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キョン「――――さあ、零崎を始めよう」 - パー速VIP 過去ログ倉庫

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1 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/05/11(月) 02:32:39.25 ID:A/EQiIAO
たてた
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君が望む永遠〜Latest Edition〜 @ 2024/04/24(水) 00:17:25.03 ID:IOyaeVgN0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713885444/

笑えるな 君のせいだ @ 2024/04/23(火) 19:59:42.67 ID:pUs63Qd+0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713869982/

【GANTZ】俺「安価で星人達と戦う」part10 @ 2024/04/23(火) 17:32:44.44 ID:ScfdjHEC0
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713861164/

トーチャーさん「超A級スナイパーが魔王様を狙ってる?」〈ゴルゴ13inひめごう〉 @ 2024/04/23(火) 00:13:09.65 ID:NAWvVgn00
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713798788/

【安価】貴方は女子小学生に転生するようです @ 2024/04/22(月) 21:13:39.04 ID:ghfRO9bho
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713788018/

ハルヒ「綱島アンカー」梓「2号線」【コンマ判定新鉄・関東】 @ 2024/04/22(月) 06:56:06.00 ID:hV886QI5O
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713736565/

【安価】少女だらけのゾンビパニック @ 2024/04/20(土) 20:42:14.43 ID:wSnpVNpyo
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1713613334/

ぶらじる @ 2024/04/19(金) 19:24:04.53 ID:SNmmhSOho
  http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/aa/1713522243/

2 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/05/11(月) 02:35:20.65 ID:fJbyzXco
おつ
3 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/05/11(月) 02:36:43.93 ID:A/EQiIAO
とりあえずパー速に立てたけどおkだよね……?
前々スレ
http://takeshima.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1241631178/
前スレ
http://takeshima.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1241804052/
4 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/05/11(月) 02:37:37.00 ID:fJbyzXco
さて、どうだろうね
人が分裂しなければいいが
5 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/05/11(月) 02:39:17.10 ID:k1liElYo
むこうにここへの誘導貼ればどうかな
6 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/05/11(月) 02:43:07.59 ID:A/EQiIAO
さんねる携帯じゃ書けないから誰か誘導よろです
7 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/05/11(月) 03:04:24.92 ID:A/EQiIAO
誰か知らんが誘導トンクス
ていうか書き手さんはここ気づいてるのか…?
もしかしてもう寝ちゃったのかな……?
8 : ◆7SHIicilOU [sage]:2009/05/11(月) 03:06:08.00 ID:fJbyzXco
いるよ
9 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/05/11(月) 03:08:27.53 ID:A/EQiIAO
あ、いたのね
安心しました
10 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/05/11(月) 03:09:37.72 ID:XBV6lfwo
突如落ちてたから各所を探しちまったぜ
しかし、別にあっちで続けてても問題ないと思うんだけどなぁ
11 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/05/11(月) 03:11:39.74 ID:A/EQiIAO
そういやもう1人の書き手さんは寝ちゃったのかね
まあそのうち気づくか
12 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/05/11(月) 04:37:36.24 ID:RWseisAO
このSS見てアマゾンでクビキリサイクルとロマンチスト注文した
13 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/05/11(月) 07:06:10.10 ID:r5Hksg2o
さんねる携帯でも書けるぜ
14 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/05/11(月) 07:14:04.52 ID:r5Hksg2o
下から見れるみたい
http://same.ula.cc/test/p.so/www.3nell.net/vip/?guid=ON
15 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/05/11(月) 07:23:30.52 ID:sjwGWuU0
こっちに来てたのか
避難所見ておいてよかった
16 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/05/11(月) 07:26:26.78 ID:A/EQiIAO
>>14
おお、わざわざありがとう
17 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/05/11(月) 07:34:56.30 ID:r5Hksg2o
キョン「――――さあ、零崎を始めよう」
http://takeshima.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1241994883/
18 : ◆7SHIicilOU [sage]:2009/05/11(月) 15:01:50.34 ID:fJbyzXco

「っていうか汚いからやめなさい!」

 俺のスニーカーはそんなに古いわけでも安物って訳でもないが、
しかし確実に汚れてるし、結構な間履きこんでいる代物だ、
決して少女が口にしていい物ではない。
しかも見ようによっては美少女。

「だが残念だがな、俺は眼鏡属性はないんだ」
「ふぇ?」
「いや、なんでもない。いいから靴を放せ。この状況は俺にも君にもよろしくない。
 俺のスニーカーは食っても絶対美味くない」

 だが少女は離した瞬間俺が
ダッシュを決め込もうと思ってるのか、中々離してくれやがらない。
―仕方ない。

「パンやるから」
「わーいっ!」

 現金な奴だ、口調や無闇に元気なところとかが妹を想起させる。
あのまんま育ったらこうなってそうだな…、流石に行き倒れはしないだろうが。
19 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/05/11(月) 15:03:49.47 ID:MC22kOI0
ktkr
20 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/05/11(月) 15:08:52.87 ID:/RnwhBgo
VIPでやれよ
立ってるんだから
21 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/05/11(月) 15:12:21.37 ID:fJbyzXco

「?」

 俺の靴に素晴らしく並びの良い歯形を残してくれた少女は、
起き上がる際に不思議な行動を見せた。
うつ伏せに寝転んでいた状態から、膝を内側に折り曲げて
膝立ちになり片足ずつ地に足の裏をつけて立ち上がる。
…なぜ普通に手を使わない?
というか、そういえばマントから腕をだしてる姿を見ていない。

「お前そのマントの下は――」

 ぐぅ、という音に遮られた。
実際には数段音のレベルは高かったのだが、
相手が女の子ということで少しは気を使う俺。

「…とりあえず食え」
「うんっ! お兄さん大好きっ!」
「あんま初対面の人間にそんなこと言うんじゃありません」
「もがもが…」
「包装ごと食うな!」

 俺が差し出したのは市販の菓子パン、惣菜パン、
それをやはり手を出すことなく口で加えて持っていってしまった。
そしてしばらくそれをもごもごとやった後、
「お兄さん空けて欲しいかなっ!」などと言ってきた。
開けてやったらやったで、やはり手は使わずに口で受け取り、
もふもふとそれを食す少女。

「…なんか、嫌な感じするんだよな」

 変態というか変人。
俺が今のところまったく普通人状態のことも合わせて考えると
どうにもこいつはただの頭の弱い少女に見えるのがうそ臭く感じる。
22 : ◆7SHIicilOU [sage]:2009/05/11(月) 15:15:17.95 ID:fJbyzXco
>>20
うぃ
23 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/05/13(水) 10:03:12.40 ID:di8Hyigo
二日落ちか、丸々二日で150ってのはひどい
24 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/05/13(水) 15:29:22.54 ID:vAUEs0MP
25 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/05/13(水) 17:39:14.98 ID:h9xaw.AO
まあ、書き手の都合があるから仕方がない
誰か、3スレ目に張ってあったまとめサイト張って下さい
26 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/05/13(水) 19:18:36.44 ID:qVg5voDO
http://www23.atwiki.jp/zerosakikyon/
27 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/05/13(水) 21:11:52.20 ID:IGRhsrE0
ところでこなたの方はどうするの?
28 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/05/14(木) 02:41:58.51 ID:YMuYF2DO
>>27

PCのOSをプリで入れ直して
規制解除されたらスレたてる
29 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/05/14(木) 05:34:28.44 ID:b1hJihgo
キョン「――――さあ、零崎を始めよう」
http://takeshima.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1242246859/
30 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/05/14(木) 05:37:21.86 ID:ZZu0bcco
>>29

え?
31 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/05/14(木) 05:38:31.47 ID:b1hJihgo
新スレだけど
32 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/05/14(木) 05:39:10.49 ID:oCQXQaEo
>>30
えっ
33 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/05/14(木) 06:35:24.99 ID:Vr5C6ADO
>>31
パー速(ここ)でやれよ!!
先走りするな この早漏が!!
34 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/05/14(木) 06:36:24.61 ID:oCQXQaEo
末尾…Oか…
悪くない
35 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/05/14(木) 06:41:44.65 ID:oCQXQaEo
>>33
マルチポストすんなアホ
36 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/05/14(木) 06:58:28.15 ID:Vr5C6ADO
>>35
独りで保守ってろ!! カスが!!
37 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/05/14(木) 06:58:57.25 ID:oCQXQaEo
えっ
38 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/05/14(木) 07:08:17.75 ID:ZZu0bcco
なんか沸いてるな
39 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/05/14(木) 14:21:30.66 ID:eG6Fgy.0
次スレをVIPで立てるのは作者が書き溜め出来て投下できるようになってからでいいのではなかろうか
40 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/05/14(木) 16:22:05.44 ID:lzZn26Mo
過去ログのところ作ったものだけど、Janeの板にhttp://kaeyou.exout.net/cgi-bin/log/を追加したら、普通に見れる
これからも暇つぶしに適当なSSのログを入れていくつもりだから気が向いたら見てね
41 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/05/16(土) 12:31:53.83 ID:0qlED6AO
今日あたり続きが来ないものか……
42 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/05/19(火) 01:53:36.25 ID:JaT1BsAO
そう言えば3スレ目って書かれた分だけでもまとめなくていいのか?
43 : ◆7SHIicilOU [saga]:2009/05/19(火) 01:57:38.42 ID:xg13k9Qo
ふん、俺が居ようと居まいとなにも変わりはしないさ
44 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/05/19(火) 03:52:39.30 ID:AwUx6kc0
>>42どっか抜けてた

>>43がっさかわるっさ
45 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv :2009/05/23(土) 14:21:38.13 ID:2aMw1gAO
ぬおー続きはないのかー
46 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/05/27(水) 23:55:14.04 ID:r7lLt2AO
続きくるのを待つ勇気
47 : ◆7SHIicilOU [saga]:2009/05/28(木) 02:43:44.30 ID:9b4WJNQo
書かない勇気
48 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/05/28(木) 08:53:26.92 ID:dffpLwSO
書けよカス
49 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/05/28(木) 08:59:53.33 ID:qDmHXnEo
面白かった。
続きが読みたいぞ
50 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [sage]:2009/06/01(月) 10:39:12.60 ID:yaVB0ADO
唯「零崎を始めます」
http://takeshima.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1243774345/
51 :旧サーバーにロールバックしましたFrom vs302.vip2ch.com sv [saga]:2009/06/02(火) 00:12:57.78 ID:xPusePEo
なんと、それは真か
52 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/10(水) 23:43:35.00 ID:QzMTjQco
もう一ヶ月か
53 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/06/16(火) 14:15:58.25 ID:y37XVMDO
hage
54 : ◆tSOF7NFWbk :2009/06/16(火) 15:45:14.74 ID:.35qhtQ0
書き溜めて投下する。

誰も見て無くても投下する。
55 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/16(火) 17:52:44.71 ID:oysOITEo
なぁに、
ネコソギラジカルを1年、
驚愕を2年待った我々に何を怖いものがあろうか
56 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/16(火) 17:55:58.82 ID:HVxTpS6o
待っているぞ
いつまでも
57 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/16(火) 21:26:16.77 ID:2Rsja6AO
>>54
待ってる、いつまでも待ってるぞ。
58 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/23(火) 20:37:43.01 ID:vtc3yQYo
そして1週間が過ぎた
59 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/23(火) 22:18:01.85 ID:9uqntrso
読者達は待ちくたびれ、やがて作品は凍り始める。
60 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/24(水) 02:16:18.90 ID:uV8ycEAO
こないだvipで書いてたやつの事ではないんかね。
狐さんが雛見沢行って……ってやつ。
あれの後編がいつ上がるのか毎日楽しみにしてるんだが(´∀`)
61 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/24(水) 07:57:28.30 ID:tvjev3Mo
>>60
kwsk。こないだっていつの話だ? 前半いーちゃん編、後半狐さん編(どちらも完結)の話じゃなくて?
つかリンク持ってない?
62 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/06/24(水) 09:12:33.31 ID:uV8ycEAO
>>61
なんでも狐さん編を書き直したそうな。
んで後編へ続く、みたいな形で終わった。

リンク?これでいいのかな?
戯言だけどね
http://takeshima.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1245431690/

レス数少ないが、ほとんど書き手が書き込んでるからみっちり読めるよ(´∀`)
63 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/07/02(木) 19:23:55.22 ID:TEJ14YUo
まだか……
64 : ◆tSOF7NFWbk :2009/07/05(日) 00:12:48.76 ID:sKlM88M0
 その後のことをすべて話す必要は無いだろう。彼は生きていて、零崎も無傷で生きている。それだけで十分な筈だ。そして今の彼等は、鴨川を、歩いている。
 彼が殺人鬼となり、殺人鬼と出会い、大切な人を無くした場所へと、戻っているところだった。

「そんで? これからお前、どうするんだ?」

「……これから、ってのは、なんだ……。そして、俺は、何をすれば、いいんだ?」
 何をどうすればいいか、彼はなんとなく理解していた。恐らく”それ”が一番の、最良の選択だと思っている。だが、その回答を自分に求めると、頭の中から黄信号と一緒にかん高いサイレンが鳴り響く。だからこそ、彼は”それ以外”を選ぼうとしていた。
 だから、救いを求めるつもりで、彼は零崎に意見を仰いだ。
 殺人鬼に、助けを請うた。
65 : ◆tSOF7NFWbk [sage]:2009/07/05(日) 00:19:13.80 ID:sKlM88M0

「これからはこれから、だ。まず、あんたが探しに来た友達はもういない。あんたの目的はもう、果たせない。そして、ここは今や、ありとあらゆるモノが集い、常識の通じない世界になっちまった。あんたに出来ることなんざねえよ」

 お前に出来ることは何も無い。
 零崎は、彼にはっきり、そう告げた。

「確かにあんたは零崎に”成った”。だが、あんたは、空っぽなんだよ。」
「……空っぽ?」
「そうだよ。俺達、零崎一賊は呼吸をするように…、いや、”呼吸をする為に[ピーーー]。”だが、あんたはどうしたもんか、”呼吸すら必要ない”、”なにも無くても構わない”、”何も必要としない”。そんな空っぽな、虚無の空間にいるような奴なんだよ。
だからあんたは何も出来ない。殺さない、いや。”殺さなくていい零崎”だなんてのは零崎には有り得ない。異端だよ、あんたは」

「……なら、お前は何故、俺の事を零崎と、そう呼んだんだ。それに……、何も出来ないってのは、なんだ…! このまま、長門を殺した奴を見逃して! 何食わぬ顔で戻れってか!!」

「戻れ? いいや、違うね。あんたの最善の行動は、このまま消えることだろうよ」
66 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/07/05(日) 00:22:14.05 ID:Kjd2y1Io
本人なのか?
67 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/07/05(日) 00:27:32.02 ID:PDDPGQAO
ウヒョー!!待ってた!
ずっと待ってたよ!!
VIPでも戯事スレ立ってるし今日はいい日だなぁ(´∀`)
68 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/07/05(日) 00:55:28.65 ID:0/oZNoAO
パー速だから[ピーーー]が[ピーーー]になってるな
目欄にsagaと入れると普通に打てるよ
69 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [saga]:2009/07/05(日) 00:58:09.72 ID:0/oZNoAO
何をやってるんだ俺は
最初の[ピーーー]は 殺す ね
70 : ◆tSOF7NFWbk [sage]:2009/07/05(日) 01:10:03.29 ID:sKlM88M0
また、皆が忘れた頃に
71 : ◆tSOF7NFWbk [sage]:2009/07/07(火) 10:10:46.79 ID:HFbPzok0
「……なんだと?」

 零崎は続ける。

「あんた、今のまま戻ることが出来るだなんて思ってたのか? 殺人衝動に目覚め、死体とはいえ十の人間を切り刻んでおいて何を言う。あんたを何故、零崎と呼んだかって? 簡単だよ、すげーシンプルな答えだ。”それが零崎だからだよ”」

 零崎は、彼を、彼の目をしっかり見据え、言う。

 自覚させるように。

 正確に、はっきりと。

「さっきも言ったろ? 零崎は突然生まれ、突然殺しだすってな。あんたはもう零崎なんだよ、俺には解る。いや・・・・・・”俺達だから解る”。もう一度言う、あんたは零崎だよ、空っぽだけどな。立派な殺人鬼さ」

「・・・・・・だから、何だよ。それは・・・、空っぽってなんだ。殺さなくてもいいんなら、戻ったっていいだろ!! 消えろってのは一体どういうことなんだ!?」
72 : ◆tSOF7NFWbk [sage]:2009/07/07(火) 10:11:42.35 ID:HFbPzok0
 そんな彼を見て、零崎は呆れたように「やれやれ・・・」と首を振った。

「さっきから質問しかしねーなあんたは、聞かなきゃ何も解らないのかい。それとも、あんたの頭は飾りなのか? ああ、もしかしたらマジで空っぽなのか? だったら・・・・・・」


 切り落としてやろうか。


「っ・・・・・・!!」

 彼の身が強張る。いや、強張るなんて生易しいものではなく。金縛りにあったかのように、動かない。
 今回は身体に何かをされているわけではない。彼はただ、零崎人識に睨まれている。ただそれだけで彼の身体は、動くことを諦めていた。

 単純な、かつ絶対的な、戦力差。

 それを彼は、ただ自分が睨まれているだけで、十二分に感じていた。
73 : ◆tSOF7NFWbk [sage]:2009/07/07(火) 10:13:41.76 ID:HFbPzok0
「あんた、自分がどれだけ危険か、解ってんのか? 殺さない零崎ってのは有り得ない。だがあんたは零崎だ、それは俺が保障しよう。だから、それが危険なんだ。俺が思うにあんたは多分、なんかが足りないんだ。だがもし、その”何か”が
あんたに備わったとき、あんたの中の零崎が覚醒したとき、どうなってしまうかは俺にも解らない」

 零崎はゆっくりと、彼に歩み寄る。
 手には鋭利なサバイバルナイフ。

「どんだけ危険か自覚したか? 消えろってのはそういう意味だよ。抜き身の刀は要らない、刺さればナイフで十分事足りる。だから、あんた――――――」


 ここで消えろ


 彼の目には、自分の胸にまるで最初からあったかのようなサバイバルナイフが写った。
74 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/07/07(火) 13:41:22.78 ID:YUkUvwAO
忘れてなんかないんだからねっ!
また気になるところで終わってるじゃないか(´・ω・)

バスタードもハンターハンターも忍空も待てたから、お前様を待つのも苦じゃないんだぜ。
75 : ◆7SHIicilOU [saga]:2009/07/12(日) 03:04:01.48 ID:i2GsaDgo

 俺が心のそこから欠片も信じてないことを
流石に表情や態度から察せたらしく、
ここで初めて少女はむっとした顔をした。

「む〜、お兄さん信じてないでしょ」
「そりゃそうだろ、君みたいな子が探偵なんて言われても―
「名探偵だねっ!」
「…名探偵だなんて言われても信じるにたる要素がなにもないからな」

 行き倒れてたし。
名探偵ってのは衣食住に困るほど稼げない職業なのだろうか?
まぁ、警察に協力しても賞状しかもらえないよな。金銭を国から渡されるはず無いよな。
切ないなぁ。

「むぅ〜、じゃあ代わりに推理をしちゃいます」
「ほう、見せてもらおう」
「お兄さんはいまお腹が空いてるねっ!」
「そりゃ腹が減ったから食い物を買ったのに、それを目の前で全部食われたからな」
「ほらあたった」
「ほらじゃねえ」

 ダメだこいつ、なんとかしようがない。
76 : ◆7SHIicilOU [saga]:2009/07/12(日) 03:04:52.23 ID:i2GsaDgo

「あっお兄さん!?」
「悪いけど、本格的にこれ以上時間を無為につかえないんだ。
 今夜寝る場所もないもんでな」

 俺は素早く距離をとって少女に別れを告げる。
…あぁ、そういや名前聞きそびれたな。

「ヘイ、そういえば君の名前は?」
「匂宮理澄、いい名前だねっ!」
「自分で言うな馬鹿」

 俺は今度こそと踵を返してその場を立ち去る。




 ……匂宮?

77 : ◆7SHIicilOU [saga]:2009/07/12(日) 03:06:52.25 ID:i2GsaDgo

 変な名前、っていまの俺が言えた事じゃないか。
この時点の俺は、まぁこんな程度しか頭をまわさなかった。
大して気にしなかったし、その名について調べたり聞いたりも行わなかった。
『いまの俺と同じくらい変な名前』そこから導き出されるいままでの違和感の正体など、
少しばかし思考を回してみればすぐにたどり着きそうなものだというのに。

 しかし、いつもならどんな質問にも答えてくれる宇宙人は
すでに俺が殺してしまっていたのだった、悲しいことに。

 変な名前、っていまの俺が言えた事じゃないか。
この時点の俺は、まぁこんな程度しか頭をまわさなかった。
大して気にしなかったし、その名について調べたり聞いたりも行わなかった。
『いまの俺と同じくらい変な名前』そこから導き出されるいままでの違和感の正体など、
少しばかし思考を回してみればすぐにたどり着きそうなものだというのに。

 しかし、いつもならどんな質問にも答えてくれる宇宙人は
すでに俺が殺してしまっていたのだった、悲しいことに。
いや、悲しくはないのだが。
しかし長門も俺がこうなってしまうのを防ぐためにあんな行動をとったと思うと
多少なり想うこともないでもない。観察観測が任務の長門が
それでもイレギュラーの異変を阻止しようとした。
しかも多分その結果をわかってなお行動した。
少し、感慨がわきかけたが。しかし朝倉とその行動の理念が似通ってる気がして、
逆に不快感を覚えた。

78 : ◆7SHIicilOU [saga]:2009/07/12(日) 03:09:02.59 ID:i2GsaDgo

―――

 次の日、公園プラス新聞紙という類い稀なる悪環境で夜を過ごした俺は
起きて早々全身の痛みに意気消沈する。
毎朝これは勘弁願いたい、今度からは多少虫がいても芝生なりなんなりで寝る。
絶対だ。

 空は曇天、新聞紙が軽く湿ってるのでごみ箱にイン。
水道を借りて軽く顔を洗ってベンチに腰掛けて今後の方針を固めようと想う。

「おい、お兄ちゃん」
「……はい?」

 想うのだが、それはもう少しあとに廻そう


―――
79 : ◆7SHIicilOU [saga]:2009/07/12(日) 03:10:09.02 ID:i2GsaDgo
―――

 料亭、といって俺のような一般的な高校生(今現在の俺がこの様な肩書きや一般などという
形容を用意て自身を表すのはどうかと思うが)が浮かべるイメージといえば
精々”広い”とか”日本庭園がる”とか”高い懐石料理がでる”程度の
テンプレートな、ステレオタイプな物しか想像できやしないのだが。
しかしではこの場はどうなのかというと。

「なんだ食わんのか?」
「いえ、こういうの初めてで」
「『こういうの初めてで』。ふん、初めてだろうがなんだろうが
 まさか箸の使い方や飯の食い方まで初めてなわけがないだろうが」
「…いただきます」

 でてきたのは控えめな量の、しかしあからさまに高そうな懐石料理。…味は薄い。
そして襖を開けて外の廊下の向こうには一面に砂利がしいてあり、
獅子威しまでしっかりある日本庭園。そして広い。
俺の中のイメージ像を修正したり、イメージを増やしたりすることなど
何一つも無いテンプレートな日本料亭だった。
まぁ、京都だしな。
80 : ◆7SHIicilOU [saga]:2009/07/12(日) 03:11:55.11 ID:i2GsaDgo

「あの〜…」
「黙って食え」
「…」

 もくもくと、食事を続ける。
話をしにこの場に来たはずなのに。
食事中に会話をしないんじゃあまり効率がいいと思えない、
こういうときは食事の時間を削減するためじゃないのか?
サンドイッチ食おうぜサンドイッチ、
和服には似合わないけど。

「…」

 とか色々思うものの、黙って食事を続ける。
一応奢ってもらってる訳だし、
金がなく非常にぎりぎり綱渡りな数日をこなしていた俺としては
本当にありがたいのだ。味は薄いけど。

 それにこの男。
正直に言えば少し怖い。
怖いというと、やや感情が先行している感じがするが、
なんだろう、虫の知らせみたいな、あざとい感覚。

 態度は理知的、物言いは静かで穏やか、
無駄に貫禄があり、この間の行き倒れさんの知り合いだというこの人。
普通に考えれば初対面というあれやこれやをさっぴいても
こんな感情を抱くほうが間違ってる。
確かに初めて声をかけられたときはその外観の奇抜さに驚いたが。

 そんな表層の隙間から漂うこの怖気はなんだ?
81 : ◆7SHIicilOU [saga]:2009/07/12(日) 03:18:39.60 ID:i2GsaDgo

 寒いわけじゃないのに、
 箸を持ち、口に料理を運ぶ手が微細に震える。

 寒いわけじゃないのに、
 背中に鳥肌が粟立つ。

 酷く嫌な気分だ。
目を瞑り、耳を塞ぎ、声を荒げ、逃げる。
理由もなくそんな選択肢が浮かんで消えた。
しかし、同時に想う。
なぜこんな気分になるのか、
この人はなんなのか、
知りたいと、好奇心と探究心とが渦巻く。
怖いもの見たさ。

 本当にそれが怖いものだったとき、どうするのかは考えずに。
82 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/07/12(日) 09:08:46.47 ID:t5zTL.AO
待ってたぜ
83 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/07/12(日) 09:59:48.32 ID:ucdXXLgo
これが読みたかった。
キョンを組み入れることでどんなオリジナル展開になるのか、楽しみです。
頑張って下さい。
84 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/07/24(金) 08:37:42.68 ID:CznuVZko
保守支援
85 : ◆tSOF7NFWbk [sage]:2009/07/25(土) 01:51:33.04 ID:EszuTEg0
 彼は考える、自分の人生がここで終わる程のものだっただろうかと。
 確かに、彼の人生は平凡だったかもしれない、何かが優秀だったわけではなく。何かが劣り過ぎていたわけでもない。ならば何処で終わろうと結果は同じかもしれない。
 だが殺されて終わりというのはどうだろうか。
 結構酷い。
 というか有り得ない。
 こんな、まるで脇役じゃないか。
 主人公なのに。
 残機は残ってるのか?
 それともまさか……夢オチ?
 本当の自分は何処かで自分なりにいつもの平凡な生活を送っているのだろうか。

「いつまでやってんだ馬鹿」

 と、彼はその声で目を覚ました。
 目の前には、零崎人識。
 彼は地面に倒れ、零崎は彼を見下ろしている。
86 : ◆tSOF7NFWbk [sage]:2009/07/25(土) 01:52:31.03 ID:EszuTEg0

「見下ろすってのは本当に気分いいもんだなー、背のたけー奴はいいもんだ」

「……残機が残ってたのか……」

「ふざけたこと言わずにさっさと目え覚ませよスペランカー、今度は洒落じゃすまねえぜ」

「……」
87 : ◆tSOF7NFWbk [sage]:2009/07/25(土) 01:53:26.94 ID:EszuTEg0
 のそり、と起き上がり、辺りを見回す。

 場所は鴨川……、長門有希の最後の場所。

 そして、零崎人識との始まりの場所。

 身体は……動く。胸には何もない。刺さっていた筈のナイフどころか、血の一滴すらも見当たらない。

「アンタは、ここで死んだ

 零崎は、kれ―――――――――――――――――――。









 ――――――俺に向かって、そう言った。

って事にしてやるよ。いや、まさか気絶するとは―――」
88 : ◆tSOF7NFWbk [sage]:2009/07/25(土) 01:54:35.14 ID:EszuTEg0
 俺に、

 何をした。

「……?」

 零崎は、俺からの何かを感じ取り。後退する。
 ……怒り?
 いや、ただ苛立っている。
 俺はただ、零崎人識に対し、恐怖でも、憎しみでもなく。
 俺を茶化したコイツの振る舞いに、ただ苛ついている。

「―――ハッ……。」

 なるほど、なるほど。

 そう言って零崎は、俺を、さっきと同じ目で、[ピーーー]ように見据える。

 獲物を舐めるように、固めるように、睨みつける。
89 : ◆tSOF7NFWbk [sage]:2009/07/25(土) 01:56:14.01 ID:EszuTEg0
 

 よりによって、この俺を―――。

 その目で―――!

 
 瞬間、俺の身体が、消える。

 アイツの元へ、脳から全身に、最速で駆け抜ける為の信号が走り抜ける。

 狙いは頭部。

 目的は破壊。

 その為に十二分の力を込め、信号の通り、最速の右拳を振るう―――。

「っ―――うおっ!」

 その拳を零崎は、身体を捻るだけで回避する、そして離れ際に何本かのナイフを俺の足元に飛ばす。その牽制は有効で、俺の追撃を完全に封じた。

 ただ、この身体から流れ出す、このおぞましい”何か”は止まらない。
90 : ◆tSOF7NFWbk [sage]:2009/07/25(土) 01:58:03.54 ID:EszuTEg0

 冷たく、鋭く、ただ速く。

 俺の全身を包み込む。

 今なら俺は、全てを殺せる。

 そんな錯覚に身体が覆われる。

 目の前には零崎人識。

「まさか……、これで覚醒したのかよ。擬似的な死を乗り越えてパワーアップってか、何処の金髪戦士だよ……つっても、聞こえちゃいねえか」

 目の前の者を[ピーーー]ために、足は前に進みだす。

「とんだ誤算だが……、ま、殺しゃあしねーよ。取り合えずもういっぺん眠っとけ」


 家族を守るのは、当然だから 
91 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/07/25(土) 09:11:30.78 ID:KzI2ZAYo
92 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/08/01(土) 00:43:42.44 ID:cI2.TVU0
乙です
93 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/08/05(水) 23:31:28.52 ID:p9NC/kSO
乙です! 楽しみです
94 : ◆tSOF7NFWbk [sage]:2009/08/20(木) 00:10:26.97 ID:qNrK.f60
――――。

俺は今、多分気絶している。

死んではいない。何となくわかる。それくらいには、冷静で、思考出来る程度に、平静。多分そろそろ目が覚める辺りではないだろうか

……。

そもそも。

俺は、何を思って此処に居るのだろうか。

長門がホテルから居なくなったとき、俺は何も考えることなく、長門の捜索を決意した。

ここから既に何かがおかしい。

自分で言うのも何だが、俺も少しは考える頭を持っている。筈だ。それが今回、この行動……。

この、異変と殺戮が入り混じった地で、長門が居なくなった。長門有希というこちらの最高のカードを失っていた時点で、取るべき手段は待機と決まっている。冷静に状況を把握し、今ある手札を最大限使いこなし、現状を確保すべきだった筈だ。

そう、こちらから向こう側に攻め入るというのなら、俺達は長門有希に頼る他無い。
95 : ◆tSOF7NFWbk [sage]:2009/08/20(木) 00:12:11.23 ID:qNrK.f60

古泉一樹という超能力者でもなく。

朝比奈みくるという未来人でもなく。

勿論、俺と言う平々凡々な一般人でもない。

こちらの攻めは、長門無しでは成り立たない。

息を殺して時間の経過を待つしかないのだ。ハルヒに一切の情報を漏らすことなく。事が静まるのを待つべきだった。

……ハルヒ……、涼宮ハルヒ。

長門有希が最高のカードなのだとしたら、涼宮ハルヒは、いわば最強のカード。

いや、そんなものではない。あのハルヒが、あのSOS団、団長様が、その程度、最強の”カード”扱いで済むわけがないのだ。
96 : ◆tSOF7NFWbk [sage]:2009/08/20(木) 00:15:02.43 ID:qNrK.f60
全てをひっくり返し。

全てをかき回し。

どんな状況をも創り変える。

または……、破壊する。

完膚なきに。

粉微塵に。

世界を消滅させる。

絶対に、ハルヒだけは、動かしてはいけない。動かせない、使えない……いや、遣えない。

遣う事の出来ない最強では、何の意味も無いのだ。

涼宮ハルヒを動かすと言うことは、世界をひっくり返すか、それ以上の異変を世界に与えて……――


『最初は


小さな異変だったそうだ。』
97 : ◆tSOF7NFWbk [sage]:2009/08/20(木) 00:15:59.18 ID:qNrK.f60


……え?


『だが、時間が経つごとに……、いや、そいつが近づいてくるごとに、と言った方がいいだろうな。』


おい……。待て、まてまてまて。


『とにかく、そいつが近づいて来るごとに、異変は大きくなっていった。』


零崎から聞いた。裏の世界での異常な……、異変……。


『何があったか詳しくは知らないが、この地のありとあらゆる所がひっくり返ったみたいだぜ。』


まさか……俺達が訪れると同時に、なのか……この異変は。

そして、零崎は、その先に、なんと言った。


『そしてそれは、俺達の「暴力の世界」にも影響した』


……だから……。


『まあ、そんな、俺達をここまで、表の世界まで引っ張りだした馬鹿野朗を――――



     ――――放っとくわけにはいかないからな――――。』
98 : ◆tSOF7NFWbk [sage]:2009/08/20(木) 00:17:14.73 ID:qNrK.f60



だから……、つまり……。



あいつが追っているのは―――。



あいつの言っていた。”裏の世界”の住人が探しているという奴は―――まさか。



―――、涼宮ハルヒ……?


99 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/08/20(木) 07:20:17.08 ID:Qy41H/.o
急展開
100 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/12(土) 02:42:22.16 ID:qYHTYkAO
コネ━━━('A`)━━━!!!!!
101 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/09/14(月) 08:51:36.00 ID:PwY3ciY0
そうきたか
102 : ◆tSOF7NFWbk [sage]:2009/09/21(月) 13:55:55.16 ID:XxV1Y7E0
 もし―――。

 零崎の標的が、涼宮ハルヒなのだとしたら、俺はこれ以上、こいつに関わるべきじゃない。

 目を開けて、すぐに立ち上がり、こいつと別れよう。

 思い立ち、すぐさま目を開き、立ち上がる―――。


「え……?」


 立ち上がると、そこは戦場跡のような風景が広がっていた。


「なんだ……こりゃ」


 零崎は……、いない。ここにいるのは俺だけだ。他には誰も―――、何も無い。

 無事なものは何も無い。

 外灯はへし折れ。

 電柱はひび割れ。

 地面は抉れ―――。

 何かが戦った後が、そこにはあった。
103 : ◆tSOF7NFWbk [sage]:2009/09/21(月) 13:56:52.29 ID:XxV1Y7E0
 そして、俺の身体も、無事と言えるような状態ではなかった。

 全身に、鋭い痛み。

 身体中が、血塗れだった。

 全身のあらゆるところが切り裂かれている。

 血、自体はもう止まっている。また、痛む箇所と服に付いた血の量からして、どうやら全部俺の血らしい。

 状況はそんなところ。

 何があったのか、理解出来ない。
 
 零崎に刺されてから以降が全く思い出せない。

 何故俺は血塗れで、何故零崎が居ないのか、そしてこの光景は一体、何なのか。全く理解出来ない。
104 : ◆tSOF7NFWbk [sage]:2009/09/21(月) 13:57:48.72 ID:XxV1Y7E0

「…………。」

 とにかく。

 冷静に、落ち着いて、状況を、整理する。

 思い切り、深呼吸。

 ありったけの空気を吸って、身体の隅々に叩き込む。

 そして、思考。

 この光景は、誰かが戦った跡だろう。

 恐らく、零崎……と、何処かの誰かが戦ったのだ。

 死体は無い、零崎も、零崎と戦った誰かも、此処にはいない。場所を移動したのか、それともどちらかがどちらかを連れ去ったのか。

 とにかく、そんな、解りもしないことを考えても無駄だ。今は、俺はどうするのかが大事なんだ。他の事は後回しにする他ない。
105 : ◆tSOF7NFWbk [sage]:2009/09/21(月) 14:02:19.89 ID:XxV1Y7E0
 ……戻ろう。そう、戻らなければ。

 ホテルに戻って、ハルヒを、守らなければ。

 零崎は、このまま消えろと言ったけれど。

 お前には何も出来ないと言われたけれど。

 空っぽになったらしい、俺の心は。

 何も無いはずの、この心は。


 殺人衝動よりも、誰かを守りたいと思う気持ちの方が、ほんの少しだけ上回っているらしかった。
106 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/09/21(月) 16:23:00.18 ID:sEH0Wr2o
107 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/10/21(水) 02:52:02.56 ID:HllDjkAO
前回から1ヶ月経ってしまったぜ……
あえてageてみる
108 : ◆tSOF7NFWbk [今回これだけ、スマヌ]:2009/10/23(金) 04:15:02.44 ID:KYTe0mQ0
これから起こることが予め解っているならば。

(深夜のホテル前)

未来はどれだけ簡単なことだろう。

(誰も居ない、静寂)

どんな危険にも対応し、回避できる。

(ホテルの入り口にある、水溜り)

数ある運命の中から、最良の選択をすることができる。

(赤い、水溜り)

過去を、やり直す

(地面に叩き付けた水風船が拡散したかのような飛び散り様)

未来を、改変する。

(そして、残骸)

そこにはどんな意図があるのか、解らない。

(そして、首)

あの幼い上級生が、何を考え、どんな過去をもっていたのか、解らない。


―――今となっては、何も―――。(幼い顔立ち、柔らかく、しなやかそうな髪、大きな瞳、それは、確実に……)


「本当に、何がしたかったんですか、朝比奈さん」

話しかけても、俺の声は彼女に届かない。

肺から脳への酸素供給を遮断され、心臓というポンプから全身に渡る筈の血は既に体外に飛散している状態で、届く訳もない。


何はともあれ確実に、未来人、朝比奈みくるは死んでいた。
109 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/10/23(金) 18:18:08.49 ID:/zp1fFko
なん…だと…?
110 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/10/23(金) 21:47:33.74 ID:6Aa6XMAO
なぜ殺たし
111 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/11/23(月) 01:59:49.21 ID:2RIsSYAO
期待あげ

楽しみしてる
112 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2009/12/05(土) 07:28:19.58 ID:GTjiksAO
僕は待ってるよ
113 : ◆tSOF7NFWbk :2009/12/18(金) 06:13:47.65 ID:O7gZFMM0


 「……。」

不思議と……、涙は無い。

ただ漠然と、自分の足元の肉塊を眺める。

朝比奈みくるであったモノを、見下ろす。

 「……。」

潰れたようになってる所を見るに、上から降ってきたのだろう。真上に視線を向けると、ホテルの、何階か、とにかく、上から数えた方が早いであろう階、そこの窓が開いている。

恐らく、あそこからここまで、身体は落ちてきたのだろう。

首は、後からのようだ、傷一つない。後から誰かが、ここまで添えに来たのだろう。

……理解は、した。

 「……なるほど?」

何の為にこんなことをしたか、なんてことは言いはしない。

ようするに、誘っているのだ。

誰でも、というわけでもなく、何処かの誰かでもなく。

オレを、誘っている。

ピンポイントに、オレのみを、誘っているのだ。

そうでもなければ、此処にある肉塊は、誰でもいい、誰だっていい筈なのだ。

オレ以外を誘うのであれば


ここにある肉塊は、朝比奈みくるである必要なんて、存在しないのだから


偶然でも何でもない、想像でも推理でも何でもなく、ただの確信でしかない。
114 : ◆tSOF7NFWbk :2009/12/18(金) 06:15:38.89 ID:O7gZFMM0

 「やれやれ……」

それはオレに、確かに伝わった。

後はオレが、それに応えよう。


 「そんなに死にたいのなら、殺してやるよ」


こうしてオレは落ちていく

ハルヒの姿は何処にもない。

そんなモノは、朝比奈みくるによって消え去った。

長門有希によって、揺らいでいた、あの団長様の姿は

もう、見えなくなっていた。

そして、涼宮ハルヒによって繋ぎとめられていた。オレの殺人衝動を、オレの零崎を、封じていた鎖は。

完全に弾け飛んだ。

 「……それでは」

足元の肉塊を、越える。

踏み越えて、ホテルの入り口へ。

 「さようなら、朝比奈さん」

あなたのことは、よく解らなかったけれど。

あなたのことは、好きだったのかも知れないけれど。

もうすべてお仕舞いですね。

残念でした。


そして

零崎を、始めます。
115 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/12/19(土) 00:53:40.92 ID:yEX9VsAO
いつも続きが気になるところで終わるから困る
116 :A HAPPY NEW YEAR 2 0 1 0 ! :2010/01/03(日) 04:23:04.53 ID:EprO7cYo
続きがきたいー

あげ
117 :戯言信者 :2010/01/07(木) 12:46:25.98 ID:J0oAids0
上げます。
118 : ◆tSOF7NFWbk :2010/01/07(木) 14:45:28.40 ID:U8bljQk0

――――

―――

――

「なあ、長門、ちょっといいか」

 放課後の文芸部・・・・・・もとい、SOS団部室で、俺はいつもの席で、いつもの様に読書をする長門に声を掛けた。

 正直返事が返ってくるかどうか解らなかったし、さして返事に期待していた訳でもない。所詮はただの暇つぶしだったのだから。

 ちなみに今、ハルヒや朝比奈さんや古泉は、少し前に帰宅している。よって、この部室には俺と長門の二人だけな訳だ。

 別に、気まずい空気が流れている訳ではない。長門がまるで置物の様に喋らないのはいつものことであり、それに俺がいつも話しかけるわけでもない。

 ようは本当にただの暇つぶしだ。だから、これからの会話は、何の意味もない、高校生という立場の、年相応の、無駄話でしかないのだ。

 少なくとも、この時は、確かにそうだった筈だ。

「何」

 長門は、長門有希は、本から視線を話さず、俺の声に応えてくれた。

「何でお前は、本を呼んでるんだ?」

 長門は、本から目を外し、その目を俺に向ける。

 無機質で、深く、黒い瞳が、俺に向けられる。
119 : ◆tSOF7NFWbk :2010/01/07(木) 14:46:26.45 ID:U8bljQk0

 威嚇するわけでもなく、警戒するわけでも、ただ、そのままの意味で、俺を見る。

 そして、いつもの簡潔な答え。

「文芸部という、所属した部の活動として、読んでいる」

 長門の視線は、また、本に戻る。

「・・・・・・じゃあ、お前が読みたくて読んでいるわけじゃないのか」

「そういうことではない」 

 今度は本から目を離さない。

「読書という行動は、私という存在を定義するための一部となっている。よって、読書は不要ではなく、必要な行動としている」

 ページを黙々とめくりながら、淡々と話し出す。

「ふん・・・・・・? なら、お前は、読書という行動が大事なのであって、例えば今、お前の読んでいる、その馬鹿みたいに分厚い本の内容は何だっていいって、そういうことなのか」

 また一ページ、めくる音。

「それは、少し違う」
120 : ◆tSOF7NFWbk :2010/01/07(木) 14:47:18.66 ID:U8bljQk0

「・・・・・・少し?」

「少し」

 栞を本に挟み、その本を閉じた長門は、自分の座っていた席を立ち、本棚に本を置いて、俺の前にあるパイプ椅子に座り、俺と向き合う形をとった。

「私は書物という媒体を通して、情報思念体という存在に、概念を与えようとしている可能性がある」

「可能性がある?」

 長門は首を左に数ミリほど傾ける。もしかすると、悩んでいるのかも知れない。

「不明、よって、推測。ただ・・・・・・」

「ただ?」


「私は、何かを求めている」


「・・・・・・」

「それだけは、確かなこと」

 そう言って、長門は立ち上がり、部室を後にした

 こうして話は、ここで終わる。

 長門有希が何を求めて、何故本を読むのか、自分でもよく解らないと、あいつは言った。

 だが、もしかすると、あいつは自身で解っていたのだと思う。

 あいつは多分――――。

 ―――

 ――
121 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/01/22(金) 19:14:46.94 ID:/WG2AYAO
毎回おつかれさまです
あげ
122 :パー速のローカルルールが変わりました :2010/02/04(木) 08:20:00.14 ID:aqMn.gAO
期待期待
今から受験アゲ
123 :lain. [sage]:2010/02/15(月) 22:21:04.59 ID:???
パー速のローカルルールが変更され、
SS、やる夫系スレはニュー速VIP避難所(クリエイター)【http://ex14.vip2ch.com/news4gep/】へ移行することになりました。
(次スレを立てられるようであれば)移動はこのスレが埋まってからで構いませんので、
上記の件を把握されましたらご返答お願いします。
124 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/02/16(火) 00:26:20.98 ID:cOJoPA.o
スレが埋まるどころか次の書き込みがあるのかさえあやしいものだ
125 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/03/15(月) 00:42:02.09 ID:oxnyvZwo
雛見沢スレついに落ちたか・・・
126 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/22(月) 18:05:03.35 ID:CsU8lIDO
かはは
127 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/23(火) 06:46:33.35 ID:HXHBiFE0
SOS団について考えてみようと思う。
世界を大いに盛り上げる涼宮ハルヒの団。
宇宙人未来人超能力者を探し出し、一緒に遊ぶことを目的とした集まり。
そして、涼宮ハルヒによって集められた、三人の異能者たち。
長門有希、――宇宙人。人間を知らない宇宙人。
朝比奈みくる、――未来人。未来を知らない未来人。
古泉一樹、――超能力者。平和を知らない超能力者。

無作為に、無秩序に、無遠慮に。
それらを集めて見せた、涼宮ハルヒ、
――他称『神様』。
彼女を中心として、不可思議は拡散していく。
俺たちは収縮させるため、意識し、意見し、意図的に意思を表すことで、意味を見出してきた。
それでも一つだけ、分からないことがある。
意識し、意見し、意図的に意思を表してさえ、意味を見出せない。納得ができない。

なぜ、俺なのか。

彼女は言った。俺は『鍵』なのだと。
彼女は言った。俺は『重要な存在』なのだと。
彼は言った。俺は『一番の謎』なのだと。
俺には、理解できない。
平淡で、平均で、平凡な俺が。あの集団の中にいてもいいのだろうか。いいわけがない。
劣等感。有事に際し何もできない自分。見ているだけの自分。唯の無能者。
居ても居なくてもかまわない。どちらでも同じ、そんな存在。
そして、俺は『兄』と出遭い――、
『俺』を見つけた。


このお話は空想です。宇宙人、未来人、超能力者の出番はなく、
実在しないはずの人物しか出て来ません。
得るものは皆無、失い尽くす物語。
それでもいい、と仰るのなら、

唯の零崎のはじまり、はじまり――。
128 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/03/27(土) 02:19:14.92 ID:RKfv1kwo
続き・・・待ってるんだぜ?
129 : ◆GrEv49dPaw :2010/03/27(土) 22:34:04.14 ID:uqxg3Gk0
テスト
130 : ◆GrEv49dPaw :2010/03/27(土) 22:35:27.85 ID:uqxg3Gk0
>>127を書いたものです
続きを投稿します
131 : ◆GrEv49dPaw :2010/03/27(土) 22:36:51.88 ID:uqxg3Gk0

      0

超能力だって?
いったい何を超えたつもりだ?

      1

そいつから会いたいという旨のメールが来たのは、昨日のことだった。
金曜日。一週間のうち、登校する必要のある最後の一日。なんておおげさに形容したが実際のところ土
曜日の前の日、程度の認識でしかない。普段なら、去年からSOS団が不法占拠している文芸部室に赴
き、可愛らしい先輩がその美しい御手をもって淹れてくださった御茶を飲みながら、無口な文学少女を
視界に入れて、ニヤケ面した同学年の男子生徒とボードゲームに興じつつ、倣岸不遜な団長様の登場を
待っている時間帯だ。
しかし、今日に限ってはその必要はなく。
北高の校門前で友人と談笑した後、俺は一人で帰宅の途に就いていた。
そんな折に届いたメール。差出人は、佐々木。
用件は短く、『明日会いたい 駅前の喫茶店で』とだけ書かれていた。
翌日にぽっかり空いた暇を持て余していた俺はすぐに了承の返事を送った。
丁度、こいつに聴きたい事柄も出来たしな。

そして次の日。わざわざ宣言するほどではないが、土曜日だ。
時間を指定していなかったが、確信があった。
朝九時。間違いない。どこぞのエスパー少年の言葉を借りるなら「分かってしまう」のだ。
そしていつも不思議探索を開始する前の溜まり場として利用している喫茶店に入ると。
果たして、中学時代には窺い知れなかったシニカルな微笑を浮かべた、佐々木がいた。
132 : ◆GrEv49dPaw :2010/03/27(土) 22:37:31.08 ID:uqxg3Gk0

      2

「やあ、キョン。久しいね」
俺が席に座り、店員がお冷とお絞りを置き、再度テーブルに訪れ注文を聞き。
そして店員が去って初めて、佐々木は口を開いた。
「君に会うのは春の一件以来かな。本当はもう少し早く誘うつもりだったんだよ。一年ぶりに親友と再
会したんだ、旧交を温めたいと常々思っていた。しかし、生憎と多忙でね。今日も何とか時間を切り詰
めて、削り出して、ようやく実現させたんだ」
そこまで言い切ると佐々木は目の前のコーヒーカップを持ち上げ、口をつける。
唇を舐め上げるように、赤い舌が動くのが見えた。
「そこまで思ってもらえて光栄だな」
俺はそれだけ言うと、佐々木を視界から外し窓の外に目を向けた。まったくの茶番だ。
何かを逡巡するような少しの間。視線を固定したまま、俺は手持ち無沙汰にお冷を口に含んだ。
「なんだかそっけないね。もしかして先約でもあったかな? そういえば、今になって聞くのは遅すぎ
るだろうけど、今日はSOS団の皆さんとの不思議探索は無いのかな?」
「ああ」
一言、零すように相槌を打つ。佐々木は何を勘違いしたのか、心持ち柳眉を下げ如何にも心配していま
すとでも言いたげな声音で窺ってくる。
「キョン、気分でも悪いのかい。どうも普段の君とは状態が違うように感じるのだが」
「別に」
まともに受け答えする気になれない。一応の覚悟はしてきたが、これは想定外だ。
気分よりも機嫌が悪くなっていく。
「ふむ、そうだね。気分が悪くなるような話は先に済ませておこうか。キョンに愛想を尽かされないう
ちに僕の用件を済まそう」
そして彼女は聞いてきた。

「どうして涼宮さんを殺したんだい?」



133 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/01(木) 12:22:47.67 ID:GUpOn.DO
wktk
134 : ◆GrEv49dPaw :2010/04/02(金) 22:25:09.03 ID:4rZhtZg0

      0

知りたくない。
知りたくない。
未来なんて、知りたくない。
135 : ◆GrEv49dPaw :2010/04/02(金) 22:26:59.92 ID:4rZhtZg0

      1

「どうして涼宮さんを殺したんだい?」
佐々木は確かにそう言った。
どうして。殺害の動機。理由。何故? 
「……それは、」
それは。何故なら。
「何でなんだろうな」
俺が、零崎だから。
そんなことを言われたところで、佐々木には理解できないだろう。深く聴かれたりしても、俺には説明
できない。俺も未だに理解できていない。当事者だから、感覚で判断しているだけ。「分かってしまう」
だけ。
会話が途切れたのを見計らってか、店員が注文を聞きにきた。コーヒーを注文する。タイミングが良す
ぎた気もする。もしかして、聞かれたか。後で殺しておくことにする。
「キョン」
急に呼びかけられたので、反応してしまう。佐々木の顔が数分ぶりに視界に入る。得体の知れない感情
が口から溢れ出しそうになり、慌ててお冷を口に含む。ぬるい。何だこれはお冷のくせに冷たくないじ
ゃないかこれは詐欺だろうなんてクレームはつけない。ただの戯言だ。
「……キョン」
再び、呼ばれた。
「何だ」
今度は返答しておく。耳に余計な仕事を押し付けて、目は窓の外の観察に余念が無い。
「まじめに答えて欲しい。親友としてのお願いだ」
「……ふむ」
こんな茶番にシリアスを持ち込む気なぞ更々ない。のだが、話が進まないし、俺の聞きたいことも聞き
出せていない。……仕方ないか。
「どうして、ハルヒが死んだことを知っている」
質問に質問で返すのはマナー違反になるだろうが、殺人鬼にそんなもの期待しないでもらいたい。
気分を害した様子もなく、佐々木は教えてくれた。
「九曜さんが、ね。彼女も長門さんと同じ人智を超えた能力を有しているみたいだから。それと、涼宮
さんだけじゃなくて長門さん達も、その、……」
そうだ。朝比奈さんも、古泉も。長門も。
「殺したよ」
長門の場合、殺したと表現するより殺させてくれたと言ったほうがしっくりくるがな。
しかし、そうか。考えてみれば当たり前のことではあるか。むしろ今まで思い至らなかったほうがおか
しい。あの『涼宮ハルヒ』が殺されたのだ。しかも、宇宙的未来的超能力的な肩書きを持ち得ない、唯
の一般人である俺なんかにだ。そりゃ、一大事だよな。他人事にしか思えないが。
しかしそうなると疑問が出てくる。
何故、俺は生きていられるのか。
観察対象を殺した俺に対して三つの勢力、最低でも涼宮ハルヒを『神様』と妄信していた《機関》の連
中が何らかのアプローチを掛けてくるはず。
信仰していた神を殺した『殺神鬼』としてか、神の気まぐれから解放してくれた『救世主』としてか。
まあ、たとえどちらであろうとも。俺にとってソレは結局、
――おなじこと。
佐々木は沈思黙考を始めたようで、テーブルには静寂が漂う。そしてまた絶妙のタイミングで、先程と
同じ店員が注文したコーヒーを運んできた。なんだ、あの店員はもしかしなくてもプロなのか。空気を
読むプロ、エアマスター。なんか発想が中学生みたいだ。
とりあえず、あの店員は後で殺しておくことにする。
136 : ◆GrEv49dPaw :2010/04/02(金) 22:28:08.81 ID:4rZhtZg0

      2

会話相手が意図的に口を閉じているので、することがない。運ばれてきたコーヒーはまだ熱い。仕方な
く俺も考えごとをしていよう。
思い出されるのは、最近のこと。
変革してしまった俺。変質してしまった日常。変容してしまった彼と彼女ら。そして。
『私の弟にならないかい?』
俺に投げ掛けられた『兄』の言葉。
正直、あの人は変態だと思う。容姿はそこまでおかしくはなかった。どこにでもあるような背広を着て、
どこにでもあるようなネクタイを締めて、どこにでもあるような眼鏡を掛けて。
細長い体躯は針金細工を連想させたが、それもおかしいとは思わなかった。
それでも第一印象は、変態だと思った。
身内に対して抱くイメージとしては間違っているだろうが、あの『兄』ならスキンシップの一環とし
て受け取ってくれるだろう。俺はあんな『兄』でも嫌いではない。
俺に『個』を与えてくれた人。居場所を明確化してくれた人。
あの時の安心感、安堵感、安定感は今後の人生でお目に掛かることはありえないだろう。
そう思うほどに俺は救われた。
平淡で平常な俺は掬われ、異端で異常な俺が救われた。
SOS団での活動が楽しくなかった訳ではない。彼女たちと過ごした日々は掛け替えのない大切な過去
だと断言できる。
でも、ソレとコレとでは文字通り、お話が違う。
本当に、傑作だ。
137 : ◆GrEv49dPaw :2010/04/03(土) 22:27:53.74 ID:Gi6IRik0
続きを投稿します
138 : ◆GrEv49dPaw :2010/04/03(土) 22:29:37.63 ID:Gi6IRik0

      0

死ぬのっていや?
殺されたくない?
139 : ◆GrEv49dPaw :2010/04/03(土) 22:30:15.38 ID:Gi6IRik0

      1

長門有希。
情報統合思念体によって造られた対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェース。
分かりやすく言えば、宇宙人。
そんな突出した肩書きを持つ彼女は、一般人たる俺に殺された。
しかしそれは。俺にとっては少し、特別な意味を持っていた。『兄』に教えてもらった零崎についての
あれこれが心に浮かび上がってくる。《零崎一賊》。理由無く人を[ピーーー]殺人鬼集団。その一員と成った
俺。そして俺に殺された、長門有希。
零崎が理由無く人を[ピーーー]のなら。俺が零崎に成ったのなら。俺に殺された長門は、人、だと言えないだ
ろうか。
そうではないか。そうだと、想う。観察を役割として造られた彼女は。感情をエラーだと認識していた
彼女は、やっぱり一人の人間だったのだ。稚拙で幼稚な考えであることは自覚しているがそれでも、そ
れだけは変わらずにそう想っていたい。想い続けたい。
俺が殺した彼女は、人間でした。

ふむ、それにしても。こうして思い返してみると、俺は長門に対して特別な感情を抱いていたのかもし
れない。変わってしまった今の俺が昔を振り返ると、傲岸不遜で唯我独尊な団長様ではなく、長門有希
とのやり取りのほうが多く思い出されるのだ。
恋愛感情ではない、はず。確信はないがそういうのではない。大体、長門はもう死んでしまっている。
俺は死体愛好者ではないし、そういえば長門の死体はどうなったのだろうか。
素朴な疑問なのだが、実に気になる。殺人事件の被害者として警察に回収されてしまったのか、それと
も生徒会に書記として所属しているあの方に引き取られたのか。
どちらにしろ、長門にはもう逢うことは無い。俺の感情が長門に向かったところで、長門からは何も返
ってこない。死んでしまったのだから。

140 : ◆GrEv49dPaw :2010/04/03(土) 22:31:12.47 ID:Gi6IRik0

      2

ふと、奇妙な出来事を思い出した。
あれは、金曜日。俺が零崎に成って初めての朝。毎朝恒例となっている妹の目覚ましボディプレスを兄
の威厳で寛容に受け入れ、昨日と同じ手順で登校しているときに。そう、出遭った。
《縁が合って》しまった。
異様な威圧感を醸し出す、

――――《狐面》の男に。

141 : ◆GrEv49dPaw :2010/04/03(土) 22:33:32.07 ID:Gi6IRik0

      3

「お前は、奇怪だ」
あんたに言われるほど、おかしいとは思わんがな。
「『おかしいと思わんがな』。ふん、当たり前だ。もし自身のおかしさを自覚しているなら、お前はそ
うも平然としていられないだろうさ」
おいおい、まるで精神病を患っているような言い方をしてくれるな。
「そちらの方がまだ見れたものだろう。投薬を持って治療するか、最悪何処かに閉じ込めてしまえばい
い。だが、お前は、違う。お前は零崎だ。しかも、とびきりおかしいと来ている」
……あんた、零崎を知ってるのか。
「『零崎を知ってるのか』。ふん、知らない奴は識らないが、知っている奴は識っている」
何故知っている?
「それを聴いてどうする? 零崎らしく俺を[ピーーー]か?」
いや、――いや。殺さない。
「それだ」
なんだ、突然。どれだ。
「日本人なんだから前後の会話文から推測してみたらどうだ。国語の成績は赤点か?」
煩いな。違う。
「なら分かるだろう。お前の奇怪が」
……お前を殺さないと言ったことか。
「それだけじゃない。お前、涼宮ハルヒを殺したんだろうが」
何故それを、
「同じことを二回も言わせる気か。くだらん。俺が此処に来た目的が、そいつだ」
あいつが? 目的ってなんだ?
「過程を飛ばし願望を実現させる能力。幼児の遊戯じみた代物だが、俺の役に立つなら使ってやろうと
視に来たが。肝心の涼宮ハルヒは零崎に殺されていて、そいつと《縁が合う》とはな。極め付けに、そ
の零崎が奇怪とくれば、物語に歪を感じざるを得ない。まったく、つまらなくなってきやがった」
おい、聴けよ。
「ああ? なんだ、自身の奇怪な部分を知りたいのか」
……もうそれでいい。俺のおかしさってなんだよ。
「今、此処に存在することだ」
俺は存在レベルでおかしいのか!?
「違う、そういうことじゃない。お前は涼宮ハルヒ、それと朝比奈みくる古泉一樹。さらに長門有希ま
でも殺した」
ああ、そうだな。間違いない。
「それでいて、お前は何故未だに此処に居る?」
142 : ◆GrEv49dPaw :2010/04/03(土) 22:34:01.94 ID:Gi6IRik0
それは――、
「お前は零崎に成った。殺人鬼に成り果てた。そんなお前が、何故、日常に留まる。解っているのだろ
う。識っているのだろう。お前は動けない。止まれない。始められない。終われない」
……、……。
「ふん、沈黙は肯定とみなすぞ。つまりお前は。《零れ堕ちた》」
零れ、堕ちた? どういう意味だ。
「意味などどうだっていい。そんなもの、在っても無くても同じことだ。ただお前は演目から弾かれ、
照明も当たらず、舞台に立ち尽くすだけ。役割の無い役者。物語に取り残された主人公だ」
なんだ、それは。意味が――分からない。どうして。
「『どうして』。ふん、それこそまさしく《因果応報》だろう。涼宮ハルヒを殺したのは、誰でもない
お前なのだから」
俺が、あいつを殺したから。だから、俺は《零れ堕ちた》?
「どちらにせよ、結果は変わらない。起こるべきことは起こるし、それを避けることは出来ない。お前
が涼宮ハルヒを殺さずとも、零崎に成らずとも、お前は物語から《零れ堕ちる》」
――そうか。
「それだけか? 主人公らしく運命への対抗心を剥き出しにしないのか。俺の娘が好みそうな熱い展開
を持ってこないのか」
あんたに娘がいたことに突っ込みを入れたいが自重しておこう。とにかく、俺はあんたが言うような主
人公じゃない。それに、仮定の話にも興味が無い。俺は零崎に成ったし、そのおかげで居場所を見つけ
ることが出来た。不満なんてないし対抗心なんて論外だ。
「つまらん奴だ。まあいいだろう。お前は俺と出遭った。このまま動かないまま、止まったまま、始ま
らず、終わらないなんてことは無いだろう」
どうしてそんなことが言える。
「決まっている。俺が人類最悪だからだ」

143 : ◆GrEv49dPaw :2010/04/03(土) 22:35:21.64 ID:Gi6IRik0

      4

結局、あの人類最悪は何が言いたくて、何をしたかったのだろうか。
時間を置いて考えてみても、まったく意味が分からない。
ただ、解っている。識っている。
認めよう。俺は《零れ堕ちた》のだと。
俺を主人公とした物語は止まってしまった。幕も下ろせず、照明も点かない。
故に、俺は動けない。触れず、離せず、進めず、退けず。
なればこそ、俺は、零崎に成ろう。
零崎として、人類最悪の舞台を演じよう。
故に、俺は流される。触れず、離さず、進まず、退かず。
今までも、これからも。
根本的に、根源の、根幹として。
流され、押され、転がされ続ける俺の名は。

『零崎曳識』

人に曳かれる殺人鬼。

144 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/04/06(火) 14:42:54.20 ID:7B4p3C6o
おもしれぇ
145 : ◆GrEv49dPaw :2010/04/09(金) 21:30:07.59 ID:jR/ULNI0
続きを投稿します
146 : ◆GrEv49dPaw :2010/04/09(金) 21:31:22.02 ID:jR/ULNI0

      0

私は、ここにいる。

147 : ◆GrEv49dPaw :2010/04/09(金) 21:34:14.79 ID:jR/ULNI0

      1

何かおかしい。
違和感を拭うことが出来ない。
なんだ、何がおかしい。
思考を掻き乱す未視感に困惑していると、久方ぶりに佐々木が口を開いた。
「そうか、分かったよ。いや、まったくは解らないが、それでも多少は君のことを把握できた」
そう言うと、カップを持ち上げる。それを見て、俺もコーヒーを注文していたことを思い出した。すで
に冷め切っているコーヒーを口に運ぶ。黒い液体が苦味を伴って喉を通り抜けた。
「そういえば」
「うん? なんだい?」
これを佐々木に聞くのは分不相応、不謹慎極まりないのだろうが。
「あー、今ってどうなってるんだ?」
適当な言葉が見つからず、適当な問い掛けになってしまった。
しかしそこは聡明な佐々木のこと。意味を汲み取って俺の聞きたい内容を、明確化してくれた。
「今、とは。宇宙人や未来人や超能力者の動向のこと。で、合ってるかな」
「ああ、それだ」
148 : ◆GrEv49dPaw :2010/04/09(金) 21:34:44.68 ID:jR/ULNI0
お恥ずかしい限りだが、本当に今更になる。
涼宮ハルヒを殺したとき。朝比奈みくるを殺したとき。古泉一樹を殺したとき。
長門有希を、殺させてもらったとき。
俺は何も考えてなかった。
世界の改変も、未来の改悟も、機関の介入も、朝倉の介在も。
その後どうなるかなんて、考えてなくて。
ただ状況に流されて。
ただ状態に曳かれて。
ただ零崎に寄った。
徹頭徹尾、他人事。まったく情けない限りである。
「ふむ、僕も正確に状況を把握している訳ではないのだが」
そう前置きをして、佐々木は教えてくれた。
「端的に言って、混沌の様相を呈しているね」
「混沌か」
「そう、まさしく混沌だね。天蓋領域は情報統合思念体を。未来人や超能力者の各組織は、ここぞとば
かりに敵対組織を。灰すら残さず、塵すら余さず。互いに互いを叩き潰そうとしているね」
まさか裏ではそんなことが起こっていたのか。ここは法治国家日本なのでまったく信じられない、三日
ほど前の俺だったら。
「今は自分たちのことで手一杯。だから君に出す手がない。妙な力が働いてるのでは、と勘繰ってしま
うほど、拮抗しているのだよ」
思い通りにならない。なるように、ならない。
それは――、それは。
あの《狐面の男》を思い起こさせる。
思い過ごし、なのだろう。まさかあの変人にそこまで、…………ないよな。
「ただ、何時までもこのままな筈が無い。一体、君はこれからどうする気なんだい?」
これから。これから、か。
どうしようもないだろう。俺は動けないから。
流されないと、曳かれないと、ここから動けない。
だから、
「なあ、俺の質問に答えてくれないか?」
「……何かな? 答えられる質問であれば何だって答えるよ」
「そうか、じゃあ訊くけど」
だから、これから、俺がしなくてはいけないのは、
「お前、誰だよ」
幕を下ろすこと。
物語を、[ピーーー]こと。

149 : ◆GrEv49dPaw :2010/04/09(金) 21:35:50.07 ID:jR/ULNI0

      2

「……何だって?」
目の前の『佐々木の振りをした誰か』が不可解だ、とでも言いたげな表情を作る。
「聞こえなかったか? 本物の佐々木は聴覚に異常無いんだがな。まあいい、もう一度訊くぞ」
一拍置いて、
「お前は誰だ」
それは質問ではなく詰問。
確定で、確実で、確信でしかない。今までの遣り取りを戯言に貶める愚問。
それでも。問いかけなくては終われない。
下ろせない、殺せない。
まだ俺の物語は終わってないから。
動けなくても蠢ける。手詰まりでも足掻いてみせる。
零崎らしく、殺してみせる。
「……、……」
『佐々木の振りをした誰か』は、
「ふふ、ふふふ――。ふ、ふふ」
哂った。シニカルに、恣意に、軽く。
誰でもない微笑を浮かべた。
「さすがだね。否、当然なのかな」
雰囲気が変わった。佐々木じゃない別の誰か、《誰でもない誰か》に戻った。
その《誰かさん》を見据える。彼女はにやにやと楽しそうに哂っている。
「どうして分かったんだい? 成り代わりは完璧で完全だと自負していたんだけどね」
完璧でも、完全でも、分かった。解っていた。
特別なスキルなど必要ない。
単純明快にして、簡単明瞭。
「どうしてだって? そんなの、」
そんなの、決まっている。

「佐々木は俺が殺したからだ」

150 : ◆GrEv49dPaw :2010/04/09(金) 21:37:27.62 ID:jR/ULNI0

      3

――佐々木を殺した。
昨日、金曜日のこと。佐々木は、俺の友人は北高の校門の傍で待ち伏せしていた。そこで涼宮ハルヒや
零崎や俺について談笑(俺視点で)して、その後に殺した。
だからこそ、俺は五体満足で生きている。
二人の他称『神様』を殺したから宇宙人は地球を見放し、未来人は過去から消え去り、超能力者は自己
を正当化するため聖戦を続けている。
俺にちょっかい掛けてる暇なんて在る筈が無い。
《誰かさん》は俺の答えを聴いて、満足したかのように頷いた。
「やはり、君か。まったく散々だよ。まさかここまで思い通りにならないとはね。さっさと本来の道筋
に戻ったほうが良さそうだ。寄り道をすると碌なことが無いな」
「本来の道筋だと?」
俺が彼女の呼び出しに応じたのは、探る為だ。
佐々木の振りをして何をしようしているのか。俺のことをどこまで知っているのか。そもそも、一体全
体こいつは誰なのか。
それを知るという大いなる目的があったからこそ、俺はこの喫茶店まで赴いたのである。
……単に流されただけ、とも言える。
まあ、結果オーライ。だっぜ。
「なんだよ、本来の道筋って」
「ああ、心配せずとも、少年にはまったく関係ない。と、言いたいところだが、万が一を考慮して一応
尋ねさせて貰おう。少年は《園山赤音》という名の学者を知っているか?」
寡聞にして知らない。そもそも学者の名前なんて詳しく知るはずが無い。一般的な(接頭語として《元》
と付くが)高校生ならそこまで異常なことではないだろう。
「ふむ、その顔を見るに知らないな。ならいい、か。なに、目的といってもそう大したことじゃないよ。
ただいつも通り、《園山赤音》に成り代わるだけだよ」
151 : ◆GrEv49dPaw :2010/04/09(金) 21:37:59.11 ID:jR/ULNI0
「はあ、」
いつも通りって、この人も変質者か。最近おかしな人と知り合いになることが多いな。これが零崎に成
ったからだとしたら、少し後悔の念に囚われてしまう。だーあーあー。
だけど、後悔に意味は無く、零崎に意図は無い。
起こってしまったのだから、もうどうしようもないよな。
気を取り直して、対話を続けよう。
「あー。そんな目的があるなら、なんでこんな所まで来たんだ?」
《園山赤音》なる学者に成り代わろうとしているのなら、この町に滞在しているのは明らかに間違いで
しかない。それに、この人はさっき寄り道と言った。
この《誰でもない誰か》が、本来の道筋を辿らず、寄り道をするに至った理由。
それは、
「なんでだって? それを尋ねている時点で、君には到底理解できないだろう。私と君はまったく違う
他人なのだからね――」
「…………」
《誰かさん》はせせら笑いながら、こう続けた。
「――二人の『神様』を、ちょっと喰べてやろうとしただけだよ」
152 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/04/11(日) 22:50:09.39 ID:1E550bko
人喰いマジカル
153 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/04/21(水) 18:22:04.93 ID:KNhpuxQo
気長に待つか
154 : ◆GrEv49dPaw :2010/04/22(木) 09:26:00.68 ID:9LquJBo0
続きを投稿します。
155 : ◆GrEv49dPaw :2010/04/22(木) 09:26:54.96 ID:9LquJBo0

      0

めでたしめでたし。
一度でもいいから、そう言って物語を終わりたい。

156 : ◆GrEv49dPaw :2010/04/22(木) 09:27:51.11 ID:9LquJBo0

      1

「しかし、今となってはそんなことどうでもいい」
目の前の《誰かさん》は心底からどうでもよさげに、そう吐き捨てた。
「どうでもいいのか」
「当たり前だろう。そも、つっこみ役の少年のためにわざわざボケたというのに。流してしまうとは思
わなかったぞ」
「分かりにくいんだよ」
もしかしたら、なんて思っちゃっただろうが。
にやにやと口の端を歪める《誰かさん》。何がそんなに可笑しいんだ。
「ふふ、いや、ね。少年は本当に異常なんだな。と、思ってね。いやいや実に興味深い」
この人もそんなことを言うのか。奇人変人の度合いなら目の前の《誰でもない誰か》や、自称《人類最
悪》のほうがよっぽどだと確信している。
確かに俺は殺人鬼だがそれでも、断言できる。
「あんたよりはマシだ」
「ふふ、くふふふ」
笑い出した。なんだ失礼な。俺はボケたつもりはさらさら無いぞ。
「ふ、ふふ。ああ失礼。なかなか面白い冗句だ。少年が何故そこまで『普通』に固執するかは私の知る
ところではないが、違うよ。そういうことじゃない」
シニカルに哂いながら、《誰かさん》。
「性格に普遍的な性質を持っていないという意味ではなく、精確に不変的な性質を持っていると言いた
いのだよ」
「さっぱり解らん」
だいたい同音異義語は小説上での表記でなくてはまったく理解できない。『せいかく』に『ふへんてき』
な『せいしつ』。鼓膜を振動させるのに大した違いはない。
「つまりだね」
――っん。……来た、きたきた。
《誰かさん》が何か言ってるが、まったく耳に入らない。
来た。違和感。さっきも感じた違和感だ。
未視感。
おかしい。そうだ、おかしいぞ……。どうして、
「少年は、流されすぎだ」

どうして、――人が居ないんだ!!

157 : ◆GrEv49dPaw :2010/04/22(木) 09:28:27.55 ID:9LquJBo0
居ない。人が居ない。客も、店員も、誰一人居ない。
この喫茶店内に、人の気配がまったくしない。
居るのは、俺と、《誰かさん》。それと、さっきの店員が一人だけだ。
その店員が、《誰かさん》の元へと歩み寄ってくる。
そして、――そして。
「ああ、もう終わりそうだよ。深夜」
「そうか。それじゃ?」
「お役御免、だろう。やっとだよ」
何を、言っている。
状況についていけない。目まぐるしく回る思考。回るだけでそれは纏まらず、動けない。
「私との会話に《流され》過ぎて気付かなかったのかい。つくづく、異常だな。いっそ異能か」
言葉が出ない。今、何が起きている?
「はあ、解らないのか? 未だに私がこの町に留まっている理由だよ。一つは、少年に対する意趣返し
として。そしてもう一つが、依頼されてね」
「……依頼?」
「理性の消失、もしくは本能の暴走。そう言ってもいいかもしれないね。古今東西、殺人鬼なんて怨み
だけは上手に買うじゃないか」
まさか、そうなのか。あの人が。
そうだ、十分有り得ることじゃないか。友人を殺されて、たとえ殺したのが知人だとしても。
あの人が、何もしない訳がない。
「鶴屋財閥の御令嬢とは顔見知りでね。親友の仇を討ちたい、なんて人情味溢れる意気込みをぶつけら
れて協力しないなんて、非人道の極みだと思わないかい」
その言葉を合図にしたかのように、喫茶店の入り口、さらには駅前に面した窓をぶち破って漫画から抜
け出してきたみたいな黒服さんがぞろぞろと、ぞろぞろと、ぞろぞろと、店内に侵入してきた。
……、…………うわぁ。
「ふふ、まあ、死なない程度に頑張ってくれたまえ」
振り返ると、……《誰かさん》が、いな、かっ、た。あの店員も、いない。
何だよ畜生!! 嵌められた!!
いくら流されるからといっても、これはない。これはダメだ。どう考えてもデッドエンド一直線。
たとえ殺人鬼でも、たとえ零崎でも。数の暴力には屈するほかないだろう。《兄さん》ならまだ何とか
できるのだろうが、残念なことに俺は成り立てだ。どうしようもない。
目の前の黒服たちが自らの得物を懐から取り出す。うわ、拳銃とか本物初めて見た。
あー、今なら。なんとなく、肯いてしまうのかもしれない。
確かに、これは異常。まるで、この展開に至るように、決められていたかのように。
「まあ、でも」
異常でも、異能でも。殺人鬼が言っていいことじゃないんだと思うけれども。
「ここで死ぬわけには行かないよな」
居場所を見つけた。家族が出来た。
なら、生きるために足掻いてみるのも、悪くない。


「やれやれ――――それじゃあ、零崎を始めるとしますか」

158 : ◆GrEv49dPaw :2010/04/22(木) 09:29:06.97 ID:9LquJBo0

      2

零崎に成る前。俺は正真正銘、唯の一般人だった。
それは、あのニヤケ面のエスパー少年が断言してくれた。
クラス委員長に殺されかけたり、時を遡ったり、変な空間に取り込まれたりもした。
それでも、そのいずれも俺は巻き込まれただけ。あくまで受動態だった。
平凡にして平淡に、平常にして平和に高校生をやっていた俺が。そんな俺が、どうして。
「――やれば、できるもんだな」
喫茶店内は真っ赤になっていた。
生きているのは俺だけ。黒服の皆さんは揃って今日を命日としていた。
「うわぁ」
店内を見渡して、ドン引きした。
そこには、割れたガラス片で首を切り裂かれた人が。ネクタイで首を絞められた人が。テーブルに押し
潰されている人が。内臓が零れている人が。右胸に空洞がある人が。目玉がない人が。舌がない人が。
腕がない人脚がない人が耳が鼻が口が潰れてぐちゃぐちゃで何もなくてない人が。人ひとがヒトヒト人
ヒトガ人ガ人がひとが。
みんなしんでる。しんでる。
だれもかれもみんな、いきをしていません。
それを、見て、視て、観て。俺は――。
「………………………………」
なにもおもいませんでした。
なにも、おもいませんでした。
159 : ◆GrEv49dPaw :2010/04/22(木) 09:29:49.65 ID:9LquJBo0

この結果。
何十人と押し寄せてきた黒服たちを俺が皆殺しにしたことは、有り得ない。
俺は殺人鬼で、でも成り立てで、その前は高校生で、だから。
この惨状を創り上げるほどの殺人技術を、俺は有していない。
予想外の結果。生き残った。それも、余裕を持って。
自分が着ている服を見下ろす。血が、一滴も、付いていない。自分の血も、黒服たちの血も。
鮮血に染まったこの空間で、俺だけが浮いている。
認識している。自分のできることを。
多分、今の俺なら。たとえコップ一杯の水でも、それを遣って溺死させられる。蜘蛛の糸でも、絞殺で
きるだろう。
ナイフも拳銃も必要ない。武器である必要など何処にもない。
人に曳かれて、状況に流されて。そこにあるものならば、何だって遣える。
それは、そんなのは。まるで、現象みたいだ。
そうなるから、そうする。殺せるから[ピーーー]。
……考えても仕方ないな。零崎だから、ということで納得しておこう。
俺が突っ立っている環境は今までの人生の中で最悪に劣悪だ。故に、新鮮な空気を肺に入れるため、取
りあえず外に出ることとする。
入り口に向かっている途中、ふと下を向くと、そこには血塗れの床と、人間の右手だと推測できる肉塊
と、それと。軍隊に採用されてそうな恐ろしげなナイフ。
俺はそれを拾い上げるとそこら辺の布でこびり付いた血を拭い、別の布を引っ張ってきて刃に巻きつけ
てポケットに突っ込んだ。
そのナイフは、何故かしっくりと馴染んだ。
160 : ◆GrEv49dPaw :2010/04/22(木) 09:30:38.32 ID:9LquJBo0

      3

喫茶店を出たところで、声を掛けられた。
「やあやあ、よかった。ちゃんと再開できて何よりだよキョン君。どうもこの町はきな臭くてね、せっ
かく見つけた可愛い弟に何かあったらと心配していたのだけれど。無事で何よりだ」
「兄さん」
「うふふ、《兄さん》、か。いい響きだね。あの可愛いさだけが取り得の愚弟にも見習って欲しいもの
だよ」
「……はあ」
何はともあれ。
《自殺志願》の二つ名を持つ、《零崎一賊》の長兄。
零崎双識の登場だった。

兄さんは俺を見て、喫茶店を見て。そしてまた俺を見ると、
「これはキョン君が?」
と訊いてきた。
特に隠すようなことでもないので、素直に頷いておく。
「ほう、キョン君が。これは全くの予想外だ。いや想定内、なのかな。まあ、なんにしろ、丁度良かっ
た」
喜色満面といった体で、兄さんは下ろしていた左手を少し上げた。
視線を兄さんの左手に移すとそこには……えっ? あれ?
そこで何してるんですか、鶴屋さん。
「うふ、うふふ。彼女がキョン君のことを話していてね。不躾だとは思ったけど大事な大事な弟が話題
に上っていたから、聞き耳を立てたんだ。そしたら、なんと、キョン君のことを[ピーーー]計画を立てていた
んだよ」
元気溌剌だった先輩だったモノを眺めながら、兄さんの話を聞く。休日の駅前だというのに、今日はや
けに静かだな。支障はないので気にしないことにした。
「キョン君は成り立てだし、兄としては心配でね。それに彼女は《不合格》だったから、だから」
だから、殺した。
「はあ、そうですか」
口からでたのは、それだけだった。
思い出はある。それも楽しい物ばかりだ。それでも、なにもおもわない。
「うん、そうなんだよ」
そして兄さんは八重歯が素敵だった先輩だった物を引き摺ると、喫茶店の中に放り込んだ。
どちゃ、べちゃ、という音がした。そして、気付いた。
これで、お終い。
幕は下りた。
物語は死んだ。
――俺の物語は。

161 : ◆GrEv49dPaw :2010/04/22(木) 09:32:18.80 ID:9LquJBo0
「ところでキョン君はこれからどうするんだい?」
喫茶店のトイレで手を洗ってきた兄さんが、唐突に聞いてきた。
「これから、ですか?」
「うん。できれば、『アス』とか『トキ』とかにも紹介をしておきたいんだけど。人識君の方も気にな
るからね。きみ次第でこれからどうするか決めようかと思うんだ。キョン君はまだ成り立てだからね」
どうにも心配してもらっているようだ。
これから、か。どうするべきか。全く何も考えてない。
流されて、曳かれて。《零れ堕ちた》俺はまだ何をするべきか解らないけど。
「あの、京都に行こうかと思います」
「京都に?」
「ええ」
なんとなく、予感がある。
京都に行かなくてはいけない。
そこで、遭わなくてはいけない。
誰のことなのか、何のことなのか、それさえも解らないけれどそれでも。
「京都に行きます」
そこから、始まるんだろう。
何かが。
そんな、気がする。
だから――、俺は《零崎曳識》として。

別の物語に《流される》。


《The melancholy of suzumiya haruhi》is BAD END.......
162 : ◆GrEv49dPaw :2010/04/22(木) 09:33:16.54 ID:9LquJBo0


      観客席から、下りた緞帳を観て


「成る程。これも一つの《物語の終わり》と言えるのかも知れん。物足りんがな」
《物語の終わり》……ですか?
「ああ。それが俺の目指す先。俺は、物語の終わりが見たい」
そうですか。それにしても今回の《彼》を中心とした物語。私にはいくつか解らないところがあったの
ですけど。
「『解らないところがあった』。ふん、当然だ。一つの視点から得られる情報量など高が知れている。
お前は《スピンオフ》に聞き覚えはないのか」
……外伝的な意味合いを持つ物語のこと、でしょうか。
「そうだ。この物語では識り得なかった事柄。涼宮ハルヒ・朝比奈みくる・古泉一樹・長門有希、それ
から、あの佐々木とかいう女の殺害方法やそれらを隠ぺい工作をした存在。《あいつ》の異常な殺人技
術の理由。鶴屋という女と《誰でもない誰か》の接点。零崎双識と鶴屋の出会い。人気のない駅前。そ
して、《あいつ》の、これから」
はい。
「それらは全て、《スピンオフ》で語られるのかもしれない。或いは、誰も識ることもなく埋もれて行
くのかもしれない。だが結局のところ、そんなことはどちらでも同じことだ」
そうですか。……そうなのでしょうね。
「ふん、ところで。何時まで俺についてくる気だ」
《彼》に逢えるまで、です。貴方についていけば、いずれ出逢う事になるのでしょう。
「何故そう思う」
勘です。
「……そうか」
ええ、そうです。
「まあ、いいだろう。だが俺についてくる以上、俺の役には立ってもらうぞ」
《物語の終わり》を見るためですか。いいでしょう。ただし、《彼》と逢えるまでです。
「それでいい。あと、そのメイド服は良いとして、俺の傍にいるのなら伊達でも眼鏡を掛けてもらうぞ」
……眼鏡属性なんですね。
「『眼鏡属性なんですね』。ふん、眼鏡属性がない奴は人間失格だ」
……、……そうですね。
「ん? おい、なにを露骨に離れてる。ちょ、おい、聞こえない振りをするな他人の振りをするな!」
ワカリマシター。
「片言じゃねえかっ! もういい、行くぞ!」
はい。
「――ふん」
163 : ◆GrEv49dPaw :2010/04/22(木) 09:35:26.77 ID:9LquJBo0
以上で終わりです。
目を留めてくださった方。
書き込みをくださった方。
本当にありがとうございました。
164 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/04/23(金) 16:39:41.66 ID:xVtKIJAo
乙、面白かった
165 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/04/24(土) 04:18:04.78 ID:tZYu9cAO
乙乙!こういうのは面白い。
構想してるならまた別の話しも読みたいです
166 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/04(火) 01:44:00.31 ID:.WZyOEoo

最後のは誰か続きかけよ!というフリなのか
167 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/05(水) 17:03:41.87 ID:yvQFe1Eo
168 : ◆GrEv49dPaw :2010/05/23(日) 17:43:09.32 ID:wJ/fBLo0

これは、私の《四年間》の人生、その記録、

――《観察記録》である。


「私は、――人類最強だ」
泰然自若に彼女はそう言った。

「一緒に遊びましょ!」
天真爛漫に彼女はそう言った。

「今日が私の命日ね」
安心立命に彼女はそう言った。

「じゃあな。……ありがとう」
虚心坦懐に《彼》はそう言った。



私という存在を構成するもの。
蛋白質やカルシウム、その他の物理的な全てを超越して成り立つ因子。
情報に依拠して確立した、私に有り得るはずのないもの。
エラー/感情

だからこれは間違いなのだろう。
プログラムに蔓延るバグ。致命的なミス。
砂上の楼閣に打ち寄せる波のごとく。儚く脆く。
そんな《エラー》を基点として、湧き上がった《感情》

故に、私はここに残します。
私の四年間。その中で出逢った四人。その記録を。
識って欲しいから。
あの人を、彼女を、彼女を、《彼》を。
そして願わくば、

私の《ココロ》を。


これはお話ではありません。唯の観察記録です。
究極的に主観的、絶対的に独善的。
失格した観察者。欠陥した宇宙人。
そんな彼女の成長記録。それは彼女の性状記憶。
それでもいい、と仰るのなら、

拙い恋物語のはじまり、はじまり――。


      『長門有希の人間観察』

169 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/23(日) 17:44:36.76 ID:LyNb27Uo
期待
170 : ◆GrEv49dPaw :2010/05/23(日) 17:47:28.86 ID:wJ/fBLo0
上の作品のスピンオフ的なのの妄想です
予定は未定です
書けるとしてもだいぶ後になるかと
需要があったらちょっとずつ書いてみます
171 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/05/23(日) 19:32:49.89 ID:Q8v.IoUo
これは楽しみだ
172 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/06/17(木) 01:02:33.66 ID:8s3Q.yYo
まだか
173 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/07/04(日) 16:19:36.24 ID:.Ew3m.Uo
楽しみに待つぜ
174 :lain. [sage]:2010/07/10(土) 12:22:56.91 ID:???
作者の方は一度生存報告をお願いします。
2週間以上反応がない場合は過去ログ化処理の対象となりますのでご注意下さい。
175 : ◆tSOF7NFWbk :2010/07/13(火) 06:07:54.83 ID:3wukDdg0
 ヽ | | | |/
 三 す 三    /\___/\
 三 ま 三  / / ,、 \ :: \
 三 ぬ 三.  | (●), 、(●)、 |    ヽ | | | |/
 /| | | |ヽ . |  | |ノ(、_, )ヽ| | :: |    三 す 三
        |  | |〃-==‐ヽ| | .::::|    三 ま 三
        \ | | `ニニ´. | |::/    三 ぬ 三
        /`ー‐--‐‐―´´\    /| | | |ヽ
176 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/07/14(水) 13:16:23.59 ID:XV0ZMTso
よかった生きていたか…
177 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/07/15(木) 14:45:38.67 ID:xgBjNEYo
おう久しぶり!
178 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/08/22(日) 22:04:32.88 ID:NB6EmmI0
こないかー
179 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/08/23(月) 17:29:19.72 ID:/HYIjSU0
こいー
180 : ◆tSOF7NFWbk [sage]:2010/09/12(日) 02:08:18.49 ID:tpV.dsDO
――――――――――――――――――――

眠い。

とにかく眠い。

眠くて、仕方ない。

何故、眠たいのか、わからない。

意識がまどろむ、思考が上手く働かない。

どうしてこんなにも眠たいのかわからない。

自分が何をしたいのか、どこにいるのか、何をしていたのか、なにもかもがわからない。

そんな自分が、意識を取り戻したのは。

「そろそろ、起きていただけますか」

手の平に激痛が走ってすぐだった。
181 : ◆tSOF7NFWbk [sage]:2010/09/12(日) 03:29:45.57 ID:tpV.dsDO
「……!」

右手が熱い、焼かれ……違う、刺された、痛みが、右手から全身へ一気に駆け抜ける。

激痛が、頭から目に届き、電気を浴びたかのように瞼を開く。

ホテルのロビーが視界に広がる。そして、俺はどうやらロビーの絨毯に上向きに寝転がっているようだ。
痛みの元は自分の右手、その右手にはナイフが生えている。

「おや、悲鳴を上げない辺り、貴方もプロのプレイヤーとしての覚悟は出来ているようですね、いやはや、助かります、僕は悲鳴が苦手でして」

そう言いながら、声の主は俺の右手を貫いているナイフを上から踏みつける。ナイフ自体は絨毯を少し貫通した程度から動かないようだが、踏まれた振動からまた痛みが広がる。

聞いたことのある、声。
182 : ◆tSOF7NFWbk [sage]:2010/09/12(日) 03:51:04.84 ID:tpV.dsDO
余裕を持った、知的さをイメージさせる声。

「貴方に二、三、質問がありまして、それに伴って、少しだけ、貴方に拷問をしようかと思うのですが……よろしいでしょうか」

声のする方に顔を向ける。

整った顔立ちに、声に合った余裕を装った笑み。

俺は、この男を知っている。

知っているが、知らない。

この男は知っているが、こんなことをするこいつを俺は知らない。

知っているようで、まるで別人だ。

「よろしい、と、取っても良いようですね」

そう言いながら、その男は俺の右手に生えているナイフを、踏んでいる足で回す、円を描くように、回す。再び激痛が右手に走り、血が吹き出す。

「……!!」

右の手の平を中心に走り抜ける痛み。

右手が燃えているかのような錯覚に陥り、抵抗どころか動くこともままならない、ただ悶えるだけしか、体が許さない。
183 : ◆tSOF7NFWbk [sage]:2010/09/12(日) 04:05:58.16 ID:tpV.dsDO
「頑張りますねえ」

男は俺の右手をこね回しながら、にこやかに話す。

「叫んで相手を喜ばすより黙っている方を選びますか」

男はナイフから足を退けてしゃがみ込み、ズボンのポケットから(北高の、制服)、ナイフを取り出して(二本目の、ナイフ)、左手で、俺の左手首を、地面に押し付け(全く抵抗出来ない、つまり、それ程、力に差があることにぞくりとした感覚が俺に襲い掛かる)、右手のナイフを(にこやかに)、俺の左手の平に――――――。


突き刺した。


「………!! がっ!!」

左手にも、激痛が走る。

「まあでも、僕はそちらの方が喜びますが」

そしてすぐに三本目のナイフを取り出す。
184 : ◆tSOF7NFWbk [sage]:2010/09/12(日) 04:17:26.56 ID:tpV.dsDO
「次はどうします? 足ですか? ああ、せっかく手を地面と縫い付けたことですし、そのまま指を切り落とすことにしましょうか?」

喋りながら立ち上がり、今度は俺の顔を踏みつける。

「……」

本当に……よく、わからない。
次に、右足を引き、蹴り上げる体勢をとる。
俺の顔をサッカーボールのように見る、男の顔。

「なんで……」

なんで……。

「なんでお前が……!」

なんの目的があって、何を考えて……。

「なんで、こんなことをしてるんだ、古泉!」

古泉一樹はにこやかに俺の顔面を蹴飛ばした。
185 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/09/12(日) 17:01:35.19 ID:DSKJYHMo
キテタ━(゚∀゚)━!
186 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2010/09/12(日) 18:22:06.26 ID:MaSuIAAO
貴方か待ってたぜ!
187 : ◆tSOF7NFWbk [sage]:2010/09/13(月) 20:14:08.08 ID:F1aDW/Y0
またしばらくネットの海に潜ります。
話自体は最後まで考えていますが文章に出来ずいつも超遅れてしまいます、すみませぬ。

最後まで挙げたいなー、と思っていますので、他の作者さんが来るまで保守(sageてるけど)がてら、ちまちまと不定期に投下します。なので他の作品が挙がる、今書いている方々が続きを投下するまでの繋ぎくらいにでも考えて見て頂けると超嬉しいです。

ではでは。

(誰か書いてくれねーかなー、続きも読みてーなー・・・・・・)
188 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/10/22(金) 21:29:23.90 ID:pKpfXwo0
あげ
189 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :2010/11/11(木) 10:23:47.47 ID:jGnmPYAO
こい
190 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/07(火) 12:41:53.71 ID:gc9nhmYo
はい
191 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします [sage]:2010/12/11(土) 05:57:40.89 ID:bqIdHLAo
 
192 :以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします :2010/12/27(月) 17:11:32.03 ID:DRGn8QAo
まだかなまだかな
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