつらをロープか何かで縛ったら街に戻ろう」

トリス「分かったわ。…ほら、ベジータ!何時までもそんなところでふてくされてないで戻るわよ?」

ベジータ「……チッ」
32 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/05/16(土) 13:56:35.07 ID:BqxvfQw0
 〜翌日〜

ワイワイガヤガヤ

トリス「ふぁぁぁ。…何だか外が騒がしいわね。何かしら?」

            トントントン

トリス「おはようネス、ベジータ。外が騒がしいみたいだけど、何かあったの?」

ベジータ「さぁな」

ネス「漸く起きてきたか。…まぁ良い。どうやら高札が立ったらしくてな」
33 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/05/16(土) 13:57:09.80 ID:BqxvfQw0
トリス「高札?」

ネス「野党達の手配書だよ。昨日捕まえた連中が根城を白状したらしい」

ネス「流砂の谷といってな。北にある険しい谷間に隠れていたようだ」

トリス「ふ〜ん。流砂の谷ねぇ。でも高札を立てる意味って?」

ネス「それはな…」

????「よーーーし!!!これだあああぁぁっっっ!!!!!!」

トリス「!!!???」
34 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/05/16(土) 14:28:39.32 ID:BqxvfQw0
????「ふふふ、この賞金が手に入ればどれだけ治療費が必要になろうとも
     大丈夫だぜ」

トリス(声でけぇ。ついでに体も)

????「この野党団の賞金は俺が貰ったああああぁぁぁ」

ネス「冒険者か」

トリス「冒険者ねぇ」

ネス「彼らはこういう荒事で旅の資金を稼ぐからな。高札は彼らの仕事の情報源
   というわけさ」
35 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/05/16(土) 14:38:39.22 ID:BqxvfQw0
トリス「それにしても、ずいぶんと自信あったみたいね、あの人。体もでかかったし。
    結構強そうだったし」

ネス「さぁ、どうだろう?冒険者というものはえてして自信家だからな。騎士団ですら
   手こずっているらしい相手にどこまで通用するものやら」


トリス「………ねぇ、ネス、ベジータ?」

ネス・ベジータ「何だ?」

トリス「野党をやっつけて役所に突き出せば、かなりのお金が手に入るわよね?」

ネス「……な!?」
36 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/05/16(土) 14:54:30.20 ID:BqxvfQw0
ネス「何を考えているんだ!トリス」   ベジータ「良いアイディアだ」

ネス「そんな事出来る訳……いや、まぁ出来るか。ベジータがいるなら」

トリス「でしょでしょ?グッドアイディアでしょ?」

ベジータ「貴様にしてはなかなかだ。それで行くか」

ネス「しかし…うぅん」

トリス「何よ?何か不安要素でも?」

ネス「いや…昨日は何とかごまかせたが、これから先もベジータが放つ不思議な光線
   や光の球を何と説明すれば良いのかと思ってな」
37 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/05/16(土) 14:55:05.75 ID:BqxvfQw0
トリス「昨日と同じで良いんじゃない?」

ネス「昨日のは相手が何も知らない一般人だったからこそごまかせれただけだ。召喚術
   を見た事のある人間からすれば、あれが召喚術の類では無い事は一目瞭然だ」

トリス「それもそうね」

ベジータ(召喚術?昨日からそんな事ばかり言っているが意味が分からん)

ネス「何か対策を考えねばな」

トリス「対策ねぇ…う〜〜〜ん」
38 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/05/16(土) 15:06:15.56 ID:BqxvfQw0
トリス「!!!!!そうだ」

ベジータ「何か思いついたのか?」

トリス「ええ!ベジータ!あなたはこれから先、私の許可なくあの不思議な攻撃を行うの
    を止めて貰うわ」

ベジータ「何だと!?」

トリス「そもそも、あなたのその攻撃方法の所為で弁償代をかき集める旅に出る羽目に
    なったんだから当然でしょ?これ以上の被害を出さないためにも当分は大人し
    くしてもらうわ」

ネス「君にしては珍しく的を射た意見だな」

ベジータ「…ぐぅ」(正当過ぎて言い返せないとは)
39 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/05/16(土) 15:07:56.03 ID:BqxvfQw0
ネス「しかしそれだと大幅な戦力ダウンは必至だな。こんな状況で野党退治はやはり
   無理が…」

トリス「ちょっとちょっと。何弱気になってんのよ?ベジータは普段は光線とか使わ
    ないけど使えないって訳じゃないのよ?いざとなったら使って貰えば野党な
    んて怖くないわ!!!」

ベジータ「既にギャリック砲やエネルギー弾の類が使えないのは決定済みなのか…」

ネス「………まぁ良い。君とここで議論していても仕方ない。見に行くだけ見に行っ
   てみよう」

トリス「やった〜〜〜」
40 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/05/16(土) 15:08:21.09 ID:BqxvfQw0
〜流砂の谷にて〜

ベジータ「……ほう」

トリス「なっ?」

ネス「なんて数だ。正直僕もこれほどに大規模な集団だとは予想していなかった。
   軽く40人は居る」

ネス「ベジータに光線を使わせずに勝利するのは厳しすぎる。ここは見つからない
   うちに引き上げよう」

ベジータ「フン。俺様も過小評価されたもんだ」

トリス「ん?ちょっと待って!!!様子が変よ?」
41 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/05/16(土) 15:25:30.21 ID:BqxvfQw0
野党の長「こいつらか。わしらを退治しに来たって間抜けな冒険者は」

???「はあぁ。簡単な仕事だって自信満々に言ってたのは何処のどいつだった
    かしら!?」

???「あっさり捕まったじゃないの!!!」

????「いやー。まさか、こんなに大所帯とは思ってなくってなぁ。失敗失敗♪」

???「こいつ…」

野党の長「自分達の立場が分かって無いみたいだな」

????「分かってるってばさ。今の俺たちはまさに絶体絶命…だけどそういう状況
     こそが美味しいのさ。奇跡の大逆転こそが物語の王道ってね?」

野党の長「ほう…どうやら痛い目を見たいらしいな」
42 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/05/16(土) 15:26:29.56 ID:BqxvfQw0
トリス「あの人、さっき街で見た冒険者だ」

ネス「やはり普通の冒険者だとああやって捕らわれてしまうのは当然だったな」

トリス「助けるわよ!」

ネス「助けるだって?あの人数にかなう訳無いだろ?まして彼らの様な赤の他人の為に
   僕らが頑張る必要なんてない」

トリス「ネス、私は同じことを何度も言うような人間じゃないの…」


ベジータ「『旅に出てすぐにイベントらしき物が発生したのよ?これを見逃す奴は居ないわ!!!
     たとえ、今回の件で大した成果が得られなくとも次に進むための重要なフラグが立つ
     のよ!』か?」

トリス「!!!!!!」
43 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/05/16(土) 15:28:29.80 ID:BqxvfQw0
トリス「さすが私の護衛獣だけあるわ!その通りよベジータ!!!」

トリス「今日は体調が悪いから明日にしよう。今日は本気を出さなかったから良い結果が出なかった
    ……なーんて言い訳はもう良い飽きたし、聞き飽きたわ!道は何時だって前にしか開かれな
    い。しかも、人の命が関わっているようなこの状況で逃げ出すなんて、私には出来ない!」

ベジータ「くくくっ。俺は早く家に帰りたいからな。この戦闘に勝利すれば賞金が出るのなら、願ったり
     叶ったりだ。俺も参加してやる」

                   ダダッ


ネス「トリス!ベジータ!待つんだ!!!」
44 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/05/16(土) 15:51:40.25 ID:BqxvfQw0
        キィン チュイン

野党「ぐはっ」

???「えっ?」

トリス「さぁ、逃げて!!!」

????「ありゃま、まさか本当に助けが来るとは」

         バキイィィッ

ベジータ「何だ。ちっとも大したことないな」

        チュドオォォォォン

ネス「やれやれ。結局戦う羽目になるのか」
45 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/05/16(土) 15:53:12.95 ID:BqxvfQw0
野党の長「今の術は…召喚術?貴様ら、召喚師か?」

野党の長「てめぇの差し金か!?冒険者!!!」

????「んーにゃ、違うね。だってよ…」

        パサッパサッ

野党「な、縄が?」

????「このとおり、捕まってたフリしてただけだよ」

???「親分であるあんたを確実に倒すためにね」

????「筋書きは変わっちまったが、大逆転と行かせてもらおうか?」
46 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/05/16(土) 15:54:09.09 ID:BqxvfQw0
〜数分後〜

???「どうもありがとう。おかげで助かったわ」

ネス「気にしないで下さい。こちらがやりたくて勝手にやった事ですので」

トリス「あはは。そうそう♪気にする事なんてないって」

ネス「むしろ、いらぬ手助けじゃなかったかと思うと、心苦しいです」

???「あら。そんな事ないわ」

???「こっちだって、そこのお調子者が立てた計画だったから、不安いっぱい
    だったもの」
47 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/05/16(土) 15:55:27.79 ID:BqxvfQw0
????「まぁまぁ、上手くいったんだし良いじゃねえか」

???「………」

????「ゴホン!まぁなんだ。それはともかく折角助けて貰ったんだし…自己
     紹介しとかないとな?」

????「俺はフォルテ。見ての通り、剣士だ」

???「私はケイナ。よろしくね」

ネス「ネスティ・バスク。蒼の派閥の召喚師です」

トリス「トリスです。私も一応、蒼の派閥の召喚師です。それと…」
48 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/05/16(土) 15:56:04.64 ID:BqxvfQw0
ベジータ「………」

トリス「あそこでほとんどの野党を半殺しにしてぶっきらぼうに佇んでるのがベジータよ」

トリス「私の護衛獣なの」

フォルテ「ほう、二人とも召喚師さんだったのか」

ネス「ええ」
49 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/05/16(土) 16:22:54.80 ID:BqxvfQw0
フォルテ「なぁ召喚師さん達よ。ついでと言っちゃあなんだが一つ頼まれてくれないか?」

トリス「はい?」

フォルテ「ここでノビテル連中をしょっ引いてもらえるように、騎士団を呼んできてほしい
     んだが」

ケイナ「誰か見張ってないと、目を覚ましたら逃げてまた悪だくみするかもしれないし…
    お願いできないかしら?」

トリス「仕方ないわね…OK!ちょっと待ってて」

トリス「ベジータ、ネス。一旦街に戻るわよ?」

ベジータ「ああ、早く賞金も貰いたいしな」 ネス「………」
50 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/05/16(土) 16:23:56.48 ID:BqxvfQw0
結局、騎士団が野党を引き取りに来た頃には、既に夕暮れがせまって、夜になる一歩手前だった。
どうやらフォルテさん達にも事情が有りそうだし、賞金は山分けって事になったけど、それでも
十分貰えそうだからこれはこれで良かったのだろう。

しかし、ベジータの戦闘能力の高さには舌を巻くばかりだ。

光線の類が使えないと戦力が大幅にダウンするとかネスは言っていたけれど、体術だけで十分
凄い。なんせ、今日の野党達のほぼ全てを一瞬で蹴散らしてしまったのだから…

あいつを使いこなす事なんて私に出来るのだろうか?
51 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/05/16(土) 16:24:42.48 ID:BqxvfQw0
◆◆◆◆◆◆◆◆

ベジータ「おい、トリス」

トリス「何?」

ベジータ「ここは何処だ?」

トリス「蒼の派閥本部の私の自室だけど?」

ベジータ「そういう話ではない。ここは…もしかしたら地球じゃないのか?」

トリス「地球?何それ?」

ベジータ(やはり俺の感覚は間違っていなかったようだな。ここは別の世界という奴か)

トリス「どうしたの?ベジータ。地球って?」

ベジータ「フン。何でもない。…一つだけ聞いておく。貴様、本当に俺様を家に送り返せる
     んだろうな?」

トリス「ええ、それだけは約束するわ」

ベジータ「…………まぁ良い。今はその言葉を信じておいてやる。他にアテもないしな」


       ?????どうしたんだろう。ベジータの奴。変なの
52 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/05/16(土) 16:26:26.08 ID:BqxvfQw0

           第1話 流砂の谷

              完
53 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/05/30(土) 15:42:56.67 ID:R/Kc9Ns0


             第2話 聖女の横顔

54 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/05/30(土) 15:43:41.95 ID:R/Kc9Ns0
トリス「で、旅に出たものの結局ここに戻って来る羽目になってるのね…」

ベジータ「仕方ないだろう。資金を稼ぐ旅なのだから、極力節約せねばならないん
     だからな」

ネス「宿代も馬鹿にならないしな」

ネス「……だが、そうは言ってもこの部屋も次の見習召喚師が使う予定だから、早
   々に出て行かないと」

トリス「そうね。その子に迷惑かけちゃうもんね」

トリス「では、そろそろ出発しますか?」

ネス「ああ」

ベジータ「さっさとな」
55 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/05/30(土) 15:45:22.10 ID:R/Kc9Ns0
………………………
…………………
……………
………



トリス「お待たせしました〜」

フォルテ「んーにゃ。俺達も今来たところさ」

ケイナ「そうそう。もう少し早く来る予定だったんだけど、この馬鹿が中々起きなくてね」

トリス「ハハハ」

フォルテ「……コホン!さて、まぁそれは置いといてだ。お前さん達これからどうするんだ?」

ネス「ファナンから街道沿いに旅する予定です」

トリス「正直言って、これといったアテはないんですけどね。取り敢えずお金の匂いがしそう
    な方にブラブラと旅をしようかなって」
56 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/05/30(土) 15:46:19.80 ID:R/Kc9Ns0
フォルテ「ふーん」

フォルテ「なぁ、もし良かったらその前に俺達の用事につい会ってくれないか?」

ベジータ「用事だと?」

フォルテ「おいおい、怖い顔は勘弁してくれ。もしかしたらお前さん達にとっても良い話かも
     しれないんだ」

ケイナ「レルムの村って知ってる?ここから北に行った小さな村なんだけど…」
57 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/05/30(土) 15:47:12.80 ID:R/Kc9Ns0
トリス「レルムの村?」

フォルテ「ああ、そこにな。怪我でも病気でも奇跡で治しちまう『聖女』が居るらしいんだ」

トリス「ええええーーーーー?」

ベジータ(怪我や病気を治す?ナメック星で会ったデンデとかいうガキと同じ能力か…)

フォルテ「聞いた事ないか?」

ネス「……一応、噂なら」

フォルテ「おおう。あるのか!」

ケイナ「本当なんだ…」
58 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/05/30(土) 15:48:22.94 ID:R/Kc9Ns0
トリス「その話本当なの?ネス」

ネス「あくまで噂だがな。真偽は定かじゃない」

フォルテ「なぁに。噂が流れてる位なんだから十分だ。実際に行って確かめる価値はある」

フォルテ「上手くすりゃ、お前の記憶も戻るかもしれないんだぜ?」

ケイナ「うん…」

トリス「記憶?もしかしてケイナさん…」
59 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/07/28(火) 13:58:42.15 ID:.Bxsz.c0
久し振りの酉テスト
60 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/07/28(火) 14:03:52.57 ID:.Bxsz.c0
本来ならこのスレは使いたくなかったんだが…
まぁ、あそこまで保守してもらうのも悪い気がするし、仕方ない

そんな訳で  ベジータ「………エルゴの王?」
は一旦ここで打ち切ります

再開は……まぁ思い出した頃に、いずれ…
61 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/07/28(火) 14:09:08.87 ID:.Bxsz.c0
そんな訳で、vip規制につきましてここで投下を再開します
パー速でも良いという人は有難う
パー速嫌いな人には、すみません


それでは(始めから)投下を開始します
62 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/07/28(火) 14:11:52.51 ID:.Bxsz.c0


        佐々木「禁則事項だけどね?」
63 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/07/28(火) 14:12:51.20 ID:.Bxsz.c0
キョン「まさか、またこんな風にお前と話す機会が来るなんて
    思わなかったよ」

佐々木「あれ?もしかしてキョンは僕と会いたくなかったのかな?」

キョン「そんなんじゃねーけどさ。……何かな。中学の卒業式が終わった
    後さ、お前とはもう会う事は無いんだろうなって、そんな感じが、
    そんな感覚が俺にはあったんだ」

佐々木「薄情だな、君は……」
64 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/07/28(火) 14:14:10.58 ID:.Bxsz.c0
キョン「だからそんなんじゃねーって。お前はさ…、何つーか、その…、
    言葉では上手く表現できないが、俺とはきっと住む世界が違う住人
    って感じてたんだ」

佐々木「………」

キョン「だってそうだろ?お前は勉強もスポーツも出来たし、老若男女問わず
    人気があって明るい。まさに才色兼備の完璧超人の超優等生。かたや
    俺は勉強も運動も普通。そこら辺探せば何処にでもいるような掃いて
    捨てるほどいる、取り立てて特に何の才能も特技も持たない凡夫な人間」

キョン「接点がある方がおかしい」

佐々木「……僕はキョンが言っているような、そんな凄い人間じゃないよ」
65 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/07/28(火) 14:15:35.41 ID:.Bxsz.c0
キョン「かもな。でもきっと俺以外の大多数の人間も少なからずそう思って
    んじゃないのかと俺は思うよ。当時の俺が何の疑いも無くそう思ってたのと
    同じように、な」

佐々木「全く。キョンにまでそう思われていたなんて、ほとほと心外だよ」

キョン「まー、そんなにむくれるなよ」

佐々木「君がさっきから、むくれるような発言ばかりしてる所為だろう?」

キョン「おいおい、子供かお前は?」

佐々木「………」

キョン「やれやれ」
66 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/07/28(火) 14:16:55.74 ID:.Bxsz.c0
佐々木「……さっきの」

キョン「ん?」

佐々木「…さっきの話で『当時の俺』って言ったよね?」

キョン「ん?ああ。言ったな」

佐々木「だったら、『今』は違うのかい?」

キョン「んー。そりゃまぁ、そうだな」
67 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/07/28(火) 14:18:14.91 ID:.Bxsz.c0
佐々木「本当だろうね?」

キョン「疑ってるな」

佐々木「まさか」

キョン「……ま、今でもお前の事を凄い人間だとは思ってるんだが、俺も
    高校に入って色々な事件に巻き込まれたからな。世界が前よりも
    広がったのさ。世の中には俺の想像を超えた物がまだまだ存在
    するんだってな」

佐々木「ふふ、涼宮さんのおかげだね」

キョン「佐々木、間違ってるぞ。正しくはハルヒの『おかげ』で広がった
    んじゃなくて、ハルヒの『所為』で広げさせられたんだ。無理矢理な」
68 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/07/28(火) 14:19:31.89 ID:.Bxsz.c0
佐々木「くくっ。どっちでも同じことだよ」

キョン「まぁそりゃそうだけどさ」

佐々木「彼女にはお礼を言わなくてはならないな。キョンを成長させてくれて
    有難う、と」

キョン「何故お前が俺の成長を喜んどるんだ。お前は俺の母親か?」

佐々木「気にすることはないさ」

キョン「やれやれ」
69 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/07/28(火) 14:20:39.34 ID:.Bxsz.c0
佐々木「でも彼女とは何時かちゃんと話をしてみたいな」

キョン「お、それだったらちょうど良かった」

佐々木「?」

キョン「実はハルヒから頼まれごとがあってさ。今度お前と会って話がしたい
    から、連れて来てくれないかって」

佐々木「へぇ」

キョン「俺としては、どうせハルヒの迷惑が炸裂すると思うから、あんまり
    お勧めしないんだが……どうする?」
70 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/07/28(火) 14:22:18.13 ID:.Bxsz.c0
佐々木「いやいや、是非御会いしたいと伝えておいてくれ。僕も彼女と話が
    したかったんだ。丁度良い」

キョン「お、分かった。ハルヒに伝えておくよ。日時はまだ決まってないみたい
    だから、決まり次第連絡する」

佐々木「了解」

キョン「ま、何の話か知らんが、ロクでもない事だろうから、心の準備だけは
    しっかりして来いよ?」

佐々木「くくっ。心配性だな、キョンは…」
71 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/07/28(火) 14:23:45.41 ID:.Bxsz.c0
………………………………
…………………………
……………………
………………
…………
……

佐々木「(あれから一週間たったけど、まだキョンから連絡が来ない。
    こっちからは何回掛けても繋がらない)」

佐々木「(……忘れてるってことは無いだろうし、着信拒否にされてたり
    もしないだろう。後考えられるのは、何かに巻き込まれてるって処かな?)」

佐々木「(でも一週間も連絡がとれないのは少し長い)」

佐々木「(こんな時橘さん達が居てくれれば、キョン達の情報があるんだろうけど、
    ここ最近三人とも見かけないし…)」

佐々木「さて、どうしようかな」
72 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/07/28(火) 14:25:27.46 ID:.Bxsz.c0
〜キョン宅前〜


佐々木「気になってキョンの家の前まで来ちゃったけど」

佐々木「家がビニールシートで覆われてる?それにこの警察官たちは一体…」

            ワイワイガヤガヤ

佐々木「とにかく取材陣の近くに行って報道している内容を聞こう」



アナウンサー「えー、ここが殺害された少年の自宅です。少年は腹部を突き破られ
       ており、死因は出血死と見られています。また、少年は……」

佐々木「なっ!!!???」
73 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/07/28(火) 14:26:49.26 ID:.Bxsz.c0
佐々木「(キョンが……死んだ?何の冗談だ?えっ?ウソでしょ?だって、
    ついこの間まで一週間前には私と一緒に会って…えっ?まさか、そんな…)」

佐々木「(ウソだ。嘘だ、嘘だ嘘だうそだウソだ嘘だ。そんなのって、そんなのって!!!)」


アナウンサー「では、近所の方の話も聞いてみましょう」

アナウンサー「あっ、学生の方ですか?少し、お話を伺いたいのですが」

佐々木「えっ?」

アナウンサー「彼はどういった性格だったんでしょうか?」

佐々木「わ、私に聞いてるんですか?」

アナウンサー「はい」
74 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/07/28(火) 14:28:06.72 ID:.Bxsz.c0
佐々木「いえ、あの……私は…」

アナウンサー「警察は他殺と見て捜査を開始したようですが、彼は他人から恨まれるような…」

佐々木「そんな…キョンは、恨まれるような人間じゃ…」

アナウンサー「キョン?キョンというのは殺害された少年のニックネームで良いんでしょうか?」

佐々木「いえ、あ、あの……」

アナウンサー「それではキョン君の交友関係についても少し伺いたいのですが」

佐々木「………」
75 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/07/28(火) 14:29:17.70 ID:.Bxsz.c0
〜翌日〜

佐々木「今朝の朝刊…昨日の事件も載ってるな」

佐々木「……キョン」

佐々木「まだ、信じられないよ。テレビのニュースにも新聞にも君の記事が
    載ってるっていうのに…。君に一体何があったのかな?殺されてしまう
    ほどの何が…」

佐々木「……いや、考えてみれば宇宙人、未来人、超能力者とその抗争の真っただ中に
    居るって事だけで、既に死と隣合わせだったのか…」

佐々木「……今日は学校を休もう」
76 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/07/28(火) 14:30:57.19 ID:.Bxsz.c0
佐々木「……………………………………………………」

佐々木「……………………………………………………」

佐々木「……………………………………………………」

佐々木「……………………………………………………」

佐々木「……………………………………………………」

佐々木「……………………………………………………」
77 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/07/28(火) 14:32:38.66 ID:.Bxsz.c0
佐々木「……………………………………………………」

佐々木「……………………………………………………」

佐々木「……………………………………………………」

佐々木「……………………………………………………」

佐々木「……………………………………………………」

佐々木「……………………………………………………」
78 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/07/28(火) 14:33:37.70 ID:.Bxsz.c0
佐々木「……………………………………………………」

佐々木「……………………………………………………」

佐々木「……………………………………………………」

佐々木「……………………………………………………」

佐々木「……………………………………………………」

佐々木「……………………………………………………はぁ」

佐々木「結局、何もしないまま一日を終えてしまった」

佐々木「でも、何もする気が起きない。……キョン」
79 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/07/28(火) 14:34:48.47 ID:.Bxsz.c0
佐々木「……TV」

佐々木「……」スッ カチッ

       ヴィン

TV「さて、今日の御勧め商品は…」

佐々木「……」ポチッ

TV「はいはいはい。せやから、それがあかんねん!」

佐々木「……」ポチッ

TV「私を置いていかないで!あなたが…」

佐々木「……」ポチッ

TV「私は私の見える世界を皆に見せるための機械だ」
80 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/07/28(火) 14:36:13.76 ID:.Bxsz.c0
佐々木「……」ポチッ

TV「ですから日本を変えていくには…」

佐々木「……」ポチッ

TV「さて、先ほど入ってきたニュースですが、またもや悲しいお知らせです。
  先日報道された男子高校生の妹さんがお亡くなりになったそうです」

佐々木「…………えっ?」

TV「また、二人の両親も現在行方不明となっており、警察はこの一家が何らかの
  事件に巻き込まれているのではないかとしており、今後も事件の捜索が…」
81 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/07/28(火) 14:37:18.72 ID:.Bxsz.c0
佐々木「(妹さんや御両親まで!?…彼が殺される理由は予測がつく。恐らく
    涼宮さんへのアプローチのつもりだろう。でも家族まで殺害、行方不明
    となると…)」

佐々木「(もしかして、彼を世間から、社会的に抹[ピーーー]るのが目的?)」

佐々木「(彼の家族まで被害に遭ったのは、彼に関する証拠を消すため…)」

佐々木「キョンはまだ生きていて、今も何かの事件に巻き込まれている可能性が
    ある?」
82 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 14:39:01.09 ID:.Bxsz.c0
佐々木「(………………仮に宇宙人達の仕業だとすると、まず涼宮さんの前からキョン
    という存在を消す。この場合、何も本当に殺さなくてもキョンを何処かに監禁
    しておき、キョンが殺害されたという情報を報道する)」

佐々木「(いくら涼宮さんが『普通』を嫌っていたとしても一般メディアの情報を完全否定
     はしない筈)」

佐々木「(涼宮さんがキョンが死んでしまった事に対して何らかのアクション、この場合
     恐らくキョンの復活を願う。その時の力の働き方を宇宙人達は観測)」

佐々木「………………一応の筋は通る。でも」

佐々木「只の希望的観測に過ぎないけどね」
83 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 14:40:13.71 ID:.Bxsz.c0
佐々木「(けど、この仮定が間違っていたとしても、私は勿論、涼宮さんもキョンの
    死なんか望んではいない筈。私や涼宮さんに、本当に願望を実現する能力が
    あるんだったら)」

佐々木「キョンはきっと生きている」

佐々木「…私に出来る事は」
84 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 14:41:13.81 ID:.Bxsz.c0
〜翌日・北高校門前〜


佐々木「もうそろそろかな」

佐々木「……………」

佐々木「……………あっ」

国木田「えっ?あれ、佐々木さん?」

谷口 「?」
85 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 14:42:14.89 ID:.Bxsz.c0
佐々木「やぁ国木田君。久し振りだね」

国木田「佐々木さん、どうしてここに?」

谷口 「おい国木田。誰だよ、この美人は?」

国木田「……もしかして、キョンの事?」

佐々木「理解が早くて助かるよ」

谷口 「………」
86 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 14:43:15.97 ID:.Bxsz.c0
国木田「分かった。本当の処言うと授業受ける気もあんまりなかったんだ」

佐々木「有難う」

国木田「構わないよ。あっ、じゃあ谷口。僕体調悪くなったんで学校休むってHRの
    時言っといてね」

谷口 「は?おいおいマジかよ?」

国木田「頼んだよ。よしっ行こう、佐々木さん」

佐々木「あぁ」
87 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 14:44:17.56 ID:.Bxsz.c0
〜市内の中央病院〜

国木田「何で中央病院?」

佐々木「おや?総合病院はお気に召さなかったかな?内科か歯医者の方が
    良かったかい」

国木田「そういう意味で言ったんじゃないよ」

佐々木「だってさっき体調が悪くなったから学校を休むと友人に言っていただろう」

国木田「あれは方便だよ。そんな所で変に真面目にならなくて良いから」
88 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 14:50:06.98 ID:.Bxsz.c0
佐々木「ゴメン、冗談だ」

国木田「冗談言う場所でもないけどね」

佐々木「これは手厳しい」

国木田「そろそろ話を進めて欲しいんだけど」

佐々木「うん、そうだね。酷くその通りだ。じゃあ、お話しようじゃないか、国木田君」
89 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 14:55:29.10 ID:.Bxsz.c0
佐々木「取りあえず病院に来た理由はこれだね」

国木田「制服?」

佐々木「うん、流石に夏休み前で多くの学校が短縮授業でも、この格好でウロウロ
    するのは補導される心配があるからね」

国木田「まぁ、そりゃそうだね」

佐々木「でも病院に来ている学生をわざわざ職務質問しに来る警察は居ないだろう?」

国木田「確かに」
90 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 14:57:21.75 ID:.Bxsz.c0
佐々木「それに病院で本当に診てもらっても、結局は健康体なんだから、医者からは
    特に何も言われない」

国木田「……成程ね」

佐々木「君は本当に理解が早いね。助かるよ」

国木田「いやいや、それを言うなら佐々木さんの方が断然凄いでしょう。こんなに
    悪知恵が働くんだから」

佐々木「悪知恵かな?」

国木田「悪知恵以外の何だってのさ?優等生とは思えないくらいだよ」
91 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 15:11:02.56 ID:.Bxsz.c0
佐々木「くくっ、優等生ね」

国木田「どうしたの?」

佐々木「いや、キョンに言われた事を思い出してさ」

国木田「…………」

佐々木「『お前は勉強もスポーツも出来たし、老若男女問わず人気があって明るい。
    まさに才色兼備の完璧超人の超優等生。かたや俺は勉強も運動も普通。
    そこら辺探せば何処にでもいるような掃いて捨てるほどいる、取り立てて
    特に何の才能も特技も持たない凡夫な人間。接点がある方がおかしい』ってね」

国木田「それ……キョンが?」

佐々木「あぁ、九日前の事だ」
92 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 15:12:38.26 ID:.Bxsz.c0
国木田「そっか」

佐々木「うん、僕は全然優等生なんかじゃないのにね。今だってこうして、不良してるし」

国木田「そうだね」

佐々木「それに、自分を過小評価しすぎだ。むしろ僕にはキョンのような、誰とでもわけ隔て
    なく、自由に付き合っていける才能が欲しかった」

国木田「そうだね」

佐々木「それと、そこら辺探せば何処にでもいるって間違えてると思うんだ。僕はこんなにも
    キョンを探しているっていうのに、ちっとも見つかりやしない」

国木田「うん。……そうだね」
93 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 15:13:29.57 ID:.Bxsz.c0
佐々木「そこでだ。僕はこれから、キョンが僕と別れてから殺害されるまでの一週間に何が
    あったのかを知ろうと思う」

国木田「……」

佐々木「知らない人間から見たら滑稽と思われるかもしれない。知り合いからだって、馬鹿
    だと思われるかもしれない。でも、僕は警察が捜査した結果をただ単に報道する
    新聞やTVの情報に左右されたくない。鵜呑みにしたくない」

国木田「佐々木さん」

佐々木「これは僕のエゴで我儘だ。でもね国木田君。僕は僕の手で、僕の目で真実を確かめ
    たいんだ」

佐々木「だから協力してほしい」

国木田「……ま、そこまで言われちゃ引き下がれないよね。男として」

佐々木「有難う」

国木田「良いさ、別に。僕だってキョンの友人なんだからね」
94 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/07/28(火) 15:14:20.70 ID:MJrtfD20
            , rハトy'Vヘ,i_
            / II|  \  \T'"ヽ
         /二一ヽ   ヽ  i  Kヽ
        ,/ 二二一−      i  li    i,
         l 一 一=,r'ー=-、,,_l   i    ::ヽ
        | 一一'{       `=-ー'"⌒'ト l
        }:::::::::::::::i;             |/
       ,r;'|::::::::_,;;;'              l
      i l` ヽ, /  ,、-=niy、,_     _,, ト,
      | レ^{ i|  '"ニr,テ-^ミ=   r彡_ニ=y,}
      ヽ, ヽi;i      ̄'”    | ^i=ィ^ r'
       ` ,_i i;l      ,_    {    'i
        | T;;      / (_   ハ   ,i|
      /^| i l;;,    ノ   ` - '" ;  /
     / ヽ\ ヽ    ''Tiニiーi-i-ァ'  //
   ノi   \ ヽ,\   ヽ`二"ノ  ,.'/
 /  l     ヽ  ヽ, ヽ    ̄   /
     l      \  ヽ`i、;;;;;;;;,,,,,,,;;rヘ
     l       \  ヽ ̄ ̄T'|   \


       マッティー・真下 [Matthias Mashita]
           (1965〜 独系日本人)
95 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 15:15:00.90 ID:.Bxsz.c0
国木田「でも一つだけ聞いても良いかな?」

佐々木「何だい」

国木田「何故僕を選んだの?高校生になってからキョンと会って話し
    してるくらいだから知っているとは思うけど、僕とキョンは
    もう中学の頃と違って、いつも一緒に居るって訳じゃない」

国木田「キョンの周りにいつも居るのは…」

佐々木「涼宮さんを始めとしたSOS団の面々の事かい?」
96 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 15:18:05.53 ID:.Bxsz.c0
国木田「そう。だから最初にアプローチを掛けるんだったら僕じゃなくて
    SOS団の方が先だと思うんだ」

佐々木「くくっ。もっともな意見だ」

国木田「だったら何故?」

佐々木「いくら高校で離ればなれになったとはいえ、今でも僕はキョンの事を
    ある程度は分かっているつもりだ。勿論君の事もね」

国木田「?」

佐々木「君ならキョンの違和感を感じ取ったと思うからさ。何だかんだいって、
    君は人の心に関する洞察力がずば抜けているからね」
97 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 15:19:18.86 ID:.Bxsz.c0
国木田「そんなに褒めてもらっても困るな。誰の心情でも読める訳でもないんだし」

佐々木「でも君はキョンから違和感を感じ取ったんだろう?」

国木田「………まぁ、そうなるね」

佐々木「さて、もうそろそろ良いだろう。聞かせてくれるかな?キョンが殺害
    されるまでの行動を」

国木田「実は……」
98 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 15:20:32.15 ID:.Bxsz.c0
………………
…………
……

佐々木「そうか……北高では」

国木田「うん。キョンが殺されるちょっと前にね。うちの高校でコンピュータ研
    の部長が死んだんだ」

佐々木「それは他殺では無かったのかい?」

国木田「警察も最初は殺人だと思ったみたいだよ。なんせ真昼間の部室で遺体が
    発見されたんだからね」

佐々木「でも実際には」

国木田「そう、実際には他殺ではないだろうって事になったんだ。まぁ、死因が
    心不全だったみたいだし、当然とも言えるけどね」
99 :完全VIPPER体質 ◆KANV..1g1M [sage]:2009/07/28(火) 15:21:50.81 ID:cwU76Voo
てst
100 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 15:22:16.30 ID:.Bxsz.c0
国木田「ただ、その頃辺りだよ。キョンの様子がおかしくなったのは」

佐々木「どんな風に?」

国木田「うーん。確か、そわそわしてたな」

佐々木「そわそわ?」

国木田「うん。後は、あんまり眠れてなかったみたい。目が充血してたし、いつも
    欠伸してたしね」

佐々木「他には?」

国木田「あぁ、SOS団の活動にも参加してなかったよ。というよりも途中から学校にも来なく
    なったから当然だけどね」

佐々木「(これはやはりキョンが何かの事件に巻き込まれた可能性が!!!)」
101 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 15:23:47.81 ID:.Bxsz.c0
佐々木「国木田君、話の途中で申し訳ないが質問しても良いかい?」

国木田「どうぞ」

佐々木「その頃のキョンは一人だった?それとも他に誰かと一緒に行動していた?」

国木田「残念だけどそこまでは分からないな。その時は特に気にも留めていなかったし」

佐々木「そうか。すまない、続けてくれ」

国木田「分かった。で、その部長さんが亡くなってから二日後だったと思うんだ。昼に
    キョンから電話がかかってきたんだ」

佐々木「!!!」
102 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 15:25:19.96 ID:.Bxsz.c0
佐々木「キョンは何て?」

国木田「うん」

〜以下、回想〜

キョン『よう、実は頼みたい事があるんだ』

国木田「どうしたの?もしかしてさっきのメールの事?」

キョン『ああ、そうだ。すまないな』

国木田「どうしたのさ。わざわざ電話掛け直すなんて」

キョン『…あぁ……分かってる。それとさ…もし俺がs……いや、何でもない』

国木田「……キョン?」

キョン『うん、じゃあもう時間だから、俺行くわ。待ち合わせしてんだ』

国木田「キョン、その喋り方。少し怖いよ。そのまま居なくなっちゃいそうな感じで」

キョン『そんなんじゃねぇって。……あぁ、サンキュな』

〜回想終了〜

国木田「……って感じだったんだ」
103 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 15:26:40.48 ID:.Bxsz.c0
佐々木「(所々会話が噛み合っていない。というよりも何処かキョンが上の空で話を
    している?その時既にキョンはかなり追い込まれた状況に居たのか。それに
    恐らくこの会話の流れからして、キョンは自分の死を予測していた。だとしたら、
    やはりキョンは既に……いや、でも、この話が本当ならキョンはまだ生きて
    いる可能性も十分ある。彼の周りには宇宙人、未来人、超能力者、さらには
    神様まで居るんだ。きっと……)」

国木田「佐々木さん?」

佐々木「おっと、すまない。それでメールというのは?」

国木田「えっ?あぁ。『リング』について知っている事があったら詳しくまとめて、教えて
    くれないかってメールだったんだ」

佐々木「『リング』って、あのホラーの?」

国木田「そうそう、それそれ」

佐々木「(『リング』か……)」
104 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 15:28:17.53 ID:.Bxsz.c0
国木田「今時リングってどうかなって思ったんだけど、その時のキョンの声が
    あまりにも鬼気迫る感じだったから」

佐々木「リングについて、知らせたんだね?」

国木田「うん。でも、あんまり時間が無いから要点だけまとめてくれって追加メールが
    来たんだけどね」

佐々木「それで君は」

国木田「学校帰りにキョンの家のポストに、リングの要点まとめた資料を
    放り込んどいたって訳」
105 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 15:29:28.01 ID:.Bxsz.c0
佐々木「その後、キョンから連絡は?」

国木田「来たよ。その日の夜にね」


〜以下、回想〜

キョン『よう、今日はサンキュな。届いてたよ』

国木田「しばらく学校来なかったと思ったら、突然『リング』について教えてくれなんて驚いたよ」

キョン『うん。…………そうか』

国木田「それよりキョン大丈夫?随分声が弱弱しいけど」

キョン「こっちは大丈夫だ……心配すんなよ」
106 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 15:30:57.32 ID:.Bxsz.c0
国木田「本当に大丈夫?無理しないでよ」

キョン『それとさ、しばらく連絡が取れなくなると思うけど大丈夫だから』

国木田「え?うん。……もしかして学校もまだしばらく来ないの?」

キョン『……あぁ、そんな感じかな。じゃあな……おやすみ……元気でな』

国木田「キョン……ちょっとキョン?」


       ツーツーツー

国木田「……キョン」


〜回想終了〜

国木田「今思えば、あの時の会話は何かのSOSのサインだったのかもしれない。
    あの電話、キョンが殺される前日だったし」
107 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 15:32:09.12 ID:.Bxsz.c0
佐々木「そうか…」

佐々木「(成程。少し繋がってきた。キョンが何故殺されたのかが。そして国木田君が
    様々な可笑しな点を見逃しているのにも納得がいく。これはやはり、意図的に
    仕組まれた事件の一つだ)」

佐々木「(確かに僕がもし国木田君のように、キョンの周りに居る魑魅魍魎といっても
    差し支えのないほどの有象無象を知らなければ、特に大きな問題が存在する事
    も見つけられなかっただろう)」

佐々木「(つまり一般人には絶対に露呈することのない事件。ただやっぱり僕の考えは
    正しかった。キョンが最後の最後に頼るだろう人物は、国木田君だった)」
108 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 15:33:39.35 ID:.Bxsz.c0
佐々木「それで国木田君、その資料というのは……」


          ピンポンパンポン

アナウンス「国木田様、国木田様」

アナウンス「3番診察室へお入りください」

         ピンポンパンポンパン

国木田「おっと、呼ばれたみたいだし行ってくるね?」

佐々木「あぁ、この話はまた後でしよう」
109 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 15:34:31.36 ID:.Bxsz.c0
………………
…………
……

〜学校〜

国木田「想像以上に簡単に入れたね」

佐々木「ま、一応制服脱いで体操服借りて着替えてるし」

国木田「それにしても、まさかここまで先読みしながら行動してるなんて」

佐々木「まぁここら辺が限度だけどね」
110 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 15:35:49.76 ID:.Bxsz.c0
国木田「でも午前中に僕と会って、キョンの情報を得て、さらに警察官の目を
    ごまかすという名目の元、病院へ行き診察してもらって」

国木田「これで、僕と佐々木さんの二人共に病院の診断書があるから学校や親に
    対しての良い訳が立てれる。しかも僕たちは健康体なんだから、特に何も
    なかったとして数時間休憩して、学校に戻って出歩いててもも不思議じゃ
    ないし、こちらに対しても言い訳が立つ」

国木田「加えて夏休み前の短縮授業。既に僕と接触している佐々木さんは、僕
    からのツテで難なくうちの学校の体操服をGET。残っている生徒も少
    ないし特に何の違和感もなく校内に忍び込める」

国木田「事件の手がかりを掴もうと学校に調査に来ている警察官もまだいるって
    のに、堂々と振舞っているから特に怪しまれてないし、凄すぎるよ」
111 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/07/28(火) 15:39:07.76 ID:.Bxsz.c0
佐々木「おいおい。そんなに僕を持ち上げたって何も出ないよ?」

国木田「いやいや、素直に感心してるんだってば」

佐々木「……はぁ。ま、ここからは僕だけで行くよ」

国木田「本当に大丈夫?」

佐々木「心配ないさ。何か進展したらまた報告する」

国木田「分かった。じゃあ、僕は家に帰ってキョンに渡した資料の元データを探してくるから」

佐々木「頼んだよ」
112 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 15:41:08.19 ID:.Bxsz.c0
………………
…………
……

〜文芸部室前〜

佐々木「(……ここがSOS団が活動していた場所)」

佐々木「(でもやっぱり立ち入り禁止になってる。当然か、あの報道があって
    まだ二日も経ってないんだ)」

佐々木「(警官も居るし、まだ入れそうにないな)」

佐々木「コンピュータ研の部長さんが使っていたパソコンもどうせまだ警察に
    保管されているままだろう。と、なるとやっぱり先に…」
113 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 15:44:21.49 ID:.Bxsz.c0
               ガラッ

佐々木「調べるのは図書室か」

佐々木「(キョンの話だと、長門さんは本が好きって言ってたな。文芸室が
    閉まっている今、僕の手持ち情報だと、恐らく長門さんと接触できる
    場所は市内の図書館か学校の図書室位だ)」

佐々木「(国木田君に頼む事も出来たけど、彼には極力非日常的な世界に巻き込み
    たくない)」

佐々木「……なんて、既に十分巻き込んでるよね」

佐々木「キョン。私がこんな事してるの知ったら、君は怒るかな?」
114 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 15:45:32.16 ID:.Bxsz.c0
………………
…………
……

〜一時間後・図書室〜

佐々木「……結局長門さんとは会えなかったな」

佐々木「やっぱり不本意だが国木田君に会合の場を設けてもらうしかないのか」

        Prrrrrrrr

佐々木「おっと、噂をすれば」
115 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 15:47:37.44 ID:.Bxsz.c0
国木田『もしもし』

佐々木「やぁ、国木田君。どうだった?」

国木田『それがおかしいんだ。キョンに渡したリングのデータが何処にも無いんだ』

佐々木「何だって?」

国木田『今も引き続き探してるんだけど、多分見つからないと思うんだ』

佐々木「(これは、既に証拠が消された?誰に?)」
116 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 15:48:51.16 ID:.Bxsz.c0
国木田『佐々木さん?』

佐々木「あっ、いや。すまない」

国木田『そう?僕はもう一度調べ直してみるつもりだけど』

佐々木「あぁ、うん。引き続きお願いできるかな?」

国木田『分かってる』

佐々木「あと、もう一つ頼み事したいんだけど良いかな?」
117 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 15:50:42.65 ID:.Bxsz.c0
国木田『僕に出来る事なら』

佐々木「うん、有難う。多分大丈夫だと思うけど……国木田君はSOS団の
    メンバーを把握してるかい?」

国木田『メンバー?あぁ、キョンと涼宮さんと朝比奈さん。それに長門さんと……途中
    で編入してきた古泉君。後は特別顧問の鶴屋さんだったかな』

佐々木「くくっ、素晴らしい記憶力だね」

国木田『佐々木さんにそう言って貰えるなんて光栄だね。でもまぁ、SOS団の事は
    いつもキョンから聞かされてたからね』

佐々木「そうか…」
118 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 15:52:45.64 ID:.Bxsz.c0
国木田『それで、僕に頼みたい事って?』

佐々木「ん、あぁ。長門さんとお話する機会を作って貰いたいんだ」

国木田『長門さん?涼宮さんじゃなくて?』

佐々木「うん。出来れば、長門さんと二人きりでお話したいんだけど」

国木田『分かった。長門さんももう帰っちゃただろうし、明日学校で聞いてみる。
    明日また連絡するよ。データの話もその時に』

佐々木「ああ。仕事を押し付けてばかりですまないね」

             ピッ
119 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 15:55:52.66 ID:.Bxsz.c0
佐々木「………」

佐々木「(涼宮さんはまだ、自分の力に気付いてはいない。キョンの亡くなった
    報道がされてまだ間もないこの時期に、その辺りを説明する訳にはいかない。
    橘さんも涼宮さんはまだ、自分の力を制御しきれてないと言っていた)」

佐々木「(それをこんな心が不安定な時期に知らせるのは不味い。何が起きるのか
    予想がつかない)」

佐々木「………前途多難だな」
120 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 15:57:41.50 ID:.Bxsz.c0
………………
…………
……

〜翌日〜

佐々木「(流石に三日続けて学校を休むわけにはいかないか)」

佐々木「(でも、どちらにしろ国木田君からの結果報告待ちだし、焦っても仕方ない)」

佐々木「……それにしても、今更ながら僕の取り巻きは一体全体何処へ行って
    しまったのか」

佐々木「(彼女らも今回の事件に巻き込まれてなければ良いんだけど)」
121 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 16:00:13.29 ID:.Bxsz.c0
佐々木「(……特にやる事もないし、昨日の考えでもまとめてよう)」

佐々木「(まずは、そうだな。今回の事件の発端)」

佐々木「(キョンは、事件や厄介事に巻き込まれるのは大抵の場合、涼宮さん
    がそう望んだからだと言っていた。それを前提と考えるのなら、今回
    のトリガーも恐らく彼女)」

佐々木「(少しホラー物に興味を示したって認識で、間違いはないだろう)」
122 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 16:01:27.08 ID:.Bxsz.c0
佐々木「(国木田君の話だとキョンは部長さんが死んだ辺りから様子が変わりだした)」

佐々木「(その少し後にキョンも死ぬ事に…)」

佐々木「(確か、リングはビデオテープにダビングされた映像を見て、その一週間後に
    死ぬというホラー映画の筈)」

佐々木「(国木田君にリングの事を聞いていた事からも、キョンはそのビデオを観た?)」
123 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 16:03:18.49 ID:.Bxsz.c0
佐々木「(そわそわした振る舞い、不眠、不登校)」

佐々木「(それに、何処かへ消え去ってしまいそうな弱弱しい声。不安)」

佐々木「(リング、リングね…)」

佐々木「(あれ?でもそれじゃ、おかしい)」

佐々木「(国木田君からリングの資料を受け立ったのなら、キョンは呪いを解けた筈)」

佐々木「(だったら何故…)」
124 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 16:04:20.29 ID:.Bxsz.c0
?? 「さ…き、……オイ、佐々木」

佐々木「はい?」

先生 「はい?じゃない。どうしたんだ、さっきからボーっとして」

佐々木「い、いえ。何でもありません」

先生 「そうか」

佐々木「(キョンが巻き込まれた事件は、リングじゃあ無いのか?)」
125 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 16:06:39.72 ID:.Bxsz.c0
………………
…………
……

佐々木「やっと授業が終わった」

佐々木「でも、国木田君からは相変わらず連絡来ないな」

佐々木「……ビデオ屋にでも行くか」

佐々木「(リングの中身を確認しておこう)」
126 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 16:08:14.45 ID:.Bxsz.c0
………………
…………
……

〜TSUT○YA〜

佐々木「さて、リングを借りようと思って来てみたけど」

佐々木「まさか全て貸し出し中とはね」

佐々木「いくら夏休み前だからって、皆張り切りすぎだろう」

佐々木「……今日は大人しく家に帰って国木田君からの連絡を待つか」
127 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 16:09:29.66 ID:.Bxsz.c0
佐々木「……………………………………………………」

佐々木「……………………………………………………」

佐々木「……………………………………………………」

佐々木「……………………………………………………」

佐々木「……………………………………………………」

佐々木「……………………………………………………」
128 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/07/28(火) 16:10:05.69 ID:8vC1TgUo
ksk
129 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 16:10:29.26 ID:.Bxsz.c0
佐々木「……………………………………………………」

佐々木「……………………………………………………」

佐々木「……………………………………………………」

佐々木「……………………………………………………」

佐々木「……………………………………………………」

佐々木「……………………………………………………」
130 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 16:11:40.67 ID:.Bxsz.c0
佐々木「連絡来ないな」

佐々木「何も進展してないけど、こちらから掛けてみるか」

        PrrrrPrrrrPrrrr

佐々木「………」

        PrrrrPrrrrPrrrrr

佐々木「出ない」

佐々木「(もしかして国木田君に何か?……やっぱり長門さんとの接触が原因?
    いや、決め付けは良くない。電話に出ないなんてざらにある現象だ)」

佐々木「(大丈夫、大丈夫だ)」
131 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 16:13:47.51 ID:.Bxsz.c0
………………
…………
……

〜翌日〜

佐々木「ん、くふぁぁ」

佐々木「んー、今、5時40分?」

佐々木「(……そうか、あのまま眠ちゃったのか)」

佐々木「(朝刊取ってこよう)」
132 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 16:15:26.49 ID:.Bxsz.c0
………………
…………
……

佐々木「あれっ?ポストに新聞以外に何か入ってる」

佐々木「………封筒。でも宛名が書いてない。中身は……原稿用紙」

佐々木「この原稿はもしかして…『リング』?」

佐々木「…間違いない、『リング』だ。国木田君、見つけて届けてくれたんだ」
133 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 16:16:36.95 ID:.Bxsz.c0
………………
…………
……

佐々木「(……成程ね、うん。思い出してきた)」

佐々木「(リングの主人公は不可解な死に方をしている人間の原因を調べ、被害者たちの
    足取りを追って行くと、一本のビデオテープに辿り着く)」

佐々木「(多少恐怖はあるんだけど、主人公はテープの中身を見てしまう。勿論ホラー
    映画であるのだから中身は…)」

佐々木「(観ると一週間後に死ぬという呪いのビデオ)」

佐々木「(そしてビデオの最後にはその呪いを解く方法も記されている。しかし、ビデオの
    最後の部分が何故か切れていて呪いの解除の仕方が分からない。そして主人公達は
    どうすれば呪いが解けるのか?と、思考錯誤を繰り返して、解決策を模索するストーリー)」

佐々木「つまり、リングってのは、ミステリー要素を散りばめたホラー作品って事だ」
134 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 16:18:59.36 ID:.Bxsz.c0
佐々木「(………でもこれ位の情報なら、ネットか何かで検索すれば直に行きついた
    と思うけど)」

佐々木「(キョンは一体この文章の中から何を見つけ出したっていうんだ!?)」

佐々木「………今持っている情報じゃ、これ以上の推測は無理か」

佐々木「私は本当に……無力だ」

             ペラッ

佐々木「ん?用紙の途中に紙切れが挟まってる」
135 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 16:20:35.70 ID:.Bxsz.c0
佐々木「(裏に何か書いてある)」


長門有希 図書室


佐々木「(これは……図書室に行けば長門さんに会えるって事?)」

佐々木「でも、日時の指定がない」

佐々木「………取りあえず行ってみるしかないな」
136 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 16:49:30.07 ID:.Bxsz.c0
〜北高・図書室〜

佐々木「さて、やって来たもののやっぱり長門さんは居ないな」

佐々木「(一応、待つだけ待って何もなかったら国木田君にもう一度連絡
    取ろう)」

………………
…………
……

〜一時間後〜

佐々木「やっぱり会えなかったか。まぁ良い。国木田君に連絡しよう」

               ガラッ

谷口 「あれっ?あんた、この間の…」

佐々木「?」
137 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 16:51:14.60 ID:.Bxsz.c0
谷口 「俺だよ俺!覚えてないか?ほらっ、あんたが国木田と一緒に学校サボった
    時に居た…」

佐々木「…あぁ、あの時の」

谷口 「何でうちの高校に居るんだ?ちゃっかり制服までうちのだし」

佐々木「これは知り合いに頼んで貸してもらったんだよ」

谷口 「ふぅん。ま、そんなのどうでも良いや!それより折角会ったんだし、どうだい?
    良ければ俺が高校案内してやるけど」

佐々木「くくっ、それは嬉しいが今は…」

谷口 「へへっ、遠慮すんなって」

佐々木「(………いや、良い機会かもしれない。国木田君とも連絡がつくとは限らないし)」

佐々木「そうだな、じゃあ頼もうか」ニコッ

谷口 「良し来た!」
138 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 16:52:28.52 ID:.Bxsz.c0
谷口 「さーて、何処から案内しよっかなー♪」

佐々木「あ、ねぇ谷口君」

谷口 「ほい?」

佐々木「谷口君ってもしかして国木田君と仲良かったりする?」

谷口 「あぁ、一緒に飯食う仲だぜ」

佐々木「そっか」

谷口 「あり?もしかして俺よりも国木田の方が良かった?」

佐々木「違うよ。後で国木田君と会って行こうかなって考えてたからさ」

谷口 「何だ、やっぱり国木田かよ。でも無理だぜ?あいつ今日学校休んでるから」
139 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 16:53:29.81 ID:.Bxsz.c0
佐々木「えっ?そうなの?」

谷口 「意外そうだな」

佐々木「(もしかして昨日は無理して資料届けてくれたのか。だから連絡しても
    繋がらなかったんだ。……悪いことしちゃったな)」

谷口 「ま、国木田の事なんて忘れて楽しく行こうぜ?どうせあいつも直に元気に
    なって学校来るからさ。なんせ別に何かの大事件に巻き込まれたわけでも
    ねーんだし。単なる体調不良なんだからよ!」

佐々木「!」

佐々木「(そうか、谷口君もキョンが死んで辛いのを無理矢理明るく振舞って、
    気取られないようにしてるんだな)」

佐々木「…うん、その通りだね。それじゃ、学校案内の方、宜しく」

谷口 「おうっ、任せな」
140 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 16:55:22.37 ID:.Bxsz.c0
………………
…………
……

〜四十分後〜

谷口 「とまぁ、こんな処だな」

佐々木「どうも有難う。大変参考になったよ」

谷口 「うんにゃ、俺もあんたみたいな美人と一緒に居られたんだから
    大満足さ」

佐々木「くくっ、君はお世辞が上手いね」

谷口 「いやいや、本心だぜ?」
141 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 16:56:16.12 ID:.Bxsz.c0
佐々木「くっくっ、そういう事にしとこうか」

谷口 「ま、何か困った事があったら俺に相談してくれよ」

佐々木「うん、その時は遠慮なく……いや、谷口君」

谷口 「あん?」

佐々木「困った事があったら相談してくれと言って貰って、すぐにこんな発言
    するのは少し気が引けるんだが、ちょっと君に聞きたい事があるんだ」

谷口 「へぇ、別に気を使ってくれなくても構わないぜ?何だって聞いてくれよ」
142 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 16:58:02.97 ID:.Bxsz.c0
佐々木「では、遠慮なく。…君もSOS団は知っているよね?」

谷口 「そりゃまぁ知ってるさ、うちの学校で知らない奴はいないんじゃないか?」

佐々木「そうか。有名なんだね」

谷口 「そりゃ涼宮が仕切ってるからな。嫌でも目立つ」

佐々木「くくっ、有名人なんだね、彼女は」

谷口 「そりゃーな。中学の時からだよ、あいつの奇人変人ぶりは」
143 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 17:00:22.09 ID:.Bxsz.c0
佐々木「それで涼宮さん以外のメンバーは知っているかい?例えば、長門さんとか」

谷口 「長門?あんた長門有希の事知ってんのか」

佐々木「あぁ、どうやら君も彼女の事知ってるみたいだね」

谷口 「へへっ、一応この学校で目ぼしい女子は全員チェックしてるんでね」

佐々木「………」

谷口 「あっ、コラ急に怪訝そうな顔すんじゃねぇよ」

佐々木「これは失礼」
144 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 17:02:06.46 ID:.Bxsz.c0
谷口 「で?長門有希がどうしたんだ?あいつは誰とも接点持ちたがらねぇから、友達
    になろうなんて考えても無理だと思うぜ?」

佐々木「そうか、それは残念だ」

谷口 「おっと、すまない。無神経な発言だったな」

佐々木「気にしないでよ。大丈夫だから。ただ、ちょっとだけ彼女に興味があるだけさ。
    キョンと同じSOS団のメンバーだったからね」

谷口 「そか」

佐々木「うん。それで、一度彼女と会ってみたかったんだけど、谷口君、長門さんがいつも
    何処に居るか知らないかい?この前から頑張ってみてるんだが、どうしても会えなくてね」
145 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 17:03:22.77 ID:.Bxsz.c0
谷口 「へぇ、……どういう経緯で長門を知ったのかは知らねぇが、そりゃ随分と
    無駄足を踏んじまったな」

佐々木「?」

谷口 「あいつは、キョンが殺される五日、いや四日前だったかな?その辺りからずっと
    学校には来てないんだよ」

佐々木「!!!」

谷口 「おいおい、どうしたんだよ、そんな驚いた顔して?」

佐々木「(キョンも殺されたとされる数日前から学校には来ていなかった。
    長門さんも学校に来ていなかったのならば、彼女はキョンと一緒に居たのか?)」
146 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 17:05:08.74 ID:.Bxsz.c0
佐々木「(もしキョンが長門さんと共に行動していたのならば、殺害される確率は一気に
    減少する。……あの殺害や報道は長門さんの情報操作の可能性……いや、キョン
    の話を聞く限り長門さんはキョンに好意的な感じだった)」

佐々木「(好意を抱く相手を世間的に抹殺しようとするだろうか?)」

佐々木「(いや、……何処かの敵対勢力からキョンの姿をくらませ、追跡から逃れるために
    止むを得ず情報操作した可能性もある。一概には決め付けられない)」

谷口 「おい、どうしたんだよ?押し黙っちまって」

佐々木「い、いや。何でもない。そうか、長門さんはずっと欠席しているのか。残念だ」


佐々木「(何にせよ、長門さんがキョンと共に行動していたとするなら、キョンが生きている
    可能性は大幅に上がる)」
147 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 17:06:56.03 ID:.Bxsz.c0
佐々木「!…有難う、谷口君。おかげで助かったよ」

谷口 「お、もう質問はねぇのか?まだまだ相談に乗るぜ?」

佐々木「うん。もう大丈夫だ。すまないが僕はやる事が出来てしまった。次、国木田君に
    会ったら宜しく言っておいてくれ」

谷口 「ok」

佐々木「じゃ」

佐々木「(今朝の手紙の件といい、もう一度図書室を調べる必要がある)」
148 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 17:08:39.57 ID:.Bxsz.c0
〜図書室〜

佐々木「さて、と」

佐々木「(この前図書室に来た時に図書委員や司書さんに長門さんの事を尋ねたが
    何かを知っていそうな素振りは見られなかった)」

佐々木「(つまり最近の長門さんはそこまで頻繁に図書室を利用してはいなかった。
    だとすると多分手掛かりがあるのは……図書の貸し出しカード)」

佐々木「(長門さんが出席していなかった日に貸し出しがあった本の中に何かヒント
    が隠されている可能性が高い)」

佐々木「(勿論そんな形跡は存在しないかもしれないけど、やるだけやろう)」
149 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 17:09:57.01 ID:.Bxsz.c0
………………
…………
……

佐々木「って、やっぱりそこまで安直じゃないか」

佐々木「一応SOS団全員分の図書カードを確認してみたけど、結局SOS団で最近
    図書の貸し出しをしたのは古泉君だけ」

佐々木「本のタイトルは『エンドレス・サマー』か」

佐々木「特に関係なさそうね」

佐々木「貸し出し日時は……キョンが殺された次の日か」
150 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 17:12:02.75 ID:.Bxsz.c0
佐々木「(そう言えば、私SOS団の人と誰とも会ってないな)」

佐々木「(涼宮さんとは、敢えて会わないようにしてるし、涼宮さん自体も私を
    監視してる訳じゃないからそ良いとして、涼宮さんを取り囲んでいる他
    の人達はどうなんだろう)」

佐々木「(長門さんは置いといたとしても、他にも未来人と超能力者が居る筈)」

佐々木「(特に超能力者は涼宮さんを神と崇めているから、私には極力この学校
    には近寄らせたくないんじゃ…)」

佐々木「(この古泉君って人は何処に…)」

佐々木「……ま、それも長門さんに会ったら、はっきりするかな」
151 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 17:13:24.00 ID:.Bxsz.c0
………………
…………
……

佐々木「(……貸し出しカードがヒントだと思ったけど結局何も見つからなかった。
    他にも何か無いかなと図書室を一通り探してみたけど、怪しそうな処もない)」

佐々木「『エンドレス・サマー』は古泉君が借りたまま返却されてる様子もないし………」

佐々木「……一応、この本があった場所を確認するだけしよう」

                ガタッ

佐々木「……え〜と、『エンドレス・サマー』、『エンドレス・サマーっ』と」

佐々木「……やっぱり貸し出し中だ」
152 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 17:14:43.63 ID:.Bxsz.c0
佐々木「隣にある本も『Lの悲劇』……関係なさそうだな」

佐々木「ん?」

           キラッ

佐々木「奥の方で何か光った。何だろう?」

          スッ

佐々木「これは………指環?」

佐々木「もしかして、これがヒント?でも指環がヒントって…一体」
153 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 17:16:50.25 ID:.Bxsz.c0
        ピンポンパンポン

アナウンス「図書室の閉館まであと15分です。本を借りられる方は、お早めに
      貸し出しコーナーへ来て下さい」

アナウンス「繰り返します。図書室の閉館まであと15分です。本を借りられる
      方は、お早めに貸し出しコーナーへ来て下さい」

        ピンポンパンポンポン

佐々木「おっと、もうこんな時間か」

佐々木「(取りあえず、指環だけでも持って帰るか)」
154 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 17:18:31.95 ID:.Bxsz.c0
〜翌日〜

佐々木「(結局、指環だけ持って帰っても何も進展しなかったな)」

佐々木「(今日が終業式か。明日から夏休み……夏休みに入ったら涼宮さん達と
    会える機会は皆無になる)」

佐々木「今日も帰りに北高に寄ろう」

佐々木「……やれやれ。全く。この事件が片付いてキョンに会ったら、たっぷり
    小言を言ってやらなくちゃ。”心配ばかり掛けさせて”って」

佐々木「本当に君は心配ばかり掛けさせるんだから」

佐々木「………キョン。君はきっと、生きているよね?」
155 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 17:19:47.90 ID:.Bxsz.c0
………………
…………
……

〜学校〜

校長 「え〜、であるからして。夏休みだと言っても羽目を外し過ぎぬよう、しっかりと
    勉学に励み、新学期に備えて……」

佐々木「(今頃は北高も終業式。北高の終業式が終わって生徒が下校している時間帯に
    忍び込んで文芸部に行こう)」

佐々木「(もしかしたら、団員が集まってるかもしれないし……涼宮さんと会っちゃう
    可能性もあるけど、キョンが死んだという報道がされてからもう五日経ってる。
    落ち着いてると思う)」

佐々木「(それに、涼宮さん自身に話を聞きに行く訳じゃないし、一人ずつ順番に
    アプローチしていけば、宇宙人や未来人、超能力者関係の話は涼宮さんに
    聞かれる事もないよね)」

校長 「では、これで話を終ります。皆さん良い夏を」


佐々木「(何にしても今日が勝負の日。どうにかして手掛かりを掴まなくちゃ)」
156 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 17:22:18.58 ID:.Bxsz.c0
           ワイワイガヤガヤ

女生徒1「佐々木さん。私達これからカラオケ行くんだけど一緒にどう?」

女生徒2「折角夏休みに入った事だし、親睦を深めるためにも、ね?」

佐々木「ゴメン。実は今日も用事があるんだ」

女生徒1「え〜、今日もどこか行くの?佐々木さん最近、学校が終わると
    毎日何処かに行ってるよね」

佐々木「うん。ちょっとね」

女生徒2「もしかして、ついに佐々木さんに彼氏が!?」

女生徒1「彼氏!?そうなの?佐々木さん!?」

佐々木「ち、違うって!」
157 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 17:24:23.40 ID:.Bxsz.c0
女生徒2「無理に否定する処が尚怪しい」

佐々木「えっ?えっ?」

女生徒1「ちょっと教えなさいよ!何時から?何処まで行ったの?」

            グイッ

佐々木「わわっ」

        コツン  カラカラカラ

女生徒2「何か落ちたよ?」スッ

女生徒1「指環?佐々木さんやるー。既に男に貢がせてるなんて」
158 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 17:26:11.36 ID:.Bxsz.c0
佐々木「その指環は…」

女生徒2「でもシンプルな形ね。宝石ついてないし」

女生徒1「いやいや、宝石なんかついてる指環だったらまた佐々木さんの援交疑惑が
    高まるって!」

女生徒2「それもそうね」

佐々木「援助交際の疑惑って……私は普段どんな目で見られてるの?」

女生徒1・2「「気にしないで!」」

佐々木「凄く気になるんですけど…」
159 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 17:30:09.10 ID:.Bxsz.c0
女生徒3「あんた達、さっきからやけに盛り上がってるけど、どうしたのよ」

女生徒1「あっ、実は佐々木さんに彼氏が出来たという話でね」

佐々木「いやいやいや、違いますから」

女生徒2「で、これが男に貢いで貰った戦利品て訳!」

              スッ

女生徒3「へぇ、メビウスリングだ」

佐々木「メビウスリング?」
160 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 17:32:12.45 ID:.Bxsz.c0
女生徒3「一時期私も持ってたな。彼氏にプレゼントしてもらって」

女生徒1「へー。メビウスリングって言うんだ。この指輪。でもま、あんたの
    ドロドロした恋話なんて聞きたくないけどね」

佐々木「(ドロドロって…)」

女生徒3「あんた、いくら夏休みに入るからって心の窓も開放的にしすぎじゃない?」

女生徒1「まぁまぁ、この会話も夏休みが明けてる頃にはすっかり忘れてるよ!」

女生徒3「……覚えてろよ」
161 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 17:33:38.28 ID:.Bxsz.c0
女生徒2「ふーん、メビウスリングね。あれっ?ねぇねぇ」

佐々木「何?」

女生徒2「指環の裏に何か彫った痕があるけど」

女生徒1「どれどれ。あっ、本当だ」

佐々木「ちょっと見せて」

佐々木「(彫った痕?昨日確認した時には何も無かった筈だけど)」

佐々木「本当だ。何か彫ってある。………m i k u r u……みくる?」
162 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 17:37:04.45 ID:.Bxsz.c0
佐々木「(……みくるって朝比奈みくるの事で良いんだよね)」

女生徒1「みくるって誰?」

女生徒2「そんなの私に聞いたって分からないわよ。ねぇ、佐々木さん、みくるって誰?」

女生徒1「もし男が二股掛けてるんだったら即座に別れた方が良いよ」

佐々木「いや、…その」

佐々木「(朝比奈みくる……朝比奈みくるに事のあらましを聞けって意味?分からない。でも…)」

佐々木「ゴメン!私、もう行かなくちゃいけないから」

                ダッ

女生徒1・2「「あっ、逃げた!!!」」
163 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 17:38:46.74 ID:.Bxsz.c0
………………
…………
……

〜北高校門前〜

佐々木「時間ぴったり、丁度北高の生徒も下校するみたいだ」

佐々木「では、文芸部室もといSOS団の部室に行きますか」

佐々木「(今日の目的は朝比奈みくるとの接触。あわよくば長門さん、古泉君と
    会って、キョンについて話を聞く事)」

佐々木「(この指輪は多分SOS団の誰かが用意した物の筈。きっと事件は進展する)」
164 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 17:39:57.74 ID:.Bxsz.c0
〜文芸部室前〜

佐々木「流石にもう警察の捜査は終わって立ち入り禁止の看板も無くなってる」

              トントン

佐々木「すみません。誰かいらっしゃいませんか?」



佐々木「………返事が返ってこない。誰も居ないのか?困ったな」

               ガチャ

佐々木「!!!扉は開いてる」

佐々木「すみません。御邪魔しまーす」

               カチャ

佐々木「やっぱり誰も居ないみたい。でもドアは開いていたし皆何処かに出かけてる
    だけで帰ってくるかもしれない。……少しここで待たせて貰おう」
165 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/07/28(火) 17:40:49.43 ID:Piy/mbMo
コレを見てるといかにも女が人の話を聞かないって事が分かるな
166 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 17:43:02.60 ID:.Bxsz.c0
………………
…………
……

〜三十分後〜

佐々木「誰も帰ってくる気配は無いな。さて、どうしようか」

佐々木「………PC。警察に回収されてると思ってたけど、残ってるんだな」

佐々木「いや、あのPCは別にキョンの私物じゃなくて学校の備品だから回収
    されてないのか」

佐々木「mikuruね……あのPCに手掛かりがあるんだったら警察がとっくに調べ上げて
    そうだけど、あのPCちょっとだけつつかせてもらうか」
167 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 17:44:26.67 ID:.Bxsz.c0
          カチッ  ヴィン

佐々木「取りあえず最近の検索履歴でも調べて……『リング』、『リングとは』、
    『貞子』、『リング 呪い 解決』、『巨乳』、『貞子 呪い』、
    『リング 映画』、『リング 原作』」

佐々木「リングの検索結果ばかりだな」

佐々木「(でもこんなに調べてたんなら、国木田君からの情報は必要無かったんじゃ?
    それとも時間がなくて、全てを確認する時間が無かったから要点だけまとめて
    もらう依頼をした?)」

佐々木「まぁ、これでキョンが巻き込まれた事件は『リング』と断定してほぼ間違いが
    ないのは分かった」

佐々木「……他にこのPCに何かヒントは」
168 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 17:45:47.04 ID:.Bxsz.c0
佐々木「mikuruでフォルダ検索でも掛けてみるか」

佐々木「……と、その前に隠しフォルダを全て表示するに設定を変更して、と……検索スタート」

………………
…………
……

〜二十分後〜

佐々木「ヒントにしては直球すぎるだろうと思ったけど、まさか本当にHitするとは」

佐々木「……まぁ良い。中身を確認しよう」
169 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 17:46:45.99 ID:.Bxsz.c0
佐々木「……………………………………………………」

佐々木「……………………………………………………」

佐々木「……………………………………………………」

佐々木「……………………………………………………」

佐々木「……………………………………………………」

佐々木「……………………………………………………」
170 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 17:47:57.84 ID:.Bxsz.c0
佐々木「……そうか、キョンは巨乳が好きなのか」

         ペタッ ペタッ

佐々木「…………くそう」

佐々木「酷く不快な気分になってしまった。もう良い、このフォルダはこれ以上
    調べても何も出てこない!」

佐々木「…………くそう」

佐々木「……ん?画像ファイル以外にもフォルダがある」

佐々木「Diary…日記?」
171 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 17:49:26.68 ID:.Bxsz.c0
佐々木「これも確認しとくか」

          カチカチッ

佐々木「あれ?パスワードが掛かってる……これは」

佐々木「真っ先に思いつくと言えば」

            『ring』  カチッ

佐々木「どうだ?」

PC『パスワード認証エラー。パスワードが違います』

佐々木「違う」
172 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 17:51:38.39 ID:.Bxsz.c0
佐々木「他には誕生日とか?」

          カタカタ  カチッ

PC『パスワード認証エラー。パスワードが違います』

佐々木「これも違う。でもキョン以外の団員の人の誕生日とかは知らないし」

佐々木「他にパスワードにしてそうな単語は…」

          『mikuru』  カチッ

PC『パスワード認証エラー。パスワードが違います』

佐々木「駄目か…」
173 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 17:53:36.14 ID:.Bxsz.c0
………………
…………
……

〜十分後〜

佐々木「キョンがパスワードにしそうな単語はあらかた試してみたけど、どれも失敗」

佐々木「後、パスワードになりそうな単語といったら…」

            『mebius』

佐々木「こいつくらいだな」

             カチッ

佐々木「どうだ?」

PC『パスワード認識完了』

佐々木「成程ね。……確かにあの指輪はヒントで間違いなかったってわけだ」
174 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 17:54:49.92 ID:.Bxsz.c0
佐々木「『Diary』フォルダの中身は……1月、2月、3月、4月……月ごとの
    フォルダか」

佐々木「それぞれのフォルダの中身は、txtファイルね」

佐々木「じゃ、一番古い奴から……」

                カチカチッ

『日記を書くなんて俺の柄じゃないが、今日から俺は一つの記録を残して
いこうと思う。別に、この日記について特にどうこうしようとは思っちゃ
いないが、一つの軌跡、確認のためだ』

『何の因果か知らんが、俺は涼宮ハルヒに選ばれてSOS団に入る事になっちまった。
まぁ、んなこたぁどうでも良い。俺の財布から放出される出費の数々を考えなけりゃ、
楽しい部活の一環に過ぎないからだ』
175 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 17:56:10.20 ID:.Bxsz.c0
『ただ、どうにも見過ごせない事実がある。それは、宇宙人、未来人、超能力者
についてだ。まぁ、俺がこの日記をつける発端にもなった一番の理由だが……俺は、
これまでそんな存在が実際に居るとは思いもしなかった』

『いや、居て欲しいとは思っていたが、俺ももうそんな夢見る子供と呼べる年齢
でも無くなってるし、仮に居た処で、俺なんかに見つかる存在じゃあないと思って
いたからだ』

『だが、どういう訳か、俺はそいつらに出会っちまった。しかも、未来人、宇宙人、
超能力者どころか、この世界の神様にさえだ!』

『しかし何だ。この神様っつー存在はえらく我儘ではた迷惑な奴なので、俺が多大な
被害を被る羽目になっちまった』
176 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 17:57:16.41 ID:.Bxsz.c0
『そこで、だ。俺はこれからその神様の所為で巻き込まれることになった事件の
軌跡を綴っていこうと思う』

『もしかしたら、今までの事件の解決方法が今後の役に立つかもしれねぇし、将来、
この日記を装い新たに書き直して、自伝をSF小説として世に送り出すのも良いかもしれない』

『とかまぁ何とか、色々書き出してみてるけど、やっぱり一番は、いつの日か
ここに纏めてある文章を読みなおして、あぁ、こんな事もあったなって、今この時
を思い出せたら、最高だと思う』

『そんな訳で、多少日記とは違うが、これから起こるであろう波乱万丈な俺の毎日
をtxtという形として残していく』


佐々木「キョン……」
177 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 17:58:27.02 ID:.Bxsz.c0
佐々木「……出来れば、君が高校に入ってから、一体どういう出来事に触れて
    きたのか全部知りたいが……それは、またの機会に取っておこう。可能なら
    その時は、君の隣で、君の口から語って貰いたいものだ」

佐々木「………」

佐々木「さて、……感傷に浸ってる場合じゃない」

佐々木「とりあえず、この隠しフォルダの意味は分かった。キョンの日記だ。となると、
    一番最近のフォルダ……7月。あった、これだ」

               カチカチッ

佐々木「txtファイルも他のフォルダと比べて異常に少ない…とにかく中身を」

               カチカチッ
178 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 17:59:42.52 ID:.Bxsz.c0
『今まで色々な事件に関わってきたが、今回はかなり不味い状況に追い込まれている。想像
以上にヤバい。ここ最近ハルヒも大人しくなって、事件らしい事件に巻き込まれること自体
少なくなっていただけに、ちょっと油断してたってのもあるだろう』


『事の発端は古泉の家に行ってからだ。親睦を深めるという名目の元、AV観賞に行ったのだが、
そもそもこれが間違いだった』

『いや、間違いというほど、古泉のAVセンスが酷いという訳じゃない。あいつはポリスにOLに
ナース。戦隊物からガチャ○ンとム○クのかぶり物のAVまで!!!かなりの広い守備範囲を誇
っていた』

佐々木「………キョン。私、こんな時どんな顔をすれば良いか分からないよ……」

『だが、ハルヒをほったらかしにしたまま帰ったのがまずかったのか、久し振りに閉鎖空間が
発生しちまった』
179 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 18:00:50.02 ID:.Bxsz.c0
『古泉は森さんに強制召集を掛けられ、やむなく機関に連れて行かれる事となり、俺は一人、
古泉の部屋に取り残された』

『古泉は好きなAVがあれば、好きなだけ観賞して行っても良い、と快く俺に部屋の合鍵を
渡してくれたので、そんな訳で、俺は巨乳DVDはないか部屋を見渡した。こんなに沢山AVがあるんだ。
何本か俺の股間にビビッと来るAVがあったって不思議じゃない』

佐々木「…………」

『と、そこで俺はボックスの片隅に無造作に置かれていた一本のビデオテープを見つけた。
部屋にはDVDが沢山あるのに、何故今時ビデオテープがあるんだ?と若干首を傾げつつ俺は
TVのそばにあったデッキにテープを入れた』
180 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 18:02:09.41 ID:.Bxsz.c0
『しかし、期待は見事に裏切られる事に。テープを再生したものの只々砂嵐が
映し出されるばかりで、ちっとも女の子は画面に出てこない』

『しばらくして画面は真っ暗になり、そこから数分間は暗闇しか見えなかった』

『もしかして元々このテープには何も録画されてなかったのでは?と思い、テープ
を取り出そうとデッキに近づいた次の瞬間、画面は切り替わった』

『画面に映し出されたのは、井戸、だった』

『俺は若干戸惑いつつも、何だ、ちゃんと録画されてるじゃないかと、席に戻って
続きを見ることにした』
181 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 18:03:22.40 ID:.Bxsz.c0
『しばらくボーっと画面を眺めていたがビデオは火山や海、病院のような施設や
婆さん、井戸、と目まぐるしく場面展開を繰り返し俺の興味を集めた』

『しかし、特にこれといったストーリー展開が待っている訳でもなく、数分間
場面展開を繰り返した後、ビデオは終了を迎える』

『俺はそれ以上ビデオに何か録画されていないか早送りで確認したが、それ以上
何も無い事が分かると、一気にビデオへの興味をなくし、停止ボタンを押し、ビデオ
を見るのを止めた』
182 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 18:04:26.63 ID:.Bxsz.c0
『興味を失った俺は、また新たにAVを探そうと部屋を見渡したが、ここでタイミング
良く俺の携帯が鳴った』

『着信履歴を確認するとハルヒからだった。俺は今日の活動に参加しなかった事を
怒られるのだろうと思い、携帯に出るのが億劫な気分になったが、しかしどうせ
明日顔を合わせたら何故昨日顔を出さなかったのか+何故電話に出なかったのか?
と刺々しく言われる事になるのかと落胆しつつ、腹を決めて電話に出た』

『だが………受話器の向こうからはハルヒの声は聞こえず、代わりに少しどもった感じ
の声が聞こえてくる』
183 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 18:05:56.87 ID:.Bxsz.c0
『ボソボソと一通り喋った後、電話は切れた。結局上手く聞き取れなかったので
俺は再度ハルヒに電話を掛け直す事にした。きっとさっきの電話は電波が悪かった所為だと
思ったからだ。だってそうだろ?着信履歴は間違いなくハルヒだったんだから』

『だが、ハルヒに電話したら、いの一番に「この馬鹿っ!!!!!!」と怒鳴られ、
「あんた、SOS団の活動をほっぽり出していい度胸ね?今どこに居んのよ?」と捲し立てられた。
俺が「ど、何処って、(古泉の)家だが…」と答えると、「何で帰宅してんのよ!!!
もう良いわ!!!今度の不思議探索活動は、あんたが遅れてこようが早くこようがどちらにしても、
全額あんたの奢りだからね?」等という理不尽な結果に』
184 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/07/28(火) 18:40:25.47 ID:8LP0YEAO
がんばって
185 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/07/28(火) 20:04:43.78 ID:Z.17mMSO
2chは規制で無理ぽだけど、ここなら支援できるんだぜ
186 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/07/28(火) 20:13:17.45 ID:PKLxgQso
>>185
パー速は支援とかいらないから。
187 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/07/28(火) 20:33:19.71 ID:Z.17mMSO
>>186
さるさる除けとかじゃなくて、書き手さんのモチベーションに支援してんの
プレッシャーにならんよう過剰な催促はしないが
188 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 21:24:44.67 ID:.Bxsz.c0
『あいつから掛けてきたんじゃないか?と、首を捻りつつ携帯の着信履歴を確認すると
ハルヒからの着信は午後五時七分が最終であった事を示していた。現在の時刻を確認
すると午後五時三十二分を時計の針は指示している』

『???さっきの着信はハルヒじゃなかったのか?』

『俺は先程のビデオテープの中身を思い出し、背筋が凍るような感じに陥る』

       『このビデオを見た者は一週間後に死ぬ』


『そんな馬鹿な。たかがビデオを見たくらいで死ぬ筈ないだろ!……だが俺は少し怖く
なって、逃げるように帰宅した。大丈夫、大丈夫だ。そう自分に言い聞かせながら』
189 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/07/28(火) 21:38:00.81 ID:DpHBuoDO
キター!
190 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 21:48:16.26 ID:.Bxsz.c0
佐々木「………キョン。やっぱりキョンは『リング』を見て」

佐々木「………」

佐々木「次のファイルも見てみよう」

              カチカチッ


『翌日、俺は昨日の事を古泉に話した。お前の部屋で不思議なビデオを見て
その後、変な電話が掛かって来たのだと。しかし古泉は予想だにしない台詞を吐く。
「変ですね。ビデオはもう見ないので全部処分した筈ですが…」と』

『俺は冷静な振りを装い「そうなのか?」と尋ねるも次の古泉の言葉でまたもや
不安に襲われる』

    『「ええ。特にデッキが二年前に壊れてからは全く」』
191 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/07/28(火) 21:57:21.79 ID:2874EcDO
ハァ…ハァー!ハァ…ハァ…ッ!!キタ
192 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 22:04:49.14 ID:.Bxsz.c0
『俺は古泉に食って掛かった。デッキが壊れた?嘘言うなよ。俺はそのビデオ、
お前の部屋にあるデッキで見たんだ!!!って感じで。しかし古泉はあくまで
飄々と「えっ?もしかして僕の部屋のデッキで見たんですか?」等と嘯く』

『俺は若干苛つきながら、ああそうだ!テープ借りた訳じゃないぞ。なんなら今日
団活が終わった後、確認するか?まだお前の部屋のデッキに入れたまんまだしな!と
捲し立てる』


『そんな俺を一瞥し古泉は、ハルヒが原因の可能性もあるから行動を開始しようと
提案してきた。ここら辺で漸く落ち着きを取り戻してきた俺は、「まぁ、ビデオ見た
後電話がかかってきただけだからな。そんなに心配する程じゃないと思うが」と
精一杯の虚勢を張る』


『だが、古泉は「そうだと良いんですがね…」と俺に聞こえるようにそう呟いた』
193 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/28(火) 22:25:00.73 ID:.Bxsz.c0
『SOS団での活動を終え、古泉の家にもう一度訪れた。俺は早速デッキの処に
駆け寄り中身を確認する。だが………ビデオはデッキには無かった』

『何故だ?確かに俺はデッキに入れっぱなしにした!何故無いんだ???』

『慌てふためく俺を余所に古泉が「不味いですね」と口を開く』

『ええい!何をそんなに落ち着いているんだ!お前の部屋に誰かが勝手に侵入
した可能性があるってのに何故落ち着いて居られる?』

『しかし、やはり古泉は酷く落ち着いた様子で続ける。「……………恐らく、
一週間後、いえ、もう残り六日ですか。六日後に、あなたは死にます」』


『それは一番聞きたくなかった台詞であり、一番考えたくなかった言葉だった。
……世界が”ぐにゃり”と奇妙な音を立てて歪んだ気がした』


       『俺は一体どうなっちまうんだ?』
194 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/07/28(火) 23:04:44.04 ID:2o1VoR6o
んふっ 待ってましたよ
195 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/07/28(火) 23:14:16.12 ID:8vC1TgUo
oi
おい
まだなのか
196 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/07/28(火) 23:31:37.97 ID:Lph0896o
ん、誘導はしたけど別に投下してるわけじゃないのか
197 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/07/28(火) 23:59:31.85 ID:uZjrWgDO
>>196
投下してるじゃん
198 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/07/29(水) 00:08:00.24 ID:fYKCp2Ao
vipの方の落ちちゃったな
199 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/07/29(水) 00:44:51.62 ID:K3iW/ako
>>196
何を言ってるんだ?
スポイルされるぞ
200 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/29(水) 01:13:32.42 ID:7x6IjTU0
『……しばらくした後、古泉に今回の事件の概要を尋ねてみる。俺はビデオを
見て変な電話が掛かって来たのだと、古泉には話したが、一週間後に死ぬという
事は一切話していなかったからだ。それなのにこいつは、俺が一週間後に死ぬで
あろうことを言い当てた。それに妙に落ち着いている。何か知っているに違いない』


『古泉が俺に語った今回の事件と思われる内容は以下の通りだ』

『今回俺が体験している事象は『リング』とかいうホラー映画と瓜二つらしい。
ちなみに『リング』という作品は元々小説として世に出た作品であり、その後、
反響が大きかったので映画化、ドラマ化、果てには洋画としてもリメイク作品
が出たほどのホラー物とのこと』
201 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/29(水) 01:17:17.47 ID:7x6IjTU0
『そして肝心のリングの中身だが、話の肝となるのはやはりビデオテープらしい。
そのテープを見た者は、一週間後に死を迎える設定になっている。そしてそのテープ
にはある女性の呪いが込められており、登場人物たちは、その呪いを解こうと躍起に
なって事件を解決しようとするストーリーみたいだ』

       『と、ここで俺の頭の隅で警鐘が鳴らされる』


『『ビデオ』の呪いの解除方法。俺が見たビデオにも確かに最後に録画されてあった。
……それは、第三者にビデオをダビングして見させること!』

 『手元にテープがない俺はどうやってその呪いを解除すればいいってんだ?』

     『俺は本日何回目になるのか分からない不安に襲われた』
202 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/29(水) 01:19:29.53 ID:7x6IjTU0
『そして……こんな時に頼りになるのは長門だが、あいつは今は力を使えない只の女子
高生だ。あいつに話しても解決はしないだろう。そんな訳で今回の事件には俺と古泉の
二人だけで挑む事となった』

『そんな中でも時計は刻一刻と針を進め、俺の余命が残り五日と二十一時間になるのを
告げた』



佐々木「…………ちょっと待って。え?あれ?これって?ウソ?うそ、嘘でしょ?」

佐々木「キョンは古泉君と二人で行動していた?長門さんは関わってない?それに
    この日付は、谷口君から聞いた長門さんが学校に来なくなった日と同じ」

佐々木「ちょっと、あれ?私何かを見落としてない?長門さん長門さん長門さん…」
203 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/29(水) 01:20:41.07 ID:7x6IjTU0
佐々木「!!!!!!!!!」

佐々木「(私は国木田君に長門さんと二人で会えるように頼んだ。そして昨日の朝、私
    の家のポストに『長門有希 図書室』というメモが)」

佐々木「(でも、この日から長門さんは学校に来ていない。当然、一般人である国木田君
    ……いや、この場合は長門さんも力を持たない単なる女子高生。だから情報操作
    を行っていない長門さんに、谷口君が学校を休んでいると言っている以上、国木田君
    は長門さんに会っていない筈)」

佐々木「だったらあのメモは何?国木田君じゃないの?だったら誰が?いや、何故私が
    長門さんに会おうとしているのが分かってる?あの時点で国木田君以外に?」


   (何だ、やっぱり国木田かよ。でも無理だぜ?あいつ今日学校休んでるから)


佐々木「!!!これは……まさか」ガタッ
204 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/07/29(水) 02:05:26.56 ID:bO5A5sDO
何なんだこの緊張感ww
205 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/07/29(水) 02:45:11.05 ID:ej3wxSgo
長門っちの力はなんでないの?
206 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/07/29(水) 02:57:34.76 ID:2cO.sIEo
>>205
長門が自分でつかわないってきめたけどなくなったわけじゃない
207 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/07/29(水) 03:11:46.96 ID:ej3wxSgo
>>206
なんで使わないって決めたの?
208 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/07/29(水) 03:17:34.68 ID:8SkG6HEo
>>207
消失じゃないかな?
ちょっと違うけど
209 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/07/29(水) 05:09:32.25 ID:2cO.sIEo
>>207
そこは原作買え
210 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/07/29(水) 05:41:21.46 ID:ej3wxSgo
あれ原作でそんなんになってたのか
読んだのだいぶ前だから全然覚えてなかったすまんこ
211 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/07/29(水) 11:27:35.26 ID:bO5A5sDO
金が貯まったら原作買いたいな
212 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/07/29(水) 16:07:26.70 ID:5gWXyASO
まだなのか
213 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/07/29(水) 19:16:25.95 ID:ruU5woDO
みてるよ
214 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/07/29(水) 19:40:34.55 ID:fpV.HESO
遅くね?
215 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/07/29(水) 20:49:38.43 ID:bO5A5sDO
まだかや?
216 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/07/29(水) 21:04:10.41 ID:olwtqsDO
ああ、これが世に聞くパー速gdgd現象か
217 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/07/29(水) 21:31:42.01 ID:Nub2UaAo
パー速だからといってまだ慌てる時期じゃない
VIPでもこのくらいは日常茶飯事
218 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/29(水) 22:25:12.49 ID:7x6IjTU0
    PrrrrrrrPrrrrrPrrrrrr

佐々木「(頼む。通じてくれ!)」

    PrrrrrrrPrrrrrPrrrrrr

佐々木「………」

    PrrrrrrrPrrrrrPrrrrrr  ガチャ

佐々木「国木田君!無事か?」

携帯 『現在、電波が届かない所に居るか、電波が…』

佐々木「!」

佐々木「国木田君…」
219 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/29(水) 22:29:26.35 ID:7x6IjTU0
………………
…………
……

〜国木田宅前〜

佐々木「ハァ…ハァッ……ハァ」

佐々木「着いた……昔の記憶を辿って…ハァ……走って来たけど」

佐々木「………」

         ピンポーン

佐々木「御免下さい」

佐々木「(頼む。出てくれ)」
220 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/29(水) 22:31:43.96 ID:7x6IjTU0
         ピンポーン

佐々木「………」

         ピンポーン

佐々木「…………」

佐々木「こうなったら…」

          ガチャッ

佐々木「扉が開いてる…」

佐々木「御邪魔します」
221 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/29(水) 22:39:16.31 ID:7x6IjTU0
佐々木「誰も、居ないのか?」

佐々木「御免下さーい。誰か、居ませんか?」


佐々木「…………返事がない」



         ギシッ

佐々木「……ここは、国木田君の部屋…」

         コンコン

佐々木「国木田君。居るんだろ?返事をしてくれ」

佐々木「国木田君?入るよ?」スッ
222 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/07/29(水) 22:39:22.89 ID:7ZE9IPUo
始まってただと
223 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/29(水) 22:41:39.55 ID:7x6IjTU0
>>218 間違えた

× 携帯 『現在、電波が届かない所に居るか、電波が…』

○ 携帯 『現在、電波が届かない所に居るか、電源が…』
224 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/29(水) 22:51:20.90 ID:7x6IjTU0
佐々木「……誰も居ない」

佐々木「(体調を崩して休んでるんだったら、家で大人しく寝てる筈。谷口君の
    口ぶりからしても入院している感じじゃなかった。何よりも鍵も掛けず
    に一体何処へ?)」


佐々木「ん?机の上に何かある」

佐々木「これは…『リング』の原稿」

佐々木「じゃあ、やっぱり私の家のポストに入っていたのは、国木田君が出した訳じゃ
    なかったって事だよね」

佐々木「………一体誰が」
225 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/29(水) 23:02:41.09 ID:7x6IjTU0
佐々木「…とにかく、これ以上ここに居ても仕方ない。不審者扱いされる前に出よう」

佐々木「と、その前にポストに、国木田君が帰ってきたら連絡するようにメモを
    残して置かなきゃ……もし、数日経っても連絡がこない場合は、警察に
    捜索願を…出すくらい…しか……くっ…うぅ……うぅうぅううぅ」

佐々木「…うぅううぅううううぅ」

佐々木「キョン、…ひっく…キョン!私……わたし、もう何が何だか分かんなくなって
    来ちゃったよ。っぐ。キョンは生きてるんだよね?国木田君も無事だよね?…ひっぐ。
    わたし、わたし!」

佐々木「…わたしの所為なの?これって……うぐ。私が巻き込んだの?私の所為なんだよね、
    きっと。私が自分の目で真実を知りたいなんて国木田君に相談したりなんてしたから!!!」

佐々木「う、うぅううぅっぅうううううううう」

佐々木「どうしようどうしようどうしよう。もう、うぅ、訳分かんなくなって。涙が勝手に…」
226 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/07/29(水) 23:14:31.12 ID:BYI4NUo0
しえn
227 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/29(水) 23:19:00.91 ID:7x6IjTU0
佐々木「何で…ひっく。泣いてんだろ?わたし。っく。まだ、国木田君が死んだって
    訳でもないのに…。たまたま、家族の人が鍵かけ忘れて出掛けただけなのかも
    しれないのに!!!」

佐々木「でも、でも!キョン……駄目だよ。駄目なんだよ、わたし。もう」

佐々木「私、心のどこかで、あなたはもうこの世に居ないんじゃないかって、思ってたんだ」

佐々木「でもね?それでもね?それでも…少しでも希望があるんなら、それに賭けてみたかった。
    うぅん。縋りたかった。あなたは今も何処かで生きているんだって。元気なんだって」

佐々木「でも、キョンの事調べていくうちにだんだん、キョンがもうこの世には居ないんじゃ
    ないかって真実味が逆にどんどん増してきて…怖くなって」

佐々木「本当の事言うと、国木田君の事だって、全く何も思わなかった訳じゃない。もしかしたら
    って予感はあった。でも…きっと大丈夫、大丈夫だって。心配無いよって。考えないよう
    にしたんだ」

佐々木「……酷い女だよね。……本当、酷い…っく。うぅ。うぅううううぅぅぅぅ」

佐々木「うっ、ひくっ。ひっく。んんうぅ」
228 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/07/29(水) 23:20:23.57 ID:DvTAXTIo
こういう女ウゼェwwww
229 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/29(水) 23:37:46.64 ID:7x6IjTU0
佐々木「んっく……っぐ………もう帰ろう…」


          ガチャッ

佐々木「キョン……」
230 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/29(水) 23:40:05.69 ID:7x6IjTU0
………………
…………
……

〜帰宅路〜


?? 「おや?あなたは……」

佐々木「誰?」

古泉 「どうも。SOS団副団長の古泉です。あなたには『機関』の人間である、とこう表現
    した方が良いのかもしれませんが」

佐々木「あなたが……」

古泉 「それよりもどうしたんですか?そんなに目を真っ赤にして。いくら機関が敵対
    している別の神候補であっても、女性のそんな顔は見ていて嬉しいものではありません。
    どうでしょう?僕でよければ相談に乗りますが?」
231 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/07/29(水) 23:45:57.51 ID:OxF.zISO
きょこたんはやくたすけにきてー!!
232 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/30(木) 00:03:17.26 ID:wsUQtNA0
ちょっと……待ってて…
233 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/07/30(木) 00:37:39.09 ID:M8nlgoDO
なんてタイミングだ…きな臭いよ古泉
234 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/07/30(木) 01:09:54.76 ID:onLqU.SO
いや、これは罠だ!!
235 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/30(木) 06:00:43.98 ID:wsUQtNA0
………………
…………
……

〜公園〜

佐々木「…………」

古泉 「先程から押し黙ったままですが、まだ何があったのか話して貰えませんか」

佐々木「………………」

佐々木「(古泉君はキョンと一緒に行動していた。だから、古泉君にどうなったのか聞けば
    キョンの安否は分かる、でも……でも、もし、もう死んでいるなんて聞かされたら
    私、わたし!)」

古泉 「やれやれ、仕方ありませんね。では、こちらの勝手な憶測ですが、今から僕は独り言
    を言います。聞きたくなければ、どうぞ、耳を閉じるなどの意思表示をしてください。
    直に話を止めますので」

佐々木「………………」
236 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/30(木) 06:02:04.45 ID:wsUQtNA0
古泉 「これは僕の勝手な推論ですがあなたが泣いているのはもしかして”彼”の事
    じゃあないでしょうか?」

佐々木「!!!」

古泉 「ふふっ、当たりのようですね」

佐々木「………」

古泉 「まぁ、あなたが悲しむのも無理はありません。あんな報道がなされたのですから」

佐々木「………………」

古泉 「涼宮さんもショックでまだ学校を休んでいますしね」

佐々木「………………そう、なんだ」
237 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/30(木) 06:06:24.72 ID:wsUQtNA0
古泉 「ええ」

佐々木「………………」

古泉 「ふぅ。二人の女神さまをこんなに悲しませるなんて、彼も罪作りな人ですね」

佐々木「………………」

古泉 「………やれやれ。本来なら、あなたにこれを教える義理は全くと言って良いほどの
    皆無なんですが、まぁ良いでしょう。女性の悲しむ顔はあまり見たいものじゃない」

佐々木「……」

古泉 「良いですか?これは、『機関』に所属している古泉一樹の言葉では無くて、『彼』の
    友人として、同じ彼の友人であるあなたに向けての言葉です」

古泉 「彼は、生きてます」

佐々木「えっ?」
238 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/30(木) 06:12:19.57 ID:wsUQtNA0
古泉 「もう一度言います。彼は生きてます」

佐々木「本当?」

古泉 「ええ。詳しくは言えませんが、今彼は機関の保護監視下に入っています。この間の
    報道も機関が一枚噛んでいたんですよ」

佐々木「………そう、なんだ」

佐々木「………キョンは、生きてる」

古泉 「はい」
239 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/30(木) 06:18:13.97 ID:wsUQtNA0
古泉 「もっとも、かなり危機的状況に追い込まれているので、劣性状態ですがね。こちらは
    かなり不利な状態から戦わざるを得なかったので、彼と彼の家族には危険が及ばぬよう
    あのような報道を流して機関で匿っているんです」

佐々木「妹さんや、彼の両親も無事…なんだ」

古泉 「ええ。もっとも一家四人共一気に匿うのは無理だったので、小出しにして少しずつ
    ですがね。特に彼以外の三人は何の情報も持っていない極めて一般人ですから、骨
    が折れましたよ」

佐々木「……そっか。キョンも、キョンの家族も皆」

古泉 「ええ。無事です。ですからあなたが、そんなに悲しむ必要なんて何処にもありません」
240 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/30(木) 07:19:13.95 ID:wsUQtNA0
…仕事行ってきます
続きは帰ってきたら…
241 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/07/30(木) 07:30:02.54 ID:j1iCsUDO
なんという寸止め
242 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/07/30(木) 07:32:10.24 ID:G6dAfgAO
朝から乙
仕事も執筆も頑張ってくれ
243 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/07/30(木) 07:44:45.58 ID:7e1kyUSO
いてら〜ノシ
244 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/07/30(木) 11:09:00.71 ID:eU.Pk2DO
>>240
乙!仕事ガンバレ〜、俺もテスト最終日乗り切るぜ
245 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/07/30(木) 11:42:53.30 ID:tSgOD16o
あれ?じゃぁ国木田は?
246 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/07/30(木) 12:41:48.47 ID:p9gYplco
つーか>>230見て思ったけど、佐々木は古泉と面識あるはずじゃね?
247 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/07/30(木) 15:21:18.67 ID:iDDmUpQo
個人としての発言ってことは嘘ってこともあるけどな
248 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/07/30(木) 19:09:06.86 ID:cTC7Nro0
つーか前作見れば何が真実かわかるやん
249 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/30(木) 21:11:48.99 ID:wsUQtNA0
佐々木「じゃあ国木田君も?」

古泉 「おや、これは驚きです。どうやって彼の事も?」

佐々木「それは……」

古泉 「まぁ良いでしょう。既に知っている物をとやかく言っても始まりません」

古泉 「えぇ、そうです。彼も無事です。安心して下さい」

佐々木「そうですか……良かった」
250 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/30(木) 21:23:15.83 ID:wsUQtNA0
古泉 「詳しくは言えませんが、彼と彼の家族もまた機関が保護しています」

佐々木「…良かった。本当に」

古泉 「んっふ。漸くあなたの顔に覇気が戻りましたね」

佐々木「あの……ちょっと良いですか?もう一つお聞きしたい事があるんですが」

古泉 「どうぞ。僕に答えられる範囲であれば、お答えしましょう」

佐々木「有難う」

古泉 「いえいえ。それで?僕に聞きたい事というのは?」
251 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/07/30(木) 21:25:29.58 ID:4DfEDQAO
期待
252 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/30(木) 21:33:03.33 ID:wsUQtNA0
佐々木「キョンの事なんですが」

古泉 「ふむ」

佐々木「わた……僕はキョンが殺されたという報道があってから、ずっとキョンが
    殺されたとされる直前に何があったのかを調べてきました」

古泉 「ほぅ」

佐々木「その、僕が調べた結果では、キョンは死ぬ五日ほど前に、あなたの部屋で『リング』
    を見たという事になっているんです」

古泉 「………」

佐々木「今もキョンが生きているというのなら、キョンはビデオの呪いを解けたんですか?
    それとも、これも機関がキョンの情報を敵に漏らさないように作った作り話なんですか?」

古泉 「…………」
253 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/30(木) 21:45:29.79 ID:wsUQtNA0
古泉 「成程。あなたが何故国木田君の話を僕に振って来たのか、これで得心がいきました」

古泉 「………そうですね。結論から言ってしまえば、これは機関の自作自演です」

佐々木「そう、なんだ」

古泉 「はい。先程も説明しましたが、今回の戦い、かなり危機的状況に追い込まれているのが、
    現状です。ですのでこちらは、彼と彼の家族には危険が及ばぬようあのような報道を流
    して機関で匿っているんです」

佐々木「はい」

古泉 「しかし、あのような報道をただ流しただけでは、敵はそう簡単には騙されてはくれません」

古泉 「そこで、彼が本当に死んだかのように見せかける為、更なるトラップを用意したんです」

佐々木「それが……」

古泉 「ええ。SOS団のPCの中に隠した、あの日記です」
254 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/30(木) 21:54:57.73 ID:wsUQtNA0
佐々木「そうだったんだ」

古泉 「どうやら、あなたにもとんだ心配を掛けさせてしまったみたいですね。
    非礼を詫びます」

佐々木「いえ。キョンが……キョンと国木田君が無事だと分かったなら、もう
    良いです」

古泉 「そうですか。有難うございます」

佐々木「そっか。無事なんだ……キョン」

古泉 「大丈夫ですよ。彼は今も元気でやってます」
255 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/30(木) 22:04:02.76 ID:wsUQtNA0
佐々木「それで、その戦いはまだ長引きそうなんですか?」

古泉 「…うーん。そうですね、現状を見る限りは、まだ確信的な事でもないですが、
    遅くても一週間以内には決着がつくでしょうね。こちらも大分疲弊していますが
    それは向こうも同じでしょうから」

古泉 「どちらかのグループが恐らく短期決戦へと勝負を持ちこむ事になるでしょう」

佐々木「……そう」

古泉 「まぁしかし心配しないでください。最後に勝つのは我々ですから」

古泉 「彼も間もなく帰ってきますよ」
256 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/30(木) 22:12:21.56 ID:wsUQtNA0
………………
…………
……

古泉 「本当にもう大丈夫ですか?なんなら家まで送っていきますが」

佐々木「いえ、もう大丈夫です。あなたの話を聞いて安心しました」

古泉 「そうですか。それは何よりです」

佐々木「本当にどうも有難う。今日、会う事が出来て良かった」

古泉 「いえいえ、お気になさらず」

佐々木「じゃあ、さよなら」

古泉 「ええ、さようなら。彼が返ってくる日が決まったら、また連絡します」

佐々木「うん。宜しく」
257 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/30(木) 22:21:57.22 ID:wsUQtNA0
そうして、私は意気揚々と家路に足を向けるのだった。あぁ、良かった。本当に良かった。

         キョンは生きている。生きているんだ!

そう思うと、次第に足取りは軽くなり、私は半分スキップのような形で歩いていた。
今までのもやもやした気持ちが一蹴され、心は晴れやかだった。

あぁ、キョン。キョン!出来る事ならば今すぐ君に会いたい。会って抱きしめたい。
抱きしめられたい。もう何処にも行かないように。決して離ればなれにならないように。
君とまどろみながら抱き合って、そのままこの世界に溶けてしまいたい位だ!


……と、ここで私は突然足をとめた。止めなくても良いのに、いや、止めてはいけないのに、

                 止めてしまった。
258 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/30(木) 22:28:00.36 ID:wsUQtNA0
私の悪い癖だ。いつも、いつでも!もう一つの可能性を考えてしまう。悪い方向に思考を向けてしまう。

     やめろ!駄目だ!考えるな!考えちゃいけない!思い出しちゃいけない!

    やめてやめてやめてやめて!駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ!やめろ!やめるんだ!

                    考えるな!!!!!


     ……そう、願っていた時には既に遅く、私の頭には、ある考えが浮かんでいた。


                 『敵』って一体、誰だよ?
259 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/07/30(木) 22:29:13.14 ID:EKf0dsIo
盛り上がってきた
260 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/30(木) 22:32:23.51 ID:wsUQtNA0
 足をその場にとめたまま、私は先程の古泉君と私の会話の内容を頭の中で反復する。

『今回の戦い、かなり危機的状況に追い込まれているのが現状です。ですのでこちらは、
彼と彼の家族には危険が及ばぬようあのような報道を流して機関で匿っているんです。
しかし、あのような報道をただ流しただけでは、敵はそう簡単には騙されてはくれません。
そこで、彼が本当に死んだかのように見せかける為、更なるトラップを用意したんです。
それが……SOS団のPCの中に隠した、あの日記』
261 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/30(木) 22:39:27.84 ID:wsUQtNA0
     そうだ!日記。日記。日記?何故日記という単語がここで出ている?

私は彼に、喋ったのか?日記を読んでここまで辿り着いたと?何時?何時だ?言ったのか?

     私は本当に『日記』という言葉を彼の前で口に出したか?


   …………目を瞑って思考を巡らす。彼との会話を思い出す。想い出す。

      しかし、幾ら記憶の網を手繰っても、手ごたえは全くない。
       当然だ。私は日記という単語は使っていないのだから。
262 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/30(木) 22:46:04.00 ID:wsUQtNA0
それに彼は、古泉君は、古泉一樹は!何と言っていた?あの日記は、『敵』を惑わすための
『トラップ』だと言った。

でも、私があれを読むきっかけとなったのは、メビウスリングという指環のヒントがあった
からだ。でも、指環の存在を知る前に私は、図書室に長門さんに会いに行ったのだ。いや、
むしろ長門さんに会うことが目的で、たまたま指環を見つけただけに過ぎない。

しかも、図書室に行けというメッセージは国木田君から来たように偽装された、別の誰かからの
メッセージだった。

   だから!その通りの手順を踏んだからこそ、私はあの日記に辿り着いたんだ!

  ……そして、ものの見事に、あの日記に書いてある事に翻弄され、振り回された。
      そう、その『トラップ』とやらに引っかかったのは『私』なのだ。
263 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/07/30(木) 22:46:13.41 ID:rdRJ/oAO
がんばれ佐々木(;ω;`)
264 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/30(木) 22:48:43.61 ID:wsUQtNA0


     ねぇ、ねぇってば。だったら、この場合、『敵』って私になるよね?

   ねぇ、古泉君?一体、何処までが本当なの?……それともこっちの質問の方が良い?


                何処からが『本当』なの?
265 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/30(木) 22:56:43.46 ID:wsUQtNA0
………………
…………
……

一時間くらいだろうか?私は天を仰いだまま、その場に立ち尽くしていた。泣きながら。

            だけど、私は体を反転させ、歩く。

           当然、向かう場所は自分の家では無い。

       もう良い。もう終わらせよう。もうこれで、最後にしよう。

                そう、口ずさみながら。



私はこの事件の始まった場所、この事件を知る事になった場所。そして、最愛の人が死んだであろう場所。

              キョンの家に、一人向かった。
266 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/30(木) 23:11:14.76 ID:wsUQtNA0
ちょっとエンディングまで書いてきます
267 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/07/30(木) 23:14:29.32 ID:ip2mpAso
頑張れ待ってる
268 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/07/30(木) 23:16:38.32 ID:EKf0dsIo
オレハマッテルゼ
269 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/07/30(木) 23:18:44.08 ID:7e1kyUSO
270 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/07/30(木) 23:22:45.15 ID:gJZA1qEo
271 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/07/31(金) 00:13:50.12 ID:ycH2coI0
タイトル的にもこっちが終わるのが先か、エンドレスエイトが終わるのが先か・・・
272 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/07/31(金) 00:35:47.46 ID:oOd1YtA0
続きwwktk
273 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/07/31(金) 00:41:50.90 ID:ZihYPZM0
楽しみにしてます
274 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/31(金) 01:06:43.62 ID:Qsv8PD.0
意外に長い…
もうちょっと……
275 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/07/31(金) 01:53:24.88 ID:AcQkzYDO
>>274
ふぁいと〜
276 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/31(金) 03:09:36.86 ID:Qsv8PD.0
………………
…………
……

キョンの家の前についた私は庭の方に回り込み、さっきコンビニで
買ってきたガムテープを何重にも重ねて貼り、なるべく音が出ないように
窓ガラスを割る。

            ゴツゴツゴツ

と、規則正しい音を数回繰り返した後、ジャリンという鈍い音と共にガラス
が割れる。

      リビングから、そのままキョンの部屋へ。
277 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/31(金) 03:11:16.13 ID:Qsv8PD.0
……キョンの部屋に入ると、おびただしい程の血痕を見つける。

あぁ、納得。やっぱり、キョンは…ここで死んだんだ。

そっか。やっぱり……。

私はどんな顔をしているんだろう。悲しんでいるんだろうか?それとも悟った
顔でもしているんだろうか?

何故か頭は、数時間前国木田君の家で怯えていた頃とは打って変わり、冷静だった。


そのまま私は、キョンの机の上を見る。確認する。うん。やっぱり何もない。
証拠となりそうな物はすべて警察に押収されたのだろう。それも、分かり切った
事だった。

でも、私は探した。もしかしたら在るかもしれないという一途の望みを掛けて。
……そして、意外にもそれは、直に見つかった。

ベッドの傍のBOXの中の、ルービックキューブ。
以前、私が彼に渡したままの状態とは違う状態で。そこにあった。
278 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/31(金) 03:16:40.39 ID:Qsv8PD.0
………………
…………
……

以前私が渡した不思議なルービックキューブ。それは……全ての面の色を
揃えると、中に仕組まれたスイッチが押され、キューブが展開されるという
代物だった。

そして、中には空洞部分があり、物を入れて置く事が出来るという、何とも使い勝手
が良いのか悪いのか微妙なキューブなのだが、何故これを彼に渡したかというと、
キョンが大切なものを無くさないようにしたいと、物忘れの激しい彼がぼやいた所為だった。

そこで私は、街で偶然見かけたこれを購入し、日ごろの感謝の気持ちと一緒に彼に
プレゼントしたのだ。

しかし、当のキョンは、

「こんな取り出したい時に取り出せないような物、使えるわけねぇじゃねぇか」

と言って、全く使ってくれていなかったのだが……。

だが、今はどうやら違うみたいだ。色がバラバラになっている。
279 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/31(金) 03:19:34.24 ID:Qsv8PD.0
流石にこれには警察も気付かなかったようだ。それに、もし、キョンがこれに
何か手掛かりを残してくれていたのなら、犯人達も気付く事は出来なかっただろう。

………なんて、キョンの死をもう信じて疑ってない私が、今更こんな事やっても、
何の意味も無いんだけどね。


   そう呟きながらも、指は規則正しく動き、キューブを回転させていく。

 ……数分もしないうちに、全ての面の色が揃い、ビックリ箱のように展開された。

  そして、中には……小さく折りたたまれた手紙らしきものが入っていた。
280 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/07/31(金) 03:20:25.07 ID:17/Evk6o
>>279
キョンどうやってそんなルービックキューブ作ったんだ…
281 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/31(金) 03:21:04.15 ID:Qsv8PD.0
『これを読んでいるのは佐々木多分お前だろう。すまないが時間がない。手短に書く。
良いか?お前は今回の事件には関わるな!何の事件かといえばもう分かっているとは
思う。俺が死んじまった事になってるだろう事件だ。このルービックキューブをお前の
家のポストに入れる次の日には、TVや新聞にも載っているかもしれない』

『そんで俺の身に何が起こったかだが、俺はどうやら『リング』とかいう奴に巻き込ま
れたみたいだ。後、古泉には近づくな!恐らくあいつが犯人に違いない。今振り返って
みると、あいつの行動には不可解な点が多かった。いや、不可解だらけだった』

『そもそも何か可笑しいとは思ったんだ。あいつの部屋でビデオを見てから、あぁも
すんなり事が運ぶ筈がないと。誰かに乗せられてる。誘導されてるって感じが常に俺に
つきまとってた。でもそれでも信じたかった。最後まであいつを』

最後は殴り書きになっていた……。

手紙の内容を読み返し、私はついに、キョンの身に何が起こったのかを知った。
遅すぎるくらいに時間が経過してしまった、今更に知った。


      そうか。これをポストに入れる前にキョンは……。
282 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/31(金) 03:22:40.28 ID:Qsv8PD.0
       ………と、この手紙を読んでいる私の背後から物音がした。

ハッと後ろを振り向くと、そこには朝比奈みくると、古泉一樹、朝倉良子がそこに居た。

      「成程ー。そんな所に隠してたんですか。見つからない筈です」

   そんな、見る者なら誰しも癒されるような笑顔で、朝比奈みくるは微笑んだ。
283 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/31(金) 03:23:48.29 ID:Qsv8PD.0
………………………………
…………………………
……………………
………………
…………
……

〜二週間後〜

私はキョンと二人海に来ていた。傍目に見たら、恋人とも見えない事もない
この状況に少し、心が浮ついてるのはキョンには秘密だ。


さて、あの事件からもう二週間が過ぎようとしているのだけれど、無事(?)
キョンは私の元に帰って来た。
284 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/31(金) 03:24:55.94 ID:Qsv8PD.0
あの日、朝比奈みくるは、私に協力を求めてきた。そして、私が協力すれば、彼を、
キョンを生き返らせると、そう提示してきたのだ。

朝比奈みくるが具体的にどうキョンを生き返らせたかについては、ここでは言及しない
でおくが、大まかな方法は次の通りだ。

まず、朝比奈みくるは過去に遡り、キョンが古泉君に殺される直前で、種を蒔く。
その種の中には、宇宙人が開発したとされる未来の情報を一時的に過去に伝える
事が可能な装置が入っている。

確かに、突然見知らぬ人間が、未来について語ったとしても、容易にそれを受け入れ
は出来ないだろう。だけど、自分の言葉ならば、納得できる。

つまり、山村貞子自身に、キョンを殺させないように説得させたというわけだ。
285 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/31(金) 03:25:58.81 ID:Qsv8PD.0
けど、それだけでは色々な不都合が起きてしまうので、キョンの死体を本物そっくり
に宇宙人に作って貰い、入れ替えたという訳。

そのまま、過去のキョンをそっくり朝比奈みくるが今の時間平面上に連れて帰り、キョン
の身に起こった一連の事件の記憶を消す。

ついでに、報道関係にも大規模ではあるが情報操作を行えば、これで晴れて、事件は何事
も無かったかのように闇に葬り去られる。


………全く。なんてご都合主義。
286 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/31(金) 03:27:01.66 ID:Qsv8PD.0
そして、肝心の彼女の私への要求はというと、いたってシンプル。

今回の事件については何も考えず、今まで通りの生活をしろ、というものだった。
朝比奈みくるが言うには、これは規定事項なのだそうだ。


結局、彼女の居る未来には、涼宮ハルヒという神様は、存在してはいけない存在
だったらしい。

そこで、彼女達未来人は、涼宮ハルヒを始末するために、宇宙人達と手を組んだ。

宇宙人達が興味があるのは、涼宮ハルヒという対象の観察。
未来人達の望みは、涼宮ハルヒの抹殺。

一見、ウマが合わなさそうなカップリングだが、そこは物の考えようだ。

つまり、『この世界から涼宮ハルヒという存在を消す』という発想につながった。
287 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/31(金) 03:28:15.05 ID:Qsv8PD.0
宇宙人達はかねてより、自分たち以外の涼宮ハルヒを監視する者達を疎ましく
思っていた。当然だ。折角監視対象が何かアクションを起こそうとしている
というのに、宇宙人達意外の勢力は、それを鎮静化させようとばかりするのだ。

これでは、観察する意味がない。

一方、未来人のグループは自分たちの未来に近づけさせる為、どうしても強大な
力を持つ涼宮ハルヒを始末したかった。

そこで、この二つのグループはお互いに牽制し合っても意味がない、ここは一つ
協力しないか?という事になったのだ。
288 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/31(金) 03:29:07.36 ID:Qsv8PD.0
宇宙人と未来人が選択した、互いにとって最も都合の良いシチュエーション。

   『涼宮ハルヒをこの世界から隔離し、別の世界に連れていく』

こうすれば、宇宙人は、他のどの勢力にも邪魔されずに涼宮ハルヒの監視を行え、
未来人は自分達の未来を手に入れられる。

……でも、この計画には邪魔な組織が一つあった。そう、超能力者のグループだ。

機関という超能力者のグループは涼宮ハルヒを神扱いしており、別世界に隔離する
など、以ての他となるのは容易に想像ができる。
289 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/31(金) 03:30:02.71 ID:Qsv8PD.0
ここで、超能力者達を一掃するために作られたのが、あのビデオテープだ。

あのビデオは、やはり『リング』の山村貞子の呪いをモチーフに作られた
もので、山村貞子の怨念が宿っている。

ちなみに、山村貞子は元々、超能力者という設定で作られた存在だったので、
同じく異なる能力とはいえ超能力を有する機関の面々には、効果絶大で、機関
の超能力者達は、たちまち山村貞子の支配下になった。


最後に、超能力者達を壊滅させたら、宇宙人達の情報操作によって、山村貞子
という存在も消滅させれば事件は一件落着。


……つまり、今回私やキョンが走り回ったこの事件は、蓋を開けてみれば宇宙人
と未来人が手を組み、超能力者を一掃し、涼宮ハルヒを別世界に隔離するという、
ただそれだけの事件だったのだ。
290 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/31(金) 03:31:12.40 ID:Qsv8PD.0
私やキョンが関わった事件はそのごく最後のちょっとした余興のようなもので、
突然神様が居なくなるこの世界を安定に導くための儀式だったという訳。

そう、キョンを殺して、私を走り回らせ、十分私が苦しんで、もう抵抗しない
だろうと分かった時に、真実を告げ、自分達に従えさせるという寸法。

ご丁寧に、いつでも殺せますから、逃げないで下さいね?というデモンストレーション
まで行ってくれた。

   これじゃあ身動きどころか、身じろぎ一つ出来ない状況だ。

          私は素直に従うしかなかった。

…けど、私がその約束を守って、大人しくし続けた、二週間後の今日、キョンは
帰って来た。あの頃の姿のまま。
291 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/31(金) 03:32:22.48 ID:Qsv8PD.0
更に、ビデオももう回収され、山村貞子も消えた。キョンも帰って来たし、今頃は
キョンの家族や、国木田君、部長氏も家に戻っている筈だ。

   ……だから、私は今回の事件はこのまま胸にしまっておこうと思う。


……でも、朝比奈みくるの横顔が、山村貞子のそれにダブって見えたのは、多分
見間違いの所為ではないだろう。

ただ私がそんな事をいくら考えた処で、それも多分きっと、どうにもならない
事なんだろうとも思う。

彼女っぽく言えばこれも、「禁則事項だけどね?」等と表現する部類に入るのだろうか?
292 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/31(金) 03:33:16.84 ID:Qsv8PD.0
        …………はぁ。ま、良いか。

そうだ。これからこの世界が何処に向かって行こうと、どうなっていこうと、
私には既に関係がない。もし関係があったとしても、それを止める術は無い。

       仮初の神様にはそんな力など無いのだ。

私に出来る事は、ただ、ただただ、この世界がどういう未来を歩んでいくのか
を見届ける事だけ。
293 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/31(金) 03:34:22.95 ID:Qsv8PD.0
……そして、そんな風に溜息をついて、私はそれ以上、今回の事件への考察を止めた。

きっとこれ以上の考察は意味が無い。いや、仮に意味があったとしても、きっとそれは
些細で取るに足らない微細なもので、取り立てて特に騒ぎ立てする必要もない些末な違和感。

ならば私の胸にしまっておこう。
……誰も気付かないように。誰も考えないように。誰も思い出さないように。


耳を澄ますと、波の音が良く聞こえる。

だが、浜辺の波は、ただただ押し寄せては戻るという単調な作業を繰り返すだけだった。


そして、そんな波の音を聞きながら私達は、さながら螺旋を描きながら階段を転がり続ける
『指環(リング)』みたいに、延々と繰り返すループのような日常に戻っていくのだった。


            ……あぁ、世界は今日も廻る。



            佐々木「禁則事項だけどね?」

                  完

294 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/07/31(金) 03:35:23.16 ID:HpWBMKoo
295 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/31(金) 03:37:37.22 ID:Qsv8PD.0
終わったああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!!
最後が眠気と闘いながらの異常な駆け足速度だったが何とか終わったあああああぁぁぁぁ!!!
296 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/07/31(金) 03:37:59.64 ID:brp3ZgUo
まぁ、期待の二割も満足できなかったが乙
297 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/07/31(金) 03:38:06.07 ID:truNwpoo
お疲れ
かなり楽しめた
298 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/07/31(金) 03:39:25.86 ID:GPMKnUYo

長門はどうなったんだ?
299 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/07/31(金) 03:39:43.00 ID:8uH4J8.0
なーんか釈然としないな
300 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/07/31(金) 03:39:59.73 ID:17/Evk6o

楽しめたよ
おやすみなしあ
301 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/07/31(金) 03:40:48.21 ID:PYjUiM2o
はっきりと言うならば最後の展開はイマイチ釈然としなかったなぁあ
でも乙
面白かったよ。
302 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/31(金) 03:45:46.79 ID:Qsv8PD.0
作者です。どうも今まで有難うございました。何回もの支援や保守、本当に感謝感激です
有難うございました。

最後の方は作者自身も「?」というか釈然としない部分が多少ありますが、眠気を
差し引いても多分ここら辺が限界だったんじゃないかと思います。

もう完全に作者の力不足です。すみません
303 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/07/31(金) 03:49:09.32 ID:HHQwYgSO
乙!
他の人は知らんが、俺はよかったと思うよ
304 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/31(金) 03:58:34.21 ID:Qsv8PD.0
実は前回の話、AVで盛り上げて終わる予定だったんですが、あまりにもレスが
つかなかったもんで、急遽ホラー要素を混ぜちゃったんです

それが、いつの間にやらこんなに話がでっかくなっちゃって。
もう、どう収拾をつけようか作者の頭はそれでいっぱいでした

でもまぁ不細工ながらも一応話的にはまとまったんじゃないかと思います。うん
305 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/07/31(金) 03:59:29.36 ID:Qsv8PD.0
そんな訳で       古泉「禁則事項です」

          佐々木「禁則事項だけどね?」

   の2本はこれにて完全に閉幕です。長いお付き合いどうもです。


それでは最後にもう一度、何回もの支援や保守本当に有難うございました。
306 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/07/31(金) 06:18:16.32 ID:rdNvJASO
おちゅかれさま
307 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/07/31(金) 08:05:48.34 ID:l7OghCg0
こんなにつまらなくなるとは思いもしなかった。
もう書かないほうがいいよ。
308 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/07/31(金) 08:27:54.94 ID:Q/XU5ks0
書くなとまでは言いたくないが
眠気で中途半端に完結させるより、しっかり作者自身が満足できるのを作ってほしかった。
309 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/07/31(金) 10:59:17.51 ID:5mJZczso
310 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/07/31(金) 12:51:34.22 ID:OYMBAUSO
終わってた。もう流し読みして話しイマイチわからなくなったけどハルヒは別の世界に行ったの?
311 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/07/31(金) 13:07:31.26 ID:HHQwYgSO
文句いってる人がSS書いたら、おもしろそうなのが出来そうだな
312 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/07/31(金) 19:04:53.75 ID:AcQkzYDO


結局、古泉は死んだのか?
313 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/07/31(金) 19:50:31.91 ID:4yQ.Ox2o
古泉は生きてるよ・・・


みんなの心の中に!
314 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/08/01(土) 00:15:02.48 ID:fyQ9S0Mo
終わった……だと……乙
315 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/08/01(土) 21:21:54.81 ID:e0kX2Bs0
さて、そろそろこのスレを見ている人も居ないと思うので、ネタばらししときます。

@ハルヒ

別世界に隔離されています

A長門

計画に邪魔だったので、思念体に消されました

B古泉

用済みなので貞子に殺されました
316 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/08/01(土) 21:22:55.28 ID:e0kX2Bs0
Cキョン

死んでいます。一度死んだ人間は生き返りません。最後の佐々木の感じ取った
違和感の一つでもありますが、あれは思念体が作ったクローンです

でも、佐々木はこれ以上今回の事件について考えないようにしているので、
気付かない振りをしています

D国木田

死んでいます

E思念体と朝倉涼子

別世界でハルヒの観察を行う予定でしたが、朝倉が山村貞子の企みに気付いてしまい、
朝倉を伝って思念体は貞子に消されました。無論朝倉も殺されています。詳しくは
『山村貞子と呪いのビデオ』に書いてあります
317 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/08/01(土) 21:24:09.70 ID:e0kX2Bs0
F朝比奈みくる

貞子に乗っ取られています

Gコンピ研部長

死んでいます。一度死んだ人間は生き返りません。詳しくは『山村貞子と呪いのビデオ』参照

H佐々木の取り巻きの未来人宇宙人超能力者

勿論邪魔なので殺されています
318 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/08/01(土) 21:25:25.44 ID:e0kX2Bs0
I山村貞子と呪いのビデオ

今回未来人と宇宙人が計画した事件によって、蘇りました。しかし、宇宙人達が
作ったのはあくまでもキョンの興味を引くための『ビデオ』であり、その他の媒体品
は、貞子自身が増殖するために勝手に作ったものです。キョンの家でDVDにダビング
されたのが発端です。その後、超能力者達を操って、ネット内に潜んで、拡大していく
つもりだったようです。しかし、コンピ研の部長がまだ完成する前のバグのあるままの
リングを見てしまい、操る前に、見て直にその場で死んでしまいました。朝倉涼子は
それに気付き解析を試みましたが、貞子に操られている古泉によって殺されます。そして、
朝倉涼子の情報伝送から、自身の暗号を送り込み思念体も消滅させました。

現在朝比奈みくるを宿主としている貞子ですが、この先どうするかのは分かりません


J世界

貞子のみがこれからどうなって行くか知っています……
319 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/08/01(土) 21:39:17.06 ID:e0kX2Bs0
あぁ、後、最後のシーンに出てきた朝倉は貞子が佐々木にこの計画が宇宙人と未来人
によって仕組まれた計画であると信じて疑わないようにさせる為、死体を操っている
だけです。別に朝倉がそのシーンだけ生き返った訳ではないので、あしからず。

夏場は死体が腐りやすいので、朝倉涼子は死体安置所から出てきています。本来、情報
が中々出てくる筈のない朝倉の死体が警察に直に発見されたのはこの為でもあります。
320 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/08/01(土) 21:41:55.18 ID:lJrrK.Io
思念体消滅させるとか貞子チート杉だろwwwwww
321 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/08/01(土) 21:44:40.70 ID:e0kX2Bs0
>>320

まだ見てる人いたのか!!!!
322 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/08/01(土) 21:47:30.86 ID:GcYsfKIo
俺も居るぜ!

と言うことは佐々木さんはこれからクローンキョンと仲良くしていくのか
ハッピーなのかバッドなのか、よく分からないエンドだ
323 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/08/01(土) 21:48:14.26 ID:xE3YvgQo
貞子がチートつかってると聞いて
324 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/08/01(土) 21:54:00.81 ID:e0kX2Bs0
くそう!!!

最後の感想で皆「釈然としないなぁ」と漏らしていたから
してやったり!!!と思っていたのに……

>>322 一応、佐々木的にはハッピーですかね。
今回の視点はあくまで佐々木に絞って書いたので…前回キョンの視点に
絞って書いた時も事件は全く解決していませんでしたが、今回もやはり
解決とまでは至ってないです。

ただし、佐々木は『キョンがそばに居ればそれで良い』と思っている(疲れきってそう思わされてしまっている)
ので、やはり佐々木的にはこの事件はこれで終了しています(良い意味で)
325 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/08/01(土) 22:04:10.98 ID:NhrqPUSO
現実的に考えたら、どんなに凄い力持ってようが所詮人間ごときでは絶対思念体にゃ勝てんだろな
なんせ46億年の経験値だしww

wizなら
貞子:Lv.100 メイジ
思念体:Lv.10000000000ビショップ

くらいの差、なんて言うだけ野暮だな乙枯山
326 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/08/01(土) 22:22:39.03 ID:e0kX2Bs0
さて、古泉「禁則事項です」
   佐々木「禁則事項だけどね?」

は、これにて、終了した訳ですが、事件は未だ解決に至っていません

>>307で、もう書かない方が良いと言われている作者ですが、そんな煽りには屈しません。
例え誰も見ていなくたって、批判が多くたって、(時間はかかるが)書いてやります

そんな訳で、次回、超能力者も宇宙人も居なくなった地球で再び『リング』がループします

『リング』、『螺旋』、と原作をそこはかとなく再現してきましたが、漸く『ループ』で
原作を離れて作者の思う作品を描きます

今回同様、前の話を見ていなくても分かる仕組みにする予定なので、vipでいつの日かまた
(規制解除されたら)投下します

それでは、期待してくれる方は有難う。もう書くなよ、という人には御免なさい。

作者はやっぱり馬鹿でした
327 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/08/01(土) 22:27:49.57 ID:DRO1KDAo
>>326
期待してます。
328 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/08/01(土) 22:33:55.13 ID:GcYsfKIo
>>326
何時になるかは分からないけど期待してるよ
329 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/08/01(土) 23:00:38.17 ID:D/0cgico
期待してる
330 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/08/01(土) 23:15:53.79 ID:NhrqPUSO
同じく期待。
331 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/08/02(日) 02:25:55.24 ID:a9XbFkoo
VIPに立ったら一応こっちでも紹介してくれたら嬉しいよ
332 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/08/02(日) 04:00:18.02 ID:zPzCAnwo
>>326


作者自らこれはオナニーだと宣言してるわけだが、
オナニーをオナニーだと言い切ったのは見苦しくも清清しい。
もっとやれ。
333 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/08/02(日) 13:57:47.27 ID:I1dgJtE0
>>331 おk

タイトルはまだ決めてないけど、建てたらここでも告知する
334 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/08/02(日) 16:00:05.98 ID:lr.k1qAo
乙 楽しかった
>>331が言ってるように、次のお話のスレを立てたらここでアドレス書き込んでくれ
それじゃ、次の話も期待してる
335 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/08/05(水) 12:49:15.97 ID:T.6r2o60
激しく遅レスだが、乙でした
次の展開もワクワクしながら待ってます


エルゴの王も期待してます
336 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/08/06(木) 03:26:08.05 ID:..Gv79go
>>325
46億年は地球だ
あとどうしても疑問に残ったんだが思念体は一体じゃなくて複数いるはずだし一体の設定なら描写からは長門の飼い主の思念体だととれてそいつが未来人に協力したなら長門は思念体に逆らえないから消す意味はまったくないはず
長門は思念体に逆らおうとしたでおk?
それと次回作に期待
337 :325 [sage]:2009/08/06(木) 19:43:51.16 ID:RTbidgSO
うあ本当だ、大雑把なlv.は人間100年、宇宙137億年に合わせたはずなのに何変なトコで間違ってんだ俺orz
338 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/08/07(金) 23:26:56.98 ID:edH1Oaw0
(´・ω・`)  今回の規制……すぐ解除されるかと思ったけど、長いな
339 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/08/08(土) 17:06:55.43 ID:idFjtsSO
>>338
you もうここで書いちゃいな Yo!
340 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/08/08(土) 23:04:55.82 ID:DYH2LuUo
>>339
あれ?いつ書き込んだっけ?
341 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/08/16(日) 01:23:53.11 ID:HQJwv52o
俺はまだ待ってるんだぜ
342 : ◆sdM9TY622s :2009/08/16(日) 11:05:10.63 ID:heiHKsg0
>>341 実はまだ規制中なんだぜ\(^o^)/
343 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/08/17(月) 20:20:35.40 ID:vPaKL0E0
VIP落ちてたからVIP+で書いたら4回もスレストされた\(^o^)/
344 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/08/17(月) 22:26:34.25 ID:7gUCRYSO
VIP復活したぞ
新スレ立ったら誘導お願い
345 : ◆sdM9TY622s :2009/08/17(月) 22:51:01.06 ID:vPaKL0E0
>>344 さっき確認してきたけど、VIP復活したのに相変わらず規制中だった…(´・ω・`)
タイトルはもう決めてあるんで、先にタイトルだけ載せときます。


               キョン「規定事項だ」
346 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/08/17(月) 23:40:11.88 ID:7gUCRYSO
らじゃった

日に朝晩二回ずつキョンで検索かけるよ
347 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/08/21(金) 22:03:50.14 ID:7A/z72DO
いっそのことここに投下し(ry
348 : ◆sdM9TY622s :2009/08/23(日) 23:40:43.90 ID:UIGsAXI0
もし今見ている人いたら、ちょっとタイトル違うけどvip+でやってます

キョン「規定事項だよ」
http://yutori.2ch.net/test/read.cgi/news4viptasu/1251025757/l50
349 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/08/23(日) 23:46:37.00 ID:rfPVDuso
スレストされとる
350 : ◆sdM9TY622s :2009/08/23(日) 23:47:06.26 ID:UIGsAXI0
ちょwwwwwwまた、スレストwwwwwwwwwwww

vip+こえぇぇぇぇぇぇぇぇwwwwww
351 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/08/23(日) 23:48:55.80 ID:h2NdKnwo
まさかのスレストwwww
どうすんの?
352 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/08/23(日) 23:48:58.56 ID:rfPVDuso
私怨ってこわいね
353 : ◆sdM9TY622s :2009/08/23(日) 23:50:48.74 ID:UIGsAXI0
風呂入ってる間にスレストとかwwwwww

vip+でSSは無理だな
354 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/08/23(日) 23:52:03.67 ID:h2NdKnwo
ここにかけば?
355 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/08/26(水) 13:23:51.23 ID:bH36CoDO
こういう時のためのパー速なんだぜ
356 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/08/29(土) 14:25:35.13 ID:UUcXDlo0



           『曖昧であやふやな物語』


357 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/08/29(土) 14:27:05.09 ID:UUcXDlo0


曖昧で空虚な夢物語。あの出来事はそう表現するのが一番適切だと、ぼくは思う。

何よりも整合性がとれていた物語だったし、相当数の伏線もちりばめられていた。
警察もちゃんと活躍して現実感はあるし、ある意味必然だったとも言える。

       常識で常套で論理的。奇妙で奇怪で摩訶不思議。

    推理物としても、オカルト物としても満足の行く物語だった。


……ただ、ただ一つだけマイナスがあったとすれば、それはぼくがあの場に居たって
ことだろう。

          ぼくはあの場に居るべきではなかった。

確かにぼくは常日頃から魑魅魍魎とよく出会うわけだけれど……それらはあくまでも
魑魅魍魎と呼ばれる「人間」達のことであって、魑魅魍魎自体ではないのだ。


         まさか本物の魍魎に会う羽目になるなんて…

358 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/08/29(土) 14:27:06.19 ID:SsVNv1Uo
おっ?
359 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/08/29(土) 14:28:58.90 ID:UUcXDlo0


                 0


         どんな物語にも始まりは存在する
     しかし、終わりという物は必ずしも存在する訳ではない

360 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/08/29(土) 14:30:29.34 ID:UUcXDlo0


                 1


              「フン、成程な」


顔の整った線の細い男が立っていた。「青年」と呼ぶには些か年を取っている。しかし
「オジサン」と呼ぶにしても何処か妙に幼さを残したままの男だ。


「中々面白い物語ではあったが……しかし、やはりこの『物語』は、俺の読みたい『物
語』では無かったようだな」


男はそう呟くと、空を見上げて目を細める。この満天の星を見て何か思う処があるのだ
ろうか?

    と、ここで私は男の手に狐の御面がしっかと握られているのに気付いた。

361 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/08/29(土) 14:32:16.78 ID:UUcXDlo0


御面と言えば御祭の屋台等で並んでいる御面を思い浮かべるが、男が手に持っているあ
の御面、中々精巧に作られている。白く塗られた下地に、真っ赤な色で彩られた目や口
元のラインが良く栄えており、また、下地は白と言ったが、場所によってより立体的に
見える為の工夫なのだろう、少しずつ色の深さに違いが見え隠れしている。


一目見ただけでもかなりの手間が掛けられているのが良く分かる。このレベルの御面が
本当にそこら辺の御祭の屋台で……。


御面についてそこまで考えたところで、私は「はぁ」と溜息をついた。随分と無駄な思
考に時間を掛けたと思ったからだ。この辺りで行っている御祭と言えば綿流しの御祭位
だが、まだまだ先の話だ。それに……大体御祭の屋台なんかでわざわざ探して買わなく
ても、御面屋さんで買えばいいのだ。


そんなくだらない思考に時間をかけてしまった自分に呆れつつ、男の顔に視線を戻した。

男は相変わらず空を見上げたままだ。まるで私なんか目に入って無いように。まるで私
なんかどうでも良い存在だと言わんばかりに…。

362 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/08/29(土) 14:33:50.87 ID:UUcXDlo0


     「やはり、自分の世界の『物語』の終わりを…俺は読みたい」


             男はまた唐突に呟いた。

この世界に住んでいる……いや、この場合は『この物語の住人』と形用した方が適切だ
ろう。『この物語の住人』のほとんどは、恐らく全く理解出来ない台詞の類であろうが、
残念ながら特殊で特別で不可解な、この世界、この物語においてそんな位置付けである
存在の私には、その台詞は彼という存在を十分に示してくれる台詞だった。


彼は、恐らくこの世界の住人では、この物語の住人ではないのだ。他の世界、他の物語
から迷い込んだ…あるいは招かれざる客と知っていながら、敢てやって来た、送り込ま
れた人間なのだろう。


本来ならばそんな現象、絶無で皆無な現象なのだが、既にあの戯言遣いと出会ってしま
った事のある私には。既にあの物語を体験してしまった私には。そして今、この男を目
の前にしている私には……そんな絶無で皆無な現象でも、上手く説明は出来ないが、何
故かとても酷く納得できた。

363 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/08/29(土) 14:35:06.46 ID:UUcXDlo0


…まぁしかし、しかしながらだ。もし自力で帰れるのであれば、自分の世界の物語を早
々に読み進めたいのならば、『この世界』から『自分の世界』とやらに帰れば良いのに、
と私はやっぱり思った。


「うん?くくっ、残念ながら今の俺には無理だ。あの戯言使いとの対決で十三階段のほ
とんどが今使えない。…というより、ここに来たのはどうやら俺一人らしいからな」

     そして、漸く男は私の方に顔を向け、淀みなく言い放つ。

「しかも俺はここを早々に引き揚げるつもりなんてないさ。確かにこの世界の物語を読
んで満足はしないだろうが…興味がない訳じゃぁ無い」

                …こいつ!

   「おっと、自己紹介がまだだったな。どちらでも良い事でもあるが…」
   「俺の名前は……いや、人類最悪の名前なんか聞いても嬉しくあるまい」

         「俺の事は『狐さん』とでも呼べばいい」

364 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/08/29(土) 14:36:01.37 ID:UUcXDlo0


     男は笑いながら手に持っている狐のお面を着物の帯にはさんだ。

何故だろう?別にこいつとこれから行動する訳じゃないのに、私は少し気分が高翌揚して
いた。

  この男なら、もしかしたら本当に物語を終わらせてくれるかもしれない。
  この男なら、本当にこのくだらない世界を破壊してくれるかもしれない。

                そして……

    この男なら、もしかしたら私の望みも叶えてくれるかもしれない。

そんな……一種の甘えとも、浅はかな願望とも取れるような感情を私は男に抱いていた
のか、気がつけば私の足は勝手に、男の後ろ姿を追いかけていた。


365 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/08/29(土) 14:37:01.64 ID:UUcXDlo0



        『狐さん』は「くっくっ」と喉を鳴らして笑うと


「じゃあ『俺』の世界の物語を読む前に、数多の人生を繰り返す輪廻とやらをぶち壊し
て、この世界の物語を読み切っとくか」

        そう、可笑しそうに、犯しそうに、侵しそうに言う。



            ……あぁ、『物語』は終わらない。


366 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/08/29(土) 14:38:37.83 ID:UUcXDlo0


                 2


………………………
…………………
……………
………



  「でも、私の輪廻を断ち切るって、具体的には何かいい案でも有るの?」

私は尋ねる。そうだ、あの圭一や『戯言遣い』、つまりはこの『狐さん』を打ち倒した
存在の『いぃ』でさえ、私の輪廻を止める事は出来なかった…

           「ふん。無いな」

『狐さん』は、はっきり言い切った。流石ね…戯言使いに敗れたとはいえ、やはり人類
最悪。既に具体的な案を持っているなんて……

          「……てぇ、無いの!!!???」

私は久しぶりに(もしかしたら今までの人生で初めて)大声をあげてツッコミを入れた

「無いな。そもそも俺は自分から動く人間じゃあ無いんだ。十三階段が居なくちゃあ俺
なんか、基本スペックでは、人類最弱を謳っているあの戯言遣い以下だ」

     そうなのだろうか?とてもそうは見えないけれど…


367 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/08/29(土) 14:40:01.76 ID:UUcXDlo0



「下手すりゃ使える手駒が居なけりゃ、戯言を使わない戯言遣いよりもひどいかもな」

『狐さん』は、自分を卑下している筈なのに、何処か嬉しそうに語る。この人の本心が
まるで読めない…


「じゃあ、私を輪廻から解放してくれるのは……」当分、後?…と、質問しようとした
のだが

「フン。というより世界から弾き出された…もとい世界に関われない身になったから何
も出来ない人間になってしまった、とでも形容した方がしっくり来るか」

……どうやら私に質問のターンは与えてくれる気は無いらしい。狐さんは相変わらず勝
手に続きを話す。


368 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/08/29(土) 14:41:17.43 ID:UUcXDlo0


「ん?何か言ったか?くくっ。まぁそう心配するな。確かに俺は世界に関われないが、
それは俺の世界での話だ。ここでは関係あるまいさ。何も出来なくなって久しいが、な
ぁに徐々に馴らしていけば良いだけの話だ」

狐さんは足を止め、何処か遠い場所を見つめて語る。一体何をしでかしたら世界に関わ
れない程の仕打ちを受けるのだろうか?

しかし、どうせ私の質問など軽くあしらわれるか、無視されるかのどちらかに決まって
いるので。私も狐さんと同じく、遠い場所を見つめて、これからの事について思想を巡
らした。


    ……さぁ、今回の人生は何処からアプローチをかけようかしら?



369 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/08/29(土) 14:42:51.49 ID:UUcXDlo0


………………………
…………………
……………
………


とか何とか、偉そうな事を考えるのにかなりの時間を費やしてしまった事を後悔したの
は、狐さんが押し黙ってその場から動かなくなった、二時間後だった。

              「あの〜狐さん?」

         「どうした。梨花?用でも足したくなったか」

「違います。何時までここに居るつもりなのですか?もうそろそろ日が暮れますですよ」

狐さんは「そんな事も説明しなくちゃお前は分からんのか?」とでも言いたそうな顔で
私に説明する。

「どうしてさっきからここでボーっとしているかって?フン。決まっているだろう?家
が無いからだ」

言い切った。自分がホームレスである事をここまで偉そうに言いきれる人間を私は見た
事がない。

370 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/08/29(土) 14:44:08.64 ID:UUcXDlo0


「戯言遣いは教師だったからここでの宿には困らなかったらしいが、俺は違う。そもそ
も戯言遣いは俺の娘の手引きでこの世界に来たみたいだが…俺はなんとなく、あいつら
が楽しそうに会話しているのを偶然目撃してね。それで興味半分、ちょいと『物語の隙
間』、世界が重なり合ったが故の『位相のずれ』とでも表現する奴を見つけて入り込ん
だわけだ」

           うわぁ。本当に最悪だ、この人

             ……ん?ってあれ?

             「どうした。梨花」

「狐さん。ちょいとかひょいとか、そんな軽い感じでここに来たみたいだけど、帰る当
てはあるの?」

「そうだな……俺が入り込んだその場には、俺以外の誰も居なかったから元の世界に戻
れる保証は、今のところ皆無に等しいな」


371 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/08/29(土) 14:45:25.08 ID:UUcXDlo0


どうするつもりなのだろう?帰れなかったら、向こうでもいろいろ問題が発生するだろ
う。この人を心配している人間も居るだろうし、……その人たちの事をあまりにも考え
ずに行動している様に私の眼には映る。本当にこの人に私の今回の人生を任せても大丈
夫なのだろうか?と頭に不安がよぎる。

 「しかしまぁ、そこら辺は木の実やるれろ辺りが必死に捜索してくれるだろう」

狐さんは、やはりというか当然というか、私の心配そうな表情には全く触れず続ける。

「俺を捜索中、木の実が『空間』に違和感を感じるだろうし、聞き込みはるれろがそこ
ら辺の人間を『人形』にして、てっとり早く情報が集まるだろう」

「そう考えると意外に早く迎えが来るかもしれんな。少し急ぐ必要が有るかも……フン。
まぁ良いか。その場合はあいつらを待たせれば良いだけの話だ」

私は何度も転生を繰り返し、長い悠久とも言えるほどの時間を過ごしたが、今回ほど他
人に失望したのも初めての経験だった。

「だがそんな事を今から考えても仕方あるまい。ほら、さっさとお前の家に案内しねぇ
か。そろそろ腹も減ってきたし、夏とはいえ、夜は少し肌寒いしな」


        もしかして、私は……人選をミスったかもしれない

372 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/08/29(土) 14:47:09.02 ID:UUcXDlo0


                 3


私達はそこから無言で帰宅した。私から話しかける言葉も特に無いし、彼も私に振る話題
が無かったからだ。

……いや、違う。本当は私は彼に話さなければならないとは言わないまでも話す事は沢山
有ったし、きっと彼も私に話す事が皆無であった訳では無いだろう。

    しかし、私達は別に特にこれ以上の確認はせず、黙々と歩いた。

              うん。少し気まずい。

そんな私の心の声をビビッとキャッチしたのかどうかは不明だが「さて、これからどうす
るかな」と、彼は呟いた。


373 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/08/29(土) 14:48:28.08 ID:UUcXDlo0


ここで会話を続かせないと、ここから帰宅までおよそ一時間は掛かるであろう道のりを終
始無言のまま完遂しなければならなくなるので、私も

       「どうするもこうするも、やるしかないでしょ?」

と返した。

だが私のそんな頑張りは虚しく、「はぁ、面倒臭いなぁ。俺がやらなくても誰か勝手に俺
の代わりに働いてくれねぇかなぁ」という彼の溜息と共に出た言葉によって、再び沈黙が
訪れた。


   私はそんな沈黙をくれた感謝の印として、彼にドロップキックをお見舞いした。

   その後、私達は家に帰るまで一言も口を聞かなかったのは言うまでもない……。


374 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/08/29(土) 14:49:43.20 ID:UUcXDlo0


                 4


家に帰宅後、沙都子にはなんて言い訳をすれば良いのか凄く心配したが、どうやらそれは
杞憂の様だった。

    「ほら狐さん!!おかわりは、まだまだ沢山ありましてよ?」

沙都子は両親を亡くしてからというもの、叔父と叔母に執拗に虐めを受けてきた。……い
や、あれは最早虐めというレベルではない。虐待、もしくは拷問とでも表現した方が良い
レベルの扱いだ。

    「まぁ、待て沙都子。お前、俺がそんなに食う様に見えるのか?」

家で私以外の誰かと夜を過ごすなんて、過去を思い出して、沙都子には耐えられる筈はな
いのだ。現に圭一でさえ、聡子と共にこの家で一晩過ごした事など…ないのだから…。

  もしかしたらこの人なら…今までとは全く違った結果を出してくれるかも…

「フン。俺は女に…とりわけ年下の女に好かれやすい性質なだけだ。そんなに俺に期待す
るな。後でまた失望する羽目になるぞ?」

375 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/08/29(土) 14:51:10.97 ID:UUcXDlo0


この人は何でこうも私をがっかりさせたいのだろうか?…極上のSなのだろうか?………
って、今、私声に出してた?

「こんなの読心術の初歩だろう。訓練すれば誰でも出来る。それこそ人類最強である俺の
娘でなくともな」

          「?何の話をしてますの?狐さん」

やばい。沙都子に明らかに不審に思われた。前回の人生では『いぃ』が部活のメンバーに
事の真相を話したときは、それなりの段階を追って、皆を上手く丸めこみ、その方向に誘
導してくれていた。…しかし、今回はそれが全くない。皆の前で無垢な少女を演じている
梨花ではなく、悠久の時を生きる梨花に、じかに、それも心で思っているだけの事に対し
て、台詞を口に出して返している。

これでは不審に思わない方が不思議だ。ましてや沙都子は部活メンバーの一員でもあり、
それなりに頭が回る…気付かないわけがない。

376 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/08/29(土) 14:52:35.49 ID:UUcXDlo0


    「確かにあの戯言遣いは上手くやり込めたようだな。さすがは俺の敵だ」

         …だから声に出しての会話は止めて欲しい

    「しかしお前はまだ読心術が使えないのだからしょうがないだろう?」

     「さっきから、意味が分からないですわ。どうしたんですの狐さん?」

沙都子。出来れば今は会話に入って来ないでもっと、「どうしたんだろう?」とか黙って
不審がっててくれないかな?……何とかあなたが納得出来る言い訳を今考えているんだか
ら…これ以上の状況は頭の処理が追いつかないの

            「そうだぞ沙都子。お前は少し黙ってろ」

……出来れば、あなたにはもっと黙っていて欲しい。さらに出来る事なら一生口がきけな
くなって貰いたい。

377 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/08/29(土) 14:54:18.50 ID:UUcXDlo0


         「梨花?さっきから狐さんがおかしいのですが…」

あぁ、だから今私に話しかけないで…お願い沙都子。今度アイスか何か奢るから、それで
許して…

      「物で釣ろうなどと考えるとは、お前中々良い感じで腹黒いな」

どうしようどうしようどうしようどうしよう?いっその事、警察でも呼んで……こんなに
怪しい住所不定の男が、子供二人で暮らしている家に上がり込んでいるとなれば大石辺り
が喜んでしょっ引いてくれるに違いないし……

         「いやいやいやいや、ちょっと待て梨花」

            うん!それが良い。そうしy…


「分かった。俺が悪かった。もう少しお前の一人漫才を見ていたかった気もするが………、
もう良い。そろそろ助け船を出してやる」

                 助け船?

そう言ったが早いが、狐さんは沙都子を御姫様だっこ状態で持ち上げながら立ち上がった。

378 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/08/29(土) 14:55:38.06 ID:UUcXDlo0


          「わわっ、き、狐さん。何しますの?」

「ん?飯を食ったんだから風呂に決まっているだろう。見ての通り俺は小食でそこまで食
べないんだよ。と、くれば次にとる行動は風呂と相場が決まっているだろう?」

             「そ、そんなの初耳ですわ!」

                  私も初耳だ。

「そ、それに食べ終わったなら後片付けをしないと!お風呂に入ってからだと、また汚れ
ちゃいますわ」

       「そんなの梨花に任せておけばいいだろう。なぁ梨花?」

これが彼の言う助け船なのだろうか?沙都子の貞操の危機も感じたが、今はそれどころで
はないので、「そうです☆任せるのです!」と私は今回の人生が始まってから最高の笑顔
を二人に向けた。

            「り、梨花の裏切り者〜」

    沙都子の叫び声が聞こえたが、私は笑顔を崩さずに二人を見送った。


379 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/08/29(土) 14:56:54.02 ID:UUcXDlo0


……………
………


数十分後

先ほどまでバスルームで聞こえていた沙都子の叫び声も漸く収まりを見せ、狐さんは沙都
子を既に私が準備してあった布団に横たえさせた。

             「気絶したのですか?」

私がそう問うと、狐さんは「あぁ、お子様には刺激が強すぎたみたいだな。特に純情すぎ
る子供には」と、意味ありげに口元を釣り上げた。

「心配するな、何もしちゃいないさ。ただ沙都子の目の前で俺が着ている着物を脱ごうと
しただけだ」

たかがそれだけで気絶する物なのだろうか?私は大人の男と風呂に入ろうとするシチュエ
ーションで沙都子の症状がぶり返していないか心配する。

380 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/08/29(土) 14:58:02.03 ID:UUcXDlo0


「フン。心配するなと言っただろう?大丈夫だ。そいつの発作は起こっちゃいない」

            信じても良いのだろうか?

「おいおい、少しは信じ……まぁ良いか。お前が信じようが信じまいがそれは同じことだ」

   狐さんは面倒臭そうに私と沙都子を見やった後、溜息交じりに話し始めた。

「しかし、だからと言ってこれではちっとも『話』、もとい『物語』が進まんな。俺はさ
っさと読み切ってしまいたいのだが……仕方ない。では、少しばかり説明してやる。本当
は面倒臭いが話が何時まで経っても進まんからな。……俺がお前の心で思っていた事に、
何故沙都子に何も説明しないまま口を出したのかだって?……簡単だ。そうすれば沙都子
は俺に興味を持つ。『俺の言動は何を根拠にしているのだろう?』とかな。今回は風呂の
おかげで一時的に記憶が飛んだだろうが、それでも完全に消える訳じゃあ無い。忘れるだ
けだ。何かのショックと共に思い出すだろう」


381 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/08/29(土) 14:59:18.54 ID:UUcXDlo0


「お前は戯言遣いと本格的に行動を開始したのが奴と学校で出会ってからだから分からん
かもしれんが、俺の敵も聞き込みとかぬかしながら、色々なところで伏線を張ってたんだ
ろうぜ」

       複線?推理小説とかで使われるっていう後で回収する奴?

「いや、字が…まぁある意味合っているかもしれんな。今回用意しなければならない伏線
の数は相当な量に上る。あながち間違ってはいないだろう。……くくくっ。まぁ良い。続
けるぞ?俺の敵もこう表現したと思うが、こいつは、お前の人生は、いわば一つの推理ゲ
ームだ。……ならば、伏線を張っておいた方が後で動きやすくなるだろうさ」

まさか…私から説明を受けて、家に帰ってくる道の途中でこれからの筋道を全て考えてい
たとでも言うつもりなの?この人……もしかしたら『いぃ』よりも……。

「フン。だから過大評価はするなと言っているだろう?後で失望する羽目になるぞ?」

       この人は…全く。どうやら間違いなく人類最悪の様だ
         私は、古手梨花はこの時、心からそう思った…


382 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/08/29(土) 15:00:35.06 ID:UUcXDlo0


この日の夜に、出会ってまだほんの数時間も経っていないというのに、私と狐さんは今後
の事についての計画を立てた。


まずはこうだ。狐さんは私と沙都子が学校に行っている間、毎日この家で怠惰に過ごし、
放課後、皆と顔馴染みに成る為に、私はクラスの友人(部活メンバー以外も)を家に招き
皆で盛り上がる。

次に、狐さんは警察関係者と密になるために毎晩、飲み明かしながら麻雀をして帰ってく
る。

仕上げに、多分二日酔いになるだろうからそれを利用して入江診療所に入り浸り、入江と
接触。その後診療所でどうせ出会う事になるだろう富竹と、鷹野三四についてメイド喫茶
と呼ばれる場所で(主に鷹野がどういった服装、コスプレ(?)が似合うかを熱く)議論
し、信頼関係を作り出す。

そして、それぞれ盛り上がっているシチュエーション中に、何回かタイミングのよさそう
な場面で、例の伏線とかいう「如何にも探りを入れてますよ」的な雰囲気を醸し出す…ら
しい。

383 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/08/29(土) 15:01:56.75 ID:UUcXDlo0


……何処からどう見ても私の目には狐さんが遊んでいるようにしか見えないが、当の狐さ
んは「フン。嫌なら別の奴にでも頼むんだな」等と公言しており、私はしびしぶこの作戦
に了解せざるを得なかった。

     この人は…全く。……どうやらやっぱり間違いなく人類最悪の様だ。

私は、古手梨花はこの時、さっきこう思ってから大して時間も経っていないのに心からそ
う思い直した…。

              「くっくっくっ」

      狐さんは溜息をついている私を横目に嬉しそうに笑っていた。

               ……凄く不安だ。

384 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/08/29(土) 15:03:50.17 ID:UUcXDlo0


                 5


今日は入江診療所に来ている。例の雛見沢症候群の件だ。本当なら狐さんも来る予定だっ
たのだが、「今日は気分じゃないな」とか何とか言って、結局来なかった。

        本当にあの人はちゃんと動いているんだろうか?

まぁ、狐さんの事は置いといて……今日は当面の敵である鷹野の確認も込めてやって来た
のだ。

         「へぇ、梨花ちゃんも相変わらず元気みたいね」

柔和な顔で話しかけてくる鷹野だったが、生憎私はもう知ってしまっている。こいつが、
こいつこそが今まで古手梨花という存在を、幾多の世界に渡り手にかけてきた張本人なの
だ。

385 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/08/29(土) 15:04:46.69 ID:UUcXDlo0


私は焦る胸の鼓動を気取られないように、間違ってもこの場で鷹野を殺してしまおうとい
う衝動を気取られないように、平静を装う。

          駄目だ、焦るな。まだ早い。まだだ。

ここで鷹野を私が殺しても、結局私の望みは叶わないだろう。そう、まだ駄目なのだ。ま
だ、全ての事件を裏で操っている奴がもう一人居るんだ。

  そうでなければ、戯言遣いが解決した筈の事件後にまた輪廻を廻る筈がないのだ。

つまり…古手梨花は鷹野や鷹野の息がかかった者に殺されなくても、結局他の誰かに、も
う一人の黒幕に殺されてしまい、輪廻を廻る、という事。


  そのもう一人が、鷹野が企む計画を阻止したその後に梨花のそばに居るその瞬間。

絶対に…居る。必ず、居るその時こそ、最大にして最初で最後のチャンス。それまでは息
を潜めて誰にも気取られないように過ごさなければならないのだ。


          全ては、狐さんの描いたシナリオ通りに……。

386 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/08/29(土) 15:06:18.44 ID:UUcXDlo0


                 6



狐さんは「今日やろうが明日やろうが結局は同じことだ。特に急いだからといって良い成
果が出るとも限らないしな」等と言い訳をし、毎日をただ、だらだらと過ごしていた。

『いぃ』の場合は一つも情報が無いところから色々探りを入れていた筈なので、彼はとて
も忙しそうに見えたが、狐さんの場合はとても暇そうに見える。

しかもほぼ全ての情報が最初から手の内にあり、私が「いぃ」から教えて貰っていない情
報だけ狐さんが独自に探さねばならない筈なのだが…一向に動く気配がない。

387 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/08/29(土) 15:07:52.52 ID:UUcXDlo0


   「一体何時になったら活動し始めるの?……もう綿流しまで日が無いのよ?」

私はとうとう堪えられなくなり、狐さんに詰め寄った。そうでなくともここ数日私は苛々
していた。当然だ。「いぃ」が犯人は鷹野だとすでに教えてくれているのだから、後は私
の輪廻をどうやって廻らないようにするかだけなのだから。


そんな私の焦った表情を読み取ってかどうか、狐さんは面倒臭そうに私を見やった後、溜
息交じりにこう呟いた。

「良いだろう。では…そろそろ動くか。俺の敵風に言うならば『じゃあ、戯言でも始める
か』かな?いや、どちらかと言えば零裂人識の台詞の方がしっくり来るか…『良いだろう。
この事件。殺して解して並べて揃えて晒してやるとするか』…うむ。こっちの方が良いな」

そして、そう呟いた後、今まで気の良さそうな感じだった狐さんの顔が、にぃぃぃぃっっ
と歪んでいく。

388 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/08/29(土) 15:09:25.54 ID:UUcXDlo0


……誰?そこには私の知っている狐さんはいなかった。…本当に一体誰なの?

怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い
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怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い
怖い怖い怖い怖い


あたかも狐さんの目が、獲物を狩る猛獣の目の様に見えた私の眼は、壊れているのだろう
か?私は恐怖で体が動かなくなっていた。


389 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/08/29(土) 15:10:27.22 ID:UUcXDlo0


                 7

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390 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/08/29(土) 15:11:27.68 ID:UUcXDlo0


                 8


………………………
…………………
……………
………

大方の予想通り、解決の展開はほぼ『いぃ』と同じ運びとなった。まぁ、当然と言えば当
然だ。何たって『いぃ』が取った一連の解決策をそのまんまトレースしたのだから、展開
は同じに決まっている。


それよりも驚いたのが、私は狐さんが何も動いていないとばかり思っていたが、どうやら
それは間違いで、私の目が届かない「学校に行っている時間帯」に、大石や入江、富竹と
会っていたらしい。そして私が家にクラスメートを連れて盛り上がっている時にも、何故
か私がトイレに抜け出したタイミングを見計らって伏線を張っていたらしい。……つまり
私が用を足す時間を狐さんは正確に知っていたという事だ(その日の体調や食事のメニュ
ーによって排泄量が変化するのにも関わらず!!!)

狐さんに言わせてみれば「そんなの毎日お前を眺めていれば、それだけでその日のトイレ
に籠る時間位分かるさ」…らしい。


    ……非常に嫌な気分とはこういう事を指すのか。…うん、嫌な気分だ。

391 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/08/29(土) 15:12:18.73 ID:UUcXDlo0


しかし伏線を張るというのは、沙都子の風呂での件と同じく、一度変な空気がそこに居る
者に流れる筈だ。それを私がトイレに行って帰ってくるまでの短時間で私に気づかせずに
戻せる物なのだろうか?

しかも狐さんは皆に「梨花には内緒だ…くくっ、良いな?」等と釘まで刺していた。もう
一度言わせてもらう。それすらも、私がトイレに行って帰ってくるまでの短時間で皆に徹
底できるのか?

いや、これは断じて私の排泄時間が人より長い訳ではない。違うんだ!違うの!絶対違い
ますから!!!

          「くくっ、口調が壊れてきてるぞ。梨花」

         私喋ってませんから!思ってるだけですから!!!

             「くくくくくくくっ」

392 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/08/29(土) 15:15:01.50 ID:UUcXDlo0


「さて…と。無駄口はここまでだ。もっと喜んだらどうだ、梨花?これであらかた終わり
なんだぜ?」

狐さんは相変わらず面倒臭そうに話しかける。ほとんど「いぃ」の真似をしただけのくせ
に。そう口に出さずに思ってやると、やはり狐さんは面倒臭そうに

「良いじゃねぇか。わざわざお手本があるんだから、それの通りやってれば上手くいく事
が多いんだぞ」

 「ちなみに、こいつは俺の考え方じゃあねぇ。俺の孫の…人類最終の考え方だな」

この人に娘がいるとは聞いていたが、まさか孫までいたとは…この人、一体何歳なんだろ
う?

 「今更俺の年齢を聞いたって何になる?それこそ、そんなもん知ろうが知らまいが」

          ……どっちだって一緒だって言うんでしょ?

「くくっ。分かってるじゃねぇか。さて、もうそろそろ良いだろう?最後にお前の輪廻と
やらを解いておいてやる」

393 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/08/29(土) 15:16:16.10 ID:UUcXDlo0


              …ついに輪廻が!!!

 「っと、その前に確認だ。おい梨花。オヤシロ様ってのはここに居るんだよな?」

私は羽入が横に居るのを確認して首を縦に振る。あぁ、漸く私の輪廻を壊す事が…幸せな
日常が…手に入る。長かった。本当に……長かった。

    「……だそうだぞ。伊吹かなみ…いや、今は園山赤音だったか?」

     狐さんが合図したその先、そこには二人の男女が居た。

                  「」

私が二人に声をかける間もなく、狐さんにそこの二人がこの場に居るのは一体どういう事
なのか問いただそうとする間もなく、さらには私が悲鳴を上げる間もなく、二人は羽入に
攻撃を加えた。いや、攻撃なんて生温いものじゃなかった。何と言うか、その…あまりに
も凄まじい速さで私の隣に居た羽入を、そう、殺害した。蹂躙した。殺戮した。破壊した。
滅殺した。

                 「え?」

漸く私がその一声を上げる事に成功したと同時に、背中、いや首に衝撃が走り、私はその
場に倒れ込む……。

     羽入?え?どうなってんの、これ?い…意識…が……え?…あれ?

               「くくくくくくっ」

394 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/08/29(土) 15:17:20.75 ID:UUcXDlo0


                 9


狐さんは倒れた梨花ちゃんと、すでに神としての能力を失い、ただの無残な肉塊となった
『オヤシロ様』を見降ろしながら笑った。

おっと…、私の事は、そうだな。今更になって自己紹介をするというのも些か変な話では
あるが、『園山赤音』とでも呼んでもらおうか。

私、園山赤音はいわゆる学者だ。七愚人の一人と数えられたこともあったが、それももう
過去の話で、今は半ば引退しているような身分だ。

まぁ、それも「あっちの世界」つまり「私達の世界」の話で、こちらでその肩書きを使う
事は無いんだけどね。

しばらくして、私は羽入と呼ばれたオヤシロ様を、私と共に攻撃した逆木深夜に微笑みな
がら話す。

           「案外神様ってのも大した事ないね」

逆木深夜は、「そうでしたね」と嘆息をつく。……どうやらこいつは、神殺しを少しばか
りビビってたみたいだ。

395 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/08/29(土) 15:18:40.15 ID:UUcXDlo0


私は、最早死んでいるオヤシロ様の頭から生えている角を引っこ抜き、自分のこめかみの
辺りに そっとあてがった。

            うん。良い感じだ。良く馴染む。
  しばらくそのままの状態でいると、角が光りだし、私の体の一部と同化した。

          「フン、成程な。そいつが力の源ってわけか」

 狐さんは、すでに常人には姿が見えなくなった私の方を向いてそう言い放つ。

 「しかし、やはりこの『物語』は俺の見たい『物語』では無かったようだな」

狐さんは続ける。まるで私なんか目に入って無いように。まるで私なんかどうでも良い存
在だと言わんばかりに…。いや、実際に視界からは私は消えうせているのだから仕方ない
のか。

396 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/08/29(土) 15:19:56.29 ID:UUcXDlo0


      「やはり、自分の世界の『物語』の終わりを…俺は読みたい」

だったら、早く『この世界』から『自分の世界』に帰れば良いのに…そう思うのはきっと
私だけではないだろう。

     「うん?くくっ、まぁ良いじゃねぇか、折角のラストなんだ」

       そして、狐さんは私の方に顔を向け、淀みなく言い放つ。

「しかし梨花の奴も中々気付かないもんだな。自分を不幸な輪廻の中に閉じ込めているの
がいつも周りでへばり付いてる『オヤシロ様』って事位…」

397 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/08/29(土) 15:21:05.32 ID:UUcXDlo0


「何故いつも梨花が死んでいる時にそばに居る筈の『オヤシロ様』は何も教えてくれない
んだ?何故いつも全ての記憶を引き継いだまま別の世界に移行できる『オヤシロ様』は梨
花に、梨花が殺された後の出来事を教えてくれないんだ?『オヤシロ様』なら、梨花が殺
される前に、危険を察知させる事位簡単な筈だ。何せ梨花にしか視認できないんだからな。
犯人達がこれから起こすであろう行動は幾らでも予測が付けられたはずだし、頼れる人間
が自分しか居なくても、情報があるのならば回避は可能だ」

 「…にも関わらず、大した情報も与えず延々と輪廻だけを廻る法をとった理由は?」

「簡単だ。知らない事に嘘はつけないが知っている事になら嘘がつけるってのと同じ理屈
だ」

                そう。つまりは…

「オヤシロサマという存在が、意図的に梨花の人生の歯車を廻してるって事になる。機械
的に、奇怪的な方向にな」

……それは、その通りだった。あまりにも単純で、あまりにも明瞭で、あまりにも明快な、
そして簡単な答えだった。

398 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/08/29(土) 15:21:56.96 ID:UUcXDlo0


「確かに、この解答には難癖を付けようと思えば、幾らでもつけられる。屁理屈や説明な
んかをこじつける事は可能だ」

「例えば、梨花とオヤシロサマの意識が繋がっているから、梨花が死ねばオヤシロサマの
意識も途切れるとか。オヤシロサマには上手く梨花に情報を伝える術、知性を持っていな
かったとか。オヤシロサマが梨花に真相を伝えると能力が使えなくなるとか。そもそもオ
ヤシロサマの力自体が弱まっていたとか。……そんな難癖は、確かにつけれる。だがな」

        狐さんは有無を言わさないような口調で更に続ける。

「……だがな。こじつけた処でそれが何だってんだ?そもそも何故そんな回りくどい屁理
屈や説明わざわざを述べる必要がある?」

「そんな後からどうとでもなりそうな解釈なんてのは所詮は只の蛇足だ。物語の本筋とは
関係ない。つまりだ、どういう事なのかと云えば、もう分り切ってしまっていて面白くと
も何ともないが、『初めに抱いた疑問そのもの』こそが唯一無二にして絶対の答えなのさ」

399 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/08/29(土) 15:22:53.18 ID:UUcXDlo0


…狐さん。あんたそこまで分かってたんなら、梨花ちゃんに最初っから言ってやれよ。教
えてやってたらもっと手っ取り早くに解決できた筈でしょ?

「俺はそこまでお人よしじゃあないんでね。それに、これは梨花自身が気付かねばならな
い解答だ。教えてやる義理なんてないね」

…どうだか。結局は、梨花ちゃんが悲しまないように、梨花ちゃんが一番大切に思ってい
た『オヤシロサマ』が間違っても犯人であると気付かれないように、……そして、梨花ち
ゃんが幸せでいられるように、望んだ未来が訪れる様に……自分自身が悪役だと思われた
としてでも、今回は走り回ってたんでしょ?


            「……フン。さぁ、どうだかな」

狐さんは私の心を読み取ったかのように、「どうだかな」ともう一度呟いて、視線を私の
方から空に戻した。

そう何度も「どうなんだかな」と、呟きを反復しながら空を見上げる狐さんは、少し、切
なそうに、いや、何だか寂しそうに見えた。

400 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/08/29(土) 15:24:04.72 ID:UUcXDlo0


もしかしたら罪滅ぼしなのだろうか?彼が以前一緒に時間を過ごした…その、円朽葉ちゃ
んという子と、梨花ちゃんの人生があまりにも酷似していたから…


     「それを聞いたところで何になる?そんなの知ってても知らなくても…」

              結局は同じことですか?狐さん

      「その通りだ。園山…いや、もう園山ではなく『オヤシロ様』か」

   別にどっちでも良いけどね。名前なんて私にとっては只の記号みたいなもんだし

「くっくっくっ。確かにそうかもな。おっと、こっちは自己紹介がまだだったな。初めま
して『二代目オヤシロ様』。俺の方も、どちらでも良い事でもあるが…まぁ一応、言っと
いてやる。俺の名前は……西東天だ」

    「だがしかし、人類最悪の名前なんか聞いてもやはり嬉しくあるまい」

    狐さんはさっきからの視線をそのままに、空に向けたまま軽い口調で言う。

         「俺の事は今まで通り『狐さん』とでも呼べばいい」


               分かりましたよ…狐さん

401 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/08/29(土) 15:25:16.11 ID:UUcXDlo0


狐さんは笑いながら手に持っている狐のお面を着物の帯にはさんだ。そして、私と深夜を
交互に見た後に…

「では逆木深夜は、お前がこの世界に飽きて戻ってくるまでの間、十三階段に入れておい
てやる。ただし、伊達でもいいから眼鏡はかけろよ?」

          この人は、本当に眼鏡が好きだな。

       『狐さん』は「くっくっ」と喉を鳴らして笑うと

「フン。じゃあ『俺』の世界の物語を読みに帰るとするか。おい、オヤシロ様よ。俺たち
を元の世界に戻してくれ」


402 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/08/29(土) 15:26:17.27 ID:UUcXDlo0


私は既に自分のものとなったオヤシロ様の力で二人を元の世界に送る。きっとあっちの世
界も大変だろう。あっちの世界には、この私ですら成り代われなかった人類最強の哀川潤
と、さらにそのスペックの全てを凌駕する人類最終、想影真心。いかに私ですら成り代わ
れない才能を持っていた玖渚機関のお嬢様。匂宮雑技団を筆頭とした御伽噺の皆さん……
そして、戯言遣いまでいる。

……あっちに戻るのは、当分はこっちの世界でオヤシロ様を満喫してからでいいか。

狐さんと深夜を無事元の世界に送り届けた後、私は一人、空を見上げながらそんな事を考
えていた。



         ……あぁ、『物語』は漸く終焉を迎える

403 : ◆sdM9TY622s [saga]:2009/08/29(土) 15:27:25.02 ID:UUcXDlo0



           『曖昧であやふやな物語』



                 完

404 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/09/06(日) 13:44:30.95 ID:U4p5dBQ0
       規制……長すぎだろjk
(´・ω・`)  完璧に忘れ去られた存在になったぞ、oi
405 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/06(日) 23:47:56.13 ID:HwU8IoSO
気長にマトーヤ
406 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/09/07(月) 00:02:13.32 ID:9VyO1kU0
……もはや、ここに投下するか
407 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/09/07(月) 02:04:23.31 ID:KKHo2CQo
いいとおもわれ
408 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/09/20(日) 16:54:12.11 ID:2rhscUDO
まだかや?
409 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/20(日) 19:12:45.17 ID:sjbMSRYo
d
410 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/20(日) 23:45:29.60 ID:cxnb4Xco
なんだよwwwwww
期待したじゃねーかwwwwwwwwww
411 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/10/04(日) 21:43:05.48 ID:YakG9nko
マダー
412 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/10/17(土) 16:04:29.20 ID:FIg5jds0
なんか番外編っぽいの書いてます。よければどうぞ

朝倉「禁則事項なの」
ttp://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1255762416/
413 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/10/17(土) 16:41:24.09 ID:qx2MPwSO
規制解除おめ

まだ朝倉さんは出てきてないけど、やっぱりここから悲劇になるんかなあ…
414 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/10/17(土) 23:36:20.43 ID:E/9Cq76o
ktkr
415 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/10/18(日) 01:27:08.55 ID:QTAQHTE0
やっぱり即興は疲れ方が半端ねぇ
416 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/10/18(日) 16:07:33.36 ID:QTAQHTE0
番外編のつもりで書き始めたのに、気が付いたら今までの
どの作品よりも本編らしい造りになってるww

というより、ちょくちょくvipにアクセスできないww
規制解除されてる筈なのに何故?
417 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/10/18(日) 17:58:56.05 ID:yWzZWYSO
むぅ…こないだ一寸VIP落ちてたのと関係あるんかな?頑張ってくれとしか言えんのは切ない
418 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/10/29(木) 23:28:58.97 ID:O3HVIjg0
またvip規制とか……どんだけだよ
419 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/13(金) 23:10:43.59 ID:gQtbFIk0



             キョン「禁則事項だ」


420 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 00:08:04.47 ID:zOAlse20
1 :◆sdM9TY622s [sage]:2009/05/10(日) 11:40:21.00 ID:nu0bZB.0
このスレでは様々な作品のSS、クロスSSを本作者が投下していくスレです。中には
ネタばれを含むものがありますので、予めご了承ください

また、基本的に投下速度は作者の暇さ加減に左右されます。投下スピードが速い時
もあれば非常に遅い時もあるので、まったりだるだる気楽にくつろいで頂ければ幸
いです

中には掲載された作品が「これ何処かで見たんだけど?」的な内容が含まれる場合
があるかもしれませんが、多分それは本作者が他のスレでの投下を全て破棄してし
まった事による副産物です。基本的に本作者が書いた(手掛けた)レスしか掲載し
ませんので、全然別の作者さんとネタがかぶっていた場合には、それはたまたま偶
然です。パクっている訳では無いのでその点についてはご理解ください


それでは投下を開始します
421 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 00:09:02.63 ID:zOAlse20
2 :◆sdM9TY622s [sage]:2009/05/10(日) 11:42:48.23 ID:nu0bZB.0


        ベジータ「………エルゴの王?」
422 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 00:09:57.26 ID:zOAlse20


3 :◆sdM9TY622s [sage]:2009/05/10(日) 11:43:55.30 ID:nu0bZB.0
???「古き英知の術と我が声によって今ここに召喚の門を開かん…」

???「我が魔翌翌翌力に応えて異界より来たれ…」

???「新たなる誓約の名の下にトリスが命じる」

???「呼びかけに応えよ…異界のものよ!!」

      チュドオォォォォン



ベジータ「……ここは何処だ?」

誰かの声が聞こえたと思うと俺は見覚えのない部屋に居た。
423 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 00:10:51.81 ID:zOAlse20
4 :◆sdM9TY622s [sage]:2009/05/10(日) 11:45:04.86 ID:nu0bZB.0
???「うまくいったかしら…って、人間?」

ベジータ「誰だ、貴様は?」

???「あのー。はじめまして…あ、あの…私、トリスって言います」

トリス(何で人間が?…まさか失敗?ど、どうしよう)

ベジータ「ここは何処だ?」

トリス「あ、蒼の派閥の本部です…一応演習場の近くです…はい」

ベジータ「蒼の派閥?聞いた事ないな」
424 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 00:11:48.56 ID:zOAlse20

トリス(会話は出来るみたいね、一応。それにしても何か凄いオーラが
    出てるんですけど)

トリス(ま、まあコミュニケーション取れるなら取っておかないと不味い
    わよね。私の護衛獣なんだし……多分)

トリス「と、ところで…あなたのお名前を教えて頂きたいんですが…」

ベジータ「俺様の名前?ふん!良いだろう。良く覚えておけ」

ベジータ「俺様の名前はベジータ様だ!」
425 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 00:13:16.16 ID:zOAlse20
6 :◆sdM9TY622s [sage]:2009/05/10(日) 11:49:18.48 ID:nu0bZB.0
トリス(何でこんなに偉そうなのかしら?)

ベジータ「おい、そこのお前、トリスとか言ったな」

トリス「は、はい!」

ベジータ「さっき蒼の派閥とか言っていたが、ここは西のm」

フリップ「無駄口はそこまでにしてもらおうか?」

ベジータ「何だこいつは?」

トリス「フリップ様よ。私の試験監督なの」
426 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 00:14:18.46 ID:zOAlse20
ベジータ「試験監督?」

フリップ「ふははは、トリスよ。どうやら低級な獣人を呼び出したようだな」

フリップ「メイトルパの獣人と言えばその風貌からも分かるように獣の姿を
     しているからこそリィンバウムの人間にはない力や瞬発力、持久
     力、その他の特殊能力を持っているのだ」

フリップ「しかし、お前が召喚したのは猿のしっぽが生えているだけの人間!」

フリップ「これではそこらの平民と大差ないわ。護衛獣としてどれほど役に立つやら」
427 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 00:15:10.71 ID:zOAlse20
ベジータ(こいつ!言いたい放題言ってくれるじゃねぇか)

ベジータ(俺様を只の尻尾が生えているだけの平民だと!?惑星ベジータ
     の王子であるこの俺s……尻尾?)

ベジータ「…………」フリッ

ベジータ「ぬをおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
     おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
     おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
     おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
     おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
     おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
     おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
     おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
     おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」

トリス・フリップ・ラウル「!!!!!」ビクッ
428 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 00:16:20.43 ID:zOAlse20
ラウル「どうしたんだい?ベジータ君?」

ベジータ「俺様に尻尾が戻ってきたーーーーーー」

フリップ「おい君…」

ベジータ「ついにサイヤ人の象徴とでも言うべき尻尾が!!!!!」

ベジータ「俺様の尻尾がーーーーー」

トリス「聞いちゃいないですね」(テンション高ぇ)
429 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 00:17:18.78 ID:UAdddsDO
ひまぁぁぁぁぁ
http://www.majam.org/p/pmem.cgi?1258124816
430 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 00:17:24.45 ID:zOAlse20
数時間後


ラウル「落ち着いたかい?ベジータ君」

ベジータ「う、うむ。ぬ?お前は誰だ?」

ラウル「あぁ、私はこの子の一応師匠みたいな者だ。今日は試験管補佐と言った処かな?」

トリス「あなた少しはしゃぎ過ぎよ」

ベジータ「む、むぅ」

フリップ「あのー、そろそろ試験を始めたいんだがもう良いかな?」
431 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 00:18:19.36 ID:zOAlse20
トリス「あ、はい!大丈夫です」

ラウル「彼も落ち着いたようですし大丈夫でしょう」

フリップ「ゴ、ゴホン!…ともあれお前と共に試験を受けるべき護衛獣はここに召喚された」

フリップ「ではトリスよ!お前の召喚した下僕と共に、これより始まる戦いに勝利せよ。
     奥に魔物を待機させておる。護衛獣と力を合せ、見事勝利をおさめるのだ」

トリス「ええええええっ?魔物ーーーー?」

トリス「あ、あのー…もしもしっ?そんなこと…聞いてないんですけど」

フリップ「お前の戦うべき相手はこの者たちだ」
432 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 00:20:32.53 ID:zOAlse20
トリス「え?えとえと…」

トリス「!!!」ピコーン

トリス(人間に近いとはいえ、尻尾が生えてるんだし獣人には違いないはず!だったら
    それなりに戦闘も…)

ベジータ「おい!トリスとか言う奴。俺様は家に帰りたいんだが西のm」

トリス「ベジータさん!!!」

ベジータ「何だ?」

トリス「目の前の魔物を私と一緒に倒してくれたら、後で家まで送ってさしあげます」
433 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 00:21:30.53 ID:zOAlse20
ベジータ「本当だろうな?」

トリス「勿論です!」

ベジータ「…フン!良いだろう」

フリップ「それでは試験開始!」ベジータ「ギャリック砲!」

         チュドオォォォォン

ベジータ「フン!それでは家まで送って貰おうか」

トリス・フリップ・ラウル「…えええええぇえぇぇぇ!?」
434 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 00:22:33.44 ID:zOAlse20
トリス「や、やりーっ?」

ラウル・フリップ「…………」ポカーン

ラウル「…………はっ!」

ラウル「フ、フリップ殿、試験結果の報告を…」

フリップ「!!!そ、そうだった。み、見習い召喚師トリスよ。試験の結果を
     持って今よりお前を…正式な蒼の派閥の召喚師とみなす?」

ラウル「おめでとう」

フリップ「なお、派閥の一員となったお前には、相応の任務が命じられる。いったん
     自室へと戻り呼び出しを待つがいい…以上だ!」
435 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 00:23:27.60 ID:zOAlse20
ベジータ「お、どうやら終わったようだな。では家まで送って行って貰おうか」

トリス「あ、あのちょとだけ時間良いかしら?この後任務についての報告が有るから」
    その後、必ず家まで送るわ」

ベジータ「まぁ、少しくらいならば良いだろう」

トリス「ありがとう」
436 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 00:24:19.59 ID:zOAlse20
一時間後


フリップ「トリスよ。お前に最初の任務を与える。心して聞くがよい」

フリップ「先ほどの試験で、蒼の派閥の所有する建造物にかなりの被害が出た」

トリス「え?」

フリップ「しかし、お前が弁償できるだけの財産を持っていないのは、ここに居る
     誰もが知っている。そこで……だ。お前はこれより護衛獣と共に、修行
     を兼ねた資金探しの旅に出るのだ」

トリス「え?あの、ちょっと?」

フリップ「なお、任務の期間は、そこの護衛獣が壊した弁償代分の資金が集まった時、
     それをもってこの任務の完了とする」
437 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 00:25:18.63 ID:zOAlse20
トリス「……」

ベジータ「…おい、トリスとか言う奴」

トリス「……」スクッ

トリス「うじうじしてても仕方ないわ!資金探しの旅に出るしかなさそうだし、
    こうなったらやってやるわよ!!!」

ベジータ「おい、俺は家に帰りたいんだが…」

トリス「……」チラッ

トリス(確かにこの人の所為で旅に出る羽目になったけど…私が召喚した護衛獣
    なんだし、責任は私にもあるわ。そうよ、この人を使いこなせないようじゃ
    いつまでたっても半人前のまま。必ず完璧に扱えるようになってやる!!!)
438 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 00:26:23.79 ID:zOAlse20
トリス「しばらく私はあなたが壊しちゃった所の弁償しなくちゃいけなくなったし
    ……何時までかかるか分からないから少しだけで良いから手伝ってよ、ね?」

ベジータ「確かに俺様の所為でもあるが…」

トリス「よし!じゃあ決まり!弁償しきったら家まで送ってくわ」

ベジータ「なっ?……くっ。まあ良いだろう!俺様の所為だと言われ続けても寝覚めが
     悪いからな。だが返済しきったら今度こそ家まで送れよ?」

トリス「良いわ!約束する。…じゃあはりきって、しゅっぱぁ〜つ」
439 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 00:27:19.12 ID:zOAlse20
そんな感じで、私はこのベジータさんという人?を、元居た世界に還してあげる前に
弁償代を稼ぐための旅に出なくちゃいけない羽目になったんだけど…



         ネス「あれ?僕、空気?」


         どうなる事やら……続く?
440 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 00:29:29.37 ID:zOAlse20


          第0話 旅立ち前日(笑)

               完
441 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 00:30:59.31 ID:zOAlse20

             第1話 流砂の谷
442 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 00:33:00.43 ID:zOAlse20
トリス「さ〜て、ではでは、改めて資金探しの旅に出発するとしますか」

トリス「……と、その前に」

ベジータ「何だ?」

トリス「ねぇベジータさん。これからしばらく一緒に旅をすることになるんだし、
    他人行儀で片っ苦しいからさ。『ベジータ』って呼んでも良いかな?」

ベジータ「フン!何だそんな事か。俺は別にそんな呼び名にいちいち拘ったりはせん」

ベジータ「貴様の好きなように呼べ。ただし、あまりにも可笑しな呼び方をしやがると
     後で消し炭にしてやるからそれだけは心に留めておくんだな」

トリス「分かったわ。これからよろしくね?ベジータ」

ベジータ「フン」
443 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 00:35:52.55 ID:zOAlse20
トリス「と、まぁそれはそれで良いとして…問題は何処に向かうかよね」

ベジータ「そんなもの決まっているだろう。金を持っていそうな奴のところに行って根こそぎ
     奪ってくるしかあるまい」

トリス「……ベジータ。あんたはこれ以上の罪を私に重ねさせたいの?」

ベジータ「だがしかし、貧乏人の所に行っても集まる物でもあるまい」

トリス「……それはそうなんだけどさ。ああぁぁ!!!誰かお金をたくさん持ってて、その癖
    ちっとも使わないで、いえ、使っていたとしても全然余裕があって、困っている人に
    無償で配ってる奇特な人はいないのかしら?」クルッ

トリス「何処に向かえば資金が稼げるか………てぇぇえええええええっ!?」
444 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 00:38:38.78 ID:zOAlse20
ベジータ「どうした?」

トリス「あ。あそこ見て!!!」

ベジータ「街道の休憩所だな、誰か襲われているが。…襲っている人数は6人。凶器は
     全員サバイバルナイフのみか。しかしナイフは威嚇にしか使っていないな。
     あの持ち方では、いざ近接戦闘になったr」

トリス「何冷静に分析してるのよ!助けるわよ!!!」
445 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 00:40:40.52 ID:zOAlse20
ベジータ「しかし襲われている奴らはあまり金を持ってなさそうだぞ。助けたところで
     あまり弁償代の足しになるとも思えんが…」

トリス「何言ってんの!こんな街を出てすぐにイベントらしき物が発生したのよ?これを
    見逃す奴は居ないわ!!!たとえ、今回の件で大した成果が得られなくとも次に
    進むための重要なフラグが立つのよ!」

ベジータ「イベント?フラグ?何の話だ?」

トリス「良いから!!!もしかしたらベジータを家に送るの、意外に早くなるかもしれないのよ?」

ベジータ「!!!!!…良いだろう」 トリス「さっ、行くわy…」

ベジータ「破っ!」

            チュドオォォォォン

盗賊たち「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁあああああぁぁぁぁあああああああああああ」

トリス「………………」
446 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 00:42:28.68 ID:zOAlse20
行商人「あ、あぁぁあ危ない所を助けて戴いてあああああ有難うございます」

トリス(あちゃあ、完全にびびっちゃってるわね。まぁあんなの見せられたら
    誰でもこうなっちゃうか)

行商人「わわわわわわ私に出来る事ならば何でも致しますゆえ、でででででで、
    ですから、何卒、何卒命だけは…」

トリス(これじゃあ誰が襲ってるのか分からないわ)

行商人「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい
    ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい
    ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

トリス(どうするかなぁ?)
447 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 00:44:07.55 ID:zOAlse20
ネス「まぁまぁ、行商人さん。落ち着いて下さい」

行商人「へっ?」

トリス(あら、ネス?居たんだ。気付かなかった)

ネス「実は僕達、こう見えても召喚師なんです」

行商人「は、はぁ」

ネス「勿論、さっきからそこで暇を持て余しているツンツン髪の彼も召喚師です」

ベジータ「……」

行商人「そうなんですか」
448 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 00:46:11.06 ID:zOAlse20
ネス「ここまで言えばもうお分かりになったと思いますが、先程あなたを襲っていた
   盗賊、あいつらをぶちのめした光の球は召喚術の一種です」

行商人「?はい」

ネス「本来なら召喚術を盗賊相手に使うのもどうかと思ったのですが、あなたの身に
   危険を感じたので、思わず彼が術を使い、助けた…とまぁ、つまりこういう訳
   です。びっくりしたかもしれませんが、あなたを助けるためにやむを得ず、使
   わなければならなかった。と、そうご理解ください」

行商人「……あぁ、成程。すみません。召喚術など、お目に掛った事が今までありま
    せんでしたので…成程ねぇ。人づてから聞いただけの知識しかありませんで
    したが、いやはや、凄いものですな、召喚術というものは」

トリス(どうやら落着きを取り戻してきたみたいね)
449 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 00:47:18.72 ID:zOAlse20
トリス「そうなんですよぅ。本当はもっとスマートに助けたかったんですけど…」

行商人「いえいえ。タネが分かればもう大丈夫です。そうでしたか。召喚師さんでしたか。
    危ない所を助けていただいて、有難うございました」

トリス「いえ、お気になさらず」

行商人「そうだ。お礼と言っては何ですが、これを差し上げましょう。私も他の行商人から
    受け取ったのですが、何せ使い方が分からず持て余していた物です。…もしかしたら
    召喚師さんなら使い方が分かるかもしれません」

トリス「ありがとう。大切に貰っておくわね」
450 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 00:48:17.31 ID:zOAlse20
         『トリスは”懐中時計”を手に入れた』

行商人「おそらく異界の物だと思われますが、針が無いんですよね。もしかしたら壊れている
    かもしれませんが…」

トリス「大丈夫!気にしないで」

行商人「そう言って頂けると幸いです。では私達はこれで…」

トリス「うん!気を付けてね?」

行商人「では……」
451 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 00:51:12.20 ID:zOAlse20
ネス「さて、じゃあ僕らも一旦町に戻ろう?」

トリス「へ?何で?」

ネス「盗賊たちをこのままにしておくのも危険だろう。目が覚めたらまた人を襲うかもしれない」

トリス「それもそうね」

ネス「だから役人に連絡してくる必要がある。こいつらをロープか何かで縛ったら街に戻ろう」

トリス「分かったわ。…ほら、ベジータ!何時までもそんなところでふてくされてないで戻るわよ?」

ベジータ「……チッ」
452 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 00:52:49.14 ID:zOAlse20
 〜翌日〜

ワイワイガヤガヤ

トリス「ふぁぁぁ。…何だか外が騒がしいわね。何かしら?」

            トントントン

トリス「おはようネス、ベジータ。外が騒がしいみたいだけど、何かあったの?」

ベジータ「さぁな」

ネス「漸く起きてきたか。…まぁ良い。どうやら高札が立ったらしくてな」
453 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 00:54:49.44 ID:zOAlse20
トリス「高札?」

ネス「野党達の手配書だよ。昨日捕まえた連中が根城を白状したらしい」

ネス「流砂の谷といってな。北にある険しい谷間に隠れていたようだ」

トリス「ふ〜ん。流砂の谷ねぇ。でも高札を立てる意味って?」

ネス「それはな…」

????「よーーーし!!!これだあああぁぁっっっ!!!!!!」

トリス「!!!???」
454 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 00:56:19.66 ID:zOAlse20
????「ふふふ、この賞金が手に入ればどれだけ治療費が必要になろうとも
     大丈夫だぜ」

トリス(声でけぇ。ついでに体も)

????「この野党団の賞金は俺が貰ったああああぁぁぁ」

ネス「冒険者か」

トリス「冒険者ねぇ」

ネス「彼らはこういう荒事で旅の資金を稼ぐからな。高札は彼らの仕事の情報源
   というわけさ」
455 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 01:00:05.88 ID:zOAlse20
トリス「それにしても、ずいぶんと自信あったみたいね、あの人。体もでかかったし。
    結構強そうだったし」

ネス「さぁ、どうだろう?冒険者というものはえてして自信家だからな。騎士団ですら
   手こずっているらしい相手にどこまで通用するものやら」


トリス「………ねぇ、ネス、ベジータ?」

ネス・ベジータ「何だ?」

トリス「野党をやっつけて役所に突き出せば、かなりのお金が手に入るわよね?」

ネス「……な!?」
456 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 01:02:43.80 ID:zOAlse20
ネス「何を考えているんだ!トリス」   ベジータ「良いアイディアだ」

ネス「そんな事出来る訳……いや、まぁ出来るか。ベジータがいるなら」

トリス「でしょでしょ?グッドアイディアでしょ?」

ベジータ「貴様にしてはなかなかだ。それで行くか」

ネス「しかし…うぅん」

トリス「何よ?何か不安要素でも?」

ネス「いや…昨日は何とかごまかせたが、これから先もベジータが放つ不思議な光線
   や光の球を何と説明すれば良いのかと思ってな」
457 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 01:05:12.29 ID:zOAlse20
トリス「昨日と同じで良いんじゃない?」

ネス「昨日のは相手が何も知らない一般人だったからこそごまかせれただけだ。召喚術
   を見た事のある人間からすれば、あれが召喚術の類では無い事は一目瞭然だ」

トリス「それもそうね」

ベジータ(召喚術?昨日からそんな事ばかり言っているが意味が分からん)

ネス「何か対策を考えねばな」

トリス「対策ねぇ…う〜〜〜ん」
458 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 01:06:25.86 ID:zOAlse20
トリス「!!!!!そうだ」

ベジータ「何か思いついたのか?」

トリス「ええ!ベジータ!あなたはこれから先、私の許可なくあの不思議な攻撃を行うの
    を止めて貰うわ」

ベジータ「何だと!?」

トリス「そもそも、あなたのその攻撃方法の所為で弁償代をかき集める旅に出る羽目に
    なったんだから当然でしょ?これ以上の被害を出さないためにも当分は大人し
    くしてもらうわ」

ネス「君にしては珍しく的を射た意見だな」

ベジータ「…ぐぅ」(正当過ぎて言い返せないとは)
459 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 01:09:45.41 ID:zOAlse20
ネス「しかしそれだと大幅な戦力ダウンは必至だな。こんな状況で野党退治はやはり
   無理が…」

トリス「ちょっとちょっと。何弱気になってんのよ?ベジータは普段は光線とか使わ
    ないけど使えないって訳じゃないのよ?いざとなったら使って貰えば野党な
    んて怖くないわ!!!」

ベジータ「既にギャリック砲やエネルギー弾の類が使えないのは決定済みなのか…」

ネス「………まぁ良い。君とここで議論していても仕方ない。見に行くだけ見に行っ
   てみよう」

トリス「やった〜〜〜」
460 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 01:11:02.31 ID:zOAlse20
〜流砂の谷にて〜

ベジータ「……ほう」

トリス「なっ?」

ネス「なんて数だ。正直僕もこれほどに大規模な集団だとは予想していなかった。
   軽く40人は居る」

ネス「ベジータに光線を使わせずに勝利するのは厳しすぎる。ここは見つからない
   うちに引き上げよう」

ベジータ「フン。俺様も過小評価されたもんだ」

トリス「ん?ちょっと待って!!!様子が変よ?」
461 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 01:13:34.48 ID:zOAlse20
野党の長「こいつらか。わしらを退治しに来たって間抜けな冒険者は」

???「はあぁ。簡単な仕事だって自信満々に言ってたのは何処のどいつだった
    かしら!?」

???「あっさり捕まったじゃないの!!!」

????「いやー。まさか、こんなに大所帯とは思ってなくってなぁ。失敗失敗♪」

???「こいつ…」

野党の長「自分達の立場が分かって無いみたいだな」

????「分かってるってばさ。今の俺たちはまさに絶体絶命…だけどそういう状況
     こそが美味しいのさ。奇跡の大逆転こそが物語の王道ってね?」

野党の長「ほう…どうやら痛い目を見たいらしいな」
462 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 01:15:30.62 ID:zOAlse20
トリス「あの人、さっき街で見た冒険者だ」

ネス「やはり普通の冒険者だとああやって捕らわれてしまうのは当然だったな」

トリス「助けるわよ!」

ネス「助けるだって?あの人数にかなう訳無いだろ?まして彼らの様な赤の他人の為に
   僕らが頑張る必要なんてない」

トリス「ネス、私は同じことを何度も言うような人間じゃないの…」


ベジータ「『旅に出てすぐにイベントらしき物が発生したのよ?これを見逃す奴は居ないわ!!!
     たとえ、今回の件で大した成果が得られなくとも次に進むための重要なフラグが立つ
     のよ!』か?」

トリス「!!!!!!」
463 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 01:17:20.96 ID:zOAlse20
トリス「さすが私の護衛獣だけあるわ!その通りよベジータ!!!」

トリス「今日は体調が悪いから明日にしよう。今日は本気を出さなかったから良い結果が出なかった
    ……なーんて言い訳はもう良い飽きたし、聞き飽きたわ!道は何時だって前にしか開かれな
    い。しかも、人の命が関わっているようなこの状況で逃げ出すなんて、私には出来ない!」

ベジータ「くくくっ。俺は早く家に帰りたいからな。この戦闘に勝利すれば賞金が出るのなら、願ったり
     叶ったりだ。俺も参加してやる」

                   ダダッ


ネス「トリス!ベジータ!待つんだ!!!」
464 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 01:19:31.52 ID:zOAlse20
        キィン チュイン

野党「ぐはっ」

???「えっ?」

トリス「さぁ、逃げて!!!」

????「ありゃま、まさか本当に助けが来るとは」

         バキイィィッ

ベジータ「何だ。ちっとも大したことないな」

        チュドオォォォォン

ネス「やれやれ。結局戦う羽目になるのか」
465 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 01:21:51.76 ID:zOAlse20
野党の長「今の術は…召喚術?貴様ら、召喚師か?」

野党の長「てめぇの差し金か!?冒険者!!!」

????「んーにゃ、違うね。だってよ…」

        パサッパサッ

野党「な、縄が?」

????「このとおり、捕まってたフリしてただけだよ」

???「親分であるあんたを確実に倒すためにね」

????「筋書きは変わっちまったが、大逆転と行かせてもらおうか?」
466 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 01:23:32.69 ID:zOAlse20
〜数分後〜

???「どうもありがとう。おかげで助かったわ」

ネス「気にしないで下さい。こちらがやりたくて勝手にやった事ですので」

トリス「あはは。そうそう♪気にする事なんてないって」

ネス「むしろ、いらぬ手助けじゃなかったかと思うと、心苦しいです」

???「あら。そんな事ないわ」

???「こっちだって、そこのお調子者が立てた計画だったから、不安いっぱい
    だったもの」
467 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 01:25:09.43 ID:zOAlse20
????「まぁまぁ、上手くいったんだし良いじゃねえか」

???「………」

????「ゴホン!まぁなんだ。それはともかく折角助けて貰ったんだし…自己
     紹介しとかないとな?」

????「俺はフォルテ。見ての通り、剣士だ」

???「私はケイナ。よろしくね」

ネス「ネスティ・バスク。蒼の派閥の召喚師です」

トリス「トリスです。私も一応、蒼の派閥の召喚師です。それと…」
468 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 01:26:56.01 ID:zOAlse20
ベジータ「………」

トリス「あそこでほとんどの野党を半殺しにしてぶっきらぼうに佇んでるのがベジータよ」

トリス「私の護衛獣なの」

フォルテ「ほう、二人とも召喚師さんだったのか」

ネス「ええ」
469 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 01:27:51.54 ID:zOAlse20
フォルテ「なぁ召喚師さん達よ。ついでと言っちゃあなんだが一つ頼まれてくれないか?」

トリス「はい?」

フォルテ「ここでノビテル連中をしょっ引いてもらえるように、騎士団を呼んできてほしい
     んだが」

ケイナ「誰か見張ってないと、目を覚ましたら逃げてまた悪だくみするかもしれないし…
    お願いできないかしら?」

トリス「仕方ないわね…OK!ちょっと待ってて」

トリス「ベジータ、ネス。一旦街に戻るわよ?」

ベジータ「ああ、早く賞金も貰いたいしな」 ネス「………」
470 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 01:29:24.69 ID:zOAlse20
結局、騎士団が野党を引き取りに来た頃には、既に夕暮れがせまって、夜になる一歩手前だった。
どうやらフォルテさん達にも事情が有りそうだし、賞金は山分けって事になったけど、それでも
十分貰えそうだからこれはこれで良かったのだろう。

しかし、ベジータの戦闘能力の高さには舌を巻くばかりだ。

光線の類が使えないと戦力が大幅にダウンするとかネスは言っていたけれど、体術だけで十分
凄い。なんせ、今日の野党達のほぼ全てを一瞬で蹴散らしてしまったのだから…

あいつを使いこなす事なんて私に出来るのだろうか?
471 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 01:47:57.33 ID:zOAlse20
◆◆◆◆◆◆◆◆

ベジータ「おい、トリス」

トリス「何?」

ベジータ「ここは何処だ?」

トリス「蒼の派閥本部の私の自室だけど?」

ベジータ「そういう話ではない。ここは…もしかしたら地球じゃないのか?」

トリス「地球?何それ?」

ベジータ(やはり俺の感覚は間違っていなかったようだな。ここは別の世界という奴か)

トリス「どうしたの?ベジータ。地球って?」

ベジータ「フン。何でもない。…一つだけ聞いておく。貴様、本当に俺様を家に送り返せる
     んだろうな?」

トリス「ええ、それだけは約束するわ」

ベジータ「…………まぁ良い。今はその言葉を信じておいてやる。他にアテもないしな」


       ?????どうしたんだろう。ベジータの奴。変なの
472 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 01:49:58.21 ID:zOAlse20

           第1話 流砂の谷

              完
473 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 01:51:52.26 ID:zOAlse20

             第2話 聖女の横顔
474 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 01:53:05.70 ID:zOAlse20
トリス「で、旅に出たものの結局ここに戻って来る羽目になってるのね…」

ベジータ「仕方ないだろう。資金を稼ぐ旅なのだから、極力節約せねばならないん
     だからな」

ネス「宿代も馬鹿にならないしな」

ネス「……だが、そうは言ってもこの部屋も次の見習召喚師が使う予定だから、早
   々に出て行かないと」

トリス「そうね。その子に迷惑かけちゃうもんね」

トリス「では、そろそろ出発しますか?」

ネス「ああ」

ベジータ「さっさとな」
475 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 02:03:07.19 ID:zOAlse20
………………………
…………………
……………
………



トリス「お待たせしました〜」

フォルテ「んーにゃ。俺達も今来たところさ」

ケイナ「そうそう。もう少し早く来る予定だったんだけど、この馬鹿が中々起きなくてね」

トリス「ハハハ」

フォルテ「……コホン!さて、まぁそれは置いといてだ。お前さん達これからどうするんだ?」

ネス「ファナンから街道沿いに旅する予定です」

トリス「正直言って、これといったアテはないんですけどね。取り敢えずお金の匂いがしそう
    な方にブラブラと旅をしようかなって」
476 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 02:04:33.71 ID:zOAlse20
フォルテ「ふーん」

フォルテ「なぁ、もし良かったらその前に俺達の用事につい会ってくれないか?」

ベジータ「用事だと?」

フォルテ「おいおい、怖い顔は勘弁してくれ。もしかしたらお前さん達にとっても良い話かも
     しれないんだ」

ケイナ「レルムの村って知ってる?ここから北に行った小さな村なんだけど…」
477 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 02:05:35.99 ID:zOAlse20
トリス「レルムの村?」

フォルテ「ああ、そこにな。怪我でも病気でも奇跡で治しちまう『聖女』が居るらしいんだ」

トリス「ええええーーーーー?」

ベジータ(怪我や病気を治す?ナメック星で会ったデンデとかいうガキと同じ能力か…)

フォルテ「聞いた事ないか?」

ネス「……一応、噂なら」

フォルテ「おおう。あるのか!」

ケイナ「本当なんだ…」
478 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 02:08:24.81 ID:zOAlse20
トリス「その話本当なの?ネス」

ネス「あくまで噂だがな。真偽は定かじゃない」

フォルテ「なぁに。噂が流れてる位なんだから十分だ。実際に行って確かめる価値はある」

フォルテ「上手くすりゃ、お前の記憶も戻るかもしれないんだぜ?」

ケイナ「うん…」

トリス「記憶?もしかしてケイナさん…」
479 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 02:24:47.30 ID:zOAlse20


           『曖昧であやふやな物語』

480 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 02:26:05.28 ID:zOAlse20


曖昧で空虚な夢物語。あの出来事はそう表現するのが一番適切だと、ぼくは思う。

何よりも整合性がとれていた物語だったし、相当数の伏線もちりばめられていた。
警察もちゃんと活躍して現実感はあるし、ある意味必然だったとも言える。

       常識で常套で論理的。奇妙で奇怪で摩訶不思議。

    推理物としても、オカルト物としても満足の行く物語だった。


……ただ、ただ一つだけマイナスがあったとすれば、それはぼくがあの場に居たって
ことだろう。

          ぼくはあの場に居るべきではなかった。

確かにぼくは常日頃から魑魅魍魎とよく出会うわけだけれど……それらはあくまでも
魑魅魍魎と呼ばれる「人間」達のことであって、魑魅魍魎自体ではないのだ。


         まさか本物の魍魎に会う羽目になるなんて…
481 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 02:27:01.59 ID:zOAlse20

                 0


         どんな物語にも始まりは存在する
     しかし、終わりという物は必ずしも存在する訳ではない
482 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 02:28:13.06 ID:zOAlse20


                 1


              「フン、成程な」


顔の整った線の細い男が立っていた。「青年」と呼ぶには些か年を取っている。しかし
「オジサン」と呼ぶにしても何処か妙に幼さを残したままの男だ。


「中々面白い物語ではあったが……しかし、やはりこの『物語』は、俺の読みたい『物
語』では無かったようだな」


男はそう呟くと、空を見上げて目を細める。この満天の星を見て何か思う処があるのだ
ろうか?

    と、ここで私は男の手に狐の御面がしっかと握られているのに気付いた。
483 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 02:29:06.71 ID:zOAlse20
御面と言えば御祭の屋台等で並んでいる御面を思い浮かべるが、男が手に持っているあ
の御面、中々精巧に作られている。白く塗られた下地に、真っ赤な色で彩られた目や口
元のラインが良く栄えており、また、下地は白と言ったが、場所によってより立体的に
見える為の工夫なのだろう、少しずつ色の深さに違いが見え隠れしている。


一目見ただけでもかなりの手間が掛けられているのが良く分かる。このレベルの御面が
本当にそこら辺の御祭の屋台で……。


御面についてそこまで考えたところで、私は「はぁ」と溜息をついた。随分と無駄な思
考に時間を掛けたと思ったからだ。この辺りで行っている御祭と言えば綿流しの御祭位
だが、まだまだ先の話だ。それに……大体御祭の屋台なんかでわざわざ探して買わなく
ても、御面屋さんで買えばいいのだ。


そんなくだらない思考に時間をかけてしまった自分に呆れつつ、男の顔に視線を戻した。

男は相変わらず空を見上げたままだ。まるで私なんか目に入って無いように。まるで私
なんかどうでも良い存在だと言わんばかりに…。
484 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 02:30:45.65 ID:zOAlse20
     「やはり、自分の世界の『物語』の終わりを…俺は読みたい」


             男はまた唐突に呟いた。

この世界に住んでいる……いや、この場合は『この物語の住人』と形用した方が適切だ
ろう。『この物語の住人』のほとんどは、恐らく全く理解出来ない台詞の類であろうが、
残念ながら特殊で特別で不可解な、この世界、この物語においてそんな位置付けである
存在の私には、その台詞は彼という存在を十分に示してくれる台詞だった。


彼は、恐らくこの世界の住人では、この物語の住人ではないのだ。他の世界、他の物語
から迷い込んだ…あるいは招かれざる客と知っていながら、敢てやって来た、送り込ま
れた人間なのだろう。


本来ならばそんな現象、絶無で皆無な現象なのだが、既にあの戯言遣いと出会ってしま
った事のある私には。既にあの物語を体験してしまった私には。そして今、この男を目
の前にしている私には……そんな絶無で皆無な現象でも、上手く説明は出来ないが、何
故かとても酷く納得できた。
485 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 02:32:54.17 ID:zOAlse20
…まぁしかし、しかしながらだ。もし自力で帰れるのであれば、自分の世界の物語を早
々に読み進めたいのならば、『この世界』から『自分の世界』とやらに帰れば良いのに、
と私はやっぱり思った。


「うん?くくっ、残念ながら今の俺には無理だ。あの戯言使いとの対決で十三階段のほ
とんどが今使えない。…というより、ここに来たのはどうやら俺一人らしいからな」

     そして、漸く男は私の方に顔を向け、淀みなく言い放つ。

「しかも俺はここを早々に引き揚げるつもりなんてないさ。確かにこの世界の物語を読
んで満足はしないだろうが…興味がない訳じゃぁ無い」

                …こいつ!

   「おっと、自己紹介がまだだったな。どちらでも良い事でもあるが…」
   「俺の名前は……いや、人類最悪の名前なんか聞いても嬉しくあるまい」

         「俺の事は『狐さん』とでも呼べばいい」
486 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 02:34:12.03 ID:zOAlse20
     男は笑いながら手に持っている狐のお面を着物の帯にはさんだ。

何故だろう?別にこいつとこれから行動する訳じゃないのに、私は少し気分が高翌翌翌揚して
いた。

  この男なら、もしかしたら本当に物語を終わらせてくれるかもしれない。
  この男なら、本当にこのくだらない世界を破壊してくれるかもしれない。

                そして……

    この男なら、もしかしたら私の望みも叶えてくれるかもしれない。

そんな……一種の甘えとも、浅はかな願望とも取れるような感情を私は男に抱いていた
のか、気がつけば私の足は勝手に、男の後ろ姿を追いかけていた。
487 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 02:35:08.70 ID:zOAlse20


        『狐さん』は「くっくっ」と喉を鳴らして笑うと


「じゃあ『俺』の世界の物語を読む前に、数多の人生を繰り返す輪廻とやらをぶち壊し
て、この世界の物語を読み切っとくか」

        そう、可笑しそうに、犯しそうに、侵しそうに言う。



            ……あぁ、『物語』は終わらない。
488 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 02:36:44.26 ID:zOAlse20

                 2


………………………
…………………
……………
………



  「でも、私の輪廻を断ち切るって、具体的には何かいい案でも有るの?」

私は尋ねる。そうだ、あの圭一や『戯言遣い』、つまりはこの『狐さん』を打ち倒した
存在の『いぃ』でさえ、私の輪廻を止める事は出来なかった…

           「ふん。無いな」

『狐さん』は、はっきり言い切った。流石ね…戯言使いに敗れたとはいえ、やはり人類
最悪。既に具体的な案を持っているなんて……

          「……てぇ、無いの!!!???」

私は久しぶりに(もしかしたら今までの人生で初めて)大声をあげてツッコミを入れた

「無いな。そもそも俺は自分から動く人間じゃあ無いんだ。十三階段が居なくちゃあ俺
なんか、基本スペックでは、人類最弱を謳っているあの戯言遣い以下だ」

     そうなのだろうか?とてもそうは見えないけれど…
489 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 02:38:01.71 ID:zOAlse20
「下手すりゃ使える手駒が居なけりゃ、戯言を使わない戯言遣いよりもひどいかもな」

『狐さん』は、自分を卑下している筈なのに、何処か嬉しそうに語る。この人の本心が
まるで読めない…


「じゃあ、私を輪廻から解放してくれるのは……」当分、後?…と、質問しようとした
のだが

「フン。というより世界から弾き出された…もとい世界に関われない身になったから何
も出来ない人間になってしまった、とでも形容した方がしっくり来るか」

……どうやら私に質問のターンは与えてくれる気は無いらしい。狐さんは相変わらず勝
手に続きを話す。
490 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 02:40:18.42 ID:zOAlse20
「ん?何か言ったか?くくっ。まぁそう心配するな。確かに俺は世界に関われないが、
それは俺の世界での話だ。ここでは関係あるまいさ。何も出来なくなって久しいが、な
ぁに徐々に馴らしていけば良いだけの話だ」

狐さんは足を止め、何処か遠い場所を見つめて語る。一体何をしでかしたら世界に関わ
れない程の仕打ちを受けるのだろうか?

しかし、どうせ私の質問など軽くあしらわれるか、無視されるかのどちらかに決まって
いるので。私も狐さんと同じく、遠い場所を見つめて、これからの事について思想を巡
らした。


    ……さぁ、今回の人生は何処からアプローチをかけようかしら?
491 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 02:43:41.95 ID:zOAlse20
………………………
…………………
……………
………


とか何とか、偉そうな事を考えるのにかなりの時間を費やしてしまった事を後悔したの
は、狐さんが押し黙ってその場から動かなくなった、二時間後だった。

              「あの〜狐さん?」

         「どうした。梨花?用でも足したくなったか」

「違います。何時までここに居るつもりなのですか?もうそろそろ日が暮れますですよ」

狐さんは「そんな事も説明しなくちゃお前は分からんのか?」とでも言いたそうな顔で
私に説明する。

「どうしてさっきからここでボーっとしているかって?フン。決まっているだろう?家
が無いからだ」

言い切った。自分がホームレスである事をここまで偉そうに言いきれる人間を私は見た
事がない。
492 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 02:46:56.31 ID:zOAlse20
「戯言遣いは教師だったからここでの宿には困らなかったらしいが、俺は違う。そもそ
も戯言遣いは俺の娘の手引きでこの世界に来たみたいだが…俺はなんとなく、あいつら
が楽しそうに会話しているのを偶然目撃してね。それで興味半分、ちょいと『物語の隙
間』、世界が重なり合ったが故の『位相のずれ』とでも表現する奴を見つけて入り込ん
だわけだ」

           うわぁ。本当に最悪だ、この人

             ……ん?ってあれ?

             「どうした。梨花」

「狐さん。ちょいとかひょいとか、そんな軽い感じでここに来たみたいだけど、帰る当
てはあるの?」

「そうだな……俺が入り込んだその場には、俺以外の誰も居なかったから元の世界に戻
れる保証は、今のところ皆無に等しいな」
493 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 02:49:22.03 ID:zOAlse20
どうするつもりなのだろう?帰れなかったら、向こうでもいろいろ問題が発生するだろ
う。この人を心配している人間も居るだろうし、……その人たちの事をあまりにも考え
ずに行動している様に私の眼には映る。本当にこの人に私の今回の人生を任せても大丈
夫なのだろうか?と頭に不安がよぎる。

 「しかしまぁ、そこら辺は木の実やるれろ辺りが必死に捜索してくれるだろう」

狐さんは、やはりというか当然というか、私の心配そうな表情には全く触れず続ける。

「俺を捜索中、木の実が『空間』に違和感を感じるだろうし、聞き込みはるれろがそこ
ら辺の人間を『人形』にして、てっとり早く情報が集まるだろう」

「そう考えると意外に早く迎えが来るかもしれんな。少し急ぐ必要が有るかも……フン。
まぁ良いか。その場合はあいつらを待たせれば良いだけの話だ」

私は何度も転生を繰り返し、長い悠久とも言えるほどの時間を過ごしたが、今回ほど他
人に失望したのも初めての経験だった。

「だがそんな事を今から考えても仕方あるまい。ほら、さっさとお前の家に案内しねぇ
か。そろそろ腹も減ってきたし、夏とはいえ、夜は少し肌寒いしな」


        もしかして、私は……人選をミスったかもしれない
494 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 02:50:25.38 ID:zOAlse20

                 3


私達はそこから無言で帰宅した。私から話しかける言葉も特に無いし、彼も私に振る話題
が無かったからだ。

……いや、違う。本当は私は彼に話さなければならないとは言わないまでも話す事は沢山
有ったし、きっと彼も私に話す事が皆無であった訳では無いだろう。

    しかし、私達は別に特にこれ以上の確認はせず、黙々と歩いた。

              うん。少し気まずい。

そんな私の心の声をビビッとキャッチしたのかどうかは不明だが「さて、これからどうす
るかな」と、彼は呟いた。
495 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 02:51:30.09 ID:zOAlse20
ここで会話を続かせないと、ここから帰宅までおよそ一時間は掛かるであろう道のりを終
始無言のまま完遂しなければならなくなるので、私も

       「どうするもこうするも、やるしかないでしょ?」

と返した。

だが私のそんな頑張りは虚しく、「はぁ、面倒臭いなぁ。俺がやらなくても誰か勝手に俺
の代わりに働いてくれねぇかなぁ」という彼の溜息と共に出た言葉によって、再び沈黙が
訪れた。


   私はそんな沈黙をくれた感謝の印として、彼にドロップキックをお見舞いした。

   その後、私達は家に帰るまで一言も口を聞かなかったのは言うまでもない……。
496 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 02:52:45.91 ID:zOAlse20

                 4


家に帰宅後、沙都子にはなんて言い訳をすれば良いのか凄く心配したが、どうやらそれは
杞憂の様だった。

    「ほら狐さん!!おかわりは、まだまだ沢山ありましてよ?」

沙都子は両親を亡くしてからというもの、叔父と叔母に執拗に虐めを受けてきた。……い
や、あれは最早虐めというレベルではない。虐待、もしくは拷問とでも表現した方が良い
レベルの扱いだ。

    「まぁ、待て沙都子。お前、俺がそんなに食う様に見えるのか?」

家で私以外の誰かと夜を過ごすなんて、過去を思い出して、沙都子には耐えられる筈はな
いのだ。現に圭一でさえ、聡子と共にこの家で一晩過ごした事など…ないのだから…。

  もしかしたらこの人なら…今までとは全く違った結果を出してくれるかも…

「フン。俺は女に…とりわけ年下の女に好かれやすい性質なだけだ。そんなに俺に期待す
るな。後でまた失望する羽目になるぞ?」
497 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 02:55:24.94 ID:zOAlse20
この人は何でこうも私をがっかりさせたいのだろうか?…極上のSなのだろうか?………
って、今、私声に出してた?

「こんなの読心術の初歩だろう。訓練すれば誰でも出来る。それこそ人類最強である俺の
娘でなくともな」

          「?何の話をしてますの?狐さん」

やばい。沙都子に明らかに不審に思われた。前回の人生では『いぃ』が部活のメンバーに
事の真相を話したときは、それなりの段階を追って、皆を上手く丸めこみ、その方向に誘
導してくれていた。…しかし、今回はそれが全くない。皆の前で無垢な少女を演じている
梨花ではなく、悠久の時を生きる梨花に、じかに、それも心で思っているだけの事に対し
て、台詞を口に出して返している。

これでは不審に思わない方が不思議だ。ましてや沙都子は部活メンバーの一員でもあり、
それなりに頭が回る…気付かないわけがない。
498 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 02:57:12.01 ID:zOAlse20
    「確かにあの戯言遣いは上手くやり込めたようだな。さすがは俺の敵だ」

         …だから声に出しての会話は止めて欲しい

    「しかしお前はまだ読心術が使えないのだからしょうがないだろう?」

     「さっきから、意味が分からないですわ。どうしたんですの狐さん?」

沙都子。出来れば今は会話に入って来ないでもっと、「どうしたんだろう?」とか黙って
不審がっててくれないかな?……何とかあなたが納得出来る言い訳を今考えているんだか
ら…これ以上の状況は頭の処理が追いつかないの

            「そうだぞ沙都子。お前は少し黙ってろ」

……出来れば、あなたにはもっと黙っていて欲しい。さらに出来る事なら一生口がきけな
くなって貰いたい。
499 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 02:58:23.41 ID:zOAlse20
         「梨花?さっきから狐さんがおかしいのですが…」

あぁ、だから今私に話しかけないで…お願い沙都子。今度アイスか何か奢るから、それで
許して…

      「物で釣ろうなどと考えるとは、お前中々良い感じで腹黒いな」

どうしようどうしようどうしようどうしよう?いっその事、警察でも呼んで……こんなに
怪しい住所不定の男が、子供二人で暮らしている家に上がり込んでいるとなれば大石辺り
が喜んでしょっ引いてくれるに違いないし……

         「いやいやいやいや、ちょっと待て梨花」

            うん!それが良い。そうしy…


「分かった。俺が悪かった。もう少しお前の一人漫才を見ていたかった気もするが………、
もう良い。そろそろ助け船を出してやる」

                 助け船?

そう言ったが早いが、狐さんは沙都子を御姫様だっこ状態で持ち上げながら立ち上がった。
500 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 02:59:39.33 ID:zOAlse20
          「わわっ、き、狐さん。何しますの?」

「ん?飯を食ったんだから風呂に決まっているだろう。見ての通り俺は小食でそこまで食
べないんだよ。と、くれば次にとる行動は風呂と相場が決まっているだろう?」

             「そ、そんなの初耳ですわ!」

                  私も初耳だ。

「そ、それに食べ終わったなら後片付けをしないと!お風呂に入ってからだと、また汚れ
ちゃいますわ」

       「そんなの梨花に任せておけばいいだろう。なぁ梨花?」

これが彼の言う助け船なのだろうか?沙都子の貞操の危機も感じたが、今はそれどころで
はないので、「そうです☆任せるのです!」と私は今回の人生が始まってから最高の笑顔
を二人に向けた。

            「り、梨花の裏切り者〜」

    沙都子の叫び声が聞こえたが、私は笑顔を崩さずに二人を見送った。
501 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 03:08:46.52 ID:zOAlse20
……………
………


数十分後

先ほどまでバスルームで聞こえていた沙都子の叫び声も漸く収まりを見せ、狐さんは沙都
子を既に私が準備してあった布団に横たえさせた。

             「気絶したのですか?」

私がそう問うと、狐さんは「あぁ、お子様には刺激が強すぎたみたいだな。特に純情すぎ
る子供には」と、意味ありげに口元を釣り上げた。

「心配するな、何もしちゃいないさ。ただ沙都子の目の前で俺が着ている着物を脱ごうと
しただけだ」

たかがそれだけで気絶する物なのだろうか?私は大人の男と風呂に入ろうとするシチュエ
ーションで沙都子の症状がぶり返していないか心配する。
502 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 03:10:24.72 ID:zOAlse20
「フン。心配するなと言っただろう?大丈夫だ。そいつの発作は起こっちゃいない」

            信じても良いのだろうか?

「おいおい、少しは信じ……まぁ良いか。お前が信じようが信じまいがそれは同じことだ」

   狐さんは面倒臭そうに私と沙都子を見やった後、溜息交じりに話し始めた。

「しかし、だからと言ってこれではちっとも『話』、もとい『物語』が進まんな。俺はさ
っさと読み切ってしまいたいのだが……仕方ない。では、少しばかり説明してやる。本当
は面倒臭いが話が何時まで経っても進まんからな。……俺がお前の心で思っていた事に、
何故沙都子に何も説明しないまま口を出したのかだって?……簡単だ。そうすれば沙都子
は俺に興味を持つ。『俺の言動は何を根拠にしているのだろう?』とかな。今回は風呂の
おかげで一時的に記憶が飛んだだろうが、それでも完全に消える訳じゃあ無い。忘れるだ
けだ。何かのショックと共に思い出すだろう」
503 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 03:12:46.30 ID:zOAlse20
「お前は戯言遣いと本格的に行動を開始したのが奴と学校で出会ってからだから分からん
かもしれんが、俺の敵も聞き込みとかぬかしながら、色々なところで伏線を張ってたんだ
ろうぜ」

       複線?推理小説とかで使われるっていう後で回収する奴?

「いや、字が…まぁある意味合っているかもしれんな。今回用意しなければならない伏線
の数は相当な量に上る。あながち間違ってはいないだろう。……くくくっ。まぁ良い。続
けるぞ?俺の敵もこう表現したと思うが、こいつは、お前の人生は、いわば一つの推理ゲ
ームだ。……ならば、伏線を張っておいた方が後で動きやすくなるだろうさ」

まさか…私から説明を受けて、家に帰ってくる道の途中でこれからの筋道を全て考えてい
たとでも言うつもりなの?この人……もしかしたら『いぃ』よりも……。

「フン。だから過大評価はするなと言っているだろう?後で失望する羽目になるぞ?」

       この人は…全く。どうやら間違いなく人類最悪の様だ
         私は、古手梨花はこの時、心からそう思った…
504 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 03:14:14.90 ID:zOAlse20
この日の夜に、出会ってまだほんの数時間も経っていないというのに、私と狐さんは今後
の事についての計画を立てた。


まずはこうだ。狐さんは私と沙都子が学校に行っている間、毎日この家で怠惰に過ごし、
放課後、皆と顔馴染みに成る為に、私はクラスの友人(部活メンバー以外も)を家に招き
皆で盛り上がる。

次に、狐さんは警察関係者と密になるために毎晩、飲み明かしながら麻雀をして帰ってく
る。

仕上げに、多分二日酔いになるだろうからそれを利用して入江診療所に入り浸り、入江と
接触。その後診療所でどうせ出会う事になるだろう富竹と、鷹野三四についてメイド喫茶
と呼ばれる場所で(主に鷹野がどういった服装、コスプレ(?)が似合うかを熱く)議論
し、信頼関係を作り出す。

そして、それぞれ盛り上がっているシチュエーション中に、何回かタイミングのよさそう
な場面で、例の伏線とかいう「如何にも探りを入れてますよ」的な雰囲気を醸し出す…ら
しい。
505 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 03:15:17.33 ID:zOAlse20
……何処からどう見ても私の目には狐さんが遊んでいるようにしか見えないが、当の狐さ
んは「フン。嫌なら別の奴にでも頼むんだな」等と公言しており、私はしびしぶこの作戦
に了解せざるを得なかった。

     この人は…全く。……どうやらやっぱり間違いなく人類最悪の様だ。

私は、古手梨花はこの時、さっきこう思ってから大して時間も経っていないのに心からそ
う思い直した…。

              「くっくっくっ」

      狐さんは溜息をついている私を横目に嬉しそうに笑っていた。

               ……凄く不安だ。
506 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 03:16:38.36 ID:zOAlse20
                 5


今日は入江診療所に来ている。例の雛見沢症候群の件だ。本当なら狐さんも来る予定だっ
たのだが、「今日は気分じゃないな」とか何とか言って、結局来なかった。

        本当にあの人はちゃんと動いているんだろうか?

まぁ、狐さんの事は置いといて……今日は当面の敵である鷹野の確認も込めてやって来た
のだ。

         「へぇ、梨花ちゃんも相変わらず元気みたいね」

柔和な顔で話しかけてくる鷹野だったが、生憎私はもう知ってしまっている。こいつが、
こいつこそが今まで古手梨花という存在を、幾多の世界に渡り手にかけてきた張本人なの
だ。
507 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 03:17:52.72 ID:zOAlse20
私は焦る胸の鼓動を気取られないように、間違ってもこの場で鷹野を殺してしまおうとい
う衝動を気取られないように、平静を装う。

          駄目だ、焦るな。まだ早い。まだだ。

ここで鷹野を私が殺しても、結局私の望みは叶わないだろう。そう、まだ駄目なのだ。ま
だ、全ての事件を裏で操っている奴がもう一人居るんだ。

  そうでなければ、戯言遣いが解決した筈の事件後にまた輪廻を廻る筈がないのだ。

つまり…古手梨花は鷹野や鷹野の息がかかった者に殺されなくても、結局他の誰かに、も
う一人の黒幕に殺されてしまい、輪廻を廻る、という事。


  そのもう一人が、鷹野が企む計画を阻止したその後に梨花のそばに居るその瞬間。

絶対に…居る。必ず、居るその時こそ、最大にして最初で最後のチャンス。それまでは息
を潜めて誰にも気取られないように過ごさなければならないのだ。


          全ては、狐さんの描いたシナリオ通りに……。
508 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 03:18:47.17 ID:zOAlse20
                 6



狐さんは「今日やろうが明日やろうが結局は同じことだ。特に急いだからといって良い成
果が出るとも限らないしな」等と言い訳をし、毎日をただ、だらだらと過ごしていた。

『いぃ』の場合は一つも情報が無いところから色々探りを入れていた筈なので、彼はとて
も忙しそうに見えたが、狐さんの場合はとても暇そうに見える。

しかもほぼ全ての情報が最初から手の内にあり、私が「いぃ」から教えて貰っていない情
報だけ狐さんが独自に探さねばならない筈なのだが…一向に動く気配がない。
509 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 03:20:21.87 ID:zOAlse20
   「一体何時になったら活動し始めるの?……もう綿流しまで日が無いのよ?」

私はとうとう堪えられなくなり、狐さんに詰め寄った。そうでなくともここ数日私は苛々
していた。当然だ。「いぃ」が犯人は鷹野だとすでに教えてくれているのだから、後は私
の輪廻をどうやって廻らないようにするかだけなのだから。


そんな私の焦った表情を読み取ってかどうか、狐さんは面倒臭そうに私を見やった後、溜
息交じりにこう呟いた。

「良いだろう。では…そろそろ動くか。俺の敵風に言うならば『じゃあ、戯言でも始める
か』かな?いや、どちらかと言えば零裂人識の台詞の方がしっくり来るか…『良いだろう。
この事件。殺して解して並べて揃えて晒してやるとするか』…うむ。こっちの方が良いな」

そして、そう呟いた後、今まで気の良さそうな感じだった狐さんの顔が、にぃぃぃぃっっ
と歪んでいく。
510 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 03:21:37.27 ID:zOAlse20
……誰?そこには私の知っている狐さんはいなかった。…本当に一体誰なの?

怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い
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怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い
怖い怖い怖い怖い


あたかも狐さんの目が、獲物を狩る猛獣の目の様に見えた私の眼は、壊れているのだろう
か?私は恐怖で体が動かなくなっていた。
511 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 03:22:34.72 ID:zOAlse20
                 7

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512 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 03:24:05.22 ID:zOAlse20
                 8


………………………
…………………
……………
………

大方の予想通り、解決の展開はほぼ『いぃ』と同じ運びとなった。まぁ、当然と言えば当
然だ。何たって『いぃ』が取った一連の解決策をそのまんまトレースしたのだから、展開
は同じに決まっている。


それよりも驚いたのが、私は狐さんが何も動いていないとばかり思っていたが、どうやら
それは間違いで、私の目が届かない「学校に行っている時間帯」に、大石や入江、富竹と
会っていたらしい。そして私が家にクラスメートを連れて盛り上がっている時にも、何故
か私がトイレに抜け出したタイミングを見計らって伏線を張っていたらしい。……つまり
私が用を足す時間を狐さんは正確に知っていたという事だ(その日の体調や食事のメニュ
ーによって排泄量が変化するのにも関わらず!!!)

狐さんに言わせてみれば「そんなの毎日お前を眺めていれば、それだけでその日のトイレ
に籠る時間位分かるさ」…らしい。


    ……非常に嫌な気分とはこういう事を指すのか。…うん、嫌な気分だ。
513 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 03:26:06.63 ID:zOAlse20
しかし伏線を張るというのは、沙都子の風呂での件と同じく、一度変な空気がそこに居る
者に流れる筈だ。それを私がトイレに行って帰ってくるまでの短時間で私に気づかせずに
戻せる物なのだろうか?

しかも狐さんは皆に「梨花には内緒だ…くくっ、良いな?」等と釘まで刺していた。もう
一度言わせてもらう。それすらも、私がトイレに行って帰ってくるまでの短時間で皆に徹
底できるのか?

いや、これは断じて私の排泄時間が人より長い訳ではない。違うんだ!違うの!絶対違い
ますから!!!

          「くくっ、口調が壊れてきてるぞ。梨花」

         私喋ってませんから!思ってるだけですから!!!

             「くくくくくくくっ」
514 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 03:28:51.92 ID:zOAlse20
「さて…と。無駄口はここまでだ。もっと喜んだらどうだ、梨花?これであらかた終わり
なんだぜ?」

狐さんは相変わらず面倒臭そうに話しかける。ほとんど「いぃ」の真似をしただけのくせ
に。そう口に出さずに思ってやると、やはり狐さんは面倒臭そうに

「良いじゃねぇか。わざわざお手本があるんだから、それの通りやってれば上手くいく事
が多いんだぞ」

 「ちなみに、こいつは俺の考え方じゃあねぇ。俺の孫の…人類最終の考え方だな」

この人に娘がいるとは聞いていたが、まさか孫までいたとは…この人、一体何歳なんだろ
う?

 「今更俺の年齢を聞いたって何になる?それこそ、そんなもん知ろうが知らまいが」

          ……どっちだって一緒だって言うんでしょ?

「くくっ。分かってるじゃねぇか。さて、もうそろそろ良いだろう?最後にお前の輪廻と
やらを解いておいてやる」
515 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 03:30:40.35 ID:zOAlse20
              …ついに輪廻が!!!

 「っと、その前に確認だ。おい梨花。オヤシロ様ってのはここに居るんだよな?」

私は羽入が横に居るのを確認して首を縦に振る。あぁ、漸く私の輪廻を壊す事が…幸せな
日常が…手に入る。長かった。本当に……長かった。

    「……だそうだぞ。伊吹かなみ…いや、今は園山赤音だったか?」

     狐さんが合図したその先、そこには二人の男女が居た。

                  「」

私が二人に声をかける間もなく、狐さんにそこの二人がこの場に居るのは一体どういう事
なのか問いただそうとする間もなく、さらには私が悲鳴を上げる間もなく、二人は羽入に
攻撃を加えた。いや、攻撃なんて生温いものじゃなかった。何と言うか、その…あまりに
も凄まじい速さで私の隣に居た羽入を、そう、殺害した。蹂躙した。殺戮した。破壊した。
滅殺した。

                 「え?」

漸く私がその一声を上げる事に成功したと同時に、背中、いや首に衝撃が走り、私はその
場に倒れ込む……。

     羽入?え?どうなってんの、これ?い…意識…が……え?…あれ?

               「くくくくくくっ」
516 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 03:33:03.48 ID:zOAlse20
                 9


狐さんは倒れた梨花ちゃんと、すでに神としての能力を失い、ただの無残な肉塊となった
『オヤシロ様』を見降ろしながら笑った。

おっと…、私の事は、そうだな。今更になって自己紹介をするというのも些か変な話では
あるが、『園山赤音』とでも呼んでもらおうか。

私、園山赤音はいわゆる学者だ。七愚人の一人と数えられたこともあったが、それももう
過去の話で、今は半ば引退しているような身分だ。

まぁ、それも「あっちの世界」つまり「私達の世界」の話で、こちらでその肩書きを使う
事は無いんだけどね。

しばらくして、私は羽入と呼ばれたオヤシロ様を、私と共に攻撃した逆木深夜に微笑みな
がら話す。

           「案外神様ってのも大した事ないね」

逆木深夜は、「そうでしたね」と嘆息をつく。……どうやらこいつは、神殺しを少しばか
りビビってたみたいだ。
517 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 03:34:45.39 ID:zOAlse20
私は、最早死んでいるオヤシロ様の頭から生えている角を引っこ抜き、自分のこめかみの
辺りに そっとあてがった。

            うん。良い感じだ。良く馴染む。
  しばらくそのままの状態でいると、角が光りだし、私の体の一部と同化した。

          「フン、成程な。そいつが力の源ってわけか」

 狐さんは、すでに常人には姿が見えなくなった私の方を向いてそう言い放つ。

 「しかし、やはりこの『物語』は俺の見たい『物語』では無かったようだな」

狐さんは続ける。まるで私なんか目に入って無いように。まるで私なんかどうでも良い存
在だと言わんばかりに…。いや、実際に視界からは私は消えうせているのだから仕方ない
のか。
518 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 03:37:25.85 ID:zOAlse20
      「やはり、自分の世界の『物語』の終わりを…俺は読みたい」

だったら、早く『この世界』から『自分の世界』に帰れば良いのに…そう思うのはきっと
私だけではないだろう。

     「うん?くくっ、まぁ良いじゃねぇか、折角のラストなんだ」

       そして、狐さんは私の方に顔を向け、淀みなく言い放つ。

「しかし梨花の奴も中々気付かないもんだな。自分を不幸な輪廻の中に閉じ込めているの
がいつも周りでへばり付いてる『オヤシロ様』って事位…」
519 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 03:39:54.28 ID:zOAlse20
「何故いつも梨花が死んでいる時にそばに居る筈の『オヤシロ様』は何も教えてくれない
んだ?何故いつも全ての記憶を引き継いだまま別の世界に移行できる『オヤシロ様』は梨
花に、梨花が殺された後の出来事を教えてくれないんだ?『オヤシロ様』なら、梨花が殺
される前に、危険を察知させる事位簡単な筈だ。何せ梨花にしか視認できないんだからな。
犯人達がこれから起こすであろう行動は幾らでも予測が付けられたはずだし、頼れる人間
が自分しか居なくても、情報があるのならば回避は可能だ」

 「…にも関わらず、大した情報も与えず延々と輪廻だけを廻る法をとった理由は?」

「簡単だ。知らない事に嘘はつけないが知っている事になら嘘がつけるってのと同じ理屈
だ」

                そう。つまりは…

「オヤシロサマという存在が、意図的に梨花の人生の歯車を廻してるって事になる。機械
的に、奇怪的な方向にな」

……それは、その通りだった。あまりにも単純で、あまりにも明瞭で、あまりにも明快な、
そして簡単な答えだった。
520 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 03:40:51.07 ID:zOAlse20
「確かに、この解答には難癖を付けようと思えば、幾らでもつけられる。屁理屈や説明な
んかをこじつける事は可能だ」

「例えば、梨花とオヤシロサマの意識が繋がっているから、梨花が[ピーーー]ばオヤシロサマの
意識も途切れるとか。オヤシロサマには上手く梨花に情報を伝える術、知性を持っていな
かったとか。オヤシロサマが梨花に真相を伝えると能力が使えなくなるとか。そもそもオ
ヤシロサマの力自体が弱まっていたとか。……そんな難癖は、確かにつけれる。だがな」

        狐さんは有無を言わさないような口調で更に続ける。

「……だがな。こじつけた処でそれが何だってんだ?そもそも何故そんな回りくどい屁理
屈や説明わざわざを述べる必要がある?」

「そんな後からどうとでもなりそうな解釈なんてのは所詮は只の蛇足だ。物語の本筋とは
関係ない。つまりだ、どういう事なのかと云えば、もう分り切ってしまっていて面白くと
も何ともないが、『初めに抱いた疑問そのもの』こそが唯一無二にして絶対の答えなのさ」
521 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 03:42:18.03 ID:zOAlse20
…狐さん。あんたそこまで分かってたんなら、梨花ちゃんに最初っから言ってやれよ。教
えてやってたらもっと手っ取り早くに解決できた筈でしょ?

「俺はそこまでお人よしじゃあないんでね。それに、これは梨花自身が気付かねばならな
い解答だ。教えてやる義理なんてないね」

…どうだか。結局は、梨花ちゃんが悲しまないように、梨花ちゃんが一番大切に思ってい
た『オヤシロサマ』が間違っても犯人であると気付かれないように、……そして、梨花ち
ゃんが幸せでいられるように、望んだ未来が訪れる様に……自分自身が悪役だと思われた
としてでも、今回は走り回ってたんでしょ?


            「……フン。さぁ、どうだかな」

狐さんは私の心を読み取ったかのように、「どうだかな」ともう一度呟いて、視線を私の
方から空に戻した。

そう何度も「どうなんだかな」と、呟きを反復しながら空を見上げる狐さんは、少し、切
なそうに、いや、何だか寂しそうに見えた。
522 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 03:44:13.68 ID:zOAlse20
もしかしたら罪滅ぼしなのだろうか?彼が以前一緒に時間を過ごした…その、円朽葉ちゃ
んという子と、梨花ちゃんの人生があまりにも酷似していたから…


     「それを聞いたところで何になる?そんなの知ってても知らなくても…」

              結局は同じことですか?狐さん

      「その通りだ。園山…いや、もう園山ではなく『オヤシロ様』か」

   別にどっちでも良いけどね。名前なんて私にとっては只の記号みたいなもんだし

「くっくっくっ。確かにそうかもな。おっと、こっちは自己紹介がまだだったな。初めま
して『二代目オヤシロ様』。俺の方も、どちらでも良い事でもあるが…まぁ一応、言っと
いてやる。俺の名前は……西東天だ」

    「だがしかし、人類最悪の名前なんか聞いてもやはり嬉しくあるまい」

    狐さんはさっきからの視線をそのままに、空に向けたまま軽い口調で言う。

         「俺の事は今まで通り『狐さん』とでも呼べばいい」


               分かりましたよ…狐さん
523 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 03:45:05.17 ID:zOAlse20
狐さんは笑いながら手に持っている狐のお面を着物の帯にはさんだ。そして、私と深夜を
交互に見た後に…

「では逆木深夜は、お前がこの世界に飽きて戻ってくるまでの間、十三階段に入れておい
てやる。ただし、伊達でもいいから眼鏡はかけろよ?」

          この人は、本当に眼鏡が好きだな。

       『狐さん』は「くっくっ」と喉を鳴らして笑うと

「フン。じゃあ『俺』の世界の物語を読みに帰るとするか。おい、オヤシロ様よ。俺たち
を元の世界に戻してくれ」
524 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 03:45:57.85 ID:zOAlse20
私は既に自分のものとなったオヤシロ様の力で二人を元の世界に送る。きっとあっちの世
界も大変だろう。あっちの世界には、この私ですら成り代われなかった人類最強の哀川潤
と、さらにそのスペックの全てを凌駕する人類最終、想影真心。いかに私ですら成り代わ
れない才能を持っていた玖渚機関のお嬢様。匂宮雑技団を筆頭とした御伽噺の皆さん……
そして、戯言遣いまでいる。

……あっちに戻るのは、当分はこっちの世界でオヤシロ様を満喫してからでいいか。

狐さんと深夜を無事元の世界に送り届けた後、私は一人、空を見上げながらそんな事を考
えていた。



         ……あぁ、『物語』は漸く終焉を迎える
525 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 03:47:02.62 ID:zOAlse20


           『曖昧であやふやな物語』



                 完
526 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 03:51:11.75 ID:zOAlse20

        佐々木「禁則事項だけどね?」
527 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 03:52:55.86 ID:zOAlse20
キョン「まさか、またこんな風にお前と話す機会が来るなんて
    思わなかったよ」

佐々木「あれ?もしかしてキョンは僕と会いたくなかったのかな?」

キョン「そんなんじゃねーけどさ。……何かな。中学の卒業式が終わった
    後さ、お前とはもう会う事は無いんだろうなって、そんな感じが、
    そんな感覚が俺にはあったんだ」

佐々木「薄情だな、君は……」
528 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 03:56:51.08 ID:zOAlse20
キョン「だからそんなんじゃねーって。お前はさ…、何つーか、その…、
    言葉では上手く表現できないが、俺とはきっと住む世界が違う住人
    って感じてたんだ」

佐々木「………」

キョン「だってそうだろ?お前は勉強もスポーツも出来たし、老若男女問わず
    人気があって明るい。まさに才色兼備の完璧超人の超優等生。かたや
    俺は勉強も運動も普通。そこら辺探せば何処にでもいるような掃いて
    捨てるほどいる、取り立てて特に何の才能も特技も持たない凡夫な人間」

キョン「接点がある方がおかしい」

佐々木「……僕はキョンが言っているような、そんな凄い人間じゃないよ」
529 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 03:58:54.96 ID:zOAlse20
キョン「かもな。でもきっと俺以外の大多数の人間も少なからずそう思って
    んじゃないのかと俺は思うよ。当時の俺が何の疑いも無くそう思ってたのと
    同じように、な」

佐々木「全く。キョンにまでそう思われていたなんて、ほとほと心外だよ」

キョン「まー、そんなにむくれるなよ」

佐々木「君がさっきから、むくれるような発言ばかりしてる所為だろう?」

キョン「おいおい、子供かお前は?」

佐々木「………」

キョン「やれやれ」
530 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 04:00:06.09 ID:zOAlse20
佐々木「でも彼女とは何時かちゃんと話をしてみたいな」

キョン「お、それだったらちょうど良かった」

佐々木「?」

キョン「実はハルヒから頼まれごとがあってさ。今度お前と会って話がしたい
    から、連れて来てくれないかって」

佐々木「へぇ」

キョン「俺としては、どうせハルヒの迷惑が炸裂すると思うから、あんまり
    お勧めしないんだが……どうする?」
531 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 04:02:39.23 ID:zOAlse20
佐々木「いやいや、是非御会いしたいと伝えておいてくれ。僕も彼女と話が
    したかったんだ。丁度良い」

キョン「お、分かった。ハルヒに伝えておくよ。日時はまだ決まってないみたい
    だから、決まり次第連絡する」

佐々木「了解」

キョン「ま、何の話か知らんが、ロクでもない事だろうから、心の準備だけは
    しっかりして来いよ?」

佐々木「くくっ。心配性だな、キョンは…」
532 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 04:08:27.35 ID:zOAlse20
キョン「まさか、またこんな風にお前と話す機会が来るなんて
    思わなかったよ」

佐々木「あれ?もしかしてキョンは僕と会いたくなかったのかな?」

キョン「そんなんじゃねーけどさ。……何かな。中学の卒業式が終わった
    後さ、お前とはもう会う事は無いんだろうなって、そんな感じが、
    そんな感覚が俺にはあったんだ」

佐々木「薄情だな、君は……」
533 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 04:09:24.38 ID:zOAlse20
キョン「だからそんなんじゃねーって。お前はさ…、何つーか、その…、
    言葉では上手く表現できないが、俺とはきっと住む世界が違う住人
    って感じてたんだ」

佐々木「………」

キョン「だってそうだろ?お前は勉強もスポーツも出来たし、老若男女問わず
    人気があって明るい。まさに才色兼備の完璧超人の超優等生。かたや
    俺は勉強も運動も普通。そこら辺探せば何処にでもいるような掃いて
    捨てるほどいる、取り立てて特に何の才能も特技も持たない凡夫な人間」

キョン「接点がある方がおかしい」

佐々木「……僕はキョンが言っているような、そんな凄い人間じゃないよ」
534 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 04:12:02.53 ID:zOAlse20
キョン「かもな。でもきっと俺以外の大多数の人間も少なからずそう思って
    んじゃないのかと俺は思うよ。当時の俺が何の疑いも無くそう思ってたのと
    同じように、な」

佐々木「全く。キョンにまでそう思われていたなんて、ほとほと心外だよ」

キョン「まー、そんなにむくれるなよ」

佐々木「君がさっきから、むくれるような発言ばかりしてる所為だろう?」

キョン「おいおい、子供かお前は?」

佐々木「………」

キョン「やれやれ」
535 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 04:13:05.63 ID:zOAlse20
佐々木「……さっきの」

キョン「ん?」

佐々木「…さっきの話で『当時の俺』って言ったよね?」

キョン「ん?ああ。言ったな」

佐々木「だったら、『今』は違うのかい?」

キョン「んー。そりゃまぁ、そうだな」
536 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 04:14:11.89 ID:zOAlse20
佐々木「本当だろうね?」

キョン「疑ってるな」

佐々木「まさか」

キョン「……ま、今でもお前の事を凄い人間だとは思ってるんだが、俺も
    高校に入って色々な事件に巻き込まれたからな。世界が前よりも
    広がったのさ。世の中には俺の想像を超えた物がまだまだ存在
    するんだってな」

佐々木「ふふ、涼宮さんのおかげだね」

キョン「佐々木、間違ってるぞ。正しくはハルヒの『おかげ』で広がった
    んじゃなくて、ハルヒの『所為』で広げさせられたんだ。無理矢理な」
537 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 04:16:23.96 ID:zOAlse20
佐々木「くくっ。どっちでも同じことだよ」

キョン「まぁそりゃそうだけどさ」

佐々木「彼女にはお礼を言わなくてはならないな。キョンを成長させてくれて
    有難う、と」

キョン「何故お前が俺の成長を喜んどるんだ。お前は俺の母親か?」

佐々木「気にすることはないさ」

キョン「やれやれ」
538 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 05:30:36.64 ID:zOAlse20
佐々木「でも彼女とは何時かちゃんと話をしてみたいな」

キョン「お、それだったらちょうど良かった」

佐々木「?」

キョン「実はハルヒから頼まれごとがあってさ。今度お前と会って話がしたい
    から、連れて来てくれないかって」

佐々木「へぇ」

キョン「俺としては、どうせハルヒの迷惑が炸裂すると思うから、あんまり
    お勧めしないんだが……どうする?」
539 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 05:32:06.46 ID:zOAlse20
佐々木「いやいや、是非御会いしたいと伝えておいてくれ。僕も彼女と話が
    したかったんだ。丁度良い」

キョン「お、分かった。ハルヒに伝えておくよ。日時はまだ決まってないみたい
    だから、決まり次第連絡する」

佐々木「了解」

キョン「ま、何の話か知らんが、ロクでもない事だろうから、心の準備だけは
    しっかりして来いよ?」

佐々木「くくっ。心配性だな、キョンは…」
540 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 05:33:03.21 ID:zOAlse20
………………………………
…………………………
……………………
………………
…………
……

佐々木「(あれから一週間たったけど、まだキョンから連絡が来ない。
    こっちからは何回掛けても繋がらない)」

佐々木「(……忘れてるってことは無いだろうし、着信拒否にされてたり
    もしないだろう。後考えられるのは、何かに巻き込まれてるって処かな?)」

佐々木「(でも一週間も連絡がとれないのは少し長い)」

佐々木「(こんな時橘さん達が居てくれれば、キョン達の情報があるんだろうけど、
    ここ最近三人とも見かけないし…)」

佐々木「さて、どうしようかな」
541 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 05:35:47.50 ID:zOAlse20
〜キョン宅前〜


佐々木「気になってキョンの家の前まで来ちゃったけど」

佐々木「家がビニールシートで覆われてる?それにこの警察官たちは一体…」

            ワイワイガヤガヤ

佐々木「とにかく取材陣の近くに行って報道している内容を聞こう」



アナウンサー「えー、ここが殺害された少年の自宅です。少年は腹部を突き破られ
       ており、死因は出血死と見られています。また、少年は……」

佐々木「なっ!!!???」
542 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 05:41:38.25 ID:zOAlse20
佐々木「(キョンが……死んだ?何の冗談だ?えっ?ウソでしょ?だって、
    ついこの間まで一週間前には私と一緒に会って…えっ?まさか、そんな…)」

佐々木「(ウソだ。嘘だ、嘘だ嘘だうそだウソだ嘘だ。そんなのって、そんなのって!!!)」


アナウンサー「では、近所の方の話も聞いてみましょう」

アナウンサー「あっ、学生の方ですか?少し、お話を伺いたいのですが」

佐々木「えっ?」

アナウンサー「彼はどういった性格だったんでしょうか?」

佐々木「わ、私に聞いてるんですか?」

アナウンサー「はい」
543 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 05:42:57.54 ID:zOAlse20
佐々木「いえ、あの……私は…」

アナウンサー「警察は他殺と見て捜査を開始したようですが、彼は他人から恨まれるような…」

佐々木「そんな…キョンは、恨まれるような人間じゃ…」

アナウンサー「キョン?キョンというのは殺害された少年のニックネームで良いんでしょうか?」

佐々木「いえ、あ、あの……」

アナウンサー「それではキョン君の交友関係についても少し伺いたいのですが」

佐々木「………」
544 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 06:03:50.87 ID:zOAlse20
〜翌日〜

佐々木「今朝の朝刊…昨日の事件も載ってるな」

佐々木「……キョン」

佐々木「まだ、信じられないよ。テレビのニュースにも新聞にも君の記事が
    載ってるっていうのに…。君に一体何があったのかな?殺されてしまう
    ほどの何が…」

佐々木「……いや、考えてみれば宇宙人、未来人、超能力者とその抗争の真っただ中に
    居るって事だけで、既に死と隣合わせだったのか…」

佐々木「……今日は学校を休もう」
545 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 06:08:50.57 ID:zOAlse20
佐々木「……………………………………………………」

佐々木「……………………………………………………」

佐々木「……………………………………………………」

佐々木「……………………………………………………」

佐々木「……………………………………………………」

佐々木「……………………………………………………」
546 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 06:09:52.66 ID:zOAlse20
佐々木「……………………………………………………」

佐々木「……………………………………………………」

佐々木「……………………………………………………」

佐々木「……………………………………………………」

佐々木「……………………………………………………」

佐々木「……………………………………………………」
547 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 06:11:04.62 ID:zOAlse20
佐々木「……………………………………………………」

佐々木「……………………………………………………」

佐々木「……………………………………………………」

佐々木「……………………………………………………」

佐々木「……………………………………………………」

佐々木「……………………………………………………はぁ」

佐々木「結局、何もしないまま一日を終えてしまった」

佐々木「でも、何もする気が起きない。……キョン」
548 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 06:12:19.60 ID:zOAlse20
佐々木「……TV」

佐々木「……」スッ カチッ

       ヴィン

TV「さて、今日の御勧め商品は…」

佐々木「……」ポチッ

TV「はいはいはい。せやから、それがあかんねん!」

佐々木「……」ポチッ

TV「私を置いていかないで!あなたが…」

佐々木「……」ポチッ

TV「私は私の見える世界を皆に見せるための機械だ」
549 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 06:18:23.39 ID:zOAlse20
佐々木「……」ポチッ

TV「ですから日本を変えていくには…」

佐々木「……」ポチッ

TV「さて、先ほど入ってきたニュースですが、またもや悲しいお知らせです。
  先日報道された男子高校生の妹さんがお亡くなりになったそうです」

佐々木「…………えっ?」

TV「また、二人の両親も現在行方不明となっており、警察はこの一家が何らかの
  事件に巻き込まれているのではないかとしており、今後も事件の捜索が…」
550 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 06:36:21.68 ID:zOAlse20
佐々木「(妹さんや御両親まで!?…彼が殺される理由は予測がつく。恐らく
    涼宮さんへのアプローチのつもりだろう。でも家族まで殺害、行方不明
    となると…)」

佐々木「(もしかして、彼を世間から、社会的に抹[ピーーー]るのが目的?)」

佐々木「(彼の家族まで被害に遭ったのは、彼に関する証拠を消すため…)」

佐々木「キョンはまだ生きていて、今も何かの事件に巻き込まれている可能性が
    ある?」
551 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 06:38:32.55 ID:zOAlse20
佐々木「(………………仮に宇宙人達の仕業だとすると、まず涼宮さんの前からキョン
    という存在を消す。この場合、何も本当に殺さなくてもキョンを何処かに監禁
    しておき、キョンが殺害されたという情報を報道する)」

佐々木「(いくら涼宮さんが『普通』を嫌っていたとしても一般メディアの情報を完全否定
     はしない筈)」

佐々木「(涼宮さんがキョンが死んでしまった事に対して何らかのアクション、この場合
     恐らくキョンの復活を願う。その時の力の働き方を宇宙人達は観測)」

佐々木「………………一応の筋は通る。でも」

佐々木「只の希望的観測に過ぎないけどね」
552 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 06:42:26.35 ID:zOAlse20
佐々木「(けど、この仮定が間違っていたとしても、私は勿論、涼宮さんもキョンの
    死なんか望んではいない筈。私や涼宮さんに、本当に願望を実現する能力が
    あるんだったら)」

佐々木「キョンはきっと生きている」

佐々木「…私に出来る事は」
553 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 06:43:54.52 ID:zOAlse20
〜翌日・北高校門前〜


佐々木「もうそろそろかな」

佐々木「……………」

佐々木「……………あっ」

国木田「えっ?あれ、佐々木さん?」

谷口 「?」
554 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 06:45:50.28 ID:zOAlse20
佐々木「やぁ国木田君。久し振りだね」

国木田「佐々木さん、どうしてここに?」

谷口 「おい国木田。誰だよ、この美人は?」

国木田「……もしかして、キョンの事?」

佐々木「理解が早くて助かるよ」

谷口 「………」
555 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 06:47:44.20 ID:zOAlse20
国木田「分かった。本当の処言うと授業受ける気もあんまりなかったんだ」

佐々木「有難う」

国木田「構わないよ。あっ、じゃあ谷口。僕体調悪くなったんで学校休むってHRの
    時言っといてね」

谷口 「は?おいおいマジかよ?」

国木田「頼んだよ。よしっ行こう、佐々木さん」

佐々木「あぁ」
556 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 06:58:50.15 ID:zOAlse20
〜市内の中央病院〜

国木田「何で中央病院?」

佐々木「おや?総合病院はお気に召さなかったかな?内科か歯医者の方が
    良かったかい」

国木田「そういう意味で言ったんじゃないよ」

佐々木「だってさっき体調が悪くなったから学校を休むと友人に言っていただろう」

国木田「あれは方便だよ。そんな所で変に真面目にならなくて良いから」
557 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 07:01:08.32 ID:zOAlse20
佐々木「ゴメン、冗談だ」

国木田「冗談言う場所でもないけどね」

佐々木「これは手厳しい」

国木田「そろそろ話を進めて欲しいんだけど」

佐々木「うん、そうだね。酷くその通りだ。じゃあ、お話しようじゃないか、国木田君」
558 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 07:02:49.44 ID:zOAlse20
佐々木「取りあえず病院に来た理由はこれだね」

国木田「制服?」

佐々木「うん、流石に夏休み前で多くの学校が短縮授業でも、この格好でウロウロ
    するのは補導される心配があるからね」

国木田「まぁ、そりゃそうだね」

佐々木「でも病院に来ている学生をわざわざ職務質問しに来る警察は居ないだろう?」

国木田「確かに」
559 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 07:03:44.93 ID:zOAlse20
佐々木「それに病院で本当に診てもらっても、結局は健康体なんだから、医者からは
    特に何も言われない」

国木田「……成程ね」

佐々木「君は本当に理解が早いね。助かるよ」

国木田「いやいや、それを言うなら佐々木さんの方が断然凄いでしょう。こんなに
    悪知恵が働くんだから」

佐々木「悪知恵かな?」

国木田「悪知恵以外の何だってのさ?優等生とは思えないくらいだよ」
560 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 07:05:01.24 ID:zOAlse20
佐々木「くくっ、優等生ね」

国木田「どうしたの?」

佐々木「いや、キョンに言われた事を思い出してさ」

国木田「…………」

佐々木「『お前は勉強もスポーツも出来たし、老若男女問わず人気があって明るい。
    まさに才色兼備の完璧超人の超優等生。かたや俺は勉強も運動も普通。
    そこら辺探せば何処にでもいるような掃いて捨てるほどいる、取り立てて
    特に何の才能も特技も持たない凡夫な人間。接点がある方がおかしい』ってね」

国木田「それ……キョンが?」

佐々木「あぁ、九日前の事だ」
561 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 07:07:50.75 ID:zOAlse20
国木田「そっか」

佐々木「うん、僕は全然優等生なんかじゃないのにね。今だってこうして、不良してるし」

国木田「そうだね」

佐々木「それに、自分を過小評価しすぎだ。むしろ僕にはキョンのような、誰とでもわけ隔て
    なく、自由に付き合っていける才能が欲しかった」

国木田「そうだね」

佐々木「それと、そこら辺探せば何処にでもいるって間違えてると思うんだ。僕はこんなにも
    キョンを探しているっていうのに、ちっとも見つかりやしない」

国木田「うん。……そうだね」
562 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 07:09:48.55 ID:zOAlse20
佐々木「そこでだ。僕はこれから、キョンが僕と別れてから殺害されるまでの一週間に何が
    あったのかを知ろうと思う」

国木田「……」

佐々木「知らない人間から見たら滑稽と思われるかもしれない。知り合いからだって、馬鹿
    だと思われるかもしれない。でも、僕は警察が捜査した結果をただ単に報道する
    新聞やTVの情報に左右されたくない。鵜呑みにしたくない」

国木田「佐々木さん」

佐々木「これは僕のエゴで我儘だ。でもね国木田君。僕は僕の手で、僕の目で真実を確かめ
    たいんだ」

佐々木「だから協力してほしい」

国木田「……ま、そこまで言われちゃ引き下がれないよね。男として」

佐々木「有難う」

国木田「良いさ、別に。僕だってキョンの友人なんだからね」
563 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 07:11:49.62 ID:zOAlse20
国木田「でも一つだけ聞いても良いかな?」

佐々木「何だい」

国木田「何故僕を選んだの?高校生になってからキョンと会って話し
    してるくらいだから知っているとは思うけど、僕とキョンは
    もう中学の頃と違って、いつも一緒に居るって訳じゃない」

国木田「キョンの周りにいつも居るのは…」

佐々木「涼宮さんを始めとしたSOS団の面々の事かい?」
564 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 07:14:23.03 ID:zOAlse20
国木田「そう。だから最初にアプローチを掛けるんだったら僕じゃなくて
    SOS団の方が先だと思うんだ」

佐々木「くくっ。もっともな意見だ」

国木田「だったら何故?」

佐々木「いくら高校で離ればなれになったとはいえ、今でも僕はキョンの事を
    ある程度は分かっているつもりだ。勿論君の事もね」

国木田「?」

佐々木「君ならキョンの違和感を感じ取ったと思うからさ。何だかんだいって、
    君は人の心に関する洞察力がずば抜けているからね」
565 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 07:16:48.23 ID:zOAlse20
国木田「そんなに褒めてもらっても困るな。誰の心情でも読める訳でもないんだし」

佐々木「でも君はキョンから違和感を感じ取ったんだろう?」

国木田「………まぁ、そうなるね」

佐々木「さて、もうそろそろ良いだろう。聞かせてくれるかな?キョンが殺害
    されるまでの行動を」

国木田「実は……」
566 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 07:17:40.97 ID:zOAlse20
………………
…………
……

佐々木「そうか……北高では」

国木田「うん。キョンが殺されるちょっと前にね。うちの高校でコンピュータ研
    の部長が死んだんだ」

佐々木「それは他殺では無かったのかい?」

国木田「警察も最初は殺人だと思ったみたいだよ。なんせ真昼間の部室で遺体が
    発見されたんだからね」

佐々木「でも実際には」

国木田「そう、実際には他殺ではないだろうって事になったんだ。まぁ、死因が
    心不全だったみたいだし、当然とも言えるけどね」
567 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 07:19:06.81 ID:zOAlse20
国木田「ただ、その頃辺りだよ。キョンの様子がおかしくなったのは」

佐々木「どんな風に?」

国木田「うーん。確か、そわそわしてたな」

佐々木「そわそわ?」

国木田「うん。後は、あんまり眠れてなかったみたい。目が充血してたし、いつも
    欠伸してたしね」

佐々木「他には?」

国木田「あぁ、SOS団の活動にも参加してなかったよ。というよりも途中から学校にも来なく
    なったから当然だけどね」

佐々木「(これはやはりキョンが何かの事件に巻き込まれた可能性が!!!)」
568 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 07:23:35.51 ID:zOAlse20
佐々木「国木田君、話の途中で申し訳ないが質問しても良いかい?」

国木田「どうぞ」

佐々木「その頃のキョンは一人だった?それとも他に誰かと一緒に行動していた?」

国木田「残念だけどそこまでは分からないな。その時は特に気にも留めていなかったし」

佐々木「そうか。すまない、続けてくれ」

国木田「分かった。で、その部長さんが亡くなってから二日後だったと思うんだ。昼に
    キョンから電話がかかってきたんだ」

佐々木「!!!」
569 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 07:24:35.65 ID:zOAlse20
佐々木「キョンは何て?」

国木田「うん」

〜以下、回想〜

キョン『よう、実は頼みたい事があるんだ』

国木田「どうしたの?もしかしてさっきのメールの事?」

キョン『ああ、そうだ。すまないな』

国木田「どうしたのさ。わざわざ電話掛け直すなんて」

キョン『…あぁ……分かってる。それとさ…もし俺がs……いや、何でもない』

国木田「……キョン?」

キョン『うん、じゃあもう時間だから、俺行くわ。待ち合わせしてんだ』

国木田「キョン、その喋り方。少し怖いよ。そのまま居なくなっちゃいそうな感じで」

キョン『そんなんじゃねぇって。……あぁ、サンキュな』

〜回想終了〜

国木田「……って感じだったんだ」
570 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 07:28:44.26 ID:zOAlse20
佐々木「(所々会話が噛み合っていない。というよりも何処かキョンが上の空で話を
    している?その時既にキョンはかなり追い込まれた状況に居たのか。それに
    恐らくこの会話の流れからして、キョンは自分の死を予測していた。だとしたら、
    やはりキョンは既に……いや、でも、この話が本当ならキョンはまだ生きて
    いる可能性も十分ある。彼の周りには宇宙人、未来人、超能力者、さらには
    神様まで居るんだ。きっと……)」

国木田「佐々木さん?」

佐々木「おっと、すまない。それでメールというのは?」

国木田「えっ?あぁ。『リング』について知っている事があったら詳しくまとめて、教えて
    くれないかってメールだったんだ」

佐々木「『リング』って、あのホラーの?」

国木田「そうそう、それそれ」

佐々木「(『リング』か……)」
571 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 07:30:13.58 ID:zOAlse20
国木田「今時リングってどうかなって思ったんだけど、その時のキョンの声が
    あまりにも鬼気迫る感じだったから」

佐々木「リングについて、知らせたんだね?」

国木田「うん。でも、あんまり時間が無いから要点だけまとめてくれって追加メールが
    来たんだけどね」

佐々木「それで君は」

国木田「学校帰りにキョンの家のポストに、リングの要点まとめた資料を
    放り込んどいたって訳」
572 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 07:31:32.60 ID:zOAlse20
佐々木「その後、キョンから連絡は?」

国木田「来たよ。その日の夜にね」


〜以下、回想〜

キョン『よう、今日はサンキュな。届いてたよ』

国木田「しばらく学校来なかったと思ったら、突然『リング』について教えてくれなんて驚いたよ」

キョン『うん。…………そうか』

国木田「それよりキョン大丈夫?随分声が弱弱しいけど」

キョン「こっちは大丈夫だ……心配すんなよ」
573 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 07:32:35.70 ID:zOAlse20
国木田「本当に大丈夫?無理しないでよ」

キョン『それとさ、しばらく連絡が取れなくなると思うけど大丈夫だから』

国木田「え?うん。……もしかして学校もまだしばらく来ないの?」

キョン『……あぁ、そんな感じかな。じゃあな……おやすみ……元気でな』

国木田「キョン……ちょっとキョン?」


       ツーツーツー

国木田「……キョン」


〜回想終了〜

国木田「今思えば、あの時の会話は何かのSOSのサインだったのかもしれない。
    あの電話、キョンが殺される前日だったし」
574 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 07:34:07.92 ID:zOAlse20
佐々木「そうか…」

佐々木「(成程。少し繋がってきた。キョンが何故殺されたのかが。そして国木田君が
    様々な可笑しな点を見逃しているのにも納得がいく。これはやはり、意図的に
    仕組まれた事件の一つだ)」

佐々木「(確かに僕がもし国木田君のように、キョンの周りに居る魑魅魍魎といっても
    差し支えのないほどの有象無象を知らなければ、特に大きな問題が存在する事
    も見つけられなかっただろう)」

佐々木「(つまり一般人には絶対に露呈することのない事件。ただやっぱり僕の考えは
    正しかった。キョンが最後の最後に頼るだろう人物は、国木田君だった)」
575 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 07:35:11.33 ID:zOAlse20
佐々木「それで国木田君、その資料というのは……」


          ピンポンパンポン

アナウンス「国木田様、国木田様」

アナウンス「3番診察室へお入りください」

         ピンポンパンポンパン

国木田「おっと、呼ばれたみたいだし行ってくるね?」

佐々木「あぁ、この話はまた後でしよう」
576 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 07:38:04.87 ID:zOAlse20
………………
…………
……

〜学校〜

国木田「想像以上に簡単に入れたね」

佐々木「ま、一応制服脱いで体操服借りて着替えてるし」

国木田「それにしても、まさかここまで先読みしながら行動してるなんて」

佐々木「まぁここら辺が限度だけどね」
577 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 07:38:57.32 ID:zOAlse20
国木田「でも午前中に僕と会って、キョンの情報を得て、さらに警察官の目を
    ごまかすという名目の元、病院へ行き診察してもらって」

国木田「これで、僕と佐々木さんの二人共に病院の診断書があるから学校や親に
    対しての良い訳が立てれる。しかも僕たちは健康体なんだから、特に何も
    なかったとして数時間休憩して、学校に戻って出歩いててもも不思議じゃ
    ないし、こちらに対しても言い訳が立つ」

国木田「加えて夏休み前の短縮授業。既に僕と接触している佐々木さんは、僕
    からのツテで難なくうちの学校の体操服をGET。残っている生徒も少
    ないし特に何の違和感もなく校内に忍び込める」

国木田「事件の手がかりを掴もうと学校に調査に来ている警察官もまだいるって
    のに、堂々と振舞っているから特に怪しまれてないし、凄すぎるよ」
578 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 07:39:53.39 ID:zOAlse20
佐々木「おいおい。そんなに僕を持ち上げたって何も出ないよ?」

国木田「いやいや、素直に感心してるんだってば」

佐々木「……はぁ。ま、ここからは僕だけで行くよ」

国木田「本当に大丈夫?」

佐々木「心配ないさ。何か進展したらまた報告する」

国木田「分かった。じゃあ、僕は家に帰ってキョンに渡した資料の元データを探してくるから」

佐々木「頼んだよ」
579 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 07:40:48.69 ID:zOAlse20
………………
…………
……

〜文芸部室前〜

佐々木「(……ここがSOS団が活動していた場所)」

佐々木「(でもやっぱり立ち入り禁止になってる。当然か、あの報道があって
    まだ二日も経ってないんだ)」

佐々木「(警官も居るし、まだ入れそうにないな)」

佐々木「コンピュータ研の部長さんが使っていたパソコンもどうせまだ警察に
    保管されているままだろう。と、なるとやっぱり先に…」
580 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 07:42:50.62 ID:zOAlse20
               ガラッ

佐々木「調べるのは図書室か」

佐々木「(キョンの話だと、長門さんは本が好きって言ってたな。文芸室が
    閉まっている今、僕の手持ち情報だと、恐らく長門さんと接触できる
    場所は市内の図書館か学校の図書室位だ)」

佐々木「(国木田君に頼む事も出来たけど、彼には極力非日常的な世界に巻き込み
    たくない)」

佐々木「……なんて、既に十分巻き込んでるよね」

佐々木「キョン。私がこんな事してるの知ったら、君は怒るかな?」
581 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 07:46:23.31 ID:zOAlse20
………………
…………
……

〜一時間後・図書室〜

佐々木「……結局長門さんとは会えなかったな」

佐々木「やっぱり不本意だが国木田君に会合の場を設けてもらうしかないのか」

        Prrrrrrrr

佐々木「おっと、噂をすれば」
582 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 07:48:45.75 ID:zOAlse20
国木田『もしもし』

佐々木「やぁ、国木田君。どうだった?」

国木田『それがおかしいんだ。キョンに渡したリングのデータが何処にも無いんだ』

佐々木「何だって?」

国木田『今も引き続き探してるんだけど、多分見つからないと思うんだ』

佐々木「(これは、既に証拠が消された?誰に?)」
583 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 07:50:21.86 ID:zOAlse20
国木田『佐々木さん?』

佐々木「あっ、いや。すまない」

国木田『そう?僕はもう一度調べ直してみるつもりだけど』

佐々木「あぁ、うん。引き続きお願いできるかな?」

国木田『分かってる』

佐々木「あと、もう一つ頼み事したいんだけど良いかな?」
584 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 07:52:25.23 ID:zOAlse20
国木田『僕に出来る事なら』

佐々木「うん、有難う。多分大丈夫だと思うけど……国木田君はSOS団の
    メンバーを把握してるかい?」

国木田『メンバー?あぁ、キョンと涼宮さんと朝比奈さん。それに長門さんと……途中
    で編入してきた古泉君。後は特別顧問の鶴屋さんだったかな』

佐々木「くくっ、素晴らしい記憶力だね」

国木田『佐々木さんにそう言って貰えるなんて光栄だね。でもまぁ、SOS団の事は
    いつもキョンから聞かされてたからね』

佐々木「そうか…」
585 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 07:53:45.30 ID:zOAlse20
国木田『それで、僕に頼みたい事って?』

佐々木「ん、あぁ。長門さんとお話する機会を作って貰いたいんだ」

国木田『長門さん?涼宮さんじゃなくて?』

佐々木「うん。出来れば、長門さんと二人きりでお話したいんだけど」

国木田『分かった。長門さんももう帰っちゃただろうし、明日学校で聞いてみる。
    明日また連絡するよ。データの話もその時に』

佐々木「ああ。仕事を押し付けてばかりですまないね」

             ピッ
586 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 07:54:52.17 ID:zOAlse20
佐々木「………」

佐々木「(涼宮さんはまだ、自分の力に気付いてはいない。キョンの亡くなった
    報道がされてまだ間もないこの時期に、その辺りを説明する訳にはいかない。
    橘さんも涼宮さんはまだ、自分の力を制御しきれてないと言っていた)」

佐々木「(それをこんな心が不安定な時期に知らせるのは不味い。何が起きるのか
    予想がつかない)」

佐々木「………前途多難だな」
587 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 07:57:14.44 ID:zOAlse20
………………
…………
……

〜翌日〜

佐々木「(流石に三日続けて学校を休むわけにはいかないか)」

佐々木「(でも、どちらにしろ国木田君からの結果報告待ちだし、焦っても仕方ない)」

佐々木「……それにしても、今更ながら僕の取り巻きは一体全体何処へ行って
    しまったのか」

佐々木「(彼女らも今回の事件に巻き込まれてなければ良いんだけど)」
588 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 08:00:59.14 ID:zOAlse20
佐々木「(……特にやる事もないし、昨日の考えでもまとめてよう)」

佐々木「(まずは、そうだな。今回の事件の発端)」

佐々木「(キョンは、事件や厄介事に巻き込まれるのは大抵の場合、涼宮さん
    がそう望んだからだと言っていた。それを前提と考えるのなら、今回
    のトリガーも恐らく彼女)」

佐々木「(少しホラー物に興味を示したって認識で、間違いはないだろう)」
589 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 08:03:52.91 ID:zOAlse20
佐々木「(国木田君の話だとキョンは部長さんが死んだ辺りから様子が変わりだした)」

佐々木「(その少し後にキョンも死ぬ事に…)」

佐々木「(確か、リングはビデオテープにダビングされた映像を見て、その一週間後に
    死ぬというホラー映画の筈)」

佐々木「(国木田君にリングの事を聞いていた事からも、キョンはそのビデオを観た?)」
590 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 08:05:08.16 ID:zOAlse20
佐々木「(そわそわした振る舞い、不眠、不登校)」

佐々木「(それに、何処かへ消え去ってしまいそうな弱弱しい声。不安)」

佐々木「(リング、リングね…)」

佐々木「(あれ?でもそれじゃ、おかしい)」

佐々木「(国木田君からリングの資料を受け立ったのなら、キョンは呪いを解けた筈)」

佐々木「(だったら何故…)」
591 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 08:08:24.49 ID:zOAlse20
?? 「さ…き、……オイ、佐々木」

佐々木「はい?」

先生 「はい?じゃない。どうしたんだ、さっきからボーっとして」

佐々木「い、いえ。何でもありません」

先生 「そうか」

佐々木「(キョンが巻き込まれた事件は、リングじゃあ無いのか?)」
592 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 08:09:24.41 ID:zOAlse20
………………
…………
……

佐々木「やっと授業が終わった」

佐々木「でも、国木田君からは相変わらず連絡来ないな」

佐々木「……ビデオ屋にでも行くか」

佐々木「(リングの中身を確認しておこう)」
593 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 08:10:30.11 ID:zOAlse20
………………
…………
……

〜TSUT○YA〜

佐々木「さて、リングを借りようと思って来てみたけど」

佐々木「まさか全て貸し出し中とはね」

佐々木「いくら夏休み前だからって、皆張り切りすぎだろう」

佐々木「……今日は大人しく家に帰って国木田君からの連絡を待つか」
594 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 08:12:35.93 ID:zOAlse20
佐々木「……………………………………………………」

佐々木「……………………………………………………」

佐々木「……………………………………………………」

佐々木「……………………………………………………」

佐々木「……………………………………………………」

佐々木「……………………………………………………」
595 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 08:13:36.04 ID:zOAlse20
佐々木「……………………………………………………」

佐々木「……………………………………………………」

佐々木「……………………………………………………」

佐々木「……………………………………………………」

佐々木「……………………………………………………」

佐々木「……………………………………………………」
596 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 08:14:41.98 ID:zOAlse20
佐々木「連絡来ないな」

佐々木「何も進展してないけど、こちらから掛けてみるか」

        PrrrrPrrrrPrrrr

佐々木「………」

        PrrrrPrrrrPrrrrr

佐々木「出ない」

佐々木「(もしかして国木田君に何か?……やっぱり長門さんとの接触が原因?
    いや、決め付けは良くない。電話に出ないなんてざらにある現象だ)」

佐々木「(大丈夫、大丈夫だ)」
597 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 08:17:46.27 ID:zOAlse20
………………
…………
……

〜翌日〜

佐々木「ん、くふぁぁ」

佐々木「んー、今、5時40分?」

佐々木「(……そうか、あのまま眠ちゃったのか)」

佐々木「(朝刊取ってこよう)」
598 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 08:20:17.42 ID:zOAlse20
………………
…………
……

佐々木「あれっ?ポストに新聞以外に何か入ってる」

佐々木「………封筒。でも宛名が書いてない。中身は……原稿用紙」

佐々木「この原稿はもしかして…『リング』?」

佐々木「…間違いない、『リング』だ。国木田君、見つけて届けてくれたんだ」
599 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 08:22:54.15 ID:zOAlse20
………………
…………
……

佐々木「(……成程ね、うん。思い出してきた)」

佐々木「(リングの主人公は不可解な死に方をしている人間の原因を調べ、被害者たちの
    足取りを追って行くと、一本のビデオテープに辿り着く)」

佐々木「(多少恐怖はあるんだけど、主人公はテープの中身を見てしまう。勿論ホラー
    映画であるのだから中身は…)」

佐々木「(観ると一週間後に死ぬという呪いのビデオ)」

佐々木「(そしてビデオの最後にはその呪いを解く方法も記されている。しかし、ビデオの
    最後の部分が何故か切れていて呪いの解除の仕方が分からない。そして主人公達は
    どうすれば呪いが解けるのか?と、思考錯誤を繰り返して、解決策を模索するストーリー)」

佐々木「つまり、リングってのは、ミステリー要素を散りばめたホラー作品って事だ」
600 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 08:24:03.03 ID:zOAlse20
佐々木「(………でもこれ位の情報なら、ネットか何かで検索すれば直に行きついた
    と思うけど)」

佐々木「(キョンは一体この文章の中から何を見つけ出したっていうんだ!?)」

佐々木「………今持っている情報じゃ、これ以上の推測は無理か」

佐々木「私は本当に……無力だ」

             ペラッ

佐々木「ん?用紙の途中に紙切れが挟まってる」
601 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 08:55:41.00 ID:zOAlse20
佐々木「(裏に何か書いてある)」


長門有希 図書室


佐々木「(これは……図書室に行けば長門さんに会えるって事?)」

佐々木「でも、日時の指定がない」

佐々木「………取りあえず行ってみるしかないな」
602 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 08:57:18.17 ID:zOAlse20
〜北高・図書室〜

佐々木「さて、やって来たもののやっぱり長門さんは居ないな」

佐々木「(一応、待つだけ待って何もなかったら国木田君にもう一度連絡
    取ろう)」

………………
…………
……

〜一時間後〜

佐々木「やっぱり会えなかったか。まぁ良い。国木田君に連絡しよう」

               ガラッ

谷口 「あれっ?あんた、この間の…」

佐々木「?」
603 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 08:58:14.69 ID:zOAlse20
谷口 「俺だよ俺!覚えてないか?ほらっ、あんたが国木田と一緒に学校サボった
    時に居た…」

佐々木「…あぁ、あの時の」

谷口 「何でうちの高校に居るんだ?ちゃっかり制服までうちのだし」

佐々木「これは知り合いに頼んで貸してもらったんだよ」

谷口 「ふぅん。ま、そんなのどうでも良いや!それより折角会ったんだし、どうだい?
    良ければ俺が高校案内してやるけど」

佐々木「くくっ、それは嬉しいが今は…」

谷口 「へへっ、遠慮すんなって」

佐々木「(………いや、良い機会かもしれない。国木田君とも連絡がつくとは限らないし)」

佐々木「そうだな、じゃあ頼もうか」ニコッ

谷口 「良し来た!」
604 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 08:59:25.31 ID:zOAlse20
谷口 「さーて、何処から案内しよっかなー♪」

佐々木「あ、ねぇ谷口君」

谷口 「ほい?」

佐々木「谷口君ってもしかして国木田君と仲良かったりする?」

谷口 「あぁ、一緒に飯食う仲だぜ」

佐々木「そっか」

谷口 「あり?もしかして俺よりも国木田の方が良かった?」

佐々木「違うよ。後で国木田君と会って行こうかなって考えてたからさ」

谷口 「何だ、やっぱり国木田かよ。でも無理だぜ?あいつ今日学校休んでるから」
605 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 09:14:01.57 ID:zOAlse20
佐々木「えっ?そうなの?」

谷口 「意外そうだな」

佐々木「(もしかして昨日は無理して資料届けてくれたのか。だから連絡しても
    繋がらなかったんだ。……悪いことしちゃったな)」

谷口 「ま、国木田の事なんて忘れて楽しく行こうぜ?どうせあいつも直に元気に
    なって学校来るからさ。なんせ別に何かの大事件に巻き込まれたわけでも
    ねーんだし。単なる体調不良なんだからよ!」

佐々木「!」

佐々木「(そうか、谷口君もキョンが死んで辛いのを無理矢理明るく振舞って、
    気取られないようにしてるんだな)」

佐々木「…うん、その通りだね。それじゃ、学校案内の方、宜しく」

谷口 「おうっ、任せな」
606 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 09:15:28.72 ID:zOAlse20
………………
…………
……

〜四十分後〜

谷口 「とまぁ、こんな処だな」

佐々木「どうも有難う。大変参考になったよ」

谷口 「うんにゃ、俺もあんたみたいな美人と一緒に居られたんだから
    大満足さ」

佐々木「くくっ、君はお世辞が上手いね」

谷口 「いやいや、本心だぜ?」
607 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 09:18:53.29 ID:zOAlse20
佐々木「くっくっ、そういう事にしとこうか」

谷口 「ま、何か困った事があったら俺に相談してくれよ」

佐々木「うん、その時は遠慮なく……いや、谷口君」

谷口 「あん?」

佐々木「困った事があったら相談してくれと言って貰って、すぐにこんな発言
    するのは少し気が引けるんだが、ちょっと君に聞きたい事があるんだ」

谷口 「へぇ、別に気を使ってくれなくても構わないぜ?何だって聞いてくれよ」
608 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 09:19:55.20 ID:zOAlse20
佐々木「では、遠慮なく。…君もSOS団は知っているよね?」

谷口 「そりゃまぁ知ってるさ、うちの学校で知らない奴はいないんじゃないか?」

佐々木「そうか。有名なんだね」

谷口 「そりゃ涼宮が仕切ってるからな。嫌でも目立つ」

佐々木「くくっ、有名人なんだね、彼女は」

谷口 「そりゃーな。中学の時からだよ、あいつの奇人変人ぶりは」
609 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 09:21:19.90 ID:zOAlse20
佐々木「それで涼宮さん以外のメンバーは知っているかい?例えば、長門さんとか」

谷口 「長門?あんた長門有希の事知ってんのか」

佐々木「あぁ、どうやら君も彼女の事知ってるみたいだね」

谷口 「へへっ、一応この学校で目ぼしい女子は全員チェックしてるんでね」

佐々木「………」

谷口 「あっ、コラ急に怪訝そうな顔すんじゃねぇよ」

佐々木「これは失礼」
610 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 09:22:21.23 ID:zOAlse20
谷口 「で?長門有希がどうしたんだ?あいつは誰とも接点持ちたがらねぇから、友達
    になろうなんて考えても無理だと思うぜ?」

佐々木「そうか、それは残念だ」

谷口 「おっと、すまない。無神経な発言だったな」

佐々木「気にしないでよ。大丈夫だから。ただ、ちょっとだけ彼女に興味があるだけさ。
    キョンと同じSOS団のメンバーだったからね」

谷口 「そか」

佐々木「うん。それで、一度彼女と会ってみたかったんだけど、谷口君、長門さんがいつも
    何処に居るか知らないかい?この前から頑張ってみてるんだが、どうしても会えなくてね」
611 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 09:24:09.10 ID:zOAlse20
谷口 「へぇ、……どういう経緯で長門を知ったのかは知らねぇが、そりゃ随分と
    無駄足を踏んじまったな」

佐々木「?」

谷口 「あいつは、キョンが殺される五日、いや四日前だったかな?その辺りからずっと
    学校には来てないんだよ」

佐々木「!!!」

谷口 「おいおい、どうしたんだよ、そんな驚いた顔して?」

佐々木「(キョンも殺されたとされる数日前から学校には来ていなかった。
    長門さんも学校に来ていなかったのならば、彼女はキョンと一緒に居たのか?)」
612 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 09:25:11.31 ID:zOAlse20
佐々木「(もしキョンが長門さんと共に行動していたのならば、殺害される確率は一気に
    減少する。……あの殺害や報道は長門さんの情報操作の可能性……いや、キョン
    の話を聞く限り長門さんはキョンに好意的な感じだった)」

佐々木「(好意を抱く相手を世間的に抹殺しようとするだろうか?)」

佐々木「(いや、……何処かの敵対勢力からキョンの姿をくらませ、追跡から逃れるために
    止むを得ず情報操作した可能性もある。一概には決め付けられない)」

谷口 「おい、どうしたんだよ?押し黙っちまって」

佐々木「い、いや。何でもない。そうか、長門さんはずっと欠席しているのか。残念だ」


佐々木「(何にせよ、長門さんがキョンと共に行動していたとするなら、キョンが生きている
    可能性は大幅に上がる)」
613 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 09:26:54.77 ID:zOAlse20
佐々木「!…有難う、谷口君。おかげで助かったよ」

谷口 「お、もう質問はねぇのか?まだまだ相談に乗るぜ?」

佐々木「うん。もう大丈夫だ。すまないが僕はやる事が出来てしまった。次、国木田君に
    会ったら宜しく言っておいてくれ」

谷口 「ok」

佐々木「じゃ」

佐々木「(今朝の手紙の件といい、もう一度図書室を調べる必要がある)」
614 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 09:32:52.37 ID:zOAlse20
〜図書室〜

佐々木「さて、と」

佐々木「(この前図書室に来た時に図書委員や司書さんに長門さんの事を尋ねたが
    何かを知っていそうな素振りは見られなかった)」

佐々木「(つまり最近の長門さんはそこまで頻繁に図書室を利用してはいなかった。
    だとすると多分手掛かりがあるのは……図書の貸し出しカード)」

佐々木「(長門さんが出席していなかった日に貸し出しがあった本の中に何かヒント
    が隠されている可能性が高い)」

佐々木「(勿論そんな形跡は存在しないかもしれないけど、やるだけやろう)」
615 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 09:36:26.43 ID:zOAlse20
………………
…………
……

佐々木「って、やっぱりそこまで安直じゃないか」

佐々木「一応SOS団全員分の図書カードを確認してみたけど、結局SOS団で最近
    図書の貸し出しをしたのは古泉君だけ」

佐々木「本のタイトルは『エンドレス・サマー』か」

佐々木「特に関係なさそうね」

佐々木「貸し出し日時は……キョンが殺された次の日か」
616 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 15:49:08.02 ID:zOAlse20
佐々木「(そう言えば、私SOS団の人と誰とも会ってないな)」

佐々木「(涼宮さんとは、敢えて会わないようにしてるし、涼宮さん自体も私を
    監視してる訳じゃないからそ良いとして、涼宮さんを取り囲んでいる他
    の人達はどうなんだろう)」

佐々木「(長門さんは置いといたとしても、他にも未来人と超能力者が居る筈)」

佐々木「(特に超能力者は涼宮さんを神と崇めているから、私には極力この学校
    には近寄らせたくないんじゃ…)」

佐々木「(この古泉君って人は何処に…)」

佐々木「……ま、それも長門さんに会ったら、はっきりするかな」
617 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 15:50:51.87 ID:zOAlse20
………………
…………
……

佐々木「(……貸し出しカードがヒントだと思ったけど結局何も見つからなかった。
    他にも何か無いかなと図書室を一通り探してみたけど、怪しそうな処もない)」

佐々木「『エンドレス・サマー』は古泉君が借りたまま返却されてる様子もないし………」

佐々木「……一応、この本があった場所を確認するだけしよう」

                ガタッ

佐々木「……え〜と、『エンドレス・サマー』、『エンドレス・サマーっ』と」

佐々木「……やっぱり貸し出し中だ」
618 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 15:51:50.63 ID:zOAlse20
佐々木「隣にある本も『Lの悲劇』……関係なさそうだな」

佐々木「ん?」

           キラッ

佐々木「奥の方で何か光った。何だろう?」

          スッ

佐々木「これは………指環?」

佐々木「もしかして、これがヒント?でも指環がヒントって…一体」
619 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 15:53:12.13 ID:zOAlse20
        ピンポンパンポン

アナウンス「図書室の閉館まであと15分です。本を借りられる方は、お早めに
      貸し出しコーナーへ来て下さい」

アナウンス「繰り返します。図書室の閉館まであと15分です。本を借りられる
      方は、お早めに貸し出しコーナーへ来て下さい」

        ピンポンパンポンポン

佐々木「おっと、もうこんな時間か」

佐々木「(取りあえず、指環だけでも持って帰るか)」
620 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 15:54:10.13 ID:zOAlse20
〜翌日〜

佐々木「(結局、指環だけ持って帰っても何も進展しなかったな)」

佐々木「(今日が終業式か。明日から夏休み……夏休みに入ったら涼宮さん達と
    会える機会は皆無になる)」

佐々木「今日も帰りに北高に寄ろう」

佐々木「……やれやれ。全く。この事件が片付いてキョンに会ったら、たっぷり
    小言を言ってやらなくちゃ。”心配ばかり掛けさせて”って」

佐々木「本当に君は心配ばかり掛けさせるんだから」

佐々木「………キョン。君はきっと、生きているよね?」
621 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 15:55:13.97 ID:zOAlse20
………………
…………
……

〜学校〜

校長 「え〜、であるからして。夏休みだと言っても羽目を外し過ぎぬよう、しっかりと
    勉学に励み、新学期に備えて……」

佐々木「(今頃は北高も終業式。北高の終業式が終わって生徒が下校している時間帯に
    忍び込んで文芸部に行こう)」

佐々木「(もしかしたら、団員が集まってるかもしれないし……涼宮さんと会っちゃう
    可能性もあるけど、キョンが死んだという報道がされてからもう五日経ってる。
    落ち着いてると思う)」

佐々木「(それに、涼宮さん自身に話を聞きに行く訳じゃないし、一人ずつ順番に
    アプローチしていけば、宇宙人や未来人、超能力者関係の話は涼宮さんに
    聞かれる事もないよね)」

校長 「では、これで話を終ります。皆さん良い夏を」
622 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 15:56:35.74 ID:zOAlse20

佐々木「(何にしても今日が勝負の日。どうにかして手掛かりを掴まなくちゃ)」
623 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 15:57:49.88 ID:zOAlse20
           ワイワイガヤガヤ

女生徒1「佐々木さん。私達これからカラオケ行くんだけど一緒にどう?」

女生徒2「折角夏休みに入った事だし、親睦を深めるためにも、ね?」

佐々木「ゴメン。実は今日も用事があるんだ」

女生徒1「え〜、今日もどこか行くの?佐々木さん最近、学校が終わると
    毎日何処かに行ってるよね」

佐々木「うん。ちょっとね」

女生徒2「もしかして、ついに佐々木さんに彼氏が!?」

女生徒1「彼氏!?そうなの?佐々木さん!?」

佐々木「ち、違うって!」
624 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 15:58:44.77 ID:zOAlse20
女生徒2「無理に否定する処が尚怪しい」

佐々木「えっ?えっ?」

女生徒1「ちょっと教えなさいよ!何時から?何処まで行ったの?」

            グイッ

佐々木「わわっ」

        コツン  カラカラカラ

女生徒2「何か落ちたよ?」スッ

女生徒1「指環?佐々木さんやるー。既に男に貢がせてるなんて」
625 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 15:59:39.70 ID:zOAlse20
佐々木「その指環は…」

女生徒2「でもシンプルな形ね。宝石ついてないし」

女生徒1「いやいや、宝石なんかついてる指環だったらまた佐々木さんの援交疑惑が
    高まるって!」

女生徒2「それもそうね」

佐々木「援助交際の疑惑って……私は普段どんな目で見られてるの?」

女生徒1・2「「気にしないで!」」

佐々木「凄く気になるんですけど…」
626 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 16:00:32.98 ID:zOAlse20
女生徒3「あんた達、さっきからやけに盛り上がってるけど、どうしたのよ」

女生徒1「あっ、実は佐々木さんに彼氏が出来たという話でね」

佐々木「いやいやいや、違いますから」

女生徒2「で、これが男に貢いで貰った戦利品て訳!」

              スッ

女生徒3「へぇ、メビウスリングだ」

佐々木「メビウスリング?」
627 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 16:01:25.68 ID:zOAlse20
女生徒3「一時期私も持ってたな。彼氏にプレゼントしてもらって」

女生徒1「へー。メビウスリングって言うんだ。この指輪。でもま、あんたの
    ドロドロした恋話なんて聞きたくないけどね」

佐々木「(ドロドロって…)」

女生徒3「あんた、いくら夏休みに入るからって心の窓も開放的にしすぎじゃない?」

女生徒1「まぁまぁ、この会話も夏休みが明けてる頃にはすっかり忘れてるよ!」

女生徒3「……覚えてろよ」
628 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 16:02:33.76 ID:zOAlse20
女生徒2「ふーん、メビウスリングね。あれっ?ねぇねぇ」

佐々木「何?」

女生徒2「指環の裏に何か彫った痕があるけど」

女生徒1「どれどれ。あっ、本当だ」

佐々木「ちょっと見せて」

佐々木「(彫った痕?昨日確認した時には何も無かった筈だけど)」

佐々木「本当だ。何か彫ってある。………m i k u r u……みくる?」
629 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 16:03:27.36 ID:zOAlse20
佐々木「(……みくるって朝比奈みくるの事で良いんだよね)」

女生徒1「みくるって誰?」

女生徒2「そんなの私に聞いたって分からないわよ。ねぇ、佐々木さん、みくるって誰?」

女生徒1「もし男が二股掛けてるんだったら即座に別れた方が良いよ」

佐々木「いや、…その」

佐々木「(朝比奈みくる……朝比奈みくるに事のあらましを聞けって意味?分からない。でも…)」

佐々木「ゴメン!私、もう行かなくちゃいけないから」

                ダッ

女生徒1・2「「あっ、逃げた!!!」」
630 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 16:04:21.90 ID:zOAlse20
………………
…………
……

〜北高校門前〜

佐々木「時間ぴったり、丁度北高の生徒も下校するみたいだ」

佐々木「では、文芸部室もといSOS団の部室に行きますか」

佐々木「(今日の目的は朝比奈みくるとの接触。あわよくば長門さん、古泉君と
    会って、キョンについて話を聞く事)」

佐々木「(この指輪は多分SOS団の誰かが用意した物の筈。きっと事件は進展する)」
631 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 16:05:42.69 ID:zOAlse20
〜文芸部室前〜

佐々木「流石にもう警察の捜査は終わって立ち入り禁止の看板も無くなってる」

              トントン

佐々木「すみません。誰かいらっしゃいませんか?」



佐々木「………返事が返ってこない。誰も居ないのか?困ったな」

               ガチャ

佐々木「!!!扉は開いてる」

佐々木「すみません。御邪魔しまーす」

               カチャ

佐々木「やっぱり誰も居ないみたい。でもドアは開いていたし皆何処かに出かけてる
    だけで帰ってくるかもしれない。……少しここで待たせて貰おう」
632 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 16:07:16.15 ID:zOAlse20
………………
…………
……

〜三十分後〜

佐々木「誰も帰ってくる気配は無いな。さて、どうしようか」

佐々木「………PC。警察に回収されてると思ってたけど、残ってるんだな」

佐々木「いや、あのPCは別にキョンの私物じゃなくて学校の備品だから回収
    されてないのか」

佐々木「mikuruね……あのPCに手掛かりがあるんだったら警察がとっくに調べ上げて
    そうだけど、あのPCちょっとだけつつかせてもらうか」
633 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 16:08:08.37 ID:zOAlse20
          カチッ  ヴィン

佐々木「取りあえず最近の検索履歴でも調べて……『リング』、『リングとは』、
    『貞子』、『リング 呪い 解決』、『巨乳』、『貞子 呪い』、
    『リング 映画』、『リング 原作』」

佐々木「リングの検索結果ばかりだな」

佐々木「(でもこんなに調べてたんなら、国木田君からの情報は必要無かったんじゃ?
    それとも時間がなくて、全てを確認する時間が無かったから要点だけまとめて
    もらう依頼をした?)」

佐々木「まぁ、これでキョンが巻き込まれた事件は『リング』と断定してほぼ間違いが
    ないのは分かった」

佐々木「……他にこのPCに何かヒントは」
634 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 16:09:05.61 ID:zOAlse20
佐々木「mikuruでフォルダ検索でも掛けてみるか」

佐々木「……と、その前に隠しフォルダを全て表示するに設定を変更して、と……検索スタート」

………………
…………
……

〜二十分後〜

佐々木「ヒントにしては直球すぎるだろうと思ったけど、まさか本当にHitするとは」

佐々木「……まぁ良い。中身を確認しよう」
635 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 16:10:24.26 ID:zOAlse20
佐々木「……………………………………………………」

佐々木「……………………………………………………」

佐々木「……………………………………………………」

佐々木「……………………………………………………」

佐々木「……………………………………………………」

佐々木「……………………………………………………」
636 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 16:14:01.47 ID:zOAlse20
佐々木「……そうか、キョンは巨乳が好きなのか」

         ペタッ ペタッ

佐々木「…………くそう」

佐々木「酷く不快な気分になってしまった。もう良い、このフォルダはこれ以上
    調べても何も出てこない!」

佐々木「…………くそう」

佐々木「……ん?画像ファイル以外にもフォルダがある」

佐々木「Diary…日記?」
637 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 16:14:55.74 ID:zOAlse20
佐々木「これも確認しとくか」

          カチカチッ

佐々木「あれ?パスワードが掛かってる……これは」

佐々木「真っ先に思いつくと言えば」

            『ring』  カチッ

佐々木「どうだ?」

PC『パスワード認証エラー。パスワードが違います』

佐々木「違う」
638 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 16:16:18.26 ID:zOAlse20
佐々木「他には誕生日とか?」

          カタカタ  カチッ

PC『パスワード認証エラー。パスワードが違います』

佐々木「これも違う。でもキョン以外の団員の人の誕生日とかは知らないし」

佐々木「他にパスワードにしてそうな単語は…」

          『mikuru』  カチッ

PC『パスワード認証エラー。パスワードが違います』

佐々木「駄目か…」
639 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 16:20:17.43 ID:zOAlse20
………………
…………
……

〜十分後〜

佐々木「キョンがパスワードにしそうな単語はあらかた試してみたけど、どれも失敗」

佐々木「後、パスワードになりそうな単語といったら…」

            『mebius』

佐々木「こいつくらいだな」

             カチッ

佐々木「どうだ?」

PC『パスワード認識完了』

佐々木「成程ね。……確かにあの指輪はヒントで間違いなかったってわけだ」
640 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 16:21:52.05 ID:zOAlse20
佐々木「『Diary』フォルダの中身は……1月、2月、3月、4月……月ごとの
    フォルダか」

佐々木「それぞれのフォルダの中身は、txtファイルね」

佐々木「じゃ、一番古い奴から……」

                カチカチッ

『日記を書くなんて俺の柄じゃないが、今日から俺は一つの記録を残して
いこうと思う。別に、この日記について特にどうこうしようとは思っちゃ
いないが、一つの軌跡、確認のためだ』

『何の因果か知らんが、俺は涼宮ハルヒに選ばれてSOS団に入る事になっちまった。
まぁ、んなこたぁどうでも良い。俺の財布から放出される出費の数々を考えなけりゃ、
楽しい部活の一環に過ぎないからだ』
641 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 16:22:55.81 ID:zOAlse20
『ただ、どうにも見過ごせない事実がある。それは、宇宙人、未来人、超能力者
についてだ。まぁ、俺がこの日記をつける発端にもなった一番の理由だが……俺は、
これまでそんな存在が実際に居るとは思いもしなかった』

『いや、居て欲しいとは思っていたが、俺ももうそんな夢見る子供と呼べる年齢
でも無くなってるし、仮に居た処で、俺なんかに見つかる存在じゃあないと思って
いたからだ』

『だが、どういう訳か、俺はそいつらに出会っちまった。しかも、未来人、宇宙人、
超能力者どころか、この世界の神様にさえだ!』

『しかし何だ。この神様っつー存在はえらく我儘ではた迷惑な奴なので、俺が多大な
被害を被る羽目になっちまった』
642 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 16:24:19.91 ID:zOAlse20
『そこで、だ。俺はこれからその神様の所為で巻き込まれることになった事件の
軌跡を綴っていこうと思う』

『もしかしたら、今までの事件の解決方法が今後の役に立つかもしれねぇし、将来、
この日記を装い新たに書き直して、自伝をSF小説として世に送り出すのも良いかもしれない』

『とかまぁ何とか、色々書き出してみてるけど、やっぱり一番は、いつの日か
ここに纏めてある文章を読みなおして、あぁ、こんな事もあったなって、今この時
を思い出せたら、最高だと思う』

『そんな訳で、多少日記とは違うが、これから起こるであろう波乱万丈な俺の毎日
をtxtという形として残していく』


佐々木「キョン……」
643 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 16:25:16.61 ID:zOAlse20
佐々木「……出来れば、君が高校に入ってから、一体どういう出来事に触れて
    きたのか全部知りたいが……それは、またの機会に取っておこう。可能なら
    その時は、君の隣で、君の口から語って貰いたいものだ」

佐々木「………」

佐々木「さて、……感傷に浸ってる場合じゃない」

佐々木「とりあえず、この隠しフォルダの意味は分かった。キョンの日記だ。となると、
    一番最近のフォルダ……7月。あった、これだ」

               カチカチッ

佐々木「txtファイルも他のフォルダと比べて異常に少ない…とにかく中身を」

               カチカチッ
644 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 16:26:31.69 ID:zOAlse20
『今まで色々な事件に関わってきたが、今回はかなり不味い状況に追い込まれている。想像
以上にヤバい。ここ最近ハルヒも大人しくなって、事件らしい事件に巻き込まれること自体
少なくなっていただけに、ちょっと油断してたってのもあるだろう』


『事の発端は古泉の家に行ってからだ。親睦を深めるという名目の元、AV観賞に行ったのだが、
そもそもこれが間違いだった』

『いや、間違いというほど、古泉のAVセンスが酷いという訳じゃない。あいつはポリスにOLに
ナース。戦隊物からガチャ○ンとム○クのかぶり物のAVまで!!!かなりの広い守備範囲を誇
っていた』

佐々木「………キョン。私、こんな時どんな顔をすれば良いか分からないよ……」

『だが、ハルヒをほったらかしにしたまま帰ったのがまずかったのか、久し振りに閉鎖空間が
発生しちまった』
645 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 16:28:26.74 ID:zOAlse20
『古泉は森さんに強制召集を掛けられ、やむなく機関に連れて行かれる事となり、俺は一人、
古泉の部屋に取り残された』

『古泉は好きなAVがあれば、好きなだけ観賞して行っても良い、と快く俺に部屋の合鍵を
渡してくれたので、そんな訳で、俺は巨乳DVDはないか部屋を見渡した。こんなに沢山AVがあるんだ。
何本か俺の股間にビビッと来るAVがあったって不思議じゃない』

佐々木「…………」

『と、そこで俺はボックスの片隅に無造作に置かれていた一本のビデオテープを見つけた。
部屋にはDVDが沢山あるのに、何故今時ビデオテープがあるんだ?と若干首を傾げつつ俺は
TVのそばにあったデッキにテープを入れた』
646 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 16:30:03.73 ID:zOAlse20
『しかし、期待は見事に裏切られる事に。テープを再生したものの只々砂嵐が
映し出されるばかりで、ちっとも女の子は画面に出てこない』

『しばらくして画面は真っ暗になり、そこから数分間は暗闇しか見えなかった』

『もしかして元々このテープには何も録画されてなかったのでは?と思い、テープ
を取り出そうとデッキに近づいた次の瞬間、画面は切り替わった』

『画面に映し出されたのは、井戸、だった』

『俺は若干戸惑いつつも、何だ、ちゃんと録画されてるじゃないかと、席に戻って
続きを見ることにした』
647 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 16:31:50.14 ID:zOAlse20
『しばらくボーっと画面を眺めていたがビデオは火山や海、病院のような施設や
婆さん、井戸、と目まぐるしく場面展開を繰り返し俺の興味を集めた』

『しかし、特にこれといったストーリー展開が待っている訳でもなく、数分間
場面展開を繰り返した後、ビデオは終了を迎える』

『俺はそれ以上ビデオに何か録画されていないか早送りで確認したが、それ以上
何も無い事が分かると、一気にビデオへの興味をなくし、停止ボタンを押し、ビデオ
を見るのを止めた』
648 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 16:33:21.51 ID:zOAlse20
『興味を失った俺は、また新たにAVを探そうと部屋を見渡したが、ここでタイミング
良く俺の携帯が鳴った』

『着信履歴を確認するとハルヒからだった。俺は今日の活動に参加しなかった事を
怒られるのだろうと思い、携帯に出るのが億劫な気分になったが、しかしどうせ
明日顔を合わせたら何故昨日顔を出さなかったのか+何故電話に出なかったのか?
と刺々しく言われる事になるのかと落胆しつつ、腹を決めて電話に出た』

『だが………受話器の向こうからはハルヒの声は聞こえず、代わりに少しどもった感じ
の声が聞こえてくる』
649 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 16:37:01.39 ID:zOAlse20
『ボソボソと一通り喋った後、電話は切れた。結局上手く聞き取れなかったので
俺は再度ハルヒに電話を掛け直す事にした。きっとさっきの電話は電波が悪かった所為だと
思ったからだ。だってそうだろ?着信履歴は間違いなくハルヒだったんだから』

『だが、ハルヒに電話したら、いの一番に「この馬鹿っ!!!!!!」と怒鳴られ、
「あんた、SOS団の活動をほっぽり出していい度胸ね?今どこに居んのよ?」と捲し立てられた。
俺が「ど、何処って、(古泉の)家だが…」と答えると、「何で帰宅してんのよ!!!
もう良いわ!!!今度の不思議探索活動は、あんたが遅れてこようが早くこようがどちらにしても、
全額あんたの奢りだからね?」等という理不尽な結果に』
650 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 16:41:12.12 ID:zOAlse20
『あいつから掛けてきたんじゃないか?と、首を捻りつつ携帯の着信履歴を確認すると
ハルヒからの着信は午後五時七分が最終であった事を示していた。現在の時刻を確認
すると午後五時三十二分を時計の針は指示している』

『???さっきの着信はハルヒじゃなかったのか?』

『俺は先程のビデオテープの中身を思い出し、背筋が凍るような感じに陥る』

       『このビデオを見た者は一週間後に死ぬ』


『そんな馬鹿な。たかがビデオを見たくらいで死ぬ筈ないだろ!……だが俺は少し怖く
なって、逃げるように帰宅した。大丈夫、大丈夫だ。そう自分に言い聞かせながら』
651 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 16:42:49.11 ID:zOAlse20
佐々木「………キョン。やっぱりキョンは『リング』を見て」

佐々木「………」

佐々木「次のファイルも見てみよう」

              カチカチッ


『翌日、俺は昨日の事を古泉に話した。お前の部屋で不思議なビデオを見て
その後、変な電話が掛かって来たのだと。しかし古泉は予想だにしない台詞を吐く。
「変ですね。ビデオはもう見ないので全部処分した筈ですが…」と』

『俺は冷静な振りを装い「そうなのか?」と尋ねるも次の古泉の言葉でまたもや
不安に襲われる』

    『「ええ。特にデッキが二年前に壊れてからは全く」』
652 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 16:45:28.03 ID:zOAlse20
『俺は古泉に食って掛かった。デッキが壊れた?嘘言うなよ。俺はそのビデオ、
お前の部屋にあるデッキで見たんだ!!!って感じで。しかし古泉はあくまで
飄々と「えっ?もしかして僕の部屋のデッキで見たんですか?」等と嘯く』

『俺は若干苛つきながら、ああそうだ!テープ借りた訳じゃないぞ。なんなら今日
団活が終わった後、確認するか?まだお前の部屋のデッキに入れたまんまだしな!と
捲し立てる』


『そんな俺を一瞥し古泉は、ハルヒが原因の可能性もあるから行動を開始しようと
提案してきた。ここら辺で漸く落ち着きを取り戻してきた俺は、「まぁ、ビデオ見た
後電話がかかってきただけだからな。そんなに心配する程じゃないと思うが」と
精一杯の虚勢を張る』


『だが、古泉は「そうだと良いんですがね…」と俺に聞こえるようにそう呟いた』
653 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 16:49:13.75 ID:zOAlse20
『SOS団での活動を終え、古泉の家にもう一度訪れた。俺は早速デッキの処に
駆け寄り中身を確認する。だが………ビデオはデッキには無かった』

『何故だ?確かに俺はデッキに入れっぱなしにした!何故無いんだ???』

『慌てふためく俺を余所に古泉が「不味いですね」と口を開く』

『ええい!何をそんなに落ち着いているんだ!お前の部屋に誰かが勝手に侵入
した可能性があるってのに何故落ち着いて居られる?』

『しかし、やはり古泉は酷く落ち着いた様子で続ける。「……………恐らく、
一週間後、いえ、もう残り六日ですか。六日後に、あなたは死にます」』


『それは一番聞きたくなかった台詞であり、一番考えたくなかった言葉だった。
……世界が”ぐにゃり”と奇妙な音を立てて歪んだ気がした』


       『俺は一体どうなっちまうんだ?』
654 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 16:50:54.39 ID:zOAlse20
『……しばらくした後、古泉に今回の事件の概要を尋ねてみる。俺はビデオを
見て変な電話が掛かって来たのだと、古泉には話したが、一週間後に死ぬという
事は一切話していなかったからだ。それなのにこいつは、俺が一週間後に死ぬで
あろうことを言い当てた。それに妙に落ち着いている。何か知っているに違いない』


『古泉が俺に語った今回の事件と思われる内容は以下の通りだ』

『今回俺が体験している事象は『リング』とかいうホラー映画と瓜二つらしい。
ちなみに『リング』という作品は元々小説として世に出た作品であり、その後、
反響が大きかったので映画化、ドラマ化、果てには洋画としてもリメイク作品
が出たほどのホラー物とのこと』
655 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 17:19:45.49 ID:zOAlse20
『そして肝心のリングの中身だが、話の肝となるのはやはりビデオテープらしい。
そのテープを見た者は、一週間後に死を迎える設定になっている。そしてそのテープ
にはある女性の呪いが込められており、登場人物たちは、その呪いを解こうと躍起に
なって事件を解決しようとするストーリーみたいだ』

       『と、ここで俺の頭の隅で警鐘が鳴らされる』


『『ビデオ』の呪いの解除方法。俺が見たビデオにも確かに最後に録画されてあった。
……それは、第三者にビデオをダビングして見させること!』

 『手元にテープがない俺はどうやってその呪いを解除すればいいってんだ?』

     『俺は本日何回目になるのか分からない不安に襲われた』
656 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 17:22:06.37 ID:zOAlse20
『そして……こんな時に頼りになるのは長門だが、あいつは今は力を使えない只の女子
高生だ。あいつに話しても解決はしないだろう。そんな訳で今回の事件には俺と古泉の
二人だけで挑む事となった』

『そんな中でも時計は刻一刻と針を進め、俺の余命が残り五日と二十一時間になるのを
告げた』



佐々木「…………ちょっと待って。え?あれ?これって?ウソ?うそ、嘘でしょ?」

佐々木「キョンは古泉君と二人で行動していた?長門さんは関わってない?それに
    この日付は、谷口君から聞いた長門さんが学校に来なくなった日と同じ」

佐々木「ちょっと、あれ?私何かを見落としてない?長門さん長門さん長門さん…」
657 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 17:25:24.09 ID:zOAlse20
佐々木「!!!!!!!!!」

佐々木「(私は国木田君に長門さんと二人で会えるように頼んだ。そして昨日の朝、私
    の家のポストに『長門有希 図書室』というメモが)」

佐々木「(でも、この日から長門さんは学校に来ていない。当然、一般人である国木田君
    ……いや、この場合は長門さんも力を持たない単なる女子高生。だから情報操作
    を行っていない長門さんに、谷口君が学校を休んでいると言っている以上、国木田君
    は長門さんに会っていない筈)」

佐々木「だったらあのメモは何?国木田君じゃないの?だったら誰が?いや、何故私が
    長門さんに会おうとしているのが分かってる?あの時点で国木田君以外に?」


   (何だ、やっぱり国木田かよ。でも無理だぜ?あいつ今日学校休んでるから)


佐々木「!!!これは……まさか」ガタッ
658 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 17:34:39.69 ID:zOAlse20
    PrrrrrrrPrrrrrPrrrrrr

佐々木「(頼む。通じてくれ!)」

    PrrrrrrrPrrrrrPrrrrrr

佐々木「………」

    PrrrrrrrPrrrrrPrrrrrr  ガチャ

佐々木「国木田君!無事か?」

携帯 『現在、電波が届かない所に居るか、電波が…』

佐々木「!」

佐々木「国木田君…」
659 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 17:36:49.77 ID:zOAlse20
………………
…………
……

〜国木田宅前〜

佐々木「ハァ…ハァッ……ハァ」

佐々木「着いた……昔の記憶を辿って…ハァ……走って来たけど」

佐々木「………」

         ピンポーン

佐々木「御免下さい」

佐々木「(頼む。出てくれ)」
660 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 17:38:59.01 ID:zOAlse20
         ピンポーン

佐々木「………」

         ピンポーン

佐々木「…………」

佐々木「こうなったら…」

          ガチャッ

佐々木「扉が開いてる…」

佐々木「御邪魔します」
661 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 17:41:09.05 ID:zOAlse20
佐々木「誰も、居ないのか?」

佐々木「御免下さーい。誰か、居ませんか?」


佐々木「…………返事がない」



         ギシッ

佐々木「……ここは、国木田君の部屋…」

         コンコン

佐々木「国木田君。居るんだろ?返事をしてくれ」

佐々木「国木田君?入るよ?」スッ
662 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 17:42:17.79 ID:zOAlse20
佐々木「……誰も居ない」

佐々木「(体調を崩して休んでるんだったら、家で大人しく寝てる筈。谷口君の
    口ぶりからしても入院している感じじゃなかった。何よりも鍵も掛けず
    に一体何処へ?)」


佐々木「ん?机の上に何かある」

佐々木「これは…『リング』の原稿」

佐々木「じゃあ、やっぱり私の家のポストに入っていたのは、国木田君が出した訳じゃ
    なかったって事だよね」

佐々木「………一体誰が」
663 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 17:43:11.36 ID:zOAlse20
佐々木「…とにかく、これ以上ここに居ても仕方ない。不審者扱いされる前に出よう」

佐々木「と、その前にポストに、国木田君が帰ってきたら連絡するようにメモを
    残して置かなきゃ……もし、数日経っても連絡がこない場合は、警察に
    捜索願を…出すくらい…しか……くっ…うぅ……うぅうぅううぅ」

佐々木「…うぅううぅううううぅ」

佐々木「キョン、…ひっく…キョン!私……わたし、もう何が何だか分かんなくなって
    来ちゃったよ。っぐ。キョンは生きてるんだよね?国木田君も無事だよね?…ひっぐ。
    わたし、わたし!」

佐々木「…わたしの所為なの?これって……うぐ。私が巻き込んだの?私の所為なんだよね、
    きっと。私が自分の目で真実を知りたいなんて国木田君に相談したりなんてしたから!!!」

佐々木「う、うぅううぅっぅうううううううう」

佐々木「どうしようどうしようどうしよう。もう、うぅ、訳分かんなくなって。涙が勝手に…」
664 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 17:47:30.98 ID:zOAlse20
佐々木「何で…ひっく。泣いてんだろ?わたし。っく。まだ、国木田君が死んだって
    訳でもないのに…。たまたま、家族の人が鍵かけ忘れて出掛けただけなのかも
    しれないのに!!!」

佐々木「でも、でも!キョン……駄目だよ。駄目なんだよ、わたし。もう」

佐々木「私、心のどこかで、あなたはもうこの世に居ないんじゃないかって、思ってたんだ」

佐々木「でもね?それでもね?それでも…少しでも希望があるんなら、それに賭けてみたかった。
    うぅん。縋りたかった。あなたは今も何処かで生きているんだって。元気なんだって」

佐々木「でも、キョンの事調べていくうちにだんだん、キョンがもうこの世には居ないんじゃ
    ないかって真実味が逆にどんどん増してきて…怖くなって」

佐々木「本当の事言うと、国木田君の事だって、全く何も思わなかった訳じゃない。もしかしたら
    って予感はあった。でも…きっと大丈夫、大丈夫だって。心配無いよって。考えないよう
    にしたんだ」

佐々木「……酷い女だよね。……本当、酷い…っく。うぅ。うぅううううぅぅぅぅ」

佐々木「うっ、ひくっ。ひっく。んんうぅ」
665 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 17:48:28.08 ID:zOAlse20
佐々木「んっく……っぐ………もう帰ろう…」


          ガチャッ

佐々木「キョン……」
666 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 18:30:09.72 ID:zOAlse20
………………
…………
……

〜帰宅路〜


?? 「おや?あなたは……」

佐々木「誰?」

古泉 「どうも。SOS団副団長の古泉です。あなたには『機関』の人間である、とこう表現
    した方が良いのかもしれませんが」

佐々木「あなたが……」

古泉 「それよりもどうしたんですか?そんなに目を真っ赤にして。いくら機関が敵対
    している別の神候補であっても、女性のそんな顔は見ていて嬉しいものではありません。
    どうでしょう?僕でよければ相談に乗りますが?」
667 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 18:32:02.57 ID:zOAlse20
………………
…………
……

〜公園〜

佐々木「…………」

古泉 「先程から押し黙ったままですが、まだ何があったのか話して貰えませんか」

佐々木「………………」

佐々木「(古泉君はキョンと一緒に行動していた。だから、古泉君にどうなったのか聞けば
    キョンの安否は分かる、でも……でも、もし、もう死んでいるなんて聞かされたら
    私、わたし!)」

古泉 「やれやれ、仕方ありませんね。では、こちらの勝手な憶測ですが、今から僕は独り言
    を言います。聞きたくなければ、どうぞ、耳を閉じるなどの意思表示をしてください。
    直に話を止めますので」

佐々木「………………」
668 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 18:32:54.61 ID:zOAlse20
古泉 「これは僕の勝手な推論ですがあなたが泣いているのはもしかして”彼”の事
    じゃあないでしょうか?」

佐々木「!!!」

古泉 「ふふっ、当たりのようですね」

佐々木「………」

古泉 「まぁ、あなたが悲しむのも無理はありません。あんな報道がなされたのですから」

佐々木「………………」

古泉 「涼宮さんもショックでまだ学校を休んでいますしね」

佐々木「………………そう、なんだ」
669 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 18:34:32.12 ID:zOAlse20
古泉 「ええ」

佐々木「………………」

古泉 「ふぅ。二人の女神さまをこんなに悲しませるなんて、彼も罪作りな人ですね」

佐々木「………………」

古泉 「………やれやれ。本来なら、あなたにこれを教える義理は全くと言って良いほどの
    皆無なんですが、まぁ良いでしょう。女性の悲しむ顔はあまり見たいものじゃない」

佐々木「……」

古泉 「良いですか?これは、『機関』に所属している古泉一樹の言葉では無くて、『彼』の
    友人として、同じ彼の友人であるあなたに向けての言葉です」

古泉 「彼は、生きてます」

佐々木「えっ?」
670 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 18:35:31.95 ID:zOAlse20
古泉 「もう一度言います。彼は生きてます」

佐々木「本当?」

古泉 「ええ。詳しくは言えませんが、今彼は機関の保護監視下に入っています。この間の
    報道も機関が一枚噛んでいたんですよ」

佐々木「………そう、なんだ」

佐々木「………キョンは、生きてる」

古泉 「はい」
671 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 18:36:27.93 ID:zOAlse20
古泉 「もっとも、かなり危機的状況に追い込まれているので、劣性状態ですがね。こちらは
    かなり不利な状態から戦わざるを得なかったので、彼と彼の家族には危険が及ばぬよう
    あのような報道を流して機関で匿っているんです」

佐々木「妹さんや、彼の両親も無事…なんだ」

古泉 「ええ。もっとも一家四人共一気に匿うのは無理だったので、小出しにして少しずつ
    ですがね。特に彼以外の三人は何の情報も持っていない極めて一般人ですから、骨
    が折れましたよ」

佐々木「……そっか。キョンも、キョンの家族も皆」

古泉 「ええ。無事です。ですからあなたが、そんなに悲しむ必要なんて何処にもありません」
672 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 18:37:26.24 ID:zOAlse20
佐々木「じゃあ国木田君も?」

古泉 「おや、これは驚きです。どうやって彼の事も?」

佐々木「それは……」

古泉 「まぁ良いでしょう。既に知っている物をとやかく言っても始まりません」

古泉 「えぇ、そうです。彼も無事です。安心して下さい」

佐々木「そうですか……良かった」
673 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 18:38:55.56 ID:zOAlse20
古泉 「詳しくは言えませんが、彼と彼の家族もまた機関が保護しています」

佐々木「…良かった。本当に」

古泉 「んっふ。漸くあなたの顔に覇気が戻りましたね」

佐々木「あの……ちょっと良いですか?もう一つお聞きしたい事があるんですが」

古泉 「どうぞ。僕に答えられる範囲であれば、お答えしましょう」

佐々木「有難う」

古泉 「いえいえ。それで?僕に聞きたい事というのは?」
674 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 18:39:51.13 ID:zOAlse20
佐々木「キョンの事なんですが」

古泉 「ふむ」

佐々木「わた……僕はキョンが殺されたという報道があってから、ずっとキョンが
    殺されたとされる直前に何があったのかを調べてきました」

古泉 「ほぅ」

佐々木「その、僕が調べた結果では、キョンは死ぬ五日ほど前に、あなたの部屋で『リング』
    を見たという事になっているんです」

古泉 「………」

佐々木「今もキョンが生きているというのなら、キョンはビデオの呪いを解けたんですか?
    それとも、これも機関がキョンの情報を敵に漏らさないように作った作り話なんですか?」

古泉 「…………」
675 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 18:41:37.23 ID:zOAlse20
古泉 「成程。あなたが何故国木田君の話を僕に振って来たのか、これで得心がいきました」

古泉 「………そうですね。結論から言ってしまえば、これは機関の自作自演です」

佐々木「そう、なんだ」

古泉 「はい。先程も説明しましたが、今回の戦い、かなり危機的状況に追い込まれているのが、
    現状です。ですのでこちらは、彼と彼の家族には危険が及ばぬようあのような報道を流
    して機関で匿っているんです」

佐々木「はい」

古泉 「しかし、あのような報道をただ流しただけでは、敵はそう簡単には騙されてはくれません」

古泉 「そこで、彼が本当に死んだかのように見せかける為、更なるトラップを用意したんです」

佐々木「それが……」

古泉 「ええ。SOS団のPCの中に隠した、あの日記です」
676 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 18:42:33.67 ID:zOAlse20
佐々木「そうだったんだ」

古泉 「どうやら、あなたにもとんだ心配を掛けさせてしまったみたいですね。
    非礼を詫びます」

佐々木「いえ。キョンが……キョンと国木田君が無事だと分かったなら、もう
    良いです」

古泉 「そうですか。有難うございます」

佐々木「そっか。無事なんだ……キョン」

古泉 「大丈夫ですよ。彼は今も元気でやってます」
677 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 18:43:47.49 ID:zOAlse20
………………
…………
……

古泉 「本当にもう大丈夫ですか?なんなら家まで送っていきますが」

佐々木「いえ、もう大丈夫です。あなたの話を聞いて安心しました」

古泉 「そうですか。それは何よりです」

佐々木「本当にどうも有難う。今日、会う事が出来て良かった」

古泉 「いえいえ、お気になさらず」

佐々木「じゃあ、さよなら」

古泉 「ええ、さようなら。彼が返ってくる日が決まったら、また連絡します」

佐々木「うん。宜しく」
678 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 18:44:54.95 ID:zOAlse20
そうして、私は意気揚々と家路に足を向けるのだった。あぁ、良かった。本当に良かった。

         キョンは生きている。生きているんだ!

そう思うと、次第に足取りは軽くなり、私は半分スキップのような形で歩いていた。
今までのもやもやした気持ちが一蹴され、心は晴れやかだった。

あぁ、キョン。キョン!出来る事ならば今すぐ君に会いたい。会って抱きしめたい。
抱きしめられたい。もう何処にも行かないように。決して離ればなれにならないように。
君とまどろみながら抱き合って、そのままこの世界に溶けてしまいたい位だ!


……と、ここで私は突然足をとめた。止めなくても良いのに、いや、止めてはいけないのに、

                 止めてしまった。
679 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 18:45:46.25 ID:zOAlse20
私の悪い癖だ。いつも、いつでも!もう一つの可能性を考えてしまう。悪い方向に思考を向けてしまう。

     やめろ!駄目だ!考えるな!考えちゃいけない!思い出しちゃいけない!

    やめてやめてやめてやめて!駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ!やめろ!やめるんだ!

                    考えるな!!!!!


     ……そう、願っていた時には既に遅く、私の頭には、ある考えが浮かんでいた。


                 『敵』って一体、誰だよ?
680 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 18:46:48.99 ID:zOAlse20
 足をその場にとめたまま、私は先程の古泉君と私の会話の内容を頭の中で反復する。

『今回の戦い、かなり危機的状況に追い込まれているのが現状です。ですのでこちらは、
彼と彼の家族には危険が及ばぬようあのような報道を流して機関で匿っているんです。
しかし、あのような報道をただ流しただけでは、敵はそう簡単には騙されてはくれません。
そこで、彼が本当に死んだかのように見せかける為、更なるトラップを用意したんです。
それが……SOS団のPCの中に隠した、あの日記』
681 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 18:49:28.08 ID:zOAlse20
     そうだ!日記。日記。日記?何故日記という単語がここで出ている?

私は彼に、喋ったのか?日記を読んでここまで辿り着いたと?何時?何時だ?言ったのか?

     私は本当に『日記』という言葉を彼の前で口に出したか?


   …………目を瞑って思考を巡らす。彼との会話を思い出す。想い出す。

      しかし、幾ら記憶の網を手繰っても、手ごたえは全くない。
       当然だ。私は日記という単語は使っていないのだから。
682 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 18:50:32.52 ID:zOAlse20
それに彼は、古泉君は、古泉一樹は!何と言っていた?あの日記は、『敵』を惑わすための
『トラップ』だと言った。

でも、私があれを読むきっかけとなったのは、メビウスリングという指環のヒントがあった
からだ。でも、指環の存在を知る前に私は、図書室に長門さんに会いに行ったのだ。いや、
むしろ長門さんに会うことが目的で、たまたま指環を見つけただけに過ぎない。

しかも、図書室に行けというメッセージは国木田君から来たように偽装された、別の誰かからの
メッセージだった。

   だから!その通りの手順を踏んだからこそ、私はあの日記に辿り着いたんだ!

  ……そして、ものの見事に、あの日記に書いてある事に翻弄され、振り回された。
      そう、その『トラップ』とやらに引っかかったのは『私』なのだ。
683 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 18:51:26.01 ID:zOAlse20

     ねぇ、ねぇってば。だったら、この場合、『敵』って私になるよね?

   ねぇ、古泉君?一体、何処までが本当なの?……それともこっちの質問の方が良い?


                何処からが『本当』なの?
684 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 18:52:31.27 ID:zOAlse20
………………
…………
……

一時間くらいだろうか?私は天を仰いだまま、その場に立ち尽くしていた。泣きながら。

            だけど、私は体を反転させ、歩く。

           当然、向かう場所は自分の家では無い。

       もう良い。もう終わらせよう。もうこれで、最後にしよう。

                そう、口ずさみながら。



私はこの事件の始まった場所、この事件を知る事になった場所。そして、最愛の人が死んだであろう場所。

              キョンの家に、一人向かった。
685 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 18:55:03.56 ID:zOAlse20
………………
…………
……

キョンの家の前についた私は庭の方に回り込み、さっきコンビニで
買ってきたガムテープを何重にも重ねて貼り、なるべく音が出ないように
窓ガラスを割る。

            ゴツゴツゴツ

と、規則正しい音を数回繰り返した後、ジャリンという鈍い音と共にガラス
が割れる。

      リビングから、そのままキョンの部屋へ。
686 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 18:55:54.32 ID:zOAlse20
……キョンの部屋に入ると、おびただしい程の血痕を見つける。

あぁ、納得。やっぱり、キョンは…ここで死んだんだ。

そっか。やっぱり……。

私はどんな顔をしているんだろう。悲しんでいるんだろうか?それとも悟った
顔でもしているんだろうか?

何故か頭は、数時間前国木田君の家で怯えていた頃とは打って変わり、冷静だった。


そのまま私は、キョンの机の上を見る。確認する。うん。やっぱり何もない。
証拠となりそうな物はすべて警察に押収されたのだろう。それも、分かり切った
事だった。

でも、私は探した。もしかしたら在るかもしれないという一途の望みを掛けて。
……そして、意外にもそれは、直に見つかった。

ベッドの傍のBOXの中の、ルービックキューブ。
以前、私が彼に渡したままの状態とは違う状態で。そこにあった。
687 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 18:57:46.59 ID:zOAlse20
………………
…………
……

以前私が渡した不思議なルービックキューブ。それは……全ての面の色を
揃えると、中に仕組まれたスイッチが押され、キューブが展開されるという
代物だった。

そして、中には空洞部分があり、物を入れて置く事が出来るという、何とも使い勝手
が良いのか悪いのか微妙なキューブなのだが、何故これを彼に渡したかというと、
キョンが大切なものを無くさないようにしたいと、物忘れの激しい彼がぼやいた所為だった。

そこで私は、街で偶然見かけたこれを購入し、日ごろの感謝の気持ちと一緒に彼に
プレゼントしたのだ。

しかし、当のキョンは、

「こんな取り出したい時に取り出せないような物、使えるわけねぇじゃねぇか」

と言って、全く使ってくれていなかったのだが……。

だが、今はどうやら違うみたいだ。色がバラバラになっている。
688 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 18:58:37.73 ID:zOAlse20
流石にこれには警察も気付かなかったようだ。それに、もし、キョンがこれに
何か手掛かりを残してくれていたのなら、犯人達も気付く事は出来なかっただろう。

………なんて、キョンの死をもう信じて疑ってない私が、今更こんな事やっても、
何の意味も無いんだけどね。


   そう呟きながらも、指は規則正しく動き、キューブを回転させていく。

 ……数分もしないうちに、全ての面の色が揃い、ビックリ箱のように展開された。

  そして、中には……小さく折りたたまれた手紙らしきものが入っていた。
689 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 19:00:51.02 ID:zOAlse20
『これを読んでいるのは佐々木多分お前だろう。すまないが時間がない。手短に書く。
良いか?お前は今回の事件には関わるな!何の事件かといえばもう分かっているとは
思う。俺が死んじまった事になってるだろう事件だ。このルービックキューブをお前の
家のポストに入れる次の日には、TVや新聞にも載っているかもしれない』

『そんで俺の身に何が起こったかだが、俺はどうやら『リング』とかいう奴に巻き込ま
れたみたいだ。後、古泉には近づくな!恐らくあいつが犯人に違いない。今振り返って
みると、あいつの行動には不可解な点が多かった。いや、不可解だらけだった』

『そもそも何か可笑しいとは思ったんだ。あいつの部屋でビデオを見てから、あぁも
すんなり事が運ぶ筈がないと。誰かに乗せられてる。誘導されてるって感じが常に俺に
つきまとってた。でもそれでも信じたかった。最後まであいつを』

最後は殴り書きになっていた……。

手紙の内容を読み返し、私はついに、キョンの身に何が起こったのかを知った。
遅すぎるくらいに時間が経過してしまった、今更に知った。


      そうか。これをポストに入れる前にキョンは……。
690 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 19:04:35.85 ID:zOAlse20
       ………と、この手紙を読んでいる私の背後から物音がした。

ハッと後ろを振り向くと、そこには朝比奈みくると、古泉一樹、朝倉良子がそこに居た。

      「成程ー。そんな所に隠してたんですか。見つからない筈です」

   そんな、見る者なら誰しも癒されるような笑顔で、朝比奈みくるは微笑んだ。
691 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 19:06:59.92 ID:zOAlse20
………………………………
…………………………
……………………
………………
…………
……

〜二週間後〜

私はキョンと二人海に来ていた。傍目に見たら、恋人とも見えない事もない
この状況に少し、心が浮ついてるのはキョンには秘密だ。


さて、あの事件からもう二週間が過ぎようとしているのだけれど、無事(?)
キョンは私の元に帰って来た。
692 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 19:08:33.00 ID:zOAlse20
あの日、朝比奈みくるは、私に協力を求めてきた。そして、私が協力すれば、彼を、
キョンを生き返らせると、そう提示してきたのだ。

朝比奈みくるが具体的にどうキョンを生き返らせたかについては、ここでは言及しない
でおくが、大まかな方法は次の通りだ。

まず、朝比奈みくるは過去に遡り、キョンが古泉君に殺される直前で、種を蒔く。
その種の中には、宇宙人が開発したとされる未来の情報を一時的に過去に伝える
事が可能な装置が入っている。

確かに、突然見知らぬ人間が、未来について語ったとしても、容易にそれを受け入れ
は出来ないだろう。だけど、自分の言葉ならば、納得できる。

つまり、山村貞子自身に、キョンを殺させないように説得させたというわけだ。
693 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 19:09:46.79 ID:zOAlse20
けど、それだけでは色々な不都合が起きてしまうので、キョンの死体を本物そっくり
に宇宙人に作って貰い、入れ替えたという訳。

そのまま、過去のキョンをそっくり朝比奈みくるが今の時間平面上に連れて帰り、キョン
の身に起こった一連の事件の記憶を消す。

ついでに、報道関係にも大規模ではあるが情報操作を行えば、これで晴れて、事件は何事
も無かったかのように闇に葬り去られる。


………全く。なんてご都合主義。
694 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 19:11:12.60 ID:zOAlse20
そして、肝心の彼女の私への要求はというと、いたってシンプル。

今回の事件については何も考えず、今まで通りの生活をしろ、というものだった。
朝比奈みくるが言うには、これは規定事項なのだそうだ。


結局、彼女の居る未来には、涼宮ハルヒという神様は、存在してはいけない存在
だったらしい。

そこで、彼女達未来人は、涼宮ハルヒを始末するために、宇宙人達と手を組んだ。

宇宙人達が興味があるのは、涼宮ハルヒという対象の観察。
未来人達の望みは、涼宮ハルヒの抹殺。

一見、ウマが合わなさそうなカップリングだが、そこは物の考えようだ。

つまり、『この世界から涼宮ハルヒという存在を消す』という発想につながった。
695 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 19:12:59.68 ID:zOAlse20
宇宙人達はかねてより、自分たち以外の涼宮ハルヒを監視する者達を疎ましく
思っていた。当然だ。折角監視対象が何かアクションを起こそうとしている
というのに、宇宙人達意外の勢力は、それを鎮静化させようとばかりするのだ。

これでは、観察する意味がない。

一方、未来人のグループは自分たちの未来に近づけさせる為、どうしても強大な
力を持つ涼宮ハルヒを始末したかった。

そこで、この二つのグループはお互いに牽制し合っても意味がない、ここは一つ
協力しないか?という事になったのだ。
696 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 19:15:23.15 ID:zOAlse20
宇宙人と未来人が選択した、互いにとって最も都合の良いシチュエーション。

   『涼宮ハルヒをこの世界から隔離し、別の世界に連れていく』

こうすれば、宇宙人は、他のどの勢力にも邪魔されずに涼宮ハルヒの監視を行え、
未来人は自分達の未来を手に入れられる。

……でも、この計画には邪魔な組織が一つあった。そう、超能力者のグループだ。

機関という超能力者のグループは涼宮ハルヒを神扱いしており、別世界に隔離する
など、以ての他となるのは容易に想像ができる。
697 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 19:17:12.67 ID:zOAlse20
ここで、超能力者達を一掃するために作られたのが、あのビデオテープだ。

あのビデオは、やはり『リング』の山村貞子の呪いをモチーフに作られた
もので、山村貞子の怨念が宿っている。

ちなみに、山村貞子は元々、超能力者という設定で作られた存在だったので、
同じく異なる能力とはいえ超能力を有する機関の面々には、効果絶大で、機関
の超能力者達は、たちまち山村貞子の支配下になった。


最後に、超能力者達を壊滅させたら、宇宙人達の情報操作によって、山村貞子
という存在も消滅させれば事件は一件落着。


……つまり、今回私やキョンが走り回ったこの事件は、蓋を開けてみれば宇宙人
と未来人が手を組み、超能力者を一掃し、涼宮ハルヒを別世界に隔離するという、
ただそれだけの事件だったのだ。
698 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 19:23:03.86 ID:zOAlse20
私やキョンが関わった事件はそのごく最後のちょっとした余興のようなもので、
突然神様が居なくなるこの世界を安定に導くための儀式だったという訳。

そう、キョンを殺して、私を走り回らせ、十分私が苦しんで、もう抵抗しない
だろうと分かった時に、真実を告げ、自分達に従えさせるという寸法。

ご丁寧に、いつでも殺せますから、逃げないで下さいね?というデモンストレーション
まで行ってくれた。

   これじゃあ身動きどころか、身じろぎ一つ出来ない状況だ。

          私は素直に従うしかなかった。

…けど、私がその約束を守って、大人しくし続けた、二週間後の今日、キョンは
帰って来た。あの頃の姿のまま。
699 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 19:25:18.41 ID:zOAlse20
更に、ビデオももう回収され、山村貞子も消えた。キョンも帰って来たし、今頃は
キョンの家族や、国木田君、部長氏も家に戻っている筈だ。

   ……だから、私は今回の事件はこのまま胸にしまっておこうと思う。


……でも、朝比奈みくるの横顔が、山村貞子のそれにダブって見えたのは、多分
見間違いの所為ではないだろう。

ただ私がそんな事をいくら考えた処で、それも多分きっと、どうにもならない
事なんだろうとも思う。

彼女っぽく言えばこれも、「禁則事項だけどね?」等と表現する部類に入るのだろうか?
700 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 19:26:13.61 ID:zOAlse20
        …………はぁ。ま、良いか。

そうだ。これからこの世界が何処に向かって行こうと、どうなっていこうと、
私には既に関係がない。もし関係があったとしても、それを止める術は無い。

       仮初の神様にはそんな力など無いのだ。

私に出来る事は、ただ、ただただ、この世界がどういう未来を歩んでいくのか
を見届ける事だけ。
701 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 19:27:53.74 ID:zOAlse20
……そして、そんな風に溜息をついて、私はそれ以上、今回の事件への考察を止めた。

きっとこれ以上の考察は意味が無い。いや、仮に意味があったとしても、きっとそれは
些細で取るに足らない微細なもので、取り立てて特に騒ぎ立てする必要もない些末な違和感。

ならば私の胸にしまっておこう。
……誰も気付かないように。誰も考えないように。誰も思い出さないように。


耳を澄ますと、波の音が良く聞こえる。

だが、浜辺の波は、ただただ押し寄せては戻るという単調な作業を繰り返すだけだった。


そして、そんな波の音を聞きながら私達は、さながら螺旋を描きながら階段を転がり続ける
『指環(リング)』みたいに、延々と繰り返すループのような日常に戻っていくのだった。


            ……あぁ、世界は今日も廻る。



            佐々木「禁則事項だけどね?」

                  完
702 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 20:21:19.07 ID:zOAlse20
古泉「禁則事項です」
703 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 20:23:18.89 ID:zOAlse20
古泉 「単刀直入に聞きます」

涼宮 「何よ古泉君、突然」

古泉 「涼宮さんは彼の事をどう思っていますか?」

涼宮 「は?か、彼って誰よ」

古泉 「彼は彼ですよ。彼は彼以外の誰でもなく、彼以上でも彼以下でもない。故に彼です」

涼宮 「全く分かんないわね」

古泉 「ふぅ。そこまで仰るのならもう少しヒントをば」
704 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 20:24:09.67 ID:zOAlse20
古泉 「彼とは即ち、『彼』です」

涼宮 「……」

………………
…………
……

古泉 「なんて事がありましてね。ですから、これから僕があなたを
    何て呼ぶか考えようと思いまして」

キョン「呼び名も何も本名で呼んでくれよ」

古泉 「それは無理ですね」

キョン「何で?」

古泉 「禁則事項です」
705 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 20:25:16.39 ID:zOAlse20
キョン「じゃあ、お前も『キョン』で良いじゃねえか。俺としては甚だ不本意だがな」

古泉 「それはアウトです」

キョン「何で?」

古泉 「考えても見てください。あなたを『キョン』と呼んでいるのは、あなたと仲の
    良い人間ばかりですよ?」

キョン「……ちょっと待て。それだと長門も」

古泉 「あぁ、彼女は宇宙人ですから例外です」

キョン「そうなのか?」

古泉 「はい」
706 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 20:26:12.37 ID:zOAlse20
キョン「ふぅん。まぁニックネームで呼ぶのは普通親しい間柄だからな」

古泉 「でしょう?」

キョン「……でも、俺とお前って結構長い間一緒に居るよな?」

古泉 「それなりには」

キョン「俺達ってそんなに仲悪かったっけ?」

古泉 「仲が悪いわけではありませんが、格別良いわけでもありませんね」

キョン「そうか」
707 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 20:27:10.00 ID:zOAlse20
キョン「俺の事…『キョン』て呼びたいのか?」

古泉 「そりゃ勿論」

キョン「だったら、これからはそう呼んでくれ」

古泉 「いえ、そう簡単にはいかないんですよんね、これが」

キョン「えっ?」

古泉 「考えても見てください。この展開だと、僕が何だか酷く負けた気分になるじゃないですか」

キョン「いや、そんなの知らんがな」
708 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 20:29:02.38 ID:zOAlse20
古泉 「だからここは一つ、男同士の親睦を深めるためにも……」

キョン「もう好きにしてくれ」

古泉 「僕の部屋で一緒にAVでも見ませんか?」

キョン「何してんだ古泉!さっさとお前の家に行くぞ!!!」
709 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 20:30:45.97 ID:zOAlse20
〜古泉宅〜

古泉 「こんなのどうですか?」

キョン「ほほう!!!クノイチとは、またマニアックだな」

古泉 「他にもここら辺もお勧めですね」

キョン「ポリスにOLにナース。戦隊物からガチャ○ンとム○クのかぶり物のAVまで!!!
    守備範囲が広いな」

古泉 「そう言って頂けると光栄です」

           Prrrrrrrrrrrr

古泉 「なっ、こんな時に誰が……!!!森さん?まさか!?」
710 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 20:32:43.94 ID:zOAlse20
森  『もしもし古泉?今どこ』

古泉 「自室で待機していますが」

森  『この馬鹿!!!彼女の監視はどうしたのよ?凄い勢いで閉鎖空間が広がってるわよ?』

古泉 「分かりました……出動ですね?」

森  『あなたの家の前にすぐ車をつけとくからね。すぐ来るのよ?』

古泉 「ええ。では後ほど」
711 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 20:34:05.29 ID:zOAlse20
キョン「どうした、古泉?」

古泉 「申し訳ありませんが、仕事が入ってしまいました」

キョン「……そうか、残念だな」

古泉 「はい、すみません」

キョン「気にするなよ?お前のおかげで世界は守られてるわけだしな。AVは残念だが
    また今度にでも」

古泉 「……あなたさえ良ければ、合鍵を渡しておきますので気に入ったAVがあったら
    見ていってください」

キョン「い、良いのか?」

古泉 「ええ、せめてもの気持です。っと、どうやらお迎えがきたみたいですね。では」

キョン「ああ!頑張ってこいよ」
712 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 20:35:11.77 ID:zOAlse20
キョン「……さてと、部屋の主は仕事に行っちまったみたいだし、どうすっかな?」

キョン「…ま、折角だし、AVでも見るか」

キョン「…………ん?何だこれ?ビデオテープ?今時?ラベルも貼ってないな」

キョン「ま、良いか。ビデオデッキは…おっ、あったあった」

キョン「ん?何だこれ?……画面真っ暗だな」

        ザザザザーーー

キョン「お、漸く映った。あれは……井戸か?」
713 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 20:36:49.60 ID:zOAlse20
キョン「もしかしてこれAVじゃなかったのか。どうすっかな」

キョン「ま、別にいいか。暇だし」

キョン「なんか火山が出てきた。ばあさんも映ってるな。喋ってる」

キョン「……」

キョン「……」

キョン「……」

キョン「……」

キョン「……終わったな。不思議なビデオだったが、別に変った事は…」

  PrrrrrrrrrrrrrrrrPrrrrrrrrrrrrPrrrrrrrrrrrPrrrrrrrrrrrrr
714 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 20:38:07.30 ID:zOAlse20
キョン「携帯か。誰だ?」

キョン「着信。何だハルヒからか」

キョン「もしもし?どうした」

ハルヒ?『………ア……ハ…シ……二…ヌ』

キョン「は?何だって?」

ハルヒ?『………カ……ホ…ハ……ダ…』

    プツッ。ツーツーツー

キョン「切れちまった。どうしたってんだよ一体?」
715 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 20:39:13.09 ID:zOAlse20
キョン「とにかくハルヒにもう一度電話すっか」

         Prrrrr

ハルヒ『この馬鹿っ!!!!!!』

キョン「のわっ?」

ハルヒ『あんた、SOS団の活動をほっぽり出していい度胸ね?今どこに居んのよ?』

キョン「ど、何処って、(古泉の)家だが…」

ハルヒ『何で帰宅してんのよ!!!もう良いわ!!!今度の不思議探索活動はあんたが
    遅れてこようが早くこようがどちらにしても、全額あんたの奢りだからね?』

キョン「なっ、ちょ、待てよ」

    プツッ。ツーツーツー
716 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 20:41:32.60 ID:zOAlse20
キョン「切れちまった。どうしたってんだよ、あいつ?さっき掛けてきたくせに」

キョン「ん?ハルヒからの着信履歴。午後五時七分?俺が古泉と一緒に帰宅してる
    時間帯じゃないか。俺気付いてなかったんだな。……ってあれ?今の時間は
    午後五時三十二分。ビデオ見てすぐに電話掛かってきたはずだから……さっきの
    着信はハルヒじゃなかった?」

キョン「でも携帯に着信履歴が表示されないなんて……」

キョン「もしかして、またハルヒがらみなのかもな。明日古泉に聞いてみるか」
717 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 20:42:37.55 ID:zOAlse20
〜翌日〜

古泉 「ビデオテープ?」

キョン「ああ、昨日お前の部屋で見かけたんだが…」

古泉 「僕の部屋にあったんですか?」

キョン「ああ、おまえのBOXの片隅にあったけど」

古泉 「変ですね。ビデオはもう見ないので全部処分した筈ですが…」

キョン「そうなのか?」

古泉 「ええ。特にデッキが二年前に壊れてからは全く」
718 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 20:43:57.74 ID:zOAlse20
キョン「デッキが壊れた?嘘言うなよ。俺はそのビデオ、お前の部屋にある
    デッキで見たんだぜ」

古泉 「えっ?もしかして僕の部屋のデッキで見たんですか?」

キョン「ああ。テープ借りた訳じゃないぞ。なんなら今日団活が終わった後、確認するか?
    まだお前の部屋のデッキに入れたまんまだしな」

古泉 「……そうですね。もし涼宮さんがらみならば、早めに行動しておかなくては」

キョン「まぁ、ビデオ見た後電話がかかってきただけだからな。そんなに心配する程
    じゃないと思うが」

古泉 「そうだと良いんですがね…」
719 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 20:45:18.52 ID:zOAlse20
〜古泉宅〜

古泉 「で、僕の部屋にあるデッキを確認したわけですが…」

キョン「ああ」

古泉 「何も入ってませんでしたね」

キョン「おかしいな。俺ビデオは確かに入れっぱなしにした筈なんだが」

古泉 「……不味いですね」

キョン「何がだ?」

古泉 「もしやご存知ないのですか?」

キョン「だからさっきから聞いているだろ?」
720 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 20:46:32.61 ID:zOAlse20
古泉 「良いですか?恐らくですが、あなたが今体験している状況と非常に似通った
    事例があります」

キョン「へぇ、前例があるのか」

古泉 「……」

キョン「どうしたんだよ古泉?前例があるなら解決策もある筈だろ?」

古泉 「いえ、今のところ絶望的です」

キョン「もしかして打つ手がないってのか?」

古泉 「……はい。正直、打つ手はありません」

キョン「俺はこれからどうなっちまうんだ?」

古泉 「………………」

キョン「おい!!!古泉!!!!!!」
721 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 20:48:05.47 ID:zOAlse20
古泉 「……………恐らく、一週間後、いえ、もう残り六日ですか。六日後に、あなたは死にます」

キョン「!!!!!!!!!!!!!」

キョン「な、何だと?死ぬ…のか?」

古泉 「はい」

キョン「俺が…?」

古泉 「そうです」

キョン「これもまたハルヒの仕業だって言うのか?」

古泉 「現状では何とも言えませんが、今回その可能性は低いかもしれません」

キョン「そうなのか?こんな不可思議な現象があいつ以外で起こるもんなのか?」

古泉 「もしくは、涼宮さんの能力を上手く利用した輩が居る。そう考えるのが妥当ですね」
722 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 20:51:37.36 ID:zOAlse20
………………
…………
……

キョン「…ふぅ」

古泉 「落ち着きましたか?」

キョン「なんとかな……で、今回の事件、俺が六日後に死ぬってことも分かっているお前は、
    この事件がどういった物なのか把握しているみたいだな」

古泉 「ええ。一言で言ってしまうとこれは『リング』ですね」

キョン「リング?どっかで聞いた事があるような」

古泉 「……しかし、やはり内容はご存知ないようですね」

キョン「…説明を頼む」

古泉 「分かりました。では少々噛み砕いてご説明します。『リング』という物は元々小説
    として世に出た作品です。その後、反響が大きかったので映画化、ドラマ化。果てには
    洋画としてもリメイク作品が出たほどのホラー物です」

キョン「(ホラー物か。俺が知らないはずだ。うちの妹怖がりだから、家には極力そういう
     類の物は置かないからな)」
723 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 20:52:36.63 ID:zOAlse20
古泉 「そして肝心のリングの中身ですが、そうですね。話しの肝となるのは、ビデオテープです」

キョン「俺の見たあのテープか」

古泉 「ええ。そのテープを見た者は、一週間後に死にます」

キョン「………」

古泉 「そのテープにはある女性の呪いが込められていまして、登場人物たちは、その呪いを解こうと
    躍起になります」

キョン「(呪いの解き方?そう言えば確かビデオの最後に……ってまさか!!!!)」

キョン「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
724 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 20:53:32.08 ID:zOAlse20
古泉 「ど、どどどうしました?」

キョン「思い出した!!!あのビデオテープの最後の場面!!!」

古泉 「おや、あなたが見たテープは最後まで録画されたテープだったんですね」

キョン「馬鹿!!!何冷静に言ってるんだよ!!!テープの最後に呪いの解き方が映ってた」

古泉 「そうだと思います。僕の読んだ『リング』の小説もそういう風な描写がありましたし」

キョン・古泉「「呪いの解き方……それは、第三者にビデオをダビングして見させること!!!!!」」

キョン「でもここにテープがなきゃ、そんなの無理じゃねぇか!!!どーすんだよ!!!!!!」

古泉 「ですから先ほど言ったじゃないですか『絶望的です』と」

キョン「くそおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」
725 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 20:54:54.17 ID:zOAlse20
キョン「おい。他に呪いを解く方法はないのか?」

古泉 「ありませんね。こういう時に頼りになるのは、長門さんですが」

キョン「長門は……無理だ。今のあいつには情報操作できる能力がない」

古泉 「僕も閉鎖空間の外では無力ですし、残るは……」

キョン「朝比奈さんの未来の情報のみか」

古泉 「彼女が話せれる内容だと有難いのですが…」

キョン「『禁則事項』の気もするが一応当ってみよう!」
726 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 21:05:08.30 ID:zOAlse20
PrrrrrrrrPrrrrrrrrrPrrrrrrrrr

キョン「くそっ、繋がらない」

古泉 「……」

キョン「朝比奈さんたち未来人なら、この先俺がどうなるか知って居る筈なのに!!!」

古泉 「…もしかしたら」

キョン「どうした?古泉」

古泉 「今から機関と鶴屋さん、それから涼宮さんにも確認をとってみます」

キョン「何か気付いたのか?」

古泉 「ええ(もしかしたら今よりも状況が悪くなるかもしれない事実ですけどね)」
727 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 21:19:44.00 ID:zOAlse20
………………
…………
……

〜一時間後〜

キョン「どうだったんだ?古泉」

古泉 「はい。裏が取れました。どうやら朝比奈みくるは、この世界に存在しないようです」

キョン「!!!!どういうこった?」

古泉 「彼女の言い方を借りるとすれば、朝比奈みくるという個体はこの次元平面上には存在
    しないってことです」

キョン「だから!今回のお前はいつにもまして回りくどいな。だから朝比奈さんが何でいなく
    なっちまったんだよ」

古泉 「………未来が変わったんでしょう。恐らく、朝比奈みくるが存在しない未来に…」

キョン「なっ?」
728 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 21:21:38.18 ID:zOAlse20
古泉 「僕は言いましたよね?今回の事件、涼宮さんが関与している可能性は低いと。そして」

キョン「もしハルヒの力が関与しているなら、裏でそれを操った奴が居るって話しか?」

古泉 「そう、その話です。幾ら涼宮さんの力が凄いと言っても彼女はその力をまだピンポイントで
    制御できていません。あなたがビデオを見たのが彼女の力の所為だというのはまだ納得できます」

キョン「いつもの事だからな」

古泉 「しかし、その後にこうも見計らったタイミングで、ビデオが消去されるとは考えにくい。普段
    ならばもっと大規模に働きかける彼女の力が、こうも見事にあなたの都合の悪くなるタイミングで
    矢継ぎ早に起こっている」

キョン「確かに」

古泉 「ここまで来ると、涼宮さん以外の誰かが人為的で作為的で意図的に事を起こしているのは明らかです」
729 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/14(土) 23:50:35.08 ID:6npf12DO
?????
730 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/14(土) 23:56:07.70 ID:6npf12DO
sage忘れた

それよりどした?
731 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 03:14:51.74 ID:.s2ZINo0
キョン「だとすると、朝比奈さんが消えちまった事からも、ビデオを奪ったのは朝比奈さんたち
    と敵対する未来人のグループか!」

古泉 「その可能性も高いですが、それだけとは言い切れませんね」

キョン「何故?」

古泉 「朝比奈さんたちの未来を邪魔だと思っているのは何も同じ未来人だけじゃないって事ですよ」

キョン「!!!そうか。別の未来に変えようとしているのは何も…同じ未来人に限った事じゃない」

古泉 「その通りです。彼女たちの情報がどこからか漏れて、そいつらにとって邪魔だったから消された
    可能性があります」

キョン「くそっ!!!どうすりゃいいんだ?朝比奈さんの事も何とかしなくちゃならないのに、
    俺は彼女を助ける前に、誰がテープを持っているかも分からないまま呪いにおびえながら
    死ぬのかよ?」
732 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 03:15:49.95 ID:.s2ZINo0
古泉 「大丈夫です」

キョン「…古泉?」

古泉 「僕があなたを死なせなんて絶対にさせません」

古泉 「朝比奈みくるも何とかしてみせます。だから…」

キョン「……」

古泉 「僕を信じて下さい。キョン君」

キョン「……ああ。有難うな、古泉」
733 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 03:16:50.77 ID:.s2ZINo0
〜翌日・キョンの余命残り五日〜


キョン「あまり眠れなかったな。……無理もないか、あと五日で死ぬって死刑宣告
    されたんだし」

キョン「こうしていても始まらないな。行動するか」

妹  「おはよ、キョン君」

キョン「おう、今日も早いな」

妹  「ねぇねぇキョン君」

キョン「ん?あぁ、どうした」

妹  「昨日のアニメさ、DVDで録画したんだけどさ、綺麗に取れてなくて、代わりに
    変なものが映ってたの」

キョン「変なもの?」

妹  「うん、何かね。井戸と火山とおばあさんと……」

キョン「!!!!!!!!!」
734 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 03:17:44.61 ID:.s2ZINo0
キョン「(ま、まさかそんな筈は、だってあのテープは。何故DVD?媒体はテープだけじゃないのか?
     いや、しかし)」

妹  「どしたのキョン君?」

キョン「おい!DVD見た後に電話は掛かってきたか?」

妹  「えっ?う、うん。あんまり上手く聞き取れなかったんだけど…間違い電話みたいなの
    掛かってきたよ。すぐに切れたし」

キョン「(なんてこった)」

妹  「?」

キョン「あ!そ、そうだ。そのDVD持ってるか?」

妹  「うん!持ってるよ」

キョン「(これは逆についているかもしれん!!!)」
735 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 03:18:35.11 ID:.s2ZINo0
………………
…………
……


妹  「あれ〜可笑しいな。昨日ケースに入れといたのに」

キョン「無いのか?」

妹  「うん。ちょっとお母さんにも聞いてくる〜」

キョン「……あぁ、急いでな」

妹  「うん」

キョン「(これは、…くそっ、何で妹まで?)」
736 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 03:19:42.20 ID:.s2ZINo0
………………
…………
……

妹  「キョン君、お母さんに聞いてみたんだけど」

キョン「知らなかったのか?」

妹  「うん」

キョン「……そうか」

妹  「おかあさんもね、ちゃんと録画できてるか中身確認した後にケースに入れたって」

キョン「お、お袋も見たのか?」

妹  「うん。でも変だよね?お母さんはちゃんと録画できてたわよって」

キョン「そ、そうか(どうやらお袋は無事みたいだな)」
737 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 03:21:03.59 ID:.s2ZINo0
キョン「で、DVDの中身の件についてだが」

妹  「そうそう!」

キョン「別に気にする程のもんじゃないさ。見たかったアニメなら、今度レンタル屋に並んだら
    俺が借りてきてやる」

妹  「本当?さすがキョン君」

キョン「あぁ、約束だ(だから何としても生き残らないとな。…この事件はもう俺だけの問題じゃ
    なくなってきている。どうにかして活路を見つけなくちゃ俺は勿論こいつも…)」

キョン「(早くビデオやDVDを持ち去った犯人を…)」
738 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 03:22:47.53 ID:.s2ZINo0
………………
…………
……

キョン「という事が今朝あってな」

古泉 「非常にまずいですね」

キョン「ああ、まさか妹にまで被害が及ぶとは…」

古泉 「いえ、僕が言っているのはそちらではありません」

キョン「?」

古泉 「おや?気付きませんか。妹さんのアニメですよ」

キョン「アニメがどうかしたのか?」
739 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 03:24:05.48 ID:.s2ZINo0
古泉「妹さんは何故DVDに録画、いえ、これは多分キョン君たちのお母さんが
   録画したんでしょうが、この際それは重要ではありません」

キョン「……」

古泉 「問題なのはそのアニメを録画した時間です」

キョン「確か、五時半過ぎだったらしいが…」

古泉 「ええ、そしてその時間はキョン君が僕の部屋で呪いのビデオを見た
    時間とも一致します」

キョン「そう言えばそうだな」

古泉 「しかし、キョン君の時とは圧倒的にケースが違います。あなたは、
    テープをデッキに残したまま帰宅。そして僕が神人を倒して帰るまで
    にかなりのタイムラグが発生しています」

キョン「!!!!!!」

古泉 「気付いたようですね?」

キョン「昨日、俺の家ではDVDをお袋が撮った後も、妹が見た後も、必ず最低でも
    誰か一人は家に居たぞ?」
740 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 03:25:08.98 ID:.s2ZINo0
キョン「犯人はうちの家族が居る中、DVDを持ち去ったってのか?」

古泉 「逆算するとそうなりますね」

キョン「おいおい、そんな真似ができる連中なんて…」

古泉 「はい…」

キョン「長門のパトロンか親戚くらいだろ?」

古泉 「ええ、今回の事件の主犯は彼らであるとみて、ほぼ間違いないでしょうね。
    涼宮さんが関与していないとなると、一番妥当な線でもありますし。しかし
    そうなると、僕たちは長門さん抜きで情報統合思念体とバトル羽目になります」

キョン「…敵うわけないだろ」
741 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 03:26:04.00 ID:.s2ZINo0
古泉 「………でも僕が!」

キョン「古泉……すまないがしばらくの間一人にしてくれないか?」

古泉 「し、しかし!!!」

キョン「時間が無いのは分かってる!…でも、でも頼む。三十分で良い。気持ちの整理を
    させてくれ」

古泉「……分かりました。僕は何か策を講じます。気分が落ち着いたら携帯で…」

キョン「有難う、古泉」

古泉 「いえ、では失礼します」

キョン「…………はぁ」
742 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 03:27:03.50 ID:.s2ZINo0
………………
…………
……

〜四十分後〜

         Prrrrrr

古泉 「おや?もう気分は大丈夫なんですか?」

キョン『ああ、すまなかったな。もう大丈夫だ』

古泉 「無理しなくても良いんですよ」

キョン『はっ、自分と家族の命、朝比奈さんの未来もかかってるんだ。無理しない
    奴の方が居ないさ』

古泉 「………そうですね」

キョン『だからお前にスンゴイ迷惑かけるかも知んないが、勘弁してくれよな?』

古泉 「やれやれ、……構いませんよとも。だって僕ら『友達』じゃないですか」

キョン『……くくっ、あぁそうだな。『友達』だ』

古泉 「では、これからそちらに向かいます。そうそう、少しだけ光が見えてきましたよ。
    もしかしたら、あなたの呪い、解けるかもしれません」
743 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 03:28:27.36 ID:.s2ZINo0
………………
…………
……

キョン「…で、お前の言ってた光ってもしかして」

古泉 「はい、彼女です」

朝倉 「……ふん」

古泉 「敵が情報統合思念体なら、最低限こちらもそれに対抗しうる力が必要ですからね」

キョン「まぁ、そりゃそうだが…」

朝倉 「ナニ?私だってあなたを助けたくてここに居るんじゃないんだからね?あくまでも
    長門さんの代わりよ」

古泉 「やれやれ」
744 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 03:29:26.34 ID:.s2ZINo0
キョン「古泉、ちょっと」

古泉 <何ですか?>

キョン<おい、朝倉は昔俺を殺しに来たほどの奴だぞ?大丈夫なのか>

古泉 <その点でしたら心配いりません。もし困った事があれば朝倉さんに手伝いをさせる
    ようにプログラムを仕込んでいると昔長門さんに伺った事があります>

キョン<そ、そうなのか。でもだったら朝倉でなくても…黄緑さんとか>

朝倉 「ちょとそこ!さっきからボソボソ喋ってるけど私を甘く見ないでよね。全部聞こえてるわよ?」

キョン「なぬっ?」

朝倉 「ふん!どうせ私は長門さんの代わりでバックアップで代替品よ!!!あんたもどうせ、
    朝倉涼子の特徴なんて眉毛しか思い出せないぜ、とか思ってるんでしょ?」

キョン「い、いや。そこまでは…」

朝倉 「ふん。別にいいわ。どうせ今回の事件が片付いたら、また私の活動を黄緑あたりが封じに
    掛かるんでしょうしね」
745 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 03:30:18.57 ID:.s2ZINo0
キョン「そ、そうなのか?」

朝倉 「安心した顔になったわね」

古泉 「まぁまぁお二人とも。今は時間もありませんし、ねっ」

キョン「そうだな」

朝倉 「仕方ないわね」

古泉 「ではこれからの方針を決めましょう。残された時間でどう、決着をつけるのか。
    主に選択肢は三つ。一つは敵と思われる集団がまだ地球上に居るのならば、テープを
    取り戻し普通に呪いの解除を行う」

古泉 「二つ目は、今回の事件を引き起こした奴を見つけ、倒して解決とする」

古泉 「……そして三つ目は」
746 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 03:31:10.05 ID:.s2ZINo0
???「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
747 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 03:32:03.71 ID:.s2ZINo0
キョン「な、何だ?この悲鳴は?」

古泉 「部室塔のようです」

朝倉 「………」

キョン「と、とにかく行くぞ。さっきの叫び声は尋常じゃなかった」

古泉 「同感です。急ぎましょう」

朝倉 「はぁ、(面倒臭くなってきたわね、これは)」
748 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 03:33:05.07 ID:.s2ZINo0
………………
…………
……

キョン「ん?あそこドアが開いてる?」

古泉 「コンピ研のようですね。この時間帯に人がいるのは珍しいですが」

朝倉 「成程ね。やっぱり…」

キョン「入るぞ!」



キョン「こ、これは…」

古泉 「部長氏が死んでる」

朝倉 「………みたいね。間違い無いわ」
749 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 03:34:04.82 ID:.s2ZINo0
古泉 「………朝倉さん。一つお聞きしたい事があります」

朝倉 「どうぞ」

古泉 「部長氏のこの死に方。僕の想像通りで良いんですよね」

朝倉 「良くはないと思うけど、間違ってはいないわね」

キョン「?さっきから何喋ってんだ二人とも!全然話が見えてこない。というよりも
    何でお前らは人が死んでいるのにそんなに冷静なんだよ?」

古泉 「……僕は、閉鎖空間内で人の死を、見慣れてしまっていますから」

朝倉 「私は宇宙人だし、別にどうって事無いわ」

キョン「そ、そうなのか」
750 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 03:35:03.49 ID:.s2ZINo0
古泉 「ただ、人の死に慣れるというのも存外気分の良いものではありませんね。
    あなたは部屋の外で待機していてください。僕と朝倉さんで調べておきます。
    教師の方がここに近づいたら知らせてください」

キョン「それくらい朝倉の情報操作で…」

朝倉 「いくら私でも、既に起こってしまったあの叫び声を今からは消せないわ。
    この空間を隔離したとしても、その後、色々問題が残るし」

キョン「確かに。人の死体があるのに、学校がその事実にいつまでも行き当たらないと、後で
    警察関係者や、マスコミがうるさそうだな」

朝倉 「そこまで広がっちゃうと大規模な情報操作しなくちゃならなくなるしね」

古泉 「ですから見張りを頼みます」

キョン「あ、ああ。分かった」
751 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 03:36:02.65 ID:.s2ZINo0
………………
…………
……

〜一時間後〜

キョン「今日はもう、学校閉鎖だってよ。明日も緊急の職員会議で、授業の復帰はいつになるか
    分からんらしい」

古泉 「まぁ、当然の流れですね」

朝倉 「条件的には他殺だけど、死因が心不全じゃあ、警察も動きづらいでしょうし妥当なところね」

キョン「お前、死因知らべてたのか?」

朝倉 「いいえ、私達が調べてたのはビデオやDVD、もしくはそれに準ずるリングの媒体品ね」

古泉 「しかしまたもや犯人には先を越されたみたいでしたが」

キョン「そうか………なぁ、ちょっと良いかな?」
752 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 03:37:02.48 ID:.s2ZINo0
古泉 「はい、何でしょう?」

キョン「この前、お前に説明してもらったリングの話な。途中で打ち切っちゃっただろ?だから
    もう少し詳しく話してくれないか?」

朝倉 「それなら私がしてあげる。何もこんな時間が無い時に三人が同時に時間つぶすなんて
    馬鹿らしいわ。古泉君は私がキョン君に説明してる間に警察関係に潜り込んでる機関の
    人たちから情報を集めてきといて」

古泉 「そうですね、それが良さそうです。では僕は探りを入れてきますので、また後で」

キョン「あ、ああ。またな(朝倉と二人っきりか。早く帰ってきてくれよ、古泉)」
753 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 03:38:02.76 ID:.s2ZINo0
朝倉 「じゃ、説明するわよ」

キョン「頼む」

朝倉 「まず『リング』ってのが元々小説って話は聞いたわよね?」

キョン「ああ、その後映画化されて、ドラマ化、洋画版でリメイクもされたんだろ?」

朝倉 「うん。今回の事件がどの作品を元にしているかでかなり解決策は変わってくるけどね」

キョン「もしかして、全部バラバラな展開を見せるのか?」

朝倉 「そう、でも洋画版やドラマ版は外しても構わないわ。既に出だしの部分がかなり違って
    きてるから」

キョン「(問題は小説板か映画化された方のどちらかか)」
754 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 03:39:03.39 ID:.s2ZINo0
朝倉 「さて、ここからが問題なの。大体大まかなストーリーは被ってるから、これからする
    説明はどちらの物でも同じと思ってくれてて良いんだけど……まず、今あなたが
    置かれている状況とさして変わらないわ」

キョン「すると…」

朝倉 「主人公はそれまでに不可解な死に方をしている人間の原因を調べていたの。いわゆる
    雑誌記者みたいな感じね。で、その人たちの足取りを追って行くと、彼は一本のビデオテープ
    に出会う」

朝倉 「多少恐怖はあるんだけど、主人公はテープの中身を見てしまう。勿論中身は…」

キョン「俺が見たテープと同じ内容」

朝倉 「そう」
755 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 03:40:02.62 ID:.s2ZINo0
朝倉 「でも決定的に違うのは、あなたが見たテープには事件の解決策がちゃんと入ってたって事」

キョン「呪いを解きたければ第三者にダビングして見せろってあれか」

朝倉 「うん。本当のリングの作品だと、ビデオの最後の部分が何故かちょん切れていて、
    呪いの解除の仕方が分からない。だからどうすれば呪いが解けるんだろう?って
    思考錯誤を繰り返して、解決策を模索するようなストーリーなのよ」

キョン「だったら俺はかなり有利な状況だったってわけだ。なんせストーリーの大部分を飛ばして
    いきなり解決策を知ってたんだからな」

朝倉 「うん。ただ、小説にしても映画にしても、最後はそれで終わりだったんだけど…そうは
    問屋がおろさないって感じで、あなたの場合にはテープ自体が無い」

キョン「……」
756 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 03:41:03.11 ID:.s2ZINo0
朝倉 「これは致命的。というよりも新しい『リング』と表現するべきなのかしら?
    今までリングは解決策を模索してきた。思考錯誤してきた。でも今回は最初から
    答えは分かり切っているのに、問題が解決できない」

キョン「?」

朝倉 「だから古泉君も言っていた通り、私達は三つの選択肢から選ばなくちゃいけない」

朝倉 「一つは、テープを取り戻す事」

朝倉 「もう一つは敵の親玉を倒して、事件を終焉に導く」

朝倉 「そして最後の一つは、神様にお願いする事かしらね」
757 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 03:42:21.49 ID:.s2ZINo0
朝倉 「ま、勿論分かっているとは思うけど、私達が選ぶ選択肢は…」

キョン「二番なんだろ?」

朝倉 「おや?キョン君も漸く事態が呑み込めたみたいね」

キョン「ああ、分かった。漸くな。先ず一番目。テープを取り戻したって結局はその場しのぎだ。
    俺が別の奴に見せたって、見せた先の相手が、また呪われるんだからな」

朝倉 「それに既に複数のテープや他の媒体品が出回ってるみたいだしね」

キョン「しかも、もし呪いの解除とかの噂に尾ひれがついたら、それこそネズミ算式に
    膨れ上がる結果になる。例えば『このビデオを見た者は一週間以内に三人以上
    にダビングして見せないと呪われる』とかな」
758 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 03:43:17.60 ID:.s2ZINo0
キョン「後、お前らの言う三番目の神様に頼るってのは無理というより無謀だな。あのじゃじゃ馬を
    事件が解決する方向に願わせるってのは期限内にはアウトだ」

朝倉 「へぇ」

キョン「だから、この状況を作り出した奴をとっちめるしかない」

朝倉 「良くできました。さすがキョン君♪」

キョン「でもな、朝倉…俺はひょっとすると…」


古泉 「古泉一樹、ただ今戻りました!!!」
759 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 03:44:10.22 ID:.s2ZINo0
キョン「お、おぉ、お帰り古泉。なんか嬉しそうだな」

古泉 「ええ!朗報ですよ。実は警察に潜んでいる機関からの情報で、コンピ研が
    使用していたとみられるパソコンのログがまだ消されてなかったんです」

キョン「マジか!?」

古泉 「はい!朝倉さんなら、ここから解析すれば、もしかしたらリングのデータ
    を送ってきた送信先も特定できるかもしれません」

朝倉 「どうやら、ようやく私の腕の見せ所ね」
760 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 03:45:03.16 ID:.s2ZINo0
古泉 「頼みます、朝倉さん!まだ部室には入れませんが、ログデータは警察庁の
    データベースにも保管されてあります。ファイアーウォールを破って解析
    を頼めますか?」

朝倉 「構わないわよ。じゃあ、私は帰ってデータ解析の準備をしとくわ。もしかしたら
    一筋縄ではいかないかもしれないから」

古泉 「そうですね。相手も恐らく同じ情報統合思念体でしょうから」

キョン「………」

朝倉 「大丈夫!心配しないで。必ず手がかりを見つけてくるわ」

古泉 「そうですよ。きっと上手くいきます!」

キョン「そ、……そうだよな。有難う二人とも。俺のためにここまでしてくれて」
761 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 03:46:02.79 ID:.s2ZINo0
………………………………
…………………………
……………………
………………
…………
……


〜翌々日・キョンの余命残り三日〜



キョン「(はぁ、結局昨日は朝倉からの連絡は無かったな)」

キョン「(古泉と機関の人も交えて色々調べてみたが結局何も出てこなかったし)」

キョン「(やっぱり朝倉の結果待ちか)」

キョン「今日、昼まで待っても連絡が無かったら、古泉と一緒にあいつのアパート
    に行ってみるか」
762 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 03:47:02.64 ID:.s2ZINo0
キョン「だけどまぁ、その前に…やれるだけのことはやっておくか」


       PrrrrrPrrrrrrPrrrrrrr


キョン「よう、実は頼みたい事があるんだ」

???『                』

キョン「ああ、そうだ。すまないな」

???『                   』

キョン「…あぁ……分かってる。それとさ…もし俺がs……いや、何でもない」

???『          』

キョン「うん、じゃあもう時間だから、俺行くわ。待ち合わせしてんだ」

???『                  』

キョン「そんなんじゃねぇって。……あぁ、サンキュな」
763 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 03:48:03.00 ID:.s2ZINo0
………………
…………
……


その日の午後。

古泉と調べ物をした後、朝倉のアパートに向かった。

しかし、そこには朝倉の姿は無く、警察のパトカーと何人もの警官がいただけで。

漸く得られた情報は残酷で、それは、現実としては、到底、受け止められない事実だった。

情報統合思念体に作られた対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェース。

……朝倉涼子が死んでいた。
764 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 03:49:03.56 ID:.s2ZINo0
………………
…………
……

キョン「なぁ、古泉」

古泉 「…はい」

キョン「朝倉は敵にやられたのかな?」

古泉 「証拠はありませんが、恐らくそう見て間違いないでしょうね」

キョン「…そっか」

古泉 「ええ」

キョン「なぁ、古泉」

古泉 「…はい」

キョン「お前さ、今回の事件にもう関わるな」

古泉 「…はい?」
765 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 03:50:02.60 ID:.s2ZINo0
古泉 「ど、どうしてですか?折角ここまで情報が集まったのに!!!」

キョン「だからさ、これだけ情報があつまりゃこの先俺一人でもやっていける」

古泉 「でも!!!それじゃあ死んでしまった部長氏や朝倉さんが!」


キョン「だからだよ!!!!!!」


キョン「頼むよ、古泉。このまま二人で事件に首突っ込んでいると、お前まで
    朝倉みたいに殺されるかもしれないんだ」

キョン「昨日までの俺は馬鹿だったんだ。どんな事になっても事件を解決してやると
    思ってた。でも、今日朝倉が殺されているのを聞いて自覚したよ」
766 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 03:51:02.58 ID:.s2ZINo0
キョン「俺は、凶器なんだって。抜き身のナイフなんだって」

キョン「そう、実感したよ。だから、俺にはもう近づくな」

古泉 「嫌です。僕はあなたに言いました。必ず守って見せるって」

キョン「……古泉」

キョン「ありがとな、古泉。お前が友達でよかったよ」

古泉 「そんな今生の別れみたいな台詞…」

キョン「もし、俺に何かあったら、俺の妹の事、よろしく頼む」
767 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 03:52:02.71 ID:.s2ZINo0
古泉 「行かせませんよ?……って、…ぐぅ?」


森  「悪いわね?古泉。でもこれも世界のためよ」

古泉 「そ……そんな」

古泉 「……ぐ」



キョン「すみません、森さん。汚れ役引き受けてもらって」

森  「良いのよ。うちの戦闘員なんだから」

キョン「それと……」

森  「あ〜昨日頼まれてた資料ね?はい、これ」

キョン「有難うございます」
768 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 03:53:03.62 ID:.s2ZINo0
森  「お礼を言われるほどじゃないわ。本当は私達も手伝いたいところだけど、
    私達の神様がここのところ不機嫌なもんであんまり時間が割けないし」

キョン「最近SOS団の活動していませんからね。朝比奈さんは消えちまって、俺と
    古泉はさぼりっぱなし。長門が一人支えてくれているはずですが、それでも
    限界がある」

森  「そうなの、最近閉鎖空間がそこらへんで発生してる。それは仕方のない事なんだけどね」

キョン「古泉をよろしく頼みます。そいつ死なせないでやってくださいね?」

森  「何時死んでも可笑しくない処で戦っているけど……そうね、努力するわ。だからあなたも
    死んじゃ駄目よ」

キョン「……努力します」
769 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 03:54:03.33 ID:.s2ZINo0
………………………
………………
………

キョン「………………………………」

       PrrrrrPrrrrrrPrrrrrrr

キョン「よう、今日はサンキュな。届いてたよ」

???『                    』

キョン「うん。…………そうか」

???『                』

キョン「こっちは大丈夫だ……心配すんなよ」
770 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 03:55:02.81 ID:.s2ZINo0
???『                 』

キョン「それとさ、しばらく連絡が取れなくなると思うけど大丈夫だから」

???『                          』

キョン「……あぁ、そんな感じかな。じゃあな……おやすみ……元気でな」

???『            』

               ピッ


キョン「…………………携帯ももう必要無いな」

             パキッ  グシャ

キョン「これでもう誰とも連絡できない。後戻りも…出来ないな」
771 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 03:56:03.14 ID:.s2ZINo0
〜翌日・キョンの余命残り二日?〜

キョン「森さんとあいつから貰った資料。やっぱりだ。朝倉から『リング』の説明を聞いた時、違和感があったのはこの所為か。
    俺は『リング』について”詳しく”教えてくれと頼んだ筈なのに、あいつは俺に一番重要な情報を伝えていない。
    でもこうなると朝倉が死んだ理由ってのは……ひょっとして」

                        ピンポーン

キョン「誰か来たみたいだな」
772 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 03:57:04.64 ID:.s2ZINo0
ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン
ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン
ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン
ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン
ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン
ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン
ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン
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ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン

                        ピンポーン
773 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 03:58:03.18 ID:.s2ZINo0
キョン「なっ、まさかもう来たのか?」

早い。早いぞ?早すぎる。こっちはまだ準備が完了していないってのに。

キョン「と、とりあえず、武器を?」

……と、その時俺は背後からの視線を感じた。

キョン「!!??」

思いっきり後ろを振り向いたが、そこにはやはり、何も居なかった。

キョン「(でも…油断はできない。幸い妹と両親は今、この部屋には居ないのが救いだ。
    まぁ、もしかしたらこういう展開になるかもしれないと思って一応、家から
    追い出しておいたんだけど、まさか本当にこうなるとは…)」
774 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 03:59:02.18 ID:.s2ZINo0
キョン「(どこから来る?)」

俺は一応武器として用意してあった、金属バットを両手で掴み、じりじりと壁を背後にして
部屋の全体を見渡す。

さっきの”チャイム”は今から俺を[ピーーー]って、殺しに来るって合図なんだろう。

畜生!!!折角全ての謎や伏線が回収できそうだって時に殺しに来るのかよ?せめて
ルールくらい守って明日に来てほしいもんだぜ!

キョン「……はぁ」

馬鹿だな、俺は。まだそんな甘い考えを持っていたのか。反吐が出る。

いつ一週間のルールが出来たんだ?これは確かに『リング』に似ているけれど、厳密には…
いや、厳密どころか、ちっとも『リング』そのものじゃないんだ!!!

俺は古泉から『リング』と今回の事件の相違点を聞いて、それだけで勝手に思い込んじまっていた。
その所為で……その所為で。くそっ!!!完璧に”嵌められた”。
775 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 04:00:06.37 ID:.s2ZINo0
畜生畜生畜生。頭に熱が昇って上手く考えがまとまらねぇ

キョン「でもまぁ、それが本当なら、恐らく俺の妹が死ぬことは無いから少しばっかし嬉しいけどな!」

台詞と口調がバラバラだ。でもそれでも構わない。

俺はさっきから自分が言っている事を反復するように、思考をめぐらす。
体はピンと張りつめた臨戦態勢の状態を保ったまま、思考をフル回転でをめぐらす。

キョン「何処だ!!!!出てこい!!!!!もうお前の正体は分かってるんだ!!!!!」

バットを手に携えたまま…。

だが、

?? 「へぇ」

キョン「?????????????????????」

「そいつ」は、ごく当たり前のように「その声の主」は、さも当然のようにそう言った。言い放った。俺のすぐそばで。
776 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 04:01:02.04 ID:.s2ZINo0
キョン「何処に居る?」

?? 「ふふふ」

何処だ?何処に居る?

俺は足りない頭を精一杯使って考える。目を凝らす。何処だ?

壁か? 違う!!!
廊下? 違う!!!
部屋の四隅にそれぞれ目を配るが、そいつの姿はおろか影すら見当たらない。

くそっ。こいつにこんな能力があるって聞いちゃいないぞ?

?? 「ふふっ、そろそろ終わりにしましょうか」

キョン「こっちだってそのつもりだ!!!」

?? 「では、死んでください」

「そいつ」は、「その声の主」は、「古泉」は、俺の血しぶきをまるで美味しいワインのように見惚れながら、
これまで見たことも無いような満面の笑顔を振りまいて、俺の腹を突き破って出てきた。
777 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 04:01:58.49 ID:.s2ZINo0
キョン「ぐ、……ぐふっ?お前、何で俺の腹の中から?」

古泉 「んっふ。その質問に関するコメントはできません。何故なら禁則事項ですので…」

キョン「そ、…そうかよ」


そのまま俺は、壁にもたれかかったまま、バットを手放してしまう。
あーあー。せめてこいつの、このにやけ面に一発かましてやりたかったが、それも……無理か。


あー、何だか…酷く、眠くなってきた。血の出しすぎか?まぁ良い。これで漸くこの悪夢から解放される。

もう寝よう。

なのに、古泉の「禁則事項です」という言葉だけが何故か頭から染み付いて離れない。

何故なんだろう?

沈みゆく意識の中、俺はそんな事ばかり考えていた。



……あぁ、すぐそこに闇が迫ってくる。
778 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 04:03:03.82 ID:.s2ZINo0
       古泉「禁則事項です」

            完
779 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 04:04:03.55 ID:.s2ZINo0
朝倉「禁則事項なの」
780 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 04:05:01.94 ID:.s2ZINo0
古泉 「お二人共早いですね」

長門 「……」

みくる「そんな事無いですよ。いつも通りです」

古泉 「それでも十分早いですよ。僕も家を一時間前には出たんですが」

みくる「私もそれくらいに出ましたよ。きっと私の家の方が近い所為です」

古泉 「そうですかね?…っと、どうやら涼宮さんも来たみたいですね」
781 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 04:06:02.70 ID:.s2ZINo0
ハルヒ「おまたせ〜。ってあれ、キョンは?」

長門 「……まだ」

ハルヒ「またぁ?あいつ、SOS団としての自覚がまるで足りてないわね!」

みくる「きっともうすぐ来ますよ」

ハルヒ「むーーーー」

古泉 「おや噂をすれば」



キョン「よう。相変わらずお前ら早いな」
782 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 04:07:02.74 ID:.s2ZINo0
ハルヒ「なーにが『よう』よ!遅い!罰金!!!」

キョン「なっ?さすがにそれはあんまりだ。集合の三十分前に着いてるってのに」

ハルヒ「駄目よ!これはルールなんだからね!」

キョン「やれやれ…なぁ古泉。お前からも…」

古泉 「(……無理です)」フルフル

キョン「はぁ」

ハルヒ「何項垂れてんの?さっ、行くわよ」
783 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 04:08:02.03 ID:.s2ZINo0
………
…………
………


キョン「……で、現在虫捕りに来ている訳だが…」

みくる「……」

古泉 「大丈夫ですか?朝比奈さん」

みくる「………虫は苦手です」

キョン「だと思います」

古泉 「まぁ、笑顔で虫を捕まえている朝比奈さんもあまり想像できませんしね」

キョン「ハルヒは笑顔でバシバシ捕ってるけどな」

古泉 「長門さんは……無表情で的確に捕らえていますね」
784 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 04:09:02.90 ID:.s2ZINo0
キョン「あいつ……凄い手慣れてるな」

古泉 「いつぞやの夏休みでとった杵柄なのでしょう」

キョン「そういえばそんな事もあったな」

古泉 「僕はあの夏を体験してからというもの、夏が怖くて仕方ありませんよ」

キョン「安心しろ古泉、俺もだ」


ハルヒ「ちょっとあんた達!何くつろいでんの?」

キョン「っと。見つかったか。それじゃあ、まぁ再開するか」

古泉 「そうですね」
785 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 04:10:01.64 ID:.s2ZINo0
………
…………
………

〜数時間後〜

ハルヒ「ふぅ…結構捕まえたわね!」

キョン「団員全員で捕まえたの合わせたら15超えてんじゃないか?」

古泉 「僕とあなたが3匹と5匹で、朝比奈さんが1涼宮さんと長門さんが
    それぞれ8匹ですから余裕ですね」

キョン「まさかこんなに捕まるとはクワガタ達も思わなかっただろうな」

古泉 「そうだと思います。実際こんなにいっぺんに捕まるとは僕も予想外ですよ」
786 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 04:11:02.25 ID:.s2ZINo0
キョン「そうなのか?ハルヒが願ったんならこんなもんかなと俺は思ったんだが…」

古泉 「いくら涼宮さんが願ったからといって、そんなに簡単に実現されませんよ。
    彼女はまだコントロールがそこまで出来ていない筈ですから。……まぁ、
    もしかしたら他の誰かさんが上手くお膳立てしてくれた可能性も無きにしも非ず
    ですが、ね」

みくる「そうなんですか、長門さん?」

長門 「………さぁ」
787 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 04:12:02.28 ID:.s2ZINo0
古泉 「そうですか。……ならば、これは僕の独り言ですので、聞き流しておいて
    ください」

古泉 「有難うございました」

長門 「…………特別な情報操作は行っていない。そんな事をするとこの山の生態系
    が乱れてしまう。単に私が何処に一番クワガタが居るのかを知っていただけ
    で涼宮ハルヒにその情報を提供しただけ」

長門 「褒められるものではない」

古泉 「いえいえ、……それで充分ですよ」
788 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 04:13:03.35 ID:.s2ZINo0
ハルヒ「ちょっと古泉君に有希!二人して何語ってんのよ」

キョン「ま、たまには良いじゃないか。それよりハルヒ、そろそろ逃がしてやろうぜ」

ハルヒ「うー、分かったわよ」カパッ

ハルヒ「さ、何処へなりとも行っちゃいなさい!」


               ブーン

キョン「………全部、山に戻って行ったみたいだな」

ハルヒ「うん!クワガタも逃がした事だし今日の活動はこれにて終了!現地解散って
    事で良いかしら?」
789 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 04:14:02.80 ID:.s2ZINo0
キョン「良いんじゃないか?」

古泉 「構いませんよ」

みくる「私も大丈夫です」

長門 「……異論は無い」

ハルヒ「うんっ!じゃ、そういう事で。明日の活動は無いから、各自英気を養っておくように!
    明後日は駅前集合だからね!キョン、今度こそ遅れずに来るのよ?」

キョン「へいへい…」

ハルヒ「返事は一回!」

キョン「はいよ」

ハルヒ「よろしい!では、解散!!!」
790 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 04:15:02.25 ID:.s2ZINo0
………
…………
………

〜帰宅路〜


鶴屋 「おや?キョン君、キョン君じゃないか!」

キョン「あれ、もしかして鶴屋さん?」

鶴屋 「こんな所で会うなんて奇遇っさ」

キョン「そうですね。学校の外じゃあんまり会わないですし」

鶴屋 「!そーだ、キョン君。これから時間あるかな?」

キョン「大丈夫ですよ。用事も終わって帰るとこですし」

鶴屋 「じゃあこれから一緒にお祭に行かないかい?」
791 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 04:16:09.26 ID:.s2ZINo0
キョン「えっ?近くで祭りなんてありましたっけ?」

鶴屋 「ちょーっち離れてるけど、やってるんだなぁ」

キョン「へぇ、知らなかった。……よし!行きますか」

鶴屋 「ふふっ、流石男の子!良い返事にょろ」

キョン「ま、これでも祭りは結構好きですし」

鶴屋 「うんうん。それじゃ、しゅっぱーつ」
792 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 04:17:03.45 ID:.s2ZINo0
………
…………
………

キョン「そんな訳で、電車に乗って祭りの会場に現在向かってる訳ですが…」

鶴屋 「うん」

キョン「何で行き先が京都なんですか!!!」

鶴屋 「ちっちっ、甘いなぁキョン君」

キョン「?」

鶴屋 「祭りといえば京都だと決まってるじゃないか!!!」

キョン「……そうなんですか?」

鶴屋 「……多分」
793 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 04:18:01.83 ID:.s2ZINo0
キョン「そんな若干首をかしげながら答えないで下さいよ」

鶴屋 「…ゴメンさ」

キョン「それで、本当の所はなんで京都なんですか?」

鶴屋 「………」

キョン「『よし!京都に行こう』みたいな軽いノリで出掛けてるんじゃないですよね?」

鶴屋 「………………」

キョン「本当に祭りやってるんですよね?」

鶴屋 「…………………………てへっ」

キョン「あなたって人は……」
794 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 04:19:01.61 ID:.s2ZINo0
鶴屋 「まぁまぁ良いじゃないか。過ぎたるは及ばざるが如しってね」

キョン「…鶴屋さん。それ、使い方間違ってます」

鶴屋 「にょろ?そうだっけ?」

キョン「はい。……あの、ずっとそのとぼけた感じで行くつもりですか?
    そろそろ疲れたんですが」

鶴屋 「ま、そんなの気にせず気楽に行こう。ほい、八つ橋あげるから」

キョン「……どうも」

鶴屋 「おいしーねー」

キョン「って、何故京都に着いていないのに八つ橋が?」

鶴屋 「さぁ?」
795 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 04:20:02.30 ID:.s2ZINo0
キョン「(いかん。何かペースに嵌められて、京都に行く事への疑念が鎮静化されていく)」

鶴屋 「どうしたのー?八つ橋まだ食べるー?」

キョン「あっ、どうも」モグモグ

鶴屋 「おいしーね」

キョン「はい」モグモグ

鶴屋 「…」モグモグ

キョン「(…………………ま、たまには良いか)」モグモグ
796 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 04:21:01.70 ID:.s2ZINo0
〜京都〜

鶴屋 「着いたー」

キョン「意外に近かったですね」

鶴屋 「そうだね。おや?キョン君キョン君!」

キョン「どうしたんですか、鶴屋さん」

鶴屋 「これ見て!」

キョン「……これって、祭りのイベント案内」

鶴屋 「しかも、これって丁度今からだよ!どうだい?ちゃんと祭り
    あったじゃないか」

キョン「……行き当りばったり感満載ですが、折角京都まで来た事ですし
    満喫して帰りますか」

鶴屋 「うんうん!それが良いっさ」
797 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 04:22:01.47 ID:.s2ZINo0
………
…………
………

〜祭・イベント会場〜

キョン「……へぇ」

鶴屋 「うわぁ、人がいっぱいだね」

キョン「そうですね」

鶴屋 「出店もいっぱい」

キョン「そうですね」

鶴屋 「キョン君?」

キョン「…………」
798 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 04:23:01.39 ID:.s2ZINo0
鶴屋 「おーい」

キョン「…………」

鶴屋 「もしもーし」

キョン「…………」

鶴屋 「頭が留守ですかー?」

キョン「…………んな訳無いって」

鶴屋 「おおう!?」

キョン「そんなに慌てなくっても…」

鶴屋 「いや、驚いただけであって、別に慌てた訳じゃ」

キョン「どっちも大差ありませんよ、それ」
799 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 04:24:01.74 ID:.s2ZINo0
鶴屋 「むぅ」

キョン「そんな、むくれられても」

鶴屋 「だって、折角お祭りに来たのに、キョン君つまんなさそうに見てたから」

キョン「そんな事無いですって。人が多くて素直に感心してただけです」

鶴屋 「本当?」

キョン「ええ」

鶴屋 「そっか。わたしの勘違いなら良いんだ!さっ、行こ?」

キョン「はい!」
800 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 04:25:01.51 ID:.s2ZINo0
鶴屋 「フランクフルト二本お願い〜」

おっちゃん「へい!フランクフルト二本」

鶴屋 「トウモロコシ二本〜」

おっちゃん「へい!もろこし二本ね」

鶴屋 「あっ、焼き鳥も二本ね」

おっちゃん「へい!」

キョン「……鶴屋さん?何もそんなにいっぺんに買わなくても」


鶴屋 「ふも?ふぁんか言っは?」

キョン「いえ、何も。一本貰いますよ?」

鶴屋 「ひいほー」ムシャムシャ
801 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 04:26:02.10 ID:.s2ZINo0
………
…………
………

鶴屋 「けふぅ、流石に食べ過ぎたねぇ」

キョン「げふっ、最早自棄食いの勢いじゃないですか」

鶴屋 「ははっ、そこまでかい?」

キョン「まったく…」

鶴屋 「おろ?あそこでやってるのは…」

キョン「?青いビニールテント?」

鶴屋 「きっとお化け屋敷さ!いざ、出陣〜」

キョン「ちょ、ちょっと。引っ張らないで」
802 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 04:27:03.38 ID:.s2ZINo0
〜お化け屋敷?〜

鶴屋 「ふむふむ。中々、楽しい造りになっているね。怖い怖い」

キョン「……そうですか。俺には手作り感MAXの仮装大賞用に作ったけど予選に
    通らなくて祭りに使っちゃいました感が否めないんですが」

鶴屋 「……キョン君、それは言っちゃ駄目さ。例え、『恐怖!旋律のお化け屋敷』
   の立て札の裏に『目指せ、満点!』の手書きを見つけたとしても」

キョン「……はい、すみません」


鶴屋 「……ま、良いさ」
803 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 04:28:02.83 ID:.s2ZINo0
キョン「で?入ってみたものの、これは一体どうすればいいんだ?」

鶴屋 「うん。中には、井戸、しかないし。ここで一体何をすれば…」

キョン「というより、鶴屋さん。もしかしてこの井戸って…」

鶴屋 「……うん。本物さね」

キョン「ビニールシートとか立て札とかは手作りっぽいのに、どうして井戸だけ…」

鶴屋 「流石京都…」

キョン「多分、京都関係無いですよ」

鶴屋 「やっぱり?」
804 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 04:29:01.85 ID:.s2ZINo0
キョン「ちょろっとだけ、不気味ですね」

鶴屋 「怖い?キョン君」

キョン「まさか。鶴屋さんこそ怖がってませんか?」

鶴屋 「何言ってるんだい、キョン君?そんな訳無いじゃないか」

キョン「声裏返ってますよ」

鶴屋 「きょ、キョン君こそ」


キョン「……」

鶴屋 「……」
805 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 04:30:01.48 ID:.s2ZINo0
鶴屋 「でもまぁもし、これが手作りなら見事な作りっさね」

キョン「本物で間違いないと思いますけどね」

鶴屋 「ふむ」

キョン「それよか、早く出ません?井戸しかないですし」

鶴屋 「そうだね。ここに居ても仕方ないし」



             ドーン


キョン・鶴屋「!!!」ビクッ

キョン「………何だ、花火か」

鶴屋 「そうみたいさね」
806 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 04:31:00.99 ID:.s2ZINo0
キョン「行きますか?」

鶴屋 「勿論!っとその前に…」スッ

キョン「?」

鶴屋 「鈍いね、君は。女の子が手を出してるんだから、男の子は何も言わず
   ギュッと手をとるもんさ」

キョン「す、すみません」キュ

鶴屋 「よーし、いざ花火観賞へ!!!」
807 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 04:32:01.51 ID:.s2ZINo0
………
…………
………

           ドーン

鶴屋 「はわー。凄いねぇ」

キョン「でっかいすねぇ」

           ドーン

鶴屋 「かーぎやー」

キョン「鍵屋?玉屋じゃなくて?」

鶴屋 「うん。今日は鍵屋な気分さ」

キョン「ふぅん、そうすか」
808 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 04:33:01.41 ID:.s2ZINo0
           ドーン


鶴屋 「ねぇキョン君」

キョン「はい」

鶴屋 「キョン君はどうしてそんなに面白くなさそうな顔をしてるんだい?」

キョン「………俺、そんな顔してます?」

鶴屋 「うん」

キョン「……本当に?」

鶴屋 「うん」

キョン「……そうですか」

鶴屋 「うん」

           ドーン
809 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 04:34:01.02 ID:.s2ZINo0
キョン「別に鶴屋さんと居るのが楽しくないって訳じゃないんです」

鶴屋 「うん」

キョン「ただ、京都に来て、祭りに来て、凄い沢山の人を見て、少し、
    ほんの少しだけ思い出しちゃったんです」

鶴屋 「………」

キョン「ハルヒの事…」

鶴屋 「………そか」

キョン「はい。………あいつ、前に俺に話してくれたんですけど、家族で
    野球見に行った事があるって。それで、その時、凄い人数が観戦し
    に来てて、自分がどんなにちっぽけな存在だったかって、世界から
    見たら、地球から見たら、宇宙から見たら、どんなに小さな存在なのか
    思い知ったって」

鶴屋 「………」
810 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 04:37:34.73 ID:.s2ZINo0
キョン「さっき、祭りに来た時、俺、それを思い出してました。あぁ、あいつ、
    こんな感じを味わったのかなって。自分だけが特別だと思っていた世界が、
    急に色あせて見える感覚ってこんなのかなって」

鶴屋 「………」

キョン「ねぇ鶴屋さん?俺、SOS団に入っていろんな事してきたつもりです。いろんな
    出来事を体験してきたつもりです。でも、もしかしたらこれも…世界中の皆
    とは言わないまでも他の誰かも既に経験してしまっている、体験してしまっている、
    そんな出来事だったんじゃないかと思えてならないんです」

鶴屋 「…そんな事無いよ」

キョン「……本当にそうでしょうか?」

鶴屋 「うん。……君は忘れてるだけさ。君は世界中の人間が一生を生きたって体験できない
    事を沢山体験してきてる筈だよ」
811 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 04:38:31.05 ID:.s2ZINo0
キョン「そんなの、無いですよ」

鶴屋 「ううん。君は覚えていないだけで、忘れているだけで、確かにあったよ。体験してる。
    宇宙人も未来人も超能力者も、果てにはこの世界の神様にだって君は会ってる。一緒
    に行動を共にしてたし、君は彼女達の仲間で、彼女達は君の仲間だった」

キョン「まさか。そんなのある訳無いじゃないですか」

鶴屋 「君は覚えていなくても、私が覚えてる。君が忘れていても、私が忘れない」

キョン「………」

鶴屋 「だから君は、キョン君が死んだ事に責任を感じなくても良いんだよ?」

キョン「?????」

鶴屋 「あれは事故だった。誰のせいでもない。だから君が無理して忘れようとしなくたって、
    無理に全部無かった事にしようとしなくたって良いの」

鶴屋 「私も、一緒に覚えてるから、だから。そろそろ思い出したって良いんだよ」
812 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 04:39:23.70 ID:.s2ZINo0
鶴屋さんはそう言うと、俺の腰に手を回し、唇をそっと合わせてきた。

俺は何が何だか分からなくなって、鶴屋さんが唇を離した後もそのままの体勢で、
しばらく固まっていた。

遠くの方でドーン、という花火が打ちあがる音だけがやけに、はっきりと聞こえる。

しかし、そんな一人身の男なら誰もが羨みそうな状況に身を置きながら、鶴屋さん
は何故、こうも俺の事を心配してくれているのかと思いつつ、ハルヒの事を考えて
しまう俺は最低だなとか、そんな考察ばかりが頭を駆け巡り、いつしか僕の思考は
あやふやなまま意味消失していった。
813 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 04:40:17.07 ID:.s2ZINo0
………………
…………
……

           「痛っ」

……どうやらベッドから落ちてしまったらしい。頭を強打した。

          「うい、うい」

二、三回頭を振りながら、呼吸を整える。……うん、正常正常。

        「さてと、……って夜中か」

そんな独り言をつぶやいて、先程まで見ていた夢を思い出す。
変な夢だった。最近疲れが溜まっているのだろうか?まさか鶴屋さん
とキスする夢なんて。

         ……しかも、友人の目線で。
814 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 04:41:08.86 ID:.s2ZINo0
そもそも、夢の始まりからして意味不明だった。しかも何で突然京都なんだよ?
別に大阪や奈良でも良かった筈だ。

それに何故彼の目線で夢を見てるんだ、僕は?彼になりたいとでも言うのか?
最終的に、更に意味の分かんない結末になってるし。

後、涼宮さんと共に虫捕りに言った筈なのに、彼の言い方ではまるで祭りの最中に
いつの間にか死んでる事になっていた。

      まぁ、それは鶴屋さんに違うと諭された訳だが……


 ……なんて、夢にあらかたの突っ込みを入れて、鏡で自分の顔を確認する。

        うん。自分だ。彼じゃない。古泉一樹だ。
815 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 04:42:01.15 ID:.s2ZINo0
けど、まったく脈絡の無かったように見受けられた夢だったけど、
それでも所々で現実と関連していた点を拾っていくと、確かに僕の夢
であることは間違いなかった。

      僕はきっと、何処か遠くに逃げたかった。

         そして、忘れたかったんだ。

      これまでの事、これからの事を全部…。

花火みたいに。お祭りみたいに。楽しい思い出は直に消えてしまうように。

           忘れたかった。
816 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 04:43:01.30 ID:.s2ZINo0
でも、夢の中でさえ、僕は逃げ切れなかった。あの『井戸』を見た瞬間に一瞬僕は
夢の中では彼である筈なのに、自分と錯覚してしまっていた。


「あぁ、逃げられないのだ」と分かってしまった。


だとしたら、鶴屋さんのあの言葉は、『忘れないで』という言葉は僕に対しての戒め
の言葉なのだろう。

自分の罪を忘れるな!という警告なのだろう。

きっと、この手で、彼を殺したという……
817 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 04:44:01.39 ID:.s2ZINo0
そんな今となっては、既に何日も経過している事象に耽りながら、自分の足が
自分の意志とはまるで関係の無い方向に歩きだす事に気付いた。

やれやれ、夜中だってのに、元気な事だ。

こんな時間に徘徊しようなんて、よほど急ぎの用でもあるのか。

玄関を出ると、待ってましたとばかりに足は走り出す。

もう、下半身は自分の意志とは全く無関係に彷徨い、何かを求めているみたいだ。
818 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 04:45:01.13 ID:.s2ZINo0
走っている内にだんだんと上半身の感覚も遠のいていく。
あぁまたこの感覚か。もう慣れた。

彼を殺した時もこうだった。自分が自分じゃなくなる感覚。

自分の中に、もう一人、別の人間が居て、自分の体を操られる感覚。

足から股、股から腰、腰から腹筋、腹筋から胸、胸から二の腕、二の腕から腕を伝い指先に。

そして、もう、自分の意志で動かせるのは眼球のみ。

呼吸すら自分の思い通りにならなくて、酷く息苦しい。
819 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 04:46:01.67 ID:.s2ZINo0
十分少々走った所で、足を止めた。
視線の先には何処かで見た事のある後姿。誰だったっけ?

まぁ良い。どちらにせよ、[ピーーー]んだろうし。

……今日の標的は彼女か、程度にしか、もう思えないし思わない。
身体の主導権は僕ではない、別のナニかが握っているのだ。

と、僕は彼女に声をかける。

「おや?あなたは……」

もっともらしい台詞だ。笑える。

「誰?」

そして、僕のそんなもっともらしい台詞に振り返ったのは、佐々木
と呼ばれる、機関の敵だった。
820 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 04:47:01.11 ID:.s2ZINo0
「どうも。SOS団副団長の古泉です。あなたには『機関』の人間である、
とこう表現した方が良いのかもしれませんが」

僕は尚も、もっともらしく自己紹介を続けた。

「あなたが……」

そんな自己紹介を受けて、彼女も俯いていた顔を上げる。

……涙?

「それよりもどうしたんですか?そんなに目を真っ赤にして。いくら機関が
敵対している別の神候補であっても、女性のそんな顔は見ていて嬉しいもの
ではありません。どうでしょう?僕でよければ相談に乗りますが?」

いつもの僕と大差ない台詞が口から零れる。

どうしたんだろう?会話したりなんかして。
彼女を[ピーーー]ために来たのではないのか?
821 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 04:48:02.88 ID:.s2ZINo0
「…………それは、その」

彼女は何か言いかけて、黙ってしまう。

「……ふむ。言いたくなさそうですね。それとも言いたいけれど言いにくい
類の話でしょうか?」

「いえ、その……」

彼女はまたもや俯く。

「そうですね。立話もなんですからベンチにでも移動しませんか?」

おや、本当にどうしたというのだ。人の悩みを聞いてやるような心がこの殺人鬼
にもあるのか?……それとも人気のない所へ誘導してから[ピーーー]のか?

そんな風に考えながら、僕は佐々木さんを公園へ誘導する。
822 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 04:49:01.53 ID:.s2ZINo0
「………………」

「先程から押し黙ったままですが、まだ何があったのか話して貰えませんか」

「………………」

公園のベンチに佇んで、既に二十分は経過しているだろうに、彼女は相変わらず
押し黙ったままだ。

流石の殺人鬼も業を煮やしたのか、

「やれやれ、仕方ありませんね。では、こちらの勝手な憶測ですが、今から僕は独り言
を言います。聞きたくなければ、どうぞ、耳を閉じるなどの意思表示をしてください。
直に話を止めますので」

そう言って、殺人鬼は独り、話し始めた。
823 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 04:50:02.47 ID:.s2ZINo0
殺人鬼の独り言は以下の通り。途中から佐々木さんも聞き役から会話に参加したが、
特にこれと言って支障はない。


・”彼”友人からは”キョン”の愛称で知られる彼が死亡したとの報道がなされた。

・しかし、これは機関による嘘の報道で”彼”は生きている。

・機関は”敵”と闘っており、彼の身の安全を考えて、嘘の報道を流した。

・また”彼”だけでなく、”彼”の家族についても嘘の報道がなされている。

・”彼”と”彼”の家族、そして一部の友人は機関が匿っている。
824 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 04:51:05.47 ID:.s2ZINo0
……まったく。出鱈目もここまで来たら大したものだ。
しかし、こんな嘘がよほど嬉しかったのか

「…良かった。本当に」

彼女は屈託のない笑顔を見せる。

「んっふ。漸くあなたの顔に覇気が戻りましたね」

そんな彼女の顔を見てかどうかは分からないが、殺人鬼も頬を釣り上げる。

「あの……ちょっと良いですか?もう一つお聞きしたい事があるんですが」

「どうぞ。僕に答えられる範囲であれば、お答えしましょう」

「有難う」

そして、次の瞬間

「いえいえ。それで?僕に聞きたい事というのは?」

僕は眼球も自分の意志では動かせなくなったのに気が付いた。
825 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 04:52:06.46 ID:.s2ZINo0
「キョンの事なんですが」

「ふむ」

やはり”彼”の事か。

「わた……僕はキョンが殺されたという報道があってから、ずっとキョンが
殺されたとされる直前に何があったのかを調べてきました」

「ほぅ」

殺人鬼はわざとらしく、にやけた表情を造る。

「その、僕が調べた結果では、キョンは死ぬ五日ほど前に、あなたの部屋で
『リング』を見たという事になっているんです」


              『リング』

久し振りに自分以外の人間から聞いたこのフレーズが、僕の記憶を揺さぶる。
826 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 04:53:01.72 ID:.s2ZINo0
〜約三週間前〜


古泉 「(ふぅ。今日も疲れた)」

古泉 「(学校での授業、SOS団の活動、閉鎖空間での戦闘。涼宮さんへの配慮。
     他勢力との牽制……どれも疲れる)」

古泉 「愚痴っても仕方ないんですけど……ね」

古泉 「たまには、羽伸ばしても何処か一人でのんびり旅行に行っても罰はあたら
    ……いや、止めよう」

古泉 「(精々借りてきたDVDで映画鑑賞でもして、気を紛らわせよう)」

              カチッ

TV 「ザー」

古泉 「あれ?」
827 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 18:06:58.17 ID:.s2ZINo0
古泉 「(なんで何も映らないんだ?)」

TV 「ザー」

古泉 「再生ボタン押したよな?」

              カチッ

古泉 「DVDプレーヤーにはセットしてあるし……って、TVに接続されてない」

古泉 「あれ?じゃあこの線どこから……ビデオデッキ?ビデオデッキなんて
    随分前に処分した筈じゃ」

古泉 「中身は……入ってる」

古泉 「……」
828 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 18:46:16.42 ID:.s2ZINo0
………
…………
………

古泉 「さて、見ないという選択肢もありますが……一応、確認しておきますか」

             ザザザザーーー

古泉 「ふむ。あれは……井戸」

古泉 「もしや、これは!駄目だ。見ては」

古泉 「……」(身体が…動かない?)

古泉 「……」(火山、海、病院、老婆、井戸、やっぱり)

古泉 「……」(動け動け動け。動いてくれ)

古泉 「…………」


古泉 「……終わった」
829 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 18:47:16.62 ID:.s2ZINo0
PrrrrrrrrrrrrrrrrPrrrrrrrrrrrrPrrrrrrrrrrrPrrrrrrrrrrrrr

古泉 「……携帯」

PrrrrrrrrrrrrrrrrPrrrrrrrrrrrrPrrrrrrrrrrrPrrrrrrrrrrrrr

古泉 「テープを見た以上、逃げられないのか」

PrrrrrrrrrrrrrrrrPrrrrrrrrrrrrPrrrrrrrrrrrPrrrrrrrrrrrrr
PrrrrrrrrrrrrrrrrPrrrrrrrrrrrrPrrrrrrrrrrrPrrrrrrrrrrrrr
PrrrrrrrrrrrrrrrrPrrrrrrrrrrrrPrrrrrrrrrrrPrrrrrrrrrrrrr

古泉 「着信は……彼」

古泉 「……」

         ガチャ

キョン?『………ア……ハ…シ……二…ヌ』

古泉 「……」

キョン?『………カ……ホ…ハ……ダ…』

    プツッ。ツーツーツー
830 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 18:48:40.85 ID:.s2ZINo0
………
…………
………

〜翌日〜

古泉 「……という事が昨日ありまして」

森  「この馬鹿!そういう得体のしれない物を発見したら、先ず報告が
    先でしょう?」

古泉 「……すみません。このような事になるとは」

森  「…まぁ良いでしょう。既に起こってしまった事は仕方ありません」

古泉 「はい」

新川 「しかし困りましたね。もし、呪いが本当だとするとどういった対処を…」
831 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 18:49:42.63 ID:.s2ZINo0
森  「そうね。悔しいけれど、現状、この手の問題は私達に解決は無理。本当ならば
    手を借りたくないけれど、情報統合思念体の彼女にでも力を借りなければ
    無理かしらね」

古泉 「そうですね。しかし……」

森  「彼女は今、力が使えない…使わないんでしたっけ?まぁ、どちらにせよ、長門さん
    には頼めないわね」

新川 「では、朝比奈みくるに未来の情報を教えて頂くというのは?彼女達未来人ならば
    一週間後の呪いが本物かどうか直に分かる筈です」

古泉 「……新川さん」

森  「彼女に聞いたって無駄よ。そんなのどうせ”禁則事項です”で分からないわ」
832 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 18:50:55.87 ID:.s2ZINo0
古泉 「!!!」

森  「どうしたの、古泉」

古泉 「あの……長門さんでは無いのですが、もう一人統合思念体の人物に心当たりが」

新川 「朝倉…涼子ですか?しかし彼女は既に消されてしまったと報告が」

古泉 「いえ、朝倉さんではなく、喜緑さんです。彼女ならこのビデオの解析が…」

森  「…………駄目よ」

古泉 「森さん?」
833 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 18:52:08.10 ID:.s2ZINo0
新川 「ふむ。駄目だと言うからには、理由があるんですね」

森  「ええ、その通り。ねぇ古泉、あなた今週の涼宮ハルヒの観察記録、目を
    通してるわよね?」

古泉 「それは勿論」

森  「それにあなたはSOS団の活動時には、機関の誰よりも彼女の近くに居る」

古泉 「はい」

森  「だったら、ここ最近彼女がこんなホラーを代表するような作品に興味を示す
    きっかけが無かったのも承知の筈」

新川 「それは…」

森  「そう。私が思ってるのはね古泉。これは私達が”神”だとしている涼宮ハルヒ
    が今回の発端じゃないって事よ。普段ならこんなトンでも現象は彼女と疑って
    かかるけど、今回は違う。彼女じゃないわ」
834 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 18:53:07.29 ID:.s2ZINo0
古泉 「だとしたら」

森  「だとしたら、考えられる候補は二つ。一つは只の悪戯。もう一つは敵対勢力
    による攻撃」

森  「敵対勢力も色々あるけど、今の現状、大雑把に言えば自称神候補に仕える超能力者達。
    未来人。宇宙人の三つ。で、もしこれらの内の勢力が攻撃してきたのだとしたら、
    最も危険なのが宇宙人の勢力」

森  「理由は分かるわよね?」

古泉 「同じ超能力者や未来人が動こうとしたら、必ず現場に痕跡、又は”痕跡を消した”
    という痕跡が残るけれど……情報を操作されたとしたら、機関では対処しきれない」

森  「正解」
835 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 18:54:26.42 ID:.s2ZINo0
古泉 「でも統合思念体ならこんな回りくどいやり方なんてせずに」

森  「向こうにも事情があったのかもしれないし、それは私にも解らない。ただ、あなたの
    御友達の長門さんなら、私も百歩譲ってこのビデオに関して相談するのも許可するわ」

森  「けど、彼女以外の統合思念体にアプローチするのは認められないわ」

新川 「ふむ。このビデオを送って来た敵かもしれないという可能性がある以上、こちらが既に
    その罠に掛かったという事実を教えてしまうのは危険だと」

森  「ええ」

新川 「しかし、それではこちらも身動きが取れないのでは?」

古泉 「……」

森  「そうね。だから……」
836 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 18:55:35.97 ID:.s2ZINo0
森  「だから、これからあなたが死ぬであろう時間まで、機関は涼宮ハルヒの監視よりも
    敵対勢力に探りを全力で入れます」

古泉 「なっ?」

森  「その代わり、あなたには涼宮ハルヒの監視と閉鎖空間を絶対に発生させないように
    努めて貰います。良い?間違っても機嫌を取り損ねて閉鎖空間を発生させるなんて
    へましちゃ駄目よ。死にたいのなら話は別だけどね」

新川 「そうですね。それしかありませんか」

古泉 「……解りました」

森  「そして、それまでに解明できなければ私がダビングしたビデオを見ます」

古泉 「えっ!?」

新川 「それは…」
837 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 18:56:33.54 ID:.s2ZINo0
………………
…………
……

それからというもの、僕は必死に涼宮さんの機嫌を取り続けたんだっけ。
間違っても閉鎖空間が発生しないように。


そういえば、新川さんから後で聞いた話だけど、森さんはあの後直に僕が
一応ダビングして持っていったテープを見たと、言っていた。

何故かと尋ねたら、

「『本当に呪いのビデオテープかどうかの確認。もしそうだとしたら、
テープ自身にヒントが隠されていないか調べる必要があるわ。あの子は
見落とすかもしれないけど、私なら見つけられるかもしれない』
との事です」

そして新川さんは、僕でも見抜ける位の造られた笑顔で

「彼女は、優しい人ですから」

と、短く後に続けたんだった。
838 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 18:57:28.12 ID:.s2ZINo0
僕の考えが甘かったというか、頭が回っていなかったというか、事態は想像していた
以上に深刻な物だった。

僕はもっと時間を引き延ばしてからでも。そう、僕の死が宣告された時間の少し前に
ビデオを見た方が良いと思った。何故直にビデオを見る必要があるんだ?と、新川さん
に話を聞いた当時、そんな気持ちで一杯だった。

しかし、それも当然、僕の事を思っての行動。


よく漫画なんかで時限爆弾が登場するけれど、あの時限爆弾についているタイマーなんて
これみよがしの存在であって、実際問題、タイマー通りに爆破する必要なんてない。
最も人が殺せるその瞬間を見計らって起動させてこその兵器だ。

……だとしたら、僕が見たビデオだって、丁度一週間後に死ぬ物でもないかもしれない。


まぁ、だったら死の解除自体ついていなさそうだが、それでも森さんは、僕の生存率を
少しでも上げる為に、テープを見てくれていた。……僕の為に。
839 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 18:58:21.08 ID:.s2ZINo0
そして、もう一つ。新川さんが教えてくれた通り、森さんはテープからヒントを
得ようと考えたのだ。

一週間後の目前まで、在るかもしれないヒントを無視するよりも、多少のリスク
を背負ってでも前に進むしかない。情報の鮮度は、その情報が真実だとするならば、
新しければ新しい程良い。

行き遅れた情報には尾ひれがついている可能性が高いし、何よりも価値がない。

今直にビデオから敵に関する情報が得られれば、策を講じられる。しかし、時間を
かければ掛けるほど、敵もそれに気付き、対策を練る可能性が高まって行く。


そこまで聞いて、漸く僕は、如何に自分の行動が軽率だったか思い知った。
840 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 18:59:14.39 ID:.s2ZINo0
と、ここまで頭の中で思想を巡らした所で、身体が不意に立ちあがった。

!?

突然の事に驚いていると、自分の口から

「どちらかのグループが恐らく短期決戦へと勝負を持ちこむ事になるでしょう」

という台詞が出て来て、今の自分の置かれている状態を思い出す。
そうだった。今、僕は佐々木さんと話をしていたんだ。

「……そう」

「まぁしかし心配しないでください。最後に勝つのは我々ですから。彼も間もなく
帰ってきますよ」

どうやら殺人鬼の戯言が完了したらしい。彼女を見送る為なのか、立ち上がったようだ。
841 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 19:01:18.90 ID:.s2ZINo0
結局、彼女は殺さないらしい。ベルトに挟んであるナイフを取り出す気配も無い。
そんな、彼女を殺さない事に、常識では考えられないような狂った思考なのに、
少し安堵する。

良かった。

例え、彼女が機関の敵だとしても、もうこれ以上彼の友人を殺さなくて済むのなら。

「本当にもう大丈夫ですか?なんなら家まで送っていきますが」

殺人鬼は微笑む。

「いえ、もう大丈夫です。あなたの話を聞いて安心しました」

「そうですか。それは何よりです」

多分、微笑んでいる。

「本当にどうも有難う。今日、会う事が出来て良かった」

「いえいえ、お気になさらず」

微笑んでいると、思いたい。
842 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 19:02:48.09 ID:.s2ZINo0
「じゃあ、さよなら」

「ええ、さようなら。彼が返ってくる日が決まったら、また連絡します」

嘘を吐くなよ、殺人鬼。彼は死んでる。もう居ない。

「うん。宜しく」

だから、そんな笑顔を僕に向けないでくれ。止めてくれ。
彼は居ないんだ。君の目の前に居る殺人鬼が、この僕が、殺してしまったのだから。

けれど、そんな願い虚しく彼女は笑顔のまま、意気揚々と歩きだす。……もう夜も遅い。
恐らく家路に足を向けているのだろう。

僕は、殺人鬼は、その場に立ち尽くしたまま、そんな彼女を眼で追いかける。
殺人鬼の戯言が余程嬉しかったのか、彼女は半分スキップのような形で歩いていた。


僕は、心の底に何かもやもやしたような言い知れない気持ちを携えて、彼女の後姿を見送った。
843 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 19:03:48.31 ID:.s2ZINo0
………………
…………
……

佐々木さんと別れてから、殺人鬼はその足をひらりと別の方向に向けた。
……僕の家とは違う方向だ。

どうやら、まだ身体の主導権を返してくれる気はないみたい。
やり残したことでもある……もしくは、今までのは只の前座のようなもの
で、これからがメイン行事なのかもしれないが。

テクテクと。テクテクテクと。軽い足取りで。

疲弊しきっているであろう重い身体を、さも「まだまだ元気さ」と、僕に
見せつける様に。


殺人鬼は歩く。
844 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 19:05:29.72 ID:.s2ZINo0
そして、しばらく歩いた処で、もう一つ、自分が奏でている足音とは別の
足音が聞こえてきた。

カツカツと。カツカツカツと。小気味良い一定のリズムで。

やがて僕の足音とそれは重なり、殺人鬼が音の方に顔を上げる。

視線の先には、蒼い、長いロングヘアー。

かつて、その手で彼を殺そうとした、そして僕がこの手で殺した、情報統合思念体
によって作られた存在。

対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェース……朝倉涼子の姿
がそこには在った。
845 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 19:07:05.38 ID:.s2ZINo0
「朝倉さん」

そう声を掛けようと思ったが、身体の主導権はやはり殺人鬼が持っていて、
僕には声を発する事も出来ない。

しかし、眼球は拘束が解かれたのか動くようになっていた。

眼を動かして、彼女を見る。

……死体のように蒼い肌が見える。いや、死体のようにでは無く、真実、死体
故に、肌が蒼いのだ。

当然だ。彼女は死んでいる。死んでいる、筈。僕が殺したのだから。


しかし、だとしたら何故、彼女は動いているんだ?
846 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 19:08:27.24 ID:.s2ZINo0
………………
…………
……

……今回の事件の発端。それは僕の不注意から招いた一本のビデオテープを
見た事から始まった。

僕が見たテープは、『リング』と呼ばれる作品に非常に酷似した内容で、見た
者は一週間後に死ぬというもの。

そして、機関が総勢でテープに関する情報を探そうとしたが、期限内にそれが
見つかる兆しはなかった。

更なる捜査を展開するため、新川さんが森さんの見たテープをダビングし、
期限を更に一週間延ばす事に。

そして、さらに数日が過ぎ、僕が死ぬであろう日を過ぎても、僕は生存しており、
少なくとも、『ビデオをダビングして第三者に見せる』という呪いの解除方法は
正しいと証明された。
847 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 19:09:26.24 ID:.s2ZINo0
ここまでは普通だ。けれど、それから更に数日後、僕は身体に違和感を覚えた。
上手く身体が動かせない。時間が経つに従って、身体は動かせなくなって行き、
最終的に、僕の意志とは関係なく動き始めたのだ。


そう、丁度あの日も、僕の意志とは関係なく身体は勝手に動いて、彼と一緒に
帰宅したんだった。

今でもよく覚えている。その日まで僕はずっと涼宮さんの御機嫌を取っていた
のに、その日、SOS団の活動に僕と彼が参加しなかった所為で、彼女は特大の
閉鎖空間を発生させたのだから。


閉鎖空間での闘いが完了した後、森さんにこっ酷く叱られたっけ。
「何考えてるの、あんたは!?」って。でも、それも叱られて当然だったけど。
848 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 19:10:34.54 ID:.s2ZINo0
その翌日、彼からテープの話を聞かされた時は、本当に驚いた。まさか彼が見る
とは思ってもいなかった。しかも、また僕の部屋のデッキにそのテープはあった
らしい。

おかしかった。オカシカッタ。可笑しかった。

テープは機関に、森さんに預けた筈なのに、何故また僕の部屋に存在しているのか、
訳が分からない。

直に機関に”彼”がテープを見てしまったと連絡を入れたが、既に機関の内部は
滅茶苦茶で、僕が引き金を引いてしまったであろう度重なる閉鎖空間の発生で、
最早テープに関する捜査は打ち切られる事となった。

そして、森さんから「あなたと彼で、事件を解決しなさい」と、命じられたんだ。
849 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 19:12:02.93 ID:.s2ZINo0
時々動きが止まる身体、勝手に動き出す身体。そんな不自由で危険極まりない僕
と、今一現状が把握しきれていない彼が、助けてくれない宇宙人、役に立たない
未来人、そして最も厄介な神様を尻目に、捜査を開始する事となった。

正直、このメンツでどう捜査を開始したらいいのか迷った。


けれど、それでも幸先は良かった。いや、悪かったと表現した方が人としては良い
のかもしれないが、まぁこの際関係無い。

幸先は良かった。

何故なら、犯人の目星がついたからだ。
850 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 19:13:06.34 ID:.s2ZINo0
犯人を特定するのに一役買ってくれたのは、彼の妹。何でも録画したDVDを
見ようとしたら、例の『リング』を見てしまったのだそうだ。

そして、その後DVDは何者かに持ち去られており、行方が分からないまま。
ダビングしたディスクを回収する時間帯には、彼の家には、常に最低限、
誰かが居て、誰にも見つからずに回収するのは通常では無理。いや、未来人
だって、超能力者だって何の痕跡も残さずにそこまでは出来ない。


森さんが初めに危惧したとおり、宇宙人の勢力が最も黒幕に近いと思われた。
851 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 19:14:15.64 ID:.s2ZINo0
………………
…………
……

ちらりと横目で朝倉涼子を窺う。彼女は相も変わらず押し黙ったまま、
僕の歩調に合わせてカツカツと着いてきている。

「…………」

僕は再び彼女に声を掛けようとするが、やはり殺人鬼に行動を止められる。
今日の殺人鬼はえらく気合が入っている。

今までなら、もう少し位、ほんの身じろぎ程度なら反抗出来たのに、今日は
自分の意志で歩みを遅らせようとする事も不可能だ。

多分、急ぎの用事なんだな、と僕は勝手に推測する。
852 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 19:15:29.52 ID:.s2ZINo0
しばらく歩いた所で、殺人鬼と死体は見慣れた住宅街の一角に入る。

……ここは。あぁ、成程。

この光景を目の前にして、漸く殺人鬼の目的地に気が付く。”彼”の家に
用があるのか。


このような既に事件が終わった所で、終わりきった処で、何をする気なのか
分からないが、僕の身体の全ての主導権を奪ってまで、僕に殺されて死体で
ある存在の朝倉涼子を出歩かせてまで、ここに来たんだ。

きっと大事な用があるんだろう。


殺人鬼と死体は仲良く門の前で足を止める。
853 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 19:16:38.22 ID:.s2ZINo0
……………………
………………
…………
……


直に彼の家に忍び込むものとばかり思っていたが、殺人鬼と死体は何かを
待つように、家のすぐ傍でじっとしている。

朝倉涼子は正門の前の電信柱の影、殺人鬼は庭の植え込みの影からひっそり
と。まるで泥棒みたいに。

ふむ。僕は今日は誰も殺さないものだと思っていたが、もしかしたら殺人鬼は
これから、ここで誰かを襲うつもりかもしれない。

結局、人を[ピーーー]のか。憂鬱だ。それにしても、今回は朝倉涼子まで連れて来る
とは、かなりのやり手の可能性がある、な。

そんな幾分ずれた思考の元、小一時間ほど待っていると、僕が侵入してきたルート
から人陰が近づいてきた。


……標的はこいつか。
854 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 19:18:37.50 ID:.s2ZINo0
だが、僕の予想は全くといって良いくらい、外れた。
庭先からやって来たのは、先程、殺人鬼と別れた佐々木さん。

僕は面喰いつつも、やはり身体の主導権が殺人鬼に握られているため
表情には出さず、ひっそりと一部始終を見届ける。

佐々木さんは用意してきているガムテープを窓に何重にも重ねて貼り、
なるべく音が出ないように窓ガラスを割る。

            ゴリゴリゴリ

            ガリガリガリ

最初の方こそ慎重に、だが途中から居直ったのか、それとも覚悟を決めたのか

            ガツガツガツ

            と力を込める。
855 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 19:19:47.67 ID:.s2ZINo0
            ゴツゴツゴツ

            ゴツゴツゴツ

佐々木さんが窓ガラスと格闘し始め、およそ二分少々で、

            ゴツゴツゴツ

と、規則正しい音を数回繰り返した後、ジャリンという鈍い音と共にガラス
が割れる。中々の手際。流石自称とはいえ、神候補といっただけの事はある。

佐々木さんはそのまま、手首を入れ、窓の鍵を開ける。

カチリと、窓のロックが外れると、躊躇なく彼女は彼の家に侵入する。
そして一目散にリビングから、通路へ。恐らく彼の部屋を目指しているに違いない。
856 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 19:21:07.57 ID:.s2ZINo0
そう彼女の犯行の一部始終を見届けると、身体が勝手に動き出す。
彼女が切り開いてくれたルートで僕も家の中に入るのか。

正門前から朝倉涼子と、そして何時の間に合流したのか、朝比奈みくるが僕の方へ
駆け寄る。

死んだ筈の人間。消えた筈の人間。そして、人間の振りをしているモノ。

騒ぎの現況である当事者である側から見たら、何とも滑稽に映るが、こんな連中に
殺された人たちには、さぞ不気味に見えた事だろう。


実際、正常に、呼吸して、食べて、考えて、生命活動を全うしている人達からすれば、
殺人鬼で無い方の僕にした処で、既に狂っている領域だとカテゴライズしても、何ら
不思議じゃないんだ。

少し寂しいけれど。少し悲しいけれど。少し悔しいけれど。

僕も、もう……立派な化け物だ。
857 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 19:22:22.00 ID:.s2ZINo0
そして、僕たち三人は、仲良く彼の部屋を目指す。先程入って行った佐々木さん
と同じく、脇目も振らずに。彼の部屋だけを目指す。

真っ暗な部屋で、一か所だけ明りが点滅している部屋に辿り着く。
成程。懐中電灯も持参してきていたのか。流石は佐々木さん。


僕たち三人は、ひっそりと、また中の様子をドアの死角であろう場所から窺う。



彼女は、彼の部屋に入って、おびただしい程の血痕を見つけた処だった。

彼女が何を考えているのかは知りようがないが、酷く冷めた、涼しげな表情で血痕を
見ている。だが特に何も感想を持たなかったのか、そのまま視線を彼の机に向ける。

無駄だ。証拠となりそうな物はすべて殺人鬼が隠滅した。見つかる筈ない。


でも、それでも懸命に彼女は探している。まるで忘れ物がここにあるかのように。
858 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 19:24:30.37 ID:.s2ZINo0
数分間、僕たち三人は相変わらず探し物を続ける彼女を眺めていただけだったが、
意外にも早く彼女の行動に変化が現れた。

小さな箱を大事そうに抱えて喜んでいる。……あれは、ルービックキューブ?


彼女はすぐさま、何やら呟きながら、キューブを回転させていく。

一体あれが何だっていうんだ?

しかし僕のそんな考えを余所に、彼女は正確に、規則正しくキューブを回転させ、
見る見るうちに色を揃えていく。


数分もしないうちに、全ての面の色が揃い、ビックリ箱のように展開された。
中には小さく折りたたまれた紙らしきものが入っている。
859 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 19:26:05.73 ID:.s2ZINo0
そして彼女はその紙を拾い上げて食い入るように見ている。いや、読んでいるのか。

一分も経たずに、彼女は真剣に紙との睨めっこを止めた。少し憔悴して
いるようにも映る。

だが、佐々木さんが漸く顔を上げたそのタイミングで、朝比奈みくるは
待ってましたと言わんばかりに笑顔で言い放った。


 「成程ー。そんな所に隠してたんですか。見つからない筈です」


僕も勢いよくドアを開け、佐々木さんに向かって微笑む。きっと朝倉涼子も
微笑んでいるのだろう。
860 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 19:31:09.83 ID:.s2ZINo0
「…………」

突然の訪問に佐々木さんは口をパクパク動かすだけで、言葉が出せていない。
そんな佐々木さんを見て、朝比奈みくるは

「大丈夫です。心配いりません。ただ、私の話を聞いてくれるだけで良いんです」

と、いつもの調子で、続けた。

「うー。そうですね。何から、説明しましょうか。……あ!そうだ。今回の事件
が何故起こったかについてからご説明しますね」


それから暫く、朝比奈みくるによる今回の事件の概要が語られる。
861 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 19:32:11.80 ID:.s2ZINo0
掻い摘んで述べるとこうだ。


宇宙人達はかねてより、自分たち以外の涼宮ハルヒを監視する者達を疎ましく
思っていた。当然だ。折角監視対象が何かアクションを起こそうとしている
というのに、宇宙人達意外の勢力は、それを鎮静化させようとばかりする。

これでは、観察する意味がない。

一方、未来人のグループは自分たちの未来に近づけさせる為、どうしても強大な
力を持つ涼宮ハルヒを始末したかった。

そこで、この二つのグループはお互いに牽制し合っても意味がない、ここは一つ
協力しないか?という事になったらしい。

宇宙人と未来人が選択した、互いにとって最も都合の良いシチュエーション。

   『涼宮ハルヒをこの世界から隔離し、別の世界に連れていく』

こうすれば、宇宙人は、他のどの勢力にも邪魔されずに涼宮ハルヒの監視を行え、
未来人は自分達の未来を手に入れられる。
862 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 19:33:22.95 ID:.s2ZINo0
……しかし、この計画には邪魔な組織が一つあった。そう、超能力者(僕達)だ。

機関という超能力者のグループは涼宮ハルヒを神扱いしており、別世界に隔離する
など、以ての他となるのは容易に想像ができる。

ここで、超能力者達を一掃するために作られたのが、僕や彼が見てしまったビデオ
テープだ。あのビデオは、やはり『リング』の山村貞子の呪いをモチーフに作られた
もので、山村貞子の怨念が宿っているとの事。

ちなみに、山村貞子は元々、超能力者という設定で作られた存在だったので、
同じく異なる能力とはいえ超能力を有する機関の面々には、効果絶大で、機関
の超能力者達は、たちまち山村貞子の支配下になった。


最後に、超能力者達を壊滅させたら、宇宙人達の情報操作によって、山村貞子
という存在も消滅させれば事件は一件落着。


……つまり、今回の事件は、蓋を開けてみれば宇宙人と未来人が手を組み、超能力者
を一掃し、涼宮ハルヒを別世界に隔離するという事件だったらしい。
863 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 19:34:26.09 ID:.s2ZINo0
一通り説明し終わり、最後に朝比奈みくるは

「それで佐々木さんにお願いがあるんですけど、いいですか?」

と付け加える。

佐々木さんはというと、観念したのか、悟ってしまったのか、コクンと、
ただ静かに頷くだけだった。

「そんな顔しなくても大丈夫ですよ。難しい事じゃないんです。それにちゃんと
手伝ってくれたお礼も用意してますから」

「お礼?」

「はい。未来の技術で、キョン君を生き返らせてあげます」

そんな、とんでもない事を朝比奈みくるはあっさりと言った。
864 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 19:35:30.74 ID:.s2ZINo0
……………………
………………
…………
……


帰宅路。僕達が彼の家を出た時には既に、夜が明け掛かっており、
今はもう、完璧に朝日が拝める位置まで太陽が昇っていた。


僕の身体はというと、相変わらず殺人鬼、いやあの話を聞いた以上、
最早山村貞子と呼ぶべきかもしれないが……まぁとにかく、主導権
は返してもらえていない。

僕の傍らには、蒼い顔をした、蒼いロングヘアーの死体と、狂った
未来から来た、狂った少女が、いる。

     テクテクと。カツカツと。コツコツと。

特に足音を揃える必要も無いのに仲良く、一緒に道を歩いている。
865 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 19:36:30.35 ID:.s2ZINo0
傍から見たら美少女二人に連れそられている僕は幸せ者に映るのかも
しれないが、僕はあまり良い気分じゃない。

何故なら死体と狂った女がくっ付いているだけなのだから。

まぁ、朝比奈みくるの説明が本当ならば、これで事件も終焉に向かう筈
だから、少しは喜んでも良いかもとは思うけれど。

何故なら涼宮ハルヒは既に統合思念体によって隔離された世界にいざな
われているのだから。


       ――――― ズキン ―――――

           ???????

          あれ?何だ、どうした?

       ――――― ズキン ―――――

   まただ。頭の奥でズキンと痛みが走る。どうしたってんだ。
866 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 19:37:35.92 ID:.s2ZINo0
      ――――― ズキン ズキン ―――――

          おい。何だ、この痛みは?

     ――――― ズキンズキンズキン ―――――

          ????????????

   ――――― ズキンズキンズキンズキンズキン ―――――

          くそっ、何だよ、これは?

     そう口に出そうとしても身体の主導権は貞子なもの。
     僕はただ、前を向いて歩く事以外の行動は出来ない。
867 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 19:38:38.32 ID:.s2ZINo0
             貞子貞子貞子貞子。

      そんな感じに痛みに耐えながら僕は貞子に訴える。

      自分の意志で動く眼球だけをギョロギョロとさせて。

         瞬間、朝倉涼子の姿を見て、ハッとした。

あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ


         決して声にはならない声で、僕は叫んだ。
868 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 19:39:49.64 ID:.s2ZINo0
おかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしい
おかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしい
おかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしい
オカシイオカシイオカシイオカシイオカシイオカシイオカシイオカシイオカシイオカシイ
オカシイオカシイオカシイオカシイオカシイオカシイオカシイオカシイオカシイオカシイ
オカシイオカシイオカシイオカシイオカシイオカシイオカシイオカシイオカシイオカシイ
オカシイオカシイオカシイオカシイオカシイオカシイオカシイオカシイオカシイオカシイ
可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい
可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい
可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい
可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい
可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい


                ヲかシ過ぎル

    そうだそうだそうだ。間違えてる。何がって?朝比奈みくるの説明だ。
だってそうだろ?今回の事件の黒幕が情報統合思念体と未来人なら、何故朝倉涼子が死んで
いるんだ?何故僕に殺されなくちゃいけなかったんだ?
869 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 19:41:17.97 ID:.s2ZINo0
ちょっと待て。ちょっと待ってくれ。

先ず初めに僕がビデオテープを見た。そして機関の森さん、新川さんが見ている。
そして僕の身体の主導権は殺人鬼に奪われたんだ。

ここまでは朝比奈みくるの説明でも通る。

次に彼、彼の家族がビデオを見た。

これも佐々木さんを”彼”という餌で釣る為の犠牲だったと考えたら、大筋からは
ずれていない。


それから、それから先は?何があった?僕はどうしたんだった?

頭が上手く働かない。落ち着け。落ち着け。落ち着け!

良く思い出せ。僕は何故彼女を殺した?
870 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 19:42:16.34 ID:.s2ZINo0
長門さんに連絡を入れたら、朝倉涼子が何故か派遣されてきて。
確か理由は……長門さんの代わりに今回の事件の手伝いをするとか何とか。

ああっあああああ。違う。そんなのは後でどうとでも説明が付く。
重要なのはその後。


問題は何故彼女を[ピーーー]に至ったかという………………あああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああ!?

       分からない。想い出せない。
何かそこら辺で大きな音がした所為か?記憶にノイズが掛かってる。


 音。大きな音。ノイズ。……違う、声だ。悲鳴が聞こえてきたんだ。


     …………そうだ!思い出した。悲鳴だ!!!


あの時、彼と僕と朝倉涼子の三人が顔合わせをして、今回の事件
に対する考えを僕が喋っていた最中に、コンピュータ研の部長の
悲鳴が聞こえてきたんだった!!!
871 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 19:43:29.15 ID:.s2ZINo0
……うん、確か、コンピュータ研の部長氏が、部室棟で悲鳴を上げている
のを聞きつけた僕たちは、ビデオやDVD、もしくはそれに準ずるリングの
媒体品がないかを探した。

けれど、その時には特に目新しいものは無く、そのまま部室を後に。

その後、警察に潜り込んでいる機関の関係者の方に、部長氏が最後に見たと
されるページや、ログが残されているのを知ったんだ。


そして僕は朝倉涼子に、ログデータは警察庁のデータベースに保管されて
あるから、ファイアーウォールを破って解析を頼んだ。


……でも。

……でも朝倉涼子に解析を頼んだその日に、僕は彼女を殺した?

           ???????

長門さんの代わりに統合思念体から派遣されてきた存在である彼女が、僕の身体
を操っている山村貞子と『仲間』で在る筈の彼女が、何故、僕に、殺人鬼に、
山村貞子に殺されている?
872 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 19:44:47.31 ID:.s2ZINo0
何処かヲカシイ。

狂っているとまでは、言わないけれど、何と表現すれば適切なのか不明だが、
ずれている。

そう、何かズレテル、ヅレテル。

上手く論点をはぐらかされたというか、敢えて答えていないような、そんな感覚。
綺麗に歯車が噛み合っていない、そんな感覚。

重大なモノを見落としている気がする。

こう、もっと単純な。もっとすぐに気が付きそうな事を。何でそんなもの見落とし
ているんだという、本当に根本的な問題。

答えは既に発言してしまった気がするのに……。分からない。
873 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 19:45:53.94 ID:.s2ZINo0
と、不意に身体が宙に浮く感覚に襲われる。

あぁ、殺人鬼に身体を任せて、思考していたらいつの間にか僕の住んでいる
アパートまで到着していたのか。

ぎりぎり動かせる眼球で左右を見やる。……二人ともちゃんと着いてきている。
エレベーターの中にまで乗り合わせたという事は、恐らく僕の部屋まで入って
来る気なのか。

『涼宮ハルヒ隔離計画』の祝賀会でも開いて、僕を解放してくれるのならば、
願ったり叶ったりだが、どうなる事やら。


ゴウンゴウンと、普段あまり意識しないエレベーターの音が、今日はやけに
はっきりと聞こえた。
874 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 19:46:47.70 ID:.s2ZINo0
………………
…………
……

吐き気のする様な腐臭の漂うエレベーターを出て、僕は自分の部屋に入る。
けれど、部屋に入って驚いた。

そこには、夥しい数の死体があった。

……中には、僕が殺した。……中には、良く見知った顔の、死体が。

森さん。新川さん。田丸兄弟。……機関の皆。

彼のクラスメートの国木田君。コンピュータ研の部長氏。

彼の妹、両親。

自称神候補である佐々木さんについて回る、未来人、宇宙人、超能力者。

彼、長門さん。

そして、一通り死体を見まわした所で、糸がプツンと切れたかのように
崩れ落ちる朝比奈みくると朝倉涼子。


……なんだ。朝比奈みくるも、死体だったのか。喋っていたから気が付かなかった。
成程、これで涼宮ハルヒ以外のSOS団メンバーも揃った訳だ。
875 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 19:47:45.96 ID:.s2ZINo0
死体が死体に積み重なって、全員の顔をきちんと確認は出来ていないけれど、
多分、今言った……今考えた人達であっている筈だ。

そんな感傷とも何とも言えない気持ちのまま、僕もその場に倒れこんでしまう。
僕の身体は、朝倉涼子の前に倒れこみ、顔と顔を見つめあわせる様な格好となった。


おいおい、まさか僕まで死体だって訳じゃないだろうな。

目の前で濁った瞳で見つめる彼女に、心の中で質問を投げかける。

……当然、彼女は答えてはくれないが。
876 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 19:50:25.14 ID:.s2ZINo0
結局、今回の事件は何だったのだろう?

宇宙人と未来人による『涼宮ハルヒ隔離計画』?黒幕がこんなにバタバタ死んで
いっているのに、そんなのが果たして真実と、導き出された答えだと自信を持って
言えるのか?

……僕には無理だな。筋が通っている所もあるが、可笑しな点も多い。
テストで解答したら、60点が関の山ってとこ。

それで充分だと言う人も居るかもしれないが、僕はまだ納得できない。
何処かに完璧な解答は用意されていないのか。


あなたは、どう思う?朝倉さん。

僕は、また沈黙を守りぬく彼女に質問を投げかける。
877 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 19:51:51.47 ID:.s2ZINo0
返ってこない返事に満足して、僕はマジマジと朝倉さんの顔を見る。
進化の可能性、その目で見れませんでしたねと心の中で嘯きながら。


              ん?

     あれ?今、僕は何を思った?何を考えた?

      …………あぁ、成程、そういう事か。
そういう考え方も、良いものだ。解答用紙にこういう解答を書けば
もっと良い点数が貰えるかも。

   独り、自分の導いた解答でちっぽけな自己満足感を満たす。
878 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 19:53:02.38 ID:.s2ZINo0
何も宇宙人と未来人による『涼宮ハルヒ隔離計画』の全てを否定
しなくとも、使えそうな部分だけ使って、後はそれを補えば良い。


宇宙人と未来人による『涼宮ハルヒ隔離計画』。これがあったと
認めよう。先ずは在ったと認めよう。

そして、『呪いのテープ』、これもその計画に従って造られたと考える。
問題はその後。

このテープは超能力者殲滅の為に宇宙人によって改良された僕達の
知っているモノと少し違うテープになっている。


……だとしたら。
……だとしたら、宇宙人も予想だにしない”進化”をこいつ自身が
勝手にしたとするならば。
879 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 19:54:12.39 ID:.s2ZINo0
『涼宮ハルヒ隔離計画』の後に、”進化”した自分が処分されないように
反旗を翻したのだとしたら?


      どうですか、朝倉さん?この解答?


      僕は得意になった気分で彼女を見る。



          彼女は何も答えない。

   けれど、もし彼女が僕の解答に答えてくれるのなら

       「ごめんね古泉君。禁則事項なの」

と言う気がする。彼女ならきっとこう言うだろう。何故かは分からないけど

          そんな気がして、ならない。
880 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 19:55:33.59 ID:.s2ZINo0


             朝倉「禁則事項なの」

                 完
881 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 19:56:42.77 ID:.s2ZINo0
………………
…………
……

吐き気のする様な腐臭の漂うエレベーターを出て、僕は自分の部屋に入る。
けれど、部屋に入って驚いた。

そこには、夥しい数の死体があった。

……中には、僕が殺した。……中には、良く見知った顔の、死体が。

森さん。新川さん。田丸兄弟。……機関の皆。

彼のクラスメートの国木田君。コンピュータ研の部長氏。

彼の妹、両親。

自称神候補である佐々木さんについて回る、未来人、宇宙人、超能力者。

彼、長門さん。

そして、一通り死体を見まわした所で、糸がプツンと切れたかのように
崩れ落ちる朝比奈みくると朝倉涼子。


……なんだ。朝比奈みくるも、死体だったのか。喋っていたから気が付かなかった。
成程、これで涼宮ハルヒ以外のSOS団メンバーも揃った訳だ。
882 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 19:57:40.80 ID:.s2ZINo0
死体が死体に積み重なって、全員の顔をきちんと確認は出来ていないけれど、
多分、今言った……今考えた人達であっている筈だ。

そんな感傷とも何とも言えない気持ちのまま、僕もその場に倒れこんでしまう。
僕の身体は、朝倉涼子の前に倒れこみ、顔と顔を見つめあわせる様な格好となった。


おいおい、まさか僕まで死体だって訳じゃないだろうな。

目の前で濁った瞳で見つめる彼女に、心の中で質問を投げかける。

……当然、彼女は答えてはくれないが。
883 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 19:58:48.60 ID:.s2ZINo0
僕と彼女はしばらく見つめ合う。
死体で満たされたこの部屋で。腐臭が漂うこの部屋で。
ただ見つめあった。


………………
…………
……


そうしている間に、どの位の時間が経ったのだろう?
気が付けば、意識はまどろんで、今にも眠ってしまいそうだ。

……もう、良いか。もう、楽になろう。

多分、ここで眼を閉じると、恐らく二度と目を開ける事は無い
と分かっている。そんな気がする。

でも、それも、それでも良いかなとは思う。

僕は、殺人鬼は、山村貞子は、人を殺し過ぎた。
僕だけ生き延びようなんて、虫の好過ぎる話だ。

だったら、ここで、この死体達に埋もれて死んで行くのも悪くない。
殺人鬼、山村貞子も、僕と一緒にあの世に連れていくのも、悪くない。
884 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 20:00:31.64 ID:.s2ZINo0
そう決心して、意識を閉じようとしたのだが、背中に、ピシリと痛みが走る。

おいおい、ここまで来て僕の決心を鈍らせるなよ。それとも、まだ僕に何か
仕事でも用意してあるのかよ。

僕の思考を読み取ったのか、もう一度、大きくピシリと背中が痛む。


―――――そして、
               ズルリ

と、ナニかが、背中から、僕の中から出ていく。

              ??????

         何だ?僕の身体からナニが出てる?
885 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 20:01:56.53 ID:.s2ZINo0
しかし、身動きの取れない身体では、どうにも確認する事が出来ない。
僕はただただじっと、眼の前の朝倉涼子を見るだけ。


        ヌルリ。ズニュリ。ズリュリ。ズルリ。

           ブリュブリュブリュブリュ
           ジュルジュルジュルジュル

        膨らんだ風船がしぼんでいくように感じた。

   やがて、皮だけになった僕を見降ろすかのように、影が出来る。

       あぁ、そうか。そうだった。そうだったな。

お前は、超能力者殲滅の為に宇宙人によって改良された、僕達の知っている”モノ”
と少し違う存在だった。

だったら、だったら。だとしたら。『涼宮ハルヒ隔離計画』の後に、”進化”した
自分が処分されないように反旗を翻したと言う事か。
886 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 20:03:24.30 ID:.s2ZINo0
    もう山村貞子と呼ぶのも些か違うであろう”モノ”に僕は問う。

     お前はこれから、何をするんだろう?何処へ行くんだろう?


               「…………」

              影は返事をしない。

        ……まぁ良いさ。何処へなりとも行ってくれ。
        最早僕にはお前を止めれないし、何も出来ない。

       身体も動かなければ、身体があるのかすら分からない。

          そして、僕は今度こそ意識を落とす。
         声にならない声で精一杯の皮肉を込めて。


            ハッピーバースデイ、殺人鬼。

           影が笑ったような、そんな気がした。



                  了
887 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 20:06:03.56 ID:.s2ZINo0
佐々木「……もしもし」
888 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 20:07:24.72 ID:.s2ZINo0
キョン「はい。もしもし」

佐々木「やぁキョン、実は君に話しておきたい事があってね」

キョン「ほう、何だ?」

佐々木「いや、その…出来れば直接会って話したいんだけど」

キョン「そか。別に俺は構わないぜ」

佐々木「そ、そう。じゃあ今週の日曜に駅前の喫茶店で」

キョン「時間は?」

佐々木「そうだね。11時くらいで」

キョン「OK。分かった。じゃあな」
889 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/15(日) 20:07:27.75 ID:snC1xoSO
ここらへんから知らない展開だww
みてるぞしえん
890 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 20:08:46.06 ID:.s2ZINo0
………………
…………
……

〜日曜日・喫茶店〜

佐々木「少し早く来すぎたかな」

佐々木「いや、でも折角キョンに会えるんだしこんな時間も悪くない」


佐々木「……」

佐々木「まだかな」ソワソワ
891 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 20:09:51.58 ID:.s2ZINo0
ガラン


佐々木「!」

キョン「……」キョロキョロ

キョン「お!」


佐々木「やぁ、君が予定時間より前に来るなんて珍しいね」

キョン「相手がお前だからな。何時も言いだした時間よりもかなり
    早くから居るし」

佐々木「そ、そうか」
892 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 20:10:53.80 ID:.s2ZINo0
ガラン


佐々木「!」

キョン「……」キョロキョロ

キョン「お!」


佐々木「やぁ、君が予定時間より前に来るなんて珍しいね」

キョン「相手がお前だからな。何時も言いだした時間よりもかなり
    早くから居るし」

佐々木「そ、そうか」
893 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 20:12:02.71 ID:.s2ZINo0
キョン「で、話ってのは?」

佐々木「君はせっかちだね。折角久し振りにこうして顔を合わせたっていうのに」

キョン「そう言えばそうだな。すまん」

佐々木「いやいや、謝らないでくれ。呼び出したのは僕なんだから」

キョン「ふむ。そうだな」

佐々木「よし。じゃあ出掛けようか」

キョン「出掛けるって、何処にだよ?」

佐々木「何処にって?決まってるよ」

佐々木「遊園地さ!」
894 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 20:13:09.96 ID:.s2ZINo0
〜遊園地〜

キョン「さて、到着した訳だが」

佐々木「キョン、キョン!早く早く!」ソワソワ

キョン「張り切り過ぎだろ」


佐々木「ハヤクー」


キョン「!何時の間にあんな遠くへ」

キョン「へいへい、今行きますよっと」
895 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 20:14:16.90 ID:.s2ZINo0
佐々木「これが遊園地!」ソワソワ

キョン「お前はなに遊園地でそんなに興奮してるんだよ、子供か?」

佐々木「なっ、失礼な?」ソワソワ

キョン「イヤでもホラ。そんなに目ぇ輝かせながらソワソワされても
    説得力ねぇよ」

佐々木「ソワソワするのは仕方ないさ。何せ遊園地なんて生まれて初めてだからね」ソワソワ

キョン「えっ?」
896 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 20:15:10.55 ID:.s2ZINo0
佐々木「えっ?じゃないさ。君は僕の家庭環境については既に知ってる筈だったと
    思うけど」

キョン「……あぁ、そういえばそうだったな」

キョン(それにこいつ、こんな所に一緒に来る友達もいなかったんだっけ)

佐々木「今日は思いっきり満喫しなくちゃ!」ピャー


キョン「だからオイ待てよ!」ピャー
897 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 20:17:06.95 ID:.s2ZINo0
佐々木「やはりまずは定番のジェットコースターだね!」ソワソワ

キョン「まぁ妥当かな」

佐々木「では早速」ピャー

キョン「やれやれ」


アナウンス「皆さま、眼の前にあるレバーを降ろして、しっかり掴まってください」

佐々木「わくわく」

キョン(……本当に子供みたいだな)

アナウンス「それでは逝ってらっしゃーい」
898 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 20:18:10.89 ID:.s2ZINo0
ガタガタガタガタ

キョン「ふむ。臨場感あるな」

佐々木「あれ?ジェットコースターってスピード感のある乗り物じゃなかったっけ」

佐々木「こんなトロッコがレール登るだけなの?」


ガタガタガタガタ

キョン「ま、今に分かるさ」

佐々木「?」


ガタガタ……ガタ
899 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 20:19:07.57 ID:.s2ZINo0
佐々木「あれ、止まった?」

キョン「ここからだぞ佐々木。口あけてると舌噛むかもな」

佐々木「へ?」

ガタ ガタ ピャーーーーーーーーーー


佐々木「〜〜〜〜〜〜〜〜〜」

キョン「おおおおおおおおおおおおお!?」

キョン(想像以上に速ええええ)
900 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 20:20:18.84 ID:.s2ZINo0
ピャーーーーーーーーーー

佐々木「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」

キョン(ジェットコースター初めてでこのスピードだともう乗れなくなるかもな)

佐々木「……ふふふふふふふふ」

キョン(笑いだした?)

ピャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

佐々木「あははっははははははははっは」

佐々木「もっと、もっと速くー」

キョン(こいつ将来スピード狂になる可能性がある…nあああああああああああ!?)

ピャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

佐々木「あははははははははははははははははははははははははははははは」
901 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 20:21:11.10 ID:.s2ZINo0
…………
……

アナウンス「到着でーす。又の御来場お待ちしておりまーす」

キョン「ふぅ……」ヨロヨロ

佐々木「楽しかった。ね、キョン?」

キョン「あ、ああ」

佐々木「帰りにもう一回乗ろうね」

キョン「ヒッ」ヨロヨロ
902 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 20:22:08.23 ID:.s2ZINo0
佐々木「さーて次は」

キョン「…死にそうだ」

佐々木「あっ!あれ!あれに乗ろう」

キョン「メリー…ゴーランド…だと?」

佐々木「さあ行くよ!キョン」

      グイッ

キョン「今日の佐々木はハルヒみたいだ…」
903 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 20:23:09.93 ID:.s2ZINo0
佐々木「ほらキョン!乗ろうよ」

キョン「ちょ、ちょっと落ち着け佐々木!周りを良く見ろ」

佐々木「?」

キョン「メリーゴーランドなんて、小さいお子様用の乗り物だ。お前が乗ると
    かなり変な絵になるぞ。それでも良いのか?」

佐々木「くっくっキョン。君は何を言っているんだい?」

佐々木「”良い”に決まってるだろう」

キョン「……」
904 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 20:24:09.35 ID:.s2ZINo0
佐々木「ほらキョン。早く早く」

キョン「もはや何言っても駄目か」


佐々木「うーん…流石に二人一緒に乗るのは無理か」

キョン「そのようだな」

佐々木「仕方ない。先に乗るからキョンも後から追いかけて来てね」

キョン「廻ってるから追いつけないけどな」

佐々木「楽しかったらここも後でもう一回乗りにこようね!」

キョン「こんな公開レイプ一回だけにして下さい!お願いします!」ダッ
905 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 20:25:06.85 ID:.s2ZINo0
…………
……

佐々木「楽しかったねキョン」

キョン「俺は周囲からの目が痛かったよ」

佐々木「さて次は…」

キョン「ん、なぁ佐々木そろそろ先に飯にしないか?」

キョン「昼時のピークになるとどこも一杯で入れなくなる」

佐々木「それもそうだね。何処に入る?」

キョン「ま、適当にレストランか?」

佐々木「遊園地ならではってのは無いの?」

キョン「お前は地方の遊園地に何を求めてるんだよ」
906 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 20:26:27.36 ID:.s2ZINo0
〜レストラン〜

佐々木「それにしても遊園地は素晴らしいね」

キョン「まぁそうだな」

佐々木「こんなに楽しい所ならもっと沢山来たかったよ」

キョン「?これからも来れるだろ?」

佐々木「そうだね。また来れると…良いな」

キョン「?」
907 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 20:27:46.37 ID:.s2ZINo0
佐々木「そんな事より注文しようよ。何食べたい?」

キョン「俺はパスタでいいや」

佐々木「じゃ、僕もそれで」

キョン「おいおい、別に同じのじゃなくても他にも旨そうなの」

佐々木「良いじゃないか。たまには」

キョン「まぁお前がそれで良いなら良いけどさ」
908 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 20:28:39.39 ID:.s2ZINo0
ウェイトレス「ご注文はお決まりですか?」

佐々木「はい。パスタ二つ」

キョン「一つはミートソースで」

佐々木「二つともそれでお願いします」

ウェイトレス「かしこまりました」

キョン「おいおい」

佐々木「えへへへ」

キョン「ま、いいか」
909 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 20:29:32.86 ID:.s2ZINo0
佐々木「キョンってさ」

キョン「ん?」

佐々木「パスタ好きだよね」

キョン「まぁな」

佐々木「昔、一緒に買い物行った時もパスタ食べてたし」

キョン「そうだったか?よく覚えてるな」

ウェイトレス「お待たせしました。パスタ二つ。ミートソースになります」


佐々木「ふふ」
910 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 20:30:27.02 ID:.s2ZINo0
………………
…………
……

佐々木「午後はお化け屋敷からスタート!」

キョン「テンション高いな」

佐々木「GO!」ピャー

キョン「だから待てと言っているだろう」


佐々木「ハヤクー」ピャー


キョン「やれやれ」
911 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 20:31:19.27 ID:.s2ZINo0
〜お化け屋敷〜

キョン「中々怖そうだな」

佐々木「何やってるんだい。入り口で突っ立ってないで早く中に入ろう!」

キョン「あ、ああ」


佐々木「暗いね」

キョン「ああ」

佐々木「いかにもって感じだね」

キョン「ああ」

佐々木「キョン?」

キョン「ああ」
912 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 20:32:11.00 ID:.s2ZINo0
キョン(不味い。不味いぞこれは。何でこんなに本格的なんだよ!)

キョン(何で客の通るルートに普通にマネキンとか蝋人形とか置いてあんだよ!)

キョン(まだお化け出てねぇのに怖すぎだろ)

キョン(こんなんで突然何か出たら俺は耐えられん)

お化け「……」ヌッ

佐々木「……」

キョン「…………」

お化け「ばぁ?」

佐々木「ふふっ」

キョン「ぎにゃあああああああああああああああああああああ!?」
913 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 20:33:50.51 ID:ahjaWYDO
支援
914 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 20:33:53.09 ID:.s2ZINo0
佐々木「キョ、キョン?」

キョン「あああああヴぁヴぁヴぁヴぁヴぁヴぁヴぁああああああ」

佐々木「キョン!しっかり!可愛いじゃないか!?」

キョン「駄目だあああああああああ」ダッ

キョン「帰るうううううううううううううううう」ピャー

佐々木「ちょっとキョン?待ってよ!」ダッ


お化け「…………可愛い?」
915 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 20:34:54.26 ID:.s2ZINo0
………………
…………
……

佐々木「まったく!」プンスカ

キョン「正直スマンカッタ」

佐々木「駄目だね。許してあげないよ」プイッ

キョン(そうは言っても、もう一度あのお化け屋敷の中に入る勇気は俺には無い)

キョン「今度なにか奢るからさ」

佐々木「ふぅん。君は僕を物で釣る気なんだね?」

キョン「い、いやそういう訳では」
916 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 20:36:06.19 ID:.s2ZINo0
佐々木「良いよ。君がそれで僕の機嫌が治ると思っているんだったらそうしよう」

佐々木「今度ね」

キョン「?」

佐々木「今度、もう一度遊園地へ行こう?また別の」

キョン「へ?」

佐々木「それでチャラにしてあげる。奢りでなくて良いから」

キョン「ん、ああ。でもまた遊園地で良いのか?」

佐々木「うん。決定、規定事項だ」
917 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 20:37:14.45 ID:.s2ZINo0
キョン「良く分からんが、お前がそれで良いってんなら俺もそれで良いさ」

佐々木「うん!よし、では気を取り直して、次はあれにしよう」

キョン「コーヒーカップか」

佐々木「さっ、行くよ?」

キョン「ああ」
918 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 20:38:08.75 ID:.s2ZINo0
………………
…………
……

キョン「今日はかなり遊んだな」

キョン「ジェットコースターにメリーゴーランド、お化け屋敷にコーヒーカップ、
    パレードも見たし、バンジージャンプ、キャラクターショー、アトラクション系
    も大体メボシイのは見たな」

佐々木「くっくっ。まだだよ」

キョン「?でも、そろそろ遅いし、今からアトラクション系はまた並ぶのしんどいぞ」

佐々木「大丈夫だよ。多分あれはアトラクション系ほどは混んでない」

キョン「?」

佐々木「鈍感だな、君は」

佐々木「遊園地の締めと言えば、観覧車だろう?」
919 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 20:39:12.96 ID:.s2ZINo0
キョン「そう……なのか?」

佐々木「そうだと僕は聞いてるんだが」

キョン「誰に?」

佐々木「橘さんに」

キョン「へー、ん?」

キョン(あれ?そういえばこいつ、昔ならいざ知らず、今は橘や藤原、周防がいる)

キョン(別に俺じゃなくてもいつでも遊園地くらい誰か誘ったら一緒に来れたんじゃ)

キョン「なぁ佐々木」

佐々木「さっ、行こう?」

キョン「あ、ああ」
920 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 20:40:14.15 ID:.s2ZINo0
ゴウンゴウンゴウン


佐々木「わぁ、高い」

キョン「そうだな」

佐々木「見て、人がゴミの様だ」

キョン「そんな台詞言っちゃいけません」

佐々木「くくっ、冗談だよ」

キョン「いや、言ってるから」
921 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 20:41:12.66 ID:.s2ZINo0
佐々木「ねぇキョン」

キョン「なんだ?」

佐々木「ありがとう」

キョン「おいおい、どうしたんだよ改まって」

佐々木「ううん。君には今まで世話になったなと思ってさ」

キョン「した覚えはないけどな」

佐々木「世話になったさ。君にとっては些細な事かもしれないが、
    僕にとっては、大事なことだった。本当に…」

キョン「……」

佐々木「だから、お礼が言いたかった。ありがとうって」
922 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 20:42:07.25 ID:.s2ZINo0
キョン「…………」

佐々木「…………」

キョン「…………そ、そういえばさ」

キョン「今日、俺にする話って一体何だったんだ?」

佐々木「…………ふふっ」

キョン「な、何故笑う」

佐々木「君があまりに君らしいものだから、つい」

キョン「???」
923 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 20:43:09.43 ID:.s2ZINo0
佐々木「こんなにムード満点に演出してるのに、相変わらずなんだから、君は」

キョン「ムードって」

佐々木「ま、鋭いと言えば鋭いんだけど、ね」

キョン「だから…」

佐々木「ねぇキョン。今日君を呼んだのは告白するためさ」

キョン「告…白?」

佐々木「うん。告白」
924 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 20:44:06.65 ID:.s2ZINo0
佐々木「僕は君が好きだった……ううん、今でも好きだ」

佐々木「君と離れ離れになって、心細かった。寂しかった。苦しかった。辛かった」

キョン「佐々木……」

佐々木「でも、君はSOS団の団員で、涼宮さんが好き、なんだろ?」

キョン「俺は…」

佐々木「だから、僕は君が彼女と付き合う前に、最後に我儘言いに来たんだよ」

キョン「ちょっと…」

ゴウンゴウンゴウン

佐々木「おや、どうやら終わったみたいだね」
925 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 20:46:25.09 ID:.s2ZINo0
佐々木「さて、途中君がお化け屋敷で逃げ出した事だが、僕も鬼じゃない」

佐々木「許してあげる。……当然、遊園地の約束も無かった事で構わない」

キョン「おい、佐々木!」

佐々木「今日はありがとう。僕の我儘に付き合ってくれて。楽しかった」

キョン「だから待てって!」

佐々木「見送りは良いよ。一人で帰れる」

佐々木「じゃあね」タッ
926 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 20:47:17.78 ID:.s2ZINo0
キョン「おい!」ダッ

藤原 「……待って貰おう」ガシッ

キョン「なっ?」

藤原 「お前には追わせない」

キョン「どけよ!」

藤原 「無理な相談だ」

キョン「何で邪魔する?」

藤原 「佐々木がこれを望んだからだ」

キョン「????佐々木が?」
927 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 20:48:14.43 ID:.s2ZINo0
キョン「おい、どういう意味だ」

藤原 「残念ながら今は説明出来ん。しかし、いずれ解る時が来るさ」

キョン「訳わかんねぇよ」

藤原 「そろそろ良いか……じゃあな」タッ

キョン「おい、待て!」



キョン「……くそっ!何だってんだ」
928 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 20:49:31.63 ID:.s2ZINo0
………………………………
…………………………
……………………
………………
…………
……

キョン(あれから一週間たったけど、相変わらず佐々木から連絡は来ない。
    こっちからは何回掛けても繋がらない)

キョン(着信拒否にでもされたりしてる?それとも何かに巻き込まれてるのか?)」

キョン(どちらにせよ一週間も連絡がとれないのは長過ぎる)

キョン「……佐々木」
929 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 20:50:24.08 ID:.s2ZINo0
ハルヒ「ちょっとキョン。どうしたのよ。ここんとこ元気ないわね」

キョン「ハルヒか……あぁ、ちょっとな」

ハルヒ「風邪ならちゃんと休みなさいよ?今年の風邪は酷いらしいから」

キョン「ん、分かってる。ありがとな」

ハルヒ「べ、別にあんたの体を思ってる訳じゃなくて、私にうつされたら困るから
    言ってんのよ。勘違いしないで」

キョン「そか」

ハルヒ「う〜〜〜調子狂うわね」
930 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 20:51:16.24 ID:.s2ZINo0
キョン(機関や情報統合思念体なら何か知っているかもな)

キョン「ハルヒ、今日の団活、俺ちょっと休むかも」

ハルヒ「良いわ。今日は活動中止にしようと思ってたし」

キョン「そか」(丁度良い。色々聞いて来よう)

ハルヒ「それより早く直して明日は来るのよ?」

キョン「ああ」
931 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 20:52:36.95 ID:.s2ZINo0
………………
…………
……

キョン「なぁ古泉」

古泉 「おや、どうしましたか?」

キョン「佐々木の事について、ちょっと」

古泉 「ふむ」

キョン「場所変えるか?」

古泉 「構いませんよ。閉鎖空間も発生する事はもうありませんし」

キョン「!!!!!!!どういう事だ?」
932 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 20:53:27.49 ID:.s2ZINo0
古泉 「どう、と言われてもそのままの意味ですが」

キョン「ハルヒの機嫌を左右するような会話は避けるべきなんじゃなかったのか?」

古泉 「???」

キョン「だから!佐々木の話をハルヒが居るかもしれない学校でするのは止めようって、
    お前が言いだしたんじゃないか!」

古泉 「ん?おや?何処かずれてますね」

キョン「だから何が?」
933 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 20:55:52.77 ID:.s2ZINo0
古泉 「まずはあなたが何処まで知っているのか確認する必要がありますね」

古泉 「佐々木団のメンバーと、我々機関、未来人、宇宙人が協定を結んだのは
    ご存知ですか?」

キョン「???」

古泉 「おや、佐々木さんから聞いている物とばかり思っていましたが」

キョン「そうだよ、別にそんな話は後で良いんだ。佐々木は?佐々木はどうしてる?」

古泉 「佐々木さん……ですか」

キョン「ああ」

古泉 「彼女は……お亡くなりになりました。一週間ほど前に」

キョン「なん……だと?」
934 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 20:57:22.85 ID:.s2ZINo0
キョン「嘘だろ?」

古泉 「いいえ」

キョン「嘘だよな」

古泉 「残念ですが」

キョン「嘘だって…言ってくれよ」

古泉 「真実です」
935 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 20:58:16.79 ID:.s2ZINo0
キョン「…どういう事だよ。佐々木が死んだって」

キョン「どういう事だよ!!!!!!!!!」

キョン「一週間前?俺はあいつと一緒に居たんだぞ!!!!」

キョン「あいつはずっと笑ってた!!!!遊園地初めてだからすごくドキドキするって!!!」

キョン「笑ってたんだ!!!!!!なんで死んでんだよ!!!オカシイだろ!!!!」

古泉 「…………」

キョン「嘘だ嘘だ嘘だ。嘘だっ!!!!」
936 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 20:59:13.57 ID:.s2ZINo0
………………
…………
……

キョン「…ふぅ」

古泉 「落ち着きましたか?」

キョン「なんとか……いや、落ち着いては、ないかもな」

古泉 「そうですか。では…どうしますか?」

キョン「聞かせてくれ。俺が聞かなくちゃ、多分駄目だと思う」

古泉 「分かりました。では少々噛み砕いてご説明します。元々は神候補が二人居た所為で
    この様になったのだと、機関は推測しています。……我々は今まで涼宮さんこそが
    この世で唯一の神だと信じて疑っていなかったのですが、佐々木さんの登場によって
    少々認識を改めざるを得なくなってしまって…」

キョン「もう一人の…神候補」
937 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 21:02:53.21 ID:.s2ZINo0
古泉 「はい。しかし最初は別にどうとも思っていませんでした。ふざけた認識だな
    程度にしか思っていませんでした」

古泉 「しかし、ここ最近涼宮さんの力が異常なまでに弱まりだしました」

キョン「そういえば、そんなこと言ってたな」

古泉 「ええ。そして僕達機関のメンバーは思いました。あぁ神の力もここまでか、と」
    ですが、この認識が間違いでした、何と涼宮さんから失われたと思われていた
    力が、そのまま佐々木さんに流れたんです」

キョン「もしかして…」

古泉 「はい。どうやら、彼女たち二人の力は、二人で分散して漸くバランスが取れていた
    らしく、佐々木さんは、全ての力を涼宮さんから受け取り、制御しきれなくなって
    お亡くなりになりました」
938 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 21:04:31.87 ID:.s2ZINo0
キョン「なんだよ……それ」

キョン「なんだよ、それ!!!」

キョン「だったら、佐々木が死ななくても良かったじゃないか!」

キョン「ハルヒと二人!仲良く二人で力を持っていたら死ななくても済んだんじゃねえかよ!」

古泉 「……」

キョン「おい!古泉、俺が言ってるのは間違ってるのか?」

古泉 「……」

キョン「なんとか言えよ!!!古泉!!!!!!」
939 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 21:06:33.52 ID:.s2ZINo0
古泉 「いえ、間違っていません」

キョン「!!!」

古泉 「あなたは間違っていません。……ですがその選択肢は彼女は選べなかったんですよ」

キョン「!?」

古泉 「もし、その選択肢を選んでいたら、あなたが死ぬ事になったからです」

キョン「どういう…事だ?」

古泉 「そのままの、意味です」
940 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 21:09:44.75 ID:.s2ZINo0
古泉 「以前、僕は、いえ、僕たちはあなたに言いましたよね?あなたは”鍵”であると」

キョン「ああ」

古泉 「それは、そのままの意味でもあるんですよ」

古泉 「涼宮さんや佐々木さんが扉だとすると、あなたは鍵なんです」

古泉 「たまたま似たような二つの扉のを鍵穴を一つの鍵で無理矢理開け閉めしていた、ね。
    元来、鍵というのは、ペアとなっている鍵穴を開ける為の物です。それ以外の鍵穴
    には入りません」

キョン「……」

古泉 「しかし、ここで大きな問題が発生しました。非常に良く似た鍵穴を持つ扉が、もう
    一つあったんです」
941 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 21:12:04.13 ID:.s2ZINo0
古泉 「本来ならば、本当ならば、入る筈の無かった鍵は…ここで
    何故か入ってしまった」

キョン「……」

古泉 「もう、お解りでしょう?幾ら鍵穴に入って鍵を開ける事に成功した
    としても、その鍵は本来ペアである鍵では無い」

古泉 「無理を続けるとその内、鍵は壊れてしまいます」

古泉 「いえ、もしかしたら、もう壊れる一歩手前だったのかもしれません」

キョン「佐々木は…俺の為に……」
942 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 21:13:05.11 ID:.s2ZINo0
古泉 「涼宮さんと佐々木さん、あなたが一体どちらの鍵であったのかは、
    僕にも解りません」

古泉 「ただ、佐々木さんはあなたがこの世界から消えないように…」

キョン「……古泉」

古泉 「はい」

キョン「その話、佐々木に関する部分はもう、終わりか?」

古泉 「ええ、まぁ」

キョン「……そっか」

キョン「その話、続きはまた今度で良いか?」

古泉 「あなたが聞きたいと思った時に訪ねて下されば、いつでも」

キョン「そうか、すまん。今日は……もう、帰るよ」

古泉 「分かりました。では」

キョン「あぁ、じゃあな」
943 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 21:14:07.71 ID:.s2ZINo0
キョン(あいつは何時からこの事を知っていたんだろうか?)

キョン(橘は初め、佐々木こそが神になるべきだと息巻いていた)

キョン(だったら、あの頃はまだ誰もこんな結末を)

キョン(それとも、佐々木は既に…もしかしたら分かっていたのかも知れない。
    だからあのタイミングで、あの状況下で…)

キョン「…………分かんねえ。分かんねえよ!佐々木!」


藤原 「ふっくっく。酷い面だな、現地人」


キョン「!!!!!!」
944 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 21:15:11.04 ID:.s2ZINo0
キョン「……藤原」

藤原 「どうやら漸く佐々木の考えを聞いたようだな」

キョン「お前、なんであの時邪魔をした?俺が、俺があいつの側に!!!」

藤原 「もう忘れたのか?言った筈だ。佐々木が望んだ事だと」

キョン「!!!!!」

キョン「…………そうだった、な」

藤原 「ふん」

キョン「それで…一体何の用だよ」
945 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 21:16:14.30 ID:.s2ZINo0
藤原 「なあに。落ち込んでるお前の顔を観察しにやって来ただけだ」

キョン「何だと、てめえ」

藤原 「それと、佐々木の遺書を渡しに来てやったのさ」

キョン「…遺書」

藤原 「ああ、そうさ。これで漸く僕のここでの仕事も終わりだ」

キョン「未来に帰るのか」

藤原 「お前には関係ない事だ。さっさと受け取れ」

キョン「分かってるよ」ガサッ
946 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 21:17:31.38 ID:.s2ZINo0
キョン、君がこの手紙を読んでいる時、君はどんな心境で読んでいるんだろうね?

怒ってる?悲しんでる?苦しんでる?悔んでる?…それとも、責めてる?

もし、僕に怒っているのなら、ゴメン。
もし、悲しんでくれているのなら、ありがとう。

もし、苦しんでいるのなら、ゴメン。
もし、僕の為に悔んでくれているのなら、ありがとう。

もし、自分を責めているのだとしたら、君に責任はないと言っておかなければいけない。
僕は自分の意志で決めたんだ。誰に言われたからでもない。自分でやると、決めたんだ。
だから君が、気にする必要は何処にもない。自分を責める必要なんて、欠片もない。
947 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 21:19:08.66 ID:.s2ZINo0
ただ、君が僕の事を思ってくれているのなら、それで良い。

僕は君に救われた。君という存在に救われた。
君には分からないかもしれないけれど、君の存在は僕を大きく変えたんだ。
君には分からないかもしれないけれど、僕の心は救われた。

ありがとう。ありがとう。ありがとう。

言葉では言い尽くせないほどに。文字に起こしてみても書き表せれない程に。

僕は君に、感謝しています。

だから、死ぬのはちっとも怖くない。消えてしまうのなんてちっとも怖くない。
君がいない世界なんて、僕はいらない。望まない。

でも、君のいる世界に僕がいなかったとしても、君が居てくれるなら。それだけで
僕は満足だ。

少しばかり、寂しい気もするけれど。少しばかり、淋しい気もするけれど。

それでも、僕は君のいる世界が、君が存在してくれてる世界が大好きだ。
948 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 21:20:30.28 ID:.s2ZINo0
だからどうか僕の分まで生きて下さい。
だからどうか僕の分まで幸せになって下さい。

ありきたりのフレーズしか思い浮かばないけれど、私はあなたが大好きです。


追伸

出来れば死ぬ前に一度、遊園地に行ってみたいので勇気を出してキョンを
誘うよ!あっ、これ読んでるって事は、もう誘った後かな?

テンションが変になってるかもしれないけれど、ごめんね?


                         親愛なるキョンへ
949 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 21:21:22.60 ID:.s2ZINo0
キョン「……佐々木」

藤原 「中身は僕も知らないが、大方の予想は付く」

キョン「藤原」

藤原 「佐々木は…あいつは、お前と遊園地で遊んで帰った後、ずっと笑顔
    だったからな」

キョン「佐々木は、喜んでくれてたのか?」

藤原 「ああ」

キョン「最後、ムードぶち壊すような、多分、この事を、死ぬ事を思い出させちまった
    だろう結果になったのに?」

藤原 「死ぬ寸前まで、笑顔だったさ」

キョン「そう、か」
950 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 21:22:16.61 ID:.s2ZINo0
キョン「なあ藤原」

藤原 「なんだ現地人」

キョン「一つ頼みがある」

藤原 「……良いだろう。言ってみろ。内容によっては、引き受けかねるがな」

キョン「ああ…多分。大丈夫だとは思うが、これを    」
951 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/15(日) 21:23:19.18 ID:.s2ZINo0
……
…………
………………

???「もしもし」

佐々木「……もしもし」

???「なぁ、佐々木。俺も楽しかったよ」

佐々木「えっ?」

???「思い出、ありがとう」

佐々木「も、もしもし?」

     ツーツーツー

佐々木「……もしもし」

佐々木「………………ありがとう、か」

佐々木「こっちこそ、ありがとう。……キョン」


         fin
952 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/15(日) 23:07:51.28 ID:snC1xoSO
乙ー。今夜はちょっと余裕無いから、明晩じっくり読ませてもらいま
953 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/11/16(月) 00:35:23.88 ID:xphNZOs0
凄すぎワロスwwwwwwwwww
954 : ◆sdM9TY622s [sage]:2009/11/16(月) 00:36:30.10 ID:xphNZOs0
……誤爆
955 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/23(月) 00:58:02.74 ID:zoodULQ0
 |日  M  目  凸  U  □  △  V  回  |    ようこそ
 |============== ∧_∧ = ============ |     
 |凹 旦  園  T.(´・ω・`)] [_]  四  ▲  .|    その金額は間違いじゃないから落ち着いて聞いて欲しい
 |============= .( >∞< ) = ============|     うん、ヤバイんだ、済まない   
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄~//  命の危険もあるしね、無理に薦めようとも思ってない
___________________/./
___________________|/   でも、この金額を見たとき、きっと君は言葉では
   | ̄ ̄ ̄ ̄|                      |     言い表せない「ときめき」みたいなものを感じてくれたと思う
    ̄ ̄|| ̄ ̄                          
                               じゃあ、紹介をしようか
956 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/23(月) 15:20:41.19 ID:VWlotQDO
あれ?リングとは別の話なのか?

面白かった乙
957 :952 :2009/11/23(月) 16:19:27.68 ID:5tUOPQSO
くあー、読んだあと乙してなかったごめんよ
改めて乙ですじゃ
958 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/28(月) 02:34:30.30 ID:NikQbMDO
続編マダー?
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